約 592,757 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/690.html
ゆっくりがこの街にやってきたのは、確か僕が小学生の頃だったと思う。 習い事の帰り道、日陰でバスを待っていると、後ろの茂みからがさごそと音がした。 振り返ってみるとそこには奇妙な生き物がふんぞり返っていた。 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ! ここでゆっくりしたいなら、れいむになにかちょうだいね!」 それはまさに饅頭だった。しかし、饅頭というにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把 すぎた。 おまけに顔がついているのである。 今でこそ歩道をひょこひょこと跳ねる姿にも見慣れてしまったが、当時まだ国内でもUMA扱いされていた頃 のことだ、人間の生首をへちゃむくれにしたようなそのフォルムは小学生の僕にとてつもない恐怖を刻み込んだ。 「なに勝手にゆっくりしてるのぉぉぉ!? ばかなのぉぉぉ、しぬのぉぉぉ!? はやくなにかちょうだいねっていって るでしょぉぉぉ!?」 「ひぃ!」 もう、これ、トラウマといってもいいかもしれない。 見たことも聞いたこともない異形の饅頭が、目の前で怒りもあらわにぽむぽむと跳ねまくってるのだ。 僕はその場にへたり込んでしまっていた。下手をすれば座尿も禁じえない状況だった。 そんな僕を助けてくれたのは、一緒に習い事をしていた友達であった。 「ここはれいむのゆっ――ゆぎゅうううううううう!」 彼女は僕の前に立ちはだかると、その爪先で思いきり饅頭を蹴り上げた。 饅頭は綺麗な放物線を描いて、再び茂みの向こうへと消えた。 「あ、あれ、なに? なんなの?」 「知らない。あんな気持ちわるいもの、見たことも聞いたこともないわよ」 「そうだよね……。ぼく、こわいよ……」 「あんた男でしょ? ちょっと様子見てきなさいよ」 「むりだよそんなの……! 見たことも聞いたこともないのに、できるわけないよっ」 と、掛け合いをしているうちに、また向こうからぼよんぼよんと跳ねてきた。 「ゆゆ! いたいよ、なにするの? れいむはなんにもわるいことしてないのに!」 それはやはり、どこからどう見ても生きた饅頭だった。 人の顔を模し、頭にリボンまでつけている。実におぞましい。 とてもこの世のものとは思えなかったが、ぎゃんぎゃん騒ぎ立てる声で耳が痛いことから、どうやら夢をみて いるわけではないようであった。 「あんた、なんなのよ。まんじゅうの化物?」 友達はその奇怪な生き物と意思疎通をはかろうとしていた。 あっけなく蹴り飛ばされたのを見て、危険はないものと判断したんだろう。しゃがみ込んで、目線をあわせる。 「れいむはれいむだよ! れいむをまんじゅうだなんて呼ばないでね!」 「〝れいむ〟……? それ、あんたの名前? そうじゃなくて、わたしはあんたがなんていう生き物なのか――」 「れいむはれいむだよ! れいむはれいむだよ!」 「わたしの話を聞け」 無造作にその頭頂部を殴りつけた。 饅頭は「ぐべえ」と口から何か黒いものを吐き出してもがいた。 「で、でいぶは……でいぶなんだよ……。この世でいちばんゆっくりしたいきものなんだよ……」 「ゆっくりした生き物って何よ」 「ゆっくりはゆっくりだよ……!」 意味がわからない、と彼女は肩をすくめた。 「――ま、いいや。それで、どこからきたのよ。外宇宙とか?」 「でいぶはまだ山からおりてきたばかりだよ……。ゆっくりぷれいすをさがしにきたんだよ……」 「だから、ゆっくりぷれいすって何」 「とてもゆっくりできるところだよ!」 急にぴょんと元気に飛びあがった饅頭に驚いて、友達は地に手をついてしまった。 アスファルトの不快な感触に眉をしかめ、「やれやれ」と呟き、その態勢のままこちらを振り向いた。 「ねぇ、まだこれを怖いと思ってる?」 「……うん。まだ、ちょっと」 「怖いものは克服しなきゃいけないって思わない?」 見れば今までのやりとりはどこへやら、饅頭は何だか誇らしげに眉をつり上げて、ぽむぽむと跳ねていた。「ゆ っくりもわからないなんて、人間さんはおろかだね! ばかなの、ちるの?」とも言っている。 なんだろう、この胸に沸き上がる感情は。 ゆっくりの跳ねる勢いはさらに増していく。 「こいつらはきっと、虐げてもいい生き物よ」 思えば、僕の心に黒いものが芽生えたのは、この時だったのかもしれない。 少なくとも、彼女のこの言葉が踏ん切りとなったのは確かなことだ。 「やっぱり人間さんはゆっくりできないよ! れいむのゆっくりぷれいすからでていって――ゆぎゅうううううううう!」 尻餅をついた友達に今にも襲いかからんとした饅頭を、僕は思いきり蹴った。 後にゆっくりと呼ばれるその生き物は、美しい虹の曲線を描いて、ゆっくりとどこかへ飛んでいったのだった。 ※ こんな風にゆっくりは街にあらわれて、そのまま居着いてしまった。 やつらはどこからともなく現われ、どこにでも侵入し、ゴミ箱から果ては台所までこれでもかというくらいに 荒らしまくる。人語を操るくせに人の話は聞かず、何度たしなめても反省の色すら見せない。 これでは嫌われないはずがなかった。 街の人間は初めこそ未知なる生物に驚き戸惑ったが、やがて醒めた表情でカラスやゴキブリと同様――いや、 それ以下のものとして扱い始めた。 今やゆっくりが街中で見かけられようものなら、ただちに市役所へ通報され、専用の回収車がやってくる。 「ゆゆん? おろかな人間がなんのようなんだぜ?」 と、饅頭どもはいつだって余裕綽々だ。 職員に掴みあげられても「ゆーん、おそらをとんでるみたい!」と楽しむ素振りすらみせる。 だが、その目の端に回収車の内部を捉えたところから、様子が変わってくる。 「ひっ」 声色が変わるのは一瞬だ。 あなたの街にも巡回しているだろうゴミ収集車を想像して欲しい。 大きなゴミ袋がどのように圧縮されていくかを想像してみて欲しい。 人間に頭を捕まれたゆっくりは身動きをとることができない。だから、必死に哀願する。 「やめてね! ゆっくりはなしてね!」 「おねがいだから、たすけてね!」 態度をひるがえすその様子や、呆れを通り越して、面白さすら感じてしまうものだ。 職員たちもきっとそうなのだろう。散々脅しすかした上で、無情を装って回収車に放り込んでいく。 ドラムの回転に巻き込まれ、「ぎぇ!」とか「ぎゅぅぅ!」とか「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ!」とか叫びな がら潰されていくゆっくりたち。 僕はその様子を観察するのが好きだった。 さて。 ここまで読んでいただいたとおり、この話はストレートなゆっくり虐待とは言いがたい。 これから先は、どちらかというと人間の方がよく喋るし、ジャンルは何かというとサスペンスだと思う。 あなたがもし、そんなものは求めてないよと言うならば、以下に多少の空白行を設けておいたので、本題に入る 前にブラウザの戻るボタンを押して欲しい。 しかし、もしもだ。もしもあなたに多少の興味があって、こんな喋りたがりを許してくれるなら、少し昔の話を させて欲しいのだ。 街中でゆっくりを見かけると、僕は今でも彼女のことを思い出してしまうから。 『僕らの街のゆっくり殺し』 高校に入って幾月か経った頃のこと。 その日には理科の実験があった。 「はい、今日は実際にゆっくりを使って、適切な駆除の方法を学びたいと思います。皆さんは三、四人でグループ をつくって、理科室に移動してください」 高校生になってまで理科の実験かよ、と思わないでもなかったが、世界情勢の変化によりカリキュラムの変更 があったのだから仕方ない。 昨年に行われた教育改革により、僕たちは大人になるまでにゆっくりについて正しい知識を身につけなければ ならなくなった。そのため、学校が余分に用意していた英語や数学の時間を削って、このような授業が設けられ ることとなったのである。 頭の痛い構文や定理から小一時間でも逃れられるというのは非常な楽しみではあったが、さりとて手放しでは 喜べなかった。 先生は〝三、四人でグループをつくって〟と言った。 「神様……。どうして神様はこんな試練を……」 結局、女子と組むことになった。 理由はお察しいただきたい。 いや……できれば、察しないで欲しいな……。 「おい、乾。おまえ、女子と組むのかよ?」 移動のため廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。 振り向けば、そこにはクラスで一番目つきの悪い、金髪の篠村くんがいた。 胸板が厚く、上背もあって、彼においそれと声をかける者はいない。どう考えても僕とは別な畑に住んでいる人 だ。 きっと因縁をつけにきたんだろう。そう思って小さくなっていると、案の定こんなことを言われた。 「今、おれの目つきが悪いと思っただろ」 「そんなことは……」 僕は目を逸らした。 図星だったことは向こうも察したらしい。質問が繰り返される。 「目つきが悪いと申したか」 「せ、拙者はさようなことは……」 思わずネタにネタで返してしまった……! ていうか、いきなりなんだこいつ……! 僕を伊達にするつもりか……! そんな感じに汗を流していると、篠村くんはにやっと笑って、僕の肩に腕を回した。 「おまえ、見た目に寄らず話がわかるな。話がわかるやつはいいやつだ」 「なんだよ、からかいに来たんじゃないのかよ」 「友達がすくねーことに関しては、おれも人のことは言えねぇよ。だから、寂しい者同士、仲良しになりにきたん だ」 「どういうこと?」 彼は僕の耳に口を寄せ、秘密めかして囁いた。 「おれも実は、女子と仲良くなりたい」 「……ええ?」 「そっちはまだ三人だ。一人くらい増えたところで構いやしねーだろ?」 篠村は肩から手をどけると、そのまま僕の尻をパァン!と叩いた。 「安心しろよ。おれが狙ってるのは相川の方じゃないから」 じゃあ今日はよろしく、と彼は先に歩いていった。 今までも何度か女子とグループを組んだことがあったが、からかいを受けてもそれは決まって別の女子のこと だった。グループには大抵の場合、相川もいたが、彼女のことを話題にする男子は一人としていなかった。 痛む尻をさすりながら、僕は思う。 篠村の方こそ、見た目によらないんじゃないか? ※ さっそくで悪いが、ゆっくりを導線で繋げてみた。 小学生の頃にやった豆電球の実験を思い起こして欲しい。まさにそんな感じだ。教壇の上では、先生が電池を直 列につないだり並列につないだりして、ゆっくりの反応をみている。 「はい、皆さんどうですか。直列繋ぎの方がより効果がありましたね?」 「ゆっ……ゆびっ……!」 「このように、ゆっくりは電流に非常に弱い構造となっています。彼らの中身はみなさんご存じのとおり餡子です が、その中心には人間では脳にあたる〝中枢餡〟と呼ばれる器官があります。ここに電流が流れると、体の動き が制御できなくなり、このように言語機能にも影響がでます」 「ゆびっ。や、やべて……ゆびっ」 「なので、もしも街中で子どもを連れてゆーゆー歌う饅頭を見つけたら、そのままコンビニに寄って市販のゆっく り用スタンガンを買いましょう。人間には無害な程度の電流で、安全に駆除できますので」 「ゆっ……ゆっ、ゆっ、ゆっ」 僕らのグループでは、特に篠村が入れ込んでゆっくりに電流を流していた。 実験用のゆっくりの赤子――通称、赤ゆはすでに三つほど黒こげになっていた。乾電池を十個も直列に繋いだ 所為だ。ぷすぷすと湯気をあげ、香ばしい匂いを漂わせている。昼前なので、なんだかお腹が減ってきてしまう。 ――考えてみれば、ゆっくりとはなんとも不思議な生命体だ。 ちと大きすぎるが、その正体は紛うことなき饅頭だ。目から口から髪から装飾品まで、食べようと思えばマジで 食べられる。 これだけを考えれば、なんて地球に優しい生き物なんでしょう!という感じだ。 事実、政情不安定な中東やアフリカの国々では、数え切れないほどの子どもたちがゆっくりによって救われて いるらしい。食文化圏にも麺・パン・米に、最近ゆっくりが加えられたくらいだ。 もしかして、ゆっくりとは神様が遣わした救世主なんじゃないかとすら思う。 「それはさておき、ゆっくりを虐めるのは楽しいよな」 「おお、楽しいとも。乾、おまえやっぱり話がわかるなぁ。今日、どっか遊びに行かないか」 「え、いや……まぁ、やぶさかではないけど。でも、なんでそんな藪から棒に」 「言いかえれば作戦会議だよ。ほら、向こうであくびをしてるお嬢さん方を見たまえ。おれたちには、ゆっくり以 上に興味がなさそうだ。事態は急を要するとは思わんかね」 最後の方だけひそひそ声になって、篠村は言った。 つられて向こうを見る。 テーブルを挟み、そっぽを向いて座っているのが、グループに僕を誘ってくれた中原だ。 周りの女子よりも頭一つ小さく、そのでっぱりの少ないシルエットは野ウサギに近い。成長期もそろそろ終わ るのに大丈夫か……?と思うが、こちらが心配しなくても、どうやら本人が一番気にしているようだった。 なんだか俯いてるな、そんなに眠たいのかな、と思ったらパンを囓っていやがった。 そのパンの名は『毎日おいしくカルシウムブレッド』。 「食パンかよっ」 「うっせぇクズが! 先公にバレんだろーがよぉ」 ……このとおり口が悪いのが玉にきずだ。 見た目とのギャップが本当に残念でならない。 「なぁ……あんなのどこがいいのさ。篠村はもしかしてロリコンなの?」 「おれは、自分より口の悪い女子を生まれて初めて見たんだ」 「マジで? マジでそんな理由?」 「いや、嘘に決まってんだろ。中原がそういうんじゃねーってのは、おまえだってわかるだろ?」 「そりゃあ……」 まぁ、僕の数少ない友人なので。 不機嫌そうに食パンを貪る彼女が、見た目どおりの性格ではないことは知っている。 「それよか、おまえの方が物好きだと思うぜ。おれの観察眼を持ってしても、あれは根暗にしか見えない」 言われて、視線を移した。 四人組の最後の一人――相川は一人窓の外に顔を向けていた。 友達であるはずの中原からも距離をとって、グラウンドを駆けるサッカー少年をぼぉと眺めている。その中に彼 女の思い人がいるというわけでもないだろう。 その黒目がちな瞳は、先ほどから動く様子を見せていない。 篠村は、僕を物好きだと言う。 「ま、人の趣味は色々だ。おまえがおれに協力してくれるってんなら、その逆もやぶさかでない」 「僕もその提案にはやぶさかでない」 「オーケイ、心得た。じゃあ、まずはコミュニケーションをとろう。乾は、あのたそがれ清兵衛と食パン娘、どっち が話しかけやすい?」 「そりゃ決まってる」 「では、第一投はまかせたぞ」 え、それずるくないか?とは思ったが、僕としてもこのまま男子だけで内緒話をしているのは気まずかった。 なので、相変わらずもぐもぐと口を動かし、二枚目に差しかかっている食パン娘さんに話しかけてみることに した。 「カルシウムばかり食べても背は伸びないよ」 「喧嘩売ってんのかてめぇ! ああん?」 話しかけただけでキレられた! 篠村くん! こいつを好きだなんて、あんたの方が物好きだよ! 「あーん? 乾てめぇ。自分から輪に入っていけない可哀想なてめぇを誘ってやったこの大天使様に、よくもそん な口がきけるな。人の身体的欠陥をからかうやつはクズだって教えてもらえなかったのか?」 「い、いや……その、あれだ。からかうなんてとんでもない。カルシウムを吸収するためには、たんぱく質も必要な んだよ。食パンには何かつけた方がいいって言いたかったんだ」 「え、そうなの?」 きょとんとした顔をして、中原は食パンから顔をあげた。口元にくずがつきっぱなしだ。 急にこういう素顔をのぞかせるから、女子ってわからない。 「カルシウムのためなら仕方ないな……。でも、参った。つけるものったって、あたし何ももってないよ」 「なに言ってんだ。目の前にあるじゃないか」 僕はテーブルの上の赤ゆを指さした。 元は七匹いたものが、すでに篠村の手によって半分まで減らされているものの、その大きさはゴルフボールほど。 パンにつけて食べるなら十分な数だろう。 「え……ゆっくりを、パンに挟むの?」 信じられないという顔。どうやら中原はゆっくりが食用になることを知らないらしい。 そこに良いタイミングで篠村が入ってきた。 「中身は餡子だって先生も言ってたろ? 植物性たんぱく質が多くて健康にもいいとか、最近テレビでやってるの を見たぜ」 「でも、あたしゆっくりって……嫌いなのよね。触りたくもないくらいなんだけど」 「ゲテモノっていうのは大抵美味しいって聞くよ。事実、ゆっくりは世界を救うくらいに美味しい」 と、これは僕。 僕自身、ゆっくりを食べること――食ゆは経験済だった。 八百屋で袋売りしているのを何度か買ってきて食べた。それは市販の饅頭と遜色なく、食べるうちに幾つか気 がついたことがあった。 死んでいるものよりも、生きているものの方が美味しい。 大きなものより小さなものが、年を取ったものより生まれたばかりのものが、そして苦しめば苦しむほど、その 甘味は増していく。 しからば、今テーブルにある赤ゆこそ最高の食材になるはずだ。 「まぁ……そこまで言うなら。カルシウムのためだし」 男子二人の熱意に負けて、中原はそろそろと赤ゆに手をのばした。 やつらは仲間三匹が黒こげにされたにもかかわらず、ゆぅゆぅとのんきにうたた寝をしていた。 それもそのはずか。やつらがいるのは赤ゆ専用の保温箱の上。ゆっくりは適度に温められると、どんな状況でも 睡魔に負けてしまうと聞く。 「うー……気持ち悪いなぁ」 中原がつまみあげると、赤ゆは「ゆぅ?」と目を覚まし、条件反射的に「おしょらをとんでるみちゃい!」と叫ん だ。 見ようによっては可愛げがある。だが、彼女は本当にゆっくりが苦手であるらしく、汚いものに触れるかのよう に、もう片方の手で赤ゆの頬っぺたを掴んだ。 「ゆ――いちゃい! いちゃいよ! おねいしゃん、なにしてるの!?」 そのまま、徐々に横に引っ張っていく。 「ゆ! ゆぎっ! はなしてね! おねいしゃん、ゆっくりはなしてね! れいみゅはなんにもわりゅいことしてな いのに、どうちてこんなことしゅるの!?」 「ゆっくりって喋るから嫌いなのよ……。特に赤ゆは耳がきんきんするし……」 「みゃああ! ゆっくちはなしてっていってるでしょぉぉぉ!? れいみゅはこんなにかわいいのに、いうこときか にゃいなんて、ばかなのぉぉぉ!? しにゅのぉぉぉぉ!?」 赤ゆの皮はとみに柔らかく、中原が引っ張ると面白いように伸びた。 こうなってしまうと可愛いなどとは口が裂けても言えない。人間でいえば瞼にあたる部分が糸のように薄くな り、中心の目玉がある部分だけぼこりと膨らんでいる。歯茎はむき出しになり、意外と鋭そうに見える歯がてら てらと光った。 その有様を長く見たくはないのだろう。中原はもう一度、赤ゆの顔の中心を掴みなおすと、ぐっと力を入れた。 「いちゃいぃぃぃぃぃぃ! いちゃいよぉぉぉぉぉぉぉ!! これじゃゆっくちできにゃいよぉぉぉぉぉぉ!!」 「……」 「ゆがぁぁぁぁぁ! ちびにんげんのくせに、なまいきで――」 「今なんつったオラァ!」 ぶちぃ、と無惨に赤ゆはちぎれ、テーブルに餡子の飛沫がまき散らされた。 「あら、あたしったらつい」 もはや赤ゆは見る影もない。 これからは中原の身長のことに触れるのは絶対によそうと思った。 「で、これを塗ると」 平然と手元に残った残骸をパンにごしごしとやる彼女。 一口、はむりと齧りつく。 瞬間、その目が大きく見開かれる。 「こ、これは……!」 「ど、どうした中原。そんなに美味かったか?」 「美味いも何も……篠村、あんたも食べてみなさいよ、ほら」 食べかけを差し出されて、篠村は目を白黒とさせた。 わかる。わかるぞ、その気持ち。 これって間接キス?とか思ってんだろ。 「どうしたのよ、篠村。あんた、人に散々勧めておいて、自分が食べるのは嫌って言うの?」 「そ、そうではなく」 「じゃあ、何よ」 「何って――いや、なんでもない! おれはゆっくりを食べるぞ! 中原ァーーーーッ!!」 篠村は彼女からゆっくりを塗った食パンを受け取り、勢いよく貪った。 その動きが、やがて硬直する。 「こ、これは……!」 端整であったはずの篠村の顔が、みるみるうちに崩れていく。口元はだらしなく緩み、え、それは涎か? 苦しんで死んだゆっくりは、これほどまでに美味なのだ。 見れば、中原はすでに二枚目の食パンを追加し、新たな赤ゆをつまみ上げていた。 「美味しい! 美味しい! 美味しい! ――乾、あんたも食べなさいよ!」 「いや、僕は……」 中原が二つ、乾が一つ食べたなら、あとは残り一つしかない。 僕は相川を見た。 彼女は相変わらず、窓の外に視線を投げている。こちらの騒乱には欠片も興味を示さず、吐息に退屈を混ぜて吐 き出している。 意を決して、声をかけてみた。 「あ――相川もどうだい?」 彼女が振り向いた。 「その、中原も美味いって言ってるし……」 「わたし、そういうのには興味がないから」 一言だけ、小さな声でそう伝えると、彼女は再び僕たちから顔を背けた。 ――その窓の向こうには、いったい何が映っているんだろう? ぽん、と横から肩を叩かれる。 振り向けば、眉をハの字にした篠村がそこに。 「や、あはは。おれだけ仲良くなっちまって悪いなぁ」 「こいつむかつく……!」 僕は最後の赤ゆをひっかみ、「いひゃい! いひゃい!」と叫ぶのも無視して引きちぎり、パンに塗って猛然と食 べ始めた。 その後、先生に見つかり、何故か僕だけが怒られてしまったことについては、悲しいので割愛させてもらう。 ※ その日の放課後は、新しくできた友人に散々連れ回され、いささかくたびれた。 中原と仲良くしたい、という狙いは概ね達成されたので、もはや僕に構う理由なんかないと思ったのだけど― ―彼は〝今度はおまえの番だ〟と言って譲らなかった。 金髪で、目つきが鋭くて、他のどのクラスメイトよりも不良に見えた篠原玲央。 ……ずっと見た目だけで判断してきた。ごめん。本当に。 さて、日はすでに沈み、月も雲に隠れ、夜は分厚い闇に覆われている。 篠村と別れた足で、僕は家の近くの公園にやってきていた。 昼間、赤ゆを食べ尽くしてしまった所為でやりそびれてしまった、実験の続きを試しに来たのだった。 先生はこう言っていた。 『ゆっくりの〝中枢餡〟が、人間でいうと脳の働きを務めているのは先に言ったとおりですが、この機能には致命 的な欠陥があることがわかっています。ゆっくりはお互いを顔だけを見て識別することができないのです』 この公園は僕のお気に入りのスポットだ。 近く一帯に自然が残されているためか、野生化したゆっくりが繁殖し、夜ならいつ訪れても必ず遭遇すること ができる。 おまけに餡子脳には学習機能もまた欠けているため、人間に対する警戒心が薄く、実験材料に事欠かないのだ。 『たとえば、我々人間は目の大きさ、眉のかたち、顔の輪郭などを記憶することで、他者を見分けることができま す。出会って間もない相手や異国人に対しては、この働きは弱くなりがちですが、それでも体型や服装等々の情 報で補い、識別を可能としてしています。――しかし、ゆっくりの〝中枢餡〟は非常に容量が少なく、これだけの 情報を留めておくことができないのです。なので、代わりにある一点だけを見て、個の判別を行っています』 丁度、目の前を二匹のゆっくりが通りかかった。 赤いリボンを結わえた妙に誇らしげなやつと、黒帽子を被り陰湿そうな眉をしたやつだ。 それぞれ〝れいむ種〟、〝まりさ種〟と呼ばれている。 僕は二匹に声をかけた。 「やあ、ゆっくりしてるかい」 「ゆ? ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってねー!」 二匹がぴょんと飛び跳ねた。 れいむ種もまりさ種も共通して〝ゆっくり〟という単語を聞くと、どんな状況でも条件反射で挨拶を返す。 〝ゆっくりしていってね〟――これはやつらにとって〝こんにちは〟や〝はじめまして〟以上に親しみがあり、 大切な言葉であるらしい。 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ! 人間さんはゆっくりしてないで、はやくでていってね!」 「ゆっへっへ、痛いめにあいたくなければ、あまあまさんをおいていくんだぜ。まりさはとってもつよいのぜ」 そして、お決まりの展開だった。 踏まれれば潰れる饅頭でしかないくせに、やつらは往々にして自分は人間よりも強いのだと思いこんでいる。 なので、にへらにへらと人間にすり寄り、コミュニケーションがとれたと思うと、このようにたちまち手のひら を返すのだ。追い出すだけではなく甘味を要求するところなど、まるで夜盗のような生き方だ。 普通の人間なら、この時点で立ち去るか、回収車の夜間サービスに電話をかけていることだろう。 だけど、僕は二匹前にしゃがみ込む。 「キミたちはれいむとまりさっていうのかい?」 「そうだよ! れいむはれいむだよ!」 「まりさはまりさなんだぜ!」 先生が言っていたことを思い出す。 ゆっくりには個体名がない。つまり、人間で言えば〝中原〟や〝篠村〟といった一人一つの名前が、こいつらに は存在しないのだ。 代わりに、己のことは種族名で呼んでいる。〝れいむはれいむだよ〟というのが、まさにそうだ。なので、同種 のゆっくりが群れている中にこの質問を放り込むと、なんというか、すごくカオスなことになる。 これも中枢餡の機能限界に因するものなのだろうか。 ともあれ、僕は先を続けた。 「僕はキミたちにあまあまさんを持ってきたんだ。そんなに大きな声を出さなくても、ちゃんとあげるつもりだか ら安心してくれよ」 「ほんとうに!?」 もちろん嘘である。 「でも、うーん、困ったな。僕は綺麗な子が好きでね、このあまあまさんも、綺麗な子のために持ってきたんだけど ……キミたち、ずいぶんと汚らしいじゃないか」 「まりさのどこがきたないっていうんだぜ! うそをつくのはやめるんだぜ!」 「ええ? だけど、ほら。キミたち、お互いの飾りを見てごらんよ。リボンも帽子もくしゃくしゃで、土がついてる じゃないか。とてもじゃないが、綺麗とはいえない」 「ゆゆ!?」 二匹は顔を見合わせて、相手の頭上を注視した。 長いこと野良をやってきたのだろう、僕の言葉のとおり、夜目にもわかるほど赤いリボンも黒帽子も汚れきっ ていた。 ゆっくりとは傲慢だが、面白いことに、反面素直な生き物でもある。 〝汚いゆっくりは、あまあまさんをもらえない〟 僕がてきとーにでっちあげたこの条件を、二匹はすっかり信じ込み、埃だらけの互いを見つめ合って悲しい表情 を浮かべていた。 「そんな顔するなよ。今、いいことを考えついたから」 「ゆぅ? いいこと?」 「キミたちの飾りを貸してごらん。僕が綺麗にしてあげよう」 「なにをいってるんだぜ! おかざりはたいせつなものなのぜ! 人間さんにわたせるわけがないんだぜ!」 「それは残念。じゃあ、汚らしいキミたちにはあまあまさんは渡せないな。僕は別の子を探しに行くから――」 「ちょっとまってね!」 赤リボンのれいむの方が、一際大きな声を出した。 ぼよん、とまりさに体を寄せ、何やらひそひそ話し始める。おそらくは〝あまあまさん〟をもらうためなら仕 方ないと説得しているのだろう。 ゆっくりは自らが饅頭であるためか、甘味に対する欲が半端ない。 装飾品がいかに大切なものであろうと、落ちるのは時間の問題と思われた。 「き、きれいにするだけだよ! ぜったいにかえしてね! ぜったいだよ!」 予想どおり一分と経たないうちに、二匹はこちらへ頭を向けた。 馬鹿なやつらだ。 僕はにんまりと笑い、手を伸ばした。リボンの先を引っ張り、するすると解く。また黒帽子の方も取り上げる。 二匹は不安げにこちらを見上げたが、僕が手で土埃を払い始めると、すぐにほっとした顔になった。 これで甘味をもらえると安心したらしい。口元から垂れる砂糖水からも、それがわかる。おまけに飾りを綺麗に してもらえるとは、なんてラッキーなのだろうとも思っているのかもしれない。 おまえらが汚らしいのは、飾りだけじゃなく、存在そのものだっていうのに。 「よし、綺麗になった。今、返してあげるからね」 「ありがとーね! ありがとーね!」 「かえしたら、さっさとあまあまさんをわたすんだぜ!」 「まぁ、慌てるなよ。――ほらよ」 僕は黒帽子をかぶっていたまりさに赤いリボンを結び、赤いリボンを結んでいたれいむに黒帽子を被せた。 すると何が起こったか。 ――先生の言葉の続きを思い出す。 『ゆっくりは頭につけた装飾品だけでお互いを見分けているのです。リボンや帽子などの種類、その大きさ、他に は汚れ具合から個体を識別します。〝中枢餡〟の機能に限りがあることから、このような形になったものと考え られていますが――さて、みなさん。手元にはれいむ種とまりさ種が残っていますね? では、その装飾品を取り 替えてみましょう』 立ち上がってしばらく待っても、れいむとまりさに変化はなかった。 愚鈍なためだろう、餡子脳では今起こっている事態に気づけないのだ。 だから、僕の方から煽ってみた。 「おや、そういえばキミたちの名前はなんといったっけ」 「ゆぅ? おにいさんはばかなの? れいむはれいむだよ」 「まりさはまりさなんだぜ」 「じゃあ――おまえらの目の前にいるのは?」 二匹はしばらくお互いを見つめ合い、やがて落ち着かないそぶりを見せ始めた。 「ゆ、まりさ……? れいむはどこいったんだぜ?」 「なにいってるの? れいむはれいむだよ」 「そっちこそなにいってるんだぜ。どうみてもまりさなんだぜ?」 「おかしなこといわないでね、れいむ! れいむはれいむだよ!」 「なんで、まりさをれいむって呼ぶんだぜぇぇ! まりさはまりさなのぜぇぇぇ!」 やっぱり、こいつらは装飾品がすべてなのだ。 赤いリボンをつけていれば〝れいむ〟。黒帽子を被っていれば、それがなんであれ〝まりさ〟と認識する。 だから、このように取り替えてしまえば〝れいむ〟が〝まりさ〟に、〝まりさ〟が〝れいむ〟に見えてしまい、 混乱の海に沈むのだ。 「れいむのおりぼんかえしてね! ゆっくりかえしてね!」 「ゆ! まりさ、なにするんだぜ! 痛いんだぜ!」 足元では、発狂寸前まで追い詰められた二匹が「れいむはれいむだよ!」「まりさこそまりさなんだぜ!」と、と うとう噛みつき合いを始めていた。 ゆっくり同士の喧嘩は、その外皮の柔らかさから例外なく死に直結する。 僕は実験の結果に満足して、その場を立ち去った。 ――いや、立ち去るはずだったが。 蛾の飛び交う公園灯をくぐり、敷地内を横切って家路につこうとしたところ、他にも人がいることに気がつい た。 僕はつい植え込みの影に隠れてしまった。 別にやましいことなどなかったのだけど、夜の公園で挨拶を交わすことほど気まずいことはない。また、この街 も最近は物騒になってきたから気をつけろと、今朝も姉に言われたばかりだった。 遠回りになるが、このまま来た道を引き返すべきだろうか。 さて、どうしたものかなと悩んでいたところ。 向こうからこんな声が聞こえてきたものだから、僕は思わず覗き込んでしまった。 「ほら、慌てないで。あまあまさんはいっぱいあるんだから」 聞いた瞬間、僕はその声の主が誰なのかわかってしまった。 この暗闇である。多少の距離もあり、普通ならわかりようのない状況だったが――ああ、それは教室で時折聞く、 気だるげだが硝子のように透き通った声で。 「……相川?」 言ってしまってから、慌てて口を手でおさえた。 幸いにもこの呟きは届かなかったらしい。こちらに気づく様子もない。僕は口から手を離し、おそるおそる身を 乗り出した。 やはり、そこにいたのは相川だった。 もう見間違えようがない。公園灯に照らされたベンチに、彼女は制服姿のまま、背中を丸めて座っていた。 だけど、相川がどうしてここに? 確か彼女が住んでいるのは、同じ街でもずっと北の方だ。中学も違ったのだから記憶違いではないはず。なのに どうして、僕の家から徒歩十五分圏内の公園なんかにいるんだ? しかも、よくよく見れば、そこにいたのは彼女だけではなかった。 先ほど声をかけた相手、それは推して知るべしだった。 彼女の周りにはバスケットボールくらいの大きさの物体がもぞもぞ動いている。それも一匹だけではない。ひぃ、 ふぅ、みぃ……うわ、五匹もいるのか。 「ゆ! ゆ! これはすごくゆっくりできるあまあまさんだね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 それがゆっくりであることは遠目にもすぐわかった。 地面に撒かれた甘味らしきものに群がりながら、ゆっくりたちは口々に相川に感謝の言葉を投げかけていた。 いったい、何をやっているんだろう? 確か彼女は、ゆっくりには興味がないと言っていなかったのに。 「ふふ、おかわりもあるんだよ。みんなゆっくり食べてね」 もしかして僕は思い違いをしていた? 正確には、彼女は〝そういうのには興味がないから〟と言っていたのだ。 〝そういうの〟というのは、つまり、僕らがやっていた……ゆっくりの実験。駆除のためのゆっくり虐待。 相川と仲良くなるためには、何か共通の趣味をつくればいいんじゃないか、と今日篠村は熱弁を振るってくれ た。 だが、それはどうやら難しいみたいだ。 僕は次の台詞を聞いて、さらなる諦観に包まれる。 「ありがとう、〝どす〟!」 「〝どす〟のおかげで、きょうはとてもゆっくり寝られそうだよ!」 初めは耳を疑ったが。 それは明らかに、相川に向けての台詞だった。 「さすが〝どす〟だね! あしたもゆっくりあまあまさんをもってきてね!」 ――ドス。 それは人間に向けた呼び名ではなく。 餡子のいたずらで巨大に成長したゆっくりのことを指すものではなかったか。 「そうだね、わたしも今日はとてもゆっくり寝られそうだよ」 僕は遅ればせながら気づいた。 相川。相川鈴華。教室では窓の外ばかり見つめている彼女。 その頭には、薄明かりに映える赤い、赤いリボンが結ばれていたのだった。 『僕らの街のゆっくり殺し 01』 終 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/853.html
『真冬のゆっくり対策 6』 「気を落とさないでください、何か対策を考えましょう」 「ええ…」 村で一番大きな施設の中。今日ここでゆっくりの駆除に当たっていた人達が集まって食事をしている。 「あ、お姉ちゃん」 右目に眼帯を付けた1人の女の子が虐待お兄ちゃんの席にやってきた。 「お姉ちゃん帰ってきてたんだ」 「ええ。今日帰ってきたところよ」 「そちらの方は?」 「今日知り合った人よ。一緒に駆除してたのよ」 「そうなんだ。…はじめまして。今日はお疲れ様です」 「ああ…どうも。そうでしたか、姉妹ですか。ああ…よく似ていらっしゃいますね」 (この子何で眼帯付けてるんだろう?…) 「お姉ちゃん、ちゃんと家に帰ってきてね。お父さんとお母さんも会いたがってるよ」 「分かったわ。ここを出るまでには会っておくわよ」 「お兄さん、何もないところですけど…ゆっくりしていってください」 「ありがとうございます。この鍋美味しいですね」 その子はまた別の席へ向かった。ここで世話係をしているのだろう。 「昔ここに住んでいたって言ってましたね」 「…なんで眼帯付けてるんだろう?……って思いましたよね?」 「え…いや…その…」 「あの子…ゆっくりに襲われたの」 「ええ!?」 「昔よ、数年前の話よ。畑にゆっくりが野菜を盗みに来たからあの子が追い払おうとしたの。そうしたら枝を咥えたゆっくりに 襲われて目を刺されたのよ」 「……」 「協定とかがあったから村中で抗議に行ったわ。まあ襲ったゆっくりは勿論その種はみな村に引き渡されて虐殺されたけどね」 「種?」 「下品な言葉使うゆっくりがいるでしょ。あいつらよ」 「そうか…だからみょん種を見なかったのか」 「それで済む問題じゃないのに……それ以降も時々畑に被害が出たわ」 「……」 「結局あの子の右目は失明したわ。かわいそうに…」 「それ以上は言わなくていいです。今は…貴方に協力しましょう」 「ありがとう…。ごめんなさい…変なこと話してしまって」 彼らは様々な意見を交わした。 「そうだ、今日途中で駆除アイテムくれたおじさんがいたんだ。何かいいものがないか聞いてきますね」 彼は席を外し昼間唐辛子入り煙幕をくれたおじさんを探した。 「村長、…スは…の…角に…るんだ…な?」 「え…そうですよ。しかし…ぜそんな…とを?」 (何を話しているんだ?) そのおじさんは村長と何か話していた。周りがうるさいためよく聞き取れない。彼は近づいた。 「実はな、明日ドスを駆除しに行こうと思うんだ」 「それは危険ではないのですか?」 「いや大丈夫だ。実は隣の村でもドスの群の被害が出ててね、事前に一緒に駆除しようって誘ったら乗り気だったよ」 「しかし無理をしなくても。ドスとはいえこの冬じゃ手が出ないですから準備を整えてからの方が…」 「そう思うだろ。実はドスって冬でも行動できるらいいぜ」 「そうなんですか」 「ゆっくりってのは皮が小麦粉で作りが単純だろ?だから冬になると中の餡子がすぐ冷えちまうから冬は苦手なんだとさ」 「ええ」 「ところがドスってのは皮が厚くて硬いんだ。まあ所詮は小麦粉なんだけどな。だけど冬の寒さには通常のよりも耐えられるんだ」 「そうなんですか」 「実際冬なのに村に食糧を恵んでもらうためにやってきたって話がある。すぐ駆除されたらしいけどな」 「ドススパークとかは?」 「ああ、いくらドスでも冬は力が100%出せないってよ。ドススパークってのも冬になるとあのキノコを咀嚼するのに時間かかるし 威力も射程も弱まるって聞いたぜ。それでも脅威であることは確かだ」 「なるほど…早めに手を打った方が良いという訳ですな」 「一応隣の村に電話させてくれないか?今朝連絡したら"明日にでも駆除に行けますぜ"って返ってきたよ」 「場所とかは分かりますか?」 「ああ。大体の見当はついている。こっから西に半日ぐらいで着くよな?」 「ええ。」 (西?) 彼は何か引っかかっていた。 "こまったことがあったらどすにたすけてもらえって。おひさまがしずむところにどすがいるってありすがいってたわ!" (そうか!じゃあ次の行動は!!) 「お…おじさん、いつドス退治に行くんですか?」 「おぅ…お前さんさっき会った坊主じゃねえか」 「いつですか?」 「そうだなあ…日の出には出るよ。さっきの話聞いてたんだろ。半日かかるから早く行けば動けないうちに駆除できるぜ」 「あ…あの…よければ場所教えてくれませんか?」 「ついてくればいいじゃないか」 「いや…その…お…俺朝弱いんですよ。特に冬は」 「ハッハッハ!最近の若い奴は軟弱者だなあ。いいぜ、一応教えとくわ。来たくなったら来いや」 「ありがとうございます」 彼は地図にドスの居場所を書いてもらった。 「大体この辺りだ。この辺りでの目撃が多い」 「わかりました。ありがとうございます。できれば明日早起きできるようにします」 「それが一番いい。俺はもう寝るぞ」 「分かったよ。あいつらが次に起こす行動」 彼は席に戻りそう言った。 「何をする気なの?」 「あいつらドスのところに助けを呼ぶんじゃないかな」 「ドスってここから西に行った所にいる?」 「そうそう。困ったことがあったら太陽が沈むところにいるドスに助けてもらえって言うのがあそこのリーダーの言葉らしい」 「明日狩るってさっき聞こえたわ」 「ああ。奴らの最後の頼みはドスだ。だからそこを叩けば奴らは何もできない」 「……………」 しばし沈黙。 「?」 「ふふふ。いいことを思いついたわ」 「その笑顔…調子が出てきたみたいですね」 「ええ…………」 彼女は作戦を彼に話した。 「ほほう。免許とかは?」 「持ってるわ。軽トラの方は借りるわ」 「じゃあ俺はドス退治に向かいます。そちらは1人でも…」 「任せて。そうね、予備のリボンがあったはずだわ。それ使えば1人で充分よ」 「分かりました。じゃあ明日は早いんで俺はもう寝ます」 「おやすみなさい。私は道具を揃えるわ」 彼らは施設を出た。ちらほら施設を出る者がいたが食事をする人はまだいる。 「え、おじいちゃんドクウツギを知ってるんですか」 「知ってるも何もうちに生えておる」 「そ…それでゆっくりは」 「時々実を畑に撒いているよ。そうするとゆっくりが気絶しててのぉ…いい肥やしになるんじゃ」 「いったいどういったものなんですか」 「見た目は小さくて美味しそうな実じゃよ。実際甘いそうじゃ。だが食べると大変なことになる」 「そういえば俺小さい時山葡萄と間違えて変なもの食って腹壊したことがあるなあ」 「腹壊すどころではない。それは別だ。最悪死ぬぞ。見た目は確かに葡萄に似とる。昔は子供が食べて死ぬということがあってのぉ」 「そんな草花の名前聞いたことないですよ」 「ドクウツギは毒空木と書くんじゃ。被害が出るから大量に狩られてな」 「なぜおじいちゃんはその木を?」 「ゆっくりの畑荒らしに使えればと思って生やしてみたんじゃ」 「実とかあります?」 「保管しているのがあるぞ。実は初夏にならないと実らないから今年中にみなに分けてやるのは無理だが…」 「いえいえ。しかしそんなに危ないとなると子供には見せられませんね」 「だからわしは畑には生やしていないのじゃ。流石に落ちている実は拾って食べたりせんしな」 「今度見せてください」 「分かった。明日にでも持ってこよう」 -同時刻、洞窟の中- 「みんな…ごはんにしようね…」 「うん…」 妻や子供、仲間を失いさらに入り口もふさがれ意気消沈なゆっくり達は力なく食堂へ向かった。 「た…たいへんだよおお!!!!」 「どうしたの?まりさ…」 「ごはんが…ごはんがあああ!!!」 「いったいどうしたのよ!!」 「まさかごはんがない!!?」 食堂の前ではゆっくりが集まっていた。 「これは!!!!ひどいわ…」 「むししゃんだべちゃかったよおおお!!!!」 「まりさのだいすきなきのこがあああああ!!!」 「だいこんさんがああ!!!たべだがっだよおおお!!!!」 食糧は半分ほどが焼焦げていた。実は虐待お兄ちゃんがゆっくりが食事をしている時にこっそりと燃やしていたのだ。 「これじゃあ…ふゆこせないよお…」 「ゆっくりできないよお…」 「ゆえぇえぇええん!!!!」 「おきゃあしゃんおにゃかしゅいちゃよお!!!!」 「と…とりあえずみんなごはんにしましょう…いつもよりすくないけど…」 ゆっくり達に食事が与えられた。いつもの半分も無い。 「「「「むーしゃむーしゃ…」」」」 「「「むーちゃむーちゃ…」」」 いつもだったらしあわせー♪な食事も今は悲しくて悔しくて辛くて味がしなかった。 「「ゆえぇええぇええん!!!!!」」 「「ぐやじいよおおお!!!!!」」 「「みゃみゃあ!!!!ゆっぐりできにゃいよおお!!!!」」 「「おいじぐないよおお!!!!みんなどいっしょにたべだいよおお!!!」」 「「あがじゃああん…いっしょにごはんたべだいよおお!!!!」」 洞窟内はゆっくりの涙声でいっぱいだった。 「ゆっぐ……もう…がまんできないよ!!」 「そうだよ!!ぜったいじがえじじでやるうう!!!」 「ごろじでやるううう!!!!じじいとばばあをごろじでええええ!!!!」 いつしか涙声は怒号に変わっていた。 そして1匹のれいむが叫んだ。 「ゆ!そうだよ、ぱちゅりーがいってたよ!!!こまったことがあったらおひさまがしずむところにいるどすにたすけてもらえって」 「そ…そうだよ!どすがいればにんげんにふくしゅうできるよ!」 ゆっくり達に希望の火が灯った。 「いこう!みんなでどすのところに!」 「で…でもおそとはさむいよ…それにいりぐちが…」 「ゆ…ゆぅ…」 「で…でも…そうしないと…」 「きめたよ!まりさはどすのところにいくよ!!」 「れいむもいくよ!このままじゃくやしいもん!」 「まりさ、いいことをおもいついたんだぜ!」 まりさは巣穴の中に入り白い綿を持ってきた。 「まりさ!それはあなたのたいせつな!!」 「そうだぜ!たいせつなもこもこさんなんだぜ!!」 「これをどうするの?」 「もこもこさんをきればあったかいんだぜ!これならおそとにでてもだいじょうぶなんだぜ!!」 「もこもこさんだったら…れいむのところにもあるよ!!もってくるね!」 「ちぇんももってるよ!ちょっとまっててほしいんだねー」 何匹かが巣から綿や藁など寒さを防ぐために持っていたものを持ってきた。 「これだけじゃ…みんなのぶんはないわね」 「ゆううう…」 「むきゅ、だったらだいひょうしゃがどすのところにたすけをよびにいってのこりはここでまってるというのがいいわ」 「どすをつれてくればいいんだね。わかるよー」 群の中で足が速くまた体力があるゆっくりが選抜された。 「あとは…いりぐちだね」 「どうしたらいいの…」 「むきゅ!みんなよくきいて、ゆきさんはおみずさんがかたまったものなのよ」 「ゆ!じゃあのめばいいんだね」 「みんなでかきわければいいんだよ!れいむさっそくいってくるよ!」 多くのゆっくりが入り口へ向かった。 「ゆんしょ!ゆんしょ!」 「ゆぴいいい!!つべたあいい!!!」 「むーしゃむーしゃ…」 「ぺっぺっぺっぺ!!!」 ゆっくりは雪をどかし始めた。 「みんなでがんばればどかせるよ!!」 「がんばるよ!!ぜったいみんなでゆっくりするよ!!」 「「「「「えいえいゆー!!!!」」」」」 ゆっくりは夜を徹して入り口を塞いでいる雪山を崩す作業を続けた。 つづく by 虐待おにいちゃん?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/127.html
ゆっくりという種族が幻想郷に突如蔓延して、どのくらい経っただろうか。 畑を荒らす害獣として駆除されたり、加工所というところでお菓子にされたりするくらいには、既に浸透していると思う。 中には俺のように、ペットして飼うものも少なからず存在していた。 「今帰ったぞ~」 「ゆっ!」 仕事が終わり、帰宅して扉を空けると、部屋の真ん中に鎮座していた生首が声を上げて駆け寄ってきた。 赤いリボンが特徴的な、ゆっくり種の中でも一番数が多いとされるゆっくり霊夢だ。 博麗の巫女によく似た顔で(と言うと、霊夢さんは怒るかもしれないが)、性格は基本的に温和で純粋無垢。 それ故にトラブルを起こすことも多々あるのだが……まぁ、その話はもうちょっと後で。 「ゆっくりしていってね!」 仕事で疲れてる俺に対する労いの言葉――ではなく、単にこいつらの口癖なのだが、兎にも角にも癒される。 可愛いなぁ、くそ。 俺の友人たちはよくこいつを買って食べているが、正直薄目に見れば人の顔そのものであるこいつらによく噛み付けるものだ。 しかも食う時に痛々しい叫び声上げるんだぜ? 悲痛すぎて言葉が出ない。 友人曰く、「お前もその内分かるようになる」らしいんだが……そういう日が来ないことを願う。 「待ってな、今晩飯作るから」 「ゆっくり待ってるね!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて晩飯を心待ちにしていることをアピールするゆっくり霊夢。 うぅん、ぷりちー。 気持ち悪がる人もいるが、俺にとっては可愛いペットだ。 晩飯を食べ終わると、読書タイムとなる。 最近友人になったパチュリーさんから借りた本を読みながら、まったりとした時間を過ごす。 ゆっくり霊夢は何をするでもなくぼーっと、たまにぴょんぴょん部屋を飛び跳ねて、「ゆっくりしてるね!」と言っていた。 ゆっくりの声には癒し効果でもあるのか、意識を阻害されることなく読書に集中出来る。 やがて切りのいいところで本を片付け、ゆっくり霊夢と遊ぶことにした。 「ほら、取って来い!」 「ゆ! ゆ!」 フリスビーを家の壁に穴を開けない程度に軽く投げ、ゆっくり霊夢に取って来させる。 ゆっくり種はその口癖と名前から勘違いされがちだが、飛び跳ねたり、野原を駆け回ったりと意外とアクティブな存在だ。 だから運動不足にならないよう、こうして遊んであげる必要がある。 俺が仕事に行ってる間に外に出してもいいんだが、もし野生のゆっくりアリスやゆっくりれみりゃと遭遇したときのことを考えると……駄目だ、放し飼いは認められない。 「取ってきたよ!」 口にフリスビーを加えたゆっくり霊夢が戻ってくる。 「おう、偉い偉い」 ゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は嬉しそうな顔をした。 その顔を見ていると、こっちの頬まで緩んでくる。 ……それと同時に、ある感覚が心の内より現れた。 「っ……」 「?」 不思議そうにこっちを見つめるゆっくり霊夢になんでもない、と首を振り、もう一度フリスビーを投げる。 せっせと追いかけるゆっくり霊夢を見つめながら、湧き上がる感情に戸惑いを覚える。 ――ゆっくり霊夢をいじめたい。 別に虐待をしたいわけではない。可愛いペットにそんな真似をしたくはない。 しかし、こう、なんというか……ううん、説明出来ない。 「ゆっくり取ってきたよ!」 再び戻って来るゆっくり霊夢。 俺は心のもやもやを打ち払うようにゆっくり霊夢の頭を撫で、そして振動させた。 「ゆっ!?」 小刻みにバイブレーション。 最初は驚いて逃げようとしたゆっくり霊夢の顔が、少しずつ赤らんでくる。 「ゆゆゆ、ゆー!! ゆー!!!」 甲高い声。時間の経過と共に、ゆっくり霊夢はどんどん発情していく。 荒んだ心を癒してくれる礼として、こうしてゆっくり霊夢に快感を与えてあげることは毎日の日課だった。 「……」 だが、今日の俺はなんとなく、手を止めてしまった。 中途半端なところで快感をストップされたゆっくり霊夢は慌てたように俺の手に擦り寄って、 「ゆ、ゆっくりして! もっとゆっくりしていって!」 潤んだ瞳で俺を見上げるゆっくり霊夢。 その視線を浴びて、 「……!」 何故か身体がゾクゾクする。 もっと見たい。 もっとこの目で見つめられたい。 「ゆー!!! ゆー!!! ゆー!!!」 だが、それと同時に可哀想だという感情も浮かび上がってくる。 俺は手をもう一度律動させ、ゆっくり霊夢を絶頂へと導いてやった。 未知の感覚に戸惑いながら、一週間が経過した。 臨時教師として慧音さんの手伝いをした俺は彼女と彼女の友人である妹紅さんと一緒にまったりとお茶を飲みながら歓談し、上機嫌だった。 「おーう、今帰ったぞー!」 扉を開ける。 ――瞬間、先程までの高揚した気分が嘘のように蒸発した。 俺はゆっくり霊夢に、家の中はどこをうろついてもいいから絶対に机の上には乗るなと言い聞かせてあった。 机の上には俺の大事なものがたくさん置いてある。 ゆっくり霊夢はそのことを理解したかどうかは知らないが、厳しく言っておいたので飼い始めてから三ヶ月、ずっと机の上に乗ることはなかった。 だが。 帰宅した俺を待ち受けていたのは机の上に鎮座してゆっくりと眠っているゆっくり霊夢の姿だった。 「……」 俺は机に近寄って、その惨状を目撃した。 綺麗に整頓されていた机の上は見事に荒らされ、物体のほとんどが破壊されていた。 アリスさんがくれた人形も、 妖夢ちゃんが作ってくれた剣神像も、 てゐから珍しく受け取った四葉のクローバーも、 幽香さんから頂戴した花も、 にとりさんと協力して発明したトランシーバーの試作機も、 みんなみんな、見るも無残に破壊され尽くされていた。 「……」 俺はどろどろとした心のまま、ゆっくり霊夢を起こした。 「ゆ……?」 とろんとした目を開け、俺が目の前に立っているのを認識するや否や、 「ゆっくりお帰りなさい!」 いつもの挨拶。 だが、俺の心はいつものように癒されはしない。 「なぁ、ゆっくり霊夢」 「どうしたの?」 「お前、なんで、机の上に乗ってるんだ……?」 「……ゆ!?」 俺の怒りのオーラを感じ取り、ようやく約束を思い出したのか、ゆっくり霊夢は慌てたように頭を下げた。 「ご、ご、ごめんなさいだよ!」 「謝るのは後でいい、理由を説明しろ」 「あのね、蝶々がね……」 ゆっくり霊夢が言うことには昼頃、窓の隙間から現れた蝶々を捕まえようと四苦八苦し、ようやく机の上で捕まえて食べ、そのまま眠ってしまったらしい。 あまりにも夢中で、俺との約束など「うっかり」忘れてしまっていたようだった。 うっかり。 それだけの理由で、俺の大切なものは破壊され、二度と元には戻らない。 俺はゆっくり霊夢を叩こうと腕を振り上げ、 「ゆーっ!!!」 目を閉じ、ぶるぶると震える姿を見て、静かに下ろした。 とんでもないことをしたとはいえ、三ヶ月間ずっと一緒に暮らしてきたペットだ。 暴力を振るうことは、俺には出来ない。 溜息をつき、ゆっくり霊夢を持ち上げ、そっと床に降ろした。 「ゆ……?」 「晩御飯にしようか」 ぱぁ、とゆっくり霊夢の顔が明るくなった。 「ゆっくり用意してね!」 先程の殊勝さが嘘のように、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを露にする。 「ふぅ……」 甘いな。 まったく甘い。 俺は、許してやるなんて一言も言ってない。 その日から、俺は帰りにある場所へ寄るようになった。 必然的に帰りは遅くなり、ゆっくり霊夢と遊ぶ時間はなくなる。 更に意識して朝飯と晩飯の量を減らしたので、ゆっくり霊夢は少しずつ文句を言うようになった。 「早く帰ってきてね!」 「たくさん遊んでね!」 「もっと食べたい!」 だが、俺はその声を悉く無視した。 少し胸は痛んだが、それでもこいつにはやったことの重大さを分からせてやらねばならない。 でないと、俺の怒りが収まらない。 俺のただならぬ様子を見かねた鈴仙さんから貰った精神鎮静剤を飲みながら、俺は準備が整うのを待った。 そして――三日後。 全ての準備は整ったのだった。 ゆっくり霊夢はまどろみの中にいた。 最近は自分の主人があまりゆっくりしてくれなくなり、寂しい思いをしていた。 だが昨日の夜、寝る前に彼は言ってくれたのだ。 「ここのところ、遊んでやれなくてすまなかったな」 「一週間の休暇を取ってきたから、ずっとゆっくり過ごそう」 「ご飯も今まで少なかったけど、豪華にするぞ」 「さ、今日は一緒の布団で寝ようか」 感激したゆっくり霊夢は、わくわくした気持ちのまま眠りに付いた。 一週間も、優しい主人とゆっくり出来る! だから、早く起きないと。 ゆっくり霊夢は寝返りを打とうとして――打てない。 「……?」 身体が動かない。 自分は今だ夢の中にいるのだろうか? なんだか息苦しい…… ゆっくり霊夢は静かに目を開いた。 「……!?」 そして映った光景に飛び上が――ることが出来ず、身体を震わせた。 自分の身体は、四角い箱の中に閉じ込められていた。 『んん゛っん゛ん゛ん゛ん゛……んん゛!?』 ゆっくりしていってね! 種族反射的にそう言おうとして、言えなかった。 自分の口に猿轡が噛まされており、更にその上からガムテープを貼られている。 周りは暗い。しかし自分の視点の場所だけ小さく四角い穴が開けられており、そこから外の様子が映し出されている。 そこには―― 「すぅ……すぅ……」 「ゆ……ゆっく……」 布団で眠っている、見慣れた主人と、ゆっくり霊夢の姿があった。 『ゆ!? ゆゆゆ!!?」』 混乱して喚くゆっくり霊夢、突然の事態に理解が追いつかない。 何故自分はこんなところにいる? 主人と一緒に眠っているゆっくり霊夢は何者だ? 「うぅん……」 と、その時。 主人が眠りから目を覚まし、起き上がった。 目をこすり、横で一緒に眠っていたゆっくり霊夢を見て―― ――惚れ惚れするような太陽の笑顔で、 「ほら、起きろゆっくり霊夢、いい朝だぞ」 『ちがうよ! そいつは偽者だよ!!!』 叫びたい。 しかし、その声は届かない。 やがて偽者のゆっくり霊夢が目を開き、開口一番、 「ゆっくりしていってね!」 「おう、ゆっくり朝飯にするか。昨日の約束通り豪華にいくぞ」 「ゆっくり作ってね!」 『待って! 気付いて!!!』 ゆっくり霊夢は泣きながら、自分と偽者が入れ替わっていることに気付いてくれと願う。 だが無情にも、主人はふんふんと鼻息を歌いながら台所に向かっていった。 『あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』 絶望が心を支配する。 だが、気付いていないのはゆっくり霊夢のほうだった。 これはまだ、始まりにすぎないのだと。 (見ているか、ゆっくり霊夢?) 俺は料理を作りながら、心の中でほくそ笑んだ。 一緒にいたのが偽者だということくらい、先刻承知している。 何故なら二人のゆっくり霊夢を入れ替えたのも、本物のゆっくり霊夢を閉じ込めたのも、全部俺だからだ。 (それがお前への制裁だ。ゆっくり楽しんでくれ) ぞくぞくするような背徳感を感じながら、意識して本物のゆっくり霊夢が閉じ込められている箱を見ないように努める。 ゆっくり霊夢は現在、透明の四角い箱に入れられ、更にその四方と天井をダンボールの壁で一枚一枚覆っている。 そんな面倒なことしなくてもそのままダンボールを被せればいいじゃないか、と思う奴もいるかもしれないが、まぁこれにはちゃんとした理由がある。 その理由は後ほど語るとして、偽者のほうを説明しておこう。 こっちのゆっくり霊夢は三日前、ゆっくり加工所に行って手に入れたゆっくりだ。 所員に事情を説明し、余っている預かり部屋を利用して仲良くなった。 こいつには一週間、俺の家で一緒に暮らせると伝えてある。 何か変なことを言い出さないかだけ少し心配だったが、流石ゆっくり、あまり深くは考えない性質のようだ。 俺は今から、この偽者ゆっくり霊夢を最大限にもてなす。 そしてその様子を、本物のゆっくり霊夢に見せ付けるのだ。 本来なら自分が得られたはずの待遇が、突然現れた自分の偽者に奪われる。 しかもその様子をまざまざと見せ付けられ、自分は食べることも、遊ぶことも許されない。 お仕置きとして、これ以上のものはそうそうないだろう。 さぁ、ゆっくり霊夢。 お前がどれだけのことをしでかしたのか、分かってくれよ? 『う゛わ゛あ゛あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』 ゆっくり霊夢は絶望の淵にいた。 どれだけ暴れても、どれだけ祈っても、自分の置かれている状況はこれっぽっちも変化しない。 朝食は豪華な豚カツだった。自分は何も食べていない。 昼飯までの間、二人はゆっくり過ごしていた。自分はきつい箱の中で息苦しかった。 昼飯は二人でどこかに出かけていた。孤独感が自分を押し潰すようだった。 夕食まで、二人はずっと遊んでいた。自分はただ身体が痒いのを我慢しているだけだった。 夕食は今まで食べてきた中で一番美味しかったお寿司だった。でも、やはり自分は食べられなかった。 そして、 「ゆー……ゆゆゆゆゆ……」 偽者のゆっくり霊夢は現在、主人の手によって振動を与えられていた。 「どうだ? ゆっくりしてるか?」 「ゆ……ゆっくりぃ……してるよぉ……♪」 『ゆっくりしてない!!! れいむは全然ゆっくりしてないよぉ!!!』 ゆっくり霊夢は快感を与えられている偽者の姿を滝の涙を流して見ていた。 滂沱のごとく流れ出る溢れ出る涙。何故、自分がこんな仕打ちを受けないといけないのか? ゆっくり霊夢の頭の中に、既に約束を破ったことは残っていない。 「んほおおおおおおおおおお!」 偽者ゆっくり霊夢が絶頂を迎えた嬌声を聞きながら、本物ゆっくり霊夢はこれがいつまで続くのだろうと考えていた。 それから太陽が昇り、また沈み、そして再び昇った三日目の朝。 空腹で朦朧とした意識を抱えながら、ゆっくり霊夢をうっすらと目を開いた。 映る光景は変わらず、静かに眠る主人と、そして主人の腕を枕に眠る偽者。 ようやく暴れたり叫んだりして体力を消費することが愚かだと気付いたゆっくり霊夢は、呆とした意識のまま、事態が変わることを待っていた。 がさ……がさ…… (……?) ふと気付く。壁の右側から何か音がする。 一体何だろうか? 確かめようにも、壁があって何も見えない。 やがて偽者ゆっくり霊夢が起き出し、ぴょんぴょん飛び跳ねて主人を起こす。 「ゆっくり起きてね!」 「む……もう朝か……」 ふわぁ、と欠伸をする主人。まだ眠り足りないようだった。 「ゆっくりご飯作ってね!」 「おう……だけどその前に」 「ゆ?」 「待ってる間暇だろ? いい遊び道具があるんだ」 そう言って。 主人はゆっくりと、自分の方向へ近寄ってきた。 『!!!』 これは千載一遇のチャンスかもしれない。 ゆっくり霊夢はありったけの力で出来る限り身体を震わせ、自分がここにいることをアピールする。 『れいむはここだよ! ゆっくり探してね!』 やがて映るのは主人の足のドアップ。そして、頭上から声。 「えーと、これだこれだ」 得心したような声。 同時に、ゆっくり霊夢の右側の闇が、突如として払われた。 『……!?』 どうやら、右側の壁が取っ払られたらしい。 もしかしたら脱出の糸口になるかもと、ゆっくり霊夢は明るくなった右側を、 見た。 「――――――ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」 声にならない悲鳴。 閉じ込められたときよりも大きい、今までで一番の驚愕。 「ほら、蛙さんの人形だぞ」「ゆっくり楽しむね!」という主人たちの声も聞こえない。 何故なら。 そこにいたのは。 『うー♪』 『だずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 自分と同じく箱詰めにされ、自分と同じゆっくり霊夢を食べている途中の、ゆっくりれみりゃの姿だった。 (気付いたかな……) 俺は朝食の準備に取り掛かりながら、昨夜のことを思い出していた。 ゆっくり霊夢の起床・睡眠時間は、永淋さんに頼んで作ってもらった気体状睡眠薬で周到に設定してある。 それをゆっくり霊夢の死角から呼吸用に空けておいた穴に流し込んで、眠気を調節するのだ。 だからゆっくり霊夢が起きる前に俺は起床し、加工所で買ったゆっくりれみりゃを入れた透明の箱を隣にセット。 同じく加工所で購入したゆっくり霊夢を中に入れ、準備は万端というわけだ。 箱の大きさはゆっくり霊夢に使った二倍、ちゃんと食べられるスペースはある。 ちなみに都合上ゆっくりれみりゃの口は防げないので、こちらの箱は少し値段の張る防音処理だ。 更にその上に右側――いや、ゆっくりれみりゃから見れば左側か、そこだけ空けた箱を被せてある。 偽者のゆっくり霊夢がゆっくりれみりゃに気付いて怯えたりしたら計画が台無しだからな。 そして全てを終えた俺は先程まで眠っていたフリをしていたわけだ。 自分の天敵がすぐ傍にいる恐怖。更にそいつは自分と同じ顔のゆっくりを目の前で食べているのだ。それも、毎日。 それがどれだけの恐怖か、俺には分からない。 俺の都合上、ゆっくりれみりゃは一日一匹のゆっくり霊夢しか食べられないので、かりかりして目の前のゆっくり霊夢をどうにかして食べようと躍起になるだろう。 それが更に、ゆっくり霊夢を襲う辛苦となる。 ゆっくり霊夢はどうするだろうか。 怯えてぶるぶる震えるだろうか。 我を忘れて泣き叫ぶだろうか。 それを想像するだけで、俺は――たまらない高揚感を得る。 あれから何日経過しただろうか。 ゆっくり霊夢には、もう時間の感覚が存在していなかった。 毎日毎日、自分が過ごすはずだった幸福の日々を目の前で見せ付けられる苦痛。 自分を食べようと、いらいらした様子で飛び回っているゆっくりれみりゃの恐怖。 それが何も口にしていない空腹と身動きが取れないことの不快感とごちゃ混ぜになり、混沌と化していた。 『ゆっくり……したい……』 考えることはもはやそれだけ。 些事を考える余裕など、今のゆっくり霊夢にあるはずもなかった。 「美味しかったなぁ、ゆっくり霊夢!」 「ゆっくり美味しかったね!」 ゆっくり霊夢が食べたことのない、ブ厚いステーキを食べ終わって、主人と偽者ゆっくり霊夢は満足した様子だった。 ステーキ。幾度となく食べたいと主人に言い、その度にあしらわれて食べる機会のなかったステーキ。 本来なら自分が食べていたはずの、ステーキ。 ゆっくり霊夢の中に偽者への憎悪が込み上げ、だがすぐに虚脱感に襲われ萎んでしまう。 もう、何をする気にもなれなかった。 右側には未だにゆっくりれみりゃが自分を食べようと、ぱたぱた飛び回っている。 壁がある限り襲ってこないとは分かっていても、本能的な恐怖は拭い去れない。 もう、ゆっくり霊夢の精神はボロボロだった。 「さて、遊ぶか」 「ゆっくり遊んでいってね!」 「そうだ、今日は面白い玩具があるぞ」 「本当!?」 「おう。ちょっと目隠しするぞ、楽しみにしておけ」 「ゆっくりわくわくするね!」 食事の片付けが終わった主人は、偽者ゆっくり霊夢に目を布で縛っていた。 そして、本物ゆっくり霊夢の方向に歩み寄る。 『……!』 主人が自分の方に近付くのは、どれだけ久しいことか。 ゆっくり霊夢の中に、淡い希望が芽生えた。 もう身体を震わせる体力は残っていない。 ただ、主人が自分を見つけてくれることを祈るだけだ。 「えーと、何処だったかな……」 しかし、主人は期待も空しく、ゆっくり霊夢の死角へと移動してしまった。 希望が潰える。しかし、落胆する体力すらない。 自分の左側からがそごそという音。 結構時間がかかっている。 「お、あったぞ!」 ようやく主人が喜びの声を上げた。 と、同時。 いつかのときと同じく、ゆっくり霊夢の左側の壁が取っ払わらわれた。 反射的に、視線がそちらへ泳ぐ。 そして。 また、いた。 『れ、れれ゛い゛むぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ううぅ゛ぅ゛!!!』 『ゆ゛! ゆ、ゆゆゆゆ゛っく゛り゛し゛て゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 発情し、顔は真っ赤にして目を血走らせたゆっくりアリスと。 そのアリスに襲われ、世にも恐ろしい顔で絶叫を上げる同種のゆっくり霊夢の姿があった。 『…………!!!』 世にも恐ろしい光景に、悲鳴を上げることも出来ず、咄嗟に目を逸らすゆっくり霊夢。 だが逸らした先には、 『うー!!!』 空腹で般若の表情をしたゆっくりれみりゃが、自分を食べようと壁をかりかり引っ掻いている。 『……!! …………!!!』 まさに前門の虎、後門の狼。 ゆっくり霊夢はただ、この状況をなんとかしてくれと願いしかない。 やがてゆっくりアリスが交尾を終えると、ゆっくり霊夢は黒く朽ち果てるのと同時に蔦を伸ばし、子供を生む。 ゆっくりれみりゃの箱より更に四倍は大きい箱の中で、小さな赤ちゃんゆっくり霊夢がぽんぽんと生まれた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆっくりしていってね!』 『れ、れいむ……れ゛い゛む゛ぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!』 だが、その瞬間。 発情が収まらないゆっくりアリスが、なんと赤ちゃんゆっくり霊夢に襲い掛かった。 『ゆ゛!? ゆ゛ゆ゛っ!?』 赤ちゃんゆっくり霊夢は突然の出来事に暴れるが、成人したゆっくりアリスに力で適うはずもなく。 他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、怯えて隅に固まる。 そして交尾は終わるが、赤ちゃんゆっくりは黒ずんだだけで、子供を生むことはなかった。 ゆっくりアリスはその様子はじっと見つめた後、 ぎらり、とその視線を他の赤ちゃんゆっくりたちに移した。 その顔は、未だ発情したまま留まっており。 始まる、地獄絵図。 ゆっくり霊夢が覚えているのは、ここまでだった。 ついにゆっくり霊夢は意識を失い、失神してしまった。 冷たい、空気。 ゆっくり霊夢が目を開くと、そこは今まで暮らしていた部屋の中だった。 「……ゆっく!?」 吃驚して声を上げる。 声が、出る。 ゆっくり霊夢はもう猿轡をしておらず、狭い箱の中にも閉じ込められていなかった。 何が起こっているのか。 周囲を見渡すが、左右にゆっくりれみりゃやゆっくりアリスの姿は見当たらない。 あるのは、激しい空腹感だけ。 「ゆ、ゆっくりー!!!」 とにかく、理由は分からないが助かったことだけは分かり、ゆっくり霊夢は歓喜の声を上げた。 と、そこに、 「おう、起きたか?」 台所で朝食の支度をしていた主人が、ゆっくり霊夢の方を振り向いた。 「ゆっ……」 その顔を見た瞬間、今までの監禁生活で押さえ込んでいた様々な感情が溢れ出し。 ゆっくり霊夢は号泣しながら、主人の足元に飛びついた。 「う゛わ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛ん゛!!!」 「おいおい、どうしたんだよ?」 主人は優しくゆっくり霊夢の身体を抱きかかえ、その涙を拭ってやる。 「ゆ、ゆ゛っく゛りて゛きる″! ゆっくりできるよぉぉぉ!!!」 「あぁん、お前何言ってるんだ……?」 わけが分からん、といった具合に主人は首を捻った。 だがその顔が笑いを堪えていることに、果たしてゆっくり霊夢は気付いているのだろうか? 「まぁいいや、朝食にするぞ」 「ゆ! 朝ごはん!?」 とにかくお腹が空いていた。寿司、ステーキ、自分が食べられなかった数々の豪華な食事を思い出し、思わず涎がこぼれそうになる。 激しい期待を込めて、調理中の料理を覗き込むゆっくり霊夢。 「……ゆ?」 だが、そこにあったのは、人参、椎茸などの普通の野菜ばかり。 しかもその量はかなり少なく、この空腹を満足させられる代物だとは到底思えなかった。 「も、もっといっぱい欲しいよ!」 「あー、悪い。今まで一週間贅沢したツケでな。今日から一ヶ月くらいこれで我慢してくれ」 「ゆっくり!?」 嘘だ、とばかりにゆっくり霊夢は絶叫を上げた。 「やだ! 食べたい!! れいむもステーキとかゆっくり食べたい!!!」 「お前、あんだけ食べてまだ足りないのか? 少しは限度ってもんがあるだろ」 「食べてない! れいむは食べてないよ!!」 「嘘をつくなよ!」 主人の厳しい叱責。びくりとゆっくり霊夢の身体が震える。 主人にとって、あの偽者が本物だったのだ。 あまりの理不尽に、ゆっくり霊夢は涙を流して訴える。 「違うの! 今までのれいむは偽者だったんだよ!! だかられいむは食べてないの!!!」 「いい加減にしろ!」 主人はがっしりとゆっくり霊夢の頬を掴み、言い聞かせるように耳元に囁いた。 「これ以上文句を言うなら、『ゆっくり出来ないようにする』ぞ」 「――!!!」 ゆっくり、できないように、する。 その一言は、ゆっくり霊夢のトラウマを蘇らせた。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 絶叫。涙の奔流が止め処なく溢れ出る。 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は今までの人生で味わったことのない幸福感に包まれていた。 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、謝罪の言葉を口にするゆっくり霊夢。 その哀れな表情が……この上なく、俺の快感となる。 「じゃあ、文句は言わないな?」 「うん……」 「よーし、いい子だ。早苗さんから貰った野菜だぞ、ゆっくり味わって食べろよ?」 「ゆっくり食べるよ……」 消沈した様子のゆっくり霊夢。 それを見て、愛しさが込み上げてきた。 「ああもぅ、可愛いなぁお前は!」 ゆっくり霊夢を抱きしめて頬ずりする。 やっぱりこいつは最高のペットだ! 酷いことしたと思うって? でもそれって俺の愛なんだ! 愛ならしょうがないよね!!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1422.html
日差しの強い夏のある日 俺は家で団扇を扇ぎながら冷やしたお茶を飲んでいた こんな暑い日は冷たいものを飲むに限る 「・・・ごくすずし・・・!」 「ゆ・・・りでき・・・ね!」 ふと外を見ると家の近くにある木の下にゆっくりがいた れいむ種とまりさ種の二匹、どうやら木陰に涼みにきたようだ 二匹とも木に寄りかかりゆっくりしている ゆっくりは夏の日差しに弱い、あまり長く日光を浴び出ると中の餡子の水分が蒸発して死んでしまう ゆえにゆっくりは夏はよく水を飲み、長時間日差しを浴びるような行動を避ける ちなみにこの時期は川で死ぬゆっくりが急増するらしい まあ、それは置いておいて、良いいじめの方法を思いついたので早速ゆっくりのところにいった 「やあ、ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「おじさんなにかようなの?まりさたちはゆっくりしてるんだからじゃましないでね!」 「いやあね、今日は暑いからこの木の下でゆっくりしようと思ってね」 「ゆ!ここはれいむたちのひしょちだよ!にんげんはここでゆっくりしないでね!」 「ひどいなぁ、君たちに美味しいものあげるから、邪険にしないでおくれよ」 「ゆっ!おいしいものはやくちょうだい!」 袋に詰めた腐りかけのクズ野菜を切ったものをゆっくりたちに与える この時期のゆっくりは乾燥した食べ物よりも水分の多い食べ物を好んで食べる・・・らしい 二匹のゆっくりはそれに飛びつく 「「むーしゃ、むーしゃ」」 「「しあわせ~!!」」 なにがむーしゃむーしゃだなんで擬音っぽいものを喋りながら食べるんだよ意味ワカラン 今日みたいな暑い日はよけいにムカつく 「おじさんおいしかったよ!」 「もっとおいしいものちょうだい!これじゃぜんぜんたりないよ!」 「「そうしたらここでゆっくりさせてあげるよ!」」 「・・・じゃあおじさんのおうちにいこうか、そうすれば今の美味しいものが沢山食べられるよ」 常套句でゆっくりたちを誘い出す、9割は誘いに乗る 「おじさんはやくあんないしてね!!」 「れいむたちはたんきなんだよ!!はやくおじさんのおうちにつれていってね!!」 「はっはっはっ、じゃあいこうか」 「ゆっ!ここがおじさんのおうち?」 「そうだよ、ここがおじさんのおうちだよ」 「じゃあ、はやくおいしいものもってきてね!あつかったからゆっくりしたいよ!」 「ちょっとまってね、二匹ともこの箱の中に入ってくれるかい?」 そういって差し出したのはご存知透明箱×2 「ゆっ!?なんでこのなかにはいらなくちゃいけないの!?」 「おじさん!まりさたちをゆっくりできなくするつもりなんでしょ!!」 「おお、鋭いね、でもいまさら気づいても遅いんだよね、これが」 二匹を掴み箱に押し込む すばやくロック! 「ゆっ!おじさんひどいよ!ここからだしてね!」 「だせーっ!ここからゆっくりだせーっ!」 「我慢してね、いまからすっごくゆっくりさせてあげるよ」 外に出て砂利が敷き詰めてある庭の真ん中にゆっくりを詰めた箱を置く 日光を遮るものは何一つ存在しない 「じゃあ、二匹ともここで思う存分ゆっくりしてね!」 「あ、あづいよ!おひさまのあたらないところにもっでいっでね!!」 「ひざしがつよいよ!!こんなどこじゃゆっぐりでぎないーっ!!」 「そうかなぁ、おじさんはとってもゆっくりしてるよ!」 「「あづいよ”-!!!」」 「じゃあおじさんはおうちの中でゆっくりしてるからね!遠慮しないで暖かいお日様に当たりながらゆっくりしていってね!」 「お、おじざんまっでー!!」 「だじでぇぇぇ!!!」 太陽は今、丁度頭上に来ている じりじりと照りつける日光にいつまで耐えられるかねぇ 「「あぢゅいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」 「まりざぁぁ!!だずげでえええ!!ごのままじゃしんじゃうぅぅ!!!」 「れいむ”ぅぅ!!だべだよ!!ごのはごあがないよ!!!」 「ああああ!!ひがらびちゃうよぉぉぉ!!おがあざーん!!だずげでよー!!」 「だれかだずげでええ!!!まりざだぢをだずげでええぇぇ!!」 いい声で鳴くなぁ、胸がスッとする 最高の清涼剤だ 俺は横になって悲鳴を聞きながら昼寝を始めた 幻想郷の夕日はとても綺麗だ 空はどこまでも赤く染まっている そういえば、ゆっくりたちの悲鳴が聞こえなくなったな まさかもう死んだか? 「お”、お”びず・・・」 「ゆ”っぐりじだい・・・」 おお、まだ生きてた 「お、おじざん”・・・おねがいじまず!おびずぐだざい”!」 「ゆっぐり・・・おびず・・・ゆっぐり・・・でぎない”・・・」 随分干乾びてる このまま死なれてもつまらんので箱の中にたらいでもってきた水を入れてやると、勢いよく飲み始める 「・・・!う”め”!おびずめっち”ゃ”うめ!!」 「おびず・・・!おびぃずぅぅ!!」 「ゆっくり飲んでね!」 「ゆっくりいぎがえるよ”ーっ!」 「すっぎりぃぃー!」 そのまま水の流し込み続ける 飲みきれないので箱の中に水が溜まる 「・・・!おじざんみずおおすぎるよ”!もうじゅうぶんだよ!」 「ゆっく”りやべでえええ!!みずのみぎれない”ぃぃ!!」 「早く箱の中の水を飲みきらないと、ふやけて死んじゃうよ?ゆっくり早く飲みきってね!」 再び窮地に陥る二匹 先ほどはほしくて仕方が無かった水が今度は自分たちの脅威となっている 「「んぐ!んぐ!」」 ひたすら水を飲むゆっくり 自分たちの体積以上の水を飲み干した 毎度思うが、いったいどうなってるんだこいつら・・・ 「おじざん!もうまりざだぢはおうぢにがえるよ!」 「はやぐここからだじでね!ゆっくりがえるよ!」 「駄目だよ!二人には死ぬまでおじさんのおうちでゆっくりしていってもらうからね!」 「「ぞんな”あああ!!」」 「だ、だじでぐれないなら!せめてたべものちょうだいね!れいむたちおひるからなにもたべてないんだよ!」 「そういえばそうだよ”!おじざんおいしいたべものをちょうだいね!」 「残念だけどおじさんのおうちには君たちにあげる食べ物は何も無いよ!」 「ゆ”っ!じゃあどうずればいいの”!」 「そこでゆっくり餓死してね!」 「なんでえぇぇ!!ゆっぐり”じにだぐないよおぉぉ!!」 「おじざん!れいむだぢあやまるからゆるじでよ!!」 「謝るって言われてもなあ、二人は何も悪いことしてないでしょ?」 「そうだよ!まりさだぢなにもわるいごどじでないのに”ひどいこどずる”おじざんはゆっぐりじね!」 「おじざんどうじだらだじでぐれるのおおおお!!」 「死んだら外に出してあげるよ」 「「う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」」 二匹のゆっくりはその後も庭の真ん中に置かれっぱなしだ 「あぢゅいよおおおお!!!」 「だれがだずげでええええ!!!」 よりによって連日快晴が続いた 日が落ちるとおじさんがやってきて大量の水を与えられる 「ごんなにおびずい”らな”いよ!がぼがぼ・・・」 「ごんなにのべないぃぃぃ・・・んぐんぐ・・・」 しかし食事は一切与えられなかったため二匹は日に日に衰弱していった 地獄は五日目で終わった ゆっくりまりさはカンカンと照る日差しに耐えられず干からびて死んだ ゆっくりれいむは生きていたが目は虚ろでまりさの死に気づいていないようだった その後に与えられた水を飲みきれずふやけて死んだ ゆっくりさせられた結果がこれだよ! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1435.html
幻想郷の空をリリーが舞い、桜が咲き乱れ、鳥達が絶え間なくさえずっている。 そんなうららかな春の昼下がり。 20人あまりの少年達がただ広いだけの野原にやってきた。真っ先に彼らの目に止まったのは一組のゆっくりのカップルだった。 ゆっくり魔理沙とゆっくりアリスというかなり珍しい組み合わせのカップル。まだ年若いのかどちらもやや小ぶりだ。 大抵の魔理沙はゆっくりアリスが発情期になると見境なく自分を陵辱することを本能で理解しているので、アリスを避けようとするのだが、 アリスの性欲が他のアリスより希薄なのか、あるいは魔理沙の危機意識が他の魔理沙より低いのか、このカップルは今のところ順風満帆といった感じである。 「「ゆっくりしていってね!」」 少年達の気配に気付いたカップルは声をそろえてお約束のせりふを口にする。 警戒する様子は一切ない。普段から少年達と野原で遊んでいる二人にとって彼らは友達、いや時に捕食者であるゆっくりゃを追い払ってくれる頼もしい恩人達なのだから当然だろう。 だからこそ、このカップルはこんな隠れる場所もない野原でゆっくりしていられる。それほど少年達のことを信頼しているのだ。 「みんな、きょうもゆっくりしていってね!」 そう言いながら満面の笑みを浮かべ、顔だけしかない自身の体全体と弾力性のある皮を巧みに弾ませて少年達の下へ駆け寄ってきたのはゆっくり魔理沙。 最初から「いっしょにゆっくり」などと口にするのは自己中心的で傲慢で、人間や他のゆっくりを自分の居場所から追い払おうとすることの多い魔理沙種にしては珍しい。 一方のアリスも魔理沙のように一目散に飛び跳ねてくることはないが、あまりにも無防備な満面の笑みを浮かべながらゆっくりの名に相応しいゆったりとした動作でやってきた。 「きょうもゆっくりさせてあげてもいいわよ!」 一見すると上から目線ではあるが、これは妙にプライドの高いアリス種の特徴であって、本当に子供達を自分より下に見ているわけではない。 なんにせよ、この2匹が少年達を信頼していることを疑う余地はなさそうだ。 勿論、その信頼は少年達にだって伝わっている。 ある農家の末っ子の少年はアリスの偉そうな物言いに 「うわっ、こいつやっぱり生意気~」 と毒づきながらも、その表情はゆっくりたちにも負けない満面の笑み。 またある八百屋の少年は 「お前らに言われなくてもゆっくりするよ」 と魔理沙の頭(いや胴体か?)をなで、 狩猟で生計を立てる一家の次男坊は 「って言うか、いい加減森に帰れよ。俺達のいないときに襲われたら危ないよ?」 と、邪険にしながらも実は心配しているというツンデレぶりを発揮していた。 とにかく、ゆっくりのカップルは少年達が大好きで、少年達はゆっくりが大好きだった。 「ゆ?おにいさん、それなぁに?」 しばらく少年達と戯れていた魔理沙が彼らの持ってきたプラスチック製のボールの存在に気付いた。 すると、リーダー格の少年がそのボールを手に取り、誇らしげに掲げる。 「これはね、阿求さんからもらったサッカーみたいなちょっと激しい遊びでも僕達とゆっくりが一緒に楽しめるようになる道具だよ」 阿求というのは人里の要人で、可愛らしい少女である。 このリーダー格の少年は密かに彼女に好意を持っていたりするが、そんなことはどうでもいい。 「ゆ!本当に?魔理沙たちもいっしょにサッカーできるの?!」 その言葉に魔理沙もアリスも瞳を輝かせる。 当然ながらが激しいぶつかり合いを繰り広げる人間同士のサッカーにゆっくりが参加することなど不可能。 今まで少年達がサッカーを始めると疎外感を感じていた魔理沙達にとってこの知らせは非常に喜ばしいものだったのだろう。 「「ゆっくりサッカーしようね!」」 ボールの前で瞳を輝かせながら必死にサッカーを催促する2匹。 その視線に苦笑しながらも、リーダー格の少年はボールをふたに割ると、2つの半球の上にアリスと魔理沙を乗せる。 「よっ、と!」 2匹が半球の上に乗ったのを確認すると素早く、半球を閉じて球体に戻す。 それから、近所のゆっくり愛好家からもらったボールを保護するための空気穴のあいたゴムを手際よく被せる。 ちなみにこのゴムは真っ黒で内部の様子が一切分からないようになっている。 したがって、少年達には殆ど身動きが取れない状況に陥っている2匹の状態をうかがい知ることは出来ない。 それにこのボールは防音を重視した設計になっているので、口を押さえつけられまともに喋れないゆっくりの声なんて殆ど聞こえない。 しかし、少年達は日ごろ優しい阿求やゆっくりについて語りだすと止まらなくなる変だけどゆっくりが大好きな親切なお兄さんの「ゆっくりは振動を与えると喜ぶからボールの中に入れて蹴ってあげると良い」という言葉を信じて試合を開始した。 少年達はゆっくりが大好きなのと同様に阿求やお兄さんも大好きだから、彼らの言葉を疑うことなど微塵もなかった。 ところ変わってここは稗田邸のある一室。 「阿求様。こちらが先日注文していただいた妊娠ゆっくり用のゆっくりボールの試作品です」 そう言って、少女に大人のゆっくりとほぼ同じサイズのプラスチックボールを差し出したこれといった特徴のない男は幻想郷で1,2を争うゆっくり好き自称する変わり者。 「いつもありがとうございます。こちらがお代金と・・・わずかばかりではありますが、今後のゆっくりグッズ開発のための資金です」 プラスチックボールと引き換えに包みに入ったお金を差し出した彼女こそ人里の名家の当主、稗田阿求である。 「いえ、こちらこそ。いつも阿求様には助けていただいてばかりで・・・」 恐縮しながらも、もらえるものは遠慮なく懐にしまった男は思い出したように「説明書」と書かれた紙切れをボールのそばに置き、そそくさと稗田邸を後にした。 一人部屋に残された阿求は説明書を手に取り、そこに書かれた短い文章に目を通した。 『このボールには妊娠初期のゆっくりを入れてください。妊娠期の動きの鈍い母親を保護するほか、圧力で赤ちゃんが成長しにくくなり小ぶりになるため、母親は無痛で出産できます。』 人並みに常識のある人ならばこの説明書がいかに異常かすぐに理解できるだろう。しかし、阿求にとってはそれが良いのだ。 明らかに常軌を逸した思考のものが作ったそのグッズは、予想の斜め上を行く拷問道具として機能する。 彼が最初に作ったゆっくりボールは透明な箱にも劣らぬ閉塞感でゆっくり霊夢の心を、長きに渡る拘束があらゆる身体の機能を破壊しつくし、ボールから解き放っても身動き一つ取れない正真正銘の顔饅頭へと仕立て上げてしまった。 その次のペア用のゆっくりボールにはゆっくり魔理沙とゆっくりアリスを放り込んだ。そして自室に置いて気が向いたときに蹴り飛ばし、回して暇を潰した。 ボールに守られたゆっくりが殆ど怪我をしないのは腹立たしかったが、阿求はそのボールが気に入った。 蹴るたびに、回すたびに与えられる振動がアリスを欲情させ、同じボールに閉じ込められている魔理沙は内と外、双方からの脅威によって恐怖のどん底に陥れるのが非常に面白かった。 もっともそのボールは魔理沙とアリスが死んでしまった後に村の少年にあげたので、今は手元にないのだけれど。 思い出すだけで、稲妻で貫かれるような快感が全身を駆け巡る。 それから、ボールをあげた少年が可愛がっている野原に生息するゆっくりのカップルも魔理沙とアリスだと聞いたことを思い出して、頬を緩める。 今頃、信頼していた少年達に絶望を刻み付けられたゆっくり魔理沙は、少年達にどんな言葉を投げかけるのだろうか? 気がついたらパートナーを苦しめてしまっていたゆっくりアリスは、少年達にどんな態度をとるのだろうか? きっと魔理沙とアリスのことだから少年達の事情や気持ちなんてお構いなしに彼らを罵るのだろう。 ああ、可哀そうな少年達。ゆっくりのためを思ってやったことなのに、ただ私にだまされただけなのに。 きっと泣いて帰ってくるであろう少年達に涙ながらに訴えよう。「私はそんなつもりじゃなかった」って。 そうすれば、酷い言葉を投げかけたゆっくりなんかより、私のことを信用してくれるはず。 そしたら彼らにゆっくりの邪悪さと醜悪さを教えてあげて、それから皆でそのカップルゆっくりを殺しに行こう。 痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて・・・虫の息になったところでこう囁こう。 「何も知らないこの子達をだましてあのボールを使わせたのは私なのよ?」って。 馬鹿だから意味が理解できないだろうか?それとも妙に情緒面だけ発達しているから暴言を吐いてしまったことを後悔するだろうか? それから、「あなた達のせいで彼らはゆっくり嫌いになった。きっと彼らにたくさんのゆっくりが殺されるわ」って囁いて、それから止めを刺そう。 想像するだけで、濡れてくる。 -----あとがき----- ゆっくりを虐待するシーンそのものは殆どなし。 ホスト規制まじぱねぇよ。ケータイまで規制喰らってやがる。 ゆっくりゃの依存の対象になっている咲夜さんがうざいと抜かす不届きものに、 むしろ、その依存はいじめられている最中において絶望の中の微かな希望も同然であり、ゆっくりゃの虐め甲斐は何もせずとも勝手に「咲夜が助けてくれる」という幻想をひとりでに抱いていることにある。 すなわち、勝手に裏切られた絶望を味わうことにあるのだから、我々は西瓜の甘みを引き立てる塩のような存在として咲夜さんを崇めるべきだ、とか 揺さぶられて感じているゆっくりアリスでフルボッキしちゃう、とか 色々語りたいことがあるというのに・・・ふぁーっく。 ボールに需要があるかなんて全く気にせず、思いつきとノリと勢いだけで素人が書いたものなので非常に読みづらいでしょうが、目を通していただけると幸いです。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3086.html
その5より 「おおおにいさん!! きょきょきょうは、れれれいむをぎゃくたいしてね!!!」 翌日、れいむは男の足音が聞こえてくるや、男の言葉を待たずして、精一杯の声でそう叫んだ。 そうでもしないと、奮い起した勇気がいつ萎んでしまうか分からないからだ。 現に、今のれいむは朝から一度も震えが止まらなかった。 しかし、言ってしまった以上、後戻りはできない。する気もない。 自分の存在意義がかかっているのだから。 「ほう、ようやくお前の出番が来たか。待ちくたびれたよ」 男はさも嬉しそうに、扉越しに声をかける。 対して、まりさとありすは、何を馬鹿な事を!! と言わんような口調で、れいむに詰め寄ってくる。 「れいむ!! なにをいってるの!! ゆっくりばかなことはいわないでね!!」 「そうよ、れいむ!! れいむがぎゃくたいされることはないわ!! ここは、まりさととかいはのありすに、まかせておけばいいのよ!!」 まりさもありすも、予想通り、れいむを止めにかかる。 しかし、ここで虐待を止められるわけにはいかないのだ。 まりさと対等になるためにも。 ありすより先に、まりさにプロポーズするためにも。 「まりさ、ありす、ゆっくりありがとう!! でもれいむはへいきだよ!! きょうは、ゆっくりしていってね!!」 「ゆぅぅ!! うそつかないでね、れいむ!! こえがふるえてたよ!! れいむがいじめられることなんてないんだよ!! きょうはまりさにまかせてね!!」 「もうきめたんだよ、まりさ!! それに、いつまでもまりさとありすにたよってばっかりじゃいられないよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむこそゆっくりりかいしてね!! れいむがいじめられること、ないんだってば!!」 「なんといわれても、れいむのかんがえはかわらないよ!! おにいさん!! ゆっくりはやく、れいむをつれていってね!!」 埒が明かないと感じたれいむは、さっさと男に連れて行けと要求する。 いつまでもまりさやありすと話をしていると、せっかく奮い立たせた勇気が萎えてしまいそうになるのだ。 そのため、多少強引ではあったが、れいむは二匹との会話を切り上げた。 「ふふ、久しぶりに、れいむを苛め倒すことが出来るよ。楽しみで仕方がないぜ」 男はれいむの部屋の鍵を開けると、扉を開けた。 その手には、一月ぶりに見る、恒例の箱が収められている。 この部屋と虐待部屋を行き来するのに、かつて男が使っていたものだ。 れいむはそれを見るや、体が委縮してしまう。これから虐待をされるのだと、否応なしに思い知らされるのである。 「さあ、れいむ。この箱の中に入れ」 男が木箱の蓋を開けて、命令してくる。 両壁からは、突然まりさとありすの声が聞こえなくなった。 何を言っても無駄だと気づいたのだろうか? それはそれで好都合だが、いざ声が聞こえてこないと不安になってくるのも事実だ。 生物(?)の心理とは、本当に不思議なものである。 れいむが完全に入ったことを確認した男は、木箱の蓋を閉める。 そして、れいむに一言言葉をかけた。 「お前だけは、利口なゆっくりだと思っていたのに、どうやら俺の見込み違いだったようだな」 利口なゆっくり。 この場合、頭がいいという意味ではなく、卑怯・狡猾という意味であろう。 二匹に虐待を任せ、一匹気楽に過ごしていたれいむに対する皮肉であろうか? 何とでも言うがいいと、れいむは心の中で反発した。 男は知らない。 虐待されることこそが、れいむの望みであることを。 これこそが、自分がこれから生き残る上での最善の方法であることを。 虐待されることは、すなわち将来への布石なのだといういことを。 自分が勝者だとおもっているであろう男は、れいむから見たら自分に従って動くピエロのようなものであった。 男の規則正しい足音が聞こえ始めた。移動を開始したのだろう。 これから一か月ぶりに、れいむは虐待を受ける。 れいむは、再度耐えしのぐ決意を固めた。 およそ一月ぶりに受けた虐待は、予想通り、死んだ方がマシといえるほど苦しいものであった。 それでもれいむは必死に歯を食いしばり、男の責苦に耐え続けた。 悪魔の拷問ような一時間が過ぎた時、れいむはあまりの激痛に意識を手放してしまった。 それでも男はきっちり時間どおり終えて、部屋に戻してくれた。 れいむが目を覚ましたのは、翌日の朝方であった。 虐待を受けてから、丸々20時間近く眠っていたことになる。 昔は虐待を受けても、ここまで長く休息を取ったことはなかった。 やはり、久しぶりの虐待に、体が付いてこなかったのだろう。 れいむは起き上がると、未だ痛みの引かない体を引きずりながら、ドッグフードと水の置かれている部屋の隅に向かい、もそもそと食べ始めた。 まりさとありすはまだ寝ているのか、物音一つ聞こえなかった。 少し残念ではあるが、れいむももうひと眠りしたいので、好都合でもあった。 何しろ、れいむは今日も男の虐待を受けるつもりなのだから!! まりさやありすに言えば、絶対に反対されるだろう。昨日の様子を見て入れば、考えるまでもない。 しかし、虐待を一回受けた程度でまりさと対等になったなどというおこがましいことは、さすがにれいむも考えていなかった。 まりさの受けた回数と同じとまではいかなくとも、少なくとも一週間分くらいは虐待を受けなくては、まりさと同じ位置に並べない。 だからと言って、ありすがいつまりさに告白するか分からない以上、三匹で順番に虐待されるなんて、悠長なことは言っていられない。 ほんの一月前までは、毎日のように虐待をされ続けてきたのだ。 それでも、れいむは生きている。悔しいが男の加減は、それだけ正確なのだろう。 これで障害が残ったりするなら考え物だが、そんなこともない以上、れいむは今日も明日も明後日も虐待してもらわなければならない。 そのためには、まず体力を回復させることが、何をおいても重要である。 れいむは食べ終わると、再び男がやってくるまで、眠りについた。 「れいむ!! いいかげんにやすんでよ!!」 「そうよ、れいむ!! これいじょうむりはやめてね!!」 れいむが虐待される決意をしてから、一週間が経過した。 まりさとありすは、2〜3日はれいむを説得し続けたが、れいむが以前のありすのように意志を曲げないと分かると、次第にれいむの心意気をくんでくれるようになった。 しかし、それでいて二匹のこのセリフ。れいむを行かせまいと必死で止めている。 納得したというのに、二匹がれいむを止める理由。 それは、れいむがこれで一週間連続で虐待をされ続けているためである。 どんなに止められようと、れいむは虐待され続けた。 男もそんなれいむの狂気じみた様子に、何か思うところがあったのだろうか? れいむの言い分を聞いて、毎日虐待をし続けてくれた。 しかし、虐待を受けているというのに、れいむは嬉しかった。 自分の思い通りに事が運んでいることに満足していた。 れいむにどんなにやる気があろうと、目下最大の懸念は、男がれいむを指名してくれるかというものであった。 如何に自分から名乗り出ようと、れいむを心配するまりさとありすも必ず名乗りを上げてくる。 心配してくれるのは嬉しいのだが、この時ばかりは、二匹のお節介も鬱陶しいと思わざるを得なかった。 気分屋の男だ、その日の気分次第ではれいむを虐待してくれないかもしれない。まりさやありすを選ぶかもしれない。 しかし、れいむには時間がないのだ。最短でまりさと対等にならなければならないのだ。 それを男は見据えているかのように、れいむを虐待してくれる。 れいむは、すんなりと事が運ぶことに満足し、今日も虐待の痛みに必死で耐えた。 虐待が終わり、れいむは部屋に戻された。 いつもなら食事をしてすぐに寝付くのだが、今日のれいむは中々寝られなかった。 嬉しかったのだ。 れいむの目安としていた一週間が終わったのだ。 これでやっとまりさとありすに、負い目を感じることはなくなる。 まりさと同じ高さに立てる。 そう考えると、ついついニヤケ面になってしまい、体の痛みも忘れてしまいそうになる。 そんなれいむに、両隣から声が掛って来た。 「れいむ!! だいじょうぶなの!?」 ありすの声である。 余程心配だったのだろう。 れいむの企みを知らぬありすは、必死にれいむの名を呼び続けてくる。 「れいむ!! あしたはぜったいにまりさがぎゃくたいされるからね!! これいじょう、れいむがいくんだったら、ぜっこうだよ!!」 まりさの言葉。 絶交とは、温和なまりさがよく口にしてきたものである。 危なかった。ノルマが達成した後で助かったものだ。 まりさと一緒になるために頑張っていたのに、そのまりさに嫌われてしまっては、本末転倒である。 「ゆっ……わかったよ、まりさ……あしたは……まりさにまかせる…ね……」 「ゆっ!?」 今まで頑として、まりさの言葉に耳を傾けなかったれいむが、いきなり素直になったのを受け、まりさは言葉を詰まらせた。 しかし、れいむの言葉はまりさにとっても、嬉しかったのだろう。 久しぶりに、まりさの声が落ち着きを取り戻した。 「ゆうぅ!! やっとれいむが、まりさのいうことをきいてくれたよ!!」 「ごめんね……まりさ………しんぱいばっかり……かけて」 「まったくだよ!! ゆっくりはんせいしてね!!」 「ゆっくり……はんせいするよ……」 「れいむ!! あしたはまりさだけど、そのつぎはありすがいくからね!!」 「ゆっ……ゆっくり…りかいしたよ……ありす……がんばってね……」 「まったく、しょうがないわね!! あとはとかいはにまかせなさい!!」 「おねがいね、ありす……でも……そのつぎは………またれいむがいく……からね」 「なにいってるの、れいむ!! れいむはしばらくおやすみよ!!」 「そうだよ、れいむ!! あとは、まりさとありすにまかせてね!!」 「だめだよ……れいむだって……まりさとありすの……やくにたちたいよ……ゆっくりなかまはずれは……やめてね」 「ゆぅぅ……やっぱりれいむはいじっぱりだよ!!」 まりさは最後に困ったような言葉を吐きながらも、最終的にはそれを認めてくれた。 元々、れいむが虐待をされることに反対だったわけではなく、れいむの行き過ぎる行いに対して苦言を呈していたのである。 れいむがしっかりと順番を守ってくれるのなら、まりさはれいむの意志を尊重してくれるつもりなのだ。 やはり、まりさは最高のゆっくりである。 この一週間、地獄の苦しみに耐えたかいがあったというものだ。 これで、準備は整った。 後はありすより先に、まりさに告白をするだけ。 しかし、物事にはタイミングというものがある。 少しでも確率を上げるためにも、その時に告白するのがベストだろう。 あの呑気でお人よしのれいむは、この時もうすでに存在していなかった。 世の物事すべてを損得の計算で考えられるように変わってしまったのである。変わらざるを得なかったのである。 それだけこの異常な空間が、れいむを変えてしまったのである。 しかし、れいむは自分が変わってしまったことに気付きもしない。いや、例え気づいていても、どうも思わないだろう。 すでに賽は投げられたのだ。 もう振り直しは出来ない。どの目が出ようと、突き進無以外道はない。 れいむは、そのまま少しの間二匹とお喋りをし、その後すぐに意識は深い深い海の底に落ちていった。 自分の成功を信じながら。 れいむの無茶苦茶な一週間が終わり、まりさとありすを含めて、三匹でサイクルを組んで虐待される日々が始まった。 すでにまりさ→ありす→れいむと一回り虐待は終了しており、今日はサイクルが始まってから、れいむが二回目の虐待を受ける日であった。 それと同時に、れいむが例の作戦を実行に移し出すと決意した日でもあった。 今日、男の虐待から戻ってきたら、まりさに告白しよう。 れいむはそう決めていた。 そのタイミングを選んだ理由はいくつかある。 一つ目は、虐待帰りだということである。 普通に告白をするより、虐待を受け心身ともに疲れている方が、まりさの気を買えるだろうという、れいむなりの考えである。 それなら、虐待一週間を終えたすぐの方がいいのではと思うかも知れないが、これについても、れいむなりに思うところがあった。 あの場で告白してしまったら、れいむの考えを見透かされる可能性があったからである。 見透かされるとは、虐待を受け続けた理由が、まりさに告白するためだとバレテしまうことを意味する。 そんなことを知られては、計算高いゆっくりだと、逆に引かれてしまいかねない。 しかし、数日置けば、さすがにそこに結びつけることはなくなるだろう。 二つ目は、あまり悠長に構えている時間もないということである。 作戦はただ告白するだけでなく、ありすより先にするというのが根幹の部分にある。 れいむも出来ることなら、もっと時間を置きたいのだ。 虐待のノルマを達成したといっても、それは所詮れいむだけが考えていることである。 まりさからすれば、れいむなんてまだまだ苦しんでないよと感じられるかもしれない。 だからこそ、今後もっと虐待を受け続けていけば、それだけまりさに近づくことが出来るのである。 しかし、悠長に構えていてありすに先を越されてはたまらない。 そういった様々な要素を考えまとめ、れいむは今日まりさに告白することを決意したのである。 男に虐待部屋に連れてこられ、今日も虐待が始まった。 その日れいむに怯えはなかった。 いざ告白を決意しても、ちゃんとまりさに伝えることが出来るか不安でいっぱいなのだ。 それに、ちゃんと告白できたとしても、まりさがれいむの告白を受けてくれるかどうかも分からない。 その気持ちが、虐待の不安を押し退けてしまったのである。 体が虐待に慣れてきたことや、虐待内容が以前行われた事の繰り返しであるということも、れいむにあまり不安を与えない要因となったのだろう。 れいむは、虐待の痛さに必死で耐えながらも、頭の中では今後のことばかりを考えていた。 虐待は終了し、れいむは部屋に帰された。 いよいよ告白の開始である。 痛さと疲れはあるものの、ゆっくりのくせにアドレナリンでも出ているのか、れいむはそれをほとんど感じなかった。 ゆっくりは思い込みの生物であるという学説がある。 思考のすべてを今後のプロポーズに費やしたれいむは、自分が痛いということを忘れてしまい、それが体にも影響しているのかもしれない。 ある意味羨ましい体である。 と、れいむがどういうふうに切り出すか悩んでいると、当のまりさの方かられいむに声をかけてきた。 「れいむ!! ゆっくりだいじょうぶだった?」 「ゆぅ!! ゆっくりだいじょうぶだよ!! ぜんぜんへっちゃらだよ!!」 いつも通りのやり取りであるが、れいむは言葉にしてからしまったと思った。 虐待後を狙ったのは、苦しみながらも告白することで、まりさの気を最大限引き寄せる効果を狙ってのつもりだったのに、うっかりと普通に話をしてしまった。 考えに夢中で痛さを感じないのも良しあしである。 こうなったら作戦実行日を変えるか? いや、やはりそれは出来ない。 ありすがいつ告白してくるか分からないのだ。あまり時間はかけたくない。 それに、せっかく今日に計画を合わせてきたのだ。 れいむは気持ちの面でも最高潮に達している。今なら、れいむの有りっ丈の気持ちをまりさに伝えきることが出来る。 れいむは、無駄な事を考えることは止めた。 最初から出鼻を挫かれたのだ。もう怖いものなどありはしない。当たって砕けろ!! いや、砕けたくはないけど、そんな意気込みで言え!! 本心をまりさにぶつけることにした。 「まりさっ!!」 「ゆっ!? なあに、れいむ?」 「れいむは、まりさがだいすきだよ!! まりさのことを、ゆっくりあいしているよ!! れいむといつまでもゆっくりしていってね!!!!」 「!!!」 言った!! 言ってしまった!!! もう後には引けない。賽は投げられた。 れいむの愛の告白に、まりさは何も返事を返してくれなかった。 しかし、一瞬、言葉に詰まった様子を見せた。相当驚いているのだろう。 こんな場合だというのに、告白なんてしてくるんだ。無理もない。 れいむは緊張で、喉(?)が乾いて仕方がなかった。 一刻も早く、水を飲みたい。 しかし、まりさの返事を聞くまでは、なんとか我慢するつもりだった。 壁越しの告白のため、姿は見えないのだが、水を飲んでしまったらまりさに振られる気がしたのだ。 様は願掛け、気分の問題である。 30秒が過ぎ、一分が経過しても、まりさは一向に口を開かなかった。 さすがにれいむも焦りだした。 やはり、まりさはれいむのことを好きじゃないのか? れいむじゃ、まりさには釣り合わないのか? 様々な感情が去来する。 しかし、ようやくまりさが口を開いて来た。 考えが纏まったのだろう。 「れいむ……れいむのきもちはうれしいよ」 「ゆっ……」 「まりさもれいむがだいすきだよ……」 「ゆゆっ!!」 「……」 そう言って、まりさは再び沈黙してしまう。 大好きだよ。 愛の告白をして大好きを言われたのだから、普通に考えれば、れいむの気持ちを受け止めたと考えていいのかもしれないが…… その後の間が嫌な気分にさせる。 なんとか傷つけないように断る手段を考えているような気分を感じさせる。 れいむは、やはり自分ではダメだったのかと弱気になった。 しかし、次の瞬間…… 「だから!! だから、まりさといっしょに、いつまでもゆっくりしていってね!!!」 …… ……… ………… れいむは唖然としてしまった。 もう十中八九、玉砕を覚悟していた。 それなのに、まりさはれいむの気持ちをしっかりと受け止めてくれた。 れいむは、ただただ感情を整理できず、言葉を詰まらせた。 「れいむ、どうしたの?」 何も話してこないれいむが気になったのだろう。言葉をはさんでくる そんなれいむの心情に気付かないのが、まりさらしいと言えばまりさらしい。 れいむは、とにかく何か話さなければ、言葉を掛けなければと、考えを纏め上げようとしたが…… 「ゆ……ゆゆ………ゆゆ……」 「ゆっ?」 「ゆ……ゆあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁぁ――――――――――――んんんんんん!!!!!!!」 「れ、れいむ!! どうしたの!!」 一気に感情が爆発してしまった。 爆発は涙となって、れいむの目から止めどなく溢れてくる。 嬉しかった。まりさが自分を選んでくれたのが。 嬉しかった。あの虐待された日々が、無駄ではなかったことが。 嬉しかった。れいむにはっきりと居場所が出来たことが。 れいむは、今までの自分の行動を振り返り、延々と泣き続けた。 「れいむ、なきすぎだよ!!」 「ゆぅ……ゆっくりごめんね、まりさ!! でも、れいむ、すごくうれしかったんだよ!!」 「まりさもうれしかったよ!! れいむがすきといってくれて!!」 「まりさ!!」 「れいむ!!」 ようやくれいむは泣きやんだ。泣きやむまで、実に10分もの時間を費やしてしまった。 れいむは水が飲みたかったことも忘れ、まりさとの話に興じ始める。 「れいむ!! いまはできないけど、けっこんしきはここをでられたらゆっくりしようね!!」 「ゆぅ!! そうしようね!!」 「それから、れいむはまりさのおうちにゆっくりくるといいよ!!」 「ゆゆっ!? いいの!!」 「あたりまえだよ!! れいむのおうちはまだできていないんでしょ? それに、れいむはまりさのおよめさんだもん!! いっしょにくらすのは、ゆっくりあたりまえだよ!!」 「ありがとう、まりさ!!」 「まりさのおうちはおっきいよ!! にんげんさんのおうちみたいにおっきいから、ゆっくりたのしみにまっててね!!」 「ゆっ!! ゆっくりたのしみだよ!! ゆっくりはやく、まりさのおうちにいきたいよ!!」 「あと、おちついたら、はねゆーんにもいこうね!!」 「ゆっくりたのしみにしてるよ!!」 人間のお家と同じくらい大きいとは、まりさも大げさに出たものだ。 まあ、所謂物の例えだろう。 しかし、れいむは「うそつかないでね!!」なんて、無粋なセリフを吐くつもりはない。 まりさは、れいむを喜ばせるために言っているのだろう。れいむだって、そのくらい分かるつもりだ。 こんな幸せなひと時を、自分から壊す必要はない。 自分の居場所が出来たばかりか、出会ったときからずっと好きであったまりさと、これからは永遠にゆっくりすることが出来るのだ。 れいむの頭の中は、まりさとの会話でいっぱい幸せいっぱいで、何にも考えられなかった。 しかし、次にまりさが言った言葉が、れいむに重要なことを思い出させた。 「ありす!! ありすも、まりさとれいむを、ゆっくりしゅくふくしてね!!」 「!!!」 そう、作戦が完璧なほどに決まったことで浮かれまくってしまい、すっかりありすのことを忘れていたのである。 れいむはなんと言葉をかければいいか分からなかった。 そもそも勝者であるれいむが、敗者であるありすにかける言葉なんて、どれも陳腐に聞こえるだろう。 裏切ったれいむの言葉なんて、都合のいい言葉としか感じないだろう。 事実、れいむの心の中は、ありすへの優越感で満たされている。 何とか考えずにいようとしても、すぐに思考の中に入り込んできてしまう。 とても甘美な麻薬のようなものだ。 れいむの口から出る言葉も、自然とありすを見下すものになってしまうだろう。 しかし、ありすへの背信行為をしておきながらも、ありすとは親友でいたい。嫌われたくない。 これもまたれいむの本音だった。 それは、勝者だからこそ持ち得ることが出来る、自分に甘く都合のいい考えである。 ありすのことを全く考えてない、自己中心的な思考である。 しかし、例えそれが分かっていようと、れいむはありすとの友情も諦めきれなかった。 それだけありすのことが好きだったのだ。 ありすは、まりさの言葉に、なかなか返事を返さない。 一体、どんな心中でいるのだろう。 自分を裏切り、まりさを手に入れたれいむに、仕返しでも考えているのだろうか? それとも、まりを諦めきれず、虎視眈々とまりさを奪う算段でも整えているのだろうか? 何とかありすに言葉を掛けなければならない。 親友でいてもらうためにも。 れいむが、なんて声をかければいいのだろうと、頭を悩ませていると、ようやく当の本人から反応が返ってきた。 「おめでとう!! れいむ!! まりさ!!」 その言葉に、特に棘があったようには聞こえなかった。 いつものやさしさに満ちたありすの声に聞こえたきがする。 心から祝福しているような気がする。 「ゆっ!! ありがとう、ありす!!」 まりさが祝福を受け、感謝の意を示す。 「けっこんしきには、ぜったいにありすをよんでね!!」 「あたりまえだよ!! ゆっくりかならず、ありすをよぶよ!!」 「ゆっくりれいむをたいせつにしてね!!」 「ゆっくりやくそくするよ!! れいむをいつまでもかわいがるよ!!」 その後、まりさとのやり取りを終えると、ありすはれいむにも声をかけてきた。 「れいむ、おめでとう!! まりさとゆっくりしてね!!」 「ゆっ……ありがとう、ありす……」 「けっこんしても、ありすとはしんゆうでいてね!!」 「ゆぅぅ……」 ありすはれいむを祝福してくれた。 そればかりか、れいむに対して、親友でいてくれとまで言ってくる。 れいむは自分でありすを裏切っておきながら、ありすの寛大な態度に居たたまれなくなった。 それと同時に不審に思った。 ありすは悔しくないのだろうか? 悲しくないのだろうか? れいむがありすの立場なら、決して自分を許さないだろう。 なのに、ありすは祝福してくる。れいむが最も望んでいた言葉をかけてくる。 腑に落ちなかった。自分に都合がよすぎる。 昔のれいむなら、その言葉に何ら疑問を抱かなかっただろう。 しかし、今のれいむは、物事を計算で見るようになってしまっている。 ありすの言い分は、そんなれいむを納得させるには、あまりにも納得の出来ない言葉だった。 折角想いに想っていたまりさと一緒になることが出来たのだ。 なのに、つまらないことで将来への希望を壊されるようなことは、絶対にあってはならない。 本当にありすは自分たちを祝福してくれているのか? 何か不穏当な考えを持っているのではないか? もしありすが何らかの手で自分を陥れようとしているのなら、何が何でも防がなくてはならない。 例え、今後ありすとの友情が壊れようと。 れいむは、ありすの真意を測ることにした。 一夜明けた翌日、今日はまりさが虐待される日である。 男はまりさを虐待部屋へと連れていった。 今がありすと話す絶好の機会である。 れいむは、ありすのいる壁際の方に行くと、真意を質すべく、核心をぶつけた。 「ありす、おきてる?」 「ええ、ゆっくりおきてるわ!!」 「ありす!! れいむ、ききたいことがあるよ!!」 「なにかしら?」 「きのうのことだよ!! ありすは、れいむにまりさがとられて、かなしくないの?」 「……」 「まりさがすきじゃなかったの?」 「……」 「れいむをうらんでいないの?」 「……」 「ねえ、どうなの、ありす!!」 れいむの問いに、ありすは中々反応を示さない。 れいむはゆっくりとありすが言葉を出すまで待ち続けた。 ようやくありすが口を開いて来たのは、一分後であった。 「……くやしいわよ!! かなしかったわよ!! ありすはまりさがすきだったんだもの!!」 ありすは、自分の隠していた感情のすべてをぶつけるかのように、大きな声で叫んできた。 これには、さすがのれいむも、少なからず動揺した。 ありすがこうまで生の感情を出してくるとは思わなかったのだ。 「それじゃあ、どうして……」 「……だって、しょうがないじゃない!! これはこいのかけひきなんだもの!!」 「ゆっ?」 「れいむは、じぶんのことをどうおもってるの? ありすのことをうらぎったとおもってる?」 「ゆぅぅ……それは……」 「さいしょはありすもそうおもったわ!! れいむにうらぎられたって!! でも、じっさいはそうじゃない!! まりさはだれのものでもないんだもの!! まりさにこくはくするのは、れいむのじゆう!! それをうけるのもまりさのじゆう!! そこのありすのはいるよちはないわ!!」 「……」 「ありすがまりさにさっさとこくはくしなかったのもいけなかったしね!! まりさのあいてが、れいむならなっとくだわ!! それに、まりさはれいむのことがすきだったみたいだから、こくはくしてもたぶんふられていたけどね!!」 「ありす……」 「だからありすはあきらめたの!! かこをふりむかないことも、とかいはのたしなみよ!! だから、れいむがきにすることはないわ!! これからもありすのしんゆうでいてね!!」 「……ありす!! ありがとう!! ありがとう!!」 「かんしゃすることなんてないわよ!! ここからでられたら、まりさいじょうにすてきなゆっくりをみつけてやるんだから!!」 「ありすならきっとみつけられるよ!!」 「ありがとう、れいむ!!」 れいむはここに来て以来、三回目の衝撃を受けた。 自分はなんて小さいのだろう。ありすと言葉を交わし、嫌というほど思い知らされた。 自分は決してそんな風に考えられない。 ありすの立場なら、絶対に嫉妬をせずにはいられない。 しかし、ありすはどこまでいってもありすだった。 優しく他人を思いやれるゆっくりだった。 本当に心の底から、れいむとまりさを祝福してくれていたのだ。 れいむは、ありすを疑ったことを悔いた。 そして、同時に感謝した。 こんな最高のゆっくりと知り合えたことを。 ありすと親友になれたことを。 「ありす!! れいむとありすはいつまでもしんゆうだよ!!」 「もちろんよ!!」 れいむは、今最高に幸せだった。 隣には愛するまりさと、親友のありす。 例え姿は見えなくても、スリスリ出来なくても、心が繋がっている。 それが感じられるだけで満足だった。 しかし、今日の幸せはそれだけに留まらなかった。 まりさが虐待を終えて帰ってきた。 それと同時に、壁越しに男からとんでもない一言が飛び出してくる。 「お前たち。今日でお前らの虐待は終了する」 「!!!」 突然の男の発言に、れいむは驚きのあまり、餡子を吐いてしまいそうになった。 何とか飲み込んで、事なきを得たが。 「ゆっ!!! ほ、ほんとうなの!?」 「ああ。飽きてきたしな。明日、部屋から出してやるよ!!」 「ゆうううぅぅぅぅぅぅぅ―――――――!!!!!」 れいむが雄たけびを上げる。 まさか、婚約した翌日に、この辛く苦しい虐待まで終わることになるとは!! 人間でいえば、盆と正月とクリスマスがいっぺんに来たようなものである。 「やったああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!!!」 遂に、遂にここから出られるのだ。 まりさとありすに会えるのだ。 スリスリ出来るのだ!! 隣では、二匹とも感無量なのか、一言も言葉を発しなかった。 「それじゃあな」 そう言って、男の足跡は遠ざかっていく。 れいむは、すぐさま二匹に声をかける。 「まりさ、ありす!! でられるんだよ!! やっとここからでられるんだよ!!」 「ゆう!! ながかったよ!!」 「やっと、ここからでられるのね!!」 「まりさ!! あしたはいっぱいすりすりしようね!!」 「ゆっ!! そうだね。れいむ!!」 「あしたがたのしみね!!」 「ゆっくりたのしみだよ!!」 れいむの頭の中には、男が嘘を付いているという考えは一切ない。 別に昔の純粋なれいむに戻ったという訳ではなく、単に嬉しすぎて頭が回らないのだ。 もっとも、男はちゃんと出してやるつもりなので、考えたところで、れいむの杞憂に終わるのだが。 早く明日が来ないだろうか? れいむは浮かれて、なかなか寝付けなかった。 その7?へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4428.html
サアーサアーお立ち会い、ご用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで。 サテお立会い 手前ここに取りい出したる湯栗膏(ゆっくりこう)は、これ「ゆっくりの油」 ゆっくりと言ったってそこにもいる、ここにもいると言う物とは物が違う。 「ハハァーン、ゆっくりかい ゆっくりなら俺んとこの縁の下や流し下にゾロゾロいるよ」と言うお方があるかもしれないが あれはゆっくりとは言わない、ただの汚饅頭(おまんじゅう)。何の薬石効能はないよお立会い。 ゆっくりと申してもただのゆっくりとゆっくりが違う、これより北の山のふもとは、おんばこと云う薬草をくろうて育った四六のゆっくり 四六五六はどこで見分ける。 前足の指が四本、後足の指が六本合せて四六のゆっくり サテ お立会い、 このゆっくりからこの油を取るには、山中深く分け入って捕らえ来ましたるこのゆっくりをば四面鏡張りの箱の中に放り込む。 ゆっくりはおのが姿の鏡に映るを見て驚きターラリターラリと油汗を流す、 これをすきとり柳の小枝にて三七 二十一日間、トローリトローリと煮つめましたるがこのゆっくりの油。 サテ お立会い、手前 ここに取りい出したるは、我が家に昔から伝わる家宝・正宗が暇にあかして鍛えたと言う代物である。 実によく切れる。エイッ 抜けば玉散る氷の刃。ここに、ちょうど一匹のゆっくりがあるから、切ってお目に掛けよう。 一匹のゆっくりが二匹 二匹のゆっくりが四匹 四匹のゆっくりが八匹 八匹が十と六匹 十六匹が三十と二匹 三十二匹が六十四匹 六十四匹が一束と二十八匹 ほれこの通り 細かくよく切れた。ふっと散らせば、比良(ひら)の慕雪(ぼせつ)か嵐山には落花の吹雪とござい お立会い。 これなら名刀も一たびこのゆっくりの油をつける時はたちまち切味が止る、おしてもひいても切れはせぬ。 と云うてもなまくらになったのではない、この様にきれいにふきとるときは元の切味となる。 サーテお立合 この様にゆっくりの油の効能が分かったら遠慮は無用だ、どしどし買って行きやれ。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2410.html
自慢のゆっくり 4KB 虐待-普通 小ネタ 虐待人間 思いつきの小ねたです 「おーい、持ってきたか?」 「ああ、オレのはすごいぞー!」 小学校の校庭の隅で少年達が集まっていた。 手にはそれぞれバックやら箱やらを持っていた。 「じゃあ、オレからいくぞ!ほら、これだよ!爆走まりさ!」 「むー!むーー!むー!」 少年の一人がバックから取り出した小箱に入っていた物は、口をテープで塞がれた子まりさだった。 涙を流しながら必死にブリブリと振るあんよには、小型のF1カーがボンドで貼り付けられていた。 「じゃあ、テープ剥がして地面に置くぞー!」 「ゆびびびびゃい!いちゃいのじぇー!あんよがむじゅむじゅするのじぇー!これとってほしいのじぇー!」 見た目はドスまりさがF1レースに参戦でもしたかの様な姿であるが、 子まりさは情けない顔で涙を撒き散らし、必死に身を捩っていた。 「おい、てめー!泣いてないで早く走れよ!すいーと同じだろう?」 「ゆびぇぇぇぇぇん!あんよしゃんがうごかないのじぇー!」 「はっはっは!お前アホか?すいーなんてトシデンゼツだろう?」 「くそ!恥かかせやがって…このくそまりさ!」 「ゆびゃん!ゆべちっ!ゆっぴぃ!やめるのじぇー!いちゃいよー!おとーしゃ!おかーしゃ!たしゅけちぇぇぇぇ!」 友人に笑われた事に腹を立てた少年が、子まりさにデコピンを浴びせる。 子まりさは痛みにゆんゆん泣き喚いていた。 「ゆび…び…び……」 「もうその辺で止めとけよ、次はオレのな!………びっくぺにありすだぞー!」 「むふー!むふー!」 今度は別の少年が大きめの箱から成体ありすを取り出した。 ありすは泣きながらぺにぺにを立たせていたが、 それには500mlの空のペットボトルがはめ込まれており、念入りにボンドで固定されていた。 空のペットボトルの中には半分ほどカスタードクリームが入っており、ありすはそれを必死で振り回していた。 「うわ…すげーなこれ!ってか、これはレイパーなのか?」 「きもちわりー!ってか、よくこんなものふり回せるな…おそるべしレイパーだな!」 「すげーだろ?持ってくるの大変だったんだぞ!じゃあ、これは箱に戻すな…おら!おとなしくしてろ!」 「むぐぶっ?!…む…む…むむ……」 少年はぺにぺにを振り回していたありす目掛けて一発殴った。 顔を変形させたありすは、更に大量のカスタードをペットボトルの放出すると大人しくなった。 「ははははっ!すげーきもちわるかったな…じゃあ、次オレな!」 「むぐー!むぐー!」 ありすを見て大笑いしていた少年が取り出したのは、やはり口をテープで塞がれたぱちゅりー。 あんよは焼かれたのか黒く焦げており、額に当たる部分にはもう一つの目が付いていた。 「すげーだろ?三つ目ぱちゅりーだぞ!ゆっくり眼にめざめたんだぞ!!」 「すげーけど、きもちわりー!ってか、これ見えてるのか?」 「一応見えてるみたい、ゆっくりってすげーよな?ははははっ!」 少年達は必死に三つの目をギョロギョロさせながら、震えているぱちゅりーをみて大笑いしていた。 「じゃあ、次はオレなー!……どーだ?トッコウれいむだぞー!」 「むー!むー!」 取り出された子れいむは、両頬に当たる部分に日の丸マークの入った飛行機の翼がボンドで固定されていた。 口もボンドで塞がれていおり、唇(?)にはプロペラエンジンがボンドで固定されていた。 更に額には日の丸マークの入った鉢巻まで巻いており、 そんな姿で泣いている子れいむはまさに、国の為に特攻する飛行隊のようだった。 「すげーなこれ!かっこいいな!れいむとは思えないぞ!」 「でも、これってどうやってエサやってるんだ?」 「ああ、それならあにゃるからさとう水とか注射してるから」 「マジで?!そんなんでいいのかよ!はははっ!本当にいいかげんな生き物だな!」 大笑いする少年達を睨むような、怒るような目で睨子むれいむ。 そんな様子に一人の少年が気が付いた。 「何だその目は?!かとう生物のくせに生意気なんだよ!」 「むぶっ!むぶっ!むー!!」 デコピンを浴びせられ、顔を腫らしながら泣く子れいむ。 「おい、あんまりいじめるなよ?おれのれいむだぞ!」 「はははっ、わるいわるい!なんか、睨んできたから…」 「こらー!あなた達!何やってるの?!」 「うわっ!うるせーのが来たぞ!」 少年達の目の前に一人の少女が現れた。 彼女を見るなり、少年達は自慢の改造ゆっくりを慌てて隠す。 「今隠したのは何?またゆっくりじゃないの?」 「うるせーな!あっちいってろよ!」 「そーだ!そーだ!いいんちょうだからってエラソウにするなよな!」 「ゆっくりは学校に持ってきちゃ駄目だって先生に言われてるでしょ?まったく!馬鹿男子!」 「うるせー!かいぞうゆっくりは男のロマンだぞ!」 「ロマンがわからん女はどっかいってろー!」 「ふん!先生に言いつけてやるんだから!」 「うるせーぞ!ばーか!ばーか!」 この少年達以外にも、学校内で改造ゆっくりを持ち込んでいた生徒が多数居た為、 この学校ではゆっくり持ち込み禁止令が出された。 それでも、放課後に自宅や公園で改造ゆっくりを自慢しあう少年達の姿が目撃されていた。 ゆっくりは少年達にとって良い玩具であった。 完 コンペ用の話を書く合間の小ねたです。 簡単に改造できる生き物(?)なゆっくりは絶対良い玩具にされそうですね。 餡サイクロペディアの編集ありがとうございました。 たまに絵も投稿するかもしれませんのでよろしくお願いします。 徒然あき 徒然あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 一瞬、女の子に対して「ちっ、愛護派のこどもには間違った道を行かぬように調教が必要だな!」 って思ったけど、別に必要なさそうだな。 ちなみに愛護派は否定しない。ピース的な愛護派(笑)は絶対的に否定するがな。 虐だろうが愛だろうが、イキすぎなければどっちも微笑ましい -- 2011-10-31 18 06 15 女の子がゆっくりを虐めることにじゃなくて持って来たことに怒ってるのがいいね -- 2010-05-19 17 40 17 たしかにw改造ゆっくりやってみてぇーw -- 2010-05-07 00 10 20
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2581.html
※良いゆっくりが出てきます ※実験・観察中は基本解説はしてません ※ストレスでマッハになる可能性があります ※人間はあくまで状況を作り出すことしかしていません 益ゆっくりと害ゆっくり これは人間のものさしではあるが、ゆっくりのなかにも良いゆっくりと悪いゆっくりがいる事は知られている。 しかし良いゆっくりと悪いゆっくりの比率は明らかに悪いゆっくりの方が多い。 そのため多くの独善的なゆっくりにより良いゆっくりは駆逐されてしまうのである。 アリのような集団で行動する動物は基本、7割が真面目に働き3割がサボるという。 しかしこれもまたゆっくりには当てはまらない。全体としてみると真面目ではないゆっくりが多すぎるのだ。 そこで、だ。 人間にとって益なゆっくり、つまり良識あるゆっくり(以降益ゆっくりと称する)を集めて群にしたらどうなるか。 実験してみよう。 1ヶ月位掛かったのだろうか、やっと益ゆっくりを30匹集め終えた。 まずは聡明なドスを探さなければならなかったからだ。 また、そんなドスがいても益ゆっくりはドスの言葉を理解しないゆっくり(以降害ゆっくり)に殺されてしまいやすい。 ともあれやっと集まったのだ、今度こそ実験を開始しよう。 まず殆ど自然の状態だが外敵がいない状況を作り、だんだんと数を増やすやり方で益ゆっくりの群を形成。 次に我侭なゆっくり達に振り回されていた益ゆっくりタイプのドスを引き抜きこの群に送る。 対になる害ゆっくりの群は…そんじょそこらにいるためにあえて作ることもないだろう。 それでは観察してみよう。 「たべものをとりすぎるとむしさんもくささんもはえてこないよ!だからふゆをこせるぶんだけかくほするよ!」 「むきゅ、どすのいうとおりだわ」 「どすのさいはいにまかせるよ!がんばってとってくるね!」 「すっきりしすぎるとゆっくりできないよ!」 「わかったわ!みんなとすっきりしないようにするわね!」 「みょーん」 「あれはにんげんさんのはたけだよ!たねをうえておやさいをそだててるんだよ!」 「あそこにあるおやさいはたべちゃだめなんだね、わかるよー」 「にんげんさんのおてつだいをすればあそこのはっぱさんやむしさんをあつめられるかもしれないね!」 「むきゅ、それもかんがえたほうがいいわね」 本来自然ではありえなかったであろう光景。 ドスがリーダーシップを発揮し、そして全員がソレをサポートする。 どのゆっくりも1匹たりとも不平不満や我侭を言う事無く、群の活動をしていた。 さて、そんな群に1匹、害ゆっくりを入れてみよう。 害ゆっくりが群をかき乱すかどうか、観察だ。 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 「まりさをこのむれにいれてほしいんだぜ!」 「まりさはゆっくりできるゆっくり?」 「もちろんだぜ!」 「れいむはかわいいんだぜ、まりさとすっきりするんだぜ」 「すっきりなんてゆっくりできないことをしようとするまりさはゆっくりできないね!」 「そんなことはないぜ!すっきりはとってもゆっくりできるんだぜ!」 「みんな!このまりさはゆっくりできないよ!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉ」 「こうなったられいむにすてきなおやさいをぷれぜんとしてはーとをげっとするんだぜ!」 「ゆ?まりさもおてつだいにきたの?」 「おてつだい?ばかなの?まりさはここのおやさいさんをわるいにんげんからうばいにきたんだぜ」 「にんげんさんがいっしょうけんめいそだてたやさいをかってにとっていくの?」 「まりさはげすだったんだね!」 「おやさいさんはかってにはえてくるんだよ!それをにんげんがひとりじめしてるんだよ!」 「まりさはなにもわかってないのね、ばかね」 「わたしたちはここのはたけのもちぬしさんにおねがいしておてつだいをさせてもらってるのよ」 「みんなだまされてるんだぜ!めをさますんだぜ!」 「このまりさはすくいがないわね」 「おなかがすいたんだぜ、ごはんをたくさんとってたべるんだぜ!」 「そこまでよ!」 「みょーん!」 「ぱちゅりーにみょん!?」 「むきゅ、むしさんもくささんもとりすぎちゃだめなのよ」 「どすのめいれいだみょーん」 「もうやだ!こんなむれからはとっととでていくぜ!」 「むれからでるにはどすのきょかがいるわ」 「わかったぜ!さっさとどすにいってこんなゆっくりできないむれからだしてもらうんだぜ!」 「どす!こんなゆっくりできないむれにはいられないんだぜ」 「むれにはいったそのひにむれをでる?まりさはゆっくりできないうえにこんじょうなしだったんだね」 「まりさはゆっくりできるぜ!ここのむれがゆっくりしてないんだぜ」 「このむれはみんなものわかりがいいんだよ、かってなことをしたいだけのゆっくりできないまりさはこっちからねがいだげだよ」 「もういい!どすはゆっくりしね!」 「「「「どすのわるぐちはゆるさないよ!!!」」」」 「なにをするんだぜ!はなすんだぜ!」 「これはせいさいだよ」 「むれをゆっくりさせないようにしたうえ、どすにてきいをもったゆっくりはゆるせないよ」 「みんなのことをかんがえるどすにしねだなんて、みのほどしらずだね」 「いんがおうほうだねー、わかるよー」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 案の定まりさフルボッコ。 今まで見てきたのとは逆の結果になった。 つまり、だ。 ゆっくりはその場の多数派に流れる傾向がある。 同じ数なら押しの強い害ゆっくりが攻勢になるが、これだけ数が揃うと益ゆっくりの勢力が強く主導権を握る。 まさに人から見てもゆっくりできる群であろう。 1対多なら多が有利。それがゆっくりの生態のようだ。 さて、こうなると同じ位の規模の益ゆっくりの群対害ゆっくりの群の勝負を見てみたくなる。 これの準備は簡単だ、近くの群の食料を台無しにすればいい。 人の手と言う事がばれないように、寝ている隙に崩落を装う。 勿論次の朝、群から五月蝿いほどの悲鳴が聞こえてくる。 「ふゆをこすごはんが・・・これじゃゆっくりできないよ」 「しかたないね、ちかくにむれがあるからたべものをわけてもらおうよ」 「れいむのかわいいあかちゃんたちをみればきっとごはんをだしてくれるよ!」 「まりさたちがゆっくりしたほうがちかくのむれもうれしいにきまってるんだぜ!」 害ゆっくり達の群でもドスはドスらしく振舞っているようだ。 空回りしている所が涙を誘う。 ドスは比較的益ゆっくりが多い為仕方ないのだが。 虐待お兄さんを愛でお兄さんにする位のドスもいるらしいが、大抵は害ゆっくりに愛想を尽かすものである。 このドスは何とか持ちこたえているようだが・・・ さぁご対面。 どうなる事だろう? 「ゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 「ここのどすにあわせてね!」 「ゆ、どすとそのむれだね、どうしたの?」 「おねがいがあるよ!そうこがくずれてたべものがだめになっちゃったんだよ」 「すこしでいいからたべものをわけてね!」 「・・・ごめんね、ここはほかのむれがゆっくりできるほどのたべものはないよ」 「むきゅ、むれのみんなのぶんでいっぱいいっぱいなのよ」 「それじゃしかたないね・・・」 「まつんだぜどす!このどすはうそをついているんだぜ!」 「なにをいいだすの?まりさたちはうそをついてないよ」 「いーや、このむれはきっとたべものをひとりじめしてまりさたちにたべさせないつもりなんだぜ!」 「へんなことをいうんじゃないよまりs」「そーだそーだ!れいむたちにたべものをださないなんてゆっくりできないゆっくりだよ!」 「まりさまでそんなことをしんj」「こんにゃかわいいれーみゅたちにごはんくれにゃいなんてこきょのどすはばきゃだね!」 「そんなこといったらだめでs」「でぃなーもくれないむれなんてとってもいなかものじゃない」 「くろうしてるんだね、どす」 「もうどうしたらいいの、どす・・・」 「ごはんをくれない、ゆっくりしてないどすはゆっくりしね!」 「そのことば、せんせんふこくとうけとるよ」 「むきゅ、むこうのどすはたたかういしはないみたいだから、どすのかんがえにはんたいなゆっくりのふこくとみるわ」 「なにをごちゃごちゃいってるちーんぽ」 「このむれをうばえるとおもってるんだねー、わかるよー」 「うるさい!ゆっくりしね!」 群同士の争いが遂に始まった。 ここからはゆっくり同士の会話だけでは分かりにくいので解説を入れてみる。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 害ゆっくり側はドスに対してしゃにむに突撃を行う。 「みんな、ここはどすはおさえるよ、ぱちゅりーとありすはほかのみんなをつれていどうするんだよ」 「むきゅ、わかったわ」 「とかいはにおまかせ!」 害ゆっくりの群の前にはドスが立ちふさがる。 そして大きく息を吸い込みその体を膨らませた。 「ここからさきはとおさないよ!」 その大きさと、体当たりにもびくともしない姿を見せつける。 「さっさとたおれるんだぜ!」 「あきらめてれいむのかわいいあかちゃんにごはんをたべさせるんだよ!」 「ゆっきゅりさせちぇね!」 大小様々な害ゆっくりがドスに体当たりを続ける。 「あとひといきだよ!」 「もうすこしでゆっくりぷれいすにつくね!」 ドスは全然こたえていないようだが、害ゆっくり達はもうすぐドスを倒せると思い込んでいるらしい。 もう1匹のドスといえば、申し訳なさそうな目でドスを見ていた。 「いまだよ!」 ドスが声を上げる。 「どすにこうげきするわるいゆっくりはゆっくりしね!」 「おうちやごはんをうばおうとするゆっくりできないまりさはいなくなってね!」 左右から洗われる益ゆっくり達。 どんどんと害ゆっくり達のスペースが狭くなっている。 「ふぅーーーー!!!」 害ゆっくりの逃げ場が殆どなくなったところでドスが吸い込んでいた息を大きく吐き出す。 「ゆわ!?」「ゆひゃ!?」 前方のゆっくりは後ろへ吹き飛ばされ、まりさやちぇんなどの帽子を被った害ゆっくりの帽子は飛ばされる。 「までぃざのおぼうじがぁぁぁぁ」 「ぼうしのないへんなゆっくりはゆっくりしね!」 「やめでぇぇぇぇ!!ゆっぐりじぬのばどずでじょぉぉぉぉ」 仲間割れ。 飾りのないゆっくりは相手を認識できない、というものであるが。 「ぼうしがなくなっただけでみぐるしいね!」 「かざりがないだけでゆっくりできないってだれがきめたの?」 益まりさが自分の帽子を益れいむにとってもらう。 「ゆっくりできな―」「なかまにぼうしがなくったってゆっくりできるまりさはまりさよ」 帽子を外したまりさに突撃してきた害れいむを突き飛ばす益ありす。 「ちゃんとあいてのとくちょうをおぼえればぼうしなんてただのかざりよ、そんなこともわからないの?えらいの?」 あれよあれよと害ゆっくりは同士討ちで数を減らす。 逃げ出そうとするものあらば益ゆっくりの囲みで押し戻される。 残ったのはとドスに従おうとした数匹のゆっくりだけである。 「わるいゆっくりにふりまわされてたんだね、どす」 「ありがとう!どすにはかんげきしたよ」 「おなじどすでしょ、しっかりしようね」 「どす!どすにいろいろとおしえてほしいよ!」 ドスがドスに教えを請う。 こんなレアなシーンを撮影できるとは思わなかった。 結局、この残ったドスとゆっくり達は益ゆっくりの群れに入る事になったようだ。 冬場までに2匹のドスの力もあり、何とか残った数匹過ごせる量の餌を集める事ができたらしい。 このまま群が増える事もあるかもしれない、れいぱーありすの集団が来た時の対応も気になる。 引き続き観察を続ける事にしよう。 …ただ、これは教授に提出するいい書けそうだ。 きっと「素敵!」の声が聞けることだろう、今から楽しみだ。 ――とある研究お兄さんの実験メモ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき よくドスの言う事を聞いたばっかりに殺されるゆっくりがいたのでそれをかき集めてみました。 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり ゆっくり畑 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/236.html
ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。 『魔法の森の奥深くに おいしい花が美しく咲き乱れ 太陽は燦燦と降り注ぎ 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる そんなゆっくりプレイスがあるという その場所の名は 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる という意味を込めて 永夜緩居(えいやゆるい) と呼ばれていた』 この物語は永寛緩居を目指したゆっくり達の物語である。 「ぱちゅりー!ゆるいに行こうよ!」 「ゆー?ゆるい?」 聞きなれない言葉を聞いてまたまりさがみょんなことを思いついたことを察し ぱちゅりーは眉をひそめた。 全く、そのみょんな思いつきに毎回付き合わされる方の身にもなって欲しい と思うと共にこれまでのドタバタ劇を思い出し汗を垂らす。 まりさが蛇の抜け殻を使ってアクセサリーを作ろうと言い出して やっと見つけたと思った抜け殻が本物の蛇の時は本当にあぶなかった。 一応先手を打って断ってしまうことにした。 しかしぱちゅりーにはまりさが思いついてしまった時点でもう遅いことはこれまでの経験でわかっていた。 これから先、また病弱な体に鞭打ってまりさと色々やらかすことを考えながらぱちゅりーは嘆息した。 「むきゅー、ゆるいなんてよくわからないところいかないよ だって知らない場所じゃゆっくりできるかわからないもの」 「それがゆっくりできるんだよ! えーっとねまほうの森の奥ふかくに…」 まりさが必死に暗記した文章を音読しようと悪戦苦闘しているところを見つめながら ぱちゅりーには『ゆるい』がなんのことなのかがその冒頭の句から思い当たるものが脳裏を過ぎった。 「むきゅ、ひょっとして永夜緩居のこと?」 「ゆ!それだよ!そこにいけばずっとゆっくり出来るってみんないっていたよ!」 興奮気味に捲くし立てるまりさを前にしてぱちゅりーはさらに眉の皺を深く刻んだ。 永夜緩居は最近ゆっくり達の間で噂になっているゆっくりプレイスのことである。 そこに行けばあらゆるゆっくり出来ない事象から開放されてずっとゆっくりすることが出来るというのだ。 しかし実際に見てきたゆっくりは居ない。 ぱちゅりーはこの話を眉唾物の与太話だと思っている。 ぱちゅりーは流石に今回は断ろうかと思案する。 「ゆるいを見つければずーっとまりさとぱちゅりーでゆっくりぼうけんできるよ!」 しかし最高の笑顔でこちらの意見も全く聞かずにそう言い切ったのを聞いてぱちゅりーは自分が折れることにした。 断ってもまたまりさは別の冒険を捜してくるだろう。 探しに行って見つからなくてもまりさが飽きたら家に帰ってまた別の冒険が見つけてくる。 そして見つかっても結局冒険するというのだからどう転んでも冒険である。 どれを選んでも変わらないならまりさの好きなように任せよう。 実を言うとぱちゅりーはまりさとの冒険は嫌いじゃないのだ。 ただ気苦労も多いが。 気苦労のことを考えてぱちゅりーはまた嘆息すると冒険の準備に取り掛かることにした。 まりさがそこら中を聞き込みまわって得た情報をぱちゅりーが纏める事で 永夜緩居があると思しき場所はすぐに目星を付けることが出来た。 かなり大変な道中を歩む必要がありなるほどもしその先にゆっくりプレイスがあるのならば わざわざこの道中を再び歩んで戻ってくるゆっくりは居ないだろう。 永夜緩居見て戻ってきた者が居ないのもある程度納得がいった。 「ゆー、すごい冒険になりそうだねぱちゅりー」 まりさがぶるぶると武者震いをした。 これから始まる冒険を前に胸を躍らせ、瞳は吸い込まれてしまいそうなほどキラキラと輝いていた。 「ゆ、どうかしたのぱちゅりー?」 ぼーっとまりさの瞳を見つめていたぱちゅりーはまりさに逆に覗き込まれて声をかけられてはっとした。 「む、むきゅ!なんでもないよ!ぱちゅりーは冒険の計画を立てるからまりさはどっかその辺でゆっくりしててね!」 「ゆ!まりさも冒険の計画立てたいよ!」 「むきゅー、まりさは無茶な計画ばっかり立てるからまりさが計画を立てるよゆっくりできなくなるよ それでもいいの?」 「ゆゆゆ~それは困るよ、ゆっくり我慢してくるね」 伝家の宝刀、ゆっくりできない丸を抜かれまりさはすごすごと向こうの木の洞に退散していった。 本当は後で説明しなおすのも面倒だしまりさと一緒に計画を立てた方がよかったのだが 顔が真っ赤に火照っているところをぱちゅりーは見られたくなかった。 とにかく気を取り直して目的地へと向かえるコースは何個か考えられたがその中からもっとも安全な物を選び それにあわせた装備を考えなければならない。 今、自分に出来ることはしっかり計画を立ててこの冒険を最高の冒険にすることだ。 そうすればあのキラキラした素敵なまりさと一緒に居られる。 「むきゅ、ほかほかしてきた」 また顔が赤くなってるのに気づき、ぱちゅりーは困り果てた。 「むっきゅ、むっきゅ…!」 「ゆっくりがんばってね!」 ぱちゅりーはぱちゅりー種にしてはかなり体力のある方だった 若いことと普段からまりさにつれ回されているためである。 しかしごつごつした岩肌の斜面を上ることはゆっくりにとっては厳しい。 「むきゅ、むきゅぅぅぅ~」 体の底が擦り傷だらけになってぱちゅりーは根を上げたくなった。 しかしプライドがそれを許さない。 何故ならここでこんなの無理だと根を上げれば自分の計画が間違っていたことを認めることになるからである。 頭脳一つでゆっくり界を渡世するぱちゅりー種にとって自分の知識を基に考えた計画が間違っていたことを認めるのはこの上ない屈辱なのだ。 しかし体力は限界に近い。 出来れば休みたいのだが夜になる前にここを越えて、予定していた池の近くの木立でゆっくり出来るポイントを探さないと あまり遮蔽物のない危険な状態で夜をすごすことになる。 それは絶対に避けなくてはならない。 プライドと痛みと恐怖の間でぱちゅりーは心が押しつぶされそうになった。 その時、ふっ、と体が浮いたかと思うとぱちゅりーはまりさの上に乗せられていた。 「ゆっ、ゆいしょっ!」 まりさが器用にぱちゅりーの体の下に入ってぱちゅりーを持ち上げたのだ。 「む、むきゅ!?な、なにをする気なのまりさ!? ちゃ、ちゃんとじぶんで歩くからおろしてね!」 「まりさは丈夫だからこれくらい平気だよ! ぱちゅりーはそこでゆっくり休んでてね!」 そう言うとゆいしょっ、ゆいしょとぱちゅりーを背負ったまままりさは岩肌を進んでいった。 その後も何度か押し問答を続けたがぱちゅりーが自分の体力から考えて結局この方式が一番合理的だと理解し自分から折れた。 そのままぱちゅりーはゆっくりと体をまりさに預けた。 傷だらけの体の底がまりさのやわらかい体と髪に触れていると不思議と痛みが引いて、とてもゆっくりできた。 体をくっつけているとまりさの甘い餡子の香りと力強い揺れがぱちゅりーを眠りへといざなった。 「むきゅ…?」 ぱちゅりーが目を覚ますと、まりさが既に池の木立に洞を見つけてそこにぱちゅりーを寝かせて 明日の準備をしているところだった。 計画を立てたり知恵を使う部分はまりさはぱちゅりーに遠く及ばなかったが ことサバイバル能力と体を使ったことに関しては他のゆっくりにも負け知らずで こういう冒険では本当に頼りになるゆっくりだった。 ぱちゅりーもさっきのようにこのバイタリティに何度も助けられていた。 ぱちゅりーはまりさのそういう頼りになるところも好きだった。 「明日も早いよ!ぱちゅりーはゆっくり寝ててね!」 「むきゅ…」 そう言うとまりさはぺろぺろとぱちゅりーの傷口を舐めて癒した。 まりさの舌の心地よい温かみを感じながらぱちゅりーは再び眠りについた。 木立の洞に朝日が刺してぱちゅりーは目を覚ました。 「ゆっくりちていってね!」 「む、むきゅ?ゆっくりしていってね!」 聞きなれない子どもの声に困惑しながらぱちゅりーは寝ぼけ眼であたりを見回した。 「ゆっぴゅー!」 「ゆゆっ!やったね!おかえしだよ!」 「ゆー!ちべたいちべたい!」 見ると池の方で数匹の子ゆっくりとまりさが一緒になって水遊びをしていた。 「むっきゅー?」 どういうことかとぱちゅりーは首を傾げた。 つまり全身斜めに傾いた。 「朝ごはんだよ!ゆっくり戻ってきてね!」 今度は別のところから成人したれいむの声が聞こえてくる。 「む、むきゅぅ?なんなの、れいむ達はゆっくりできるゆっくりなの?」 ぱちゅりーはそう一人ごちた。 「あ、ぱちゅりーがおきたよ!まりさー!ぱちゅりーもいっしょにゆっくり朝ごはんたべるよー!」 大人れいむが木立の洞を見てまりさに向かってそう呼びかけた。 「むきゅ、つまり昨日からここで偶然れいむ達の家族と会ってそれでいっしょにおやすみしてたんだけど ぱちゅりーはねてたから気づかなかったってこと?」 「そうだよ!いっしょにゆっくりしてたよ!」 まりさが元気に答えた。 つまりはそういうことである。 このれいむ達の一家も永夜緩居を目指して旅をしていてまりさ達と出会ってこうして休息を共にしているのだ。 「むきゅ、そんなにいっぱい子どもがいるのにここまでこれるなんて…」 ぱちゅりーは感嘆した。 それがどれだけ大変なことかはここまで来たぱちゅりーが一番よくわかっている。 しかもここまで一人も脱落者を出さずにここに来たというのだ。 ぱちゅりーはれいむのその知恵と勇気に尊敬の念を禁じえなかった。 「れいむのおかあしゃんすごいでしょ!」 「すごいでちょ!」 子れいむ達は誇らしげに胸を張った。 「むきゅ~、ほんとにすごいよ どうやって来たのかぱちゅりーにも教えて欲しいよ」 「ゆ、れいむはお母さんだからね 子ども達のためにすごいがんばったんだよ」 「おかあしゃんがんばったよ!」 「がんばっちゃょ!」 「ゆゆ、何があってもれいむの赤ちゃんはれいむがまもってあげるからね」 そう言って子れいむ達にほお擦りされるれいむの表情はやさしく、そして暖かく輝いていたが ぱちゅりーにはその瞳にまりさとは違いどこか暗いものがその奥に潜んでいるように感じた。 「まりしゃおねーしゃんばいばい!またいっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりちようね!」 「ちようね!」 「ゆ~!」 「うん!きっとみんなとゆるいで一緒にゆっくりするよ!」 まりさは名残惜しそうにゆっくり一家に向かってぴょんぴょんと跳ねて別れの挨拶をした。 子ども達にかなり懐かれていたので別れの寂しさも一際のようだ。 しかし永夜緩居を目指すのであればこんなところでゆっくりしていてはいけないのだ。 まりさとぱちゅりーは池で顔を洗うと、れいむ達とは別のルートで永夜緩居を目指し歩き出した。 永夜緩居への道のりは困難を極めたが二匹は知恵と勇気でもってその困難を乗り越えていった。 深くて棘の生えた茂みを葉っぱを体に巻いてなんとか通り抜け 流れの速い川に阻まれ物凄い遠回りをしてなんとか抜けられる程度の浅さの場所を見つけ 木の少ない場所で土砂降りの雨にあったのでなんとか穴を掘ってその上から草をかぶって凌いだり 鳥や犬や蛇にも何度も何度も襲われた。 それでも二匹はあらゆる危機を力をあわせて乗り切った。 ここに来るまでに二匹はもう体はぼろぼろ、自慢の帽子も傷だらけで汚れてしまっていた。 しかしその顔はとても晴れやかで達成感に溢れたゆっくりした表情をしていた。 そう、二匹は辿り着いたのだ。 永夜緩居へと。 「ゆ~~~~ゆっくりー!!!」 「むっきゅ~~~~~~ん!!!」 二匹はそのゆっくりとした雄大な風景を眺めて感動の余り声をあげた。 そこは噂にたがわぬおいしそうな花が美しく咲き乱れ お日様は燦燦と降り注ぎ小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 素晴らしくゆっくりして美しい場所だった。 「やったよぱちゅりー!これで一緒にずっとゆっくり出来るよ!」 まりさが喜びをあらわにしてぱちゅりーにほお擦りした。 ぱちゅりーもお返しにとほお擦りしかえす。 永夜緩居の全てが二人を祝福しているとその時の二匹は心から信じた。 ぐるぐるとみょんな音が美しい景色の中に響き渡る。 「ゆゆっ、おなかすいてきちゃった ゆっくりあのお花さんとってくるね!」 「ゆっくりもってきて~」 まりさが向こうに見える美しい花畑をさして走っていくのをぱちゅりーは見送った。 「ゆ~おいしそ~おもいっきりたべてゆっくりするよ!」 ぱちゅりーはまりさが花を食べようとするのをゆっくりした気持ちで眺めていた。 まりさは嬉しそうに花を口しようとした。 その刹那、花びらがまりさの唇を切り裂いた。 「ひぎゃあああああ!?」 「!?まりさ!どうしたの!?まりさ!!」 何が起こったのかわからずに混乱するまりさを花びらが何本も何本も鋭く突き刺さりズタズタにした。 「いだいいだいいだいいいいいいいいい!!!!」 「…!まりさ!それはお花じゃないよ!かまきりさんだよ! 早く逃げて!!」 ぱちゅりーはその豊富な知識からその花に大量に花に擬態した蟷螂が居ることを看破しまりさに向かってそのことを知らせた。 しかし混乱冷め遣らぬまりさは花蟷螂達の鎌に捕らえられ身動きもとれずにその強力な顎で皮を齧られていた。 「む、むきゅうううううう!まりさをもってかないでねえええええええええ!!!」 ぱちゅりーは一瞬逡巡したが決死の思いで花蟷螂達に向かって体当たりを敢行した。 「ゆ゛っ!」 まりさごと吹っ飛ばしながら花蟷螂がまりさの体から大分離れた。 しかし何匹かの花蟷螂が今度はぱちゅりーの体に鎌を付きたてた。 激痛がぱちゅりーを苛むがそれを表面上は意にも介さずまりさに声をかけた。 「はやくお花から離れてね!」 「ゆ゛、ゆ゛ぅぅぅ~~」 ぱちゅりーはキッと花畑の方をにらめつけた。 何十、何百という蟷螂のギョロリとした目がこちらを見ていた。 あり得ないはずであった。 こんなそれほど大きくない花畑にこれだけ花蟷螂が密集して生息してるなど通常ではあり得ない。 一体何故こんなにも蟷螂がたくさんいるのだろうか。 ぱちゅりーは疑問に囚われながらも傷ついたまりさを連れて花畑を離れた。 近くの林に逃げ込んだ二匹は 「いだいよ゛おおおお!!」 「むきゅ、もう大丈夫だよ、すぐゆっくりさせてあげるから我慢してね!」 まりさの体に取れて刺さったままの花蟷螂の鮮やかな鎌をぱちゅりーは口で器用に抜いてぺろりと傷口を舐めると持っていた葉っぱをそこに貼った。 傷口を触れられる痛みにまりさが悲鳴をあげ、それがぱちゅりー自身の傷にも響いた。 しかし今それを意に介している暇はない、一刻も早く治療を終わらせなければならない。 「むっきゅ…これでひとまず大丈夫、ゆっくりできるよ」 「ゆぅぅぅ…ありがとうぱちゅりー… それにしてもどうしてあんなにカマキリさんがお花畑にいるの?これじゃゆっくりできないよ!」 「むきゅん、ゆっくりできないからお花畑にはちかづかないようにしようね とにかくまずゆっくりやすめるおうちを探してそこからゆっくりここが本当に永夜緩居か調べるよ もしかしたら別の場所にきちゃったのかもしれないよ」 ぱちゅりーはすぐさま今後の計画を立てた。 こういうことは頭脳はの自分の出番であるという自負がある。 「ゆ!そんなことないよ!ここがぜったいにゆるいだよ!」 まりさはここが永夜緩居であると頑なに言う。 苦労して辿り着いたこの地が間違っていたということを認めたくないのだろう。 「むっきゅ、でもここはゆっくりできないよ!」 「ゆ、ゆ…それは…」 ぱちゅりーは確信を突いた。 ここが永夜緩居ならゆっくりできないはずがない。 だのに現に自分たちはカマキリに襲われて全くゆっくりできずにこうして逃げ出しているではないか。 ということは自分達が間違っているのか、そしてこれはまりさにとってそれより辛い話だが永夜緩居自体が存在しなかったかだ。 もし永夜緩居が存在しないと知ればまりさはぱちゅりーを巻き込んで危険な場所に連れてきてしまったことに責任を感じて自分を責めてしまうだろう。 だからぱちゅりーはそのことはあえて言わなかった。 場所自体が間違っていたとすれば情報を整理してこの場所だと考えたぱちゅりーにも責任があることになるからだ。 少し言い争いになるかもしれないがそれでもまりさが傷つくのは少しでも避けたかった。 この時はぱちゅりーもまりさも第三の可能性には気づかなかった。 永夜緩居が悪意を持って自分達を襲っていることに。 「とにかく今はきょてんになるゆっくりプレイスを探すよ!」 「ゆー…」 ぱちゅりーはなんとかまりさを説き伏せ、とにかく自分達の拠点を探すことに同意させた。 こういう場所探しはまりさが頼りになるはずなのだが どうにもうまくいかないことが続いて気落ちしているまりさでは役に立つかは疑問であった。 しかしまりさが立ち直るのを待っている暇はない。 早くしないとこの危険な場所で夜を迎えることになってしまう。 こうなれば自分ががんばるしかないとぱちゅりーは思った。 ぱちゅりーは精力的に夜を凌げそうな場所を探した。 まりさにははぐれないように後ろを付いてくればいいといっておいた。 まりさは言われたとおりに項垂れて、ぱちゅりーの後を追った。 とにかく今は自分が頑張らなければ共倒れだとぱちゅりーは気負った。 その気負いが隙を産む事になった。 「むきゅーん………むっきゅ!」 ぱちゅりーは木立の中にうまくすればゆっくり二匹は入れそうな木の洞を見つけ早速中を覗き込んだ。 本来ならばまず危険を確認してからゆっくり覗くところだが気負ったぱちゅりーにその余裕はなかった。 「むきゅぅ!?」 洞を覗き込んだぱちゅりーの顔に鋭い痛みが走る。 続いて鋭い何かがたくさん突き刺された。 「む゛ぎゅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 たまらず洞から顔を出すぱちゅりー。 まるでぱちゅりーの顔から生えてきたかのように伸びるそれをまりさはみた。 「ゆ゛!ぱぢゅりいいいいい!!!」 ぱちゅりーの顔に何十匹もの百足が噛み付いていた。 「む゛ぎゅううひいいいいいいいいい!!?!?!?」 ぱちゅりーの頭の中が痛みと恐怖と気持ち悪さでいっぱいになる。 「む゛ぎゅひ゛い゛いむ゛ぎゅどっでえええ!ごでどっでえええ!!!」 ぱちゅりーは痛くて気持ち悪くてわけもわからず必死に助けを求め声をあげた。 しかし声をあげたのがまずかった。 声を出すために開いた口に数匹の百足が飛び込んだ。 「む゛ぎゃぎぃぃぃいっぃいいいい!?」 口の中にズキリとした痛みが広がる。 舌に百足の何十本もある足が触れてモゾモゾと動いた。 「む゛ぉ゛ごお゛お゛お゛!!」 ぱちゅりーは吐き気を感じ咳き込んだ。 餡子が口から漏れるが百足はまだ体の半分以上が口の中に入ったままだ。 餡子まみれの百足がもぞもぞと動いた。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い このまま百足に少しずつ食べられて死んでいくんだと思いぱちゅりーの心の底に冷たいものが降りた。 その時、まりさが動いた。 「ぱちゅりーをはなしてねえええええええええええ!!!」 ぱちゅりーの顔に食いついた百足に喰らいついて引っ張ってぱちゅりーから引き離した。 「む゛ぎゅぃやぁあ゛あああ゛あ”!!!」 「我慢してね!絶対ゆっくりさせてあげるから我慢してねえええええええ!!!」 百足が離れる際刺さっていた牙がぱちゅりーの皮を引き裂いた。 痛みであがるぱちゅりーの悲鳴がまりさの胸にズキリズキリと突き刺さった。 まりさはこれがぱちゅりーのタメなんだと必死に言い聞かせながら作業を続けた。 「む゛ぎぃ!む゛ぎぃいい!い゛だいよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「我慢ぢでねえええええええええええええええええええええええええ!!!!」 絶叫して、まりさは最後の百足を引きちぎった。 「ぱちゅりー!早く逃げるよ!早く!」 「む…きゅ…」 再び百足に食いつかれる前に一刻も早くこの場を離れようとするまりさだったが ぱちゅりーは俯いて下を向いてこちらを向こうとしなかった。 「ゆ…動けないならまりさの上に乗ってね!」 そう言うとまりさは器用にぱちゅりーの下に入ってぱちゅりーを背負うと一目散に走り出した。 「まりさのせいでごめんねぱちゅりー…絶対にゆっくりできるとこまで連れて行くからね…!」 背中のぱちゅりーを励ましながらまりさは力強く走り続けた。 続く このSSに感想を付ける