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国連・子どもの権利委員会の勧告:教育一般関連(日本) 参考:CRC総括所見:競争主義的教育等 第1回総括所見(1998年) (一般原則) 13.……委員会は、高等教育機関へのアクセスにおける不平等がコリアンの子どもたちに影響を与えていること、および社会のあらゆる分野、とくに学校制度において、一般の子どもたちが参加権(第12条)を行使する上で困難に直面していることを、とりわけ懸念するものである。 35.条約の一般原則、とりわけ差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正ならびに司法上のおよび行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業および計画の発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。……委員会はまた、コリアンおよびアイヌを含むマイノリティの子どもの差別的な取扱いを、それがいつどこで生じようとも全面的に調査し、かつ解消するようにも勧告する。…… (プライバシー) 15.委員会は、とくに家庭、学校およびその他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために締約国がとった措置が不充分であることを懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、とくに家庭、学校、ケアのための施設および他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために、法的措置も含めて追加的措置を導入するよう勧告する。 (障害のある子ども) → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 (教育) 22.識字率がきわめて高いことに表れている通り締約国が教育を重視していることに留意しながらも、委員会は、競争が激しい教育制度のストレスにさらされ、かつその結果として余暇、運動および休息の時間が得られないために子どもたちの間で発達障害が生じていることを、条約の原則および規定、とくに第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして懸念する。委員会はさらに、学校忌避の事例が相当数にのぼることを懸念するものである。 43.競争の激しい教育制度が締約国に存在すること、ならびにその結果として子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じていることを踏まえ、委員会は、締約国に対し、条約第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして、過度のストレスおよび学校忌避を防止しかつそれと闘うために適切な措置をとるよう勧告する。 23.委員会は、条約第29条に従い、人権教育を体系的に学校カリキュラムに導入するために締約国がとった措置が不充分であることを、懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、条約第29条に従って、人権教育を体系的に学校カリキュラムに含めるために適切な措置をとるよう勧告する。 24.委員会は、学校における暴力が頻繁にかつ高いレベルで生じていること、とくに体罰が広く用いられていることおよび生徒の間で非常に多くのいじめが存在することを、懸念する。体罰を禁ずる立法、およびいじめの被害者のためのホットラインのような措置も確かに存在するものの、委員会は、現行の措置が学校暴力を防止するためには不充分であることに、懸念とともに留意する。 45.とくに条約第3条、第19条および第28条2項に照らし、委員会は、学校における暴力を防止するため、とくに体罰およびいじめを解消する目的で包括的な計画を作成し、かつその実施を注意深く監視するよう勧告する。加えて、委員会は、家庭、ケアのための施設およびその他の施設における体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつこの条約に従って行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告する。 (参考)人種差別撤廃委員会の勧告(2001年) 14.委員会は、韓国・朝鮮人、主に児童、学生を対象とした暴力行為に係る報告及びこの点に関する当局の不十分な対応に対し懸念を有するものであり、政府に対し、当該行為を防止し、これに対処するためのより毅然たる措置をとることを勧告する。 15.在日の外国国籍の児童に関し、委員会は小学及び中学教育が義務的でないことに留意する。委員会は、更に、「日本における初等教育の目的は、日本人をコミュニティのメンバーたるべく教育することにあるため、外国の児童に対し当該教育を受けることを強制することは不適切である。」との締約国の立場に留意する。委員会は、強制が、統合の目的を達成するために全く不適切であるとの主張に同意する。しかしながら、本条約第3条及び第5条(e)(v)との関連で、委員会は、本件に関し異なった取扱いの基準が人種隔離並びに教育、訓練及び雇用についての権利の享受が不平等なものとなることに繋がり得るものであることを懸念する。締約国に対し、本条約第5条(e)に定める諸権利が、人種、皮膚の色、民族的又は種族的出身について区別なく保障されることを確保するよう勧告する。 16.委員会は、韓国・朝鮮人マイノリティに対する差別に懸念を有する。韓国・朝鮮人学校を含む外国人学校のマイノリティの学生が日本の大学へ入学するに際しての制度上の障害の幾つかを除去するための努力は払われているが、委員会は、特に、韓国語での学習が認められていないこと及び在日韓国・朝鮮人学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることに懸念を有している。締約国に対し、韓国・朝鮮人を含むマイノリティに対する差別的取扱いを撤廃するために適切な措置をとることを勧告する。また、日本の公立学校においてマイノリティの言語での教育へのアクセスを確保するよう勧告する。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2001年) 31.委員会は、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることを懸念する。 58.委員会は、締約国が、委員会の一般的意見第11号および第13号ならびに子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号を考慮にいれながら、教育制度の包括的再検討を行なうよう強く勧告する。このような再検討においては、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることにとくに焦点が当てられるべきである。 32.委員会は、マイノリティの子どもにとって、自己の言語による教育および自己の文化に関する教育を公立学校で享受する可能性がきわめて限られていることに懸念を表明する。委員会はまた、朝鮮学校のようなマイノリティの学校が、たとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも公的に認められておらず、したがって中央政府の補助金を受けることも大学入学試験の受験資格を与えることもできないことについても、懸念するものである。 59.委員会は、締約国に対し、学校教科書その他の教材において、諸問題が、規約第13条1項、委員会の一般的意見第13号および子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号に掲げられた教育の目的および目標を反映した公正なかつバランスのとれた方法で提示されることを確保するよう、促す。 60.委員会は、言語的マイノリティに属する生徒が相当数就学している公立学校の正規のカリキュラムに母語による教育を導入するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、マイノリティの学校およびとくに朝鮮学校が国の教育カリキュラムにしたがっている状況においては当該学校を公的に認め、それによって当該学校が補助金その他の財政援助を得られるようにすること、および、当該学校の卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告するものである。 第2回総括所見(2004年) 広報および研修 20.……委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチについて充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること。 (c) 意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること。 (d) 人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。 子どもの意見の尊重 27.子どもの意見の尊重を向上させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを依然として懸念する。 28.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、裁判所および行政機関、施設および学校ならびに政策立案において、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図ること。また、子どもがこの権利を知ることを確保すること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて定期的検討を行なうこと。 (d) 学校、および子どもに教育、余暇その他の活動を提供しているその他の施設において、政策を決定する諸会議体、委員会その他のグループの会合に子どもが制度的に参加することを確保すること。 表現および結社の自由 29.委員会は、学校内外で生徒が行なう政治活動に対する制限を懸念する。委員会はまた、18歳未満の子どもは団体に加入するために親の同意を必要とすることも懸念するものである。 30.委員会は、条約第13条、第14条および第15条の全面的実施を確保するため、締約国が、学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直すよう勧告する。 プライバシーに対する権利 33.委員会は、とくに子どもの持ち物検査との関連でプライバシーに対する子どもの権利が全面的に尊重されていないこと……を懸念する。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 個人的通信および私物の検査との関連も含め、プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施を確保すること。 (b) (略) 体罰 35.委員会は、学校における体罰は法律で禁止されているとはいえ、学校、施設および家庭において体罰が広く実践されていることに懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設および家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について教育キャンペーンを実施すること。また、そのような罰に代わる手段として、学校、施設および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 (c) 施設および学校の子どもを対象とした苦情申立てのしくみを強化することにより、不当な取扱いの苦情が効果的に、かつ子どもに配慮した方法で対応されることを確保すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 教育、余暇および文化的活動 49.委員会は、教育制度を改革し、かつそれをいっそう条約に一致させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a) 教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されていること。 (b) 高等教育進学のための過度な競争のため、学校における公教育が、貧しい家庭出身の子どもには負担できない私的教育によって補完されなければならないこと。 (c) 学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教職員とのコミュニケーションおよび協力がきわめて限られていること。 (d) 日本にある外国人学校を卒業して大学進学を希望する者の資格基準が拡大されたとはいえ、依然として高等教育へのアクセスを否定されている者が存在すること。 (e) とくにドロップアウトした生徒を対象として柔軟な教育機会を提供している東京都の夜間定時制高校が閉鎖されようとしていること。 (f) マイノリティの子どもたちにとって、自己の言語で教育を受ける機会がきわめて限られていること。 (g) 審査手続の存在にも関わらず、一部の歴史教科書が不完全または一面的であること。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 高校を卒業したすべての生徒が高等教育に平等にアクセスできるよう、高い水準の教育の質を維持しつつも学校制度の競争的性質を緩和する目的で、生徒、親および関連の非政府組織の意見を考慮にいれながらカリキュラムを見直すこと。 (b) 生徒および親と連携しながら、学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させること。 (c) 東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大すること。 (d) マイノリティ・グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明しまたは実践し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大すること。 (e) 教科書でバランスのとれた見方が提示されることを確保するため、教科書の審査手続を強化すること。 性的搾取および人身取引 51.パラ3で述べたように、委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)の制定および実施を歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a)~(b) (略) (c) 被害を受けた子どもが犯罪者として取り扱われているという報告があること。 (d) 「援助交際」すなわち対償をともなう交際が行なわれているという報告があること。 (e) 〔性的〕同意に関する最低年齢が低いこと。このことは「援助交際」を助長している可能性があり、また子どもの性的虐待の訴追を妨げている。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)~(c) (略) (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。 (e) 性的同意に関する最低年齢を引上げること。 (参考)人種差別撤廃委員会(2010年)〔PDF〕 13.……また、在日韓国・朝鮮学校(Korean schools)に通う生徒を含むグループに対する不適切で下品な言動、及び、インターネット上での、特に部落民に対して向けられた有害で人種主義的な表現や攻撃という事象が継続的に起きていることに懸念をもって留意する(第4条(a)及び(b))。 ……委員会は締約国に以下を勧告する。 (a) 本条約第4条の差別を禁止する規定を完全に実施するための法律の欠如を是正すること。 (b) 憎悪的及び人種差別的表明に対処する追加的な措置、とりわけ、それらを捜査し関係者を処罰する取組を促進することを含めて、関連する憲法、民法、刑法の規定を効果的に実施することを確保すること。 (c) 人種主義的思想の流布に対する注意・啓発キャンペーンを更に行い、インターネット上の憎悪発言や人種差別的プロパガンダを含む人種差別を動機とする違反を防ぐこと。 22.委員会は、バイリンガル相談員や7言語による就学ガイドブックといった締約国による少数グループへの教育を促進する努力に評価をもって留意する。しかしながら、教育制度における人種差別克服のための具体的施策の実施に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。さらに、委員会は以下の事項を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する: (a) アイヌの子どもやその他の国のグループの子どもが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受ける適切な機会の欠如 (b) 締約国における義務教育の原則が、日本が締約国となっている本条約第5条の(e)の(v)、児童の権利条約第28条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2に適合した形で、外国人の子どもに完全には適用されていない事実 (c) 学校の認定、教育課程の同等性や高等教育への入学に関連する障害 (d) 締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系(Korean)、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い (e) 締約国において現在国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校(technicalcolleges )並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢(第2条及び第5条) 委員会は、非市民に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らして、教育機会の提供において差別がないこと、締約国の領域内に居住する子どもが学校への入学や義務教育就学において障壁に直面しないことを締約国が確保することを勧告する。また、委員会は、この点において、外国人のための学校に関する種々の制度や、国の公的学校制度の外で別の枠組みを設立することが望ましいかについての調査研究を締約国が行うことを勧告する。委員会は、締約国の少数グループが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受けられるように適切な機会を提供するとともに、締約国がユネスコの教育差別防止条約への加入を検討することを慫慂する。 25.委員会は、本条約において保護されているグループによる日本社会への貢献に関する正確なメッセージを伝えることを目的として教科書を改訂するために、締約国によりとられた措置が不十分であったことを懸念する(第5条)。 委員会は、締約国がマイノリティの文化や歴史をよりよく反映するために既存の教科書を改訂することやマイノリティが話す言語で書かれたものを含む歴史や文化に関する書籍及びその他の出版物を奨励することを勧告する。特に、義務教育において、アイヌや琉球の言語教育及びこれらの言語による教育を支援することを慫慂する。 第3回総括所見(2010年) 差別の禁止 33.……委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 生命、生存および発達に対する権利 41.(略) 42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。 子どもの意見の尊重 43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、……学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。 44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。 体罰 47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。 (b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。 (c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 メンタルヘルス 60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障害者支援センターにおける注意欠陥・多動性障害(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。 61.委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。 教育(職業訓練および職業指導を含む) 70.委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。 71.委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮するよう奨励される。委員会はまた、締約国が、子ども同士のいじめと闘う努力を強化し、かつそのような措置の策定に子どもたちの意見を取り入れるよう勧告する。 72.委員会は、中国系、北朝鮮系その他の出身の子どもを対象とした学校に対する補助金が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような学校の卒業生が日本の大学の入学試験を受けられない場合があることも懸念する。 73.委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される。 74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。 75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。 武力紛争選択議定書・第1回総括所見(2010年) 人権教育および平和教育 10.委員会は、平和教育との関連も含め、あらゆる段階のあらゆる学校のカリキュラムで締約国が提供している具体的な人権教育についての詳しい情報が存在しないことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、締約国が、すべての児童生徒を対象とする人権教育およびとくに平和教育の提供を確保するとともに、これらのテーマを子どもの教育に含めることについて教職員を研修するよう勧告する。 性的搾取議定書・第1回総括所見(2010年) 普及および研修 14.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発活動が不十分であることに、懸念とともに留意する。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)選択議定書の規定が、とくに学校カリキュラムおよびキャンペーンを含む長期的な意識啓発プログラムを通じ、とくに子ども、その家族およびコミュニティを対象として広く普及されることを確保すること。 (b)議定書第9条第2項にしたがい、議定書に掲げられた犯罪の有害な影響および被害者が利用可能な救済手段についての意識を、研修および教育キャンペーンを通じ、子どもを含む公衆の間で促進すること。 (c)選択議定書に関連する諸問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、市民社会組織およびメディアとの協力を発展させること。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2013年) 13.委員会は、締約国で根深く残るジェンダー役割についてのステレオタイプのため、女性による経済的、社会的および文化的権利の平等な享受が妨げられ続けていることを懸念する。委員会はまた、数次にわたる男女共同参画基本計画の採択のような措置がとられたにも関わらず、ジェンダー役割に関する社会一般の態度の変革を狙った十分な措置がとられてこなかったことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、締約国の称賛すべき努力にも関わらず、労働市場における垂直および水平のジェンダー分離がいまなお徹底していること……に表れているように、進展がなかなか見られないことを懸念する。委員会は、第3次男女共同参画基本計画で締約国が控えめな目標しか設定しておらず、規約上の権利の行使に関する平等の達成が加速されることはないであろう点を遺憾に思う。(第3条) 委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ジェンダー役割に関する社会のとらえ方を変革するための意識啓発キャンペーンを実行すること。 (b) 伝統的にいずれかの性が多数を占めてきた分野以外の分野での教育の追求を促進する目的で、女子および男子に対して平等な就業機会に関する教育を行なうこと。 (c) 男女共同参画基本計画において男女双方を対象とするいっそう大胆な目標を採択するとともに、教育、雇用ならびに政治的および公的意思決定の分野においてクオータ(割当枠)制等の一時的措置を実施すること。(以下略) (d) コース別雇用管理制度および妊娠を理由とする解雇のような、女性差別である慣行を廃止すること。 (e) 待機児童ゼロの達成をいっそう速やかに進めるとともに、保育が負担可能な料金で利用できるようにすること。 26.委員会は、「慰安婦」が受けてきた搾取により、彼女たちによる経済的、社会的および文化的権利の享受ならびに彼女たちの賠償請求権に対する悪影響が永続していることを懸念する。(第11条、第3条) 委員会は、搾取の永続的影響に対応し、かつ「慰安婦」による経済的、社会的および文化的権利の享受を保障するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、「慰安婦」にスティグマを付与するヘイトスピーチその他の示威行動を防止するため、締約国が「慰安婦」の搾取について公衆を教育するよう勧告する。 27.委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。(第13条、第14条) 差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、委員会は、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう、締約国に対して求める。 28.委員会は、多数の外国人児童が学校に通っていないことに、懸念をもって留意する。(第13条、第14条) 委員会は、締約国に対し、義務教育の状況の監視を、法律上の地位に関わらず締約国の領域内にいるすべての子ども(国民ではない子どもを含む)に対して適用するよう促す。 29.委員会は、規約第13条(b)にしたがって完全無償の中等教育を漸進的に提供するため、締約国が、可能なかぎり早期に、入学料および教科書費を授業料無償化プログラムの対象に含めるよう勧告する。 30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。(第15条、第2条第2項) 委員会は、締約国が、アイヌ民族の生活水準を向上させるための努力を強化し、かつ、とくに雇用および教育の分野において追加的な特別措置を実施するよう勧告する。委員会は、これらの措置を、北海道外在住のアイヌ民族に対しても適用するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、アイヌ語を保全しかつ振興するためにとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年6月3日)。/~/社会権規約委員会の勧告(2013年)を追加(2013年10月31日)。
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『陽だまりの子どもたち』 誰の手も届かない場所で、 優しく笑う子がいたんだ。 たったひとりで皆のために、 静かに笑う子がいたんだ。 僕はそれが許せなかった。 だって、ひとりぼっちは寂しいじゃないか。 どうして誰もあの子に近づかないんだ。 どうして誰もあの子の手を取らないんだ。 どうして誰もあの子を救わないんだ。 それはきっと、ひとりぼっちの寂しさを知らないからだ。 だけど僕は違う。 僕ならきっと、あの子の隣に立てる。 走った。 走った。 あの子は誰よりも遠くにいたから。 走った。 走った。 僕は誰よりも遠いところを目指したから。 そうして僕はあの子にたどり着いた。 あの子は僕を見て笑った。 僕だけのために笑ってくれた。 僕はあの子の手を取った。 そのまま抱きしめた。 あの子が笑った。 刹那、世界に光が溢れた。 暗く悲しいことは消え失せて、 暖かな希望が世界を包み込んだ。 その世界の中心に僕がいた。 あの子が笑っていた。 だけど あの子は笑っていた。 あの子は笑っていた。 今日も明日も。 そして昨日も。 あの子はいつでも笑っているから、 僕があの子を幸せにしたのかわからないんだ。 あの子はいつでも笑っているから、 僕をあの子が見ていたかわからないんだ。 僕はあの子を突き放した。 僕はあの子の手をほどいた。 僕はあの子から逃げ出した。 刹那、世界は闇に飲まれた。 暗い絶望の歌を聞いた。 肌寒い積怨(せきえん)の叫びを聞いた。 暖かな光に慣れた僕にとって、 世界の輝きはあまりに儚かった。 走った。 走った。 誰よりもあの子から遠いところへ。 走った。 走った。 僕は誰かに望まれて生きたかったから。 やがて僕は世界の果てにたどり着いた。 ここへはあの子の笑顔も届かなかった。 皆が光に飢えていた。 僕は彼らに微笑んだ。 彼らはとても喜んだ。 僕の光はか細いけれど、 皆に安らぎを与えられた。 山の稜線から時折覗く、あの子は優しく笑ってくれた。
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欧州評議会・教育現場における子どものデータ保護(ガイドライン) 個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約諮問委員会 条約第108号 2020年11月20日 T-PD(2019)06BISrev5 原文:英語 日本語仮訳:平野裕二(日本語訳PDF) 教育現場における子どものデータ保護(ガイドライン) 目次 1.はじめに 2.適用範囲および目的 3.ガイドラインの適用上の定義 4.データ処理の原則 5.教育現場における子どもの権利の基本的原則5.1 子どもの最善の利益 5・2 子どもの発達しつつある能力 5.3 意見を聴かれる権利 5.4 差別の禁止に対する権利 6.立法者および政策立案者に対する勧告6.1 立法、政策および実務の見直し 6.2 意見を聴かれる子どもの権利のための効果的支援の提供 6.3 子どもの権利の承認および統合 7.データ管理者に対する勧告7.1 正当性および法定根拠 7.2 公正性 7.3 リスク評価 7.4 データ保持 7.5 教育現場における個人データの安全管理 7.6 自動化された意思決定およびプロファイリング 7.7 生体データ 8.業界に対する勧告8.1 基準 8.2 透明性 8.3 データ保護およびプライバシーに関連するデザイン特性 1.はじめに デジタル環境はさまざまな形で子どもたちの生活を形成しており、子どもたちのウェルビーイングおよび人権の享受にとって機会とリスクをつくり出している。デジタルツールのなかには、必要不可欠な情報の提供を可能にし、教室の外で学校コミュニティを結びつけることにつながるものも存在する。また、教育コンテンツの共有手段を提供したり、支援技術および補助コミュニケーションを通じて重要な代替的教育手段および教育様式を提示したりするものもある。 このガイドライン [1] は、現代化された条約第108号(「条約第108号プラス」と称されるのがより一般的である)[2] 第3条の適用範囲内で、かつデジタル環境における子どもに関するガイドライン勧告CM/Rec(2018)7 [3] を含むCoE文書にしたがって、諸機関および個人が教育との関係でデジタル環境における子どものデータ保護権の尊重、保護および充足を図っていく際の支えとなるはずである。 [1] このガイドラインは、Jen Persson(defenddigitalme代表)が起草した報告書 "Children s Data Protection in Education Systems Challenges and Possible Remedies"(https //rm.coe.int/t-pd-2019-06rev-eng-report-children-data-protection-in-educational-sys/168098d309 より参照可能)を踏まえ、その内容を発展させたものである。 [2] 条約第108号プラス:改正議定書CETS 223により現代化された個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約。https //rm.coe.int/convention-108-convention-for-the-protection-of-individuals-with-regar/16808b36f1 より参照可能。 [3] デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン(デジタル環境における子どもに関する欧州評議会ガイドライン)に関する加盟国への閣僚委員会勧告CM/Rec(2018)7。https //rm.coe.int/guidelines-to-respect-protect-and-fulfil-the-rights-of-the-child-in-th/16808d881a 国連・子どもの権利条約委員会は2001年に次のように述べている。 「子どもは校門をくぐることによって人権を失うわけではない。……教育は子どもの固有の尊厳を尊重し、……子どもの自由な意見表明や学校生活への参加を可能にするような方法で提供されなければならない。……」〔訳者注/「教育の目的」に関する国連・子どもの権利委員会の一般的意見1号、パラ8〕 教室にデジタルツールを導入することは、事実上、子どもたちの日常的活動に関わる広範なかつ多数のステークホルダーに対して校門を開放することになる。教育現場で採用されるデバイスならびにアプリケーション、ソフトウェアおよび学習プラットフォームの大多数は、民間の商業的主体によって開発されたものである。 ステークホルダーは、データ保護との関係で、権利が尊重される環境をつくり出し、欧州人権条約第8条〔訳者注/私生活・家族生活等の尊重〕を擁護し、かつすべての個人の人間の尊厳および基本的自由を保護するために、協働することが求められる。 多くの商業的教育ソフトウェアは「フリーウェア」として知られている。直接の金銭的負担なしに教育現場に提供されるソフトウェアである。EU電子商取引指令(第1条1)にしたがえば、これは一般的に「有償で提供される」情報社会サービス [4] の定義に該当することになろう。教育テクノロジーの拡大は、独立の学校のみならず「公立」または「国(州)立」学校においても、非国家主体が日常的に子どもたちの教育上の記録を管理することを意味しうる。国の教育を提供するデジタルインフラは商業的に所有されていることが多い。このことは、コンテンツの態様および提供のあり方がテクノロジープラットフォームによって定められている場合にカリキュラムの管理権はどこに存するのかという新たな問題や、安全性および持続可能性の問題が生じることにつながりうる。 [4] たとえば、GDPR〔訳注/EU一般データ保護規則〕における「情報社会サービス」という用語の範囲を確定するため、GDPR第4条(25)では指令2015/1535が参照されている。規則2016/679に基づく同意についてのEDPBガイドライン05/2020(パラ128)参照。 したがって、学校をプロプライエタリー(著作権等により保護された)ソフトウェアの提供慣行によってがんじがらめにすることも企業の力で可能となりうるのであり、学校は、相互運用性、データへのアクセスおよびデータの再利用に関して生じる可能性がある結果ならびに撤退(たとえば企業がハードウェアまたはソフトウェアのアップグレードの打ち切りを決定した場合)がもたらす予算面および環境面の影響について認識していなければならない。小規模な企業がエンジェル投資家によるインキュベーション(事業の立ち上げ・初期段階での支援)を受け、その後、他の大企業から株を買い占められることは、このガイドラインの作成時点で当たり前のように生じている。したがって、ある子どもの教育の過程で、個人データの管理者権限および保存先が企業取得によって複数回移転される可能性もある。 教育データシステムでクラウドベースの越境データフローが増加しているということは、条約第108号プラス第7条にしたがい、安全管理実務に特別な注意を向けなければならないということである。 子どもたちは、自分のデジタルフットプリントがどのぐらい大きくなっているか、あるいはそれが生涯を通じてどのぐらい遠くへと広がり、教育領域全体を通じてもしくは教育領域を超えて数千人の第三者に渡るかを把握しまたは理解することができない。子どもたちのエージェンシー(自律性・主体性)はきわめて重要であり、自分自身の個人データがどのように収集・処理されるかについての子どもたちへの情報提供は改善されなければならないものの、同時に、非常に複雑なオンライン環境を理解して単独で責任をとるよう子どもたちに期待することはできないというコンセンサスも存在する。 教育現場で製品またはサービスを調達する前に必要な調査の負担により、大人にとってさえ、ソフトウェアツールおよびその情報処理を完全に理解し(オープンソースの情報通信技術(ICT)もしくは著作権等により保護されたICT、有料サービスまたはフリーウェアを利用することの意味合いを比較して評価することを含む)または十分なリスク評価を実施し、かつ、データ主体に提供しなければならない関連の情報を引き出して提示することは困難なものとなりうる。これにより、ユーザーの権利を満たしかつ擁護する資質を十分に備えることは難しくなる。 教育現場に関する法律ならびに他の国内法および国際法がデータ保護規則(データ主体の権利を含む)の適用のされ方にどのような影響を及ぼすかを認識し、教育機関には、スタッフのエンパワーメントを図るための、また教育活動の文脈で子どもたちのデータを処理する際に許されていることおよび禁じられていることを企業が明確に理解するようにしてすべての者にとって公正な競争環境をつくり出すための、強力な法的枠組みと実務規範が必要である。 政策立案者および実務家(立法者、条約第108号プラス第15条(2)(e)に基づく監督機関、教育当局および業界を含む)は、このガイドラインにしたがいかつその促進を図るとともに、データ保護およびプライバシーに関わる義務の履行のための措置を実施するべきである。 子どもたちは、教育現場で、公的機関との関係においてその力を奪われており、かつ、理解力がないこと、能力が発達途上にあることおよび大人へと成長する過程にあることを理由として脆弱な立場にあるとも認識されている。静態的観点に立てば、子どもはまだ身体的および心理的に成熟していない人間である。動態的観点に立てば、子どもは大人へと成長する過程にある存在である(Working Party 29, 2009)[5]。子どもたちはまた、主体的な権利の保有者でもあり、保護だけではなく情報、訓練および指導の提供も必要とする行為主体である。 [5] Working Party 29 Opinion 2/2009 on the protection of children s personal data (General Guidelines and the special case of schools), https //ec.europa.eu/justice/article-29/documentation/opinion-recommendation/files/2009/wp160_en.pdf 情報ガイドや公正な情報処理に関する文書のような資料も、子どもにやさしくアクセシブルな方法で、子どもたちおよびその代理人に対して利用可能とされるべきである。 処理される可能性がある個人データの幅広さ、その広範な利用(学習上およびそれ以外の目標の達成支援、事務管理、行動管理および教育目的のための利用を含む)、その要配慮性、および、デジタル化されていないものかデジタル化されたものかを問わず教育現場で記録を処理することから生じる可能性がある生涯にわたるプライバシー侵害のリスクが認識されるべきである。 このガイドラインはまた、子どもがいずれかの教育現場に編入した結果として、家庭学習または遠隔学習といった遠隔的eラーニングの解決策およびサービスが導入されかつ当該教育現場の外で利用される場合にも、常に適用されるべきである。遠隔学習のためのツールおよびリソースは、教育的質、安全性およびデータ保護基準(たとえばデフォルト設定に関する基準)に関して同じように厳格なデューディリジェンス(相当の注意・配慮)の対象とし、アプリケーションやソフトウェアの利用によってデータ主体の権利が侵害されないようにすることが求められる(バイ・デフォルトによるデータ保護)。データ処理の際には、正当な目的を達成するために必要とされるもの以上のデータが用いられてはならない。このことは、製品を利用して遠隔指導を受けるか、利用を拒否して指導を受けられないかのいずれかしか選択肢がないために自由な同意を与えることのできない場合には、とりわけ重要である。 学校がeラーニングツールの利用を要求する場合、学校または第三者たる処理者による個人データの処理に同意したという根拠は有効とはみなされない。同意は曖昧さを残す余地なく自由に与えられなければならず [6]、かつ不利益を受けることなく拒否できなければならない [7] ためである。 [6] 条約第108号プラス第5条(2)にしたがい、かつこのような文脈においては、GDPRの前文第43段落で「同意が自由に与えられることを確保するために、データ主体と管理者との間に明確な不均衡が存在する特別な場合、特に、管理者が公的機関である場合で、それゆえに、当該状況の全体からみて、同意が自由に与えられる可能性が低いようなときには、その同意は、個人データを取扱うための有効な法的根拠を提供するものとはならない」と述べられており、かつ、教育現場における子どもは、データ主体と管理者との間に不均衡が存在し、むしろ他の法的根拠が適用されるべき状況の典型例であることも考慮されるべきである。〔訳者注/GDPRの日本語訳は個人情報保護委員会の仮訳による。〕 [7] 条約第108号プラスの説明報告書パラ42に掲げられているように、データ主体に対しては、直接的なものか間接的なものかにかかわらず、いかなる不当な影響力または圧力(経済的その他の性質のものである場合もある)も行使されてはならず、データ主体が真正なもしくは自由な選択を行なえない場合または不利益を受けることなく同意を拒否しもしくは撤回することができない場合には、同意は自由に与えられたものとみなすべきではない。 データ保護規則は、教育現場に関する法律または平等、雇用、通信のプライバシーに関する法律その他の関連法および国内法と無関係に適用されるものではないことを念頭に置いておくことが重要である。 このガイドラインは、セクション4で取り上げる現行のデータ保護原則(データ最小化の原則を含む)とあわせて適用することが求められる。 大人は、子どもたちに提供される保護が子どもである間だけ適切であることを確保するのみならず、子どもたちの将来の利益も考慮するべきである。私たちには、子どもたちが妨げられることなく成熟できること、および、子どもたちが全面的かつ自由に発達し、その可能性を十全に発揮し、かつ人類の繁栄に貢献できることを促進する義務がある。 2.適用範囲および目的 2.1 このガイドラインは、新たなテクノロジーおよび慣行によってもたらされる個人データ保護上の課題に対処するための条約第108号プラスのデータ保護原則について、技術的に中立的な規定を維持しながら説明することを援助しようとするものである。 2.2 このガイドラインは、教育現場との相互作用の結果として必要となるデータ保護との関連で、子どものさまざまな権利(とくに情報、代理、参加およびプライバシーに対する権利)が遺漏なく守られるようにすることを目的とする。これらの権利は全面的に尊重されるべきであり、かつ、子どもの成熟度および理解水準に応じて正当に考慮されるべきである。 2.3 このガイドラインのいかなる記述も、欧州人権条約および条約第108号 [8] の規定の適用を排除しまたは制限するものとして解釈されてはならない。このガイドラインでは、条約第108号プラスの新たな保障措置も考慮されている。 [8] 個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約(ETS 108)。https //www.coe.int/en/web/conventions/full-list/-/conventions/treaty/108 より参照可能。 2.4 このガイドラインは抽象的かつ一般的なものに留まる。監督機関は、締約国の法律に特化した国内的実務規範および実務的ガイダンスの一部として、自分たちが進めるプロセスにデジタル技術を統合したいと考える人々を対象とする、教育現場のための実際的提案(チェックリスト)を取り上げることも考えてよい。実務規範を(権限ある機関の中でも特に)監督機関に提出する(そして承認を求める)ことも考えられる。各国は、学校ならびに教育テクノロジー・資料の調達および使用に責任を負うその他の機関を対象として、すでに証明されている教育上の利益がこれらのテクノロジー等によってもたらされることおよびこれらのテクノロジーにおいて子どものさまざまな権利が遺漏なく擁護されることを確保するための、エビデンスに基づく基準およびガイダンスを策定するべきである。 3.ガイドラインの適用上の定義 a.「子ども」(child)とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、国内法に基づきより早く成年に達する場合にはこの限りではない。 b.「データ分析」(data analytics)とは、隠れたパターン、傾向および相関を明らかにする目的で大量のデータを分析する計算テクノロジーにおいて使用される個人データを指し、かつ、パターンの発見、状況または状態の推測、予測および行動理解を目的としてデータの収集、整理および分析を行なうデータ管理のライフサイクル全体を指す。 c.「デジタル環境」(digital environment)とは、インターネット、モバイルおよび関連のテクノロジーおよびデバイスならびにデジタルネットワーク、データベース、アプリケーションおよびサービスを含む情報通信技術(ICT)を包含するものとして理解される。 d.「直接のケアおよび教育」(direct care and education)とは、教育の直接的提供およびその運営に関連する学習ケア、管理上のケアもしくは社会的ケアの活動または特定された個人の直接的ケアであって、学校に通うことの一環として子どもおよび法定保護者が合理的に期待するであろう、法律で定められた教育の公的任務およびデータ処理に一般的に該当するものを意味する。直接のケアと対比されるのはデータの二次的再利用であり、これは、教育現場で「親代わり」(in loco parentis)の監督を受けながら時間を過ごす際に収集されまたは推論される個人データの、他のあらゆる間接的利用をいう。非網羅的な例には、学習分析、リスク予測、公益調査、報道またはソーシャルメディアによる処理のための利用およびマーケティング目的での利用が含まれる。 e.「教育現場」(educational setting)とは、締約国の管轄下にある子どもに対し、民間部門および公共部門において教育が提供される環境をいう。ただし、純粋な家庭内活動の過程で個人が行なう教育は含まれない。 f.「eラーニング」(e-learning)には、とくにコンテンツの提供もしくはコンテンツへのアクセス、遠隔学習またはウェブベースの学習を目的とした情報通信技術(ICT)(オンラインモードおよびオフラインモードで使用されるツールを含む)に支えられた学習が広く含まれうる。eラーニングは、ネットワークに直接つながっていない状態またはインターネットに接続されていない場合でも行なわれうるが、サービスの一環としてそのようなアクセスが必要になることが多い。 g.「法定保護者」(legal guardians)とは、国内法にしたがって子どもに対する親としての責任を有しているとみなされ、かつ、子どもの発達しつつある能力にしたがってその権利および福祉を促進しかつ保護するための一連の義務、権利および権限を有している者をいう。 h.「学習分析」(learning analytics)は、学習および学習環境を理解しかつ最適化する目的で行なわれる、学習者および学習者が置かれている状況に関するデータの測定、収集、分析および報告と説明することができる [9]。 i.「(データ)処理」(processing)とは、個人データに対して行なわれるすべての作業または一連の作業(当該データを収集し、保存し、保全し、改変し、検索し、開示し、利用可能とし、消去しもしくは破棄することまたは当該データに対して論理演算および/または四則演算を実行することなどだが、これに限られない)をいう。 j.「プロファイル」(profile)とは、個人に帰属される一連の特性であって、ある類型に属する個人を特徴づけるものまたは個人への適用が意図されたものをいう。 k.「プロファイリング」(profiling)とは、あらゆる形態の個人データの自動処理(ある個人に関わる特定の個人的側面の評価を目的として個人データまたは非個人データを利用することから構成される、機械学習システムを含む)であって、とくに対象者の業務遂行能力、経済的状況、健康、個人的選好、興味関心、信頼性、行動、位置または移動に関わる側面の分析または予測を目的とするものをいう。 l.「特別類型データ」(special category of data)は、条約第108号プラス第6条と同じ意味を有する。 m.「監督機関」(Supervisory Authorities)とは、条約第108号プラス第4章の規定の遵守を確保することに責任を負う機関として指定された機関をいう。 [9] Learning and Academic Analytics, Siemens, G., 5 August 2011 https //www.researchgate.net/publication/254462827_Learning_analytics_and_educational_data_mining_Towards_communication_and_collaboration 4.データ処理の原則 条約第108号プラスは、あらゆる個人データ処理に適用される原則、義務および権利を定めており、したがって教育現場においての適用が不可欠である。 4.1 処理の正当性と、適法性、公正性、必要性、比例性、目的の限定、正確性、識別可能な形式による保持期間の限定、透明性およびデータの最小化の原則、ならびに、個人データが、処理の目的との関連で十分であり、関連性があり、かつ必要であることの確保(条約第108号プラス第5条)。 4.2 子どもがいっそう脆弱な状況に置かれていることの認識を踏まえた、配慮を要する特別類型データ(遺伝子データおよび生体データならびに民族的出身または性的指向もしくは犯罪に関連するデータを含む)に対する予防原則アプローチおよび保護の強化。 4.3 適切なときには明確な言葉遣い、子どもにやさしい用語および形式を使用することによるアクセシビリティの重要性についての認識を踏まえた、意味のある形でのデータ処理の透明性(条約第108号プラス第8条)。 4.4 いかなる契約上の取り決めにおいても、処理の性質によって決定されるデータ管理者およびデータ処理者のアカウンタビリティ(責任)が明確に定められなければならないこと(条約第108号プラス第10条(1))。 4.5 バイ・デザインによるプライバシー確保およびデータ保護の原則ならびに適切な組織上および技術上の措置が、実務において適用されるべきであること(条約第108号プラス第10条(2))。 4.6 いかなるデータ処理についても、その開始の時点において、かつ当該処理のライフサイクル全体を通じて、意図された処理がデータ主体の権利および自由に及ぼす可能性のある影響についての評価が行なわれるべきこと。子どもが教育現場を離れた後に、データ管理者と子どもまたはその法定保護者との間でデータ処理に関するやりとりがどのように維持されるかについて、早い段階から特段の注意が払われなければならない。 4.7 個人データへの偶発的なもしくは無権限のアクセス、個人データの破棄、喪失、濫用、修正、個人データに対する金銭目的の攻撃または個人データの開示などのリスクを防止しかつこれらのリスクからの保護を図るための、安全管理措置 [10] が必要であること。 [10] 遠隔学習時の個人データの安全管理については UODO s guide for schools が推奨される。https //uodo.gov.pl/en/553/1118 4.8 とくに教育の文脈に関して言えば、データ管理者は、国内法および国際法にしたがい、子どもに代わっておよび子どもの最善の利益にのっとって行動する法定保護者の権利を認識しなければならない(条約第108号プラス第9条)。子どもに関する決定に際して子どもの関与を得るために、また適切なときは家族に適正な情報を提供するために、最善の努力が行なわれるべきである。 5.教育現場における子どもの権利の基本的原則 このガイドラインは、条約第108号プラス、欧州評議会子どもの権利戦略(2016~2021年)[11] および欧州人権裁判所に掲げられた現行の原則を踏まえ、これを発展させたものである。すべての子どもは、欧州人権条約、国連・子どもの権利条約(UNCRC)およびその他の国際人権文書で保障されている諸権利を遺漏なく享受する権利を有する。このガイドラインは、条約第108号の締約国に対し、教育における子どものデータ保護との関連でこれらの権利を認識するよう奨励するものである。子どもに影響を与えるすべての措置において子どもの最善の利益を保障するため、締約国は、欧州評議会子どもの権利戦略(2016~2021年)にしたがって子ども影響評価を導入し、かつその質および効果を高めることを検討してもよい。 [11] The Council of Europe Strategy for the Rights of the Child (2016-2021) https //rm.coe.int/CoERMPublicCommonSearchServices/DisplayDCTMContent?documentId=090000168066cff8 5.1 子どもの最善の利益 5.1.1 デジタル環境における子どもに関わるすべての行動において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。 5.1.2 国は、子どもの最善の利益を評価するにあたり、保護に対する子どもの権利とその他の権利(とくに表現・情報の自由および参加に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)との均衡および調和を図るためにあらゆる努力を行なうべきである。 5.1.3 教育においてより脆弱な立場に置かれている子どもの場合、最善の利益の定義について特有の考慮をしなければならない場合がある。このような子どもとしては、親のいない子ども、移住者である子ども、難民・庇護希望者である子ども、保護・養育者をともなわずに入国してきた子ども、障害のある子ども、ホームレスの子ども、ロマの子どもおよび入所施設、医療施設または若年犯罪者施設に措置されている子どもなどが挙げられる。 5・2 子どもの発達しつつある能力 5.2.1 子どもの能力は出生から18歳に達するまで発達していく。個々の子どもがさまざまな成熟度に達する年齢は同一ではない。 5.2.2 デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン [12] で定められているように、すべての関係者は、子どもの発達しつつある能力(障害のある子どもまたは脆弱な状況に置かれた子どもの発達しつつある能力を含む)を認識し、かつ、デジタル環境との関連でそれぞれのニーズに応えるための政策および実務が採用されることを確保するべきである。 [12] Council of Europe Guidelines on Children in the Digital Environment Recommendation CM/Rec(2018)7 https //rm.coe.int/guidelines-to-respect-protect-and-fulfil-the-rights-of-the-child-in-th/16808d881a 5.3 意見を聴かれる権利 5.3.1 子どもは自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を有しており、その意見は子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に考慮されるべきである。国は、子どもたちがデジタル環境における自己の権利について理解することを、子どもにやさしく、透明な、包括的かつアクセシブルな方法で確保するよう求められる。教育制度に関わるすべての者は、子どもたちが自己の権利を守らせるようにするための仕組みにアクセスできるようにするべきである。 5.3.2 教育現場のスタッフは、条約第108号プラス第5条(1)にのっとって関係するあらゆる利益の公正なバランスを確保する目的で、子どもの個人データの処理を生じさせる新たなテクノロジーを採用するための決定に関する協議に、法定保護者およびその能力にしたがって子どもたちの関与を得るという望ましい実務のあり方を標準的立場として確立するべきである。国はまた、協議のプロセスが、自宅でテクノロジーにアクセスできない子どもたちを包摂するものであることも確保するよう求められる [13]。 [13] 国連・子どもの権利委員会、デジタル環境との環境における子どもの権利についての一般的意見草案(2020年8月) https //tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRC/C/GC/25 Lang=en 〔訳者注/一般的意見25号、パラ18〕 5.3.3 条約第108号プラス第5条(4)(a)にしたがい、法定保護者および子どもの双方に対し、データ処理に関する情報が公正に提供されるべきである。ただし、条約第11条(b)を正当に考慮したうえでそのような情報を共有することが子どもの最善の利益を危険にさらす場合、または能力のある子どもが1人または複数の法定保護者の関与に異議を申し立てる場合、この限りではない。 5.3.4 締約国の法律にしたがい(情報社会サービス(ISS)の定義が教育現場において適用される場合に、ISSによるデータ処理への同意に関して法律で年齢制限が定められている場合には当該年齢制限を考慮することを含む)、かつデータ主体としての子どもを支援するため、法定保護者は、子どもが異議を申し立てない場合に、子どもの能力水準および最善の利益を考慮しながら、教育において子どもに代わって条約第108号プラス第9条(1)(b)に基づく権利〔訳者注/データ処理の状況等について情報を取得する権利〕を行使することを認められるべきである。 5.3.5 同意に基づくデータ処理は、同意が自由に与えられることを損なう、とくに公的機関と個人との間の力の不均衡が存在するときは、有効ではない場合がある。このような不均衡は、データ主体が子どもである場合にはいっそう顕著である。したがって、恒常的データ処理活動については他の根拠のほうが有効である可能性が高く、またそのようなデータ処理は法律に基づくものであるべきである。 5.3.6 子どもは、データ処理に関して子どもにやさしく、透明、包括的かつアクセシブルな情報の提供を受けることにより、子どもがデータ処理の意味することを理解する能力を有しており、かつ当該処理が子どもの最善の利益にかなうものである場合に、年齢に基づく国内法および国際法があるときは当該法律に一致する形で、同意を与えることも撤回することもできるようにされるべきである。 5.3.7 子どもに対し、適切な、包括的な、独立のかつ効果的な苦情申立ての仕組みにアクセスし、かつ自己の権利を行使する権利が認められるべきである。 5.4 差別の禁止に対する権利 5.4.1 子どもの権利は、いかなる事由に基づく差別もなく、すべての子どもに適用される。教育現場において1人ひとりの子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するための努力が行なわれるべきであるが、その一方で、デジタル環境には子どもの脆弱性を高める可能性も子どものエンパワーメント、保護および支援につながる可能性もあることを認識し、特有のニーズに対処するための焦点化された措置が必要になる場合もある。 6.立法者および政策立案者に対する勧告 教育目的でデジタル技術を利用することは、国の政府ならびに公的および民間の教育現場から民間の主体(製品またはサービスの提供者およびソフトウェア開発者など)および個人(教員、法定保護者および他の子どもなど)に至るさまざまな主体が子どもの個人データを処理することにつながる。処理されるデータには、子ども、親または教育者から提供されるものだけではなく、ユーザーの関与の副産物として生み出されるデータまたは(たとえばプロファイリングに基づいた)推論の結果としてのデータもある。高度な配慮を要するデータ(生体データなど)が教育機関によって収集されることも増えている。このようなデータ収集は、子どもにとって生涯にわたる影響をもたらす可能性もある。異なる機関に法的な協力義務が課される状況が生じるときは、データの最小化を確保するため、かつ、いかなる利用も、子どもの合理的期待に応え、かつ目的の限定の原則ならびに保存および保持に関する制限を満たすようなものであることを確保するため、あらゆる個人データの収集前に必要性および比例性に関する厳格な基準が適用されるべきである。教育とデジタル技術に関して影響を受けるのはデータ保護に対する子どもの権利だけではないこと、またプライバシーおよびデータ保護に対する権利はさらなる権利および子どもの保護につながる権利であることを認識することも不可欠となる。差別の禁止に対する権利、発達に対する権利、兵家の事由に対する権利、遊びに対する権利および経済的搾取から保護される権利も関係してくる場合がある。立法者および政策立案者は、教育の場面における子どものデータ処理の影響について検討する際、さまざまな権利がその他の文書、標準業務手順およびガイドラインによって遺漏なく確保されるようにするべきである。 6.1 立法、政策および実務の見直し 6.1.1 これらの原則およびガイダンスとの一致を確保するとともに、すべてのデータ処理におけるその実施を、教育現場において、教育現場全体で、かつ教育現場を離れた後にも、データのライフサイクル全体を通じて促進する。 6.1.2 サービス調達の技術的要件に関する基準において、プライバシー・バイ・デザイン構造に対する高い期待を定める。 6.1.3 自国の教育制度、監督制度および行政制度にしたがい、このガイドラインの促進およびモニタリングのための枠組み(適切なときは独立の機構を含む)を維持しまたは設置する。 6.2 意見を聴かれる子どもの権利のための効果的支援の提供 6.2.1 データ保護法が教育現場において十分に適用され、かつ関連のテクノロジーが一貫した形で利用されることを確保するための十分な資源を監督機関に提供する。 6.2.2 子どものデータ主体が監督機関に申立てを行なう際の第三者による代理(第18条)は、アクセスしやすいものであるべきであり、かつ強化されるべきである。締約国は、第13条に基づき、自国の国内法でいっそうの保護を定めることもできる。いかなる機関、組織または団体も、あるデータ主体の権利がデータ処理の結果として侵害されたと考えるときには、法律で認められている場合、当該締約国において権限のある監督機関に対し、当該データ主体の委任の有無とは無関係に苦情を申し立てる権利が持てるようにするべきである。 6.2.3 教育現場におけるプライバシー権の行使に関して子どもが意見を表明しかつその意見を聴かれ、かつその意見が考慮されることを確保するための手続を定める。 6.2.4 子どもが条約の規定の違反について第12条に基づく救済に容易にアクセスできるようにするとともに、子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針 [14] の精神にのっとり、必要な協力のための事由を定め、かつ監督機関が相互に協力しながら(第15条、第16条および第17条(3))、教育現場でのデータ保護に関わる問題について子どもが裁判所にアクセスすることを妨げるすべての障壁を取り除く。 [14] Guidelines on child friendly justice adopted by the Committee of Ministers of the Council of Europe on 17 November 2010. また、Parliamentary Assembly Resolution 2010(2014) "Child-friendly juvenile justice from rhetoric to reality", and the orientations on promoting and supporting the implementing of the Guidelines on child-friendly justice by the European Committee on Legal Co-operation (CDCJ (2014)15) も参照。 6.2.5 子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の個人のデータ保護関連の権利に具体的注意が向けられなければならないことを認識し、教育現場は、スタッフが、デューディリジェンス(相当の注意・配慮)に関わる自己の役割を理解する十分な能力を確保するための訓練を受け、かつ意見を聴かれる子どもの権利を具体化できることを確保する。 6.3 子どもの権利の承認および統合 6.3.1 子どもの権利についての現行の欧州評議会基準および国連基準における義務およびコミットメントを尊重しかつ充足する [15]。このガイドラインは、差別なくかつ機会の平等を基礎として教育に対するこのような権利を実現する目的で、すべての子どもに適用される。 [15] UNCRC第29条1項:「締約国は、子どもの教育が次の目的で行なわれることに同意する。(a) 子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させること。(b) 人権および基本的自由の尊重ならびに国際連合憲章に定める諸原則の尊重を発展させること」(https //www.ohchr.org/en/professionalinterest/pages/crc.aspx)および子どもの権利宣言(1959年)(国連総会決議1386 (XIV)、A/RES/14/1386、1959年11月20日)の原則7。 6.3.2 デジタル環境における子どもに関するガイドライン [16] にしたがい、教育現場で、デジタル環境における子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する。 [16] Council of Europe Guidelines on Children in the Digital Environment Recommendation CM/Rec(2018)7 https //rm.coe.int/guidelines-to-respect-protect-and-fulfil-the-rights-of-the-child-in-th/16808d881a 6.3.3 企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての国連・一般的意見16号(2013年)[17] を尊重する。国は、子どもの権利の尊重に対するコミットメントを示している入札者に対して公共調達契約の機会が与えられることを確保するための措置をとらなければならず、また子どもの権利を侵害する事業活動に公的資金その他の資源を投資するべきではない。国は、教育現場およびデジタル環境で企業が行なう人権侵害を防止し、モニターしかつ調査するための適切な措置をとるべきである。 [17] 子どもの権利委員会「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号」(2013年)https //www.unicef.org/csr/css/CRC_General_Comment_ENGLISH_26112013.pdf 子どもによっては、適応テクノロジーの利用が、自分の障害を明らかにするものとして歓迎されないこともありうる。〔訳者注/この1文は6.3.4に関する注ではないかと思われる〕 6.3.4 障害のある人の権利に関する条約第24条に掲げられた教育についての義務ならびにテクノロジーの採用に関する意思決定への包摂および関与に関わる義務を認識し、ユニバーサルなアクセシビリティ・バイ・デザインを確保し、かつ公正な供給を促進する。 7.データ管理者に対する勧告 データ処理の流れのなかでは、多くの主体がデータ管理者となりうる。教育機関および政府機関のみならず、プラットフォーム、デバイス、プログラムおよびアプリケーションの提供者もそうである。後者の商業的主体はまた、条約第108号プラス第2条で定義されたデータ処理の性質を単独でまたは他の主体と共同で決定する場合、それ自体としてもデータ管理者となりうるのであり、それぞれの役割を決定するのはデータ処理の性質であって契約条項に書かれていることだけではないことを理解するため、慎重な注意が必要である。したがって、データ管理者に課される義務を負うのが常に教育現場だけであるとは限られない場合もある。関連するすべてのデータ保護原則(データの正確性、必要性および安全性を含む)を履行するため、教育現場は、包括的でコンプライアンスの精神を備えたデータ管理文化を奨励しなければならない。これは、リスク評価において、データ処理または調達のためのすべてのプロセスの一環として権利および自由が積極的に考慮されるとともに、データの質が、スキル訓練および方針に裏づけられた形で、記録の管理を通じて積極的にモニターされかつ効果的に管理されるような文化である。 7.1 正当性および法定根拠 7.1.1 条約第108号プラス第10条第1項にしたがい、十分なデータ保護を確保し、かつ、データ処理が適用される法律を遵守して行なわれていることを示せるようにする義務は、管理者に存する。 7.1.2 教育現場におけるデータ処理に関与するすべての関係者は、データ処理に関わる法的権限および自己の義務を確証する目的で、かつサービス提供者および第三者たるデータ処理者と契約する際に、諸役割間の責任およびアカウンタビリティを明確にするべきである。 7.1.3 第6条で定義されている子どもの特別類型データは、処理の際、処理のための適切な法的根拠に始まるいっそうの保護を必要とする。健康データその他の特別類型データの処理に関して他の法定根拠が存在しない場合であって、当該処理が子どもの最善の利益にかなうものであるときは、当該処理に関して十分な情報に基づいて自由に与えられる同意を法定保護者から取得し、かつ第6条(1)に基づく子どものための適切な保護措置として記録するべきである。このような特別類型データは、データ主体またはその法定保護者が自由に与えた、具体的な、十分な情報に基づく、かつ明示的な同意があるときでなければ、当該子どもの直接のケアおよび教育の範囲を超える目的で共有することができない。 7.1.4 いかなるデータ処理(子どもの特別類型データの処理を含むが、これに限られない)についても、法定保護者または子どもに代わって同意があると推定することにより、第三者のサービス提供者によるデータ処理を正当化することはけっしてできない。 7.1.5 データ管理者は、自由にかつ不利益を受けることなく同意を拒否できない場合には、第三者たるデータ処理者によるデータの利用に対して子どもおよび法定保護者が有効な同意を与えることはできないことを、認識するべきである。 7.1.6 データ主体としての子どもに代わって権利を行使する法定保護者の権限は、能力のある子どもが法律で定められた成熟年齢に達したときに終了する。データ主体(子ども)に対しては、成人したときにデータ主体の権利を行使できるよう、当該子どもに関するデータ処理であって法定保護者が同意したものが継続している場合、当該データ処理についての情報が提供されるべきである。 7.1.7 子どもに対し、第三者(たとえば教育現場の委任を受けたeラーニングの提供者またはアプリケーション)との契約締結を期待することはできない。教育現場は、子どものデータを、当該現場と第三者との書面による契約に基づいて処理するべきである。このようなサービスによる個人データの処理は、法律で定められた正当な根拠に基づいて行なわれるべきである。 7.1.8 第三者と教育提供機関との契約においては、データ主体の基本的権利および自由に影響を与えるいかなる条件変更も防止されるべきである。第三者と教育提供機関との契約のいかなる変更においても、契約書の改訂と、提案されている変更について簡潔明瞭に説明するデータ主体(または適切なときはその法定保護者)への通知が、標準的手順として必要となろう。 7.1.9 教育に対する子どもの権利についての義務を履行するため、教育現場は、条約第108号プラス第9条(1)(f)にのっとった救済措置として家族または子どもがデジタルツールにおけるデータ処理への異議申し立て権を行使する場合に、子どもに対して不利益を与えることなく、適正な水準の代替的教育を提供するべきである。 7.1.10 第9条(1)(d)にのっとり、広告は、第5条(4)(b)に基づく、子どもの最善の利益またはその基本的権利および自由に優越する正当事由または適合的目的とみなされるべきではない。 7.1.11 個人データを利用したデータ分析および製品開発は、子どもの最善の利益もしくは権利および基本的自由または条約第108号プラスの説明報告書パラ49にのっとったデータ主体の合理的期待に優越する、データの追加的処理のための正当な適合的利用とみなされるべきではない。 7.1.12 管理者および処理者は、子どもの教育の過程で収集された子どもの個人データを、他者の収益化のために譲渡し、または匿名化もしくは識別不能化されたデータとして(たとえばデータブローカーに)販売する目的で再処理してはならない。 7.1.13 第5条(4)(b)にいう、公共の利益にのっとったアーカイブ作成の目的、科学的研究もしくは歴史的研究の目的または統計の目的のために行なわれる個人データの追加的処理は、当該目的が条約第108号プラスの説明報告書パラ50で定義されているようなものであるときは、適合性を有する。 7.1.14 締約国の国内法にしたがい、スタッフまたは子どもが。教育上のソフトウェアシステム、データベースその他の第三者製品に個人の電子機器を通じてまたは自宅からアクセスすることにより、私生活および家族生活から生じる個人データ(メタデータを含む)が職業上または教育上の記録と混ざりあってしまう状況についてのガイダンスが、実務規範に掲げられるべきである。 7.2 公正性 7.2.1 第5条(4)(a)にしたがい、データは公正に、かつ透明なやり方で処理されるものとする。条約第108号プラス第8条(a)~(e)には、データ処理が透明かつ完全でなければならないという要件を満たすために期待されることが掲げられている。条約の説明報告書パラ68にしたがい、形式は、データ主体に公正かつ効果的に情報を提供するいかなるやり方をとってもよい。すなわち、たとえば、子どもの発達しつつある能力にしたがっており、子どもにやさしい包括的な言葉遣いを用いた、アクセシブルな代替的形式から、適切な場合にはテキストだけのものでもよいということである。この点については、教育的文脈において、必要に応じ、能力のある子どももしくは(低年齢の子どもについては)その法定保護者によって理解されるよう、または適切なときは子どもの発達しつつある能力に応じて、解釈されるべきである。 7.2.2 透明性に関する義務を履行するためには、データ主体が有するすべての権利についてのアクセシブルな情報を、データ収集プロセスの開始前に、子どもおよびその法定保護者に対して積極的に提供することが必要となる。原則として、子どもおよび法定保護者の双方が直接情報を受け取るべきである。法定保護者への情報提供が、子どもに対し、その発達しつつある能力にふさわしい形で情報を伝達することの代替措置とされるべきではない。 7.2.3 教育現場は、データ処理活動の登録簿の作成、提携事業者(販売事業者および外注事業者など)リストの作成、データ保護影響評価、プライバシー通知の作成および経時的な契約条件の改訂を、機関レベルで実行しかつ公表するべきである。 7.2.4 教育現場は、第7条(2)にしたがい、侵害があった場合は条約第108号プラスが定める監督機関およびデータ主体本人に報告するとともに、自らのアカウンタビリティおよび第三者とのデータ処理の透明性を実証するため監査報告書を共有するべきである。 7.2.5 データ主体のアクセス権の一環として、処理された個人データに関するステートメントが請求に応じて提供されるべきである。データ主体としての子どもに対し、セルフサービスツールを通じてそのような情報を無償で提供することについて、望ましい実務として認めることも考えられる。 7.2.6 個人データが、第14条(3)および(4)にしたがった適切な水準の保護が確保されることを条件として国境を越えて移転される場合、事前にデータ主体および法定保護者への通知が行なわれるべきである。 7.3 リスク評価 7.3.1 管理者は、条約第108号プラス第10条(2)にしたがい、予定されているデータ処理が子どもの権利および基本的自由に与える可能性のある影響をデータ処理の開始前に評価しなければならず、かつ、条約第108号プラスの第10条(3)および他のすべての原則を顧慮し、これらの権利および基本的自由への干渉のリスクを防止しまたは最小化するようなやり方で、データ処理のあり方を定めるものとする。 7.3.2 子どものデータを処理するツールおよびサービスの調達においては、購入するものかいわゆるフリーウェアであるかを問わず、すべての製品の導入に関する意思決定の一環として、データ主体としての子どもの尊重、その法定保護者の権利の尊重およびこれらの者の合理的期待の尊重が確保されるものとする。 7.3.3 情報の自由法が公的機関に適用される場合、幅広い透明性およびアカウンタビリティを促進するため、定期的公表制度の一環としてデータ保護影響評価にアクセスできるようにする旨の提案を、最善の実務のあり方として実務規範に記載することも考えられる。 7.3.4 最善の実務のあり方として、かつ国内法および国際法にしたがい、実施されるいかなる子どもの権利影響評価においても、自己のデータの処理に関する子どもの視点を包摂するため、子どもたちの声がその一環として位置づけられるべきである。 7.4 データ保持 7.4.1 子どもが教育を離れる際には、到達度の証明、将来のアクセス権の保障および制定法上の義務の履行を目的とする、かつ子どもの最善の利益にのっとった、必要最小限の量の識別可能データのみが保持されるべきである。 7.4.2 教育現場を離れた者の個人データは、第5条(4)(e)にしたがい、識別を可能とする方式で、必要な期間を超えて維持されるべきではない。 7.4.3 教育現場は、条約第108号プラス第5条(4)、第7条(2)、第8条(1)および第9条の規定を正当に顧慮し、個人データを、識別を可能とする方式で、必要な期間を超えて保持するべきではない。例外は、それが子どもの基本的権利および自由の本質的部分を尊重し、かつ、条約第108号プラス第11条の適用上、民主的社会のために必要な比例的措置である場合に、認められることがある。 7.4.4 子どもが義務教育の各段階を離れたときまたはその教育現場が(年齢を問わず、幼稚園教育、初等教育、中等教育、継続教育および高等教育において)変更されたときに、子どもに対し、当該子どもに関する記録の完全な写しを提供すること(個人データの保持および破棄に関する情報、すなわち、子どもが教育現場を離れた後、どのような個人データが、誰によって、どのような目的で引き続き保持されかつ処理されるかについて通知することを含む)が最善の実務のあり方とされるべきであり、データ管理者は、いずれにせよ、データ主体に対するすべての継続的義務を履行できるようにするための仕組みを維持しなければならない。 7.4.5 データの十分な識別不能化は非常に困難であるため、最善の実務のあり方として、再特定化は禁止されるべきであり、かつ、第三者に対しては、いかなる再特定化も試みないこと、または識別不能化されたデータを受領した他の者による再特定化の試みを認めないことが要求されるべきである。一部の締約国で国内法にしたがって適用がある場合、そのような再特定化は犯罪となりうることを、認識する必要がある。 7.5 教育現場における個人データの安全管理 教育現場が、長期にわたって大規模に子どもたちのデータの処理に関与することもありうる。このようなデータならびに通常時および移転時双方の処理環境に適切な安全管理措置を適用することは、子どもたちのデータが最高の水準で保護されることを確保するためにきわめて重要である。条約に掲げられているように、安全管理措置では、データ処理分野におけるデータの安全管理手法・技法の最新状況を考慮することが求められる。そのコストは、潜在的リスクの重大性および蓋然性に相応したものであるべきである。データの安全管理には追加的義務が包含され、以下に列挙する管理措置は教育現場におけるデータ処理にとりわけ関連するものである。 7.5.1 個人データに適用される保護措置は、業界の基準および最善の実務のあり方にしたがって、かつ確立された技術的ガイダンス(ISO 27000シリーズその他の適切なガイダンス等)を活用して実施されたリスク評価に基づくものであるべきである。 7.5.2 措置は、処理の状況および当事者である子どもにとってのリスクに特化しており、かつ、処理がどのような文脈で行なわれるかにかかわらず子どものデータの機密性、完全性、可用性および真正性を確保することならびに処理システムおよび処理サービスの回復性を確保することを目的とするものであるべきである。 7.5.3 したがって、リスク評価においては、データ処理の性質、範囲、状況および目的ならびに処理によって生じるリスクを考慮しながら、処理全体を通じて高水準の安全管理がしっかりと行なわれるような成果の達成が追求されるべきである。このような評価は、必要性および比例性の考慮ならびに基本的なデータ保護原則を踏まえ、次の点も考慮して行なわれなければならない。 物理的アクセス可能性を含むさまざまなリスク。 ネットワークを通じたデバイスおよびデータへのアクセス。 データのバックアップおよびアーカイブ化。 7.5.4 物理的アクセス可能性(たとえば教育現場でのデバイスおよびデータへのアクセス)には、少なくとも次の状況において収集されまたは保管されるデータが含まれる。 教室/eラーニング(学校の施設外で行なわれる遠隔学習を含む)。 学校経営。 諸施設(物理的アクセス、スクールバスにおけるものを含むCCTV〔閉回路テレビ〕、生体認証リーダー)。 7.5.5 子どものユーザーがシステムに対して行なう認証の方法(データ処理の文脈においてこのような認証が必要か否かを含む)が検討されなければならない。リスク評価においては、配置されたシステムで要求される認証方法について、代替的アプローチが利用可能であってユーザーのプライバシーの保全につながる場合には当該アプローチを正当に考慮しながら、検討を行なうべきである(たとえば、完全に識別可能なIDとパスワードを利用するシステムか、トークン認証および属性レベルのアクセス許可か)。認証は、堅固で、データの保護を確保できるものであることが求められる。目的の限定およびデータの最小化の原則も、あらゆる認証システムの評価の一環に位置づけられるべきである。 7.5.6 ネットワークを通じたデータへのアクセスについては、無権限のアクセスを防止するため、認証がほぼ確実に必要とされ、かつ望ましい。検討しなければならない問題は現場でのアクセスの場合と同様であり、もっとも適切な認証テクノロジーは何か、および、アクセスは個人の身元(氏名)または属性(「本校の児童生徒」)のどちらに基づいて認めるかが問題となる。 7.5.7 データ処理の間に実施するリスク評価では、無権限のアクセス、修正および消去/破棄からデータが保護されているかどうかも評価されなければならない。データの処理が現場以外で(たとえば第三者たるサービス提供者により)行なわれる場合でも、教育提供機関は、データ管理者としての継続的責任を引き続く自覚しなければならない。個人データの適切な保護(機密性、完全性および可用性を含む)を行なう第三者の能力を確証するため、デューディリジェンスが実行されなければならない。 7.5.8 バックアップおよび/またはアーカイブ化のために保存されるデジタルデータとの関連でも、とくにこれらのサービスが、eラーニング運営サービスにより提供されるデータの可用性の保護の一環として、明示的(契約上のアーカイブ化サービスのためなど)か黙示的かは問わず第三者によって提供される場合には、同様の問題が検討されるべきである。 7.5.9 締約国は、法律上または実際上、子どもを対象として暗号化技術の利用を禁止するべきではない [18]。アプリケーションまたはサービスに暗号化が統合されていない場合、独立した保護措置としてデータを「手動で」暗号化することが望ましいこともある。 [18] デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドラインに関する加盟国への閣僚委員会勧告CM/Rec(2018)7。〔訳者注/パラ39〕 7.5.10 適用可能な保護の水準は多数にのぼる(それらを組み合わせることさえできる)。暗号化されたデータは、バックアップデータ/アーカイブデータと同様に管理されるべきである。すなわち、データを(暗号化された状態から、またはバックアップもしくはアーカイブから)復旧するプロセスは、定期的に検証することが求められる。主たる責任者がこの業務を行なえない場合の予備手続についても、検討しておくべきである。 7.5.11 実施されるいかなる措置についても、条約第108号プラス第7条に掲げられているように定期的な検証が行なわれるべきであるとともに、データの安全管理手法・技法およびリスクの変化を考慮し、かつ定期的な見直しおよび必要な場合のアップデートが常に行なわれるべきである。 7.6 自動化された意思決定およびプロファイリング 7.6.1 すべての個人は、条約第108号プラス第9条(1)(a)および第9条(1)(c)にしたがい、自己の意見を考慮されることなく、もっぱらデータの自動化された処理に基づく自己に著しい影響を及ぼす決定の対象とされない権利を有する。データ処理の結果がデータ主体に適用されるときは、当該データ処理の背景にある推論方法についての知識が容易に利用可能とされるべきである。 7.6.2 子どものプロファイリングは、法律で禁じられるべきである。例外的事情があるときは、国は、(デジタル環境における子どもに関するガイドラインのパラ37にしたがい)解除が子どもの最善の利益に合致する場合または優先されるべき公共の利益がある場合に、法律で適切な保護措置が定められていることを条件として、このような制限を解除することができる。 7.6.3 システムの評価を目的とする(たとえば学校または教員の業績管理のための)子どもの到達度および達成度の恒常的プロファイリングは、優先されるべき公共の利益として正当化されないため、行なわれるべきではない。 7.6.4 すべての子ども(子ども個人か共同体としての子どもかは問わない)の人間の尊厳、人権および基本的自由がとくに差別の禁止に対する権利との関連でAIアプリケーションによって阻害されないことを確保するため、教育現場では、個人データの自動化された処理に関して、人工知能とデータ保護に関するガイドライン [19] にしたがうべきである。 [19] Guidelines on Artificial Intelligence and Data Protection, document T-PD(2019)01, available at https //rm.coe.int/2018-lignes-directrices-sur-l-intelligence-artificielle-et-la-protecti/168098e1b7 7.6.5 データ主体としての子どもおよびその法定保護者双方の権利を認識することが、人工知能を利用した個人データの処理および十分な情報に基づくデータ処理と関連する、アルゴリズムによる意思決定の文脈において必要である [20]。 [20] 前掲。〔原文には脚注番号なし〕 7.6.6 データ管理者は、データ保護・プライバシー影響評価を実施する責任を有する。これらの評価においては、子どもの権利に与える具体的影響が顧慮されるべきである [21] とともに、アルゴリズムを利用したアプリケーションのアウトカムが子どもの最善の利益にのっとったものであることが実証され、かつ、子どもの発達に不明瞭な形で不当な影響が生じないことが確保されるべきである。 [21] 子どもの権利委員会、企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ77-81。 https //www.unicef.org/csr/css/CRC_General_Comment_ENGLISH_26112013.pdf 7.6.7 コンテンツの個別化(personalisation)は、一部のオンラインサービスにおいては本来的かつ所期の要素であることがあり(ただし常にそうであるとは限らない)、したがって場合によってはサービス提供者と教育現場との契約の履行において必要とみなされることがあるものの、子どもとの関係では、たとえ教育現場が強く主張したとしても、そうではない。子どもは契約を締結することができないからである [22]。 [22] コンテンツの個別化(personalisation)は、一部のオンラインサービスにおいては本来的かつ所期の要素であることがあり(ただし常にそうであるとは限らない)、したがって場合によってはサービス利用者との契約の履行において必要とみなされることがある。(EPDB, Guidelines 2/2019) 7.6.8 大規模な個人データのセットの分析に基づく、属性を共有する集団または個人についての予測は、たとえそれに基づいて個人への介入が生じることを意図したものではないとしても、なお個人データの処理とみなされるものとする。 7.6.9 ターミナル上または通信ネットワーク上で利用者のアクティビティの観察およびモニタリングを行ない、行動プロファイルを構築することを目的とするソフトウェアの配布および利用またはそのようなサービスの利用は、認められるべきではない。ただし、国内法に明示的定めがあり、かつ、プロファイリングの文脈で行なわれる自動化された個人データ処理に関わる個人の保護についての欧州評議会勧告CM/Rec(2010)13の原則3.8および説明覚書 [23] に掲げられた適切な保護措置をともなっている場合は、この限りではない。 [23] Council of Europe recommendation CM/Rec(2010)13 and explanatory memorandum (2011) https //rm.coe.int/16807096c3 7.7 生体データ 7.7.1 生体データは、教育現場で日常的な処理の対象とされるべきではない。例外的状況(遠隔試験監督などで身元確認が必要な場合など)での教育現場における生体認証の利用が認められるのは、厳格な必要性の原則にしたがい、データ保護影響評価を実施した後に、より侵襲度の低い手法では同じ目的を達成できないことが明らかになった場合であって、かつ、条約第108号プラス第6条(1)にしたがい、法律に掲げられた適切な保護措置がとられる場合に限られる。これには、要配慮データの処理が子どもの権利および基本的自由にもたらす可能性のあるリスク(生涯にわたる差別のリスクを含む)を正当に顧慮することが含まれるべきである。代替的手法が、不利益を与えることなく提示されるべきである。 7.7.2 アクセシビリティ上のニーズを有している子どもおよび教育スタッフの支援を目的とする利用(たとえばスクリーン上の視線追跡)について、当該利用がこれらの者の直接の利益となりかつ差別なく適用される場合 [24] に認められる例外が、法律に掲げられた適切な保護措置とともに定められるべきである。 [24] Report on children with disabilities in the digital environment Two clicks forward, and one click back (2019) The Council of Europe (page 5) 「子どもによっては、適応テクノロジーの利用が、自分の障害を明らかにするものとして歓迎されないこともありうる」 https //rm.coe.int/two-clicks-forward-and-one-click-back-report-on-children-with-disabili/168098bd0f 7.7.3 条約第6条における生体データの定義では、ある者を一意に識別することが目的とされていることを認識しつつ、公的機関は、子どもから取得した身体データおよび行動データであって身元確認を目的としていない可能性があるものについても、その要配慮性に対して注意を払うべきである。そのようなデータ処理は、身元確認に代えて、没入型バーチャルリアリティなどにおける子どもの身体的または精神的経験に影響を及ぼすことを目的としている場合がある。子どもの行動に影響を及ぼすことまたは子どもの行動をモニタリングすることを目的とする、声・眼球運動・歩様、社会的・情緒的・精神的健康および気分ならびに神経刺激反応に関する特徴のデータ処理は、予防原則に基づいて行なわれるべきであり、かつ、たとえ対象者を一意に識別することが目的でない場合でも、条約第108号プラス上の生体データとして扱われるべきである。 7.7.4 教育現場は、サービスの利用(たとえば、遠隔学習プログラムを実施できるようにするためのビデオ会議ソフトウェアの利用)が契約上の取決めであって、その際、子どもの画像および音声データを含むコンテンツの処理および記録を含むサービスの契約条件にスタッフが同意する可能性がある状況に、特段の注意を払うべきである。スタッフは、データ処理が同意に基づいて行なわれる場合に、そのような同意が存在すると教育現場が推定することおよび子どもに代わってそのような同意が与えられることが生じないようにするとともに、そのような同意が、データ主体である子ども(その発達しつつある能力にしたがって)またはその法定保護者により、十分な情報に基づき、曖昧さを残す余地なく自由に、かつ他のすべてのデータ保護原則(目的の限定を含む)にしたがって与えられなければならないことを確保するよう求められる。 8.業界に対する勧告 このガイドラインを実務規範へと発展させる監督機関は、開発者および業界、教育実践者、学界、教員および家族を代表する団体、市民社会ならびに子どもたち自身との幅広い協力に基づいて、その作業を進めるべきである。基準には、子どものデータの処理に関わる製品またはサービス(無償または低価格で提供される製品またはサービスを含む)に関連した調達ならびに製品試用および調査目的の試用に関する最低基準または明確なガイドラインを含めることも考えられる。 8.1 基準 8.1.1 子どもは特別な保護を受けるにふさわしい存在であるので、教育部門における子どものデータの処理に関して期待される基準は、質および法の支配に関する適切な基準を満たすためにバイ・デザインによって高く設定されるべきであり、かつバイ・デザインおよびバイ・デフォルトによるデータ保護を掲げるべきである。 8.1.2 基準は、実務および認可に関する基準に掲げることもできる。このような基準は、開発者および業界、教育実践者、学界、教員、家族および子どもを代表する団体、市民社会ならびに子どもたち自身との幅広い協力に基づいて起草されるべきである。 8.1.3 調達時に合意された適法なデータ処理契約の規定は、他の主体による買収、合併またはその他の形態の取得後も引き続き適用されるべきである。条件のいかなる変更についても十分に公正な通知期間が設けられなければならず、かつ、新たな条件を修正しまたはそれに反対する権利、契約を終了する権利および要請に応じて生徒のデータを回収する権利が認められなければならない。 8.2 透明性 8.2.1 開発者は、自らがデザインした製品のすべての機能に関する自らの理解を、規制上および法律上の要件を満たすために十分に説明できるようにしなければならず、教育現場のスタッフおよび子どもたちにとって不適切な、デザインによる重い調査の負担をつくり出さないようにしなければならない。 8.2.2 プライバシー情報ならびに公表されているその他の規約、ポリシーおよびコミュニティ基準は、簡明で、子どもにふさわしい明確な言葉遣いで書かれていなければならない。子どもにやさしい伝達手法は、公正な処理のために必要な説明を薄める必要はないものの、過剰であるべきではなく、また法定保護者および教育者向けの法律上・契約上の条項とは別に提示されるべきである。プライバシー通知の階層化は、完全ではあるが同時に効率的な情報提供を行なう必要性を同時に満たすうえで役に立ちうる。 8.3 データ保護およびプライバシーに関連するデザイン特性 8.3.1 バイ・デザインおよびバイ・デフォルトによるデータ保護の原則の尊重に対する期待により、子どもに不必要な個人データの提供またはプライバシー設定の緩和を奨励する可能性のある特性を含むデザインが防止されるべきである。 8.3.2 サービス向上およびセキュリティ強化を目的とする個人データの処理は、厳格に必要なものでなければならず、かつ、中核的サービスの提供ならびに契約サービスに対する合理的な期待および利用者への当該サービスの提供の範囲内に留められなければならない。 8.3.3 個人データおよびユーザートラッキングに基づくデータ分析 [25] は、サービス向上およびセキュリティ強化の一形態であるとみなされるべきではなく、契約の履行のために必要とされるべきではない。 [25] Guidelines on the protection of individuals on the processing of person data in a world of Big Data (2017) T-PD(2017)01 8.3.4 製品の改善(たとえばアプリケーションへの新たな特性の追加またはパフォーマンス向上を意図したもの)の際は、新たな受諾または同意およびインストール前のオプトインが求められるべきである。契約以外の法定根拠に依拠している場合、データ主体に対し、アップグレードの前に、かつ当該法定根拠にしたがって、通知が行なわれなければならない。 8.3.5 教育目的による個人データの越境移転に際して条約第14条の条件が満たされるようにし、教育目的による個人データの越境移転を限定し、かつ越境移転が承認されたデータ保護の枠組みのなかで行なわれることを確保するため、条約第14条に対して具体的に注意が向けられるべきである。 8.3.6 利用場所・利用者の特定、アプリ内機能の対象設定またはプロファイリングを目的とする位置情報の追跡は、必要な場合に限り、適切な法的根拠にしたがって実行されるべきである。サービスは、位置情報追跡がアクティブであるときにはそのことを表示するべきであり、かつ、必須機能を使用不能にすることなく容易に無効化できるようにすることが求められる。このようなプロファイルおよび履歴は、セッション終了時に容易に削除できるべきである。 8.3.7 教育ソフトウェアツールによって収集された子どものデータは、行動ターゲティング広告の掲出もしくはターゲティング、リアルタイム入札広告もしくはアプリ内広告、子どももしくは家族を対象とするマーケティング、製品のアップグレードまたは供給側主導の製品の追加を目的として処理されるべきではない。 更新履歴:ページ作成(2022年2月9日)。
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国連・障害者権利委員会の総括所見抜粋:子ども・教育関連(1) 2011年~:一般的意見2号抜粋/チュニジア/スペイン/ペルー/アルゼンチン/中国/ハンガリー/パラグアイ/オーストリア/オーストラリア/エルサルバドル/スウェーデン/アゼルバイジャン/コスタリカ原文は国連・障害者権利委員会のサイト(Sessions)を参照。 関連国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連(日本) 国連・子どもの権利委員会:一般的意見9(障害のある子どもの権利) 国連・障害者権利委員会:一般的意見4(インクルーシブ教育を受ける権利) 一般的意見2号「第9条:アクセシビリティ」(2014年)抜粋 39.学校へのアクセシブルな移動手段、アクセシブルな校舎ならびにアクセシブルな情報およびコミュニケーションがなければ、障害のある人は教育に対する権利(条約第24条)を行使する機会を有しないことになろう。したがって、学校は、条約第9条第1項(a)で明示的に指摘されているように、アクセシブルでなければならない。ただし、アクセシブルでなければならないのはインクルーシブ教育のプロセス全体なのであって、建物のみならず、すべての情報およびコミュニケーション(環境総合支援型(ambient)またはFM活用型の支援システム、支援サービスおよび学校における合理的配慮を含む)についてもこれが当てはまる。アクセシビリティを促進するため、教育、および学校カリキュラムの内容は、手話、点字、代替文字、ならびに、コミュニケーションおよび移動誘導のための拡張型・代替型の形態、手段および様式(第24条第3項(a))を推進するようなものであるべきであり、かつ、これらによって遂行されるべきである。その際、盲、聾および盲聾の生徒が使用する適切な言語ならびにコミュニケーションの形態および手段に特別な注意を払うことが求められる。授業の形態および手段はアクセシブルであるべきであり、かつアクセシブルな環境において遂行されるべきである。障害のある生徒が置かれる環境全体が、インクルージョンを促進し、教育プロセス全体におけるこれらの生徒の平等を保障するようなものでなければならない。条約第24条の全面的実施は、他の中核的人権文書、および、教育における差別を禁止する条約(国際連合教育科学機関)の規定とあわせて検討されるべきである。(原文英語〔PDF〕/全文日本語訳〔日本障害者リハビリテーション協会仮訳〕) チュニジア(2011年) 障害のある子ども(第7条) 16.委員会は、2~14歳の子どもの94%が家庭において暴力的手段(言語的暴力、身体的暴力または剥奪のいずれによるかは問わない)よるしつけを受けていることを明らかにした複数指標クラスター調査(MICS2006)の結果に鑑み、危険な事態に達する可能性もある、子ども(障害のある子どもを含む)に対する常習的な不当な取扱いの通報(signalement)率が低いことをとりわけ懸念する。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある男子および女子に対する暴力の現象について評価を実施するとともに、このような現象との闘いを改善する目的で体系的なかつ細分化されたデータ(後掲パラ39参照)を集積すること。 (b) 障害のある子どもをケアしている施設が、適切な基準にしたがうことを条件として特別な訓練を受けた職員を配置され、定期的な監視および評価を受け、かつ、障害のある子どもがアクセスできる苦情申立て手続を設置することを確保すること。 (c) 独立のフォローアップ機構を設置すること。 (d) 障害のある男子および女子の施設措置に代えてコミュニティを基盤とするケアを提供するための措置をとること。 教育(第24条) 30.委員会は、障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムに留意する。しかしながら委員会は、インクルージョン戦略が実際には学校において平等に実施されていないこと、普通学校における子どもの人数およびインクルーシブな学級の運営に関する規則の違反が当たり前になっていること、ならびに、同一県内の諸地域間で学校が公平に分布していないことに、深い懸念とともに留意するものである。 31.委員会は、多くの統合学校において障害のある子どもを受け入れる設備が整っておらず、かつ、障害に関する教員および管理者の研修が締約国において依然として懸念事項のひとつとなっていることを、同様に懸念する。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある者が、他の者との平等を基礎として表現および意見の自由に対する権利を行使できることを確保するための措置をとるとともに、これとの関連で、一般公衆向けの情報をアクセシブルな形式で提供し、ならびに、――とくにろう者、難聴者および盲ろう者との関係で――手話の使用を承認しおよび促進すること。 (b) 障害のある女子および男子を対象としたインクルーシブ教育をすべての学校で施行するための努力を増強すること。 (c) 教員および管理者を含む教育関係者を対象とした研修を強化すること。 (d) 障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムを実施するため、十分な財源および人的資源を配分すること。 スペイン(2011年) 障害のある子ども(第7条) 23.委員会は、障害のある子どもの虐待率が他の子どもに比して高いと報告されていることをとりわけ懸念する。委員会は、障害のある子どもの早期発見、家族的介入および十分な情報を提供したうえでの支援が行なわれているために障害児の全面的発達および意見表明能力が危機にさらされていること、ならびに、とくに社会サービス、保健サービスおよび教育サービスにおいて利用可能な資源および調整のとれた行政が欠けていることを、同様に懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を増強するとともに、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究を実施して、このような権利侵害を根絶するための措置をとること。 (b) 自分自身の意見を表明する障害児の権利を確保するような政策およびプログラムを確立すること。 (c) 十分な情報を提供したうえでの治療、リハビリテーションおよびハビリテーションのためのサービスを含む支援サービス、ならびに、とくに乳幼児期における障害児の健康上、心理社会上および教育上のニーズに対応するケアへのインクルーシブなアクセスを確保するため、十分な資源をともなう、調整のとれた公共政策を策定すること。 教育(第24条) 43.委員会は、特別な教育ニーズを有する生徒の学校教育がインクルージョンの原則によって規律されていること、教育における差別が禁じられていること、および、障害のあるほとんどの子どもが普通教育制度に包摂されていることを歓迎する。委員会は、専門の教員、有資格の専門家ならびに必要な教材および資源の提供を教育当局に対して義務づけた教育に関する組織法第2/2006号、ならびに、障害のある生徒のために必要なカリキュラムの修正および多様化を学校に対して義務づけた諸法律の制定を称賛するものである。しかしながら委員会は、合理的配慮が行なわれないとされる事案、隔離および排除が継続しているとされる事案、差別を正当化するために財政的主張が利用されているとされる事案ならびに子どもがその親の意思に反して特別教育に編入される事案に鑑み、これらの法律の実際の実施について懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもの特別教育への措置について異議を唱える親に不服申立ての可能性が認められておらず、かつ、このような親にとっての唯一の選択肢は、自己の費用により子どもの教育を行なうか、または普通教育制度における子どもの合理的配慮のための費用を支払うことであることに、懸念とともに留意するものである。 44.委員会は、合理的配慮の否定は差別であること、および、合理的配慮を行なう義務は即時的に適用されるものであって漸進的実現の対象ではないことを、あらためて指摘する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) インクルーシブ教育に対する権利を実施するために十分な財源および人的資源を配分し、専門の資格を有する教員を手配できる可能性の評価に特段の注意を払い、ならびに、地方政府の教育部局が条約上の義務を理解しおよび条約の規定にしたがって行動することを確保することにより、教育において合理的配慮を行なうための努力を増強すること。 (b) 障害のある子どもを特別学校もしくは特別学級に措置し、またはこのような子どもに対して水準を緩和したカリキュラムによる教育のみを提供する旨の決定が、親との協議に基づいて行なわれることを確保すること。 (c) 障害のある子どもの親が教育のための費用または普通学校における合理的配慮措置のための費用の支払いを義務づけられないことを確保すること。 (d) 子どもを隔離された環境に措置する旨の決定に対し、速やかにかつ効果的に不服申し立てが行なえることを確保すること。 ペルー(2012年) (注)未編集版に基づいて訳出 障害のある子ども(第7条) 16.子どもおよび青少年法(法律第27337号)において障害のある子どもの一定の権利が認められていることには留意しながらも、委員会は、これらの権利の事実上の享受について懸念を覚える。委員会は、締約国の統計データにおいて、障害のある子ども、とくに先住民族の子どもが不可視化されていることを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、障害のある子ども(とくに先住民族の子ども)に対する特別なケアおよび援助に優先度の高い課題として取り組み、かつ利用可能な資源を最大限に投資しながらこれらの子どもに対する差別の解消を図るとともに、これらの子どもの権利の擁護状況を監視するために正確なデータを収集するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害のある子どもに対する暴力、その虐待および極度の遺棄を防止するための措置をとるよう、勧告するものである。 教育(第24条) 36.インクルーシブ教育の制度の枠組みを定めることを目的とした多くの省令には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、これらの規定の事実上の実施に関して存在する欠陥、とくに、先住民族およびアフリカ系ペルー人コミュニティにおける非識字率ならびにこれが先住民族およびマイノリティの障害児に与える可能性がある影響について、懸念を覚える。 37.委員会は、締約国が、障害のある子どもおよび青少年を対象のためのインクルーシブ教育の制度に向けた進展における前進を達成するために十分な予算財源を配分するとともに、障害のある子ども、とくに先住民族およびアフリカ系ペルー人の子どもの非識字を特定しかつ減少させるために適切な措置をとるよう、勧告する。 アルゼンチン(2012年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、子どもおよび青少年の権利の包括的保護に関する法律第26.061号に障害のある子どもについての具体的規定が掲げられていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国における障害児の状況に関する情報がないことも懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、優先的課題として、法律第26.061号ならびに子どもおよび青少年の権利の包括的保護のための制度に、障害の視点を編入するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、障害のある子どもに対する差別を終わらせることに対して可能な最大限の量の利用可能な資源を投資するとともに、障害のある子どもが健康保険制度の対象とされ、かつ受給資格のあるサービスおよび手当(年金および住宅など)を受給することを確保するよう、促すものである。 教育(第24条) 37.委員会は、締約国における教育を規制する法律上の枠組みにおいて、インクルーシブ教育の原則が明示的に認められていること(法律第26.206号第11条)に留意する。しかしながら委員会は、プログラムおよびカリキュラムが障害のある生徒のニーズに適合させられていないこと、および、障害のある者が差別なくかつ他の生徒と平等な立場で教育制度にアクセスすることを妨げるあらゆる種類の障壁が蔓延していることにより、この原則の実施が実際には限定されていることを懸念するものである。委員会は、特別学校に通学している障害児の人数が多いこと、および、障害のある生徒の効果的インクルージョンを支える教育リソースセンターが設置されていないことを、深く懸念する。 38.委員会は、締約国が、インクルーシブ教育に対する権利を保障する包括的な国家教育政策を策定するとともに、障害のある生徒を包摂する教育制度の確立に向けた進展を確保するために十分な予算財源を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、先住民族およびその他の農村コミュニティに特段の注意を向けながら、障害のあるすべての子どもが締約国の定める全面的義務教育を受けることを確保するための努力を強化することも、促すものである。委員会は同様に、締約国に対し、特別学校に通学している障害のある生徒がインクルーシブな学校に編入されることを確保し、かつ一般教育制度において障害のある生徒のために合理的調整を行なうために、必要な措置をとるよう促す。 中国(2012年) 障害のある子ども(第7条) 13.委員会は、締約国の障害児が、親によって遺棄される危険性が高い状況に置かれ、かつしばしば孤立した施設に措置されていることを恐れる。農村部の在宅障害児については、委員会は、コミュニティを基盤とするサービスおよび援助が存在しないことを懸念するものである。 14.委員会は、締約国に対し、障害のある男子および女子の遺棄の根本的原因と闘うため、障害のある男子および女子に関わって広く存在しているスティグマと闘い、かつ厳格な家族計画政策を改定するための措置をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、農村部でもコミュニティを基盤とする十分なサービスおよび援助を提供するよう求めるものである。 教育(第24条) 35.委員会は、特別学校が多数設置されていること、および、締約国がこのような学校を積極的に発展させる政策をとっていることを懸念する。委員会は、実際には特定の種類の機能障害(身体障害または軽度の視覚障害)がある生徒のみ普通教育に出席できる一方で、他のすべての障害児は特別学校への就学または完全な脱落を余儀なくされていることを、とりわけ憂慮するものである。 36.委員会は、締約国が、インクルージョンの概念は条約の基本概念のひとつであり、教育の分野でとりわけ遵守されるべきであることを想起するよう望む。これとの関連で、委員会は、より多くの障害児が普通教育に出席できることを確保する目的で、普通学校におけるインクルーシブ教育を促進するために特別教育制度からの資源の再配分を行なうよう、勧告するものである。 ハンガリー(2012年) 障害のある子ども(第7条) 21.委員会は、障害のある生徒の権利を保護しかつ促進することに対する締約国の献身的姿勢の表明に留意する。しかしながら委員会は、施設環境で生活している子どもの人数が多いこと、および、障害のある子どもの多くが在宅ケアではなく施設ケアを受けていることを懸念するものである。委員会は、障害のある子どもがコミュニティで家族とともに生活し続けられるようにするために十分な資源を配分することの重要性を強調する。 22.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが家族とともに生活できるようにするため、子どもの権利委員会から勧告された(CRC/C/HUN/CO/2)ように、障害のある子どもおよびその家族を対象とした、コミュニティを基盤とするリハビリテーションサービスその他のサービスをそれぞれの地域コミュニティで促進しかつ拡大する目的で、とくに地方レベルで必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうよう、求める。 教育(第24条) 39.委員会は、障害のある生徒が手話および点字システムの利用を学習する機会を有していることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、これらの教科に関する研修が教員を対象として行なわれていることにも留意するものである。委員会はさらに、締約国が、普通教育施設において障害のあるすべての生徒について合理的配慮を行ない、ならびに条約が定めるインクルーシブ教育の制度を発展させおよび促進するための十分な措置をとっていないことに、懸念とともに留意する。 40.委員会はさらに、障害のあるロマの子どもが普通教育にアクセスできることを確保するための社会的プログラムが存在せず、かつ、教育に対するこれらの子どもの権利を充足するためにどのような支援が必要かを決定するための、子どもおよびその親との十分な協議が行なわれていないことを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、障害のある子どものためのインクルーシブ教育の制度を発展させるために十分な資源を配分するよう、求める。委員会は、合理的配慮の否定は差別であることをあらためて指摘するとともに、締約国が、生徒の個人的必要に基づいて障害児に対する合理的配慮を行ない、障害のある生徒に対して一般教育制度において必要な支援を提供し、かつ、教員および他のすべての教育職員を対象として、インクルーシブ教育の環境で働けるようにするための研修を引き続き行なうための努力を、相当に増強するよう勧告するものである。 42.委員会は、締約国に対し、望まれる成果を得るために必要となる可能性がある合理的配慮の実施を軽視することなく、障害のあるロマの子どもが普通教育プログラムに包摂することを確保するためのプログラムを発展させるよう、促す。 パラグアイ(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.委員会は、「障害のある子どもおよび青少年の包括的ケア国家プログラム」が、医学モデルの障害特性の予防および早期発見だけに限定されており、障害のある子どもに認められた一連の権利を全面的に考慮していないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、障害のある子どものインクルージョンに関する公共政策を実施するための資源が不十分であることも懸念するものである。委員会は、不当な取扱いおよび虐待を受けるおそれが高い障害のある子ども(障害のある先住民族の子どもを含む)についての情報がないことを遺憾に思う。 20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利委員会がパラグアイの第3回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/PRY/CO/3、パラ49)で勧告したように、障害のある子どもを対象とする、インクルーシブなかつコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラムを発展させることによって、生活のあらゆる分野(家族生活およびコミュニティにおける生活を含む)における障害のある子どものインクルージョンについての広範な政策を実施するために必要な十分な資源を配分するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、虐待および不当な取扱いからの保護を提供する目的で、農村部および先住民族コミュニティにおける障害のある子どもの状況を調査しかつ記録することも依頼するものである。 教育(第24条) 57.委員会は、障害のある子どもの就学者数が少ないこと(1パーセント未満)、および、これらの学校のほとんどが特別学校であり、かつ、教育水準を評価する際、障害の医学モデルからとられた用語法が一貫して用いられていることを懸念する。委員会はまた、都市部および農村部における就学率についての情報ならびに教育が民族的および言語的に関連性を有しているかについての情報がないことも遺憾に思うものである。 58.委員会は、障害のあるすべての子どもおよび青少年が国の教育制度にアクセスできるようにするための戦略を締約国が実施すること、ならびに、教育はあらゆる段階および国内全域でインクルーシブなものであるべきであり、またジェンダーの視点を組みこみ、かつ民族的および言語的に関連性を有するものであるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、医学モデルからとられた教育用語を修正し、かつ隔離型の特別教育からインクルーシブ・モデルへの方向転換を図るよう促すとともに、締約国がその方向に向けた行動を起こすよう奨励するものである。 オーストリア(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.子どもの権利委員会は、オーストリアに関する2012年の総括所見(CRC/C/AUT/CO/3-4)で、障害のある子どもの権利が多くのやり方で廃止されるおそれに直面していることについての懸念を表明した。 20.委員会は、子どもの権利委員会の勧告を支持するとともに、締約国に対し、これらの勧告を可能なかぎり迅速に実施するよう要請する。 教育(第24条) 40.委員会は、オーストリアにおけるインクルーシブ教育への進展が停滞していることを懸念する。委員会は、特別学校に在籍する子どもの人数が増えていること、および、障害のある子どものインクルーシブ教育を支援するために行なわれている努力が不十分であることを示唆する報告に、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、「インクルーシブ」教育と「統合」教育との間に若干の混同があることに留意する。しかしながら委員会は、いくつかの州でインクルーシブ教育モデルが確立されていることを称賛するものである。 41.委員会は、オーストラリアにおいて障害のある大卒者がきわめて少数であることに失望する。委員会は、高等教育段階で学生に手話通訳を提供していることについてオーストリアを称賛するものの、締約国が建設的対話の際に述べたように、聴覚障害のある学生はこれまで13名いたにすぎず、かつそのうち3名しか大学を卒業していないことに留意するものである。 42.障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする教員養成が行なわれていないように思われる。手話の技能を有する教員が十分に存在しなければ、聾の子どもは相当に不利な立場に置かれる。 43.委員会は、幼稚園から中等学校に至るインクルーシブ教育のすべての分野で障害のある学生を支援するため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はとくに、締約国が、諸州で導入されているインクルーシブ教育モデルの日常的実施に障害のある人(障害のある子どもおよびその代表団体を含む)が関与することを確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、障害のある学生が大学その他の高等教育機関で学習できるようにするため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、オーストリア憲法においてオーストリア手話が正式に承認されていることにしたがい、聾および聴覚障害者である女子および男子の教育を増進させる目的で、障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする質の高い教員養成を行なうための努力を向上させるようにも勧告するものである。 オーストラリア(2013年) 障害のある子ども(第7条) 18.委員会は、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み」が暴力、虐待およびネグレクトからの子どもの保護に焦点を当てていること、ならびに、子どもの権利がどのように実施され、監視されかつ促進されるべきかについて詳しく述べた、子ども(障害のある子どもを含む)のための包括的な国家的政策枠組みが定められていないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび若者一般に適用される法律、政策、プログラム、サービス基準、運用手続および法令遵守枠組みに条約を編入することにより、障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を向上させること。 (b) 自己に関わるあらゆる事柄について意見を表明する障害児の権利を確保する政策およびプログラムを確立すること。 教育(第24条) 45.委員会は、平等を基礎として教育へのアクセスを確保するために定められた「教育における障害基準」にもかかわらず、障害のある生徒が特別学校に措置され続けており、かつ、普通学校に在籍している障害生徒の多くは主として特別学級または特別班に押しこまれていることを懸念する。委員会はさらに、普通学校に就学した障害のある生徒が、合理的配慮が欠けているために標準以下の教育を受けていることを懸念するものである。委員会はまた、障害のある生徒の中等学校修了率が障害のない人々の約半分であることも懸念する。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 必要な質の合理的配慮を教育において行なうための努力を向上させること。 (b) 現行の教育インクルージョン政策がどの程度有効であり、かつ「教育における障害基準」が各州および準州でどの程度実施されているかに関する調査を実施すること。 (c) あらゆる段階の教育および訓練において障害のある学生の参加率および修了率を高めるための目標値を定めること。 エルサルバドル(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.委員会は、子どもおよび青少年保護法に、障害のある子どもの保護を確保するための具体的措置が、保健ケアに関するいくつかの措置を除いて含まれていないことを懸念する。委員会は、貧困下で暮らしている障害児が、遺棄または施設養護への措置の対象にいっそうなりやすい立場に置かれていることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が、農村部および先住民族コミュニティで暮らしている障害児ならびに聴覚障害、視覚障害および知的障害のある子どもにとくに注意を払いながら、障害のある子どもの権利を平等に保障するための国内法の強化および具体的プログラムの策定を進めるよう勧告する。その際、機会および有利な立場等を奪われている家族のための措置を優先させながら、これらの子どもの社会的インクルージョンの確保ならびに遺棄および施設措置の防止を図ることが求められる。 教育(第24条) 49.委員会は、障害のある子どもの就学率が低いこと、ならびに、都市部および農村部のいずれにおいても障害児が教育にアクセスできることを保障するための合理的配慮および成人教育へのアクセスを保障するための合理的配慮が行なわれていないことを懸念する。委員会は、心理社会的障害または知的障害のある子どもについて学校へのアクセスおよび在学継続の面で差別があることを懸念するものである。また、締約国が障害のある子どもを対象とする無償教育の原則を定めていないことも、委員会にとって懸念の対象となる。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 都市部および農村部の双方において、あらゆる段階でインクルーシブ教育モデル(ジェンダーの視点および文化的視点、ならびに、障害のある子どもおよび青少年が教育にアクセスできることを確保するために必要な合理的配慮を含む)を発展させること。 (b) 障害のある人に関わるインクルーシブ教育の手法について教員を対象とする義務的研修を行なうための計画を採択しかつ必要な予算を配分することにより、心理社会的障害または知的障害のある子どもにとっての、アクセスおよび在学継続に関わる教育上の障壁を取り除くこと。 (c) アクセシブルな教育ツールおよび教授法を立案し、かつ障害のある生徒が新たなテクノロジーおよびインターネットにアクセスできるようにするための取り組みおよび官民共同事業を実施すること。 スウェーデン(2014年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、障害のある子どもが他の子どもよりも高い割合で暴力にさらされており、かつ子どもとともに働く職員の間で意識が欠けていることを示す報告があることを懸念する。 16.委員会は、締約国が、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究ならびにデータおよび統計の収集を発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、親のおよび子どもとともに働く職員の感受性強化および訓練ならびに一般公衆の意識啓発のための戦略および取り組みを強化するようにも勧告するものである。 17.委員会は、精神保健上および心理社会上の問題および障害の発生率が若者の間で高く、学校保健サービスに十分な資源が配分されておらず、かつ、学校心理学者および心理社会的支援制度にアクセスするための待機期間が長い旨の報告があることを懸念する。 18.委員会は、締約国が、子どもが適切な心理社会上および精神保健上の支援ならびに精神医学的保健ケアに時宜を得たやり方でアクセスしかつ当該支援およびケアを受けられることを確保するため、学校保健サービスに対して利用可能とされる資源を増やすよう勧告する。 19.委員会は、障害のある子どもが自己の生活に関わる決定に制度的に関与していないこと、および、これらの子どもが自己に関わる事柄について意見を表明する機会を有していないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、自己に関わるあらゆる事柄について協議の対象とされる障害児の権利を保護するための現行の保障措置を確保し、かつ追加的な保障措置を採択するよう勧告する。 教育(第24条) 47.委員会は、学校が、障害のある一定の児童生徒について、組織的および経済的困難を理由に入学を拒否できる旨の報告があることを懸念する。委員会はさらに、広範な支援を必要とする一部の子どもが、そのような支援が存在しないことを理由として通学できないことを示す報告があることを懸念するものである。 48.委員会は、締約国に対し、普通教育制度におけるすべての障害児のインクルージョンを保障し、かつ、これらの子どもが必要な支援を得られることを確保するよう促す。 アゼルバイジャン(2014年) 障害のある子ども(第7条) 18.子どもの権利委員会は、アゼルバイジャンに関する2012年の総括所見(CRC/C/AZE/CO/3-4)のパラ34において、ヨーロッパで5番目に高いとされる、締約国における乳児死亡率の高さについて不快懸念を表明した。さらに同委員会は、締約国による生児出生の定義が、国際的に承認された世界保健期間の定義と一致していない旨の懸念を表明している。障害者権利委員会は、子どもの権利委員会による懸念をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国の高い乳児死亡率の影響を受けている先天性障害児の人数についてのデータが存在しないこと、とくにこの現状が障害のある男女の子どもの出生登録にどのように影響しているかについて、懸念を表明するものである。 19.委員会は、子どもの権利委員会の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国がその実施を速やかに進めるよう要請する。したがって委員会は、締約国に対し、世界保健機関による生児出生の定義の実施に一致する形で、障害のある男女の子どもの死亡率に関する研究を実施し、かつ乳児死亡率を削減するための努力を速やかに向上させるよう、促すものである。 教育(第24条) 40.委員会は、障害のある子どもが特別寄宿学校その他の特別学校に措置され続けていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに支援技術および教室内支援、アクセシブルでありかつ適切な修正を加えた教材およびカリキュラムならびにアクセシブルな学校環境を提供することにより、学校その他の学習機関においてインクルーシブ教育および合理的配慮を実施するための努力を向上させること。 (b) 「インクルーシブ教育に関する国家プログラム」の実施のために十分な財源および人的資源を配分すること。 (c) すべての種別の障害児(聾および難聴の女子および男子を含む)の教育を増進させる目的で、障害のある教員を含む教員を対象として点字および手話の使用に関する良質な研修を実施するための努力を向上させること。また、インクルーシブ教育が、大学における中核的な教員養成の不可欠な一部に位置づけられることを確保すること。 (d) 現行のインクルーシブ教育プログラムがどの程度有効であり、かつアクセシビリティに関する基準が締約国でどの程度遵守されているかについての調査を実施すること。 (e) 次回の定期報告書に、障害のある生徒を就学させているインクルーシブな学校の数についてのデータ(学年度別、男女別および障害別ならびに地域別に細分化されたもの)を記載すること。 コスタリカ(2014年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、締約国が、施設に措置され、遺棄され、虐待の被害を受け、または貧困下もしくは農村環境下で生活している障害児(先住民族の子どもを含む)の状況についてまったく調査を実施していないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、国家子ども福祉庁が、援助を基調とする非正規状況モデルを反映しており、障害のある子どもの権利を軽視していることを遺憾に思うものである。委員会はまた、障害が法律第7739号(子どもおよび青少年法)に主流化されておらず、かつ、同法第62条(特別教育に対する権利)が条約第24条に一致していないことも懸念する。 16.委員会は、締約国が、障害のある子どもを虐待および遺棄から保護し、かつ施設措置を防止するための緊急の措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、障害のある子どもに対して表現および意見の自由を保障することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよび青少年法を改正することにより障害を横断的テーマのひとつとして含めること、および、障害のある子どもに良質なインクルーシブ教育を保障する目的で同法第62条(特別教育に対する権利)を改正することも促す。 教育(第24条) 45.委員会は、特別教育モデルが引き続き存在していること(当該モデルのもと、障害のある子どもおよび若者は隔離され、かつインクルーシブ教育にアクセスできていない)、および、教員その他の専門職員を対象とする訓練がこのような特化された枠内で行なわれ続けていることを、遺憾に思う。 46.委員会は、締約国に対し、教員を対象としてインクルーシブ教育の訓練を行なう政策を採択するとともに、訓練を受けた教員に対する支援、点字、コスタリカ手話、コミュニケーションの代替的な手段および形態、読むことが容易なテキストならびにその他の補助用品および補助媒体を提供することによってインクルーシブ教育を保障するよう、促す。 47.委員会は、障害のある子ども、若者および成人の教育面でのインクルージョンに関する指標が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある成人、障害のある女性および女子、重複障害者、先住民族ならびに農村部で暮らしている人々の間で排除の度合いがいっそう高いことに、とりわけ懸念しながら留意するものである。 48.委員会は、締約国が、障害のあるすべての人を対象として、成人教育を含むすべての段階の教育において、かつ国内全域でインクルーシブ教育へのアクセスを確保するとともに、この教育モデルが最遠隔地も対象とし、ジェンダーの視点を編入し、かつ民族的および文化的に妥当なものとなることを保障するよう、勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年12月6日)。/パラグアイ~コスタリカを追加(2014年9月1日)。/冒頭に一般的意見2号抜粋を追加(9月12日)。
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子どもの権利委員会・一般的討議勧告:緊急事態下における子どもの教育への権利 一般的討議勧告一覧 (第49会期、2008年10月3日採択) 原文:英語〔ワード〕(日本語訳/平野裕二) III.勧告 [4] これらの勧告は、「緊急事態下における子どもの教育への権利」に関する一般的討議(2008年9月19日)への情報等の提供および当日の議論に基づいたものであり、これに尽きると主張するものではない。 23.委員会は、教育が他の基本的権利と分かちがたく結びついた奪うことのできない権利であり、緊急事態にあろうがなかろうがすべての子どもに保障されなければならないものであることを想起する。委員会は、この一般的討議の目的上、「緊急事態」(emergency situations)とは、人災または自然災害によって、子どもの生活、ケアおよび教育上の便益の通常の条件が短期間のうちに破壊されるあらゆる状況として定義されていることを想起するものである。緊急事態により被災した子どもたちは、世界でもっとも被害を受けやすくかつ周縁化された集団のひとつに数えられ、かつ就学していない子どもの集団としても最大のもののひとつを構成している。万人のための教育を現実のものとするためには、緊急事態下における子どもの教育への権利が尊重、保護および充足されなければならない。 24.委員会はさらに、緊急事態下における子どもの教育への権利が効果的に確保および実施されなければ、すべての子どもに初等教育の全課程を保障するという、2番目のミレニアム開発目標が達成されない見込みであることを強調する。 25.委員会は、教育への権利が緊急事態における優先事項であり、かつ人道救援対応の不可欠な構成要素のひとつであることを支持する、2008年の一般的討議を通底していた原則に同意する。 26.子どもの権利条約を批准した締約国は、その管轄内で子どもの権利を実施し、かつこれらの権利の世界的実施に貢献する義務を自ら引き受けた。委員会は、2008年の一般的討議の目的が、第28条および第29条に概略的に掲げられた教育への権利を尊重および保護する義務について、国その他の主体に対していっそう包括的な指針を提供することであることを想起する。したがって、以下の勧告は、締約国のみならず他の関連の主体にも宛てられたものである。これには、子どもの奪うことのできない権利(教育への権利を含む)が尊重、保護および充足されなければならない地域を実効支配している国以外の主体が含まれる。 27.委員会は、多くの組織、とくに「緊急事態下における教育のための機関間ネットワーク」(INEE)の傘下にある組織(とくにユニセフ、ユネスコ、国際救助隊〔IRC〕、国際赤十字・赤新月社委員会〔連盟〕、セーブ・ザ・チルドレンおよびワールド・ビジョンを含む)によって緊急事態下の子どもたちのために現地で実施されている貴重な取り組みおよびプログラムに、評価の意とともに留意する。 I.中核的義務 28.委員会は、緊急事態下における子どもの教育への権利の実施においては、条約第28条および第29条に掲げられた要件が制限なく満たされなければならないことを強調する。 29.委員会は、緊急事態下においては教育への権利を享受する子どものニーズが高まると考える。教育は、保護措置であると同時に、救援措置であり、かつ身体的、心理社会的および認知的保護を提供する救命措置だからである。教育は、正常性の感覚、安定感、構造性の感覚および未来への希望を与えることにより、紛争および災害の心理社会的影響の軽減につながる。したがって委員会は、緊急事態のあらゆる段階(緊急事態対策段階ならびに復興段階および緊急事態後段階を含む)を通じ、その管轄内にあるすべての子どもを対象として、いかなる差別もなく教育への権利を全面的に確保する自国の義務を全うするよう、締約国に対して求めるものである。委員会はまた、締約国、ドナーおよび救援機関に対し、教育を最初から人道救援対応の不可欠な要素のひとつに含めるよう求める。 30.条約の実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)についての一般的意見第5号(2003年、CRC/GC/2003/5)で、委員会は、条約に掲げられた経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現および国際協力に関わるものも含む一般的実施措置を発展させる締約国の義務について、その概略を示した。「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の勧告では、漸進的実現とは、条約締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現に向けて可能なかぎり迅速かつ効果的に進んでいくために的を絞った措置をとる即時的義務を課したものとして理解されるべきであると勧告した。委員会はまた、締約国には少なくとも、経済的、社会的および文化的権利の中核である最低限の内容を達成する義務があると考えていることも明らかにした。 31.委員会は、緊急事態下にあって教育への権利を充足させる責任は個々の国だけが背負わなければならないものではないことを、あらためて指摘する。いずれかの国が対応能力および(または)必要な資源を欠いているときは、他の国々、ドナー機関および国連機関を含む国際社会が、条約第4条第2項〔第2文〕にしたがい、教育への権利が普遍的に充足されることを確保するべきである。 32.委員会は、締約国、ドナー・コミュニティおよび人道機関に対し、緊急事態下で教育への権利を確保する努力を行なう際には、条約の4つの一般原則――差別の禁止に対する権利(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに意見を聴かれる権利(第12条)――を考慮に入れながら、権利基盤アプローチを適用するよう求める。 II.緊急事態下にあって教育にアクセスする子どもの権利を確保する国の義務――教育制度の継続/再建(第28条) 緊急事態対策 33.委員会は、条約第4条において、締約国は条約で認められた権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上その他の措置をとらなければならないと定められていることを想起しつつも、締約国に対し、緊急事態に耐える能力を高める目的で、国の教育制度、保護のための法的枠組みならびに保健サービスおよび基礎的社会サービスを強化するよう求める。 34.委員会は、すべての締約国、とくに自然災害に遭いやすい国または武力紛争の影響を受ける可能性が高い地域の国に対し、緊急事態下における教育への権利の保障のための体制整備に関する行動計画を作成するよう求める。これには、政府機関、市民社会、人道救援機関およびドナー間の調整担当窓口を教育省内に設けること、緊急事態が生じても教育への権利の充足を確保するための十分かつ持続的な資源を配分すること、カリキュラムを修正すること、緊急事態に対処できるよう教員を訓練すること、および、ボランティアを特定および訓練することが含まれるべきである。 緊急事態の最中 35.国際法に基づいて国が負っている民用施設(学校を含む)の保護義務に関して、委員会は、締約国に対し、学校が平和地帯でありかつ知的好奇心および普遍的人権の尊重が醸成される場であることを確保する義務、および、戦闘員による軍事的攻撃もしくは接収または徴募センターとしての利用から学校が保護されることを確保する義務を履行するよう促す。委員会は、締約国に対し、国際刑事裁判所ローマ規程第82条第2項(b)(ix)にしたがって学校への攻撃を戦争犯罪として犯罪化すること、ならびに、吹処罰を防止しかつこれと闘うことを促すものである。 36.委員会は、教育が周縁化された子どもも容易にアクセスできる真にインクルーシブなものであることを、締約国が確保するよう勧告する。このような子どもには、障害のある子ども、HIV/AIDSの影響を受けている子ども、難民および庇護希望者である子ども、国内避難民である子どもならびに乳幼児(乳幼児期発達教育プログラムを通じたアクセス)が含まれる。初等教育に留まらず、中等教育も、一般教育および職業教育ともに、子どもたちに対して利用可能とされるべきである。 37.委員会は、脆弱性および周縁化を悪化させる可能性がある緊急事態、人道援助および初期回復時の複雑なジェンダー力学によってジェンダーの平等がとりわけ課題となることを認め、締約国に対し、緊急事態の影響を受けたすべての男子および女子が安全、良質かつ妥当な教育に平等にアクセスできることを確保する目的で、ジェンダーの公正に配慮した政策およびプログラム介入を実施するよう促す。 38.委員会は、締約国、救援機関およびドナー・コミュニティに対し、その教育活動を調整しかつ責任の引き受けを促進する目的で、INEEの蓄積、とくに、緊急事態中に教育の提供に携わる可能性があるすべての主体に対して調和のとれた原則枠組みおよび行動方針を提示する「緊急事態、慢性的危機および初期復興における教育に関するINEE最低基準」(INEE最低基準) [5] を活用するよう勧奨する。委員会はまた、締約国、救援機関およびドナー・コミュニティに対し、常設委員会 [6] を支援するとともに、その蓄積ならびにIASC教育クラスタおよび(地元の人道団体および市民社会組織の能力構築を目的とした)「万人のための教育-ファスト・トラック・イニシアティブ移行基金」の蓄積を活用するようにも促すものである。委員会はまた、教育クラスタが、緊急事態下における教育ニーズを決定し、かつ調整のとれたやり方でこれに対応していくための適当な機構となるべきであるという、教育への権利に関する特別報告者の勧告 [7] をあらためて繰り返す。 [5] Report of the Special Rapporteur on the right to education, A/HRC/8/10, para.66. [6] 人道支援に関する常設委員会(Inter-Agency Standing Committee, IASC)は諸クラスタの主務機関をそれぞれ指定している。主務機関の任務は、特定の緊急事態に対応している国連機関および国連以外のパートナーの役割、責任および説明義務を明確にし、かつ受入れ国政府との意思疎通を合理化することである。(http //www.unicef.org/girlseducation/index_44882.html 参照) [7] Report of the Special Rapporteur on the right to education, A/HRC/8/10, para.84. 復興および緊急事態後 39.委員会は、締約国および他の関連の主体に対し、教育を和平協定および停戦協定の対象にするとともに、INEE最低基準を尊重する修了証明ならびに緊急事態中に受けた教育の認可および公的承認を付与することを通じて通常学校への円滑な移行を確保するよう、求める。 40.委員会は、受入れ国に対し、難民および庇護希望者である子どもが自己の言語で学ぶ権利および自己の文化について学ぶ権利を尊重するよう求める。委員会はさらに、国内避難の状況にあって避難民である子どもたちの言語が地元住民のそれと異なる場合、子どもたちの言語が考慮されなければならないことを強調するものである。 41.救援・復興機関ならびにドナーは、緊急事態下にある地域およびその周辺地域における教育の状況を考慮し、かつ、必要なときは、社会的緊張を防止する目的で、地元住民に対してもこの点に関わる援助を提供するよう促される。 III.緊急事態下において権利としての良質な教育を確保する義務:内容(第29条) 42.委員会は、社会的結束を高め、かつ紛争解決および平和構築を支える良質な教育の重要性を強調する。良質な教育はまた、国の脆弱性を緩和し得るとともに、社会の社会的、経済的および政治的安定を達成する役にも立ち得るものである。良質な教育は、誘拐、軍隊および(または)武装集団への子どもの徴募ならびに性的暴力およびジェンダーに基づく暴力を含む搾取および危害からの保護を提供することにより、生命を救うことにつながり得る。良質な教育はまた、衛生、地雷被害回避およびHIV/AIDS予防等の問題についての救命につながる情報を普及することにより、緊急事態を生き延びる知識およびスキルを提供することにもなる。 43.委員会は、一般的意見第1号で、条約に掲げられた教育の質、内容および価値観は平和な地域で生活している子どもにも関連するものの、「紛争または緊急事態の状況下で生活している子どもにとってはさらにいっそう重要となる」と述べていることを想起する。委員会は、教育の質については条約第29条1項が指針とされるべきであり、かつ、保護および救命の措置としての役割が果たされるようにするため、緊急事態下における教育に関して合意されたINEE最低基準が満たされなければならないことを強調するものである。 44.緊急事態下においては、良質な教育は子どもの具体的生活状況を反映するとともに、子ども中心であり、権利を基盤とし、保護の機能を果たし、適合させやすく、インクルーシブであり、かつ参加型のものであるべきである。 45.教育が憎悪を煽動してはならない。教育は、他者の権利の尊重および寛容を植えつけるものでなければならず、かつ、いかなる政治的または宗教的集団による偏見および一方的教化からも子どもを保護するものでなければならない。教育は、子どもの心理的または精神的状態に対応し、かつ、子どもが緊急事態、危険、脅威または操作的取り扱いに対処するのを援助しなければならない。教育は、子どもの文化、言語および伝統に対して敏感であるべきである。 46.学校から脱落した子どもたちのためのノンフォーマルまたはインフォーマルな教育(地域コミュニティの参加を通じて行なわれるものも含む)が支援および奨励されなければならない。委員会は、このような教育を、すでに公式の教育制度で学んでいない子どもたちの再編入を奨励する目的で、子どもたちのニーズに適合させるよう勧告する。 47.委員会は、子どもたちが良質な教育を受けることを確保するうえで教員が決定的に重要であることを想起する。最低基準を満たすため、教員は適切な訓練および監視の対象とされ、かつ必要な物資、支援および監督を受けなければならない。これとの関連で、教員が適切な報酬を受け取れるようにするための戦略がきわめて重要であり、担当公的機関が教員の雇用の効果的調整および監視を行なえない状況においてはこのことがとりわけ当てはまる。教員研修は、教員のスキルを向上させるとともに、緊急事態の最中に子どもたちを学校に留め、かつさらなるトラウマから保護する役割についての自信を備えさせる目的で、継続的プロセスとして実施されるべきである。 IV.子ども参加 48.委員会は、締約国その他の国際的パートナーが子ども参加を支援することによって、子どもたちが、自分たちが何を学ぶか(内容)およびどのように学ぶか(権利を基盤とした、子ども中心の積極的学習)に関して意見を表明できるようにし、かつ実際的意味を有する教育内容および積極的学習プロセスによってエンパワーされるようにすることを勧告する。委員会はさらに、子どもが学校から脱落しないようにするため、意見を聴かれる機会を子どもに与えるように勧告するものである。委員会は、よい学校とは子どもが敬意、活動、協力ならびに仲間、教員および親との関係を獲得できる学校であるという、ある子どもが表明した意見に賛同する。 49.委員会はさらに、子どもたちが、その親とともに、自分たちの状況および将来展望の分析への参加を奨励され、かつ参加できるようにされるべきことを勧告する。 50.委員会は、親と教員の組織、コミュニティ教育委員会およびこれに類するコミュニティの取り組みの創設および積極的関与を奨励する。 V.国際的援助および資金提供 51.締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関は、教育を救援措置のひとつに採用し、かつそれを基礎救援援助の主要分野のひとつとして優先的に位置づけることによって、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するよう求められる。委員会は、すべての人道救援対応に当初から教育を含めることの決定的重要性をあらためて指摘するものである。 52.委員会は、締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関に対し、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するため、人道救援対応のあらゆる段階でINEE最低基準が適用されることを確保するよう、あらためて促す。委員会はまた、〔人道支援に関する〕常設委員会に対する支援の重要性もあらためて指摘するものである。 53.委員会は、緊急事態下における子どもの教育への権利を全面的に実現するためには十分な人的資源および財源(国際協力によるものも含む)を配分することが重要であることを強調する。したがって委員会は、締約国、国連機関、ドナーおよび救援機関に対し、十分かつ継続的な資金を提供するとともに、緊急事態下における子どもの教育への権利を確保するための資金の獲得および適切な配分に関して国を援助するよう求めるものである。 VI.モニタリング 54.国レベル:すべての締約国は、この文書で概観した自国のコミットメントの実施を継続的にモニターするべきである。国際的レベル:国は、条約第44条の定めにしたがって条約の実施に関する報告を委員会に行なう際、これらの勧告の実施に向けて達成された進展も含めるべきである。 55.委員会はまた、締約国および国際的パートナーに対し、準備体制の向上を達成し、かつ緊急事態下における子どもの教育への権利の侵害の再発を回避する目的で、緊急事態が子どもの教育への権利に与える悪影響を最小限に留めることに関して得られた教訓を享有および普及するようにも奨励する。 56.委員会は、関連する場合には、条約および選択議定書の実施に関する締約国報告書に、INEE最低基準の実施に関する情報を含めることを勧告することも考慮する。 更新履歴:ページ作成(2011年4月24日)。
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ホールボディ検査・計画と結果報告 半数の子どもからセシウム 南相馬市「ごく微量」 2011/10/28 19 33 【共同通信】 http //www.47news.jp/CN/201110/CN2011102801000844.html 福島県南相馬市は28日、東京電力福島第1原発事故を受け、市内の小中学生527人に最新のホールボディーカウンターを使って内部被ばく検査を実施、半数以上から微量の放射性セシウムを検出したと発表した。最大でも体重1キロ当たり35ベクレル未満で、市は「緊急に治療が必要な子どもはいない」としている。 検査は、従来に比べてより微量の放射性物質を検出できる最新の機器を使用。9月26日~今月11日に市立総合病院で小中学生527人を検査、268人の体内からセシウム137を検出した。 ホールボディ検査・計画と結果報告
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狼の子どもたち(おおかみの-)は粕谷紀子の漫画作品。月刊tiara1988年7-12月号連載。 登場人物 正林 薔子(しょうりん しょうこ) - 中学時代、陸上の短距離のタイトルを持つ。 城之内 潤(じょうのうち じゅん)- 薔子を温かく見守っている。父は弁護士。 南風 真由(みなみかぜ まゆ) - 病弱な少女。 九鬼 亮太(くき りょうた)- 保護者のように、常に真由に付き添っている。 あらすじ 第一話 薔子は朝のランニングが日課。ときどき見かけるランナーが気になっていた。 学校では、彼女が負けたらデートするという条件で男子学生たちとかけっこをしており、進学校である光栄高校の中でも、やや浮いた存在。城之内潤があきれつつも、優しく彼女を見守っている。だが、彼女の理想は高く、毎朝見かける、名も知らぬランナーのように情熱的で、自分を追い越せるような男でなくてはいけないと思っていた。 薔子は中学時代に名を馳せたランナーだったが、光栄高校が高体連に加盟していないため夏の高校陸上競技会に出場できないことを、教師から知らされる。そこで彼女は、高体連に加盟するために陸上部を結成することを決意。部として承認されるためには、最低4人の部員が必要だが、進学校故ドライな学生たちは誰一人として興味を示さない。そこへ城之内が現れ、薔子のためなら一年くらい浪人しても良いと入部してくれることに。 「わ……わたしのためにとかさ……そういういいかたって、ずるいのよね」 城之内はあくまで一種のボランティアで、薔子が出場しないと高校陸上界が損失を被ること、薔子の毎朝の練習が無駄になることを理由に挙げた。薔子は朝練を知っていることに驚くが、城之内は偶然朝の散歩のときに見かけたのだという。…ということで、多くの学生が遠巻きに見る中、二人は練習を始めるが、城之内はハードな練習についていけず、デモとしては失敗に。薔子も城之内が自分のために無理をしていることを感じ、帰り際そっと唇を寄せる。 城之内は、彼女を初めて見た朝のことを思い出す。誰もいない公園で、風とたわむれる自由な生き物……。城之内はその時から薔子に恋いこがれつつも、同時にそれを彼女には言わないと思う。しばろうとすれば、自由な小鳥は逃げてしまうから、と。 光栄高校の学生が活発でないのは、部活動に限ったことではなく、体育の授業も見学者が続出する有様。薔子が激しく投げたボールを、男子はとることが出来ず、ボールは見学者の方へ。サボっていると思った薔子は、ボールの近くにいるクラスメートの女子に、ややきつい言い方でボールを取ってくれるよう頼む。しかし、その途端、少女は動悸が激しくなり、ついに気絶してしまう。薔子はきつい言い方をしたことを後悔しつつ、保健室に行き、その少女・南風真由に謝罪する。真由は、自分は病弱だからよくあることと薔子を許すどころか、生き生きとした薔子に憧れていたから話すチャンスが出来て嬉しいと話す。養護教諭から、真由の荷物を持ってくるよう頼まれた薔子と城之内は保健室から退出するが、薔子はその時すれ違った真由のボーイフレンドが、あのランナーだと気が付く。城之内に聞くと、彼は同じ1年生の九鬼亮太だという。 薔子は保健室へ戻り、真由の荷物を手渡す際、亮太に公園でのことを聞くが、彼は陸上もやったことは無く、公園にも行ったことが無いという。薔子は彼を試そうと、亮太の持っていた真由の荷物を奪い走り去る。いつもなら、男子を軽く振り切れる薔子だが、亮太は差を縮めるところかついに追いつく。薔子を乱暴に壁に押し付け、こういう試され方は気にくわない!と激怒、真由と二人で下校していく。だが薔子はあのランナーに出会えたことが嬉しく、その場で涙を流す。 第二話 城之内に調べてもらったところ、亮太は中1のときにジュニア陸上の短距離で優勝していることが判明。中2・3では、不自然なことに出場を取り消していた。薔子は、なぜ彼がすばらしい才能を持ちながら、陸上をやっていたことを隠すのか、好奇心を強める。 一方、真由は亮太が陸上を続けていたことを嬉しく思う。 「わかってよ、亮太をしばりたくないの。あの事故はあなたの責任じゃないのよ」 「おれが、責任感で真由とつきあってると思うのか?」 「思いたくない…でも…本当はいつも不安なの」 真由は亮太には例えば薔子のようなひとがふさわしいのではと言うが、亮太は真由の不安を取り除くように、口づける。だが、再び真由は発作を起こしてしまう。真由は亮太に、ただ並んで歩くことしか出来ない自分でいいのか訪ねる。亮太はそれでよいと励まし、彼女に合わせしばらくその場で休憩することにした。だが、真由はやりきれず、子どもの頃からの病気なのに、切なさを感じていた。 休み時間、教室移動の際に亮太を見つけた薔子は、彼に先日の件を謝罪しつつ、また陸上をやらないかと誘う。亮太はそっけなく無視しようとするが、薔子はそれを追い、周囲から冷やかされる。そこで大胆にも彼に抱きついて見せるが、おしゃべりで図々しい女は嫌いだと言われる。城之内は、彼女にあきらめるよう諭すが、薔子は亮太が本当は走りたがっていると確信していた。授業に遅刻しそうになった二人は、慌てて次の教室へ走るが、一連の様子を真由は静かに見つめていた。 錦花山への登山遠足の日、薔子は真由が遅れたことに気づき、城之内と列を離れ、真由のもとへ駆け寄る。教師と相談の末、薔子は真由を介抱しつつ下山してバスへ戻ることに。薔子は城之内に亮太への連絡を頼んだ。小川のほとりで、少女二人で休憩しつつ、様々なことを話す。亮太との約束を破ってまで、真由は自分を試そうと登山に挑み、そして具合が悪くなったのだった。きっといつか登れるようになりたいと言う真由を、薔子もきっとそのうち上れるようになると励ますが、真由はその言葉の重みを感じていた。やがて亮太が迎えに来て、やはり怒るが、薔子が自分が連れて来たと真由をかばう。亮太は真由を抱き上げバスへ連れ帰り、薔子を追い払おうとするが、荷物と靴があるので結局三人で帰ることに。 真由の家まで、薔子と亮太は付き添うが、真由の父・浩介は亮太が来たことに不快感をあらわにし、きみの顔は二度と見たくないと突き放す。薔子は真由の父に抗議するが、亮太がそれを止め、真由とふたりだけの視線をかわす。帰り際、薔子は親の了解を得ていなかったことが意外で、彼らの事情を質問するが、きみには関係ないと亮太はやはり答えない。亮太は、昼の態度について謝罪し去っていった。 薔子は、真由と亮太の間に自分が入り込めない世界があるのに嫉妬から、真由が病弱な振りをしているのではないかとさえ思う。そんなある日、正林家の営むスーパーに亮太が訪ねてくる。薔子は驚きながらも、二人でいられることに満足していたが、彼が薔子を訪ねて来た理由が、欠席している真由の様子を見て来て欲しいからだだと知り、内心残念に思いつつ、いじわるそうに亮太が陸上部に入ることが条件だと突き放す。 薔子は、自分が彼らに嫉妬していることを認めつつ、亮太を恋することを止められない。 「真由に遠慮なんかしない。わたしは真由の存在を知る前に、あの人に恋していたんだもの」 決意を胸に、薔子は花束を買い、真由の家に見舞いへ向かう。 第三話 薔子が見舞いに来たことと花束を、真由は素直に喜び、薔子は複雑な気持ちに。真由は元気そうだが、父が精密検査を受けさせていたのだという。くつろぎながら、真由は薔子に事情を話しだす。 まず、真由の両親は再婚しており、夏に赤ちゃんが産まれるのだという。そして、前妻である真由の母・多喜子は、雨の日に真由を連れ車で病院へ赴く途中、ランニング中の少年・亮太を避けようと交通事故を起こして死亡。父は葬儀の場で、亮太を怒鳴りつけていた。 次に、真由の病気は「ジェラズニィ症候群」という難病(注:架空の病名)で、激しい運動・精神的ショックで動悸が起こって息苦しくなり、最悪の場合気絶してしまうのだと言う。いつ発作が起こるか分からないため、ずっと母が付き添っていた。しかし母の死後、家から出られなくなり、代わりに看護婦が付き添ってもめまいを起こし、父はカタログ通販やVTRで何とかなると悲しそうに笑い飛ばす。真由も父を悲しませたくないと、自分一人で登校を試みるが、駅の大階段の途中でしゃがみこみ、倒れかけるが、それを助けたのが亮太だった。 自分なんてどうだっていい、ママの代わりに自分が死ねば良かったと取り乱す真由を、亮太はきみが強く生きることこそお母さんの願いじゃなかったのかと励ます。真由は母との会話を思い出し、きっと亮太のように言ったに違いないと考える。そう考えた途端、心が軽くなり動悸が嘘のように静まった。 「その日から、亮太は母の代わりになったの」 全ての事情を理解した薔子はため息をつく。ふと、写真立てに飾られた真由と亮太の写真が目に入る。未公認のカップルだからデートをしたことが無く、二人の写真はそれ一枚しか無いという。真由は薔子からデートの話を聞く 「いいわね、風の中を走りまわれたら!きっとすてきでしょうね」 薔子は心の中で、 「九鬼くんはわたしとならそれができるのよ、思いきり」 と思うが、そのとき、真由がきっぱりと言う。 「薔子さん、亮太をとらないで!」 薔子は慌てて否定し、真由も謝罪するが、生き生きとしている人を見ると不安になるという。自分が亮太をしばっているのではないか、不安でたまらなくなるが、同時に彼を失ったら生きていけない、と。 薔子は笑い、真由が心配だから見に来てくれと頼まれた時の彼の必死な様子を話す。 「……そう?」 帰宅する薔子を見送りながら、真由は自分の卑怯さに震えていた。学校で、亮太の視線の先にいた生き生きとした薔子の姿に、二人が出会わないよう気をつけていた。走る喜びを共有する二人が惹かれ合うことは当然で、いつか病弱な自分と亮太は別れる日が来るし、彼を愛するなら彼を自由にすべきだと分かっているのに、今の真由はそれに耐えられそうも無く、動悸が激しくなり玄関先でしゃがみこんでしまう…。 薔子はドーナツ屋に亮太を呼び、真由の様子を話す。頼まれたから行ったのではないと、交換条件を無効にすることを告げる。 「4人集まらず、陸上部が成立しなかったら?」 「競技会にエントリーしない、それだけのことよ」 そう言って、二人は別れた。 「走りたい、九鬼くんと走りたい、すべてをぶつけあって」 だが、真由にストレートに頼まれた以上、その望みを叶えることは出来ない。薔子はこれまで、ボーイフレンドも友人も、競技会のトロフィー・高校受験に至るまで、望む物で手に入らない物は何も無かった。だが、彼女の望みが断たれた以上、それが何の役に立つのだろう。薔子は夜道でひとり涙を流す…。 第四話 夏休みは続く。 薔子は城之内を誘ってプールへ。賑やかな流れるプール・スライダーではなく、ガラガラの競技用プールへ。彼女は2kmもひたすら泳ぎ続けた。城之内は日光浴専門。帰り道、目標を失うと人間はだらけるものね、と薔子は城之内に話しかける。宇治金時をおごってもらいながら、競技に没頭していない夏は初めて、と話すと、城之内は陸上の競技人生は長いのだから人並みの夏もいいじゃないかと応じる。そして、秋には部員をかき集めて陸上部を成立させようと励ます。 帰宅後、薔子はかつてのライバル・藤ケ岡が高校新記録を出したことをニュースで知る。両親は薔子が落ち込んでいないか不安がるが、彼女は明るい笑顔で、公園へランニングに出かける。城之内の励ましを思い出しながら彼に感謝し、自分は走ることそのものが好きなのだと、さわやかな気持ちでいっぱいだった。 するとそこへ亮太が現れる。真由から事情を知った今、亮太は薔子に一緒に走ろうと誘う。二人は次々と目標を決めながら走っていく。本気で走りながら、心を一つにした二人は楽しいひとときを過ごす。やがて休憩し、亮太はふと薔子の乱れた髪に手を伸ばす。薔子を身を強ばらせ、遅いから帰る、と別れる。彼女はむろん真由の願いを思い出していた。しかし、たとえ真由と亮太が愛し合っていても、二人で心を一つにして走った世界は、真由には奪えないと考える。 一方、亮太も二人で走ったことを快く感じていた。やがて真由に毎晩恒例の電話を掛けるが、その時ひとりで走っていたと嘘をつき、そのことに悩む。 二学期となり、再び陸上部の募集をかける。気持ちが楽になった薔子は、以前と違い楽しむことを目的に生徒たちを説得し、今度は興味を示す者も出て来て順調そうだった。 真由には、弟が産まれていた。必然的に子どもの話になり、薔子は真由にはもう恋人がいるんだからと言ったところ、真由はたぶん赤ちゃんも産めないし結婚も出来ないだろうと遠くを見ながらつぶやく。掃除中だったため、やがて薔子は窓の桟によじ上って高いところを拭こうとするが、見事に落ちてしまう。しかし、真由を手伝うために来た亮太がちょうど彼女を抱きとめる。すぐさま二人は口論となるが、以前と違う雰囲気に真由は気づいてしまう。亮太との帰り道、何気ない会話から、真由は亮太が壊れやすい人形のようにしか扱わないことを痛感してしまう。 雨の夜、薔子は真由の「結婚できない」という言葉が気になり、寝付けずにいた。そこへ亮太から電話があり、公園へ向かう。真由の具合が悪いのか尋ねる薔子に、亮太は真由のことでなければ呼び出しては行けないか、と逆に聞く。薔子は亮太に背を向け、用もないのに呼び出されたら困ると言い返す。 亮太は薔子のお転婆な様子を挙げ、真由との違いを強調する。だが、真由は力を入れれば壊れてしまうが薔子は対等だ、と。そして、またいつかの晩のように二人で走りたいと告げる。……薔子は、ちょっと親しくすると男の子が誤解する、わたしには好きなひとがいる、と亮太の好意を拒む。 「真由!だめじゃない!彼の心をしっかりつなぎとめておかなくちゃ!」 第五話 薔子は真由の家を訪れ、二人で真由の弟・慎也(しんや)を可愛がっていた。両親はすっかり弟に夢中で自分のことを忘れたようだと、そう話す真由を薔子は心配そうに見るが、亮太と自由に会えるのでかえってホッとしているのだと言う。薔子は、このチャンスにいっぱいデートしてお父さんに認めさせればいいと勧めるが、真由はこのごろ亮太の様子がおかしいと相談する。 帰り道 「真由のために、うそをついてまで九鬼くんを拒んだのよ!真由さえいなかったら……」 そう思いながら、薔子は自己嫌悪する。 学校では、亮太に自分を拒む何かがある、と真由は感じていた。そして、つい卑屈になる自分に情けなさも感じていた。その頃、校庭では薔子が100mのタイムを計ろうとしていた、目標は11秒76、ライバルの藤ケ岡が先日出したタイムだ。校舎の壁までギリギリ3mとしかない直線コース。 「わたしのほうが速く走れる!」 その想いを胸に薔子は疾走する。しかし彼女は止まりきれず…… 気が付くと、保健室のベッドの上だった。城之内と養護教諭が心配そうにみつめる。彼女は壁ではなく、間に入った亮太に激突したらしい。城之内はじめ、素人だから誰もが薔子が止まれると思っていた。激突して騒ぎになったが、亮太は平然と彼女のタイムを質問したという。その話を聞いて、薔子も思い出したようにタイムを尋ねる。 「きみたちはそっくりだね、正林も九鬼も、速く走ることしか頭にないみたいだね」 タイムは11秒6だった。シューズをはじめ条件の劣るなか、これなら藤ケ岡に勝てる!と薔子を自信を強めた。 一方、亮太と真由は、また、亮太が真由よりも先に歩いてしまった。息を切らしながら追いつく真由に気づき謝るが、真由はこのごろ亮太がおかしいと指摘する。ごまかそうとするが、真由はいつになく強い口調で問いただす。薔子さんね、という指摘は的中し亮太はうつむく。 「…少し時間をくれないか」 「わかったわ、もうむかえにこなくていい、帰りも家まで送らなくていい、わたしだいじょうぶだから」 真由は精一杯平静を保とうとしたが、別れた途端、道に倒れ込んでしまう。亮太は愛しているのは真由だけだ、さっきのことは忘れてくれ、と真由を抱きしめるが、真由は自分の心と身体の情けなさを感じていた。 「 そのとき を先へのばしただけなのに、必ずくる亮太との別れのときを」 休み時間、薔子と真由はゲーム(オセロ?)をして過ごしていた。そこへ亮太がやってくる。真由はわざと亮太を呼び寄せようとするが、彼は外で待つという。真由はゲームを中断して立ち上がり、薔子は真由さえいなければと思いつつそう考えてはいけないと強く念じる。 「薔子さん、みにくい顔してるわよ。でも、わたしのほうがもっとみにくい顔だわ」 城之内が、なんと美しき女の友情、と薔子を冷やかす。しかし彼は冷やかしに来たのではなく、亮太と会うべきだと勧めに来たのだった。自分が今度の模試をキャンセルして九鬼と秋川渓谷(注:東京郊外)へ釣りに行くことにするから、秋川でなく渋谷へ、城之内とではなく薔子と、そう変更になってもいいじゃないかと。薔子は彼のおせっかいぶりに苦笑しつつも、それを受け入れることにした。 「気持ちをいつわると一生後悔する」 城之内の言葉が響き、亮太を取るのではなく、一度会って自分の気持ちを伝えるために会うことを決意する。そして、亮太も、次の日曜に城之内と釣りに行くと真由に嘘をついた。 …数日後、同じクラスだから落とし物のスケジュール帳を渡すよう頼まれた真由は、城之内の名前を確認する。そして、次の日曜、城之内が模試を受けることを知る。スケジュール帳を手渡しながら、城之内に亮太が本当は誰と会うのか問う。もしはキャンセルしたととぼける城之内に対し、ならば亮太に聞くから、と言うが、逆に自分が惨めになるだけだと諭される。城之内は亮太と薔子が会うことを教える。真由は嘘をつかれたことに怒りと悲しみを感じるが、嘘をついたのもまた彼の気持ちだと城之内は言う。 「わたしはがそうさせたというの!」 城之内は、会うのを止めようとする真由を思いとどまらせようとする。 「なぜ?あなただって正林さんがすきなんでしょ。なぜふたりをそうまでして会わせようとするの」 「正林にひとを憎むようになってほしくない」 彼女はまっすぐで、競争意識はあってもひとを憎んだことはないはずだ、だから自分は正林が好きだ、そう語る城之内を真由は驚きの目で見つめる。城之内の愛情の大きさに衝撃を受けた真由は、帰宅しても亮太もわたしを憎むことになるならみな不幸になるが、でも亮太を失うのが怖いと感じ、また震えが始まった。水を飲みに階下へおりると、弟が両親に可愛がられている姿がドア越しに見えた。父は、病弱な真由に対しては心配が先に経って可愛いとしみじみ感じる暇もなかったと回想する。 ショックを受けた真由は、自室へ駆け戻り、自分のせいでみなが不幸になると、苦しみ、自分はどうすればいいのか思い悩みソファに崩れ落ちる。 薔子と真由は表面上いつもと変わらずに過ごしていた。 「ごめんね真由、いちどだけ九鬼くんに会わせてね」 「やさしくてうそをつくのがへたな、すてきな薔子さん。あなたが好きよ、憎まれたらつらいわ」 そして、亮太に対しても真由は知らないふりをとおしていた。 「やさしい大好きな亮太。あなたを苦しめたくないわ」 …そして、日曜日、待ち合わせの場所になかなか亮太は来ない。薔子は心配するが、やがて彼が現れる。しかし同時に、真由が昨夜から行方不明になったことを知る。そして、二人とも、今日隠れて会うことを真由に教えていないことを確認すると、唯一今日の事情知っていた城之内に電話をして呼び出す。 城之内が、二人が会うことを教えていた。いずれわかるなら隠さない方が良いという判断だったが、真由がそこまで追いつめられていたとは城之内も予想外だった。 「真由、まさかばかなことしないわよね!?もしなにかあったら、わたし自分を一生許せないわ」 第六話 三人は心当たりを全て探した。 薔子は内心いらだっていた。彼を失ったら生きていけない、普通本気のはずはあり得ないし、たった一度会うだけなのにあてつけがましく家出をするなんて… 落ち込む亮太に対して、笑いながら大騒ぎをすることはない、きっと友達のところに泊まったはずだと言う。 「真由の友人は”きみとおれ”だけだよ、正林」 亮太に冷たい目で言われてもなお、それでも深夜喫茶なりコンビニなり行く場所があるはずだ、と主張するが、あざ笑うように真由と正林は違うと言われ、薔子は亮太を平手打ちにし、城之内が間に入って止める。亮太は、ひとり歩きが生命に関わる真由が不安でならず、三人で真由の家へ行くことにする。 家にもやはり連絡はなく、やや乱暴な口調で真由をとがめる父に対し、後妻は真由ちゃんはいつも明るく振る舞っていたけれどさびしさを心の中に隠していた気がする、と言う。 薔子は、亮太が自分を好きになったことを後悔しているのを見て、真由の思い通りになったと悔しさでいっぱいになる。城之内と二人での帰り道、真由が卑怯だという一方、自分が失った者のことしか考えられない利己主義者(エゴイスト)であることがいやでたまらず城之内に泣きつく。 「ふたりきりの友だちが、ふたりして真由にうそをついて、だから真由は…真由は… わかってるわ、真由が姿を消したのがわたしの責任だということを認めたくないから真由の身勝手さを起こってみせた。 もし真由の身に何かあったらわたしは…」 亮太に電話を掛けても、まだ戻って来ていないという。亮太が死ぬほど心配している、以前にもこんなことが…薔子は錦花山とそのときの真由の言葉を思い出す。そして、真由の義母に聞くと、おそらくスラックスにスニーカーで出かけたらしい。薔子は亮太と城之内を誘い、学校をサボって錦花山へ行くことを決意。 真由は、あの小川のほとりで横たわっていた。亮太に半身を支えられ、ゆっくりと目覚める。帰ろうという亮太たちに対し、頂上につくまでは帰らないと主張。そんなことができるはずがないという亮太に、薔子は理由を聞くべきだと言う。 …真由は一昨日(土曜日)の夜思い立って、両親に反対されそうだからと家を抜け出す。民宿に泊まって、登山道に登ったが苦しくなって引き返し、そして今朝もやはり失敗し、小川のほとりで休んでいたのだった。 そうまでして何故、と尋ねる亮太に真由は答える。 「わたし…亮太のお荷物になりたくない」 「亮太がわたしと薔子さんのあいだで苦しんでいる。 わたしが病気でさえなければ。ふたりで会うために薔子さんと亮太がわたしにうそまでついたのも、わたしが病気だからよ。」 そして、真由は自分の病が心に左右されやすいことに気づき、病気に負けないと自分に証明したい、薔子と対等な立場になりたいと。そして、真由は薔子にいじわるしたことを謝罪し、薔子も真由にうそをついたことを謝罪し、固く抱きしめ合う。 亮太はずっと背を向けていたが、真由の気持ちを理解し、登頂に同意。4人での登山が始まった。しかし、真由はやはり途中でしゃがみ込んでしまう。ところが、城之内も一緒になってしゃがみ込み、亮太と薔子のスポーツマンには自分たち ふつうのひと のペースも理解して欲しいと言う。薔子はとことん付き合うから、と真由にも視線を送る。真由は二人の優しさに心から感謝する。 苦しみながら、必死に登る真由を見て、薔子は真由を疑った自分の心の狭さを恥じ、こんなすてきな真由になら負けてもいいと感じる。 …ついに、山頂に到着する。固く抱きしめある亮太と真由。やがて、亮太は薔子に歩み寄り礼を言い、薔子もまたその意味に気が付き、二人は固い握手を交わす。薔子は涙を流して、真由を祝福した。そして亮太は真由をおぶって下山する。 真由は、自分はもう平気だから薔子さんがすきなら彼女のところへ行ってね、と伝えるが、亮太はさっきさよならを言った、真由がこの世でいちばん大切だと。真由は嬉しさで涙ぐむ。そして亮太は、陸上を再開することも伝えた。 「すてき!亮太がそう言ってくれるのを待っていたの」 一方、薔子はぽろぽろと涙をこぼしながら、生まれて初めてふられた!と城之内に言い、励ましの言葉を求める。城之内は彼女の長所を次々と挙げていく。 「いつも全速力で走ってるから、つきあうほうも大変さ」 「それでもつきあって走ってるんだから、城之内もこりないね」 二人の下山は、まだ始まったばかりである。 (終わり)
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浪江町の子ども、生涯3ミリシーベルト未満も 内部被曝調査で 浪江町の子ども、生涯3ミリシーベルト未満も 内部被曝調査で 2011/9/12 23 28 東京電力福島第1原子力発電所事故で福島県の健康管理調査を先行的に受けた住民3373人のうち、内部被曝(ひばく)線量が最も高かったのは同県浪江町の子ども2人で、生涯3ミリシーベルト未満と推計されることが分かった。県が12日に公表。「全員健康に影響が及ぶ数値ではない」としている。 先行調査は浪江町をはじめ、川俣町、飯舘村など11市町村の住民が対象で、4~9歳は1149人、10代は1433人、20歳以上は791人。そのうち内部被曝線量が最大だったのは浪江町の男児(7)と女児(5)で、2ミリシーベルト以上3ミリシーベルト未満だった。1ミリシーベルト以上2ミリシーベルト未満は同町の5~7歳の男女5人。残る全員は1ミリシーベルト未満だった。 内部被曝は食事や呼吸などで放射性物質を体内に取り込むことによって受ける。県は、8月から約200万人の全県民を対象とした健康管理調査を本格化させたが、原発事故による被曝のリスクが高い地域を対象に先行的に内部被曝検査を実施した。 11市町村の住民は6月27日~8月31日にかけて、千葉市の放射線医学総合研究所や茨城県東海村の日本原子力研究開発機構にあるホールボディーカウンターと呼ばれる装置で受診。成人の場合は今後50年間、子どもは70歳になるまでの累積の内部被曝線量を推計した。〔共同〕
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福山雅〇治の子どもが実況プレイ タグ一覧 その他 企画 単発 完結 鈴木けんぞう おんぎゃあ、おんぎゃあ、ばぶー。 目次 概要 概要 生放送配信日 - 動画公開日 2016/11/12 作品数 1 動画リンク https //www.youtube.com/watch?v=IQVXazsi0z8 福山雅治と結婚をした吹石一恵の妊娠を祝して作成されたと思われる実況動画。(動画概要欄より) 福山雅治の子どもの声真似をしながらスーパーマリオブラザーズをプレイするという内容。 "子ども"としているため話す言葉は「おんぎゃあ」、「ばぶー」、「はーい」等であるが、声は福山雅治の真似である。 福山雅治の声真似の鉄板である「あんちゃん」も披露している。 BGMとして自分で歌った「家族になろうよ」を流している。 何に対してか明言していないが、動画の最後に「すみませんでした」と謝罪している。 コメント すべてのコメントを見る