約 115,885 件
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/262.html
唯「あずにゃーん!」 梓「どうしたんですか?唯先輩」 唯「今日は何の日でしょう!」 梓「2月14日・・・あ、バレンタインですか?」 唯「そー!とゆーわけではいっ!」 そう言うと唯先輩は私に箱を渡した 梓「唯先輩が作ったんですか?これ」 唯「もっちろん!あずにゃんの為に作ったんだよ!」 梓「ちゃんと食べれますよね?これ?」 唯「もーっ!失礼だなーあずにゃんはー。ちゃんと憂に教わりながら作ったからだいじょぶだよ!・・・たぶん」 最後の三文字がちょっと気になったけど私の為に唯先輩が作ってくれたんだし、頂くことにした。(断る理由ももちろんないけど) 箱をあけると中には猫耳つけてツインテール・・・つまり私の形をイメージしたチョコが入っていた。 唯「どうかな、あずにゃん?かなり頑張ったんだよ?」 梓「頑張ってる唯先輩が目に浮かびますよ」 口では冷静だけど内心はとても嬉しかった。 箱を開けて食べようとすると、 唯「あ、待って、あずにゃん」 梓「はい?」 唯先輩は私の持っている箱からチョコを取り出すと 唯「はい、あずにゃーん、あーん」 梓「!・・・い、頂きます・・・」 梓「・・・あ、おいしいですね。」 唯「でしょー?はい、あずにゃん、もう一口、あーん」 梓「あ、あーん・・・」/// 唯「うふふ、あずにゃんがあずにゃん食べてるー」 梓「結構シュールですね、それ」 そして食べ終え、 梓「ごちそうさまでした。」 唯「あずにゃんに喜んでもらえて何よりだよ」 唯「それであずにゃん、」 梓「はい?」 唯「お返しはー?」 当然ながら予想してなかったので持っていない。 梓「ホ、ホワイトデーに・・・」 唯「えー」 梓「そんなこと言われても今持ってないですし」 去年の唯先輩みたいに何か持っていればよかったのだが生憎無い。 唯「うーん、あ!そうだ!」 何か思いついたような唯先輩、妖しい笑みを浮かべながら、ふふふとか言っている。 唯「えーい!」ダキッ 梓「はうっ」 梓「ど、どうしたんですか?いきなり」 とはいってもいきなり抱きついてくるのはいつものことである。 唯「ふふ、いただきまーす」 梓が何をと思う前に唇が押しつけられた。 梓「!・・・んっ」 梓(この柔らかい感触は・・・ってキス!?私今唯先輩と・・・はわわわ) 唯「んっ・・・」 梓(し、舌が・・・はぅ・・・頭ぼーっとしてきた・・・) 梓「んぁ・・・はぁ・・・んんっ」 しばらく舐めるとようやく唯先輩は口をはなした。 梓「はぁ・・・はぁ・・・ゆ、唯先輩?」 唯「ふふっ、チョコレート、おいしかったよ、あずにゃん。」 梓「はぅ・・・///」 唯「本当、可愛いねぇ、あずにゃんは」ギュー 梓「今度ちゃんとお返ししてやるです・・・///」 唯「ふふ、待ってるよ、あずにゃん。」 おわり。 巻き添え規制喰らってたんで直接。 -- (名無しさん) 2010-02-14 19 53 04 ヴァレンタインやっふー! -- (鯖猫) 2013-08-12 01 22 40 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/813.html
「唯先輩!こっちです!」 「遅れちゃったーっ」 「唯先輩らしいですね」 「えへへーごめんね」 「いいですよ、来てくれただけで帳消しです」 今日は唯先輩とデート。 といっても、 休日にできた暇を使って遊ぶだけ。 唯先輩も今日は忙しくないみたい。 「レポートは終わったんですか?」 「終わったよー。アレは強敵だったー…」 「巨人でも相手にしてきたような余韻に浸ってますね」 「小人だって皆で団結すれば巨人だって倒せることを証明してきたよ!」 「唯先輩が皆の足を引っ張っている図しか浮かばない…」 「あっ、ヒドイなーもう」 皆で机を囲んでレポートに取り組んでいる図が浮かぶ。 きっと大学に行っても変わらない関係なんだろう。 明らかに変わったと言えば、 私がそこにいないということ。 ………。 でも、寂しくないもん! 「あずにゃんは特に変わりない?」 「特に悪いこともなければ良いこともないです」 「平凡だねーそれでこそ軽音部って感じだよ」 「それ、純も同じこと言ってました」 「ホントに?純ちゃんってオモシロイの?」 「まあ、面白い方だとは思いますよ?ちょっと滑るけど」 「大丈夫!私はそれでも笑える自信があるから!」 「純に聞かせてあげてください。泣いて喜びますから」 なにをするでもなくブラブラ歩く。 アクセサリーショップやCDショップを回る。 気にいったものを見せあったり聴かせ合ったり。 他愛のない時間が過ぎていく。 「あずにゃんこの曲どーお?」 「まさにポップなロックって感じですね」 「私たちのと似てない?」 「んーでも唯先輩の歌声の方が好きです」 「んまぁ恥ずかしい♪」 「本当のことを言ったまでですから」 CDショップで時間を潰す。 片方ずつイヤホンをつけて二人で試聴。 「これだ」というものを見つけて即購入。 またコレクションが増えた。 「いい曲と巡り合えたね♪」 「唯先輩と選んだおかげです」 「えへへ、あずにゃんに褒められちゃった」 照れる唯先輩。 正直にカワイイ。 お持ち帰りしてしまいたいほどに。 でもなんとか押さえる。 「そろそろお昼ですね」 「そうだねーなに食べよう」 「パスタとかどうですか?」 「いいねーじゃあレッツゴー♪」 「そっちはなにもないです!!」 ノリで突き進んでいく唯先輩を引きとめ、 着いたのは安くもなく高くもないで評判の イタリアンレストラン。 いかにも私達にはお似合いの。 「見てよあずにゃん!アイスが一杯!」 「あはは、よかったですね」 訂正…。 ここのレストランは侮ってはいけない。 特にアイスやらパフェのメニューが! 唯先輩にとっては宝庫に映ったらしい。 しばらくメニューから顔を離せずにいたぐらい。 「ふぅー満腹満腹」 「お腹でてるんじゃないですか?」 「大丈夫だよ。私太らないもん!」 「それ、絶対澪先輩とムギ先輩の前では禁句ですから」 「えーなんでー?」 「地の果てまで吹き飛ばされちゃいますよ?」 「なんかわかんないけど怖いからわかった…」 ちょっと二人のイメージに泥が…。 しかしこれはお互いのために必要な犠牲。 澪先輩、ムギ先輩、ゴメンナサイ。 「次どこ行くー?」 「映画館とかどうですか?」 「いいねーでも今なにやってるのかな」 「海猿とか言うのが流行ってるらしいですけど」 「ウミザル?どんなお猿さんが出てくるんだろ」 「まあ予想通りの反応です」 結局『海猿』は満席で見れなかった。 代わりに見たのは題名が長い恋愛モノ。 つい熱くなる唯先輩が可愛かった。 映画の内容はもちろん頭に入らない。 「結局あの二人、別れちゃったね」 「そうですね」 「世界って不条理なんだね」 「そうですね」 「じゃああずにゃんにコレをあげよう♪」 「どんな流れで『じゃあ』なんですか!?」 唯先輩に「腕を出して」と言われる。 私は腕を差し出した。 唯先輩がその腕に何かをはめる。 どうやらブレスレットのようだった。 たぶんさっき立ち寄ったアクセサリーショップの。 「コレは…さっきのお店の?」 「うん、あずにゃん喜んでくれるかなーって」 「どうでもいいところで気が回るんだから」 「どうでもよくないよ私にとってはね」 「私だって嬉しいですよ…」 「そう?」 「驚き半分ですけど…」 「サプライズだもん♪」 唯先輩の優しさに胸が熱くなる。 恥ずかしさと嬉しさで息苦しい。 こんな苦しさがあったんだ。 新しい発見をした気分。 「よーく見てごらん♪」 「え…」 促されてブレスレットの装飾を見る。 その形は、 「ネコ?」 「そうネコ!」 「私だけに?」 「あずにゃんだけに!」 もう一度マジマジと眺めてみる。 何度見ても、猫以外の何物でもない。 それでも、どこか… 「私だから…なんですね」 「そうだよ。あずにゃんだからだよ♪」 「大切にします…」 「じゃああずにゃんが出世したら返してね」 「出世払い!?というか貸しなんですか!?」 「世の中というのは不条理にできているのだよ」 ハッハッハと愉快に笑う唯先輩。 でも、絶対にはずしてなんかやらない。 これは、たった今、 私だけの宝物になったのだから。 901 名前: date. [sage] 投稿日: 2010/09/16(木) 01 59 18 ID gjDIkRvm0 「コレは返しませんからね。別ので我慢してください」 「その時は私にプレゼントしてね」 「忘れてなければ、ですけどね」 「えー忘れないでよぉー」 「じゃあ忘れないようにおまじないでもしますか?」 「おまじない?」 「はい…でも、ちょっとだけ恥ずかしいおまじないです」 「ちょっとぐらいの恥ずかしさ耐えて見せます!」 あぁ、と自分の発言に自己嫌悪。 それでも時間は巻き直らない。 ひょっとしてこれは神様の悪戯? ううん、例えそうでなくても… 「唯先輩、目閉じて…おまじないします」 「う、うん…」 「終わるまで、開けたらダメですよ」 「うん…」 「じゃないと、魔力が薄れちゃいますから」 「うん…」 不安そうに震える唯先輩。 場所は公園に移したし、人目もない。 最後にもう一度確認する。 すると、唯先輩が口を開く。 「ん…あずにゃん…?」 「ごめんなさい、もう準備できました」 「私は準備できてるよ?」 「私だって準備が必要なんです…」 唯先輩の頬に手を添える。 ビクッと震えた。 緊張してるのかな…。 きゅっと目を瞑って何かに震えるよう。 それでいて、何かを期待するような…。 「唯先輩……いいですか…?」 「うん……いいよ…」 「しますよ…?」 「うん……して…」 魔法がかかる。 「………」 「………」 この瞬間私たちは 見えない何かで繋がれた 気がした… 「……おまじない終了です」 「えへへ、随分と長いおまじないだね♪」 「唯先輩が吸うから」 「あずにゃんだって」 「そうですけど…」 「随分と暗いね」 「え?」 当たりはとっぷり暮れていた。 そもそも公園に来るまでの意識が朦朧すぎた。 すでにあの場所からスイッチが入っていたのか。 「おまじない」を口にしたあの時から。 案外自分はムッツリなのかもしれない。 「唯先輩これからどうするんですか?」 「明日もあずにゃんといるつもりですがなにか?」 「大学は…?」 「ちゃんと行くよ。明日の午後には帰ろうかな」 「じゃあ今日は…」 「なんのためにご両親がいないか聞いたと思う?」 「察しはついてましたけどね」 「まだ緊張するの?」 「なにが」 「私と二人っきりになること♪」 「そんなの、もう卒業しましたよ」 「私だって卒業したよ」 「……」 「……」 「でも、ちょっと…」 「うん、そうだね…」 公園のベンチで肩を寄せ合いながら。 これからの事に思いを馳せる。 私たちの一日はまだ終わらない。 おわり 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/2587.html
梓「今日はどこ行くんですか?」 唯「任せて!今日のためにいろいろ調べたんだから!」 梓「じゃあ今日は唯先輩にお任せします」 唯「まずは……水族館から!」 梓「いいですね!行きましょう!」 … 唯「あれ…?」 梓「今日は閉まってますね…」 唯「そ、そんな…」 梓「ほ、他のところはないんですか?」 唯「あっ! 動物園もあるよ!」 梓「それじゃ行きますか」 … 唯「なんで…?」 梓「こっちも閉まってますね…」 唯「こ、こんなはずでは…」 梓「もっとないんですか?」 唯「もうないよ……」 梓「うっ…」 唯「ごめんね…私じゃやっぱり無理だったんだよ…」 梓「せ、先輩、私は大丈夫ですから…」 唯「本当?」 梓「はい!」 唯「えへへっ!」 別にどこかに行って楽しむのがデートじゃない。 私はこの人といるだけで楽しいのだから、それでいい。 私たちは結局どこへも行かずに、ぶらぶら歩くことにした。 唯「あずにゃん!この木だよ!」 梓「なんですか?」 唯「桜の木!春になったらとってもきれいに咲くんだよ!」 そう言って紹介されたのは、大きな桜の木だった。 まだ花は咲いてないけど…春になったらどうなるか楽しみだ。 私たちはその桜の木の下で日が暮れるまで話した。 軽音部の話とか、憂の話など…話が尽きることはなかった。 唯「そろそろ帰ろうか」 梓「そうですね」 唯「……ねえ、あずにゃん」 梓「なんですか?」 唯「…やっぱなんでもない」 梓「なんですかそれ」 唯「なんでもないの!ほら、帰るよ!」 梓「はい!」 唯先輩が何を言おうとしたのかわからなかった。 でも…そのときのあの人の顔はなんだか悲しそうだった。 …… 憂「お姉ちゃんは今日も布団に丸まってるよ」 梓「やっぱりか…」 冬の終わり、私と憂はファーストフードで食事をしていた。 そこでは私の唯先輩に対する愚痴と、憂のお姉ちゃんに対するかわいいだのなんだのが飛び交っていた。 梓「はぁ…唯先輩ってば、最近私と一緒にお出かけしないんだよね…」 憂「この季節になるとお姉ちゃんは外に出たがらないんだぁ」 梓「想像できるよ…」 憂「梓ちゃんとお姉ちゃんが付き合うって最初知ったとき、びっくりしたんだよ?」 梓「まあ、突然だったからね」 憂「でも、二人ともお似合いだから私はうれしかったなぁ」 梓「そ、そうかな」 憂のお墨付きが出て私はうれしかった。 唯先輩とお似合いだなんて…先輩達にも言われたけど、やっぱりうれしい。 梓「そういえば、憂のおかげで私も軽音部に入れたんだよね…」 憂「そうだっけ?」 梓「そうだよ」 憂「あの時は私も必死で…たまたま梓ちゃんがいたから…」 梓「たまたまなのね…」 どうやら私は憂の気まぐれで軽音部に入ったらしい。 なんというか…憂も唯先輩に似ているところがある。 憂「そっかぁ…でも、梓ちゃんと離れ離れになるのはなんか悲しいなぁ」 梓「そうだねぇ…」 憂「……」 梓「……」 梓「えっ!!?」 憂「うわっ!?梓ちゃん?」 今、憂はなんて言った? 私と離れ離れになる?どういうことだ? 梓「離れ離れになるって…どういうこと!!?」 憂「えっ…お姉ちゃんから聞いてなかった?」 梓「何も聞いてないよ!」 憂「あ、じゃ、じゃあ今のは忘れて!」 梓「どうして?唯先輩と憂はどっかに行っちゃうの!?」 憂「そ、それは…」 梓「おねがい!教えて!」 憂「……わかった」 なんだか嫌な予感がする。 唯先輩がどこかに行ってしまいそうな…そんな予感が。 憂「私とお姉ちゃんは…3月にロンドンに行くの」 梓「ロンドン!!!?」 憂「うん。お父さんたちが海外を転々としているのは知ってるでしょ?」 梓「うん」 憂「それで、仕事がロンドンで落ち着くことになって…私たちも一緒に行くことになったの」 梓「うそ…」 憂「梓ちゃんにはお姉ちゃんがもう話してたと思ってたんだけど……」 梓「じゃ、じゃあ唯先輩と憂は…」 憂「うん。転校しなきゃいけないの」 梓「そんな…」 私の予感は的中した。 唯先輩がロンドンに行っちゃう… つまり私と離れ離れになってしまう。 でも…私と唯先輩の仲はこの程度では壊れない。 梓「それはいつまでなの?」 憂「わからない…」 梓「えっ!?」 憂「いつ日本に帰ってくるかわからないんだ」 いつ帰ってくるかわからない… その一言で私のさっきの考えは粉々になった。 梓「そんな…嫌だよ…」 憂「梓ちゃん…ごめんね…私が黙っておけば…」 梓「ううん。憂のせいじゃないよ…それにいつかわかることだったし」 憂「うん…」 翌日、私は唯先輩に憂から聞いたことを話した。 唯先輩は「ばれちゃったか~」と、たいして悲しくなさそうに言った。 まだ2年生なのに…あと1年待ったらどうかと言っても、 「お父さんたちがどうしてもって言うから…」と言った。 しかし、私は一番大事なことが言えなかった。 それは…離れ離れになったらこの関係はどうなるのかということ。 結局、唯先輩達が旅立ってしまう前日までそれが言えないままだった。 梓「こんにちはー」 憂「いらっしゃい!もう皆さん来てるよ!」 唯先輩達が旅立ってしまう前日、律先輩の提案で唯先輩達のお別れ会をすることになった。 場所は唯先輩のお家。そこには荷物がほとんど無く、唯先輩達が遠くに行ってしまうことを痛感してしまった。 律「おっせぇぞ!早く座れ!」 梓「すみません…」 唯「あずにゃん、こっちこっち!」 私は唯先輩の隣に座る。 あまり悲しそうな顔はしてない。 それどころか楽しそうな顔をしている。 律「それじゃあ、唯と憂ちゃんが……えーっと…」 澪「ロンドン」 律「そう!ロンドンに行ってもがんばってくれるよう乾杯しましょう!」 律「それじゃ、かんぱーいっ!」 「かんぱーいっ!」 唯「えへへっ、ありがとね。こんな会を開いてもらって」 紬「そんなことないわ。唯ちゃん達のためならなんでもするもの!」 唯「ムギちゃん…」 律「えぇい!湿っぽい雰囲気はダメだぞ!今日は騒げ騒げ!」 唯「おーっ!」 澪「近所迷惑だろ!」 それから私たちは夜まで騒いだ。 途中、酔っ払ったさわ子先生が乱入してきて唯先輩にお酒を飲ませようとしたので、私たちが必死に止めたり、 澪先輩が襲われそうになったのを止めたり…… さわ子先生のせいで会はめちゃくちゃになった。 さわ子「グゴーーーーっ!!」 律「ふぅ…やっと寝たか…」 澪「無駄に疲れた…」 唯「でもさわちゃん先生も私たちのために来てくれたのはうれしかったよ!」 憂「うん!」 律「……それじゃひとりづつ、お別れのあいさつといきますか」 憂が片づけをしている間に、私たち放課後ティータイムのメンバーは集まった。 もう夜も更けていて、日付が変わりそうだった。 これでお別れ…そう思うと胸が痛くなる。 律「まずは私な……唯!お前がいなかったらこの軽音部はなかったかもしれない!」 唯「りっちゃん…」 律「だからありがとなっ!」 唯「うん!」 律「ロンドンに行っても私たちのことを忘れるなよ!」 唯「もちろんだよ!私はずっと放課後ティータイムのメンバーなんだから!」 律「ゆいぃ…」グス 澪「な、泣くなよ律」 律「な、泣いてなんかないし…ぐすっ」 律「うぅ…ちょっとトイレに……」バタン 律先輩が耐えきれなくなり部屋を出ていった。 涙を流す律先輩を見るのは初めてだったので、びっくりした。 澪「律……」 唯「私も泣きそうだよ…」 澪「まだ泣くなよ…次は私だな」 澪「唯がいなかったら…律の言うとおり軽音部がなかったかもしれない」 澪「だから……ありがとな」 唯「澪ちゃん…こっちこそだよ!」 澪「なにかあったら電話して!」 唯「うん!」 澪「あと、英語も勉強しといてよ?」 唯「わ、忘れてた……」 澪先輩は泣かなかった。 少し涙目だったけど…澪先輩はやっぱ大人だと思った。 紬「次は私ね……唯ちゃん、私は唯ちゃんのことが好きよ」 梓「!」 唯「えっ!? わ、私にはあずにゃんが…」 紬「友達としてって意味よ」 唯「そ、そうだったのか…びっくりしたよ」 紬「だから…私たちのこと、あっちへ行っても好きでいてね?」 唯「もちろんだよ!」 ムギ先輩にはいつも驚かされる。 それよりも、唯先輩が私の名前をあげてくれてうれしかったのは内緒だ。 紬「次は…梓ちゃんね」 梓「わ、私ですか?」 澪「梓、二人で話したいだろ?私たちあっち行くから」 澪先輩の計らいで私たちは二人っきりになった。 そういえば二人っきりになるなんて久しぶりだ。緊張する。 梓「……」 唯「……」 何を言えばいいんだろう… 今さらだけど、何も考えてない。 ただ、時間だけが過ぎていく。 梓「……」 唯「…ねぇ、あずにゃん」 この沈黙を破ったのは唯先輩だった。 唯「わたしのこと……好き?」 梓「もちろんです…」 唯「そっかぁ…私も大好き」 梓「……」 唯「でも……別れよっか」 それは突然だった。 今、唯先輩はなんて言ったのか? 別れようって言ったのか? 頭の中が、真っ白になった。 唯「私はあずにゃんのことが好き。本当に大好き」 梓「……」 唯「でも…私がロンドンに行って…離れ離れになって…あずにゃんに会えないってなったとき…私、何も考えられなくて…」 梓「……」 唯「そんなじゃダメだってことはわかってるから…だから…あずにゃんと別れようって思ったの」 梓「……」 唯「ほら、遠距離じゃ続かないって言うでしょ?」 梓「……」 唯「あずにゃんも、私のことは忘れて…新しい恋にでも…」 梓「…ばかっ!!」 唯「あ、あずにゃん?」 梓「唯先輩のばかっ!意気地なしっ!天然!」 唯「え、え、えっ」 梓「そんなんで…そんなんで私があきらめると思ったんですか!!?」 唯「……」 梓「……もういいです!唯先輩なんか…大っきらいっ!」ダッ 唯「あ、あずにゃん!」 そう言って私は家から出ていった。 走って、走って、走って…… 気がつくとあの日唯先輩が言ってた大きな桜の木のところまで来ていた。 梓「はあ…はあ…」 桜の木は満開で、桜の花びらが舞っていた。 唯先輩の言うとおり、とても奇麗だった。 夜に見る桜も悪くない… でも…今は気分が最悪だった。 梓「唯先輩なんか……唯先輩なんか……」 「あずにゃ~~ん!!」 振りかえるとそこには唯先輩が息を切らして立っていた。 梓「な、なんで私を追っかけて来たんですか!別れるんでしょ!嫌いなんでしょ!」 唯「嫌いなんかじゃないよ!」 梓「うそだ!そうなら別れるなんて言わないです!」 唯「違うんだよ!私じゃあずにゃんと一緒にいられないから…だから…」 4
https://w.atwiki.jp/83452/pages/12204.html
梓「……唯先輩」 唯「なに?あずにゃん」ムクリ 梓「……わたしのこと、好きなんじゃないですか?」 唯「……うん、だいすき」コクリ 梓「……」 唯「……あずにゃん?」 梓「嘘ついてたんですか……最低ですね」 唯「ふえ……ご……ごめん……」ジワッ…… 梓「で、私は唯先輩のこと……」 唯「う……うん……///」ドキドキ 梓「唯先輩……目、閉じてください」 唯「うぇ……!?///う……うん……///」 梓「……」 唯(あっ……鼻に、あずにゃんの吐息……あたってる……///) 唯(だんだん……近づいてきて……いい匂い……///) 唯(そっか……あずにゃんとキスするんだ……///) 唯(あずにゃあん……あずにゃあん……///) 梓「……」 唯(すきいっ……だいすきい……///)プルプル 梓「……」 スッ…… 唯(……えっ///)プルプル 唯(はなれてく……なんで……?) 梓「……ゆいせんぱい」 唯「っ!……なっ……なに!?///」ビクッ 梓「……唯先輩は私のこと好きなんですよね?」 唯「う……うん……///」 梓「そうですか……でも……」クスッ 梓「私は、唯先輩のこと、「好き」なんて一言も言ってませんよ?」 唯「……えっ……」 梓「もしかしたら唯先輩のこと嫌いかもです」 唯「えっ……やだ……」ジワッ… 梓「……そうですね、やっぱり唯先輩なんて大嫌いです」 唯「やっ……やだあ……///」ポロ…ポロ… 梓「……フフッ」 唯「う゛え゛っ……うう゛っ……」ポロ…ポロ… 梓「……唯先輩」 唯「……」グスッ 梓「……」 チュッ 唯「ふえっ!?///」 梓「……唯先輩」 唯「ふわ……ふわぁ……」ドキドキ 梓「……私も、唯先輩のこと大好きですよ」 唯「う……ふぁ……///」ドキドキ 梓「……」クスッ チュッ チュッ チュッ チュッ 唯「んぁ……ふぁ……///」ドキドキ 唯「あず……あずにゃあん……///」ドキドキ 梓「……なんですか?キスしてほしかったんじゃなかったんですか?」 唯「ん……ふぁ……ほっぺたばっか……やぁ……くちびるに……してよお……///」ドキドキ 梓「……ダメです」 チュッ 唯「んぁ……///」ドキドキ 梓「唯先輩に……」チュッ 梓「いっぱいひどいこと言われて……」チュッ 梓「すっごく不安になったんですからっ」チュッ 梓「だから私も……」チュッ 梓「唯先輩の嫌がることしてやるんですっ」チュッ 唯「うあっ……うぁ……あずにゃ……///」ドキドキ 梓「うるさいですっ!唯先輩なんて……嫌いですっ!」チュッ 唯「ふわあっ///」ドキドキ 唯「ご……ごめんよお……あずにゃあん……///」ドキドキ 唯「すきいっ……だいすきぃ……///」ドキドキ 唯「ひどいことぉ……きらいって……もうにどと……ずっと……一生……///」ドキドキ 唯「いわないからあっ……だからぁ……はぁ……はぁ///」ドキドキ 唯「くちっ……くちびるにい……っ……はぁ……ちゅう……してよお……はぁ……///」ドキドキ 梓「……どうしたんですか、唯先輩。はぁはぁ言っちゃってますよ」クスッ 唯「だっ……だってぇ……あずにゃんのせいでえ……はぁ……むね……ドキドキしすぎちゃってぇ……///」 梓「むね?胸がどうかしたんですか?」ムニッ 唯「ふわっ!や…っ…やあっ……///」ムニムニ 梓「むぅ……胸が邪魔で何が言いたいのかわかりません」ムニムニ 唯「あず……にゃ……///」ポー 梓「……」チュッ 唯「ふぁっ!///」ビクッ 唯「……///」ムクリ 梓「……ゆいせんぱ」 チュッ 梓「い……?」 唯「えへへ///」 梓「なっ……ななななな……///」プルプル 唯「あーずにゃんっ///」ダキッ 梓「にゃ゛っ!?///」ビクッ 唯「えへへへへへへ///」ギューッ 唯「だぁーいすきっ!」ギューッ 梓「にゃ゛……///」カァァァァ 唯「えへへへへ///」ギューッ 梓「……ゆいせんぱい///」 唯「んー?なぁに?///」ギュッ チュッ 唯「ん……っ///」 梓「……///」プイッ 唯「えへへー。やっとくちびるにちゅーしてくれたね///」ギューッ 梓「……しりません///」 唯「……ねーあずにゃーん?」 梓「……なんですか///」 唯「……軽音部、辞めないよね?」 梓「なっ……まだそんな事言ってたんですか!」 唯「うん……でもすっごく不安になった……私のせいだけど……」 梓「……それを言うなら唯先輩だってです。簡単に退部するとか言わないでください。すっごく不安になりました」 唯「うん……でもあずにゃんは本当に退部届けまで用意するし……」 梓「あれは……真鍋先輩に協力してもらったんです。……でも、もうこんなもの」 ビリリッ ビリッ ガサッ 梓「……こうしちゃいます」 唯「……うん、よくできました」ナデナデ 梓「ん……」ポー 唯「……でも、あずにゃん。ひとつ忘れてるよ」スッ 梓「あっ……」 唯「へへへ……「ぶ」」 梓「……」クスッ ………… 唯「私たち、これからもずっと一緒だよね」 梓「ん……当たり前です」 唯「高校卒業しても、大学行っても行かなくても、社会人になっても」 梓「ずっと……ずーっと永遠に一緒ですよ」 唯「……中野 梓ちゃん」 梓「……なんですか?」 唯「大好きだから、愛してるから。女同士でもずっと永遠に、一緒にいてください」ギュッ 梓「……」 唯「……」ドキドキ 梓「だいすきな……ゆいせんぱいがあ……ずっといてくれるなら……おんなどうしなんて……」ポロ…ポロ… 唯「あずにゃあん……もう泣かないで……」ギュッ 梓「だっ……だってえ……嬉しくって……」ポロポロ 唯「うん……ねえ、あずにゃん」 梓「グスッ……ふぇ……?なんですか……?」 唯「……」スッ 梓(あ……) 唯「誓いの……キス……しよ?」 梓「……///」コクリ 唯(……) 梓(……) 唯(あずにゃん……) 梓(唯先輩……) 唯(あずにゃんの顔……すごく近い……///) 梓(唯先輩の顔……すごく近い……///) 唯(わあ……あずにゃんたら、顔真っ赤///) 梓(唯先輩……顔真っ赤だよ……///) 唯(あずにゃんの吐息……あともう少しで……///) 梓(唯先輩の……くちびる……キレイ……///) 唯(あずにゃん……///) 梓(唯先輩……///) 唯(……///) 梓(……///) ピタッ 唯「……」 梓「……」 「……だーいすきっ!」 チュッ! お、わり、だよん? 戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/1160.html
そう、だよね。 分かりきっていた回答なのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 これ以上、苦しみたくないのに。 どうして私は、自分の傷を抉るような真似をしているの? 梓「でも、姉妹……じゃない」 憂「関係ないよ。そういう考えは、とっくに捨てた」 梓「……そっか」 十分だった。 もう、考えたくない。 梓「っ……!!」 憂「具体的に言えば、四歳の時の九月半ばにお姉ちゃんが私に……って、あ、梓ちゃん!?」 だから、私は逃げ出した。 家を飛び出して、ただひたすらに、全力で走った。 昼間の快晴から天気は崩れる気配もなく、夜空には雲ひとつない。 にも関わらず、地上を照らす光は燦然と輝く星々でしかなかった。 今宵は新月だったか。 その僅かな星明かりと、一定間隔に設置された無機質な街路灯を頼りに歩く私の体を、 夜風が冷たく刺した。 「……なにやってるんだろう」 虫達の合奏以外には何も聞こえない静かな夜。 虚空に消えた私の声は、孤独を感じさせるには十分だった。 荷物、唯先輩の家に置いたままだったな。 ……今更戻る気にはなれないけれど。 カメラだってカバンの中だし、 ムギ先輩に頼まれてた罰ゲームの撮影も、結局放り出すカタチになってしまった。 「唯……先輩……」 頭に浮かぶのは、唯先輩のあったかい笑顔ばかり。 ――自分の気持ちに正直になればいいんだよ。 そんなの、無理ですよ……。 ――え、でも私もあずにゃんも女の子なのに……? 告白なんかして、そんな風に拒絶されてしまったら 私はきっと、立ち直れないから。 「う、……うあっ……」 ぽたっ、と乾いたアスファルトに水滴が落ちた。 「ゆい、せ、んぱ、い…っ、う、ううっ……」 片思いでも構わない、一緒に居られたらそれでいいって思ってた。 だから、唯先輩が他の誰を好きになったとしても、受け入れられるって思ってた。 でも、違ったんだ。 唯先輩と憂の関係には、私の存在は邪魔でしかないのかもしれない――。 そう考えてしまったときの、胸を引き裂かれたような痛み。 「受け、うっ、入れ、られ、る、はず、うっ、うああ……」 自分に言い聞かせる為に必死に紡ごうとしているのに、 嗚咽が酷くて言葉にならない。 今日一日、ずっと憂に嫉妬してたんだ。 憂は大事な友達なのに。 ああ、私ってこんなにも欲深かったんだって、気付いてしまった。 そんな自分が嫌なのに。 それでも唯先輩を独占したい気持ちはきっと消えない。 堤防の決壊した河川の様にぼろぼろと、涙が零れ落ちる。 途切れることない虫の合奏も、どこか寂しそうに聞こえた。 一体どれくらいの時間が経っただろうか。 沈んでいた心も、ようやく落ち着きを取り戻し始め、 私はこれからのことをぼんやりと考えていた。 いつまでもこんなところで泣いてる訳にはいかないけれど、 唯先輩の家に戻ることはできない。 仕方ないよね。 家族には泊まりって言ってあるけれど、今日は家に帰ろう。 立ち上がって、再び歩みを進める。 そのとき、トクン――、と胸が高鳴る音がした。 ――足音。 誰かが、走ってくる。こっちに向かって。 私はゆっくりと、振り返る。 ――声。 私の名前を呼ぶ、声。 「…ずにゃ……ん」 それは段々と近付いていて。 「あずにゃーーーん!!」 あ……追いかけてきてくれたんだ――。 嬉しいはずなのに、どういうわけか、再び涙が滲む。 梓「唯……せんぱ――」 がばっ! 唯「あずにゃあああああん!!」 いつもより力強く、唯先輩は私を抱きしめてくれた。 さっきまでの冷め切った心が、嘘みたいに穏やかになっていく。 私の好きな、優しい匂い。 私の好きな、心地良い体温。 唯「憂が私が走っていっちゃったって聞いてあずにゃんがキッチンで」 梓「落ち着いてください、何言ってるかわかりません」 唯「う、うぇ……、心配したんだよおおっ!」 梓「……なんで、唯先輩が泣いてるんですか」 私の名前を何度も呼んで、 小さな嗚咽を漏らすこの人の前で、涙を流すなんてできる筈がなかった。 十分にも満たない静寂。 本当に、どうしてあなたが泣いているんですか。 梓「……少しは、落ち着きましたか?」 唯「うん。ごめんねあずにゃん」 二人並んで、公園のベンチに腰掛ける。 人の姿は見えず、まるで私達の為の空間であるかのような錯覚に陥る。 追いかけてきてくれたことは本当に嬉しかった。 泣いていた私を、慰めてくれる――ことを期待していた訳ではないが、 まさか私が慰める立場になるとは、正直予想していなかった。 梓「完全に立場が逆じゃないですか……」 悪い気は、全然しなかったけれど。 唯「ねえ、あずにゃん」 梓「なんですか?」 唯「どうして、出て行っちゃったの?」 梓「それは……」 一人ぼっちにされたのが寂しかった。 唯先輩が憂と仲良くしているのが、悔しかった。 それに嫉妬している自分がどうしようもなく嫌だった。 ムギ先輩や澪先輩にあれだけ後押ししてもらって、 それでも正直になれない私は、やっぱり臆病者なんだろうな。 唯「あ、ううん。答えたくなかったらそれでもいいの」 だけど―、と唯先輩は続ける。 唯「それがもし、私のせいだったなら――謝らなくちゃなぁって」 梓「違います、唯先輩のせいなんかじゃ――」 唯「ごめんね、ひとりにしちゃって」 梓「……」 ――見透かされていたのだろうか。 普段鈍感な癖に、どうしてこんなときだけ。 なにも、言い返せない。 違うのに。唯先輩は悪くないのに。 言い返さなくちゃ、ダメなのに。 唯「私ね、ちょっと後悔してるんだ。 あずにゃんに寂しい思いさせちゃうくらいなら、ちゃんと話しておけばよかったって」 唯先輩は月の無い夜空を見上げながら、 子供みたいに両足をぶらぶらさせて、ゆっくりと言葉を紡いでいく。 唯「……笑わないでね?」 梓「……笑うわけ、ないでしょう」 唯「えへへ。 実はお料理してたんだー。 ……憂に教わりながらだけど」 梓「料理? どうして、突然そんなこと……」 唯「あずにゃんに、私の手料理食べて欲しかったから」 梓「……」 キラーパスだった。 心臓をぶちぬかれたような衝撃に身悶えする。 唯「指とか、切っちゃった」 人差し指を私に見せて、照れ笑いを浮かべる唯先輩。 その発言で、ようやく私は気が付いた。 ――「もう、気をつけてって、言ったじゃない」 ――「だって……」 ――「ほら、もっとよく見せて」 ――「私が……舐めてあげる」 ――「は、恥ずかしいよ、うい……っ」 指のことかよ!! 紛らわしいよちくしょう!! いや、指でも舐めようとするのはおかしいけど憂!! 梓「あー、あー、あー」 唯「どうしたの?」 梓「いえ、どうしようもない早とちりした自分が情けなくて」 ――そう、だったんだ。 普通に忘れていたけれど、確かに夕飯まだ食べてなかったし。 ていうか気付けよ。 階段降りてる途中で声が聞こえてて、降りきるまでに憂が階段の前に来れる範囲って リビングの真横のキッチン以外ありえないだろ。 唯先輩の姿がなかったのはキッチンに居たからだろ。 なんで、そんな簡単なことに気付かなかったんだろう。 唯「そっか。 ……ごめんね、あずにゃん」 梓「もう、いいですよ。 気にしてませんし……っていうか、私が勝手に誤解しただけですし」 唯「誤解?」 ……あ? なんか噛み合ってないな。 もしかして、単純に一人にされて寂しかったことが原因だと思ってるのか。 前言を撤回しておこう。 やはりこの人は鈍い。 唯「驚かせたかったんだー。 『唯先輩、実は料理うまかったんですね、素敵っ!』って言わせよ」 梓「言いませんからそんなこと」 あからさまに私のキャラを履き違えていらっしゃるので、台詞の途中で遮ってやった。 唯「えー、いいじゃん言ってくれても……」 梓「私頭悪い子みたいになってるじゃないですか」 唯「もう、素直じゃないなぁ」 梓「いや、だから。 なんでそんな恋する乙女みたいな台詞を吐かなきゃいけないんです……か」 ん? 恋する乙女? 強ち間違ってもいなかった例えに、一瞬だけ体が強張る。 唯「ふふ。……でも、それがいけなかったんだよね」 梓「……」 唯「憂が慌てて戻ってきて『梓ちゃん出て行っちゃった!』なんて言うんだもん、 びっくりしちゃったよ」 梓「……それにしたって、泣くことはないでしょうに」 唯「うん。でも、あずにゃんに嫌われちゃったって思ったら、なんか泣いてた」 そんなことを平気でいいのけて、唯先輩は俯いた。 痛い。 心が痛い。 話題を、話題を逸らすんだ。 話題を逸らすのよ、梓。 梓「で、これから私はその、唯先輩の手料理を食べるわけですけど」 あんまり逸らせてなかった。 唯「食べてくれるの……?」 まぶしすぎて直視できない。 その上目遣いをやめてください。融けそうです。 梓「……そりゃ食べますよ、お腹ぺこぺこですし。何を勘違いしてるのか知りませんけど、 私が唯先輩を嫌いになるとか絶対にありえませんから」 唯「あずにゃん……」 あれ? なんだこのムード。 いつもなら、嬉しそうに抱きついてくるであろうシチュエーション。 なのに、どうしてあなたはそれをせず、 薄っすらと目に涙を溜めた上で頬を赤らめておられるのでしょうか。 そんな顔をされると、こっちまで緊張してくるじゃないですか。 うわあっ、どうしよう。ドキドキしてきたっ!! こういうときは、どうすれば……、どうすれば……。 そ、そうだ。名前を呼んでみよう。 名前を……。 『唯先輩……』 『あずにゃん……』 見つめ合う二人。そして二人は唇を重ね―― うわあああああああ!! なに考えてるんだ私は!! ちがうちがうちがう!! もっとこう、砕けた感じで名前を……。 『ゆいにゃん……』 『あずにゃん……』 見つめ合う二人。そして二人はにゃんにゃん―― もっとちげえ!! ――ぴと。 一人妄想コントをしていると、不意に肩の辺りにあったかい感触。 ふわりと私の鼻をくすぐる、やわらかい髪。 梓「……っ!!」 ドキドキ……。 お、落ち着け、落ち着くのよ梓。 まずは、今私がどういう状況におかれているのかを確認しなくては。 いや、もう大体予想はついているけど。 だけど、生憎と今日私は学んだのだ。 早とちり、よくない ――ってね! キリッ!とした表情を浮かべて、心の中で叫んだ。 そう、期待とは常に裏切られるモノなの。 もしかしたら、今私に寄りかかってきているのは、 唯先輩じゃなくて、夏場に成長しすぎた無農薬栽培のトウモロコシかもしれないじゃない。 脳内で鼻の大きなおっさんが「わしが育てた」と言いながら、良い顔をしていた。 くわっ、と眼を見開いて、そっと隣を見る。 唯先輩が、私に全身を委ねていた。 唯「大好きだよ、あずにゃん」 梓「ふにゃあああっ!!」 文字通り顔から火が出て、そのまま意識がホワイトアウトした。 梓「……」 唯「……」 もう、いいですよね。 よく我慢したよ、私。 うん、偉い偉い。 唯先輩はきっと、私の言葉を待っているんだ。 だから、百合の神様。 どうか私に力を貸してください。 琴吹菩薩の顔を思い浮かべて祈ると、百合の神様は最高の笑顔で答えてくれた。 『Yes, We can!』 よし、いける。 梓「唯先輩」 唯「……」 梓「唯先輩!」 唯「は、はい!?」 梓「……なんでぼーっとしてるんですか」 唯「なんでもないなんでもない、それより、そろそろ帰ろっか。 憂も待たせちゃってるし……」 『行け、今だ、行くのよ梓!!』 脳内で百合の神様が、並列繋ぎのアルカリ乾電池からむき出しの銅線で繋がった 豆電球をカチューシャ代わりにピコピコさせながら必死に叫ぶ。 淡い光を帯びて煌く沢庵ライクの眉毛が、これほど神々しく思えたのは初めてだった。 梓「唯先輩……ごめんなさいっ!!」 唯「え……んぅ――!?」 まるっきり無防備な唇に、私のそれを強引に重ねた。 『ヨッシャアァァァ!!』 脳内で百合の神様が吼える。 雰囲気とか色々台無しだ。 お前もういい、どっかいけ。 百合の神様を脳の片隅に追いやったところで、ようやく自分の犯した事の重大さに気付く。 ちっがあぁぁぁう!! 順番が違ぁぁぁう!! 告白が先だろ!! なに血迷ってんだ私は!! だけど、体は止まらない。 唯「ん、んんっ!」 その声は口籠もって通らない。私が声の逃げ道を塞いでいるのだから。 体が芯から熱くなって、胸の鼓動も次第に早くなっていく。 唯先輩は顔を真っ赤にして、 『アバンチュール』と書かれたシャツの裾を必死に握り締める。 そんな様子を見て、私は唯先輩を抱きしめる腕に、一層力を込めた。 今まさにこのときがアバンチュール。 同性であり、一つ年上の先輩を、舌で犯すという底知れぬ背徳感。 それが喩えようのない快感に変わる。 唯先輩唯先輩唯先輩唯先輩っ!! ――。 そして、私は唯先輩を抱く腕の力を緩めて、唇をそっと離した。 梓「……」 唯「……」 僅かな、沈黙。 まずい。 何か言わないと。 ……何か。 梓「部屋着のまま、外出しないでください」 唯「え、ええ!? わ、私の純潔を奪っておいて最初に言う台詞がそれなのあずにゃん!?」 一息でまくし立てる唯先輩。 まさにExactly(その通りでございます) しかしそれでも、 梓「微妙な言い回しですけど、多分純潔までは奪ってません」 私は、どういうわけか異常に冷静だった。 唯「え、えっと……」 梓「前に、言いましたよね。私は唯先輩のことが好きです……、って」 一ヶ月前のことだ。唯先輩の部屋で、私はそう告げていた。 よくよく考えたら、あの時、憂も一緒にいたんだけど。 梓「あの時、唯先輩は『私も好きだよ』って答えてくれました」 いつものほんわかした笑顔で、そう言ってくれた。 梓「勿論わかってます、あの時の『好き』は、こんな意味なんかじゃないって」 唯「……」 梓「だけど、私の『好き』は違うんです」 ずっと苦しかった。 順番は違ってしまったけれど、きっと今しかない。 梓「好きです。愛しています、唯先輩。 私と……、付き合ってください」 ……ああ、勢いで言ってしまった。 顔から火が出そうだ。 どうしよう……、受け入れてもらえなかったら、私は……。 目を思いきり瞑って、唯先輩の言葉を待つ。 一秒、二秒、そして十秒があっという間に過ぎて行く。 この時が、永遠のようにも思えてくる。 唯先輩――。 8
https://w.atwiki.jp/83452/pages/3305.html
唯「あずにゃんっ!」 唯先輩の顔に笑顔が輝いたのは決して夕日だけのせいではないと思います。 そして私の顔が更に真っ赤に なったのは唯先輩が道端であるにも関わらず抱きついてきたからに違いありません。 唯「もう、あずにゃんは最高にカワイイ後輩だよ!」 普段の私なら、道端で抱きつくのはやめて下さいとか言う場面ですが、今日だけは 例外でした。 唯「えへへ……あったかいね」 梓「……そうですね」 私の身体を抱きしめる唯先輩の腕の力が少し強くなった気がしました。 唯「なんか、あずにゃんがあずにゃんじゃないみたい」 梓「今日の私は少し変なんです」 唯「少しじゃなくて、だいぶ、だよ」 幸せでした。 二人だけの時間がこんなにも心地好いものだなんて……。 梓「唯先輩」 唯「なあにあずにゃん?」 梓「私からのお願いを聞いてもらえますか?」 唯「もちろんっ。あずにゃんのお願いなら何でも聞いちゃうよ」 唯先輩の吐息が耳にかかって 口許が知らず知らずのうちに弛緩していくのが自分でもわかりました。 梓「私のお願いは……」 この時、私の胸によぎったのはある種の予感であり確信でした。 今、告白すればすんなりと唯先輩は私を受け入れてくれる……そんな気がしました。 もちろん単なる錯覚かもしれません。 或いは、こうして唯先輩に抱きしめられている うちに、意識していないところで安心してそう思わされているだけなのかもしれません。 しかし、告白が成功するにしようしないにせよ、そんなことは 一切関係無く決して臆病からではなくあえて私はこの絶好のチャンスを手放しました。 代わりに私の唇は別の言葉を紡いでいました。 梓「唯先輩。最近私、料理にはまっているんですけど、よろしかったら来週の日曜、私の家で 鍋をするんで是非来てもらえませんか?」 唯「全然オッケーだよ、あずにゃんっ」 梓「料理って言っても鍋なんですけどね」 唯「うんっ」 梓「よかった。断られたらどうしようかと思いました」 唯「そんな、まさかわたしがあずにゃんの頼みを断るわけないよ~。 でもなんでわたしなの?」 夕日を浴びて足元から伸びる私と唯先輩の影は、どこか楽しそうで、嬉しそうでした。 梓「あなたのことが好きだからですよ唯先輩」 唯「あずにゃん、私、今すごく嬉しいかも……」 梓「……本当に本当ですか?」 気配で私を抱きしめている唯先輩が微笑ったのが わかってそのことがまた嬉しくて私も釣られて笑みを零してしまいました。 唯「いつまでもこうしていたいけど」 梓「でもこの手を離さなければ家には帰れませんよ?」 唯「そういうあずにゃんだって私の手、掴んでるくせに」 指摘されて初めて無意識に絡められていた手を握っているのに私は気づきました。 梓「……ふふ」 唯「……へへ」 梓「私たち似た者どうしですね」 唯「そうかもねっ」 私たちがこうやって笑いあってるのには、たぶん 明確な理由なんて存在してないんだと思います。 それこそ人が人を好きになるのと同じで。 唯「じゃあ、そろそろバイバイだね」 そんな言葉とともに私を包んでいた腕を唯先輩は解きました。 ……先輩は既に私に背を向けて帰り道を辿っていました。 梓「唯先輩……」 名残惜しくはありましたけど、寂寥感は微塵もありませんでした。 理由は至極簡単でした。 もう私は朧げながら答を見つけたのですから。 梓「唯先輩っ!」 振り返った唯先輩がもう一度私に向かって微笑みました。 ♪その日の夜 私は今まで自分の恋愛の悩みを相談してきた憂に電話をしました。 梓「憂……今まで相談に乗ってくれてありがとう」 電話越しからでも相手の動揺が伝わってきました。 そう言えば、今までは自分のことに精一杯で、憂に配慮することもできなかった けれど、今は心にも十分なゆとりがあるので幾分私は落ち着いて憂に返答することができました。 梓「ううん、違うよ。諦めたとかそういうわけじゃないよ」 ただ、私は何となく気づいて悟ったのでした。 私が求めていた唯先輩との関係。 梓「うまく言葉にできないけど、たぶんわかった んだ……うん、だから心配しなくて大丈夫だよ」 そうだ、と私は相談したいことを思いついて憂に尋ねた。 梓「今度家で鍋するんだ」 憂の弾んだ声が私の耳朶を震わせます。 梓「だから、憂には鍋についての心得を伝授してほしいんだ」 まかせて、と電話越しから でもわかる力強い言葉に私は今度の鍋が成功することを確信しました。 梓「そうだ――」 ――そして。 あれからのことを少しだけ話そうと思います。 唯「あずにゃんのエプロン姿って新鮮かも」 梓「初めてでしたっけ?」 唯「うん。すごく似合ってるよっ。憂の次くらいに」 梓「それは光栄です」 一週間後。 唯先輩に宣言した通り、私の家で鍋でお持て成しをすることになりました。 もっとも私の料理の腕前は未熟そのものですので クラスメイトである憂 からアドバイスをもらうという形になりました。 まあ、そうは言っても鍋は鍋。 本当に小さな工夫を凝らすことになったんですけど。 何か気になることでもあったのか、私の手元を凝視する唯先輩。 唯「うん?あずにゃんは何を擦ってるの?」 梓「ニンニクです。憂に鍋を美味しくする方法を教えてもらったんです」 唯「へえ。そっちのビンに入ってる大量の赤いのは?」 梓「鷹の爪ですよ」 唯「すごく辛いヤツでしょ?これ全部入れるの?」 梓「全部は入れませんよ。隠し味程度に少しだけ入れるんです」 唯「そうなんだ」 梓「ていうかじーっと見られるとやりづらいです」 ついでに愛情もひとさじほど……なんて言ったりして。 さて、あとは待つばかりです。 最高の講師である憂にアドバイスをもらった鍋のデキはすごくいいはず。 普段、鍋を食べる時にはこんな気持ちにならないのに――少しだけ緊張しました。 唯「フツーの鍋だね」 梓「まさかいつか言ってたマシュマロ鍋なんてものを私が作るとでも思ってたんですか?」 唯「えへへ、ちょっと期待してたかも」 梓「……」 唯「どうしたの?」 梓「……その、今度また唯先輩と鍋をする機会があったら……その時は……」 皆まで言えませんでした。 唯先輩が例によって例のごとく抱き着いてきたからです。 ……テーブルを挟んでですけど。 梓「唯先輩、急に抱き着かないで下さい」 例によって例のごとく私はそう言って、 唯「へへ、またあずにゃんったら照れちゃって」 これもまたお約束の返しをする唯先輩。 唯「……急に抱きつかないで、っつじゃあゆっくり抱きつけばいいの?」 梓「そ、そういう問題じゃないです」 唯「……」 梓「……」 鍋が徐々に煮立ってきました。 唯「ねえ、あずにゃん」 ――コトコト。 梓「……はい」 ――コトコト。 唯「もう少しだけこうさせて」 ――コトコトコト。 梓「はい……」 なぜでしょう。私はもう答を見つけたはずなのに。 ですから安心して……唯 先輩に抱き着かれたって平生と変わらない態度でいられると思ったのに。 頬っぺたが、熱くなるの を感じて、そのことがまた恥ずかしくて私の顔はさらに赤くなってしまいました。 ――コトコトコトコト。 唯「あずにゃん。私に好きって言った時のこと覚えてる?」 ――コトコトコトコトコトコト。 梓「まだ一週間前ですよ。それにあと、何か起きない限り十年は忘れないと思います」 唯先輩のおとがいが私の肩に乗っているので、 振動が伝わってきて私の心臓までも震わせました。 ――コトコトコトコトコトコト。 唯「すごく嬉しかったんだ」 梓「……そう言ってもらえると……嬉しい、です」 唯「でも、何か違うって思ったんだ」 ――コトコトコトコトコトコトコトコト。 梓「はい、私も……唯先輩のことはすごく好きです。 でも、こんな風に抱き合って言うのも変ですけど……」 ――コトコトコトコトコトコトコトコト。 唯「うん、私たちってきっとこういう風に恋人みたいに抱き合ったりする関係じゃないんだよね。 そんなのは私たちらしくないとっていうかなんて言うか……」 適切な言葉を探しているのか、唯先輩の口舌そこで止まりました。 梓「……ふふっ」 唯「あずにゃん?」 抑えようのない歓喜が私の喉から零れました。 梓「嬉しかったんです。唯先輩も私と同じことを考えてくれていたのが」 ―コトコトコトコトコトコトコトコトコトコト。 唯先輩がゆっくりと腕を離しました。 少しだけ名残惜しいけれど、やっぱり寂しいとは思いませんでした。 梓「私も語彙の多い方じゃないから言葉にできませんけど……それでも唯 先輩と同じ想いを共有できていたんだと思うと、それだけで本当に嬉しくて」 唯「……私もあずにゃんももうすぐ進級するけど、またこれからもよろしくねっ」 梓「……はいっ!」 ――次の瞬間。 私の返事がきっかけなのかどうかは知りませんが、鍋が爆ぜました。 私は思わずびっくりして唯先輩に抱き着いてしまいました。 唯先輩もびっくりして目を丸くして唖然としています。 鍋の爆発――鍋自体が爆発したのではなく、中身 の汁が爆ぜたのです――によって、脳みそまでしっちゃかめっちゃかです。 梓「あっ……」 憂の言葉を唐突に思い出して私は声をあげてしまいました。 憂『今回の鍋はコクを出すために粗い味噌を使うんだけど、注意してね。 きちんと掻き混ぜないと味噌が沈澱して爆発しちゃうから』 ……その場の雰囲気に流されて一番大切なことを失念していました。 唯「あずにゃん大丈夫?」 梓「だ、大丈夫じゃないです……」 心臓がシックスティーンビートを刻んでいます。 唯「ふふっ、はははおかしいあずにゃんっ。 思いっきり怖がって私に抱き着いちゃって、澪ちゃんみたい」 梓「わ、笑わないでください」 ――でも、まあ。 梓「ああ……もう一回鍋、作り直さないといけませんね」 唯先輩をはじめとする軽音部の皆と一緒に決して真面目とは 言えないけど、時々真剣に練習して毎日ほんわかと楽しい時間を過ごせて。 唯「よーし、ここは先輩である私が手伝ってさしあげましょうっ」 憂や純っていう大切な友達も私の周りにはいて。 梓「――唯先輩」 何よりこんなに素敵な人と出会えて。 ――そしてこんな平々凡々とした 日常の中で大好きな人たちと一緒の時間を過ごせる私はスゴイ幸せ者です。 梓「これからも一緒に頑張りましょうね!」 唯「うん、だって私とあずにゃんは――――」 おしまい!! ※ちなみに最後の唯の台詞は最初、マブダチとかそんな感じだったけどしっくりこんくてやめた。 んだで皆さんの想像で台詞入れて下さい 戻る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1325.html
先輩達の色々な事情が重なり、今日の部活は休みとなりました。 唯先輩は居残り勉強、律先輩と澪先輩は買い物、ムギ先輩は掃除当番…と皆さんからそういう内容のメールがきて。 というわけで、今日は一人で帰り道を歩いています。一人で部活するわけにもいきませんしね。 …うーん、いつも先輩方と一緒に帰っているから、少し寂しい。 こんなに静かに帰るのは久しぶりだ。 …いや、嘘をつくのはやめましょうか。 この寂しさは、唯先輩がいないからだ。 さっきから唯先輩のことが頭から離れない。 「今日一緒に帰ろうね」なんて言いながら居残りって。 無責任な発言はやめてほしいです。 彼女を一人で帰らせるなんて信じられません。 襲われちゃいますよ?私。 大体メールとかでなく直接教えてくださいよ。もしくは電話。 大事にしてくださいよ! なんて。悶々と愚痴を心の中で零す。 …えぇ、私は、唯先輩の彼女です。 そして唯先輩は私の彼女です。 面倒臭いです… 唯がよく使う表現なので、つい私も使ってしまう。 …まあ、構いませんが。 はぁ、と今度は声に出して息を零す。 そういえば最近二人きりになれてないなぁ。 寂しいよ。唯先輩。 と、思っていると、前方に律先輩と澪先輩が歩いているのが見えました。 ビニール袋を持っているところを見ると、買い物帰りでしょうか。 そこで私はお二人に声をかけようと思ったんですが… 何だか二人を取り巻く空気が怪しい。 どちらも無言で歩いている。 なんだろ…まさか喧嘩!? と一人勝手にオロオロしてたら、澪先輩の空いている方の手がおずおずと律先輩の手に触れ… 律先輩はその手をギュッと握って、指を澪先輩のと絡ませて… 恋人繋ぎ。をしていました。 …いえ、お二人が交際しているのは知っているのですが。 お二人共特に人前でいちゃつくようなことはしてなかったんですよね。 それを今目の当たりに。 しかも…まるで初めて手を繋いだみたいな空気… いや、きっとそうです… というわけで、私は別の道を回って帰りました。 あの雰囲気は邪魔しちゃ駄目です。 部屋に入り、ベッドに寝転り、ふと考える。 「恋人繋ぎ…」それは、まだ経験してないなぁ。 というか、意識してしっかり手を繋いだことあったっけ。 …無い気がする。 いつもは、唯先輩からのハグばかりだし。 …実は、ち、ちゅーなんかは経験済みだったり …あれ?…私たち順序を飛ばしてませんか。 それにしても新鮮だった。 律先輩の紅潮した頬と、ぎこちなく指を絡ませる姿。 澪先輩の赤くなりながらも、凄く嬉しそうな表情。 純愛って感じがする。 正直、そういうのは憧れる。 あ、いや別に今のに不満があるわけじゃないです。 ただ唯先輩と一緒だといつもくっついてばかりで…あの人には恥じらいが無い。 嫌じゃないんですけど、ね。 でもそういうのも大切だと思うから。 唯先輩と、恋人繋ぎ… 彼女、っていうより…恋人。 えへへ… そして、翌日の帰り道。 他の先輩方と別れ、先輩と二人きり。 「昨日はごめんね、あずにゃん」 「全く…なんで居残りなんか…」 「いやぁ久しぶりに赤点とっちゃってねー…」 「大丈夫なんですかこの時期に…」 「駄目だろうねぇ」 「私の為に成績を上げてください」 「あずにゃん寂しかったんだねぇー」 なんて呑気に笑う唯先輩を睨みながら、歩くペースはゆっくり。 今日は昨日の分もお話して帰るんだ。なんて考えたり。 そして今日は… 「あっ」 そこで私は今更気付いた。 話に夢中で気付かなかった。 唯先輩手袋つけてる… 一昨日はつけてなかったはず… 「どうしたの?あずにゃん」 「先輩、手…」 「んー?あぁ手袋…今日は特に寒そうだったからつけてきたんだよぉ」 ぶーくろちゃん!とか言って私に見せつける。 …手袋のことをこんなに疎ましく思ったのは初めてかもしれません。 タイミング悪いです…なんで今日… 「マフラーは忘れちゃったんだけどね」 「抜けてますね」 「えへへへへぇ」 「褒めてないんですけど…」 「ほらぁぶーくろちゃん!私の彼女さんだよー」 …んー… こうなったら昨日の澪先輩に学ばせて頂こう。 確か、こうおずおずと唯先輩の手に触れて… 「んー?あずにゃんも寒いのー?」 「あ、いえ、そういうわけでは」 「それじゃあ、片方貸してあげようか?」 「いえ…いいです」 駄目だ…この人には通じないようだ。 ていうか澪先輩は天然であれやってるんだろう。うーん…凄いなぁ。 じゃあ…話題をふって… 「そ、そういえば昨日は帰る途中律先輩と澪先輩に会いました」 「へー、買い物だったっけ?」 「はい、確か」 「ふむ…」 「そ、それで二人が不意にですね…って、どうしたんですか唯先輩」 「なんかお腹空いちゃったなぁ」 「…はぁ」 「私たちも買い物しよっか」 「………はぁ」 「はぁ、肉まん美味しい」 「…」 んー… からし付けすぎました。からい… はぁ。どうやったら唯先輩と恋人繋ぎできるのかな。 肉まんを持つ手で更にバリケードは強くなる。 どうすれば… 「あずにゃん…本当にごめんね」 「えっ?何がです?」 「昨日の事まだ怒ってるよね…」 「へ、いや、そんな」 「あずにゃんずっと難しい顔してるし…」 しまった、顔に出ていたか。 「違います!ちょっと…考え事というか…」 「何の?」 あなたと手を繋ぐことです。 何て言えるはずもなく。 「悩みがあるなら何でも言って?」 「いえ、別に…」 「頼っていいんだよ!あずにゃんは私の彼女なだから」 ……… 「じゃあ、唯先輩」 「ん、なあに?」 「私、彼女は嫌です」 先輩の顔から笑顔が消えた。 「えっと…どういう、こと…」 動揺したかの様に目を泳がす唯先輩。 …あ、しまった、さっきのじゃまるで別れ話を切り出したみたいだ。 違う違う。そういう意味じゃなくて… と、そこで私は急いで唯先輩の食べかけの肉まんを奪って、一気に飲み込み。 先輩の手袋を外し… ギュッ 「恋人、がいいです」 なんて。 いいながら指を絡ませる。 暖かい。それでいて、少し汗がついてるのか、しっとりしてる。 あぁ、これが恋人繋ぎ。 ワクワクしてドキドキしてる。 うん、純愛っぽい。 当の唯先輩は少し目に涙を溜め、驚いているような表情をしている。 「…びっくりさせないでよー」 「す、すいません…」 「別れたい、とか言われるかと思った」 「まさか」 有り得ない。 唯先輩と一緒に帰れなくなるのは、嫌。 こんなふうに。 「肉まん、後でまた買いに行きます」 「うん…えへへ、なんか恥ずかしいね、これ」 「そ、そうですね」 「なんか私たち、恋人同士っぽい」 「そうでしょう…」 「確かに、彼女っていうのも、ややこしいしねー」 「はい、唯先輩だって可愛いんですから…」 「…あ、あずにゃん…」 「あ、いえ、その…」 「ふふふ、あずにゃんも可愛いよ」 「…うるさいです…」 …という感じに、その後は無言で帰りました。 律先輩と澪先輩のお気持ちが今なら解ります… 恥ずかしくて、嬉しい。 あぁ、私たち今、純愛してる。 私たち今、恋人してる。 END 良いなぁこういう純愛話…ほっこりするよね^^* -- (るん) 2012-05-12 04 58 25 ビバ!!純愛 -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 09 53 49 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/90.html
「ねーねー」 「なんですか? 唯先輩」 いつもどおり唯先輩のお部屋にお邪魔をして、いつもどおり膝枕をしてあげて、頭を撫でていると、唯先輩に声をかけられた。 「あずにゃんってさ、好きな人、いる?」 「好きな人ですか?」 なんと性格の悪い人だろう。こんな解りきったことをわざわざ私の口から聞き出そうなんて。 唯先輩がにやにやと笑っているのがなんとなく気に食わなかったから、顔を手のひらで覆ってやることにする。……尤も、私に手のひらじゃ全体を覆うことはできなかったけど。 「いませんよ、好きな人なんて」 まぁ嘘ですけど。たまにはこれぐらいしてやらないと日頃いじられている私の気が済みませんし。 これで少しぐらいは動揺してくれるかと思ったけど、現実はそう甘くなかった。顔を覆っていた手のひらをどけてみると、唯先輩はさっきと同じ――いや、それ以上のにやにやした目で私を見ていた。 「好きな人いないんだぁ~、へぇ~」 「なんですかその言い方。まるで私が嘘吐いているみたいに」 「吐いてるじゃん」 間、髪を入れずに突っ込まれた。 さっきまでのにやにやとした目から一転、じとーっとした目で私を見てくる。 「……なんですか」 「どうして嘘吐くの?」 「さぁ、どうしてでしょうか」 原因はあなたですけど。 これまでもそう。何度も何度も手を変え品を変え私の口から『好き』だという言葉を言わせようとする。 もしかしなくても私が恥ずかしがる姿を楽しんでいるとしか思えません。趣味悪いですよ。 「そうじゃないんだけどなー」 「じゃあどうだって言うんですか」 「だって、好きな人には好きって言ってもらいたいから」 この人は……本当に卑怯だ。こんな恥ずかしいことを簡単に言ってしまうなんて。 だから私も反撃してみる。 「それじゃ、唯先輩は私のことが好きなんですか?」 「うん。世界で一番愛してるよ」 「……」 本当に、この人は……。愛してるなんてそんな簡単に言っていい言葉じゃないでしょうに。 こんなことを真顔で言われてときめかない訳がない。私は赤くなった頬を隠すようにそっぽを向く。 「どうしたの? あずにゃん」 「先輩は、本当に卑怯ですね」 「うん?」 だから、この人にも私と同じぐらいの羞恥を味わわせないと気が済まない。私もこれ以上の羞恥を味わうことになるけど、それはもうどうでもいい。 「唯先輩」 「なに?」 「私も、唯先輩のことを愛しています」 「……」 そっぽを向けていた顔を戻して、真正面から唯先輩の目を見据えて言うと、しばらくして唯先輩の頬がぽっと赤くなった。 だけど、恥ずかしさよりも喜びのほうが勝っているらしい。唯先輩は赤くなった頬を隠そうともせず、笑顔で私に抱きついてきた。 「わっ」 「やっと言ってくれたね」 急に何するんですかと言おうと思って口を開いたけど、言葉が喉に詰まってしまった。 その原因は―― 「もう、何泣いてるんですか、唯先輩」 「だって、嬉しかったんだもん」 「嬉しいからって人の肩で泣かないでください。制服が汚れちゃうじゃないですか」 この人の涙で汚れるのならそれはそれでいいかもしれないけど。 ……いやいやそれはだめだろう思考が変態になってるよ私。 「あずにゃん」 「なんですか?」 「好きだよ」 「……私もです」 「ね、ね、ちゅーしよ?」 「調子に乗らないでください」 Fin 2828 -- (名無しさん) 2012-10-16 20 37 16 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/71.html
「はぁ…」 最近、こうやって溜め息をつくことが多くなった気がする。 違う。紛れもなく多くなった。 そのせいか、この頃はまともに寝ていない。 自分の感情に違和感を感じたのが少し前。違和感の正体に気付いたのが、つい最近。 自覚をしてしまえば、答えはあっけないほどに簡単で、 けれど、それをあっさりと認めてしまえるほど私は器用な人間じゃない。 「どしたの、あずにゃん。なんか悩み事?」 「いえ、今日はちょっと寝不足で…」 先輩方に気付かれないよう溜め息をついたつもりだったけど、目の前には私をこんな風にした原因がいて、 しかも、顔が近いんですけど… 突然のことで身構える余裕のなかった私は自分が思っている以上に挙動不審なのだろう。 「だったら、私が膝枕をしてあげるよ~」 「け、結構です!」 「もう、あずにゃんったら恥ずかしがり屋さんなんだから」 一瞬でも諦めてくれたと思ったのが間違いだった。 「ひゃうっ!」 膝枕を諦めたかと思えば、今度は急に私に抱きついてきた。 助けを求めようと回りを見ても、皆さんこれをいつもと同じ唯先輩のスキンシップと捉えたようだ。 澪先輩はこちらに向けた視線を再び雑誌へと移し、ムギ先輩はただニコニコと笑っているだけ。 律先輩にいたっては「なんだかんだ行って、今日は素直なんだな、梓」と無責任なことを言っている。 …全然、素直なんかじゃないですよ。 素直になりたい自分と天邪鬼な自分とを天秤にかけてしまえば勝のは後者で、 素直になれない無器用な私はこうやって先輩を怒鳴る振りをして心の均衡を図るしかないのだ。 「ふふ、なんなら私の胸で寝てもいーんだよ」 唯先輩はずるい。 辛うじて平静さを保っていたのに、甘い声でそんな言葉を囁かれたら、おかしくなっちゃうじゃないですか。 振り払おうにも耳の奥で焼き付いてしまったそれは私の中で何度もリフレインする。 あぁ、きっと今夜も眠れない。 容易に想像できる情けない自分の姿に、また溜め息がこぼれた。 どうして、あんな人を好きになってしまったんだろう。 人に変なあだ名はつけるし、特に練習熱心というわけでもない。 そのくせスキンシップと称しては抱きついてくる。おまけに人の反応を見て遊んでいる節すらある。 その姿に入学するまで憧れを抱いていた私の幻想は一瞬のうちに砕かれた。 それこそ、毎日あんなにライブの録音を聞いていた自分が馬鹿みたいに思えるほどに。 「やっぱりムギちゃんの持ってくるケーキは最高だね!」 「唯ちゃんはとっても美味しそうに食べてくれるから、私も嬉しいわ」 上機嫌でケーキを頬張る唯先輩はまるで子供だ。 そんな唯先輩に気を良くしたのか、ムギ先輩は自分のケーキを小さく切り分け、フォークに突き刺すとそれを唯先輩の前に差し出した。 やめて、そんなことしないで… 「よかったら、これもどうぞ」 「ほんとに!ムギちゃん太っ腹だね!」 いくら私が祈っても願いが通じることはなくて、唯先輩は幸せそうな顔でケーキを口にする。 「唯ばっかりずるいぞ!てりゃー!」 「あー!りっちゃんずるーい!」 「何やってんだか…」 すると律先輩が唯先輩のケーキにフォークを突き刺し自分の口へと運ぶ。 すかさず唯先輩が抗議の声を上げ、二人のじゃれ合いが始まった。 澪先輩も仕方がないといった具合いに二人を見つめている。 何ひとつ変わらない部活の光景。 なのに、どうして私はこんなにも苦しいんだろう。 何か鋭利なものが胸を突き刺すような、そんな感触。 ズキズキと鈍い痛みがゆっくりと私の中を廻っていく。 楽しげな先輩方を見て泣きたくなるなんて、ちっともまともじゃない。 母親が子供にしてあげるように、ケーキを食べさせてあげるムギ先輩に嫉妬して 仲の良い姉妹みたいにじゃれ合う律先輩に嫉妬して そんな二人にからかわれて困っている澪先輩に嫉妬して 今だけじゃない。私は唯先輩と関わる全てのものに嫉妬している。 気を紛らわそうとケーキを口にしても広がるのはチョコレートの苦味だけ。 ムギ先輩が持って来たのだから、これもすごく美味しい…はず。 なぜか今日はそれが喉元を通らず、フォークを持った手が進まない。 「あれ?あずにゃん、食べないの?」 全然フォークが進まない私に唯先輩が目を輝かせて尋ねる。 あれだけ食べたのにまだ食べ足りないらしい。 「ええ、今日はちょっと食欲が湧かなくて…」 「えー!あずにゃん、具合いでも悪いの?」 一転して心配そうな唯先輩。 心なしか顔色が青くなっているように見える。 「大丈夫ですよ。全然、気にしないでください」 「でも梓、調子悪いみたいだし、あまり無理しないほうがいいんじゃないか?」 「そんなこと、ないですけど…」 心配をかけまいと何でもないよう振る舞ってみても、澪先輩が私の嘘を簡単に見抜いてしまう。 それに続くかのように、次々と優しい言葉をかけてくれる先輩方。 「とりあえず今日は帰って休め。これは部長命令だからな!」 「そうだよ。あずにゃんの体が一番大事なんだから」 「元気になったら梓ちゃんの大好きなたい焼きを持ってくるわね」 「梓、もし悩み事があるなら、いつでも相談に乗るからな?」 律先輩も、ムギ先輩も、澪先輩も、それに唯先輩も私をこんなに心配してくれる。 それなのに私は唯先輩が他の先輩と楽しそうにしているのが嫌で… 優しい先輩方に醜く嫉妬しているなんて、なんて嫌な後輩なんだろう。 最低だ、私… 「あ、あずにゃん、どうしたの?急に具合い悪くなっちゃった?」 急におろおろと慌てる唯先輩。けれど、その姿はどこか歪んでいて… もしかして、私、泣いているの? 一番それに気付いてしまえば、もう我慢するこてなんて出来なくて、私は堰を切らしたかのようにただ泣きじゃくる。 唯先輩は私の体を優しく抱きしめ、子供をあやすように何度も頭を撫でてくれた。 あれから唯先輩の胸で散々泣いた私は、気が付くとベッドの中で眠っていたようだ。 ここ数日、眠れない日が続いていたため肉体的も精神的も限界だったのかもしれない。 目を開けば真っ先に映る真っ白な天井。そして私の髪に触れる柔らかな掌の感触。 「あ、あずにゃん起きたんだね?」 「…ここは?」 「保健室だよ。泣きやんだら急に倒れちゃうんだもん、心配したよ?」 でも、大したことがなくてよかったと微笑む唯先輩。 辺りを見回しても他の先輩はいない。 「ご迷惑をお掛してすみませんでした」 「全然、気にしなくていいよ。あっ、でも…」 私の頭を撫でながら、唯先輩が優しい口調で言う。 「今日みたいに何か悩み事があるなら相談してほしいな。あ、でも私じゃ頼りない…かな?」 照れ臭いのか、自分の頬を指でかく唯先輩。 思うように言葉が出てこない。代わりに私は首を横に振る。 そうだ。こんなにも簡単なことだったじゃない。 すぐコードは忘れるし、練習よりもティータイムやゴロゴロすることを優先するし、でも、それだけじゃないんだ。 誰よりも真っ直ぐで、優しい、そんな人だったから、私は唯先輩のことを好きになったんだ。 「…あずにゃん?」 「………が……き、です…」 聞こえないといった表情の唯先輩。 先輩の体に抱きつく形で私はもう一度同じ言葉を口にする。 「私、唯先輩のことが、好きです…」 ずっと伝えることはないと思っていたのに、声に出して言ってしまった。 だけど不思議と後悔はなかった。 唯先輩は何も言わない。 私は先輩が耳を傾けてくれると信じて、ゆっくりと自分の素直な気持ちを言葉にしていく。 「嫉妬…していたんです。先輩方に。唯先輩が他の人と楽しそうにしているのが辛くて…」 「……………」 「学校でも、家でも、そんなことばかり考えてしまって…ずっと…眠れなくて…」 そこまで話して言葉が詰まる。 目頭が熱くなる。だけど泣いちゃ駄目。最後まで自分の気持ちを伝えなきゃ… 「好きになってごめんなさい…でも、自分じゃどうしようも出来なくて…」 ギュッと目を瞑って、唯先輩の返事を待った。 やがて、ゆっくりと体を離す先輩に私は身を固くする。 「顔上げてこっち向いて、あずにゃん」 「唯、せんぱ…」 顔を上げると同時に、ちゅっと軽く湿った音と共に柔らかな感触が唇に伝わる。 涙でぼやけた視界の先には真っ直ぐな瞳で私を見つめる唯先輩。 「いっぱい辛い思いをさせてごめんね。私も、あずにゃんのことが好きだよ」 耳元で甘く囁きながら抱きしめられる。 密着した体から伝わる先輩の鼓動。鼻孔をかすめる先輩の匂い。 それだけで私の体温は上がり、熱くなった頭が少しずつ理性を溶かしていく。 唯先輩の手が私の腰へと回り、それに応えるように私も先輩の首に手を回す。 そして、互いの気持ちを確かめるかのように何度も口付けを交した。 一方、蚊帳の外 律「心配して様子を見に来たら、こんな展開かよ…」 澪「ひゃっ…あ、あんなこと…」 紬「……………」 律「んー。ムギどうした?さっきから何も言わないけど…って、立ったまま気絶してる!?」 澪「た、大変だ!保健室に連れて行かなきゃ!」 律「澪、落ち着け!保健室は目の前だ!」 澪「そうだった…でも、二人があんなんじゃ入っていけないよ…」 律「ムギ起きろ!うわっ、ムギから大量の鼻血が!?」 澪「血怖い。血怖い。血怖い。血怖い。血怖い…」 律「澪しっかりしろー!あいつらー後でたっぷり文句言ってやるからな!」 紬「ゆいあず…すごく、美味しいです…」 こ、これは・・・!! ドバドバ -- (4ℓの噴水(赤)) 2010-08-30 11 18 41 立ったまま気絶すんなw すごく、美味しいです -- (名無しさん) 2014-08-27 22 53 46 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/763.html
講堂に移動した私達は、舞台上で演奏前の最後の準備を始めた。その間、唯先輩は舞台そでから客席の様子をチェックしている。 そして、戻ってくるや否や『凄い!』という言葉が…。何がどう凄いのかはわからなかったけれど、とりあえず期待を胸に、幕が上がるのを待った。 唯先輩はポジションに就くと、私達にアイコンタクトを送ってくれた。特別な会話は無いけれど、唯先輩の言いたい事はわかったので、私は微笑み返した。 『あずにゃん、頑張ろうね!』――――――――――『はい!頑張りましょう!』 「皆さん、こんにちはー!放課後ティータイム、ギター兼ボーカル担当の平沢唯です!ベース兼ボーカル担当は秋山澪ちゃん!ドラム担当は部長の田井中律ちゃん! キーボード担当は琴吹紬ちゃん!そして、もう一人のギター担当は私達の後輩、中野梓ちゃん!」 幕が上がり、唯先輩のMCから始まった私達のライブ…。目の前に広がる光景に、私達は驚きを隠せなかった。唯先輩が言った『凄い』の意味とは…。 講堂内は満員の状態で…それだけでもビックリするのに、さらに皆が私達と同じTシャツを着てくれていた。前の方で観てくれている憂と純も…。 私達だけではなく、会場全体が一体となり、さらに大きな声援を送ってくれている…。これは、まさに先輩達が目標に掲げていた『武道館ライブ』そのものだった。 先輩達との最後の学園祭ライブ…1曲1曲を私は全力で演奏し、1分1秒をしっかりと心に刻んだ。気付けば、あっという間に3曲目を終えていた。 「今の曲は『わたしの恋はホッチキス』という曲目だったんですが、皆さんは恋…してますか?…私は、今凄く素敵な恋をしています♪ ドキドキしたり、心が温かくなったり、胸がキュンとなったり…その子の事を考えるだけで、毎日が楽しくなってくるんです! 恋って…良いですよね!恋って、毎日が生き生きするし、自然と笑顔にもなれちゃう、素敵な魔法だと思ってます!」 皆と一体になれる…ライブって良いな…。余韻に浸りながら唯先輩のMCに耳を傾けていた。MCは唯先輩の恋についてのエピソード…。 私は、ただ『恋をするって素敵ですね』という話だけで終わるものだと思っていた…のに…。 「私は、今日…そんな素敵な魔法をかけてくれた子に、私の気持ちを伝えようと思っています。恥ずかしいんですけど、これが私の初恋なんです。 その子は、私にとっての初めての後輩で、凄く真面目な子なんです。それでもって凄く可愛くて、私が困った時や、他のメンバーが困った時には、 すぐに手を差し伸べてくれる、とっても優しい子なんです。…私は、そんな素敵な後輩…中野梓ちゃんに恋をしています」 私は、唯先輩の方を見たまま動けなくなった。そして、あれだけ聞こえていた大きな歓声が…何も聞こえなくなっていた。 唯先輩の恋の相手が私…。いや、もうそれほど驚く事では無かったけど、今のこの状況…大勢の人の前で…。私は…何も考えられなくなっていた。 「今から、私は1曲歌います。それは…私の大好きな…中野梓ちゃんの為に歌う曲です」 もう…何が何だかわからない…。今はライブ中なんだよね…。『わたしの恋はホッチキス』が終わったから、次は『ふわふわ時間』だよね…。 それなのに、唯先輩が1曲歌うの…?しかも、私の為…?皆の前で、大好きとか、恋をしてるとか…そんな…。私、もしかして夢見てる…? 「…梓、聴いていてね…『Y to A~キミへの想い~』」 えっ…?…唯先輩、今私の事…。いつも、あずにゃんって呼んでくれてるのに…梓って呼んだ…?これって、やっぱり夢? 混乱する中、初めて聞く曲が私の耳に入ってきた。唯先輩が歌っている…律先輩、澪先輩、ムギ先輩が演奏している…私は聞いているだけ…。 ♪ ひらり舞う桜の季節 キミに出会えた Like だった私の心を…キミは さらって Love に変えてしまった 私をドキドキさせるキミへの想い 夢の中でもキミと会えますように いつでもキミと一緒(とも)に居たいから… はにかむキミの笑顔に…私はドキドキしちゃったの 夏祭りで上がった花火 キミと見ていた 輝いているキミの瞳に…私は のめり込んでいってしまった あの花火に願ったキミへの想い ずっとキミと一緒(とも)に居られますように 最愛のキミを守りたいから… 頑張るキミの横顔に…私はキュンとしちゃったの 抱きつくのはキミのぬくもりを感じたいから… イヤと言われると凹んじゃうけど… 好きだからやっぱり甘えちゃうの… キミといるだけで心が温かくなるよ…キミと 出会えて本当に良かった…だから伝えたいの 好きだよ 世界一大好きだよ…! ♪ それはあっという間だった。私は頭が真っ白になっていて、正直…唯先輩の歌ってくれた歌詞をほとんど覚えていなかった。 いや、覚えていられるほど気持ちの余裕が無かった。だけど…沢山の愛情を注いでもらった事はわかる…。 そして…歌詞は覚えていなくても、凄く感動的な告白をされた事もわかった。…今の私には…唯先輩しか見えていなかった。 2人だけに照らされたスポットライト…。時間が止まり、この世界には私と唯先輩しか居ないかのような感覚に陥っている。 現実なのか夢なのかもわからない…。こんな事、現実であってほしいよ…だけど、もしも夢なら…永遠に醒めないで…! 「これが…私の気持ちです。だから…私と付き合っ…」 私は、唯先輩に抱きついていた。体が自然と、唯先輩のぬくもりを求めていた。唯先輩のぬくもり…しっかり感じる…。 良かった…夢じゃないんだ…。本当に私…唯先輩から告白されたんだ…。聞こえなかった皆の歓声も、今はしっかり聞こえる…! 大粒の涙で、目がにじんでいたけれど、憂と純がこっちを見ながら喜んでくれているのがわかった。 告白をされた…だったら、しっかり返事をしなきゃ…。想定外すぎて、ちゃんと声が出なかったけれど…私は精一杯気持ちを伝えた。 「私も…大好きです…」 抱き締め合う私達を祝福してくれるかのように、唯コールと梓コールが講堂内に大きく響いていた。そこは…2人が主役の世界になっていた。 もしかしたら、昨日の澪先輩と律先輩よりも主役として目立ってしまったかもしれない。ここには、その2人とムギ先輩も居るのに、何か申し訳ないな…。 私は徐々に落ち着きを取り戻し、唯先輩から離れた。そして唯先輩の顔をジッと見つめ、愛しさを感じながら小さく微笑んだ。 「みんなぁ、ありがとぉー!!みんなには感謝の気持ちでいっぱいですっ!まだまだみんなの前で沢山演奏したいけど、次が最後の曲になってしまいました! 今日、この瞬間を…みんなと一緒に過ごせた事を心から感謝して…精一杯歌います!!聴いてくださいっ!『ふわふわ時間』!!」 唯先輩のMCから、最後の曲が始まった。とっておきのサプライズもあった学園祭ライブだったけれど、私達は最後まで無事に演奏する事が出来た。 ライブも無事に終わった後、私は唯先輩に体育館の裏に来てほしいと伝えた。どうしても、唯先輩に伝えたい事があったから…。 ただ…まだ興奮冷めやらない中だったから、どんな表情で…また、どんな口調で唯先輩を誘いだしたかは自分でもよく覚えていなかった。 約束の時間は30分後…。まだ学園祭は行われているけれど、学校内で唯一と言っていいほど、誰も居ない場所…。そこで、私は唯先輩を待っていた。 「お待たせ、あずにゃん…どうしたの、こんな所に呼んで…」 私の考えていたシナリオはここからが始まりだったんだよね。唯先輩は何でここに呼び出されたのか…まぁ、本人は多分わからないだろうなぁ。 誰も居ない体育館の裏…。唯先輩に表情を見られないように、背を向けて少し話を始める。少し話をして、クルリと唯先輩の方を向き、想いを伝える…。 『好きです…私と付き合ってくれませんか…』少し上目遣いでドキッとさせれば、きっと告白は上手く行く…!と思ってたのに…。 あんな告白されて…思い出すと顔が赤くなって、ドキドキが止まらないよ…。だから私は、シナリオとは違うけど、表情を見られぬように唯先輩に背を向けていた。 「今日のライブ、お疲れ様でした」 「うん、お疲れ様ぁ…」 よし、変に声が上ずったりしてないよね…。少し、口調が厳しいかもしれないけど…これくらいは我慢してくださいね。 本当は…もう、恋人同士になっているわけだから『唯センパーイ♪』って言いながら抱きつきたいくらいだけど…それも暫く我慢…! 「あずにゃん…?」 「あんな大勢の人の前で、あんな告白するなんて…何考えてるんですか。私の気持ちも考えてくださいよ…」 あの告白は嬉しかったけど、想定外過ぎて歌詞が聴き取れなかった…。心には残ったけど、インパクトが強すぎたから…軽く文句を言ってみた。 「まったく…あんな告白するなんて、唯先輩はズルいです」 「ゴメン…」 「…まぁ良いですけど。何で私が体育館の裏に唯先輩を呼び出したかわかりますか?」 何も無ければ、ここで唯先輩に告白する為…だけど、告白されちゃったから、別の理由で呼び出したのだけれど…。唯先輩にはわかるかな? 「ゴメン…わからないや…」 …でしょうねぇ。まぁ、その反応は想定内だったから…唯先輩を呼び出した本来の理由を話す事にした。 「小学校の時に聞いた話なんですけど…女の子が好きな人に告白をするのは、体育館の裏が一番良いみたいなんです。滅多に人が来ないし、 他の人に話を聞かれる心配も無いから…。たとえフラれたとしても、1人でこっそりと涙を流す事ができるから…。 昨日も唯先輩には話しましたけど、今、私がしている恋が初恋なんです。だから私は今日、初恋の相手に告白をしようと考えてました。 1ヵ月前から、今日、この場で告白しようって考えてたんです…。それなのに…その相手から、一生忘れられない告白をされました。 あんな告白、私からできるわけないじゃないですか…。だから、唯先輩はズルいんです。私よりも一歩二歩…いや、全然追いつけない所に 進んでいるんですから。あんなカッコいい姿見せられたら…あんな感動的な告白されたら…もっともっと大好きになっちゃうじゃないですか!」 …思わず熱くなりすぎてしまった。まぁ、何が言いたいかといえば、唯先輩には全く敵いませんって事…。私の心を掴んで離さないんだもん…。 「私の考えてた事、何か小学生そのものみたいで、凄くカッコ悪いです…。告白も唯先輩からされて、計画も全部台無しですよ…」 「ゴメンね、あずにゃん…」 嬉しかったけれど、ほんのちょっとだけ先を越されてしまった告白…。自分から想いを伝えられなくて、ちょっと悔しい気もした。 だから、これだけは唯先輩からではなく、私からしたくて…。後ろから優しく抱き締めてくれた唯先輩の腕を解き、私は唯先輩の顔を見つめた。 「だから…」 「…」 唯先輩は、まさか私からこんな事するなんて…思ってなかったんじゃないかな…。油断…いや、無抵抗の唯先輩の唇を、私はサッと奪った。 告白は唯先輩からだったから…せめて、キスは私からしたくて…。わ、私だって本気で唯先輩の事を好きという気持ちを伝えたくて…。 それに、こんな大胆な事ができるのは…誰にも邪魔されない場所だったから…。だから、体育館の裏なんですよ、唯先輩…。 キスによって…私がどんどん唯先輩の色に染まっていく…そんな感覚が嬉しかった。 「だから…キスは私からしちゃいました///…別に良いですよ…ね?」 「勿論だよ…梓からのキス、とっても良かったよ」 「唯先輩…」 ライブの告白の時と同じように…私の名前を呼んでくれた唯先輩…。普段と違う呼び方だけでも、とっても新鮮な感じで…ドキッとしちゃうよ…。 「先輩、は要らないよ、梓…」 「うん…ゆ、唯…」 ついに私も…呼び捨てで呼んでしまった。唯…かぁ。呼ぶだけでも、何か照れちゃうなぁ。…なんて考えていたら、今度は唯から唇を奪われちゃった。 「大好きだよ、梓…」 「私も…好きだよ、唯…」 唯との距離がだんだんと近くなっていく…それは、夏祭りの時から少しずつ感じていた。昨晩のお泊まりの時には、その距離は手が届く所まで近くなっていた。 そして今日…大勢の人達の前で、その距離はゼロになった。私と唯…それぞれの初恋が成就した瞬間だった。 「そうだ…唯がさっき歌ってくれた曲…あの歌詞って、唯が考えたんだよね?」 「うん、そうだよ。作曲はムギちゃんがしてくれたんだ。だから、ムギちゃんはこの告白には一番力になってもらった人なんだよ」 「そっか…。ねぇ、その歌詞って今見る事できるかな?」 「できるよ~。私、ちゃんと歌詞カード持ってるから♪」 私は唯から歌詞カードを受け取ると、聴き取れなかった部分を読み返してみた。…まぁ頭が真っ白で、ほとんど聴き取れなかったんだけどね…。 この曲のリズムは覚えていたので、リズムに合わせて歌詞を追ってみた。すると、あのライブ会場で再び告白された感覚になったので…思わず笑みがこぼれてしまった。 「この歌詞、梓への想いをたっぷり込めて作ったんだよ…三日三晩寝ずに♪」 「えぇ!?」 三日三晩寝ずに…まぁ、それが本当かどうかはわからないけど…。でも、唯が私の為に歌詞を作ってくれたっていう事が凄く嬉しかった。 もう…毎日でも歌ってほしいくらい…。凄く嬉しくて、何度も何度も歌詞を読み返していた。その時…私はこの歌詞の秘密に気付いてしまった。 「あっ…」 「どうしたの?」 私の為に作ってくれた歌詞…聴いているだけでは、決して気付かないであろうメッセージが、そこにはあった。 本当に何気なく…歌詞の一番最初の文字だけを読んでみたんだけど…まさか、こんな所にも告白メッセージがあるなんて…。 「唯ったら…こんなメッセージを…///」 『ひLさ私夢い は 夏輝のあず最 頑 抱イ好キ出好』⇒『ひらさわゆい は なかのあずさ が だいすきです』 隠されていたメッセージ…。私の答えは勿論…。 「中野梓も平沢唯が大好きです…」 2人だけの世界を堪能して、どれくらい時間が経ったんだろう…。お互いを梓、唯と名前で呼び合う関係になったわけだけど…。 フッと現実世界に戻ってくると、まだ呼び合いに慣れていないせいか、思い出しただけで2人とも顔が赤くなっていた。 大胆に攻めたキスの事も…思い出すと、私は茹でダコ状態になっていた…。そんな状態でも、差し出された唯の手をしっかり握っていたけどね…。 「唯…」 「な~に?梓…」 「よ、呼んだだけ…///」 「もう…梓!」 「ふぇ!?…な、何、唯…」 「…呼んだだけ///」 きっと…いや、皆の前でこんな事をやっていたら、100%バカップル認定だよなぁ…。誰も居ない体育館の裏で良かった…。 私は、唯に名前を呼ばれ、唯に見つめられ、唯とキスをして…余韻に浸って、冷静になって赤面して…また唯に名前を呼ばれ…を繰り返していた。 まぁ、唯からの受けだけじゃなくて…私も唯の名前を沢山呼んだし、唯の事をずっと見つめてたし、キスも…堪能しちゃったけどね/// 翌日、私が登校すると、早速色々な人から声をかけられた。『昨日は感動したよ!』『幸せになってね!』『校内認定カップルおめでとう!』…へっ!? 校内認定カップルって…何ですか、それは!?…唯に話を聞けば、学校内で公に認められたカップルの事って…良いんですか、学校が公に認めて…。 「唯×梓ファンクラブ…?」 「な、なんですか、これはー!?」 そしてもっと驚いたのが、新しく私達のファンクラブができていた事…。きっと律先輩が、面白がって作ったに違いない!…私は律先輩に説明を求めた。 「唯×梓ファンクラブ…これで、『ゆいあずファンクラブ』って読むらしいぜ♪」 「そんな事聞いてるんじゃないんです!律先輩、こんなファンクラブを勝手に作らないでください!気持ちは凄く嬉しいですが!」 「私じゃないし!…って、嬉しいのかよ!?」 軽音部の部室にファンクラブのポスターがあるって事は、少なくとも軽音部の関係者か、軽音部に近い人が作ったと思うんだけど…。 ムギ先輩でも、澪先輩でも無い…残る可能性と言えば…。 「私は衣装しか作らないわよ…最近徹夜続きで疲れてるのに、ファンクラブなんて作ってる余裕無いわよ…」 顧問のさわ子先生でも無いかぁ…。だとすると、一体誰が…。軽音部に直接関係ある人では無くなった。となると、あとは軽音部の知り合いかな…。 もしかして…純が、また私をからかう為に!?…なんて思ったけれど、ファンクラブの会長は唯と私に最も関わりのある人だった。 「私、一応2人の恋の相談に乗ってあげたわけだし…これくらい良いでしょ♪私、2人の恋を応援するって決めたんだから! …お姉ちゃんと梓ちゃんには、もっとラブラブになってもらわないとね♪」 憂だったのね…。2人が恋人になったという事で、憂から色々話を聞かせてもらった。憂は、私が恋の相談をした翌日、唯から私とのデートの相談を受けたそうだ。 と言う事は…夏祭りの前から、私達はお互いに相思相愛だったって事なのね…。嬉しいと言うか、もっと早く気付きたかったなぁ…。 私達の噂は、校内だけでなく、町内にも広がっていた。違う学校の人からも声をかけられるようになってしまい、私達は町内一有名な女子高生になってしまった。 ファンクラブ会員数も1000人を超えたとか…。そこまで望んでなかったんだけどなぁ…。と言うか、2人だけのゆっくり過ごせる時間も欲しいよぉ! 「私の告白って…そんなに凄かったのかなぁ」 「破壊力ありすぎだよ…」 まったく、この人は…。自分がやった事がどれだけ凄い事か、わかってないのかなぁ…。まぁ、唯らしいと言えばそれまでだけど…。 でも…何だかんだ言っても、皆から声をかけてもらえると嬉しいな。私達の事を応援してくれる人も多いけど、放課後ティータイムのファンになってくれた人も多い。 高校生活が、こんなに素晴らしいものになるなんて、夢にも思わなかった。今、唯に言いたい事…それは…『貴女に出会えて本当に良かった』と…。 「どんな事があっても…これからも、ずっと一緒に居てね。私が梓の事…守ってあげるから…」 「はい…宜しくお願いします///」 お互いを信頼して支え合う、2人で1つの関係…私達の固い絆に勝るものは無いよね、唯♪ 2人で指を絡め、ゆっくりと進んでいく道…その先に繋がる未来でも、ずっと2人で歩いて行けたら良いなぁ。 END 凄く良い!癒されたよ GJ!!!! -- (名無しさん) 2010-09-01 18 26 04 歌詞も凄いッ!誰か曲付けてくれないかなぁ -- (通りすがりの百合スキー) 2010-12-20 01 51 20 歌詞いい -- (名無しさん) 2012-09-21 21 25 06 唯梓最高!これまでにない名作だ!唯先輩凄い!僕の好みな、みんなの前での告白最高!凄いごちそうさま!梓ちゃんも良かったね♪なんか泣けて来た…てか町内一有名になったなんてこりゃ将来HTTは色んな意味で大物になる!もしかしたら親も公認?マジで!?凄いな!唯先輩の告白。あずにゃんも幸せになってくれ!!いや…いやでも幸せになるな。僕も唯×梓ファンクラブに入ってます!これマジ名作!終わり方が超スケールでかくて、ハンパない! -- (あずにゃん) 2013-01-17 22 16 56 よかった -- (名無しさん) 2013-07-30 00 50 01 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る