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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-4 「試図」 作り出した主の命を待つ氷の矢、それはタバサが得意とする魔法『ウィンディ・アイシクル』。 チーフは右手にハンドガン、左手にデルフリンガーを手に取る、戦闘態勢は整った。 掲げるはメイジの杖、従うは氷の矢、狙い定めるはルイズの使い魔。 構えるは兵士の銃、狙うは氷の矢、撃ち抜くは攻撃の魔法。 杖を振り下ろすと同時に撃たれた氷の矢。 三度の発砲、迫る十数の矢。 着弾までの時間に撃てるのは三発、回転して飛来する氷の矢が三つが砕ける。 その三つは被弾の可能性が最も高い物。 そうして前へと踏み出し、全力で駆け出した。 「………」 十数の氷の矢が地面に突き刺さり、巻き上がった砂埃を見るタバサ。 『ウィンド・ブレイク』 突風が吹き、砂埃が吹き飛ぶ。 晴れた砂埃から現れたのは平然としたチーフ、立ち上がりタバサを見ている。 (当たらなかった……?) 幾つかは砕けたが、確かに当たったのが見えた。 なのに……。 さすがにこの距離では何が起こっていたのかよく分からない。 だったら、近くで確かめるだけ。 レビテーションを解き、タバサが落下し始める。 『ブレイド』 落ち行く中、呪文を唱えると同時に杖が魔力を帯びて刃と成る。 『エアシールド』 立て続けに呪文を唱え魔法を発動させる。 『レビテーション』 地面から数メイル、呪文の効果により浮力を得て落下が止まる。 『ウインド・ブレイク』 と同時に爆発的な加速、轟音を伴って低空を駆ける。 肩に担ぐように持つ杖はさながら長槍、一撃で敵を切り伏せる大刃。 「っ!」 タバサとチーフが交錯、烈風が木々の葉を揺らし、散り落ちる。 振り払った杖の刃は大地を薙ぎ、大きな亀裂を作る。 最大に近い速度で避けられた、反応速度も並じゃない。 あれを見て「あの使い魔に勝てるのか」と感情が揺れる。 だが、それをすぐにかき消す。 雑念を持てば負けに繋がる、感情を排除。 『私は人形、私は人形、私は人形、私は人形、私は人形。 負ける事が無い必勝の存在』 ただ戦い、勝利を収める人形。 思うのは勝利した姿、あの技術は必ず自分強くする。 なんとしても手に入れたい、そうすればまた一歩念願に近づける。 『線』で避けられるなら『面』で打ち、動きを止めて『点』で打つ。 耐えられる最大戦速、次は外さない。 大地を蹴って奔る、自身が風の奔流となり隙無く牙を剥く。 狭く灰色の視界、その中心には剣を持つルイズの使い魔。 「エア──」 タバサは討つための魔法を放った。 読唇術、唇の動きを読み取り打ち出す魔法を察知する。 氷の矢のように予備動作が全く見えない魔法に間接をロック、可動領域を固定、避けれないと判断して身体に掛かる衝撃を極力軽減する。 間接ロックとシールドに頼り、あとは意識を手放さないようにするだけ。 途端、周囲の地面が凹み、撥ねられた様な衝撃。 高密度の、空気の塊が押しつぶさんと圧し掛かる。 地面を穿ちりながらも振り下ろされた空気の槌によって減少したシールドは、約30%。 「異常だ」 考える暇は無い。 ロック解除、高速で飛翔するタバサとの距離は5メイルも無い。 「相棒!」 腰から引き抜くと同時に魔力の刃と物質の刃がぶつかり、弾き上がったのは両方。 極小の視界の中で、目を見開いた。 ラインクラスのゴーレムでも潰れているであろう衝撃に耐え切った使い魔。 「ふざけてる」 視界が回転、地面に叩き落付けられたわけでも、投げ飛ばされたわけでもない。 瞼を開くと映るのは自分の顔。 金と橙を混ぜ合わせたような色の、鏡のようなチーフのヘルメット。 自分の顔を見て思い出した、壊された母と、消されてしまった父の顔を。 私は……、もっと強くなりたい。 抱えたタバサは瞳はうつろで、視線が定まっていない。 『ブラックアウト』、いや『グレイアウト』も併発しているかもしれない。 だが、そんな状態なのに今だ動けるのは驚嘆に値する。 海兵隊以上にタフな精神力を持っているかもしれない。 「貴方は、どうして……?」 たどたどしい言葉で問う。 ここまで彼女を駆り立てるのは何か。 「知りたいなら教えるが、二つ約束してほしい」 どちらも重要な事、外すことは出来ない。 それを聞いてタバサは頷く。 「一つ目、聞いたことは他の誰にも話すな」 頷く、少しずつだか目に力が戻り始める。 「二つ目、先ほどの魔法は使うな」 「さっきの?」 「高速で飛び回るやつだ」 急激な加速により、脳内血液が一箇所に固まったり。 下半身に溜まる事で後遺症を伴う、脳内組織の破壊を招くことがある。 それこそ脳の損傷で死に至る場合もある。 初見だが、あれは使い慣れている。 タバサには、使わなければ行けない状況が幾つかあったようだ。 「守れるか?」 タバサは小さく頷き。 「教えてくれるなら、守る」 「で、どういうことかしら?」 ビキビキブチッっとルイズの血管が切れていた。 タバサは視線を逸らし、キュルケは何とか諌めようと、チーフは転倒したワートホグを起こしていた。 「こ れ は ど う い う こ と か し ら ?」 鬼が居た、紛れも無く鬼が居た。 事の経緯はタバサとチーフの戦闘が始まったとこから。 キュルケに抱えられて運ばれたは良いが、逃げてきた方向から凄まじい轟音が響いてきた。 恐らくはタバサが放つ魔法に対してチーフが対抗したためだろうか。 「チーフッ!」 「あ、ちょっとルイズ!」 キュルケの腕から逃れ、チーフが居るだろう場所へ駆けた。 「チー……」 名前を叫びながら、倒れた木々を乗り越え身を乗り出すと。 膝を着くチーフと、そのチーフに抱えられたタバサが居た。 見つめあって動かない二人の姿を見て、ルイズは先ほど以上に激怒して今に至る。 そのルイズ(鬼)を直視できないタバサが呟いた。 「必要だったから」 「はぁ!? 必要だったから!?」 「まぁまぁ、ルイズ。 少し落ち着きましょ?」 「は ぁ ~ ?」 ギギギと回るルイズ(鬼)の首。 うわぁ、とキュルケも目を逸らした。 「あんなのどこが必要だったわけ? 下手したら大怪我じゃすまなかったかもしれないのよ!?」 別段チーフがと言うわけではなく、タバサもその可能性があったと言った。 「確かめたかった」 「何を!?」 「彼が、なぜ強いのか」 「……、どうしてミス・タバサが──」 「タバサでいい」 「──タバサがそれを確かめる必要があったの?」 「私にとって必要だから」 「必要なら他人を傷つけても良いって言うの!?」 チーフに怪我は無い、だがもし他の人なら……。 周囲は戦闘により、かなり酷い状況になっていた。 木々は倒れ、大地には亀裂と陥没の跡。 相手がチーフじゃなかったらどうなっていたか……。 タバサの実力と共に、その状況に寒気が走る。 「……必要ならば、傷つける」 今度は目を逸らさない、ルイズの瞳にタバサの瞳が映る。 凄惨な覚悟、タバサの瞳は揺らめきもしない。 ルイズも視線を逸らさず、タバサの瞳にルイズの瞳が映る。 「はいはい、そこまで」 二人の間に割ってはいるキュルケ。 「ルイズ、どうしたらタバサの事許してくれる?」 「………」 ルイズはタバサを見て。 「二度としないなら、許してあげても良いわよ」 フン! と腕組みして顔を逸らす。 「と言うことよ、タバサ」 「二度目は無い」 即答してキュルケが優しく微笑む。 「それじゃ、この話は終わりね」 3人をよそに、横転したワートホグを起こし運転席に座って、エンジンを掛けるチーフ。 「チーフ、帰りましょ!」 手打ちになり、ルイズは助手席に座る。 「ええ、そうしましょ」 とキュルケが銃座の前に立ち、タバサはシルフィードに乗る。 「ちょっと! 何勝手に乗ってんのよ!」 「タバサもこっちに乗りなさいよ」 「無視すんじゃないわよ!」 いい、と呟くタバサ。 ほらほら、そんな事言わないで、とシルフィードからタバサを下ろしてルイズの隣に座らせる。 文句言いつつも結局は座らせるルイズ。 助手席に小柄な少女が二人、銃座の前に長身の少女が一人、本来3人用だがそこは何とか。 4人乗っても、なお速度が衰えないワートホグから楽しそうな悲鳴が響いていた。 「おーい、俺は置いてけぼりかー?」 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-16「真意」 「杖を失ってまだ抵抗するか、それとも予備の杖でも手に取るか?」 場所はニューカッスル城の城壁内にある礼拝堂。 その中に四つの影、その内二つが激しい魔法の打ち合いをしていた。 それは長くは続かず、傷一つ無く笑みを作り浮かべるワルドと、全身に浅い傷を作り膝を着くタバサであった。 お互い放った魔法の風がぶつかりあい出来上がったカマイタチで、いくつも皮膚を切り裂かれて血を滲ませていた。 それを見据えるワルドはタバサの将来を感じさせる才覚に、多少なりとも驚いていた。 それと同時に遺憾の意、己の道を塞ぐ邪魔者である事に残念な思いを抱いた。 邪魔をするなら排除せねばならん、そう思い睨むような視線をタバサへと向ける。 「まさかとは思うが、その腰の玩具で立ち向かうか?」 ワルドが言う通り、タバサにはこの手しか残っていない。 杖は弾き飛ばされ、魔法は使えない。 いや、既に魔法の力量の差が顕になっている以上、魔法で対抗するのは自殺行為に等しい。 今のタバサには剣の一撃に掛けるしか勝つ手段は残されていない。 「………」 深く、ゆっくりと深呼吸。 落ち着かせて、右手に剣の柄を握る。 「……良かろう、お遊びに付き合ってやろう」 子爵は落胆したようにため息を吐き、一言。 立ち上がりながら鞘を固定するために巻きつけていたベルトを、弾いて外す。 自重に引かれ、落下する鞘を利用して剣を抜き取る。 カチン、と軽い金属音が鳴り鞘が転がった。 「……始める前に一つだけ聞かせてもらおう、何故そこまでする? 逃げるなら見逃してやっても良いというのに」 「……頼まれた、だからここに居る」 「それだけか? それだけの為に一つしかない命を無駄に散らすのか?」 「………」 もう話すことは無いと、タバサは黙りこくる。 応えないタバサを見て、ワルドは愚かなと呟いた。 戦いはすでに始まっている、子爵は魔法を使う気が無いのかただレイピアを構えるだけ。 お遊びに付き合う、剣のみでの戦いをやると言うことか。 ……ならば付き合ってもらう、この剣で、教わった戦い方で子爵を倒す。 身を低く、素早く、一撃で、斬る。 大の男に対して長期戦は不利になる一方、故に、短期決戦。 そう決めてタバサが動いた。 流れる水でありながら、空を切る風。 ワルドの守りが一番薄い箇所、そこに狙いを付けかく乱。 「ぬっ」 キンッと金属音、膝を着いた時に握っておいた小石を、ワルドの顔に向け放った。 ワルドはそれをレイピアで弾く、そして生まれる隙。 持てる最速で駆け、斜め下からの右腕を狙い切り込んだ。 その速度、ワルドは自身を上回る速さに驚きながらも、辛うじて攻撃を防ぐ。 「チッ!」 防いだ時には高速の斬り返し、刃が翻ってワルドの右脇腹に向かっていく。 「このッ!」 それも辛うじて防ぐ、ほんのコンマ数秒遅れていたならば脇腹を切り裂かれていた。 圧倒的なスピードと手数、ワルドは一瞬で守勢へと回された。 攻撃を繰り出す暇がない、刃を防ぎ、押し崩そうとすればすでに別の箇所へと攻撃を繰り出される。 ここでワルドは後悔する、茶番に付き合うべきではなかったと。 二合の打ち合い、それだけでタバサは自身の近接格闘能力を上回っていると判断した。 単純に速い、一極特化型のタイプであるが故に追随を許さない。 追いつけないワルドはただ守りに入るしかなく、攻撃に転じれば一撃で命を持って行かれかねない。 だからワルドは守りのみに集中する、この速度で長時間の攻撃は無理だとタバサを見て判断した。 逆にタバサは攻め倦む、どの攻撃も辛うじて防がれ、ワルドの身に入ることはない。 これが最速、これ以上は無い。 今だ数合しか打ち合っていない攻防だが、決着は付いたと言えた。 全力を持って攻撃を加えるタバサ、それを辛うじて防ぎ続けるワルド。 そうして動かなかった推移は徐々に傾き始める、タバサの体力消耗によって。 「ッ」 ゆっくりと速度が鈍り始める、万全の状態ならまだ持っていたはずだった。 今のタバサの身は怪我が多い、切り傷擦り傷で血が滲み流れ出る。 痛みもあるし、打ち身だってある。 気にするほどでもない小さな傷であったが、確実にタバサを死へと追いやる物であった。 だからこそ、タバサは賭けた。 こちらが攻撃を緩めれば、確実に向こうは攻勢に出る。 狙いはそれを用いたカウンター。 いわゆる『肉を切らせて骨を絶つ』、捨て身に近い攻撃であった。 タバサの狙い通り、攻撃速度、手数が減っていけばワルドは攻勢に出始める。 攻撃一辺倒から回避を取り入れ、ワルドの攻撃を避ける。 余裕が出来たのか、ワルドは笑みを浮かべ始めていた。 一瞬の緩み、攻勢に移れると判断したときに生まれた隙。 まさに目論み通り、最後の力、搾り出した最速の一撃をワルドの身に打ち込んだ。 「やはり、か」 捨て身の突きは確かにワルドへと届いた、だが狙っていた場所には届いていない。 痛みにお互い顔を歪め、タバサは狙いが外れたことを悔やむ。 ワルドのレイピアはタバサの肩を貫き、タバサの剣は胸への攻撃を防いだ腕に突き刺さっている。 「その身で見事」 跳ね上がったワルドの足、つま先がタバサの腹に突き刺さり、大きく身を圧し曲げる。 「だが未熟」 衝撃でレイピアが抜け、一歩下がったタバサに再度突き出された。 腹部の鈍痛に苦しみながらもその身をそらし、倒れながらも飛び退き回避した。 しかし鈍った体では避けきれず、左鎖骨を抉る一撃となった。 「ッァ」 派手に飛び仰向けに倒れ、苦悶を漏らす。 それを見下ろすのはワルド。 「驚くべき、と言った所か。 ままごとかと思えば並みの者を切り伏せる速さ、見かけに騙されたか」 立ち上がろうとして左腕に力が入らない。 視線を自分の胸に落とす、そこには肉とそれを赤く彩る血で濡れていた。 「その武器格闘術、高い水準と言わざるを得ない」 そう言って左腕に刺さっている剣を抜き捨てる。 剣が落ちて甲高い音、そしてワルドがレイピアを構える。 「魔法の才もかなりのものか、何れは優れたメイジとなるかもしれんが……」 杖先、レイピアの切っ先に光が灯る。 魔法行使の予兆、狙いは勿論タバサ。 「未来は無い」 振り下ろされる一瞬の間に悔やんだ。 結局は何も出来ない、こんな所で屍を晒す。 お父様の復讐や、お母様を治してあげることも出来ない。 彼に教えてもらった事が、ただ一度実践で使ったっきり。 それもただ敵の腕を貫いただけ、それは上手く扱えていない証拠。 私は弱く、そして弱いまま生を終える。 「っ!」 悔しい、溢れ出た涙が頬を伝う。 悔しい、肩の怪我と腹部の痛みがそれを助長する。 悔しい、私は、何も出来なかった。 タバサ、ルイズ、ウェールズの命はここで終わる。 ワルドがその身と魔法を使い、引き裂くだろう。 そしてそれは一分も掛からず終わる、そうなるはずであった。 「ッ、何だ!?」 ワルドが杖を振り下ろす直前、礼拝堂の天井が吹き飛び、大量の埃を舞い上げながら何かが落ちてきた。 飛び退き、崩れた天井の瓦礫を見る。 ここでワルドは人生で最も致命的なミスを犯した。 障害物に隠れるなり、ウェールズやルイズを人質にでもするべきであった。 『自分は強い』と言う過信、何が来ても正面から打ち据える事が出来ると言う思い込み。 「ナ」 その代償、耳を塞ぎたくなるような激しい炸裂音。 衝撃がワルドの右手を揺らし、一歩後退させた。 「グッ、アァ……!!」 右手の甲を抉り沿い抜けた何か、余りの衝撃でレイピアを取り落とす。 超高速、風を持ってしても認識出来ない何か。 皮膚が抉れ、肉が抉れ、骨が見える。 「なに゛」 焼けるような痛み、まるで炎に炙られるかのような初めて感じる痛み。 それは攻撃、天井を突き破って落ちてきた何者かが放った攻撃。 どのような攻撃か、瞬時に恐れを抱いた。 「ガッ!?」 さらに土埃の向こう側から炸裂音。 左太腿に衝撃、激しい痛みと共に蹴られた様に左足が下がった。 「グゥウオォ……」 辛うじて倒れるのを押さえ、右足だけで立つ。 見れば左足の太腿、ズボンに穴が空きその下からドクドクと血が流れ出ている。 その傷を見てまさかと、しかしありえないとも思う。 こんな威力のある銃など……。 そんな疑問を吹き飛ばす、この攻撃を放った存在が土埃の向こう側から飛び出してきた。 「チーフ!」 皇太子の傍に居るルイズが叫ぶ、邪魔をするのは使い魔か! 魔法は使えぬ、右手は痺れ、左足は傷を負う。 まともに戦えぬ中、相手をしなければならないのは全身をくまなく包むおかしな鎧を着た大男。 「クゥオオオォォォ!!」 力を込める、無様な姿勢の威力の無い拳。 成し遂げなければならない願い、邪魔はさせぬと全力を込める。 「──ッガ!」 だがその思いは、ガンダールヴとの接触によって儚くも終わる。 突き出した左拳を絡め取られ、床に叩き付けられるようにうつ伏せに倒された。 立ち上がろうとすれば、左腕を背中に回され締め上げられる。 そうして腰に掛かる凄まじい重み。 「グオッ! こ、このようなことがぁぁ!!」 骨が軋むような、強烈な締め上げ。 負けぬと言う思いとは裏腹に、現実には体を押さえつけられてこれ以上の抵抗は出来ない。 私の願いは終わったのだと、それを悟れば全身から力が抜けた。 その出来事を半場呆然に見つめていたウェールズ。 タバサ嬢が子爵と猛攻を繰り広げ、惜しくも打ち負けた。 いよいよ持って、このような終わりを迎えるのかと悲観したところに。 天井を突き破ってきた竜とその背に乗る子爵を倒した者、緑を基調とした2メイルを超える……恐らくゴーレムが落ちてきた。 視線をやれば膝で踏みつけられ倒れ伏し、少しも動かない子爵。 右手と左足から血が流れ出ていた。 何がどうなった、天井を突き破って落ちてきた全身緑と黒の鎧を着た存在が、子爵をいとも簡単に打ち伏せた。 落ちてきたもう一方の竜はタバサ嬢に擦り寄っている、恐らくは使い魔だろう。 「……ルイズ、怪我は」 「無い、無いわ。 どこも、怪我してないわ」 そんな考えを他所に、緑色のゴーレムが話しかけてきた。 ヴァリエール嬢は平然と、声からして男の問いに答える。 ヴァリエール嬢が擁する兵士か何かか、しかしながら助かった。 あと少し遅れていたら、僕とタバサ嬢は子爵に殺され、ヴァリエール嬢は連れ去られていたかもしれない。 「チーフ、……死んで無いわよね?」 「生きている」 ヴァリエール嬢がチーフと呼ばれた全身鎧の男の足元を見る。 そこにはぐったりと、力の抜けたような子爵が踏み敷かれていた。 「チーフ、と言ったね。 助かった、感謝する」 「いえ」 膝で子爵を押さえ込んだまま、変わらずの姿勢で応える。 ヴァリエール嬢を伴い立ち上がり、杖を取り出してタバサ嬢の元へと歩む。 ゆっくりと起き上がっていたタバサ嬢に向け杖を振り、治癒魔法を掛ける。 「感謝」 「こうできるのも彼のお陰だ、謝意は彼に述べると良い」 それを聞いて頷き、チーフ殿の下へ歩むタバサ嬢。 それに続き、同じくチーフ殿の下へ歩む。 「………」 一通りの会話、タバサ嬢が謝意を述べ、それを聞いて頷くチーフ殿。 ヴァリエール嬢がどうやってここまできたのかと問えば、歩いてきた、最後は飛んできたと応えるチーフ殿。 そういった問答が終わり、四人がチーフ殿に押さえつけられる子爵を見る。 「子爵、一つ聞きたい」 襲撃が失敗した今、子爵に反撃の余地など残っては居まい。 「……何でしょうか」 「何故裏切った」 その問いに、子爵は一間以上の間隔を空け、ゆっくりと喋りだした。 「力を手に入れたかったのです」 そう語りだした子爵の声は、なんとも悲観が篭った声だった。 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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時計は動くのを止め 奇妙な和音は静かに響く 終わりを告げる様に もうそろそろ瞼閉じて 伝えられてるかどうかの答えは 貴方に託した それなら命を失う事にも… 輝くものは 未来の道標 だから僕に 後悔などないから 静かな風に半身の光 『独りでなんて逝かないで』 『どうか私と最期を』 この冬の過ぎる頃には 終わった戦いが記憶に溶ける 仲間の居ない場所で あとどれだけ頑張れるだろう 『でも貴方の望み果てへでも』 『それが希望なら』 この身の滅びるその限界まで 失う時が いつか来る事も 知っているの 貴方は悲しい程 それでも何故生きようとするの (…と、過去の自分が囁く) そんな寂しい期待で 輝くものは 未来の道標 だから僕に 後悔などないから 静かな風に半身の光 『独りでなんて逝かないで』 自分の半身 崩れて消えていく 最後を共に 名前を呼んで 身体に帰す これが最後だから 「貴方が居たから自分で在れた」 「ふたりで希望見届けよう」 そして私と最後を どうか彼らに未来を 原曲【鬼束ちひろ「私とワルツを」】 元動画URL【http //www.nicovideo.jp/watch/sm2049764】
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レイトン教授と最後の時間旅行 2010/01/05 クリアヽ(゚∀゚ )ノ シリーズ通して初めて攻略サイト見ませんでした。 ※総評は後日 2010/01/03 現在165問。残りあと3問(`・ω・´) 2010/01/02 一応本編はクリア。 ただしこのシリーズは全ての問題を制覇してクリアとしてます。 本日は問題を20問解いて合計147問。 あと20問くらい? 2010/01/01 wi-fi問題を8問解きました。 これでwi-fi問題は全部制覇! 2009/12/31 本編を19問、wi-fi問題は25問解きました。 2009/12/30 今日は頑張って本編を25問解いて合計100問over。 wi-fi問題は10問解きました。 2009/12/29 本編を9問、wi-fi問題を5問解きました。 2009/12/27 本日は本編を10問、wi-fi問題を2問解きました。 2009/12/26 超久々にプレイ( ・ω・) まさかこんなに間隔が空いてるとは思いませんでした。 wi-fi問題も全て配信されていますしね。 とりあえず本編を7問、wi-fi問題を1問解きました。 2009/02/07 久々にプレイ( ・ω・) 6問解いて合計56問。 2009/01/25 10問解いて合計50問。 あとwi-fi問題をダウンロードして 1問だけ解きました。 2009/01/19 5問解いて合計40問突破! 2009/01/18 今日はちょっとだけ頑張った(`・ω・´) 5問解いて合計35問。 2009/01/17 ゆっくり3問解いて合計30問。 2009/01/16 ようやく第三章。 2問解いて合計27問。 2009/01/15 ひっそり3問解いて合計25問。 2009/01/13 こっそり2問解いて合計22問。 2009/01/12 手堅く3問解いて合計20問。 2009/01/11 今までのシリーズよりも解くのに時間がかかってますが、 それは前に解いてるものを覚えているからです( ・ω・) 今日は3問解いて合計17問。 2009/01/10 今日も2問だけ解いてみた( ・ω・) 合計14問。 2009/01/09 時間あったけど2問だけ解いた。合計12問。 2009/01/08 時間がなくて3問だけ解きました( ・ω・) なんとなく前より問題が簡単になってるような気がします。 ようやく合計10問。 2009/01/07 今日もの前日比の倍解いてやりました(`・ω・´) これで合計7問。wi-fi問題は今のところパス。 2009/01/06 今のところ昨日の倍(2問)解きました(`・ω・´) 合計3問になりますね。 2009/01/05 昨年の発売日に買ったゲームをようやく開始。 といってもシナリオ1問解いただけw
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-15 「敵意」 がさりがさりと生い茂る草木を掻き分け、森の中を進む一つの影。 軽く高さ10メイルはある樹木の、空を隠すほど生い茂った葉が太陽光を遮り、森の中は薄暗くなっている。 視界は差して良くは無い、集中すれば何とか見えると言う程度。 そんな深い森の中で緑色の全身鎧を着た大男が、青く長い髪を持つ全裸の少女を肩車して歩いているなど考え付きもしないだろう。 そんなチーフとシルフィード、もといイルククゥは悪路もなんのその、構わず進んでいく。 整えられた街道、そちらの方が速いのだが、やはり人目に付きたくはないために森の中を突っ切る。 それでもだ、チーフの進行速度は目を見張るものがある。 草木を掻き分けて進む、それは文字通り手で跳ね除けて進むわけだが。 鎧を着ているチーフにとっては意味の無い動作、幾ら草木がアーマーに擦ろうが極小の掠り傷一つ付きはすまい。 もう一人、シルフィードことイルククゥは常にチーフの上、肩に乗っている。 最初は歩いて付いてきていたが、チーフとの移動速度に差が在りすぎ一分も経たず数十メイルもの差が出来ていたため。 チーフの上に乗ると言う選択を選ぶことになった。 ただのお荷物、と言うわけではなく、優れた視覚と嗅覚、聴覚によってチーフの知覚外の事象を感じ取ることで役立っていた。 その具体例が一つ、それは……。 「お兄様、前に豚が居るのね」 「………」 イルククゥが前方を指差し、それを聞いたチーフは光学ズームにて指差された方向を確認。 薄暗いため、暗視に切り替えてみる。 イルククゥが言った通り、豚、オーク鬼が一匹のっそり歩いていた。 「他には」 「んー、居ないと思うのね」 25メートル以上の距離はモーショントラッカーの範囲外、それより先で何者かが動いていても分かりにくい。 オーク鬼の周囲を確認、一匹しか居ないらしい。 ここは素通りさせるか、そう思いその場にしゃがみこんでオーク鬼の動向を観察する。 「……ふご」 のっそり、非常にゆったりしている。 寛いでいるのだろうか、散漫な動きしかせず、とうとうその場に座り込んでしまう。 「邪魔なのね」 イルククゥは嫌そうに呟き、チーフの頭の上に両腕を乗せダレた。 「………」 そんな行動に構わず、物音立てず観察し続ける。 出来るだけ先を急ぎたいチーフに浮かんだ選択肢は三つ。 一つ目、このまま待ち、オーク鬼が移動するまで待つ。 二つ目、すぐさま排除し、行軍を再開する。 三つ目、迂回して目的地へ向かう。 「お腹空いたのねー」 「……排除する」 イルククゥの五感を信用し、素早くオーク鬼を排除する事を決める。 それを聞いて飛び降りるイクルルゥ、そうして腰のハンドガンを手に持つ。 すると体が軽くなり、力が漲り始めた。 武器を握れば体が軽くなるこの現象、使用するに当たりメリットはいくつも見ることは出来るが。 デメリット、使用による不具合に何があるのかが見当も付かない。 ミスタ・コルベールによれば使い魔の契約に因って与えられる力らしいが。 何せ人間の使い魔など例が無いと言う事で、言った通り効果が持続するかどうかも分からないとの事。 効果の程を確かめるのは長期間の情報収集が必要となるだろう。 チーフとしてはそれに当てる時間など無いに等しい、出来るだけ早く戻らなければならないから。 「………」 立ち上がり、オーク鬼を見据える。 もう一度オーク鬼の周囲を確認、その他の存在が見受けられないことを確認して駆けた。 森の悪路もなんのその、時速50kmを超えて走るチーフがオーク鬼へと接敵。 「ブゴ?」 オーク鬼が近づいてくる足音に気が付き、ゆっくりと振り返った。 その時には10メイルの距離もなく、1秒もすればクロスレンジ。 地面に擦りそうな低い位置から跳ね上がってくる、固く握ったチーフの左拳がオーク鬼の顎を打ち抜いた。 「ッポギ」 とオーク鬼の口から漏れた声。 余りの威力に座っていたオーク鬼が軽く浮き上がり、垂直に一回転してうつ伏せに倒れ落ちた。 「さすがお兄様ね!」 ピクリとも動かないオーク鬼を確認した後、イルククゥがまたもチーフに飛び乗った。 手だれの戦士5人に匹敵すると言われるオーク鬼でも、正面から戦っても勝てるチーフの奇襲を受けたものだから勝てないのは自明の理か。 素手に因る近接格闘のみであっても、オーク鬼10匹居ても勝てなかっただろう。 それほどまでに練達した戦士であるチーフだった。 「相棒はな、俺を使わなくても十分強いんだよな。 俺が居る意味あるのかね?」 「消耗しない武器は重要だ」 そうして行軍を再開する、道中お腹すいたと連発するイルククゥに腰のサックから食料を出して手渡す。 「ウマウマ」 モグモグと食べ続けるイルククゥを他所に、黙々と歩み続ける。 時折ポロポロと小さな食べカスが転がり落ちてくるが、それすらも無視して歩き続ける。 「お兄様は食べないの?」 と四分の一しか残っていないパンを、顔の前に差し出すイルククゥ。 「……別のがあるからそれは全部食べて良い」 この星の日照時間などから、強引にだが地球の定時法に割り当てた。 時間は11:24と表示され、既に3時間以上歩いていたようだ。 「降りてくれるか」 「きゅい」 パンを頬張りながらも飛び降りる。 「周りに何か居るか」 「ムグ……、いないのね」 モゴモゴと口を動かしながら、目や鼻、耳を使ってあたりを探るイルククゥ。 モーションセンサーにも動く物、草むらに潜む小動物しか捉えていない。 「少し休もう」 現在位置の周囲、草むらから樹木の位置を確認。 迫るとしたらどこから来るかなど考え、防衛に最適な位置を割り出す。 「(……あそこか)」 攻めるも守るも、優位になるだろう位置にしゃがみ込む。 その動作を見て呼ぶより早く、イルククゥが隣に座り込む。 そうしてサックをあさり、パンと水を取り出した。 「いっぱい食べるのね」 手に持ったパンと水の入ったビンを差し出してくる。 「………」 じーっと、チーフの顔、ヘルメットを見つめ続けるイルククゥ。 顔が見たいのか、そう聞くと「見たいのね!」と元気よく声が返ってくる。 「機密だ、見せられない」 そう言って左手のひらをイルククゥの顔に当てる、勿論力は入れてない。 「は、離すのね!」 イルククゥの視界を塞ぐように左手で顔を覆う。 ヘッドディスプレイを不透明100%に指定し、空いている右手でヘルメットを外す。 「んあー!」 チーフの手を外そうともがくイルククゥ、竜とは言え変身している時では本来の力を出せないらしい。 そんなイルククゥから手を外すと同時にヘルメットを被せ、また視界を塞ぐ。 「なにするのね!?」 「少しだけそのままでいてくれ」 叫びながらもヘルメットを取ろうと動くが、上からヘルメットを押さえつけているので両腕を使っても外せない。 上に持ち上げられないなら、自分の体を下げれば良い。 そう言う考えに至ったのであろう、ずりずりと体を下げ始め、一行に外せないヘルメットと共に地面へと寝そべっていた。 最後の方には体をひねり始めてもいた、そこまでして見たいのかと思ったが、見せてやるわけにも行かないので素早く食事を済ます。 「と、とれたのね!」 と、体を土塗れにしたイルククゥが起き上がって見るも、既にチーフはヘルメットを被っており、その顔を拝む事は出来なかった。 「んきぃー!」 見れなかった事に腹を立てたのか、ついには地団駄まで踏み出す。 「何故見たい」 「見たいから見たいの!」 「見せられない」 単純な答え、見たいと言う感情のみでの発言。 しかしながら軍機のため、顔、名前、年齢と言った個人を特定できる物は一切教える事は出来ないし、見せる事も出来ない。 違う惑星に居ても、UNSC<国連宇宙軍>の法はチーフに適用される。 たとえイルククゥのようなファンタジーな生物でも、決して語る事、見せる事は出来ない。 「進もう」 「むー」 とりあえずイルククゥの顔に付いている土汚れをふき取り、持ち上げてから肩に乗せる。 顔が見れなかったのは不満だったが、先に進む事には反対しない。 そういった感情がだだもれなイルククゥであった。 その後、運良くアルビオンの兵や亜人に遭遇せず順調に進み続けた。 暗くなり始めても歩き、完全に日が落ちても歩き続ける。 街道を見つければ誰も居ないか確かめ横断、ひたすら歩く。 そんな代わり映えのしない状況にイルククゥは文句を垂れるが取り合わず。 「遅れてタバサが危険な目に遭ってても良いのか」 といえば黙り込む。 既にこの状況、タバサはともかく魔法を使えないルイズは歳相応の身体能力しかない。 もしもと言う時の自衛手段が少ない、スクウェアの子爵が居るとは言え過信するのも良くは無い。 タバサにしても最速の移動手段であるイルククゥが居た方が良いだろう。 「お腹空いたのねー」 そう言えばサックからパンを取り出して上に手渡す。 「ウマウマ」 それを数時間毎に繰り返しながらも歩き続ける。 そうしてさらに数時間、00:56と時間的に言えば翌日になっていた。 このままニューカッスル城に向けて歩き続けるのはチーフ的に問題は無いのだが。 肩に座る少女、イルククゥが完全にチーフの頭へとうな垂れかかり眠っていた。 「………」 バランスの問題もあるし、何より敵に遭遇した時に対処が遅れる可能性も十分ありえる。 ならば何処か適切な場所でキャンプを張った方が良い。 決断するや否や落ちそうになるイルククゥを横抱きにして抱え、周囲を探る。 特に草むらが多い箇所、そこを避けてしゃがみこめば隠れられる程度の草垣に陣取った。 本来ならば暖を取るために焚き火の一つを起こしてやりたいのだが。 「……いっぱいねぇ、おなかぁ……」 と平然と寝るイルククゥを見て、そのままで良いだろうと思い至った。 「軍人ってのは随分慎重なんだな」 「基本だ」 樹木を背にして周囲を警戒し、気持ち良さそうに眠るイルククゥの安眠を邪魔しないようにする。 「娘っ子の傍にいけすかねぇ兄ちゃんが居るんだし、そこまで急ぐ必要ねぇんじゃねぇの?」 「守るならば一枚だけでは駄目だ」 出来るなら二重三重と、敵の手が届かないようにするべきだ。 強い仲間が一人居る、だからなんだと言う考え。 魔法だろうが火器だろうが、使用による限界は何れ来る。 物量で攻められればより限界が近くなる、それを補うために複数の仲間を必要とするのだ。 チーフと言えど、ただ一人きりで戦ってきたのではない。 心強い仲間が居てこそ、支援があってこそやって来れただけだ。 本当にただの一人きりであったなら、ここには居ない。 命はなく、ただ終わっていた。 「………」 チーフは森の天井、木々に生える葉の天井の隙間から見える双月を見て夜を過ごした。 日が昇る。 水平線の向こう側から顔を出す太陽、天文学的に言えば太陽ではないのだが、殆ど真っ暗だった森の中に明るみが増えてきたので朝と認識。 時間も05:13と表示されている。 視線を下げればうつ伏せで寝ているイルククゥ、起こしてすぐにでも進むべきか。 そう考えていれば。 「……お腹、空いたのね」 むくりと起き上がった。 睡眠欲より食欲を取ったらしい、言った通り食料、最後のパンを水と一緒に差し出した。 「ウマ、ウマ」 眠気眼で頭を揺らしながらもパンを頬張る。 地面に直接寝転がっているため、土埃が凄い事になっている。 食べ終わったのを見計らい、口周りと顔を拭いておく。 「……お兄様はもう食べたのね?」 「済ませた」 「……むー」 まだ狙っていたのか。 「進もう」 抱え上げて肩に乗せる。 「いつか絶対見せるのね!」 と完全に目が覚めたのか、元気良く宣言するイルククゥ。 自分から見せることは無いので、見るとしたら力尽くか、或いはヘルメットを外すその時に覗き見るか。 どちらにしろ簡単な事ではない事は確かだった。 そんなこんな、さらに5時間ほど歩き続ければ大きく長い森の切れ目、端が見え始めた。 進み、森の端、幹の太い樹木に手を置きながらも視線は森の外。 先に遠くまで続く広い草原と、その先に有る小さく見える、大陸から突き出た地形の上にある城があった。 「あれ?」 「あれだ」 イルククゥが指差すのは城、地形にも因るが後数時間で城にたどり着けるだろう。 だが、今現在の問題は目の前に広がる草原。 人目に付かぬよう迂回するか、或いは時間優先で突っ切るか。 「さっさと行くのね!」 迂回はイルククゥの好みではないらしい、一直線に城へ向かおうと言う。 地下を行くギーシュたちもどの辺に居るのか分からない、もう付いているかもしれないし遅れているのかもしれない。 ならば出来るだけ早く付いた方が良いだろう。 「ああ、そうだな」 右手にハンドガンを握る。 「掴まっていろ」 「うん!」 イルククゥは手でヘルメットをしっかり掴み。 チーフの左手がイルククゥの足を押さえ、落ちぬ様にする。 「行くぞ」 駆け出す、人の全力疾走の倍以上。 時速70kmはあろうかと言う速度で駆ける。 「きゅいきゅい!」 嬉しそうに鳴くイルククゥ、空を飛ぶのと地を走るとではスピードの差が在るが、映る景色や体感にも違いがある。 それを感じて喜んでいるのか、普通ならば感じる事が出来ないのだから仕方ないと言える。 そうしてグングンと走り進み続ける。 運が良い、ここまできて行った戦闘はオーク鬼の一度だけ。 願うならばこのまま敵と出会わず、と言いたい所だが現実はそれほど甘くは無い。 「敵だ」 空に見える赤い点、恐らくは赤い姿の火竜。 イルククゥが素早く降りて草原に伏せる、同じ様にチーフもしゃがみ込んで草丈に紛れた。 「………」 気付いているのか、ゆっくりと草原を見渡すように飛んでいる。 警邏、その類だろう。 ここは穏便に、無駄な戦闘を行い敵を呼び寄せても良い事が無い。 だからじっとして警邏が通り過ぎるのを待つ、が。 「………」 左の視界、歪み明らかにおかしい。 「きゅい!」 自身の異変と連動するかのように、イルククゥが叫んだ。 「きゅいぃぃ!!」 それは叫びのような、力の篭った鳴き声。 光を放つと同時に変化、イルククゥが風竜シルフィードへと移り変わる。 「これは……」 左目の映る景色、今見える草原とは別物。 その左の景色には背を向けている子爵と、杖を支えにして立つタバサが見えた。 苦しそうな表情、衣服は切り刻まれ、その下の肌も傷がいくつも入っている。 『使い魔は主人の目となり耳となる』 これも能力、メイジの使い魔になる事で得られる力の一つ。 普段見えないのは発動する条件ではないから。 つまりルイズとタバサの身に危険が迫っていると言う事。 イルククゥは自身と同じ様に主に危険が迫っている事が分かるのだろう、翼を大きく広げた。 「乗るのね!」 言われると同時に飛び乗る。 500kgも何のその、大きく一度羽ばたいただけで浮き上がり。 二度目の羽ばたきでさらに高く、三度目には加速し始め、四度目を最後に高速で飛翔し始めた。 そんな草原から突如光を放ち飛び上がる物体に気が付いた警邏、怪しい存在に対して攻撃を加えようとした時にはもう遅かった。 チーフがハンドガンにて狙い撃ち、火竜の下顎から進入したマグナム弾が喉に突き刺さり、火竜は一撃で絶命。 そうして落下する火竜から飛び降り、フライにて浮き上がった頃には遠く小さくなっていた。 この警邏が不審な存在が草原に居たと報告できた時には、ニューカッスル城は陥落していたのであった。 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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~第四章 閉鎖空間と最後の審判~ 「まず、いまの状況を説明してくれ。いったい何が起こってるんだ。ハルヒは急にいなくなるし、お前たちまで姿を消してしまって、正直何が起こっているのかさっぱりわからん」 古泉は俺の質問に、おやっと首をかしげるようなしぐさを見せる。 「ここに来る前にあなたの友人の佐々木さんや橘京子に説明を受けませんでしたか?」 さらりと答えた古泉の回答に驚きを隠せなかった。まさか、いままでハルヒのことを神とまで言っていた古泉がハルヒが佐々木の影にしか過ぎないという主張をあっさりと認めるとは思わなかったからだ。 「ハルヒが佐々木の影だとか、いまハルヒが閉鎖空間の中から世界を崩壊させようとしているという話のことか。お前はそれを本当のことだと思っているのか?」 少し強い口調で問い返すと、古泉はくっくっと笑うようなそぶりを見せながら答える。 「そうですね、いまの僕達の世界ではそれが真実といって間違いないと思いますよ」 「どういうことだ?」 「涼宮さんが本当に佐々木さんの影であったかどうかはわかりません。しかし、涼宮さんは何らかのきっかけで自分が佐々木さんの影であると信じてしまった。おそらくそう信じるに足る何かがあったのでしょう。 涼宮さんにはこの世界を創りかえる能力がある。だから、少なくとも涼宮がそれを信じたときから、その主張はこの世界の真実となってしまったのです」 「待て、その主張はおかしいぞ」 古泉得意の演説を途中で遮り、一般人の俺でも分かるようなごくごく当たり前の疑問をぶつける。 「ハルヒの能力は自分の好きなように世界を創りかえることだろう。ハルヒ自身がこんなことを望むわけがないだろうが」 俺にはこのことがどうにも納得のいかない疑問のように思えたが、古泉は、ほんの少しだけ考えるようなしぐさを見せた後、俺の質問を想定の範囲内であると言わんばかりに淡々演説を続けた。 「もともとそうだったのか、それとも涼宮さんの能力で世界改変があったのかは、僕達にはわからないのですよ。同じように涼宮さんの心の中や能力についてもすべてが分かっているわけではありません。 だから、涼宮さんが識閾下では今回のような出来事を望んでいた可能性や、また涼宮さんの能力が負の感情すらも実現してしまう類のものであるといった可能性も無いとは言えないのです」 「つまり、お前達はいま現在の世界の状況を知ることしかできないということか」 「そのとおりです」 苦笑するようなポーズをとる古泉の姿が先ほどよりも少し薄くなっていることに気づき、このまま消えてしまうのではないかと少し不安を感じた。 「それで森さんや新川さんは佐々木を新しい神と認め、お前はいまでもハルヒを神と思っているということか」 「神と言ってしまっては語弊がありますが、概ねそのような状況と思っていただいて間違いないでしょう」 しばらくの間、俺と古泉の間に沈黙が訪れた。あまり人に誇れるほど優秀ではない脳みそで古泉から聞いた話を整理した後、再び疑問をぶつける。 「それで……ハルヒはいま何をしようとしているんだ。世界を崩壊させようというのが、まさかハルヒの意思ではないだろうな」 表情を確認できないはずの古泉の赤い人影の表情が曇ったような気がした。目の前の赤い影は躊躇いがちにゆっくりと重い口調で言葉を紡いでゆく。 「涼宮さんは……自分が偽者の存在であることを知ってしまい、そのショックで巨大な閉鎖空間を創りだして、その中に閉じこもってしまったのです。 そして、涼宮さんは独りで閉鎖空間の中で思い悩み……ひとつの結論を導き出したのです。自分が真実の存在となる方法を」 古泉の口調から、ハルヒが導き出した方法が世界を崩壊の危機に晒しているのだということは容易に分かった。そして、なんとなくだが、それを聞くことを躊躇う気持ちが自分の中にあることに気づく。 おそらく、このとき本能的にそれを聞けば後悔することに気づいていたのだろう。できることなら、古泉の話を遮りたかったが、俺にはその方法を聞かないという選択肢は与えられていなかった。 「それは、この世界をいったん無に帰し、そしてその後に涼宮さん自らがまったく同じ新しい世界を創造するという方法です。そうすれば、涼宮さんは偽者の存在ではなくなるのです。 その後にできる世界では、すべての存在が涼宮さんの創造物となり、創造主である涼宮さんを偽物とするロジック自体に意味が無くなるからです」 「………………」 「しかし、涼宮さんの創造した世界には、涼宮さんが佐々木さんの影であることを知っている者は呼ばれることはありません。 なぜなら、そういった者がいるという事実が、自分が偽者の存在であることを涼宮さん自身に思い出させることとなり、涼宮さんの創りだした世界そのものを脅かすこととなるからです。 つまり、いま我々は神に見放された存在となってしまったわけです。だから、情報統合思念体も、機関も、そして未来の世界も佐々木さんを神として認定することになったのです」 「つまり、ハルヒが自分達を見捨てたから佐々木に乗り換えたということか」 「そういうことです」 「勝手だな。自分達の都合でハルヒや佐々木を振り回すとは」 「まったくそのとおりだと思います」 まるで他人事のように話す古泉の様子にイラつきを覚えた。まるで当然のことのようにハルヒを見捨てようとする態度が気に食わない。 「それでお前は俺にハルヒを止めてもらいたいわけか。だが、お前達の思惑通りになるとは限らんぞ」 古泉は俺の言葉を聞いてもう一度くっくっと笑うようなしぐさを見せた。 「あなたは何か誤解をしていらっしゃる。涼宮さんを止めてもらいたいのは森さんや新川さん、橘京子、藤原といった佐々木さんを神と認定するメンバーです。 朝比奈さんや長門さんを含めた僕たちSOS団のメンバーは、たとえ自分たちが消えてしまうことになろうとも、涼宮さんがそうを望むのであればそれで良いと考えています」 再び沈黙が訪れる。目の前の古泉はじっと俺の目を見据えているように見えた。その目はまるで俺の覚悟のほどを窺っているような気にさえさせる。 「……つまり、お前たちはハルヒのために殉じてもいいということか」 「そうです。だが、古い世界を残すのか、それとも新しい世界を創造するのかを選択するのは、僕たちではありません」 そう言い放った古泉の人影からは自らの死すらも覚悟した気迫のようなものが伝わってきた。 古泉が指を鳴らすようなしぐさをすると、天井から刃渡りが十センチほどの綺麗な装飾の施された短刀が落ちてきて、俺と古泉の間の床に突き刺さった。その青白く不気味に光る短刀の刃を見て、思わず息を呑んだ。 「どういう……ことだ? 古泉」 短刀の刃に視線を向けたまま古泉に問い質す。この後の古泉の回答はなんとなくだが想像はついた。だが、それでも俺は古泉にこう尋ねざるを得なかった。 正直、俺の予想がこのときほど外れて欲しいと思ったことはなかった。そんな俺の心を見透かすように古泉は淡々と答えた。 「あなたの想像通りです。もうすぐこの世界に夜明けが訪れます。日が昇ってしまえば、この世界は元の世界と入れ替わり、閉鎖空間であったこの世界が真実の世界となってしまいます。 そしてそれを止めるためには涼宮さんを殺害する以外に方法はないのです。 だが、この世界は涼宮さんによって創られた世界。この世界のいかなる能力を用いても涼宮さんを傷つけることはできません。唯一、あなたの親友である佐々木さんが創造したその短刀を除いてはね」 ゆっくりと視線を短刀から古泉へと移す。空気が重苦しく感じられ、周囲の静寂が際立ち、時間の感覚が狂っているような錯覚に陥る。 「つまり……ハルヒを殺せ……ということか」 「いえ、あなたには涼宮さんとともに新しい世界へ赴くといった選択肢も与えられています。涼宮さんのことを知っている者で唯一人あなただけが新しい世界へ赴く権限を与えられたのです」 「だが、それはお前たちを見捨てるということだろう?」 「そうです。ただ、念のためもう一度申し上げますと、少なくとも僕と朝比奈さん、長門さんはあなたがそれを望むのであればそれで良いと考えています」 ふと、下宿先に残してきた佐々木のことが気がかりになった。佐々木はこのことを知っているのだろうか。俺がハルヒとともに新しい世界へ行くと選択すれば、佐々木もこの世界に取り残されてしまうのだろうか。 「佐々木は……このことを知っているのか?」 「もちろんご存知のはずですよ。表層心理ではともかく深層心理、識閾下ではね。なぜなら今回の事件はこの世界のふたりの神、涼宮さんと佐々木さんの識閾下の合意によって決められたことですから」 予想外の古泉の回答に、俺は言葉を失い視線を床に落とす。床に突き刺さった短刀が怪しい光沢を放っている。ハルヒは、佐々木はどういう気持ちでこんなルールを定めたのだろうか。 それと同時に、罪悪感が胸にこみ上げる。ふたりに対して曖昧だった自分の態度。それが今回の事件を起こしたような気がしてならない。俺はハルヒと佐々木、どちらを選ぶべきなのだろうか。 「その短刀を引き抜けば、後ろの扉は開きます。それを持ってグラウンドにいる涼宮さんに会いに行ってください。その短刀を持って会いに行くこと。それがふたりの神が定めた公平なルールですから」 言い終わった古泉の体がゆらゆらと揺らめきだした。 「どうやら僕の役割はもう終わりのようです。僕はあなたにどちらを選んでいただいても結構です。ただ、あなたが後悔することのないことを願っています。では」 最後まで勝手なことを言うだけ言って、古泉の人影は水面の波紋のように薄く広がり消え去った。くそう、いったい俺にどうしろというんだ。 ゆっくりと短刀に近づき、柄を軽く握り締め、床から短刀を引き抜く。 カチャッ 背後で鍵が開くような音がした。深呼吸をしてから短刀を握り締め、扉を開き廊下に出てグラウンドへと向かう。 思えば、いまたどっている道筋は初めてハルヒと閉鎖空間に閉じ込められたとき、突如現れた神人からハルヒを連れて逃げた道のりだ。 あの後、グラウンドの真ん中でハルヒとキスをして元の世界に帰ることになるのだが、今回はハルヒを連れてもとの世界に帰るということはできないらしい。 走馬灯のように、あのときの出来事が、元の世界に戻った後のSOS団での活動が、長門や朝比奈さん、古泉の顔が、ハルヒの怒っている顔や笑っている顔が脳裏に浮かんでは消えていく。 どうしてこんなことになってしまったのか。なぜ、平凡な日常を過ごすことができないのか。やり場の無い不満がこみ上げてくる。グラウンドに出て、その中央、ちょうど俺とハルヒがキスをした付近に、小さな少女の姿を見つけた。 「コイツ、こんなに小さかったんだ」 ハルヒを見た瞬間、驚きとともに思わずそうつぶやいてしまった。目の前のハルヒはとても脆く小さく、触れると壊れてしまいそうな感じさえした。 「キョン……」 ゆっくりと顔をあげたその瞳からは不安の色が滲んでいた。そのハルヒの様子は普段のパワフルなハルヒからはとても想像できなかった。 「ハルヒ」 「こ、こないで」 予想外のハルヒの言葉に思わず立ちすくんでしまう。俺を見つめるハルヒの瞳は怯えているように思えた。 「ご、ごめん……なさい……で、でも……」 すまなさそうにうつむくハルヒの姿がとても儚く思えて切なかった。普段のハルヒの姿とのギャップがいっそう切なさを募らせる。 「だ、大丈夫だよ、ハルヒ」 「え?」 「お、俺はハルヒ、お前といっしょにいるよ」 顔を上げ、驚いたような表情で俺の顔を見つめる。 「で、でも、あたしといっしょになるってことは、佐々木さんや有希やみくるちゃん、古泉くん、みんなにもう会えなくなるのよ」 「あ、ああ、それでもいい」 ハルヒはじっと俺の目を見つめる。だんだんとその瞳から涙が溢れてくるのがわかった。ふと、唐突に得たいの知れない違和感のようなものが俺の中にこみ上げてくる。 「本当に、本当にあたしでいいの? 佐々木さんじゃなくても、有希やみくるちゃんじゃなくても、本当にあたしで……」 涙交じりの声で問いかけるハルヒを見て違和感がだんだんと鮮明になっていく。雑音、ノイズ、奇妙な感覚。なぜだろう? 俺の心の中に迷いがあるというのだろうか。この人生の決断の最中に。 「ああ、お、俺は……お前のことが誰よりも好きだ。だから……」 ハルヒのしぐさ、表情がさらに違和感を強くする。違和感の正体を……俺は知って……いる? いや、そんなことはない。だが、その思いは打ち消そうとすればするほど、違和感は強くなり、やがてそれは確信へと変わる。 「キョン!」 ハルヒは俺の元に駆け寄り、ぎゅっと俺の体を抱きしめた。ハルヒのことを抱きしめてやりたかった。このまま何も知らずにハルヒといっしょになれたならどれほど幸せだっただろうか。 だが、俺は気づいてしまったのだ。下唇を噛みしめ、短刀の柄を力いっぱい握り締めた。 「これは規定事項だ。あんたが閉鎖空間に行くことも、この世界に戻ってくることもな」 脳裏に藤原の言葉がこだまする。決意の瞬間、不意にハルヒの顔がゆがんだ。右手に持った短刀の刃がハルヒの体に突き刺さり、ハルヒの血液が短刀を伝い俺の手を濡らす。 ゆっくりとハルヒは視線を下に移し、自分の身体に深々と刺さった短刀を見つめた後、もう一度ゆっくりと顔をあげ俺の方に視線を向ける。きっとハルヒには一瞬何が起こったのかわからなかったのだろう。 「あ、あ、ああ……」 すべてを理解し、俺から放れ、一歩ずつ後ずさりしていくハルヒの表情は絶望に染まっていた。そんなハルヒにかける言葉を俺は持っていなかった。ただ、悲しさと罪悪感の混じったような感情が俺の心を支配していた。 「ハル……」 「そ……そうよね。あ、あたしひとりの命じゃ……みんなの命とは……釣り合わない……わよね……」 「ち、ちが」 「やっぱり……キョンは佐々木さんを……仕方がないよね。あたしは……佐々木さんの……偽者……だから……」 「違う……き、聞いてくれ、ハルヒ」 「いまさら言い訳なんて聞きたくないわ! だって、キョンはあたしじゃなくみんなといることを―――――」 「最後ぐらい俺の話を聞け!」 思わず叫んでしまった俺の気迫に圧されて、ハルヒは身体をビクッとさせて黙りこむ。 「俺は! ここに来るまで、お前の姿を見るまで、お前といっしょに新しい世界に行ってもいいと思ってた! いや、たとえこの世界に朝が来なくても、ハルヒと二人でいられるならそれでもいいとさえ思っていた!」 「…………」 「だが、本当にお前はそんなことを望んでいるのか? 俺以外のみんなを見捨ててまで新しい世界に行くことを!」 「キョン……」 「俺には分かるんだ! お前が何を考えているか、何を望んでいるか。ずっと、ずっと、三年前あの閉鎖空間から帰ってきた日からずっとお前のことを見続けてきたんだから!」 ハルヒだけでなく、自分自身にも言い聞かせるように、叫ぶように語りかけた。正直、ハルヒの気持ちに気づかなければ、どれほど幸せだっただろう。そんな思いを打ち消すように俺は叫んだ。 「授業中も、家にいるときも、気がつけばお前のことを考えていた。だから、分かってしまうんだ! お前が本当はそんなことを望んでないということが!」 叫び終わった後、俺とハルヒは互いに言葉無く見詰め合っていた。どれぐらいの時間そうしていただろう。 カラン ハルヒが自分の身体から引き抜いた短刀が地面に落ち、乾いた音が響く。やがてハルヒの身体がゆっくりと傾きその場に倒れこんだ。 「ハルヒ!」 思わずハルヒのもとに駆け寄り、ハルヒの身体を抱き上げる。 「ごめん……なさい……キョン……ごめん……」 「え?」 ハルヒの意外な言葉に一瞬戸惑いを感じた。ハルヒは泣きながら俺の服にしがみつく。 「あたし……ようやくわかったわ。あんたに言われて……ようやく自分の本心に気づくことができた。あんたの言うとおりよ。あたし……誰かに止めてもらいたかったんだわ。 こんなことをしても……どうにもならないって知っていた。でも……でも……止めることはできなかったの。他にどうしようも無かったから……」 「ハルヒ……」 「あんたも見たでしょ。部室の……人形の山を。あたし……独りが寂しかったから……形だけあんたに似せた人形を作って……自分を満足させようとしてた。でも、どれもあたしの心を満たしはしなかったわ。 当然よね。あたしが作ったキョンがあたしを止めることなんて無い。そんなこと分かってたはずなのに……何度も何度も同じこと繰り返して……バカみたい…………」 「ハルヒ……ごめんよ。俺が……俺がはっきりしないばかりに……お前や佐々木を悩ませることに……」 「謝るのは……あたしのほう。辛い思いをさせてごめんね」 無理をして微笑むハルヒの顔がとても切なかった。いままでハルヒに冷たく当たってきた自分に後悔の念が押し寄せる。なんでもっと優しく接してやれなかったんだろう。 「ハルヒ……」 「そんな顔しないで……これでよかったんだから」 ハルヒは俺から視線をそらして周囲を見回す。 「ここは……あたしの創った偽りの世界。周囲に見えるすべてのものが……みんなまがい物。もうちょっとで……あたしはあんたをこの嘘の世界に閉じ込めてしまうところだった。 そしたら……あたしはきっと永遠に後悔したと思うわ。でも……あんたが止めてくれたおかげで……あたしは後悔しなくて済んだ。だから……あんたが謝る必要はないわ。それに…………」 ハルヒは弱々しく手を上げて、俺の目から溢れる涙を拭う。 「部室も、学校も、あたし自身さえも、すべてがまがい物のこの世界で……あんたの流すこの涙……あんたのあたしへの想いだけは、この世界でたった一つだけの真実だわ。 あんたがあたしのことを想って流してくれた……この涙。この想いが……あたしが確かにこの世界に存在していたことの……証。だから……キョンに会えなくなるのは寂しいけど……悲しくはないわ。 だって……あんたがあたしのことを覚えていてくれる限り……あたしは……涼宮ハルヒは……確かにこの世界に存在したと……胸を張って言うことができるもの」 「ハル……」 「佐々木さんと……幸せにね」 ドンと一瞬世界が揺らいだような感覚に襲われて、反射的に辺りを見回すと、学校の校舎が上のほうから数千、数万の粒子となって宙に舞い上がり崩壊している。 学校だけではなく周囲の建造物、地面さえもバラバラの粒子に変わっていっている。直感的にハルヒの創った閉鎖空間が消滅しているのだと分かった。 慌ててハルヒの方に視線を戻すと、ハルヒの身体は光り輝き、かつて朝倉涼子が消えたときのように端の方から光の粒子となって、指の間から漏れていく。 「ハルヒ!」 「さようなら、キョン」 最後の最後に、ハルヒは、いままで俺が見た中で一番の微笑を見せて、俺の前から消え去った。 やがて、周囲にあるすべてのものが崩壊し、辺りが完全な闇に覆われると、ハルヒであった光の結晶が、塵が風に吹かれて舞い散るように、拡散していく。が、突然その拡散した光の粒子が、もう一度一箇所に集まり人の形を作り始めた。 「ハ、ハルヒ?」 人影の背後から太陽の光が差し込み、周囲の闇を取り払うと、辺りには見飽きた日常の景色が広がった。もとの世界に戻って来たことを知る。 「ハル―――」 「お帰り、キョン」 佐々木は悲しげな表情で俺に微笑みかける。 「佐々……木」 「ごめん、僕に少しばかりの勇気が無かった為に、キミに辛い思いをさせてしまった。本当にごめん」 俺はよろよろと佐々木に近づくと、そのまま佐々木をその場に押し倒して、佐々木の胸で泣いた。 「うわあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 佐々木は尻餅をついたまま、俺の気持ちが落ち着くまで、何も言わずに俺を抱きしめてくれていた。 エピローグへ
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-18「信念」 「殺せぇ!」 と、二人が天井が崩れる礼拝堂から飛び出すと、アルビオンの兵士が二人を見つけるなり叫び走り寄って来る。 攻めていなかった礼拝堂から出てきた、敵だな。 そんな単純過ぎる考えなのか、ワルドの咎める声を無視して突っ込んでくる。 「馬鹿者が!」 杖を向け、迫ってくる一団に風の魔法、ウインド・ブレイクを放った。 人を跳ね飛ばす強烈な突風、それをまともに受けて数十名が纏めて吹き飛ばされた。 「私はレコン・キスタのワルド子爵だ! 味方すら分からぬとは、この部隊の指揮官は誰だ!」 声を張り上げ、一遍して睨みつける。 杖を向け声を張り上げる子爵は『怒っている』、それが容易に分かるような『演技』。 演劇について目が肥えているわけでは無いチーフから見ても、『大根』だった。 そんな下手な演技ではあるが、それを見て兵士が動揺し狼狽し始める。 「も、申し訳ありません!」 兵士を掻き分け、焦りながらも前に出てくる男。 「このような間違い、私で無かったら今頃お前は魔法で殺されていたぞ」 怒り心頭の子爵に恐れを為しての行動。 やはり兵士を纏めて吹き飛ばした事が効いているようだ。 「……まぁいい、司令部は今どこにある?」 「まだ城外に……」 脅すような物言い、真実は隠れていても今はレコン・キスタに所属する者。 子爵が言うように、他のメイジだとしたらこの隊長は間違いなく殺されていただろう。 それだけ隔絶した存在の差、それは熱いものを触り、意識せず瞬間的に手を離すような。 脊髄反射的に頭を下げる、貴族と平民と言う型枠に嵌められ、それから抜け出す事が非常に難しいものとなっていた。 地球人類の有史以上に長く続く、この貴族格差が骨の髄まで染み込んでいるかのようだった。 「しっかりと見よ、そうして気を付けるのだ」 「は、はい!」 許してやる器量を見せる、元より構ってやる必要も無いので先へ進む。 数十数百のもアルビオン兵士とすれ違う、城へ向かう者達と、城から出る者たち。 後者のワルドとチーフはニューカッスル城の門を悠々と後にする 城内中庭と変わらず、チーフに視線が注がれるがたいした事にはならないので放って置く。 縦に大きく、横にも大きい全身緑色と黒の、顔の大部分に明るい橙色を付けた存在に目が行かないわけが無いが……。 「ワルド子爵でしょうか?」 「ん? ああ、そうだが……」 そうして目標が居るだろう司令部を探し歩み進んでいれば、前方から走り寄って来るマントを羽織ったメイジ。 ワルドとチーフを一遍した後、話しかけられた。 「閣下からワルド子爵に言伝を預かってまいりました」 「閣下から……? 聞こう」 「『子爵の報告を今すぐ聞きたいのだが、余にも色々やらねばならん事がいくつもある。 すまないが、天幕を用意したので余の手が空くまでそこで休んでいてくれたまえ』、との事です」 「……確かに」 「こちらです、付いてきてください」 そう言って背を向け、歩き出す伝言役のメイジ。 「……怪しいな」 そう小声で呟く子爵、やはりすぐに目標の達成は出来ないようだ。 歩く事十数分。 指定された天幕、そこの前まで案内される。 周囲には同じく幾つもの天幕が張られていた。 「それでは失礼します」 「……ああ」 踵を返し、歩き去るメイジ。 見送らず視線だけで周囲を見渡し、天幕の中に入る。 チーフもそれに続き、中に入る。 子爵はそれを確認した後杖を取り出し、ディテクト・マジックを唱え、魔法による盗聴や盗見が無いか探る。 光が収まり、目や耳が無い事を確認した後杖を収める。 「……どう思う」 「時間稼ぎ、縫い止める目的もあり得る」 何のために、と言う疑問があるが。 推測、憶測でしかないがここは敵地であり、こちらの行動がばれている可能性もある。 子爵の裏切りも疑惑もまだ晴れては居ない、何らかの意図があると注意して掛かる事は決しておかしくない。 「通常ならば、重要な報告はすぐにでも通されるのだが……」 何かある、今現在の状況は勘ぐっても不思議ではない状態だと言う事だと子爵は言う。 攻城戦が終わり、城内への進行、城に潜む王党派の殲滅戦へと移行していると言う状況。 戦争は既に終わりに近い、消化試合にも似た戦闘。 今の状況なら子爵の報告を耳に入れても良い頃合なはず、それをしないとなると……。 「……天幕の中に居るのは危険か」 奇襲、それもあり得る。 過ぎたる警戒か、損をする訳でもなく怠る理由もない。 天幕の入り口、垂れ下がった幕を腕で押す。 空は雲一つない蒼、晴天が広がっている。 「……周囲からの奇襲か」 張られた天幕相応、何人もの兵士たちが忙しそうに走り回っている。 その中でこちらに向けられている視線は無い、覗いているという可能性もあるが、見える範囲にワルドとチーフを見ている者はいない。 「天幕に入った瞬間にでも魔法を放てば良いものを……、何故そうしないか……」 処分する気なら子爵が言った通り、天幕に入るのを見計らって何らかの、殺傷力の高い魔法を放てば終わる。 チーフならばエネルギーシールドがあり、キャパシティ限界まで身に入るダメージを無効化するが。 少なくとも子爵なら怪我を負い、死に至る可能性も十分過ぎるほどあった。 それをしないとなると、何らかの狙いがあるのかもしれない。 「……考え過ぎかも知れんな」 警戒するに足るかと言う疑問、そんなものなど必要なく、警戒し続けるのが当たり前。 当面の目標はレコン・キスタの指導者クロムウェルの捕獲、それが不可能なら排除と言う手段をとる事になっている。 だが今現在はニューカッスル城から一キロも離れていない平原の天幕、クロムウェルの居場所も掴んでいないためにまともに動けない。 現在の状況を鑑みて選ぶ、ここは大人しくしているべきだと。 そうして30分と言う予想以上に短い時間の内に命令を伝える、先ほどと同じメイジが伝令として天幕を訪れた。 「失礼します、閣下からワルド子爵への言伝を預かってまいりました」 そう言って優雅に一礼するメイジ。 それを取り成し、子爵も礼を交わす。 「何かあったのか? 閣下は随分と忙しいのだろう?」 「閣下は『天幕では何分休みにくかろう、落としたニューカッスル城に部屋を用意してあるので、そこで休んでもうしばらく待っていて欲しい』との事です」 「……君は」 「すぐに案内役を遣しますので、その者に付いて行ってください。 それでは失礼します」 「待ちたまえ!」 と子爵が制止を掛けるが、伝令のメイジは意に介さず立ち上がって天幕から出て行った。 「……なんだ、今の伝令は」 子爵が不満の声を上げる、確かにそう言う感情が湧き出るかのような行動。 まるでただ伝令を伝えるだけのような、子爵の言葉が全く聞こえていないかのような感じが見受けられた。 「………」 杖を取り出し、ディテクト・マジックを唱える子爵。 魔法の目や耳が無いか調べ、そうして問い掛けてきた。 「……どう思う?」 「おかしい、何らかの異常があるのかもしれない」 まるで人形のよう、淡々と命令された事をこなす機械のような印象を受けた。 だが、実際の伝令はどこからどう見ても人間にしか見えない。 この惑星で科学技術、機械技術など無きに等しい。 そこで代用、と言うわけではないがガーゴイルなどの魔法人形なのかとも思ったが、動きの端々に人間臭さが見えた。 「……何か有ると思った方が良いか」 だが普通ならば子爵が呼び止めた時に足を止め、何かあるのか聞くだろうが完全な無視。 何らかの理由で出来るだけ早く戻らねばならないにしても、子爵に一言断れば良いはずだ。 聴覚不全などの者を伝令として使う訳もないだろう、そうして考えるとあの伝令役のメイジは『どこかおかしい』。 少しずつ積み重ねられる異常、不安感を煽るには十分なもの。 「従わぬのは拙いか、だが素直に付いていくのも……」 何が有ろうが無かろうが、行くしか方法は無いだろう。 とりあえず天幕の外に出る。 「本当にそれしかないのか……、そこの君!」 子爵が頭を上げ、走る兵士を呼び止めた。 「君! 司令部がどこにあるか分かるかね?」 「司令部……ですか、自分ではちょっと……」 「知っている者はここら辺にいないかね?」 「部隊長なら知っていると思いますが、今は城内に……」 「……そうか、行って良いぞ」 「失礼します」 敬礼をして走っていく兵士。 子爵が次に呼びつけたのは、先ほどの兵士より装備が充実した兵士。 「そこの者! 司令部がどこにあるか知らないか」 「いえ、詳しい位置は……」 「そうか、行って良い」 「はっ」 そうして次々に声を掛けるが、一人たりとも司令部の位置を知らない。 中にはメイジも居た、前線に出る貴族は部隊を率いるか、メイジだけで構成された魔法攻撃隊として動く。 十中八九知らされているはず、しかし誰もが司令部の場所を知らない。 「……どう言う事だ? 何故誰も知らない?」 子爵の物言いでは知っていて当然と言ったようだ。 何かがおかしい、浮き彫りになっていく異常。 不安が過ぎるが、ここはこうだろう、あそこはこうするだろうと言う決め付けは危険だ。 視野を狭め、自身所か友軍の危険まで呼び込んでしまう。 そうして決めて行動するのは尚早、求められるのは即応性、臨機応変の対応能力。 どうしても後手に回ってしまうが、今現在はそれしか選べる選択肢は無いと思われる。 「子爵」 積もる不安と思案、この状況に対してどう動くか決断を迫られる。 天幕が並ぶ平原に、走る兵士やメイジの間を抜けてこちらを向いて歩いてくるメイジが見えた。 「……行かねばならんか」 そうして案内役のメイジを向かえる。 礼を交わし、案内役のメイジが口を開く。 「こちらです」 進む案内役に付くワルドとチーフ。 歩いていく3名をひたすら見る者、走り回っていたメイジや兵士が完全に足を止めて遠のく3人を見る。 その状態から数分、完全にワルドとチーフの姿が見えなくなって動き出す。 ゆったりと動き出す者たちの表情は無い、真顔、無表情で動き出して天幕を片付け始める。 それからものの十分、ワルドとチーフが休んでいた天幕を含む、この一帯に敷かれていた天幕群が完全に消え去った。 そんな事を知らず、案内されるがまま陥落して一日と経っていないニューカッスル城へと入る。 ぼろぼろに崩れた城門を潜り、城内に歩を進める。 一階エントランス、大広間に広がるのは惨状、片付けたのだろう死体は無いが激しい激戦の後が見て取れる。 床や壁に大きな亀裂や抉れた跡、火の魔法で出来た焦げ目、窪みに溜まる溶けた水、棘が生えたように隆起して激しく変形した床。 そしてどこに視線を向けても赤いこびり付き、要は生き物の血が飛び散り乾いている血痕。 「………」 死戦、元より生き残る心算が無かった為の激しい抵抗。 激戦故か、豪華だったらしい内装も見る影は無い。 「こちらです」 大広間を抜け、通路に入っても変わりない。 亀裂や抉れ、魔法行使を確認できる跡、血痕も変わらず残っている。 それを踏み分け、通路を進み続ける。 半分以上砕けた階段を上り、上り上り上り、六階、七階、八階と次々と上がっていく。 折り返す階段を上る事9回、階層にして10階まで上る。 「こちらです」 低い、と感じる。 もちろん高低という意味ではなく、チーフが思う低さとは戦闘時に発生する『撤退、退却の成功確率』。 クロムウェルを捕獲し、アルビオンから逃れる必要がある以上、クロムウェルを抱えて追っ手から逃げ切らなければいけない。 もしニューカッスル城で捕獲できたとして、どうやって逃れるか。 隠れるにしても数百数千と探索に人員を導入出来るであろうから、それこそ一時間も持ちはすまい。 いや、それだけ隠れられれば御の字と言った所だろう。 見つかり戦う事になっても城の中なので一度に対峙する兵士の数はそこまで多くは無いだろう、だが総数は五桁にも及ぶためにまともに相手には出来ない。 如何に魔法の不可思議な力で強化されるとは言え、相手に出来る数にも限度はある。 弾薬にしても魔法にしても、消耗品には変わりなく一日二日で補充、回復できる物でも無い。 自身が無事に帰還するには最悪、クロムウェルの捕獲ではなく暗殺に切り替えるべきかもしれない。 またクロムウェルと対談する場所にも因る、案内される部屋なのか、また別の場所なのか。 場所的に捕獲するか、暗殺するか、どちらの方が最適かを判断しなければいけない。 「ここです、閣下からの御用命があればすぐにでもお伝えしますので」 一礼、頭を下げて案内役のメイジは下がった。 子爵は去るメイジには目を向けず、立ったまま数十秒。 それから動いたにしても鈍重、警戒しているとも取れる動き。 腰のレイピアに右手を掛け、左手でドアノブをゆっくり回す。 「……何も無いか」 既に基本と言って良い探知の魔法を掛ける。 確認した後、大きなため息を子爵は吐いた。 攻城戦の被害が少なかったのだろう、小奇麗な部屋のソファに座りながら問いかけてくる。 「さて、これからどうする? おそらくは向こうから来ると思うが、そうでない場合は退却の方法でも考えねばならん」 捕獲か暗殺か、どちらかになって逃げる際に選ぶ選択肢。 敵陣を抜けて強行突破か、何かしらの乗り物を奪って逃げるか。 前者はどう考えても無理だろう、戦車(スコーピオン)でもあれば可能かもしれないが。 そうなると後者、風竜でも奪って飛んで逃げる位しか出来ない。 「……だろうな、とは言えクロムウェルを都合良く捕まえられるかどうかか」 尤もだ、皇帝であるクロムウェルにはスクウェアクラスの護衛が複数ついているだろう。 捕獲するとなると護衛を排除しなければならない、スクウェアともなればドットスペルでも容易くで人を殺せる。 子爵と同レベルのメイジである可能性が高い故、魔法を使う前に排除が必要になる。 そうなるとより暗殺の方が確実に思える。 しかしながら皇帝であるクロムウェルが持つ情報も捨て置く事は出来ないだろう。 状況に応じて決めるしかない。 「待つか、そうする他手はあるまい……」 違いなく、二人はそれ以外に選ぶ選択肢は無い。 それしかない故に止まる、ワルドはソファに座りっぱなしになり。 チーフはチーフで立ったまま、会話一つ無くただ時間が流れる。 息苦しいとか、雰囲気が悪いなどではなく、二人とも一定の緊張を保っているだけに過ぎない。 ここは敵地であり友好を深めると言う場所でもない、そうして時間が流れて一時間を過ぎた辺りに事は動いた。 「……反応が6」 唐突、近寄る影の一つも無くただ時間が過ぎるだけであったこの場所に近寄ってくる反応。 「左右の通路から3ずつ」 その声にワルドは頭を上げ、チーフを見る。 「こちらに近づいてきて、移動速度を緩めた」 どう言う事か、なぜ移動速度を緩めるのか。 またその6と言う数は何なのか、何故左右に分かれてくるのか。 答えは確信に近い。 「………」 ドア近くに立つチーフはワルドを見る。 すばやく背中のアサルトライフルを右手に取り、左手にはハンドガンを取った。 そしてそのハンドガンの銃口を子爵へと向けた。 「……そう取るだろうな、君がそう思ったならやれ。 不安材料を抱えたまま逃げるのも厳しかろう」 立ち上がり険しい表情の子爵、持っていたレイピアを手放しチーフの足元へ放る。 魔法発動媒体である杖を放り投げるのは、今の現状命の放棄に近い。 「………」 礼拝堂の時と同じ、覚悟があるのだろう。 右手のアサルトライフルを背中に担ぎなおし、左手のハンドガンも下ろす。 足元に転がるレイピアを拾い上げ、柄を子爵へと向け差し出す。 「それは自分が判断すべき事ではない」 最先任上級兵曹長<Master Chief Petty Officer>たるSPARTAN-Ⅱ-117に求められるのは『戦闘能力』。 罪過を決める事ではなく、敵を打ち砕く武器となる事。 「罪を裁いて欲しくば生き残れ、罰を受けたくば生き残れ」 マスターチーフははっきりと、ワルドだけに聞こえる声でそう言った。 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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アンチャーテッド4 @wikiへようこそ ソフト情報 タイトル アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝 開発 Naughty Dog 対応機種 PlayStation®4 販売元 SCEJ ジャンル アクションアドベンチャー レーティング CERO:審査予定 プレイ人数 未定 特典 発売日 2016年3月18日 備考 価格 未定 リンク アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝 公式サイト アンチャーテッド ポータルサイト アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス @ Wiki The Last of Us @ Wiki 開発元NaughtyDog 公式サイト(英語) [部分編集] 最新ニュース 2015年10月8日発売のPlayStation®4専用ソフト「アンチャーテッド コレクション」に、本作マルチプレイヤーβテスト参加券が付属することが決定しました。 トレイラー ゲームプレイトレイラー TGS2015トレイラー E3トレイラー マルチプレイ概要 今作もマルチプレイ搭載決定。 マルチプレイヤーβテストが2015年12月5日〜2015年12月13日に開催決定。 詳細はマルチプレイβテストを参照のこと。 リクエスト・コメント 名前 コメント 邦題は海賊王と最後の秘宝 -- 名無しさん (2014-10-11 18 17 25) http //youtu.be/d4BC48aem60 -- 名無しさん (2014-06-10 15 40 52) 4でまたマルチ実装されて盛んになるといいなー -- 名無しさん (2014-02-12 17 56 31) 早く宝物集めて武器とかアンロックしたい~ -- 名無しさん (2014-02-01 17 02 42) オンラインに期待。協力4人にならないかなー? -- 名無しさん (2014-01-29 23 51 36) ちょーほしい! -- 名無しさん (2014-01-25 22 10 05) 早くでて欲しいー -- 名無しさん (2014-01-25 00 04 36) 4出たらクランまた作ろう -- 名無しさん (2014-01-24 18 01 11) うんうん 楽しみ~(o^^o) -- 名無しさん (2014-01-21 23 11 19) 早く出て欲しいですねーw -- 名無しさん (2014-01-12 22 21 12) tst -- 管理人 (2014-01-05 11 43 01)
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-11「想い」 『女神の杵』、ラ・ロシェールで一等と言う宿 一歩足を踏み入れると広がるのは中々豪華な酒場 流石に貴族を客に取るだけあって豪華なことこの上ない 勿論、そこが貴族たちに気に入られたのだろうが また、気に入られた理由は他にもある 女神の杵宿はハルケギニアでもかなり珍しいらしい巨大な一枚岩の中にあり、床やテーブルは勿論、削り出された岩で出来ている 鏡の如く光を反射するように磨かれたテーブルはチーフたちの姿を映していた 反射した光を視界に捉えながら入り口、窓、二階への階段、カウンターの隣にある裏口への扉に視線をやる 理由は勿論、敵の襲撃に際してどう行動するかの判断材料にするため 「へぇ、中々良い作りじゃない」 宿内を見渡すチーフをよそに、キュルケはハルケギニアでも結構珍しい岩作りの宿を見て感嘆の声を漏らす それを発端に3人は内装の話をし始める 「装飾が疎ら」「統一感が無い」「二流品だね」などと酷評、先ほどまでの評価とは裏返っていた 子供と言えど貴族と言うものは対面を気にするので仕方が無いのかもしれない そこへ、乗船の交渉へ行っていたワルドとルイズが現れる 「あら、どこへ行ってたの?」 ワルドは羽帽子を近くのテーブルに置きながら、椅子に座る その表情から見るに、結果はあまり芳しくなかったようだ 「乗る船を捜してたんだが、どうやら出発は明後日にならないと駄目な様だ」 「急ぎの任務なのに……」 口と尖らせるルイズを見て、キュルケは疑問を口にする 「あたしアルビオンに行ったこと無いんだけど、どうしてすぐに出せないの?」 「明日の夜は『スヴェルの月夜』さ、その翌日の朝にアルビオンが最もラ・ロシェールに近づくんだ」 「へぇ~、その時が一番効率がいいから明後日と言うわけね」 「そう言う事だね」 言いながらワルドは懐から鍵束を取り出し、テーブルの上に置く 「部屋を取っておいたが、一部屋に3人は厳しいかな?」 キュルケ・タバサ・モンモランシーを見てワルドが聞いてくる 3人は、正確には2人だが問題ないと言った 「それじゃあ、ギーシュとチーフが相部屋」 「そして、僕とルイズが同室だ」 「え、ちょ、ちょっと待って!」 予想もしていなかったと声を上げるのはルイズ 『使い魔は常に主人と共に在るべき』と常々思っている 同じ考えを持つメイジはたくさん居る、それを裏付けるようにメイジは召喚した使い魔を常に傍に置いている者が多い 「だ、だめよ! 私達結婚してないじゃない! それに……」 チーフを横目で見つめる、それに答えるようにチーフは口を開く 「ルイズとは同室が好ましい」 護衛の関係上、安全ではない場所で離れるのは出来るだけ避けたい 守るにしても逃げるにしても、すぐに近くに居なければ意味がない 駆けつけている間に死を招くこともあるが故にこれだけは譲れなかった 「ワルド、大事な話ってなに?」 先ほどの部屋割りの提案、チーフと同室がいいと言ったルイズは 『とても真剣な話があるんだ、二人っきりで話したい』 と真剣な表情で言われ、渋々その提案を呑みワルドと同室に相成った この決定にチーフは何も言わなかった、不服そうな感じだったけど ギーシュと同室になっていたが、その部屋で寝ることは無いと思う 私とワルドの部屋の前で一晩中立ち続けるだろうから、後で一言言っておかなくちゃ 「ねぇ、ワルドったら」 女神の杵で一番上等な部屋、室内は一般の宿と比べかなり広く複数人入っても広々していると感じられる 部屋に置かれた調度品も質の高い物ばかり、その中で一際目を引くのは天蓋付きのベッド 見るからに豪華なレースの飾りが付いたベッドに座るルイズは問いかけた それを聞いていたワルドはワインのコルクを開け、一つの椅子を引いた 「こっちに腰掛けて、一杯やらないかい?」 屈託の無い笑みを浮かべたワルドは二つのグラスを並べてワインを注いだ 返事で答えず、ルイズは椅子に腰掛ける 先ほどと同じような笑みを浮かべてワインを手渡すワルド、それを受け取るルイズ 「二人に」 その言葉に戸惑いながらもグラスを軽くあわせた 「ルイズ、姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」 手紙が入っているポケットを押さえて頷く 思い出せば手紙を書き綴っているアンリエッタの表情は憂いを帯びた悲しそうな それでいて、少しだけ熱を持った瞳で書き認めていた あの表情は王女としてではなく、恋する── 「──イズ、ルイズ?」 「あ、ええ。 ちゃんと持ってるわ」 「心配なのかい? 無事アルビオンのウェールズ皇太子に会えるかどうか、手紙を取り返せるのか」 身の安全が心配かと言われれば、別にそうでもない いまや疑うことの出来ないチーフの力を信じている、ただ守られているだけなのは我慢できないけど ワルドだって居るし、失敗なんて事態を想像することが出来ない 「………」 「大丈夫さ、きっと上手く行くよ。 僕が居るし、君の使い魔だって居る」 「それに他の4人もそこそこ出来るんだろう? 並みのメイジが来たってすぐに撃退出来るさ」 ワルドは自信満々で『何も危険なことは無い』と言い放った 「……そうね、皆居るしきっと大丈夫よね」 「ああ、ルイズを必ずウェールス皇太子のもとに送り届けよう」 「貴方は昔から頼もしかったもの、全員無事に戻ってこれるわよね」 ワルドはにっこりと笑う、ルイズも釣られて笑った 「ワルド、これが話したいことじゃないわよね?」 「ああ、これからが君と二人で話したかったことだ……」 ワルドは一呼吸、ルイズを見つめる瞳に炎が宿る 「ルイズ、この任務が終わったら僕と結婚しよう」 「ワ、ワルド、本気だったの?」 「勿論さ、ラ・ロシェールへの道中で言っただろう?」 「で、でも。 わたしまだ……」 「ルイズ、君はもう子供じゃない。 自分の意思を持って自分の事を決めれる歳だろう? きっとお父上だって認めてくださる」 「ワルド……」 「僕は君を何年もほったらかしにしてきた、これはどう考えても僕が悪い、謝るよ」 「婚約者と言えた義理じゃない事も分かってる、でも僕には君が必要なんだ、ルイズ」 「待ってワルド……私はまだ、ちゃんとしたメイジじゃないの。 いつも失敗ばかりして、まともな魔法は一度しか使えていないの」 「私ね、立派なメイジになりたいの。 いつか皆に認めてもらいたいの、ただ口先だけじゃないメイジになりたいの」 「私は貴方のような立派なメイジに相応しくないと思うの、だから……」 「……違う、違うんだルイズ」 「え?」 「君はもう立派なメイジだ、それも並の奴らとは違うんだよ」 「まさか、そんなわけ……」 「君は他人にはない特別な力を持っているんだ、今はまだその使い方が分からないだけなんだよ」 「買いかぶりすぎよ、私にそんな力……」 「いや、君は特別なんだ。 その証拠が君の使い魔だ」 「チーフのこと?」 浮かんだのは常に身を持って守ってくれる使い魔 その巨躯で自分を包み込んでくれる、頼もしいチーフ 「そうだ、彼が武器を握った時に浮き上がった左手にルーンはね、とても特別な物なんだよ」 「特別……?」 「ああそうだ、あれは伝説の使い魔のルーンなんだよ」 「伝説の使い魔?」 「そう、あれは『ガンダールヴ』、始祖ブリミルが用いたと言われる伝説の使い魔の印さ」 語るワルドの瞳には力強い光を放っている 始祖ブリミルといえば、誰もが知る偉大なメイジ 従えていた使い魔はいずれも強大な力を持っていたと言われている 「そんな、信じられないわ」 「確かに、信じられないかもしれないが、彼が伝説の使い魔であり、君の使い魔と言う現実なんだよ」 「さっき君が言っていたように、今は立派なメイジではないかもしれない、だがいずれは歴史に名を残すような偉大なメイジになるに違いない」 「きっと、誰もが君の名を偉大な、素晴らしいメイジとして知る日が来る、僕はそう予感している」 「……ごめんなさい、ワルド。 私、なんて答えればいいのか分からない」 「……わかった、今返事をくれとは言わないよ」 ワルドは背もたれに背を預け、ワインを呷る 「任務中にこんな話をしてすまない、でも僕は本気なんだ。 それだけは覚えておいてくれ」 ルイズはそれを聞いて頷く、その真剣な瞳を前に頷く事しか出来なかった 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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アンチャーテッド海賊王と最後の秘宝 公式サイト http //www.jp.playstation.com/scej/title/uncharted/4/ 機種 プレイステーション4 発売日 2016年春 定価 パッケージ版:未定 /DL版:未定 ジャンル アクションアドベンチャー 発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント 開発元 ノーティードッグ オフラインプレイ人数 1~2人 多人数プレイ要素 年齢区分 審査予定 初回特典 限定版 備考 プレイ画像 デモプレイ動画