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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-7 「願い」 少女は泣いていた。 何時もの如く、母から魔法の成績を姉達と比べられ叱られていた。 それが嫌で逃げ出し、訪れたのは少女が『秘密の場所』と呼ぶ中庭の池。 舟遊びを楽しむために作られた池は今では誰も遊ぶものは居なく、ただ幼いルイズのみが利用している。 小さな桟橋には小さな船、それに飛び乗り櫂で漕いでゆく。 ある程度進み漕ぐのをやめる、そして小船に用意してあった毛布に包まり、涙を流す。 「どうして、わたしは……」 悔しくて悔しくて、歯噛みして悔しがった。 ぼろぼろと流れる涙で、言葉は出ず哀咽のみ。 そうして居たルイズが乗る小船に近づいたのは、一人の男。 霧の中から手を伸ばしてくる、その手の持ち主が誰か解った。 差し出された手をとり、引き寄せられ見上げると。 「チーフ!?」 全身を緑色の鎧で纏った人物。 幼い姿ではなくなっていたルイズは声を上げる。 「どうした、泣いているのか?」 「な、泣いてなんか!」 気丈に振る舞い、頬を伝う涙を拭う。 「安心しろ、ここに怖いものなど無い」 ルイズへ向かい伸びた手は、ルイズの頭をなでた。 違う、相手はチーフではないはずだ。 そう思いながらも、チーフの大きな手に撫でられる。 止めてとは言えず、ただその場に佇む。 ゆっくりと撫でられたルイズはしおらしく、彼が持つ安心感に包まれていた。 「どうしてよ……」 チーフは答えない、ただルイズの頭を撫でるだけ。 「どうして何も言わないのよ!」 魔法を使えないメイジに召還されて、帰らなければいけないのに文句一つ言わず付き従う。 とても強いその姿が、堪らなく劣等感を刺激する。 「……その努力は無駄ではない。 出来る事を、成すべき事に全力を傾ければいい」 その言葉を聞いて、また涙が溢れ出してくる。 「わ、わた、わた、しは……」 チーフは顔を伏せたルイズを抱え上げる。 「そうだ、ルイズ。 君は『ゼロ』ではない」 凄く凄く凄く、嬉しかった。 堰を切って流れ出す涙は止まらない。 止まらぬ涙の中、彼は私にとって『最後の希望』なんじゃないかと、そう思った。 「ルイズ、起きろ」 泣きながら笑って震えたり、明らかにおかしいルイズを揺すって起こす。 「っ!」 あれ? といった感じに起きるルイズは部屋を見回す。 見上げるとチーフが私を見つめている、見つめあう事数秒。 あ、と夢の内容を思い出した。 「大丈夫か」 と心配してくれているチーフ、なんだか恥ずかしくてあわせる顔が無い。 夢の中だったが、認めてくれたのが嬉しかった。 「だだだだいじょうぶよ!」 なにかむくれて返事をしている。 タバサとギーシュの早朝訓練が終わって戻ってきてみると何かと危険な状態だったルイズ。 何かの病気なのかと思われたが、「ななななななんでもないわ!」と何時も以上に噛んでいた。 多少顔が赤いが、別段異常があるわけでもなく良しとした。 ルイズの洗顔と着替えを終え、食堂に向かう。 一際大きなドア、アルヴィーズの食堂の入り口。 それをルイズより先立って開く、主と従者という構図だが。 堂々と歩くルイズに、緑色の全身鎧を付け、剣を携えるチーフ。 姫と騎士にも見えなくは無い。 「おはよう、ルイズ」 入ってきたのを見て軽く手を上げ挨拶したのはキュルケ。 「おはよう、ってあの子は?」 何時も二人でいるキュルケとタバサ、だが今はキュルケだけが一人座っている。 「あそこ」 長いテーブルの一角、そこには通常あり得ない組み合わせがあった。 隣り合いに座るタバサとギーシュ、一枚の紙を手に取り何か話し込んでいる。 その顔は真剣、何時もなら茶茶が入るだろうがそれすらも無い。 それだけの入り難い雰囲気を作っていた。 「タバサがあのギーシュとねぇ……」 とても感慨深い表情だった。 「ふーん」 興味無いと言った感じに引かれた椅子に座る。 用意された食事を黙々と食べる、頭の中は朝見た夢の事でいっぱい。 むむむ、と額に皺が寄っていた。 「ねぇダーリン、ルイズはどうしちゃったの?」 「朝からこんな感じだ」 「何か変な夢でも見たのかしらね」 「べべべべべつに何も見てないわよっ!!」 夢という単語に高速で反応したルイズ。 ふんっ! と立ち上がり食堂から出て行く。 「変な夢見たのね」 解り易すぎるルイズの反応にキュルケはクスリと笑った。 「ミス・ツェルプストー、最強の系統はなんだか知っているかね?」 教壇に立つ教師、『疾風』のギトーは唐突に言った。 食事が終わり、午後の授業中の一コマ。 「『虚無』じゃないんですか?」 「現実的な話をしているのだよ」 「ならば、『火』に決まっておりますわ」 得意げに言ったキュルケ。 「炎はあらゆるものを燃やし尽くす、そう思いませんこと? ミスタ・ギトー」 「残念ながらそうではない」 キュルケの一言を即座に否定。 「試しに、君が最強だと言う『火』を私に撃って見たまえ」 挑発されているのだと気が付き。 「火傷じゃすみませんことよ?」 「かまわん、早く撃ちたまえ」 ギトーがそう言った瞬間には、胸の谷間から杖を取り出して呪文を綴る。 現れたのは小さな火の玉、さらに続けて呪文を綴ると火の玉は途端に膨れ上がる。 1メイルを超える火の玉を、手首を捻ってギトーへ飛ばした。 唸りを上げて飛来した火球を目前に、腰の杖を引き抜きながら払った。 火球は閃光を上げつつ消滅し、火を薙ぎ払った風がキュルケへ向かって飛んでいく。 だが風がキュルケに当たる寸前、キュルケの前に突き出された剣によって掻き消される。 「ああん、ダーリンったら私を守ってくれたのね!」 デルフを持った腕を突き出していたのはチーフ。 それを見たキュルケがチーフに抱きつこうとしたのを、ルイズが体を張って止めようとしたらキュルケの胸に挟まれた。 「こ、この無駄な脂肪めっ!」 ルイズがキュルケを押し返そうとして、バインバインと揺れる胸に釘付けになった男子達であった。 一部では「おお!」という歓声も上がっていた。 「君は確か、ミス・ヴァリエールの使い魔、軍人と聞いたな。 なぜ邪魔をしたのかね?」 鋭い視線を向けるギトー、それを真っ向から受け取るチーフ。 「危険と判断したためです」 1メイルはあろう巨大な火球を簡単に掻き消す風圧、人に当たれば簡単に吹き飛ばすだろう。 吹き飛ばされた後、頭を強打したりする可能性を考えなかったのか。 「フン、この程度で危険などとは、君は戦場の端を渡り歩いたんだろうな」 その言葉に反応したは何時もの3人。 「ミスタ・ギトー、今の発言を訂正してください!」 「そうです、ダーリンほど屈強な軍人は居ませんことよ?」 「事実を言ったまでだ、訂正する事も無い」 二人の言葉を一蹴、馬鹿にしているとルイズは憤怒。 「だから──」 「弱い者程よく吼える」 と、時間が止まった。 クラスの全員が予想外といった表情だった。 「聞き間違えたか、ミス・タバサ、今なんと言ったのかね?」 「………」 無言で本のページをめくるタバサ。 「もう一度聞こう、今なんと──」 再度問い掛けようとした時、教室の扉が勢いよく開かれた。 「あややや、ミスタ・ギトー、失礼しますぞ!」 ギトーに一礼してコルベールが急いだように言った。 「今日の授業は全て中止であります!」 もったいぶった様に用件を伝えた。 このトリステイン魔法学院に先の陛下の忘れ形見、アンリエッタ姫殿下が行幸なされると。 いきなりの情報に教室は沸き立つ、それによりすぐに皆の頭からタバサが先ほど言った言葉が吹き飛んでいた。 1年から3年まで、全ての生徒が正装に着替え正門に整列していた。 待つ事数分、正門を潜って現れた馬車。 その側面には金銀白銀のレリーフに、その中に聖獣ユニコーンと水晶の杖が組み重なった紋章。 それは、トリステイン王家王女が乗る馬車。 ユニコーンが引く馬車は学院本塔の玄関前で止まった。 王女の馬車の後方、もう一台あった馬車から降りてきたマザリーニ枢機卿。 国の政治を扱う枢機卿が、王女が乗る馬車の扉に手を掛け開く。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーりぃーーー!」 マザリーニの差し出した手を取り、降りてきたのは『アンリエッタ・ド・トリステイン』。 『トリステインの一輪の花』と称された姿に、見ていた生徒や教師から感嘆の声が漏れていた。 「あれが王女ねぇ、私の方が美人だと思わない? ダーリン♪」 とチーフに絡むが、ルイズは一向として反応しなかった。 「まさかルイズ、王女を見て感動したとか?」 ルイズの頬を突付くが、まったく持って反応が無かった。 チーフはチーフで、王女ではなく魔法衛士隊ばかり見ていた。 「よく訓練されている」 それを聞いたタバサが本を読むのを中断して顔を上げる。 チーフが褒めるのだ、言う通りかなりの錬度なんだろうと魔法衛士隊を見た。 「……もう、3人ともつまらないわよ」 誰にも相手にされないキュルケは少し拗ねていた。 「よくお越し下さいました、アンリエッタ姫殿下」 玄関で出迎えたのはオスマン、何時もとは違う凛々しい顔つき。 あまり貴族を好かないオスマンが深々と頭を下げていた。 「頭を上げてください、オスマン学院長」 「これはこれは、私如きに勿体無いお言葉」 オスマンはニッコリと笑い、それに答えてアンリエッタも微笑んだ。 オスマンとアンリエッタ、マザリーニは魔法衛士隊の護衛をつけて学院内に消えた。 アンリエッタと、その護衛に付くワルド子爵の姿を見て懐かしい思い出が蘇っていた。 アンリエッタが学院内に消えると、生徒達は各々のやるべき事へ戻っていく。 ルイズたちも然り、学院に戻っていくキュルケとタバサはふと気が付いた。 「ちょっとルイズ、どうしたってのよ?」 一向に動かないルイズ、ぼーっと放心していた。 「ダーリン、放って置きましょ」 と腕に絡みつき引っ張っていこうとするが。 「それは出来ない」 そう言って佇むルイズを抱き上げ、学院に戻った。 部屋に運ばれたルイズは、うろちょろしていた。 夕食になっても、部屋から出ずうろついていた。 一通り歩き回った後、ベッドに座り動かなくなる。 そして横になり枕を抱えて動かなくなる、そしてまた起き上がり部屋をうろつくと言った行動を約3時間ほど繰り返していた。 何か考え事でもあるんだろう、チーフはそう思い何も言わず壁際に立ち続ける。 さらに幾許かの時間が過ぎた後、チーフは扉の方を見た。 モーションセンサーに反応、ルイズの部屋の前で立ち止まる者が居た、ハンドガンに手を掛け何者かと扉とルイズの直線上に入る。 ドアノブに手を掛け、いざ開こうとするとノックされる。 長く2回、今度は短く3回ノックされた。 その音にルイズは飛び起き、ドアに駆け寄るが。 「ルイズ、俺が開ける」 手を出し、制止した。 「だいじょうぶ、知り合いよ」 頷き、チーフがドアノブを回して扉を開くと頭巾を被り、漆黒のマントを羽織った人。 するりとルイズの部屋の中に入るのは少女、マントの隙間から杖を取り出し呪文を綴る。 杖の先から光が現れ、部屋の隅々まで照らす。 「ディティクト・マジック?」 「ええ、目や耳があるかわかりませんからね」 その声を聞いてルイズの顔が輝いた、もちろん閃光とかそちらの意味ではない。 「姫殿下!」 喜んだ声を上げたルイズ、それに応じたのはアンリエッタだった。 「ああ、お久しぶりね! ルイズ・フランソワーズ!」 頭巾を取った少女、ルイズと同様に笑顔。 咄嗟にルイズは膝を着く。 「ああ、ルイズ! 懐かしのルイズ! 頭を上げてちょうだい!」 それを聞いて頭を上げるルイズ。 「そんな堅苦しい挨拶はやめてちょうだい! ここには私と貴女だけなのよ! 王女のアンリエッタではなく、幼馴染のアンリエッタとして接してちょうだい!」 護衛も付けず、お忍びでルイズに会いにきたのだろう。 そうなると扉を開けっ放しにするのは良くない、とドアを閉めたチーフ。 ガチャリと、閉まると同時に振り返ったアンリエッタ。 「何者です!!」 裏に誰かいるとは思いもしなかっただろうか、杖を取り出し呪文を綴った。 「姫様! 違います! 私の使い魔でございます!」 え? と詠唱を止め、ルイズを見てチーフを見直す。 「彼が貴女の?」 「はい、私の使い魔『マスターチーフ』と申します」 「人、ですよね?」 アンリエッタは見上げる、チーフはかなり大きく約2メイル10サントほどある。 「はい、鎧を着ています」 チーフはゆっくりと膝を着く、それでも大きく見えた。 「申し訳ありません、闖入者と勘違いしてしまって」 「いえ」 「でも、人を使い魔にするなんて、ルイズは昔から相変わらずね」 フフと笑う姿は年相応の少女であった。 「チーフは人ですけど、ものすごく強いんですよ!」 力説するようにルイズは言う。 「そこら辺のメイジなんて相手になりません!」 それを聞いて、まあ! と驚くアンリエッタ。 「使い魔さんは魔法を使うのかしら?」 「いいえ、剣と銃を使う騎士で御座います」 「メイジではないのにメイジに勝つ、という事かしら?」 「はい!」 ルイズは嬉しそうに言った。 アンリエッタも魔法が使えない者はメイジに勝てないと知っている。 それなのに、ルイズは自信満々に言ったという事は本当の事だろうと考えた。 「ルイズは素晴らしいメイジに成長したのね!」 メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ。 言った通りメイジに打ち勝てるほどの使い魔を呼び出したルイズは、相応のメイジなのであろうと。 「い、いえ、素晴らしくは……」 「いいのよ、謙遜しなくても!」 うつむくルイズ、それを気にしないでアンリエッタは昔話を語り始める。 衣服を汚して従者のラ・ボルトさまに叱られたとか。 お菓子を取り合ってつかみ合いになったとか。 宮廷ごっこでどちらがお姫様役になるかといって取っ組み合いになったとか。 昔話に花を咲かせつつも、アンリエッタは深いため息を吐く。 「どうかなさいました?」 アンリエッタの嬉しそうな顔に陰りが現れる。 「今度結婚するのよ、私」 「それは、……おめでとうございます」 嬉しそうではないその言葉に、手放しに喜べないルイズ。 「ありがとう、ルイズ」 儚げな笑顔、その表情を見て心配になった。 「何か心配事でも?」 「いえ、親友に話す事ではないの、ルイズ」 「いいえ、親友だからこそ悩みを打ち明けてほしいのです、姫様」 「……ありがとう、ルイズ」 一息付く、その表情はやはり重い。 「私はゲルマニアに嫁ぐ事となったのです」 「ゲルマニアですって!? あんな野蛮な成り上がりのどもの国へですか!?」 「ええ、今彼らと同盟を結ばければトリステインが危ないのです」 「ですが……」 ルイズの言葉を遮ってアンリエッタがハルケゲニアの情勢を説明した。 アルビオン王家が転覆しそうだという事、その転覆を狙うものたちは『聖地奪還』を掲げている事。 そして、聖地奪還を行う前に『ハルケギニア統一』を狙っている事。 もしアルビオン王家が転覆した場合にはトリステインに攻め入ってくる事、そうなれば小国のトリステインだけでは防ぎきれないという事。 「そうだったのですか……」 国のため、民のためになんとしても戦争を回避したい王家の判断。 「いいのよルイズ、好きな相手と結婚なんて当の昔に諦めているわ」 先ほどと同じ、儚げな笑顔。 「そうなると、やつらは同盟が邪魔になると考えるのでは?」 「ええ、察しがいいわねルイズ、やつらは今婚姻の妨げになる材料を探しているの」 「もしや……」 何れ女王になる姫と、名高い公爵家の三女のやり取り。 チーフは立ち上がり、ドアの前に立つ。 ドアの向こう側で何か聞こえるが無視した。 「ええ、その材料があるのです」 「何ですって!? それは何なのですか!?」 「以前にしたためた一通の手紙、送った相手はウェールズ皇太子なのです」 それを聞いてルイズは顔を青ざめた、アンリエッタがこう言うのなら婚姻破棄されるだけの内容なのだろう。 アルビオン王家はかなり劣勢だというし、遅かれ早かれウェールズ皇太子は捕まり。 その手紙が反乱勢に渡れば間違いなくゲルマニアに送る。 そうなれば婚姻は破棄され、トリステイン一国で新生アルビオンを相手取らなければ行けない。 「ルイズ、懐かしきお友達」 「はい」 「貴女は土くれのフーケを倒したと聞いたのですが、あれは本当なのですか?」 「はい、私めが討ち取りました」 土くれのフーケは最低でもトライアングルクラスあると言われていた。 それを討ち取ったということはトライアングルかそれ以上の実力があるという事。 事実、スクウェアクラスに匹敵する攻撃でフーケのゴーレムを破壊したルイズ。 「……私の願いを聞いてくれますか?」 「はい、姫殿下の願いでしたらどのような事でも」 その言葉を聞いたアンリエッタ、頭を垂れるルイズには見えなかったが悲しそうな表情をしていた。 「ならば、その実力を認め一国の姫として命令します」 「アルビオンに赴き、ウェールズ皇太子から手紙を回収してきなさい」 「はい、その命謹んで──」 「姫殿下、発言をお許しください」 遮られたルイズはチーフを見た。 それを聞いたアンリエッタはチーフに杖をむけ。 「許可します」 「……何故、ルイズなのですか」 その言葉にルイズとアンリエッタが止まった。 「……それはルイズの実力を──」 「実力で選ぶのなら、姫殿下を護衛していた者達でも構わないのでは」 何故、ルイズなのか。 今だ学生の身分であり、公爵家の三女ではあるが軍事的な繋がりなど皆無。 実力で問うなら今言った通り魔法衛士隊の隊員で問題無い筈だ。 なのに、それを彼らに命じないのは如何言う事か。 「……、それは──」 アンリエッタが口を開くと同時に部屋の中に転がり込んできたのはギーシュとモンモランシー。 「ギーシュに……、モンモランシー!?」 「や、やあ」 倒れてはははと笑うギーシュ、その上にはモンモランシーが赤面して乗っかっていた。 「あ、あんた達今の聞いてたの!?」 「いやー、どうだろう?」 「え、ええ、どうかしら……」 非常に余所余所しい、恐らく半分以上聞いていたのであろう。 「ルイズ、こちらの方々は?」 それを聞いて素早く起きたのはギーシュ。 その反動でモンモランシーが転げ落ちるがチーフが背中を支えて止めた。 「ギーシュ・ド・グラモンと申します!」 「モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシと申します」 二人とも膝を着いて名乗った。 「ルイズの級友ですか?」 「ええ」 「姫殿下! ぜひともその任務を私にもお申し付けくださいますよう!」 「ちょっとギーシュ!? 何言ってるのよ?」 モンモランシーが驚きの表情を浮かべた。 「グラモン? もしやグラモン元帥の?」 「はい、息子でございます」 「ミス・モンモランシは水の精霊との交渉役を引き受けていると聞きていましたが」 「はい、ですが今は……」 苦しげに言ったモンモランシー。 「大丈夫さ、モンモランシ。 君は僕おぶあっ!」 何か言おうとしたギーシュがモンモランシーに殴り飛ばされた。 まあ、何を言おうとしたか想像し易い。 「貴方方も、わたくしの力になってくれると言うの?」 ビクビクと痙攣していたギーシュが素早く起き上がる。 「この身を、一命を賭して!」 アンリエッタの視線がモンモランシーに向く。 その視線を向けられたモンモランシーは大変な事になったと考えていた。 事は女子寮内をうろついていたギーシュを見かけ、付けてみたら姫殿下が居るじゃないの。 こんな任務、命が幾つあっても足りないかもしれない。 さらには、隣でギーシュがあんなふうに言うもんだから断る事なんて出来やしない。 「はい、彼と同様の所存でございます……」 あー、言っちゃったぁぁぁぁ……。 と内心後悔しまくりのモンモランシーを見て、アンリエッタが笑顔で答えた。 「ありがとう、力ないわたくしのために……」 「それでは姫様、明日の朝にアルビオンへ出発するといたします」 「ありがとう、ルイズ」 それからはトントン拍子で進んでいった。 ウェールズ皇太子に会ったらアンリエッタが書いた手紙を渡す事。 その件の手紙を返してもらえる事。 渡した路銀が足りなくなったら『水のルビー』を売り払ってもいいという事。 ルイズとその一行はアルビオンへと旅立つ事となった。 『チーフ、姫様をお部屋まで護衛しなさい!』と仰せつかったのでアンリエッタに付いて歩いた。 「……、使い魔さん」 「はい」 「先ほどの質問に答えなければなりませんね」 重苦しい口を開いたアンリエッタ。 「ルイズに危険な命を頼んだ理由は、真に信頼できる者が居なかったからです」 政治関係の悩み、この任務を安心して任せられる者がアンリエッタの周りには居なかった。 「ルイズは、彼女は変わっていませんでした。私と過ごした時のまま、私を信頼してくれて ルイズが土くれのフーケを討伐したと聞いたときには、この話を決めていました」 少しだけ軋む床と、アンリエッタの声だけが響く廊下。 「それに、使い魔さんのようなお強い人が居らしたので」 ふふ、と可愛らしく笑った。 「あれだけルイズが自慢していたんですもの、お強いんでしょう?」 「それはどうでしょうか」 曖昧な返事を返す。 チーフの世界では間違いなく強いだろうが、この魔法世界ハルケギニアでは解らない。 またも軽く笑い、アンリエッタが振り返る。 「使い魔さん、これからもルイズをお守りください」 左手の甲を差し出す、それを見てチーフは跪く。 「申し訳ありません姫殿下、この兜を外す事は許可されて下りません」 「それはルイズが?」 「いえ、違います」 「主であるルイズの命でも外せないと?」 「はい」 一瞬考思、意味を理解したのか手を下ろす。 「わたくしに誓わずともルイズを護ってくださいますか?」 「はい、この身に代えましても」 アンリエッタは頷き、笑った。 「ルイズを、わたくしの大切な友をよろしくお願いしますね」 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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佐々木さん、最後の一葉の巻 病院にて 佐々木「十二、十一、十……」 橘「佐々木さん、何を数えているのですか? 窓の外には小さな庭と木くらいしかないのです」 佐々木「六。折れるのが早くなってきたわ。三日前は20近くあったのに。数えていたら頭が痛くなったもの。でも、今は簡単だわ。また一つ落ちたわ。あと、五つしかない」 橘「だから何なのです」 佐々木「葉っぱよ。あの蔦のつるの。最後の一葉が落ちたら、私のフラグがへし折れるの」 橘「そんなバカな話はないのです。退院したら、一緒に新世界を創造して、ヒロインになるのです」 佐々木「いいの。明後日は嵐になるわ。きっとそれで最後の一葉が落ちて、 私の使いすてのテコ入れキャラとしての寿命も終わるの」 橘「そんなことありませんってば!」 橘さんがどんなに言葉をつくしても、佐々木さんはどんどん衰弱していきます。 それにあわせるかのように、葉っぱは一枚、また一枚と落ちていきます。 それと同時に阪中さんが元気なくなったり岡田さんが元気なくなったりしましたが、それは余談です。 困った橘さんは、とうとうキョンに全てを打ち明けました。 佐々木さんが入院して心細くなり、最後の一枚が落ちると同時に、自分のヒロインとしての 立場も終わると思い込んでいることを。 キョンはそれをツッコミをいれずに聞き、何か考えていたようでしたが、何も言わずに立ち去りました。 そして嵐の夜が過ぎました。橘は祈りながら一睡もせず夜をすごし、翌朝一番に佐々木さんの所へ行きました。 佐々木「ねえ橘さん、ブラインドを開けてくれないか。もう覚悟はできてるから」 橘「だめなのです佐々木さん!」 佐々木「お願い、橘さん」 観念して橘がブラインドを開け、おそるおそる蔦を見ると、 どうでしょう。最後の一葉が、嵐にも耐え、けなげにも残っているではありませんか。 橘「見てください佐々木さん、あの葉っぱを」 佐々木「ああ、なんてこと。……ごめんなさい橘さん。私甘えていたわ。 佐々木団の団長として、そして中学時代のキョンを知る唯一のヒロインとして、 私がんばってみる!」 橘「佐々木さん、その意気なのです!」 そこへ、佐々木さんの部屋に来客が。 キョン「よう佐々木、元気か?」 佐々木「き、キョン! ……とそちらは」 キョン「お前が元気ないって聞いてな。長門に頼んで、あの葉っぱの時間を凍結したから。 これでいつまでも葉は無事だぞ。よかったな佐々木。 長門が特殊な能力使ったのはナイショで頼むぞ」 佐々木「……」 長門「……いい。あなたのタメだから」 キョン「いつもいつもすまんな長門。じゃ、俺はお礼を兼ねて長門と図書館行って来るから。 早く元気になれよ、佐々木」 長門「……行く」 橘「……」 佐々木「……………………」 橘「またいつものオチですかー!!」
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-10「港町」 一行の前に現れた男は『グリフォン隊隊長、ワルド子爵』と名乗った、それを聞いたギーシュは押し黙ってしまった その男が名乗ったグリフォン隊と言えばトリステイン魔法衛士隊の一つ 若い男子ならばその黒マント姿に一度は憧れ、その花嫁になることを望む女性も多いという 勿論、成ろうと思って成れるほど容易くは無い 第一に高い実力を要求され、第二にグリフォンを乗りこなす騎乗技量を求められる 両方を揃え持つ者がグリフォン隊に選ばれ、入隊できるエリート部隊 そのエリート部隊を束ねる隊長職は更なる実力を要しなければ成らない 「つまり、ワルド子爵はエリート中のエリートと言う訳さ!」 などと、まるで自分のことの様に語るギーシュ 「ははは、そう褒めないでくれ」 「いえ、事実を言ってるだけですよ」 ハハハハハと互いに笑いあう二人、そんな中、ルイズとモンモランシーはワルドだけを見て軽く頬を染めている 理由は簡単、ワルドが美形だからだ 高い実力があり、誰もが憧れる職に付き、尚且つ美形 どう考えても前途有望な人物を気に掛けない人など居ない ギーシュも美形、美少年なのだが、何と言うか『安心感』が無い 所謂、そのまま『大人と子供』と言うことだった 「ルイズ、久しぶりだね」 「はい、お久しぶりでございます、ワルドさま」 ワルドはルイズを抱えあげる 「はは、君は昔と変わらず羽のように軽いね!」 ワルドとルイズのやり取りの後、3人に向き直り口を開く 「ルイズ、彼らを紹介してくれないか?」 「あ、はい! 『モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ』と『ギーシュ・ド・グラモン』と使い魔の『チーフ』です」 ギーシュとモンモランシーは公式の挨拶、チーフは軽く頭を下げる 「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ、姫殿下から護衛に就くよう命じられた、よろしく頼む」 少しの不安があったアンリエッタは、マザリーニの覚えめでたいワルドへ一行について行くようにと命じたと言う 「しかし、君がルイズの使い魔かい? 人とは思わなかった、それにかなり大きいな」 ワルドの身長でさえ見上げるほどの差がある、体格も関してワルドより一回りはある 「ぼくの婚約者がお世話になっているよ」 「いえ」 「君が使い魔なら大抵のことから、ルイズを守ってくれるだろうね」 ニッコリと笑い、チーフの肩を叩く 振り返り、ワルドが口笛を吹くと、朝もやの中から一匹の獣が現れる グリフォンと呼ばれる鷲の頭と獅子の体、大きな翼が付いた幻獣だ グリフォンに跨ると、ルイズを手招きする 「おいで、ルイズ」 その言葉を聞いて、ルイズはワルドとチーフを交互に見つめた後俯いた 「どちらに乗るかはルイズが決めればいい、それに従う」 決めかねていたのを見て、ワルドがルイズを抱え上げ、グリフォンに乗せる 「では諸君、出撃だ!」 サーベル型の杖を空に掲げて、ワルドは叫んだ 軽快に空を飛ぶグリフォンと地を走るワートホグ、グリフォンにはワルドとルイズが ワートホグにはチーフとモンモランシー、銃座にギーシュとヴェルダンデが乗っていた 「さすがグリフォン、疲れ知らずな幻獣だ!」 瞳を輝かせるギーシュ、その言葉にモンモランシーが口答え 「そうね、ギーシュじゃ乗りこなせないわね」 「確かに、今は乗りこなせないかもしれないが、いずれ乗りこなしてみせる!」 かっこいいものを見る少年の瞳は一層輝いて、意気込んだ 「その暁にはモンモランシー、一緒に乗ってくれるかい?」 「ばッ!? 何言ってんのよ! ギーシュじゃ無理よ!!」 唐突なギーシュの言葉に顔を赤くしながらモンモランシーは喚いた 「約束するよ、必ず君をグリフォンに乗せてあげるさ!」 「……、期待しないで待ってるわ」 さらに赤くなるモンモランシー、ギーシュはその言葉を聴いて喜んでいた 一方、ワルドとルイズは昔話をしていた 「ルイズ、僕の父が戦死した時のことを覚えているかい?」 ルイズは頷く、ワルドの表情はとても悲しそうだった 「とても悔しかったよ、貴族として生まれ、魔法を扱う力がありながら誰も守れなくて、泣くほど悔しがったものだよ」 「だからかな、家を出た時に決めたんだ」 「なにを?」 「立派な貴族に、強いメイジとなって君を迎えに行くってね」 「冗談でしょ? ワルド、あなたもてるでしょうに、何も私なんかとの婚約を守るなんて……」 「君だからさ、君で無ければとうに反故していた」 ワルドの真剣な瞳に、ルイズは顔を逸らす 「そんな……」 子供の頃に見た憧れ、今も憧れとして見れるが、「好きかどうか」となるとよくわからない 「僕のことが嫌いになったのかい?」 「嫌いなわけ無いじゃない」 「よかった、正直君に嫌われているかと思ったよ」 その言葉を聴いて、ルイズはどうすればいいか判らなくなった 「一緒に旅を続ければ、またあの頃の気持ちになるさ」 あの頃の気持ち、やはりワルドが好きかどうか分からない ルイズは後ろに振り向き、ワートホグを見る チーフが運転して、助手席のモンモランシーに銃座のギーシュが頻りに話しかけているのが分かる 「しかし、あの『じどうしゃ』と言うのはすごいな」 ワルドは釣られてワートホグを見て唸った グリフォンの速度に、重鈍そうな鋼鉄の箱が離れず付いて来たのだ、驚嘆に値する 「ルイズ、君の使い魔は何者なんだい?」 「チーフは軍人だと言ってましたわ」 「ほう、軍人か、土くれのフーケを退治した実力、確かめたくなったよ」 ニッコリと笑うワルド、笑顔の奥には鋭い視線があった 「だ、ダメよそんなの!」 強く否定、如何にチーフがギーシュやタバサに勝ったとはいえ、ワルドとはレベルが違いすぎる ギーシュはドット、タバサはトライアングル、そしてワルドは二人を上回る『スクウェア』 最上級のランクに位置する強力なメイジなのだ、どう考えても勝てないと思う反面 ギーシュとの決闘の時のように、予想を覆すかもしれないと思えた 「はは、ただの手合わせだよ、こんなとこで怪我でもしたら任務に支障をきたすからね」 同じような笑顔、ワルドはただ笑っていた ───────────────────────────────────────── 空中を疾走するグリフォンの体力は屈強で、既に6時間以上飛んでいる それに見て追従するワートホグは淡々と動く機械である為、疲れなど無く高速で地面を走る だが、乗り物は疲れなくても乗り手たちは疲れる 一行は休憩しようと、スピードを抑えた所に松明が投げ込まれ、ラ・ロシェールへの道先を塞いだ 「なんだ?」 ギーシュが疑問を口にした時にはハンドルが切られ、脇道に乗り上げる 「きゃあ!?」 「うわあ!?」 瞬間、走っていた路の上に多数の矢が降り注いでいた 乗り上げた衝撃に悲鳴を上げる二人、飛び出そうになるのを踏ん張り耐える チーフはデルフに手を掛け、ワートホグから飛び降りた 構えると同時に飛来した矢を悉くなぎ払う、モンモランシーとギーシュ、ヴェルダンデには一矢たりとも当たらない 「き、奇襲だ!」 ギーシュが叫ぶと同時に、先ほどの倍以上の矢が飛んでくる 当たるものだけを叩き落そうと、もう一度デルフを構える 振り払おうとしたとき、小さな竜巻が目の前で起こり、矢が巻き込まれ在らぬ方向へと飛んでいく 「大丈夫か!」 上空から杖を掲げたワルドの声が響く それにチーフは頷く、矢が飛んできた崖の上を見るが矢が飛んでこない 「山賊か」 「も、もしかしたらアルビオン貴族の仕業かも……」 はっ! と気が付いたようにルイズが言うが 「いや、貴族なら弓矢など使わないだろう」 油断せず、チーフとワルドは得物を構えたまま その時、崖の上から悲鳴が聞こえ始め、何かが転がり落ちてきた 「ウ、グ……」 軽装のいかにもな男、肌には軽い切り傷が出来ていた それを皮切りに、どんどん転がり落ちてくる男たち 「な、なんだ?」 困惑するギーシュ、それに答えたのは大きな羽音だった 「シルフィード!?」 風竜に放たれる矢を悉く吹き飛ばし、その竜巻で男たちをなぎ倒していく 男たちの叫び声が消えたところで、シルフィードが降りてくる 「はぁい、ルイズ」 シルフィードの背から降りてきたのは長い赤毛の少女 「キュルケ! 何しにきたのよ!」 「あら、存外な言い方ね、折角助けてあげたのに」 ルイズは兎も角、ギーシュとモンモランシーは「助かったよ」「そうね、助かったわ」と頷く 「朝方、貴女達が出かけるのを見て、すぐ追いかけたのにこんなに時間掛かっちゃったわよ」 「それにしても流石に速いわねぇ」と後に付け加えて言った その後ろ、シルフィードの背中にはパジャマ姿のタバサ、おそらくはキュルケに無理やり起こされたのだろう 気にした様子も無く、座って本を読んでいた 「あのね、これはお忍びなのよ?」 「お忍び? ただ追いかけてきただから知らないわよ、とにかく助けたんだから感謝しなさいよね」 「誰も助けてなんて言ってないでしょ!」 「もう、頑固ね! 貴女たちを襲った盗賊も捕まえたのに」 「ワルドさまとチーフが居れば、こんなやつらすぐ捕まえてたわよ!」 「はいはい、べつに貴女を助けたわけじゃないの、ねぇ?」 ワルドを見て一言、色を作り歩み寄る 「あー、助けは嬉しいがあまり近寄らないでくれたまえ」 「なぜ? どうして?」 キュルケが近づいてくるのを制止して、ルイズのほうを見る 「婚約者が誤解するといけないのでね」 それを聞いたルイズは頬を染める 「こ、婚約者!?」 キュルケが驚いた 勿論キュルケにも縁談が回ってくるが、まだまだ遊びたい盛りであり 回ってくる縁談相手の中に眼鏡に適う男が居なかった 「くっ!」 見た所、プライドが高いグリフォンを乗りこなすのは限られた人物 高い実力を持つ、グリフォンに認められた者しか跨げない それにあの黒マントは魔法衛士隊のグリフォン隊のみが付けれる特別な物、誰もが憧れるトリステインの花形である 服装を見て、この男のレベルを理解した時、キュルケは驚愕した 「そ、そんな!」 あのルイズに男の格で負けた! この『微熱』のキュルケが負けた!? いいじゃない、それなら彼以上の男を見つけてやろうじゃないの! 変な、いや、ツェルプストーとして正しい対抗心が猛烈に燃え上がっていた 「ルイズ! 見てなさい!」 指差すキュルケにルイズは「はぁ?」と唸っていた そこへ、襲ってきた男たちの尋問を終えたギーシュが戻ってくる 「子爵、あいつらただの物取りだと言ってます」 「……そうか、なら捨て置こう」 軽やかにグリフォンに跨るワルド、続いてルイズを素早く抱きかかえる 「今日はずっと休まずに着たから、休憩後ラ・ロシェールに着いたら、一泊してからアルビオンへ渡ろう」 そう言ってグリフォンが飛び上がる 「モンモランシー、私も乗りたいからもうちょっと詰めてちょうだい」 「分かったから押さないでよ!」 ギャアギャア言い合う二人、チーフはギーシュに聞いた 「本当に物取りだと言ったのか?」 「ああ、そう言ってたよ」 「……そうか、港町まで後どれくらいか分かるか」 「うーん、結構走ってきたからもうすぐじゃないかな?」 それを聞いてチーフはワルドに言った 「……車の調子が悪い、先に行っててくれ」 「大丈夫かい?」 「ああ、すぐに追いつく」 「それじゃあラ・ロシェールの宿『女神の杵』亭で合流しよう」 そう言って飛び上がるグリフォン、ルイズは何も言わず心配そうな視線を向けていた 「不調なのかい?」 「……、いや」 その発言に三者三様の疑問、チーフはグリフォンを見送った後山賊たちを見た 縛られ動けない山賊へ歩み寄り、膝を付いて喋り掛ける チーフのバイザーに男の顔が写りこんでいた 「本当にただの物取りか?」 「ああ、そうだ」 悔しげに言った男、それを聞いたチーフは足元に合ったチーフの拳大の石を掴む 「もう一度聞くぞ」 山賊と石を交互に見つめた後 「本当に、ただの物取りか?」 バゴンと音を立て、右手に持った石が握り潰され砕け散る それを見た山賊たちの顔から血の気が引いた 山賊に襲われる出来事があったとはいえ、普通ならば馬で2日掛かるところを8時間 半日も掛からず一行はラ・ロシェールの港町に到着した 4人は先ほどの光景を思い出す チーフはギーシュがただの物取りと言った山賊たちにもう一度尋問をかけた 『本当にただの物取りか?』 『あ、あたりめぇだ! 葱背負った鴨が居るんだぜ、狙わねぇ手はねぇだろうがよ!」 『そうか、それでどうする』 『……、どうするって何が?』 4人を代表してキュルケが言った 『俺はどちらでも良いが』 右手を握っては開きまた握る、そしてその右手を一人の山賊の頭の上に乗せる 『どうする』 右手を頭に乗せた意味を悟り、山賊たちの顔が引きつる 『わ、わかった! 喋るから殺さないでくれ!!』 頭に手を乗せられた男は震えた声で懇願する、他の男たちも同様だった 『誰に頼まれた』 『仮面を被った貴族に頼まれたんだよ! グリフォンと馬に乗った貴族がこの街道を通るから襲撃してくれって』 『……漏洩してるな』 へ? と4人が疑問の声を上げる 『任務が外部に漏れていると言う事だ』 『な、なんだって!?』 『ど、どうして!?』 『さあな、先にラ・ロシェールに行こう』 情報が繋がり始める、今だ推測の域を出ないものを彼是考えても仕方が無い 今はただ任務を果たすだけだった 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-14 「離別」 「……朝日」 4人はフネの中、夜明け前に港を出て夜が明けて来た頃に白の国が見え始める。 それでもまだ2~3時間は掛かるとの事、ルイズたちは既に港に着いているかもしれない。 出来るだけ早く追いつきたい、数多の戦場で生き残る要因となった『勘』がざわめいていた。 フネ、唯一アルビオン大陸に渡る手段。 渡る為には条件がある、それはフネを浮かばすための『風石』が必要。 だが、一番風石を積んだフネはルイズたちが乗って行ってしまっている。 つまり、アルビオンまでいける風石を積んでいるフネは、今現在一艘もない。 浮力を得るための手段が風石しかない、しかし浮力を得るための風石がない。 それはアルビオンへ渡れないと言う現状を指し示していた。 渡る手段がない、どうしようか、と考えていた所にシルフィードが現れた。 タバサに残り付くように言われたのだろう、背を向けきゅいきゅと鳴くその姿、まるで乗れと言わんばかり。 キュルケが乗れと言っているのか問いかけた所、頷き一度鳴いた。 それを聞いてシルフィードなら行けるでしょう、と判断したキュルケ。 チーフを除く3人はシルフィードの背中に乗ろうとした所に止める声。 「……アルビオンまでの距離はどの位あるか分かるか」 「距離? そうねぇ……、フネで10時間位かしら」 それを聞いて押し黙るチーフ。 押し黙った姿に怪訝を抱いたキュルケ。 「どうしたの? 何か問題でも?」 「恐らくシルフィードでも、たどり着く前に力尽きてしまうかもしれない」 「4人も乗せたらアルビオンまでたどり着けないって事?」 頷く、それを見てキュルケが笑う。 「大丈夫よ、竜って言うのはとてもタフなのよ。 4人乗せた位じゃ全然疲れないんだから、ね?」 と、シルフィードの頭を撫で声を掛ける。 撫でられたシルフィードは鳴いて頷いた。 「……恐らくは無理だ」 「どうして? ああ、鎧が重いのね。 そうね……、その鎧だと100リーブル位かしら?」 チーフは首を横に振る。 「……200リーブル?」 首を振る。 「まさか……、300リーブルなんて言わないわよね?」 それにも首を振る。 「逆ね! 軽いんでしょ?」 やはり首を横に振った。 「……幾つなのよ」 埒が明かない、重さがいくつあるのかキュルケは問いかける。 「……700だ」 「え?」 「700リーブル程だ」 それを聞いてキュルケ、ギーシュ、モンモランシーの3人は絶句した。 鎧を着ている以上それなりに重いだろうと思っていた3人、だがチーフが言ったのは予想を上回る重さ。 1リーブルは500グラムより少し下らしい、一般的な女性の体重が100リーブル程でありキュルケもそれ位らしく。 この惑星の重力が1Gで、地球の女性の平均体重と近いならその程度だろうと荒い推測。 そしてチーフが言った約700リーブル、キログラムで表せば350キログラムから400キログラムの間。 チーフ自身の体重もキュルケの二倍以上、しなやかで強靭な肉体は130キログラムほどある。 チーフ自身とアーマーの重量を合わせれば0.5トン、1000リーブルを超えるかも知れない。 難しい計算抜きにすればキュルケの10倍前後重いと言う事、普通の人間の体重ではないし、着たらまともに動けなくなる所か押し潰される重さ。 如何に竜がタフだとは言え、背中に0.5トン以上の重さを乗せて10時間も飛び続けられるとは思えなかった。 「700リーブルの重さって、普通動けなくなるわよ……」 呆れながら言う言葉。 大の男でも確実に動けなくなる重さ、チーフなら……と思わなくないが流石に重過ぎる。 「……パワーアシストが有るから問題ない」 よく分からない単語に首をかしげる3人。 「動きやすくなる魔法が掛かっていると思えば良い」 と言われてもどういう魔法なのか、勿論思いつかないし聞いた事も無い魔法に疑問を抱くが。 「……侮れないわね」 『かがく』と言う物で作られた鎧。 優れたメイジでもそんな重い物を何十時間も軽くし続ける事は出来ない。 メイジの矜持である魔法と言えど、出来ない事だってある。 ならこの鎧は魔法で出来ない事を実現していることになる。 このチーフを相手にすれば、つくづく魔法が使えないのが馬鹿に出来ないと思えるようになってきたキュルケであった。 「それで、その鎧が重いって事は分かったけど、シルフィードが無理なら今すぐ追いかけるのは無理なんだけど」 「他のフネから風石を買い取る事は出来ないか」 「……そうね、その手があるわね」 なるほど、と3人が頷く。 大きい風石が無ければ、小さな風石を複数集めればいい。 使える物は何でも使う、『武器は現地調達』が基本のチーフからすれば普通の考えだったりする。 そうと決まればすぐにでも買取に走り出す。 幸いチーフ除く皆が財布を持って来ていた為、そのお金で風石を買う事となる。 だが向こうにも都合がある、風石の買取に渋る船長も勿論居る。 さらには足元を見る、平均的な値より割高で売ろうとする者も居た。 お金は無限にあるわけじゃない、ある分だけしか買い取れないため切り詰める必要がある。 安くしてもらうために貴族と言う肩書きとチーフと言う圧力を使って出来るだけ安く、必要な分だけ買取り。 アルビオン行きだったフネを貸し切り、風石を運び込んで出発することとなった。 そうしてチーフ一行はフネへと乗り込み、アルビオンへ渡る事となる。 フネに揺られ、夜が明けない内にキュルケ、ギーシュ、モンモランシーは睡眠をとる事に。 チーフは空の上とは言え、変わらず警戒を緩めない。 3人が別々の部屋で眠り、その部屋に至る道を警備しておく。 そうして数時間、朝日が上がった事が分かり、アルビオンの全容を確かめるため甲板に上がる。 朝日を浴びながら甲板でアルビオンを見つめるチーフの下に、船内から現れたキュルケが隣に立つ。 「……まだ掛かりそうね」 「まだ眠っていた方が良い」 「ダーリンは眠ったの?」 「ああ」 「……そう、じゃあもう少し眠らせてもらうわ」 チーフが言ったとおり、必要な睡眠は既に取っている。 通常人間が必要な睡眠は6~8時間ほどと言われる。 減る時間にも寄るが、影響が受けるのは精神的なものが大きい。 特に集中力、睡眠不足に陥ればその分だけ集中力、集中できる時間が目張りに減ってゆく。 だがスパルタン計画によって身体能力、遺伝子学的、技術的に強化されたチーフは、通常の強化されて無い人間よりもはるかに強靭である。 あらゆる状況下での活動、戦闘が可能になるよう身体能力を強化されており。 短い時間、2~3時間睡眠を取るだけで大幅に体力を回復できるよう調整されている。 座る、或いは寝転がる事が出来ない場所で直立したまま睡眠を取る事だって可能。 さらにはアーマーのお陰で場所を問わず、それこそ水中や地中、果ては宇宙でも睡眠が取れる。 ルイズが寝静まっても警戒を行うチーフに、いつ寝ているのかと言う疑問も短い時間にちょくちょく睡眠を取っているからであった。 船内に戻っていくキュルケを見送り、再度視線をアルビオンへと戻す。 その視線の先、大地の下半分を白い雲で覆われた、浮かぶ大陸に注がれていた。 それから約3時間ほど経ってようやくアルビオンの港が見えてくる。 それを機に連れて来た使い魔を含む、一行全員が甲板に集まる。 「直接は無理よねぇ」 そうキュルケが呟く、恐らくはアルビオン中の港は不審な者が入り込まないよう警戒しているだろう。 そうなれば堂々とフネに乗ったまま港には行けない。 「この距離ならシルフィードでも行けるんじゃないのかね?」 「そうねぇ、正面からは無理でしょうし、そうするしか無さそうね」 チーフも反論は無いらしく、黙ってこの話を聞くだけ。 そうと決まればやっておかなければいけない事がある。 「船長、はいこれ」 「……これは?」 キュルケが船長を呼び出し、少し重たい麻袋を手渡した。 「口止め料よ」 「……ああ!」 ようやく理解したのか、船員以外が乗ってきたと言うことを知られたくはない。 口止めとして硬貨を渡しておく。 「黙っておきなさいよ? もし一言でも喋ったらその顔が真っ黒になるから」 胸元から取り出した杖を船長に向け、喋らぬよう脅しておく。 頬を引きつらせ、何度も頷く船長。 キュルケはそれを無視してシルフィードを呼んだ。 甲高い泣き声、空の覇者と言わんばかりに翼を広げたシルフィードがフネを追い越した。 ぐるりと大きく旋回、また追いかける位置となり、羽ばたきながら甲板に降り立つ。 「ええっと、スカボローだったかしら?」 「ええ、お城がニューカッスル、港から馬で一日くらい掛かったと思うけど」 「ルイズたちはもうお城に向かっているだろうね、追いつけるかな」 「襲われて、足止めでもされてなきゃ追いつけないでしょうね」 「シルフィードに乗っていけばもっと……」 「ばれるでしょうが」 「それもそうか……」 目立ちやすいシルフィードに乗っていくわけには行かない、もし見つかれば間違いなく追いかけられる。 チーフは重たいし、速度が鈍って追いつかれるかも。 「その時は落とす」 「……何を?」 「行こう」 「え、ちょっと! 何を!?」 問いかけるキュルケを無視し、シルフィードに乗れと催促するチーフ。 何を落とすのか、普通に考えれば敵だろうが、何か引っかかる嫌なものを感じたキュルケだった。 4人はシルフィードの背中に乗り、ヴェルダンデはシルフィードの口に銜えられて飛ぶ。 スカボローの港から大きく外れ、雲に隠れつつニューカッスル城の方向へと近づきながらアルビオンの大地へと降り立つ。 降り立った場所は平野である為、見渡しが良く、この場に留まれば遠くからでも見つかってしまう。 故にすぐ移動を開始し、近くの森の中に入った。 「やっぱりきつそうよねぇ」 「きゅい」 森に入るなりキュルケが言う、シルフィードはそれに同意して鳴いた。 0.5トンはやはり無理だった、もとより銃やデルフリンガーの重さも加わるし、キュルケたちの重みも加わる。 600キロを超える重荷を背負ったまま、十時間も飛べるほどシルフィードは育っていなかったと言うこと。 「一度港に戻る? 馬が買える様な所は港……」 とキュルケが言葉を止めた。 見ればヴェルダンデが物凄い勢いで地面を掘り返して潜って行く。 「ヴェ、ヴェルダンデ!? 待ってくれ! どこへ!?」 ギーシュが慌てて止めるも、ヴェルダンデは無視して地中へと消えていく。 その穴は大きく、人が簡単に入り込める大きさだった。 「………」 キュルケとモンモランシーは「またこいつは……」と言う表情でギーシュを見ていた。 チーフも穴を見つめた後ギーシュを見る。 「い、いやぁ……はは……」 「どうすんのよ」 「ど、どうって……」 「ギーシュの使い魔でしょうが、さっさと呼び戻しなさいよ」 「いやね、ヴェルダンデは宝石が何とかと言っててね……」 「はぁ?」 「……ルイズが着けていた指輪?」 ギーシュが首をかしげる様に言った。 「何? あのもぐら、ルイズが着けてる指輪の匂いでも嗅ぎ取ったわけ?」 「そうらしいよ、進んでいった方向もニューカッスル城の方だし……」 そんなギーシュの答え、どうする? とキュルケがチーフに視線を向ける。 「それは確かか」 「間違いないって言ってるよ」 「辿り着けるんだな?」 「匂いは覚えたって」 「そうか、それなら3人は地下から行った方が良い」 馬を買って突っ切るにしても、かなりの危険が伴う。 チーフ一人なら切り抜けられるかもしれないが、3人も居ればフォローに回れず危険な目に合うかもしれない。 ならば、敵が居ない地下に潜っていくほうが確実に安全だ。 ヴェルダンデが掘った穴は幸い、キュルケたちが入り込めるほどの大きさがある。 「3人はって、チーフはどうするの?」 「徒歩で向かう」 「心配は……要らないわね」 昨晩100人以上一人で倒し尽くしたチーフが、生半可な山賊などに負けるとは思えない。 元よりこの穴のサイズではチーフにとって窮屈、せめてあと50センチほど欲しい穴の大きさだった。 同様に、穴に入れないシルフィードをどうしようかと、話し合おうとすれば。 「きゅい」 とシルフィードが一度鳴いてチーフの傍による。 「シルフィードはダーリンと一緒に居るの?」 「きゅい」 もう一度鳴いて、キュルケの問いに答えた。 「流石に潜れないしね、それじゃあ……どこで落ち合いましょうか」 行き当たりばったり、追いつけるか分からないし、城の中であったら正規の訪問で無い以上確実に会える保証は無い。 だから会えなかった場合にどうするか、それを考え決めておく。 「そうね、戦いも近いって聞いたし、会えなかったらここで落ち合いましょうか」 穴、ヴェルダンデが掘った穴で集合する事を決める。 キュルケたちは穴を通って戻ってくれば良いだけの話だから簡単だろう。 穴が塞がっていたり、他の誰かが居たとしてもヴェルダンデが他の出口を作れば良い。 そうして今後の行動を決めた後、キュルケたちに持ってきた水や食料を多めに分け、穴に潜っていくのを見送る。 こちらはこちらで進もうか、と言う所でシルフィードに異変が起こる。 一度鳴いたシルフィードが一瞬だけ光り、視界を染める。 それが収まり、翳していた手を下ろせば。 「………」 タバサと良く似た青色の、長い髪をなびかせる全裸の少女が居た。 「お兄さま、いくのね!」 と飛びついてくる少女、流石のチーフも一瞬唖然とした。 だがやはり流石のチーフは一瞬で我に返り、抱きついてくる少女に尋ねる。 「……シルフィードか」 「そうなのね、お姉さまがお師匠様なら見せても良いって言ってたのね」 「そうか」 「そうそう、そうなのね」 いつの間にか肩車のようにシルフィードがチーフの上に乗っていた。 どうやら魔法は質量保存の法則も無視するようだ。 竜のシルフィードは間違いなくチーフより重く、そのまま乗せたらそれなりの負荷が掛かるはずだが。 この少女、シルフィードらしい少女は姿かたち見た目通りの重さしかない。 「すぐ戻れるのか?」 「簡単ね」 チーフから飛び降り、また一瞬だけ光ると青い風竜シルフィードの巨体があった。 「きゅい、本当の名前は『イクルルゥ』なのね。 お姉さまが人前で喋っちゃいけないって言ってるから、いっつもこの姿なのね」 使い魔契約ではなく、元から喋れる動物は『韻』と言う存在らしい。 生態系を調べる為に見た図鑑に、一言だけ注釈されていたのを思い出す。 そうしていれば、いつの間にかまた少女に戻り駆け回っているシルフィード。 そこでチーフは疑問を浮かべる。 「何故変身する必要が」 韻と言えど喋らなければ通常の風竜と見分けが付かない。 生態個数も比較的多く見られるほど存在している、アルビオン界隈で飛んでいてもなんら不思議ではない。 そうなれば、態々人型になってチーフに付いてくる必要もない。 「お姉さまが離れるなって言ってたのね、だから一緒に行くのね!」 そう言ってチーフに飛びつくシルフィード。 何らかの理由、恐らく急行の事態に陥った時の移動手段と予測付ける。 すでに急行的な事態だが、目立つシルフィードに乗って直接追いかけるのは……最後の手段か。 そんな事を考えながら、肩に人型シルフィードを乗せてニューカッスル城に向かうチーフであった。 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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初めての昼寝なしの日 息子はいつもお昼ご飯を食べてしばらくするとお昼寝をします。 昨日は休日でお兄ちゃんがいたのでなかなか寝ず、楽しそうに遊んでいました。 お昼寝することなく2時になり、用事で出かけていた旦那が帰ってきました。 するとまた元気に遊び始めました。 夕方になるとだんだん眠くなってきたようでしたが、こんな時間に寝たら夜寝れなくなると思いここまで来たら寝かさないでおこうと頑張って起こしていました。 早めにご飯とお風呂を済ませ、いつでも寝られるようにしていました。 すると8時前にゴロゴロし出し、寝てしまいました。 生まれて一年半、初めて昼寝をしませんでした(^ ^) http //www.ipanemaholidays.com/
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このページはこちらに移転しました 最後の3月 作詞/271スレ89 作曲/( A`)モヲトコ 君の隣の最後の一ヶ月はまるで陽だまりみたいで 話すたびに笑うたびにどんどん気になって 片思いでもいいかな 好きになるだけなら良いかな ちょっとだけ手を伸ばせば届くはずなのに できないよ 君の隣の最後の一ヶ月はすぐに過ぎていったから 前の席、見るたびに少し苦しいよ 片思いで良かったのに好きなだけで良かったのに 甘い汁を飲んじゃったよもうかえれないよ 伝えたいよ 音源 最後の3月 mp3
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『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』プレゼンテーションレポート! - PS World マルチプレイ概要 今作もマルチプレイ搭載決定。 マルチプレイヤーβテストが2015年12月5日〜2015年12月13日に開催決定。 詳細はマルチプレイβテストを参照のこと。 リクエスト・コメント 名前 任天堂ファンですが洋ゲーとバカにしてました プレイしてみてわかる感動 - 2016-05-11 16 32 16 面白すぎて誰も wiki編集しないというw - 2016-05-11 14 25 56 アップデート情報てどこのサイトで見れるかわかる? - 2015-12-05 13 54 57 マルチプレイβ始まったな マッチング速いー - 2015-12-04 17 19 47 クリックでお気に入りに追加 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン一覧 @wikiかんたんプラグイン入力サポート バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
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APO/S53-028 カード名:“最後の一閃”赤のセイバー カテゴリ:キャラ 色:赤 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:9500 ソウル:2 特徴:《サーヴァント》・《王族》 【自】 このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。 【自】CXコンボ[② あなたのレベル置場の表向きのカードを1枚裏向きにする] このカードがアタックした時、クライマックス置場に「燦然と輝く王剣」があるなら、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、相手にXダメージを与え、次の相手のターンの終わりまで、このカードのパワーを+3500。Xはあなたのレベル置場の裏向きのカードの枚数に等しい。(ダメージキャンセルは発生する) だから、オレの願いはただ一つだ レアリティ:RR SP Fate/Apocrypha収録 18/04/27 今日のカード 18/05/25 今日のカード CIP回復とCXシナジーでのバーン能力を持つレベル3。 対応CXも含めて“主と従者”凛&アーチャーと似た性能。 違いとしてタイトル特有のレベル置場を裏返すギミックが組み込まれている。 単体で使用した場合は1点のバーンダメージに留まる。 しかし2枚目以降のこのカードや、“決戦”黒のアーチャーといったレベル置場を裏返すカードを用いることでダメージ量を増やすことが可能。 パンプが付随することもあり、CXさえあればターンをまたいでの使用も視野に入る。 逆に“聖女”ルーラー・“人類救済”シロウ・コトミネといったレベル置場を表返す・入れ替えるカードを使うことで、コストを捻出したりダメージ量を減らすことができる。 自身ではCXを持ってこれないので、ドロー能力を持つ“殺戮”黒のアサシンや“聖杯大戦”赤のセイバーといったレベル3キャラとの併用も考えたい。 弱点はストック2枚という重めのコスト。 このカード以外のレベル3や、レベル応援といったコストを使うカードとの投入バランスには気をつけたい。 ストックブースト能力を持つ“乙女の貞節”黒のバーサーカーとの相性がいい。 ・対応クライマックス カード名 トリガー 燦然と輝く王剣 扉 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 “円卓の騎士”赤のセイバー 1/0 5000/1/0 赤 CXシナジーで回収
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-20「脱出」 奪う、戦争ではごく当たり前のことだ。 武器に食料、乗り物など、技術すらも奪うし命も奪う。 マスターチーフからしてみれば敵歩兵は歩く武器庫、この世界でもそれはあまり変わらないのだが……。 「マスターチーフ、考え直さないか? 君は魔法を使えない、失敗すれば落ちれば死んでしまうぞ?」 「問題無い」 「何故そう言い切れるんだ?」 「失敗はしない、それにこの高さから落ちても死にはしない」 「……君がタフなのはわかった、だが落ちて死ななくても下の兵に包囲されるだろう?」 「その為に子爵が居る」 「まさか失敗して落ちたときは魔法で蹴散らせ、等と言わぬよな?」 「レビテーションで重量の軽減を頼む」 狙って飛んだとしても、相手は常に動いている。 不意に速度を早めたり緩めたり、生き物故の不規則。 魔法を持たぬチーフに落下中任意で方向を変えることは難しい、500キログラム近くあるからこそ風圧に因る軌道変化も難しい。 無論そんな重さの物体が落ちれば、その下にあるものは大きなダメージを受けることは間違いなし。 そこで子爵の魔法で重さを軽減しつつ、風圧に頼った軌道修正より確実であろうレビテーションでズレを減らす。 「まだ上か」 唖然とするワルドを横切り、チーフは廊下の窓の外を覗く。 「ちょっと待ってくれ、それは幾ら何でも……」 「出来ないのならそれでいい、別の手段を探す」 挑発めいた、実際挑発なのだろう言葉にワルドは噛み付く。 「その位瞼を瞑ってでもやってみせよう!」 そう言った時にチーフは振り向き、ワルドは自分の失言に気が付いた。 大きな自信を持って出来ると宣言してしまった事、その一言が作戦の遂行可能かを決めてしまった事に。 「なら任せる」 ワルドは呻きながらもまだ口を開く。 「……この作戦を行えることはわかっている、君の度胸と僕の魔法が加われば無理ではないと思う。 だが成功するかどうかとは違う、もっと確実な作戦を考えた方が合理的ではないのか?」 「子爵は任務の失敗を念頭に置いているのか」 「その可能性もあると言っているだけだ!」 「任務を達成する、しないの話ではない。 我々は任務を『達成させるしか無い』」 「それは……、確かにそうだが……」 「ならば考える事ではない、やるだけだ」 「………」 考えるだけで任務を遂行できるならいくらでも考えよう、だが現実はそうではない。 考える暇があるなら動け、動いて任務を達成させるためだけに動け。 それ以外の思考は必要ない、不要なものにリソースを配分するなどただ失敗への確率を増やすだけ。 「……本当に、出来るんだな?」 その問に頷き、歩き出す。 目指す場所はニューカッスル城にある一番高い部屋、ウェールズの居室だった部屋。 降りるはずだった階段を登り、上へ上へと上る。 その途中もやはり敵は居ない、降りてくると思い恐らくは下の階に兵を揃えていた可能性が高い。 予定通り下の階へと向かっていれば、激しい戦闘になっていたかもしれない。 「……しかし、君の行動は突拍子も無いな。 下から行けないからと言って上から飛び込む、なんて普通に思い付かないと思うのだが」 「やれる事は全てやる、それだけだ」 階段を駆け上がりながら、ワルドはチーフの奇怪な考え方に声を漏らす。 マスターチーフと言う存在を生み出したスパルタン計画の真髄、超兵士育成による状況の打破。 なんとしても作戦を遂行する事を求められる存在、故にあらゆる方向からのアプローチを掛けなければいけない。 不可能を可能にすると言うことがこの計画の最大の命題、ならばマスターチーフは最大の成功作と言われるだろう。 そう言われ、思われて当然の戦功をいくつも残しているのだから。 「……そうか、やはり僕とは違うのだな」 「………」 軍人と言う括りは同じでも、与えられた役割は全く違う。 ワルドの役割りは『王族の護衛』、対するチーフの役割りは『最前線で戦う歩兵』。 最も前に出る軍人と、最も後方に居る軍人、比べ差異を語るなど意味はない。 「子爵の考えは分かり難い、だが国の安否を思うのは理解出来る」 「………」 結局はどちらも守るために動くと言うこと、思惑は理解できないが行動は理解出来る。 それを機に会話は途切れ、二人は階上を目指す。 「ここだ」 子爵の記憶頼りに廊下を進んでとある部屋へと入る。 そこはニューカッスル城で一番高い天守の一角にある部屋、ウェールズの居室であった。 室内には木で出来たベッドや机と椅子、壁には戦いを記したタペストリーや、1メイルほどの窓位しかない質素な部屋。 ドアを潜り室内に入る、最短で窓まで歩み寄り、外を確認する。 上下左右、室内から見える景色を確かめ、窓を開いた。 「すぐに後を追えば良いのだな?」 ワルドのその問に頷き、もう一度外を見る。 城の上空にはフネが浮かび、その周囲には騎士が乗った竜を飛び交っている。 城の周囲にも竜が飛び交い、おそらく場外に出るだろう存在を警戒している。 「下しか狙えないだろう、タイミングは全てチーフに任せる」 万有引力、全ての物は重力に引かれて下へと落ちる。 チーフが単身で飛べない以上落ちるしかあり得ないため、チーフより下に居る竜しか狙えない。 「……行こう」 僅かばかり顔を出してこちらに気がつく位置に敵が居ないことを確かめ、窓から外へ出る。 バルコニーなど無く、何かに掴まっていないと確実に転げ落ちる傾斜。 窓枠がチーフの重量に耐えられるか確かめ、右手にハンドガンを持つ。 「ひえー、高けぇーな。 落ちたら相棒でも死ぬんじゃないかね?」 「やはりインテリジェンスソードか……、確かにここから落ちたら頑丈なオーク鬼等でも即死するだろう」 高いゆえに風が吹く、風切り音が耳元でうるさく聞こえるほど。 高所恐怖症の者なら失神してもおかしくない、そうでなくとも足が震えたりするだろう高さ。 それを目前としてチーフは淡々と答えた。 「問題無い、2リーグの高さから落ちた事がある」 「「……は?」」 デルフリンガーとワルドの声が重なる、それを切っ掛けにチーフは窓枠を手放した。 踏ん張り体を傾け、天守の傾斜に沿って駆け出す。 5メイルほどの、もう落ちていると言って良い傾斜を駆けて飛び出した。 「冗談だろぉぉーーーーー!?」 自殺紛いに飛び出した事か、あるいは2リーグの高さから落ちた事か。 短い助走で傾斜を蹴って横への距離を一気に稼ぐ。 空を飛べないチーフが空へと舞う、2メイル越えの巨体、1000リーブル近い物体が速度を上げながら落ちて行く。 その落下地点は地面、では無く空を飛び飛竜。 落ちならがも他の飛竜との位置を確かめ、できるだけ位置を調整する。 頭を上に向ければ続いて飛び降りて風を切るワルド。 下に向ければ上に気付かず飛び続ける飛竜。 後十秒も無い、そうして飛竜の上に降りれるだろう。 ……順調に行けば、だったが。 元より人間より優れた感覚を持つ飛竜が、上から落ちてくるチーフ達に気が付き大きく鳴き声を上げる。 その声、警告だったのだろう鳴き声に反応して竜騎士が手綱を引き、飛ぶ速度を上げる。 それは飛竜の上に落ちるはずだった予定を狂わせるに十分、このズレは修正出来ない、チーフは間違いなく地面に叩きつけられる。 チーフが一人だったならの話だが。 飛竜ではなく地面の上に落ちるはずだったチーフが突如大きく曲がる。 チーフが小さな閃光を放ち、エネルギーシールドが反応するほどの威力を持った風に煽られて曲がる。 真っ直ぐ下に落ちる軌道が、斜め下に落ちる軌道へと変化、その調整は神掛かっていたと言って良い。 バランスが崩れて縦横問わず回りながらも見事、速度を上げた飛竜の上へと四つん這いに近い状態でチーフは落下する。 「ギャォッ!」 「なッ!?」 無理やりな軌道修正で僅かばかり落下速度が鈍ったとは言え、1000リーブル近い重さを持つチーフが落ちれば人より強靭な飛竜とは言え痛い。 むしろそれで墜落しない竜を褒めるべきか。 飛竜の悲鳴と、竜騎士の驚きと、落下時の一瞬の硬直が重なるが、竜騎士へ迫るに十分な時間が生まれている。 飛竜の背を蹴って駆け出し、低い姿勢からの強襲。 チーフの太い腕が竜騎士へと伸び捉える。 「ぎざばッ!」 背中から抱え上げられ、杖が握れぬよう腕を拘束。 ミシリと竜騎士の背中が軋み、濁った声が上がる。 「一つ言っておく」 飛竜の上と言う不安定な足場で、竜騎士の腰に指していた杖を引き抜いてチーフは竜騎士に向かって一言。 「杖を手放すな」 そう言って強引に竜騎士に杖を握らせ、腕一本で竜騎士を空へと放り投げた。 悲鳴を上げながら竜騎士は落ちて行く、そうして全長10メイルを超える飛竜に付けられた手綱を握る。 それを引っ張り、鳴いていた飛竜の速度を緩める。 ざっと周囲を見渡し、異常に気が付いて向かってくる他の飛竜を視界に収める。 飛竜のブレスや竜騎士の魔法が届くまで後数十メイルだが……。 「本当に無茶をする!」 ワルドが飛竜の背に降りてきて、手綱を奪うように握る。 「しっかり掴まっていてくれよ!」 手綱を操り、その先の飛竜まで操る。 飛竜が吠え、その大きな翼を羽ばたかせ速度を上げる。 「あれは片付けるか!?」 速度を上げて、クロムウェルが居るだろう天幕を目指すのだが。 他の飛竜が追撃を掛けてきている、間違いなく邪魔に成るだろう一団。 500キログラム、1000リーブルほども有るチーフを乗せていれば、間違いなく速度の差が出来上がって追いつかれる。 「ああ」 ワルドへと背中を向け飛竜の背びれを掴み、出来るだけ飛竜の揺れと体の揺れを合わせる。 左手で背びれを掴み、その左手の上にハンドガンを持った右手を乗せる。 飛竜が羽ばたく際の上下の揺れと、敵飛竜の軌道を予測する。 「………」 より正確に急所へ、一撃必殺を意識したハンドガンでの狙撃。 銃爪に少しずつ力が込められ、後数ミリ引けば弾丸が飛び出す。 狙う、追撃を掛けてきている飛竜の頭を。 「片付ける」 上下に揺れる敵飛竜の頭部、それが一瞬止まる位置。 そうして引き金を引いた、『M6G ピストル』の銃口からマグナム弾が吐き出される。 同時に排莢、僅かばかりに銃口から排煙、衝撃を逃がすためのスライドブローバック、そして弾頭は敵へと一直線。 高威力高機能化が進んだ地球人類が使う拳銃、ハルケギニアの物と数倍から数十倍もの威力や射程距離を誇るそれ。 比較的威力の低いものと認識されるハンドガンでも、飛竜の鱗を持ってしても止められるものではなかった。 硬い鱗を突き抜け、頭蓋骨を砕き、脳を蹂躙して、飛竜を絶命させる。 そうして二度三度と間髪入れずに発射音。 そのどれもが追撃を掛けてきている飛竜へと吸い込まれるように当たる。 突如頭に赤い花を咲かせて死に至る飛竜に驚愕し、墜落する飛竜から飛び降りる竜騎士達。 「これで!」 邪魔者はいなくなったと、ワルドが声を上げて手綱を操る。 翼を羽ばたかせながら滑空して行く、半ば落ちているために速度も加速して行く。 どんどん大きく、近づいて天幕の詳細が分かる距離まで迫る。 下では飛竜の落下と、下降してくる飛竜に慌て驚き走り回るレコン・キスタ軍。 「誘き出す」 「僕に討たせてくれ!!」 「任せる」 なんとしてでも自分の手でクロムウェルを打ち取りたいのか、ワルドが声を荒らげてチーフに言った。 それを聞き任せながらも腰のフラググレネード一個とプラズマグレネード二個に手を掛ける。 「爆音で気を引く、出てきたら魔法で討ち、出てこなければ天幕ごと討て。 これに関しては成功しても失敗してもすぐ離れよう」 任務の内容は神聖アルビオン共和国皇帝、クロムウェルの捕獲か暗殺。 だが大前提の二人とも生きて帰ることを達成しなければならない、クロムウェルに構い過ぎて討つことも逃げることも出来なくなるのは避けなければならない。 たった一度の一撃離脱しか許されない状況、軍艦も浮いているし、遠くだが飛竜もまだ飛んでいる。 もたもたしてるとどうにも出来なくなる状況、その状況へと至る泥沼に片足を突っ込んでいるために一度だけの攻撃。 「……行くぞ」 「ああ!」 青色の球体に緑色の線で構成されたプラズマグレネードを右手に取り、起爆用のスイッチを押す。 同時に甲高い音が鳴り、球体から青白い炎のような物が溢れ出す。 それを飛竜の尻尾に当たらないよう上へと放り投げて落とす。 青白い尾を引きながら落下して行くプラズマグレネード、数秒掛けて落ちたそれは地面へと到達し。 「グオ?」 高さ5メイルほどもある一匹のオグル鬼の頭に落ちた。 音を出しながら炎のような青白い光を放っているそれを手に取ろうとする。 「……?」 だが手に触れれば手もくっついて離れない、力任せに引っ張るも異常な吸着力に引き剥がせない。 それを見ていた周囲のオグル鬼も興味本位で近づき、それに触れようとした時閃光が走った。 プラズマ爆発、プラズマグレネードがくっついていたオグル鬼の上半身が吹き飛び、そのオグル鬼に近寄っていた他のオグル鬼も爆風で致命傷を負いながら吹き飛んだ。 一瞬で起こった惨状、何が起こったのか分からないまま肉片となったオグル鬼。 ざわめきが起きて、少々慌て始める周囲、それを加速させるようにもう一度爆音が鳴った。 「な、何が起こっている!?」 吹き飛んだオグル鬼と、別のところでもう一度起こった爆発に驚き状況を確認しようと一部隊の指揮官が声を荒げる。 「わかりません、青い光が爆発したとしか……」 「さっさと調べろ!」 そう怒鳴り終えると同時に、さらに爆発音。 慌てふためき、言ってはならない一言がついに飛び出した。 「敵襲! 敵襲ッ!!」 「敵!? どこだ!」 「竜騎士達は何をしていた!!」 「南から来ているらしい! 戦闘準備!!」 「違う! 東だ!」 錯綜する情報、正しいのか間違っているのか、それを確認出来ずに慌ただしく動く。 まるで大砲のような轟音、それだけで戦況が有利に発展する。 落ちてくる飛竜の死骸と、たった三つの爆発、一つのフラググレネードと二つのプラズマグレネードでレコン・キスタ軍に混乱が広がっていく。 ただでさえ数が少ないグレネード類を全て使い切ったのだ、多少なりとも混乱してくれなければ困る。 それを尻目に飛竜とそれに乗った二人は一際大きな天幕へと迫る。 「やはりあれだったか!」 手綱を握ったままワルドは立ち上がり、右手に持った杖を天へと向ける。 爆音と騒ぎが気になったのか、大きな天幕からメイジの一団を引き連れているクロムウェルらしき男が出てきた。 それを確認すると同時に風が大きく鳴る、ワルドの杖先に風が渦巻いて轟音を立てる。 高速で空を飛び、耳に入る大きな風切り音に負けぬ音を立てて、風が渦巻く。 「傾けるぞ、落ちてくれるな!」 その警告に飛竜の背びれを掴み直し、落ちぬよう体を固定する。 「何が虚無か! あのような外道を認めてなるものか!!」 バレルロール、螺旋に飛竜を回りながらも魔法で狙い澄ます。 それは『エア・スピアー』、風で出来た投擲槍。 薄い鉄板でも容易く抉り貫き通す威力を持った風が、逆さまになった飛竜の鞍乗から放たれる。 「……見事だ」 高速、流石に音速には届かないが放たれた矢より速い速度で空を裂き、メイジの壁に守られていた男を斜め上から胸を串刺しにした。 目算距離で200メイルもないだろうが、この距離で当てられるメイジはそれこそ数が少ないだろう。 王族を守る魔法衛士隊の隊長と、スクウェアと言う肩書きは伊達ではない。 「これで……良い」 手綱を引き、下降気味だった飛竜は舞い上がり始める。 顔を見知っているワルドがクロムウェルだと言うなら、風の投擲槍で串刺しにした男はクロムウェルなのだろう。 とりあえずだが殺害には成功したが、まだ脱出は終わっていない。 無事に帰還して報告するまでが任務の内になる、気を抜くにはまだ早すぎる状況。 「どこでも良い、まずはアルビオンから降りなければ」 この飛竜に乗るものがクロムウェルを殺したことなど、多くの将兵が見ただろう。 混乱が広がっているとは言え、すぐに追っ手を掛けられるのは目に見えて居る。 ぐずぐずしていれば包囲される。 「わかっている」 前を向いたままワルドは頷き、飛竜に速度を上げさせる。 チーフは背後の警戒のため、ワルドに背を向けていた。 「ああ、陛下!」 一人の将軍が胸に大穴を開けて横たわるクロムウェルを見た。 間違いなく死んでいる、胸に大穴を開けて生きている人間など居ない。 これが陛下でなければ陛下が虚無の魔法で生き返せただろうが……。 「おのれ……ッ!」 強い怒りを瞳に映し、振り返りながら立ち上がる。 「親衛隊は何をしていた! 竜騎士どもも一体何をしている! 早く賊に追っ手を掛けぬか!」 喚くように大声を上げる、彼からしてみれば許しがたい出来事。 空から侵入してきた賊を艦隊は見過ごし、竜騎士達は止められず、あまつさえ皇帝陛下を討たれてしまった。 大失態にも程がある、責任者と竜騎士達を処分したとしても収められぬ怒り。 「バカ者共が! 何をつっ立って居る!? さっさと動かんか!」 その怒鳴り声にも反応せず、周囲の将兵はざわめくばかりで一歩も動こうとはしない。 「貴様ら!!」 「……ご、ぞのひづようばな……ゴホッ」 怒り狂う将官は背後から聞こえてきた声に、驚きを顕に振り返る。 胸に大穴を開けたクロムウェルがゆっくりと、吐血をしながらも立ち上がっていた。 「へ、陛下ッ!?」 「んん……、ゴホ。 流石にしてやられた」 口周りの血を拭きながら、クロムウェルは平然と立ち上がっていた。 その旨に開いた大穴はゆっくりとだが、見て分かる速度で塞がっている。 「少々侮りすぎていたか」 「お、おお……。 なんと……まるで奇跡……」 「奇跡ではない、虚無の力だ」 そう言ってのけたときには胸の大穴は塞がり、何事も無かったかのようにクロムウェルは振舞っていた。 予想外も良いところだ、死者を生き返らせるだけでも奇跡に等しいのに、まして自身にもそれを行えると言うのは想像だに出来ない。 「追っ手は掛ける必要はない、私を殺せたとぬか喜びしているだろうからね」 「しかし……」 「良い、死んだと思われていた者が実は生きていた、なんて面白い話ではないかね?」 「た、確かに」 「うむ、流石に穴開きのままではいかんな。 着替えが終われば会議の続きを始めよう」 「は、仰せのままに……」 間違いなく勝てる、虚無の力を扱うクロムウェルに付いていけば、間違いなくハルケギニアはクロムウェルの手中に収められるだろう。 そう考えながらも翻って歩き出すクロムウェルを、将軍の男は畏まって後ろ姿を眺めていた。 前ページ次ページ虚無と最後の希望
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前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-3 「相棒」 「決めたわ!」 握り拳を作って立ち上がるルイズ。 勢いで椅子が倒れた、それを屈んで立て直すチーフ。 「チーフ!」 首が折れそうな勢いで振り向くルイズ。 目には異様な輝き、確固たる意思が込められている。 「剣を買いに行くわよ!」 昨日の今日は虚無の曜日、時間は午前で休日である。 朝起きてからずっと部屋の中をうろつき、部屋の端に行き着くとチーフをちらり。 また歩き出して端に着くとチーフをちらり、最後には椅子に座り横目でチーフを見つめ続けていた。 それを何時間も繰り返し、やっと決意したように言った。 「武器ならある」 背中に背負ったアサルトライフル、そして腰に付いたハンドガン。 どちらもチーフの世界の武器であり、扱いに精通し彼の技量ならば十二分に扱いこなすだろう。 予備の弾も十分とは言えないが所持している、しっかり狙いを付けて撃てば百を超える敵でも捌けるだろう。 「前々から思ってたけど、それって何の武器?」 ルイズはそれが『銃』であると分からなかった。 話に聞いたのみで実物は見たことが無い。 話より大分形が違い大きさもかなりあって、それが銃であると辿り着けなかった。 銃は一部の銃士隊しか扱っておらずサイズはせいぜい短銃か、流線的なフォルムを持つ長銃くらい。 施条、ライフリングが刻まれていない単発滑腔銃でメイジが注意するほどの武器ではなかった。 一発撃つごとに手間の掛かる装填、中距離でも命中精度が落ち、威力も極端に落ちる。 弾道も不安定になるため、確実に当てる為には一定の距離まで敵を近づけさせる必要もある。 また、当たったとしても頭や心臓など、急所で無い限り秘薬無しでも十分に治せる程度の怪我しか負わない。 上記等の理由で使い所の難しい武器、という扱いになっている。 そういった事により、さほど進化せずこの現状を作っていた。 もっとも、チーフの持つ銃とハルゲニアの銃は性能が違い。 射程距離や威力は物によっては数百倍、千倍以上にも及ぶ。 それを知らないルイズは当たり前にさほど強くない武器であると考え思ってしまっていた。 「へぇ、これが銃……、ちょっと貸して」 チーフの側面に回りこみ、腰や背中に担がれる銃を指で突付きながら見つめる。 「駄目だ」 貸してくれるよう聞いてくる問いに、チーフはすぐさま拒否の姿勢を見せる。 「どうしてよ」 「危ないからだ」 「いいじゃない! これは命令よ!」 ビシッと指先をチーフの顔に向ける、命令と言われて従うチーフ。 ルイズは理解していた、『お願い』では無く『命令』として出せばチーフが従ってくれることに。 腰からハンドガンを外し、安全装置を掛けてルイズへ差し出す。 重いぞ、と言って渡すが案の定ルイズの手から零れ落ちる。 ガキン、と鈍く重い音がした。 「お、重すぎるわよ!」 銃器としては最も軽いであろうハンドガンで重い、ルイズが如何に非力か理解できた。 「だから言っただろう、重いと」 「こんな使いづらい物より、もっと使いやすいのにしなさいよ!」 チーフにとっては剣を振るより扱い易い物だが。 「近接武「さあ、行くわよ! 付いてきなさい!」」 と、話し出す前に廊下へ飛び出していった。 アクセルを踏み絞り、街路をかなりの速度で走る。 「凄い凄い!」 おもちゃを買い与えてもらった子供のようにはしゃぐルイズ。 二人が乗るのは鋼鉄の箱、『ワートホグ』。 地を掛ける乗り物としては最も早いんじゃないかしら? 突然『ペリカン』へ行きたいなんて言うから、待っていればこんな物に乗ってきた。 「ほんと、凄い……」 響きは、先ほどまでの言葉とは違っていた。 チーフはルイズの呟きと風切り音を耳に、指示された方向へアクセルを踏み込む。 そして走ること1時間足らず、木々の間から見えたのは白い石作りの街。 『ブルドンネ街』、王都の一角。 ワートホグを街の門より離れたところに止める、さすがに堂々と乗り込むことはしなかった。 こんな物で入り込めば確実に混乱が起きるだろう。 しょうがないと門まで歩いていく、馬より断然速く到着できたのだから文句は言えない。 門を潜ると並ぶのは数多の露天や商店、道幅5メイルほどで多数の人々が賑わい通りを闊歩する。 「ちゃんと付いてきなさいよね」 ズンズンと道の真ん中を歩く、見ると道が少し開ける。 道行く者たちは羽織ったマントで気が付いたのだろう、ルイズが『貴族』であると。 そしてその背後について歩くチーフの姿を見て人の波は次第に開けていく、割れた海のように。 「えっと、こっちだったかしら」 四辻に出る、ルイズは周りを見渡しながら呟いていた。 狭い路地裏にはゴミなどが散乱していて、鼻に付く臭いが漂っている。 「秘薬屋の近くだったと思うけど……」 袖で鼻を塞ぎながら目的の武器屋を探しているようだ。 「あれかしら」 汚い路地裏の一角に剣の形をした看板がぶら下がっている。 看板がぶら下がっているところに行ってみると、階段があり、上がりきった所にそれらしき店があった。 上りきって扉を開けるとカウンターの奥に店主らしき男がパイプを吹かし座っている。 「ああ? ここはお嬢ちゃんが……、これは失礼を」 入るなり店主が吐いた言葉を謝る。 マントか、あるいは紐タイ留めの五芒星を見たのか。 「それで、何か御用で?」 「剣が欲しいんだけど」 「貴族様が剣を? こりゃあ、珍しいこって」 「いいえ、私じゃないわ。 使い魔に持たせるの」 ルイズがそう言った時には扉を開けて入ってくるチーフ。 「そ、そちらの方が持たれるので?」 チーフの異様さに押されたのか声が上ずる。 「ええ、剣の事はよく分からないからそちらに任せるわ」 腕を組みつつ、胸をそらせた。 「わかりやした」 鴨がネギ背負ってやってきた、店主は奥に入るなりそう呟く。 勿論、それを聞き逃すチーフではなかった。 「ルイズ」 「なに?」 「自分で確かめる」 「そ、そう」 壁に掛けられた武器を見始める。 手に取り、軽く叩く、その後一度振る、そしてまた元に戻す。 そこまで試された武器は十振りも無かった。 一通り目を通す、最後に視線をやったのは樽の中に突っ込まれた武器。 錆びていたり、刃が欠けている、要は粗悪品の物。 その中の一つに手を伸ばそうとすると。 「おい、にーちゃん。 俺を手にとってみねぇか?」 樽の中から声が響いた。 その声にチーフの手が、店主が店の奥から持ってきた武器の話を聞いていたルイズが、そしてその話をしていた店主が止まった。 「にーちゃん、かなり出来そうじゃねぇーか!」 カタカタと震える、刀身ほぼ全てが錆びに覆われた大剣。 突っ込まれた樽の中、周囲の売り物になるかどうかギリギリの品物と同等の剣。 「デル公! てめぇは黙ってろ!」 「もしかして、インテリジェンスソード?」 「ええ、口うるさい奴でして」 「おうおう、どうせそんなガラクタ高値で売りつけようとしてるんじゃねぇか!?」 「なんだと!? これはてめぇなんかより上等な代物だってんだ!」 カウンターに置かれた剣、眩い宝石が幾つも散りばめられ、鏡のような両刃の刀身が煌く。 高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が作り上げた名剣、幾重にも魔法が掛かっていて鉄をも一刀両断。 そういう話だったが、ルイズの興味はインテリジェンスソードに向いていた。 「あんた、名前は?」 「おう、デルフリンガー様ってんだ!」 「へぇ、インテリジェンスソードなんて初めて見たわ……」 「そんなことより、にーちゃん早く握ってみれや! にーちゃんの目に叶うと思うぜ!」 デルフリンガーと名乗った剣は自分を販促。 言われるがままにチーフはデルフリンガーを握って樽から引き出す。 「……おでれーた、やるとは思ってたがにーちゃん『使い手』か」 「使い手?」 「にーちゃん、俺を買え!」 「これにする」 「え?」 即決、ルイズと店主の声が重なった 「そ、そんな駄剣なんかよりこちらのほうが断然──」 「そ、そうよ! そんな錆びだらけの──」 「錆は落とせばいい、それに」 言葉が止まる、チーフはデルフリンガーを見つめ。 「これはいい武器だ」 それを店の外から覗いていたのはキュルケとタバサ。 昼前に起き、『ダーリン』ことマスターチーフに愛に来たのは良いが部屋はもぬけの殻。 ただ椅子が一つ倒れているだけだった。 「どこに言ったのかしら」 ルイズの部屋を見渡した後、窓に手を掛ける。 外に広がる風景を見下ろすと、何か見知らぬの物体に乗って道を行くチーフとルイズが見えるではないか。 その時すでに、ルイズの部屋に誰も居なくなっていた。 場所を移し、勢いよく扉を開けた部屋はタバサの部屋。 壁に背をしてベッドに座り、黙々と本に目を通す、自身より長大な杖を抱えた青髪の小柄な少女。 部屋に入るなり大声で叫ぶが、一切タバサの耳には入らない。 本を読む際に入る邪魔な雑音を消すための無音魔法『サイレント』を掛けていた。 隣で、手振り身振りでタバサに話しかけようとするキュルケにしょうがなくと言った面持ちで魔法を解く。 話によるとルイズとその使い魔が何処かへ出かけたらしい。 馬より速い、何かに乗っていたため、馬では追いつけない。 そこでタバサの使い魔、風竜『シルフィード』で追いかけてほしいと言っていた。 タバサは少し悩んだ、今日は貴重な『虚無の曜日』、溜まっていた書物を読破するにうってつけだったが。 「わかった」 無二の親友の頼みでは断れない、後に分かる、その選択は正解であったと。 ルイズ達を追いかけ、尾行していれば。 「うぎゃあああ!」 と汚い悲鳴を上げ、投げ飛ばされたのは折れた剣を持った一人の男。 事はキュルケとタバサが覗き、ルイズとチーフが居る武器屋。 入ってきたのは4人の無頼漢。 「親父、約束の物は用意出来てるかぁ?」 店主はそいつらの顔を見た途端、顔を大きく歪めた。 「ふざけるんじゃねぇ! 誰がてめぇらなんぞに金を出すかってんだ!」 店主は何かしらの理由で金を要求されているが、それを突っ撥ねている。 まあ、見るからに柄の悪い男たち。 「ああ、そうかい」 手に持つ鞘に入った剣を飾り置かれた剣に振り下ろす。 大きな音を立てて、それらは崩れ落ち、床に転がる。 それを見て切れたのはルイズ。 「これでもまだ、ださねぇってか?」 「店主、出す必要ないわよ」 「あ?」とにごった声を上げたのは男たち。 「分かっておりやすよ、若奥さま。 こんな屑どもに渡す金など一硬貨すらありやせん」 分かてるじゃないとルイズは店主に向きなおす。 そして何事も無かったかのようにカウンターに置かれた剣とデルフリンガーの値段を聞き始める。 やはりと言うか、無視される男たちは憤慨した。 一人の男がルイズへと歩み寄る。 「小娘が、大人を舐めると酷い目にあうってのを教えてやるよ」 伸ばした手が、ルイズに掴みかからんとした時。 男の手が太い緑色の手に掴まれていた。 「触るな」 男たちは気が付いていなかった。 薄暗く、ランプで照らされた室内はそれでもなお暗かった。 その部屋の片隅、右手にデルフリンガーを握るチーフが居たことに。 動かなかった故に奇妙な鎧、その程度にしか思っていなかった。 「な!?」 それを見て驚いたのは男たちのみ。 ルイズと既に一度驚いた店主は剣の値段を話し合っている。 「若奥さま、そちらの方はおやりになるので?」 「そうよ、あんな平民が束になって掛かってきても負けることは無いわよ」 自慢げに言うその姿は自信に満ち溢れ、店主に信じ込ませるような風格を放っていた。 「そんなにお強いんで? それならこちらの剣を──」 背後で起こっている出来事を尻目に淡々と商談を進めていく。 「た、高いわね、立派な家と森つきの庭が買えるじゃない!」 「てめぇ!」 チーフに腕を掴まれた男は不自然な体勢で剣を振るうが。 逆に振るわれたデルフリンガーの一撃で剣が折れて男は床を転がる。 「おうおう、思った通り相棒はやりやがる」 カタカタと喋るデルフリンガーはうれしそうだった。 一歩、カウンターに体を向けたルイズの背後に立つ。 ただそれだけだ、ただそれだけで男たちは尻込みした。 狭い店内では己の不利を悟ったのか、男たちは外に出る。 「出てきやがれ!」 男たちが叫ぶが、店内から誰も出てこない。 チーフは店内入り口の前、十分に剣が振るえる位置でただ立つ。 「正解」 「なに? どうしたの?」 それを遠くから覗く二人、突如言ったタバサの言葉にキュルケは頭をひねらせる。 「あれで正解」 あれ、店の外から出ない事が最善の方法とタバサは言った。 一対多数で戦う場合、如何に一対一に持ち込めるかだ。 同時に襲われるのは非常に危険、同時に対処できない場合は死を意味する。 その点で言えばチーフの判断は正しい、あの狭い入り口では一人、よくて二人しか同時に入れない。 さらに、その狭い入り口のおかげで満足に剣を振るえまい。 入ると同時に殴り飛ばされるのが関の山。 勿論、相手が遠距離武器、魔法や銃などを持っていない場合に限るが見たところ男たちは杖を持っていないし、銃もなさそうだ。 故にこの結論に至る。 「噛んでいる」 「そうねぇ、軍隊経験でもあるのかしら」 キュルケから決闘の話を聞いていたが、実際目にするとでは大分違った。 タバサの目には動きに無駄が無い、効率を重視した動きに見えていた。 「これは……、知らない」 小さく、キュルケにも聞こえない声で呟いた。 武器屋の入り口付近には剣を折られ気絶した男が4人、予想通り殴り飛ばされた。 そんなことはすぐに忘れ、店主とルイズはこっちにしようと武器を進めてくるがチーフはデルフリンガーを選んだ。 「これから宜しくな! 相棒!」 「本当にそれでよかったの?」 「ああ」 背中にアサルトライフル、右腰にハンドガン、左腰にはデルフリンガーが付けてあった。 「本当に、本当にそれでよかったわけ?」 「ああ」 何度も「それでよかったのか」と繰り返すルイズ。 そのたびに「ああ」と呟く。 問答しながら軽い金属音を立て、元来た道を戻る。 「いやー、ほんとすげぇな、相棒は」 デルフリンガーはデルフリンガーでチーフを褒めっぱなし。 「ちょっと! 五月蝿いわよ!」と怒鳴ると「おっとすまねぇ、うれしくてついな」とカタカタ揺れる。 所持金ほぼ全てをデルフリンガーにつぎ込んだ、と言うか持ってきた所持金で買える物がデルフリンガーだけだった。 幾つか欲しかった物があったがここは諦め、帰路に着いていた。 まさか剣がここまで高いとは思っても見なかったルイズ。 「しかしなぁ、相棒はすげぇ所を渡ってきたんだなぁ」 「行き成り何言ってんのよ」 いや、なんでもねぇとデルフリンガーは黙る。 はぁ? とルイズは頭をひねる。 「いやいや、ほんとどうでもいいって」 「言いなさいよ、気になるじゃない」 「だってよ、相棒自身のこと教えてもらってねぇんだろ? なら俺から言えるわけねぇ」 その言葉に、あ、と気が付く。 チーフ自身のこと、確かにその強さばかりに目が言ってチーフのことは殆ど知らなかった。 チーフが左手でコツンとデルフを叩く。 「おっといけねぇ、おらぁ黙るぜ」 と、雰囲気をかき回した犯人はカチンと黙りこくった。 「………」 「………」 デルフの一言により微妙な空気になってしまった。 (確かに気になるけど……、今はまだ私の使い魔じゃないし……) うーん、と悩むルイズ。 やはり何も言わず後ろを付いて歩くチーフ。 そこへ、ルイズの仇敵。 「はぁーい、ヴァリエール」 と聞きなれた嫌な声。 ルイズが頭を上げるとワートホグに寄りかかるキュルケとシルフィードに座って本を読むタバサ。 「なななんでツェルプストーがここに居るのよ!」 食って掛かるように質問を繰り出すルイズ。 「いえね、折角の虚無の曜日なのに学院に居るのもどうかと思って街に来てみたらこんな物見つけて調べてたら、貴女達が現れたってわけ」 「うそつき」とタバサは心の中でつぶやき、本を読みながらもチーフへ視線をやっている。 「嘘おっしゃい! まさかつけて来たわけじゃないでしょうね!?」 「それこそまさかよ、折角の虚無の曜日に『ゼロのルイズ』を付回してなんになるのよ」 キィー!とハンカチを噛み千切りそうな勢いで口喧嘩が始まる。 「ゼロじゃないわよ!」 「はいはい、サモン・サーヴァント成功させましたよね~」 如何にも馬鹿にしたような言い方、ルイズはさらに激怒する。 タバサはそれを横目に、シルフィードから下りてチーフと向き合う。 「聞きたいことがある」 「何が聞きたい」 「貴方の素性」 「答える必要が見当たらない」 「何故」 「関連性が見当たらない、少なくともルイズとは友人関係でない事は理解出来る」 青髪の少女ではなく、赤髪の少女であれば友人と言えるくらいの親しさがある。 だがこの青髪の少女は殆どと言って良い程接点が見当たらない。 故にチーフは問答を拒否する。 「……目的」 「答える必要が無い」 「何故答えられない」 「その必要が見当たらない」 「何を考えている?」 「君が問いかけてくる意味に付いて」 「答えは」 「警戒している」 「………」 不審な人物、タバサから見ればそれ以外にあり得ない。 タバサは視線を鋭く、ただチーフの顔に映る自分の顔を睨むように見つめる。 「……貴方は、力の使い方を知っている。 それをどこで習ったか、教えて欲しい」 「何故」 「必要だから」 「断る」 「何故」 「不要ないざこざを持ち込まれる可能性がある、そうなれば自分だけではなくルイズにも火の粉が掛かる可能性がある」 「……貴方は、一体何?」 答えを拒否した問いを再度聞いてくることに、この青髪の少女に諦めはないのだと薄々感じたチーフ。 「……軍人だ」 「どこの」 「答えられない」 「その戦い方をどこで」 「軍による育成プログラム」 「……貴方は戻りたいと思わないの?」 「思っている、だからこそ彼女の護衛を務めている」 「貴方が居るべき場所は、遠い?」 「歩いても走っても、恐らくは空を飛んでも戻れないだろう」 「……そんな場所などどこにも無い」 数秒の沈黙の後に、タバサがそう口を開く。 それにチーフは指先で示した。 「とても遠い場所だ」 右手の人差指は、空へと向けられていた。 それを見たタバサとキュルケは一様に驚きを見せる。 「空? まさかアルビオンじゃないわよね?」 「違う、空の向こう側。 俺が生まれた場所は、夜空に輝く星の向こう側だろう」 その言葉で再度タバサとキュルケが驚く。 「ちょっとルイズ、本当なの?」 ルイズはただ一度だけ頷く。 「……見せて欲しい、星の海の人」 その言葉を呟いて杖を向ける。 「ちょ、ちょっとタバサッ!?」 その光景に今度はルイズとキュルケが驚く。 「意味がない」 「何してるのよ!?」 ルイズの問いかけに答えないタバサ。 その瞳には何かが渦巻いていた。 「見せて欲しい」 さらに一歩、杖を突きつける。 殺気、答えないならば強行手段に出るという警告。 「無用の戦いは必要としていない」 それでも繰り返し、応えないチーフ。 「………」 途端、爆発したような烈風が吹き荒れ、落ち葉や砂埃を巻き上げる。 「タバサッ!?」 「なななななに!?」 影を残すかのような飛翔、それは『レビテーション』と『風』を利用した、『フライ』をはるかに超える速度で移動する技。 レビテーションにて浮き上がった体に、風を任意の方向から当て押し出すもの。 その速度はフライの比ではなく一気に上空へ舞い上がり、杖を構える。 「離れていろ」 この言葉の意味に気づいたキュルケは頷き、呆然とするルイズを抱えて走り出す 「ちょっと一体何なのよーーーー……」 小さくなっていくルイズの叫び声。 タバサもそれを見届けたのだろう、杖を振るう。 現れたのは螺旋に渦巻く氷の矢。 収束していく殺気、狙いは一点、殺す気で掛かった。 前ページ次ページ虚無と最後の希望