約 592,754 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/241.html
前 「ゆ…ここまでにげれば…ゆ、ゆっくりできるよ…」 ぱちゅりーを背負ったまま走り続けて息も絶え絶えのまりさはちょうどいい森の中で少し開けた草原に寝転がった。 ゴロリ、とぱちゅりーがまりさから落ちる。 ぱちゅりーはすぐさま顔を地面に押し付けた。 「…ゆ?どうしたのぱちゅりー?おなかいたいの?」 「むきゅぅううううん!こないでー」 心配して寄り添うまりさだったがぱちゅりーは頑なに動こうとしなかった。 「ぱちゅりー?どうしたの?ぱちゅりー!」 まりさは何かあったのかと思いぱちゅりーをゆすると、体力のないぱちゅりーはまりさに押されて遂に顔が上がり二匹の目が合った。 まりさはその顔を見て凍りついた。 「ぱ、ぱちゅ…ぱちゅりーのお顔がああああああああああああああ!?」 「いやああああああ見ないでまりさああああああああああああああ!!」 ぱちゅりーの顔は百足に所々食い千切られ、首のところから取れてしまった百足の首が何個も刺さったままで そこらじゅうから餡子がちょろちょろと漏れていて、二目と見れないほど醜くぐちゃぐちゃになっていた。 まりさは思わずそこから目をそむけた。 「む゛ぎゅぅ゛ぅ゛う゛う゛ん゛!む゛ぎゅぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛う゛ん゛!」 大きな声を出せば危険な虫がまた襲ってくる可能性も忘れてぱちゅりーは大声でわんわんと泣き始めた。 私はなんて醜い顔をしているのだろう、こんな顔ではまりさには完全に嫌われてしまった。 そうぱちゅりーは思い、それがズキズキと痛む顔の傷よりもずっと痛かった。 流れる涙餡が傷口に入り込んで滲みるのも意に介さずにぱちゅりーは泣いた。 涙で視界が滲んで前が見えなくなるほど泣いた頃、突然口にやわらかく暖かいものが押し付けられた。 「む、むきゅ!?」 何がなんだかわからず目を白黒させるぱちゅりー。 「ゆうううううう!!ぷはぁ、ゆぅ…」 「むっきゅぅっぱはぁ!?な、ななななな何をしてるのままままありささささあ!?」 まりさがぱちゅりーに熱い口付けをしたのだ。 二人の口から唾餡の糸がたらりと伸びていた。 「まりさは!ぱちゅりーのことが!だいだいだいすきだよ! どんなお顔になっても!どんな時でも!ずーっとずーっと一緒にゆっくりしていたいの! だから、だからああああああ!!!」 「む、むきゅううううううううん!!」 まりさは顔を真っ赤にして、上擦りながらも大声で愛の告白をすると再びぱちゅりーにねっちょりとしたキスをした。 舌と舌が絡んで粘膜が激しくこすれあった。 ぱちゅりーは混乱する意識の中でただ今自分は最高に幸せだということを理解した。 もう二匹を止められるものは居ない、だんだんと理性が抑えられなくなり二匹は体をゆすり始め 「そこまでよ!」 『ゆきゅう!?』 丘の上の方からあのゆっくりれいむの一家がこちらを眺めていた。 「まだ大人じゃないのにスッキリしたらゆっくりできなくなるんだからね! じちょうしてね!!!」 『ゆ、ゆゆゆゆゆ~~』 若い二匹の交尾に対してぷんすかと怒るお母さんれいむであった。 恥ずかしいところを目撃されて二匹は顔を真っ赤にして俯いて唸っていた。 「おかあさん、まりさおねえちゃんたちなにちてたのー」 「子どもはまだ知らなくていいよ!! まったく、わかものの性の乱れにはゆっくり呆れるよ!」 普段からお母さんれいむはそういった風紀の乱れに対して心を痛めていたようだ。 「ゆゅ!?まりさ!そっちのきもちわるいのなに!?」 「ゆ!?」 ぱちゅりーの顔を見た子れいむが悲鳴をあげた。 「おかあさん!きもちわるいのがいるよ!」 「あんなのといっしょじゃゆっくりできないよ!」 「…ゅっ、むっ…ゅぅ…」 「ぱ、ぱちゅりー…!」 子ども達の言葉がぱちゅりーの心に突き刺さった。 まりさが受け入れてくれればそれでいいとはいえやはり辛かった。 ぱちゅりーは顔を子れいむ達に見せないように後ろを向いてまりさの胸に顔を埋めた。 「おかあさん!はやくあいつをやっつけ…ゆ゛ぅ!?!」 その時、パァンという音が響いて子れいむが転がった。 「ゆぅ…?お、おかあさんがぶったぁあああああああああ!!!!!」 「お、おかあしゃんどうちてこんなことするのおおおおおおおお!!?」 「ぼーりょくてきなおかあさんとはゆっくりできないよ!!!!」 子れいむ達はお母さんれいむに次々と非難の声を浴びせた。 「お だ ま り !!!!!!」 子れいむ達の罵声がさっ、と止んだ。 「ぱちゅりーはれいむ達のおともだちだよ! そのぱちゅりーをきもちわるい、やっつけようなんていうゆっくりはおかあさんの子どもじゃないよ!!」 お母さんれいむはピシャリと子れいむ達を叱りつけた。 子れいむ達はしゅんとなって俯いて黙り込んだ。 お母さんれいむは子れいむ達を睨み付けると呆然とこちらを見ているぱちゅりーの方へと近寄っていった。 「ごめんねぱちゅりー、子ども達がこわがるからお顔にこれをつけてね」 そう言って口の中から雨避けに使う大きめの葉っぱを出して舌に三つ穴を開けるとぱちゅりーの顔に貼り付けて傷が見えないようにしてくれた。 「むっきゅう…ぁ、ありがどう…ありがどぉおおお…!!!」 ぱちゅりーは葉っぱの下でわんわんと泣いた。 「それで、れいむ達もゆるいをさがしてここに着いたの?」 「そうだよ、でも虫さん達に追われてぜんぜんゆっくりできないよ! だから一緒に力をあわせてここから出ようね!」 「そうね、早くここから出ないと虫さん達におそわれてむっきゅーってなっちゃうわ」 お互いに大体の事情を話しあった結果、とにかくこの場から協力して脱出する必要があるという結論にたどり着いた。 「ゆー!もっとやすみたいよ!」 「おなかすいた!ゆっくりできないよ!」 年長三人がたどり着いた結論に子れいむ達が異議を申し立てた。 実際子れいむ達の体力はかなり厳しいところにきていた。 「むきゅ、どうしようまりさ…」 「ゆー、ゆっくり…していく?」 子れいむ達の申し出に折れそうになるまりさとぱちゅりー。 子どもにあまり無理はさせたくないというのが正直なところだった。 確かに今のところここでは虫には襲われていないのだし、少しぐらい休んでもいいのではないかという考えが頭を過ぎる。 「だめだよ!こんなところで休んでいたらゆっくりできなくなるよ!!!」 しかしお母さんれいむはそれ以上の危機が自分達に迫りつつあることを長年の経験で察していた。 「ゆ、ゅ…」 「ゆ、わかったよ、がまんするよ…」 「ゆっくりちたかったのに…」 不平を漏らしつつも母の決断に従う子れいむ達だった。 早速準備を整え出発しようとするゆっくり達。 その時、ブゥゥン、という不吉な音が辺りに響き渡った。 「ゆ、あっちからなにかくるよ?」 「ゆー、なんだろ」 「いっぱいいるよ!ゆっくりちていってね!」 それを見て無邪気に声を上げる子れいむ達。 「イナゴさんだよ!!!早く逃げて!ゆっくりできなくなるうううううう!!!」 それの恐ろしさを知っているお母さんれいむは血相を変えて叫びをあげた。 しかし狭い森の中の小さな草原である、お母さんれいむが叫んだ時には既に先頭のイナゴ達に追いつかれていた。 「いだいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 「がじらないでええええ!!!れいむはおいしくないよおおおおおおおおおお!!!!」 「おかあさんたすけてええええええええええええ!!!!」 「はやく走って!小さい子はお母さんのお口の中に入ってね!」 泣きながらイナゴの群れから逃げ出すお姉さん子れいむとお母さんれいむの口に入る妹れいむ達。 まりさとぱちゅりーもお姉さんれいむを先導しながら先を急いだ。 「お、おかあさん!はやくなかにいれてね!ゆっくりできぁいよ!!!」 「ふが、ふが…!」 何分大家族である、全ての子れいむを入れる前にお母さんれいむの口がいっぱいになってしまったのだ。 「…ふがっ、ふがっ!(ゆっくり追ってきてね…!)」 お母さんれいむは苦渋の決断を下す。 ここで手をこまねいていては口の中の子れいむ達まで道連れになる。 ならばこの子れいむがなんとか一人で逃げ切れることを祈って先に進むしかないのだ。 お母さんれいむは涙を堪えながら子れいむに背を向けた。 「おかあさん!れいむのいもうとがまだのこってるよ!」 「おねえちゃん!おねえちゃぁぁあああん!!」 「れいむのいもうとがああああああああああ!!!!」 お母さんれいむの口の中の子れいむや先に進んでいた子れいむが叫んだ。 「おかあさん!おかあさんおいてかないで!!れいむをおいてかないでええええええええええええ!!!!!!! もうわがままいわないから!!ぱちゅりーのこともあやまるからあああああああああ!!!」 「ふがっ、ふがぁっ(ごめんね、ごめんねえええええ!!!)」 お母さんれいむは歯噛みしたい思いでひたすら走り出した。 もう子れいむには追いつけないだろう。 そしてイナゴから逃げ切ることも子れいむのスピードでは出来ない。 子れいむの命運は尽きたと思われた。 「ぱちゅりー!先に行ってみんなをゆっくりポイントまで連れて行って!」 「むきゅ!?何をするつもりまりさ!ま、まさか…!」 まりさのいつもの悪い癖が出たのではないかとぱちゅりーははっとした。 ぱちゅりーの思ったとおりまりさは突如反転して先頭から外れると凄まじいスピードでイナゴの群れに突っ込んだ。 「ゆっ!?」 「はやくまりさのお口に入ってね!」 その勢いでイナゴを一時的に振り払い、子れいむの傍に着地するとまりさはぺろりと子れいむを口の中に入れる。 「駄目!イナゴに囲まれてゆっくり出来ない!」 ぱちゅりーが叫ぶと同時にイナゴがまりさを囲み一斉に襲い掛かる。 「ゆっぐぉおおおおおお!どっけえええええええええ!!!」 体当たりでイナゴを振り切りながらまりさはどんどんと突き進んでいった。 仲間を思う気持ちを頼りにイナゴを蹴散らしていく雄雄しい雄姿。 その姿、まさに廃線ぶらり途中下車。 「まりさおねえちゃんすごい!」 「おかあさんよりはやーい!」 そのまますぐにお母さんれいむに追いつくとそのまま追い抜かして先頭のゆっくり達に追いついた。 「むっきゅー、流石ねまりさ!」 「ぱちゅりーも乗る?ゆっくりさせないよ!」 はっはと息を上げながらも軽口を叩いてまりさはにやりと笑う。 まったく、減らず口をよく叩くのはまりさ種の特徴とは言え 本当に困ったゆっくりだと呆れると同時にぱちゅりーは笑いがこみ上げてくる。 「むきゅ、遠慮しとくわ!」 健在をアピールするまりさの姿に必死に走っている最中で息も絶え絶え 頭がズキズキ痛くてクラクラしているにも関わらずぱちゅりーも思わず笑みをこぼした。 「ここまでくればもう大丈夫だよ!」 「みんなゆっくりしようね!」 「ふがっ、ふがっ!(ゆっくりお口から出てね!)」 ゆっくり達は森まで行き木々を障害物として利用しながらなんとかイナゴを振り切ったのだった。 「ゆー、ちぬかとおもったよ!」 「これでみんなでゆっくりできるね」 「よかったね!ゆっくりしようね!」 和気藹々とするまりさとぱちゅりーと子れいむ達。 「……い、一番おっきなれいむの子どもはどこ…?」 お母さんれいむが震えながら呟いた。 先頭グループを走っていたはずの最年長の子れいむがどこにも見当たらなかった。 「あ、あれ?おねえちゃん?おねえちゃーん!?」 「お゛ね゛え゛ぢゃんがい゛な゛い゛よ゛おおおお!!!」 「ゆ゛っぐりできな゛いいいいいいいいい!!!!!!!」 「み゛ん゛な゛でゆっぐりぢだがっだああああ!!!!!」 和気藹々とした雰囲気が一瞬で壊れ、子れいむ達の嘆きの叫びが辺りを支配した。 それとは対照的にお母さんれいむは声を殺して静に泣いていた。 「ま、まりさがもう一回もどって助けに行くよ!」 すぐに子れいむを助けに行きに飛び出そうとするまりさ。 「ま…」 「駄目だよ!どの道もう助からないよ!まりさもゆっくりできなくなるよ!」 ぱちゅりーがまりさを止めようとするよりもさらに早くお母さんれいむがまりさの前に立ちふさがった。 「どおぢでぞんなごどい゛う゛のおおお!?」 「お゛があ゛ざんのばがあああああ!!!!」 「お゛ね゛えぢゃんをだずげでよお!!!!」 「れ、れいむ!まりさは強いから大丈夫だよ! 子れいむを助けてすぐに帰ってくるよ! ゆっくりどいてえええええええええ!!!」 まりさは必死にれいむを退かして進もうとするがれいむはびくともせずその場を動かなかった。 「もうあの子は助からないの…!だから…だからせめてみんなあの子の分までゆっくりして…!」 「ゆ、ゆうう…」 涙を流して懇願するれいむの迫力に気おされるまりさ。 「まりさ、れいむが言うことが正しいよ…」 ぱちゅりーはゆっくりとまりさ達を嗜めた。 ぱちゅりーにももう子れいむは助からないだろうことはわかっていた。 まりさも心の底ではわかっていたのだろう。 しかし仲間思いのまりさにはそれがどうしても認められなかったのだ。 お母さんれいむの涙を見てまりさはようやく目の前の現実を受け入れた。 「ゆぐぐぐううう…」 「お゛ねえぢゃん……」 「ごべんね…ごべんねぇ…!」 「おねえぢゃんのぶんもいっぱいいっぱいゆっくりするからね…!」 その場に居る全てのゆっくりが子れいむのために涙を流した。 涙を拭って、ゆっくり達は再びこの地獄、永夜緩居から脱出するために進み続けた。 ガサガサと枯葉の地面を踏み歩きながら森を抜ける道を探す。 「むっ、きゅっ…」 静かにただ黙々とみんなが進んでいく中で、ぱちゅりーが突然ふらついてまりさにもたれかかった。 「ゆ?大丈夫ぱちゅりー?」 「むきゅ…大丈夫だよ…まだまだ元気いっぱいだから…」 「ゆー、できればみんなゆっくり休ませてあげたいんだけど…」 そう言ってまりさは子れいむ達を見回す。 「ゅ…ゅー」 「ゅひゅー…ひっひ…ゅー」 「………っ………」 全員息も絶え絶えと言った様子だ。 しかしさっきのように虫たちに襲われた時休んでいたらひとたまりも無い。 とにかく一刻も早く永夜緩居から脱出することが最優先なのだ。 ぱちゅりーもそれを理解しているから空元気でまりさに苦笑いを返す。 「ごめんね…まりさがゆるいに行こうなんていわなかったらいまごろゆっくり出来てたのに…」 つっ、とまりさの頬を涙が伝う。 「むっきゅ、それは言わないお約束だよ」 そう言ってぱちゅりーはまりさの涙をぺろりと舐めて拭った。 その時、異変が起こった。 「ゆぅ~~!?」 段差に気付かずに子れいむが足を踏み外して転げ落ちたのだ。 「れ、れいむの赤ちゃんが!?」 慌てて下を覗き込むお母さんれいむと子れいむ達。 「ゆゆ?おそらをとんでるみたい~~~!」 しかし子れいむは不思議なことに下まで落ちずにまるで中に浮いているかのように 段差からの途中辺りから伸びていた4、50センチほどの枝と枝の間の空間で止まっている。 子れいむはそこで楽しそうにぽよんぽよんと跳ねていた。 「ゆ、おねえちゃんいいな、ずるいずるい!」 「れいむもやるー!」 ぴょんぴょんとそこに飛び込んでいく子れいむ達。 「ゆ、ゆー?」 お母さんれいむも今度は何が起こったのかわからず困惑して首をかしげている。(つまり斜めになっている) 「ごほっ、むぎゅうううん!だめええええ!ゆっぐぉほっ、ゆっぐりでぎなぐなっぢゃううう!!!」 ぱちゅりーだけが餡子を吐きながら遅すぎる静止をした。 「ぱ、ぱちゅりー?どうしたの?おなかいたいの!?」 まりさは突然餡子を吐いて叫ぶぱちゅりーを心配して傍によって背中をさすった。 「うああああああ!だずげでおがあざあああああああん!!!」 「いやあああああああ!!こないでえええええええええええ!!!」 子れいむは中に浮いていたのではない、蜘蛛の巣に引っかかっていたのだ。 人間の拳二つ分ほどもある巨大な蜘蛛が二匹、枝の影から現れた。 「い゛や゛ああああああ!れ゛い゛む゛のあがぢゃんがああああああ!!!」 お母さんれいむの叫びも空しく大蜘蛛が身動きの出来ない子れいむ達に齧りついた。 「あがっがっがっがっが…」 「ゆっ…ゆぐっ…ゆ゛…」 皮を突き破った牙から餡子に毒を混ぜられて子れいむ達はもはや喋ることもままならなくなった。 「おねえぢゃああああああああああん!!!」 「れいむの…れいむのい゛も゛う゛どがあああああああ!!!」 獲物が動けなくなったのを確認すると大蜘蛛達は子れいむを咀嚼し始めた。 皮を剥ぎ、蜘蛛の頭が餡子の中に埋まる。 くちゃりくちゃりという咀嚼音が辺りに響いた。 「うっ、ゆうう…ごめんね…ごめんね…」 お母さんれいむが耐え切れずに目を背けた。 まりさとぱちゅりーは何も出来ずにただ後ろから見ているしかなかった。 「おねえぢゃん!おねえぢゃん!」 一匹の子れいむが身を乗り出して家族の名前を呼んだ。 「むきゅ、そんなに乗り出したら危な…」 ぱちゅりーが注意を促そうとしたその時、段差に生えた枝の一本が動いた。 「ゆぎゃあああああああああ!?」 茶色の蟷螂が子れいむの頭に深々と鎌を突き立てていた。 ギロリと辺りを睨み付けると茶色い枝蟷螂は段差の下へと子れいむを連れて飛び降りていた。 「いやあああああああああ!!?」 「あ、あああああああああああ!?」 傍にいながら何も出来なかったことにお母さんれいむは歯噛みして後悔した。 「だずげでよおがあざん!れいむおねえぢゃんだぢみだぐにたべられだぐ…! ああああ!いだいいいいいいいい!おがあざん!おがあざん!みでないでだずげぎぃ!」 枝蟷螂は鎌で器用に子れいむのリボンを切り裂いた。 「あ゛!やべでええ!れ゛い゛む゛の゛!れ゛い゛む゛の゛リ゛ボン!れ゛い゛む゛のだいじなりぼんな゛のお゛!!!」 邪魔なリボンを切り裂けば次は皮、その次は中の餡子だ。 「ごめん…こんなお母さんでごめんね…もっとゆっくりさせてあげたかったよ…」 ポタリと子れいむの頭にお母さんれいむの涙が落ちた。 最後に一瞥くれてお母さんれいむはその光景から背を背けた。 「おがあざん!?どうじでぞっぢむいぢゃうの!?れ゛い゛む゛はごっぢ!ごっぢだよ゛!」 「早く行くよ、急いでここから出ないとゆっくりできなくなっちゃうから」 「ゆ!?ま、まってよおかあさん!」 「で、でもおねえちゃんが…」 「……」 生き残った子れいむ達の静止を無視してお母さんれいむは無言で進んでいった。 {お゛があざんお゛いでがないでだずげで!だずげでよ゛おお゛お゛!!! れ゛い゛む゛ゆっぐりでぎでだいどおおお!おいでがないで!おいでがないで! れ゛い゛む゛をだずげでごのま゛まぢゃれ゛い゛む゛ゆっぐりでぎないよ!! お゛があざん!お゛があざん゛ん゛んん゛ん゛ん゛ん゛んん゛ん゛ん゛!!!」 子れいむの絶叫が木霊する中、ぱちゅりーとまりさは黙ってお母さんれいむに着いていくしかなかった。 「ゅぅ…ゅぅぅぅぅ…」 「ひっく…ゅ…おねえぢゃん…ぅゅぅぅ…」 「ゅっく…ゅぇぇ…」 子れいむ達は啜り泣きながらお母さんれいむの後ろについて歩いていた。 まりさとぱちゅりーはしんがりを勤めて周りを警戒している。 「がほっ、ごほっ…むきゅぅ…」 「ほ、ほんとに大丈夫?まりさの上に乗ったらゆっくりできるよ!」 「むきゅっ、まりさだって限界でしょ 大丈夫、その気持ちだけでぱちゅりー嬉しいから」 ぱちゅりーはよろめく体でそう応えた。 実際のところぱちゅりーは限界に近い状態にあった。 百足に噛み付かれた場所はズキズキと痛んだ。 眩暈もさっきからずっと止まらない。 耳鳴りだってしている。 足の裏も枝や小石で傷だらけだ。 満身創痍に近い様態だった。 けれどここから出れればまた二人一緒にゆっくり出来る、そして大きくなったら二人で子どもを作りたい。 そして死んでいった子れいむ達の分もゆっくりさせてあげたかった。 ぱちゅりーはまりさと一緒にここを出ることを心から願った。 その願いが僅かながら歩む力をくれた。 ぱちゅりーを突き動かすのはもはや気力だけであった。 「ゆ!森を抜けるよ! もうすぐゆっくり出来るよ!」 木々の間から光が挿している。 お母さんれいむの話では出口はもうすぐのはずだった。 「ゆ!森を抜けたよ!もうすぐ! あの丘を越える前は虫さん達に襲われてなかったからあそこを越えれば大丈夫だよ!」 そこは開けた草原だった。 その先にはゆっくりにとってはそれなりに小高い丘があった。 「ゆ!あとちょっとだよ!やったねぱちゅりー!」 「むっきゅー、あそこを越えたら絶対にゆっくりやすみたおしてやるわ…」 ゆっくり達は最後の力を振り絞って歩き出した。 「もうちょっとだよ…」 「もうすぐゆっくりできるね!」 「みんなでゆっくりしようね!」 草原を進んでいる内に段々とみんなの顔に笑顔が戻ってきた。 ここを抜ければゆっくり出来るのだ、そのことがみんなに元気を与えてくれた。 その時、絶望の羽音がゆっくり達の耳に届けられた。 「い、イナゴさんだー!!!」 「いやああああああああ!!!」 「ゆっくりできないいいいいいいいいい!!!」 「急いで!もう丘は目の前だよ!」 さっきのようにお母さんれいむの口の中に子ども達が隠れる。 今度は全ての子れいむ達が入ることが出来たし喋ることも出来た。 とにかく急いで丘にまでたどり着くゆっくり達。 しかしそこからが地獄だった。 「ゆっ、ゆっ…!」 「むきゅぅっぅぅぅぅ…!」 登りはどうしてもそれまでよりスピードが落ちる。 一方イナゴは空を飛んで変わらぬスピードで追いかけてくる。 もうイナゴの軍団はすぐそこまで来ていた。 「むぎゅぅ…ま゛り゛ざ…もうぱちゅりーをお゛いでにげで…」 「何言ってるのぱちゅりー!ここを出ていっしょにゆっくりするんだよ!急いで!」 「むぎゅ…うげぇ!エロエロエロ…!」 「ぱ、ぱちゅりー!?どうしたのぱちゅりー!ぱちゅりー!」 突如、ぱちゅりーが激しく嘔吐し辺りにどろどろの餡子が飛び散った。 「む、むぎゅぅ゛…」 「ふが…ま、まさか…!」 はっと思い当たったようにお母さんれいむがぱちゅりーの顔の葉っぱを取り去った。 「ど、どうじでぱちゅりーのお顔が紫色なのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 ぱちゅりーは顔中に紫色の斑点が浮き出ており、その表情は死相としか言いようが無い痛々しく生気の無いものだった。 最初に噛み付かれた百足の毒が全身に廻ってたのだ。 一匹なら、普通の百足ならこうはならなかっただろう。 だがここは永夜緩居なのだ。 そこは虫たちの住まう狂った世界。 諸手を挙げて誘い込まれる獲物を喜び喰らう魔境である。 「これは…もう…助からないよ…」 「うん…ぱちゅりーが…一番わかってるよ…むぎゅぇっ!ごばぁっ!」 「二人とも何をいっでいる゛の゛おおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?」 れいむとぱちゅりーの二匹がぱちゅりーの死を受け入れる中でまりさだけが現実を受け入れようとしなかった。 「むきゅ…ありがとうねまりさ、でもぱちゅりーは、もう駄目だからまりさには生き延びてゆっくりして欲しいの…」 足手まといとなった自分を絶対に見捨てないまりさの気持ちが嬉しかった、そんなまりさが大好きだった。 だからこそぱちゅりーは絶対にまりさには生き残ってもらいたかった。 「馬鹿なこといってないで早く行こうね!もうすぐイナゴさんが来るよ!!」 そう言ってまりさはぱちゅりーの帽子を引っ張って無理やり連れて行こうとする。 ぱちゅりーは力無い瞳でれいむの方を見つめた。 「れい…む…このままじゃみんな死…んじゃう…から…おね…がい…わか、るよね まりさ達が…ゆっくりする方法…」 「そんなの簡単だよ!まりさとぱちゅりーがあの丘を越えればいいだけだよ!」 まりさも薄々と手遅れなことを感じ取っていた。 れいむは黙って悲痛な表情でコクリと頷いた。 そして、れいむが体当たりをしてぱちゅりーは丘を転げ落ちた。 「さよなら、まりさ」 「ぱちゅりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 ぱちゅりーは餡子を撒き散らしながらごろごろと転がり、イナゴの群れの中に堕ちた。 「な゛に゛を゛ずるどれ゛い゛む゛うううううううううううううううううう!!!!」 「ぱちゅりーはもう駄目なんだよ!だからぱちゅりーはみんなを助けるためにああやって犠牲になったの!ああやって…!」 れいむの視線の先にはイナゴに群がられ齧り削られていくぱちゅりーの姿があった。 ああしてぱちゅりーを食べている間はイナゴの群れはこちらを追ってはこなかった。 「今助けに行くからねぱちゅりー!!!」 「駄目ぇ!!どうしてぱちゅりーがああまでして犠牲になったのかわからないの?ばかなの? まりさに助かって欲しいからだよ!お願いだからぱちゅりーの命を無駄にしないで!!」 「黙れこの豚れいむがああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 鬼の形相となったまりさは必死に止めるお母さんれいむを突き飛ばすとイナゴの群れの中心へと ぱちゅりーの所へと転がっていった。 「どうして…どうしてぱちゅりーが命を捨てる気持ちがわからないの…! 何でまりさはぱちゅりーの気持ちを無駄にするの…! みんな命を繋ぐために生きてるのに!れいむだってぱちゅりーだって虫さんだってみんな命を繋ぐために生きてるのに! まりさああああああ!まりさは最低だよ!最低のゴミクズだよ! 死ね!まりさはそこでゴミクズらしくゆっくり死ね!!!」 お母さんれいむはぱちゅりーの命を無為にするまりさのその行為に激昂し、唾を吐きかけた。 そして丘の上を目指し振り向かずに子れいむ達を連れて登っていった。 「ぱっぢゅぃりぃー!ぱぢゅぅりぃ!!!」 どうして来てしまったのか、ぱちゅりーがもう見ることは無いと思っていたまりさの姿を見て思ったことはそれだった。 まりさはイナゴに体中を齧られながらもぱちゅりーの所へと辿り着いたのだ。 せっかくまりさだけでも助かって欲しいと思っていたのにと腹が立った。 いつもそうだ、まりさは自分の作戦を無視して勝手なことをして台無しにするのだ。 この前の蛇の時だって自分を囮にしている間に逃げれば簡単に二人で逃げ出せたのに なのにまりさが石につまづいた自分を飛び出して助けようとしたから台無しになって必死に逃げ回る羽目になったのだ。 本音を言うとそれがとても嬉しかった。 今もそれは同じだった。 ただとても悲しくもあった。 きっとまりさも自分と一緒にイナゴに食べられてしまうだろうから。 まりさには生きてその明るさと行動力でみんなを導いて欲しい、そう思っていた。 「ぱちゅりー!待ってて!絶対に絶対に絶対に助けるよ! ここから出たらね!おっきなおうちみつけようね! ゆっくりがたくさんすめてゆっくりできるおうちだよ! そこで二人でゆっくり暮らすの!冬も安心して越せるんだよ! 虫さんなんて絶対に入ってこないんだよ! ごはんはぱちゅりーが調べたばしょからまりさがいっぱいとってくるから安心だよ! 春になったらお花さんも食べようよ!こんどはかまきりさんの居ないゆっくり食べられるお花なんだよ! 夏は水浴びして!ひんやり~!してゆっくりするよ! 秋はね!秋はね!食べ物がたくさんあるからゆっくりし放題なの!! それで二人が大きくなったらたくさんたくさん子どもを作るの! ここで死んでいったみんなの分もいっぱいいっぱいゆっくりさせるの! だから!だから一緒にここを出ようよ!ぱちゅりー! ぱちゅりー!!起きて!ぱちゅりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 まりさの声を聞きながら体中を齧られて、ぱちゅりーの視界はやさしい緑で埋め尽くされた。 ありがとうやさしくてわたしのだいすきなまりさ。 もう喋る口も食べられちゃって無いけれどこれだけは言わせて まりさといっしょで本当にゆっくりできる一生だったよ。 ああ、私に群がる虫さんたち 最後に一つお願いさせて 私の体は全部あげる だからまりさを もってかないで… 永夜緩居― 二匹のゆっくり 別視点 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2339.html
農家の為のゆっくり駆除装置 虐待というか虐殺かもしれません 以前読んだ様なSSやら一部設定を借ります 踏み台にはなるかと 近頃ゆっくり達が人間の畑を荒らす事が増えてきた。 そこで人間は「ゆっくりしていってね!!」と言われると必ず返事をするというゆっくりの習性を利用した。 どの様な事をしたかと言うと、畑の周辺にゆっくり用のセンサーを設置して、ゆっくりを感知したら 「ゆっくりしていってね!!」 とスピーカーから声が出る装置を作ったのだ。 仕組みはシンプルだが、ゆっくり相手には非常に効果的だった。 スピーカーから音声が流れている間はゆっくり達は釣られてしまい動けなくなるし、 畑の持ち主はゆっくりの侵入に気が付けるので作物に手を付けられる前に対処ができる。 この装置は瞬く間に農家の間に広まっていった。 この装置が普及して暫くした頃、装置に関しての要望が多く寄せられた。 ゆっくりの侵入が分かり足止めできるのは良いが、わざわざ駆除しに行くのが面倒だというものである。 そこでこの装置に改良が施される事となった。 改良とは言っても大それたものではなく、少し機能を付け足すだけのものである。 その機能とは 「さあ!!おたべなさい!!」 という声を出すというものである。 「さあ!!おたべなさい!!」とはゆっくりが他人に自らを食べてもらう為に発する言葉で、 これを発する事でゆっくりの体は2つに割れて食べやすい大きさになる。 体が割れるという事は即ち死ぬという事であり、通常ゆっくりは口にする事は殆どない言葉である。 群れや子供を生き延びさせる為や、飼い主に世話になった恩返しなどといった限られた条件でのみ発するのだ。 そんな言葉の為、いくら大きな声で「さあ!!おたべなさい!!」と叫ばれた所で釣られるものはほぼ居ない。 そこで「ゆっくりしていってね!!」の声と組み合わせるのである。 この装置の発する「ゆっくりしていってね!!」は、ゆっくりにとって非常に心地よいものである。 音程・音量・音質、それら全てがゆっくりにとって完璧な具合で調整されているからである。 最高の「ゆっくりしていってね!!」を聞かされれば、ゆっくりは返さずにはいられない。そこに付け入るのだ。 具体的な方法としては「ゆっくりしていってね!!」の直後に「さあ!!おたべなさい!!」と流すのである。 とは言え「ゆっくりしていってね!!」を1回流した直後ではゆっくりもそうそう釣られない。 その為「ゆっくりしていってね!!」を5回連続で流した直後に「さあ!!おたべなさい!!」を流すのである。 「ゆっくりしていってね!!」と同じ調子で「さあ!!おたべなさい!!」 と流されれば、通常のゆっくりは確実に釣られてしまう。 釣られないゆっくりはと言えば、みょんやめーりん、それと捕食種位である。 これらのゆっくりは畑荒らしに来る事はほぼ無いので、釣られなくとも問題はないのだ。 「さあ!!おたべなさい!!」を新たに収録した装置は、絶大な効果を発揮した。 元々の「ゆっくりしていってね!!」だけでも強力だった上に、更に駆除能力もついたのだ。 とある村でもこの装置を試験的に導入した。村人達は効果が本当にあるのかと心配していたが、 それも余計な心配であった。 ある日の昼過ぎ 「うおっ!?なんだこりゃぁぁぁあ!?!?」 装置のある畑を通りがかった村人が叫び声を上げた。 なんとそこには真っ二つになったゆっくり達の死骸があったのだ。 それもほんの数匹というものでなく、数百匹分はあろうかという程の量であった。 そしてその中に3メートルはあろうかというドスの死骸もあったのだ。 装置が強力だという話は聞いていたが、まさか数百匹の群れとドスをもまとめて殺せるとは思っていなかった。 しかし考えてみれば、装置は大音量で声を発しているのであり、それが聞こえれば良いのである。 センサーの感知できる範囲は大した事はないが、発せられる音声はゆっくり数百匹を釣る事など容易い。 それに加えドスも釣られてしまえば、更にその声にゆっくり達は釣られてしまい、聞き漏らすという事は無い。 それぞれが釣られ合い、結果として巨大な群れを全滅させるまでに至ったのだ。 ドスの群れ1つを丸々全滅させた装置の評判は瞬く間に広がり、各地に設置される事となった。 それにより人里近くにいたゆっくりは殆ど皆殺しにされ、ゆっくり達による食害も無くなったのだった。 終 オマケ1 ゆっくり数百匹とドスが死滅した村にて、村人が畑を通りがかる数十分前 「ゆゆっ!やっと村についたよ!!これから村長を呼んで協定を結ばせるよ!!」 村の近くの山に住んでいたドスが、自分の群れのゆっくり達を引き連れて村の入り口に佇んでいた。 ドスはゆっくりにとって有利な協定を結ばせようと村まで降りてきたのだった。 協定を結ぶのを断ればドススパークで人間を皆殺しにして村を乗っ取ろうとまで考えていた。 ゆっくり達はそんなドスの考えに賛同し、着いて来たのだった。 協定を結べればそのまま村に居座り、結べないなら一気に群れに攻め込むつもりでいた。 「さあみんな行くよ!!えいえいゆー!!!!!」 「「「「「「「「えいえいゆー!!!」」」」」」」」 ゆっくり達は村に入っていった。そして数匹のゆっくりが村の入り口の側にある畑に少し入った。 そこには装置が仕掛けられていて、装置のセンサーは当然ゆっくりに反応し 「ゆっくりしていってね!!」 声が響いた。 ゆっくり達は一瞬驚いたが、その声に釣られて 「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」」」」 と返した。 するとまた 「ゆっくりしていってね!!」 と声が響いた。 ゆっくり達は同じ様に 「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」」」」 と返した。 ゆっくり達は装置による「ゆっくりしていってね!!」に律儀に返していた。 そして6回目の「ゆっくりしていってね!!」に備えていたゆっくり達は 「さあ!!おたべなさい!!」 「「「「「「「「「さあ!!おたべなさい!!」」」」」」」」 見事に釣られてしまった。 「「「「「「「「「「ゆ゙!?!?」」」」」」」」」」 ゆっくり達は一瞬唖然としたが、直ぐに自分達の言葉に気が付いた。 しかし、気が付いた時にはもう体が真っ二つになっていた。 ドスは体が裂けるまでの1秒にも満たない間に、これは人間の罠だと悟った。 しかし、それを悟った所でどうしようもない。ドスもそのまま真っ二つになった。 オマケ2 虐待をしたい人用の装置の使い方。 「さあ!!おたべなさい!!」と発する新機能を付けたおかげで農家の人々は非常に喜んでいた。 しかし虐待派はそうではなかった。 「さあ!!おたべなさい!!」と発してしまうと、虐待もできずに即死してしまうからである。 しかし装置の製作者は、虐待派の事も考えて装置を作っていた。 「さあ!!おたべなさい!!」の音声は、当然カットする事ができるのだ。 そうする事でゆっくりを生け捕りにしたい人のニーズも満たすことができる。 また、苦痛を与えたい人用に「ゆっくりしていってね!!」の速度も調整することができる。 「ゆっくりしていってね!!」を極端に速くしたり遅くしたりする事で、ゆっくりは精神的苦痛を感じる。 遅い分には不快感が出る程度だが、速ければ速いだけゆっくりに掛かる苦痛は大きくなる。 2倍速程度で「ゆっくりしていってね!!」を連呼させれば、ゆっくりは凄まじい苦痛を感じる。 しかし2倍速ではショック死する程の苦痛ではない。(それ以上だとショック死するが) つまりギリギリのところで死なずに苦しめる事も可能なのだ。 「ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!ユックリシテイッテネ!!」 「ゆっくりしていっ!!ゆっくりs!!ゆっくっ!!ゆっく!!ゆぎぃぃぃぃ!!! ゆっぐりでぎなぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっくりの叫びが今日も畑に響いた。 あとがき 以前見かけたスピーカーで「ゆっくりしていってね!!」って流してれば何もできなくなるんじゃね? といった内容のSSと、「さあ!!おたべなさい!!」と言う事で死ぬという設定をあわせてみました。 設定を混ぜる事って可能性を秘めてるものなんですねぇ。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4203.html
数時間団欒させた後、俺は再び部屋に踏み込んだ。 「ゆっ!!」 親れいむ共が例によって罵声を浴びせてくる。 「ちかづかないでね!!おちびちゃんたちにちかづかないでね!! くそじじいはゆっくりしないであっちにいってねぇ!!」 いまだに屈伏しきれないのは、ひとえに子を守りたいがゆえか。 「今日はお前らに用があるんだ」 俺はそう言うと、親れいむ共を一匹ずつ取りだした。 「ゆゆっ!?」 今まで何十日も、赤ゆっくりだけを取り上げられ、なぶり殺されてきた。 しかし今日に限っては、自分たちが取り出された。 ということは。 親れいむ共がぶるぶる震えだした。 「たっぷり付き合っていってくれよ」 「ゆっゆっゆっゆっ、お、おに、おにいさ」 震えながらも、子れいむが気丈に問いかけてきた。 「あ、あか、あかちゃんはたす、たすけてね?」 「れいむが、れいむがいじめられるから、あかちゃんは、あかちゃんはゆっくりさせてね!」 れいむ共が揃って懇願している。 その目元には安堵さえ浮かんでいた。 ようやく子供たちを死なせずに助けられる。 そして死ねる。そんな安堵だろう。 あの体験を経た今、 子供に死なれて呪われるよりも、自分が殺されたほうがましだ。 そういう思考にたどり着いたようだ。 「ああ。お前たちががんばれば、赤ちゃんたちは一匹も傷つけない。 お前たちさえがんばってくれればね」 「ゆっくりがんばるよ!!」 「れいむがゆっくりがんばっていじめられるよ!!」 「あかちゃんはたすけてね!!ごみくずでもやくそくはまもるよね!!」 俺に対する態度はだいぶ卑屈になってきたと思うのだが、 どうも、なにかの拍子にゴミクズ発言が飛び出す。 意外とれいむ種が一番タフなのかもしれない。 そんな失言は聞き流してやり、俺は早速れいむ共をカートに詰め込んだ。 別室に入ると、そこには大掛かりな機械が並んでいた。 どれも一見見たところでは用途がわからないが、わからないなりにれいむ共はがたがた震えている。 テーブルの上にれいむ共を並べ、使用人に見張らせたあと、 俺は先ほどの部屋に戻って赤ゆっくり共をカートに乗せ、連れてきた。 「ゆぅー!しゅーりしゅーりちちゃあい!!」 「おきゃあしゃん!にゃにちちぇるにょ!?」 「まりしゃとあしょんでよ!ゆえーん!」 「ゆっ!?おしょらをちょんでるみちゃい~♪」 カートの籠で喚いている赤ゆっくり共を取り出してれいむ共の傍に並べる。 「なにじでるのおおおおおおおお!?」 「ぐぞじじいいい!!あがぢゃんをばなぜええええええ!!」 「やぐぞぐう!!やぐぞぐまもれええええごみぐずうううう!!」 「何もしないさ。みんな、自分のお母さんのところに集まってね」 歯をむき出して飛びかかってくるれいむ共の方に、赤ゆっくり共を追いやる。 自然と、それぞれが自分の生みの親のところに集まっていった。 「おぢびぢゃんにはざわらないでねええ!!」 叫び続けるれいむ共。 まず、一匹の子れいむを取り上げた。 こいつの子は、赤れいむ二匹と赤まりさが一匹だ。 子れいむと三匹の赤ゆっくりを、部屋の一角に連れていく。 そこは仕切りで20cm四方余りに区切られていて、赤ゆっくりではそこから出ることはできない。 その仕切りの中に赤ゆっくりを三匹とも投げ込んだ。 「ゆべっ!」 「いちゃあい!ゆわぁぁん!!」 「ぐぞじじいいいいいいざわるなあああああああ!!」 暴れる子れいむを持ち上げ、上を向かせる。 赤ゆっくりが閉じ込められた仕切りの真上には、天井から縄がぶら下がっていた。 その縄を見せつけ、俺は言った。 「噛め」 「ゆゆっ!?なわさんはゆっくりできないよ!あまあまをゆっくりちょうだいね!!」 「噛まないなら子供の上に落とすぞ」 「ゆっ!」 ここから落とされては、真下にいる子供がすべて自分の体に押しつぶされてしまう。 慌てて開かれたれいむの口に縄を近づけ、噛ませてやる。 手を離すと、歯だけで自重を支える形になった。 「ゆぅぅ!!おきゃーしゃん!?」 「おりちぇきちぇにぇ!!しゅーりしゅーりしちぇにぇ!!」 状況がわかっていない赤ゆっくり共は、 飛び跳ねながら真上の母親の顎に呼びかけていた。 上の子れいむはぶるぶる震え、答えることもできない。 口を開けばどうなるかぐらいはわかるようだ。 そこで俺はれいむに鉄板を見せてやった。 鉄板は幅3cmとぶ厚く、およそ20cm四方の正方形をしている。 鉄板の片側の中心には紐を通す穴があり、縄が結ばれていた。 「これをこいつらの上に落としたらどうなると思う?」 「ゆぐぅううううううう!?」 「約束通り、俺はこいつらには何もしない」 鉄板の縄を子れいむの口の中に突っ込み、噛ませる。 「じゃ、頑張ってくれ」 「ううううううううぐううううううううううう!!!」 必死に首を振る子れいむの体から、俺は手を離す。 天井の縄と鉄板の縄を噛み、子れいむはくぐもった呻きを漏らしながら耐えていた。 どちらを放しても下の我が子はお陀仏だ。 この鉄板の重量は5キロ。 成体ゆっくりにとってはそれほどの重みではないだろうが、赤ゆっくりを潰すには十分だ。 そしてこの子れいむの顎には、鉄板に加えて自身の体重がすべてかかっている。 下の赤ゆっくり共は、鉄板がつり下げられるのを見て、 ようやく状況が掴めたようだ。 それでもどこか他人事のような気楽さで、母親に向かって命令した。 「ゆっ!おとちゃにゃいでにぇ!きゃわいいれいみゅたちがゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おきゃーしゃんはゆっきゅりちにゃいでがんばっちぇにぇ!!」 「ゆうううううぐううううういいいいいいいいいーーーーーー」 子れいむの表皮からは、早くも脂汗のようなものがじっとりとにじみ出してきた。 どれだけ耐えられるだろうか。 他のゆっくりれいむで実験したところ、一時間もたなかった。 しかしその場合は、ゆっくりれいむの真下に置いてあったのは剣山だ。 自分自身ではなく我が子の命が危険にさらされたこのれいむが、 どれだけ記録を伸ばしてくれるか楽しみだ。 次の子れいむに手を伸ばす。 こいつの子は、赤れいむと赤まりさのセットだ。 「やべでえええええあがぢゃあああああんんん!!!」 二匹の赤ゆっくりを、透明なガラスケースの中に入れる。 ガラスケースの前方と後方は強化ガラスで、内部が見通せるようになっているが、 左右両脇はぶ厚くなめらかな鉄板になっていた。 鉄板はきちんと壁の役割を果たし、ガラスケースとは隙間なく接している。 鉄板の外側には、ばね仕掛けのような装置がついていた。 「おきゃあしゃん?これにゃに?」 「ゆっきゅりできりゅの?」 「おちびちゃん!!にげて!!にげてえええええ!!」 装置のスイッチを押す。 すると、ゆっくりと鉄板がケースの内側に向かってスライドしはじめた。 「ゆゆっ!?」 「かべさんこっちこにゃいでにぇ!!」 慌ててケースの中心部に集まる赤ゆっくり共。 二個の饅頭に向かって、鉄板は無情にじりじりと近づいていく。 「最終的には、あの鉄板はぴったりくっついてあの子たちを押しつぶす」 「ゆううううあああああ!!おにいざん!!あがぢゃんだずげでええええ!!!」 「いや、助けるのはお前さ」 そう言ってやり、子れいむを別の装置に設置する。 今度の装置は、一言でいえばハムスター用の車輪だ。 大きな車輪は、片側が機械に取り付けられており、 車輪内部は空洞になっている。 車輪のもう片側は丸く開かれ、ゆっくりが入れるようになっていた。 その中に子れいむを入れてやる。 「走ってみてくれ」 「ゆゆぅ!?おにいざん!?ぞんなごどよりあがぢゃっ」 「走れ。子供が死ぬぞ」 「ばじりまずうううう!!!」 言う事を聞かなければ子供を殺す、という脅しだととらえた子れいむは、一心不乱に駆けはじめた。 必死にぴょんぴょん飛び跳ねる子れいむに向かって、俺は先ほどのケースを指し示してやった。 「あれを見ろ」 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ……ゆっ?」 見ると、赤ゆっくり両脇の鉄板が止まっている。 「ゆゆっ!あかちゃんゆっくりしていってねゆゆぅ!?」 「ゆあぁぁかべさんゆっきゅりしちぇよおぉぉ!!」 「おきゃあしゃあああんはしっちぇえええええ!!!」 安堵して走るのをやめた途端に、鉄板が再び赤ゆっくりに向かって動きはじめた。 慌てて走るのを再開すると、鉄板の動きが少しずつ遅くなっていき、 全速力で走ることでようやく止まった。 この二つの装置は連動していた。 「お前が走ってその車輪を動かしていれば、あの壁は動かない。 だが、走るのをやめたりゆっくり走ったりすれば、赤ゆっくりは潰れてしまうぞ」 「ゆぅうううううううううーーーーーっ!!!!」 説明を理解したらしく、必死に全速力で走り続ける子れいむ。 向かい合った鉄板の距離は、今のところ30cm足らずぐらいか。 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆっぐりでぎないいいいいいい!! おにいいざあああああんゆるじでえええええええーーーーーーーーっ」 叫ぶとそのぶん体力を消耗するのではないか。 しかし、饅頭はそのあたり人間と違うのかもしれない。 ゆっくりは声を出すことでも疲れるのかどうか、それはこれから確かめてみよう。 次の子れいむも、似たような装置に設置する。 こいつの子は、赤れいむが一匹だけだった。 今度は、まず子れいむから処置した。 子れいむを、小さな箱に入れる。 その箱は透明だが、防音に優れた特殊なガラスを使っており、 密閉すれば外側の音は入ってこないようになっている。 そして、長方形の箱の内部は、ガラス壁によって真ん中で区切られていた。 片側の空間に子れいむを入れる。ちょうどぴったりだ。 そしてもう片側に赤れいむを入れるのだが、 こちら側には機械が据え付けられてある。 機械の中心部に赤れいむをセットし、針金で縛りつける。 「ゆびぃい!いちゃいいぃ!うごきぇにゃああい!! ゆっきゅりしちゃいよぉおおお!!」 早くも泣きながら抵抗を始めた。 ガラス壁に遮られ、その声は母親の元には届かないのだが、 その様子を目の当たりにして母親は涙にくれる。 「ゆっくりさせてあげてねええぇぇ!!ゆっくりさせてねぇぇぇ!!」 箱の蓋を閉める前に、装置のスイッチを入れた。 「ゆびゃっ!?」 びぐん、と赤れいむが跳ねた。 針金に縛りつけられたまま、びぐびぐびぐと痙攣しはじめる。 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「あああああああおぢびじゃあああああんん!!?」 説明してやる。 「電流が流れてるんだよ。全然ゆっくりできないものだ」 「ゆびゃびゃびゃああああ!!!いぢゃいぢゃ、ゆぎゅ、ゆっぎゅり、でぎぢゃあああいいいいびゃあああっ」 言葉が発せられるのだからまだまだ余裕がある。二十ボルトに足りない程度だ。 「今はまだ弱いけど、どんどん強くなって、そのうち永遠にゆっくりすることになる」 「いやあああああ!!!でいぶのあがぢゃんをだずげでねええええええ!!!」 「大丈夫、歌えばいい」 「ゆっ?」 「歌え!!」 怒鳴りつけてやると、れいむはおどおどと歌いはじめた。 「……ゆ、ゆーゆーゆー、ゆっゆっゆっゆゆゆ~♪」 すると、子れいむの痙攣のペースが見る間に落ちてきた。 「ゆびぃ……ゆびぃ……ゆびゅ!……びぃ……」 「お前が歌っているかぎり、電流がゆっくりしてくれる。 大きな声で歌えば歌うほど、赤ちゃんはゆっくりできるぞ。 毎日やってることだからできるだろう」 「ゆゆっ!!おうたをうたうのはとくいだよ!!」 「頑張ってくれ。ほら、また流れだしたぞ」 「ゆうぅぅ!?ゆっゆっゆ~!!ゆゆゆゆゆ~~!!」 子れいむの入っているスペースには、マイクが備え付けられていた。 このマイクと子れいむの機械はやはり連動しており、 マイクに向かって声をあげれば、声量に応じて電流が弱まる仕掛けになっていた。 実際のところ歌でなくてもいいのだが。 これで箱を密閉すれば、外から音が入ってくることもなく、 この親れいむは自分の声だけで電流を抑えなければならない。 「ゆっゆっゆっくり~♪ゆゆゆゆ~~ゆっくりしていってねぇぇ~~♪」 歌っているうちに自分もゆっくりできるのか、この子れいむはどこか余裕のある表情だった。 最後に親れいむ。 親れいむの赤ゆっくりは三匹だった。珍しく三匹ともまりさ種だ。 その三匹を、やはり透明なケースの中に入れる。 ケースは小さく、20cm四方の立方体といったところだ。 この装置は単純なものだった。 密閉されたケースの上部に、内部につながるホースが固定されている。 そのホースから、水がちょろちょろと流れ出し始めていた。 「ゆゆっ!?おみじゅしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おみじゅしゃんはいっちぇこにゃいでにぇ!!」 しかし、見るまに水は床一面に広がっていく。 「おちびちゃんたち!!ゆっくりしないでおぼうしさんにのってね!!」 箱の外側から母親が指示する。 慌てて帽子を下に敷き、赤まりさ共は水に浮かびはじめた。 「浮かんでいれば今のところは大丈夫だろう。 だが、そのうち水でいっぱいになるぞ」 密閉されたケースは、やがて水で満たされるだろう。 そうなれば、帽子に浮かんでいようが関係なしに全身が水没することになる。 「あがぢゃあああああんん!!ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 「飲んでやればいい」 箱の上方には、水を注入するホースとは別に、 ちょうど親れいむの口の高さにストローが突き出ていた。 ストローの下端はケースの床面に届いている。 「お前が水を飲めば、いつまでもケースが水でいっぱいになることはない。 赤ちゃんたちもゆっくりできるぞ」 「ゆっくりおみずさんをのむよ!!!ごーく、ごーく!!」 たちまちストローに食いつき、水を飲み始める親れいむ。 赤まりさ共が親に声援を送っている。 「ゆっきゅりしにゃいではやきゅのんでにぇ!!」 「ゆっゆっゆ~♪ぷかぷかきみょちいい~♪」 そこで親れいむの口をガムテープで塞いだ。 「ゆびゅっ!?」 ストロー以外の部分が綺麗に閉じられた。 これで、口の端から水を吐き出すというようなことはできない。 親れいむはますます必死になって飲みはじめた。 れいむ共の踏ん張りは想像以上だった。 それはそのまま、子への愛、そして子を死なせることへの恐怖をも表していた。 すでに開始から二時間が経っている。 どのれいむも、子を殺すまいと必死になっていた。 「ぅうううぅうううぐぐぐぐぐぎぎぎぎぎぎいいいいいいがががががが」 天井からぶら下がっている子れいむは、 がたがた震え全身から粘液をぼたぼた滴らせながら、気丈に顎を噛み合わせつづけていた。 ぎりぎり絞められている口元からは、餡子の混じった涎がひっきりなしに滴っている。 歯茎から餡子、つまり血が出ているようだ。 精神的に限界を超えているらしく、 両目は涙を流しながらぐるぐると高速で回転ている。 下顎からはしーしーが漏れ出していた。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 下の赤ゆっくり共は、最初のほうこそ親を応援していたが、 いまではそれにも飽き、呑気に身を寄せ合って眠りこけていた。 「ゆぎゅううううううう!!ゆっぎゅ、ゆっぎゅぢじだあああああいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「かひゅうー…………ゆひゅうー…………ゆぅううううううう!!!」 車輪の中の子れいむは、いまだに必死に走り続けていたが、 最初のほうのペースは見る影もなく、うつろな目でぼてぼてと飛び跳ねているだけだ。 少量の餡子を断続的にはき散らしているが、 すでに体液は汗(のようなもの)にして流しつくしたらしく、かさかさに乾いている。 甘やかされた飼いゆっくりなら、十分走っただけでもぜいぜい息切れする。 それがもう二時間だから大したものだが、肉体的にはとっくの昔に限界を超えている。 それでも精神力だけで必死に体を鞭打っているが、 大きくペースの落ちた走りは、鉄板の移動を多少遅らせこそすれ、止めることはできなかった。 今では二匹の赤ゆっくりは、鉄板に両側から押しつぶされ、 恨めしげに親を睨みながらくぐもった悲鳴を漏らしつづけている。 もはや数分もたないだろう。 「ゆぎゃぎゃぎゃびゃびゃびゃびゃびゃばばばばばばばばびびびびびびび」 「ゆ゛ー!ゆ゛ぅー!ゆ゛ううぅう!がはっ、かっ、げほっ、はっ………ゆ゛ぅうううううううううぅぅぅ!」 ひっきりなしに電流を流され続け、子れいむはもはや虫の息だ。 ぎりぎり生きてはいるようだが、すぐに死ぬだろう。 電流だけでは、ゆっくりはなかなか死なない。 前述のように餡子がなくならない限りは死なないわけで、 沸騰した餡子が体外に流れ出すか、 あるいは黒こげに燃えて破れた皮から餡子がこぼれ出すまで待つ必要がある。 流れている電流はすでに一万ボルト近くなっていた。 すでに沸騰しはじめているだろう。 マイクに向かって、母親の子れいむは必死に歌い続けている。 しかし、その声はすでにがらがらで、もともとひどい音程もリズムももはや完全になくなり、 ただマイクに向かってがなり立てるばかりだ。 それでも声量が相当落ちているのは、赤れいむに流れている電流を見ればわかる。 「ごーく……ごーく……ゆげぇ……ゆげぇぶ………ごーくぅ……」 「おみじゅしゃんはいっちぇきちゃだみぇえええ!!!」 「のみぇええ!!!ゆっきゅりしにゃいでもっちょにょみぇええええ!!!」 「ゆぁああああああしにたきゅにゃいいいいいいいいい!!!」 親れいむの姿は面白いことになっていた。 もともと大きかった50cm大の体が、水をためこんでだぶだぶに膨らんでいる。 身長はそう変わらないが、横幅は1メートル以上になってたっぷりテーブルの上に広がっていた。 三十分を超えたところで、ひっきりなしにしーしーをしはじめた。 飲んだはしから排出するようになったので、しーしー道をガムテープで塞いでやった。 そうしたら水っぽいうんうんをするようになり、半透明の液状の餡子があちこちにピーピーまき散らされた。 面白いのでしばらく見ていたが、結局あにゃるも塞いでおいた。 そうして今、親れいむはひたすら膨れているのだが、 すでに限界らしく、ねばつく全身を苦しげに上下させている。 さっきからずっとごぼごぼせき込んでおり、 飛び出さんばかりの眼の淵からひっきりなしに流れつづけている水は涙ばかりではないだろう。 ケースの中の赤まりさ共は、すでに水かさに押されて天井に頭を押し付けている。 帽子の中に水が入りはじめており、躍起になって親を叱咤していた。 「ゆぎゃあああああああおみじゅしゃんやべぢぇええええええええごぼごぼがぼ!!」 ついに一匹が、帽子ごとひっくり返って水の中に沈んでいった。 ごぼごぼと沈んでいく我が子を前に目を見開き、親れいむはさらに必死になって飲み始めた。 初めに死んだのは、電流を流されていた赤れいむだった。 沸騰した餡子が口と眼窩から飛び出し、ぽんっという音をたてて眼球が飛び、ケースの天井に当たった。 発火する前に電流を切ったのだが、死体からは焦げくさい煙が立ち上っていた。 次に、二匹の赤ゆっくりが鉄の板に押しつぶされて事切れた。 「もっぢょゆっぎゅっ」が断末魔だった。 死骸を飲み込んで隙間なくぴったり合わさった鉄板にも気付かず、 子れいむはそれからしばらくの間のろのろと跳ねていた。 それは歩くよりも、這いずるよりも遅い走りだった。 三番目に、親れいむが水を吐き出した。 ガムテープでふさがれた口は水を逃がさず、唯一の出口であるストローから盛大に水を逆流させた。 餡子の混じった水がガラスケースの中に大量に流し込まれ、 残っていた二匹の赤まりさは、たちまちのうちに水没した。 親れいむは涙を流しながら長いこと吐き続け、 流し込まれる水の勢いでケースの中の水が循環し、 二匹の赤まりさは餡子が溶け出すまで一個の死骸とともにぐるぐると攪拌された。 以外にも、一番最初の子れいむが最後まで残っていた。 涙やら涎やらに濡れそぼったその形相は仁王だか不動明王を思わせる迫力があり、 その体の激しい震えで、縄がぶらぶら揺れていた。 しかしやがて限界は訪れ、 ついには天井側の縄を離し、体ごと我が子の元に落ちていった。 記録は二時間四十三分。 驚いたことに、このれいむは縄を離したのではなく、噛んでいた部分の歯が根本から抜けおちていたのだった。 自らと鉄板の下に我が子を敷き、子れいむは泣きながらかすかに笑っていたようだった。 その笑いは決して幸福感からのものではあるまい。 「残念だったな」 れいむ共は元の自室、大きなガラス箱のある部屋に戻っていた。 体力を使いきってぐったりと横たわるれいむ共に、俺は声をかけてやる。 「でも、お前たちは精いっぱい頑張った。 あの子たちも許してくれるだろう。 お前たちは母親として胸を張っていいぞ。あの子たちは感謝しているはずだ」 れいむ共の答えはなかった。 俺は背を向け、部屋から出ていった。 「しねぇぇぇ……」 背後からかすかな呟きが聞こえてきた。 その夜、れいむ共が眠っているときにそれは起こった。 「づぶれびゅ!!づぶれびゅうううううう!!!」 真っ暗な部屋の中にあの声が轟いていた。 車輪の中で走り続けていたあの子れいむが飛びあがり、甲高い悲鳴をあげた。 「ゆあぎゃああああああああああああ!!!」 「のみぇ!!ゆっきゅりしにゃいでのみぇえええええーーーーっ」 「ががががああああばばばばばばばばうばばばばばびびびびびび」 「ゆっぎゅりでぎじゃいいいいいいいいいぃぃ!!!」 「ゆびぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」 れいむ共全員が、恐怖に身をひきつらせて叫んだ。 昼間の、あの赤ゆっくり共の絶叫と断末魔が部屋中に轟いていた。 そして、あれ以来すっかり聞いていなかった絶叫。 「のりょいごろじでやりゅがらにゃあああああああああああああああああ!!!!」 今、暗い部屋の中で、かすかな照明に照らされ、 れいむ共の視界に浮かび上がっているそれは、赤ゆっくりのデスマスクだった。 あの日、母親を呪い続けながら溶けていった赤れいむと赤まりさ。 それだけではなかった。 鉄板に押しつぶされてぐしゃぐしゃになった赤ゆっくり共。 電流を流されて焼け焦げた赤れいむ。 水没してどろどろに溶けた三匹の赤まりさ。 昼間死んでいった九匹が新たに加わり、 十一匹のデスマスクが、ガラスケースの四方かられいむ共を睨みつけていた。 「なんじぇあじゅげだ!!なんじぇあじゅげだあああああああああああーーーーーーーーーーっ」 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「じぇっだいにじぇっだいにのりょいごろじでやりゅううううーーーーーーっ!!! じにぇ!!じにぇ!!じにぇ!!ぐりゅじんでじにぇええええええええええええ!!!」 「ゆぎゃびいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」 恐怖に目を見開き、れいむ共は絶叫しながらガラス箱の真ん中に身を寄せあってがたがたと震えた。 餡子を吐き出すのはすぐだった。 監視室で確認してからすぐに部屋に飛び込み、 すさまじい勢いでえずいているれいむ共の口をガムテープで塞ぐと、言ってやった。 「一体なにをそんなに怖がってるんだ?」 「ゆぅぐううううう!!むぐうううううううううぅぅぅ!!」 涙を流しながら必死に訴えてくるれいむ共に向かって、俺は空とぼけてみせた。 「俺には何も見えないし、何も聞こえないな。 怖い夢でも見たんじゃないか?じゃあな」 そのまま、吐けなくなったれいむ共を放置して俺は部屋を出ていった。 その晩、れいむ共は暗闇の中に取り残され、 デスマスクに囲まれて子供たちの絶叫を聞き続けていた。 以上に述べた方法で、 その日からは毎日、れいむ共自身に自らの手で子供を殺させた。 子供が生まれ、装置に設置されるたびにれいむ共は必死に耐えたが、 時間制限がないのだからいずれは死なせるしかなかった。 そして、赤ゆっくりが死ぬたびにその断末魔と死骸を保存し、 夜が訪れるたびにデスマスクと断末魔のコレクションは増えていった。 いまでは、れいむ共は毎晩ガムテープを口に張られて死ぬこともできず、 子供たちに囲まれながら、人間ならたやすく発狂しているであろう恐怖を味わい続けていた。 れいむ種に施した処置は、現在のところは以上だ。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/156.html
ゆっくり魔理沙はご満悦だった。 今までお友達のゆっくり霊夢たちと思う存分ゆっくりしていたからだ。 日があるうちはぽかぽかとしたお日様の下で草原を走り回り、蝶々を追いかけばったと一緒に飛び跳ねる。 お腹が空いたら蝶々やばったを食べたり花の蜜を吸ったりした。 夜はゆっくり霊夢たちの巣で、夜通しゆっくりとおしゃべりに興じたり、星を眺めて眠ったりした。 この数日間は、ゆっくり魔理沙にとって本当に幸せな日々だった。 もっとゆっくりできるといいなと思いながら、ゆっくり魔理沙は自分の巣に戻ることにした。 お友達のゆっくり霊夢たちは、もっとゆっくりしてほしそうだったが、たまには別のゆっくりをしたくなるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 おおよそ四日ぶりに巣に戻るゆっくり魔理沙。 その巣は落雷で死んだ木の洞だ。 ゆっくり魔理沙一匹には広すぎるが、自分が気に入ったものを並べたりできるから、そこはまさに楽園だった。 巣の周りには緑鮮やかな木々が立ち並んでおり、草も豊富で色とりどりの花々が思い思いに咲き誇っている。 そばには川も流れていて、そこで暮らしている限りゆっくり出来ないことなどないと思える。 大勢でゆっくりするのもいいが、一人でゆっくりするのもまたいい。 ゆっくり魔理沙は久しぶりにするそれに、期待で目をぎらぎらさせながら飛び跳ねていた。 鼻息も荒く、興奮で頬ははちきれんばかりにふくらみ、いつも以上に赤らんでいる。 焼け焦げが目立つ折れた木が見えてきた。 そこには四匹のゆっくり魔理沙たちがいた。群れのようだ。みな微笑みながらゆっくりしている。じつに楽しそうだ。 同種のゆっくり同士には、基本的に縄張りの意識はない。 だから帰ってきたゆっくり魔理沙は元気よくその群れに飛び込み一声あげた。いつもどおりの鳴き声だ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 次々と聞こえるそれはやまびこのようだった。 帰ってきたゆっくり魔理沙は手近なところにいた中くらいの、と言っても帰ってきたゆっくり魔理沙と同じくらいのゆっくり魔理沙にほお擦りをした。 「ゆぅ~」 「ゆゆゆ」 気持ちよさそうな声をあげて親愛の情を返す中ゆっくり魔理沙。 その様子を微笑ましそうに見ている群れの長だろう大ゆっくり魔理沙。これは帰ってきたゆっくり魔理沙よりも一回り大きい。 明らかに繁殖経験ゆっくりだ。きっと群れの仲間はこれの子供たちなのだろう。 しばらく五匹でゆっくりしていたが、小さな声が聞こえてきた。 「おかーさーん、ゆっくりしようね!」 「しよーしよー!」 「ゆーゆー!」 大きな木の洞から小さなゆっくり魔理沙が三匹でてきた。中ゆっくり魔理沙よりも一回り小さいそれらは、今まで眠っていたのか大きなあくびをしている。 「ゆゆっ!?」 帰ってきたゆっくり魔理沙は戸惑いの声をあげた。 今、小ゆっくり魔理沙たちが出てきた見覚えのある洞は、自分の巣ではないか? そんな疑問を抱いたゆっくり魔理沙をよそに、小ゆっくり魔理沙たちは大ゆっくり魔理沙に頬をこすられて気持ちよさそうにしている。 「ゆゆゆゆっ!?」 いぶかしげな顔をしながら、ゆっくりと巣に近づいて、中の様子を探るゆっくり魔理沙。 「ゆ゛っ!?」 中は酷い有様だった。ゆっくり魔理沙が集めた宝物の鳥の頭蓋骨は粉々に砕かれていてもはや白い残骸だ。 布団代わりに敷き詰めた草は半分以上がむさぼられていたし、後で食べようととっておいた桃はどこにもなく、代わりに食べかけのカボチャがでんと置かれていた。 なかでも一番嫌だったのが、巣の中から自分の臭いがまったくしないのに、それとは違うゆっくりの臭いがしていることだった。 急にゆっくり魔理沙の頭に餡子が上る。 その視線の先には飛び跳ねている小ゆっくり魔理沙の姿があった。 「ゆぅううーーーっ!」 跳躍し、小ゆっくり魔理沙の一匹に体当たりする。 「ゆぎゃっ!!」 吹っ飛ばされ転がる小ゆっくり魔理沙。 続いて他の小ゆっくり魔理沙を弾き飛ばそうとするが、それは出来なかった。中ゆっくり魔理沙が思い切り体当たりしてきたのだ。 「なにするのー!」 「ゆぐっ!」 家族を攻撃されて、こちらも頭に餡子が上った中ゆっくり魔理沙。威嚇なのか「ぷんぷん!」といいながら帽子のリボンをひときわ大きく広げている。 他の中ゆっくり魔理沙も無言でにじりよってくる。 弾かれた小ゆっくり魔理沙は、ほかの小ゆっくり魔理沙たちと一緒に、大ゆっくり魔理沙にすりよって慰められていた。 体勢を立て直したゆっくり魔理沙は、その場で勢いよく飛び跳ねて声高に訴える。 「ゆっゆっ!わるいのはそいつらだよっ!」 「わるくないよっ!まりさたちはいいものだよっ!!」 すぐさま言い返す中ゆっくり魔理沙。リボンはまだ大きい。 言い合いは続く。他の中ゆっくり魔理沙もそれに混じる。 「ゆぅ~、ここはまりさのおうちなのっ!ゆっくりしないでね!」 「なにいってるの?ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ちーがーうーの~!まりさのおうちなの~~!いいからさっさとでてってね!!」 「いやだよ!ここはまりさたちがゆっくりするおうちだよ!!」 「ちがうもん!ちがうもん!!はやくでてけっ!」 地団太を踏むように小刻みに跳ね続け、顔を真っ赤に染めてゆっくりしないで叫ぶゆっくり魔理沙。 中ゆっくり魔理沙たちは、そんな様子を餡子が腐ったようなものを見る目でみつめている。 「ここはまりさたちがみつけたんだよ!」 「まりさたちのおうちだもん!ゆっくりしないでさっさとどっかいってね!!」 「はやくきえてね!まりさたちはゆっくりするから!」 「「「ばーかばーか!うそつきー!どっかいけ!!かえれー!!!」」」 ゆっくり魔理沙は三匹に立て続けに言われてとうとう怒ったのか思い切り飛び掛った。 「いいからさっさとでてくのーーー!」 体当たりされて転がる中ゆっくり魔理沙。それを見て勝ち誇るように鼻で笑うゆっくり魔理沙。 「なにするのーッ!!!」 「ゆ゛ッ」 同時に重い音とともに潰されるゆっくり魔理沙。大ゆっくり魔理沙が飛び乗ったのだ。 すぐさま中ゆっくり魔理沙のもとへと跳ねよる大ゆっくり魔理沙。だが中ゆっくり魔理沙は大丈夫だと言うように跳ねている。 そのままゆっくり魔理沙へと向かう。 「ゆ~~」 体を起こすと、ゆっくり魔理沙は中ゆっくり魔理沙に囲まれていた。いや中ゆっくり魔理沙だけではない、六匹の群れが全員でゆっくり魔理沙を取り囲んでいるのだ。 ゆっくり見渡したところ、逃げられるような余裕はなかった。とたんにきょろきょろと慌てるゆっくり魔理沙。 「ゆっゆっゆっ?」 なぜ囲まれているのかゆっくり魔理沙には理解できない。自分はただ、自分の巣でゆっくりしたかっただけなのだ。 「ゆー!」 べよん。 小ゆっくり魔理沙が体当たりする。少し痛かったが、すぐにしかえそうとするゆっくり魔理沙。 しかし逆側からも体当たりされる。 「ゆぅっ!!」 そちらを向く。 すると背中に衝撃が。 「ゆぐっ!?」 ほどなくゆっくりリンチが始まった。 大ゆっくり魔理沙がのっかり攻撃し思い切り飛び跳ねる。 まわりで中ゆっくり魔理沙は三方向から勢いよく体当たりをする。 その隙間からは小ゆっくり魔理沙が噛み付いているのが見える。 みんな思い思いの方法で、ゆっくり魔理沙に暴行を加えている。 ゆっくり魔理沙は最初こそ反抗的だったが、ものの数秒もしないうちに号泣し、命乞いの声をあげていた。 しかし群れの攻撃はやむどころか弱まる気配すらない。ぼこぼこぼこぼこといい音がしている。 それに混じる悲鳴や泣き声。なにかが飛び出る音。 「ゆっゆ゛っゆっゆ゛っゆっゆ゛っ!!!」 「いや゛っ!いや゛っ!よじでっ!びゅっ!」 「ぐるぢいよ!だぢでっ!やべでぇっ!!だぢでよおおお!!!」 「どお゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛お゛ぉ゛!?」 「い゛や゛ぁあ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ」 「も゛う゛や゛め゛て゛ね゛っ゛!」 「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「ゆ゛っぐり゛じだい゛よ゛ぅ」 「ゆ゛……っぐり゛……ざぜ……でぇ……ぜっぜっ」 「……ッ!……ぅっ!!…………っ」 ぴくぴくと動くゆっくり魔理沙のようなもの。 それは涙と鼻水、よだれや泥で汚れきっており、餡子まみれで帽子もこれ以上ないほどによれて、ところどころに噛み跡が見える。 もはや虫の息でゆっくりとしているゆっくり魔理沙。 「ゆっ!」 仕上げとばかりに大ゆっくり魔理沙はそれに思い切り体当たりをする。 餡子を撒き散らしながら声もなく転げていくそれを追いかける三匹の中ゆっくり魔理沙たち。 それは近くの川岸でゆっくりと止まった。 その様子に明らかに不満顔で膨れていく三匹。顔を見合わせると、何かを決めたように頷く。 「「「ゆぅ~う~うぅ~っ!!!」」」 声を合わせて、三匹は汚れたゆっくり魔理沙を川に投げ入れてやった。 「「「ゆっくりしんでね!」」」 汚れたゆっくり魔理沙が川をゆっくりと流れていく様子を、げらげらげらげらという笑い声が見送っていた。 ぶくぶくと泡をだしながらゆっくりと薄れていく意識の中でゆっくり魔理沙は思った。 こんなことならゆっくり霊夢たちの巣でもっとゆっくりしてればよかった……と。 おわり。 著:Hey!胡乱
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/204.html
ゆっくりるーみあ 「なのかー」 夕闇の空のなかゆっくりるーみあが空を飛んでいた。 美しい金髪、紅く燃える瞳、ゆっくり種の中でも段違いに白く美しい肌。 ゆっくりるーみあは肉食種であるが、基本的にのんびりとしていて実にゆっくりらしい性格である。 「わはー」 笑顔ではねるゆっくりるーみあ。 宵闇ゆっくりとも言われるゆっくりるーみあにとって夕闇の時間帯は一番心躍る時間帯であるのだ。 これから来る楽しくて心地の良い夜。 西の空を眺めながら完全な日没を心待ちにしている。 地面にうつるゆっくりるーみあの影が徐々に長くなっていく。 辺りは暗さを増し、徐々に徐々にと闇が支配していった。 今夜は雲一つ無い美しい夜である。 月の蒼い光に美しい肌と金髪が生える。 さほどお腹が空いていなかったため原っぱでゆっくりと月光浴をすることにしたゆっくりるーみあ。 「きょうは満月なのかー」 紅い瞳が楽しそうに気持ち良さそうに笑う。 ゆっくりるーみあにとってここまで心地の良い夜も久しぶりだった。 ゆっくりるーみあが時を忘れ月光浴を楽しんでいると、月に黒いシルエットが横切る。 一つ、二つ、三つ、四つ。 「とりなのかー」 ゆっくりるーみあは小型の鳥も食べる。 もし捕食できるサイズだったら晩飯でもいいなと思いながらゆっくりと眺めていると、 影がこちらへと近づいてきた。 宵闇ゆっくりであるゆっくりるーみあは夜目が利く。 長く伸びた牙、奇妙な形の翼。 近づいてくるそれらがゆっくりフランであることに気づく。 「危険なのかー」 ゆっくりるーみあも肉食種であるが、同じ肉食種の、れみりゃ、フランに比べると段違いにゆっくりるーみあは弱い。 下手をすればゆっくり霊夢の群れに負ける程である。 慌てて逃げ始めるゆっくりるーみあ。 相手は肉食種最強の四匹のゆっくりフランである。 当然るーみあに勝ち目は無い。 飛び出すものの、その速度は実にゆっくりで、高スピード、高攻撃力が売りのアサルトゆっくりの異名をもつゆっくりフランから逃げ切れるはずは無い。 「ゆっくりしね!!」 上の方から叩きつけられ、錐揉み回転しながら落ちていくゆっくりるーみあ。 「やーーー、なっ!!」 鈍い音をだして叩きつけられるゆっくりるーみあ。 他のゆっくりよりも頑丈なため一命は取り留めるもののダメージは大きい。 「もうだめなのかー」 ゆっくりるーみあはもう諦めていた。 この四匹のゆっくりフラン達に食い裂かれるのだ。 ゆっくりフラン達が近づいてくる。 「うー、うー」 それぞれ楽しそうに声を上げるゆっくりフラン。 「いだぁあ!!」 ゆっくりフランがゆっくりるーみあの背中に噛み付き引きずっていく。 「うー、うー」 刺すような痛みの中捕食される恐怖に震えるるーみあ。 四匹のゆっくりフランがゆっくりるーみあを取り囲む。 ゆっくりるーみあにとっては本当に恐怖である。 「うー、うー」 首狩族のようにゆっくりるーみあの周りで声を上げながら反応を楽しむゆっくりフラン。 ゆっくりフラン、その性格が残虐と言われるのは、獲物を捕食前に甚振るのが所以である。 嗜虐心を煽るゆっくりるーみあのその様子はゆっくりフランにとって何よりのご馳走だった。 突然、ゆっくりるーみあの体に衝撃が走る。 「飛ばされるのかー」 そのまま地面に落ちころころと転がる。 「うー」 ゆっくりフランが転がってきたゆっくりるーみあに体当たりを加える。 「また飛ばされるのかー」 再び宙に舞うゆっくりるーみあ。 蹴鞠のように弄ばれるゆっくりるーみあ。 「うー、うー」 「ゆっくり死ね、ゆっくり死ね」 歓喜の声をあげるゆっくりフランとは対照に擦り傷を増やし、声をか細くしていくるーみあ。 「やめてー」 もういっその事一思いに食べて欲しかった。 残酷なゆっくりフランの仕打ちに心身ともに甚振られていく。 残酷な蹴鞠はしばらく続き、もうゆっくりるーみあは傷だらけで偶に声をあげる程になっていた。 これで仕上げとばかりに大木に向かって一匹のゆっくりフランが大木に当たるよう目一杯体当たりをする。 「ゆっくりしね!!」 渾身の体当たりを受け飛んでいくゆっくりるーみあ。 薄れ行く景色のしかしの中で迫ってくる大木が見えた。 「も、もうだめなのかー」 その様子を楽しげに見守るゆっくりフランたち。 そのとき、突然突風が吹いた。 ゆっくりるーみあは突風にその進路を変えられ、木の枝に一度引っかかったあと墜落した。 仕損じた。 その様子を見て、落下地点へと駆け寄るフランたち。 どうやら茂みに落ちたらしいが、直ぐに場所の見当が付いた。 ゆっくりるーみあがつけていたと思われる真っ赤なリボンが茂みに引っかかっていたからである。 「うー、うー」 それを見つけ仲間達を呼び寄せる。 もう、逃げる体力はあるまい、そう踏んで余裕たっぷりに茂みに集まる四匹のゆっくりフラン。 みな、にやにやしながらこれからの残酷な宴の想像をしていた。 突然茂みから黒い影が猛スピードで飛び出す。 「うーーーーーーー!!」 ゆっくりフランのうちの一匹が大きな悲鳴を上げた。 仲間達が悲鳴の先を見ると、リボンが外れたゆっくりるーみあがフランに喰らい付いている。 「がっ、がっ」 何故弱小種であるはずのゆっくりるーみあが仲間を? 三匹のゆっくりフラン達が呆然としている間に、ゆっくりるーみあがゆっくりフランの頬を噛み切った。 「うーーーーーっ!!」 今まで外敵に攻撃など受けたことの無いゆっくりフランである。 大きな混乱に包まれていた。 口の端から餡子を漏らしながら美味しそうに咀嚼するるーみあ。 仲間が固まっているうちに、震えるばかりのゆっくりフランに噛み付いては、引きちぎり、噛み付いては引きちぎり。 もうゆっくりフランは見る影も無く、皮と餡子の塊に成れ果てていた。 「ゆっくりしてくのかー」 先ほどとは別ゆっくりのような様子のゆっくりるーみあに突進していく一匹のゆっくりフラン。 このゆっくりフランはゆっくりるーみあに同胞が負けたのは奇襲のせいだと踏んだのだ。 遺されたフランたちは判断を誤った。 「うーーー」 一直線にゆっくりるーみあに向かっていくゆっくりフラン。 衝突すると思った次の瞬間。 「うっ!!」 ゆっくりるーみあは消え冷たい土の感触。 「うっ!? うっ!?」 混乱しながら辺りを見回すゆっくりフラン。 そのとき上に気配を感じた。 「う?」 上を見上げたときにはもう遅い。 上空から自重と重力を利用して突っ込んでくるゆっくりるーみあ。 「ぶべぇ!!」 二匹目のゆっくりフランも醜く餡子を漏らし潰れた。 一瞬で最強種といっても過言ではないゆっくりフランを絶命させたゆっくりるーみあ。 「あわわわわわわ」 目を見開き、口を広げ震える二匹のフランに向き直るゆっくりるーみあ。 真っ赤に燃える瞳は地獄のよう。 普通のゆっくりるーみあとはもはや別種と言っていいほど、雰囲気が変わっていた。 ゆっくりるーみあには震えながら羽を広げる姿が十字架のように見えた。 「フランは磔にされました?」 そう笑い声を上げるゆっくりるーみあ。 ゆっくりフランが別々の方向へと逃げ出した。 「ううーー、うー」 そのゆっくりフランは全速力で夜の闇を飛んでいた。 理解できなかった。 なぜ弱小種であるるーみあにここまでフランたちが圧倒されたのか。 そのときゆっくりフランは初めて恐怖という感情を覚えた。 いままで、自分達に追い詰められた獲物は成す術も無く甚振られ死んでいった。 反撃を試みてくる種もいたが、全て一蹴にした。 なのになぜ、あいつは、あいつは。 「うーっ!!」 遠くから、同種のものと思われる悲鳴が聞こえた。 どうやら自分はターゲットにされなかったようだと、安堵のため息をつくゆっくりフラン。 自分は助かった。 当分は湖周辺に篭ろう。 そうだ、ゆっくりれみりゃたちを苛めて楽しく過ごせばいいのだ、 「なんで、逃げるの」 突然後ろから声がした。 忘れもしないあのゆっくりるーみあの残酷でよく通る冷たい声。 緊張で再びピーンと羽を広げるフラン。 くすくす、という笑い声の後 「フランは磔にされました」 それがゆっくりフランが聞いた最後の音であった。 ゆっくり大辞典:ゆっくりるーみあ 夜行性かつ肉食だが大概のるみーあ種はのんびりとした性格で ゆっくりを捕食するよりも小型動物や昆虫を食し、月夜の晩にゆっくりとしていることが多い。 しかし、頭部のリボンが外れた場合、運動能力が増し上位肉食種と拮抗して戦闘する事例も報告されている その日も綺麗な満月だった。 リボンをつけていないゆっくりるーみあは月光を浴びながら、原っぱで気持ち良さそうにゆっくりとしていた。 written by TAKATA
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/326.html
短いけど書いてみた。 「ゆっくり相撲」 最近里の子供達の間ではやっている遊びがある。 「ゆっくっゆぎゅれいむゆっくりおちていってね!」 「ゆぶっゅべっゆっぶっまりさこそゆっくりおちていってね!」 里の寺子屋、裏返したタライの上で二匹のゆっくりが互いを押し合っている。 といっても別に発情しているわけではない。 虫の代わりにゆっくりを使った「ゆっくり相撲」をしているのだ。 周りを里の子供達が取り囲み「つぶせっ」だの「おしだせ!」だのと囃し立てている。 ゆっくり相撲とは、種類の違うゆっくりを捕まえて来て取っ組み合いをさせる遊びだ。 「ゆっくりできる場所を教えてあげる」「美味しい食べ物をあげる」等といえば殆どのゆっくりは疑いもせずついて来る。 その後タライに乗せ「押し合いをして、勝った方には特別なご馳走をあげる」と言えば、割と簡単に押し合いを始める。 時々、言う事を聞かずご馳走だけを強請って五月蝿いゆっくり達もいるが、全員で蹴り飛ばしながら脅せば大概言う事を聞くのである。 今日捕まえてきた二匹はどうやら親友同士らしく 連れてくる途中「ゆっくりたのしみだねー」「どんなところでゆっくりできるんだろうねー」と声を掛け合っていた。 だが、子供達はゆっくりさせる気もなければご馳走をあげる気もない。 負けた方のゆっくりを勝ったゆっくりに特別なご馳走として無理やり食べさせるのである。 この間は姉妹同士のゆっくりを争わせた。 勝ってご馳走が食べれるとはしゃぐ姉、ずるいずるいと騒ぐ妹。 ご馳走をあげると言い、互いを向き合わせ、目の前で妹を踏み潰してやった。 目の前で潰され、息絶えた妹ゆっくりを見て半狂乱になる姉ゆっくりを見て大笑いをしながら、潰れた妹を無理やり食わせる。 「い”も”う”と”を”か”え”し”て”ぇ”ぇ”ぇ”」「ゆ”っ”く”り”で”き”な”い”ぃ”ぃ”」だのと喚き散していたくせに、口の中に捻じ込むととたんに「うっめ、メッチャうめ!」「しあわせー」と喜ぶゆっくりを指差して腹を抱えて笑った。 あの後、日が暮れるまで残った姉を皆で蹴り回して、適当な木の枝に刺して帰った。 次の日に鞠代わりに蹴り飛ばして遊ぼうと木を見たら木の根元に少量の餡子とリボンが落ちていた。ゆっくりれみりゃにでも食べられたのだろうと皆で残念がった。 「ゆゅっゆっおちちゃうよっゆっくりおちちゃうよっ」 「ゆっくりおちてね!ゆっくりおちてね!」 もうすぐ勝負がつく。ご馳走にありつくゆっくりも決まりそうだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3082.html
その1より れいむたちが考え付く限りの作戦を敢行しておよそ3時間。3匹は未だ部屋から出られないでいた。 壁に体当たりをしても壊れない、床に穴を開けようとしても硬くて掘り返せない、再度3匹でお兄さんを呼んでも返事は返ってこない。 疲れてお腹の空いてきた3匹は、一時休憩とばかりにドッと床に座り込む。 「でられないね……」 まりさがポツリと呟く。 どんなに頑張ろうと、この部屋のありとあらゆる物が、自分たちの行く手を阻む。 かつて見たこともない物で溢れかえっていることもあり、れいむはまるでここが異次元の世界のように感じられた。 更にはお腹が空いてきたこともあり、いよいよもってれいむはこの状況に恐怖を感じ始めた。 もしまりさやありすが側にいなく、一匹でここに閉じ込められでもしたら、たちどころに精神が参ってしまうだろう。 本当に自分たちはここで一生を終えることになるのではないか? まりさの一言は、精神的にも肉体的にも憔悴したれいむを落とすのには、あまりにも雄弁すぎる言葉だった。 すでに頭の中は最悪の事態まで考え始めている。 しかし、れいむの悪い空想とは裏腹に、ここに来てようやく事態が動き始めた。 突然、遠くから物音がしたかと思うと、徐々に足音らしきものが近付いてきて、すぐそばでピタリと止まった。 そして今までビクともしなかった壁がいきなり開き始めた。単に扉が開いただけともいう。 そこから部屋に入ってきたのは、三匹をここに連れて男その人であった。 「おにいさん!! くるのがおそいよ!! れいむぷんぷんだよ!! あのおいしいものをいっぱいもってきてくれないと、れいむおこっちゃうよ!!」 扉が開き、暗黒の世界に一変して光が差し込んだれいむは、嬉しさを隠しきれず、男の元に跳ねていった。 お菓子を寄こせとは言ったものの、別に本気で言ったわけではない。 もし男が自分たちの苦労の一端を知れば、もう一度あの美味しいものを食べさせてくれるかもしれないという僅かばかりの打算が働いただけである。 しかし男がれいむにくれたのは、甘い甘いお菓子などではなかった。 「ゆべっ!!!!」 突然、れいむの体が浮いた。そして、背後の壁に叩きつけられる。 れいむは何が起こったのか理解できなかった。 床に落ちると同時に襲ってきた強烈な痛みに、何が起こったと考えている暇などありはしなかった。 ただ、れいむが男の足元に行った瞬間、男の足が目の前に迫ってきたことだけは、無意識で理解していた。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあ―――――――――――――!!!!!」 れいむはあまりの激痛に、蹴られた鼻(?)周りを地面に擦りつけたり、床を転がりまわったりして、必死で痛みを和らげようとする。 しかし、男はれいむの元に来ると、無造作に髪の毛を掴み上げ、まりさとありすの居る所に放り投げる。 「ゆぶっ!!!」 痛さを和らげる暇もないれいむ。 まりさとありすは、そんなれいむを心配しつつ、男に食ってかかる。 「おにいさん、れいむになにするの!! ゆっくりあやまってね!!」 「そうよ!! こんなことするなんて、とかいはのすることじゃないわ!!」 二匹は「ぷくー!!」と頬を膨らませて、威嚇のポーズを見せる。 しかし、威勢のいい言葉や態度とは裏腹に、決して男の元に近づこうとはしなかった。 頭のいい個体なら、今の一見を見ただけで、自分たちが人間に敵わないのが分かるというものだ。おそらく二匹にはそれが分かっているのだろう。 それでも男に食ってかかるあたり、れいむを心配しているのと、未だあの優しかった男の行動が信じられないと言ったところだろうか。 そんな男はというと、二匹に言葉ではなく行動で返事を返す。 バアン!!! 男が盛大に床を踏み、壁を叩く。聞くからに痛そうな音が部屋中に響き渡った。 たったそれだけの行動であるが、まりさとありすに恐怖を植え付けるには充分であったようだ。 風船のような頬は萎み、未だ痛みのひかないれいむも含めて、体を寄せ合ってブルブル震え始める。 男はその様子に満足そうな笑みを浮かべると、入ってきたドアを閉め、ようやく口を開いた。 「もう起きていたとは……意外と薬の効きが弱かったらしいな」 ようやく痛みの引いて来たれいむは、男の言葉に耳を傾けるも、その意味が理解できなかった。 隣のまりさ、ありすも同様に首をかしげている。 「さてと、まず何から話すべきか。まあ、これから一緒に暮すんだし、まずは挨拶からか。お前たち、おはよう。ゆっくり寝られたかな?」 またもや話しかけてくる男。 今回もれいむは男が何を言っているのか分からなかった。と言っても、最初のとは意味合いが違う。 “これから一緒に暮らすんだし” いったいどういう意味だ? 普通に考えれば、男が言葉をかけたのは自分たちであり、自分たちと一緒に生活するということである。 しかし、れいむたちは自分のお家がちゃんと森の中に存在する。いや、れいむはまだ出来ていないが、それも数日たたず出来上がるだろう。 男と一緒に暮らせば、毎日おいしいものを食べられるかもしれないが、正直ここに住みたいとは思わない。 この歪みのない均一のとれた空間が森暮らしのれいむには違和感だらけで、どうにも心地よくないからだ。 「お、おにいさん、なにいってるの? まりさはじぶんのおうちがあるから、おにいさんといっしょにくらせないよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 まりさもれいむ同様男の言葉に疑問をもったらしい。 さっきの男の行動にビクビクしながらも、きっぱりと意思を示す。 「う〜ん、いきなり言っても分からないよな。まあいい、これから説明してやろう」 「ゆっ?」 「お前たち、昨日食べたビスケットは美味しかったかな?」 「ビスケット?」 ビスケットという言葉に聞き覚えのないれいむだが、おそらく森で食べた甘いものであろうと当たりをつける。 その味を再び思い出し、痛みも忘れ、涎を垂らす。 「おいしかったよ!! いっぱいゆっくりできたよ!!」 「そうか、それはよかったな」 「ゆっくりまたほしいよ!!」 「ざんねんながら、あれはもうないよ。まあ睡眠薬の入ってないものなら、まだたくさんあるがね、ハハハ」 「すいみんやく?」 「睡眠薬ってのは、無理やり眠らせる為の薬だ。お前たちが食べたビスケットの中に含まれていたんだ。食ってる最中、いきなり眠くなってきたのはそのためだ」 「ゆゆっ!!」 そういえば、まりさもありすもあまあまを食べていた時、急に眠くなったと言っていた。 まりさと同じだということで浮かれたが、よく考えてみたら、全員がいきなり眠くなるなんておかしいことだ。 れいむはようやくそれに気が付いた。 「どうやら理解できたようだな」 「おにいさんがれいむたちをねむらせて、ここにつれてきたの?」 「ご名答ありがとうございま〜〜す」 「ゆゆっ!! ざんねんだけど、れいむはおにいさんといっしょにくらせないよ!! れいむはゆっくりはやくおうちをかんせいさせなくちゃならないんだよ!! ゆっくりさびしくても、がまんしてね!!」 自分たちを眠らせて連れてきたということは理解できたが、れいむは思いっきり蹴られたにも関わらず、全く危機意識を持っていなかった。 自分が蹴られたのは、お菓子を持って来いと我儘を言ったからだ。 自分たちを連れてきたのは、きっと一人暮らしが寂しかったからだ。 これがれいむの出した結論だった。 れいむは群れ一番の狩人である親れいむと、群れ一番の識者である親ぱちゅりーから生まれたゆっくりである。 母体が体の弱いぱちゅりーだったため、ぱちゅりーの体を重んじた親れいむは、れいむを除いた姉妹の蕾をすべて間引いてしまった。 とは言え、親れいむが無理強いをしたわけではなく、ぱちゅりーとの相談のもと、断腸の思いでの間引きであった。 本来、ゆっくり殺しは禁忌であるが、蕾の段階なら間引くことは問題ない。 そのため、多産のゆっくりにしては珍しく、れいむには姉妹がいなかった。 そんなこともあって、両親がれいむに与える愛情は相当なものであった。 周りのゆっくりたちも、群れに貢献度の高い偉大な二匹から生まれたれいむを誉め湛え、れいむはそれを当たり前として育った。 それでいて我儘なゲスにならなかったのは、ひとえに両親の惜しみない愛情と、親ぱちゅりーのしっかりした教育の賜物であろう。 しかし、それは言いかえれば籠の中の小鳥とも言い換えられる。 知識では教えられていても、所謂本当の悪意を知らずに育った箱入り娘のれいむは、あまり疑うということを知らなかった。 よく言えば純粋、悪く言えば世間知らず。 ここにホイホイ連れてこられた経緯を見れば、まあ言うまでもないだろう。 「はは、寂しいねえ……まあ、この年になって嫁さんも貰わず、こんな趣味をしてるようじゃ、そう言われても仕方ないか」 「ゆっくりりかいしてね!!」 「ああ、ゆっくり理解したよ。まあ理解はしても、改めはしないがね」 「ゆっ?」 「繰り返すが、お前たちが俺と一緒に暮らすのは決定事項だ。そこにお前らの事情は関係ない。明日も明後日も一週間後も十日後も、お前たちはここで生活するんだよ」 「ゆぅ……だからゆっくりりかいしてねっていってるでしょ!! まりさたちはおうちがあるから、おにいさんとはくらせないんだよ!!」 まりさが語気を強くして反論する。 いい加減、自分たちの話をまともに取ってくれない男に、イラつき始めたのだろう。 れいむも同じ気持ちだった。 しかし、男はまりさの言い分を全く聞こうとしないばかりか、突然、態度を豹変させた。 「うっせーぞ、饅頭どもっ!! ホント、頭がわりーな!! 人が下手に出ていりゃ、つけあがりやがって!! もう一度だけ言ってやる。これからお前らはここで暮らすんだ。ゆっくり理解しな!!」 ガラの悪い言葉と共に、壁を壊れるのではという勢いで叩いてくる。 三匹はそんな男の言葉と行動に再度萎縮させられた。 れいむには信じられなかった。 これが本当にあの優しいお兄さんの言葉なのか? 森であまあまをくれた時は、あんなに優しそうな声を掛けてくれたというのに!! これでは丸っきり別人じゃないか!! おそらく、隣にいるまりさやありすもそう感じたのだろう。 「ゆっ……」と言葉を詰まらせ呑み込んだまま、まりさは男に言葉を返せないでいた。 三匹の委縮した様子を見て、男はようやく鬼のような形相を静めると、ゆっくりと説明を加えてきた。 「これでようやく話が進められるな。結構結構。それでは、お前らの今後の生活について簡単に説明してやろう。お前ら3匹には、これからこの家で生活してもらう」 「な、なんで、こんなところでせいかつしなくちゃいけないの?」 「理由は至極簡単。お前らを虐待するためだ」 「ぎゃくたい?」 聞きなれない言葉に、れいむがビクビクしながら質問を返す。 「ちっ、虐待の意味も知らんとはな。まあ、饅頭なんてそんなもんか。お前らふうに分かりやすく言えば、お前らを苛めるために連れて来たんだよ!!」 「い、いじめ!? いじめはしちゃいけないって、れいむのおかあさんがいってたよ!!」 「そうだな。確かにしてはいけない。だが、虐めというのは、生物に対しすることだ。お前らは生物(いきもの)ではなく生物(なまもの)だ。故に問題なし!!」 「れいむたちは、いきものでもなまものでもなくて、ゆっくりだよ!!」 「なら、なおよし!!」 「「「そんなあああぁぁぁぁぁ―――――!!!!」」」 3匹は一斉に悲鳴を上げる。 男に説明されて、ようやくれいむは理解出来た。 つまり、れいむたちは、この男に嵌められたのだ。 あの時の優しそうな態度は演技で、これが男の本当の姿ということなのだろう。 しかし、それが分かったからと言って、どうなるわけでもない。 親ぱちゅりーから、何があっても人間に刃向ってはいけないと言われていたのも忘れ、れいむは苛めという言葉に反応し、男から急いで離れようとした。 とは言え、ここは狭い部屋の中。 ドアも閉められており、れいむたちに出る術はない。 痛いのを我慢して壁に体当たりしたが、一向に壊れる気配は無かった。 「無駄なことは止めておけ。お前ら程度の力で、人間の家の壁を壊せるわけがない」 「なんでれいむたちをいじめるのおおぉぉ―――!!! れいむ、わるいことしてないよおおぉぉぉ―――!!!」 「まりさだって、なんにもわるいことしてないよおおぉぉぉ―――――!!!」 「とかいはをいじめるなんて、いなかもののすることよおおおぉぉぉぉ――――――――!!!」 各々が感情を爆発させる。 しかし、男は淡々とあり得ないことを口にする。 「理由は至って明快、俺はゆっくりいじめが好きだからだ」 「そんなあああぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――――――――!!!」 「ちなみに、お前ら三匹を選んだ理由は特にない。俺の目に止まったから連れて来ただけだ。睡眠薬入りとはいえ、人間のお菓子を食べられるなんて運がいいな」 「ぜんぜんよぐないよおおおおぉぉぉぉ――――――!!!」 「何言ってる。しあわせ〜〜♪ とか言ってたくせに!!」 「ゆっぐりおうぢにがえじでええぇぇぇぇぇ―――――!!!」 「れいむ、お前の巣はまだ建造中だろうが。帰る家もないんだし、ちょうどいいだろ」 「やだあああぁぁぁぁぁ―――――――!!!!!」 れいむは泣き叫んだ。 隣のまりさもありすも、れいむに負けず劣らず、大声で悲鳴を上げている。 男はそんな三匹の歪んだ顔に満足そうな笑みを浮かべながら、説明を続けてくる。 「お前たち。これから虐待をするに当たって、いくつか説明しておこう。 まず虐待は一日一回。一匹につき一時間行う。それ以上は一切しない。 また、お前たちを殺しもしない。俺は殺すことに興味がない。せいぜい精神崩壊を起こさないように気を強く持て。 次に虐待は一匹ずつ行う。その時、他の二匹は待機。 気が散るとあれだから、大声は上げるなよ。もし俺の不興を買ったら、虐待時間を延長するからな。 ちなみに、虐待されている者は、どんなに泣き叫んでも構わない。むしろ泣き叫べ。歪んだ顔を見せろ。そのほうが、俺は興奮する。 以上だ。何か質問があったら受け付けよう」 男は淡々と事務的な口調で述べてくる。 質問と言われても、れいむたちに質問するようなことなどありはしない。 「れいぶだぢ、いじめられだぐないよおおおぉぉぉぉ―――――!!!」 「却下だ。お前たちを、虐待することはすでに決定事項だ。他には?」 「まりざをおうぢにがえじでえええぇぇぇ―――――!!!!」 「さっきも言ったように、お前らを殺しはしない。いずれ、虐待に飽きたら森に帰してやろう。まあ、何時になるかは未定だが」 「ぞんなあああぁぁぁぁぁ―――――!!!」 「とかいはをいじめるなんで、いながもののずるごどよおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 「お前はそれしか言えんのか……だいたい森暮らしのゆっくりに、都会派とか言われてもな。それにお前に言われるまでもなく、ここは田舎で、俺は田舎者だ」 「「「ここがらだじでえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――!!!!」」」 「……どうやら、もう質問はないようだな。それじゃあ、そろそろ始めるか」 「「「やだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!」」」 「まず最初はまりさ、続いてありす、最後にれいむの順番で虐待を行う」 男はそう言うや、三匹に迫ってくる。 対して、三匹は捕まるまいと、泣きながら部屋中を逃げ回る。特に、最初に指名されたまりさは必至だ。 しかし、そこは狭い部屋の中。 ゆっくりと人間とでは、勝負になるはずもなく、あっさりとまりさは捕まってしまう。 「や、やだああぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!! やだああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!!!」 まりさは必死で男の手の中から抜け出そうとするも、ガッチリと締め付けられており、どうしても抜け出せなかった。 「まあ安心しろ。今日は初日だからな。特別緩い虐待で我慢してやる」 「ぜんぜんあんじんでぎないよおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 「それじゃあ、虐待部屋に行きますか」 「はなじでええぇぇぇぇぇ―――――――――――――!!!! やめでええぇぇぇぇぇ――――――――――――――!!!!」 男は右手でまりさを抱えたまま、部屋の扉を開けた。 れいむはこの瞬間しか逃げるチャンスはないと、男の隙間をぬって、扉に滑り込もうとした。 しかし、男はすでにお見通しだったのか、れいむの顔面を蹴りつけ、部屋の中に吹っ飛ばす。 「ゆぶっ!!」 「余計なことはしない方がいいぞ。何度もこういう目に逢いたくなかったらな。もっとも、たとえこの部屋を抜け出せたとしても、この閉め切った家から出られる訳ではないが」 男はそう言うや、泣き叫ぶまりさを連れて、部屋の中から出て行った。 しっかりと扉を閉めて、外から鍵をかけられる。 男になんと言われようと、虐待されるなんて真っ平である。 れいむは何とかここから出ようと、壁に体当たりをしたり柱にかみついたりしたが、男の言葉通り、無情にも壁や柱はビクともしなかった。 逆に、体当たりをした箇所に、痣や切り傷が出来る。 それでも、懸命に部屋から抜け出そうと、れいむはもがきまくる。 ありすは、そんなれいむに目もくれず、未だにグズグズ泣きわめいている。 れいむは泣いている暇があったら手伝えと、何もしないありすにイラつくが、数分後、微かに聞こえてくるまりさの絶叫に震えあがり、自然と手が止まってしまう。 そして、どうしても考えざるを得ない未来の自分。 一時間というのがゆっくりであるれいむにはどれほどの永さか分からないが、まりさが終わりありすが終えた後、れいむも同じ道を辿ることになるのだ。 まりさは一体どんな酷いことをされているのだろう? どれほど痛いのだろう? 時間がたてば、それを自分も受けることになるのだ。 自然と涙腺の緩んでくるれいむ。 部屋から抜け出せないせいか、それともありすに釣られてか、はたまた近い将来の自分の姿を想像してか…… れいむは一気に感情を爆発させた。 「ゆああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――ん!!! おがあざあー――――――――――ん!!! だずげでえええぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!!」 以前両親は言った。 自分たちのお家の近くに家を作りなさいと。 大人になったといっても、れいむはまだ完全な大人じゃないんだから、自分たちの目の届くところに居ろと。 お前の友達もみんなそうしているんだと。 それを断わって、遠く離れた所に来たのは、れいむの意志だった。 今まで、何不自由なく暮らしてきたれいむ。安全で、温かく、満ち足りた生活を送っていた。 しかし、それでいてどこか現状に不満を抱いていた。所謂刺激が足りなかった。 それは満ち足りているからこそ持ち得る贅沢な悩み。 れいむは両親の反対を押し切り、群れを出た。 これから刺激に満ち溢れた生活が始まるはずだった。 本当なら……本当なら……そうなるはずだったのだ!! なんでこんなことになったのだろう。 れいむは今激しく後悔した。 何であの時両親の言葉を素直に聞かなかったのだろう。 何でホイホイと人間を信用してしまったんだろう。 まりさの絶叫は、さらに大きさを増してくる。 れいむは男がまりさの虐待を終え、部屋に来るまで延々と泣き続けた。 まりさが連れていかれてから一時間後。 れいむとありすの閉じ込められていた部屋のドアが開かれた。 二匹は、ビクッと体を震わせる。 「まりさの虐待は終わりだ。続いて、ありす、お前の番だ」 「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!! ごないでええぇぇぇぇ――――――――――――!!!!」 先程同様、部屋の中で鬼ごっこをするも、やはり呆気なく捕まってしまうありす。 今回はれいむの番ではないと分かっていつつも、泣きながら最大限男と距離を取る。 ありすが終わればいよいよ自分の番なのだ。 いったいまりさはどんな酷い目にあわされたのだろう? 少しでも情報が聞ければ、対策の立てようも……と、ここにきて、ようやく気が付いた。 まりさがいないのだ!! 男は部屋に入ってくるとき、まりさを連れて来なかった。 もしかしたらまりさの身に何か起きたのではないか? 殺さないとは言ったが、もしかしたらあまりの痛さに死んでしまったのではないか? 最悪の状況が浮かび上がる。 「おにいさん!! まりさをどうしたの!? なんでつれてきてくれないの!?」 震える体を必死で抑え、男に問いただす。 男は泣き叫ぶありすを抱えたまま、れいむの方を向き、口を開いた。 「ああ、心配すんな。ちゃんと生きてるさ。今は別室で休んでるよ」 「ゆぅ……よかったよ」 「大事な虐待要員だ。簡単に死なせてたまるか」 「……」 「それにしても、お前も呑気だねえ。次は自分の番だってのに、ここにきて友達の心配か。そんなことするより、自分の心配をした方がいいと思うがね」 男は、「一時間後にまたな」と残し、泣き叫ぶありすを抱えて、部屋の中から出て行った。 れいむは、まりさが助かったことに安堵した反面、一匹部屋に取り残された状況に恐怖で押しつぶされそうになった。 この一時間、ありすは泣き続けていただけだが、それでも誰も居ない今よりはずっとマシであった。 シーンと静まり返る密閉された空間が、恐怖感や緊張感をこれでもかと演出してくれる。 再びれいむの頬に涙が伝う。 一時間。一時間後には、れいむもまりさやありす同様、男に虐待されてしまう。 いったいどんなことをされるのだろうか? どれほど痛いのだろうか? れいむの餡子脳が思い描くのは、最悪の想像ばかり。 なんとか回避できないものか? なんとかここから出られないか? もう何べん考えただろう。考えては、絶対不可避な状況に絶望させられる。 もうどれだけ泣いただろう。 一生分の涙を流したといっても過言ではない。 なのに涙は止めどなく流れてくる。 時間というものは、早く来てほしいと思うときほど遅く、まだ来るなと思っている時はとてつもなく早く来る。 今のれいむにとって、一時間というのはあまりにも短い時間であった。 れいむがどんなに泣き叫ぼうが、時間は流れ、その時は来る。 徐々に男の足跡が近付いてくる。 部屋の扉が開かれた。 その3?へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3081.html
注意書き 虐待お兄さんが行方不明になります ゆっくりが普通のゆっくりとは違います 以上 日が沈みかけ、薄暗くなってきた山の中にゆっくり達の悲鳴が木霊していた。 「もうやだよおおおおおおおおおおおおおお!!!!だずげでえええええええええええええええええええええ!!!!」 「おねがいだがらもうやべでくだざいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 叫び声をあげるゆっくり達の中には一人の男が居た。 麓の村に住んでいた男だが、男は己のことを『虐待お兄さん』と名乗っていた。 趣味はゆっくりを虐待し、殺すこと。 だから男は今この上ない幸福を感じていた。 何故なら、ゆっくりを己の手で痛めつけて殺しているからだ。 無様に喚き、悲鳴を上げ、何もできずに死んでいくゆっくりが男は好きだった。 正確には、ゆっくりを殺す事が男は好きだった。 右腕で殴り、左腕で投げ、右足で踏み、左足で蹴る。 己の四肢を振るうだけでゆっくりは死んでいく。そんなにもゆっくりは脆かった。 中にはもちろん抵抗するゆっくりも居たが、人間に敵うわけがなく男に殺されていった。 「おちびちゃんたちはいそいで逃げてね!! まりさが囮になるからね!!」 「まりさごめんね…… 急いで口の中に入ってね!! ゆっくりしないで逃げるよ!!」 「みゃみゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 家族を逃すため囮になろうとしたまりさは掴まれ、逃げようとしたれいむにぶつけられた。 口の中に居た子ゆっくりは潰れ、親のまりさとれいむももう動かなかった。 「人間なんかれいむ達の敵じゃないよ!!!! ゆっくり死んでね!!!!!」 「「「「「「「ゆっくりしんでね!!!!」」」」」」」 仲間と一緒に体当たりを仕掛けてきたゆっくりは、一匹残らず殺された。 ただ潰されたゆっくりは幸せだっただろう。数匹のゆっくりは底面の皮を破くだけで男は済ました。 動けば中身がこぼれて死ぬ。動かなくても徐々に中身がこぼれていって死んでしまう。 迫り来る死という恐怖に泣き叫ぶゆっくりの姿は相変わらず滑稽で、男の顔は笑っていた。 普通の人間であるならば、これだけの悲鳴を聞いていれば発狂するだろう。 しかし、男は『虐待お兄さん』である。今この場で感じているのは愉悦だけだ。 逃げるゆっくりも立ち向かうゆっくりも、どんどん男に殺されていく。 そして、最後に残った一匹のゆっくり。成体のゆっくりれいむが震えていた。 逃げようとしても、立ち向かっても男に殺されるのはもう分かりきっているのだろう。 どんな風に虐待しようか『虐待お兄さん』の男が考えていると、ある事を思いついた。 やわらかいゆっくりの体を持ち上げて、両手でゆっくりの頭頂部を男は掴む。 「な、なにするの!! ゆっくり離してね!!」 喚くゆっくりを無視して男は手に力を込め、真っ二つに引き千切ろうとした。 「おにいざんやべでね!! 痛いからはなじでね!!」 男がゆっくりの願いなど叶えてやるわけがなく、弾力のある皮はどんどん伸びていく。 「やだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! じにだぐないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 そんな風に叫びながら、れいむは千切られた。 男の手にはちょうど半分に分かれたれいむがあり、片方は投げ捨てもう一つは持ち帰る事にした。家へ帰ってから食べるつもりである。 周囲を見渡してもゆっくりはもういないようなので、男は山を降りる事にした。 ゆっくりを追いかけてどんどん奥まできてしまい、帰るのが面倒だと男は思った。 男が去ってから少し経つと、一匹のゆっくりの残骸が震え始めた。 いや、一匹だけではない。見ればどのゆっくりの残骸も震えていた。 やがて一匹のまりさの残骸から腕が生え出して、徐々に元の丸い形に戻り始めた。 何秒も待たずにまりさは元の姿に戻り、辺りを見回してから息を吐いた。 「さて、今日もお疲れ様なんだぜ」 「お疲れ〜」 「一人だけだったね」 「でもこんなことよくやるよ」 「他の人間さんは忙しそうなのにねぇ」 まりさの声に反応して元の姿に戻ったゆっくり達は好き勝手に話を始めたが、男に残骸を撒き散らされてしまったゆっくりはまだ戻れていなかった。 「じゃ、いつもみたく先に元の姿に戻れたやつはまだ戻れてない奴の手助けをしてほしいんだぜ。戻れてない奴はどんどん助けを近くの奴に求めるんだぜ」 手を叩きながらまりさは指示を飛ばす。どのゆっくりも文句の一つも言わず指示通り動き始めた。 「あと数合わせで分裂した奴もちゃんと元に戻すんだぜ」 「しょうだよ!! もどらなかったらみんなこんな風に自我をもっちゃうよ!!」 まりさの言葉に続くように一匹の小さなれいむがまりさの隣でふよふよ浮きながら言った。 「お前さんも手伝ってくるんだぜ」 「みゅ〜… 面倒だよぉ…」 「そんな事は通用しないんだぜ」 「わかってりゅよ!!」 小さなれいむはふよふよと飛んでいく。その姿を見送ってからまりさもふよふよ浮き始める。 元の姿に戻ろうとしている仲間の残骸を集める作業に入るのだ。 残骸を集めるのは実に大変である。 ある程度の距離ならば勝手に残骸と残骸が勝手にくっ付いて元の姿に戻ろうとするのだが、撒き散らされてしまってはくっ付くことはできない。 放っておいても一番多く集まった残骸が中途半端に復元され、時間を置けば徐々に修復される。 しかし、この群れはもうあの『虐待お兄さん』に潰されてしまった群れなのだ。 それなのにこの場に留まっていてしまっては、流石に人間にだって怪しまれてしまう。 ゆっくりはあくまで『愚鈍で馬鹿で意地汚い動く饅頭』でなければならない。この秘密を人間に知られない為にも、今は一刻も早くこの山から離れなければならないのだ。 「困りました……」 まりさが仲間の残骸を集めていると、半分だけのれいむが俯いて浮いていた。 『虐待お兄さん』に最後真っ二つにされ、片方を持っていかれてしまったれいむだ。 「まあ、お前さんは仕方ないんだぜ。どうせ少ししたら元に戻れんだから人間に見られないように移動するしかないんだぜ」 食べられたりすれば適当に復活できるゆっくりではあるが、流石に中途半端に食べられてはそれも無理である。 このれいむは自然に修復されるまで待つしかないのだろう。 だが、れいむの返事は違った。 「いえ、別に元の姿に戻れないの事で困ってるんじゃないんです」 「? どういうことなんだぜ?」 「実は……」 山を順調に下っていた男は一つの違和感に気づいた。 最初は気のせいだと思っていたのだが、どうやら気のせいではないらしい。 右手に持っていたゆっくりれいむの半身がもぞもぞ動き出していたのだ。 不思議に思いながらゆっくりを顔の前まで持ってくると、断面から餡子がこぼれなくなっていた。 断面の方を見てみると餡子がこぼれない理由が分かった。餡子が消えていたのだ。 ゆっくりの中身である筈の餡子は見事に無くなり、断面には何もない空間が広がっていた。。 最初は餡子がこぼれて皮だけになったと思ったのだが、どうやら違うようである。 男が手を突っ込んでみると、男の腕はそのまま入ってしまったからだ。 いくら成体のゆっくりとは半分に切り取ったゆっくりの体はそこまで大きくない。 恐る恐る男は己の顔をゆっくりの断面に入れてみる。すると、男はゆっくりの中に吸い込まれていくのが分かった。 慌てて顔を皮から出そうにも既に手遅れで、男は顔から下も全て吸いこまれてしまった。 後には何も残らず、残ったゆっくりの皮はふよふよ浮いて男が下っていた山道を再び登り始めた。 「つまり、引き千切られた半分の方も復活してしまいどうやらあの男を飲み込んでしまったみたいなんです……」 「はぁ……」 れいむの説明を聞いていたまりさは溜息を吐いた。 今の話はおそらく本当の事で、間違いなく先ほどの『虐待お兄さん』は吸い込まれてしまったのだろう。 「全く、運の悪い人間さんだぜ……」 そう言いながらまりさは頭の裏を掻く。 人がいなくなったと分かれば人間は間違いなく山狩りをするだろう、そう考えてまりさは再び指示を出す。。 「れいむの半身がこっちに来たら出発するんだぜ。その前に各自修復するんだぜ!!」 ゆっくり達は再び作業を再開する。 今優先することは急いでこの場を離れ移動することだ。下手したら人間に見つかってまた潰されるかもしれないからだ。 流石に二日連続で潰されるのは嫌だからか、修復速度もどんどん上がってきている。 まりさも仲間の残骸を集め始めてから、再び溜息を吐いた。 「人間さんがゆっくりって名付けた癖に、ゆっくりがゆっくりできる日は来るのかだぜ……」 ま、ここじゃ無理かとまりさは思った。 終 by大貫さん ↓は後書きと感想フォームへの返事です。読みたくない方はこのまま戻ってください こんな駄文を最後まで読んで頂き本当にありがとうございます!! 本当は膿と膿以降人間を酷い目にあわす話は書くつもりはありませんでした。 ただ、あるれいむのAAを見て (これ、誰か吸い込まれたら面白そうだなぁ…)って思ったので書いてみました。 感想フォームに感想下さった方、本当にありがとうございます。 (名無しさん) 2008-11-10 15 16 03 後書きに対してのご忠告、本当にありがとうございます。 自分が作者様をおちょくるつもりはありませんでした。ただ、一言断っておいた方がいいかも…… と思っただけなのです。 本当にすいませんでした。 (名無しさん) 2008-11-19 13 43 03 読んで下さりありがとうございます。 タイトルを見れば分かるように、ゆっくりの中の膿と人間の中の膿を比較するために書いた作品です。 ですが、この作中に出てきた虐待お兄さんも他の人が書かれれば立派殺される事もなかったと思います。 (名無しさん) 2008-12-05 17 30 26 確かに原作の靈夢と魔理沙ならばふぅ〜んとかへぇ〜で済ましそうですね…… 反省です。 本当は最初は霖之助の視点で書くつもりだったんですが、霖之助というキャラは本当に扱い難いキャラだったので諦めさせてもらいました。申し訳ありません。 あと、最後に色々書いてくださいと言ってくださり本当にありがとうございます。 虐待スレという場で、ぬるいじめでも良いと言ってくださり本当に嬉しかったです。ありがとうございます。 最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。お目汚し失礼!! 書いた作品一覧 ゆっくりいじめ系352 虐められるゆっくり ゆっくりいじめ系382 ある馬鹿なゆっくりの話 ゆっくりいじめ系394 きめぇ丸 ゆっくりいじめ系421 めーりんとこうりん ゆっくりいじめ系488 ゆっくり飼ってます ゆっくりいじめ系497 携帯でチマチマ書いてみた ゆっくりいじめ系571 みんなで食べよう ゆっくりいじめ系572 きめぇ丸その後 ゆっくりいじめ系596 ゆこまち ゆっくりいじめ系611 どこで何が狂い出したのか… ゆっくりいじめ系628 鳩と餌と糞 ゆっくりいじめ系793 誰かがやらねばいけないこと ゆっくりいじめ系823 保護場 ゆっくりいじめ系843 ゆっくり飼ってます2 ゆっくりいじめ系900 膿と膿 幽香×ゆっくり系9 ある馬鹿なゆっくりの話2 森近霖之助×ゆっくり系1 代価 ゆっくりいじめ小ネタ125 虫眼鏡 ゆっくりいじめ小ネタ128 ゆっくりが大好きだ!! ゆっくりいじめ小ネタ140 ガラス ゆっくりいじめ小ネタ146 生まれ変わり ゆっくりいじめ小ネタ251 飼われているゆっくり 野良のゆっくり
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/639.html
オレ設定満載の小説です 前半はゆっくりが出てきません、と言うか全体的にゆっくりがゆっくりらしくありません えーりんはガ板風にナスになっています。 それでも見てみたいという人はご覧下さい。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆっくりするよ!」 縁側で二人の孫がれいむ達と遊んでいる。外で妖怪が闊歩しているこの世の中 ゆっくりのような安全で喋れるナマモノは子供達と良い遊び相手になれそうだ。 「おばあちゃんもゆっくりしていってね!」 「はいはい、十分にゆっくりしてますよぉ」 それにしてもゆっくり達も大分多くなったものだ。昔はこの幻想郷自体にゆっくりは殆どいなかった それがここ数年幻想郷にれいむやまりさなどのゆっくりが大量に出没したのだ。 「おばあちゃん」 「どうしたんだい?」 「おばあちゃんが子供だった頃のゆっくりってどうだったの?」 「れいむたちもききたいよ!」 昔のゆっくりか……思うと本当に懐かしいあの日々…… 「いいでしょう、おばあちゃんがゆっくりだけの村、ゆっくり村に行ったことを話してあげましょう」 「やったー!」 私がまだ年端もいかない女の子だった頃、その当時私たちの村は食糧が不足して 若かった私でさえ遠くの山へ山菜を採りに行かなければならないほどだった。 私は出来るだけ妖怪が通らないような道を近くの住民から聞き、採っていったので 比較的身の安全は確保できていたのだ。 だけどそうやって山菜を採っていたある日のことであった。 山菜を籠一杯に詰めて帰ろうとしたとき突如日常では聞けないような破壊音が聞こえてきたのだ。 若さ故の好奇心からか私はその音が聞こえる方へと近づいてみる。 そこには二つの影。互いに火花を散らせて交差しそれと同時に血さえも降らせていました。 今の弾幕ごっことは違う本物の殺し合いだった。 「やめてけれ!オラは戦いたくなんかないっぺ!」 「はっ!貴様のような口からそんな言葉がでるとはな!」 雰囲気と動きで私は二人とも妖怪であることが分かった。 しかしどう見ても麦わら帽子を被った妖怪が一方的に痛めつけられているように見えない。 先ほどから舞い散る血も全て麦わら妖怪のものだ。 そしてもう一人の妖怪の攻撃を受け麦わら妖怪は全身から血を流しながら 無残にも木に打ち付けられていったのだ。 木を血で染めながら麦わら妖怪の身体は木にもたれる形となっていった。 「おねげぇだ……助けてけれ……」 「はん!」 もう一人の方の妖怪が麦わら妖怪にとどめを刺そうとした瞬間、私は目を覆おうとして 手が木の幹に当たり、枝が折れ音が響く。 その音のせいで私は妖怪に見つかってしまった。 「人間か……しかし博麗や八雲に報告されても困るな」 そう言って妖怪は麦わら妖怪に振り落とそうとした手を戻しこちらに向かってきたのだ。 一瞬だけど走馬燈が見えた、今まで大切に育ててくれた親や近所の人、 妖怪に食べられていった仲間達との思い出が一瞬にして駆け巡り私は死を覚悟した。 「これは儀式だぁ!俺のための生け贄となれ!」 「クワこうげき!!」 身体をかがめた直後、麦わら妖怪の叫びが聞こえた。何をしたか分からなかったが 目を開けた瞬間もう一人の妖怪がものすごい勢いで頭上を吹き飛んでいくのが見えたのだ。 「ぐぎゃあああああああああああ!!!!」 「はぁはぁ……だ、大丈夫だっぺか?」 麦わら妖怪は血だらけであるのに私のことを心配していた。よく見るとその麦わら妖怪は 緑の髪が目立った女性で妖怪とは思えない優しい目をしていたのだ。 「な、ま、まさかぁ……あのサディスティッククリーチャーであるお前が……後ろから……」 「カマこうげき!」 森の奥から戻ってきたもう一人の妖怪を麦わら妖怪はカマで一閃していった。 それと驚きだったのがもう一人の妖怪は先ほどまで全く無傷だったのがたった2撃で 麦わら妖怪以上の傷を負っていたのだ。 「な、何故ほ、本気、を、だ、さ……」 「イネカリぎりィィ!!!」 麦わら妖怪がその一撃を加えるともう一人の妖怪は全身ばらばらになって吹き飛んでいった。 死体が私の目の前に転がっているが見たくもない。 「はぁはぁ……」 麦わら妖怪は立つ力さえないのか血まみれのまま私にもたれ掛かった。 「大丈夫ですか!?」 「………オラはもういいっぺ、さぁ早く家にけえれ……」 「……そう言うわけにはいきません!!」 いくら妖怪でも、私の命を助けた人をこのまま見捨てることが出来なかった。 正直三撃で妖怪を粉々にした力に対しての恐怖もあったけれど、命の対しての 恩はどうやったって心の底からぬぐい去る事なんて私は出来なかった。 「オラはもう戦いたくねぇ……だから死んで……ゆっくりするだ……」 「死んじゃったらゆっくりなんて出来ません!!生きてるからゆっくり出来るんです!」 私は山菜の詰まった籠を降ろし麦わら妖怪さんを出来るだけ慎重に背中に乗せた。 重すぎず軽すぎでもない、普通に人間を乗せたような重量であった。 「………どこさつれてくっぺ?……」 「医者の所です、近くにある村ならほんの数時間で着きますよ」 「……オラは妖怪だ、人間の医者が診てくれるはずがねぇ」 「でも……」 「それに……もう無理ッペ……もう身体が保たないだ……」 「どうしてそう死にたがるんですか!私たちの村の人々は生きたくても死んでく人がいるんですよ!」 そう私は麦わら妖怪さんを生きろと励ましつつ近くの村へとようやく着いた。 しかし道行く人は私たちを見ると過剰なほど怯え、出て行けと喚き罵り、挙げ句には石を投げつける人までいた。 訳が分からぬまま私は背負いながら走っていく、途中転んだが痛くもない。 やっと医者へと辿り着くも医者も村の人々と同じ様な反応をし 門前払いでやむなく私たちは村から出て行かなければなりませんでした。 「どうして……でしょうか」 「きっとあの村はオラの娘に迷惑をかけられたんだっぺ……それで娘さに似ているオラも……」 「麦わら妖怪さんは全然悪くないのに……」 悪態をつきながら道を行くも先ほどの村以外に近くにいる医者を私は知らない。 私は自分の村へと連れて行こうと思った。けれどそれはここからあまりに遠く 麦わら妖怪さんの命が保つか分からない。 「もういいだ、お嬢さん。ここでゆっくりさせてけれ……」 「……どうして……そんなに死にたがるんですか……」 長い道のりで疲弊した足を休めるために私は麦わら妖怪さんと一緒に木に背もたれにして座った。 「オラは戦いなんてでぇ嫌いだ。けどオラを娘と勘違いした者達がどんどんやってくるだ」 「…………」 「だからオラは死んでゆっくりしたいっぺ……」 私は自分の衣服を千切り出来るだけ出血を抑えようと麦わら妖怪さんの傷口へ巻き付けていく。 それでも流れ出る血を全て抑えきることが出来ない。 「嘘付かないでください。あなたはあの妖怪に命乞いしたでしょう」 「……土壇場で命ってのは生きたがるもんだ……」 疲れていた足も大分回復して私はまた麦わら妖怪さんを背負い歩き始めた。 「死にたくない人だっているんです……だから生きてゆっくりしてください」 「さっきも言ったっぺ…それ、それにオラがゆっくり出来る所なんてどこにもねぇ……」 「じゃあ探しましょう、ゆっくり出来る場所を」 「………………嬉しいっぺ………」 声が小さくなったと感じ、今まで私の肩に掛けられていた力が急に弱くなっていった。 「もう目の前がぼやけてるだ……今まであんがとな……お嬢ちゃん……」 「そんな!!一緒に生きてゆっくりしましょうよ!」 私は足がもげそうな勢いで走り出す。もう麦わら妖怪さんの体力は恐らく保たないだろう。 走っている間、何故か私の目からは大粒の涙が流れ始めていく。 けれど潤み、ぼやけていく目に一つ集落らしきところが見えたのであった。 「麦わら妖怪さん!見えましたよ!!」 麦わら妖怪さんの返答はない。私は無心で一目散にその集落へと走っていった。 「どなたか!医者!!医者はおりませんか!?」 私はその集落に入り精一杯叫びました、しかし声はただ静寂に響くだけ。 それどころか人の気配すらあまりない様に感じられた。 「どなたか!………!」 ふと前を見ると私は道の真ん中にある一つの帽子を見つけた。帽子があるという事は人がちゃんといると 思い私はより大きな声で思い切り叫んだ。 「お願いです!!!この人を助けてください!!!」 「うるさいわねぇ……」 正直予想もしていなかった。なんと道ばたにある帽子が返事し始めたのだ。 さらにその帽子は動き出す。 「きゃああああ!!!」 つい叫んでしまった。生首だ、生首が動いている。つるべ落としか!! しかし妖怪なら妖怪の治療も出来るだろうと思った。そう思い近づいてよく見ると私はさらに 衝撃的な驚愕を体験したのであった。 「や、八雲様の生首!!いやああああああああああああああああああ!!!!」 妖怪達の賢者とも言われる、たった一人のスキマ妖怪。 道に転がっていたのはその八雲紫様の生首だったのだ! 「お黙りなさい、後ろの怪我人に響くわよ」 その冷静な言葉によって私は正気を取り戻す。よくよく見てみると 帽子や髪の色、声は確かに紫様であるが肝心の顔は何か太々しい。 時々私たちに見せる表情とは全く違っていた。 「あ、あなたは……」 「わたしはゆっくりゆかりん、このゆっくり村の賢者よ」 「ゆっくり……ゆかりん……」 一体この情景は何なのだろうか、これは恐怖と焦りでどうかしてしまったのだろうか 「まずはその怪我人よ、ちょっと貸してご覧なさい」 呆然としてその生首に言われるがまま麦わら妖怪さんを生首さんの前で横にした。 「すきますきま~はいっ!」 生首さんは謎の呪文を唱えるが全く訳が分からない、しかしその呪文を唱えた瞬間 麦わら妖怪さんの口から微かに息をしているのが聞こえた。 「!!!一体何を…!」 「死と生の境界をいじっただけよ」 「境界……じゃあやっぱりあなたは紫様……」 「とは言ってもオリジナルとはほど遠いわ、もって半刻延命できたぐらいね」 オリジナル…?横文字とやらはよくわからない…… 「本物の紫ではないという事よ」 そう言って生首さんはまた変な呪文を唱える、今度は麦わら妖怪さんの傷口がどんどん閉じていく。 「ここはゆっくり村、存在の歴史が記録される聖域 私は紫の記録というわけ、本人じゃないわ」 「………記録?」 「そう、幻想郷で活躍した人や悪名高い人たちの存在を饅頭にして記録しているの それらはゆっくりという名前の饅頭妖怪として保存される、私はさしずめカレーまん」 「…………おまんじゅうなんですか!?」 「食べてみる?」 食欲をそそられる香ばしい臭いが漂うがが今はそんな事をしている暇はない。 「とりあえずありがとうございました。おかげで麦わら妖怪さんの命が助かりそうです!」 「…………ダメよ、まだ」 ゆかりんさんは身体を左右にゆっくり振る。 「私はオリジナルに到底力及ばない。だから境界を操る能力も弱いの せいぜいこのゆっくり村までが限界なのよ」 「………と言うことは」 言わずともゆかりんさんの言おうとしていることが分かる。 けど心の奥底からその考えを否定したい気持ちで一杯だ。たとえゆかりんさんが その旨を話したらどんな優しい言葉であっても激昂してしまうほど、私は恐れていた。 「………このゆっくり村に医者はいないわ、 けどゆっくりしたいと思っている人には絶対に応えてくれる、それがゆっくり村よ」 「どうすれば……どうすれば良いんですか!!!」 「落ち着きなさい、とりあえずこのゆっくり村のゆっくり達を頼りなさい 人口そのものは少ないけどみんな力のある者達の記録よ。頑張りなさい」 そう言ってゆかりんさんは地面から出てきたスキマに入ってしまった。 私は麦わら妖怪さんを担ぎながらゆっくり村を歩き回る。背中越しから呼吸の音が聞こえるが それもいつまで保つか分からない。 それにしてもこのゆっくり村というのは歩き回って気づいたのだが まるで幻想郷を丸ごと小さくしたようなものであるように思えた。 あちらには妖怪の山らしき丘が、こちらには魔法の森らしき林が、 そして目の前には氷精の湖らしき池があった。 「あたいってばさいきょーゆっくりね!!」 湖の真ん中には二つの生首がふよふよ浮かんでいる。あの顔には見覚えがあり 一人は氷の妖精チルノ、もう一人は名前を忘れたが相当徳が高い妖精だ。 「あっおきゃくさまだよ!ちるのちゃん!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 まるで親の敵を討ったかのようでその上無邪気な笑顔を浮かべるゆっくり。 ゆっくりなんて出来ないのに、何処かゆっくりしてしまう自分が嫌になる。 「貴方たち!この人の怪我直せますか!?」 「ん?だれそれ」 「ひどいきずだよちるのちゃん……わたしやくそうとってくる!」 そう言って緑髪のゆっくりは森の中へと入っていく。 目の前のゆっくりちるのはと言うとバカな笑顔を浮かべて池でぷかぷか浮いている。 そして何を思い立ったのかいきなり池から出てきて麦わら妖怪さんの所へやってきて いきなり吹雪を吐き始めたのだ。 私は突然の事態に驚きすぐにゆっくりちるのを池の中へ投げ込んだ。 「何するんですか!」 「だってこおらせればなんか「かしじょうたい」になるとかなんとかってゆかりんがいってたもん! そうすればゆっくりねむれるもん!」 「ちるのちゃん!!」 緑髪のゆっくりが何枚かの葉っぱをくわえながら私とちるのの間に入ってくれた。 そしてくわえていた葉っぱを私の手の上に載せてくれた。 「これをきずぐちにあてればすこしはもつとおもいます……あとちるのちゃんがひどいことを…」 「ひどくないもん!あたいはてんさいでさいきょーなのよ!」 ちるのは有りもしない才能を主張しながらわめきちらしている。 氷の妖精とは実際に会ったこと無いが本人もこのようなものなのだろうかと心配になってくる。 「ありがとうございます、それでは」 そう言って私は麦わら妖怪さんに先ほど貰った薬草を傷口にすりつけその場を去る。 ほんの些細な薬草だけでも助けになるものだ。あの二人にはいずれ本格的に感謝を言わなければならないだろう。 あのちるのも私たちを助けてくれようとしてあんな事をしたのだ。邪気はない、むしろ善意だ。 ただ一つだけ、ちるのが麦わら妖怪さんに吹雪を吹きかけたときから どうしようもない不安が心の中で巻き起こってくる。 ゆかりんさんが言っていたようにゆっくりしたい人には絶対応えてくれるのがゆっくり村らしい。 けれど麦わら妖怪さんが言った「死んでゆっくりしたいっぺ」その言葉が引っかかるのだ。 もしそのニュアンスでゆっくり村が応えたとしたら。 麦わら妖怪さんの呼吸は途絶え途絶えながら聞こえる。 「かっぱっぱ~わたしにはむりだよ~」 妖怪の山らしき丘で河童のゆっくりに訪ねてみたが返答はこの通りだ。 通り道、秋の神様ゆっくりや厄神様のゆっくりらしきモノもあったが どの子も人の傷を癒すなんて事は出来ないという。 なんでこうも役立たないんだと舌打ちしいけない事だと分かってはいても幻想郷を呪った。 「おや、人間とはめずらしい」 そんな私たちの元へ一つのカラスっぽいゆっくりがやってきた。 この子は見覚えがある。よく新聞を渡してくれるあの鴉天狗だ。 「あやや、話はきいています、私にできることががあったら言ってください」 「それじゃあ、この人の傷を治せる人はこのゆっくり村にいる?」 「ゆかりんでもないと無理ですね」 気づいたら私はその鴉天狗ゆっくりを蹴飛ばしていた。 「なんてことするの!あやはなにもわるくないって!」 そんな事はしっかりと頭で分かっているのだ、分かっているはずなのだ。 けれどこの感情の昂ぶりは理性を破壊する。 私は泣いて現実を呪った。麦わら妖怪さんと会ってから初めて流した涙だった。 「………そのようすだとゆかりんでもむり……だったんですね」 蹴飛ばされたゆっくり鴉天狗はすぐさま私たちの所へ戻ってきた。 私は噛みつかれるのを覚悟したがゆっくり鴉天狗は何もせずに私を見つめている。 「せめてこの言葉だけでも」 そう言って河童と鴉天狗のゆっくりは向かい合うように並ぶ。 そして満点の笑顔でこう叫んだ。 「「ゆっくりがんばってね!!!」」 私は涙を拭いて立ち上がる。今はただゆかりんさんの言葉が理不尽でないものであって欲しいと 願うだけ。麦わら妖怪さんを背負って丘を下っていった。 気づいたら草履がいつの間にか脱げていた。いつ脱げたのであろうか。 私の息が荒々しくなるのに反比例して麦わら妖怪さんの呼吸が弱くなっていく。 ゆかりんと会ってからどのくらい経つのだろうか、ゆかりんは半刻は保つと言っていた。 「あっ…」 足を何かに引っかけて私は盛大に転んでしまった。 すぐに立ち上がろうとしたが力が入らない。そして自分の足も限界だと言うことに気づいたのだ。 「こんな…こんな所で……」 死なせたくない。 「ひどいよ!ひどすぎる!!!これがゆっくりだというの!! 死ぬことがゆっくりなの!?じゃあ生きている意味って何!? みんなゆっくりしたいから生きたいの!私も!親も!友達も!!! ゆっくりしていってねと言うのなら!!!私たちをゆっくりさせて下さい!!!!!!!」 あらん限り私は叫び散らし顔を地面に埋めた。 理由なんて無いが麦わら妖怪さんが死んだら私も死んでしまうような感覚に襲われた。 その感覚に従うように私の息も次第に弱くなっていく、じわじわ迫り来る死の恐怖。 こんな恐怖に襲われてゆっくりなんてできっこない。 でも私がゆっくりを願おうとも叶えてくれる者なんていないのだ。 私は現実を呪いつつ竹林の下静かに目を閉じていった。 「にんげんウサ」 目の前で何かの声が聞こえる。 「あなたはラッキーウサ!このてゐに会えるとなんと幸運がもれなく付いてくる!」 「幸運……?」 不運とか幸運とかそんなの概念に過ぎないものを一体どうしようというのか。 心には辛さしかない。今はただ辛い、悲しい。 「さらにこの壺を買えば運気は二倍!これがたったの二万ゆっくり円ウサ!」 「いくら運がよくなっても……意味ないよ」 私を助けてくれた麦わら妖怪さんが死ぬ。 もうちょっと話したかった。生きてて楽しいことやゆっくり出来る事を教えたかった。 優しい人とお友達になりたかった。 「上の妖怪も傷だらけウサ……」 目を開けて見てみると目の前にはウサギのようなゆっくりがいる。 見た事はないがこのゆっくりが麦わら妖怪さんの傷を治してくれるとは思えない。 「あんたはやっぱりラッキーウサ」 そう言ってそのウサギゆっくりは何の訳もなく跳ね飛ぶ。 太々しい顔だがどこかしら喜びがあるようにも見えた。 「このてゐに付いてくるウサ!」 そのゆっくりウサギは竹林の奥へと入っていく。 しかしついて行こうにも足が動かない。しかし希望は見つかった。 私は腕を必死に動かしゆっくりウサギについて行った。 「ここウサ!」 腕も殆ど動かないがようやく竹林の奥に辿り着くことが出来た。 竹林の奥にこんな屋敷があるなんて聞いた事がない。実際の幻想郷にもあるのだろうか。 「お~い、え~りん」 ウサギが屋敷に呼びかけると今度はナスっぽいゆっくりが現れた。 ナスゆっくりは私たちの姿を見ると慌てた様子で屋敷の中へと踵を返していった。 「月から来たんじゃなさそうから連れてきたウサ」 「………そうなのですか?」 私はまだまだ動ける首をブンブンと縦に動かす。 「承知しました、どうぞお上がり下さい」 私は何とか屋敷の中まで這い上がることが出来た。 麦わら妖怪さんは何枚ものゆっくり用布団の上に寝かされナスゆっくりの検査を受けている。 「ギリギリ応急処置が間に合った、とりあえず輸血と栄養を用意するわ」 「え~りんお腹すいた」 屋敷の奥から聞こえてきた声にナスゆっくりはいち早く反応し会話の途中で出て行ってしまった。 「てゐは外で遊んでくるウサ」 そう言ってウサギも屋敷から出て行き実質的この部屋には私と麦わら妖怪さんだけになった。 「大丈夫?麦わら妖怪さん」 返事はなくただ寝息が聞こえるだけ、けれどその寝息は安らかでようやく私は安心が得られた。 体勢を緩めようとして身体全体が床に崩れ落ちる。足に力が入らない。 「何で……」 何分かそうしていると先ほどのナスゆっくりが血と薬が入ったビニールパックを持って帰ってきた。 意外!ナスゆっくりは手がないので髪の毛を使う!慣れた手つきで麦わら妖怪さんに注射をすると 何故か私の方へと近づいてきた。 「足を出しなさい」 そう言われても動かないのが現状だ。そう告げるとナスゆっくりは無理矢理私が痛がるのも 気にしないで髪の毛を使い私の足を引っ張り出す。 そこで私はようやく気づいた。草履を履かずにさんざん歩いてきたためか足の裏の皮が剥げていたのだ。 「破傷風になるから今後気をつけなさい」 足に何か塗られていって気持ちいい感触があるがやっぱり薬が染みて痛い。 動く腕で辺りをのたうち回り、痛みで狂いながら涙を流しそうになった。 「それにしても無茶しすぎよ、まぁここでゆっくりしてい」 「え~りんのどかわいた」 その声が聞こえた刹那ナスゆっくりは言葉の途中で出て行ってしまった。 また私は麦わら妖怪さんと二人きりになる。 出来るだけ私は足を風に当てないように麦わら妖怪さんに頭を向けて俯せになった。 「ゆっくり………」 麦わら妖怪さんが助かると思い自然に心が安らいでいく。 私は生まれてこのかたこの時ほどゆっくりしたことはない。 これがゆっくり村の神秘なのかなと思い、それに甘え心ゆくまでゆっくりした。 いつの間にか涙が出ていたがそんな事は大したことではないだろう。 ゆっくり出来れば涙なんて雨の雫みたいなものだし、怒りも悲しみも安らぎへと変わる。 私は今まで会ってきたゆっくり達のことを思い出して思い出し笑いをし、 その笑い声に呼応するように麦わら妖怪さんの瞼が開き母のような優しい声が漏れる。 「オラ……生きてるんだっぺか……」 「ええ……死んでたらこんなにもゆっくりは出来ないわ」 「ゆっくり……」 麦わら妖怪さんの目に涙が溜まりどっと溢れ出していく。 それから麦わら妖怪さんと私は満足するまでゆっくりと話し合った。 嬉しいことに麦わら妖怪さんは死んでゆっくりするという考えをきっぱり捨てたようだ。 死ぬことの恐怖を覚え、そして生きることの力強さを私を見て感じたそうだ。 それはゆっくり村が授けてくれたこと。私はただ訳の分からぬまま迷っていただけだといまは思う。 奥の部屋からナスゆっくりが黒髪のゆっくりを連れて戻ってくる。同じように 外からウサギゆっくりが似たようなウサギっぽいゆっくり達を連れて戻ってきた。 「さぁ!みんなでゆっくりしよう!」 ゆっくり村の夜更け、女の子は足に包帯を巻き、ゆっくり用の布団を被りすやすや眠っている。 麦わら帽子を被った緑髪の妖怪、風見農香は体中に包帯を巻きながらも縁側に座り月を見る。 この竹林のスキマから覗く月は農香が見たどんな月よりも妖美であった。 「元気みたいね、それにしてもこんな所にこんなものが……」 そこへゆっくりゆかりんは月光が指す地面からスキマを通ってやってきた。 「この子のおかげだッペ……本当に嬉しいだよ」 「思う存分ゆっくりしてるようね……ゆっくり村の賢者として鼻が高いわ」 農香とゆっくりゆかりんは微かに笑い合う、そこへ屋敷の中からゆっくりえーりんが二人の下へやってきた。 「はぁ、あなたには来て貰いたくなかったんだけどゆっくりのためですものね」 「そうね、私たちが幻想郷の記録だとしても私たちにゆっくりの名を課せられてる以上 ゆっくりしたい者には全力でゆっくりさせるわ。 例えオリジナル同士が会っていなくてもね」 ゆかりんとえーりんは互いに月のような狂気を持った笑みを浮かべている。 「……聞きたいことがあるっぺ、どしてオラは今までゆっくりしたいと思ってたのに今日になって このゆっくり村に入れたんだっぺ?」 「そりゃあ死んでゆっくりなんて許さないわよ、あの子も言ってたでしょ…… それにあの子もあなたとゆっくり話したいと言ってたからね」 ゆかりんは一回すやすや寝ている女の子に視線を動かしまた農香の方へと戻した。 「……………あの……オラ……」 「ゆっくりしたい話であればなんでもいいわよ」 農香はどもりながら、けれども嬉しそうにゆかりんに向き合う。 「オラ、この村に住んでいいっぺか?」 ゆかりんはわざとらしく間を開けて縁側へと上がり込む。 首を振るように頭を動かすとえーりんもそれに応えるように同じ動作をした。 そして二人は向かい合うような体勢となる。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「…………嬉しいっぺ……」 一粒一粒の涙が縁側に滴り落ち、月の光を受け取り輝いている。 農香は女の子にも娘にも見せたことのない笑顔を浮かべ目に涙を浮かべた。 そうしてゆっくり村の夜は更けていく。 「正直言ってゆゆことやりたいけどゆゆこって「ゆゆ~」ってしか 喋れないからしょうがなくやってんのよ」 「私だって出来ればかぐや様と一緒にやりたかったわよ」 「でね、朝起きるとおばあちゃんは自分が住んでる村にいたの おばあちゃんのお父さんもお母さんも私がいなくなったのを心配してねぇ…」 孫達は一度も耳をそらすことなく私の話に食いついている。 一語一語語るごとに忘れていた記憶がどんどん湧き出ていく。 「あの頃のゆっくりは本当に少なかったわ……でもれいむちゃんやまりさちゃんのおかげで こうしてみんながゆっくり出来るもの」 「ゆっくりさせるよ!!」「ゆっくりするぜ!」 ゆっくり村にいたゆっくり達と比べるとちょっと生意気だけど この子達もみんなをゆっくりさせてくれている。 「と言うわけでおばあちゃんの話はこれでお終い」 「ねぇ、麦わら妖怪さんって結局どうなったの?」 「う~んおばあちゃん結局お別れも言わずに帰って来ちゃったからねぇ でも今もゆっくりしてると思うわ」 あの帰ってきた日からずっと思い続けていた。 結婚して子供を産んでも、娘が結婚してもその思いは消えなかったのだ。 「おばあちゃん!またうーパックからお届け物よ!」 玄関から娘の声が響く、自分の親なんだからおばあちゃんはないでしょと悪態をつくが これが結構合ってる気がする。あれだけ歩けた足も今ではボロボロのガタガタだもの。 玄関に行くとゆっくりれみりゃの派生であるうーパックが段ボールを持ってきている。 私はうーパックを撫でて見送った後段ボールを開いた。 「おやおや、今度は秋の野菜かい、不思議と送られてくるものは秋のものが多いねぇ」 「季節外れにもほどがあるわ、それに一体誰がおばあちゃんに送ってるのかしら……」 うーパックが持ってきた段ボールには受取人として私の名前が書かれている。 だが肝心の差出人の名前には見覚えがないのだ。 「ふふふ………そういえば、まだ名前教えて貰わなかったわねぇ……」 そう言えば刺繍に名前を入れたお守りを子供の頃持っていたことを思い出した。 ただうっかり母さんが私の名前を間違って入れてしまい結局そのまま持ち歩くこととなったのだ。 だけれどゆっくり村から帰ってきたときにそのお守りはなくなっていたのだ。 そして受取人の名前も同じ様に同じ風にきちんとぴったり間違っていた。 「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー アノノアイノノォオオオォーヤ♪」 ゆっくり村は最近影の薄い秋姉妹が目立とうとその能力を惜しみなく使っていて 丸ごと秋模様であった。 「ラロラロラロリィラロローラロラロラロリィラロ ヒィーィジヤロラルリーロロロー♪」 ゆっくり村に音楽が響く。麦わら帽のゆっくりと紅いリボンのゆっくりが歌い ウサギのゆっくりがその歌に会わせ踊り出す。 ゆっくり村は今日もゆっくりである。 生意気な後書き ガ板でのうかりんが本物の風見幽香にゆっくりを送るネタがあった。 それでのうかりんも元は妖怪だったと考えてしまった。 テスト前でむしゃくしゃしてやった、今も反省している イイハナシダナー(AA略 のうかりんはゆうかりんのお母さんってヤツですかw のうかりんかわいいよね。 -- 名無しさん (2009-01-18 22 57 08) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/284.html
「ユックリシテイッテネ!!!」 夕飯の買い物から途中、そんな声を上げる物体を見かけた。 普通のゆっくりによく似ているが、体が赤くて通常のゆっくりと比べると随分早口で甲高い声だ。 「ユックリシテイッテネユックリシテイッテネ!!!」 またとんでもない早口で喋ると、こちらに向かって飛んできた。ギリギリで避けられたが、物凄い速さだ。 「な、何だお前?く、食い物が欲しいのか?」 「ユックリチョウダイ!!!ユックリタベサセテネ!!!」 何だか気味が悪いので大根の葉を少しちぎって投げてみる。 普通のゆっくりなら地面に落ちた後で「食べていいの!?」などと喚きながら食べるだろう。 だが、こいつは地面に落ちるどころか手を離すとほぼ同時に飛び上がって食いついてきた。 何て意地汚い奴だ。目にも留まらぬとはこの事か。 何だかちょっと面白くなってきたので試しにキャベツを一枚剥がして投げてみる。 また飛び上がって食いつく。今度は流石に一口では食いきれないようだが、これまた尋常じゃない速さで食い尽くす。 「何なんだぁお前は?随分ゆっくりしてないゆっくりだが」 「レイムハレイムダヨ!!ツウジョウノサンバイユックリシテルサンバイレイムダヨ!!」 「早口で喋るのはやめてくれ聞き取りづらい。そうか三倍れいむか……そんなのもいるんだな」 「オジサンユックリデキルヒトダネ!!オウチニツレテイッテヨ!!」 「あ?やだよ。お前大食いっぽいんだもん」 「ダイジョウブダヨ!!レイムジブンデゴハントッテコレルヨ!!ツレテイッテヨ!!!」 「…ならいいが。言っておくが家の中を少しでも荒らしたりしたら潰して食うからな」 「ワカッタヨ!!ユックリシテイクヨ!!ユックリツレテイッテネ!!!」 「お前に言われると物凄く説得力が無いんだけどな。まあいいや付いて来い」 「ユックリー!ユックリシテイッテネー!!」 上機嫌そうに付いてくる三倍れいむ。自分でエサを取るなんて、珍しい事を言うゆっくりだな。 それに赤いし、早口だし、全然ゆっくりしてないし。時々普通に歩いてる俺を追い越して待ってる事まである。 「ハヤクハヤク!!ユックリカケアシシテネ!!!」 「無茶言うな。何だってお前はそんなにすばしっこいんだ」 とにかく変わったゆっくりだ。こいつを増やせば高く売れるかもしれんな…… そんな思惑と共に帰宅。 「そら着いた。ここが俺の家だ。言っておくが、お前の家じゃないぞ」 「ワカッテルヨ!!オジサンノオウチダヨ!!セマクテウスギタナクテクサイケドイイトコロダネ!!ユックリシテイクヨ!!!」 「死にたいか?」 「ゴベンダザイ!ヒログデギレエデイイニオイガジマズゥ!!ユッグリザゼデグダサイ!!」 まだ何もしてないのに泣き叫ぶ三倍。変わった奴だな本当に。 「まあいいがな。しかしお前なんだって俺の家に来たがったんだ?エサは自分で取るとか言うし、メリット無いだろ」 「サビシイノハイヤナンダヨ!!ダレカトユックリシタインダヨ!!!ユックリサセテネ!!!」 「寂しいってお前、友達とか居ないのか?」 「レイムトモダチイナイノ!!ミンナレイムノコトイヤガルノ!!オジサンモレイムキライナノ!!?」 「いや別に。まだ何もしてないからなお前は。……ふうん。お前変な奴だからなぁ。それで嫌われてんのか」 狼等の動物も怪我や病気等で他とは違うような奴は爪弾きにされるという。ゆっくりもそうだったのか。 「ま、どうでもいいや。さっきも言ったが、自分でエサを取って、家の中を荒らしたりしないなら家に置いてやる」 「ヤクソクスルヨ!!ゴハンハジブンデトッテコレルヨ!!オウチノナカモコワシタリシナイヨ!!オジサンアリガトウ!!ユックリシテイッテネ!!」 凄く嬉しそうにその場で跳ねまくる。あまりに素早いので表情がよく見えない。声もステレオで面白い。 さて、そうして三倍ゆっくりれいむとの奇妙な同居生活が始まった訳だが。 確かにエサは自分で取ってくるし、家の中でもなるべく大人しくしようとしている。 一ヶ月経ってもその様子に変化は無く、ゆっくりの割に約束事を守れる非常に珍しいゆっくりだ。 あまりに早口なので集中しないと言葉を聞き取れないのが難点だが、それは何度言っても直らなかった。 まあ、それが原因で他のゆっくりから迫害されたのだからもう矯正は無理なんだろうな。 下手に弄って普通のゆっくりと同じになられてもそれはそれで困るし。実害が出てしまう。 そういえば、試しに眠っている隙にこっそり千切って食ったら辛かった。味まで変わってるとは。 その後飛び起きて「ユックリアヤマッテネ!!ユックリアヤマッテネ!!」と泣き叫ぶ三倍を宥めるのに苦労した。 結局傷口を塞いで抱いて寝てやったらとても喜んでいた。普通のゆっくりと違って手間も少ないし、可愛いかもしれない。 そんなある日、そろそろ季節が変わろうかという頃。 普通のゆっくりれいむとゆっくりまりさのつがいが家の庭に這入り込んでいた。 「おじさんだあれ!?」 「ここはまりさたちがみつけたおうちだよ!!!ゆっくりでていって!!」 見つけたも何も、俺は始めから家の中に居たんだが。と、その声を聞きつけたのか三倍が猛スピードでやってきた。 「ユックリデテイッテネ!!!ココハレイムトオジサンノオウチダヨ!!!サキニミツケタノハオジサンダヨ!!」 「ゆっく!?へんなひとがいるよ!!」 「ぴょんぴょんはねてぜんぜんゆっくりできてない!!」 三倍を見てゲラゲラと笑い出した二匹。なるほどこんな感じで迫害されてたのか。 見れば三倍は跳ねるのをやめ、プルプルと震えている。物凄い勢いで。顔がブレて表情が見えん。 「ウルサイウルサイウルサイ!!!ユックリデテイッテネ!!ユックリデテイッテネ!!」 「うるさいうるさい、だってさ」 「おお、こわいこわい」 そう言って再びゲラゲラ笑い出すゆっくり二匹。うーむ。やっぱり普通のゆっくりの方が腹立つな。 三倍なら何を言ってるのかいまいち聞き取りづらいし、動きも異様に速いから逆に笑えるんだが。 「ゆっくりできないひとたちはれいむたちのおうちからでていってね!!!」 「ゆっくりでていってね!!ゆっくりしんでね!!!」 一通り笑ってから飛び掛ってくるノーマルゆっくり二匹。手で弾こうと思った瞬間、二匹とも凄い勢いで横に飛んでいった。 「オジサンニナニスルノ!!ユックリデテイッテネ!!」 どうやら三倍が突き飛ばしたらしい。三倍どころかこいつらの十倍以上の速度はあったと思う。 突き飛ばされた二匹は何が起こったのか分からないような顔をしていた。 「ユックリデテイッテネ!!ユックリデテイッテネ!!」 威嚇しつつ叫ぶ三倍を見て漸く自分達がこいつに突き飛ばされたのだと理解したのか、 顔を真っ赤にして焼いた餅の様に全身を膨らませて三倍に向かっていく。 だが、異常なまでのスピードで跳ね回る三倍には手も足も出ず、一方的に四方八方から突き飛ばされて転がるだけだった。 「ユックリシネ!ユックリシネ!!レイムヲユックリサセナイヒトハユックリシネ!!」 「や゛べでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「どう゛じでゆ゛っぐり゛ざぜでぐれ゛な゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 はいパターン入った。この台詞が出る頃には大抵戦意などどこかへ行ってしまっているのだ。 それでも攻撃の手を緩めない三倍。今日のように迫害された日々の記憶でも甦ったのだろうか。 「ユックリシネ!!ユックリシネ!!…ウメェ!!メガッサウメェ!!ハフハフ!!」 「ぎゅっ!!い゛だい゛!!や゛べで!れ゛い゛む゛をだべだい゛で!!」 「ま゛り゛ざはお゛い゛じぐだい゛よ゛!!れ゛い゛む゛だげだべでよ゛お゛お゛!!」 飛び跳ね、突き飛ばしながら少しずつ皮を食いちぎっていく三倍。見る見るうちに餡子が露出していく。 「びゅぐっ……ゆ゛っゆ゛っ……ゆ゛っぐ、り゛……じだい゛……」 「びくびくっ……ぼっど……ゆ゛っぐり゛……じだ……が……」 「ユックリウメェ!!タマンネェ!!ハム!ハフハフ、ハフ!!」 完全に二匹とも動かなくなった後もぐるぐる周囲を回って餡子を食い続ける三倍。結局十分程度で二匹とも食い尽くしてしまった。 「お前、同類でも構わないで食っちまうゆっくりなんだな」 「アンナノナカマジャナイヨ!!ユックリサセテクレナイモン!!」 「ふうん。じゃあお前一人ぼっちなんじゃないのか?」 「ヒトリジャナイヨ!!レイムハヒトリジャナイヨ!!オジサンガイテクレルモン!!ユックリデキテルヨ!!」 ゆっくりの割に殊勝な所もある三倍ゆっくり。あのスピードにこの性格。 ひょっとしたら加工場に持っていけば対ゆっくり用ゆっくりとして高く売れるかも知れない。 それにはまずこいつの数を増やさないとな。可愛いくて忠実なだけじゃ生き残れないんだぜ三倍。 翌日、早速三倍ゆっくりを連れて加工場へ向かう。幸いこいつは加工場がどういう所か知らないらしく、散歩だと言えば喜んで着いてきた。 受付で事情を話すと、奥の部屋へ連れて行かれた。手に持っている三倍がウズウズしているのが分かる。 「中に入ったら大人しくしていろ」という言いつけを守ってくれるのは正直ありがたい。普通のゆっくりは絶対に聞かないからな。 「お待たせいたしました。それが三倍ゆっくりですか?」 部屋で少しの間待つと、この工場の偉い人が来た。何でも繁殖・飼育全般の責任者兼副工場長なのだとか。 「ええそうです。普通のゆっくりと違って赤いでしょう?それに早口で、動きも素早いです」 「ふぅむ…ちょっと部屋の中を走らせてもらっていいですか?」 「はい。おい三倍。この部屋の中を一周だけ走ってみろ。絶対に物を壊したりするなよ」 「ワカッタヨオジサン!!ユックリハシルヨ!!」 ゆっくり、と言いつつその速度は全然ゆっくりしてない。 いつもの超スピードで部屋を一周すると、凄い勢いで膝の上に戻ってくる。タマちゃんが痛い。 「ど、どうですか。こんなに速く動くゆっくりなんて珍しいでしょう」 「そうですねえ。ゆっくりフランの飛行速度よりも随分と速いようです。 番ゆっくり、でしたか。貴方の言う事もよく聞いてるようだし、確かにいけるかも知れないですね」 「そうですか。それでは繁殖の件は……」 「試してみる価値はありそうですね。ただ、失敗すればこの子が死ぬかも知れないですが本当によろしいのですね?」 「ええ、構いません。どうせ拾い物ですし」 「そうですか。それでは早速用意しましょう。着いて来て下さい」 「ユックリデキル!?ユックリデキルヨネオジサン!!」 「ああゆっくりさせてやるよ。だから安心しろ」 不安がってこちらを見て震える三倍。だからブレて表情が見えないってば。怖がってるのは分かるけどさ。 案内された部屋には、数匹の発情したゆっくりれいむが居た。 「ゆっくりれいむは受けになる事が多いですから。では三倍も発情させましょう」 ゆっくり業師とかいう人に三倍を手渡す。業師は慣れた手つきで三倍の体を撫で回し、揺すった。 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリシテイッテネェェ」 目がとろんとして動きが少しだけ緩慢になった三倍。ちゃんと表情を見れたのなんて久しぶりだ。 すかさず発情れいむが入っている檻に入れられる三倍。 自身と同じく発情した相手を見つけるやいなや猛スピードですり寄って行く。速すぎて気持ち悪い。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっくりいぃぃぃぃん!!」 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリイッテネ!!ユックリイッテネ!!」 凄まじい勢いで発情れいむに擦り寄りまくる三倍。見る見るうちに発情れいむの息が荒くなっていく。 「ゆっく……ゆっくりいくよ!!ゆっくりいくよ!!ゆぅん……んほおおおおおおおおっ!!」 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリシテイッテネ!!!!!」 例の雄叫びを上げ、ぶるりと大きく震えて動きを止める二匹。しばらくすると三倍の方は元気良く動き回る。 「スッキリー!!」 一方ノーマルれいむの頭からは赤い蔓が伸びている。やがて蔓には三倍と同じ赤い実がいくつも実り、目を覚まして騒ぎ出した。 「ユックイチテイッテネ!!!」「ユックリオハヨウ!!!」「オジサンタチユックイデキユヒト!!?」 「どうやら上手くいったようですね。貴方も三倍も、本当にありがとうございます」 「いえいえ、私は何も。では私はこれで。三倍、帰るぞ」 「ユックリシテイクヨ!!!レイムハココデユックリスルヨ!!!」 「何言ってるんだ。お前の家は……」 「レイムノアカチャンガイルモン!!レイムガソダテルヨ!!オジサンダケカエッテネ!!!」 「…せっかくだからこいつも引き取ってもらえますか?」 「ええ、喜んで。では後でお礼をお渡ししますので先程の部屋でお待ち下さい」 その後、わざわざ工場長までやって来て、普通のゆっくりよりも随分沢山の代金を受け取った。 せっかくなので赤ん坊の三倍を売って貰えないだろうか、と尋ねると無料で一匹貰えた。 これから番ゆっくりが商品化すれば、売り上げ次第でまた配当がもらえるらしい。ラッキーだ。 今はすやすやと高速で寝息を立てているちび三倍を持って家に帰ると、そこには普通のゆっくりが我が物顔で居座っていた。 早速餌が手に入ってありがたい事だ。 大金を貰って機嫌のいい俺は大声で呼びかける。 「おおいゆっくり達。美味しいお菓子があるからおいで!!」 「ゆっ!おかし!!おかし!!おじさんはやくたべさせてね!!」 「さっさとちょうだいね!!くれないならかえってね!!」 上機嫌な俺にそんな口撃は通用しない。さらばゆっくり。 足元に群がってきたゆっくりを一匹残らず踏み潰す。 「ゆ゛びゅぷっ!!」「ぐぇあ」「びゅぷるぷっ!!」「ぱっびっぶっぺっぽおっ!」「い゛だい゛よ゛ぶっぷ!!」 悲鳴でちび三倍が目を覚ます。体は小さいがスピードは成体と変わらないようで、素早く地面に飛び降りて残骸を食い始める。 「ハァハァ、ウッメ!!オジサンオイシイヨコレ!!オジサンモタベレバイイヨ!!ユックリタベヨウネ!!ハム!ハフハフ、ハフ!!」 「俺はいらん。好きなだけ食べな」 こいつも普通のゆっくりとは性格が少し違うようだ。ちゃんと躾ければ番ゆっくりとして役に立つかもしれない。 YUKKURI THE RED COMET END 作:ミコスリ=ハン