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マクロスなのは 第14話『決戦の果てに・・・・・・』←この前の話 『マクロスなのは』第15話「魔導士とバルキリー」 後方のはやては爆撃のチャージに入っていた。 「『ホークアイ』、敵の正確な座標を送ってください!」 『了解。二佐の火器管制デバイス(はやての場合はリィンフォースⅡ)へ座標を送信します。1発でかいのを頼みますよ!』 「了解や。任しとき!」 「・・・・・・来ました!未来位置予測開始・・・・・・着弾位置、高度1万メートル。座標、0120-333-906。30秒以内に爆撃してください!」 リインフォースⅡが報告する。 (なんだか聞いたことある番号やな・・・・・・) 一瞬思考を巡らせたはやてだが、今はそんな時ではない。先ほどと同様、合計6つの魔法陣を展開。時間がないため負担が大きいが予備チャージ と詠唱を破棄する。 「フレース、ヴェルグ!」 すると魔法陣より再び白い光の奔流が発射される。しかし予備チャージしなかったので同時にデバイスの魔力コンデンサがオーバーフローして セーフモードに突入した。 バリアジャケットを除く全ての魔法が消失し、融合するリィンの飛行魔法で何とか高度を保つ。 そして詠唱破棄したときの全身に来るピリピリとした痺れにも似た痛みに耐えながらAWACS経由のJTIDS(統合戦術情報分配システム)の戦術俯瞰図を流し見る。 そこではバルキリー隊と魔導士各隊が指示通りの位置に防衛ラインを構築している様子が伺えた。 範囲攻撃に特化した自分はこれから起こるであろうガジェットとの戦闘への参加は、この一撃が最初で最後となる。 確かに全く関与しないわけではないが、それは指揮任務であって実際に目視して戦う彼らとは次元が違う。 彼女は心の中で『みんな頑張ってや!』とエールを送ると、意識を誘導に集束させた。 (*) ゴーストは高空へ。ガジェットは低空にそれぞれ分かれたため、集合したフロンティア基地航空隊は高空にて迎撃態勢に入っていた。 演習に参加した25機の内15機が演習で撃墜され、演習中止までフロンティア航空基地で整備していた。 そのため迎撃するフロンティア基地航空隊の戦力は残った9機(ライアン二尉は現在急行中)と、付近に警戒配備されていた2期生操るVF-1A部隊25機の合計34機。 50を超えるゴーストを相手にするには少し心許ないが、これでも現状出来うる限りの全戦力だった。 しかしそれでも隊の士気は高い。なぜならMMリアクターは一定時間無負荷で休ませたため満タンになっているし、弾薬もVF-1A部隊の持ってきた実弾を補給、換装していた。 そして何よりスペック上ではなく、本当に高ランク魔導士部隊と対等以上に渡り合える事が証明された事が大きかった。 彼らの横を白い光の奔流が通りすぎていく。はやての魔力爆撃だ。 それは遥か前方で炸裂すると、敵をその圧倒的な魔力衝撃波で破砕していった。 この凄まじさに隊の者は一様に息を飲む。 『自分たちはあんなものに狙われていたのか・・・・・・』 と。 幾つかの編隊に分かれていたゴーストだが、その衝撃波に触れた瞬間粉微塵になる。 あのゴーストはどうやらリニアレール攻防戦の時の自律AIでも、最新ゴーストの純正AIである『ユダ・システム』も搭載していないようだ。おそらくガジェットの物を流用して一本化しているのだろう。 狡猾な彼らは本来なら退避する所だが、愚直なまでに直進。その半数ほどが撃破された。 『すげぇ・・・・・・』 2期生の1人が呟く。 VF-25のセンサーによると、それは5発でキロトン級の対空反応弾2発に匹敵する空間制圧力を示していた。 だがアルトはいつの間にかディスプレイから目を離し、その〝花火〟に見とれていた。それは破壊の光だが、反応弾と違ってただひたすら美しい光景だった。 『こちら『ホークアイ』。今の爆撃によりガジェットは4分の1、ゴーストは3分の1が撃破された。今後爆撃の支援はない。各隊市民の安全を確保し、敵を撃退せよ!』 『『了解!』』 ホークアイの指令にこの空を駆け、戦う者達の声が唱和した。 同時にゴーストから中距離ミサイルが雨あられと発射される。その数、250以上。 『迎撃ミサイル発射!』 間髪入れぬミシェルの掛け声に各機から6発ずつ、合計で204発の中HMMが発射され、ゴーストの発射したミサイルへと突入を敢行していった。 (*) 低空域 フロンティア基地航空隊と違って長距離誘導兵器のない魔導士部隊は、目視照準で己が魔力を込めた砲撃を運河のごとく攻め寄せるガジェットに送り込んでいた。 しかしまだどこからか送られているらしく、ガジェットは減らなかった。 また、演習で生き残り空中に残った魔導士は約80名。撃墜組は遠い所に集められて来るのに時間がかかる。それに来た所で民間人の退避と、新たに出現した陸戦型ガジェット(Ⅰ型及びⅢ型)の対応に追われるだろう。空への増援は望みようがなかった。 防衛ライン上ではひっきりなしに魔力砲撃と無線が飛び交う。 『こちら第1小隊、あれから2人やられた!八神隊長、早く増援を!』 『被害が大きい第1小隊は第2小隊と交代。第3小隊は交代を援護しつつ─────』 『こちら第14小隊、敵が多すぎる!高町空尉に援護砲撃を要請する!』 『こちら高町なのは。現在中央で手一杯なので支援砲撃はできません!〝宮原君〟、教導を思い出して、何とか持たせて!』 『り、了解しました!第1、第2分隊で左右に展開!全力で迎撃!なのはさんはオレらを覚えてるぞ!叱られたくなかったら体を盾にしてでも、奴らを決して後ろに通すな!』 『『了解!』』 『ワレ第10小隊第1分隊。孤立した!至急援護を!』 『こちら独立遊撃隊のフェイトです。第10小隊第1分隊、そこを動かないで!今行く』 現在魔導士部隊は14の小隊に再編成され、旧市街(廃棄都市)を守るため南北に小隊間を500メートル間隔にして並んでいる。 両側からこぼれるガジェット逹もいるが、このラインを放棄したら旧市街に現在の10倍以上の数のガジェットが雪崩れ込むことになる。おこぼれは地上派遣隊(撃墜された演習参加者)に任せるしかなかった。 また、初動が早かったため即座に防衛ラインを築けた魔導士部隊だが徐々に押されて来ていた。 そして遂にラインにほころびがでてきた。 『こ、こちら第12小隊、ガジェットにラインを突破された!突破された穴が塞げない!支援を!』 『こちら第11小隊。手が回らん。わかってくれ』 『こちら第13小隊。すまないがこちらも無理だ』 フォローするはずの左右の小隊も自分の持ち場だけで手一杯だった。そこに他から無線が入る。 『こちら特別機動隊空戦部隊だ。第12小隊、これより支援する』 演習中、ガジェットの出現に備えるために温存されていた地上部隊きっての対テロ特殊精鋭部隊『特別機動隊』が遂に到着したのだ。 彼らの到着に戦線の穴が塞がれる。しかしこの濃度のAMFの中では既にラインを突破した20機を超えるガジェットまでは手が回らない。 『誰かラインを抜けたガジェットを迎撃して!』 ホークアイとともに指揮を任されているはやてが無線の向こうから指示を飛ばす。しかし前線の誰もが手が離せない状況だった。 だが後方から飛来した紫と青白い2つの魔力砲撃がそのうち10機近くのガジェットを一瞬で葬った。 急行してきたのはシグナムとライアンのVF-11Sだった。 『『隊長!』』 機動隊の面々が歓喜の声をあげた。 (*) シグナムとライアン、そして特別機動隊空戦部隊の参入により徐々に戦線を盤石なものへと変えつつあった。 『ライアン、そっちは任せたぞ』 「了解。隊長こそ抜かれないで下さいよ」 ガウォークに可変したライアンのVF-11Sとシグナムの2人は左右に分かれて敵へと斬り込み、最も敵の集まる中央と少数の敵が展開する左右の3つに分断する。 そんな2人の分けた左右のエリアを制圧するは特別機動隊の魔導士達だ。 元々同じ部隊の一同は絶妙な連携で敵を排除していった。 そして中央は本隊の鶴翼陣形によるクロスファイア(十字砲火)によって撃破されていった。 (*) ライアンは愛機VF-11Sで担当のガジェット群を切り裂いていく。しかし撃ち漏らした1機がファイター形態のVF-11Sに特攻を仕掛けてきた。 ファイター形態ではエネルギーの大半を推進に使うため、アドバンスド・エネルギー転換装甲の出力が下がって耐久性はバトロイドの時の10分の1以下に低下する。 これは他で例えると20世紀末の重装甲車程であるが、例え人間大の物体であっても相対速度が音速を超えているだけで大破は免れない。 ガウォークに可変するも、もはや回避は間に合わないと見たライアンは反射で目を瞑ってしまう。しかし覚悟した衝撃はいつまでたっても来なかった。 目を開けるとキャノピーの外には懐かしい顔があった。 『よう、ライアン。危なかったなぁ』 彼がいつものお気楽調で言う。 彼─────ウィリアム・ハーディング三等空尉はライアンが特別機動隊に所属していた頃の同僚で、彼とライアンは同部隊で名の知れたコンビだった。 彼は転送魔法のエキスパートであり、同隊では幾多の戦闘を共に駆け抜けてきた。 どうやら、彼の転送魔法に救われたらしい。見るとさっきまで自分のいた位置にミッドチルダ式魔法陣が展開されていた。 「ああ、サンキュー。ウィル」 彼は手をヒラヒラさせると 『気にするなって』 とあしらった。 そんな彼の後ろにキラリと光る物を視認した。ガジェットだ。どうやらウィリアムを狙っているらしく、急接近してくる。 ライアンはスラストレバーを倒して即座にバトロイドへ可変すると、何が起きたか分からない友人を尻目に彼の背後のガジェットとの間に割って入った。 それと同時にガジェットのレーザーが放たれる。ライアンはそれをバトロイドの左腕に装備した防弾シールドで防ぐと、間合いを見て回し蹴りを放った。 空を切り裂き高速でやってきた巨大な足に蹴り飛ばされた哀れなガジェットは、急速に金属部品へと還元されていった。 「借りは返したぜ」 ライアンが外部フォールドスピーカーを通して伝えると、ウィリアムは 『相変わらず律儀な奴だな、お前は』 と笑った。 (*) その後再会したこのコンビは、後の手本となる画期的な戦法を編み出す。それはバルキリーと魔導士の連携だ。 魔導士はなのはやフェイトのようなハイクラスリンカーコア保有者以外は絶望的なまでに殺傷設定の攻撃や、連続する強力な物理衝撃を伴った攻撃に弱い。だがバルキリーの陸戦兵器並の耐久性には定評がある。 またバルキリーはレーダー等が補助するがファイター、ガウォーク形態の時は圧倒的に視界が悪い。しかし魔導士はなんと言っても生身なのでそんな制約はない。 こうして短所が相殺されると長所が生きてくる。 バルキリーでは操縦者はバルキリーと常にコネクトし、武装やその他に魔力を使ってしまう。そのためリンカーコアが最低Aクラスでなければまともな魔法は使えない。一方魔導士はバルキリーとは違い、各種魔法(高速移動魔法や転送魔法など)が豊富だ。 バルキリーも常時、クラスBのリンカーコアにしてクラスAA以上の砲撃力。撃ちっぱなしミサイルの大量使用による制圧力。そして高い耐久性に汎用性。 こんな長所を持つ両者が手を組むとどうなるか。彼らはその答えを示した。 (*) 雨のように降り注ぐレーザーの弾幕の中を突入していくVF-11S。その後ろにウィリアムが続く。 VF-11Sはウィリアムの最高速度である亜音速に合わせており、エンジン出力に余裕ができたため、余剰エネルギーはPPBSと火器に回されている。 そのため前部に展開したPPB(ピン・ポイント・バリア)の出力は4割向上し、この弾幕の中でも耐え抜く。また魔力砲撃の出力も2割ほど向上し、火力と防御力がパワーアップした。 ウィリアムとしても盾代わりがいて安心だ。 しかし通常この速度で飛ぶと、ガジェットはその数と機動力に物を言わせて多方向から攻撃してくる。 その場合加速して振り切るか可変して迎撃することが通常の対処法だ。 今回もガジェット数機がライアンの死角から攻撃しようと忍び寄る。 しかし彼らは後ろで警戒するウィリアムによって発見、迎撃が行われた。 彼はエンジンノズルの真後ろに居るため、青白く光る粒子状の推進排気に曝される。しかしこれは悪い訳ではない。ミッドチルダ製のバルキリーや今のVF-25は推進剤を完全魔力化している。 これは圧縮した魔力を噴射して反動を得るという効率の悪い推進方式だが、今回は好都合だ。魔導士から見れば圧縮した魔力をわざわざ(予備)チャージせずに受け取れるのだ。 仮にこれが莫大なチャージ時間を要するなのはのスターライトブレイカ-であっても魔力のフィードバックやデバイス冷却を無視すればカートリッジを使わず10秒毎。エクセリオン状態のディバインバスターであれば1秒毎で速射できる。となれば通常の魔力砲撃など理論上常時照射すら可能なのだ。 クラスAAのウィリアムの魔力砲撃は空冷の影響もあってまるで速射砲の如き驚異的連射速度で撃ち出され、敵を残らず叩き落とした。 ライアンは死角を心配せず、前方の敵にだけ集中すればいいためずいぶん気楽だ。 2人はそのまま分散していた敵を追い回して暴れ回る。そして敵が包囲作戦に移ったと見るや敵中真っ只中で即時転送魔法を行使。脱出した。 突然目標を見失ったガジェットは一瞬棒立ちになる。そこに集中するは後ろに控えた本隊の130(演習参加組80人、特別機動隊50人)近い魔力砲撃だ。 〝たくさん飛ぶ蚊も集まって止まってしまえば叩きやすし〟 はやての発案のもと実行されたこの囮作戦は、なのは達オーバーSランクを含め魔導士部隊だけでもバルキリー隊だけでもできない。双方が手を組んで初めて実現出来る作戦だった。 しかし敵は多い。まだまだガジェットはたくさんいた。だが遂に高空より援軍が到着した。 その援軍は青に塗装されたVF-11SGを先頭に編隊を組んでいる。 『こちらフロンティア基地航空隊。上空のゴーストは掃討した。これより援護する!』 放たれる大量のミサイル。 逆落としに迫るミサイルにガジェットは一瞬にして火葬にされた。 この時、初めて防衛側は優勢になった。 (*) 時系列は戻って演習中止直後 地上では旧市街(廃棄都市)のスタジアムから近い「核シェルター」への民間人の誘導と避難が進んでいた。 しかし出現した陸戦型ガジェットがそれを襲わんと市外から迫る。 そこで総合火力演習に参加していた陸士達は民間人の安全を確保しようと奮戦していた。 陸士部隊の中には約3ヶ月前にリニアレール攻防戦で活躍した第256陸士部隊もいた。 その部隊でも同攻防戦でロストロギアを守りきった第1分隊隊長であったロバート・ジョセフ准尉は昇進し、小隊を任されていた。 彼の小隊はガジェットを市街に入れぬよう市外に広がる森林に防衛ラインを設定。踏み止まって迎撃していた。 「ロバート隊長、北東40メートル先よりガジェットⅠ型が8機、Ⅲ型が1機接近中。」 声を潜めた観測班の報告を受けたロバート三等陸尉は、小隊に指示を発する。 「Ⅰ型には89式かMINIMI(ミニミ軽機関銃)で対応しろ。Ⅲ型は俺が吹き飛ばす。いいな?」 彼の部下は 「了解」 と応ずると散開していく。 第97管理外世界のJSSDF(日本国陸上自衛隊)の装備をまるまるバリアジャケット化した彼らの緑に溶け込む迷彩は、日本型の森の色彩に合って更に威力を発揮。すぐにどこへ行ったか見えにくくなった。 続いてロバートは自らの愛銃である89式小銃に指令を発する。 「『エイトナイン』、ランチャーパック装備」 『Alright.』 89式小銃のハンドガード下にM203グレネード・ランチャー(米軍の装備する40mmグレネード弾発射機)の口径を小さくしたものが生成された。 彼は弾帯に付けられたパウチを探ると1発の弾を取り出す。それはベルカ式カートリッジシステムの大容量カートリッジ弾だった。だが少し違う。弾頭の部分に後付けの信管が着いているのだ。 ロバートは信管を遅発に設定し、ランチャーに装填。草に隠れて伏せ撃ちの姿勢になる。彼の突然の出現に驚いたのか蛙がピョコピョコと逃げていく。その逃げていく先に敵を視認した。 同時にこちらへと進撃するガジェットに向かって部下達の銃撃が始まり、にわかに騒がしく動き回る。 頭の悪い〝あいつら〟は、多方向同時攻撃に対して一瞬パニックに陥るのだ。 (まったく馬鹿で助かる。バジュラじゃこうはいかないからな・・・・・・) 彼は以前の職場を思い出す。 マクロスフロンティア船団の新・統合軍『アイランド3・地上防衛隊』に所属していた彼は、第2形態のバジュラの大群が船内で暴れた際に同船で必死に市民を守ろうとした1人だった。 (しかしなんで脱出挺なんかに避難民を誘導しちゃったかな・・・・・・) 彼はそう考えて思考の脱線に気づいた。 ロバートは邪念を振り払って意識を集中する。そして目標を狙うと発射機の引き金を引いた。 ひゅぽんっ シャンパンの栓を抜いたような音をたてながら、魔力(で発生させた電磁気)によって加速されたカートリッジ弾が発射された。 音はショボいが、その実音速で飛翔するカートリッジ弾は目標であるⅢ型に着弾した。 しかし遅発のためシールドと装甲を破って内部に侵入。そこで強制撃発すると内包する魔力を解放した。 内側から文字通り吹き飛んだⅢ型。そして部下達がⅠ型を撃破したことを確認すると一息入れた。 そして自身のインテリジェントデバイスである愛銃『エイトナイン』に礼をいう。 「いつも補正ありがとな」 『No problem. This is my job.』 「ふっ、生真面目なやつだ」 彼は銃身を擦ると笑いかけた。しかし休憩もそこそこ再び観測班から通信が入った。 「続いてガジェットⅠ型が5、6・・・・・・くそっ!24機!Ⅲ型も7機確認!続々増加中!」 さっきの数程度なら小隊単位で対処できるが、これだけ増えると手に負えない。 「佐藤分隊、吉田分隊、共に後退しろ。ポイントデルタに集合だ。両隣の第4,6小隊にも後退の旨伝えろ」 隊の皆に指示を出すと、自らも伏せ撃ちの姿勢から起き上がり後退する。 バリアジャケットである各種装備(ヘルメットや防弾チョッキ、野戦服)は純正の物より軽く、物理・魔法攻撃に強く、コンパクトにできていた。 そのため例え森林であっても動きに支障はなかった。 (*) 1分後 ポイントデルタ─────つまり旧市街入り口にロバートが到着した時にはすでに小隊全員の集合が完了していた。 周りを見ると両隣だけでなく、森に展開していた第256陸士部隊全ての小隊が後退していた。 しかし幸いなことにどこも戦略的後退で被害はないようだった。 (*) ロバートの部隊はその後市街入り口にて水際戦をやることになった。 任務はできるだけ時間を稼ぐこと。その間に残りの部隊は後方にトーチカ(防御陣地)を設営する。 幸い入り口付近に木はなく、森から入り口までの間30メートルほどが比較的開けているため間を渡ろうとする移動物の迎撃は容易だ。 また、入り口以外の場所は当時戦時中だったためか鉄条網(100年以上放置されても錆びていないことから〝鉄〟製でないため、この表現が正しいかわからないが・・・・・・)が張り巡らされており、実質的な入り口はこの付近では唯一だった。 部隊は入り口の両隣に建ったビルの2階と道路に展開する。 道路は遮蔽物がなかったので、特殊合金のためか100年経っても原型を保っていた車3台を押してきて横倒しにし、盾代わりとした。 車の背後に隠れたロバートは部下がしっかり展開しているか確認する。 今、彼の小隊の全ての89式小銃にランチャーパック(15mmカートリッジランチャー)が装備されている。 しかしこれらは彼らの魔力によって生成したものではなく、工場で生産されたものだ。 魔法で物を生成するにはインテリジェントデバイス、またはアームドデバイスの補助と、クラスB以上のリンカーコア出力が必要なのだ。 だが大半の隊員は量産された安価なストレージデバイスでクラスCの者が多い。 予算が増えても隊員のリンカーコアの出力が上がるわけではない。昔も今も陸士は空戦魔導士と違って泥臭く、大変な職場だ。そうなると空にいるディーン・ジョンソンのようなポストを狙って本局から来た転職組に代表される優秀な人材は陸士にはならなかった。 しかし昔と違って今はミッドチルダの誇る工業力が彼らを支えていた。 ちなみにロバートの装備するインテリジェントデバイス『エイトナイン』は支給品ではなく、彼が大枚叩(はた)いて買った貴重な代物である。 閑話休題。 小隊は4挺のMINIMIと21挺の89式小銃を保有している。MINIMIは面制圧を得意とするため両ビルに配備され、虎視眈々と待ち受けている。 現在ロバートの小隊は道路に13人、両隣のビルに6人ずつ分散配置されており、上手く立ち回れば撃墜組が到着する20分後(撃墜組は演習空域 の外まで転送されていたため時間が掛かる)まで足止めが効くはずだった。 そしてついに、奴等は姿を現した。 ガジェットⅠ型が数十機、一斉に森から姿を見せたのだ。 「撃ち方始め!」 彼の号令が飛ぶと、MINIMIや89式小銃が一斉に火蓋をきった。 魔法の世界とは思えない〝タタタッ〟という喧しい連発音(これはできうる限り微小な魔力で無理矢理電磁気を産み出しているために発生する音で、〝断じて〟設計者の趣味ではない)。 超音速で飛翔する5.56mm徹甲弾によってガジェットは確実に倒され、骸を中間地点にさらしていく。 銃撃が小康状態になった。 どうやら第1波は重武装、重装甲のⅢ型の姿がない事から斥候部隊だったようだ。 時を置かず、次はⅠ型、Ⅲ型の連合部隊がやってきた。Ⅰ型はともかくⅢ型は通常の徹甲弾ではダメージが少ない。 ここで役立つのが新開発のランチャーパックだ。 ロバート達は待ってましたとばかりにⅢ型にカートリッジ弾を撃ち込む。 一番前にいたⅢ型は他の隊員からも放たれたカートリッジ弾数発を受けて擱座。後続もほとんど同じ運命をたどった。 「圧倒的ではないか我が軍は!」 ロバートの部下である佐藤曹長が高笑いながら言う。確かにこの分なら後方のトーチカはいらないかもしれない。そう思い始めたロバートだったが、 こういう快進撃は長続きしないのが世の常だった。 その2へ
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これまでのあらすじ カオスかがみの思いつきで開催されたクロススレタッグトーナメント。 乱入者にリザーブマッチといろいろあったが、ようやく一回戦が終了した。 果たして優勝の栄冠をつかむのはどのチームか! そして予約中にこんなのを投下して、作者は自ロワ住人に怒られないのか! こなた「さあ、クロススレタッグもいよいよ二回戦突入! 開始前に、改めて二回戦の対戦カードを確認しておきましょう!」 アニマル悌団VS拳鬼 ワイルドドッグスVS陵桜師弟コンビ ダブルレッズVS冥王ブラザーズ 患部に止まってすぐ盗む~狂気の恋泥棒VSマッスルブラザーズ極 こなた「こういったメンバーが残ったわけですが……。ではここで、観客の方に今後の予想をインタビューしてみましょう」 長門「ユニーク」 こなた「はい、ありがとうございました」 中トトロ『それじゃあ二回戦、始めるよ!』 二回戦第一試合 アニマル悌団(シマリス&花子)VS拳鬼(ラオウ&範馬勇次郎) バキバキ! ドゴォッ! メメタァ! グチャッ! (都合により、視聴者の皆様はnice boat. が川を行く様子をご覧ください) ロジャー「そ、そこまで……」 こなた「あちゃー、一方的……」 雷電「やはりゴリラとリス程度では、あの二人を止められぬか……」 アニマル悌団●―○拳鬼 二回戦第二試合 ワイルドドッグス(犬塚信乃&ザフィーラ)VS陵桜師弟コンビ(黒井ななこ&峰岸あやの) こなた「さあ、お互いの先鋒は信乃とななこ先生でありますが……。 ななこ先生がチョークを投げるー! しかしそれを信乃が村雨で防ぐー! 先程からこの構図の繰り返しであります」 ななこ(ちっ、やっぱりチョークじゃ攻撃力不足やな……) 信乃(くっ、間合いが詰められない……!) 二人『ここはタッチだ(や)!』 こなた「ここで同時に選手交代! あやのとザフィーラが同時にリングインだーっ!」 あやの「喰らいなさい、デコビーム!」 こなた「ザフィーラの身体は…溶けていく、溶けていく。い、いや、これは!」 ザフィーラ「残像だ」 あやの「何……ですって……」 こなた「あーっと! あやの、背後を取られてしまったー!」 ザフィーラ「同じ空気キャラを倒すのは気がすすまないが……許せ」 こなた「あやの、絶体絶命だー!」 ドガッ! あやの「え……?」 みさお「ぐぅ……!」 こなた「おーっと、これは! みさきちがリングに乱入してあやのの盾となったー!」 ロジャー「他者乱入により、陵桜師弟コンビ反則負け!」 あやの「みさちゃん、しっかり!」 みさお「わりーな、あやの。反則負けにしちまって……」 あやの「そんなこといいのよ! それより、なんで私なんかをかばって……」 みさお「何言ってんだ……。私ら、友達だろ?」 あやの「でも私は、目立ってるあなたのことを妬んで……恨んで……!」 みさお「長いこと友達やってれば、そういうこともあるって……。気にすんな」 あやの「わ……私が間違っていたわ……。こんな素晴らしい友と人気を競おうなんて……。 やはり私たちは力を合わせなくては……」 ななこ(これでええ……。峰岸、日下部、いつまでも仲良くな……) 安西「ほっほっほっ。お疲れ様です、黒井先生」 ななこ「あ、安西先生!? ど、どうも、お疲れ様です」 安西「黒井先生……。あなたは最初からこれを狙ってこの大会に参加したのでは?」 ななこ「まさか……。うちはただ教え子を利用して目立とうとした、ダメ教師ですよ」 安西「あなたがそう仰るのなら、そういうことにしておきましょうか。どうです、これから食事でも。私がおごりましょう」 ななこ「じゃあ、お言葉に甘えて……」 ワイルドドッグス○―●陵桜師弟コンビ 続く
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なのは すごい魔道師よあなたは あの魔道人ブウはあたしにはとても敵う相手じゃなかった 何となく分かった気がする なぜ天才であるはずのあたしがあなたに敵わないのか 守りたいものがあるからだと思っていた 守りたいという強い心が得体の知れない力を生み出しているのだと 確かにそれもあるかもしれないが それは今のあたしも同じことだ あたしはあたしの思い通りにするために 力をためすために 自分の存在価値を肯定するために そして母親に認めてもらうために闘ってきた だけど あなたは違う 自分のために闘うんじゃない 絶対にみんなを傷つけないために限界を極め続け闘うのよね・・ だから相手の命を絶つことにこだわりはしない あなたはついにこの魔人になって暴れたあたしとかつて悪人だった母親を殺しはしなかった まるで今のあたしたちがほんの少しだけ・・いや、とっても温かい親子の愛情を持つようになるのが 分かっていたかのように・・・ アタマにくわね! みんなが大好きで優しい魔道師なんて! ・・・ ・・・ がんばれ高町なのは あなたがナンバー1よ! 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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敵に洗脳されて魔人になったフェイト あたしは あたしは 昔のあたしに戻りたかったのよ! 残忍で冷酷な魔道師のあたしに戻って 何も気にせずあなたと徹底的に闘いたかった! 気に入らなかった 知らないうちにあんたたちの影響を受けて 穏やかになっていく自分が あたしともあろうものが仲間を持ち わ・・・悪くない気分だった 居心地の良いここも好きになってきてしまっていたのよ・・・ だからバビディに支配され 元の最強魔道師に戻る必要があった おかげで今は良い気分よ!! 自分の身勝手な行動に責任を感じたフェイトは、自爆を決意する フェイト「やっとあなたの倒し方がわかったわ!!修復できないように粉々に吹き飛ばすことよ!!」 「テスタロッサ・・・死ぬ気だな あいつは己以外のもののために死のうとしている」 フェイト「さらばね、 ユーノ アルフ はやて シグナム ・・・・・そして高町なのは・・・ うおおおおおおおお!!!」 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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● 「もしもこの世界が、幾度も滅びていると聞いたら信じますか? 滅びるたびに二百年余りの時を遡り、それを何度も繰り返しているのだと。 騎士カリムの予言とは、その過去の世界を詠む能力だと」 赤毛の青年は、私にそう言った。 「そして―――管理局システムが、その『破滅の転輪』を保つためのものだと聞けば―――信じますか?」 ● ずっと、その人に憧れていた。 重い前科を背負いながらも執務官の職を得た、かつては世界を救った本物の英雄。 ジェイル・スカリエッティを筆頭に、特級の時空犯罪者を幾人も逮捕した腕利き。 フェイト・T・ハラオウン。 それが、私の憧れていた人の名前だった。 ● 破裂音。同時に、空き家の窓から炎が噴出した。倒壊する建材が、濛々と粉塵を巻き上げる。 出入り口を塞いでいた局員達が一斉に突入。だが、黒い影は金髪をたなびかせ炎に紛れて路地に駆け込んでいた。 それを捉えていた視線が一組。 「フェイト・テスタロッサ……!」 憎悪を煮詰めたような声は、乗用車の助手席に座った少女のものだ。 ドアを蹴り開ける。軍服の腰から硬質素材のカードを取り出し疾走。自分の上司に念話を飛ばす。建物の倒壊に巻き込まれた程度で死ぬような人ではない。 『フェイト・テスタロッサを確認しました! 追撃します!』 『……待て、非殺傷設定を』 念話を切断。非殺傷設定は切っている。 「行くわよ、クロスミラージュ―――」 《魔弾の射手は覚醒する》 『Standby, ready―――SetUp』 待機状態のデバイスが光を放ち、白を基調に赤と橙を配した二丁拳銃へと変形。バリアジャケットを展開する。 「―――オプティックハイド」 《魔弾の射手とは姿を見せぬものなり》 空間を伝う音律は、強臓式デバイス最大の特徴である可変定型呪文、言実詞(エアリアルワード)。 魔法の効果を限定化し研ぎ澄ます力の詞(テクスト)が、迷彩魔法の効果時間を引き伸ばす。 影を消し姿を消し、ティアナ・ランスターは路地裏へと飛び込んだ。 ● ミッドチルダ中央から東、その海上に、一人の青年が浮かんでいた。 潮風を受ける強い赤色の髪に鋼色の双眸。赤の軽装に白の外套を合わせたバリアジャケット。 左手に無造作に提げているのは、蒼と銀で組まれた長槍だ。 「僕とヴィータ副……ヴィータさんの役割は陽動……と。東西からなるべく派手に魔力反応を撒き散らして下さい、か。 ―――カートリッジロード」 排気音と共に槍がコッキング。カートリッジ内の圧縮魔力を開放、穂先に充填。 青年の足元、宙に展開されたのは雷色の魔法陣。相転する三角形がその回転速度を上げ、魔力を物理力へと変換する。 海面へと狙いを定めた青年の独白。 「……『前回』とは、違う……強臓式デバイスなんてものはあの時には無かった。 スカリエッティが数年以上早くに逮捕されている……それが全ての原因なのか? 僕が二年遅れているのも、キャロがルシエの里に留まっているのも……三人が、管理局の真実を知ってしまったのも」 紫電を纏った穂先が、臨界を迎えた。解き放たれたのは、雷の属性を持つ砲撃魔法。 高熱が海水を沸騰させ、水蒸気爆発を引き起こす。上がった水柱は数十メートル。確実に、警備隊には発見されている。 「―――永遠なんて、あってはならないんだ。たとえそれが、世界を保つ為だとしても」 ● 背中が疼く。手榴弾の爆風を利用して跳躍した時の打撲だろう。 肩で留めているのは耐熱性と防刃、防弾を兼ね備えた戦闘用のコートだが、衝撃を弾けるわけではない。ある程度拡散するだけでダメージは入る。 脚から伝わる振動が痛みを走らせるが、無視。路地のより入り組んだ方へと走る。 ミッドチルダ首都部の地図は頭に叩き込んである。エリオ・モンディアルとの合流場所―――セーフハウスまで あと100m強。 直角の曲がり角を踊るようにステップワーク。 追っ手が来る頃合だが、空を飛んだところで入り組んだ路地裏は見通せない。陽動の方に多くの戦力が回されている筈。 追ってくるすれば、陸戦魔導師の足を使った追跡だ。 だから不意打ちで歩調を乱す。躓いたように見せ掛け、一定のリズムを刻んでいた足音を変化。 足音が一つ、余分に聞こえた。位置は五時方向三メートル。 疾走の勢いで身を回し、右袖から振り出した自動拳銃を構え射撃。質量兵器は基本的に禁制品だ。これでまた罪状が一つ追加。 音速超過で飛翔した鉄弾が、不可視の何かを確実に打撃した。 空間を走るのは緑の掛かったノイズエフェクト、光学迷彩が強制解除された反動だろう。 その下から現れたのは――― 「貴女も……二年ぶりだったかな? ―――久しぶりだね、ティアナ」 橙の髪を左右で括り、二丁拳銃を手にしたかつての教え子。 両眼は憎憎しげにこちらを睨みつけ、その銃口も同様だ。 「……動けば撃ちます。武器を捨てて投降しなさい。一秒だけ待ちます」 「悪いけど、私もここで立ち止まるわけにはいかないよ……」 《魔弾の射手は敵を討つ―――》 一秒どころか一瞬と待たずに引き金を引いてきた。橙色の魔力弾が髪を掠めて壁を穿つ。 「管理局もクロノさんも騎士カリムも私も、皆を裏切ったあなたがそんなことを……!」 「私が裏切った? それは違うよティアナ、ティアナ・ランスター。 まず、管理局が私達を裏切ったんだ。ジェイル・スカリエッティから得たデータを使って、人造魔導師計画に手を出した」 あの『事故』で冷静さを失っていた私となのはが暴走してしまったのが拙かった。 止めに入ったシグナムに対して、全力の砲撃を放ったなのはは――― 「……いや、それよりも、貴女も知ったんだよね? 管理局システムの設立理由を」 「……それでも私は、管理局の人間です……五年前からそう決めていたんだ! ランスターの姓は弾丸を任ずる! 意志すら持たずに敵を貫く、それだけの力で構わない! それこそが、それだけが、ティアナ・ランスターの在り方だ……!」 《魔弾とは敵を穿つ一矢なり!》 叫びに重なる言実詞。速度を倍は増した魔力弾が飛んだ。 曲線軌道と直線射撃の乱れ撃ち。一発二発、三四五と連射されるそれを身を捻って回避。 《群れ成す猟犬は魔弾の射手に追従す》 だがそれは布石。言実詞と共に浮かんだ魔力弾の数は二十四。 距離は離れ、左右を壁に挟まれている以上、その一斉射撃を避け切る術は無い。 そこまで読んでなお、顔に浮かべるのは薄い笑みだ。 「―――シュート!」 弧を描き迫る弾丸は、数を以って空間を制圧する。前方は無論、背後や上空さえ完全に塞がれた。 着弾する。 ● 完璧に制御された二十四発の魔力弾。その余波だけで壁や地面が削れ、舞い上がった塵が光を遮り、路地裏に影を落とす。 背中を向けて逃げていればまだ生き残る可能性もあった。だが全方位から囲まれては、最早それも不可能だ。 だから、彼女はそれを解き放つ。 《我が―――》 あらゆる死を覆す、力の詞を。 《我が運命は未だ死を告げず》 ● 「嘘だ……」 ティアナ・ランスターの驚愕は、当然のものだった。 言実詞によって威力を底上げされた魔力弾は、Bランク相当の障壁なら容易く打ち抜ける。 直撃弾、二十四発―――それを、あの一瞬で展開された半球状の結界が、小揺るぎもせずに受け止めていた。 その中心に立つ斧型のデバイスを構えた黒衣の女は、困ったような笑みを浮かべ口を開いた。 「ティアナには、まだ見せたことが無かったね。強臓化を施したバルディッシュ・アサルト―――」 二年前―――あの事件の後に改造された雷神の戦斧。 主の一部を構成要素として取り込み、より強い繋がりを与えるユニゾンデバイスの亜種、強臓式(ハイオーガン)・デバイス。 その二つ名は、使い手たるフェイト・T・ハラオウンの名と同じ意を持った――― 「―――『運命(ゲレーゲンハイト)』」 一度だけ、爬虫類の瞳じみた金色の結晶体が煌いた。 ● 前へ 目次へ 次へ
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クロスストロークのこと。
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マクロスなのは 第26話『メディカル・プライム』←この前の話 『マクロスなのは』第27話「大防空戦」 1502時 クラナガン上空2000メートル そこではアルト率いるサジタリウス小隊がCAP任務に従事していた。 既にクラナガン上空で任務を開始してから2時間を超えている。 普段ならあと2時間足らずでこの任務を終え、引き継ぎに交代する。しかし今日は航空隊のオーバーホールのため、あと4時間は缶詰の予定だった。 こうなると普段禁止されている私語が多くなる。天城はその軽い性格からか、いつもおしゃべりが過ぎる。しかしこの日、真面目なさくらまでもその岩戸が軽石になってしまっていた。 『─────それでさ、基地のパン屋のお姉さん、ほら、あの・・・』 『・・・ああ、いつも基地にパンを持って来てくださっている事務員のお姉さんですね。』 『そう、それ!でさ、昨日パン屋さん午前中休みだったろ?』 『そう言えばそうですね・・・・・・何かあったんでしょうか?』 『うん、それがさ、そのお姉さんが朝の7時ぐらいにミシェル中隊長の部屋から出ていくのを見たやつがいるんだよ!』 『え!?ということは朝帰りぃ!?』 (・・・・・・おいおいミシェル、もう噂になってるぞ・・・・・・) アルトは昨日、彼の部屋に入ろうとしてドアにハンカチが挟んであったことを思い出し、「やっぱりそういうことだったのか」と、全く変わらない戦友であり友人である男に頭を抱えた。 『その公算は大だな。・・・・・・ああ、俺も一度でいいから、女を抱いてみてぇ~!』 『・・・・・・天城さん、私の前でそんなこといっていいんですか?私も一応女なんですけど』 『あっごめん!さくらちゃんだとあんまりにも気兼ねなく話せちゃうからつい・・・』 『もう知りません!』 『あぁ、さくらちゃぁ~ん!』 この会話を聞いたアルトは「ざまぁみろ」と思ったそうだが、定かではない。 『もう・・・・・・あ、ところでアルト隊長、』 突然の天城の転進に「な、なんだ?」と生返事を返す。 『噂で聞いた話なんですが、アルト隊長が〝ランカちゃん〟と付き合ってるってのは本当なんですか?』 その予想外だった問いにアルトは制御を誤り、機体は機位を崩して5メートルほど落下させる。VF-25がピーキーな機動性能を誇るゆえに可能とした機動だが、今は彼の動揺を証明する役目しか果たしてくれなかった。 増速によって編隊まで高度を持ち直す。 「い、いきなりなにを─────」 『あっ、それ私も聞きました!本当なんですか、アルト隊長?』 さくらは左を飛んでいるため、左耳から聞こえる無線に、アルトは嫌気がさす。 「おいおい、さくらまで・・・・・・お前らバルキリー隊の隊長を色恋で話題にすると、突然撃墜されるってジンクスを知ら─────」 2人を説き伏せようと説明していると、天城の〝叫び〟がそれを遮った。 (え!? マジ?) 右後方のバックミラーに天城の機体が飛んでいるのを確認する。 流れる動作でレーダーを警戒するが、敵機なし。 変わったことと言えば、少し離れたところにヘリが飛んでいるだけだ。 (ん、待てよ・・・・・・ヘリだと?) アルトはヘリに視線で照準すると、モニターでズームをかける。 すると予想は的中。ヘリは六課のヘリだった。 そのヘリの窓にはどういうわけか、出張中なはずのランカの姿がある。 そして間の悪いことに、こちらを見つけたのか手を振っており、彼女の唇を読めば自分の名を呼んでいることはバレバレであろう。 「うぉぉぉ!アルト隊長!ランカちゃんのサインを3枚お願いします!うちの家族がランカちゃんの大ファンなんです!」 どうやら天城は完全に恋人認定してしまったようだ。 アルトは溜め息をつくと、ヘリに繋ぐのは嫌なため、上空のAWACS(空中警戒管制システム)『ホークアイ』に回線を繋いだ。 無論なぜこんなところを六課のヘリが飛んでいるのか聞くためだ。すると、 15分ほど前にクラナガン外辺部で休暇中だったライトニング分隊の2人がマンホールから出てきた5~6歳ほどの少女を発見したこと。 その少女はガジェットが狙っているロストロギア「レリック」を1個引きずっており、大変衰弱していること。 六課のヘリが保護のため急行しているが、なのは達はデバイスの調整のため出撃できず、準備の出来ていたランカが代わりに緊急時に備えて乗せられていたこと。 などの情報が提供された。 「レリック絡みか。わかった。サンキュー、ホークアイ」 『いやなに、君たちの会話の方が楽しかったよ』 「なぬ!?」 『私にも5枚、サインをよろしく頼むよ。うちの甥っ子もえらくご執心でね。交信終了』 アルトは無線に 「ちょっと待てぇぇぇーい!!」 と怒鳴るが時すでに遅し、回線は切られていた。 『・・・・・・アルト隊長』 「・・・・・・なんだ?」 『認知しましょう』 「いや、だ・か・ら、俺とランカは別にそんな関係じゃないんだぁ!」 アルトの叫びが澄んだ青空に響き渡った。 (*) その後ガウォーク形態で3機はヘリの護衛に入った。 来るかわからない航空型の警戒より、周囲に敵がいる公算の高い場所へ赴く、ヘリの警護が優先されたのだ。 その間にアルトはランカに対し念話を試みる。 『(おーい、ランカ?)』 『(あ、アルトくん久しぶりぃ~)』 『(・・・大丈夫なのか?)』 『(うん。向こうの人達にはすっごいよくしてもらったし、戦争だって終わったんだもん!)』 念話は言葉を介した意志疎通とは少し違う。これには言葉以外に言語では表現不能な概念・思考すら載せる事ができるのだ。 こう表現すると「そんな役立つものがあるのに、なぜまだ不完全な言葉など使っている?」という話になるが、実は念話は慣れていない相手だと稀に、相手に与えるのには好ましくない思考を載せてしまう事があるのだ。 つまりごく稀に本音が丸見えになるという事だ。 本音と建前の人間の世界、話す時に稀にでも相手の本音が見えたら決して成立しないだろう。 だから念話で話すにはそれ相応の勇気が要り、よっぽどの親友や仕事でない限り用いられなかった。 しかしランカから流れ込んだ思考には本当に嬉しいという思いだけが伝わってくる。 自分自身彼女に対する本音がわからない分、どう伝わっているか不安が残るが、彼女の無事が確認できただけでもよかった。 それから1分も経たない内にヘリは現場に到着。少女のヘリへの搬送が開始された。 しかし───── 「こちら機動六課、ロングアーチ。地下にガジェット反応多数!搬送を急いでください!」 ロングアーチの警告とともにガジェットが地上に出てきた。 幸い付近は既に交通規制で人はいない。ガジェットは用さえなければ家の中まで入ってこないので民間人は大丈夫だ。しかし道路でアイドリングするヘリに敵が迫る。 シャマルとランカが、担架(たんか)に乗せた少女を急ぎヘリに搬送しているが、まだ遠くとても間に合わない。 休日返上で集まっていたフォワードの4人も搬送する2人を守るので精一杯で、ヘリまで手が回らないようだ。 「ヘリを死守する!行くぞ!」 『了解!』 アルトの命令に呼応してガウォークからバトロイドに流れるように可変すると、3機でヘリを囲み、地下からワラワラと出てきて全方位から迫るガジェットに相対した。 『やっとなまった体が動かせるぜ』 天城のVFー1Bが凝りをほぐすように腕と肩をぐるぐる回した。そんな天城にさくらが釘を刺す。 『天城さん、抜かれないでくださいよ』 『へいへい』 市街地なので発砲は厳禁。しかしヘリを1機、1分ほど守るだけなら、彼らにはそれで十分だった。 「サジタリウス小隊、交戦!」 アルトは宣言と共に先頭にいたⅠ型をぶっ潰した。 (*) 一度途切れた意識が五感と共に帰ってくる。 頭の中が霧がかかったかのようにぼやけているが、1つだけわかる事がある。ここは戦場だ。 何かと何かがぶつかり、轟音と共にどちらかが、もしくは両方が壊れてしまう。 大人達は自分を縛りつけ、自らに眠る〝ちから〟を使ってヒトや物を壊すことをいつも強要した。 ぼやけた視界に映る、必死の形相をして自分を運ぶ金髪と緑の髪したお姉ちゃん達も、自分に戦いを強要するのだろうか? 彼女は自らの運命を呪うと、意識と共に記憶を閉じた。 (*) 『ヘリの離陸を確認!』 VFー25の外部マイクがティアナの声を拾う。 アルトが見たときにはヘリは(バトロイド形態の)目線の位置まで来ていた。ヘリはそのまま急速に上昇していき、安全高度まで行くと病院へと直行した。 「よし、長居は無用だ!さくら、先に飛べねぇ3人を連れて上に上がれ」 『了解!』 さくらは頭部対空レーザー砲で牽制しつつ後退。バトロイドからガウォークに可変すると、さっきまでヘリが駐機していた位置に移動する。 現在サジタリウス小隊とフォワード4人組は、ヘリのいた位置を中心に円陣を組んで全周位から迫るガジェットに対抗している。そのためヘリが居なくなろうと、その場所が一番安全だった。 『皆さん、聞いた通りです。早く手に乗ってください!』 さくらがVF-11Gの手(マニピュレーター)を地面に広げ、外部スピーカーで呼び掛ける。 しかし円陣の内郭を構成するティアナやキャロはともかく、自分達と共に外郭で戦うエリオはおいそれと戦線から後退することは出来なかった。アルトはハイマニューバ誘導弾による援護を準備しようとした矢先、その宣言が聞こえた。 「クロスファイアー・・・シュート!!」 一斉に放たれたオレンジ色の誘導弾は、数を優先したためかガジェットのシールドを抜くことはできなかった。しかしその進攻を遅らせ、エリオが後退する時間とアルト達が穴を埋める時間をひねり出した。 「いいぞティアナ。ナイス判断!」 アルトの掛け声にティアナは 『どうも!』 と応じると、後退してきたエリオ共々ガウォークの手のひらに収まった。 『じゃあしっかり掴まっていてくださいね!』 さくらは警告すると、時を置かずエンジンを吹かして離床。急速に高度を稼いでいった。 「おっし、天城にスバル、次は俺達だ」 『了解!』 上空から再び放たれたティアナの誘導弾に援護されながら、アルトと天城はガウォークで、スバルはウィングロードを展開して上空に退避した。 こうして目標を失ったガジェット達は撤退して・・・・・・いや、新たな目標を見つけたらしい。戦闘機動レベルのスピードで次々マンホールに入っていく。理由はすぐに知れた。 『こちらロングアーチ。今までジャミングにより探知できなかったレリック反応を地下から2つ確認!回収に向かってください!』 「・・・・・・っておい、ロングアーチ!あの大軍の中に4人を突入させる気か!?」 なに1つ反論せずバカ正直にも 『了解』 と応答しそうな4人の代わりに異議を訴える。 軍隊では捨て駒にされるなど日常茶飯事だ。 例えばフロンティア船団でも中期の対バジュラ戦に投入された新・統合軍がその典型例だ。 バジュラの進化によって彼らの保有する武装が何1つ効かなくなった状況で、出撃を命令され無駄に命を散らしていった。 軍隊とはそういうところだ。だから生き残るために常に最善の努力を必要とする。反論など大した努力は必要ない。それで作戦の穴が見つかり、手直しされて生存率が上がるなら、それに越したことはないのだ。 しかし六課は〝軍隊〟ではあっても無策のバカではなかった。 『そのことなんですが、おそらく問題ありません。現在ガジェットの優先命令はレリックの確保と思われ、積極的な攻撃はないと推測されます。また、事態を聞きつけた第108陸士部隊の陸戦Aランク魔導士が1人、5分で支援に駆けつけてくれるそうです』 「・・・・・・なるほど」 とアルトは呟くと、やる気満々という目をした4人に視線を投げる。 「・・・だそうだ。お前らの力を存分に発揮してこい!」 『『了解!』』 4人は敬礼すると地面に降ろされ、マンホールへと突入していった。 「・・・・・・全く、お人好し揃いだな。管理局は」 アルトの呟きにさくらが割り込む。 『それを隊長が言います?』 「・・・・・・そうだな」 俺もいつの間にかお人好しになってしまったらしい。 しかし敵はそんな感慨を抱く平和な一時(ひととき)すら許さなかった。 『こちら『ホークアイ』、クラナガン近海の相模湾に敵の大編隊が多数出現!機種はおそらく改修前のガジェットⅡ型とゴーストだ。目標はヘリでなくクラナガンの模様。サジタリウス小隊は即座に迎撃行動に移れ!』 嫌な現実が耳に入った。しかし過去を振り返るにはもう遅い。今はやれることをやるしかないのだから。 「サジタリウスリーダー了解!これより迎撃行動に入ります!」 ファイターに可変したVFー25を始めとする3機は最加速。目標空域海上に急いだ。 (*) 『『ホークアイ』よりサジタリウス小隊。いま増援を要請した。5分で六課のスターズ1とライトニング1が。その20分後に緊急出動するバルキリー隊が合流する。それまで何とか持ちこたえてくれ』 「了解」 VFー25率いるサジタリウス小隊は中距離ミサイルの射程に入ると、中HMM(中距離ハイマニューバミサイル)を一斉に放つ。 今度のミサイルは今までの2系統の誘導方式のシステムに改良を加えたもので、通常の回避手段にもある程度対応できるようになっていた。とは言え、今まで敵が回避手段を講じたことがないため、効率面から誘導システムがセンサーを全面的に信用するようセットしていた。今回はそれを通常の設定に戻しただけだったりしたが。 サジタリウス小隊の保有する全中HMM、都合20近い光跡を残してマッハ5で飛翔するそれは、30秒程度で着弾した。しかし全てではなかった。 「なんだと?」 半数以上が目標を見失ったかのように迷走していた。 しかしフレアに代表されるような妨害装置の使用は見られない。強いて言えば当たったのに当たらなかったというか───── 『こちら『ホークアイ』。命中しなかった理由が判明した!敵は幻影魔法を展開している!現在術者を走査中だ。十分注意して迎撃せよ。実機はおそらくレーダーに映っている半数以下だ!』 どうやらガジェットを使役する者達が本格的に動き始めたらしい。アルトは猛る血を抑えると、僚機に指示を出す。 「各機、陣形〝トライアングラー〟!行くぞ!」 『『了解!』』 さくらはバトロイドに可変すると三浦半島の海岸線に着陸し、アンカーでしっかり片膝撃ち姿勢を取る機体を固定。己の長大なライフルを敵の迫る南へと向けた。 続いて天城がガウォークに可変すると、さくらの直掩に入った。 この陣形は『アルトが突入して敵をかき乱し、さくらが援護狙撃を行い、天城が撃ち漏らしを排除する』という時間稼ぎと敵の一地域の釘付けに主眼を置いた陣形だった。 ちなみにこのネーミングセンスだが・・・アルトの前隊長によるものが大きいと予想される。 ともかくアルトは、天城のマイクロハイマニューバミサイル。さくらの狙撃、そして自身のハイマニューバ誘導弾と共に敵に突入していった。 (*) サジタリウス小隊が交戦に入ってから5分後の横浜上空。 そこでは今、2人のワルキューレが天を駆けていた。 「スターズ1よりホークアイ、現状は?」 『こちら『ホークアイ』。先行したサジタリウス小隊が敵大編隊を迎撃中。現在おかげで戦闘空域は相模(さがみ)湾上空に限定されている。船もないので安心して撃墜して構わない。また、幻影はロングアーチの協力で実機との区別がつきつつある。これはデバイスに直接IFFとして送信する。また、混戦なため誤射に注意せよ』 「了解」 なのはは答えると、『Sound only』と表示された通信ディスプレイを閉じた。 そして今や10キロメートルを切った戦闘空域を睥睨する。 そこでは真っ青なキャンバスをバックに、自分達魔導士には無縁な白い飛行機雲が、幾筋も複雑な螺旋模様を描いている。 「綺麗・・・・・・」 思わず素の感想が口に出る。 しかしその作品を作っているのがアルトのVF-25と、ガジェット・ゴースト連合であることを思い出し、あわてて頭を振ってその考えを吹き飛ばした。 「フェイトちゃん、行くよ!」 頷く10年来の親友。 「スターズ1、」 「ライトニング1、」 「「交戦(エンゲージ)!」」 2人は文字通り光の矢となって、空域に突入した。 (*) ガーッ、ガーッ、ガーッ───── 鳴りやまないミサイルアラート。多目的ディスプレイは真紅の警告色に染め上げられている。 VF-25は魔力のアフターバーナーを焚きながら上昇を続ける。 アフターバーナーを焚いたVF-25は、推進剤である魔力が機体の推進ノズルや大気との摩擦で発熱するため、赤外線カメラを通して見れば太陽のように光輝いて見えることだろう。 周囲を飛翔する全ての敵ミサイルが、そんなVF-25に打撃を与えんと、回避運動すらせずに追いすがる。 それを確認したアルトはスラストレバーを下げ、フレアを撒くと足を60度機体下方に展開する。 こうすることによって推進モーメントが突然変わったバルキリーはクルリと前転、機首を下に向ける。 そして再び足を戻して下降するVF-25を尻目に、高熱源体となったフレアにミサイルが引き付けられ、そのすべてが誘爆した。 「ふぅ・・・」 アルトは前方を塞ぐ実機のガジェット達を徹甲弾を装填したガンポッドで次々葬っていく。 しかし敵は全天を覆っていた。 彼は顔をしかめて敵を俯瞰していると〝衝突コース!〟という警告がディスプレイに表示された。 しかしレーダーに映る敵機はIFFには反応なし。 つまり目視できるしレーダー反射もあるが、六課のスーパーコンピューターが『あれは幻影だ』と、結論を出したという事だ。 正直幻影だろうと実機だろうと撃墜か回避したいが、おそらく敵の罠だ。 確かに発砲してあれが実機でないと証明するのは簡単だ。 しかし敵が作戦を変更してしまうので、こちらが『あれが実機でない』ことに勘づいたことを知らせる訳にはいかない。また、機動を操作されるわけにはいかないため、回避もできない。となればそのまま突入するしかなかった。 迫る敵機。もし実機なら正面衝突で大破は免れない。 (南無三!) アルトは一瞬で全ての神仏に祈る。 次の瞬間には敵機はVF-25を通り抜けていた。 後方を振り返ると、やはり罠があったようだ。ガジェット数十機がホバリングして袋を形成している。回避していればあの袋に飛び込んで集中砲火という結末だったらしい。 (最近は罠を作るぐらいの頭ができたんだな・・・) アルトが感心する内もガジェットは半ばホバリングしているためさくらの狙撃が面白いほどよく当たる。 しかしゴーストが対応を開始した。 彼らは三次元推力偏向ノズルで機首を無理やりこちらに向けると向かってきた。 いつの間にか囲まれている。 このままでは包囲、殲滅される!と危惧したアルトは遂に奥の手を出した。 「メサイア、〝トルネード〟パック装備!」 「roger.」 VF-25の胴体全体を一瞬青白い光が包み、背面に2門の大口径ビーム砲を、そして両翼には旋回式追加ブースターと装甲を装備した。 機動重視の装備として開発されたこれは、FAST(スーパー)パックを数倍する機動性能を発揮する。バジュラとの抗争では開発未了であったが、これさえあれば被害は4割は減らせたと言われている悲願の追加装備だ。 さくらの速射狙撃が包囲するゴーストの一角に穴を開ける。 アルトはスラストレバーを一杯まで押し上げると、その穴から一気に突破、包囲から脱出を図る。 しかし援護にも限界がある。上方より数機のゴーストと火線。 アルトは両翼に装備されたブースターを左右逆に旋回して急激に90度ロール機動をおこなうと、間髪いれずに主機、旋回ブースター、スラスター・・・すべての機構を駆使して上昇をかける。その瞬間的なG(重力加速度)は『ISC』、『イナーシャ・ストアコンバータ』、デバイス由来の重力制御装置の限界を越え、アルトの体に生のGを掛ける。しかしいままで反吐が出るような訓練に鍛えられた彼にはどうということはない。 機体はゴーストでも真似できないような角ばった急旋回を行って敵の火線を回避すると、ガウォークで急制動。擦れ違おうとしたゴースト数機に背面のビーム砲を照準すると立て続けに見舞った。 魔力出力にしてSランククラスの砲撃を受けたそれらは、瞬時に己の体を空中分解させて海の藻屑へと帰した。 『こちらサジタリウス2(さくら)。弾が切れました。これより魔力砲撃に切り替えます』 遂に持ってきた砲弾を撃ち尽くしたらしい。魔力砲撃ではこの空域全体に作用したAMFにより威力が格段に低下するが、致し方ない。 アルトとてガンポッドに残る残弾など雀の涙だ。 熱核反応エンジンは戦闘機に無限の航続能力を与えたが、積める弾薬量が決まっている以上、まともな戦闘可能時間は旧式の戦闘機と変わらないのだ。 (荷電粒子ビーム機銃さえ使えれば・・・・・・) 現在も封印(シール)状態でVF-25の両翼に装備されているこのビーム機銃は、最初からバジュラには効かなかったが、AMFが作用しないためゴーストやガジェットなら苦もなく落とせるはずだった。 だが局員となった今、そんな物を使えば暖かい寝床から一転、鉄格子の部屋で寝ることになる。 アルトは無駄なことを考えるのをやめると、戦術に集中する。 トルネードパックで機動力の上がったVF-25に対し、ゴーストとガジェットはその機動性と数で対抗してくる。 更にゴーストの撃ち出す実体弾は、バルキリーの転換装甲のキャパシティをすごい勢いで消耗させていく。 (というかこれはマジ物の対(アンチ)ESA(エネルギー・スイッチ・アーマー。エネルギー転換装甲)弾じゃないのか・・・・・・?) 通常の実体弾はこれほどの消耗を強いるものではないはずだった。 とにかく、客観的に見てこれ以上の進攻阻止は無理だった。 しかしすでに1キロ程先に三浦半島の海岸線があった。 (現行戦力でこれ以上の足止めは無理だ。しかし半島上空を戦場にするわけには・・・・・・) そこに見える民家が、彼に後退を躊躇わせた。 その時、待ちに待ったものが来た。ディスプレイに表示される〝空域マップを貫く太く赤い線〟と〝退避要請〟という文字。 敵は大量に後ろに引きつけている。ここで撃てば最も多くの敵を巻き込めるだろうが、時空管理局、特に彼女がそれをするはずがない。かといって一度意図を図られてしまってはその効果は急速に薄まる。 ならば自分にできることは何が何でも急いでこの位置から退避するしかなかった。 アルトは操縦桿を倒すと左ロール、続いて主観的な上昇をかける(つまり左旋回)。もちろんその間スラストレバーは限界まで前へと押し上げられている。 機体が転換装甲の使用を前提とした設計限界である25Gの荷重によって悲痛な悲鳴をあげる。VF-25のF型(高機動型)としてスペシャルチューンされた『新星/P W/RR ステージ II 熱核バースト反応タービン FF-3001A改』が己の力を示すように、そして左右エンジンでハーモニーを奏でるかのようにその雷のような轟音によって圧縮した空気と魔力を後方へと吐き出す。両翼のブースターも主翼の空力だけでは成し得ない無理な上ベクトルの力を捻り出す。 アルトもまた、転換装甲維持のため機載のISCが止まった事により、襲いくる津波のような力に必死に抗う。 そして赤い線の示す射軸線をVF-25が越えると同時に、海岸線から桜色をした魔力砲撃が伸び、射軸上にいたゴーストとガジェットに突き刺さる。それは幻影含めて50機近くを瞬時に撃墜した。 『アルトくん、大丈夫!?』 天使の声が聞こえる。 「ああ、なのは。助かった」 しかし安心したアルトの機動は少しだが単調になっていた。 ゴーストはその機を逃さず肉薄してきた。 そのゴーストから横になぎ払うように機銃弾が放たれ、VF-25に迫る。 (緊急回避は・・・・・・間に合わない!) アルトはトルネードパックの装甲パージによる囮回避に備える。しかし機銃掃射はバルキリーまで来ない内に止まった。 不思議に思ったアルトはゴーストを仰ぎ見る。 そこには金色の矢に貫かれ、海に力なく落ちていくゴーストの姿があった。 外部マイクが女性の声を拾う。 『・・・・・・もう、私の事も忘れないで欲しいな』 彼女は大鎌形態のそのデバイスを、その華奢な肩に担ぐと大見得を切った。 同時に周囲に展開する他のガジェット、ゴーストにもランサーの雨が襲い、その多くを撃墜、爆炎が花を添えた。 「フェイト!」 外部スピーカーを通して放たれたアルトの声に、彼女はニッコリ微笑みを返した。 (*) 六課の合流後、すぐに役割に応じて部隊を再編する。 高機動型であるアルトとフェイトの2人は、引き続き敵を掻き乱す前衛部隊。 2人に構わず進む編隊には、さくらとなのはの火力部隊が当たり、天城は機動部隊として2人の直掩と撃ち漏らしの掃討を続行。 この後の戦いは比較的スムーズに進んだ。 そして10分後、更なる援軍が到着した。 『こちら機動六課フロンティア2。これより、支援します!』 聞こえた声はランカのものだった。レーダーを見るとヴァイスのヘリが戻って来ていた。 どうやら保護した少女を、この近くの聖王教会中央病院に置いて、とんぼ返りしたようだった。 『みんな!抱きしめて!銀河の、果てまでぇ!』 フォールド波に載ったランカの常套句が、半径10キロに渡って響き渡った。 続いて流れてくる歌声。 アルトはそれを聞いて、先ほどの念話以上の安心感を抱いた。 彼女の歌声は、いつかのような迷いある歌声ではない。 誰に向けてのものかはわからない────きっと、生きとし生きるもの全てにだろう────が、晴れ晴れとした澄み渡った空のように、暖かい歌声が沁み渡っていった。 (*) ランカの参入は戦闘の趨勢を激変させた。 魔導兵器であるガジェットⅡ型はレーザー攻撃を封じられボロボロ落とされる。 ゴーストには魔導技術がほとんど導入されていないらしく相変わらず元気だったが、ガジェットが脅威でなくなった分、楽になった。 しかし、ランカの超AMF範囲内にありながら、幻影魔法が解除されることはなかった・・・・・・ To be continue・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 ランカ「ずっとそばにいたかった。でも、もうあなたまで届かない・・・・・・」 マクロスなのは第27話「撃墜」 追悼の歌、銀河に響け! ―――――――――― シレンヤ氏
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なのは「さあ、このポタラをつけて!それしかあいつに勝てる方法はないの!!」 フェイト「そ・・・それだけは無理だ・・・あたしにだってプライドが」 なのは「じゃあ知ってる!?みんなはお菓子にされてあいつに食べられちゃったの!ユーノ君もアルフさんもはやてちゃんもシグナムさんもヴィータちゃんも シャマルさん、そして、せっかく生き返ったあなたのお母さんも! 急激なパワーアップはそのため!!」 フェイト「!!・・はやくよこしなさい!!く・・・右耳だったわね!こんなギリギリで・・・!!」 なのは「そうそう、この合体は二度と解けないから!!」 フェイト「な・・・こんなギリギリで言うなんて・・・これでいいでしょ!!」 なのは「ありがとう、フェイトちゃん・・・」 カッ!!! ナノト「なのはとフェイトが合体してナノトってとこかしら・・・そして、こいつがスーパーナノト!!」 敵「それが・・・・どうした!!」 ボコスカッバキィッ!! ナノト「ふふふ・・・あたしに出させてよ、本気を・・・」 観戦サイド「すごい!!あのとんでもないブウが手を出せないなんて・・・!」 「馬鹿ねえ、この世界でもっとも強くて天才的な力を持つ魔道師2人が合体したのよ・・・最強にきまってるわ」 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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マクロスなのは 第24話『教導』 前半←この前の話 『マクロスなのは』第24話 後半 (*) 10分後 「え~!? ダメだよシャーリー、人の過去勝手にばらしちゃあ!」 六課に帰還してすぐ伝えられた事実に思わずその言葉が口をついて出た。 なんでもティアナ達に教導の意味を教えるために自分の撃墜の話をしてしまったのだと言う。 「ダメだぜ、口の軽い女はよぅ」 バルキリーから降りて何事かと見に来ていたアルトが愚痴る。普段の彼のセリフとは思えなかったが、なぜだが違和感はなかった。 「あの・・・・・・その・・・・・・見てられなくて・・・」 シャーリーは頭を下げるが事態はそんな簡単ではない。自分の撃墜に関わる情報は管理局内では未だに『TOP SECERT(最高機密)』であり、違反すれば問答無用で軍法会議になりかねない。 それも機密に関わることなので完全非公開で行われ、どうなるか全くわからない。 だがなのはは、この中に告発するような者はいない事を知っていた。 なぜならこれが機密である事を知っているのはフェイトとヴィータ、そして自分だけだったからだ。 アルトやさくらも─────いや、教導の卒業者には〝教訓〟として話していたし、完全無欠に無関係な天城君は 「(ドラマの)続きはどうなった!」 と叫んで既に宿舎に飛び込んでいた。 (もう・・・・・・) ため息をつくと、頭を下げて両手を合わす困りものの友人に再び目をやった。 (仕方ない。言うのが少し早くなっちゃっただけかな) 思いなおした彼女はシャーリーからティアナの居場所を聞き出すと、義務付けられている報告を済ましてそこに向かった。 (*) 機動六課敷地内 桟橋 ティアナはこの場所が好きだった。 夜風に吹かれながら明るい月と対称的な暗い海とを眺め、この真夏に涼しげな波音を聞けるこの場所が。 普段は訓練が終了して2,3分ほどゆっくりしていく場所だったが、ここへ来てもう20分。まるで不思議な魔法がかかったようにその場を動けずにいた。 早く強くなりたいと思っていた。だけど、間違ってるって叱られて、隣を走る相棒にも迷惑かけて悲しい思いをさせた。 これらの出来事は彼女を深く落ち込ませた。 (それに、私は結局・・・・・・) (*) 「ティア・・・・・・」 彼女から『独りにして』と言われていたスバルだが、遠く離れた茂みに隠れてエリオ、キャロと共に彼女を見守っていた。 そこに数人の闖入者が現れた。 「アルト先輩?」 スバルの疑問形の呼び掛けに、彼は無声音とジェスチャーで 「よ!」 と挨拶する。その後ろでもさくら、そしてシャーリーが 「こんばんは」 と会釈した。 どうしたのか聞こうとしたスバルだが、ティアナの声が聞こえてきたため中断された。 『なのは・・・・・・さん?』 振り向いたティアナの視線の先を追うと、軽く手を後に組んだなのはの後ろ姿があった。 (*) なのははそのまま自らの隣に座り込み、涼しむように、明るい月が暗い海に沈んでいく幻想的な風景を眺める。 そんな沈黙が10分ほど・・・いや20秒ぐらいの事だったかもしれない。ともかく、その沈黙に堪えられなくなって口を開く。 「・・・あの、シャーリーさんやシグナム副隊長にいろいろ聞きました。」 「〝なのはさん〟の失敗の記録?」 「え・・・・・・」 てっきり「なんの話?」と聞かれると思っていたティアナは少し狼狽する。 「あ、いえ、そうじゃなくて─────」 ティアナは自らの思考力が上手く回っていない事を改めて実感した。なのは達が帰投してからそれなりに時間が経過しているのだから、シャーリーでもシグナムでも聞く機会があったはずだ。 そんな簡単なことすら失念していたことにティアナはすこし可笑しくなった。 「無茶すると危ないんだよって話だよね」 なのはの確認に、ティアナの頭ではさっきの話がフラッシュバックする。 普通の、魔法すら知らなかった9歳の女の子が、魔法をその手にしてすぐに死闘を繰り返した。 少女はその後も自分の信念と守りたいもののために「早く強くなろう」として命懸けの無茶をし続け、遂には撃墜され、瀕死の重傷を負ったという話。 その少女が目の前にいるなのはであると聞かされたティアナの解答は、1つしかなかった。 「すみませんでした・・・・・・」 なのははそんなティアナに頷き1つを返した。 (*) 「じゃあわかってくれたところで聞くけど、ティアナは自分の射撃魔法をどうして信じないの?」 「それは・・・・・・兄を最後の最後で守りきれなかった魔法だから・・・・・・」 ティアナと彼女の兄ディーダ・ランスターの射撃魔法は少し特殊で、通常の半分以下の大きさの魔力球(魔力弾)を使用する。これは誰も使えないから特殊というわけではなく、練る魔力量が少ないため6~8歳の子供が普通の魔力球の練習のために使う。 つまり、リンカーコアがあるものなら誰でもできるという事だ。 しかしほとんどの場合で真っ直ぐにしか飛ばず、誘導性能や機動力など汎用性に優れた通常の魔力球には到底及ばないため使われないのだ。 しかしディーダはこれを究めることによってそれを練習用から実戦レベルにまで引き上げた。 練る魔力量が少ないということはそれだけ早く生成でき、小さいということは空気による減殺が少なくなり、より遠距離に届く。 また、真っ直ぐにしか飛ばないというのは最高クラスの信頼性の象徴であり、なのはの砲撃ですら反動で多少のブレが出る。つまり戦場の原則である『敵より早く、敵より遠くから、敵より正確に狙い撃つことができる』そんな技だった。 事実彼の技術は陸士部隊の目に止まり、装備改編前に負担の大きい魔力砲撃に代わる主力攻撃方法となっていた。 閑話休題 「そっか・・・・・・でも模擬戦でさ、自分で受けてみて気づかなかった?」 なのはの問いかけの意味が分からず首を捻る。 「ティアナの射撃魔法って、ちゃんと使えばあんなに早く撃てて、当たると危な いんだよ」 「あ・・・・・・」 「私は今まで一度もティアナとは撃ち合ったことはないでしょ?だって正面から早打ち勝負したら絶対ティアナの方が早くて正確に当たるから。だから、そんな一番いいところをないがしろにしてほしくなかったんだ。・・・・・・まぁ、でもティアナの考えたこと、間違ってはいないんだよね」 なのはは言うと、隣に置かれていたティアナのデバイス『クロスミラージュ』を手に取る。 「システムリミッター、テストモードリリース。高町なのは一等空尉。承認コード、NCC-1701A」 『OK,release time 60 seconds.(承認。解除時間60秒。)』 解除を見届けたなのははデバイスを起動状態にし、ティアナに渡す。 「命令してみて。〝モード2〟って」 ティアナはそれを受け取ると、おそるおそる指示を出す。 「モード・・・・・・2」 直後銃全体がオレンジ色に瞬いたと思うと 『Set up.dagger mode.』 という復唱と共に変形していく。 フロント・サイト(照星)の付いたマガジンを兼ねるグリップと、ピストルグリップ辺りで折れ・・・いや、折れていた物を引き起こしたというほうが正しい。 ともかく、引き起こされて真っ直ぐになった銃身は、ピストルグリップの下から魔力刃で覆うようにして銃口までつながる。 そして最後に銃口から、自らが作戦時無理やり作った魔力刃より大きなそれが、まるで短剣のように伸びた。 「これ・・・・・・」 自らの相棒の変貌に目を白黒させるティアナになのはは説明する。 「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出て、執務官を目指すようになったらどうしても個人戦が多くなるだろうし、将来を考えて用意はしてたんだ」 ティアナは規定の60秒が経ったのか元に戻ったクロスミラージュを握りながら涙する。そんな彼女になのはは続けた。 「クロス(近距離)はもう少ししたら教えようと思ってた。でも出撃は今すぐにでもあるかも知れないでしょう?だからもう使いこなせてる武器と魔法をもっと確実なものにしてあげたかった。だから1つの技術を身につける事が目的のさくらちゃんとは違ってゆっくりやってたんだけど・・・・・・ゆっくりって地味だから、あんまり成果が出てないように感じて、苦しかったんだよね。・・・ごめんね。」 「ごめん・・・・・・なさい・・・・・・こんなに私のために準備してくれてたのに・・・・・・私、なのはさんの期待に応えられなかったみたいで・・・・・・」 「・・・・・・え?どうしてその結論!?」 「だって2発目の砲撃、なのはさん、結構本気で私を落としにかかったじゃないですか!」 「ああ、それは・・・・・・」 なのはにとって触れたくなかった、できれば触れずに行きたかったこの事柄。しかし残念なことにティアナはその事実に気付いていたのだ。 もし彼女が事前に彼と接触せずにこの場面に遭遇してしまっていたら、バレまいと思って彼にしたときとまったく同じ嘘をついて煙に巻こうとしただろう。 (なんてバカだったんだろ・・・・・・私・・・・・・) この分では自分の教える優秀な生徒達の前では、彼にしたような嘘を見破るなど児戯にも等しきものだったようだ。 だからなのははそれを教えてくれ、さらには受け止めてくれた彼に改めて感謝した。 「ごめん!実は・・・・・・あれは私のせいなの!」 なのははすべてを話した。 彼女自身から湧きあがった黒い考え、そしてそれに至った理由を。 ティアナはこの告知を少し驚いた様子だったが静かに聞き入り、最後にはどこか嬉しそうな表情へと変わっていた。 こうなると納得出来ないのはなのはの方だ。自分は最悪の場合ティアナ自身の魔導士生命に終止符すら打ちかねない行為を教官の身の上で行ったのだ。批難される事こそあっても、その様な表情を浮かべられる場面では無いはずだっだ。 「落ち着いてるんだね」 「はい。だって、私の前にそれを怒ってくれた人がいるみたいでしたから」 「それってーーーーー!?」 「私、宿舎の屋上から見たんです。なのはさんとアルト先輩が言い争ってるのを。・・・・・・先輩すごいですよね、あんなに離れてたのにちょくちょく何を言ってるのか聞こえるって」 「・・・・・・」 「その時は断片的過ぎて先輩がどうしてあんなに怒ってたのかよくわからなかったんですけど、やっとわかりました。たぶんですけど、アルト先輩に嘘をついたんですよね?」 ティアナにどこまで聞かれていたかわからない以上、嘘を重ねても仕方ない。なのはは正直に頷く。 「でも、今話してくれた話は本当の方だった。だからちょっとびっくりしましたけど、なのはさんがちゃんと私と向き合ってくれてるってわかったらうれしくって」 その顔にウソはない。その事実になのはは安堵したが、彼女のセリフはまだ終わっていなかった。 「・・・・・・でも、やっぱりちょっと強引だと思います。不発だったからよかったですが、もし撃ってたら私、ここにいられませんでした」 こちらの心情は察してくれたが、さすがにティアナもあの砲撃を無条件に看過することはできなかったようだ。 そこでなのははひそかに温めていたできれば切りたくなかった打開策のカードを使うことにした。 「ごめんね・・・・・・・それで考えたんだけど、ティアナ言ってたよね?さくらちゃんみたいな教導をしてほしいって。もしティアナが望むなら明日からでもできるけど、どうする?でも私は・・・・・・あー、もちろんティアナ達全員をどこに出しても恥ずかしくないエース級のAランク魔導士にしてみせるよ!だけど私ね、あなた達には―――――!」 「いいですよ、このままの教導で」 ティアナは言うと、座り込んでいたポートから立ちあがって清々しそうな表情で大きく伸びをする。 「本当言うと私、なのはさんに煙たがられてる、手を抜かれてるって思ってたんです。でも、全然そんなことなくて・・・・・・。だからもう、そのことはいいんです。それに今の様子だと、この教導には普通とは違う秘密があるみたいですし」 「にははは・・・・・・」 危うく言いそうになったが、立場上はにかみ笑いで応える。しかし内心切り札のカードの無力化に焦っていた。 「(これ以上私がティアナにしてあげられることなんて・・・・・・)」 「そこで私から一つだけお願い、聞いてもらっていいですか?」 「なに・・・・・・かな?」 脳裏を最悪の可能性が過る。 小さきは自らの職権の乱用、果ては犯罪まで。ティアナがそんなこと願うわけないと思ってはいても、彼女の魔導士生命を奪うかもしれなかった対価としてはそれも止むをえぬとも思えてしまっていた。 だからティアナの次の言葉を聞いた時、なのはは心底安心したという。 「もう一度、模擬戦を受けさせてください!」 なのはは自らの生徒の純真さと安心感に万感の思いをもって頷き、それに応えた。地平線の先に見えていた月は軌道の影響で沈まず、新たに登ったもう1つの月とともにクラナガン湾を照らしていた。 (*) スバルには2人の会話は聞こえなかったが、どうやら和解できたようなのでそっと胸を撫で下ろした。 そんな彼女の肩が〝とん〟と叩かれる。振り返るとさくらが〝昨日と同じジェスチャー〟をしていた。 その意味を即座に理解したスバルは頷くと、ここにいたギャラリーと共にその場から撤退した。 (*) なのは達が戻ってきたのは10分後だ。2人はロビーに入るなり驚く。 「よぅ、遅かったじゃねぇか」 婉曲語法で2人を迎えたヴィータの手には数枚のトランプが握られている。 また彼女だけでなく、シグナムやシャーリー、アルト、さくらにフォワードの3人と総勢8人が1つの机を囲んで同じようにトランプを握っていた。 「・・・みんなどうしたの?」 しかしなのはの問いはアルトの宣言でかき消された。 「いざ、革命!」 放られる1枚のジョーカーに3枚のファイブ。しかし上には上・・・・・・いや、下には下がいた。勝ち誇った顔をするアルトの前に4枚のスリーが放られたのだ。 驚愕するアルトに放った主が厳かに告げる。 「勝ちを急ぎすぎたな大富豪よ」 シグナムは微笑を浮かべると8切りして4を投げると1抜けした。 盛者必衰。アルトは一気に都を追われることになった。 悔しげに項垂れるアルトと大富豪に興じる人々。なのはとティアナは石像を続けていると、背後の入り口の扉が開いた。 「お、やっとるやっとる~」 現れたのは何か箱を持ったはやてとフェイトだった。箱には〝ビンゴ抽選機〟とある。 「いったい何事なの?」 なのはのその問いに、はやては笑顔で答える。 「さくらちゃん発案のビンゴ大会や。・・・・・・おーい!みんなこっから1枚とってな」 はやての呼び掛けに大富豪に興じていた人々がわらわら集まって来て、ビンゴカードの束から1枚ずつ引き抜いていく。 「さぁ、ティアナさんもなのはさんもどうぞ」 空気から取り残されていた2人もさくらに招き入れられ、和やかな、そして楽しげな人々の輪の中に入っていった。 (*) そのビンゴ大会はひどく白熱した。賞品として先着3名にゲームに参加した者なら一度だけ言うことを聞かせられる〝王様カード〟なるはやて特製の手作りテレカが手に入るためであろう。 途中ロビーに来た天城が司会進行を申し出たり、ヴィータがビンゴ抽選機(取っ手を回して番号のついたボールを出す機械)を盛大回して誤ってぶちまけるハプニングがあったりと波乱を巻き起こした。 しかし誰の顔からも笑顔は片時も消えず、階級などない学校のレクレーションのように和気あいあいと進行した。 そしていろいろあって何度か振り出しに戻り、3枚目になってしまったビンゴカード。おかげでまだ勝利条件であるトリプルビンゴに到達した者はいなかった。 「─────54番!さぁ、誰かいませんかぁ!」 天城がハイテンションで転がり出た球の番号を読み上げる。それに1人の少女がニヤリと微笑んだ。 「ふ、みんな済まねぇな。トリプルビンゴだぜぇ!」 ヴィータが雄叫びと共にカードを持った右手を突き上げた。 そして天城から王様カードを受け取ると、〝ビシッ〟とアルトを指差した。 アルトは自らの一列も埋まっていないカードを見て覚悟を決める。 そしてヴィータは王様カードをどこぞの長者番組の紋所のように彼にかざすと、高らかに宣言した。 「早乙女アルト!私と明日勝負しろ!」 極めてヴィータらしい命令にアルトはため息をつく。今や彼の方が上官なので拒否権がないことはなかったが、余程と言える断る理由が思いつかなかったようだ。 「仰せのままに・・・・・・」 体の演技こそ王妃に従えるナイトのようであったが、不服そうに答えたという。 (*) その後また振り出しに戻るなど激闘が20分ほど続いてようやく残りの2枚の行き先が決定した。 それはどういう因果かティアナとアルトであったが、2人ともすぐには権利を行使せず、夜も遅かったのでそのまま解散する事になった。 (*) 次の日 スターズ分隊の再模擬戦は、引き分けに終わったライトニング分隊の後に行われた。 2人の機動は訓練通りだが、クロスシフトAからBや、BからAの変更の流れは滑らかで、なのはをずいぶん手こずらせたという。 そして───── (*) スバルの連続攻撃とティアナの間断ない誘導弾の攻撃を受け、白いワルキューレは遂に地上に引きずり下ろされた。 しかし地に足を着いた彼女の砲撃力はそれでも強力であり、高度の優位に立ったスバルでも近づけなかった。 だがそんな彼女の前に虚空からティアナが現れた。 この間合い、シールド展開は間に合わない。まさに一騎打ちの早撃ちの距離だ。 どうやら早撃ちなら勝てるという助言に忠実に従ったらしい。 だが───── (甘い!) なのはは魔法の起動の邪魔になるレイジングハートを右手に持ちかえると、利き手である左手の人差し指をティアナに向ける。 「クロスファイヤー、シュート!」 放たれる小型魔力弾。確かにティアナの射撃魔法は優秀だが、その魔法を模倣できないわけではない。 なのはとの勝負においては単純な魔法の起動時間の勝負ではないのだ。 (惜しかったけど残念だったね) なのはは勝利を確信した。しかしここは地上。つまりティアナのフィールドだった。 魔力弾はティアナを貫通して、そのまま彼女ごと消えた。 「フェイク(幻影)!?」 続いてレイジングハートが右から飛翔してきた魔力弾によって弾かれ、地面に転がった。 「え!?」 そちらを見ると、砲撃用魔法陣を展開したティアナがいた。 そう、何もかも罠だったのだ。 わざと目の前に出現して助言に従った一騎打ちが狙いであるようにアピールして見せたのも、なのはが砲撃を行わずいつもの癖でレイジングハートを持ちかえる(デバイスにプログラムされていない魔法を本体経由で使おうとすると、無駄に処理しようとして発動が少し遅れるため)のも、全てティアナの狙い通りだったのだ。 あたかも助言に従った演技をすることによって、本来レイジングハートによって飛行魔法などの面において優越するがゆえに、選択肢が多いはずのなのはの選択肢を完全に奪い取る老獪な罠。 なのはは急いでレイジングハートに駆け寄るが間に合わない! 結果として右手のビルの2階から放たれたオレンジ色した魔力砲撃が、無防備の彼女を直撃した。 (*) 「やったぁ!」 ティアナがビルから出てくると、彼女を迎えたスバルにハイタッチした。 なのはは晴れていく煙の中から姿を現すと、そんな2人に笑いかけた。 「うん。文句のつけようがないくらいいい戦いぶりだったよ。それに一撃どころか撃墜されちゃうとはね」 教官の面目丸つぶれだよ~と彼女は嬉しそうに苦笑すると、遠くで観戦するライトニングの2人に集合の合図を放った。 (*) 「みんなお疲れ様。今日は午前までで訓練は終わりだけど、定期模擬戦のレポートを書いて今日の18時までに提出してね」 「「はい!」」 4人は今回引き分けか勝ちだったので気分は良さそうだ。いつもの訓練終了時と違って覇気があった。 「あと、解散前に私から渡すものがあります」 『何だろう?』という顔をする4人の前に、昨日渡すはずだった4冊の冊子を取り出した。 「今日は訓練開始から6カ月の節目の月だからね。これまでやってきた訓練の要点とかアドバイスとかをまとめてあります。暇な時でいいから目を通してね」 「「はーい!」」 4人はそれを受け取ると、互いに目配せしながら指示もないのに整列した。 「え?・・・・・・みんなどうしたの?」 ティアナが代表するように応える。 「実は私達、昨日話し合って、なのはさんに伝えたいと思ってた事があるんです」 なのはからすると全く意表をついたものであり、何を言われるか少し心配したが、先を促す。 すると4人は声を揃えて合唱した。 「「半年間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」」 それはまるで小学生のようなお礼の言葉だったが、心がこもっているためノー・プロブレム。 なのはは最上級の笑顔で 「こちらこそ」 と応えた。 この時、なのはは照れ笑いする自らの教え子達を見て誓ったという。 『この子たちは絶対私の手でどんな状況でもあきらめずに打破できるような一流のストライカーにして見せる。他の生徒のように短期ではできなかったけど、この子たちなら絶対大丈夫。だから何があっても、誰が来ても、この子達は落とさせない。私の目が届く間はもちろん、いつか一人で、それぞれの空を飛ぶようになっても』と。 (*) さて、昼頃から始まったアルトvsヴィータの模擬戦だが、一進一退の攻防をみせた。 そのため我慢出来なくなったさくらとフェイトが、続いて天城とシグナムが参戦する大演習となった。 勝敗についてはまた機会があれば記述したいと思う。 その2週間後、サジタリウス小隊の出張任務は解かれ、別れを惜しみつつフロンティア航空基地に帰投した。 ―――――――――― 次回予告 アルト達が第一管理世界に来てからここまでで半年が経っていた こんなにも長い間、第25未確認世界は指をくわえて一体なにをやっていたのか!? 次回マクロスなのは第25話「先遣隊」 想い人を奪われた少女の思いが炸裂する―――――! ―――――――――― シレンヤ氏
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あらすじ ティアナはクヌソ漬けだった シャマルは八卦集にはなれなかった シグナム「ベルカの騎士団入りませんかー」 なのは「ジュエルシードもおまけでーす」 フェイト「そこのオペレーターのお姉さん、ジュエルシード持ってかない?」 シャリ「いりません・・・」 スバル「やっぱり無理ですよ・・・」 シグナム「ロストロギアをおまけにしたら余計に引かれてるじゃないか・・・」 なのは「やっぱり開けてびっくりレリックのほうが良かったかな・・・」 フェイト「そんな事言ったって、今日中に一人は入らないとベルカの騎士団改め冥王八卦集が設立できないじゃない」 エリオ「残り一人・・・ここまで集まったのも強制みたいなものだけど・・・」 キャロ「でも、このロストロギアはどうしましょう?」 ティアナ「そもそもこんな物どこから・・・」 フェイト「ああ、それならアースラにあるハラオウン王国に返しておきましょう」 クロノ「くああああああああああああ!!!!ジュエルシードが一つ残らずなくなっとるううううううううううううううううう!!!!昨日あんなに丹精込めて植えたというのに・・・」 これは 新 発 見 だ ! クロノ「ジュエルシードを地面に植えると消滅する・・・ノーベル賞は僕の物だああああーーーーー!!!」 ボトボトボトッボトン・・・ フェイト「使えないわね・・・」 シグナム「全くだな、あ、同化したぞ」 なのは「バスター!!!・・・扱いのめんどくささだけはノーベル賞ものだと思うの・・・」 クロノ「あいつら・・・まさか・・・ロストロギアを・・・ん?」 リ リ カ ル 冥 王 八 卦 集 クロノ「冥王八卦集!?」 フェイト「今日中に後一人・・・」 なのは「夢にまで見た冥王八卦集・・・はやてちゃんもびっくりするよ!」 クロノ「・・・なんだこの感じ・・・心が震えている・・・艦長職と機動六課後見人を受けた時から前線に行く事はもうないかと思っていたが・・・ 僕の 青春 はまだ終わっちゃいないようだ・・・!!そこんとこヨロシク!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 昼時 スバル「訓練場なんていじって・・・どうするんですか?」 ティアナ「ここ、あまり人来ませんし・・・宣伝になるとは思えませんが・・・」 なのは「甘いね、二人とも・・・キャロ、フリードでみんなを上空に連れて行ってあげて」 キャロ「は・・・はい・・・?」 ティアナ・スバル「?・・・・・・こ・・・これは!!」 ビルの形で 冥 王 八 卦 集 シグナム「完璧だ!」 なのは「ありがとう!」 エリオ「誰が見て解るんだこんなのーーー!!!!」 前へ 目次へ 次へ