約 117,900 件
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/401.html
日曜日の午後。 一人暇を持て余していた私は、近くの公園に散歩に出掛けた。 季節は初夏。梅雨があけて、空はようやく青さを取り戻していた。 浮かぶ雲は梅雨と違い、キレイな白色で空を彩っている。 少しだけ湿り気を残した風も心地よくて、 予定のない休日も悪くないかな、なんて思いながら歩いていると、 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 ……唯先輩の声が聞こえてきた。 声が聞こえてきた方に顔を向けると、 ベンチに座った唯先輩の姿が見えた。 何をするでもなく、ただぼんやりと空を見上げていて、 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 変わった調子で、 まるで歌を口ずさむように同じ言葉を繰り返していた。 憂鬱な季節が終わり、過ごしやすい気持ちの良いお天気に、 唯先輩も散歩に来たのだろう。 のんびりベンチに座って小休止というのは、悪くない過ごし方だと思う。 ただ…… 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 「………………」 唯先輩の言葉の中身が問題だった。 あまりの内容に、思わずその場に立ち尽くしてしまう。 唯先輩はまだ私に気づいていないのか、空を見つめたまま、 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 同じ言葉を口にし続けていた。 その声が耳に届き、私は一度目を閉じて、 「唯先輩っ!」 目を開いてそう叫び、唯先輩に駆け寄った。 「あっ、あずにゃ~ん!」 私に気づいた唯先輩がこちらを向き、 ほにゃっとした笑顔を浮かべて両手を振った。 でも私は、手を振り返す余裕なんてなくて…… 顔を強張らせたまま、返事の代わりに怒声を上げた。 「何なんですか! あ、あんな大きな声で! す、す……き……だなんて!」 恥ずかしさに言いよどみながら、それでもしっかり文句を言う。 幸い、公園には他に人影はなかったけれど…… だからといって、外であんなことを言うなんて…… あまりに恥ずかしすぎる。 私は怒って文句を言うけれど、 でも唯先輩は何を言われたのかわからないとばかりに、 「え? あずにゃん、どうしたの?」 首を傾げて、そう言うだけだった。 「どうしたの、じゃないです! さっき大きな声で言っていたじゃないですか! わ、私のことが……そ、その……す、す……き……とかっ ……ぁ……してる……とか!」 私の言葉に、唯先輩は「ん~」と言いながら空を見上げて、 「……あ、さっきの歌のこと?」 「……う、歌、なんですか?」 「うん、歌だよ。私の作った、あずにゃんに捧げるラブソング! お天気で気持ちよくて、つい口ずさんじゃったんだよぉ」 笑顔でそう言われ、私は脱力してその場にしゃがみこんでしまった。 確かに声の調子は歌のようだったけれど…… まさか本当に歌だったとは思わなかった。 あの言葉はどう聞いても歌詞とは思えない。 「……あれが、歌なんですか」 「そうだよ。澪ちゃんにアドバイス受けて、頑張って作ったんだよ!」 「……どんなアドバイスを受けたんですか」 「澪ちゃんがね、『自分の中にある素直な気持ちを、 まず言葉にすることが大事なんだ』って言ったからね、 自分の素直な気持ちを言葉にしてみたの…… あずにゃん、嫌だった……?」 笑顔で言葉を続け……最後に曇り顔でそう聞かれては、 嫌なんて強く言うことはできなくて…… 「……せめてサビ以外の箇所を歌うようにしてくれませんか」 「サビ以外も同じだよ?」 「……全部あれなんですか」 「あ、曲名は『あずにゃん好き好き大好き、愛してる』、だよ!」 「……曲名もですか」 あまりのことに何も言えず、私はもう力なく笑うことしかできなかった。 唯先輩に好きと言われるのが嫌なわけじゃない。 誰だって好意を寄せられて不快になるはずがなかった。 ましてやそれが、自分にとって大切な人からの好意ならば、 嬉しく思うのが当たり前だろう。 でも、いくらなんでも…… やっぱりあの歌は、さすがにきついと思った。 せめて人には聞かせないで欲しいと思ってしまう。 恥ずかしいなんてものじゃなかった。 (よし……やっぱり歌うの、やめてもらおう) 決意をもって、いつの間にか俯けていた顔を上げると、 「ん? あずにゃん、どうしたの?」 唯先輩の笑顔が目の前にあった。 混じり気のない、純粋な笑顔。 私を見つめるその笑顔には、悪意なんて一欠けらも存在していなくて…… さっきの歌も、本当に、 ただ純粋に自分の気持ちを歌にしたということが伝わってきてしまった。 「……唯先輩はズルイです」 「え? えっと……なにが?」 「……なんでもないです」 仏頂面で答えて、私は唯先輩の隣に座った。 ため息をついて、 「……歌」 「え?」 「……さっきの歌……恥ずかしいですから、 もう少し小声で歌って下さい……」 私がそう言うと、一瞬唯先輩はきょとんとした表情を浮かべて…… その表情は、またすぐに笑顔に変わっていた。 「あずにゃんは恥ずかしがり屋さんだねぇ」 「……あんな歌詞じゃ、誰だって恥ずかしがりますっ」 私の文句に、唯先輩は「エヘヘ」と笑い、 そしてまたあの歌を口ずさみ始めた。 さっきよりも、ちょっとだけ小さな声で。 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 歌詞の恥ずかしさに、私の頬は熱くなってしまうけれど…… 楽しそうに歌っている唯先輩の笑顔を見ていると、 もう止めようなんて思えなかった。 (まったく……いっつも唯先輩は……) いつもこうだった。唯先輩の笑顔を見ていると、 いつも本気で怒ることはできなくて、 結局最後は許してしまう。 あずにゃんと呼ばれることも、 ところ構わず抱きつかれることも、 最初は困っていたはずなのに…… 笑顔と一緒に向けられる好意に、 本気で怒ることはできず、抵抗もできなくて…… そして気がつけば、いつの間にか受け入れてしまっていた。 受け入れ、喜んでしまっていたのだ。 (……ほんとに、ズルイですよ) あんな笑顔を向けられたたら…… そんな楽しそうに「好き」って歌われたら…… 喜ばずにはいられないじゃないですか。 「あずにゃん好き好き大好き、愛してる~」 唯先輩の声が私の耳をくすぐる。 恥ずかしい歌詞に、頬は熱くなるばかりだ。 きっと今、私の眉は困ったように斜めになっていて…… でも口元は、きっとまた、ほころんでしまっているんだろうなって、 そう思った。 END おまけ 翌日月曜日。 「~~♪ あ、純、おはよう。今日も良いお天気で気持ちいいね」 「……あ~、まぁ……ねぇ……」 「……? なに、その微妙な表情?」 「まぁ、お天気で気持ちがいいのはわかるけれど…… 登校中にあんな歌を口ずさむのはどうかと……」 「……え? 私、なんか歌っちゃってた?」 「うん……『ゆいにゃん好き好き大好き、愛してる~』って……」 「…………え?」 ありゃま…感染したな。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 12 16 42 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/891.html
「あ、これって…ふふ♪」 整理していた荷物の中に懐かしい物を見つけ、私は思わず目を細めた。 「唯先輩?どうしたんですか、いきなり思い出し笑いなんかして」 隣で片づけをしていたあずにゃんが少し呆れた顔で私に言う。 「ん、何となくね…あずにゃんと恋人同士になった日の事を思い出しちゃって」 「な、何でいきなりそんな事を思い出すんですか!?」 私の言葉に、あずにゃんが顔を真っ赤にした。 「だってほら…これ」 「あ、それって…」 私の手の中の物を見て、あずにゃんが軽く声を上げる。 「うん、あの時のだよ」 「…私まで思い出しちゃったじゃないですか」 「あずにゃん、顔が真っ赤だよ?」 「もう知りません!私はあっちを片付けて来ますから、唯先輩はここの整理をお願いします!」 「りょうか~い♪」 軽く返事を返しながら手の中の物を見つめた。 「だけど…」 私は少し感慨深く目を閉じる。 「あの時は考えてもなかったなぁ…こんな未来」 「いっちば~ん♪」 私は勢い良く音楽室のドアを開ける。 他の皆は日直やらクラス委員の仕事やらで、今日は少し遅れると言っていた。 「…とは言え、一人じゃ何もする事ないんだよね」 ギターの練習でもしてようかなと思いながら部屋を見渡すと、視線の先に見慣れた綺麗な黒髪が見えた。 「あれ、あずにゃんもう来てたんだ」 私は鞄を置き、愛しい子猫ちゃんの元へと駆け寄る。 「あっずにゃ~ん♪…あれ、寝てる?」 愛しの子猫ちゃんは静かな寝息を立てて眠っていた。 「?」 近寄ってその寝顔を覗き込むと、目尻にうっすらと光る珠が見えた。 「…あずにゃん、泣いてるの?」 私はそっと涙を拭おうとした…が。 「唯先輩…」 寝ているはずのあずにゃんが、小さい声で私の名前を呼ぶ。 「あずにゃん?」 「…」 耳をあてて見ると小さな寝息が聞こえた。やっぱり眠っているようだ。 「夢の中で私とお喋りでもしてるのかな?」 「唯先輩…」 「なぁに、あずにゃん?」 再び呼ばれたその声に思わず反応してしまう。 反応した後で、昔どこかで聞いた迷信みたいなものを思い出した。 「そう言えば、寝言に答えたら駄目だって話を聞いたような…」 そんな事を考えていた矢先、あずにゃんが再び静かに呟く。 「好き、です…」 「!」 その言葉を聞いた瞬間、私の身体は凍りついた様に動かなくなってしまった。 「…ん」 「おはよう、あずにゃん♪」 「唯先輩?…おはようございます」 唯先輩の顔を間近で見た瞬間、まだ夢の中にいるのかと勘違いしそうになった。 「よく眠ってたね」 「あ、すいません…昨夜、寝るのが遅かったせいかついウトウトしちゃって」 「良いんだよ、別に~♪」 やたら機嫌が良さそうに唯先輩が言う。 「どうしたんですか、唯先輩?何か妙に機嫌が良いみたいですけど」 「え~、そうかなぁ?」 「はい、何て言うか若干引きそうなくらい素晴らしい笑顔です」 「あずにゃん、ひどす…」 「…で、何か良い事でもあったんですか?」 唯先輩の抗議を無視して私は更に問う。 「えっと、どうしよう…言っちゃっても良いのかな」 「言うと何かまずい事でもあるんですか?」 「ん~、私は特に…どちらかと言うとあずにゃんが?」 「私がですか…もしかして寝言で何か言ってましたか?」 「…うん」 少し照れた表情で唯先輩が答えた。 「…まぁ、良いです。気になるから教えて下さい」 「本当に良いの?」 「かまいません」 「本当の本当に?」 「しつこいですね、ドンと来いです!」 「あのね、あずにゃんが私の事を…」 「唯先輩の事を?」 「…好きって」 「好き…ですか、なるほど」 私は頷きながら、唯先輩の言葉を頭の中で繰り返す。 「…好き?」 「うん、好きって」 「…」 「…」 一瞬の沈黙、そして…。 「ええええええええええええええええ!?」 「あずにゃ~ん♪むちゅちゅ♪」 「ちょ、ちょっと待ってください!唯先輩…私、本当に?」 「うん、私もびっくりしたけど嬉しかったよ♪」 「え…嬉しかった、ですか?」 「うん♪」 「本当、ですか?」 「勿論だよ~」 「じゃ、じゃあ…私と付き合ってくれますか?」 「え?」 「え?」 あれ…私、何か間違えた? 「付き合うってどう言う意味で?」 「そのままの…意味です」 「恋人…って事かな?」 「…はい」 「…で、でも私とあずにゃんはどっちも女の子なんだよ?」 「そんな事わかってます…私はそれを承知で言ってるんです」 「え、え?」 「駄目…ですか?駄目ですよね?」 「そ、それは…」 「良いんです、唯先輩は悪くありません…同性を好きになった私の方が異常なだけですから!」 そう言って、私は唯先輩に背を向ける。 「あずにゃん、待って!」 唯先輩が呼んでいるが、私は構わず音楽室を飛び出した。 「あずにゃん…」 「…」 私は必死に走り続けた。 一秒でも早く、一歩でも遠く、唯先輩から離れたかった。 「何で…」 解っていたはずなのに。 唯先輩の『好き』は私の『好き』とは違う。 だからこの気持ちは胸に仕舞って置くつもりだった、それなのに…! 「だって、嬉しかったんだもん…」 唯先輩があんなに嬉しそうにしてくれて、私と同じ気持ちなんだって思い込んで。 この恋が成就する事はないって覚悟はしてた。 だけど、まさかこんな形で私の初恋が終わってしまうなんて思ってもみなかった。 「…唯先輩」 辛い。 ついさっきまであんなに好きだった笑顔が、今は思い出すのも苦しいなんて。 「辛いよぉ…」 いつの間にか辿り着いた屋上で、私は空を見上げて泣き続けた。 「…」 私は馬鹿だ。 大好きなあの子を傷つけてしまった。 「あずにゃん、ごめん…ごめんね…」 私はここには居ないあの子に謝り続ける。 こんな謝罪、いくらしたって意味なんてないのに。 「何で…」 何で、私は素直に受け入れてあげられなかったんだろうか。 確かに、女の子同士の恋愛なんて常識からは外れてるのかも知れない。 だけど、そんな物に囚われて私は誰よりも大切な人を傷つけてしまった。 「私も…」 私はここには居ない、愛しいあの子に向かって語りかける。 「私も好きだよ、あずにゃん…」 もっと早く気付いていれば。自分の『好き』が、常識なんて吹っ飛ばすくらい大きなものだったって事に気付いていれば。 「あんな悲しい顔をさせる事なんてなかったのにね…」 私はいつの間にか流し続けていた涙を拭う。 「このまま終わりになんてしない、絶対に」 生まれて初めてかも知れない。こんなに胸が熱くなるほどの『想い』を抱いたのは。 「大好きだよ、あずにゃん」 「…」 何もする気が起きない。 私は暗い部屋で一人、ただ時間が過ぎていくのを待っていた。 待った先に何がある訳でもない。時間が解決してくれるなんてそんな生易しいものじゃない。 「明日が休みだったのがせめてもの救いかな…」 今日が土曜日で本当に良かった。 正直、こんな状態で登校出来るほど私は強くない。 「あんなに好きだったのに…」 今は思い出すだけで苦しくなる愛しいあの人の顔。 唯先輩は何も悪くない。悪いのは異常な好意を持ってしまった私の方なんだから。 「唯先輩、助けてよぉ…苦しいよぉ…辛いよぉ…」 そしてこんな時でも、私が助けを求めて思い出すのはあの人なんだ。 枕に顔を埋めながら嗚咽を漏らす。 もう何も考えられない。私に出来る事と言えば、ただ助けを求め嘆くだけだ。 そんな時。 ジリリリリ 不意に私の携帯電話が鳴り響いた。 「な…んで?」 私は携帯を手に取り言葉を失う。 「何で掛けてくるのよぉ…」 着信の相手は唯先輩だった。 「あずにゃん…」 コールは既に十数回。当然と言えば当然だが、あずにゃんは電話に出てはくれない。 「お願い、あずにゃん」 私は祈りを込めて再び掛けなおす。 そして、更に数コール。 諦めかけた時、私の耳に『ピッ』と言う電子音が鳴り響いた。 「もしもし、あずにゃん?」 「…」 返事は無い。けれど私には直ぐに解った、あずにゃんは助けを求めてる。 「何も言わなくていいから、聞くだけでいいから…ね?」 「…」 「あずにゃん、今日はごめんね?私もいきなりの事で頭の中がごちゃごちゃになってたんだ」 「…謝らないで下さい」 私の大好きなあずにゃんの声。でも、その声は悲哀に満ちた弱々しいものだった。 「ごめ…ううん、ごめんじゃないよね」 「…」 「あずにゃん、私ね…あの後いっぱい考えたんだよ」 「何をですか?」 「あずにゃんの事を、だよ」 「私の事?私の事なんて、今更どうでもいいじゃないですか」 「よくないよ、あずにゃんは私の大切な…」 「大切な、何ですか?後輩ですか?友達ですか? 唯先輩にとって、私はただ可愛いだけの猫と同じなんでしょ!?」 「…違うよ、そうじゃない」 「何が違うんですか?違わないでしょ? あんなにも私にベタベタくっついて来てたのに… 私の事なんて、抱き心地の良いぬいぐるみ程度にしか思ってなかったくせに!」 「好きだよ、あずにゃん」 「!」 「私はあずにゃんの事が大好きだよ」 「な…んで…」 「…」 「何でまた…本気でもないくせにそんな事…!」 「本気だよ、私はあずにゃんをを愛してる」 「…っ!?」 「あずにゃん、聞いて?」 「…」 「あの後、いっぱい考えたんだ… 何でこんなに苦しいのか、何でこんなに悔しいのか」 「…」 「あずにゃん、言ったよね? 自分の方が異常なだけだって…でもそれは違うんだよ」 「何が違うんですか… 女の子同士なのに、私は唯先輩を好きになったんですよ?」 「うん、だってそれは私も同じだから」 「え…?」 「私もあずにゃんの事が好きだから… 可愛いだけの猫じゃない、抱き心地の良いぬいぐるみなんかじゃない」 「…っ」 「もう一度、ちゃんと言うよ?私は貴女を…平沢唯は中野梓を愛しています」 「唯…先輩」 「あずにゃんが自分の事を異常って言うんなら私だって異常だよ」 「違う、唯先輩は…」 「ん…」 「唯先輩は異常なんかじゃない…です」 「うん…あずにゃんもね?」 「はい…」 「あずにゃん、私にもう一度チャンスをくれないかな?」 「チャンス、ですか?」 「もう一度、私に告白して欲しいんだ」 「…」 「駄目かな?」 「駄目、じゃないです…だけど」 「だけど、何?」 「電話越しなんて嫌です…直接会って話したい、唯先輩の顔が見たい」 「うん」 「場所の指定、してもいいですか?」 「外で会うの?良いけど、夜も遅いし危ないよ」 「我侭言ってごめんなさい…だけど、どうしても行きたい場所があるんです」 「わかったよ、あずにゃん」 「ありがとうございます」 「それで、場所は…」 「唯先輩!」 「あずにゃん」 「ごめんなさい、待たせちゃいましたか?」 「ううん、私も今さっき来たところだよ」 「そうですか」 「まぁ、座りんさい」 「あ、はい」 「…」 「…」 お互い気恥ずかしさのせいか、妙な沈黙が流れる。 『あの…』 「あずにゃんから先に言って?」 「唯先輩からどうぞ!」 「…」 「…」 再び流れる沈黙。その沈黙を先に破ったのは唯先輩だった。 「あずにゃん」 「は、はい」 「虫除けバンド、いる?」 「は?」 「ほら、こんな季節だし蚊に刺されると後々厄介だから」 「は、はぁ…確かにそうですね」 電話の時は凛々しい一面を見た気がしたのに 今、目の前に居るのは普段通り何処か抜けた感じの唯先輩だった。 (まぁ、そんな唯先輩も含めて好きになったんだけど…) 「じゃあ、あずにゃん手を出して」 「あ、はい…こうですか」 唯先輩が私の腕に虫除けバンドを付ける。 「あれ、このバンド何か書いてますよ?」 バンドにはサインペンで『Y to A』と書いていた。 「これ、婚約指輪の代わりね♪」 「ちょ…な、何を言って…え?」 「ムードなくてごめんね?だけど、これが私の決意だから」 「決意?」 「私は梓と一生添い遂げる…その誓い」 「一生添い遂げるって…えぇ!?」 この人は何をさらっと凄い事を… しかもドサクサに紛れて私の名前を呼び捨てにしちゃってますよ? 「さぁ、次はあずにゃんの番だよ」 あ、呼び方が戻ってる…ちょっとがっかり。 「私の番って…」 「告白、してくれないの?」 「既に告白よりも凄い事を言われた気がするんですが…」 「それはそれ、これはこれ」 「むぅ…何だか今日の唯先輩、色々とずるいです」 「ふふ、そうかな?」 「余裕があるって言うか、何か大人な感じがします」 「惚れ直しちゃった?」 「…はい、惚れ直しました」 ここまで来たらもう観念するしかない。 「じゃあ、改めて…お願いできるかな」 「はい、唯先輩…」 「なぁに、あずにゃん?」 「貴女が好きです、私と付き合って下さい」 「うん♪私も大好きだよ、あずにゃん♪」 その言葉を期に、私達はどちらからともなく近づいて行く。そして…。 『…』 永遠を約束する、誓いのキスを交わした。 「唯先輩、片付けは終わりましたか?」 「ん~、もうちょっと」 「もう、ちゃんとして下さいよ」 「わかってるよ、梓」 そう言って、私は彼女を後ろから抱きしめる。 「ちょ…そんな不意打ち卑怯ですよ」 「あはは♪ごめんね、あずにゃん♪」 「本当にもう…今日から新しい生活が始まるんですから」 恋人同士になって二年目の春。 「うん、そうだったね」 この春から同じ大学に通う事になった私とあずにゃんは…。 「今日から私達は一緒に暮らすんだもんね♪」 同棲する事になりました♪ おしまい! GJ!動画の方も良かったです! -- (名無しさん) 2010-10-14 01 03 31 よかった -- (名無しさん) 2011-02-18 00 50 06 良かった…ハッピーエンドで良かった! -- (とある学生の百合信者) 2011-03-08 17 11 53 中盤はヒヤヒヤしました。でも最後は超ハッピーエンド -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 02 26 28 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1888.html
梓「ん…あ…朝…」 梓「ここは…?」 唯「もう…に…zz」 梓「唯先輩」 梓「そっか…ここは唯先輩の部屋で唯先輩のベッド」 梓「そして昨日の夜に…//」 梓「唯先輩と…//」 梓「……」 梓「駄目だ…どうしても思い出しちゃう」 梓「唯先輩…//」 唯「ん…?あずにゃん?」 梓「えっ」 唯「もう…朝?」 梓「あっ、は、はい」 唯「あずにゃん、良く寝れた?」 梓「それなりに…」 唯「良かった~」 唯「じゃあ、私もそろそろ起きるよ」 唯「よいしょっと」 唯「ねぇ?あずにゃん?」 梓「な、なんですか?」 唯「なんでさっきから私の顔を見てくれないの?」 梓「そ、そんな事ないですよ」 唯「そんな事あるよ」 唯「あずにゃん、こっちに顔見せて」 梓「い、いやです…//」 唯「あずにゃん…?」 梓「……」 唯「……」 唯「あずにゃん」 唯「もしかして私と一緒に寝ちゃった事を後悔してる?」 梓「えっ、いやその…」 唯「私は後悔してないよ」 唯「…私、ずっと怖かったんだ」 唯「あずにゃんがOKしてくれた時も喜んでたけど心の中ではずっと怖かった」 唯「あずにゃんが本当に受け入れてくれて分からなかったから」 唯「でもね。あずにゃんが受け入れてくれた時、怖さが一気になくなったんだ」 唯「怖さが消えて嬉しさが出てきた」 唯「それでね。嬉しさが出てきた時に思ったんだ」 唯「あずにゃんと一緒にいたい。あずにゃんを幸せにしたいって」 唯「そう思えた。だから…だから…私は後悔してないよ」 唯「あずにゃんが今、後悔してても必ず後悔を無くさせて見せる」 唯「だからこっちを私の方を向いてあずにゃん」 唯「お願いだから」 梓「……」グスッ 唯「ごめんね。あずにゃんの事を苦しませちゃって」ギュッ 梓「違います!」 梓「私も後悔なんかしていません」 梓「唯先輩を受け入れて唯先輩に受け入れられて凄く良かったです」 梓「ただ自分の感情が許せなかっただけです」 梓「これからちゃんと唯先輩の方を向きますので安心してください」 唯「ありがとう、あずにゃん」 唯「そしておはよう、あずにゃん」 梓「はい、おはようございます唯先輩」 終わり 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/17516.html
実に図々しいと思う。 皆に合わせる顔がない。それは重々承知している。 でも、私自身のことなんてどうでもいいじゃないか。 私が図々しくて自分勝手で生意気で面の皮が厚い女でも、憂が幸せならそれでいいじゃないか。 私がどうしようもない奴でも、今よりも憂が幸せになれるというなら、それに乗らない理由はないはずなんだ。 私が隣にいてくれればいいって憂は言ったんだから、それを前提とした上で今より幸せにしてあげることが出来るなら、乗らない理由はないはずなんだ。 考え方がコロコロ変わり、あっちにこっちに行ったり来たり。 フラフラしてる私だけど、憂の幸せを願う気持ちだけは変わらない。 純『……え、っとね。その、私も明確な解決法ってのは思いついてないんだけどさ』 私がすんなり受け入れたことに動揺しているのか、たどたどしく純が話す。 純『でも結局は、今みたいに二人それぞれに居場所があればいいと思うんだよね』 梓「私は憂の隣に、“私”はいずれ唯先輩の隣に、ってこと?」 純『そんな感じ。居場所があって、ちゃんとそれを皆に認めてもらえれば、それだけでオッケーだと思うんだよね』 それでも『中野梓』の名義はどちらか一人だけに絞らなくちゃいけないけど、とも言うけど、それは仕方ないと思う。 名前なんてさしたる問題じゃない。幸せに生きていられて、胸を張っていられる。そんな居場所がある。それが大事なんだ。 ただ、それが何よりも難しいことだ、というのもわかってる。 梓「……私と“私”の存在を、それぞれの居場所を認めてもらうってことは、それはつまり今まで私達二人の間にあったこと全てを話すということになるよね…?」 純『まぁ、それが一番の近道かなぁ』 近道というか、ぶっちゃけそうやって話した上で認めてもらえればそれだけで解決なんだけど。 梓「……でも、それは絶対に出来ないよ」 私と“私”が互いに殺そうとしあったことなんて、皆に説明できるわけがない。 『本物』と『ドッペルゲンガー』として争ったことなんて、説明できるはずもない。 あの時に決意した通り、これは隠し通さないといけない。 でないと、“私”を生み出した人が自分を責める。殺し合う原因を生み出したことを責める。好きな人を苦しめた自分を責める。 仮に本人が気づかずとも、周囲の人にはそう映る。あの人のせいでこうなったんだ、と。 つまり、“私”を生み出した唯先輩を、苦しめてしまう結果になる。 それだけは絶対に駄目だ。唯先輩は何も悪くなんてない。話してみた私にはわかる。あの人は今だって素敵な先輩のままなんだ。まぁ、キスされたのはショックだったけど。 それでも結局はちょっとタイミングが悪かっただけ。ちょっと事情がすれ違っただけ。 それなのに、そんな素敵な唯先輩を悪者に追いやるような説明が出来るわけがない。 そう思ったからこそ、私は澪先輩にも相談せずに解決しようとしたんだ。なのに今更説明できるわけが―― 純『いや、案外なんとかなるかもしれないんだよね。上手くやれば』 梓「…どういうこと?」 純『ずっと気になってたんだけどね…… 先輩達は、一度も『ドッペルゲンガー』って口にしてない気がするんだ』 梓「っ!?」 言われて、思い返してみる。 ……確かに、確かに口に出してはいないような気はするけど…… 梓「ま、まさか……」 純『……澪先輩のネタバラシを聞いた私だから、わりと自信持って言えるよ。終始、「生き返った」って言い方だった』 梓「いや、でも……」 しかし、確かに可能性としては五分五分だ。 私達の場合は、純が『ドッペルゲンガー』という言い方を決めた。勝手に決めた。限りなく正解に近いとは思うけど、そもそも合ってるかすらわからないんだ、本当は。 だから、先輩達に教えた人と見解が一致している可能性がそもそも低い。純のような物事の見方をする人なら同じ答えに辿り着く可能性はあるけど、それだけだ。 五分五分の可能性の中で、それでも私も純も先輩達の口から『ドッペルゲンガー』という言葉を耳にした記憶は無い。 そうなると、先輩達は『ドッペルゲンガー』と定義さえしていない可能性が高くなってくる。 梓「だとしたら……ドッペルゲンガー絡みの事は言わなくても済むかもしれない…!?」 純『うん。殺し合いになった、なんて言わないでもケンカになった程度で誤魔化せるかもしれない』 ドッペルゲンガーは人を傷つける存在。ドッペルゲンガーという呼び名自体にそういう前提と先入観があるけれど。 でもそれを伏せて説明することができれば、それこそ純の言う通り、ただの喧嘩程度で通せるかもしれない。 命を奪い合おうとした存在だと説明してしまうと、聞く人にも『相容れない存在なんだ』という印象を持たせてしまうから、これは大きなメリットになる気がする。 そして『ドッペルゲンガー』と知らないとするならばそれ以上に、先輩達は、唯先輩は、ドッペルゲンガーと知っていて“私”を生み出したのではない、ということになる。 つまり、あの時の私が万が一の可能性として懸念していた「先輩達は私を不要なものと判断した」という憶測の否定に繋がる。信じていたつもりだったけど、それは素直に嬉しい。 嬉しいからこそ、これは何があっても成功させたい、という気持ちになる。 少し、光明が見えた気がした。 梓「……ねぇ純、そこに“私”も居るんでしょ?」 先輩達を誤魔化すためには“私”との口裏合わせも必要不可欠だ。 「二度と会いたくない」とは言われたけど……事情が事情だし、わかってくれると信じたい。 そんなわけで、“私”と相談しようと思って純に聞いた。……んだけど。 純『あっ!!』 梓「……何?」 純『そうだった、私に伝えてすぐ、“梓”は唯先輩に会いに行ったんだよ。憂の書き置きを持って』 梓「ええっ!?」 どうしてそんな大事なことを言われるまで忘れてるかな、純は…… 梓「っていうか、そんなことしたら唯先輩は憂を探すに決まってるじゃん!」 純『まぁ、だからこうして私が電話してるんだよ。さすがに唯先輩からの電話には出にくいでしょ?』 憂「……うん、そうかも」 梓「いや、でもそうじゃなくて、そっちじゃなくて、そんな結果が見えてるのになんで……」 憂のこととなると、唯先輩が動かないわけがない。そんなの目に見えてる。 でも私も憂も唯先輩に合わせる顔がないし、“私”としても一通りの解決の目を見たんだし、唯先輩に私達を見つけてほしくないはず。 つまり得をするのは純くらいのはず。なのに話を聞く限りでは“私”が率先して動いたとのこと。どうして? 純『隠せって言うの? あの唯先輩に、憂のことを』 梓「あ………」 そうだ、冷静に考えてみればすぐにわかる。 あまり思い上がった言い方はしたくないけど、唯先輩と憂は私を取り合う恋敵。それでありながら相手を絶対に嫌いにはなれない、そんな関係。そんな唯先輩に憂の身に起こったことを隠し通すのはきっと不可能だ。 それに、憂がそんな決断をしたことを唯先輩に隠せば、発覚した時に唯先輩は余計に傷つく。 いや、傷つくどころか唯先輩に嫌われかねない。好意を抱いている“私”なら伝えるより他に選択肢はないんだ、最初から。 もちろん、『唯先輩のためにすぐに伝えに来た』体を装いながら、それでも間に合わなかった……とするのが“私”にとってベストなシナリオなんだろうけど。 純『とりあえずそんなわけだから、“梓”と口裏を合わせるのはムリかも』 仮に純か憂が“私”の携帯に電話したところで、その隣には唯先輩が居る可能性が高い。 というか唯先輩と一緒にいたいという想いだけを胸に行動している“私”にとってはそもそも今のままでも別に構わない、と考えている可能性だってある。 仮に口裏を合わせるとしても、絶対に成功するという確証がないと乗ってこなかったんじゃないかな、とも思う。 梓「……でも、それじゃ難しくない?」 純『まぁ、ね。とりあえず私も今からそっちに行くから、合流して相談して、何かアイデアが浮かぶまでは唯先輩と接触しないように――』 と、純が言い切る前に、憂が顔を上げ、周囲を見渡した。 憂「――………」 梓「…憂?」 純の言葉の続きを聞くよりも、純に私達の居場所を伝えるよりも、憂のその行動が気になった。 けど、その行動の理由は、わかってみれば簡単なもの。とてもわかりやすいもの。 憂「……お姉ちゃん……」 唯「……憂……」 さっきよりも少し低くなった夕陽を背に、唯先輩が立っていた。 【ED≒OP】 唯先輩が私のほうを一瞥して、ほんの少しの時間だけ驚いた顔を浮かべてから、憂に向き直った。 その顔には、純粋な心配と安堵が浮かんでいる。 唯「……心配したんだよ、憂」 憂「……ごめんね」 唯「……ううん、無事ならそれでいいよ」 憂「……どうして、ここがわかったの?」 唯「憂のことだもん。わからないわけがないよ」 憂「……お姉ちゃん……」 全然理屈になっていないけど、それこそが理屈なんだろう、とも思う。 この二人の絆はそれほどのものだ、という理屈。以心伝心というか、何処に居ても通じ合ってるというか。 外見や感覚のそっくりさと言い、姉妹よりも双子と言った方がしっくりくると思ったことも一度や二度じゃない。 唯「……そして、あずにゃん」 梓「っ、は、はい」 唯「いろいろ説明して欲しいんだけど――っと?」 梓´「っ――!」 私に向き直り、そう告げた瞬間、唯先輩の後ろから走ってきた“私”が唯先輩の背中に抱きついた。 やっぱり行動を共にしていたらしい。でも“私”としても、唯先輩がこうも容易く憂と私を見つけるのは予想外だったんだろう。 私の場所からは、私と目が合った一瞬の、驚愕の、そして泣きそうな顔がよく見えた。 梓´「……唯先輩っ……!」 唯「……ごめんね。でも、知らないままじゃいられないよ」 “私”の悲痛な声は、その心情を嫌と言うほどに唯先輩に伝えたはず。 すなわち、「何も聞かないで、知らないでいて」と。でも唯先輩はそれを受け入れなかった。 理由はわからない。唯先輩はどこか自分の責であるかのような言い方をするけど、唯先輩にバレるようなことは何一つ言っていないはずなのに。 でも、その答えはすぐに唯先輩の口から告げられる。 唯「……あずにゃん、二人とも、辛そうだから」 梓「……そんなこと……」 そんなことない、と言いたかったけど、言い切れない。 私は自分で思っているよりずっと感情が顔に出やすいらしいし、“私”に至っては誰がどう見ても辛そうと言う他ない。 少なくとも、私達皆が何かを隠しているという事くらいは痛いほど伝わっているだろう。そして唯先輩はそれを知りたがっている。 おそらくは、いつも私に接するように『先輩』として。 でも、私はどう切り出せばいいかさっぱりわからないでいた。 そもそも純と相談の最中だったんだ、なのに突然何か言えと言われても―― 梓「……憂、純は?」 純『聞こえてるけど……ゴメン、何も出来そうにないね』 梓「そんな……」 純『何も考えがないのは私も一緒だよ。だったらその場に居ない私に出来ることは、何もない』 一見冷たい言い方だけど、条件が一緒なら、話す相手の顔色とかを窺える私の立場のほうがその場に合わせた『答え』を導き出せる、という意味だろう。 コミュニケーション能力に長けた純が言うのだから疑う余地はないし、言われてみればその通りだと思う。 唯「……純ちゃんなの? 電話が繋がらないと思ったら……」 憂「…純ちゃんも、引き留めようとしてくれたんだよ」 唯「そっか……ありがとね、純ちゃん」 純『いえ、そんな…。……じゃあ切るよ、梓』 梓「っ……」 憂「………」 私の返事を待たずして電話は切れた。 隣で携帯電話をしまった憂が不安そうな顔で私を見つめてくる。 ……やらなくちゃいけない。私が。 そもそも目の前に当事者がいるのに第三者が電話から状況を説明するというのも変な話だ。それでは唯先輩が納得するかさえ怪しいから、やっぱり私がやるべきなんだ。それはわかる。 ……それでも、私にちゃんと出来るのかという不安は残る。でも、もう他に道はない。ずっとずっと純に頼っていたけど、ここにきて純から私は託されたとも言える。心細いけど、やるしかない。 何も思いついていないし、どう言えばいいかもわからないけど……今度こそ私が、終わらせないと。 唯「……あずにゃん」 梓「……私、ですか?」 唯「そだね。そっちのあずにゃん。憂の隣に居てくれたあずにゃん。憂を引き留めてくれたのは、きっとあずにゃんだよね」 梓「それは……その……」 唯「手紙を見る限りは、原因もあずにゃんっぽいけど……ここにいるってことは、引き留めてくれたんだよね」 その問いに、私は何と答えればいいのか。 手紙自体が嘘だった、というのが真実だけど、それを言うと次はじゃあどうしてそんな嘘をついたのか、という方向に話が行く。 そうなってしまうと、話がどんどん遡っていって最終的には私と“私”が居場所を奪い合うような存在であることを説明しなくちゃいけなくなるような気がした。 嘘は吐きたくない。けど、唯先輩を傷つける真実に繋がるような答えを返すのはそれ以上に嫌だし、当初の私の想いに反する。 純は正直に話すのが近道だと言ったけど、それをそのまま受け止めてはいけない。純は「そうしろ」とは言わなかったんだから。 ……考えるんだ。どう言えば、唯先輩を傷つけないで済む? どう言えば、全てが丸く収まる…? 梓「えっと――」 憂「……梓ちゃんが、お姉ちゃんを好きになった。私にはそう見えたの、お姉ちゃん」 梓「……憂?」 唯「……うん、手紙にはそう書いてあるね」 私達を置き去りに、憂が唯先輩に説明する。 憂の狙いは読めなかったけど、意図はわかる。わかるというか、信じてる。 憂と私の想いは一緒なんだから、私はただ信じていればいい。信じながら、自分がするべきことを考えるんだ。 憂「…そして実際、梓ちゃんはお姉ちゃんを好きになってた。……そっちの“梓ちゃん”だったけどね」 唯「……憂も、見間違えた、ってこと?」 憂「その手紙を書いた日、私のところにいたのはそっちの“梓ちゃん”だったよ」 梓´「………」 憂「だから……あの手紙にあるようなことは、しないよ。ごめんね、お姉ちゃん。心配かけちゃって」 唯「……ううん、いいよ、憂が無事なら。これからもずっと無事なら」 憂「うん。梓ちゃんと一緒にね」 梓「………」 上手い、と思った。 全体の事情を知ってればそれは確かに嘘なんだけど、憂は一度も嘘を口にしてはいない。 “私”を見て、その手紙を書いた。そして今となってはあの手紙はなかったことにしてほしい。そうとしか言っていないんだ。 屁理屈のようだけど、それは確かに嘘ではない。隠し事はしているけれど嘘ではないし、何よりも伝えるべきことはちゃんと伝えている。 言わない方がいい真実を伏せて、伝えるべき真実を伝える。真実の『核』だけを伝える。隠し事をしている負い目はあるだろうけど、ただ漫然と全てを伝える人より二倍相手の事を考えている、とも取れる。 私も、こんな風に上手くやれれば…… 憂「梓ちゃんは、ずっといつまでも私の隣にいてくれるって言ったよ」 唯「……そっか。ありがと、あずにゃん」 梓「いえ……その、唯先輩にはちゃんと言ってなかった気がしますけど……私、憂のことが好きですから」 ちゃんと言ってれば、こんなことにはならなかったのだろうか。それはわからない。 あの時の私がちゃんと言えなかった理由は、あれ以上唯先輩を傷つけられなかったからに他ならない。 相手が憂だという事どころか、既に両想いで付き合っていることすら言えなかった。唯先輩の気持ちが叶わぬものであることを口にすることが出来なかった。 匂わせるので精一杯だったんだから、それ以上先のことが言えるはずもない。 でも、それもまた私の弱さだったのかもしれない。それが招いたのが今の状況であるのもまた事実だと思うから。 梓「……ごめんなさい。唯先輩には、憂のお姉さんには、ちゃんと言っておくべきでした」 唯「それは……うん、憂のことを隠されたのはショックだけど……でもあずにゃんも別に私にイジワルするために隠したわけじゃないでしょ?」 梓「そんなことするわけないじゃないですか!」 唯「そうだよね。あずにゃんはそんな子じゃないもんね。だから好き」 憂「お姉ちゃん……」 唯「………っ」 何とも言えない沈黙が流れる。 やっぱり唯先輩は、心のどこかで私を諦められないんだろう。ドッペルゲンガーを生み出したわけだし、それは充分わかっていたこと。この場で責めるつもりなんて全くない。 けど、それでも諦めてくれないと困る。私が好きなのは憂なんだから。諦めて、そっちにいる“私”と結ばれてくれるのが理想であって―― 梓「………」 いや、待って。ちょっと待って。 唯先輩が好きなのは私じゃない。私じゃなくて、かといって“私”でもなくて、『中野梓』が好きなんだ、唯先輩は。 唯先輩が今、“私”ではなく私に話しかけている理由は、きっとあれだけの理由。 23
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/109.html
「あずにゃん、かえろ~」 「はいはい、少し待ってくださいね」 チャイムが鳴るなり教室に入ってきた唯先輩に一言そう言って、帰るために荷物をまとめる。 いつも思うのだけれど、唯先輩はいつから教室の前にいるんだろう? 「それじゃ、帰りましょうか」 「うんっ」 頷いて私の腕に自分のそれを絡めてくる唯先輩。子供みたいな笑顔でにへらと笑っている。 別に腕を組むことには抵抗が無いのだけど、人前でこういうスキンシップはあまり取らないほうがいいと思う。さすがに恥ずかしい。 いくら私たちの仲が周知だといってもある程度の距離を保たないと、そのうち人前でキスとかもされそうで困る。 「どんとこいです」 「うん? なにか言った?」 「いえ、ただの独り言です」 危ない危ない、気付かないうちに口に出てたみたいだ。 さすがにあのセリフだけで考えが見透かされるということは無いだろうけど少し心配。何せ私は考えていることが口に出ていることが多いから。 「そ、それで、今日はどこに行くんですか?」 取り繕うように質問を投げかける。 「あ、うん、実は私の家の向こう側にいいお店を見つけたんだ~」 「向こう側、ですか」 両腕を使って場所を教えてくれてるけど正直よく解らない。 「え、っと、それは私の家からどれぐらいかかりますか?」 「んー、多分10分くらいで着くんじゃないかなぁ、自転車で」 「んー」 「あ、でも直接行くから時間は気にしないでいいよ」 「それもそうですね」 そんなことを話しながら下駄箱を通過して校門を通り抜けて唯先輩の見つけたというお店に向かう。 「――着いたよ」 他愛も無い話をしながら歩いていると、唯先輩が足を止めたのでつられて私も止まった。 視線の先には小さな喫茶店。 「喫茶店、ですか」 「うん、ここのアイスが美味しいんだぁ~」 「そうですか」 そんな会話をしながらお店に入り「何名さまですか?」「お二人様です」という恒例のやり取りを済ませて手近な席に座って注文を済ませる。 「お待たせしました」 早っ! 注文して1分も経ってないですよそれとも今はこれがデフォなんですかいやそんなことはないでしょう。 動揺している間に唯先輩が「どうも」とお礼をして店員さんが「いえいえ、ごゆっくり」と言って去って行った。 「どうしたの?」 「……いえ、何でもありません」 「? へんなあずにゃん」 不思議そうにしながらも唯先輩は持ってこられたパフェを食べ始める。 「おいしいですか?」 「うん、あずにゃんも食べなよ」 「そうですね、では」 当然唯先輩とは違うものに手をつける。あわよくば交換しようと言われることを期待したのではなくてたまたま違うのを選んだだけなので誤解しないように。 しばらく黙々とスプーンを口に運び続けていると、不意に唯先輩が「あ」と声を上げた。 「どうしたんですか?」 その問いには答えずに唯先輩は顔をこっちに近づけてきて、ぺろりと紅い舌で私の頬を舐めた。 「……なにするんですか」 「ん? んーとね、あずにゃんのほっぺにクリームがついてたから」 悪びれた様子も無くあっけらかんと答える唯先輩に怒る気が失せてしまった。 「クリームを取ってくれたのはいいんですけどそれなら布巾で拭けばよかったじゃないですか」 「だめだよそんなの。もったいないじゃん」 「そういうものなんですか」 「そういうものなんです」 上手く言いくるめられた気がするけどまあいいか。 「あ、唯先輩」 「うん?」 ――やり返してやった。 Fin 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1603.html
梓「あっ、雨」 梓「どうしよう…傘持って来てない…」 唯「あずにゃん~。一緒に帰ろ」 梓「唯先輩っ」 唯「どうしたの?あっ、雨が降ってるね」 梓「今日、傘持って来てないんです」 唯「それなら大丈夫だよ、あずにゃん」 唯「鞄の中にほら。折りたたみ傘~」 唯「私があずにゃんの家まで送ってあげよう」 梓「そんな悪いですよ」 唯「良いではないか。先輩の好意に甘えなさいな」 梓「…じゃあお言葉に甘えまして」 唯「うん、帰ろ」 梓「唯先輩何か嬉しそうですね」 唯「だってあずにゃんと一緒に帰れるんだよ。嬉しいよ~」 梓「っ//」 梓「そ、それにしても雨が強いですね」 唯「そうだね。傘が小さいからもっとこっちにおいで」 唯「じゃないとあずにゃん濡れちゃうよ」 梓「そ、そうですね」 梓「(唯先輩とぴったり…)」 梓「(えへへ)」 唯「あずにゃんも何だか嬉しそうだね~」 唯「あっ、私と一緒に帰れるのが嬉しいんだね!!」 唯「可愛い奴め~」ダキッ 梓「ち、違います///!!」 翌日 梓「あっ、また雨」 梓「でも今日は鞄の中に傘が…」 唯「あずにゃん~。一緒に帰ろ」 梓「唯先輩」 唯「おっ、今日も雨が降ってるね」 唯「鞄の中に傘が…あっ!」 梓「?」 唯「どうしようあずにゃん」 梓「どうしました?」 唯「傘がない」 唯「干したままにして家に忘れちゃった」 唯「どうしよう…」 梓「…しょうがないですね」 梓「今日は私が唯先輩の家まで送ってあげます」 唯「あ、あずにゃん~」ダキッ 梓「い、いちいち抱きつかないでください///!!」 唯「今日も雨が強いね」 梓「そうですね。傘が小さいですから唯先輩はもっとこっちに来てください」 梓「そうじゃないと唯先輩濡れちゃいますよ」 唯「うん、分かった」 梓「(唯先輩とぴったり…)」 梓「(えへへ)」 終わり 梓可愛い -- (名無しさん) 2013-08-01 12 30 24 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/354.html
軽音部。 それは多分私の中でとっても有意義なものだと思う。 唯先輩。澪先輩。律先輩。むぎ先輩。みんなとってもいい人。 私をいつもかわいがってくれている。 私がここに入った理由は唯先輩だ。 新入生歓迎会のとき、軽音部は私たちのために演奏をしてくれた。そのときのギターが彼女。 彼女のギターはとても天才的だった。有名なギタリストでいえば、Charぐらい。 現在私は、その唯先輩の家、平沢家にいる。 そして唯先輩の部屋にいる。 「今日はギターの練習一緒にがんばろうね」 練習終了後、次のライブに向けて練習することが決まり、私は唯先輩と一緒にギターの練習をすることになった。 半ば強引に。 「次のライブに向けて、みんなで各自練習だあ!!」 事の発端は自称部長、律先輩だった。 「どうしてそんなに律が張り切ってんの?いつもそんなやる気見せないのに」 「だってえ、だってえ、新曲だよ?今日演奏した新曲をさあ、もっとうまく演奏したいと思わない? 今日の練習はむぎ先輩が持ってきた新曲の練習が主だった。 その日は何だかいつものお茶する軽音部とは違い、何だかみんな張り切っていた。 「この曲はね、すごく爽やかな曲なのお。だから、もっと練習すればこの世界観がもっと伝わるかも」 「まあ確かによかったな」 「うん。これで優勝間違いなしだよ!!!」 何を競っているんだか。でも、そんな感じ。みんなの目が輝いていた。 「あずにゃんはどう思う?」 「わ、私は……」 私はというと、そののりにどうもついていけなくて、そのせいか珍しくミスを連発した。 エフェクターの調節が難しい。あとギターソロもみんなにだめ出しされた。 「梓は結構ミスしてたなあ。珍しく」 「確かにあの曲は難しい。エフェクターの調節がな」 「澪ちゃんの歌詞もすごくよかったよ」 そして澪先輩の作詞。たいていむぎみおで曲が出来上がる。 タイトルは「Realize」。結構真面目なタイトルだが、内容は恥ずかしい。 「あ、あんなののどこがいいんだ?ものすっごく鳥肌立つ詞だよ?」 「律はうるさいなあ!!いいじゃないか、私がこんな恥ずかしい詞書いても!!!」 今日の部室はこんな感じ。私はどうもついていけなかった。 「でも練習すればもっとよくなるよ。あずにゃん、今日は一緒にがんばろうね」 そして唯先輩のこの発言。 「えっ?この後ですか?」 「もちろんだよ~。憂のおいしいごはんもあるよ~」 要は泊まりに来いと。確かに明日は土曜日だし、学校はないから別にいいのだが。 「っしゃあ!!各自練習は決定だあ!!!日曜にライブハウスに集合な!!!以上、解散!!!!」 そして強引な決議。 「わ、わかりました。じゃあ、19 00頃、そちらに向かいます」 「了解」 そして現在に至る。 時刻は22 00を過ぎたところ。まだギターの練習をしていない。 「唯先輩」 「なあに?」 「まだギターの練習してないですよ。早くしましょうよ」 私は家に帰りたかった。1人でなら自由に練習が出来る。それが理由。 するなら早くしたい。 しないなら帰りたい。 「んじゃしよっか。待ってね。今から飲み物持ってくる」 そう言うと、「まいこはん」という文字が書かれているパジャマを着た唯先輩はこの部屋から出ていった。 私もパジャマ姿。もちろん入浴は別々。 憂は現在皿洗い中。 いつものんびりしている唯先輩と、しっかり者の憂。この姉妹はこれはこれでいいバランスを保っている。 私はムスタングのむったんが入ったケースを開け、むったんを取り出した。 そして今日の「Realize」の楽譜をかばんから取り出した。 「ああ、何で私、自由が少ないの?他の人は自由を持て余しているのに」 冒頭の歌詞はこれ。 これだけでは「別に普通じゃん?」と思うかもしれないが、 「えっち」 だとか、 「キスがしたい」 などといった歌詞もこの「Realize」にはある。それを歌うのは唯先輩。 今日の練習のときは歌わなかった。 「お待たせ~」 そのとき、唯先輩が麦茶をこの部屋に持ってきた。 「これ結構難しいよね。私だってこの歌詞とギー太の演奏とを一緒になんか出来ないよ~」 そう言いながら唯先輩は私の隣に座り込んだ。 「難しいですよね。特にギター2人のパートは」 「これを考えたむぎちゃんもすごいと思うよ」 麦茶を置いたら早速唯先輩はギターのギー太を取り出した。 「あんまり音出さないようにしましょうね」 「そだね」 そして彼女も机に向かい、かばんの中から楽譜を取り出した。 ちなみに平沢家の両親は現在バリ島に行っているらしい。こういうことはしょっちゅうあるらしい。 子供を置いて何をしているんだか。 ギターソロの次に難しいのはサビ。 何とここで全員のコーラスが入るというのだ。 「この曲はね、実は私を含めた4人が考え抜いて出した曲なんだ。あずにゃんのために」 「わ、私のために?」 「うん」 そしてどうやら私の曲という。私は当日まで全然知らなかったのに、みんな結構張り切っていたから、このことは何となく納得は出来る。 唯先輩は現在私の隣。ご想像の通り、引っ付いている。 「ほら、このサビはね、私が考えたの」 「「奇跡にも似た世界の果て」、ですか?」 「うん」 「じゃあ、この「えっち」とか、「キスがしたい」といったものは…」 「ああそれはむぎちゃん」 この歌詞は4人が分担して考えたという。 これなら何とか説明がつくか。他の3人がこんな歌詞を思いつくはずがないから。 「さすがむぎ先輩ですね…」 「そだね」 むぎ先輩の変態ぶりはもう軽音部の中では周知だった。 女の子同士の絡みを見るとうっとりするらしい。 「むぎちゃんは女の子同士がいいみたいなんだ。しかも、見る側」 「さすがですね……」 「この絡みも、多分彼女がいると鼻血をだばだば垂らすと思うよ」 「そうされると結構困りますね……」 そう言うと、唯先輩は私に引っ付くのをやめ、また練習に戻った。 夜遅いから何もつけない。素のままのギター。 音は全然鳴らない。チューナーをつけての練習。 唯先輩はこの曲の鼻歌を歌いながら演奏していた。 何だかもうこつをつかんだみたいだった。さすが唯先輩だ。こういうところが天才的だ。 一方私の方は楽譜と悪戦苦闘。正直言ってわからない。 「ああだめだあああ。上手に弾けなあい!!」 ついにはその言葉を叫んで練習中断。私の心の叫びがふと出てしまった瞬間だった。 「珍しいね。あずにゃんがそんな言葉発するなんて」 「無理ですよ……。難しすぎます……」 いつになく、私は弱気だった。 この曲は私のためにみんなが作った曲。それなのに当の私は結局弾けずに打ち切り。 はあ、何だか情けないなあ……。 「はあ~あ……。全然うまく弾けない……」 私はそう言うと背中を床にぽんと叩きつけ、天井を仰ぎ見る姿になった。大の字になって。 いつもはそういうことないのだが、今回に限っては本当に無理。今すぐにでも逃げ出したい気持ち。 みんなに日曜日、どんな顔して謝ればいいのか、そんなことまで考えるようにもなっていた。 「唯先輩はいいですよね…」 「ん?」 ついには唯先輩を最初出会ったときのように羨むようになっていた。 「だって、難しい曲をすぐに弾けるようになるじゃないですか……。すごすぎますよ……」 彼女の天才度はずば抜けている。この前、この「Realize」と同じくらい難しい「GO!GO!MANIAC」を演奏したとき、彼女は1日でギターのリフを完璧なまでに仕上げた。 同じ音楽家でいえば、のだめと同じくらいの天才ぶり。 練習はあまりしないのに、いざとなるとめちゃくちゃでも曲になるように仕上げてくる。 私は練習しないと弾けない。というか完璧でないと本番で演奏したくない。 この2人の違いはそこにある。 「そんなことないよ。あずにゃんには敵わないよ」 「本当にそう思ってます?」 「ほんとだって」 この話をしているとき、唯先輩は手を止めなかった。 「私ね、去年の学園祭のとき、あずにゃんに怒られて嬉しかったんだよ」 そして彼女は去年の学園祭のことを話し始めた。 「怒られて嬉しくなるって、どこのMなんですか?」 私は少々恥ずかしくなり、くすっと微笑みながらそう言った。 「だってさ、演奏が成功してもあずにゃんはそれに満足しなかったもん」 「当たり前じゃないですか。あれは本当にめちゃくちゃだったんですから」 「楽しく演奏できたことも嬉しかったんだけど、私はあずにゃんに怒られて嬉しかった」 それにしても唯先輩はどうも先輩らしくない。 威厳がないといえばそれまでだが、後輩に怒られる先輩は先輩として失格だと思う。 「はぁ…」 そして私の溜め息で会話終了。唯先輩はまた鼻歌を歌いながらギターに集中した。 「私トイレ行ってきます」 「ほ~い」 何のためかはわからないが、私は一旦席を外すことにした。トイレという口実を使い。 むくっと起き上がり、部屋のドアを開け、向かった先は憂の部屋。 別に憂の部屋で用を足すつもりではないが。 もう皿洗いは終わったのかな。水の音もしないし。 とんとん。 「はーい」 ドアをノックしても憂の声がしたし。 「梓です」 「どうぞ」 とりあえず憂と話がしたかった。唯先輩には申し訳ないのだが。 憂のパジャマは「おみやさん」だった。 「どうしたの?練習は終わったの?」 「いや途中…」 憂はもうそろそろ寝る感じだった。枕元にカバーつきの小説に、電気を消そうとしていたから。 「だったら練習してきなよ。お姉ちゃん寂しがってると思うよ」 「いや無理…」 「ふぇ…?」 私はそのまま憂のベッドまで足を運び、体をすとーんとそのベッドに叩きつけた。 「疲れた……」 「そんなに大変なの?」 「大変も何も、難易度が高すぎる……」 憂は軽音部=放課後ティータイムのオフィシャルサポーターである。単純にお手伝いさんというような感じ。 「そっかあ。今度の難しいんだあ」 「でも唯先輩は完璧だった……」 私がそう言うと、憂は嬉しそうに微笑んだ。 「お姉ちゃん梓ちゃんが出来ないものでも出来るんだ」 「その曲、私のために作ったんだって……」 「へぇ~。何てタイトル?」 「「Realize」」 彼女のシスコン度は世界一だと思う。私が出来なくても、唯お姉ちゃんが出来れば微笑むという始末だ。 私のことも考えてほしい。 「今度日曜日、ライブハウスで合わせることになったの。でも、私多分弾けない……」 私がこんなにネガティブになるのは初めて。いつもなら「やってやるです!!」というようにがんばるのだが、こればかりは無理だった。 「大丈夫だって。梓ちゃんなら出来るよ」 「出来ない……」 匙を投げた。 真面目な私が弱音を吐く今日この頃。短時間で唯先輩みたいに上手くは弾けない。 「いつもの梓ちゃんなら、私に弱音吐かないでひたむきに練習してるよ」 「そうだけど……」 この「Realize」が私の曲というところがネックだった。だから私が完璧に演奏しないと放課後ティータイムの一体感が崩れてしまう。 みんな私のために必死。誰か1人が失敗すると演奏を中断して励まし合う。 そして一番私を励ましてくれた。しかしもう弾けない。 この曲については憂には何も言わなかった。 「ねえ憂…」 「なあに?」 「何かギターがうまくなる道具……、ない?」 「ない」 そして私のどうしようもないぼけも軽く跳ね返された。 「がんばるしかないと思うよ。私は」 努力が大事。私もそう思うのだが、努力しても報われないことだってある。 それが今。まだ土曜日があるというのに、全然先に進まない。 「……………」 私は何も言わずに起き上がり、憂の部屋から出ることにした。もうそろそろ唯先輩のところに行かないと、彼女が心配する。だから。 「がんばってね。応援してるから」 憂の最後の言葉がこれ。これを発すると、憂は電気を消してゆっくり目を閉じた。 唯先輩の部屋に戻ると、唯先輩はギターの練習を終えていた。 目は充血していた。眠いのかな。 麦茶は残り1/6。もうそんなに飲んだのか。 「あれ、終わったんですか?」 「ううん。中断してた」 そう言うと、彼女はまたギー太を持ち、楽譜を見ながら練習を始めた。 「それにしてもトイレ長かったね」 「べ、別にいいじゃないですか。長くたって」 私はどうしよう。 今から必死になって練習しても完璧までは行かない可能性が高い。 むったんは放置状態のまま。悲しそうに私を見ていた。 「私ね、あずにゃんがトイレに行ってるとき、この曲、本当にライブで出来るのかなって思ってきたんだ」 そして唯先輩も悲しそうに私を見ていた。 そのときは手を止めていた。 そしてギー太も床に置いた。 練習はふりみたい。 「それは、私が失敗ばっかりするからですか?」 「ううん。あずにゃんはがんばってるよ。でもね」 「でも、何ですか?」 楽譜は見たところ濡れていた。お茶でもこぼしたのかな。 「これ、歌いたくない……」 唯先輩はこの歌を歌いたくないと言った。 なぜかはわからない。私を除くみんなが考えて作った曲なのに、どうして歌うことを嫌うのだろうか。 「何で歌いたくないんですか?」 だから私はそれを尋ねた。 「だって、これを歌うと、あずにゃんが遠くに感じてしまうから……」 「……………」 遠くに感じてしまう?それはどういうこと? この歌詞に私を遠ざけるフレーズはなかった気がするが。 「あずにゃん……」 「な、何ですか……?」 何だろう、この空気。 重い。 悲しい空気ってこんなにも重くなるのか。 「……助けて」 「何で……?」 「嫌……」 そう言うと、唯先輩は涙を流した。 「ふえぇぇ……。嫌だよおぉぉ……、嫌だよおおぉぉぉ……」 いつものんびりしている唯先輩とは大違いだった。 こんなにも涙を流して、こんなにも私を想って……。 いや、「想って」は違うか。 それとこれとは全然違うように聞こえるし。 楽譜は彼女の涙で濡れたのだろう。 「何で私があなたを助けなきゃいけないんですか……?」 しかし、現在の私はその唯先輩の姿に退いていた。 かわいそうとしか思えない。何もしてあげられない。 「ふわああぁぁぁぁぁぁ………っ!!!」 この泣き声は部屋、いやこの家中に響き渡っていた。だから、憂の就寝も妨げてしまう。 「唯先輩大声で泣かないでくださいよ…」 「あずにゃあああぁぁぁぁぁ………」 私を遠くに感じる。 もしや、サビ……? サビは彼女が書いたと言っていた。 「奇跡にも似た世界の果て、私はここで何が実現る(できる)? つかみ損ねた夢の粒が、弾け飛んで空に消えていく。 奇跡を望む私の胸、夢を失くしたときに気づく。 その夢を忘れるのならば、楽しまなきゃいけないのかな?」 これがそのサビの一部分。となると、夢=私。彼女は私に近づきたいと思っているのか。 それは多分ギター技術の向上のため。もっと練習して私と肩を並べたいと思っているのだろう。 そしてギターの技術が向上しなければ、あとはライブを楽しむだけ。奇跡は一体何を表わしているのだろう。 「行かないで……」 唯先輩の寂しそうな声が室内に響き渡った。 「どこにも行かないですよ……」 「嫌いにならないで……」 「嫌いにならないですよ……」 「ずっとそばにいて……」 「いますよ……」 その言葉のやり取りに悲愴感を感じた。これから死ぬわけではないのに。 でもそんな感じ。 これは私が動かないといけないのかな。 そう思った私は唯先輩のそばに行き、そっと彼女を抱き寄せた。 心臓の鼓動はすでに高鳴っていた。心拍数も速い。 「私の胸で思う存分泣いてください。先輩らしくないですよ。だから泣き顔を私に見せないでください」 「ふええぇぇぇぇ………」 彼女はまたわんわん泣いた。 私はどきどきしていた。 何だかとっても緊張している。 当然か。人を抱き締めているのだから。 「あずにゃん……?」 「何ですか……?」 「大好き……」 その言葉でまた緊張が膨れ上がった。 「あったかい……」 唯先輩に寂しさはいらない。いつも元気でのんびりしていればそれでいい。 今日はもう練習はいいや。 それどころではないし。この状態では練習できない。 「あずにゃん大好き……」 その言葉はもう寝言みたいだった。 「すー……、すー……」 そして泣き終えたら赤ちゃんみたいにすやすや眠り始めた。 「もう……、唯先輩ったら……」 彼女は先輩。 先輩が後輩をかわいがることは普通。 後輩が先輩を想うことも普通。 思いやることも。 「私の胸で寝られたら困るのに……」 唯先輩の体は華奢だった。今にも崩れてしまいそうな感じ。 私は彼女の背中をぽんぽん叩いた。起こさない程度に。 「でもこういうのも……、ありかな」 しかし、このままでは私が寝れないので、私は彼女を抱っこし、そのままベッドの方へそっと持っていった。 おやすみなさい、唯先輩。 ここで1つ問題が起きた。 私、どこで寝ればいいのだろう。 平沢姉妹は眠ってしまった。 現在覚醒しているのはあずにゃんただ1人。 猫のように何もまとわず寝るのはさすがに寒い。 そして歯も磨いていない。 とりあえず歯は磨かないとまずいと思い、私は洗面所に行き歯を磨くことにした。 そして用を足したあと、再び自分の荷物がある唯先輩の部屋へと戻っていった。 どうしよう。 添い寝? いやいやいや、添い寝なんか出来るわけない。 もしこんな光景を憂に見られたら、人生が終わってしまう。 「お、お姉ちゃんと梓ちゃんが…、こんな関係だったなんて……」 その言葉を発されて終了。こんなことは思いたくもない。 でも、この寒い季節、何か羽織らないと無理。凌げない。 「あずにゃぁぁ……」 そして唯先輩の寝言が聞こえた。 「何ですか…?」 「むにゃむにゃ……」 その顔はさっきみたいに寂しそうだった。 どうしよう。 この寂しそうな唯先輩を抱き締めながら寝るか、それともその顔を見ないで背中合わせで寝るか。 もう添い寝は前提。 これはもう仕方のないこと。憂には土下座で謝ろう。 「失礼しまあす……」 私は彼女の布団の中にゆっくり入り込んだ。 ぬくぬく。 あったかい……。 普通にあったかい……。 彼女の温もりが溢れていた。そんな感じ。 あ、でもその前にギターたち片付けておかないと。私はそう思い布団から出て、ギターと楽譜を片付けた。 そしてまた布団の中へ。 あったかい……。 「あずにゃん……」 布団に入ってから3秒経って唯先輩はそう言った。 「何ですか……?」 私は彼女の顔は見ていない。背中を向けていた。 「むぎゅ……」 しかし、抱きつかれた。 彼女の胸が背中に当たる。 「な、何やってるんですか……?!」 寝ぼけてやっているに違いない。絶対にそうだ。 「大好き……」 今日その言葉を何回聞いたか。 「すー……、すー……」 そしてまたすやすや眠った。 一方私は動けない。 抱きつかれているのもそうだが、緊張で体が硬直していた。 心臓の鼓動が激しく鳴り響いていた。 何でだろう。 私、もしや唯先輩のこと……。 いやいやいや、もしそんなことを考えてしまったら、今までの一体感が崩れてしまう。 亀裂ものだよ。 彼女は先輩。 そして同じ女の子。 同じ女の子がお互いを恋してしまってはいけない。 私が助けてもらいたい……。 唯先輩…。 唯先輩……。 唯先輩………。 助けて………。 私、何かに溺れてしまいそう………。 ここは夢の中なの……? それならそれでいいから……。 「あずにゃん……」 あ、唯先輩……。 「何で泣いてるの……?」 あなたのせいですよ……。 「私のせい……?」 そうです……。 「あずにゃんが悲しむ顔は見たくない……」 それをさせているのは誰ですか……? 「だから、私、行くね……」 どこにですか……? 「あずにゃんの悲しい顔が見えないところまで……」 だめ……!! 「だめなの……?あずにゃん、私がいると寂しくなるんじゃないの……?」 行かないで……!!!! 「でも、みんなが待ってるから行かなきゃ……」 嫌……。 行かないで……。 ずっと私のそばにいて……。 私を1人にしないで……。 「うわああああぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!!」 「ふぇ……?どうしたの……?」 あ、唯先輩……。 どうやら私は自分の叫び声で起きてしまったようだった。 窓の光は私を優しく包んでくれた。 そして私の枕元で私を心配そうに見ている唯先輩も……。 もう朝か……。土曜日か……。 「ひどくうなされてたね。何か悪い夢でも見た?」 昨日の彼女の泣き顔はどこかへ行ってしまったみたいだった。 「行かないで……」 しかし、今度は私が泣いてしまいそう。 「ふぇ……?」 「唯先輩は私のそばにずっといるの……」 私は自分で勝手に泣き出した。 布団をハンカチ代わりにして。 「あずにゃん……?」 これで彼女が行ってしまったらもう終わり。 私は軽音部を辞めなくてはいけなくなる。 演奏不可能という理由で。 「私が助けてもらいたいですよ……!!!ぐすん……、ふえぇ……」 「あずにゃん……」 心がおかしくなってきた。 私は一体どうなってしまうのだろう。 唯先輩に抱き締められるのか、それとも……。 「私もあずにゃんと離れるのは嫌だ……。みんなと離れるのも嫌だ……」 私は彼女の方は見ていなかった。だから次何をするのかはわからない。 「あずにゃん……」 その言葉のあと、唯先輩はもう一度布団の中に入ってきた。 「大好き……」 そして、次の瞬間だった……。 ちゅ。 彼女は私の頬にキスをした。 「キスがしたい、夢の泣き顔にそっと 夢のことをずっと忘れないように」 そして「Realize」のワンフレーズを耳元でささやいた。 ぞくぞくした。当然といえば当然か。耳だもん。 「な、何してるんですか……?!」 「キスしたくなってきた……。あずにゃんを忘れないように……」 「私は夢なんですか……?」 「夢というより……」 その次の言葉は発さなかった。 その代わり私の頬にもう一度キスをした。 もう心を許してもいい……。そう思えた瞬間だった……。何も縛られずに生きていけそうに気がした……。 「あずにゃん……」 「はい……」 「こっち向いて……」 「はい……」 だから、この口同士のキスは容易に出来た……。 憂、ごめんなさい。 私、唯先輩の唇を奪ってしまいました……。 (未完) 続きが気になる -- (名無しさん) 2010-12-11 21 46 17 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/217.html
※この物語では未成年の飲酒シーンがあります。よい子は真似しないでください 「こんにちはー♪」 その日も愛しの唯先輩とラブラブ時間を過ごすべく部室にやってきた私。 ですがその日の唯先輩はなにかが違っていました。 「……」 「唯先輩?どうしたんですか突っ伏しちゃって。居眠りですか?」 「…あずやん……?」 「ど、どうしたんですか唯先輩!?顔が真っ赤です!風邪ですか?」 「かじぇ…?えへへ、ちがうよー…ひくっ、わたしは元気百倍らよー♪」 「元気って…」 「それよりー♪」ガバッ 「きゃあ!?」 「あずにゃん遅いよも~!私待ちくた、ひくっ、待ちくらびれちゃった~♪♪」 「唯先輩…お酒臭い!?」 真っ赤な顔、おかしなテンション、酒の臭い…間違いない、唯先輩、酔ってる! ふと机の上を見ると、チューハイらしき缶が。まさか、これを…? 「えへへ~♪さわちゃんがねぇ、ひくっ、会議らから唯ちゃんに預けるって言ってね、ひくっ、らからね、ちょっと味見したの~♪」 「ちょっとって…あ、半分しかないじゃないですか!とにかく顔洗って酔いを…きゃああ!!」ガターン! 「ん~♪あじゅにゃ~ん♪」 「ゆ、唯先輩、何を…」 「えへへ~ん♪あ~ず~にゃ~ん♪」 「に゙ゃ…!ん……」 唯先輩に頭を思い切り抱きしめられ、私の顔は先輩の胸に押し付けられます。 普段なら極上の幸せを噛みしめるところでしょうが、酔っているせいか力が強すぎです。い、息ができません…… 「…ぐ……ぎ、ぎぶ……」 「あ!あずにゃん苦しそう!ひっく…たいへんだぁ…人工呼吸しなきゃぁ…」 「うぇ!?ちょ、ちょ……」 「んちゅ~♪」 「ん…!!」 今度は遠慮なくキスをする唯先輩。人工呼吸というか、これはもうただのディープキスです…… さ、酒臭い……でも唯先輩の唇、柔らかくて気持ちいぃ……って私なに考えてんの!? 「ぷはぁ…ねぇあずにゃーん…私なんかあっつい……」 「はぁ、はぁ…え?ちょ!ダ、ダメですよ脱いじゃ!唯先輩!!」 「はー、すっきりー♪」 私の静止を振り切ってブレザーを脱ぎ捨てた唯先輩は、ブラウスのボタンを全て外してしまいました。 間からかわいらしい下着がちらほら覗くのを下のアングルから見るのは、な、なんというか…… 「い…いくら酔ってるからってまずいです…!もし皆に見られたら……」 「えー…ひっく…大丈夫らよぉ……そうだ♪」 唯先輩はチューハイの缶を掴むと、満面の笑みを浮かべ私に差し出しました。 「はい♪あずにゃんも飲もー♪」 「ダメですよ未成年が飲んじゃ!と、とにかく離れて服を……!」 「ひっく……そっか、あずにゃんはまだ一人じゃ飲めらいのかぁ…大丈夫だよ、私が飲ましてあげるからぁ♪」 「な、ちょ…唯先輩……まさか」 「口移しならあず、ひくっ、あずにゃんも大丈夫れしょ~? く、口移し!?いくらなんでもそれは…と唯先輩を引きはなそうとしましたが時既に遅し。 チューハイを含んだ唯先輩の唇は、んちゅーっと私の唇に… 「んっ……ん…んく…んく…」 あ…やば……チューハイ、おいしい……かも……ゆ、ゆい…せん…だ、ダメ……あたま、ぼんやり……して……き……もち…いい…… 「えへへ、どう~?」 「…れんれんらめれす」 「ほぇ?らに言ってるのあじゅにゃん」 「こんらんじゃらえれす!ゆいしぇんぱいははらかになってくらさい!」ガバッ 「え?はらか?わ…ひゃあぁっ……!!」 私の名前は田井中律。個性派揃いの軽音部を華麗にまとめる美少女部長だ。 今日も澪や梓をからかったり唯と絡んだりムギの入れるお茶を飲んだりがんばるぞ! ガチャ 「おーっす!」 「んんっ、あ、あじゅにゃ…はふぅ…」 「ゆーいしぇんぱい♪」 バタン 律「……」 えーと、待て。落ち着け。まずは気持ちを落ち着けよう。私の名前は?――田井中律。私の誕生日は?――8月21日。 …よし、大丈夫だ。私は平気だ。変な幻覚なんて絶対に見ない。友達と後輩が半裸で絡み合っている光景なんてあるはずがないんだ。 ガチャ 「おーっす!」 「…あ…じゅ…にゃん……」 「あっ…ん、んん……唯…しぇ……気持ち…いいよぅ……」 バタン 「……」 「よ、律!」 「そんなところでどうしたの?」 「澪、ムギ。今日の部活は中止だ。3人でハンバーガーでも食べに行こう。今日は私のおごりだ」 「え、唯と梓は?…ていうかなんで泣いてるんだ…?」 「わ…私だって泣きたい時くらいあるんだよぉぉ!うわあぁぁぁん!」 「わ、わかった!わかったから!わかったから泣くな!」 「…なにか、部室から強烈かつ甘美な雰囲気がするわ……ゴクリ」 ―終幕― さすがムギ -- (名無しさん) 2010-06-30 23 35 35 律の自己紹介吹いたwww -- (ぴー) 2010-07-13 20 42 23 この後どうやって帰ったのだろうか…もしや外でもイチャイチャを…! -- (nWo) 2010-07-29 15 33 41 そのまま寝落ちして~、起きたらあら不思議、裸で絡み合ってるじゃありませんか!!っていう妄想をした。 -- (名無しさん) 2010-08-28 22 01 10 さわちゃんGujjobu! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 20 09 53 これはえっちぃ -- (名無しさん) 2020-06-29 00 35 27 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1948.html
「アイスが美味しいね~、あずにゃん」 今日は唯先輩と私は部活が終わったあと、近所のお店に立ち寄って唯先輩念願のアイスタイム。 でも唯先輩だけじゃない、二人でソフトクリームを舐めあう私にとっても至高の時間。 でも、せっかくのアイスだったのに、唯先輩ったら無理をして食べて…… 「うわ、あずにゃんちょっとお腹を壊しちゃったからトイレに入ってるね~」 そんなに夢中で食べるからです。 残りは私が頂いちゃいますからね、もう。 はあ、唯先輩が出てくるまでちょっと暇になっちゃったな。 ここで最近こっそり携帯でやってるネットサーフィンの時間にしちゃおう。 掲示板とか、動画サイトとか、色々あるけれど… あれ?なんだろうこのスレッド。なになに、あずにゃ……何で私がこんな所で話題に? さてと開いてと…… あずにゃんペロペロ(^ω^) 一瞬固まってしまった。ペ、ペロペロ!?アイスじゃなくて私!? しかも一つや二つじゃなくて何回も繰り返して、沢山の人が。 私、クラスメイトや近所の人からそんな風に見られてるの!? 歩いてたら突然舐められちゃったりするのかな!? 「あずにゃんお待たせ~」 ビックリしたというのもあるけれど、何よりも不安になった私は唯先輩に抱きついた。 「唯せんぱぁ~~いっ!!」 ギュッと力一杯先輩の抱き心地のよい身体に絡みつく。 その瞬間、ほっとして力が抜けていった。 「どうしたのあずにゃ~ん……」 先輩は心配そうにあたしの顔を覗き込んでくれた。 その気持ちに応えるように、甘えるように、あたしは言った。 「なんかネットの掲示板に変な事が書かれてるんです~!」 携帯の画面を唯先輩に見せつつ、私は先輩の胸に泣きついた。 「どれどれ~、あずにゃんぺろぺろ?可愛い掲示板だね~」 可愛くないです!私、そこら中の人からペロペロされちゃうんですよ? 「わぁお!あずにゃん大人気ですか……」 人気なんてどころじゃないです。身の危険を感じます……。 「でもあずにゃんはアイスじゃないから本当にペロペロなんて出来ないはずだよ~」 世の中にはそういう趣向の人もいるんです。 例えば、こうやって顔中を嘗め回したりとか…… 「あずにゃん、可愛いよ……ぺろっ」 「にゃあん!舐めちゃ駄目です……唯先輩」 「この肌の張りを舐めてるだけでなんか落ち着くよ……ぺろっ……ぺろっ」 「にゃ、うにゃあああ///」 はうっ!なんで唯先輩で想像してるの! 落ち着け、私!! 「も~、真っ赤になったあずにゃんも可愛いなあ」 そんなにスリスリしないでくださいっ。 気持ちよすぎて先輩の虜になっちゃいます…… 「あ、あずにゃんさっき気を散らしながら食べてたな~。ほっぺにアイスついてるよ~」 珍しく先輩らしくなった唯先輩。でもほっぺに付いたの位自分で 「あずにゃんアイスいただき~……ぺろっ」 ふにゃあああああああああああああっ!! 本当だ! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-07 16 41 33 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/191.html
放課後、廊下を歩いていると唯先輩が私の元に駆け寄ってきた。 唯「あずにゃーん♪」 梓「あ、唯先輩!こんにちは」 唯「こんにちはー♪今日も部活頑張ろうね!」 梓「お菓子を食べるのは頑張らなくていいんですよ?」 唯「ぎくっ…れ、練習も頑張るよ」 そんなやりとりをしつつ部室にたどり着くと、ドアに貼り紙がしてあるのに気がついた。 梓「なんだろこれ…えっと…」 ――緊急連絡―― 本日は澪が歯医者に行くそうなので部活は休みです! 私とムギが責任持ってついてくのでお前らは心配しないでいいぞ! ――超絶天才美少女部長 田井中律―― 梓「な…なにこれ…」 唯「澪ちゃん虫歯なんだねー。大丈夫かなぁ」 梓「ていうか…律先輩はともかく、なんでムギ先輩まで付き添いに?」 …まぁ、なんとなく察しはつくけど… 梓「…で、なんで私は唯先輩の部屋にいるんでしょう」 唯「へ?」 30分後、私は唯先輩の部屋の座布団にちょこんと座っていた。なんでこうなったのか、自分でもよくわからない… 唯「なんでって、あずにゃんが来たいって言ったんじゃーん♪」 梓「わ、私はそんなこと言ってないもん!唯先輩が遊びに来いって強引に引っ張ってきたんじゃないですか!」 唯「えーそうだっけー?記憶にないなー」 梓「あなたって人は…」 唯「まぁまぁ、二人でのんびりしようよ♪はい、冷蔵庫にあったプリンだよー」 梓「ど、どうも…」 私はこの状況に戸惑うと同時に、嬉しくもあった。こんな風に唯先輩の部屋で二人きりになるなんて、初めてだから。 プリンを食べながら唯先輩を眺めていると、不意に先輩と目が合った。 唯「…あずにゃん」 梓「はい?」 唯「今、ドキドキしたりしてる?」 梓「さぁ、どうでしょう?」 唯「むー、しないの?私はしてるのに」 梓「確かめてみます?」 唯「うん。確かめる!」 唯先輩は私の胸に頭を近づけると、ぴたりと耳を当てた。なんだか、妊娠した奥さんのお腹の中の音を確かめる旦那さんのようだ。 そう考えると、妙に照れくさくなってしまう。 唯「あ、ドキドキいってる!やっぱりしてるんじゃん」 梓「それは唯先輩がくっついてるからですよ」 唯「じゃあ…こうしたら、もっとドキドキするかな?」 唯先輩は顔を上げると、私にキス――せずに、ぺろりと私の頬を舐めた。 思いがけない感触に、私の体はビクッと震える。 梓「うぅっ…な、なにするんですかぁ」 唯「えへへー♪柔らかそうだったからつい」 梓「そんな犬じゃあるまいし…でも唯先輩って犬っぽいところありますよね。居眠りしてる時なんか特に」 唯「あ、あんまりうれしくない…」 梓「私があずにゃんなら…先輩は唯わんですね」 唯「ゆ、唯わん…かわいいかも…」 梓「冗談で言ったつもりなのにまんざらでもなさそうですね…よし唯わん、お手!」 唯「わん!ってやらせないでよ!…えいっ!」 梓「きゃっ…」 唯先輩は私にのし掛かった。お互いの体が密着して、その鼓動や息づかいが手に取るように分かる。 唯「ふふっ…犬は猫より強いんだよ、あずにゃん♪」 梓「…それはどうでしょう?猫だって犬に勝つこともありますよ」 唯「じゃあ…試してみる?」 梓「…やってやるです」 猫と犬、どちらが勝ったかは…ご想像におまかせします。 おわり 犬の圧勝 -- (名無しさん) 2010-06-30 23 22 02 じわじわと猫が追い詰める -- (ぴー) 2010-07-16 09 53 42 犬のドSスキル発動 -- (名無しさん) 2010-08-02 11 48 12 バター犬覚醒 -- (名無しさん) 2010-08-04 23 19 46 唯わん、強し♪ -- (名無し) 2011-08-19 08 23 38 うへっ続き見てぇーうへへ -- (キング) 2012-01-22 21 22 42 Mにゃん捨てがたいけど、猫のspeedyな勝利。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 02 43 57 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る