約 592,757 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/381.html
あんまり熱いので川辺で涼しんでいたら、やたら甲高いカエルの声が聞こえてきた。 「ケローっ! ケローっ!」 なんだか泣いているらしい、生えた草を踏みつぶしながらこっちに向かっていく。 よく見ると、その後ろから水色のゆっくりが追いかけていた。 「アタイったらゆっくりね!」 どう見てもゆっくりだね。 どうやらゆっくりカエルはあのゆっくりに追いかけられているらしい。 ゆっくりカエルはぴょんぴょん跳ねて逃げ回るが、水色のゆっくりは上下に動かず、そのまま平行に動いて追いかけてる。どうやって移動してるんだ、こいつ? 「アタイったらゆっくりね!」 「ケローっ!」 突然、水色のゆっくりが一回り大きく膨らむと。 口から冷気を吐いて逃げてたカエルを凍らせてしまった。 ……おぉっ、そんなこと出来るのか。 「やっぱりアタイったらゆっくりね!」 「……あ、あ~う~……」 体が冷凍されてカエルの動きが止まっている。水色のゆっくりはそのままカエルに近づいていって……。 あ、食べた。 「あぁあああぁぁあぁあぁあっ!」 「ガジガジ」 「やめっ……たずっ……」 カエルシャーベットはあっという間に水色のお腹に収まっていった。水色の大きさは大体30センチぐらい、カエルも同じぐらいだったんだが……スゲェ喰うな。 「アタイゆっくりだよっ! ゆっくりしてるよ!」 食べ終わると高らかに周りに宣言し始める水色ゆっくり。周りには誰もいないのに誰に言ってるんだ。 水色の体は宙に浮き、その辺を行ったり来たりしている。 こいつ、飛べるのか。 飛べるゆっくりなんて肉まんかあんまんぐらいかと思ったが、他にもいるんだな。 ……。 暴れ回っている水色を見て思う。 こいつがいたら、部屋も涼しくなるんじゃね? ……。 取りあえず話しかけてみた。 「ゆっくりしていってねっ!」 「ゆっ? アタイゆっくりだよっ!」 ……それが挨拶なのか? 「ああ、見てたよ。見事にゆっくりしていたな」 「そうだよ! アタイったらゆっくりだからねっ!」 おまえの言ってることはよくわからん。 「なるほど。でもやっぱりゆっくりなら、よりゆっくり出来る場所に行きたいものじゃないか?」 「ゆっ? アタイゆっくりしてるよ?」 「ここもゆっくり出来るけど、俺はもっとゆっくり出来る所を知っているんだ。興味ないか?」 俺の言葉に、水色は眉間に皺を寄せて考えている。よくわかってないらしい。 ……ゆっくりは馬鹿だ馬鹿だと思っていたが。 こいつは、輪をかけて馬鹿だな。 あまりに話が通じないので、掴んで持っていくことにした。 「ゆっ! アタイに何するのっ!」 「冷てっ!」 水色に触った瞬間、手に走る冷たさ。手がくっつくかと思った。こいつ氷で出来ているのか? 急に触れて機嫌を損ねたらしい。冷気を出した時のように顔が膨らんでいた。 「おじさんはゆっくりじゃないね! どっか行ってね!」 いつ俺がゆっくりだって言ったんだよっ! ……ちょっと腹立ってきたぞ。 「お前だって、ゆっくりじゃねぇよ」 その言葉は心外だったらしい。凄い形相でこちらを睨みつけてきた。 「アタイはゆっくりだよっ! ゆっくりしているよ!」 「どこがだよ! 全身氷のゆっくりなんて聞いたことねぇよ! あんこ吐けあんこっ!」 「ムッキーっ! ゆっくりったらゆっくりだよ!」 「だったら付いてきて証明してくれよ。お前がゆっくりだって」 「いいよ! ゆっくりしにいくよ!」 売り言葉に買い言葉。 気づいたら、水色が家へ来る流れになっていた。 俺にとっては願ったり叶ったり……なのか? なんだか間違えた気が……。 家に連れてきて3時間もすれば、自分がどれだけ間違えていたかがよくわかった。 畳の上を歩いたら畳が凍りつく、冷気を吐かせて涼しくしようと思ったら「アタイやすうりはしないよっ!」と言われる始末。それじゃ西瓜でも冷やすかと水色の上に置いたら凍りつき、後々「なにするのさっ!」と怒られる始末。 そして何よりも。 「アタイったらゆっくりねっ! アタイったらゆっくりねっ!」 意味もなく騒いでいるのが最高に鬱陶しかった。 こんなに使えないなんて……。 俺は頭を抱える。正直とっとと放り出したいところだが、体が冷たすぎて触れない。それじゃ勝手に帰るのを待とうと思ったら、どうも家が気に入ったらしく、まるで帰る気配がない。 他のゆっくりなら食べれば済む話だが、正直、30センチの氷を食べるなんて考えたくもなかった。 まさか力ずくで相手に出来ないゆっくりがこんなに扱いづらいなんて……どうしたものか。 ……ん? 「アタイったらゆっくりねっ!」 相変わらず叫ぶゆっくりは放っておいて、俺は思考を走らせ始めた。 そういえば……。 立ち上がり、押し入れを漁り始める。ここに確か……お、あった。 俺は鉄のかたまりを持ち上げると、水色の目の前に置いた。 「ゆっ?」 鉄のかたまりを指さして、水色に言う。 「ここに平べったくて乗れそうな所があるだろう」 「アタイゆっくりだよっ!」 ……まぁ理解したってことだろう。 「お前ここに乗れるか? 無理かなぁ、狭いかなぁ?」 「ゆっ! アタイゆっくりだもん! のれるよっ!」 案の定、挑発に乗って移動する水色。普通のゆっくりなら苦戦しそうだが、空を飛べる水色はあっさりと上に乗ってみせた。 「ほらねっ! アタイったらゆっくりでしょっ!」 「はいはい、そうだね」 乗るのはすげぇ速かったけどな。 俺は鉄のかたまりの頭についているレバーを回していく。 ほどなくして、水色が上から押さえつけられた。 「ゆっ!」 さてと。 用意しておいた器を下に置く。 「何するのおじさん、アタイゆっくりだよっ!」 はいはい。 横のレバーを回し、かき氷を作り始めた。 「あ、ああ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁっ!」 水色が回転し、器に削られた氷が乗せられていく。 「あ゛がががががっ!」 シャリシャリと音が鳴りながら、あっという間にかき氷が出来上がった。 「あっ……あっ……」 おおっ、普通に食えそうだな。えーと……。 出来上がったかき氷を手に俺はふと気づく。 そういえばシロップがなかった……。 俺はかき氷を一端置くと、そのまま外へと出る。 どうせその辺に……お、いたっ! 「みんなゆっくりしてねっ!」 「ゆっ!」 「うん、ゆっくりするよっ!」 そこにいたのは、ちょうど手のひらサイズの子供達3匹を遊ばせようとしていたゆっくりれいむの家族だった。 取り合えず親れいむを蹴り飛ばす。 「ゆ゛ぐっ!?」 変な叫び声を上げて飛んでいく親れいむ。こいつらってよく歪むから、あまり遠くまで飛ばないんだよなぁ。 「お、おかあさんっ!?」 「なにするのおじ──」 有無を言わせず、その場にいた子供れいむをかっさらっていく。 「うわあ゛あ゛ぁあ゛ぁぁっ!」 「なにずるのっ! ゆっぐりざぜでっ!」 「おがあざーんっ!」 子供の声に活性化されたのか、いきなり親れいむが起き上がってくた。元気だなこいつ。 「れいむのあがじゃんがえじでぇえぇぇぇっ!」 シュートッ! 「めぎゃっ!?」 ゴーーーールッ! 綺麗な放物線を描いて、親れいむが飛んでいく。……我ながら綺麗に飛んだな、体歪んでるのにぜんぜん減速してねぇや。 あ、誰かの家に飛び込んだ。 「いやぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛っ!」 「おがあ゛ざあぁぁあぁあぁぁんっ!」 邪魔者を排除して、俺は家へと戻ってきた。 「あっ! どこ行ってたの! アタイをむしするなんておじさんゆっくり──」 煩いのでレバーを回す。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」 水色を黙らせて、俺はかき氷を確認する。よかった、まだ溶けてないな。 「おじさん! 早くれいむたちをかえしてね!」 「おじさんとはゆっくりできないよっ!」 「ゆっくりしねっ!」 手に抱えていた子供れいむたちを、そのまま手のひらで丸めていく。 「うぎゃぁあ゛ぁぁあ゛っ!」 「うぷぷぷぴゅっぷぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅっ!」 「やめでうぶあおじあぶげまぜうぎゃっ!!」 しっかり混ざったあんこを、そのままかき氷の上に乗せた。 氷宇治あずきの出来上がりと……。 一口食べてみる。 ……うーん。 普通の氷宇治あずきより喰いづらいが、そのまま氷を食べるよりマシか……なにより甘いしなっ! 「ここか」 「ここだよ! ここに入っていったよ!」 「これで嘘やったらタダじゃすまさへんど」 あん? 玄関の方で声がした瞬間、大きな音を立てて扉が開かれた。 「ゆっくりっ!」 なんだ、さっきの親れいむじゃないか。……あれ? 「ちょっと失礼しますよ」 親れいむの後ろには男が付いてきていた。何だ? 「なんか用ですか?」 「いや、さっきこのゆっくりが窓から飛び込んで来てな。ふざけるなと怒鳴ったら、吹き飛ばしたのは兄ちゃんやって言うんで話聞きにきたんや」 ガラ悪っ! つーかこのゆっくり、あれだけけっ飛ばしたのになんで生きてるんだよ……。 「そう言われても、俺今日ここから出てないですし……」 「なにいってるのさ、さっき──」 レバーを回す。 「あぎゃがぎゃがっ! も、もうやめでよ゛っ!」 余計なことを言うからだ。 「それにゆっくりをけっ飛ばすなんて誰だってやるでしょ、俺だっていう証拠がないじゃないですか」 「まぁそうなんやけどな……」 俺の言葉に面倒くさそうに頭を掻く男。どうも泣きつかせて儲けようという考えだったらしいが、引く様子がないので迷っている。 そもそもガラス代も、この親れいむを加工所に連れていけばちょっとは金になるし、大きな騒ぎにしたくないのが本音だろう。 「ゆっ! そんなことないよっ! れいむを蹴ったのはおじさんだよっ!」 ……煩いのがまだいたか。 「だから証拠がないだろう。何かあるのかよ」 「れいむの子供どこにやったのっ! あの子たちがいる筈だよ!」 「この部屋のどこに子ゆっくりがいるんだ?」 周りを見渡す男と親れいむ。もちろん子ゆっくりなんて影も形も見あたらない。あるのはかき氷に乗ったあんこだけだ。 「ゆっ! そ、そんなはずないよ! どこにいるのぉっ!」 呼び掛ければ返事をしてくれると、親れいむが叫び始める。 その間に、男と目があった。 「……」 手に持っていたかき氷を見せる。 「……」 男は頷くと、そのまま親れいむを片手で鷲づかみにした。どうやら伝わったらしい。 「ゆっ!? な、なにするのお兄さん!!」 「どうやら嘘だったみたいだな……」 その言葉に、親れいむは饅頭肌を青くして震えた。 ……どうやって色変えてるんだ、この不思議生物。 「ち、ちがうよ、れいむうそなんて」 「それじゃ約束通り、加工所いこか」 「いや゛ぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁっ! かごうじょばい゛や゛だぁぁぁあ゛あ゛ぁっ!!」 暴れ回るが、ゆっくりが人の力に逆らえるわけがない。 食い込む親指の感覚に震えながら親れいむは連れて行かれる。 ……。 出て行く瞬間、俺は親れいむが見えるようにかき氷を食べ始めた。 「あ゛あ゛っ!!」 扉が閉められる。 親れいむの暴れている声が聞こえていくが、もう俺には関係ない。 ……やれやれ。 ため息をついてその場に座る。予想してなかった騒ぎに疲れがたまった。 ……。 俺は最後の光景を思い出し、思わず顔がにやけてしまう。 あの絶望で満ちた顔に、俺は溜飲が下がる思いだった。 さて。 業務用かき氷機の方を見る。 「おじさんゆっくりじゃないねっ! 早く外してねっ!」 さっきは喋らなかったので、ちょっとは学習したかと思いきや、時間が経つとまた水色は喚き始めた。 ……やっぱり、馬鹿だから数分で忘れたんだな。 それだけ忘れられたら、人だと幸せに生きられるんだろうが、水色が忘れても鬱陶しいだけだ。 しかし、どうするか。 全部削って食べるのは流石に辛い。 いっそ、削ってそのまま流しに捨てるか。 水色を処分する方法を考えながら、取りあえず腹が減ったので俺は洗い場の方へ向かう。 「ちょっとむししないでよっ! アタイはむしたべるんだからねっ!」 ……。 一瞬、無視なんて知っていたのかと思ったが、やっぱり馬鹿は馬鹿だった。 何かないかと食材を探し始める。 えーと、何か食えるものが……。 ……あ。 「だからむししないでっ! アタイたべちゃうよっ!」 ……うん、面白そうだな。 俺はその場から離れると、今度はかき氷機に近づいていった。 「ゆっ?」 「わかったわかった助けてやるよ」 頭についたレバーをゆるめ、水色を動けるようにする。 途端、水色は俊敏な動きで逃げ出していた。 「ゆっ! ようやくアタイがゆっくりだってわかったみたいね!」 だから、その速さのどこがゆっくりなのかと。 「でもおじさんはゆっくりじゃないねっ! アタイそろそろかえるよっ!」 「ああ、帰るのか?」 「ええ! ゆっくりじゃないおじさんはとっととれいとうはそんされてね!」 破損してどうする。 「残念だな。せっかくエサを用意してたんだが……」 言った瞬間、水色がこっちを見ていた。凄い食いつきだな……。 「エサっ? アタイしたにはうるさいよっ!」 「ああ、ゆっくりには美味しいって絶賛されているものがあってね。それなら満足できると思ったんだ」 ゆっくりに絶賛と聞いて興味が惹かれたらしい、さっきまでとは打って変わって瞳が輝いている。 「いいよっ! ゆっくりたべてあげるねっ!」 「そうかい、それじゃちょっと待ってな」 俺はまた洗い場へ引き返す。 水色に与える食材を手に取り、そのまま引き返してきた。 「それじゃ今から目の前に置くから、ちゃんと凍らせろよ」 「もちろんだよ! アタイに任せておいて!」 顔を張って自信満々に言う。 俺は手を開き、素早く食材を置いた。 水色の顔が膨らみ、瞬間冷凍しようと冷気を吐く。 しかし、食材が凍ることはなかった。 「ゆっ?」 「なんだ、凍らないみたいだな」 食材は水色よりも小さいながら同じゆっくりだ。しかしゆっくりカエルを食べていた水色には特に疑問はないらしい。特に気にせず、どうして凍らなかったのかを考えている。ああ、馬鹿でよかった。 「まぁいいじゃないか。そのまま食べてみたらどうだ?」 「もちろんアタイそのつもりだよっ! おじさんはだまってて!」 はいはい。 言われた通り黙っておくと、水色は躊躇せず大きく口を開けて、そのゆっくりを飲み込んだ。 「もぐもぐ」 「……」 「もぐもぐ……っ!?」 突然、口を開いたまま水色が痙攣し始めた。 「どうした? 美味しくないかっ?」 「ちがうよっ! アタイゆっくりだよっ!」 なんか慣れたな。 「お、おじさんっ!」 「なんだ?」 「あ、熱いよっ! すっごくあつじっ!?」 水色が最後までいい終わらないうちに、食べたゆっくりは水色の頭を通って中からはい出てきた。 「もこーっ!」 それは、ゆっくりもこうだった。 やっぱり、中で燃えると溶けるもんなんだな。 「あ、あああああああああっ!」 水色の痙攣は止まらない。もこうはそのまま水色の頭に乗って燃え続けている。 「もっこもこにしてやるよっ!」 「とける、アタイとけちゃうっ!」 もう頭の上部分は完全に溶けて、俺の家の床を水浸しにしていた。あとで掃除しないとな……。 「おじさんっ! 水っ! 水ちょうだいっ!」 「水ならそこの壺に入ってるぞ」 言い終わった途端、壺に向かって飛んでいく。 しばらくして、水色の大きな声が聞こえてきた。 「なかからっぽだよぉおおぉおおおぉおおぉっ!」 そりゃな。もったいないじゃないか、水が。 俺は両手でしっかり抱え、そのまま壺に向かっていく。 中を覗き込むと、もう半分近く溶けきった水色がそこにいた。 「お……おじさ……アタイ……」 「何だかさっきよりゆっくりしてるなっ!」 「……ち、ちが……」 「そんなお前にプレゼントだ。受け取ってくれっ!」 水色の上へ抱えていたものを落としていく。 抱えていたのは大量のゆっくりもこうだった。 「あ……」 「もこたんいんしたおっ!」 全員が一斉に炎を纏う。 「……あた……」 あっという間に、水色は溶けきって水に変わっていた。放っておけば蒸発し、跡形もなくなくなるだろう。 俺は安心と落胆でため息をついた。 やれやれ、もうちょっと使えると思ったんだがなぁ……。 もこうは一定時間炎を纏う。出せる時間に制限があるものの、物を燃やす時はかなり便利だ。 俺は使えるゆっくりはちゃんと使っていくが、使えないゆっくりほど邪魔なものはない。 いいゆっくりは、使えるゆっくりだけだ。 さて……。 改めて飯を食おうと、洗い場へ近づいていく。 「もこーっ」 そこに残っていたゆっくりもこうが、元気な声を上げていた。 End ゆっくりちるのをゆっくりもこたんで溶かしたかった。 すっきりー。 by 762 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/203.html
(前編から) ゆっくり共の苛めの執拗さは人間の比ではなかった。 人間なら、いくら他人をいじめたって日がな一日そればかりやるわけじゃないが、 ゆっくり共は一日中ひたすらいじめに没頭していた。 集中力がすごいのか、単純な思考しかできないゆえか、 なんにせよ、その標的にさらされたこちらの負担は計り知れない。 いつでも握りつぶせるような、自分よりはるかに弱い連中に苛められることが、 これほどまでに悔しく苦しいとは想像もしていなかった。 まりさとれいむ二匹だけの時は、「たかが饅頭のやること」と受け流すこともできたが、 今ではその「たかが饅頭」の意識が俺を苛んでいた。 そのたかが饅頭に、俺の生活は蹂躙され、何もやり返せないでいるのだ。 苛立ち、怒り、悔しさ、俺の精神的ストレスはすでに限界を超えていた。 外では意味もなく道端の木を殴りつけ、缶が転がっていれば力いっぱい蹴り飛ばした。 友人が俺を少しばかり避けるようになったが、どっちみち友人と遊んでいる時間は全くない。 由美にしても、自分の趣味のために苦労をかけている引け目があるらしく、 ゆっくり以外のことでは近頃本当に気を配って聞き分けよくしていた。 しかし、ゆっくりを全力でゆっくりさせるという計画の苦難はこれだけではない。 ゆっくり同士の関係にも気を配らなければならなかった。 全員がゆっくりしていなければ計画の完遂はないのだ。 しかし、こいつらが繰り広げるゆっくり模様はまさに地獄だった。 まりさは、相も変わらず傍若無人に振る舞っていた。 十匹の子ゆっくり共には目もくれず、食べたいものを食べたいときに食べ、 子ゆっくり共の注視の中でれいむやありすにすっきりを要求した。 まりさの相手をするのは主にありすだった。 ありすのすっきりテクニックは完全にまりさを虜にしていた。 かつては人間に躾けられ、人間の強さを知っているありすの方も、 その人間に勝てるまりさを手放してはならじと、全力で奉仕した。 まりさはオーラルすっきりがお気に召したようで、 ありすの舌技ですっきりすることも多く、交尾そのものはそんなに行わなかった。 直接交尾をしてにんっしんっをしてしまえば、体力が奪われてそれ以上すっきりしにくいものだが、 この技術により、ありすは通常では考えられないほど連続でまりさをすっきりさせていた。 また、舌を使うことで、 たとえにんっしんっ中であってもありすはまりさのすっきりを相手することができる。 なによりその点が、そのへんのゆっくりとは決定的に違っていた。 それでも一匹だけでは飽きるようで、まりさは外出先でもとっかえひっかえすっきりし、 一方で、厚かましくも家でれいむにすっきりを要求した。 「ゆっ!まりささまとすっきりするんだぜぇ」 「うらぎりまりさはれいむにちかよらないでね!!」 初めのほうこそ、れいむは形ばかりの抵抗をしていたが、 子供たちを父なし子にしたくないという母心と、そしてありすに対する対抗心から、 すぐにまりさとすっきりするようになった。 日々ありすの性技を目の前で見せつけられていたれいむはすぐに真似し、技術を磨いていった。 「んほっほっほおぉぉぉ!!!たまらないのぜぇぇぇぇぇ!!!」 互いに対抗心を燃やし、日々技を磨いていく妻と妾とのすっきりは、 もはやそこらの野良ゆっくりとは比べものにならず、 まりさが外出先ですっきりすることはめっきり少なくなった。 さて問題は、にんっしんっした子供である。 俺としては、これ以上一匹だって増えてはほしくないし、 数が多ければそれだけトラブルの種も増えるだろう。 由美と相談のうえ、なるべくこれ以上増やさないように誘導する方針を固めた。 れいむとありすは、その時点ですでにまたにんっしんっしていた。 れいむは頭に茎を生やし、ありすは下顎をぼってり膨らませている。 その母どもに対し、俺は説得を試みた。 ここは手狭だから、あまり増えるとみんなゆっくりできなくなる。 その方向で言葉を尽くした。 しかしやはり、れいむが言う事を聞くはずはなかった。 「なにばかなこといってるのおおおおおぉぉぉぉ!? かわいいあかちゃんをみればみんなゆっくりできるにきまってるでしょおおおおお!!! ばか!!ごみ!!むのう!!しね!!」 「ちにぇ!!ちにぇ!!」 「おきゃーしゃんのいうこちょをきけ!!」 処置なしだった。 強すぎる母性愛により、こいつの餡子脳内では、 赤ゆっくりがすべてを解決することになっているようだ。 一方ありすの方は、論外であった。 「みゃみゃ、かちきゅがにゃにかほえちぇるわね?」 「なんだかこうふんしてるみたいね。ほうっておきなさい」 「きちゃにゃいきゃらおいかえちまちょう!」 「およし。つかれたらかってにおとなしくなるわよ」 どれだけ言葉を連ねてもこの調子だった。 全く目線を合わせてこず、家族同士でせせら笑うだけだ。 俺は頭を抱えたが、 子供数の問題に関しては、結局のところ、紆余曲折を経ながらも最終的には決着した。 かかる状態において、当然ながられいむとありすの関係は最悪だ。 憎悪と侮蔑、同じ屋根の下に住みながら互いに家族と認める気は皆無のようだ。 子育ての途上で、互いに互いの家族を貶めた。 あのれいむ共はゆっくりできない、あのありす共はみんなれいぱーだ。 部屋の反対側の隅どうしで、互いの家族は固まって暮らしていた。 どちらも相手を蹴落とし、家から追い出すチャンスをうかがっていた。 最初の十匹の子供が生まれてからまた十日ほどがたったころ、 れいむの茎の子供がまたぽとぽとと生まれた。合計五匹だ。 暗い表情の俺に向かって、喜色満面のれいむがいきいきとあまあまを命令する。 由美は俺を気遣いながらも、やはりどこか浮きたっていた。 その顔を見ると、もう少し頑張ってみるかという気になった。 その翌日、事件は起こった。 「でいぶのおぢびぢゃんがあああああーーーーーーっ!!!」 絹どころか牛革をも裂くような甲高い悲鳴で、俺は起こされた。 押入れから出ると、れいむ一家が泣きわめいている。 「れいみゅのいもうちょがあああああーーーーーーーー!!!」 「ゆっぎゅりぢで!!ゆっぎゅりぢでよおおおぉぉ!!」 「どぼじでごんなごどにいいいいいいいいーーーーーー!!?」 れいむ一家が囲んでいるのは、黒ずんだ五つの小さな饅頭だった。 昨日生まれたばかりの赤ゆっくり共。 どれも苦悶を顔に貼り付け、頭の上から何本もの茎を生やして死んでいた。 その周囲に垂れこびりついているこの液体は。 俺はありす共を見た。 ありす共は何も言わず、揃ってにやにやと見下した笑みを向けている。 全てが一目瞭然だった。 「お前ら……………やったのか?」 くだらない質問だったが、俺は聞いてみた。 「はあああぁ~~~~~~?」 返ってきたのは唇をゆがめた冷笑。 「ばかがなにかいってるわねえ?」 「みゃみゃ!あのどりぇい、いよいよおかちくなっちぇるわよ」 「ときゃいはにゃありしゅちゃちをうちゃがうにゃんて、きっちょあちゃまがおきゃしいのにぇ!」 「あら、ちょんなこちょはみゃえからわきゃっちぇちゃわよ!」 「ゆっほっほっほっほ!!」 言葉こそまだ舌足らずだが、こいつらはもう子ゆっくりとしてはそれなりの大きさだった。 昨日生まれたばかりの小さな赤ゆっくりを標的に、夜中にこっそりすっきりしたのだろう。 親れいむを起こさないように赤ゆっくりだけを舌でそっと連れ出し、 赤ゆっくりの小さな声が届かないほど離れたところですっきり殺したあと、ご丁寧に戻しておいたわけだ。 見ると、俺が寝ていた部屋の隣にある部屋の押入れが開いていた。 その中にカスタードが落ちている。ここに連れ込んでことに及んだのか。 物音や声が聞こえなかったおれも迂闊だった。連日の疲れで毎日泥のように眠っていたのだ。 「あでぃずううううううううーーーーーーーっ!!!」 泣き喚きながられいむが突っ込んできた。 胎生型にんっしんっしているありすに激突し、ありすはごろんと転がって悲鳴をあげた。 「ゆひぃいいいっ!!?いだいいぃぃぃぃ!! ゆっくりごろし!!ゆっくりごろし!!たすけて!!たすけてまりさああああ!!!」 「じねええええええーーーーーーゆびゃ!!」 なおもつっかかろうとするれいむに、まりさが横から激突した。 「ばかなことはやめるんだぜ!! ゆっくりどうしなかよくしろだぜぇ!!」 どの口が言うのか、家庭内不和の元凶がなにか叫びだしている。 「ばりざああああ!!あでぃずが!!あでぃずがでいぶのごどぼおおおおおお!!! でいぶのおぢびぢゃんだぢがあでぃずどもにごろざれだんだよおおおおおおお!!?」 「ちょうこもにゃいにょにちょんなこちょいわにゃいでよ!!」 「りぇいしぇいになりなちゃいよ!!いにゃかもにょね!!」 子ありす共が口々に罵る。 まりさはありすを起こしてやりながら、れいむに向かって言った。 「うるさいんだぜ!! なかよくできないんならここからでていくんだぜ!!」 「ゆっ!?で、でも!!」 「じぶんのこどもをちゃんとみてないれいむがわるいんだぜ!! いくじほうきなんだぜ!?めんどうごとはごめんなんだぜ!!」 本当にどの口が言うのか。 「…………ゆあぁぁぁ……ゆがああぁぁぁぁ………」 ちゃんと見ていなかったお前が悪いと、母性愛にケチをつけられると弱いようだ。 れいむはその場に突っ伏してむせび泣いた。 「ゆゆっ、うるさいわね!やばんないなかもののそばになんかいられないわ」 「まったきゅ、みっちょもにゃいわね!」 「あっちでおけちょうをなおちまちょう!」 その場から離れ、家族でぺーろぺーろを始めるありす共。 まりさはあくびを一つして、俺にあまあまを要求するとむしゃむしゃやりはじめた。 れいむの家族だけがいつまでも泣き続けていた。 昼過ぎにやってきた由美は、俺に成り行きを聞いて絶句していた。 これであきらめてくれればもうけものだが。 忍耐力を示す手前、俺のほうから計画の中止を言い出すわけにはいかない。 「ありすちゃんは、無理、かな……」 さんざん考えた末、ありすを追い出せば解決するという結論に落ち着いたようだ。 まあ、それでひとまずは収束するだろう。 「ねごとはねてからいうんだぜ!!」 まりさの一喝で、その提案は一蹴された。 「追い出すわけじゃないの。ありすちゃんたちに別のところに住んでもらって、 まりさちゃんが通えば……」 「ここでいいんだぜ!!めんどくさいんだぜ!!」 「でも、れいむちゃんと喧嘩しちゃうでしょ?」 「けんかなんかないのぜ!!いじめはありません!! ちゃんとまりささまがとりまとめてるのぜ!! まりささまのりーだーしっぷにけちをつけるきかぜぇ!?」 リーダーシップなどというものが自分にあると、このまりさは思っているらしい。 まりさはかたくなに固辞した。 理由は不明だが、俺の思うところ、 目の前で二匹のゆっくりが自分をめぐって争うのが気分がよかったのではないだろうか。 その結果子供が殺されようと、むしろ面白がっているふしがある。 とにかく、まりさが拒否する以上、 まりさがゆっくりできない可能性のある選択肢は取れなかった。 どうしようかと気をもんでいるうちに、やはり報復は行われた。 ありすが胎生型出産で、二匹の赤ありすを産み落とした翌朝のことだ。 「ゆぎゃあああああああああ!!!」 その日の朝は、ありすの悲鳴で起こされた。 予想できていた光景がそこにあった。 二匹の赤ありすが、風呂場で潰されてカスタードのカスになっていた。 狼狽するありす共の後ろで、れいむ共がこれ見よがしに笑っている。 「あなたたち!!あなたたちがやったのね!!?」 「れいむはしらないよ!!みてなかったそっちのせきにんだよ!!」 「ちょうこもにゃいのにうちゃがわにゃいでにぇ!!」 「ばぁ~きゃ!!ばぁ~きゃ!!」 ぽんぽん飛び跳ねながらせせら笑うれいむ共。 とかいはを自称するありすは、さすがにれいむのように暴れることはしなかったが、 ぎらつく殺意の視線をれいむに向けている。 ありすはまりさに泣きついたが、面倒ごとはごめんだとばかりに取り合われなかった。 こうして、ここは地獄と化した。 毎日思うさますっきりするまりさの子供たちは、 弱い赤ゆっくりのうちに敵対する家族に殺された。 れいむの子はありす共に殺され、ありすの子はれいむ共に殺される。 互いに必死に自分の子を守ろうとするのだが、 所詮ゆっくりの事、つけいる隙はいくらでもあった。 結局、すでに大きくなって力のついた一番最初の子供十匹以外は、 成長する前にことごとく殺され、それ以上子ゆっくりが増えることはなかった。 こんな状況に、ついに由美が泣きだした。 わがまま放題にゆっくりさせるのは構わないが、このゆっくり共は子供を殺している。 可愛い子ゆっくりが殺されていくこの地獄を前に、 まりさ達を自由にさせたい、しかし子ゆっくりが死ぬのは可哀想だ、というジレンマに苛まれていた。 由美が泣いて俺は俄然うろたえ、事態の収束を決意した。 俺は考え、新たに1メートル四方程度の透明なガラス製の箱を設置した。 まあ水槽のようなものだが、これを部屋の両端に一個ずつ置く。 箱の壁は高いのでゆっくりには飛び越えられないが、人間が入れてやればよい。 箱の底にタオルを敷き、こうして寝床ができあがった。 寝るときなど無防備な際は、俺たちに言えばこの中に入ることができ、 赤ゆっくりを守ることができるわけだ。 れいむ種とありす種がそれぞれ別の寝床を使った。 こうしてこいつらはひとまずゆっくりできるようになり、 由美は俺に抱きついて大袈裟なくらいに喜んだ。 ついつい鼻の下を伸ばしてしまう。 由美がゆっくり馬鹿なら、俺は恋人狂いだろう。 しかし、問題はそこでは終わらなかった。 最大の問題児はまりさ種だったのだ。 「むーしゃ、むーしゃ!!うっめ、これ、これめっちゃうめえ!!ぱねえ!!」 「はむっ、はふはふ、はふっ!!」 「しあわちぇなんだじぇぇぇぇ~~~~~!!」 今、まりさと子まりさ三匹は、あまあまにむしゃぶりついている。 そのあまあまは、赤ゆっくりのなれの果てであり、 それを差し出しているのはこの俺だ。 そもそも、ここで一番強いのはまりさだった。 個体としては身体能力が高く、狩りが得意で、ときには外敵を撃退する。 ゲスにはままあることで、その強さゆえに増長するケースがほとんどだ。 それゆえ、まりさは俺たちに対してだけでなく家族にも横暴にふるまっていた。 子供たちの食べている食事がうまそうだと思えば、横から奪い取る。 楽しい遊具は片っ端から独占し、他のゆっくりが触れると体当たりを食らわせる。 れいむやありすが寝ている最中でも、お構いなしにすっきりを強要する。 面倒だと思えば話しかけられても返事もせず、文句を言われれば暴力で返した。 先ほどガラス箱の寝床のことを書いたが、 まりさに限っては、自分専用の天蓋つきの高級ゆっくりベッドを使用していた。 最初のうちは父親を恋しがって近づいていた子ゆっくりも、 その横暴を恐れ、三匹の例外を除いていまでは父親には近づかないようにしていた。 三匹の例外とは、子まりさである。 最初の子ゆっくり十匹のうち、三匹がまりさ種だった。 二匹がれいむの子、一匹がありすの子だが、 このまりさ種に限っては両母親の確執とは無関係に接触し、行動を共にするようになった。 三匹のまりさ種は父親のまりさを慕っていた。 いつも父親の後をついて歩き、機嫌を損ねないように媚びへつらう。 子育てを面倒がるまりさも、自分を持ち上げてくれる子まりさ共は憎からず思うらしく、 ついてくる分には勝手にさせていたし、気が向けば自らの武勇伝を語って聞かせていた。 語られる強さにあこがれ、子まりさ共はますます父親を尊敬し、その価値観にすり寄って、 妻と妾を同時にはべらせて顧みない横暴をさえかっこいいと思っているようだった。 新たなゲスまりさが三匹完成したというわけである。 れいむ種やありす種が家族でゆっくりしている間、 子まりさ共は母親の傍にも行かず、ひたすら格闘ごっこをしていた。 クッションをサンドバッグに見立てて体当たりを繰り返し、 子まりさ同志で取っ組み合いを始める。 父親のような暴力を奮い、権力をものにするための鍛練だった。 すぐに子まりさ共は子ゆっくりの中では強いほうになり、 三匹で固まってうろついては俺や他の姉妹をいじめ出した。 そんな子まりさ共を、父親は悦に入って眺めていた。 直接喧嘩しても勝てないのはもちろん、 父まりさお気に入りの三匹に抵抗したらどんな目に逢わされるかわからない。 それゆえ、子まりさ共が他の家族に忌避されるのは必然だった。 同族食いの味を発見したのは子まりさだった。 生まれては殺されていく赤ゆっくりの死骸を、ある時一匹の子まりさが餡子の匂いに惹かれて舐めた。 「ぺーろ、ぺーろ……ちちちちちあわちぇぇぇぇ~~~!!!」 甘い餡子やカスタードで構成されるゆっくりは、ゆっくり自身にとっても御馳走だ。 れいむ種やありす種は同族食いに怖気をふるったが、 完全にゲスとなったまりさ共は、積極的にタブーを犯すことを楽しんでいた。 子まりさ共が争って死骸をむさぼり、続いて親まりさがその死骸を横取りした。 今まで差し出されてきたどんなあまあまよりも濃厚かつ深い甘味。 やがて、子まりさ共が率先して赤ゆっくりをつけ狙うようになった。 母親や大きくなった子が守っているあいだは手を出されないが、 母親たちが寝静まった夜中にこっそり盗まれたり、 うっかり赤ゆっくりだけにしてしまった時に襲われる危険性は日常的についてまわった。 いよいよ赤ゆっくりは安心できなくなり、ほとんどをケースの中で過ごしていた。 面白くないのはまりさ共のほうで、すでにやみつきになった甘味を忘れられない。 しかしさすがに母親に面と向かって子を差し出せと言えず、夜中に盗もうにもケースの中には入れない。 やがて、他のゆっくり共が寝静まったある夜、彼らは奴隷を使うことにした。 「おい、ごみくず!あのあまあまをもってくるんだぜ!!」 子まりさが顎でしゃくったほうを見て俺は唸った。 「赤ありすの事か?」 「にゃにいっちぇるんだじぇ!!ありぇはゆっきゅりじゃなきゅてあみゃあみゃなんだじぇ!!」 「さすがに、そんな手助けは」 「おいぃ!!ごみくじゅがにゃにまよっちぇるんだじぇぇ!? ごみのうみしょなんきゃうごかちたっちぇしょうがにゃいんだじぇ!!」 「くちょどりぇいはだまっちぇはいはいいうこちょをきくんだじぇぇ!!」 俺は考えてしまった。 赤ゆっくりを保護したはいいが、これ以上増やしては世話しとおす自信がまったくなかった。 そして、こいつらの渇望は深いようで、ここで拒否したら後々めんどうそうだ。 またぞろ由美の目の前で、堂々と赤ゆっくりを殺しかねない。 二つの問題を解決するために、俺は手助けしてしまった。 あとあとこの決断を深く後悔する事になったが。 大きめの赤ありすを一匹持ち出し、ケースから離れて子まりさ共に与えた。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……ゆぴぎゅっ!?」 起きる暇さえ与えられず、一撃のもとに踏みつぶされて絶命する赤ありす。 そのカスタードを子まりさ共は貪った。 その日から、毎日のように少しずつ赤ゆっくりを持ち出してはまりさ共に食わせた。 親まりさも舌鼓を打ち、赤ゆっくりを食すためにますますすっきりするようになった。 同族殺しの罪悪感、というよりは母親を激怒させては面倒なので、晩餐は夜中に秘密裏に行われた。 ゆっくりは数を数えるのが苦手なので、あまり多くなると自分の子供の数が把握できなくなる。 度重なるまりさとのすっきりで、母親共は数多くの赤ゆっくりを生み出したが、 一見わからない程度に少しずつ盗み出しているぶんにはばれないようだった。 大きくなってきたものから順に運び出していったので、 どれも子ゆっくり程に成長する前に間引かれることになった。 しかし、やはりやがてはばれるものだ。 そんなことを繰り返していたある日、たまたま起きだしてきたありすに見つかった。 自らの子を貪り食うまりさ共をしばし呆然と見つめた後、 ありすは聞いてきた。 「……どうやってありすのこどもをとったの?」 「ゆっ」 居直ったまりさが咀嚼しながら俺のほうを指した。 ありすはしばらく黙っていたが、やがて信じられないことを言ってきた。 「ありすにもあっちのあかちゃんをもってきなさい!」 まさかこいつらも食うつもりなのか。 そういえばこいつが俺に直接口を聞いてきたのは初めてのような。 とにかくれいむ側の寝床に寝ていた赤まりさを取り出して渡してやると、ありすはケージの中で震えはじめた。 「ま、ま、ま、まりさかわいいよまりさああああああ!!!」 「ゆぎゅっ!?」 赤まりさに突撃し、すさまじい勢いで交尾を始めた。 「かわいいあかちゃああああんん!!ありすのとかいはなあいをたっぷりそそぎこんであげるわねええええ!!!」 「ゆぶっえっ、ぎぼ、ぎぼぢわりゅいいいいいい!! おがあじゃああああんだじゅげぢぇええええええ!!!」 ここに来てから、生きるためにまりさをすっきりさせるばかりだった生活。 本来、性欲の並はずれて強いゆっくりの中でもだんとつに性欲が強いありす種にとって、 それは恐ろしいほどの欲求不満だったのだろう。 というか、やっぱりレイパーだった。 「んほほおおおおおおおおすっきりーーーーーーーーーーーーっ!!!」 「もぢょっ!!」 小さな赤まりさの中に大量の精子カスタードを注ぎ込み、その勢いで赤まりさが爆ぜた。 断末魔は、「もっとゆっくりしたかった」の言いかけだろうか。 「ゆふぅ、ゆふぅ………まりさたちにおすそわけしてあげなさい」 ありすの指図で、茎を生やして黒ずんでしまった赤まりさをまりさ共の前に差し出してやった。 まりさ共は喜々として貪った。 あんなに黒ずんで崩れた饅頭は食べる気も起きないが、少なくともゆっくりにとって味は問題ないようだ。 まりさ共の死体食に、ありすが一枚噛むことになった。 溜まりに溜まった性欲と、同族食いを目の前にしての集団心理が、ありすを子殺しに追いやったのだろう。 ありすは自分の赤ゆっくりさえ犯し殺しはじめ、死骸をまりさ共に差し出した。 茎を生やして黒ずんだ赤ゆっくりはまた特別な味らしく、まりさ共は喜んでいた。 自らの子を、まりさは食らうために、ありすは犯すために、以前の何倍ものすっきりを繰り返した。 子ありす達がそれに参加しはじめ、子まりさ共とすっきりし、出産と強姦に加わったことで、 数倍のペースで出産される赤ゆっくりは数倍のペースで消費されていった。 子殺しの宴は、表向きは秘密にされており、 夜中は自宅に帰っている由美は幸い知る機会がなかった。 ひっきりなしに出産しているはずなのに一向に増える様子のない赤ゆっくりを、 彼女は疑問に思っていたが、俺が取り繕った。 「外出のときに、森のゆっくりの群れに預けてるんだよ。 このゆっくり達も自分では手に負えないってわかってるみたいで、間引いてこいってさ」 由美はすんなり信じてくれた。 残念だけど、子供たちが死ぬよりはずっとましだと喜んでいた。 「でいぶのおぢびぢゃんになにじでるどおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!?」 れいむに露見したときには、やはりそれまでのようにはいかなかった。 母性愛の強いれいむにとって、赤ゆっくりは絶対だ。 その赤ゆっくりを犯し、食らっていたありすとまりさ共に向かって飛び跳ねたが、 ガラスケースをばんばん叩くばかりだった。 「だぜえええええええ!!ごごがらだぜえええええーーーーーーっ!!! おばえらみんなごろじでやぐううううううううううーーーーーーーーー!!!!」 れいむの剣幕に、さすがにまりさとありすも少々青ざめていた。 目玉と歯茎をむき出しにしてがんがんガラスに体当たりする様は、確かにこの世のものではなかった。 しばらくたじろいでいたが、やがてありすが叫んだ。 「あ、ありすはしらないわよ!そこのどれいがかってにやったことよ!!」 「ゆゆっ!そうだぜ!!そいつがもちだしてころしたんだぜ!! まりささまはしたいをかたづけてただけなんだぜ!!」 まりさがすぐに口裏を合わせた。 面倒事はすべて奴隷に押し付けろ、の方程式がここでも採用された。 「おばえがあああああーーーーーーーーっ!! だぜ!!だぜ!!だぜ!!ごろじでやるがらだぜえええええええええ!!!」 あっさりと信じたれいむが俺に殺意を叩きつけてくる。 弁解しても火に油を注ぐだけだろう。 仕方なしに、運び出そうとケージに手を突っ込んだら、思いっきり右手に噛みついてきた。 痛くもないが、急に引き抜いたら歯を折らせてしまいそうなので、慎重に運びだしてやる。 「じね!!じね!!じね!!ゆっぐりごろじのごみぐじゅはじねえええええ!!!!」 床に下ろされた途端、すさまじい剣幕で体当たりを繰り返してくるれいむ。 適当にやられたふりでうずくまる俺を見て、まりさとありす共はけたけた笑っていた。 「ころちぇ!!ころちぇ!!」 「れいみゅのいもうちょをころちちゃごみくじゅはゆっくりちないでちにぇ!!」 「おきゃーしゃん、かちゃきをとっちぇにぇ!!」 子れいむ共がガラスケースの中でわめいている。 しばらくの間黙ってやられていたが、やがてまりさが言った。 「ゆっ、れいむ!そこまでにしとくんだぜ!! このどれいにはまだまだはたらいてもわらなければならないんだぜ。 ころすんじゃないのぜ!!」 「ゆはぁーっ、ゆはぁーっ……」 全身を上下させて息を整えてからようやくれいむが答える。 「こんなどれいはもういらないよ!かわりをつれてくるよ!! こいつはここでしまつするんだよ!!」 「あら、そんなにあっさりころしてきがすむのかしら?」 ありすが口をはさんでくる。 「かわいいおちびちゃんをなんびきもころしたにんげんを、ひとおもいにころすなんてやさしいのね」 「ゆっ!?」 「しぬまでゆっくりくるしめたほうがえれがんとにたのしめるんじゃないかしら?」 「……そうだね!!」 憎いありすに同意するのは不本意だろうが、俺への憎しみが勝ったようだ。 れいむは俺に向きなおって宣言した。 「おまえはいっしょうゆるさないよ!! これからずっとゆっくりさせないよ!!ゆっくりくるしんでいってね!!」 その日から、苛めは制裁に変わり、制裁はやがて虐待になっていった。 れいむの憎悪はすさまじかった。 その日からすっきりもせず、 子れいむ共ともども、すべての生活と意欲を俺への虐めに注ぎ込んだ。 「ごみくずはどげざをしてね!! いいというまであたまをあげないでね!!」 理由もなしにいきなり土下座を強要され、いつまでも続けさせられた。 「れいむたちのうんうんをじっくりみててね!!めをそらさないでね!!」 正座させられ、れいむ親子が一列になってうんうんをひり出す様を見せつけられた。 「れいむたちのうんうんをかたづけてね!! どうぐはつかっちゃだめだよ!!ぜんぶきれいにたべてね!!」 床のうんうんやしーしーを綺麗になるまで舐め取らされた。 「ひまなんだったらかべさんにあたまをうちつけててね!!」 えんえんと壁に頭突きをさせられた。 さすがに演技で、本気ではやらなかったが、それでも相当苦痛だった。 「くそじじいはうごいちゃだめだよ!!」 仰向けに寝転んで動かぬよう強要され、 れいむ共に上で跳ねまわられしーしーをかけられた。 「なにおへやにはいろうとしてるの?ばかなの?ほんもののばかなの? おまえのへやなんかもうないよ!!ごみくずはゆっくりしないでね!!」 押入れに逃げ込むことも許されず、一日中部屋の中を追い立てられた。 「だれがごはんをたべていいっていったのぉ!?くそじじいはいっしょうたべなくていいんだよ!! それをだしてね!!む~しゃむ~しゃ、しあわせぇ~!!」 部屋の中では食事ができなくなった。 れいむの執拗な攻撃にまりさ共とありす共も喝采して、 右にならえで俺への虐めを強化した。 俺の無様な姿を目の当たりにして、由美はさすがに狼狽していた。 これまでさんざん見下され馬鹿にされてきたが、 これほどの虐めは想定していなかったのだろう。俺だってしていなかった。 「あの、れいむちゃん、許してあげて?」 「おねえさんはだまっててね!! ゆっくりごろしにかけるなさけはないんだよ!!」 「ゆ、ゆっくり殺し?」 俺のほうを見る由美に向かって、俺は慌てて言った。 「いや、なんでもないんだ。ちょっと勘違いしているだけなんだよ」 嘘でもあるし、事実でもあった。 「なにがかんちがいなのおおおぉぉぉ!!?」 れいむが体当たりを浴びせてくる。 「なにがちがうのぉぉ!?いってみてね!!ゆっくりごろし!!」 本来なら俺のほうを信じてくれるはずの由美が、 今までにないれいむの剣幕にうろたえている。 そんな彼女に向って、大丈夫だという笑顔のサインを向けてやる。 こいつらの子殺しに加担していたということはどうしても伏せておきたかった。 由美を泣かせたくはなかったし、 ゆっくりの子を次々死なせていたという事実が愛護派の長浜氏に知られると大変だ。 「ゆふぅ~ん……つがいのにんげんにはしられたくないらしいわね」 ありすが無駄な鋭さを見せ、俺の弱点を読み取った。 その日はなんとかごまかせたが、 ゆっくり同士で密談が行われ、翌日からそのカードをいちいちちらつかせられるようになった。 「あのことをしられたくないんでしょ?さっさとよういしなさい!!」 「やりたくないならしなくてもいいんだよ! おねえさんにかわりにやってもらおうね!!」 「まりささまはくちがかるいのぜ!! ききわけよくしてないといつくちがすべるかわからないのぜぇ!?」 俺が誰をかばってやっていると思っているのか。 そして現在に至る。 こんな地獄を、俺は二か月以上自分の部屋で耐え忍んできた。 甘やかされ飽食しきったゆっくり共は、 三匹の親ゆっくりが直径50cm、十匹の子ゆっくり共が直径30cm程度に膨れていた。 昼は虐められ続けた。 寝る暇も食べる暇もなく、通学をはじめとした外出だけが俺の休息だった。 勉強なんてとてもじゃないがやっている時間はない。 夜はまりさとありすの子殺しパーティーに加担させられ、日々赤ゆっくり殺しの片棒をかつがされた。 れいむはもう子供を作っておらず、この宴に関わっていない。 自分でも自分の忍耐力にあきれる。 何度投げ出そうと思ったか、何度殺しそうになったか、何度死にたくなったか。 それでも、由美。 由美だけが俺の支えだった。 長浜氏に認めてもらい、由美と一緒になる。 それだけを思い描き、来る日も来る日も耐え続けた。 あんないい女、どこを探したっていない。 俺があの子と付き合っているなんて、何度考え直しても夢としか思えないような話だった。 ゆっくり狂いについては機会をみつけておいおい話し合うとしても。 そして今、ついに、その地獄から解放されるときが訪れた。 ある件のために、計画の中止が長浜氏から言い渡されたのだった。 由美が妊娠したのだ。 俺の子だ。 続く 選択肢 投票 しあわせー! (1) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1240.html
第二章 脱出口である光の元に辿りつくため、様々なルートを試行錯誤しながら、機械室の上部へ向かうゆっくりれいむ、ゆっ くりまりさ、ゆっくりみょん。 あっちこっち行くたびに、3匹の体力は確実に奪われていった。それでも、互いに励まし 合い希望を忘れない。 「ゆっくりいこうね!」 「ゆっくりがんばって!」 「ちーんぽっ!」 3匹は助け合いながら、ゆっくりだが、確実に外への穴に近づく。途中、ゆっくりが足場にするにはやや細いパイプの 上を進むことになった。やや危険だが、ここを通れば、出口へとぐっと近づく。 「ゆっくりすすんでね!」 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりれいむ、ゆっくりまりさは細いパイプの上を何とか、這うように前方へ向かう。 しかし、ゆっくりみょんの様子がおかしい。 「ゆっくりゆっくりちーんぽっ!ゆっくりゆっくりちーんぽっ!」 独特の鳴き声を、オマジナイのようにして発しながら歩くが、今にも落ちそうなほど、左右に大きく体をゆらしながら 進んでいる。理由は、カチューシャの飾りだろう。そのせいで、ゆっくりみょんは重心がややズレているのだ。 また、今のゆっくりみょんは、ここまで来るのに体力を消耗していることも原因だ。 「ゆっくりとぶよ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさが、パイプから、安定した人間の作業員用の足場へ跳び移る。 「すこしゆっくりできるね!」 安堵するゆっくりれいむ、ゆっくりまりさ。 しかし、その後ろで、 つるんっ 「ちんぽーーーっ!!」 とうとうゆっくりみょんが落下した。パイプの上の水滴に体を滑らせてしまったのだ。 べしゃ そのまま床へと落下するゆっくりみょん 「ゆっくりだいじょうぶ!?」 心配するゆっくりれいむとまりさ。 「ゆっ…ゆっ…。」 よろよろと体を立てるゆっくりみょん。なんとか大丈夫そうだ。 元々ゆっくりはある程度の弾力があることもあり、今回程度の高さからの落下なら、傷は負っても死ぬことはないだろ う。 「すこしやすんでね!!」 「ゆっくりのぼってきてね!!」 落ちてしまったゆっくりみょんに気をつかう2匹。 「ゆっくりしてからいくよ!」 二匹の呼びかけに応じるゆっくりみょん。どうやら大きなダメージは負っていない。 しかし… チュウ……チュウ…。 ゆっくりみょんの耳に、機械室の機械音以外の“何か”が聞こえてきた。 チュウ!チュウ!チュウ!チュウ! その何かとは、…鼠だ。 本来、食品加工工場であるゆっくり加工所は、清潔さが保たれているはずだが、この機械室は掃除も難しいこともあり、 非常に不衛生な状態になっている。そのため、床下にはゆっくり加工所内のゆっくりを狙った鼠が住み着いてしまったの だ。 今になって鼠が集まってきたのには理由がある。無機質な鉄のニオイしかしない機械室のなかで、ゆっくりちぇん が破裂したため、甘い匂いが広がってしまったのだ。 鼠達がゆっくりみょんに雪崩のように襲いかかる。 「ゆゆゆゆゆっ!?」 体力を消耗したゆっくりみょんは逃げることもままならない。 チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウッ! あっというまにゆっくりみょんの表面を埋めつくす鼠の群れ。その数は、ゆっくりみょんに直接ひっついていないもの も含めるとざっと200はいるだろうか?そして、鼠達はゆっくりみょんにいっせいにカジりつく。 「ち、ちんぽーっ!!」 グチュグチュグチュグチュグチュグチュ 全身を襲う痛みに、ゆっくりみょんが声をあげる。 しかし、それが更なる地獄をゆっくりみょんに味あわせる。 なんと鼠達は、同時に食すことができる面積が広がったと言わんばかりにゆっくりみょんの口の中へと雪崩れ込む。 「ゆぐぎぎぎがばばば…っ!!」 痛い、苦しい。ゆっくりみょんはもはや、息をするのもままならない。 「ゆぐりぎがおごごげげがっ!!!」 外から、中から皮と餡子を食い破られていくゆっくりみょん。 体外、体内から激痛が襲う。 「はやくやめてね!!!」 「ゆっくりさせてね!!!」 上から、その地獄絵図を目の当たりにする二匹のゆっくり。 しかし、助けに行くことはできない。行けば自分達も同じ目に会うことは明らかだからだ。 ゆっくりみょんを中身とした、表面がうごめく球状の鼠の集合体がゴロン!ゴロン!とあちこちへ転がる。 「ぢんんんぼおおおおっ!!!」 ゆっくりみょんが、必死の抵抗をしているのだ。 「ゆっくりがんばってね!!!」 ゆっくり達のエール。 しかし、その鼠の集合体は少しずつ……少しずつ……小さくなっていく。 「ゆっぐりいいいいっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 それが小さくなっていくことが何を意味するのか、知能の低いゆっくりでもわかるようだ。 やがて、その集合体は動くことすらなくなった。表面のみが、激しくうごめいたまま。 第三章 数分がたった。 あれほど激しく床でうごめいていた鼠の群れの鳴き声はもうなく。また機械の音だけが部屋に響く。 床には、そう、何も無くなっていた。 ねずみも、ゆっくりみょんも。 「ゆっぐ…」 そのはるか上の足場を、涙を流しながら進むゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 あと少しで出口だ。しかし、どこか足取りは重い。この短時間で、二匹も“おともだち”を失ったのだから。 しかし、悲しみで立ち止まっているわけにはいかない。また鼠の大群が現れ、今度は上まで登ってくるかもしれない。 それに、モタモタしていれば人間達がこの機械室に入ってくるだろう。 「あとすこしでゆっくりできるよ!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 そして、ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、ここから跳べば、光が差し込む穴まで直接続く足場へと行けるところま で来ていた。 最後の足場までの距離…それは今のゆっくりれいむとゆっくりまりさの跳躍力で何とか届くかもしれない距離だ。ちょ うど、ゆっくりちぇんが死んだパイプまでの距離とほぼ同じだろう。 「こんどはゆっくりとべるかな?」 不安そうな顔をするゆっくりれいむ。もし落ちれば、もう一度ここまで登る気力は二匹には無い。 「ゆっくりとぶよ!」 後ろから強い口調で言葉を発するゆっくりまりさ。まるで、あの時のゆっくりちぇんのようだ。 「ゆっくりがんばって!」 応援するゆっくりれいむ、そしてゆっくりまりさが助走をつけるために後ろへ下がる。 かつてのゆっくりまりさなら、怖じけついていたかもしれない。しかし、今は違う。ゆっくりちぇんが前へ進む勇気を くれたのだ。 駆け出すゆっくりまりさ、そして。 ぴょん! ぷにん、と着地するゆっくりまりさ。見事、ゆっくりまりさは最後の足場へ到着した。 「ゆっくりーっ!」 歓喜の雄叫びをあげるゆっくりまりさ。 次はゆっくりれいむの番だ。意を決して助走するゆっくりれいむ。 ぴょん! 届く…かに見えた。 「ゆーーっ!!」 ほんの少し、届かない。無情にも、落下するゆっくりれいむ。 しかし、 ガクンっ! ゆっくりまりさがギリギリのところで、ゆっくりれいむの髪の毛を口で掴んだのだ。 「ゆっくりはなさないでね!!!」 叫ぶゆっくりれいむ。 重い…。疲れきったゆっくりまりさには、今のゆっくりれいむの体重は重すぎる。 「ゆゆゆゆっ…!」 しかし諦めない、鼠の群れに襲われながら、食われながらも抵抗したゆっくりみょんの姿が、ゆっくりまりさに諦めな い心を与えたのだ。 「ゆっく…りーーーーっ!!!」 まりさは渾身の力で、ゆっくりれいむを引き上げた。勢いで、後方に転がるゆっくりまりさとゆっくりれいむ。 ごろんごろん…。 「ゆっゆっゆ……ゆっくりーっ!!!」 二匹は、跳びはねて喜びを分かち合う。そう、2匹はついに光の下へ辿り着いたのだ。 「ゆっくりできるね!!!」 「おそとにでれるね!!!」 あとは、穴から外に出るだけだ。その穴の入口はゆっくりが入るには十分の直径だった。 まずは、ゆっくりれいむか ら光の穴へと入っていく、続いて、ゆっくりまりさが後へ続く。 二匹は、懐かしい外の景色を思い浮かべていた。これからの幸せに心を膨らませながら…。 しかし、ある程度進んだところで、2匹は異変に気づく。風が強い、それも、追い風だ。 「ゆっ?」 しかも、それは前に進むたびに強くなっていく。 そして、 「ゆうううううーーーーっ!!!」 急激に前へと引き寄せられる、ゆっくりれいむ。 そう、その穴は機械室の換気口だったのだ。追い風は、換気扇により中から外へ換気される空気によるものだった。換 気扇が高速で回転していたことと、太陽の光のまぶしさで、ゆっくりには非常に見づらかったのだ。 「ゆっくりとまってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 前へと飛ばされるゆっくりれいむの後ろから、叫ぶゆっくりまりさ。 「ゆっ、ゆっ、ゆーーーー!!!」 絶叫するゆっくりれいむ、その瞳には、高速で回転する換気扇がはっきりと映っていた。 それはどんどん近づいてく る、いや、正確にはゆっくりれいむが近づいているのだが。 破滅は一瞬だった。 高速回転により換気扇のプロペラは、ゆっくりれいむの顔の部分の表面を皮と餡子ごと切り裂く。 「ゆっぐ!!!ゆっぐりだずげでええええ!!!」 顔の無いゆっくりれいむが泣き叫ぶ。 そのまま換気扇に巻き込まれ、あっというまにゆっくりれいむは餡子のミンチとなり、外へ吐き出された。 「れ゛い゛む゛う゛う゛う゛うううう!!!」 その光景を目の当たりにしたゆっくりまりさ。光の穴は、天国ではなく、地獄への扉だったのだ。 急いで、その穴か ら出るゆっくりまりさ。ゆっくりまりさのいる地点はまだゆっくりを引き寄せるだけの吸引力無かったのが不幸中の幸い だったか。 「ひっぐ!えっぐ!…ゆっぐり…でぎないよ!」 むせび泣くゆっくりまりさ。これからどうすればいいのか、もうわからない。 下に戻り、機械室から出て別の脱出ルートを探すのか?いや、それはあまりにも非現実的だ。機械室の外にはそれこそ、 作業員や警備員が徘徊している。 いや、それ以前に下へ戻る気力も起きない。 その時、換気口から音がした。 ブルン、ブルルン…プスプス……。 何事かと、ゆっくりまりさは穴を覗く。すると、何やら様子がおかしい、意を決し、再び中へ入る。今度は急に引き寄 せられることのないように慎重に、慎重に奥へ進む。しかし、わずかに追い風があるくらいで、一向に引き寄せられる気 配がない。ゆっくりまりさは更に進む、すると、換気扇が壊れて止まっているではないか、そのうえ、プロペラ部分は大 半がバラバラになり、残った部分もヒビ割れている。 「ゆっくり?」 換気扇へ近づくゆっくりまりさ。恐る恐る、換気扇にふれると、音を立てて崩れ落ちた。 そう、換気扇は、ゆっくりれいむを巻き込んだことで、故障し破損したのだ。 結果的にゆっくりれいむは、ゆっくりまりさのために道を開いたのである。 ゆっくりまりさは、呆然としながら、換気扇の向こうへ進む、光はすぐそこだ。 ついにゆっくりまりさは換気口の出口に立つ。空はすっかりと夕焼けに赤く染まっていた。 突然…ゆっくりまりさの頬を涙が伝う。それは止まることなく、流れ続ける。 その涙は、これまでの悲しみによる涙ではない。ゆっくりまりさが生まれて初めて流した、喜びの涙であった。 ゆっくり加工所の最上部に近いとこから望む草原と森の、かつてない光景を目にしゆっくりまりさは感激の涙を流した のである。 「……………。」 言葉にはならなかった、ゆっくりまりさは、かつてないほど、深く、深くゆっくりしたのである。 それは、時間にして30分くらいだろうか。 野生のゆっくりのごく一部には、高い所から飛び降りる術を知っている。正確には、壁を転がるのだ。 ゆっくりまりさは、目から歓喜の涙が枯れた後、換気口の出口から垂直の壁を転がった。そして、地面が近づくと、壁 を体の底で蹴り、衝撃を逃しながら今度は地面を転がった。 ゆっくりの球状に近い体型と、弾力性を利用した技である。猫は、7階の高さから飛び降りても無傷の場合があるとい う。が、このゆっくりの技はそれ以上のものだろう。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぴょん!と体を起こしたそのゆっくりまりさは、住み慣れた森へと帰っていった。 終章 それから三日が経った。森の中に、主を無くした、ゆっくりまりさの帽子が落ちていた。 ほんの三日程前の夜、ゆっくりフランに襲われ、残虐の限りを尽くされ死んだゆっくりまりさの帽子だ。 そう、そのゆっくりまりさとは、あのゆっくり加工所から脱出したゆっくりまりさだ。 もし加工所から抜け出さず。檻の中にいたままなら、もう少し長生きできたかもしれない。 しかし、あのまま檻の中にいることは、ゆっくりまりさにとって、生きていることにはならなかった。 なぜなら、ゆっくりできなかったのだから。 あの、夕焼けの草原と森の光景の前に佇み、草原を駆け抜けてゆっくりしたゆっくりまりさは、最後の生を受けたので ある。最後に足掻くことで、ゆっくりまりさは生きることができたのである。 今日も、捕らえられた野生のゆっくり達がゆっくり加工所へ連れて行かれる。 おわり
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2814.html
『大人のゆっくり』 13KB 小ネタ 調理 番い 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ 現代 独自設定 ふたばのネタから思いつきました。酒の知識があまりないので、矛盾点が多いかもです。 この世界のゆっくりは、種類を問わず、甘い液体ならば傷が回復してしまう設定です。 筆者はお酒についての知識は余りありません。色々矛盾点があったらすいません。 ゆっくりが濁った液体の中で他のゆっくりが見えたり、会話する事ができるのは、ゆっくりだからという事で…… ここは、とある自然豊かな田舎町の農村。ブドウの産地として全国的に有名であり、殆 どの人々はその栽培、加工で生計を立てている。 そんな人間によって楽園のような場所、そんな場所は”ある生物”にとっても楽園であ ると言える。”ある生物”とは、ご存知ゆっくりである。 ゆっくり達にとって、この村と、その付近は天国だった。天敵になる動物や捕食種は多 少なりとも生息していたが、何と言っても食料に困ることが無かったからである。緑が多 いこの地では、春や夏には木の実や野苺等が豊富であり、秋になればたっくさんのきのこ が採れる。唯一、ゆっくり達の不満は、人間が作っているブドウが食べられない事ぐらい であった。 ゆっくりは小さく、手足を持っていないために、高い所に実っているブドウは食べるこ とができないのだ。木の実は自然に落ちた物を食べることができるが、ブドウが落ちてい ることは殆ど無いのである。しかし、実はこれはゆっくり達にとって幸運だったのだ。も し、ゆっくりが高いところのブドウを取ることができたら、間違いなく人間によって周辺 のゆっくりは大規模な駆除を受けていただろう。この地域の農家は九十五パーセントがブ ドウ栽培をしているので、実害が余り無いゆっくりに対しての対応が、実に甘かったので ある。 「ゆっ! れいむ、まりさのかわいいおちびちゃんたち、きょうはあたらしいおうちを ゆっくりさがしにいくよ!」 「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!!」」 「ゆーん! おちびちゃんたちはとってもききわけのいい、とってもゆっくりとしたよ いこだね!」 こんなテンプレのような会話を繰り広げているのは、とあるゆっくりの番であるれいむ とまりさと、そのおちびちゃん達のれいみゅとまりちゃである。現在住んでいる巣が、れ いみゅとまりちゃが産まれた事によって狭くなったので、もっと広いお家へと引越しを行 おうとしているようだ。 「ゆぅ~ん……おちびちゃんたちも、とおくへはねていけるぐらいに、あんよがつよく なったよぉ……」 「まりさぁ……れいむとまりさはとぉーってもしあわせだね……こんなにかわいいおち びちゃんたちと、これからもずーっとくらせるんだから……」 そう言って、れいむとまりさはすーりすりを始める。そこに、れいみゅとまりちゃも加 わって、家族ですーりすりをする。野生のゆっくりの中でも、この家族はとても幸せな部 類に入ると思われる。そう、この時までは…… ――数時間後 「ゆーん。これはりっぱなおうちだよ! ここをまりさたちのおうちにしようよ!」 「だめだよまりさ。ここは、ゆっくりできないにんげんさんのおうちだよ! ゆっくり できなくされちゃうかもしれないよ!」 「だいじょうぶだよ、れいむ。なかをそろーり、そろーりとのぞいたけど、にんげんさ んはいなかったよ! ここはあきやさんなんだよ!」 「ゆゆっ! それならだいじょうぶだね!」 「「ゆわ~い!!! ここがあらたしいおうちなんだにぇー!!!」」 一家がやって来たのは、とある人間が所有する物置である。一家が中に入ると、一家が 入っても、まだまだ余裕があると思われる円筒状の入れ物が、幾つか並んでいる。 「ゆっ! あそこのたおれたつつさんに、ゆっくりはいれそうだよ! れいむ、おちび ちゃんたち、ゆっくりあそこにはいろうね!」 「「「ゆっくり(ち)りかい(りきゃい)したよ(しちゃよ)!!!」」」 人間もゆっくりも、必要以上に広い家は、逆に居心地が悪いと感じる物である。この円 筒状の入れ物のお家は、ゆっくり達にとって丁度良い広さで、とてもゆっくりできるよう である。 ゆっくり家族は入れ物の中で、のーびのーびしたり、ごーろごーろをして、一通りゆっ くりした後、早速お家をもっと住みやすくするためのリフォームを行う事に決めたようで ある。 「れいむ、おちびちゃんたち、まりさはおうちをりふぉーむするためのざいりょうさん をさがしてくるよ! ゆっくりここでまっててね!」 まりさは、そう宣言し、外へリフォームの為の材料を探しに行こうと飛び出そうとする のだが…… 「あー、よっこらしょっと!」 人間によって、その行動を阻まれたのであった。 「ゆっくりぃの日ィィィィィェァ! まったりぃの日ィィィィェェァァァァンッ! や っぱり音楽はロックだぜぃ! オーイエー!」 人間はヘッドホンで大音量で音楽を聞きながら、自身もその歌を大音量で口ずさんでい る。口ずさんでいると言うよりは、叫んでいると言ったほうが正しいが…… この物置は、とある農家がワイン造りのために使用している。この物置を所有している 農家は、自分の畑でブドウを生産する傍ら、生産した内の一部のブドウを、自宅の物置を 使ってワインにしているのだ。 ちなみにこの男は、農家の息子である。都会へ出たいが、一人息子の為、この村に残っ て家を継がなければならないのである。そのような事情から、農業にも、ワイン醸造もや る気がまったく無いのである。日頃から適当な仕事をしているので、今日もゆっくりが入 っている事を、完全に見逃してしまったようである。 「おそらがまわってるみたいいいいい!?」 樽の上部にいたまりさが、樽が立てられた事によって底部へと滑り落ちる。 「「ゆべぇ!!」」 そして、そのまま底部にいたれいみゅとまりちゃを潰してしまう。 「「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」」 まりさに押しつぶされてしまったれいみゅとまりちゃは、若干の餡子を吐いた後、痙攣 を始める。このまま放置しては、間違いなく永遠にゆっくりしてしまうだろう。このレベ ルの傷を治療するためには、あまあまが必要不可欠である。しかし、ここはゆっくり一家 以外には塵一つない樽の中。あまあまなんて、絶対にあるわけがない。しかし、その時で あった。 ジョボジョボジョボジョボジョボジョボ…… 一家の入った樽の中に、赤紫色の液体が注がれていく。樽が満たされると同時に、人間 によって樽の蓋が閉めらた。それにより、一家は樽の外に出ることができなくなってしま った。 (ゆぅ……まりさたちはここでえいえんにゆっくりするんだね……) まりさは一家全員が永遠にゆっくりする事を覚悟した。まりさの両親は、まりさが巣立 つ直前に、まりさの妹の妹れいむを助ける為に、村のはずれの池に落ちて、皮がふやけて 体内の餡子が漏れ出し、妹共々永遠にゆっくりしたのだ。なので、まりさはこの状況がい かに絶望的な物なのかが瞬時に理解できたのである。 しかし、何時まで経ってもまりさの中身が溶け出していく感覚がないのである。まりさ は恐る恐る目を開けてみた。すると、自分の皮はまったく溶けておらず、周りを漂ってい る家族も平気のようであった。それどころか、先ほどまで瀕死の重症だったれいみゅとま りちゃが、赤紫の液体の中を元気に泳ぎ回っているではないか。 「れいむ……? おちびちゃんたち……? おからだはだいじょうぶなの!?」 まりさが家族に問いかける。 「ゆんっ! まりさっ! れいむはなんともないよっ! それに、なんだかげんきがわ いてくるよっ!」 「おちょーしゃん、れいみゅはとってもげんきげんきなんだよっ!」 「まりしゃもなんだじぇ! このあまあまなえきたいさんは、とってもゆっくりできる んだじぇ!」 そう、現在この家族が浸かっているのは、この村の特産品であるブドウの果汁なのであ る。ゆっくり達にとって、極上のあまあまとも呼べるブドウ果汁に浸かった一家は、皮が 水分によってふやけても、あまあま効果により、ふやけた部分が一瞬で回復するため、永 遠にゆっくりすることが無いという訳である。 「それににぇ、おちょーしゃん。このあまあまさんは、ちょっとだけごーくごくしただ けで、おなかがいーっぱいになれるんだよ!」 「お、おちびちゃん! このえきたいさんをのんだのっ!?」 ブドウ果汁は、ゆっくりにとって万能薬であると共に、最高級の食料にもなる。濃厚な ブドウ果汁は、ほんの少量でゆっくり達の満腹中枢を刺激するのである。 「まりさ、ここはさいっこうっのゆっくりぷれいすだね! おそとでのーびのび、ごー ろごろできないのはざんっねんっだけど、ずっとここでゆっくりしようね!」 れいむはこのゆっくりプレイスを大変気に入ったようだ。れいみゅとまりちゃも、れい むと同じ意見の様子である。考えて見れば、捕食種や動物等の天敵の危険もなく、極上の あまあまがいくらでも手に入り、何故だか体の調子もすこぶる良い。そんな条件の揃った この場所は、最高のゆっくりプレイスに違いない。そのように、まりさも考えた。 「そうだねっ! このさいっこうっ! のゆっくりぷれいすで、ずっとゆっくりしてい こうね!」 「「「ゆうううううっー!!!」」」 ――数週間後 「おちびちゃんたち! そんなにはしゃいだら、けがしちゃうよっ!」 「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆーん! だいじょうぶだよ、まりさ! あまあまさんのなかにいれば、けがさんは どこかへいっちゃうからねっ!」 元気すぎる程にはしゃぎ回る、五匹のおちびちゃん達。それを優しく叱るまりさと、そ れを嗜めるれいむ。そう、れいむとまりさは数週間前に新しいおちびちゃん達を産んだの である。 「ゆぅぅぅぅん! まりさのいもうとたちは、とってもゆっくりしてるんだぜ!」 「ゆんっ! まりさもれいむと、もっともっとゆっくりしようね!」 それを見て嬉し涙を流しているのは、高栄養の環境下であっという間に成体にまで成長 したれいみゅとまりちゃだ。他ゆんのいないこの環境において、二匹は当然のように番と なった。今、れいみゅのお腹には数匹の新しい命が宿っている。 「「「「「「「「みんなでずっと、ずーっとゆっくりしようね!!!」」」」」」」」 ――二ヶ月後 「ゆ……にゃんだが……うみゃくしゃべれにゃいよ……?」 ゆっくり達に変化が起きていた。どのゆっくり達も上手く言葉を喋ることができなくな ったのである。 「ふぁりざぁ……でみょ、なんだきゃきもてぃいぃよぉぉ……ひっく!」 ゆっくり達がこうなってしまった原因は、ワインに含まれているアルコールである。元 々ゆっくり達が入っていた樽は、ワインを熟成させる為の樽である。ある程度の月日が経 った事によって、樽の中のブドウ果汁が、ワインへと変化していったのである。食料とし て、毎日少量ずつ果汁を摂取していたゆっくり達は、徐々にブドウ果汁の中に発生してい ったアルコールの作用によって酔っ払ってしまったのだ。 しかし、酔っ払って、ふーらふーらしてしまう事以外は問題はないようだ。酔っ払った 時特有の気分の良さは、ゆっくり達にとっても悪くない物ではなかったようだ。ゆっくり 達は、特に気にする事無くそのままの生活を続けていった…… ――そして月日は経ち 「どぼぢでえぎだいざんにゃぐにゃっでりゅの゛お゛お゛お゛お゛!?」 樽の中のワインも無限に湧いてくる訳ではなく、最初に入れられた分しか存在しないの である。たとえ一度の消費量が少量でも、無計画ににんっしんっ! をして増えていった ゆっくり達を長期的に養っていく事など、出来るわけがなかったのだ。 「どぼぢで! どぼぢでな゛の゛お゛お゛お゛お゛!」 「――あん……?」 一人の男が、樽の中からゆっくりの声がしている事に気付いた。彼はこの物置でワイン を製造している農家。つまり、ゆっくりを樽の中に放置した男の親父である。彼は定期的 にこの物置を訪れていた。樽の中がワインで満たされていた期間は、そのお陰もあってゆ っくりがいくら騒いでも聞こえることは無かったが、中のワインが殆ど無くなった今、ゆ っくり達の騒ぎ声が、外に響くことになったのであった。 男が樽の蓋を開けてみると、樽一杯に入っているはずのワインが無くなっており、代わ りに樽の半分の高さまで、増えに増えたゆっくり達が、ぎっしりと詰まっていた。 「ゆっきゅりー!」 「ゆっきゅりしちぇいってにぇーー!」 「ゆっきゅりしちゃいよぉー!」 その全てが赤ゆ言葉を喋っている。いや、赤ゆ言葉ではない。その言葉を発しているゆ っくりのサイズは、赤ゆサイズから成体サイズまで、幅広かったのである。男は考えを巡 らせる。 「ワイン樽に入った、居るはずの無いゆっくり……その代わりに消えたワイン……そう か、こいつら、ワインを全部飲みやがったな?」 樽の中に入ったゆっくりを一匹だけ取り出して、じっくりと観察してみる。じっくりと 見たゆっくりの顔は、『アヘ顔』と言うのがしっくりくる程、憎たらしく、醜い顔である と言える。皮は赤紫色に変色しており、腐っているのではないかと勘違いしてしまいそう である。しかし、男は思った。 (このゆっくり、普通のゆっくりとは違う、とても良い香りがする。食用ゆっくりは何 度か食した事があるが、ここまで良い香りはしなかった。野良で汚そうだが、強制アルコ ール消毒されているだろうから、大丈夫か……?) 男はおもむろにゆっくりを掴むと、そのまま一気に食いちぎった。 「もぐもぐ……上品な甘み、ブランデーチョコを食べたときのように、口の中に広がる 芳醇さ……これは、旨い! 今までのゆっくりが子供のおやつだとしたら、このゆっくり は、正に”大人の味わい”だ!!!!!」 男は、ワイン漬けゆっくりの美味しさに驚愕した。これは商売になる。そんな予感が男 の中に駆け巡っていた。 「「「「ゆっぎゅちぃぃぃ! ゆっぎゅぢじじぇいっじぇねええええええ!」」」 男の考え等知らないゆっくりは、今後の自分達の未来も知らず、アルコールの効果によ って、好きなだけ騒ぎ続けていた。 ――数年後 男が興した会社が東京に進出した。支店長を務めるのは、あのやる気の無かった息子で ある。元々能力はあったらしく、立派に支店長の仕事をこなしているようだ。 会社の目玉商品は『大人のゆっくり』名前は某ふりかけの名前からインスパイヤされて 付けられた。種類もれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇんと豊富。近日中には高 級贈呈品として、中身が抹茶餡のさなえも発売されるという。 ゆっくり加工食品は、ゆっくり加工所がほぼ百パーセントのシェアを誇ってきたが、こ の会社の登場により、シェアの十パーセントを奪われたという。今や立派なライバル企業 である。 男の農村も、今では『ブドウ』の村ではなく、『ブドウとゆっくりの村』として町おこ しを始めた。男の会社の経営する大きな加工施設も建造され、毎日フル可動している。 「一時はワインを樽一つ丸々失うことになると思って青ざめたが、まさかこんな結果に なるとはな。被害者から一変して成功者。本当にゆっくりには感謝しなくちゃな」 男が過去を振り返って、呟く。この事件の本当の被害者は…… 「だずげてええええええ! でいぶだぢがなにがわるいごとじだっでいうのおおおおお おおお!?」 「ゆがああああああ! だれがばりざをだずげろお゛お゛お゛お゛お゛」 男の村で積極的に狩られ、大人のゆっくりの原料として使われるようになった、ゆっく り達なのかもしれない。 END あとがき 実際のワインの醸造は、ある程度タンクで発酵が進んだ状態で樽に移されて、そこから 熟成に入るらしいです。この作品の場合は素人が作ったということで…… 一般人は無許可で酒を作るのは違法と知ったのは作品を書いた後なので、ご容赦を。 コンバートあき いままで書いた作品 anko2495 一番多いゆっくりは anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2503 新たなエネルギー源 anko2504 冷凍ゆっくり anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法 anko2516 読書の秋 anko2561 すぃーはゆっくりできない anko2737 イヴの夜に anko2751 ゆっくり餅 anko2753 共生 anko2758 作ろう!ドスまりさ! 挿絵:○○あき
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1321.html
アリスが外出から戻ってくると、なにやら家が騒がしかった。 「ゆっくりしていってね!!」 「おねえさんはゆっくりできるひと?」 「ここはれいむたちのおうちだからゆっくりでていってね!」 そこにいたのは1体のゆっくり魔理沙と数体のゆっくり霊夢であった。 どうやらドアの隙間から入ってきてしまったらしい。 部屋を見回してみると、大きく荒らされていた。 「――上海、蓬莱。こいつらを全部捕まえなさい」 その直後、人形たちがゆっくりたちに襲い掛かった。 「なにするの! ゆっくりやめてね!」 「シャンハーイ」 「ゆっくりはなしてね!」 「ホラーイ」 「ゆっ、ゆっー!」 次々と捕まり、非難の声を上げるゆっくりたち。 程なくして全てのゆっくりたちは檻の中へと捕まった。 「さて、どうしようかしら」 アリスはまるで感情のこもっていない目で檻の中を見つめた。 すぐにでも全員潰すことさえ厭わない目だ。 そうしていたら、1体の黒い帽子をかぶったゆっくりが訴えた。 「まりさはわるくないよっ! はいろうっていったのはれいむたちだよ!」 「「「「「ゆ゛っ!?」」」」」 「だからはやくゆっくりだしてね!」 ゆっくり魔理沙は、生き残るために簡単に仲間を売る。 話には聞いていたアリスだが、あまりの変り身の早さに少々驚いた。 「そう。だったらあなたは、助けてあげようかしら」 そう言ってアリスはゆっくり魔理沙を檻から出してあげた。 嬉しさのあまり、飛び跳ねるゆっくり魔理沙。 「おねえさん、ありがとう!」 そう言うが否や、ゆっくり魔理沙は素早く開いているドアから出て行った。 ゆっくり霊夢たちに、 「ゆっくりしんでね!」 と、言い残して。 翌日、ゆっくり魔理沙は昨日の事をすっかり忘れてゆっくりしようとしていた。 遠くに見えるのはゆっくり霊夢の家族。 「ゆっくりしていってね!」 今日もたくさん遊んでゆっくりしよう。 そう考えながら近づいていくゆっくり魔理沙。 だが、ゆっくり霊夢たちはゆっくり魔理沙の姿をちょっとの間見つめると、全員で体当たりを仕掛けてきた。 「ゆっ、いたいよゆっくりやめてね?」 最初はふざけているのかと思った。 しかし、一向にみんなやめる気配が無い。 それどころか、徐々に激しくぶつかられているようだった。 「ゆっ、ゅゅっ、どうしてそんなことするの?」 そう言うとゆっくり霊夢たちは口々にこう答えた。 「なかまをみすてるまりさとはゆっくりできないよ!!」 「うらぎりものはともだちなんかじゃないよ!!」 「ゆっくりあっちいってね!!」 「ゆっくりちね!」 「まりさはそんなことしないよ! まりさはいいこだよ!!」 「うそをつくまりさはわるいこだよ!」 「ゆっくりできないよ!」 「ほうっておいてわたしたちだけでゆっくりしようね!!」 罵って去っていく家族たち。 ゆっくり魔理沙はその場に立ち尽くしていた。 追いかければ本当に酷い目にあうことが分かったからだ。 しかし、なぜそんなひどいことを言われたのかは分からなかった。 仕方なく巣にもどってみると、巣の中は荒らされていた。 そこにいたのはたくさんのゆっくり魔理沙。 「ここはまりさのおうちだよ! ゆっくりでていってね!!」 「「「ちがうよ! ここはまりさのおうちだよ! そっちこそでていってね!」」」 追い出されないように抵抗したが、多勢に無勢。 果敢に体当たりを仕掛けるが、逆に大量のゆっくり魔理沙につぶされそうになってしまう。 とうとう巣から叩き出されてしまった。 「どぉ゛じでごんなごどずるの゛ぉぉぉぉぉぉ」 「「「ゆっくりのたれじんでね!!」」」 叩き出されたゆっくり魔理沙は、どこか遠くへ行くことにした。 きっとそこならゆっくりできると信じて。 しかしどこへ行っても、 「うらぎりもののまりさがいるんだって」 「おお、こわいこわい」 「ゆっくりしね、わかるよー」 「でていけちーんぽ」 「うーうー」 追い立てられてしまった。 「ゆっぐり゛でぎな゛いよぉお゛ぉぉぉぉぉぉ」 1週間後。 ゆっくり魔理沙はもうずっとゆっくりできていない。 身も心もボロボロになりながら、今日も食料を求めてよろよろと進んでいた。 そのとき後ろから、 「ゆっくりとばされてね!!!」 完全な不意打ちで勢いよく吹っ飛ぶゆっくり魔理沙。 力なくその方向を見てみると、ゆっくり霊夢たちがいた。 その姿を見てゆっくり魔理沙は思い出した。 そして無事なのを見て、 「みんなぶじだったんだね! よかったゆっくりしようね!!」 嬉しそうに駆け寄った。 自分が見捨てた相手だということさえも忘れて。 だから、言われた言葉に本当に驚いた。 「わたしたちをうらぎったまりさなんていなくなっちゃえ!」 「ゆっくりここからでていってね!!」 「もうみんなにつたえたから、どこでもゆっくりできないよ!!」 「もうずっとゆっくりできないよ!!」 「ゆっくりでていけ!!」 何を言っているのか良く分からなかったが、分かったことが1つだけあった。 自分がゆっくりできないのは、全てこのゆっくり霊夢たちのせいなのだと。 「ゆ、ゆ…こんなひどいことをするそっちこそでていってね!」 「「「「「ゆっくりしね!!」」」」」 口だけは一人前であったが、この数とこの状態で勝てるはずも無い。 全員に囲まれて、あっさりと袋叩きにされてしまった。 「ゆっ、やめでえ゛え゛ぇぇゆっぐり゛ざぜでえ゛ええぇ」 「「「「「ゆっくりしね、ゆっくりしね、ゆっくりしね、ゆっくりしね!」」」」」 「い゛だい゛い゛だい゛よ゛ぉぉぉお゛ぉ」 ひとしきり痛めつけた後、恨み言を言って去っていくゆっくり霊夢たち。 幸か不幸か、ゆっくり魔理沙は生きていた。 もっとも、生きているのか死んでいるのか分からないくらいであったが。 ゆっくり…したい。 そして気を失いかけていたゆっくり魔理沙の前に、1つの大きな影が見えた。 「どうしたの、そんなにボロボロで」 ゆっくり魔理沙はその影を見上げた。 そこには、あの時自分たちをつかまえて自分を逃がしてくれた者の姿が見えた。 「とりあえず、うちに来てゆっくりしない?」 「ゆ゛…ゆ゛っぐりじだい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」 「何があったのかは知らないけど、そんなに泣かないの。さ、行きましょ」 「ゆ゛っく゛り゛ぃ゛ぃぃぃぃ」 もう2度とできないと思っていたゆっくりをさせてくれる。 ゆっくり魔理沙は力いっぱいアリスに泣きついた。 (ふふ、こんなに上手くいくとは思わなかったわ) アリスは胸の中で微笑んだ。 全ては1週間前からアリスが仕組んだことだった。 わざとドアに隙間を残しておき、入ってきたゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢を捕まえる。 ゆっくり魔理沙が仲間を裏切ったらスタートだ。 「いや゛ぁ゛ぁぁぁぁだずげでぇぇぇ」 「わ゛だじだじもゆっぐりざぜでぇぇぇ」 ゆっくり魔理沙を逃がした後の檻の中は、パニック状態だった。 アリスは優しい顔をしてこう答える。 「大丈夫よ、あなたたちも逃がしてあげるわ。でも、1つお願いがあるの」 「ゆっ…? ゆっくりなんでもするよ! だからたすけて!」 「そう、じゃあ――」 アリスのお願いはこうだ。 ここから出た後に、今逃げていったゆっくり魔理沙がひどいヤツだということを他の全てのゆっくりに伝えてほしいと。 そして、追い出してほしいと。 最初は戸惑ったゆっくり霊夢たちだったが、 「あなたたちを売って逃げちゃったのよねぇ、酷いと思わない?」 「あなたたちは何も悪くないのにね」 「そんな悪い子に仕返しをしてやりたいと思わない?」 というと、反対する者はいなくなった。 アリスはゆっくり魔理沙を自分のものにしたかった。 それも無理やりでなく、相手から自分の方を向くように。 力で押さえつけても心から懐きはしない。 エサを与えたところでエサ役として認識されるだけ。 だからアリスはこの方法を取った。 他のゆっくりたちから追い出させ、自分だけを頼りにするように。 事実、ゆっくり魔理沙にはもう心のよりどころがどこにもなかった。 そんな中で現れた、ゆっくりさせてくれるアリスはまさに希望だった。 これから、外に出ようともせず自分だけを見ていてくれるだろう。 (色々揃えておいたのよ、この日の為に…) これからこのゆっくり魔理沙とどんな生活を送ろう。 アリスの心はどこまでも躍って仕方がなかった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/264.html
実に投棄場行き 虐待成分薄めどこか0 ――――――― ゆっくりを虐めたい、そう思い立ち山を歩くこと数分、ゆっくりまりさを見つけた。 草を千切り、口に詰め込んでいるが食べている様子はない。 巣に持って帰るのだろうと思い、ゆっくりまりさの後をつける、 しばらくするとゆっくりまりさの巣であろう小さなほら穴に到着した。 「ゆっくりもどったよ!」 「おかえり、まりさ」 家族がいるようだ、後をつけてよかったと口をゆがめる。 そっと中を覗き込むとにんっしんしているのであろうゆっくりれいむが一個、 幸せでないと胎生の出産はしないと聞くが、心なしかそのゆっくりれいむは悲しそうに見える。 「ここをあかちゃんのねるばしょにしようね!」 ゆっくりまりさは運んできた草をゆっくりれいむの前に広げた なんという幸運、ゆっくりの出産まで見ることができそうだ、 饅頭の事情なんぞ知ったことではない、子ゆっくり共々どうやって虐めてやろうかと思いを馳せる。 「…まりさ、あっちにいってもいっしょにゆっくりしようね」 「ずっといっしょだよ!やくそくするよ!」 あっちに行く?逝く?、出産で死ぬということなのだろうか、どちらにしても意味がわからない。 「ゆげっ…げぷぅ…ぇ゙っ…お゙げぇ゙ぇ゙゙ぇ゙」 エレエレエレエレ 突然ゆっくりれいむが"何か"を吐き出しはじめた、 カエルの卵のような"何か"を。 出産が始まるとばかり思っていたのだがそれよりおぞましい光景に目が釘付けになる。 数分後、いや数秒のことだっただろう、残ったのは白目をむき、苦悶の表情のままピクリとも動かないゆっくりれいむ、 カエルの卵のような"何か"、そしてゆっくりまりさ。 「れいむ、いっしょにゆっくりしようね…ゆぶぅっ…げべぇ…ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙」 エレエレエレエレ 一言放ちゆっくりまりさは白くてどろどろした"何か"を、カエルの卵のような"何か"に吐きかける。 やせ細り、この世の終わりのような表情を浮かべ、ゆっくりまりさも動かなくなった。 後に残されたモノは気持ち悪い"何か"、動かなくなった二つの饅頭、静寂。 「うわああああああああああ!」 何故だかとても恐ろしくなった俺は大声を上げ、その場から逃げ出した。 逃げながら心のどこかで思った、俺は虐待お兄さんにはなれない、と。 ――――――― 最後まで読んでくれた人ありがとう!そしてごめんなさい。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1528.html
前? この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(中) その日、ゆっくりしていたどすまりさの下に、群れのテリトリーに人間が立ち入ったとの情報がもたらされた。 しかもその人間は、二ヶ月前、群れを追い出されたまりさと一緒だというのだ。 何か良くないことが起きているような、そんな予感をドスは覚えた。 「分かったよ。わたし自らが出ていって、話をするよ」 ドスが広場に出てくると、そこには確かに、男に抱えられたあのまりさがいた。 広場には群れ中のゆっくりが集まり、男とまりさを遠巻きに見ていた。 男は何の変哲もないただの男だが、まりさは左目に、二ヶ月前にはなかった眼帯をしている。 誰一人近寄るものがいないのは、二人の纏う異様な雰囲気に近寄りがたいものを感じていたためだ。 その感覚は、ドスにも理解できた。 広場に入り、あのまりさに見つめられた瞬間、言いようのない寒気がドスを襲ったのだ。 ドスは二人の手前五メートルの位置まで来ると、足を止めた。 「まりさ、おかえり」 そしてまず、生きて群れに戻ってきたかつての仲間に、そう声をかけた。 だがまりさは答えない。ドスは諦めの息を吐き、改めて問いかけた。 「二人とも、今日はここになんの用なの? お兄さんは、ゆっくりできるひと?」 まず男が答えた。 「俺はただの付き添いだ。お前らをどうこうしようって意志はない。敵でも味方でもない。 二ヶ月前、俺はこのまりさを助けた。そしてまりさがどうしてもしたいことがあると言うから、それを手伝い、ここまで連れてきた。それだけだ」 ドスの視線が、男の腕の中のまりさに向く。 「……まりさは、何がしたいの?」 まりさは、答えた。 「復讐だよ」 その一言は、群れ全体にさざなみのように困惑を伝播させていく。 一匹のゆっくりが群れから一歩飛び出し、怒りに満ちた声を張った。まりさの父だった。 「まりさ! どうしてそんなこというの!? やっぱりおまえはゆっくりできないゆっくりだよ! さっさとここから──」 「うるさいよ」 静かに。 ただ静かに告げられたまりさの一言が、群れの空気を押さえつけた。 他者の心の機微に総じて鈍感なゆっくり達だったが、そこに込められた、研ぎ澄まされた暗黒の感情は明確に感じ取ったのだ。 まりさは、周囲の皆が自らに抱く恐怖を和らげるために、口元だけの笑みで言葉を発する。 「おねがいだから、みんな、静かにしていてね。まりさは、ドスにだけ用があるんだよ。 そして──ゆっくりよく聞いてね! ドスは、みんなが思ってるようなゆっくりじゃないよ!」 再び困惑の波が、まりさを中心に押し寄せていく。 その中に、まりさは愛しいれいむの姿を見つけた。得体の知れない不安に包まれたかのように、身を震わせている。 そんなれいむに、まりさは心の中だけで微笑みかける。だいじょうぶだよれいむ、まりさがれいむを、みんなを助けるから。 「ゆ! 何をいってるのまりさ! わたしは群れのみんなのことをちゃんと考えて──」 「ドス、釈明は、まりさがさいごまでしゃべってからだよ!」 「ゆ……」 またしても、ドスはまりさに気圧された。 たった一匹の、男の腕に抱かれるほどの大きさしかないまりさに、である。 この時点で、ドスはまりさに対する警戒を強めた。明らかに、普通のゆっくりではない。 ここぞとばかりに、まりさはドスの罪を暴きにかかる。 「ドスは、いえの中にたくさんのしょくりょうをため込んでいるよ! たべものがとれないときのためだって言うけど、あれは明らかに多すぎるりょうだよ! ドスは、みんなからあつめたたべものの一部を、自分のものにしようとしてるんだよ!」 ザワッ、と一際大きく群れがどよめく。 確かに、皆普段から取ってきた食料の一部をドスに預け、保管するようにしてきた。 それが群れ全体のためであると聞かされていたし、それならば、と了承してきたのだ。 だが物の量を正確に把握できないゆっくり達には、ドスが一体どれほどの量の食料を保管しているのか分からない。 冬が近くなり、取れる食料が少なくなってきた今、まりさと同様の疑いを持ち始めていたものも群れには何匹かいた。 「ゆっ、た、たしかめてくるよ!!」 そう言って、数匹のゆっくりが群れを離れてドスの巣へ向かおうとする。 それを視線で追おうとするドスだったが、その前にまりさの声が飛んだ。 「ドス! まだ話はおわってないよ! あのいえの中にたくさんのゆっくりをつれ込んで何をしているのか、まだきいてないよ!」 そしてまりさはドスの返事を待たず、皆を振り仰いだ。 「みんなも知ってるはずだよ! ドスのいえの中にはいっていったゆっくりは、ゆっくりできなくなって出てきてたよ!」 ざわざわと、そこかしこでゆっくり達が話を始める。 「ゆっ、うちのこもたしかにつかれてでてきたよ……」 「でもどすがべんきょうをおしえてるって……」 「だからって、つぎのひもつかれたからだのまま、どすのところにいっちゃってた……」 群れの中に、今まで妄信的に尽くしてきたドスに対しての疑念が芽生えつつあった。 まだ不信感というほど大きなものでなくとも、一度生まれた『もしかして』は中々消えるものではない。 「ゆ! まってみんな! わたしのはなしもちゃんときいてね!」 ドスが声を張り上げるが、ざわめきは収まらなかった。 ドスを支持するものとしないもので、意見の衝突が起き始めているのだ。 まりさは更に声高に語りかける。 「ドスがどんなりゆうをつけてるのか知らないけど、みんなをゆっくりさせないドスを、まりさはゆるせないよ! ううん、もうおまえなんかドスじゃない! ドスの名をかたるにせものだ! このゲスまりさ!」 「ゆ゛ぅぅぅぅっ!!! そのことばはききずてならないよ! あやまってねまりさ!」 とうとう、ドスが激昂する。 ドスは、これまで群れのために尽くしてきたつもりでいた。 そのために多少厳しいこともやってきたが、だからといって『ゲス』とまで言われて黙っていられるはずもなかった。 まりさはキッと片方だけとなった眼でドスを睨み付け、宣戦布告を行う。 「そう思うなら、ここでまりさとしょうぶをしてね!」 それを聞いて、まりさ以外の全てのゆっくりが言葉を喪った。 ドスに勝つ。 そんなこと、普通のゆっくりにはできるはずもない。ドスは人間でさえそうそう手出しできないほど強大なゆっくりなのだ。 そのドスに、ただの一匹のゆっくりでしかないまりさが勝つなど、平時なら一笑に伏されるようなありえない話だった。 だが誰一人茶化すものがいなかったのは、まりさにそうさせないだけの何かがあったからだ。 「おまえが本もののドスだというのなら、まりさなんかにまけるはずがないよね! 逆にまりさがかてば、おまえはドスなんかじゃない、ただ大きいだけのまりさだよ! このにかげつ……まりさはおまえにかつためだけに、おまえよりつよくなるために、がんばってきた。 みのあかしを立てたいというのなら、まずはこのまりさをたおせ、にせものめ!!」 溜まりに溜まった怒りをぶつけるように、まりさはドスを挑発する。 「ゆ……どうしても、やると言うんだね」 そしてそこまで言われて黙っていられるほど、ドスもまたプライドの低いゆっくりではなかった。 今の自分には、この群れのリーダーとしての立場がある。 まりさの言うことは一面では事実だが、しかし、それだけのことではないのだ。 そのことをきちんと説明すれば、群れの皆は分かってくれる。ドスはそう信じている。大丈夫、皆良いゆっくりだから。 ──だがそれもこれも、目の前のまりさを黙らせてからだ。 「分かったよ、まりさ。そのちょうせん、受けてたつよ!」 普段は温厚に垂れ下がっている眦を、今日ばかりは怒りの形に吊り上げ、ドスはまりさを睥睨した。 「双方合意したと見ていいな?」 睨み合う両者の間に、男が割って入る。二匹それぞれの表情を確かめ、頷いた。 そして懐から十数枚の御札を取り出すと、何やら呟き、空中に放った。 御札は光の線となって、広場を円形に周回し始める。 「「「ゆゆゆっ!?」」」 突然の出来事に、円の内側にいたゆっくり達は、慌てて外側に逃れていく。 やがてリング状になった光線はゆっくりと高度を下げていき、それが地についたとき、薄い光の壁が出来ていた。 広場の中心、半径二十メートルほどの円形の空間に、まりさとドスまりさの二匹のみが残される。 男は全てのゆっくりに聞こえる声で言う。 「聞け! この結界の中が、まりさとドスまりさのための闘技場だ! ドスに加勢したいならば入るがいい! ただし一度入ったら、どちらかの陣営が全て倒れるまで出られない!」 それを聞いて、ドスに加勢しようと動き出したゆっくり達もいたが、 「大丈夫だよ! みんなは下がっていて! まりさは、わたし一人でかってみせるよ!」 ドスの言葉に、渋々といった様子で引き下がる。 とはいえ、結界の外のゆっくり達は、その全てがドスの勝利を確信していた。 まりさによって疑念を喚起されたとはいえ、ドスの強さは群れの全員が知っていたからだ。 一部ではむしろまりさの無謀を嘆き、または嘲る声すら聞こえてくる。 だがまりさは、それらを全く意に介さず、ただドスだけに憎悪を注いでいる。 「ドスまりさ、戦う前に俺から言っておくことがある。このまりさには、お前の『ゆっくり光線』も幻覚も効かない。 間違っても使うなよ。それはお前に決定的な隙を生むことになる。その隙を、このまりさは逃しはしないぞ。 加えて言うならば、このまりさは『武器』を持っている。純粋な力比べになるとは思うなよ」 「……どうしてそんなことをわたしにおしえるの?」 不可解そのものの表情で、ドスは男に訊いた。 「俺は、別にそのまりさの飼い主なんかじゃないからな。 ただまりさがお前に勝ちたいと言ったから、俺はまりさを助け、そして戦う術を与えた。それだけの関係だ。 言っただろう、俺は敵でも味方でもないと。だから、どちらか一方が極端に有利になるような状況にはしたくない。 何よりこれは、まりさ自身が望んだことでもある」 驚きの表情で、ドスはまりさに視線を戻した。まりさは静かに、憎悪を漲らせながら、言う。 「とうぜんだよ。ふいうちでおまえにかったところで、うれしくもなんともない。 みんなが見ているまえで、正面からせいせいどうどう、おまえをたおしてやる」 まりさは殺意を隠そうともしない。それにドスまりさは、ほんの少しだけ、哀しそうに息を吐いた。 「どちらも、準備はいいな? では、────始め!」 決闘開始と同時、まりさは弾かれたように飛び出した。 その速さは他のゆっくりの比ではない。硬化剤の継続投与によって、身体は強い弾力性を持つに至った。 その弾力性を最大限に活用して、まりさは地面を低く、しかし早く跳ねていく。ただの一歩で、一メートルもの距離を詰めていく。 対し、ドスまりさはまずは様子を見るつもりであった。 だがまりさの尋常ならざるスピードを前に、決して余裕を持って戦える相手ではないと判断した。 ドスはどっしりと構え、まりさを正面から弾き飛ばす算段を立てた。まりさは武器を持つというが、大抵のものはドスには通用しない。 まりさは構わず、正面から突っ込んでいく。 『ドスパークは始めのうちは警戒しなくていい』 まりさの頭の中で、男が教えた対ドス戦術が再生されていく。 『他のゆっくりを巻き込む恐れがあるから、戦闘開始直後にはまず使わないと見ていい。 もし使うとしても、溜め時間が長いから、お前ならば如何様にも対処できるだろう』 だからまりさは、ひたすら距離を詰めていく。ドスが全身の皮を収縮させ、こちらを弾き飛ばすつもりであるのを理解した上で、だ。 その通りにドスはまりさが目の前に来た瞬間、その身体を前に押し出そうとして、 「──ゆ?」 まりさの姿を見失う。 次に感じたのは、右側面の皮への鋭い痛みだった。 「ゆぐぅぅぅぅぅ!!??」 つい今まで目の前から突進してきたと思っていたまりさが、いつの間にか真横に回り込み、皮に喰らいついていたのだ。 『お前とドスじゃウェイトの差は明らか。正面からぶつかりあって勝つのは絶対に不可能だ。 だから決して正面切って戦うな。お前の武器は小回りの利くその身体だ。ドスの死角に回り込め』 ドスの射程圏内に入る直前、まりさは弾力を最大限に活かして横っ飛びし、ドスの視界から消えたように見せたのだ。 強く噛み締めた前歯が、ぶつんと皮を噛み切った。 ドスの硬い表皮を噛み千切るそれは、当然、普通のものではない。 一度全て歯を抜かれ、男の手によってセラミック勢の鋭い歯が埋め込まれていた。これがまりさの『武器』だ。 だが浅い。ドスの分厚い表皮は、まりさの一噛みでは餡子にまで届かなかった。 ドスが振り向いても、もうそこにまりさはいない。またあまりに身体が大きすぎるため、足元まで視界が及ばなかった。 本能的な勘だけを頼りに、ドスは前方へ跳んだ。その直後、まりさの歯がガチンと鳴る音がした。 ドスはまりさから距離を取り、再び、決闘開始時と同じ距離を取った。 違うのは、ドスの皮の一部が喪われていること。 それはドスの体躯からすればほんの些細な傷だが、群れに与えた衝撃は大きかった。 無敵だと思っていたドスが、戻ってきたまりさに手傷を負わされた。 それだけあのまりさが強いのか、それともドスが弱いのか──ゆっくり達には、判断がつかない。 大小二匹のまりさは、お互いの隙を突かんと、一進一退の攻防を繰り返している。 ドスは先程の攻撃への警戒から、まりさを見失った瞬間には大きく距離を取るように跳躍した。 対し、まりさはなんとかドスのサイドを取ろうとするが、回り込む動作の分だけ一手遅れる。 どちらの攻撃も当たらない──そんな状況が長く続く。 『長期戦は不利だ』 男の声が餡子の深い位置から響いてくる。 『体躯の差がそのまま体力の差と言っていい。千日手になったら、ドスが痺れを切らすより、お前の体力が尽きるほうが早い。 だからそうなる前に、早々に状況を打破することが必要だ』 ドスの死角に入る。ドスは再び警戒して、大きく跳躍する。だがまりさは、攻撃する素振りすら見せなかった。 そしてドスが次に振り向いたとき、まりさはわき目も振らず自分に突っ込んできていた。 来る──ドスは予感する。あと次にまりさが着地したとき、再び自分の視界から消える。 連続してジャンプするのは正直辛いが、あの歯の威力は侮れない。 だがこうして逃げ回っていれば、いつかまりさにも体力の限界が来る。卑怯と言われようが、背に腹は変えられない。 (ごめんね! ころしたりなんかしないから、どうかわたしに大人しくやられて!) そう思えるだけの余裕がまだドスにはあった。 だがそれが大きな間違いであることに、ドスは愚かにも気づかない。 所詮己の生来の力を頼みにしてきたものに、己を捨てて強さを得たものの力を理解することはできないのだ。 まりさが着地し──消えない。 だが代わりに、その頬は大きく膨らんでいて── 「ぷッ!!!」 まりさが吐き出したのは、人の拳大ほどもある尖った石だった。 それは過たず、ドスの両目の間を直撃する。 「ゆぎゅっ!?」 普段感じることのない痛みに、ドスの動きが一瞬止まる。 致命的な隙が生まれる。 コンマ一秒の空白の次に、ドスの右目が映したのは、帽子から次なる『武器』を取り出して迫るまりさの姿。 そしてそれが、右目が映した最後の光景だった。 ザグン。 「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」 まりさの咥えたノミが、ドスの右目の表面を抉る。 『目は、日中行動する陸上生物ほぼ全てに共通の弱点だ。その重要性に反し非常に脆くできている。 だから、狙えるならまず目を狙え。位置的に厳しいが、それだけに見返りは大きい』 面積としては浅いダメージだが、しかしそれだけで目は目としての機能を喪った。 「はな゛れろ゛ぉぉぉおぉぉぉおおお!!!!」 ドスが身を揺すると、まりさが突き飛ばされる。思わず口からノミが放り出されるが──ノミはまりさの動きに追随するように一緒に跳んでいく。 ノミの柄は、紐によってまりさの帽子と繋がっている。 そして帽子は、まりさの頭に直接縫い付けられていた。 まりさ種にとって命の次に大事な帽子は、今のまりさにとっては今や命と等しい価値を持つ『武器庫』だった。 ドスに突き飛ばされたものの、まりさはすぐさまノミを咥えなおし、再びドスへ突進する。 このとき、ドスは初めて恐怖した。 まりさの目に宿る、尋常ならざる暗黒の視線が、ドスの一つだけになった目を射抜いたのだ。 加えてあのノミからは、とてもゆっくりできない何かを感じる。目を抉られてそれを理解した。 ──ドスは知る由もない。そのノミが、つい先日、百を越えるゆっくりの餡子を吸ったものであることを。 ノミの刃先から溢れ出すおどろおどろしい何かが、獣の顎となって残る目を狙っているような錯覚が、ドスを襲った。 「ゆ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさとは見当違いの方向に、ドスは跳躍した。『回避』ではなく、それは『逃亡』に等しいものだった。 このとき、ドスは二つのミスを犯す。 一つには、恐怖に駆られ、まりさの動きを良く見ずに逃げたこと。 もう一つには、着地後、既に喪われた右目の側から振り向いたこと。 「──ゆ!?」 過ちに気づいたときにはもう遅い。まりさの姿はどこにも見当たらなかった。 その時、まりさはとうとうドスの背後を取っていた。 「ぷっ!」 まりさが再び口から何かを吐き出す。それはドスの髪の毛に当たって割れ、内包していた液体を撒き散らした。 まりさが吐き出したのは、透明な液体の入ったガラス球だった。 「ぷっ!」 ドスが音の発生源に気づく前に、更にもう一つ。また別の場所に当たって割れる。 「ゆっ! うしろにいるね!」 ドスが振り返る直前、三度、まりさは口から『武器』を吐き出す。 まっすぐに飛んでいくのは、紐で繋がれた小さな石。 それはドスの髪の毛で受け止められ、小石同士がぶつかり──火花を発した。 「見つけたよまりさ! いいかげん、おとなしくしてね!」 ドスはまりさを説得しようと試みた。それは慈悲というよりも、これ以上戦えば自分がゆっくりできないと悟ったからだ。 まりさは明らかに異常だ。 男はまりさの『手伝い』をしたというが、それは単純に鍛えたというだけのことではないに違いない──そのことに、ようやくドスは思い至った。 ──それは、あまりにも遅すぎる発見であった。 ふとドスが気づくと、何やら自分の後ろが騒がしい。それでも目の前のまりさに対し警戒を緩めるわけにはいかなかった。 だが折り重なる激しい悲鳴の中から、一匹のゆっくりの言葉を聞き分けたとき──ドスは自分を見失った。 「どずのがみがもえでるぅぅぅうううう!!! れいぶのりぼんんんんんんん!!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あああああああ!!!???」 ドスが叫ぶのと、後頭部の熱を自覚するのは、同時だった。 まりさが投げたのは、油の入ったガラス球と火打石だった。まずドスの髪に油を撒き、その後火打石で着火したのだ。 『ドスをドスたらしめているのは、他のゆっくり達からの信頼の証であるリボンだ。 それを破壊すれば、直接的なダメージは少なくとも、精神的には多大な負荷をかけることができるだろう。 周りに他のゆっくりもいればなお良い。みすみすリボンを壊されたドスは、その失態を責められるだろうからな』 『最も効果的なのは焼き払うことだ。ゆっくりの髪は兎角燃え易い。 だがそれはお前にとっても同じことだ。火種を持ってうろつくわけにもいかない。 多少手間だが、この二段階の手順を踏むことで、ドスの髪を燃やすことはできるだろう。 もっとも、もしお前がこれを自分の頭の上で割ろうものなら、お前自身が焼け死ぬことになるがな──』 あらかじめ提示されていたリスク。それを承知で、まりさは帽子の中に油と火打石を仕込んでおいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ!!! も゛え゛る゛うううううううう!!!」 ドスは無様にそこら中を転げまわって、火を消そうと躍起になっている。 だが火はあとに投げた油に燃え移り、より焼失範囲を広げていくばかりだ。 「どずのばがああああああああああああああああ!!!!!」 「どうじでりぼんもやずのおおおおおおおおおおおおおお!!!???」 遠慮のない罵声がリングの外から飛び交った。ドスの信頼は、喪われたリボンの数に比例して貶められていく。 あまりに無様な敵の姿を見て、まりさはしかし何も思うことはなかった。 そうだ。これこそが、自分の求めていたものだ。これでドスは、今までのように皆から信頼されることはなくなる。 少なくとも、ドスに復讐するというまりさの目的は、この時点で既に達成されつつあった。 ドスを負かし、その傲慢な自信を打ちのめし、その後は── その後は? 「まりざああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一瞬、思考の淵に沈みそうになった意識を、ドスの怒号が引っ張り戻した。 ようやく火を消したドスの姿は、哀れなものだった。髪の毛は半分が真っ黒に焼け焦げ、帽子も三割ほど喪われてしまっている。 群れのリーダーとしての落ち着きはどこへいったのか、猛烈な赫怒を以てドスはまりさを睨みつけていた。 「ごろずっ!!! ごろじでやるぅぅぅぅぅぅ!!! よぐもまりざのりぼんをおおおおおおおお!!!」 その顔は般若もかくやというほどの、怖ろしい形相と化していた。群れのゆっくりですら、ドスの変貌に恐れ慄いている。 「ようやく本性をあらわしたな! ゲスめ!」 それを見て、まりさは改めて確信した。 このゆっくりは、やはりドスなどではない。自分が誅すべき、群れの、いや全てのゆっくりの敵なのだ! 「ゲズはお゛ま゛え゛だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 慈悲も、恐怖も、一切合財を灼熱の怒りに塗り固めて、ドスは正面からまりさに突っ込んでいく。 『冷静さを見失った相手ほど扱い易いものはない』 対するまりさの心は冷え切っていた。そうだ、教わったとおりやればいい。そうすれば、このような下劣なゆっくり程度、自分の敵ではない。 体格差を物ともしない、知識と経験に基づいた自信が、まりさの根幹を支えていた。 『正面から突っ込んでくる敵を、正面から相手にする必要があるか? ──否だ。 さっきも言ったとおり、どう足掻いてもお前じゃドスの体格には対抗できない。 よしんば攻撃を加えることができたとして、ただの一度で貫徹できるほど、ドスの表皮は軟くないはずだ。 ──だから、狙うならば、既に一度攻撃を加えた箇所。一度目で防御を削り、二度目で渾身の一撃をくれてやるんだ』 まるで暴風のようなドスを前にして、まりさは一歩も退かない。 ただ機を伺うようにじっと身を低くし──衝突の瞬間、横っ飛びに跳んだ。 帽子の中のガラス球を割る心配がなくなったまりさの跳躍は、今までで一番速かった。 跳んだのは、ドスの右側。 全てはこの瞬間のための布石だ。開始直後、右の頬を噛み千切ったのも。右の目を抉ったのも。冷静さを奪ったのも。 「じねええええええええええええええええ!!!!!!」 咆哮するドスは、だが気づいていない。ドスの下にまりさはいない。 まりさの帽子から、先端の尖った竹が落ちてくる。それを咥え、捻るように全身を収縮させて跳躍し。 「死ぬのはお前だああああああああああああああああああああ!!!!!」 貫いた。 「ぶぉぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一度噛み千切られ、薄くなった皮は、竹の侵入を容易に許した。 管状になっていた竹は、そのままドスの餡子を噴出す間欠泉と化す。 ドスほどの巨体であれば、小さな穴が空いたところで皮同士の圧力によってすぐに塞がってしまう。 だがそこに管となるものを突き刺してやれば、逆に皮の圧力がそれを固定し、穴は永遠に塞がらない。──今のように。 「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あんごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! わたぢのあんごがあああああああああああああああああああああ!!!!」 勢い良く、細い竹からドスの餡子が流れ出していく。 勝った。まりさは勝利を確信した。ほどなくドスの餡子は生存に必要な分を垂れ流し、その命を奪うだろう。 だがそこで、まりさにとって思いもよらぬことが起きた。 「ゆあああああああああああああ!!!!」 「ゆっ!?」 ドスは餡子が流れ出すのにも構わずに、まりさに体当たりした。 潰されぬよう、咄嗟に飛びのいて空中でそれを受け止めたまりさだったが、ドスのぶちかましは強烈だった。 たった一撃で体内の餡子が揺り動かされ、まりさは天地の認識を喪う。 ボールのように地面を転がり、ようやく体勢を立て直したとき、ドスが大きく口を開いてまりさのほうを向いていた。 「げじどべええええええええええええええええええええええ!!!!!」 口腔内にドスパークの光が溜まっていく。最早群れへの被害など考えず、まりさを抹殺するつもりだ。 逃げようと思ったが、足が震えて動かなかった。恐怖ではない。先程の体当たりで、一時的に麻痺してしまったのだ。 逃げられない。まりさは悟った。 『──もしドスがドスパークを使うなら──』 この戦いの前、男が最後に教えてくれたことを思い出す。 『もし、ドスがドスパークを使うなら、お前の喪われたその左目に埋め込んだモノを使え。 発射直前のドスの口の中に放り込むんだ。だがこれは、非常に危険だし、タイミングを誤ればお前が死ぬだけだ。 だからこれは、本当に最後の手段だ。どうしてもドスパークを避けられないときにだけ、命を賭けて使うんだ』 「まさに今が、そのときだよ!」 まりさは大きく息を吸い込むと、口、そして左目を閉じる。 「ふん゛っ!!!」 そして口に含んだ大量の空気を飲み込むと同時、全身の力を右目に集中させた。 逃げ場を喪ったエネルギーが、右目から鉄砲水のように放たれる。 バツン、とまりさの眼帯が弾け飛び、その下にあったもの──喪われた眼球の位置に埋め込まれていたものを、若干の餡子と共に発射した。 まるで人間が全力で投げたボールが如きスピードで、山なりにではなく直線的に、ドスの口目がけて飛んでいく。 それは過たず、ドスパークの光の中心のキノコに向かっていき── ──爆発した。 「あqwせdrftgyふじこlp;!!!!!」 ドスパークの熱量とまりさが投げたものが激しく反応し、ドスの口内で暴発したのだ。 男がまりさに持たせたのは、いわゆる打ち上げ花火だった。当然、火薬の塊にも等しい。 花火は打ち上げられたあと、中心の火薬が爆発することで、『星』と呼ばれる小さな火薬玉が四方八方に飛び散り美しい色を色彩を見せる。 だがドスパークによって引火した花火は、『星』それぞれが滅茶苦茶な方向に飛び散って、ドスの口内をずたずたに切り裂いてしまった。 「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛…………」 爆発の衝撃で、ひときわ大量の餡子が頬の穴から流れ出ていた。 そのとき一緒に突き刺していた竹も飛び出したようで、それ以上の餡子の流出はなかったが、そのことはもうドスにとって何の救いにもならない。 ドスの体躯は、元の半分ほどの大きさにまで潰れてしまっていた。 ぐるんとドスが白目を剥き、重々しい震動と共に地面に倒れ伏した。 「…………」 そして、そのまま起き上がることはなかった。 まりさは、ドスに勝利したのだ。 あとがき 饅頭のバトルってどう書けばいいんだ。 また20KB越えたのでまた分割しました。自重しろ。 しかし……これは……ゆっくり虐待SSどころか、ゆっくりSSなんでしょうか…… どちらにしろここまで来たので、最後まで書き上げたいと思います。 ちなみにお兄さんが使った御札は霊夢から買ったものです。お兄さん自身はちょっとだけ腕に覚えがある程度。 ただしお兄さんは、『外敵から身を護る結界』を、内側と外側を逆にして使っているのですが…… 次でエピローグです。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1344.html
ここはゆっくり実験室。 月の頭脳、八意永琳のゆっくり実験が、今日もゆっくりと行われるのだ。 さて。 「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」 永琳の目の前に、四匹のゆっくりれいむがいた。 どこからどうみてもただのれいむで、実際その通りなのだが、ちょっとだけ違うところがある。 この四匹のゆっくりは、産まれた直後に親から引き取り、永琳が自ら管理・育成したものだ。 ちなみに親は子供達を取られることに激しく抵抗を示したが、ちゃんと育てると言ったらすぐ納得してくれた。 純粋なのか薄情なのか。それとも単に『子を取られる親』のポーズをしていただけなのか。 いずれにしろろくなものではない。今はどこかの部屋でゆっくりしていることだろう。 閑話休題。 この四匹のれいむは、産まれたときからずっと同じように育てられてきた。 同じ量の餌を与え、同じ量の運動をさせ、同じ時間に眠らせ、同じ時間に起こされた。 その甲斐あってか、四匹のゆっくりは全く同じ体型・重量を持つゆっくりとなった。 無論、永琳の目的はただ同じゆっくりを育てることにあったのではない。 これからこの四匹を使って、とある実験を行うのである。 まず、実験の前段階として、永琳はれいむ達に簡単なテストをしてみた。 「今日はみんなにこれをあげるわ」 と、永琳はれいむ達に、赤、青、黄、緑の色違いのリボンをつけてあげた。 「ゆゆ! れいむかわいいよ!」 「れいむもにあってるよ! おしゃれさんだね!」 「おねえさんありがとう! ゆっくりかんしゃするよ!」 「またなにかちょうだいね!」 最後に若干厚かましいことを言ってきたが、それを気にした様子もなく永琳は笑ってみせた。 「うふふ、でもずっとつけてると髪にクセがついちゃうかもしれないから、晩ご飯の前に一度外しましょうね」 「「「「ゆっくりそうするよ!!!!」」」」 四匹は唱和して、その日も(本人達は自由に遊んでいるつもりだが)永琳が用意した運動メニューに沿って過ごした。 晩ご飯を食べたあと、永琳は前もって予告していた通りにリボンを外した。 「もっとつけていたかったよ!」 「ごめんなさいね。また明日つけてあげるわ。そのかわり、ちょっとみんなで遊びましょうか」 と永琳は、三つの黒い箱を持ってきた。ちょうどれいむがぴったり収まるサイズだ。 「なにするの?」 「当てっこよ。今から、三人に箱をかぶせて、私が一つずつ箱をどかすから、残った一人がそれが誰か当てるの。いい?」 「「「「ゆ! おもしろそう! やるやる!」」」」 早速、永琳は四匹のうち三匹に箱をかぶせた。普通ならここで騒ぎ立てたりするのだろうが、新しい遊びということで好奇心が勝ったようだ。 「それじゃあ行くわよ。……はい!」 待ち構えていた一匹の目の前で、永琳は箱を外した。三十秒ぶりにゆっくり姉妹が対面する。 「これは誰かしら? さっき着けていたリボンの色で答えてね」 「ゆ! わかるよ! きいろのりぼんをつけてたれいむだよ!」 得意げに、青いりぼんをつけていたれいむは答えた。 「正解! よーし、それじゃあ次に行きましょうか──」 その後、残りの二匹についても、れいむは正解してみせた。 難易度を上げて、箱にいれた三匹のれいむをシャッフルしても結果は同じだ。 念のため残りの三匹についても同じことをしてみせたが、やはり全員全問正解だった。 もちろん、自分がつけていたリボンの色も覚えている。 永琳から見ても同じ顔にしか見えないゆっくりだが、どうやら個体識別はちゃんとできているらしい。 「すごいすごい! あなた達、ちゃんと姉妹の顔が分かるのね。判子絵師が描いた立ち絵みたいな均等品質のくせに」 「あたりまえだよ! れいむたちはかぞくだもん!」 「かぞくのかおをまちがえるわけないよ!」 「ねー!」 「ねー!」 何気にバカにしていた表現にも気づかず、気をよくするゆっくり達。 ……ところで、永琳からも見分けがつかないほど同じ顔をしたゆっくり達なのに、何故永琳はれいむの答えが正解だと分かったのか。 それは実に単純な話で、リボンを外したあとのれいむ一匹一匹の動きを、完全に記憶していただけのことである。 そんな天才薬師八意永琳は、いよいよ今日の実験の本番に取り掛かった。 「正解したみんなへのご褒美に、今日は特別な晩ご飯を用意したわ」 「ゆぅん! はやくもってきてね!」 「おなかすいたよ! ゆっくりはやくね!」 口々にご飯をせがむゆっくり達を、まぁまぁ、と永琳はなだめる。 「そう慌てないで。何しろ特別なご飯だもの。食べ方もちょっと特別なの。頭のいいあなた達ならわかるわよね」 「! うん! れいむたちあたまいいからね! ちゃんとわかってるよ!」 「ゆっくりまつよ! だからはやくね!」 永琳はにっこり笑うと、さっきと同じ黒い箱にれいむを四匹とも入れた。 ただし今回の箱は、れいむの正面と左側に、同じ大きさの穴が開いている。 「ゆ! せまいよ! なにもみれないよ!」 「ゆっくりだしてね! ごはんちょうだいね!」 みじろぎも出来ないほど狭い箱に押し込まれて、ゆっくり達が抗議の声を上げた。 「だから慌てないで。これからみんなをごはんのあるところに連れて行くの。 ちょっと準備が大変だけど、ちゃんとみんな食べられるから安心してね。 口のところにある穴からストローが差し込まれるから、それを吸えばご飯がでてくるわ」 「ゆ、そういうことならゆっくり待つよ!」 わくわくとした気配で、ゆっくり達はご飯が出てくるのを今か今かと待ち続けた。 「…………」 永琳は無言で、ゆっくり達の左側面の穴に、穴と同じぴったり太さの管を差し込んだ。 管は、箱の中のゆっくりの皮を貫いて、その先端を二センチほど体内にめりこませた。 「ゆぎっ!? な、なにかはいっでぎだよぉ?!」 構わず、永琳は残り三匹についても同様の処理を行う。 「ゆぎゃっ!」「ざざっでる! へんなものがざざっでるよぉ!」「ぬいでぇぇぇ!」 さっきまでとは打って変わって悲鳴が上がるが、永琳はそれを笑顔で封殺する。 「ごめんなさいね。しっかり固定しておかないと危険かもしれないの。 痛いけどゆっくり我慢してね。そうでないと、ずっとゆっくりできなくなるかもしれないわよ?」 「「「「ゆっ……ゆっぐりがまんずるよ!!!!」」」」 ゆっくりできない、という言葉が効いたのか、ゆっくり達は素直に痛みに耐えた。 「うん、あなた達は強いゆっくりだわ。それじゃあ今から、ご飯をあげるわね。口を開いていてね」 そして永琳は、四つの箱を正方形に並べた。 あるゆっくりの側面の管は、隣のゆっくりの正面の穴に宛がわれている。 そのゆっくりの側面の管は、やはりその隣のゆっくりの正面の穴へ── 全方向から同時に押し込めば、箱とゆっくりが四本の管で円状に連結されることになる。 (そう……これこそ『ムゲンゆっくリング』!!!) カッ!と心の中に稲妻を轟かせ、永琳は天才的なネーミングセンスによってこの実験に名を与えた。 天才とは凡人には理解できないものである。 永琳は鈴仙とてゐとついでに適当な兎に手伝わせ、四方向から箱を押し込む。 「「「「ゆっ!!!!」」」」 ゆっくり達の口の中に管が差し込まれる。 狭いところに押し込まれ、痛い思いをしてまでようやくありつけたご飯だ。ゆっくり達は、それぞれ思いっきり管を吸った。 そして口の中に甘みが広がり──同時に、自分の身に起きた異常を悟る。 「「「「!!??!?!!?!!?!?」」」」 自分の中身が、さっき痛みを感じた場所からどんどん流れ出ていく感触。 あんこの量が生死を左右することを、ゆっくりは本能的に知っている。だからこそ、自らに迫りつつある死の気配を、れいむ達は敏感に感じ取った。 そして同時に、自分が吸っているものの正体が何であるかも悟った。 抜け出すのと同じ量だけ入ってくる甘み。味わったことがないはずなのに、どこか懐かしさを感じさせる味。 それは、自分の姉妹の中身なのだと。 そして、自分の中身もまた別の姉妹に食われているのだと。 だが気づいたところでどうしようもなかった。一瞬でも動きを止めれば、その隙に自分の餡子が吸い出されてしまうのだ。 四匹のゆっくりは、最早相手が姉妹であることも忘れたように、ひたすら餡子を吸い続けた。 一匹でも力尽きれば、その瞬間に最終勝利者が決定するこの地獄のループ。 だが永琳の手によって、完全に均質に『調整』されたゆっくり達は、どれも同じ吸引力を持ち、どれも同じように疲労していった。 餡子を吸い、吸われ、吸い、吸われ── そして一時間と十五分と三十七秒が経過したとき、四匹のゆっくりは同時に力尽きた。 「……ゆっ?」 ゆっくりれいむは目を覚ました。きょろきょろと辺りを見回すと、自分以外も三匹も同時に目を覚ましていた。 「あら、起きたかしら?」 いつも聞いている声が降ってきた。 それは自分達に餌をくれる優しいお姉さんの声だった。 だが今日は、いつもと事情が違う。 「ひどいよ! れいむにれいむのあんこたべさせたね!」 「あんなひどいことするおねえさんとはもうゆっくりできないよ!」 「ゆっくりできないおばさんはゆっくりしんでね!」 「しね! ゆっくりしね!」 四匹分の罵声が、永琳を攻め立てた。だが永琳はただ、いつもと同じ笑みを浮かべるだけ。 「はいはいゆっくりゆっくり。大丈夫よ、もうあんなことしないから。 でも、訊いてもいいかしら」 「……なに」 警戒心もあらわに、れいむ達は上目遣いで永琳を睨みつける。 永琳は笑みを深めた。 それは氷のように冷たい笑みだった。 「──ねぇ。 自分が何色のリボンをしていたか、覚えてる?」 そう訊かれ、れいむ達は思い出そうとして、──思い出そうとして、 「「「「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?!?」」」」 四匹のれいむは、完全な恐慌状態に陥った。 「「「れ゛い゛む゛は゛だ゛れ゛な゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!????」」」」 「自らの存在を問う──哲学的ねぇ」 そこら中を転げまわるゆっくりの中で、永琳はしきりに頷いて見せた。 永琳は、ゆっくりの餡子がゆっくりの血であり肉であり、内臓器官であり、脳であることを、これまでの実験で理解していた。 通常の生物で考えれば『おかしい』作りではあるが、あえて人間の器官で表現すれば、ということだ。 また、多少の餡子が喪われても、他のゆっくりの餡子を詰め替えたり、或いは市販品の餡子を詰めてやれば、意識が回復することも分かっている。 およそ半分の餡子を喪うと死に至ることも同時に明らかになっているが、つまりそれは、餡子の量によって意識の主導権が変わるのではないかと永琳は踏んだ。 それを踏まえての今回の実験である。 一時間と十五分をかけて、ゆっくりの体内の餡子は均等に混ざり合った。体内の餡子の総量自体は全く変化させないままに。 その結果がこれである。 改めて、ゆっくりの自我の実在と、驚くべき生命力(人間で言えば脳味噌をかき混ぜられたようなものだ)が明らかになったわけだが…… (指摘されるまで気づかないなんて……これぞゆっくり脳ってことなのかしらねぇ) 全く以て飽きない実験材料だ。永琳はそう思いながら、絶叫の合唱をよそに、実験室を去った。 三日後。 鈴仙に適当に餌だけ投げ込んでおくよう指示していた永琳は、例のれいむ四姉妹の様子を見に行くことにした。 「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」 れいむ達は、再び新たな自我を確立していた。無論、永琳のことも覚えていた。 色々聞いてみると、どうやら三日前の記憶は綺麗さっぱり消えてしまっているようだ。 だが、永琳があの四色のリボンを取り出すと、全員石像のように硬直してしまう辺り、完全に忘れたというわけではないようである。 『逃避』という高度な精神活動が行われたことに、永琳は素直に驚きつつ、次の実験のテーマを練り始めた。 (次は、ゆっくりの精神活動について、詳しく調べてみましょうか……) このゆっくり達は、後日、四匹の母親を加えてまた新たな実験が行われることになるのだが……それはまた、別の話である。 ここはゆっくり実験室。 月の頭脳、八意永琳のゆっくり実験が、明日もゆっくりと行われるだろう。 あとがき 前々から考えていたネタを、904.jpgを見た誰かに先を越される前に書いた。 反省はしていない。 あと、別に判子絵師(誰とは言わない)に恨みがあるわけではありません。むしろ好きです。イベ絵は綺麗ですし。 これ以上は年齢制限にグレイズかしら…… このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/856.html
『真冬のゆっくり対策 2』 「そこ掘ってください」 「堀作るだけでも違うかね?」 「この幅でしたら小型のゆっくりは飛び越えられないでしょう。ただまりさ種は帽子で渡るかもしれません」 「これ以上の幅だとこっちが落ちるときがあるかもしれないな」 「無いよりマシですよ。他に柵とか壁も作りますから」 「加工所から職員がやってきましたよ。ビニールハウスとかいうものを持ってきたそうです」 「なんですかね。新しい箱でしょうか?今行きます」 「さ~てどこにいるのかなあ?」 虐待お兄ちゃんは山の奥へ入っていく。途中ゆっくりの死骸や巣を壊され泣きながら修復作業をしているゆっくりを見かけた。 他の人達もまずは地面に巣を作るタイプから潰しているようだ。 「ゆんしょ!…ゆうううう!!!さぶいいいい!!!」 「まりさあ…ゆっくりしないでね!おちびちゃんたちがさむがってるよ」 「でいぶもてつだってよお…ゆ!!おにいさん!!まりさのおうちをなおすのてつだってほしいんだぜえ!!」 「れいむに手伝ってもらえよ」 「だめだよ!れいむはおちびちゃんのめんどうをみるんだよ!!」 「仕方ねえな。ほれ、まりさじっとしてろ」 「ゆうう…ゆっくりしないでね…」 「よっと…」 彼はシャベルを振り上げた。 「それ!」 「ゆぎゃああああああ!!!!!!!」 「ばりざあああ!!!!どぼじでぞんなごどずるのおおおお!!!!」 彼はシャベルでまりさの中身を穿り出した。 「ゆぎゃがががぎゃぎゃあがやああああ!!!!!」」 「やべでえええ!!!ばりざのながみがあああ!!!!」 「れいむ、奥に入ってな」 「ばりざああ!!!!ばりざああ!!!」 奥に行かないれいむをほっといてまりさだった皮を巣に入れ餡子で穴をふさいだ。 「じゃあ俺は行くよ」 「おにいいざあん!!!!まっでええ!!!!」 「ゆ?なんだかあまあまさんのにおいがするよ!」 「あみゃあみゃしゃあ~んまりしゃにたべりゃりぇてね!」 「なにじでるのおおおお!!!!それはまりさだよおおお!!!たべじゃだめだよおおおお!!!!!」 「さて…どういった所を巣にしているのかな」 ゆっくりが一番住み易い巣は洞窟である。入り口が水平であるため雨水が浸入しにくく天井が壊れにくいからだ。 といっても洞窟がたくさんあるわけではない。大抵は斜面に穴を掘って巣を作っている。 「丁度これくらいの角度がいいよなあ」 山道沿いの斜面を見て彼は言う。急斜面だと巣に帰るのが大変になってしまう。そのため緩やかな斜面に巣を作るのだ。 「しかし雪で真っ白だな。これじゃ分からん…なんだこれ?」 丸くて小さな穴が斜面に向かっている。 「まさかゆっくりの足跡?」 注意深く見てないと見落とすところであった。足跡は斜面の途中で途絶えていた。 「どれどれ…あ、あった。」 彼は雪を掻き分け石や藁が詰まっている穴を見つけた。入り口だろう。 巣の中- 「ゆううう…さむかったよ!」 「まりさ、なんでおそとにでたの?おそとはあぶないっていったでしょ!」 「おかあさんまりさをしからないであげて」 「まりしゃおねえしゃん!ゆっくちちてね!」 「ゆっゆっゆ…いもうとたちにぷれぜんとがあるんだぜ!」 子まりさは帽子の中から雪を取り出した。 「まっちろしゃんだ!まっちろしゃん!!」 「ゆきさんをとりにいってたの?」 「そうなんだぜ!いもうとたちがまっしろさんにさわりたいっていうからもってきたんだぜ!」 「なんてとかいはなまりさなの!ゆうかんだわあ」 「まっちろしゃんちゅべちゃい!!」 「おねえしゃんありがちょー」 「さむいいい!!!!おかあさんすりすりい」 「す~りす~り。ゆっくりしていってね!」 「ごはんのじかんなんだねー。みんなきてねー」 この巣には数組の家族が住んでいるようだ。 「ゆ!いりぐちからへんなおとがするんだぜ!」 「ゆっくりできないね!みんなゆっくりしないでおくにはいってね!」 「しょくどうにいこうね!ごはんたべながらかくれようね」 食堂は巣の奥にあった。最悪天敵に入り口を壊されても食糧のある部屋まで逃げれば天敵も諦めるだろうし食糧を取られずに済む。 「ああ…巣だわ。しかし奥が深くて見えないや…。ゆっくりしていってね!!!」 「「ゆ…ゆっくりしていってね!」」 微かに返事が返ってきた。相当奥に隠れているようだ。 「どうしよっかなあ…わざわざシャベルで巣ごと壊すのも面倒だなあ」 彼は悩んでいた。 「ゆううう…きょわいよお…」 「だいじょうぶだよ!しょくどうまでにげればとどかいないよ!」 「このおうちはれみりゃもはいってこれなかったんだよ!だからしんぱいしないでね」 このままであればゆっくりの知恵が勝っていただろう。しかし世の中そう甘くは無かった。 「よう兄ちゃん、そんなところで突っ立ってどうした?」 「どうも。いやゆっくりの巣を見つけたんですが奥に逃げられましてね」 「ああ、わざわざ巣をぶっ壊すのも面倒なんだろ」 「はい」 「じゃあこれ使いな」 男は2つの丸いものを取り出した。 「何ですかこれ?」 「煙幕だよ。でもただの煙幕じゃないぞ。唐辛子とタマネギエキスが入った特製だ」 「うわあ…効果ありそうですね」 「奥が深いなら2つ入れれば届くさ。俺はこの先で駆除するからこれで失礼するよ」 「ありがとうございます」 男は去っていった。彼もゆっくり駆除を手伝いに来た人なのだろう。 「じゃあ早速入れますか」 虐待お兄ちゃんはライターで煙幕に火をつけ巣の中に入れた。そしてすぐ穴を雪で塞いだ。 「ゆゆ!いりぐちがくらくなったよ!」 「やったね!あきらめてかえってくれたよ!!」 「きょれでごはんをゆっきゅりたべりゃれるね!!」 ゆっくり達はご飯を食べ始めた。 「「「むーしゃむーしゃ…しあわせえ♪」」」 「「ちあわちぇえ♪」」 いつも通りの平和な食事だ。貯蓄された食糧は充分にある。春まで余裕で暮らせるだろう。 「ま…まりさ!はるになったらいっぱいこどもうんでゆっくりしようね!」 「れいむ!こんなところではずかしいんだぜ…」 数分後 「ゆげえええええ!!!!!」 「きゃりゃいよおおお!!!!ゆべえええええ!!!」 「おめめがじみるよお!!!!!ゆぎいいいい!!!!」 「げほっ!げほっ!!!!ゆぎゃあああ!!!!!ゆぎぇえええええ!!!!」 天国から一気に地獄になった。小さいゆっくりから餡子を吐き出し巣の中はパニックだ。 「まりさのおちびちゃんがあああ!!!!ゆぎぇえええ!!!」 「でいぶう!!!じっがりじd…ぎゃあああ!!!おべべが!!おべべがああ!!!!」 「ゆっぐりできなよおおお!!!!わがらないよおおおお!!!!!!」 「ごんなのどがいはじゃないわあ!!!ぎゅうううぎゃあ!!!!」 「むぎゅ…ぎっどごれはどぐよ!!ぎゅううう!!!」 「ばじゅりいいい!!!じっがりじでええ!!!!げほっ!ぎいいい!!!」 「だれが…どぐをそどにすでで……むぶうううう…」 数匹のゆっくりが入り口に向かった。途中で餡子を吐き出し息絶えるゆっくりもでた。 「ごのばるいのが…ぎいい!!!…いげないんだね…ゆぎゅううう!!」 ちなみにゆっくりは手足がないため物を運ぶ時は大抵口の中に入れるか口に咥える。 「む!!!…ゆぎゃああびゃああああああ!!!!!!」 煙幕を口の中に入れたまりさは煙幕を吐きながら餡子も外に出してしまった。 「むうう!!!!むううう!!!!」 こちらのまりさは息を止め体で煙幕を押していた。 「もしかして全滅したのかな」 虐待お兄ちゃんが煙幕を入れてから十数分が経った。 「お、何か出てくるぞ」 雪が盛り上がりまりさが顔を出した。 「むううううう…ゆふうっゆふううううう…ゆうううううう…」 「わざわざ返してくれなくてもいいのに」 「どぼじでえ…ごんなごどじだのおお…あがじゃんも…おぢびじゃんも…でいぶも…じんじゃっだよお…」 「さあてね。なあ、煙幕は2つ入れたんだぞ。あと1つはどうした?」 「ぞ…ぞんなあ…なんでごうなるのおお……」 「ほれ、行った逝った」 「やべでえええ…おざないでええ…」 まりさは巣の中に戻されてしまった。 「これも持ってけ」 「ぜっがくだじだのにい…」 外に落ちた煙幕を巣の中に入れなおした。失意のあまりまりさも死んでしまった。 「これでここは駆除できたかな……うわっ!!これはキツイ。俺でも死ねるわ」 彼は穴の中を覗き煙幕を嗅いでしまった。 「げほっ!げほっ!これならもう死んでるわ。げほっ!」 咳き込みながら山道を登っていった。 「ふう…落ち着いた…。アレ結構キツイな。俺も量産してみるかな」 ふと道から外れたところを見ると大きな黒い帽子が動いていた。 「え、ドスまりさ?」 彼はその帽子を追った。 「う~ん…あ、違う人間だ」 帽子はとある女性が被っていた。 「こんにちは」 「あら、手伝いに来てる人かしら?こんにちは」 「その帽子は?」 「これ?ちょっと前に小さめのドスから取ったものよ。ちょっとぶかぶかね」 「なんでそんなものを?」 「私の記憶が正しければこの近くに洞窟があるのよ。警戒されずに中に入るためね」 「昔この辺りに暮らしてたんですか?」 「ええ。今日数年ぶりにここに戻ってきたわ」 「そうですか。洞窟は大きめなんですか?」 「そろそろ着くわ…。あ、あれよあれ」 少し先に洞窟があった。かなり大きい。 「これは…かなり広そうですね」 「あなたも中に入る?とりあえずれいむのリボンもあるわ。手に結び付けとけば大丈夫よ」 「そういう話よく聞きますね。本当に見分けがつかないんですかねえ」 「まあ付けてみてみればわかるわよ」 彼らは洞窟の中へ入っていった。 「ほお…これは…すごい」 「こんなに大きかったかしら?百匹はいるわね」 洞窟の中は予想以上に広かった。壁には多数の穴が掘ってあり中からゆっくりの声がする。 「ゆゆ!すっごいおおきなれいむとまりさだね!ゆっくりしていってね!!」 「こんなおおきなれいむみたことないよ!」 「もしかしてどすなの?」 「どすだよね!れいむたちをゆっくりさせてくれるためにここにきたんだね!」 「ね、気付いてないでしょ」 「本当なんですね…これが餡子脳か。で、一体ここをどうするつもりなんですか?」 「まあ見ててくださいな。…ねえれいむ、この巣の中をドスに案内してくれないかしら?」 「いいよ!みんなー!!どすがきたよ!!このむれにもどすがきてくれたんだよー!!!!」 壁から出るわ出るわその数数百匹。リーダーであろう大きいありすがやってきた。 「なんてとかいはなどすなのかしら!!よこにいるれいむもおおきくてりっぱだわあ」 「貴方がここのリーダーね。この巣を案内してくれないかしら?」 「いいわ!みんな!ドスとれいむに挨拶してね」 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 「「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」」」 「ゆっくりしていってね!」 「はは…ゆっくりしていってね…」 壁に掘ってある穴は百ヶ所はあるだろう。寝床だけでなく赤ゆっくりを育てるスペースや出産するスペースまである。 「冬篭り中なのににんっしんしているゆっくりがいるね。食糧は大丈夫なの?」 「ゆっへっへ。だいじょうぶなのだぜ!!」 「しょくどうにあんないするわ!!みてびっくりしないでね!」 食堂とされる大き目の穴は大人が屈めば入れるくらいの大きさだった。中にはたくさんの野菜や果物、虫の死骸や草花などがぎっしり詰まっていた。 「この野菜は?」 「はたけさんからもってきたんだぜ!にんげんはずるいんだぜ!!おやさいさんをひとりじめするなんてずるいんだぜ!」 「この果物は?」 「にんげんのおうちからもってきたわ!いなかものがたべるよりとかいはなわたしたちがたべるべきよ!」 「(これは…)」 「(ええ。こいつらね。荒らしているのは。一思いに殺してあげようかと思ったけど苦しませて駆除した方がいいわね)」 「(…………言うねこの子)」 「どす!まりさたちはすごいんだぜ!!これならあかちゃんだってそだてられるんだぜ!」 「ふうん…ねえまりさ、野菜はどうやって大きくなるか分かってる?」 「しってるんだぜ!おやさいさんはかってにはえてくるんだぜ!」 「へえ…そうなの。ちょっとドスはれいむと話したいことがあるから外に出るわね」 「おそとはさむいよ!ゆっくりしないでかえってきてね!」 「ええ…。……ちょっと来て」 「あいよ」 「さて、どうやって苦しめますかね?案とかありますか?」 「ここがまだマシな方だったら洞窟に油撒いて火攻めにしようと思ったんだけどね」 「油どこにあるんですか?」 「さっき出会った所に置いてあるわ。赤ポリタンクよ」 「準備いいですね」 「火攻めだったら一瞬で終わるんだけど…。そうね、貴方は何か考えてる?」 「何か持ってきてますか?俺が持ってきてるモノだと……」 「それはいいわね。私が持ってきてるのは………」 果たしてどのようにして苦しめるのであろうか?彼らの話し合いは続く。 つづく by 虐待おにいちゃん
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2529.html
『ある秋のゆっくり』 11KB いじめ 小ネタ 日常模様 ゲス 捕食種 希少種 現代 虐待人間 独自設定 秋と言えば・・・ 注意書き *駄文です *誤字脱字があるかも知れませんがご容赦を *独自設定があります *特定のゆっくりを贔屓しています *人間は直接手を下しません 『ある秋のゆっくり』 すっかり肌に感じる空気も涼しくなり蝉の代わって鈴虫の羽音が聞こえるようになったある日のこと 日課になった飼いゆの胴付きふらんとの散歩に出掛ける為に準備を整え、ふらんに声を掛ける 「おい、ふらん!散歩に行くぞー」 「う~♪おにいさんといっしょのさんぽさんはこんてにゅーできるのさ!」 茶の間にある窓の欄間部分を開けっ放しにしているので、仕事で家を空けている時は何時も外を自由に飛び回っている様だが 一緒に散歩する事は1匹で飛び回っている時よりも楽しいようで、『う~♪』っとご機嫌な声を上げながら飛び回っている 「よし、玄関の鍵はかけたな・・・ふらんの方はどうだ?」 「うー、まどさんはぜんぶしまってたのさ!」 「それじゃ、出掛けるぞ」 「うっう~♪」 ふらんと一緒の散歩と言っても特別何かをする訳でもなく、ぶらぶら歩きながらふらんと会話をしたり 途中で野良や野生のゆっくりを見かければふらんと一緒に虐殺する程度の本当にただの散歩だ そうして、しばらく歩いているとふらんが前方にゆっくりを発見したらしくやや興奮気味に報告をしてくる 「おにいさん!おにいさん!!ゆっくり、ゆっくりがいるのさ!」 「お?どれどれ・・・・あー、確かに1匹いるな」 「うー!ふらんのすーぱーはんてぃんぐたいむがはじまるのさ!!」 「まてまて、何かおかしいぞ?」 「うー?」 前方に見えたゆっくりがれいむなのかまりさなのかは判らないが、先ほどから道の真ん中で右往左往しているようだ 普通ならこちらに気が付いたなら逃げるかこちらに近づいてくるなりするはずだし、気が付いていないとしても 何も無い道の真ん中でうろうろしている意味がわからない、もしかして変な病気に掛かってあんな行動をしているのかもしれない 「とりあえず、もっと近づいて何をしているのか確認してからだな」 「うー、ゆっくりりかいしたのさ」 今にもゆっくり目掛けて飛び掛って行きそうなふらんをなだめながら、怪しいゆっくりへ近づいていく 近づいて行くと、怪しいゆっくりの正体は赤い帽子に葡萄の様な飾りを付けた金髪の見たことの無いゆっくりだった 「ゆぅぅ、ねーさんがどこかへいっちゃったよ、どうしようどうしよう」 「見たこと無いゆっくりだな、ふらんはこのゆっくりをみたことあるか?」 「うー、ふらんもわからないのさ」 「おい、こんな所で何してるんだお前は?」 「ゆゆ!!ゆっくりあきしていってね!!!」 「うー、ふらんはふらんなのさ!ゆっくりしていってね!!」 「みのりこはみのりこだよ!!」 「はぁ?ゆっくりあきしていってねって言ったか?それに、ふらんを見ても怖がらないんだな」 「ふらんはゆっくりしたゆっくりだからだいじょうぶだよ!ところでにんげんさんはゆっくりあきしてるにんげんさん?」 「いや、そもそもゆっくりあきするって何なんだ?」 「ゆゆ?すずしくてしあわせー!だったり、きれいなはっぱさんをみてしあわせー!したりすることだよ!」 「あー、秋を堪能してるかどうかってことか」 「ゆっくりあきしてる?ゆっくりあきしてる?」 「そうだな、紅葉は綺麗だと思うし、涼しくて過ごしやすい何より秋は食い物が美味いから良いな」 「ゆゆ~~~♪」 みのりこと名乗ったゆっくりはまるで自身の事を褒められたかのように嬉しそうに足元を跳ね回っている 喜んでくれたのは良かったのだが、先ほどまで何か困っていた様子だったのが気になりみのりこに尋ねてみることにした 「なぁ、みのりこは何か探してたのか?ずっとここでうろうろしてたみたいだったが」 「ゆゆ!!!!そうだよ!!ねーさんがどこかへいっちゃったんだよ!それでみのりこはねーさんをさがしてたんだよ!!」 「なるほど連れが迷子なのか」 「たいへんだよ!どうしようどうしよう」 「うー、おにいさん・・・・・・」 「ん?わかってるからそんな顔すんなよ、おい!みのりこ」 「ゆゆ?にんげんさんはみのりこになにかようなの?」 「ああ、お前の姉を探すの手伝ってやるから名前と特徴を教えろ」 「ゆ!ほんとうなの!!にんげんさんとふらんはとってもゆっくりしたにんげんさんとふらんだね!!!」 「それで、お前の姉ってのはまりさやれいむみたいな基本種か?」 「ちがうよ!みのりこのねーさんはゆっくりしずはだよ!」 「ゆっくりしずは・・・・聞いた事も見た事も無いな」 「うー、それならみつけるのはかんたんなのさ!」 「そうだな、ここら辺で見たことの無いゆっくりがいれば、それがしずはってことだな」 「それとね、ねーさんはみのりことおなじでかみのけさんはきんぱつさんだよ!おかざりはまっかなもみじさんだよ!」 「それだけ情報があれば大丈夫だろう、ふらん!頼んだぞ」 「う?おにいさんはさがさないの?」 「お前が分身して上から探した方が早いだろうからな」 「うー、サボりさんはこんてにゅーできないのさ!」 「アー、アー、ナニモキコエマセーン、家に帰ったらご褒美用意してやるからさっさといって来い!」 「う!ぜったいだよ!ぜったいにだよ!!ごほうびさんくれなかったらぜったいにゆるさなえなのさ!」 「ゆー、ふらんがんばってー!」 ふらんが4匹に分身し方々へ散って5分ほど経った頃だろうか、ゆっくりを両手に抱えたふらんが他の分身を引きつれ戻ってきた 「うっう~♪しずはをつれてきたのさ!」 「「「うーーーー!」」」 「ねーさん!!!」 「みのりこをしんっぱいさせたみたいね、ごめんね」 「そうだよ!みのりこはとってもしんっぱいしたんだよ!」 「まあ、無事に見つかったんだからそれでいいだろ?」 「ゆ!そうだね!にんげんさんにふらん!ねーさんをみつけてくれてありがとう!!」 「ゆ~?みのりこ、こちらのにんげんさんは?」 「にんげんさんはねーさんをさがしてくれたふらんのかいぬしさんで、ゆっくりあきしてるにんげんさんなんだよ!」 「ゆゆ!!それならにんげんさんたちにおれいをしないといけないわね」 「そうだね!にんげんさん!みのりこたちはにんげんさんにおれいがしたいよ!」 「しずはたちのおれいでもっとゆっくりあきしてくださいね!」 そう言うと2匹は口をもごもごし始め、口の中に何かを溜めているのだろうか頬が膨らみ始めた ここで『自分たちの中身を食べてね!』なんて言われて餡子を差し出されたら、きっとこの2匹を潰してしまうだろう 「「ゆっくりあきしていってね!!」」 だが、しずはとみのりこの口から出てきた物はこちらの予想を超えるものだった 「・・・・・サツマイモと栗?」 「みのりこのさつまいもさんはあたたかいうちにたべてね!!」 「しずはのくりさんはかたいかわさんをむいてからたべてくださいね!」 「サツマイモは・・・・焼き芋で・・・栗は・・・・甘栗かよ!!」 「うー?やきいもさん?あまぐりさん?」 「ああ、とりあえず食べてみろ」 半分にした焼き芋と皮を剥いた甘栗数個をふらんに預け、自分も残りの焼き芋を頬張る 「むーしゃむーしゃ・・・・・・・しあわせー!!!」 「ホクホクして美味い芋だ、甘栗の方は・・・・」 「むーしゃむーしゃ・・・・・・・しあわせー!!!」 「さっきからそればっかりだな、まぁ、確かにそこら辺の市販の奴より美味いな」 「「ゆっくりあきしてる?ゆっくりあきできた?」」 「うー!やきいもさんもあまぐりさんもこんてにゅーできてとってもゆっくりあきしてるのさ!!」 「「ゆゆ~~~ん♪」」 ふらんとみのりこ達がわいわい騒いでいるとふらんがしずはを連れて飛んできた方向の茂みから1匹のまりさが飛び出してきた 「ゆゆ!!やっとみつけたのぜ!どれいのぶんざいでまりささまをおいていくとはいいどきょうなのぜ!」 しずはを見るなり奴隷発言をしたまりさは天敵であるふらんや人間である俺を全く無視して飛び跳ねてくる 「あ?なんだあれ」 「ゆー?なんだかゆっくりしてないまりさだよ」 奴隷扱いされているしずははまりさを見るなり迷惑そうな表情になり、そばに居たふらんはゴミを見るような視線を送っている 「ゆー、なんどもいってるけどしずははまりさのどれいじゃないのよ」 「ゆゆ!おきざりにしたあげくこんどはくちごたえなのぜ!むのうなどれいにはおしおきがひつようなのぜ!」 まりさが勝手にヒートアップしていく、このままではしずはが怪我をしてしまうと思い片手でまりさを持ち上げる 「まりさまのひっさつのいちぎげきをくらおそらをとんでるみたいーーー」 「お仕置きで必殺ってどうしたいんだよ、おまえは」 「ゆ!!きたないてでまりささまにさわるんじゃないのぜ!!!」 「ねーさん、このまりさをしってるの?」 「うー、このまりさはさっきしずはいじめてたゆっくりなのさ」 「ずっとおいかけてきて、こまっていたときにふらんがむかえにきてくれたのよ」 「なるほどな、しずはが迷子になった原因がコイツか」 「うー、あのときえいえんにゆっくりさせておけばよかったのさ」 「ゆへへ、そんなこといってもまりささまはぜんっぜんこわくないのぜ!」 「そういえば、ふらんを見ても全然怖がらないな普通なら捕食種の後を追うなんて事しないだろうし・・・」 「あたりまえなのぜ!まりささまはれみりゃをえいえんにゆっくりさせたことがあるのぜ!とってもつよいのぜ!」 「はぁ?いやいや、嘘をつくならもっとまともな嘘をつけよ、それとも証拠でもあるのか?」 「しょうこさんならあるのぜ!みせてやるからまりささまをおろすのぜ!」 あまりに自信満々に言うので下ろしてやると、帽子の中をごそごそし始めた 「ゆへへ、これをみてまりささまのつよさをおもいしればいいのぜ!」 まりさが取り出したのはあちこちにシミの様なものが付いておりズタズタになってはいたが確かにれみりゃ種の帽子だった ゆっくりは自身の帽子等をはずす事を極端に嫌うので、他者の飾りを手に入れるには力尽くで奪うか死んだ者から奪うかの二択だ 帽子の破れ具合からまりさの言った通りれみりゃを倒して奪い取ったものに間違いは無かったが・・・・・・ 「ふらん、これ見てどう思う?」 「すごく・・・・小さいです・・・」 「そうだよな、明らかに赤ゆサイズの帽子だな」 「ゆゆ?どうしたのぜ?まりささまのおそろしさがわかったのぜ?」 「ゆー、れみりゃをたおしたってきいてびっくりしてたのに・・・・・」 「そうね、れみりゃのおちびちゃんをえいえんにゆっくりさせたくらいで、なんであんなにえらそうなのかしら」 「正直、これは引くぞ」 「ゆがああああああああ!うるちゃいのじぇ!!れみりゃにはかわりないのじぇ!!!まりしゃはつよいのじぇ!!!!」 帽子を見てのそれぞれの感想がまりさの薄っぺらい自尊心を深く傷付けてしまった様で、その場で気持ち悪く飛び跳ねている 「あ~あ、あれどうするんだよ」 「ゆ!みのりこたちにまかせてね!」 「そうね、これいじょうにんげんさんたちにめいわくかけれないわ」 「何か良い方法でもあるのか?」 「きっとまりさもあきのすばらしさをしればゆっくりできるはずだよ!」 「あー、うん、まぁ、がんばれや」 「「まりさ!ゆっくりあきしていってね!!」」 「ゆ?」 「まりさはゆっくりしたあきをしらないからゆっくりできないんだよ!」 「しずはたちがゆっくりしたあきをおしえてあげるわ!」 「はぁあああああ?なにいってるのぜ!!ゆっくりしたあきなんてしらないのぜえええええええええ!!」 「「ゆゆ!!!」」 「そもそも、あきさんはぜんぜんゆっくりできないのぜ!くささんもむしさんもすくなくなってゆっくりできないのぜ!!」 「あー、確かに秋は春や夏に比べれば野性のゆっくりが食べれる物は少ないだろうな」 「それに!あきさんはじみでゆっくりしたまりささまにはにあわないのぜ!!あきさんはなくなってもいいのぜ!!」 「「・・・・・・・・」」 「うー?みのりこ?しずは?」 「「あきをばかにするゆっくりはしね!!!!」」 「ゆぺっ」 まりさの暴言にぶち切れたみのりこ達は咆哮と共に口から何かを吐き出し、それが突き刺さりまりさは絶命した 「生のサツマイモが中枢餡を貫いてるな」 「うー?おにいさんこのとげとげさんはなんなのさ」 「それの中にさっき食べた栗が入ってるんだよ」 「くりさんはこんてにゅーできるけど、とげとげさんはこんてにゅーできないのさ」 「ゆー、もっとあきのよさをひろめないといけないね!」 「そうね!まりさはざんねんだったけどしかたないわね!」 「それじゃ、みのりこたちはもういくね!」 「にんげんさんたちはこれからもゆっくりあきしていってくださいね!」 「ああ、お前らも気を付けろよ」 「バイバイなのさ!!」 「「ゆん!わたしたちのあきはこれからだ!!!!」」 謎の掛け声を残し茂みの中へ消えていくしずはとみのりこを見送りながら、まりさに刺さった芋と毬栗を引き抜く 「晩飯はサツマイモの天ぷらと茹でた栗だな」 「やっぱりあきはこんてにゅーできるのさ!!」 あとがき 前作のアップ後に感想用掲示板で『あるあき』というあき名をいただいたので しばらくはあるあき(仮)と名乗らせて頂こうと思います、10作超えたら・・・・(仮)を外したい 秋なので彼女らに登場願いました、以下は彼女らの独自設定です 『ゆっくりみのりこ』 春のゆっくりりりー、冬のゆっくりれてぃに続く季節ゆっくり 中身は芋餡であり、口から色々な状態のサツマイモを出す事が出来る ゆっくりしずはの事を『ねーさん』と呼ぶ 『ゆっくりしずは』 春のゆっくりりりー、冬のゆっくりれてぃに続く季節ゆっくり 中身は栗餡であり、口から色々な状態の栗を出す事が出来る 『季節ゆっくり』 特定の季節になると活発に活動するゆっくり 春のゆっくりりりー(白、黒)、冬のゆっくりれてぃ、秋のゆっくりみのりこ、しずは 夏の季節ゆっくりは厳密には確認されていないが夏の花である向日葵を好むゆうか種が候補に上がっている あるあき(仮)の今まで書いた物 anko1826 『殴る』 anko1842 『伝える』 anko1862 『蹴る』 anko1989 『ある日の午後』 anko2040 『加工所in宮城』 anko2238 『ある山で』 anko2269 『ある公園で』