約 128,334 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/127.html
「んむ~~~」 「ぬうううう~~~ッ」 ベッドの上にすわりこむルイズ ドアの正面にアグラをかく仗助 いろいろ一段落はついたものの ふたりは小一時間にらみあったままだった たまに口を開いたかと思えば 「ンだよ、またバカにすんのかよ、髪」 「…ヘンタイ」 たがいにプイとソッポを向き そしてまたチラリと目が合うと 「んッ、むゥゥ~~」 「ぬううう~ッ」 このくり返しだった (くっそ~~ そりゃチカンだろーよ ムネをさわりゃあよおおお~ だけどオレがやろうとしたのは人命救助だっつうの 釈然としねー ムカつくぜっ) (なによこいつッ 使い魔のくせにご主人様をなぐるし 胸、さわろうとするなんてサイテー 大ミエ切った手前、仕方ないから追い出してないけど ケガらわしいわ 不潔だわ このチカンッ) こんなグチを心の中でタレるのも何度目だろうか? いいかげん不毛だとはどっちもわかりきっていた (だけどよぉー また一方で、コイツが助けてくれなきゃあ オレは死んでたっつー事実もあるわけでよー それに、ナニがどーなってんのかも聞いとかなきゃ ラチがあかねぇってやつだよなぁー) (でも、こいつ… 崩れた建物の下じきになったわたしを助けてはくれたのよね 使い魔のくせに魔法をつかうなんて、もっとハラ立つけど ここであたしがムカついててどうすんのよ 聞くことだってたくさんあるのに) チラッ チラッ ふたりはまた相手を見る そして (でも、やっぱりムカつくっ) プイッ プイッ また顔をそむけるのである いつまでこんなことをしているつもりか もう夜もすっかりフケていた 目が覚めたころからとっくに夜だったが 今は遠くから生き物の声しか聞こえなかった トントン 「うおおわッ」 やっとしてきた物音は仗助の背後から ドアを叩いてきた誰かだった 仗助はビビって軽くのけぞる 「これは失礼しました、ジョースケ様」 「だから、様はいらねェって」 声には聞き覚えがあったので ドアごしにこころよく応じる仗助だったが ムッ! それがまたルイズのカンにさわったようだ (使い魔のくせに「様」ですって、こいつッ というかジョースケ? 名前? 使用人にカンタンに教えてやった名前なのに ご主人様には態度悪くして黙ってるって、そーいうワケぇ?) ムッカァァ~~~~~ッ 「ルイズ様、よろしいでしょうか…」 「帰んなさい」 「ですが」 「聞こえなかったのッ」 即答 聞く耳もたないッ 「わかりました… ミセス・シュヴルーズからの、今夜の分は置いておきますから…部屋の前に」 ドア向こうの声、シエスタはスゴスゴと引き返していったようだ 仗助は少し落胆してからまたムカついた 今、目の前にいるピンク髪のバイオレンス女よりも ずっと話が通じる相手だったのに! 「おい、なにもあんなフウによー」 「るさいッ おまえ何様よッ」 「何様だはてめーだッ ゴーマンチキッ」 そろそろ我慢の限界 仗助も声をあらげてしまった 「フンッ!! 何様、ですって? いいわよ、教えてやるわよ」 バサァ ザッ!! ベッドから、マントをひるがえして立つルイズ 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール トリステイン王家につらなるヴァリエール家の三女とは、わたしのことッ」 ドン 気合いを入れた名乗りではあったが それを聞いた仗助の顔といったら 「…………」 ホケェェ~~…ッ (ルイズ・フラン…何…? 「トリステイン」…どこのヨーロッパだぁ? 王家っつわれても、聞いたこともねェんじゃあよー) 「ま…おめーが王家だろうが金持ちだろうが、どっちでもいいや」 気を取り直して、やっと話し合いに入ろうとする仗助 だがもう少し洞察力を働かせるべきだったのではないだろうか? とはいえ実際、そんなものを「悟れ」と言う方に無理があるのだが 彼も彼女も、置かれた状況をあまりにも理解していなさすぎた ヒクッ… ルイズのまぶたがケイレンした 「ふっ… そ、そぅお~ クチで言ってもワカンナイやつなのね、おまえ」 ヒクッ… ヒクッ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ビンッ ビン 片手に取り出した鞭を指先でしならせ じりじりと仗助に寄ってくる 「ちょ、待、待て… どうする気だ? そいつで…その『鞭』」 「わたしはご主人様で、おまえは使い魔なのよ」 「…はぁ?」 何デンパ抜かしてんだてめー そうとしか言いようがないッ (そーいや、出会い頭にも言ってたな 使い魔だとか、ご主人様をおまえ呼ばわりだとか…) まさか本気で言っていたのか 現在進行形でマジなのかッ? だとしたら…イカレポンチか! 正真正銘のッ 「調教してやるわ、このド平民」 「冗談じゃねー 自衛すんぞコラァァ―――ッ!!」 9へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/897.html
ゼロのルイズがとうとう使い魔を召喚した。よりにもよって平民の女だ。 一緒に儀式をしていたキーシュも平民を召喚したらしい。こちらは老人とのこと。 センセーショナルなニュースであるはずが、学院内の話題を独占するにはいたらなかった。 なぜか? 皆、自分のことで忙しかったからだ。 モンモランシーは、使い魔の蛙とともにギーシュの部屋の前から動こうとしなかった。 使い魔の蛙は機械的な動作でドアを叩き続け、モンモランシーは人間的な必死さを込めて声を出し続ける。 「ギーシュ、どうしたの。いったい何をしているの。顔だけでも見せてちょうだい」 返事は無い。が、気配はある。何事かを呟く声も聞こえる。 「ギーシュ! あなた食事もとってないでしょう! 体を壊してしまうわよ!」 「お嬢様、ここは男子寮です」 「だから何?」 「私達少しばかり目立っているようです。お声を落とされた方がよろしいかと」 「あんたは黙ってドアを叩いてなさいヨーヨーマッ!」 「分かりましたお嬢様……ゲロッ、ゲロッ……乗っかりてェェェ」 キュルケは浮かれていた。 召喚した使い魔は、他と比べて異質、かつ恐ろしく強い力を秘めているらしい。 今はまだ水をお湯にするだけだが、秘めたる力はキュルケ自身にも伝わってくるような気がする。 その力を魔法と組み合わせた時、誰もが想像しえなかった真価を発揮するだろう。 戦場を縦横無尽に駆け回り、あらゆる名誉を手にした自分を想像する。 その右隣にはまだ見ぬ運命の人が……。 「うっふっふ、全てがあたしに味方しているようね」 キュルケは浮かれていた。 思っていたよりもかなり早く、力を発揮する場を与えられる喜びに打ち震えていた。 早くタバサを見つけ、偶然にも手に入れた素晴らしい情報を教えてあげなければならない。 タバサは学んでいた。 少しずつだが、確実に一歩ずつ歩みを進めていた。 この使い魔は、ドラゴンの例に漏れず、無類の強さを持っている。 だがそれを的確に使いこなすためには、覚えなければならないことが山ほどあった。タバサでなければとうに投げ出していたことだろう。 「ダカラー! ソーじゃネェーんだッツーの! わかんねェーなァー眼鏡サン」 「感覚的すぎ」 「風水ってのはそういうモンなの! エネルギーを感じンだよ、エネルギーをよォー」 理論で説明できることの方が得意なのだが、文句を言っても始まらない。 目的を果たすためには、千里の道を半歩ずつ歩かなければならないこともある。 「ソーじゃねェーんだって! アーモウいっそ毎朝小便でも飲めばイインじゃねェの?」 「いや」 「きゅイきゅイッ」 「うるさい」 マリコルヌは自室で一人肩を落としていた。 ゼロのルイズが平民を召喚した。本来ならば格好のネタである。 ため息をつき、机の上を見る。そこには蛙のような生き物がいた。 払い落とそうとしたが離れようとしない。食事、風呂、トイレ、ベッドの中、どこまでも主についてくる。 ついてくるだけで何をするというわけでもない。ただ、ついてくるだけだ。 目を通して見ることも、耳を通して聞くこともできない。心も通じていない。本当に何も無い。 平民の使い魔がどんなものかは知らなかったが、これよりダメな使い魔はそういないだろう。 こんなことを知られれば、ルイズにどれだけ馬鹿にされるか。考えるだけで憂鬱になる。 「まさかとは思うけど……他の人が召喚するはずだった使い魔じゃないだろうな」 そもそも風上を名乗る自分が、なぜ蛙を召喚しなければならないのか。 ロビンと名付けたその使い魔に目をやり、マリコルヌはため息をついた。 マリコルヌも不幸ではあったろうが、ギーシュの比ではなかった。 ギーシュは部屋の隅で震えていた。そこから動こうとはしない。動くことができない。 食事はとることができないため痩せこけ、排便はその場で済ませるため、部屋の中が名状しがたい臭気で満たされている。 それでもギーシュは動くことができない。モンモランシーを部屋の中へ呼ぶこともできない。 「なんでぼくが……どうしてぼくが……」 ギーシュはこれまで快楽的に生きてきた。 女の子に泣かれることは多々あったが、それもまた甘美な人生には必要なスパイスだ。 まさか使い魔を召喚することで、これまでの人生を悔いるはめになるとは思っていなかった。 何も高めなかった自分を、積み上げてこなかった自分を呪うことになるとは考えていなかった。 「ねっ。ねっ。彼女も呼んでるよ。外に出なきゃ飢え死にしちゃうよ。ねっ」 「うるさい……うるさい……黙れ……黙ってくれ……」 「ねっ。ご主人様なら背中見せずに生活できるよ。ねっ」 「やめてくれ……許してくれ……お願いだから……」 幸運には上限があるが、不幸には下限がない。ギーシュは自分の幸運を知らなかった。 ギーシュの使い魔は、自分の性質を押し殺してまで主人に仕えようとしている。 使い魔としては最低限のことだったが、その最低限がどれだけ重要なことか。 最低限が無いということは、最低よりも下に位置しなければならないのだ。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/87.html
桃色の髪をした少女、ルイズの眼前に現れたのはただの男だった。 貴族として、魔法使いとしての一生を決めるといっても過言ではない 使い魔召喚の儀式であるサモン・サーヴァント。これは彼女が属する 魔法学院において進級のための通過儀礼である。 何度も失敗を重ねながらも、周囲から聴こえる嘲笑に耐え、ようや く成功した。それなのに、現れたのは何のとりえもない人間だった。 愕然とした。彼女より先に儀式を行ったものたちの使い魔は全て立派 だった。土中を走るモグラ、火を吹くサラマンダ、中には大仰な姿の竜 を呼んだものさえいた。溢れる羨望と悔しさを押さえ込んで、挑戦した 結果がこれ。 ルイズは傍で儀式の成り行きを見守っていた教師、コルベールにやり直し を求めた。だがそれは即座に却下された。その反応はわかっていた。もともと 神聖な儀式であり、使い魔は運命の相手、選り好みなどしてはいけないのだ。 彼女は腹を据え、足元に倒れている男に視線を注いだ。身に付けている バンダナやマント、手持ちの杖が砂で汚れているため平民でも下流のものである と思われる。だが、このさっきから微動だにしない男から受けるのはどんな貴族 からも感じたことのない威圧感だった。 ともかく、ルイズは契約の儀式を行うため静かに男の頭部を持ち上げた。 そのときだ。 「なにをしようというのだ少女よ」 重く、身体の芯に響く声がした。 ルイズも、すぐ近くのコルベールも一瞬誰が発したのかわからなかった。 「君に聞いているのだ」 声の持ち主はその男だった。彼は目を開き、ルイズに顔を向けた。 びくりと彼女の心臓が跳ねた。彼のまぶたの奥にあるべきものが 見つからなかったからだ。そこにあるのは瞳ではなかった。 「鼓動が激しくなったぞ。盲目の人間を見るのは初めてか?」 動揺を悟られた。しかし彼女は、口中のつばを飲み込み顔を寄せた。 自分は誇りある貴族、差別を持つような卑しいものではない。 その矜持が彼女を動かした。それに、彼は使い魔なのだ。 「質問に――」 男の声は遮られた。ルイズの小さな唇が音の出口を封じてしまったからだ。 その接吻は一瞬だったが、それでも効果はあった。 「ぐ、ぬあ……」 苦悶の声を男が上げる。熱と痛みが彼の身体を暴風雨のように 荒らしまわっていた。ルイズの腕から離れ草の上を転げ回る。 そんな彼の元にコルベールが近づき、左手の甲を確認した。 したり顔でうなずきぶつぶつとなにかをつぶやいていたが、 すぐに周囲の学生たちに学院に戻るよう指示を出した。 その間に、ルイズはいつのまにか大人しくなった男の傍に立ち、 重要なことを尋ねた。人間であれば絶対に持っているものだ。 「あんただれ?」 男は重い声で答えた。 「俺は、ンドゥールだ」 言いにくいわね。ルイズはそんなことを思った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/37.html
「やめて!!」 ギーシュとドッピオの決闘の間に誰かが割って入りました 「ミス・フランソワーズ、そこをどいてくれないかな?」 ギーシュは一度、ピッと杖を突きつけ言います 「もう勝負は決まったようなものじゃない!続ける必要なんて・・・」 「僕はその平民に誇りを汚されたんだ。だったらそっちが負けを認めるまでこれは続けるさ」 ルイズは一度ドピッオに振り返り 「・・・ドッピオ、負けを認めなさい。これ以上続けたらアンタ死ぬわよ!」 ルイズはそう言いました 「・・ルイズさん?いつから来てたんですか?」 ドッピオは見当違いのことを言います。ドッピオ自身気になっていたからです 「そんなのどうでもいいから!何が目的でやったか知らないけどこんな傷まで負って・・・」 「ルイズさん」 言いくるめようとしたルイズを一言で止めました 「使い魔って言うものがどういう者か最初に説明してくれましたよね」 「確かに説明したけどそれとこれとは・・・」 「使い魔はつねに主を守り、敬愛する者・・・だったら」 ドッピオはギーシュの方を向き 「あだ名だかよく分かりませんけど、ゼロのルイズとか言ってバカにしているような人には・・ッ」 力が入らない足に渇を入れて立ち上がり 「絶対に・・ッ謝らないッ!!!」 その意気に呑まれたのかそれとも感動したのか 「・・・平民の方、頑張れ!」 「ルイズの使い魔!頑張れよ!!」 「ドッピオさん!負けないでください!!」 「ドッピオ?・・ドッピオ!ギーシュなんかに負けるな!」 「「「ドッピオ!ドッピオ!ドッピオ!」」」 周囲から湧き上がるドッピオコール 「え?え?なに?」 ルイズ自身は戸惑っています 「・・よし」 その声援に少々力づけられたドッピオはギーシュを倒そうと歩こうとしますが (駄目だ、力が・・・) たとえ気力が充実したとしても肉体が拒否する。痛みにドッピオは耐えられないのです (ドッピオ) 不意に聞こえる声 (よくここまでやった。可愛い部下がここまでやっているというのに私がやらないわけにはいかん) この声は・・まさか (後は私に任せろ。あの男が気に入らぬのは私も同じなのだ) ドッピオの意識はそこで途切れました 「ドッピオ・・・?」 一番最初に異変に気づいたのはルイズでした 「・・・・・・」 目の前でだんまりしている自分の使い魔が別の何かに・・・最初のときのような人になっていることを 「・・・どうかしたのかな、ドッピオ君。そうまでして立ち上がったのだから僕と戦うのだろう?」 ギーシュはまだ気づいてません。目の前の男がドッピオではなく 「戦いなんかにならないだろうけどね!」 ドッピオにボスと呼ばれた絶頂の能力を持っている人だということを 「キング・クリムゾン」 そう男が呟きました 「ハッ?!」 ギーシュは気がつきました 「あ、あれ?」 さっき確かに召喚したはずのワルキューレがいません 「そ、そんなバカな!」 もう一度召喚しようとしますが 「キング・クリムゾン」 どの呟きに邪魔されてしまうのです 今、ドッピオと呼ばれた人はその人にボスと呼ばれた人に入れ替わっています 名をディアボロ。エピタフとキング・クリムゾンという絶頂の能力を持っている人です 肉体が痛みで動くのを拒否するのをそれを超える精神で肉体を支えています (この程度の痛みッGERで与えられた痛みに比べればまだましだ!) GER、その効果の所為でディアボロは地獄を味わい続けていました 終わりが無いのが終わり、それを救ってくれた少女。それをバカにする周り (我が救いを侮辱するなど許さん!) そう思い、目の前を男に歩みを進めるのでした ギーシュはいくら召喚しようとも召喚できていないことに不安を覚えました 自分が魔法を使えなくなってしまったのではないかと思ってしまうのです 「くっくそ、くそくそくそ!!」 目の前の男がなにをしているのかさえ分かりません ただ自分の魔法をなにかで消している。そう思わないと不安につぶされてしまうのです 「ひっ・・!」 とうとうその男が目の前までに来てしまいました エピタフで未来を予知し、それをキング・クリムゾンで消し飛ばす それが絶頂の能力の正体、最強の守りのことです 攻撃はキング・クリムゾン自体の攻撃です。こういうと些細なものと思われてしまいますがその力も尋常ではありません ディアボロは今、目の前の男が未来になにするか予知してその時を消し飛ばしながら進んでいるのです そして、その男の目の前まで来ました (・・・殺すか?) ディアボロは殺すかどうか考えていました (・・とりあえずこうしとくか) 殺すかどうか以前に目の前の男の杖をへし折りました 「あ・・・僕の杖が!」 「・・・・・・」 決闘はこれで終わりです。その後は、キング・クリムゾンで目の前の男を・・・ 「ストップ!」 殺そうとして止められました。止めたのはルイズです 「・・・なぜだ?」 「え?」 「この男は君をバカにしていただろう。他にも大勢の者が・・・だ」 「・・・そんなの一々気にしてたら仕方無いし魔法をちゃんと使えない私が悪いのよ!」 「・・・そうか」 キング・クリムゾンをしまい・・・目の前の男に近づきます そして一発殴ります 「ギャッ!」 男は変な声を出して地に伏しました 「・・・ぐっ」 男を殴ってから少し経つとディアボロも倒れました 精神が支えていたのですから倒したことで安直するとこちらだって倒れてしまいます 「あ・・・いけない!誰か救護・・・」 ルイズの心配する声も聞こえなくなってきました 「ぐ・・・はあ」 一度、呼吸をしてディアボロは妙な達成感を覚えながら意識を遮断しました 7へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/18.html
渡り廊下のほど近くに倒れた男へ向かい コルベールが寄ってくる そしておもむろに杖を振り上げた あわてるのはキュルケだった 「ちょっと、何をなさるおつもりッ!?」 「決まっているでしょう、殺すのですよ 彼…『この存在』は危険すぎる」 「バカなことをッ!! これなら充分、生け捕りにできるじゃありませんのッ」 生徒にあるまじき態度でくってかかるキュルケ 一応、敬語を使ってはいるが ガンバりを無駄にされて笑っている趣味はないッ だがコルベールも引き下がらなかった 「タダの使い魔であればそれも良いでしょう しかし、これはあまりに得体が知れないッ おまけに出てくるなり危害を加えたならば 皆を監督する者として、こうする以外にありませんッ」 スジは通っていた 出てくるなりいきなり殴りかかってくる使い魔など前代未聞だった 危険な生物を召喚してそのまま放っておき続ければ あるいはそんなに不思議なことでもないかもしれないが それでもキュルケは食い下がる 「ですが、あれは平民ですわ、ミスタ・コルベール」 「それこそバカなことではないのかな? 本気で言っているのかね?」 「………」 黙るしかなかった あんな平民がどこにいる? だが、それでも 今、目の前で折れた足をかばっている男は理性ある「人間」だ 最後の方、攻撃を明らかにためらったことに気づいていたキュルケである そこに火球を浴びせかけて反撃せざるをえないように追い込んだのだ そうしなければ、男は戦いをやめ、どこかに逃げるなりしていただろう 最初に暴れたワケは不明なままだが とにかくキュルケは確信していた それを言おうと口を開くがコルベールに先手を打たれた 「それに、だとしたらますます存在を許すわけにはいかない 貴族を殴り、使い魔を山ほど傷つけた そんな平民が生きていられると思うのかね?」 もっともだ もっともすぎる これほどハデにことが起これば隠蔽など不可能 人間と認めたら認めたで、かばいようがないッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「つまり、『これ』には死刑判決以外ありえない」 コルベールは厳粛だった そして振り向く この真なる当事者に 「良いですね、ミス・ヴァリエール」 ビクッ ぐずりながら見守っていたルイズは肩を震わせる 何を言われたか そのくらいは理解していた 「気に病むことはありませんよ これは事故なのです あなたには何の責任もない これを始末した後で、また儀式をやり直しましょう そのくらいの時間はとってあげられます」 「……」 (…そうだわ これは事故なのよ 私には何も責任ない こんなところに出てきた平民がおかしいのよ) くじけた心はまたたく間にルイズに『弱い考え』を植え付けた (私は「ゼロ」じゃない だから、あんなの私が呼ぶわけがない これは何かの間違いなのよ そうに決まってるのよ…) ルイズは、コルベールに向かってうなずいてしまった 死刑の執行許可書にサインしてしまった (…見ッ下げ果てた奴ッ アンタ、やっぱり「ゼロ」だわ、ルイズ) キュルケが苦虫を噛み潰す横で コルベールが呪文の詠唱を始める 足を折られた元・鳥の巣は、なんとなく置かれた状況を理解した ナニゴトか唱えた後で炎が飛んできたり地面が固まったりしてきたのだ どうやらこのハゲは自分を殺す気らしいぞ そう思ったらしい 最後の抵抗を試みたようだ 「DORA!!」 ボコァ 見えない手が掘り返した土くれがコルベールに投てきされる ボグォム 「―― ぐはッ!?」 至近距離からのレーザービーム送球ッ!! 単なる土くれだったがスピードがシャレにならない 下腹部に直撃されたコルベールは呪文を中断して咳き込むことになる そして彼は男が闘志をあらわに睨み付けていることに気づくのだ 「…恐れることはない、私にも情けはあるさ 苦しませはしないよ…『炎蛇』の二つ名にかけてなッ」 『火×1』 正面からが駄目ならカラメ手だった 男の前後左右から迫り来る、文字通り炎の蛇ッ ススス ドヒャ! ドヒャ! のけぞって逃れようとする男の顔へ容赦なく飛びかかり 口をふさいで巻き付いたッ ゴゴゴォ チリ…チリ… 「Go…aa!!」 振り払おうと身体を激しく振るう男 見えない手もさかんに振り回されているようだ だが蛇は炎の塊でしかない つかめるものが何もない 白目をむくッ!! 炎を呼吸して肺を焦がすか 顔を焼かれたまま長い窒息の苦しみの果てに死ぬか 非情な二者択一をコルベールは迫ろうというわけだ 「早く受け入れたまえ…そっちの方が、楽だぞッ」 「Gaooa…DORAa!!」 バコォ ようやく「自分の顔を殴って脱出」という方法に思い至った男だったが その力は予想を越えて貧弱だった 炎の蛇が振り切れないッ 「なるほど、君自身の生命力に依存する力かね… 死にそうになればなるほど弱っていくわけだ 正直、興味深いよ だがね、生徒達の安全には変えられないんだ わかってくれるね」 這って渡り廊下までついた男だったが そうしたところでどうにもならない どうにかなりそうなモノも見当たらない 「王手の詰み」(チェックメイト)にハマッたのだ 「では、死…」 ゴッバォオーz_ ン その爆発は、トドメに刺された一撃ではなかった コルベールに使える魔法では、無いッ!! なにっ!? たったひとつの心当たりを見てみれば、 やはり、だがなぜ…ゼロのルイズが魔法の杖を掲げ、振り下ろしていた 「…これは一体、何のマネだね ミス・ヴァリエール」 今ので吹き飛ばされた男は全身、服がミジメなことになりはしたが まとわりついた炎の蛇もまた、どこかに消え失せてしまっていた 肩で息をして返事をしないルイズに、コルベールは再び問う 「…何のつもりだねッ!!」 ゼェ…ハァ… ルイズは少し呼吸を整え、答えた ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「儀式は途中です、まだ終わっていません」 「どういう意味だね、言っていることが少し、わからないのだが…」 「契約を続けるんですッ!! そこの、私の使い魔とッ」 ルイズは実家の家族達を思い出していた キビシイ父、キビシイ母、それにキッツイ長女ッ 魔法がマトモに使えていないことでだけでも 自分の頭をカチ割りたくなるような追及を受けまくっているのに そこへ今回の話がいったらどうなる? 予想どころではないし考えたくもない だが (ちい姉さま…) 次女カトレアはルイズに優しいのだ 怒られてばかりのルイズをなぐさめ励ましてくれたのはいつも「ちい姉(ねえ)」だった 今この瞬間だって絶対にそうだろう 父と母と長女の態度がつらくても、ちい姉さまがいるから頑張れる もちろん、今回のこれを聞かせることになると思うと泣けてくる しかしッ (呼び出した使い魔を見捨てて… そんな私に、ちい姉さまは笑ってくれるの…?) 答えはNOだッ ルイズの中のちい姉さまは許さないッ (ちい姉さまに会いに行くのに、イチイチおびえなくちゃいけないようになるなんて… 顔を見るたび、オドオドしなきゃいけないようになるなんて… 私はイヤよ、絶対にッ!!) だが考えてもみる あの使い魔はイキナリ暴れて大変なことをしでかした 今は死刑宣告をくらって執行されようとしている そんなものと一生寄り添って、どうするつもりなのだ? 新しく使い魔を呼んだ方が… (使いこなしてみせるわよ) そんな弱音は握りつぶしてみせるッ (ちい姉さまがたくさんの動物を手なずけるようにッ そうすれば…私は「ゼロ」じゃ、ないッ!!) ルイズは男の前に立ち、両腕を広げた 今まさに攻撃を再開しようとしているコルベールから、男を守るようにッ 「…セ・シ・ボン(結構だわね)、ルイズ」 一時は自分が彼の身柄を買い取ってしまおうかとまで考えていたキュルケだったが 進み出たルイズの姿にヒュウッと軽く口笛を鳴らした 「言いたいことはわかりましたよ、ミス・ヴァリエール」 杖は下ろさないまま、コルベールは言う 「あなたは全部、責任が取れるというのですね? 使い魔や衛兵の治療代に、貴族子弟を危険にさらした賠償金、全てをッ」 「……」 「使い魔が噛みついた責めは、全てその主にあるッ わかっているというのですねッ?」 「…わかっていますッ!!」 「安請け負いをす…」 コルベールはその先を続けることができなかった 渡り廊下が突然、崩れ始めた 原因は明白ッ ルイズの起こした爆発以外にあるものかッ グラァ ドドガァ 男はもとより 前に立ったルイズももろともに下敷きだッ!! ガラ ドォォ ズズン 砂煙が収まった後が見えてくる 男は無事だった あの正体不明の見えない力で防ぎきったものだろう だが、もう一人は かばったために一緒に巻き込まれたルイズはッ 「ル、ルイッ…」 キュルケをはじめとした、クラスメートの何人かが顔を真っ青にした ルイズは横倒しに、瓦礫の下敷きになっていた 肩から上は外に出ているが その下から赤い水溜まりが見え隠れ…大きくなっていた 「ガレキを全部、上に…魔法、使いすぎてるッ 魔力足りないのよッ…… タバサァァーッ 何ぼさっと見てんのォォーッ!!」 「……」 タバサは片手で杖を振り上げ『風×2』を器用に行使する 突風で瓦礫のみを取り除く、おそるべき精密性であった しかし、そうやって重みから解放されたはずのルイズは 「………」 どこからどう見ても、手遅れだった 血溜まりの直径が1メイル近かった まもなく死ぬだろう 誰もがそう思った だから そんな彼女に膝を引きずって近寄っていく男が何をする気なのか 誰も大して気にしていなかった …そして ズギュウウゥゥゥン 「え…」 「あ、あれ?」 逆再生のビデオそのものという、 この世界の誰もが見たことのない光景に、 全員、息を呑む…どころか反応できなかった 崩れ落ちた渡り廊下が全て元通りになってゆき… 横たわるルイズの下には、血溜まりなど、どこにも無かった 「…何、が?」 コルベールが二回、目をこすったとき、 男…元・鳥の巣はその場にグッタリ倒れ伏した 結局のところ、残されたのは謎だけだった 男が再び目覚める、そのときまでは… 6へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/162.html
「ドラァァーッ」 「げうッ」 鞭をふりまわす相手には近寄りたくない 女を殴るのも気がすすまない 仗助は顔をしたたか打ちすえた一発に耐え ルイズの右肩を全力で突き飛ばし室外へ逃げた ケガをしていないか心配にはなるが、かまっているヒマはない そして部屋を出るついでにドアを壊し 「なおす」 彼の不思議な力は他のモノと意図的に混じり合わせ癒着させることもできる それを利用してルイズの部屋を即席の座敷牢に仕立て上げてしまったのだッ ドンッ ドンッ 「何これ、どうなって? 開けなさいッ」 「ザマーミロだぜ つきあいきれっかっつーの」 言いつつ仗助は改めて回りを見る どうもルイズの部屋と同じようなのがズラリと並んでいるらしい もしかしてここは「寮」か何かみたいなものなのか? そういえば、亀に引き込まれて「ここ」に出たときに見たっけか 同じ服装をしたやつらがズラリと並んでいるのを アレは制服ってことか! (つまり…なんだぁ、おいッ) 推論が次第に形になってきた いきなりここに出てきたオレ ドラクエとかなんとか、それっぽい魔法を使うあいつら オレはヤツらに「なにか」されたわけか …と、なるとッ 得体のしれない力を持った組織とか何かに誘拐された? (ドコの十週打ち切りマンガだっつーの) 自分で考えてアホらしかった 一蹴しかけて…自分で自分の考えに目ン玉をムイたッ (だけど待てッ 「使い魔」だとか、「ご主人様」だとか ツジツマが合うじゃあねーか、そう考えりゃあよぉぉ~) つまり、そーいうモノにするために誘拐したということになるッ というかもう、そうとでも考えなければ何もかもわかんね―――ッ!! とにかく、あのルイズとかいうピンク髪が今ギャンギャン騒いでいるのだ このままここでジッとしていたらマズイッ 仗助くんピンチッ (だがよぉ~ ただ逃げるだけじゃダメだぜ、多分…) このままインディ・ジョーンズのようにサッソウと逃げ出していけると考えるほど ノンキこいてはいられないのである 右も左もわからないまま突っ走ってもアッという間につかまるのがオチだ 必要なものは「情報」である そして、それを得るため 今頼れそうなアテは 「シエスタ、っつったな…あのメイドさんしかいねぇよなぁ~」 すくなくともあのメイドは仗助を人間扱いしていたのである それどころか、仗助の不思議パワーを指して「貴族」だと まだ遠くには行っていないはずだった 一刻も早くつかまえ、聞きたいこと全部聞き出してしまわなければならない それこそ、あのハゲチャビンのような人間と出くわす前に、だッ 「帰れと言われたんなら『上』に上っていく可能性は…低いぜ 使用人なんだからな」 幸いすぐに見つかった階段を注意深く降りていく 誰かと出くわしたらどうしよう? そのときは…多分、手を上げて降参するしかないだろう きゃしゃな少女に鞭を持たれただけで手こずる始末なのだ 髪の毛をバカにされれば話は別だろうが 怒りにまかせてでしか制御できない破壊力になんか頼ったら 今度こそ身の破滅というやつだ それを思えば、今の自分の髪型が見る影もないことになっているのは むしろヒジョーにありがたくすらあるのかも… 「…くっそ~~」 誰とも会わないよう、祈り続けて突っ走る しかし、そういう思いは大抵むくわれないッ 仗助はギリギリのところで曲がり角の壁にひっ付いた 二人だ、二人いる 男と女の二人 男の方には見覚えがあった 赤毛の女と戦ってるとき後ろでわめいてた、なんかムカつく奴ッ 「私、スフレを作るのが得意なんですのよ」 「それは是非、食べてみたいな…」 「ホントですかッ」 「ああ…キミの瞳にウソはつかないよ、ケティ」 しかもどうやらスケコマシの真ッ最中 おサカンなことでッ!! 仗助は半分キレて眉をピクピクさせていた (てめー このヒモ野郎ぉぉー さっさとどっかに行きやがれェェ―― シエスタが追えなくなっちまうだろーがァ~~~ッ) 一方、ルイズッ 人一倍負けん気の強いこの少女 閉じこめられたまま大人しくなどしていないッ 「…どーなってるの、コレ」 「知らないわよ、あいつのヘンな力でしょ」 わめきたてまくって、なんだなんだとやってきたクラスメート達に 部屋のドアを壊してもらい、やっと出ることができた その助けてくれた一人にモンモランシーという金髪碧眼の少女がいた ルイズとはあまり仲はよくないが、まるきり他人というわけでもなかった 「ヘンな力っていうか、どう見ても魔法じゃない 完璧に壁とくっついてる…『土』? 『練金』?」 「知らないっつってんでしょッ」 怒るルイズに、モンモランシーはヤレヤレだった 「ゼロのルイズがメイジを召喚」ッ なんという倒錯ッ!! しかも「三日前」の戦いでは杖らしきものも持っていなかったのだ つまりあれは先住魔法か 召喚されたあの男も人間なのは見た目だけで エルフや吸血鬼だったりするのか? 使い魔との契約『コントラクト・サーヴァント』が成功していれば オリの中の猛獣を恐れる子供がいないように心配なかったが そこは「ゼロのルイズ」なのである 聞けば使い魔が逃げ出したという ご主人様を部屋に閉じこめてッ 崩れた建物を一瞬で修復するほどの力を持った使い魔がッ 「非常事態じゃないの…」 背筋が寒くなった 学院のド真ん中にエルフのような存在が歩き回っているなど 火薬庫に火トカゲを放たれたのと同じだ 「探すわよ、わたしの使い魔…」 「バカ言ってんじゃあないわよ 先生起こして学内全員避難だわッ」 意気込むルイズをモンモランシーはどなりつけた そんなこと、自分が指示するガラではなかったが 誰かがやらねばならないッ だがその決意も、続くルイズの行動に踏みにじられることになる 「~~~時間がないッ!! わたし行くわよ、逃げられちゃうじゃないッ」 「あっ、ルイズ、待ちなさ…」 走るルイズを追うモンモランシー その後をなんとなくついていってしまうその他数名 避難するにしても降りるしかないのだから これはある意味当然ではあったが どたどた駆け回るいくつもの足音から異変に気づく生徒が続出 彼らのうち何人かもまたドアを開け、騒動のもとを確かめようと追いかけることになるのだった なんか上が騒がしい 仗助もすぐに気がついた 向こうにいる男女も気づいたのだろう 「ひとまずこの場はお開きだ」とやっと決めてくれたようだ (ようやくか! くっそぉ~ 時間くいすぎたな 逃げ切れっかな…) 「いたッ」 「うええっ!?」 確かに時間を食いすぎた ふりむけばそこにヤツがッ 「待ちなさいルイズッ」 「いた、って、使い魔?」 「平民の使い魔? いえ、魔法を使ってたから貴族の使い魔?」 「なんだなんだ」 「何の騒ぎなんだよ、さっきから聞いてんのに」 「教えろったら」 「キュルケの新しいカレがペリッソンって本当?」 「コルベールってハゲだよな」 しかもなんかたくさん連れてる! もう考え事の段階は月までブッ飛び消滅した 助かるには走るしかないッ 「オレが何したっつーんだよォ チキショオオオオ―――ッ!!」 「な、なんだねキミはッ」 「ギーシュ様に乱暴しないでッ」 男女二人を突き飛ばして逃げる仗助だったが そのさらに向こう側の曲がり角から、また見覚えのあるヤツが… あの赤い髪、あのナイスバディーのねーちゃんはッ 「あら」 こちらに気づくと、興味シンシンといった眼で近づいてくる 仗助は無視こいて横を通り過ぎようとしたが、すこし甘い 伸びた右手から腕を組まれた ナチュラルに、ニュルッと 年齢的にも彼女イナイ歴イコール年齢である仗助は思わずドギマギするものの そんなもの、うしろからせまりくる絶体絶命の前にはふっ飛ばされてしまうッ 「は、放せッ…殴るぞ、本気だぞッ」 「なぁに? またヤるの? あたしはかまわないけど、どうせやるなら別の場所での戦いの方が」 「さわってんじゃねーわよッ」 ドボォォ 「がぶほおッ」 ドシャア 走り込みからの十八文ドロップキック ルイズの両のブーツ底が仗助に炸裂 顔面にッ!! 自分も転んでしまってはアレだということだろう 赤毛の女はアッサリ手を放していた 鼻血を出して立ち上がった仗助は、尻もちをついていたルイズと目が合った直後 …がなり合いに発展した 「てめー なんてことしやがるッ 女だと思って黙ってはいたが 温厚な仗助さんでもイイカゲン我慢の限界だぜーッ」 「勝手に逃げる使い魔がそれを言うのッ? わたしを一体、なんだと思ってんのよ」 「誘拐犯だろーがッ ここはどこだッ すぐにオレを返せッ 110番すっぞ バカヤロ―――ッ」 「バカヤローですって? いやしくも王家につらなるわたしをバカヤロー? よっぽど長生きしたくないらしーわね、このトーヘンボク」 「落ち着きなさい」 バシッ バシッ ヒートアップする仗助とルイズの頭を後ろからひっぱたいたのは赤毛の女 我に返った仗助は言われた通り落ち着くことにした ルイズも不本意ながら従うようだ 「まず、なんで逃げたのか聞かなきゃいけないトコだけど」 「ンだよ、オレにゃ言いたいことなんかナンもねーぞ」 「ま、それは後にしましょ…ほら、あそこ。 面白そうなことになってるし」 「ん?」 赤毛の女が指さした先 そこにいたのは今さっき仗助が突き飛ばした男女と、もう一人… スラリとしたパツキンの少女だった 「モ、モンモランシー どうしてここに…」 男がボーゼンとつぶやいていた 10へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/83.html
フーケを倒し、学院に帰ることとなったドッピオとルイズですが 「・・・・っ」 「・・・・・・」 ドッピオの足はとても酷いことになっていました 何か支えが無いと歩けないほど酷く、ルイズに少し寄り掛からないと歩けないのです 「・・・・・・」 ルイズは自己嫌悪を起こしていました 結局は今回自分は邪魔なだけで自分がいなければこの使い魔はすぐに勝てたと言うのに 「・・・・あの」 自分の責任で負傷した使い魔に謝ろうと、ルイズはたまらず声をかけてしまいました 「今回は・・・その・・」 謝ろうとしても謝罪の言葉が見つからずモゴモゴしていると 「謝らなくていいですよ」 「え?」 まるで自分のことを見透かされたかのように声をさえぎられたのでした 「今回はあの場でルイズさんを取り残したのが悪かったんです ・・・本当にすいません」 事実ドッピオはロングビルがいるから大丈夫ということを考えてルイズを残しました 結果そのあとの戦いに支障がでました。ドッピオは自分が甘いと考えていました 「・・・なんで?」 その後、主からでた言葉は疑問でした 「なんでそんなに自分ばっかり責めるの?ディアボロだって私を邪魔って言ったのよ? なんでアンタは・・・私を責めないの?」 なんで、そんなの考えるまでも無い。自分の不注意で招いた結果だったのにルイズを責める道理は無い そう思っていたドッピオは 「全部僕が悪いんです。力を持たない主を守れなくて何が使い魔ですか? ・・・もしルイズさんが自分のことを悪いと思っているなら」 一区切りおいてドッピオは 「成長してください。自分の未熟な過去に打ち勝って強くなってください 今回のことに対する謝罪はそれで十分です。まずは・・・」 ドッピオは笑って 「その泣きそうな顔をどうにかするところから始めましょうか」 そう言いました。ルイズはあわてて顔を隠します ・・・今は寄りかかる訳にもいかないのでドッピオは座っています 目をゴシゴシしてから向き直るともうその顔はいつもの顔です 「・・・今回は助かりました。次回もまた期待していいですね?」 微笑みながらそう聞いてくる使い魔に 「もちろんじゃない!」 なんの臆面もなく答えられたルイズの顔には憂いは浮かんでいませんでした 「・・・頼りにしてくれてありがとう」 聞こえたか聞こえなかったかわからないほどの小声でしたがドッピオはしっかり聞こえていました ですがあえてそれには何も言いません。しばらく無言で歩いた後 「そろそろ学院が見えてきますね」 「さぁ、さっさと帰るわよ」 「もちろんです」 辺りはだんだんと暗くなり2つの月が見え始めていました 帰った後ドッピオはすぐに保健室へ運ばれました。傷だらけですがどれも致命傷ではありません 二日ほどで完治したドッピオはいつも通りに家事をこなしていました その後、破壊の杖を取り戻したコンビとして周囲から注目の的となったルイズは困惑しドッピオはあまり取り乱しませんでした そんな毎日を少し楽しみながらドッピオは家事にいそしんでいました。 12へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/759.html
「わからないのか? おまえは「運命」に負けたんだ! 「正義の道」を歩む事こそ「運命」なんだ!!」 「やめろ このちっぽけな小僧がぁあああああああああああああ」 グシャァァ ~~~~~~~~~~~~~~ 子供の使い魔 ~~~~~~~~~~~~~~ 「うわあああああああああ」 「プ、プッチ神父!?」 急に左手に激痛が走り目を覚ますと、見たことのない風景と二つの人影が見えた それは黒服の頭のてっぺんが寂しい男の人と桃色の髪の少女が立っていた 「終わりました、ミスタ・コルベール」 「それでは私は戻りますね」 そういうと寂しい男性何か呟き、宙に浮かび建物に向かっていった 「ここはどこですか?それに今の飛んで行ったのはスタンドですか?」 少女に尋ねると、 「ここはトリスティン学園、あんたは私に召喚されたてさっきの契約で私の使い魔になったの それにスタンドって何? あれはフライ、魔法よ」 「トリスティン・・・・?それってどこですか?それに魔法って?」 「トリスティンも知らないなんて・・・・それに魔法も知らないって本気?あんた一体どこの田舎から来たの?そもそもあんた誰?」「僕の名前は・・・・僕の名前はエンポリオです!」 魔法?何を言ってるんだろうこの子 それにトリスティンってどこなんだろう・・・・? プッチ神父を倒したから魔法なんてものが現れたんだろうか? プッチ神父・・・・あいつは・・・・ 「あ、あんた何でいきなり泣いてんの!?」 エンポリオは泣いた・・・・素数ヲタ・・・あ、神父か、と戦い死んでいった 徐倫、承太郎、アスナイ、ウェザー、そしてえっと・・・男顔の・・・ うーん、誰だっけ?兄・・・兄貴・・・あ、そうだ プロ・・・じゃない エルメェス、エルメェス兄貴だ!の事を思い出して・・・
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/304.html
二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。一人は泥を見た。一人は星を見た。 そして、空条徐倫が見たものは―――。 少なくとも、眠りに着く前に見上げた夜空に見えたものは、在り得ない筈の『二つの月』だった。 空条承太郎の血統、徐倫。行き着いた先は『異世界』である。 目を覚ますと、まず床の硬い感触が右半身を圧迫して僅かな痛みが走った。 お世辞にも寝心地が良いとは言えない不快な感触で徐倫は目を覚まし、同時に寝る前の状況で夢でも幻覚でもないと自覚し、憂鬱な気分になる。 目を開けて、まず視界に入ったものが昨日ルイズの放り投げた下着である事を確認して、更に飛びたくなるほど欝になった。 生きている事は素晴らしい! 自分がバラバラになって死ぬような体験をした後なのだから、その気持ちは尚更だ。 しかし、人はただ生きるだけで満足出来る存在ではないのだった。 「『使い魔』か……『奴隷』と変わらないわね。囚人よりは、まあマシかもしれないけど……」 バリバリと頭を掻きながら、徐倫は昨夜ルイズと交わした幾つかの会話を思い出していた。 この世界は『ハルケギニア』 あの日は『魔法使い(メイジ)を目指す学生達が使い魔を召喚する内容の授業だったので』ルイズも召喚し『それを失敗した』―――。 以上が、徐倫がまず尋ねた『何処?』『何故?』『どうやって?』という基本的な質問に対するルイズの答えである。 ここはハルケギニアという魔法中心のファンタジーやメルヘンの世界なのだ。 突きつけられた現実は、実に空想的で胡散臭いものだったが、徐倫は呆れこそすれ、意外にも認める事はすんなりと出来たのだった。 元々、不慮の事故で刑務所送りになった薄幸の一般人である徐倫にとって、理解の及ばない状況というのは慣れ親しんだものだ。 スタンドを始め、今回の魔法に至るまで、『不可思議』という点においてどれも大して差はない。 例えば、初めて徐倫がスタンド能力に目覚めた時、『この力は魔法というんだ』と言われたなら、きっとそれで納得していただろう。 言葉一つ、認識一つの違いなのだ。 元から生まれ持ち、数々の異常の中で培った徐倫の適応力は大きかった。 徐倫が異世界人である事を、ルイズは形ばかり認めたが、心底では信じていないのは丸分かりだった。 それよりも重要な事は、ルイズ曰く『元の世界に戻る方法は無い』という事である。 ここが異世界であると理解した瞬間に浮かんだ『戻る』という選択肢。それはもはや、徐倫の中で目的として固まっている。 仲間も親も失い、残ったのは恐るべき敵と狂った時間しか待っていないあの世界に、しかし徐倫は帰る事を望んでいた。 戻れば死は明らかだ。あるいはもう全て手遅れになっているかもしれない。 それでも、戻らずにはいられなかった。 何もかも失ったあの世界で、それでも残してきた物は幾つもあるのだ。 かくして、徐倫はやるべき事を見出した。 『元の世界に戻る方法を探す』 他人の否定は関係ない。無理や無茶は、過去何度も繰り返してきた事だ。どうって事は無い。 そんな密やかながら確固たる目的を、もちろんルイズには話さず、徐倫は結果的に一先ずこの世界で暮らしていく為に、ルイズの使い魔となる事を認めたのだった。 そして『使い魔』とは―――実質『召使い』や『奴隷』も同然だった。 「朝よ、お嬢様」 徐倫はとりあえず、すやすやと心地良さそうに眠るルイズを起こす事にした。 しかし、声を掛けただけでは反応すらしない。ムッときた。 朝一番に目覚まし時計代わりをさせられる事に不満がないわけでもないが、それよりも硬い床で寝転がるしかない自分を差し置いて、柔らかいベッドで眠るルイズとの格差にムカついた。刑務所にもベッドぐらいはあったというのに。 徐倫はルイズの毛布を剥ぎ取ると、どさくさに紛れて額を叩いた。 「痛い! な、なによ! なにごと!?」 「おはよう、お嬢様」 「はえ? ……あ、あんた誰よ!」 「寝惚けてんの? それとも頭脳がマヌケ? 徐倫よ」 「……ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」 ルイズは納得したように頷いたが、やはり寝惚けているらしかった。 昨日の会話の端々でも、徐倫の口の利き方に一々文句をつけていたヒステリーっぽい反応が、さっきのマヌケ発言に対して起こっていない。 『黙っていれば可愛い』という評価を、地でいく少女だと徐倫は思った。 自分の意思を無視してこの世界に呼び出したくせに、それが当然であるように振舞う態度のデカさが昨日から気に入らないと思っていたが、なかなかどうして、欠伸を噛み殺す姿は平和で微笑ましい。 一人娘の徐倫は、ルイズを世話のかかる妹のようだとちょっとだけ感じた。 「服」 「はいよ」 命令口調のルイズにも、やれやれと従ってやる。ここは、寛大になってやろう。 下着も受け取って、それを身につけたルイズが再びだるそうに呟く。 「服」 「さっき渡したでしょ?」 「着せて」 「…………は?」 ルイズの王様発言を、徐倫は一瞬疑った。 「……何だって?」 「着せて」 律儀にもルイズは正確に繰り返した。 オーケイ。ナメんな。 怒鳴りながら目の前の甘ったれた小娘を殴り飛ばしたい衝動を、徐倫は素晴らしい忍耐力で堪えた。 あの悪夢のような刑務所での生活は、確実に人を変える。『駄目になる』か『成長する』か、だ。 徐倫はまさしく後者だった。沸点の低い今時の若者だった徐倫は、少しだけ大人になっていた。 「……手、上げて」 「んー」 結局、徐倫はルイズの着替えを、まさに召使いのように手伝った。 ルイズがいつか小便の手伝いまでするよう言い出さないか、割りと本気で心配しながら。 「おはよう、ルイズ」 褐色の肌、長身、雰囲気、バストサイズ―――ルイズと徐倫が部屋から出てすぐに出会ったのは、そんな風にルイズとあらゆる意味で正反対の少女だった。 ルイズは顔を顰めると、嫌そうに挨拶を返した。 「おはよう、キュルケ」 「あなたの使い魔ってそれ?」 「そうよ」 「あっはっは! ほんとに人間なのね! すごいじゃない!」 愉快そうに笑うキュルケが自分をバカにしているのだと徐倫には察する事が出来たが、特に腹は立たなかった。 侮辱や侮蔑は刑務所で最も多く向けられた感情だ。 何より、人間がどうのと言われても、それが本当に侮辱なのかイマイチ判断しにくい。事実、自分は人間なのだから。 それよりも徐倫は、純粋にこのキュルケという、初めて会うタイプの少女に関心を抱いていた。 過剰な色気を纏う女は、娼婦くずれの犯罪者も多い刑務所でもよく見かけたが、キュルケにはそんな奴らには無い高貴さがあった。 これがルイズの強調する『貴族』というものか、と納得する。確かに、そこいらの女とは磨かれたモノが違う。 一見して犬猿の仲であると理解できるルイズとキュルケは何やら言い合っていたが、ふとキュルケの方が徐倫の視線に気付いた。 「お名前を聞かせてもらえるかしら? 使い魔さん」 「徐倫よ」 「ジョリーン、ね。……平民だけど『なかなか』ね。本当にルイズが召喚したのかしら?」 値踏みするような視線を徐倫に向けながら、キュルケが面白そうに笑う。その言葉に、ルイズは改めて自らの使い魔を見た。 190センチを超える長身の父・承太郎とアメリカ人の母の血を引く徐倫は、女性にしてはかなり長身の部類に入る。 身長のせいか、キュルケほどバストは強調されないが、下品ではない程度に付いた筋肉で体は引き締まって見える。足はスラリと長い。 キュルケとはまた違った意味で色気があり、またある意味同じ種類の美女だった。 いろんな意味で小柄な自分との対比を思い浮かべ、自然とルイズの顔はしかめっ面へと変わっていった。 「うるさいわね、あんたには関係ないでしょ」 自然、更に不機嫌になったルイズは吐き捨てるようにキュルケを突き放した。 「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 「あっそ」 ルイズの反応は素っ気無かったが、徐倫はわずかに目を見開いた。 キュルケの傍らにのっそりと現れた『使い魔』とやらは、巨大トカゲとしか表現出来ない、少なくとも徐倫の知識には存在しない生物だったからだ。 尻尾の先が常時燃えている生物など在り得る筈が無い。 「……それが、あなたの『使い魔』なの?」 「そうよ、火トカゲよー。見て? この尻尾。 ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? ブランドものよー」 「へえ」 専門的な用語の混ざるキュルケの説明に、徐倫は適当な相槌を返しておいた。 未知との遭遇を果たした徐倫に、驚きはあれど恐怖や警戒は湧かなかった。確かに見た事も無い生物ではあったが、彼女がこれまで遭遇してきたスタンドなどにはもっと醜悪な見た目や性質を持つ者もいた。 それに比べれば、ここまで分かりやすくファンタジーなデザインを持つ生物は、充分目に優しい部類に入る。 ただ、目の前の火トカゲとやらには新鮮な驚きを感じ、それらが当たり前に闊歩するこの世界の常識に少しだけ呆れた。 サラマンダーの凄さがイマイチ分からない徐倫を尻目に、ルイズはその価値が分かるのか、悔しそうにキュルケの言葉を聞いている。 「じゃあ、お先に失礼」 やがて使い魔自慢に満足したのか、キュルケは炎のような赤髪をかき上げ、颯爽と去っていった。その仕草にも、やはり平民の女には無い気品がある。 徐倫は面白そうに笑った。 自分の仲間は変人ばかりだったが、全ての出会いは新鮮で、思い返せば掛け替えのないものだった。この異世界で、そういう出会いがまたあるのかもしれない。 「くやしー! 何よっ、火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって……! 何、笑ってるのよ!?」 「なかなか面白そうな友達持ってるじゃない?」 「あんなのが友達なわけないでしょ! 言っとくけど、あんたもアイツと関わっちゃ駄目よ!」 「そう? ご主人様を上手くあしらう方法の参考になりそうなんですけどォ~」 「あんた、本当に反抗的ね……餌抜くわよ!?」 「あたしを犬扱いするなッ! お前、本当に崖から飛ばすぞッ!!」 相変わらずコイツは生意気だ。殴りたい。ムカつく。 徐倫はルイズと言い争いながら、内心で思った。 一方で、ルイズは徐倫と言い合いながら同じ事を考えていた。 優雅に歩いていくキュルケとそれに付き従うサラマンダーの姿が理想的な主従の関係であるのなら、その少し後に口喧しく言い争いをしながら肩を並べて押し合い圧し合い歩くルイズと徐倫の姿はなんとも珍妙なデコボココンビに見える。 二人の相性は一見最悪であり、しかしまた奇妙なところでひどく息が合っているようにも見えるのだった。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/366.html
「ルイズー!ルーイズー!起きてるのー?」 ノック、というにはいささか品無くドアを叩く音にジョナサンは目を覚ます。 波紋呼吸法を覚えてからは多少寝なくても疲労感や眠たさを感じる事は無くなったが、師ツェペリから 『体の問題じゃあない、精神の問題なんだよジョジョ。波紋は心まで強くはしないからねェ~』 と定期的な睡眠を欠かさぬよう厳命されており、ジョナサン自身も守り続けていた。 どんどんとドアを叩く音が続く。 ジョナサンは椅子から身を起こし、ベッドで眠るルイズを見ると、 「んむにゅ、くらえ~い、きゅうきょくまほう~、のいらて~む!」 身振り手振りまで加えて寝ぼけていた。 「仕方ないな…」 ベッドの脇をすり抜けてドアへ。シンプルな引き手に手を掛け、 「待ってください、今…」 引くがびくともしない。 鍵かかんぬきがどこかにあるのかとも思ったが、鍵穴も何も見つからない。 「まーた寝てんのねぇ…」 ドアの外で溜息一つ。かちゃりと掛け金が外れる音がドアの中から鳴り、 「さあて今日はどうしてイジメてくれよう…」 開いたドアがジョナサンの額をしたたかに打った。 「ブ!」 「…ってあら?」 痛みと驚きで目を白黒させるジョナサンの前に現れたのは二人の女性。昨日から見てきた生徒達と同じ服装なので ルイズの級友だろう。 一人は長身でグラマラスな赤毛。もう一人は小柄で(ジョナサンには信じられなかったが)青い髪。 「こいつ確か…ルイズが召喚した使い魔の平民じゃない?」 赤毛の娘が値踏みするような目でジョナサンを見つめている。 「…何の御用でしょうか?」 ジョナサンは立ち上がり、極力威厳を保った顔を作って尋ねる。 「ああ、ルイズを起こしに来たのよ。あたしはキュルケ、こっちはタバサね」 青い髪の娘が軽く会釈する。 「ジョナサン・ジョースターです…その、ミス・ヴァリエールとは…」 「ま、ライバルってところかしらね」 「…友達」 二人はジョナサンの脇をすり抜けルイズが眠るベッドの脇に立つ。 「相変わらず可愛い寝顔ねぇ…フレイム?」 にんまりとキュルケが笑むと、開いていた扉から巨大なトカゲがのっそりと入ってくる。 「ううッ!」 慌ててジョナサンが後ずさると、尾の炎から膨大な熱量をふりまきながら、それでいて室内の調度一切に 火を点けること無く、ジョナサンの目の前をすり抜け、ベッドの脇によじ登る。 「私の使い魔よ。私が操る限り危害は加えないわ」 火竜は口を開け、炎をひと吹き。 「うわきゃああぁぁぁ!」 鼻の先を高熱であぶられ、ルイズは文字通り跳ね起きた。 「はいおはよう、ルイズ。どう、私の使い魔?火竜山脈のサラマンダーよ?」 事の次第を理解する数秒の間の後、 「な、何考えてるのよツェルプストー!何で火竜なんて連れてくるのよ!焼き殺す気? タバサも何で止めないのよ?あんた達の後ろにいる男は誰?それと何時よ今?」 一気に全開でまくしたてるルイズと、 「あー、質問は一つづつお願いできますかしらねぇ、ミス・ヴァリエール?」 勝ち誇った微笑を崩さないキュルケ、 「あれ、あなたの使い魔」 無表情で答えるタバサから一歩引いた所で、 「な…何だ?これがメイジの日常なのか?」 ジョナサンは自分の常識を疑っていた。 「いっつもこうやって起こしてあげてるのよ。ヴァリエールは代々寝起きが悪いから」 「ふん!代々腰軽のツェルプストーに言われたくないわよ!」 ふくれながらベッドを降り、クローゼットに向かうルイズ。ジョナサンは慌てて部屋の奥に戻るが、 「ちょっと、服を着せなさいよ」 呼び止められて振り向き、 「君は自分で服も着られない赤ん坊じゃないだろう?」 言い放ってからキュルケへと向き直り、 「僕が来る前からこんな調子なのかい?」 疑問をぶつけてみる。 「んー…まあそうね。さすがに服は自分で着てたけど」 「余計な事言わないでよ!」 ルイズはクローゼットの戸の奥でぶつくさと文句を言いながら洗面と着替えを済ませ、 「はいこれ、洗っておくのよ」 洗濯物をかごごとジョナサンに手渡す。 「これは?」 「生徒の洗濯物は生徒寮付きのメイドがやるわよ…普通はね」 肩をすくめるキュルケに、 「ちょっとキュルケ!何教えてるのよ!」 目論見のことごとくが外れたルイズが食って掛かる。 「あぁら、常識知らずのヴァリエールに言われたくないわねぇ」 手を頬に当てて高笑いをすると、 「…ミス・ヴァリエールを侮辱するのは関心しないな」 ジョナサンの声色が変わったのに気付いたが、 「気にしないでいいのよ。じゃれ合ってるようなもんだから」 キュルケの余裕は崩れない。 「全く、あんた何考えてるのよ!ヴァリエール家にとってツェルプストー家は仇敵なの! あたしの許可も得ないで勝手に喋ってるんじゃないわよ!」 怒鳴りながら中央塔への渡り廊下を歩くルイズの後ろについて歩くジョナサン。 「でも起こしに来てくれたんだろう?方法は…まあ問題があったけれど」 廊下を歩きながらあちこちを見回す。ぱっと見では東欧あたりのどこかの城としか思えなかったが、 塔を主体とする建築様式やあちこちの意匠、特に文字は馴染みの無い物ばかりだ。 「方法?使い魔の自慢してただけじゃない!何であの色気バカの使い魔がサラマンダーであたしが平民なのよ!」 両開きの扉の前でジョナサンが先に進み、右手の戸を開ける。今度は特に鍵は掛かっていない。 足音高く中に入るルイズを追うと、ドアの向こうは塔の直径をそのまま長辺とする広大なホールになっていた。 幾重にも並んだ長テーブルに朝食とは思えない豪勢な料理が並び、生徒達がずらりと席に着いている様は なかなか壮観だった。 「ここが『アルヴィーズの食堂』。平民はまず入れない場所よ。感謝しなさい」 自分の席に向かいつつなぜか自慢げなルイズ。 「なるほど、礼儀作法も教育のうち…貴族ならば当然だろうな」 料理の匂いに気を良くした様子のジョナサンはルイズの椅子を引き、座らせてから、 「で、僕の席は…」 ルイズが指差した物に気付く。 「本当は使い魔は、外。あんたはあたしの特別な計らいで、中。感謝しなさい」 床に直に置かれた木製の素っ気無い皿の中に、薄いスープと質の悪いパンが二切れ。 スープには木製のこれまた素っ気無いスプーンが一本転がされている。 「…良く分かったよ、ミス・ヴァリエール」 きびすを返し、ホールの出口へと向かう。 「ちょっと!どこ行くのよ!嫌なら朝食抜きでも…」 「このような物を食事とは呼ばない」 ジョナサンの視線にたじろぐルイズ。 「何言ってるのよ!これは使用人の食事と同じ物よ!贅沢言うんじゃないわよ!」 「食事の内容じゃない」 戻ると皿を拾い上げ、テーブルの上に置く。 「ちょっ…汚いじゃない!」 「貴族は自分が汚いと思うような物でも平気で平民に食べさせるのか?」 ルイズの顔に傷ついたような表情が一瞬浮かぶが、 「朝食は要らない。君の食事が終わるまで入り口で待っている」 ジョナサンが背中を向けると、 「ふ、ふん!要らないなら要らないって言えばいいじゃないの!」 いつもの調子に戻った。