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梓「雨、強くなってきたな……」 梓「……今思えば唯先輩じゃなくって、私が調子良かったんだ」 梓「あずにゃんなんて言われて喜んで」 梓「抱きついてくるのだって唯先輩にとったらただのありふれたスキンシップ」 梓「勝手に期待して勝手に裏切られた気になって勝手に怒って」 梓「最低だ私って…・…」 梓「……早く謝らないと」 梓「口きいてくれるかな……グス」 梓「だめだぁ……なんだか涙がとまらないよ」 梓「雨降っててよかった……こんなとこ見られたくないもんね」 梓「寒い……」 梓「唯先輩はきっとこの先も変わらない」 梓「大学生になっても、大人になってもいつまでもあんな調子だろうな……」 梓「だったら私が変わる。唯先輩に振り向いてもらえる私に」 梓「戻ろう……唯先輩のもとに……」 … 唯(どこ……あずにゃん……どこ行ったの) 唯「あずにゃん……」 唯(初めての後輩……とっても嬉しかった) 唯(可愛いからって勝手な理由で抱きついても許してくれて) 唯(ちゃんと私のこと理解してくれて、笑ってくれて、怒ってくれて) 唯(なのに私はあずにゃんのことが全然わかってなかった……) 唯(ごめんねあずにゃん……ちゃんと謝るからお願い) 唯「ハァ……ハァ」 唯「どこにいるのあずにゃん!」 … 梓(唯先輩に釣り合うのはやっぱり天才な人なのかもしれない) 梓(私なんて凡人の凡人) 梓(それでも傍にいたい……だって) 梓(私は唯先輩が大好きだから……) 梓(そんなのおかしいって言われてもいい) 梓(ちゃんと伝えなきゃ) 梓(言わないとわかってもらえないよ。なんでそんな簡単なことが理解できなかったんだろう) 梓(がんばれ私! 今は走るんだ! どしゃぶりでも! 明日が見えなくっても!) 梓「あっ!」 唯「あっ!」 梓「唯先輩……」 唯「あずにゃん……」 梓「びしょびしょですね」 唯「あずにゃんもね」 梓「ゼイゼイいってますね」 唯「あずにゃんこそ!」 梓「……あの」 唯「ごめんなさい!」 梓「あっ、え」 梓「違います! 私が謝るんです!」 梓「本当にすいませんでした!」 唯「どうして?」 唯「私が悪かったんだよ?」 梓「いえ唯先輩は唯先輩でしたから。いいんです」 唯「なにそれ!?」 梓「唯先輩」 唯「はいっ!」 梓「その……実は言いたいことが」 唯「な、なんでしょうか!」 梓「あの……」モゴモゴ 唯「……」 梓「あー、あー。あ、雨やみませんね」 唯「そ、そだねーもうびしょびしょー」 梓「とりあえずどこか屋根あるところに……」 唯「うん」 唯「……ほら。手」 梓「え」 唯「さっき繋ぎそびれたから」 梓「あ……はい、いいですよ」 ギュ 梓「雨の音すごいですね……」 唯「まさかこんなに振るなんてねー」 梓「神様もクリスマスが嫌いなんでしょうか」 唯「それであずにゃん……言いたいことって?」 梓「あ、その……」 唯「もじもじしちゃって」 梓(言わなきゃ。自分の言葉で。考えなきゃ) 梓(告白の仕方なんて学校じゃ習ってない……) 梓(それでもやらなきゃ!) 梓「スゥ」 唯「……」 梓「唯先輩。実は前前から私」 唯「……」 梓「唯先輩のことが好きでした」 梓「だから今日も唯先輩と買い物にいけてすごく嬉しかったです。楽しかったです」 梓「嘘じゃありません。はじめて会って、抱きつかれて、あだ名をつけられて」 唯「……」 梓「そのときからずっとずっと好きでした」 梓「大好きです」 梓「唯先輩みたいないい匂いの人、生まれて初めて出会いました」 梓「だから唯先輩。こんな私でよければお付き合いしてください」 唯「……そっかぁ」 唯「むむむ」 梓「……」 唯「きれいな目だねあずにゃん」 梓「……あいがとうございます」 唯「突き刺さっちゃうようなまなざしだよ」 唯「……ごめんね」 梓「……ぁ」 梓「……はい、謝らないでください」 唯「ううんまだ。聞いて」 梓「今は……キツイです」 唯「違うの!」 唯「あずにゃんに告白させちゃってごめんね?」 唯「私もね、ずっと変わらなきゃって思ってたんだ」 唯「いつまでもこのままじゃいけないなって!」 唯「妄想だけじゃなくてね?」 唯「ありがとうあずにゃんのおかげだよ」 唯「私一歩ふみだせるよ。あずにゃんには先越されちゃったけどね」 唯「だから……ほんとにありがとう。大好き」 唯「大好きだよあずにゃん」 梓「唯先輩……」 梓「あっ……ぁ……う」 梓「どうして……」 唯「え?」 梓「唯先輩は和先輩といるとドキドキするって言ってたじゃないですか」 梓「なのにどうして……もしかして同情ですか」 唯「アハハ」 梓「笑わないでくださいよぉ……」 唯「あずにゃん焼きもちやいてたんだね。可愛い」 梓「ち、ちがいます! ……ちがいます」 唯「和ちゃんやさわちゃんといるとね、いつ怒られるかわからないからハラハラするって意味だったんだよ」 梓「え……?」 唯「勘違いさん」コツン 梓「ぁ……そ、そうなんだ……」 梓「うわああ」ダッ 唯「ちょっと! あずにゃんどこいくの!? また!?」 梓「は、恥ずかしいです。今きっと顔が真っ赤です! 見られたくないんです!」 ギュ 唯「だめだよ今度は逃さない」 梓「離してください! 嫌です!」 唯「嘘ばっかり」 唯「あずにゃん今さっき私のこと大好きーって言ったじゃん」 梓「そ、それは」 唯「矛盾だらけだね?」 梓「私は素直じゃないんです……」 唯「そっか、それはそれはよく頑張ったね」 梓「唯先輩のくせに馬鹿にしないでください……」 唯「濡れててもあずにゃん暖かいね」 唯「あったかあったか」 梓「そりゃああんだけ走って、あんだけ緊張して……」 唯「ふふ。私のために走ってくれたんだよね」 梓「はい……」 唯「私もあずにゃんの為に走ったよ」 梓「唯先輩のために走りました……」 唯「私、あずにゃんのためならなんでもできるよ?」 唯「あずにゃんも私のためになんでもできる?」 梓「はい……唯先輩がいてくれたら……どうにでもなるような気がしました」 唯「ありがとう」 唯「こんな後輩に出会えて幸せだよ」 唯「ううん。これからは後輩じゃなくて恋人だね?」 梓「う……そうなりますかね」 唯「こっちみて? ほら顔」 梓「……恥ずかしいです」 唯「だーめ」グイッ 梓「唯しぇんぱい……」 唯「あずにゃん泣き虫ー」 梓「雨のせいです! いい年して泣いてなんか……グス」 梓「うわあああああん」 唯「よしよし」 梓「唯先輩ぃ唯先輩ぃい」 唯「いい子いい子」 梓「私、嬉しいです」 唯「うん」 梓「幸せです」 唯「うん」 梓「ずっとこのまま抱きしめていてほしいです」 唯「それはだめ!」 梓「えっ」 唯「風邪引いちゃうよ?」 唯「さ、今度こそ帰ろ?」 唯「まだまだクリスマスは終わらないよ?」 梓「……! うぅ……ヒグ」 …… 律「はぁ。やっと見つけたぞ」 澪「なんだぁアイツらみせつけてくれちゃって」 憂「ハァ……ハァどうして泣きながら抱き合ってるの」 紬「恋に定まった道なんてないのよ」 紬「そう、女の子同士でもいいの」 紬「この先二人にはいろいろ試練があるでしょう」 紬「だけど雑草をふみしめてでも進まなきゃならないの」 紬「これはただのスタートラインでしかないのだから」 紬「がんばってね」 律「何いってんだムギ」 澪「なんだかいい歌がつくれそうだなぁ」 『うええええんあずにゃーん!』 『唯先輩ぃいいい うえええん』 澪「でも…・…これ以上は歌詞にできないな」 梓「あれ、先輩方」 律「あちゃー見つかったかー」 澪「よ! 梓」 紬「これ、タオル。使ってね」 憂「お姉ちゃん風邪ひくまえに早く!」 和「ほらもたもたしない」 唯「みんなー私ね!」 律「あぁわかってるって」 澪「おめでとう」 憂「梓ちゃん。こんなお姉ちゃんだけどよろしくね?」 梓「う……うん///」 紬「がんばってね唯ちゃん、梓ちゃん」 唯「ありがとう!」 和「ほんとにあんたってば……」 唯「よし! いまから精一杯クリスマスをたのしもう!」 梓「はい!」 律「お、いいな!」 澪「ばーか、律」 憂「パーティしないんですか? 一応ケーキ買ってますけど」 紬「ふふ、そうね。じゃあ私はお呼ばれしちゃおうかな」 和「私もいいかしら暇だし」 澪「お、おいお前ら…………じゃ、じゃあ私も!」 梓「え、なら私も……」 憂「梓ちゃん」 唯「ぶー。あずにゃーん」 梓「あっ、ごっごめんなさい。つい」 唯「ふふふー。いいよ、クリスマスはウチでパーティね。その代わり」 唯「イヴはあずにゃんと二人きりで過ごしたいな」 おしまいです 戻る
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放課後、廊下を歩いていると唯先輩が私の元に駆け寄ってきた。 唯「あずにゃーん♪」 梓「あ、唯先輩!こんにちは」 唯「こんにちはー♪今日も部活頑張ろうね!」 梓「お菓子を食べるのは頑張らなくていいんですよ?」 唯「ぎくっ…れ、練習も頑張るよ」 そんなやりとりをしつつ部室にたどり着くと、ドアに貼り紙がしてあるのに気がついた。 梓「なんだろこれ…えっと…」 ――緊急連絡―― 本日は澪が歯医者に行くそうなので部活は休みです! 私とムギが責任持ってついてくのでお前らは心配しないでいいぞ! ――超絶天才美少女部長 田井中律―― 梓「な…なにこれ…」 唯「澪ちゃん虫歯なんだねー。大丈夫かなぁ」 梓「ていうか…律先輩はともかく、なんでムギ先輩まで付き添いに?」 …まぁ、なんとなく察しはつくけど… 梓「…で、なんで私は唯先輩の部屋にいるんでしょう」 唯「へ?」 30分後、私は唯先輩の部屋の座布団にちょこんと座っていた。なんでこうなったのか、自分でもよくわからない… 唯「なんでって、あずにゃんが来たいって言ったんじゃーん♪」 梓「わ、私はそんなこと言ってないもん!唯先輩が遊びに来いって強引に引っ張ってきたんじゃないですか!」 唯「えーそうだっけー?記憶にないなー」 梓「あなたって人は…」 唯「まぁまぁ、二人でのんびりしようよ♪はい、冷蔵庫にあったプリンだよー」 梓「ど、どうも…」 私はこの状況に戸惑うと同時に、嬉しくもあった。こんな風に唯先輩の部屋で二人きりになるなんて、初めてだから。 プリンを食べながら唯先輩を眺めていると、不意に先輩と目が合った。 唯「…あずにゃん」 梓「はい?」 唯「今、ドキドキしたりしてる?」 梓「さぁ、どうでしょう?」 唯「むー、しないの?私はしてるのに」 梓「確かめてみます?」 唯「うん。確かめる!」 唯先輩は私の胸に頭を近づけると、ぴたりと耳を当てた。なんだか、妊娠した奥さんのお腹の中の音を確かめる旦那さんのようだ。 そう考えると、妙に照れくさくなってしまう。 唯「あ、ドキドキいってる!やっぱりしてるんじゃん」 梓「それは唯先輩がくっついてるからですよ」 唯「じゃあ…こうしたら、もっとドキドキするかな?」 唯先輩は顔を上げると、私にキス――せずに、ぺろりと私の頬を舐めた。 思いがけない感触に、私の体はビクッと震える。 梓「うぅっ…な、なにするんですかぁ」 唯「えへへー♪柔らかそうだったからつい」 梓「そんな犬じゃあるまいし…でも唯先輩って犬っぽいところありますよね。居眠りしてる時なんか特に」 唯「あ、あんまりうれしくない…」 梓「私があずにゃんなら…先輩は唯わんですね」 唯「ゆ、唯わん…かわいいかも…」 梓「冗談で言ったつもりなのにまんざらでもなさそうですね…よし唯わん、お手!」 唯「わん!ってやらせないでよ!…えいっ!」 梓「きゃっ…」 唯先輩は私にのし掛かった。お互いの体が密着して、その鼓動や息づかいが手に取るように分かる。 唯「ふふっ…犬は猫より強いんだよ、あずにゃん♪」 梓「…それはどうでしょう?猫だって犬に勝つこともありますよ」 唯「じゃあ…試してみる?」 梓「…やってやるです」 猫と犬、どちらが勝ったかは…ご想像におまかせします。 おわり 犬の圧勝 -- (名無しさん) 2010-06-30 23 22 02 じわじわと猫が追い詰める -- (ぴー) 2010-07-16 09 53 42 犬のドSスキル発動 -- (名無しさん) 2010-08-02 11 48 12 バター犬覚醒 -- (名無しさん) 2010-08-04 23 19 46 唯わん、強し♪ -- (名無し) 2011-08-19 08 23 38 うへっ続き見てぇーうへへ -- (キング) 2012-01-22 21 22 42 Mにゃん捨てがたいけど、猫のspeedyな勝利。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 02 43 57 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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ピンポーン 梓「……」 梓「寝てるのかな」 梓「だったら……直接起こすしかないよね」 梓「ふふっ」 年甲斐もなくイタズラ心が騒ぐ。 と言ってもこっそり上り込んで起こすだけなんだけど思わずにやついてしまった。 朝から人の家の前でにやにやしているのもあれだから早く入ろう。 それに秋の終わりだけあって寒いし。 キャリーケースを立て掛けてトートバッグからスペアキーを取り出した。 慎重に差し込み静かにドアの鍵を開ける。 たまには私がイタズラしたっていいよね。 そうだよ、昔は私が色々されてたんだし……色々……。 やっぱり普通に起こすのやめようかな。 梓「おじゃまします……」 そーっとドアを開いて玄関に侵入。 重いキャリーケースも音を立てないように玄関へ置いた。 初めてこの部屋に来てから今日で二週間ちょっとか。 私の誕生日前日に偶然再会してこのアパートに連れてこられて、 それから色々あってスペアキーを預かる事になり、気が付くと入り浸るようになっていた。 玄関の左手に台所、右手にお風呂とトイレ、奥の部屋には布団が敷かれている。 家主には気付かれなかったみたいだけど、同居人が私の侵入を察知してお出迎えしてくれた。 黒い毛並みが綺麗な子だ。 「……なー」 梓「おはよう、あずにゃん3号」 本当の名前は少し違うけれど私はそう呼んでいる。 だって被ってるんだもんなぁ。 そんなあずにゃん3号と一緒に忍び足で奥の部屋へ。 盛り上がった羽毛布団が僅かに上下していて、顔も半分埋まっている。 相変わらず寒がり。 さてどうやって起こそうかな……そうだ。 冷えた指を擦って常温まで戻し、すやすや寝ている顔に近付けた。 閉じたまぶたに触れても反応がない。 よく寝てる。 今日以外だったらゆっくり寝かせておいてもいいんだけど。 なんて思いつつも声はかけない。 私は吹き出しそうになるのを堪えながら寝ている人のまぶたを開けてみた。 無理矢理開かれた瞳は真っ直ぐ天井を向いていて焦点が合っていない。 ここで漸くピクリと反応して唸った。 梓「ぷふ……くふふふっ」 ダメだおかしい。 何だかわからないけどおかしくて笑いが止まらない。 本当にただのいたずらっ子だ私。 「ん……んぇ?」 私の笑い声と指の感触で目が覚めたらしい。 流石に悪い気がするのでちゃんと声をかけよう。 梓「おはようございます、唯先輩」 唯「はぁ~……あずにゃんおはよ」 大きい欠伸をしてゆっくりとこちらを向く唯先輩。 まだ眠そうだけどあんまりのんびりしてもいられない。 唯「……ねむ、さむ」 梓「一応早めに起こしましたけど今日は絶対に遅刻できませんよ」 唯「ふあぁ……」 梓「ほら、支度して下さい。その間に朝食用意しますから」 唯「んー……」 梓「シンガポールが待ってますよー」 唯「っ! そうだ、今日シンガポール行くんじゃん!」 わあ、起きた。 唯「ふーっ、寒っ」 唯先輩がタンスから服を見繕い始めたので私は台所へ移動した。 朝食の用意と言っても食パンをトーストして冷蔵庫にある出来合いの惣菜を出すだけなんだけどね。 唯「あずにゃんは朝ご飯食べたー?」 梓「家で食べてきましたー」 唯「そっかー」 梓「朝食出来ましたよー」 唯「ありがとー」 さて、先輩が朝食を食べている間に旅行の予定を確認しておこう。 本日11月25日、これから空港に向かい4泊5日シンガポールの旅へと赴く。 今日は金曜だけど唯先輩は有給パワーを発動。私は求職中だから……まあ、うん。 ホテルでチェックインするのは夕方か夜になるかな。 今日はまったり過ごすとして、明日以降は観光したり先輩が楽しみにしてるプールで遊んだり。 今回は宿泊するホテルがメインかもしれない。 去年出来たばかりで55階建ての高層ホテルが3棟連なっていて、 その3棟のホテルは屋上にある船を模した巨大空中庭園で連結している。 そこに空と繋がっているかのような野外プールがあり、先輩はそこに行きたがっている。 インフィニティプールって言うんだっけ。 私もすごく楽しみだったり。 何しろ唯先輩が『シンガポール すごいホテル』なんて単語でネット検索してすぐに見つかる程だ。 唯「はぁ~早く泳ぎたいなぁ」 梓「その割には珍しく寝坊してたじゃないですか」 高校の頃の唯先輩なら珍しくも何ともないんだけど、社会人になった唯先輩が寝坊した所を見た事がない。 と言っても先輩と再会したのは最近だし、むしろお泊りした時は私が寝坊しちゃってるんだけど……。 おまけに自炊もしてるし頼れるしで気が付いたら私の方が甘えちゃってたり。 やっぱり一人暮らしするとしっかりするものなのかな。 ……対する私は都会で一人暮らししていたものの会社に嫌気がさして退職。 その後再就職せず引きこもりみたいな感じになって友達や先輩からの連絡も見て見ぬふり。 あの時は完全に迷路に迷い込んでいて自分から身動きとろうとも思えなかった。 そんな状態のまま先日地元に帰ってきて、その時偶然唯先輩と再会して、こう、ね。 しっかりしつつも変わらない唯先輩に元気を貰って、もう一度頑張るぞって思ったんだ。 おまけに唯先輩からアパートのスペアキーまで渡されちゃって。 大事な物だからそれを持って消えないでねっていう首輪みたいな感じで。 唯「あずにゃんが来てくれるって言うから目覚ましかけなかったんだ」 唯「起こしてくれるかなーって。えへ」 こういうところも変わらないなあ。 今回の旅行には目的というか名目があって、まず私を立ち直らせてくれた唯先輩へのお礼を兼ねている。 唯先輩はずっと遠慮していたけど誕生日プレゼントという事にして飛行機のチケット代とホテル代は私が払う事にした。 という事で唯先輩への誕生日プレゼントとしての旅行でもある。 値は張ったけど、一人暮らしの時は貯金が趣味みたいになってたし仕送りもあったからお金はそこそこあった。 むしろ先輩の為に使えるのならあの何も得られなかった苦行にも意味が見出せるというものだ。 この旅行ではとにかく唯先輩に楽しんでもらわなきゃ。 それからもう一つ。 旅行先で、唯先輩の誕生日までに、返事をしなければならない。 私は11月11日に唯先輩から告白された。 ずっと前から好きだったと言われて、その時私は どちらかと言えばセーフ という何とも曖昧な言葉を返した。 その場では焦ってうまく返せなかったし、あとで考えれば考える程障害が浮き彫りになるし。 そりゃあ唯先輩の事は好きだけど、先輩の言う『好き』と同じかどうかわからなくて。 その後現在まで保留みたいな感じになっている。 2週間以上保留にしておいてその上先輩の家に頻繁に上り込んでいるという……。 先輩がいつでもおいでって言ってくれて、合鍵までくれたから……。 それに唯先輩は私を引きこもりから救ってくれた恩人だし、その反動からかひと肌恋しかったし、大切な人だし。 と、先輩の好意に甘えつつずるずると返事を先延ばしにしてしまった。 だから今回の旅行で決着をつけなければいけない。 舞台と日付を決めたのは私だけど、こうでもしないとまた先延ばしにしてしまう。 唯「あずにゃん、準備出来たよ!」 梓「え、あ、それじゃ行きましょうか」 いつの間にか支度の完了した唯先輩が私の前に立っていた。 まずは先輩に楽しんでもらわないと。 梓「忘れ物とかありませんか?」 唯「水着も入れたし多分大丈夫。あずにゃんおいで~」 ……危ない、声を出すところだった。 唯先輩は黒猫のあずにゃん3号を抱き上げてケージに入れた。 この子は旅行の間お隣さんが預かってくれるらしい。 唯「よし、それじゃ出発!」 梓「はい!」 * 7時間ちょっとのフライトを終えて私達が目にしたのは常夏の空。 唯「……雨降ってるね」 梓「ですね……」 唯「えーっ、泳ぎたかったのにー」 梓「天気予報では曇りだったんですけどね。シンガポールは11月から雨季ですから」 唯「蒸し暑いのに……うぷ」 唯先輩はフライト時間のほとんどを寝て過ごしたけど結局酔ってしまったみたい。 梓「秋の日本から来ると余計にそう感じますね。とりあえずホテルに行きましょうか」 唯「そだね」 梓「……バスで」 唯「……うっぷ」 シンガポールに辿り着いた私達は空港からバスに乗りホテルへ向かう。 通りに並ぶ整った建物と点在するヤシの木。 バスから覗く景観はこれぞ常夏の先進国っていう雰囲気を醸し出していて、見ているだけで気持ちが踊る。 同じく外を眺めていた唯先輩も多少元気を取り戻していた。 唯「うわーすごいねー、高層ビルがいっぱい!」 梓「綺麗な街並みですね」 唯「そうだねー。あ……お腹空いてきたな」 梓「もうすぐ夕飯の時間ですからね」 唯「あれっ今何時?」 梓「18時過ぎです」 唯「まだ明るい感じなのに。雨空だけど」 梓「こっちは1年中7時から19時くらいまでが日照時間なんですよ」 唯「へえ~」 程なくしてバスが到着し、唯先輩を介抱しながら下車する。 唯先輩が「ようやく解放されたーっ」という顔で軽く身体をひねっているとふいに動きを止めた。 それから首だけがどんどん上に傾いていく。 先輩の視線を追ってみると写真で見るより数倍迫力のある建物がそびえ立っていた。 首が痛くなりそうなほど高い。しかも3棟。 おまけに屋上には船が乗っかっている。 唯「うおお……すごーい!」 梓「おっきい……」 それにホテルの手前には入り江が広がっていて、 対岸の高層ビル群も合わせてホテルからの眺めに期待が持てる。 唯「よし、早く行こっ!」 梓「はいっ」 ホテルは外観だけでなく中身もすごかった。 吹き抜けになっていて開放感のあるエントランスや高級感溢れる内装を見るたびに感嘆が漏れる。 チェックインを済ませて私達が泊まる部屋に向かうとそこがまたすごくて、二人してすごいしか言えなくなった。 部屋は広く昨年オープンしたばかりだから内装も綺麗。 ふかふかのソファーとベッド。 大きなバスタブと鏡のあるバスルーム。 そして何と言っても入り江を眺められる一面ガラス張りの窓。 外は既に暗くなっていて、ライトアップされて色付いた夜景が広がっている。 暫く唯先輩と一緒になって窓に張り付いていた。 唯「ふぁぁ……この部屋が30階だから、屋上から見たらもっとすごいんだろうねぇ」 梓「これの倍くらいの高さですからね」 その後お腹の空いた私達はフードコートで夕食を取り、隣接するショッピングモールを見て回った。 このホテルは宿泊棟に隣接する総合ショッピングモールがあり、フードコートやショップの他にもカジノ等様々な施設がある。 とても1日じゃ周りきれそうにない。 唯先輩が次々に心を惹かれては物を買い込みそうになるので止めるのが大変だったけど、 目を輝かせている姿を見ると旅行をプレゼントしてよかったなと思えた。 部屋に戻って来て一息ついていると唯先輩が戦利品をゴソゴソし始めた。 置物に洋服にお菓子におつまみにボトル……ボトル? 唯「じゃあ飲もっか!」 梓「いつの間に買ったんですか」 唯「えっへへー。こんなに良い部屋と景色なんだよ? 飲まずにはいられないでしょー」 梓「そういうものですかね」 唯「そういうものだよ~」 私はあまり飲む方じゃないけど今日は久しぶりに飲みたい気分だ。 唯先輩の言うとおりこんな時は飲まずにはいられないのかも。 唯「何飲む?」 梓「ええと、唯先輩と同じものを」 唯「おっけー」 唯先輩のお誘いだし景気付けに丁度いい。 明日か明後日、唯先輩に返事をするんだから。 現地に来てそれを自覚するとやっぱり緊張してくる。 今日が25日だからあと2日もあるし大丈夫だよね。 いや、今日言っちゃうのもありか。 そうすれば胸のつかえが取れてもっと旅行を楽しめるかも? そうだよ、ホテルで夜景を見ながらお酒……今しかないよ。 先輩が2つのグラスにボトルを傾けた。 ほのかなこがね色に気泡がはじける。 梓「シャンパンですか?」 唯「うん、高かったんだけど思い切って買っちゃった」 汗ばんだ手で先輩からグラスを受け取る。 先輩が乾杯の仕草を見せたので、私は力の入った指でそれに答えた。 唯「かんぱい~」 梓「か……かんぱいっ」 2
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あらゆるものは近づき、そして遠ざかる。 別に磁石を例に取らなくても、 二つの物体間には引力と斥力が働いていて、 そのせいで、すべての物体は引き合い、 反発し続けている。 近づき遠ざかり続けることで、物体は静止している。 わたしたちは素粒子間に働くたった4つの力によって 笑ったり、泣いたり、怒ったりする。 これは遠ざかりつづける二人の女の子の愛の物語だ。 だからわたしと唯先輩の話ではない。 わたしは、人に近づかれるのが怖かった。 唯先輩はものすごいはやさで、 わたしの中へ侵入して、 たとえば凍り付いてどこにも行けなくなったわたしを 腕の中で溶かしてくれて、 わたしは唯先輩に引かれて歩き出す。 でも、これはその手のお話ではない。 すでにわたしたちはお互いに引き合っている。 静止するためには反発しなければならないだろうか? なんてことを言えば、 「知らないよ」 と、憂は怒ったような顔をして言う。 それはいつだって夕暮れの、帰り道のことだったから、 夕日が照らした憂はいつでも真っ赤で、 だから、怒っているように見えたのかもしれない。 あるいは ドップラー効果が光に示すように ものすごいはやさで遠ざかる物体は赤く見えるというだけのことかもしれない。 これはわたしと憂の物語で、 遠ざかり続ける二人の女の子の物語だ。 だから、わたしと憂は遠ざかり続けている。 * * * 音は波でできている。 波のやってくる間隔が広ければ音は低く響き、 せまければ、音は高く響く。 もし音源が観測者に近づいっていったら、 波の間隔は詰まってせまくなっていく、 ということはわりと感覚的に理解しやすい。 逆に音源が観測者から遠ざかる場合、 波の間隔は広くなる。 救急車のサイレンの音はわたしの前を通り過ぎる瞬間に 響きを変える。 これをドップラー効果というのだそうだ。 宇宙規模の世界では光の場合にも同様の現象が起こり、 遠ざかる天体は赤くシフトし、 近づく天体は青く見える。 憂はそういう類の女の子だ。 それを言ってしまえば、 唯先輩だってまたそんな女の子には違いないのだけど、 接近でのみ存在する女の子というのはわりとふつうで、 遠ざかることで存在する女の子というのは なんだかよくわからない。 「それは梓ちゃんの 理解不足だよ」 なんて憂は笑い声で言うのだけど、 その顔は怒っているのか笑っているのかちょっとよくわからない。 「そうかなあ」なんてわたしは頭をかいて、 憂を見ていると、 「どうかした?」 と、小首を傾げた。 「いや憂がかわいいから」なんて言ってから、 唯先輩に似てるからだなんて思われるだろうか、 と考えたところに そっくりそのまま憂は同じことを言う。 「おねーちゃんと 似てるから?」 「まあそうかもね」 なんてわたしは適当に応える。 「梓ちゃんは いやなやつだ」 と、憂は嬉しそうに言った。 わたしたちは夕暮れの帰り道にいて、 今日は部活の後に図書室で 唯先輩の受験勉強に付き合ってあげていたところだった。 帰り道は憂だった。 もう少し正確に言えば、 帰り道の残りの後二つ曲がったらさよなら のあたりで、 唯先輩は握っていたわたしの手をほどき、 (そうじゃない日もある) 少し遠ざかる。 憂はなぜかいつも最初は不機嫌で、 一歩一歩歩くたび、 というのはわたしから少しずつ遠ざかっていくという意味だけど、 優しくなる。 いつものバス停のところで、 わたしは憂にバイバイをして、 それから小さくなっていく憂のことを見送って、 家に歩きながらも、憂のことを考えている。 唯先輩のことを考えることはできない。 遠ざかっていくものは憂であり、 誰かを思うときわたしたちは大概遠ざかるものを思う。 「本当はずっと おねーちゃんのことを 考えていたいのに?」 なんてまた憂は嫌みめいたことを言い 「そうだよ、でも本当は憂の手を握ったりもしたい」 と、わたしが言うと、 真っ赤になって、 おこる。 「照れてるの?」 冗談でわたしが聞けば、 「うん」 とか笑ってみせるから、 何がなんだかわたしはわからなくなってしまう。 お別れの前に何か気の利いたことを言わなきゃって わたしは思うから (憂ほど特殊でないにしろわたしだって何かの類の女の子ではある。 たとえばロマンチックな言葉を言わなきゃならない瞬間があるって信じてるとか) こう言った。 「夢で逢おうね」 憂は一瞬きょとんとして、 「梓ちゃんって ときどき ばかみたいだ」 って笑うから きっと逢えるのだろうと思うし 実際夢に出てくるのは憂だった。 わたしは憂が小さくなって点になるまで バス停の看板に背を預けてそれを見守っているし 憂は憂で、 おそらくはわたしが消えてしまうまで、 後ろ向きで歩いていて わたしは危ないからやめてほしいと思っているんだけど 憂はわりと自分の心配はしないらしく それでもときどき手を振ってくれるのが見えるから 手を振り返す。 * * * あらゆる自然言語は二価性を持っている。 それはごく簡単に言えば対義語を持つと言うことだ。 そのことが言語にベクトルを与え、ベクトルは意味を生じさせる。 「悲しい!」がなければ「嬉しい!」って言えないわけじゃないけど、 でも「嬉しくない!」がなければ「嬉しい!」もない。 そして「嬉しくない!」は「嬉しい!」から逆方向に伸びるベクトルにある。 そのことは「悲しい!」が存在しない言語にさえ「嬉しい!」の二価性があることを肯定する。 そして自然言語が人間の単純思考のために生み出されたのだとすれば、 あらゆる自然言語は二価性を持っている。 だからわたしたちは 泣いたり、怒ったり、笑ったりするのだ。 唯先輩も、憂もそうする。 もちろん、わたしもそうする。 ときどきはそれがうまくできなくなっちゃうんじゃないかって怖くなる。 わたしは一価性言語の喋り方を知っているから。 憂が教えてくれた。 放課後、部活後の図書館で。 いつもの唯先輩との勉強の合間に それが、わたしと憂の出会いだった。 憂にいわせれば、 一価性言語の完全に習得は必ずしも感情の消滅を意味するのではないという。 というのも わたしたちが二価性言語を使いながらも一価性言語を学ぶこと自体が二価性的であって、 それには二重思考を必要とする。 ということは一価性言語を喋ること自体が二価性言語に許容されているのであって、 たとえるなら二価性言語という容器の中に一価性言語が収納されていて、 わたしは使いたいときにだけ道具的に一価性言語を取り出すことができるのだ。 そんな言葉を憂は喋る。 「おはよう」と「ばいばい」 「はじまり」と「おしまい」 が 同じベクトルを持つ言語。 その言語が描く宇宙は一枚の地図を丸めてひとつなぎにした宇宙。 その宇宙は広がり続ける二価性宇宙に反して 円球のように一巡して また元のところに戻ってくる。 だからその一価性宇宙の中では遠ざかり続けるわたしと憂でさえ 出会うことができる。 わたしたちは宇宙を一周して、 その端と端、 紙のつなぎ目でまたお互いに再会して、 こう言う。 こう。 「ばいばい!」 図書館の隅っこで わたしと憂は そんな未来の昨日のばからしさを 想像しては 笑う。 * * * わたしは唯先輩の腕の中が好きだ。 あたたかくて、そしてなんだか懐かしい。 唯先輩の腕に抱かれると冬場のお風呂をいつも思い出す。 丸型の石油ストーブのあったリビングでは父親がテレビで野球を見てて、 台所で母親が皿洗いをする音が聞こえる。 わたしは凍える廊下を小走りに 脱衣場で一息に衣類からするすると逃げ出し 白い湯気であふれたお風呂場へと飛び込む。 そんな思い出を。 「のぼせちゃった?」 と、唯先輩は言う。 わたしは唯先輩の腕の中にいて、 唯先輩は近所の公園にいる。 「もう、やめてくださいよ」 と、わたしは口で言い、 「えへへ、つかまっちゃった」 と、唯先輩は笑う。 唯先輩がわたしのことを抱きしめているように見えるだけで、 ほんとうは わたしが唯先輩をつかまえているのだと、 唯先輩はそう言う。 だからつかまるのはいつも唯先輩で。 それから唯先輩はわたしの背中で組まれた指をほどいて、 「あずにゃんが してほしくないことは しないことにした」 と、いじわる言いながら わたしに触れた手を離して、 「ね、梓ちゃん、 また逃げられちゃったね!」 憂はわたしに手を振ってみせる。 逃げ出すのはいつも憂だった。 憂は、 「梓ちゃんは素直じゃない」 って笑う。 「別にそんなことないと思うけど」 わたしは口をとがらせてそう言い、 憂のにのうでの感触のことを思い出す。 わたしが憂にそろりそろりと近づいていくと、 それよりほんの少しだけはやく憂は後ろ向きで歩く。 「梓ちゃん、そんなに わたしに触れたい?」 憂が突然そんなこと言うからわたしはつい吹き出してしまう。 「そうじゃなくてただ わたしは、憂から離れたいたいだけだって」 そしてそのふたつは憂の世界ではまったく同じことだ。 「うん、わたしも はやく梓ちゃんから逃げたいよ」 と言って憂はわたしから遠ざかり、 唯先輩はわたしのことを抱いた。 わたしはまた冬のにおいを思い出した。 * * * 唯先輩のことを思い出すとき、わたしは決まって憂のことを思い出す。 わたしたちは未来に向かって歩みを進めているので 過去は常に現在から遠ざかっている。 そして遠ざかるものは常に憂だ。 わたしはまだ高校の一年生で 新入生歓迎ライブのステージに 憂はいた。 憂はそこにいる誰よりも輝いていて 憂以外のすべてのものについた明かりのスイッチを ぐーっとひねったみたいだった。 背の低いわたしは全身を思い切り空方向に引っ張って、 なんとかして憂を見ようとした。 憂がなにか歌うたびわたしの心臓がはねた。 わたしは熱狂してた。 そんなふうに熱狂したことは一度もなかったのに。 それからわたしは 憂のいる軽音部に入って、 憂のことをいろいろ知ることになる。 たくさん失望して、 ちょっとだけ感心した。 先輩4人とわたし、いつも帰り道の終わりに ふたりだけになって、 いろんなことを話した。 学校の先生がどうとか、 お互いのクラスメイトの話とか、 昨日のテレビとか、 もちろん音楽のことも。 そして、お互い愛し合いつつも黙りあうふたりに おきまりのいくつかの儀式を 通り抜けた後で、 いつしかその帰り道の終わりの終わりに 憂が現れるようになった。 それはいつもちょうど夕暮れの頃で、 憂はいつも夕日の色をしていたから、 それが唯先輩だった憂と憂として現れた憂のわたしなりの区別だった。 もちろんその区分けはかなり雑な分類法で、 唯先輩と憂はしばしば入り交じるけど、 少なくともロマンチックだとわたしは思っていて、 もちろんそんなことを言えば憂は笑うに決まっているのだから、 わたしは黙っている。 わたしが黙っていると憂は不思議がって 「どうかしたの?」 って聞く。 「なんでもない」 って答えた後、かわりに もうひとつ黙っていようと思っていたことを わたしは聞いてみる。 唯先輩にも言えないことを憂に言えるときがあるのは何でだろうか と、ときどき思うのだけど、 その理由は未だ不明だ。 「あのさ」 「なに?」 「こういうのって続いていくかな?」 「こういうのって?」 「こういうのってこういうのだよ。 その、こういう、いろいろ」 わたしは”いろいろ”をしめすために両手をぶんぶん振る。 「続いてくものもあるし 続かないものあるよ」 あるいは、って憂は笑って 「続いていく、かつ続かない」 と、言う。 それからちょっと考えて、 「梓ちゃん、もしかして こわがってるの?」 「なんのこと?」 「おねーちゃんたちが卒業して ひとりになっちゃうことと それについてまわるいろいろ」 「それもある」 「新しい場所で おねーちゃんが 梓ちゃんを 忘れちゃうとか?」 「それもある」 「ほかには?」 「たぶんこういうことって これからもたくさんあるじゃん」 「第一次危機だ」 と憂は笑う。 「そう、第一次危機」 「それがこれからも続いてくのに やっていける気がしない?」 「ううん、そうじゃなくてさ、 まあそれもあるかもしれないけど わたしが思うのは憂のことだ」 「わたし?」 「つまりそんな危機のたびにだよ、 唯先輩がわたしから 遠ざかってしまうかもしれない危機のたびにだよ、 憂のことを思わざるを得ないわけだ。 近づく憂を」 「うん」 「それはなんていうか、その、なぐさめられる」 「それはよかった」 だけどさ、とわたしは言う。 「だけど、ただそれだけのために憂がいるとしたらどうする?」 わたしは言わなきゃよかったなって後で思う。。 思いを喋ることはその考えに明確に意味を与えてしまう。 わたしたちは100パーセント言葉では考えない。 言葉は表明されたとき揺れるベクトルの矢印の先っぽを 一点に向けて伸ばし始める。 少なくともわたしたちの世界の言葉はそうだ。 違う世界の言葉を喋る憂は冗談っぽく笑って言う。 「悲しいし、嬉しい」 へえ、 とわたしは呟き、 それから二人して黙ってしまう。 しばらくして憂が言った。 「すっごくおもしろい ジョークを教えてあげよっか?」 その「おもしろい」は すごくおもしろくてすごくつまらないという意味のおもしろいなのか、 ただ単に本当におもしろいのか、 わからなかったけど、 とにかく、 ジョークを言う前に 自分でおもしろいなんて 言わない方がいいだろうなとわたしは思った。 天国ではね、 と憂は言う。 「天国ではね、 天使が歌って喋るんだけど、 天使はみんな ダンプカーみたいな声で歌うから 天国はとてもうるさい」 へえ。 とわたしはまた呟き、 「おわり?」と憂に聞く。 「うん」 と憂が言うので 「あはは」 とわたしも言う。 射しこんだ夕日にいつもどおり憂の顔は真っ赤で、 憂は笑っているけど、 たぶん、 てれてるか、怒ってる。 いつもどおり。 「一価性言語で 歌が歌えると思う?」 と、後に憂が聞くので、 わたしはしばらく考えた後に 「歌えると思う」 と、答えることになる。 それから憂は笑って 「歌、歌ってみようか?」 って聞くだろうから わたしはもちろん 「うん」 って言うだろう。 そしたら憂はいたずらっぽく笑って 「いやだ」 って答えて、 その理由を問えば、 てれくさそうに 「へたくそだから」 って言うはずだから、 こらえきれずにわたしは吹き出して、 二人で笑うだろう。 さらに後でわたしは、 少なくとも思い出の中の憂は”天使”みたいなきれいな声で歌っているな、 と思うことになる。 * * * 町外れの丘めがけて思い切りわたしが自転車をこぐとき、 荷台に座ってわたしの腰に手を回す唯先輩はものすごい速度でわたしに近づいていて、 息を切らせながらペダルを回すわたしは憂から遠ざかり続けている。 そんなときは彼女がどっちなのかわたしはわからなくなってしまう。 自転車の前をこぐわたしは 彼女の姿を見ることができないから そんなとききっと背中の彼女は わたしの知らない誰かになってしまっているのだと思う。 彼女にわたしの知らない何かがあって そのなにかのおかげで わたしの知らないどこかでも 彼女は彼女でいられるのだという考えは、 ちょっとさびしいし、 すごくこわい。 だからそんな考えを振り払うようにわたしは ペダルをさっきよりもずっと強く踏む。 憂みたいな誰かは 「きゃっ、はやくなった」 と、驚き、 唯先輩みたいに 「あはっ、あははっ」 って笑う。 唯先輩みたいな憂のような誰かはわたしの背中ごしに腕を振り上げて言う。 「いけ、いけー!」 その誰か変なぐちゃぐちゃな女の子の手は わたしの腰にぴたって手をくっつけてて、 それを強く意識したら汗がにじんだ。 丘の上からは街が見える。 ミニチュアみたいに見えるわたしたちの街。 唯先輩はわたしの肩に手を回してた。 「あずにゃん、あずにゃん、 わたしの家ってあの辺かな」 「たぶん」 「じゃあ、じゃあ、 あずにゃんの家ってあの辺?」 「もう少し右の方ですよ、そこ」 「もうじきこの街とお別れだと 思うと寂しいな」 「またいつでも帰ってこれるじゃないですか」 「えへへ、そうだね」 髪をかき上げて目を細めて 遠くを眺める唯先輩は なんだか大人びていて、、 わたしはちょっと困ってしまう。 わたしから決して遠ざかることない唯先輩は、 いつまでも唯先輩で、 だからこうしてゆっくりと 変わっていくことを思わされるときの唯先輩は どっちかというと 憂によく似ているとわたしは思うのだけど、 こうして現にここにいる唯先輩は憂ではなくて、 というのは憂の言葉は変わっていくっていうことを 扱うことができなくて だから変わっていくことこそが 唯先輩が憂でなくて唯先輩であることなんだろうと思うけど、 かわりにわたしから遠ざかっていく憂は ずっと変わることがなくて、 たぶんそれはわたしも変わっているということによって 生まれる問題なんだろうけど、 そういうことはなんだか変だなって思う。 それはたとえば 電車に乗っている人々は ほんとうは電車と同じ速度で動いているのに 止まっているように見えて、 逆に景色はずっとそこにいるのに通り過ぎていく っていったようなことで、 ドップラー効果は音源が動くときに だけ起こるのではなく、 わたしが動くときにだって 音楽は変わるのだってことを思い浮かべた。 沈黙を破ってわたしは言う。 「好きですよ」 わたしが急に言ったからだろうか、 照れた唯先輩はわたしの肩のにおいた手を大げさに離して 「わたしは大嫌いだもん」 と言う。 「そっか」 ってわたしは笑った。 街の向こうで沈む夕日はとても赤い。 * * * わたしと唯先輩は駅のホームのベンチに座って電車を待ってた。 話飽きてた。 疲れてちょっと眠かった。 近所のファミリーレストランでお昼を食べてあと、 乗るべきはずの電車を五本見過ごして、 「あずにゃんが ひっついて離れない」 と、唯先輩は冗談を言う。 「じゃあそのままわたしも連れて行ってくださいよ」 わたしは答えた。 「ほんとに?」 わたしは黙っている。 「それはだめだよ」 って、唯先輩は言う。 「なんでですか」 「だってあずにゃん重いもん」 あずにゃんがひっついて離れない、 とまた唯先輩は繰り返す。 立って、わたしのことを持ち上げようとして、 「ほら、重い」 って言った。 離れたわたしは布団みたいにベンチに沈む。 憂が言う。 「あんまりおねーちゃんを 困らせちゃだめだよ」 「別にそんなことしてないって」 あはは、 と憂が笑い、 唯先輩はまたベンチに座った。 「新しい場所で暮らすのってどんな気分がします?」 わたしは聞く。 「不安もあるけど、 みんなもいるし だからすっごく楽しみだよ!」 「へえ」 がたがたかたかた。 って急行列車が通り過ぎる。 あずにゃん以外。 唯先輩はそう呟く。 「へ?」 「もちろん あずにゃんが いないならだよ」 「そうですか」 「忘れられてるって 心配しちゃった?」 「別にそんなことは……」 電車がやってきて、 それで今度は止まったのを見て、 わたしはちょっと残念だった。 立ち上がった憂は、 「梓ちゃんは素直じゃないから すぐにさよならだ」 ほおを膨らませて、 あまりにわざとらしくおこるのだ。 そして憂は消えてしまう。 憂が消えてしまった後で、 わたしは揺れて、 唯先輩のあたたかい腕の中にいて、 それからこの瞬間の唯先輩を これから何度も思い出すことになるんだろう、と思う。 そのとき、たぶん、憂はそこにいて。 唯先輩はさらに一歩前に出て、 「泣いちゃだめだよ また会えるんだから」 って、 わたしの目の下に触れた。 憂は一歩下がって、 「すぐにね!」 って笑った。 電車に乗っていった。 夕焼けだった。 憂のことをわたしは考えている。 唯先輩がいないときはいつだって憂のことを思っていた。 わたしたちは、と 憂を乗せて遠ざかる電車を見ている あるいは 電車から遠ざかっていく わたしは思う。 わたしたちはまだ1度も出会ったことがないのだ。 出会いが向かい合うベクトルの衝突なら、 お互いに逆を向くベクトルが出会いになることはないだろう。 わたしと憂はまだ出会ったことがなく、 そしてこの宇宙が循環しない開いた宇宙である以上、 これから先遠ざかり続ける二人が出会うことはなく、 わたしたちは未だ出会わずそして二度と出会うこともない。 だから憂はわたしのことを大嫌いだと言うのだ。 出会った二人の幸福な結末が大好きなら、 出会うことのないふたりに大嫌いは ぴったりじゃないだろうか。 だからわたしも憂のことが大嫌いで、はやく唯先輩に会いたいと思う。 唯先輩とわたしが1つにくっつくとき、 わたしと憂は本当にお別れして、 それではじめて手をつなぐことができて、できない。 遠ざかっていくことで愛し合う二人の女の子。 もっとも遠い瞬間にわたしたちはひとつになる。 それはわたしと憂の仕組んだちょっとした冗談。 誰のためでもないわたしたちのためだけの。 そしてその冗談を実行するために憂は存在していて、 だからあるいは、 憂が存在するためだけにそんな冗談を仕組んだ、 なんてことも言えるかもしれない。 あの夕日が真っ赤なのはそれがものすごい早さで遠ざかっているからではなく、 小さな角度にある太陽が昼間のそれより遠くにあって、 波長の長い赤い光だけがここまでやってくるからで、 けど、夕日は赤いからものすごい早さで遠ざかっているのだ、 そんなふうに言ってしまうこともできるわけで、 わたしと憂の物語はたぶん、そういう種類のほら話だ。 だからわたしは憂のことが嫌いだと言い、 わたしがそう言ったなら 顔を真っ赤にして 照れてる憂の顔は容易に想像できて それはどうしようもなく、 そうだな、 愛おしい、 では絶対になくて ええと なんだろ? おわり 戻る
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なぜか私には、そこがいつもの唯先輩と違う匂いを吸い込んでいることが、近づく前に簡単に悟れた。 純はその匂いが特別なことすら知らないで、ここに寝たのか。 いまさらになって、嫉妬の情念がめらめら炎を吐いた。 そしてその火を、私は知っているという優越感が覆い消し、 なにをくだらないことを考えているんだろうと平静が冷まし、 梓「っ!」 そしてまた、憂への嫉妬が体をぶわっと震わせた。 梓「……」 ふわり。 唯先輩が背中から抱きついて、私はひざまずいた。 やめてくださいって、いつも言っているのに、唯先輩はちっともやめてくれなかった。 それどころかもっと愛しそうに、かわいいかわいい言って私を抱いてきた。 もし、私の言うことをきいて、やめていてくれたら。 私は唯先輩の柔らかい匂いも、声の甘さも、ほおずりの幸福も、 腕の中の居心地さえも本当の意味で知ることはなかったし、愛することもなかったはずなのに。 いくつもいっぺんに教えられて、唯先輩のことがどんどん気になるようになって。 すぐ。ほんとうにあっという間に、唯先輩の全てが愛しくなっていた。 こんな情けない理由で好きにさせるから。 私は素直に、唯先輩に大好きだって言うことができないんだ。 梓「……」 梓「やめてくださいよ……」 言うと、唯先輩はショックを受けたような顔をして、なおも抱きすがってくる。 ……唯先輩のことはすきじゃありません。 心の中で強く、願うように言いつけると、唯先輩の重みが、息をのむ気配とともに消えた。 梓「……ふぅ」 私はバカか。 好きなはずがない。 唯先輩は女の子なのだから、これを恋と呼べるはずがない。 これは尊敬と、親愛と、安心と、あと何かが混ぜこぜになった感情だ。 唯先輩とは、そういう相手に過ぎない。 だから私はのっそり立ち上がって、毛布をぐっと引っ張った。 梓「失礼します……」 どこかにいるような唯先輩の気配に向けて言い、 私は初めてふれる唯先輩の香りに包まれて目を閉じた。 とても心地よい香りは、唯先輩とともに液体になり、ともに溶けていくような夢に誘った。 びしょびしょの体で、唯先輩が私に抱きつく。 私の体の中に唯先輩がしみこみ、私の体は唯先輩に溶かされていく…… 憂「梓ちゃん」 梓「うわっ!?」 唐突に現れた憂に名前を呼ばれ、びくりと体が跳ねた。 反射的に体を起こし、腕があることに驚く。 憂「ご、ごめんね起こしちゃって……」 梓「いや……いいけど、どうしたの?」 憂「ちょっと、純ちゃんがね……」 まさか純、襲ったのか。 完全にただれていた私の頭は、純を私と同じような人間に貶めて、そんなことを考える。 憂「……寝相が、ひどくって。ベッドを追い出されちゃったから、梓ちゃんと一緒に寝ていい?」 そりゃそうだよね。 いくら純でも、レズじゃあない。 梓「別にいいよ。……ほんと純って遠慮ないよね」 憂「純ちゃんはそこがいいところなんだよ。悪いところでもあるにはあるんだけど」 私は憂のほうに枕をずらし、壁ぎわに寄ってまた横たわった。 梓「……まあ私だったら、今日憂の家に泊まるとは言い出せなかったかも」 憂「うん、すごく嬉しかった」 憂は枕を突っ返して、部屋から持ってきたらしいクッションを置くと、そこに頭を乗せて毛布に入る。 顔に乗せられた枕から、唯先輩の使っているシャンプーの匂いがした。 梓「ぷは」 枕をひっくり返して敷きなおすと、私は毛布の位置を調節した。 憂「梓ちゃん、もうちょっと近くに来ないと毛布足らないかも」 梓「そうかな……じゃそっち行くよ」 私は体を起こして、また枕をずらし、おしりを憂のほうに動かした。 ふと、憂の顔を見る。 ポニーテールをほどいた表情は、きょとんと私を見つめ返していた。 憂「どうかした?」 梓「……うーん。何でもない……と思う」 たった今、憂でもいいからこの匂いの中、口付けてしまいたいと思った私は、 よほど最低な欲望にとりつかれて、しかもそれを愛と呼ぼうとしているようだった。 憂「変な梓ちゃん」 梓「そうかも」 笑う憂に笑顔を返して、枕に頭をうずめた。 そして目を閉じると、液体の唯先輩を何度も蹴飛ばして拒絶しながら眠った。 その夜みた夢は覚えていないけれど、とにかくひどく暑くて、起きてすぐシャワーを借りた。 髪をかわかしていると案の定、 純「あこがれの唯先輩のベッドの寝心地はどうだった?」 と純がにやにや聞くものだから、 梓「澪先輩のベッドぐらいには心地よかったよ」 と答えてやったら、本気で信じて悔しがっていた。 憂と純と過ごす丸一日は、かくして始まった。 ごろごろして動かない純と、ぐったりして動かない私に、 憂は当たり前のように朝食を作って出し、にこにこして箸を渡した。 憂はきっと、唯先輩だけを愛しているのではない。 だけど憂は、唯先輩だけを特別に愛しているのは間違いないな。 なんて味噌汁を吸いながらぐちゃぐちゃ思った。 純「ごちそうさま」 早々に純が食べ終えると、ぱしんと手を合わせて頭を下げた。 憂を見てみると、嬉しそうにしながらきゅうりの漬物をかじっているところだった。 それだけの、普通の顔だ。 ごちそうさまと言ったのが唯先輩だったら、憂はきっとなにか言う。 なにか言ったら、唯先輩は負けないくらいの笑顔でなにか返す。 そうなんだろう。 じわりと、食べた朝食が胃で嫉妬に変貌するのを感じる。 私が欲しくてたまらない日常は、いま憂が独占しているのだ。 そこまで考えがいって、思い直す。 私もたいがいではあるにしろ、憂は私が欲しくてたまらない非日常は、決して手に入れられないのだ。 悪い心はおさまってくれて、私はほどほどに冷めたごはんをぱくりと食べた。 純「このあとどうするー?」 退屈そうに純は言った。 憂「んー。どこか遊びにいく?」 梓「どこかと言ってもね……雨の予報出てるから、外はどうかな」 携帯の予報を見ながら答える。 今日はいよいよ、先輩たちみんな夢中になっているみたいで、メールは1通もなかった。 お土産を忘れやしないだろうか。 もちろんそのくらい忘れたって、ちゃんと4人揃って部室に戻ってきてくれたらそれでいいけれど。 憂「じゃあ家で過ごそっか。傘持っていくのもめんどうだしね」 純「だねー。もう一眠りするかあ」 純がソファにのぼって、ばたりと倒れた。 梓「……え、まだ寝るの?」 純に安眠を妨害された憂か、ろくに眠れなかった私が言うならわかるけれど、 豪快に寝ていたはずの純が言うと、なんていうか引く。 純「そりゃあ女子高生がろくにすることない時にやることといえば、昼寝しかないでしょ」 憂「確かにお姉ちゃんもよく昼寝してるけど……」 梓「純、いまは人んちに泊まらせてもらってる立場なんだよ」 純「……じゃあ憂、あそぼっか」 しぶしぶといったご様子で鈴木女史は起き上がりになられた。 憂「なにして遊ぶ?」 純「私にまたがれ」 梓「やめろよ!」 あやうく純にグーパンかますところだった。 憂は憂で、ちょっと照れたような顔しちゃってるし。 キャラは守ろうよ、憂。 純「冗談冗談。んー、考えてみりゃ、家の中で遊べることってないよねー」 梓「あるでしょ、折り紙とかトランプとか」 憂「ごめん、どっちもうちには……え、折り紙?」 純「まあ……あったとしても、トランプでこれから10時間以上潰すのは厳しいっしょ」 梓「……」 折り紙って今はもう遊びにならないんだ……覚えておこう。 それはそれとして。 話はまた振り出しに戻ってしまった。 純「はー。こんなときその辺の萌えアニメだったらツイスターゲームとか出てくるのに」 梓「あれ手足短い私が不利すぎてやだ」 憂「あるけど……ツイスターゲームのボード」 純「いや、ノーサンキューで……」 憂「……じゃあ普通にお茶飲んで、お話しながら過ごそうよ」 純「おっ、いいね。休日ティータイム! 優雅なおぜうの午後……」 梓「純、まだティータイムに変な憧れ持ってるんだ」 純「先輩に変な憧れ持ってる梓に言われたくない」 梓「それむしろあんたでしょ」 頼むから日常会話に織り混ぜてこないで。 憂「……とりあえず、お茶わかしてくるから待っててね? 軽音部と違ってティーパックだけど」 憂はいたたまれなさそうに、とことこ台所に走っていってしまった。 梓「ちょっと……憂怒ってたよ」 純「だってねぇ」 梓「今日……っていうか昨日からだけど、なんか純おかしいよ」 梓「純って、まさかほんとにレズなの?」 純「だったらどうする?」 純のこの意地悪な笑顔が、すごく苦手だ。 梓「べつに、だったらどうとかじゃないけど……」 梓「と、とりあえず自分を棚にあげて人を同性愛者扱いするのやめてよ。唯先輩とは普通に部活の仲間なの」 純「唯先輩が単純にそうは思ってないとしたら?」 梓「え……!」 何を言っているんだろう、純は。 唯先輩が私を好きってこと? なんでそんなこと純が知ってるの? 純「なにキラキラ目輝かせたまま俯いてんの? 仮定の話だよ」 梓「えっ……あっ、へっ!?」 純「もし相手に好かれてるって分かってたら? 私に言うように、やめろ気持ち悪いって言うわけ?」 梓「そ、そこまでは、言えないよ……私に、その、好意をもってくれるなら……ふつーに、嬉しいし」 なにを私はもにょもにょしているのか。 だいたいこんなくだらない仮定の話、どうしてまじめに付き合ったりするんだ。 もしかしたら純のことだし、仮定と言いつつ仮定じゃないかも、なんて可能性に懸けてるの? 純「そんな煮えきらないことを聞いてるんじゃないの。だっから梓ってイライラするんだよなあ」 純「付き合うか付き合わないかだけ聞けたらいいの、私は」 梓「な、なんでそんなこと聞きたいのさっ」 純「だって私も同じだから、梓の気持ちすごくわかるんだもん」 純「だからこそ、きちんと答えを出さないといつまでも辛いままだってわかるんだよ」 梓「……」 同じ、ということは、やっぱり純もレズビアンだったというわけか。 正直、昨日今日で予想はしてたことだけれど、正面切って言われるとなんとも返せない。 純「梓……わかるでしょ。今の自分がすごく辛いの」 純「好きなのかさえわからないことにしてる。だから諦めることも踏み出すこともできないでいるじゃん」 純「そういう思春期のバカによくあるんだよ。ておくれになってようやく、好きだったことに気づくとかさ」 梓「……そう」 私はいつもより低く結んだ髪に触れた。 梓「……でも、好きじゃない」 純「……後悔するとしても?」 梓「好きだって言って、軽音部にいられなくなるほうがずっと後悔するよ」 ため息をつくと、外でざあざあ雨が降りだしていたのに気付いた。 純「……私には、軽音部がその程度で崩れるとは思えないけどな」 純「私も憂も、梓のこと大好きだし、唯先輩も澪先輩も律先輩も紬先輩も」 純「みーんな、梓の性癖なんか関係ないところで、梓のことを好きなんだよ」 純「……うらやましいところだよ? ほんと、軽音部って」 少し泣きそうに純は言った。 梓「でも、ほら。それと、私が唯先輩を好きなのかって話は関係ないし……」 私は確かに、唯先輩を好きなふしはあるのかもしれない。 純がこれだけ言うのだから、外から見てもそうなのだろう。 だけど、だったらなんだっていうんだ。 好きなら、傷つくこと、壊すことのリスクも背負って、告白しないといけないんだろうか。 繊細に築き上げた砂の城を土台から突き崩してまで、この恋は成就させなければならないものなのだろうか。 付き合うって、そんなことが許されるほど尊いことなのだろうか。 純「……梓。あのさ」 純は重たそうに言った。 梓「なに?」 純「梓は一度、唯先輩でオナニーしてみたらいいと思う」 梓「……」 純「たぶん梓がもってる、面倒な倫理観だとか理性だとか全部すっとばして、素直になれると思うよ」 純「梓みたいなバカは、そうでもしないと自分のこと認めたがらなそうだし」 バカみたいだ。 いや、純はまごうことのないバカなんだ。 梓「……そんなことで、ハッキリする?」 だけど、ちょっとばかりやってみたいと思うのは、なぜだろう。 私は前から、そうしてみたいと思っていたのかな。 純「少なくとも、今よりはね」 梓「じゃあ、帰ったら……試す」 純「うん。ガンバ」 純が親指を立てるのを、私は苦笑して眺めた。 3
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唯「ごっ、ごべ……ハナチ、ほんとに、出ちゃった」 梓「……構いませんよ。どうせお風呂場だし、流せばいいだけですから」 唯「れも、あうにゃんの綺麗なお肌が……ハナチなんかれ、汚れちゃった……」 梓「だから、すぐに流せますって。むしろ、ハナチ出すくらい私で興奮してくれたことの方が嬉しいです」 唯先輩の手を握って、まだ洗ってもらっていない場所をなでてもらう。 脇の下、腕、首筋……脚も。 唯「あぅ……あ、あずにゃん?」 梓「ん……ふ……ゆっ、唯、お姉様? ほら、ちゃあんと洗ってくれないと、いつまでも湯船に浸かれないですし」 唯「うっ、うん、わかってる……けど……」 梓「こ、ココは、石鹸が入ると大変ですから……知ってるとは思いますけど……優しく洗ってくださいね」 唯「わ、わかってるよ……すっごく大変だったもん……」 梓「やっぱりしたことあるんですね」 最後に、股間へ唯先輩の手を運ぶ。 緊張で硬直したかのように、唯先輩は私の耳元ではぁはぁと荒い呼吸を繰り返すばかり。 唯「う、うん、優しく、優しぃく……ん、ふぅ……はう、あぁ、あふ……」 梓「んっ……ちょ、ちょっとだけですよ、ちょっとだけ……はい、もういいです」 唯「やん、もう少し触ってたい」 梓「ボディソープを流してからなら……じゃなくて、次は私が唯、お、お姉様の身体を洗ってあげる番です」 ハナチで息が苦しいせいか、唯先輩の全身がくてっと弛緩してる。 大丈夫かな、のぼせたのかな、なんて思いつつ、後ろを向いて唯先輩を抱き締めた。 あったかい、っていうより……熱い。 それに背中で感じるより、まぁ、私は悲しいくらいまな板だけど、胸に唯先輩のおっぱいが当たって……ふよふよのぬるぬるで、とっても気持ちいい。 唯「んっ……あ、あずにゃん……」 梓「はい、座ってください。私はエッチぃ真似しませんから、期待しないで、洗ってる間にハナチを止めちゃってくださいね」 唯「うん……ごべんね」 謝らなくていいです。 唯お姉様、なんて勢いで私が言ったせいで、唯先輩がハナチを出してしまうなんて思ってもみなかったから。 梓「とりあえずスポンジでいいですよね、そうします。私の洗濯板で唯……お姉様と同じことしたって、気持ちよくなさそうですし」 唯「ふわ……あずにゃんが、私のこと……唯お姉様、唯お姉様って……夢……そう、これは夢……」 お風呂場でエッチに雪崩れ込んじゃうのは、色々と危ない。 滑って転んだり、のぼせたり、風邪を引いたり。 だから私は、愛用のスポンジにボディソープを染み込ませて、念入りに泡立てる。 梓「ゆ、唯お姉様……えと、ハナチを止めるには鼻の下を指で押さえるといい、ってテレビでエゲレスのサバイバルマスターが言ってましたよ」 唯「うん……鼻の下……伸びまくってるけど、どの辺を押さえたらいいのかなぁ……?」 ぼんやりとしつつも、唯先輩は私が言った通り、鼻の下に指を当てる。 よし、今のうちに……。 梓「んしょ、んしょ……」 軽く、優しく、手早く。 唯先輩が痛がっていないか確かめつつ、綺麗な肌を傷付けないよう丁寧に、のぼせて余計にハナチが出ないように急いで。 唯「はふぅ……こりはこりで、人様の前で言えるような気持ちよさだね、あずにゃん」 梓「そうですか。ん、しょ、んしょ……唯せ……唯お姉様、こっちの脚で最後です。少し上げてください」 唯「ちょっとだけよー」 ふざける余裕があるなら大丈夫、か。 足の先から膝の裏も丁寧にスポンジでこすって、とりあえず完了……かな。 梓「シャワー出しますよ」 唯「あん、あずにゃん。一番大事なところがまだだよ」 梓「…………」 いえ、わかってますけど。 意識的に避けていたんですけど。 やっぱり洗わなきゃいけませんよね、そうですよね。 唯「スポンジもいいけど、あずにゃんの指で、ちょこっとだけエッチくお股こすこすして欲しいなあ~?」 梓「……えいっ」 唯「んぁんっ!?」 スポンジ一閃、腰を浮かせて淫らに微笑む唯先輩の股間を洗って、今度こそ完了。 唯「ううっ、あずにゃんってば、しどい……私はあんなに可愛がってあげたのに……」 梓「ハナチは止まったみたいですね、よかったです」 唯「あ、本当だ……すごいね、あずにゃん!」 シャワーの温度を確かめた後、自分と唯先輩、交互に泡を流す。 湯船に浸かったわけでもないのに、お互いに、見てわかるくらい赤く肌を火照らせてる。 梓「……ま、また、明日……明日は、私が先に、ゆっ、唯お姉様、の身体を……洗いますね」 唯「ぷふっ!?」 梓「……鼻の下を押さえてください」 唯「あい……」 両手で口と鼻を覆うように、背中を丸める唯先輩。 またハナチを出してしまったんだろう。 それにしても……『唯お姉様』って呼ばれると、そんなに興奮して、嬉しいものなのかなあ? ベッドの上では、呼ばない方がいいかもしれない。まぁ、その……昂ぶった状態なら、呼んじゃうかもわからいけど。 唯「ふーっ、ふー……ふう……ふはー」 梓「ふーんふん、ふふーん♪」 汗でぺとぺとしながら抱き合っても気持ちいいし、あわあわで抱き締められても気持ちいいし、お湯で流した卵肌の手触りもいいなんて、唯先輩ってば性能よすぎ。 それに比べて、私なんて……ぺったんこだし、あわあわだったら少しは誤魔化せるだろうけど、こんなにちゅるんとしてないし。 唯「ふあー、さっぱりさっぱり♪ ありがとー、あずにゃん♪」 梓「い、いえ……お粗末様でした」 唯「シャワー貸して、あずにゃん。背中は私が流してあげるよ」 渡すというより、引ったくられた。 唯先輩は口元のハナチの跡を洗ってから、私の背すじにシャワーのお湯を当てる。 唯「やっぱり……いいなあ、あずにゃん。お肌すべすべで、羨ましいよ」 梓「は、はいっ? そんな、私なんかより唯せん……お、お姉様の方が、ずっとすべすべぷるんって感じですしっ」 どうして、触ればすぐわかるハズなのに、そんなこと言うんですか。 謙遜してるつもりでも、私、何だか情けなくなってきちゃいますよぉ……。 唯「ねえ、あずにゃん。もしかして、自分のお肌は綺麗じゃない、とか考えてる?」 梓「え? えと……は、はい……」 唯「私ね、さっき……エッチしてる時に思ったんだ。相手は、自分が思ってる通りに感じてくれない、って」 梓「…………」 唯「私は、あずにゃんのお肌、とっても綺麗で、私よりすべすべで、羨ましいと思ってるよ? でも、あずにゃんは逆のこと考えてるよね?」 梓「はい……」 唯「こんなにちゅるちゅるの、赤ちゃんみたいなお肌なのになぁ~?」 シャワーを当てながら、つうっと背すじをなぞられる。 思わず固まっちゃって、喉から可愛くない声が漏れちゃった。 梓「ひゃっ!?」 唯「んふふ。あずにゃんは、やっぱり可愛いなぁ」 背すじから腰、お尻。ついついついーって、私をくすぐるように指を這わせてくる。 梓「ん、あ、あっ、あああ」 唯「あのね、あずにゃん。感じ方は人それぞれだよ? だから、もしあずにゃんが、私の肌の方が綺麗だと思ってても……」 唯「私は、私よりあずにゃんのお肌の方が綺麗だな、って……思ってる、よ?」 ボディソープを流し終えて、唯先輩がシャワーを壁にかける。 そして、また後ろから私を優しく抱き締めてきた。 梓「んっ……」 唯「あずにゃんは、とっても可愛いよ。髪だってつやつやだし、お肌もすべすべだよ」 梓「そんな……」 唯「だから、自信持っていいんだよ。私は可愛いんだって、あずにゃんはそう思って自慢していいくらいに素敵だから」 梓「ゆ……ゆぃせんぱあい……」 唯「こら」 梓「ふぇ?」 唯「お、お姉様、でしょ?」 ふんす、っていう鼻息。 隠してるつもりなんだろうけど、すっごく期待して、興奮してる唯先輩。 梓「……折角さっぱりしたのに、またハナチ出されたら大変なので、あったまって上がりましょうか」 唯「……ううん、あずにゃんのいけずぅ~」 梓「でも、このまま一緒に入りましょうか。唯先輩のおっぱい、ふよふよって背中に当たって気持ちいいですから」 唯「う、うんっ」 きゅ、と唯先輩の腕の力が、少しだけ強まった気がした。 でも、そのまま一向に動く気配がなかったから、仕方なく背負うようにして湯船に入る。 おっぱいが、私にはないしっかり揉めるような膨らみが、背中に押し付けられて強く潰れてるせいで、気もそぞろだったけど。 かっぽーん。 唯「あふぅ~……お風呂はいいよねぇ。リリスの産み出し」 梓「リリンでしたっけ」 唯「ちゃんと『文化の極みだよ』まで言わせてよ!」 梓「じゃあ、こんな抱っこされてるみたいな恥ずかしい格好から解放してください」 唯「このまま入ろうって言ったのは、あずにゃんだよ~」 梓「……ぶくぶく」 うん、別に唯先輩から離れたいわけじゃないよ。 相変わらずおっぱいが柔らかく背中にぷにょぷにょ当たってて気持ちいいし、でも、それが逆に私のコンプレックスを刺激するっていうか。 唯「あー……髪が長いと、こんな風になるんだねぇ」 梓「知らない人が見たら心霊現象ですよね」 唯「私もびっくりしたけど……ぶわって、うん、考えてみたら当たり前だよね。髪って水に浮くんだもんね」 梓「温泉とかで髪の長い人を見かけても驚かないでくださいね」 あー。 何だか、独りで入る時よりあったかいっていうか……すっごく充実してる感じ。 後ろから抱っこされてて、ほっとする。自分以外の体温って、こんなに安心するんだ……。 唯「あずにゃん」 梓「はい?」 唯「お風呂って気持ちーね」 梓「はい」 お風呂はぬるめの追い炊き。ずっと入ってても、冷めることはない。 だけど、芯まであったまる前に、唯先輩のせいでのぼせちゃいそうですよ。 唯「あずにゃん、ほら」 梓「はい?」 唯「おならー」 丸めたタオルを湯船に沈めて、ぶくぶくぶく。 何て子供っぽい、っていうか今時の子供は、こんなことしません。 梓「タオルを湯船に入れるのはマナー違反ですよ」 唯「ご、ごめんね」 後ろの方で、しゅんとうなだれた気配が伝わってくる。 私のひと言で。ほんの軽い気持ちで放った言葉で、唯先輩は傷付くんだ。 ……ううん、私もきっと、唯先輩の軽い気持ちの言葉で傷付いちゃう。 梓「怒ってませんよ」 唯「ほんと?」 梓「はい。唯先輩に優しく抱っこされて、今とっても幸せな気分ですから、私」 唯「あは……よ、よかった♪ 私も、あずにゃんをだきだきして、しかも裸で、お肌がこすれて気持ちいいよ!」 梓「欲情していると言った覚えはないです」 唯「はうっ」 また、うなだれる。 けど、欲情したくなる気分もわからないでもない、から。 梓「え、えと……ハナチ出さないって約束してくれますか?」 唯「うん……頑張る」 梓「ゆ、唯お姉様っ……背中、おっぱいぷにぷにで、実はかなり気持ちよくって……私、興奮、してます」 唯「ふっ……う、ん、だ、だいじょぶ。まだハナチ噴かないよ」 『まだ』? じゃあ、この先を言うのは控えた方がいいのかな? 梓「……その、恥ずかしいんですけど……折角お風呂入ったんですけど……え、えと、ですね……」 唯「うんうん、お風呂入ったけど、何?」 ぽたぽた、ぼたり。 梓「…………」 唯「あふ……こ、これはハナチじゃないよ! 心のエッチなおつゆだよ!」 梓「鼻の下押さえてください。あと鼻にティッシュ詰めた人とはエッチしたくないんですけど」 唯「ふぷ、ん……な、なるほど。つまりあずにゃんは、お風呂を上がってからまた一戦交えたいわけだね!?」 梓「シーツがハナチで血まみれになるとか、そんな惨状は御免ですからやっぱりいいです」 唯「のっ、のぼせてるから! お風呂でのぼせてるからだよ! その証拠に、さっきは全然ハナチ出さなかったじゃん!」 ああ……そういえば、確かに。 お互いに思いの丈を募らせて、無事に成就して、でもハナチは出さなかったですね。 ……じゃあ、お風呂? 唯先輩の言う通り、お風呂でのぼせなければ平気なのかな? 梓「唯先輩」 唯「なぁに?」 梓「ちょ、ちょっとだけ、首を前に傾けてくださいです」 膝を抱えるようにしていた腕をお湯から出して、唯先輩の頭の後ろに添える。 くっ、と少しだけ力を込めると、唯先輩はそのまま素直に、私の顔の真横まで口元を動かしてきた。 唯「ど、どおしたの、あずにゃん?」 梓「そ、そのですね……」 えい。もう、どうにでもなあれ。 唯「ちゅ……んふ、んんっ、んむ……はぷ」 梓「んちゅ、ちゅ……ちゅっ、ちゅちゅ、くちゅ……」 はあ、と息をつきながら唇を離すと、唾液が透明な糸を引いて、まだ私と唯先輩とを繋いでいる。 いやらしい、とってもいやらしい。感触も、音も、行為自体も。 唯「は、う、あぅ……あずにゃん……」 梓「ね、眠れそうにありません。このままじゃ私、身体が火照って、今夜は眠れないですっ」 唯「……うん。もっかいエッチしようね、あずにゃん」 梓「はい……唯先輩。エッチで一緒に気持ちよくなって、その……ぎゅって抱き締められたまま、眠りたいです……」 唯「いいよ、あずにゃん。ほんとは今すぐエッチなことしたいけど、我慢するよ。ハナチでお風呂を真っ赤にしたら本気で嫌われそうだし」 梓「それはさすがに引きますね、嫌いにはなりませんけど」 唯「あ、あはは……我慢しててよかったよ」 ぷにぷに、ぎゅう。 唯先輩の身体の感触が、とっても心地いい。 けど……うん。もう一回エッチするって、して欲しいって、私からおねだりしちゃった。 やらしい子だって思われたかな、って思ったけど、唯先輩は嬉しそうに応えてくれた。 ……うん、うん。 頑張ってエッチしよう。唯先輩を気持ちよくしてあげて、私はついででいいから、一緒に気持ちよくなって……一緒にイけたらいいな。 梓「唯先輩」 唯「ぅん?」 梓「やっぱり、『唯お姉様』って呼ばれた方が嬉しいんですか?」 唯「ぷふぅっ!?」 ぼたぼたり。 梓「…………」 唯「あの、ちょ……心の準備が出来てない時に、いきなり呼ばれるとね、あのね、嬉しいんだけど、このハナチは違うんだよあずにゃんっ」 ……お風呂の外では、唯先輩、って呼ぶことにしよう。 お風呂限定ということにしておけば、私も間違えて口走ったりしないだろうし。 唯「あずにゃん、お願いだから誤解しないでっ」 梓「……ちゅ」 唯「ふわぁ!?」 唯先輩の鼻の頭の辺りを、ちろり。 口の中に、しょっぱくて、鉄臭い味が広がる。 美味し……くはない、けど、これも唯先輩の味。 梓「貧血にならないでくださいね。私も興奮してますし、それは仕方ないと思いますけど……でも、唯先輩が倒れたりしたら、マジ泣きしますよ?」 唯「う、うん……気を付けるよ、あずにゃん」 梓「じゃ、じゃあ、そろそろ上がりましょうか? アイスは買い置きありますし、お互いにちょっと頭を冷やしてから布団に入りましょうっ」 唯「はわ……あ……うん……」 ざぱぁ、とゆっくり立ち上がって、唯先輩の手を取る。 あの感触は名残惜しいけど。でも、もっと気持ちいいことが待っているから。 梓「さ、早く身体を拭かないと、風邪引いてエッチどころじゃなくなりますよ、唯先輩っ!」 唯「そぉ、だね……うん、早く上がろ、あずにゃん……」 唯先輩は、ぼんやりと瞳を彷徨わせていて、すっかりのぼせちゃったみたい。 梓「唯先輩?」 唯「あずにゃんと、こんなコト……そんなコト……えへへへへ……♪」 梓「…………」 何でか、正気がどっかにお出かけしちゃってるっぽい。 仕方ないから、脱衣場に連れていって、丁寧に全身の水滴を拭いてあげた。 ~お風呂上がりまーす!~ 7
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唯「ぶっかつー、ぶっかつー♪」 ガチャ 唯「おいっーす!」 梓「あ、唯先輩!こんにちは♪」 唯「お、あずにゃん!今日は何だかご機嫌だねー」 梓「え、そうですかぁ?そんな事無いですよ」 唯「うーん、そうかな?ちょっといつもよりテンション高いような……」 梓「それは当然ですよ。だって大好きな唯先輩と会えたんですから」 唯「…………」 唯「え、ええええーーーー!!!!???」 唯「ちょ、あずにゃん……い、今なんて……?」 梓「もう……何度も言わせないでくださいよぉ。大好きな唯先輩……」 唯「ふぉぉぉぉぉおおおおーーーーーー!!!!」 唯「あ、あずあずあずあずにゃーーーん!!!」ダキッ 唯「あずにゃーん!!私も大好きだよーー!!!」 梓「にゃっ!!もう唯先輩ったら……」 唯「あずにゃーん♪」ナデナデ 梓「ゆいせんぱーい♪」スリスリ 梓?「ふん、何やってるんだか。馬鹿みたい」 唯「へ……?」 梓?「何よ?何か文句あるの?」 梓?「別にぃ?ただ自分と同じ顔が鼻の下伸ばして、だらしない顔をしてるのを見たくないだけ」 唯「え?ちょ、ちょっと待って……あ、あずにゃんが二人……どういう事?」 梓?「ふんだ。そんな事言って私が唯先輩イチャイチャしてるのが羨ましいんでしょ?」 梓?「はぁ?バッカみたい。そんな締りの無い顔した人になんて興味ないわよ」 梓?「なっ!私の悪口ならともかく唯先輩の悪口は許さないんだから!」 梓?「許さなかったらどうするっていうのよ?」 梓?「うっ……そ、それは……」 梓?「ふん。結局口だけなんだから……」 梓?「な、何をぅ……」 唯「ちょ……とりあえず二人とも落ち着いて!」 梓?「ご、ごめんなさい唯先輩……」シュン 梓?「ふん」 唯「え、ええっと。とりあえずこれはどういう事なのかな? 何であずにゃんが二人いるの?」 梓?「あ、そっちの方は偽者ですので、お構いなく」 梓?「ちょっと何勝手なこと言ってるのよ!偽者はそっちでしょ!」 唯「も、もう訳が分らないよぉ」 ガチャ 律「ういーっす。唯、梓遅くなってわる……」 律「…………」 澪「どうした律、いきなり固まっ……」 澪「…………」 紬「澪ちゃんまで一体どうしたの?」 梓?「ゆーい先輩♪」 梓?「ふん!」 唯「はわわわ……」 紬「…………」 律「ええと、つまりなんだ?唯が部室に来た時には梓が既に二人に分裂していて……」 澪「しかもお互いがお互いを偽者呼ばわりしてるって訳か」 唯「うん……」 紬「そして一方の梓ちゃんは唯ちゃんに対してデレデレでもう一方はツンツンと……」 唯「そういう事みたい……」 デレ梓「はい、唯先輩あーん♪」 唯「あ、あーん……」 デレ梓「美味しいですか?」 唯「う、うん……」 デレ梓「えへへ」 ツン梓「…………」 ツン梓「あ、手が滑った」ガチャーン 唯「あっ、あっつーい!!!」 デレ梓「ちょっと唯先輩に何てことするのよ!」 ツン梓「うるさいなぁ。手が滑ったって言ってるでしょ」 デレ梓「嘘!絶対わざとでしょ!唯先輩に謝って!」 唯「あ、あずにゃん私は大丈夫だから……」 デレ梓「唯先輩が良くても私の気がすみません!」 律「…………」 澪「…………」 紬「…………」 ガチャ 憂「あのー、すいません。お姉ちゃんいますかー?」 唯「あ、憂どうしたのー」 憂「うん、今晩のおかず何がいいかなって思って……って梓ちゃんが二人いる!?」 唯「え、あー、これはその……ね」 憂「そう……梓ちゃんもとうとうその境地にたどり着いたのね……」 律「なっ!?憂ちゃんその口ぶりからすると梓に起きた異変について何か知ってるのか!?」 憂「はい……心当たりはあります」 澪「……そんな馬鹿な」 紬「憂ちゃん、よかったらそれ教えてくれない?」 憂「分かりました……」 憂「あれは私が中学一年生の頃、幼い頃から両親が不在がちだった平沢家では、当時から私が全ての家事とお姉ちゃんの世話を受け持っていました」 律「最低な姉だな」 唯「い、いやぁ……」 憂「そして毎日家事に追われる私の片隅には邪悪な心が芽生えてしまいました。 なぜ私がこんな事をしなければならないのだろう、私だって自由な時間が欲しいと……愚かにもそんな事を考えるようになっていました」 澪「むしろ真っ当だと思うけど……」 憂「私はお姉ちゃんに反抗心を抱いた自分を憎みました。 憎んで憎んで憎み続けた結果、ある日お姉ちゃんへの反抗心をもった憂と、お姉ちゃんをこよなく愛する私に分裂したんです。 言うまでも無い事ですが私はお姉ちゃんへの愛に満ち溢れた方の平沢憂。 今ではお姉ちゃんへ奉仕する事に一片の疑問も感じていません!」 唯「へぇ、そんなことがあったんだ。全然知らなかったー あれ?なんで、律ちゃん泣いてるの?」 律「うるせぇ……」 澪「ところで、その悪い(?)方の憂ちゃんはどうしたんだ」 憂「ああ、電子ジャーの中に封印して家の物置の中に置いてありますよ」 憂「…………」 紬「つまり、梓ちゃんも唯ちゃん大好きな梓ちゃんと素直になれない梓ちゃんの心が分裂してしまったという事かしら?」 憂「多分そういう事だと思います」 デレ梓「要するに、こっちのほうの私を封印しちゃえばいいって言うわけだね!!憂」 ツン梓「なっ……」 憂「その通りだよ、梓ちゃん」にっこり ツン梓「ちょ、勝手に決めないでよっ!」 デレ梓「うるさい、唯先輩に逆らうあなたに存在価値なんてないんだからさっさと封印されちゃいなよ」 憂「覚悟してね、梓ちゃん」 ツン梓「ひ、ひいぃ……」 唯「だ、駄目だよ!!」 唯「デレデレでもツンツンでもあずにゃんはあずにゃんだもん!」 ツン梓「唯先輩……」 唯「っていうか、二人とも極端すぎるよ。私は元のあずにゃんに戻って欲しいな……」 律「まぁ、そうだな。どっちが残ったとしても部としては難ありだからなー」 紬「憂ちゃん、何か元に戻るための方法は無いの」 憂「はぁ、一応元々一心同体だったのでその気になれば簡単に元に戻れますが…… あくまで本人達にその気があればですが……」 デレ梓「ふん、二度と元に戻る気なんてないから 大体あんたのせいでいつもいつも愛しの唯先輩に素直になれなかったんだからね!?」 ツン梓「私こそ、あんたなんか願い下げだよ!」 律「こりゃ、無理そうだな……」 唯「諦めちゃ駄目だよ、なんとか私が説得してみるから!」 唯「という訳で、あずにゃん達、今日は家に泊まりんしゃい」 デレ梓「え?いいんですか!?唯先輩」 唯「もちろんだよー」 デレ梓「やったー!!唯先輩とお泊りー!」 ツン梓「勝手にやってて下さい。私は自分の家に帰らせてもらいますので」 唯「駄目だよ、ツンにゃんも一緒に来なきゃ意味ないでしょ」 ツン梓「しつこいですね。放っておいて……」 憂「梓ちゃん?言う事聞かないとどうなるか分ってるよね……?」ニコニコ ツン梓「うう……」 平沢家 唯「あずにゃん、お風呂入ろう!」 デレ梓「はい、喜んで!」 デレ梓(にゃふふ、やった!唯先輩の裸が拝める!!あ、やば鼻血出そう……) 憂「駄目だよ、お姉ちゃん。一人で入ってきなさい」 デレ梓「え……」 唯「ええー、何でー」 憂「どうしても」 唯「ぶー……」 憂「梓ちゃん……?」 デレ梓「はっ……はい!!」 憂「お姉ちゃんを愛していれば何やっても許されるって訳じゃ……無いからね?」 デレ梓「ハイ……」 ツン梓「あーあ、やだやだ。煩悩丸出しで恥ずかしくないのかしら。みっともなーい」 デレ梓「う、うるさいっ!!」 ―――― 唯「それじゃ、あずにゃんお休みー」 デレ梓「お、おやすみなさい……」 デレ梓(結局憂に邪魔されて何の進展も無かった……寝る部屋すら違うし……) デレ梓(だけどこれくらいで諦める私かと思ったら大間違いだよ!) ガチャ デレ梓「失礼しまーす……」 唯「スー……スー……」 デレ梓「ふふ……よく寝ていらっしゃる……」 デレ梓「それじゃいただきまーす!」 バッ ツン梓「…………」 デレ梓「…………」 デレ梓「ちょ、ちょっと……何唯先輩のベッドに潜り込んでるのよ、あなた!」 ツン梓「べっ、別に……これは……」 デレ梓「ははーん、分かった。素直になれない部分が具現化したとはいえ私は私だもんね~? 唯先輩が大好きなことには変わりないか~」 ツン梓「なっ……そんな事!」 デレ梓「じゃあ、この状況でどう言い逃れするつもり?」 ツン梓「うっ……うう……」 唯「うっ……ううん……」 デレ梓「あっ、唯先輩!!すいません、起こしちゃいましたか?」 唯「あ、あれ?あずにゃん達どうしてここに……?」 デレ梓「ごめんなさい、どうしても寝る前に唯先輩の顔をもう一度見ておきたくて……駄目でしたか?」 唯「あ、あずにゃーん!可愛いー!!全然駄目なんかじゃないよー。むしろ、もうこのまま一緒に寝ちゃおう!!」ギュウ デレ梓「にゃっ!!」 ツン梓「むぅ……」 唯「あれ、そういえばツンにゃんはどうしてここに?」 ツン梓「うっ……」 唯「まぁ、いいや、ツンにゃんも一緒に寝よ?」 ツン梓「だっ、誰が!」ぱしっ 唯「痛っ!もう、どうしてぶつのー?」 ツン梓「うるさいです!唯先輩のバカバカバカ!!!」 デレ梓「ちょっと!唯先輩に乱暴しないでよ!!」 ツン梓「何よ!あんたなんていい子ぶりっ子なんてしちゃってさ!本性は汚らわしい獣のくせに!!」 デレ梓「ふんだ!悔しかったらあんたも唯先輩に甘えてみればいいじゃない」 ツン梓「それが出来たら苦労はしないのよ!!」 デレ梓「だったら唯先輩に関わらないでよ!!」 ツン梓「い、言わせておけばー」ボカッ デレ梓「イタッ!!やったわね、この!」バシッ 唯「ちょ、ちょっと二人とも取っ組み合いの喧嘩なんてやめてよー!」 ドンッ! ドカッ! 唯「きゃっ!」 ツン&デレ梓「!!」 唯「いったー……」 デレ梓「ゆ、唯先輩、大丈夫ですか!?」 ツン梓「わ、私は悪くないからね?」 デレ梓「何言ってるの!元はといえばあんたが……」 憂「二人ともお姉ちゃんの部屋で何やってるの?」 ツン&デレ梓「!?」 憂「お姉ちゃんを傷つけるなんて二人とも一体どういうつもりなのかな……?」 ツン梓「ち、違うの!憂、これは出来心というか、何かの間違いというか……」 憂「でも、お姉ちゃんを傷つけたのは事実だよね」 デレ梓「う、憂。私は許してくれるよね?悪いのは全部こっちの方だから!」 ツン梓「ちょ、私を売るつもり?」 憂「関係ないよ、言ったでしょ。お姉ちゃんを愛していようが嫌っていようがお姉ちゃんを傷つけるのは私、絶対に許さないから」 デレ梓「や、やばいよ!憂のあの目、本気だ!」 ツン梓「かくなるうえは、不本意だけど……」 デレ&ツン梓「合体だね!!」 憂「いいから元に戻るんなら早くしなさい!!」 デレ&ツン梓「はっ、はいぃ!!」 梓「ううん……あれ、ここは?」 唯「あずにゃん、おはよう」 梓「ひゃあ!ゆ、唯先輩!?どうしてここに?ってあれ、ここは唯先輩の部屋?」 唯「あずにゃん、覚えてないのー?」 梓「何のことですか?」 唯「本当に全く全然?」 梓「はぁ……本当に何が何やら……」 唯「ふーん……。ま、いっかー」 梓「な、何ですか、唯先輩ニヤニヤして……」 唯「何でもないよん」 梓「ちょ、ちょっと唯先輩教えてくださいよー!」 憂「梓ちゃん、おはよう」 梓「あ、憂。ねぇ、何で私こんなところにいるの?唯先輩に聞いても教えてくれないし……」 憂「自分の胸に聞いてみればいいんじゃないかな?」 梓「へ……?」 憂「それにしても梓ちゃんは本当にお姉ちゃんのことが大好きなんだね」 梓「はあぁ!?」 憂「それはいいんだけど、くれぐれも変な気は起こさないようにね」ニコ 梓「はっ、はい!!」 梓(な、なんだろう……憂の笑顔が妙に怖い……) おしまい 戻る
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唯「今日はあずにゃんの部屋だね」 梓「待ってます…唯先輩」 唯「うん」 唯「あずにゃん、来たよ」 梓「唯先輩、わ、私…」 唯「もうあずにゃんったら」チュウ 梓「んあっ…そ、そこ…」 梓「今日は唯先輩の部屋に行きますね」 唯「待ってるよ、あずにゃん」 梓「はい」 梓「来ましたよ、唯先輩」 唯「おいでー」 梓「いきなりですか?」 唯「だって私もあずにゃんが来る事を考えてたら…//」 梓「唯先輩もそういう事を考えちゃうんですね」 唯「あずにゃん、は、早く…」 梓「はいはい」チュウ 唯「あ、あずにゃん…そ、それぇ…あぁん」 寮長「あなた達、何を考えてるの!」 寮長「1日事に部屋を抜け出して相手の部屋に行くなんて!」 唯「だってあずにゃんがそこにいるんだもん」 唯「大好きなあずにゃんがそこにいるから一緒にいたいんだよ」 梓「そうですよ」 梓「好きな人と一緒にいれないなんておかしいです」 寮長「100歩譲って会いに行くのはいいとします」 唯「ほんと!?」 寮長「しかし」 寮長「毎晩、ひ、卑猥な声をあげるとはどういう事ですか!」 寮長「両隣の部屋を始め苦情がたくさんきてます」 唯「卑猥な声?」 唯「そんなの出してないよ。あずにゃんは?」 梓「私も出してませんよ」 寮長「しかし苦情が!」 梓「ああ、きっとあれですよ」 梓「私と唯先輩の愛の声ですね」 唯「それだよ!愛の声」 寮長「愛の声…?」 梓「私と唯先輩が愛をはぐくんでるとつい出ちゃう声の事です」 唯「この前のあずにゃんは凄い声だったよね」 梓「唯先輩だってあんなに私の事をあんな声で呼んでたじゃないですか」 唯「だってそれはあずにゃんが…//」 梓「でもあの声…私、好きですよ//」 唯「あずにゃん…」 梓「唯先輩…」 唯「今夜もね//」 梓「はい//」 寮長「そ、それを卑猥な声って言うんだ!!」 寮長「だいたい人前で何、今夜の約束をしてるんだ!!」 唯「ひ、ひぇー」 梓「同室の特別許可が出て良かったですね」 唯「うん、あずにゃんと一緒に暮らせるなんて嬉しいよ」 梓「私もです」 梓「しかもこの部屋は防音になってるそうです」 唯「じゃあ、あずにゃんさっそく…しちゃう?」 梓「はい//」 終わり 寮長は以外に優しい -- (あずにゃんラブ) 2013-01-08 03 02 58 寮長がレールガンの寮長さんで脳内補完されたが中身は正反対だった -- (名無しさん) 2013-07-28 00 46 45 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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それは部活を終えて、二人きりで帰り支度をしていた時のこと 唯「ねぇ、あずにゃん」 梓「なんですか?唯先輩」 唯「あずにゃんって、私のことホントに好き?」 なにを聞くかと思えば…私は半ば呆れて答える。 梓「なに言ってるんですか?好きに決まってるじゃないですか」 唯「……」 唯先輩はなにも言わずに、私をぎゅっと抱きしめた。 その体を抱きしめ返してあげると、唯先輩はふてくされたような口調で話し始めた。 唯「じゃあどうして、私のこと唯って呼んでくれないの?」 梓「それは…一応先輩ですし」 唯「あとその敬語も。なんかよそよそしいよ」 梓「えっと…それは…」 唯「ホントは私のこと、そこまで好きじゃないんでしょ」 唯「唯先輩…」 なんとなく、唯先輩の意図が見えてきた。 多分先輩は、一つ前に進みたいんだと思う。付き合い始めてから結構経ったし、ここで何かを変えたいって思ってるんだろうな。 でも具体的にどうしていいかわからないから、拗ねてみたりしてる…まったく、子供みたいなんだから。 私は右手を唯先輩の頭にポンと乗せてから、優しく語りかけた。 梓「大丈夫だよ、唯」 唯「あ…」 梓「私は唯のこと大好きだよ。だから唯がしてほしいことならなんでもしてあげる。…だから、機嫌直して?」 唯「…うん。わかった」 優しく頭を撫でてあげると、唯先輩はあっさりと頷いた。なんというか、単純だな…そこがかわいいところでもあるんだけど。 梓「ありがと。じゃあ、唯も私のお願い聞いてくれる?」 唯「なあに?なんでも言って?」 梓「今だけでいいから、私のこと梓って呼んで?それから、好きって言って?」 唯「なんだか、欲張りじゃない?」 梓「別にいいでしょ?さ、早く早く」 唯「あ…梓、大好きだよ。これでい…あっ…」 私は素早く唯先輩の唇をふさいだ。その唇はやわらかくて、とても甘かった。 唯「も、もう…不意打ちなんてずるいよ」 梓「いいのっ!ていうか唯、さっき食べたチョコケーキの味がするよ?」 唯「そうかなぁ?…じゃあ梓、きれいにして?」 梓「んもう、唯こそ欲張りなんじゃない?」 唯「えへへ…そうかも」 梓「…唯」 唯「ん?」 梓「大好きだよ」 唯「…うん、ありがとう」 私は唯先輩を強く抱きしめて、この日二回目のキスをした。 終わり かわいい gj -- (名無しさん) 2010-08-23 23 26 29 たまらない/// -- (あずにゃんラブ) 2013-12-31 03 04 08 いいね♪ -- (名無しさん) 2014-02-19 21 57 44 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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梓「そー言えば純?」 純「ん?どーしたの?」 梓「純ってさ澪先輩好きだよね」 純「うん、好き……って言うか憧れる」 憂「澪さんカッコイイもんね~」 純「そうそう。あのキリっとした目とかかっこいー!よね」 梓「うん、カッコイイよね。ベースも上手いし」 純「そこも憧れるよね~」 憂「純ちゃんお姉ちゃんの事はどう思う?」 純「憂のお姉ちゃんは可愛いかな~」 憂「えへへ~そうだよね~」 梓「ちなみに唯先輩の何処が可愛いって思ったの?」 純「う~ん。あのほんわかしたオーラとかかなぁ?憂は分かるよね?」 憂「分かるよ~」 梓「私も分かるよ!」 憂「ギターも上手いもんね!」 純「ギター弾いてる時の憂のお姉ちゃんはカッコイイかも……」 憂「ありがと~」 梓「あ!じゃあムギ先輩は?」 純「琴吹先輩か~……」 梓「美人だし優しいよね」 憂「そうだよね~」 純「琴吹先輩って少し怖い……かな?」 梓「え!怖いの?」 純「うん……」 憂「紬さんの何処が怖いの?」 純「う~ん。何か怖い体も大きいし……」 憂「確かに背が高いよね~」 梓「背が高いだけで怖いの?」 純「琴吹先輩ってお嬢様なんでしょ?近寄りがたいってのも少しあるかなぁ」 梓「そうかなぁ?意外と親しみ易いけど……」 純「それにほら、何だか外国の人みたいだよね」 憂「金髪だもんね~」 純「うん……琴吹先輩って少し怖い」 梓「いい人なんだけどなぁ~」 純「いい人ってのは分かるよ?でも、私が一年の時だけどびっくりした事があってさ……」 憂「びっくりした事?」 純「学園祭の時にね琴吹先輩が何食わぬ顔で重たそうな機材を運んだりしててさ……」 梓「ムギ先輩力持ちだからね」 純「やっぱり力持ちなんだ。汗もかかずに何往復もしてたよ」 憂「あ、それお姉ちゃんも言ってたよ!ムギちゃんは力持ちなんだよ~って」 純「そうなんだ。しゃらんらしゃらんらって歌いながら運んでたよ」 梓「ムギ先輩よくそれ歌ってるよね」 純「そうなの?私分かんない」 憂「お姉ちゃんは紬さんの事が大好きみたいだよ~」 純「憂のお姉ちゃんは琴吹先輩の事なんて言ってるの?」 憂「可愛いとか!ムギちゃんが作る紅茶は美味しいんだよ~う~い~って毎日のように言ってるよ」 梓「言ってる姿が目に浮かぶ……」 純「あ、でも体験入部した時の琴吹先輩の紅茶は美味しかったよ」 憂「確かに紬さんの紅茶は美味しいよね~お姉ちゃんも美味しい美味しいって言ってるよ!」 梓「憂、さっきから唯先輩の事ばかりだねー」 純「まぁ憂らしいけどね~」 憂「えへへ~」 純「あ、私そろそろジャズ研行かなきゃ」 梓「私もそろそろ軽音部に……」 憂「二人共バイバイ~」 純「あ、うん。憂は帰るの?」 憂「うん!ご飯の支度しなきゃいけないから」 純「大変だね~」 梓「唯先輩は手伝ったりしてるの?」 憂「してるよ~」 憂「昨日もクラムチャウダーを一緒に作ったんだぁ~」 梓「美味しかった?」 憂「うん!とっても美味しかったよ~」 純「私も食べたいなぁ~今日お母さんに頼んでみよっかなぁ」 梓「私は今日はカレーが食べたいなぁ……」 憂「私の家は今日はカレーだよ!」 梓「いいな~」 純「購買でカレーパン買えばいいんじゃない?」 梓「それだと夜ご飯入らないじゃん」 純「あ、そっかそっか。ところでさ……」 憂「どうしたの?」 純「カレーにつけて食べるパンみたいな奴ってなんだっけ?」 梓「うん、そうだよ」 純「そうなんだーありがとうスッキリした」 憂「梓ちゃん純ちゃんそろそろ部活に行かなくていいの?」 梓「あ!忘れてた!」 純「私もスッカリ忘れてた」 梓「じゃあ私達は部活に行くね」 憂「うん!バイバイ~」 純「バイバイ~」 梓「また明日ね~」 純「あはは何かグダグダだね」 梓「毎度の事でしょ」 純「はぁ~そう言えば来月からテスト期間かぁ~」 梓「ちゃんと勉強してる?」 純「勿論してるよ。はぁ……めんどくさい」 梓「赤点取らないようににしなきゃね~」 純「そうだね~はぁ……」 梓「ため息ばっかりだね」 純「ため息でもついてないとやってらんないもん」 梓「あ、週末って空いてる?」 純「空いてるよ」 梓「動物園に行かない?」 純「う~ん……行く!」 梓「そっか、じゃあ明日憂にも話してみるよ」 純「ありがと~」 紬「あら?梓ちゃんと……鈴木さん」 梓「あ、ムギ先輩!」 純「こ、こんにちは!」 紬「うふふ。こんにちは」ペコリ 梓「ムギ先輩もまだ部室に行ってなかったんですね」 紬「えぇ!ちょっと唯ちゃんが落とし物したみたいで探してたの~」 梓「何の落とし物ですか?」 紬「手袋を落としたみたいなの~」 梓「手袋……ですか」 紬「憂ちゃんから貰った大事な手袋だからみんなで探してるの~」 梓「私も手伝います!」 純「あ、私も手伝います」 紬「梓ちゃんありがとう。鈴木さんは大丈夫なの?」 純「は、はい。大丈夫です」 紬「本当?とってもありがたいわ~」 純「いえ……」 梓「あ、じゃあ私達は二年の教室側を探しますね!今朝、唯先輩が来てたし」 紬「そうね~私は下駄箱辺りを探してみるわ~」 梓「はい分かりました。じゃあ純行こっか!」 純「うん、わかった」 紬「それじゃよろしくお願いね~」 梓「は~い!」 純「う~ん……見つからないね」 梓「だね~それより純?」 純「なに?」 梓「ムギ先輩と会った時もの凄く緊張してたね~」 純「えーしてないよ」 梓「そう?してたように見えたからもしかしてと思って……」 憂「あ!梓ちゃんと純ちゃん!」 純「あ……憂」 憂「あれ?まだ部活に行ってなかったの?」 梓「うん、唯先輩が手袋落としたみたいでみんなで今探してるんだ」 憂「え!お姉ちゃん手袋落としたの?」 純「そうみたい」 憂「私も手伝うよ!」 梓「大丈夫だよ。私達で探すから」 憂「ううん!お姉ちゃんの為だもん!私も探すよ」 純「三人の方がすぐに見付かるかもしれないしね」 梓「そっか……じゃあ憂も一緒に探そう!」 憂「うん!」 純「う~ん無いね~」 梓「何処行ったんだろう?」 憂「にんにく~にんにく~」 梓「にんにく?」 憂「にんにく~にんにく~」 純「そんな大声で叫ぶ程にんにくが食べたいの?」 憂「ううん違うよ~」 梓「じゃあなんでにんにくって言ってるの?」 憂「にんにく~って言いながら探し物を探すと見付かりやすいんだって!」 純「本当?」 憂「う~ん……ただのジンクスだから本当かどうかは分からないよ」 梓「そうなんだ……」 純「にんにく~にんにく~」 梓「純……?」 純「ほら梓も……にんにく~にんにく~」 憂「にんにく~にんにく~」 梓「も、もう……恥ずかしいよ……」 憂「にんにく~にんにく~」 純「にんにく~にんにく~」 梓「に……にんにく~にんにく~」 純「にんにく~にんにく~……あ、あった!」ヒョイ 憂「本当だ!純ちゃんやったね」 梓「うん!やったね純!」 純「あ、中身も入ってるよ」 憂「……え?」 梓「……中身?」 純「あぁ……ごめん間違えた中に何か入ってる」 憂「もーびっくりしたよ~」 梓「どんな間違いしてるのよ……」 純「あははごめんごめん今取り出すから」ガサコソ 憂「何が入ってるの?」 純「紙が入ってた」 純「あ、何か書いてあるみたいだから読んでみるよ」 憂「うん!」 純「えーと……この手袋が落ちてたら平沢唯に渡して下さい……だってさ」 梓「って言うか唯先輩、紙が入ってた手袋をずっと着けてたんですね」 梓「あ、早く唯先輩に届けましょうよ」 憂「そうだね~私、電話かけるよ!」 梓「うん!」 純「私が見付けたって言ってね!」 憂「勿論だよ~……あ、もしもしお姉ちゃん?」 純「…………」ドキドキ 憂「手袋見付けたよ~……あ、うん!梓ちゃん達から聞いたんだぁ~」 純「…………」ドキドキ 憂「それから!純ちゃんが見付けたんだよ~うん!うん!わかった。伝えておくね~」ピッ 梓「唯先輩何だって?」 憂「職員室の前にいるから届けに来てって。あと純ちゃんありがとうだって!」 純「えへへー……何か照れるね!」 2 戻る