約 128,334 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/815.html
食堂につくまでの間ルイズは自分の使い魔についてかんがえていた。 (トリッシュはいい使い魔?だけど…なんというか…私、下にみられてるっ!?って感じがするのよねぇ~! 考えてみれば昨日の夜から情け無い姿しか見せて無いし…もっとご主人様らしく威厳を示すべきよね?うん、決めた!もっとご主人様らしくしなきゃ!) 食堂に着くとテーブルには豪華絢爛な料理が並んでいた。 (フランス料理のフルコース…朝っぱらから?…うっ) トリッシュはみているだけで気持ち悪くなった。朝からこんな重たい料理を食べる何て…正気か?というのがトリッシュの偽らざる気持ちだ。みているだけで胸焼けしてきそうだ。 「ここにあるのは貴族のための料理。使い魔のための料理はこっちよ」 ルイズが指差した先にはスープとパンが二切れのった飾りの無い貧相な皿がある。 「そう、わかったわ」 「しょうがないわね、そんなに言うなら…っていいの!それで!?」 「かまわないわ」 トリッシュは短く答えると、ルイズの隣の席に座ろうとする。 (え~?いいの!?なんで?そんなものじゃそこらの平民だって満足しないものじゃないの!?っていうか折角ご主人様が特別に私の分を分けてあげようとしているのに…! 察しなさいよ!……ばかっ!) ルイズは当初の予定が狂って少し混乱したがトリッシュがいすに座っているのを見てにや~っと口角を吊り上げて何かたくらんでる悪い顔をした。 「トリッシュ…ここは貴族の食卓なのよ!そのいすには貴族しか座ってはいけないのよ!…でも、しょうがないわね、私が頼んで特別に……」 「そう、わかったわ。じゃあ私は外で食べることにするわ」 「…て、外で食べるの!?」 「ええ、だめかしら?」 「え?いや、だめってことは無いけど…」 「なら、外で食べてくるわ。食べ終わったら食堂の前で待っているわ」 「え?あ、うん。わかった」 トリッシュはさっさと皿を持って食堂を後にした。 ルイズはただ呆然とトリッシュを見送った。 教室に入ると生徒達はトリッシュを連れたルイズをみてくすくす笑っている。 ルイズは不機嫌そうに席に腰かけ、トリッシュもその隣に座った。 (ここは、貴族専用よ!でも、特別に座らせてあげるわ!って言ったらトリッシュはどっかいっちゃいそうね…) ルイズは何とかご主人様としての威厳をトリッシュに見せたいと思っていた。 中年の女性が入ってきて授業が始まった。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期にさまざまな使い魔を見るのを楽しみにしてますのよ」 シュヴルーズは教室を見渡しやがてルイズの隣に座るトリッシュに目を向けた。 「おやおや、また変わった使い魔を召喚したようですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズがそういうと教室はどっと笑いに包まれ生徒達はルイズを馬鹿にしだした。 「ルイズ!使い魔を召喚できないからって平民を連れてくることは無いだろ!」 「ゼロのルイズ!サモンサーヴァントもまともにできないなんて!さすがはゼロ!」 トリッシュは無言でスパイス・ガールをだした。 「ルイズ、こいつら黙らせましょうか?」 「いいのよ、いわせたい奴らには言わせとけば」 ルイズは首を横に振る。 (ルイズが黙っているのに、私が切れるわけにはいかないわね) トリッシュも黙っていることにした。 ただ、いま馬鹿にした奴らの顔を覚えておくことにはしたが。 授業が始まり中年のメイジは土系統のすばらしさについて恍惚とした表情で語っている。 生徒達は少し引いてた。 トリッシュは机に肘を突いてそれを聞いているのかいないのかわからないような顔をしている。 ルイズは横に座るトリッシュを見つめていた。 (考えてみれば…私はトリッシュについて何も知らないのよね…どんな奴なのかも、どこから来たのかも。 なにより、トリッシュが従えている『使い魔』、スパイス・ガールについても…トリッシュはあれはスタンドだって言ってたけど、スタンドってなにかしら? 確か、精神がどうのこうの言ってたような…今度ちゃんと聞かなきゃ!) ルイズはそれにしてもと思う。 (さっきの私は結構ご主人様としていいかんじだったんじゃ~ないかしら? 馬鹿にされてもきれることなく受け流した私!大人の対応って奴かしら!) にやにやしながらトリッシュをみるルイズ。なかなか不気味だった。 「ミス・ヴァリエール!使い魔が気になるのはわかりますが授業には集中してください! そうですね、ミス・ヴァリエールあなたにやってもらいましょう」 やってもらう?ルイズはまったく聞いていなかったためなにをすればいいのかわからない。 しかし教室の生徒達の間には戦慄が走る。 「やめといたほうが…」 「危険」 「ルイズの爆発はマリコルヌの体を除けて通る…ルイズの爆発はマリコルヌの体を除けて通る…」 生徒達の中には逃げ出そうとするもの、机の下に隠れるもの、ぶつぶつと壊れたラジオのように祈りをささげる奴までいる。 「な…なんですか!?あなた達は!?ミス・ヴァリエールの錬金が何だって言うのです!?ミス・ヴァリエール。 周りの声など気にせずやってごらんなさい」 「ルイズ、お願い…やめて」 キュルケは悲痛な顔をしながら言った。 しかし、ルイズは立ち上がり教壇に向かった。 (ちゃ~んす!これで成功すればきっとトリッシュはもっと私を見直すはずよ! 大丈夫、召喚の儀式も成功?したし!) ルイズはなんか今日はできそうな気がする…と根拠の無い自信を発揮した。 それは、ルイズは知らないがドラゴンボールを読んだ少年達が「なんか今日は出そうな気がする…」とかめはめ波を出そうとする気持ちに似ていた。 全国で1億人くらいはやったんじゃないだろうか? 果たしてどうなったか。 教室にルイズのかめはめ波が炸裂した。いや、ちがった。ルイズの『錬金』が炸裂した。 ルイズの目の前に置かれた小石はおよそ同量の火薬でもありえないくらいの爆発がおきた。 「だからルイズにやらせるなっていったのに!」 「もう二度とルイズとおんなじ教室には入らねぇー」 「メディック!メディーック!」 教室はちょっとした阿鼻叫喚の渦だった。 そんな中渦中のルイズはけほっとかわいらしいせきをしてから言った。 「ちょっと失敗したみたいね」 「「「ちょっとじゃねーだろ!!」」」 まるでコントだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/177.html
トリスティン魔法学園、春の使い魔召還。 それはこの学園に通う生徒にとってもっとも重要な行事。 皆が思い思いの使い魔を召還し、あるものは歓喜し、あるものはがっくりとうなだれた。 それはもちろん彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも同じであった。 彼女が使い魔召還のための呪文を詠唱を終えると まばゆい光が辺りを包んだ。 そして ドオン! 「うわ! ゼロのルイズがまたやったぞ!」 「建物が崩れるぞ、逃げろー!」 地震のような地鳴りと巨大な爆音。 いつもの彼女の失敗にしては少々大きすぎる爆発。 辺りを覆う煙が晴れると、そこには 「・・・・・・・・・なによ、コレ」 巨大な『鉄塔』がそこにはそびえ立っていた。 それは高さ20mくらいはあろうか。 塔とは言うものの床がなく、側面に鉄の棒が繋がっていてかろうじて塔と分かるだけだ。 そう、ちょうど塔に骨があるとするのなら、こんな感じなのだろう。 「ぶ・・ふふ・・・あーっはははは、さすがね、ルイズ・・・まさか生き物以外を召還しちゃうなんて」 キュルケの笑い声が引き金となりほかの生徒もどっと笑い出す。 「ぶははははは、塔ってなんだよ! どういう使い魔だよ!」 「これなら失敗のほうがよかったんじゃねーの?」 「違いねえ」 わはははははは、と生徒は笑う。 本来誇り高き貴族たるルイズは侮辱に怒りを露にするはずだが、 「あ・・・あはははは」 もはや笑うしかなかった。いくら自分に才能がないとしてもコレはあんまりだ。 みなの言うとおり失敗して爆発のほうがまだ救いがあっただろう。 「あー、コホン、ミス・ヴァリエール」 「・・・ミスタ・コルベール、もう一度召還の機会を与えていただけますか?」 「それはダメだ、ミス・ヴァリエール。使い魔召還は今後の属性を固定しそれにより・・・」 「お言葉ですが、ミスタ・コルベール」 「これと『どう』契約しろというのですか?」 契約は使い魔との口付けでなるのは周知の通りだ。 だが『こいつ』には口はない。 あまつさえ顔もない。 それ以前に生き物ですらない。 「ううむ・・・確かに。春の使い魔召還の儀式はあらゆるルールに優先する・・・と言っても限度があるな。 さすがに契約できないものを使い魔とすることはできない。やむ終えません。今回の件は特例として オールドオスマンと協議の上再度仕切りなおしと致しましょう」 「ありがとうごさいます! ミスタ・コルベール」 「やめといたほうがいいんじゃない? 今度召還したら風車が出てくるとかいやよ」 「うるさい、キュルケ!」 いつもの通りの嫌味に腹を立て鉄塔の外に出ようとしたとき、ルイズの体に異変が起きる。 バキバキバキ 「! ルイズ、あんたそれ!」 「へ?」 見ると鉄塔の外に出ている右手と左足が『鉄』に変わっていた。 「きゃああああああああ」 あわてて手と引っ込めると拍子に転んで鉄塔の中に戻る。 手と足は元に戻っていた。 「なによこれ・・・」 「ややや、コレは・・・!」 コルベールが鉄塔に腕を出し入れする。しかし今度は何も起きなかった。 「・・・・・・」 バキバキバキ ルイズが手を出そうとする再び鉄に変わった。 あわてて手を引っ込める。 「・・・信じられないが、どうやらこの鉄塔から出ようとした人間は『錬金』されてしまうようですね」 「そんな! 人間が錬金されるなんて聞いたことありません」 「そうですね、ミス・ヴァリエール。私も聞いたことがありません。建物を使い魔として召還すると言うことも含めてね」 うぐ、とルイズは痛いところを突かれる。 「とにかく、すぐオールドオスマンと相談してまいりますので、本日は皆さんこれで解散。 ミス・ヴァリエールはそのまま残っておくように」 言われなくてもどこかにいけるわけがない。 いったいなんだと言うのだこの使い魔は。 使い魔は主人に有益なものをもたらすのが普通なのに、有益どころかもたらすのは不利益ばかり。 いや、そもそも契約もしてないし使い魔かどうかすら怪しいのだが。 「一体・・・なんだってのよ・・・」 どっと吹き出てきた疲れに身を任せ、ルイズは鉄塔の中で倒れこんだ。 コレが彼女と鉄塔、「スーパーフライ」の出会いであった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/726.html
朝靄の煙るヴェストリ広場、そこにヴァニラは一人佇む 正確には彼のスタンド「クリーム」も一緒なのだが常人の目には映らないうえにスタンドは本体と一心同体、故に彼は一人だった 元の世界、延いてはDIOの元へ帰るための頼みの綱だった――蜘蛛の糸よりも頼りないが、ルイズの渾名である「ゼロ」の意味を知り 、いつかルイズに見切りをつけることを視野にいれなければと考え、毎朝ルイズを起こす前に精神鍛錬をやるようにしていた。 少しでも早く、少しでも遠くへスタンドを飛ばせるように、それこそ自分と対峙した時のシルバーチャリオッツのように (だが当面の目標は・・・) 顔を動かさぬまま、そっと森の方へ視線を向ける (あの爬虫類をここから消し飛ばすことだな) 茂みから小さな炎と、つぶらな瞳がヴァニラを見つめていた 亜空の使い魔――ヴァニラの日常 鍛錬を終え、部屋に戻ると洗濯物をまとめて洗い場へ持っていく 心底嫌そうに下着を洗っているのを見られてからシエスタが代わりにやってくれているので洗濯籠に入れただけでまた部屋に戻ると、今度は未だに夢の中のルイズを起こす 「おい、朝だ。起きろ」 部屋の端から端までフッ飛ぶくらいに思いっきり蹴りを入れてやりたいところを自制し、少々力を込めて肩を揺さぶる 「う・・・・?」 しかしルイズは首を傾げるような仕草で寝返りを打つと毛布をすっぽりと被り、丸まってしまった。 今ここにマニッシュボウイがいればいいのに、などと物騒なことを考えながらヴァニラは溜息を吐くと無理やり毛布を剥ぎ取った 「な、なによ!なにごと!」 「朝だ、遅れるぞ」 ようやく起きたルイズに着替えを投げてよこすといい加減聞き飽きた愚痴をBGMに着替えが終わるのを待つ。正直、だるい 男であるDIOと比べるのもなんだがあまりに・・・・・貧相なルイズの着替えを見たところでヴァニラにとって何の慰めにもならない 彼の名誉のためにいっておくが別にアーッ!とかではない、念の為 着替えを終えたルイズに伴い食堂へ赴くと相変わらず貧相な食事をいそいそと平らげ、部屋に戻る振りをして厨房へと潜り込み賄を別けてもらう 念の為廊下の途中でクリームを使って姿を消しているので万が一ルイズに見つかる心配も無いだろう(途中で危うくコルベールの頭髪を消し飛ばしそうになったがばれなかったので気にしない) .... まともな朝食を終えると外に出て薪割を始める マルトーは別にいいといっているのだがヴァニラは妙な律儀さで毎朝食事の礼にと薪割りをしていた 一応手斧を借りはしたがそれは使わずクリームの手刀で次々と薪を割り、あっと言う間に一日分の煮炊きに必要な薪の山を築き上げるいくらスタンドが弱体化したとはいえ木材を裂く程度の力は残っていた 「・・・・またか」 気配を感じ、薪を縛り纏めながら視線を向けると建物の影から巨大な赤い蜥蜴が顔を覗かせている 最近気がつけば事あるごとにあの蜥蜴に見張られていた 誰の使い魔かは知らないが普通使い魔とは主の目や耳になるものらしいから恐らく何らかの目的で偵察をしているのだとヴァニラは推測していた (杖を消し飛ばした連中か、それともあのヌケサクの使い魔か・・・何れにせよまっとうな目的ではないだろうな) 気づいていない風を装い、マルトーに薪割が終わった事を告げるとルイズが食べ終わるよりも先に部屋に戻る 椅子に座ってDIOの無事を祈っていると何やら機嫌の悪そうなルイズが貴族にあるまじき悪態をつきながら戻ってきた 「どうした、何か面白い事でもあったか?」 「うるさいわね!あんたには関係ないでしょ!?」 ヴァニラが皮肉を込めて声を掛けるとルイズは悪鬼の形相で睨みつけ、喚くその答えにヴァニラはつまらなそうに肩を竦ませるが、授業の準備をしながらぶつぶつと繰り返される独り言からキュルケとかいう奴と何か一悶着あったらしいと察するが頻繁に聞く名前だけに毎度の事なのだろう (私に被害が及ぶようなら釘を刺しておきたいが・・・) しかし態々その相手を探し出して始末をつけるのは何となくルイズのために働くような気がして止めにした その判断があんな事態を招くなどと、その時は誰も気付きませんでした・・・ To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/833.html
トイレから部屋に戻ったルイズは、昨日呼び出した使い魔について考えていた (朝食は抜いた、死体は芯まで凍っていた為、血こそ飛び散らなかったものの食欲が消えるには十分だった 粉々になった死体は部屋に戻ると昨日の様に消えていた、消えて無かったら今頃いい感じでスプラッタだったろう) おかしい、落ち着いて考えてみると確かにおかしい 死体が消えるのもそうだけど、死んだ筈なのに再び召喚されるっていうのは如何考えてもありえない 死んだ、自分の目の前で死んだ、なのに召喚されて動いて喋っていた 屍生人?吸血鬼?アヴドゥル?どれも違うように思える それよりも「死んでも召喚されれば生き返る」のではないか? そう思えた もう一度呼び出してみれば分かるかもしれない 疑問を確かめるべく、三回目の召喚を行う これであの男が出てくれば確定だ、自分が呼び出したのは只の平民などではない 何か力を持った存在なのだ、馬鹿にされる様な使い魔等ではないのだ そう思うと落胆していた気持ちが高揚していくのを感じた 「あらためて、アンタ誰」 「…ディアボロだ」 過去2度の召喚と同様に杖の先に現れた男は落ち着いていた 絶え間無く周囲を見回し警戒していること隠さなかったが、こちらを見て怯えるということは無かった ディアボロの落ち着きを見て取ったルイズは ディアボロを召喚したこと、ディアボロが使い魔であること、使い魔とは何であるかを説明した 「自分の置かれた立場が分かったわね」 「じゃあ私の疑問に答えて貰えるかしら 彼方は何故生き返ったの? 前に呼び出した時は確かに死んでいた筈だわ 甦る力があるの?それとも死んでいなかったの?」 ディアボロは警戒を解かぬまま口を開く 「…私はある戦い以来、何処から来るか何時来るか分からない死に襲われ続けている」 「一度死んでもそれで終わりではない、場所が変わり時が変わりまた死が襲ってくる」 「…まるで死の呪いね」 「ルイズ…だったな」 「お前の話は理解できた、だがそれはお前の都合であり私には関係の無いことだ 使い魔が欲しいのなら別のを探すんだな」 この男の言葉には凄みがある、言葉を裏打ちするだけの力を持っているのだ 逃す訳には行かない ここで逃せば自分は本当に何も無い「ゼロ」になってしまう しかしこのままでは引き止められない ルイズは何かこの男を留めて置けるなにかはないかと必死に頭を働かせた 力?金?カラダ?いや違う 男の喋った言葉の中にあったそれに気付く、思いつくままに口を動かす 「死ぬ度に時間と場所が変わる、そう言ったわね」 「それならばあれほどまでに周りを恐れていたのは分かるわ」 「何も分からぬままいつまでも流され続ける、これほどの恐怖は無いものね」 「でも、今の彼方は落ち着いている、死を恐れているものの落ち着いているわ」 「それは安心したからじゃあないかしら、状況が理解できる範囲にあることに」 「私に呼ばれてから別の場所で死んだことはあった?無いんじゃないの?」 「それは契約を結んだことで呪いに変化があったと考えられるわ」 「だから私の元を離れたり、私を殺したりすればその安心は失われるかもしれないわよ」 「何処とも知れぬ場所で永遠に死に続ける、そんなのに耐えられるかしら」 一気にまくし立てたルイズは息を整え、最後の決め手と言わんばかりに言い放った 「これは機会よ!慈悲深い御主人様が与えた最後の機会! 逃したならもう二度と救われることは無いわね」 ディアボロがルイズを見る 「よく喋る口だ…つまり利害が一致した訳だな、お前は使い魔が欲しい、私は平穏を必要としている いいだろう、使い魔になってやろうじゃあないか」 ルイズは笑みを浮かべた やった、ほとんどでまかせだったがこの男は使い魔になると言った ディアボロの言葉遣いや態度は気に入らないが、とにもかくにも使い魔を得ることが出来たのだ 「じゃあ行くわよ、ついて来なさい」 「何処にだ」 「教室によ、使い魔は主と行動を共にするものよ」 教室は大学の講義室という風だった 何か異なることといえば生徒達が皆何かしら生き物を従えていることだろう 道すがら見かける様なものもいれば、動物園で目にするようなものもいる ディアボロの目を引いたのは中でも物語の中でしか存在し得ない筈の生き物達だ (ここでは幻獣と称するらしい、ルイズの話の中で出ていた) (イタリアではないことだけは確からしいな) この小娘に出会ってから2度死んだ、死んだ次の場面は2度とも小娘の前だった 今までこんなことは無かった、時間も場所繋がり無く変わり訳も分からぬまま死を繰り返した 小娘のでまかせを思い出す 確かに以前の状態に戻らないという保証は無い 認めたくは無いが自分はあの小僧に破れ絶頂から転げ落ちてしまったのだ 今は崖に生えた細い枝に服が引っ掛かった様な極めて不安定な状態だ 少しでも重心を崩せば再び奈落の底へと転落してしまうだろう しっかりと三点確保を維持しながら崖を上らねばならない 迂闊な行動は出来ない 絶頂であり続ける為には… 「コッチヲ見ロォ~~ッ」 「ん………?」 顔を起こしたディアボロに散弾の様な石の破片が突き刺さり、ついで爆風が体を粉々に吹き飛ばした ■今回のボスの死因 ルイズの失敗魔法の巻き添えで爆死
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/240.html
朝食を終えたルイズと康一は、授業が行われる教室へと向かっていた。 今後、どうやったらルイズと衝突せずに生活できるか、などと考えている康一。 ちびの癖に生意気な犬をどうやって躾けようかしら、などと考えているルイズ。 二人とも無言で、今後についてのことを一生懸命考えていた。 そんな二人の前に、一人の色気を放っている赤い髪のナイスボディな女性と、真っ赤な巨大トカゲが現れる。 思案に暮れていた康一は、目の前に現れた魔物とおっぱい星人に気づいておらず、 おっぱい星人の使い魔である、真っ赤な巨大トカゲと思い切りぶつかった。 「うわっ!?」 尻餅をつき、顔とお尻をさすりながら前を見ると、のっそりとした巨大トカゲが康一をジーッと見ていた。 「うわぁぁあああああっ!?」 その姿に思わず驚き、康一は半身起こしただけの状態で後ずさりする。 「あら、大丈夫? おチビちゃん」 「ちょっとキュルケ! 私の使い魔に何するのよ!」 「あら、余所見をしていたのは貴方の使い魔でしょ」 そう言って、キュルケと呼ばれた女性はせせら笑う。 康一は床に手をつきながら立ち上がり、ペコリと頭を下げて謝った。 「す、すみません、考え事をしていたもので……」 素直に謝る康一を見て、ルイズは不機嫌そうな顔をする。 「ちょっと! こんな奴に謝らなくてもいいの!」 「僕が余所見してたんだから、悪いのは僕だし、ちゃんと謝らなくちゃいけないよ」 そんなやり取りを見ながら、キュルケはニヤニヤと笑いながら康一を見ている。 「それにしても、平民を使い魔にするなんて、貴方らしいわ。さすがはゼロのルイズ」 「うるさいわね」 とっとと目の前から消えろと言った感じの表情で、ルイズはキュルケを睨みつける。 「ところでそっちのおチビちゃんは、誰かさんと違って随分と礼儀正しいみたいね。一瞬、どっちが使い魔なのか分からなかったわ」 立て続けに嫌味を言うキュルケに、ルイズは康一を指差しながら怒鳴った。 「こいつのどこが礼儀正しいのよ!」 「少なくとも貴方よりは品性があるわね」 「ど・こ・が! 目が腐ってるんじゃないの!?」 「あらあら、品性のかけらもない言葉遣いね、ヴァリエール」 余裕のある笑みを浮かべるキュルケと対照的に、ギリギリと歯軋りさせながら怒りの形相を浮かべるルイズ。 少なくとも、彼女達は礼儀正しくないよなぁ、などと思いながらルイズ達を見ている康一。 「何か用でもあるわけ!? 用がないなら鬱陶しいから早く私の視界から消えて」 「あら、用ならあるわよ。あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 そう言って、巨大トカゲの頭を撫でるキュルケ。 「えーと、その大きなトカゲがキュルケさんの使い魔って奴ですか?」 康一は物珍しそうに、キュルケの隣でのっそりとしている巨大トカゲを見て言った。 「そう、素敵でしょ。火トカゲよー。見て? この尻尾。 ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランドものよー」 康一は、あんなにそばにいて熱くないのかなぁ、などと思いながらサラマンダーに近づいた。 「凄いなぁ~、こんな生き物見たことないよぉ~。 カッコいいなぁ~」 「そうでしょ? 貴方、見る目があるわ。誰かさんと違って」 康一は、サラマンダーを触ったり撫でたりして、目を輝かせている。 自分の使い魔を称えられているキュルケも、気分よさそうに康一に色々とサラマンダーについての説明をしていた。 和気あいあいとした雰囲気の中、一人だけ暗黒の空気に包まれている者がいた。 他でもない、ルイズである。 目を逆三角形にしながら、康一の背中を引っつかんで自分のそばに引き寄せる。 「何楽しそうにおしゃべりしてんのよ! あんたは私の使い魔でしょ!」 「あら、私の使い魔になりたがってるんじゃないかしら? あなたと違って、魅力があるしね」 そう言われて、キッと康一を睨みつけるルイズ。 康一は、必死に顔を横に振って否定の意を表す。 「ハイ、そーです」なんて肯定したら、殺されそうな勢いだった。 「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね」 「あ、広瀬康一です」 「ヒロセコーイチ? ヘンな名前ね。ま、覚えておいてあげるわ」 そう言うと、炎のような赤髪をかきあげ、颯爽とキュルケは去っていった。 大柄な体に似合わない可愛い動きで、サラマンダーがその後を追う。 「くやしー! ただ自慢しにきただけじゃない! 火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!」 「ま、まぁまぁ……」 ルイズは、自分をなだめようとしてくる康一を睨みつける。 「うるさいわね! 今日は晩御飯もヌキッ!」 「えぇ~ッ! 何でェー――ッ!?」 「ご主人様をそっちのけにして、他人と仲良くした罰よ! なによ、私にはあんな顔しない癖に!!」 そりゃ、キミがワガママ言うからだよ、などとは口が裂けても言えない康一。 これ以上刺激したら、もっと空気が悪くなりそうだ。 「行くわよ! フンッ!!」 ドッカドッカと、品性のかけらも無い歩き方で教室へ向かう。 康一は、どっと疲れたような足どりで、肩を落としながらルイズの後を追った。 重い空気の中、やっとのことで教室につく。 康一とルイズが中に入っていくと、先に教室にやってきていた生徒達が一斉に振り向いた。 そして、康一とルイズの姿を見るなり、クスクスと笑い始める。 そんな生徒達を無視して、康一は辺りをキョロキョロと見回す。 教室は、大学の講義室のようだった。 ちょうど、教室の真ん中くらいの所には先ほどのキュルケもいた。 周りには、数人の男が取り囲んでいる。どうやら相当モテるらしい。 よく見ると、皆、様々な使い魔を連れていた。 キュルケのサラマンダーをはじめ、フクロウや、巨大な蛇や、よく分からない謎の生物も沢山いた。 「へぇ~、色んな使い魔がいるなぁ~」 「あんたも使い魔でしょ。まったく、少しは自覚しなさいよ」 ルイズは不機嫌そうな声で答え、席の一つに腰をかけた。 康一も隣の席に座る。ルイズが康一の横っ腹を肘で小突いた。 「イテッ! こ、今度はなに?」 「ここはね、メイジの席。使い魔のアンタは床」 康一は、ムッとしながらも、床に座った。 机が目の前にあって窮屈だったが、康一は我慢する。 そうこうしている内に、扉が開いて、先生が入ってきた。 紫色のローブに身を包んだ彼女は、教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 ルイズは俯いた。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズが、康一を見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 キュルケの件もあって、かなり不機嫌だったルイズは、机をバンッ叩いて大きな声で怒鳴りつける。 「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができ……ッ! ッ!!」 突然、ルイズをバカにしていた男が、一言も喋れなくなる。 周りで笑っていた生徒は、突然喋らなくなった男を不思議そうに見ていた。 「フン! 言いたいことがあるなら最後まで言ってみなさいよ、かぜっぴきのマリコルヌ!」 マリコルヌと言われたその男は、反論しようとしたが、声が出なかった。 否、出ないというよりは、防音室にいる時のように、声が全く響かなかった。いくら喋っても、声が届かない。 「みっともない口論はおやめなさい。授業を始めますよ」 シュヴルーズは、こほんと重々しく咳をすると、杖を振った。机の上に、石ころがいくつか現れた。 「私の二つ名は『赤土』。 赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」 授業は淡々と進んでいき、康一はその光景をボーっと見ていた。 『火』、『水』、『土』、『風』の四つの魔法があるだとか、『土』系統の魔法は重要だとか、そんな話だった。 「今から皆さんには、『土』系の魔法の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます」 シュヴルーズの話を聞いていた康一の横から、ルイズが話しかけてくる。 「ねえ」 「なに~? 今、先生が何かやってるみたいだよ。ちゃんと見なくていいの?」 「そんなことはいいの。あんた、さっき『何か』した?」 「『何か』って?」 「だから……さっき、マリコルヌがいきなり喋らなくなったでしょ?」 康一は、「ああ、あれね」と言った表情でルイズを見た。 「そうだね。何でだろうねぇ~。でもま、静かになって良かったんじゃない?」 「……そうね。ま、いいわ。良く考えたらあんたが何か出来るわけないし」 そう言って、ルイズは再び授業に参加した。 康一はエコーズで、マリコルヌに張り付いていた『シーン』という文字を密かに回収し、 誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。 「いくらワガママでも、自分の主人をバカにされるのは、気分が良くないからね……」 「……今、何か言った?」 「何も~?」 康一はとぼけたような声で言った。 ルイズが、康一を怪訝な目で見つめていると、シュヴルーズに声をかけられる。 「ミス・ヴァリエール」 「え……? は、はい!」 「今日はあなたにやってもらうわ。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 「え? わたし?」 ルイズは立ち上がらずに、困ったようにもじもじとしている。 その様子を見て、頭に?マークを浮かべながら康一は質問する。 「……行かないの?」 「……」 ルイズは康一の質問を無視し、困った顔をしているだけだった。 なかなか立ち上がらないルイズに、シュヴルーズは再び声をかける。 「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか? 早く立ち上がってこちらに来なさい」 しかし、それでもルイズは立ち上がらない。 「ねえ、行かなくていいの?」 その様子を見ていたキュルケが、困ったような声で言った。 「止めた方がいいと思いますけど……」 「どうしてですか?」 「危険です」 キュルケがきっぱりと言うと、教室のほとんど全員が頷いた。 「危険? どうしてですか?」 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。でも、彼女が努力家ということは聞いています」 そういう風には見えないけどなぁ、などと思いながら康一はルイズを見る。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」 「ルイズ。やめて」 キュルケが蒼白な顔で言った。 しかし、ルイズは立ち上がった。 「やります」 そして、緊張した顔で、つかつかと教室の前へと歩いていった。 せめて声援は送ろうと思った康一が、ルイズに向かって言う。 「頑張ってねー!」 しかし、周りの生徒たちは「余計なことを言うな」という顔をしている。 皆、何であんなにおびえた表情をしているのかなぁ? と康一は思った。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 こくりと頷き、ルイズが手に持った杖を振り上げた。 唇をへの字に曲げ、真剣な顔で呪文を唱えようとする。 すると、他の生徒たちが一斉に椅子や机の下に隠れた。 何で皆、机の下に隠れてるんだろう? と康一が思った瞬間――。 ドグォンッ! ――大きな音を立てて、机と石ころが爆発した。 爆風をモロに受け、ルイズとシュヴルーズ先生は黒板に叩きつけられた。 「うわあああああっ! な、な、何事!? まさか敵スタンドッ!?」 大きな爆発によって、康一は半ば混乱しながら、ACT2を出して辺りを見回した。 過去に、敵を爆破するスタンドに襲われた康一は、汗をダラダラと流しながら、攻撃に備えている。 もっとも、爆発を引き起こしたのはルイズなので、敵スタンドなど存在はしない。 そうこうしてる内に、驚いた使い魔たちがあっちこっちで暴れていた。 キュルケのサラマンダーがいきなり叩き起こされたことに腹を立て、炎を口から吐いた。 その炎で、マリコルヌが黒焦げになった。 マンティコアが飛び上がり、窓ガラスを叩き割り、外に飛び出していった。 割れた窓ガラスのシャワーがマリコルヌに全部突き刺さった。 「うわあああッ! そ、そこにいるのかッ!?」 窓ガラスの音に反応し、康一がACT2の音攻撃をする。 バゴーンという文字は、不幸にもマリコルヌに命中した。 口から血ベトを吐いて、痙攣するマリコルヌ。 駄目押しと言わんばかりに、割れた窓の隙間から入ってきた大蛇が、マリコルヌを飲み込んだ。 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。教室の隅では、丸飲みにされたマリコルヌの救出活動が行われていた。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「ええい! ヴァリエールなんて退学になればいいんだ!」 「マリコルヌーッ! しっかりしろーッ! 食われちゃいかーんッ!!」 康一は呆然としていた。 誰かの攻撃かと思っていたが、生徒全員が口を揃えてルイズの文句を言っている。 つまり、さっきの爆発はルイズの仕業である可能性が高い。 至近距離で爆発に巻き込まれたシュヴルーズ先生は、ピクピクと痙攣している。 何やらうわ言で「ビ・チ・グ・ソ・が……」と言っているような気がしたが、康一は聞かなかったことにした。 一方、爆発を引き起こした張本人であるルイズは、煤で真っ黒になっていた。 ハンカチを取り出して、顔についた煤を拭うと、淡々とした声で言った。 「ちょっと失敗みたいね」 当然、他の生徒達からは猛然と反撃を食らう。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」 「そうだ! お前のせいで、マリコルヌが…マリコルヌがなぁ……!」 「いや、マリコルヌは生きてるぞ」 康一は、何でルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれて、バカにされてるのか理解した。 シュヴルーズ先生――この後、治療を施された。 マリコルヌ――再起不能。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/318.html
「さて…どうだね? 今のうちに言っておくが…」 仗助を宙に吊り上げたギーシュはスデに勝ち誇っていたッ 「キミ、敗北を認めたまえ! そしてぼくにわびろ 『いやしいワタクシのせいで二人の尊きレディの名誉にキズがつきました』とね 反省の色さえ見せてくれれば…なに、ぼくだって鬼じゃあないのさ」 地上から薔薇をふりかざし仗助を見上げ、一方的な言いたい放題 わざとらしく聞き耳を立てる仕草をし かすかに動く仗助の唇に注目する 「ンッン~? なんだい、悪いがよく聞こえないんだ もうちょっと大きな声を出してくれないか? それともなんだい 反省が足りないのかなぁぁ―――ッ」 ズドァッ 落とした 頭からッ! 首の骨でも折っちまう気なのか? 単にギーシュはハイになりすぎていた キュルケやコルベールさえ苦戦した使い魔に完封勝利をおさめつつあることにッ 「ドッ…ッラァ!!」 グシァ ギュンッ 頭からも血を流す仗助の反撃は 落ちた地面の土を掘りあげ投げつける コルベールに試みたものとまったく同じ ゆえにギーシュはあわてなかった 「おおっと!」 ドドッ ズバシィッ 地面の中から突如生えてきた槍が飛んできた土くれを阻んだ 土中から身を起こし完全な姿を見せたのは、青銅製の女神像ッ!! 「このぼくのワルキューレ 動きはそれほど速くはないが 正面から来るとわかっている『土くれ』程度、たたき落とせないほどヤワでもないのさ…」 すでに土の中 待機させていたッ 歯ぎしりをする仗助がまた宙に浮かんでいく 「あ――っと 言い遅れたが ぼくはギーシュ・ド・グラモン 二つ名は『青銅』 青銅のギーシュだ 以後お見知りおきを…使い魔君 そしてキミの今の態度 なるほど、もっと反省したいらしいね?」 「なに言ってんのよ!」 調子にのりまくったギーシュをどやしつけたのは、遅れてやってきたルイズ ようやく気をとりなおして後を追ってみたら 見せられたのは使い魔が痛めつけられる光景ッ そんな有様、我慢して見ていられる女では…やはり、なかった 「おわびなんかしようったって、しゃべれなくしてるのアンタじゃないッ フザけないで!」 「そうは言うがねミス・ヴァリエール 反省には態度ってやつがあるだろう? 彼からはね、なんというかァ、そのォ…見えてこないのだよ 誠意とかそういうものがね わびるべき相手にドロを投げつけるんじゃあ 救ってやりようがないよなぁぁ~~~」 「二股かけてたヤツがイッチョ前に反省とか誠意とかカタッてんじゃないわよッ 大体なによ、決闘は禁止じゃないのッ」 「だまりたまえッ 平民との決闘を禁じる法はないッ 彼は決闘を請け負った ここではそれが全てだろうッ! それともなんだねキミは この決闘を侮辱しようとでもいうのかい?」 押し黙ったルイズを放って 続きを楽しもうと振り返るギーシュ 彼は今、生まれて初めて「暴力」の甘美に酔っていた 強い力をより強い力で蹂躙する快感にッ 二股がバレてかいた恥も これで埋め合わせがききそうな気分だった 決闘! 決闘! 決闘! ハハハハハ ニィィ 「…では決闘だ キミがわびるまで落とすのをやめないよ クク」 くっ… 額を割りながらもなお にらむのをやめない仗助に ギーシュもまた ニヤついた顔をやめない 得意げにビシリと指さす 「次にキミが何を考えているか当ててやろう! また叩きつけられるその瞬間 キミは地面を殴って逃れようとしているな? そのいきおいでぼくの方へ飛び、この顔面に拳をくれようと思っているな?」 ドン! 「…っ」 「図星を刺された顔色だね フフフ」 薔薇を左右に振り始めるギーシュ 仗助の身体も左右に振れる 同時に槍をかかげ 直立するワルキューレ 「いいだろう、やってみるがいいさ! キミの拳とぼくの槍、どちらが先に届くか勝負しようじゃないか」 「~~!」 「キミに勝ち目があるとしたら、そのくらいだろう? 感謝したまえよ、ぼくの慈悲にッ 決闘の幕引きにはピッタリだと思わないかい?」 つまりギーシュはこう言っていた 「こいつで終わりだ!」と それはたった今駆けつけたルイズにもビンビン伝わった ルイズは息を呑んで見入る ワルキューレの掲げる大振りのランスに… 騎乗突撃用の大槍! こんな太いのをぶち込まれたらどう考えても即死! 見上げた先の使い魔からは血がしたたっているというのに 「ねえ、おまえッ」 耐えきれなくなってルイズは叫んだ 「どうして治さないのよッ わたしのキズを治したみたいに、自分のキズを治せばいいじゃないッ」 ……… 使い魔の反応は無い 不可解だ あれほどの力を持ちながら 自分のキズを治そうとしないなんて …あれほどの、力? 「あれほどの力だから連発できない」ッ! ルイズの脳天に雷が落ちた そうだ、トライアングルメイジやスクウェアメイジだからって 無尽蔵に魔法が使える人間などは存在しない あの使い魔… わたしの治療と建物の修復で、ほとんど力を使い切っているのか! うなずける上につじつまがピタリ合う 「フ、なるほど」 …ギーシュが気づいてしまったらしい わたしが叫んだせいでッ ルイズはサッと青ざめた 「考えてみれば当然ってやつだな 先住魔法だか何だか知らないが…あれだけハデなことをやったんだ そりゃ魔力も残っているわけないよなぁ――」 薔薇を振り上げる ついに落とす気だ この戦い最後の火蓋を 切って落とす気だッ! 「だが決闘にハイと言ったのはキミだぁぁ――ッ さあ落ちろ、そして来いッ 最後に血にまみれて反省しろぉ―――ッ」 もうダメだ あまりにもカワイソウすぎる わたしを助けたせいで自分のキズも治せなくなって こんなフウになぶりものにされて しゃべることも反撃もできないまま だからルイズは走った 走って… 「ル、ルイズ、なにを…」 ドグシャアッ 外野からも驚愕の声が上がった ルイズは走って、落ちてきた使い魔を「受け止めた」 実際は身体のサイズが違いすぎて 落ちてくる使い魔のために自分の身をしくことになった ゼロのルイズは レビテーションひとつ使えないからッ 「うぅぅっ……」 痛い…泣きそうだ 腕がつぶれたんじゃあないか? ほとんどしびれた感じの中に刺すようなのが混じってくる シャツに染み込んでくるぬるい感覚は 使い魔が流している血なんだろう 使い魔がなんだか目をぱちくりさせているから言ってやった 「ご主人様の言うこと…聞かないから、こーなるのよ あげく、わたしに手間かけて どういうつもりよ…」 「おま、え…」 「おまえ呼ばわりは禁止したはずだわッ… そこで… しばらく黙ってなさい」 使い魔の下から這い出して、右手をついて… 痛い痛い痛い痛い痛い! 左手をついて立ち上がった 服がひどいことになっている ご主人様を血で汚した報いはそのうち受けてもらうとして 今はギーシュ・ド・グラモンに… 「…な、なんのマネなんだい、ゼロのルイズ」 彼の理解を数百万リーグも超えた行動にアングリと口を開いているギーシュだが そんな様子になど構っているヒマはない 「わ…わたしの、使い魔の不始末を…おわびするわ」 「…は?」 ルイズは… その場にひざまずいた 外野のさらなる驚愕の声 王家に連なる侯爵家がッ ヴァリエール家の三女がッ! あの気位ばかり高い『ゼロ』のルイズがッ! 『ヴァリエール』が『グラモン』の前にひざまずくッ なにをやっているのかわかっているのか? きっとそう思っているんだろうな 「つ…使い魔のかみついた責めは主人にあるんだもの だから、ヴァリエールの名にかけて、伏してお願い申し上げるわ」 『どうか、お許し下さい』 頭をグイと下げる 悔しい…泣きそうだ でも泣いたらもっとヴァリエールの名に傷がつく もう、あのバカ使い魔を助命してやる方法はこれ以外になかった こうやって次々と取り立てていくの? お金の次はプライドを? なんてヒドイ疫病神よ 正直、殺してやりたいわ 「…よ、よしたまえよ『ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール』 キミが頭を下げるほどのこともあるまい…」 これ見よがしに姓も一緒に呼ぶとは さぞかしイイ気分でしょうね、ギーシュ・ド・グラモン いいわよ 『プライド』くれてやるわ せいぜい鼻を高くしなさいよ これで使い魔にかけた『お金』がムダにならないのなら安いものよ… ヒュ… ドグチァ!! 「うげぇッ!?」 いきなりギーシュの顔面にすっ飛んできたドロの塊は ルイズには意味不明、意味不明、意味不明… 振り向いたらそこには使い魔 こいつが今のを投げつけた 確定! 理解不能、理解不能、理解不能、理解不能… 「な、に…な…ん…… なん、てこと、してくれんの、よ、あん、た」 ぼやく彼女の表情をたとえるならば そう… 『水中で窒息、あとわずかで顔を出せるところを目の前で水位がグングン上がっていく』絶望だった 「もう、おしまいだわ… わたしには、あんたのために支払えるもの何ひとつ残っていない」 「殺してもかまわないなッ ミス・ヴァリエールッ!!」 ドロをぬぐったギーシュの目つきはすわっていた ルイズは、その場にくずれ落ち、すすり泣きを始めてしまった… 「使い魔なのに 使い魔のくせに… どうしてムダにするの、どうしてわたしの頑張りをムダにするのよおおおお…」 「だからよー…てめー、の召使いになった覚えは、ねーよ」 はっとして仰ぎ見ると 立っている! 使い魔が横に立っている! 血だらけ傷だらけで今にも膝を屈してしまいそうなのが! 「先に言っとくけどよぉー おまえのガンバりは最初っからムダだぜ」 「なっ…」 「なぜならあいつに頭を下げて『ゆるして下さい』っつー理由が オレにもおまえにも無いからだ」 「……ほう?」 とんでもない悪人ヅラで微笑みを浮かべているギーシュに 使い魔はこともあろうに人差し指をさしてみせたッ! 「敗北だの反省だの誠意だのが今この場で一番必要なのはよぉぉ―― フツーに考えてテメーだと思うんだよなぁ――― そこんトコどうよ? グラモンさん」 「人を指さして気安く呼べる立場と思うなよ、下賤(げせん)ッ」 「そぉーッスかぁー 超安心ッスよ、話の通じねー貴族様でよぉぉ――― こころおきなく存分にボコッてやれるッスからなぁぁ――――ッ!!」 そのとき、ルイズは見た 使い魔がギーシュを指さしている左手から飛び出した もうひとつの左手 錯覚だと思ったがそんなことはない たしかにもうひとつ はっきり見える左手がある! そしてその手の甲に光輝いているのは…使い魔のルーン? あんなところにあったというのか! 繰り返すが、東方仗助にしてみれば 召使いになった覚えがないのは当然である どうしてこんなワケのわからないところに誘拐されて仕えなければならない? いきなり殺されかけたと思ったら下僕扱いされて ムチで叩かれて…冗談じゃない! だが、それでも…たとえそこから発した動機であったとしても 仗助を助けるためにその小さな身体を張り、下げにくいだろう頭を必死で下げた その後ろ姿に仗助は『タイヤのチェーンでズタズタになった学ラン』を見た そう思った途端に 身体が熱くて止まらなくなった 魂のエンジンに火が入ったのを実感した そして心底ぶっ飛ばしてやりたくなったのだ! 『学ラン』をズタズタに踏みにじる、あの二股のクソヤローがッ! (なんか泣き顔にうまく使われてるみたいでシャクだけどよぉー だけどこれでグッと来ねーヤツは男じゃねぇーぜッ そして、なんとなくわかってきた…今までバク然と使ってきたオレの『武器』) 歯車が、仗助の全身にピタリとはまりつつあった 今まさに呼ばれるその瞬間を待っている力の『砕けない名前』 運命であり、魂そのものであるそれは、今! 東方仗助の中で高らかに名乗りを上げたのだッ! 「クレイジー・ダイヤモンド…」 『そばに立つもの』、真なる覚醒ッ!!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/41.html
■ パートⅠ 使い魔は静かに暮らしたい ├ 使い魔は静かに暮らしたい-1 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-2 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-3 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-4 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-5 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-6 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-7 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-8 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-9 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-10 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-11 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-12 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-13 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-14 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-15 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-16 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-17 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-18 └ 使い魔は静かに暮らしたい-19 ■ パートⅡ 使い魔は今すぐ逃げ出したい ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-1 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-2 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-3 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-4 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-5 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-6 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-7 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-8 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-9 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-10 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-11 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-12 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-13 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-14 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-15 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-16 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-17 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-18 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-19 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-20 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-21 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-22 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-23 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-24 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-25 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-26 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-27 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-28 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-29 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-30 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-31 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-32 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-33 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-34 └ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-35 ■ 使い魔は今すぐ逃げ出したい外伝 『ラ・ロシェールにて』 ├ ラ・ロシェールにて-1 ├ ラ・ロシェールにて-2 ├ ラ・ロシェールにて-3 ├ ラ・ロシェールにて-4 ├ ラ・ロシェールにて-5 └ ラ・ロシェールにて-6 ■ パートⅢ 使い魔は手に入れたい ├ 使い魔は手に入れたい-1 ├ 使い魔は手に入れたい-2 ├ 使い魔は手に入れたい-3 ├ 使い魔は手に入れたい-4 ├ 使い魔は手に入れたい-5 ├ 使い魔は手に入れたい Until It Sleeps ├ 使い魔は手に入れたい-6 ├ 使い魔は手に入れたい-7 ├ 使い魔は手に入れたい-8 ├ 使い魔は手に入れたい-9 ├ 使い魔は手に入れたい-10 ├ 使い魔は手に入れたい-11 ├ 使い魔は手に入れたい-12 ├ 使い魔は手に入れたい-13 ├ 使い魔は手に入れたい-14 ├ 使い魔は手に入れたい U.N.Owen ├ 使い魔は手に入れたい-15 ├ 使い魔は手に入れたい-16 ├ 使い魔は手に入れたい-17 ├ 使い魔は手に入れたい-18 ├ 使い魔は手に入れたい-19 ├ 使い魔は手に入れたい-20 ├ 使い魔は手に入れたい-21 ├ 使い魔は手に入れたい-22 ├ 使い魔は手に入れたい-23 ├ 使い魔は手に入れたい-24 ├ 使い魔は手に入れたい-25 ├ 使い魔は手に入れたい Love ├ 使い魔は手に入れたい-26 ├ 使い魔は手に入れたい-27 ├ 使い魔は手に入れたい-28 ├ 使い魔は手に入れたい-29 ├ 使い魔は手に入れたい-30 ├ 使い魔は手に入れたい-31 ├ 使い魔は手に入れたい-32 ├ 使い魔は手に入れたい-33 ├ 使い魔は手に入れたい-34 ├ 使い魔は手に入れたい-35 ├ 使い魔は手に入れたい-36 ├ 使い魔は手に入れたい Can't Stop? ├ 使い魔は手に入れたい-37 ├ 使い魔は手に入れたい-38 ├ 使い魔は手に入れたい-39 ├ 使い魔は手に入れたい-40 ├ 使い魔は手に入れたい-41 ├ 使い魔は手に入れたい-42 ├ 使い魔は手に入れたい-43 ├ 使い魔は手に入れたい-44 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-2 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-2 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-3 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-3 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-4 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-4 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-5 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-5 ├ 使い魔は手に入れたい Sad But True ├ 使い魔は手に入れたい No Remorse ├ 使い魔は手に入れたい Dive in the sky ├ 使い魔は手に入れたい-45 ├ 使い魔は手に入れたい-46 ├ 使い魔は手に入れたい-47 ├ 使い魔は手に入れたい-48 ├ 使い魔は手に入れたい-49 ├ 使い魔は手に入れたい-50 ├ 使い魔は手に入れたい-51 ├ 使い魔は手に入れたい-52 ├ 使い魔は手に入れたい-53 └ 使い魔は手に入れたい-54 ■ パートⅣ 使い魔は穏やかに過ごしたい ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-1 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-2 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-3 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-4 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-5 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-6 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい外伝『バッカスの歌』 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-7 └ 使い魔は穏やかに過ごしたい-8 ■ Shine On You Crazy Diamond ├ Shine On You Crazy Diamond-1 ├ Shine On You Crazy Diamond-2 ├ Shine On You Crazy Diamond-3 ├ Shine On You Crazy Diamond-4 ├ Shine On You Crazy Diamond-5 ├ Shine On You Crazy Diamond-6 ├ Shine On You Crazy Diamond-7 ├ Shine On You Crazy Diamond-8 ├ Shine On You Crazy Diamond-9 ├ Shine On You Crazy Diamond-10 ├ Shine On You Crazy Diamond-11 ├ Shine On You Crazy Diamond-12 ├ Shine On You Crazy Diamond-13 ├ Shine On You Crazy Diamond-14 └ Shine On You Crazy Diamond-15
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1261.html
ヴェストリの広場へ向かう4人の少女と1匹の使い魔。 双月は雲に隠れているため、道中はけっこう暗い。キュルケが魔法で灯したランプを頼りに進んでいく。 「別に着いて来なくてもいいのに」 ルイズがシエスタと名乗ったメイドの少女に話しかける。 「いえ、原因の発端は私ですし……」 「だから別にあんたの為に決闘するんじゃないんだってば」 もう何度目かになるそのやり取りをキュルケは苦笑しながら聞いていた。 「それに、ミス・ヴァリエールの使い魔さまにもいろいろお世話になりましたし」 それを聞いたルイズは足を止めた。すぐ後ろを歩いていたタバサがルイズにぶつかる。 「痛い」 「あ、ゴメン。………シエスタ。ブラック・サバスがどうしたって?」 「お手伝いしていただいたんです。夕食の準備とかを」 もっとも邪魔にしかならなかったが、それは言わないでおく。 「あいつ……!一日姿を見せないと思ったら何やってんのよ……」 不機嫌そうに呟くルイズを見て、シエスタは余計なことを言ってしまったことに気づく。 「あ、いえ、あの」 なにかフォローになることを言おうとするが、何も思い浮かばない。 ルイズから他の貴族とは違う何かを感じていたとはいえ、貴族は貴族。やはり恐怖心はあった。 そこに助け舟を出したのは意外にもタバサだった。 「昼間図書館で会った」 「え?」 タバサの方を向き疑問符を上げる。 「会ったって。ブラック・サバスと?」 コクリとうなずくタバサを見て、ルイズは質問を続けた。 「図書館で何してたのあいつ」 「何かしゃべってた」 実際にはタバサは図書館でブラック・サバスの姿を見たわけではなく、ただ話しかけられただけでしかない。 しかし、今さっきの食堂でのブラック・サバスの声とセリフを聞いて、昼間の図書館の声の主がそれだと理解したのだ。 「そういえば、私も昼間に中庭で会ったわよ。あんたの使い魔の…ブラック・サバス?」 今度はキュルケが思い出したように話し出す。 「あんたも!?ほんとにあいつ一日中ほっつき歩いてたの!?」 ルイズはブラック・サバスに文句のひとつでも言ってやろうとして…ふと止まる。 「キュルケ、あんたブラック・サバスはさっきまで死んでたと思ってたんじゃなかったの?昼間に会ってんじゃない」 言われたキュルケは思わず、う……と声を漏らす。 まさか昼間に会ったルイズの使い魔を幽霊と勘違いしたとは言えまい。 「そ、そんなことより!早く行かないと、不戦敗になっちゃうわよ!」 急に慌てだしたキュルケに疑問符が浮かぶも、彼女の言うことももっともだったので思考を切り替える。 「サバス!この話の続きは、決闘の後でゆ~っくりするからね!」 さっきまで最後尾をヒョロヒョロついてきていたブラック・サバスに向かって言う。 が、そこには話題の中心になっている使い魔の姿は無かった。 「…………ええええ!?まさかまた勝手にどこかに行ったの!?あのバカ犬!!!?」 今度はルイズが急に慌てだす。 「ちょっと!ヴァリエール!落ち着きなさい!うろたえるんじゃあないッ! ドイツ軍人はうろたえないッ!」 「ドイツ軍人ってなによ!」 「いいから落ち着きなさいって、もしかしたら先に行ってしまったのかも……」 言いながらキュルケは、ランプを前方へ向けた。その灯りの中にブラック・サバスの仮面のような顔がヌッと浮かびあがる! 「キャア!」 後ろから甲高い悲鳴が上がった。 「サバス!!!フラフラしないの!私の影の中にいなさい!」 ルイズが杖を向けながら怒りの声を上げる。 「だいたいあんた影の中しか歩けないんでしょうが!なんで普通に歩いてんのよ!」 そこまでまくし立てて、気づく。 「……………………そうか。今あんたが立ってるところも影なのか」 さっきまでルイズは、ブラック・サバスは『自分たちの影』を踏んで付いて来ているとばかり思っていた。 しかし今、このパーティーはブラック・サバス、ランプを持ったキュルケ、ルイズとシエスタ、タバサの順番で並んでいる。 ブラック・サバスは誰の影も踏めてない。ならばブラック・サバスが踏んでいる影は、何の影か? 恐らくブラック・サバスは『月を隠している雲の影』を踏んでいるはずだ。 (てことは…………今暗いところは全部雲の影で……てことは………暗いところは全部こいつのテリトリー?) 今度は急にニヤニヤし始めたルイズにキュルケは少なからず不審の目を向ける。大丈夫かしらこの子。 「ワケが分からないけど…自己解決したみたいね」 「ええ。これで勝ちは決まったも当然よ。私が手を出さなくてもサバスだけでも勝てるわ」 またもや妙に自信満々に言う。 「この使い魔そんなに強いの?」 疑いの目でキュルケはブラック・サバスを見る。 「もちろんよ。こう見えてこいつ、ものすっごい力持ちなんだから」 ルイズは昨日と今朝で二度、ブラック・サバスに捕まる経験をしていた。 あのとき感じたパワーは今まで体験したことの無いものだった。 物理的な強さというよりも、なんというか魂ごと押さえ込まれるというか……。 この自信満々のルイズに対して疑いの目を向けるのはシエスタもだった。 どう考えてもこの使い魔が力持ちとは思えない……。大丈夫かこの人。 「サバスちゃんと言うこと聞きなさいよ!働きようによっては、特別に今日フラフラ歩き回ってたこと許してあげてもいいわ」 ルイズは上機嫌だった。もう勝った気でいる。 (後で泣くことにならなければいいけど) キュルケの心配をよそに、ルイズは勝った時の決めゼリフへと思考を移していた。 「遅刻」 後ろからのタバサのつっこみでやっと一行はヴェストリの広場へ歩き出した。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/302.html
「じゃあ、このハルキゲニア…」 「違う!ハルケギニア!もう、何度言ったら覚えるのよ!」 ルイズの苛立つ姿を見たジョナサンの脳裏に、ラテン語の格変化で父親に散々しごかれた子供時代の思い出がよぎる。 窓からは月の光が淡く差し込み、卓上の魔法灯の明かりと共に部屋の中をほの明るく照らしている。 この時間になるまでルイズとジョナサンは互いの情報交換に忙しかった。 ルイズは端っからジョナサンがどこかの辺境から来た平民、つまり魔法を使えない人間だと信じ込んでおり、 そもそも彼女の知らない別世界から召喚されたという事実なぞ思うよしも無かった。 一方ジョナサンは二つの月が昇るのに面食らい、カーター某なる男が死後に火星の二つの月の下で大冒険を 繰り広げる話を思い出して、ここは火星のどのあたりかと聞いてみたが、返答は「どこそれ、あんたの国?」と ごく簡単なものだった。 双方の誤解を解くための説明や無駄な遠回り、はたまた時には口論の末、ようやく二人は 1:ジョナサンが今いるのはハルケギニアという魔法が存在する世界である 2:ジョナサンが来たのは19世紀のイギリス、但しアメリカへの連絡船の中で死んだはずである 3:ジョナサンはどういう訳かルイズの使い魔として召喚された という共通した認識を持つに至った。 「…ハルケギニアに召喚された僕は、使い魔として何をすればいいのかな?」 先程までの激昂ぶりが嘘のように、ジョナサンは落ち着きを取り戻して椅子に座っている。 結局先程のキスは子馬や何かの鼻面にしてやるような、いわば動物とのスキンシップが儀式の一環として 組み込まれているだけの話で、要するに人間が召喚された場合を想定してなかったがために ややこしい事態になっただけだと分かると、納得はいかないまでも淫らがましい行為ではないと思えるようになった。 「まず一つ目に、使い魔は主人の目と耳になるの。使い魔の見聞きした事は主人も見聞きできるはず…」 ベッドの上に座るルイズが精神集中するように目を閉じる。 「…なんだけど無理みたい」 ルイズも最初のうちこそジョナサンの剣幕とその後の変貌ぶりに驚いていたが、自分がファーストキスを交わした相手が 自分と同じような後ろめたさを感じていること、また冷静な状態なら(いささか田舎臭いものの)それなりに 礼儀作法をわきまえていると知り、これまた納得はいかないが安心はできた。 「二つ目は秘薬の材料を探してくれる…んだけど、あんたじゃ無理そうね」 「残念だけれどその通りだな」 「最後にご主人様を守る。ある意味これが一番大事よね」 ルイズはジョナサンに歩み寄り、周囲を回りながらじろじろと観察する。 「…結構いい体つきしてるわね」 「ラグビーをやっていたからね。革で出来た紡錘形のボールを蹴ったり持って走ったりしてゴールに入れる競技だよ」 「ふうん…ま、小間使いぐらいは勤まるかしらね」 あふ、とルイズが欠伸を噛み殺す。 「さすがに遅くなってしまったな。もう休むべきだ」 気付いてジョナサンは立ち上がり、 「それで、僕のベッドはどこだい?」 ルイズが指差した物を見て我が目を疑った。 毛布が一枚椅子の背に掛かっているだけ。つまりこれをかぶって適当な所で寝ろ、ということらしい。 「…また僕を侮辱するつもりか?」 「ち、違うわよ!そもそも部屋の中で寝られるだけ有難いと思いなさい!普通だったら大型の使い魔は外で寝てるのよ! それに急だったからベッドの予備なんて無いわよ!第一使い魔なのにベッドで寝るなんてありえない!」 言ってからしまった、とルイズは顔をしかめる。 いい加減眠くなってきたのにまた口喧嘩を始めてしまい、これでまた時間を取られるのはごめんだ。 「うん…それもそうだ。ベッドが用意できるまでは仕方ないな。レディのベッドを取る訳にも行かないし」 ジョナサンは意外にあっさり折れ、椅子に戻ると毛布を羽織る。 ルイズは内心胸を撫で下ろし、いつものように制服を脱ぎ始め、 「…僕が君の立場なら、もう少し恥じらいというものを持っているはずだけれどね」 ジョナサンの非難めいた声に慌ててクローゼットの戸を大きく広げ、 「わ、分かってるわよ!つい今までの癖が出ちゃっただけよ!さっさと寝なさいよ!」 それを衝立代わりに着替えを済ませる。 下着に手を掛け、 (洗って貰おうと思ったけど明日の朝言えばいいわね。もう面倒は沢山) 普段通り足元の洗濯物かごに放り込んで、ベッドに潜り込んで魔法灯を消す。 (でもあいつ、ベッドで寝るなんて言ったわよね…まだ誰がご主人様か分かってないんじゃないの?) ジョナサンは目を閉じ、背を向けたまま、ルイズがベッドに入ってすぐ寝息を立てるのを聞いていた。 (世間知らずで我がままってだけじゃない、無防備だ…警戒心が無いのか?それとも貴族としての自負の表れか?) 波紋の呼吸に意識を集中、心の雑念を振り払う。 (…何としてでもエリナに僕が生きていると伝えたい…出来ればエリナの許に帰りたい…) 肺の空気を残らず吐き出し、血液のビートを全身で感じる。 (ここは魔法学園だと言っていたな。教員ならば元の世界に戻る方法を知っているだろうか?) ゆっくりと空気を吸い込み、全身の細胞から血流に乗って運ばれる波紋エネルギーを背骨に沿って束ねる。 (どちらにしても明日からだ) 残らず吐き出す。 ゆっくりと吸い込む。 吐き出す。 吸い込む。 (…そういえばあの娘、さっき小間使いがどうとか言ってなかったか?) 主人と使い魔の間にある理解の壁は、まだ高く厚かった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1026.html
「五つの力を司るペンタゴン 我の運命(さだめ)に従いし――」 「使い魔を召喚せよ━━」 その言葉を紡いだと同時に メメタァ!! よく解らない音と共に――━━ 爆発が起こった。 第1話●ロの使い魔 (狭い…暗い…ここ…どこ?) 必死に記憶を反芻するも思い当たる節もない (確か…病院に…居たはず…) 息がし辛い口をガムテープで塞がれて居る、体もロープで拘束されてるみたいだ ━理解不能理解不能理解不能理解不能━ などとちょっとした電波を受信していると浮遊感が体を包み込み―― 彼はこの世界から別れを告げた (お願い、皆が私のことゼロなんて言えなくなるようなすっっっごい使い魔よ来なさい!むしろ来て下さい!) 爆発を起こした張本人であるルイryは自らが起こした爆発に内心ビビりながら祈っていた そして土煙が晴れてくると次第に長方形の何かが姿を現し始めた (やったわ!とりあえず召喚には成功したんだわ!第三部完っ!ってとこかしら) しかしその喜びは束の間であった、何故なら姿を現したのは ━━箱? いや取っ手もついてるしカバンかしら、ああ、ちょうど良かった新しいカバンが欲しかったのよ、ウケウコケウケコウケッ ル(ryは現実から逃げ出した、しかし回りこまれた 周囲の生徒からは 「流石ゼロっ!俺達に(ry」 「そこにしびれ(ry」 とはやし立てられている、(ryは屈辱に肩を震わせて今にも泣きそうな表情へと変化している その様子を伺っていた褐色の胸がグンバツな女キュルケは (泣きそうな顔もそそるわねぇ、ルイズカワイイよルイズ――ってアレ??) (あの箱微かに動いてる?それに呻き声みたいなのも聞こえるわ) 「ねぇルイズ」 「なによ!!あんたも私を馬鹿にするんでしょ?笑いたければ笑いなさいよ!!」 キュルケは苦笑しながら答える 「アナタが召喚した箱なんだけど…中に生物が入ってるみたいよ?」 その言葉にルイズは箱を見やる、確かに呻き声や動きが見られる。 それを見てルイズの表情が緩みかけるが思いとどまった (駄目よ過度の期待をしては駄目、どうせ裏切られるんだから) などとネガティヴまっしぐらになってると乳女が 「早く中を開けて御覧なさいよ、ま、どうせ死の呪文を唱える舌の長いモンスターが出てくるだけでしょうけどw」 キュルケのその言葉にルイズは顔を真っ赤にしながら反論しつつも箱に近づく (ほほほ、本当に皿木を唱えるああああ、あいつがでたらどどどうしよう) 真っ赤にしていた顔を真っ青にしながらもルイズは意を決し箱を開ける―― 「――え?」 間抜けな声が出てしまった それもその筈モンスターが出てくるとばっかり思っていたのに箱の中には奇妙な恰好をした平民の少年がおり、しかも口を塞がれロープで体の自由を奪われてたのだ、少年の傍らに本があったがこれまた見た事の無い字であった。 ルryは混乱している (どういう事よ、くそっくそっ、舐めやがって!!) 周囲の奴らは 「ゼロが平民をしやがった!」 「しかも縛ってやがる」 「俺も縛られてルイズに詰られたい」 などとルイズを馬鹿に?しだしたのだ 「ちちち、違うわよ!ちょっと失敗しちゃってこの子が召喚されちゃっただけよ、ミスタ・コルベール!再召喚を要求します!」 「だが断る!再召喚など許可しなぃぃぃぃぃ!!」 「ですが平民を使い魔になんて聞いた事ありません!!」 だがルイズも食い下がる、平民を使い魔にするなんて良い笑いものだ、それだけは避けたい。 ルイズの必死の講義にコルベールは 「では留年という事で良いかな?」 と頭を輝かせながら言う、ルイズは留年という単語を聞き (留年なんて事になったらヴァリエール家の恥!それこそ家を追い出されてしまうわ、それだけはイヤ!) ルイズは観念し、少年に近づき━━ 思いっきり嫌そうな顔をした (なんなのよ!?平民でもせめて強そうな平民ならまだしもこんな子供なんて、しかもなによその前髪?ワカメなの?) (しかも私みたいな絶世の美少女が近づいっていってあげてるのになんで脅えてるのよ!) 見ると平民の少年は体をぶるぶると震わせながら泣いている (ああ!!もう!さっさと終わらせてしまおう、後の事は今考えない!) ルイズは自棄になりコントラクト・サーヴァントを行う 「感謝しなさいよ、平民のあんたが貴族で美人で素晴らしい私にこんなことしてもらえるなんて、二度とないんだからねっ!!」 少年は一層脅えだした、(俺のそばに近寄るなぁぁぁぁ)と聞こえた気がしたが無視する事にした。 「五つの力を司るペンタゴン、此の者に祝福を与え━━我の使い魔となせ━━」 ズキュゥゥゥゥン 「……あれ?なんで?失敗…したの?」 (そ、そんな、失敗したっていうの?人生オワタ\(^o^)/) ルイズが失望感に苛まれていると、禿ベールが近づいて来る 「あー、ミスヴァリエール?彼の猿ぐつわをとらないと、直接唇が触れないと契約は行えないよ?」 その言葉にルイズは希望を得るが同時にファーストキスを平民にあげる事に失望を感じた (ああっ!!もう!“覚悟”を決めるのよ私!) そして平民の子に対し出来るだけ威厳を損ねないような口調で話しかける、今更威厳もへったくれもないようなものだが、彼女のプライドがそうさせるようだ。 「今からこの猿ぐつわをとるけども泣き叫んだりしないって誓えるかしら?」 平民の少年は首を激しく縦に振る、どうやら苦しいようで顔色も心なしか悪く見える 「よぉーし良い子ね、安心しなさいリラックスよリラックス」 平民に言い聞かせながら猿ぐつわを取る その時衝撃の出来事が!! 「オゴェェェェェーーッ、ゲロゲロ」 平民が勢いよくゲ●を吐き出したのである、その勢いたるや圧倒的破壊力の小宇宙と言わんばかりであった 「何をするだァァァ!!許さんっ!!」 メメタァ! その後無事(?)にコントラクト・サーヴァントを終えルイズが少年に問う 「そういえば名前を聞いてなかったわね、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールよ!あんた名前は?」 使い魔のルーンを刻まれる際の痛みで泣き転んでいた少年は少し落ち着きをルイズの問いに答える 「ぼ…僕…僕の名前……ボインゴです…はい」