約 592,713 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4550.html
「しんっぱんっ」の日は、やがて訪れた。 その日、十三匹の家族に対して「しんっぱんっ」が行われることが宣せられた。 最後の試験、「しんっぱんっ」によって、 十三匹はここで犯した罪を暴かれ、それに応じた罰を与えられることになる。 そうして罪を清算し、最後の訓練を経て、ついに人間さんに飼われることになるのだ。 緊張しながらも、十三匹は浮き立っていた。 いよいよ、いよいよ、人間さんに奉仕できるのだ。 そのためには、少しぐらい辛い罰でも耐えよう。 それに、罪など犯していない自信があった。 このゆっくりぷれいすに来てから、ずっとかいがいしく赤ちゃんの世話をし、 勉強と訓練に勤しみ、最低限のあまあましか口にせず、遊びさえしなかった。 周囲の仲間たちから尊敬されるほどの、品行方正な生活を送ってきたはずだ。 罪などないだろうし、あるとしても些細なことだろう。 部屋に入ってきた人間さんに向かって整列しながら、 十三匹は自信に満ちた表情を浮かべていた。 「ゆっくりいらっしゃいませ!!きょうもおつかれさまです!!」 「はい、こんにちは。 知ってのとおり、今日はあなたたちの「しんっぱんっ」よ。 心構えはできてるみたいね?」 「ゆっくりじゅんびできてます!!がんばってばつをうけます!!」 「いいお返事ね。 さて、この中にあなたたちのした悪いことが記録されてます。 謙虚な気持ちでしっかり受け止めてね」 「ゆっくりわかりました!!」 お姉さんは、十四匹で世話をしたあの赤ちゃんも籠に載せて連れてきていた。 赤ちゃんが自分たちに笑いかけてくれている。 この赤ちゃんの目の前で恥ずかしい姿を見られるわけにはいかない。 粛々と罰を受け入れ、正々堂々と罪を償うのだ。 決心を固め、親れいむ達はにっこり笑って元気に挨拶をした。 十四匹がテレビの前に整列する。 その周囲を、遠巻きにY飾りの仲間たちが取り囲んで見守っていた。 ビデオデッキに、円盤型のソフトが差し込まれる。 どんな悪いことをしたっけ。 こっそりしーしーをした? あまあまをぬすみぐいした? ゆっくりどうしでけんかをした? よくおもいだせないけど、ぜんぶにんげんさんにはおみとおしなんだ。 がんばっておしおきをうけて、ゆっくりできるゆっくりになるんだ。 十四匹は気を引き締めて、テレビの画面を食い入るように見つめていた。 『ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!』 『ゆっ!まりさ!!あっちにおうちがあるよ!!』 『ゆゆゆっ!!すごいんだぜ!! すごくおおきくてゆっくりできそうなんだぜ!!』 『ゆっ!だれもいなかったられいむたちのゆっくりぷれいすにしようね!!』 『いてもおいだしてやるんだぜ!!まりささまはとってもつよいんだぜぇ!!』 『ゆゆぅ~ん、まりさはゆっくりできるね~♪』 「ゆっ?」 何が映っているのか、しばらくは状況が掴めなかった。 テレビに映っているのは、二匹のゆっくりだった。 子ゆっくりから成体になったばかりといったサイズの、れいむとまりさ。 映っている風景は、想定していたような、このゆっくりプレイス内の景色ではなかった。 それは外の、街中の風景だった。 草をかきわけ、道路を飛び跳ね、二匹は人家の敷地に侵入している。 「ゆ?ゆ?ゆ?」 親れいむは首をかしげ、傍らにいた親まりさの方を見る。 二匹の目が合った。 二匹は互いに困惑の表情を浮かべていた。 テレビの中の二匹は、人家のガラス戸にべちゃりと顔をぶつけて叫んだ。 『ゆっ!!いだいいぃ!!』 『ゆっ!!みえないかべさんがあるんだぜ!!』 『これじゃはいれないよ!! ゆっくりどいてね!!かべさんはゆっくりどいてね!!』 ぼんぼんと体当たりを繰り返すれいむだったが、 まりさの方は庭にあった大きな口を咥えて戻ってきた。 『ゆっへっへ!!まりささまにかかればこんなかべさんはいちころなんだぜ!! みえないかべさんはいしさんをぶつければこわせるんだぜ!!』 『ゆぅ~ん、まりさすごいよおぉ!!』 漬物石のような大きな石を、 二匹は協力して持ち、勢いをつけてガラス戸に叩きつけた。 たちまちガラスはひび割れ、粉々になった。 開けられた穴から中に侵入したまりさは、 周囲を見渡したあと、高らかに宣言した。 『ここはまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜぇ!!』 「ゆぅあああああぁぁぁぁ!!!?」 「ゆえええええぇぇーーーーーーっ!!?」 親れいむと親まりさは困惑のあまりに絶叫した。 そこに映っているのは、まぎれもない自分たちだった。 その二匹がつけている髪飾りは、見間違えようもない、自分たちのそれだった。 「なにしてるのおおおぉぉ!!?ゆっくりできないよおおぉぉぉ!!!」 「にんげんさんのおうちにはいっちゃだめだよおおぉぉぉ!!!」 「ゆっくりできないいいぃ!!ゆっくりできないいいいいいぃぃぃ!!!」 遠巻きに見ていたY飾り達が、 それまでの「しんっぱんっ」で暴かれた罪とは全くケタ違いの悪行を目の当たりにして悲鳴をあげていた。 その家は、人間社会のことを勉強したY飾り達にとって、 人間の住む家であり、その中に入るのは不法侵入、領域侵犯であることは自明だった。 観衆の絶叫を背中に聞きながら、 親れいむと親まりさの脳裏、餡子脳の奥の奥に、 きっかけがなければ一生思い出さなかったであろうほど、 完全に忘れていた過去が今、頭をもたげる。 ゆっくり教の教えを学ぶことに必死で、長いこと思い浮かべることさえなかった遠い記憶。 二匹は、がたがたがたがたと震えはじめた。 人家に侵入した二匹は、 部屋の中を我が物顔で転げまわり、 冷蔵庫の食料を漁り、辺りのものを散らかしてまわった。 やがて、家の主である二人の人間が帰ってきた。 荒らされた部屋の様子を目の当たりにして困惑する人間に向かって、 れいむとまりさは口を揃えて叫ぶ。 『ゆっくりしていってね!!』 『ゆっ!!ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!! にんげんさんはさっさとあまあまをもってくるんだぜ!!』 『それからゆっくりしないででていってね!!』 「ゆがああああぁぁーーーーーーーーっ!!!」 「にんげんさんにそんなくちををきくなああぁぁ!!ごみくずううううぅぅ!!」 「なにさまのつもりなのおおぉぉ!!?」 観衆が激昂して叫び散らすが、 お姉さんに静かに見ろと注意され、ぎりぎりと歯噛みしながら黙りこんだ。 親れいむと親まりさは青ざめてがたがた震えながら画面を凝視していた。 家主の二人、お兄さんとお姉さん。 その二人のことを二匹は覚えていた。 そしてその二人に、自分たちは何をしたのか。 家主のお姉さんに頬ずりをされ、 れいむとまりさは家族として迎え入れられる。 しかし、二匹は自分たちが人間を飼ってやるのだと主張し、 傍若無人に振る舞った。 『ゆっくりうんうんするよ!!』 『にんげんさんはまりささまのうんうんをそうじするんだぜ!! さっさとするんだぜぇ!!』 『それをよこすんだぜ!! ゆっくりぷれいすのものはぜんぶまりささまのものなんだぜ!!』 『かわいいれいむにゆっくりしないでごはんさんをちょうだいね!! かわいいれいむがおなかをすかせてるんだよ!? なにぼさっとしてるの!?れいむをくるしめてへいきなの!?ばかなの!?しぬの!?』 『くそどれい!!ここをつかわせてやるんだぜ!! よばれるまでここからでてこないで、きたないかおをみせるんじゃないんだぜぇ!!』 『ごみくずにはもったいないけどとくべつにつかわせてあげるんだよ!! ゆっくりかんしゃしてね!!』 『なにいってるのおおおおぉぉぉ!? かわいいれいむのごはんをじゃまするほうがめいわくでしょおおおぉぉ!! なんでそんなこともわからないのおおぉぉ!!?』 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいい!!!ゆううぐぎいいいいいい!!」 「ゆがあああ!!ゆぅがあああああ!!」 「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」 お姉さんに抑えられ、必死に耐えてはいたが、 それでも観衆のゆっくり達は歯軋りをして唸り声をあげ続けていた。 すでに殺意をはらんだ視線が二匹に向けられている。 親れいむと親まりさはぶるぶるがたがた震えながら見ていたが、 ついにお姉さんのほうに向かって懇願した。 「お、おねえさん!!ごめんっ、ごめんなさい!! わかりました!!ゆっくりわかりましたから!!はんせいじまず!!もうっ」 「静かになさい!!」 今度は親れいむ達が一喝される。 「黙って見ていなさい!!「しんっぱんっ」の邪魔は許さないわよ!!」 「ゆぐうううううううううぅぅぅぅ!!!」 『ゆふぅぅ~~………くそどれいがばかそうなかおでみてるよおぉ』 『だからなんなのぜぇ~? ごみくずにはまりさたちがやってることのこうけつでしんせいないみなんかわからないのぜぇ』 『ゆふっふ……そうだね…… かわいそうなごみくずでも、みられるとこうふんするよおぉ』 『ゆほっほっほっほっ……いくのぜ……いくのぜぇぇ!!』 『はながつまってるのぉぉ!? ふとんがくさくなってるでしょおぉぉ!! こういうときはどうするの!?いわれなくてもあたまをうごかしてねぇ!!』 『ゆふんっ、とってもとかいはなゆっくりぷれいすね!! ありすがすんであげてもいいのよ?』 『あたりまえなんだぜ!!ありすはここでまりささまをすっきりさせるんだぜ!!』 『ばりざああああーーーーーっ!!でいぶどのあいはうぞだっだのおおおぉぉ!!?』 映像の中ではありすが登場し、親ありすが呻き始めた。 「ゆぁ、ゆ、ゆ、ゆっぐ、う…………」 『しらないようだからおしえとくんだぜ。 すべてのゆっくりとにんげんさんは、まりささまにつかえるのがいちばんゆっくりできるのぜ!!』 『ゆふん、だーりんったらわいるどでとかいはね!!』 『なにみてるのおおぉぉ!!? ごみくずにはれいむのかわいいあかちゃんをみるけんりなんかないんだよぉ!!』 『ゆっ!!ごみくじゅがこっちをみちぇるよ!!』 『こっちみりゅな!!くちょどりぇい!!』 『くちょどりぇいにはきゃわいいれいみゅたちはもっちゃいにゃいよ!!』 『ばぁ~きゃ!!ばぁ~きゃ!!』 『いちびょういにゃいにあまあまもっちぇきちぇにぇ!!』 『いち!!まにあわなかっちゃね!!ばつとしちぇどげざしちぇにぇ!!』 『ゆっきゅりできにゃいかちくにぇ!!』 『あちゃまのわるちょうなかおにぇ!!みっちょもにゃいこちょ!』 『おちびちゃんたちはままのとかいはなあんこをうけついだこうきなゆっくりよ。 あんなげせんなかちくとはくちをきいちゃだめよ?』 『ゆっきゅりりきゃいしちゃわ!!』 『ごみくじゅ!!ゆっきゅりしにぇ!!』 『まりしゃのあたっきゅのいりょきゅをおもいちるんだじぇ!!』 『ゆゆっ!!くちょじじいがないちぇるのじぇ!!おもちろいんだぜぇ~♪』 映像の中では家族が揃い、十三匹のゆっくりは、 テレビの前で全員が震え、歯をがちがち噛み合わせていた。 その映像の中で自分たちがしている事がどういうことなのか。 それは、このゆっくりプレイスで過ごした数か月の中でいやというほど学んできていた。 まりさの親子が、赤ありすの死骸をむさぼり食っている。 『なにをいってるのぜぇ!?あれはあかちゃんなんかじゃなくてあまあまなんだぜ!! うすのろはかんがえなくていいからだまってもってくるんだぜぇ!!』 『うっみぇ!!きょれめっちゃうっみぇ!!ぴゃねぇ!!』 ありすが赤まりさにのしかかって顎を振っている。 『まりさかわいいよまりさあああああぁぁ!!!ゆっほっほおおおおお!!』 『ゆびぇえええええ!!ぎぼぢわりゅいいいいいい!! おぎゃあじゃあああああああん!!!』 「ゆぅええええええええ!!!?」 親れいむが叫んだ。 そこに映っているのは、お兄さんに強要して、 自分たちの寝床から眠っている我が子を運び出させているまりさとありす。 運び出された我が子を、ありすが犯し殺し、まりさが貪り食らっていた。 口をぱくぱくさせながら、親れいむは隣の夫と妾のほうを向いた。 「ま、ま、ま……まりさ………まりさとありすが……… れいむのあかちゃんをころしてたの!!?」 「ゆあ………あ………」 親まりさと親ありすも、同じように口をぱくぱくさせて冷や汗をだらだらと流していた。 親れいむはそこでようやく、 自分のお兄さんに対する苛めを決定的なものにしたその事件の真相を知った。 苦く重く、そして激しい後悔が餡子脳を切り刻む。 『じね!!じね!!じね!!ぐぞじじい!!ゆっぐりごろじはじねえええええーーーーっ』 『れいむたちのうんうんをたべていってね!!どうぐはつかわないでね!!』 『ずっとかべさんにあたまをぶつけていってね!!』 『くそじじいはいっしょうたべなくていいよ!!それをれいむによこしてね!! む~しゃ、む~しゃ!!しあわせぇ~~♪』 テレビの画面の中には、 お兄さんを怨み、憎悪し、苛めをエスカレートさせていく自分の姿があった。 「ゆぁあああああああ!!!あああああああああーーーーーーっ!!!」 お姉さんに制止されるまで、親れいむは泣きながら叫び続けた。 観衆の歯軋りと怨嗟に囲まれながら、十三匹はがたがた震えてテレビを凝視する。 映像は終盤に差しかかっていた。 『はあぁぁぁ!!?なにをいってるのかしら? かちくのあかちゃんなんてみたくないわよ! いいからあまあまをもってきなさいよ!!ぐずないなかものね!!』 『のろくさしてるんじゃないのぜぇ!! まりささまのべっどめいくをさっさとすませるんだぜ!!』 『にんげんさんのあかちゃんなんかいらないでしょおおぉ!? れいむのかわいいかわいいあかちゃんがいるでしょ!!こっちのめんどうをみなさいよぉ!!』 場所は変わっていた。 その部屋には見覚えがあった。 その部屋の中で、 十三匹は、屈みこんだお姉さんと話していた。 自分には赤ちゃんがいる。 赤ちゃんが生まれる前に、ここから引っ越さなければいけない。 だからいつもついていてあげることはできなくなるけど、 新しい家からここに通うからね。 お腹の大きくなったお姉さんは、十三匹にそういったことを話していた。 十三匹のゆっくりは、そんなお姉さんを嘲笑っている……… 「ゆわああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 全身を震わせて親れいむは絶叫していた。 「ゆあああああああ!!ああああああああ!!!ゆうううぅああああああーーーーーーっ!!! みないで!!みないで!!みないで!!みないでええええぇぇぇ!!!」 テレビに駆け寄り、必死に叫びながらその画面を全身で塞ごうとする。 「下がりなさい!!」 お姉さんの手に弾かれて転がったが、親れいむは叫び続けた。 「やめて!!おでがい!!おでがいでずううぅぅ!! ゆっぐりごべんなざい!!ごべんなざいいいいいいい!!みぜないでええええーーーーっ!!!」 「ゆぁああああああああ!!!ゆぁぎゃああああああああ!!!」 「ゆびぃ!!ゆびぃいいいいーーーーーーーっ」 何が起こるのかを察知した十三匹が叫び、テレビの画面に駆け寄ろうとする。 その度にお姉さんに張り倒され、蹴り飛ばされた。 「ゆぐぅあああああああああああああああ!!!」 絶叫する十三匹に頓着することなく、映像は続いた。 『ゆっくりころぶんだぜぇ!!』 『ゆゆっ!!やったよ!! おちびちゃんたち、おねえさんのおなかにのってあかちゃんをだそうね!!』 「あああああああ!!!いやだああああああああ!!!」 『ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!』 「ごべんなざいっ!!ごべ、ごべんなざいいいいいいい!!」 『ゆふんっ!!でてきたわね!! あら、なんだかとかいはなはだしてるじゃな~い? ありすがあじみしてあげるわあああああ!!んっほおおおおおおおぉぉ!!!』 「ゆぐじで!!ゆぐじでええええええぇぇーーーーーーーーっ」 十三匹が身悶えし、転げまわる。 「ゆぎゃああああーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 「やべで!!やべで!!やべで!!おでがいいいいいい!!! にんげんざんのあがぢゃんごろざだいでええええええええええ!!!」 「ゆぁぁぁぁぁあああああああゆっぐじでぎだいいいいいーーーーーーーーーーーーっ!!!」 「じねええええ!!!にんげんざんごろじいいいいいいい!!! よぐも!!よぐも!!よぐもおおおおおおおおおお!!!!」 悶える十三匹に、観衆のゆっくり達が口々に罵声を浴びせつけていた。 『くそじじい!!あかちゃんはしんだよ!! じじいもれいむのあかちゃんをころしたんだからね!! ゆっくりりかいしてくるしんでね!!ざまああぁぁ!!ざっまああああぁぁ!!!』 『ごみくずのたくらみなんておみとおしなんだぜぇぇ!! げらげらげらげら!!ふっきんほうかい!!ゆぴゃぴゃぴゃぴゃ~~~♪』 『あかちゃんのおはだすべすべよおおおぉぉぉ!!! んほほほほほおおおおおぉぉぉすっきりいいいーーーーーっ!!!』 『ごみくずのあかちゃんはありすにころされたよ!! くやしい?くやしい?ねえねえ、いまどんなきぶん?ゆっゆっゆ~~♪』 『げらげらげら!!そしてこのかお!! ないてるときがいちばんばかづらなんだぜえぇ!!!』 『ごみくずはむせびなき~♪れいむたちはいいきぶん~♪』 「ゆぅげぇええええええーーーーーーーっ!!!おごぇええええええええええ!!!」 ついに嘔吐するゆっくりがいた。 そのゆっくりとは、誰あろう親れいむ自身であった。 あれほど愛らしい人間の赤ちゃんに対する、あまりに残酷で凄惨な所業。 そしてそれを行ったのが他でもない自分自身であるという事実。 その嫌悪感に、親れいむはえんえんとえずき続けた。 それが引き金となり、十三匹は全員が餡子やカスタードを吐いてのたうちまわった。 涙を流し、餡子を吐き散らし、絶叫する。 そうすることで罪を振り切ることができるかのように。 言うまでもなく、どれだけ暴れたところで無意味だった。 「にんげんさんごろし!!にんげんさんごろし!!にんげんさんごろし!!」 「しね!!しね!!しね!!しね!!しね!!しね!!そくざにしねえぇぇ!!!」 吐き続ける十三匹に、Y飾りのゆっくり達が殺意と罵声をぶつけてくる。 しかし、それらすべてを合わせたよりも絶望的で苦痛だったのが、この一声だった。 「ゆっくりできないごみくずはしね!!」 自分たちが世話してきたあの赤ちゃんが、自分たちに殺意を向けていた。 「あああああああああああああ!!!ゆぐぅああああああああああああああああ!!!」 大切に大切に築き上げてきた、何よりも愛しくかけがえのない存在からの完全否定。 その殺意は、何よりも深く親れいむ達の精神をえぐった。 「効いてるぅ~~~~~♪」 「うーん。ものの見事にはまってるな。 本当に見分けがつかないのか」 「眠っている間に十三匹の髪飾りをとって、訓練された他のゆっくりにつける。 そのゆっくり達と圭一さんと、メイクで似せた由美さん役の女の人で、 圭一さんの記憶をもとに再現ドキュメンタリーを作ったわけだけど。 見事に成功しましたねー。完璧に昔の自分たちだと思ってるよ」 「説明的なセリフだ」 「はて、なんの事やら?」 「なんでもない。 しかし、赤ゆっくりに演技をさせたシーンもあるが、 成体サイズの子れいむ共から取ってきた髪飾りじゃ、サイズが全然合ってないだろう。 そんなんでもおかしいと気付かないもんなんだな」 「そのへんは実験済み。髪飾りで個体識別するわけで、 本体の大きさはそれほど問題じゃないみたいよ。 ゆっくりの不思議ってところね」 「ご都合主義にも思えるな」 「はて? それにしても圭一さん、細部までよく覚えてたねー。ゆっくりのセリフとか」 「根に持つタイプなんでな。 それでもだいぶうろ覚えだったと思うが、見事に騙せたようでよかった。 由美と話すシーンとか、創作も入ってるんだが」 「本人だって、自分の昔のセリフを正確に覚えちゃいないもんだよー」 憔悴しきった表情で、十三匹のゆっくり達はお姉さんの後について這いずっていた。 ゆっくりプレイスから連れ出され、お姉さんと十三匹は廊下を歩く。 自分たち自身完全に忘れていた過去の罪は白日のもとに暴かれ、 その取り返しのつかない大きさと深さに、十三匹は狼狽した。 人間を傷つけ殺した十三匹に対し、 殺そうとして飛びついてくるY飾り達を制止して、 お姉さんは、十三匹にもまた、罪を贖う機会が与えられると宣した。 これほどのことをした十三匹が更生などできるはずがない。 Y飾りたちはいますぐ殺せと口々に要求したが、人間さんに一喝されると歯噛みしてこらえた。 当の十三匹は、どうすることもできずに成行きに任せるしかなかった。 「自分たちがどんな事をしてきたのかわかった?」 その部屋に招き入れ、ゆっくり達を並ばせるとお姉さんは言った。 十三匹は答える気力もなく、ただうなだれた。 「で、どうする?お仕置きと最後の訓練、する?」 腕を組んで聞いてくるお姉さんの顔を、卑屈な瞳で見上げる。 お仕置きと最後の訓練。 罪を贖い、訓練することで、 十三匹は飼いゆっくりとして人間に奉仕する機会を与えられる。 しかし、こんな自分たちに飼われる権利などあるのだろうか。 「知りませーん。 お姉さんはそういうこと決める立場にないからさ。 君たちさえやりたいと言えば、できるよ」 結局、やりたいです、と答えた。 自分たちが、世界で最もみじめであさましく醜い生き物であると知った今、 潔く殺してもらうことが正しいのだろうとも思った。 それでも、親れいむ達は、最後の希望を捨てられず、 決定を人間に委ねることを選んだ。 「はいはい。 じゃあ、これからこの部屋で、訓練役の人間さんと一緒に過ごしてもらいます。 その人間さんにまず罰を与えてもらって、 その後は一緒に暮らしながら、人間さんに奉仕する作法を教わってね。 じゃ、がんばってー」 そう言い、お姉さんは部屋を出ていってしまった。 その部屋は、よく知っている部屋だった。 人間の住む一般的な住居の体裁をとり、必要な家具も揃っている。 ゆっくりプレイスで見せてもらったライブ映像で、 こういう部屋で人間と一緒に暮らし、訓練をするゆっくりを見てきた。 自分たちも、ここで人間さんに訓練してもらうのだ。 十三匹は互いに目配せをして、かすかにうなずいた。 人間さんはチャンスをくれた。 そのチャンスにしがみつき、今からでもやり直そう。 どんな厳しい罰でも耐えて、訓練をやり通すのだ。 そして、人間さんに飼われ、 今度こそ、今度こそ、人間さんにゆっくりしてもらうのだ。 悲壮な決心を胸に秘め、親れいむ達は唇を引き締めた。 やがて扉が開いた。 入ってきたその人間の姿を見て、その人物が誰かを知ったとき、 十三匹は、自分たちが置かれた絶望的状況を正しく理解した。 「ゆぅあああああああああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 その人は、とてもとてもゆっくりした人間だった。 その姿を一目見た瞬間に、ゆっくりしたい、ゆっくりさせてほしいというあの渇望が沸き上がる。 人間はゆっくりできる。 中枢餡の奥の奥まで刷り込まれた認識が、 十三匹にその人間を崇拝させた。 なぜ。 なぜ、こんなに尊くゆっくりできる人間に、 自分たちはあんなことができたのだろう。 いくら思い出そうとしても思い出せない。 記憶を探ろうとしても、抗えないゆっくりへの欲求がそれを遮る。 ゆっくり達は無我夢中で人間ににじり寄り、その足元にへばりつき、 びたんびたんと体を振りながら床に頭を打ちつけこすりつけ、 ほとんど無意識のうちに、喉も裂けよと声を振り絞って絶叫していた。 「ごべんなざい!!ごべんなざい!!ごべんなざい!!ごべんなざい!!ごべんなざい!! にんげんざんをばがにじでわるがっだでず!!ごびぐずっでいっでずびばぜんでじだ!! おにいざんのあがぢゃんをごろじでごべんなざいいいいいいぃぃーーーーーーーーーーっ!!!!」 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1775.html
博麗神社にお参りに行った帰り、林道を歩いていると妙な祠を発見した。 太い木の枝や葉っぱを組み合わせて作った小屋に、ゆっくりれいむが一匹収まっている。 そしてその前には、格子状の蓋のついた木箱。 ゆっくりに複雑な工作など出来るわけないから、人間の作り損じでも拾ってきたのだろうか。 手前には枝を組んで作られた小さな鳥居?があり、ゆっくりがくぐれる程度の大きさだ。 祠に収まっているれいむと目が合うと、得意げな笑みを浮かべながら話しかけてきた。 「おにいさん!!とってもありがたいゆっくりじんじゃだよ!! ゆっくりしていってね!!おさいせんをゆっくりちょうだいね!!」 こんなことを言い出す。神社の巫女さんを模したゆっくりであることは解っていたが、 本物の真似事まで始めるとは。しかしゆっくりを崇めてもありがたいどころか、運気を吸われそうな気がするぞ。 でもまあ、ゆっくりがこんなことをしているのは何だか珍しかったので、 少しぐらいお賽銭をやっても良いだろう。人間に奪われそうな気もするが。 狭い鳥居をくぐろうとすると体がぶつかり、固定の甘かった鳥居はあっさり崩れてしまった。 れいむは「なにするの!!」と言って少し悲しそうな顔をしたが、それほど怒った様子も無いので気にしないでおいた。 そしてお賽銭箱に面白半分に木箱に小銭を入れてやる。さっき本物の博麗神社に投じた額の1/10ほどだが。 「ゆゆ~!!おにいさんありがとう!!おねがいごとをしてね!!」 うるさい巫女だな……いや、神主なのか? よく解らない。でもお参りは静かにさせてほしい。 作法に則り、手を叩いて願い事を念じる。それが済んで立ち去ろうとすると、 れいむは膨れっ面でこっちをにらんでいた。 「おにいさん!!おねがいごとをゆっくりいってね!!だまってちゃわからないよ!!」 え~……そういうもんなの? というか、お前が願い事を知ったところでどうする。 まあもう少し付き合ってやるか。 「今度資格試験を受けるんだよね。それで仕事がもらえるかどうか決まる大事なやつでさ。 もちろん勉強も頑張ってるけど、一応ゲンかつぎに神頼みもしとこうかな~ってことで。 勉強がうまくいって、試験に合格できますよーに!」 もう一度手を合わせて祈る格好をする。ゆっくりに祈るのも何かムカつくけど、まあごっこ遊びだし。 「ゆっ!ゆっくりききとどけたよ!!おにいさんはきっとごうかくできるよ!!」 お前が聞き届けるのかよ。こいつは神主兼巫女兼神様なのか? しかしたとえゆっくり相手と言えど、励ましの言葉をもらえるのは悪いものではない。 俺は少しだけ機嫌を良くすると、れいむに手を振って帰路についた。 その夜。寝る前に机に向かって勉強をしていると、窓をドンドンと叩くものがあった。 何だろうと思って開けてみると、そこには一匹のゆっくりぱちゅりーが。 「むきゅ~!!おにいさんがべんきょうのことでこまっていそうなけはいがしたから、おしえにきてあげたわ」 ……何だこいつ。あ、もしかしてゆっくり神社の差し金か? 学問成就を願った俺のところにゆっくりの中では頭の良いぱちゅりーを派遣し、勉強を手伝わせる。 それによって願いを叶えさせ、ご利益の評判を高めてお賽銭をもっと集める……と。 「お前、ゆっくり神社から来たのか?」 「むきゅ!?な、なんのことかしら?ぱちゅりーはそんなれいむ、ぜんぜんしらないわね!」 れいむなんて一言も言ってないのに……まあこれで間違い無さそうだ。 しかし人を助けて対価を貰おうというのは、ゆっくりにしてはなんとも殊勝な考えだ。 「むきゅ!とってもかしこいぱちゅりーがばかなおにいさんをかしこくしてあげるわ!ゆっくりなんでもきいてね!」 しかしもうちょっと口の悪くない奴を派遣出来なかったものか…… ぱちゅりーは文房具に混じって、机の上に鎮座している。気が散って邪魔だ。 ぱちゅりーの頭が実のところそんなに良くないことは知っているので、追い返しても良い。 しかし受験勉強でストレスの溜まっていた俺は、ちょっとだけ悪戯をしてみた。 「ふーん、じゃあここの問題がちょっと解らないんだけど。答え教えてくれないかな?」 「むきゅ!ぱちゅにおまかせよ!」 俺は使っていた問題集の中で一番簡単な問題をぱちゅりーに見せてみた。 五秒後 「むっきゅー!!むじゅむじゅーー!!」 何か変な声を出し始めた。それでも問題集にかじりつくように向き合うぱちゅりー。 しかし人間様の問題をゆっくりに解けというのは難儀な話だ。 「むっきゅーー!!むじゅむじゅーーー!!」 ぱちゅりーはそのまま溶けていった。知恵熱でも起こしたんだろうか。 机の一角に広がったぱちゅりー液を指ですくって舐める。甘い。 これは勉強で疲れた頭を癒すには良いかも知れない。少しは役に立ったな。 ◇ 後日、試験に無事合格した俺は、息抜きに林道を散歩していた。 博麗神社に学問成就のお礼をしにいったのだが、ゆっくりの方にもついでに寄ってやることにする。 ゆっくり神社にさしかかると、おばあさんがお賽銭を入れていた。遠くから様子を見てみる。 「おばあさん!!おねがいごとをいってね!!」 「そうねぇ……うちの畑が今年も豊作で、おいしい野菜が沢山売れますように」 「ゆっくりききとどけたよ!!おばあさんはおいしいおやさいをいっぱいとれるよ!!」 「あらあら、嬉しいねぇ」 おばあさんは朗らかに微笑みながら、れいむに手を振ってゆっくり神社を後にする。 ゆっくりは子供っぽいところがあるから、ああいうのは年寄りに受けが良いのかもな。 おばあさんの姿が見えなくなると、れいむの仲間らしきゆっくりが数匹周りから飛び出て来た。 「みんなおばあさんのおねがいきいた?」 「はたけをてつだうんだねー!!わかるよー!!」 「きっとちからしごとだからまりさがてきにんね!」 「ゆっ!ゆっくりまかせるんだぜ!!」 「ちーんぽ!!」 この件を一任されたまりさは、おばあさんの帰っていった方角に向けて走っていった。 ああやって参拝者の住居を特定してるんだな。 その仕事ぶりを見るため、俺はまりさに二重尾行を仕掛ける。 やがて林を抜け、まりさはおばあさんの家に着いた。おじいさんと二人暮らしをしているらしい。 二人とも家の中にいるのを確認すると、まりさはさっそく畑に侵入する。青々と茂った根菜はもう収穫寸前らしい。 しばらくゆーゆー言いながら物色するまりさ。農作業のやり方なんて知ってるのだろうか。 そう思ってみていると、突然大根を掘り返して食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 何してんだ、あいつは……初めからこれが目的だったのか? いや、おそらく神社のれいむの目的は、こらしめられるリスクを負わずに人間の食べ物を手に入れること。 お賽銭を使って経済に参加することで、人間に疎外されない社会性を獲得しようとしたのだ。 まあ、現実的に可能かどうかは別として。 しかしアホのまりさには、そんな(ゆっくり的に)遠大な計画は理解出来ないし、面倒臭い。 それより目の前に広がるごちそうの山を目の前にして、今すぐしあわせになることを選んだのだろう。 「ゆっゆっ!これめっちゃうめ!さいしょからこうすればてっとりばやいんだぜ!!れいむはばかだぜ!!」 バカがどちらかは一目瞭然だが。 俺は畑の被害が大きくならない内に現場に踏み込み、まりさを取り押さえた。 「ゆっ!?おにいさんなんなんだぜ!?ゆっくりはなすんだぜ!!」 「人の野菜を食う悪いゆっくりを見過ごすわけにはいかないな」 「ゆべえぇっ!しらないんだぜ!ここはまりさがみつけたからおやさいはまりさのなんだぜ!!」 ぎゅうぎゅうと両手で地面に押さえつける。 跳ねようとするまりさの力が伝わって来るが、人間の腕力からすれば大したものではない。 餡子を口からぶりぶりと吐き出し、悲鳴を上げながらしなびていく。 あんまりまりさがうるさかったからか、住居からおじいさんが出てきた。 「コラーッ、わしの畑で何の騒ぎだ!?」 「あ、すいません。害獣が畑を荒らしていたものですから、咄嗟に……」 「ああ、ゆっくりか。すまんね兄ちゃん、うちも畑の周りに柵を作らないといかんのぉ。 そのゆっくりはうちが引き取るから置いていってくれ。良い肥料になるんじゃよ」 ほう、それは知らなかった。最近の農家はゆっくりを肥料にしているのか。 潰れて動けなくなったまりさをおじいさんに引渡し、俺は林道へと引き返す。 まりさの餡子によって畑の土壌は更に充実し、立派な野菜が収穫されることだろう。 ◇ 引き返した俺は、再びゆっくり神社へと赴く。 れいむが「ゆっくりしていってね!!」と言うので、「はいはいゆっくりゆっくり」と返す。 「ゆっ!!このあいだのおにいさん!!」 「やあ。おかげさまで試験にも合格出来たよ」 「よかったね!おともだちにもゆっくりじんじゃをしょうかいしていいよ!! ところでおにいさん、とってもかしこいぱちゅりーをみかけなかった?」 「ん? いや、見てないな。見てたとしても、見ただけじゃ賢いかどうかなんて解らないよ」 「ゆー、そうなの・・・」 まさかぱちゅりーは家で死にましたとも言えまい。余計な誤解と揉め事が起きそうだ。 しかしれいむもこっそりと仲間を派遣している手前、大っぴらに「お前の家に行ったはず」などとは聞けないらしい。 ご利益要員が欠けたのは痛いだろうが、またどっかから補充すれば良いだろう。ゆっくりなんて幾らでも沸いて出る。 「おにいさんきょうもおさいせんちょうだいね!!」 「いや、今日は良いよ。特に願い事も無いし」 「そんなことないでしょ!!なにかあるはずだよ!!おさいせんいれてね!!」 「醜い神社だなぁ……ん?」 傷付いた顔の子供がとぼとぼと歩いてきた。俺は道を開けてやる。 れいむが子供に「ゆっくりじんじゃだよ!!ゆっくりしていってね!!」と声をかける。 子供は賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を叩いて願い事を言った。 「村のいじめっこがぶっ倒れますよーに!!」 どうやら虐められて怪我をしてるらしい。身体も大きくないし喧嘩では勝てないんだろう。 賽銭入れて祈るなら博麗神社の方が……と思ったが、確かに博麗神社までの道のりは少し険しくて子供の足では辛い。 とはいえゆっくりにも縋る気持ちなのだろうか。 「ゆっくりききとどけたよ!!あくはせいぎにやっつけられるうんめいなんだよ!!」 「うん……ありがとう……」 れいむの言葉を気休めと受け取って力なく笑うと、少年はトボトボと村に帰っていった。 助けてやりたい気もするが、子供の喧嘩に大人が出て行くってのもね。 周囲の茂みがガサガサと揺れた。仲間ゆっくり登場かと思ったが、出てこない。俺がいるからか。 「おにいさん!!ようがないならさっさとどっかいってね!!」 れいむが体を膨らませて怒鳴ってくる。俺ははいはいと答えてれいむの視界から消え、近くの茂みに隠れて様子を見る。 俺の姿が見えなくなったのを確認すると、何匹かのゆっくりが茂みから出てきた。 「こんかいはわるものたいじだよ!!」 「わかるよー!みょんとちぇんがいくんだねー!」 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「ふたりにかかればにんげんなんていちころね!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 子供の帰っていった方に走っていくみょんとちぇん。 俺も気付かれないようにその後ろをこっそりついていく。暇な奴だな、俺も。 結構歩いて村に辿り着く。こそこそと住人の様子を見て回っているゆっくり二匹。 やがて、いかにもいじめっ子ですといった風貌の、体格の大きな子供を見つける。 「あいつなんだねー!わかるよー!」 「ちーんぽ!」 「ちぇんがうしろからきしゅうするから、みょんがとどめだよ!」 「でかまら!」 気合の掛け声だろうか。 打ち合わせをするやいなや、ボサっと道を歩いていたいじめっ子の後頭部に向けてちぇんが苛烈な体当たり。 「いだっ」と呻いたいじめっ子は軽い脳震盪でも起こしたのか、その場に手をついてしまう。 そしてみょんが追撃。背中の上でぼふぼふ跳ね始める。 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「痛いっ、痛い! な、何なんだお前ら!?」 「ゆっくりしぬんだねー!わかるよー!!」 ゆっくり達の猛攻は続く……が、最初の一撃以外はあんまり効いてるとは思えない。 肩甲骨の間あたりで飛び跳ね攻撃を繰り返していたちぇんが、しっぽを掴まれて地面に叩きつけられる。 「ゆべっ!!なにずるのー!!ゆっくりやめてよー!!」 「はぁ? お前らが先に喧嘩売ってきたんだろうが。何やったってセイトーボーエイだぜ」 「ち、ちーんぽ!?」 みょんを払いのけ、立ち上がる少年。その瞳には苛立ちと、面白いおもちゃを手に入れたという好奇の光が輝いている。 ちぇんはしっぽを掴まれたまま、「ぎにゃあああああああ!!」と叫びながら振り回されている。 目からあふれ出る涙が周囲に飛散する。隠れているこっちにも飛んで来たので、顔についたのを指で取って舐める。甘い。 その勢いでびたーんびたーんと地面に叩きつけられるちぇん。その度に餡子を吐き出し、地面に放射状の餡痕が残る。 少年は鞭のようにちぇんを振ると、近くでおろおろしていたみょんを横に薙ぎ払った。 「ぺにずっ!?」 「ぎゃはははは! 弱っちいゆっくりごときがおれさまに勝とうなんて、百年早いんだよ!」 「やめでねー!!たずげでねー!!わからないよーー!!!」 吹っ飛ばされたみょんが、俺の隠れている近くの茂みに突っ込む。ギクッとしたが、何とかばれなかったようだ。 ちぇんは餡子を吐き出して少し軽くなり、速度を増して引き続きひゅんひゅんと振り回されている。 「やめてねええええーーー!!わからないよぉぉぉぉーーー!!!」 「あははは、これ面白いな。そうだ、お前うちの飼い猫の遊び相手にしてやろうか。 何か見た目も猫っぽいことだし、あいつもきっと喜ぶぞ。楽しみだな!」 「ゆぅぅぅうーーー!ちぇんおうちかえりたいよーーー!!!」 言葉とは裏腹に残酷そうに笑う少年の顔を見て、飼い猫もきっと彼に似て大きくて乱暴なんだろうなと思った。 その時、茂みに埋まっていたみょんが颯爽と飛び出す。その口には折れた枝がくわえられている。 ちぇんを振り回して遊ぶ少年の足元に、あっという間に駆けていき……そのまま枝の尖った折れ口で、少年の足を突き刺した。 「ちぃーーーーんぽ!!」 「い゛っ……痛っでえぇぇぇぇぇーー!!」 「みょーん!たすけてくれたんだね!!わかるよーー!!」 「ちんぽちんぽちーんぽ!」 足の痛みに、思わずちぇんを離してしまう少年。地面に落ちたちぇんは、嬉しそうにみょんの元に擦り寄る。 少年の足を見てみると、結構傷が深いみたいで血がどくどく溢れ出ている。あれは跡が残りそうだな。 ……っていうか、ちょっと洒落にならなくなってないか? 見てていいんだろうか? 血まみれの枝をくわえてなおも戦闘態勢のみょんを、泣きそうな顔で見ている少年。 やがて足を引きずりつつも、全速力で泣きながら逃げていく。 「いでぇ、いでぇよぉぉぉぉーーー!! お父ちゃーーーん!!」 「やったねーー!!ちぇんたちがかったんだよ!!わかるよーーー!!」 「ちーんぽ!!」 手負いの二匹はぴょんぴょん跳ねて勝ち鬨を上げている。 確かにあの怪我では、いじめっ子もしばらくは他の子供達に乱暴など出来ないだろう。 だがしばらくもしない内に、先ほどのいじめっ子など比べるべくもない屈強な男が現れる。 「てめえらか、うちの坊主に怪我させたゆっくりは!!」 「ちんぽ?」 「またわるものとうじょうなんだねー!わかるよー!でもちぇんとみょんならまけないんだよーー!!」 いじめっ子を撃退して自信をつけたのか、勢いよく突進していく二匹。 しかし大人の男に勝てるはずもなく、木の枝を突き刺す前に順々に蹴り飛ばされてしまう。 「ぢんっ!?」 「ゆびゅっ!なんでえええーーー!わからないよぉーーー!!」 「饅頭ふぜいが、人間様を傷付けやがって……あの世で後悔しやがれ!!」 男は少年のように甚振ることなどなく、躊躇せず二匹のゆっくりを確実に踏み潰していく。 始末を終えた男は、村の広場に大人たちを集め、何やら話し合いをしていた。 「ゆっくりが人間を襲っただって? 信じられないなあ」 「しかし現に、うちの坊主が木の枝で足を刺されてるんだ。あれじゃ当分は田んぼにも入れねえ」 「うーん、確かに子供や年寄りなら怪我をさせられることもあるかもな」 「どうする? 人間に勝てると思い込んだゆっくりが人を襲い始めたら……」 「そんな危険な饅頭がいたんじゃ、弱い者はおちおち村を出歩けもしない!」 「仕方ない、このあたりのゆっくり一斉駆除しよう。決行は明日の午後、子供や老人には外出を控えさせよう」 さあ、大事になってまいりました。まあ当然の成り行きですけどね。 ゆっくり神社のおかげで大量のゆっくりが死ぬことになってしまった。 まあ神社自体はこの村から離れた所にあるから、そこまで駆除の手が及ぶことはないだろうが。 しかし酷い話だ。俺は家に帰った。 ◇ 数日後。ゆっくり神社は人員の欠損と補充を繰り返しながら、 俺のような珍しいもの好きの人間相手にそこそこ繁盛してるみたいだった。 何度か様子を伺ってみたが、神社の運営を担当するれいむに、周囲の仲間がごはんを運んでくるらしい。 その見返りに、お賽銭が溜まった暁にはれいむがおいしいお菓子を振る舞うという筋書きだろう。 そしてついに、充分なお賽銭が溜まったとれいむが判断したらしい。 れいむは達成感に満ちた笑顔で、お堂から出てきて賽銭箱にすりすりしている。 「おかしをかいにいくよ!!ゆっくりはこをあけるよ!!」 ゆっゆっと言いながら、箱の周りを何週かするれいむ。何をやっているのか。 「どうやっであげるのおぉぉぉおおおぉぉぉぉ!?」 考えてなかったんかい。神社の巫女さんがやってるんだから何とかなるだろうぐらいの気持ちだったんだろうな。 引っ繰り返そうと体当たりをするが、元々が高さがなく横に広い形状であった上、 皮肉にも小銭が溜まって重量を増した箱はそう簡単に倒れない。 ゆぐゆぐと泣いているれいむ。開けてやろうかしらと思い始めた頃、性悪そうな一人の青年が参拝にやってきた。 れいむを無視して賽銭箱に小銭を投げ入れると、ぱんぱんと手を叩く。 「もっといっぱい虐待できますよーに!!」 「ゆ!?おにいざん!このはこをあげでね!!!」 巫女としての務めも忘れ、泣き声で参拝客に懇願するれいむ。 青年はにっこりとれいむに微笑みかける。 「いいよ、お安い御用さ。でもタダでは引き受けられないなあ」 「ゆ゛!?」 「お願い事をする時は何が必要なんだっけ?」 「ゆ・・・おさいせん・・・でもおさいせんはそのなかだよ」 「じゃあ僕が箱を開けたら、僕にお賽銭をくれるのかい?」 「いいよ゛!!はやぐゆっぐりあげでねぇ!!!」 箱を開けることしか考えていないれいむ。青年は手に力を込め、固く閉められていた箱の蓋を外す。 れいむは感激の涙を流す。 「ゆぅ~~!!おにいさんありがとう!!」 「じゃあ約束どおり、お賽銭はもらっていくね」 「ゆ?」 持参した袋に箱の中身の小銭をじゃらじゃら流し込んでいく青年。 感激の表情のまま、呆然と眺めているれいむ。 「じゃあね!」 「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅ!!おにいざんなにずるの゛おおぉぉぉぉぉ!!! れいぶのあづめだおざいぜんがああぁぁぁぁぁ!!」 「大丈夫、これはちゃんと里の自然保護基金に寄付しておくよ。 買い物しようなんてらしくないこと考えず、森の中でゆっくりしていってね!」 疾風のように去っていく青年を、れいむは追いかけることも出来ない。 俺が捕まえるべき? いや、別にれいむの肩持つ気無いし。 それにあの青年は、本当に森のためにお金を使うことだろう。私利私欲のためではなく、 ただゆっくりを絶望に突き落とすことだけを目的に行動する人種のようだから。 まあ自然保護活動にとっちゃ、微々たるものだろうけどね。あんなはした金。 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・なんでぇ・・・れいぶのおさいせん・・・」 ゆっくり神社の境内でれいむが泣いていると、周囲から仲間のゆっくりが怒った表情で飛び出して来た。 れいむだけのお賽銭じゃないんだよね。 「ちょっと!どういうことなのれいむ!!」 「はこをあけるためにおさいせんをあげちゃうなんてばかなの?しぬの?」 「ゆ゛っ!?ちがうよ、れいむは・・・」 「ちがわないんだねー!わかるよー!」 「にんげんのたべものをいっぱいくれるってやくそくはうそだったんだね!!」 「いままでまりさたちをだましてごはんをはこばせてたんだぜ!!ゆるせないんだぜ!!」 「にんげんのおねがいにつきあわされてゆっくりできなかったわ!」 「れいむはぜんぜんゆっくりできないゆっくりだね!!」 「このうすぎたないばかゆっくり!!いきてるかちないよ!!」 「「「「「「ゆっくりしね!!!」」」」」 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」 何匹ものゆっくりから袋叩きに遭うれいむ。 参拝客に気に入ってもらうために綺麗にしていた髪や肌もボロボロになっていく。 暴行に参加していないゆっくりは、れいむの収まっていた手作り小屋に体当たりして破壊し、 屋根に使われていた葉っぱや草をむーしゃむーしゃとやっている。 やめでぇぇぇというれいむの声も、罵声と悲鳴の中に掻き消える。 十数分に渡る暴行が続いた後、完全に神社を破壊しつくしたゆっくり達は、それぞれ周囲に散っていった。 残ったのはゆっくり神社本堂のわずかな建材(食べられない部分)と空っぽの賽銭箱、 ボロ雑巾のようになった虫の息のれいむだけだった。 リボンも解けていてかわいそうだったので、俺は出て行って結んでやった。めんどくさいから固結びだけど。 「ゆ・・・・おにいさん・・・・・・」 「やあれいむ。お賽銭いるかい?」 「いらないよ・・・・・もうおかねはいやだよ・・・・・」 「あ、そう」 清貧ってやつかな。本物の方の巫女にも見せてやりたいぜ。 俺はれいむの前に立って、手をパンパンと叩く。 「早いとこ給料上がりますよーに!」 そして一礼すると、ゆっくり神社跡に背を向け、家に帰る。 饅頭には神も仏もいないよね。 おしまい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1811.html
※注意 現代ゆっくりモノ。 てんこかわいいよてんこ。 オリジナル設定あり。 若干の愛で要素を含む。 変なところに着陸しました。 たまの休みに家でごろごろしていたら、午後になっていた。 寝すぎて頭が痛いので、縁側に出て一服することにする。 夏の盛り。 陽射しは激しいが、吹き込む風は気持ちいい。部屋の淀んだ空気を散らしてくれる。 煙草を一本、灰にし終える頃には頭痛は引き、動き出そうという気分になってきた。 ところでさっきから気になっていたんだが、 おれの庭でちょこまかしているあいつは何だ。 『虐待お兄さんとてんこ』 俺の家は和風の一軒家だ。 家そのものよりも庭のほうが広い。 これは俺の趣味だが、実益も兼ねている。 正門を開けておけば、ゆっくりが迷い込んでくるからだ。 俺はゆっくりの虐待を趣味にしている。 特に、家屋のっとりを制裁する名目での虐待が好きだ。 別に善良なゆっくりをなぶるのも嫌いじゃないが、気分のノリが違う。 今日も遊び相手にありつけた事を喜びながらしめしめと近寄ってみると、どうも様子がおかしい。 普段ならゆっくりれいむかまりさあたり、まれにぱちゅりーかちぇんが混ざる程度なのだが。 庭に迷い込んでいるそいつには胴体があった。 胴付きといえばゆっくりれみりゃだが、国家を挙げて絶賛根絶中のあれが街中を歩けるわけがない。 ではどういうことだろう。俺は注意しながらそいつの背中に忍び寄った。 そいつは、「おいィ……、おいィ……」と呟きながら、なにやらしゃがみこんでいる。 「おい」 俺が呼びかけると、そのゆっくりは驚きに体を震わせた。 ゆっくりとこちらを向く。 ぱっと見は普通の幼女に見える。 つば付きの帽子に桃の飾り。エプロンドレスにも似た服装。 しめ縄の巻かれた岩を模したと思われるポシェットを下げている。 ただ特徴的な面構えと、冗談のような頭身が、そいつがゆっくりであると告げていた。 そいつはドレスの前掛け部分を両手で握って、なにやら戸惑っている様子だったが、 思い直したように絶壁の胸を張ると、短い腕をぱたぱたいわせつつ不機嫌そうに顔を歪めて威嚇してきた。 「なにいきなりはなしかけてきてるわけ?」 生意気な口を利く。 俺は腕を組んで高圧的に見下してみた。 そいつは片手をこちらに向け、ぶんぶんと上下させながら啖呵を切る。 「ふいだまとかあまりにもひきょうすぎるでしょう? じぜんにおどかされるとわかっていれば こいきにたいしょできますが、 わからないばあいびっくりするんですわ? お?」 何言ってんだこいつ……。 見たことのないゆっくりだが、順当にむかついてきたぞ。 こちらが黙っていると、ゆっくりは慌てた様子で言葉を続けた。 腕を上下させるのはしゃべるときの癖らしい。 「てんこがおもうに、てんこはおこっているのではないか? ここですなおにしゃざいできるやつはほんのうてきにちょうじゅたいぷ。 はやくあやまっテ!!」 俺は右足を高々と振り上げると、 殺すつもりで奴の脳天に踵を打ち下ろした。 ゴムのような感触。奴は一度地面に叩きつけられ、反動で跳ね上がった。 「おいィィィィィィィィィ!!!」 そのまま仰向きに地に落ちる。 くぼんだ頭を短い両手で押さえるようにして、足先をぴんとのばして痙攣中。 よい泣きっ面だ。 「てんこの うちょうてんが ちめいてきなんだが……」 てんこ。 聞かない名だ。希少種か? もしかしたら学会にも報告されていない新種かも……。 でもゆっくりの学名に名前残してもなー。 俺が考え事をしているうちに、てんこは元通りになり、立ち上がっていた。 おいィ! おいィ! とわめきながら、俺を手で突いてくる。 てんこの体長は50センチぐらいだし、力はないようでまるで効かないが瑞々しい敵意は感じられた。 とりあえず詰問する。 「お前ここで何をやっていた?」 「おいィ! お……、いィ……」 てんこはおとなしくなった。 前掛けを握ってそっぽを向く。 俺はてんこのしゃがみこんでいたあたりを注意して調べてみた。 何か、もじゃっとしたものが地面から生えている。 掘り起こしてみるとそれは雑草だった。 そこらへんに生えていた草を引き抜き、上下逆にして植え直したらしい。 庭の広範囲にわたって土から根っこが飛び出している光景は、控えめに見てもキモイ。 俺は振り返りざまのローキックを見舞った。 側転→側頭部痛打→仰向けに転倒→短い手で頭を押さえて号泣、と美しい経緯を辿るてんこ。 俺は庭を戻すように言い添えて、家へと戻った。 苦々しいものだ。 虐待家として、いたずらをしたゆっくりを見逃すというのは。 だが体付きを殺るのは気が引けるというか、人っぽさが強くて尻込みしてしまった。 くそぅ。 縁側から家に上がり、ちゃんと後始末をしているか振り向いた。 「おいィ……っ、おいィ……っ」 てんこはすぐそこ、縁側の板にしがみつき、片足を高く上げて縁側にかけ、よじ登ろうとしていた。 俺はてんこを蹴り落とした。 「おいィィィィィィィィ!!」 無常にも落下するてんこ。視界から消える。 立ち上がり、再び視界に入ったてんこは泣きながら地団太を踏んだ。 「たかだいはめとかはずかしくないの? きたないさすがひゅーまんきたない!! はやくあやまって! ほとけのかおがさんどまでというめいせりふをしらないのかよ!? まじでおやのおくばのけっこんゆびわのねっくれすをゆびにはめてひそうひひそうけんでばらばらにひきさいてやろうか!!」 すごい剣幕で縁側をバンバン叩きだす。 相当トサカに来たらしく、たどたどしい滑舌で憤怒の長台詞を矢継ぎ早にまくし立てていた。 「びょういんでえいようしょくをたべるはめになりたくなければわびのひとつもいれるひつようがあるのはかくていてきにあきらか!」 だいたい次の台詞が想像できたので、俺は居間からお菓子を取ってきた。 てんこはしめしめ顔になり、俺に向かって短い両手を差し出していた。 「せいじろうねぎとろでいい」 「ごめん。ナチョスしかねーや」 そういって三角形のチップスとソースの皿を差し出してみる。 てんこはそれを払いのけた。 「おい!」 「なちょすとかてんこのたべものじゃないんだが?」 「!! 終わったぞテメェ!!」 けして踏み荒らしてはならない聖域に土足で踏み込んだてんこの頭をわしづかみにして持ち上げる。 おいィ! おいィ! と暴れまくるてんこを吊ったまま地下の虐待室へ向かう。 無名といえど『ゆ・即・惨』の理念に集いしゆっくり虐待士の一員。 ここまでコケにされて黙っていられるかよ! ※ 完敗だった。 ゆっくりてんこ。 別名『死なないてんこ』 桃まんで出来た体は極端な弾力性を餅、打撃は通用しない。 刃物ならば比較的容易に切断できるものの、れみりゃ顔負けの再生能力が瞬く間に傷を癒してしまう。 中身が白餡であることを確認するのがやっとだった。 ならばと精神的虐待に切り替えてみれば、再び壁にぶつかることになる。 ゆっくりてんこは、究極の「かまってちゃん」なのだ。 それがコミュニケーションであれば、プラスでもマイナスでも構わない。 怒りも悲しみも痛みも、喜びも楽しみも快感も同じ。数値が大きければ大きいほど良い。 そのときは苦しんでいるようでも、まるで懲りたようすもなく接してくる。むしろ懐いている。 ドMに対して虐待はあまりにも無力だった。 不毛な虐待の最中、てんこ種が悪戯を好むことを発見した。 悪戯は極めて些細な、子供の悪戯にも満たないものだ。 それをとがめると逆切れして、謝罪と賠償を要求するのがパターンらしい。 だが、そこで反応してしまっては相手の思う壺。 やつが真に求めるものは、コミュニケーションなのだ。 夏が終わりに差し掛かった頃、俺はゆっくりてんこをリリースした。 打つ手を失ったためである。 それでも、てんこは俺の家にたびたび訪れた。 かまってくれるおじさんと認識されたためか、足元にいる事が多くなった。 蹴り飛ばせば「おいィ!」が聞けるが、すぐ機嫌を直して戻ってくる。 つかず離れずの距離をぐるぐる走り回っていたり、隙を見せたこちらの股下をくぐっていくこともある。 時には小脇にタッパーを抱えてやってくることもあった。 タッパーには肉じゃがだったり、芥子レンコンだったり、おかずが入っていた。 てんこの差し入れだ。どうやって調達したのかはわからない。 なめるんじゃねぇ、と叩き落とすと、 「おまえにてんこの辛子煮のなにがわかるっていうんだよ!」 といって地団駄を踏みつつ示談に持ち込もうとする。 「ほうぎょくでいい」 蹴った。 もういろいろと限界だった。 「おいィィィィィィィ!」が耳から離れずに寝不足になった。 縁側で茶を啜りながら、俺は知人のゆっくり虐待の名士にてんこを引き取ってもらおうと考え始めていた。 俺の庭を我が物顔で歩き回るてんこ。 忸怩たる思いでそれをにらみつける。 てんこはどこからか調達してきたゆっくりをししおどしの下に固定しようと試行錯誤している。 同類という意識はないらしい。「やめてね! やめてね!」の哀願もどこ吹く風だ。 ゆっくりを固定する道具をさがして、庭をうろつきまわる。 てんこは植木台のそばを通り過ぎる際、大げさなほどに遠回りをした。 思わず立ち上がり、湯飲みを落とした。 愛用の湯飲みが割れたが、そんな事はどうでもいい。 天啓が舞い降りた。 ゆっくり虐待神は俺を見捨てはしなかったのだ。 汗ばむ掌を強く握りこみ、はやる気持ちを押さえ込んで再び座る。 てんこが何事かと俺を見て、おいィ……? と呻いた。 見ていろ。 俺のゆっくり虐待人生の集大成ともいえる虐待をお前に味あわせてやる! ※ 数日後の昼過ぎ。 俺が息を潜めて待っていると、おいィ、おいィ、と呻きながらてんこが現れた。 てんこはてくてくと家のほうに向かって庭を横切り、その途中であるものを見つけた。 庭の地面から縦に生えた丸太の上に、普通はゆっくりの監禁に使う透明ボックス。 その中には、ねぎとろの軍艦巻き。 そう。 『せいじろうねぎとろ』である。 「おいィィィィィィィ!? おいィィィィィィィ!?」 駆け寄るてんこ。透明な箱をカリカリしてなかのネギトロを手に入れようとする。 その動きが止まった。 注意書きに気づいたようだ。 『てんこへ おたんじょうびおめでとう これはおじさんからのぷれぜんとだよ でもおじさんがかえってくるまでさわらないでね やくそくだよ』 あそこにはそう書かれている。 ゆっくりに誕生日があるかどうかはしらないが、どうでもいいことだ。 さあ、さっさとあけてトラップを発動させるがいい……! 多少ためらうかとも思っていたのだが、 てんこは右、左、右と周囲を確認すると、何の躊躇もなく箱を取った。 かたん。 透明箱に仕掛けられていた罠が発動した。 てんこはネギトロの箱を抱え、何とかあけようと四苦八苦している。 その背後で、ネギトロ台になっていた丸太が垂直に持ち上がっていく。 高く、ゆっくりと、3メートルほど持ち上がり、丸太は停止した。 てんこが、影に気づいて顔を上げた。 いつの間にかそびえ立つ丸太に首をかしげる。 「おいィ?」 その間に、丸太はゆっくりと倒れていった。 てんことは逆の方向へ。 そこには植木鉢の並んだ台があった。 「おいィィィィィィィィィィィィィィ!!?」 慌てて止めに入ろうとするてんこ。 その目の前で、丸太が植木台を真っ二つに叩き折る。 けたたましい破壊音と共に、弾丸のように打ち出される植木鉢。 多くは家屋敷のほうへ。 「おいィ! おいィィィィィ!!」 今度は鉢を追うてんこ。 間に合うはずもなく、植木の砲弾は直線、あるいは放物線を描いて家屋に着弾した。 ある鉢は引き戸を打ち砕いてガラス片を撒き散らし、 ある鉢は壁面をしたたかに打ち据えて砕け散り、 またある鉢は屋根を抜いて室内へ。 「おいィィィ! このままではてんこのじゅみょうがすとれすでまっはなんだがあああああああ!?」 てんこはすでに泣きが入り、顔面蒼白で帽子をかきむしっている。 だが崩壊の連鎖は終わらない。 ガラスが割られたことで防犯装置が働き、大音量の警報が鳴り響いた。 警報は庭中に響き渡り、塀の外にも聴こえているはずだ。 「おいィィィィィ……。おいィィィィィィィィ……ィィ……」 てんこは過呼吸をおこし、家を前に膝から崩れ落ちる。 瓦が一つ、滑り落ちた。 それを皮切りに、植木鉢の着弾を受けた周辺の瓦が雪崩を打って滑りだした。 「おいィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」 瓦の集団投身自殺。 機関銃のような連続的な破壊音。 地に落ち、砕け散った残骸が砂利の如く敷き詰められる。 「あ……、ああ……。おじさんのおうちがぁぁぁ……」 『てんこ……』 俺の声が響き渡り、てんこは身を震わせた。 事前に録音しておいた台詞がスピーカーから流れ出す。 『残念だよ。言いつけを守れなかったんだね……』 『そんな悪い子には、プレゼントはあげられない』 ぷしゅん、と空気音がして、てんこの持っていた透明箱が開いた。 ネギトロが、 空へと。 「おいィ……」 透明箱から打ち出されたネギトロの皿が、 昼過ぎの黄色がかった青空を飛んでいく。 きれいに、くるくる回りながら。 「あっ、あっ…………」 てんこは操られるように立ち上がり、空を見上げたまま数歩、歩いた。 その視線の先で、空を駆けるネギトロの皿がゆっくりと傾いていき、 バランスを崩した皿は急激に失速して高度を落とし、 その動きによって皿から離れたネギトロは風圧に負け、空中分解した。 遠くで皿が割れる音がした。 立ち尽くしていたてんこは頭を抱え、 糸が切れたように、 「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 絶叫を残して、そのまま後ろに倒れこんだ。 「いいいよっしゃああああああああああああああああ!!」 俺もまた叫んだ。 しげみから飛び出し、学生時代ぶりの全速力でてんこの元に駆けつけた。 地面に転がるてんこを指差して、思い切り笑った。 てんこは足先を痙攣させ、口からはネクターの泡を吹き出していた。 傑作だった。 膝を叩いて笑い、のけぞって笑い、最終的には地面を転がりまわって笑った。 やったのだ。 あの強敵を、ゆっくりてんこに文字通り一泡吹かせた。 『てんこのささいな悪戯を、大事に発展させる。』 俺が思いついた対てんこ用の虐待だった。 ちゃちな悪戯でびくびくしているてんこの小胆さを突く作戦。 極めて痛みを伴うやり方ではあったが、効果は抜群だ。 ゆっくり虐待士としての俺の手腕も捨てたものではなかった。 俺はかすかに感じる後味の悪さを押し流すために必要以上にはしゃぎまわった。 一生分笑ってすっきりした俺は、てんこを起こしにかかった。 俺には考えがあった。 こいつを、ゆっくり虐待の助手にしようと考えていた。 ゆっくりてんこは他のゆっくりほど悪さを働くわけではないし、ペットのように世話をしなくてもいい。 虐めていれば懐くのだ。こんなに扱いやすいやつはいない。おれによし、おまえによし、だ。 世にも珍しい、ゆっくりてんこをつれた気鋭のゆっくり虐待士。 そのイメージに胸を膨らませながら起きないてんこの頬を叩いた。 てんこは死んでいた。 ※ たまの休みに家でごろごろしていたら、午後になっていた。 寝すぎて頭が痛いので、縁側に出て一服することにする。 夕陽に染まる秋の雲。 庭の木々も紅葉し、一面の秋模様だ。 もう少しすると落ち葉の始末に追われることになる。 そうなったら焼イモでもするか。 集めた落ち葉にホイルで包んださつま芋を仕込み、火をつけるさまを思い浮かべる。 俺はそこに、あのてんこの姿を幻視した。 てんこの死因はショック死だった。 些細な悪戯を好んだてんこだが、それは本人にとってはギリギリのスリルだったらしい。 意に反して深刻化した悪戯の被害に、限界を著しく超えたストレスを受けてしまい、寿命がマッハだった。 そういうことのようだ。 あの後、駆けつけてきたセコムの人にゆっくりの悪戯だと説明したが、 てんこの遺体を回収しようとしたので、あわてて嘘をついた。 こいつは自分の飼いゆっくりなんです、と。 軽く怒られたが、てんこを持っていかれずにすんだ。 しばらく待っても生き返らなかったので庭の隅に埋葬した。 「ゆ! とってもいいおにわだね! ここをれいむたちのゆっくりプレイスにしようね!」 「しゅごいしゅごい! れいみゅたちゆっくりできるね!」 開けっ放しにしていた正門から、野良ゆっくりが庭に入り込んだ。 俺はゆっくり用ごみ袋を持って近寄った。 「ゆ? おじさんだれ? ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだからね! さっさとでていってよね!」 「うしぇろ♪ うしぇろ♪」 ニヤニヤしているゆっくり親子をゴミ袋に放り込むと、袋の上から踏み潰す。 「いやめでえええぇぇぇぇぇぇぇぇ! どうじでごんだごど!」 「むぎぃ! ぷぎょい! いだいいいい!!!」 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおお!!」 透明な袋の中、角の部分に追い詰められた赤ゆっくりがひしゃげていくのを見る。 ほんの少し、心が晴れた気がした。ずいぶん久しぶりな感情。 ――てんこを埋葬してからというもの、とんと虐待欲が湧かなかった。 どうやら俺は、てんこを失ったことが少しだけショックだったらしい。 なにも死ぬ事はなかった。 そう思わせる何かが、てんこにはあったのだろう。 煙草の灰が落ちて、我に返った。 どうしてしまったんだ俺は。 いまさら悔やんでも仕方がない。ゆっくりに負わされた傷はゆっくりに癒してもらうことにしよう。 袋の中で生きていた子ゆっくりを手に取る。家族の餡子にまみれて酷い様だ。 俺に対して見当違いの恨み言をまくし立てるそいつを、死なない程度に握り締める。 こみ上げる餡子を吐き出すまいと、泣き顔を赤黒くして耐える様はなんとも滑稽で、 それでも俺は、どこか楽しみきれないでいた。 ふいに夕陽が赤みを増す。 西の空を仰げば遠く、山の端に太陽が沈むところで。 鮮やかな夕映えの中に、ゆっくりのうめき声がささやかに響いていた。 <愛憎のゆっくりてんこ 終> このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1355.html
うどんげファーストミッション 「と、言うことです。八意さん、今回も協力していただけますでしょうか。」 「うーん・・・」 鈴仙が客間の前を通った時、このような会話が耳に入った。 どうやら加工所の職員が来ているらしい。 永琳もゆっくりの研究を行っているので、時々協力を持ちかけられることがあり、その時は鈴仙も手伝ったことがあった。 鈴仙は別に気にとめることもなく部屋の前を通り過ぎた。 翌日鈴仙は師に呼び出された。 「お呼びですか?」 「昨日加工所の人が来たんだけどね」 いきなり本題から切り出した。 「ゆっくりをもっと効率よく苦しめる方法はないかって言うのよ」 ゆっくりに苦痛を与えると味が良くなるというのは周知の事実で、加工所では職員達がゆっくりにマニュアルに沿って「加工」を加えている。 しかし、それはかなり手間がかかる工程であり、その過程で他のゆっくりに恐怖を与えるために味が悪いまま殺される(見せしめや子殺しなど)ゆっくりも出るため、商品の等級にばらつきが出るそうだ。 現行の手法が行き詰まっており、永琳に協力を求めたらしい。 「苦痛なんてのは精神から来る物だから、別に直接痛めつける必要はないわけよね」 「つまり精神に働きかければよいと?」 「ご名答。幻覚剤をゆっくりに飲ませてバッドトリップさせてみたんだけど、ちゃんとおいしくなったわ」 「でもね、そんな薬はゆっくりなんかに使うには高価すぎるし、第一残留した時は食べた人間がトリップしちゃうわ。私は平気だけど」 どうやら師匠も行き詰まっているらしい。 「そこでウドンゲ!」 鈴仙に向き直る。 「あなたにこの課題は任せるわ」 「えっ!?」 思っても見なかった言葉にうろたえる鈴仙。 「わたしは本来薬品専門なのよ。精神についてはあなたのほうが詳しいんじゃないかしら」 たしかに自分は狂気の兎。自らの瞳で何人もの人や妖怪を狂わせてきた。しかしゆっくりの精神構造なんてよくわからないぞ、と頭の片隅では思っていたが 「わかりました!やります!!」 ようやく自分を認めてくれた、と言う喜びの方が大きかった。 「じゃあ頼んだわよ」 とやけにあっさり引っ込んだ師匠。しかし鈴仙はいまだに感慨に耽ったままだった。 さて、引き受けはしたもののどうすべきか。 まずその辺のゆっくりを探そうか。 竹藪に入ってしばらくうろつくと、ゆっくりの巣を見つけた。 「ゆー!ゆー!」「ゆっくりごはんにしようね!!」 どうやら何匹かの家族らしい。 「お邪魔しまーす」 勝手に入り込む鈴仙。 「ゆ!」「おねえさんだれ?」「ここはれいむたちのおうちだよ!!おねえさんはゆっくりできるひと?そうじゃないならゆっくりでていってね!!!」 テンプレ通りの言葉が返ってくるが無視する。ざっと見たところゆっくり達はすべてれいむ種で、親一匹、中程度のものが一匹、赤子が二匹と割と小さな家族だ。 「ずいぶん数が少ないけど食べられちゃったの?」無神経に聞いてみる。 するとゆっくり達はたちまち目に涙を浮かべ始めた。やっぱりそうか。 「大変だったわねー」と心にも無いことを言ってみる。 「れいむのこどもたちはれいむのめのまえでたべられちゃったよ・・・だからこのこたちはれいむがちゃんとまもるよ!!」 あっそ。そこでふと思いつく。 (こいつらに私の眼は効くのだろうか?) 思い立ったら吉日生活!先手必勝で親れいむを真紅の瞳で見つめる。 「ゆ?ゆ!Yu・・!?」 どうやら効果はあるらしい。 「い"や"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!おがあざんをゆるしでええええええ!!」 いきなり絶叫した。子供の幻覚でも見ているのか? 「ゆ!?」「おかあさんどうしたの!?」「げんきだして!!」 子供達も母の尋常ではない様子に狼狽している。一匹なにか変だが。 親ゆっくりがいきなり現実に帰ってきたような顔になる。 「ゆうううう!?こんなにけがをしちゃってどうしたの!?」 まだ幻覚を見ている。それはあなたの子じゃなくてあなたが取ってきたエサですよ。 「こいつらがあなたたちにけがさせたんだね!!ぜったいにゆるさないよ!!こんどはれいむがまもるよ!!!」 「ゆ!?」「おかあさん!?」 あーあ。子供に敵意剥き出しにしてるよ。 「ゆ"っ"く"り"し"ね"え"え"え"え"え"!!!」 凄い形相で子供達に飛びかかる。ああこれ基地外の顔ですわ。 「や"め"でお"があ"ざあ"あ"あ"あ"ん」「い"や"あ"あ"あ"あ"あ"」「ごはんに"じよ"う"よ"お"お"お"お"」 やっぱり一匹頭の弱い子がいるがこれは家族を喰われたことによるPTSDなのか? 「じん"じゃ"え"え"え"え"え"え"え"!!!」 親が赤子二匹に噛みつく。 「い"だい"よ"お"お"お"お"お"!!」「や"め"でえ"え"え"え"え"!!」 そのまま咀嚼され、飲み込まれる。赤子達は「ゆ"っ!」「ぐぎゅ!」とか細い断末魔を上げた。 「はぁはぁ・・・うめぇこれめっちゃうめぇ・・・」「ずるいよおかあさんだけおいしいものたべて!!ぷんぷん!!!」 ああだめだこの子。ほっといてもそのうち死んでたな。 「おいしそう・・・」親が一匹残った子に振り返る。もはや目的がすりかわってるあたり流石ゆっくり。 「はやくれいむにもたべさせあ"ぎゃ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」 ああ、痛みはちゃんと感じるんだな。と思っている合間に見る見るうちに母の腹に収まる子。母胎回帰できてよかったね。別の袋だけど。 「やっぱりうめえ・・・」と言った後、こんどは自分の子だと思っているらしいエサの方を見る。 「ちょっとたべさせてね!!!だいじょうぶだよ!!いたくないからゆっくりたべさせてね!!」 守るんじゃなかったんかい。 よだれを垂らしながらエサににじり寄る親れいむ。知らない人がみたらただ飢えてるだけに見えるだろうが、こいつは自分が子だと思いこんでるものすら食べようとしている。 「おとなしくまってくれてていいこだね!!!」「むーしゃ!!むーしゃ!!あれ!?まじゅいよ!?」 そりゃそうだ。ただの草や虫なんだから。 「まじゅいまじゅいまじゅい・・・れいむのこどもはまじゅい!れいむもまじゅい!!ぶへひぃひゃふほおおおおっ!!!」 ここにきて本格的に狂いだしたようだ。頭が鈍いと狂気の廻りも遅いのだな。 「ひ"ゃ"ら"ぺち"ょ"ぷげら"あ"あ"あ"!!ぽげらるごおおおお!!おっけーれいむにまかせて!!!」 それはお前の台詞じゃないだろ。 「ゆ"ん"ゆ"ん"!!ま"も"な"く"でんしゃがとおちゃくします!!どぎゅううううんというはっしんおんのあとにおなまえとこうざばんごうをおはなしください!!!」 「しゅっぱつじんごお"お"お"お"お"お"お"!!」 「あ"ーーーーーーーーーーーっ!!ぴちゅううううううううううん!!!」 被弾したような擬音を発して基地外の笑みのまま息絶えた。 「さて」 あまり恐怖を感じてはいなかったようだがとりあえず食べてみよう。 「う"え"っ!?」 何故か塩味がした。虐待の末の発狂は味が引き締まって良いらしいが、直接発狂させるのは駄目なようだ。 その後も何体かのゆっくりに試してみたが、いずれも妙な味になり、さらに発狂の効果も様々で一定では無かったので、狂気の瞳の工業的な利用は難しいという結論に達した。 「あっ!!そもそもこの能力って私にしか使えないじゃない!」 加工所での利用、という前提を忘れていた。 「振り出しに戻る、か・・・」 一方そのころ 「あー面倒な問題がうまく片づいたわー引き受けはしたけど正直もうどうしようも無かったのよ弟子の教育ってことでウドンゲにまかせたことにしたら失敗したっていってもウドンゲは自分の責任にするだろうし私の面子に傷は付かないからいい方法よねまったく私ったら天才ねそれはそうとおなかすいたわね加工所の人が持ってきた菓子折(ゆっくり)でも食べようかしらだいたいゆっくりの醍醐味は自分の手で虐待する事じゃないの別の手段を使おうなんて想像力のない人の手抜きよ手抜きそのへんがわかってないのよね最近の風雅を解さない人間はそもそもゆっくりを虐待する手間もかけずにおいしいお菓子を食べようなんて考え自体間違ってるわまったくもうエレガントじゃないわ機械が勝手に人を殺すぐらいエレガントじゃないわだからお前はアホなのよ」 えーりんが私室で一人いろいろとぶっちゃけていた。 続くかも このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1375.html
あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く? 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3676.html
『真冬のゆっくり対策 3』 「へえ…そんなものがあるんですか」 「外の世界から流れてきたものです。透明なビニールの中で野菜を栽培するようです」 「でもビニールハウスだと風通しが悪くなるのでは?温度とか湿気とか」 「そこなんですよ。ですから我々は屋根を取っ払って実際に育ててみました。大丈夫なようです。外の世界ではどう使ってるのかは不明ですが」 「いくつかの畑に使ってみましょう。他に何かありませんか」 「そうですね、商品ではなくアイデアなのですが畑の周りに毒草を生やしておくというのはどうでしょうか?」 「春の毒草といえばトリカブトやスイセンとか有名ですね。ドクウツギなんて昔は農村でよく被害が出たものです。今から生えてきますかね?」 「そこなんですよねえ…あとは青唐辛子を用意して仕込んでおくとか」 「周りの村から苗木を調達するとか検討してみましょう」 「さて私も何か少し手伝わせてくれませんか?」 「ありがとうございます。今から壁を作るのですがお手伝いお願いできますか?」 「任せてください」 「「「「「「むーしゃむーしゃ…しあわせぇ♪」」」」」」 洞窟の中は宴会だった。冬篭りというゆっくりにとって厳しい時期にドスが来てくれたのだから。 数分前 「ドスとみんなの約束だよ。ゆっくり理解してね!」 ドスまりさの帽子を被った女性が言った。 「おきてなんだね。わかるよー!!」 「「「「「「ゆっくりりかいするよ!!!」」」」」」 「1つ、無闇にすっきりしないこと」 「ゆ!どす、まりさたちはすっきりしてもだいじょうぶなんだぜ!」 「まりさ!さっき食糧を見せてもらったけどこの数じゃもうギリギリよ。それともまりさが食糧になってくれるの?」 「ご…ごめんなさい!!!!まりさがわるかったですううう!!!!」 「はるになったらすっきりしほうだいよ!それまでがまんしようね」 「1つ、………」 「1つ、…」 「みんな分かった?」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」」」」 「約束を破ったら死刑かこの群から出て行ってもらうわ。わかったわね?」 「「「「「「「はーい!!!!」」」」」」」 「じゃあみんなご飯にしようね!」 「「「「「「「やったね!えんかいだね!!!!」」」」」」」 こうしてゆっくり達の宴会が始まったのだ。 「ご飯だよ」 れいむのリボンを付けた虐待お兄ちゃんは親ゆっくりに食事を与えた。 「おきゃあしゃん!いっちょにたべよ!」 「赤ちゃんはドスから貰ってね。これは赤ちゃんには美味しくないんだ」 「ゆっふっふ、これはおとなのあじなんだよ。あかちゃんにはまだはやいよ。ごめんね」 「ゆっくちりかいちたよ!あとでゆっくちちようね!」 「赤ちゃんはこれを食べようね」 彼女は赤ゆっくり達に親ゆっくりとは別の食事を出していた。 「「「「むーちゃむーちゃ…ちあわせぇ♪」」」」 「「「「ちちちちちあわせええええ♪」」」」 赤ゆっくり達が完食した直後異変が起こった。 「ゆ!にゃんだきゃむずむずしてきちゃよ!」 「ゆ?にゃんだかぽかぽかしてきちゃよ!!」 「ありちゅもー」 「りぇいみゅもー」 「ゆゆゆゆゆ?あちゅくなっちぇきちゃよ」 「にゃんだきゃへんだよ!」 赤ゆっくりは頬を赤らめ体からぬとぬととした粘液を出していた。発情したのだ。 「ま…ま…まりしゃああ~しゅ~りしゅ~りぃ」 「しゅ~りしゅ~り…な…なんだかへんだよ。しゅ~りしゅ~り」 「しゅりしゅりしてたらきもちよくなってきちゃよぉ」 「な…なにしてるの!あかちゃん!すりすりしたらしんじゃよおお!!!!」 親ゆっくり達が気付いた時は遅かった。 「ゆっぎりやめぢぇええ!!まりしゃじんじゃうよおおお!!!!」 「にゃんだぎゃへんだよおおおお!!!!」 「まりじゃああああ!!!!!ちょっちぇもきもちいいわああああ!!!!!!」 「ぎぼぢわるいよおおお!!!!やべじぇえええ!!!!」 「ありじゅうう!!!!やべでよおおお!!!!」 「わぎゃらないよおおお!!!!!!らんじゃまああああ!!!!!!」 「やべでええええええ!!!!あがじゃんじんじゃうよおおおお!!!!!!」 「どぼじでええええ!!!!!!!」 「貴方達!!!なにしてるの!!!!早くとめなさい!!!」 何とか半分ほどは親ゆっくりが赤ゆっくりを咥えて離すことができた。それでもかなりの赤ゆっくりはまだ交尾をしたままだ。 「「ゆぎゅっ!ゆぎぃ!やめちぇ!やべじぇええええ!!!ゆげぁぁぁ!!!!」」 「「「「「んほおおおおぉぉおおおおぉおおお!!!!!」」」」」 「「「「だ…だめだよおおお!!!!それいじょうはああああぁぁ!!!」」」」 「「「「「「しゅっきりぃー!!!!」」」」」」 「「「「「「じゅっぎりぃ……」」」」」」 発情した半分の赤ゆっくりは頭から茎を生やしみるみるうちに真っ黒な塊へと化していった。 「でいぶのあがじゃんがあああああ!!!!」 「ばりざああああ!!!!!どぼじでうぢのばりざがああああ!!!!!」 黒い塊と化した赤ん坊に必死に呼びかけるが何も答えてくれない。 「何てことをしてくれたのよ!!!!!」 彼女は未だに発情している赤ゆっくりを集めた。 「この子たちの親は誰?前に出てきなさい!!!」 「ゆうううう…」 「他のゆっくりはれいむに従ってね。今からこの子達の裁判をするわ」 「じゃあみんな、こっちにおいで。後はドスに任せよう」 彼は残りのゆっくりを連れその場から離れた。レイプをした赤ゆっくりとその親を一列に並ばせて彼女は言った。 「まったく、貴方達は子供にどういう教育をしているの?」 「ご…ごべんなざいい…」 「なんであがじゃんがすりすりなんてじってるのお…おじえでないよぉ…」 「おきゃあしゃん、しゅりしゅりぃ」 事態を分かっていない赤ゆっくりは側にいる親にすりすりしている。 「どす!おねがいじまず!!ゆるじでくだざい!!!ぢゃんどおじおきじますがらああ!!!」 「ごべんなざい!ごべんなざいい!!!」 「そこのれいむ!」 「ゆ!!」 「私との約束を忘れてはないよね?」 「ゆ!ゆ!ゆ!ゆ!」 「言って御覧なさい」 「むやみにすっきりー!したらだめ…だよ…」 「そうね。さっき言ったもんね」 「あかちゃんたちを…どうするんだぜぇ…」 「そこのぱちゅりぃ!!!!」 「むきゅ!!」 「掟を守れない場合はどうなるんだっけ?」 「しけいかこのむれから…でていく…」 「そうね。死刑か追放よ」 「「ぞ…ぞんなあああ!!!!!」」 「「おでがいじまずううう!!!!!ゆるじでぐだざいいい!!!!」」 「「おでがいじまずう!!!!ありずはいながものでいいでずがらごのごだけはゆるじでええ!!」」 「「まだごのごは……おでがいじまずうううう!!!ゆっぐりざぜであげでぐだざいいいい!!!!」」 「黙りなさい!!」 「「「「「ゆぴいいいい!!!!」」」」」 「ドスとの約束を初日から破っちゃうの?そんな悪いゆっくりは潰すよ!!!」 「ゆぅ…ぐずっ…」 「ぁかちゃ…ん…なんでぇ…」 「今すぐこの子達を殺すかもしくはこの子を連れてここから出て行くか決めなさい!!」 「ぞんなのえらべないよおお!!!」 「ゆええ"ぇえ"えん!!!!」 「仕方ないわね…」 「ゆ!どす…もしかして…」 「死刑だけは許してあげるわ」 「「あじがどうございまずうう!!!!!」」 「「よがっだねえ…あがじゃん!!!!!ごれでゆっぐりでぎるよお!!!!」」 「ハア?」 彼女は壁を強く蹴った。 「「「ゆううう!!!!!」」」 「誰が許すなんて言ったのかしら?」 「じゃ…じゃあどうずるの…」 「これを口に咥えなさい」 彼女は木の枝を数本親ゆっくりの前に投げた。 「それで赤ちゃんの目をくり抜きなさい」 「ゆ!!!!」 「どす…いまなんていったの…」 「聞こえなかった?その枝で!!!赤ちゃんの目を潰しなさい!!!!」 一瞬場が静まった。 「そ…ぞんあああ!!!!!」 「いやだああああ!!!!!!あがじゃんがゆっぐりでぎないよおおお!!!!」 「ぞんなのどがいはじゃないわあああ!!!!!!」 「ゆえ"えぇえぇえん!!!!!!そんなのいやだよおおお!!!!」 「どっぢもいやだよおおお!!!!」 「この子達にレイプされて死んでいった赤ちゃんたちはどんな思いだったのかな?死んじゃった赤ちゃんのお母さんは今どんな気持ちなのかな?」 「ぞ…それは…」 「ゆぅ…ぐずん…だげどぉ…」 「早く決めなさい!早く決めないと貴方達全員潰すからね!!」 「ゆう"う"う"う…」 「あがじゃん…どうじよぅ…」 「時間よ。れいむから聞くわ。どうするの?」 「ゆううう…どぅじよぅ…」 「おきゃあしゃんとしゅりしゅりい~」 泣きながら悩むれいむと対照的に赤れいむは嬉しそうに頬擦りをする。 「殺すの?ここから出て行くの?それとも目を潰す?」 「ゆうううう…ぐ…ずっ…あがじゃあん…ごべんねえ…」 「ゆ?」 れいむは赤れいむに思いっきり圧し掛かった。 「ゆびぇえええ!!!!おがあじゃんにゃんでえええ!!!!」 「ごべんねえ!!!ごべんねええ!!!!おぞらでゆっぐりじでねええ!!!!!」 「ぎゅえええええ!!!!……もっちょ…ゆっきゅりちたきゃったよ……」 赤れいむは死んでしまった。 「ゆあ"あ"あ"あん!!!!ばがなおがあざんでごべんねええ!!!!ごべんねええ!!!」 「「ゆひいぃぃぃ…」」 「「どうじだらいいのぉ…」」 事態を飲み込めていなかった赤ゆっくり達もようやく自分達が置かれている状況を理解した。 「お…おきゃあしゃん…まりしゃ…いいこだ…よ…だきゃら…」 「うるさいよ!!」 「ゆぎゃあああ!!!!」 「れいぷするゆっくりはわるいゆっくりだよ!!!!ゆっくりしないでしね!!」 「ゆびぇええええ!!!!!!まりじゃじにだぐないよおおお!!!!」 吹っ切れて赤ん坊を潰す親ゆっくり。 「みゃみゃぁ…ありちゅ…ちにたくにゃいよお…」 「ごめんなしゃぃ…ごめんなしゃぃ…」 「ごべんねえええ!!!!!!ごべんねええ!!!!」 「あがじゃんのぶんまでゆっくりずるがらああ!!!!!ままをゆるじでええええ!!!!!」 「いじゃいよおおお!!!!!やびぇでえええ!!!!!!」 「ぢにだくにゃいよおおおお!!!!たじゅげでえええ!!!!!」 泣きながら我が子を潰す親ゆっくり。 「おぢびじゃああん…ごべんねえ…すぐずまずがらがばんじでねえ…」 「ゆぴゃああ!!!!」 「いじゃいよおおおお!!!!!」 「りぇいみゅのおべべが!!!!おべべぎゃあああ!!!!」 「ぐらいよおおお!!!!!!なにもみえないよおおおお!!!!」 「ごべんねええ!!!!!」 「おぎゃあじゃんが…ゆっぐりざぜてあげるがらあ…ごべんねええ!!!!」 泣きながら目を潰していく親ゆっくり。赤ゆっくりとともにここから出て行くゆっくりはいなかった。 「そう。それでいいのよ。辛いけど掟を守らないとみんなゆっくりできないのよ。貴方達は反省してゆっくりしなさい」 「わがっだよお…」 「なにもみえにゃいよお…おぎゃあじゃん…どごにいるのお…」 「ぐらいよお…まりしゃあ…ありちゅううう…ちぇえええん…どごにいるのお…」 「あがじゃあん…ゆっくりじでねえ…」 親ゆっくり達は潰れた赤ゆっくりを食べていた。これがゆっくりの中での供養だという。目を潰された赤ゆっくりは親ゆっくりとともに巣へ帰っていった。 一方彼女は先ほどの虐待お兄ちゃんとの会話を思い出していた。 『俺が持ってきているモノだとこれですかね』 『それは?』 『これは精子餡ですよ。通常の何百倍も濃縮してます。こっちは妊娠促進剤と媚薬です』 『ええ』 『精子餡をゆっくりに注入したり肌にすり込むと妊娠しますよね。この濃縮した精子餡と妊娠促進剤と媚薬を混ぜるととんでもない薬ができるんですよ』 『霧吹きを取り出してどうするんですか?』 『精子餡と促進剤と媚薬を混ぜたものをお湯で溶かして…よっと、よく振って……これで完成です』 『これをゆっくりに噴きかけるんですね』 『ええ。噴きかけるだけでゆっくりは妊娠するんですよ。大抵は植物型ですね』 『それは確かにとんでもない薬ですね。発想は私と同じですよ』 『貴方は?』 『私も媚薬を持ってきてます。かなりのやつを。あとは睡眠薬ですね。火攻めする気だったんで用意はこれくらいなんです』 『妊娠で体力を奪わせて黒い塊にするか食糧を一気に減らす作戦…ですね』 『媚薬の方は私がやるわ。そうね、赤ゆっくりを発情させましょう』 『じゃあ霧吹きは俺がやります。あ、睡眠薬くれませんかね』 (彼はうまくやってるかしら…) 「ゆふう…ゆふう…」 「ゆゆ~ん…ゆゆうう…」 「ゆぴーゆぴー」 ゆっくり達は眠っていた。満腹して眠くなったのではなく虐待お兄ちゃんが盛った睡眠薬で眠っているのだ。 「もう!たべたらすぐねるなんてとかいはじゃないわ!!」 「あかちゃんがたいへんなことになってるときにねないでよぉ」 「あがじゃんがあ…ゆええぇえん…」 全てのゆっくりに盛ったはずなのだが先ほどの騒ぎで眠気が吹っ飛んでしまったようだ。といっても半分は寝ている。 「いいよ。寝かせてあげな。さっきの事はドスに任せなさい。この子達もショックだったんだ。落ち着かせてあげよう。君達もゆっくりしなさい」 「うん…じゃあれいむにまかせるわね」 起きているゆっくりは巣の中に帰っていった。彼の周りは眠っているゆっくりだけになった。 「(じゃあ始めますか)」 彼は霧吹きを眠っているゆっくり達に噴きかけた。さらに辺り一面にも霧吹きを噴きかけた。 「(これくらいかな。あとは少し待てばいい)」 彼は一旦彼女がいる所へ向かった。この後戻ってきた時に偶然ゆっくりが妊娠しているのを見つけたふりをして皆を集めるつもりだ。 つづく by 虐待おにいちゃん
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1376.html
前 「こっちににげたよ!」 「ぜったいつかまえてころすよ!」 「ゆっくりできないにんげんはしね!」 ゆっくりの叫び声が廃鉱山の闇に溶けるように響く。 私が今隠れている食料庫の扉越しに聞こえるぐらいだから、相当な大きさで怒鳴っているようだ。 リーダーまりさと見張りの巨大れいむを殺されたために相当ご立腹の連中は巨大ゆっくりも通常ゆっくりも総動員してゆっくりできない人間を始末しに掛かっている。 その人間とは私のことだ、困ったことに。 今、こちらに接近中の連中は声の高さから判断するに、巨大1通常2の混成部隊らしい。 ガヤガヤと騒ぐ声がさらに大きくなってきた。 ゆっくりが跳ねながら移動するときに餅をつくような音が扉の前で止まった。 こちらは陰に隠れているために分からないが、どうやら巨大ゆっくりが扉に付いた小さな窓から中の様子を伺っているようだ。 「おにいさ~ん。もうあきらめてでてきてね~。いまならゆるしてあげるよ~。」 こちらを見つけて得意になったような声だが、実際のところ連中はこちらを見つけていない。 あわてて出てきたところを袋にしようとする程度の知能はあるらしい。 「ゆっ!ここにはいないみたいだね!むこうをさがそうね!」 「まりさはおおきくてかしこいね!これならすぐににんげんをみつけられるよ!」 でも見つけられてねえじゃん。流石通常ゆっくり、能天気なもんだ。 餅つき音が十分に遠ざかるのを待って、物陰を出て扉に近づく。 先ほど、巨大ゆっくりにフェイントを掛けられてすぐに扉に近づいた結果、こちらの姿を見た巨大ゆっくりが突撃してくるのを咄嗟に撃ち殺し、その音で更に多くのゆっくりを呼び寄せてしまった為に十分に注意しながら進む。 どうやら本当に向こうを探しに行った様だ。 ヒカリゴケがわずかな光を提供する通路に扉を開ける音が吸い込まれていく。 細心の注意を払いながら左右を素早く確認し、出口へ向かった。 何かを食べている通常ゆっくりのペアの後ろを慎重に通り過ぎ、巨大ゆっくりの巡回を隠れてやり過ごして進んだが、 後で吹き飛ばそうと先ほど決意した巨大あかちゃんゆっくりの寝室に差し掛かった所である物が視界に入ったために素早く姿勢を下げ、曲がり角に隠れる。 巡回をサボり中の巨大ゆっくり3匹が寝室に向いて何事かを話しかけていた。 「ゆー、べろべろばあ!」 「れいむのあかちゃん!もっとゆっくりしてていいよ!」 「こわいにんげんからまもってあげるね!」 困った事にこいつらのいる寝室の前を通らねば外には出られない。 手持ちの小銃は5発装填済みで巨大ゆっくりを倒すためには最低3発が必要。 距離は十分に離れているので2匹射殺するなら何とかなるが、発砲炎を見られたが最後、突進してきた3匹目に俺は踏み潰される。 畜生。何でデカいとはいえゆっくり如きを警戒せねばならないんだ。 どうする?どうやって多数の巨大ゆっくりを始末する? そう思いながら悩んでいると、隣の里が少数の戦力で多数の巨大ゆっくりを屠った事を思い出した。 連中はどうやって交戦した?こっちの集落と違って隣の里に重火器は無い。 バリスタで交戦したとかいう話だが、連射速度と射程から考えて全速突撃するゆっくりを5回撃てれば御の字だろう。それでは十分に数を減らす前に蹴散らされる。 一体どうやって巨大ゆっくりの足を止めたんだ? 荷物から資料を素早く取り出し、交戦記録の記述を読む。程なくして目的の箇所を発見。 死んだゆっくりの帽子で同士討ちを誘発したようだ。 よし、これを応用させてもらおう。 実行に必要なゆっくりを調達するために物陰から離れ、来た道を引き返した。 鉱山時代には採掘された鉱石をトロッコに積載する部屋だったそこは現在、食事の時間であれば多数のゆっくりで賑やかとなる「ゆっくり食堂」となっていた。 破滅的に下手糞な平仮名(というより、文字であるかどうかすら怪しい)を書かれた札がかかった入り口の更に奥、昼食の時間が終わった為に静まり返った食堂に二匹の通常ゆっくりがいた。 「はぁ…はぁ…おいしー!」 「ゆっ!まりさ!しずかにしなきゃだめだよ!」 摘み食い中らしき2匹は他のゆっくりに見つかることを恐れ、音を立てぬように注意を払っていたが、ゆっくりの本能に抗うことはなんとも難しかった。 慌てて周囲を見回す2匹だったが、幸いな事に気づかれた様子は無い。 体を食料に向けて食事を再開する。 「ゆっくりしずかにたべようね。」 「む…しゃ…む…しゃ…」 食事はすぐに中断した。入り口から地面を踏みしめる音が聞こえてきたのだ。 モチモチとした体を飛び跳ねさせて移動するゆっくりの立てる音ではない事をれいむは知っていた。 これは人間が歩くときの音だという事もれいむは知っている。 「ゆっ!みん…ゆっ!」 入り口を向いたれいむは大声で助けを呼ぼうとしたが、そもそも自分たちがここで何をやっているか、それを見た仲間が自分たちをどうするだろうかという事に気づき慌てて口をつぐむ。 「れいむ?どうし…ゆっ!」 遅れてゆっくりまりさが入り口を向き、人間の姿を認めて驚く。 2匹は視線を交わし、ヒソヒソと話し合ったあと、侵入者の方を向いてこう言った。 「「おにいさんもいっしょにたべていいからしずかにしてね!」」 「断る。」 「「…ゆ?」」 侵入者の返答の意味が分からず体を傾けて疑問の声を上げる2匹。 彼女たちにとってこの提案は自分たちの取り分を減らすことになる痛い物だったが、それだけに必ず効果があるだろうという物だっただけに拒否されたことが理解できなかった。 残念なことに、提案を考えたのは結局餡子であるという事だった。 2匹が正気に戻ると侵入者が近づいて来たところだった。 「おにいさん、ほしいならあげるからゆっくりまってね。」 「も~くいしんぼさんだねおにいさん!」 提案が受け入れられたと勘違いしたセリフ。しかし、侵入者は足を止めずに近づいてきた。 まるで無視されたように感じたゆっくりまりさが膨れる。 「おにいさん!はなしきいてるの?!ゆっくりとまってね!」 それでも侵入者は足を止めない。聞こえていないかのように反応すら見せない。 まりさはついに実力行使に出た。 「ゆっくりとまってね!ゆっくりとまってね!ゆっくりとまっヘェヒュ!!」 侵入者の足に体当たりを開始したまりさだったが、3回目の体当たりを放つためにセリフを放ちながら飛んだとき、妙な声を上げて彼女は落ちた。 れいむは訳がわからなかった。 いっしょにゆっくりする筈のお兄さんはまりさに棒を突き刺したような体制だったし、さっきまで元気に跳ねて体当たりしていたまりさはピクりとも動いていなかったから。 「お、お兄さん…。まりさをどうしたの?」 「こうしたんだよ。ゆっくり見てね。」 れいむの疑問に答えた彼はまりさから白色の細い板──三十年式銃剣を引き抜き、まりさを足でれいむの方に押しやった。 ぐにゃりと歪みながらまりさは半回転し、れいむの方を向く。 「ゆぅーーーーーーーーーーーっ!!!」 まりさの額がぱっくりと裂け、そこからどろどろと流れ落ちる餡子を見たれいむは悲鳴を上げる。 「まりさっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「れ…ぃむ…。この…ひとは…ゆっく…りできな…ガプッ!!」 「はいそこまでー。永遠にゆっくりしてね!」 まりさが最後の力を振り絞って親友に警告を発しようとしたが、頭上から差し込まれた銃剣に途中で阻止された。 「まりさ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーーーーーーっ゛!!!」 もはや摘み食いを仲間に見られる事など忘れ泣き叫ぶゆっくりれいむ。 しかし彼女が悲しみを完全に吐き出すことはできなかった。 正面から高速で襲来したつま先が彼女を乱暴に蹴飛ばし、壁に叩きつけられたのだ。 「ゆっくり静かにしていってね。すぐ終わるから。」 「ゆっ…ぐっ…まりさ゛あ゛ぁ…。」 れいむは甘い死臭を放つまりさの帽子を強制的に口の中に入れられた後、猿轡をかまされ喋れなくなった。 自身の運命を悟った彼女は必死の抵抗を試みるが、その抵抗が重心を移動させて転がるというものでは何の意味も無かった。 「じゃあ、今から仲間のところでゆっくりしようね。」 「ん゛ー!ん゛ー!ん゛っん゛んう゛うう゛う゛んう!」 リボンを捕まれ持ち上げられたれいむは痛みに耐えながら必死に揺れて自己主張をしたが聞き入れられなかった。 思い付きを実行する為に必要な物を入手した彼は、あの巨大赤ちゃんゆっくりの寝室入り口を見渡せる物陰に戻ってきて再び隠れた。 「れいむのあかちゃんはほんとうにかわいいね!ずっとみててあげるね!」 「まりさのあかちゃんもかわいいよ!」 「「おかあしゃん!ゆっきゅりしちぇっちぇね!!」」 彼は未だに寝室の前で子供に話しかける巨大ゆっくりに呆れながら、持ってきた痣だらけのゆっくりれいむを手元に置き、腰を下ろして小銃を構える。 彼はれいむの猿轡がゆるくなっているのに気がついていなかった。 ──れいむがしゃべれるようになってるのにきがつかないなんてほんとうにばかなにんげん!これでゆっくりできるよ! 「みんなー!れいむをはやくたすけてね!」 ゆっくりれいむのくぐもった救助要請に一斉に振り向く巨大ゆっくり。 れいむの口からただようゆっくりの死臭はまだ届いていないようで、巨大ゆっくりはれいむを助けようと突進を開始した。 「ゆゆ!いまわるいにんげんからたすけるよ!」 「ゆっくりまっててね!もうちょっとだよ!」 「ゆっくりできないにんげんはしね!」 巨大ゆっくりが3匹で己の方へ突っ込んでくるのはそれなりに恐ろしい物である筈なのに、彼は全く関心が無いように引き金を引いた。 「ゆぶっぅ!」 「まりさっ!まりさのかたきはれいむがトビャッ!」 3発の銃弾を受けて先頭を進んでいた巨大まりさが粉砕され絶命する。 それを見た巨大れいむが気勢を上げるが、更に飛来した銃弾で全身を貫かれて速度をガクンと下げる。 しかし、最後尾を進んでいたため無傷の巨大まりさが2匹を追い越して突撃を継続する。 「もうばーんってできなくなったね!あきらめてゆっくりしんでね!」 勝ち誇った顔で勝利宣言をする巨大まりさ。 その時、正面から何かが闇の中から飛んできてまりさの顔に当たり、ぼよんと跳ねて地面に落ちた。 飛んできたのは捕まっていたゆっくりれいむだった。 「ゆっ!れいむをかえしてももうおそいよ!ゆっくり、し…ね…?」 「れいむをなげるなんてばかなおにいさん!まりさ!あんなやつゆっくりころしてね!」 れいむの口から覗く黒い物体とその匂いに気が付いた巨大まりさが表情を変えていく。 勝利宣言のニヤけた笑顔から憤怒の表情へと。 「ゆっくりしねえぇ!」 「まりさ!にんげんはこっちじゃないよ!ゆっくりきづいてね!」 れいむの体から漂う甘い死臭で同属殺しと判定した巨大まりさがれいむを潰しに掛かる。 当然、黙って見ているれいむではなく必死で逃げだした。 彼は巨大ゆっくりと通常ゆっくりが追いかけあってる間に小銃を再装填し、再び構える。 銃声が3つ響き、無傷だった巨大まりさが物を言わぬ餡と皮の複合体へと変えられた。 「おにいさん!れいむをたすけてくれてありがとう!」 そのお兄さんが自分に何をやったかもう忘れたゆっくりれいむは4発目の銃声を最後に動かなくなった。 最後の1発で巨大れいむの息の根が止められ、彼の前を阻むゆっくりはいなくなった。 彼は立ち上がって静まり返った巨大赤ちゃんゆっくりの寝室へと入って行きこう言った。 「君たちには悪いけど君たちの親が悪いから死んで貰います。ゆっくり親を恨んでね!」 大小混合編成の赤ちゃんゆっくり達は入ってくるなりそう宣言した人間の言うことが分からず、頭に?を浮かべたような表情をしていたが、人間に一番近かったゆっくりが刺し殺された時点で狂乱の渦に落ちた。 「いやた゛あああぁぁあ!」 「まりし゛ゃは゛こ゛ろし゛ゃないち゛ぇ!やめち゛ぇ!」 「ゆ゛ーゆ゛ーゆ゛ーゆ゛ー」 それから3分後。 かつて赤ちゃんゆっくりが最も安心できるゆっくりプレイスだった筈の寝室は、赤ちゃんゆっくりの死骸が転がる餡子の池地獄と化していた。 入ってきた人間がまた1匹、ゆっくりを捕まえて刺し殺す。 その周りには鋭利な刃物で殺傷された赤ちゃんゆっくりや踏み潰された赤ちゃんゆっくりが3ダース近く転がっていた。 一部のゆっくりは息があるのか「ゅ…ゅ…」と呻いていたが、どう見ても助かりそうには無かった。 生きている赤ちゃんゆっくり、その数およそ120匹は部屋の隅に固まって泣き、怯えながら震えていた。 更には自分こそ奥へ行こうと他の赤ちゃんを押しのけ、自分より小さい赤ちゃんを踏み潰しているゆっくりまでいる。 人間がそちらへ近づいていくたびに、殆どの赤ちゃんゆっくりが意味の無い単語を叫びながら逃げて行き、運の悪い赤ちゃんゆっくりが公開処刑されていた。 これだけの数が居れば人間に勝てそうなものだが、彼に向かっていくゆっくりは一匹も居らず、ただ逃げ惑うばかり。 そのような勇気ある赤ちゃんゆっくりは真っ先に死骸となっていた。 さらに2分経過して赤ちゃんゆっくりの数が3桁を切ろうかという頃、赤ちゃん達の耳に待ち望んでいた声が聞こえてきた。 頼もしい群れのリーダーと、彼女が引き連れる巨大ゆっくりの声だ。 急に強気になった赤ちゃん達は偶然にも彼女達の親の1匹が取った行動を再現した。 勝利宣言である。 「ゆゆ!おにいさん!りーだーにつかまってころしゃれてね!」 「りーだーはつよいんだよ!おにいしゃんなんかかちぇないね(わらい)!」 「あきらめてあやまっっちぇね!」 しかし、彼は赤ちゃんゆっくりの言葉に聞く耳持たずといった様子で寝室から出て行った。 「にげちゃうんだ!あかちゃんあいちぇににげちゃうんだ(わらい)!」 「しゅごしゅごにげてね!まけいぬ!」 「おうちでゆっくりないちぇいっちぇね!」 「りーだーからはにげられにゃいよ!ゆっくりつかまっちぇね!」 寝室から出た彼は荷物から最後のセムテックスを取り出し、信管を幾つか差し込んでデトコードを素早く伸ばしていく。 彼が角の向こうに姿を消すのと、彼を始末に来た巨大ゆっくり一行の先頭集団が寝室入り口に差し掛かったのはほぼ同時だった。 その瞬間、セムテックスが起爆してあまり頑丈ではない通路に強烈なダメージを与えた。 自身の重量とその上の土を支えきれなくなった通路が急速に崩壊し、寝室で惨殺されている赤ちゃんゆっくりを見てショックを受けていた巨大ゆっくりが押しつぶされた。 彼は通路が塞がれたのを確認した後、悠々と外へ出て行った。 土砂の向こうから僅かに漏れてくる、ゆっくりがこんな事をした人間のおうちは必ず破壊すると宣言しているのを聞いてから。 仲間の巨大ゆっくりに殺されかけたものの九死に一生を得たリーダーまりさは目の前の光景を呆然として眺めていた。 切り札の精鋭巨大ゆっくり部隊があの人間を殺そうと加速したとき、爆発が起こって天井が崩れ、彼女の切り札が生き埋めになってしまったのを。 「な、なんでぇ…れいむ!まりさ!」ぱちゅりー!おきてよ!ねえへんじをしてよ!」 「まりさ…もうしんじゃってるよ…ゆっくりさせてあげなきゃ…」 「そんなこといわないでよ!れいむもまりさもぱちゅりーもいきてるよ!へんなこといわないで!」 切り札にして親友のゆっくりを一挙に3匹も失ったまりさは暫くの間、錯乱しながら叫んでいたが徐々にその顔が赤く染まってきた。 まりさにとって己の命と同じぐらい大切だった仲間を無残に殺戮した人間に憎悪を抱いたのだ。 「ゆるさない…まりさのしんゆうをころしたにんげんはぜったいにゆるさない!ゆっく゛りさ゛せ゛す゛にこ゛ろし゛てやる!!にんけ゛んのおうち゛をにと゛と゛ゆっく゛りて゛き゛ないようにし゛て゛やる!!」 復讐に燃えるまりさは崩落箇所を修復した翌日の朝、発言を実行に移すこととなる。 「連中の侵攻予想時刻は明日午前9:00と思われます。」 日が落ちたために電灯で照らされた広い部屋。 その入り口から反対側に設置された黒板の前で一人の男が何か図らしき物を描きながらそう発言した。 セムテックスで巨大ゆっくりを生き埋めにしてきた彼だ。 「この時刻想定は連中が洞窟の復旧にかかる時間、巨体で森林を通過する時間を入れて計算してありますから、まずまずの正確さと思われます。」 「それで、どうやって対応するつもりなんだ?流石に陣地防御だけでは難しいだろ。最低200匹の想定なんだろ?」 彼が黒板の『廃鉱山』と書かれた箇所に『08:00』、『主防御線』と書かれた所に『09:00』と記入しながら発言したとき、1人の男が疑問をはさんだ。 「そうですね。確かに陣地だけじゃ厳しいです。なので、連中が巣から出てきた時点で砲撃を開始します。」 「砲撃?加工所の連中か?」「またあいつ等に頼るのか?良い連中ではあるんだがな。」 「廃鉱山入り口を見渡せる場所に夜明けと同時に観測班が移動する予定です。使用装備は毎度おなじみ155ミリ榴弾砲3門を予定しています。」 彼は質問者に答えつつ、黒板の『主防御線』より下に長方形を書き、その中に塗りつぶされた小さい丸を書く。 「連中がこちらに接触するまでに砲撃を継続し、100は削るつもりです。」 「あの巨体だろ?効果が通常のゆっくりよりも落ちるというのは?」 「勿論想定しています。加工所研究開発部に増援を要請した所、彼らは快く応じてくれました。」 そう言いながら、『主防御線』の所に長方形と横に潰れた楕円を組み合わせた記号を書き込み、その上に縦棒を1つ加えた。 「彼らなら巨大ゆっくりの50や100何する物ぞ、必ず蹴散らしてくれます。」 「その記号は…!それなら大丈夫か、安心した。」「彼らならやってくれるだろうな。」 「ご理解頂き感謝します。それでは作戦会議を終了致します。すでに斥候ゆっくりとの小競り合いが起きていますので、各員、情報漏洩に注意してください。では、解散。」 会議に参加した男たちが一斉に腰を上げ、挨拶を交わしながら外へ出て行く。 男たちは愛する家族が待つ家へと帰るために扉の外の吹雪へと次々姿を消し、後に残ったのは彼と里長だけになった。 「それでは、私もこれで。向こうで加工所の皆様とうち合わせをしなければならないので。」 「ああ、武運を祈る。」 彼もそう言って外へ出て行き、最後に残った里長は冷えた体を温める為、茶でも飲もうかと立ち上がっていった。 まりさは勝利を確信していた。 昨日おうちを破壊してくれた愚かな人間は赤ちゃんゆっくりをかなりの数惨殺しており、それ自体は群れの存続に影響があるほどのダメージだったが、現有戦力──つまり成体ゆっくりの殺害数は2桁にすら届かないというレベルだったので、人里侵攻には何の影響もなかった。 あかちゃんをころしてもつよいゆっくりをころさないなんて、あのにんげんはほんとうにばかだね! 昨日その人間のせいで死に掛けたのだが、餡子脳はそのような自分に都合の悪いことは覚えておらず、昨日の人間はまりさの中で雑魚ということになっていた。 それに、おともだちのありすやみょんもたすけにきてくれたからぜったいまけないね! 友好関係にある巨大ありすや巨大みょんの群れから結構な数の巨大ゆっくりが増援に来ており、その事もまりさの自身を増大させていた。 自分たちの後方で爆発が発生するたびに、巨大ゆっくりが数匹に通常ゆっくり1ダースが脱落している事にまりさは気づいていなかった。 巨大ゆっくりが大量に動くとき発生する音と巻き上がる地吹雪のせいでまりさの視覚と聴覚が半ば麻痺していたから。 そんなまりさでも森の向こうが徐々に明るくなってくるのは分かった。森の出口だ。 「ゆっ!みんな!もうすぐにんげんのところだよ!ゆっくりじゅんびしてね!」 まりさは走行中の巨大ゆっくりの上から指示を出す。 それを聞いた仲間たちは巨大ゆっくりが前面に出るように加速し、通常サイズがその後ろに隠れるようにやや減速した。 まりさは今まで敵対してきた群れをいくつも滅ぼしたこの陣形に絶対の自信を持っていた。 だから、森を抜けた瞬間に人間たちの攻撃で足元の巨大ゆっくりごと吹き飛ばされ、高速で木の幹に叩き付けられても何が起こったかわからなかった。 リーダーまりさ自ら率いる最初のゆっくり集団は森を抜けると同時に待ち構えていた人間の一斉射撃によってリーダーを残し全滅した。 雪の色と餡子の色が絶妙なコントラストを作り出す。 「みんな!にんげんたちをころすよ!」 「ゆっくりできないようにしてやる!」 「あやまってもゆるさないよ!」 第2集団がすぐに現れ、最初の集団の成れの果てが見えないのだろうか同じような陣形で突撃していく。 その集団は最初の物より5メートルほど先に進めたが、そこが限界だった。 「ゆぶぶぶぶぶぶぶっ!」 「ゆ゛ーーーーーーっ゛!!」 「もうし゛ないか゛らゆるし゛へ゛っ!!」 重厚な音を立てて機関銃が弾を吐き出していく。 何発かに1発の割合で混ぜられた曳光弾の放つ光が巨大ゆっくりへと吸い込まれ、瞬時に穴だらけの巨大饅頭へと変化させた。 そればかりか、巨大ゆっくりの柔らかい体を反対側まで突き抜けた7.7ミリ弾はその後ろを進んでいた通常ゆっくりに命中し、そこでやっと運動を止めた。 その運動エネルギーを受け止めた通常ゆっくりは既にバラバラになっていた。 このような光景が防御陣地に三箇所据え付けられた機関銃によって現出させられていく頃、同時に他の光景も現れ始めた。 陣地中ほどで待機していた加工所研究開発部の戦車中隊が侵攻してくるゆっくりの増大を見て攻撃を始めたからだ。 「目標!前方の巨大ゆっくり!弾種榴弾!撃ぇーーーーっ!」 「ゆっく゛りし゛て゛て゛ね!こっち゛こないて゛ねへ゛っ!?」 「みんなはれいむがまもってあげるほ゛おぉっふ゛っ!!」 合計10門の戦車砲が咆哮をあげ、灰色に塗装された様々な形の鋼鉄が振動するたびに巨大ゆっくりが体を貫通されて悲鳴を上げ、その後ろの通常ゆっくりが榴弾の爆発により木っ端微塵にされていく。 「みんなはまりさのかわりにしんでほしいんだゼゴブッ!」 「ゆっくりしんでいっぺぺぺぺぺっ!」 仲間が次々と穴だらけのオブジェにされるのを見たゆっくり(特にまりさ種)がその場から逃げ出す。 だが、機関銃の弾は勇敢なゆっくり臆病なゆっくり誠実なゆっくり卑怯なゆっくり大きいゆっくり小さいゆっくりを区別せず平等に死を与えていく。 「おか゛ーち゛ゃーん!た゛す゛け゛へ゛っ!!」 「まりさ゛をこ゛ろし゛て゛もいいか゛らみんなをた゛す゛け゛く゛っこ゛ーーっ!!」 「ころさ゛ないて゛えヘ゛フ゛ヘ゛ーーーッ!!」 幻想郷においては美しさの点でおそらく最底辺に位置する弾幕が展開されるたびにゆっくりの命が刈られ、白化粧の風景が飛び散る餡子に汚されていった。 5個集団100匹のゆっくりの突撃を粉砕した陣地に僅かな静寂が訪れた。 5個目のゆっくり集団が突撃を中止、仲間の死骸や仲間だった物の一部を引きずり、口に入れて回収し始めた事に陣地の人間が気づいた段階で射撃は停止されていたからだ。 突撃と射撃の中止タイミングが少しずれていたために回収役のゆっくりが10匹以上回収される側になっていたが。 機関銃陣地の人間は加熱し磨耗した銃身を取り替える為に、大量に消費された機銃弾を補給する為に僅かな人間を残して後方へ必要な物資を取りに行ってしまった。 戦車隊は横付けされたリヤカーから砲弾を受け取っている為に全員配置についていたが、ハッチから砲弾を受け取っている為に直ちに戦闘可能と言う訳ではなかった。 全員、機関銃と戦車砲の前に無謀な突撃を繰り返して餡子の山を築くゆっくりに油断していた。 だから、陣地から最も突出していた九七式中戦車の車体前方で火花が散って甲高い衝撃音が発生したとき、それに乗車していた人間は気のせいだと無視した。 ゆっくりが戦車の装甲を打ち抜くなど無理だと思っていたから。 森から巨大ゆっくりが再び姿を見せたとき、戦闘可能なのは陣地中央の1輌のみだった。 「ちいさいゆっくりはいしをどんどんあつめてね!」 「おっけー!ありすにまかせて!」 「おおきいゆっくりはもらったいしをどんどんはきだしてね!」 「ばかなにんげんはおどろくだろうね!」 「たのしみだね!」 木の根元で潰れていたところを救出されたリーダーまりさが生き残りに指示を出す。 巨大ゆっくりの肺活量をいかして砲台にしようとしているのだ。 ぽんっ、という二重の意味で気の抜ける音が森に反響し、陣地へ数十個のこぶし大の石が飛来する。 殆どの石は一番目立つ戦車へ向かって発射され、甲高い音を立てて戦車の装甲に弾かれたが幾つかの石は効果を発揮した。 『こちら第1機銃座!石で機関銃がゆがんだ!射撃不能!』 『7号車から1号車。今の投石で履帯が切れたようだ。自走不能。指示を請う。』 どのみち弾薬切れで射撃できない機銃要員が指示を受けて下がっていき、唯一戦闘可能な四式中戦車がエンジン音を上げて陣地の前方に出る。 「ばかなにんげんだね!それだけでかてるわけないじゃん!」 「はやくあやまってね!くるしまずにころしてあげるよ!」 「あやまってね!」「あやまってね!」 「ゆーっゆっゆっゆっ!」 勝ち誇るゆっくりが戦車に対して罵声を浴びせる。 満面のいやらしい笑みをうかべた巨大まりさだったが、返事は彼女の期待に沿った物ではなかった。 巨大まりさにオレンジ色に光る物体が突入した瞬間、彼女はくぐもった悲鳴をあげながら巨大な虐待お兄さんに蹴り飛ばされたかのように中央がへこみ、瞬きする間もなく後頭部が膨らみ炸裂した。 一式破甲榴弾が巨大まりさ自慢の分厚い皮をちり紙のように貫通し、そのまま後ろへ抜けて行ったのだ。 五式七糎半戦車砲から放たれた砲弾はこのような光景を5回再現し、6匹目の通常ゆっくりに突入してからやっと炸裂した。 リーダーまりさの小間使いをやっていたゆっくりれいむが破裂する。 後方で他のゆっくりに指示を出していたリーダーまりさに加熱された餡子の酸化物が降り注いだ。 「よ゛っ゛、よ゛く゛ほ゛れ゛い゛ふ゛を゛!!」 滝のような涙を流し、リーダーまりさは人間へと突撃。 何事かと振り向いた巨大みょんの横をすり抜け、石を集積中だった赤ちゃんれいむを飛び越して駆けた。 最も先頭にいる巨大ゆっくりを追い抜いたとき、目の前の惨状に気がついた。 まりさの目の前にあるのは餡子と皮の山。森の出口正面の為にここで無残に撃ち殺されるゆっくりが多かったことを物語っている。 苦痛の表情をした顔の皮とまりさは目を合わせてしまった。 背中に何か冷たい物を感じるまりさ。 まりさの右にはたくさんの瀕死ゆっくり。「い゛た゛い゛よ゛お゛ぉ゛。」「ゆ゛っく゛り゛し゛た゛い゛よ゛」「ま゛り゛さ゛。た゛す゛け゛て゛よ゛は゛り゛さ゛」ゆっくりのうめき声がたくさん流れてくる。 元気なゆっくりが葉っぱを貼り付けてあげ、言葉をかけるなど治療行為を行っているが餡子の流出が止まらず、どう見ても助かりそうに無かった。 まりさの左には形が残っているゆっくりの死骸が集積されていた。 話しかければ今にも起き上がるんじゃないかという安らかな顔で目を閉じたゆっくりれいむが運ばれてきて、死骸の山に加えられた。 まりさは再び正面に顔を向けた。 餡子と皮の山の向こうには灰色の塊が鎮座している。人間の乗り物だ。 後部から煙を噴き出し、その塊がが次々とまりさの方へ向かってくる。 あれが、あれがまりさのともだちを!あれがまりさのかぞくを!あれがまりさのなかまをころしたんだ! 怒りの視線を射殺さんばかりに灰色の塊へと向けるまりさ。 ふっと、何かを決意して口を開く。 「ひ゛んは゛!ひ゛んけ゛んはゆっくりし゛て゛るみた゛いた゛よ!いは゛のうち゛にこ゛ろせ゛えええぇぇ!!」 20を切るまでに減った砲台ゆっくりがリーダーの命令を受けて口を開けた。 次に石を頭に載せた通常ゆっくりが近づき、砲台ゆっくりがそれを受け取る。 本来ならば砲台ゆっくり1に対し、石運びゆっくりは3を確保して迅速な射撃を実現していたはずだったが、急速な石運びゆっくりの消耗により射撃間隔がひどく開いてしまっていた。 でも、これまでだよ。にんげんののりものがすごくてもこんなにたくさんのいしをふせげるわけないよね。 砲台ゆっくりが一斉に空気を吸い込むと言う頼もしい光景にまりさは勇気付けられた。 今までにその自信が何回打ち砕かれたかはもう忘れて。 「みんな!いくよ!ゆっくり~!」 「装填よし!」 「目標!砲撃ゆっくり!弾種徹甲!」 「うってね!」 「テェッ!」 砲台ゆっくりと戦車隊の射撃はほぼ同時だった。 しかし、ゆっくりが放った石は放物線を描き、それに対して砲弾はほぼ一直線に突き進んでいく。 どちらが先に効果を発揮するかは明らかだった。 ゆっくり達にとって幸いだったのは、石が効果を発揮したかどうか判別する前に死んだ事だった。 「は゛ぁ…は゛ぁ…な゛ん゛て゛ぇ!?な゛ん゛て゛ぇっっ!????」 リーダーまりさは僅かな手勢を引き連れて廃鉱山へと泣きながら逃げ帰っていた。 切り札を人間に悉くつぶされた挙句、新しく開発した「投石」作戦すら無効だったから。 強靭な悪い巨大ゆっくりの皮膚すら貫通する「投石」を防がれたのはショックだった。 あの時、自分達の放った石よりも先に人間達の攻撃が到達して砲台ゆっくりを粉砕、餡子と白雪の混合物が舞い上がったが、それでもまりさは口をゆがめて笑うのを止めなかった。 試しうちした時に見た、放物線を描く石が悪いゆっくりの上から降り注いで、餡子の飛沫を上げながらゆっくりが絶命した光景。 それが今度は人間相手に起きるだろうと確信していた為だ。 しかし現実は厳しかった。 威力を期待された石は戦車の一番薄い上面装甲すら貫徹できず、火花を上げて跳ね返された。 必殺の攻撃すら防がれたゆっくりの群れはその光景を目にした時点で壊乱。 残り少ない巨大ゆっくりが人間の前に立ちふさがり、通常ゆっくりがまりさを援護しながら脱出を開始した。 巨大ゆっくりの断末魔を聞きながら全速力で「おうち」を目指しているのが今の状況、というわけだ。 まりさが後ろで何かはじけるような音がしたのに気づくと同時に、横を走っていたゆっくりみょんが顔をはじけさせながら前につんのめる。 「ま…さ…ゆ…くり…にげ…て…ね…」 まりさはみょんを見ない。見ると追いつかれて殺されると知っていたから。 再び後方で音が発生。ついでまりさのまわりを高速で何かが飛びぬけていった。 高速で飛ぶ何かが木に当たり、木片を高速で周囲に撒き散らす。 ゆっくりちぇんが木製の散弾を食らって倒れた。 ありすの群れから来てくれたゆっくりありすが高速で飛ぶ何かに全身を貫かれて吹き飛ぶ。 それでもまりさは前を見続け、前進し続けた。 まりさを救うために散ったゆっくりの命を無駄にしない為に。 そうするうちに追撃がやんだが、それに気づかずリーダーまりさは森を駆け抜けていった。 「撃ち方やめ!撃ち方やめ!」 逃走した指導者まりさとその取り巻きを追撃していた加工所職員達に停止命令が伝わる。 停止させた理由が分からず疑問に思ったが、彼らはそれを態度に表さずに帰っていった。 それが彼ら加工所研究開発部実験隊の仕事だから。 ごめんね。ぜんぜん「雪中」じゃないね。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3088.html
鰤たんのゆっくり 数日前からゆっくりまりさを飼っている。 というより、単に室内に軟禁している。 食べ物は一切与えていない。ある実験をする為である。 そして今日がその頃合。俺はまりさを閉じ込めていた部屋の戸をガラリと開けた。 「ゆっ・・・!おにいさん!まりさおなかすいたよ!!ごはんちょうだいね!!」 俺の姿を認めるや、すぐに擦り寄ってきて飯の催促。「ゆっくりしていってね」の一言も無い。 家に連れてきた時に比べ、まりさの体は大分やつれているように見える。 ぽよぽよと跳ねる動きも力無い。放っておけば今日あたり餓死しそうだ。 「はっはっは、まりさに言われたごはんの用意に少しだけ手間取ってね。ちょびっととは言え待たせてすまんね」 「ゆっくりしすぎだからね・・・もうまりさはおなかがぺこぺこなんだよ・・・おなかすきすぎていたいからね・・・」 野生で遊んでいたまりさに「好きな食べ物を食べさせてあげるから、うちにおいで」と誘ったのが事の始まりだ。 まりさの注文は、蜂の子入り蜂の巣の蜂蜜がけ。自然界でこいつらが手の届く範囲では、最も上等なご馳走だろう。 俺も子供の頃は痛みに耐えてよく食べたものだ。 まりさも以前に食べた時の味を思い返したのか、よだれを垂らして「ゆっくりはやくもってきてね!!」と騒いでいた。 それ以降俺はまりさと顔を合わせることをやめ、覗き穴から観察することにした。 まりさは俺がいない時でも「まだかな!まだかな!まだかな!」と連呼しながら、 少しでもごちそうを美味しく食べようと、部屋中を駆け回ってお腹を空かせようとしていた。 それが翌日になると、「ゆぅ〜〜〜!!ゆっくりしすぎだよ!!はやくごはんちょうだいね!!」と苛立ち始めた。 更に翌日になると「なにしてるのおにいさん・・・まりさおなかすいたんだよ・・・」と、か細い声が聞こえるだけになった。 その翌日ともなると、「ゆ・・・・ゆ゛・・・・・」と床にへばって呻き出した。 そこから更に二日間熟成させ、今の状態が完成したよ! 「さあ、約束どおりごはんを用意したよ。ゆっくり食べてね!!」 「ゆゆ!ゆっくりしないでたべるよ!!」 ゆっくり食べろっつってんだろうが。 ともあれ、ごはんがもらえると聞いてまりさの目に光が戻って来た。良いことだ。 さて、ここからが実験の本番である。 「ただし!!」 「ゆっ?」 「お前にはこの二つのどちらか一方を選んでいただく」 そういって俺が差し出したのは、それぞれ透明な箱を覆い被せた二つの食べ物。 透明な箱は非常に安定しており、ゆっくりに開けたり倒したりすることは不可能です。 「一方は完熟マンゴープリンだ! お前らより数段美味いもん食ってる人間様でも舌鼓を打つ高級品! ほ〜ら、フルーティな芳香が鼻腔をムンムン刺激するだろう?」 「ゆ・・・・ゆゆゆゆゆゆゆ!!すっっっっっごくおいしそうだよぉぉ〜〜〜〜!!」 まあこいつ鼻無いけどね。 でも美味そうなオーラは伝わっているのか、まりさの口からは滝のようなよだれが溢れている。まだこんなに水分持ってたのか。 野菜などを盗んで食べたことがあるのだろう、人間の食べ物の美味しさを知っているらしいまりさの頭の中では、 この未知のごちそうに対する期待がハイパーインフレを起こしているに違いない。そんなご覧の有様だった。 「そしてもう一方はご注文の品、蜂の巣フルコースだ! これに目を付けるとはお目が高い! かく言う俺も大好物、健康食としてのブームも起きているハチノコから、今日は良いとこばかり厳選したよ!」 「ゆ、ゆわあああああああああ!!!これはまりさのごはんだよ!!ぜっっっっっっったいにあげないよ!!!!」 まるまると太ったハチノコと琥珀色のソースを前に、まりさの思考餡子はショート寸前。 とうとう涙まで流し始めた。そりゃ数日間待ちに待ったごちそうが来たんだから無理もないだろう。 まあこいつの涙もよだれもベタベタした砂糖水には違い無いからどっちでも良いんだけどね。 「さあ今夜のご注文は、DOCCHI!?」 「ゆゆーん!どっちもたべるよ!!はやくたべさせてね!!」 「ブブー、ダメでーす。どっちか一方だけでーす」 「ゆゆ゛っ!?どうしてなの!!まりさおなかすいてるっていってるの!! かわいそうなまりさをいーこいーこしないとだめでしょ!!おにいさんのぶんもちょうだいね!!」 自分に優しくしてくれない愚かな人間を前に、体を膨らませてぷんぷんと怒っている。 あー憎たらしいったらない。 「俺の分なんて無いでーす。俺さっきおせち料理たらふく食ったのでもうお腹一杯でーす。 選ばれなかった方はゴミ箱に捨ててきまーす」 「ど、どぼじでぞんなごどずるの!!すてるならちょうだいよ゛おおぉぉぉぉ!!」 「嫌でーす。ちなみにどっちも選ぶ気が無いならどっちも捨ててくる。で食べるの? 食べないの?」 「ゆ・・・ゆっくりえらんでたべるよ!!すてちゃだめだよ!!すてないでね!!」 ついに折れたまりさ。そりゃそうだよね。 物欲しそうに口をあんぐりと開き、「ゆっ・・・ゆっ・・・」とよだれを振りまきながら両者を交互に見ている。 マンゴーの輝き……蜂蜜の照り返し…… プリンのアール……ハチノコの丸まり…… 芳醇な香り……懐かしき日のにほひ…… 「ゆっ・・・どっちをたべようかな・・・まりさのおいしいおいしいごはん・・・・・」 未知の究極と既知の至高、両雄がまりさの餡子の中で一進一退の攻防を繰り広げる。 これは、まりさのごはんだ……しかしどちらかしか食べられない……どちらを食べるか……どちらもまりさのごはん…… まりさの思考は入り口のあたりでずっとループしていた。まあ人間じゃないんだからこんなもんである。 「ゆゆゆ・・・・どっちもすっっっっっっごくおいしそうだよおぉぉ〜〜〜!! むーしゃむーしゃしたら、ぜったいしあわせ〜〜〜!!になれるよぉ〜〜〜〜!!ゆわわああぁぁ〜〜〜!!」 食べた時の幸福を想像しただけで、まりさの全身には凄まじいゆっくりが駆け巡っているようだ。 まりさの口内はよだれが溜まり過ぎて、金魚が泳げそうな様相を呈している。しかし目は笑ってないんだぜ。 金魚って砂糖水の中で生きられるんでしょうか? そんなくだらない疑問すら浮かんだ。 「ははははちのこさん、ゆっくりしていってね!!まんごーさんもゆゆゆゆっくりしていってね!!!!」 お、今日初めてのゆっくりコールが炸裂した。この声掛けの意味は全く解らないけどな。 しかし、まりさはしきりに両方のごはんに媚を売っている。 これは何かゆっくりなりの哲学に基づいた行動なのか? 全く解らない。ごはんの方に選んで貰おうと思っているのだろうか。 さて、そんな風にグダグダと悩み続けること数時間。 結論から言うと、まりさはどちらも選びきれずに餓死した。 彼女の姿を見て賢者は、「我々人類もこのゆっくりと同じだ。迷いを捨てなければ真の幸福は掴めないのだ」などとのたまう。 しかし俺は思う。奴は誇り高かったと。 どちらも譲れぬ、生の最期の瞬間までその信念を貫いた。 何かを生かすということは、何かを殺すということなのだ。 だから皆さん、時にはこんな選択肢があっても良いのではないでしょうか? 実験結果! おせちも良いけどカレーもね♪
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4553.html
※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。あと五話以内で完結の予定。ここまで長くなるとは…… ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』21 その夜、十三匹のゆっくり達は円になって向き合っていた。 いずれも惨憺たる有様だった。 髪のほとんどを失って禿げあがり、あんよを焼いて動けなくなったれいむ四匹。 歯と舌を失い、噛むことも喋ることもかなわず、ゆーゆーと呻くことしかできないまりさ四匹。 目とぺにぺにを失い、生き甲斐のすっきりを捨てて暗闇の中で蠢くありす五匹。 どれもひどい状態だったが、 今、十三匹は助けあうことでなんとか暮らしていた。 動けないれいむ達を、まりさ達が押して移動させてくれる。 目の見えないありす達に、れいむ達が視界を指示してくれる。 まりさ達は言葉を喋れなかったが、 ありす達は「ゆーゆー」のうめき声に込められたニュアンスを鋭敏に読み取ってくれた。 苦労しながら、手を貸し合うことで、十三匹はこうして綺麗な円を描いて座っている。 昔、お兄さんに飼われていた頃、五体満足だった頃の自分たちにはできなかった芸当だ。 かつてはいがみ合っていた十三匹が、 共通の罪を背負い、片輪になった今、その結束が強固なものになっている。 親れいむは一同を見回し、ささやかな満足を覚えていた。 すでに話し合いは済んでいた。 あとは決められたことを実行するだけだ。 かすかに震えながら、十三匹はずっと動かなかった。 誰かが最初に差し出せば、全員がそれにならって差し出すだろう。 しかし、一番手を名乗り出る勇気がなかなか出ずにいた。 それしかない、ということはわかっていた。 髪も、目も、歯も、舌も、あんよも、ぺにぺにも、 お兄さんの赤ちゃんには釣り合わず、贖罪にはならなかった。 となれば、残されたものはそれだけだ。 誰からともなく、傍らのゆっくりにすーりすーりを始めていた。 互いの姿を確かめるように、じっと見つめ合い、頬を擦り合わせる。 かつて暴君だった親まりさでさえ、我が子の頬を愛しみ、子との抱擁を味わっていた。 まるでそれが今生の別れででもあるかのように。 「ゆー………ゆううー……………」 名残りを惜しむ時が長い間流れた後、 ついに、一匹の子ありすが舌を伸ばすと、 自分の頭からそれを外し、円陣の中心に置いた。 それを皮切りに、一同から次々とそれが差し出されていった。 最後に親れいむが自分のものを差し出し、 一同の中心に、それは山と積み重なった。 償いたかった。 あれほど愛しい人間の、あれほど愛らしい赤ちゃんを嬲り殺した罪。 それを償い、詫びたい。 詫びて、あの赤ちゃんに許してほしい。 そして人間に褒めてほしい、自分たちはゆっくりできると。 それだけがゆっくり達を突き動かしていた。 もはや、見慣れた家族の姿はどこにもなかった。 外見上は、どこの誰とも知れず、得体も知れず、ゆっくりできないゆっくり。 禿げ上がるよりも、目をえぐられるよりも、足を焦がすよりも、舌を失うよりも、 ゆっくりにとってゆっくりできないおぞましい姿が、 宵闇の中で円になって並び、黒いシルエットを浮かびあがらせている。 しかし、その場にいるゆっくり達は、 それらが自分の家族であり、そして自分自身であることを知っていた。 いずれともなくすすり泣きはじめ、 隣のゆっくりがその頬をぺーろぺーろしながら、自分も涙を流している。 これを以てしても詫びることができなかったその時はどうするか。 それもすでに話し合い、決めてあった。 これを差し出した今、自分たちが差し出せるものはもう一つしか残っていないのだから。 そして、これを差し出す以上、最後に残ったそれに対する未練ももうないのだ。 せめて、それを人間がゆっくりする役に立てることだけが皆の望みだった。 皆が身を寄せ合い、一言も発することなく静かに泣いていた。 二十七日目 恐ろしく、冷たく、しかし何よりも愛しいお兄さんが、 椅子に座り、自分たちを見下ろしている。 動けないれいむ達をまりさ達が押し、 押されながら、れいむ達がありす達に方向を指示する。 息の合った連係で、十三匹はお兄さんの前に並んだ。 今日のお兄さんは、部屋に入ったときから、 新聞も読まずに自分たちに注目している。 一言も口を挟まずに、自分たちの動向を見守ってくれていた。 「おにいさん。 これが……れいむたちのおわびです」 親れいむがそう言うと、盲目のありす達が、 それぞれ口にくわえていたものを床に置き、お兄さんのほうに押しやった。 四揃いのリボン、四つの帽子、五つのカチューシャ。 ゆっくりにとっては命と同等の価値がある髪飾りが、 ひとつも欠けることなく、十三匹分揃って並べられていた。 「れいむたちの………いちばんたいせつな、おりぼんさんです」 「ゆうううぅ……ゆー……ゆーゆゆううーゆー………」 「ありすたちのかちゅーしゃです………」 お兄さんは黙ったまま、それらを見つめていた。 その様子を窺ってから、親れいむが続けた。 「れいむたちは、それがないと、にどとゆっくりできません。 あまあまをむーしゃむーしゃしても、すっきりしても、おひるねしても、 それがないと、れいむたちはゆっくりできません。 れいむたちは……もうにどとゆっくりをしません」 「………本当にいいのか?」 弾かれたように、全員が顔をあげた。 お兄さんが、眉を寄せてこちらに身を屈めていた。 いつものように「捨てろ」と切り捨てられるのではないかと気が気ではなかった。 しかし今、お兄さんが身を乗り出していた。 その喜びに、親れいむが声をはりあげる。 「いいんです!! ゆっくりできなくなってもいいんです!! それが、それが、れいむたちの、おわびなんです!!」 「……一生ゆっくりできなくなるんだぞ。 仮に人間に飼われても、それがないとゆっくりできないぞ」 「ありっ、ありすたちが!!」 親ありすが声を絞り出す。 「あでぃずだぢが、ゆっぐ、ごろじだあがぢゃんも!! にどどゆっぐりでぎばぜん!! だがら、だがら、あでぃずだぢも!!もうにどどゆっぐりじばぜん!!」 「ゆぐううううーーーー!!ゆうううぐうううううううーーゆーーーー!!!」 まりさ達もしきりにうなずきながら叫んでいた。 「うげどっでぐだざい!! どうが、どうが、おりぼんざんをうげどっでぐだざい!! でいぶのおわびを!!うげどっでぐだざあいいいいい!!!」 お兄さんが屈みこみ、それらを手に取っていた。 ゆっくり達の表情がぱあっと華やいだ。 こんなゴミクズの汚らしい飾りを、お兄さんが手ずから触れてくれた。 それだけで報われる思いがした。 「………お前たちの気持はわかった」 「ゆううぅぅぅぅうううう!!!」 嬉しさのあまり、ゆっくり達は泣き、呻いた。 「お前たちはそこまでして………俺の子供のために詫びてくれるんだな」 「ばい!!ばいいいぃぃ!! ぼんどうに、ぼんどうに!!ぼうじわげありばぜんでじだあああぁぁ!!」 「ゆるじで!!ゆるじでぐだざいいいいぃぃ!!」 「許す」と、ただ一言言ってほしかった。 深刻な障害を抱え、髪飾りを失った今、 許されたところで、もはやゆっくりできるゆん生はないだろう。 それでも、ただ一言、一言だけ「許す」を言ってくれれば、 自分達は報われるのだ。 「………………」 返答は返ってこない。 ゆっくり達がちらりと表情を窺うと、 髪飾りの山を前にして、お兄さんは口に手を当てて悩む風だった。 小声でぶつぶつ言っている。 「これだけのものを………これでもう……どうだろう……… まさかここまで………こいつら…………… 俺の娘は………これでやっと………………いや、しかし…………」 悩んでくれている。 それまで歯牙にもかけられなかったゴミクズの自分たちのために、 お兄さんが気にかけ、許すかどうか悩んでくれている。 それだけでたまらなく嬉しかった。 お兄さんの逡巡は長く続いた。 ついに親れいむが待ち兼ねて、多幸感を表情に浮かべて叫んだ。 「れいむをころしてください!!!」 「なんだと!?」 お兄さんが叫び、驚愕の表情でこちらを見つめる。 他のゆっくり達も、一瞬親れいむを見やり、続いて口々に叫んだ。 「れいむもころしてください!!」 「ありすもころしてください!!」 「ありすもおねがいします!!」 「れいむも!!」 「ゆー!!ゆううーゆーー!!」 殺してくれ、の合唱。 お兄さんに許してほしい、その一心でゆっくり達は叫び続けた。 「………死ぬっていうのか。俺の、子供のために」 「ぞうですううぅ!! ごろじでっ!!ごろじでぐだざい!! でいぶだぢはっ!!じんで!!おぞらの、あがぢゃんにっ!!あいにいぎばず!! おぞらで!!あがぢゃんに!!ごべんなざいっでいっでぎばずううぅぅ!!」 お兄さんが呻いた。 「……どんな死に方がいいんだ?」 「いぢっ!いぢ、いぢばん!!ぐるじいぼうぼうで!! いぢばん、いだぐで、ぐるじぐで、ゆっぐりでぎないぼうぼうでごろじでぐだざい!! あでぃずだぢは!!おわびじだいんですうううううぅぅぅ!!!」 「そんな……本当に、それでいいのか?」 「いいでず!!」 「いいんでず!!」 「ゆううううぅ!!ゆううううぅーーーーーーっ!!」 「ぼんどうにずびばぜんでじだ!!」 「おにいざんのぎがずむばで!!あでぃずだぢをぐるじめでぐだざいいぃ!!!」 お兄さんが椅子から立ち上がり、懇願するゆっくり達を見下ろした。 しばらく考えていたが、やがて言い渡した。 「よし。殺してやる。一番ゆっくりできない方法で……それでいいんだな」 「ばいいぃ!!あじがどうございばずぅ!!」 「ぼんどうに、ぼんどうに、あじがどうございばじだ!! ぼうじわげありばぜんでじだあああぁ!!」 「ああ………そして」 お兄さんがゆっくり達の前に屈みこみ、 親れいむの頭に手を置いて、優しく笑った。 「それで許してあげよう」 「ゆっ………!?」 「お前たちは、俺の子供のために死ぬとまで言ってくれた。 お前たちは本当に反省したんだな。 認めるよ。お前たちは、本当に、ゆっくりできるゆっくりだ」 ゆっくり達の表情が、ゆっくりと、泣き顔から笑顔に変わっていく。 涙に濡れた頬に、開放の笑いが大輪の花を咲かせた。 「お!!おにいざん!!おにいいざあああああんん!!」 「あじがっ!あじがどうございばず!! ごんなごみぐずをゆるじでぐれであじがどうございばずううううぅぅ!!」 「いいや。お前たちはもうゴミクズなんかじゃない。 人間のためになる立派なゆっくりだよ」 「ゆうううぁあああああああ!!!あじがどう!!あじがどううううぅぅぅ!!!」 「子供を殺したお前たちを、俺は心底憎んでいた。 でも、もう、憎み続けるのにも疲れたよ。 何かを憎み続けるというのは辛いもんだな……自分までみじめになってくるんだ。 お前たちのことも、ずっと許さずにいじめ抜いてやろうと思っていた」 「ゆぐっ………!!うぐぅ………!!」 「でも、もういいよ。 お前たちは本物だった。最高のゆっくり……いや、人間以上だ。 罪を償うために自分をそこまで傷つけ、命まで差し出すなんて、 人間にだってなかなかできることじゃない。 尊敬するよ………目が覚めた気分だ。ゆっくりって、すごいんだな」 泣きじゃくりながら、ゆっくり達はお兄さんの言葉を聞いていた。 その一言一言が、傷ついた身体に、心に、温かく沁みとおった。 「お前たちは罪を償わなければならない。 お前たちの死が、すべての人間、すべてのゆっくりのためになるんだ。 苦しんで死ぬことになるが、死んだあとは、お空でゆっくりしていってくれ。 お空から、俺達人間を見守っていてくれ」 「ばいいぃ!!ばいいいいいぃぃぃぃ!!!」 「ゆうぐううううう!!ゆううううぅぅぅーーーーーーーっ!!!」 ゆっくり達は、嬉し泣きに大粒の涙を流した。 感極まった親れいむが、泣きむせびながらお兄さんにすがりついて叫んだ。 「お、おにいざん!!おにいざんっ!! びどづだげ!!ざいごに、びどづだげ!でいぶのおでがいをぎいでぐればずが!?」 「なんだい」 「ず、ず、ずーりずーり!!ずーりずーりじでぐだざい!! ずっどっ!!おにいざんどっ!!ずーりずーりじだぐでっ!!でい、でいぶはっ」 「いいよ。ほら」 お兄さんの手が、親れいむの頬をやさしく撫でた。 「あぐっ、ゆぐっ………ゆっ…………ゆっっっっぐいいいぃぃぃぃ~~~~~~~~……!!」 夢にまで見たすーりすーり。 罪を許され、開放され、ついに親れいむは人間さんにすーりすーりをすることができた。 あまりの嬉しさと多幸感に、涙と涎とうれちーちーが止まらなかった。 「お、おにいざん!!でいぶも!!でいぶもおねがいじばず!!」 「あでぃ、あでぃずもずーりずーりじでぐればずが!?」 「ゆぐううううーーーーっ!!ゆうううううゆうううううーーーーーー!!!」 「慌てなくてもいい。みんなすーりすーりしてやろう。 みんな、とてもゆっくりできる、いいゆっくりだもんな」 「ゆんやあああああああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!」 嬉しさのあまりに悲鳴をあげ、十三匹のゆっくりはお兄さんの膝元に殺到した。 動けないれいむも、目の見えないありすも、 お兄さんはわけ隔てなく取り上げ、膝の上ですーりすーりをしてくれた。 髪飾りを捨ててなお訪れた、生涯最高のゆっくり。 後に待つのは苦痛に満ちた死だったが、それは全く苦にならなかった。 ただただ、このお兄さんを喜ばせたいと願い、 十三匹は、最後の苦行を心待ちにさえしていた。 長い階段だったが、ゆっくり達は文句も言わずに飛び跳ねていた。 親れいむが花束を手に持ち、親まりさが手桶と柄杓を持っている。 他のゆっくりも、それぞれに線香や蝋燭などこまごました荷物を持っている。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりのぼるよ!!」 「がんばってのぼろうね!!おにいさんといっしょだからゆっくりできるね!!」 「おにいさん!おにもつもちますわ!!」 「いやいや、大丈夫だよ」 お兄さんは笑いながら、声をかけてきた足もとの子ありすの頭を撫でた。 「ゆふぅっ………!!」 ひと撫でで子ありすの表情が幸福にゆるむ。 霊園は広く、道のりはそれなりに辛かったが、 十三匹のゆっくり達はこのうえなく幸福だった。 れいむ達は元気に飛び跳ねているし、 まりさ達はころころした声で喋り、ありす達はきょろきょろと瞳を動かしている。 人間の技術は、ゆっくり如きには思いも及ばない素晴らしいものだった。 あれほど傷ついたれいむ達の体を、 眠っている間に、お兄さんはいともたやすく完璧に治療してくれた。 髪飾りも返してもらい、十三匹は元通りの完全な健康体である。 長い階段を上りきったところに、赤ちゃんの墓はあった。 長浜家の墓は、綺麗に手入れされていた。 黒い長方形の墓の側面には、先祖代々の法名が彫られている。 お兄さんが指し示してくれた名前が、 自分たちが殺した赤ちゃんのものだった。 ゆっくり達は涙を流し、赤ちゃんのために頭を下げて詫び、祈った。 「ごめんなさい……ごめんなさい……ほんとにごめんなさい……」 「おそらでゆっくりしてください………」 「すぐにおわびにいきます……」 墓に水をかけ、周りを掃除し、墓前に花を添える。 泣きじゃくっているゆっくり達の頭を、お兄さんは撫でてくれた。 「きっと許してくれるよ。お空に会いにいったときに」 「ばい………ばいいぃ………!」 墓前に添えられた菊がかすかに揺れた。 白い清潔な廊下を跳ねていく。 ゆっくり達の口には、それぞれ一本ずつのカーネーションが咥えられている。 お兄さんの後について人気のない廊下を進み、何度も角を曲がった。 ある一室の扉が開かれた。 その部屋は白い壁に囲まれた簡素なつくりだったが、 部屋の中心にベッドが置かれ、 その周囲に配置された器具から何本もの管がベッドの中心に伸びている。 お兄さんがゆっくり達を持ち上げ、ベッド脇のテーブルに並べてくれた。 そこには忘れもしない、 かつて自分たちを世話してくれたあのお姉さんが横たわっていた。 やつれて青白い顔には太い管に繋がった透明なマスクが被せられており、 蒲団から突き出た腕にはコードが何本も繋がっている。 親まりさは顔に近付き、その瞼を見た。 その目は閉じられ、開く気配は全く感じられなかった。 まるで死人のように、お姉さんは動かなかった。 「おねえさん……えいえんにゆっくりしてるの?」 「いや。生きている。 生きてるが、目を覚まさないだけだ」 「どうしたら…おねえさんはめをさましてくれますか?」 「わからない。どうしようもない。 いつかは目覚めるかもしれないが、 俺たちはただ待つしかできないんだ」 親まりさが泣いていた。 「まりさが……まりさが、おねえさんに……あたっくをしたから……」 「もういい。まりさ」 「なんでぼじばず!!」 親まりさが叫び、お兄さんに懇願した。 「ばりざ、なんでもじばず!! なんでぼじばずがら!!おねえざんを、おねえざんをなおじでぐだざい!! ばりざのがらだをづがっでいいでず!!」 「無理だ!」 お兄さんが叫んだ。 「どうしようもないことも世の中にはあるんだ。 お前たちにだって、俺達人間にだってどうしようもない。 あとは運を天に任すしかないんだ。 お前たちは……ただ、見守っていてくれ」 「ばい………」 親まりさはしゃくりあげ、頷くと、 お姉さんに向きなおって言った。 「おねえさん……。 まりさたちは、おそらにいきます……。 おそらでずっと、おねえさんがおきるのをまってます」 「れいむたちも………まってます」 「きっと…………きっと…………」 ゆっくり達は目を閉じて祈り、 口に咥えたカーネーションを、お姉さんの手元にそっと置いた。 お姉さんのベッドが、赤い花で彩られた。 「ありがとう」 お兄さんが言い、親まりさの頬を撫でた。 「お姉さんは喜んでくれてるはずだ。 お姉さんがお空に行ったときは、温かく迎えてやってくれよ」 「はい………」 (後編へ)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5137.html
厳しい冬が終わりを告げ、春めいた陽気の日々が続くようになると、山の竹林では一斉にたけのこが生え始める。 この竹林の周辺を住処とするゆっくり達にとっては最高のご馳走であり、冬を生き延びた自分たちへの山からのご褒美とも思えるものだ。 「ゆっゆっゆー ゆっくりしていってね!!!」 「ここに、おいしそうなたけのこさんがあるんだぜ! まりさがとってあげるんだぜ!」 「「「おとーしゃん、ゆっくちがんばっちぇね!!」」」 ここにも、6匹でなかよくたけのこ掘りに興じているゆっくりの家族がいた。 成体の「れいむ」に「まりさ」とれいむ2まりさ2の赤ゆっくり達。 たけのこは、土の中のまだ葉が開いていない物が美味とされるが、ゆっくり達はカサカサと音を鳴らし地を這うようにして動きまわり、器用にたけのこを見つけていく。 ゆっくり達の身体的な特徴は、真にたけのこを探し当てるのに適していた。 「ゆぅぅ〜 ゆぅうううーー・・・!!」 「おとーしゃん がんばっちぇね! おいしいたけのこしゃんたべさせてね!」 「あ! たけのこしゃんのおちりがみえてきたよ!あとちょっとやよ!」 「おかーしゃんすごいね! おとーしゃんすごいね!」 「ふたりちゃりとも ちぇからもちですごいね!」 かわいいわが子達の声援を受けて、両親の作業にも熱が入っていき、見事に土の中からたけのこを取り出すことに成功した。 「ゆぅぅぅうう・・・・・!!!」 「「すっぽりーー!!」」 間の抜けた、掛け声とともにたけのこを抱えたまま二匹は力を入れた方向に転がっていく。 たけのこと一緒にコロコロと2,3回転がった程度で回転は止まり、心配して跳ね寄る子供達に2匹はニッコリと微笑んだ。 「やったぜ! たけのこさんが掘れたぜ!」 「まりさとれいむにかかれば たけのこさんもいちころなんだよ!」 「ゆゆー おとーしゃんやったね!」 「これで たけのこしゃんむーしゃむーしゃできるね!」 「おかーしゃん だいじょうぶ? いちゃくなかった?」 「ゆぅぅ〜 とっちぇも ゆっくりできちょうな たけのこしゃんだねぇー!」 キャッキャッとはしゃぐゆっくりの家族達は完全に、たけのこに気をとられて浮かれていたため、周囲に対する警戒が薄くなっていた。 この時期、たけのこを狙ってイノシシなども竹林によく姿を現すし、ゆっくりにとって「ゆっくりできない」存在である人間なども竹林に入ってくる。 周囲への警戒はしすぎるということがないくらいに、厳にするべきであったのだが、この家族は取ったたけのこをその場で食べ初めてしまった。 「むーしゃ むーしゃ しししししぃーしあわせぇぇーー!!!」 「「「「ちあわしゃへーーーー!!」」」」 「うっめ! これうっめ!」 しかし、この無警戒には理由があった。 この家族がたけのこを取っている場所は、山の竹林の中でもかなり奥まっているし、やや急な斜面をびっしりと成長した竹が覆っている、竹の密集地帯だった。 そもそも、良いたけのこはある程度、竹林を伐採してたけのこの出てくる余地を作ってやって、初めて生えてくるものである。 効率を重視する人間達は、最初から目をつけた竹林に手を入れて、良質な物を手に入れようとする為、竹林の奥までわざわざ入ってくることは稀であることを、この家族は学習できていた。 野良にしては、優秀なゆっくりと言える部類であり、この家族の未来は真にゆっくりしていると言えた。 しかし、そう上手くいかないのが人生・・ もといゆん生である。 この家族の破滅の足音は、頭上50メートル付近で轟音を轟かせた。 バチバチチチッッ パァーーン ビチチチッ!! 「「ゆゆっ!!?」」 ゆっくりとしあわせーを交互に繰り返し、緩みきっていたゆっくり達の下膨れの頬が一気に緊張する。 彼女達からは目視できない、はるか頭上で鳴ったその音は親達ですら生まれてこの方耳にした事が無い音であり、赤ゆっくり達はたちまちパニックを起こしてしまっていた。 「「ゆぅーー このおちょなにぃー??!」」 「「ゆっぐじでぎにゃいよお”お”お”お”お”お”!!!」」 「おちびちゃん達! 落ち着いてね! お母さんにゆっくりついてきてね!」 「まりさが付いてるから安心するんだぜ! おかあさんにゆっくりついていくんだぜ!」 親れいむが子供達を先導し、親まりさはその場にしばらく留まって周囲を警戒した。 緊急時の役割分担すら完璧であり、自分達も初めて遭遇する事態であるにも拘らず、迅速に巣へ引き返し始めた。 先導する親れいむと親まりさにはさまれるようにして、4匹の子供達が安全に巣へ誘導された。 あたりには焦げ臭い匂いが立ち込めていたが、目に見える範囲での明確な出火は確認できず、事態を把握しきれない事に、親まりさは言いようの無い不安を覚えていた。 {何が起きたかはわからないけど、みんなのゆっくりはまりさが守ってみせる!} 心の中で、そう決意しながら家族とともに安全な巣へ引き返していくゆっくり達。 彼女達は知る由も無いことだが、餌場たる竹林の上空には高圧送電線が通っており、伸びきった竹が接触することによって、短絡(たんらく)が発生していたのだった。 そしてこの事象が、今まで人間の進入を拒んできていた竹林に人間を呼び込む原因となることを、勇敢な親まりさは知りようも無いのだった。 ==翌日== 「あーーーあぁ めんどくせぇなぁ」 そんな風に悪態をつきながら、長柄鎌とのこぎりを装備して5人の仲間と一緒に山の斜面をノロノロと登っていく一人青年の姿があった 年の頃は25、6といったところだろうか? ひたすらダルそうにしながら山の斜面を登っていく。 昨日の送電線の短絡事象は、変電所などの関連した設備にはたいした影響は及ぼさなかったが、 再発防止のため、彼らを含む複数のグループが送電線の巡回検査を行う為に山に入り込んでいた。 この青年、いつもはデスクワークなどを専門とし、現場作業にあっては下請け等をこき使う為、周囲からは白眼視されていたが、本人はそんなことは大して気にする様子も無くオフィスで砂糖のたっぷり入ったコーヒーをすすり続けており、入社以来使い続けた椅子はその重量を支えることが難しくなっていた。 シュボ スパスパ フゥーーーー あろうことか、火気厳禁の山林でタバコを吸うこの男は、他の仲間からどんどん距離を開けられていき、目的の竹林近くに到着した頃には、すでに竹の伐採が始まっていた。 「じゃあ、私達は鉄塔のところまでこのまま竹を切りながら向かいますんで、すいませんがこの辺りの竹をお願いしてもいいですかね?」 連れてきた下請け業者の責任者が、そのように申し出ると青年は何も言わずに黙ってタバコを咥えたまま、2,3度頷いた。 他の五人はそのまま、上空の送電線を確認しながら、送電鉄塔を目指して進んでいった。 青年は適当に、腰の辺りまで伸びているたけのこを鎌でつつきながら、2本目に火をつけた。 吸い切った一本目のタバコを、腰を屈めて地面にこすり付けていると、視界にふと、ところどころ齧られた跡のあるたけのこを見つけた。 大きな齧り口もあれば、小さなものもある。 イノシシかなにかとも思ったが、それにしては齧り方が控えめな様な気がした。 もっともこの青年は、イノシシの齧ったたけのこなど見たことが無いので、そんな気がしただけであり、そのうちにそんなたけのこには興味を失ってしまい、ささやかな自分の義務を遂行するために、ゆっくりと立ち上がった。 「もうちっと、””ゆっくりしても””いいかも知んないけどさ〜」などと呟きながら・・・・・・・・。 昨日の不意に起きた、破裂音を警戒して、ゆっくり達はいつもとは違い十分に警戒しながら、餌場に向かっていた。 彼女達の巣は、倒木などで出来た天然の屋根に守られており、夏は涼しく、冬は少しの工夫で寒風を凌ぐことが出来た。 入り口を塞ぐ葉っぱを取り除き、親まりさが周囲を警戒しながらでてくる。 その後に、子供達が続いて親れいむが葉っぱの上にさらにカモフラージュを施せば、出発の準備は完了である。 親達の緊張が伝わったのか、子供達も今日は口数が少ない。 しかし 昨日おなかいっぱいになり損ねた分、今日こそはいっぱいたけのこさんをむしゃむしゃしてやろうと、心は踊っていた。 親達はゆっくり餌場に移動しながら、昨日のことを話し合っていた。 「ねぇ まりさ 本当に大丈夫かしら? 昨日の事もあるし・・・ 今日は他の餌場でもいいんじゃないかな?」 「ゆぅ〜〜ん・・・ 」 「「おとーしゃん れいみゅはたけのこさんたべたいー」」 「「おかーしゃん まりしゃもたけのこしゃんむーしゃむーしゃしたいんだぜ!」」 「「ゆぅぅーーん・・」」 二匹の親ゆっくりは困ったような顔をしながらも、子供達の期待に満ち溢れた、キラキラした目に押される形で、昨日の竹林付近にまで歩みを進めていた。 そしてそこで、腰を屈めて、昨日彼女達が掘り出したたけのこを観察する人間に出くわしたのだった。 すぐさま、木の根元に身を隠した親まりさは、目配せで他のゆっくり達に静止をかけると、親れいむはすぐさま子供達の注意を舌で喚起し、近くの藪に誘導した。 臭い煙を吐きながら、たけのこをまじまじと見つめる姿を、藪の中からじっと見つめる子れいむと子まりさ達。 {しょれは おかーしゃんとおとーしゃんががんびゃってとってくれた とってもゆっくちできるたけのこしゃんなんだよ! ゆっくちかえしちぇね!!} そんな風に、ちいさいながらも憤りを覚えていた。 故に、その後に耳を打った本能を刺激する言葉に素直に、そして大きな声で反応してしまった。 「「「「ゆぅ? ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」」 「あぁ?」 その声に振り返る青年。 その目の前に、成体のゆっくりまりさが飛び出してきた。 「ゆっくりしていってね!!人間のおにいさん!」 この時のまりさは、半分以上死を覚悟している。 とにかく、人間の注意をそらすことのみに、考えを集中させていた、後ろにいる最愛の家族のために、ほんの少しでいい、注意を逸らす事が出来れば・・・! しかし、そんなまりさの想いを無視するかのように、青年は下衆な笑顔を浮かべて、まりさの背後の藪を長柄鎌で横なぎに払った。 間一髪で親れいむが子供達を体当たりで弾き飛ばしたおかげで、子供達は鎌の刃にかかる事は無かったが、れいむ自身は自慢の赤いリボンを巻き込みながら後頭部にザックリと鎌の刃の進入を許してしまっていた。 「ゆ”う”う”っう”−−!!」 「い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ッッッ れ”い”ぶの”か”わ”い”い”お”り”ぼん”がぁぁぁ!!!」 「ははーッ ゆっくりじゃねえかよ こんな所で見つけるなんてツイてるぜ!」 青年はれいむが刺さったままの長柄鎌を手元に戻すと、ドンッと柄の部分の先端で地面を叩いた。 衝撃でれいむがゆっくりと鎌の刃からすべり落ちるように落下する。 と、地面に落ちる寸前で青年が軽くれいむに前蹴りを食らわせようとしたが、むなしく空を蹴った。 「れ” れ”い”む”ぅ”ぅ”ぅ” し”っ”か”り”し”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 大粒の涙をこぼしながら、まりさは一目散にれいむの元に跳ね寄り、傷口を舌で労わりはじめる。 子供達は体をぶるぶると震わしながら、呆然と眼前の光景を見やることしか出来なかった。 空振りの前蹴りでたたらを踏んだ青年は、悪態を付くと長柄鎌を少し持ち上げて、柄の先端を再び地面に向かって突き込んだ。 無防備にさらけ出されたれいむの後頭部に追撃の一撃を加えるつもりだ。 ジュブゥゥッ!! 最初の一撃で出来た傷口付近に叩きこまれた一撃は、空気を含んだようないやな音を立てて、れいむの後頭部にめり込んで行き、なおも力が加えられたため、完全に地面まで貫通してしまった。 青年はさらにひねりを加えながら、ゆっくりと柄に貫かれたれいむを持ち上げて、藪の近くで震える子供達の前に突き出した。 「で? これお父さん? お母さん?」 「や”べ”ろ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”!!! れ”い”む”を”は”な”せ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!!」 まりさは子供達の方に跳ねていき、庇う様に青年に向き直ると、れいむを柄からなんとか引き抜こうと、奮闘し始めた。 「ねえ どっちなの? 答えてよ?」 「「ゆ”ぅ”ぅ” お”か”ぁ”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん” や”め”ち”ぇ”ぇ”ぇ” 」」 「こ”ん”な”の” ゆ”っ”く”し”で”き”な”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”」 「に”ん”げ”ん”し”ゃ”ん” ひ”し”ょ”い”こ”ち”ょ”し”な”い”で”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 「ああ そう お母さんかー ありがとね 教えてくれて」 そう言いながら、青年は両の手で長柄鎌を持ち直して、ひどいことをしないでと懇願した赤れいむをそのまま突き刺した。 「し”ゅ”う”!?」 母親が刺さったままの鎌の柄に、ちょうど眉間の辺りを突き刺された赤れいむは、その勢いのまま腐葉土の地面に半ばめり込んだ。 青年が慎重に引き抜くと、親子れいむはちょうど向かい合う形で串刺しになっており、その姿をみた青年は「よかったね お母さんにキスしてもらえたよー」などとおどけた調子で言い放った。 「ゆ”ぅ”ぅ”ぅ” も”う”い”や”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”」 「た”し”ゅ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ” お”と”ーし”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん”」 「お”か”ぁ”し”ゃ”ん”と”れ”い”む”を”た”し”ゅけ”て”あ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 その場で絶望を表明するもの、父親に助けを請うもの、なおも他の家族を気遣うもの。 三者三様の反応であったが、共通しているのは、一匹もその場から動こうとしなかった事だ。 なまじ親が優秀すぎ、子供達が幼すぎたのが不運であったようで、三匹は恐怖のあまりその場から動けずにいたのだ。 このような時、とにかく分散して逃げてしまえば、この図体ばかり大きい愚鈍な人間からなら生きて逃げ延びる事が出来たかもしれないが、そのような判断が出来るほど成長してもおらず、危機的な状況に陥ったことが極端に少ない幸せだった赤ゆっくり達は、ただひたすらに恐怖を訴え、救いの手が頼れる父親から差し伸べられるのを待つしか出来なかった。 「お”ち”ひ”ち”ゃ”ん”た”ち”に”て”を”た”す”な”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」 涙でぐちゃぐちゃになった顔面に光る二つの目には、未だ闘志が灯っていたまりさは、猛然と怒りに任せて青年の膝辺りにまで飛び上がって体当たりを敢行した。 通常のゆっくりには考えられないほどの大ジャンプであるが、地形の高低差を利用した、この優秀なまりさならではの、ひねりの効いた一撃だった。 山登りで足に疲労がたまっていた青年には、一定の効果が在り、無様にもヒザカックンの要領で、青年はバランスを崩してしまった。 「がッ! くそったれ! この腐れ饅頭がッ!!」 「おちびちゃんたち!今だぜ! ゆっくり逃げるんだぜ!!」 その一声で、我に返った赤ゆっくり達は、一斉に後ろの藪に飛び込み、そこから2方向に別れて別々に逃げようとした。 ーーーーーーが、藪と赤ゆっくり達の間に、母と姉妹の体を貫いた長柄鎌そのものが降って来た。 その衝撃に足踏みした赤ゆっくり達に、まず青年の右足が踏み込まれた。 踏み込まれた右足は、なおも地面を擦り上げ下敷きになった赤まりさをすり潰す。 次に振るわれたのはノコギリで、赤れいむの顔面をザックリと裂きながらめり込んで行き、彼女に与えた苦痛の量は、意識を失わせるのには十分なものだった。 最後に残った一匹を、青年は抱え上げると、木の枝に串刺しにし、親まりさに向き直った。 「クソッ 舐めた真似してくれたもんだな?」 青年はなおも右足を地面に擦りつけながら言うと、タバコに火を点けてこう言った。 「お前が俺に体当たりなんかしちゃうからだよ 全員殺しちゃう気なんかなかったんだぜ?」 まりさは答えない。 ただ目の前の光景が信じられなかった。 ついさっきまで生きていた最愛の家族の変わり果てた姿は、まりさから戦意を奪うには十分だった。 「ゆっ ゆ・・・」 その声は、青年のすぐ傍にある木から聞こえてきた。 弱弱しいながらも、生存を主張するその声の方向に向かって、まりさはフラフラと進みだす。 「おちびちゃん ゆっくり待っててね いま まりさが・・・・」 スコンッ! まりさの目の前で、枝に突き刺さった赤ゆっくりの体が両断された。 それから数十分後、伐採を終えたメンバーと合流した青年は何事も無かったように山を降りていった。 あのゆっくりの家族が暮らした竹林には、いま6体のゆっくりの死骸がある。 顔面から背面向けて大きな穴の開いた、物が2つ 顔面にノコギリの刃を受けた後、息があった為に、丁寧な輪切にされた物 木の枝に体を突き刺されたまま体を両断され、奇跡的に皮一枚で枝からぶら下がっている物 地面に黒いシミとしてしか名残を残さない物 そして、家族を守ろうとしてついに果たせずに終わり、その心が折れた物。 4本ほどのタバコの吸殻を体にめり込ませたまま、まりさはただただ焦点の合わない目で見続けた。 今は無い、幸せだった頃の家族の姿を。 このSSに感想を付ける