約 128,334 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2204.html
ゼロと使い魔の書 第二話 「……ねえちょっと!聞いているの?」 「聞いている。相槌を打ったほうがよかったか?」 自室で使い魔の仕事を説明している間、ルイズはずっと困惑していた。 自分の使い魔が貧弱そうな平民だった。それはまだいい。前例がないだけで使い魔には違いないのだから。 問題はその平民の性格というか態度というか、自分が接してきたどの平民よりも、いや、どんな人間よりも生気というものが希薄だった点だ。 ただ、そこに存在している。空気のように。 呼びかければ反応するし、普通に呼吸しているからゴーレムの類ではないのは確かだが、その姿はまるで長い年月を生き終わった老人のようであった。 ルイズはまだ就寝までに時間があることを確認すると、当初の予定を変更した。 「今度はあなた自身のことを話して」 「俺はお前に仕える。それでは不十分なのか?」 優しさも厳しさもない、冷め切った目をして聞かれるとルイズも一瞬言葉に詰まる。 好奇心で聞いた。とは、なんとなく言えそうにない雰囲気だった。 「と、当然でしょ!?貴族たるもの使い魔のことをよく知ってなければつとまんないもの」 とっさの一言にしては理屈が通っている。内心そう思った。使い魔もそれで納得したらしい。 「なるほど。ところで話は変わるが、これが見えるか?」 ……やっぱり聞いてないんじゃないか。そう思わせるほど露骨な話題転換だった。 「……それがどうかしたの?やけに装丁が頑丈そうな本だけど」 使い魔は無言で本を開いた。 「……?これ何語?見た事もないわね……」 ここへきて初めて、僅かに、使い魔は表情を変化させた。 「読めないのか、ならいい。面倒だがな」 「な、なに偉そうな口きいているのよ!」 使い魔は完全にスルーした。どうもいけない。主導権はこちらになくてはいけないのに。 さっき思いついた「餌付けによる格差見せつけ作戦」も、鞭による調教も、はたしてこいつに堪えるかどうか…… ルイズは内心頭を抱えた。 話はルイズの予想の遥か斜め上をいったものであった。 「月が一つですって!?人間の目が一つしかないのと同じくらい違和感あるわよそれ……」 「俺にとっては二つある方が違和感がある。ようは慣れ親しんだ環境の違いだろ」 月が一つしかない、魔法がない、身分制度がないなど夢にも思ったことのない世界から使い魔は来た、ということらしい。 要点をかいつまんだ的確な説明もあって、ルイズにはそれらを全て妄言と片付けることができなかった。 「……まあ、いいわ、信じてあげても」 「そうか、それはよかった」 そんな棒読み口調で言われてもね。 再び訪れる重すぎる沈黙。 使い魔は話が終わるや否やさっさと窓辺に近寄り、草原を飽きもせずに眺めていた。 「……あんた、もしかして帰りたいって思ったりしてる?」 ここまでそっけないのは実は召還されたことに対する当てつけではないのか、と考えたルイズは聞いてみた。 言葉が響き、余韻が残り、再び静寂が訪れた頃。 「元の世界では、ある男に復讐するために生きていた。それが俺の存在理由で、生きる意義だった。だがそれも終わった今、元の世界に帰りたいとは思わないな。理由がない」 淡々と事実を告げるような口調に、背筋が寒くなった。なんと声を掛ければよいのか分からない。 同時に、自分の使い魔がなぜここまで無気力なのか理解した。 要するに、この男には今、生きる目的がないのだ。 簡単な魔法もろくに使えず、周囲からゼロゼロ言われて育ってきた自分でも、自分の生を余すことなく復讐に費やすなんて生き方は想像もつかなかった。 数瞬の間の後、ルイズはなんでもないように、でも内心勇気を奮って、言ってみた。 「なら、丁度よかったじゃない。メイジの使い魔。命を張って頑張ってもらうわよ!」 自分の言葉をどうとるか。使い魔が振り返った。 顔は陰になってよく見えないが、そんなに悪い表情ではなかったように思う。 「そうだな。当分世話になるよ。ご主人様」 口調もやわらかになった……というのは、ただの希望的観測かもしれないが。 「さてと、しゃべったら眠くなっちゃったわ。おやすみタクマ」 ルイズは服を脱ぎつつ、それらを自分の使い魔に放っていく。 「それ、明日になったら洗濯しといて、あ、あとあんた床で寝てね」 言いつつ、ちらりと使い魔の方を見る。案の定、使い魔は下着を手に立ち尽くしていた。 表情は相変わらずだが、きっと内心動揺しているのだろう。優越感。 「洗い場はどこかな」 ……全然違った。 「じ、自分で探しなさいよね!それくらい!」 「それもそうだな」 だから何でそうなるの…… 仕掛けたのは自分であるが、ここまで肩透かしだと逆に敗北感が沸いてくる。 こいつわざとやってるんじゃないだろうな…… ルイズは馬鹿馬鹿しくなって、ベッドに飛び込むように潜った。 使い魔が隣の床に横たわっている。 かなり迷った後、毛布を上からかぶせた。なんで貴族なのにこんなやつに気を使わなくっちゃいけないのだろう。調子狂う。 ルイズは目を閉じた。隣の使い魔からは古本に似た独特の匂いがしてきた。 前ページ次ページゼロと使い魔の書
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/898.html
その少女はごく普通の生徒だった。 ルイズのように魔法が使えないわけではない。ギーシュのような浮名を流したりもしない。 キュルケの情熱も無ければ、モンモランシーのいじらしさも無い。 タバサのような宿命も持たず、マリコルヌほど怠惰でもない。 美しくもなく、醜くもない、ごく目立たない容姿をしていた。少ないながらも友達はいた。 人並に魔法は使えたが、将来を嘱望されるほどの才能があるわけではなかった。 絵を描くことが好きだった。 明確な将来を思い描くことはできなかったが、嫁いだ先でも趣味を続けられたらな、と考えていた。 優しさや思いやりを持っていたが、それは小心からくる自己保身の意味合いが強かった。 また、けして「貴族の優しさ、思いやり」といった分を超えることはなかった。 春の使い魔召喚の儀式が始まり、終わるまでは、少女は埋没しがちな一生徒でしかなかった。 初めてその使い魔を目にした時、少女は少しだけがっかりした。 有能、無能ということではなく、その見た目が少女の趣味にそぐわなかった。 有体に言って、バラバラ、ぐちゃぐちゃ。気色が悪かったが、呼んでしまった以上は仕方が無い。 自分が何を召喚してしまったかも知らずに、少女は使い魔と契約をかわした。 使い魔はベッドの上一面に本を敷き詰めていた。 それだけでは足りず、本は机の上にも雑多に積み置かれている。 恋愛小説、エッセイ、学術書、辞書、事典、ジャンルの方も負けずに雑多だ。 餌をボロボロとこぼしながら、一瞥のみの速さでページをめくっていた。 右足が本を押さえ、左足がページを手繰る。右手で食べ物を掴み、左腕はベッドの上で本を整理していた。 少女はなるだけ音を立てないように扉を閉めたが、使い魔は動きを止めた。 ページを動かす十分の一程度の速度で顔を少女へと向け、 「おかえりなさいスカラファッジョ」 「……ただいま」 机から飛び降り、床を這って少女へと向かってくる。 這わなければ移動できないわけではない。少女が嫌がるのを知っているというだけのことだ。 「ねえ、スカラファッジョ」 使い魔は笑っていた。口の両端が頬を突き抜けてしまいそうに笑っていた。 スカラファッジョと呼ばれた少女は恐る恐る笑い返した。 「お願いがあるんです」 すがるように抱きつこうとしたが、少女は重量に耐え切れず尻餅をついた。 これも、もちろん分かっていてやっている。 「欲しい物があるんですよ」 「わたしが用意できるものなら……ね、ねえちょっと重いわ」 「世界の情勢が詳しく知りたいのです。それが分かる物をいただきたい。私もこの国のため役に立ちたいのですよ」 そんなつもりが無いことは、少女もよく知っていた。それでも頷く以外何もできない。 「それとですね、馬が一頭欲しい。なるだけ頑丈なやつがいい」 「そ、そんな」 「そんな……なんです?」 「そんなお金……も、もうわたしのお小遣いはありません。これだけ本を買えば蓄えだって無くなります。父や母は厳しいし、お金が入る当てなんか……」 「スカラファッジョ」 使い魔は身体を押し上げた。顔と顔が近づき、少女に生暖かい吐息がかかる。 「私はあなたのためにつくしてきました。スカラファッジョという素敵な呼び名を考えてあげましたし、不幸な事故によってあなたの内部が露出した時には、きちんと施術してあげた」 少女の背骨を悪寒が貫いた。小刻みな震えが止まらない。 「少しくらい、私がいい目を見てもいいんじゃあないですか?」 長い舌が伸び、少女の頬を舐めた。唾液の跡が月の光に照らされている。 「それに、あなたは豊かな方だ。お金は無くとも物がある。その豊かさを哀れな使い魔にもお分けください」 長い舌が、今度は眼球を舐めた。溜まっていた涙を丁寧に舐めとる。 「ざっとこの部屋を眺めただけでも、かなりの不必要な物がある。たとえば絵を描く道具。魔法の勉強には不要のものです。ドレス、宝石。メイジには必要ありませんね。それに……」 いつの間にか、左腕が床に降りている。形だけは優しげに少女の胸を押しやった。 「あなたには、それ以外にも……売ることのできるものがあるんじゃあないですか?」 少女は口も開けず、瞬きさえできないで、ただただ震えている。 使い魔はそれを見て満足げに微笑むと、 「ま、その話はとりあえず置いておきましょう。もう夜も遅いことですしね」 来た時と同じように、蜘蛛のように床を這って机の上へと戻っていく。 荒い呼吸ながらも、ようやく少女は息を吸い、吐くことができるようになった。 「寝る前に掃除をしなければいけませんね。健康な肉体を作るためにはそれなりの環境が必要です。ほら、見てください」 ベッドの上に戻った左腕が指した先には、床に散らばった餌の食べかすがあった。 「汚いでしょう。これはよくない」 よろよろと立ち上がり、杖を構えた少女に向けて、使い魔がさらに続けた。 「そうそう、貴族たるもの食べ物を大切にする心もまた大切です。大丈夫、唾液には殺菌作用がありますから、床を舌で舐めたくらいではくたばりません」 少女が凍りついた。 「さ、べったりと綺麗にしましょうね。私はお仕置きが好きではありませんので、きちんとやってください」 ――今は目立つわけにいかない……だからお前で我慢してやるよご主人様。 本を読んでるフリをしながら、こっそりと床を覗き見る。 使い魔の表情は愉悦一色に塗り固められ、少女の表情は……。 ――いいぞォ……もっとだ。もっと絶望しろ。そしてその表情を私に見せろォォォ……! 湿気に紛れて天井裏に潜り、地面へ染み込んで隠れ、今日も無事に偵察を終えることができた。 誰にも気づかれず、誰からも悟られず、この学院の全てを手中に収めつつある。 だが、まだ足りない。もっと情報が欲しい。メイジは何ができて、何ができないのか。どうすれば死んで、どうすれば苦しむのか。 ――眼鏡のドラゴンは多少気になるが問題ねェ。桃色髪が召喚した女は……俺達に似た匂いがするが、今は様子見か。それよりヤバイのは緑色のバラバラ野郎だ。 だが、どれだけ危険な人間であっても問題は無いだろう。放っておけば何かをやらかす。 おそらくはそれによって多くの人が死ぬ。自分の楽しみは減るが、減った分の楽しみもまたある。 多くの人を苦しめて殺したバラバラ使い魔は、必ず調子に乗るだろう。 調子に乗った馬鹿を恐怖させ、殺す。それ以外も殺す。全て殺す。楽しんで殺す。 本体を叩かれることが唯一の弱点だったが、それも昔の話だ。 岩としてこの世界にあらわれた自分を、スタンド使いだと考える人間がどこにいるというのだろう。いるわけがない。 ――これだけの雄餓鬼と牝餓鬼にかこまれてよォ……溜まっちまってしかたねェェゼェェェェェ……。 時期がくれば、その時こそ全てを開放しよう。考えるだけでありもしない涎が溢れた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2553.html
反省する使い魔! 第三話「報いか試練か反省か」 出所当日、オレは家に帰ろうと駅に向かい電車に乗ろうとしたところを いきなりルイズとか言う奴のおかげでわけのわからねーところに連れてこられちまった… 神様よぅ、あんたはまだオレを許してくれねーわけか?恨んでるわけか? ええおい?三年前、確かにオレは形兆を殺した、盗みもやった なのになんでだ?オレは三年間、刑務所に入って反省はした筈だ。 実際今だって、形兆を殺したことをオレは後悔しているんだぜぇ… あいつは気に入らなかったがオレなんかと違いかわいそーな奴だった。 形兆は自分の父親を救ってやりたいが為に弓と矢を使ってきたんだ。 それに比べオレはどうだぁ?ええ?当時の俺はただ日頃のつまらねえ 繰り返しをするだけの社会に不満を感じ刺激的の人生を求めるがために 弓と矢を奪い…使っていたんだ。 虹村形兆という男を殺してまで……最低だな、オレ 都合のいい話かもしれないが音石は刑務所に入ってから ゆっくりと時間を掛け自分の行いを思い返していくことにより 自分がどれだけ酷い事をしたのか自覚することができていた… そしてそれを自覚し反省したが上で彼は今日出所した… そう!自分の罪を受け入れたからこそ彼は杜王町に戻る覚悟があったのだ!! 東方仗助、虹村億泰、広瀬康一、岸辺露伴などといった 「黄金の精神」を持つ若者達と向き合う覚悟が彼にはあったのだ!! (杜王町で億泰に会ったらまたぶん殴られるのを覚悟してたんだがなぁ~…) 「ちょっと!アンタちゃんと聞いてんの!?」 「ん?ああワリィ…考え事してた」 「ッ~~~~!!あんたねぇ~!」 「悪かったって、俺だっていきなりで結構混乱してんだよ、 サモン・サーヴァントだっけ?その使い魔っつーのを召喚する儀式で オレを召喚したってことはちゃんと理解してるぜ」 「そう!そしてここは!」 「ハルケギニアっつー世界の神聖なるトリステイン魔法学院……だろ?」 「…なによあんた…やっぱ知らないとか言って実は知ってるんじゃあ…」 「そんなんじゃねーよ、ただ単に記憶力がいいだけだ」 その言葉にルイズがふーんと言って目を細めている。 先程のハルケギニアを知らないと言う音石の質問を 自分をバカにしてるんじゃないかとまだ疑っているようだ。 「でも、最後の所だけ聞きそびれちまったんだ、なんだっけ…使い魔の…えーと…」 「使い魔の役目よ」 「そうそうそれだ、そこんとこよくわかんねーんだよ、もう一回頼むわ」 「たくっ、仕方が無いわね…いい?使い魔って言うのは 主人を守り、手となり足となり一生主人に仕える、それが使い魔よ!」 「なるほど……ん!?ちょっと待て…一生?今、一生って言ったのか!?」 「そう一生よ、当たり前じゃない」 ハァ~~~~~~~~~~~ッと音石は深くため息をついた。 当然だろう、いきなり呼び出され一生使えろなど無理な話である。 「なによそのため息、何か不満があるわけ!」 「逆に聞くがこんな状況にされて不満を感じねーって言うのもどうかと思うぜ…」 「う……、うるさいわね!私だってまさか人間が召喚されるなんて 思っても見なかったもの!仕方ないでしょう!」 「随分といい加減な召喚だなァ、おい…」 「あんた!神聖なるサモン・サーヴァントを侮辱するつもり!?」 「そうは言ってねーよ…なあ、悪いことは言わねぇから俺を送り返してくれねーか?」 「無理よ」 「即答かよッ!!」 「だって、使い魔を送り返す魔法なんて聞いた事ないもの、仕方が無いでしょう」 「改めて言うがマジでいい加減だなァおい!」 「うるさいうるさい!私だって本当はドラゴンとそういうのを期待してたのよ!? それなのにアンタみたいな平民を召喚した私の気持ちがわかる!?」 「オレ魔法使いじゃねーからわかんねーよ」 「メイジよ!!」 「はいはい………!」 その時音石は気付いた、ルイズが涙目になっているのを… それと同時に昼間のことを思い出す彼女が自分という平民を 召喚したことにより周りからバカにされたあの一部始終を… 「………はァッ」 「なによそのため息!まだ文句あるの!?」 「……なるよ…」 「大体アンタ平民の癖に生意気……え?」 「なにマヌケな顔してんだよ…、なってやるよ…その使い魔とかによォ~」 「使い魔になるって……、ほ、ホント!?ほんとにほんと!?」 「ホントにホントだ、ただし帰る手段が見つかるまでだがな…」 「そ、そう…わ、わかればいいのよ!わかれば!」 (涙目で威張られてもな…それと無い胸で胸を張るな) そして音石は壁にもたれ掛かり、ルイズはベットに腰を下ろした。 「そう言えばあんた異世界からどうとかって言ってたけど異世界ってどういうこと?」 「言葉通りの意味だよ、このハルケギニアとは異なる世界から呼び出されたってこった」 「信じられないわね…、大体アンタなんでハルケギニアが異世界だって断言できるのよ?」 「簡単だ、文化が違いすぎるからな…そしてなにより」 そういうと音石は窓を見た 「なにより…なによ?」 「俺がいた世界には月は1つしかねーよ」 「はあっ!?なにそれ!?月が1つってどんな世界よ!?」 「オレからしたら月が2つあんのがどんな世界だって話だがな…」 「…やっぱり信じられないわね、わたしをバカにしてるんじゃないの?」 「まあ、好きにしな…信じようが信じなかろうがおまえの勝手だ」 「お前って…私はアンタの主人よ!ご主人様と呼びなさい!」 (めんどくせぇ……しかし、まあ退屈はしなさそうじゃねーか) その時、窓を見ながら音石の顔は薄く笑っていた。 「それじゃあ、これ明日になったら洗濯しといて…」 「ああ、悪い…せっかくだしちょっとそこらへん散歩してくるわ」 「はっ!?え、ちょっと…あんた」【バタンッ】 「行っちゃった…、もう!なんなのよアイツ!!いきなり変な楽器で演奏するし 異世界からとか訳わからないこと言うし、散々文句言ってたくせに急に素直になるし…」 その時、ルイズはハッと気づいた。 「も、もしかしたらアイツ、散歩とか言って逃げる気じゃあ…」 そんな何気ないマイナス思考な一言がルイズの顔色を青く変えた。 (も、もし召喚初日に使い魔に逃げられちゃったら…みんなになんて言われるか …い、いいえ、それだけじゃないわ!実家にいるお父様やお姉様になにされるか… こ、こ、こ、こうしちゃいられないわ!直ぐにアイツを連れ戻さないと!!) バタンッ!と甲高い音が廊下に響き渡らせ、ルイズは階段を駆け下りた。 現在音石も階段を駆け下りながらいろいろ考えていた。 異世界か…、出所していきなりとんでもねーゴタゴタに巻き込まれちまったが 悩んでてもしょうがねぇ、前向きに行くとするか… そうだぜ音石明、逆に考えるんだ 異常な事に巻き込まれているが逆に言えばオレはとても貴重な体験をしている。 よし、これでいこう! そして階段を降りると廊下に突き当たった。そしてその廊下には 金髪のいかにもナルシストを思わせるキザっぽい少年と 茶色のマントをしたおとなしそうな少女が楽しそうに会話していた。 「ケティ…君はやはりいつ見ても美しいよ…まるで女神のようだ」 「まあ、ギーシュ様、本当ですか?」 「もちろんだともケティ、僕が君にウソをつくわけ無いじゃないか」 「ギーシュ様……」 「ケティ……」 「あー…、お楽しみのところ悪いんだがちょっといいか?」 「うわァッ!?」「きゃあッ!!!」 二人とも音石の存在に気づいていなかったのか 突然声をかけられたため予想以上に驚き、声が重なっていた。 少女に関しては驚いた勢いで床に倒れ尻餅をついている。 「ああ、ワリィ…驚かせるつもりは無かったんだが…大丈夫かよ?」 「イタタタ…」 「ケティ!ちょっと君ぃ、横からいきなり口出ししてくるなんて無礼だぞ!」 ギーシュという少年が音石をキッ!と睨む。 ふと、ギーシュはその男に見覚えがあるのを思い出した。 「君は…たしか、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 「覚えてもらっているとは光栄じゃねーか」 すると尻餅をついているケティという少女が意外そうな顔で音石を見る。 「この人が!?一年の間でも有名ですよ!……ッ、あいたた」 「おいおい、足でも挫いたんじゃねーのか?立てるか?ほら……よっと!」 「え!?…あ、ちょ…」 「なッ!?……な、な…」 すると音石はケティの手を取り、彼女を引っ張り立たした、 ギーシュは音石の予想外の行動に唖然している。 「なんともねーか?」 「あ…いえ、あ、ありがとう…ございます…」 まさかいきなり手を掴まれるとは思ってもいなかったのか ケティは若干顔を赤くしている。 「おい、君!本当に無礼な平民だな!!平民が貴族の手に気安く触れるなど 立場をわきまえたまえ!!」 「いえ、いいですギーシュ様!私は別に気にしてませんから!」 勢い余るギーシュをケティが静止をかける。 「だから悪かったって、ただちょっと道を尋ねたいんだが…外に行くにはあの階段を降りればいいのか?」 そう言って音石は下に通じているであろう下り階段を指差した。 ギーシュは興醒めといわんばかりに薔薇を顔に寄せる。 「ふん、愛しのケティに免じて許してやろう…、ああ、その通りだよ」 「そいつはどうも…」 そう言うと音石は何事も無かったかのように階段を下りていった。 「たくっ…大丈夫かいケティ?」 「ええ、私は大丈夫です」 すると音石がやってきた登り階段から足音が聞こえてくるのに気づき ギーシュとケティは何事かと階段を覗き込んだ、そこからやって来たのは… 「おや?ルイズじゃないか、どうしたんだいそんなに慌てて…」 「ギーシュ!私の使い魔見なかった!?」 「君の使い魔?彼ならさっき階段から降りていったが……、おいおいルイズ まさか君は使い魔に逃げられたのか?フッ、まったく、使い魔もロクに扱えないとは さすがは『ゼロのルイズ』だな、期待は裏切らないでくれるよ」 「うるさいわよギーシュ!もう、あいつ変に足が速いんだから…ギーシュ!ちょっと 捕まえるの手伝って!!」 「やれやれ仕方がないな、いくらゼロとは言え女性の頼みだ すまないケティ、すぐに戻るよ」 「あ!ぎ、ギーシュ様ぁ!!」 下り階段に向かうルイズの後をギーシュが続いた。 階段を下り室内噴水広場にでるとそこにはルイズが良く知る褐色肌の女性と 小柄で眼鏡をかけた水色の髪をした少女がいた。 「あら、ルイズにギーシュじゃない、一体どうしたのよそんなに慌てて?」 「キュルケ!私の使い魔見なかった!?」 「ああ、顔に大きな傷のある彼なら向こうの階段に降りていくのを見かけたけど?」 「ギーシュ、行くわよ!」 「やれやれ…」『タタタタタ……』 「なんだかおもしろそうねぇ、タバサ!行ってみましょう!」 タバサと呼ばれる少女は読んでる本を閉じ、無言のままキュルケの後に続いた。 「改めて見てみるとマジで異世界っつーことが実感できるな」 音石は学院の外に出てみると視界に入るものすべてが元の自分の世界とは かけ離れている事を実感した。 夜空に浮かぶ2つの月、見たことも無い巨大な城、使い魔を引き連れているメイジ どれもこれもがファンタジーやメルヘンの世界だった。 「おや?君は…」 「ん?」 すると不意に声をかけられ音石は顔を向けると そこにはいたのは昼間の禿げ頭の男だった。 「あんた…確か昼間の」 「コルベールです、この魔法学院で教師を務めています」 「あ~どうも、オレ音石明っつーもんです」 「オトイシアキラ?変わった名前だね」 「(そりゃ変わってるだろーよ…)あのー、俺になんか用ッスか?」 「おお、そうだった!なに…君の『ルーン』をスケッチするのをうっかり忘れていてね 今からミス・ヴァリエールの部屋に伺おうとしていたのだが手間が省けたよ」 「『ルーン』?なんスかソレ?」 「『ルーン』を知らないのかい?使い魔としての紋章だよ」 「紋章」という言葉に音石は心当たりがあった。 「あ!もしかして左手にあるこいつッスか?さっきから気になっていたんスけど…」 「おお!それだよそれ!…ふむ、珍しい『ルーン』だな、後で図書館で調べてみよう ところでオトイシ君、さっきから気になっているのだが…」 「…?…なんスか?」 「君がぶら下げているソレは…楽器かなんかかい?」 それを聞いた瞬間、音石は納得した。 なるほど、確かにこの世界は俺らの世界で言えば中世ヨーロッパあたりだからな… ギターがないのは当たり前か…、楽器はあるみてーだが良くてもヴァイオリンあたりだな。 「こいつはギターッス」 「ギター?」 「オレの故郷にある楽器みたいなもんッスよ」 「民族楽器みたいなものかい?」 (民族楽器って…このハゲ、オレをなんだと思ってんだぁ?…) 「ふむ…実に興味深いな、よければまた今度 演奏してみてくれないか?今夜はさすがにもう遅いが…」 「はぁ~、わかりました……って、うおおッ!!?」 「なっ!?オ、オトイシ君!?」 なんと突然、音石の体が宙に浮き始めた! 「やれやれ、貴族の手をここまで煩わせるとはとは…、終わったよミス・ヴァリエール」 「助かったわギーシュ」 そこにいたのはルイズとギーシュ、そして面白半分でついてきたキュルケ そしてそのキュルケについてきたタバサであった。 「お、おい!一体なんのつまりだァコラッ!?降ろしやがれ!」 「うっさいわね!あんたがいきなりどっか行くからじゃない!」 「だから散歩だって…」 「嘘ッ!!そんなこと言って逃げる気だったんでしょう!?」 「なんでそうなんだよ!?」 「あっはっはっは、さすが『ゼロのルイズ』ね!使い魔に逃げられるなんて!」 「黙りなさいキュルケ!!」 「だから散歩だって言ってんだろーがぁ!誤解だ!さっさと降ろせぇ!!」 「彼の言うとおりだ、ミスタ・グラモン…降ろしてあげなさい」 その日頃聞き慣れた声がコルベールだと気付き それを最初に驚いたのはギーシュだった。 「コ、コ、コ、コルベール先生!?」 キュルケも「やっば…」と小さく呟いたが その一方でタバサは本を読んだまま動かないでいる。 しかしルイズは… 「先生!あいつは使い魔のくせに逃げ出そうとしたんですよ!」 「それは何かの誤解じゃないのかい?落ち着きたまえミス・ヴァリエール 彼とはさっきから一緒にいたがそんな素振りは全くありませんでしたよ?」 「で…でも、勝手にいなくなる使い魔なんて…」 「ミス・ヴァリエール…確かに彼は使い魔ではあるが人間だ 人間である以上、自分で行動するのは当たり前だろう? …それとミスタ・グラモン、いい加減降ろしてあげなさい」 「あ!は、はい!」 【ドサッ!】「いってぇ~~…」 「わかりましたか?ミス・ヴァリエール」 「…はい」 「よろしい…ではみなさん、私は部屋に戻ります 明日も授業がありますからくれぐれも寝坊しないように…」 コルベールはそう言うとその場を後にし 続いてキュルケ、ギーシュ、タバサも続いてその場を後にした。 ルイズと音石もその場を去り部屋に戻ってきた、 「おい…」 「……………」 「今更どうこう言うつもりはねーがよー…お前なに焦ってんだよ?」 「……あんたには…関係ないでしょう…」 そう言うとルイズは制服のままベッドに入り込んだ。 「おい待てコラ!オレはどこで寝ればいいんだァ!?」 「そこの藁の上」 「………」 (ないよりは…マシだな…) 音石は自分に言い聞かせ藁の上に腰をかけゆっくりと 眠りに付いた…。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1256.html
星屑「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」 DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」 スト様「ずいぶん老けたなジョジョ、しかも隠し子もいるとは、元気そうで何よりだよ」 隠者「そ、そいつは言わない約束じゃよ!」 トニオ「ワオ、吸血鬼サンニ会ウノハ初メテデス」 仗助「トニオさんよぉー、それより俺にも料理食わせて欲しいッスよー」 康一「お城の生活ってどんな感じなの?やっぱり藁束の布団?」 康一「…う、うん…」(ごめん…ごめんよ僕…) 露伴「素晴らしいッ!平行世界で少しずつ設定が違う!この曖昧さが読者の想像力をかき立てるんだッ!」 アホ「あ…兄貴! 兄貴ィーッ!」 几帳面「泣くな億安!おまえも召喚されて使い魔になったなら背筋を正せッ!」 ミキタカ「形兆さん、泣きながらそんなことを言っても説得力がありませんよ」 猫草「…? ……??」 スミス「何だよフーゴォ~、食堂でキレないでもっと上手くやれよー」 フーゴ「…誰のせいだと思ってんだァー!」 スネイク「騒ガシイナ、ホカノ世界ハ皆コウナノカ?」 白蛇「プッチガ居レバ、ココニイル皆ヲコレクションスルンダガナ…」 育郎「あの、みなさん、シエスタさんがお菓子を届けてくれたんですが」 ジャイロ「ニョホ!一番大きいケーキを貰うぜ…ん?」 ジョニィ「大きいケーキを取ったはずなのに…ケーキが元の位置にあるッ!?」 リンゴォ「キッカリ六秒時を戻した…ケーキは元の位置に…まだ決着はついていない」 メロン「じゃあ小さいのから頂きますよ、勝負は勝手にやっていて下さい」 ンドゥール「イチゴの臭い…ショートケーキではない…タルトか」 ドイツ人「我がドイツのバームクーヘンは世界一ィィィ!このケーキは二番目にしてやろう!」 シーザー「シャボン・ソーサー!シャボン玉の上にケーキが乗り口元へと運ぶッ!」 ジョナサン「彼がツェッペリさんのお孫さんか…後で僕は彼に謝らなければならないな」 卿「謝る?逆に考えるんだ、トンペティさんの予言を深読みしたせいで死んだと考えるんだ」 DIO「ウリィィィィィィヤァァァァ!ブッ潰れよォォォォ!…何、く、口の中が苦い!」 星屑「九秒経過した時点で、てめーの口にハシバミ草をぶち込んだ…」 エンポリオは泣いた…自分のケーキが残っていないことに気づき…泣いた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/694.html
翌日、いよいよ始まった品評会。舞台の上では次々と二年生たちが自身の使 い魔の特技を披露している。うち何名かは単なる大道芸になっていたりする のだが、滞りなく進行していた。 そして、ついに、ルイズの名前が呼ばれた。彼女は先日とは違い、覚悟を決 めたのか凛とした表情で己の使い魔を連れたって舞台に上った。 ルイズのクラスメイトや数名の教師、自分の仕事をしているものたち以外は ざわめきを起こす。それでも彼女は動揺しなかった。 「私の使い魔を紹介いたします。名はンドゥールです」 「がんばれー、『ゼロ』のルイズー」 野次が飛ぶ。その二つ名の意味を知っているものたちからは笑いが生まれる。 それでも顔をうつむかせない。 「見てのとおり、彼は人間です」 さっきより大きな笑いが起こる。こんな罵声はわかっていたことだ。 それに負けぬよう、彼女は己の胸を張って言い放った。端的にンドゥールの 特技というか得意なことを表すもの。 「――この場の誰より強い人間です!」 笑い声も何もかもが消え、しんとなった。ルイズは表情を硬くして、観衆を 見つめながら思った。 (言っちゃった………) 「なら誰かとやってみろよ!」 予想通りの声が飛んできた。それを合図にしてかざわつきが生まれ、それは 加速度的に大きくなっていく。教師たちは静まらせようとしたが、その必要 はなかった。 親衛隊の一人がゆっくりと手を上げた。 「私が相手になりましょう」 今度はどよめきだ。トリステインで親衛隊というものは男児であれば誰もが 入隊を夢見る部隊。それほどの実績と、吟味された力がある。そんな人物と 戦う。 ルイズはやっぱりやめにしないかなあと思った。勝てるとは到底思えなかっ たのだ。 「礼を言う」 だが、ンドゥールはそんな主人の心配などお構いなしに了承した。 わかっていたことである。元々、ンドゥールが親衛隊の中から適当に一人選 んで戦わせてくれと王女に頼んだのだ。なれば受けるのは当然の流れ。 ルイズは舞台に歩いてい来る騎士を見た。精悍な顔にマントの下にある鎧か らあふれる威厳、別にンドゥールを弱いと思っているわけではないが、いく らなんでも相手が悪すぎる。 そう思っていた。 すぐさま刃引きされた剣が用意される。勝負はどちらかが自身の敗北を認め ることで終わる。魔法は自由だ。ルイズはここまで来てしまってはもう止め ようなどとは思わなかったが、下がる前にンドゥールに尋ねた。 「これ、使う?」 ルイズは懐から水筒を出した。彼が異常聴覚以外になにか特別なものをもっ ているのは確かだが、具体的にはわかっていない。それでも水を使うことを 彼女は知っている。 「一応、いただいておこう」 ンドゥールはそれをズボンのポッケに入れて、騎士と対峙した。その人物は 剣を構え、目を尖らせている。杖を取り出さないことから魔法を使う気はな いようだった。対するンドゥールは、左手に剣を握っているものの構えては いなかった。 しばらくどちらも動かなかったが、痺れを切らしたのか騎士がじりじりとす り足で近づいた。やがて互いの間合いに入る。 騎士が剣を振りかぶり、床を蹴った。 ンドゥールの左手が光った。 「んぬお!」 騎士が苦悶の叫びを上げた。 鎧の横っ腹に目にいつのまにか剣が食い込んでいた。 「まいった……」 今度は逆に喝采があがった。野次を掛けていたものたちも大きな拍手を鳴ら している。騎士は一礼をしてから舞台から降りていった。 「やっぱりタバサのシルフィードか。ま、妥当なとこよね」 キュルケが舞台を見てそんなことをいった。隣にはギーシュやルイズもいる が、ンドゥールの姿はない。彼は生徒ではなく使い魔の立場である。そのた め席が用意されておらず、ほかの使い魔たちとともに中庭の隅で鎮座してい た。 「ダーリンもなかなかだったけどねえ。ルイズ、悔しくないの?」 「あれだけやってのけたら十分じゃないの。本当に親衛隊を倒すなんてこっ ちが驚いたわ」 「そうよね。ますます惚れ直しちゃったわ」 「言っときなさい。でも、おかしいのよね。剣は使えなかったはずなのよ。 自分でも言ってたもの」 「あんなあっさり倒したのに?」 「うん」 二人の視線が木陰で休んでいるンドゥールに注がれる。もしかして、あれが デルフリンガーの言っていたことなのかしら、と、ルイズは思った。 舞台上では王女がもう一度竜で舞ってほしいと頼んでいた。それに応じ、タ バサは使い魔に乗りあがった。 「あれ?」 自分の使い魔が選ばれずにいてうなだれていたギーシュが声をだす。静粛な 場にふさわしくないそれを隣席のモンモランシーが注意する。 「どうしたのよ」 「いや、彼、なにをしてるのかなって」 「誰よ」 「ンドゥール、ルイズの使い魔だよ」 その名前にモンモランシーだけでなくキュルケ、ルイズもそちらを見た。 ンドゥールは、使い魔の群れから離れて歩いていた。向かっていく先は外に 繋がる門である。 「あいつ……!」 「ちょっと駄目よ。座ってなさいな」 席を立とうとするルイズをキュルケがとめる。渋々それに従った。 「でも、彼はどこへ行こうっていうんだろうね」 「さあ。でもそろそろ黙ったほうがいいんじゃないの? 先生たちがこっち 見てるわよ」 モンモランシーがそう言うとぴたりと全員口を閉じてしまったが、ルイズだ けはそわそわと落ち着きがなかった。 (どこに行くのよ) 自分が戦いを頼んだのだから腹が立ったなんてわけではないだろう。それに なんだか妙に急いでいる。一体なんだというのだ。 答えはすぐにわかった。というよりもわからされた。突如、彼が向かってい る門が破られたのだ。 「なに!?」 いち早くルイズがそれを見た。そしてルイズの隣にいた者たち、舞台にいる ものたちと波紋が広がるように次々と門から出てきたものに気づいていった。 人型、薄茶色の肌、城壁と同じ背、生えている草、ところどころ穴が開いて いるがメイジならすぐさまそれがなんなのか理解する。 「ゴーレム!」 「姫殿下をお守りしろ!」 その声に応じて親衛隊が王女の周りを固めた。学院の教師たちは自身の杖を 取り出す。 「あんのバカ! 気づいてたらいいなさいよ!」 ルイズも杖を取り出し、魔法を唱えだすが横から口をふさがれる。 「ふがふ! ふがふがががー!」 「あんたが魔法使ったって失敗しかしないでしょ。使い魔を殺す気?」 キュルケにそう言われ、しぶしぶ杖を下ろす。と、次には駆け出そうとした ところを再びとめられる。 「離しなさいよ!」 「だからやめなさいって言ってるでしょ。ここは私たちに任せなさい。フレ イム!」 主の声にサラマンダーが鎌首を持ち上げ走り出す。それだけでなく彼女自身 も呪文を唱える。 「この『微熱』のキュルケがお相手してあげるわ! ファイアーボール!」 「僕だってやってやるさ。ゴーレムたち!」 火球が飛んでいき、青銅の像が走っていく。それだけでなく多くの攻撃魔法 が襲い掛かる。タバサは本を読んでいる。 ンドゥールはそれらとゴーレムの攻撃をよけながらなんとか奮闘している。 圧倒的な優勢ではあるが、見ているしかないルイズは胸の奥に焦燥感を覚え た。 (自分でいうのもなんだけど使い魔は立派。立派だけど、じゃああたしって 何なのよ!) 地団駄を踏む。彼女は己の無力さに涙がこみあげてきそうになった。いまは それを堪えることが精一杯。唇からは血が出ていた。 やがてゴーレムは多重攻撃に耐えかね、ゆっくりとその形を崩していった。 魔法の数も少なくなっていく、と、一発の大きなファイアーボールがンドゥ ールを狙ったかのように飛んでいった。 それは直撃こそしなかったものの、ンドゥールを転ばせてしまった。さらに 運の悪いことに力を失ったゴーレムが土の塊となって彼に降りかかり、完全 にその姿を隠してしまった。 それを見て、ルイズは気絶しかけたが、何とか踏みとどまる。 「ギーシュお願い!」 「わかってるさ。愛しのヴェルダンデ、彼を助けてやってくれ」 主人の命令に応じ、大きなモグラが土の山に突き進む。 「大丈夫でしょ。そんなたいした量じゃないわ」 「……うん。そうよね」 ルイズはキュルケの言葉で心が少し落ち着いた。が、なにか先ほどまでとは 違う焦りが心の中にやってきた。それはとても妙なもの、自分のものではな く他人のもののような気がした。 徐々に、それは形を得て、言葉になった。 (囮―本命―違う) それは彼女がよく知る、ンドゥールの重く響く声だった。 「ルイズどうしたのよ。顔色悪いわよ?」 キュルケの声も聞こえない。モンモランシーやタバサも顔を寄せているが、 ルイズは彼女たちの顔が見えていない。 (狙いは――) ルイズは首を真後ろに向けた。ムチウチになりそうな勢いだった。 彼女の視線の先は、この品評会が行われている広場の反対側。僅かな暇もな くルイズは走り出した。 「どこにいくのよ! ルイズ!」 後ろから掛けられる声も気に留めない。使い魔から発せられたメッセージを 受けて走る。敬愛する王女の姿も入らないほど視野狭窄になっていた。 彼女は裏側にたどり着き、本命を見た。それは門を破壊したものとは比べ物 にならない大きさのゴーレムだった。そばにはフードで顔を隠した人物が宙 に浮いている。ゴーレムを操り同時にフライを使う、それだけで相当な使い 手とわかる。 狙いは明白。宝物庫の破壊だ。 「ちょっと、なによこれ!」 キュルケとタバサがルイズのあとを追ってやってきた。 「ゴーレムよ! 見たらわかるでしょ!」 「でもこれさっきのよりもっと大きい……もしかして『土くれ』のフーケ!?」 その大きな声が災いした。 フーケと思われる人物に彼女たちは姿を見られてしまった。 「く……ファイアー!」 キュルケが火球を投げつける。だがそれはゴーレムの肌を少し焦がすにとど まった。 「見掛け倒しってわけじゃないのね」 「当たり前よ。こっちが本命だもん」 「あんた、そういやなんで気づ……なにしてるのよ!」 キュルケが声を上げるのも無理はなかった。ルイズは呪文を唱えていたのだ。 成功率『ゼロ』だというのに。 「ちょ、やめ………」 「―――ファイアー、ボール!」 ゴーレムが主人を守ろうと動く。が、ルイズの魔法は、なにも起こらなかっ た、わけではない。宝物庫の外壁が爆発した。 「どこがファイアーボールよ!」 「うるさいわね。ちょっと失敗しただけじゃないの」 最悪の状況で二人は口喧嘩を始めてしまった。危険極まりない、が、ゴーレ ムは彼女らを攻撃しなかった。 「あれ……」 タバサが上空を指差した。ルイズとキュルケは喧嘩をやめて空を見上げた。 そこでは、ゴーレムが宝物庫の壁を巨大な腕で殴りかかっていた。 「ああ!」 ゴーレムは壁を打ち抜いた。 ヴェルダンデによってンドゥールはたいした時間もかからず救助された。と はいえ下半身はいまだ土の中だ。 「感謝は結構だよ。君は体を張って奮戦していたわけだしね」 ギーシュはそういうものの高慢な笑みが張り付いた顔は、礼をして当たり前 と言った感じだった。本来ならンドゥールは感謝するところだが、今回はし なかった。己の杖を地面に突き刺し、柄を自分の耳に当てる。 ギーシュはそれを見て少し腹が立ったが、その些細な苛立ちを吹き飛ばす轟 音が耳に入った。 『土くれ』のフーケと思われる人物は宝物庫に入り、長い箱を奪っていった。 「……ん、」 タバサが使い魔のシルフィードに乗って風の魔法を放つが、それすらもゴー レムという壁に阻まれてしまう。 地面からはキュルケが何度も火球を放つがまったく効果はない。 「かったいわねえ! 逃げられちゃうわこれじゃ」 「そうさせないようにがんばりなさいよ!」 「やってるわよ!」 また喧嘩が始まるが今度はすぐにやめた。大きな足が迫ってきていたら当然 だ。二人はなんとかそれを避けるが、こんどは大きな腕が振り下ろされる。 タバサがシルフィードを向かわせる。自身でも魔法でゴーレムを攻撃する。 しかしその巨体は揺るがない。 拳は、落ちた。が、結果的に、ルイズとキュルケは無事だった。ゴーレムに つぶされる直前、何かに押し飛ばされたのだ。 「……なに、あれ」 タバサは思わず声を上げていた。もともと寡黙な彼女がこのような声を出す ということは、それだけの驚きだったのだ。 「……水?」 キュルケがそうこぼした。そのとおり、彼女らの眼前に水が立っていた。 水系統のメイジが助けてくれたのだろうか。キュルケにはそれが誰かわからな かったが、ルイズにはその人物に心当たりがあった。 「――ンドゥール!」 「うそ! これダーリンなの!?」 「たぶん!」 水は返答せずにゴーレムに襲い掛かった。やすやすと体に穴を開けて潜り込 むと縦横無尽に走り回り、傷だらけにしていく。しかし効果がない。一瞬で ふさがってしまう。水もそれを察したのか、ゴーレムの頭に上っていき、術 者を狙おうとする。 しかし、見当違いなところを襲っている。 「どうしたのあれ」 「わからないのよ! ンドゥールは音で場所を確認するの。だから空にいら れたら攻撃できないんだわ」 「じゃあ教えないと。ダーリンそこじゃないわ左よ!」 キュルケが場所を叫ぶがそれは術者にも筒抜けだ。水は相変わらず命中しな い。ゴーレムは外へと歩いていく。このままではまんまと宝物を盗まれてし まう。 「……ンドゥール、隠れてて」 ルイズはそういい、呪文を唱えだした。キュルケはそれが聞こえていなかっ たので止めることができなかったが、ンドゥールがゴーレムの体の中に隠れ たことでルイズが何をやろうとしてるのか気づいた。 「また………」 「ファイアーボール!」 数秒の間をおき、爆発した。今度は宝物庫ではなくゴーレムだったが、頭の 表面をほんの少し削っただけ。砂を巻き上げただけに過ぎない。 ゴーレムはなんのダメージも負っていないのか歩みを止めなかった。 だが、ようやく水は当たりをつけ、まっすぐ術者に向かっていった。 腕を掠め、血が吹き出る。しかしなんの障害にもならなかった。盗賊はゴー レムとともに外へと出て行ってしまった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/112.html
フーケの騒動があってから一週間が経ちました いろんな人たちから一目置かれるようになったルイズとドッピオ ルイズはあいかわらず魔法の腕が上がっていないのでフーケの件は使い魔がすべて行ったと周りは思っているようです その所為か決闘を申し込む貴族は殆どいなくなり、ドッピオにとっては平和な日々が続いていました そんな中 「ドッピオ、アンタ芸とかある?」 そんなことを主人から聞かれました 「芸・・・ですか?なんでまた」 いきなりそんなことを聞いてきたルイズに質問で返します 「質問を質問で返さない!・・・まあ、いきなりなのは認めるけど 今度使い魔の品評会があるのよ」 「品評会?・・・そういえば」 最近学院の中で使い魔に芸を教え込む人たちを見たことがありました 「・・・で、何かある?」 「・・・・・・」 この人たちにはスタンドは見えない。ならスタンドを使った芸でもいいかと考え 「・・・うーん」 いざ芸をしろと言われても思い浮かびません 「・・・え?もしかして特に無い?」 「・・・いえ、特に無いってわけじゃないですけど」 スタンド自体の能力は未来予知・・・これを利用した芸といって思いついたのは 「・・・手品なんてどうでしょう?」 「手品?・・・なにが出来るの?」 「そうですね・・・硬貨とかありますか?」 「あるけど・・・」 そういって一枚金貨を取り出します 「表か裏か。右手か左手か。絶対にあてることが出来ます」 「・・・それじゃこれはどっち?」 差し出した両手。ドッピオはエピタフを発動させます 「・・・右手、裏」 「・・・当たってる。でも」 二人が考えることは 「地味ね」 「そうですね」 ドッピオではどうも未来予知を生かしきる芸と言うものが思いつきません 「・・・まあ品評会は明後日だし手品だって変な力使ってやってるんでしょう?」 「そうなんですけど・・・」 「時間には猶予があるしもっとパッとした物、思いついてよ」 言うだけ言って主人は眠ってしまいました 翌日、もはや日課と化した使い魔の仕事をこなしてドッピオは自由時間を謳歌していました 「・・・品評会か」 自分を晒されるようであまりいい気分ではありません それでもやるなら驚かせるようなものをしてやろうと思い芸を考えますが (・・・学院精鋭百人連続で倒すなんてどうだろう) 変なものばかり思いつきます 「・・・やっぱりエピタフを使ったもので・・・」 ぶつぶつ言いながら廊下を歩いていると 「ドッピオー♪」 そう言って誰かが後ろから抱きついてきました。いえ、誰かなんて分かっています 考え事をしながら歩いていたドッピオはその突然のことに対応できず前のめりで転んでしまいました 「っ」 「あっと・・ごめんなさい」 抱きついてきた人はドッピオに謝ります。もちろんその人はキュルケでした 「・・・キュルケさん。いきなり抱きつくのはちょっと」 「そうね。今度からは前からにするわ。ところで」 「・・・品評会ですか?」 「ピンポーン♪ドッピオは何をするのかな?」 はっきり言ってまったく思いつきませんでした 「・・それがまだ」 「えー?ドッピオのことだからすること決まっていたと思ったのに」 残念ながらまったく決まっていません 「・・・手品」 そんな中キュルケの横で黙っていたタバサが口を開きました 「手品?ああ、そういえばルイズが言ってたわね」 現状でなにも芸が無い以上手品程度でしかドッピオには出来ません 「で?どんな手品が出来るの?」 「えっと相手がなにを持っているかとかそういう類のものなら」 事実未来を見えるドッピオにはそれが尤も簡単かつすごいと思わせるものです 「それじゃカードを使った手品をしたらいいんじゃない? カードくらいならルイズだってすぐ用意できるでしょ」 「・・それだ!」 ドッピオはいきなり叫びました 「ありがとうございます!これなら・・・」 そう言ってドッピオは走っていきました。おそらく行き先はルイズの部屋でしょう 「・・・楽しみ」 タバサが小さい声で言いました 「え?タバサ?」 「・・・なんでもない」 「ルイズさん!」 部屋に入りこんで来た使い魔がいきなり自分のことを呼びました 「なに?芸でも決まったの?」 「はい。ところでカードって用意できますか?」 「出来るけど・・・カードで手品でもするの?」 「はい」 言い切りました。ここでキュルケからの提案とかは言いません 言ったら絶対「するな」といわれますから 「カードか。やっぱり手品といえばカードかしらね」 「どうでしょう?用意できます?」 「大丈夫よ、そのくらい。で、すごいのが出来るの?」 「・・・カードが来たら見せてあげます」 (・・そんなに自信があるのなら問題ないかしら) そう思ったルイズは 「分かったわ。カード用意するからすごい手品してよね」 「もちろんです!」 13へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/12.html
「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッグォオォ 今更、爆発くらいでは誰も驚かない 慌てて身をかばいはするが、誰も彼も、ただそれだけのことだ ゼロのルイズが魔法を使えば爆発する 馬を怒らせたら蹴飛ばされるのと同じくらい、彼らにとっては当然 だが、煙がおさまったあと、そこに見えてきたものは違った そういえばルイズは召喚魔法を使ったのだ クラスメートは皆、そのことを思い出していた そして――― 「…なに? この…鳥の巣アタマ…は?」 当のルイズがのけぞりおののいた時、それは噴出する 煙から現れ出た男、その頭ッ 彼らの目にはまさしく鳥の巣ッ 笑い出すにはあまりに充分ッ 「うはッ」 「くくくっ」 「あっはっはっはっはっは」 「ぶーっはっはっはっはァ――――ッ」 「ちょ、ちょっと、ぷはっ、アハハハハハハハハ」 「鳥の巣、鳥の巣、くわははははは」 「さっすがルイズッ ぐはははは」 「鳥の巣男を召喚したぞおおおお」 「そこにしびれるあこがれるゥ――ッ ヤッハハハァァ」 腹を抱え、転がる 教員にも収集がつかない 引率のコルベールは頑張っていたが その努力はむなしかった 笑い声に囲まれたルイズは拳を握り、 どうしてくれようかと男を見やった瞬間である 「DORAa!!」 ズド ルイズは空を飛んでいた 何が起きたのかわからなかった 空と地面がぐるりと視界を一週、二週、三週 桃色がかったブロンドも歌舞伎のように乱れ、そして ドザアッ 肩から落ちた 笑い声がぴたりと止んだ 「鳥の巣」の様子はおかしかった 誰が見ても明らかだった そいつは今まで座っていたが 立ち上がってみると、意外なまでに大きな男だった 「鳥の巣」もそうだが、見たこともない黒ずくめの服装、その装飾 何から何まで奇妙だ だが奇妙なのは、もっとも奇妙なのはッ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 男が一体何をしたのか、誰の目にも見えなかった 「お…おまえ、ご主人様にッ つ、使い魔のぶんざいでぇぇっ」 痛みを忘れたルイズは身を起こし、半泣きで怒鳴るが 虚勢は一瞬で消し飛ばされた ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「鳥の巣」が影となって、その目元はよく見えない 見下ろすように顎を上向けているにも関わらず (何、こいつ… なんか知らないけど、ヤバいッ) 直感し、立って少し離れようとした直後 男が初めて喋った 聞き取れる声を出した 「oreno…」 「オ、オレ、ノ?」 「orenoatamaganandatte?」 「わ、わっかんないわよっ 人間の言葉しゃべんなさいよッ!!」 「darenoatamagaDORAEMONnoSUNEOmiteedato~~~ッ」 「そこまでだッ」 「不審なヤツめ、取り押さえてやる」 衛兵がやってきた 誰かが呼んだのだろうか どうでもいいが彼らは不運だった ドゴ バキャア 兜と顎が砕け割れる 二人同時だった 同時に別方向に飛んでいった 今度こそ確かに言える 「見えない何かに殴られた」 この場にいる全員に、そうとしか見えなかった 「kikoetazoKORAaa!!」 ズンッ 踏み出す男、全員後じさる 「い…い…」 ゲドゲドの恐怖ヅラで、生徒の一人が命じてしまった 緊張に耐えきれず、火蓋を切ってしまった 召喚したての使い魔に、自らの半身にッ 「いけえええ、ビーティィィィ―――ッ」 パニックだった 頭の血管がプッツンした生徒が次々と使い魔をけしかける だが、彼らなどよりも「鳥の巣」男の方が圧倒的にプッツンしていた 彼らはそれを知らなかった プッ プッ… プッ…… プッ ツ~~ン 「DORARARARARARARARARARARARARARARARA」 バス バスッ ドゴォ ベキッ ズドム 使い魔達が空を飛ぶ 木の葉の軽さで宙を舞う 大惨事である 「なんということだ…」 コルベールは戦慄する あと数分もしないうちに、このままでは生徒達が「殴られる」 応援を呼ばせようと、先に殴られた衛兵二人に向き直り… 目の玉をひん剥いたッ 「治っている? ひとりでに? いや…違うぞ」 「た、助けてくださ、助けてェェ」 「これ、は…こいつはッ」 ドドドドドドドドドドドドドドドド (兜と顎が、癒着…しているのか? これは魔法か? 何の系統だ…水、土? スクエアメイジだとでもいうのか、あの青年がッ そんなことはどうでもいい もし子供達がこの力で殴られてみろ…ハッ!?) すでに一人殴られている コルベールは咄嗟に彼女の方を見た 抜かした腰でずりずりと下がっていく彼女の胸にある、マントの留め金…五芒星の、学園制式の… 本人は気づいていないようだが… 三日月にも似た前衛芸術と化し、一部はシャツと同化していた (ダメだ…応援を呼んでいるヒマは、ないッ 守るのだ!! 私が、生徒をッ) 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/786.html
ああ困った困った困った弱った弱った。 「表面的には焦っていても、心の中では常にクール」がモットーのルイズちゃんだけど、こればっかりは本当にまいった。 「おいおい後がつかえてるんだぞ。さっさと終わらせろよゼロのルイズ」 「あなたのせいで私達まで使い魔無しなんてことになったらどうするのよ」 「そうだぞ、くだらないワガママ言うなよ。立派な眼鏡じゃないか」 ここでまたドカン。笑われるかわいそうなわたし。 眼鏡。眼鏡かあ。眼鏡だよねぇ。眼鏡、眼鏡。うううう。ああああ。 くうう……慌てるな。落ち着くんだ。 冷静になるんだルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。名前長っ。 「うるさいわね! あなた達ちょっと黙ってなさいよ!」 とりあえず怒鳴り返すポーズだけはとっておくとして……さてどうする。 今はまだ笑う余裕があるけど、これ以上時間を使えばまわりの空気も悪くなるでしょ。 そうなればわたしが悪者みたくなって、皆に責められる。 この後いまいちな使い魔召喚した子達はきっと 「ルイズの馬鹿が時間使いすぎやがって。おかげで俺までとばっちりさ」 「まったく、ゼロのルイズにも困ったもんだな」 ダメダメダメ。これはダメ。 なんで他人の使い魔までわたしの責任になるのよ。おかしいでしょ。 だいたいここでゴネきって再召喚させてもらうとしても、この眼鏡が出てくるまですでに呪文詠唱十七回。 十八回目も手ごたえ無しで爆発、こりゃ当然失敗したと思ったらそこにはこの眼鏡。 やり直すとしても……まあ、普通に考えて成功する見込み無し。 「さっさと契約しなさい、ミス・ヴァリエール。眼鏡の何が悪いというのかね」 この毛髪ツンドラ地帯、人事だと思っていい加減なこと言ってくれるじゃないの。 「眼鏡は悪くない」 だったらあんたの使い魔にしなさいよザ・眼鏡。 「そろそろあきらめろよゼロのルイズ!」 みんな静かに。考えがまとまらない。笑うなマリコルヌ。肉屋に卸すよ。 グラモンの馬鹿、いちいち隣の縦ロールにささやいてるんじゃない。 グラモンの阿呆、その好奇心丸出しな顔を引っ込めなさい。 うううう。どうしようかなあ。眼鏡で我慢すべきかなあ。嫌だなあ。でも使い魔無しよりは眼鏡かなあ。 フレームをつついてみた。レンズをノックして、蝶番を何回か開閉させてみる。 実体が無かったり、この世界には無い物で作られていたり、わたしに話しかけてきたりすることはない。 まごう事なき、混じりっ気無し、誰が見ても正真正銘、ただの眼鏡だ。 コレ本当に眼鏡以外の何者でもないね。なのにわたしの使い魔だってさ。困ったね。あはははははは。 もうどうにでもなれとダメモトで眼鏡をかけてみた。 お、ちょっとすごいな。かなり遠くの方までしっかり見える。 べつに目ぇ悪いわけじゃないんだけど、それでも効くもんねぇ。 ただ見た目だけじゃなく、実際的なところにも気を配ってるってわけか。 すごいねコレ。眼鏡なんだけどね。あははははははははははははははははははは。 ……なんかもうどうでもよくなってきた。疲れた。 人間であり、貴族でもあるこのわたしが、なぜ眼鏡ごときにここまで気を遣わなければならないのか。 もういいよ。眼鏡眼鏡。みんなのばーかばーか。うんこうんこ。 「ミス・ヴァリエール。気は済んだかのな」 「……はい」 なるだけ情けない顔にはならないよう振り向いたけど、あたしの努力は結局無駄に終わった。 どれだけ頑張ったっていつもこうなる。 もう本当にね。みなさんかんべんしてください。 眼鏡を額の上に押しやって、肉眼で皆を見る。普通だ。 眼鏡を鼻の上に据え付けて、レンズ越しで皆を見る。普通に全裸だ。 お前もうコラいんちき眼鏡いい加減にしなさいよ。 「どうしたのかね?」 「いえ、あの」 「気分でも悪いのかね?」 「あ、ちょ、ちょっと待ってくださいミスタ・コルベール! そこで止まって!」 全裸のまま真顔で近づいてくる人間がいればわたしもビビる。 しかも、その、なんというか、コルベール先生は他の男子に比べて、その……。 ま、まあいいや。意外な人の意外な発見は置いておくとして、問題はこの眼鏡だ。 みんなが「何やってんだこの馬鹿?」って顔でわたしを見ている。 眼鏡をかけると、全裸のみんなが「何やってんだこの馬鹿?」って顔で見ている。馬鹿はあんたらだよ。 何度か繰り返してみたけど、やっぱりこの眼鏡をかけるとおかしなことになる。 これはひょっとして、ただの眼鏡じゃない? それともわたしの頭がおかしくなった? あ、キュルケってばちゃんと下の毛も赤いのね。そりゃそうか。 「ちょっとモンモランシー」 「なによゼロのルイズ」 「あなた、昨日の晩虫に刺されたりしなかった?」 モンモランシーは怪訝な顔で 「何で知ってるの?」 「肩とか?」 「だから何で知ってるのよ」 本物だ……この眼鏡は本物だ。ひょっとしたらわたしはとんでもない物を呼び出してしまったのかもしれないぞ。 あ、キュルケのおっぱいすごい。乳房とかいうべきなのかもしれないけどあえてこう言う。おっぱい。 でかいだけだと思ってたけど大きさだけじゃないわ。大きなおっぱいにありがちな形崩れが全く無い。 トレーニングとかしてんのかな。バストアップの体操とか。 でも努力のしがいもあるよね。あれだけ大きかったらわたしだってするもん。 いいなあキュルケばっかり。おっぱい大きいし、魔法もすごいし。いいなあああ。 「ちょっとルイズ。何よ、人のことじろじろ見て」 「そっちこそ何よキュルケ。なんでわたしがあなたを見るのよ。自意識過剰なんじゃないの」 乳首の色も綺麗な桜色。褐色の肌によく映えること。いいなああああ。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1084.html
夕食の時間、シエスタはデザートを配膳していた。 今日は色々あった。ほとんど謎の使い魔がらみだったけど。とにかく疲れた。 あの使い魔は結局気づいたら消えていた。本当に何がしたかったんだろう?嫌がらせ? でもエプロンは返しにきてくれたわけだし、悪い人(?)でもないのだろう。 とにかく今日は早く仕事を済ませて、さっさと寝てしまおう。今日は厄日だ。 そんなことを考えていたら、手前に座る金髪の少年のポケットから何か小瓶のようなものが落ちるのを見た。 すぐにそれを拾い、落とし主であるギーシュ・ド・グラモンに声を掛ける。 こうしてシエスタのその日最大の災難が始まった。 「疲れた…」 ルイズは紅茶を飲みながらぼやく。 半壊の教室の掃除は一人でやるには相当の時間と労力を必要とした。 こんなことならキュルケの手伝いの申し出を受ければよかったかもしれない。 そう思って、部屋を見渡しキュルケの姿を探す。 青い髪の少女と一緒におしゃべりをしているのを発見する。 だがいつもよりその顔色が悪いような気がした。 (もしかしてまだ気にしてるのかな……) 少し罪悪感が心に産まれる。もう使い魔のことを言ってもいいかもしれない。 ただ逃げられたことをどう説明するか……。 「その香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」 「そうだ! その鮮やかな紫色はモンモランシーが調合している香水だぞ!」 急にガヤガヤと騒がしくなる。見ると、数人の生徒が集まっていた。その中心にはギーシュとメイド。 ギーシュがなにやら否定の言葉を並べ、その隣にいるメイドはさっきからどうしていいか分からずオロオロしている。 いつものギーシュの恋愛話か。どうでもいいや。 ルイズはさっさと自室に戻ろうと、残りの紅茶をいっきに飲むため、カップを口に持っていった。 「チャンスをやろう!」 「ぶッ!」 リアルに紅茶噴いた。 ギーシュは混乱していた。 メイドに「落としましたよ」と言われ、見るとそれはたしかにモンモランシーから貰った香水。 なんとか誤魔化そうとするも、回りの連中にはやしたてられてしまい、騒ぎが大きくなる。 このままではモンモランシーにもケティにもばれてしまう! 3択-一つだけ選びなさい 答え①ハンサムのギーシュは突如誤魔化すアイデアがひらめく 答え②仲間がきて助けてくれる 答え③誤魔化せない。 現実は非情である 答え-③ 答え③ 答え③…………しかし答えは違っていた!意外!その答えは④! 答え④変な奴がきて誤魔化せない。現実は非常識である 「チャンスをやろう!」 突如聞こえた、異質な声。見るといつのまにかメイドの背後に黒づくめの奇妙な亜人が立っている。 はやしたてていた連中も、メイドも声を失いこの奇妙な闖入者を見ている。 ザ・ワールド!時は止まる! ……………………その世界で最初に動いたのは、亜人と二人の少女だった。 「お前には向かうべき二つの道がある!ひとつは……「ギーシュ様、やはり、ミス・モンモランシーと…」」 亜人のセリフをかき消すようにギーシュに話しかけてきたのはケティである。 「え?ケティ!ち、違うんだ!」 急に話しかけられ反応できない。ギーシュはろくな弁解もできずに、ケティから頬をはたかれるしかなかった。 「もうひとつは!!さもなくば『死への…………「やっぱりあの一年生に手を出していたのね?嘘つき!!」」 また何か亜人が話そうとするが今度はモンモランシーに邪魔される。 モンモランシーはギーシュが何か言う前に、ワインをかけて行ってしまった。 呆然。何が起きた?なんなんだこいつは? ギーシュは亜人を睨みつける。すると、自分が睨まれていると勘違いしたのかメイドがビクっと震えた。 そういえばこのメイドが事の発端じゃないか。 くそうこの平民が!でもけっこうかわいいな。 だがそれはそれ、これはこれ。 「君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!どうしてくれるんだ?」 ギーシュがメイドに詰め寄る。 メイドは泣きそうな顔になって、ひたすら謝罪の言葉を並べた。 その平謝りする姿がいくぶん滑稽で、少し優越感を覚えたギーシュはさらに続けた。 「君たちのその黒づくめの格好を見てるとこっちの気分まで暗くなってくる。 平民とはいえ貴族の前に出る時くらいは、もう少しまともな格好をしたらどうだい? …………と言ってもメイドの君の黒いのは、生まれつきだろうから変えることはできないか」 そういって笑うギーシュに、同調して回りの数人の生徒からも笑い声があがった。 「黒いの」 その言葉はシエスタの心を締め付けた。 それは後ろの使い魔の格好と、自分の髪と瞳の色のことを言っているのだろう。 大好きだった祖父から受け継いでいるこの黒い髪と瞳は、珍しい色だった。 それを馬鹿にされるのは、自分だけでなく祖父まで馬鹿にされているようで悔しかった。 シエスタの瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ始めた…… その時 「それ以上の侮辱は許さないわよ」 シエスタは背後から声を聞いた。 その声の主は使い魔ではなかった。その主人であるミス・ヴァリーエル。『ゼロ』のルイズ。 ピンクの長い髪と、鳶色の瞳。今、その瞳からははっきりと怒りの感情を読み取ることができた。 「ルイズ」 主人を見つけた、使い魔の場違いな声が部屋に響いた。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/756.html
「うわッ!なにコレ!メチャクチャ広いじゃない!」 「ここが『アルヴィーズの食堂』さ。みんなここで食事を取るんだ」 マリコルヌの後について歩きながらトリッシュは周りを見渡した。 絢爛豪華な装飾に眼を奪われつつ、マリコルヌから教師を含む貴族全員がこの場所で食事を取ると 説明される。トリッシュはこんな場所で食事を取ったことなど一度も無く、内心ドキドキしていた。 「さ!ここに座って」 「あ…うん」 マリコルヌが席を引きトリッシュを座らせると、その横の席にマリコルヌは座った。 他の貴族たちも続々と集まってきているが、トリッシュを見ると怪訝そうな顔をしてボソボソと 小さな声で周りの貴族と会話し、その内容がトリッシュにも聞こえていた。 「なんでメイドが座ってるんだ?」 「ほら、アレよ。昨日の儀式で……」 「平民なんだろ?…貴族と同じ席に座るなんて…」 正直居心地が良いとは言えない。そんなトリッシュの様子を見たマリコルヌが トリッシュの眼を見つめ紳士的に微笑みながら、 「他の奴らが言う事なんて気にしちゃダメだよ」 そう言ってトリッシュを慰める。マリコルヌはトリッシュの好みのタイプではけっして無いが 今まで自分の周りに居た男の中には無かった、その紳士的な態度にトリッシュは好感を覚えた。 「なんでメイドが…ああ、あなた確かマリコルヌの使い魔だったわね」 ふと隣の席を見るとドリルのようなロール髪の少女が座っていた。 「やあ!おはようモンモランシー!今日はギーシュと一緒じゃないのかい?」 モンモランシーと呼ばれた少女は不機嫌そうに口を尖らせマリコルヌを見ると、 「ギーシュは食事いらないって」 「へえ?ギーシュの奴どうしたんだろ?」 「昨日医務室にあなたの様子を見に行ってからずっと変なのよ。 今日だって呼びに行ったら『僕のそばに近寄るなああーーーッ』って言って出てこないのよ ねえマリコルヌ何か知らない?」 「う、うん僕にも判らないな。なんだか大変だね。ア、アハハ…」 二人の会話を聞いていたトリッシュは知らない振りを決め込むことにした。 「ところでどうして使い魔がここにいるのよ?外で待たせるんじゃないの?」 「え?ああ、ほら、使い魔と主人は一心同体って言うじゃないか」 やはり、自分がここに居ることは変らしい。トラブルはマズイと感じたトリッシュは モンモランシーに語りかけた。 「あなた…モンモランシーって言ったわよね?私、やっぱりここに居ちゃマズイかしら?」 「別に良いんじゃないの?あなたの主人が良いって言ってるんだから。 私の知ったことじゃないわ」 そう言って、モンモランシーは頬杖をしならが溜息を吐きだした。 おそらくは昨日胸を覗き込んでいた男のことで頭が一杯なのだろう。トリッシュの事などに 構ってられないと言った感じである。 (それにしても、あのキザ男には何にもしてないのにそんなに怯えるなんてね。 とんだ腰抜けだわ。マンモーニってヤツね。あのハゲ親父を少しは見習うべきだわ) 昨日、ギーシュを縛り上げて猿轡を噛ませ、持っていた毛抜きでやめてくれと叫ぶコルベールの 髪の毛を一本一本丁寧に抜いて額縁に飾っていった事を思い返しながら、トリッシュは 食事の開始を待つことにした。 豪華としか言いようの無い料理が運ばれトリッシュがたくさん並べられたフォークやナイフなどの 使い方や食事のマナー等をマリコルヌに聞いていると前の席に一人の少女が現れた。 桃色の髪の色をした小柄な少女である。その髪の色に父親を思い出し、トリッシュは 少し不快になった。 (うわ…アレで斑点つければあの男にそっくりだわ…朝から最悪ね…) 「ほら、椅子を引きなさいよ。気の利かない使い魔ね」 仕方ないといった感じで少女の後ろに控えた少年が椅子を引き、少女が腰掛ける。 (なんだか生意気そうな小娘ね。ムカつくわ。……今、使い魔って言ったわよね?) 『ソウデス。使イ魔とイイマシタネ』 スパイス・ガールがトリッシュの心を読んだように疑問に答える。 昨日の医務室でスパイス・ガールを発現してメイジにスタンドが見えないことは 確認済みである。もっとも見えているのなら召喚されたときに騒ぎになっている筈なのだが その時は意識はあったが眼が覚めておらず、スタンドの防衛本能でスパイス・ガールが勝手に 動いていたのでトリッシュの記憶には残っていなかった。 ちなみにその時の事をスパイス・ガールは怒られるのが怖かったので黙っていた。 「すげえ料理だな!俺こんなに食えないよ!」 (同感ね。おなかは空いてるけど朝からコレじゃ逆に食欲無くすわ) 目の前に座った少年に心の中で同意しながら料理を眺める。 この量と内容はトリッシュの基準から言ってとても朝食には思えなかった。 「あのね?ほんとは使い魔は外なの。アンタはわたしの特別な計らいで、床」 そう言って頬杖をつきながら桃色の髪の少女は少年に床に座るように命じる。 その様子を見ていたトリッシュに少女が気付き不機嫌そうな顔で話しかけてきた。 「ちょっとアンタ。なんでメイドが座ってんのよ、さっさと椅子からどきなさい」 桃色の髪と少女の態度にムカついたのでトリッシュは無視を決め込んだ。