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ひとまず店内へ。 まーくんが長年の経験を生かし、まず今後のトレーニング方法についての説明を始めた。 まーくん「お前にフットサルについて言うことは何もない。 だが、今のお前にはスピードがない。 腰もヤバいから激しい走りこみは無理だ。」 オミ「オレと同じだ。」 拓真「・・・。」 まーくん「その代わり、昔の軟弱なときより、今の方がパワーがある。 これを生かすしかない。 相手を吹っ飛ばすような強靭なフィジカル、そして、ゴールネットを突き破るような強烈なメガトンシュートをつくるぞ!!」 拓真は右手でガッツポーズを作り、返事した。
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BACK 106 :名無しさん:2007/06/02(土) 16 33 25 ID a6.nVPFw0 [画面端からの投げコン] 家庭用調べ。数字はダメージ。端密着時に、Lv1、テンションゲージ使わないでの最大ダメのはず。 ■ダッシュJHSD>JHSD>ダッシュ近S>JHSD>JD>BRP ※LV2ならダウン確定。アバだけLV1だと最後がスカる チップ189、 アンジ154、 ザッパ146、 テスタ146、 イノ154、 ミリア176、 紗夢154、 ソル146、 聖ソル139、 医者146、 アクセル154、 アバ(LV1スカで125、LV2で129になるはずだがヒット確認できず) ■JHSD>JHSD>ダッシュ近S>JHSD>JD>BRP ※スレイヤー用。139 ■ダッシュJHSD>JHSD>ダッシュ近S>JHSD>JHSD>BRP ※カイ151、ロボ130、ポチョ129 ■JHSD>ダッシュ近S>JHSD>JHSD>BRP ※エディ148。始めのJHS>D部分を出来る限りディレイかける ■ダッシュ近S>JHSD>JHSD>ダッシュ近S>JHSD>BRP ※ジョニー144 ■ダッシュ近S>JHSD>JHSD>ダッシュ近SHS ※ヴェノム143 ■ダッシュ近S>JHSD>JHSD>着地>ダッシュJPS>JSHS>SV ※デズ157 ■ダッシュJHSD>JHSD>近S>HJ・SHSD>BRP ※アバ124、梅169、メイ150、 (このコンボは、デズ、ジョニー、スレイヤー、ヴェノム、ザトー以外なら全キャラに入る) [むずめ投げコンボ] ■JHSD>近S>JHSD>JHSD>BRP ※ジョニー140。最初のJHSD以降最速で繋ぐ ■ダッシュ近S>JHSD>JHSD>ダッシュ近S>HJSHSD>BRP ※ヴェノム&ジョニー用だが未確認、入るっぽい JKHSD>ダッシュ近S(仕込み)>HJ・SHSD>JD>BRP ※デズ153。これはやや簡単 ダッシュ近S>JHSD>JHSD>ダッシュ近S>HJSHSD>BRP ※デズ165。激難 ■ダッシュJHSD>JHSD>ダッシュ近S(仕込み)>HJ・SHSD>JD ※紗夢153 ■ダッシュJHSD>JHSD>ダッシュ近S(仕込み)>HJ・SHSD>JHSD>BRP ※ソル151、聖143、医者151、アンジ158、ザッパ151、アクセル158、鰤160、梅178、メイ158、テスタ151、イノ158 全キャラに試した結果だが、ミリアやチップにも入りそうな気配した) 126 :名無しさん:2007/06/03(日) 01 24 36 ID GlnpkVgg0 スレって確か本当の壁密着だと近Sから入らないと JHSか、2段JHSのどちらかがスカったような覚えがあるのだがどうだったかな。 136 :名無しさん:2007/12/06(木) 22 12 45 ID uOXRayaMO 端投げコンでジョニーに ●ダッシュJS JHSJD 着地 近S JSJD D SV が繋がったんですが既出ですか? 137 :名無しさん:2007/12/06(木) 22 55 25 ID 0evERKA.0 ●投げ (ダッシュS JHSJD JC JHSJD)×2 BRP 残念ながらジョニーにはこれが入るよ。 439 :名無しさん:2008/02/23(土) 04 56 09 ID NytrBna6O ●端投げHJHSJDJS>JHSJD>BRPLV2 BACK
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2HS(CH)>ダッシュ立K→近S>JK→JS>JK→JS>SV 2HS(CH)>ダッシュJHS→JD>JHS→JD>SV 2HS(CH)>ダッシュJHS→JD>JHS→JD>(着地)近S>HJS→JHS→JD>BRP(端)
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足払い>BHBorロック>AC 足払い>LV1ロック>~(ロックイット参照) 足払い>RC>近S遠S立HS>ロックイット>AC 足払い>RC>近S>立HS>JS>JC>JHS>SV 足払い>RC>近S>立HS>HJSHSD>BRP ※CH時は、どれもRC無しでも繋がる 足払い>RC>JPJHSJD>着地近S>JSJD>JC>JD>BRP 足払い(密着CH) K(J仕込み)S HJSPS or HJSKS JC SHS SV 足払い(密着CH)>GB>追撃~
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BACK 484 :名無しさん:2008/03/03(月) 02 55 48 ID 482jU3M2O ●2D>LV1BHB>ACFRC>ダッシュJHS>JD>JHS>JD>〜 今はここまでしかやれてない、ていうかしらないから適当なんだけどどんな感じでやればよさげ? 485 :名無しさん:2008/03/03(月) 03 16 20 ID bDqbhFpE0 二回目のJDのあとBRPに繋ぐくらい 486 :名無しさん:2008/03/03(月) 10 55 12 ID OU05dCFQO 2D>LV1BHB>ACFRC>ダッシュJHSって繋がる?LV2BHBじゃなきゃ繋がらなくね? 487 :名無しさん:2008/03/03(月) 12 24 10 ID /RxwcfCoO ダッシュJHSでは無くダッシュJPのはずだな。間違いじゃない? 488 :名無しさん:2008/03/03(月) 13 21 44 ID SIq7eHAsO 一応つながるけど、猶予1、2Fくらいだったはず 489 :名無しさん:2008/03/03(月) 13 23 01 ID EVotApp60 BHB2ならJHSでいける、1はJPじゃないと無理。 491 :名無しさん:2008/03/03(月) 15 06 30 ID /RxwcfCoO あれ?JHSって発生6Fだっけ?BHB1FRCって最速だと猶予7F生まれるんだよね? ん?どっちにしろ聖ソルのJ移行が3Fだから無理なのか? 492 :名無しさん:2008/03/03(月) 15 45 52 ID aPtwUYwo0 JHSは9Fですよ 493 :名無しさん:2008/03/03(月) 16 48 28 ID /RxwcfCoO 曖昧でサーセンW じゃあ尚更無理じゃね? 494 :名無しさん:2008/03/03(月) 17 06 10 ID e6UcKaukO 足 1BHBAC青 ダッシュJHはキャラ限密着で可能だよ。確かミリ、ザパ、ヴェノ、闇慈辺り…他にもいる。 これらには密着で足 ディレイ無し1BHBてやると、BHBの二段目がズレてヒットするため、猶予が増える。 足 2BHBAC青てやコンと難易度はあまり変わらないよ 496 :名無しさん:2008/03/04(火) 12 15 07 ID HB/Ir8ZQO 把握した。ザッパとかはJHDいけそうだけどミリアは高くなるから近S単発仕込みとかで妥協したほうが良さげだね。 499 :484:2008/03/06(木) 02 40 44 ID BHx0R70wO ミリしか練習してないけど2D密着じゃなくても一応繋がるよ。立ちK>2Dとかでやってるから 123 :名無しさん:2007/03/14(水) 00 48 39 ID 9ggTEGhs0 ●ダッシュガト〜足払い>Lv2BHB>AC青>先行ダッシュJHSJD>JHSJD>Lv2BRP ジョニーとロボ以外確認しました ACゲージがLv2の半分くらいあればできると思います 大体どこからでも端までもっていけるうえにダウンをとれます ダメージは4割弱です 最後のLV2BRPを>着地近S>HJS>JHS>JDに変えることもできます ●足>SVLV3>ダッシュJHSD>BRPLV2(CG220%以上) ほぼどこからでも端まで持っていける。アバはバウンドが変わってるから ダッシュJD>BRPかCGが220を超えないと、BRPLV2で締められない。 JD>BRPLV2はBRPLV2がすかるときもある。 CGに余裕があって中央付近から決めたならもう一回JHSDを決めてダメアップ。ゲージも25%近く溜まっていい。 ●足>BHBLV2AC青>ダッシュJHSD>BRPLV2(CG120%以上) 上のコンボと同じように中央付近から決めたならJHSDをもう一度決められる。 ダメ重視ならJHSDからSVLV2決めて拾うといい。SVLV2で端に持っていければほとんど拾える。 基本的に端に持っていった上でダウン重視で。次の起き攻めで崩せれば一気に勝負を決められる。 498 :名無しさん:2008/03/05(水) 22 43 12 ID HWHToW7I0 足 2BHBAC青 ダッシュJHSの猶予って実際何Fなんでしょうか?なかなか安定しなくて・・・ 612 :名無しさん:2007/02/24(土) 23 35 27 ID ImkmaR1k0 スラッシュであった足ロックコンだけど、今作ではJHS>JD2ループからの拾いがしやすくなったのでかなりダメが上がった。 ●足>ロックRC>JHSJD>JHSJD>着地SHS>HJSHSD アンジに確認、ダメは6割弱ほど。 髭にも確認して近Sで拾ってSHSDで、ダメは4割強ほど。 1ロックは発生遅くなったので当たるキャラと当たらないキャラがでるけど、 2ロックなら少なくともスラッシュで当たったキャラにはいけるはず。 レベル3なら確認サベから拾ったほうがいいと思うけど、レベル1ではかなりダメ高いし意外と画面端遠くても運んで拾える。 レベル3でもCK併用して全然使えるわ。3BRPとの対の選択肢で足>1ロック。 ヒット確認してRC、ガードされててもチャージゲージそのまんまでロックガード後の有利な状態。 ダメはどっちでも5割くらい。うん、キャラ限とはいえ十分実用に足ると思う。 足確認サベだとガードされた後攻めが途切れるしファフだとゲージ使う。足ならガトから直接出せるのもいい。難易度低いし。 671 :名無しさん:2007/02/27(火) 00 05 14 ID xMDaPOec0 足>1ロックが当たらない カイ ロボカイ テヤコンの二回目のJDがすかる アクセル メイ バイケン やってみた感じ中量級には大体いけそう。ミリアもいけた。以外に対応キャラ多いわ。 足先端>ロックだとRC後のJHSがすかることがあるけど、画面端なら大抵いける。ただ 画面端のほうが相手が高く浮くので二回目のJDがすかりやすくなったり。気が向いたら 実戦投入してみて。ダメは大体5割くらい。防御力により4〜6割に変動といった感じ。 615 :名無しさん:2007/02/25(日) 04 17 21 ID 8QKDzuPk0 LV3ならロック後はLV3サベ決めた方がいいんじゃない?25%くらいは上手くやれば回収できて、ダメはほとんど変わらないよ。 616 :名無しさん:2007/02/25(日) 12 30 28 ID mKtqUkfE0 それと 613は全くの別のお話だと思うぞ。613はチャージゲージをキープできるのが強み。 お前さんのはテンションゲージをある程度回収できるのが強み。ダメ変わらんなら尚更、 どっちのゲージを放出するか状況に合わせて使うべきなんじゃないかね。 619 :名無しさん:2007/02/25(日) 14 56 56 ID Vkr7FNqQ0 ダメは明らかにサベ3入れたほうが高い。サベ3からでも多分テヤコンいけるしね。 だから613のメリットはヒット確認しつつ攻めを維持できる、チャージゲージ維持 デメリットはキャラ限なのと、ダメが多少落ちること。どれくらい落ちるかは家庭用ないからわからんけど、結構違うと思うよ。 でもまぁ5割奪ってなおレベル3ならどうとでもなる気はするけどね。 個人的に攻勢が維持できるのはとても使えると思うのでもちょい調べてみるわー 625 :名無しさん:2007/02/25(日) 20 42 03 ID eZ.dIfzA0 今日 612のコンボ試してきたんだけど、何回やっても黒ビート・・・これ猶予2Fくらいですか?ロックRC>JHSの繋ぎです 628 :名無しさん:2007/02/25(日) 21 08 14 ID Vkr7FNqQ0 ロックRC>JHSはロックの時にレバーを斜め上にいれっぱにして最速JHS。 ずらし押しでやったほうが安定するよ。ダッシュしなくてもロック後は勝手に慣性つく。 猶予は4Fくらいはあるんじゃなかろうか。とにかくPKS同時押し後のHSを最速で入れることを意識すれば割と簡単。 BACK
https://w.atwiki.jp/5757/pages/112.html
家庭用調べ。数字はダメージ。 端密着時に、Lv1、テンションゲージ使わないでの最大ダメのはず。 [画面端からの投げコン] ■ダッシュJHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>JHS→JD>JD>BRP ※Lv2ならダウン確定。アバだけLv1だと最後がスカる チップ189、 アンジ154、 ザッパ146、 テスタ146、 イノ154、 ミリア176、 紗夢154、 ソル146、 聖ソル139、 医者146、 アクセル154、 アバ(LLv1スカで125、Lv2で129になるはずだがヒット確認できず) ■JHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>JHS→JD>JD>BRP ※スレイヤー用。139 ■ダッシュJHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>BRP ※カイ151、ロボ130、ポチョ129 ■JHS→JD>ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>BRP ※エディ148。始めのJHS→JD部分を出来る限りディレイかける ■ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>JHS→JD>BRP ※ジョニー144 ■ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S→立HS ※ヴェノム143 ■ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>着地>ダッシュJP→JS>JS→JHS>SV ※ディズィー157 ■ダッシュJHS→JD>JHS→JD>近S>HJS→JHS→JD>BRP ※アバ124、梅169、メイ150、 (このコンボは、デズ、ジョニー、スレイヤー、ヴェノム、ザトー以外なら全キャラに入る) [上級投げコンボ] ■JHS→JD>近S>JHS→JD>JHS→JD>BRP ※ジョニー140。最初のJHS→JD以降最速で繋ぐ ■ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>HJS→JHS→JD>BRP ※ヴェノム&ジョニー用だが未確認、入るっぽい ■HJK→JHS→JD>ダッシュ近S(J仕込み)>HJS→JHS→JD>JD>BRP ※デズ153。これはやや簡単 ダッシュ近S>JHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S>HJS→JHS→JD>BRP ※デズ165。激難 ■ダッシュJHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S(J仕込み)>HJS→JHS→JD>JD ※紗夢153 ■ダッシュJHS→JD>JHS→JD>ダッシュ近S(J仕込み)>HJS→JHS→JD>JHS→JD>BRP ※ソル151、聖143、医者151、アンジ158、ザッパ151、アクセル158、鰤160、梅178、メイ158、テスタ151、イノ158 全キャラに試した結果だが、ミリアやチップにも入りそうな気配した)
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正式名称 コマンド 通称 判定 RK 生RK 上 里合連掃腿 6RK RK 連掃 中下 順蹴り 3RK アホキック 中 2RK 生ロー 下 1RK フジン 下 7RK 避けRK 中 8or9RK コゲツ 中 66RK RK トウタイ 中中 横移動RK ソウタイ 下 しゃがみor鳳凰中3RK RK 鳳凰ソウタイ 下下 立ち途中RK ソウクウ 中 立ち途中4RK トウコン 上 4RK RK 即弾 中上 立ち右キック 発生の速い上段で、カウンターヒットで空中コンボに持ち込める。 置いとけ技で使えるが、見てから確定反撃で反応する人もいる。 里合連掃腿 6からの新技で、2段目が下段。なので読まれやすい。 左右へのホーミングが優秀だが、射程が短いので至近での使用。 2段目カウンターで転ぶので、蕩肩などで拾ってコンボへいける。 順蹴り 射程はかなり短いが、発生が早く、スキも少ない。中段。 射程以外は優秀。 ローキック ほぼ全キャラ共通で、優秀すぎるチクチク技。 多用すると嫌がられる可能性もあるが、捌きポイントともなる。 技後がしゃがみなので、シャオにとっては連携の一部といえるか。 斧刃脚 モーションは大きいが、技後のスキは小さく、ダメージもそこそこある。 カウンターでうつぶせダウン。リゴウで拾ってコンボもいけるが、猶予がかなり短いために難しい。 ダウンしている相手にも当たるので、寝っぱにも有効。 後ろ飛び蹴り ほぼ全キャラ共通の逃げ蹴り。 開幕時や、連携割り込み逃げで用いる。 虎月閃 気づかれにくい優秀技。ただ、当たり判定が発生するまで遅く、ジャブ等に引っかかってそのままコンボにもってかれることも多い。 優秀な点はジャンプステータス、中段技、カウンター確認からコンボにいける、技中2WPで鳳凰に直接移行、技中レバー2でしゃがみ移行。垂直と前方飛びが選べる、10連コンボの起点となる…など。 起き上がりにかぶせるのも、一時期流行した。 騰腿・騰腿宙転脚 前入力のために飛び込み技として用いられる。ダメージは大きい。 ガードされたときにもう一度右キックを入力すると、相手を足場にバック宙返りして間合いをとる。相手によってはそこに余裕で届く確定技もあるので注意。 掃腿 優秀技。リーチがかなり長く、下段。カウンターヒットしたら蕩肩、もしくはリゴウで拾ってコンボへ。 掃腿を連続で出すのもキリキリ削るにはいい。 が、シャオの横移動からの技は伏鳳と掃腿しかなく、どちらも見てからガードはもちろん、捌きも比較的ラクである。 過信には注意されたし。 前旋掃腿 1発止めで鳳凰に強制移行。2発出し切りでしゃがみへ強制移行。 射程は短いが、様々な連携に取り込むと幅が広がる。 蒼空砲 強力な立ち途中技。ガードさせてもスキはない。 振り回すこともあるが、追撃が難しいために、これをダメージソースとして頼るのは初級のうちに止めておこう。 遁甲転腿 その特殊なコマンドと動き、性能から使用率は低い。 一応カウンターヒットでよろけ、目視してから拾ってコンボへいける。 上段なのでガードさせて有利をとりたい。 即弾腿 新技。
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風を切り裂き地を駆けるライダーに対して、このフェイトもまた6課最速の魔導士だ。 速度で遅れを取る事など無い。 地面に打ち込まれていく雷槍を見事な側転でギリギリ回避していくライダーだったが、脇腹や腿を雷に焼かれて白い皮膚をきつね色に焦がす。 幾度目かの空爆に晒され、弾かれ、ゴロゴロと地面を転がるライダー。 「セット!」 消費した分の猛追の矢を魔力の許す限りに追加する。 矢継ぎ早に行われる魔力行使に彼女の体内のリンカーコアが唸りを上げる。 遠距離、は駄目だ。あのスピードで動く相手には長距離砲は当たらない。 ならばこそ近接、中距離での戦術を五つ、六つ――同時に展開する脳内シミュレーションに用意される魔法は優に10を超えている。 それは「いぶし銀」の技巧を持つ彼女の義兄譲りのマルチタスク。 あのクロノハラオウン直伝の高速思考は幼少からの10年の練成を経て、生まれ持った高機動の資質に更なる輝きを与え 近、中、遠距離を問わず、戦場のどこにいても味方をフォロー出来、また誰よりも早くそのポジションを埋める事の出来るという恐るべき特性を秘めた魔導士へとフェイトを成長させる。 付いた渾名が最速のオールレンジアタッカ「ライトニング(雷光)」 先の話に出たクロノをして、あと1,2年で越されるかもな、と愚痴らせるほどの 彼女の織り成す驚速の連携は無限のバリエーションを以ってまさに鳴り止まぬ稲妻の如く敵に降り注ぐのだ。 相手は度重なる槍の雨を回避するため地面を転がり、飛び退り、既に擦り傷と感電による火傷で痛々しい姿を晒している。 もはや反撃の糸口も、その場に踏ん張る事も出来ずに吹き飛ばされてしまう。 射出魔法を弾くも衝撃が全身に伝わり、きりもみしながら吹き飛ぶサーヴァント。 「もう抵抗するな! 武器を捨てて投降しろッ!! 無駄な怪我が増えるだけだと分からないのか!?」 再度、相手に降伏勧告を呼びかけるフェイトだが紫の髪たなびく背中には全く届かない。 空からの一方的な蹂躙。なまじ敵が強いだけに攻撃は決定打にならず、相手の生皮を一皮一皮剥いていくように痛めつけていく光景が続く。 心優しい執務官には酷な仕事となった。 (シグナムは………) ふと相方の騎士の安否を気遣うフェイト。 その時―――数100mほど離れた木々生い茂る地点から、ゴォォウ!!と凄まじい業炎が立ち上った。 離れていても、その火山の噴火のような轟音は聞き逃しようがない。 (紫電一閃……!) あの業火は他ならぬ、かのベルカの騎士が放つ必殺の太刀による噴炎だ。 向こうの戦況も佳境に入っているのかも知れない。あるいは今の一撃で勝負がついた? ならばそろそろこちらも詰めに入ろうと思い立った―― (え……?) その側面から――――――フェイトの思考の間隙を縫うように、こめかみに高速で飛来する迫るナニカがあった。 「なっ!!??」 それは旋回するかのような軌跡を描いて彼女の顔面に突き立つ。 それを銀色の光沢を放つ杭のような短剣だと魔導士が視認出来たのは 常時張っていた体表面を覆うフィールドが、その切っ先を辛うじて阻んで止めたからであろう。 頭蓋骨ごと串刺しにされなかったのは幸運。念のために防御に魔力を割いていたフェイトの聡明さ故であろうが。 その凶器は他ならぬ、今追いかけている女性の手から放たれたもの。 長く伸びた鎖に繋がれているそれを、完全にこちらに後ろを見せながらに魔導士の一瞬の隙を付いて投擲してきたのだ。 意外な反撃に息を呑む――― それだけの間、それだけの刻――― 追跡の中断と思考の混乱を招いたというだけで――― だがそれだけのチャンスで十分。 それを生かせないような愚鈍はサーヴァントなど名乗れない。 「私を前にして余所見とは―――」 上空の魔導士に背を向けていた騎兵が今、ここでおもむろにターンする。 前方に向いていた速度をボコン!、とアスファルトを踏み砕くような切り返しと共に強引に方向転換。 慣性の法則を脚力で強引にねじ伏せ、踵を返し、数歩助走―――― そして、そして釘剣が相手にヒットし、敵の猛追に一瞬の陰りが見えたと同時。 ホップ、ステップ、、 「行きますよ―――――魔術師ッ!」 ―――――――大ジャンプ!!!! ドォォォン、!!!という凄まじい擬音が何よりも似合う まるでロケットが打ち上げられたかのような踏み切りと共に――――ライダーは宙空へと身を躍らせた! 紫色の砲弾。放たれた対空の迫撃砲。 乱れ散る長髪をなびかせて、高度はぐんぐんと上昇。 10m、20m、ッッ!! 「そんなっ!??」 体勢を立て直すのに一秒も要してない。 すぐに相手に向き直ったにも関わらず、敵は逃走を止め 遥か上空に居を構える空戦魔導士に向けて捨て身のダイブを敢行したのだ。 そのあまりと言えばあまりな跳躍力に悲鳴じみた声をあげるフェイト。 当然だ。埒外なんてものじゃない! 翼持たぬ者が要するであろう常識的な跳躍力は生物の構造上、その身体強度の限界を超えて飛ぶ事は出来ない。 だがそんなセオリーを無視して……否、木っ端微塵に砕いて行われたそれは、もはや跳躍ではなく「飛翔」。 飛距離は伸びる。 30、40、。 ソレは瞬く間にフェイトの眼下にまで上昇。 地面から打ち放たれた、まさに対空砲撃と化した騎兵に対し、プラズマランサーを当てるのは難しい。 「シールド!!」 ならば自ら迎撃――その砲弾を打ち落とす! いかに凄まじい突進であろうと一直線。空戦による攻防のアドバンテージは今だ、空を自由に駆けるフェイトにある。 紫色の砲弾に対し、フェイトは右手に魔力を集中させて今、全力のシールドで受け止めたのだ。 宙空にて激突する紫と金色。 空を魔力の残滓で染め上げる二人の光はまるで月光に舞う蝶のよう。 ギギギッギギッッ、という鼓膜を削られるような魔力陣の擦れる音が宙域一帯に鳴り響く。 「く、ぅ!!」 凄まじい衝撃がフェイトの全身を駆け巡る。だが受け止めきれば自分の勝ちだ。 下手に逸らしたり避けたりして敵を逃がし、再び地に降り立たせる事は無い。 重力の楔に縛られた者が、空に住む者を前に宙に身を躍らせるという事実。 このまま相手の勢いを減退させ、弾き返すだけで期せずして敵の無力化は完了。 力なく浮き上がり、自由落下に身を任せる以外に術の無い肢体に空中での同時連携を数十発叩き込めば、それでノックアウト―――詰み、だ。 「はぁッ!!!」 シールドの残り魔力を叩きつけるようなバリアブレイクで相手の突進を弾き飛ばすフェイト。 相手の奇襲をほぼ完璧な防御にて無力化。プラン通りの展開。 今度こそ決まった――――大鎌を力のままに握り直し、締めの追撃を行う――― 「!!」 その期に及んで―――またもフェイトが目を見張る事となった。 そこでも敵の行動は彼女の斜め上を行くものだったからだ。 目の前の敵を無力化し、追撃に身を乗り出した彼女の鳩尾に衝撃が走る。 ライダーが中空において放った蹴りがBJの上から突き刺さったのだ。 予想外の反撃に息を詰まらせ、出鼻を挫かれるフェイト。 それは苦し紛れの反撃以上の意味を持たず、不安定な体勢から放たれたこんな攻撃で魔導士を壊せる筈が無い。 だがその蹴り付けた反動でライダーはこちらの手を離れ、ぐんっと地上への落下を開始。 むしろこれが目的かと気色ばむフェイト。 例えそうだとしても、こちらの追撃の方が早い! 逃がすわけにはいかない! そのたなびく長髪を称えた背中に追いすがろうとする彼女。 そんな一瞬だが完全に無防備になったその手首に―――― 「あ、ッッ!??」 ―――驚愕の声と共に何かが絡み付く。 何かはまさに今、フェイトの左手首を締め上げ、思いっきり体ごと引っぱってくる。 何が起こった!? 前後不覚に陥る魔導士。 牽引力で体勢を崩し、同時詠唱によって、テーブルに接地された数々の魔法が霧散してしまう。 「―――本命はこちらです」 耳に響くその声。 敵……あの紫の騎兵の「してやったり」という呟き。 そう、そのリストに巻きつきギリギリと彼女の手首を締め上げているのは、鎖。 言うまでも無くサーヴァントの武装である短剣の尾から伸びている金属の縄であったのだ。 フェイトを後ろ目に上空30m以上の高度から降下したライダーが、高度を全く感じさせぬかのように 翼無き者とは思えないほど見事に、地面を滑るように着陸し、悠々と地上に降り立った。 そして、間髪入れずに再び走り出す。 今度は連環によって繋がれた「エモノ」を引き摺って。 一瞬の躊躇が生んだ状況。 左手に巻き付く敵の縛鎖。これでフェイトの制空権は大幅に制限され、先ほどまで為す術の無かった騎兵の攻撃は十分に射程内となる。 (何て凡ミス……油断なんて微塵もしていなかったのに…ッ!) 自身の詰めの甘さか。それとも敵の埒外がフェイトの秤を越えた事によるものか。 そんな事は今更どうでもよかった。 魔導士絶対優勢の戦況が、今ここに互角の展開を醸し出す結果となったのだ。 再び地を駆けるライダーと、先ほどまでと打ってかわって10m前後の低い高度で彼女と並走しながら飛ぶフェイト。 騎兵が駆ける一本道であった山道は再び林道へと景色を変え、道路の周りにちらほらと生い茂る樹林が高々と聳え立っている。 その中を疾走する二人。 ギリ、ギリ、、ギリ、、、ギリ、、、、ギリ、、、、ギリ―――― 左手首が捻じ切られるほどに絞まる。 その戒めの鎖を担うのは、疾走しながらまるで根っこのように両足で地を食み、得物を渾身の力で引き付けているライダーの姿。 「痛ぅッッ…………」 強烈な引き合いで魔導士の肩関節が外れそうになる。 何という膂力……! 先ほどから出力を上げて上昇を試みているにも関わらず、相手は持ち上がるどころかビクともしない。 そして―――舞踏は新たなるステージへと移行する。 目の前に迫るのは数え切れないほどの木々生い茂る森。 魔導士の顔が青ざめる。直感で判断するまでも無く、あそこに入ってしまったらまずい。 そこは間違いなく自身の特性の大半を殺されるフィールドだ。 高速戦闘と機動力を旨とする自分のアキレス腱に、楔を打つ戦場。 引きずり込まれたら戦局は急転直下。一気に相手へと傾く事になる。 「く、ううぅぅ……!!」 しかし必死の抵抗空しく、まるで牽引車に引きずられるかのように力任せに引き擦られるフェイト。 パワーでは明らかに向こうの方が上だ。 そして激走に激走を重ねる両者が、前方に直角に折れたコーナーを迎え、それに対し減速せずに突っ込んでいくライダー。 そのままコーナーを曲がらずに直進し、道路を跨ぎ、ガードレールを陸上のハードルのように飛び越え、ものの見事にコースアウト。 眼前に広がっていた深い森林へと身を飛び込ませる。当然、フェイトを引き摺ったまま。 まるでカメレオンの舌によって絡めとられ、その口へと放り込まれる虫のように――― ぽっかりと空いた森が金の髪の魔導士を飲み込むのだった。 今、深く昏き森で縛鎖に囚われた乙女と魔幻の女神の織り成す、チェーンデスマッチが開幕を告げたのである。 ―――――― Flame Lancer2 ――― 「、イ………オイ、聞いてんのか?」 突然、耳に男の声が入ってきた事により騎士は己が意識を深層より浮上。 春雷の槍渦巻く戦場へと帰還を果たす。 「………………」 タガの外れたような槍撃の嵐を幾度となく打ち据え、その上で切り離した意識。 人としての部分が、重労働を科している肉体そっちのけで夢を見ていたらしい。 「すまんが聞いていなかった……何だ?」 「いや、だから大したもんだって誉めたんだよ。」 「そうか」 「何だぁ…?初めからの見積もりだが、明らかにお前の反射速度を超える速さで突いたんだぜ? それを既に36合―――涼しい顔して凌いだかと思えば今度は気絶したみたいにボケっとしやがって。」 気絶していた、とは言い得て妙かも知れない。 正確には余分な意識をカットしていたと言うべきか。 通常のままでは相手の攻撃を受けられぬと判断したシグナムは 五感――視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚。 その複雑に絡み合う神経と思考のうち、戦いに使用する以外の一切の機能を肉体から切り離した。 まさに完全な戦闘機械となる事で神経の伝達速度や反応を飛躍的にアップさせて相手の攻撃に対応したのだ。 「無我の境地、無明の位って奴か。 ありゃなかなか難しいんだが、其処に至ったのはいつだい?」 「生まれた時から出来たぞ」 一瞬、言葉を失い目をしばたたせるランサー。 彼とて人の御業という意味でのあらゆるジャンルを研鑽し、磨き上げ、その練磨した強さによって英霊と呼ばれた男である。 そんな彼が今、目の前の女がしれっと言った事の意味。その凄さ、凄まじさを分からぬ筈がない。 「昔、主と共に赴いたげーむせんたーという所にあった遊戯施設を思い出していた。 土中生物を何匹叩き殺したかを競うゲームだ。」 「俺の槍はモグラかよ」 「ウルトラハードよりもだいぶ速い」 「ハッ! 面白え姉ちゃんだなぁ! ひょっとしてお前、結構、凄い奴なんじゃねえの?」 後ろ手で後頭部を掻きながらに今更感のある事を言うランサー。 「ベルカの騎士……ヴォルケン……むぅ、聞いた事ねぇぞ。 お前さんほどの手練となれば、一度くらいはこの耳に入っていてもおかしくない筈なんだが。」 「我らはここではない所から来た。 時空管理局……この星の住人にはその存在は秘匿され詳細は知らされていない。 ついでに言えば、このヴォルケンリッターという名も本来ならば歴史の闇に埋もれた名である。 彼女も今はもう命を賭した果し合いをする相手にしか名乗ってはいなかった。 「ああ、道理で」 納得したようにうなづくランサー。 「んじゃま、素面に戻ったところでもう一丁行くかい?」 再びギチリ、と空気が凍り、凝縮した。 槍がゆらりと正面、シグナムの正中線に向けて標準を定める。 対して再び、自分に向けられた紅き切っ先に相対する烈火の将。 (久々に踏み込んだが、やはりきついか…) 騎士の体の節々に電流のような痛みが走る。 筋肉が己が意思を凌駕した動きに悲鳴を上げているのだ。 彼女こそ生まれついての戦士にして、闘い殲滅するために生み出された、とある魔導書の守護騎士プログラム。 ある意味、サーヴァントに匹敵する戦闘マシンだからこそ可能な、人体のリミッターを外した肉体運用法。 「速度」に勝る相手に対する処方。あのフェイトと交戦した際にも使っていた、反射速度と反応速度の強引な底上げだ。 だが、故に今、問題となるのは――― それを今ここで使い、そこまでしてようやく均衡を保っているという事実だった。 自身の体中に至る所に刻まれた傷は、打ち損じたモグラ……否、敵の真紅の槍がつけたものに他ならない。 手足、脇腹、胸、首に残る刃の痕は致命傷ではないものの、逸らしきれなかった槍が己が肉体を削っていった明白な証であった。 常時、知覚全開にしてなお凌ぎ切れない猛攻。 剣と分厚い甲冑の恩恵により何とか急所を外してはいるが、このままでは…… 「…………フ」 だが、その口に湛えるは更なる不敵な笑い。 まさに吹っ切れたといった感じの彼女の表情。 守り切れない? だからどうした? 元より防御を固めて縮こまっているのは性に合わない。 当然の事だが戦は――――――守るだけでは勝てないのだ。 「せぇあッッ!!!」 炎を纏う甲冑がその凄まじい気合いと共に爆ぜる。 その竹を割ったような潔さがひたすらに心地よい。 喜色を満面にしたランサーが、これまた両の足を地に踏みしめ断固不退の様相にて対峙。 「来な」 一寸も動かしていない筈なのに、ゆらゆらと揺らめくように見える男の槍の穂先。 そこから溢れ出す魔力の残滓はまるで死神の手招きのよう。 不吉な気配漂う呪いの朱槍を前にして騎士は、牽制もフェイントも一切無しに真正面から突進を敢行する。 騎士の踏み込みは豪壮なれど男にとっては決して速くは無い。 左右後ろの空間をふんだんに使っての防戦ならば比較的少ないリスクで迎撃出来るだろう。 だが今、男がそんな無粋な真似をする筈がない。 「えええええりゃッッッ!!!!!!!」 ボッ、ボッ、ボッ、と陽炎のように朱艙の切っ先が分身を開始。 一つが二つ、二つが四つ、四つが八つ――――分身などという生易しいものではない。 それはまさに分裂。 真紅の槍の煌きは幾多の刃閃を伴い、男の周囲を囲み 結界じみたその弾幕はまるで不可侵の防御にして絶え間ない攻撃の序章。 ガトリンク砲の如き連撃が今また、駆ける剣士に襲いかかる。 その姿、闘神・阿修羅の如し。 本当に自分と同じく二つの腕のみで行える所業なのかと疑わずにはいられないシグナム。 「頼むぞ騎士甲冑……今はお前の堅牢さが我が命運を左右する!」 両の目を限界まで見開き、赤き結界に自ら踏み込む将。 それは全開で回る扇風機に自らの手を突っ込む行為に似ていて、自殺行為にさえ見えるゾッとするような光景だ。 彼女が狙うは身の毛もよだつ相打ち戦法。 防御をアーマーに任せてのクロスカウンター。 同時に肉体にヒットすれば必ず打ち勝てるという自信がなければ出来ない捨て身の戦法だ。 烈風さながらの猛攻の中、決して両目を逸らさず一つ――― 剣を死に物狂いで振いながらに一つ――― イナゴの大群相手に剣を振るうような、絶望的に埒のあかない光景を前にして、それでも一つ―――選ぶ! その一突きを! 辛うじて見えた赤い線。 点が、線として捉えたその閃光こそ男の持つ槍の柄に他ならない! 「せえいっっっ!!!」 10の刺突が彼女の防御を突き抜け肉体を削っていく中、その1に対し剣を振り上げるシグナム。 バォウ!という、大気を根こそぎ持っていくような騎士のフルスィングは男の槍を勢いよくかち上げ――― 「っ!? ちぃっ!!」 ――――ない! 斜め下方から振り上げた姿勢が横に泳いでしまう。そのあまりの手応えの無さ。 霞を切ったかのような感触に歯噛みする女剣士。 「ようやっと亀が顔を出したか」 そこに空気を切り、大気を割って繰り出される刺突4連に、払いで締める計五つの赤い光。 ボン、ボン、というある種、小気味の良い音がシグナムの鼓膜を震わせる。 だがそれは恐ろしい事に、まさに男の槍が通り過ぎた後に追随する形で鳴動。 間抜けなほどにタイミングのズレた轟音。 「だが、ちょっと見え見え過ぎだぜ、魂胆がよ。」 「っ……おのれッ」 それが意味する所は一つしかなく、男の槍戟は一つ一つがマッハの壁を優に超えているという結論に至る。 相打ちや鍔迫り合いに持ち込むことすら至難。 触れる事すら叶わぬアンタッチャブル・レッド・サイクロン。 これ以上ははっきりとジリ貧だ。 このまま同じ展開を続ければ自分はもはや目で追うのも億劫になるような手数にたちまちのうちに飲み込まれてしまうだろう。 (こんな時でなければ見惚れているところだな……) 敵のその力。純然たる戦闘力に戦慄を覚えずにはいられない。 その戦慄と共に今、騎士の胸に湧き上がっているのは純粋な感動だった。 剣士として、その技量の壮絶さ―――そこに敗北感を禁じえない将である。 「はああッ!! はっはァッッ!!!!」 猛追する槍兵がその本性を見せ始める。 嬌声混じりの気合いと共に男はアクセルを終始ベタ踏み。 更に、更に、加速ッ、加速ッッ!! 既に残像現象を伴うその動きは減速という概念のコワれた暴走超特急だ! 剣士が辛うじて往なした一条の閃光が、すぐさま戻ってきて彼女の横っ腹を、首筋のすぐ横を通り過ぎていく。 何とか鍔迫り合いに持込み、せめて一呼吸、酸素を体に取り込みたい剣士であるが、その隙もない。 場に踏み止まれず、得意の空からの打ち落としの機会もなく、じりじりと後退を余儀なくされる。 身のこなし、歩法、体捌き、フェイントを織り交ぜた気配の使い方に至るまで一切の無駄の無い理想の挙動。 術を突き詰めた――――まさに極めたとしか思えないレベルにある目の前の男。 ダイヤの如き強さと輝きを秘めた術技の結晶が目の前にあった。 これほどの、これほどの戦技。 間違いなく生涯を武に捧げた者のみが到達し得るといわれる――剣聖の域。 「………答えろ!! 貴様は……いや、貴方は何故、私たちを襲った…!?」 「まだそんな事言ってんのか? いい加減、白けるぜ」 「いや、言わせて貰う! こちらには貴方のような者から命を狙われる謂れは全く無い! これほどの槍の使い手……さぞや名のある騎士と見受ける! そのような者が外道に付き従っている筈が無い……何故だ!?」 剣を交えた騎士の直感でわかる。 知らず彼女の口調にも畏敬の念が篭ってしまうほどの、それは偉大な何かだ。 交えた刃、かわした数百合は決してウソをつかない。 その根底にある戦士としての輝き、魂は誓ってテロリストなどに組する者のそれではない。 「名のある、か……まあ、あるっちゃあ、あるんだが―――シィッ!!」 「ぬうっっっ!!」 シグナムの頬を紅い閃光が通過した。 更に半歩、後退を余儀なくされる騎士。 その凛々しい顔の右頬にくっきりと赤い痕がつく。 「外道とはまさに言い得てズバリだが、別に珍しい事じゃねえだろ? 手違いでいけ好かねえ主に召し上げられるなんてのは世知辛いご時世じゃそこらで起きている事だぜ?」 「ならばやはり本意ではないという事か? 話してくれねば分からぬ事もある。 剣を交えるのはそれからでも遅くはあるまい?」 「おい、まさかお前―――ビビってんじゃねえだろうな?」 「見損なうな………そうではない。 貴方のような使い手にはそうそうお目にかかれるものではない。 故にだからこそ有象無象の無頼として、ただの犯罪者として相手をしたくないだけだ。」 「かぁ………面倒くせえなぁ。 御行儀の良い騎士様は」 彼女は惜しむ。 意見の食い違ったままにつく決着に納得のいくものなど無い。 そう教えてくれた、とある事件―――JS事件の折、剣を交えた一人の騎士の事を脳裏に蘇らせながら 彼女は槍の男を真っ直ぐ見据え、その解答を待つ。 「別に喋るなとは言わんが、お前さんも騎士ならば良い勝負の途中で中断を促すような真似するんじゃねえよ。」 槍の穂先を向けながらに叱咤するランサー。声には女騎士に対する失望の念がありありと籠っている。 「強敵と刃を交えるのは光栄な事だ。 正直、心が躍る。 中断する気は無いし決着は今ここで必ずつけよう。 だが槍の戦士よ……刃を交えるにせよ、まずは立てるべき筋というものがあると思わないか?」 「は、……あくまで引かんか。 だが生憎と戦場で弱い奴と語る舌はねえ」 騎士の道理など些細な事と切り捨てるランサー。 事実、男にとって襲う理由や真情など本当にどうでも良かった。 (どうせあのクソ神父の事だ……口にするのも憚られる、ロクな命令じゃないだろうしな) そんな事に気を揉むよりも男はとにかく戦いを欲していた。 渇望する魂は言葉などでは癒せない。 サーヴァントが唯一、その身の置き所に誇りを感じる事があるのなら、それは血潮飛び散る戦場以外に有り得ないのだから。 「力を示しな。 そうすりゃ口から何かしら零れるかも知れねえよ。」 あくまでこのまま戦闘続行を促すランサー。 釈然としない――― そんな思いから、振るう剣にいつもの業火の如き猛りを乗せられないまま、相手の男に対し構えるシグナム。 ――――――、、、、、、、、、、、その時 「………っ!!?」 将の全身に衝撃が走った。 見開かれた顔に大きく張り付いた驚愕。 あ、と声が漏れた口が、しかしそれ以上の言葉を発する事無く中途半端に開かれている。 (い、今のは…………?) 「それ」はどこから聞こえてきたのか? 遥か南東………ここから見えるのは鬱蒼と茂る森。 そこから―――― 「テ…………」 それは断末魔じみた悲鳴だった――――― 一体、誰の…………? 半ば呆然とする思考が今、火をくべられた暖炉のように燃え盛っていく。 (テスタロッサっっ!!!) そう、この場において将の耳に覚えのある声を放つ者など一人しかいないのだ! 今、まさに別の場所で戦っている戦友フェイトテスタロッサハラオウンの声以外には有り得なかった。 (まさか……有り得ん!?) 焦燥に駆られる騎士の思考。 あの6課の双翼、ライトニング隊長……閃光と称された最速の魔導士が、こんな僅かな時間で? 「向こうは終わっちまったかな…」 目の前の男がポツリとそんな事を呟いた。 それは、今の声が幻聴でない事の何よりの証。 シグナムの髪が逆立ち、元々の薄い赤毛が今や真っ赤な炎のように揺らめき出す。 もはやモタモタとやっている暇も余裕も一切ない。 「……良い顔になってるぜ――――お前」 男がその相貌を横目に見てニィ、と嗤う。 「レヴァンティンッッ!!」 烈火の将が相棒、一振りの魔剣に一気に魔力を込める。 ベルカの結晶=カートリッジシステムがせわしなく稼動し、撃鉄音と共に薬莢の落ちる音が三つ――― 途端、騎士のポニーテールが……否、全身の襞垂れが魔力の奔流と共に翻る。 それは宙を焦がす炎となってシグナムの剣に集約され、纏われていく。 「本当に殺してしまうかもしれん……」 こうなった以上は後戻りは出来ない――――― 怒りに震える炎の剣士の口からはもはや一切の甘さも焦燥も感じられない。 怜悧にして底冷えのする声が響く。 そんな騎士の様相を前にして 男の顔にも感極まったような笑みが灯った。 「―――――遅えよ」 飄々とした口調はそのままに、槍を体の周囲で10ほど回転させたのは手慣らしのためか。 何にせよ、それは中断された場を再び動かすためのゼンマイを捲く行為に似ていた。 そしてピタッと後方に抱えたまま―――相手の騎士の正中線を見据えたままに――― 「始めっからそのつもりでぇ! 来やがれってんだッッッ!!!」 猛々しく吠えるランサーが再びこの場に赤き旋風を作り出す!!! 烈火の剣と春雷の槍。 その苛烈な戦いは―――――――まだ始まったばかりである。 ―――――― Lightning Rider2 ――― それは一瞬の油断だった。 そしてやはり敵が埒外過ぎた。 フェイトは入ってしまう――――― 捕食動物がエモノを食らうために用意した魔の森に。 「くっ!!」 死へと続く魔の二人三脚。 矢のように通り過ぎていく周りの木々と片腕を極められ自由にならない体。大幅に制限された行動範囲。 そんな有様で手を繋がれ、ライダーに引き回されるがままに森へと侵入したフェイト。 眼前に広がる無数の障害物。こんな速度で激突したら、例えBJを纏っていてもタダでは済むまい。 「付いて来れますか? この私の速度に」 初めは自身の攻撃の通らない相手に苦戦させられたサーヴァントが今、相手を嬲り殺しにする料理法を展開し舌なめずりをする。 ライダーの疾走は「騎乗」していない時点ですら流星そのもので、並のものならついていけるはずがない。 その彼女に手を引かれ、木々生い茂る森林などに入ってしまったら、為す術も無い獲物は障害物や木に激突し 叩きつけられるのを繰り返しながら、引き摺られ、引き摺られ、彼女が足を止めた頃には見るも無残な挽肉となって地面に転がっている事だろう。 だが、ここで先ほどのライダーに負けないほどの意地を見せたのは他ならぬ執務官である。 「! ――――、ほう…」 ライダーが感嘆の声を上げる。 その姿、木々の合い間を縫って翻るは稲妻。 その枝を掻き分けてくるのは純白のマント。 その空を切り裂いて飛ぶは―――黒衣の魔道士! 付いてきている! フェイトがその高速のマニューバを展開し、森林をすり抜けて 逆にライダーを猛追するように後を追いかけているのだ! 追撃は終わらない―――最速同士の戦い その領域は既にオーバーレブリミットを超え、早くも問答無用のトップギアに突入していた。 ―――流れる景色は弾丸 ―――いや、景色に対して自分が弾丸なのか? ―――どっちでも良い、、 ―――そんな事を一寸でも考えている余裕は無い 共に流れる綺羅星と化した二人の思考がクロスする。 追う者と追われる者が目まぐるしく逆転するこの戦い。 まるでハンターと獲物の知を振り絞り凌ぎを削る戦いのようだ。 どうやって自陣に追い込み、罠にかけ、敵を引き込めるか。 既にそこから彼らの戦いは始まり、そこで勝敗は決まってしまっていると言っても良い。 故に訓練された捕獲者と神話によって生み出された天然の捕食者。 彼女達のその戦場は、まずどちらの陣地に相手を引っ張りこめるかであり――― その観点から言えば先ずはライダーが先んじたといっても過言では無かった。 キャノンボールの如き様相を呈してきた二人の戦闘。 あるのは強襲。急襲。速攻。 そんな金色と紫の肢体が苛烈に美しく踊り狂う様は視認できるのならば、激しく情熱的なシンクロナイズのように映っただろう。 迫る幾多の障害物。 手を鎖で繋がれた者同士、その間10mの魔の並走。 どこまでも、どこまでも上がっていく速度。 フェイトの視線の先――その眼に映る敵の姿は妙齢の女性。 美しい髪。美しい肌。 スラリと伸びた肢体に完璧といって良い、美の化身のような様相。 闘いなど知らぬ、琴などの優雅な楽器を弾いて小鳥と戯れているのが似合いそうな そんな女神のような女性の細い腕から伸びるは無骨な鎖。 それが黒衣の魔導士の手首にしっかりと巻きつき、一定以上の離脱を許さない。 そんな状態でこれだけの障害のある森を、縄で繋がった二人が並走したらどうなるか? 当然、彼女と相手が並ぶ合い間には無数の木があり、今、ついにその一本を間に挟んで通過する。 「ううっ!!」 「―――、」 瞬間、ビィィィンと張り巡らされる鎖に捕らえられるフェイトとライダー。 急激なGに内蔵や背骨を圧迫されながら、マッハに近い速度で直進していた二人が強制的に方向転換。 両者は支点となった木を中心にアメリカンクラッカーのように弧を描き、振り子の如き軌道にて急接近する。 「――死になさい」 紫の球が杭のような短剣片手に迫る。 「……! はぁぁぁぁあああッッ!!!!」 金色の球が裂帛の気合と共に大鎌を振るう。 その軌道が交差する地点が敵と切り結ぶ時、玩具のクラッカーならば互いの球はつがいの仲良しだ。 遊びに耽る子供の笑顔を作るため、仲むつまじくカチン、カチン、と小気味良い旋律を奏でるのだろう。 だが―――この二つの球にはそんな気は毛頭無い。 ぶち砕く!!! 初っ端の激突で相手の球を粉々に粉砕すべく、美しく扇状の軌道を取って旋回――Gに揺られた髪が横に流れる。 それは上から見たら閉じる扇子を模した組体操に見えた事だろう。 互いのラインが歪にクロスする。 長物である大鎌を器用に右手で扱うフェイトと、敵を捕らえたまま左手に握られた短剣を構えるライダー。 二つの閃光じみたクラッカーは遠心力に振り回されるままに―――激突! まさに扇が閉じた瞬間、先端にてバチィッッ、と火花が散ったかのように それぞれの肉体の機能を停止させるために放った凶器をそれぞれ紙一重でかわし、両者は交錯して位置を入れ替える。 支点となった大木は二人の手に繋がれた鎖によって絞首刑に処される。 ミチミチと繊維に食い込む金属の様相が、まるでふ菓子のような柔らかい固体を握り潰すかのような光景の元に、やがてばつんと力任せに切断される。 「う、くっ!」 支点が無くなった事で運動力が正常に作用し、半ば強制的に宙に放り投げられる両者。 並の人間ならばこの時点で脳は極限までシェイクされ、三半規管はズタズタだ。 なのに何事も無かったように二人は姿勢制御をその身に施し、フェイトは宙へ、ライダーは木の枝へ着地。 一瞬たりとも止まる事が罪悪であるかのように、再びロケットじみた加速で並走を始める。 鎖一本―――たかが鎖一本でそのフィールドは慣性の法則、作用反作用、振り子の原理。 その他ありとあらゆる運動法則がマーブルのように溶けあい二人に牙を剥く、異次元の戦場と化していた。 そんな並走戦を一体どのくらい続けただろうか? 十分? 一分も立っていない? フェイトの息が荒い。 それはスタミナ切れや精神的な負荷によるものだけではない。 左手に巻き付いた鎖が、彼女の手首を、引いては左腕、肩、全てに悪影響を与えているのだ。 その戦局が――――動く。 幾度かの打ち込みの後、 「あっ!?」 フェイトが相手の挙動の変化―――― 互いを振り子の玉にする支点となった木がまたもや砕け、両者があさっての方向へ投げ出されるその瞬間 刺客が起こそうとしているアクションに得も知れぬ悪寒を走らせ、目を見張る。 そう、ライダーが鎖を進行方向と真逆の方向へと引き、渾身の力で並走のベクトルを捻じ曲げたのだ。 「うあ!?? あぁぁッッッ!???」 凄まじい絶叫が森に響き渡る。 先ほどまでは予定調和の如き美しさを持った二人の二人三脚にノイズが走る。 ライダーが太股まで露になった両の足で自身の足場である古木を挟み込み 空いている腕で枝を掴み、この疾走に無理やり制動をかけたのだ。 結果、どうなるか―――高速で前進する体と、逆側に引かれた腕。 体の一部分だけが逆に引き寄せられたその結果、フェイトの左肩が歪に捻れ、引き千切られるほどに伸びていく。 「あ、かッ、ぁ……ッ」 全身が捻じれる感覚。 内蔵が雑巾のように絞られる感覚に嗚咽を漏らすフェイト。 当然、こんな制動をかけたライダーの両足や全身も無事では済まない。 挟み込んだ足場だけでは、この急制動を達成する事かなわず 彼女は己が鎖を自身の肉体に巻きつけ、大木に自ら縛り付ける事で己を固定させていた。 「―――、つっ!」 その牽引力たるや、大木すら耐え切れずに切断されるほどのものだ。 金属の縛鎖がライダーに食い込み、その白い肌を軋ませる。まるで捨て身の戦法だ。 だがそれは逆に自身の耐久力がニンゲンに劣る筈が無いという絶対の自信の表れか。 フェイトの断裂寸前まで伸ばされた肩の筋肉がミシミシと音を立てて軋み、全身に衝撃を走らせる。 だが、そこは高速戦闘に慣れた執務官。 寸での所で制動をかけ、身体を捻って関節の稼動限界に逆らわずに飛翔、受身。 左腕部破壊という最悪の展開だけは何とか免れていた。 「……ッ! ファイアッ!!」 後方の木々にその身を残すライダーに放たれるプラズマランサー。 ライダーがその光景を見据えて唸る。 (残しましたか……小癪な) 相手の生存を確認し、舌打ち一つ。 下の木に飛び降り、射撃を回避。 またも並走を開始する二人の女神。 「は………はふ……は、ッ」 乱れた呼吸はフェイトのもの。 あと一歩で左腕がオシャカになるところだったのだ。 その痛みと衝撃は決して無視できるものではない。 BJとはいえ万能ではなく、意外な事に捻挫や骨折、間接への衝撃には弱い。 デスマッチの主導権を握っているこの女怪。 仲良し二人三脚をやるために森に彼女を誘い込んだのではない。 天性の捕食者たる彼女がこの好機を逃がすわけがないのだ。 魔導士がキッと睨みつけた先、自身の真横数mに追いついてきた相手。 サーヴァントライダーに対し並走しながらに彼女は極められた左手を掲げる。 「そっちがその気なら……こちらもちょっと強引に行かせて貰う!」 「――――! チッ」 ライダーが盛大に舌打ちをし、途端にフェイトとの距離を詰めようとラインをずらして来る。 「フォトン……ランサーッ!!」 木の枝を次々と横っ飛びで渡りながらフェイトに迫るライダー。 だが―――遅い! フォトンランサー――― 射出系だけで七色を誇るとまで言われるフェイトの攻撃魔法の一つ。 彼女の周囲に出現した黄金のフォトンスフィアから射出される矢は、先ほどのプラズマランサーのような誘導性能はない。 だが自身、最も効率の良い射撃魔法として多用してきた凄まじい連射性能を誇る魔弾である。 「墓穴を掘ったね。私と繋がっている以上、もうこちらの射撃からは逃げられない!」 はっきりとした意思を以って敵――ライダーを見据えるフェイト。 迫り来る恐るべき騎兵を悠々と引き付け、余裕を持って今――― 「ファイアッッ!!!」 彼女が幼い時、師事した、母の使い魔から初めて教わった 万感の思いの篭った魔法のセーフティロックを解除し、トリガーを引く! 既に隣のライン。距離にして3m弱に差し迫っていたライダーが最後の跳躍を以ってフェイトに迫る。 そしてそれと同時、正面に見据えたライダーに対して魔導士が雷撃の連弾を盛大にブッ放したのだ! ドン! ドン! ドン! ドン!という小気味良い射出音が森に木霊し、迫る騎兵を雷撃の魔弾が飲み込んでいく。 一撃一撃の威力は低いが、速効性を求められたこの状況にて計30発に及ぶマシンガンの如き連射を相手に叩き付けたフェイト。 しかも至近距離。 宙空で回避も出来ない彼女を包み込む硝煙。 手に馴染んだ感触は確かなベストヒットの手応え……これでKO出来ない筈が――― 前 目次 次
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「ごっ…………!?」 アスファルトにぱたた、と鮮血が舞い散り、男の頭が爆発物に被弾したかのように爆ぜた! 蒼い肢体の上半身がズレるように吹き飛び、槍を構えた姿勢が崩れ、後方によろめく! まるで遠方からの狙撃を食らい絶命する瞬間のような光景。 頭部をピンボールのように左後方に弾かれ、その肢体がぐらつき揺れる。 ドクドクと脈打つ傷口から溢れる流血を手に感じ、負った傷にガリリと爪を立てて男は飛びそうになる意識を保つ。 抑えた手から際限なく溢れるように吹き出す血はまるで止まる気配を見せない。 頭蓋―――下手をすれば脳すら傷つけているのではないかという深手だった。 ―――まさか相手にこんな隠し手があったとは…… 蛇腹剣―――今でこそ武装・バリエーションの多様化により、剣と鞭のフォームチェンジによる変幻自在の奇剣は珍しくはない。 だが男の生きた時代では、それはいまだに未知の武装。 故に対処が遅れてしまった。 彼の反射速度を以ってしなければ頭を輪切りにされていたに違いない。 その見事な剣を放ったシグナムは男の正面、愛剣を横に薙いだ姿勢のままにランサーを睨み据えていた。 一言も発す事無く、血に塗れながらもクールな出で立ち。 だがその相貌、まずは一つ返したと言わんばかり。 修羅の如き女……まさかあの状態から槍兵のサーヴァントを相手に逆襲を決めるとは。 「―――――面白くなってきたじゃねえか………」 まさに剣鬼と魔人の滅ぼし合い。 今ので槍兵の顔半分、片目が大きく塞がっていた。 そして男は―――変わらず哂った ―――――― (ようやく一矢、といったところか…) 長い長い万里の道をようやっと一歩、踏み出せた……そんな心境の彼女である。 レヴァンティン・シュランゲフォルム――― ここまで我慢に我慢を重ねて温存してきた将の愛剣のもう一つの顔。 近距離特化のシュベルトフォルム・ソード形態の弱点である中距離戦闘を補い 鞭のような形状で相手を切り刻むレヴァンティンの主戦武装の一つ。 今まで使用を控えてきたツケを取り合えずは引き戻せた事にまずはほっと胸を撫で下ろす剣士。 見事に不意をつけたが、二度は通じまい。 この形態は飛距離に優れ、防御されにくいという反面、こちらが守勢に回った時は果てしなく脆い。 鞭という武装の利点と欠点。 使いどころに迷ったが、取りあえずは及第点を付けたいところだ。 ――― ム、!! 、、ナムっ! グナム 大丈、――、ム! ――― そして先ほどから耳元に威勢の良い声を届かせている小人の少女。 (おい、生きてるか!? シグナム! おい! 返事してくれよ頼むからっ!!) (アギトか……まだ生きている。 安心しろ) 最寄りの木の上に避難して事の成行きを見守っていた剣精アギトに返事を返してやる将。 (心配するな、じゃねーよ! 戦闘中なのは分かるけど少しはこちらの声に答えてくれてもいいじゃんか! フェイトにも何べんやっても繋がらねえし……うう) (すまんな。 余裕がなかった) (だいたいあんなヒョロい奴……何でフルドライブで一気に潰さねえんだよ!?) シグナムの顔がほんの少しだが驚きに染まる。 事もあろうにあのランサーを「ヒョロい奴」扱いするアギトに対し、簡単に言ってくれると苦笑するしかない。 まあ無理も無いのだが……この妖精にとって強さの指標はかつての彼女のロード――ゼストグランガイツが基準となっている。 満身創痍の身でありながらヴォルケンリッターの二枚を続けて抜いた恐るべき騎士。 その勇者を結果的に打ち破った烈火の将の剣こそ、今のアギトにとっては最強そのものなのだ。 そのシグナムがどこの馬の骨とも分からない野党に苦戦する光景など信じられないし、あってはならない事なのだろう。 だが、あの槍兵もまた強い……途方も無く。 陸戦オンリーだが、あるいはあのゼストをも凌ぐかも知れない。 戦術の組み立て、並べ方を一つでも間違えたらそこで終わりだ。 リカバーは効かず、その時点で一息の元に押し潰されて殺されるだろう。 と、そうした将の見解は取りあえず感情の昂ぶっていたアギトには伏せておく。 (………シグナム) (何だ) (いつまでもチンタラやってんなよ! いつでもいけるからな………ユニゾンっ!) そんなシグナムに対して強い意志で一言、小さな少女は騎士に告げる。 元より少女が今、出来ることなど一つしかない。 ならば雌伏してその時を待つ。 あの憎らしい槍野郎に止めを刺すその時まで決して自分の存在を相手に気付かれてはならない。 この体はロードの剣に業炎の力。 全てを燃やし尽くす灼熱の炎を与える切り札だ。 だからこそ将が命を下すまで今は歯を食い縛って耐えるしかないのだ。 (アギト) 故に二人の間にこれ以上の問答は必要ない。 最後に一言――― (心配するな) 小さな羽をパタつかせる少女の総身を震わせるには余りある、心強い言葉をかけてやる。 (ああ! ボッコボコにしてやれよな!) そうだ……この強いロードがあんな奴に負けるはずがない。 自分の心配なんか杞憂だ。 きっと、きっと、あと数分後にはいつも通りの強くて雄々しい烈火の将の勇士が見れるんだ! そんな思い―――― 小さな小さな応援を背に抱き――――騎士は再び魔槍の男に相対する。 ―――――― (ユニゾン、か……) 心の中で呟く騎士。 烈火の将のみならず古代ベルカの騎士の切り札ともいうべき、デバイスとの文字通りの「融合」 それは最後の選択肢の一つだ。 自身の限界以上の出力、付属能力を備える事になるそれは当然、通常運用よりも燃料消費はかさむ。 その試みによって敵を倒しきれれば言う事は無いが、もし相手を殲滅する前にガス欠を起こしてしまったら目も当てられない。 だがこの局面、このまま漠然と打ち合っていて事態が好転するとは思えない。 今の手札で戦うのもそろそろ限界だ。 どうする? このままジリ貧を続けるか? それともユニゾンで一気に勝負を決めるか? 試行錯誤するシグナム。 目の前、紅い槍との対峙がいよいよ持って熱を帯びてきた。 (さし当たっては無策で迎え撃つしかないか……) 鞘と剣の二刀を携える騎士が内心で舌打ちする…………その時―――!! (シグナムッ!!!) 先ほどのアギトに続き、脳内に――――― その身の無事を心配して止まなかった戦友の声が響いた! ―――――― (テスタロッサか……!) 沈着な騎士の声がわずかに半トーン上がる。 そしてどちらともなく漏れた吐息は、友の無事に対して心底からの安寧を感じさせるものだった。 (っ! クロスライン!! お願いしますッ!!!) だが切羽詰った声がその多くの安寧を称えた言葉を紡ぐ事は無い。 火急を要するこの状況で安息を求めるほど二人は愚鈍ではないのだ。 (間もなくフルスピードでそちらを通過します! 敵を引き連れて!) 間髪入れずに超高速でシグナムのデバイスにデータが送られてくる! ―――――時間は、あと 10秒03、、02、、 ―――――― と同時にそれは来た! ランサーが真紅の牙を翻し再び襲い掛かってきたのだ! 「ぐ、ッ!!」 「どうしたよ!! 人のアタマ削っておいてボサっとしてんじゃねぇ!!!」 後方に下がりながら手に持つ二刀、剣と鞘で必死に槍を裁くシグナム。 数多の敵を打ち倒し、また己が身を守ってきた彼女の半身が彼女の手によって踊り狂う。 右手に煌びやかな光と紅蓮の炎を内包する刀身。 眼前の男の喉元に向けて真っ直ぐに、片手正眼にて呼応する。 左手に純白の輝き放つ重厚な鞘。 クナイの様に逆手に持ち、胴の下の懐に構え、あらゆる猛攻を打ち払う鉄壁の城門の如く佇む。 攻防一体の出で立ち。 本来ならば一刀のオーソドックスな超攻撃的騎士剣こそが彼女の本流であるが、この姿もまた何と堂に入っている事か。 対して槍兵は変わらず攻める!攻める! 先ほどの蛇腹剣の予想外の変化はあくまで中距離において有効。 近接では使えまい。 ならば下手に距離を取られるよりは徹底的に密着した方が自身にとって有利。 (………?) だが男がここで違和感に苛まれる。 それにしても、この消極的な姿勢は何だ? 先ほどまでと違い、剣に覇気を感じない? 竦んでいる? 弱気になっている? ………そんなわけはない。 この女に限って、そのような惰弱なタマである筈が無い。 男の煌々と光る紅い瞳が、射抜くようにシグナムを凝視する。 (全く生きた心地がせんな) その些かの仕掛けも見逃さない魔犬の双眸に晒されて、全身の毛穴が開き、彼女の体からは発汗が止まらない。 (だが………もう少しだ) そんな綱渡りのような攻防も目前に光明を見出しているが故に悲壮感は無い。 出来るだけ完璧に近い形を以ってあの隊長を迎えたい。 あの金色の魔導士の副官としてキッチリと仕事をする。 それが今の自分の立ち位置に他ならないのだから。 その時まで―――――もうすぐ―――もうすぐだ―――! ――― ジャスト、0 ――― そして戦場を―――――――今、雷光が真っ二つに切り裂いた!! ―――――― 場に飛び込んできたのは金色の天使! シグナムの後方に座す森林の奥から爆風じみた突風と共に雷を纏う翼が舞い上がり 騎士の薄紅のポニーテールを跳ね上げたのだ! (間に合ったか……!) シグナムの目線は正面――槍兵から一時も話さないままに 後ろ髪に感じた戦友のマニューバによる心地よい風を以てミッションが正しく開始された事を知る! 「打ち尽くせ……………ファイアッッ!!!!!!」 上空へと舞い上がった女神はその黒衣と白きマントをはためかせ 号令の元、己が周囲に展開している全てのフォトンスフィアの解放を命ずる! 瞬間、フィールドは稲妻降り注ぐ雷帝の庭と化した! 雷の雨はまるで神が罪深き人間に下した天罰そのもの。 一帯にプラズマを生じさせながらアスファルトを焼き尽くす雷撃魔法。 「サンダァァ………スマッシャァァーーーッッ!!!」 そして、その止めというべき豪雷の鉄槌を今、フィールドの中央に打ち放つ! ―――――― 美しい金の髪をなびかせて――白い羽を羽ばたかせて――獲物は森を抜け、空に舞い上がった。 逆おわん型の上昇軌道で綺麗な離陸を飾る姿を片時も見失う事なく 鼠を追いかける猫の如き凄まじさを以って、マスクの下に爛々と光る目を隠した紫の女怪がそれを追走する。 やるべき事は既に決まっていたのだが、少し惜しい気もしている彼女。 恐らくアレを放てば、彼女の亡骸は骨も残らないだろうから。 あの白い体に爪を立てて直に引き裂いてやりたかった……その口から断末魔の絶叫をあげさせたかった。 泣き叫び恐怖する彼女の首筋をゆっくりと切開して、その滴る生命の奔流を浴びながらにいつものように口を潤す――― それが出来ないのは口惜しい……本当に口惜しい。 「―――――、」 全力を超えた全力疾走。 決して浅くなかった傷は既に癒え始め、森の中を疾風の如く駆け抜ける彼女の息は微塵も上がっていない。 マスクに覆われた眼は白いマントに釘付けだ。 捕食者は獲物を狩る時、その対象以外のものは見えない。 今、彼女の目には金色の髪がかかっているあの背中しか見えていない。 ――森を抜けた―――上昇する背中 可愛くて、でも憎たらしいまでに抵抗を続けた雀が今………宙に舞い上がる! 「助かった」と思っているのでしょう? 九死に一生を得た安堵感で胸が一杯なのでしょう? その顔が―――― 次の瞬間、絶望と驚愕に染まり、一瞬でこの現代より消えてなくなる…… その至福の瞬間を目に収められるだけでも、サーヴァントでもない相手に「アレ」を使ってしまう事の慰めとするには十分。 「―――終わりです」 そしてついにフェイトに一足遅れて紫の閃光、サーヴァントライダーが弾丸のような勢いを放ちながら森から飛び出してきた! 己が武器。 相手を貫く筈の短剣を彼女は自らの首に当て、その切っ先を自身に突き刺そうとする。 自虐というには余りあるその行為に加え、彼女は場に、まるで陸上選手のクラウチングスタートのように 前傾姿勢で―――地面をザザザ、と滑空しながらに四つんばいになる。 彼女独特の戦闘姿勢のそれよりも更に地に伏せ―――これより襲い来る凄まじい衝撃に耐えようと口を引き結ぶ。 愛しき生贄の一切合財を滅す、それは儀式――― 騎兵たる彼女の真の足を顕現させるために、今―― ―――――― 森の正面をぶち抜くように抜けて来た雷電と紫電―――片方が舞い上がり、片方が地に伏せる! 伏せた方の紫の長髪は忌々しいながらもよく知った顔で……… (……………て、おい) 騎兵―――サーヴァントライダーが今、四肢を地に付け こちらに向けて「疾走」の体勢に入っていたのだ! (あのヤロウ!!? まさか打つ気か!?) 驚愕と戦慄に見開かれるランサーの双眸! シグナムとの戦いに没頭していたその身では到底、回避も阻止も間に合わない! 冗談ではない……! この位置関係――――間違いなく巻き込まれる! 「ちょっと待てッ! てめえっ!!!」 体感、既に手遅れとなったこの局面にて――― 男の出来た事はパートナーに対して怒声を浴びせる事のみだった。 ―――――― 「―――!?」 瞬間―――森を抜け、視界が開けた瞬間、頭上から降り注ぐ光が騎兵の視界を焼く! 光は場全体に黄金の雷が降り注いだ事によって生じた物だ。 「目晦ましのつもりですか――無駄な事を!」 嘲笑う騎兵。 最期の抵抗にしてはそれはあまりに矮小で哀れだ。 樹海の闇に慣れたこちらの目を潰すために放った苦肉の策であろうが 並の閃光弾を遥かに凌駕する威力で対象の眼球を焼いたであろう光はしかし、彼女の「目」に対して些かの効果も得られない。 「―――――――、」 ――― ベルレ、 ――― そして自身の感覚にくっきりと焼きついた金髪の魔術師に向かって 騎兵は己が全力の疾走を敢行すべく、その真名を紡ぎ出す! 何か視界の隅に余分なものがいる気がするが大した問題ではない。 猛り狂う魔力。 凝縮していく「力」! そしてその杭を自身の首筋に深々と―――深々と、――― ……………… ……………… ―――――― 結論から言えば、儀式めいた自虐が彼女の首を鮮血で濡らす事は―――なかった。 求め焦がれた獲物の悲鳴。 搾り取られたかのような断末魔の叫びを聞く事も。 変わりに己の耳を振るわせたもの。 それは、ゴシャリ、と――――自らの肉体のうちより発せられた…… ―――――― 此処に来てパズルのピースがガチリと嵌ったかのように天秤は―――ライトニングに傾く。 個別に展開していた戦場が完全に交わり、四人八つの視線が近距離にて交錯する。 ここが戦局を傾ける分岐点。 事態が相手側に有利な状況で膠着している以上 戦況を自分側に手繰り寄せる「きっかけ」が欲しかったのは他ならぬライトニングの二人だった。 ならばここで引っくり返さない手はない! この予期せぬ事態で先に動けたのは言うまでもなく、デバイスの情報や念話による意思疎通によって状況を予見し 即席ながら対応策を練ったライトニングであった事は言うまでもない。 機先を制した騎士と魔導士のコンビに対し、仕掛けた網に飛び込むが如く、まずその餌食になったのは騎兵のサーヴァントライダー。 標的を追いかけ、己が疾走を解き放とうと宙を見上げ、視界が捉えた金色の肢体。 それに手が届く―――それを焼き尽くそうとした寸前――― ランサーに背を向けて森側に向き直り、ライダーの正面にて地を這うほどに十分に腰を落として待ち構えていたのは――― 「不用意だな………もっと周囲に気を配った方が良い」 ――――剛剣を携えた騎士であった! 雄々しい雄叫びのように翻る炎の魔力。 決して軽症でない体を振り絞り、体内に残った力を一気に集約し、解放して炎の魔剣に叩き込む。 そして今、自分の目の前に飛び込んできた間抜けな敵に対しその業火をフルスイングしたのだ!!! ゴシャリッッッ!!!という何かが粉砕される音を響かせて、溶鉱炉の如き熱気を放つ剣が女の胴にぶちこまれていた。 「は、ふッッッッ、!?――――」 何かがひしゃげる鈍い音を騎兵は確かにその耳に聞いた。 何も見えなかった……いや、見ようとしていなかった……獲物の姿以外の何も。 その獲物が逆にこちらに罠を張った事も、自身の胴を薙ぎ払われた事も、理解の及ばぬままに嗚咽に咽ぶその体。 全てに気づいたのは己の口が無様な悲鳴を上げた後の事。 待ち構えていた騎士の渾身の一撃が空へ釘付けになっていた視線の外 全く想定外の下方から伸び上がるような軌道でライダーの胴に打ち込まれる! 短剣の鎖を胴の前に張り巡らせて、奇襲に対し何とか防御の姿勢をとった彼女だったが 完全に不意をつかれた上、剛健さに欠ける鎖ではその攻撃を弾き返すにはまるで足らない。 ましてや騎士の渾身の一撃を受けられる筈もなく、両断されて上半身と下半身に分け放たれるのを辛うじて防げたというだけ。 打ち込まれた衝撃はミシミシッと肉体に食い込み、炎纏う刃が金属越しでも十分な殺傷能力を持って彼女の白い肌を焼く。 「かッ、――はぁっっ!?」 とても耐え切れるダメージではない! 明らかな嗚咽を漏らすライダー。 騎兵の身体がカクンと力なく、くの字に曲がる! 「おおおおぉぉぉぉぉおおっっっ!!!」 まさにド真ん中に放られ、真芯に捉えられた打球の如し! 烈火の将の軸足がぎゅるり、!と地面を抉る。 ライダーの両足が更に地から勢いよく浮き上がり、レヴァンティンが噴き出す炎熱の魔力にて火だるまになり ゴキャンンン、!という鈍い音と共に、飛び出してきた方向に打ち返されてしまう。 地面と垂直に吹き飛ばされるライダー。 その体が後方の木に叩きつけられ、その木が無残に折れて、それでも勢いは止まらない。 二本、三本と次々と大木に激突し、将棋倒しに薙ぎ倒しながら女怪は再び森の中に叩き込まれてしまったのだ。 「テスタロッサ・ホームラン……奴の直伝だ」 弾丸ライナーでバックスクリーン……否、森林の奥にまで打ち込まれた敵を見据えて将が呟く。 (変な名前付けないで下さい!) (フフ、恥かしがる事は無いぞ) 肩先から足の指まで痺れの残る、紛う事なきハードヒットの手応え。 クリティカルヒットの感触は戦いで負った苦痛を一時、忘れさせてくれる。 相手が何であれ、これほどの一撃……無事には済むはずがない。 「行くぞ、レヴァンティン」 すかさず森の中に追撃を敢行するシグナム。 その目に危険な光を称え、彼女の外袴が敵に止めを刺そうと翻る。 今の自分達の状態でこの二人をまともに確保するのは難しい。 故に今は捕獲できたとしても一人が限界。 どちらかに再起不能―――いや、二度と立ち上がれないようになって貰う事も視野に入れなければならなかった。 あの優しい金髪の魔導士の手は出来れば汚したくは無い。 元々この身は汚れ役に徹するに何の不都合も無い。 だからこれは自分の仕事だ。 そんな冷酷な思考の元、騎士は相手――吹き飛ばされ悶絶する女の元へと駆ける。 手に持つ魔剣が危険な炎を纏い、その残滓をアスファルトに撒き散らしながら 烈火の将が敵の消えたその森へと足を踏み込むのだった。 ―――――― 槍兵が真正面から垣間見たフェイトの飛翔。 それは雄々しく立つ豪炎の騎士の頭上から放たれた迅雷のように映ったであろう。 鉄壁の構えを見せていたシグナムを隠れ蓑にして上昇した魔導士が今――― 「ソニックムーブ!!!」 伝家の宝刀、神速移動魔法の詠唱を終え、ここに解き放つ! 地上に稲妻を存分にばら撒いた雷神。 これであの強力な敵を倒せるとは夢にも思わないが、閃光によってそのフィールドは黄金の発光に包まれる。 相手にして見れば、それは光の奔流に突然にして放り込まれるようなもの。 その目晦ましの効果は凄まじく、加えてサーヴァントに勝るとも劣らない速度を持つ彼女がその機動力に更なるブーストをかけたのだ。 不可視に不可視が重なり、今や彼女の動きは英霊の視認すら超えてその姿をロストさせる。 上空へと舞い上がったフェイトが狙うは当然、先程までシグナムが相手をしていたランサー。 ここにいる全ての者の視界から逃れた雷迅の魔導士が上昇した勢いを些かも殺さずに、そのまま急降下しつつ敵の頭上に迫る! キッと、下方にいるであろう槍の男をフェイトは真っ直ぐに睨みつける。 友であり尊敬する騎士をあそこまで痛めつけた相手……仕掛けによって不意をつけたとはいえ、生半可な攻撃は通用すまい。 「行くよバルディッシュ……アサルトフォーム!」 故にここで投入するは彼女の切り札。 アサルト・突撃の名を冠する攻撃特化型のフォームへの変形を今、自身の相棒に命じていた。 Yes sir... 低くて含蓄のある声がデバイスから発せられ、そしてフェイトの手から細い体躯に不釣合いな―――無骨極まりない巨大な刃が伸びる! それこそが彼女の近接最大最強の武装。 魔導士でありながら騎士とすら拮抗せしめるフェイトテスタロッサハラオウンの真の力。 バルディッシュアサルト・ザンバーフォーム―――― 天に突き立つような大剣は彼女の出力不足、低火力という弱点を補って余りあるもの。 古において騎兵を馬ごと叩き斬る剣 「斬馬刀」 が起源とされている巨大な刃は 以来、甲冑ごと相手を屠る、城門を切り崩す等など様々な逸話においてその姿を見せる巨剣を模したものであった。 グレートソード、クレイモアと呼ばれる騎士の持つ両手剣を遥かに上回る重量、刀身。 決戦モードとも言えるそれを満を持して解き放ったフェイト。 彼女は今、最速にして剛の牙……否、巨人の鉄槌さえも手に入れた埒外の存在。 神話の具現サーヴァントを切り伏せるに不足の無い神速の剛剣使いと化したのだ! (左だ! 奴の右目は塞がっている!!) (はいっ!) 念話にてシグナムの怒号が飛び、合わせてフェイトが飛翔する。 もはや流れは完全にこちら。 勝利は目前に感じられた。 「はあああぁぁぁああああッッッ!!!!」 騎士の助言を的確に受けた魔導士が稲妻の如き速度と威力を以って気合一閃、地上にいるランサーの頭上を襲う! 対して槍兵の不運―――彼の行動を遅らせたもの。 それは言うまでもなく対面に凄まじい速度で飛び出してきた騎兵に起因していた。 その時、確かに男の体が明らかに強張った。 森から出てきた女怪が地面に四肢をつき「その」体勢に入った瞬間、男の危険を察知するアラームがガンガンガン!!!と狂ったように鳴り響き 意識も感覚も残らず引っ張られ、一瞬で全てがそちらの方に向いてしまう。 彼が戦慄を感じたモノこそ己が槍をも越える威力を秘めた神秘―――ライダーの持つ騎兵の「疾走」に対してのもの。 「疾風迅雷」 紡ぐ言葉は心優しき黒衣の死神が己が渾身の意を秘めるための必殺の言霊。 両腕には、もはや不釣合いを通り越して不条理なほどに巨大化し、星すら薙がんと振り上げる刀身。 否、それは正しく落雷の如き破壊力を秘めた天罰そのものであり――― 「プラズマ………ザンバーッッッッッ!!!!」 その黄金に輝く破壊の名を彼女は静かに、内に秘めた魔力を押さえつけるように名を紡ぎ…………そして繰り出した! 大地に降り注ぐ雷の巨剣が空を裂き、アスファルトを粉々に叩き割る金色の一刀両断の光。 「ぬっ――!? うおおぉっ!?」 それが槍兵の立つ地面、その横幅10mに至るほどの巨大な柱となって降り注ぐ! 黄金の鉄槌の襲撃をまともに受けた蒼き槍兵の体が光の奔流に巻き込まれ―――― ―――――――――――迸る渦に飲み込まれたのだった。 前 目次 次
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SIGNUM,s view ――― 「ナイスショットってやつか……さて、これでようやっと二人きりだ」 「………」 優位の要だったこちらの連携を強引に切り裂いてきた敵。 再び奴と、あの真紅の槍との邂逅を果たす。 邪魔者の入らぬ強敵との一騎打ちは武人の華なれど、もはやそんなものに興じている場合ではなかった。 男の傷ついた身は人間ならばとうに致命傷。 到底、戦える身体ではないだろう。 我が全開出力をその身に受け続け、十全には程遠いコンディションである事は明白だが…… 舐めやがって……あんなザマでまさか勝てると思ってんのか? 「アギト……ぬかるな。」 ああ! ぶっ潰す! 目の前の男―――恐らくは己が最強を信じて疑わぬその眼を見据える。 戦場にて背中に下りた死神をも跳ね除ける強さと傲慢さを称えた風貌には、同時に歓喜の色も伺えた。 そう、嬉しいのだろう。 愉しくて愉しくて仕方が無いのだろう。 本当に強い相手を前にすると笑いが込み上げてくる……その手の人種の持って生まれた性。 ソレを理解できてしまうのも、私が男と同類の個体であるが故。 「元より決死の覚悟でなくては倒せない相手だ……行くぞ!!」 了解だロード! 本当に強いのはどっちか見せてやるぜ! 何にせよ半死の男を前に剣を淀めていては剣の騎士の名折れであろう。 凝縮に凝縮を重ねた時間が私に、与えられたリミットの半分を消費した事を知らせた瞬間――― 「来なッッ!!」 「応っ!!」 ランサーの怒声に反応するかのように、爆ぜた中空の炎を纏いて私は男に襲い掛かった。 Last assault 残り時間は――― ―――――― ―――――― 雑巾絞りのように極限まで捻り込んだ全身が、力を集約させて放つ一撃をことごとく必殺のものとする。 まさしく死神の首狩り刃。 肘間接を支点に手首のスナップを効かせた高速の蛇剣。 ゆうに半径50m弱を扇状に薙ぎ払い、敵の傷ついた目の死角を容易く犯す。 「うらぁ!」 だがその全てを紙一重、肌一枚の域で掻い潜っている男の姿もまた健在。 下唇を噛み締める女剣士。 霞を切らされ続けて早幾合、自慢の剛剣が相も変わらず空を切る。 互いに拮抗する力の持ち主であれば千日手になるのも珍しくは無いが、今はそれではまずい。 追い詰めているようでその実、長期戦になれば確実に……である以上、この剣で一刻も早く仕留めなければならない。 「そろそろ行ってみるかよっと!!」 しかし気負いが先立ち、荒く入った横薙ぎの一閃を男が狙い打つ。 前に踏み込み、あろう事か自身の体を取り巻くように飛来する蛇腹剣の「連結刃全て」に突きを叩き込む槍兵。 「なに…ッ!?」 豪快でありながら精密極まりない連打。 彼のそれはライフルの命中率とマシンガンの手数を併せ持つ。 防御不可能の鞭が支点の全てを打ち落とされ、弾かれ、力を失って宙にたわむ。 その最前尾をガツン!と、足で思い切り踏み付けるランサー。 「しゃあああ!」 将の右手より伸びた縦横自在だったレヴァンティンの刃の先端が地面に深々と差し込まれ あたかも天へと続く渡橋となったそれを踏み台に、ランサーがシグナムへと駆け上がる! 「くっ! 馬鹿なっ! レヴァンテイン!」 ja! Schwertform! 敵に足蹴にされた愛剣がその屈辱を拭おうとソード型に戻る。 だが一瞬早く足場となったアームドデバイスを蹴って跳躍するランサー。 跳び上がった槍兵はシグナムの頭上高くに舞い上がり、真紅の魔槍を翻して襲い来る。 させるかよぉ!! 刹那、剣士のものとは違う甲高い声が響く。 そして襲い来る男に対し、彼女の背中の二対の羽がオートで作動、頭上に爆炎の弾幕を張り巡らせた。 ユニゾンデバイス・アギトの支援砲火ブレネン・クリューガー。 高い対魔力を誇るサーヴァントに対して有効打とは言えないが牽制には十分。 既に剣に戻したレヴァンティンを、将は下段から斜め逆袈裟に振り上げる。 空中で交差する紅蓮と赤閃は剛と剛の鬩ぎ合い。 剣士の刃がランサーの脇腹から胸を抜けていき、男の槍の先端がシグナムの視界の右隣を通り過ぎる。 ぞぶり、と肩と、首と、頬の肉を殺ぎ落としていく互いの刃。 ことに騎士の鉄壁の甲冑――パンツァガイストがまるで発砲スチロールのようにこそぎ取られ そのまま交差し、切り抜けていくシグナムとランサー。 炎を被って堕ちて行く男を振り返って見据えながら、自身の流血する肩口を押さえてシグナムは再び悔しげに唇を噛む。 危ねえッ! 何やってんだよシグナム! さっきから全然当たらねえじゃねえか! 「そうだな。」 そうだなって……何を暢気な! 策でもあるのかよ!? 「そんなものは無い。 より強く、より速く、だ。」 ああもう! らしいっちゃらしいけどさぁ!! こちらの一撃がまともに入ればそれだけで終わる。 楽勝のはずだった……未だに敵が立っている事自体が有り得ない。 だのに、決められない。 未だ敵はそこにいて、クリーンヒットを許さぬままに地を駆け続ける。 何が……足りないってんだ… この男を倒すには一体何が? 力か、技か、速さか? 「私にも分からん。」 しっかりしてくれよ……不安だよ… 戦いが始まってより薄々と感じていたこの相手の本質。 あるいは物理的な何かでは到底説明できない何か…… 力学や常識さえも超越した神的な、一個体との戦闘というより一つの超常現象と相対しているような。 (……オカルトか。私も青いな。) これほどの相手に見える事など一生を数えてもそうはない。 共に全てを武に捧げた者同士、勝敗を超えて通じ合う何かは確かにあった。 求めてやまぬ理想の敵との邂逅は千年を捜し求めた恋人との出会いも同じ。 ついついその語らいに特別な意味を持たせたくなってしまうのも騎士の性か。 「何にせよ、そろそろか…」 そんな自分を心の中で苦笑しつつ、己が体内時計に問いかけるシグナム。 ここに至って自分の剣は不甲斐無くも相手を捕らえられずにいる。 出来ればこの剣で決着をつけたかったが、それが叶わぬとあらば次の段階に移行するしかないだろう。 で、でもフェイトの準備がまだ…… アギトが上空、二つの光が消えていった空を心配そうに見上げて言う。 「大丈夫だ。 あいつを信じろ。」 それは短くも絶対の信頼を称えた言葉。 Last assault ジャスト7分 ――― 「――――ぐほおおおおっ!?」 と同時に――――男の背中に何かが降ってきた。 「見ろ。 時間通りだ」 はは…………優等生だからな……フェイトは ―――――― 「が………こ、この…ッ」 超高度から投下されたナニかの下敷きとなるランサー。 カピバラのくしゃみのような悲鳴は衝撃音に掻き消され、突きたての餅のようにひしゃげた体が地面にめり込む。 その場に亀裂を……人二人分の亀裂を生じさせた槍兵と、ナニか。 うつ伏せに倒れ付す男の頬に、さらりと掛かる紫色の御髪が……男の口から壮絶な怨嗟の声を上げさせる。 「オ・マ・エ・な・あッッッ!!! 何やってんだこのボケェ!!! そこまでして俺の邪魔して楽しいか!? ええッ!?」 「怒鳴る事はないでしょう……我ながらよく頑張った方だと思うのですが」 バリバリと放電し、ところどころを雷の矢で貫かれた騎兵の肢体…… 上空で空戦魔導士とやりあったのだ。 その痛手は推して知るべし。 「何で宝具を使わねえ! アレ出せば空中戦だって負けねえだろ、お前は!」 「そんなものを使うまでもなく一度はこの手でフェイトに肉迫し、拘束したのですよ。 それで彼女の怯えた顔を見ていたら少々、欲にかられまして…… いや、窮鼠猫を噛むとはあの事ですね……凄まじい逆襲に合いました。」 嫌われたものです、フフフと澄まし顔でのたまう神話の怪物。 何でこんなモノと組まされたのか、今一度、天に問いかけずにはいられない男だったが――― 「……て、やべッ!」 血の気が引くランサーの相貌。 あの相手がこんなおいしい機会を見逃してくれる筈が無い! 「おおおおおおおおおおおおっっ!!」 臓腑の奥からひり出すような咆哮を上げる火竜! たゆたう四枚の羽が全長10mにも達し、場に彼女の最大出力を現出させる! 融合した三者のコアがレッドゾーンにまで吹け上がる! 魔力を極限まで燃やし尽くした騎士が全身から山吹色の炎を発し、吼え盛る火飛沫が空一面に広がった。 直視可能なほどの騎士の全開魔力の顕現。 その凄まじさは下手をすればあのセイバーの全開魔力放出にも匹敵する! ――― 大爆撃が始まった ――― ―――――― 範囲攻撃魔法に匹敵するユニゾンシグナムのラッシュが地表を覆い尽くす。 明らかに今までのものとは違う、ある種の決意を含んだ攻撃がサーヴァントにダメ押しの一打を浴びせる。 己が肉体のそこかしこでぞぶり、という異様な感触を認めたランサーとライダー。 「くそ………派手な女だぜ」 「まったくお里が知れますね……」 濛々と立ち篭める硝煙と焦げた臭いの充満する大地に投げ出されるのも何回目か。 軽口を叩く両サーヴァントの有様は、もはや余裕など一片も無い。 逃げ惑うサーヴァント。 その後を追うように炎熱の剣が燃え盛る。 「―――――あん?」 しかし、サーヴァントをして「ここまでか」と覚悟を決めざるを得ないこの状況にて 後ろ手に垣間見た槍兵の視線の先に―――既に炎の騎士の姿はなかった。 撤退? ここまで敵を追い詰めておきながら? 未だ爆炎の余波冷めやらぬ中で怪訝に思うランサーだったが――― 「―――ランサー。」 「何だよ。」 「泣きっ面に蜂、という言葉を知っていますか?」 隣にいるライダーの言葉を受けて、事の顛末を正しく理解するに至る男。 炎熱の代わりに今、目に映るのは………ざわめく曇天。 雲の上でパチパチと放たれるプラズマ。 先ほどの爆炎攻撃の破滅の予感を遥かに凌ぐ――― 「知るわきゃねえだろ馬鹿。」 ―――――――――――空一面に広がる雷雲を見上げながら…… 男は、現界最期になるであろう悪態を場に残すのであった。 ―――――― Last assault 残り3分20秒弱 ――― 「はぁ……はぁ……」 上空にて―――息も絶え絶えながら直下を見据えて佇むフェイト。 恐るべき捕食者の魔手に蹂躙されかかった体は、BJのところどころが裂けてズタズタ。 スラリと伸びた金の長髪に、顔に、体の至る所に牙で掻き毟られたような後が残る。 首筋に立てられた凶牙ごと相手をを引き剥がした事による出血が肩口を朱に染める。 辛くも敵の撃退に成功したが、見るからに紙一重……あと一歩の所で彼女は女怪の供物となっていたに違いない。 改めて騎兵のおぞまじき所業に身震いするフェイトだったが、すぐさま時に備えて雲下を見据えると――― ――――――――果たして「それ」は確かに魔導士の総身に届く。 「!!!」 雲の上と下、姿は確認出来ない状況でありながら、互いの息吹・魔力の迸りだけを頼りに行うノールックコンビネーション。 その要である「爆炎の狼煙」を確かに確認! 故に絶対の確信と自信を以ってフェイトは詠唱を開始する! 「………行こう。 バルディッシュ」 焦燥に焦燥を重ねた肉体を引き摺るように、彼女は今、ラストアサルト最後のトリガーに指をかける。 ――― アルカス・クルタス・エイギアス ――― 歌うように紡がれる言霊。 それに導かれるように彼女の周囲に次々と現れるフォトンスフィアの射出口。 ――― 疾風なりし天神。 今…導きのもと撃ちかかれ ――― ただしその数が、規模が、馬鹿馬鹿しいほどに今までとは違う…! 吼えるプラズマが、現出するスフィアが「所狭し」と彼女の周りを埋め尽くす! それはかつてのフェイトの最大最強の広範囲殲滅掃射魔法―― かけがえの無い育ての親である母の使い魔から受け継がれた力。 10の年月をかけてその威力も規模も桁違いに磨き上げられた雷神の怒りの豪雨。 ――― バルエル・ザルエル・ブラウゼル ――― これぞ防御も回避も為し得ぬ切り札。 相手を問答無用で倒し得る絶対決戦魔法。 圧倒的な装甲の以外では防ぎようの無い、その破滅の名は――― ――― フォトンランサー・ファランクスシフト! ――― 「打ち砕け………ファイアッッ!!!!」 迅雷の闘志を秘めた叫びを受け取った彼女の眷属たち。 主の命を受けた稲妻たちが次々とその意思を持って直下の雲を突き破り―――放射された! ―――――― 「………」 シグナム……シグナム! 「…………ああ……すまんな…………もう、しばらく……」 時間をくれ、と言おうとして、彼女は激しく咳き込んだ。 戦場から一間ほど離れた宙域に身を移した騎士。 オロオロと心配する妖精の言葉は当然届いていたが、その意を汲んでやれぬほどにシグナムは消耗していた。 無理しすぎだよ…… 「……ここまでの限界出力は久しぶりだったからな」 こけた頬、落ち窪んだ目尻に、かつての自分のロードの姿を重ねてしまい悲壮な表情を見せるアギト。 自身の魔力の許す限りの猛襲撃を地に降らし、相手の動きを止めた所で離脱。 確かに作戦通りで、己がすべき役目を果たした烈火の将に落ち度はないとしても、だ。 落ちかかるブレーカーを必死に支えてやっと立っている様相を見せられては、抗議の一つも入れたくなるのがデバイスの心境というものだろう。 「………始まったな。」 崩れ落ちそうになる身体を必死に支えながら遥かに離れた大地に見るは―――天変地異の具現。 フェイトのフォトンランサーのバリエーションにおける最強にして究極の姿。 40以上のフォトンスフィアより毎秒7発という間隔で繰り出される一点集中高速連射撃。 その合計、ゆうに1000発を軽く超える雷の矢を場に叩きつける、文字通りの魔導士の切り札。 もはや虫一匹の生存を許さぬ雷神の怒りの鉄槌。 雲霞の向こう―――遥か上空から無限の如く降り注ぐ雷の豪雨が大地を焼き、剣山のように突き刺さってプラズマ流を場に発散させて消えていく。 す………凄え… アギトが改めて絶句する。 恐らくは時空管理局の魔導士の中においても威力、範囲共に最大クラスの大魔法。 これを幼少の時に体得した彼女の才覚にも驚きだが、Sランクとなったフェイトが放つそれは幼い頃のものとは比べ物にならない。 炎による蹂躙から雷の殲滅へと至ったこの樹峰は、もはや1000年は復元不能な荒野となってしまうだろう。 まさにライトニングの全戦力を投入したフルバーストがこのフィールドに――敵のサーヴァントに降り注ぎ――― ――――――――全てを終わらせた…… ―――――― LANCER,s view ――― ゆうに1000発を超える雷の矢が眼前に迫る。 戦を終わりへと導くに十分な、過剰ともいえる火力。 対して俺は―――俺の右足は、先のシグナムの爆撃で膝から下が炭化しちまってる。 こいつはいけねえ……足がオシャカになった歩兵なぞ何の価値もねえ。 俺の目から見ても、神代にすら見劣りしない大魔術。 空を覆い尽くす雷の矢。 こりゃいくら何でも全部叩き落とせるわけがねえ。 初戦敗退……不名誉極まりない結果だが、いよいよ受け入れざるを得ない結果に終わりそうだ。 …………………………………………………………………………………………ん? …………………………………………………………………………………………矢? 「……………」 いやホント、生まれつき生き汚い性分なのかも知れんな俺は…… 戦いの中で死ぬは本望と言いながら、その身に宿った何かが何時だって俺を生還させてきた。 その度に味方ですら、バケモノを見るような目で見やがったものだが…… ともあれ、俺は千の矢を眼前に躊躇う事無く身を躍らせる。 ――― 矢避けの加護 ――― 俺が先天的に身に宿していた、飛び道具に対する神性防御スキル。 投擲型の攻撃に対し、使い手を視界に捉えた状態であれば余程のレベルでないかぎりこの身を貫く事はない。 雲の上にいる金髪の嬢ちゃんが、己が射撃で雲霞に穴を開け、その姿は俺の視界に余さず入っている。 広範囲の全体攻撃に等しい射撃の雨あられが、まるで俺の体を擦り抜けていくかのように通り過ぎていく。 己が意の外から拾った生存に素直に喜べるほど目出度くはねえし コレを潜り抜けたところで、この足じゃ遅かれ早かれトドメを刺されて終わりだろう。 それでもなお―――生存本能に付き従うままに、俺は雷の雨を掻い潜る。 ……………ああ、そういやライダーは? 金の豪雨で視界も定まらないままに周囲を見渡すが、あの馬鹿女の姿はついぞ見つからなかった。 俺と違って、あいつに神聖なる加護が付く筈もない。 今頃、この身が逸らした矢まで一手に引き受けているに違いないだろう。 不幸な話だ。 流れ弾に当たって死ぬ奴の気持ちなんぞ一生分からんが……まあ、一応謝っとくわ。 さて、無限に続くかと思われた雷雨だが、そろそろ終わりの兆候を見せてきた。 その全てを掻い潜り―――――俺は再び、何事もなかったかのように奴らの前に躍り出る。 焦げた足を引き摺って上手く着地出来ずに地面を転がり、片膝をついたままに再び敵と相対する俺。 「なっ……………」 「嘘…………こんな……あ、有り得ない……」 驚愕に見開かれるシグナムと嬢ちゃんの瞳。 すまんな……自身の変態体質は変えようも無いんだわ。 お前らに取っちゃ難儀で理不尽な話だろうが、納得してくれや。 ………………それに―――― 「ランサぁぁぁーーーッッ!!!」 ―――――どの道、これで終わりか……足に力が入らねえ。 鬼気迫る表情で上空から迫るシグナム。 極太の山吹色の光を背に担ぎ、翻る炎熱の将。 その光景―――恐らく、この現世で最後に見るものであろうが…… 「が、ぐっ――――!!」 肉体が爆ぜた。 「ぐううう、おおおおおお――ッ!」 まるで踏ん張りの利かぬ両足は地面を食む役割を何ら為さず 一撃を何とか受けるも、衝撃をほとんど吸収できねえ。 軋む手足が、焼かれる肉体が、紙人形のように力なく投げ出される。 やべえ……浮いた。 こりゃいよいよ持って、潮時かね―――――― ―――――― FATE,s view ――― 自身の切り札ですら決め手にならなかった――― その事実に呆けていたのも一瞬、ハッと我に返る私。 シグナムの搾り出すような魂の叫びに心身を揺り動かされ、眼下に捕らえた光景。 それはついに火竜の尾が敵を捕らえた場面だった。 「は……ぁ…ッ」 求めていた手応えにようやっと辿り着いたシグナムが嗚咽を漏らす。 ガクガクと揺れる四肢はもはや限界を超えていて……ッ! 口の端から漏れる赤の混じった液体は命の危機を報せる警鐘に他ならない! 「シグナムっ!!!」 「……あと一押しだ!! これで決めるぞッッ!!」 Last assault 8分経過 ――― 「はい!! バルディッシュアサルトッ!!」 搾り出すようなシグナムの声に、今はただ全力で委ね、全霊で答えるしかない! 再び巨大な魔力刃を形成したバルディッシュを肩に抱え上げ、私は飛び向かう! 宙に踊るあの蒼い肢体に! 「…………くっ!」 敵はもはや死に体で、自分達に負けず劣らずボロボロだ。 私はそんな満身創痍な相手を宙に浮かせて、無抵抗なままに追い討ちをかけようとしている。 本来ならこんな過剰な武力行使はしたくない………したくないけど! シグナムが骨身を削って掴んでくれた好機を無駄になど出来ない! ここは私も鬼になるしかないんだ! 「許しは……請いません! はぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」 渾身の力を込めたアッパースィングで雷の巨剣を振り上げ、槍の魔人を下から叩き上げる。 巨大な鉄板を思わせる剣の腹でカチ上げられた肉体が感電しながら更に上空へ……! 既に必殺の剣を打ち放つべく上昇を開始していたシグナムに向けて絶妙の位置へ相手をトスする! 待ち受けるは烈火の将の最強奥義―――紫電一閃! これで間違いなく……決まるっ! 魔力エンプティだ! ユニゾンが切れるぞッ!! 「持たせろアギト!! あと一撃だッッ!!」 既にユニゾンが切れてもおかしくない状況で、シグナムが叫ぶ! 確固たる決意が、炎のデバイスに最後の動力を開けさせた! Last assault 残り1分 ――― ―――――― ―――――― ランサーを打ち上げたフェイトも、今まさに止めを刺そうと迫るシグナムも、まるで野生の獣の如き形相だった。 見る影も無いほどにボロボロの敵。 対する自分らも普段の面影などまるでないボロ雑巾。 近年においてもそうは無い死闘に苛まれた彼らに余裕などある筈がない。 「ランサー…………もらうぞッッッッ!」 そこへ突進をかけるシグナム。 狙うは紫電一閃。 間違いなく止めとなる……否、ならなければいけない一撃。 故に行った―――正面から。 既に出力の切れ掛かった身体を推して。 今ここに槍の魔人に最期の刻を突き付けるために! Last assault ??? ――― ―――――― 「あーあ……」 最後の最後で………………勿体ねえ ―――――― ……………え? その呟きは 戦闘時とは思えぬほどに 間の抜けた響きを以って―― 彼女の口から紡がれた。 ―――――― 、、、、、、、、、、、、、 それは一部始終を見ていた魔導士の眼前で――――起こった。 相棒の騎士が敵に止めを刺そうと飛び掛る。 上空に浮いた槍の男に最期の一撃を浴びせようと剣を振り上げる。 相手は既に半死半生。 烈火の将最大の斬撃、紫電一閃。 もはや逃れようの無い、敵の最期の光景を唇を引き結んで見つめるフェイト。 抱いた感情はやはり「命を奪いたくは無い…」だった。 出来る事なら死なせたくはないという感情は心優しい彼女をして決して消せるものではない。 揺れる心の狭間にて、だからこそ彼女は今、目を逸らした。 敵が切り伏せられるその結果から視線を背けた。 ――― 故に当然、その間に起こった出来事を説明する事が彼女には出来ない ――― 「……………」 閉じた瞳は凄惨な結果から逃れたい心の表れでもあり、相手に対する黙祷の意を含んだものでもあった。 「……………え?」 しかして、その呟きは戦闘時とは思えぬほどに 間の抜けた響きを以って――彼女の口から紡がれた。 「………あ」 2秒か、3秒……短い間に過ぎぬその間、閉じていた目を再び開けた彼女が その光景を眼球に捉え、情報を脳に送り込んで、なお――――― ――― フェイトテスタロッサハラオウンは目の前で起こった光景を暫く認識できない ――― ――― 槍が…………シグナムの胸に突き立っている、という事実を ――― ―――――― 「………」 氷のように固まった魔導士の表情の、唇だけがみるみるうちに乾いていく。 絶対に有り得ない事でありながら、それは不思議と予定調和の如き自然な光景。 呆気ないほどに当たり前の事に感じられる事実に寒気すら覚える。 ――― やがて静止した体内時計がゆっくりと動き出す ――― フェイトの唇がわななき、下腹部が締め付けられ、全身から血の気が引いていく。 震える両手がデバイスを取り落としそうになる。 やがて半狂乱の叫びを口が紡ぐ前に彼女は、空中で絡み合った剣士と槍兵に向かって飛び向かおうとした。 「うぐっ!!?」 だが、そんなフェイトの体を何かが拘束する。 首と胴に巻き付いた金属のそれが相棒に駆け寄ろうとするフェイトの身体を留まらせ、場に組み伏せる。 「―――失念に失念を重ねる………英霊を相手にそれでは詮無い。 勝てる勝負を取りこぼすわけですね」 その声は聞き違いようの無いおぞましさを孕んだ声だったけれど、そんな事はどうでもいい。 全身をハチの巣にされて倒されていなければならない筈の敵が、再び自分の事を捕らえていたのだけれど、そんな事はどうでもいい。 「教わりませんでしたか? 蛇はしつこいのですよ。 もっとも盾がなければ流石に持たなかった。」 何かがあれば隣の男を盾にして逃げおおそうと狙っていたのだろう。 女怪はあの時、ランサーを盾にして死角に身を窶し、殲滅から滅びを免れていた。 槍兵ですら気づかぬ身のこなしで男に影のようにへばり付き、矢避けの「盾」の恩恵で飛来する雷撃のほとんどをやり過ごしたのだ。 そして今の今まで短時間ながらも体内活動を休止させ、最期の締めを行うに足る余力を回復させながら雌伏して待ったのだ。 獲物と再び、二人きりになる瞬間を。 「駄犬が最後の最後に役に立ってくれましたね……理想的な展開です、ランサー。 あとは地獄で意中の相手と続きをするといい。」 言葉と共に一瞥したその先で、蒼い槍兵と炎熱の騎士が揚力浮力を失い、絡み合いながら カクン、と重力に引かれて崖下へと堕ちて行く。 「あ………ああ…!!!」 自身に巻き付いた縛鎖が喉に、胴に食い込む事さえフェイトの頭にはない。 莫迦みたいに前に伸ばした手は当然、相棒の腕を掴む事などかなわない。 ようやっと心内から吐露された絶望が確固たるカタチを以って彼女の心身、表情に作用し―――― 「シ……シグナムッ!! シグナムーーーッッ!!!」 彼女に絶叫を上げさせる頃には、左胸を貫かれた騎士と男は奈落へと飲み込まれ 彼女の視界から消えていた。 「あ………あああああああっ!! いやあああああああっっ!!!!」 フェイトの涙に咽ぶ声が、やがて慟哭となって―――― ―――――――――――相棒を飲み込んだ渓谷に木霊するのであった。 前 目次 次