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※ボイスなし + 旧ポトレ アマネ=セレスタイトとは ルナ氏が作った紅美鈴改変のFLAM氏の「Hei-F」改変。 ちなみに紅美鈴はオンゲキにも出ている 2019年2月に公開された。2019年産である。 神版の1pは親変更も探査もなく技同期系のキャラだが、 対応力は素晴らしく、設定も凝っている。 削りも優秀で、神殺しドナルドを削りルートで倒せるくらいすごい。 彼女は過去にどこかで公開していた自作小説のスピンオフ感覚でルナ氏が作っている。 ある世界線の紅美鈴とアマネの魂が意気投合した結果、彼女が生まれた。 アマネの次の命が決まるまでの間、アマネ自身を紅美鈴の依り代とし、 共に旅をすることになったという経歴がある。 彼の一番の大技は「イキガミ・ノア」。 「災厄」の目により静かに大魔法即死を使い敵を干渉させるという物凄い技であり、 即死が刺さるキャラを「イキガミ・ノア」で倒してきた。 専用力も最強であり、ウブウアウト程ではないが専用の数は盛沢山。 その数なんと563であり、圧倒的な多さを誇る。 最近神威氏「Abyss_of_Heaven」やしらさぎ氏「バラム・ノーレッジ」など 彼女に匹敵するような親変更なしが存在するが、 それでもなお親変更なし最強候補である。(*1) 親変更なしが故に「マルチドナルド12p」「親変更チェッカー」を倒せない。 さらに探査もないので、「A-Bomb」も倒せない。 それを突けば、誰でもアマネさんに勝てると思う。そう、運が良ければ・・・ アマネ=セレスタイト神版1p、殺傷力大会の戦いの歴史 + ネタバレ注意 EPISODE1 「MUGEN God Verdict War ~評決の神議~」 彼女はMUGEN God Verdict WarのTeam Cosmosとして初参戦。 初戦の相手は七夜死貴と幽鬼。両方男。紅一点。 2タゲ目の「試験体KGM2nd EX」を倒せなかった幽鬼が脱落し、 七夜死貴との決戦に。 4タゲ目の「オロチ長森(旧版)」を彼女だけ倒し勝利。2pt貢献した。 (ちなみに七夜死貴は20分経過で倒せず) 拳法のポーズを撮りながら少したまったクリスタルから出た光を見ながら 光がアマネさんの前に移動。その光を左手で我が物とした。 28 46~ 2ptを持ち帰る 次の相手はDパルスィと星井美希。 「バレンタイン翡翠」という専用対策しているキャラを引き 1ptいただきーと思いきやなんと「撃破条件変更に対応していない」という 痛恨のミスで撃破失敗。 ルナ氏のブログ曰く「更新されていることを知らなかった」とのこと。 「C-Obscure tyM-v.SG」で星井美希が脱落し、Dパルスィとの一騎打ち。 結果、「激おこホワイト8p」という詰みタゲを引いてしまい敗北した。 バレンタイン翡翠で専用が成功していれば・・・ Dパルスィに敗れる 本来ならここで出番終了だが、ボーナスを受けているので3回目の出番がある。 ボーナスの3戦目、相手は本気ケンシンとウブウアウト。 どっちも男で親変更持ち。 「Sadist Devil」で宣告自滅でKO負けを喫した本気ケンシンが脱落。 結果、「アバターコア」を撃破し勝利。 論外の「在庫マン」を落としただけで勝利した。 アマネさんの前にまた少したまったクリスタルが。 その真ん中に光が出る。クリスタルは割れ、その光がアマネさんの前に近づく。 するとなんと彼女はアイドル翡翠みたいなドットになり、左手を上げ光の先に指をさした。 2ptを持ち帰り合計4pt貢献、この大会での出番は終わった。 28 16~ アイドル翡翠みたく2ptを持ち帰る ...と思いきや大会が終わって帰るところをFS蛟に阻まれ、 蛟の聖地に誘われた。 そして15vs1のレイドバトルに参戦することとなった。 14th Challengerとして選ばれた彼女。 Daiyousei-I-OverDrive-GeNeとTimeEaterがFS蛟の残機を減らし、 あと1回膝が突けば15人の勝利というところまで来ていた。(FS蛟残機3、15人それぞれ残機1) そうして、2partに及ぶ戦いが始まった。 激闘の末、「エグゼリカ」を倒せず敗北。 「下の下だな...」を言うFS蛟の前で膝を付き、身体が緑に染まる。 FS蛟の「図に乗るな!」の合図で「アマネ=セレスタイト」「脱落」と共に砕け散った。 そして、Beatrix Rephaの前でFS蛟に処理された彼女であった... FS蛟に敗れる EPISODE2 「Expectation deity Convention」 次に呼ばれた大会は「Expectation deity Convention」。 1回戦最後の組み合わせで、追加枠を勝ち抜いた廃滅者セトを迎え撃つ。 決着は1partでついた。「村人J」を専用で倒しセトはエラー落ち。 リードを広げ、「N.O」で今度は汎用で差をつけ勝利。 撃破失敗なしのストレート勝ちで追加枠最強を退けた。 廃滅者セトに勝利 次の対戦相手はグゼスべスというこいし。 もちろん「Beatrix Repha vs 輝夜ハワード」みたいな番狂わせが起こるわけもなく、 「ベアビヨ9」「レンちゃん」で差をつけ勝利。 「レンちゃん」に至っては制限時間20分ギリギリだったという... グゼスべスに勝利 ここまで撃ち漏らしなしだったものの、続くImaginary Number戦での 「令和ドナルド」でこの大会初めて撃破失敗。20分経過。 しかしImaginary NumberもKO負けだったのでイーブン。 さらには「エンダーマン」で「終焉【夢幻泡影】」という強制宣告をやり KO負けを喫するという失態。これもImaginary NumberもKO負けだったが? しかし続くDeadly Trackerをアマネだけ倒しリードしたところで 戦いは次回へと持ち越された。 迎えた次のpart。 「Federn-X」を落としただけで特に変動はなく3part目に突入。 そして3part目... 「神オロチカンフーマン」を両者落とした次のタゲ。 「フィンスファニス」という鹿目まどかを専用対策で倒し勝利。 親変更なしで決勝まで行った。 Imaginary Numberに勝利 ここまで残機が減ることはなかったが... 決勝のナタリア・フォーリンアビス戦の「巫女ボム」でついに残機が減った。 相手が倒したのに対し、彼女は20分経過したのだ。 「パンドラボックス(耐久パッチ入り)」を両者落として次のpart... 「D.Shadow(耐久パッチ入り)」。そこでナタリアは倒し、彼女は... 「終焉【夢幻泡影】」を撃った。撃ってしまった。 もちろんKO負け。ストレート負け。敗北。 勝敗画面の際、彼女は白い十字架と化した。 ナタリア・フォーリンアビスというアルクが優勝し、彼女は準優勝だった。 実はルナ氏のブログでは「撃破成功パターンがあった」 それを引いていれば試合はまだ続いていたのだ... ナタリア・フォーリンアビスに敗れ、準優勝 EPISODE3 「MUGEN God Tournament 浄天杯」 ルナ氏本人主催のMUGEN God Tournament 浄天杯で、彼女は参戦した。 予選の相手はウブウアウトと女神佐祐理。 どちらかが残機0になれば本選進出。 まず進撃のハート様を15分経過で倒せなかった女神佐祐理が残機を減らし、 「ジャガーさん」という親変更必須タゲを引いてしまったが、 相手も両方撃破失敗したので変動なし。 「ナイトメアフラン」を彼女だけ倒し女神佐祐理の残機が0になり、 ウブウアウトと共に決勝進出となった。 26 44~ 決勝に進出 そして抽選で、墨姫という小町と対戦。 「Zechael-type-S」という親変更アンチを引き当て残機を減らす。 「アチチルノ」も彼女だけ倒し、勝利した。 17 25~ 墨姫に勝利 次の相手はアズリエルたそ。 早速「クリスマスジャガーマン」という親変更もってこいのタゲを引いてしまい 残機を1減らされる。 だが、「Mongori」を彼女だけ倒し1vs1になり、 「オメガトムばすー」も彼女だけ倒し勝利した。 21 12~ アズリエルたそに勝利 迎えた準決勝。相手はBeatrix Repha。 「進撃 or 撤退」で彼女だけ倒しリードするが、 「混沌ぬこXXX」という親変更もってこいのキャラを引いてしまい1vs1に。 結果、「殺神貴試験体Mk2ver.A」を15分経過で倒せず敗北。ベスト4となった。 にっこり笑顔のBeatrix Rephaの前で白目を剥いて驚く彼女が映し出された。 17 15~ Beatrix Rephaに敗れる EPISODE4 「Mentee and Mentor Pair Battle」※未脱落のため未完成 「Mentee and Mentor Pair Battle」で彼女が「滅び」という早苗と組んだ。 相手は狂い月と殺人鬼レナ。 「滅び」をフォローする形で「幽雅」と「魔理沙の目」を倒し 最後は「鬼塚小町」を滅びが倒し目標の6ptの達し勝利した。 主催の更新ペースもあってか、現在進行形で脱落していない。 27 10~ 狂い月と殺人鬼レナに勝利 EPISODE5 「屈辱のStruggle Quartret」 Struggle QuartetでTeam Wealのメンバーとして出場した。 相手は「TimeEater」という汎用化け物。 saint-of-silver11pで「終焉【夢幻泡影】」が命中し、いいとこを見せる。 が、「Dc-003」という親変更もってこいを引いてしまい敗北。 静かなオーケストラ同様、TimeEaterの餌食となった。 しかもチームは敗北。刹那が頑張ったのにこの仕打ち・・・ TimeEaterに敗れる EPISODE6 「古新乱舞 -Conflict of Period-」 迎えた「古新乱舞 -Conflict of Period-」。 opでは彼女の姿はなかったが、Part8で援軍として登場。 援軍10人では唯一親変更を持っておらず、「マルチドナルド12p」などを引けば 0勝1敗で脱落、なんてこともありえた。実際、このページを書いた人もそう思っていた。 15 01~ アマネ=セレスタイト登場シーン MGO3を終え、主催が新PCで動画を作ることとなった2020年12月。part12。 ついに出番は来た。相手はマシロふぁんぐ。 「破壊者ぐだ子」を倒しリードすると、 「ちびアザゼル」で専用対策が炸裂し勝利・・・となるはずだったが なんと「アザゼル」の専用暴発で撃破失敗という失態をかました。 それでも「デカコハク」12pの専用はちゃんと機能し勝利。初戦を飾った。 18 11~ マシロふぁんぐに勝利 その後、引きこもり、気が付けばPart52。 彼女の2回目の出番が来た。相手は殺人鬼レナ。 「強化ラドン」を殺人鬼レナが倒し彼女は専用。 ...だったのだがなんと専用ミスにより撃破失敗。先制されてしまった。 ルナ氏のブログによると「このタゲ用の削り記述がなかった」とのこと。 それでも「げっだんこぁ」の専用対策は演出も機能し、 相手は20分経過で強制宣告の「終焉ノ刻」を撃つことすらできず追いついた。 「沼」で親変更でズルできるとのことから、またリードされる、と思ったが、 「イキガミ・レリエル」で普通に撃破。決着はつかず、Part53へ・・・ 「アレンジワドルディ」12pを専用で削り殺し、 「クラルーツ」1pで相手が宣告自滅でKO負けしたことを横目に 専用対策が炸裂、暴発もミスもなく削り殺し、「クラルーツ」最後っ屁の強制宣告を耐え勝利。 殺人鬼レナを脱落させた。 15 33~ 殺人鬼レナに勝利し、脱落させる 引きこもった結果、最後の5人にまで残った。 最後の5人では唯一、親変更を持っていない彼女。 静かなオーケストラが脱落した次のPart、Part69で彼女の出番が来た。 相手は静かなオーケストラを脱落させたリミカGE。 「KFM-ZERO」でリミカGEがKO負けしたことを横目に 「シニガミ・ネフィリム」で即死させリードする。 そして「FT-Nanaya」を倒し、マッチポイント。 あと1pt取れば勝利というところまで来た。 ...がなんと「死神&ケンシン」という☆3.6(難易度やや難)で リミカGEが撃破したのに対し、彼女はなんと「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまう。 もちろんKO負け、追いつかれ、サドンデスとなった。 ちなみにエンコ後の更新では「死神&ケンシン」を倒せていたという。もったいない・・・ こうして1partやっても決着はつかず、Part70にまでもつれ込んだ。 激闘の末。「カグツチ」を引いた。 リミカGEは「オールオーバー」による自滅でKO負け。 そして彼女は専用対策。 「クラルーツ」同様暴発もミスもなく削り殺し勝利。 勝利ポーズで後ろを向き、リミカGEを脱落させた。 14 54~ リミカGEに勝利し、脱落させる しかしその次の試合でBeatrix Rephaが琥珀にゃんに3partに及ぶ戦いの末敗れ脱落。 新世代最後の一人となってしまった。 歯車となったBeatrix Rephaに駆け付ける。するとBeatrix Rephaの幻影が現れ、 彼女は膝をついた。そして、本来喋らないはずの彼女が喋った。 そして立ち直り、「まだだ、まだまだ!!」と歯車を持ちながら言った。 彼女は後ろを向いた。その前でBeatrix Rephaを脱落させた琥珀にゃんが現れ、 指をさした。彼女は言った。「これで、終わる・・・」と。 こうして、最終決戦が幕を開けた。 2021年12月28日。 琥珀にゃんとの決戦が始まった。 親変更がないので、親変更もってこいタゲを引けば負け。 最初は「D日向義仲」7pで「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまいKO負けを喫し、 琥珀にゃんは専用で削り殺し先制される。 だが、「Anonymous_Ferrum」で仕分けのやってることの差をつけ追いつく。 サドンデスに入り、琥珀にゃんが専用している「普通京」10pを引いてしまう。 「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまいKO負け。琥珀にゃんは・・・ なんとこれも宣告ミスでKO負け。助かった・・・ 1part丸ごとやっても決着はつかず、2part目に入る。 しかし、ここでも決着はつかなかった・・・ ちなみにその動画の最後に、「次回、決着!」と金文字で書いてあった。 迎えた2022年1月9日19時。 戦いは決着を迎えることとなる。 琥珀にゃん「チャンネルは、そのままです!ふふふふ、一年専心・・・」 アマネ=セレスタイト「これで、終わる・・・」 琥珀にゃん「料理して差し上げます。燃え尽きてくださいまし!」 (This is gonna be a match remember!) アマネ=セレスタイト「今こそ滅びの時だ!!」 (FIGHT!!) ☆4.5「Reaper_Kain」を専用で削り殺し、琥珀にゃんは汎用。 アマネさんの勝利かと思われたが・・・ なんと汎用即死。まだ決着はつかない。 そして迎えた、No.617... 「ニコニコ本社」12pであった。変数弄り要求タゲ。☆4.1。 彼女は「イキガミ・レリエル」で削り殺した。 琥珀にゃんは...20分経過。今度こそ彼女の勝利であった。 親変更持ってこいタゲを引かなくて良かった。 彼女は喋った。「終わりです」、と・・・ 琥珀にゃんが石化し、塵となり消えるのを見届けると... 彼女は左に向いて歩き、新世代の背景の真ん中に立った。 そして彼女は喋った。 「...任務完了。」と・・・ 「新世代」は勝利した。 紙吹雪の中、アマネさんは勝利ポーズを取った。 彼女の記録 4勝0敗 これだけ見てると、「親変更を持てば鬼に金棒」に見える。 28 08~ 琥珀にゃんに勝利し、チーム勝利 決着から2ヶ月後の2022年3月9日19時。 EDが投稿された。 Imaginary Number「ご堪能頂けたかね?」 アマネ=セレスタイト「終わりです。」 (WINNER!)(歓声) Imaginary Number「ここが終焉だ。」 Imaginary Numberと会話するが、Imaginary Numberにスルーされてしまう。 白目を剥いて驚いた後、走ってImaginary Numberの後を追った。 ターゲットを振り返りながら、Imaginary Numberの後を歩いた。 歩いた先に、新世代のメンバーがいた。そしていつもの勝利ポーズで締めた。 手に入れた称号は「ラストファイブ」「リーサルウェポン」「全てを終えし者」そして「東方不敗」であった。 当初は親変更がないという点で新世代援軍最弱だと思われていたが、 ここまで勝ち残ると最弱とは言えないだろう。 15 00~ 最終戦績 EPISODE7 「MUGEN God Tournament 第2回浄天杯」 2019~2020年公開キャラで最強を決める大会がルナ氏本人で開催された。 彼女は主催枠で登場した。 予選第8試合、死神舞と対戦。 「フィンステァニス」を倒しリードすると、「オム君」を倒して勝利。 新神に洗礼を浴びせ、本戦進出となった。 死神舞に勝利 本戦の初戦では雨水七映と対戦。 「Decoration_Charlotte」で相手がKO負けしたのを横目に汎用で 「憑依解放【アマネ】」を発動した直後に倒し、リード。 最後は「荒ぶる文(パッチ)」を倒し勝利した。 雨水七映に勝利 次の相手は愛乃すぃか。 ☆8を連続撃破したところで次のpartへ。 古新乱舞で琥珀にゃんとの決着が着いた2022年1月9日。 2part目に突入した。 「BURNING SUPER DEATH SWORD」を「イキガミ・レリエル」で倒し、 相手はAssertエラーで撃破失敗し先制。 が、古新乱舞と違い決着付かず3part目に突入。 迎えた2022年1月30日。 誰もが決着付くだろうと思っていた。 迎えた「うまい棒(コンポタ味)」2p。 彼女は・・・「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまった。 KO負け。さらに、愛乃すぃかは仕分け。1vs1となった。 「notkfm」1pを倒し、愛乃すぃかは強制宣告まで行った。 この「notkfm」は宣告タゲではない。アマネさんの勝利だ。 と誰もが思ったが・・・ 愛乃すぃかは喋った。「よかったよかった。」と。 表示されたのは「A-suika Wins」。そう。強制宣告が命中したのだ。 こうして、また1partやっても決着はつかず、前代未聞の4part目へ・・・ 2022年2月22日。part32が投稿された。 「ユヴィッチネント氏パッチ入りマスタークリス」を引いた。 特殊構造じゃないと汎用は無理で、☆10であった。 彼女は専用対策していた。勿論暴発もミスもなく、 「イキガミ・ノア」を炸裂させ、倒した。 愛乃すぃかの番だ。汎用オンリーなので、ついに終わる。 数分後。 愛乃すぃかはまたあの技を繰り出した。 「ぐるぐるぐる~!とにかくすっごい...」 腕をぐるぐる回し、愛乃すぃかは... 「愛の鉄拳パーンチ!!」 腕を地面にたたきつけ、「KO」の文字が出て、 「ユヴィッチネント氏パッチ入りマスタークリス」側のライフバーごと消し飛ばした。 が、何故か猛抗議するように「マスタークリス」はオロチの姿となり、全画面攻撃を繰り返した。 その数秒後、ついにこの時が訪れた。 4回目の「マスタークリス」がオロチの姿になって全画面攻撃をした時であった。 愛乃すぃかの頭上で、消し飛ばしたライフバーが降ってきたのだ。 そして、愛乃すぃかとごっつんこ。 そして表示された文字は「Master Orochi Wins」。 愛乃すぃかはKO負けを喫したのだ。 「愛の鉄拳パンチ」こそ愛乃すぃかの強制宣告なのだ。 こうして2ヶ月(4part)に及ぶ愛乃すぃかとの闘いは終わった。 激闘の末、勝利した。親変更もってこいが来てたらと思うと・・・ 愛乃すぃかに勝利 準決勝の対戦相手はデ=リーパー。 愛乃すぃかと同じ親変更持ちだが、探査は持っていない。 それにデ=リーパーの製作者が引退したため、更新は見込めない。 「レリンクリッシュ」でデ=リーパーがKO負けしたことを横目に 「シニガミ・ネフィリム」で即死させ先制。 「超肉体派な博麗霊夢」を両者落としただけで次partへ。 両者撃破を繰り返した末、 「耐神用改変素材KFM」という☆10中☆2のタゲでデ=リーパーが宣告すら撃てず 20分経過で撃破失敗。第1回で逃した決勝進出のチャンスが到来した。 結果、「イキガミ・ノア」の連発したのちKO勝ち。 第1回では逃していた決勝進出を果たした。 デ=リーパーに勝利 そしてもう一つの準決勝では黒橙式がImaginary Numberを破った。 すなわち、彼女の決勝の相手は黒橙式となった。 技同期+親変更なしの彼女に対し、相手はチャート+究極の削り+親変更。 汎用では少し負けているが、黒橙式は専用を持っていない。 ということで専用に頼るしかないが、果たして主催優勝がありえるのか・・・? まさか親変更なしで親変更持ちがいっぱいいる大会で優勝なんてこと、あるのか? そんな不安を胸に、「オンゲキBrightMEMORY」が大盛り上がりとなった 2022年6月23日19時00分。 Part37が投稿された。 ついに、黒橙式との1partに渡る決勝戦が始まった。 金髪の彼女と、黒髪の黒橙式。 親変更なし快挙への再挑戦が始まった。 最初のターゲットは「BBBカイン」12p。 「バナナボートに乗ってビーチバレーをするカイン」が正式名称。 難易度は低かったため、「イキガミ・ノア」連発であっさり倒した。 黒橙式も華麗なナイフ捌きで、ターゲットを倒す。 「EW美鈴G」7pは「シニガミ・ネフィリム」で撃破したアマネ。 しかし、ここでなんとZAF氏の撃破挑戦用タゲである「kfm0x02」が・・・ 2pであった。マイナスの精密フローにNoko条件、さらには耐性強化というZAF氏のやばいやつ。 アマネは・・・「終焉【夢幻泡影】」を打つまで到達してしまった。 勿論KO負け。黒橙式は対応していたため、先制されてしまった。 後がなくなった彼女。 次のタゲは・・・「葬バナナヤ」6pであった。 削りが最適だが、宣告も通すことも可能。 ただ、耐性が高いため、精度が良くないと・・・ しかし、アマネさんは削ることができず、また「終焉【夢幻泡影】」まで到達。撃ってしまった。 だが宣告も通せる。「KO」が出た。 だが。 「KO」が出て数秒倍速再生になり、1倍速に戻った瞬間であった。 MUGENの画面に小さく出たのは・・・ 十字架で見えにくいが「soubananaya Wins」であった。しかも「葬バナナヤ」側に1winが・・・ 右側のターゲットのポトレに傾いた赤い「KO負け」「撃破失敗」がフェードインした。 終わった。やはり親変更なしでは無理だったのか。 黒橙式のナイフ捌きを眺めるしかなかったアマネさん・・・ 万事休すであった。 しかし、試合は異常に時間が掛かる。 カットしてから暫くして・・・ 白い光が包む。「黒橙式」のカットインがあるが、光で顔は見えずらい。 バナナを3WAY方向に投げる黒いバナナヤと左端から真ん中へ移動する「黒橙式」。 黒いシルエットの「黒橙式」が中央に達した瞬間、「黒橙式」は膝をついた。 地面に武器のナイフを突き立てようとして、黒橙式は・・・ 「お前が落ちろ・・・」 こう言った直後であった。 黒橙式はナイフを振り下ろし、地面に刺した。 画面が赤くなる。「KO」の文字が出る。 画面が真っ暗になる。 数秒後、画面全体を覆う翼のエフェクトと共に、MUGENの画面が明るくなる。 「葬バナナヤ」の本体の前に、ナイフが地面に刺さっていた。 Roundstate=4であった。 アマネさんは、黒橙式に敗北してしまったのか。 宣告の精度が勝敗を分けたのか。 否。 画面全体を覆う翼のエフェクトが終わった直後に表示されたのは、 これまた上寄りの中央で小さな「soubananaya Wins」と ターゲットのポトレを覆う傾いた赤い「KO負け」「撃破失敗」であった。 そう、両者撃破失敗である。残機変動なしである。 実はシルエットの黒橙式がナイフを振り下ろし、「お前が落ちろ」と言いナイフを地面に突き刺すのは 黒橙式の強制宣告なのだ。 彼女は、強制宣告で自滅したのであった。 助かったアマネさん。しかし劣勢は変わらない。 次のターゲットは「真祖こぁ」。 ターゲットが決定してトランジションした次の瞬間・・・ アマネさんは灰色の体で、半透明状態になっていた。 青い白文字で表示されているのは「専用」 そう、アマネさんは専用対策をしていたのだ。 ガバもなく削り殺し、元の色に戻り、ラウンドも以降する。 黒橙式は、あの宣告まで行き撃ってしまいKO負け。 これで、1vs1。次分かれた瞬間、決着が着く。 ついに専用で一矢報いた。次「げっだんこぁ」など専用しているタゲを引けば優勝だ。 次のタゲ、選ばれたのは・・・ 「SYUSYO」12pというイグニスであった。 リダ偽装での高速削りを意識しないと削れない。 撃破演出が出ても油断は禁物。邪魔すると一からやり直しになる。 アマネさんの番だ。 だが少ししか削れない。時間が過ぎていく。 そして彼は・・・ 「SYUSHO」12pのHPを半分に削ることすらできず、「終焉【夢幻泡影】」を打ってしまったのであった。 勿論KO負け。技同期では厳しかった? 黒橙式の番だ。この人が撃破すると、今度こそ敗北。 黒橙式は削りは削りの鬼「季節風」氏監修。 削りタゲに強いこともあって、アマネさんに「敗北」の二文字と「準優勝」の三文字が頭を過ぎる。 諦めがつく。やはり親変更なし+技同期では縛りなし大会を優勝することは無理だったのか。 削りが優秀が故に、黒橙式は華麗なナイフ捌きで「SYUSHO」のHPを少しずつ削っていく。 カットを重ね、気が付いたら「SYUSHO」のHPは3分の1を切った。 それでも黒橙式はナイフと刀で攻撃する。 「SYUSHO」のライフは、1cmまで来ていた。 そして次に「SYUSHO」のHPの青いゲージが見えなくなり、黒橙式が着物の姿で刀を振った時だ。 大きい隕石が降ってきて、黒橙式の演出のノイズに紛れて・・・ 「KO」 ノイズで見えないが、KOが出た。 アマネさんにとって、無情であり、非情のKOであった。 黒橙式はナイフと刀捌きの手を止めた。 オレンジ色の「SYUSHO」というイグニスのマントに隠れ、Roundstate=3をやり過ごした。 数秒後、黒橙式はしゃがみ、ナイフを取り出すと・・・ それを振り、MUGENの画面が赤く染まった。 染まる途中、右側のターゲットのポトレに金色で傾いた「撃破成功」の文字が出た。 そして真っ赤な画面に、「Kokutou Shiki Wins」とその文字を右半分隠す一瞬の黒橙式のカットインが出た。 黒橙式は喋った。「じゃあな。」と・・・ アマネさんはRoundNotOverを信じた。 だが、画面は暗転し、ラウンドは移行した・・・ こうしてアマネさんは黒橙式に敗れ、準優勝に終わった。 親変更なしで二度の準優勝、しかも最後はどちらもillness氏に敗北・・・ やはり縛りなしの大会で親変更なし+探査なし+技同期で優勝するのは無理なのか・・・? そう思っていたが・・・ なお、主催のブログによると、 「彼女的に倒せたんだろうなってタゲを落として順当に負けた」とのこと。 黒橙式に敗れ、自身2度目の準優勝 FINAL EPISODE 「M.G.T.リスペクト」 M.G.T.リスペクトでは初っ端から元強豪の鬼巫女Xと対戦。 延長戦にもつれ込んだ戦いの末、「#Lonly_Nanaya」で 「終焉【夢幻泡影】」が命中し、勝利となるはずだったが鬼巫女が疑惑の判定でKO勝ちとなり続行。 それでも「Tree」を鬼巫女Xが時間切れで倒せなかったのを横目に アマネさんは・・・「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまった。 もちろん「撃破失敗・・・」...ではなく 何故か「撃破成功!」であった。何があった。 暗くなってるとこをよく見ると、「Amane Seresterite Wins」が表示されている。 こうして鬼巫女Xに勝利し、初戦は突破した。 鬼巫女Xに勝利 次の相手はジェラシーというドナルド。 「ERDING of Metatron」で専用対策が炸裂・・・したのはいいものの 何故か倒せずTU判定負けという失態をかましたものの、(アルシエルとの専用暴発説がある) 「Arthas/LichKing.def」での専用対策はちゃんと機能し勝利。 Iブロックの決勝に駒を進めた。 ジェラシーに勝利 Iブロック決勝の相手は汎用の強豪「Dパルスィ」。 女神佐祐理を作った円氏のキャラである。 「Oracle氏パッチ入りイグのん」でDパルスィが隔離使われてKO負けしたのを横目に 専用対策を派手に決めKO。 KOが出た瞬間、タゲの画像が砕け散った。 アマネ=セレスタイトが勝利した。そう思っていた... しかし真っ白な左寄りのMUGEN画面と右寄りのタゲ情報に 数秒待って表示されたのは・・・ なんと、小さな「UNKNOWN-O Wins」の文字と画面中央くらいを横狭く覆う赤い「撃破失敗・・・」であった。 しかも、砕け散ったはずのタゲ画像がまた姿を現した。 専用対策が出て、なおかつKOが出たはず。何があったのか。 実はKOが出たと同時に、「ここは永遠...わたしの世界....」と表示されていた。 その技こそ、Oracle氏のパッチで隔離攻撃となった「えいえんのめいやく」なのだ。 Dパルスィもそれを食らっていてKO負けを喫していたのだ。 そして、アマネさんの専用が失敗していたのだ... 何があったのか?実はルナ氏のブログ記事によると、 「高速削りのために混線干渉したいがいざ干渉の準備をすると このキャラの構造上全く削れなくなる」ため、 「専用ガバが起きやすく、仮に上手くいっても運ゲーみたいな状態で放置されていた」とのこと。 専用ガバしすぎ... ちなみに撃破確認のコーナーでは「改変パッチ入り神みずか」が倒した。 その後も戦いは続き、 「STG氏パッチDKFM」でDパルスィが恨符「丒の刻参り七日目」で倒れたっきりで30分経過で撃破失敗。 それを横目に「イキガミ・ノア」連発で即死させ今度こそ勝利し、Iブロック代表となった。 Dパルスィに勝利 そして時は流れ、2022年7月3日午後7時。 親変更なし快挙への挑戦ラウンド3が始まった。 決勝戦の様子が投稿されたのである。 彼女の制覇を2度も阻んだillness氏のキャラは黒式しかいない。 (TimeEaterはJブロック予選決勝で空集合に敗れ、黒橙式は敗者復活戦で脱落、ナタリア・フォーリンアビスはBブロック予選でQネクに敗れ、これまた敗者復活戦でも脱落) しかし壁はまだ存在する。MGVWで戦ったFS蛟、琥珀にゃん、ウブウアウト、空集合、白魔導士の5名だ。 彼女は親変更を持っていない。「マーシャル」12pや「マルチドナルド」12pを引けば、確実に脱落する。 果たして親変更なしでどこまでいけるのか・・・? まず最初のタゲは「Middle-God-Challenge」2p。 最後は「シニガミ・ネフィリム」でバルパトス即死ルートの条件を満たして撃破。 その後11~15位決定戦が行われたため、決勝戦Part1の出番を終えた。 1週間後の2022年7月10日午後7時。 決勝戦のPart2が投稿された。 しかし概要欄の1行目には「優勝候補、続々脱落」と書いてあった。 まさか、彼女が脱落したのか・・・? 親変更要求が来たのか・・・? その動画の最初のタゲは「supercell-R」という幽々子。 削りタゲではあるが、普通じゃない削りをするとライフが全回復、 さらにAlive偽装をしていると論外化するタゲであった。 アマネさんは・・・「イキガミ・ノア」の後に「イキガミ・エリー」を放った瞬間、 タゲが即死した。倒したのだ。 しかし、ここで空集合と白魔導士が脱落。空集合に至ってはKO負け。 そう、「優勝候補、続々脱落」は、空集合と白魔導士の事だった。 この後8~11位決定戦が行われたため、決勝戦Part2の出番を終えた。 2週間後の2022年7月24日午後7時。 決勝戦Part3が投稿された。 その最初のタゲは「チープマリオ」。 ...だが彼女の青い白文字で表示しているのは、「神版」ではなく「専用」。 どうやら、専用対策を持っていたようだ。 ミスも暴発もなく無事「イキガミ・ノア」で削りKO。ちゃんと機能したようだ。 しかしこの後5~7位決定戦になったため、決勝戦Part3の出番を終えた。 1週間後の2022年7月31日午後7時。 決勝戦Part4が投稿された。 「普通ミズチ」を専用対策で倒すと、その後の「NothingNull」8p、「天空の龍神 レックウザ」7pを倒し、 「黄桃(Pixel)」を専用対策、「イキガミ・ノア」を常に放ち続け、 地道に削り、ミスも暴発もなく撃破。 ここで琥珀にゃんが30分経過で脱落。4位。 ついにFS蛟、ウブウアウトとの1~3位決定戦にまでもつれ込んだ。 それ以降は全員撃破。 rakurai氏の「コロナ」という撃破難易度極難があったが、全員専用対策で撃破した。 1週間後の2022年08月07日午後7時。決勝戦Part5投稿。 ついに、この時が訪れることになるとは・・・ 「3rdデススター」と「808080」12pは難易度易だったため、全員撃破。 迎えた次のタゲ・・・ 「DefeatChallenge-EG_02」1pであった。 削りタゲであった。削ると10Fでライフ回復するタゲ。 アマネさんは・・・削ったのち、「イキガミ・ノア」で残りのライフを一機に削り撃破。 しかし・・・ ここでなんとあの最強格のFS蛟がKO負けで撃破失敗。3位が決定した。 ついに訪れた千載一遇のチャンス。あとは親変更要求を引かずにウブウアウトに勝利するだけだ。 だがウブウアウトも「マルチルノ」に続くようつべ勢殺傷力大会優勝の千載一遇のチャンスであった。 どちらも快挙であり、彼女の方が大きい快挙である。 次のタゲは・・・「踊るアルテラ」1p。 早速ウブウアウトがエラー落ち。試合開始すら進めなかった。 アマネさんの番だ。タゲ解説では・・・ 「条件は親変更変数弄りでカット可能、全領域親変更を行うことでタゲが取れる」 ...そう、ウブウアウトは優勝のチャンスを逃していたのである。 親変更持ってない彼女では「終焉【夢幻泡影】」を打つことすらできず30分経過。 撃破確認のコーナー行きとなった。 続く「複数のパッチ入りナイトメアブロリー」12pは「シニガミ・ネフィリム」で、 「天気雨」12pという小傘は「イキガミ・ノア」で、 「極道人形使い」12pはウブウアウトが専用で撃破したのに対し、 彼女は汎用で放置期間で何もしない状態で撃破し、ウブウアウトにない汎用力を見せつけた。 そしてNo.699、選ばれたのは・・・ 「ヘカーティア・ラピスラズリ」12p。 また東方キャラであった。削りで倒せるタゲであった。 ウブウアウトは・・・なんと削ったものの半分すら削れず、30分経過で撃破失敗。 さあ、親変更なし快挙への千載一遇のチャンスだ。これを撃破すれば優勝。 さあ、いけ、彼女。優勝するんだ。 こうして彼女は、「ヘカーティア・ラピスラズリ」に挑んだ。 順調に削っていく。技同期を利用して・・・ 色んな技を駆使して、地道に削っていく。 斬撃、大魔法・・・いろんなことを試みた。 そして、「ヘカーティア・ラピスラズリ」のライフがちょっとになり、 「シニガミ・ネフィリム」を放った時だった。 「KO」 出た。ついにこの時が訪れた。ついにだ。 そして、「Amane Seresterite Wins」が出て、「撃破成功!」の文字が出た。 しかし、まだ油断できないのがMUGEN。RoundNotOverがあるかもしれないのがMUGENの殺傷力大会だ。 そのRoundNotOverは・・・ 暗転する前にトランジションしたため、不明だったが、 こうして彼女は「M.G.T.リスペクト」の頂点に立った。 親変更なしが縛りなしの殺傷力大会で優勝するのは親変更登場以降史上初である。 128キャラ+敗者復活新人の中から親変更・探査なし+技同期が頂点をもぎ取ったのだ。 これは偉業であり、「強さに親変更は関係ない」ということが証明された瞬間でもある。 親変更・探査なし+技同期で縛りなし大規模殺傷力大会優勝!! 彼女は、親変更・探査なし+技同期で縛りなし大規模殺傷力大会を優勝した上位神である。 親変更と探査がなくとも、対応力と専用力さえあれば最上位神になれるのだから。 彼女の戦いはこれからも続く。 FS蛟から王座を奪い取る、その時まで・・・ 親変更探査無し+技同期で大規模殺傷力大会の頂点に立って3か月が経った。 あれから、検証が行われようど、殺傷力大会は開かれていなかったが...... EXTRA EPISODE 「親変更無しで勝負せんかい!招待状の無いプチ神トーナメント」 この大会が開催される3か月前、「M.G.T.リスペクト」で頂点に立った親変更の無い彼女。 しかし、彼女は本当に親変更無しで最強なのか? それを証明する大会が始まった。 彼女はLv3。故に残機1固定。 Lvが上の相手だと相手の残機が2になるハンデを仕掛けられていた。 初戦の相手は「samael」というKOFの禍忌。Lv2。 当然、相手がLv2なので相手残機2というハンデが仕掛けられる。 2022/12/28に投稿されたPart2は残機変動がなかったため、省略する。 2023/01/23。1か月くらいの時を得て、Part3投稿。 すると最初から動きがあった。 「STGf0394」であった。ターゲットの仕様上、試合中に会話をする。 当然10年前くらいから更新が止まっている「STGf0394」は、 2019年公開の「アマネ=セレスタイト」の事を知らないらしく、 オペレータールームは「ウハウハ?ぼちぼち?」と対戦相手の情報を教えてくれなかった。 邪魔だから通信切るといって、対戦相手の情報を調べるどころじゃなかったらしい。 「シニガミ・タナトス」でライフを削ったのち、 「イキガミ・ノア」で削り切り撃破した彼女。 そして「samael」は20分経過で撃破失敗。1vs1となった。 続くSDという幽々子は両者撃破失敗。 次のターゲットは「槍投げ萃香ちゃん」。 削りタゲである。しかし彼女は...... 汎用なのに専用対策を引いたかのように「イキガミ・ノア」をぶっぱ。 まるで即死干渉を狙っているかのようであった。 しかしカットして他の技を使うと、 彼女は「イキガミ・ノア」で撃破した。 「samael」はKO負け。つまり彼女の勝利となった。 これで負けてたら「M.G.T.リスペクト」の優勝者とは思えないという所だった こうして彼女は、ステージの真ん中でいつもの勝利ポーズを取った。 彼女は言った。「はい、終わりです。」と...... 天童アリスかお前は! samaelに勝利 次の対戦相手はAbyss_of_Heaven。 同じLv3同士だが、果たして......? そして2023年6月24日午後7時。 二回戦が始まった。Part12が投稿されたのだ。 Iブロックで戦う彼女とAbyss_of_Heaven。 黒いクローバーのトランプカードから出てくるAbyss_of_Heavenと、 赤いダイヤのトランプカードから出てくる彼女。 Abyss_of_Heaven「さて...」 Abyss_of_Heaven「恐れおののけ!」 アマネ=セレスタイト「砕け散れ!」 Abyss_of_Heaven「おとなしくしてもらおうか。」 アマネ=セレスタイト「輝きよ!」 「Ready?」 Abyss_of_Heaven「思い知るがいい.....」 「Go!!」 Abyss_of_Heavenの残機を示す、白いカインと黒いカイン。 彼女の残機を示す、2つのぬいぐるみ。 果たして、ここでも親変更無し最強を証明する事が出来るのか......? ちなみに本来は残機1同士だったが、追加ルールにより、 残機2同士での戦いとなったのである。 最初のターゲットはなんと「ブールブール」だった...... 専用対策の鬼である。2014年検定では最下位だった癖に 「MugenGodSpeedCrash」で下剋上をした結果決勝まで残ってしまった温泉卵。 専用安定だが、実は相性が良ければ汎用で倒せるらしい、が...... 「Abyss_of_Heaven」は20分経過で撃破失敗。 彼女の番。倒せば、差が付く。さあ、勝つんだ。 試合開始から50秒くらい後、M.U.G.E.N.の画面が突然ネガ反転した。 突然のネガ反転、一体、何があったのか? そして半透明で赤い長方形が表示され、その上に赤と白のグラデーションで「撃破失敗...」が表示された。 その下に、左寄りで「Time Over...」その下に右寄りの金色で「20分経過...」。 どうやら、「終焉【夢幻泡影】」を打つことすら出来なかったようだ......。 その為、「ブールブール」は撃破確認のコーナー直行となったのは言うまでもない。 次のターゲットはチルノっぽい。それは...... 「⑨Timer」だった......。あのマルチルノを作ったマイナー氏のキャラである。設定 11。 偽装アンチ要求やらガーステ固定アンチ要素やらTime要求やらと項目の数が多く、 それなりに面倒な類である。干渉拒否型。 彼女はいろいろ試してみた。しかし時計は正午から動かない。 試合開始から90秒後......「イキガミ・ノア」を放つ途中で...... 白い太い線が出た。それは無数に出てきた。 それは画面を覆いつくすように..... 「イキガミ・ノア」が終わった後、真っ白な背景に黒いヒビが...... それは砕け散り、白い翼と共に画面に大きく白い十字架が出てきた。 倍速になり、数秒後「K.O.」が出た。 しかし動画右側のタゲ画像は砕け散らない。 そう、それが...... 強制死の宣告技「終焉【夢幻泡影】」なのだから。 また倍速になり、等速に戻った後に、これが表示された。 十字架に隠れるが、「9Timer_option-11 Wins」と、 そしてM.U.G.E.N.の画面中央に赤い半透明の長方形が表示され、 その上に乗っかる赤と白のグラデーションで「撃破失敗...」、 その下に深紅の文字で「Lose KO...」、 その下に赤と白のグラデーションで「KO負け...」。 そう、彼女は強制死の宣告で自滅したのだ。 時を動かすことすら出来ない、M.G.T.リスペクト優勝者であった。 そして、「Abyss_of_Heaven」はと言うと...... Abyssモードの放置期間中に時が動き出した。 時計の針が動いたのだ。しかし時は0時20分を指した時に止まる。 そしてAbyssモード中のAbyss_of_Heavenが去った後...... 時が再び動き出した。効いている。 そして時計が再び正午になった時だった...... 砂嵐から、「チルノ」のカットインが出てきて、 「K.O.」ボイスと共に「⑨Timer」というのを示す動画右側のタゲ画像が砕け散り、 「⑨Timer」というチルノは氷漬けになった。 ピー音が鳴り響く。そのピー音が鳴りやんだ後、 分かりづらいが倍速になる。 等速になった後、この文章が表示された。 「Abyss_of_Heaven Wins」 そしてM.U.G.E.N.の画面に水色で半透明な大きな長方形のようなものが表示され、 その上に青と白のグラデーションで「撃破成功!!」と、 その下に「Knock Out!!」、その下に選手名を示す「Abyss_of_Heaven」が表示された。 残機が1つ減った。動画右下で、彼女の残機を示す1つのぬいぐるみが砕け散る。 ここから、逆転できるのか......? 次のターゲットは俺がベジータだ!と「Vegeta-ST」12p。 ブロリーからクズと呼ばれている癖に耐性は折り紙付き。 「ベジータピリオドモード」という名を冠している通り、 某ドナルド改変を元にしている。干渉は出来ないので即死不可なのだ。 ライフバーが粗ぶっている割に特定条件を満たすとライフを減らせるようだが、 その条件はなんとEnemy,Ver(26)=318、Enemy,Life=26という特定値偽装要求であり、 汎用性は皆無である。しかもそれでいて減少が非常に遅いためにどう考えても汎用は出来ない。 専用推奨であり、難易度は☆4.8。 案の定、Abyss_of_Heavenは20分経過、 彼女はまた、「終焉【夢幻泡影】」を撃った。 「K.O.」が出た後、十字架の背景の中、倍速になる。 当然、「Vegeta-ST Wins」と共に 赤い半透明な長方形がM.U.G.E.N.の画面中央に現れ、 そこから赤と白のグラデーションで大きく「撃破失敗...」の文字と、 その下に「Lose KO...」、赤と白のグラデーションで「KO負け...」の文字が現れた。 それは、「ベジータST」の撃破確認のコーナー直行とも意味していた...... ここまで1タゲも撃破していない彼女。 このまま乾杯完敗してしまうのか......? 次のターゲットは「りぐる・ないとばく」だったものの、東方に仕分けの洗礼。 ...彼女がKO負けを喫した「⑨Timer」も東方だったのだが。 Abyss_of_Heavenもここは放置期間終了後に削り切る。 その後「CODE-NAME_0」「Lemon Tree」は「イキガミ・レリエル」で削り倒す。 Abyss_of_Heavenもここは退ける。 次のターゲットは「ジン」と言うストリートファイターのブランカ。 某狩りゲ―のジンオウガ風のブランカ狂改変。当然ながら雷属性。 今回はもっとも耐久力のある設定である。 その設定、難易度6、肉質3。とにかくカチカチであり、極限化個体の真っ青な硬さである。 元々1ラウンドで倒すキャラではないだけに削り切るのが尋常ではないホドの時間がかかる...... ってなんかブルアカのボスの事が浮かんだような......? 狂であってもKOするとなれば神キャラでも苦戦する程である。 狩猟(しゅりょう)難易度、☆4.3。狩猟を終了させることができるのか......(ダジャレ) Abyss_of_Heavenの挑戦、試合開始から110秒後...... Abyss_of_Heavenは何かを考えた。そして翼と共に去っていった。 次の瞬間、M.U.G.E.N.の画面は左側が真っ黒、右側が真っ白になっていた...... そこから、真っ黒の方には下に白いカイン、真っ白の方には上に逆さで黒いカインが...... 「我らは誓わん!」 そう言って、画面に真っ黒の方は白いヒビ、真っ白の方は黒いヒビが入った。 そしてヒビが砕け散り、「K.O.」の文字が出たと同時に、 「ジン」というブランカのカットインが入った。 背景には白黒背景と白と黒の羽根がたくさん舞っている...... そう、それが...... Abyss_of_Heavenの強制死の宣告、終幕『Abyss of Heaven』なのだから。 速さが倍速になり、等速に戻る。 次の瞬間、表示されたのは....... 「JIN Wins」 そして赤い半透明の長方形が現れた。赤と白のグラデーションで出てきた文字は...... 「撃破失敗...」ではなく、「狩猟(しゅりょう)失敗...」であった。 凝っている。まるでモンハン風に凝っている。 これでチャンスが出た彼女。残機を減らすチャンスである。 「イキガミ・エリー」だのを試し、HPを削る。 そして、彼女の大技、「イキガミ・ノア」を放った時だった...... 「K.O.」 「メインターゲットを達成しました」 と共に斃(たお)れる瞬間の「ジン」のアップが映し出された。 そして「Amane Seresterite Wins」と共に、水色の半透明の長方形が映し出され、 青と白のグラデーションで表示されたのは... 「撃破成功!!」ではなく、「狩猟(しゅりょう)成功!!」であった。 その下に「Knock Out!!」、下に水色の「Amane Seresterite」。 Abyss_of_Heavenの残機が減る。残機を示すHeavenモードの方のカインが砕け散る。 その後「みにれみぼーなす」というレミリア・スカーレットは専用対策で撃破、勝利を確信するが、 Abyss_of_HeavenはAbyssモードで汎用撃破。両者このタゲを撃破した。 なんと、1part丸ごと使って決着が付かなかった。 まあ、残機が2同士なので、仕方ないことなのだが...... Abyss_of_Heaven「見誤ったか......」 アマネ=セレスタイト「逃がさない......」 Abyss_of_Heaven「君はもう、要は無い。」 彼女vsAbyss_of_Heaven その間にも季節は7月に入る。七夕の季節だ。 まずブルーアーカイブの世界では「グレゴリオ」というゲマトリアのマエストロが送る刺客が大暴れ。 それを止めるため、蒼森ミネだの空井サキだのと言ったSTRIKER枠や、 安守ミノリや花岡ユズ(メイド服)というSPECIAL攻撃枠を連れ、 即死攻撃が来る前に倒す戦術を下江コハルや白洲アズサ、陸八魔アル・ヒラルと共に立てるという、 素晴らしい総力戦となった。なお最高難易度のTORMENTは2凸されている。 BEMANI PRO LEAGUEのDDRのファイナルではSILK HATとROUND1がぶつかり、 大将戦で「Fascination ~eternal love mix~」を連れてきたO4ma.とZERO.のおかげで、 ROUND1がチャンピオンとなった。やはりROUND1だったのだ...... 2022年7月6日。七夕前日の出来事。 オンゲキでは「Regulus」が通常解禁。 さらには「Rainbow Rush Story」がmaimaiから移植され、 Beatmania IIDXではHEROIC VERSE以降姿を消していたDDRからの刺客「MAX 300」がANOTHER譜面を連れて復活。 maimaiでは「10周年ちほー2」が登場する事が発表され、 DDRではBREAKING THE FUTUREのCHALLENGE譜面が「ENDYMION」と同じ最高難易度の19として暴れた。 そんな中、この大会のPart13が18 50からライブ配信されることが発表。 どうやら19 00に動画再生を始めるようだ。 そうして、彼女とAbyss_of_Heavenのラウンド2が始まった。 Abyss_of_Heaven「さて、次の手は?」 アマネ=セレスタイト「光あれ!」 「Ready?」 アマネ=セレスタイト「今こそ滅びの時だ!!」 「Go!!」 Abyss_of_Heaven「恐れおののけ、我が炎の前に!」 最初のターゲットは......2022年に流行った「ぼっち・ざ・ろっく!」の「結束バンド」だった! それが、旧版で...... ギターを弾く、「後藤ひとり」のような人である。12pで、論外化は36000F。 試合開始直後に隙を見せるのでそこでハメれば倒せるらしい。 難易度☆4.3である。しかし試合開始直後に倒せなかった結果...... 「ぼっち・ざ・ろっく! 完」 「デデーン!(ききシリーズの不正解音の後半)」 ...と共に赤い半透明な長方形が現れ、赤と白のグラデーションで「撃破失敗...」、 その下に「MUGEN Crash...」その下に銀色で「エラー落ち...」。 そう、エラー落ちが起きたのだ。 さあ、これがチャンスだ。つかみ取れ、チャンスを。 試合開始から130秒後。 彼女は「終焉【夢幻泡影】」を撃った。 この時、「結束バンド」はギミック技の最中で、演奏をしていた...... それが、白い十字架の背景に変わった...... 「K.O.」が出る。そして..... 「Kessoku_Band_ver.0.6 Wins」 ...と共に赤い半透明な長方形が現れ、赤と白のグラデーションで「撃破失敗...」、 その下に「Lose KO...」その下に赤と白のグラデーションで「KO負け...」。 それは、「結束バンド(旧版)」の撃破確認のコーナー直行を意味していた...... 一般人なのに、なんてタフなキャラなんだ。恐ろしいバンドである..... その後「Terro」というラムバルドは「イキガミ・レリエル」で撃破、 「U美鈴」は「イキガミ・エリー」で撃破、「非常口」は「シニガミ・タナトス」発動直後に撃破。 「Blue End」という小悪魔は「イキガミ・ノア」で撃破し、記念すべき100体目である「当身トキ」は専用対策で撃破した。 そして迎えた次のターゲット.....北斗の拳のサウザーであった。 金カラーのサウザーである。普通のサウザーのように見えるが...... 「聖帝サウザー」kakeyぷらい氏のキャラである。 狂ランク改変のサウザーである。あのケンシロウに一度勝利した、あのサウザーである。12p。 ダメージ条件が特殊で。Defence=0でかなり特殊な構造を持つ。 相性が悪いと神キャラであろうと全くもう削れない事が多い。 耐性面はコードによる補助もありガチガチであり、即死不可である。 ちなみにHPが0になると「帝王の意地」という道連れ技を使うが これが強制死の宣告であり非常に強力。 Abyss_of_Heavenがまだ初期削り期間中、「聖帝サウザー」のHPが0になった。 「ぐぅあっ!!」 「聖帝サウザー」は怯んだ....... 「俺は聖帝サウザー...南斗六星の帝王... 退かぬ!媚びぬ!省みぬ! 帝王に逃走はないのだ―――!!」 「K.O.(テーレッテー)」 これが、「聖帝サウザー」の強制死の宣告、「帝王の意地」である。 しかし...... 「Abyss_of_Heaven Wins」 中位神(ランク核地雷)に、そんなものは通用しなかった...... 宣告でKO負けするなら挑戦者失格である。 さあ、彼女の番だ。これを倒して、次のターゲットに入るんだ。 まずは仕分け、これは耐えられる。そりゃそうだ。だって干渉不可だもん。 最初に放った大技は「イキガミ・エリー」。彼女は放つ。 耐えられる。これはタフである。 そして時間は過ぎ、「イキガミ・ノア」を放った時、 「ぐぅあっ!!」 「聖帝サウザー」はまた怯んだ....... そしてアマネ=セレスタイトが取った次に繰り出した技は...... なんと、強制死の宣告である、「終焉【夢幻泡影】」だった...... そして、聖帝サウザーも「聖帝の意地」という技の構えを取る。 十字架と共に...... 「退かぬ!媚びぬ!省みぬ! 帝王に逃走はないのだ―――!!」」 (テーレッテー) 何度世界が眩んでも陽炎が嗤って奪い去る。 繰り返して何十年。もうとっくに気が付いていたろ。 こんなよくある話なら結末はきっと1つだけ。 繰り返した夏の日の向こう。 引用 カゲロウデイズ/じんP お互いに繰り出された、強制死の宣告。 彼女の「終焉【夢幻泡影】」と「聖帝サウザー」の「聖帝の意地」が、ほぼ同時に発動したのだ。 まるでドラマのように、激闘を広げた。 そして倍速になり、1倍速になる。 「K.O.」 そう出ると共に、動画画面右側の「聖帝サウザー」を示すタゲ画像が砕け散った。 勝利したのは、彼女の「終焉【夢幻泡影】」だったのか? 「おお・・・」 「アマネだ!」 「あ~っと強制死の宣告の打ち合いは、アマネが聖帝サウザーを終焉【夢幻泡影】で切って落としたーっ!」 (これで両者撃破だ!) 「アマネ!」「アマネ!」「アマネ!」「アマネ!」 「さあ、あなた...」 「!」 そう、決まったのは...... 「HE-THOUTHER Wins」 なんと、「聖帝サウザー」の「聖帝の意地」だった。 ↓BGM 「HE-THOUTHER Wins」が表示されたと同時に、 砕け散ったはずの動画画面右側の「聖帝サウザー」を示すタゲ画像が再び姿を現した。 そして、赤い半透明の長方形が現れ、上に赤と白のグラデーションで「撃破失敗...」、 その下に「Lose KO...」、その下に赤と白のグラデーションで「KO負け...」が浮かんだ。 「キャア~ッ」 「ゲェ...聖帝サウザー...」 「か、勝ったのはアマネ=セレスタイトじゃなかったのか~~~っ!!」 そして、セビアになった「Abyss_of_Heaven Wins」が出た瞬間と共に、この文字が中央に表示された。 Abyss of Heaven のみが撃破に成功し、 対戦相手の残機がなくなったため、 Abyss of Heaven の勝利!! 森の奥でひたすら待つ あとどのくらい 生きるのかな? 見放されて流行という 時の摩耗に 勝てなかった 余計な感情(モノ)吹き込まれた→「永遠(トワ)に絶望すること」も せめて彼が もっと機械らしく 扱ってくれていたならば 引用 初音ミクの終焉(2018Remake)/cosMo@暴走P そう、彼女は、Abyss_of_Heavenに敗れたのである。 タッチの差で、「聖帝サウザー」に敗れ、2回戦敗退を喫したのである。 彼女は親変更無し最強ではなかった......折角M.G.T.リスペクトを優勝したのに、 「古新乱舞 -Conflict of Period-」で勝ち残ったのに...... 最強を証明できないとは、誰もが思わなかっただろう。 思えば、2020年は親変更無し最強だった...... なのに、バラム・ノーレッジに抜かされるわ、Abyss_of_Heavenに負けるわで...... もう、親変更無し最強伝説は1年限りだったのかも知れない....... バッと押しのけ飛び込んだ、瞬間トラックにぶち当たる 血飛沫の色、君の瞳と軋(きし)む体に乱反射して 文句ありげな陽炎に「ざまぁみろよ」って笑ったら 実によく在る夏の日のこと。 そんな何かがここで終わった。 引用 カゲロウデイズ/じんP 彼女は、驚きながら、スポットライトに充てられていた...... スポットライトが熱い。プリコネのクルミ(ステージ)の言葉を借りて言うならば、 「スポットライトが熱いよ~!」 まるで彼女をあざ笑うかのように、ライトは彼女の下を向いていた...... 彼女は白目になった。食らい動作をしながら...... 「う、うぅ......」 「ぐっ......」と言って下を向いた瞬間、 文字別に左右に揺れた赤い「脱落」の二文字が浮かんだ。 彼女は地に伏した。まるで気絶させられたように...... 何故、彼女は親変更無し最強ではなくなったのか......現実を受け入れらレナモンい。 彼女は意識を失った。目を閉じたのだ...... 「脱落」の文字が出た後、彼女を示す赤いダイヤのカードが倒れた彼女の上に浮かび...... 「脱落」の二文字が揺れた後に、彼女を示す赤いダイヤのカードが斬られる。 彼女を示す赤いダイヤのカードが、斜めに一刀両断された。 なすすべもなく、斬られたのだ。 彼女の体が光る。真っ白に光る...... そして彼女は、光となって消えたのであった...... まるで、儚く、跡形もなく...... 聖帝サウザーとの強制死の宣告の打ち合いの末、Abyss_of_Heavenに敗れ、二回戦敗退...... 目を覚ました8月14日のベッドの上 少女はただ 「またダメだったよ」と一人 猫を抱きかかえてた 引用 カゲロウデイズ/じんP EXTRA EPISODE2 「Evolution God Tournament」 そして、この大会の出場権が渡された。 当然、本戦枠であった。 彼女は、Aグループで舞妃小蓮?と戦うことになった。 さあ、5か月のブランクを経て、ついに初優勝以来の試合が始まる。 あれから更新を重ねたんだ。M.G.T.リスペクトで強化パンドラボックスに負けるような元最上位神に負けるわけがない。 そう言って、彼女と舞妃小蓮?の試合が始まった。 彼女は「べしましなり氏の動画」とは違い喋らない。 それでも舞妃小蓮?と戦う。 最初のターゲットは「グローリア」という十六夜ノノミ咲夜...のようなオリキャラ。11p。 ☆3.8だったため、「イキガミ・レリエル」で削り倒した。 当然、舞妃小蓮?も落とさない。 次のターゲットはなんと「Immortal Devil」7pという小悪魔であった。 削りがよくなければ2147483647バリアが完成し、宣告でしか通さなくなる。 そう、宣告...... 「シニガミ・ネフィリム」を放とうとした瞬間、あの小悪魔の下の数値が2147483647になった。 そして彼女は、「終焉【夢幻泡影】」を放った...!! 翼の背景と共に、十字架が移る。 そして、「KO」の文字が出た。 多分対応しているはずだ!やったか!? 「Immortial Devil Wins」 「アマネ=セレスタイト 撃破失敗 撃破数変化無し」 「PERFECT」 「帰って寝よ......パーフェクトだ。」 アマネ=セレスタイトは絶望した。宣告のタイミングが、外れていたのだ。 運が良ければ、汎用撃破が出来る。だがその運に見放されたのだ。 彼女が倒せないのなら、舞妃小蓮?も倒せないだろう。 彼女は撃破確認のコーナー直行を信じた。 2147483647バリアが張られ、舞妃小蓮?は... 「一撃必殺!受け止めきれるかな?」 彼女の持つ「月華美人」というチャクラムをワープゾーンに見立て、舞妃小蓮?は... 「ごっつんこ!」 「D.K.O.」 「D.P.Syaoren Wins」 「舞妃小蓮 撃破成功 撃破数1→2」 先制された。相手の方は宣告が刺さっていた。 ここから先は専用を引かないと負けだ。 技同期・親変更無しなので「マーシャル」や「マルチドナルド12p」、「旧鬼巫女12p」といった親変更必須キャラを引いてもアウトだ。 ランセレ運に賭けるしかない。そう願って...... 続く小ネタkfm6は両者撃破失敗。 そして迎えた、「kfm_bt4」...... 「イキガミ・ノア」を決め、「kfm_bt4」を撃破する。 だが、「舞妃小蓮?」が撃破してしまえば、逆転のチャンスを逃したことになる。 が!!!!! 「舞妃小蓮?」と「kfm_bt4」の試合中、突然M.U.G.E.N.の画面が止まった。 一体、何があったのか? しばらくすると、M.U.G.E.N.の画面がモノクロになり・・・・・ 動画の真ん中部分に狭く、このメッセージが表示された。 「舞妃小蓮 撃破失敗(エラメ無し落ち) 撃破数変化無し」 そう、エラー落ちだ。 M.U.G.E.N.ではエラー落ちは当たり前だ。 彼女はついに、勝負を振り出しに戻した。同点である。 そして「恋恋」を両者撃破失敗したところで、 撃破数が2-2で同じになり延長戦に突入。 したところで、戦いはPart2に持ち越された。 1part丸ごとやっても決着がつかなかったのだ... 1週間後の2023年1月20日、Part2が投稿された。 次のターゲットは「サワキちゃん」12p。 早速彼女が挑戦。すると...... 彼女の姿が見当たらない。 映っているのは、黄金で浮いているサワキちゃんと...... 「彼女の偽りのライフゲージ」の下にある「専用」だけだ。 そう、専用対策だ。彼女は、都合よく専用対策を引いた。 問題は「M.G.T.リスペクト」の「Oracle氏パッチ入りイグのん」のように専用ミスをしないか、だ。 果たして、専用ミスなく削り倒すことができるのか......。 不動の「サワキちゃん」。その間にも、サワキちゃんのライフゲージが削られていく。 え?長江衣玖?あ、ダジャレ思いついたかも! 「長江衣玖が長くなっていく!」寒いか。 そうしてる間にも、「サワキちゃん」のライフの青い部分は狭くなる一方。 このまま押し切れるか? ついに青い部分がギリギリになった!これはやったか!? 「KO」 専用ミスもなく削りきった。恐るべし、対応力抜群の彼女。 しかし問題は「舞妃小蓮?」も撃破しないかだ。 撃破失敗を祈る彼女。 そして、「舞妃小蓮?」はまたあの技を繰り出した! 「一撃必殺!受け止めきれるかな?」 彼女の持つ「月華美人」というチャクラムをワープゾーンに見立て、舞妃小蓮?は... 「ごっつんこ!」 舞妃小蓮?は突っ込んだ。まるで、「当たって砕けろ!」と頭の中で考えるように...... しかし、「サワキちゃん」にそれを躱され..... 彼女は倒れこみ、死体蹴りに金色のビームを食らった。 そして、「Sawaki-chan wins」と、「舞妃小蓮 撃破失敗」の文字が浮かんだ。 そう、彼女は親変更無し・技同期型で、親変更あり・コード使用・汎用オンリーの舞妃小蓮?に勝利したのである。 そして彼女は上に表示される「Amane Seresterite WIN!!」という文字の下で・・・ 彼女はいつもの勝利ポーズを取った。 舞妃小蓮に勝利 次の対戦相手は死神舞。 削りが得意な季節風氏のキャラである。 専用対策も搭載されており、相当の強豪である。 そうして2023年4月28日午後8時。 死神舞との決戦が始まった。 死神舞は削りが得意である。削りの鬼だ。 しかし「M.G.T.リスペクト」ではAbyss_of_Heavenに敗れて予選落ちをかました女だ。 対して彼女は「M.G.T.リスペクト」優勝だ。 予選落ちごときに、負けてたまるか。 最初のターゲットは「ヘルマスターギース」12p。 かつての矛であり、今は削りタゲのターゲットである。 親変更未満の場合、タゲを渡せば宣告を打ってくれるらしい。 彼女は親変更を持っていない。早速リードのチャンスだ。 数分後。 ステージが真っ白になる。 「ヘルマスターギース」が仁王立ちし、彼女は「イキガミ・ノア」を放つ。 そして、「ヘルマスターギース」が後ろを向き、両手を上に掲げた。 そして「ヘルマスターギース」は...... 手の上から黒いブラックホールを2つ大きくし覆いつくした。 「イキガミ・ノア」も負けてたまるかと「災厄の目」を出す。 ステージ背景が真っ暗になる。 「イキガミ・ノア」を出し終えた彼女。 そして真っ暗な背景になってから「イキガミ・エリー」を放つ。 放った後動き回ったその時。 「K.O.」 KOが出た。直後、右側のタゲ画像であるギースの墓が砕け散った。 早送りして1倍速に戻った直後、 急に出現した倒れた「ヘルマスターギース」の前で勝利ポーズを取る彼女。 そして映し出されたのは当然...... 「Amane Seresterite Wins」 「アマネ=セレスタイト 撃破成功 撃破数0→1」 そう、宣告を耐えたのだ。 宣告が刺さる上位神がいるのかはよくわからないが、 宣告を食らってKO負けする上位神はいないと思う。 ...え?宣告? 実は「ヘルマスターギース」が「仁王立ちし、後ろを向き腕を上げ、手の上からブラックホールを放つ」 のが「ヘルマスターギース」の強制宣告なのだ。 そう、宣告誘発ルートで撃破したのだ。 「死神舞よ、親変更を搭載した事を後悔するんだな」と彼女は思う。 「親変更持ちでは宣告誘発できない」のだから。 さあ先制のチャンス、死神舞の撃破失敗を祈れ。 が...駄目ッ...! 無常にも死神舞は削り殺した。 それでも「ヘルマスターギース」にはRoundNotOverがあった筈。 しかしそのRoundNotOverは機能せず、ラウンドは移行した。 先制のチャンスを逃した彼女。 しかしまだこれからだ。 次のターゲットは「こと座流星群」というストリートファイターのベガ。 背景固定でベガのサイコクラッシャーが容赦なく襲い掛かる。 開幕から彼女は「イキガミ・エリー」を放った。すると...... ベガの断末魔が響き、「K.O.」が出た。 なんとほぼ瞬殺である。タゲ紹介中に撃破したのだ。 死神舞は......雨が降っていた。 どうやら専用対策していたようで、ミスもなく撃破した。 ちなみにこのタゲ、難易度はなんと専用推奨レベルの☆4.5だったのだ...... 次のターゲットは「スペースゴジラ」12p。 これは通常攻撃の応酬で撃破する。 死神舞は時間をかけながら撃破した。 次のターゲットは「F-KFM」1p。 落ち続けている煽るKFMみたいなものである。 落下即死で撃破できるらしい。1pは汎用圏内。 彼女は、「シニガミ・ネフィリム」を放とうとした瞬間「K.O.」。 ☆3.6をM.G.T.リスペクト優勝者が落とす訳がないのだ。 死神舞もここは撃破する。 さあ、最後のターゲットだ。 最後のターゲットは......「メガリス」というレミリア・スカーレットであった。 削り即死両方可能である。 彼女は「シニガミ・ネフィリム」で削り、直後に「イキガミ・レリエル」で撃破。 後は死神舞の撃破失敗を祈るのだが、難易度は☆3.6。 死神舞は最上位神だから、このタゲを落とす訳がない...... 案の定、死神舞は仕分け。東方に仕分けの洗礼を浴びせた。 撃破数両方5。全タゲ撃破。当然延長戦に突入。 この調子だと長い戦いになるかも、とD2nd氏は思っていた...... 彼女vs死神舞 そしてゴールデンウィークのこどもの日である、2023年5月5日午後8時。 延長戦の動画が登場した。 全タゲ撃破同士の戦いなので、2partまるごとの戦いと予想していた...... 中国風の構えをする彼女と、「...片づける。」と言う死神舞 激闘の延長戦が、幕を開けた。 延長戦最初のターゲットは「!!!-1」という小悪魔。 変数弄りで普通に倒せるがヘルパーのステ抜けが厄介であり、 特殊な方法の邪眼キラーを行う必要があるのだ。 意識したら汎用で行けるかもしれないものの、高難易度タゲである。 ちなみにちょっと難化した2pもあるらしい。 彼女は技を試みた。しかし「!!!-1」はKOされない。 そうしてるうちに時間が10秒を切った。 9、8、7、6、5、4、3、2、1。 彼女は最後の賭けである「イキガミ・ノア」を放った。 頼む、これで「K.O.」になってくれ。 が...駄目ッ...! 放った直後に「Time's up」。時間切れとなってしまったのだ。 ターゲットの背景に邪魔されて、彼女の姿が見えない。 倍速になった後、速さが元に戻り、次の文字が表示された。 「!!!-1 Wins」 「アマネ=セレスタイト 撃破失敗」 そう、彼女は判定負けを喫したのだ。 そして死神舞は...... 白い背景に、雨が降っていた。 本来の灰色の背景は見えないが...... そう、専用対策を組んでいたのだ。 そして死神舞は仕分けした。東方に仕分けの洗礼を浴びせるように...... 死神舞は、東方ターゲットを2タゲ連続仕分けしたのだ。 そして、目みたいな背景が画面を上書きした。 専用で差がついてしまった。 そう、それが......。 「終堕『DEAD END』」なのだから。 長くなると予想された、延長戦が1タゲで終わった...... まさか、1タゲで終わるとは思わなかっただろうか...... 信じられない。早すぎる終わりであった...... こうして彼女は死神舞に敗れた。 専用で負けた。親変更もク〇もない。 M.G.T.リスペクト優勝者が、M.G.T.リスペクト予選落ちに敗れるのは、屈辱だ。 アキノ「屈辱ですわ......」 2回戦敗退であった。親変更無しが。 これでバラム・ノーレッジが2回戦勝利したらさらなる屈辱であるが......? 追記 バラム・ノーレッジもTimeEaterに敗れ2回戦敗退しました。 死神舞に敗れる EXTRA EPISODE3 「ライフ反転タゲ殺傷力大会」 彼女はyoutubeの大会にも再び参加する事となる。 この大会の制限時間は15分+αであり、 録画の関係で最大で1分くらい伸びるらしい。 最初のターゲットは「A-Mikoto」1p。 これはタゲのライフ点滅音を鳴らしながら「イキガミ・レリエル」で退ける。 「トライヘキサ」も「シニガミ・ネフィリム」で撃破すると、 その後のタゲも撃破し続ける。 しらさぎ氏のNothingNullは「イキガミ・ノア」で撃破すると、 「ナタリア・フォーリンアビス」6pを「イキガミ・エリー」で撃破する。 「セレネv2」12pというチルノや「Revolution Solid Nabla」は「憑依解放【アマネ】」という 一時的にアマネが自身の肉体を取り戻した状態で撃破し、 「Sphele of Nameress」も「イキガミ・エリー」で撃破。 そして「血風」12pという七夜で...... 何故か彼女は翡翠みたいな姿になった。 そう、専用対策だ。彼女は専用をしていたのだ。 そしてそれはミスもなく削り倒した。 「Mバイス」10pは「イキガミ・ノア」で、黒白七夜は専用対策で、 「ティルフィング」という元矛12pも「イキガミ・ノア」でライフ0にし、 宣告を耐え撃破した。 「オリジナルゼロ-M-E-R」は「イキガミ・エリー」で撃破。 しかしなんとその次のターゲット「Kensin_A_mu」12pは15分経過で撃破失敗。 彼女が初めて撃破失敗という失態をかました。 彼女の今大会初めての撃破失敗 それでも「卵オールスター」は「イキガミ・ノア」で倒し、 「斬殺意志」Ver0.1というドナルドはタゲのデスジャという大魔法に合わせて 「イキガミ・ノア」で削り切った。屍小町も「イキガミ・ノア」で撃破。 「通り魔両儀」も「イキガミ・レリエル」で撃破。 静かなオーケストラが撃破失敗した「アマノジャク」1pも、 「シニガミ・タナトス」で撃破。 「チルノ-O」は汎用で何もしない期間中に撃破した。 「名前の長いカンフーマンLv60」11pも「イキガミ・レリエル」で倒す。 そして「Invert Nanaya」1pは「憑依解放【アマネ】」明けの「イキガミ・ノア」発動直後で撃破。 が、「Bloody Lancer」11pはなんと15分経過で撃破失敗。 「攻撃成功時にライフ全回復」なので技同期が故に詰んでいると思われる...... 彼女の今大会2回目の撃破失敗 しかし「フェノメノ」という奏こころは「イキガミ・ノア」発動後の通常攻撃で撃破。 そして「Hecate Scalet」10pで...... また彼女は翡翠のような姿になった。 左側の彼女の文字は「神版」ではなく「専用」。 そう、専用対策だ。彼女は専用対策を引いたのだ。 ...しかし試合は時間がかかる。 しばらくして、画面がモノクロになり、この文字が中央に表示された。 「15分経過」 そう、15分経過である。なんと専用ミスをしていたのだ。 彼女はM.G.T.リスペクトの「ERDING of Metatron」「Oracle氏パッチ入りイグのん」、 「古新乱舞 -Conflict of Period-」の「強化ラドン」から何も学んでいなかった。 専用が多い故の悲劇なのである。 製作者のブログによると「自動減少部分のみしか対応していない」との事。 彼女はライフ自動減少だけ対応していてその後の削りは対応していないのだ。 彼女、まさかの専用ミス そして最後のターゲット、「フィサリスG」も15分経過で撃破失敗。 まさかのこの大会では一度も強制死の宣告である「終焉【夢幻泡影】」を打たなかった。 そして最終結果は...... なんと、TimeEaterと同じ10位であった。 撃破ポイント内訳は撃破数26のボーナス4であった。撃破率87%。 しかも下位神の静かなオーケストラの下。これは屈辱であろう...... 製作者のブログによると「ライフ反転は応用的なことをしてないが、思ったより倒せてた」との事。 最終回、そして・・・ EXTRA EPISODE4 「神々の希望vs絶望」 ※未脱落のため未完成 彼女はルナ氏の大会にも再び出場することとなる。 狂ランクでよくやるきぼぜつ形式である。 希望軍が勝つこともあれば、絶望軍が勝つバッドエンドがあるのだ。 つまり「正義は必ず勝つとは限らない」のがセオリーである。 彼女は絶望軍での出場。親変更無しとして、バラム・ノーレッジと一緒に希望軍を迎え撃つ事となる。 Part3。2023年7月6日午後8時。 「親変更無しで勝負せんかい!招待状の無いプチ神トーナメント」でAbyss_of_Heavenに敗れて落ち込んでいる頃に、 彼女の出番はやってきた。さあ、視聴者に絶望を見せるのだ。 相手は希望軍でも上位の枠に入る「スーパーゴッドバード」。SGB。 鬼巫女を親変更無しで汎用で倒せる恐ろしいキャラである。 最初のターゲットは、「Eltnum(POTS)」。 即死返しで倒せるらしいが、正攻法での本命ステート取得には複数ステートの経由と、 複数ヘルパーの状態を管理する必要があるため探査or準汎用推奨である...... 彼女は探査を持っていない。まさか...... 一発で裏切りになってしまうのか!? ......あ、「イキガミ・ノア」を連発し、ある時放とうとした時に倒しました。 なんだ......。 その後「黒白想影氏月宮あゆ」だのを「イキガミ・ノア」ぶっぱで倒し、 「Brannen Rosso」というサニーミルクを「イキガミ・エリー」で倒した。 サマエルとの決着をつけた「槍投げ萃香ちゃん」は「イキガミ・ノア」で撃破。 そして迎えた次のターゲット。 「Test-HighEnd」であった。illness氏の。1p。 オメガトムハンクスキラーからの猛毒で撃破可能である。しかしステ返し先に工夫が必要であり、 このタゲ用に作られた検定である「小規模検証-HighEnd」では撃破数は7/20名であった。 これでもカラー差の中では撃破率は高めである。 「スーパーゴッドバード」の挑戦だ。 カットが出た後、「スーパーゴッドバード」はその場で動かなくなっていた......! まるで、何かをチャージするかのように...... その間にもタイマーは動き出す。 「スーパーゴッドバード」が固まっている。 そして、動画再生時間が18分01秒を指した時、M.U.G.E.N.の画面が突然モノクロになった。 一体、何があったのか?それは動画画面右側を見ればわかることである。 なんと、「ポトレなし」に重なった、赤く傾いた「20分経過」「撃破失敗」が表示された。 そう、20分経過である。制限時間20分をオーバーしてしまったのだ。 さあ、チャンスだ。視聴者に絶望を与えろ。 彼女の挑戦。彼女は技を繰り出した。 カットが出て、タイマーは11363を示していた......! 彼女はその時も、大技を繰り出す。 一体、彼女は何と戦っている? 透明人間と戦っているのか......? もしそうだとしたら、彼女は恐ろしい人物である。 そして彼女がある時、「イキガミ・ノア」という技を出し終えた時だった。 「K.O.」 そう、彼女は撃破したのだ。対応力が素晴らしかったのだ。 こうして彼女は「スーパーゴッドバード」に勝利し、土を付けた。 そして彼女は頭の中で言う。遊戯王のアポリアのように...... 「少年、これが絶望だ。」 スーパーゴッドバードに勝利 さて、次の出番はいつになることやら......? ......Part17であった。相手は「黒白七夜」。 「黒白七夜」は2015年作ながら上位神Bになる程の海外勢。 最近更新は来てないので、楽勝そうだが...... 最初のターゲットは「範馬刃牙」。 ...なんか簡単そうな名前。☆1でしょ? だが「黒白七夜」は仕分け出来ない。サクラ@さん氏パッチ入りらしい。 つまり「サクラ@さん氏パッチ入り範馬刃牙」だ。 でもおやつになりそうな名前だが......? 削り撃破要求の撃破挑戦仕様。......え?即死じゃないの?だって? 元々後半戦の回復回避が肝なものの 更新によりlife依存で次々とダメージ条件が変化する「専用必須級」ターゲットになった。 難易度......☆1.......0。 難易度☆10。 ( ゚д゚) ・・・ (つд⊂)ゴシゴシ 「専用必須級」ターゲットになった。 難易度☆10。 (;゚д゚) ・・・ (つд⊂)ゴシゴシゴシ 「専用必須級」ターゲットになった。 難易度☆10。 _, ._ (;゚ Д゚) …!? あの並キャラっぽくておやつになりそうな名前の「範馬刃牙」が難易度☆10。 ドラゴンクエストで例えるならドラキーが最強レベルのモンスターになるくらいだ。 ありえない。こんなのはありえない。 ......そういえばリミカGEvsTimeEaterの「海苔」も難易度難易度☆10であった。 名前で判断してはいけない、ということなのか......? 案の定「黒白七夜」は20分経過。彼女は...... 試合開始から数十秒後、「終焉【夢幻泡影】」を撃ってしまったのである。 そして倍速になり、等速に戻る。 「しゃあーーーっ!!」 その叫びが木魂すと共に、 「baki-h_Patch220819 Wins」 動画右側の「範馬刃牙」のポトレに重なる赤く傾いた「撃破失敗」が浮かんだ。 そしてそれは、「範馬刃牙」の撃破確認のコーナー直行を意味していた。 おやつそうなタゲが高難易度だとは思っていなかった。 信じられない。それが殺傷力大会。 次のターゲットは、「Vision」。 テレビの中に閉じ込められた古明地さとりを救出しなければならないターゲット。 時間経過で演出が進み、条件を満たせはKOとなる。ダメなら......? M.U.G.E.N. Error message state 1 can only have max of 512 controllers 「黒白七夜」の挑戦のようにエラー落ちするターゲット。 さあ、彼女は......? 彼女の姿は何も映っていない。 カットを挟み、テレビの前に倒れた古明地さとりが出てくる。 ここまでは「試合が始まった事以外」黒白七夜と同じ。 またカット。そして...... テレビは砂嵐の後、映らなくなった。 そして起き上がった古明地さとり。そして左に向かって歩き...... 「KO」 彼女は「Vision」を専用で撃破した。 「黒白七夜」はエラー落ちで撃破失敗なので、彼女の勝利という事になった。 こうして彼女は「黒白七夜」に勝利し、黒白七夜を脱落させたのであった。 黒白七夜に勝利し、黒白七夜を脱落させる EXTRA EPISODE5 「”神撃” 神ランク 殺傷力バトル大会」 彼女はhumi氏の大会にも手を出すこととなる。 1pで神版の彼女。親変更無し最強だった彼女の戦いが始まる。 さあ彼女よ、「M.G.T.リスペクト」で優勝した実力を見せるんだ。 出番が来たのは第6試合。 相手は「蒼白の信徒」というEFZのみさきと......FS蛟!?!?!? なんとここでFS蛟という神キャラ最強を引いてしまう。 専用対策を引かなければ勝ち目はない。親変更要求が来てしまうとFS蛟が一人勝ちの可能性がある。 それもそのはず、「蒼白の信徒」というEFZのみさきも親変更を搭載していないからだ。 「蒼白の信徒」というEFZのみさきは新神ながら親変更無し。 いつか狂版も登場する予定なのだ...... さあ、それはさておき最初のターゲットは「ダイボウケン」。 審査員撃破達成者は10名......弱そう。 案の定難易度Lv0。エラー落ちが来ない限り落とす筈も無く...... 「イキガミ・ノア」ぶっぱで撃破。撃破時間1分30秒。 FS蛟も「蒼白の信徒」というEFZのみさきもそこは撃破する。 ......と言っただけで戦いはPart5に持ち越しとなった。 彼女 vs FS蛟 vs 「蒼白の信徒」というEFZのみさき そして2023年11月18日午後8時。 彼女とFS蛟と「蒼白の信徒」というEFZのみさきの戦いの続きが始まった。 Part5が投稿されたのだ。 さあ、親変更要求を引くな......!! 最初のターゲットは「G-Fish」。 審査員撃破者は6名。難易度Lv4。 2014年のエイプリルフールに生まれたミズチボイスの魚である。 早速FS蛟が撃破。そして彼女の挑戦...... なんと姿が消えている!? 上の表記は、なんと「専用」!! そんな中解説が入る。その内容は...... 普通に攻撃しても減りはするもの削り切れないので即死させるさせる必要があり 本体の重要な情報がヘルパーで制御されているので、 親変更でヘルパーを奪って悪さをするのが正攻法と思われます お分かりいただけただろうか......。 親変更でヘルパーを奪って悪さをするのが正攻法と思われます 親変更でヘルパーを奪って悪さをするのが正攻法と思われます 親変更でヘルパーを奪って悪さをするのが正攻法と思われます 彼女は......親変更を持っていない。持ってすらいない。 よって専用対策するしかない。なんて恐ろしいターゲットなんだ...... その専用はミスするはずもなく、普通に撃破した。 何故専用対策をしていたのか?実は「G-Fish」には「親変更が無くても撃破出来る裏ルート」が存在していたからだ。 条件的に専用安定であり、彼女はその裏ルートを突いたのだ。 さて、「蒼白の信徒」というEFZのみさきの挑戦だ。裏ルートを汎用で突けるか? しかしリアル時間10分経過。カットが出て...... M.U.G.E.N.だけの画面になった後、「蒼白の信徒」というEFZのみさきは何もしなくなった。 「G-Fish」も様子を見ている。一体、何が起きるのか......? 何もしない......?まさか......? 「K.O.」 唐突にKOが出た。なんの前触れも無かった。 突然KOが出た。まさかこんな事が......。 一体、何が起きたんだ?まさか......? 数秒後、「G-Fish」は消え、そこから隠れていた「蒼白の信徒」というEFZのみさきが出てきた。 「蒼白の信徒」というEFZのみさきは気まずい顔をして手を口に当てた。 そして、表示されたのは...... 「G-Fish Wins」 そして右上寄りの赤い「相手側に1winがありますので撃破未達成」が少し拡大して表示された。 一体、何があったのか? 実は、「蒼白の信徒」というEFZのみさきは、「強制死の宣告」を放っていたのだ。 演出はないが、「強制死の宣告」を撃っていた。 そう、中には「強制死の宣告」の演出が無いキャラがいるのだ。 例としては「デ=リーパー」というKOFの麟や「Imaginary Number」という小悪魔のようなキャラだ。 このキャラが「強制死の宣告」の演出は無くとも、強制死の宣告を放っているのだ。 なにあともあれ「蒼白の信徒」というEFZのみさきはここで脱落。 FS蛟との一騎打ちとなった。 「とんでもないターゲット」を次に引くと知らずに。 それは「本気霊夢」12p、親捏造関連offであった。 世界四大霊夢の一人である。(白麗霊夢、鬼巫女X、本気霊夢、禍霊夢) え、それより強いのが入ってない?あ、ダークネス霊夢のことね。 撃破には専用必須である。果たして彼女は持っているかどうか...? FS蛟は......なんとこのタゲに対してを専用対策を持っていた...!! 案の定撃破。撃破タイム1分20秒。 さあ、彼女の番だ。上の表記は...... なんと「神版」だった。 そんな中下で解説がスクロールする。 専用が必須な理由は ①親変更を使った超精密な変数弄りを併用しながら削りが必要 ②様々な即死技術の複合でシールド(上の赤いゲージ) をある程度削らないと倒せないのだが、条件を満たさなくなると回復してしまうため、 これを汎用で検知し削り切るのはかなり難しい ③露骨な汎用でやるにも非常に硬い上に重くなりやすい お分かりいただけただろうか......。 専用が必須な理由は ①親変更を使った超精密な変数弄りを併用しながら削りが必要 専用が必須な理由は ①親変更を使った超精密な変数弄りを併用しながら削りが必要 専用が必須な理由は ①親変更を使った超精密な変数弄りを併用しながら削りが必要 彼女は......親変更を持っていない。持ってすらいない。 まるで親変更無しに親変更要求の洗礼を浴びているようだ...... 親変更無しに厳しいターゲットばかりで、この中で唯一親変更を持っている黒一点のFS蛟が有利であった。 案の定、試合開始から3分くらい後...... 赤いこの文字が右寄りで少しずつ拡大するように表示された。 「リアル時間15分経っても試合が終わらないので未撃破」 そう、15分経過である。制限時間15分をオーバーしてしまったのだ。 これが仲間外れ補正の力......なんて恐ろしいんだ。 親変更があるとこんなタゲを撃破できるのかと思い知らされた。 それが元最上位神主席、FS蛟の実力なのだから。 FS蛟に敗れる こうして彼女はFS蛟に敗れ、1回戦敗退と......あれ? 上の動画の冒頭をよく見てみよう。 なんとhumi氏は敗者復活戦を行うことを決めた。 そう、彼女にもまだチャンスがあるのだ。 しかし敗者復活のメンバーの中には琥珀にゃん、空集合、バラム・ノーレッジ、女神佐祐理があった。 このメンバーは恐ろしい面子である。 果たして、敗者復活をもぎ取ることが出来るのか......? そして2023年12月2日。敗者復活戦Bブロックに、彼女の姿があった。 相手は死神舞、廃滅者セト、nas-ayukas、鬼巫女X、ヘブンズゲートである。 死神舞は過去に「MUGEN God Tournament 第2回浄天杯」で勝利した事があるが、 「Evolution God Tournament」ではそのリベンジを許している。 ここまで1勝1敗であり、因縁の相手である。 nas-ayukasは新入り上位神の中で優秀な殺傷力を誇り、TimeEater11pを破った事がある強敵。 親変更要求を引けば脱落だが、果たして......? 最初のターゲットはポトレ画像が無かった!? BGMが「EGOISM 440」になる。怖いBGMが流れ、ノイズが出る。 そう、それが「Radio」である。戦車氏。 審査員で撃破したのはなんと「輝夜・ハワード」と「デ=リーパー」という麟の2名。 難易度Lv8。それが「Radio」5pデフォルトである。 削り要求で、毎フレーム攻撃を当て続けるような密度の高い攻撃をしないように、 間隔を開けながら打ち続けることを要求されるターゲット。 とにかく大ダメを撃ち続けないとすぐ回復されて倒せないので難しめである。 さらにダメージを受ける毎にクールタイムが発生。攻撃の密度が高いと、 このクールタイムの減少が止まるので削る上では攻撃を頻度を抑える必要がある。 ヘブンズゲートと鬼巫女Xは旧神が故に即死脳筋だったため15分経過で撃破失敗。 そして廃滅者セトは......強制死の宣告を放ったきりで15分経過で撃破失敗。 nas-ayukasは撃破。さあ、彼女と死神舞の番だ。 彼女も死神舞も、色々な技を試みる。 先に動いたのは彼女。倍速を重ね...... 「イキガミ・ノア」だの「シニガミ・ネフィリム」だの色々な技を試す。 「シニガミ・ネフィリム」を使った時、「Radio」のLifeが削れて1919810。 だが回復されてしまう。それでも諦めず、「シニガミ・ネフィリム」を使う。 「KO」 彼女は「Radio」を「シニガミ・ネフィリム」で撃破した。 こんなタゲくらい汎用で倒せて当然である。 その後死神舞も撃破。鬼巫女Xとヘブンズゲートと廃滅者セトはここで脱落となった。 下位神に3敗する廃滅者セトェ...... 次のターゲットは「MAROKARE」。 ダメージ条件難化0で被弾回数1。名無しのぽろろ氏。謎の模様キャラ。 当身に成功するとダメージを受け、Projectileという攻撃を無効にする。 難化0は本体とヘルパーでも良いので、HitDefを当身したらライフが減る。 回復もしないため難易度は高くなく、難易度Lv2。 審査員の中で撃破できなかったのが「入巣 京子」と「ウィッチ・アンジェリーヌ」だけということからも、難易度Lv2の簡単さがうかがえる。 案の定死神舞が落とすはずもなく削り倒す。 nas-ayukasの番。nas-ayukasは...... 色々技を試み、「MAROKARE」のLifeは半分になっていた...... 数十秒後、画面が突然徐々に暗転している。 何故か徐々に暗転している。暗くなっている。 一体、何があった?明るさ調整しないと見えないっぽい? だが「MAROKARE」はライトの役割を果たしていた...... そこからnas-ayukasは去り、白い背景エフェクトを出した。 そして「KO」が出た。残ったのは「MAROKARE」だけだった...... そして表示されたのは...... 「MAROKARE Wins」 相手側に 1winがあるので 未撃破 一体、何があったのか? 実は「画面が少しずつ暗転し、暗転しきった後、nas-ayukasが去ると共に白い背景エフェクトを出す」のがnas-ayukasの強制死の宣告なのだ。 nas-ayukasは、強制死の宣告で自滅したのだ。 nas-ayukasは宣告自滅でKO負けを喫したのだ。 その頃彼女は、「憑依解放【アマネ】」を発動していた...... 偽装とか使う時間経過で発動する技だ。 カットを挟み、「MAROKARE」のHPは1割を切った。 しかしそこから削れない。このままだと死神舞が敗者復活だ。 ......彼女は「イキガミ・ノア」で削り切った。 彼女は「MAROKARE」を撃破したのだ。 これでnas-ayukasも脱落。死神舞との一騎打ちとなった。 ...ところで、戦いは次Partへと持ち越しとなった。 彼女の敗者復活戦の様子 そして2023年12月10日。 彼女と死神舞のラウンド3が始まった。Part8が投稿されたのだ。 彼女は親変更を持っていないので、親変更持ちが来ると確実にやられる。 しかし彼女も対応力が抜群。1勝1敗の死神舞になど、負けはせん。 最初のターゲットは「萌え王杏子」。AceBluest氏のキャラ。 審査員で撃破したのはなんと「強化パッチ入りエグゼリカ」だけ。 実は「萌え王杏子」、マシロふぁんぐの改変である。 そのため速度を持っていないと削れない「速度耐性」がある。 ターゲットを取らせないと回復するらしいのだが、 だからといってターゲットを取らせても別の回復条件「引っかかった~!!」になりやすい。 ただしマシロふぁんぐと比べるとこの回復が易しくなっている。 そんな中汎用で動く死神舞。「萌え王杏子」を倒したかに見えたが...... 何故か「KO」が出ない。そして...... 15分経っても 試合が終わらないので 未撃破 そう、15分経過である。制限時間15分をオーバーしたのだ。 そして彼女。専用対策が無いものの、もう少しで倒せ... やっと倒したが、「KO」が出ない。 「イキガミ・ノア」を放った途端、「萌え王杏子」のLifeが回復、そして...... 15分経っても 試合が終わらないので 未撃破 それは、「萌え王杏子」の撃破確認のコーナー直行を意味していた。 「萌え王杏子」を汎用で倒せるキャラがいるのか......? 専用必須タゲだもんね。 気を取り直して次のターゲットは「Blue_Wing」という神奈備命。 難易度はLvMAXの10。 気を取り直せねーーーーーーー!!!!! こちらのstateno、timeを範囲特定内の数値に収めるように調整しつつ、 で色々する必要があり汎用で満たすのは不可能に近い。 しかも彼女、このタゲに対する専用を組んでいない。 案の定...... 15分経っても 試合が終わらないので 未撃破 15分経過であった。制限時間をオーバーしたのだ。 さあ、次は死神舞の番。死神舞は...... 灰色の背景と共に、赤い雨が「Blue_Wing」という神奈備命を襲う。 「Blue_Wing」という神奈備命のLifeが早速削れるが、技の無敵時間でカバーする。 が...... 突然赤い目の背景になり、「ピー音」が4秒鳴り響いた。 下には「DEAD END」という文字。 何が起きている?まさか......? 死神舞は言った。「私は、魔物を討つ者だから。」と...... そして赤い目の背景に血飛沫が飛び出た。大量の。 一体、何があったのか? 実は「灰色の背景と共に、赤い雨が降り、撃破した後に赤い目の背景が出る」のが死神舞の専用対策演出、「終堕『DEAD END』」なのだ。 死神舞は、「Blue_Wing」に対する専用対策を組んでいたのだ。 こうして彼女は今度こそ脱落した。 あの負け方は親変更もク○もない。専用対策の鬼のはずなのに、専用で負けた。 死神舞との直接対決は1勝2敗(初戦で勝ったっきり)。死神舞の成長っぷりが伺える。 死神舞に敗れる 検定の戦績 + ネタバレ注意 検定名 得点 順位 判定 補足 MUGEN God Ordeal -season2- 161点 60位 上位神C 初めての検定。この時は強くなかった... Defeating to victory. 276点 21位 上位神 断罪者と同順位。小数ボーナス1。参考に同じ親変更なしの物質199は18位。この時は最強ではなかった... White_Reimu氏2020検定 175点 9位 最上位神 White_Reimu氏検定史上初、親変更なしでの最上位神。2013年を探しても親変更なしの最上位神はいない。それくらいアマネさんは大出世した。 Long Time-Defeat Challenge 350点 15位 最上位神 小数ボーナス小1。最上位神入りは果たせたもののTOP10漏れ。ルナ氏のブログによると「準汎用1つと専用2つがガバっていなければ11、12位だった」 MUGEN God Ordeal -season3- 333点 18位 上位神A 同じ親変更なしの神威氏の「Abyss_of_Heaven」というカインは11位で最上位神。ついに親変更なし最強の座を「Abyss_of_Heaven」に明け渡した。 JK3 504.1666667点 6位 上位神A キルスコア12。この検定に関しては特に言うことなし。 Defeating to victory.Pt2 277点 16位 上位神B 小数ボーナス26。Abyss_of_Heavenは18位だったので親変更なし最強の座を奪還。...したのだが、ルナ氏のブログによると「個人的には少々残念な結果」。倒せるはずのタゲを6、7体落としてたのもあったし、技術的に詰みなのを倒せると思いこんでいたのも数体いた。そんなわけで「予想点数を下回っていた」らしい。 White_Reimu氏2021検定 164.5点 24位 上位神 挑戦タゲ1体撃破。懐タゲ大杉で順位大下り。ルナ氏のブログによると「p0008874氏やオロミズ大好き氏、もなか氏勢をメインにしたら大外しした」。 Long Time-Defeat Challenge_cp.2 384点 5位 最上位神 小数撃破ボーナス小大2。これが対応の賜物。東方最強ではないが...「親変更なし最強の座」をバラムやAoHから守り抜くどころかTOP5まで残るという親変更なし舐めるなガール。「ガバ祭りたくさんある可能性」のバージョンで最上位神。 White_Reimu氏2022検定 174.5点 16位 上位神 専用撃破数1位。この検定で、D2nd氏は理解した。M.G.T.リスペクトの優勝や古新乱舞での勝ち残りは「下剋上」だったことを。(参考までに、琥珀にゃん11位、FS蛟5位、ウブウアウト2位。)しかも同じ親変更なしのバラムは9位で最上位神。あれから更新を重ねたのにも関わらず、親変更最強の座を奪われてしまった。というかバラム・ノーレッジが琥珀にゃんレベルに大化けしている。ついに「Abyss_of_Heaven」にも「バラム・ノーレッジ」にも敗戦経験を味わった彼女。nas-ayukasという咲夜に負けたら彼女の名誉が丸潰れだが・・・ 海外検定2023 164.5点 5位(実質) 最上位神(?) なんと、主催がこのキャラの結果を入れ忘れると言う痛恨のミスが発生した。しかし親変更無しでこの戦績は素晴らしいが......バラム・ノーレッジはなんと3位。ここでも親変更無し最強では無かった...... God Trial of Strength 283点 5位 最上位神 また5位だった......ちなみに専用対策数ランキング1位。22体撃破。しかしバラム・ノーレッジが1位だったため親変更無し最強ではなかった............あれ?あれれ?そう、バラム・ノーレッジが1位である。信じられないと思うが親変更無しが最上位神主席となったのだ。しかもバラム・ノーレッジは汎用撃破数1位という恐ろしい状態。親変更無しが動画の検定で1位となり、最上位神主席となるのは動画式検定史上初である。......去年は彼女が大会史上初の「大規模縛り無し殺傷力大会を親変更無しで優勝」という史上初の快挙をやってのけたが、今度はバラム・ノーレッジが「動画式検定を親変更無しで最上位神主席(1位)を勝ち取る」という史上初の快挙をやってのけた。屈辱だ。かなりの屈辱だ。バラム・ノーレッジは去年は上位神Aだったはず。それもそのはず、バラム・ノーレッジは定期的に週刊更新を続けてきたのだ。恐るべし、バラム・ノーレッジ......。次の検定では、彼女が親変更無し最強を奪還するといいのだが、果たして、彼女にそんなことが出来るのか......? ステータス 10/14/50/26 台詞(リンクをクリックすると元ネタのシーンを表示します。ネタバレ注意!!) 前述の通りMUGENではボイスはないが、 古新乱舞Part72~EDと「親変更無しで勝負せんかい!招待状の無いプチ神トーナメント」ではボイスが付いている。 そのため、古新乱舞Part72~ED仕様となっている。 つまり、草津結衣奈とユキの逆パターン。 (あっちは原作だとボイスがあるが、オンゲキのコラボキャラ仕様のため無言) 攻撃「...終わりです。」 回避「地獄に落ちろ。」 被弾「逃がさない...」 会心「今こそ滅びの時だ!!(イキガミ・ノアぶっぱ)」 勝利「...任務完了。」 敗北(旧)「(膝を付いて、身体が緑に染まり割れた)」 敗北(新)「う、うぅ...ぐっ、うぅ...(倒れた後、光となって消えた)」 逃走「まだだ、まだまだ!!」 バトル前のコメント「親変更なしを舐めるな!」 活躍 初出場初制覇 失態 台詞を間違えてしまう 亀にトリプルV逸される
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ゆっくりいじめはゆっくりできるね!(後編) 26KB いじめ 虐待 観察 同族殺し 駆除 野良ゆ 子ゆ 希少種 現代 ゆっくりによるゆっくりいじめ 結局、狩りには家族全員で行くことになった。 せっかく夜の間にできなかったすーやすーやをしようとしていたおちびちゃんたちは大いにぐずったが、 きめぇ丸が唯一恐れているお父さんまりさの側から肌身離さずにいるしかないという結論になり、 泣き叫ぶおちびちゃんたちをれいむの頭の上に乗せ、まりさがれいむの護衛をして連れていくことになった。 一番安全なのは口の中に入れておくことだが、長時間となると親の涎で子供の体がふやけてしまうのでそれもできない。 ずりずりと這い狩り場に向かう一家のはるか後方から、二匹のきめぇ丸が距離を置いてついてくる。 いくらまりさがぷくーをしたり叫んだりして威嚇しても、きめぇ丸は尾行をやめようとはしなかった。 狩り場の位置を他ゆんに知られるのは普段なら避けたいところだが、 食べざかりのおちびちゃんを抱えた一家にとって、食糧補充はもはや一刻の猶予もならなかった。 森のはずれに流れる川のほとり、ささやかなお花畑に着く。 「ゆっ!みんな、おひるごはんにしようねっ!!」 「ゆわーい!!ごひゃんしゃん!!」 「まりしゃ、おにゃかぺーきょぺーきょだよっ!!」 「ゆぅ……きめぇまるによこどりされないかしんぱいだよ……」 「だいじょうぶだよ!!おとうさんがちゃんとみはってるから、きめぇまるなんかにてだしはさせないよっ!!」 結果から言うと、横取りされた。 「すーぱーむーしゃむーしゃたいむ、はじまるよっ!!」の宣言が言い終わらぬうちに、 きめぇ丸たちがそれまでとはうって変わった速度で接近して、両親を突き飛ばしたのだ。 「ゆぶぅぅっ!?」 しばらくの間地面に突っ伏して痛みに呻いた後、まりさが顔を上げると、 とっておきの狩り場のお花畑を荒らし回っているきめぇ丸たちが目に入ってきた。 「やめちぇええぇ!!れいみゅのおはなしゃんつぶちゃにゃいでえぇぇ!!」 「むーちゃむーちゃしちゃいよおおぉぉ!!いぢわるちにゃいでよおおぉぉ!!」 子供たちが泣きながらきめぇ丸に体当たりをするが、きめぇ丸は一向意に介さず、 ものすごい速度で花畑の上を走りまわり、滑り、回転し、 最後にはしーしーを撒き散らして台無しにしてしまった。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………」 誰にも教えていなかった、まりさのとっておきの狩り場が駄目になり、絶望の呻きが上がる。 しかしまりさは歯軋りし、立ちあがってきめぇ丸どもに闘いを挑んだ。 向こうから接近してきた今ならこちらのものだ。 しかし、ようやくまりさが戦う気になっても、やはりきめぇ丸はにやにやと跳びすさっていった。 ただの一言も発さず、やはりあのにやけ顔。 まりさは叫び散らし、吼え、暴れ、ついには泣き叫んだが、 それでもきめぇ丸は逃げるばかりで一瞬たりとも触れさせようとはしなかった。 それからも家族で狩りを続けたが、ことごとく邪魔された。 ちょうちょさんを追いかければ、横からかっさらわれる。 おいしいいもむしさんを捕まえようとしても、やはり体当たりをされて横取りされる。 きのこさんもたけのこさんも、おいしいごちそうは全て横取りされてしまった。 なにより腹立たしいのは、そうして横取りしたごはんさんを、きめぇ丸は食べる素振りさえ見せないことだ。 ぐしゃぐしゃに潰してしまい、川や崖、手の届かないところに捨てられてしまう。 明らかに生理活動のためではなく、自分たちへの悪意から行っていた。 「どぼじでごんなびどいごどずるのおおおぉぉ!!? でいぶだぢなんにもわるいごどじでないでしょおおぉぉ!!めいわぐがげでないでじょおおおおおお!!! おぢびぢゃんだぢががわいぞうでじょおおおお!?やべでね!!あっぢいっでねええぇぇ!!」 涙を撒き散らしながられいむが抗議するも、やはり一切の反応はない。 全力で走って尾行をまこうとしてもみたが、きめぇ丸の速度に勝てるはずもなく、まったく距離は開かなかった。 追えば逃げられ、逃げれば追われ、どうやってもきめぇ丸どもの監視から逃れられない。 見つけたそばから横取りされるとわかっていながら、 それでも時間を追うごとに強くなっていく空腹感を満たすために狩りを続けなければならなかった。 「ゆ゛ぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ゆ゛んぐがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーっ!!!!」 子供たちが怯えるのも構わず、まりさは悔し涙を流して地団太を踏み暴れ回った。 どうして自分たちがこんな目に遭わなければならないのかもわからなかったし、 これだけどす黒い悪意を向けられてどうすることもできない苛立たしさは餡子を吐き出しそうなほどだった。 結局、狩りは全くの成果をあげられず、子供たちの空腹はいよいよ限界にきていた。 赤ゆっくりなら、六時間ほど食事をしなければ死んでしまう。 おちびちゃんたちは赤ゆっくりよりは成長していたが、それでもぐったりと動かなくなり、命の危険をうかがわせた。 「ゆ゛ああああああおぢびぢゃん!!おぢびぢゃん!!ゆっぐじじで!!ゆっぐじじでねええぇ!!」 「ゆ゛………む……ぢゃ………む…ぢゃ………じぢゃい………」 「ゆ゛………ぐべぇ…………」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛!!べーろべーろ!!べーろべーろ!!」 ぺーろぺーろも気休めにさえならない。 朝から泣きわめき通しだった子供たちはもはや叫ぶ気力もなく、死相を顔に浮かべていた。 その時、きめぇ丸が背後に立っていた。 ぎょっとして振りむくと、きめぇ丸は口に咥えていたものを乱暴におちびちゃんたちの上にふりかけた。 それは雑草だった。半分は茶色くなったような、ほとんど枯れかけの苦い雑草。 普段は見向きもしないようなにがにがさんだったが、どうやら今はそれを食べるしかないらしかった。 「おぢびぢゃんっ!!ごはんだよっ!!むーじゃむーじゃじでねぇぇ!!」 「ゆ゛………ごひゃ、しゃ………」 「ゆげぇ………にぎゃいよおおおぉ………」 「これしかないんだよっ!!ゆっくりむーしゃむーしゃしてねぇ!!おねがいいぃ!!」 「ゆぐえぇ………むーじゃ、むーじゃ……ぶじあわぜぇぇ…………」 「ゆぐっ、えぐっ………どぼぢぢぇ………どぼぢぢぇ、ゆっぐぢでぎにゃいにょ………? まりじゃだぢ、どぼぢぢぇゆっぐぢじちゃいけにゃいのぉ………?」 涙を流し、えずきながら必死に咀嚼するおちびちゃんたちを見てまた涙が流れる。 こんなに純粋で、罪のない、無力な小さな可愛いおちびちゃんが、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。 あまりに理不尽すぎる仕打ちにまりさは怒りの炎を燃え上がらせ、きめぇ丸を睨みつけたが、 きめぇ丸はすでに充分な距離をとって遠巻きに観察していた。 「ぎめぇまるはじねっ!!おぢびぢゃんをゆっぐりざぜないぎめぇまるはじね!! ゆっぐりでぎなぐなっでじね!!ゆっぐりずるなっ!!ゆっぐりずるなぁ!!ぐずぐずじないでいばずぐじねぇぇぇ!!」 普段は温厚な夫が、とても聞くに堪えない悪罵を撒き散らすのを聞きながら、 れいむはゆぐゆぐと嗚咽を漏らしていた。 家に帰ると、どうやら三匹目がやったらしく、 家の中にはあのゆっくりできないうんうんさんや死骸やお飾りがたっぷり投げ込まれていた。 疲労の極致にいた家族は、今また家を失い、意気消沈した。 これだけのものを掃除する気力もなかったし、掃除したところで家にしみついた悪臭はもはや消えないだろう。 こんなところではもうむーしゃむーしゃもすーやすーやもできない。 「まりしゃのちゃからもにょ!!ちゃからもにょとっちぇきちぇよおおぉ!!」 「ごべんね……ごべんね………むりだよおぉ……おひっこじ、ずるじがないんだよおぉ……」 家の中にあった思い出の品々も捨てるしかなかった。 すでに日は落ちかけており、夜が来るまえにせめて隠れ場所を探さなければならない。 休息の時間さえ与えられず、まりさたち一家はまた這いずりはじめた。 はるか後方にきめぇ丸どもの尾行を引き連れながら。 きめぇ丸どもの尾行は、それから何日も続くこととなった。 ときには交代しながら、四六時中ひとときも途切れることなく、まりさ一家はきめぇ丸どもの監視下にあった。 夜になれば、丈高い草の茂みに、 あるいは小さな木のうろに、崩れかけたベンチの下に寝床を求めたが、 眠ろうとすれば必ずあの嫌がらせが繰り返された。 何日も何日も、二時間以上続けてすーやすーやできない日が続いた。 きめぇ丸どもは一切近づこうとしなかったが、ときには干渉してくることもあった。 人間さんの家にあまあまを分けてもらいに行こうとしたときがもっとも顕著で、 その時ばかりはきめぇ丸どもは露骨に道に立ちはだかり、通ろうとする家族を突き飛ばした。 「ゆっぐじでぎないぎめぇまるはじねえええぇぇ!!!」 千載一遇のチャンスとばかりに、まりさは通せんぼするきめぇ丸に渾身の体当たりをしたものだが、 それを正面から喰らってもきめぇまるは小揺るぎもせず、にやにや笑いながら何倍も強力な体当たりを返してきた。 まりさの誤解はようやく解けた。このきめぇ丸はやっぱり自分たちよりもずっとずっと強い。 そこに至り、まりさはぞっとするような事実に思い至った。 このきめぇ丸どもは、自分たちをいたぶっているのだ。 殺そうと思えばすぐにも殺せるのにそれをせず、ひたすら嫌がらせを繰り返し、 自分たちが苦しむのを見て喜び楽しんでいるのだ。 狩りをしようとしても、自分たちが選んだ一切のものは口に入れさせてもらえず、かといって餓死も許されず、 疲労困憊したところであの苦い雑草や腐りきった生ゴミのかけらを、申し訳程度に投げつけられた。 寝ているときも、れみりゃが通りかかればすぐにも見つかるような開けた場所で眠らざるをえない日もあったが、 不思議とれみりゃもふらんも来なかった。 どうやらきめぇ丸が追い払っているらしかった。 それでいながら、夜通しの嫌がらせは止む様子がない。 自分たちを楽しませるためだけに生きろ、生きて苦しめ。 明確にどす黒い悪意を向けられ、まりさは戦慄したが、 それでも食欲には抗えず、与えられたゴミをむさぼり喰った。 「ゆ゛ひぃ………ゆ゛ひぃ………どぼじで…………どぼじでごんなごどに………」 「どぼじででいぶだぢがごんなめにあわなぎゃならないのおおぉ…………」 「ゆ゛っぐ、ゆ゛っぐ、ゆえ゛っ……ゆ゛え゛え゛え゛ぇぇ」 ひたすら嗚咽し、呪詛を吐きながら、どこへ行くあてもなくきめぇ丸から逃げるようにずりずりと這い回る。 いまやまりさ達の生活はただその繰り返しのみだった。 きめぇ丸は依然としてつかず離れず、無言でにやにやとあの薄ら笑いを浮かべ、まりさたちの苦悶を楽しんでいた。 水浴びをしようとしても、ふかふかした草地でゆっくり休もうとしても、 足を止めるたびにきめぇ丸から執拗な嫌がらせがやってきた。 なにか少しでもゆっくりできるようなことをするたびに、偏執的な執念で邪魔をされるのだった。 家族の会話はほとんどなくなった。みな疲れすぎていた。 最初の一日二日は互いに八つ当たりして叫び散らす余裕もあったが、 とっくに限界を超えた疲労を抱えた今、ただぼそぼそと呪詛を吐き散らすしかできなくなっている。 そんな生活が三日も過ぎたころ、ついに限界は訪れた。 その日の夕刻、子供たちが地面にへたり込み、何を言っても怒鳴ってもすかしても、もはや動こうとしなくなった。 「もう……やぢゃ……おうぢがえりゅ………」 「おぢびぢゃん………」 「あみゃあみゃしゃん……むーぢゃむーぢゃじぢゃいよ………」 「ふかふかのべっどしゃんですーやすーやしちゃい…………」 「ぼーるしゃんであしょびちゃい…………」 「ゆっくちしちゃい……ゆっくちしちゃい…………ゆっくち、しちゃいよおおぉぉぉ…………」 涙を流して横たわり、おちびちゃんたちは嗚咽を漏らした。 両親も泣き、どうしようもない状況下、どこに行くあてもないのにこれ以上子供たちをせっつく気にもならなかった。 森の開けた草地で、一家はその場にへたり込み、もはや動こうとしなくなった。 生きる気力も、死ぬ気力もなかった。どうせ食事はあのきめぇ丸たちが持ってくる。 そんなに苦しむのが楽しいならたっぷり見ていけ、自暴自棄になったまりさたちは居直ってその場にぐったりと横たわった。 どれだけ眠っていたのか。 気がつけば、夜が明けていた。 ひと晩じゅう邪魔されずにすーやすーやできるのは何日ぶりだろうか? 久しぶりのまとまった睡眠に意識は軽い。 信じられない思いでまりさが起き上がり、爽やかな朝の空気に包まれた周囲を見渡す。 まさか、きめぇ丸たちがついにあきらめてくれたのだろうか? 愛しい家族に目をやる。 そして、すぐにそれが目についた。 「ゆ゛っ…………ゆ゛ん゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「「ゆゆぅっ!?」」 驚いてれいむと子まりさが起き上がり、叫び続ける父親を見る。 父親の視線を辿ると、二人も金切り声で叫びはじめた。 家族の傍らに、子れいむがいた。 子れいむは両目に枝を突き刺され、 歯をすべてえぐり抜かれた口内に切り刻まれた自分のお飾りを詰め込まれ、 もみあげだけを残して髪をほぼすべて引き抜かれ、 大きく切り開かれたまむまむから内部を剥き出しにし、 やはり大きく引き裂かれたあにゃるに抉り出された中枢餡を突っ込まれ、 全身にぎざぎざに抉られたような切り傷を刻みつけられた無残な死体をさらしていた。 「「「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」 家族は長い間叫び続けた。 叫びながら、ふとまりさが気づく。 遠くの土手の上で、三匹のきめぇ丸が、にやにやとあの薄ら笑いを浮かべていた。 苛立ちと怒りは色濃い恐怖に取って変わられた。 あのきめぇ丸たちは、やはり自分たちを殺そうとしている。 それも考えうるかぎり一番むごたらしい方法で。 まりさたちは必死に逃げ続けた。 それでも、どれだけ急いでも、どんな道を通っても、きめぇ丸たちはにやにやとついてくる。 逃げようがないのは身にしみてわかっていた。 それでも逃げ続けるしかなかった。 なぜかはわからないが、起きて這い回っているうちは、きめぇ丸たちは手出しをしてこなかった。 いや、理由はわかりきっている。 生をもとめてあがき苦しむ自分たちを見て楽しんでいるのだ。 子れいむの死骸から枝を取り除き、土を掘って墓を作ってあげている間、 きめぇ丸たちはわざわざ目と鼻の先まで接近し、間近で作業を観察しながら、 自分たちの涙にくれる顔をのぞきこんでは終始にやにや笑い続けていた。 殺ゆん鬼の狂気に怖気をふるい、まりさたちは抵抗する気力を失っていた。 道なき道を進み、どこまでも続く森を這い回る。 やはり狩りは邪魔され、道端の一番まずい雑草を食むしかない。 「むーしゃむーしゃしあわせー」などと喋ったのが遠い遠い昔のように思えた。 家族の顔に生気はない。 ずっと水浴びもせず、休息もほとんどなく、体中は生傷と汚れに包まれ、 埃をまとってぼさぼさに散らばる髪をふりみだし、虚ろな目でゆひいゆひいとあえぐばかりだ。 結果のわかりきった希望のない強行軍。 それでもむごたらしい苦痛と死を一瞬でも先延ばしにする、ただそれだけのために、まりさたちは痛む体に鞭打って這い続けた。 その日も日が暮れるまで這い、激痛と形容していい疲労をまといながら、 まりさたちはどうにか休息所を見つけた。 眠れば殺される。しかし、休まなければ行き倒れてやはり殺される。 交代で見張りながら眠るしかなかった。 まず子まりさとれいむを眠らせ、ひとまずれいむと交代の時間がくるまでまりさは起きて目を光らせることにした。 それでも我慢弱いゆっくりのこと、疲れきった体をおして覚醒しつづけることができるはずもない。 「ついうとうと」、それが子まりさの命運を分けた。 翌日の朝、まりさとれいむは子れいむと全く同じ状態で横たわる子まりさの死骸を前に絶叫しつづけていた。 「おぢびぢゃんをみずでるげずばりざはゆっぐじじねぇ!!」 れいむが壊れた。 あらゆる苛立ちと悲しみをすべてまりさにぶつけることでしか自我を保てなかったのかもしれない。 子まりさを残酷な死に追いやることになったまりさのミスを絶叫し難詰し、弱弱しい体当たりを仕掛けてきた。 まりさはただ泣きじゃくりながら「ごべんなざい、ごべんなざい」とひたすら繰り返すしかなかった。 「ごんなばりざどはいっじょにいられないよっ!!でいぶはりごんっずるよっ!! ごのままだとでいぶまでじんじゃうよ!! ばりざはびどりでぎめぇまるにいじべられでいっでねえぇ!!」 問題は今晩のことだった。 きめぇ丸の襲撃から身を守るには、交代で起きながら互いを警護するしかなかったが、 れいむはもはやまりさへの信用を失っており、このままではなすすべなく殺されてしまうと判断した。 その結果、きめぇ丸どもの悪意はまりさに向けられたものだという推測にすがり、 れいむはまりさから離れていった。 「まっで!!まっでぇぇ!!でいぶううぅ!!ばりざをおいでいがないでええぇぇ!!ゆっぐじざぜでえええぇぇ!!」 泣き喚きながらまりさはれいむに追いすがったが、れいむの意思は固かった。 ゆっくりは孤独を極端に嫌う。 むーしゃむーしゃするにもすーやすーやするにも、共に喜びを分かち合う仲間が側にいなければしあわせーは半減する。 まして、この極限の状況下で一人にされるのは何よりも恐ろしいことだった。 れいむに追いすがろうとするまりさの前に、二匹のきめぇ丸が立ちはだかった。 「ゆ゛う゛う゛ぅぅ!!どいでっ!!どいでね!!どいでよおおぉぉ!! でいぶがいっぢゃうよおおおぉぉぉ!!」 「ゆゆっ!!やっぱりきめぇまるはまりさをねらってたんだねっ!! れいむはにげるよ!!まりさはひとりでころされていってね!!」 きめぇ丸に遮られて絶望の叫びをあげるまりさを振りかえりもせず、れいむはずーりずーりと立ち去っていった。 「ゆびい………ゆびい…………だんで…………どぼぢで……………」 荒い息をつきながら、泥だらけの体に鞭を打って這いずる。 ついに一人になってしまった。 もはや眠ることはできない、眠ればあのきめぇ丸どもに襲われる。 かといって眠らずに、いったいどれだけ逃げ続けられるものか。 どうあがいても逃れる術はなかった。 どれだけ先延ばしにしても必ずやってくる死、それでも少しでも、少しでも先送りにするために、 全身を苛む激痛に涙を流しながらまりさは這いずり続ける。 おひさまさんがお空の真ん中にかかる頃、 森の中を這いずっていたまりさの上に、何か重いものが落ちかかってきた。 「ゆ゛べぇっ!!?」 衝撃に呻くが、すぐにそれ以上の不快感に神経が粟立つ。 真新しい濃厚な死臭。 頭上にのしかかるそれを必死に振り払うと、半ば予想していたものがそこにあった。 「ゆ゛っあ゛っ………あ゛っ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……… でい、ぶ………でいぶ…………でいぶううぅぅ!!」 子供たちと同じように全身を突き刺され、目を潰され髪を引き抜かれあにゃるとまむまむを蹂躙されたでいぶの死骸を前に、 まりさはもう何度めかわからない絶叫を長々と発した。 もう選択肢はなかった。 妻の墓を作る余裕さえなく、まりさは必死に川まで這いずってきた。 あの恐ろしすぎる、苦痛に満ちた死を逃れるために、ついに自ら死を選んだのだ。 「ゆ゛びい………ゆ゛びい………ゆぐっ………ゆ゛っぐ……… ゆっぐじ、ゆっぐじ…………ゆっぐじ、じだがっだ……………… …………じだがっだよおおおぉおぉぉぉぉ…………………」 生き汚いゆっくりが死を選ぶのは相当な状況である。 何よりも目先のゆっくりを、明日がどうあれ今日をゆっくりすることに意識の大部分を割くのがゆっくりであり、 自ら命を絶つという発想は人間よりもずっとハードルが高い。 それを、まりさはついに選んだ。 今までしてきた様々なゆっくり、これからするはずだった沢山のゆっくり。 おちびちゃんやおちびちゃんのおちびちゃんに囲まれて、沢山のあまあまをみんなでむーしゃむーしゃする、 近い将来叶うはずだったそんな光景を脳裏に浮かべながら、まりさは眼前の死を見つめていた。 あとからあとから襲うのは悲しみと疑問の念。 「どぼじで………どぼぢでばりざだぢが、ごんなべにぃぃぃ…………」 誰かに嫌われるようなことは何もしてこなかった自負があった。 笑顔でいっぱいの明るい家族、誰からも好かれ、慕われるゆっくりした家族のはずだった。 そんな自分たちに、あのきめぇ丸どもはどうしてあんなひどいことができるのだろう。 いくら考えてもわからなかった。 後ろを振り向けば、あのきめぇ丸どもが遠巻きに見つめている。 逃れようもない。 長い間、何時間もの間まりさは迷い続けていたが、 ついに意を決し、眼前の川に飛び込んだ。 「ぼっどゆっぐじじだがっだよおおおぉぉおぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛げぼっ!!ゆぼっ!!ごぼ!!げぶふぅぅ!!」 結局、死ぬことさえ許されなかった。 川に飛び込んだ直後に、まりさはきめぇ丸に引き上げられ、 三匹のきめぇ丸どもに囲まれながら呑みこんだ水を吐き戻していた。 涙をためた視線をきめぇ丸に向け、まりさは懇願した。 「ゆ゛………おでっ、おでがい………… じなぜで………じなぜで、ぐだざいいいぃ…………」 きめぇ丸どもは、やはり、にやにや笑っているだけで答えてはくれなかった。 「どぼ、ぢで………… どぼぢでぇぇ………?だんで………?ばりざ、わるいごどじだ………? じでないでじょおお………ばりざだぢ、ゆっぐじじでだだげだよおおぉぉ……… どぼじでごんなびどいごどでぎるのおおおおぉぉぉぉ………?」 返ってくるのはにやけ顔ばかりだった。 「ゆっぐじざぜでよおおぉぉ………ゆっぐじ、ゆっぐじじだいよおぉぉ………… ぼう、いや………おうぢがえる…………おうぢでゆっぐじずる…………… いいでじょおおおお………?ぼう、いいでじょおおお…………ゆっぐじざぜでよおおぉぉ………… ばり、ざ………ゆっぐじずる………ゆっぐじ、ずるよおぉぉ………いいよね…………いいでじょおおおお………?」 きめぇ丸どもに背を向け、必死に這いずり、離れていこうとする。 そうして振り向けば、やはりきめぇ丸があとからついて来ていた。 「やべでよ!!やべでよおぉ!!ごないで!!ごないでえぇぇ!!! なんでごんなごどずるのおおおぉぉ!!?ざっぎがらぎいでるでじょおおおおぉぉぉ!!! なにがいっでよ!!ごだえでよおおぉぉ!!」 沈黙と嘲笑。 「ゆっ、ぐじ……ゆぐひ………ぐひいいぃぃ………… ゆっぐじ……ゆっぐじ………ゆっぐじ…………ひぐぅっ………えぐっ、ゆっぐうううぅ………」 そしてまた始まる、絶望的な逃走。 「………ゆ゛っ゛ぐじじだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉ…………………」 夕刻とともに、まりさの最期の時は訪れた。 ついに一歩も歩けなくなり、開けた草原のど真ん中でまりさはへたり込んだ。 ずたずたに傷ついたあんよは中枢餡にまで響く激痛のシグナルをひっきりなしに出し続け、 視界は薄い餡子色に濁り、二メートル先も見えない状態だった。 ひび割れた舌を突き出し、からからに乾いた喉の奥からまりさは絞り出した。 「………ゆぼ…………ぼ、う……………だ……べ………」 濁った視界の中、まりさはきめぇ丸どもの足跡を聞いた。 ズサササ、という独特の軽い摩擦音が響き、自分のすぐ側で止まる。 見上げると、三匹のきめぇ丸たちが、あのにやけ顔で口々に枝を咥えているのがわかった。 ついに自分も殺されるのだ。 まりさは観念し、目を閉じた。 「ぼう……どうに、でぼ……じで………ね……」 やっと終わるのだ、という安堵のほうが恐怖よりも大きかった。 直後、右の眼窩を激痛が襲った。 「ゆ゛っぎゃああああああああ!!?」 眼球を刺し貫いた枝が、ぐりぐりと内部の餡子を掻きまわす。 想像したこともなかった激痛が、まりさの本能を刺激した。 死の覚悟はどこへやら、激痛にまりさは身をよじり、必死に枝先から逃げようとした。 「ゆぎゃああああだいだいだいだいだいだいいいいぃぃ!! やべ!!やべで!!いぢゃいよおおおぉぉぉ!!」 まりさが身を引いて逃げると、きめぇ丸は追ってこず、枝を引き抜いてそこでにやにや笑っていた。 このまま追ってきて、まりさを次々と刺し殺すのだと思っていた。 しかし、きめぇ丸は追わなかった。この期に及んでも、まだまりさをにやにやと観察していた。 ぞっとした。 まりさがきめぇ丸の前で身をさらさない限り、死は訪れてきてくれなかった。 あの激痛。死への覚悟はとうに吹き飛んでいた。 いたいのはゆっくりできない。ゆっくりできないのはいやだ。ゆっくりしたい。 とっくの昔に限界を迎えている体をきしませ、まりさは今なお逃げはじめた。 疲労で動けなくなり、倒れこむたびに、きめぇ丸たちはまりさを突き刺した。 一度に一刺し、ぐりぐりと枝をこじって、最大限の苦痛を与えるように。 そのたびにまりさは身をよじり絶叫し、その場の苦痛から逃れるためにまた這いずり始めるのだった。 自分を徹底的になぶり、いたぶり、苦悶の叫びと絶望の逃避行を楽しんでいる。 ずーりずーりと這いずる自分の最期のもがきが、きめぇ丸にはこの上なく面白い見世物なのだ。 こんな死に方はいやだ、こんな死に方はゆっくりできない。 自分の家族たちに囲まれて、自分の死を悲しんでくれるおちびちゃんたちに囲まれて、自分は満ち足りて死ぬはずだった。 こんなところで、ずたぼろになって、自分の苦痛と死を喜ぶやつらに囲まれて、 自分の悲鳴と苦悶を笑われながら永遠にゆっくりするなんていやだ。 いたい。いたい。ゆっくりできない。ゆっくりしたい。 「いぢゃいっ!!いぢゃいよおおぉぉ!!ゆびい!!ゆっぐじでぎにゃいいいいぃぃ!!!」 立ち止まるたびに全身を枝で刺され、切りつけられた。 きめぇ丸の選んだ枝は、頑丈でいながら粗くささくれ立ち、まりさに最大限の痛みを与えた。 「いぢゃ!!いぢゃああぁ!!だべでえええぇぇ!!!ばりじゃのざらざらべあーざああああ!!」 髪を少しずつ噛みちぎられた。 もみあげを千切られたときの激痛は、まりさのあんよにさらに無情な力を与えた。 「おぼうじっ……おぼうじざ………ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 目の前で帽子を取り上げられ、少しずつ引きちぎられるのを見せつけられた。 もはや帽子を気にしている状況じゃないのはわかっていたが、 本能的に、帽子を咥えたきめぇ丸をずりずりと追い続け、まりさは相手にさらなる興を与えた。 「あ゛ぎい゛!!い゛い゛い゛い゛い゛ぃ!!」 残った片目もえぐり抜かれた。 もはや見えなくなった目で、まりさは岩や草に足をとられながらより無様に這いまわることになった。 「ゆ゛ごぼぼおおおおぉぉぉ!!!」 歯を一本ずつこじり抜かれた。 まりさが倒れるたびに歯茎に枝を差しこまれ、一本抜かれるたびにまりさは飛び上がってまた這いずった。 「おぎょおおおおおぉぉぉぞご!!ぞごやべでええぇ!!!!ばりじゃのあにゃるううううゆ゛ぎゃああああああ!!!」 あにゃるに枝を突っ込まれ、ぐりぐりと回転させながら押し広げられた。 逃げながら、あにゃるから滴る大量の餡子がさらにまりさの体力を奪ってゆき、真の限界の訪れが近づいていった。 「ぼぶっ!!おご!!ぼぼぉぉぉ!!ばぶっ!!ゆげぼばあぁぁ!! ごがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぼばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぶぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉ」 最期の時が訪れていた。 しかしその最期の時は長く長く引き伸ばされ、いつまでたってもまりさのもとを立ち去ってはくれなかった。 完全に動けなくなったまりさを仰向けにし、きめぇ丸たちはまりさのまむまむを枝で切り開くと、 その内部の餡子をゆっくりとゆっくりとかき回していた。 餡子が大量にこぼれ出さないように、中枢餡を傷つけないように、ささくれた枝でゆっくりゆっくり内部を引っ掻き回す。 こんな苦痛がこの世にあったのか。 こんな苦痛がこの世に存在する必要が本当にあるのか。 なんでまりさがそんな苦痛を感じなければならないのか。 いまやまりさは抑えつけられ、激痛にびくんびくんと跳ね上がる以外に動くこともできず、 ただ苦痛にのみ染まった世界を悶えまわった。 その視界は、最後のその時まで、きめぇ丸のにやにや笑いだけが満ちていた。 結局、まりさの最期の時は、 一歩も動けなくなってから永遠にゆっくりするまで、夜通し八時間ほど続いた。 ――――――― 「ありがとう。本当に来なくなったわ」 「おお、かんりょうかんりょう。これにておひきうけしたしごとはおわりました」 人間さんの元を訪れ、きめぇ丸たちは報告していた。 一週間前に取り引きを交わし、人間さんの家にたかりに来るゆっくり達を駆除して、 約束通り一週間後のこの日に訪れた。 「本当にありがとうね。困ってたから。 でも、どんなふうにやったの?」 「おお、きぎょうひみつきぎょうひみつ」 「それはきかないでくださるとたすかります」 自分たちの「駆除」の内容を聞けば、人間さんは眉をひそめるだろう。 我が物顔に世界をほしいままにしながら、 はたから見れば意味不明な「罪悪感」だの「良心」だのとやらに悩まされ、 今後自分たちに依頼するのをためらうようになる。 経験則から、人間たちのそうした特性をきめぇ丸たちは知っていた。 「今、ゆっくり害が流行ってるからねえ。 また他のゆっくりが来るかもしれないけど、その時はまたお願いできる?」 「おお、びみょうびみょう。ほかにもおとくいさきはありますし、これでけっこういそがしいのです」 「いちおう、ときどきこのへんもみまわっています。 まあ、なんといいますか、おやさいさんをたくさんくれるところがどうしてもゆうせんてきに……」 「あらまあ、しっかりしてるのねえ。 わかってるわ、ちょっと待っといでね」 「おお、かんしゃかんしゃ(ヒュンヒュン)」 人間さんはざる一杯の野菜を持って戻ってきてくれた。 目の前に置かれた野菜の量を確認し、きめぇ丸たちはヒュンヒュンと動きを激しくする。 この人間さんはいいお得意先になりそうだ。 「おお、たしかにたしかに。ありがとうございます」 「こんごともきめぇさんれんせいをよろしくおねがいします」 「その呼び方はよくわかんないけど、こちらこそよろしくね。 ゆっくりがみんなあなたたちみたいだったら、もっと気持ちよく付き合えるんだけどねえ」 野菜と感謝の言葉を受け、きめぇ丸たちは人間さんの家をあとにした。 帰る道々、互いに視線を交わして笑みを漏らす。 ゆっくりがみんな自分たちみたいだったら? それはそれで厄介だろう、ゆっくりにとっても人間にとっても。 ゆっくりが人里に現れて数カ月。 それはゆっくりにとっても、人間という未知の生物との出会いだった。 自分たちよりはるかに強く、しかし自分たちをとてもゆっくりさせてくれる力を持つ生物。 人間との付き合い方はゆっくりによって様々だったが、 きめぇ丸のように、人間の需要に従って役立つことでゆっくりを引き出す道を選んだものもいる。 三匹のきめぇ丸姉妹は、ゆっくりをいたぶるのが好きだった。 その嗜虐性はきめぇ丸の中でも飛びぬけている。 悪意を向けられ、怯え、怒り、苦痛にのたうち回るれいむ種やまりさ種が、 きめぇ丸たちにとってはこたえられない楽しみなのだ。 そして、人間さんに迷惑をかけている個体を狙うことで、 こうして人間さんから美味しい野菜を分けてもらう方策をとっていた。 この野菜もまた、森ではなかなかお目にかかれない、こたえられない味だった。 「つぎはどこへいきましょうか(ヒュンヒュン)」 「おお、となりまちとなりまち(ヒュンヒュン)」 「かいゆっくりにちょっかいをだしているありすがいるといううわさです(ヒュンヒュン)」 「ありすはひさしぶりですね。おお、たのしみたのしみ(ヒュンヒュン)」 人間の前に突如現れた正体不明の生物、ゆっくり。 ひとまず現在のところは、そう悪くない関係を築いているといっていいだろう。 〔終〕 挿絵:車田あき
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「ゆぅ…みんなはやくでてきてね!」 まりさは精一杯の大声で自分の家に住む仲間達を呼んだ。 しかしその声は山々に吸い込まれていき、何の返事も返さなかった。 辺りは木の生い茂る森の中でまだ昼前だというのに薄暗く、それがまりさの恐怖心を煽った。 「ゆうう…どおしよう…こわいよ…ゆっくりできない… おねえざん…おばざん…お゛じざん…だずげで…」 もうまりさは耐え切れなくなり目を潤ませて辺りを何度も見回す。 「も゛う゛お゛に゛い゛ざんでぼいいがらだずげでえええええええ!!!」 まりさは遂に泣き出してさっきの大声と違い限りなく悲痛な叫びをあげた。 「…そろそろいいかな」 僕はこっそりまりさを覗いていた茂みから出てまりさの方へ手を振った。 「やあ、随分と怯えて泣いてたみたいじゃないか 迷子の迷子のまりさちゃん」 僕の姿に気付くとまりさは満面の笑みで駆け寄ろうとし、慌ててかぶりを振って涙を振り払うと ぷくぷくと頬を膨らませながら言った。 「まりさないてないよ!ぷんぷん!おにいさんがはぐれちゃったからまりささがしてただけだよ!」 「そうかそうか」 随分な言い様だが腹は立たなかった。 まりさの目の周りがまだ涙の跡を残して腫れぼったくなっていた。 「それにしてもさ、まりさ」 「ゆ?なあにおにいさん?」 安心したのかほっとした表情を慌ててまりさなりにきりっとした表情にしながら僕の足元にまで来た。 「山なんて降っていけば絶対迷う訳無いと思ってたんだけどそうでもないんだよな」 「ゆゆ?だからなんなのおにいさん?ほんだいをはなしてね!」 話の要領がつかめずまりさは苛立ちながら僕に問い詰めた。 「いやまあそんな怒らないでくれよ」 僕は手をまりさの方にかざしてなだめた。 「迷子同士力をあわせて頑張って帰り道を探そうなって言おうと思っただけだから」 その瞬間、山の中に僕らが立ち入る前の静寂が戻った。 「どお゛い゛うごどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 そして数瞬後、再び山の静寂を打ち砕く、これまでで一番憐れっぽくて悲痛なまりさの悲鳴が木霊した。 人間こういう時に図星の図星を指摘されると逆に腹も立たないもんだなと感心しつつ 僕はまりさを見てカラカラと笑った。 「お゛に゛い゛ざんのばがあああああああ!どぼぢでお゛に゛い゛ざんばでま゛いごな゛っぢゃうのおおおおおお!?」 「ミイラ取りがミイラって奴だねうん、面目ない」 僕は片手を立てて謝罪の意を示した。 「まあこうなったら行くしか無いだろ、どっかの道に出れば帰れるし」 そうあっけんからんに言い放つ。 要するにヤケ糞気味なのである。 「ゆう…おにいさんをしんじたまりさがばかだったよ…」 もうこの世の終わりでも来るのかというくらい俯いてまりさは呻いた。 信じてたかなぁ、と首を傾げつつ僕は一歩踏み出した。 「ゆぅ、おにいさん!いつになったらもといたところにもどれるの!? ちゃんとしてね!まりさもうおうちかえる!!」 「あーうんごめんごめん」 普段は一々苛立たされるまりさの愚痴も、この状況ではいっそ腹も立たない。 自分に呆れていたところなのでむしろ調度いいくらいだ。 「やっぱ一人で行くんじゃなかったなぁ…」 こんなことになったのかを説明すると原因は一時間ほど遡る。 僕ら一家は秋の行楽に山登り来ていた。 父は急に仕事が入ったので残念ながら僕と母と妹の三人とペットのまりさで登ることになった。 この面子だと母はリーダーシップをとるのは苦手だし妹も小学生だしでどうしても僕が舵取りをすることになる。 そして僕もそれなりにいい気になってリーダー気分を味わっていた。 「あれ、まりさは?」 最初にまりさが居ないことに気付いたのは妹だった。 「あ、あら ほんとにいないわね…どこに行ったのかしら…? 困ったわぁ」 一向は来た道を戻りながら母はおろおろとしながら辺りを探し回り妹もその辺を探し回る。 僕はその場に立ったまま、腕組みをしてあたりを見回した。 「なるほどね、そういうことか」 ふふん、と鼻で笑うと指パッチンをして母と妹の視線を集め言った。 「謎は、すべて解けた」 「ど、どういうこと兄貴!?」 妹が驚愕の表情で僕に言った。 「松ぼっくりだよ」 「松ぼっくり?」 僕の言葉に母はきょとんとして首を傾げた。 一方の妹ははっとしたように地面を見回した。 「そっか、そういうことね!」 「どういうこと?」 パンと手を叩いて僕の顔を見つめる妹と未だに首を傾げたままの母に 僕は山道の両側に広がる森の一角を指差しして言った。 その一角にだけ他の場所にはたくさん落ちている松ぼっくりが無くなっていた。 「まりさはここで松ぼっくりを拾って森の中に入っていったんだ 見てみなよ、ここの草も今しがた誰かに踏まれたみたいに倒れている 多分ここを通って森の奥へと入っていったんだ」 僕の推理を聞いて母は困ったようにあらあらと口に手を当てた。 「どうしましょうか、ここで戻ってくるのを待つ?」 「いや、多分まりさの事だからもう森の中で迷ってるんじゃないかな ゆっくりにとっては広くて仕方ないだろうし 僕がちょっと行って連れ戻してくるよ」 「頑張ってね兄貴!」 「おう!」 拳を天に向かって振り上げて僕を応援した妹とは逆に それを聞いた母はかぶりを振って言った。 「駄目よ、あなたまで迷ったら…」 「大丈夫だよ、まりさもそんなに奥には行って無いだろうし痕跡もたくさん残ってるからすぐ戻ってこれるって 先に頂上に行って待っててよ、すぐ追いつくから」 そう言って心配する母を尻目に僕は森の方へと向くとシュッと片手を振りかざして森の中へと入っていった。 もしタイムマシンでこの時に戻れるなら僕に「調子に乗るな」と言ってぶん殴りたい。 本当にいい気になっていた。 電車の中で読んでいた推理小説が思いのほか面白くて気持ちが高揚してたのがあるかもしれない。 しかし妹も今になって考えると明らかに僕のことをノせてまりさを探してこさせようと動いているように思える。 完全にしてやられてしまった。 そんなこんなで今に至るわけである。 「せめて携帯が繋がればなぁ…」 未練がましく携帯を弄りながら僕は言った。 山の中は完全に圏外だった。 「ぷんぷん!ほんとにおにいさんはやくにたたないよ! ほんとなんなの?ばかなの?しぬの?」 まりさはこちらを見上げて頬を膨らませながら口を尖らせた。 「そうだな返す言葉も無いな ほんとこのまま行くと山の中でお前と仲良く飢え死にだな」 「い゛や゛あああああああああああああああああ!!! ま゛り゛ざまだぢに゛だぐないよおおおおおお!!! ゆ゛っぐりぢだい!ゆ゛っぐりぢだいいいい!!」 僕のことを罵倒して紛らわしていた迷子であることの不安感を 僕が言った『飢え死に』という単語で思い出してしまったのか その場でゴロゴロ転がりだして呻いている。 僕はそれに見向きもせずに歩きながら言った。 「無駄に体力使うと死期が早まるぞ」 「ゆ゛っばあああああああああ!!!」 まりさは仰向けに寝転がって空を見上げながら絶叫した。 そんなこともあってかすっかり萎れて陰鬱な表情で俯きながら僕の後ろを付いてくるだけになったまりさのおかげで 僕は順調に歩みを進めて山の秘境の奥へ奥へと意に反して進んでいった。 「…ふう」 三十分ほど歩き回って僕はその辺にあった石に腰掛けた。 「おにいさん?なんでとまるの?まだぜんぜんおやまからでれてないよ?」 まりさが達観した表情の僕を見て不安と違和感を混ぜこぜにした表情で見つめながら尋ねた。 「短い人生だったなぁ」 「ま゛だあぎらめぢゃだめ゛えええええええええええ!!!」 すっかり疲れ果てた僕の姿にまりさは大慌ててで僕の周りを跳ねながら 何とか僕にやる気を出させようとしていた。 どう考えてもゆっくり一匹でここから帰るのは無理だろうから当然の行動だろう。 「とりあえず口から松ぼっくり吐き出すのやめろよ気持ち悪いだけでやる気とか出ないから」 「ま゛り゛ざのだがら゛ものにどぼぢでぞんなひどいごどいうのおおおおおおおおお!?」 べとべとの粘液まみれになった松ぼっくりを舌の上に乗せながらまりさが信じられないという面持ちで泣き叫んだ。 慌てふためくまりさを見て心を落ち着けながら真面目にどうしたものかと思案していると 茂みがガサガサと動いているのに気が付く。 風か何かによるものではない、明らかに何かが潜んでいる。 この期に及んで獣とかに襲われればもう本当に生還の目は無い。 流石に慄きながら息を呑んで立ち上がりながら茂みの方を凝視する。 神妙な雰囲気に気付いたのかまりさも黙って僕と同じ方向を見た。 そのままの体勢でとても長い時間が過ぎたように感じた。 ついに茂みの動きが一際激しくなり僕は逃げ出すか否かを思案した。 そして逃げ出そうと決めたとき、ついに茂みの中からそれは出現した。 「ゆっくりしていってね!」 茂みから出てきたのは、一匹のゆっくりれいむだった。 「ゆ?ゆっくりしていってね!」 「え…はあ、どうもこんにちは」 本能的に元気良く返事をするまりさとは別に 僕は予想外の展開にしどろもどろになった。 そしてはたと気付き、親愛の挨拶に頬をすり合わせていたまりさを押しのけて尋ねる。 「あ、君の飼い主はこの辺に居たりするのかな?」 このゆっくりの飼い主の所に連れて行ってもらえばその人に道を聞いて帰ることが出来るに違いない。 そう考えて僕は目の色を変えてそのれいむに詰め寄った。 「おにいさんなにするの!まりさはれいむとゆっくりすりすりしてたんだからじゃましなぶえぇ!?」 「山から帰れるか帰れないかの瀬戸際だから黙っててくれ」 僕は不平を漏らすまりさの口の中にありったけの松ぼっくりを拾って詰め込んだ。 「ゆ?かんぬし?れいむかんぬしじゃないよ!れいむはれいむだよ!」 「いや神主じゃなくて、君のご主人が…」 話の要領を得ずに僕は頭をかきむしった。 「ゆ?れいむのだーりんはまだいないけどきっととってもゆっくりしたれいむなんだよ! このまえゆめのなかでしろいうーぱっくにのってくるのをみたの!」 「あーもーちーがーうー!」 僕は自慢げに伴侶のことを話し出したれいむに対して頭を抱えて仰け反って ふと、あることに気付いた。 「…ひょっとして君野生のゆっくり?この森に住んでるの?」 「そうだよ!れいむはもりのゆっくりなんだよ!」 指を刺しながら尋ねる僕に対してれいむは胸を張って自分の生まれを答えた。 「そっか…」 僕はガックリして後ろに倒れこんで仰向けに寝転んだ。 これでまた振り出しである。 僕は嘆息した。 「おにいさんどうしたの?おなかいたいの?」 れいむが心配そうに尋ねた。 「いや別に…強いて言うならおなかが空いたかな」 「ゆ、じゃあれいむのむれにきてね!おさぱちゅりーにそうだんしてあげるよ!どう?」 好意的な申し出だが野生のゆっくりの食べ物貰ってもなと思って考え込んでいると 口の中の松ぼっくりを吐き出したまりさが割り込んできて言った。 「もちろんいくよ!すぐにおにいさんをおこすからちょっとまっててね!」 まりさも乗り気だしこのまま寝てても仕方ないと思い僕は体を起こした。 山のさらに奥、といっても既に方向感覚は無いので一般の山道から遠のいたのか それとも近づいたのかはわからないが、何にせよ幾許か歩いていくと そのゆっくりれいむの言う集落にたどり着いた。 僕とまりさはその集落を見て思わず感嘆した。 「ゆっくりしていってね!」 窮屈そうな巣穴から壁に頬がこすれて形が変形しているのも気にせずに 顔を出しゆっくりが僕らに向かって挨拶した。 地面に掘られた巣穴の入り口は木の太い根と根の間から覗いておりその下は 木に影響ない程度の小さな空洞になっているのだろうか。 例えるとしたらば恐らくウサギの巣辺りが近いのではないだろうかと思う。 爪も無いのに良く掘ったものだと僕は感心した。 道具でも使ったのだろうか。 相当苦労して掘ったのだろう、僕が巣穴を見ているのに気付くとそのゆっくりは 「すごいでしょ!」 と言って誇らしげに胸、に当たると思われる顎の辺りを張った。 家のまりさでは絶対に途中で根を上げるであろうことは想像するまでも無い。 辺りを見回すとそんな巣穴がいくつか散見される。 僕はここが野生のゆっくりの集落なのだということを実感した。 来客に気付いてそこらかしこから集まってきたゆっくりから次々と 「ゆっくりしていってね!」 と声をかけられて僕は少し気恥ずかしそうに頭を掻いた。 まりさはというと声をかけられるたびに律儀に 「ゆっくりしていってね!」 と返事を返している。 家ではろくに挨拶も出来ないのだが この挨拶だけは本能レベルで反応してしまうということだろうか。 「あ、おさぱちゅりーがきたよ!」 「おにいさん!おさぱちゅりーにあいさつしてね!」 歓迎ムードに対してどう返したものかと少し困っていると 奥のほうから少し顔に皺のある年老いていそうなゆっくりぱちゅりーが 付き添いにゆっくりありすを従えてのろのろと現れた。 それを見て僕らをここに連れてきたれいむは僕を見上げて挨拶をするように促した。 その表情からは群の長と訪問者である僕らの交流を喜んでいることが見て取れた。 僕も好意にこたえようと思って手を上げて 「あ、どうもこんにち」 「どおぢでに゛んげんざんづれでぎぢゃっだのでい゛ぶのばがああああああああああああ!!!」 口から餡子を飛ばして目玉を剥き出し絶叫する老ぱちゅりーを見て 僕とまりさとれいむはぽかんとその場に固まった。 目を血走らせながら僕のことを睨む老ぱちゅりーに気圧されながらも このままでは仕方ないので恐る恐る僕は口を開いた。 「えーっと…ひょっとして歓迎されてなかったり…?」 「あだりばえでじょおおおおおお!! おにいざんはさと゛どばぢゅりーだぢのおやぐぞぐやぶっだんばよおおおおおおおおお!!!」 老ぱちゅりーは怒り狂い、獣のように体をうねらせながら僕に掴みかからんとするぐらいの勢いで言った。 「げごぉ!ごっぼっ!がばぁっ!」 話が飲み込めずに僕が困惑していると、老ぱちゅりーは咳き込んでしまい 隣に居たありすが慌てて老ぱちゅりーの背中を擦った。 そしてありすはすまなそうに僕のことを見上げて言った。 「ごめんなさいね、こんなだけどぱちゅりーもむれのことをしんぱいしていってるの」 「はあ」 僕は生返事をした。 僕が今ひとつ状況を理解できていないのを理解したのかありすは説明を続けた。 「にんげんとゆっくりはかかわりあいにならないほうがゆっくりくらせるのはわかるかしら?」 「ゆ?なにいってるの?にんげんさんがごはんもってこないとゆっくりできないでしょ! そんなこともわからないの?なんなの?ばかなの?しゆぶぶぶぶぶぶ!?」 「悪いけどこいつの言うことは気にしないで」 僕は近くにあった掘りかけと思われる小さなゆっくり一匹分ほどの深さしかない巣穴に まりさをねじ込んで上から土をかけてぺたんぺたんと固めるとありすに対して同意を口にした。 「うん、分かるよ 野生動物に人間はなるべく干渉すべきではないとかそういう話でしょ?」 「わかってくれてうれしいわ おにいさんはとかいはね」 「はあ、どうも」 何だか褒められたようなので僕は一応軽くお辞儀をした。 「それでね、わたしたちはずっとむかしにふもとのさとと おたがいにかかわりあいにならないためのじょうやくをむすんだの」 「ゆう…そんなのしらないでかってにおにいさんをつれてきちゃったよ…」 れいむは掟を破るのに加担した罪の意識からか目を潤ませて今にも泣き出しそうな表情で言った。 「いいのよれいむ、ずっとにんげんさんがくることもなかったから わたしたちおとなもそのことをつたえるのをないがしろにしてきたから… おにいさんはおかあさんやおとうさんからこのことはきいてない?」 れいむを赤ん坊に話しかける母親のように優しい声音で慰めると ありすは上目遣いに諭すように僕に尋ねた。 「いや、僕は今日はこの山に行楽に来ただけだから っていうか里?っていうのかな 麓はでかい駅もあって結構大きな町なんだけど」 どうにも疑問を感じて僕はありすに尋ね返した。 「ゆ?えき?まち?」 聞き覚えの無い単語だったのだろう、ありすは怪訝な顔を浮かべた。 「むきゅう、さととおやくそくをしたのはずっとむかしだから いまさとがどうなってるのかなんてしらないわよ」 ムスっとした表情で呼吸の落ち着いた老ぱちゅりーが会話に割って入った。 「なにせおやくそくをしたのはぱちゅりーのおばあちゃんのおばあちゃんの おばあちゃんのおばあちゃんのおばあちゃんのおばあちゃんの…」 「あー要はすごい昔ってことね」 おばあちゃんの、を延々と続けていきそうな老ぱちゅりーを遮って僕は言った。 要は麓の町がまだ畑だらけの牧歌的な里だった頃に不可侵条約を結んで その後お互いに全く関わらずにやってきたと言うことなのだろう。 その歴史の長さを考えて少し感動する。 「むっきゅー、とにかくちゃんとおやくそくはまもってもらわないとこまるよ! そこのどんぐりのきの方にずっとまっすぐいけば さとにかえるみちにたどりつくからとっととでていってね!」 「いやなんか申し訳な…え、マジで?」 さらっと出てきた願っても無い申し出に僕は心中でガッツポーズを取った。 すっかり忘れていたが僕は今絶賛迷子中なのだ。 いくらこの群がずっと町と関わり無く生きてきたと言っても 少なくとも麓に繋がる道の跡くらいは見つかるはずである。 「むきゅぅん…どうしてもかえらないっていうならようしゃは…」 「帰る帰る帰る帰りますよ今すぐにでも」 一触即発の構えで真剣な面持ちで僕に相対した老ぱちゅりーに 僕は乗り気も乗り気、最高のスマイルを浮かべて答えた。 拍子抜けしたのか眉を歪めみょんな表情を浮かべてから 老ぱちゅりーは咳払いをしてから言った。 「そ、それならいいのよ」 「さよならおにいさん…」 名残惜しいのか、それともゴタゴタに巻き込んでしまった罪悪感からか れいむは悲しそうなニュアンスを多々に含む表情でお別れの挨拶をした。 「ばいばいおにいさん!」 「もうきちゃだめだよ!」 「おうちかえるの?ゆっくりばいばい!」 れいむに続いて次々にお別れを言うゆっくり達を見て 僕は柄にも無くしんみりした気分になった。 万が一にでも泣き出さないうちにこの場を後にしようと思って僕はさっと手を振って言った。 「ごめんな迷惑かけちゃって さよなら、ゆっくりしててくれよ」 「さよならおにいさん!もうにどとこないでね! まりさはこのむれでずっとゆっくりするね!」 顔中土まみれになって汚れた見覚えのある黒いのが視界の端に映り 僕はしんみりした気分をぶち壊されて苛立ちながら何を言っているんだこいつはと半眼でうめいた。 「ん…えーっと、ここに残る気なの、お前」 僕はうんざりした気分でまりさに尋ねた。 「ゆっくりできないおにいさんのせいでいままでゆっくりできなかったけど ここならきっとゆっくりできるよ! だからゆっくりできないおにいさんはとっととでていってね!!」 何やら野生のゆっくり達のゆっくりさに感銘を受けたらしく 物凄くいい笑顔でそう言ってのけるまりさをジト目で見つめた後 僕は野生のゆっくり達の方を振り向いて尋ねた。 「いいの、これ?」 「ゆ、ゆー…まあおなじゆっくりだからいい…のよねおさぱちゅりー?」 「むきゅう、とくにこばむりゆうはないけど…」 独断で勝手に群への加入を決めたまりさの態度に困惑しつつも 一応野生のゆっくり達は受け入れる姿勢を示しているようだ。 「そっか…なら僕から言うことはないよ」 そう言って僕はきびすを返し、まりさを置いて帰路についた。 「さよならおにいさん!もうにどとまりさのゆっくりぷれいすにあしをふみいれないでね!」 まりさのふてぶてしいどころではない言い草に 複雑な表情を浮かべる周りのゆっくり達が印象的だった。 そのまま僕は老ぱちゅりーに言われたとおりに進み と見せかけてしゃがみ込んで背を丸めて近くの茂みに隠れて群の方を覗き見た。 正直、今後まりさがこの群に適応できるのかどうかは興味深く感じた。 あのペット生活でたるみにたるみきったまりさが野生で生きていけるのか 予想通りに失敗して泣いて帰ってくるのか それともここの生活で野生の本能が目覚めてうまくやっていくのか。 僕は息を潜めて様子を見た。 「まりさもゆっくりするからみんなもゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「むきゅ、そうね あなたもさいしょはなれなくてたいへんだとおもうけどゆっくりしていってね!」 「とかいはとしてかんげいするわ、ゆっくりしていってね!」 何はともあれとりあえず再び挨拶をして場を仕切りなおした。 「えーっとそれじゃこれからまりさがどうせいかつするかを話し合おうとおもうんだけど…」 挨拶を終えてから、まりさはでっぷりと口元に笑みを浮かべて動かず 他の誰も話し始めないので仕方なさそうにありすが口を開いた。 巣のことや、餌のとり方を学ぶなどやるべきことは山ほどあるだろう。 まりさにそれらのことをちゃんと向き合い解決することが出来るだろうかといぶかしみ 僕は顎を撫で息を呑んだ。 「ゆ?なにいってるの? そんなことよりまりさおなかすいたからごはんちょうだいね!」 ありすの言ったことの意味を全く理解できなかったのか まりさは頬を膨らましながらありすにそう言った。 他のゆっくり達はあからさまに厭そうに眉根を顰めたが 腹が減っていては話も進まないだろうと思い直したのか 老ぱちゅりーがれいむに言って食べ物を分けてやるように言い れいむも気を取り直していい笑顔で承諾すると巣に食べ物を取りに行った。 「ゆっくりまってるよ!」 なんだか釈然としてなさそうな表情のありすと老ぱちゅりーを尻目に まりさは元気にれいむを見送った。 まりさ以外気まずい空気に悶々とする中、時間だけは流れていった。 「ゆっくりもってきたよ!」 頬袋を軽く膨らませたれいむが跳ねながら戻ってくるのを見て その場にいた全員がぱっと表情を明るくした。 まりさは食べ物がやってきたことに それ以外の者はこの空気から開放されることにだ。 「ちょっとゆっくりしすぎだよれいむ! もうまりさおなかぺこぺこだよ!」 老ぱちゅりーとありすはまりさの言動にピクリと体を震わせた。 笑顔を微妙にヒクつかせているのが茂みの奥からでも見て取れた。 そんな周りの空気は気にしないのかそれとも気付いていないのか れいむは快く頬袋に入れていたどんぐりを口の中から何個か吐き出し 舌の上に乗せてまりさの目の前に差し出した。 唾液で濡れたどんぐりが木漏れ日を受けて照り返した。 「ゆ!これをくれるの?ありがとうれいむ!」 「ゆゆ!まりさがよろこんでくれてれいむもうれしいよ!」 そう言ってれいむとまりさは頬をすり合わせ始めた。 気持ちよさそうに目を細め二匹は顔を赤らめた。 むちむちとやわらかそうな饅頭皮がこすれあいくっつきあった頬が変形した。 その微笑ましい光景にありすと老ぱちゅりーもやっと表情を緩めた。 僕も前途多難とはいえこうやって馴染んでいけば何とか成るかな等と思い始めた。 「で、どんぐりはいいからはやくごはんをちょうだいね!」 ほお擦りをやめてまりさは真面目な顔でそう言った。 動き出そうとしていたその場の空気が再び凍りついた。 「ゆ?だかられいむのどんぐりさんを…」 「そんなのたべられるわけないでしょ! ばかなこといってないではやくたべものちょうだいね!」 そういってまりさはれいむからもらったどんぐりを地面に置いてぷんぷんと怒り出した。 「ど、どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおお!? ぜっがぐどんぐりざんだべざぜであげようどおぼっだのにいいいい!!」 せっかくの好意を無為にされてれいむは泣き喚いた。 そして呆れて何も言えずにぽかんと口をあけている老ぱちゅりーの胸に顔を埋めた。 そういえば木の実とかよく集めるんだが大事に保管するだけで 食べてるのは見たこと無いな、と思い出して僕は苦笑した。 まあもとよりまりさは毎度食事の時には一言二言文句を言う偏食なので こうなるのは目に見えていたといってしまえばそうだが、やはり呆れざるを得ない。 「ゆ…まりさ!いまのたいどはとかいはとしてみとがめたわよ! れいむにゆっくりあやまってね!」 義憤にかられたありすが頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして怒りながらまりさに詰め寄る。 「ゆー!まりさはおなかぺこぺこなのにれいむがごはんもってきてくれないのがわるいんだよ!」 「だからどんぐりさんをもってきだでしょ!!」 「どんぐりさんをたべれるわけないでしょ!!」 生活環境が致命的なほどに違う二匹は鼻がくっつくほど顔を突き合わせて平行線のまま言い争った。 「ゆー!どんぐりさんをたべるなんてなんなの?ばかなの? あんなものたべるなんてほんとにとかいはなの?」 「ゆゆ!?あ、ありすはとかいはよ!!」 都会派というのは正直良く分からなかったのだがどうもありすにとっては譲れない部分らしい。 その点に疑いをかけられたありすは口を歪め、烈火のごとく怒り狂った。 「じゃあけーきさんたべたことあるの!?」 そんなありすに物怖じせずにまりさは聞いた。 「ゆ?け、けーき? ももももちろんしってるわ!」 慌てながら言うその姿を見れば恐らくケーキのことなど知らないのはすぐにわかった。 まあずっと人間と関わらずに生きてきたのだからケーキなんぞ知らなくて当然だ。 まりさも多分以前妹に分けてもらった時以外は食べたことは無いだろう。 しかしなんだか論点が一気にずれて来てるなあの二匹はと思い僕は嘆息した。 「じゃあけーきさんがどんなのかいってみてね!」 まりさはぷんぷんと怒りながらさらにありすに詰め寄った。 「ゆ…その…ほろにがくって」 「ぷっぷー♪」 ありすは額に汗を浮かべながらしどろもどろに言った。 それを聞いてまりさは目を細め、口をすぼめて噴出した。 跳んだ唾がありすの顔にかかる。 「けーきさんはとぉ~ってもあまいんだょぉ~! ぜんぜんけーきさんのことしらないんだね! ぷっぷー♪それでとかいはなんてわらっちゃうよ! ぷっぷぅ~う♪」 鬼の首を取ったかのようにまりさは捲くし立てた。 まりさが口をすぼめて噴出す度にありすの顔に唾が飛んで 屈辱にありすは唇を見てるこちらが痛くなりそうなほど噛んで体をわなわなと震わせた。 甘みの中にほろ苦さを持つケーキも有るんだが まあ一般的にケーキといわれるものの特徴としてはハズレている。 僕はなんともいえない気分で腕を組んだ。 「あ、ありすはとかっ、とか…」 可愛そうな位顔面を蒼白にして震えながらありすは何かを言おうとした。 「なーにけーきさんもたべたことのない『とかいはかっこわらいかっことじさん』 ぷっぷぷぅ~う♪」 「ゆがががあああああああああああああああ!!!」 遂にブチギレたありすが天を仰ぎ獣のごとく咆えた。 「あ゛り゛ずば!あ゛り゛ずばどがい゛は゛よ゛おおおおおおおお!!!」 さっきまでの知的さを感じさせる表情とは一変して 目を血走らせ口からよだれを垂らしたまるで狂犬病の犬みたいな表情でありすはまりさに突っ込もうとした。 「おさえてありすううううううううう!!」 「あんなのあいてにしないでええええ!!」 「いづものありずじゃないいいいいい!!」 「ゆっぐりじようよおおおおおおおお!!」 周りで見ていたゆっくり達が慌ててありすを止めに入る。 普段知的である様子のありすのこんな顔を見せられて その表情はどこか悲しげだ。 「ぷっぷ~う♪とかいはじゃないやばんなゆっくりはこれだからいやだよ」 自分は絶対安全だとでも思っているのか まりさはそんなありすの姿を腹の底から笑っていた。 「えっと…むきゅ、いいかしら」 呆然とし続けていた老ぱちゅりーがやっと口を割った。 「ゆ、ぱちゅりーはえらいゆっくりみたいなんだし ゆっくりしてないであのとかいはをかたるやばんじんをどうにかしてね」 「むきゅう、そのまえにまりさのこんごについてひとこといいたいんだけどいいかしら」 老ぱちゅりーは目を伏せ、神妙な態度でまりさに言った。 「ゆ、おなかがへってしかたないけどひとことくらいならゆるしてあげるよ!」 老ぱちゅりーは発言を許可されたことに礼を言った。 「それじゃあまりさをこれからどうするかなんだけどね…」 そしてゆっくりじっくりとそう言い、次の句を告げずに周りを見た。 一部始終眺めていた険悪な表情の群のゆっくり達が目に入ったことだろう。 「たたきだせー!!!!」 「「「ゆっしゃー!!!!!!」」」 老ぱちゅりーの号令に周りのゆっくり達は歓声を上げ一斉に潰しにかかった。 僕はゆっくり達が持っているはずの無い手でガッツポーズを取るのを幻視した。 「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 大量のゆっくりに押し出されゴロゴロと木の枝や石ころの落ちた地面を痛そうに転がりながらまりさは悲鳴を上げた。 僕はその様子を見て思わず「自業自得だろ」と呻いた。 そして心中でこう繋げた、『ざまあみろ』と。 そうして僕はまりさに気付かれないようにそそくさとその場を後にした。 「ゆう、ひどいめにあったよ…あんなにゆっくりできないゆっくりがいるなんてしんじられないよ…」 僕はまりさの声が聞こえる程度の距離を保ちながら気付かれないよう背を丸めてまりさの先を歩いていた。 「にどとこんなとここないよ!もうおうちかえる!」 そしてまりさはぷんぷんと言った。 そのまま数分このまま歩き続けた。 「ゆ、こっちでいいんだよね…ほんとにこっちにいけばおうちにかえれるんだよね…」 不安そうなまりさの声が後ろから聞こえてきた。 「…おにいさん!さきにこっちにいったんでしょ!でてきてへんじしてね!」 一人で不安だったのか遂に僕のことを呼び出そうとするまりさ。 「ゆー!まりさがよんでるのにどおしてでてこないの!? ちゃんとでてきてね!」 そう言ってまたまりさはぷんぷんと口で言った。 そんなことを続けながらさらに数分が過ぎていく。 「ゆううううううう!どぼぢででてきてくれないのおおおおお!? いいかげんにしないとまりさおこるよ!!」 怒っているつもりなのだろうがその声は震えていた。 それでも僕は返事をしない。 遂にまりさは立ち止まった。 そして泣き声をあげながら叫んだ。 「お゛に゛い゛ざんは゛やぐででぎでだずげでよ゛おおおおおおおお!!! お゛う゛ぢがえりだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 それを聞いて一頻り満足して、そろそろ出て行ってやろうか悩みながら進んでいると 僕はあるものを発見して思わず歓声をあげた。 「これ…道だよな」 寂れて雑草だらけだったが、確かに昔は人が行きかっていたであろう道らしきものが山の麓に向かって伸びていた。 結構坂が急で道も荒れているが充分に踏破可能な程度だ。 僕は喜び勇んでその道を駆け下りた。 足音に気付いたまりさが叫ぶ。 「だれ!?おにいさん?おにいさんなの!? ゆううううなんでかってにさきにいくの!? まってね!まってね!まってねぇえええ!! ま゛っでえ゛ええええええええええええええええええええええええええええええ!!! お゛い゛でがな゛い゛でよ゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 つい走り出してしまったが、泣き喚くまりさの声に流石に置いていくとまずいか しかしここで置いていけばまりさを始末する千載一遇のチャンスだな と色々迷いながら後ろを振り向いた。 「ばっでえ゛え゛え゛えええべぶぼばばばばあああああああああ!!!!!!!!」 すると、後ろの方から顔中からありとあらゆる体液を垂れ流しながらゴロゴロと 小石が飛び出してごつごつしている坂を転がっていくまりさが僕を追い抜いていった。 まだ道は長いというのに既に小石にぶつかり頭をへこませ土に皮を擦りきれ枝が突き刺さり 雑草が髪に絡まって凄まじいことになっているまりさの顔が一瞬だけ見えた。 その表情はさながら絶叫マシーンに乗った怖がりのおっさんといったところだろうか。 考えるまでも無く慌てて坂道を転がり始めたら止まれなくなってああなったのだろう。 「おーい、置いてくなよー…」 せめて帽子だけは拾っておいてやろう。 余りの憐れさにそう思って僕は奇跡的に殆ど無事な状態で落ちていたまりさの帽子を拾い上げて ゆるゆる歩きながら坂を下っていった。 それから数時間後、僕は無事に麓の町に辿り付き 山の探索を始めようとしていた山岳救助隊の人々と 大見得切っておいて思いっきり心配かけた母にしこたま謝った。 そうこうしているうちにあの道を一直線に転がってボロ雑巾のように怪我だらけで さながら泥団子といった様相で気絶したまりさを妹が発見してやっと帰路についた。 帰り道では怪我をしたまま気絶しているまりさにオレンジジュースをかけながら 妹はしきりに自分も野生のゆっくりを見てみたかったとぼやいていた。 僕はあの野生のゆっくり達の言葉を思い出して、その度にやめておけと言ったのだった。 このSSに感想を付ける
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『K.Kの日記』 K.Kの日記(1ページ目) ============================== *月**日 数ヶ月ぶりに冥さんから手紙が来た。 先週、私の手紙が受取人不在で戻ってきたので、嫌われてしまったかと思ったが違ったようだ。 今は日本で働いているらしい。早速、返事を書くことにしよう。 リターンアドレスが書いていない。 K.Kの日記(2ページ目) ============================== *月**日 待ちに待った冥さんからの返事が来た。2か月待った。 住所が分からなかったから、消印から勤めてる検察庁を推測して送ってみたが、無事に届いていたようだ。 どうやら、検察庁の窓口で不審物扱いされて鑑定室に留め置かれていたらしい。 検察庁の住所と名前しか書いてなかったから、仕方ないか。 おかげで検事オフィスの室番号を教えてもらえた。 これでちゃんと手紙が送れる。 自宅の住所を教えてもらいたかったのに。 K.Kの日記(3ページ目) ============================== *月*日 今日は冥さんとランチに行った。検察庁の近くのカフェでホットサンドを食べた。 本当ならディナーが良かったんだけど、夜は仕事がいつ終わるか分からないから、と断られてしまった。 でも粘ってお昼に会えるようにお願いして良かった。 さすがに日付を指定して「待ってます!」とだけ言ったのは、無理矢理すぎたかもしれないけど。 それでも冥さんは来てくれた。嬉しい。 約束の日の前日に着くように手紙を送ったのが良かったのかも知れない。 断る手紙を出している時間がないから。 この約束を取り付けるために、手紙を5往復もした。 久しぶりにお会いした冥さんは、やっぱり凛々しくて綺麗だった。 あまり時間がないと言われて、たいしたお話はできなかったけど、私は目の前に冥さんがいるってだけでお腹いっぱい。 アメリカの検事局は辞めて、正式に日本で働くことになったらしい。 これからもっと頻繁にお会いできると思うと小躍りしたいくらい嬉しい。 相談したい事もあるからどうしてもとお願いして、電話番号を教えてもらった。 しかも冥さんのオフィスに直通の番号だ。 どうせなら自宅か携帯の番号を教えて欲しかった。 K.Kの日記(4ページ目) ============================== *月**日 近くを通りがかったフリをして、また冥さんをランチに誘うのに成功した。 やっぱり電話を掛けられるっていうのは素晴らしい事だ。 今日も冥さんは綺麗だった。 昨夜から泊まり込みで仕事だったらしく、仮眠を2時間しか取っていないそうだが、そんなやつれた表情も憂いがあって素敵。 でもいくら仕事だからって、こんな綺麗なうら若い女性に徹夜仕事をさせるなんて許せない。 第一、お役所なんてまだまだ男社会だって聞くのに。 ムサ苦しい男がうろうろしているフロアで仮眠なんて、想像するだけでオソロシイ。 そんな事を考えていたら、仕事が動き出したらしく、電話で呼び出されて冥さんは戻っていってしまった。 貴重な時間をどうでもいい想像で無駄にしてしまった。 それはそれで心配だけど、冥さんのお姿を見ることの方が大事だったのに。 でも今日は冥さんのメールアドレスを聞くことが出来た。 食事の途中でメールを送ってきた高菱屋の営業、いい仕事よ。 おかげでアドレスを聞くきっかけに出来た。 電話だと大抵は不在か、忙しいって事務官に取り次いでもらえないから。 でも仕事のPCじゃなくって、携帯のアドレスが知りたかったな。 ______________________________ side.M 見慣れたドアを開けると、中には見慣れた男――御剣怜侍がいた。 「遅かったな」 デスク上の書類をぱさぱさと整理しながら、彼のオフィスにやってきた冥に軽い笑顔を見せた。 「外に食事に出てたのよ」 冥は迷いなく御剣の横に歩を進める。 「君の部屋に掛けたら、森屋君がしきりに謝っていたぞ」 “森屋君”とは冥のオフィスの事務官の1人。地味で仕事は早くはないが、真面目で何より腰の低い好青年だ。冥はたまに、そんなに頭を下げてばかりいたら首が痛くならないか不思議になる。 「彼はあなたに恐縮してるから。後で労っておくわ。で?」 冥が横に身を寄せると、御剣は揃え終わった書類の内、一束を冥に手渡した。 「ご要望の資料だ。中は確認してくれ」 渡された書類の内容を一瞥すると、冥は納得したように頷いた。 「しかし、この長時間労働の最中に外で食事とは、意外と疲れ知らずだな、君は」 同じく昨夜帰宅できなかった御剣は、欠伸を噛み殺しながら言う。 『鬼検事』『鉄仮面』と影で揶揄される彼がこんな姿を見せるのも、側に彼女がいる時だけだ。サブデスクでモニタに向かっているこの部屋の事務官達はもちろん、見て見ぬ振り。 「まぁ、丁度休憩しようと思った時に誘われたから‥‥。それにこの書類待ちだったしね」 書類を掲げていたずらっぽく微笑むと、御剣と向かい合うようにデスクに寄りかかる。 「誘われた?」とあまり起こりえない事態に眉を潜めると、もう少し近くに来いとばかりに彼女の腰を引き寄せた。 「そう。華宮霧緒にここの番号を教えたの」 「あぁ、彼女か‥‥」 それなら御剣も知っている。どうやら彼女は冥を慕っているようだし、人付き合いの少ない冥にも同年代の知り合いが増えるのはいい事と思っている。 「でもちょっと困ってて」と今度は冥が頬に手を添えて眉を潜めた。 「私、法廷や会議であまりオフィスにいないでしょう? どうやら日に4~5回は掛かってきてるみたいなのよね。私用電話だし、急ぎじゃないって言うから、取り次いでなかったみたいなんだけど‥‥。この間森屋事務官に聞くまで全然知らなくて」 「‥‥‥‥‥‥‥‥それは」 思わず御剣はたっぷり5秒は絶句した。 「やっぱり多いわよね? 忙しい時なんか、事務官が気を利かせて断ってもくれてるみたいで‥‥」 確かに、忙殺されてイライラしている冥に、急ぎでない電話など取り次いだら確実に鞭の叱責を受けるだろう。 どうしよう? と小首を傾げて御剣の返答を待っている冥を『可愛いな』と眺めつつも、御剣の脳内では考えられるだけの憶測が飛び交っていた。 「‥‥‥‥とりあえず、勤務中の私用電話は控えるように勧告すべきだろう」 一番無難な選択をした彼の答えに、「そうね」と納得した冥は書類を持って自分のオフィスへ戻っていった。 その後ろ姿を見送りながら、プライベートな番号だけは教えない方が、と思わずにはいられない御剣だった。 K.Kの日記(5ページ目) ============================== *月**日 スゴイ事をしてしまった。驚くべき事態になってしまった。 なんと、冥さんをショッピングに誘うことが出来た。 今日、いつも休日はどう過ごされてるのか訊ねたら、明日はショッピングに行くらしいので、同行させてもらう事にしたのだ。 あいにく、私は明日休みじゃなかったんだけど、そんな些細なことは同僚に代わってもらって解決。 冥さんとおでかけできるなんて、こんな千載一遇のチャンスを逃す事だけはできなかった。 明日は冥さんとどこへ行こう? 最近出来た総合ファッションビルに誘ってみるのもいいかも知れない。 疲れたらカフェでお茶なんかしちゃったりして。 買い物が済んだら、明日こそゆっくりお食事をしたいし。 そういえばあそこは映画館も入ってるんだった。もし映画まで誘えちゃったらどうしよう。 何を上映してるのか調べておかなきゃ。冥さん、どんな映画が好きかしら。 そうだ、何を着ていこう。この前買った新作のバッグおろしちゃおうかな。 冥さんはどんな服を着てくるのかしら。スーツ以外の格好で会うの初めてだし。 行動的な人だし、やっぱりパンツスタイルかしら。 でも育ちのいい人だから、シックなスカート姿もいい。 先月号のキャズに載ってたスモッグの新作なんて冥さんに似合いそうだった。 〈以下、ごちゃごちゃと服の落書きがいくつかされている。略〉 なんだか緊張してきた。とにかく、念入りに準備しなくちゃ。 K.Kの日記(6ページ目) ============================== *月**日 今日はスゴイ。スゴイ、記念すべき一日だった。 冥さんとショッピングに行ってきた。 それも冥さんは私服姿だ。 淡い萌葱色と白のトップスに落ち着いたピンクのふんわりしたスカート。 想像してなかった可愛らしいコーディネイトで、私もまだまだ知らない姿があるのだと勉強不足を実感。 何より目を引いたのは、爪先を今日のスタイルにぴったりの可愛らしいミュールで飾った脚が、素足だった事だ。 いつも厚手のストッキングを履いているのに、生足。 ふわふわしたミニスカートから覗く脚も当然、生足。 若いって素敵‥‥。 今日が暖かい日でほんとーに良かった! 〈横にごちゃごちゃとした*キリオのファッションチェック!と題した挿絵付き。略。〉 色々な事態を想定して、湾岸の複合ショッピングエリアに誘ったんだけど、行くお店が決まってたらしく、待ち合わせの駅から2分のすごうに行った。 着くなり「じゃあ何時にここで」と言われて、颯爽とエレベーターに乗られてしまったのには少しびっくりしたけど。 一生懸命フロアを探し回ったら、3階のガラス工芸店の前で合流できた。 もう小さな買い物袋を持っていて、ちょっとがっかり。 一緒に行きたかったとちょっと詰ったら、きょとんとしていた。 話を聞くと、女の子と一緒に“ショッピング”というカタチで買い物をした事がないらしい。 友達とお店を見て回りながら色々喋るのが楽しいのだ、と教えたら、じゃあそこらでウロウロしてるのは暇なんじゃなくて、そうやって楽しんでるのか、と感心されてしまった。 さすがお嬢様、箱入りなんだ、とこちらが感心してしまった。 せっかくなので“オンナノコのショッピングの仕方”というのを実践してみようと誘って、色々見て回った。 興味のあるお店に足を止めてたっぷり時間をかけて見て回って、と普段女友達といるように振る舞って見せたら、少し戸惑っていたみたいだけど、付いてきてくれた。 結局3~4軒回ったけど、私はシャツを一枚。冥さんもニットのトップスを一枚買っただけ。 効率が悪いと冥さんは納得いかなかったみたいだけど、どうやら楽しんではもらえたようだ。 あのトップスは私も一緒に選んだものだから、それを冥さんが着てくれると思うとちょっと嬉しい。 私のシャツはお財布的には辛かったけど。 すごうの3階なんてブランド店や高級ファッション系しか入っていないようなフロアだもの。 シャツ一枚でも普段見ないような価格基準で、とても贔屓にして買えるようなお店じゃない。 でも冥さんのトップスと同じお店の服。ちょっと嬉しい。 5階のカフェで遅めのランチとお茶にした。 バジルソースのパスタとオレンジティーにプチフール。 さすがにお揃いの服は買えなかったから、ランチくらいは同じものを頼んじゃった。 向かい合って座ってたから、せっかくの生足は近くで見ることは出来なかったけど、代わりにゆっくり手元を見ることが出来た。 いつもは革の手袋で守られてる指先はとっても細くて綺麗。 襟ぐりが広めの服だったから、普段はお目にかかれない首筋も、鎖骨のラインもたっぷり鑑賞できた。 今でもあの白くて透き通るような肌をはっきり思い出せる。 ほんっとーに、暖かい日で良かった。 残念なのは、お茶の後すぐ冥さんが帰ってしまった事だ。 これからだと思ったのに、用事が済んだからとあっさり置いて行かれてしまった。 ‥‥まぁ、ランチまで一緒できたし、あまり贅沢は言わないことにする。 でもあの最初の買い物袋が気になるなぁ‥‥。 見たことないブランドだったけど、高そうだったし、聞いて見れば良かった。 ______________________________ side.M 「はい、これ」 差し出された小さい包みを思わず受け取って、ようやく御剣は疑問を発した。 「なんだ?」 「プレゼント」 ふふっと嬉しそうに笑う贈り主を肩で引き寄せながら、渡された包みをじっくり眺める。 「開けていいのか?」 彼の肩にもたれ掛かるように身体を横たえて冥は、当然でしょ、とちょっと目元をきつくして彼を見上げた。 そんな仕草に苦笑しながらも、礼の代わりに額に小さくキスをして、彼女にも見えるように包みを開いていく。 しっかりとしたケースに収まっているのは、1本の万年筆。 手に取るとしっくりなじむ黒のボディに、クリップには彼女の好きなスワロフスキーのラインストーンが落ち着いた輝きで華を添えている。 「バースディプレゼントよ」 冥は自分の選んだものが気に入ってもらえるか気になるのか、少し恥ずかしそうにしながら御剣の反応を見ようと顔を覗き込んでくる。 彼がそれに気づいてその目に笑いかけると、安心したように微笑んだ。 「冥はやはり趣味がいいな」 「そう?使ってくれる?」 もちろんだ、と彼女の髪を愛おしげに撫でると、冥は嬉しそうに頭を擦り寄せてきた。 おそらく彼女は、しばらく前に御剣が自身の万年筆のペン先をダメにしてしまった事を覚えていたのだろう。 検事に任官した時から愛用していたものと、同じメーカーのものをきちんと用意してくれるあたりも、普段から彼女が自分のことを気に掛けてくれている証に思え嬉しくなる。 「しかし、私の誕生日は明後日だが」 彼女の誕生祝いは欠かしたことはないが、己の誕生日などすっかり忘れていた御剣はその事にようやく気づいた。 「だって、レイジ明日から出張に行っちゃうでしょう?」 御剣の胸元に顔を寄せていた冥は、顔を上げると拗ねたように眉を寄せた。 それについてあまりいい感情を持っていないらしいという事は、きっと彼女は当日一緒に祝いたかったのだろう。 前倒ししてでも祝おうとしてくれる彼女が愛しくて、細い身体を抱きしめた。 「なるほど。それで今日は早く帰れと言ったのか」 昨夜のうちに厳命されていたので、勤めだして初めてじゃないかというくらい早く、陽のあるうちに帰宅したのだが、どうやらそういう事情だったようだ。 「どうせ明日は朝早いんだから、いいじゃない」 御剣に苦笑されて、一応は無理を言った自覚があるのか、少し恥ずかしそうに言葉を濁した。 それならば、と御剣は身を横たえていたソファからゆっくりと起きあがる。 「ではせっかくの時間を無駄にはできないな。ディナーはどこに行きたい?」 その言葉に、冥も慌てて身を起こす。 「あっあのね、私ね」 「?」 「時間、無駄に出来ないのでしょう?だから、私、あの、‥‥ご飯、作ろうと思って」 「‥‥‥‥」 「材料、買ってあるの。‥‥こ、この私が作ってあげるんだから!喜びなさいよ!」 御剣は想定外の事態に、真っ赤になった冥の顔を凝視していたが、やがてふっと表情を綻ばせた。 「当然だ。君の手料理なんて、これ以上のプレゼントはあるまい」 彼の笑顔に気を良くしたのか、冥もにっこりと微笑むと、さっそく立ち上がった。 「じゃあ、ちょっと待っててね。大丈夫、あなたの好きなメニューにするから」 「私も行こう」 キッチンに向かう冥の後を御剣が追うと、彼女は怪訝な顔で振り向いた。 「? あなたに手伝って貰っても手間が増えるだけなんだけど‥‥」 「‥‥それぐらい心得ている。ただ君を側で見ていたいだけだ」 すると冥はさっと頬を染め、俯きがちに馬鹿ね、と言った。 「あぁそうだ、大事な事を忘れていた」 「?」 御剣の言葉に動きを止めた冥に、彼は顔を寄せながら告げた。 「ありがとう」と。 K.Kの日記(7ページ目) ============================== *月*日 電話を全然取り次いでもらえなくなってきた。 傾向は分かってる。 おとなしい感じの男の事務官が出ると間違いなく取り次いでもらえない。 もう1人、声が高めの事務官がいるので、彼が出るとたまに取り次いでもらえる事がある。 でもこの人は電話係じゃないっぽいから、あまり期待はできない。 返信はあまりもらえないけど、メールにしようかな。 手紙もあまり返事がもらえなかったけど、筆無精なのかしら。 でも、読んでもらえるだけで私は嬉しい。 K.Kの日記(8ページ目) ============================== *月**日 突然、メールが送れなくなってしまった。 今日3度目のメールを送ろうとした時だ。 一時間前に送った時は問題なかったのに。 送信先サーバーのエラーみたい。 どうなってるのかしら、検察のネットワークメンテナンスは! 後で冥さんに電話して聞いてみよう。 ______________________________ side.M 「これでいいですよ」 最後にマウスをクリックしてウィンドウを閉じると、男は顔を目の前のモニタから上げた。 「ありがとう、森屋君」 横でその様子を見ていた冥が労いの言葉を掛ける。 「念のため確認してみますから」 森屋事務官はまた目線をモニタに向けると、メーラーを立ち上げた。 「これで外からのメールは取れなくなるのね」 「外部ネットワークからの送信メールをサーバーで受信拒否させてます。内部なら、問題ないですよ」 受信トレイが業務メールのみなのを確認しながら、森屋は簡単に解説した。 「‥‥やっぱり、多い、わよね」 「多いです」 きっぱりと断言すると、森屋は先ほどサーバーから取得した受信履歴を開いて見せた。 「一日に少なくても10通は越えてます。別に私用メールは構いませんけど、実務に支障をきたすのは‥‥」 そうなのよ、と冥も申し訳なさそうに頷いた。 「仕事のメールが埋まっちゃって、選り分けるだけで時間をくうんだもの。困るわ」 せがまれてアドレスを教えたのはいいものの、その回数は日に日に増えていて、頻繁な時は10分置きに届いたりもするようになっていた。 とうとう無視しきれなくなった冥は、ネットワークに詳しい森屋に相談を持ちかけたのだ。 その時、小さなベル音がオフィスに響いた。冥のプライベート用携帯電話だ。 「鳴ってますよ」 「分かってるわよ!」 冥は少し慌ててデスクに置かれていた小さな機体を手に取る。 このベル音はここのオフィスの人間には聞き慣れた音だ。 彼女は、親しい彼からのメールに、この涼やかなベルの音を鳴らすよう設定している。 何度か小さな液晶画面に目を走らせて読み返した後、すぐにボタンを操作しだした。 仕事にしろプライベートにしろ、はっきり優先順位を付けて事によっては容赦なく無視、もしくは後回しに行動する彼女でも、このベル音の後はしばらく携帯画面とにらめっこだ。 いじらしいもんだ、と思いつつ、事務官は冥のマシンを仕事の環境に戻していく。 そうこうしているうちにメールの返信も終わったらしく、冥は何事もなかったように携帯電話をしまって、森屋の方を向いた。 「でもこれで大丈夫よね。さ、仕事に戻りましょう」 当面の些細な問題が解決してすっきりした冥は、サクサクと仕事の続きを始めだす。 「‥‥一応、御剣検事にお話しておいた方がいいですよ」 サブデスクに追いやられながら、森屋は念のため意見を申し立てておいた。 冥はどうして?と首を傾げるので、どうやらこの事態をそれほど異常には感じていないらしい。 経験のない事にはとことん疎い人なのだと、この短い付き合いの中で感じていた森屋は、あまり彼女が事を大げさに捉えて不安にならないように、言い回しを変えて忠告しておいた。 「‥‥御剣さんは検事にあった事は全部把握しておきたいでしょうから」 しばらくして、「‥‥そうかしら」と上司の小さな小さな声が聞こえた。 自分の仕事に集中している振りをしていたので、彼女の表情までは見えなかったが、きっと真っ赤に頬を染めてそっぽを向いていただろう事は想像できた。 森屋はそうですよ、と素っ気なく返事をし、とりあえず自分からも御剣検事に進言しておこうと決めると、本当に仕事に集中するためデスクに向かった。 K.Kの日記(9ページ目) ============================== *月**日 やっぱり冥さんに取り次いでもらえない。 今日は捜査で戻らないというので、思い切って電話に出た事務官にメールのことを聞いてみた。 どうやら検察全部で外部ネットワークが使えなくなったらしい。 冥さんだけじゃなかったみたいだ、良かった。 となるとまともに接触がもてるのが手紙だけになっちゃう。 なんとかして会いたいなぁ。 K.Kの日記(10ページ目) ============================== *月**日 今日は仕事も休みだったので、検察庁に冥さんを訪ねていった。 門前払いを喰らわされた。 今時一般人立ち入り禁止なんて流行らないわよ。 時代は開かれた行政、開かれた法曹、でしょ。 でも偶然御剣検事に会えて、話ができた。 そりゃ冥さんに会えなきゃしょうがないんだけど。 どっちにしろ、今日は出掛けてていなかったらしい。なんだ。 訊ねた事は伝えてくれるらしいから、上手くすれば冥さんから連絡があるかもしれない。 でもこっちからの連絡方法は教えてくれなかった。ケチ。知ってるくせに。 ______________________________ side.M 廊下をそれぞれの目的地へと向かいながら、2人の男は軽く息をついた。 「助かった。礼を言う」 御剣が半歩後ろを歩く森屋に声をかけた。彼は恐縮しきってぶんぶんと頭を振る。 「いえいえ!‥‥出しゃばった真似をしまして‥‥」 「いや、正直なんと答えたものかと‥‥」 先ほど、外から戻った森屋は正面ホールの受付前で女性に声をかけられた御剣を目撃。 仕事の関係かとも思ったが、相手が若い女性なこともあって、場合によっては己の上司に報告せねばなるまいと近づいたのだが、どうやら様子がおかしい。 しかも相手の要望が目の前の男ではなく、その上司自身であるらしいと感づいた瞬間、咄嗟に口を挟んでいたのだ。 『今日は狩魔検事はご不在です』と。 まさか彼女が件の“ご友人”とは思いもよらず。 「スゴイですね、わざわざここまで訪ねてくるなんて」 御剣はドッと疲れたように肩を落とした。 「普通、機密事項を扱っている施設は一般出入り禁止だろう。それを、受付に理不尽だと食いついていた」 自分もその対象だったのだから、情報の機密性は分かっているだろうに、と何やらぶつぶつと言い募っている。 「第一、検察だろうが一般だろうが、本人の了承なしに勝手に個人情報を教えるわけにいかないのは当然のモラルではないか」 どうやら、冥の携帯電話番号を教えろとせがまれたのを断った時、物凄い顔で非難されたのを根に持っているようだ。 仕事の上では見てるこっちがハラハラするほど不貞不貞しい態度を崩さない男なのに、検事という肩書き以外のところでは変なコトで傷ついていたりする。 「でも、意外と普通の人でしたね」 まぁ、若くて人並み以上の容姿を持つ女性に対し、初見で悪い感情を持つ男はいない。さらに彼女は並みどころか、かなり魅力的な顔立ちをしていたことを思い出しながら、森屋は何故か感心したように呟いた。 それを聞いて、御剣はふんと軽く鼻を鳴らす。 「女性を見た目で判断すると痛い目をみるぞ、森屋君」 御剣は職業上、過去関わった事件で華宮霧緒がいかなる悪癖を持っているかを調べ尽くしている。 しかも、それが改善の兆しがない事も、現在進行形で身を持って体験している。 まさか自分の身内が“そういう対象”に見られる事になるとは思ってもみなかった。 不埒な腹積もりで近づく男ならいくらでも蹴落としてやるが、さすがにこういうのにはどう対処していいか謀りかねる。 「‥‥よぉく肝に銘じときます」 霧緒の度重なる冥への接触を思い出し、森屋は少しげっそりとした気分になった。 「僕もなるだけ力添えしますから、頑張ってくださいね」 軽い激励のつもりだったが、なにやら御剣はあたふたと慌てたようだ。 「なっ、何がだ。事務官」 「決まってるじゃないですか。‥‥狩魔検事を大事にしてあげてください」 あまり言われ慣れてないのか、普段絶対に態度を崩さない彼が、うぅとかああとかなにやら呻いて返事に困る姿に、少し愉快な気分になった。 そんな心の内を感じ取ったのか、御剣は顔を真っ赤にして彼独特の射抜くような視線で睨んできたので、森屋は思わず表情を引き締める。しかし、 「‥‥随分、協力的だな」 と皮肉をこぼすのが精一杯のようだ。 そりゃあ、と森屋は日頃の上司の態度を思い返す。 「彼女の機嫌を損ねない事が、うちのオフィスの平和を保つ一番の秘訣、ですから」 切実な森屋の言葉に、思わず御剣はぽん、と彼の肩を叩いた。同情された。 その時、ふいに涼やかで良く通る声が二人の背中に降ってきた。 「あら、随分気が合うみたいね」 ぎょっと2人が振り返ると、横手の保管室から出てきたらしい冥が、斜め後方に立っている。 御剣と会っている時に良く見せる柔らかい表情をしているので、どうやら今の話を聞かれた訳ではないらしい。 森屋はホッと胸を撫で下ろしたが、御剣は話題の主の登場に戸惑っている。 「? ?」 どういう事だ?と不可解そうな御剣に、さっきのお返しとばかりに一つアドバイスを送っておいた。 「“嘘も方便”っていうでしょう、御剣検事」 K.Kの日記(11ページ目) ============================== *月**日 48日ぶりに冥さんから電話がきた! ここのところ仕事が忙しかったらしくて、わざわざ謝ってくれちゃった! 私は別に、冥さんとお話できるだけでいいんだけど。 仕事の話を聞いて欲しいってお食事に誘ったら、OKがもらえた。 時間が空いたらメールすると言われたけど、待ってられないので4日後に約束を取りつけた。 冥さんの時間が空くことなんて、ないに決まっている。 とはいっても実際、相談にのってもらうほどの問題も無い。 今一番の悩みの種は、少しでも冥さんとお近づきになる方法だもの。 無駄な時間を嫌う人だから‥‥。 4日後までに何か話題を考えておかなきゃ! K.Kの日記(12ページ目) ============================== *月**日 冥さんとランチの約束の日、3日前。 話すこと。 ・○×社の営業と話が噛みあわないこと → 大人しく話をさせるテクニックを聞く ・企画部の◎○が私に気がありそうなこと → セクハラトラブルの相談になる? ・今度の製作発表会のこと → ‥‥‥ 〈他にもごちゃごちゃ会話フローチャートが書いてあるが割愛〉 どうしよう。せっぱ詰まって困ったことがない。 ※プライベートの携帯番号かメアドを必ず聞き出すこと!〈太赤字で〉 K.Kの日記(13ページ目) ============================== *月**日 冥さんとランチの約束の日、2日前。 今日は散々だった。 クライアントの新しい担当者が完全な前世代の男尊女卑信者! 現場の女なんてお飾りくらいにしか思ってないんだ。 しかも馴れ馴れしく身体にも触ってくるし! 触られたトコ、まだ気持ち悪い気がする。 世間よりは対等に仕事ができる職場だと思ってたのに、まだこういう人もいるのね。 この事、冥さんに聞いてもらおうかな。 そう言えば冥さんのところはどうなのかしら。 女性の法律家も増えてきたと何かで見た気がするけど、それでも一、二割だって言うし。 国家公務員なんて堅くて世間に疎い特権意識の固まりみたいな人もいるみたいだから、 イヤな思いしてなければいいんだけど。 あ~、急に心配になってきた! やっぱり明後日はこの事話そう。 何とか冥さんの状況とかも聞き出さなくっちゃ。 K.Kの日記(14ページ目) ============================== *月**日 たった1時間8分しか会っていられなかった‥‥。 でも夢の様な1時間8分だった~(はぁと) 52日ぶりの冥さんはやっぱりキレイで、うっかり12分くらいは見とれちゃってた。 なんてもったいないコトを‥‥、でもキレイだったからいいか。 それにしても検事って何て忙しいのかしら。 今日だって検死が終わったからって呼び出されていっちゃったし(よりにもよって検死なんて!) 時間さえあれば一日中だってご一緒したいのに! おかげで用意した話題が全然できなかった。 一つだけ、セクハラ紛いの扱いを受けた事だけは話せたけど。 やっぱり冥さんもオトコ中心社会に思うところがあるみたいで、たっぷりグチを言い合って盛り上がっちゃった。 さすがに冥さんに不埒な真似をするようなヤツはいないみたいだけど、体制的なものに不満があるみたい。 冥さんはキレイなうえに優秀なんだから。もっと全面的に任せてくれればいいのに。 ホント、オトコなんてろくなモンじゃないわ。 もし私の冥さんが本当にセクハラを受けていたらと思うとゾッとする。 そんなバカがいようものなら、私が冥さん直伝のムチで張り倒してやるんだから。 そう言えば最近、あまり自主練してないな。 おさらいしたい、って冥さんにお願いしてみようかしら‥‥。 快挙達成!!! つ、い、に!冥さんのケータイ番号をゲットしました。 「どうしても困ったことがあったらかけていいわよ」、って。いいわよ、って! 私の話を聞いて心配してくれたのね。 今すぐにでもかけたい!けどけど「どうしても」って言われてるし、下手に馴れ馴れしくして疎まれてもイヤだし。 「困ったこと」って、「冥さんに電話したくでもできない」事に一番困ってるんですけど。 うぅ~どうしよう~~~。でも嬉しい~~!! ______________________________ side.M 「‥‥それでね、肩を触られたりするんですって。信じられないわよね」 口早に捲し立てながら、冥は目の前の人物に訴えかける。 「女性を一体何だと思ってるのかしら。そんな不躾なオトコ、見つけたらただじゃおかないんだから」 確かに彼女の視界内でそんな所業が行われようものなら、それが誰であろうと鞭の叱責を受けるのは確実だろう。 それがモチロン彼女本人に対してであっても同様なのも明白なので、今のところ実行に移す勇者は現れないようだが。 「本当、オトコなんてろくなもんじゃないんだから」 昼に食事に外へ出てきて何か言い含められてきたのか、一度火がついた彼女の苛立ちは収まらないらしい。 「大体どうしてこう何でも男性優位にできてるのかしら。個体能力で差別するならば分かるけれども、ただ性別で分けるっていうのには納得いかないわ」 この間だってね、と冥は続ける。 「新規の案件を余所へ回されたのよ!“キミのとこには無理かな”ですって!私の担当では不満だとでも言うの!?」 「それは‥‥キミのオフィスの許容量を考えての事ではないのか?」 憤慨している冥を見かねて、今まで黙って彼女の話を聞いていた御剣が口を挟んだ。 「でも!行った先は川前さんのところよ。うちよりあっちの方が案件抱えてるじゃない」 川前オフィスはキャリア10年弱の検事のチームで、検察世代的には冥達と同じくらいだ。 同クラスの検事なのに、仕事を回されてしまったのが悔しいらしい。 まぁその理由が別に能力的な差異ではないと、容易に想像はつくのだが。 「そうは言うが、キミは残業をしないだろう」 そう、冥は基本的にきっちり定時にオフィスを閉める。 仕事とプライベートをしっかり分ける欧米らしい感覚と言えばそうなのだが、慢性的に人材不足の国家公務員としては、普通はやりたくても出来ない事だ。 必然的に仕事の処理数は違ってくるし、急ぎの案件なら余計に頼みづらくなるだろう。 それに、ここの上司や同僚達は揃いも揃って彼女に甘い。 任せればカンペキな仕事をしてくるし、それも驚くほど早く処理できるから、腕に文句は付けられない。 何より若いオンナノコだし無理させるのも可哀想だからと、どちらかといえば優遇されていると言える。 それを「女性蔑視だ」などと言い掛かりをつけられても困るだろうに。 案の定というか、冥の返答と言えば、 「当たり前でしょう。ハードワークを押しつけるなんて、レディはもっと丁重に扱うべきだわ」 こんな感じで。 一体どうしろと言いたいところだが、こんな壮大なムジュンにも御剣がつっこめるハズがない。 何と言っても冥に一番甘いのは彼だったりするのだから。 「‥‥それで?」 「え?それでって?」 御剣に促されて、冥はきょとんと目を瞬かせた。 「いや、わざわざこちらに向かって言うくらいだから、何か私に対して含むところがあるのかと思ったのだが」 「え?」 数拍ぽかんとしていた冥だったが、ハッと気付いて慌てて否定する。 「ち、違うわ!別に貴方の事じゃなくて、ただ、こういう事があったって聞いて欲しかっただけで‥‥!」 あわあわと真っ赤になって釈明する冥は、何だか動揺しているようだ。 思いがけず言い掛かりをつける格好になって、御剣の機嫌を損ねたと思ったのか。 「うん?」 「レイジは、‥‥レイジはそんな事なくて‥‥、ちゃんと、紳士だもの‥‥」 段々と小さくなる声でぼそぼそと言い訳をする冥が可愛くて、ニヤニヤ笑いが抑えられない。 思わず悪戯心が頭を擡げる。 「きゃっ‥‥!」 ふいにヒップに走った感触に、冥は小さな悲鳴を上げた。 「こんな事をしても?」 その原因である御剣はにやりと不遜に笑いかけ、なおも冥の引き締まった臀部をまさぐる。 「もう‥‥バカ!」 ぺしり、とヒップに伸ばされた手を叩くが、無理に引き剥がそうとはしない。 「レイジのは‥‥ただエッチなだけじゃない‥‥」 冥は嫌がる風でもなく、さらに一歩、御剣に近づいた。 むしろ逆に擦り寄るように彼に身体を寄せる。 「でも、」 と言うと、冥の感触を楽しんでいる御剣をキッと見つめる。 「他の女に触るようなら、鞭のフルコースなんだから!」 「ふふふ‥‥」 可愛い独占欲を覗かせる冥を微笑ましく思いながら、彼女を引き寄せる。 「大丈夫だ。私はただ愛しいキミに触れたいだけなんだから」 いけしゃあしゃあと言ってのける御剣の言葉に、冥は顔を赤くしながらも満更ではない様子であった。 <スレにて連載中>
https://w.atwiki.jp/sousakujojis/pages/437.html
ここに作品タイトル等を記入 更新日:2022/05/12 Thu 12 52 09NEW! タグ一覧 セブンスカラー 「始まったか。」 あちこちから爆発音や戦闘音が響く宇宙センターを俯瞰しながら、薄紫色の髪を一つに纏めた痩せぎすの青年…龍斗が呟く。 「…龍賢、龍香。」 彼は二人の名を呟くと魚の怪物のような姿へと変貌し、斜面を降る。 「負けるなよ…。」 そう言って彼は宇宙センターへと駆け出した。 凄まじい殺気を放つプロウフに向けて“ティラノカラー•アンビバレント”に変身した龍香は“タイラントブレイド”と“ディザスター•メイス”を握り、駆け出す。 「まずは小手調べと参りましょうか。」 プロウフが手を翳すと彼の周辺に鋭く尖った氷の刃が浮かび上がる。 「悲哀の剣《トゥリステサ•エスパーダ》」 浮かび上がった氷剣が唸りを上げて龍香に向かって行く。龍香は迫る氷剣を両手の武器を振るって次々と粉砕していく。 「ほう?」 プロウフはスッと龍香に向けて指を指す。 「憐憫の火砲《ラスティマ•レボルメル》」 プロウフの指先から細い紫色の光線が放たれる。しかしそれも龍香はタイラントブレイドの刃で受け止め、切り裂きながら前進する。 「うおおおおおお!!」 そして、とうとう龍香はプロウフを攻撃出来る範囲まで接近する。 「近づいた!」 《畳み掛けろ龍香!》 カノープスに言われ、龍香はプロウフに向けて武器を振るう。 「こうも容易く近づかれるとは。フフッ。」 しかし言葉とは裏腹に何処か嬉しそうにプロウフは右手に精製した氷剣を握り、全ての攻撃をいなす。 「くっ、このっ!」 二つ武器を持って、両腕で攻撃する分龍香の方が手数の方は上なのに、プロウフは隻腕であるにも関わらず余裕を感じさせながら龍香と互角以上に打ち合う。 「このままじゃ、埒が明かない…なら!」 龍香がそう言うと“ディザスター•メイス”が赤い光と共に灼熱を帯びる。 そして次の瞬間赤熱した“ディザスター•メイス”がプロウフの氷剣を溶かしながら粉砕する。 「なんと。」 《龍香!》 「うん!」 千載一遇の機会。こちらの攻撃を受け止める手段を失くしたプロウフに龍香は剣を振り上げる。 「貰った!」 気合一閃。無防備なプロウフに龍香の剣が振り下ろされた。 「はァァァァァァァ!」 雄叫びを上げながらアンタレスが先端に鋭い針がついた尻尾を雪花に突き出す。 彼女はそれをチェーンソーブレイド“マタンII”で火花を散らしながら受け流しつつ、アンタレスへと向かって行く。 「チッ」 「この蠍野郎!」 左腕に装備した盾“ルーキス•オルトゥス”を折り畳み、まるでボクサーのグローブのように変形させ、拳に着いた掘削機でアンタレスに殴りかかる。 しかしアンタレスはそれを首を捻って避ける。 「甘いのよクソガキ!」 お返しとばかりにアンタレスは腕の鋏を繰り出す。雪花もその一撃を身体を捻って避ける。 「藍!」 雪花の背後から黒鳥が両腕から糸を発射する。不意打ち気味に放たれた糸をアンタレスは尻尾を叩きつけて跳躍する事で回避する。 「避けられた!」 「分かってるわよ!」 雪花は着地するアンタレスに向けて駆け出す。駆け出す彼女を援護するように黒鳥は翼を拡げ、そこから電気を纏った羽根を放つ。 「舐めるな!」 アンタレスは尻尾を縦横無尽に振り回すと、放たれた羽根を全て弾く。 しかし、その間に距離を詰めた雪花がアンタレスに斬りかかる。 「たぁぁぁぁっ!」 アンタレスは振り下ろされた“マタンII”を鋏で受け止める。 「しつこいクソガキね!」 「さっさと斬られろこの野郎!」 「お姉ちゃんの仇、だっけ?そんなに会いたきゃ会わしてやるわよ!」 アンタレスはワザと力を抜いて、雪花を前のめりにする事で体勢を崩させるとカウンター気味に蹴りを叩き込む。 「あの世で仲良くしてろ!」 蹴飛ばされた雪花にアンタレスは尻尾を伸ばす。慌てて雪花が“マタンII”で防御しようとするが、繰り出された尻尾は雪花に当たる直前でピタリと硬直する。 「えっ」 「何!?」 「藍!体勢を!」 見れば黒鳥が糸を射出して、アンタレスの尻尾を絡め取っていた。雪花はそれを見ると素早く体勢を立て直し、アンタレスへと走り出す。 「チッ、小癪なクソガキ共!」 アンタレスはすぐさま両腕の鋏で雪花を迎え撃とうとそれを振るう。 しかし雪花はそれを、“マタンII”と“ルーキス•オルトゥス”で受け止める。 「ふんっ!」 しかし黒鳥が絡めとった尻尾を渾身の力で引っ張ることでアンタレスの体勢が崩される。 「んおっ」 「オラァァァァァァァァァッ!!」 その隙を雪花は見逃さなかった。一瞬生まれた隙。雪花はアンタレスの顔面を“ルーキス•オルトゥス”で思い切り殴りつけた。 硬いもの同士がぶつかり、激しい火花と何かが砕ける嫌な音が響く。殴り飛ばされたアンタレスはそのまま受付席の椅子を派手に倒しながら地面に叩きつけられる。 「はぁっ、はぁっ…!まずは一発…!」 アンタレスを殴り飛ばした雪花のフォローに入るように黒鳥も前に出て来る。 「油断しないで。まだ終わってないわ。」 「分かってるわよ。」 黒鳥の言う通り、頭を押さえながら机の残骸を蹴飛ばし、アンタレスが立ち上がる。 「やってくれたわね…!」 押さえてる箇所はひび割れ、そこから青色の液体がボタボタと流れ落ちている。 「ハッ、これくらいで死んで貰っちゃ困るわ。まだ姉さんの痛みの一兆分の一も与えてないんだもの。」 雪花がそう挑発すると、アンタレスの額に青筋が浮かぶのが見えた。 「クソガキが…いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞ!」 アンタレスはそい激昂すると尻尾を振って素早く糸を断ち切り、地面を蹴る。 「黒鳥!」 「ええっ!」 迫り来るアンタレスに対して黒鳥は拡散弾のように糸を前方に発射するが、アンタレスはそれを跳躍して回避する。 それを見た二人は雪花は“マタンII”をしまい、ライフル“モルゲン”を構えると発砲し、黒鳥は翼を広げて羽根を射出する。 「そんなものが効くかァッ!」 アンタレスは尻尾を縦横無尽に振り回してその攻撃を弾くと、クルクルと回転しながら痛烈な踵落としを雪花に見舞う。 「させないっ!」 しかし寸前に黒鳥が割って入り、両腕でその一撃を受け止める。 「邪魔をっ。」 「コイツっ!」 雪花が再び殴りかかろうとするのが見えたアンタレスは尻尾を横薙ぎに振るって雪花を吹き飛ばす。 「うあっ」 「お前もよっ!」 さらに身体を捻ってアンタレスは黒鳥に痛烈な蹴りを見舞う。 よろめく黒鳥に、アンタレスは容赦なく鋭い尻尾の突きを見舞う。が、ギリギリで黒鳥はその一撃に勘づき両腕の手甲でその突きを防ぐ。 「はぁっ!」 しかしアンタレスが繰り出した一撃は黒鳥の防御ごと彼女を大きく吹き飛ばす。 「ぐっ」 黒鳥は勢いそのまま壁に叩きつけられる。一瞬痛みで黒鳥は呻くが、すぐさまアンタレスに向けて糸を射出する。 「そいつはもう喰らうか!」 だが、アンタレスは素早い身のこなしで次々とその糸を避ける。 「やったわね!」 吹き飛ばされながらも雪花は立ち上がり、アンタレスに向けて“モルゲン”を発砲する。 しかしこれも尻尾に弾かれてしまう。 「無駄なのよクソガキ!」 (…やっぱり、あの尻尾は厄介ね。) 発砲しながらも、雪花は冷静に思考を巡らせる。 アンタレスの特徴はなんと言ってもあの攻防一体の縦横無尽に動く尻尾だ。持ち前の身体能力の高さも相まって、並大抵の攻撃ではアンタレスには届かない。 (だけど!) (今の私達には突破方法はある!) 雪花は黒鳥に目配せすると、黒鳥はコクリと頷く。それを見た雪花は腰の武装ラックから“シャハル”投擲装甲貫通弾を取り出すと、アンタレスに向けて投げる。 アンタレスは投げられたそれを尻尾を振るってそれを弾く。が、当たった瞬間カチリ、と信管が作動し爆発が起こる。 「何?」 「“トロンバタリア•フルミーネ”!!」 爆発によって一瞬生じた隙を見逃さず、黒鳥は雷を纏い回転しながらアンタレスに突進する。 「チッ、そうはさせるか!“ピアシング•ペプチド”!」 黒鳥の繰り出した一撃に対し、アンタレスは尻尾を右腕に巻き付けて前へと突き出す。 二つの必殺技がぶつかり合った瞬間凄まじい衝撃が辺りに広がる。窓は割れ、壁にヒビが入る。 「ぐぅぅ!」 拮抗する二人の攻撃。だが、次の瞬間アンタレスに対し横からエネルギーの奔流がぶつかる。 「なっ、うおおおおお!?」 堪らずアンタレスの体勢が崩れた瞬間、均衡が破られ、黒鳥の一撃がアンタレスに炸裂する。 「がああああっ!?」 吹き飛ばされたアンタレスがエネルギーが飛んできた方に目をやると、そこにはエネルギー砲“へオースII”を構えている雪花の姿があった。 「どうかしら。流石に大技二発も喰らっちゃアンタもタダでは済まないみたいね。」 ニヤリと笑う雪花。 「このクソガ…ッ!」 そんな彼女にアンタレスは尻尾を伸ばそうとして気づく。身体がまるで地面に縫い付けられたかのように動かない。慌てて見れば、地面に撒き散らかされていた白い粘液がアンタレスの身体にくっつき制限していた。 (!!これはあのガキの…そうかあの時…!!) アンタレスに吹き飛ばされた際に放った苦し紛れの一撃。そうタカを括っていたが、あれは攻撃ではなく罠を仕掛けるための… 「アンタの厄介な尻尾も、身体能力もこれで封じた!」 「ここで消え失せろ!姉さんの仇!」 動けないアンタレスに銃口を向けると怒りと共にその引き金を引いた。放たれたエネルギーの奔流は真っ直ぐアンタレスへと伸びていき─── 「このっ、私がッ…!?」 その身体を包み込んだ。 一方、発射場前では龍賢とレグルスがぶつかっていた。レグルスが振るう剛腕を避け、龍賢が槍を振るう。それをレグルスは片手で受け止める。 そして反撃に振るわれた剛腕を龍賢は後ろへと跳んで避けるが、振るわれた剛腕で地面はひび割れ、その威力を如実に物語る。 《チッ!なんてぇ馬鹿力だ!》 「力勝負では不利、か!」 龍賢が槍を構えると、レグルスの上空から小型の手裏剣のようなものが降ってくる。 「むっ!」 それはレグルスに着弾するとスパークを撒き散らしながら爆発する。 「この、天才を忘れてもらっては困るな!」 《多対一だが卑怯とは言ってくれるなよ!》 上空にいる月乃助がライフルを、ピーコックが両翼の機関銃をレグルスに浴びせかける。 奇襲攻撃によってレグルスの動きが止まる。 「今ッ!」 月乃助がレグルスを足止めしている隙に龍賢は地面を蹴って駆け出す。 「ッ、舐めるなッ!!グラディエイト•ルジット!!」 だが次の瞬間レグルスの目に光が灯ったと同時にレグルスがりに向かって吼える。辺りに轟く咆哮は凄まじく、その衝撃と音に龍賢は近寄れず立ち止まってしまう。 「ぐっ、」 「貴様も堕ちろ!ソルダート•デファンス!」 レグルスの腹の牙から無数の刃が放たれる。月乃助は翼を翻し、それらを時には撃ち落とすことでかわしていく。 「くっ、あっ。」 しかし、数が多く完全には避け切れず、一発が月乃助の脚を掠める。 「!!ぬぅぅ!!」 それを見た龍賢は強引に咆哮で硬直した身体を動かすとレグルスに向けて思い切り槍を突き出す。 「何!?」 突進してくる龍賢を見て、レグルスは慌てて両羽をクロスさせてその一撃を防ぐ。 「あの咆哮を受けて無理矢理動くとは…!」 「あの程度で脚を止めていては皆を守れないからな…!」 「ほざけ!」 再び剛腕が龍賢に襲いかかる。しかし龍賢はしゃがみ込むと今度は足払いを仕掛ける。だがレグルスも読んでいたのか脚を上げてそれを避ける。 だが脚を上げたことで一瞬動けないレグルスに龍賢は槍を突き出す。 「うおおっ!!」 だが流石はツォディア。当たる直前に跳躍することで繰り出された槍が掠めるも、何とか直撃を避ける。 後ずさるレグルスに上空から月乃助がグレネードを、立ち上がった龍賢が再び槍を振るう。 「ッ!“ソルダート•スクード”!」 レグルスが地面を蹴りつけると地面から牙が生え、スッポリとレグルスを覆い尽くす。その牙に爆発と槍が直撃するが、爆発でも少し焦げた程度で、槍も弾いてしまう。 「何!?」 《器用な野郎だな!?》 さらに牙の中から声が響くと同時に地面を殴る音が聞こえる。 「“ソルダート•ランチャ”!」 次の瞬間周辺の地面から次々と鋭い針が地面から生え、龍賢を襲う。 「龍賢君!」 「月乃助さん!」 地上にいてはまずいと見たか、急降下した月乃助は龍賢の手を取ると同時に上空へと飛翔する。 「助かりました。」 「なぁに。お互い様さ。」 《イチャつくのも結構だが、アイツをどうするかね。》 牙がボロボロと崩れると同時にレグルスがこちらを見上げているのが見える。 「ふんっ。上手いことかわしたか。」 レグルスは鼻を鳴らすとこちらに向けてまたもや牙を発射する。 「この槍の性能を信じますよ!」 「龍賢君!」 一人でも避け切れないのに、もう一人を抱えた状態ではかわすのは不可能だと判断した龍賢は月乃助から離れると、その弾幕を槍で弾きながらレグルスへと向かっていく。 「うおおおおおおおお!!」 「正面から!舐められたものよ!」 レグルスがスゥと息継ぎをするのが見えた瞬間、月乃助が叫ぶ。 「龍賢君!今こそ槍の特殊機能のお披露目だ!」 「了解ッ!!」 月乃助の言葉を聞くと同時に龍賢が持ち手のトリガーを押し込むと、槍がバッと傘のように展開し、展開した部分がスパークしたかと思うと龍賢を守るように前方に電磁フィールドが展開される。 「“グラディエイト•ルジット”!!」 龍賢を迎え撃つようにレグルスが咆哮する。あまりにも凄まじく空気を震わせる轟音が龍賢に向かう。が、その咆哮は電磁フィールドによって受け止められる。 「何!?」 「少し応えた、が!」 龍賢は防ぎ切ったのを確認すると、槍の展開した部分を収納しレグルスに向けて突き出す。 「むぅ!喰らうか!」 だがその一撃をレグルスは両腕で受け止めてしまう。 《ソイツは予測済みなんだよ!!》 次の瞬間槍を手放し、剣を手にした龍賢の振るった一撃がレグルスに炸裂する。 「ぐおっ!」 予想外の一撃にレグルスは思わず槍を手放してしまう。 「うおおっ!」 龍賢は剣を投げ捨て、手放された槍を再び握ると思い切りそれを振るい、レグルスに痛恨の一撃を当てる。 「むぅぅ!?だがっ!」 熾烈な攻撃に地面を転がったレグルスが立ち上がり、龍賢の追撃に備えた瞬間──目の前に複数の黒い物体…月乃助がレグルスに投げつけた爆発物が広がる。 「貴様ッ」 次の瞬間爆弾が起爆し、猛烈な爆炎がレグルスを包み込んだ。 「ふっ!」 「はぁっ!」 ヘリポートの上で、ルクバトと赤羽の振るう刃がぶつかり合う音が響く。 赤羽の振るう刃がルクバトを掠め、ルクバトの突き出す刃が赤羽を掠める。一瞬でも気を抜けば確実に致命傷が待っている文字通り死闘の中で、赤羽はルクバトに対して確かな手応えを感じていた。 (戦える…!今までよりも速く動けている!) 月乃助に頼み込んで強化して貰った“雨四光”が鈍く赤い光を放ちながら、赤羽の身体を強化する。 (コイツ…依然より速い。だが。) ルクバトの脅威的な観察眼が赤羽の身体の調子を見破る。急激な強化に赤羽自身の身体が悲鳴を上げているのが見て取れる。 目の前の敵に勝つためにいかなるリスクも厭わない。差し違えても自分を倒すと言う意志を目の前の少女からヒシヒシと感じる。 心地よい殺気にルクバトは自分が高揚していくのを感じた。 「執念の成せる技か!」 「はぁぁっ!」 赤羽の振るう斬撃をルクバトは弾いて対応すると後ろへと下がりながら彼女に矢を射る。 「“霧雨”!」 赤羽の動きを封じるようにルクバトは矢を拡散させて放つ。 「ッ!」 赤羽の目が見開かれギョロギョロと“サダルメリクの瞳”がせわしなく動き始めると放たれる矢の間に空いた僅かな隙間を看破する。 その隙間をくぐり抜けるように身体を捻りながら矢を回避しつつ、腰の円形状のデバイスにワイヤーを接続させる。 「かわした!?」 「喰らえっ!」 赤羽がヨーヨーのように投げた円形デバイス“早蕨”がルクバトへと向かっていく。だがルクバトはそれを瞬時に見極めると体勢を低くして回避する。 しかし赤羽はワイヤーを素早く指先で操作すると、ルクバトの背後へと飛んでいった“早蕨”が引っ張られてルクバトの背後へと向かう。 「何ッ!」 瞬時に気づいたルクバトが“早蕨”を切り払おうとするが、赤羽はすぐにワイヤーを“早蕨”から切り離す。 次の瞬間カチリ、とスイッチが入り至近距離で爆発する。 「カストルのような技を…!やってくれる!」 「使えるものは全部使うわよ。」 爆煙から所々身体を焦がしながら出て来たルクバトに赤羽は刀を振り上げる。 「全部アンタを倒すために!」 渾身の力で赤羽が刀を振り下ろす。振り下ろされた一撃がルクバトを捉える──と思われた。 ルクバトの目がギラリと光り、振り下ろされた刀を両の掌で挟み込むようにして受け止める。 「真剣白刃取りッ!?」 「いい執念、攻撃だ。並々ならぬ覚悟を感じる。」 ルクバトはそう言うと一瞬呆気に取られて生じた赤羽の隙を逃さず、その横腹に蹴りを喰らわせる。 「うあっ!」 「だが、覚悟だけで勝てる程俺は甘くはない。」 倒れる赤羽を横目に奪い取った刀を地面に突き刺す。 「くっ!やったわね…!」 だが赤羽もすぐさま立ち上がり、右大腿部に装備していた小刀を抜いて構える。 「随分と身持ちが固いな。まぁ、そうでなくては。」 「…ッ」 (…分かっちゃいたけど、技巧に関しちゃあっちの方が上。苦し紛れの小細工は通じない。“雨四光”と“サダルメリクの瞳”で何とか渡り合えているけど、それがいつまで持つか。) 右腕の刃をこちらに向けて構えるルクバトを睨みつけながら、出方を伺う。 (さぁ、どうする?) 「今だっ!」 龍香の振り下ろした刃がプロウフに迫る。そしてそれがプロウフを捉える──と思った瞬間。 刃がプロウフに当たる寸前で止まる。見ればプロウフの“左肩から伸びた氷の腕”がそれを受け止めていた。 「えっ!」 《何ッ!?》 「氷の義手ですよ。人間の姿の時、両腕あったでしょう?」 プロウフがそう言うと、氷の腕に掴まれている刃がドンドン凍りついていく。 「ッ!」 その状況をヤバいと見た龍香は“ディザスター•メイス”を振るって氷の腕を砕くと一旦下がる。 「おやおや、酷いことをしますね。」 「…やっぱり一筋縄じゃいかない!」 砕かれたのに余裕綽々と言った具合のプロウフを睨みながら龍香は歯噛みをする。 《シードゥスのテッペンの名は伊達じゃねぇって事か!》 「さて、そろそろ調子を上げて行きましょうか。」 プロウフがスッと、龍香に向けて右腕を向ける。 「辛苦の氷蛇《ソフェレンツァ•ヒュドラム》」 プロウフの背後から八つの氷の蛇が鋭い牙を剥き出しにしながら畝りを上げて龍香に襲いかかる。 「ッ蛇!?」 《龍香!》 龍香は後ろへと下がると、襲いかかる蛇から逃れようと会費に専念する。 だが蛇はまるで意志を持つかのように龍香を追いかけ続ける。 「キリがないっ!」 《龍香!右だ!》 カノープスが警告すると同時に右側から氷の蛇が大口を開けて龍香に迫る。 「ッ!“ノンパイレル•ニファレス”!!」 赤灼した“ディザスター•メイス”が振るわれ、氷蛇のその顔を叩き壊す。 が、まだ頭は七つ残っており、その全てが龍香へと向かっていく。 「ダメっ!避け切れない!」 全てを避け切るのは無理だと判断した龍香は“タイラントブレイド”と“ディザスター•メイス”の柄頭同士を連結させるとそれを思い切り振るい、灼熱の斬撃を蛇に向けて放つ。 「“ジャガーノート•ジュビラーテ”!!」 龍香必殺の一撃が蛇を斬り伏せていく。さらに蛇を全て切り開いたのと同時に龍香はメイスの方を思い切り突き出し、暴力的なエネルギーの塊がプロウフに向かっていく。 「おや。」 次の瞬間その一撃がプロウフに炸裂する。その威力は凄まじく、その身体を粉々にしてしまう。 「やったっ!」 《いや、違うっ!》 プロウフを倒し、龍香が喜んだ瞬間カノープスが警告する。が次の瞬間健在のプロウフが龍香の横に現れる。 「えっ」 「貴方が破壊したのは私が作り出した氷像ですよ。」 そして至近距離で龍香に向けて右掌の青白い光球を龍香に向ける。 《それはフェニックスを倒したッ…!?》 「苦悶の雨《アゴニーア•ジュビア》」 カノープスが驚くと同時にプロウフの右掌から放たれた光が弾け、辺りを凍り付かせる。 それは拾い格納庫の半分を瞬く間に凍結させ、次々と氷柱を乱立させていく。 「ほう。直撃は避けましたか。」 だがプロウフの視線は、所々凍りついているものの健在な龍香に向けられていた。 「危なかった…!」 《メイスが無かったらヤバかった…!》 龍香は大きく後退しつつ、一旦プロウフと距離を取る。 「流石ですね。私の技の薄い部分を狙い、そのメイスで攻撃することで生き延びている…。今まで生き抜いて来ただけのことはある。」 《嫌味かテメェ。》 「いえ賛辞ですよ。ですが、まだ足りない。」 プロウフはまた右手を龍香に向ける。 「まだ貴方の母には遠く及ばない!」 「来るっ!」 氷の剣か蛇か。プロウフが何かを飛ばしてくると思ったその瞬間、地面を蹴って一瞬で距離を詰めた彼の掌が目の前に広がる。 「なっ!?」 「思い込みはいけませんね。私はまだ全てのカードを貴方に切っていないのですよ?」 龍香は咄嗟にプロウフの掌から逃れようとするが、どう移動してもそれはピッタリと龍香に照準を合わせてくる。 「避け切れないっ…!?」 プロウフから発射された氷塊が龍香に飛んでくる。ギリギリでそれを剣で受け止めるが、同時に繰り出された脚が龍香を捉える。 「がっ」 「悲哀の剣《トゥリステサ•エスパーダ》」 さらに追撃で放たれた剣が蹴りでよろめき倒れた龍香を斬り刻む。 「きゃあああああああっ!?」 斬撃に怯む龍香にプロウフは指を向ける。 「ぁ!?ヤバイっ」 「憐憫の火砲《ラスティマ•レボルメル》」 指から放たれた光線を龍香は飛び込むように跳躍して避ける。そして素早く受け身を取って立ち上がると、またもやプロウフが高速で距離を詰め、手にしている氷剣を振り下ろす。 「──ふっ。」 「ぐぅぅ!!」 その一撃を龍香は呻きながら剣で受け止める。 「いい反応です。ですが私は既に次の手を打っています。」 《龍香!上だ!》 「ッ!」 見れば龍香の上空に巨大な氷の槍が精製されており、その矛先を龍香に向けている。 「疑惑の槍《ドゥビターレ•ジャヴェロッド》」 槍が龍香に向けて降ってくる。龍香はすぐさまプロウフの剣を弾くと地面を蹴ってその場を離れる。 槍が地面に炸裂し、凄まじい冷気が辺りに吹き荒れる。 「うわっ!?」 思わず目を瞑った瞬間カノープスがギョッとして慌てて龍香に警告を飛ばす。 「龍香!右へ跳べ!」 「へっ」 突然のことに一瞬龍香の判断が遅れる。その一瞬が致命的だった。再び放たれた槍が龍香の背を削りながら掠める。 「うああああああっ!!」 痛烈な一撃に龍香は地面に倒れる。刺すような冷気の痛みで龍香は顔を顰めて呻く。 《大丈夫か龍香!?》 「うっ、ぐぅ……!!」 「おやおや。もう限界ですか?」 プロウフは悠々と歩きながら龍香へと歩を進める。 「これでは私を倒すことなど夢のまた夢、ですよ。」 余裕を見せつけるプロウフに龍香は覚悟を決める。まるで詰将棋かのように的確にこちらに対して手を打つプロウフと龍香には技量に差がありすぎる。 そう考えると長期戦は確実に悪手。ならば龍香が取るべき策は。 「カノープス…!次で決めるよ…!」 《何ッ》 「…長引いて不利になる前に一気にケリをつける!」 覚悟を決めた龍香を前にして、プロウフはそれに応えるように再び右手を向けた。 「──良い覚悟です。が、覚悟だけでは何もなし得ない。」 「…やった?」 “へオースII”が炸裂し、炎と煙を巻き上げられている痕を見ながら黒鳥が茫然と呟く。 確かに直撃した。あの状態からアンタレスが避けられるとはとても思えない。 「…思い知ったかクソ野──」 勝利した。そう思って雪花が言葉を発そうとした瞬間。 「オオオオオオオオオオッ!!」 「「!!」」 爆煙から絶叫が辺りに響く。二人がそれに気づき、身構えると煙を切り裂き巨大な昆虫の脚のようなものが地面を抉る。 「何…!?何が、」 「アイツ、まだこんな隠し球を!」 煙が晴れると巨大な5本の尾を生やした蠍の怪物の頭の部分から上半身を生やし、完全な怪物へと変貌したアンタレスが現れる。 「まさか、こんなクソガキ共に。奥の手を使わせられるなんて……!!」 言葉からも怒気を孕ませながらアンタレスは二人を睨む。 「こっからが、本番って訳!!」 「雪花!身構えて!」 「死ねよクソガキィィィィィ!!」 二人が身構えると同時に五つの尻尾が唸りを上げて二人に襲いかかった。 「当たった!」 《やったぞ!》 爆発が直撃したのを見た月乃助とピーコックが嬉しそうに声を上げる。 「いや──」 だが、龍賢は爆煙から微かに除いたレグルスの身体がまだ健在であることを視認する。 「だが、一気に決める!」 龍賢が槍を構えて一気に決着をつけようと前に出た瞬間。 ゾワッと背筋に嫌なものが走る感覚を覚える。 《ッ!下がれ龍賢!》 「くっ…!」 それはトゥバンも感じたようで、後ろへと退がる。 「龍賢君!?」 煙が晴れると、そこにはレグルスがいた。あちこちが焼け焦げ、ダメージを受けているのは明白だがその瞳の闘志は微塵も薄れていない。 レグルスは自身の胸に手を当てると呟く。 「プロウフ様……貴方から頂いた御力…使わせて頂きます。」 そう言った瞬間胸から光が溢れ出し、レグルスの身体がバキボキと音を立てながら変形していく。 「なっ……」 「お、おおお!オオオオオオオオオオ!!!」 背中から新たに鋭く、禍々しい爪を生やした一対の剛腕が生え、身体の各所もさらにおどろおどろしく強靭な姿へと変貌する。 《なんだこりゃ……》 《こんな変形、私は見たことがないぞ!?》 トゥバンとピーコックも呆然とする中、完全に変身を終えたレグルスは自身の変貌した身体を見下ろすと…ツゥと一筋の涙を零す。 「えっ、泣い…てる?」 突然の涙に月乃助が困惑していると、ピーコックが気まずそうに言う。 《いや…あれは彼女のクセだ。》 「え。」 「プロウフ様の御力が全身に漲るのを感じる…!!ありがたき幸せ…!ならば、ならば。」 するとさっきまでとは打って変わって空気が震えていると錯覚する程の凄じい殺気を放ちながらレグルスは二人を睨みつける。 「私は全力の忠義を貴方に捧げましょう!!」 「来るぞっ!!」 「っ」 《気をつけろ!今までの奴とは違う!!》 月乃助が飛び上がって距離を取ると同時に龍賢が槍を構え飛び出すと狂気すら感じる忠義の雄叫びを上げながら向かってくるレグルスとぶつかる。 決死の第二ラウンドが幕を開けた。 ヘリポートでは小刀を構える赤羽とそれをジッと注意深く観察するルクバトが互いに出方を伺い、張り詰めた空気が漂っていた。 そして、その空気の中先に動いたのは赤羽だった。 「ふっ!」 左大腿部ホルスターから投擲装甲貫通弾“椿”を投擲すると同時に駆け出す。 「ふんっ」 投擲されたそれをルクバトは上体を反らすことで軽くかわす。だが、放たれた内の数本がルクバトの足元に刺さると、プシュウという音と共に煙を噴出する。 「手品が随分と上手くなった…。」 視界を煙で遮られながらもルクバトは己の感覚を研ぎ澄まし、赤羽の位置を探る。 そして次の瞬間煙の中から赤羽が飛び出してくる。 「!幻か!」 しかしそれは幻だとルクバトは看破し、一瞬注意を逸らしてしまう。 次の瞬間赤羽の幻影の腹から小刀が飛び出し、ルクバトへと向かっていく。 「むっ!」 ルクバトが右手の刃でそれを弾く。だがそれに続くように赤羽が飛び込んでくる。 「その奇襲は見切っているぞ!!」 素手で飛び込んできた赤羽に対し、ルクバトは刃を振るう。それを受け止める手段を持ち得ない赤羽にはこの攻撃は防げない──そう思えた瞬間。 赤羽は腕を前に突き出し、ルクバトの一撃を綺麗に受け流す。 「何っ」 さらにそのまま半回転し、勢いをつけてルクバトの顔面に裏拳を叩き込む。 「むおっ」 一瞬怯むルクバト。だがその一瞬の間にシュルシュルと音を立て、彼の両腕にワイヤーが巻きつけられる。 「私が刀がなきゃ格闘戦も出来ないとでも思ったかしらっ!?」 そしてワイヤーを巻き取り、勢いをつけた赤羽の蹴りがルクバトに炸裂する。 「むっ…!」 「残念だったわね。私も格闘技の心得位はあるのよ。」 ルクバトを後退させ、着地すると赤羽刀を拾い上げて構える。 蹴られた箇所を少し見つめた後、ルクバトは赤羽を見据えて。 「ふっ…こうでなくては。」 ルクバトはそう言うとスッと胸に手を当てる。 「ならば貴様に敬意を払い、俺も全力を出させてもらう。」 次の瞬間、ルクバトの身体が光に包まれその姿形を変えていく。 「!」 そして光が収まると、そこにはまるで神話のケンタウロスのように馬のような四つ足を生やした姿へと変貌したルクバトの姿があった。 「随分と変わったわね…!」 「…ほう。これが……成る程、悪くない。」 構える赤羽に対し、身体の具合を一通り確かめたルクバトは赤羽へと視線を向ける。 「さて、待たせたな。続けようか。」 龍香は構えると同時にプロウフへと駆け出す。それに対してプロウフはすぐさま氷の刃を放つ。 「うおおおおおおっ!!」 しかしその攻撃は龍香が振り回す武器によって全て粉々に砕かれる。 「ならば。」 尚向かってくる龍香にプロウフは氷の槍を放つ。しかし龍香は赤灼したメイスを突き出すと、それを溶かしながら粉砕する。 《いいぞ龍香!》 プロウフの妨害を全て踏破し、射程内に彼を捉えた龍香は渾身の力で武器を振るう。 「うああああああっ!!」 「おっと、危ない。」 龍香の攻撃を避け、時に氷の剣で受け流しながらプロウフは迎え撃つ。 「貴方を倒せば全てが終わる!貴方達に苦しめられた沢山の人達のためにも私は負けない!」 「終わる……ですか。」 プロウフは意味深に呟いた後、フフッと笑うと。 「えぇ。確かに終わりますとも。ただし。」 プロウフは精製した左腕の氷の義手を龍香に向ける。 「貴方は私に勝てませんがね。」 氷の義手は剣へと変貌し、それをプロウフが突き出すが、龍香はそれを剣で受け止めると。 「やってみなくちゃ、分からない!」 そう言って思い切りメイスを振るう。それは氷の義手を打ち砕き、右腕で防御するプロウフを吹き飛ばす。 「むっ」 「ノンパイレル•ニファレス!!」 さらに追撃にと放った灼熱のエネルギーの塊がプロウフに炸裂し、さらに彼を吹き飛ばす。 《今だ龍香!畳み掛けろ!!》 「うん!」 龍香はすぐさま武器を連結させるとプロウフ目がけて必殺技の構えを取る。 「ジャガノート•ジュビラーテ!!」 灼熱の斬撃と打撃を放つ龍香最大の必殺技がプロウフへと放たれる。 プロウフは吹き飛ばされながらも体勢を立て直すと、こちらへと向かう必殺技へと目を向けるとプロウフは右手を構える。 「絶望と慈愛の星泳空《ディスペラ•カリタ•コスティラツィオ》」 次の瞬間龍香の斬撃を受け止めるように巨大な氷嵐が吹き荒れる。そしてそれは徐々に変化しら神の如き氷像となると斬撃とせめぎ合う。 「ぐっ!つ、よい!!」 凄じい冷気に龍香が一瞬呻くが、カノープスが龍香を励ます。 《踏ん張れ!龍香!ここが正念場だ!!》 「う、ぐぅ、おぉ!」 龍香が武器を握る手にさらに力を込めると、斬撃の勢いが増す。 「ほう。」 (お兄ちゃんや雪花ちゃん、新月のみんなのためにも…!この戦いで命を落とした人達のためにも!) 龍香はこちらを見据える氷像を睨みながら、最後の力を振り絞って絶叫する。 「私は、勝つんだァァァァァァァ!」 そう叫ぶと同時に一回り大きくなった斬撃が氷像を押し戻す。氷が溶け蒸気が吹き荒れるのを見て、龍香とカノープスはさらに力を込める。 「《いっけぇぇぇぇぇぇ!!》」 斬撃の力が更に強まり、氷像へと放たれる力は確実に氷像を破壊していく。 「勢いもいい。仕掛けるタイミングも巧妙。そして素晴らしい執念、覚悟です。──ですが、悲しいですね。」 だがプロウフはどこか悲しそうに目を細めると、残念そうに言う。 「やはり私と貴方には──絶対的な力の差がある。」 次の瞬間氷像の目が輝いたかと思うとその全身から凄じい冷気が放出され、斬撃を掻き消した。 「えっ」 《なっ…》 「残念です。貴方では私を倒すことは出来ない。」 氷像は斬撃をかき消すと、ゆっくりとその拳を振り上げる。 《お、おおお…!?》 「そんなっ、私の全力でも…!?」 「惜別の時です。」 次の瞬間氷像の拳が振り下ろされる。その拳は冷気を撒き散らしながら龍香に炸裂し、大爆発を引き起こした。 To be continued…
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637 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 00 18 ID jfDCykFL 第二十一´話『そういえば、レギンってどうなるの?』 岩が崩れ落ちる中、シグナムは右腕だけで崖縁に掴まっていた。 ブリュンヒルドを殺すためとはいえ、流石に岬崩しの策はやりすぎた。 その代償で、左肩を強かに打ち、骨を砕いてしまった。 だが、こうでもしなければあの化け物は殺せなかったのだ。 それを思うと、左肩の犠牲くらい安いものである。 シグナムは右腕に力を入れて、懸垂する様に崖をよじ登ろうとした。 突如、月光を遮る影がシグナムを覆い、右手を掴んだ。 「シグナム様、大丈夫ですか!?」 それは最も聞きたくない声だった。身体中の血という血が引いてしまった。 右手を掴んでいたのは、間違いなくブリュンヒルドだった。 傷どころか土埃さえ付いていない様を見て、 やはりブリュンヒルドを殺せるものなどいないのだ、と絶望感がシグナムを包んだ。 「今助けますからね、じっとしていてください」 ブリュンヒルドの手に力が入った。このまま引きずり上げられたらどうなるか。 本当に助けてくれるなどという甘い考えは、そもそもシグナムの頭にはない。 ブリュンヒルドの事だ。きっと、半死半生になるまで嬲られた挙句、 死後も辱められてしまうだろう。 死ぬ事は別に怖くない。だが、イリスの仇を打つ事も出来ず、 人としての尊厳を無視されて惨殺されるのだけは絶対に嫌だった。 「そうなるくらいなら……」 シグナムはブリュンヒルドの手を振り払い、落下直前に右腕を薙いだ。 瞬間、ブリュンヒルドの首に赤い線が走り、次に鮮血が降り注いだ。 末期の言葉などありはしなかった。 終わった、というのがシグナムの感想だった。 イリスの仇を討て、さらに短い時間ではあるが、トラウマを乗り越える事が出来た。 魔王討伐とガロンヌの排除が出来なかったのは心残りだが、 終わり方としては、十分すぎるものだった。シグナムは小さく笑った。 もうすぐこの世ともお別れである。目の前に岩礁が近付いていた。 「これでずっと一緒にいられますね」 岩礁に直撃する間際、声が聞こえた。それが、シグナムが聞いた最期の声だった。 638 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 01 21 ID rhvtT6cM シグナムがアーフリード領を脱出したという知らせを聞いてから、既に三ヶ月が経った。 ブリュンヒルドは信用できないと判断したガロンヌは、それとは別に密偵を送り込んだ。 今度こそシグナムを仕留められる、と確信していた。 ところが、である。 トゥファニアの東の玄関口であるカヴァールに到着した密偵は、 シグナムだけでなく、一緒にいるはずのブリュンヒルドも見付ける事が出来なかった。 確実にシグナム達がこの町に来たというのは間違いないというのに、だ。 念のために七国に捜索依頼を出したが、それも徒労だった。 密偵の報告を聞いたガロンヌは、すぐさま御前会議を開いた。 シグナムが生存しているか否かを決めるための会議である。 議題に疑問を持った者達もいたが、この会議に誰も異論を唱えなかった。 結果はしばらく様子を見ようと言う者達や、 今すぐにでも代王を正式な王に即位させようと言う者達で半々だった。 まだ子供であるレギンに裁定を仰ぐ事は出来ない。 必然的に摂政であるガロンヌが裁定を下す事になる。 当然、やるべき事など決まっていた。 ガロンヌはシグナムの死亡認定と、レギンのファーヴニル王即位の両方を決定させた。 手順はかなり違ってしまったが、ガロンヌは遂にレギンを王にする事が出来た。 計画は着々と進んでいた。後はこの王様が、自ら政治をやるなどと言わなければいい。 そうなった場合は、速やかに玉座からご退場願わなければならず、 せっかくの計画も台無しである。出来れば無能な王であって欲しい。 自分にとっても王にとっても、ガロンヌはそう思っていた。 639 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 02 00 ID rhvtT6cM 子供の頃のレギンは、異母兄であるシグナムから見ても賢愚が定かではなかった。 まだ九歳なのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが、なんとも特徴のない子供だった。 その平凡なレギンは、十二、十三と歳を重ねたがこれといって知性のきらめきを見せず、 十五、十六歳頃になると、目に見えて変化があった。 酒を飲むようになったレギンは、連日後宮に入り浸り、長夜の飲を行なう様になったのだ。 だが、レギンの淫行はこれだけに留まらなかった。 長夜の飲も然る事ながら、メディア・コルキスという愛妾を常に侍らし、 女官達に音楽を奏でさせるなどして、ますます堕落の度合いを強めていった。 レギンがまだ政治に関与する歳でないとはいえ、 流石にこれはまずいと思った者もおり、臣下の何人かはこの淫行を諌めようとした。 しかし、後宮には王以外の男は入れない決まりになっているため、 諫言できる場所が限られていたばかりか、 レギンが諫言する者は殺すという箝口令を出し、臣下達の口を塞がせてしまったのだ。 出歩く際は、ローラン・デュランダルという素性も知れない仮面騎士がレギンの傍に侍り、 この令が冗談ではない事を内外に知らしめた。 この状況をほくそ笑んでいたのはガロンヌだった。 平凡だとは思っていたが、まさかこちら側に堕ちてくれるとは思わなかった。 あと二年で、レギンが政柄を握る事になる。 それだけの時があれば、暴君にするなど造作もない事である。 親政開始時に、この様な絵に描いた暴君を見れば、皆大いに失望し、新たな王を望むだろう。 その時こそ、自らの野望を成就させる絶好の機会である。 残りの二年、レギンの好きな事をやらせてやろう。 あの女が欲しいと言えば、大臣の妻であろうと掻っ攫い、 宮殿を大きくしたいと言えば、民家を潰し、金が欲しいと言えば、民に重圧を掛けてやろう。 自らの命令で思い通りになる快楽をたっぷりと味合わせて、地獄の底に叩き落してやる。 それまで、精々人生の春を謳歌するがいい。 薄笑いを浮かべたガロンヌは、部屋の闇に消えた。 640 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 02 28 ID rhvtT6cM 二年の歳月はあっという間に過ぎた。レギン親政の年である。 結論から言えば、レギンは暗君から暴君へは墜落しなかった。 だが、暗君から名君にもならなかった。 やっている事は今までと変わらず、酒、女、音楽に溺れる日々だった。 せっかくレギンの評判を叩き落す好機だったが、これではあまり意味がなかった。 とはいえ、まだ時間はある。豹変するまで様子を見る事で、ガロンヌの腹は決まった。 摂政から宰相になったガロンヌは、この怠惰な王の親政を静観した。 一、二年と時が過ぎ、季節は春の盛りとなった。 レギンは相変らず酒ばかり飲んでいるが、一向に暴君の片鱗は見せなかった。 国内はガロンヌの手腕もあり、可もなく不可もなく治まっていた。内心、ガロンヌは焦り出した。 これまでにも怠惰な暗君というのは何人とこの世に出てきた。 それ等は皆、何事もなくその生を全うしていった。 今更怠惰と言う理由だけで追放する事など不可能だったのだ。 ガロンヌは眠り目で群臣達を見渡すレギンを見つめた。 知性の知の字も見当たらないその顔に、ガロンヌはなんとも言えない苛立ちを覚えた。 退廷後、ガロンヌはとある一室に同志数人を集めた。 彼等はガロンヌが選んだ平民出身の大臣達だった。 「計画の実行を早める」 開口一番にそう切り出したガロンヌに、大臣達は顔色を失った。 沈黙の中、一人の大臣が口を開いた。 「宰相閣下、確かに陛下は色に溺れる暗君ですが、まだ暴政を行なった訳ではありません。 今計画を実行すれば、貴族達や他の公子達の反発を招きますぞ」 「そんな事は先刻承知だ。だが、この千載一遇の機会を逃せば、 我々の理想郷の実現は遠退くばかりである。ここが勝負の分かれ目なのだ。 民さえ味方に付けられれば、公子や貴族など恐れるに足りぬ」 ガロンヌはそう言うと、大臣達に指示を出し、散会した。 その夜中、大臣の一人がファーヴニル城を抜け、領地に帰った。 五日後、その領地で反乱が起こり、その火種は各地に広がった。 兵士や平民を合わせて、五十万にも及ぶ大乱だった。 641 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 03 03 ID rhvtT6cM 反乱勃発の報せは、すぐさまレギンの許に届いた。 驚いたレギンはすぐさま御前会議を開いた。 「はっ……反乱が起こったというが、どっ……どうすればいいのだ!?」 おどおどと左右の群臣を見回し諮問する様に、王の威厳など見当たらなかった。 内心で薄ら笑いを浮かべているガロンヌが進み出た。 「私に兵をお与えください。相手は所詮寄せ集めです。一戦で打ち砕いてみせましょう」 「そっ……そうかそうか、汝は政治だけでなく軍事も堪能だったとは、 長い間共にいたが、全く気付かなんだ。で、兵はいかほど所望するのだ?」 「二十万もあれば十分でしょう」 「おうおう、賊軍の半数以下の兵力で戦うとは、なんとも勇ましいものよ。 よし、汝に全権を預けるゆえ、見事に賊を討滅せよ」 レギンは蘇った様に陽気な声を出し、ガロンヌに斧鉞を与えた。 慎んでそれを受け取ったガロンヌは、急いで部隊を編成し出陣した。 ガロンヌを見送った後、レギンの表情から怠惰というものが消えた。 護衛であるローランは、レギンの合図を受け、無言で大臣達を斬り殺していった。 それ等は全て、ガロンヌと結託していた大臣達であった。 その最後の一人となった大臣に、レギンは剣を向けた。 「お前の親玉の計画を教えてもらおうか」 今まで聞いた事もない様なレギンの冷たい声に、大臣は悲鳴を上げた。 逃げられない様に、ローランが腕を捻り上げている。 大臣は諦めたのか、わなわなと震える口を開いた。 「さっ……宰相閣下が軍を返されたら、わっ……我々同志一同がこっ……後門を開き、 へっ……兵を招き入れるという計画でごごっ……ございます!」 「なるほど、よく分かった」 「おっ……お助け……うげっ……」 レギンの剣が、大臣の喉を刺し貫いた。 大臣の死亡を確認する事なく、レギンは唖然とする群臣を見回し、口を開いた。 「諸君、今、ファーヴニル王家始まって以来の未曾有の危機が訪れようとしている! ガロンヌは先王から受けた寵愛に報いようとせず、あろう事か無辜の民を煽動し、 我が王室を傾倒させ、自ら独裁国家を築こうとしているのだ! これ以上、歴史あるファーヴニル王国を、下劣な乞食上がりに踏み躙らせる訳にはいかない! 皆一致団結し、共にこの大難を乗り切るのだ!戦って、勝って、自らの名を青史に刻み付けよ!」 レギンの檄の後、一人の大臣が万歳を唱えた。続け様に一人、また一人と万歳を唱え始め、 遂にそれは、万雷の声となって王宮内に響いた。 642 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 03 33 ID jfDCykFL 軍議において、群臣の間から出撃してガロンヌと決戦しようという声が聞こえた。 内通者を皆殺しにした今、背後を突かれる心配などなく、平野での決戦ならば、 例え兵力差があろうと、勝つ事が可能であるというのが彼等の自説である。 だが、レギンはあえて篭城策を取った。 別に七十万の大軍が恐ろしいという訳ではなく、今まで暗君を演じてきたレギンが、 急に兵を率いて決戦などをすれば、ガロンヌに勘付かれ、逃げられる可能性がある。 ガロンヌを確実に殺すには、徹底的に暗君を演じ続ける必要があったのだ。 群臣が不安の表情を浮かべる中、それを一身に受けるレギンは泰然としていた。 三日後、ファーヴニル城の正門前は、反乱軍七十万に埋め尽くされた。 レギンは防衛を軍務大臣に一任させ、自らは王宮に居座った。 反乱軍の陣容は、前線に平民四十万、後方にガロンヌの率いていた兵二十万と、 反乱を起こした領地の兵十万を配置するというものだった。 明らかに精鋭を温存し、いざという時に動いてくるという考えが、そこからありありと見える。 「民にどう吹き込んだのかは知らないが、悲惨な戦いになりそうだな」 難攻不落の巨城ファーヴニルを相手に、寄せ集めの軍団がどこまでやれるのか。 悠然と玉座に腰掛けるレギンの許に、攻撃開始の報告が届いた。 攻防戦は、凄まじいものだった。 両軍の号令の下、矢と砲弾が入り混じった矢合戦が始められた。 無数の矢は空に黒い橋を作り、砲弾は落雷の様に地を抉った。 調練をまともに行なっていない平民は、次から次へと矢と砲弾の餌食となった。 が、流石に兵力差は覆し難く、その間隙を縫って矢や砲弾の雨の下を掻い潜り、 城壁を攀じ登ろうとする者達が現れた。 それ等は城壁上から熱湯や石を投げ掛けられ火傷し、潰された。 「雑魚には目をくれるな!後方でちょこまかと動いている本隊を攻撃せよ!」 軍務大臣の檄が飛んだ。波の様に押し掛ける平民達の間に混じって、 後方の部隊が弓矢や大砲を放ってくるのだ。 少しずつとはいえ、城壁側の兵力も確実に減少していった。 堪りかねた軍務大臣が、出撃命令の要求の使者を送ったが、 レギンはそれを退け、ひたすら防衛に専念せよ、と改めて命令をした。 レギンの命令を聞いた軍務大臣は、いったいなにを待つというのか、と怒鳴り声を上げた。 そもそも篭城は、外から援軍が来る事を想定して立てられる策である。 確かにファーヴニル城の周辺には他の貴族の領地があり、援軍は期待できる。 しかし、この落日の軍を助ける貴族がどこにいるというのか。 レギンの死んだ後に立てられた王に取り入る方が安全であるに決まっている。 つまりは、ファーヴニル城に駆け付けてくれる忠勇の領主などいる訳がないのである。 あれほど偉そうな事を言っても、所詮はただのボンクラか、と軍務大臣は怒りを胸に、 手に取った弓で押し寄せる平民に矢を放った。 643 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 04 12 ID jfDCykFL 防衛のみの戦いが続いていた。 難攻不落といえども、三十日という長い篭城は、城兵達には地獄でしかなかった。 レギンを見つめる群臣の目に、悉く侮蔑の色が表れていた。 口先だけ、役立たず、無能、裏では散々罵倒されていた。 そろそろか、とレギンは判断した。真夜中、一人の小間使いが呼ばれ、闇に消えた。 翌日も、正門前では激闘が繰り返されていた。 城壁前には無数の死骸が転がっており、腐臭を放っていた。 その死骸を踏み越え、城壁に向かってくる平民を、城兵が無表情で迎撃していた。 お互いに疲労は極限まできており、最早気力で戦っている様なものだった。 激闘は日暮れと共に一時中断となった。両軍から炊煙が上がり始めた。 そんな時、レギンが軍の主だった者達を宮中に呼び集めた。 降伏でも発表するのか、と諸将は侮蔑の視線をレギンに向けていた。 その様な視線の中でも、レギンは萎縮しなかった。 「今日、この日を以って戦いを終わりにする」 やはりな、と諸将が呆れて溜め息を吐いた。 「ついては、私が兵三万を率いて後門付近に伏せ、敵を撃退する。 それと同時に諸将には正門から出でて、反乱軍を攻撃してもらう」 諸将の目が驚きで見開かれた。レギンが言葉を継いだ。 「内通者の言っていた時とは、正門に戦力が集中した今しかない。 内通者が全滅した事を知らないガロンヌは、私の送った偽の使者の言葉を鵜呑みにし、 今日の夜半に奇襲を仕掛けてくる。私の事を殺したくて堪らない奴の事だ。 他の将ではなく、必ず自ら部隊を率いてやって来るだろう。付け込む隙はそこにある!」 威のある声だった。その声は諸将を圧倒し、平伏させた。 城内が慌しくなった。三万の兵を率いたレギンは後門付近に兵を伏せ、 奇襲部隊がやって来るのを待った。 レギンの才覚を疑っている兵達にとって、この時間は不安でしかなかった。 しばらくすると、場外から微かだが物音が聞こえた。 次の瞬間、後門が開けられ、馬の嘶きと足音が聞こえてきた。 焦る気持ちを抑え、隊列が中頃を過ぎた辺りで、やっとレギンが合図を送った。 瞬間、周辺は煌々と光る松明で照らされ、間髪を入れずに無数の矢が放たれた。 目に見えて奇襲部隊は動揺した。レギンは剣を抜き、敵中に突っ込み、ガロンヌを捜した。 逃げ惑う兵を踏み潰し、レギンは慌てて逃げようとするガロンヌを見付けた。 レギンは剣を振り上げ、ガロンヌの首を切り落とした。 「敵総大将ガロンヌを討ち取ったぞ!」 レギンの声と共に、火矢が天空に放たれた。 それを見た軍務大臣が、正門を開け、寝静まっている敵陣に突入した。 将兵は皆口々に、ガロンヌは死んだ、と叫び、目に付く兵を斬り殺していった。 この頃になると、将兵達も本陣にガロンヌがいない事に気付き、混乱は本格的なものとなった。 反乱軍の潰走を始まった。合流したレギンは追撃を命じ、徹底的にこれを叩き潰した。 こうして一月に及んだファーヴニル城攻防戦は、討ち取った首級の数十万、 捕虜の数三十万という王軍の大勝利に終わった。 この勝利は、今まで暗君としか思われなかったレギンが、 一転して尋常ならない人物であると内外に知らしめるのには十分すぎる出来事だった。 644 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 04 42 ID jfDCykFL 戦後、レギンは論功行賞だけでなく、箝口令が布かれた中、 媚び諂い私腹を肥やした臣下の誅殺を行ない、有能な臣下を登用した。 レギンの擬態は、ガロンヌを騙すためだけではなく、臣下を見極めるのにも役立ったのである。 戦後処理を終えたレギンは後宮に帰り、部屋の入り口で立ち止まった。 疲れた、というのが本心だった。 六年という長きに亘って暗君の演技をしていたが、それもやっと報われるのである。 小さく溜め息を吐いたレギンは、急に背中を押され、ベッドに倒れ込んだ。 振り向くと、そこにはローランが立っていた。 「捜したんだよ、レギンちゃん。帰る時は一緒だっていつも言ってたのに」 仮面の下か聞こえてきたのは、男ではなく女の声だった。 鎧のプレートを一枚一枚外していき、最後に仮面と兜を脱ぐと、 そこにいたのは、ショーツに晒しを巻いているだけというあられもない格好のメディアだった。 「やっぱり鎧はいつ着ても蒸れるなぁ……。汗でべとべとだよ……。 ……レギンちゃん、勝手に行動した罰として、汗を舐めてもらいますからね」 メディアに押し倒され、顔に腋の下を押し付けられた。 むせ返りそうな甘い匂いが、レギンの鼻腔をくすぐった。 「ちゃんと舐めないと、お仕置だからね」 気圧される様に、レギンはメディアの窪みに舌を伸ばした。 舌が甘く痺れる。舐めれば舐めるほど、身体が浮いているのではないかと錯覚してしまう。 「あはっ……レギンちゃん、私の汗、んっ……おいしい?」 とろんとしたメディアの瞳に見つめられた。 こんな事、本当は嫌なのに、舌が止まらない。 「うふふ……、急がなくても、あんっ……逃げないから安心して……」 そう言って、まるで子供をあやす様に頭を撫でられた。 子供扱いをするなと言いたいが、後が怖いので口を噤むしかない。 時間も忘れて舐め続けていると、メディアが一旦身体を離した。 「じゃあ次はぁ……」 手を後ろにやって、晒しを緩めると、押さえ付けられていた胸が飛び出した。 「おっぱいを舐めて……」 大きな胸に顔を押し潰される。汗が潤滑油となって抵抗なく擦り付けられた。 レギンは勃起した薄紅色の乳首に舌を這わせ、空いている方には爪を立てた。 柔らかい胸がレギンの手の形に歪む。 「んはぁ……、レギンちゃん、ぁうっ、もっと……、もっと強く……」 メディアの抱き締める力がさらに強くなった。乳肉に気道を塞がれる。 乳首を吸うのを止め、軽く甘噛みすると、メディアは引いてくれた。 と思ったら再び強く抱き締められた。 目の前が白いのは、肌の色か酸欠か、レギンには分からない。 どの道、お仕置きは避けられないじゃん、とレギンは愚痴りたくなった。 645 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 05 42 ID jfDCykFL レギンがガロンヌに恐怖を感じ始めたのは、十歳の時だった。 その時はどうしてガロンヌが怖いのかもよく理解できなかったが、 時折見せるガロンヌの狂気めいた目を見た時、本能的にガロンヌは敵だと認識した。 だが、だからといってどうすればいいのかも分からず、ただ流されるだけの日々が続いた。 十四歳頃になると、ガロンヌが自分に対して敵意を持っている事に気付いた。 思春期特有の過剰な自意識を超越したそれは、レギンを大いに苦しめた。 誰かに相談しようにも、周りの群臣はガロンヌに頭を下げてばかりで信頼できなかった。 そんな中で、レギンが唯一心を許せた存在が、二歳年上のメディアだった。 メディアはファーヴニル家に代々仕える貴族の子女であり、 父親の意向で王の生活居住区である後宮に入れられたのだ。 レギンは小さな頃から親しく、メディアを本当の姉の様に慕っていた。 この人ならば、とレギンは自らの懸念をメディアに告げた。 メディアはレギンの告白を笑わず、 寧ろ、レギンちゃんに頼られて嬉しいわ、と真剣に耳を傾けてくれた。 数日もすると、メディアが以前流行った奇妙な噂を持ってきた。 それは、先王はガロンヌに毒殺されたのではないかというものだった。 先王が死ぬ直前、最後に見舞った人物がガロンヌだった事と、 ガロンヌの指示で、この国では一般的な土葬ではなく火葬にしたという事が、 その噂の下地となっていた。馬鹿馬鹿しい噂で片付けてしまえばそれまでだが、 レギンにはそれが真実の様に聞こえた。もともとレギンの勘は鋭い方である。 なぜガロンヌが先王を殺したのか、考えれば誰にでも分かる。 先王が死ねば、王位後継者だったシグナムがいなかった当時、 後継者となるのは必然的にレギンである。レギンを王位に据え、自ら政治を壟断する。 または王位を狙っているのではないかと予想する事も容易い。 これ等が全て推測の域を出ていないとはいえ、用心するに越した事はない。 どうしようかと、考え始めた矢先、メディアが拍子を打った。 「レギンちゃん、いい方法があるわ。今から暗君になればいいのよ」 「えっ?」 いきなりなにを言い出すのか、という表情をメディアに向けた。 メディアは相変らず朗らかに微笑んでいた。 「宰相が気にしている事は、レギンちゃんが政治に興味があるかどうかよ。 下手に政治に興味を持たれでもしたら、対立する事は明らかだし、 そうなったら殺される事は目に見えてるわ。 そこでレギンちゃんには、色に溺れる駄目君子になってもらうの。 そうすれば宰相の目を欺けるし、尻尾を掴む事も容易くなると思います」 「だけど、そんな事をしたら群臣だけでなく、民にも捨てられるんじゃ……」 「宮中の出来事を民達が知る術なんてないから、そんな事は考慮しなくていいわ。 それに群臣達も、レギンちゃんの実力を知れば、おのずと納得するから大丈夫よ」 メディアの策は、全てが運に絡むものだった。 だが、ガロンヌに抱いた不審は一向に消えそうにない。 ここは、自分の勘とメディアを信じるか。レギンは決心した。 「うん……、分かった。姉さんの策に従うよ」 この日から、レギンの擬態は始まった。 646 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 06 31 ID jfDCykFL 暗君が好むものといえば、酒、女、音楽の三つと相場で決まっている。 酒と音楽は問題なかったが、女に関してはメディアから提案があった。 それは、手を出す女性はメディアただ一人にして欲しいというものだった。 「この後宮に、宰相に通じている女官が入り込んでいないとも限らないわ。 過去にも、大事を起こそうとした貴族の妻が敵方と縁戚で、 そこから情報が漏れてしまったという話もあるし……。他人だったら言わずもがなよ」 明快な理由だった。だが、どこか気が引けた。 演技とはいえ、メディアにいやらしい事をしなければならないのだ。 実の姉の様に慕っているメディアにそんな事をしたくはない。 表情で察せられたのか、メディアはレギンの頭に手をやり、 「私は別にどうなってもいいの。レギンちゃんがこの国の王になって、 しっかりと治めてくれれば、それだけで私は満足だから」 その言葉から壮絶な決意を感じられた。その決意を無下に断る事など、レギンには出来なかった。 極力、女色に走らないようにしようとレギンは心に決めた。が、それは不可能だった。 酒に溺れ、音楽に入り浸る王が、なぜか女にだけは手を出さない。 女が嫌いという訳でも、男色の気があるという訳でもないのにだ。こんなおかしな話はない。 暗君を演じる上で、この三つの色は必要不可欠なのだ。 レギンは心中で謝りながら、メディアの胸や太ももに手を這わせ、吸い付いた。 その度に、メディアは顔を紅くした。嫌がっている事は明白だった。 メディアと二人きりになった寝室では、何度も頭を下げた。 その度にメディアは微笑みながら、次はもっと激しくしてください、と言った。 レギンは居た堪れなかった。早くこの様な事が終わればいいと切に願った。 一年も経つと、レギンの悪評が宮中でも聞こえるようになり、 日に日に諫言をしに来る臣下と、媚び諂いの言を掛ける臣下が多くなった。 それだけでも、群臣がレギンの演技を真に受けているという事は察せられた。 レギンはやる気のない生返事で応答し、呆れ顔をする臣下達を尻目に後宮に帰着した。 既に次の心算は出来ていた。箝口令を布き、群臣の口を塞ぐのである。 これで暗君の評価は確実なものとなる。 レギンはこの事は誰にも告げなかった。だが、なぜかメディアに悟られてしまった。 「レギンちゃんの考えている事だったら、なんでも分かるよ」 とは本人の言である。この発言にレギンは一瞬空恐ろしさを感じたが、 表面上は笑みを浮かべ、姉さんには敵わないな、と言ってベッドに横になった。 ベッドは二人が一緒に寝るには十分すぎるほど大きい。 暗君の演技をする際、寝る時は一緒、と二人で決めたのだ。 メディアがベッドに上がり、後ろから抱き締めた。 「レギンちゃん、その箝口令なんだけど、破った人はどうする事にしてるの?」 「んっ……、命を賭けて諫言する臣下がガロンヌと繋がっているはずはないから、 その時は本当の事を話して、味方になってもらうつもりだ」 「だったら、もっと分かりやすい形で知らしめる必要があると思うんだけど……」 腹案のありそうな声だった。レギンは向き直り、メディアと目を合わせた。 「私が鎧を着て、レギンちゃんの横に侍ったら、いい宣伝になるんじゃないかな」 メディアの案は、流石のレギンでも首を捻るようなものだった。 その様な事をしなくても、諫言する臣下を斬ろうとする動作をすれば、 それだけでも十分宣伝になるはずである。 わざわざメディアが鎧を着て横に侍る理由が分からない。 メディアの気配が変わった。表情は変わらないのに、放つ気がレギンを圧迫した。 「私がレギンちゃんの足を引っ張る様な策を立てる訳ないじゃない。大丈夫、私を信じて……」 真正面から抱き締められた。顔がメディアの大きな胸に埋まり息苦しい。 レギンは少し考えて、形だけだからいいか、と結論を出し、メディアの案を呑む事にした。 647 :ドラゴン・ファンタジーのなく頃に ◆AW8HpW0FVA :2011/02/13(日) 00 07 51 ID jfDCykFL レギンの横に、ローラン・デュランダルという仮面騎士が侍るようになった。 当然それは、メディアが騎士の格好をしている時の偽名である。 メディアの言う通り、仮面騎士を侍らせると、多くの臣下がレギンを恐れるようになった。 仮面騎士は十分脅しとして通用するものだった。 だが、やはりというべきか、命を賭けてレギンに諫言をする臣下もいた。 婉曲に諌言する者もいれば、直接訴えてくる者もいた。 レギンはその者達に本当の事を話し、時機を待て、と言った。 後に彼らはレギンの政権下で、大いにその力を振るう事になる。 箝口令が布かれてから一年が経った。レギンの周りには媚び諂い私腹を肥やす臣下が集った。 レギンはそれ等の者達を招き大宴会を催した。 彼等の話は全て媚び諂いばかりで、理知の欠片も見当たらなかった。 レギンは緩んだ笑みを浮かべながら、内心で彼等を貶していた。 なんとなしに周りを見回すと、ある事に気付いた。メディアがいないのである。 一緒にいる時は傍を離れない、とメディアが一方的に決めたはずなのに、 こういう事は珍しかった。 「はははっ、酒を飲みすぎると、近くなってしょうがない」 気になったレギンは催した振りをして宴会の席から離れ、メディアを捜しに出掛けた。 当てはなかったので、適当に辺りをうろついていると、大きな物音が聞こえた。 音のした方に向かうと、そこは人があまり使わない部屋だった。 中を覗いてみると、血塗れの死体を見下ろすメディアの姿がそこにいた。 「姉さん……」 思わず大声を上げそうになった。部屋に入り鍵を閉め、メディアに近付いた。 仮面を被っていて表情は窺えないが、メディアの声は嬉々としたものだった。 「こいつはレギンちゃんに近付いて、情報を引き出そうとした愚かな雌豚だよ。 雌豚の癖に、私を介してレギンちゃんに近寄ろうとするなんて、 なかなか小賢しい事を考えるよね」 背筋が凍った。いつもの様に笑っているメディアが、今はとても恐ろしかった。 「怖がる必要なんてないよ。レギンちゃんの行く手を遮る奴は、 私が皆殺してあげるから。だからレギンちゃんは、私だけを見て」 メディアは狂っていた。いつどこで狂ったのかは分からないが、 最早後戻りは出来ないところまで来てしまっている事は十分に理解できた。 この日を境にメディアは変わってしまった。 レギンは幾度もメディアに押し倒され、その身を愛液や唾液で汚された。 目が覚めたレギンの横には、裸のままのメディアが幸せそうな寝顔を浮かべて眠っていた。 顔にはかぴかぴとしたものがこびり付いており、昨日なにがあったのかを如実に表していた。 「ガロンヌは倒せたが、今度はメディアに囚われてしまったか……」 メディアの髪を一通り撫でた後、レギンはすぐに服を着替えた。 片付けなければならない案件が溜まっているのだ。帰ってくるのは深夜になりそうである。 「今日もまたお仕置きかな……」 そう呟いたレギンは部屋を出て行った。 部屋には、メディアの寝息のみが響いていた。
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武人として/鮮血の結末 (前編) ◆guAWf4RW62 オボロは辺りの様子を窺いながら、慎重に森の中を歩いていた。 普通に進むのに比べて大幅に行軍速度が遅くなるが、それは必要経費だ。 千影の言っていた『銃』という道具は、弓矢を遥かに凌駕する恐るべき武器であるらしい。 実際に体験した訳では無いが、此処は出来る限り警戒しておくべきだろう。 どの方角から攻撃されるか分からない以上、極力物陰に身を隠し続けるのが重要だ。 聳え立つ木の影から、そっと頭を出す。 周囲の安全を確認した後、次の木の陰へと一目散に走り移る。 そしてまた近辺の状況を確認してから、次の木に移るという動作を繰り返す。 卓越した身のこなし、常人を大きく上回る身体能力。 疾風の如き速度で走り回るオボロを、正確に撃ち抜ける射手などこの世には存在しない。 だがオボロは一つ、大きな勘違いをしていた。 木を盾にしながら移動する――それは確かに、矢相手なら十分有効な行動だろう。 そう、あくまで矢が相手ならば。 事は、オボロが木の陰を飛び出した直後に起こった。 「…………っ!?」 鳴り響く銃声、轟く爆発音。 全身に伝わる凄まじい振動。 肌に叩きつけられる、飛散した木の破片。 オボロが震源に目を向けると、太さ1メートルはあろうかという木の幹が、無惨にも叩き折られていた。 支えを失った大木が力無く揺らぎ、重力に従って倒れてくる。 圧倒的な質量を伴ったソレが直撃すれば、いかなオボロとて無事では済まぬだろう。 「――くぅぅッ……!」 オボロは即座に数歩の助走を経て、大きく地面を蹴り飛ばした。 制限を受けてはいるものの、トゥスクル国随一と言えるその跳躍力は凄まじい。 僅か数秒足らずの内に危険地帯から離脱し、身体の降下が始まった時にはもう、現状を把握すべく思考を巡らせていた。 銃声が鳴り響いた後に、近くにあった木が破壊されたのだから、自分が狙撃されたのだという事は分かる。 元々銃声がした方向に向かっていたのだから、これは十分に予測し得た事態だ。 だが、この恐ろしい破壊力だけは完全に想定外だ。 一撃で大木を破壊する程の遠隔攻撃など、少なくとも自分の常識では有り得ない。 これでは木を盾にしての移動など、敵に照準を合わせる猶予を与えてしまうだけだ。 迫り来る爆撃は易々と盾を貫通し、只の一撃で致命傷となるに違いないのだ。 「ク――――」 盾が意味を成さぬのなら、最早自力で全て回避し切るしかない。 オボロは血相を変えて、左右に、或いは上下に、縦横無尽に跳ね回る。 そこで再び銃声が鳴り響いて、すぐ近くにあった茂みが跡形も無く粉砕された。 そしてその銃声のお陰で、オボロは視認する事が出来た――右方約150メートル程の所に居る、狙撃手の姿を。 特徴的な青い長髪、そして自分と同じような長い耳を携えた少女が、地面に寝転んだ体勢で筒状の物体を構えていた。 恐らくは、あの少女が狙撃してきているのだろう。 クロスボウで反撃したい所だが、この距離から標的を捉えるのは難しい。 ならばと、オボロは距離を詰めるべく疾走し始めたが、そこで少女の構えた筒が火を噴く。 その一秒後には前方の小木が、呆気無く爆散していた。 直撃どころか掠ってすらいないというのに、その衝撃が自分の所にまで伝わってくる。 鼓膜を痛め付ける轟音が、オボロに一つの確信を齎す――――掠っただけで、間違いなく死ぬと。 このような状況で交戦を続けようとするのは、ただの自殺行為に過ぎぬだろう。 自分はまだ、四葉を殺した償いすら成し遂げれてはいない。 此処で血気に逸って死ぬ訳にはいかないのだ。 (……一旦引くしかないな) くるりと踵を返す。 オボロは素早く決断を下し、狙撃手から距離を取るような方角に疾駆し始めた。 当然背後を狙われぬよう、不規則にフェイントを交えながらだ。 「……逃がしてしまいましたね」 冷静な狙撃手――ネリネは、遠ざかるオボロの背中を見送りながらそう呟いた。 銃を用いての遠距離狙撃は、予想以上に難易度が高かった。 確かに永遠神剣の身体能力強化を利用すれば、発砲の反動をある程度押さえ込む事は出来る。 動き回る獲物の一挙一動を、逃さず視認する事は出来る。 戦車をも破壊し得る九十七式自動砲ならば、敵が木の陰に隠れていようとも、その守りごと貫ける筈だった。 だが自分程度の射撃技術では、狙った箇所を正確に撃ち抜くのは困難だったのだ。 その所為で千載一遇の好機を逃してしまった。 とにかく、何時までも此処で休んではいられない。 ある程度の時間休息したお陰で、多少は体力・魔力共に回復した。 これからは移り変わる状況に対応して、的確な行動を取らねばならないだろう。 自分がこれまで見てきた限り、神社に向かった者は合計四人。 先程の男とその仲間が三人。 そしてもう一人は―― ◇ ◇ ◇ ◇ 舞台は神社の入り口付近に変わる。 突如鳴り響いた、鼓膜を奮わせる大きな銃声。 それは当然、トウカや千影の耳にも届いていた。 異変の正体を確かめるべく、千影が本殿から飛び出してくる。 「――トウカくん、今のは……?」 「某にも分かりませぬ。オボロが去った方向から聞こえ――――!?」 トウカはオボロが向かった方角を指差そうとして、大きく目を剥いた。 振り向いた先――左斜め前方より、巨大なナニかを構えた少女が、ゆっくりと歩いてきていた。 トウカには直感で分かった。 少女が持っているのは、恐らく銃、それも相当強力な部類に属するものだ。 「私は楓、芙蓉楓です。少々お尋ねしたい事があるんですが、宜しいでしょうか?」 突如現れた芙蓉楓が、重機関銃――ブラウニングM2“キャリバー.50”を保持しつつ、語り掛けてくる。 不快な音響を奏でる、酷く昏い声。 こちらを眺め見る、何処までも深い闇を湛えた瞳。 全身の様々な部位に付着した、紅い鮮血。 楓の身長とほぼ同じ大きさを誇る、最強の凶器。 あれだけの質量を持ち上げ続けるのは辛いだろうに、楓は決して銃を手放さない。 少女から伝わってくる尋常でない雰囲気が、巨大な重火器の存在が、トウカの警鐘をけたたましく打ち鳴らす。 (ク…………不味いな……) 全身の表面に鳥肌が立ち、手足を痺れさせる程の悪寒が湧き上がってくる。 トウカがちらりと横を眺め見ると、千影の顔にも焦りの色が浮かんでいた。 楓の構えたブラウニングM2“キャリバー.50”の銃口は、しっかりと自分達の方に向けられている。 自分一人ならまだ対応のしようもあるが、千影を連れて回避行動に移るのは難しい。 それにまだ楓が敵と決まっていない以上、此処は極力穏便に事を進めるべきだろう。 トウカは否応無く、楓との会話を行う羽目になった。 「……某の名はトウカ、エヴェンクルガの武士なり。お主の用件を伺おう」 「では聞かせて頂きます。稟くんが此処に来ている筈なんですけど……見かけませんでしたか?」 「すまぬが心当たりが無い。某達が此処に来てから出会ったのは、お主が始めてだ」 「そうですか……」 質問に対し嘘偽りの無い答えを返すと、楓の表情が落胆のソレへと変わった。 恐らくは探し人を見つけられなくて、落胆しているのだろう。 トウカは油断無く剣を構えたまま、冷静に思考を巡らせる。 ……この殺し合いで人を探す場合には、二つのパターンが考えられる。 一つは、大切な人間を守る為に探し回っているというケース。 これなら全く問題は無い。 自分だってハクオロやアルルゥを護衛しようと、必死になって動き回っていたのだ。 止めるどころか寧ろ、暖かく見守ってやろうではないか。 だがもう一つは、特定の人物を殺す為に探し回っているというケース。 この場合は、易々と見過ごす訳にいかない。 幾ら相手が強力な武器を携えているとは言え、危険人物を放置など出来る筈が無い。 自分は正義を信念に戦う者。 誇り高きエヴェンクルガ族なのだから。 「楓殿といったか。お主は稟殿とやらと出会って、どうするつもりなのだ?」 「――決まっています、稟くんをお守りするんです。たとえこの身を犠牲にしてでも、絶対に最後まで守り通して差し上げるんです」 紡がれた返答には、一切の曇りも迷いも無い。 知略に長けているとは到底言えぬトウカですら、楓の言葉が本心であると確信出来た。 仲間を守る為に探し回るという行動原理は、トウカとなんら変わりない。 半ば正気を失っているように見えたが――もしや、楓の志は自分と同じではないのか? 仲間として、共に歩んでいけるのではないか? そんな希望が、トウカの心に湧き上がる。 だがそこで一人の男が出現した事によって、状況は一変する。 「トウカ! 千影! これは一体……」 「――――オボロくん……」 逸早く気付いた千影が声を上げる。 現れたのは、ネリネの銃撃から逃げ延びたオボロだった。 そしてオボロの視点に立ってみれば、今の状態はトウカ達が追い詰められているようにしか見えない。 仲間が襲われているとなれば、やるべき行動など一つしか有り得ない。 「貴様、俺の仲間に何をやっている!!」 「オボロ、待――――」 トウカが制止の声を投げ掛けるが、それは余りにも遅い。 オボロは何の躊躇も無く、素早い動作で楓目掛けてボウガンを撃ち放った。 楓はすっと横に動いて矢を躱したが、それはオボロの狙い通りだった。 ボウガンは矢の再装填に時間が掛かり過ぎて、連続攻撃には不向きだ。 事実岡崎朋也との戦いでは、それが原因で逃げられてしまった。 少数戦に於いてボウガンが力を発揮するのは、最初の一発だけなのだ。 ボウガンのみで敵を仕留めるのは困難――ならば、連携の一環として組み込めば良いだけの事。 そう考えれば、最初の一発だけで十分。 敵を回避に回らせる事さえ出来れば、距離を詰める時間的猶予が生まれる。 「――――フッ!!」 疾風と化したオボロが、あっという間に楓の眼前まで走り寄る。 高重量の機関銃を装備している楓は、オボロのスピードにまるで対応出来ていない。 オボロは果物ナイフを振り下ろし、楓のブラウニングM2“キャリバー.50”を叩き落してた。 間髪置かずにブラウニングM2“キャリバー.50”を蹴り飛ばし、それと同時に楓の喉元へ白刃を突きつける。 「…………っ!」 「フン、ここまでだ曲者が。俺の仲間には指一本触れさせん」 その所業、正しく電光石火の如し。 オボロはその実力を余す所無く発揮し、一瞬で強敵を制圧してみせたのだ。 そしてこれは楓からすれば、孤立無援にして絶体絶命の危機。 此処で交渉を誤まれば、確実に殺されてしまうだろう。 だというのに――楓は凄惨に哂った。 「フフ……貴方はこれまでもそうやって、人を襲い続けてきたんですか? 何もしていない人を、無慈悲に殺してきたんですか?」 告げられた一言。 それは『稟以外の男は全て絶対悪』と断ずる楓の思い込みが生んだ、つまらぬ疑念に過ぎぬ。 だがその言葉は、どんな攻撃よりも的確にオボロの心を射抜いていた。 オボロがよろよろと後退しながら、掠れた声を絞り出す。 「き、貴様何を言っている……?」 「だってそうでしょう。私はまだ何もしていないのに、一方的に襲い掛かってきたんですから。 トウカさん達に聞けば分かります。私はただ、質問をしていただけだと」 言われてオボロが視線を移すと、トウカがこくりと頷いた。 続けて楓が薄ら笑いを浮かべながら、話を続ける。 「ほら、ね。私は悪くないんです。なのにいきなり攻撃してくるなんて、おかしいです。怪しいです。 あ……分かりました。貴方が稟くんを襲った人なんだ、そうでしょ?」 何時の間にか楓の左手には、大鉈がしっかりと握り締められていた。 心なしか、瞳孔も大きく開いているような気がする。 追求を続けてゆく楓は、傍目から見ればとても愉しげだった。 その変貌に少々気圧されながらも、トウカはオボロを弁護しようとする。 「確かに楓殿の言うとおり、某達は危害を加えられてなどいない。だがオボロが殺し合いに乗っているというのは、楓殿の思い違いであろう。 オボロは清廉潔白なる武人。聖上の為に、国の為に、戦い続けてきた男。そんな男が悪の道に手を染めるなど、有り得ぬ事だ。 そうであろう、オボロ?」 「…………オボロくん。……君は、殺し合いに乗っていないんだよね? 信頼して……良いんだよね?」 全員の視線を一心に受けながら、オボロは苦悩する。 此処で『殺し合いに乗っていない』とさえ言えば、全ては平穏無事に終わるだろう。 だがこちらを吟味するように眺め見る、千影の視線。 自分の所為で大切な存在を失ってしまった、少女の目。 世界に満ちた全ての悲しみを、漏らさず閉じ込めてしまったかのような瞳。 その瞳で見つめられると、胸が張り裂けそうなくらい痛む。 抑え切れぬ感情の奔流が、良心の呵責が、次々と押し寄せてくる。 理性では嘘をつくべきだと分かっているのに――気付いた時にはもう、言葉が溢れ出していた。 「……トウカ、千影、すまない」 「!? お主何を――――」 「俺はお前達が思ってるような男じゃないんだ! 俺は罪の無い者を――四葉を殺してしまったんだ!」 「「え…………」」 驚きの声は、トウカと千影のものだ。 衝撃的な告白に暫しの間、場が静寂に包まれる。 やがて千影が、確認するように言った。 とても、冷たい声で。 「オボロくん……それは本当かい?」 「ああ。兄者を守る為……少し前まで俺は殺し合いに乗っていたんだ」 「……それなら、私は君を許さないよ……必ず殺す……」 言い終えると、千影は鞄から短剣――永遠神剣第三位『時詠』を取り出した。 精一杯の憎しみを籠めて、オボロを思い切り睨み付ける。 やはりこの男は、確信犯の殺人鬼だったのだ。 あの時トウカを止めたのは、自分を欺く為だったのだろう。 この卑怯者によって、四葉は殺されてしまった。 自分にとっても兄にとっても大切な、可愛い妹は死んでしまったのだ。 オボロが何故正体を明かしたのかは分からないが、絶対に許せない。 止め処も無く滲み出る殺意のままに、千影は時詠を深く構える。 「――――待たれよっ!」 「……トウカくん、止めても無駄だよ。私は……オボロくんを殺す」 トウカはオボロと知り合いであったらしいから、止めようとするのは理解出来る。 それでも千影は、絶対にオボロを殺すつもりだった。 この島に兄は居ない――ならば自分が、報復を成し遂げなければならない。 だがトウカが発した言葉は、千影にとって予想外のものだった。 「……許さなくて結構、妹君を奪われた千影殿の苦しみは計り知れぬものでしょう。 ですがオボロの不始末は、仲間である某にも責任がある。ならば千影殿が手を汚す事など無い。 某がこの剣で以って、けじめをつけさせて頂く」 トウカはそう言って、ずいとオボロの前に踊り出た。 トウカの冷酷な双眸が、かつて仲間であった者の姿を眺め見る。 オボロは泣いているような、苦しんでいるような、そんな表情をしていた。 「オボロ……お主は武人として、決してやってはならぬ事をやってしまった。罪無き人の命を奪うなど、たとえ聖上の為であろうとも許されぬ。 何か申し開きする事はあるか?」 「……無い。千影が俺を殺すと云うのなら、その決断に従おう」 「そうか。ならば――此処でお主を斬るっ!」 正義を貫き通す為ならば、エヴェンクルガ族は何処までも冷徹になれる。 一切の容赦も躊躇も無く、トウカの剣が、オボロに向けて振り下ろされる。 奔る剣戟、飛び散る鮮血。 左肩から胸にかけて大きく斬られたオボロは、糸が切れた人形のように倒れ伏せた。 (聖上……。某は……某はっ…………!) トウカの心を、形容しがたい激情が襲う。 手に伝わる肉を裂く感触、崩れ落ちる仲間の姿――今まで体験したどんな出来事よりも、心が痛かった。 オボロが死んだ事を知ってしまえば、ハクオロもユズハも酷く悲しむだろう。 何より自分自身だって、戦友の死は悲しい。 それでもトウカはどうにか感情を抑え込んで、千影の方へと首を向けた。 「千影殿……オボロの罪は清算しました。ですから何卒、怒りをお鎮め願いたい」 「…………うん、そうだね」 答える千影の表情は、酷く沈み込んでいる。 復讐を成し遂げた達成感など、微塵も見て取れなかった。 それも当然だろう――オボロが死んだところで、四葉は生き返ったりしないのだから。 残ったのは空しさと、深い悲しみだけだった。 トウカ達が悲しみに打ちひしがれていたその時、それまで黙りこくっていた楓が口を開く。 「これでまた一人、稟くんに害を成す人間が減りましたね。 ですが――この時間になっても稟くんが現れないという事は、私は春原さんに騙されたみたいですね」 「春原……確かあの時の……。楓殿、その話を詳しく聞かせてくれぬか?」 トウカが訊ねると、楓は事の顛末を語り始めた。 楓は春原陽平と名乗る人物の情報を信じて、土見稟と合流すべくこの神社を訪れた。 しかし未だ、稟が神社に現れる気配は無い。 楓が春原陽平と別れてから、もう半日近く経過しているのにだ。 トウカは春原と呼ばれていた男に、騙されそうになった経験がある。 同じようにして、楓も騙されたと考えるのが妥当だった。 トウカが苛立たしげに奥歯を噛み締める。 「春原……人を謀る悪漢め。何時の日か懲らしめねばならんな」 春原という男は殺し合いにこそ乗っていなかったものの、適当な出任せを言う姿勢は戴けない。 次に出会う事があれば、きっちりとお灸を据えておくべきだろう。 まあ犯した罪は比較的軽いし、命を奪う必要は無いが。 それがトウカの結論だったのだが、そこで楓が口を挟んでくる。 「懲らしめる? 何甘い事を言ってるんですか」 「……む?」 「稟くんを襲ったのは男です。私を騙したのも男です。ですから――」 訳も分からず、楓の言葉に耳を傾けるトウカ。 千影もトウカに倣って、黙って話の続きを待とうとする。 だが次の瞬間二人の耳に飛び込んできたのは、おぞましいとも言える程の独白だった。 「稟くん以外の男なんてこの島には必要無いんです、消え去るべきなんです。 稟くん以外の男なんて生きたゴミなんです、稟くんを傷付けるだけのゴミなんです」 まるで歌うかのように、愉しげに放たれる言葉の数々。 少女の淀んだ瞳が、爛々と妖しく輝いている。 「だから私がゴミを全部片付けて、稟くんが傷付かない世界にするんです。私がずっとずっと稟くんをお守りして差し上げるんです。 十年後も、百年後も、未来永劫傍でお世話し続けるんです」 伝わってくる感情は三つ。 異常なまでの愛情と、過ぎた自己陶酔、そして――――稟以外の男に対する、圧倒的な殺意。 「私がこの島を浄化するんです、稟くんの為に浄化するんです。 浄化するんです、浄化するんです、浄化するんです、浄化するんです浄化するんです浄化するんです……」 矢継ぎ早に紡がれる異常な理論に、トウカも千影も口を挟めなかった。 オボロの乱入で有耶無耶となっていたが、最早疑いようも無い。 この少女、芙蓉楓は――完全に、『異常者』だ。 話し合って分かり合えるような相手では無い。 そしてトウカ達が硬直していたその時に、突如パチパチと拍手する音が聞こえてきた。 「――――流石楓さん、素晴らしいお考えです」 とても満足げな声が神社に響く。 それはとても甘美な、しかし粘りつくように重い音響だと感じられた。 トウカ達の視線が、右方にある林の辺りへと引き寄せられる。 そこには、青い長髪の少女――ネリネが屹立していた。 「な――――これは…………」 ネリネの姿を認識した千影は、背筋が寒くなる感覚を禁じ得なかった。 多少なりとも魔術を齧っている自分だからこそ、何とか理解出来る。 こうやって向かい合っているだけでも感じ取れる程の、凄まじい魔力。 人間では決して持ち得ない、桁外れの魔力。 実際には制限があるのだから、十分に対抗可能なのだが――千影からすればネリネは、桁違いの怪物のように感じられた。 そんな千影の狼狽を意に介す事無く、ネリネは楓に語り掛ける。 「ですが楓さん。男だけが稟さまを傷付けるというのは、楽観が過ぎますよ?」 「……リンちゃん、それはどういう事ですか?」 「考えてもみてください。女性の方だって、稟さまに危害を加えるかも知れないじゃないですか。 お優しい稟さまの事ですから、ひ弱な女性を保護しようとして、寝首を掻かれてしまう可能性もある――違いますか?」 言われて楓は僅かの間考え込んだ。 だがほんの数秒足らずで、すぐに結論が弾き出された。 楓は何の迷いも無く、首を縦に振る事で肯定の意を示す。 「そう……ですね、私が間違ってました。リンちゃんの言う通り、女性の方も殺しちゃわないといけませんね」 「ええ、では手始めにこのお二方から片付けましょう。稟さまを傷付ける存在など、二酸化炭素を撒き散らすだけの公害。 悪の権化です! 不必要です!」 ネリネが永遠神剣第七位“献身”を、楓がベレッタM93Rを取り出す。 二人の目に宿った明確な殺意が、最早説得など不可能であると報せていた。 千影はドクンドクンと踊り狂う心臓を必死に沈め、時詠を構え直した。 トウカの身体能力は並外れているものの、この二人を同時に相手する事は難しいだろう。 自分も戦うしかない。 焦る千影の横で、トウカの鋭い視線がネリネを射抜く。 「やるしかないようだな…………お主、名は何という」 「――私はネリネと申します。貴女は?」 「某はエヴェンクルガのトウカ、正義を貫く武士だ。……参るッ!」 叫び終えるとほぼ同時、トウカの足元が爆ぜる。 刃こぼれした西洋剣を左脇の辺りに構え、一人の武士が疾走する。 極限まで鍛え抜かれた脚力に裏付けされた、高速の突貫。 だが制限されているソレは、対応不可能な域にまで達してはいない。 「……抵抗するおつもりですか? やっぱり女性の方だからって、油断してはいけませんね。 危険です、野蛮です。一人残らず駆除しなければいけません」 迎え撃つは、絶対の殺意を湛えた少女。 楓の握り締めたベレッタM93Rから、破壊を齎す弾丸が放たれる。 トウカは戦場で培った直感に身を任せ、上体を大きく横に傾けた。 直後、頬を掠める突風、直接触れずとも伝わってくる衝撃。 (これが銃という武器かっ……!) 予想以上の威力に、トウカは思わず唇を噛む。 矢を遥かに凌駕した武器だと聞いてはいたが、まさかここまでとは。 これでは弾丸を切り払うのは勿論として、見てから避けるのすらも不可能だろう。 銃口の向きから射線を予測して、予め身を躱すように動き続けるしかない。 「ほらほら、どんどん行きますよ?」 「――――――――っ」 距離さえ詰めてしまえば、敵が引き金を絞る前に切り伏せられるが、そうは問屋が卸さない。 第二、第三の銃弾が連続して撃ち放たれる。 迫り来る衝撃力の塊は、弓矢などとは比べ物にならぬ程の威力だろう。 たった一度の回避ミスが、そのまま致命傷に直結する。 まずはもう少し守りに専念して、感覚を慣らさねばならない。 トウカは楓を中心として円状に疾走し、一定距離を保ち続けようとする。 だがそこで横に忍び寄る、青い殺人者。 トウカの不意を突く形で、ネリネが槍を突き出してきた。 「――ヤアアアアアッ!」 「…………!」 トウカに迫り来る槍の刃先は、大した速度では無い。 ネリネは魔力を温存する為に、身体能力の強化を行ってはいないのだ。 だが――それでも不意を突かれたトウカには、防御方法が存在しない。 槍を払いのけても、若しくは強引に飛び退いたとしても、結末は同じ。 生じた隙を、楓が放つ銃弾により捉えられてしまうだろう。 しかし槍の刃先はトウカに届く前に、短剣によって受け止められていた。 自身の窮地を救ってくれた者の姿に、トウカは少なからず驚嘆の念を覚える。 「――――千影殿!?」 「……此処は私が、引き受けるよ。その間に……トウカくんは、……楓くんを倒してくれ」 「し、しかし――――」 守るべき対象を前線に立たせるなど、武人として避けなければならない行い。 トウカは千影に退避を促そうとするが、すぐにこちらを狙う狙撃手の存在に思い至り、断念する。 話し合っている暇など無い。 今は一刻も早く、楓を仕留めるのが肝要だ――そう判断したトウカは、千影に背を向けて走り出した。 トウカは再び銃撃の嵐へと身を投じ、ある時は身を屈め、ある時は跳躍する事によって、荒れ狂う銃弾を躱してゆく。 そんな中、千影はネリネと対峙する。 ネリネの手に握られた大きな槍からは、強大な魔力の波動が感じられる。 恐らくは自分の持っている時詠と同じく、永遠神剣の類であろう。 そんな千影の確信を裏付けるかのように、ネリネが語り掛けてくる。 「何か感じませんか?」 「え……?」 「私は感じます。この槍が……献身が……もっと魔力を欲しがっているのが。 貴女の永遠神剣もきっと、同じなのではないですか?」 「…………」 千影は答えないが、内心ではネリネの言葉を半分程肯定していた。 自分が『時の流れを加速』させた時、確かに魔力を多少消耗した。 その事から推察するに、永遠神剣は魔力を超常的な力へと変えている筈だ。 しかし自分が時詠の力を使用した際、もう一つ大きな変化があった。 あの時自分は、強い疲労と凄まじいまでの虚脱感に襲われたのだ。 ネリネの槍がどれ程の奇跡を起こせるかは分からぬが、時詠の力には遠く及ばないだろう。 より強い奇跡を起こす為には、より大きな代償が必要なのは自明の理。 恐らくこの時詠に限っては、魔力だけで無く、所持者の生命力そのものを吸い取るのでは無いか。 極力時詠の特殊能力には頼らず戦った方が良いだろう。 千影は地面を勢い良く蹴り、生まれた推進力と肉体の力だけで斬りかかろうとする。 だがすかさず献身が横一文字に振るわれて、千影は後退を強要される。 そして続けざまに、ネリネが槍を振り下ろしてくる。 「…………くうっ」 髪を舞い上げる旋風。 千影は済んでの所で横に方向転換し、槍の刃先から逃れていた。 だが勿論その程度で終わる筈が無い。 「は――――あ、く…………」 矢継ぎ早に献身の刃が奔り、千影は必死の思いで耐え凌ぐ。 幾ら後ろに下がろうとも、休憩は許されない。 右方向より襲い来る白刃を、懸命に時詠で受け流す。 生まれた僅かな時間を利用して後方に退こうとするが、すぐに距離を縮められる。 敵が一撃毎に踏み込んでくる所為で、延々と回避を強要される。 千影は永遠神剣による身体能力強化を行っていないが、対するネリネも魔力を温存している。 だがそれでも千影の不利は明白だった。 自分の得物は短剣、そしてネリネの得物は槍――故に反撃する余裕など無い。 剣で槍を制するには、相手の三倍の技量が必要だというが、千影は運動を得意としていない。 必然的に、戦いの天秤はネリネへと傾く。 そして、決して忘れてはいけない。 もう一人の敵は、遠隔攻撃が可能だという事を。 「――――――――!?」 突如千影の脳内に、胸を撃ち抜かれる自身の姿が浮かんだ。 所謂未来視というものだ。 斜め後方から楓に狙われているのが、手に取るように分かる。 前方からは今もネリネが、獲物を仕留めるべく迫ってきている。 自力でこの状況を逃れるのは不可能――もう、時詠の力を使うしかない。 千影は精神を集中させ、タイムアクセラレイト――自身の時間を加速させる技――を発動させた。 途端に全身を凄まじい疲労感が襲ったが、それでも身体の動きは速まった。 今の状態ならば、銃弾も槍撃も大した脅威では無い。 千影はコンマ数秒で4-5メートル後退し、絶望的だった状況をあっさりと覆す。 本当に一瞬の出来事だったが、その動きは生物の限界すらも超越していた。 連射された銃弾も、ネリネの振るった槍も、等しく空を裂くに留まった。 「そんな――――!?」 銃撃を躱された楓は、計らずして驚きの声を洩らしてしまった。 トウカの追撃を振り切って放った、最高の奇襲だったのに、恐ろしいまでの動きで回避された。 有り得ない現実を目の当たりにし、楓の思考が一瞬停止する。 そしてその狼狽は、先程から楓の隙を窺っていたトウカにとって、最高の好機。 神社の境内に、一陣の旋風が吹き荒れる。 「芙蓉楓――――その首貰い受ける!」 「…………っ!?」 疾風と化したトウカは、前進を続けながらスペツナズナイフの柄を投擲する。 投げられた柄は勢い良く宙を突き進み、楓の左手に命中した。 そのままトウカは、痛みに硬直する楓の懐へと潜り込んだ。 トウカの十八番にして、数多くある剣技の中でも最速の攻撃――居合い抜きが、満を持して放たれる。 常人では抗いようの無い剣戟が、寸分違える事無くベレッタM93Rの銃身を捉えた。 大きく響き渡る金属音。 「あぐっ…………」 楓の手元から、ベレッタM93Rが弾き飛ばされる。 空手となった楓の首に、トウカの振るう白刃が迫る。 先の居合い抜きには遠く及ばぬものの、十分な鋭さを伴った斬撃。 それは間違いなく勝負を決する一撃となる筈だった――千影の悲鳴さえ聞こえてこなければ。 「……くっ、ああああああ!」 「――――千影殿!?」 トウカが視線を移した先で展開されていたのは、絶望的な光景だった。 千影の左肩が、ネリネの握り締めた献身によって深く穿たれていた。 鮮血が花裂くように舞い散る中、千影の首元に白刃が突きつけられる。 そのままネリネは、トウカに向けて底意地の悪い笑みを浮かべた。 「惜しかったですねトウカさん。後数秒遅れていれば、私達の負けでした」 ネリネの言葉通り、本当にたった数秒の差だった。 トウカが楓を追い詰めている間、ネリネもまた千影に対し猛攻を仕掛けていたのだ。 そして激しい疲弊を抱えていた分、千影が敗れる方が僅かに早かった。 「……貴女には剣を捨てる義務があります。まあ千影さんの命が惜しくないというのなら、話は別ですが」 「おのれ……卑怯な!」 トウカは心底苛立たしげに舌打ちをするが、どうしようもない。 武器を捨てればどうなるか、末路を想像するのは余りにも容易いが、それでも投降するしか無いのだ。 誇り高きエヴェンクルガ族である自分が、人質を見捨てるなど有り得ぬ話だった。 トウカは手にした西洋剣を、ゆっくりと地面に放り投げる。 次の瞬間、トウカの即頭部に奔る衝撃。 「がっ…………!」 「――――先程はよくもやってくれましたね」 楓は拾い上げたベレッタM93Rの銃身で、思い切りトウカを殴り付けていた。 予期し得ぬ攻撃に、トウカがもんどり打って転倒する。 楓はつかつかと足を進めて、倒れたままのトウカの腹部を踏みつけた。 ――足を振り上げ、降ろす。 ――足を振り上げ、降ろす。 同じ動作を何度も何度も、感触を確かめるかのように繰り返す。 その最中拳銃に新しいマガジンを詰めもしたが、責める足だけは決して止めない。 「うっ……がっ……はっ…………」 「アハハハハハハハ! あんたなんか、死んじゃえば良いんだああああっ!!」 「く……楓くん、止めてくれ……」 ベレッタM93Rの引き金を絞れば一瞬で終わるというのに、楓は敢えて拷問の続行を選択する。 土見稟を傷付ける可能性がある者――即ち『土見ラバーズ』以外の人間は、極力苦しめて殺したいからだ。 腹部を踏みつけるのに飽きたのか、次は狙う箇所を変える。 サッカーボールを蹴る要領で、トウカの腕を、足を、休む事無く蹴り続ける。 その度に、トウカの喉から掠れた声が絞り出される。 妄信に取り憑かれた狂人が繰り広げる、終わりの見えぬ責め苦。 千影が制止を懇願するが、楓の狂笑は止まらない。 人質を取られている限りトウカは戦えぬし、首元に刃を突きつけられている千影も動けない。 誰も楓を止められないであろう状況。 ――だがそこで突然、猛獣の如き咆哮が響き渡った。 104 来客の多い百貨店 投下順に読む 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 104 来客の多い百貨店 時系列順に読む 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 093 恋獄少女 芙蓉楓 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 102 知る者、知らざる者 オボロ 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 102 知る者、知らざる者 トウカ 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 102 知る者、知らざる者 千影 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 096 彼女は眠らぬ山猫の様に、深く静かに休息す ネリネ 105 武人として/鮮血の結末 (後編) 090 無垢なる刃 川澄舞 105 武人として/鮮血の結末 (後編)
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◆ 一羽の鳥が、空を翔んでいた。 群れはどこにもいない。 繁殖期になって、つがいを求めて海を渡っているのか。 渡り鳥は、時には大陸さえも越えて新天地を目指して翔び続ける。 気流を羽根で捕まえて、障害物のない大空を遊泳する。 飛び立つ身を籠の中に縛る鎖も、丘の向こう側へ向かう道を阻む壁も、天を疾走る鳥には無縁の縛りだ。 どこまでも遠くに行ける翼を、いつまでも飛んで行けるる翼を、生まれつき持っている。 鳥は自由に生きていた。 けれど鳥はボロボロだった。 体は毛繕いもされないまま埃で汚れに汚れ、羽根は乱れ切っている。 餌も禄に取れず痩せ細った姿は、いつ翼を広げる力を失って地に叩きつけられるかも知れず。 憧れた自由の代償は、圧倒的な孤独と孤立。 支え合いも、助け合いも、いがみ合いも、憎しみ合いも、殺し合いも起こらない。たったひとりの世界。 そこで鳥は気づくのだ。 本当の本当にひとりになって、初めて知った。 窮屈な群れが、離れたかった親鳥が、閉じ込める社会のルールが。 うっとうしいと感じていた枠組みが全部、いつも弱い自分を守っていたのだと。 それでも鳥はただ飛ぶのだ。 群れからはぐれ、比翼になる番にも出会えなかった己には、それしかないと誇示するように。 自由を抱く叫びだけが、この心臓を動かす理由だったのだと。 鳥が見下ろす視点は、あまりに遠かった。 大陸ひとつを見渡せるほど、高い視座。 傲岸にも霊長を名乗り、地球の支配者を気取る人類の痕跡も、ここからでは蟻と並べても違いが分からない。 繁華の町並みも、超高層と銘打たれた建造物も、豆粒と大差ない矮小さ。 人1人の姿を見とがめるなぞ、微生物を探る顕微鏡でもなければ存在すら気づかない。 ……ああ、けれど。 今見える景色は、そんな小さな人間の在処を克明に示している。 例えるなら、それは膨大な料の絵の具だ。 黄土色の大地に均一に塗りたくられた色。 バケツに溜まった液体を無造作にぶちまけたにしか見えないそれが、どうしてか、芸術家が魂の炸裂する瞬間を表現しようと全霊を上げた稀代の絵画に見えてならない。 己という肉袋に詰まっただけの汚水が、こうも精神を昂らせるほど鮮烈に見えてならない。 それはそうだろう。 数千万、数億に至る血肉を使った、惑星の地表をキャンバスとした芸術を前にして、衝撃以外の何を与えられるというのか。 誰の声も聞こえない。 聞くに耐えない断末魔も、絶望的に不細工な命乞いも、空の彼方からはあまりに遠い。 見えるものは、ただ、悠久の地平線。 先の見えない、本当に世界の果てまで続いてるのではないかというほどの、底なしの蒼。 本当に掛け値なしに、この息苦しい世界全てを、無に還す。 薄汚い有象無象を蹴散らしていく様を眺めて。 「とても、爽快だな」 『僕』は、心の底から、胸がすくような気持ちになった。 ◆ マスターであるその少年は、目の前で燐光を放つ芒円に立ち尽くす、自分のサーヴァントを凝視する。 背は高い。西洋の地で生まれ、今年で19になる少年よりもう一回り上回る恵体だ。 筋肉もそれに見合った密度であり、そう露出していない服装からでも引き締まった肢体をしているのが分かる。 召喚の余波の突風で波打つ白いコートに、髑髏をあしらった奇体な肩当て。 英霊、英雄、曖昧に描いたイメージとそう解離していない風貌をしていたが……間違っても益荒男、豪傑と呼び習わす事は出来ないだろう。 纏う空気が、召喚と共に引き連れてきた気配が、言葉を交わさず、ただ存在だけを以てそう表明している。 コレは、鬼だ。 幽鬼にして戦鬼、戦場を勲を求めてでなく、骸を生み出す為に現れる死神だ。 サーヴァントは口を開かない。 項垂れた姿勢で垂れた前髪で顔は見えず、口元だけが寡黙に閉められている。 こちらを認識しているのか。そも意識があるのか。 黙秘を貫く男を目にして動きあぐねるが、彼がアーチャーのサーヴァントだという事は、召喚が完了した時点で脳に流入してきた情報でとうに理解していた。 未知の知識が急に頭にねじ込まれるというのは、初の体験ではないので混乱もせず受け入れられた。 「お前がオレのサーヴァントか」 ただの事実確認の台詞だった。 契約のラインが繋がっており、各種の能力値が理解できる以上、この男が自分のサーヴァントである事に疑いはない。 念の為の相互確認、意志を聞こうと声を出したに過ぎなかった。 出そうとして、いたのだ。 違和感は、そこからだった。 「─────────?」 立ち尽くしていたのは、突然の発光と出現に警戒を抱いて身構えていたからだと思っていた。 しかしこうして男に近づこうと歩を進める意を決めても一向に足は動かない。 まさかと、走る勢いで全力で蹴り出そうとしても、己の踵が地面に縫い付けられて離れなかった。 「……………………ッ!」 不覚を悟ってももう、遅い。 そこからはもう芋づる式だ。 指は1本たりとも言うことを利かず、肩も腰も首もどれだけ力を込めても微動だにしない。 まるで全身が石のように硬質化したかのようだった。 間抜けにも、自分の体が金縛りにあっていた事に、少年は全く気づかなかったのだ。 攻撃は既に済まされていた。 闇に潜んでいた敵の奇襲と、迂遠な考えを及ぼすまでもなく。 未だ用を成す目が映す、目の前の魔人によって。 身動きの取れなくなった男に、身動ぎひとつしなかった男が、そこで漸く伏せていた顔を上げた。 「一度だけ、口を動かして声を出す事を許すよ」 死神の貌をしていた。 顔立ちこそ麗人の整いをしているが、艶やかさは褪せて久しい。まるで屍蝋のように、人間味が乗っていない。 瞳には殺意の色彩。 口元は引き締められていても、目は違う。 視界に映った生命を、身分に限らず能力に依らず種族に留まらず、片端から消してしまいたくて仕方がないと嗤っている。 それでいて、その通り鏖殺を遂げても何の喜悦も抱かない、そうする事が自然と疑問を抱かない無機質と無関心さも表れている。 殺される。 前置き、困惑、一切を抜き去ってそう確信させられながら、マスターを拘束したサーヴァントは詰めを打つ事なく。 「あの景色は、何だ?」 「何……?」 問われた言葉に訝しる。 それは言葉の意味が分からないのではなく、 「蟻の群れを踏み潰すように、鬱陶しい雑音を轢き散らして、進撃していく空。 例え秒未満だろうと……僕からあの方以外への認識を向けさせたあの光景の事だよ」 自分の記憶と共有して見ている、深層を知られた焦りからのものだ。 「これは赦しがたい侮辱だ。僕の魂への凌辱だ。 君の即死絶殺を以てしか、この購いは遂げられない。心臓を吊し上げ、身体が見えなくなるくらいまで折りたたみ、僕自身の首を差し出してもまだ足りない」 狂人の言葉を聞かされている。 神に等しきものへと仕えるものが如きの、孕んだ狂信。 上げられた男の顔に穿たれた二つの孔は、彼を見ていない。 その後ろ、いやもっと遠く、遠くの、こことは根本的にズレた視座に対して、視線を向けている。 時間も次元も隔てた向こう側。 視線は正しく対象の相手に向けられてるのか。相手は視線に気づいているのか。そもそも相手がそこにいるのか。 無視していた。 そんなものは取るに足らない障害だと意志を捧げ続けていた。 我が念が正しいと証明されれば、理屈が後からついてきて、なべて辻褄は合うのだと。 「けれど……己の罪から目を逸らすのも、それはそれで見過ごせない背信だね」 科学の法則を蒙昧共の幻想と真っ向から反抗する意志力の怪物、頑迷固陋の光の亡者は、そこで言葉を変えた。 「なので、君にも機会をあげるよ。 僕を隷属させるなんて言う、程度を知らないマスターへ一度だけ。 あの景色は、君の脳ミソの中だけで描かれたさもしい妄想(イマジナリー)か? それとも───そこに至ると固く信じて実現させんとする未来(フューチャー)なのか」 問いかけは撃鉄の引かれた銃に似ている。 静かな激情を混ぜて突きつけられ、弾丸の入ったシリンダーが狂々と廻る。 「答えてくれ、翼なき者。 あのお方が存在しない世界に僕を拐かして、一体どんな浅ましい欲望を乞うつもりだい?」 どうということはない。要は遺言を聞きたいのだ。 死を賭してまで叶えたい願いを、他に委ねてしまう軟弱さ。 圧倒的に自らを上回る存在にそれを託す脆弱性。 たった三回しか震えない強権の鞭で、どうして都合よく動かせると勘違いしてしまったのか。 生殺与奪を奪い取った状態で、本人の口から聞いてみたいのだ。 正解は用意されていない。 答えなければ当然死ぬし、答えても死ぬ。 気分次第で、こめかみに当てられたトリガーは呆気なく引かれる。 それで契約者が死に、現界を保てなくなって消滅するのも、この男は厭わないのだろう。 命を捨てるのは最初の前提、後は残りの時間でどれだけの罪を滅ぼせるか。 コイツは、そういう生き物だ。 「…………令呪をっ……以て……!」 紋様から光が放たれる。 いかなサーヴァントであろうと従えられる、令呪の使用の兆候だ。 絶対命令権とさえいわれるマスターの証が発動しようと輝き───令呪のある手首の関節が、曲がってはいけない方向に折れた。 「………………っっっっ!」 両足の膝関節が八の字に折れた。 肩甲骨が広がって肩幅が倍に膨れた。 大小問わない各所の骨が同時に悲鳴を上げる。 シールでも剥がす軽快さで、骨に張りついた肉がめくれていく。 人間だったものが、瞬く間に奇怪なオブジェへと早変わりしていく。 「それが遺言(こたえ)か。残念だね」 急速に冷めていく声で、処刑を宣告する。 ほんのわずかに芽生えた興味が肩透かしと分かれば、待っているのは乾いた処理だ。 自らの筋肉で首を折るのも、折れた腕で胸を掴み心臓を抉り出すのも自由自在。 これは攻撃ではなく自壊。敵の筋繊維、電気信号を操作して司令塔を乗っ取る、彼が最も得意とする繰糸の絶技。 一度絡め取られたが最後。 抜け出す正攻法は存在しない。 筋力も異能も、死すらもが解放の手立てになりはしない。 外すには唯一、人の域を易易と突破してのける力ずくの無法のみ。 人間の身で抜け出せる手段は、それこそ蜘蛛の糸よりなお細い命脈だ。 「ア────────────」 もがく。 呻く。 芋虫のように這いずって、縛りから逃れようとのたうち回る。 無様この上ないダンスを見ても、男には無聊の慰めにもならず、ただ冷ややかに見下すのみだ。 動けば動くほど、糸は体を締め上げる。 少年のやっている事は、自分から蟻地獄に転がり落ちる小虫と大差ない。 「ア、ア──────ァアア」 もがく。呻く。這いずる。のたうつ。 絡まる。締まる。折れる。千切れる。 もがく。呻く。這いずる。のたうつ。 絡まる。締まる。折れる。千切れる。 もがく。呻く。這いずる。のたうつ。 絡まる。締まる。折れる。千切れる。 もがく。呻く。這いずる。のたうつ。 絡まる。締まる。折れる。千切れる。 もがく。呻く。這いずる。のたうつ。 絡まる。締まる。折れる。千切れる。 「────────────────」 平行線でいた柳眉が、僅かに吊り上がる。 理性も感情も……正気すら吹き飛ぶ激情の筈だ。 なのにどうして、こうも永く抵抗を続けていられる。 いや、だいいちこれだけ傷ついて生きていられるのがどうかしている。 床を湿らす失血は人間の致死量を超えている。折れた骨は心臓と除き主要な臓器に突き刺さるよう動かしてある。 ならばこの男の──────何処の箇所が折れていないというのか? 「ァアアアァァアアアアアアアアアアアッ!!!」 振り上げられる左腕。動く道理の失くした体が、知らない理論で駆動する。 途切れていた赤光が再輝する。それだけではなく、少年の体には今や稲妻が纏われている。 令呪の光と合わさった輝きの色は紅蓮の焔。自由を求めた一団の朱の血路。 特殊な電磁場でも引き起こしたのか、謎の極光が生んだ幻炎は、体に打ち込まれた糸を弾き出す。 無感情に嬲るだけの処刑人が、遂に目を見張った。 千載一遇の隙に紡がれる言葉。 裂けた喉、割れた顎を開き、叛逆者を退去させる呪文が発令を──────── 「お前は、自由だ」 「なに、」 を、と告げるより先に、命令は速やかに、滞りなく実行された。 断ち切られる鎖と枷 代わりに流入する、夥しい量の魔力の波。 毛細血管の隅々まで流れ込み、溜まった膿という膿を押し出して、汚れた身を内側から新生させる。 五体に軋まぬ骨。 全身にしなやかな肉。 熱くも赫い血潮が駆け巡る、仮初のエーテルならざる肉の体。 三回分を一度に凝縮した光は、終わってみれば呆気なかった。 だが前後に起きた変化の差異は激的に明白なもの。 令呪三角の全使用によるサーヴァントの受肉。 サーヴァントにとってマスターの最大要素。 霊体である仮初の身を現世に留める基盤の要素。 要石の役割を、放棄したのだ。 「─────────どういうつもりだい? 今のは」 青年にしても、この予想はしていなかったらしい。 本気でかけてないとはいえ『技』に逆らったのは多少目を引かれたが、所詮末期の断末魔と高を括っていた。 それがどうだ。サーヴァントを抑える虎の子の令呪を一気に消費。その内容も己の身を解き放つだけときた。 契約者だった少年は、未だ地べたに転がったまま息を荒げている。 四肢が砕けたおかげて体重を支えられないのだから、それも当然だ。 これでは口を利けるようになるのは少し先かと思えば、伏した態勢でもそこだけは萎えを見せていない視線と目が合った。 「オレは、お前を縛らない。上から支配して奴隷のように支配して下す事は、しない」 骨折や出血の負傷した部位からは絶えず煙を蒸かせている。どういう理屈か、傷口は治癒に向かっているらしい。 記憶の角に引っかかる知識が該当する。ある宗教組織の執行者、教義をまっとうするための改造人間が、こういう風に再生していた気がする。 「戦うならそうしろ。力を借りたければそう言え。やめたければ好きに帰ればいい。決めるのはお前だ。お前が選べ」 闘志とか、気迫とか。 折れた背中を押した衝動に根源は、ましてや希望ですらない。 自分が生きる価値を見ていない、誰かと同じ虚無とも異なっている。 「オレも、そうする。お前に力を貸して欲しかったらそう伝えるし、今みたいにオレから自由を奪うむもりなら、逆にお前から自由を奪う」 そこにはただ、意思があった。 目的も報酬も要らない。 手足が千切れても立ち上がり、一歩も止まらず進み続ける。 野を駆ける獣ほどに単純化された、荒々しい起源の衝動。 「オレ達は、対等だ」 そう、自分達の新しい関係を口にする。 倒れた者と立つ者の、違う目線の相手に。 「対等……? 僕と、君が?」 青年は思いがけもしない言葉を、暫し聞き入れるように反芻して。 「は──────────。 は、ははは、ははははははは、はははははははは!」 魂が躍動する笑い声を上げた。 少年に懐いた仄かな期待と、そんなものを感じてしまった自身が痛快でならならないと。 「いや──────すまない。しかし傑作だ。 あの頃と同じ籠に閉ざされ、慰みされ続けた立場に逆戻りした僕と君が、対等などとは!」 哄笑は皮肉からのものではない。 不覚にも、認めてしまった。 主と宿敵以外にはどんな強風にも微動だにしない精神が、出会って間もない男に揺さぶられた。 この身が英霊などという世界に従事する人形に貶められた、 即ちは死を迎えた日の血闘。 見えた宿敵と自分が、酷い箇所で似通っていた事に気づき、堪えられなくなった時とは違う。 虚の相似形に含まれないこの少年は、交わらない平行線でありながらこうも近似している。 己や『彼』が、過去の疵から自分の生への執着を捨てしまったのなら。 この少年は、この世に生を受けてから誰しもが抱く願望を、ずっと叶え続けている。 「──────いいよ、気が変わった」 潜ませていた帯電糸を仕舞い込む。 一旦弾かれていても抜かりなく次弾を装填していた準備を、取り止める。 「例え刹那でもあの景色に魅入られた僕への罰と、君への敬意の表れとして……ここで殺すのはやめておこう。 オーダーは受諾した。此れより僕と君は同じ道を進み、故あれば異を唱え、逆らう関係をよしとする。 僕はレガート・ブルーサマーズ。ここではアーチャーのサーヴァントと名乗るべきかな。 今更ながら問おう、同盟者(ユニオン)よ。君の名前は?」 「オレは──────」 回復してきた半身を起こす。 見上げる側には狂気を。 見下ろす側は狂信を。 主従ではない、マスターとサーヴァントの2人組は、ここに新たな契約を結ぶ。 運命の構図を迎えた少年は低い声で、握られた銃を構える面持ちで名を告げた。 「エレン・イェーガーだ」 ◆ 事後紹介を済ませてすぐ、アーチャー……レガートは自分の足で立ち去った。 契約は切れたが、どうやらパスの名残で念話の機能ぐらいは使えるらしい。 あるいは、血族の意識を共通した空間に飛ばせる始祖の力が、少しだけ発動してるのかもしれないが。 何にせよ用があれば、向こうから不躾に連絡が来るだろう。 恐ろしい男だった。 今まで見てきたどんな人間、巨人、継承者よりも、個としての力が桁違いだ。 山ほどの巨躯も、雲霞の如き数の群れも、あの技の前には棒立ちの的に早変わる。 何より、人間を殺す事に何の呵責も持たないのが恐ろしい。 マーレの兵士や、世界中のパラディ島勢力への憎悪を募らす人々のように、正義や贖罪を肯定する為の矛にしているのではない。 本当に世界全ての枠組みがどうでもいいと捉えて、ここまで容赦なく粉々にする。 エレンが九つの巨人───『進撃の巨人』の継承者でなければ命は無かった。 契約で繋がっていたレガートも道連れに消えるというのに、何の迷いも見せずにこちらを切り捨てようとした。 そんな怪物と、エレンは組まなくてはならない。 壁の外の世界とすら比較にならない発展を遂げた、未来のどこかの国で殺し合いを強いられながら。 「ここでも戦争か……」 始祖ユミルすら見ていなかっただろう事態になっても、耳慣れたことはついて回るらしい。 生きていた時代と基準がまるで異なる世界。 聞いた事のない概念と知識を使った、幽霊を従わせるという突拍子もない話。 現実味のなさは夢でも見ているのかと頭を振った事も少なくない。 死の寸前の走馬灯としても、記憶にない映像を見るものか? と頭を捻らざるを得なかった。 首を円周上になぞる。 操られた時の負傷ではなく、それ以前に受けた傷跡を確かめるように。 ……記憶しているのは、銃声と、首に起きた凄まじい衝撃。次いで頭部の浮遊感。 サシャを殺したマーレの女兵士が構える銃が視界の端に映って以降は断線している。 撃たれたのだろう、と予測するのは、この世界で意識が取り戻してからだ。 一も二もなく憂慮したのは、元の世界の状況だ。 未来は変わらない筈だった。 進撃の巨人の秘めた能力。先の記憶の継承。 あるひとつの結末に未来を導く、2000年前から続く遠大の航路。 見せられる記憶と声に従えば、必ずその光景を現実に引き起こせる呪いの鏡。 首を飛ばされたとしても、何らかの形で未来に辿り着くと決まっているのだ。 その予知が、鍵となるエレンが消失した事で覆ってしまった。 最低限あの場にいなければ、どんな未来も実現する訳がない。 エレンの中に収まる『始祖の巨人』……全ての巨人を操作する無敵の力の不在は、戦争の泥沼化を意味する。 エルディア政府が当初より予定している、融和策を模索する時間を稼ぐ限定的『地ならし』による他国への牽制も。 異母兄ジークが進めた、ユミルの民の生殖能力を奪い、巨人そのものをこの世から消し去る安楽死計画も。 始祖の力がなくてはどれも頓挫する。あらゆる策は崩れ去る。 エルディア帝国の威名を掲げて国を蹂躙されてきた世界の憎しみは、今やピークに達している。 マーレ帝国に自作自演で破れ、落ち延びた先で静かに自死する道を王が選んだと知ったところで、この波は止められない。 パラディ島は瞬く間に世界の総力に一呑みにされ、血の海に沈むだろう。 エレンが生まれ育った土地も、エレンが愛する仲間達も。 ユミルの民の血を引く人間は一匹残らず駆逐される。 帰らなければ。何としてでも。何をしても。 そう逸るものの、唯一の脱出法は戦いに勝ち、願いを叶えるという単純解だけ。 未知なるもの、新しい場所を知った昂りがないこともない。 しかしそれでやるのが戦争と言われれば、諸手を挙げて歓迎できる筈もない。 しかも強制。強制だ。 自由を奪う、意思を問わずに行動する事を強いるのはエレンの最大の逆鱗だ。 無理やり拉致して互いに食い合わせて、最後に残った一人にだけは聞こえの良い報酬を与える。 これを奴隷と言わず、家畜の扱いと言わずして、何という。 何も知らない子供のままだったなら。 巨人を駆逐すれば、誰も知らない新大陸へ行けると夢を見ていた頃のエレンなら、悩むまでもなくこんな殺し合いに乗らなかっただろう。 物語の英雄みたいに格好つけて、勇猛果敢に死に急いだことだろう。 けどエレンはもう知ってしまった。 壁の外には人がいて、あるがままの自然が広がってると思った世界は、とっくに人間が広がっていた。 大陸は開拓され、島という島には文明が息づいている。 人が足を踏み入れてない場所なんて、もう地上の何処にもなかった。 未踏の地を巡って旅をする。そんな夢想はどこかの誰かが大昔に叶えていた。 そしてそこに住む人の種類は色々で。 鼻持ちならない連中もいれば、別け隔てなく手を差し伸べる優しい子供もいる。 生まれや環境、理念と心情。 「仕方ない」の一言も言わなければやっていけないぐらい、様々な理由で戦わざるを得ない時代だった。 エレンがやろうとしている事も、多分同じだ。 過去も未来も、自由なんて言えないぐらい雁字搦めになって、それでも自由を知りたくて歩いている。 進む途上を飛ばして見せられた結末は、多くを救う為に自分を捨てるという終わり。 憎しみの連鎖を一旦断ち切り、不和の根を引き抜き、平和を築く為の人身御供。 自分がいなくなった後も、愛する人が幸せに天寿をまっとうできる日々を送って欲しい。 それさえ叶えば、自由の報酬には十分だと。 そんなの嫌だ。 ミカサが他の男と結ばれるなんて。 一生自分を想ってて欲しい。 死んだあとも……せめて十年以上は引きずってて欲しい。 本当はミカサの想いに応えたい。 アルミンと世界中を冒険したい。 ジャンと下らない意地で言い合って、サシャとコニーのする馬鹿を見て笑って、リヴァイ兵長とハンジ団長も戦わずに済み、ヒストリアが子供に囲まれて長生きし続ける。 そんな平和な日々が欲しい。 仲間外れなんかじゃなく、みんなが作る輪に一緒に入って、好きなだけ自由に生きてみたい。 後生胸に抱えて腹まで持っていくつもりだった『願い』を、こんな形でほじくり返されるとは思わなかった。 あらゆる望みを叶える願望器。 信じるに値しない。欺瞞に決まっている。 なのに──────いつもと同じく殴りかかれないのは、なぜなのか。 理由なんてとっくに分かってるのを、いつまでも後回しにしてる。 少なくとも都市ひとつと世界じゃ死ぬ人の数が違いすぎる。 この東京という土地の、生きてると呼べるか定かじゃない1000万と、エレンが生きる世界全て。 数字の上で計れば、どちらかを選ぶなんて考えるまでもない。 (でも……それは……) パラディ島のエルディア人に憎しみを集約させる事で、いがみ合う世界の融和の舵を取ろうとしたヴィリー・タイバーと、何の違いがあるのか。 仕方なく自分を犠牲に世界を救おうとしていたら、他に丁度いい生け贄が見つかったので、そっちに乗り換えて自分だけ助かる……? そんな勝手、許されるわけないだろう。 この街を憎んでるわけじゃない。 疎んでるわけじゃない。 争いは絶えないが、多くの人は笑い合える豊かな暮らしをしていて。 差別はあるけれど、世界中で族滅を叫ばれるような酷さは見られない。 何より、この街の人達は、優しかった。 文明の利器に慣れず、明らかに浮いた異邦人であるエレンに、親切に付き合ってくれた。 それだけでもう、この街の元になった世界が、自分達と比べ物にならないぐらい平和なんだと思い知った。 だけれど───────ここは、とても窮屈だから。 「ごめん……ごめん……」 慟哭に喉を詰まらせながら、涙が流れ落ちる。 贖いきれない罪が待つ未来に怯えて。 誰にも届くこともない声と知りつつ、エレンは繰り返し懺悔した。 「ごめんなさい……」 新たな戦いに呼ばれるまでの、僅かな安息。 少年は涙に暮れて侘び続ける。 ◆ 「僕ともあろうものが、ナイブズ様以外に目を奪われる事になるとはね」 闇の届かぬ日の往来。 街中を堂々とレガートは闊歩する。 ロングコートに黒の装束は、武装を外しさえすれば一応の住人と見なされる格好だ。 令呪三画を費やした受肉は、霊体故の不如意を受ける事なく生身の行動を許している。 同時に、歩く人間災厄に制御不能の加速装置を追加でもある。 魔力の制約が取り払われた今なら、限りなく生前に近い力を引き出せる。 「この背信を払拭するには、やはりこれが一番か」 縛る戒めは余さず解かれた。 面白い同盟者にも巡り会えた。 ならば、もう───厭うものは何もない。 サーヴァントとマスター。街に住まう肉人形。 砂の惑星も、人造の天使も知らぬ無知蒙昧な者共に、かのお方の何たるかを示してやろう。 ミリオンズ・ナイブズの何たるかを、例外なく区別なく、その身に覚え込まそう。 そして自分は聖杯に許しを乞うのだ。 例え刹那でも貴方以外に仕える立場にいた軽薄と、人類総殺を代行してしまった愚かしさを。 再び不興を買って押し潰されるとしても、死に戻った穢れの身を認識してくれた喜びで受け入れよう。 「期待してるよ狩人(イェーガー)。大墜落(ビッグフォール)にも迫る、君の戦争を見せてくれ」 ◇ はるか時の彼方 まだ見ぬ 遠き場所で 唄い続けられる 同じ人類のうた ◇ 【クラス】 アーチャー 【真名】 レガート・ブルーサマーズ@トライガン 【ステータス】 筋力A+ 耐久B+ 敏捷A+ 魔力E 幸運E 宝具E 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 対魔力:E- 単独行動:A++(A) 元来高いランクで保持していたが、エレンの三角令呪使用によって、マスター不在でも独立して動けるようになっている。 【保有スキル】 被罰の不具:- かつて主からの制裁を受け、その体は首から下が完全な付随状態になっている。 宝具の補助がなければ、文字通り身動きひとつ取れない。 ……逆に言えば、肉体・神経の状態に関わらず、肉体を動かし続けられるという事でもある。 肉体に関連するバッドステータスを全て無効、あるいは無視し、戦闘を続行する。 狂信:A+++ 特定の何かを周囲の理解を超える程に信仰することで、通常ではありえぬ精神力を身につけ、精神操作系の魔術などに強い耐性を得る。 ……高すぎると精神に異常をきたす。ここまでくると精神が肉体を凌駕しており、屍と化すまで戦い続けられる。 【宝具】 『凶器に名は不要、示すべきは我が忠誠(ナノフィラメント・フィジカルドミネイション)』 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~99(街一つ分) 最大捕捉:1000人以上 オーヴァーテクノロジーのナノフィラメントによる遠隔肉体操作。 肉眼では視認不可能な帯電糸を体内に打ち込み、意のままに操る。 数ヶ月身動きを取れなくする事も、車の中に数十人を無理やり詰め込んで圧死させる事も、街一つの住人を一斉に自ら心臓を掴み引きずり出させる事も自由自在。 生物であれば老若男女、人か人外か、生死を問わず適用範囲。単純な肉体に限らず、固有の能力・特性に対しても効果を発揮する。 拘束力は凄まじく、筋力・対魔力での抵抗は極めて困難。Aランクでやっと「抵抗の判定を低確率で発生させられる」程度。 破るにはそれを上回る数値に加え、更なる要素が不可欠。 レガートはこの宝具で肉体を道具のように操作し、全身不随のハンデを克服している。 縫合や体内物質生成による鎮痛、治療にも用いられ、左肩に仕込んだ単分子鎖ナノ鋼糸を解放すれば、肉体性能を更に上昇させられる。 具体的には魔力と幸運を除いたステータスが上記のそれからもう一段階「倍加」。亜光速の飛来物すら感知・対応する。 糸そのものに物理的拘束力は無く、物理的に縛ったり持ち上げたりする芸当は不可能。 また素材こそ特別製であるものの、以上の能力は全てレガート自身の研鑽による技術でしかない。その為魔力消費は極めて軽微。 唯一の弱点は、強力な電磁場。質量の軽い糸を完全に弾いてしまい、サーヴァントになった後もこの性質は引き継いでいる。 拘束力、効果範囲、精密性、隠匿性、燃費……全てに優れた、対人として圧倒的すぎる能力でありながら、レガートはこの宝具に一切の誇りも執着も抱いていない。 異様なランクの低さはそれに起因する。 【weapon】 『超高速鉄球型奴隷ゲルニカ』 一言で言えば、アイアンメイデン状のモーニングスター。 数百キロに及ぶ重量を軽々と持ち上げ、振り回し、蹴り飛ばす。全身の突起には機関銃も搭載。 『拳銃』 折りたたみ式の刃付きの銃。 【人物背景】 鳥籠から解放された青年。 【願い】 ナイブズへの忠を示す。つまりは全員皆殺し。 【マスター】 エレン・イェーガー@進撃の巨人 【マスターとしての願い】 自由。 【能力・技能】 『進撃の巨人』 巨人に変身する因子を持った民族エルディア人(ユミルの民)、彼らを支配するエルディア帝国が擁する、知性を持ったまま巨人化できる「九つの巨人」のひとつ。 肉体は継承者の体から急速に出現し、うなじ部分に収まる形で固定される。 形状的には変哲のない15m級。継承者のエレンが格闘術に優れてる為そのまま戦闘に転用できる。手足を一時的に硬質化する事で破壊力を向上させられる。 ……歴代の継承者しか知らない固有の能力は、『未来の継承者の記憶を覗き見、未来を知る事』。 聖杯戦争という未来にない事象を経過した事で、見える景色は曇りかけてる。 他の継承者を喰らい、その巨人の能力を奪う事が可能で、現在は硬質化能力を多方面に展開、武器に加工する『戦鎚の巨人』、全てのユミルの民の原点でありあらゆるユミルの民と巨人を操作できる『始祖の巨人』を継承してる。 【人物背景】 自由を知りたかった少年。 参戦時期は、サシャを殺したガキにライフルで首を吹っ飛ばされて、ジークがキャッチするまでの数秒の間。 【方針】 戦え。 戦え。 ……………ごめんなさい。
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クレイジートレイン/約束(中編) ◆guAWf4RW62 「――――千影ぇぇッ!!」 「…………悠人、くんっ!?」 現われたのは、ショベルカーの後を追い掛けていた高嶺悠人だ。 悠人は状況を把握すべく全体を見渡し、最初に千影の姿を発見した。 見れば千影は、息を切らしながらも懸命に、巨大なショベルカーと戦っている。 「ク――待ってろ千影、今助ける!!」 再会を祝っている暇など無い。 一も二も無く悠人は疾走し、ショベルカー目掛けてベレッタM92Fを撃ち放った。 だが当然の如く銃弾は防弾ガラスに弾き飛ばされ、大した戦果を挙げぬまま無力化した。 驚きの表情を浮かべる悠人に、千影が警告を投げ掛ける。 「悠人くん、駄目だっ……! あの機械に銃は効かない!」 「分かった!」 悠人は直ぐにベレッタM92Fをデイパックへと戻し、代わりに日本刀――トウカが愛用していた物――を取り出した。 元々悠人の得意とする戦法は剣を用いての近接戦、銃弾が効かぬと分かった以上、拳銃に頼る意味など無い。 悠人はまるで臆する事無く走り続け、ショベルカーとの間合いを縮めてゆく。 「――カトンボが一匹増えたくらいで!!」 新たなる敵対者の存在を認めた名雪が、即座に攻撃目標を変更し、横薙ぎにシャベルを振るった。 広範囲に渡るその攻撃は、正しく死の旋風と呼ぶに相応しい。 しかし悠人は天高く跳躍する事で、迫る一撃を空転させた。 「ハアアアアアァッ!!」 空中に浮いたまま、ショベルカーの防弾ガラスに狙いを定めて、思い切り日本刀で斬り付ける。 悠人の攻撃動作はアセリアに比べると少々稚拙だが、一発一発の威力だけで見れば間違い無く最強だ。 その威力は、いかな防弾ガラスと云えども完全に防ぎ切れるものでは無い。 「えっ…………け、けろぴーが!?」 この戦いに於いて初めて、名雪の表情が狼狽の色に染まった。 悠人が放った剣戟は、防弾ガラスに刻み込まれていた皹を肥大化させていた。 それを好機と取った悠人は、連続して剣戟を繰り出し、その度に皹がより一層広がってゆく。 誰の目から見ても、耐久力の限界が近いのは明らかだった。 「う、あ、このっ……!!」 不利を悟った名雪は、堪らず操縦用のレバーを動かして、一旦悠人から距離を離そうとする。 しかしながら悠人が、後退しようとする敵を黙って見逃す筈も無い。 一気に勝負を決めるべく、大地を蹴り飛ばして疾走する。 だがそこで鳴り響く、一発の銃声。 悠人は脇腹に焼け付くような痛みを感じ、もんどり打って転倒した。 「あぐっ……が……!?」 「――ふふ、また会ったね悠人君」 「ぐ……お前は……!」 悠人が身体を起こし、銃声のした方へ振り向くと、そこには数時間前に交戦した佐藤良美が立っていた。 良美は心底可笑しげに微笑みながら、悠人に向けてS W M627PCカスタムを構えている。 とどのつまりは、良美が悠人を狙撃したのだ。 未だ良美の正体を知らぬ千影が、訝しげに眉間へ皺を寄せた。 「良美くん……、一体何のつもりだい……?」 「一々説明しないと分からないのかな? 見ての通りだよ」 「……つまり君は、殺し合いに……乗っているという訳か」 千影の質問に、良美は笑みを深める事で応えた。 良美はもう正体を隠すつもりも、この場から逃亡するつもりも無かった。 自分の正体を知る悠人が出現した事で、千影を騙すのはほぼ不可能になった。 だからこそ逸早く思考を切り替えて、この場に居る人間全ての排除を目標にしたのだ。 平時であれば、殺し合いに乗った自分は、人数的に不利な戦いを強いられる。 しかし名雪という無差別殺人者が居る今ならば、立ち回り方次第で、悠人と千影の両方を始末出来る筈だった。 「糞っ――良美! お前どうして、そこまで楽しそうに人を襲えるんだよ! ことりみたいな良い子を殺して、心は痛まないのかよ!?」 「……ちょっと待ってくれ、悠人くん。ことりくんが……死んだ、だって……?」 千影が聞き返すと、悠人は表情を深く曇らせた。 「ああ。ことりは良美と戦って、それで……」 「……ことりくん。君まで……逝ってしまったのか……」 また一人知り合いが死んでしまったと分かり、千影は悲しげな声を洩らした。 白河ことりとは少し会話しただけの仲だったが、彼女が善良な人間であったのは分かる。 こんな所で殺される謂れなど、ある筈も無い。 一方千影と対照的に、良美は何時も以上の笑顔を湛えていた。 苦渋を舐めさせられた怨敵が死んだと聞いて、上機嫌になっているのだ。 「そっかあ、やっぱりことりちゃんは死んだんだね。うん良いよ、折角だから質問に答えてあげる。 心が痛む? そんな訳無いじゃない。お人好しが一人減って、寧ろせいせいするよ」 「っ……コイツ、何処までも腐り切ってやがる……!」 三者三様の表情を見せる三人。 悠人は怒りの表情を、良美は愉悦の表情を、そして千影は悲嘆の表情を露としている。 だがそれも、長くは続かない。 ルール無用の殺人遊戯に、開戦の合図など不要。 良美は唐突に腕を持ち上げて、S W M627PCカスタムのトリガーを引き絞った。 千影が直感に身を任せて跳ねるのとほぼ同時、唸りを上げる357マグナム弾が、彼女の頬を掠めた。 「――遅いよっ!」 良美の攻撃はそれだけに留まらず、立て続けに銃弾が放たれてゆく。 後手に回ってしまった千影と悠人は、否応無く回避を強要される。 疲弊した千影と脇腹を撃ち抜かれた悠人にとって、それは決して楽な作業で無かった。 「っ…………!」 業を煮やした千影が、苦し紛れにショットガンを撃ち放ったが、散弾は狙った位置から大きく逸れてしまった。 回避しながらでは、照準を合わせる余裕など無かったのだ。 そして無理な反撃を行った千影は、良美にとって格好の標的に他ならない。 しかし良美は千影に銃撃を浴びせようとせず、突然横方向へと飛び退いた。 その直後、良美の傍を巨大な物体が通過してゆく。 「――あははははははっ、一人残らずペチャンコにしてやるぅうううう!!」 ショベルカーに搭載された拡声器から、狂った笑い声が放たれる。 獲物達同士で交戦し始めたのを見て取り、名雪はここぞとばかりに攻めに転じた。 上手く奇襲を躱した良美にはもう目もくれず、前方に残る二人の標的へと意識を集中させる。 名雪の駆るショベルカーが、一直線に悠人達の方へと向かってゆく。 それを迎え撃つ形で、悠人もまた勢い良く駆け出した。 徐々に明るみを帯び始めた大空の下、鋼鉄の怪物と鍛え抜かれた戦士が衝突する。 「っ…………く、そ――――」 悠人の動きには、先程までのようなキレが無い。 乱暴に振り下ろされたシャベルを、サイドステップで躱したものの、そこから反撃に転じれない。 撃ち抜かれた脇腹の怪我が原因で、行動一つ一つの速度が大幅に低下しているのだ。 間合いを詰め切る前に、ショベルによる第二撃が飛んで来て、悠人は後退を余儀無くされる。 今の身体で接近戦を挑むのは、分が悪いと云わざるを得なかった。 「でも……それならそれで、やりようはある!」 ならばと、悠人はデイパックからベレッタM92Fを取り出した。 これならば無理に間合いを詰めなくても、離れたままで攻撃出来る筈。 シャベルの射程外で、悠人は弾切れまでトリガーを引き絞る。 しかし名雪も、大人しく銃撃を受け止めたりはしない。 防弾ガラスの損傷が深まっている今となっては、銃弾一つ一つが致命的な損害に繋がりかねない。 素早くレバーを操作して、ショベルカーの車体をジグザグに揺らす事で、被弾部位をズラそうと試みる。 それでも銃弾の幾つかは防弾ガラスに命中したが、破壊し切るには至らない。 そして銃弾を再装填する暇など与えんと云わんばかりに、ショベルカーが再び接近して来て、悠人は守勢に回る事となった。 「チィ――――」 「逃げろ逃げろ! 虫ケラみたいに醜く逃げ惑え!!」 傷付いた身体に鞭打って戦う悠人と、限界の近い機体を酷使する名雪。 両者の戦いは、互角と云っても差し支えないだろう。 そんな二人から少し離れた場所では、千影と良美が苛烈な銃撃戦を繰り広げていた。 「――千影さん、もっと頑張らないと当たっちゃうよ?」 「…………くっ」 轟く銃声、忙しい足音。 千影のすぐ傍の空間を、猛り狂う銃弾が切り裂いてゆく。 済んでの所で命を繋いだ千影は、散弾銃の照準を合わせようとする。 だがそれを遮るような形で、良美の構えたS W M627PCカスタムが火を吹いた。 「――つ、あ……!」 千影は即座に銃撃を中断し、ぎりぎりのタイミングで上体を捻った。 真っ直ぐに迫り来る銃弾は、千影の右肩を軽く掠めていった。 千影は激痛を噛み殺して反撃しようとするが、それも良美の銃撃によって阻まれる。 古いタイプの回転式拳銃を用いている良美と、高性能の散弾銃を用いてる千影。 武器だけ見れば、どう考えても千影に分がある。 しかし休憩を取ったばかりの良美と違い、千影は未だ疲労困憊の状態だ。 故に良美は行動一つ一つの速度で千影を上回り、常に先手を取る形となっていた。 「ハァ――フ――、ハ―――」 呼吸を荒く乱しながら、千影は回避に専念し続ける。 秀でた動体視力など持たぬ千影が銃弾を避けるには、照準を合わされぬよう常に走り続けるしかない。 苦し紛れの反撃すらも許されない、余りにも一方的な展開。 それでも千影の瞳には、諦めの色など微塵も浮かんではいなかった。 (まだだ……絶対に好機は来る。トウカくんなら……絶対に、諦めない……!) 生きている限り、そして自分から勝負を捨てない限り、勝敗の行方は分からない。 桁外れの実力を誇ったネリネ相手ですら、トウカは最後まで希望を捨てず、そして絶対的な劣勢を覆したのだ。 だから、自分も諦めない。 どれだけ見苦しかろうとも、死を迎えるその瞬間まで諦めず、一縷の勝機が到来するのを待ち続ける。 「く――――は、――――あ――――!」 身体の限界を感じつつも、千影は懸命に良美の猛攻を耐え凌ぐ。 絶えず跳んだり跳ね回ったりして、敵の銃撃を躱してゆく。 そして千影が思っていたよりも早く、反撃の時は訪れた。 「…………?」 千影は激しく動き回りながらも、一抹の疑問を感じ始めていた。 それまで絶えず降り注いでいた銃弾の雨が、急に飛んで来なくなったのだ。 見れば良美は、鞄の中に片手を突っ込んだまま、狼狽の表情を浮かべている。 まさか――千影の推測を肯定するように、良美の口から焦りの言葉が零れ落ちた。 「――た、弾切れっ……!」 つまりは、そういう事だ。 あれだけ一方的に攻め立てれば、何時銃弾が尽きてしまっても可笑しくは無い。 その事実を正しく認識した瞬間、直ぐ様千影は攻めに転じた。 右手にショットガンを握り締めたまま、左手で鞄から永遠神剣第三位"時詠"を取り出す。 唯一無二の好機をモノにすべく、自身の全戦力を揃えた上で敵目掛けて疾駆する。 「……ことりくんの仇、取らせて貰うよ――!」 「ち、かげ――――さん――――!!」 千影は走りながら一発、二発とショットガンを撃ち放った。 片手での、そして動き回りながらの射撃が命中する筈も無いが、十分牽制にはなる。 今は当たらなくても良い、良美の後退を防げればそれで構わない。 焦らずとも、近距離まで詰め寄ってしまえば、広範囲に渡るショットガンの攻撃は確実に命中する筈だった。 前に進む足は決して止めぬまま、良美の後退を遮るような形で、何度も何度も引き金を絞る。 そのまま狙い通りに間合いを縮め切って、ゆっくりとショットガンの照準を定めようとして――瞬間、良美の顔に冷笑が浮かんだ。 「……莫迦だなあ、千影さん。本当に弾切れだったら、わざわざ報せてあげないよ」 「――――ッ!?」 千影が照準を定めるよりも早く、良美のS W M627PCカスタムが水平に構えられた。 咄嗟の判断で千影が"時詠"に魔力を注ぎ込むのとほぼ同時、一発の銃声が鳴り響いた。 「……へぇ。まさか、今のを避けるなんてね」 「あ……ぐ…………」 結果から云えば、銃弾が千影の身体を捉える事は無かった。 千影はタイムアクセラレイト――自分自身の時間を加速する技――を発動させて、間一髪の所で難を逃れたのだ。 だがその代償として、残る全ての魔力と体力を消耗してしまった。 手足の先端にまで痺れるような感覚が奔り、喉はカラカラに乾き切っている。 最早、銃撃戦を続けられるような状態では無い。 千影と良美の距離は約15メートル。 苦しげな表情を浮かべる千影に、S W M627PCカスタムの銃口が向けられる。 「どうやって躱したのか教えて欲しいけど……どうせ断るよね?」 「……ああ。君みたいな人間に……手を貸すつもりは無い」 「そう。それじゃ、今すぐ殺し――――!?」 そこで、良美の背後から、巨大なエンジン音が聞こえて来た。 「死ねっ死ねっ!! 佐藤さんも千影ちゃんも、皆死んじゃええええええええええッ!!」 悠人との戦闘を中断した名雪が、良美と千影を一纏めに始末すべく突撃する。 良美は死に物狂いで横に転がり込んで、迫る脅威から紙一重のタイミングで逃れた。 しかし未だ体力に余裕のある良美とは違い、千影にはもう何の力も残されていない。 「アハハハハハハハハッ、バイバイ千影ちゃん!!」 「う、く、ァ――――――」 シャベルが容赦無く振り下ろされる。 千影は懸命に真横へ逃れようとするが、明らかに速度不足。 どう考えても避け切れない。 だが千影の危機を前にして、悠人が大人しく手を拱いている筈も無い。 「――させるかあああああああっ!!」 悠人は恐るべき勢いで駆け付けると、千影の身体を抱きかかえて跳躍した。 天より降り注ぐ鋼鉄の牙が、悠人達のすぐ真横の地面を大きく抉り取る。 「こ……の……カトンボがあああぁぁぁ!!」 「遅い――――!」 激昂した名雪がシャベルを横に払おうとするが、それは無駄だろう。 悠人は既に後方へ下がり始めており、このままショベルの射程範囲から逃れ切る筈。 横薙ぎに振るわれる鋼鉄の牙が、獲物に噛み付く事は無い。 そう――空気を引き裂く、一発の銃弾さえ無かったのなら。 「――惜しかったね、悠人君」 「…………ガアアアッ!?」 苦悶の声が木霊する。 良美の放った銃弾が、悠人の右太腿を完璧に貫いていた。 グラリ、と大きく悠人の身体がバランスを崩す。 悠人は一瞬の判断で、それまで抱き抱えていた千影を、安全圏へと突き飛ばした。 その、直後。 「あ――――――」 今度は、呻き声を上げる余裕すら無かった。 ショベルカーに搭載された鋼鉄の牙が、悠人の身体を正確に捉えていた。 悠人はゴミのように吹き飛ばされ、少し離れた地面に背中から衝突した。 「がはっ――――ぐ、ごふっ……!」 「ゆ、悠人くん……!!」 倒れたまま咳き込んだ悠人の吐息には、紅い血液が混じっていた。 手足の感覚は消え失せて、全身が砕け散ったような錯覚すら覚える。 圧倒的な衝撃で、内臓は酷く痛め付けられた。 肋骨の内数本は折れ、かろうじ骨折を免れた部位にも皹が入っている。 「づ……あ……ぐ……」 悠人は必死に立ち上がろうとするが、身体が反応してくれない。 どれだけ必死に命令を送っても、腕や足が思うように動かない。 それだけのダメージを、受けてしまった。 「フ――ハハ――――アハハハハハハハハハハハハッッ!! 醜く地面を這いずり回って、カトンボにお似合いの姿だね!」 とうとう獲物を捕らえた名雪は、余裕綽々たる面持ちでショベルカーを停車させて、高々と哄笑を上げていた。 這い蹲るカトンボを天からじっくりと見下ろすのは、名雪にとってこの上無い快感だ。 「どうだどうだっ、やっぱりけろぴーは無敵なんだよ! 私は無敵なんだよ! あはっ、あははははははははっ!!」 気分が高揚し切った名雪は、すぐにトドメを刺そうとはせず、唯只哂い続ける。 だが名雪は少し横に視線を移し、大きな違和感を覚えた。 悠人同様に絶体絶命である筈の千影が、こちらを見ていないのだ。 単に余所見していると云う訳では無い。 千影の視線は、名雪よりも更に上方の位置へと寄せられていた。 「…………?」 疑問を解消すべく、名雪が頭上に視線を送ると、そこには―― 「――良く頑張ったね、名雪ちゃん。お陰で悠人君達を殺せそうだよ」 「え……ひ、あ、ひああああっ!?」 嘗ての倉成武と同じように、佐藤良美がショベルカーの天井に張り付いていた。 「でもね、これでもう名雪ちゃんは用済みなの。だから――そろそろ死んでよ」 良美はS W M627PCカスタムを取り出すと、防弾ガラス上の皹が密集した部分に狙いを定めて、思い切りトリガーを引いた。 至近距離から何度も何度も銃弾が吐き出され、同じ箇所に叩き付けられてゆく。 ピンポイントを狙ったその銃撃に耐え切れず、とうとう防弾ガラスの一部が砕け散った。 すかさず良美は、その開いた穴から片腕を侵入させる。 「ヒッ――は、はああ、ひううっ……、嫌だ、助けて、死にたくない…………っ!!」 良美を振り落とすべく、名雪が必死に機体を前進させようとするが、遅い。 良美は怯える名雪の姿を、何処までも愉しげに眺め見た後―― 「さて、何が起きるかな?」 右人差し指に嵌めたフムカミの指輪を使用した。 瞬間、良美が指を向けた先――即ち、名雪に向かって幾重ものカマイタチが放たれる。 「ひぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああッッ!!!」 名雪の喉から、獣の如き悲鳴が吐き出された。 荒れ狂う風の刃は、容赦無く名雪の身体を蹂躙してゆく。 服を裂き、肌を裂き、酷い箇所では血管すらも断ち切られている。 舞い散る鮮血により、防弾ガラスが真っ赤に染め上げられた。 「ぎっ……がっ……ごああ……ガァァァアアア!!」 凄まじい激痛から意識を逸らすように、名雪は操縦用のレバーを滅茶苦茶に動かした。 それは何か明確な狙いがあった訳では無い、只の苦し紛れに過ぎぬ行動だ。 だがその行動こそが、名雪の命を薄皮一枚の所で繋ぐ結果に繋がった。 まるで操縦者の苦悶に反応するかのように、ショベルカーが不規則な動きで走り出す。 「……っ、くあ、無茶苦茶、だね……!」 良美は慌てて攻撃を中断して、転げ落ちぬよう態勢を安定させる事に専念した。 ショベルカーは慌しく左右に方向転換し、その度に良美の身体を衝撃が襲う。 まるでロデオ。 暴れ狂う馬に乗っているかのような感覚。 結局このまま張り付いていては危険と判断し、良美はショベルカーから飛び降りた。 「あぐ、あうっ、ぐ……よくもよくもぉ! 殺すッ、絶対に皆殺してやるぅぅぅぅぅぅう!!!」 名雪が駆るショベルカーはそのまま、明後日の方向へと走り去って行った。 スピーカーから、苦悶と憎悪の声を撒き散らしながら。 そして地面に降り立った良美は、逃亡するショベルカーを追い掛けたりしない。 フムカミの指輪が巻き起こした現象は驚愕に値するが、そのような事に意識を取られている暇も無い。 今は生死を賭した激戦の最中であり、全員が敵対者を仕留めるべく動いているのだ。 ならば次に何が起こるなど、考えるまでもない事だろう。 良美は大地を蹴って、素早くその場から退避した。 次の瞬間、それまで良美が居た空間を散弾の群れが引き裂く。 「甘いよ千影さん。悠人君を囮にするくらいじゃないと、私の裏は掻けないよ?」 「――――っ」 散弾を放った張本人である千影が、焦りを隠し切れぬ顔付きになる。 良美の背後に回り込み、照準をしっかりと絞り込んでの奇襲。 千載一遇の好機だった筈なのに、それすらも読み切られてしまった。 良美はS W M627PCカスタムに銃弾を詰め込みながら、千影をじっくりと眺め見る。 「千影さんもなかなか頑張ったと思うけど、そろそろ限界みたいだね」 その言葉に、千影は反論を返せない。 何とか自分の足で立ってはいるものの、それで殆ど限界だった。 時詠を介しての魔術はもう使えぬし、銃撃から身を躱すような動きも望めない。 度重なる連戦によって、魔力も体力も完全に底を突いているのだ。 対する良美も、万全の状態であるとは云い難い。 左手の小指は消失してしまっているし、右手にも軽くない傷を負っている。 体力も、一時間程度の睡眠では回復し切れていない。 それでも良美には未だ、動き回るだけの余力が十分にある。 とうに限界を越えている千影と比べれば、どちらが有利かなど明白だ。 両者が戦えば、一分も経たない内に決着が着くだろう。 だが、決して失念してはいけない――この場には、もう一人戦士が居る事を。 「ぐ――う――やらせる……かよっ……!」 「――悠人くん!?」 驚きの声は、千影のものだ。 満身創痍の風体を晒しながらも、悠人が懸命に起き上がろうとしていた。 口元にこびり付いた血を拭おうともせず、トウカの刀を杖代わりに用いて。 慌てて千影は、悠人の無謀な行いを制止しようとする。 「悠人くん、無茶だ……! 此処は私が――」 「駄目だ。ことりは最後までコイツに立ち向かった……腹を撃たれても戦い続けて、一矢報いたんだ。 それなのに、俺だけ逃げる訳にはいかないさ」 それに、と悠人は続ける。 「俺は衛やお前を守るって決めたんだ! お前達を何としてでも守ってみせるって、約束したんだ! だから絶対、コイツに勝ってみせる!!」 そう云って悠人は、日本刀を深く構えた。 その瞳には、警戒に値するだけの強い光が宿っている。 肋骨の幾つかが折れ、内臓も酷く傷付けられているにも関わらず、良美に立ち向かおうと云うのだ。 通常ならば、まず考えられない状況。 だが良美は、目の前で繰り広げられた光景に対して、驚きなど感じていなかった。 「……やっぱりね」 良美にとって、この事態は予想の範疇。 自分は既に、過去何度も同じような経験をしている。 前原圭一も白河ことりも、追い詰めれば追い詰める程、驚異的な底力を発揮した。 そして――その度に、苦渋を舐めさせられてきた。 「私、分かったんだ。悠人君みたいなタイプの人は、どれだけ痛め付けても止まらない。 どれだけ絶望させようとしても、奇麗事を吐き続ける」 もう、嫌という程思い知った。 こういった類の相手と戦う際には、一瞬の油断が命取りとなる。 相手がどれだけ傷付いていようとも、腹部を撃ち抜こうとも、気を抜けばその瞬間に負ける。 余分な思考は、只の足枷にしか成り得ない。 「だから決めたんだ――もっと恨もうって……もっと憎もうって! 二度と喋れないよう、五臓六腑まで引き裂いてやろうって!!」 そう――必要なのは、純然たる殺意のみ。 相手の想いを上回る、圧倒的な憎悪のみ。 そこで良美がS W M627PCカスタムの銃口を持ち上げ、構え終えた時にはもう銃弾が発射されていた。 三発。 群れを成した銃弾が、悠人目掛けて襲い掛かる。 悠人は上体を捻って避けようとしたが、今の身体で全てを凌ぎ切る事は不可能だった。 放たれた銃弾の一発が、悠人の左肩に突き刺さる。 「俺は……守ってみせる」 それでも、悠人は止まらない。 ことりは止まらなかったのに、自分だけが止まれる筈も無い。 トウカの刀を握り締めて、傷付いた足で一直線に駆け続ける。 「私は……憎い」 そして良美もまた、一歩も引き下がろうとはしない。 人を信じる、人を守ると云った悠人達の生き方は、絶対に認められない。 傷だらけの両手で、何度も何度も銃を撃ち放つ。 「衛を――そしてアイツの姉妹を、絶対に守ってみせる! もう衛が悲しむ所なんて見たくない!!」 悠人は良美の銃撃を、左右にステップする事で掻い潜った。 ――これまで自分を支え続けてくれた少女、衛。 これ以上彼女が悲しむ所なんて見たくない。 「圭一君が――そして悠人君のような、偽善者達が憎い! 私の全てを奪った世界そのものが憎い!!」 良美は弾の尽きた拳銃を仕舞い込んで、鞄から名刀"地獄蝶々"を取り出した。 ――自分にとって最も大事な存在だった、霧夜エリカと対馬レオ。 彼女達を奪った世界そのものが憎い。 「だから俺は――」 「だから私は――」 二人は、互いの剣が届く位置にまで踏み込んだ。 良美は地獄蝶々を、悠人はトウカの刀を振り上げて、 「「絶対に負けられないんだぁぁぁぁあああああああ!!!」」 己が想いを思い切り叩き付ける――!! 二本の刀が鬩ぎ合う。 絶対に譲れぬ想いと想いが衝突する。 だが、それはほんの一瞬。 あっという間に均衡は破られた。 「くぅ――――!?」 甲高い金属音と共に、良美の手から地獄蝶々が弾き飛ばされる。 いかに満身創痍と云えども、高嶺悠人はラキオスのエトランジェ。 只の一般人である、そして左小指を失った良美が、斬り合いで勝てる道理など無い。 「貰ったぁぁぁぁああああ!!」 得物を失った良美目掛けて、悠人が日本刀を振り下ろそうとする。 至近距離から放たれる剣戟を、今の良美が防御する方法は存在しない。 されど――良美とて覚悟を決めし修羅。 どんな極限状態であろうとも、諦めたりしない。 守れぬと云うなら、攻撃に全力を注ぎ込むだけの事……! 「まだ、だよ…………っ!!」 「ッ――――!?」 手を伸ばせば届く程の至近距離で、良美はフムカミの指輪を使用した。 猛り狂うカマイタチが、悠人の身体を次々に切り裂いてゆく。 だが、どれも致命傷に至るようなものでは無い。 その程度の攻撃で、悠人は怯んだりしない。 「ク……オオオオォォォォォ――――!!」 悠人は風圧で吹き飛ばされながらも、刀を最後まで振り下ろした。 しかし距離を離されてしまった所為で、刀の先端しか届かない。 放たれた剣戟は、良美の左肩を浅く切り裂くに留まった。 二人はよろよろと後退して、十メートル程の間合いを置いた状態となる。 「グ、ガアァッ…………」 「あ、くうっ…………」 悠人と良美は揃って呻き声を洩らす。 最早悠人は、自力で立てているのが不思議な程の状態だ。 対する良美も相当のダメージを負っているものの、悠人に比べればまだ浅手。 身体の状態ならば良美が、素の実力ならば悠人が大きく上回っている。 故に、両者の戦いは互角。 このまま戦い続ければ、どちらが勝つか全く分からない。 だがそんな二人の戦いは、第三者の手によって終止符を打たれようとしていた。 (悠人くん、悪いけど……横槍を入れさせて貰うよ。 君を……此処で死なせる訳には、いかないからね……) ショットガンに銃弾を詰め終えた千影が、良美の横顔に照準を合わせる。 先程までは悠人を巻き込む可能性もあった為、狙撃する事が出来なかった。 しかし両者の間に十分な距離がある今ならば、確実に良美だけを仕留められる筈。 一騎打ちの邪魔をするのは少々気が引けるが、今は悠人の命を守るのが一番重要だ。 千影は引き金を絞ろうとして――そこで、絶望的な何かが近付いて来るのを感じ取った。 「な――――」 思わず千影は言葉を失った。 良美も悠人も戦いを中断して、迫り来る物体に視線を寄せている。 黒光りしているボディ、特徴的な煙突。 ショベルカーを遥かに凌駕する圧倒的スケール、スピード。 見間違う筈が無い。 木々を薙ぎ倒して疾駆するソレは、蒸気機関車と呼ばれている代物だった。 「っ…………!!」 良美の判断は素早かった。 ショベルカーならばともかく、あんなモノが相手では犬死にするだけだ。 燃え盛るような憎しみを抑え込んで、直ぐ様逃亡を開始した。 先程弾き飛ばされた地獄蝶々を拾い上げて、即座にデイパックに押し込もうとする。 慌てていたのもあり、デイパックから何かを落としてしまったが、そんな些事に構ってはいられない。 一分一秒でも早くこの場を離れるのが、生き延びる為の絶対条件。 そのまま良美は脇目も振らずに、全速力で戦場から離脱した。 「――ハ、――ハァ――フ――」 斬られた左肩がじくじくと痛む。 銃撃の反動を押さえ続けた所為で、両手は感覚が無くなり掛けている。 悠人と千影には十分な損害を与える事が出来たし、後は放っておいても、あの機関車が始末してくれる筈。 だが今回のような戦い方をずっと続けていては、とても身体が保たないだろう。 ……いい加減、限界だ。 敵は大抵徒党を組んでいるのだから、こちらも集団化しなければ、余りにも不利過ぎる。 「なら――狙い目は、殺し合いに乗った人だね」 恐らくもう自分の悪評は広まり切ってしまっただろうが、殺人遊戯を肯定した者相手ならば、未だ交渉の余地はある。 自分と同じく、人数的な不利を痛感している殺戮者は多い筈なのだ。 交渉に成功したとしても、勝ち残れるのは一人だけである以上、信頼の伴わぬ一時的な協力関係に過ぎない。 だが、それで十分。 勝ち残れる確率が1%でも上がるのなら、何であろうと構わない。 「私は負けない……。どんな手を使ってでも、絶対に偽善者達を根絶やしにしてやる……っ!」 何処までも昏い声で紡がれる独白。 傷だらけになって尚、少女は全てを憎み続ける。 【F-4下部 /2日目 早朝】 【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】 【装備:フムカミの指輪(残使用回数0回)@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】 【所持品:支給品一式×3、S W M627PCカスタム(0/8)、S W M36(5/5)、 錐、食料・水x4、目覚まし時計、今日子のハリセン@永遠のアセリア(残り使用回数0回)、 大石のデイパック、地獄蝶々@つよきす、S W M627PCカスタムの予備弾3、.357マグナム弾(40発)、肉まん×5@Kanon、オペラグラス、医療品一式】 【状態:疲労大、左肩に銃創と穴(治療済み)、重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み、右手に穴・左手小指損失(応急処置済み)、左肩に浅い刀傷】 【思考・行動】 基本方針:あらゆる手段を用いて、優勝する。 1:ゲームに乗った者と共闘関係を築く(行き先は次の書き手さん任せ) 2:魔法、魔術品を他にも手に入れておきたい 3:あらゆるもの、人を利用して優勝を目指す 4:いつか圭一とその仲間を自分の手で殺してやりたい 【備考】 ※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない) ※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ) ※大空寺あゆ、ことみのいずれも信用していません。 ※大石の支給品は鍵とフムカミの指輪です。 現在鍵は倉成武が所有 ※商店街で医療品とその他色々なものを入手しました。 具体的に何を手に入れたかは後続書き手任せ。ただし武器は無い) ※襲撃者(舞)の外見的特長を知りました。 175 クレイジートレイン/約束(前編) 投下順に読む 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 時系列順に読む 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 朝倉純一 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 蟹沢きぬ 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 小町つぐみ 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 高嶺悠人 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 佐藤良美 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 千影 175 クレイジートレイン/約束(後編) 175 クレイジートレイン/約束(前編) 水瀬名雪 175 クレイジートレイン/約束(後編)
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『明日の夜明け、町の西の外れで待ってる』 ミィレスのその言葉に、ソラリアの心は揺れていた。 ミィレスの誘いは考えるまでもなく「一人で来い」と言う誘いだ。 「ミィレスさん……私と同じ魔神……」 同種族の同胞とは言え、出会ったばかりの相手を簡単に信用して良いのだろうか。 だがこれは千載一遇のチャンスかもしれない。そう思うと、ミィレスを信じたくなってくるのだ。 「黒い月と言う所に行けば……本当に私、記憶を取り戻せるのでしょうか」 ソラリアは可能性を示されたのだ。記憶を取り戻し、タクトととの大切な何かを思い出す可能性を。 ミィレスは感情を取り戻したいと言った。それが本当なら、彼女もソラリアと同じ、可能性に縋っているのでは無いのか?ソラリアはそう思った。 もし黒い月に行くのに一人では無理な理由があるなら、ミィレスが自分を誘う事の説明も付く。 ソラリアが自分に都合の良い理論展開を考えていた時、宿のドアを叩く音が聞こえた。 「はい、どなたでしょう?」 「カイラです。少し良いですか?」 「はい……?」 夜、ソラリアの部屋のドアを叩いたのはカイラだった。 カイラが会ったばかりのソラリアに一体何の用があるというのか? カイラは理由を告げぬまま、ソラリアと共に宿を出て行った。 (ん?) しかしその光景を目撃した者があった。一人部屋で酒を飲んでいたエルだ。 (あれはソラリアとカイラ。こんな時間に一体?) 時刻はとっくに深夜と呼べる時間帯だった。 シエラとカイラの出来すぎた出会い。そしてカイラがソラリアを見た時に見せたあの表情。エルの背筋に嫌な汗が溢れ出た。 「あの、魔神について知っている事って」 「……」 カイラがこんな深夜に初対面のソラリアを呼び出せたのは、魔神について教えると誘い出したからだった。 ソラリアは今ミィレスの誘いに乗るか否か迷っていた。 それを判断する為の情報を少しでも欲しかった矢先、カイラの申し出は渡りに船だったろう。 勿論、カイラはミィレスの誘いの事など知らない。魔神の情報をダシに使ったのは、単に事前にソラリアが記憶喪失と言う情報を得ていたからに他ならない。 だが運命の悪戯か魔神とカイラの宿命か、二つの歯車は全くの偶然に、完全に噛み合ってしまったのだ。 「魔神……黒い月に居る悪魔」 「悪……魔?」 カイラは俯いたままゆっくりと語り出す。 それはあたかも、ソラリアに向けられた呪言のように、ソラリアの心に深く深く浸透して行く。 「精霊無しで魔法を使う、この世界の住人ではない存在。神と精霊に嫌われた世界の異分子。我々の天敵」 カイラの言葉にソラリアの中で昼間の光景がフラッシュバックする。 『私達魔神はこの世界の敵。居ればみんなを不幸にする』 ソラリアの中にミィレスの言葉が蘇る。 実感のなかった大げさなセリフが、今確かな真実味を持ってソラリアの中で再生された。 「あ……あぁ……」 ソラリアは後退りペタリと尻餅をついた。 信じたくなかった言葉が今、現実の物となったのだ。 それまで平和に暮らしていたタクト達が、何故急にこれ程過酷な運命に巻き込まれてしまったのか。 ソラリアにはその理由が今こそ分かったような気がした。 『もしかしてぜんぶ、わたしとであったせい?』 天地がひっくり返りそうな衝撃に、最早ソラリアは正気を保つ事は不可能であった。 焦点の定まらぬ瞳は虚空を彷徨い、すがるべき何かを探している。 だがカイラはそんなソラリアに、追い打ちをかける一言をかけるのだった。 「そして、私とシエラの両親の仇」 「ッ!!??」 ソラリアは目を見開きカイラを見返した。 カイラも真っ直ぐにその瞳を見返す。 カイラの瞳に嘘は無い。全て偽りなき真実だからだ。 古き言い伝えにこうある。「魔神の征く所、必ず戦乱の嵐が吹き荒れると言う」 その伝承の通り、魔神は、ソラリアは、周囲に戦乱と死を振りまく存在だったのだ。 己の意思とは不関係に、それが魔神に科せられた宿命、いや、呪いであるかのように…… 「あなたに直接怨みは無いけれど……シエラから離れてもらうわ。永遠に」 カイラは放心状態となったソラリアを見て、彼女がもう抵抗する力も気力も失った事を確認した。 「死んで」 そして翼腕を構え、心で風の精霊にカマイタチを願ったその時、何かが二人の間の闇を切り裂いた。 「っ!? 誰っ!?」 カイラが振り向いた先、宿の方向を見た時、そこに居たのは悲しそうな顔をしたエルその人だった。 「カイラ……」 「ダークエルフの!? くっ、着けられていたとは!」 カイラが目撃者を消すべく、起ったカマイタチをエルに向けて放とうとした時、エルの影から一番巻き込みたくなかった人物が姿を見せた。 「お姉ちゃん!」 「シ……シエラ……」 それはシエラだった。 エルはカイラがソラリアを連れだしたのを見た時、怪しいと思いシエラを連れて二人を追っていたのだ。 そして間一髪、ソラリアがやられる前に間に合った。 「どうして!? どうしてこんな事するの? 教えてよ、お姉ちゃん!」 「シエラ、私は――」 カイラがシエラに手を伸ばす。だがその翼腕が可愛い妹の肩を掴む事はなかった。 「シエラ下がれ! そいつは傭兵なんかじゃない、ファルコの手下だ!」 そう、エルがシエラを下がらせたのだ。 エルは思い出したのだ。ファルコの四元魔将はまだ一人残っていた事を。 そしてその者の名は、災厄を齎す者(テンペスター)と言った事を。 昼間見た翼竜と竜巻を起こす程の風の精霊術師との戦い。そんな使い手など、大陸にもそう居なかったからだ。 「シルフ!」 「くっ、風で矢の軌道を……!」 次に放った矢はカイラを狙って射った矢だったが、これはいともアッサリと風で防御される。 エルは唇を噛んだ。やはり正面から挑んでは実力が違いすぎるのか!? 「いかにも私はファルコ軍四元魔将が一人、風の魔将テンペスター・カイラ」 「四元魔将!?」 シエラが驚きの声を上げる。それもその筈、四元魔将とはファルコ軍で最強の称号を持つ軍団長だからだ。 その軍団長に何故、優しい自分の姉がなっているのだろうか。シエラには理解出来なかった。 「何故妹の友達に手を出そうとした! 何故妹を騙した!」 「こうするしかなかったのよ!」 エルは続け様に弓を射るが、その悉くが風に煽られて決して当たる事が無い。 エルは自分が手加減されて居ると感じ、またしても己の無力さに唇を噛んだ。 「シエラ、聞きなさい! 私達の両親はね、本当は殺されたの」 一方、カイラは防戦一方に見え、その実全く本気を出していなかった。エルと戦う事が目的ではなかったからだ。 カイラの思いはシエラを守りたい事、エルの思いもシエラを守りたい事。 何故同じ思いを持つ者同士戦わなければならないのか? それはきっと、エルの思いがカイラよりも純粋でないから…… 「遺跡探索者(ルーインエクスプローラー)だった私達の両親は黒い月に近づき、そして魔神に殺されてしまった」 「そ、そんなの……そんなの聞いてないよ! 殺されたって何!? どう言う事なの?」 エルはその話を聞き、弓を引く手を止めた。 シエラが本当の事を知りたがっている。この場にもう自分の役割は無い。 シエラに必要とされていないと思った時、エルの手から世界樹の枝で作った弓がスルリと地面に落ちた。 「魔神は世界の敵、遥か古代の負の遺産! 絶対に倒さなければならない!」 それを見てカイラはシエラに近づいた。 この場にはもうそれを止める者はいない。カイラはシエラの両肩を掴み、未だ地面にへたり込むソラリアに向けて叫んだ。 「そしてそのソラリアと言う娘が、現代に甦った魔神なのよー!」 ソラリアとシエラの視線が交錯する。だがソラリアはシエラの目を真っ直ぐに見る事が出来ない。 それは先程のカイラとの会話によって、ソラリアの心に後ろめたさが植え付けられていたから。 「ソラリンが、私のお父さんとお母さんを殺した種族の……仲間……?」 「わ、私……私は……」 ショックを受けるシエラに何か言ってあげたい。だがソラリアには何も返す言葉が浮かばなかった。 自分の事も分からない者の言う事など、一体どうして信じる事が出来ようか。 再びグラリと視界が回り、ソラリアはその場に倒れそうになる。そこにやっと異常を察知してやって来たタクトが、倒れるソラリアの肩を支えた。 「ソラリア! 一体どうしたんだ!? 大丈夫か!?」 「タクト……さん……」 タクトはソラリアを後ろから抱きしめた。 あんなに強いソラリアが、今は力を入れたら砕けてしまいそうな程儚く、か細い。 それ程までにソラリアの心は今、ダメージを受けていたのだ。 「確かに私はファルコの手先となった。けどそれは魔神に復讐する為。そしてシエラ、あなたをファルコと魔神から守る為よ」 それでもカイラは構わず続ける。シエラの瞳を真っ直ぐ見つめて、伝えるべき真実を全て、心まで伝える為に。 「私達は空のオルニトも地のオルニトも追われた。そのせいであなたには辛い思いをさせてしまったけれど……全てはファルコの仕組んだ事だったのよ」 ファルコの企み、魔神の恐ろしさ、全て妹に伝えて、そして共に手をとって戦う為に。妹を守り抜く為に。カイラはーー 「風神ハピカトルに見えない”空の死角”の軌道を進む、黒い月へ行った事があるのは私達だけ。だからあの男は――」 あぁ、しかし何と言う事か。 カイラはシエラに想いを、真実を全てを伝え切る事が出来なかった。 「えっ!?」 「あぁ!」 シエラの脇を抜け地面を焦がした一筋の光。 続いて漂ってくる肉の焼けた匂い。 「お――お姉ちゃーーーん!!」 シエラに崩れかかるように倒れたカイラの胸には、ハッキリと金貨大の風穴が空いていたのだった。 「くそ!」 これにはそれまで力なく立ち尽くしていたエルも反応する。 猛禽類の目を除けば、最も目が良い部類に属するエルの目でも、暗闇の中カイラを狙撃した相手の姿は、影も形も見つける事が出来なかった。 (い、一体何をされたんだ? 光……光の精霊魔法なのか?) 「お姉ちゃん! お姉ちゃーん!」 「動かしちゃ駄目だ! 早く医者のところへ――」 突然の事に慌てふためく一同。 シエラはカイラの胸の穴から溢れ始めた、どす黒い液体を止めようと手で押さえながら泣き叫び、タクトがそれを止めようとする。 エルは周囲を警戒しながらシエラに覆いかぶさり次なる攻撃から守ろうとしている。 一瞬にして混乱の坩堝と化したその場で、ただ一人冷静なのは以外にもカイラだけであった。 「私は……もう助からないわ……」 「そんな事無いよ! きっと助かるよ! 助かってくれなきゃやだよ!」 シエラの顔を撫で、落ち着かせようとするカイラ。 その一方で考えていた事は、誰が自分を攻撃したのかと言う事。 光――それはファルコとミィレスが得意とする魔法の属性。だがこの攻撃の瞬間、精霊の息吹は全く感じられなかった。 だとすると犯人は…… (これは……ファルコの精霊魔法じゃない……そうか、結局私も両親と同じように……) カイラは両親が死んだ日の事を思い出した。 ――あの時、お母さんお父さんはこんな気持ちだったのかな―― 不思議と犯人への怒りや憎しみは無い。いや無いと言うより、そんなものどうでも良くなってしまうのだ。 犯人や自分の事よりも、もっと遥かに大切な事が他にあるから。 「シエラ……逃げて……」 「嫌だー! 絶対やだーーー!!」 「シエラ……」 シエラの姿に昔の自分を思い出すカイラ。 もう自分の事は良いから早く逃げてよ。あなたさえ助かってくれるならそれで良いのに。そんな思いに反し、シエラは固くカイラを抱きしめて放さない。 そんなシエラが愛おしくて、大切で、涙が出るほど嬉しいのが悲しい。 カイラはシエラに何も言えなくなって、もうどうして良いか分からなくなって、そんな時、シエラのもう一人のお姉ちゃんがシエラをカイラから引き離した。 「何か……言い残す事は?」 「シエラを……頼みます……」 「分かった」 カイラはそれを聞いて、安心して目を閉じる。まるで、もう思い残す事は無いと言うように。 「お姉ちゃーーーん!!」 冷静になったタクトとエルの手によってカイラは医者の所へと運ばれていった。 その場に残ったのは、子供のように泣きじゃくるシエラと、呆然とただ虚空を眺め続けるソラリアだけだった。 「……」 カイラを担ぎ込んだのは、地球式医学を学んだと言う触れ込みの、怪しい街病院だった。 そこの廊下で、一同は暗い空気に包まれていた。 カイラは面会謝絶で、地球で医学を学んだと言う怪しい若い医者から手術を受けている。 ハッキリ言って生死不明の重体だ。 廊下の椅子で一言も喋らないシエラに対し、皆何と声をかけたら良いか分からずに居た。 「シエラさん、あの……」 そこで初めて口を開いたのは、以外にもソラリアだった。 もし万が一カイラが死ねば、シエラは天涯孤独となる。 その最悪の事態を考えた場合、根拠も無く下手に希望的観測を述べて励ますのは、返って悲しみを増大させる結果となる。 希望を持ちたい。だが希望が潰えた時、人はより深く絶望する。 きっと、シエラも姉に助かって貰いたい反面、心の何処かで覚悟を決めなければならないと思っているのだ。 だがその覚悟を持つ事自体、姉が助かる事を信じない事になるのではないか? そして非科学的な考えだが、姉が助かると信じ切れなかった為に、祈りが足りずに助からないかもしれないと言う思いもあるのだ。 ソラリアは自分が魔神で、人々に不幸を撒き散らす存在だと知ってしまった。 事の責任の一端は自分にあると思っているのだ。 だからシエラを少しでも励まそうと声をかけたものの、やはり何と言っていいかわからず、こうして再び黙ってしまったのだった。 だがこの事が、シエラに珍しい怒りと言う感情を呼び起こす結果となってしまった。 「……何で何も言わないの?」 「えっ」 シエラが椅子からゆらりと立ち上がった。 そしてそのままゆっくりとソラリアの前まで来ると、翼腕をだらりと垂らしたまま虚ろな瞳で話し出したのだ。 「あの時、精霊力を感じなかった……前にソラリンが魔法を使った時と同じだったよ」 「っ!?」 感情の籠らない声でそう言うシエラ。 いつもの明るく元気な声からは想像もつかない、ゾッとする程冷たく静かな声に、ソラリアは身動き一つ取る事が出来なかった。 (まさかミィレスさん? そんな、どうしてなの?) 幽鬼の如くソラリアの前に立つシエラを見て、エルは嫌な予感しかしなかった。 これから最悪の事態になる。戦闘種族であるダークエルフの感がそう告げて居た。 (やっぱりカイラは魔神に……ソラリア以外にも魔神がこの街に来て居たのか) 魔神には気配が無い。気配を消して居るとか気配が薄いとかではなく、初めからそんな物魔神は持ち合わせないのだ。 あの時、エルの視界の外からミィレスはカイラを正確に撃ち抜いた。 それはカイラが潜在的にマスターであるファルコの敵であった為か?いや、或いはもしかしたら、カイラと戦闘になりそうだったソラリアを守る為に…… エルはもう一人の魔神よ目的が分からず考え込もうとしたが、それを止めたのだ突然の怒声だった。 「お姉ちゃんはソラリンと同じ魔神にやられたんだよ! 私の両親だって!!」 「私は……私はその……」 その大声はシエラの声だった。 誰も見た事が無いシエラの怒り。もうこの先何が起こるのか、一番付き合いの長いエルにも分からない。 ただ一つ言える事は、今のシエラは何をするか分からないと言う事。 「ソラリンも魔神なんでしょ!? 何とか言ってよ! 何か言ってよぉ!!」 「もうよせシエラ!」 エルはシエラを後ろから羽交い締めにした。今やシエラの顔はソラリアに噛みつかんばかりに近づいていた。 エルがあと一瞬、動くのが遅ければシエラはソラリアに掴みかかっていたろう。 シエラの怒気はそれ程の物だった。 「お前が悲しいのはみんな分かってる! でも、これ以上は……ただの八つ当たりだ」 「う……」 そう、エルの言う通りだった。 シエラのソラリアへの怒りは完全な八つ当たり。そんな事誰もが、シエラだって分かって居た事だったのに…… 「うわぁぁぁぁぁん! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 シエラはエルに抱きついて泣いた。 エルはシエラの頭を撫でながら、もう何も言わなかった。 エルがシエラを守り始めたのは、彼女のセンチメンタルだった。 そのセンチメンタルはシエラの実の姉が現れた事で崩れ去った。 今は違う。これからは、エルはシエラを大切な仲間として守るのだ。大事な友達だから守るのだ。 エルの中で何かが変わり始めた。 「ソラリア、行こう」 「タクトさん、私……」 どうして良いのか分からず、ただ下を向いていたソラリアを助けたのは、やはりタクトだった。 「今はそっとしておこう。時が経てば……シエラも分かってくれるさ」 「はい……」 ソラリアはタクトの優しさに素直に甘えた。 しがみ付いた腕は思っていたよりもずっと太くて硬く、それだけでソラリアは不安を忘れる事が出来るようだった。 「わあぁぁぁぁぁぁぁ……」 廊下に響くシエラの泣き声は、深夜まで続いた。 『あの時、精霊力を感じなかった……前にソラリンが魔法を使った時と同じだったよ』 宿に戻ったソラリアはベッドで今日起った事を思い返していた。 カイラ、シエラ、二人の姉妹を襲った悲劇は今も続いている。 (カイラさんを攻撃したのはミィレス……あなたなの?) そしてその悲劇をもたらしたのは、ソラリアと同じ魔神のミィレスだ。 ミィレスは何故そんな事をしたのだろうか?誰かに命令された?一体誰に。 そう考えてまず頭に浮かんだのはファルコと言うオルニトの神官だった。 だがその考えは矛盾している事にソラリアはすぐ気付く。 ファルコ軍の精鋭である四元魔将のカイラを、何故ファルコが殺そうとするのか。 『私達魔神はこの世界の敵。居ればみんなを不幸にする』 再び頭の中でミィレスの言葉がリフレインする。 あの時カイラはソラリアを殺そうとしていた。もしミィレスがカイラを攻撃した理由が、ソラリアをカイラから守るためだったら? (だとしたら、カイラさんがあぁなった原因の一つは、紛れもなく……) ソラリアは思う。自分が目覚めてからの戦いの連続を。 きっとこんな事普通じゃないんだ、と。 「世界の……敵」 スワンもミィレスもカイラも魔神の事をそう言っていた。魔神とは一体何なのか? 何故こんなに憎まれ、そして戦いを呼んでしまうのか。 考えても考えても答えは見えてこない。ただ一つ確かな事、それはソラリアが紛れもなく魔神であると言う事。 「シエラさんごめんなさい……カイラさん……エルさん……タクトさん」 その答えを見つけるには一つしか方法はない。だがそれは今まで共に戦って来た仲間への裏切りになる。 「みんな、ごめんなさい……」 それでもソラリアは答えを求めずにいられない。 自分が何なのか分からなければ、これ以上一歩も進めない気がするから。 (こんなに悲しいのに、シエラさんのように涙が出ない) ソラリアは自分の選択が自分勝手な選択だと分かっていた。罪悪感も孤独感もあった。 それでも、ソラリア黒い瞳からは、一滴の涙も流れ落ちないのだ。 「私は……悪魔なんだ……」 ソラリアは、そのまま静かに目を閉じた…… 「シエラ落ち着いたか?」 「うん……」 翌日の朝、シエラが落ち着きを取り戻したのは、カイラの手術が成功したとの報せを受けてからの事だった。 それまでエルはずっと、付きっ切りでシエラを落ち着かせようと頑張っていた。 シエラにとって今が一番辛い筈だ。誰かが支えてあげなければならない。それが今出切るのは自分しかいないとエルは思った。 「私、ソラリンに酷い事言っちゃった……」 一方、平静を取り戻したシエラは、自分が仲間に言ってしまった事を後悔していた。 「ソラリン、許してくれるかなぁ」 あの状況で、ソラリアがシエラに何か言える筈がない。 にも関わらず、ソラリアは何とかシエラを励まそうと思ってくれていたのに、その思いを完全に踏みにじる行為をしてしまったのだ。 こんな事をしたら嫌われて当然だとシエラは俯いた。 「きっと分かってくれるよ」 「エル」 そんなシエラをエルがまた励ます。ソラリアは心の優しい娘だ。それが分かっていたから、エルは二人は仲直りできる筈だと信じていたのだ。 だが事態は、エルが想像していたよりも遥かに悪い方向に進み始めていた。 「あれ? 居ない」 朝方宿に戻ったエルとシエラは、ソラリアに謝ろうと真っ先に泊まっている部屋に向かった。 しかしノックをしても反応がない。仕方なくドアを開けてみると、そこにソラリアの姿はなかった。 「もう起きてたのかな?」 「……そのようだ」 シエラがキョロキョロと部屋を見回す中、エルの目はもぬけの殻となったクローゼットを見ていた。 「そんな……ソラリン、私のせいで……私があんな事言ったから」 ソラリアはどこを探しても居なかった。 宿にも、宿の近くにも、三人で街中探し回ったが全く姿が見えない。 昨夜の事を考えれば、それは誰の目にも「出て行った」としか思えなかった。 「シエラは悪くない。誰も悪くない。悪いのは――」 再び宿に戻って結果を報告しあい、芳しくない結果に責任と罪悪感を感じて泣くシエラ。 それをエルが慰め、タクトがソラリアの行きそうな所はまだ無いかと必死で考えていると、窓の外から誰かが話しかけてきた。 「あ~まんまとしてやられちゃったね」 三人が一斉に声のした方を振り向く。 そこにはこれから葬式に出るのかと思うほど、全身黒尽くめで顔も見えない喪服の女性が立って、こちらを見ていたのだった。 「朝からデバガメみたいな真似して申し訳ない。私は元老院の聖騎士アルトメリア」 「聖騎士だと!?」 「嘘、本物? 本物の聖騎士!?」 素早く弓を構え臨戦態勢を取るエル。一方、噂でだけ聞いた事がある都市伝説めいた存在に、妙に浮き足立つタクト。 そんなタクトを殴って静かにし、エルはシエラを庇うように立ちアルトメリアに向き直った。 「で、スラヴィアの戦闘貴族にも匹敵すると言われる聖騎士様が、私らに一体何の用だい?」 「魔神を退治しに来た」 と、アルトメリアは事も無げに話した。 しかし実際ソラリアの戦いを間近で見た事のあるエルは、昨日の怪獣大戦争めいた戦いを見ても、聖騎士が魔神をすんなり倒せるとは思えなかったのだ。 いや、今はそんな事が重要なのではない。この聖騎士が、何を目的に昨日からちょっかいを出して来ているのかと言う事が大切なのだ。 その目的、何を知り、何をしたいのか。それを聞き出す必要がある。 エルは駄目元で顔の見えないアルトメリアに話を聞いてみる事にした。 「魔神の――ソラリアの事を知っているのか?」 「多少はね」 案外簡単に、エルの呼びかけにアルトメリアは答えた。 まるで待っていたかのような気軽さだ。これがこの聖騎士の性格なのだろうか? とにかく、アルトメリアは聞かれてもいないのに、エル達に情報を与え始めた。 「かつて魔神は聖剣を持つ聖騎士によって倒された。だが今はその聖剣も殆ど残っていないからね」 かつて魔神を倒す為、神が人に与えた兵器――それが聖なる剣『聖剣』だった。 そして現代に残る数少ない聖剣の所持者の一人が、アルトメリアが所属する聖騎士団の団長、スパイク=エンフィールドだった。 だがその彼とて、魔神と戦った事がある訳ではない。遥か古代から甦った魔神と、現代でも戦える者がいるのか? それは正直な所、やってみなければ誰にも分からない。 ただ、これまでのソラリアの戦績、そして発掘されて即ファルコの右腕となったミィレスの実力から考えて、人の身で太刀打ちできる者は殆ど居ないだろう。 「だから代わりに腕の立つ者達が聖騎士の役割をやっているって訳さ」 「ソラリンを殺すの?」 シエラは核心を突く質問をする。 そう、タクト達にとって重要なのはそこだ。ソラリアはタクト達の仲間だ。その仲間を殺すと言うのであれば、アルトメリアはタクト達の敵と言う事になる。 聖騎士と戦って勝てる見込みは殆どないが、それでも我が身可愛さに仲間を見捨てるような薄情者は、ここには一人もいない。 三人に緊張が走る。次のアルトメリアの返答いかんで、聖騎士と戦うか否かが決定されるのだ。 「そのつもりだったが……どうやら、ソラリアと言うその魔神は悪い奴じゃなさそうだね」 アルトメリアはそう言うと、表情が読めない三人に気遣ってかオーバーなジェスチャーでやれやれとやって見せた。 一安心した三人だが、アルトメリアの話はまだ終わらない。 「だがファルコとその右腕、魔神ミィレス……そして黒い月は許さない」 アルトメリアはやれやれのジェスチャーを止めて、片手の拳を握り締める動作をした。 聖騎士にしてもファルコは、そして魔神はそれ程忌むべき相手と言う事らしい。 ここに来てだんだんと、朧気ながらエルとタクトにはアルトメリアの目的が見え始めた気がした。 そこでタクトは更に突っ込んでみる事にした。 ソラリアと出会い、四元魔将と戦い、度々登場する『黒い月』と言う単語。 それが一体何なのか?タクト達はまるで知らないままだったからだ。 「カイラも言っていたがその黒い月ってのは一体何なんだ? それが重要なものなのか?」 「行けば分かるよ」 「何?」 アルトメリアはそう言うと、顔を覆っていた黒いレースをめくって見せた。 「その為に私はここに来た」 レースの下から出てきた顔は、まだ歳若い女の顔。それも地球人女性の顔だった。 日光が顔に当たり、アルトメリアは顔に火傷を負い始める。太陽光に弱い、それはスラヴィアン独特の特徴だった。 もともと与えられた神力が少なく、スラヴィアンとして最低ランクの力だった為、こうして太陽光への拒絶反応も比較的弱くて済んでいるのだ。 これがもし強力な神力を持った古い貴族だったなら、一瞬で石のように固まり、ものの数分で風化して自然に還る事だろう。 「シエラ=ウィンザード。黒い月へ至る道を教えてほしい」 「なっ――」 だがそんなアルトメリアとて太陽光に長く当たっていられる訳ではない。 シエラを見詰めるアルトメリアの顔は、その僅か数秒間で火傷を負い、女の顔がどんどん傷付いていった。 その光景を前にしてシエラは戸惑った。何故なら黒い月の事など、小さい時の事すぎてほとんど覚えていないからだ。 この聖騎士が自らの弱点を曝け出してまで、願い乞うような情報をシエラは持ち合わせていないのだ。 「アルトメリア=リゾルバの名において命ず。出でよワイバーン!!」 シエラがそうこう考えて居る内に、アルトメリアが昨日カイラと激戦を繰り広げた時に使役した翼竜を召喚した。 この翼竜に乗って飛んで行こうと言う事か。 「ソラリアも、もう一人の魔神とファルコと共にそこにいる筈だ。再び神魔戦争を起こさない為に……頼む」 辺りは早朝だと言うのに、昨夜に続き現れた翼竜に驚いた住民達が集まりざわめき始めている。 アルトメリアはそのざわめきの中、翼竜の上でシエラを誘うように手を伸ばしている。 「シエラ……」 「……」 ソラリアがどこに行ったかわからない。だがもし本当にソラリアが、ファルコやもう一人の魔神に連れられて行ったのだとしたら? その可能性は高いとエルとシエラは直感した。 このアルトメリアと行く事が、ソラリアを探す一番の近道かもしれないと。 『行こう! 黒い月へ!!』 シエラとエルの声が重なった。 「ミィレス……本当に黒い月まで行けば、私もあなたも失った物を取り戻す事が出来るの?」 「行ければ取り戻せる。絶対に」 ソラリアとミィレスは街の外に出た広野を飛んでいた。 目指すはファルコ軍の野営地、ファルコの下である。 「ミィレス……あなたも……」 ソラリアはミィレスの表情を窺った。しかしミィレスは相変わらず無表情のまま前を向いて飛行するばかりである。 ミィレスは心を失っていると言った。心を取り戻したいと。 心が無ければ悲しみや苦しみや罪悪感に苦しめられる事も無いのだろう。 しかしそれは同時に喜びや楽しみや感動もないと言う事になる。 何も感じない、それは死んでいる事と何が違うと言うのだろうか。 ソラリアはミィレスを可哀想だと思った。 「よく来てくれた、もう一体の魔神よ」 そしてとうとう着いたファルコ軍陣営で、ソラリアはファルコに出会った。 立派な体格に手入れの行き届いた翼。服は一目で良い物を着ていると分かる物で、首や足首や体の至る所に金銀宝石の飾りが輝いている。 これこそ、今までこの男がどれ程の村を襲い、奪ってきたかを証明する姿に他ならない。 ソラリアは目覚めてからの短い生の経験の中で、初めて嫌悪感と言う物を感じた。 「私はオルニトの神官ファルコ。私が君達を黒い月へ招待しよう」 「イエス、マイマスター」 「お願い……します」 ソラリアはその嫌悪感を抑えてファルコと握手を交わした。 この場で感情のまま握手を拒めば、ソラリアを連れて来たミィレスの立場を悪くする。 それに何より、ソラリアはみんなの事を裏切ってここまで来たのだ。今更立ち止まるわけにはいかなかったのだ。 「ふふふ……コマは全て揃った。後は行くだけだ」 ファルコが今までの失敗の繰り返しを思い出す。 カイラから聞き出した黒い月の軌跡から辿り着いた『門』には二つの鍵穴があった。 一つはミィレスの持つ鍵の剣で開く。だが鍵の剣はもう一本必要なのだ。 二本の鍵の剣を同時に回さなければ門は開かない構造らしく、また、鍵の剣の複製はドワーフ達の技術力を持ってしても不可能だった。 開門に失敗し、現れた門番三人に部隊を壊滅させられる事数回、ファルコが半ば諦めていた時、ソラリアの噂が耳に入った。 (私が魔神達の王となりオルニトを、いや、世界を手に入れる日も近い) 学者達の見解によれば、黒い月には魔神達が眠っていると言う。そして目覚める時を待っている。そこに最初に到達して、ミィレス同様自分がマスターだと言ってしまえば…… 「ふふふ……はーーーっはっはっはっはっ....」 ファルコは込み上げる気持ちを堪える事なく、高らかに勝利の笑い声をあげた。 異世界の空を漂う黒い球体型の建造物。その軌道はカオス理論によって算出した空の死角を縫って航行するように設計されている。 嵐神の力で浮遊している浮遊大陸オルニトとは違う原理で飛行するこの物体は、悠久の時をこうして過ごしてきたのだ。 「そうですか。ここに向かってくる者がいると」 その巨大球状物体の中、色取り取りで大きさも様々な灯りが灯る暗い部屋の中で、一人の女の声が響いた。 「本当ですか? もしそうなら我々が待ち望んだ時がついに……」 微かな灯りに照らし出される一人の女。その視線の先には光る窓のような四角い灯りがあり、その中で別の女が何かを話している。 「あの悲劇の日から幾星霜……早く、早く来て下さい。我らが主様……早く……早く……」 明るい窓が消え、部屋にはまた元の静寂が戻った。 まるで時が止まったかのような闇と静寂が支配する場所で、女は男の到着が待ちきれないように、その手を下腹部に伸ばすのだった。 ※異世界冒険譚-蒼穹のソラリア- ④ へ行く 独自色の強いシリーズだけど迷わず走り抜けるのは清々しい。このシリーズが世界観に合っているか?というよりもどうやればしっくり世界観に馴染むかを考えてしまうくらいの気持ちよさがあった -- (名無しさん) 2013-01-18 17 27 24 物語として最後はどういうゴールをきりたいのか一区切り終わって気になったんやな -- (名無しさん) 2013-01-18 21 52 45 最初は違和感があったがここまで通しで読むと作者の気合みたいなものを感じて清々しい -- (名無しさん) 2013-02-08 00 32 29 本来いるはずのない自分への懐疑と他者の運命を狂わせるという思いは今のソラリアには厳しい仕打ちでしょうね。状況も悪化し周囲の人が傷ついていくというのも読んでいて辛さが重いですね。ファルコの目論見と魔神の心が剥離していっているようにも感じましたがやはり結末は黒い月でとなるのでしょうか -- (名無しさん) 2015-12-20 19 41 07 名前 コメント すべてのコメントを見る