約 592,756 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2610.html
『最後のゆっくり』 5KB 制裁 観察 考証 不運 自業自得 駆除 独自設定 ジャンルがよくわかりません ※俺設定 ※直接的な虐待は一切なし。 ※矛盾があるかもしれないけど、軽く流して。 ※ゆっくりの言葉は少ないです。 ※あと、ゆっくりの言葉では漢字を使います。 最後のゆっくり ゆっくりが、人間たちの目の前に現れてから数十年が経った。 最初は、その可愛らしい姿に、人々は惹かれ、仲良くなった。 しかし、人間の価値観と、ゆっくりの価値観は、相容れぬものであり、 いつしか、仲違いすることが多くなった。 人間たちは、ゆっくりたちが”ゆっくりしたい”という欲望によって、 行動することにより、不快になったり、被害を受けたりすることに対して、 人間の方が、賢くて強いのだから、純粋無垢なゆっくりたちの無知さを寛容な心で許していた。 中には、そんな寛容な心を持ち合わせていない人間もいたが、ごくわずかであり、 調子に乗ったゆっくりたちを虐待するという行為は、別に責められはしないが、 褒められるような行為でもないので、世間ではあまり認識されなかった。 しかし、ゆっくりたちの”ゆっくりしたい”という欲望は、尽きることなく、常に高まっていき、 人間たちは、ゆっくりたちの要望に答えることもできなくなり、ゆっくりたちの無知さに、 ついに我慢できなくなった。 いつの頃からか、自然と、人間たちは、ゆっくりを、「人間の敵」と認識した。 そして、人間とゆっくりの戦争が始まった。 今まで、人間たちは、数多くの生物たちを絶滅させてきた。 この地球上で、他の生物を絶滅させるということに関して、人間たちは、どの生物よりも長けている。 地上最弱と言っても過言ではないゆっくりたちが、人間たちに抗う術などほとんどなかった。 唯一の武器、ドスまりさのドススパークすら、すでに人間たちは攻略する方法を知っていた。 最初から、ゆっくりたちに勝つ可能性などない。 だから、人間とゆっくりの”戦争”という言葉は間違いだ・・・。 一方的な虐殺だった。 しかも、人間たちは残酷である。ゆっくりたちを出来るだけ長く苦しめて殺した。 なぜ、そんなことをしたか。 最初は怨恨。ゆっくりたちに対して、積年の恨みを晴らすべく、想像を絶する壮絶な拷問を繰り返した。 しかし、次第に、そんな恨みもなくなり、いつしか、ゆっくりたちをいじめるのが、ただ楽しいからという、 そんな理由に変わっていった。 そんな中、ゆっくりたちにある変化が起きた。 ゆっくりは、にんっしん(妊娠)しなくなった。 すっきりー(性交)をどれだけ繰り返しても、赤ゆっくりが生まれない。 なぜならば、長年、人間たちに虐待され続けるゆっくりたちの餡子に、この世界は”ゆっくりできない”という認識が、 刻み込まれ、母体のゆっくりは潜在的に、 「こんなゆっくりできない世界におちびちゃんを生ませたくない!」 と思い出し、赤ゆっくりたちも、 「こんなゆっくりできない世界に生まれたくない!」 と思い出し、生まれることを拒否したからである。 無理矢理、人間たちのテクノロジーを使って、赤ゆっくりを作り出しても、 自我が目覚めた瞬間、一瞬にして破裂する。 それほど、ゆっくりたちは、この世界に絶望していたのだ。 この世界は、ゆっくりたちのが望む”ゆっくり”が存在していないのだ。 生き残ったほとんどのゆっくりたちが、自殺し始めた。 死ねばゆっくりできる。 死に行くゆっくりたちの表情は、 死ぬことへの恐怖や悔しさや、やっとゆっくりできるという安堵より、 この世に生まれてきたことへの後悔がにじみ出ていた。 「こんなことなら・・・生まれたくなかった・・・」 これがゆっくりたちの断末魔の叫びになった。 「もっとゆっくりしたかった」というゆっくりたち特有の最期の言葉すら、 言わなくなったのは、この世にゆっくりできるところがないということが、 わかっているかであろう。 自業自得といえども、 さすがの人間たちも、良心の呵責にやっと悩まされだして、ゆっくりたちに対して、再び寛容な心で許してやろうと、 思った矢先・・・それはすでに遅かったことに気づいた。 世界に現存するゆっくりは、たった1匹のゆっくりれいむだけだった。 このれいむも、例に漏れず、死にたがっていたが、 人間たちの献身的なフォローのおかげで、とりあえず、自殺願望は取り除くことはできた。 人間たちは、ゆっくりたちに対して、謝罪の気持ちをこめて、れいむに対して、出来る限りのことをした。 例え、横暴な要求であっても、どんな手段を使ってでも、れいむの望むものをすべて与えた。 しかし、番のゆっくりとれいむのかわいいおちびちゃん、それが唯一れいむに与えることが出来なかった。 過去にゆっくりたちから採取して保管してあった精子餡を、いくられいむに擦り付けても、にんっしんしなかった。 れいむ自身がいくらほしいほしいと願っても、れいむたちの先祖が代々受け継いできた、 この世界はゆっくりできないという潜在意識のせいで、赤ゆっくりたちは、生まれなかったのである。 世界のすべてを望めば手に入ることに、最初は冗長し、でいぶと化したれいむであったが、 どんなに願っても、番のゆっくりとおちびちゃんだけはできないことを悟ると、次第に何も望まなくなった。 「どんなにゆっくりできても・・・一人は嫌だよ・・・寂しいよ・・・少しくらいゆっくりできなくてもいいから・・・誰かれいむの隣にいてよ・・・」 人間が、れいむには、すべてを知る権利があると言い、なぜ、こんなことになったのか、今までの人間とゆっくりの経緯について説明した。 ゆっくりの中でも、あまり賢くないれいむ種であるから、様々なことを教えながら話すので、途方もない時間がかかってしまった。 れいむは、途中、何度も怒ったり、泣き狂ったり、身震いしたりしていが、次第に、 話を聞けば聞くほど、怖くなってきて、ある時から、哀しい表情を浮かべだした。 そして、すべてを聞いたれいむは、人間に問いた。 「れいむたちは1つくらいは悪いことをしたかもしれない・・・でも・・・ゆっくりしたかっただけだよ・・・ ゆっくりしたいって思うことは悪いことなの?じゃあ、どうして、れいむたちはゆっくりしたいって思うの? ゆっくりしたいって思わないければ、こんなことにならなかったの?教えてよ・・・」 誰もれいむの問いに、答えられなかった。 それから数年、最後のゆっくりれいむは、寿命を迎えて死んだ。 最期の言葉は、なかった。 終わり。 作者・ユグルイあき 追伸 ゆ虐SSのネタはたくさん思いつくんです。 ユグルイのストーリーも頭の中では、3~4部とかなり発展してるんです。 でも、どうも、書けない。 なんでだろうねw かわいくてごめんね☆
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1529.html
この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(前) ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ。 降りしきる雨粒と雨音は、まるでまりさを迎える死神の歌声だった。 ああ──自分は死ぬんだ。 まりさは、ゆっくりらしくあまり上等な頭の出来はしていないが、それでもそのことだけははっきりと理解した。 頭の中を走馬灯が駆け巡る。 ゆっくりしていたあの懐かしき日々。友と遊び、ご飯を食べ、それだけで満ち足りていた。 何よりも、幼い頃からとても仲の良かった、一匹のれいむ。その姿は何より輝かしくまりさの人生を照らしている。 ──決して手の届かない太陽のように 「ゆへ、ゆへへへへへ」 土砂降りの雨に包まれているというのに、笑い声はどこまでも乾いていた。 曇天の空に光はない。このまま泥のように、自分は死んでいくのだろうと、まりさは思う。 だから、せめて、最期くらいは。思い出の中で笑いながら── 「…………ゆ?」 突然、雨の音が消えた。 帽子のつばから覗く視界に、いつの間にか、人間の足があった。 おずおずと顔を上げると、一人の男が無表情にまりさを見下ろしている。 「生きたいか?」 男はそう言った。 まりさはしばらくその意味を理解できながったが、やがて理解すると、自嘲気味に笑い出した。 「ゆへへ……もう、いいよ。まりさはここでしんでいくのがおにあいのごみくずなんだよ」 瞳に希望の色はない。ただ諦観と悲哀だけがまりさを満たす全てだ。 だが次の男の言葉は、まりさにとって思いがけないものだった。 「勝ちたいか?」 「──?」 ただそれだけでは意味の通らないようなその言葉は、しかし、清水となってまりさの中に染み渡っていく。 「勝ちたいか?」 重ねて、男は訊いた。 勝ちたいか。何にだ。──決まっている。倒したい相手、憎い相手は確かにいる。 でも、勝てはしない。強さが違いすぎる。そしてこの厳しい自然の中では、強い者こそ正しいのだ。 だから弱い自分は間違っていて、ここでこうして死ぬのが似合いだ。 だが── 「勝ちたいか?」 勝ちたくないはずなど、ない。 「……ちたい」 「聞こえないな。どうしたいって?」 「かちたい……!」 「聞こえない、と言っている。お前の気持ちはそんなものか?」 まりさは、強く身を震わせ、 「か゛ち゛た゛い゛ッッッッッ!!!!!」 「──よく言った」 男はまりさを抱き上げた。 「なら、俺がお前を強くしてやる。どんなゆっくりよりも、どのゆっくりよりも、強くだ」 温かい腕と、力強い言葉を与えられ、まりさの意識は遠のいていった。 「強い目をしているな。……いや、強くなるものの目だ」 だがそこに暗闇に落ちていく恐怖はなく、ただ真綿に包まれるような安らぎがあったように思う。 「……ゆ?」 まりさが次に目を覚ましたとき、そこは森の中ではなかった。 何もかもが見慣れないものばかりの、四角い閉ざされた空間。 まりさはその中心に寝かされていた。 「起きたか?」 とそこに、男が入ってくる。まりさは一瞬警戒したが、その男が自分を助けてくれたことを思い出すと、すぐに礼を述べた。 「おにーさん! たすけてくれてありがとう!」 「おう、中々礼儀のできたやつだ。まぁ気にするな。俺が勝手にやったことだからな。それよりも──」 男はまりさの前にどっかと腰を下ろすと、まりさの瞳を見透かすように目を細めた。 その目を、まりさは少し怖いと思った。 「──まりさ、お前は、勝ちたいんだな」 「……そうだよ」 搾り出すように、まりさは返した。 そう、勝ちたい。その思いは確かに、冷たく澱んだものしかなかったまりさの精神で、小さいながらも確かに光を放っていた。 「まりさは、かちたいんだ」 ふむ、と男は顎を撫でた。 「なら、まず聞かせてくれないか。お前が勝ちたい相手と、その理由を」 まりさは、あるゆっくりの群れの長の息子だった。 聡明で強い成体まりさの子として、自らも将来は皆のリーダーとなるべく日々を生きてきた。 実際、既にまりさのリーダー性は発揮されつつあった。群れの若いゆっくりのまとめ役として、充分な働きをしていたのだ。 ゆくゆくは、その同年代のゆっくり達が成長したとき、それをまとめあげる存在に、まりさはなる予定だった。 両親も、群れの皆も、勿論まりさ自身もそれを確信していた。 だが── ある日のことだ。群れに3メートルはあろうかというドスまりさが現れた。 精々が30センチ、大きくても50センチ程度のゆっくり達にとって、ドスまりさはまさに天を衝くような大きさだった。 ドスまりさは、土砂崩れで自分の群れの仲間を喪い、旅をしていたのだという。 そうして立ち寄ったのが、まりさのいる群れだったのだ。 ドスまりさは数日滞在しただけで立ち去るつもりだったのだが、それをまりさの父が引き止めた。 『どす! せっかくだからまりさのむれでゆっくりしていってね!』 『ううん、そんなことをしたらまりさたちに悪いよ。わたしは旅をつづけるよ』 『そんなこといわないでね! もしよかったら、まりさのあとのりーだーになってね!』 それを聞いて色を喪ったのはまりさだった。 何故なら、次のリーダーには自分が内定していたはずなのだ。 だというのに皆、そのことを忘れてしまったかのようにドスまりさを支持した。 唯一、あの愛しいれいむだけは何も言わず、まりさを悲しそうに見ていたが、それだけだ。 結局ドスまりさは群れに留まることを決め、まりさの父はその日のうちに引退宣言を出した。 群れはドスまりさを中心にして、再構築されていった。 ……自分を差し置いてリーダーになったドスまりさを、まりさは快く思わなかった。 しかし一方でこれほどリーダーにふさわしい者もいないと分かっていた。 実際、ドスのお陰で群れの食糧事情は格段に良くなったし、ドスが授けてくれた知識は狩り以外の局面でも役に立つものばかりだ。 そうして群れが繁栄していくのなら、まりさとしても、不満を言い出すような筋合いはなかったのである。 だがやがて、まりさはドスの行動に違和感を見出し始めた。 ドスは普段は深い洞窟の奥に住んでいるが、そこに他のゆっくりを招き入れ始めた。 入っていったゆっくりは、ひどいときには一週間以上姿を現さなかった。 しかも出てきたときには身体はやつれ、だというのに目はきらきらと輝いていたのだ。 『むっきゅん、だいじょうぶよ。どすはぱちゅりーたちにいろんなことをおしえてくれているの』 友人のぱちゅりーはそう言ったが、今にも倒れてしまいそうだった。 日に日に洞窟の中に入っていくゆっくりの数は増えていく。 その中には──自分が愛したれいむもいた。 ある夜、まりさはドスまりさの家に忍び込んだ。 洞窟の中は外からは考えられないほど広く、そこかしこに小部屋があった。 部屋のいくつかには人間の文字で色々書かれていたが、まりさにそれらは読めなかった。 そしてやがて、一つの部屋に辿り着く。 その部屋には、ドスの体格と同じほどはあろうかという量の食料が集められていた。 ──ドスが皆に命じて食料を集めさせていたのは知っている。 もし何らかの事情で餌が取れなくなったときのため、あらかじめ保管しておくというのが言い分だった。 実際、何週間も雨が降り続いたときは、ドスは溜めておいた食料を皆に分け与え、飢える心配をなくした。 だがここに集められている量は、そのときの倍以上はある。 まさかドスはこれを独り占めしているのでは──まりさはそう思いつつ、別の部屋を見て回った。 石がたくさん集めてある部屋。木がたくさん集めてある部屋。そして、葉っぱが敷き詰められている部屋──そこで、まりさはドスを見つけた。 そこはドスの寝床だったのだ。だがそこにいたのはドスだけではなかった。 (れいむ……!) まりさが愛したれいむは、ドスに寄り添うように眠っていた。 それだけならまだいい。れいむは全身傷だらけだった。何かゆっくりできないことがあったのは明白だった。 まりさの視線は、ドスに向いた。 ドスの力は、まりさも認めている。そのドスの近くで、れいむが傷を負うようなことなどないはずだ。 だとしたら、何故れいむは怪我をしているのか。もしかしてその傷の原因は──ドスまりさ自身ではないのか。 まりさの頭の中を、やつれたぱちゅりーや仲間達の姿が駆け巡っていく。 あのときのぱちゅりーの目の光は、明らかに異常だった。本当に大丈夫だったのか? ドスが無理矢理従わせているのではないのか? いや、ドスは『ゆっくり光線』なるものを持っているという。まさかそれによって、無理矢理ゆっくりさせられているのでは──? 次々と疑念が膨らんでいく中、眠るれいむが身じろぎをした。 『まりさ……』 寝言で紡がれた言葉は、とても悲しそうに聞こえた。 その声を聴いた瞬間、まりさの中で一つの事実が確定した。 このドスまりさは、良いドスまりさなんかじゃない。 まりさ達を騙している、悪いドスまりさ──いや、ドスまりさですらないのだ! まりさはドスの家を飛び出すと、夜が明けるなり、群れの皆に主張した。 あのドスまりさは偽物だ。まりさ達を騙して、搾取するつもりでいるんだ。 当然、群れの皆は反発した。だがまりさは諦めずに主張を繰り返した。 あんなになってしまったれいむを、一分たりとも放っておくことはできない。 少しでもいい、仲間ができてくれれば、その仲間と一緒に虐げられているゆっくり達を救い出すのだ。 ──だが結局、まりさの言葉を聞いてくれるゆっくりは一匹もいなかった。 最後には、まりさは父親の手で群れから追い出された。 『ざんねんだよ! おまえはどすの、いちばんのたすけになってくれるとおもってたのに! ゆっくりできないおまえはもうまりさのこどもなんかじゃないよ! ゆっくりでていってね!』 そして皆から石もて追われ、まりさは独りきりになった。 群れから追い出された辛さよりも、ドスに騙された皆を救えなかった自分の無力さに腹が立った。 何日も森をさまよい続け、やがて怒りの後に来たのは、諦め。 そしてまりさは、あの雨の中、静かに朽ちていく──はずだった。 全てを語り終える頃には、まりさの身体はすっかり乾いていた。 「そうか」 男は頷き、それだけを口にした。 慰めや励ましなど一切なかった。ただ、確認するようにまりさに問うた。 「お前は強くなりたいんだな? 強くなって、ドスを倒し、群れの皆を救いたいと、そう言うんだな」 「そうだよ!」 まりさの心は、今や炎のように燃え盛っていた。 回想するうちに、一度は忘れていた怒りに再び火がついていた。 「まりさはどすにかちたいよ! そしてみんなをたすけるよ!」 「そうか……だが本当にいいんだな? 俺はお前を強くするが……その結果、お前は二度とゆっくりできないゆっくりになるかもしれんぞ」 「ゆっ……! そ、それでもいいよ! まりさはぜったいどすにかつんだから! だからおにーさん、まりさをつよいゆっくりにしてね!」 「…………」 男はしばし、まりさの目をじっと見つめていた。 三十秒だろうか、一分だろうか。それとももっと長い時間だろうか。 それでもまりさは目を逸らすことなく、強い思いを込めて男の瞳を見つめ続けた。 やがて男は力強く頷き、言った。 「……分かった。いいだろう。俺がお前を強くしてやる。ドスに勝てるゆっくりにしてやる」 男はまりさを抱え上げ、そして部屋を出た。 その日のうちに、まりさは三本の注射を打たれた。 一つは餡子増強剤。ゆっくりは餡子の量や密度によって知能が上がるというのは周知の事実だ。この薬物は餡子の密度を高めるものである。 一つは繁殖抑制剤。万が一発情期のありすに襲われても大丈夫なように、生殖能力を立つ。要は去勢だ。 また去勢することにより、エネルギーを他のことに回せるという利点もある。 一つは皮硬化剤。饅頭であるゆっくりの皮を、弾力性に富んだ硬いものに作り変える。 いくら強い力を得たところで、中身の餡子を喪えばそれでゆっくりは同じだからだ。 「…………! …………!」 三つの薬品が自分の身体を作り変えていく感覚に、まりさは悶え苦しんだ。声も出せぬ痛みが全身を襲う。 まるで死んだほうがましなような痛みの中、 「ドスまりさを倒すんだろう?」 「────!」 男の声が、まりさの気力を復活せしめた。 そうだ、こんなことでへたばってどうする。あのドスを倒し、群れの皆を救う使命が自分にはあるのだ。 まりさは歯を食いしばり、痛みに耐え続けた。 三日後、ようやくにしてまりさは痛みから生還した。飲まず喰わずだったせいで、その身体はやつれきっている。 「食事だ」 「ゆ! いただきまー……!」 そう言ってまりさの目の前に出されたのは──縦に潰された、ゆっくりの屍骸だった。 「お、おにーざん! ごれ……!」 「喰え」 「ゆ゛!?」 男は冷たく言い放つ。 「喰え。そのゆっくりを喰って、その餡子を自分のものにするんだ」 「で、でもっ」 「いいから喰え。言っておくが、今後一切食事はゆっくりしか出さん。飢えるのが嫌なら、喰え」 そうだった。自分は三日も何も食べていないのだ。ここで食べなければ、本当に死んでしまう。 だが──いいのか。同族殺しは最大の禁忌であり、それを食することも同様だ。 既に死んでいて、他のゆっくりも見ていないとはいえ、その禁忌を犯してもいいのか。 「何をためらうことがある。言ったはずだ、お前はもうゆっくりできないゆっくりになるかもしれないと。 それに、ゆっくりであるドスに復讐するお前が──同じゆっくり程度喰らえなくて、どうするというんだ?」 「ゆぅ……」 確かに、ドスに勝つのは生半な覚悟では無理だろう。そのために力をつけなくてはいけないというのは分かる。 そのために、このゆっくりの屍骸を食べねばならないというのも分かる。 だがその一線を、まりさは中々越えられないでいた。 男は仕方なさそうに溜息をついた。 「良心が咎めてるのかもしれんが、一つだけ言っておくぞ。 そのゆっくりは、人間の畑に忍び込んで、野菜を盗んだゆっくりだ。俺が捕まえて殺して、今そこにいる」 「ゆ……なら、このゆっくりは、わるいゆっくりなの?」 餡子増強剤によって知能の高まったまりさは、男の言葉の意味を正確に理解できた。 「そうだ。どんな事情があれ、他人のものを不正に奪うのは悪いことだ。 それはお前が一番知っていると思うがな」 男に言われ、まりさは目を見開いた。 他人から奪った食べ物を、自分勝手に扱う──それはあの洞窟で見た、ドスまりさの姿そのものだ。 まりさには、目の前の屍骸がドスまりさと同じものに見えてきた。めらめらと、心が暗黒の炎で沸き立っていく。 「──ゆっくりしね!」 がぶり、と大口を空けて、その顔だったと思しき部位に食らいついた。 そしてそのままがつがつと、一時も休まずゆっくりを胃の腑に納めていく。 甘いはずだが、味はしなかった。ただ憤怒の熱だけが舌を焦がしていく。 その様子を見て、男は一つ頷くと、部屋を出て行った。 翌日から、まりさの本格的なトレーニングが始まった。 平均台を渡らされたり、高さの違う台を乗り継いだり、飛んでくる石を避けたり様々だ。 硬化剤を注入されたまりさは、強い弾力が生まれた身体を上手く動かせなかったが、 「三日で自在に動かせるようにしろ。でなきゃ死ぬぞ」 その言葉通り、三日目からは全てのトレーニングに死の罠が設置された。 平均台の下には鋭い棘が並び、台は動き出して外側にはやはり棘がある。飛んでくるのは石の変わりに鉄球だった。 まりさは、その訓練を必死でこなした。クリアできなければ死ぬ。死への恐怖がまりさを突き動かす。 だが訓練は日に日に厳しくなり、一度ならず、まりさは生を諦めかけた。 その度に男の檄が飛んだ。 「そんなことでどうする。お前はそれでいいのか。ドスを殺すんじゃなかったのか。 ドスの魔の手から、皆を救うんじゃなかったのか」 その言葉がまりさにいつも勇気を与えてくれた。 そうだ。自分がここにいるのは、ドスを倒すため。お兄さんは、そんな自分に付き合ってくれている。 一刻も早く強くならなければならない。こうしている間にも、ドスは皆から搾取を繰り返しているだろう。 友は無事だろうか。 パチュリーは生きているだろうか。 愛するれいむは、笑えているだろうか。 「れいむ、れいむ……!」 記憶の中で鮮やかに輝くれいむの笑顔が、まりさに無限の活力を与えてくれる。 そして今日も、より厳しい訓練に取り組んでいくのだ。 二週間が過ぎた。 食事の方法にも変化があった。最初のほうはゆっくりの屍骸だったが、やがて生きたゆっくりが与えられるようになった。 どれも男が村を襲いに来たのを捕まえたものばかりだった。 始めは足を焼かれたれいむやまりさからだった。生きているゆっくりをそのまま食べるのは気が引けて、殺してから、数度に分けて喰った。 足を焼かれていないゆっくりを相手にしたときは、幾度となく傷を負った。 発情したありすは、嫌悪感から即座に噛み殺してしまった。その勢いのまま全て口の中に納めていった。 足の焼かれていないゆっくりの中でも、巨大なまりさは特に手強く、そして一番憎い敵でもあった。 「あのゆっくりは、他のゆっくりを働かせて搾取していたらしいな。お前が言うドスと一緒だ」 そう男から聞いたとき、まりさから一切の情けの心が消えたのだ。 激しい死闘の末、まりさは巨大まりさを内側から食い殺し、そして一日をかけて全て消化した。 一ヶ月が過ぎた。 この頃から、まりさはただ身体を動かすだけでなく、戦うための知識や道具の使い方を教え込まれた。 自分より大きな敵を相手にしたときの立ち回り方や、ゆっくりの弱点。 また一対一のみならず、大多数の敵を相手にした場合の対処法まで。 それだけではない。れみりゃやふらんといった凶暴な捕食種を想定した戦闘技術の伝授も行われた。 そしてその日学んだことを活かさせるかのように、『食事』が与えられていく。 やがてまりさは、胴付きのれみりゃやふらんでさえ物ともしないだけの戦闘力を身につけるに至る。 道具──武器については、ゆっくりはその体格のため、一度に一つずつしか使うことができない。その辺りも踏まえての訓練が行われた。 「落とした武器を拾おうと思うな。お前が身体を下に向けるのは、相手にとって最大のチャンスだ。 武器は基本的に使い捨てるものだと憶えろ。最後に残るのは、お前の身体一つだ」 その日は、その言葉通りの訓練が行われた。 まりさに与えられたのは、数本の、重石のついた竹の棒だけ。 敵はそれと同数の、飢えたゆっくり。 まりさは一本一本を的確にそのゆっくり達に突き刺し、重石の重みで自由を奪ってから仕留めていく。 途中、二本の棒を落としたが、男の助言に従いまりさはそれを拾わず、自らの身体能力だけで勝利を収めた。 そのような戦い=食事を幾度となく繰り返した。 絶対的不利な条件下からの逆転を求められ、それに応えた。 全ては、そう、ドスに勝つためだけに。 強く根付いた復讐心だけが、まりさを動かす全てだった。 一ヶ月と二週間が過ぎた。 この頃から、再度、まりさ自身の身体に手が加えられ始めた。 一日ごとに薄めた硬化剤を塗りつけ、ありとあらゆる薬物投与が行われた。 その苦しみたるや、最初の三日間の比ではなかった。 だがそれは、まりさがドスまりさに勝つために、必要な措置であったのだ。 ドスの『ゆっくり光線』や幻覚を見せる能力は、戦いに利用すればこの上なく危険な代物である。 まりさはそれを無効化する必要があった。そのための改造だった。 しかし、それはまりさが真にゆっくりできなくなることと同義だ。 『ゆっくり光線』を浴びてもゆっくりしないということは、その者の肉体と精神に、『ゆっくりする』という概念が存在しないということだ。 まりさが薬物によって与えられたのは、『痛み』だった。 内側から餡子を責め立てるような痛みが、常にまりさには満ちていた。 その痛みがある限り、まりさはゆっくりすることがない。 まともに動くことも、眠ることすらできないほどの痛みを受け、しかし男はそれ以外のスケジュールに一切の変更を加えなかった。 戦う相手は日ごとに強くなっていき、殺して喰らわねば明日を生きる命(しかく)はない。 「──お前はここで終わるのか?」 胴付きふらん五匹と相討ち同然の死闘を繰り広げたまりさに、男は声をかける。 まりさは答える気力すらない。 「これがお前の望んだ結末か?」 「ゆ゛ぅ……」 「お前がもうゆっくりしたいと言うなら、俺は止めはしない。楽に殺してやろう。 だが、お前はそれで良かったのか? 何故お前はここにいるんだ?」 ああ、それは、もちろん。 「ドスまりさを、殺すためだろう?」 そうだ。 「ドスまりさから、皆を救い出すのだろう?」 そうだ。 「愛する友や、家族たちに、再びゆっくりしてもらいたいんだろう?」 そうだ! 「──いい目だ。 立て。そして喰え。お前が生き延びるため、そして、仲間の明日を護るために」 「ゆ゛、ゆ゛ぅぅぅぅ」 まりさは、激痛の走る身体を動かして、ふらんの屍体に齧りついた。 自分ひとりの痛みなど、それがなんだというのだ。 今頃仲間達は、ドスに騙されていることにも気づかぬまま、ゆっくりと死の道を歩き続けているというのに。 その自覚なき苦しみに比べたら、この程度の痛みで弱音を吐いている暇などない! 「ゆ゛っ、まりざは、がづんだ……どずをごろじで、みんなを、れいぶを、だずげるんだ……!」 うわ言のように、しかしゆっくりとしては考えられないほどの強固な意志で、まりさは言う。 そこに溢れる漆黒の殺意を感じ、男は満足げに頷いて、部屋を出た。 あとにはまりさがふらんを咀嚼する音だけが響いている。 ある日、まりさは初めて男の家から出された。 「お兄さん、どこにつれていく気なの?」 まりさが来て、もう二ヶ月近く。この頃にはまりさは人間同様の明朗な発音が出来るようになり、また痛みに苛まれる様子もなくなった。 だが痛みは消えたわけではなく、今もまりさと共にある。ただそれに慣れ、寝食を共にすることを可能としただけだ。 その事実を示すかのように、まりさの目には、最早かつてのような奔放な輝きは宿らない。 復讐の業火で灼かれ、苦痛の鎚で叩かれた、刃の如き鋭さを湛えていた。 男はある大きな柵の中で立ち止まった。 「……!」 そこには、大小さまざまなゆっくりが掻き集められていた。 大きいものから小さいものまで。まだ赤子のゆっくりもいる。その数は百は下らないだろう。 「こいつらは昨日、群れ丸ごとで村を襲いに来たやつらだ。大規模な罠仕掛けて一網打尽にはしたが、反省する様子はない」 ゆっくり達は男に興味などないように、必死に柵に対して突進を繰り返している。 仲間と励まし合うもの、お互いに責任を押し付けあうもの、泣き叫ぶ子と、それをあやす親、気にせずゆっくりしているもの。 そこには様々なゆっくりの様々な在り方があり、それにまりさは、かつていた群れを思い出した。 復讐の炎が、ほんの僅か、ゆらぐ。 まりさの心を悟ったかのように、男は続けた。 「これだけの数が丸ごと押し寄せてきたんだ。何か、並々ならぬ事情があったんだろうさ。 だとしても俺ら人間にとって、許す理由にはならないが──お前にとっては、どうだろうな」 「ゆ……」 まりさがたじろいだのは、これだけの数を前にしたからではない。 もっと心の奥底の、どこかに置いてきたものが、まりさに訴えかけてきたのだ。 「まりさ、これを咥えろ」 男が差し出したものを、まりさは反射的に口で受け取る。 それは、工具のノミだった。 戸惑うまりさをよそに、男はまりさを柵の中に放り込んだ。 「「「「ゆゆっ!? ゆっくりしていってね!!」」」」 いきなり放り込まれた同族にゆっくり達は驚いたようだったが、すぐにお決まりの言葉を返した。 だがまりさは何も返せなかった。ひとたび『武器』を咥えた口は貝のように閉じ、それを落とすことを許さなかった。 「まりさ、そいつらを全員殺せ」 男は、まりさにだけ聞こえる声で言った。 「ゆっ!? でも……!」 振り返り、思わず抗議しようとするまりさに男は取り合わず、今度は他のゆっくり達を向く。 「おい、お前ら、よく聞け!」 「「「「「「「ゆゆゆ!!!???」」」」」」」 そして、思いもかけぬ言葉を発した。 「このまりさを殺したら、お前ら全員解放してやる! 餌もたっぷりやるぞ! どうだ!?」 「「「「「「「「ゆ゛!!!!????」」」」」」」」 驚きの声は、まりさからも発せられていた。 「お、お兄さん! どうしてそんなことを──!」 「「「「「「「ゆっくりしんでいってね!!!!!!!」」」」」」」 まりさの声は、後ろから叩きつけられた数多の殺意に押しつぶされた。 (ああ────) 何かが急激に冷めていくのを、まりさは自覚した。 さっきまで、励まし合っていたゆっくりが、責め合っていたゆっくりが、泣き叫んでいたゆっくりが。 親が、子が。良いゆっくりが、悪いゆっくりが。れいむがまりさがありすがぱちゅりーが。 百二十一匹のゆっくりの群れが。 今はその全ての意志を、まりさ一匹を殺すために向けている── 「殺せ」 男は見もせず、まりさに言った。 背後からはゆっくりの跳ねる音が、波濤となって押し寄せてくる。 まりさは振り向いた。 そして、一方的な虐殺が始まった。 あとがき 虐待でも愛ででもない、全く新しいジャンルを生み出そうとして、試行錯誤した結果がこれだよ! 書いてる途中でいつのまにか40KB越えてたんで分割しました。しかもまだ途中です。 文章が無駄に長くなってしまうのは自分の悪い習性ですね…… 簡潔かつ効果的に感情をゆさぶれる他の書き手さんたちが羨ましいです。 続きは近いうちに。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/158.html
【六十年目のゆっくり裁判】 そこには、今まさに命の灯火が消えようとしているゆっくりれいむがいた。 「ゆ…っゆ…っ。」 ゆっくりれみりゃに捕食されながら、そのゆっくりれいむは虚ろな目で虚空を見つめていた。 既に体の三分の一以上が喰われ、中身の餡子が飛び出している。 体が重い…。 湖のほとりで、蝶々さんと遊んでいただけなのに…どうして…? ゆっくりれいむは自分の不幸を怨めしく思った。 「うー!うー!」 既に、ゆっくりれみりゃの鳴き声も、ゆっくりれいむには聞こえていなかった。 「(もっとゆっくりしたかったよ!)」 そんなことを思いながら… ゆっくりれいむは死んだ。 「ゆっ!?」 ふと、ゆっくりれいむの目が覚めた。 そこは、赤い花が一面に広がっていた。 「ゆっくり!?」 そして、先程までの自分との状況の変化に気付いた。体が軽い、どこも痛くない。 「ゆっくりー!!」 おまけに体がスイスイと動く。 先程までの苦痛が嘘のようだ。 「ゆっくりできるよ!!!」 ゆっくりれいむは幸せいっぱいに、赤い花畑を飛び回った。 しかし、自身の体の外見の変化には気付いてはいなかった。 額に白い三角の布をつけ、体の底がたなびいているその姿に…。 そう、ゆっくりれいむは死に、魂となってこの彼岸に来たのである。 「お、またゆっくりかい。」 「ゆっ?」 楽しそうにしているゆっくりれいむに、ガタイの良い、肩に大きな鎌を担いだ女性が近づいてきた。 「最近多いんだよね~。ゆっくりの魂が。」 その女性は、ヤレヤレといった表情だ。 「おねえさんだれ?」 「あたいは小野塚小町。死神さ。」 「しにがみ?おねえさんもゆっくりしていってね!!!」 「クスッ、ゆっくりはみんな同じことを言うねぇ。でも生憎、あたいはゆっくりしてられないんだ。あんたを この川の向こう岸に連れていかなきゃならないんでね。」 「むこうぎし?そこはゆっくりできるの!?」 小町に問いかけるゆっくりれいむ。 「ああ、ゆっくりできるさ。お前のお友達もみーんなゆっくりしてるよ。」 「わぁい!れいむもゆっくりしたい!!」 「そんじゃ、そこの舟に乗った乗った!お代はいらないよ、ゆっくりだしね。」 そう言うと、小町はゆっくりれいむを舟に乗せ、舟を対岸へと向かわせた。 胸にゆっくりが二匹入っているんじゃないかと言いたくなるような豊満なバストを揺らして、小町は舟を漕い でゆっくりを対岸へ運んでゆく。 「…でね!…だから、ゆっくりしたんだよ!!」 「ほお~そうかいそうかい。」 途中、小町はゆっくりの自慢話のような話に付き合ってやる。もうゆっくりの自慢話は聞き飽きたよと言わん ばかりの顔で。 …そうこうしている内に、舟は対岸へと到着した。 「ほら、着いたよ。後はあんた一人で行けるだろ?あのでっかいお屋敷の中がゆっくりできる場所だよ。」 「ありがとうおねえさん!ゆっくりしていくよ!」 そう挨拶すると、ゆっくりれいむはピョンピョンと屋敷へ向かっていた。 小町は、去ってゆくゆっくりれいむの後ろ姿を眺めながら、ポツリ。 「ま、あんたがゆっくりできるかどうかは映輝さま次第だけどね。」 屋敷の門に辿り着いたゆっくりれいむ。 「ゆっくり?」 門をくぐり抜けると、ゆっくりれいむの目の前に、大きな扉が立ちはだかる。 「ゆっくりさせてね!」 と、ゆっくりれいむが、少し怒りぎみで声をあげると、大きな扉はギギギ…と、音を立てながら開いていった。 扉の奥へと入るゆっくりれいむ。そこにゆっくりできる場所がある。ゆっくりれいむは期待に胸を膨らませた。 だが、扉の向こうは特に面白みのない無機質な広い部屋だった。正面には5mほど台があり、その上の机には、 立派な装飾の施された帽子を被った緑髪の女性が座っていた。 「ゆっ?おねえさんだれ?」 また知らない女性がゆっくりれいむの前に現れた。 「私の名は、四季映輝・ヤマザナドゥ。幻想郷の閻魔です。」 「し…え…やまだなどう?」 映輝の肩書き付きの長い名前を復唱できないゆっくりれいむ。しかし、 「おねえさんもゆっくりしようね!」 気にも止めずに、いつもの台詞だ。 「残念ですが、ゆっくりしているヒマはありません。」 「ゆっ?」 「これから裁判を始めます。」 映輝がそう言うと、ゆっくりれいむの背後の扉がギギギと閉じてゆく。同時に、ゆっくりれいむの立っている 場所がせり上がってゆく。 「ゆゆゆっ!?」 3m程持ち上げられたところで、ゆっくりれいむを乗せた台は止まった。 「ゆっくりれいむよ、よくお聞きなさい。私はこれから貴方の生まれてから死ぬまでの行いを、この浄瑠璃の 鏡で見渡します。貴方の行いによって、私は貴方の今後の行き先を決定します。」 「おねえさん!ゆっくりできないよ!はやくおろして!」 まるで聞いてないゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむよ、今一度言います。これは貴方がゆっくりできるかどうか大切なことなのですよ?」 「ゆっくりできるの!?」 ゆっくりという言葉に反応するゆっくりれいむ。 映輝はゆっくりれいむが聞く耳を持ったことを確認すると、説明を続けた。 「生きている間の貴方の行いによって、あなたはこれから二つの道のどちらかを行かねばなりません。」 そう言って映輝が右手の手の平をバスガイドが案内するかのように上げると、楽しげな極楽の様子が写し出さ れた。 そこは、お日様いっぱいの花畑。ゆっくりゆゆこやゆっくりレティ、ゆっくりフランがニコニコと楽しそうに 遊んでいる。正にゆっくり天国だ。 「わあっ!たのしそう!!れいむもそこでゆっくりしたい!!!」 次に、映輝は左手を上げる。そこには…。暗くてよくわからない。しかし、とにかくあまり楽しそうではない ことは確かのようだ。 「いかがですか?ゆっくりれいむよ。」 「そっちでゆっくりしたい!」 ゆっくりれいむは天国の様子が写し出されたほうを向いてピョンピョンとその場を飛び跳ねる。 「そうですか、ゆっくりれいむよ。しかし、私は今、あなたの人生をすべて拝見しました。…判決を下します。」 キラキラとした目で映輝を見つめるゆっくりれいむ。その顔は、自分がゆっくりできそうな場所へ行けると信 じきっている顔だ。 「あなたには、地獄へ落ちてもらいます。それも、最も過酷な“ゆっくり無限焦熱大大地獄”です。」 「ゆっくり!?」 映輝が何を言っているのかよく分からないゆっくりれいむだが、自分がゆっくりできなさそうな場所へ連れて いかれることは、何となく理解した。 「貴方は生前、たくさんの虫を殺して食べました。たくさんの田畑を荒らしました。そして何より、『ゆっく りしていってね!!!』と大声で叫び、人々を不愉快にさせてきました。………そう、貴方は少しウザすぎる。 地獄に落ちて、終わることの無い様々な苦痛を永遠に受けること。これが今の貴方が積める善行よ。」 映輝がそう言うと、ゆっくりれいむの足元の床に穴が出現した。 「ゆうーーーっ!」 そのまま落下するゆっくりれいむ。 文字通り、ゆっくりれいむは地獄へと落ちていった。 六十年目のゆっくり裁判・下へ続く。 選択肢 投票 しあわせー! (0) それなりー (7) つぎにきたいするよ! (9) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2452.html
注意 虐待ありません パロディです。 都合上、ゆっくりが現れてからの年数を「Y歴○○年」と表記しています。 『YUKKURI of THE @%#$?』 #1 あそぼうれみりゃ 「ねぇ、まりさ知ってる? 子ゆっくり達の間で流行っている噂」 「ゆっくり知ってるぜ! あれだろ? "あそぼうれみりゃ"」 「ええ、おかげで遊び場に遅くまで居座る子ゆっくりがいなくなって助かるわ」 今、子ゆっくり達の間で『あそぼうれみりゃ』という噂がまことしやかに流れている。 どのようなものかと言うと… 「ゆぅ、すっかり遅い時間だよ! 早くゆっくり帰るよ!」 ほぼ太陽が沈んだ頃、子れいむは忘れ物を取りにドーム型の人工洞窟に戻ってきた。 この人工洞窟はいつからあったのかは定かではないのだが、天井に発光成分のあるコケが張り付いており、 いつでも明るかったため子ゆっくり達の遊び場となっていた。 成ゆっくり達はこの場所を利用できない。 なぜなら、入り口が横に狭く、成体ゆっくりでは進入できないから。 「でも、みんなばかだよ! "あそぼうれみりゃ"なんてただの噂話なのに怖がって!!!」 (むきゅ、夕方過ぎまでこの洞窟にいると、入り口にれみりゃがくるそうよ!) 「ゆ…あ………ぁ……」 洞窟の入り口にはゆっくり通常種の天敵の捕食種、れみりゃがいた。 普通のれみりゃは太っていて鈍重だが、このれみりゃは骨と皮だけと言わんがばかりに痩せている。 腕も足も木の棒のように細く、服もスカスカ。 顔も下膨れが引き締まり、まるで餓死直前であるかのような様相だ。 (それでね! れみりゃは洞窟の中には入ってこないのよ! だから、こういって誘い出そうとするのよ!!!) 「あそぼお」 「ゆっくりこの中に入れないのはわかってるよ!!! れいむはゆっくり帰るからさっさと出て行ってね!!!」 子れいむは振り絞れる勇気すべてを使ってれみりゃに威嚇する。 「はやぐででいっでよおおおおぉぉぉ!!! れいむががえれないでじょおおおおぉぉ!!!」 れみりゃは出入り口に両手足をかけ、入り口を揺さぶる。 「あそぼおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「あそぼおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉおおおお!!!」 「あそぼおおおおぉぉおおおおおぉぉぉおおおおぉぉおおおおおお!!!」 「あそぼおおおおぉぉおおおおおおぉおおおぉおぉおお!!!」 入り口がガタガタと音を立てて揺れる。 子れいむは恐怖のあまり声を出すこともできずにこの光景を見ている。 もし、『あそぼうれみりゃ』が「入ってこない」のではなく「入ってこれない」のだとしたら? もし、「入ってこれない」理由が「入り口が狭いから」だとしたら? もし、洞窟に進入するためにガリガリに痩せたのだとしたら? ----Y暦31年.人工洞窟 #2 訪問 がさがさ… 「はぁ」 またか、とみょんはため息をつく。 夜中、たまに自分の家と間違えてバリケードを破って入ってくるゆっくりがいる。 しかもたちの悪いことにそのままおうち宣言するということもある。 みょんは少々手荒だが、木の棒でしたたか叩いてから追い出すようにしている。 光コケの蓋を取り、明かりを確保。武器である木の枝を咥え、侵入者を待つ。 がさささ!!! ひときわ大きい音がしてバリケードが完全に崩れた。 そこにいたのは 「み"ょん!!?」 ゆっくりれいむであったが、額から右頬にかけて皮が破れだらりと垂れ下がり、 左頬は損壊し歯が見える。 そして頭には見たこともない金属片が突き刺さり、眉間には木の枝が突き刺さっていた。 「ゆュ……まチガえタ」 みょんが固まっているとれいむは一言 そう残してどこかへと跳ねていった。 ----Y暦27年.泉のほとりにほど近い洞窟 #3 帰り道 ザーザー… 「ゆぅ、全くついてなんだぜ…」 友達のれいむと遊んでいたら、突然雨が降り出した。 れいむの巣はすぐ近くだがまりさの巣は結構遠い。 最初はぽつぽつとしか降らなかったので、大きな葉っぱを傘代わりにすれば濡れずに帰れるだろう。 そう思ってれいむの巣で雨宿りせずに帰路についたが、 もうそろそろ巣につくであろう頃になって雨脚が強まった。 傘代わりの葉を見ながらまりさは思う。もっと早くに帰ってれば良かった。と。 ずん! 「ゆっ?」 突然葉が重くなった。 バランスを崩しながらも葉をのぞくと、そこには沢山のゆっくりの顔が映り込んでいた。 「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」 「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」 「ゆ、ゆうぅぅうううう!!!」 恐ろしくなって葉を離し、逃げ出す。 後ろを振り返り、葉を見るとそこにはゆっくりの顔も笑い声も無くなっていた。 「……………」 ----Y暦3年.まりさの巣の近辺 #4 訪問2 「ゆぅ……ゆぅ……」 ちぇんとらんは二匹寄り添って眠っていた。 「おい」 「おいィ」 「おい」 「おいィ!!!」 「ゆぅ?」 「むにゅ…、どうしたのらんしゃまぁ…」 何者かの声にらんが気付き、起きる。ちぇんはらんが起きるとつられて起きた。 何だろうと光コケの蓋を外す。 すると、気の棒などで覆ったバリケードの外に何者かがいることがわかった。 「おいィ!」 ガタガタガタ!!! 木の棒の隙間から声が聞こえる。 二匹はそちらを見て絶句した。 木の棒の隙間から目玉が何個も二匹を凝視しているのだ。 「おいィ…………」 「こコを……アけロ」 正体不明の訪問者にがたがた震える二匹。 「オいぃ!!!」 ----Y暦30年.場所は伏す #5 他に、誰がいたのか 「ゆー、ありす、まりさ! こっちだよ! 早く来てね!!!」 「れいむ、都会派は焦らないのよ!!!」 「そうだよ、もうちょっとゆっくりしようよ…」 れいむ、まりさ、ありす。 仲の良い三匹はこのたび親元を離れ、新しい巣に引っ越そうとしていた。 「でも、そこ本当に誰もいなかったの?」 「ゆ! 誰もいなかったよ! れいむちゃんとこの目で見たもん!!!」 れいむが見つけたのは中くらいの大きさの洞窟。 前日に中をのぞいて見たところ、住人もおらず、誰かが住んでいる様子もない。 三匹で生活するには広すぎるくらいの広さ。 れいむは一目で気に入り、三匹での生活に心踊らせ、二匹に知らせ 早速翌日三匹で下見をしに来たのだ。 「ゆ! ついたよ! ここだよ!!!」 岩肌に見える小さめの穴。成ゆっくり一匹分の入り口。 「ゆー! なかなか都会派な場所じゃない!!!」 「まりさここ気に入ったよ!!! さすがれいむだね! ゆっくりできるよ!!!」 早速三匹は順番に洞窟の中に入った。 「ゆわ~ひろ~い!」 「ありす、ここが気に入ったわ! さっそく、お引っ越しの準備しましょ!」 「ゆ? 誰かいるよ!!!」 入ってきたときは誰もいなかったはずなのに、気がつけば自分たちの目の前にゆかりんがいた。 そのゆかりんは一瞬だけ笑ったように見え、 ザクッ! 袈裟に切られた。 しかし三匹には何がゆかりんを切り裂いたのか、見えなかった。 ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ! ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ! ゆかりんは中身をまき散らかし、残骸があちこちに散らばった。 その中で、目玉だけはしっかりと三匹を見据えていた。 ----Y暦27年.山奥の洞窟 お気づきの方もいらっしゃると思いますが、 これらは「不安の種」のエピソードを元に作成されています。 これかなり怖いので、怖いの苦手な方は見ない方がいいです。 次は「不安の種+」のエピソードも書こうかなぁ、と思っています。 今まで書いたSS? ドスまりさとゆうか1~3 ゆっくり闘技場(性)1 不幸なきめぇ丸 名物餡玉 行列の出来るゆっくり スカウトマンゆかりん前・後 ファイティング親子とゆっくり まりさの商売 ぱちゅりーの失敗1~4 盲点 進化 ぶっかけ!ぱちゅりー! 短い話しを一つだけ ありふれた話 対決!ドスまりさ! 被虐のみょん_その一 とあるきめぇ丸の一日 おさんぽバターみょん さなえに首ったけ ゆっくり兵団 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2890.html
その3より こんな感じで、れいむの虐待は毎日のように行われていった。 過ぎてしまえば、長いようで短かった一か月。 れいむは何度心が折れてしまいそうになったか分からない。実際、折れた方がどれだけ楽だっただろうか。 しかし、その度にれいむの心を救ってくれたのは、同じく男に虐待を受けるまりさとありすの存在であった。 男は初日の説明通り、一日一時間の虐待を済ませると、きっちりと虐待を止めて、れいむを元の部屋に帰してくれた。 本当に虐待以外に興味がないのか、虐待時間以外は決してれいむたちに干渉してこなかった。 そのため、残りの23時間は、部屋から出れないことを除けば、自由に過ごすことが出来た。 れいむは一日の大半を、寝て過ごす。 虐待時間は一時間とは言え、あまりに過密な内容に、十分な休息を取らなければ、それこそいつ死んでもおかしくないからだ。 まりさやありすも同様に、大半を休息で過ごしているそうだ。 その後、起きたら食事の時間である。 部屋にはドッグフードと水が毎日欠かさず用意されており、その点に関してだけ言えば、森での生活より遥かにゴージャスであった。 とは言え、初日のように体が受け付けないことも多く、楽しい食事とはそうそういかない。 それでも、体力回復には食事を取らなければならないこともあり、れいむはどんなに苦しくても、毎日食事を取り続けた。 その後はまりさ・ありすを交えての意見交換会。 三匹で集まれる時間はあまり長いものではないが、これがれいむの一日の中で最大の楽しみであった。 内容は、今日はどんな虐待をされたのかとか、これこれこうすればあんまり痛くないだとか、明日はきっとこんなことをされるに違いないといった虐待に関することが半分。 そしてもう半分は、ただただ無駄話の駄弁りである。 大抵は男の悪口であったり、自分はどこどこの森で暮らしていただとか、昔こんなことをしたことがあるとかいった世間話だ。 もしこの時間がなくなれば、それこそれいむの心は早々に折れていたことだろう。 まりさとありすが居るからこそ、れいむは心を保ち続けることが出来、未だ信じるに足らないが、「飽きたら森に帰す」という男の言葉を微かな希望として生き続けている。 どれか一つ欠けても、先はないのだ。 まりさとありすと言えば、この一か月の間に二匹に対する感情も変化していった。 まずはまりさ。 出会ったときから美ゆっくりであったまりさへの親愛度は高かったが、今では以前に輪をかけて大きなものになっている。 最初は単なる一目惚れであったが、今では間違いなく、れいむはまりさに惚れ込んでいた。 会話を交わしていて分かったのだが、まずまりさは頭がいいのだ。 無論、所詮はゆっくりの中でのことであり、人間や妖怪とは比べられないが、それでも母ぱちゅりーに匹敵するのではというほどの知識を溜めこんでいる。 聞けば、まりさの片親もぱちゅりーであり、幼い頃から様々なことを教え込まれてきたらしい。 今後使う機会があればよいが、丈夫な家の作り方や安全なキノコの見分け方など生活の知恵からちょっとした雑学まで、れいむとありすに懇切丁寧に教えてくれる。 また、リーダーシップにも長けていた。 まりさは三匹の中で一番年長であり、自然とまとめ役をこなすことが多い。まりさ種特有の気質も無関係ではないだろう。 れいむとありすが喧嘩した時もうまく収めてくれたし、三匹の意見が食い違うことがあっても、常に一歩引いて二匹を立ててくれる。 こういうさり気なさがまりさの魅力を引き出しており、結果、れいむのまりさへの好意は急上昇していったのである。 続いてありすであるが、最初はれいむにとって、あまりいい印象を持つゆっくりではなかった。 しかし、今ではれいむの親友であると、はっきりと断言できる存在となっていた。 ありすについて真っ先にいうなら、とても優しいゆっくりだということである。 自身も辛い目に遭わされているにも関わらず、常にれいむとまりさの心配を優先し、自分は二の次に置いていた。 以前、れいむが寝れなかった時など、ありす自身も辛いはずなのに、一晩中、れいむの話し相手をしてくれたことがあった。 都会派を気取るところは最初から変わりないが、それはありす特有の照れ隠しの場合が多く、付き合いが続けば自然とそれが理解出来るようになっていた。 そんなありすであるが、小さい頃から親まりさ一匹に育てられたらしい。 れいむがうっかりと「おとうさんはどうしたの?」と聞いてしまったことがあって、すぐに失敗したと思った。 こういう場合、大抵れみりゃや野生動物に食べられたか、人間に捕まったかのどちらかであるからだ。 しかし、ありすから返ってきたのはそのどちらでもなかった。 ありすの親ありすは、なんとレイパーだというのだ!! これには、れいむばかりかまりさも驚愕した。 レイパーありすは、無理やり親まりさをすっきりさせると、親まりさを置いてどこかに行ってしまったらしい。 その後、ありすは親まりさ一匹で育てられたそうだ。 レイパーから生まれたありすは、高確率でレイパーになることが多い。 先天的にレイパーの因子を持つことと、望まれないで生まれてきたことによる親からの愛情不足、生活環境の乱れが、レイパーへと成長させる主な原因である。 しかし、このありすはレイパーの子供でありながら、とてもレイパーを憎んでいた。 望まれて生まれて来たわけではなく、周りのゆっくりたちはそんなありすをレイパーの子と蔑んだが、親まりさはありすを憎むどころか、自分の子供としてしっかりと育ててくれた。 その過程を見て育ったありすは、親まりさを心の底から尊敬し、愛し、レイパーを憎んだ。 自分は決してレイパーなどという下品で下等なゆっくりにはならないと心に誓い、常に他者を思いやる心を持ち続けようと、今日まで頑張ってきたのだという。 それが、この慈愛に満ちたありすなのだろう。 れいむは、見もせず伝聞だけでありす種すべてを嫌っていたことを恥じ、ありすに謝罪した。 ありすは、そんなれいむに怒ることはなく、「仕方がないわ」と笑って許してくれた。 それ以来、二匹は親友と呼べるようになった。 二匹の年齢がほぼ同じくらいなのも、それに輪をかける結果となったのだろう。 これが現在のれいむの二匹に対する感情である。 男の虐待がなければ、三匹仲良くいつまでもゆっくり出来たことだろう。 男に連れてこられなければ出会うこともなかったのだが、例えそうだとしてもれいむはそれが悔しくて仕方がなかった。 しかし、男の虐待は、ここにきてようやくターニングポイントを通過したことを、この時のれいむは知る由もなかったのである。 翌日、今日も一日が始まる。 男が三匹に虐待する時間はほぼ決まっており、今日もその時間がやってきた。 虐待の順番は、まりさ→ありす→れいむ→まりさ→ありす→れいむ→まりさ→……とサイクルが決められており、昨日はありすが一番だったので、今日はれいむが最初である。 ところが、男はれいむの部屋になかなか入って来ることはなかった。 いつもなら入ってくるや、れいむを木箱に詰めて虐待部屋に連れていくのだが、いったいどうしたのだろう。 男が居ないわけではない。 現にここまでの足音はしっかりと聞こえているので、扉のすぐ前に男は居るはずなのだ。 順番を忘れたのだろうか? もしかしたら今日は虐待されないんじゃ…… れいむがそんなあり得ないことを考えていると、男がようやくリアクションを見せた。 れいむの部屋を開けることなく、壁越しに大きな声で言葉をかけてくる。 れいむだけでなく、まりさとありすにも聞こえるように、そこから話しているのだろう。 「お前たち、よく聞け。今日から虐待の一部を変更する」 「ゆっ!?」 虐待の一部変更? 一体今さら何を変更するというのだ? まさか時間を延ばすのだろうか? それとも更なる痛みに耐えなければならないとか? まさか、虐待に飽きたから殺されるんじゃ!! れいむは焦った。 何しろ今日の虐待はれいむが最初なのだ。 全く心構えが出来ていない。 しかし、男はそんなれいむの心情を知ってか、「怯えているようだな」と前置きをして、説明を続けた。 「心配することはない。虐待方法は、前と変わりはない。時間はきっちり一時間だし、決して殺すまで傷めつけたりはしない。 他の時間は何をしても構わない。寝るのも食べるのも三匹で語り合うのも、お前たちの自由だ」 「ゆっ……それじゃあ……」 「変えることはただ一つ。今日から、お前たちの中の一匹だけを虐待することにする」 「ゆゆっ!!」 一匹だけ? ってことは、残された二匹は虐待されずに済むってこと? でもそんな都合のいい話があるだろうか? かつては疑うことを知らなかったれいむも、今ではすっかり俗世の垢にまみれ、あらゆることに考えを向けるようになっていた。 あれだけ虐待の好きな男が、一匹だけを虐待し、他の二匹を虐待しないなんてそんな甘いことをするだろうか? れいむがその旨を男にそれを問いただす。 男も予め予想が付いていたのだろう。れいむの質問に、淀みなく返事を返してくれた。 「その通り。今日からは一匹だけを虐待し、他の二匹は虐待しない」 「ゆゆっ!!」 れいむはその言葉に、あんぐりと口を開けた。 あり得ない。あり得るわけがなかった。 余りにも自分達に都合がよすぎる。なぜ今頃になって、男がそんなことを言ってくるのか、全く理解が出来なかった。 何か裏があることは間違いないだろう。 男はまたしてもれいむの心を悟ったように、続けてくる。 「どうやら、何か裏があるんじゃないかって疑っているようだな? まあ、今までの経緯を見れば、お前らが俺を疑うのは当たり前だな。 だが、この話に裏はない。一日の虐待は一匹のみ、他の二匹は今日から虐待をされなくなる。この話は真実だ。ただし、裏ではないが一つだけ条件がある」 れいむはほら来たと思いつつも、言葉に出さずに男のいう条件に耳を傾けた。 「虐待されるゆっくりは、俺が決めるのではなく、お前らが選出する。これが条件だ」 「ゆっ!! れいむたちがえらぶの?」 「その通り。相談して誰が虐待されるかを選び、選ばれたゆっくりだけが虐待され、他の二匹はその日は解放される。次の日は誰、次の日は誰と、毎日決めるんだ。 自分で立候補してもいいし、多数決で決めても構わない。毎日、同じ奴が虐待されても構わないし、三匹仲良く順番に虐待されてもいい。決めるのはお前らだ。 ただ、お前らが虐待される一匹を選出できなかった場合、その日は今まで通り三匹全員を虐待する。無論、それでも俺は構わないが」 「ゆぅぅぅ……」 男の言葉に、れいむは悩んだ。 未だ完全に男の話を鵜呑みには出来ないものの、もし話が本当だとするなら、自分たちにとってこれほど都合のいいことはない。 しかし、自分たちが選ばなくてはならないというのが一番の問題だ。 誰か一匹を選ぶということは、その日の生贄を選ぶということである。 れいむは二匹を親友だと思っている。 向こうもれいむを親友であると思ってくれているという自負がある。 たかが一か月の付き合いだが、今や二匹は自身の一生をかけても惜しくない存在になっている。 本心である。 嘘ではない、嘘ではない、が…… あの虐待と友情を天秤にかけると、それが揺らいでしまう自分がいることに、れいむは気付き愕然とした。 それだけ男の提案は魅力的なのだ。 もし生贄に選ばれさえしなければ、森に解放されるその日まで、ずっと虐待されなくなる可能性があるのだ。 あの地獄の苦しみにも匹敵するほどの暴力を、その身に受ける必要がなくなるかもしれないのだ。 忘れかけていたゆっくりした日々を、再びおくることが出来るかもしれないのだ。 どうして簡単に結論を出せるだろう。 虐待される者を選ばないという選択肢は、初めから却下だ。 せっかくのチャンスを不意にするような馬鹿者はここにはいない。 これをするくらいなら、三匹でサイクルで回すほうが効率的だ、というかサイクル回しこそが、この場合最もベストな案であろう。 これなら全員等しく虐待されるので、友情面は何ら変わらない。 しかし、虐待時間は三日に一度、今までの1/3で済むことになるのだ。 もし、今日虐待されるのが誰かで揉めるようなことがあれば、そこはれいむが立候補すればいい。 元々今日最初に虐待されるはずだったのはれいむなのだ。 それに今日虐待されてしまえば、明日明後日は平穏に過ごすことが出来る。 早いか遅いかの違いである。 と、ここまで考えたが、れいむはそれをまりさとありすに言い出しきれなかった。 確かに三匹を平等に考えれば、これがベストな案なのは間違いない。 しかしながら、自身だけに重きを置けば、永遠にゆっくりすることすら可能な選択がある。 二匹との友情は壊したくない。 けれども、相談次第では虐待されないかもしれないチャンスがあるのを、みすみす逃したくはない。 虐待は怖い、痛い、辛い。二度と受けたくはない。 でもまりさとありすに、れいむの代わりに虐待されろとは言えるはずがない。 このジレンマが、れいむの心に重くのしかかる。 そんなれいむの葛藤を余所に、男は言葉をドア越しに言葉をかけてくる。 「まあ、いきなり決めろって言ったって、すぐには思いつかんだろう。一時間後また来る。その時まで、今日誰が虐待されるか考えておけ。決まらなかったら、全員を虐待するからな」 そう言って、男の足音は遠ざかっていく。 が、次の瞬間、沈黙を続けていたまりさが、いきなり声を上げた。 「おにいさん、ちょっとまってね!!」 「ん? なんだ、まりさ?」 男の足音が止まり、再びこちらに近づいてくる。 れいむは、まりさが何を言うのか分からなかった。 まだ三匹で相談はしていない。誰が生贄になるか決まっていない。 何か聞き洩らしたことでもあったのだろうか? すると、まりさはれいむの予想に反して、とんでもないことを言い出してきた。 「おにいさん!! まりさがぎゃくたいされるよ!! だから、れいむとありすにはぜったいになにもしないでね!!」 これにはれいむも唖然とさせられた。 隣にいるであろうありすもそう思ったのだろう。 黙っていられなかったのか、声を出してくる。 「ま、まりさ!! まだそうだんしていないのよ!! それなのに、じぶんからすすんでいじめられるなんて!!」 「わかってるよ、ありす!!」 「ほんとうにわかってるの!! いじめられるのよ!! いたいのよ!! それをじぶんからうけるなんて!!」 ありすは、信じられないといった声色で、まりさに問いかける。 そんなありすの言葉に続いて、男も質問を返してくる。 男にとっても、予想外の展開だったのだろう。 しかし、まりさの返答は変わりはしなかった。 「……本当にいいのか、まりさ?」 「いいんだよ!! まりさがぎゃくたいされるよ!!」 「本当に分かっているのか? ありすのセリフではないが、虐待されるんだぞ。あの痛みを忘れたのか? あの苦しさを再び味わいたいのか? それを自分から進んで買って出るなんて正気か?」 全くもってありすと男の言う通りである。二人はれいむのセリフをすべて代弁してくれた。 賢いまりさのことだ。 れいむと同じ考えに行きついていないはずはないだろう。 それなのに、自分から進んで地獄に飛び込むなんて、まりさはいったい如何してしまったのだ!! 「……ぎゃくたいはまりさもこわいよ」 「だろうな」 「できるなられいむとありすといっしょにいつまでもゆっくりしていたいよ!!」 「ならなぜ自分から進んで虐待されようとする?」 まりさは、男の問いに少し間を置いた後、おもむろに語りだした。 「ぎゃくたいはされたくないよ!! でも、れいむとありすがぎゃくたいされるのは、もっといやだよ!!」 この言葉には、男ばかりかれいむも言葉を失った。 まりさが、自分から進んで志願した理由。 それは、れいむとありすを守るためだというのだ!! れいむは心を叩きつけられるような衝撃を受けた。 れいむにとって、まりさとありすは大切な存在だ。しかし、一方で虐待は受けたくない。 れいむは友情と虐待を天秤にかけて選びきれなかった。 精々譲れない妥協点として、三匹でサイクル回しをすることを考え付いただけ。 自分の被る被害をなんとか最小限にしようということばかり考えていた。 このれいむ考えを非難することなど、誰にも出来はしないだろう。 人間や妖怪ですら、心を強く持つことはとても難しいことなのだ。 増してや、幻想郷におけるヒエラルキーの下層に位置するゆっくりだ。 自分のことを第一に考えても、それは決して責められるべきことではない。 しかし、まりさは違った。 弱いゆっくりという身でありながら、自分よりれいむとありすを優先させた。 自分が被る被害など、初めから頭になかったのだ。 「……それじゃあ何か、お前は二匹の為に進んで虐待を受けるというのか?」 「そうだよ!! ゆっくりまりさだけにぎゃくたいしてね!!」 「二匹の為ってことは、今日だけじゃなく、明日も明後日もお前が虐待を受けるのか?」 「そうだよ!! まりさがゆっくりまいにちぎゃくたいされるよ!!」 「やはり正気の沙汰じゃないな……そんなことをして何になる。自分だけが虐待されるなんて、不公平だとは思わないのか? お前が俺に酷い虐待されている時、他の二匹は悠々とゆっくりを満喫しているんだぞ。妬ましいと思わないのか? 毎日三匹交替で虐待されていけば、全員公平なんだぞ。それが分からないのか?」 「おにいさんおいうことはわかるよ!! でもまりさは、このなかでいちばんおねえさんなんだよ!! だから、がんばらなくちゃいけないんだよ!! それに、まりさのおかあさんがむかしいってたよ!! だいすきなゆっくりは、じぶんをぎせいにしても、まもらなくちゃならないって!! まりさもそうおもうよ!! だから、だいすきなれいむとありすのぶんまで、まりさががんばらなくちゃならないんだよ!!」 「……いいだろう。そこまでいうなら、お前の意地を見せてもらおうか。今日の生贄はお前で決まりだが、明日は明日でもう一度決めるチャンスをやろう。 いつでも今の言葉を撤回して構わない。あまり意固地にはならないことだ」 そう言って、男は隣でゴソゴソ物音を立てる。 まりさを連れていこうとしているのだろう。 「まりさっ!!」 れいむは、そんなまりさに言葉をかけた。 何か言いたいことがあったわけではない。 いや、違う。言いたいことはたくさんあったが、いったい何から伝えればいいのか、考えを纏められないでいたのだ。 まりさの自己犠牲をもいとわない尊い精神と、れいむたちへの深い愛情に対し、いったいどんな言葉で返せばいいのか分からなかった。 自分が何か言ったところで、陳腐な言葉しか掛けられないだろう。 それでも、何か言わなければならない。言わずにいられない。 強迫観念にも似た思いで、まりさの名だけ口にする。 そして壁越しに聞こえてくるまりさの声。 「だいじょうぶだよ、れいむ!! ありす!! まりさはへいきだよ!! どうせいつもとおんなじだよ!! すぐにもどってくるから、ゆっくりまっててね!!」 それだけ言って、男の足音は徐々に遠ざかっていった。 「まりさ……」 再度れいむの口から出てくるまりさの名前。 れいむは、ただただまりさが無事に帰ってきますようにと、必死で願い続けた。 「れいむ……まりさ、つれていかれちゃったね」 ありすが壁越しに言葉をかけてくる。 それに対し、れいむは一言、「そうだね……」と返しただけであった。 何を話せばいいのか分からなかったのだ。 まりさのおかげで、自分たちは今日は虐待されないだろう。 それは、れいむの然程長くない人生の中で、最も嬉しい瞬間であった。 それと同時に、れいむの人生の中で、とても悔しい瞬間でもあった。 まりさの無事を願う反面、虐待されなくて良かったなんて思っている自分がいる。 なんて醜いのだろう。 まりさを助けたい。まりさの役に立ちたい。 もし自分から名乗り出れば、明日はまりさは虐待されないだろう。男も続けてまりさを虐待するくらいなら、きっとれいむを選ぶだろう。 まりさに対して胸を張れるだろう。 しかし、れいむには自分を虐待しろなんて男に言えない。言い出せない。言いだす勇気が持てない。 虐待はされたくない。虐待は怖い。 でも、まりさは助けたい。 れいむの葛藤は計り知れなかった。 おそらくありすもれいむと同じ気持ちなのだろう。 最初の言葉以外、れいむに話しかけてこなかった。 ここに来て以来、初めて味わうゆっくりした一日だというのに、何でこんなに気が晴れないのだろう。 モヤモヤした気持ちは一時間後、虐待を終えた男がまりさを連れてくるまで続いた。 「明日の虐待は今日とは比べ物にならないほどキツイ。安易に自分がなんて、言わない方が身のためだ」 まりさを部屋に戻し、男が挑発してくる。 しかし、まりさの意志は変わらなかった。 「ゆぅゆぅ……ゆぅ………あ、あしたも……まりさがぎゃくた…い……されるよ……れいむとあり……すはいじめ………ない……で…ね……」 苦しそうな声で、しかし、きっぱりと男の言葉を否定するまりさ。 男はそんなまりさを苦々しく思ったのか、「ちっ!」と舌打ちをして、去って行った。 男が行った後も、まりさは荒い息を吐いている。 相当きつい虐待を受けたことが、姿を見ずとも容易に感じられた。 「まりさ……だいじょうぶ?」 なんて声をかければよいのか分からず、れいむは在り来たりな言葉を口にする。 対して、まりさは「ゆっ!! へいき…だよ!! ぜんぜん……へっちゃら…だよ!!」と、不安を見せまいと虚勢を張ってきた。 それが一層れいむの心をかき乱す。 とにかくなんか言葉をかけなければ!! 焦るれいむは、思ったことを適当につなげ、言葉を紡ぐ。 「まりさ、ゆっくりありがとう!! まりさはすごいよ!! やっぱりえらいね!! まりさのおかげで、れいむとありすは、ぎゃくたいされなかったよ!! ゆっくりかっこいいね!! きょうはゆっくりやすんでね!!」 「そうだよ、まりさ!! ゆっくりねむってね!!」 れいむに続いて、ありすも言葉を投げかける。 ありすもどうやら何を言えばよいか分からなかったと見える。 他人を特に気遣うありすだ。 れいむ同様、まりさを頼り切った状況に、悔しく思っているに違いない。 「ありが…とう、れいむ、ありす!! まりさ、ゆっく……りおひるねす……るね……」 まりさはそう返すと、その後、何も言ってこなくなった。 おそらく毛布に包まって、寝入ったのだろう。 今までの日課のパターンと同じである。 れいむとありすは、まりさを起こさないように、「しずかにしようね!」と口裏を合わせ、その後一切の会話をしなかった。 れいむは、まりさの心意気を無駄にしないためにも、精一杯ゆっくりさせてもらうことにした。 この日、れいむの体は久しぶりにゆっくりを味わった。 この日、れいむの心は、一日中ゆっくり出来なかった。 その5へ
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2153.html
※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方 ※捕食種設定を不快に感じる方 ※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方 ※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方 ※素晴らしい小説を求めている方 は、この小説に合いません。 申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。 それでも良ければどうぞ 子まりさはミリィの腕の中で怯えていた。 自分もこれから親のようにれみりゃに食べられてしまうのだろうか。 自分が何をしたのだろう。 両親と一緒にゆっくりしたかっただけなのに。 子まりさはこの世の理不尽さを嘆いていた。 ミリィは逃げていた。 あのゆっくり出来ない記憶から。 どこまで飛べばあの記憶から逃げられるのだろうか。 そんなことを考えながら森の中を飛んでいた。 「へぶっ!?」 …顔面から木の枝にぶつかった。 ミリィのゆっくり冒険記 第三話 「ゆぎゃぁ!?」 子まりさは突然の衝撃に驚いた。 そしてその衝撃の後、どんどん地面さんが近づいてくる。 「おそらをとんでるみたいぃ~~~」 地面に近づきながらそんな言葉を叫ぶ子まりさ。 そこには危機感の欠片も感じられなかった。 ピンク色の地面にぶつかった時『ぼよん♪』といい音が聞こえた。 じめんさんってこんなにやわらかかったっけ? 子まりさがそう思った矢先、 「う~、いたいいたいなの~…」 という声が間近から聞こえた。 「う~…いたいいたいなの~…」 ミリィは下ぶくれした顔を抑えながら、仰向けに倒れていた。 顔面から木にぶつかって墜落してしまった。 痛む顔をさすりながら、ミリィは上半身を起こす。 「うぅ!?」 ミリィは腕の中に子まりさを抱えていた事を思い出す。 先程のゆっくりできない光景のせいで子まりさを抱えながら飛んでいた事を忘れていた。 顔と背中に走る痛みのせいで幾分か冷静になれたミリィは子まりさの無事を確認する。 腕の中を見ると、怯えた表情でこちらを見る子まりさの顔が見えた。 「う~♪だいじょうぶだいじょうぶ?」 子まりさは、れみりゃが自分に対して何を言っているのかよくわからなかった。 まりさ種に限らずゆっくりの基本種は、れみりゃ種を初めとする捕食種に対して恐怖を感じる。 彼女達が自分よりも食物連鎖の上位であり、自分達を捕食するということが本能で分かるからだ。 この子まりさも 「おちびちゃん!れみりゃやふらんはゆっくりできないんだぜ!ゆっくりにげるんだぜ!」 と、親から何度も言われた記憶がある。 子まりさは自分にとってれみりゃはゆっくり出来ないものだと考えていた。 しかし、今はどうなのか。 抱かれていると、とても暖かくてゆっくり出来る。 「う~♪ゆっくりしていくんだぞぉ~♪」 極度の緊張と涙を流し続けた結果、子まりさは酷く疲れていた。 子まりさがゆっくり眠り始めるまで時間はかからなかった。 「…ゆっ?」 子まりさが暖かい日差しの中、目を覚ました。 まだ眠いが、お日様の光が見えたら挨拶しなければいけないと親に言いつけられていたので、起きることにした。 「ゆっ!おひさまもゆっくりしていくんだぜ!」 今日もお日様に挨拶する。 お日様に挨拶をしたあとは、今度は親に挨拶しなければいけない。 そう思い周りを見渡すと、親の姿の代わりにピンク色の物体が見えた。 「ゆっ…?おかーしゃん?」 それが何かを確かめようとし、近づいてみると 「う~…まんま~…」 と声が聞こえてきた。 その物体が転がる。 どこかで見た顔が見える。 自分を抱えていた胴付きれみりゃの寝顔だった。 「ゆっ…!!」 その寝顔を見て子れみりゃは戦慄する。 先ほどの温かみなど関係ない。 れみりゃがいつ自分を食べてもおかしくないのだ。 食べられたくない!そう考えた子まりさの取る行動はただ一つ。 「ゆっくりねてるんだぜ、ゆっくりねてるんだぜ…」 子まりさは震えながら、ゆっくりゆっくりとれみりゃの元を離れて行った。 「ゆっ!おはなさんはゆっくりできるんだぜ!」 れみりゃの元から離れた子まりさは御飯を食べていた。 れみりゃの元を離れた安心からか、空腹感が生まれてきたのだ。 さらに、この辺はゆっくりがあまり多くないのか、ゆっくりの基本種であるまりさ種にとっての御飯が豊富にあったのだ。 「しあわせぇ~~!!!」 ご飯を食べている間の子まりさはとてもゆっくりできた。 親が食べられてしまった事も忘れることができ、とてもゆっくりできた。 満足できるまで御飯を食べた後、まだ子供だからなのか先ほどまで寝ていたというのにまたもやゆっくり寝ようとする。 「ゆ~…まりさはおねむなんだじぇ~…」 心地よいまどろみが訪れる。 次に目が覚めた時には、自分の両親が眼の前にいる。 そう願って。 しかし、まりさの願いは思いもよらぬ形で打ち砕かれることになった。 まりさの頭上に一つの小さな影が現れる。 「…ゆっ…?」 なんだろうと思い頭上を見てみる。 そこにいたのは…金色の髪に白いナイトキャップ、後頭部からは虹色の翼が生えている。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 胴なしのゆっくりふらんであった。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 子まりさの頭上にいるゆっくりふらんは子まりさを見て笑いながら叫ぶ。 この周辺に子まりさの餌が豊富にあった理由…それはこのふらん種のテリトリーだったからだ。 近くにいる野生のゆっくりならば当然のようにこの周辺に近づいてこない。 しかし、自分の意思でこの場に来たわけではない子まりさにとっては関係なかった。 ただ、空中に浮かんでいるそれを見上げながら叫ぶしかなかった。 「ふ、ふりゃんだ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」 ふらんはストレスを感じてきた。 最近、自分のテリトリーに自分の獲物であるゆっくりの基本種が全く近づいてこないのだ。 獲物をいたぶりながらゆっくりを食べることで自身をゆっくりさせられるふらん種にとっては、とてもストレスが溜まる状況だったのだ。 最近は自身のテリトリーから遠出をして御飯を食べているが、あまりゆっくりできる状況ではなかった。 長距離を飛行することはふらん種にとっては向いていないのだ。 ふらん種はれみりゃ種に比べて力や飛行速度で上回るが、飛行距離や体力で劣る。 つまり、遠出をする度にかなりの疲労が付きまとうのだ。 だから、ふらん種はれみりゃ種に比べて頻繁に住処を変える。 (れみりゃ種が自身の住処に『こーまかん』と名付け、なかなか住処を変えないという理由もあるが) しかし、この場には基本種にとっての餌が豊富にあったので、自分が離れた途端にゆっくりがわらわらと群がってくるかもしれないことを考えれば、ここを手放すのも面白くない。 そのようなジレンマを抱えていた時、自分のテリトリーに格好の獲物が飛び込んできたのだ。 今までのストレスを解消させるようにふらんは叫ぶ。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 ふらんの動きは素早かった。 叫んだあと、あっという間に子まりさとの距離を詰めようと飛翔する。 「ふ、ふらんはどっかいくんだぜ!まりさになにもしないんだぜ!」 子まりさも逃げようとするが、ふらんのスピードからはとても逃げられるものではなかった。 「しねぇ!」 「ゆびぃ!?」 ふらんの体当たりが容赦なく子まりさに直撃する。 子まりさはまだ小さいということもあり、ものの見事に吹っ飛ばされる。 「ゆっ…ゆっ…やめる…んだぜ…」 子まりさの中身である餡子がシェイクされたような感覚に子まりさは吐き気を覚えた。 「どぼじで…まりさがこんなめに…」 子まりさは自身の境遇の不幸を嘆いていた。 しかし、その時間も長くはなかった。 またもふらんが目の前に迫ってきているのだから。 「ゆっくりしね♪ゆっくりしね♪」 そうして子まりさにとっての地獄が始まった。 ふらん種もれみりゃ種も同じ捕食種なので狩りはするが、そのやり方は異なる。 れみりゃ種は早めに食欲を満たすために、早期に決着をつけようとする。 早くあまあまを食べ、ゆっくりしたいからだ。 逆にふらん種はゆっくりを長い時間をかけて捕食しようとする。 ゆっくりをいたぶることは、ふらん種にとってとてもゆっくり出来ることだったからだ。 だから長い時間を掛けてゆっくりいたぶろうとする。 そして、それはこのふらんも例外ではなかった。 現にこの子まりさをいたぶり始めてから1分以上経つが、この子まりさはまだ 「や、やめ…ほしい…だぜ…」 と喋ることもできる。 何度も体当たりされた為に子まりさは傷だらけではあるが、まだ体から餡子は出ていない。 本来ならばふらん種にとって子供のまりさ種など、簡単に物言わぬ饅頭にすることが出来るのだから。 今回ばかりはそれがいけなかったのだろう。 「だめぇ~~~~~~!!!!!」 ピンク色の丸くて太い物体が叫びながら空から飛び出してきた。 その時の子まりさにはそれが何なのかわからなかった。 ただ、とにかく太くて丸かった。 後書き ふらんは100m走の陸上選手、れみりゃは3000m走の陸上選手と考えていただければわかりやすいと思います。 ゆっくり達は自分がゆっくりする為に必死です。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/605.html
ある日、いつものように畑に行くと4匹のゆっくりの姿がそこにあった れいむとまりさの成体1組とその子供と思しきれいむとまりさが1匹ずつ いわゆるお約束の家族構成である 「おい、饅頭ども!俺の畑で何してる!?」 「ゆゆっ!ここはれいむたちのおうちだよ!にんげんさんはゆっくりでてってね!」 「そうだぜ!ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなんだぜ!」 「「ゆっきゅちでていっちぇね!」」 この発言は俗におうち宣言と呼ばれ、要するに縄張りであることを主張しているのだ ここは自分達の縄張りだから出て行け ゆっくりに人間の所有権など理解できるはずもないし、人間の縄張りの主張の仕方も知らないだろう だから、このように人間の畑や家屋でおうち宣言するのも致し方ないことだと言えよう しかし、俺もまた一己の生命であり、宿と畑は生きていくうえで不可欠 だからこいつらを、俺に害をなす敵を追い払うのも致し方ないことなのである 「ごちゃごちゃうるせえ!!」 「ゆぎゅ!?」 手始めに大抵の場合、家族の中で最も戦い慣れているゆっくりまりさを蹴り飛ばした まりさは間抜けな悲鳴を上げながらごろんごろんと畑を転がって行き、10mほど転がったところで停止した れいむと子ゆっくり共は目を大きく見開き、その事態を信じられないといった様子で見守っている 「ま、まりざあああああああああああ!?」 「どほぢぢぇこんにゃこちょしゅるにょおおおおお!」 「ゆえーん、きょわいよー!」 1分ほどしてようやく我に返ったれいむは苦しそうにのた打ち回っているまりさの下へと跳ねてゆく 一方、子ゆっくり2匹はあまりの恐怖にありもしない腰を抜かしたのかその場で泣きじゃくる どちらも、自分を守ってくれる親がそばを離れてしまっていることに気づいていない 「なあ、お前ら。お母さんのそばにいなくていいのか?」 「ゆっぐ・・・ゆゆっ!?おきゃーしゃあああん!」 「おきゃーしゃん!ゆっきゅちたしゅけちぇね!」 そう言いながら2匹は急いで嗚咽を漏らすまりさと心配そうな表情で彼女に寄り添うれいむのそばへ まりさは痛みで子供のことを気にする余裕がないようだが、れいむは彼女達に「はやくこっちにきてね!」と叫んでいる 子れいむと子まりさはその言葉に従ってぴょんぴょんと畑の上をゆっくりした速さで跳ねてゆく 「おかーさんのおくちにかくれてね!」 「「ゆっきゅちかくれりゅよ!」」 安堵の笑みを浮かべて勢いよく飛び跳ね、れいむの大きな口の中に飛び込む2匹 これでようやくゆっくり出来る ゆっくり出来ない人間さんはきっとお母さんがやっつけてくれる さっきは人間さんがずるをしたから負けたけど、今度は勝つに決まっている そんな根拠のない確信を胸にれいむの口の中でゆっくりしようと一息ついたその瞬間・・・ 「ゆ゛びぃ!?」 「「ゆゆっ!?」」 俺が渾身の力を込めて放った蹴りを背中に受けたれいむはその衝撃で吐しゃ物を撒き散らしながら宙を舞う もちろん、吐しゃ物にまぎれて彼女の大事な子ゆっくり達も口の中から飛び出してしまった それから地球における法則に従って地に落ちる3匹 その衝撃でれいむは致命傷を負い、最期に「おぢびぢゃ・・・にげ、で・・・」と言い残して短いゆん生を終えた 「おきゃあああしゃあああああん!?」 「ゆっぎゅぢいいいいいいい!?」 子れいむと子まりさはその事実を受け入れられないらしく、れいむのそばでゆーゆーと騒いでいる 恐らく放っておいても逃げるようなことはないだろう そう判断した俺は2匹をひとまず無視して、先ほどからめそめそと泣き通しでれいむの死に気づいていないまりさを引っ掴む 「ゆぐぅ・・・やべるんだぜ!ゆっぐぢでぎないんだぜ!」 「止めないんだぜ。ゆっくりさせないんだぜ」 「ゆぐぅぅうぅぅ・・・おぞらをどんでる、ゆべっ!?」 引っ掴んだまりさを子ゆっくりどもめがけて叩きつけるのに近い要領で放り投げてやった その一撃で子れいむが下敷きになり、まりさの下から顔を覗かせ、声を発することは二度となかった 「おい、まりさ!」 「は゛、は゛いいいぃぃ!?」 「死にたくなかったら消えろ」 「わがぢまぢだあああああ!ゆっぐぢぎえまずうううう!」 「ゆえーん、ゆっきゅちでぎぢゃによおお!おうちかえりゅ!?」 泣き叫びながらまりさ母子は森へと帰っていった 翌日、今日も例のお約束の家族構成のゆっくり4匹が畑を荒らしていた もっとも、ゆっくりの貧弱な力だ 昨日同様に作物を1つだめにされた程度の微々たる被害なのだが 「「うっみぇ!こりぇみぇっちゃうみぇ!」」 「すごくゆっくりできるはたけだね!」 「ゆっへっへ、まりささまにかかればとうぜんだぜ!」 どうやら今回の連中はゲス気質持ちのようだ ゲス・・・言葉の通りの連中で、時には同属さえも食い物にするたちの悪い連中である こいつらは昨日の連中と違って野菜は畑が人間のものであると理解したうえでこのような行為に及んでいる もっとも、どのような意図があってここにいようと俺のすることには何一つ変わりがないのだが 「と言うわけで死ね!」 「ゆぶっ!?」 昨日と違って最初から潰す気満々の全体重をかけての踏みつけをまりさに食らわせる 畑の野菜を食い散らかしていた汚らわしい饅頭のうっとうしい顔が徐々にひしゃげてゆく みちみちと音を立てながら少しずつ潰れて行き、やがて餡子が漏れ始め・・・ 「ゆ゛っ・・・」 「ま、まりざああああああ!?」 「「おきゃあああぢゃああああん!?」」 次の瞬間には悲鳴を上げる暇もなく、餡子を四散させて息絶えた 「じじぃ!れいむのばりざをがえぜえええええ!」 「おきゃーぢゃんをごろじだぢぢいはゆっぐぢぢねえええ!」 「ゆっきゅぢぢにぇえええええ!」 その後、ゆっくりと事態を把握した3匹は俺に向かって決死の体当たりを仕掛けてくる 当然、ゆっくりの緩慢な動作から繰り出される攻撃などたかが知れており、痛くも痒くも無い しかし、れいむと子ども達はその攻撃が俺を著しく疲弊させていると信じて疑わないらしく・・・ 「ゆふん!まりさのかたきだよ!」 「ゆっくちちにぇ!」 「まりしゃはとってみょちゅよいんだよ!」 などなど、行け行けモードの押せ押せモードである 「うぜぇ」 「ゆがっ!?」 「「おきゃーしゃん!?」」 自分達の無駄な努力に気付くまで様子を伺おうかとも思ったが、得意げな表情がうっとうしかったので止めた さほど力をこめたわけでもないのに、蹴りを食らったれいむは無様に転がり、俺に土で汚れた底部をさらす 直後、子れいむと子まりさは自信満々の表情を恐怖とあせりに歪めて叫んだ 「「ほどぢぢぇじぇんじぇんきいちぇにゃいのおおおおおお!?」」 「そりゃ、お前らが弱いからだ」 逃がさないように2匹を捕まえてから、状況が飲み込めずに困惑しているれいむの底部を踏みつけてやる 「ゆぐっ・・・やべでね!でいむはやべようねっでいっだんだよ!ば、ばりざがいぐっでいっだんだよ!?」 「で?」 「ゆぐっ!ほ、ほんどだよ!ぞれにおぢびぢゃんだちにおいぢいものをだべざせであげだがったんだよ!?」 「だから?」 「でいむはたすげでね!ゆっぐぢでぎないわるいおぢびぢゃんはどうなっでもいいから、れいぶはゆっぐぢぢだいよ!」 「そうか」 「「どほぢちぇぢょんなこちょいうにょおおおおお!?」」 流石ゲス。あっという間に家庭崩壊を起こした そして、俺の存在を忘れたかのように口論を始める 「おきゃーぢゃんにゃんちぇおきゃーぢゃんぢゃにゃいよ!」 「ゆっきゅちできにゃいおきゃーちゃんはちにぇ!」 「ゆふん!しぬのはおまえたちだよ!れいむのためにせいぜいゆっくりできなくなってね!」 「「どほぢちぇしょんなこちょいうにょおおおおお!?」」 「ああ、もううっせ」 「「ゆびゅ!?」」 流石にこれ以上構っている気になれないので、子ゆっくり2匹をさっさと握りつぶす そして、足の下で「さっさとはなしてね!」と喚くれいむを両手で掴んで持ち上げると・・・ 「はいよ」 「わーい、おそらをとんでるみたー・・・ゆべしっ!?」 渾身の力をこめて放り投げてやった れいむを放り投げた先から「おべべがびえないよおおおお!」という悲鳴が聞こえてきたが無視して仕事に取り掛かった 翌日、またしてもゆっくりが畑を荒らしていた もちろん昨日一昨日同様に損害は微々たるものではあるが 「むーしゃむーしゃ、ゆっくりー!」 「ゆゆ~ん♪とってもゆっくりしてるよ!」 「「ゆっきゅちー!」」 組み合わせも昨日一昨日と同じくオーソドックス しかし、満面の笑みを浮かべて大根を貪る4匹はえらく語彙が貧弱 もしかしたら人間との接触が皆無に等しいタイプのやつが何かの拍子に紛れ込んできたのかもしれない だとしたら流石にいきなり踏み潰すのはかわいそうだ 「おい、ゆっくりどもここは俺の畑だぞ?」 「ゆゆっ、にんげんさん!」 「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」 「「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」」 「はいはい、ゆっくりゆっくり。ところでお前ら、ここは俺の畑だぞ。さっさと出て行け」 適当に返事をしてから、さっさと本題を切り出した 4匹は俺の言葉を素直に聞いていた。が・・・ 「おれのはたけさんはゆっくりできる?」 「おれのはたけさん!ゆっくりしていってね!」 「「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」」 どうやら畑と言う語彙も「俺の」が所有を意味することも理解できなかったようだ まあ、人間と接触することなく生きてきたような感じの連中だから仕方ないと言えば仕方ないが しかし、そうなると一筋縄では行かない というか、事実上話し合いでの解決は不可能だろう 「悪く思うなよ」 そんな訳で俺はまりさを軽く蹴り飛ばして、人間が怖い存在である事を教えてやることにした 出来るだけ跡の残るような怪我をさせないように軽く口のした辺りにつま先をぶつける 「ゆっ!」 「まりさぁ~!?」 「「ゆっきゅちー!?」」 れいむと子ゆっくり2匹は急いでまりさの元へと跳ねてゆくと、のろのろと起き上がろうとするまりさに「ゆっくりー!」と声をかけた まりさはまりさで、ぐずぐずと泣きべそをかき、嗚咽を漏らしながらもれいむ達を心配させまいと「ゆっくりしてるよ!」と返事をしている 「まりさ、す~りす~り」 「「ゆっきゅちー」」 「れいむ!ゆっくりしてるよ!」 そして、れいむと子ども達が起き上がったまりさに頬ずりをすると彼女はすぐに笑顔を浮かべた 目の前に俺がいることも忘れて4匹はしばらく家族のゆっくりを堪能し、やがて・・・ 「おれのはたけさん、ゆっくりしようね!」 「ゆっくりしようね!」 「「ゆっきゅち~♪」」 こりもせずに俺の前まで跳ねてくると、先ほどまで自分たちが食べていた大根を差し出した どうやら、俺に蹴られたのは自分達だけで大根を食べてゆっくりしていたせいだと解釈したらしい 付け加えるならば、今のこのしぐさと言動は「一緒に大根を食べてゆっくりしようね」と言う意味なのだろう 参った・・・ 「う~ん・・・仕方ない」 こうなったら本当に酷い目に遭ってもらうしかないだろう そう結論付けた俺は子れいむと子まりさを捕まえるとれいむの口の中に放り込んだ 4匹は行動の意図が読めずに首をかしげている 「悪い!」 それからまりさの目の前に膝をつき、正座に近い格好になると彼女に平手打ちをお見舞いした 「ゆびぃ!?」と悲鳴を漏らし、それから恐怖と困惑と涙でにじんだ瞳で俺を見つめ首をかしげる しかし、逃げようとする気配は一向に無く、ただ「ゆっぐりぢようよ!」と涙声で訴えてくる 「ゆぐっ!」 「ま、まりさああああ!」 もう一発 困惑の色が若干薄れ、恐怖に満たされていることがまりさの瞳から伺える いや、それ以上に恐怖のあまりにがくがくと震える丸い体が全てを教えてくれた 傍らではつがいのれいむがただひたすら「まりさ」と「ゆっくり」を交互に繰り返し叫んでいる 「ゆっぐぢぃ・・・ゆっぐぢぢようよぉ・・・」 我慢出来なくなったまりさは相貌からぽろぽろと涙をこぼす が、それでもまだ俺に向かって「ゆっくりしようよ」と声をかけ続ける つがいのれいむの中の子ども達もなんとなく状況を察して「ゆっぐ、ゆっきっぢー」と泣いている どうやら半端なことをしても余計に痛い思いをさせるだけのようだ 「・・・仕方ないか」 俺はまりさの大きく綺麗な瞳に中指を突きたてた 流石に視界の半分を奪われては俺とゆっくりしたいと思えなくなったようで、泣き叫びながら家族とともに逃げ帰った 更に翌日、またしても例の家族構成のゆっくりどもが畑を荒らしていた 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~」だの「うっめ、これめっちゃうめぇ」などと叫びながら大根を貪る顔饅頭ども 口調からはゲスなのかそれ以外なのか判断しかねる 流石にゲスかどうか分からない以上いきなり潰すようなことはしたくない 「ひゃっはー!虐待だぁ!」 そんなわけで虐待お兄さんの真似をしてゆっくりどもを脅してみた すると・・・ 「れいむ、きいた?ぎゃくたいだって?」 「おお、こわいこわい」 「「きょわいきょわい」」 俺のことを蔑むような眼差しで見つめてきやがった 「こんな白昼から良い大人が何してるの?」とでも言いたげな表情だ なんとなく腹が立ったので一発蹴りをお見舞いしてやる 「ゆっ?」 間抜けな声を発しながらいつものようにぶっ転がるまりさ しかし、今までの連中と違ってすぐさま起き上がると俺の顔を伺いつつ一言 「おお、いたいいたい」 どう見ても痛がっていなかった それになぜ襲われているのかも分かっていないらしく、子ゆっくりどもは平然と大根をかじり続けている どうやら今までの相手にしてきた連中とはいろんな意味で次元の違うゆっくりのようだ 「ぎゃくたいなんてゆっくりできないね」 「そうだね、ゆっくりすればいいのにね」 「「ゆっくりしていってね!」」 「「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」」 4匹は目を大きく開いて下膨れ顔をどことなく鬱陶しい感じに歪め、お約束の言葉を口にした。 何と言うか・・・今までに見たことの無いタイプのゆっくりだ とは言え、畑を荒らす以上こいつらの処置になんら変わりは無い 「おい、ゆっくりども。ここは俺の畑だからさっさと出て行け」 「ゆっくりりかいしたよ」 「にんげんしゃんはゆっきゅちちてにゃいにぇ」 「おお、あわりぇあわりぇ」 どうやら俺はゆっくりにコケにされているらしい 正直腹は立つが大人しく帰ってくれるんならとやかく言うことも無いだろう ゆっくりどもが見えなくなってから俺は適当に柵を作って連中が入ってこれないようにした またまた翌日、俺が畑に行ってみると・・・ 「「「「覇王翔吼拳を使わざるを得ない」」」」 「・・・・・・もうヤダ、おうち帰る・・・」 4匹のゆっくりが柵をぶち壊して畑に侵入していた 流石にアレに手を出すのは怖いのであきらめて家に帰った ‐‐‐あとがき‐‐‐ 初日:今の標準? 2日目:ゲス 3日目:純朴 4日目:AAの系譜 最終日:ガ・・・ ゆっくりの多様性を見ていると遠くに来たものだと思わざるを得ない byゆっくりボールマン このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/381.html
あんまり熱いので川辺で涼しんでいたら、やたら甲高いカエルの声が聞こえてきた。 「ケローっ! ケローっ!」 なんだか泣いているらしい、生えた草を踏みつぶしながらこっちに向かっていく。 よく見ると、その後ろから水色のゆっくりが追いかけていた。 「アタイったらゆっくりね!」 どう見てもゆっくりだね。 どうやらゆっくりカエルはあのゆっくりに追いかけられているらしい。 ゆっくりカエルはぴょんぴょん跳ねて逃げ回るが、水色のゆっくりは上下に動かず、そのまま平行に動いて追いかけてる。どうやって移動してるんだ、こいつ? 「アタイったらゆっくりね!」 「ケローっ!」 突然、水色のゆっくりが一回り大きく膨らむと。 口から冷気を吐いて逃げてたカエルを凍らせてしまった。 ……おぉっ、そんなこと出来るのか。 「やっぱりアタイったらゆっくりね!」 「……あ、あ~う~……」 体が冷凍されてカエルの動きが止まっている。水色のゆっくりはそのままカエルに近づいていって……。 あ、食べた。 「あぁあああぁぁあぁあぁあっ!」 「ガジガジ」 「やめっ……たずっ……」 カエルシャーベットはあっという間に水色のお腹に収まっていった。水色の大きさは大体30センチぐらい、カエルも同じぐらいだったんだが……スゲェ喰うな。 「アタイゆっくりだよっ! ゆっくりしてるよ!」 食べ終わると高らかに周りに宣言し始める水色ゆっくり。周りには誰もいないのに誰に言ってるんだ。 水色の体は宙に浮き、その辺を行ったり来たりしている。 こいつ、飛べるのか。 飛べるゆっくりなんて肉まんかあんまんぐらいかと思ったが、他にもいるんだな。 ……。 暴れ回っている水色を見て思う。 こいつがいたら、部屋も涼しくなるんじゃね? ……。 取りあえず話しかけてみた。 「ゆっくりしていってねっ!」 「ゆっ? アタイゆっくりだよっ!」 ……それが挨拶なのか? 「ああ、見てたよ。見事にゆっくりしていたな」 「そうだよ! アタイったらゆっくりだからねっ!」 おまえの言ってることはよくわからん。 「なるほど。でもやっぱりゆっくりなら、よりゆっくり出来る場所に行きたいものじゃないか?」 「ゆっ? アタイゆっくりしてるよ?」 「ここもゆっくり出来るけど、俺はもっとゆっくり出来る所を知っているんだ。興味ないか?」 俺の言葉に、水色は眉間に皺を寄せて考えている。よくわかってないらしい。 ……ゆっくりは馬鹿だ馬鹿だと思っていたが。 こいつは、輪をかけて馬鹿だな。 あまりに話が通じないので、掴んで持っていくことにした。 「ゆっ! アタイに何するのっ!」 「冷てっ!」 水色に触った瞬間、手に走る冷たさ。手がくっつくかと思った。こいつ氷で出来ているのか? 急に触れて機嫌を損ねたらしい。冷気を出した時のように顔が膨らんでいた。 「おじさんはゆっくりじゃないね! どっか行ってね!」 いつ俺がゆっくりだって言ったんだよっ! ……ちょっと腹立ってきたぞ。 「お前だって、ゆっくりじゃねぇよ」 その言葉は心外だったらしい。凄い形相でこちらを睨みつけてきた。 「アタイはゆっくりだよっ! ゆっくりしているよ!」 「どこがだよ! 全身氷のゆっくりなんて聞いたことねぇよ! あんこ吐けあんこっ!」 「ムッキーっ! ゆっくりったらゆっくりだよ!」 「だったら付いてきて証明してくれよ。お前がゆっくりだって」 「いいよ! ゆっくりしにいくよ!」 売り言葉に買い言葉。 気づいたら、水色が家へ来る流れになっていた。 俺にとっては願ったり叶ったり……なのか? なんだか間違えた気が……。 家に連れてきて3時間もすれば、自分がどれだけ間違えていたかがよくわかった。 畳の上を歩いたら畳が凍りつく、冷気を吐かせて涼しくしようと思ったら「アタイやすうりはしないよっ!」と言われる始末。それじゃ西瓜でも冷やすかと水色の上に置いたら凍りつき、後々「なにするのさっ!」と怒られる始末。 そして何よりも。 「アタイったらゆっくりねっ! アタイったらゆっくりねっ!」 意味もなく騒いでいるのが最高に鬱陶しかった。 こんなに使えないなんて……。 俺は頭を抱える。正直とっとと放り出したいところだが、体が冷たすぎて触れない。それじゃ勝手に帰るのを待とうと思ったら、どうも家が気に入ったらしく、まるで帰る気配がない。 他のゆっくりなら食べれば済む話だが、正直、30センチの氷を食べるなんて考えたくもなかった。 まさか力ずくで相手に出来ないゆっくりがこんなに扱いづらいなんて……どうしたものか。 ……ん? 「アタイったらゆっくりねっ!」 相変わらず叫ぶゆっくりは放っておいて、俺は思考を走らせ始めた。 そういえば……。 立ち上がり、押し入れを漁り始める。ここに確か……お、あった。 俺は鉄のかたまりを持ち上げると、水色の目の前に置いた。 「ゆっ?」 鉄のかたまりを指さして、水色に言う。 「ここに平べったくて乗れそうな所があるだろう」 「アタイゆっくりだよっ!」 ……まぁ理解したってことだろう。 「お前ここに乗れるか? 無理かなぁ、狭いかなぁ?」 「ゆっ! アタイゆっくりだもん! のれるよっ!」 案の定、挑発に乗って移動する水色。普通のゆっくりなら苦戦しそうだが、空を飛べる水色はあっさりと上に乗ってみせた。 「ほらねっ! アタイったらゆっくりでしょっ!」 「はいはい、そうだね」 乗るのはすげぇ速かったけどな。 俺は鉄のかたまりの頭についているレバーを回していく。 ほどなくして、水色が上から押さえつけられた。 「ゆっ!」 さてと。 用意しておいた器を下に置く。 「何するのおじさん、アタイゆっくりだよっ!」 はいはい。 横のレバーを回し、かき氷を作り始めた。 「あ、ああ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁっ!」 水色が回転し、器に削られた氷が乗せられていく。 「あ゛がががががっ!」 シャリシャリと音が鳴りながら、あっという間にかき氷が出来上がった。 「あっ……あっ……」 おおっ、普通に食えそうだな。えーと……。 出来上がったかき氷を手に俺はふと気づく。 そういえばシロップがなかった……。 俺はかき氷を一端置くと、そのまま外へと出る。 どうせその辺に……お、いたっ! 「みんなゆっくりしてねっ!」 「ゆっ!」 「うん、ゆっくりするよっ!」 そこにいたのは、ちょうど手のひらサイズの子供達3匹を遊ばせようとしていたゆっくりれいむの家族だった。 取り合えず親れいむを蹴り飛ばす。 「ゆ゛ぐっ!?」 変な叫び声を上げて飛んでいく親れいむ。こいつらってよく歪むから、あまり遠くまで飛ばないんだよなぁ。 「お、おかあさんっ!?」 「なにするのおじ──」 有無を言わせず、その場にいた子供れいむをかっさらっていく。 「うわあ゛あ゛ぁあ゛ぁぁっ!」 「なにずるのっ! ゆっぐりざぜでっ!」 「おがあざーんっ!」 子供の声に活性化されたのか、いきなり親れいむが起き上がってくた。元気だなこいつ。 「れいむのあがじゃんがえじでぇえぇぇぇっ!」 シュートッ! 「めぎゃっ!?」 ゴーーーールッ! 綺麗な放物線を描いて、親れいむが飛んでいく。……我ながら綺麗に飛んだな、体歪んでるのにぜんぜん減速してねぇや。 あ、誰かの家に飛び込んだ。 「いやぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛っ!」 「おがあ゛ざあぁぁあぁあぁぁんっ!」 邪魔者を排除して、俺は家へと戻ってきた。 「あっ! どこ行ってたの! アタイをむしするなんておじさんゆっくり──」 煩いのでレバーを回す。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」 水色を黙らせて、俺はかき氷を確認する。よかった、まだ溶けてないな。 「おじさん! 早くれいむたちをかえしてね!」 「おじさんとはゆっくりできないよっ!」 「ゆっくりしねっ!」 手に抱えていた子供れいむたちを、そのまま手のひらで丸めていく。 「うぎゃぁあ゛ぁぁあ゛っ!」 「うぷぷぷぴゅっぷぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅっ!」 「やめでうぶあおじあぶげまぜうぎゃっ!!」 しっかり混ざったあんこを、そのままかき氷の上に乗せた。 氷宇治あずきの出来上がりと……。 一口食べてみる。 ……うーん。 普通の氷宇治あずきより喰いづらいが、そのまま氷を食べるよりマシか……なにより甘いしなっ! 「ここか」 「ここだよ! ここに入っていったよ!」 「これで嘘やったらタダじゃすまさへんど」 あん? 玄関の方で声がした瞬間、大きな音を立てて扉が開かれた。 「ゆっくりっ!」 なんだ、さっきの親れいむじゃないか。……あれ? 「ちょっと失礼しますよ」 親れいむの後ろには男が付いてきていた。何だ? 「なんか用ですか?」 「いや、さっきこのゆっくりが窓から飛び込んで来てな。ふざけるなと怒鳴ったら、吹き飛ばしたのは兄ちゃんやって言うんで話聞きにきたんや」 ガラ悪っ! つーかこのゆっくり、あれだけけっ飛ばしたのになんで生きてるんだよ……。 「そう言われても、俺今日ここから出てないですし……」 「なにいってるのさ、さっき──」 レバーを回す。 「あぎゃがぎゃがっ! も、もうやめでよ゛っ!」 余計なことを言うからだ。 「それにゆっくりをけっ飛ばすなんて誰だってやるでしょ、俺だっていう証拠がないじゃないですか」 「まぁそうなんやけどな……」 俺の言葉に面倒くさそうに頭を掻く男。どうも泣きつかせて儲けようという考えだったらしいが、引く様子がないので迷っている。 そもそもガラス代も、この親れいむを加工所に連れていけばちょっとは金になるし、大きな騒ぎにしたくないのが本音だろう。 「ゆっ! そんなことないよっ! れいむを蹴ったのはおじさんだよっ!」 ……煩いのがまだいたか。 「だから証拠がないだろう。何かあるのかよ」 「れいむの子供どこにやったのっ! あの子たちがいる筈だよ!」 「この部屋のどこに子ゆっくりがいるんだ?」 周りを見渡す男と親れいむ。もちろん子ゆっくりなんて影も形も見あたらない。あるのはかき氷に乗ったあんこだけだ。 「ゆっ! そ、そんなはずないよ! どこにいるのぉっ!」 呼び掛ければ返事をしてくれると、親れいむが叫び始める。 その間に、男と目があった。 「……」 手に持っていたかき氷を見せる。 「……」 男は頷くと、そのまま親れいむを片手で鷲づかみにした。どうやら伝わったらしい。 「ゆっ!? な、なにするのお兄さん!!」 「どうやら嘘だったみたいだな……」 その言葉に、親れいむは饅頭肌を青くして震えた。 ……どうやって色変えてるんだ、この不思議生物。 「ち、ちがうよ、れいむうそなんて」 「それじゃ約束通り、加工所いこか」 「いや゛ぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁっ! かごうじょばい゛や゛だぁぁぁあ゛あ゛ぁっ!!」 暴れ回るが、ゆっくりが人の力に逆らえるわけがない。 食い込む親指の感覚に震えながら親れいむは連れて行かれる。 ……。 出て行く瞬間、俺は親れいむが見えるようにかき氷を食べ始めた。 「あ゛あ゛っ!!」 扉が閉められる。 親れいむの暴れている声が聞こえていくが、もう俺には関係ない。 ……やれやれ。 ため息をついてその場に座る。予想してなかった騒ぎに疲れがたまった。 ……。 俺は最後の光景を思い出し、思わず顔がにやけてしまう。 あの絶望で満ちた顔に、俺は溜飲が下がる思いだった。 さて。 業務用かき氷機の方を見る。 「おじさんゆっくりじゃないねっ! 早く外してねっ!」 さっきは喋らなかったので、ちょっとは学習したかと思いきや、時間が経つとまた水色は喚き始めた。 ……やっぱり、馬鹿だから数分で忘れたんだな。 それだけ忘れられたら、人だと幸せに生きられるんだろうが、水色が忘れても鬱陶しいだけだ。 しかし、どうするか。 全部削って食べるのは流石に辛い。 いっそ、削ってそのまま流しに捨てるか。 水色を処分する方法を考えながら、取りあえず腹が減ったので俺は洗い場の方へ向かう。 「ちょっとむししないでよっ! アタイはむしたべるんだからねっ!」 ……。 一瞬、無視なんて知っていたのかと思ったが、やっぱり馬鹿は馬鹿だった。 何かないかと食材を探し始める。 えーと、何か食えるものが……。 ……あ。 「だからむししないでっ! アタイたべちゃうよっ!」 ……うん、面白そうだな。 俺はその場から離れると、今度はかき氷機に近づいていった。 「ゆっ?」 「わかったわかった助けてやるよ」 頭についたレバーをゆるめ、水色を動けるようにする。 途端、水色は俊敏な動きで逃げ出していた。 「ゆっ! ようやくアタイがゆっくりだってわかったみたいね!」 だから、その速さのどこがゆっくりなのかと。 「でもおじさんはゆっくりじゃないねっ! アタイそろそろかえるよっ!」 「ああ、帰るのか?」 「ええ! ゆっくりじゃないおじさんはとっととれいとうはそんされてね!」 破損してどうする。 「残念だな。せっかくエサを用意してたんだが……」 言った瞬間、水色がこっちを見ていた。凄い食いつきだな……。 「エサっ? アタイしたにはうるさいよっ!」 「ああ、ゆっくりには美味しいって絶賛されているものがあってね。それなら満足できると思ったんだ」 ゆっくりに絶賛と聞いて興味が惹かれたらしい、さっきまでとは打って変わって瞳が輝いている。 「いいよっ! ゆっくりたべてあげるねっ!」 「そうかい、それじゃちょっと待ってな」 俺はまた洗い場へ引き返す。 水色に与える食材を手に取り、そのまま引き返してきた。 「それじゃ今から目の前に置くから、ちゃんと凍らせろよ」 「もちろんだよ! アタイに任せておいて!」 顔を張って自信満々に言う。 俺は手を開き、素早く食材を置いた。 水色の顔が膨らみ、瞬間冷凍しようと冷気を吐く。 しかし、食材が凍ることはなかった。 「ゆっ?」 「なんだ、凍らないみたいだな」 食材は水色よりも小さいながら同じゆっくりだ。しかしゆっくりカエルを食べていた水色には特に疑問はないらしい。特に気にせず、どうして凍らなかったのかを考えている。ああ、馬鹿でよかった。 「まぁいいじゃないか。そのまま食べてみたらどうだ?」 「もちろんアタイそのつもりだよっ! おじさんはだまってて!」 はいはい。 言われた通り黙っておくと、水色は躊躇せず大きく口を開けて、そのゆっくりを飲み込んだ。 「もぐもぐ」 「……」 「もぐもぐ……っ!?」 突然、口を開いたまま水色が痙攣し始めた。 「どうした? 美味しくないかっ?」 「ちがうよっ! アタイゆっくりだよっ!」 なんか慣れたな。 「お、おじさんっ!」 「なんだ?」 「あ、熱いよっ! すっごくあつじっ!?」 水色が最後までいい終わらないうちに、食べたゆっくりは水色の頭を通って中からはい出てきた。 「もこーっ!」 それは、ゆっくりもこうだった。 やっぱり、中で燃えると溶けるもんなんだな。 「あ、あああああああああっ!」 水色の痙攣は止まらない。もこうはそのまま水色の頭に乗って燃え続けている。 「もっこもこにしてやるよっ!」 「とける、アタイとけちゃうっ!」 もう頭の上部分は完全に溶けて、俺の家の床を水浸しにしていた。あとで掃除しないとな……。 「おじさんっ! 水っ! 水ちょうだいっ!」 「水ならそこの壺に入ってるぞ」 言い終わった途端、壺に向かって飛んでいく。 しばらくして、水色の大きな声が聞こえてきた。 「なかからっぽだよぉおおぉおおおぉおおぉっ!」 そりゃな。もったいないじゃないか、水が。 俺は両手でしっかり抱え、そのまま壺に向かっていく。 中を覗き込むと、もう半分近く溶けきった水色がそこにいた。 「お……おじさ……アタイ……」 「何だかさっきよりゆっくりしてるなっ!」 「……ち、ちが……」 「そんなお前にプレゼントだ。受け取ってくれっ!」 水色の上へ抱えていたものを落としていく。 抱えていたのは大量のゆっくりもこうだった。 「あ……」 「もこたんいんしたおっ!」 全員が一斉に炎を纏う。 「……あた……」 あっという間に、水色は溶けきって水に変わっていた。放っておけば蒸発し、跡形もなくなくなるだろう。 俺は安心と落胆でため息をついた。 やれやれ、もうちょっと使えると思ったんだがなぁ……。 もこうは一定時間炎を纏う。出せる時間に制限があるものの、物を燃やす時はかなり便利だ。 俺は使えるゆっくりはちゃんと使っていくが、使えないゆっくりほど邪魔なものはない。 いいゆっくりは、使えるゆっくりだけだ。 さて……。 改めて飯を食おうと、洗い場へ近づいていく。 「もこーっ」 そこに残っていたゆっくりもこうが、元気な声を上げていた。 End ゆっくりちるのをゆっくりもこたんで溶かしたかった。 すっきりー。 by 762 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2148.html
※東方原作キャラが登場することを不快に感じる方 ※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方 ※捕食種設定を不快に感じる方 ※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方 ※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方 ※素晴らしい小説を求めている方 は、この小説に合いません。 申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。 それでも良ければどうぞ ミリィのゆっくり冒険記 第一話 ここは霧の湖のほとりにある真っ赤な洋館、紅魔館。 人間達の間では吸血鬼が住む館と恐れられている。 今の時間は昼の3時。 現代の人間の子供たちにとってはおやつの時間と認識されている時刻である。 しかし、それは人間以外にも例外ではなかったようだ。 「ぷっでぃんぷっでぃん♪さくやのぷっでぃ~ん♪」 恐ろしい紅魔館の廊下を間が抜けた声を出して踊りながら歩く、背中に悪魔の翼を持ちピンク色の服と帽子を被ったふとましい幼体の胴付きゆっくり。 「ミリィのおなかはぺこぺこで~♪さくやのぷっでぃんほしいの~♪」 このゆっくりは、紅魔館でペットとして飼われているれみりゃ種だ。 紅魔館にいる妖精メイドからは『ミリィ様』と呼ばれている。 「さくやのぷっでぃんあまあまで~♪あまあまあまあまおいしいの~♪」 自身の作ったぷっでぃんの歌を口ずさみながら大好きなさくやのあまあまなぷっでぃんを食べるためにダイニングルームに行くために廊下を歩いていくミリィ。 しかし、ミリィも胴付きであるとはいえゆっくりなので歩みは遅い。 その上、紅魔館は非常に広いのでダイニングルームに向かうだけでもかなりの時間がかかってしまう。 「うー?」 ミリィが視線の先に何かを見つけたようだ。と思った矢先 「さくやー!!」 と大声をあげながら廊下を走りだす。 ミリィの視線の先にいたのは紅魔館のメイド長であり、ミリィの飼い主でもある十六夜咲夜だ。 ティーセットを乗せたワゴンを押しているところを見る限り、紅茶好きのこの館の主人の元へ向かうつもりなのだろう。 しかし、今のミリィには大好きな咲夜の姿しか目に入っていない。 構わずにミリィは咲夜に向かって駆け出した。 咲夜はミリィの姿を認めると、走ってくるミリィを柔らかい笑顔で抱きとめる。 「ミリィ様、廊下を走ってはいけませんよ?」 「うっう~♪ごめんなさい~さくや~♪」 本当に反省しているのかしていないのか、ミリィは咲夜の腕の中で甘えたような声を出す。 咲夜の腕の中でミリィは思う存分甘える。 ミリィは本当に咲夜のことが大好きだった。 ミリィの母親が突然いなくなってから、咲夜が親代わりにもなっていたのだから。 「さくやはあったかいぞぉ…」 「ふふ、そうですか?ありがとうございます」 嬉しそうに笑う咲夜。 ミリィにとって、咲夜と一緒にいる時間は本当にゆっくりできる。 出来る事ならずっと一緒にいたいと思っているくらいだ。 少しの間、1人と1匹の穏やかな時間が過ぎていく。 しかし、咲夜は先ほどまで自分が押していたティーセットの乗ったワゴンを見て 「ごめんなさい、ミリィ様」 と申し訳なさそうにミリィに謝りだした。 「…う~?」 ミリィが咲夜の腕の中で不安そうに咲夜の顔を見上げる。 「これからお嬢様のお茶の時間なのです。ミリィ様のおやつはダイニングルームに用意させておりますので…」 「う~…おねーさんのとこ…?」 ミリィには咲夜がこれからこの紅魔館の主の元に向かうことが分かった。 紅魔館の主…レミリア・スカーレットはミリィにとっては恐くもあるが優しいお姉さんのような人物だ。 母親がいなくなった後のミリィを主に教育してきたのがそのレミリアだ。 「自分に似た姿をした奴がおかしな振る舞いをするのは紅魔館の沽券に関わる」というのがレミリアの弁。 ミリィも教育開始当初はレミリアに反発することが多かったが、今ではレミリアに反発することは少ない。 反発してもお仕置きされるだけだし、きちんと言う事を守れば大好きなぷっでぃんもくれるし、なでなでをしてくれるということがわかったからだ。 ミリィにも咲夜がレミリアのお世話をしなければいけないということはわかっていた。 しかし… 「やだやだぁ~!さくやはミリィといっしょにぷっでぃんたべるの~!」 と、感情の面で納得できず、咲夜の服を引っ張ることでなんとか引き留めようとする。 ミリィにとって、おやつを食べるのもゆっくりして幸せなことではあるが、隣に咲夜がいるとこれ以上ないほどゆっくり出来てしまうのだ。 咲夜と一緒におやつを食べたい。咲夜ともっとお話がしたい。咲夜ともっと一緒にいたい。 「うぅ~…」 ミリィは哀願の眼を咲夜に送る。 しかし、現実はミリィにとってゆっくり出来る事ではなかったようだ。 「ごめんなさい、また今度…お願いします」 咲夜は申し訳ない顔をしながら、それでも躊躇うことなくワゴンを押しレミリアの元へ向かって行った。 「うぅ~…さくや~…」 大好きな咲夜に自身の申し出を断られ、ミリィがその場に一人寂しそうに咲夜の後ろ姿を見つめていた。 「ちゅんり~~~~!!!!」 「むきゅ!?ミリィ、おやつのじかんじゃなかったの!?」 ミリィが向かったのはおやつがあるダイニングルームでなく紅魔館の地下にある図書館だった。 そこにはミリィを除いて紅魔館で飼われている唯一のゆっくりである、紫色の髪に白いナイトキャップを被った胴なしのぱちゅりー種であり、ミリィの友達でもあるチュンリーがいた。 チュンリーは図書館の司書である小悪魔が飼っているゆっくりだ。 この図書館の主に似ていて知能も高く、飼い主の小悪魔の教育によって平仮名を読むことが出来るようになった稀有なゆっくりだ。 「チュンリー、さくやがぁ、さくやがぁ…!」 「はぁ…またなの…」 ミリィが喚いている一方で、チュンリーは諦めたように溜息をついていた。 ミリィが咲夜のことでチュンリーに泣きつくのはすでに何度もあることだった。 その度にチュンリーはミリィを落ち着かせることに苦労をしている。 「むきゅ…さくやにとって、レミリアおねーさんがいちばんだいじだいじなのはミリィもわかっているでしょう?」 チュンリーが窘めても、ミリィはいやいやと首を振りながら 「ミリィはさくやといっしょにゆっくりしたいの~!さくやがいいの~!」 と、相変わらずの調子。 ミリィは一度こうなったら落ち着かせるのに苦労するのだ。 「はぁ…」 どうやら今回もミリィの機嫌を取るのに時間がかかりそうだ。 思わず溜息が出てしまう。 これはチュンリーにとってゆっくりできる状況ではなかった。 チュンリーはどうしようか悩みながら周りを見渡してみると一つの紅い本に目がとまる。 その本の名は『ゆっくりだいずかん』。 幻想郷の人里にいる自称ゆっくり研究家達が作った本だ。 彼らが今までゆっくりについて研究した成果がこの本に記されている。 あくまで少人数で作られている為、図鑑と言う割には知識に少々偏りがあるようにも見られる。 しかし、文中の漢字には振り仮名も振ってあり、人間の子供にもチュンリーにも読みやすい図鑑だった。 「ミリィ、そのあかいごほんさんをとってくれないかしら」 「…う~?」 ミリィはきょとんとした表情を見せながら、チュンリーの視線の先の紅い本を見つける。 「これぇ…?」 ミリィは本棚の『ゆっくりだいずかん』を両手で取り出し、チュンリーの前に本を置く。 「むきゅ、ありがとう、ミリィ」 チュンリーはその本に唾液がつかないように注意をしながら、器用に口でページをめくっていく。 唾液が付いたら、この図書館の主であるパチュリー・ノーレッジに怒られてしまうからだ。 また、チュンリーは本棚から本を出すことは自力ではできない。 チュンリーの顎の力に比べて、図書館の本は非常に重かった。 だからチュンリーが本棚にある本を読む時は司書であり飼い主の小悪魔や、胴付きのミリィに頼ることになってしまう。 自分も胴付きであるならもっと自由に本を読めるのに。 チュンリーは胴付きであるミリィを羨ましく思っていた。 静かな図書館にチュンリーが『ゆっくりだいずかん』のページをめくる音だけが響く。 しばらくそのような時間が続いたが、チュンリーは目的のページを見つけたのか、図鑑から目を離しミリィの方に顔を向ける。 「むきゅ、ミリィ…ミリィはミリィだけのさくやがほしい?」 「う…?」 ミリィはチュンリーの言った言葉の意味がよくわからなかった。 怪訝な表情でチュンリーを見返してしまう。 ミリィだけのさくや? さくやがミリィだけの物になることなどありえるのだろうか? 「ミリィ…これをみてほしいの」 チュンリーに促され、ミリィはチュンリーが開いたページを見る。 そして、そこに書いてある内容に驚いて目を見開いた。 「う~!?どうしてさくやがこのごほんにのってるの~!?」 この『ゆっくりだいずかん』には十六夜咲夜のゆっくりである『ゆっくりさくや』も載っているのであった。 そこには『ほとんど目撃例のない幻のゆっくり』や『プリン饅頭』といった断片的な情報が載せられていた。 「むきゅ、このごほんさんによるとゆっくりさくやはまぼろしのゆっくりといわれてるくらいもくげきじょーほーがないみたいね、でもこのごほんさんにのってるってことは…」 「ゆっくりのさくやがいるってことなのぉ!!」 ミリィはさっきまで泣いていたことも忘れたように大声を出す。 ミリィにとって、十六夜昨夜はとても大切な人物だ。 咲夜と一緒にゆっくりするのは大好きだし、咲夜をゆっくりさせてあげたい。 そして、何より自分を一番に考えてほしかった。 しかし咲夜にはレミリア・スカーレットという絶対的な主がいる。 咲夜が自分のことを一番に考えてくれるなんてことは無理なのだろうと以前からミリィは考えていた。 それでも咲夜に自分を一番に考えてほしかった。 どうにもならない状況にミリィは苦しんでいた。 しかし、目の前の本に書いてある内容はどうだ。 十六夜咲夜以外にも『さくや』は存在するのではないか。 そして、自分と同じゆっくりならば、今度こそ『さくや』をゆっくりさせてあげられるのではないか。 勿論、その『さくや』が十六夜咲夜と同一の存在ではないと言う事はわかっていた。 それでもミリィは自分を一番に考えてくれる『さくや』が欲しかった。 そう考えたミリィが出した結論は一つだった。 「チュンリー!ミリィはさくやをさがしにいってくるぞぉ~!さくやといっしょにゆっくりするのぉ~♪」 ミリィの言葉に今度はチュンリーが驚く。 単にミリィを慰めるつもりだっただけに、いきなりそう言い出すとは予想外だったからだ。 「むきゅ!?それならミリィがいくよりもさくやにたのんだほうがはやいんじゃ…」 「チュンリーありがとう!ミリィはさくやをさがしにいってくるぞぉ!すぐかえってくるぞぉ!」 チュンリーの話もほとんど聞かずにミリィは騒がしく図書館から走って出ていく。 この単純さもミリィの魅力かもしれない。 「だいじょうぶかしら…」 心配そうなチュンリーを一人残して。 次の日の朝… 「さくや~、いまからいくんだぞぉ~♪」 咲夜が作ってくれたおやつのクッキーを非常食として大事な大事な帽子の中に入れたミリィは、庭から翼を羽ばたかせ空を飛ぶ。 空を飛ぶのはいつ以来だったのか、ミリィはよく覚えていない。 若干ふらつきながらも、何とか紅魔館の塀を乗り越えて行く。 紅魔館の外に出る頃には、ミリィの頭の中からはゆっくりさくやが幻のゆっくりと呼ばれているということをきれいさっぱり消えていた。 ほとんど外に出たことがないミリィは、外に出たらさくやがすぐに見つかるという楽観的な考えをしていた。 だからチュンリー以外には外出することを伝えないという迂闊な行動に出たのだ。 「うっう~♪うぁうぁ♪」 ミリィはさくやを見つけた後のことを考えながら、御機嫌に紅魔館を後にしたのだった。 数時間後………… 「う~!?ここはどこ~!?さくや~!さくや~!」 森の中で迷子になっているミリィの姿があった。 後書き ゆっくりに癒しを求めている方には、2話以降は読まない方が良いかもしれません。 あと、誤解のないように先に言っておきますが、私はゆっくりは大好きです。 棒か何かでページをめくればよだれはつかないよ -- 名無しさん (2011-02-08 16 39 15) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1407.html
※美鈴によるゆっくり虐待……ってか虐待っぽいエロ。非常に下品。 ※ゆっくりまりさと美鈴の絡みと言うか性的描写が含まれています。当然の如くアナル。 ※本番してないから18禁じゃないと思いたいですが、たぶん18禁です。 ※直接の描写は避けましたが、スカトロ要素を含んでおります。 ※また、虐待とあまり関係ない場面も、いつものようにやたらございます。 ※前後編か前中後編の前編です。 ※例の如く、ある意味では美鈴虐め。キャラ性格の俺改変ひどいし。かなり変態だし。 ※また、ある意味ではレミリア虐めかも知れません。キャラ性格の俺改変ひどいので。 ※「美鈴と森のゆっくり」の後日談的な感じとなっておりますが、これ単独でも普通に読 めるようにしたつもりです……一応。 ※当然のように俺設定満載な感じです。 ※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、 ご注意ください。 「レミリアと森のゆっくり 前編」 悪魔の住む館、紅魔館── 「見なさい咲夜。今夜も良い月よ」 この館の主人であるレミリア・スカーレットは、自室からテラスへと通ずるガラス戸を 開け放ちながら、傍らに控える従者に言った。 「曇っていますよ。お嬢様」 瀟洒なメイド、十六夜咲夜の反応はまことにクールだった。 この従者は絶対的な忠誠をレミリアに捧げているが、完全であるが故に、あからさまな 阿諛追従はしないのである。 主君は暴君であっても、暗君であってはならないと思っているようだ。 もっとも、だからこそレミリアも信頼しているのだが。 「……こう言うのは気分の問題よ。それじゃ行ってくるから、後は頼むわね」 興が削がれた、と言いたげな表情を浮かべ、レミリアはテラスに出た。 やや湿度は高いが、それでもまだ夜風は心地良い。 もう一月も時が経つと、この夜風は蒸し暑い熱風となるであろう。 「かしこまりました。時に、今宵はどちらへ?」 また神社かしら? と思いながら、咲夜は聞いた。 レミリアはここからも見える近郊の森を指さし、 「森へ行ってみるわ。たまには森林浴も悪く無さそうだから」 意外な返答を行った。 それに対し咲夜は、理由を詳しく聞くような真似はせず、 「行ってらっしゃいませ、お嬢様」 と言って、主に深々と頭を垂れる。 特に異変が起きているわけでも無いのだから、無理に意図を聞いたり、同行を申し出る 必要は無いと判断したのであった。 どんよりとした曇天の夜空をレミリアは独り飛ぶ。 「……ムードが出ないわね」 瞬く星や月の輝きが無いと、夜空を飛ぶ爽快感が今ひとつである。 「降りて……歩こう……」 レミリアは眼下に広がる木々の群れの中へ降下を開始した。 やや開けた場所を見つけ、そこに着陸する。 体重が無いかのように、ふわりと軽やかに。 そして彼女は二本の足で歩き始めた──森の奥へ。 「ふふっ、夜の森をこうして独り歩くのも、たまにはいいわね」 後ろに腕を組み、ぶらぶらと歩く。 魔法の森と違って普通の森であるこの森は、変にじめじめしたいたり、気色悪いキノコ がわさわさ生えていたり、わけのわからない触手生命体が蠢いていたり、白黒の魔法使い と七色の人形遣いが逢い引きしていたり、などの意外性にはあまり恵まれていないが、別 にレミリアはそんな意外性を求めていない。 白黒と七色の逢い引きは、ちょっと見てみたいが。後日からかうために。 曇った夜の森の中、木々の間からこぼれる弱々しい月星の光すらない、濃い闇の中を臆 することなくレミリアは歩き続ける。 「咲夜と一緒もいいけど、こうやって独り気ままに散歩も悪くないわ」 元々が夜の生き物である吸血鬼なのだから、夜目が利くどころか、自然の闇の中ならば 充分に見えるため、レミリアは足下の障害物に引っかかり、顔から転んでおでこを擦りむ いて「うぇぇぇんっ! さくやぁーっ!」などと泣く事もなく、危なげない足取りでぽく ぽくと歩いている。 ふと、遠くに人影が見え、レミリアは足を止めた。 こんな暗い夜の森で人影とは、尋常ではない。 注意深く、レミリアは木々に身を隠しながら人影に近寄ってゆく。 別に恐れているわけではなく、状況を確認せずどんどこ進んで敵性と遭遇し、奇襲を受 けたりするような事態を招くのは、あまり美しくないからである。 「……あら? あれは……美鈴じゃない……」 良く知った人物が人影の正体だった。 自らの館の門番を勤める紅美鈴。 勤務態度は真面目なのか怠惰なのか、いまひとつ微妙だが、穏和で人当たりの良い、あ まり妖怪らしくない彼女が、何故こんな所にいるのであろうか。 「……なにを、してるのかしら……!?」 顔が判別でき、向こうの声が聞こえる程度にまで近寄ったレミリアは、身を隠したまま 小声で呟いた。 こんな夜に、こんなところで、なにをしているのか興味があったのである。 ずかずかと歩んで姿を現し、尋問するのは簡単で手っ取り早いが、それでは興がなさ過 ぎるので、夜の王は窃視を行う事に決めた。 自分が物陰から覗かれている事に、美鈴は全く気付かなかった。 これがレミリアではない別の誰かならば、またレミリアが相手でも別の時であったのな らば、気の乱れを察したであろうが、うきうきわくわくしている今の美鈴は色々と足りて いない。 「さぁ、はじめるわよ」 美鈴は足下を見渡して言った。 「ゆっ! やめて、おねえさん! れいむになにするのっ!」 生首のような生命体──ゆっくりれいむは、持ち上げる美鈴の手を振り解こうと、もが いている。 その直径はだいたい40センチほどで、人の頭部よりも大きく、形もまた人の頭が卵形な ら、これは下ぶくれで鏡餅を連想させる形であった。 「なっ……! なにあれ?」 見知った顔と良く似た生首を見て、レミリアは驚きの声を漏らした。 驚いてはいても、自分の今の状況はしっかりと把握しているため小声で。 「…………そうだ! あれが、ゆっくりね……へー、本当に霊夢に似てるわね」 幻想郷の有名人に似た妙な生き物について、話には聞いていたが、実物を見るのは初め てであった。 それで、どうする気なんだろう? 思いながらレミリアは展開を静かに見守った。 「ふふっ、あんたは友達をいじめたんでしょ? だから罰を受けるのよ。そうよね、まり さ?」 再び美鈴は足下に視線を向けた。 それに答え、黒い帽子を被った生首──ゆっくりまりさが口を開く。 「……ゆっ! そ、そうなんだぜ……れいむはまりさをくさいっていって……いっ、いじ めたんだぜ!」 虐められた相手を告発するにしては、やけに態度がおかしかった。 許しを乞うような目で、美鈴の手に捕らわれたれいむを見ている。 「ゆっ! そ、そんな! だ……だって、まりさほんとにくさいんだもんっ! それに、 おかおもきたないしっ!」 その告発は誣告だ! と言わんばかりの態度で、れいむは自らの正当性を主張する。 かつて友達であったまりさを、その言葉がどれだけ傷つけているかも知らず。 「臭くて汚い、か……まぁ、確かにこいつは臭くて汚いけど、お友達なんでしょ?」 ニヤニヤとまりさを見ながら、美鈴は「臭い」「汚い」を強調して言った。 「ちがうよっ! れいむのおともだちなんかじゃないいよっ! まりさはもっといいにお いがして、おかおもしろくてきれいで、きんいろのかみのけもながかったのに、こんなぶ さいくになったまりさは、もうおともだちじゃないよっ!」 まりさの心中を全く慮ることなく、れいむは友人関係を否定した。 その言葉の一言一言が、まりさの心を刺し抉る。 「ゆ゛っ、ゆ゛ぐぅっ……ひ、ひどいんだぜ……れいむぅぅぅぅっ……ぐずゅんっ……」 滂沱の涙を流し、まりさは泣いた。 悲しく、苦しく、悔しくて、とても辛い。 お散歩につれて行ってあげる、と言ってくれた時は、自分はやっとお姉さんに認められ た、良い子になれたと思って、あんなに嬉しかったのに。 今はもう辛かった。こんな思いをするのなら、喜ぶんじゃなかったと後悔していた。 「それじゃ百歩譲って、お友達じゃ無いってのは認めてあげるわ。こんな汚臭いのを友達 だなんて言って、すまなかったわね」 手中に収めたれいむへと顔を向け、美鈴は微笑んだ。 「もうっ、おねえさんやっとわかったの? あたまわるいねっ! わかったなら、ゆっく りしないで、はやくれいむをはなしてねっ!」 相手が自らの非を認めたようなので、れいむはすこぶる強気である。 状態は全く変化せず、捕らわれているままだと言うのに。 それに対して美鈴は、 「それはダメよ。だってあんた、まりさいじめたんでしょ? あんたのお友達じゃなくて も、こいつは私の可愛いペットなのよ」 と言いながら、細い麻縄でれいむを縛りはじめ、 「だから、飼い主が黙ってないってわけよ。ゆっくり理解してね」 器用に縦横しっかりと十文字に縄を掛けた。 「ゆぎゅっ! やべでぇぇぇぇっ! いだいっっっっ! なわ゛きづいぃぃぃぃっ!」 縛られたれいむは悲鳴を上げ抗議するが、美鈴が耳を貸すはずもなく、木の枝につるし 上げた。 そんな様子を絶賛ピーピング中のレミリアは、 「うーん……聞いた通りね。似てるのは外見だけで、性格はだいぶ違うって」 と感想の声を漏らしていた。 「それに見た目が似てると言っても、おおまかな特徴だけね……霊夢は、あんな下ぶくれ のぶさいくじゃないし」 似てると言われれば似ているし、そっくりといえばそっくりではあるが、瓜二つとか生 き写しではなく、喩えて言うなら写実的肖像画ではなく漫画的似顔絵としての話だと、レ ミリアは思った。 「……と言うか、美鈴ったらゆっくりをペットにしてたのね……ふむ、ペットを散歩させ に来て、そのペットが野良に虐められた、ってとこかしらね……」 それにしては美鈴がやけに楽しそうなのが気になったが、この会話からではそれ以上の 推察が難しい。 「なーんか……引っかかるのよねぇ……ま、見てればわかるか」 レミリアは引き続き経過を見守ることに決めた。 「ふふっ、私の可愛い可愛いゴミクズのまりさを虐めた罰、たっぷりと味わって貰うわよ」 心地良い悲鳴に恍惚とした笑みを浮かべ、美鈴はぽきぽきと指の関節を鳴らした。 「……ゅぅ……」 沈痛な面持ちで、まりさは悲しそうに喉を鳴らす。 可愛いと言われても、後にゴミクズと付けられるのは嬉しくなく、散々に「汚い」「臭 い」と美鈴にも言われているのだから、素直には受け取れない。 ──そもそも、まりさが「臭い」「汚い」と言われる原因を作ったのは、美鈴なのだか ら。 このまりさは、数日前までこの森に住んでいた。 可愛い二匹の子供と、性欲処理相手とその二匹の子供と、二匹の奴隷の計八匹の家族で、 何不自由なくゆっくり暮らしていた。 その暮らしぶりは、自分のゆっくりのために奴隷二匹を虐げるなど、あまり褒められた ものではなく、そのために因果が応報し全てを失ってしまったのだが。 そして、その際まりさは美鈴によって、全身の皮肌を餡子が漏れない程度に切り剥がさ れながら、激辛調味料を垂らされると言う仕置きをされ、治療はされたものの醜い顔とな ってしまったのである。 まりさはあまりの苦しみに死を望んだが、美鈴はその希望は叶えず、あえて生かして己 の支配下に置いたのであった。 ──このあたりの詳細に関しては、合計150kbほどのクソ長ぇ物語となっているが、そ れはまた別の話である。 「ゆぎゅぅぅぅっ! ばつってな゛にっ! れい゛むなにもわるいごとしでないよ゛っ!」 痛い目に遭うか、怖い目を見ない限り、そうそう謝らないのがゆっくりと言う生き物の 習性である。 目端の利く狡猾な個体は危ないと思った際に、心にもない謝罪を口にする事も度々ある が、たいがいのゆっくりは言い逃れできない状況でも、自分は悪くないと主張する事が良 くある。 ゆっくりが「自分は悪くない」と主張するのは、他に言い逃れの言葉が見つからず頑な に現実を否定しようとしている時と、本当に悪いことだと思っていない時の、どちらかで ある場合が多い。 今まさに痛い目に遭わされようとしている、このれいむに関しては後者であった。 自分がまりさに対して行ったことを、全く悪い事だったと思っていないのである。 約30分ほど前──れいむは自分の巣で、ゆっくり眠っていた。 数日前、このあたりのゆっくりたちの中で、人間社会で言うならば「顔役」として通っ ていた、まりさとその家族たちが突然姿を消すと言う事件が起きた。 親しかった者は、その親しく仲良かった度合いに応じて、まりさたちの失踪を嘆いた。 れいむは友達であり、過去に何度か一緒に「すっきり」した経験もあったので、丸一日 嘆き悲しみ、ゆっくり出来ない日を過ごした。 だが、そこは常に外敵の危険がある野生のゆっくりである。次の日には、もう「過去の 辛い思い出」のひとつとして、再びゆっくり出来るようになっていた。 今日もまた、いつも通りエサを探して食べたり、友達のゆっくりと遊んだりして、何ら 普段と変わらないゆっくりした一日を終えて、眠っていたのである。 そこに失踪していたまりさが現れ、寝ているれいむを起こした。 「ゆっくりしていってね!」 再会の喜びとともにお決まりの挨拶をしながら、れいむは違和感に気付いた。 臭いのである。まりさが、すごく。 友達だったまりさの匂いもするが、それ以上に臭い。腐ったような臭いがする。 れいむは不快感に顔をしかめた。 「ゆっくりしていくぜ!」 まりさは笑顔で挨拶を返したが、れいむはその顔を見て驚いた。 汚いのである。まりさの顔が、とても。 白くきれいだった皮肌が、ところどころ黒い染みのあるでこぼこ肌になっていた。 れいむは、もう耐えられなかった。 「ゆっくりしないで、でていってね!」 渾身の力を込めて体当たりして、臭くて汚いまりさを巣から追い出した。 そのとき、髪の毛も短く切られている事に気付いた。 自分が好きだった、親しかったまりさが、醜くなったのが許せなかった。 だから、もう一刻も早く目の前から去って欲しくて、体当たりで攻撃した。 ケンカの強さに物を言わせ、かつて顔役として通っていただけあって、れいむの激しい 攻撃もまりさにはさほど効いていない。 「ゆぐっ! れ、れいむっ! な、なにするんだぜ! いたいんだぜっ! ゆっくりしよ うぜ!」 ──いっしょにすっきりしたなかなのに、ひどいんだぜ……。 臭いにおいを発していて、顔が汚くなっている事を、まりさは自覚しているが、それで も仲の良かったこのれいむなら、話せばわかると思っていた。 「ゆっ! れいむは、くさくてきたないまりさなんかと、ゆっくりできないよっ! はや くどっかいってね!」 じりじりと後ずさってはいるが、まだ話しかけてくる、近寄ってくるまりさを、れいむ は体当たりで攻撃し続ける。 そんな事をせず巣の中に陣取って、巣に入ってきたら撃退するようにしていたら、もし かしたら運命は変わったのかも知れない。 ──攻撃に熱中するれいむが、美鈴によって捕らえたのはこの直後である。 「ふんっ、悪くないですって? 良いか悪いかは私が決める。そして、あんたは悪いと私 が決めた。だから罰するのよ!」 これが裁判であるならば、まさしく茶番であろう。最初から筋書きが出来ているのだか ら。 「いやぁぁぁぁぁっ! れ、れいむわるくないよぉ! なんでぇぇぇぇっ!」 悪くないと思っていたとしても、とりあえず詫びを入れていたら、もう少しは会話が続 き、多少長生きは出来たかも知れない。 美鈴は最早れいむの言葉に応えることなく、速やかに罰の執行へと移行する。 「豚のような悲鳴を上げ、許しを乞い、助けを求め、泣き叫ぶがいい……いくわよっ! 紅家奥義! 虎納魅拳っ!」 どうかと思うネーミングセンスな技名を叫び、美鈴はれいむへの懲罰を開始した。 「上! 上!」 言葉の通りれいむの上から美鈴は頭突きを二度行い、 「ゆ゛ぎゅっ!」 「下! 下!」 次に下から突き上げるようなアッパーカットを二回、 「ゆ゛べっ!」 「左! 右! 左! 右!」 続いて左フックと右フックを交互に二発、 「びゅぶっ! お゛ぶっ!」 「B!」 そして膝蹴りを顎に見舞い、 「ごじゅっ!」 「A!」 最後は顔面の中心へのエルボー。 「べぶっ!」 「あははっ! どう? これが虎納魅拳よ! 虎のように動き、型に納めるように敵を圧 倒する、魅力的な拳よ!」 誇らしげに豊かな胸を張り、美鈴は技名を解説した。編み出してから初めて使用した技 に有頂天になっている。 「……いや、Bって膝蹴りだからニーじゃないの。それに……エルボーの綴りはAじゃな くてEからよ……突っ込みどころ多い技ね……」 美鈴に聞こえない程度の声で、隠れているレミリアは呟いた。 「ゆぶっ……ゆっ、ゆぅ……ゅ……」 すでにもうれいむは虫の息である。 打撃もさることながら、縛られている縄が身体に食い込み皮肌を切り裂き、そこから中 身を溢れ出しつつあった。 「ふふっ、どうかしら? これをもっと速いスピードで、573回連続で行うのよ。あんた は何回目まで耐えられるかしらね」 初使用がゆっくり相手と言うのは気分的に微妙なものもあるが、サンドバッグなどの無 生物とは異なり、ちゃんと悲鳴が聞こえるので威力を実感出来るのは楽しい。 「……あー、573回ねぇ……んー……なんて言うのかしらね……」 上機嫌で有頂天な美鈴とは対照的に、木陰で窃視中のレミリアはとてもだるだるな気分 である。 「……にしても、美鈴が霊夢の顔を殴ってるみたいで、ちょっと微妙ね……んー、そう言 えば私やパチェ、魔理沙たちのゆっくりも居るのよね……うーん……」 自分や友人知人と似た顔が、知らないところで殴られたり虐められたりしている可能性 を考え、レミリアは少し不快な気分になった。 「なんかねぇー……微妙な気分。なんて言うのかしら、出来の悪い似顔絵を描かれて、そ れを破かれたり踏まれたりしてるみたいな、そんな気分……んーむ」 美鈴の行動を盗み見る好奇心よりも、徐々に不快感が上回りつつある。 だが、レミリアは立ち去らず、もうしばらく見守ることにした。ひょっとしたら、気分 が良くなるような展開になるかも知れないと思ったのである。 「さぁっ! 二発目行くわよ! 上上下下左右左右BA!」 「ゆ゛べぶじゃぐゆ゛う゛ぉばぁっ!」 二回目の衝撃に、れいむの身体は耐えきれなかった。 「ちょ、ちょっとぉっ! なんでたった二回で死んじゃのよっ! もうっ!」 食い込みすぎた縄によって四分割に解体され、地面に落ちたれいむの残骸に向かって、 美鈴は怒りの声を上げた。 「あ゛ぁっ……れ、れ゛いむ゛ぅぅぅっ……うぅっ……」 親愛を裏切られたとは言え、交尾まで行ったことのある友達の死に、まりさは涙を流し た。 「あら? なに泣いてるのよ? まりさ、あんたが殺したのよ、このれいむは」 れいむへの懲罰が中途半端なところで強制終了した不満をぶつけるかのように、美鈴は まりさを言葉の鞭で叩いた。 「ゆ゛っ! ゆぐっ……お、お゛ねえざん゛っ……ぞ、そぶな゛ぁ……」 「だって、そうでしょ? あなたが『まりさはいじめられたりしなかったぜ!』って言っ てれば、これは死ななかったのよ。だから、まりさ、あんたが殺したのよ」 非常に強引な理屈で、美鈴はまりさをなじる。 「……うわぁ、えげつないわね……美鈴ってこんな一面があったんだ……ふふっ、ちょっ と見直しちゃった」 とても悪魔的な感想をレミリアは述べた。 「んー……最近、でもないか……ずっと美鈴が腑抜けになったって思ってたけど、これは 評価を改めないとね……いいわぁ、私が見込んだ美鈴は、これぐらい暴力的で野蛮で、意 地悪な妖怪だったんだから……」 初めて美鈴と出会い、そして戦った当時のことを思い出し、レミリアは恍惚とした表情 を浮かべた。 「うん、今の美鈴もそれはそれで好きよ。でも、私の館の門を任せているんだからね…… 単なる良い子じゃ相応しくないの……ふふっ、やっぱ見てて良かったわ」 先ほどまでとは打って変わって、レミリアは上機嫌である。 普通の主従であれば、部下の残酷で理不尽な一面を見た場合、悪い方に評価を改めると ころだが、彼女たちは吸血鬼であり妖怪である。 人間に恐れられるべき存在なのだから、このように「本当は怖い、恐ろしい」一面を持 っていなければ、鼎の軽重が問われるのだ。 そんな風にレミリアが自分の行動を見ていて、気分を悪くしたり機嫌を良くしたりして いる事に全く気付いていない美鈴は、まりさへの言葉責めを続けている。 「いい? あんた、わかってんの? あんたがウソつきで最低な奴だったから、ありすも ゆっちゅりーも未だに許してくれないのよ!」 かつてまりさが奴隷として虐待していた、今この場にいない二匹のことにも言及する。 ちなみに、その二匹もまりさともに美鈴のペットとなっている。 「ゆ゛っ、ゆ゛ぐっ……ご、ごべんなざいっ……おねえざんっ……」 「はぁ? なんで謝るのよ? 私に謝ったって仕方ないでしょ? そんなんだから、あん たの子供も死んだのよ! このれいむと同じように、あんたのせいであんたと親しいゆっ くりはみんな死んじゃうのよ!」 美鈴自身も、我ながら無茶苦茶言っているという自覚はあるが、まりさの泣き顔を見て いるとどうにも止まらない。 「ぞっ、ぞぶな……ぐじゅっ、う゛ぁぁぁぁん゛っ!」 とうとうまりさは大声で泣き出した。 もう何を言っていいのか、誰に何を謝れば良いのか、わからない。 「な、泣けば許して貰えると思ってんの? どうなのよ? あ、あんたは、どうして欲し いのよっ?」 大声で泣くまりさを見て、美鈴は自分の胸が高鳴っている事に気付いた。 もっと泣かせたい、無様に許しを乞わせたい、過去を延々と反省させたい──どんどん、 美鈴の中に欲望が膨らんでゆく。 「ゆぐっ……う゛ぅっ……ま、まじざはぁっ、ゆ……ゆるじで、ぼじいですっ!」 「誰によ? あんたのせいで死んだ、あんたの子供? さっきのれいむ? ありす? ゆ っちゅりー? 誰に許して欲しいのよ?」 泣きながら強い調子で意志を述べたまりさに対して、美鈴は厳しく、意地悪く追求した。 どんな答えが返ってこようと、またそれに対して追求するつもりである。 「ぞっ、それ゛う゛ぁ……み、み゛んな゛にっ! みん゛なに、ゆ゛っゆる゛じで……」 「はぁ? なにムシのいい事言ってんのぉ? 欲張り過ぎよっ! だいたい、どうやって 許して貰うのよ? もう死んじゃってる相手もいんのよ? ほらっ、どうすんのよ? 言 ってみなさいよ!」 どうせゆっくりの知能では答えられないと思いながら、美鈴は問い詰めた。 「う゛っ……ゆ゛ぐっ、ぞ……ぞれ゛はぁっ……」 「なによ? 答えらんないのっ? そんなんで、みんなに許して貰いたいなんて、よく言 えたものねっ! ほらっ、考えてみなさいよ! どうすればいいかっ!」 美鈴は、黙り込んでしまったまりさに対して、容赦なく答えを求める。 一方、隠れて見ているレミリアは、 「意外ねぇ……美鈴ってこんなねちっこい性格だったかしら? 意地悪なのはいいけど、 ちょっとねちっこ過ぎるわねぇ……でも、これはこれで……ふふふ」 まりさがどう言うか、美鈴がどう反応するかを楽しんでいる。 「それにしても、あれって魔理沙のゆっくりよねぇ……んー、美鈴ったら弾幕ごっこで負 け越してる鬱憤を、似ているゆっくり虐めて晴らしてんのかしら……?」 ひょっとしたら自分や咲夜のゆっくりも美鈴は虐めているんじゃないか、とレミリアは 想像し、また少し機嫌を悪くした。 「……ま、まぁ、別にいいわ、それぐらい……ガス抜き、ストレス解消も必要でしょうか らね……」 あまり嬉しくない想像で壊れた気分を、自分は器が大きい"カリスマ"だから気にしない、 と思い込む事でレミリアは修復した。 「で、どうなの? 答えらんないの? ほら、さぁ、ぐじゅぐじゅ泣いてないで、なんと か言いなさいよっ!」 「ゆ゛っ! ぐ……ゆ゛ぐっ……わ、わ゛がじまぜん゛……ぐじゅっ……」 絞り出すように、わからない、とまりさは言った。 「ふんっ、だからあんたはゴミクズなのよっ! 望むばっかりで、どうすりゃいいかもわ からない、最低ね! 牛のクソ以下ねっ! 肥料にすらならないから、ゴミクズなのよ!」 普段口にしないような汚い言葉を使うことによって、美鈴は己をどんどん昂ぶらせてゆく。 「ゆ゛……ぐっ……ん゛、ひっく……ゆ゛っ……」 「泣いたってどうにもなんないのよっ! 全く、なんであんたみたいのが生きてるのよ? あんたはなんのために生きてんのよ? ほらっ、ゴミクズ! 答えてみなさいよっ!」 まりさの泣き顔を見ていると、ある程度での切り上げが難しい。 普段はふてぶてしく見える顔が、泣くと無様に可愛らしくなるからだ。 「ぐじゅ……ぐずっ、ゆ゛……わ゛……わ゛、がり゛、ません゛……」 「あら、自分がなんで生きてるのかもわかんないの? じゃ、死ぬ? なんで生きてんの かわかんないんなら、とっとと死んじゃえば? ほら、どうなのよっ! 死ねよ!」 死ねと言ったものの、美鈴にはまりさを殺す気は全くない。 むしろ、死んで貰ったら困るのである。 全てを奪い、痛めつけ、泣かせ、いじめ抜き、時には飴を与え、自分好みに矯正してき たのだから、簡単に死なせる気は全くない。 さほど長い時間をかけて矯正を行った訳ではないが、その代わりに工夫をし、手間を掛 けたのだから。 「ぐゆ゛っ……じ、じに゛だい゛ですっ……う゛ぁぁぁぁんっ!」 「そう、死にたいのね? でもあんたは自分で死ぬ事も出来ないじゃないっ! また出来 もしない望みを言ってるのよ! あんたは、生きるのも死ぬのも、私にお願いしないとま まならない、何も出来ないゴミクズなのよっ!」 事実まりさの生殺与奪は、完全に美鈴によって握られているのであった。 自由に活動できる野生のゆっくりならば、崖から飛び降りたり、入水するなどの方法で 自殺する事も可能だが、美鈴に飼われているまりさには行動の自由が無い。 そもそも飼われている場所が、紅魔館中庭の物置小屋──美鈴ハウスの、鍵のかかった 地下室なのだから、行動の自由以前に太陽の光すら見る事が出来ない。 飼われている部屋で、美鈴が勤務中など不在の時を見計らって、角のある物や壁などに 渾身の力で体当たりしたとしても、死ねるかどうかは微妙なところであった。 何故ならば、一緒に飼われている他のゆっくり、ありすとゆっちゅりーの二匹がいるた め、自殺を図る前に阻止される、または図って後に助けられてしまう。 ありすとゆっちゅりーの二匹は、まりさを嫌い憎んでいるが、死なせてしまった場合、 美鈴から厳しく責任を追及される事も良く判っているから、全力でまりさが死なないよう に力を尽くすであろう。 すなわち、まりさは自らの意志で死ぬ事が出来ないのである。 そして、命を繋ぐエサは、飼い主である美鈴によって与えられている。 生きるも死ぬも、飼い主次第の存在──それがペットと言う身分なのだ。 「ゆ゛っ……ひぐっ……ぐじゅっ……う゛ぅっ……」 「ふんっ、泣いてばっかりいないで、ちっとは私の役に立ってみたら? その気が無いん なら何もしなくて良いけど、何もしないんだったら、また殺さない程度に皮剥いだりして、 私が勝手に役立てるわよ? どうなの?」 たっぷりと自分の立場をわからせた上で、美鈴は助け船を出してやった。 それに乗らないのならば、言葉通りにいたぶるつもりである。 「ゆ゛ゆ゛っ! ご、ごべん゛なざいっ! ま、まじざ、おね゛えざんのっ、や、や゛ぐ に、だっだぢたい゛でずぅぅぅぅっ!」 殺さない程度に皮を剥ぐ、それはまりさが最も恐れる懲罰である。 死ぬほどの苦痛、事実もう死にたいと思ったほどの苦痛を、再び味わうのは何よりも怖 く嫌であった。 「あら、そうなの? 私の役に立ってくれるの? ふふっ、いい子ねぇ……そうよ、そう やって、あんたは私に媚びて、私に心から服従しないといけないのよ。わかった?」 「ばっ、は、はい゛ぃっ! わ、わ゛がり゛まじだっ! ま、ま゛りざ、お、お゛ねえ゛ ざんの゛や、や゛くにだちまずぅっ! だっ、だだぜて、ぐだざいぃぃぃっ!」 役立たねば苦痛が訪れる、そう思っているまりさは必死であった。 必死に美鈴に、役立ちたい、役立たせてくださいと懇願する。 「……んー……これって、ペットのしつけ、なのかしら……?」 事の成り行きを、飽きもせず見続けているレミリアは呟いた。 「なんか、しつけって言うよりも……んー、特殊なプレイみたいね、これ……まぁ、 でも相手がゆっくりとは言え、美鈴も案外カリスマあるのね……いや、カリスマじゃない か、これは……うーん」 何となくだが、レミリアはこのまま見続けていると、精神衛生上あまり良くない事にな りそうな予感がした。 だが、なんだかんだ思いながらも、ここまでずっと窃視し続けていたのだから、せっか くだからもうちょっと見ていようと考え、その場に留まった。 ──この後レミリアは、やっぱり立ち去るべきだった、と後悔する事になる。 18禁部分に続く 18禁飛ばして中編に続く このSSに感想を付ける