約 235,564 件
https://w.atwiki.jp/ohomodachi/pages/51.html
「先生は三度死にかけました。」 概要 若かれし頃、ホンジュラスで死にかけたらしい。 治安が悪いと大変である。 関連項目
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2824.html
戦況は絶望的だった。 それだけが存在理由だ。と言わんばかりに暴れる「神人」という名の半透明の化け物 次々と破壊されていく建造物 飛び交う悪態と悲鳴 既に負傷者の数ははかりきれない 機関に入って以来、僕だってそれなりに修羅場をくぐりぬけてきた。 それは何も僕だけの話ではなく、少なくともここに集まっている仲間全員がそう自負している。 死を覚悟した経験も一度や二度ではないし、実際、仲間の中には生命の危機に関わるほど 重傷を負った人もいた。 そんな経験もあって、僕らは既にこの閉鎖空間内での戦闘に関してはスペシャリストだった。 それはもう全員がたった1人でのハイジャック、及び原子力発電所の奪取が可能なほどに。 そんな一流の僕らが、今まさに機関始まって以来、最大のピンチをむかえている。 午前6時、涼宮さんと彼が朝っぱらから愛し合う事で発生した空間の中で。 「あぁ、もう駄目…」 森さんしっかりして下さい! もしどこか負傷したのなら… 「別に肉体的な負傷は負ってないんだけどね。」 はぁ… 「あんたはまだその年だから平気かもしれないけど あたしぐらいになるとね。このゲロ甘&桃色の空気に包まれてるだけで体に毒なのよ。」 … 「なんてゆーか。心が蝕まれるっていうの?すっごい鬱になるのよね。」 な、なるほど。 「つまり、もう決して取り戻すことのできない自分の青春時代を思い出し、 当時の自分との余りのギャップに心が挫け、極めて遺憾な状態に陥った、ということですな。」 あ、新川さん…そんなはっきり 森さんが新川さんをギロリと睨む。いつもならここで容赦なく肝臓打ち→ガゼルパンチ→デンプシーのフルコンボを 打ち込んでいるはずだったのだが、よっぽど気が滅入っていたのだろう、今回は剛体術一撃で済んだ。 それだけでも、新川さんの胃袋はズタズタになったはずだが。 口から血をまきちらし昏倒する新川さんをしりめに、森さんと対策を練る。 「ヤバイわね。昨日の今日ってこともあって、みんな疲れきってるわ。」 ええ、それに加えて桃色パワーでさらに(ある意味)凶暴化してる神人が相手ですからね…。 「多丸(裕)の顔見てよ。昨日のダメージと極度の疲労で顔がリカルド・マルチネス戦の伊達みたいになってるわ。」 ああ、本当だ…。 「神人の強さや空間の居辛さもそうだけど、戦ってる理由がアレなせいでテンションが上がらない。っていうのもあるわね。」 ああ、それはあるかも。 1組のカップルが愛し合い、肉体を求めることで発生した世界崩壊の危機を防ぐために戦う。 …なんて意味の分からない理由だろう。 百戦錬磨のソルジャーでさえそんな出動命令が下れば戸惑いの1つや2つ浮かべるというものだ。 「とにかく、うちみたいなベンチャーは1人1人のモチベーションが大事なんだから。 その辺の対策も練ったほうがいいかもね。」 えぇ、機関ってベンチャーだったんですか?!…ってうわぁぁぁぁぁ! 前方からもの凄い勢いで飛んできた謎の物体をギリギリで回避する。 ソレはその勢いのまま、まるで地面に突き刺さるように激突した。 「ちぃ、一体何?!」 衝撃で飛び散る破片をかわしながら、飛んできたソレを確認する。 そこには上半身だけ地中にめり込み、下半身をぴん、と伸ばしたまま地面に突き刺ささっている多丸(圭)の姿があった。 「まぁ、まるでコンクリートの隙間から力強く必死に茎を伸ばして空を仰ぐように咲くたんぽぽみたい。」 言ってる場合ですか! 多丸(圭)を(1人で)必死に引っこ抜こうとしてると 「古泉まずい、こっちに来たわ!」 ええ?! 振り向くと確かに神人が1体、物凄く楽しそうにスキップしながらこちらに接近していた。 「逃げるわよ!」 ちょっと待って下さい!多丸(圭)さんが抜けないんです! 「そんなのほっときなさい!」 ええ?!…って森さんも手伝ってくださいよ! が、森さんは既に球体化して遠くに避難していた。 神人がどんどん近づいてくる。 わわわわわわわわわ…! 必死に多丸(圭)を引っ張るが全然抜けない。 そりゃ出来るなら僕だって逃げたいけど、それは人として、古泉一樹として絶対間違っていると 自分に言い聞かせ、涙目になりながら引っ張り続けた。 スポン! およそ人が地面から抜け出る音とは思えない効果音を奏でて、多丸(圭)をようやく掘り出すことに成功した。 が、時すでに遅し、神人の足の裏がもう目の前にまで迫ってきていた。 球体化している暇もない。 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 「古泉ぃぃぃぃぃ!」 遥か遠くの空から森さんが叫ぶ。決して助けてくれようとはしない。 万事休す!と、とうとう覚悟を決めようとしたその時 『ヴォォォォォォォ…』 まさに間一髪。 神人がその動きを止め、足元からゆっくりと自壊し始めた。 僕は思わず腰が抜け、へたりと座り込む。 「ギリギリだったわね。」 ええ…、今回は本当に死ぬかと思いました。 …って森さんいつの間に。酷いですよ、助けてくれないなんて。 「空間が発生して1時間、神人が出現して30分が経過してるわ。…昨日より掛かったわね。」 無視ですか。 「しかし、酷い有様ね。」 周りを見渡す。建物は軒並み破壊され、仲間の半分以上は怪我を負い、地面にうずくまっている人もいる。 まるで核の被害にあったかのような状態なのに、相変わらず空間内は桃色で、空にはハート型の雲が浮かんでいる。 なんてシュールな光景なんだ。 しかし… 涼宮さんには早いとこ、彼との行為に少しでも慣れてもらわなければ。 だけどこればっかりは僕も横槍のいれようがない。 もし彼女に直接『愛する人とのSEXとはいえ、なにも緊張することはないんですよ。』的なアドバイスをしようものなら …その後起こるであろう惨劇は容易に想像できる。 「ふぅ、とりあえず集合よ。今日の反省と、今後の対策を練る必要があるわ。 …新川、いつまで悶絶してるのよ。さっさと集まりなさい!」 身悶えている新川さんにドカッと蹴りを入れる森さん。あそこまで酷い事をするとは…彼女もそうとう参ってるようだ。 うん、そう思っておこう。決して普段からああって訳ではない。ないんだ。 「なにぶつぶつ言ってんのよ。」 ああいえ別に何も! …あっぶねー。 ようやく気持ちも治まってきて、冗談(?)を言う余裕も出てきた。 とにかく、今は一刻も早く帰りたい。 なにしろ昨日は3時間弱しか寝れてない。金曜日だったので、疲れもかなり溜まっていた。 今日は午後から不思議探索だから、急いで帰れば2時間ぐらいはまだ眠れるかもしれない。 なんてことを考えながら、みんな集まっている場所へ多丸(圭)を担いで向かっていると… 『ヴォォォォォォォ…』 え? 僕はもちろん、森さんも新川さんも、他の仲間達も全員体をビクッ、と硬直させる。 「…今のってまさか…。」 森さんにつられて後ろを振り向く。 そこには信じられないような、信じたくないような光景が… 桃色神人、再・爆・誕! 「2Rね…ほんっと、若いって素敵。」 森さんが呟く、その顔は笑みを作ってはいるが、絶望と怒りと、そして悲しみに包まれていた。 他の仲間もみんな同じような顔をしていた。もちろん僕も。 やっとこさメタルクウラを1体やっつけたというのに、その後崖の上から無数のメタルクウラが現れた時の悟空とべジータの心境だ。…わかるよね? 「まぁ、ここでいくら落ち込んでもしょうがないわね。いくわよ、野郎共!」 森さんのその叫びと共に、半ばやけくそになりながら僕たちは神人に突っ込んだ。 どうか生きて帰れますように…。 なんとか生きたまま桃色空間の中から帰ってくることに成功した頃には、時刻は既に10時をまわっていた。 戦闘自体は…まぁ今日2回めということでわりかし早めに終わったのだが、その後緊急で 対策会議が(道端で)行われた為、こんな時間になってしまった。 結局その対策会議というのも、ろくに結論が出ないまま終わってしまったのだが。 そういうわけで、僕が自宅に戻ってきた頃にはそろそろ不思議探索に行く準備を しなければいけない時間帯になっていた。なんの拷問だ。 のんびりお風呂に入りたい気持ちでいっぱいだったが、あいにくそんな時間はない。 とりあえずシャワーだけ浴びる。自分の体を見るとあちこち擦り傷や、打撲で酷いことになっていた。 やれやれ、せめてお2人の事を少しでも嫌いになれれば、気持ちよく悪態もつけるというのに。 そんな事を考え、思わず苦笑する。 シャワーを浴び終え服を着た後、簡単な食事を摂る。 買っておいたパンを食べ、野菜ジュースを飲む。疲れているため食欲もいまいち沸かない。 それから少しばかりソファーに座りくつろぐ。うっかり寝てしまいそうだ。あぶないあぶない。 …そろそろ時間だな。 今日、今日さえ無事に過ごしてしまえば明日は日曜だ。きっとゆっくり休める。 そう自分に言い聞かせ、ソファーから体を起こす。 玄関で靴を履き重たい足を引きずるようにしながら、僕はドアを開けた。 集合場所まで行くと、既に僕以外の団員は揃っていた。 それはそうか。いつも最後の彼は今日は朝から涼宮さんと一緒にいたわけだから。 「やぁみなさんお揃いで。」 「おっはよー古泉君!」 「おはようございますぅ。」 「…」 「おぅ。」 朝っぱらからそれなりに激しい運動をしたのだから、さすがの涼宮さんも少しは疲れていると 思ったのだが…むしろいつもよりもテンション高めに見えた。 …彼のほうは少しやつれ気味だったが。 「大丈夫古泉君?なんか少し顔色が悪いわよ?」 ああしまった。疲れが表に出てしまったようだ。 「いえ、大丈夫です。恥ずかしながら昨日少々夜更かしをしてしまいまして。」 横目でチラリと彼を見てみる。微妙に怪訝な顔をしていた。 「ふぅん、まぁ平気ならいいわ。 じゃあとりあえず喫茶店ね。そこで班決めするわよ。」 付き合っているんだから彼と2人きりでいればいいのに。わざわざ班を決めるところが涼宮さんらしい。 「あ、古泉君。ドベだから今日おごりね。」 … …かしこまりました団長様。 公正な班決め(色つきわりばし)の結果、涼宮さん長門さん朝比奈さんの女の子3人組。 僕と彼の男2人組みという組み合わせになった。 「じゃあ4時にまたこの喫茶店で待ち合わせね。 古泉君。キョンがさぼらないようにしっかり見張っててね。」 「かしこまりました。」 「さぼらねーっての。」 特に気分を害したようすもなく彼が溜息をつく。 「んじゃ、いくわよ。みくるちゃん、有希。」 あちら方と別れ、彼と街中を歩く。 「なんか飲むか?おごってやるぜ。」 これはめずらしい。なにかいいことでもあっ…そういやありましたね。凄いのが。 「?どうした、いらないのか。」 「いえ、ありがたくいただきます。今日はえらく気前がいいですね。」 「ま、今日誰かさんが遅く来てくれたおかげで珍しく財布が重いんだ。」 「なるほど。」 奢ってもらったコーヒーのプルタブをあける。彼は既に飲み始めていた。 「…昨夜はお楽しみでしたね。」 『ブーーーーーーーッ』 彼が派手にコーヒーを噴出す。ここまで期待通りのリアクションをしてくれるとは。 「なななな、なんで…ハッ、また機関とやらの情報だな! おい、いいかげんにしろよ。俺はともかくだな、ハルヒのそんなプライベートなことまで…」 顔を赤くさせたり青くさせたりしながら物凄い勢いでまくしたててくる。 普段冷静な彼がここまで取り乱すとは… 「いえいえ、別に覗いてたり、会話を聞いてたりしていたわけではありませんよ?」 「?、じゃあどういうことだ。」 「閉鎖空間です。」 「なに?」 「昨夜の12時過ぎごろ、ものすごい規模の閉鎖空間があちこちに発生しまして… 昨日涼宮さんがあなたの家に泊まりに行っていたことは、僕をはじめSOS団員全員が知って いたことだったので、発生した原因としてはまぁ、。そういうことかなと。」 この際だ。彼ぐらいには言ってもいいだろう。 僕の中に溜まっている疲れを少しでも癒すために、彼をおちょくって照れた顔でも見てやろう。 「…!…っっ!」 彼は落ち着かない様子で目をぎょろぎょろ動かしている。 その時点でかなりおもしろい。よっぽど恥ずかしいのだろう。 が、さらなる動揺を与えるため例の桃色空間の様子を伝えようとすると… 「閉鎖空間が発生した…ってことは…ハルヒはもしかして、ストレスを感じていたのか?」 「え?」 「いや、だって閉鎖空間が発生する理由ってのは、ハルヒの精神が不安定になることが原因なんだろ? てことは俺との行為になにか不満があって…」 いやいやいやいや。発生理由としてはまさにその真逆なのだが… 彼は顔を青くしながら頭を抱えている。こんな一面もあったとは。 「いや、でも昨日はハルヒもあんなに満足そうにしてたし…今日の朝だって…」 ぶつぶつ独り言を呟く彼。そしてハッと顔を上げると 「もしかして、今日の朝方も?!」 「え、ええ、発生しました。あの、でもですね…」 そうじゃないんですよ。と、別に涼宮さんは不満を感じていたわけではないんですよ。と 説明しようとすると… (ん?ちょっと待てよ…) ピキーンと、ある閃きが僕の頭をよぎった。 そして… 「…そうですね。涼宮さんはあれで乙女チックな所がありますから。 もしかしたらまだ彼女の中では、あなたとそういう関係になるのは早い、と感じていたのでは?」 なんて事を口走っていた。 「で、でも昨日ハルヒは割りとノリノリで…はっ、ま、まさかそれも俺の為を思って?」 少し考えれば分かりそうなことなのだが、彼は完全に動揺しきっていて冷静な判断力を失っているようだった。 「考えられますね。涼宮さんがあなたの事を愛しているのには変わらないのですから。 多少強引に迫られれば、それは彼女としては断れないでしょうね。」 僕がそういうと彼はとうとう力なくうなだられてしまい 「なんてこった。俺はハルヒの気持ちを少しも考えないで…」 なんだかちょっと可哀想になってきた。 もちろんこのままではよろしくないから、それなりにフォローもする。 「でも、安心してください。確かに割りと規模の大きな閉鎖空間でしたが、 そこから重度のストレスや、不満などは感じ取りませんでしたから。」 僕がそう言うと彼はバッと顔を上げ 「そ、それはどういう事だ?」 「つまり、涼宮さんは嫌がっていたわけではないんですよ。 やはり多少の不安や恐怖みたいなものはあったのでしょうがその反面、あなたに求められて嬉しいと いう気持ちもあった。その証拠に、いつもは獰猛に暴れる神人が昨日はまるで『どうしていいかわか らない』といった感じでおろおろしているばかりでしたから。」 嘘8000な事を言う。結構穴だらけの説明だったのだが動揺している彼にはこれで十分だった。 「な、なるほど…」 彼も少しだけ立ち直ったようだ。 ここでトドメを。 「時間はたっぷりあるのですから、急いで体を求める必要はないと思いますよ。 あなたと涼宮さんの相性は抜群なわけですから。ゆっくり距離を縮めていけばいいかと。」 そう言ってコーヒーを口に運ぶ。彼は 「そうだな。そんなに急いてやる必要はない。サンキュー古泉。俺、なんだか焦ってたみたいだ。」 と言って、なんだか1人新たに決意を固めているようだった。 くくく、計算通り。 涼宮さんには悪いがこれで彼との行為がしばらく無くなってくれれば、僕をはじめ 機関の仲間全員が少しは休息をとれるというものだ。 もちろん、それで涼宮さんが欲求不満になって通常の閉鎖空間が発生しては元も子もないので、 その辺はまたタイミングを見計らって彼を焚き付けるとしよう。 集合時間になり、3人と合流する。 彼は涼宮さんの姿を見るやいなや彼女の肩を掴み、 『ごめんなハルヒ。俺、もっとお前のこと大事にするから。』 などと言っていた。 朝比奈さんは顔を赤らめ動揺し、長門さんも少し驚いてるようだった。 当の涼宮さんも顔を赤くしていたのだが、当然彼にいきなりそんなことを言われた意味が分かるはずもなく 「ええ?!と、当然よ!」 などと言っていた。…なにが当然なんだ。 それから解散になり、僕も帰宅することにした。 分かれる際に見た。彼から積極的に手を握られ、意味がわからず動揺する涼宮さんの顔が印象的だった。 ふぅ、これでしばらくは僕もゆっくり養生できそうだ。 彼と涼宮さんの絆をより深め、桃色空間の発生も防ぐ。なんて完璧な事をしでかしてしまったのだろう僕は。 機関に申請すれば、ボーナスでも出してくれるかもしれない。 そんなことあるわけないっての。とか1人でにやにやしながら歩いていると、いつの間にか自宅に到着した。 ああ、疲れた。すぐに横になりたいが… どうせ明日はゆっくりできるんだ。のんびりしようか。 それから僕はゆっくりお風呂に入って、夕食を作り、テレビを見ながらのびり食事した。 久しぶりの休息はあっという間に過ぎていき、時刻は22時、 昨日ほとんど寝ていなかったためそろそろ目蓋のほうも限界である。 …そろそろ寝よう。 トイレで用を足し、布団に入る。 明日は何時に起床しようか。せっかくだ、いっそお昼の12時ぐらいまで寝てしまえ。 好きなだけ睡眠をとれることに小さな幸せを感じつつ、僕は目蓋を下ろした。 『『溝鼠ハイエナ糞豚ばかりぃぃぃ! ソゥアタック ソゥアタック ベノムセェェイ!!』』 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 爆音に思わず目が覚める。 音の発信源を探る、どうやら自分の携帯電話の着信音だったようだ。 もちろんこんな激しいハードコアな音に設定した覚えはない。 …長門さん、今日は僕の携帯に触るヒマなんてなかったはずじゃ… 液晶を見る。 『着信・バイオレンス森』 森さん…?時間は…午前12時…。 …嫌な予感がする。 いや、でもそんなバカな。 だって今日僕が成し遂げた偉業によってあの空間が発生するはずはないのだから。 と、とりあえず電話に出よう。 「もしもし…」 「古泉。仕事よ。」 「えぇ?!それってまさか…」 電話越しで深い溜息が聞こえた。 「閉鎖空間よ。」 ハハハ…んなバカな。 「それって、どっちの…?」 「言わなくてもわかるでしょ。桃色のほうよ。」 なんで…今日のお昼の事は一体… 「しかも、規模の広さも神人ちゃんの浮かれっぷりも前回とは桁違いよ。」 そ、それはどういう… 「機関の精神部の話だと、涼宮ハルヒの中で昨日よりも激しい歓喜の気持ちが生まれたのが原因だって。」 激しい歓喜の気持ち? 「なんでも彼のほうから彼女になんらかの告白をしたらしくって。」 携帯の向こうから自嘲気味な笑いが聞こえる。 「それを受けた彼女の強い喜びが、そのまま神人の行動に出ちゃってるみたい。」 … 「で、そのままベッドインしちゃったもんだから、当然閉鎖空間も発生する。 強い感動を引きずったままだから、空間の規模も神人ちゃんの浮かれ 具合もそんな風にパワーアップしちゃったってわけ。」 それは… それはつまり… 僕が今日行った事が、思いっきり裏目に出てしまったということですか? 「どうしたの古泉。ちゃんと聞いてんの?」 「ああ!聞いてます聞いてます。」 とりあえずその事は黙っておこう。バレたらどんな目に会うかわかったもんじゃない。 「とにかく、もう新川をあんたン家によこしたから、急いで準備して。今日は戦闘に入る前にちょっとした集会をやるわよ。」 ちょっとした集会? 「今日の朝言ったでしょ。やつらと戦うには、個々のモチベーションアップが大切なのよ。」 はぁ… 「とにかく、来ればわかるわ。」 午前12時40分。 僕が現場に到着すると、そこには異様な光景が広がっていた。 機関の仲間が綺麗に、一列に整列しており、その背筋は例外なく伸びている。 そして、1人列に混じらず相対するように仁王立ちしている森さんの姿が。 「来たわね古泉。」 あ、あの森さん。これは一体… 「言ったでしょ。全員のモチベーションをあげるのよ。あんたもさっさと列に加わりなさい。」 怖いので支持に従う。 そのうち残りの仲間が到着し、彼らも同じように整列させられた。 それじゃあ、始めるわよ。 何をやるんだろう…どうやら僕以外の人たちはこれからなにをするか知ってるようだったが… と呑気に構えていると… 「あたしが桃色空間特別対策員隊長の森園生である!」 えぇ?!森さん、急になにを… 「話しかけられたとき以外は口を開くな 口でクソたれる前と後に“Sir”と言え 分かったか、ウジ虫ども!」 いきなりなに言い出し『『『Sir,Yes Sir!!』』』ええええええ?! 「ふざけるな!大声出せ!タマ落としたか!」 『『『Sir,Yes Sir!!!!』』』 ちょ、どうしたんですかみんな! 僕の疑問などどこ吹く風。森さんはかまわず続ける。 「貴様ら糞超能力者どもがもしこの戦いに生き残れたら── 各人が兵器となる。戦争に祈りを捧げる死の司祭だ その日まではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ 貴様らは人間ではない 三流アニメキャラのクソをかき集めた値打ちしかない! 貴様らは厳しいあたしを嫌う だが憎めば、それだけ学ぶ あたしは厳しいが公平だ、二次創作での差別は許さん 古泉が自分のことを「私」と呼ぶSS、 名前が「小泉」、「朝日奈」となっているSS 「みくるちゃんでAVを録るのよ!」的なエロ同人誌 すべて── 平等に価値がない! あたしの使命は甘くて身悶えるようなSSを読んでにやけることだ! 『10月8日 曇りのち雨』なみの甘さを! 『ハルヒ親父シリーズ』なみの甘さを! 分かったか、ウジ虫!」 わかりませ『『『Sir,Yes Sir!!!!』』』ええええええ?! 「ふざけるな! 大声だせ!」 『『『Sir,Yes Sir!!!!!!!!』』』 「OK、行くぞ!」 『『『オォォォオオオォォオ!!!!!!』』』 並んでいた仲間が雄たけびを上げ、次々と桃色空間へと突っ込んでいく。 1人残され、唖然としていると森さん(現ハートマン森軍曹)が近づいてきた。 あの森さん。これは一体…。 「ほら見てみなさい。全員見違えるようなテンションよ。 今日一日中考えてた甲斐があったってもんよ。」 は、はぁ… 「これから桃色空間が発生した場合、毎回これやるから。 あんたも次回からはちゃんと返事しなさいよ。」 うええええ… 「なによその反応。嫌だっての?」 いえ、なんでもないですぅ。 とりあえず、明後日にでも彼には本当のことを言おう。 うん、そっちの方がいろんな意味で安全だ。 おしまい
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/154.html
249 名前: NPCさん 04/02/28 12 55 ID ??? DQNなGMはルール読まず、選んだシステムにあったシナリオを組まずに まず俺ルールを押し付けるので、GM判断優先を素でやってくる。 俺が神だ! ハイハイ 250 名前: NPCさん 04/02/28 13 03 ID ??? ルルブ掲載のルールを背景にしたGM優先っつーよりも、 俺ルールを背景にしたGM独裁って感じ? 251 名前: NPCさん 04/02/28 13 28 ID ??? 250 あー、そんな感じそんな感じ。 で、そういう奴がFEARゲーに出会っちまうと、 「ほれ見ろ! このゲームはルールプックで公式に採用されてるだぜ!」 となって暴走3割増し。 252 名前: NPCさん 04/02/28 13 36 ID ??? 251 では、そのGMとセッションした時の話を語ってくれ。 それをネタにするのが、このスレなので。 267 名前: NPCさん 04/02/28 22 15 ID ??? 251-252 あー、結局駄目GMの実例が出てこないわけだが、 「GM判断優先」に対して、何らかの反発心を抱くDQNPLがいたってこと? 268 名前: NPCさん 04/02/28 22 46 ID ??? 267 ……あんま書きたくないんで、箇条書きで。 ・ゲームはFEAR製・近未来物 ・俺のキャストは二回生き返れる格闘家 ・サイバーウェアは入れてなかった(ウェットという) ・オープニングで敵NPCの電撃使いと戦闘 ・攻撃が命中した時、おもむろにGM宣言「あ、ウェットだと死んじゃうわ」 ・カチンときたが、とりあえず「生き返る技」発動。演出だろうと信じる (ないし、他のNPCが技使用数を回復してくるんだろうと深読み) ・再度襲ってくる→命中する→再度「死んだ」宣言。 ・いい加減腹立ったので、どこにそんなルールがあると問い詰める ・「どっかに書いてあったはず。大体サイバーウェアも入れてない人間が電撃に耐えられるか」と発言 ・「サイバーウェアが入ってたら制御判定は出来たのに」でブチ切れ ・他プレイヤーからの苦情も、俺GOD発言でにべも無し。卓崩壊 ・ちなみに1シーン目(笑) 269 名前: NPCさん 04/02/28 22 51 ID ??? 全然箇条書きになってないな。 ちなみに俺神RLの名言を掲載。 「一度襲われた時に、死んだままやり過ごすか、すぐ逃げれば良かったんだよ」 このゲームを知らない人の為に、『一応』補足しておきますが、 ウェットが電撃を喰らったら、自動的に死亡するルールなんて『ありません』 272 名前: バサラ凶 04/02/28 22 55 ID ??? ウェットが〈元力:電磁〉食らっただけで死ぬかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!!!!!!!!!! というか2ndでもRでもRRでもDでもそんな記述ねぇ! むしろサイバーウェア入れている方がダメージでかくなるのに! そんなに楽にウェットチャクラが殺せるのならこれほど苦労はせんわぁぁぁっ!! おそらく2ndで神業と特技の区別がついてねぇDQNRLだな。 脳内ルールブック完備とはまさに困ったちゃん! 275 名前: 251=268-269 04/02/28 23 04 ID ??? 272 いや、元力じゃなかった、かもしれない、っぽいのよ(凄い歪曲表現) 書いてて思い出した。そう、こう言ってたんだ。 神「その現場を見た君に対して、黒ずくめの男が襲い掛かってきます」 俺「回避します」 神「その達成値だと命中するね。その瞬間、君の身体をバチッと電流が走って 君 の キ ャ ラ は 死 に ま し た」 うん。もしかして脳内武器だったのかも知れない(笑) 282 名前: NPCさん 04/02/28 23 19 ID ??? 275 それは速やかにルールブックを指差して根拠を示して貰え。 多分出来ないと思うけどなw 284 名前: 251=268-269 04/02/28 23 22 ID ??? 282 >それは速やかにルールブックを指差して根拠を示して貰え。 「どっかに書いてあったはず。俺は間違ってない」という答えが返ってきた記憶が。 あー精細に思い出してきたら、また腹立ってきたぞ。 285 名前: ドルフ☆レーゲン 04/02/28 23 23 ID ??? しかしこのテのお話を聞くたび思うのだけど、 そーいうGMちゃんはそんな風にゲームしてて楽しいのかしらね? 例え鳥取でもそんな風な遊び方じゃ二度三度と続かないと思うのだけど…。 287 名前: NPCさん 04/02/28 23 30 ID ??? 285 わりとこの例は典型なんだけど、強弱やかっこよさに「俺順位」をつけてる人って多いのね。 サイバーサムライ>>ウェット とか 銃>>白兵武器 とか 剣>>斧 とか で、そいつの俺順位は、どんなルールでも覆らないの。 鳥取的に、こいつの俺順位を尊重して俺順位一位が大活躍するように キャラも環境も偏らせておくと、とりあえずそこだけはうまく回っちまうんだわ。 296 名前: NPCさん 04/02/29 00 50 ID ??? そーいえば、漏れも 「敵のヒルコが《突然変異》→《突破》を使用。NPC(ゲスト)死亡」 と言われた事があるなぁ ちなみに ・《突破》ではゲストはを殺せない ・誰も《突破》を使っていないので《突然変異》でコピー出来ない と、いう状況。 漏れは「それは無理なんじゃね?」と突っ込んだんだが・・・ スルーすべきだったのか? 298 名前: NPCさん 04/02/29 01 24 ID ??? 俺も書き込もうと思ってたんだが、268の例で充分だな。 296 その手のマスターには俺も出会ったことがある。 PC[カタストロフでビルを倒壊させて、敵を一網打尽に倒せる?」 RL「カタストロフでは人は死なないので無理」 しばらく後のシーン。俺のPCは捕まっている。重要NPC(ゲスト)も 同じ場所に捕まっていた。 PC「カタストロフでビルを倒壊させて、逃げ出す」 RL「ビルの倒壊に巻き込まれて、ゲストが死んでしまったよ」 あの、さっき、カタストロフでは人は死なないって聞いたんですけど。 325 名前: NPCさん 04/03/01 16 16 ID ??? 似たような話かどうか分からないが。 クライマックスに謎のカブトワリ=カゲに超々遠距離から隠密狙撃されて、手も足も出なかった事があったよ。 結局そいつは倒せないまま終了したんだけど。RLに攻略法を聞いたら、 「一度逃げて、次のシーンでカブトの「戦術」の特技で奴のそばに登場すればよかったじゃない」 そんな使い方が出来るかどうか議論になったけど、RLが出来るっていうんだから出来る、でFA。 でも、何かおかしい気がする。 415 名前: NPCさん 04/03/02 00 36 ID ??? 亀レスでスマンが。 268-269のコンベが、自分の知ってるコンベであってるなら、 そこの2ndは、バサラ取らないとまずエンディングまでに殺される卓だった。 敵役が平気で身代わり符5枚10枚。横で見てて敵役が死んだの見たこと無かった。 ちなみにこのRLは、最後はプレイヤー泣かせてR発売前にコンベ出禁になった。 Rで≪天変地異≫が弱体化したのは、このRLのせいじゃないのか?w 916 名前: NPCさん 04/03/10 00 32 ID ??? 914 なんたってシースルー構造だからイカスよな! データとかウイルスとかのチラリズム! 915 今読み返して、あの出来事がOPシーンだった事に気が付いたw 開幕早々即死とはカラテカ並みのアクトだよな スレ9
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/4848.html
62: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 26 58 今日は祝日で時間があったので支援SSを投稿してみます。日本海軍とイタリア海軍の戦いを書きましたが、場所は地中海じゃないですし、ご都合主義な展開です。 提督たちの憂鬱支援SS 二度あることは三度(?)ある ~アデン湾夜戦~ …1940年 12月のアデン湾。 乾燥したこのあたりでは珍しく、空が曇り,星一つ見えない夜のことだ。 真っ暗な海上を、三隻の船が進んでいた。 その中の一つ、通報艦『エリトリア』の艦橋では男たちが ふぅーと息を吐き出した。 艦長たちは笑みを浮かべて話し合う。 「…どうやらアデンの連中は気づいていないようですね。」 「ああ。このまま突っ切る。 そしてインド洋に出たら、とりあえずフランス領に逃げ込むぞ。」 「向こうは受け入れてくれますかね?」 「イギリスを恨んでいるから大丈夫だろう、たぶん。…本当は駆逐艦の奴らも連れてゆきたかったが。」 「仕方がないですよ、駆逐艦は航続距離が短いし,連日の戦闘でボロボロで、マダガスカルにもたどり着けるかどうか。 クソッ、ブルドッグと日本猿め。あいつらさえいなければコソコソ逃げずに済んだのに!」 「落ち着け。向こうの港に着いたらいい店に連れていくから。」 63: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 30 15 『イタリア海軍紅海艦隊』に所属する彼らが このように逃げているのには訳がある。 まず、ジブラルタルが占領されたことで,紅海も封鎖されて地中海が陥落するのを恐れたイギリスが東アフリカのイタリア軍に猛攻を仕掛けたこと。 また、史実と違い,この頃まで日英関係が良好"だった"ため、アジアやオセアニアから有力な軍艦を呼べたこと。 そして、10月12日に日本が宣戦布告したこと。特に日本海軍は早くもBN7船団の護衛に参加し、イタリアの攻撃から船団を守り抜いている。 これらの要因から紅海艦隊は痛めつけられている。 駆逐艦及び潜水艦は通称破壊を続けるも,日英の反撃で沈められていき、一方で英陸軍はソマリアとエリトリアの沿岸部を徐々に制圧していく。 だから、エリトリアと仮装巡洋艦ラム1世,ラム2世(元々はソマリア産バナナの輸送船)は紅海の拠点 マッサワを出港したのだ。史実よりも二ヶ月早い出発だった。 今のところ、インド洋への脱出は順調だった。 紅海の出口,マンデブ海峡は狭く警戒が厳重だったが、闇夜に紛れて通り抜けた。 そしてつい先ほど、英海軍の拠点,アデンの近くも 見つからずに通りすぎた。 わずかだが水兵たちの気が緩んでしまったのも無理はない。 故に、『彼ら』が現れたとき動揺してしまう。 「「「 何故、日本海軍が待ち構えている!?」」」 64: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 32 31 「参謀長の予想どおりだな。どうして今夜ここに来るとわかったのだ?」 「…ずっと昔、アデン湾で働いたことがあります。そのときにこの海域のことを よく学んだからです。 それにイタ公は逃げ足が速い。特に『奴』は二度も逃げているから、近いうちに機会があれば 脱出を試みるのは明らかでした。特に今日は曇り空だったので。」 「ほう。ところで二度とは?」 「あ、いや英軍の攻撃からです。 今はそんな話をしていないで目の前の敵に集中しましょう。」 アデンに派遣された第三海上護衛隊の旗艦,軽巡洋艦『阿賀野』。その艦橋で 酒井原繁松大佐は司令官たちにそう言った。 …すでにお気づきかもしれないが、彼もまた,転生者だ。 史実では米軍捕虜殺害により 戦後処刑された人物だが、この世界では ソマリア沖での対海賊任務に参加した海上自衛官が憑依している。 そのため戦前は海上保安庁に出向させられて,そこで海賊の対処法を教えていた。が,大戦勃発後に海軍に戻され、第三海上護衛隊の参謀長を務めることになる。 65: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 33 56 大戦時、日本海軍が前大戦での船団護衛の経験から設立したのが 海上護衛総司令部。のちの太平洋戦争でも活躍する彼らだが、対独戦のころは 第一~四海上護衛隊と総司令部附属部隊から成っていた。 遣欧艦隊に物資を送る船を護送するため,大西洋を往復する第一海上護衛隊。 比較的安全なインド洋での船団護衛を担当するので 海防艦が多い第二海上護衛隊。 そして、紅海経由でエジプトへ向かう輸送船を 東アフリカのイタリア軍の攻撃から守るために創設された第三海上護衛隊。 最も損耗率が高いのが,危険な地中海での護衛を担う第四海上護衛隊である。 海軍が史実と違ってシーレーンを軽視していないので,各護衛隊の規模は小さくない。まず 必要な人材を集め、現役復帰した旧式艦船と,充分な対空・対潜能力を持たせた戦時量産艦で護送船団を編成している。 彼が第三護衛隊の参謀長に任じられたのも、前世において紅海・アデン湾で活動した経験を踏まえてのことであり、確かに彼は任務をこなした。 だが,海軍と海保の間で振り回されたり,他の憑依者から地味だと言われたりして鬱憤が溜まっていたのか、あるとき 彼は上層部に脱出するであろうイタリア軍艦の撃沈作戦を提案した。 敵艦にたいした火力はないのでリスクは低く,もしインド洋に逃がしたら捜索が面倒だ、と。 もちろん上は護衛任務に集中しろと叱った。しかし 逃がしたら面倒なのも確かであり,安全に戦果をあげられる機会は貴重なので結局許可されたのである。 66: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 35 09 「かっ,艦長どうします?」 「チッ。だがまだ包囲はされていない。北東に迂回して躱すしかあるまい。」 「・・・逃げませんか?」 「バカ。こっちは三隻とも低速だ。どちらにしろ逃げるのは難しい!」 イタリア海軍の艦長は怒鳴り声で部下に言った。 かくして、のちに『アデン湾夜戦』と呼ばれる海戦が始まった。 双方の砲撃から始まったこの戦いは、しかし日本海軍が圧倒していた。 まず 焦る伊海軍に比べ、最悪 英軍の応援を呼べばいい日本海軍には余裕があった。 また イタリア側は三隻とも最高速力20ノット,主砲の内径は12cmなのに対し、日本側では低速といわれる阿賀野型でさえ28ノット,事前に松型駆逐艦など対艦戦闘に不向きな艦は置いてきたので 主砲も駆逐艦の12.7cmが最小。さらに魚雷も日本側しか持たない。 数さえも日本海軍の方が多い状況で、日本の得意な夜戦に挑むのは無理があった。 それでも旗艦の阿賀野に命中させるなど 奮戦するも、とうとうラム1世が撃沈。 残された二隻も、船をUターンさせた。 もちろん日本側が見逃すわけがない。 だが、ここで幸運の女神がイタリア人に味方した。 「一隻も逃さん!追撃するぞ!」阿賀野艦長がそう叫んだとき、突如報告が入る。 「タービンの出力が低下しています‼」 「なに⁉こんなときに⁉」 …実は阿賀野には 戦時急造型軽巡の一番艦のためか,僅かだが初期不良が存在した。いや これまで問題は起きていなかったが、被弾の衝撃で 戦闘中にそれが発生してしまったのだ。 旗艦のトラブルは僅かな時間だが,日本の追撃を遅れさせた。 もちろんすぐに追撃の艦を送ったが、イタリア艦は先ほどよりも上手く攻撃を回避し,逃げていく。 「なんでだ、全然当たらねえぞ⁉」 「スパゲッティーみたいにツルツルと躱しやがって‼」 「うまいこと言ってないで攻撃しろよ!」 夜の海に そんな声と砲声が響き,やがて消えていった。 67: 名無しさん :2016/12/23(金) 22 36 39 …追撃戦の結果、途中で継戦能力を失ったラム二世が拿捕されるも、辛くもエリトリアは逃れてしまった。 二度あることは三度あるというが、なんとエリトリアはこの世界でも逃げ果せたのである。 【あんな不利な状況から逃げることが出来るとは、と誰もが驚愕した。 イタリア軍をヘタリアと呼ぶ者もいるがとんでもない。少なくともあのときの海軍は 優れた技量と最後まで諦めない意志をこちらに見せつけた。 彼らの奮戦は 私たちに今後も激闘が続くことを予感させた。】 上記は、のちに発売された 酒井原の自伝()の一節である。 実際、東アフリカ沿岸部を英軍が制圧すると第三海上護衛隊は解散され、所属していた艦と船員は地中海への援軍に送られた。地中海では イタリア海軍やUボートを相手に、これまで以上の激闘を繰り広げることになった。 …この海戦で旗艦を務めた阿賀野をはじめ、多くの艦と英霊が地中海に眠っている。 さて、傷つきながらも逃げ延びたエリトリアだが、さすがにボロボロかつ単独の状態では脱出は不可能だった。 しばらくは港に置かれていたが、英軍が迫ってきた際 ついに自沈。 戦後 再浮揚されるが,すぐに船舶不足のフランスに売却された。 現地で『フランシス・ガルニエ』と改名された彼女は、数年後の親善航海で,特設給糧船『生田川丸』に改装されたラム二世と再会を果たすことになる。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2919.html
戦況は絶望的だった。 それだけが存在理由だ。と言わんばかりに暴れる「神人」という名の半透明の化け物 次々と破壊されていく建造物 飛び交う悪態と悲鳴 既に負傷者の数ははかりきれない 機関に入って以来、僕だってそれなりに修羅場をくぐりぬけてきた。 それは何も僕だけの話ではなく、少なくともここに集まっている仲間全員がそう自負している。 死を覚悟した経験も一度や二度ではないし、実際、仲間の中には生命の危機に関わるほど 重傷を負った人もいた。 そんな経験もあって、僕らは既にこの閉鎖空間内での戦闘に関してはスペシャリストだった。 それはもう全員がたった1人でのハイジャック、及び原子力発電所の奪取が可能なほどに。 そんな一流の僕らが、今まさに機関始まって以来、最大のピンチをむかえている。 午前6時、涼宮さんと彼が朝っぱらから愛し合う事で発生した空間の中で。 「あぁ、もう駄目…」 森さんしっかりして下さい! もしどこか負傷したのなら… 「別に肉体的な負傷は負ってないんだけどね。」 はぁ… 「あんたはまだその年だから平気かもしれないけど あたしぐらいになるとね。このゲロ甘&桃色の空気に包まれてるだけで体に毒なのよ。」 … 「なんてゆーか。心が蝕まれるっていうの?すっごい鬱になるのよね。」 な、なるほど。 「つまり、もう決して取り戻すことのできない自分の青春時代を思い出し、 当時の自分との余りのギャップに心が挫け、極めて遺憾な状態に陥った、ということですな。」 あ、新川さん…そんなはっきり 森さんが新川さんをギロリと睨む。いつもならここで容赦なく肝臓打ち→ガゼルパンチ→デンプシーのフルコンボを 打ち込んでいるはずだったのだが、よっぽど気が滅入っていたのだろう、今回は剛体術一撃で済んだ。 それだけでも、新川さんの胃袋はズタズタになったはずだが。 口から血をまきちらし昏倒する新川さんをしりめに、森さんと対策を練る。 「ヤバイわね。昨日の今日ってこともあって、みんな疲れきってるわ。」 ええ、それに加えて桃色パワーでさらに(ある意味)凶暴化してる神人が相手ですからね…。 「多丸(裕)の顔見てよ。昨日のダメージと極度の疲労で顔がリカルド・マルチネス戦の伊達みたいになってるわ。」 ああ、本当だ…。 「神人の強さや空間の居辛さもそうだけど、戦ってる理由がアレなせいでテンションが上がらない。っていうのもあるわね。」 ああ、それはあるかも。 1組のカップルが愛し合い、肉体を求めることで発生した世界崩壊の危機を防ぐために戦う。 …なんて意味の分からない理由だろう。 百戦錬磨のソルジャーでさえそんな出動命令が下れば戸惑いの1つや2つ浮かべるというものだ。 「とにかく、うちみたいなベンチャーは1人1人のモチベーションが大事なんだから。 その辺の対策も練ったほうがいいかもね。」 えぇ、機関ってベンチャーだったんですか?!…ってうわぁぁぁぁぁ! 前方からもの凄い勢いで飛んできた謎の物体をギリギリで回避する。 ソレはその勢いのまま、まるで地面に突き刺さるように激突した。 「ちぃ、一体何?!」 衝撃で飛び散る破片をかわしながら、飛んできたソレを確認する。 そこには上半身だけ地中にめり込み、下半身をぴん、と伸ばしたまま地面に突き刺ささっている多丸(圭)の姿があった。 「まぁ、まるでコンクリートの隙間から力強く必死に茎を伸ばして空を仰ぐように咲くたんぽぽみたい。」 言ってる場合ですか! 多丸(圭)を(1人で)必死に引っこ抜こうとしてると 「古泉まずい、こっちに来たわ!」 ええ?! 振り向くと確かに神人が1体、物凄く楽しそうにスキップしながらこちらに接近していた。 「逃げるわよ!」 ちょっと待って下さい!多丸(圭)さんが抜けないんです! 「そんなのほっときなさい!」 ええ?!…って森さんも手伝ってくださいよ! が、森さんは既に球体化して遠くに避難していた。 神人がどんどん近づいてくる。 わわわわわわわわわ…! 必死に多丸(圭)を引っ張るが全然抜けない。 そりゃ出来るなら僕だって逃げたいけど、それは人として、古泉一樹として絶対間違っていると 自分に言い聞かせ、涙目になりながら引っ張り続けた。 スポン! およそ人が地面から抜け出る音とは思えない効果音を奏でて、多丸(圭)をようやく掘り出すことに成功した。 が、時すでに遅し、神人の足の裏がもう目の前にまで迫ってきていた。 球体化している暇もない。 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 「古泉ぃぃぃぃぃ!」 遥か遠くの空から森さんが叫ぶ。決して助けてくれようとはしない。 万事休す!と、とうとう覚悟を決めようとしたその時 『ヴォォォォォォォ…』 まさに間一髪。 神人がその動きを止め、足元からゆっくりと自壊し始めた。 僕は思わず腰が抜け、へたりと座り込む。 「ギリギリだったわね。」 ええ…、今回は本当に死ぬかと思いました。 …って森さんいつの間に。酷いですよ、助けてくれないなんて。 「空間が発生して1時間、神人が出現して30分が経過してるわ。…昨日より掛かったわね。」 無視ですか。 「しかし、酷い有様ね。」 周りを見渡す。建物は軒並み破壊され、仲間の半分以上は怪我を負い、地面にうずくまっている人もいる。 まるで核の被害にあったかのような状態なのに、相変わらず空間内は桃色で、空にはハート型の雲が浮かんでいる。 なんてシュールな光景なんだ。 しかし… 涼宮さんには早いとこ、彼との行為に少しでも慣れてもらわなければ。 だけどこればっかりは僕も横槍のいれようがない。 もし彼女に直接『愛する人とのSEXとはいえ、なにも緊張することはないんですよ。』的なアドバイスをしようものなら …その後起こるであろう惨劇は容易に想像できる。 「ふぅ、とりあえず集合よ。今日の反省と、今後の対策を練る必要があるわ。 …新川、いつまで悶絶してるのよ。さっさと集まりなさい!」 身悶えている新川さんにドカッと蹴りを入れる森さん。あそこまで酷い事をするとは…彼女もそうとう参ってるようだ。 うん、そう思っておこう。決して普段からああって訳ではない。ないんだ。 「なにぶつぶつ言ってんのよ。」 ああいえ別に何も! …あっぶねー。 ようやく気持ちも治まってきて、冗談(?)を言う余裕も出てきた。 とにかく、今は一刻も早く帰りたい。 なにしろ昨日は3時間弱しか寝れてない。金曜日だったので、疲れもかなり溜まっていた。 今日は午後から不思議探索だから、急いで帰れば2時間ぐらいはまだ眠れるかもしれない。 なんてことを考えながら、みんな集まっている場所へ多丸(圭)を担いで向かっていると… 『ヴォォォォォォォ…』 え? 僕はもちろん、森さんも新川さんも、他の仲間達も全員体をビクッ、と硬直させる。 「…今のってまさか…。」 森さんにつられて後ろを振り向く。 そこには信じられないような、信じたくないような光景が… 桃色神人、再・爆・誕! 「2Rね…ほんっと、若いって素敵。」 森さんが呟く、その顔は笑みを作ってはいるが、絶望と怒りと、そして悲しみに包まれていた。 他の仲間もみんな同じような顔をしていた。もちろん僕も。 やっとこさメタルクウラを1体やっつけたというのに、その後崖の上から無数のメタルクウラが現れた時の悟空とべジータの心境だ。…わかるよね? 「まぁ、ここでいくら落ち込んでもしょうがないわね。いくわよ、野郎共!」 森さんのその叫びと共に、半ばやけくそになりながら僕たちは神人に突っ込んだ。 どうか生きて帰れますように…。 なんとか生きたまま桃色空間の中から帰ってくることに成功した頃には、時刻は既に10時をまわっていた。 戦闘自体は…まぁ今日2回めということでわりかし早めに終わったのだが、その後緊急で 対策会議が(道端で)行われた為、こんな時間になってしまった。 結局その対策会議というのも、ろくに結論が出ないまま終わってしまったのだが。 そういうわけで、僕が自宅に戻ってきた頃にはそろそろ不思議探索に行く準備を しなければいけない時間帯になっていた。なんの拷問だ。 のんびりお風呂に入りたい気持ちでいっぱいだったが、あいにくそんな時間はない。 とりあえずシャワーだけ浴びる。自分の体を見るとあちこち擦り傷や、打撲で酷いことになっていた。 やれやれ、せめてお2人の事を少しでも嫌いになれれば、気持ちよく悪態もつけるというのに。 そんな事を考え、思わず苦笑する。 シャワーを浴び終え服を着た後、簡単な食事を摂る。 買っておいたパンを食べ、野菜ジュースを飲む。疲れているため食欲もいまいち沸かない。 それから少しばかりソファーに座りくつろぐ。うっかり寝てしまいそうだ。あぶないあぶない。 …そろそろ時間だな。 今日、今日さえ無事に過ごしてしまえば明日は日曜だ。きっとゆっくり休める。 そう自分に言い聞かせ、ソファーから体を起こす。 玄関で靴を履き重たい足を引きずるようにしながら、僕はドアを開けた。 集合場所まで行くと、既に僕以外の団員は揃っていた。 それはそうか。いつも最後の彼は今日は朝から涼宮さんと一緒にいたわけだから。 「やぁみなさんお揃いで。」 「おっはよー古泉君!」 「おはようございますぅ。」 「…」 「おぅ。」 朝っぱらからそれなりに激しい運動をしたのだから、さすがの涼宮さんも少しは疲れていると 思ったのだが…むしろいつもよりもテンション高めに見えた。 …彼のほうは少しやつれ気味だったが。 「大丈夫古泉君?なんか少し顔色が悪いわよ?」 ああしまった。疲れが表に出てしまったようだ。 「いえ、大丈夫です。恥ずかしながら昨日少々夜更かしをしてしまいまして。」 横目でチラリと彼を見てみる。微妙に怪訝な顔をしていた。 「ふぅん、まぁ平気ならいいわ。 じゃあとりあえず喫茶店ね。そこで班決めするわよ。」 付き合っているんだから彼と2人きりでいればいいのに。わざわざ班を決めるところが涼宮さんらしい。 「あ、古泉君。ドベだから今日おごりね。」 … …かしこまりました団長様。 公正な班決め(色つきわりばし)の結果、涼宮さん長門さん朝比奈さんの女の子3人組。 僕と彼の男2人組みという組み合わせになった。 「じゃあ4時にまたこの喫茶店で待ち合わせね。 古泉君。キョンがさぼらないようにしっかり見張っててね。」 「かしこまりました。」 「さぼらねーっての。」 特に気分を害したようすもなく彼が溜息をつく。 「んじゃ、いくわよ。みくるちゃん、有希。」 あちら方と別れ、彼と街中を歩く。 「なんか飲むか?おごってやるぜ。」 これはめずらしい。なにかいいことでもあっ…そういやありましたね。凄いのが。 「?どうした、いらないのか。」 「いえ、ありがたくいただきます。今日はえらく気前がいいですね。」 「ま、今日誰かさんが遅く来てくれたおかげで珍しく財布が重いんだ。」 「なるほど。」 奢ってもらったコーヒーのプルタブをあける。彼は既に飲み始めていた。 「…昨夜はお楽しみでしたね。」 『ブーーーーーーーッ』 彼が派手にコーヒーを噴出す。ここまで期待通りのリアクションをしてくれるとは。 「なななな、なんで…ハッ、また機関とやらの情報だな! おい、いいかげんにしろよ。俺はともかくだな、ハルヒのそんなプライベートなことまで…」 顔を赤くさせたり青くさせたりしながら物凄い勢いでまくしたててくる。 普段冷静な彼がここまで取り乱すとは… 「いえいえ、別に覗いてたり、会話を聞いてたりしていたわけではありませんよ?」 「?、じゃあどういうことだ。」 「閉鎖空間です。」 「なに?」 「昨夜の12時過ぎごろ、ものすごい規模の閉鎖空間があちこちに発生しまして… 昨日涼宮さんがあなたの家に泊まりに行っていたことは、僕をはじめSOS団員全員が知って いたことだったので、発生した原因としてはまぁ、。そういうことかなと。」 この際だ。彼ぐらいには言ってもいいだろう。 僕の中に溜まっている疲れを少しでも癒すために、彼をおちょくって照れた顔でも見てやろう。 「…!…っっ!」 彼は落ち着かない様子で目をぎょろぎょろ動かしている。 その時点でかなりおもしろい。よっぽど恥ずかしいのだろう。 が、さらなる動揺を与えるため例の桃色空間の様子を伝えようとすると… 「閉鎖空間が発生した…ってことは…ハルヒはもしかして、ストレスを感じていたのか?」 「え?」 「いや、だって閉鎖空間が発生する理由ってのは、ハルヒの精神が不安定になることが原因なんだろ? てことは俺との行為になにか不満があって…」 いやいやいやいや。発生理由としてはまさにその真逆なのだが… 彼は顔を青くしながら頭を抱えている。こんな一面もあったとは。 「いや、でも昨日はハルヒもあんなに満足そうにしてたし…今日の朝だって…」 ぶつぶつ独り言を呟く彼。そしてハッと顔を上げると 「もしかして、今日の朝方も?!」 「え、ええ、発生しました。あの、でもですね…」 そうじゃないんですよ。と、別に涼宮さんは不満を感じていたわけではないんですよ。と 説明しようとすると… (ん?ちょっと待てよ…) ピキーンと、ある閃きが僕の頭をよぎった。 そして… 「…そうですね。涼宮さんはあれで乙女チックな所がありますから。 もしかしたらまだ彼女の中では、あなたとそういう関係になるのは早い、と感じていたのでは?」 なんて事を口走っていた。 「で、でも昨日ハルヒは割りとノリノリで…はっ、ま、まさかそれも俺の為を思って?」 少し考えれば分かりそうなことなのだが、彼は完全に動揺しきっていて冷静な判断力を失っているようだった。 「考えられますね。涼宮さんがあなたの事を愛しているのには変わらないのですから。 多少強引に迫られれば、それは彼女としては断れないでしょうね。」 僕がそういうと彼はとうとう力なくうなだられてしまい 「なんてこった。俺はハルヒの気持ちを少しも考えないで…」 なんだかちょっと可哀想になってきた。 もちろんこのままではよろしくないから、それなりにフォローもする。 「でも、安心してください。確かに割りと規模の大きな閉鎖空間でしたが、 そこから重度のストレスや、不満などは感じ取りませんでしたから。」 僕がそう言うと彼はバッと顔を上げ 「そ、それはどういう事だ?」 「つまり、涼宮さんは嫌がっていたわけではないんですよ。 やはり多少の不安や恐怖みたいなものはあったのでしょうがその反面、あなたに求められて嬉しいと いう気持ちもあった。その証拠に、いつもは獰猛に暴れる神人が昨日はまるで『どうしていいかわか らない』といった感じでおろおろしているばかりでしたから。」 嘘8000な事を言う。結構穴だらけの説明だったのだが動揺している彼にはこれで十分だった。 「な、なるほど…」 彼も少しだけ立ち直ったようだ。 ここでトドメを。 「時間はたっぷりあるのですから、急いで体を求める必要はないと思いますよ。 あなたと涼宮さんの相性は抜群なわけですから。ゆっくり距離を縮めていけばいいかと。」 そう言ってコーヒーを口に運ぶ。彼は 「そうだな。そんなに急いてやる必要はない。サンキュー古泉。俺、なんだか焦ってたみたいだ。」 と言って、なんだか1人新たに決意を固めているようだった。 くくく、計算通り。 涼宮さんには悪いがこれで彼との行為がしばらく無くなってくれれば、僕をはじめ 機関の仲間全員が少しは休息をとれるというものだ。 もちろん、それで涼宮さんが欲求不満になって通常の閉鎖空間が発生しては元も子もないので、 その辺はまたタイミングを見計らって彼を焚き付けるとしよう。 集合時間になり、3人と合流する。 彼は涼宮さんの姿を見るやいなや彼女の肩を掴み、 『ごめんなハルヒ。俺、もっとお前のこと大事にするから。』 などと言っていた。 朝比奈さんは顔を赤らめ動揺し、長門さんも少し驚いてるようだった。 当の涼宮さんも顔を赤くしていたのだが、当然彼にいきなりそんなことを言われた意味が分かるはずもなく 「ええ?!と、当然よ!」 などと言っていた。…なにが当然なんだ。 それから解散になり、僕も帰宅することにした。 分かれる際に見た。彼から積極的に手を握られ、意味がわからず動揺する涼宮さんの顔が印象的だった。 ふぅ、これでしばらくは僕もゆっくり養生できそうだ。 彼と涼宮さんの絆をより深め、桃色空間の発生も防ぐ。なんて完璧な事をしでかしてしまったのだろう僕は。 機関に申請すれば、ボーナスでも出してくれるかもしれない。 そんなことあるわけないっての。とか1人でにやにやしながら歩いていると、いつの間にか自宅に到着した。 ああ、疲れた。すぐに横になりたいが… どうせ明日はゆっくりできるんだ。のんびりしようか。 それから僕はゆっくりお風呂に入って、夕食を作り、テレビを見ながらのびり食事した。 久しぶりの休息はあっという間に過ぎていき、時刻は22時、 昨日ほとんど寝ていなかったためそろそろ目蓋のほうも限界である。 …そろそろ寝よう。 トイレで用を足し、布団に入る。 明日は何時に起床しようか。せっかくだ、いっそお昼の12時ぐらいまで寝てしまえ。 好きなだけ睡眠をとれることに小さな幸せを感じつつ、僕は目蓋を下ろした。 『『溝鼠ハイエナ糞豚ばかりぃぃぃ! ソゥアタック ソゥアタック ベノムセェェイ!!』』 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 爆音に思わず目が覚める。 音の発信源を探る、どうやら自分の携帯電話の着信音だったようだ。 もちろんこんな激しいハードコアな音に設定した覚えはない。 …長門さん、今日は僕の携帯に触るヒマなんてなかったはずじゃ… 液晶を見る。 『着信・バイオレンス森』 森さん…?時間は…午前12時…。 …嫌な予感がする。 いや、でもそんなバカな。 だって今日僕が成し遂げた偉業によってあの空間が発生するはずはないのだから。 と、とりあえず電話に出よう。 「もしもし…」 「古泉。仕事よ。」 「えぇ?!それってまさか…」 電話越しで深い溜息が聞こえた。 「閉鎖空間よ。」 ハハハ…んなバカな。 「それって、どっちの…?」 「言わなくてもわかるでしょ。桃色のほうよ。」 なんで…今日のお昼の事は一体… 「しかも、規模の広さも神人ちゃんの浮かれっぷりも前回とは桁違いよ。」 そ、それはどういう… 「機関の精神部の話だと、涼宮ハルヒの中で昨日よりも激しい歓喜の気持ちが生まれたのが原因だって。」 激しい歓喜の気持ち? 「なんでも彼のほうから彼女になんらかの告白をしたらしくって。」 携帯の向こうから自嘲気味な笑いが聞こえる。 「それを受けた彼女の強い喜びが、そのまま神人の行動に出ちゃってるみたい。」 … 「で、そのままベッドインしちゃったもんだから、当然閉鎖空間も発生する。 強い感動を引きずったままだから、空間の規模も神人ちゃんの浮かれ 具合もそんな風にパワーアップしちゃったってわけ。」 それは… それはつまり… 僕が今日行った事が、思いっきり裏目に出てしまったということですか? 「どうしたの古泉。ちゃんと聞いてんの?」 「ああ!聞いてます聞いてます。」 とりあえずその事は黙っておこう。バレたらどんな目に会うかわかったもんじゃない。 「とにかく、もう新川をあんたン家によこしたから、急いで準備して。今日は戦闘に入る前にちょっとした集会をやるわよ。」 ちょっとした集会? 「今日の朝言ったでしょ。やつらと戦うには、個々のモチベーションアップが大切なのよ。」 はぁ… 「とにかく、来ればわかるわ。」 午前12時40分。 僕が現場に到着すると、そこには異様な光景が広がっていた。 機関の仲間が綺麗に、一列に整列しており、その背筋は例外なく伸びている。 そして、1人列に混じらず相対するように仁王立ちしている森さんの姿が。 「来たわね古泉。」 あ、あの森さん。これは一体… 「言ったでしょ。全員のモチベーションをあげるのよ。あんたもさっさと列に加わりなさい。」 怖いので支持に従う。 そのうち残りの仲間が到着し、彼らも同じように整列させられた。 それじゃあ、始めるわよ。 何をやるんだろう…どうやら僕以外の人たちはこれからなにをするか知ってるようだったが… と呑気に構えていると… 「あたしが桃色空間特別対策員隊長の森園生である!」 えぇ?!森さん、急になにを… 「話しかけられたとき以外は口を開くな 口でクソたれる前と後に“Sir”と言え 分かったか、ウジ虫ども!」 いきなりなに言い出し『『『Sir,Yes Sir!!』』』ええええええ?! 「ふざけるな!大声出せ!タマ落としたか!」 『『『Sir,Yes Sir!!!!』』』 ちょ、どうしたんですかみんな! 僕の疑問などどこ吹く風。森さんはかまわず続ける。 「貴様ら糞超能力者どもがもしこの戦いに生き残れたら── 各人が兵器となる。戦争に祈りを捧げる死の司祭だ その日まではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ 貴様らは人間ではない 三流アニメキャラのクソをかき集めた値打ちしかない! 貴様らは厳しいあたしを嫌う だが憎めば、それだけ学ぶ あたしは厳しいが公平だ、二次創作での差別は許さん 古泉が自分のことを「私」と呼ぶSS、 名前が「小泉」、「朝日奈」となっているSS 「みくるちゃんでAVを録るのよ!」的なエロ同人誌 すべて── 平等に価値がない! あたしの使命は甘くて身悶えるようなSSを読んでにやけることだ! 『10月8日 曇りのち雨』なみの甘さを! 『ハルヒ親父シリーズ』なみの甘さを! 分かったか、ウジ虫!」 わかりませ『『『Sir,Yes Sir!!!!』』』ええええええ?! 「ふざけるな! 大声だせ!」 『『『Sir,Yes Sir!!!!!!!!』』』 「OK、行くぞ!」 『『『オォォォオオオォォオ!!!!!!』』』 並んでいた仲間が雄たけびを上げ、次々と桃色空間へと突っ込んでいく。 1人残され、唖然としていると森さん(現ハートマン森軍曹)が近づいてきた。 あの森さん。これは一体…。 「ほら見てみなさい。全員見違えるようなテンションよ。 今日一日中考えてた甲斐があったってもんよ。」 は、はぁ… 「これから桃色空間が発生した場合、毎回これやるから。 あんたも次回からはちゃんと返事しなさいよ。」 うええええ… 「なによその反応。嫌だっての?」 いえ、なんでもないですぅ。 とりあえず、明後日にでも彼には本当のことを言おう。 うん、そっちの方がいろんな意味で安全だ。 おしまい
https://w.atwiki.jp/kyojin-ogasawara/pages/781.html
1 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2011/02/22(火) 22 49 24.18 ID iEUbZzYH 大正義蜀軍軍師、諸カッス亮が南征を企てているとの情報を入手した南蛮王・巨人小笠原(37)は、 金玉三結らを先鋒として送り込むものの、カッスのフルスイングの前にあえなく敗退。 捕えられた畜生はその場で斬首され、その後南蛮征伐第二戦の舞台となった城塞に姿を現す。 しかし城塞内に満ちた畜生の精液臭に嫌気が差した伝荼那が木の棒で撲殺し、またも死亡。 大正義蜀軍の勢いを止められぬと見た畜生は、偽降伏会見を開いた上での奇襲を計画するも、 それらの計略は全て諸カッス亮に見破られており、痺れ薬を飲まされた揚句に死亡した。 度重なる死にもめげない巨人小笠原であったが、諸カッス亮のとる持久戦法に苛立ち、 腹立ち紛れに現地人の幼女を強姦している隙を突かれ、射殺される。 その後も敗退、死亡を繰り返した畜将軍は、最終的に6度の死亡が確認された。 ようやく大正義蜀軍へのFA宣言を決定すると、シャカシャカ走りで成都に侵入。 阿斗里に罵声を、さらに諸カッス亮へは熱い精液を浴びせ、めでたく7度目の死亡を迎えた。 ここに、諸カッス亮と大正義蜀軍による南蛮征伐は成ったのである。 http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1298382564/
https://w.atwiki.jp/kixyojinogasawara/pages/48.html
1 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2011/02/22(火) 22 49 24.18 ID iEUbZzYH 大正義蜀軍軍師、諸カッス亮が南征を企てているとの情報を入手した南蛮王・巨人小笠原(37)は、 金玉三結らを先鋒として送り込むものの、カッスのフルスイングの前にあえなく敗退。 捕えられた畜生はその場で斬首され、その後南蛮征伐第二戦の舞台となった城塞に姿を現す。 しかし城塞内に満ちた畜生の精液臭に嫌気が差した伝荼那が木の棒で撲殺し、またも死亡。 大正義蜀軍の勢いを止められぬと見た畜生は、偽降伏会見を開いた上での奇襲を計画するも、 それらの計略は全て諸カッス亮に見破られており、痺れ薬を飲まされた揚句に死亡した。 度重なる死にもめげない巨人小笠原であったが、諸カッス亮のとる持久戦法に苛立ち、 腹立ち紛れに現地人の幼女を強姦している隙を突かれ、射殺される。 その後も敗退、死亡を繰り返した畜将軍は、最終的に6度の死亡が確認された。 ようやく大正義蜀軍へのFA宣言を決定すると、シャカシャカ走りで成都に侵入。 阿斗里に罵声を、さらに諸カッス亮へは熱い精液を浴びせ、めでたく7度目の死亡を迎えた。 ここに、諸カッス亮と大正義蜀軍による南蛮征伐は成ったのである。 http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1298382564/
https://w.atwiki.jp/0103/pages/95.html
少年と少女の青春。 天気の子とただの人間。 生贄にされる運命とそれに抗う者。 男にはどうでもいいとしか思えなかった。 神子柴なる謎の老婆。 森嶋帆高の命を巡ったバトルロワイアル。 死者の蘇生すら可能な神子柴の力。 男の心を震わせるものは一つとして無かった。 「ハッ、結局何も変わりはしない」 男は二度目の死を迎えたはずだった。 生まれ故郷を地獄に変えようとして、見事に失敗。 風都の仮面ライダーに敗れ、今度こそ完全に消滅した。 だと言うのに、こうして三度目の生を受けてしまった。 だが何も変わらない。 男がやるべき事は生前と同じ。 風都を、世界を死人だけが行き交う地獄に変えて、人々を絶望に叩き落とす。 それだけが、彼に残されたたった一つの野望。 それだけが、彼が彼である事の証明。 永遠という名の悪魔には、他に何も残っていない。 実の母は既に己の手で殺した。 NEVERの仲間も全員死んだ。 財団Xへの復讐心など、とっくに消え去っている。 かつて救えなかった少女の記憶すら、今となっては曖昧だ。 あのハーモニカの音色はもう、思い出す事も無いだろう。 「今の俺に必要なのは、力だけだ」 風都の仮面ライダーは人々の声援を受けた事で強大な力を得て、男を打ち倒した。 ならばそれ以上の力を手に入れて帰還すればいいだけと考える。 森嶋帆高を見つけたら適当に痛めつけて動けなくする。 神子柴からのお題達成に邪魔な参加者は一人残らず殺す。 力を手に入れたらまずは神子柴を排除し、それから改めて風都を絶望に叩き落とす。 実にシンプルだ。 「それにしても…やはりお前はどこまでも俺と共に或る運命のようだな?」 不敵な笑みを向ける先には、片手に握られた純白のメモリがあった。 『永遠』の記憶を内包したそのメモリは、彼がこの世で唯一信頼を寄せるもの。 家族や仲間を捨て去っても、このメモリだけがあればそれで満足だった。 「さて、最初に地獄を見るのはいったい誰だ?」 皮肉気な笑みを浮かべ、男は雨の中を傘も差さずに歩く。 男の名は大道克己。 かつて風都を恐怖に陥れた死人兵士。 【大道克己@仮面ライダーW】 [状態]:健康 [装備]:ロストドライバー+T2エターナルメモリ@仮面ライダーW [道具]:基本支給品、細胞維持酵素×5@仮面ライダーW、ランダム支給品0~1 [思考・状況] 基本方針:力を手に入れて風都に帰る 1:森嶋帆高の確保 2:邪魔な参加者を殺す [備考] ※参戦時期は劇場版で死亡後。 【ロストドライバー@仮面ライダーW】 ガイアメモリを装填し仮面ライダーに変身する為のベルト。 普段はバックルの状態で携帯され、腹部に当てることで自動的にベルトが伸長して装着される。 【T2エターナルメモリ@仮面ライダーW】 『永遠』の記憶を内包したガイアメモリ。 適合した人間と惹かれ合うT2ガイアメモリの特性により、大道克己の手に渡った。 【細胞維持酵素@仮面ライダーW】 NEVERが蘇生した体を維持するために必要な酵素。 これを投与することで不死身の肉体、常人の数倍の身体能力、死への恐怖心の消失といった数々の肉体的恩恵を享受できる。 定期的に投与しないと、NEVERは死体に還る。
https://w.atwiki.jp/heiseirowa/pages/86.html
Opening『交響曲第一楽章「海老名は二度死ぬ」』 [登場人物] 佐衛門三郎二郎、海老名菜々、利根川幸雄 西陽が、都市をゆったり包み込む。 紅く照らされるは、ズタズタに亀裂の入ったアスファルト、マッチ棒のようにへしゃげ曲がった信号機の数々、そこら中に転がる廃車と、ビルの割れた窓ガラス群。 辺りは煤の匂いと、夕陽の赤に共鳴するかのような血肉の臭いが漂っている。 つい二日ほど前までは多くの人々が交差点を行き交っていた街の原型は、もはやない。 惨状に次ぐ惨状。崩壊しきったゴーストタウンがここにはあった。 一体、この都市で、何があったというか。 答えを知る鍵は唯一。 あるビルの屋上にてポツンと落ちていた、『カセットテープ』が教えてくれるのではないだろうか。 一人の者がそのカセットテープを拾い上げ、再生ボタン向けて指に力を入れる。 カチ グルグル─── ザザ───────────ッ、ザザ───────────ッ 録音環境が悪かったのか雑音が暫く続いたが、やがて『録音者の声』も、か細くも聞こえてきた。 この荒廃した街で生き延びた、名前も知らぬ誰かの声が。 ※※※ ザ───────────ッ ザ───────────ッ ザザザ───────────ッザザ …す、てす…ザ───────────ッ えー……この…… ザ───────────ッ このテープを…再生してくれた貴方へ。 これを聴いているということは、…私はもう既にこの世にはいないでしょう。 … 『…こころの手紙かッ』 『話し始め、それ?』 ……。 えーと。…んんっ。 あー、失礼しました…。何しろこういうことは初めてというか、不慣れなものなので。 まぁ、でも陳腐な言い回しになってしまいましたが、本当にこれを聴いてる=私は死んでることになってるんですよ。 なにせ、例によって『生き残った』場合このテープは処分する予定ですから…ね…。 『スパイ大作戦みたいなこと言うなぁ…』 『まっ、テープ残したら『殺人の物的証拠』になるからね』 ええ、そんなわけでどうか私の想いを考えながら聞いてもらえたら、と。 …ん? あぁ、そうそう。 さっきから後ろで聞こえてる声は、私のー、『この場』で出会った同士たち。 いわば仲間達です。 出会いの方はまぁ色々あってー、話すと長くなるのでここでは省略しますが…。 『それ説明するために録ってるんでしょうが!』 『もう…ザザ──────────…(雑音につき聞き取り不能)は!』 『だからザザザッ──…(聞き取り不能)にやらせるなつったじゃん。グッダグダで…』 ザザ───────────ッッッ ゴオォォォオォォォォッ… (何かが大破する?音) 『…』 『…あっ』 ザザザ───────────ッザザ (グチャグチャ…と鈍い音が響き続ける) ザザザ───────────ッ ザザザ───────────ッ ザザザ───────────ッ 『はぁ…はぁ…ザ───────ッ(聞き取り不能)が…………んや……………』 ザザザザ────────────────────────────────ッ…………… ………。 これを……。 これを、聴いてるあなたへ。 ほんの十分ほどなので、どうかご清聴ください。 私の……、私たちの生きてきた証。 『闘い-Battle Royale』の記録を…。 ザザ───────────ッ 『ね…い…………力を………っ』 まず。 あれは二日前。 自らの意思で車に乗る人を…『乗客』と定義するとしたら、否。 私たちはま、 ──────────────────────プツンッ。 ※※※ テープはここで終わっていた。 ◆ ◇ Heisei Comics Battle Royale ◇ 平成漫画バトル・ロワイヤル 人間は“肉”である。 ────ミートきよし(談) 弱肉強食。 そう、それは食うか食われるか。 食は生の特権だ。生きるためには食べ続けなければならない。 だからこそ、今、まさに。 “サバイバルの時代”の幕が上がったのだ。 ◆ 深夜の首都高を大型バスが走り抜ける。 奥行き広し車内には、五十…いや七十人ほどの老若男女様々な乗客が腰掛けている。 否。彼等は皆『乗客』ではない。 というのも、『乗客』の定義が『自分の意思で』乗車した者のことだとするのなら、七十人一同誰一人とて当てはまらないからだ。 皆が皆、戸惑いや不安の表情を隠せない様子。 なにせ目を覚ましたらこの見知らぬ車内で座っていたのだから、記憶の整理が追いつかない。 ここはどこで──、自分は何故いるのか? 手を顎に乗せ神妙な面持ちでいる者、不安を少しでも解消しようと周りに話しかける者、思考を諦め移りゆく景色をただ眺める愚者…。 緊張感が次第に高まっていく車内にて、最後尾に座る一人の男だけは不可解な現状を把握しきっていた。 (危機っ…、圧倒的…危機〈ヤバい〉っ……! 何をやらされるのか、さっぱりだけども………とにかくヤバイっ……!!) 緊迫した汗を垂らすサングラスの黒服。 (なぜ…、なぜ僕は……) 彼──佐衛門は、疑念に苛まれた。 (『帝愛のバス』に…乗ってるんだ……っ?) 佐衛門が思い出すは、つい数ヶ月ほど前──『チーム利根川』発足当初、一泊二日の社内旅行に連れ出された時のこと。 チームの親睦を深めると名分の元、福利厚生施設へキャンプに向かったのだが、その送迎で乗ったのがこのバスだったのだ。 従って、今この事態は帝愛絡みであることは明白だったが、佐衛門、彼にとってそれが何よりも恐ろしかった。 「ぐっ………!」 恐怖という暗闇が彼を包み込む。 (このバスがどこに向かってるのか…何をするのかさえ、僕には分からない…) (ただ、ただ………! そういうことだろっ…………、意識がない間に連れてきたってことは…………!) (『推奨されたら絶対拒否るようなヤバい行事に参加させられてる』んだろっ…………?!) ましてや、人を人として見ていない…どころか徹底的にしばきあげ、もがき苦しむ様を愉悦とする帝愛が企画の『何か』に参加させられているのだ。 想像を絶するような恐怖。 故に、佐衛門の顔は自分でも分かるくらい青くなり、血潮はざわめきを止められない。 ざわ…ざわ… ざわ… バス一帯は不安の声で徐々に充満していく。 「あっ、ああの……っ、すみません……」 「…え、あっ、なんですか?」 不意に、佐衛門は隣の少女から声を掛けられた。 横を向くと、茶髪でツーサイドアップの女子生徒?らしき子が、困り果てたといった表情で座っている。 「こ、ここはどこなんですか…? 実はわたし…お、起きたらココにいてて……わかんなくて…」 彼女は、震えながら当然の疑問を投げ掛けてきた。 佐衛門は一瞬どう返答を取るか困惑したが、とりあえずパニックに陥らせないよう無難な返しを発すことにする。 ふと、見渡せば周囲の人々は自分と違い帝愛とは無関係そうなカタギが大半。 その無作為な人選がまた一層不気味に感じた。 「……すいません、僕も目が覚めたら…って感じでして。とりあえず、今は落ち着い──」 ここで、佐衛門は思わず言葉を途切った。 それは、あまりに一瞬であったため、佐衛門には落雷かスマホのフラッシュにしか思えなかったという。 なんの前触れもなく、閃光が走る女生徒の首──厳密には『金属首輪』。 「────えっ?」 奇しくも落雷同様、数コンマ遅れてやってきたものがある。 ボンッ──。 空間を切り裂く爆発音と、降りかかってくる生暖かい鮮血。 女生徒『だった物』が、糸の切れたマリオネットのようにゆったりと寄り掛かる。 「…はっ……い、………………?」 「………………ぁ…ぁ、あ………………ぁぁあ…………っ!」 返り血でぐっしょり濡れる佐衛門の顔。 少女──海老名菜々の、爆発の影響で歪み大破した生首が、ゴロゴロ…ゴロゴロゴロ……と。 「ひ」 「…えっ………」 前へ、前へ床を染め上げ転がっていった。 「いやぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」 【海老名菜々@干物妹!うまるちゃん 死亡確認】 【残り69人】 「わっ…、わぁああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!」 段々と拡大していく車内のパニック。 悲鳴、絶叫、泣き叫び。 「開けてくれえっ、おいっ!!!!」 「出してえぇぇええ!」「逃げろっ、逃げろお!」 ざわざわざわざわざわっ────。 死臭が充満するにつれ、次第にその大混乱は騒がしさを増していった。 「嘘だっ…………。嘘だ………そんなこと……」 そんな中、佐衛門を支配した感情は恐怖でなく、底の知れぬ絶望だった。 幼少期の頃から、佐衛門は『悪い予感』だけは確実に当たる性質だと自認していた。 今日はいい日な気がする、と思えどその通りになったことは無いが、てんで、悪い予感だけは馬鹿みたいに的中するのだ。 それ故、改めて絶望した。 圧倒的最悪な行事にぶち込まれたかもしれない、と予想した、自分に。 「そんな………嘘に……き、決まってる…‥だろう、が………がぁ………」 『ククク……』 ────────Good morningっ…! 「…!!」 佐衛門は、いや佐衛門のみならず乗客全員、思わず顔を上げた。 前方のエコーが響く『声』に向かって。 『ククク…クック……!』 声の主の、不敵な笑い声。 直感的に奴が事態の黒幕だと察せられる。 佐衛門にとっては『親しみ深い』あの声が不気味に響き渡る。 「な、なっ?!」 転がり続けた海老名の頭が、真っ黒な靴先に当たりようやく静止した。 ピシャっとした汚れ一つないスーツが気品高いその男。 マイク片手にニヤニヤと笑う、小ジワの目立つその顔。 そして、そのモダンな白髪。 察しが良い佐衛門とはいえど、予測することはできなかった。 黒幕の男の容体。 奴を野生動物に形容するとしたら、まさしく──。 『Good Morning──。お早う、ゴミめらがっ…!』 「と、利根川先生っ!?」 ────蛇、だった。 ◆ 車内はシン…と静まり返る。 皆、顔をひきつらせながらも前方の男一点を凝視していた。 『ククク…っ!』 『この静けさたるや…、まるでサーカス…! 貴様らは、猛獣使いが戻った途端のトラやライオン……っ!! …だなんて、まぁ────、』 『黙るのも仕方ないよな。こんな物見せられたのだからなぁ……? クックク…』 利根川幸雄は、そう言いながら海老名をクルクル…と回し始めた。 飛び出たまんまるの眼球と、血肉を飛ばしながらブラブラはしゃぐ取れかけの顎。 「うげぇっ…」最前列に座る女の子が、思わず口を抑える。 『まぁとりあえず…、こんばんは。私……ここの責任者を仰せつかっております利根川といいます』 『単刀直入に申しますと、皆様には『最後の一人になるまで殺し合い』──をしていただきたく集まってもらいました……!』 そう言い終わると、利根川は持っていた頭を適当な方向に投げ捨てる。 放物線を描いていくボール。「ぅおわあっ!!」──男の声が、この沈黙の中響いた。 ──殺し合い。 淡々とだが、利根川はそう口にした。 シンプルかつ単純で、それでいて悪趣味極まりない企画。 これまで人間競馬や焼き土下座強制など帝愛による陰湿非道な遊びを見てきた佐衛門。 そんな彼ですら衝撃的と感じる外道遊戯が利根川に宣言される。 いや、衝撃的というより、『信じられない』か。 「そんな……どうしたんですか……、利根川先生…」 佐衛門からしても、特段『利根川』という男は人格者とは言い難い人間である。 なにせ現代悪の枢軸・ブラック会社帝愛に長年勤めNo.2候補にまで至るような者なのだから人として歪なのは確かだ。 だが。 上司として、一人の人間としては圧倒的理想的。 若手を存分に暴れさせて上手く進まない時は責任を持つ。現代の日本にはほとんど存在しない、器量の大きな管理職の人間だった。 だからこそ、帝愛トップ・兵藤和尊の命令とはいえ、部下である自分を見殺しにする目の前の利根川が信じられなかったのだ。 黙っていなきゃ死〈マズい〉のは分かっているが、佐衛門は声を荒げずにいられなかった。 「やめてくださいよ……っ、先生っ!! おかしいで…」 『っではっ────────……!!』 「………っ」 佐衛門の声を遮るように、マイクがエコーした。 利根川の圧倒的凄みに佐衛門は思わずひるんで、沈黙をせざるを得なくなる。 力が抜け、落ちるように座席に座り込む佐衛門。 以降、彼は利根川の発言──『ルール説明』の数々をただ静聴するしかできなかった。 (何故……おかしいですよ……利根川先生……………!!) ニヤリッ。 口角を上げ再び利根川はマイクを通す。 『では、時間も押しておりますので簡単なルール説明を行います』 『説明は一度のみ、繰り返しません…。後に質問されてもお答えしかねますので』 『どうか皆様集中力を持ってお聞きください……!!』 間髪開けず、利根川は十五分ほどかけ、殺し合いのルール説明を始めた。 先述通り最後の一人になるまで脱出できないことや、男女格差を無くすため武器を支給すること、叛逆防止で参加者全員に首輪爆弾を取り付けたこと、六時間おきに死者発表の放送がされること等が話される。 他には、 四十八時間以内に優勝者が決まらない場合、全員首輪を爆破させること。 殺し合いのエリアは『渋谷』。頑丈なバリアーで覆ってるため自力脱出は困難であること。 食料等は専用店を設備しているのでそこから摂取すること。 といった重要なルール項目も説明された。 参加者を縛りに縛り付ける、悪魔的なルール。 これら全てが、 《なお、》 パパパパ… パパパパパーッ 《なお、首輪は無理に外そうとすると『 』します。》 シャッ、 ジワ~… 《なお、首輪は無理に外そうとすると『爆発』します。》 天井のテレビに映るパワポで解説された。 「……………………は?」 車窓からベイブリッジが見え始める。 以上のルールが表示されきった時、テレビが暗転しだした。 ルール説明は以上とのことなのだろう。 これまで無言でマウスクリックを続けた利根川が、口を開く。 『これで私の、説明のすべてを終わらせていただきます』 『皆様のけっ健闘………心から、お祈りいたしております』 そう彼は深々とお辞儀をして、パソコンを閉じた。 ヒソヒソ声一つ聞こえず、まるで葬式会場のように静まり返る参加者一同。 唖然とした表情で固まり切る彼ら、彼女らはきっとこの地獄のようなデスゲームに凍りついているのだろう。 「………………」 訪れる暫しの静寂。 ロロロロロロ…とバスの走行音がもはやうるさいレベルの静まりっぷりだ。 「………………………………」 パワーポイントが終了してだいぶ経つが、それでもこの通夜と同等の無音が続く。 「…………………………………………………」 無音はまだ続く。 続きに、続ける。 「──────。…………………………………………………………」 皆、誰も口を開こうとしない。 理由は何もおかしいことではない。 冒頭、利根川の口から直々に『質問されても答えない』と言われたからなのだ。 疑問を聞いたところで返答に期待はできないし、何よりも口を開いたら殺される不安もあるので皆が皆空気を読み続ける。指示に従い続ける。 しかし。 それは利根川にとっては『予想外』の事態他ならなかった。 『…あ、あ、ちょっと? 皆さん?』 「……………………」「……え?」 『皆さんーーー? あ、あの…? いいんですよ? なんか質問はあるかなぁーーー、みたいな?』 この間の抜けたトーンで質問を促す者は、信じられぬが利根川幸雄本人。 会話の続かなさ故に気まずくなった人のように、ナヨナヨと重い口を開き始めた。 ──彼の額には、大粒の汗が生まれ始める。 『……み、みみ、皆さんー? あの、な、なんか質問ないですかー?? ぶっちゃけ、話してくれないと私もこっ困る…みたいな……』 ハンカチで顔を拭い始める利根川先生。 彼を、佐衛門の目にはどう映ったのだろうか。 「え………? えっ、え? …え??」 見かねた様子で恐る恐る挙手してみることにした。 「じゃあ…ハイッ、質問を一つ。なんでパワポ…」 『Fuck you<ファッキュー>ぶちころすぞゴミめがっ!!!! お前たちは皆大きく見誤っている!! この世の実態が見えていない!! まるで山菜か四歳の幼児のように!! この世を自分中心求めれば周りが右往左往して世話を焼いてくれるそんな風に!!──』 「…ひえっ!!??」 『──世間はお前らのお母さんではない! お前たちはシャバで甘えに甘え負けに負けてここにいる折り紙つきのクズだ! クズには元来権利など何もない。船の中でも、外でもだ! それはお前達が負け続けて来たからだ。他に理由は一切ない!──』 「びえぇぇぇっーーーーーー!!!!」 ざわざわっ…。 水を得た魚がマシンガン乱射するかのように、利根川先生は早口でその『決めゼリフ』を羅列した。 飛び交う唾はまさに銃弾のごとし。喋るスピードも銃弾のごとし。 『──お前らが今為すべきことはただ勝つこと、勝つことだ! 勝ったらいいなじゃない勝たなきゃダメなんだ!! 勝ちもせずに生きようとする事がそもそも論外だ。これはクズを集めた最終戦。ここでまた負けるような奴、そんな奴の運命なんて俺はもう知らん、ほんっとうに知らんそんなやつなんてもうどうでもいい。勝つ事が全てだ! 勝たなきゃゴミだ!!──』 質問した佐衛門を筆頭に全参加者は唖然、というかもうぶっちゃけドン引きしたが、そんなこと利根川先生にはどうでもいい。 何せ、この決め台詞を吐き出し切ることが目的なのだから。 言い換えるのなら、 「『無能』…っ!! ワ、ワシのスピーチをとりあえず言っただけの……っ!! 応用力も糞も効かぬドクズっ…………!!!」 ──佐衛門の隣に座っていた中年の男が、小声の毒をボソッと吐いた。 「………えっ?」 振り返った佐衛門が、目を丸くしたのも無理はない。 周囲一帯見知らぬ人間で固められたバス内で、唯一身近な人だったのがその隣の男。 その男が知り合いだったからこそ、佐衛門はより一層理解できなかった。 なにせ、男は汚れ一つないスーツを着て、小じわの目立つ、モダンな白髪の容姿。 ヒソヒソ声ながらも慣れ親しんだその声は、最前方の責任者とそっくり──。 「なんだか妙な既視感を覚えていたが、やはり……っ。恐らくあのボンクラは、台本かなんかを渡されてたんだろうな………っ」 「大方、〘質問が来たら次の台詞を言う→Fuck you…(以下略)〙とか書かれた……台本…っ!! それをまんま読み吐いたんだ、あのバカは……っ!!」 というかまったく同じ。 利根川幸雄、その人がまさに隣に座っていたのだ。 「え??──」 「──…えっ?? え、え──」 「──……えぇっ?!」 佐衛門は思わず前方、そして隣を交互に、何度も何度も見回す。 つまり、今この場には、殺し合いの進行役として前方にいる利根川?と、隣でギリギリ歯ぎしりを鳴らす利根川?──二人の同一人物がいるということになる。 「えっ?! 本物…?? 本物……で、ございますか………?」 「…チッ、お前ほどが自分の上司の見分けもつかぬか………っ」 「あっ、す、すみません…!!」 本物と名乗る利根川は、舌打ちを放つ。 佐衛門の脳はもうCPU使用率100%といった程にいっぱいいっぱいだ。 次々に起こる荒唐無稽、状況の読めない出来事の数々。処理し切るのは活動限界寸前といったところだった。 が、とりあえず今隣にいる方を本物としたほうが都合が良いので耳を傾けることにした。 「で、でもどういうことなんですか…? 何故二人も……」 「恐らく、『まさやん』………っ!!」 「…え? まさやん??」 「奴と同じ感じなのだろう………。この世に三人はいるとよく聞く…とどのつまりワシに似ているクズが………っ!!」 『まさやん』──とは、兵藤会長からの司令で利根川たちが連れてきた、会長そっくりの影武者のこと。 正面から見たら団子鼻なのに、横から見たらカクカク。おまけに常に口周りがびしょびしょという、稀有な容姿の会長。 そんな人間が探せば見つかるものだったのだ。 「あっ!! あー…」 「つまりはポッシブルっ……!! 十中八九ソイツ……」 「で、でも……だとしたら尚更不可解ですよ…」 「…あー? 何がだ…っ」 「な、何故ドッペルゲンガーにわざわざ進行役を…?? 普通に本人にやらせても無問題というか。それは置いといたとしても、じゃあなんで本物と同席させたのか解せないですよ」 「だから言ったろうが……っ。バカなんだよっ、コイツは………!!」 利根川…──勿論『本物の方』は、半ば呆れた目つきで『仮性:影武者利根川』に指をさす。 影武者の長く、長い演説はまだまだ続く。 『────勝ったらいいなぐらいにしか考えてこなかった…!! だから今クズとしてここにいる…。勝たなきゃだめなんだお前らは!! いいか?! 例えるならな…──』 「あ、この流れだと……。次影武者のセリフは、例の………」 「フンッ、イチローだろ……」 『──《イチロー》は負け続けの人生だった場合…いけ好かないマイペース野郎!!』 「やはりクズめがっ!」 ただ、『演説』というのは物事の真理を突く理論や、革新的なパワーワード、また工夫された間やトーンで、聞く人の心を動かすことが目的。 こうも、ただ喋っているだけではまるで全校集会の校長先生の如し。 自然と聞かされる側も不満が立つのである。 『えーと、あとは…《野茂》は…バカだし!! あと、《黒木智貴》も…ねっ根暗……』 「ぁあぁああっ?!?!! 智貴くんのどこが根暗なんだよオッ?!! ふざけんなよブタァ!!!」 『えひいっ!!!!?』 影武者が例に上げた黒木とやらの親しい人物からなのか。 どこからか、怒号の野次が飛び出した。 女子ながら野太いその声に、「あ、あぅ…」あたふためくので精一杯な影武者。 『あっ、す、すまない…!! た、確かに黒木はいい奴だ!! だ、だが《ファリン・トーデン》は…あーーーー…ウスノロなんだよォっ!!! 成功しなきゃ!!』 「いや誰、ファリンって」「もっと万人受けする例え持ち込みなさいよ!! バーカ!!!」 『ひっ!! …えひゃ、あああぁ…ぁああ………!!!』 影武者にとって飛ぶとは一切思わなかった二つの野次。 視界は大きく揺れ動き、もはや立っていられないくらいにパニックとなった。 どれほど強者であろうとも、『隙』を隠そうとしなければ弱者に徹底攻撃されるのがオチ。 そう、それは例えるなら些細なヒビから決壊に至るダム。 尻もちをついた影武者相手に、参加者からの容赦無い野次の炸裂が始まった。 「なんとか言えーーーーーっ!!!」 「お前こそファッキュー!!」「イチローはすごいのよ!!!」 「お前にイチローのなにが分かるんだ早口野郎!!!!」「そうだそうだーー!!!」 わいわいがやがや…ざわっざわ。 甲子園のタイガースファンもビックリなお祭り騒ぎと化すバス車内。 影武者はいつの間にやら、数人に囲い込まれ危機一髪の事態だ。 進行役の適応力が皆無な故、早くも崩壊寸前の殺し合い。 〘prrrrrrrr……prrrrrr…〙 だが、転機とはピンチのときこそ訪れるもののようで、影武者にとって『救いの光』が前触れもなく訪れた。 救いは、彼の胸元から──。 『ヒッ!!! あ、はいっ!! もしもし…《主催者殿》……』 鳴り響く電子の木琴音、そして音源の板を耳に当てる影武者利根川。 不意をつかれたのか一同、一瞬で静まり返った。 『あっ、はい…。はい。』 『えっ???! あっ、いや…ヒィッ!!! す、すみません!! その娘は見せしめで殺しちゃって……!! ほ本当にすみません!! 【海老名だけは殺すな】、だなんて……すみませんでした!!!』 『あ、いや、あの、その……、ほんとに、忘れてたんです…!! すみませえん…!!』 電話の主の上司…いや、『主催者』の馬鹿でかい罵倒が周囲にも響く。 この行動から、殺し合いには黒幕がいて目の前の平謝り奴は単なる傀儡に過ぎないことは皆察せた。が、正直そんなことはなんでもいい。 「失礼します」も言わず電話を切った影武者の顔色は、デスゲームのマスターとしては皮肉にも生気を失っていたが、ため息を一つ吐くと人差し指を突き上げ、 『【黒魔術】…ドンジャラ~ホイ、っと』 と、未だ血しぶきを放出続ける首無し死体に向かって『光』を飛ばした。 皆の注目を浴びる中、光は緩やかに、そのたわわな胸に吸い込まれていく。 すると、こんな奇妙で奇跡的なことがあろうことか。 海老名の飛び散った肉片や血液、胴体に集結し、再生を始めていったのだ。 ゴロゴロゴロ……。 もちろん生首も、元の場所へ向かって転がり始める。 「うおっ!!」 海老名菜々。 見るも悲惨な死体だった彼女は見る見るうちに元の美麗な姿に再生を始め、 そして、 「……んぐっ!! げほっ! げほっ! ……えっ、わ、私……なにが……」 蘇生した。 『ふう…っと……』 影武者利根川はここに来て信じられない離れ業を見せ「チッチッチ」と指を降る。 人を生き返らせる魔法のようなものを持つ影武者。 彼は自信あふれるしたり顔で、目を丸くした参加者達に胸をはった。 『さて、皆さん。お分かりの通り、私はこういうことをできちゃうんです。いいですか?』 ちょっと前までは完全に破綻へ向かっていた殺し合いも、この電話一本。 ──海老名を殺してしまったミスの解決により、瞬く間に参加者皆固唾を飲むこととなった。 短い時間で権威を失くし、ゲームマスターとしての威厳は消えた影武者利根川大先生の、機転が効いた大復活劇。 『私はね、《願い事をなんでも叶えること》だってできます。…そうだ、優勝者は褒美にそれをしましょう』 『だから、だからね? 殺し合いしよ? ね、皆さん』 こうして、悪魔的ゲーム──言うなれば『バトル・ロワイアル』は始まりを見せ、 「だから何だァアーーーーーー?! 早く家に帰せーーーーっ!!!」 「ふっざけるなぁーーーーーーー!!!!!」「知らねんだよアホがっ!!」 「そうだーー!! 解放しろ!!」 なかった。 ざわざわざわざわざわがやがやがやがや うらうらうらうらざわざわざわざわざわ… 憔悴しきった影武者は、もはや目の前が見えておらず頭の中は『小学生の頃の思い出』で溢れていた。 (あー、っ…。そういえば昔先生に怒られたとき、同じくらい地面がぐにゃあっ…ってなったなぁーーー) 救いの光など都合よく現れるものではないのである。 終わりかけの物が這い上がる夢物語なんて、そんなあるわけがない。 「っざけんな!! 殺し合いなんてやめろバカが!!」「帰せえーっ!!帰せ!!」 まるで、人間とて同じだ。 終わったものは再起など絶対にできない。 「野郎を吊し上げろっ!!!」「お前こそファッQだよおっ!!!」 なら、終焉を迎えた者が復活するにはどうすればよいか。 答えは簡単だ。 『…はぁ…。もう、面倒くさいや……』 リライト──『破壊するだけ』である。 影武者利根川はパチンと指を鳴らす。 刹那、閃光。 全参加者の頭が、まるでぷよぷよの連鎖かのようにグチャグチャブチュッと弾け飛んだ。 【バトル・ロワイアル プログラム開始】 【場所は──渋谷】 【AM.0 00 現場到着確認】 【同時刻を以って──始動確認。】 「…っちまいましたねぇ。これ全部生き返らせなきゃいけないんでしょ。ご苦労ですなぁ」 「いやいや…、運転手さんもちょっとは手伝ってくださいよ…。ほら、肉片集めるとか……………」 ────プツンッ。 前回 登場キャラ 次回 001:『あんたが客で、私がその髪をカットして、』 佐衛門 海老名 028:『新田さんは捨牌だゾ』 利根川 影武者
https://w.atwiki.jp/kaz1m/pages/41.html
凶鳥 凶鳥グルル グルル 解説 名前 コメント