約 1,037 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/321.html
そのじゅうご・みっつめ「さあ反撃の狼煙を上げろ・3――ジジィと神姫――」 件の強化案にもあったのだが、どうも親父はこのジイ様――母さんの父親――に何らかのツテを求めていたらしい。 僕のジイ様は、趣味を仕事にしている人で、「息抜きと人生は同義語だ!」と言って憚らないダメ壮年だったりする。 はっきり言ってしまえば、親父のアップグレード版。……ダメさ加減が上位種って、マイナーダウンじゃなかろうか? そんなジイ様が趣味でやってる仕事ってのが、小説家だったりする。桜田柄今(さくらだ・つかいま)というペンネームで、『デヴォ探シリーズ』という連作ミステリを執筆している。かくいう僕はその一編すらも読んだ事はないけど、どうも好評らしい。 僕の主観だけで言わせて貰えば、こんないい加減なジイ様が作家だという事実に心苦しさを感じないでもない。はっきりと、端的に言ってしまえば、「他の作家先生たちに謝れ!」 という心境だったりする。 要するに、ダメ大人っぷりを目の当たりにする親類としては、そう言わざるを得ないくらいの特異なパーソナリティーの持ち主ということ。 まぁ、そんなジイ様は、そのシリーズモノのおかげかなんかで、玩具メーカーやその他色々なところにコネを持っていたりする。 親父はそこに目をつけていたらしかった。 今、僕とティキはチョット大きめな一軒家の真ん前にいる。 お屋敷とか館とか、そこまでの規模では決して無いけど、それでも一般的には『広い』と認識される一軒家。 まぁ立地条件が良かったと言うか悪かったと言うか、とにかく不便な所ではあるので、これくらいの広さがあっても、安く購入できたらしい。 決して大きくは無い門には『葉月』と彫られた表札が掛けられていた。 ここの家の家主は葉月総(はづき・そう)と言う名の60過ぎのジイ様で、オタク気質の持ち主。更に付け加えるなら、自分と趣味が合うからといって快く娘をその男のところに嫁に出したという逸話まで残す変人。そして、僕の亡父に武装神姫を進めた張本人。 つまり僕の、紛れも無く血のつながった祖父。母の父親。親父の言うところのお義父さん。 ……諸悪の根源。 いや、ジイ様のおかげでティキと出会えることが出来たわけだから、感謝すべきなのか? 兎に角、僕らは休日を利用し、わざわざ交通の便も少ないこんな僻地までやってきたわけだ。 田舎だけあって、庭も広い。いや、あくまで庶民感覚で。 それでもティキは感じ入ったらしく、しきりに感嘆の声を上げ、キョロキョロとあたりを見回した。 さすがにご近所さんで、これくらいの規模の個人宅なんて無いからなあ。一応新興住宅地だしね、僕の家の周りは。 十数歩も飛び石を歩き渡ったところで玄関にたどり着き、僕は呼び鈴を鳴らす。 待つこと数秒。 「よく来たな、ボウズ」 そのむやみやたらに勘違いした若作りファッションのジイ様は、ニカッと不自然に白い歯を見せて笑った。 居間に通された僕達は、なんだか居心地の悪さを感じていた。 何でこの家は神姫にお茶を運ばせてるんだろうね? 四体の神姫たちは手馴れた様子で僕らをもてなしてくれている。 で、当のジイ様は上座でどっしりと座っていたりする。 ……この家じゃこれが普通なのか? 「バアさんに三行半突きつけられてから、一人暮らしで何かと不便でなぁ。神姫たちが家に来てからすっかりと楽になったよ」 やっぱりこれが普通なんだ…… 「マスタ、ティキも手伝いした方がいいですかぁ?」 こっそりと僕に聞いてくる。それに対し、僕は小さく首を横に振った。 この状況が平素なものだとしたら、僕やティキが手を出すのは遠慮した方がいい。それこそ大きなお世話ってヤツだ。 「でボウズ。今日は何のようかね?」 ジイ様は緑茶を啜ると僕に笑いかける。 その笑顔は何処か邪悪めいていて、うがった見方なのを承知で言わせて貰えば、「ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」と言ってる様に感じられる。 「くっくっくっ。ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」 …………本当に言いやがった! 「しかし女に振られてからやっとこさ本性顕にしたつーのがなんとも情けないが」 止めまで刺す気か! 「大方ボウズの事だから、ティキちゃんの愛らしさを見てコロッと態度を代えたんだろ? 『萌ー』とか言って。……まったくムッツリだな」 言ってねーよ。更にいらんレッテルまで貼ってくれたよ、このジイ様! そこまで言うとジイ様はテーブルに用意されていた大福に手をつける。 「で、萌々エロボウズ。用件を早く言わんかい」 「誰が『萌々エロボウズ』か!」 「マスタは『萌々エロボウズ』なのですかぁ!?」 「ちっがーう!」 このジイ様は昔っから僕をこういう風にからかって遊ぶのが大好きだったんだよ。 普通孫にこんな仕打ちするか? 「相変わらずからかい甲斐があるボウズだな。……まぁ、ボウズがオレッチを訪ねて来た理由に心当たりもないわけではないが……どうせなら本人の口から聞かせてくれんか?」 人の悪そうな笑みを浮かべながら飄々と言ってのける。 実際敵いません。お手上げ。母さんがしっかり者なのも良くわかるよ。ホント。 反面教師がこうも間近に居るんじゃ、ああもなる。 「……武装神姫の、ティキの武装強化案。親父が頼んでいたパーツを受け取りに来たんだ」 僕はジイ様の目をしっかりと見据えて、はっきりと口に出していった。 ジイ様はニヤリと口を歪ませる。 「別に、ボウズにやってもいいけど、ありゃあボウズの手にゃ余るぞ?」 「それでも、譲って欲しい。親父がやりたかった事をやり遂げたい、から」 「旦那さんが最後に残した物を、無駄にするのはイヤなのですよぉ」 ジイ様は口元を歪ませたまま僕らをジッと見定める。 うーん、なんとも居心地が悪い。 おもむろにジイ様はお勝手に向かって声をあげた。 「おーい、ヒワよ。あのパーツを持ってきてくれ。アトリ、お前は例のメモを」 「畏まりました」 「了解です」 すぐさま返事が返ってきて、待つこと数十秒。 仲居さんの格好に、ウイングユニットを取り付けたアーンヴァルのヒワが、箱を抱えて飛んで来る。ホテルマンの制服を着て、アームユニット、レッグパーツを装備したストラーフのアトリがメモの束を抱えてやって来る。 先ほどから、ある意味珍妙な格好の神姫が四体、僕らを接客しているのだから、居心地だって悪いというものだ。 ……こんな趣向の持ち主だからバア様が出て行くんだよ。 心の中でそっと嘆息。 そんな僕に気が付いているのかいないのか、ジイ様は二体からそれぞれ持って来てもらった物を受け取り、それぞれに礼を言う。 その細やかさが何で生身の、それも肉親に向けられないのかな? 「さてと、これが修芳(あつよし)君から頼まれていた物だ」 そういって二体の神姫より受け取った物を、僕の前に差し出す。 ちなみに、修芳というのは親父の事。 「これと、先に届いていた演算ユニットで、修芳君の構想していたユニットは完成するはずだ」 ジイ様は滅多に見せることがない真面目な顔で言う。 「一応このメモには大まかな回路図が記されているが、間違いなくお前には理解できんだろう。それでも、これを持って行くか?」 「うん。それでも僕はこれを完成させる。させてみせる」 僕も、ジイ様に負けないくらいの気持ちを持ってジイ様に告げた。 「……わかった。持って行け。本当なら修芳君に代金を請求するつもりだったが、これは修芳君への弔い代りだ」 ジイ様は残ったお茶を煽るように飲み干した。 「……ところでジイ様」 「なんじゃい」 「演算ユニットって、どこ?」 「あ? アレなら修芳君がすでに持ち帰ったぞ」 親父が持って帰っているのか。うーん探して見るか。 だけど本当はこういうコネって、なんかズルしてるみたいで好きじゃないんだけど。 言い訳だよなぁ。 言い訳だけど。 言い訳に使いたくはないけど、親父の思いに答える為に、僕のくだらないプライドはこの際無視してしまおう。 その後、僕らはジイ様と食事をし、ジイ様の家を出るころにはすでに夕暮れ。暗くなるとこのあたりは本当に真っ暗になるというので、僕らはお暇することにした。 「ジイ様、ありがとう」 「ありがとうなのですよぉ♪」 僕らはジイ様にお礼を言うと、ジイ様は照れたような顔をして。 「イイんだよ。気にすんな」 とだけ言う。 「それじゃあな」 そう素っ気無く言うと、ジイ様はそのまま玄関の戸を閉めようとした。 が、その時、 「先生。私お見送りに行ってきます」 ヒワはジイ様にそう断わると、スーッと外へと飛び出す。 「そうかい? じゃあ頼むな」 そう答え、今度こそジイ様は玄関の戸を閉めた。 「別にまだ明るいから大丈夫なのに」 申し訳ない気持ちになって、僕はヒワに言った。 「いいのですよ。ここら辺は何も目印がないので迷いやすいのです」 「そうなのですかぁ?」 「はい。……それと、雪那様にお話もありまして」 僕とティキは顔を見合わせる。 「移動しながらお話しましょう」 ヒワはそう言うと進み始めた。 家の門を潜り、角を曲がったところでヒワが口を開く。 「雪那様。お願いが御座います」 金髪に和服、そしてウイングユニットを装着したその神姫は静かにそう言った。 「時折、本当に稀で構いませんので、たまにこうして先生を訪ねてきてはくれませんか?」 「え? いや、まぁそれは。別に構わないけれど……なぁ」 僕はヒワの言葉に答え、ティキに同意を求める。 「ティキはまたお爺さんと遊びたいのですよぉ♪」 ティキは元気良く答えた。 「有難う御座います」 ヒワは浮遊しながらも器用に頭を下げる。 ここで「なんで?」と聞くのは、鈍感が過ぎるか? 「……先生は奥様が出て行かれた後、大変に塞ぎ込んでいたと言います。私達が先生の所でお世話になってからも、時折寂しい思いをされているようです」 …………………… 「それでも今までは、時折修芳様がいらっしゃっていましたので、元気にやっていたのですが、その修芳様が亡くなったからは、さすがに気落ちしたご様子で……」 僕も、ティキも、項垂れてヒワの言葉を聞く。 「それでも私達の前では気丈に振舞って居られますが…… そんな先生を見ているのは悲しいのです」 バア様が今でもジイ様と連絡を取っているのか僕はわからないけど、少なくても母さんはあまりジイ様と連絡を取り合っていない。 別にジイ様と母さんが仲が悪いと言うわけじゃないけど、男親とその娘って、そんなもんなんだと思う。 加えて、なぜか親父はジイ様と仲が良かった。親父はジイ様を本当の親以上に思っていたと、聞いたことがある。 そういう事をちゃんと考えたら、やっぱりジイ様も寂しいのか、な……? 「大丈夫だよ。僕はちゃんとジイ様が好きだから。また来るよ」 「ティキもまた来るですよぉ☆ もっと、いっぱいお話したいですぅ♪」 僕達は勤めて明るくそう言った。 それを聞いて、ヒワは優しく微笑んだ。 そんなこんなで必要なものとそれに伴うある程度のヒントを手に入れたが、僕は案の定それを完成させる事が出来ずにいた。 当然だよなぁ。僕は専門家ではないし、その手の知識に明るいわけじゃない。 神姫のオーナーになってから多少はそういう知識に明るくなってはいたけど、それでも僕の手には余った。 ジイ様が指摘した通りの結果、というわけだ。 だけどやっぱり諦めるわけには行かない。 専門的な知識が僕にないのであれば―― ――専門家に聞けばいいじゃないか。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/1770.html
「で、よぉ……これから、お前らはどうしたいんだ?」 出来れば、もう何も話したくはなかった、何も考えたくはなかった。子供と、あんなのでも自分の妻以外とは、誰とも会いたくはなかった。 でも残念ながら、そうは行かなかった。仮に今ここで、投げ出してしまったら。本当に、こいつらがどこまでやらかすか。まるで想像がつかなかった。 下手をすれば、ここにいる全員で殺し合いを始めかねないし。最悪、その矛先が自分に向く可能性もある。 それに気付いてしまうと、怖くて仕方がなかった。 心臓はバクバク震えているし、口内は舌の切っ先に至るまで、余す所なくブルブル震えている。 一番いい座布団を使って、楽な姿勢でいるはずなのに。めまいを感じて、そのまま倒れこんでしまいそうだった。 先ほどまでは、死人が出ては不味いと言う。そういう使命感と、勢いだけでどうにか乗り切ったが。 こうやって、一度座って。何だかんだで楽な状態になると、緊張の糸と言うのは容易く切れてしまった。 “何か喋れよ”どうしたいのかと、質問をしたのに。こいつらはまた、お得意のだんまり戦法を使ってきた。 両隣や、真正面の人間とも目を合わせたくないらしく。よく観察していると、目線があっちを向いたり、こっちを向いたり。 下ばかり向いていたり、微動だにせずにあさっての方向を向いていると。それをなじられるとでも思っているのか。 まるで、云々と唸りながら考えているような振りをする者までいた。 誰かが、そんな真似事までするものだから。 ああ、そうだ。俺も、私も。この手を使おうか、などと考えでもしたのか。 性質の悪い流行病みたいに。誰かがやった、欺瞞の為の行動は。あっという間に、燃え広がった。 イライラして仕方がなかった。しかしそれでも、喋らずに済んで鼻から深い深呼吸を密かに繰り返して。 バクバクと鳴る心臓の暴れっぷりや、痙攣する口内の動きを鎮めるための時間。 これがたっぷりと用意出来たのは、本当に皮肉な出来事としか言いようがなかった。 奴等が何も喋らないことに心の底からイライラしつつも、奴等が何も喋ろうとしない事に心の底から安堵する。 全く交わる事の無い、矛盾した感情。水と油、犬と猿。そんな表現が陳腐に思えるほどに、強烈なまでに相反しあう二つの感情だった。 当たり前の事だが。彼の心中には、余裕などまるで無かった。 微動だにしないのは、強烈なめまいのせいで。少しでも動けば、倒れこんでしまいかねない危うい安定感だったから。 行儀悪く、あぐらの上に頬杖を付いているのだって。少しでも重心を安定させたいからに他ならなかった。 目つきが、余りにも鋭いのは。ボロを出せば、今度はこっちが殺されかねないと言う。恐怖から来る物だったから。 なので、たまに視線をあっちこっちに巡らせて逃げ回る誰かと不意に目が合っても。 引きつった愛想笑いに対して。何も返すことが出来ずに、鋭い目つきのままだった。 実の所、これが一番不味かった。 これもある意味、当たり前の結果だが。彼以外の人間は。彼の余裕の無さなど、まるで気づいてはくれなかった。 特に、尋常ではない目つきの悪さ。これを、彼以外の者達は彼の怒りだと捉えていた。 しかしその怒りを鎮める役目を、自分がやりたいなどとは絶対に言わなかった。 先ほど彼に茶を用意したり、上座を作ったり、茶菓子を添えたりする役目を……媚を売りたくて買って出た者達が。 彼が少し、だんまりをしただけで。彼の機嫌を損ねたと早合点されて、危うくまた凄惨な私刑が始まりかねない所まで行ってしまった。 あの時は。ただ単に、彼が考え事をしていたと、方便を付いてくれたから。どうにか、きな臭い空気は鳴りを潜めたが。 方便と気づけるほどの余裕がないこの者達は、彼からの質問に対して。いつまで経っても誰も答えないこの状況に。 ついに、怒り出したと。全員が、勘違いをしてしまっていた。 無論、ここで何か彼の気に入りそうな言葉を吐いて、良い子ちゃんの振りをして媚を売り。 気に入られて、その後の人生を楽にしようと。そう思う輩もいないわけでは無かったが。 彼の目つきの悪さを見るに。不幸にも目が合ってしまって、愛想笑いをしても。何も返さない彼の様子に震えてしまい。 もしも気に入ってもらえずに、不興を買ってしまったら。 次に、あのチンピラと同じような私刑を受けるのは、自分だ。 そういう危機感を勝手に感じ取ってしまい。一か八かの賭けに出るよりも、こうやって誰とも目を合わさずに嵐を去るのを待つ方に傾いていた。 一時間くらい、無駄な時間が流れたか。 何度も深呼吸をした甲斐があったのか、それともただ単に時間が経ったお陰か。 とにかく、彼の体の不調は。大分、鳴りを潜めてくれた。 「……はぁ」こうやって、溜息交じりに。ちょっと楽な姿勢を取るために、座り位置を直す事も可能なぐらいには、回復した。 しかし。彼以外の恐慌状態と疑心暗鬼は、酷くなる一方だった。 さっき彼が付いた溜息だって、同じ姿勢で無理やり居続けたから。ちょっと、体がだるくて何となしに漏れたに過ぎないのに。 そうは思ってくれないのが。今のこいつ等だった。 さっきの溜息を、待ちに待ったのに誰も何も喋ってくれないから。 痺れを切らすように、苛立たしい気分の象徴として。そういう溜息を付いた。 大なり小なり、違いはあれど。大方ではこういう想像しかしてくれなかった。 彼の溜息が、何かの合図かのように。この者達は、笑えるぐらいに狼狽してくれた。 この様子を見て、彼自身が最も驚いたが。顔にも珍しく笑みが……それが嘲笑の笑みとは言え。 少なくとも先ほどよりかは、マシな表情だった。目糞鼻糞、その程度の違いしか存在していないが。 ある者は、バネ仕掛けの玩具みたいにブルブルと小刻みに震えるばかりだし。 またある者は、歯をガチガチと鳴らして。空いた口の隙間から、何か泡のような物が漏れ出している。 そして、極めつけは。 「臭い!何だ、これは!?」この静寂を誰かが破ったが、それは勇敢だからではない。 それは、ただの生理的な嫌悪感から。反射的に動いているにしか過ぎなかった。 「うわ……うわぁ!!こいつ、漏らしやがった!!」 極めつけの、大珍事。それは、大の大人がやらかす、失禁であった。 これには、彼もあんぐりと口を開けるしかなかった。 本当に、こいつらは何に怯えているのだろうか。ただの、子煩悩な一職人に。何を恐れる必要があるのだろうか。 「なぁ……お前さん、何でそんなに俺のことを怖がるんだ?」 思わず口を付いた言葉だったが。それは責めたり、怒っているのではなく。 純粋に、何でこいつらは自分を、殊の外怖がるのか。 それが、ただただ、疑問でしかないのだったのだ…………が。 「そうだ!失礼だぞ!!ここは、今では御前にも等しい場所だというのに!!」 「お前は!失礼とは思わないのか!!無為にこの方を恐れているなどと!!」 彼は、本当に。ただ自分の疑問を氷解させたかっただけなのに。周りの者が、また人死にを出しそうな熱を帯びてくる。 彼の事を異常なまでに恐れだしたのは、失禁と言う大失態を晒した者だけではなかった。 失禁をした者は、ただ単に。この異様な空間が出来上がるちょっと前に、少し水を飲み過ぎていただけだったのだ。 だから、ここに来て。ついに膀胱の限界と、恐怖の限界が。関を超えてしまい。 衆目の前で、失禁と言う大失態を。不幸な巡り合わせで、掴んでしまったに過ぎなかった。 それ以外は。失禁をした者も、幸いにもしなかった者も。全く変わりはなかった。 「待て!待て!待てと言っているだろうが!!聞こえんのかぁ!!馬鹿共がぁ!!」 失禁をした者の周りを、他の者が一気に取り囲んで来た。 このままでは、また無意味な私刑が始まり、きっと死人が出る。やっとの思いで、あのチンピラ達に治療を受けさせに行ったのに。 これでは全てが水の泡になってしまう。 取り囲む者達の間を、彼は乱暴に掻き分けて。失禁と言う大失態を演じた者の前に立ち塞がり、盾となった。 「お前ら!何で、そんなに、人を殺したがるんだ!!恥を知れぇ!!」 先ほどの、余裕が無くて鋭い目つきしか出来なかった顔付ではない。 今の彼の表情は。明らかに激昂して、怒り狂っている表情だ。 物凄い剣幕だった。きっと、彼の人生の中でも。今の表情は、文句無しに頂点を飾れる程の怒気が込められていた。 失禁をした者の周りに詰め寄った者達は。彼のこの、余りの剣幕と怒気に。身を震わせる以外の行動が出来なかった。 そしてまた。 「申し訳ありません」 「どうか、お許しを」 「何卒、慈悲を」 そう言う、意地などすべて捨て去って。卑屈なまでに、頭を地に擦り付けて、許しを乞う。者達の姿があった。 許しと慈悲を乞う声の合間に紛れて。 「有難うございます」と、失禁をした者の声が混じっていた。 たった一晩。里の外で、夜を明かしただけで。彼はすっかり、普通の人間扱いされなくなってしまった。 卑屈に、慈悲と許しを乞い。そこに紛れて、助けた者からの。やっぱり卑屈な、感謝の言葉。 彼はこの無駄に仰々しすぎて、軽い言葉を受けながら。里に帰ってきてから、今までの事を。強い焦燥感と一緒に、思い返していた。 そこで、出た結論は。 「もう良い……お前らとじゃ、話もろくにできん」 一緒の目線に立って、話してくれる相手は。多分もういない。 唯一、裏切って欲しくなかったのは。妻と子供達だったが。 子供たちはともかく、こいつらと同じ大人である妻が。果たして、正気を保っているかどうか。 「あの……どちらに!?」 跪いて、頭を地面に擦り付けるこいつらを。もう、視界に入れたくなくて。部屋から出ようとしたが。 やっぱり、泣きそうな声で呼び止められてしまった。 まるで、見捨てないで下さいと言わんばかりの、表情と声で。 「心配するな……戻ってくるよ……お前たち以外の、当てを頼るんだ」 不思議な事に。彼の脳裏によぎった、人物とは。 あの、上白沢慧音の理解者を自称して。里との交流を自ら断ち切った。あの木こりだった。 焦燥感は、留まる所を知らない。でも、歩みを止めることはしなかった。 出来る限り早く、ここから出たかったから。 その一点が強烈過ぎて。彼の足取りは、しっかりと地面を踏みしめる事が出来ていた。 「は……ははは…………嘘だろぉ」 履物をはいて、寄合所の外に出ると。一体いつから、ここに立ち続けているのか。 寄合所の周りには、大勢の里人が。不気味なまでに、整然とした面持ちでいた。 そして、彼の姿を見ると。皆が一斉に、膝をついて頭を低くした。 もう、疑う余地はない。こいつらは、彼が出てくるのを待っていたのだった。 そして、地面に膝を付く人々の中に。 彼の妻がいた。 彼は悟った。もう、普通の人間としての暮らしは、出来ない。 昨日まで、化け物と呼んで忌み嫌っていた。上白沢慧音のような。 上辺だけ、敬われる生活しか出来ない。 彼の脳裏に、木こりの姿が。また一層、強くなった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4483.html
前ページ次ページゼロな提督 村の広場では、ルイズの前に金髪の若い騎士が立っていた。 「えー?戻って来なさいって、そんなぁ~」 「申し訳ありません。ですが、公爵は相当にご立腹とのことです。枢機卿も口頭での報告 が欲しいと」 「そんな、急に言われても…ねぇ?」 ルイズが後ろを振り向くと、ヤンとロングビルとシエスタも困った顔を見合わせてる。 「ねぇ、セブランて言ったっけ?確かアルビオンへ送ってくれたわよね」 セブランと呼ばれた少年騎士はビシッと直立不動をとった。 「はい!名前を覚えて頂き光栄であります!確かに先日、自分がミス・ヴァリエール一行 をアルビオンへ送らせて頂きました」 「そう、その節はご苦労様でした。でも、私達は村に用事があるので、もうしばらく滞在 したいのです」 「いえ、そう言われましても…」 彼等の周囲では村長はじめ村人達も突然の事に困惑していた。 第二十話 SPIRIT ルイズ一行がタルブの村に来てから数日が経った頃の昼下がり。村の広場に、突然若い 風竜が舞い降りた。 突然何事かと飛び出してきた村人達の前に、柔らかな金髪をなびかせた少女の様な顔立 ちの若い竜騎士、セブランが降りてきた。城からの使いとしてルイズ達を迎えに来たので すぐに呼んできて欲しい、とのことだ。 というわけで、村長の家でのんびり読書していたルイズ一行は、すぐに広場へ飛んでき たのだった。 「少しお待ち下さい、共の者と相談しますので。あの、村長」 ルイズがワイズを見ると村長は頷いた。 「ええ。それでは皆様、とりあえず私の家へどうぞ。騎士様は話が終わるまで、当家にて おもてなし致します」 一行とセブランは村長の家で話をする事になった。 ちなみに風竜は村の広場にいると皆が怖がる。竜騎士の風竜でも、竜が恐怖の象徴なの は変わらない。なので一緒に村長の家へ連れてこられた。 村長の家の横では、風竜がゴハンを食べている。と言っても竜の食べ物なんて村には無 いので村人用の食べ物を手当たり次第に引っ張り出してきた。 「ああ…ウチのブタを、丸飲みだなんて…せっかく育ててきたのに」 「しょうがないだろ。空腹で暴れられたらえらいこった。にしても、よく喰うなぁ」 竜を繋ぐような鎖も檻もないのでは危なくてしょうがない。なら満腹にさせて機嫌を取 ろうかということで、村で育ててたブタやら野菜やらをおっかなびっくり風竜の前に置い ていく村人達。若い風竜の食欲は凄まじく、目の前に出された物を片っ端から平らげてい く。 それを遠目から溜息混じりに眺めてる村の男達の姿は、執務室の窓からも見えていた。 執務室にはルイズとヤンとロングビルとシエスタ。 ルイズは窓際に立ち、上機嫌の風竜と不機嫌な村人達を眺めつつ指折り数えていた。 「ええっと、学院を出たのが…スカボローで2日で…ロンディニウムで一泊して…あらや だ、まだ十日ちょっとじゃない。これだけ色々あったのに、驚きだわ」 椅子に座るロングビルも目を閉じて思い出にふける。 「ホント、あっという間だね。色々あったよねぇ…。 ま~、あれだわね、ホラ。将軍に貸してもらった風竜でタルブ来た時、手紙だけ持たせ て返しちゃったじゃないか。枢機卿はともかく、公爵は『タルブで何を遊んどるかー!』 というとこじゃない?」 ルイズもヤンも思い返してみれば、確かにそうだったと頷いた。 扉の前に立ってるシエスタはちょっと苦笑いだ。 「エヘヘ…でも、それってミス・ヴァリエールを大事に思ってるんでしょうね。危険なア ルビオンを出たんだから、早く無事な姿を見せて欲しいんですよ、きっと」 実際、ルイズ達はアルビオンの調査を名目として派遣された。そして『ウェールズ皇太 子生存』情報という一定の成果を出し、大使であるド・ポワチエ将軍から風竜を借りてア ルビオンを飛び去った。タルブへ寄ったのはシエスタと合流するためなので、手紙なんか 出さずに風竜に乗って一緒に帰れば良かったはずだった。 それが、何故に調査報告書としての手紙だけ手渡して竜騎士を帰らせたかと言えば… 「でも~、だって、せっかく旅行に来たんだしぃ~。ゆっくりしていきたいわよねぇ?あ たしの系統については、祈祷書がトリスタニアにないなら急ぐ必要ないし」 と、ヤンに同意を求めるルイズ。 「そうだよ。そもそもこれはルイズと僕が見聞を深めるための旅なんだよ。焦って帰る理 由は無いじゃないか」 と、自己正当化をするヤン。 「あたしだってさぁ、学院長のセクハラからよーやく逃げれたんだしねぇ~。ちょっと羽 を伸ばすくらい、いいんじゃない?」 と、責任をオスマンに押しつけるロングビル。 「つーわけでタルブに残ったわけだ!でもおかげでサヴァリッシュの書とか、色々見つけ れたから良かったじゃねーか!」 と、結論をまとめたデルフリンガー。 「はぁ…ともかく、そろそろ学院に戻りましょう。私は学院じゃなくてヴァリエール家の メイドになったからいいですけど、ルイズさんとロングビルさんは帰らないと怒られるで しょ?」 と、シエスタの冷静かつ当然な予想。二人とも「ふぁ~いぃ…」と気のない返事を返す のだった。 ヤンはよっこらせっと机から降り立った。 「まぁとにかく、トリスタニアに戻らなきゃだめか。公爵も怒ってるみたいだし。枢機卿 には手紙で報告書を出したけど…足りなかったかなぁ?」 外を見てたルイズがクルッと振り向いた。 「そんな事はないと思うわよ、アルビオンで見聞きした事で虚無とテファに関わらない範 囲で全部書いたもの。多分、興味があるから直接話を聞きたい、ということじゃないかし らね」 壁に立てかけられたデルフリンガーも鞘からピョコッと飛び出す。 「んじゃ、早速帰るっきゃねーな!秘書のネーチャンも、ずっとお暇をもらってるわけに もいかねーんだろ?」 「うぅ、そうだねぇ…正直、あのセクハラジーサンの所に戻るのは気が重いけどね、しょ うがないわねぇ」 諦めの溜息混じりにぼやくロングビル。フーケを辞める以上、給料に縛られる生活もや むを得ないと観念した。 執務室の本を見渡しながら、ヤンが呟く。 「ま、帰るのは良いんだけど…この本がね」 その言葉にルイズとロングビルも執務室の書棚に並ぶ本を見る。 「確かに、ただ帰るのは…ねぇ」 「ホント、もったいないわ。村長と相談でもしようかね?」 それらの本は、全てハルケギニア語で記されている。サヴァリッシュの書庫にある冊子 とは異なり、何かの動物の皮で装丁され、各隅は鉄で補強された立派な本が並んでいる。 学院の図書館にあっても不思議はない。そのほとんどはハルケギニアの地理と歴史、教会 の教義、トリステインの法律、紳士録、魔法関連など。村長の家にあっても不思議はない 本ばかりだ。 ただ、その中に、背表紙に何も書かれていない本がいくらか混じっていた。装丁も他の 本と比べるといい加減、というより素人が手作業でやったかのようだ。 その内一冊をシエスタが取り出して広げる。もちろんハルケギニア語の文章と様々な絵 が描き込まれている。 「お祖父ちゃんに相談してみましょう。村のみんなの意見も聞いてみないと出来ない事で すし」 そんなわけで、食堂でタルブ名産ワインと手料理にて接待を受けているセブランを残し て、一行は村長の所へ向かった。 「…というわけで、ブドウを原料とする蒸留酒です。作ってみませんか?」 村の広場で、ヤンは村人達に蒸留酒造りを勧めていた。 広場には沢山の村人達が集まってきている。来ていないのは村長宅でセブランと風竜の 対応をしている人など、ごく少数だろう。無論、広場にいるのは村人とルイズ一行だけ。 よそ者がいても顔見知りの村人同士だからすぐ分かる。 提案を受けた人々は互いに顔を見合わせ、どうしたものかとそこかしこで囁き合っている。 一人の老人が声を上げた。 「それで、蒸留酒の作り方は分かるんかの?」 「ええ、もちろん。サヴァリッシュ氏がハルケギニア語で記していました。今も村長の執 務室においてありますよ」 ハルケギニア語で記されたサヴァリッシュの書。この言葉を聞いた時、村人からは驚嘆 の声が上がる。 当然、地下書庫の存在はサヴァリッシュ家の秘密。内容は帝国公用語で記されてはいる が、書籍の存在自体も口にするのはタブー。そもそも異国の言語で記された書を大量に隠 している時点で、異教徒だの間者だのと疑いをかけられる原因たり得る。その知識は口伝 を装っている。 それだけにハルケギニア語で記された書の存在はインパクトを持った。口々に「なんと まぁ!そんなものがあったのか…」「すると、オイゲンさんはわしらに作れと言ってる、と いうことなのか」「まさかぁ、あの方の力なしに出来るもんか」等の意見がザワザワと聞こ えてくる。 広場を埋め尽くす村人達の前に、今度は村長が進み出た。 「まずは、話を聞いてくれるかな?」 ガヤガヤと騒がしかった村人達が静かになってから、ワイズは朗々と語り出した。もち ろんサヴァリッシュ家の秘密に触れない範囲で。 サヴァリッシュの書。それはハルケギニアとは比較にならない超技術の塊であり、存在 自体を秘匿せねばならない。書を記したオイゲン自身も秘密を守り、平凡な平民として生 涯をまっとうした。 ただ、その中には公表しても危険性のない技術・知識もある。 例えば、現在タルブの村で使用されているワイナリーの知識。 もともとタルブではワインを作っていた。また、ワイナリーとしては秘伝の知識ではあ るが、既に数十年前からタルブ村はワインの名産として知れ渡っている。つまり、ワイナ リーとしての優れた知識がタルブに存在する事自体は周知の事実。これが外部に漏れたか らといって地下書庫の存在がばれるわけではない。 他に、ヤンが既に持っている知識もある。一例としては軍事・兵法関連だ。 突然『出所不明の知識』が小国トリステインの片田舎から湧き出すのが不自然だという のなら、出所がハッキリしていればいい。それに、オイゲンは後ろ盾が無い異邦人だった ことと、ワルキューレの存在を万一にも知られないため、一介の平民として生きた。しか しヤンはヴァリエール家の後ろ盾があるし、世界を滅ぼすような兵器も持っていない。な によりヤンが高度な技術を持つ異国から来ているのは召喚された時点で明白。 そして、最初からほとんど危険性の無い知識として料理もある。料理の本はハルケギニ ア語で記された書の一つだ。 その書にはチャーハン・ラーメン・餃子やクレープ・ワッフル等の作り方が記されてい た。材料さえあれば創作料理を装えば済む。ただ、オイゲンがそれをしなかったのは、タ ルブに来るまで自炊したことが無かったから。料理書に書かれたメモによると、故郷の料 理を懐かしみたかったものの、料理の才能は無かったので諦めたらしい。というより、成 功するまで延々と失敗作を自分で味見した上で始末せねばならず、懲りた。 オイゲンがハルケギニア語で記した書の一つで、ヤンが提案した蒸留酒作りがこれらに あたる。 「・・・というわけで、簡単に言うと『蒸留酒の作り方はヤンさんから聞いた』と言えば いいんだ。事実、ヤンさんは蒸留酒の作り方をある程度知ってるから、別に問題は起きな いと思うのだ。念のため、執務室にあった蒸留酒と蒸留器製造に関する書は読んでもらっ たし」 以上、ワイズは地下書庫に触れない範囲で、村人へ説明した。後ろのヤンも嬉しそうに 頷く。 村人達は様々な表情で意見をぶつけ合う。 面白そうだからやってみよう、という野心的意見。ワインだけで十分だわよ、という欲 のない意見。アストン伯や近隣の町や村にも話を通してみるべきだ、という周囲との軋轢 を不安に思う意見。蒸留酒ってことは蒸留のための設備がいるから金がかかるなぁ、とい う資金面を考える意見。本だけ見たって簡単に作れるもんじゃないよ、という技術面を考 える意見。サヴァリッシュが公にする事を禁じた知識だから秘密にし続けるべき、という 意見も聞こえてくる。 そんな彼等の前に、今度はルイズが進み出る。小さな身体に精一杯空気を溜め込み、大 きな声でしゃべり出した。 「いきなり蒸留酒なんて、と思うのも当然でしょう!でも、ハルケギニア語で記した書と いうことは、サヴァリッシュ家だけじゃなく、村の人々全員に末永く読んで欲しかった、 という意味だと思います!」 その意見に、騒がしかった人々も注意を向ける。 「当然、資金や技術など難しい事は多いと思います!何しろ、作り方は図解入りで記して はありますが、一から作り始めるとなると本の通りにはいかないと思います。最初は失敗 が続くでしょう。蒸留酒も樽で寝かせる場合は、売れるほどの品が出来るまで長い時間が かかるのも事実です!」 そこかしこから、そりゃそーだ、オイゲンさんだって村に来た時は散々苦労したそうだ しなぁ、という声が聞こえてくる。不安げな表情が村人達の間に広がっていく。 そんな否定的空気が広がる広場に向けて、ルイズはさらに元気よく声を張り上げた。 「でも!挑戦する価値はあると思うの!成功すれば村はさらに発展することは間違いなし よ! もちろん、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、協力致 します!出資は惜しみません。父さまにも話を通しておきますわ!」 ヴァリエール家の名を知らない村人もいない。ヴァリエール家の後ろ盾があれば心強い なぁ、いやアストン伯が領内に干渉された事を怒るだろ、秘密を守るには貴族とは縁を持 たない方が、ヤンさん自身がヴァリエール家の執事やってるから今さら…等々、様々な意 見が広場を飛び交っている。 「ちょっといいかしら!?」 若い女性の元気な声が上がった。村長が声の主を見ると、長いストレートの黒髪を持つ 可愛くて活発そうな女性が手を挙げていた。 「おや、ジェシカじゃないか。いつトリスタニアから戻ってきてたんだ?」 「ついさっきよ。姫さまの婚儀で、お店のワインも足らなくなったので帰ってきたの。シ エスタから『迷い人』のヤンという人が村に来るって聞いてたし」 ジェシカはヤンの半開きな目を真っ直ぐ見つめながら、腰に手を当てて大きな声で意見 を述べた。 「ワインを蒸留するって言うけど、タルブのワインは高級品よ!そんなの勿体なくて蒸留 出来ないわ!第一、そんな事しなくてもタルブは十分ワインだけで潤ってるのよ。この上 もっと儲けようなんて考えたら、周りの村から無茶苦茶な嫉妬を向けられ、とんでもない 嫌がらせをされることは間違いないわ!」 ジェシカの意見に周囲の人々も頷く。様々な意見が再び広場中から湧き起こる。 確かにタルブはワイン商を通さず直接販売もやってるせいで街の問屋から嫌われてるよ なぁ、いやそれはハルケギニア中から直接買い付けが来ちまうせいだよ、俺達のせいじゃ ないよな、とか。実際私達のワインって高級品だから、わざわざ蒸留する必要はないよ、 とか。 これらの意見を背にして、ジェシカはヤンの反論を待つかのように彼を見つめ続けてい た。 ヤンは再び前に出る。村人達もシン…とすぐに静まりかえる。『2秒スピーチのヤン』と 呼ばれた彼だが、今回のスピーチはさすがに長かった。 「皆さんの意見は当然です!確かにタルブワインを蒸留するのは勿体ないです。そのまま で十分美味しいんですから!」 ヤンの率直な高評価に、村の人々も満足げに頷く。そして同時に、じゃあ蒸留の話はど うなるんだ?と首を傾げる。 「だから、タルブのワインを蒸留するんじゃないんです!ワインを作った後の、ブドウの 搾りかすを発酵させるんです!私の国ではマールとか、グラッパとか呼ばれている蒸留酒 です! また、タルブ以外のワインを蒸留する事も、別の村でやってもらう事も出来ます!」 ヤンは大きな声で静まりかえる広場に説明を続けた。オイゲンの遺した知識とヤンのア イデアを。 西暦時代のフランス産マールとイタリア産グラッパ。これらは共ににブドウ原料の蒸留 酒だが、使用するのはブランデーと違いブドウの搾りかす。マールはオーク樽で熟成させ るがグラッパは熟成を経ないものが多い。 ブランデーという蒸留酒は、16世紀のオランダ商人がフランスとのワイン貿易を行う 際に考えられたという説がある。ワインを少しでも船舶で大量輸送させるため、いったん 蒸留し濃縮させ、フランスに持ち込んでから水を足して売ろうとしたらしい。もう一つの 説は、ワインの過剰生産により余った在庫を処理しようと加工した結果、というもの。良 質なボルドー産ワインの前に、コニャック産ワインは1/3くらいの値段しか付かなかった ため、これをどうにか売れるようにしようと蒸留したところ、見事な蒸留酒が出来上がっ た。 オイゲンは若い頃、実家でワイン醸造を勉強していた。その課程でブドウの搾りかすを 有効利用する方法として、マールとグラッパについても調べていた。ただ、蒸留器の製造 には多額の資金と高い技術が必要になる。タルブのワインで手一杯だし、十分に儲かって いたので手を出す事はなかった。 「・・・でも、今なら出来ると思います!グラッパなら樽で寝かせないので、完成までの 期間はマールより短いでしょう! なにより、これは周辺の村々の為になると思うのです!」 ジェシカはじめ村の人々も、食い入るようにヤンの言葉を聞き入っている。特に周辺の 村々のためになる、という点に。 「恐らく、タルブのワインが高級品として出回っているため、他地域のブドウ農家やブド ウ商人から反発を受けていると思います!彼等のワインやブドウが値崩れして生活に困っ ている事でしょう!」 ヤンの予想は正解だったらしい。広場の人々は頷いたり困った顔を向け合ったり。そう だけど、でもそう言われてもなぁ…という不服げな言葉も多い。そんな中、「あー!なるほ ど!」「ふーん、でもそう上手く行くかなぁ?」「売れるほど美味しいモノは、なぁ」とい う声もちらほらと聞こえる。 ヤンは慣れない大声を出し続けて喉が痛くなり、ジュリアンから水を一杯受け取り一気 に飲み干す。そして大きく息を吸い、結論を述べた。 「だから、他のブドウ農家やワイン商人に蒸留酒の作り方を教えるなり、他地域の余って 値崩れしてしまったブドウやワインを、適正な値段で買い取って質の良い蒸留酒にしても いいんです!この村でも、たまにブドウの出来が悪い時はあるでしょうから、その時は自 前でやってもいいでしょう! タルブ村は蒸留酒で更に潤います!他のブドウ農家も人気が無くて買い叩かれるワイン を確実に適正な値段で買い取ってもらえたり、蒸留酒にできれば、タルブへの怒りも収ま るでしょう!技術供与の対価を受け取るなり、醸造の手数料をもらうなりで、村も儲かり ます! ワインと蒸留酒で客の取り合いになる事もあるだろうけど、味もアルコール度数も全然 違うので、深刻に考えるほどのライバルにならないと思います!」 広場の熱はどんどん上昇していく。もはや怒鳴りあいという程の大声で意見がぶつかり 合う。 是非やってみようという若者。これ以上タルブは目立つべきでないという老婆。オイゲ ン無き今、私達だけで出来るのかしらという妊婦。他の村々に話を通してみようという少 年。なんで他の村の事まで考えなきゃいけないのじゃ、という老人。やり方だけ教えてあ げればいいんだから、私たちが作る必要ないんじゃない?という少女。あたし達自身がや らないと他の連中も付いてこないさ、という奥方。これを機にタルブ村の知識を広めよう じゃないか!と気勢を上げるグループもいる。 そんな光景を広場の隅で眺めているのはロングビルとシエスタ。二人は熱い討議が行わ れる村人達を楽しそうに、嬉しそうに見つめていた。 「ははっ!なんだかあいつら、熱くなってるねぇ!」 ロングビルの口からも熱を帯びた言葉が漏れる。答えるシエスタは満面の笑みだ。 「そりゃそうですよ!ひいおじいさんの凄い知識の数々、自慢したいのをみんな我慢して たんですもの。 正直、ヤンさんが来てくれなかったら、村は知識を隠す者達と公にしようとする者達で 分裂していたでしょう」 「うん?どういうこったい…と、まぁ予想は付くけどね」 シエスタが語る話は、大方がロングビルの予想と一致するものだった。当然の成り行き と言うべきものだから。 昔から、オイゲンの知識を持ち出し金を得ようとか、酒の席でつい口を滑らすとかいう 不届き者が何度も現れた。何しろ、サヴァリッシュ最後の書にある航空写真から地図をお こすだけで、現行のいかなる地図より正確かつ広範囲な地図が描ける。どんな貴族も商会 も先を争い金貨を投げつけて買い求めるだろう。 特に医学に関しては、もっと世間に広めるべきだっていう意見が多かった。高価な水魔 法を使えず死に至る貧しき者達を黙って見過ごすなど、人として出来る事ではなかったか ら。 また、サヴァリッシュ家の持つ医学やワイナリーとしての知識を授けて欲しいと弟子入 りを志願する若者達も後を絶たなかった。特に貴族達相手だと、断るだけでも一苦労だ。 シエスタの言葉を聞いて、ロングビルが顎に手をあて空を見上げて考えこむ。 「ヤンが来ないうちに知識を公にしちまったら、『タルブはどういう村?』と不審がられる ね…教会にも目を付けられて、地下書庫を見つけられちまうかも知れない。でも『ヤンか ら聞いた』ということにすればタルブは安全ってワケかい? ヤンの知ってる範囲の知識を公にするということで妥協も出来る、と。まずは蒸留酒で 試してみるわけだね」 ロングビルの歯に衣を着せない推理に、シエスタはバツが悪そうに俯いた。 「はあ、その…そういう事なんです。ヤンさんには悪いと思ってますけど、二つ返事で承 知してくれましたし。ヤンさんにも悪い話じゃないと思いますから」 「あんたらも意外と性悪だねぇ」 「あなたに言われたくないです!」 ニヤニヤと笑いながら言う女を、少女はキッと睨み付けた。 だが睨まれてる女は怒りもせず笑ったままだ。 「まぁまぁ、そう怒りなさんな。ヤンを利用しようってのはお互い様なんだからさぁ。ヤ ンもその事は百も承知なんだし、もちつもたれつ。後ろめたいと思う事はないさね」 今度はニッコリと微笑みかけられ、シエスタはフンッとそっぽを向くついでに広場を見 つめる。ロングビルも広場を見る。 広場では、相変わらず激論が続いている。 ロングビルは独り言のように呟いた。 「新しい技に挑戦、か…ワクワクするわね」 シエスタも顔を紅潮させる。 「何年かして、蒸留酒作りが成功したら、どんな村になるのかしら…」 「もう、街になっちまうんじゃないかい?平民が作った、全く新しい街。いや、トリステ イン自体が変わっちまうかもよ」 「こうやって、ひいおじいさんの知識を少しづつ広めていったら、世界はどうなるのかし ら。蒸留器製造とかで、地下書庫の知識も少し使うかもしれないし…。 なんだか想像がつかないなぁ~。ちょっと怖いかも」 二人は空を見上げながら、まだ見ぬ世界に想いを馳せた。 さすがに村の将来を左右する話なので、簡単には結論が出せない。枢機卿への報告や姫 の婚儀もある。なのでルイズ一行は村の結論を待たず学院へ戻る事になった。 ただし、村を発つのは明日の朝。 村長の家で接待を受けていたセブランは、普段口にしない高級ワインを浴びるほど飲ん で酔いつぶれ、風竜も満腹でひっくり返り大イビキで熟睡していたから。 「いやぁ~、楽しい旅だったなぁ。んふふ、マールにグラッパ、ブランデ~。やっぱり紅 茶にはブランデーだよね~」 既に日も暮れた頃、村長の家ではヤンが旅の思い出を振り返り、まだ見ぬブランデーを 想い描きながら鼻歌混じりにデルフリンガーを磨いていた。 「嫁さんも手に入れたしな!」 いきなりなデルフリンガーの言葉に動揺したヤンは長剣を落としそうになった。 「ば、バカな事を言わないでくれよ!マチルダとは、まだ、そんな…僕は…」 「なんでい、やっぱり故郷に未練が残ってるのか?」 長剣に言われ、ヤンの腕からは力が抜けていく。 「いや、そんな事は、まぁ…ね。でも、ハルケギニアでやる事も増えたし、もう吹っ切る つもりだよ」 力なく膝の上に置かれた長剣。だがそのツバはヤンを元気付けるようにガチガチと打ち 鳴らされる。 「なら、なおさらだぜ!オイゲンみたく、ここで結婚して子供作っちまいな!」 「いや、だから、その…」 ヤンは赤くなりながらしどろもどろ。そしてデルフリンガーは更に彼を慌てふためかす 言葉を畳みかける。 「なんだ?もしかして、オメーはシエスタの方が好みってワケかぁ?それとも意外にルイ ズみたいなちみっこが!」 「ば!そ、そんなわけないだろ!?」 その後も扉がノックされるまで、ヤンは長剣にからかわれ続けた。 ルイズとロングビルの部屋では二人が荷物をまとめている。 ルイズは四角いトランクにヒョイヒョイと、柄付き行火・ティーカップ・小鉢・ブラシ に香水瓶などをキッチリ綺麗に並べて収めていく。ロングビルは畳んだ衣服と少々の小物 をズタ袋に詰め込んでいく。 「あ~あ、これで旅もおしまいかぁ…なんだかもったいないなぁ」 溜め息混じりのルイズに、ロングビルもボンヤリという感じで答える。 「ホントだねぇ、『虚無』とか、サヴァリッシュの書庫とか、盛りだくさんだったよ。 でもあたいは何と言っても!ヤンと、ね…フフフ」 長い緑髪の女性は頬を染めながら身をよじらせ、手を頬に当てたり自分の身体を抱きし めたり。まるで恋する少女のように…というにはあまりに艶めかしく妖しい姿だ。 ウエストウッド村での夜を思い出しているロングビルを見るルイズも、テファと一緒に ドアに張り付いていた時の事を思い出し、真っ赤になってしまう。顔を見られまいと暗い 窓の外へ向く。 「全くもう!いやらしいんだから!」 照れ隠しに叫ぶルイズを見るロングビルには、ピンクの髪から覗く真っ赤な耳が見えて いた。意地悪にニンマリと笑ってしまう。 「へぇ~、それをずっと覗き見してた、どこかのお嬢様は、どうなんだい?」 「うわわ!私は!その!あの…」 慌てて向き直り誤魔化すルイズだが、どんどん語尾がしどろもどろになっていく。 対するロングビルも、どんどん口の端が釣り上がっていく。 「その?あの?…ん~、なんだろーねえ?」 「うぅ…しっしゃべったら、許さないんだから!!」 虚勢を張るルイズの姿に、ロングビルは爆笑してしまった。 「キャハハハッ!アハハ…ふぅ。もちろん分かってますわよ。ま、これからもヤン共々、 よろしくお願いしますわ」 ヤン共々、という言葉を聞いたルイズは更にロングビルを睨み付けた。 睨まれた方は爆笑をやめ、服も髪も整えてから、今度はニッコリと微笑む。 「ご安心下さい。前にも言いましたが、決してヤンをミス・ヴァリエールから取るわけで はありません」 以前にも聞いた言葉ではあったが、今度はプイッとそっぽを向いた。 「当然よ!忘れないでね、ヤンはあなたの恋人である前に、私の使い魔であり執事なんだ から!」 「ええ、分かってます。私は王侯貴族が大嫌いですが、あなた個人の事は嫌いじゃありま せんから」 王侯貴族は嫌い、と言われたルイズは一瞬眉間にシワがよりそうになる。だがロングビ ルがサウスゴータを追われた事情を思い返し、尖らせそうになった口を元に戻した。 「そう…なら、それでいいわ。ところで、急に丁寧な口調になると、気味が悪いわね」 「そういわないで下さいな。学院では有能で上品な秘書のつもりなのですから。今から演 じておかないと学院でボロが出ますわ」 コンコン、とノックの音が室内に響いた。 扉の向こうからシエスタの声が届く。 「失礼します。準備が出来てますので、食堂へお越し下さい」 ルイズの「すぐ行くわよー」という返答を受け、シエスタの足音が遠ざかっていった。 そして少女はニンマリと笑い、反撃という感じで女に毒の籠もったセリフを投げかけて くる。 「…でも、気をつけないとねぇ~。ヤンってモテるから、油断してると若くて器量良しな 女の子に捕られちゃうカモよぉ~」 投げかけられた女の満面の笑みは、一瞬引きつった。 「もちろん、取られたりしませんよ。私も十分若いですし、容姿にだって自信あります。 何より、既に夜を共にしてるのですから!ヤンは女を傷つける人ではありませんよ」 「んふふふふ~。でも、ヤンだって男だもんねぇ~男は狼って言うモンねぇ~」 ますます楽しそうに意地悪な笑みを浮かべるルイズの言葉に、ロングビルも内心穏やか ではいられなくなってきた。 「もう!そんな話は後にしなよ!ほら、食堂でみんな待ってるから、さっさと行くとする よ!」 「あ、ちょっと待ってよー」 ルイズの言葉に耳を貸さず、ロングビルはスタスタと部屋を出て行った。 村長宅の食堂では宴会が開かれていた。 ルイズ一行を上座にして、サヴァリッシュ家の人々や村の有力者達等がしきりに乾杯を 繰り返し、肩を抱き合って歌を歌う。もちろん飲むのはタルブのワイン。目の前には野菜 やキノコの鍋、チーズとパン、フルーツなど、素朴ながら心のこもった家庭料理がズラリ と並んでいる。 一番上座にルイズ、その左にロングビル、そして更に左にヤンという並びで座ってる。 タルブ村の主賓は明らかにヤンなのだが、雇い主の貴族を差し置いて平民のヤンを中心に するわけにはいかない。デルフリンガーはいつものように背後の壁に立てかけられてた。 「ほーら、ヤン。もっと飲みなよ」 「あはは、いやー嬉しいなぁ。こんなに飲めるのは久しぶりだよ」 ヤンはグラスが空になるたびに隣のロングビルからワインを注がれてご満悦。宴会が始 まって以来、かなりの勢いで酒量を胃袋に流し込んでいる。 それを緑の髪ごしに眺めるルイズは二人にほっとかれて、ちょっとご機嫌斜め。 つまらなそうにチビチビとグラスに口を付けるルイズの姿に見習い執事も気が付いた。 「ルイズ、どうしたんだい?何を怒ってるのかな?」 といってヤンは小さな主のご機嫌を伺う。でも、ルイズはツンとそっぽを向いたまま。 そんな子供っぽい姿をロングビルは柔和な微笑みと共に眺めている。 ご機嫌斜めな少女と、少女の機嫌を直そうとあれこれ話しかける男。 二人に挟まれていたロングビルは、ふと二人を見る視線に暖かさが増した。 「ちょっと、いいかしら?」 二人にそう言うと彼女は自分の椅子をずらす。 「ヤン、ちょっとこっち来て…そう、ルイズの横」 自分のいた場所にヤンを座らせると、ロングビルはルイズを挟んだ反対側に自分の席を 移した。 「これでよし、と」 上座から、緑髪の女性とピンク髪の少女と黒髪の男が並んだ。 ロングビルがボトルをルイズのグラスに注ぎ直す。 「ほら、機嫌直しなよ」 「な、なによ。あたしは別に怒ってなんか…」 そう言いつつチラリと左を見ると、すぐ隣でヤンが彼女の顔を心配げに覗き込んでた。 右を見れば、ワインを注ぐロングビルが微笑んでいる。 「…ま、今夜でタルブも最後だし。楽しまなきゃ損ね」 と言うやルイズはグラスのワインを一気に飲み干した。 大人二人に挟まれたルイズをみて、デルフリンガーはボソッと一言。 「まるで親子だなぁ」 その言葉は、ワイワイガヤガヤと騒がしい食堂では誰の耳にも入らなかった。 宴もたけなわになった頃、キッチンからシエスタとジェシカが大盆に皿を乗せてルイズ 達の所へやって来た。 シエスタが手慣れた様子で彼等の前に皿を並べていく。 「はーい!それでは皆さん、本日のメインディッシュですよー」 ジェシカはヤンの前に皿とマスタードの入った小瓶を置いた。 「ヤンさん、ぜひ感想を聞かせて下さいね!」 目の前の皿に乗せられた食べ物を見て、ルイズとロングビルは目が点になった。 それは、メインディッシュと言うにはかなり奇妙なものだったから。 ルイズは皿の上に置かれた細長いパンを手に取った。 「なに、これ?サンドウィッチ?」 ロングビルは縦に切れ目を入れられたパンを開いてみる。 「えーっと…パンの中に焼いた腸詰めと、タマネギのみじん切り、それにキャベツの酢漬 け?いや、漬け物だね」 二人がふとヤンを見ると、手に取ったそれをしげしげと見つめていた。 「…ホットドッグだ…」 ヤンはマスタードを塗り、恐る恐る、ゆっくりとかぶりつく。 その姿をジェシカとシエスタは期待と不安が入り交じった目で見つめている。 彼はじっくり味わい、ゴックンと飲み込んだ。 「ホットドッグだ…間違いなく、美味しいホットドッグだ」 その言葉に、持ってきた二人は手を取り合って黄色い歓声を上げた。シエスタはヤンの 横に軽やかな足取りで駆け寄る。 「ホントに、ホントに美味しいですか!?故郷のものと比べてどうですか!?」 「うん、間違いない。これはホットドッグだよ!これって執務室にあった料理の本にのっ てたんだね!?」 ジェシカが満面の笑みで自慢げに答えた。 「その通りよ!嬉しいわねぇ、これでお店にも出せるわ! 実は昔から料理の本を読んでたのよ。ずっと作りたいなって思ってたけど、本物の味が 分からなくて。『迷い人』のお墨付きも手に入れたし、これで『魅惑の妖精』亭に新しい名 物料理が出来たわ!」 そんなジェシカの言葉は、ヤンの耳には届いていない。彼は取り憑かれたようにホット ドッグを頬張っている。 少々見苦しい姿に、ルイズは顔をしかめてヤンの服をツンツン引っ張る。だがヤンは全 然気付く様子がなかった。軽く頭をひっぱたこうとしたルイズの右手は、微笑むロングビ ルの手にそっと包まれた。 シエスタも夢中で懐かしい料理を頬張るヤンを暖かく見つめている。 「それじゃ、デザートの『スイギョーザ』や『シューマイ』も持ってきますから。是非感 想を聞かせて下さいね!」 ソバカス少女の言葉に、彼は上の空のままで頷いた。だから『何故餃子や焼売がデザー トなのか?』という質問をするのも忘れていた。 この後しばらく、オリジナルの味を知らず本だけ見て作った、しかもハルケギニアで手 に入る材料のみを使った様々な料理が並べられた。期待のこもる視線に囲まれたヤンは、 どう言えばいいのかと酔いが覚めるほど困り果てるのだった。 幸い、自炊した事がなかったオイゲンではなく、料理を作れる可愛いひ孫達の作品。さ すがに不味いという程のものはなかったが。 あらかたの料理が人々の胃袋に収まった頃、奥方の一人がクラシックギターに似た弦楽 器を持って来た。洋梨を半分に切ったような形状で、背面が丸く湾曲している。 それを見たへべれけ寸前の村長が、グラスを高々と掲げた。 「お~、久々にマリーのリュートが聞けるかぁ」 とたんに拍手喝采が湧き、マリーは酔いの回った聴衆へ深く礼をする。 そして椅子に腰掛けて、リュートの旋律と共に歌い始めた。 ヘイ、ジャン・ピエール、地獄がお前に媚を売っている ヘイ、ジャン・ピエール、お前に似合うのは偽りの微笑み ヘイ、ジャン・ピエール、魔王を閉じこめた地獄の氷を砕いて ヘイ、ジャン・ピエール、お前のグラスに浮かべよう… 聞き慣れない歌に不審を感じたのは壁に立てかけられた長剣だった。 「なぁ、ヤンよ。もしかしてこれもオイゲンの故郷の歌か?」 彼は何も答えず、頷きもしなかった。だが肯定の回答としては、それ以上明確なものは なかった。 さほど飛び抜けて上手というわけでもない歌。歌詞も目出度い宴会の席に相応しいもの とも思えない。だが、ヤンの心を掴むには十分だった。 それはまだ宇宙歴が始まらない、西暦の時代。開拓途上にあった星々を放浪する伊達男 を歌ったものだったから。 彼は黙って歌を聴き続けた。 ルイズもロングビルもシエスタも、デルフリンガーすらも黙って彼の傍で歌を聴いてい た。 第二十話 SPIRIT END 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/324.html
必殺御宅人1 【投稿日 2006/05/25】 必殺御宅人 カネに生きるは下品にすぎる 恋に生きるは切なすぎ 出世に生きるはくたびれる すべて浮世は視覚之文化 萌えにギリギリ生活かける 仕事はよろず引き受けましょう 人呼んで御宅人 ただしこの稼業 江戸職業づくしには載っていない ※ ※ 錦絵(浮世絵)や華々しい見世物など、庶民を中心に視覚文化が大きく花開いた江戸時代。見る文化が発展すれば、おのずとさまざまな嗜好も生まれてくるもの……。 ところは江戸浅草の外れにある椎応長屋。 夕刻、この長屋に住む浪人・斑目晴信は、傘貼りの内職を終えると、同じ長屋の奥まった一角へと足を運び、ある部屋の前に立った。 そこの扉には、美人錦絵が貼られて飾られている。 しかしその絵は、菱川師宣に始まり喜多川歌麿、東洲斎写楽が人気を博す美人絵や役者絵とは趣が違っていた。瞳が大きく肌の露出も多い、春画(エロ絵)スレスレの「萌絵」と呼ばれる錦絵である。 カラリと戸を開いて斑目が中に入ると、そこは周りを棚に覆われた狭い空間だった。棚には当世の萌絵や読物、木彫りや陶器の萌人形が所狭しと並べられている。 「遅かったな斑目。見ろ武者頑我留が組み上がるぞ」 部屋の中央のちゃぶ台で、木彫りの人形を組んでいる男が声を掛けた。 裁縫や木彫物まで何でも寝ずにこなせる侍崩れ、人呼んで「梟の田中」である。 田中と向き合う形で座り、斑目に目もくれずに帳面に絵を描いているのは、遅筆のために絵師になりきれずにいる町人・久我山だ。 そして、部屋の上座に鎮座している、一見置物の如く生気や気配を感じさせない男が一言、「やあ、揃ったね」と声を発した。 「元締、急な呼び出しは困りますよ。内職の納期があるんで……」 「悪いね斑目君」 彼らは、当世の庶民風俗の好みとはちょっと違った趣味の錦絵や人形、絵草紙などを収集している。 江戸市中では、彼らのような極端な嗜好は、幼稚であるとか、時にはワイセツであると糾弾され忌み嫌われてさえいた。 彼らの様な者達は、「主に自宅に御座ましまして外に出たがらない者」……略して「御宅(オタク)」と呼ばれていた。 ※ ※ 必殺御宅人 第壱話「あんたこのオタクをどう思う」 ※ ※ この部屋に集まった御宅人たちは重症…いや筋金入りだ。 町人文化が始まった元禄時代から、当世までの視覚文化を研鑽する集まりとして、彼らは自分達を「元禄由来視覚之文化研鑽會」、略して「元視研」と名乗っていた。 元締と呼ばれた、なで肩で眼鏡を掛けた男が口を開く。 「実は萌絵の同人版元から泣きつかれてね……最近、おかしな事件が起きてるんだ」 「同人版元が次々に殺されている一件ですね」と、事情通であり元締の代わりに会計も行う田中が、後を継いで語った。 萌絵は春画のように未成年禁止で取り締まられてはおらず、かといって子供に見せられないきわどい物もあり、中途半端な代物として危険視されていた。 特に正規の版元ではない同人の絵師や版元は、ご法度になるかもしれない恐れがあった。 斑目「危ない絵だからと、私怨を持って殺しをしていると?」 元締「いや、それだけではなく、絵の題材(モデル)になって版元で働いていた女性が乱暴され、河原で殺されていたり、売り飛ばされたという噂もある」 斑目「酷い話だ……それで…」 そのとき、ガラッと扉が開いて、元視研の部屋に珍しい来客が訪れた。 一人は眉目秀麗の武士。その後ろに、唐人のように赤く明るい髪をした美人だが目つきの悪い女が付いてきていた。 「元禄由来視覚之文化研鑽會はこちらですか。入りたいんですけど」 武士がニコニコと笑いながら問う。斑目、田中、久我山は目を点にして、「はあ」と答える。こうした入会希望者はめったにいないのだ。 武士の連れは憮然として、「ねえコーサカ、こんな掃き溜めみたいな処よりもさ、狩野派や光琳好みの絵を学びに行った方が良くない?」と、斑目たちへの遠慮もなく呟く。 「失礼な女だな!」と斑目が怒ると、女はギロリと睨み返して、「御宅はダマッテロ」と釘を刺した。火花を散らす両者。 そんな殺伐とした空気も何のその。高坂と呼ばれた男は、「咲ちゃん、ちゃんとした絵師は金持ちのパトロンがいないと続かないよ。僕はここでノンビリしたいなあ」と笑顔で返す。 田中が、「とりあえず今日はたて込んでいるんで、明日にでもまた来て下さい」とその場を鎮めて珍客を帰した。 「何だアイツ」と斑目はご立腹だ。田中がまあまあと抑えながら用件を続けた。 「話を戻すが、事件の前には、定町廻の同心が版元の周りをうろついていたという話もある」 「泣きついてきた版元は、同心や岡っ引きが近くをうろついていたので不安になって僕らに相談してきたという訳だよ。さっそくそこに行って事情を聞いて来てくれないかな」と元締。 「さ、さっきの2人も次に、ど ど 同人版元の処に行くって外で話してたよ」 無言だった久我山が口を開いた。 斑目は眉をひそめ、「えー、またややこしい事になるんじゃねーだろな」とザンバラ髪をかきむしった。 その夜、斑目、田中、久我山の3人は相談者の同人版元へ向かう。佃島の郊外は人の通りも少ない。 まもなく版元の家に付くという時になって、静寂を破るように、目的の家から悲鳴が聞こえた。3人は漁の網や建物の物陰に隠れる。 血糊が付いた刀を持った町廻同心が、版元の家から出てきた。 「おい斑目、あれ見ろ」 田中が指差したのは同心の方ではない。近くに、夕方の無礼な女・咲が立っていたのだ。彼女は何が起きたのか分からないでキョトンとしていた。 同心が咲を見かけ、「そこの唐人女!萌絵の題材になった女じゃないのか!?」と、咲の色の明るい髪に目を付けた。 「ちょっ!、私は関係ないし唐人じゃないってば!、連れがここに来るのを待ってただけよ!」 「五月蝿い。言い訳は番所で聞くわい」 岡っ引きにしょっぴかれていく咲。 その様子を見た斑目は、思わず同心の前に出ていた。出たはいいが腕っ節も弱い斑目には咲を助ける術がない。 「何だお前は?」 「あ、いや……通りすがりの者ですが、さっきの人をどうなさるんで?」 「お上の取り調べに文句があるのか?」 同心は斑目のみすぼらしい容姿を一瞥した後、斑目が腰に差している刀に手をかけた。本来なら浪人相手とはいえ、このような無礼が許されるものではない。 同心は、刀の手応えの軽さに気付いて一気に引き抜いた。それは竹光(たけみつ)だった。 竹でできた斑目の刀を投げ捨てて、同心は「ケッ、命が惜しけりゃじゃまするな」と言い捨てて去った。 物陰から出てきた田中らと共に、斑目は屋内に入り、斬られた版元に駆け寄った。 「も…元締めの使い…ですか、こんな非道が許され…て…」 版元はそのままこと切れた。斑目の眼鏡の奥の瞳が鈍く光る。 (許せねえ。それにあの生意気な女も、このまま乱暴されるとあっちゃ仕方がねえ…) 斑目は久我山の方を向き、「お前は元締と、高坂とやらに知らせてこい!」と告げた。 「こ 高坂は、ど どこにいるんだよ」 「うるせえ、こっちに来る約束だったんだから走ってる間に出くわすだろ!」 巨体を揺すりながら久我山が駆け出して行く。すぐに息が上がるのが遠目にも分かった。人選ミスだ。 田中が斑目に声を掛ける。 「お前、久しぶりに“マムシの晴信”に戻るのか」 「俺は前世がヘビだからな…。この獲物は俺ら二人で十分だ。行くぜ」 彼ら元視研は、今までも、視覚文化に関わる事件で許せぬ者があれば、「仕置き」を行ってきた。 仕置き。法によって処刑することを江戸時代こう呼んだ。 しかしここにいう仕置とは、法の網をくぐってはびこる悪を裁く闇の処刑人のことである。 ただしこの存在を証明する記録古文書の類は一切残っていない。 世に言う「仕置人」と彼らが違うのは、カネでは動かないこと。萌えを基準に動くのだ。 咲が連れて行かれた番所。竹刀で折檻を受けた咲は気を失っていた。 「ま、お楽しみはこれからだ」と同心と岡っ引きが野卑な笑いを浮かべる。 岡っ引きが厠に行く為に外へ出た。 番所の外は夜の闇。その闇の中に一瞬、“梟の田中”の顔が浮かんで、消えた。 (※ここから殺しのテーマを適当に脳内再生してください) 岡っ引きは明かりもほとんど届かない闇の中に、人の姿が浮かび上がるのを見た。 「ヒッ!」と驚く岡っ引きだが、その影をよく見ると、柳に吊るされた羽織物であった。 いぶかしげに羽織に近づく岡っ引き。その背後にはすでに田中が立っていた。 田中が手にした反物から、糸を一本引き抜くと、岡っ引きの首に絡めて絞めたまま、闇の中へと姿を消していった。 岡っ引きが闇の中から戻ってくる事は無かった。 代わりに夜の闇の中から歩いてきたのは、斑目だった。その姿が番所の灯りに照らされて、次第にハッキリしてくる。 斑目は、腰の刀に手をかける。鞘に納めたまま、鍔(ツバ)の部分だけを半回転させると、中からカキンと音がした。 番所で、気を失った咲の美しい顔立ちを眺めていた同心は、背後でガラッと戸の開く音を聞いた。 同心が、「おい、遅いぞ」と振り向くと、そこに立っていたのは、先刻出会ったみすぼらしい浪人だった。 「なんだ、さっきの“竹光”か。喧嘩でも売りにきたのか?」 斑目は無言のままだ。 「こんな竹の刃で何ができるんだ。ハハっ」 同心は、再び斑目の刀に手をかけて、“竹光”を引き抜いた……つもりだった。だが、手応えが無かった。手には柄(取っ手)だけがあった。 次の瞬間、彼の体に熱と激痛が走った。 斑目の本来の「刀」は、柄の中に仕込まれていたのだ。鍔を回転させることで竹の刀身が抜けないように固定して、鞘ごと「槍」として使えるように改造してあったのだ。 同心は、目の前の事が信じられないという顔をしたまま崩れ落ちた。 翌朝、咲が目を覚ますと、元視研の部屋に居た。 「咲ちゃん大丈夫?」と、枕元で高坂がにこやかに声を掛けた。 ホッとした表情で布団から半身を起こした咲は、「こうさかぁ……」と高坂に抱きついて甘えた。 その部屋の外には、斑目と元締が立っていた。 「目が覚めたんならとっとと出て行けばいいのによ~」 毒づく斑目の後ろで元締が、「彼女を助けた本人がそんなことを言ってはいけないよ。新しい仲間なんだから優しくしてやってね」と語り掛ける。 「仲間?、あいつら元視研に入るんですか?」と、斑目が振り向いた時には、もう元締の姿は無かった。神出鬼没の男である。 これまでの穏やかな御宅生活(オタクライフ)が、どうか乱されないように、と願う斑目であった。 <おわり>
https://w.atwiki.jp/kurogirihankoku/pages/293.html
食料増産における藩王の死闘 ~または、彼はいかにして弱点を克服し、巨大魚と対決することになったか~ ここは山と森の国、玄霧藩国。 そんな国にも川はある。むしろ河というべき大きさの河が。幅は広く底は深く、しかし水は澄んでおり魚影も確認できる。 まぁ、いくら澄んでいても一番深い場所は底が良く見えない訳だが。ちなみに子供たちが間違って覚えれないように色々工夫を凝らしている。そのへん説明するとSS一本近く使うので次の機会にしたい。 さて、そんな河べりに釣り糸をたらす男が一人。この国の藩王である玄霧である。 「・・・やっぱり題名に『異常な』って入れるべきかねぇ」 とまぁ、謎なことをのたまいながら生あくびを噛み潰す藩王。この人物、都合が悪くなるともっぱら旧友の家に逃げたり釣りをしたりすることで有名である。 その彼が釣りをしていると言う事は、何か都合が悪くなったのであろう。 「ふぅ・・・急に食料増産っつってもなぁ・・・」 溜息をつく彼を笑うようかのように魚が跳ねた。 さて、時は少し戻る。 以前の戦闘動員から数日。『やれやれ大変だったなぁ』と吏族が口をそろえて言う中に、慌てて駆け込んで来る影が一つ。 「た、た、大変だぁっ!」 と言いながら、文字通り転がり込んでくる若き吏族。彼の手には書簡が握られていた。倒れた彼を解放している吏族をヨソに藩王は書簡を取り上げ、中を見た。 「えー、なになに?『戦闘動員に付く食糧不足が予測されるため、各藩国は規定の量以上を増産されたし』か。んーと、ウチの割り当ては・・・19万tか」 無言で所定の位置に座る吏族達。『会議始めろ』の合図である。藩王は溜息つきながら上座に歩いて行き 「はい、じゃー藩国会議はじめまーす。技師と文師呼んでー」 と、非常にやる気の無い声で宣言した。 その後はテキパキと進み、恙無く会議は終了した。 一言で言えば「食糧生産地の規模を広げよう」で決着が付いた。 だが、しかし。 どう計算しても足りない。強いて言えば4万tほど。 足りない分は山から頂戴しよう。ということになったが、ほぼ全員が足りないだろうなぁと思っていた。 時は戻る。 つまりの所、彼は妙案を求めて釣りに来ていたのだった。無論、釣りで食料を増やそうとは考えておらず『肴が釣れればいいか』位の気分である。 だが、珍しく上流のほうまで脚を伸ばし、釣り糸をたらすがマッタク釣れない。自分の釣りの腕が落ちたかとか思ったが即座に考えないことにした。 「やれやれ。今日は坊主か。たまにはそんなこともあらぁなぁ」 そう呟きながら片付けようとすると、手に感触があった。 「おっと。最後にいっぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 急に重くなる竿、そして衝撃。 もしもこの状況を見ていたものがいたら『人が水面を跳ねる決定的瞬間を目撃した』と口をそろえて言うだろう。 「わちょっ!まっ!なっ!なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇ」 見事なドップラー効果付きで川下に爆走というか水切り石のごとく飛び跳ねる藩王。 どうでも良いが水に擦れた影響でズボンが脱げそうである。 「誰かたぁーすぅーけぇーてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」 非常に情けない声を上げながら飛び跳ね続けるこの国のTOP。国民が見たら目を疑うだろう。 いや、そもそも人が水面を跳ねる時点で目を疑うとは思うが。 そのとき。 『ザバァァァァァァァッ!!!』 魚が跳ねた。魚というには幾分大きすぎるがシルエットは確かに魚であった。と、同時に 『ブチィッ!!』 糸が切れた。糸と言っても皮紐をねじり合わせただけのものであり、今まで持ったのが奇跡と言えるだろう。 で、慣性というものを殺せずに吹っ飛んでいく藩王。 ・ ・ ・ 1時間後。だいぶ下流のほうで水死体っぽい藩王が救出された。なお、まだ生きていたという。 ズドドドドド、と何かが疾走する音。そして・・・ 「くぉーれぇーどぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 バァン、と政庁の扉を叩き壊さんかの勢いで開く藩王。救出されたままなのでずぶぬれである。 「・・・あー、えー。とにかく体を拭いてズボンをキッチリはいて下さい」 「それどころじゃねぇこれだ!」 「だからなんなんですか」 堂々巡りになりそうな予感を感じ取ったのか、目で合図する雅戌。即座に如月が首筋にチョップをかます。 其れを見事に回避失敗しながらも続ける藩王。 「だから!食料問題が解決しそうなんだよ!全員集合!!」 先ほどとは打って変わって物凄いやる気な藩王を止めるよりか会議に付き合ったほうが労力が低いと判断し、即座に集合する吏族達。 というか藩王の扱い酷すぎである。 そして数分後。 「というわけで、魚を釣って食料にするぞ!」 微妙に諦めたような空気の中、雅戌が手を上げる。 「はい、藩王。ウチの国には魚の養殖所がありますが其れとは別物ですね?」 「違う!天と地ほどの差の大きさだ!」 「で、何処までが本当ですか」 「100%本当だ!嘘偽りは無いっ!」 「私怨でそんなこと言ってるんじゃ無いですね?」 「否ッ!断じて否ッ!!」 「じゃ、検討しますかね。先ずは釣竿ですか」 藩王と摂政の三文芝居のような論戦の後。 遂に「対・巨大魚?」用の竿が出来た。 本体は粘度を高く保った鉄製。糸は皮紐を3本より合わせて強化したもの。針は硬度を高くした鉄製。 藩王も大満足で「うむ、完璧だ」と言った後、重くて持てんわっ!と床に叩きつけた。 「重くて使いもんにならんわーい!!」 「藩王。其れは固定して使うものです」 以下略。 さて、問題の最初に掛かった場所まで人員動員してえっちらおっちら竿を担いでやってくる藩王一向。 指示を出す前に自分で設置に掛かる藩王。基本的に釣り好きなのである。 程なくして設置完了。竿の持ち手から伸びた皮紐を周囲の木々に固定し、押し切られるのを防ぐ形らしい。 常に持っている必要も無い(掛かれば確実に気付く)ため、藩王と一部の側近以外はやや下流の場所で釣りをすることになった。 そして、2時間ほどした後。 「・・・かかりませんねぇ」 側近が折れた。 暇で耐えられないと言ったので下流のグループに混じって釣りするように言うと暇つぶしにいいやと逃げた。 さらに、1時間後。 「藩王。もう諦めませんか?」 摂政たちが折れた。 煩いので下流に行けと言うと渋々行った。その割にはちゃっかり釣竿を持っていた。 それからさらに1時間後。 いい加減に太陽も沈みそうなので藩王拾って帰るか。と側近達が思い立った頃に異変は起こった。 あまりに長い間待ったため船を漕いでいた藩王を尻目にしなる竿。木々の揺れる音。次第に大きくなっていく。 と、ここで藩王が気付いた。 「うぉっしゃー!掛かったー!」 嬉々として釣竿に近づく。何かを踏んづけた気もするが気のせいだろうと竿にかじりつき、魚の動きにあわせて竿を振る。 流石に質量差がありすぎるため、疲れさせてからゆっくりと引き上げる算段である。 「ぬぉっちょっ!クソ、竿を振るだけでやたら疲れる!側近達は下流に行ったしどうするかっ・・・!」 そうこうしている間にも竿は振れる。既に固定してた台座は吹っ飛んでいる。 『プチ・・・プチプチ・・・』 嫌な音が藩王に聞こえ、振り向いたときにはジ・エンド。 バツンバツンバツン、と木に固定していた皮紐が弾け跳び、藩王は再び水上の人となった。 「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 二度目でも慣れないようで、彼は泣いていた。 一方その頃、側近達。 「ぅわー、またつれたー」 「おー、こっちも。ここは穴場だなぁ」 既にピクニック気分である。 「さて、そろそろ日も暮れるし藩王を拾って帰ろうかー」 「おーぅ」 と言った会話の中、とある吏族が川上に異変を発見した。 「あ、あのー。あそこ、なんか、水飛沫上がってません?ねぇ!?」 彼女の言葉に皆が振り向くと同時に疾走する物体が通り過ぎる。 「ぁぁぁぁすぅぅぅけぇぇぇてぇぇぇぇぇぇぇ」(ドップラー効果) ブオシャアァ! と濡れ鼠になる側近達。 あるものは眉間を押さえ、あるものは帰還の準備をし、あるものは目をパチパチさせながら川上と川下を見比べている。 「・・・藩王だったな」「ですね」「いきますか」「そだな」 有る意味抜群のタイミングで各自呟いたあと、やや投げやり気味に追跡が始まった。 「助けてって言うくらいなら放せば良いのに」 と、誰かが呟いたが返すものは居なかった。 そして藩王サイド。 「作者っ!同じネタはっ!禁止っ!って俺だぁぁぁぁ!!」 ザパッ、ザパッ、ザパッ、っと水面を跳ね回りながら意味不明な言葉を叫ぶ藩王。きっと錯乱しているのだろう。 「うぬぉぉぉ、埒があかん!何か!何か無いかっ!?」 必死にあたりを見回す。すると、高速で流れていく風景の端に何かが見えた。 「ちょいやっ!!」 足を伸ばして掴む。ややタイミングがずれたか足に痛みが走るが、気にせずに掴んだものを凝視する。太めの枝だった。 即座に捨てて次に視界に入ったものを必死で挟む。しかし今度は空振り。 「何か!何かぁぁぁぁぁ」 そのとき、彼はふとデジャヴを感じた。そう、確かこの辺で・・・ 『ザッパァァァァァァァ!!!』 『ブチィィィッ!!』 「ギィィィヤァァァーーー!!」 彼は今日二度目のフライングを楽しんだ。 なお、今回は10分程度で側近達に回収されたらしい。 翌日。 どう見ても不機嫌な顔の藩王と其れをなだめる吏族が一人。 「結局国の総力を挙げて魚一匹連れんのか」 「自然と言うものは強大です、藩王」 「ところでこの国は巨大ヒトデだの巨大魚だの怪獣があつまっとるのか」 「類友かと」 そんな会話を尻目に今日も帳簿をつける吏族達。なんとか食料も集まりつつあるらしい。 「ところで藩王」 世間話を思い出したかのようになだめていた吏族が告げてくる。 「ウチの国、釣り糸に使えるのが皮紐しかないんでそもそも糸の強度が足りませんよ?」 藩王、固まる。たっぷり100秒の後再起動。 「てめぇー!気付いてるなら言えぇー!?」 「言ったところですむとは思えませんでしたので。ギブギブ」 首を掴んでガクガク揺らしながら訴える藩王と吏族。 そんなこんなで一日はすぎてゆく。もう直ぐ戦争があるのかも知れないという不安を吹き飛ばすかのように。 ともかく。玄霧藩国は今日も今日とて平和である。 そして、藩王の闘いも続く。 ここからは余談である。 藩王は即急に交易を開始し、強度の高い糸を手に入れようと画策しているようだ。 また、藩王以外の釣りに出たものは大量で食糧増産に少なからず貢献したと言う。 結局、坊主は藩王だけであった。
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/10326.html
宗教 / 仏教 ーーー 空海 / 曼荼羅 +ニュースサーチ〔密教〕 トイレに飾るだけで運気が突然アップする開運絵馬 - ダイヤモンド・オンライン 【戦国こぼれ話】とても重要だった法螺貝と陣鐘。戦国時代にはどう用いられていたのか(渡邊大門) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 新・景教のたどった道(64)作家と景教(2)海音寺潮五郎と陳舜臣 川口一彦 - クリスチャントゥデイ 藤田美術館所蔵の絵画集めた特別展 奈良国立博物館10日から|NHK 奈良県のニュース - NHK NEWS WEB 華族将軍の「タンネンベルク信仰」が玉砕精神を生み出した――日米開戦80年目の真実:フォーサイト編集部 | 記事 - 新潮社 フォーサイト 空海を生きる ひろさちや著:中外日報 - 中外日報 話題の占い師・法演が横山由依を占断!国民的アイドルを全否定した理由… - 占いTVニュース 【3日更新】12月に始まる全国の美術館・博物館の展覧会を公式SNSとともに紹介 - 読売新聞社 「ハイスクール・オーラバスター」シリーズ完結、若木未生さんインタビュー 「32年間、読んでくれてありがとう」|好書好日 - 好書好日 正門にかかる2つの大学名 キャンパス「同居」で生き残り 高野山大と大阪千代田短大(産経新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「冬報恩講」智積院|イベント|京都新聞 - 京都新聞 県立金沢文庫 特別展「密教相承―称名寺長老の法脈―」2021/12/3~2022/1/23|横浜市金沢区 - 横浜金沢観光協会 醍醐寺の五重塔内部、24年ぶりに特別公開 27日から3日間(毎日新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 黄色い〝じゅうたん〟一面に 山鹿市・康平寺のイチョウ見頃(熊本日日新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「北斗の拳」北斗七星、南斗六星、死兆星を陰陽道の視点から考察 その関連性とは(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 兵庫県内の国宝が集中する播磨地域 歴史文化遺産 国宝太山寺 「歴パ!ひょうご地域遺産バトンリレー」(14)(ラジトピ ラジオ関西トピックス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 足で描かれた48年前の「幻」の油彩画 公開中 滋賀・大津で14日まで - 京都新聞 中露海軍日本一周の意図:北海道はロシア領、沖縄を中国領に ソ連による終戦後の北方四島侵攻は「米英ソの密約」で行われた(1/10) - JBpress 伝教大師[最澄]の誕生から出家・受戒までをたどる(歴史人) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 比叡山延暦寺の寺宝と全国各地の秘仏で天台宗の歴史を紐解く 『最澄と天台宗のすべて』東京国立博物館にて開催中(ぴあ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース コロナ禍で捧げる特別な祈り。大護摩祈願祭「氏神祭り」を11月6日、7日にて開催。 - PR TIMES 【気になる!】文庫 『マンダラを生きる』(正木晃著、角川ソフィア文庫・1100円) - 産経ニュース 原因不明で治療が困難な病気の実体は何か - JBpress MdN新書の最新刊! なぜ「呪い」は人を惹きつけるのか『日本の呪術』、行動経済学で読み解く日本の未来『ゲームチェンジ日本』発売 - PR TIMES 凸版印刷、空海の立体曼荼羅のVR作品を東京国立博物館で上映、オンラインも - マイナビニュース 若い女性が中年男性に溺れる不倫愛は「カルチャー」 - JBpress 『世界遺産』放送25周年SP「高野山の四季」高野山最古の国宝・多宝塔の内部を史上初の8K撮影(TV LIFE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 上杉謙信の書状、金・銀の文字での経文も発見…高野山に眠る50個の「寺宝箱」開封へ - 読売新聞 中国やアフガニスタンで民主主義が不可能なわけ 歴史の教訓:人は宗教、法律、武力のいずれかで統治される(1/7) - JBpress 【 高野山 別格本山 清浄心院 】新型コロナ退散大護摩祈願祭を9月20日にて開催。 - PR TIMES 特別展「最澄と天台宗のすべて」 秘仏・本尊、寺外初公開が多数 10月12日から東京国立博物館で - 読売新聞社 新・景教のたどった道(58)景教を日本に紹介した人々(2)ゴルドン 川口一彦 - クリスチャントゥデイ どうして護摩行はキャンプファイヤーのように火を燃やすの? | - ラブすぽ クロちゃん、2浪して57校受けるも短大しか受からず…学びたかったチベット仏教は授業なし(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 平安初期に仏教の大革新が起きた理由とは? | - ラブすぽ さまざまな姿や表情の“ほとけ”に出会える特集展示『みほとけの姿 -如来・菩薩・明王・天・羅漢-』9月4日(土)より開催 - アットプレス(プレスリリース) 日本人大虐殺を命じた米大統領と靖国問題 - JBpress 『山の日』世界文化遺産 関西二大霊峰から捧げる ~疫病退散への祈り 比叡山・高野山 ~ | ラジトピ ラジオ関西トピックス - ラジトピ ラジオ関西トピックス 呪術を取り入れた!密教が登場した理由とは? | - ラブすぽ 伝教大師一千二百年大遠忌記念事業「最澄と比叡山『戒壇院・法華総持院東塔』」特別拝観 - PR TIMES Tsuyoshi Suzukiが高野山金剛三昧院でDJを披露する「密教トランス」映像が公開 - Qetic 小室圭さんと池袋の上級国民に共通する私利私欲 - JBpress 「海外はこうだから」病の処方箋 - Forbes JAPAN 日本人より中国人が評価:日本近代化の父、小栗上野介 - JBpress 京都で「チームラボ 東寺 光の祭 - TOKIO インカラミ」を開催。創建から約1200年の世界遺産・東寺をインタラクティブなアート空間に。8月6日(金)から - PR TIMES 30年後に日本は消滅と言い放った、中国首相の言葉が現実味 仏教が教える侵略への対処法、国防の在り方とは(1/8) - JBpress 「鑑真に思う、人に伝える大切さ」唐招提寺新長老 - iza(イザ!) 立木義浩写真展「遍照」が六本木のFUJIFILM SQUAREで開催中。密教の世界に迫る撮影アプローチを語るインタビュー動画も - デジカメ Watch 仏教が教える人間が生きる意味と意義 - JBpress 疫病が蔓延すると、『般若心経』を写経してきた歴代天皇 - JBpress 日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」 - JBpress 聖地四国と遍路の誕生 - 朝日新聞デジタル コウザブロウ 2021年秋冬コレクション - 空海の修行の日々に想いを馳せて - Fashion Press 眞子さまと小室圭さんにお伝えしたい仏陀の言葉 - JBpress 宗教に共通する教え:幸せの本質とは何か - JBpress 【門真市】古川橋の普賢寺遺跡で金銅製の密教法具が出土、市役所にも展示コーナーがあります。 - 号外NET 守口・門真 英国のアジア進出に貢献、故地追われたアルメニア人 - JBpress 春期特別公開 東寺|イベント|京都新聞 - 京都新聞 特別対談:田原総一朗v.s池口恵観 - JBpress 占星術の起源と科学的根拠 現代においても占いは科学である(1/5) - JBpress 「阪南のタイガーバームガーデンや!」台湾新宗教が日本に築いた“巨大なカオス寺”が異世界すぎた - 文春オンライン 検査陰性の高僧たちで「後七日御修法」 京都・東寺、7日にわたり国の安泰祈る - 47NEWS 閃きはなぜ生まれるか、閃きを生むためには - JBpress <コトバ言葉>仏教語の三密 - 東京新聞 仮想現実に覆われたこの世界で認識を変えれば覇者になれるのか - 現代ビジネス 岡山の「密教」「神仏習合」の名宝、下京で企画展 - 朝日新聞社 武田信玄と上杉謙信がかけ合った呪術合戦とその代償 - JBpress 京都・西寺跡に須弥壇 顕教の可能性 密教の東寺と新旧仏教で平安京守護か - 毎日新聞 - 毎日新聞 喜びの中に悟りがある理由 - JBpress 最澄と空海、その違いを知る 空海が最澄に貸し出しを拒んだ経典(その1)(1/8) - JBpress 「死をきっかけとして、生そのものをどう充実させるか」 逃れようのない宿命を恐れない、真言密教の死生観 - ログミー 神秘の力を操るためのアプローチ(その1) - JBpress なぜ、物質に霊験は宿るのか 釈迦の教え「縁起」と密教(1/7) - JBpress 密教の「密」とは何か - JBpress 「3密」すっかり普及したけど...密教には古くから「三密」が! こちらの意味は? - J-CASTニュース 上杉家にゆかり、密教法具重文へ 文化審が答申 米沢・法音寺 /山形 - 毎日新聞 弘法大師空海:一指を以って招けば星月も落ち来たり 真言宗は真言を唱え、手指によってあらわす印を結ぶ(1/3) - JBpress 【日本再発見】都心で真言密教を体感~高野山東京別院(東京・高輪) - 産経ニュース 修験道と密教の違い:継承される力とされない力 呪術・密教はどのように生まれ、使われてきたか(1/5) - JBpress 日本で育った密教、いよいよ中国に帰る - JBpress 密教の呪術、その理論と哲学 空海が生涯をかけて目指した秘密瑜伽とは何か(1/5) - JBpress 唐への留学を切り上げ密教の教義を持ち帰った空海の苦悩|歴史検証 この人物の光と影 - 日刊ゲンダイ ジャニー喜多川社長、ジャニーズ繁栄の神髄に「真言密教」 - Business Journal 東博に仏像曼荼羅が出現! 圧巻の密教美術が集う特別展『国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅』。|Pen Online - Pen-Online 4月5日発売!Discover Japan 2019年5月号「はじめての空海と曼荼羅」 - PR TIMES 東寺に伝わる密教の至宝が勢ぞろい - WEDGE Infinity 口ぐせ、思いぐせ、行動ぐせを変えるだけ!「最強運の人生」を手に入れる! - PR TIMES 今もっとも刺激的で奥深い「密教」を知る一冊 混迷する現代社会を生きるため、日本人が培ってきた叡智を再発見!気鋭の著者が果敢に挑んだ、異色の密教入門書、登場。 - PR TIMES 台湾にあるミャンマー仏教僧院で日本人僧侶が密教瞑想の指導を行う。 京都の一般社団法人・寳幢会(ほうどうかい)とミャンマーのダバワ瞑想センターとの提携活動がスタート。大乗仏教と上座部仏教のコラボが実現 - Dream News サントリー美術館『京都・醍醐寺−真言密教の宇宙−』展レポート 国宝34件を含む、濃厚な密教美術を紹介 - http //spice.eplus.jp/ 千百余年の願い込め 真言密教の歩み追想 - 日本経済新聞 醍醐寺に伝わる密教美術の至宝が一堂に - WEDGE Infinity 展覧会「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」国宝の仏像など 醍醐寺 の至宝約135件 - 東京・福岡で - Fashion Press 「隠れミッキョー」を探せ!? 高野山大のギリギリな宣伝文句が話題 - withnews(ウィズニュース) 【この本おもろっ】「仏教は悩み多き人を救う」清風校長が密教経典を紹介、ダライ・ラマ14世との交流も - 産経ニュース (高野山異聞)密教 皮膚感覚こそ大事に:朝日新聞デジタル - 朝日新聞社 「KRK株式会社・スタジオ」古来の神秘的な、密教ヒーリング・密教ヨガを現代に復活! - Dream News 「顕教」と「密教」...持たざる「大国」の苦悩の果てに - J-CASTニュース 高野山、曼荼羅の宇宙(2) 壇上伽藍 真言密教の根本道場 - WEDGE Infinity 「密教呪術占」をYahoo!占いにて配信開始 - PR TIMES ● 密教〔ノイズレスサーチ〕 ● 密教〔blog Google検索〕 ● 密教〔DuckDuckGo検索〕 ● 密教 (広済寺ホームページ) .
https://w.atwiki.jp/goldenlowe/pages/43.html
大阪遊楽記 その2 とりあえず食事場所へと移動しようとテクテクと歩き出す。 今回は中華料理…楽しみやねぇ~♪ 歓楽街と言うか飲み屋街アーケードと言うのか煌びやかなネオンや看板や引き込みが雑多する道を 蟻の這い出る隙間もないぐらいに敷き詰め動く人の流れに身を任せながら移動する…なんとなくウンザリだw でも、それがあるからこそ晩餐会の一杯目が美味いのだと、名幹事サマのお手並みは意見と言わんばかりに最後尾を歩きつつ入店する。 地下のBOX席っぽい所へ案内されて、いざ座ろうかと思えば席順を言われ 「折角アンレさんは遠路から来たんやから、上へ~」と薦められるままに上座へ…フフフ 席順は以下のように… ○ (閣下) ○(れんれん嬢) ○(ひろっち卿) ○(けんけーん卿) ○(こうひえ卿) ┌──────────────────────────────────── │テーブル └──────────────────────────────────── ○(ウチ) ○(ライラ姫) ○(SEIJI卿) ○(レナータ嬢) 喫煙チームと非喫煙チームに体よく分けられたようにも見えなくもないような…まぁ、良しw。 飲み放題、食べ放題と言うことで鬼のタイムアタックが開始された… れんれん嬢がぐんぐんその数を伸ばす…ひろっち卿も隠れて強い♪ SEIJI卿:「アンレさん、食べてくださいよ」 ウチ:「ん?」 ライラ:「皿が綺麗なでw」 ウチ:「ハハハ、スデに割り箸すら割ってないゾ」 ライラ:「なんでw」 ウチ:「いぁ~どこまで割れずにいけるかな~っと」 SEIJI卿:「割ってないw」 レナータ嬢:「(笑)」 焼き奉行をしなくて良いSEIJI卿は手持ち無沙汰なのか、片付けるスピードと食事するスピードがスバラシイ(≧∇≦)b ウチはやっぱり隅っこでスピードについて行けずにチマチマやってるだけ♪ お酒が入ると饒舌になるのは酒の利点と言うところか 一見して静かそうに見えるひろっち卿も実は良くお話してくれるし、れんれん嬢は関西なノリでお話してる。 閣下も姫もいつも通り♪SEIJI卿は気遣いながら食べてるし、レナータ嬢はやはり笑ってた♪ 時間の都合もついてこうひえ卿が参陣、実はこうひえ卿はウチと出身県が同じ♪ いぁ~こんな異郷の街で同郷の方と会えるとは僥倖としか思えないねぇ♪ が、こうひえ卿…隠れて酒強いw 半ば強制的にウチと閣下の間に呼び寄せて職務質問ならぬ歓談する席を作っちゃう♪ 最初は緊張した面持ちで丁寧な口調…「こんな席で緊張なんて無駄な体力の浪費よw」と支離滅裂な言葉をかけつつ 時間がアッというまに21時30分を迎える。 けん卿に促されて電話参加するというクラ卿にメールを送る。 実はウチ等が飲んでる地下は各種携帯メーカーことごとく「圏外」というスバラシイお店だったので 苛め抜かれているこうひえ卿を慮ってかけんけーん卿が体よくウチを外へ放り出した。 クラ卿からの連絡を待つウチ、都合よく店の前にベンチがあったので、返事を待つものの…来ない。 「さては…まだ忙しいんかのぅ。」と思いつつ2通目のメールを作成中に着信がっっ! ウチ:「もしもーし」 クラ卿:「ああああ、どもークラですー。はははは」 ウチ:「おぅ、アンレじゃ。今大丈夫なんか~」 クラ卿:「いあー、まだ仕事中なんですよー」 都会の喧騒は携帯電話もろくっすぽに話さしてくれんらしい、喧騒を拾って「聞こえるけど言葉が届かない」状況に苛々する。 クラ卿:「飲み会はどーですかー?」 ウチ:「あとは卿が来たら言うことなしじゃ」 クラ卿:「えーっとですねー。下っ端なんで休めないんですよー。」 ウチ:「はははは、大変だのぅ」 クラ卿:「また電話しますね。仕事してきます」 ウチ:「がんばってねー」 うーん、良い声だ。良いキャラだ…会ってみたいのう♪ 少しだけ残念な結果に終わってしまった報を持って席へと戻る。 すると目の前に見慣れない杯が置いてある… 「ん?」 「それアンレさんのやで~」 確かれんれん嬢が言うたと思うが、薦められたらヤらずにおられまい♪ くいくいくいっと飲む…ん~実にフルーティーな「お冷や」だことw 皆が笑っているが…まぁ正体は何あれ感覚てきには日本酒の冷酒に近かったかなw っと、名残惜しいように正体不明の酒の余韻を楽しんでいると。 ウチの取り皿に食物がっ…およ?w どうやられんれん嬢が見かねて入れてくれたらしいw いぁ、ホンマにお気遣いありがとうです…(ノ_ 。) (結局食べたのは餃子1個、ニラ玉1口、サラダ1口、酢豚に入ってた赤ピーマン1片ぐらい。酒は生1、ジントニック1、ジンロック2、謎のお冷や2デシタ♪) どんな意図があるにせよ、姫が隣だとDOLとは違い姫も饒舌なもんで会話が進む。 こうひえ卿と話つつもナイスタイミングなツッコミが隣からガンガン飛んでくるwww 閣下:「な、コイツらオモロイやろ。『№2№3』ってコンビ名や」 なんともやはりキタッ!前回のOFF会で頂戴した(?)モノがいまだ健在とはっ♪ しかも誰も否定しない…うそーんw 前回、前々回を踏まえて時間を多く取ろうと企画した今回のOFF会も20:20~23:00までがアッと言う間に過ぎてしまい 「しゃーない出るか~」と物足りなさを感じて店を出る。 クラ卿からの連絡がまだと言うこともあり「アンレの宿まで行くか~」っと歩き始めてスグにその電話は掛かってきた。 クラ卿:「もしもしー。クラですー、やっとですねー仕事終わったんですよー」 ん~、先ほどと変わらない口調…ま、当たり前か♪ ウチのケータイを回しつつ、ようやくこれで全員が参加♪ しかし、誰もが「こんばんは、SEIJIですー」と挨拶するのは当のクラ卿も何が何だか分からんかったやろな~。 閣下から始まりレナータ嬢→SEIJI卿→けん卿→こうひえ卿→ひろっち卿→れんれん嬢(多分合ってると思うw)とまわり どこまで分かったかは不メインなものの「皆さんとお話できて感無量でしたー」とクラ卿との電話が終了しGL1周年記念OFF会は無事に終了しました。 皆様オツカレサマでした♪今回もデジカメを持参したにも関わらず食事中1枚も写真を撮りませんでしたw(そんな暇ないよw) んで、宿の前で解散したOFF会メンバー…を他所にウチはそのまま再び繰り出しまして。まだイケそうな居酒屋へこっそりと1人で入店…♪ 適当に肴を注文して焼酎「山猿」と泡盛「於茂登」をロックでグィッグィッと一気飲み♪ その時思ったコトは、意外とこの近辺の居酒屋ってメニュー数少ないんよね…食べるもんに微妙に困ったりw 今回の宿は正面にコンビニがあり、夜食と朝食とヴォ●ビックを2本購入し部屋へと戻る。…ん~今回も楽しかった♪ *************************************** 大阪遊楽記(番外記) 翌日、西明石に住む学生時代からの友人を呼び出し、大阪を遊んでみる。 元々はウチの実兄(DOL内ではZEP鯖ルカ・トニ)からお使いを頼まれていたモノを探す為だ。 とは言うもののホテルは掃除の為に10時には出なきゃならんw 「さて、困ったぞ…」 友人と会う約束をしてるのは昼前… どうしたものかと思案しても仕方ないのでホテルに常備していた梅田マップなるモンを手に「1人」でLoftを目指そうと決意する… 以前に2度ほどその友人の先導で行ったのみ…不安がよぎる…ま、良いっかw 地図を片手に人の流れに身を任せるを半分、直感がその半分、残りを地図頼りにテクテク歩いてみると…スバラシイ!迷わずに到着した。 「本日の開店時間は10:30です」 …店内に見える不穏な看板、現時刻10:10…うひぃorz まぁ、他に寄る場所もないし、安売り500mlペットボトル麦茶を購入し開店を待つ。 都会の人はスゴイと思う…ウチが到着した頃は疎らだった往来も、開店間際になると合わせたように集まってきた♪ Loft開店…なだれ込むまでも行かないが多くの人を飲み込んでいく。無論、ウチもその1人♪ 1人で周る店内は想像以上に楽しい。が、やはり歩きの後遺症として朝だと言うのに腰に違和感が。 「ヤヴァっ!」 店内商品の家具の座り心地を試すフリをしながら所かしこでインターバルを得ながら少しでも腰を労わりながら時間を潰すw 11:20に友人と合流し昼食をとる。 「昨日飲みすぎたから、コッテリとして胃に優しいヤツ!」という注文に彼は「カレー」を選んでくれました…フフフ (美味いには美味かったんですよ♪) 食事を終えて、Loft近辺をウロウロしてみたんやが探し物は見つからず場所をアメ村と呼ばれる場所へと移す。えぇ、もちろん230円切符を購入しましたよ♪ 数え切れないほどに居並ぶショップを巡りながらようやくハケーン♪クエ完了♪ そーなるとウチの目当ては日本橋…PCパーツショップを冷やかしまくる。途中HDDを買おうかどうしようかと悩んだが結局手を出さず仕舞いw OFF会へ向かう前「メイド喫茶なるもんに行って見たい」と公言していたが、この酷暑でどこも満席…悔しいやらホッとしたやら♪ 何か越えてはならない一線がそこにあるようね。 パーツショップを巡って、ノーマルな喫茶店で休憩を入れつつそのまま飲みに♪さすがの連荘で飲みはキビシイので胃腸薬を途中購入し。 店員:「お飲み物は何になさいますか?」 ウチ:「お冷や2つとグレープフルーツサワーとピーチサワー」 無論、お冷やは胃薬用♪ OFF会の時とは違うアフォ話を繰り広げた後、お決まりのコンビニで水、麦茶、菓子、おにぎり、調理パンを購入し宿へ戻る。大阪のTVを堪能しつつそのまま轟沈… 翌日、「起きた時間が帰省時間」という行動パターンなウチが目を覚ましたのは6:40! ん~、事前に調べてなかったんだけど、先月に新神戸8:47発新幹線に乗った記憶が蘇る。 「新神戸―新大阪は1駅20分、逆算して…時間20分ごとに1本あるかな…」 もちろん7:20代の電車に乗ることはムリなので8時20ごろの新幹線狙いでホテルを後にする。「みどりの窓口」で喫煙席希望を告げると「グリーン車」になるとの言。 ま、指定席で帰れるなら問題ナシ♪少々お高いがええじゃろw 新大阪駅でガッポリと土産を買い込み、帰途につく。 が、ここでも田舎モン丸出しなトンチンカンをしてしまう。今の時代「グリーン●●●」と付いてたら環境の何かを考えて禁煙だと思ってたら 電車のグリーン車って「ちょっとリッチな車輌」だったのねw 周りはプカプカと煙草吸ってる…くそぅ、知らんかったorz 11:37に駅到着、タクシーに乗り込み正午前には無事帰宅♪さすが盆!家は夜勤に入る兄しかいなかった… そして、軽く昼食を作って食べて、PC電源をポチッ♪早速DOLへONしてこの文章を書き始める…さて終了時間は……えぇ時間やねw (おわり)
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/416.html
比呂美と眞一郎……そして朋与の運命の日から、数日が過ぎた。 朋与は結局、あの日から病欠ということで学校を休み、二人と顔を合わせることは無かった。 比呂美が部活でキャプテン代行を務めた以外は、普段と変わらない日常が流れ、そして日曜日がやってきた…… ………… ブラインドが開くシャッという音と、その隙間から差し込む光が、眞一郎に目覚めを強要した。 (休みなんだから……まだ寝てたっていいだろうに……) どうせ母だろうと見当をつけると、眞一郎は「ううん…」と低く唸って侵入者の要求に抗う。 昨晩は新作の下書きに夢中になって、深夜の四時まで作業をしていたのだ。 今が何時かは知らないが、まだ起きるつもりはなかった。 ………… …………パラッ………… ………… 作業机の方から、画用紙をめくる音が聞こえる。 (……ん……なんだよ……) 例え母親でも、作品に手を触れられるのは良い気分がしなかった。 眞一郎は寝返りをうって、重い瞼を開けると、机の前にいる人物に抗議の視線を送る。 「起きた?」 眞一郎の目覚めに気づき、声を掛けてきたのは母ではなかった。 ストーリー順に並べておいた下書きを、一枚一枚、ゆっくりとめくっている比呂美の姿が目に入る。 こちらを見ることもなく、できたての話を読むのに夢中になっている比呂美。 眞一郎は身体をベッドから起こし、眼の辺りを擦りながら訊いた。 「日曜に来るなんて、珍しいじゃないか」 休日は経理の仕事もないので、比呂美が朝から仲上家に顔を出すことは殆どない。 「うん、ちょっとおばさんに教えてもらいたいことがあって」 そう言いながら、比呂美は下書きをめくる手を止めない。 味噌汁のダシの取り方が何とか…と言っているが、理由は別にありそうだった。 なんだろう?と思い、眞一郎は、比呂美が口を開くのを待つ。 「…………あのね……」 「ん?」 眞一郎が小首をかしげたところで、会話は止まってしまった。 『あのこと』だろうか?と少し不安になったが、自分がしっかりしなければとも思う。 だが、二人が結ばれてから、まだ数日しか経っていない…… 『結果』が出るには早過ぎる気もする。 「……身体、調子悪いのか?」 問い掛ける眞一郎に、比呂美は少し驚いたような顔を向けてきた。 「……あぁ…違うの。そっちは平気よ。……一昨日…生理来たし……」 若干モゴモゴと口篭りながら、比呂美は新しい命が宿らなかったことを報告する。 覚悟が空振りして眞一郎は拍子抜けしたが、二人の為には、今はそれで良かったのだと思い直した。 (……?… それじゃ何なんだ?) 相変わらず比呂美は『なにか』言いたげな様子なのだが、それほど深刻に悩んでいるようにも見えない。 しばらく、迷いを含んだ視線をこちらに向けていた比呂美だったが、「やっぱりいい」と下書きに目を戻してしまう。 「この新作、猫が主人公なんだ」 「え? ……あぁ……」 一昨日に思いついた、まだ題名も決めていない話。物語の主役は、旅をする一匹の牡猫だった。 ………… そのネコは、せかいじゅうを旅していました およめさんをさがす旅です ネコは《ノラネコ》なので、なまえはありません はやくおよめさんを見つけて、じぶんをなまえで呼んでもらうことが、ネコの夢でした あるとき、ねこは海岸を旅していました そして、さみしそうに泣いているカモメの女の子にであいます 《かわいそうなカモメさん、きみに涙はにあわないよ》 ネコは涙をなめてあげましたが、カモメの女の子はなきやみません ………… 物語はそんな風に、ネコが旅先で色々な動物の女の子に恋をする、という形で進んでいく。 だが、結局ネコは、女の子が好きな相手とのキューピッド役を務めて、彼女たちの元を去っていくことになる。 そして紆余曲折の末、独りで最初の町に帰ってきたネコは、防波堤に登り、空に向かって泣く…… 「『ぼくはひとりだ ぼくはひとりなんだ だれもぼくの名前をよんでくれないんだ』……か……」 ラフスケッチの最後の一枚を読み終えた比呂美は、絵本の世界に入り込んでしまったのか、とても悲しげだった。 「……悲しいお話…… 眞一郎くんらしくない……」 作家の端くれとしては、完成していない作品を口頭で説明するのは如何なものかと思う。 だが『一番のファン』である女の子が、自分の絵本で悲しい顔をしていることに、眞一郎は耐えられなかった。 「それで終わりじゃないんだ。結末はまだこの中」 そう言って人差し指で自分の側頭部を突っつき、昨夜描ききれなくてさぁ、と眞一郎は笑う。 「…………」 「…………比呂美、どうした?」 机に視線を落とす比呂美の表情は、薄曇りのまま変わることが無かった。 そして次に比呂美の口をついて出た言葉が、眞一郎に彼女の心が感じたモノを悟らせる。 「この子、朋与の……」 「…………」 その指摘に、今度は眞一郎が口を噤む番だった。 さすがだ、と思う…… 比呂美が見抜いたとおり、ネコのモデルは朋与の愛猫・ボーだった。 話すのを止めた眞一郎の様子を知るのが怖いのか、比呂美は視線を机に向けたままでいる。 だが、重苦しくなるかと思われた空気は、眞一郎の発した言葉で吹き飛んだ。 「そう。そいつのモデルは黒部ん家のネコ。そんで……それはアイツの話」 「!」 弾けるように、比呂美は眞一郎に向き直った。 眞一郎は『何も隠す事なんか無い』という風に、晴れ晴れとした顔をしている。 ……キョトンとしている比呂美を真っ直ぐ見つめながら、眞一郎は続けた。 「アイツがくれた物、教えてくれた事、……形にして残したいって思ったんだ」 「…………朋与のために?」 その問いに眞一郎は、「アイツはそんなこと、望む奴じゃないだろ」と言って、首を横に振る。 「俺の中のケジメっていうか… 俺、バカだから、描いとかない忘れるっていうか……」 「プッ…… 何それ……フフフ…」 いつの間にか比呂美の顔は霧が晴れ、笑顔になっていた。 …………伝わったな、と思う………… それから眞一郎は困ったような顔で「笑うなよ」と抗議をしたが、暴走をはじめた比呂美の腹筋は止まらない。 やれやれ……と苦笑しながら『笑い転げる美少女』を観察していると、対象の動きが突然、ピタリと静止した。 (??) 再び眞一郎に向けられた比呂美の顔は、まるで憑き物が落ちたような、透明な微笑みをしている。 「私が怒るとか…思わなかったの?」 「うん。全然」 間髪入れずそう言い切る眞一郎を、一歩近づいてきた比呂美の両腕が、包み込むようにして抱きしめた。 もう言葉はいらないな、と感じた眞一郎は、そのまま首を伸ばして、比呂美の唇を求める。 …………ペチッ! 目を閉じてキスをねだる眞一郎の額に、弾けた比呂美の指が直撃し、絆創膏の横に小さな赤い痣を作った。 「痛っ! ……もう、なんだよ~」 「早く起きなさい。休みだからってダラダラしない!」 そう言ってフフッと笑うと、比呂美は戸口をくぐって階下へと降りていってしまう。 「ま、待てよ」 『おあずけ』を喰らった眞一郎は、新しい痛みを擦りながらベッドを飛び出し、比呂美の後を追った。 洗面所で軽くうがいをしてから居間の戸を開けると、いつもなら上座で新聞を広げている父の姿が無かった。 食卓の上にも、一人分の朝食しか用意されていない。 「母さん、比呂美の分は?」 台所の気配にそう声を掛けてみると、引き戸が反対側からスッと引かれ、その比呂美本人が顔を出した。 「今 何時だと思ってるの? 私はもうとっくに頂きました」 「あれ? お袋もいないのか?」 比呂美の話では、一時間ほど前に二人で出掛けてしまったらしい。 挨拶回りか何かか?と想像しながら、眞一郎は朝食に箸をつけ始める。 「じゃあ、私いくから。後片付け、自分でしてね」 「え!? 何だよ、それ」 お茶くらい付き合ってくれると思っていた比呂美は、すでに帰り支度を済ませて、玄関側の戸口に回っていた。 用事があるから、と素っ気無く告げ、比呂美は戸をピシャリと閉めてしまう。 (……話があるんじゃないのかよ……ったく……) どうやら本当に、母から味噌汁の味付けを習いに来ただけらしい。 恋人同士なんだから、嘘でも『あなたの顔を見に来た』くらいは言って欲しいものだと思いつつ、お碗にお茶を注ぐ。 微かな苛立ちを感じながら、眞一郎がお茶漬けを胃袋に流し込み始めたとき、閉じられた戸板が再び開いた。 「……ん?なんだ、忘れ物か?」 冷たくし過ぎたと反省したのだろうか。 肩越しに振り返って見る比呂美の様子は、どこか神妙だった。 「…………もしかして……デートとかするつもり……だった?」 「え??」 謝辞の気持ちから、想像が大きく飛躍してしまった様だ。 比呂美の脳内では『眞一郎は今日、自分をデートに誘うつもりだった』という事になっているらしい。 「いや…別に。俺も今日、用事あるし」 ……決して『お返し』という訳ではない。本当に予定があるので、眞一郎は正直にそう言った。 「………… あっそう! じゃ、私いくわ!」 一際大きく雷鳴が轟いたかと思うと、今度はドンという轟音を立てて戸が閉まる。 ……こういう面倒なところも可愛いよなぁ……などと考えながら、眞一郎は立ち上がって比呂美を追った。 「怒ったのか?」 ブーツを履いている比呂美を玄関で捕まえ、眞一郎は訊いた。 「別に。 ただ、言われた事をそのまま返してくるなんて、子供だなって思っただけよ」 比呂美はおとなしそうでいて、結構、気性が荒くて怒りっぽい。 だが、それは甘えの裏返しで、その本当の顔を見せるのは、自分と母、そして朋与くらいであるのも分かっていた。 頼られている実感は嬉しくもあるが、やはり、誤解は早く解消せねばと思う。 「用事があるのは本当なんだ」 と抗弁する眞一郎をキッと睨みつけ、「何の用事!」と問い詰めてくる比呂美。 本当は夜になってから話すつもりだったが、こうなっては仕方が無かった。 前触れもなく比呂美の上体を抱きしめ、その耳元に眞一郎は囁く。 …………これから行く場所、そしてこれから会う人たちのことを………… ………… 眞一郎の話を聞き、すっかり怒気が抜けてしまった比呂美は、「私も一緒に行く」と言い出した。 だが、眞一郎は首を縦には振らない。 「一人で行きたいんだ。 二人で行くのは……まだ早い」 それに、そっちにも約束があるんだろ?と問い掛ける眞一郎に、比呂美は短い逡巡のあとで、静かに頷いた。 比呂美が普段の落ち着きを取り戻したことを確認し、眞一郎は彼女を解放する。 「夜に……こっちの用事、何なのか話すから」 比呂美はそう告げながらブーツを履き終えると、クルリと眞一郎に向き直って瞼を閉じた。 なんだよ、と惚ける眞一郎に、「ん」と唇を突き出して『お出掛けのキス』を要求する比呂美。 「大胆だぞ、お前」 「いいじゃない。……ふたりっきりなんだしさ」 それもそうだ、と呟いて、眞一郎は比呂美の瑞々しい膨らみに、自らのそれを甘く重ねる。 従業員の少年が中庭からそれを目撃し、硬直している事に二人が気づくのは、それから二分後のことだった。 つづく
https://w.atwiki.jp/pikatyuunozinsei/pages/42.html
891 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 00 59 24 ID ??? ディグダの穴を抜け、ハナダの北にあるというポケモンコレクターの庭を目指す。 途中、ニビシティでは人間の家の玄関や街の木々にキラキラ光る飾り付けがされていた。 そうか…確か今日はクリスマスとかいう日だったな。 「うわぁ、綺麗ね~!」「すごいですね!」「きらきら~。」ミミロップ達がはしゃぐ。 「…騒ぐな、人間共に見つかるぞ。」「あ、そうだった。ごめ~ん。」 「それにしても人が多いですね。」 こんな日のせいか夜だというのに街には人間が出歩いている。 「いつもより街が明るいわね。」 闇に紛れようにもあの光る装飾のせいで難しい。 「どうするの~?」 「むう…。」どうしたものか……。 「ねぇ、ピカチュウ。」 策を考え黙っているとミミロップが話し掛けてきた。 「何かいい案でも浮かんだか?」 「ええと、その…今日は街を通るのは難しそうだし、それに折角のクリスマスだし…」 ミミロップはもじもじしている。 「…何だ。」 「ふ、ふたり…い、いや、みんなでパーティーでもどうかなーって。」 ………。 「却ッ…」 「あ、それいいですねー。」「たのしそう~!」 ………。 「ねぇ、みんなもああ言ってるし…どうかな?」 やれやれ…。 「わかったわかった。好きにしろ。」「やった~!」 「じゃあ、仮拠点に戻ってやりましょうか。」「ムウマージ、あのキラキラしたのちょっととってくる~!」 …まあ、たまにはいいか。 メリークリスマス 892 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 18 55 16 ID zEpMIDjJ 保守 893 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 20 09 40 ID YgOqpR+O 「クリスマスケーキです~」 「もぐもぐ」「まいう~」 「ピカチュウ、はい、あ~ん」 「馬鹿…自分で食える///」 「またまたー」 「あ、そういえばみんな、これクリスマスプレゼント」 ミミロップは皆にプレゼントを用意していたようだ。 「はい、ロゼリアにはこれ」 「…これは?」 「それはとても珍しい光の石。お守りに持っておいて」「ありがとうございますー」 「…で、ピカチュウには…」 「…チュッ」 「ば、ばかばかばかばかばか…何をするっ!?」 「私からの最高のクリスマスプレゼント」 「お~!」 「ひゅうひゅう~」「まさにクリスマスの夜ですね~」 「ま、まったく…/// お前ら、盛り上がるのはいいが程々にしろよ。 明日は朝一番に出発するからな」 クリスマスの夜は更けていった 894 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 20 11 08 ID ??? 895 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 20 12 27 ID ??? 893 GJ(*´Д`) 896 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 21 13 59 ID ??? 超GJ!! メリークリスマス 897 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 21 42 01 ID ??? くう~、さっきは油断した!まったく…なぜ突然あ、ああああんな…を…。 「えへへ~…。」 そういえばミミロップの顔が赤い。ん…?少し酒の匂いが…。 「あはは~、お酒って美味しいれすね~。」 「ほわわわ~ん。」 ロゼリアとムウマージがシャンパンの瓶を持ってくるくる回っている。 あ れ か ! まったく…ミミロップめ、酔いに任せて…あ、あんなことを…。 ええい、さっさと忘れるとしよう! 「ロゼリア!それの中身を俺にもよこせ!」 「ピカチュウさんも飲みますかぁ~?あはは!」 …………………… 「ふぅ…。」 飲んでも忘れられない…。 ミミロップは酔い潰れたのか寝ている。ムウマージはロゼリアとまだ騒いでいるようだ。 「あれ~?ピカチュウさん顔真っ赤ですよぉ~?ど~したんでぇすか?あはははは!」 酔っ払ったロゼリアがからんでくる。 「…ちっ、何でもない、少し飲み過ぎただけだ。少し夜風にあたってくる。」 あ~!俺は今どうかしている!頭を覚まさなければ! 898 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 21 43 28 ID ??? ディグダの穴の外に出る。ひんやりした風が頬を撫でた。 「ふ…。」 酔いは大分覚めたな。 …焼けたトキワの森を見る。 ……………。 物思いにふけっていると後ろから肩をポン、と叩かれた。 「…大丈夫?」 後ろを振り替えるとミミロップが立っていた。 「お前か…。」 「隣、いい?」 「す、好きにしろ。」 …。 「さ、さささ先程の無礼はす、すぐに忘れてやる。お前も自分のやったことを忘れるがいい!」 「…?何の事?」 どうやら覚えていないようだ。ほっ…。 「な、ならばいい…。」 899 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/25(月) 21 45 06 ID ??? 「残念だったね、森…。」 ………。 「別に…一番長くいた所、と言うだけだ。未練は無い。」 「本当にそう思ってる?」 「…ああ。」 「…ふぅん。」 …………。 「…明日は早い。先に戻れ。俺はもう少し風にあたる。」 「…無理、しないでね。」 「大丈夫だといっているだろう。」 「うん…。」 ミミロップはディグダの穴に戻っていった。 …………………。 900 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/26(火) 00 29 33 ID ??? ほしゅしゅ 901 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/26(火) 15 47 01 ID ??? 保守 902 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/26(火) 17 30 05 ID ??? ほっしゅ!ほっしゅ! 903 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/26(火) 22 16 17 ID dSqaO6+O 今1から読んだ… 皆ありがとう… よいお年を!!GJ 904 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/27(水) 12 29 51 ID ??? ぉぅぃぇっ!ほっしゅ! 905 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/28(木) 01 03 57 ID ??? クリスマス最高だぜ!GJ 906 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/28(木) 20 44 43 ID ??? 保守 次スレってどうする?? 907 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/28(木) 21 58 28 ID ??? ほしゅほしゅしゅしゅしゅすyyすhjすんhそ 908 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/29(金) 07 52 47 ID ??? 906 神作者が降臨しない限りスレが進まないだろうから 980あたりでよくない? 909 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/29(金) 11 10 05 ID ??? 908 それもそうだな 神よこい 910 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/29(金) 11 18 36 ID ??? 保守ageヒャハ! 911 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 01 53 53 ID ??? 保守 912 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 07 25 35 ID ??? ほっしゅほしゅ!!! 913 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 11 05 16 ID ??? 保守ですぜ! 914 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 12 49 38 ID ??? お祭り騒ぎはおさまり、皆は酔って寝ている。 穴に戻ってきたピカチュウは手に石を持っていた。 キラリと光るその石をミミロップの側に置いた。 「・・・。」 ピカチュウは自然と顔を赤らめていった。 ピカチュウは横になった。 そしてこれからの事、シンオウのドンカラス達のこと。そして・・。 いろいろな事を考え、眠りについた。 そして朝。 915 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 21 29 04 ID ??? GJ! 916 :名無しさん、君に決めた! :2006/12/30(土) 23 32 01 ID ??? おつ!! 917 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/01(月) 00 17 23 ID ??? 「あけましておめでとうごぜぇます。」 「宴会の様子はまた後で書くって言ってたお!」 918 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/01(月) 00 43 27 ID ??? 皆あけおめ!! 917 期待してます 919 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/01(月) 03 39 47 ID ??? あけおめ保守 920 : 【吉】 【368円】 :2007/01/01(月) 22 20 03 ID ??? 保守ります 921 :ぐっさん :2007/01/02(火) 00 04 53 ID CPpXax9p 早くつづきよみたい 922 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 00 44 44 ID ??? ゲンガーの人生<小ネタ・進化>第1章(最終章)「因縁の対決 VSザングース【序章】」 さて、前回は森の洋館にビリリダマを放り込もうとして失敗したゲンガーだが、 その後修行を繰り返してとうとう正月となった。しかし正月といっても暇である。 皆さんの世界では塾やら部活やらもこの日では休みだし、勿論普通の奴は 修行とかなどする気が起きない。彼もその一人である。さて、今回はそのゲンガー様のお話。 平成19年1月1日 某時刻 ロストタワー 「ケッケケ、今日は正月だぜ。今度はどうやって突撃するか…いい案あるか?」 「正面突撃はどうでしょうか?オヤビン」「お前は10万ボルトを食らいたいのか?ゲンガーさまどうします?」 んー…と、ゲンガーが考えて2分後。ゲンガーが口を開きだした。 「あいつらの事だからきっとパーティでもしてるぜ…その隙を狙って忍び込みビリリダマを!」 「流石、ゲンガーさま!」 「ビリリダマといえばあの時言いたい事があったんですが…。」「…なんだ?」 「あの時、皆でビリリダマを仕掛けにいきましたがあの時は確か12月24日でクリスマスの1日前ですよ。」 「…ウゲゲッ!しまった…どーしてそれを教えてくれなかったんだ!」 「ケケッケ、子供みたいな間違え…オヤブンは馬鹿にも程があるぜ!えっ!う゛っ。すみませんでした。」 どうやらゲンガーにつねられたようだ。可愛そうなゴーストである。 「あまりにも張り切ってたもんで…言いにくかったんです。お前もそうだろ!」 「…知らなかった。オヤビンがそんな事を間違えるなんて…」「…」 場は沈黙した。――さてゲンガーの作戦を簡単におさらいをしよう。 森の洋館に突撃し隙を狙ってビリリダマを入れてドカンという子供でも思いつく作戦である。 こんな役に使われるビリリダマは可愛そうである。彼はモンスターボールに間違えられるらしいが 大きさまるっきり違う。本当に可愛そうである。さて今回の話の本題は、 可愛そうな奴と可愛そうな奴が激突する話である。 923 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 01 11 09 ID ??? ぼっ゙じゅ゙! 924 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 01 21 00 ID ??? 平成19年1月1日 某時刻 森の洋館 「ゴースト共…、準備はいいかー?」「「「アイアイサー!」」」 「じゃあいくぜー!」「……」 ドアには鍵がかかっていたようだ。 「ケケケ…そうきたか。俺には(ゴースト)考えがあるぜ!俺に任せな、オヤブン!」 「あっけろ!あっけろ!さっさとあっけあっけろー!」「なるほど…騒音攻撃か。お前も中々やるぜ!お前等もやるぞ!」 ゲンガー達が騒音攻撃をしようと思った時、ヤツが出てきた。そう…ヤツである! 「さっきから五月蝿い。何様でござるか?…あの時の…!」 「テメーは……誰だったけ。」「そんな…ひどいでござる…。」 ザングースはゲンガーからも忘れられたようだ。可愛そうである。 「待て…今思い出すぜ…。」「まってください、オヤビン!」「ん…?」 「この前、オヤビン【あん?思い出せねえなら大した事じゃねえだろ。そのまま忘れとけ!】 とかいってたじゃないですか。多分大した奴じゃないっすよ!」 ゴーストにまで言われたようだ。そんなこんなで10分後、ゲンガーは思い出したようだ。 というわけでタイマン勝負の因縁の対決をする事になった。 「ケケッケ、素早さはおれさまの方が早い。また眠らせてやるぜ!」 ゲンガーが催眠術をかけようとしたその時、目の前にザングースが爪を向けた。 「残念だがそうはいかないでござる。」「そ…そのスカーフは!」 そう、こだわりスカーフである。あの時ジバコイルが落としていったのか。 「シャドークロー!」「ウゲゲッ!」 終わったか…そう思ったザングースだが簡単にやられる程ゲンガーは弱くは無い! 「ケッケケ!残念だったな…。」 「な…なぜ立ち上がれるでござるか?!」 なぜゲンガーは立ち上がれたか?後半へ続く。 925 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 04 50 20 ID ??? 時は少し遡り十二月三十一日、シンオウのハクタイの館にて…。 洋館の食堂にドンカラス他、ハクタイの館に住むポケモン達が集まっていた。 ポケモン達はなにやら忙しそうに、料理を運んだり食堂を飾り付けたりしている。 ドンカラスは食堂のテーブルの上に乗り、その指揮をとっているようだ。 「もう少しで今年も終わりですぜ!さっさと準備しやがれってんだ!!」 「イエッサー!」 「いい匂いがするお~…。」 「そこ!つまみ食いすんじゃねえ!」 こっそり料理をつまみ食いしようとしていたビッパの額をドンカラスが嘴でガツンと突く。 「お゙っ!い、痛いお!少しくらいいいと思うお…ケチだお…。」 「少しくらい我慢しなせぇ。あ~!おい、ゴルバット!その飾りはもう少し上だ!上!」 「わ、わかったキィ。(…まったく、注文が多いオッサンだっキィ。)」 ケチをつけられたゴルバットはぶつぶつ文句を呟きながら飾りなおす。 「…おい、聞こえてやすぜ。あっしはまだ若いってんだ!」 ドンカラスは羽を拳のように器用に握り、ゴルバットの頭をゴツンと叩いた。 「あ痛っ!じ、地獄耳だっキィ…。」 何だかんだで準備は進む。 926 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 04 51 21 ID ??? そんなこんなで準備をしていると、洋館の入り口の扉をドガッと乱暴に蹴り開ける音がした。 「ああ?なんでえ!?」 ドンカラスが様子を見に行くと、そこにはマニューラと三人のニューラの姿があった。 「ヒャハハハハ!勝手に来てやったぞ糞カラス!」 「オレたちも誘えっつーの!」「あたしらに黙ってこっそりやろうとしても無駄よ。」「カーラースくーんあーそーぼ!ギャハハ!」 「ちっ、またてめえらか糞ネコ供!クリスマスの時といい、どっから祭りの匂いを嗅ぎつけて来やがるんでえ!?」 悪態をつくドンカラスを無視しマニューラ達は勝手に上がり込みはじめる。 「それじゃ、お邪魔するぜ!ヒャハ!」 「上がらせてもらうっつーの!」「それにしても相変わらずボロい館ね…。」「やーい!お前んち、おっばーけやーしきー!ギャハハ!」 「おいっ!誰も上がっていいとは……ちっ、準備の手伝いくらいはしやがれよ糞ネコぉ!」 「へーへー。」 927 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 11 45 25 ID ??? ネ申スレ保守(´・ω・`) 928 :名無し :2007/01/02(火) 15 33 40 ID CPpXax9p うおーーーー楽しい物語だぜしかも姉がマンガ書いてやがる!!=ファン 929 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 16 39 55 ID hDaT4GrK ポケモン初めたんだけど努力値ってあるじゃん、あれってレベル1のポケモン が努力値ため方なんだけど、どうすればいいですか?未熟なのでおしえてください 930 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 17 39 43 ID ??? 人 (__) \(__)/ ウンコー! ( ・∀・ )  ̄ ̄ ̄ 931 :名無し :2007/01/02(火) 17 58 03 ID 6zcAj+dU 930さん。ウ○コじゃなくてせめてかがみもちにしろよ!! 932 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 18 03 14 ID ??? ドウモ~~~ッ!!フッジッ/^o^\サーン♪フッジッサーン~~~ッ☆☆/^o^\ 私は37歳のフッジッサーンしてるのぉ~~~っ♪/#^o^#\ うーんとー、私メル友がすっごくすっごく欲しくってー、/^o^\フッジッサーン 探してたら/^o^\フッジッサーン/^o^\フッジッサーン!☆彡/^o^\☆彡/^o^\☆彡/^o^\☆彡 素敵Σ/^o^\フッジッサーン!な掲示板♪を発見!!!!/^o^\""" フッジッサーン え?くれないのぉ~?/^o^\そんなのフッジッサーン♪/^o^\フッジッサーン や~~、フッジッサ━━━/^o^\━━━ン なってくれなかったら、/^o^\ 勝フッジッサ-ン! /^o^\フッジッサーン ☆○/^o^\oフッジッサーン ぱ~んち、☆/^o^(○=/^o^\o バコ~ン!!♪/#^o^#\フッジッサーン /^o^\=◯)^o^\ /^o^\フッジッサーン ゛o/^o^ \oo/ ^o^\)o″フッジッ!! サーン!! 素敵/^o^\フッジッサーンな掲示板♪フッジッサ━━━/^o^\━━━ン を発見!!!!/ ^o^\//""" パチパチパチ /^o^\きゃ~~/^o^\フッジッサーンやられた~~/o^o^\o ドテッフッジッサーン フッジッサ━━/^o^\━━ン! /^o^\←フッジッサーン。。。。・゜゜・o/^o^\o・゜゜・。フッジッサーン /^o^\ フッジッサアアアン! Σ/^o^\フッジッサーン 933 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 18 05 02 ID ??? 黙ってスルー 934 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 18 30 10 ID ??? 930さん。名○しじゃなくてせめてsageにしろよ!! 935 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/02(火) 23 18 25 ID ??? 神スレほしゅ 誰か漫画化してくれないかなぁ(ボソ あ、いや、なんでもない。言ってみただけなんだ。 936 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/03(水) 00 55 36 ID ??? 保守 937 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/03(水) 08 29 57 ID ??? 保っ守 938 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/03(水) 14 53 36 ID ??? 保守 939 :L :2007/01/04(木) 00 13 06 ID 7ldLmwdU 935 同意 だが、誰が書き誰が出版する? 940 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/04(木) 04 43 53 ID ??? 誰か~ 絵が得意な方、ぜひ描いてください 941 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/04(木) 21 22 39 ID ??? 保守 942 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/04(木) 21 57 09 ID ??? ピカ「アッ イク イクーーー」 943 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/04(木) 23 39 32 ID ??? 保守 小説、絵のどちらか神が降臨するといいな 944 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 03 47 20 ID ??? ところかわりカントーのディグダの穴。 ピカチュウ達は目的地のポケモンコレクターの家に行く旅の支度をしていた。 「折角、もうすぐ新年だってのに私達は旅に出るのね~…。」 ミミロップは袋に道具を詰めながらぶつくさ文句を言っている。 「うるさい。ついこの間、クリスマスのパーティーなどと言い、騒いだばかりだろう。」「ちぇっ。」 「こんばんは。みなさんお揃いかしら?」 そんな所にミロカロスが突然たずねて来た。 「!ミロカロス…。」「な、何しに来たのよ~?」 「ふふ、シンオウの洋館でドンカラス達が楽しそうな年越しパーティーをやろうとしていましたの。そこにあなた達もお連れしようと思いまして。」 「え~?ドンたちずるい~。」「でもどうやって行く気ですか?ここからでは遠いし絶対間に合いませんよ~?」 「それは、ひ・み・つですわ。」「何よ~!それ!」「(空間の力を使うつもりか…?)」 ピカチュウはイライラしながら言う。 「…おい、勝手に話を進めるんじゃない。まだ行くとは言っていないだろう。ただでさえ予定が狂わされているんだ、これ以上余計な時間を…」 「まあまあ、いいではありませんか。折角のイベント、楽しまなきゃ損ですわよ? さて、移動の方法を見られるわけにはいきません。少しの間、あなた達には眠っていてもらいますわね。」 ミロカロスの目が怪しく光る。 「おい、待っ…。」 …ピカチュウ達は眠ってしまった。 945 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 03 48 51 ID ??? もどり、ハクタイの館。 パーティーの準備はもう済んでいるようだ。 「さて、後は年が明けるのを待つだけでえ。クァカカ!」 「「「かんぱ~い!」」」 ポケモン達が楽しそうに騒ぐ中、エンペルトが不安そうに、上座にどかっと座り酒を上機嫌そうに飲んでいるドンカラスに近づいていき小声で訪ねた。 「(うわ、酒臭いポチャ…。)ドン、大丈夫ポ…ごほん…か?ボス達がカントーで頑張っているのにこんなことしてて…。」 ドンカラスは上機嫌なまま答える。 「大丈夫だってんだ。こんなめでてぇ日だ、ボス達も楽しくパーティーをやってることでしょうぜ!」 「(あのせっかちで真面目なボスがそんなことやるとは思えないポチャ…。)もうどうなっても知らないポチ…よ。ボクは止めたからな。」 「大丈夫、大丈~夫!ボスも今ごろは酒によって、その勢いでミミロップの姐さんとあんなことやこんなことを…クァカカ…」 バチチィッ!バリバリィッ!突然、ドンカラスに電撃が放たれる! 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!…だ、誰でぇ!」 「…き・さ・ま・らぁっ…!」 「げ、げげぇーーーっ!?ボ、ボボ、ボボボスッ!?!!?!」 946 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 03 50 06 ID ??? 「誰が酒に酔ってミミロップと…だとぉ…!?それに何だ!?この洋館の浮かれきった状態は…!?」 ピカチュウは怒り、電気を纏いバチバチと音をたてている。 「ク、クァハ…クァハハ…いや…そのあっしは…。え~… 「「「ご、ごめんなさい!すいませんでした~!!申し訳ない…。」」」 激怒するピカチュウにドンカラス達は土下座して謝る。 「(だからボクは止めたんだポチャ…。)」 ――――― ピカチュウは大きなため息をつく。 「はぁ…もういい。呆れて何も言えん。今回は許してやろう。」 土下座していたドンカラス達が一斉に頭を上げた。 「い、いや本当にすいやせんでした。ささっ、こちらへどうぞ!」 ドンカラスは今まで自分が座っていた上座の椅子を羽でささっと払い、ピカチュウを案内する。 「情けないポチャ…。」 947 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 03 52 14 ID ??? 「さ、さあ、姐さん達もこちらへ!」 ドンカラスは今まで座っていたポケモンをどかし、ピカチュウの座る上座に近い席を譲らせる。 「あ、ごめんね~。」「それじゃ遠慮無く…。」「ぼわ~ん。」 食堂はシーンとしている。ドンカラスが恐る恐るピカチュウに訪ねた。 「あ~、それで、その…宴会の続きは…。」 ピカチュウはやれやれといった感じで答える。 「…好きにしろ。」 「「「イヤッホォォウ!」」」 ピカチュウがそう言うと、またポケモン達は楽しく騒ぎはじめた。 「やれやれ…。」 948 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 03 54 41 ID ??? 駄目だもう眠い…続きはまた明日…。 949 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 18 16 39 ID ??? 神キター!! 超GJ! 950 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 20 10 43 ID ??? GJ!! これからも宜しくな。 俺文才無いしww 951 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 21 33 19 ID ??? 保守 952 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/05(金) 23 22 22 ID ??? 保守 953 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/06(土) 00 52 42 ID ??? 保守 954 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/06(土) 15 45 10 ID ??? 保守 955 :場所間違えた :2007/01/06(土) 22 31 12 ID ??? ゲンガーの人生<小ネタ・進化>第1章(最終章)「因縁の対決 VSザングース【後編】」 さて、何故ゲンガーは生きていたのか。こういう時には必ず解説キャラ、三沢っちが現れる。 「ケケケ、オヤブンの気合のタスキだぜ。」「流石オヤビン!」 「っく…ピンチでござる。」 「ちょちょいと眠らせてもらうぜ!ケッケッケッケ。」 ゲンガーの催眠術でザングースは眠ってしまった。 「ピカチュウの技を決めさせてやるぜ…10万ボルト!」 「ぐはあ!うが…はっぐぅ…!」 ザングースはゲンガーの10まんボルトで起きた。 得意な技じゃないためか致命傷までにはならなかった。 「これ以上ダメージを受けるのは危険だ。これで決めさせてもらうぞ!ブレイククロー!」 「ケッケケ、そんな技くらわねぇーな。シャドーボール!ってあれ?」 「っくそー!シャドークロー!」「乱れひっかき!」「したでなめてやる!」 ………私たちはついつい大事なことを忘れてしまう。ここにもまた1つ 「お雑煮が1つ余ってるお。多分作りすぎた体お。勿体無いから僕が食うお!」 ここにもまた1つ 「ぷぅ・・・テレビの中でネズミ共を待ってるのに来ないなんてネズミ共臆病者だなー。」 956 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/06(土) 23 06 49 ID ??? おぉ!!GJ! 957 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/06(土) 23 56 55 ID ??? 保守 958 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 01 06 36 ID ??? 時々書きに来てもいいですか? 959 :L :2007/01/07(日) 01 18 50 ID ??? 958歓迎 960 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 10 19 26 ID ??? 960 大歓迎!!! 961 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 10 21 50 ID ??? 960→ 958 誤爆った… ピカチュウに殴られてくるわ... 962 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 13 21 15 ID ??? 宴会も終わり翌日の朝になった。そろそろ帰るか。 「ミロカロス、元の場所に戻してくれ。」 そういえば俺たちはハナダシティのポケモンコレクターの家にいくんだったな。面倒だからミロカロスに運んでもらおう。 「――分かりましたわ。」 俺たちは森の洋館からポケモンコレクターの家についた。ちなみにあいつらは疲れて眠っている。 ミロカロスはいつのまにかどこかへ消えてしまった。…ディグダの知り合いはどんな奴だろうか。 そう思っていた頃、その家から声が聞こえてきた。 「コレを押せば元通りの体に戻れるんや…ポチっとな。」 「しまった!このスイッチは戻るときの場合外からしか押せないんや!どないしよう!」 963 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 20 41 02 ID ??? 962じゃないけど… ――人間? ディグダの知り合いは人間なのだろうか。 人間に見つかるのは避けたい、それにこいつらも寝ている。 焦ることはない。俺は大都市ハナダシティの視察に行くことにした。 久しぶりに有名なキンタマブリッジでも見てみるか。 見に行く途中人間の声が聞こえてきた。 「何やってるんだ!そんなんだからカスミに勝てないんだぞ!!」 見てみるとトレーナーがポケモンを叱っている。しかも何とピカチュウではないか。 自分のためにポケモンを使い怒る人間、まさに俺のトレーナーと一緒だ。 一気に殺意が高まるのを覚えた。電気を溜める。 964 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/07(日) 20 41 43 ID ??? ――次の瞬間そのピカチュウから強い電撃がほとばしった。あれは、10万ボルト。 「よくやったなピカチュウ!やった!やったね!」 そのトレーナーはピカチュウを強く抱きしめていた。 そのピカチュウは、――とてもうれしそうだった。 「ご褒美のミックスオレが…ない。ちょっと取りに行くから待っててピカチュウ!」 そのトレーナーは自分の家に帰っていった。俺はそのピカチュウに話しかけてみた。 「おい、なぜ人間にあれだけ言われて我慢している。」 「彼は、とてもいいトレーナーだよ。僕たちのことをいつも気遣ってくれる。 そんな彼に答えてあげたいんだ。」 「正直に言え、人間は好きか。」 「僕は、彼がとても好きだ。」 そのピカチュウはまっすぐな目をして俺にそう言い放った。 「あ、来た。」 ――俺はトレーナーに見つからないようにその場を離れた。 俺も、そんな人間に出会えば考えが変わったのだろうか。 黒ピカの正体が分からないのでピカチュウの人間に対する見方を書いて見ますた。 却下でも良いです。 965 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/08(月) 01 26 23 ID ??? GJ 966 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/08(月) 01 26 47 ID ??? GJ! 保守 967 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/08(月) 18 42 19 ID ??? 保守 968 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/09(火) 01 03 59 ID ??? 保守 969 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/09(火) 01 21 00 ID ??? おちんチ~~~~んッ! 970 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/09(火) 07 34 02 ID ??? 保守 971 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/09(火) 19 50 16 ID ??? 保守 972 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/09(火) 23 16 42 ID ??? 保守 973 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/10(水) 00 12 50 ID ??? 保守 最近一日三回保守する癖がついたww 974 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/10(水) 12 30 25 ID ??? 保守 975 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/10(水) 14 38 18 ID ??? 「オレ達が怖いもの一つだけ、一体何だ!?」「「「こわ~い、こわ~い、ピカチュウさま~!」」」 「そーだ!じゃああそこでふんぞり返ってる奴は何だ!?」「「「神気取りのお馬さん!ギャハハハハ!」」」 「ヒャハハ!そのとーり!何も恐れることはねえ!あの神気取り野郎を地面に叩き伏せて、背中にピカチュウの旗をおっ立ててやれ!」「「「イヤッハー!!」」」 このかけあい、すごすぎ 976 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/10(水) 18 43 51 ID ??? 975 アルセウス戦か? 977 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/10(水) 22 11 44 ID ??? ほっしゅ 978 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 11 47 57 ID ??? 保守 979 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 11 49 17 ID ??? と( ._.)つ保守 980 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 13 32 02 ID ??? ∧ ∧ /■\__/■\ ___ ● ̄ 「● \_ 0 / | ▼ |<ピカチュウ ● ∧ ● \ ∀ / | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | | ____ |∑ ∑ |_/ | | ▲▲ / ̄ ̄ ̄ \ / ̄ ̄ VV ̄ ̄VV 981 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 13 47 31 ID ??? 保守 982 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 18 07 21 ID ??? 保守 983 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 18 44 49 ID ??? 次スレマダー? 984 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 20 27 04 ID ??? 俺はあの黒いピカチュウが言ったことを思い出した。 「…お前にこき使われる手下の気持ちを考えたことはあるか?」 先ほどの人間とピカチュウを考えてみれば、確かにそんな気もしなくはない。 しかし、俺は自分でも戦った。ドンカラス、マニューラ、そしてアルセウス。 …俺は、何を考えているんだ。こいつらは確かに手下だが人間とポケモンのような関係など… 「おはようピカチュウ。」 「おはようございます」。 「おはよう~」 「…」 「どうしたの?」「どうしたんですか?」「ムウマージ、しんぱい~」 「なんでもない、行くぞ。」 こいつらは俺のことを心配してくれる。それに、俺は絶対こいつらを裏切らない。 「ディグタの知り合いはなぜか人間の可能性がある。注意していくぞ。」 「何かあったら私がピカチュウを守るんだからっ!」 ディグダに教えてもらった家を覗いてみると、怪しげな装置に入った見たこともないポケモンがいた。 そして、そのポケモンは人間の言葉をしゃべっている。 「…あかん、もう出られへん」 ちょっとぐだぐだ感が否めないかな… 985 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/11(木) 20 46 02 ID ??? 984 GJ!! 983 次スレは 990がたてるらしい 986 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 00 34 10 ID ??? ぐっぐっじょぶ(^ω^) 987 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 08 04 35 ID ??? イ呆守 988 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 08 06 29 ID ??? 保守 989 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 08 41 38 ID ??? 保守 990 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 10 01 57 ID ??? 前スレ http //game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/ この内容で誰か次スレ立ててくれ…。俺じゃ無理だった。 何か付け加えてくれると嬉しかったり。 991 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 12 20 38 ID ??? 議論スレで決まったテンプレ案ドゾー 全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレ。 ※本編自体は既にシンオウ編で完結しています。続編のカントー編等はパラレルワールドという扱いになっています。 ※怖いお兄さんに絡まれないように、続きを書く前に前スレ・議論スレ・保管サイトをしっかり読み、 流れとキャラの性格と口調をしっかり掴んでおきましょう。 ※シンオウ編は必見 ※小ネタ歓迎!絵も歓迎! ※荒らしはスルーが基本。神が降臨するまでまたーり行きましょう 前スレ ピカチュウの人生 小説リレー・進化 http //game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/l50 関連スレ ピカチュウの人生議論スレ http //game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/ まとめwiki http //www21.atwiki.jp/pikatyuunozinsei/ 保管サイト http //park.geocities.jp/pokepoke0830/newpage6.html 992 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 13 21 23 ID ??? 俺も無理だった・・・ 誰かお願い 993 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 17 32 20 ID ??? ? 俺行こうか 994 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 00 08 ID ??? 995 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 00 26 ID ??? ガンガレ 996 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 01 56 ID ??? 保守 997 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 03 02 ID ??? 保守 998 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 04 09 ID ??? 保守 999 :名無しさん、君に決めた! :2007/01/12(金) 18 05 27 ID ??? 保守 1000 :75%の人 ◆q6AVR3NnIA :2007/01/12(金) 18 06 33 ID ??? 1000GET 1001 :1001 :Over 1000 Thread ここは…… れきだいの ポケモン いたの もとで…… かつやく した スレッド たちを えいえんに きろく して たたえる 1001 である! ポケモン いたでは ここに きろく される よろこびを でんどういり と よんで いる! このスレッドは はげしい かきこみの すえ 1000レス たっせいと なった! ここに スレッドの なまえと レス たちを きろく しよう! ただいま かこログに きろくして います レポートを かきおわるまで でんげんを きらないで ください
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/3563.html
新桃太郎伝説 【しんももたろうでんせつ】 ジャンル ロールプレイング 高解像度で見る裏を見る 対応機種 スーパーファミコン メディア 16MbitROMカートリッジ 発売・開発元 ハドソン 発売日 1993年12月24日 定価 9,800円 書換 ニンテンドウパワー1997年9月30日/1,000円/F×4・B×4 プレイ人数 1人 セーブデータ 3個(バッテリーバックアップ) 判定 良作 ポイント 打って変わったシリアスな桃太郎伝説サウンド、グラフィックをはじめ、ゲームとしての完成度が高いバランスは少々難あり 桃太郎シリーズリンク 概要 ストーリー 評価点 賛否両論点 問題点 総評 余談 概要 ハドソンの看板シリーズである桃太郎伝説シリーズの一つ。 本作はFC版『桃太郎伝説』のリメイク作としてPCエンジンで発売された『桃太郎伝説ターボ』の続編である『桃太郎伝説II』のシナリオやゲーム性を練り直したリメイク作品だが、内容は大幅に変更され、ストーリーの大筋は踏襲しつつ大きく趣の異なる作風に変化している。 ストーリーこそFC版初代のストーリーの続き(*1)となっているが、先に述べた通り、「第1作目のリメイク版の続編のリメイク作」という位置づけなので、厳密にはFC版の直接の続編ではない。(*2)。 ストーリー 桃太郎がえんま大王をこらしめてから6年の月日が流れた。 平和が永遠に続くと思われていたある時。鬼族の総大将・伐折羅王の腹心である鬼カルラの暗躍により、愛と勇気に目覚め人と鬼の共存を訴えていたえんま大王が失脚し、奈落の底に幽閉されるという事件が起きた。人間世界の侵略をもくろむ伐折羅王は、カルラの進言に従い、人間の希望の象徴であるかぐや姫を手中に収めんと魔の手を伸ばす。かぐや姫に危機が迫っていることを知った桃太郎はすぐさま月の宮殿へと向かうが、立ちはだかる伐折羅王の息子、ダイダ王子との戦いに敗れさり、全ての力を奪われて月から叩き出されてしまう。 生家で目覚めた主人公は、かぐや姫を救い、再び伸びる鬼族の魔の手から世界を守るべく、決意を新たに旅立つのだった。 評価点 シナリオ それまでの桃太郎伝説シリーズの持ち味だった牧歌的な雰囲気やギャグ要素が尽く廃された、これまでからは考えられないほど重くシリアスな展開が持ち味。昔話をモチーフにしているのは変わらないが、根底にあるのは「上座部仏教と大乗仏教の対立」である。これは公式攻略本にも明記されている。 「上座部仏教」とは「厳しい戒律と修行の果てに自己の救済を目指す」という仏教思想で、対する「大乗仏教」は「自己の解脱よりも他者の救済を重んじる」という仏教思想であり、それぞれ『実力主義と封建社会の厳しさの中で生きる鬼たち』と、『人助けと融和を重んじる桃太郎たち』になぞらえられている。 話の展開上、「鬼の支配(上座部仏教)」を「桃太郎たちが解放する(大乗仏教)」ことになっているが、もちろん現実の世界でこれらの思想に善悪のくくりがあるわけではない。(*3) 特にその物語に華を添えるのが、リメイク元の『II』には居なかった悪役『カルラ』の存在。鬼族の王である伐折羅王 (『II』での地獄王に相当)の腰巾着であり、行く先々で桃太郎たちの前に現れて様々な嫌がらせを仕掛けたり、何かあるたびに伐折羅王に虚偽の報告をしていたりする、裏の主役とも言える存在である。 その所業はネタバレとなるため詳しい記述は避けるが、作中で今までのシリーズからは想像もできないような暴悪で残忍な悪行を幾度となく行い、桃太郎シリーズはおろかRPG史上でも屈指の外道悪役として今でも名を馳せている。 作中のある場所で語られる鬼族の世界観やカルラの生い立ちの中にはそうならざるを得なかった事情もある(*4)にはあることが読み取れ、プレイヤーに複雑な感情を抱かせた。開発日記いわく「悪いけど哀れな奴」とのこと。 『ファイナルファンタジーVI』のキャラクターであるケフカとは劇中での立ち位置など共通点が多い。なお、偶然とはいえゲームの発売時期もかなり近い。 システム面 RPGとして、以下のような意欲的なシステムが盛り込まれている。 『絶好調』 フィールドを歩いていると一定確率でキャラクターが絶好調になり、戦闘中のステータスが大幅に上昇する。一定時間で元に戻ってしまうが、上手くボス戦に持ち込むことができれば大幅に有利となる。(ただしボス戦では恩恵が通常戦闘より小さくなるように設定されている。) これは、後の桃太郎電鉄シリーズや、PS版『桃太郎伝説』にて復活することとなった。 『タクティカル・ウェザー・バトル』 フィールドでの敵キャラとの戦闘には「天気」という概念がある。各キャラや一部の術に得意な天気 苦手な天気が割り振られており、天気によって戦況が変化するというもの。味方だけでなく敵にも得意な天気が設定されていて、その天気に変更する能力を持っていたりする。 一例をあげると、最序盤から出現する『カエル』という敵は、雨ごいを行って天気を雨に変えるが、雨になると攻撃力と防御力が2倍になる。また『ひとだま』という火の化身のような敵は、怒りで燃え上がる事で攻撃力と防御力を2倍にするが、雨(雷雨)が降っていると次のターンに元に戻ってしまう……といった、天気に絡んだ特徴がある。 どの天気になるかは毎回ランダムだが、南国は日照りになりやすい、海では時化が発生するなどの特徴分けがなされている。 現在の天気が得意である場合、毎ターン体力が回復する、ステータスが増加する、術の消費技量が半分になるといった効果が発生。逆に苦手な天気の場合体力が自然減少したり、術の消費量が増加する。中には全く動けなくなったり、戦闘から逃げ出してしまうという極端な仲間も。術の威力も天気によって増加したり減少したりする。 回復役として重要な浦島は苦手な天気が4つと多い。元々の体力が低いところに体力減少が加わってしまうので、戦闘の際には注意が必要となる。 なお、天気は一部のアイテムや術などで意図的に変化させることも可能。 『人気度』 桃太郎が人々からどれくらい支持されているかを示すステータス。 このステータスが高いと、店で割引をしてもらえる、利用できる施設が増えるなどの利点が生じる。逆に低いと店に高い値段を吹っ掛けられたり、お供が命令を聞かなくなってしまう。 この人気度がある程度以上高くないと入れない場所や、一定以上無いと仲間になってくれないキャラも存在するが、普通にクリアするだけなら無視しても問題はない。 人気度は困っている人の手助けをする、ボスキャラをこらしめるなどで上昇し、敵の甘言に乗せられる、嘘をつく、仲間を戦闘不能にするなどで減少する。 『II』でも“桃太郎らしくない行動”に対するペナルティはあったが、本作は悪行に対するペナルティと善行に対するご褒美をより明確にしたものと言える。 『各仙人との修行』 桃太郎はレベルアップで術を覚えないため(*5)、フィールド各地の庵に住む仙人を訪ねて術を伝授してもらう必要がある。そしてその修行がバリエーション豊富。 桃太郎一人で仙人と戦い勝利する、指定された敵キャラを一定数討伐する等定番のものから、仙人がしたオナラの数を数えるといった修行とは言い難いものまで様々。 個性的なキャラ 仲間キャラの総数は当時のRPGとしては破格の多さ。またキャラごとに癖や使い勝手も大きく異なるので、個性が大きく出ている。 重要イベントの際に特定のキャラをつれていると、仲間や敵のセリフが変化するようになっており、パターンも豊富。 また、フィールドを歩くときに仲間が好き勝手に歩く『アクティブ・ウォーキング』など、細かいところにも独自性が見られる。 敵キャラもそれぞれ独自のトリッキーな技を使うものが多く、敵との戦闘では毎回細心の注意を払う必要がある。 様々な伝承・民話や仏教用語に由来する敵が多数登場しており、雪女や海坊主のような著名どころから、「うわん」や「いつまで」のようなマイナーな妖怪まで敵の種類は実に幅広い。不喜、悪杖、はちずまびんなど変わった名前の敵は十六小地獄の名称に由来していたりする。 「一体の敵に必ず一つ以上の特殊能力を」という意気込みで作られたため、ザコからボスに至るまで皆非常に個性的。そのぶん、ややゲームバランスが犠牲になっている側面もあるが……。 シリーズ恒例のギャグ敵も健在。 パロディ表現への厳しさや作風のシリアスさゆえか、時事ネタやパロディは鳴りを潜めてしまっているが、相変わらずのコミカルなノリでシリアスな雰囲気を適度にほぐしてくれる。 その他 格調高い純和風のBGM群 作曲は旧作でおなじみのサザンオールスターズの関口和之が担当し、いずれも名曲揃いである。 中でもボス戦、ダイダ王子戦、風神 雷神戦、嵐の海戦、そしてラスボス戦のBGMは特に評価が高い。 また、効果音も非常に秀逸なものが揃っている。戦闘開始時や鹿角の術、痛恨の一撃などは印象的で、プレイヤーの思い出(またはトラウマ)を呼び起こすような、良くも悪くも一度聞いたら忘れられなくなること請け合いである。 戦闘勝利時やレベルアップ時のジングルなど、旧作でお馴染みだったものが新規の者に入れ替えられているなど、ゲーム全体の雰囲気に合わせた重厚かつシリアスな曲調で統一されている。 細かなところや妙なところへのこだわりよう、力の入れようも凄い。 本作の題字『新桃太郎伝説』は今井凌雪氏(黒澤明監督の映画の題字を手がけたことでも有名な、本職の書家)にわざわざ依頼して書いてもらっている。 桃太郎シリーズのお約束である女湯イベントなど、細々としたイベントやミニゲームにも力が入っている。 賛否両論点 旧作と比較して顕著なシリアス要素と死亡描写 『敵を殺すのではなく懲らしめる』という根底こそ貫いている(*6)が、ストーリー展開上、登場人物の殺害シーンなどのショッキングな展開が多く、殺伐とした雰囲気が顕著。 ギャグ基調から重厚かつシリアスなストーリーへの転換を好意的に受け止めて評価しているプレイヤーは多いが、ほのぼの感あふれる作風を特徴として他作品と差別化していたシリーズだけに、旧作からのファンの中には否定的に見る層も存在している。 夜店の難易度と景品のバランスが悪い 金太郎の村を解放すると夜店が出現し、4種類のミニゲームを遊ぶことができる。そして稼いだ得点に応じて景品が貰える仕組みとなっている。 一番簡単なのは「桃カルトクイズ」で、問題の種類も少なく100点を取るのも容易。更に景品のびっくり玉は序盤としてはそこそこ高値で売れる(*7)ため、一種のバランスブレイカーとなっている。 「ポコポコジャンケン」は100点を稼ぐのは難しいがその分景品も豪華で、ランダムでレアアイテムに化けるギヤマンの玉と難易度に見合った物が用意されている。 一方で「桃まとあて」はジャンケンと同等かそれ以上の難易度を誇るにもかかわらず、100点の景品が簡単に入手可能な仙人のかすみと明らかに苦労に見合っていない。 ちなみに「ポコポコジャンケン」の景品の中には仙人のかすみの上位種である仙人の桃も含まれている。あんまりにもあんまりである。 「桃ふくわらい」に至ってはドット単位で減点されるため、人力で100点を取るのはほぼ不可能(*8)。そして仮に100点を取れた場合は万能丹が貰えるのだが、このアイテムは同じ金太郎の村の薬屋で少々値が張るとはいえ普通に販売している。 これに関しては上3つのミニゲームに比べて極端に難易度が高いことから、攻略上の有用性を敢えて下げることで寄り道のやり込み要素に特化させたとも解釈できなくもない。 裏技やバグ技が非常に多い 小ネタ程度のものから中にはゲームバランスを著しく損なうものまで多種多様。ただしこれら裏技自体もやり込み要素の1つと捉える事もでき、一概に否定はできない。 代表的な例を挙げると…… 桃太郎の技数の最大値を863~865まで強化すると鹿角の術の技消費量が0になる「無限鹿角」 えんま様の1回目のコマンド入力後、ある手順を踏むと最大99回までコマンドの回数を増やせる「えんま様無限行動」 敵の体力を半減する半分の玉をボス戦で使用すると効きめがなかったと表示されるが実際には効いている「半分の玉バグ」 風神の谷でぬけだしの術を使用すると風神との戦闘をスキップできてしまう「ぬけだしバグ」 問題点 レスポンスが遅い。 特にフィールド画面が顕著である。メニュー画面を開く、仲間同士でアイテムを交換するなどの動作でイライラさせられやすい。 操作性が悪い。 町中では歩行速度の調整ができるが、フィールドやダンジョンでは遅い速度でしか歩けないなど、微妙に不親切。町での移動速度を速くしていると、ダンジョンでのノロノロした歩みに苛立つことだろう。 かと思えば、船に乗ったときの速度は勢い余って陸地に上陸してしまうほどの異常な速さ。狭い川に入った時などはとても操作しづらい。 この移動速度の調整には紆余曲折あったらしく、本編発売前に放送されたテレビCMではフィールドやダンジョンを町中と同じ速度で高速で移動していたりする。 エンカウント率が非常に高い(*9)。特に橋の上を通ると当時のプレイヤーから「橋を通る度に敵が出た。これは何かの陰謀か?」と言われたほどに高確率で敵と遭遇する(*10)。 その上雑魚敵も全体的に強く、ダンジョンでは常にギリギリの戦いを強いられる。 ただし、こちらにも敵全体に会心の一撃を繰り出し敵をほぼ一掃出来るようになった鹿角の術など、対抗手段は決して少なくはない。また一度倒した敵と遭遇しなくなる「オニよけの術」、敵との遭遇率を下げる「かくれみの」といったものもあり、こちらは逆に強力すぎるため一応のバランスはとれており、救済措置が全くないわけではない。 「しょうけら」という敵は此方の呪いを解いてくれる他、倒すと改心の証として味方1人のHPを回復してくれる。 「黄粉坊」という敵は逃げ出しやすいが、なんと 倒したキャラの体力と技を全回復 させてくれる。 wikiや攻略本によると、本作の実質の制作期間はわずか 4ヶ月 しかなかったとの事。バランスが厳しいのもこのためであり、どうあがいても難易度調整が間に合わなかったため、これらの敵を配置してしのいだらしい。 このゲームに限らず、この時期のハドソンのRPGは(バースデイなどのデベロッパー会社なども含んで)全体的にエンカウント率が高い傾向にあるので、社内の空気と言うか方針がそんな感じだったのかも知れない。(*11) 物価が非常に高い。 特に装備品の値段が際立っており、先の村へ到達するほど価格が容赦なく上がる。 また物語後半で建造した自分の城を飛行させたり、海に潜らせるために莫大な資金が必要になる。(どちらもクリアには必須) さらに城に大砲をつけようとするとそれらを上回る金額を請求される。大砲はクリアに必須ではないが…。 お供の活躍頻度の減少。 キジ、イヌ、サルのお供たちはそれぞれ固有の特技を持っており、前作『II』では無制限に使用できたのだが、今回は特技一回につき、きび団子一つを消費するようになった。 特に、その場で即エンカウントを引き起こす効果のあるイヌの「敵を呼ぶ」は『II』において経験値・資金稼ぎをする上で非常に重宝したのだが、今作では気軽には使えない。お金が増える後半でも、やはりアイテム欄を圧迫する 買い込む作業が面倒という点で変わりはない。 代わりに同じく敵を呼ぶ効果を持ち、何回使ってもなくならない「鬼の笛」というアイテムがあり、比較的簡単に入手できるのでそちらが使われる。 特技を覚えさせるにはエサを買って食べさせないといけないのだが、これが人間用の回復アイテムの何倍も高い。しかも3種類の数値がランダムで上がり(*12)、その数値が15とか30まで上がらないと使えない特技もある。早い段階で覚える特技はほんの大道芸程度だが、後々の特技は使い勝手も上がり、またそれぞれ上限の50まで上げると貴重なアイテムが最大3x3の9個まで手に入るので、一応救いはある。もっともそこまで育てるには、かなりの根気と金が要求される。 戦闘中に食べさせると毎ターン援護してくれると言う非常に助かるシステムが存在してはいるが、桃太郎の道具袋から使わないと食べさせられない。イヌサルキジを全員参加させようと思ったらそれだけで主人公の道具袋の3/8を圧迫するのである。 またイヌやサルの特殊攻撃はボスにほとんど通用せず、かといってザコ戦へ呼び出すには前述の通りコストが高い。そのためキジだけを参戦させることになりがち。 キジは味方の支援や回復術を使うので、ことボス戦だと治療の手間を減らしてくれて都合がいい。イヌやサルは弱点を突いたり怯ませたりが得意なのだが、バランス取りのためかボスに効きにくいので呼び出す意味がほとんどない。 役に立つ仲間と役に立たない仲間の落差が激しく、結果的にメンバーが固定されやすい。 桃太郎、金太郎、浦島、夜叉姫の4人で組むのがストーリー的に妥当であるが、癖はあるがオリジナルの強力な術を使えるあしゅらはこれらのメンバーを凌ぐほどの性能を持っており、旧作よりも弱体化が激しく微妙な性能の夜叉姫(*13)を抜いてあしゅらを加えるプレイヤーも多い。 サブキャラは癖の強いピーキー性能のキャラが多く、特にデメリットがきついキャラは縛りプレイでもない限り、試しに使ってみたらお払い箱になってしまいがち。 天の邪鬼や雪だるま(どちらもランダム要素が多すぎて安定しない)、貧乏神(*14)や福の神(どちらもステータスが極めて低い)、寝太郎(ステータスは最強で攻撃時は必ずクリティカルが出るが1/16の確率でしか行動しない)、といちや(メンバーの術をほぼ全部使える等、一見すると万能だが、事あるごとに大金をせしめる)、でか太郎(これらのキャラクターの様な目立ったデメリットこそ無いが、空中の敵相手でも命中率が下がらない事以外これといった長所が無く、ステータスも標準以下)などのデメリットのせいで使えない奴は本当に使えない。 一方、敵からの通常攻撃を無効化するはらだし(*15)、鍵盤のパターンさえ覚えてしまえば他のキャラでは使えない強力な効果を生み出すことができるましら(*16)、加入するのは終盤だが高ステータス+強力な術に加えてメガガルーラもびっくりの1ターンにデメリットなしで完全2回行動が可能なえんま様(*17)の3人は、プレイ方法を練ると明らかなバランスブレイカーになってしまうほど強力。えんま様に至っては特にプレイ方法を練らず普通に使っても、上記のメインキャラクター4人やあしゅらを凌ぐほど強い。 後半で風神と雷神が仲間になる。風神はパラメータが高い肉弾戦タイプで、ある程度回復術を使用可能。一方の雷神は体力と技以外のパラメータは低めだが、覚える術にかなり強力なものが揃っている。ただし雷神は、風神がPTにいる時でないと使えない術もあるため、この2人はセットで運用しないといけないので、PTの編成選択肢が狭くなりがち。とはいえ、彼らが仲間になってしばらくは海に出る機会が多く、彼らに有利な天気である雷雨や時化に恵まれやすいため、起用する価値は十分にある。奈落の洞窟でも活躍が見込めるうえ、HPが高いことから直属の上司であるえんまを幽閉している牢獄の破壊とも相性がいい。 銀次は専用装備の包丁をそろえるのにお金がかかる他、術は使えずパラメータも平凡。しかしながら「盗む」で敵のアイテムを奪えるという強みがある。 黒河童は覚える術が個性的で、特殊攻撃技も味方に有利になるものが殆ど。しかし装備が一切できない上、戦闘中に攻撃を受けると確率で『腕が抜ける』『頭の皿の水が零れる』などが発生し、その戦闘中は攻撃力が大きく低下するデメリットがある。 なお、弱いキャラが弱いとされる要素の一つに「ろくに装備ができない」というのがあるが、何故か「鎧は着れないが足袋は履ける」連中が多い(*18)。普通に考えれば逆なのでは? 大江山の暗号やあしゅらの謎かけなど、ストーリー上避けて通れない謎解きの中に異常に難しいものがある。 どちらも多少のヒントはもらえるが、はっきり言って(本作が最もターゲット層として想定しているであろう)小学生高学年あたりまでの子どもには難しすぎる。親や友達まで巻き込んで頭をひねった人も多いことだろう。 取り返しのつかない要素 終盤になるとシナリオの都合上、フィールドマップの行き先が制限されてしまい、行ける場所が愛と勇気の国、月の一部、鬼ヶ島しかなくなってしまう。こなしていないイベント、取得していないアイテムなどを残したままイベントに突入してしまう泣きを見る羽目になる。 この点を予期させる展開が存在しないため、初見プレイ時に泣きを見たプレイヤーは多い。 また、ラスボス目前まで話を進めると、今度は月にも行けなくなってしまう。 不要になった一部の装備品は捨てられない。 本作では装備しているアイテムは所持アイテムに含まれないシステムとなっている。 しかし、えんま様の装備できる武器や防具は、なぜか売る事も捨てる事も出来ない。因みに全てつづらからの入手であり店では扱っていない。 といちやに預けられるアイテムの上限もそこまで多くない本作では、最強装備である紅蓮の独鈷と黄泉の衣以外は、最終的に邪魔になってしまう。普通に進めた場合、合わせて6個ほどアイテム欄を圧迫することになるだろう。 なお、裏ワザ・バグの範疇ではあるが装備品を買う時に「下取り」を実行した場合、通常売れない装備品でも下取りできる。武器であれば全員共通で装備できる武器が店売りされているので、「下取り」で処分することが可能。 一部レアアイテムの入手場所のヒントがゲーム中に存在しない。 「四神の刀」という、ゲーム中のある場所に持っていくことで特典が得られる四振りの刀があるのだが、そのうち「朱雀の刀」以外の三本は地面に埋まっている上、その場所についてはゲーム中一切のヒントがない。攻略本などの情報なしでは、イヌの特技「ここほれ」を使って全てのマップをしらみつぶしに探索していくしかないのである。 もちろんなくてもゲーム進行には全く影響がない。また4本のうち最強の「青龍の刀」があるダンジョンはクリア後に再訪する方法が少々わかり難く、「取り逃すと取り返しがつかない装備」と勘違いするプレイヤーも多かった(補足すると、なんとなく怪しい置き方をされたつづらの近くにある)。 これらの刀は戦闘中にアイテムとして使う事で様々な術が発動するのだが、これに関しても説明が無い。これの他に使って効果が発動する武器は他に朝凪のモリと夕凪のモリと言う一対の銛が存在しているのだが、やっぱり何の説明も無い。 四神の刀は汎用の店売り刀と同じく多くの仲間が装備出来るため、専用の最強武器を持たない仲間は青龍の刀が最強武器になる。このゲームには「ものふやしの玉」と言うどんなレアアイテムだろうが複製出来る便利な道具があり、人数分用意する事もちゃんと可能なのだが、そもそもオリジナルを手に入れられなければそれも適わない。 『桃太郎伝説ターボ』にも「うごのけん」「ふしまちのけん」といった入手場所ノーヒントのレアアイテムはあったが、こちらは決して高性能とはいい難くギャンブル性の高い武器であるため、見つけなくても何の問題もなかった。 仲間ごとに設定されている「体重」の平均が48キロでないと通れないポイントがある。だが、ここがとんだ初見殺しになっている。 + どう初見殺しかというと…… 上記の定番メンバーで挑むとすんなり通れるのだが、そこを通る際にイベントで風神によって仲間(その場のメンバーのみ)がバラバラな方向に飛ばされてしまう。 特に回復担当として重要な浦島の再加入が非常に遅く、回復を浦島に任せっきりだった場合、辛くなる。 実は、この期間中にすでに仲間に入っているあしゅらが有能(*19)で、『ランダム要素があり不安定だが、期待値的には回復量が多い』「まほろばの術」を使える上に攻撃役としても優秀。なので浦島はいなくてもそこまで問題が無いのだが、あしゅらは癖の強い術が多く、防御力が低い欠点がある(*20)ため初見では強さに気づきにくい。 たくさん居る仲間キャラを色々使ってもらうための措置だと思われるが、上記の通り使えるキャラと使えないキャラの差が激しく、加入時は全員一律で一段(レベル1)のため、特定メンバーを集中的に育てていると文字通り1から育て直すことになってしまう。 また、この場合後述のじゃこつばばあ戦の難易度が高くなる可能性が出てくる。直前に夜叉姫が人質に取られるため必然的に控えメンバーをパーティに加えて戦力を補強しなければならなくなるのだが、初めて新しい村に入った時点で、夜叉姫以外にも城に残った控えメンバーが2名ランダムに人質に取られてしまう。 この時点で戦力になるメンバーは余程偏った使い方をしていない限り金太郎、浦島(*21)、あしゅら、ましら、銀次しかおらず、この5人のうちの誰かが人質に取られてしまったら弱いメンバーを1名パーティに入れて挑まざるを得なくなる。 戦闘敗北時の仕様が従来シリーズから変更された。 旧作では「ドラゴンクエスト」シリーズ同様、「全滅時はイベント進行状況、アイテム、経験値はそのまま据え置きで続行」であったが、本作では敗北すると最後にセーブした地点からやり直しとなり、それまで進めたゲーム内容や育てたステータスがリセットされてしまう。要は「敗北」=「ゲームオーバー」である。 当時のRPGとしては決して珍しくない仕様ではあるが、本作は主人公が倒された時点で仲間が残っていても敗北になってしまう(*22)。 桃太郎は仲間の中でも高ステータスであり、その上いい装備品を付けられるのだが、敵の攻撃も熾烈なため敗北の機会は比較的多い(*23)。油断は大敵、長時間セーブをしないまま進めて桃太郎をうっかり死なせてしまいゲームオーバー…という事態も起き得るため、本作をストレス低く攻略したいのなら、こまめなセーブが推奨される。 この点は『ファイナルファンタジー』シリーズのように、イベント途中で仲間が増減する機会が多かった(特に本作ではボス戦の最中に加わる仲間もいる)ことやストーリー性重視の内容に変化したことも関係あるのかもしれない。 「人気度」システムのバランスがやや不安定。 人気度が減少する条件に、仲間の戦闘不能や戦闘からの逃走といったものが含まれている。逆に上昇する条件は少ない上に、厳しかったり面倒なものが多い。 そのため、基本戦闘では仲間を殺さず、逃げずに戦うことが求められる。しかし初見でそれを成し遂げるのは少々難しいので、どうしても人気度は下がりがちになる。 一方で、面倒ささえ乗り切ればごくごく序盤で最高値の100にすることもできる。施設の利用料が安くなることもさることながら、ご褒美に貰えるアイテムが高額で売れたりするので、逆にバランスブレイカーになってしまう。 そのため、序盤の人気度をあげられるポイントは救済措置という見方が強い。 目玉システムのタクティカル・ウェザー・バトルが空気になりがち。 戦闘機会が増えるであろうダンジョンの大半は天候の影響を受けない洞窟や塔などの屋内であり、更にストーリーが進むに連れて月面や海底など天候のないフィールドが増えていくため、折角の斬新なシステムも終盤に差し掛かる頃にはプレイヤーから忘れられがちである。 また、肝心の恩恵も全体的に受け辛い。 特に『日照り』は苦手としている仲間が多いためにデメリットのほうが大きい。炎系の術の威力が上がるが、波・雷・雪系の術の威力が10分の1にまで下がる。金太郎・夜叉姫・でか太郎・寝太郎・風神などの日照りに極端に弱いキャラ(*24)は戦闘への影響が特に大きい。また、浦島は上述通り4つの天気(雨・雷雨・日照り・雪)に弱い上に、それらは遭遇しやすい天気なのも辛いところ。 有利になる一例として、設定どおり夜叉姫は雪が得意な天気なので、消費技数が減った流れ星の術で経験値稼ぎができるなどの恩恵はある。 ただし、夜叉姫が仲間に加わる時期は雪のフィールドの終盤であり、次に雪が降る地を訪れる時には夜叉姫がイベントでパーティを離脱しているのでアイテム等で天候を変更しない限りこの恩恵を受けられる機会は非常に少ない。このことも夜叉姫が不遇と言われる理由の1つとなっている。 最も恩恵を受けられるのは『日本晴れ』。得意とする仲間が多い他、桃太郎の鹿角の術が消費技数が減った状態で打てるのがその理由である。 一部の敵の能力がかなり厄介で、苦戦する場合も多い。 雑魚敵では、序盤で味方が育ち切っていない時期に徒党を組み、痛恨の一撃を頻発してくる『馬鬼』、一番弱っているキャラに痛恨の一撃を放ってくるという『じゅむへんく』、きゅうりを持っていないとアイテムや所持金を全て盗んで逃げる『黒河童』(*25)、攻撃力、防御力がかなり高い上に後述の夜叉姫戦前にはイベントで4体で現れる『黒鬼』(*26)、その他にも通常攻撃がほとんど効かない雑魚敵など。 ボスでは、竜巻を放つことにより毎ターン固定ダメージを与えてくる+強力な術を連発し、メンバーを半壊させるボス『風神 雷神』、イベントで雑魚連続戦闘からの連戦な上に戦闘中にHPが減ると自身のパラメータを強化し全体攻撃の「流れ星の術」を放ってくる『夜叉姫』、味方が一人になるまで問答無用で動きを封じてくるボス『じゃこつばばあ』、ラスボス級の体力に加え、強力な全体攻撃を容赦なく撃ってくる『三千世界』など。 特に『風神 雷神』は3回戦うのだが、最後の3回戦目はゲーム中でも最大の山場と言われるほど難易度が高い。また、2回目も3回目と比べれば幾分か楽だが、村の中で戦うため再挑戦が容易な3回目と比べて「オニよけの術」を使わなければ1時間近くもかかるダンジョンを抜けた先で戦うため負けた場合のプレイヤーのダメージは大きい。 その一方で弱いボスもいることはいるが、シナリオで一番盛り上がる部分のボスに限って弱い。 + 弱いボスの例 まず、『酒呑童子』。序盤の山場である大江山のボスとして登場。有能な四天王を配下に持ち、戦闘前に桃太郎たちを全回復してくれたりと、大物として描かれているのだが……正直、酒を呷って連続攻撃してくる以外に特殊な攻撃や能力はなく、その連続攻撃も1ターン目に金太郎の「はり手」や浦島の「まもりの術」を使えばダメージを最小限に抑えられるため別段恐れる必要もない。更にHPも低いため、塵角を3連発すれば余程低レベルでもない限り3~4ターンで決着がつく。 ちなみに酒呑童子以降のボスはHPが大幅に跳ね上がり塵角の3連発で瞬殺する戦法は通用しなくなる。 むしろ、彼が桃太郎らの力量を測るために放った四天王達とは一対一で戦う上それぞれが厄介な能力を持っており、そっちの方が苦戦する始末。特に『とらくま童子(*27)』『ほしくま童子(*28)』は桃太郎以外で勝つのは非常に難しい。ほしくま童子に至っては桃太郎でさえ勝率は5分といった所である。また、金太郎は物理攻撃を2倍にして返してくる『かね童子』にも勝つ事が出来ず、術を吸収する特性を持つ『くま童子』以外には勝つ事が出来ない。元ネタだとこいつらと戦ったのは成人後の金太郎(正確には坂田金時)達なのに… もっと酷いのが桃太郎の宿敵である『ダイダ王子』。彼はオープニングのイベント戦闘で、桃太郎の術を吸い取り、装備品を弾き飛ばし、完膚なきまでに叩きのめす。その後も、桃太郎の前に現れては幾度も刃を交えてこちらの実力を測ってくるうえ、鬼達との会話の中でもダイダ王子の強さを物語るセリフが多く、その強大さをプレイヤーに印象付ける。 しかし、満を持しての最終決戦において彼は一切特殊行動を行わず、完全に単体物理攻撃一辺倒(しかも、その攻撃力も直前のダンジョンに出てくる雑魚敵以下)。こっちは4人パーティであるため、まず負けることはない。 その為極端な話、桃太郎とはらだしの2人パーティで挑みはらだしが毎ターン桃太郎をかばい続けるとノーダメージで完封できてしまう。 強大な力を持つライバルという立ち位置にも拘らずここまで散々引っ張っておきながらのこの弱さだけに、肩透かし感が非常に否めない。 さらに、ダイダ王子との戦いに勝つと、改心して仲間に加わる…となった瞬間に、 背後に控えていたカルラから不意打ちされて殺害される(*29)という展開になるため、とことん救いがない。 セーブデータが消えやすい その際の演出は、ドラクエシリーズと同じくおどろおどろしい呪いのジングルとともにメッセージが流れるという不気味なもの。さらに意地の悪いことに、データ選択画面に入ってデータを選ぶまで消えているかどうかがわからず、選んだ瞬間に呪いのジングルが流れ、目前でデータを抹消されるという非常にいやらしい仕様になっている。 「大変です!旅の話が消えています!」「勇気を持ってやり直して下さい!」と、太い赤文字でデカデカとメッセージが出てくるため心臓に悪い。 総評 エンカウント率を筆頭にゲームバランスには多少の難があるものの、おとぎ話を題材にした和風RPGとしての完成度は高い。 特にシナリオ面は評価が高く、ボリュームもたっぷり。特にカルラは忘れられない存在だろう。 本作を「桃太郎伝説」シリーズの最高傑作として挙げるファンも多く、長く愛されている作品で、今でも移植やリメイクを望む声は多い。 余談 作者のさくまあきら氏が発売前の雑誌インタビューで述べたところによれば、「作品に文学性を持ち込みたい」という意図があったといい、本作のシナリオには現実の人間社会が投影されているという。 まずはこの意図が先にあって、とっつきやすさを重視して桃太郎シリーズの世界観とキャラクターを流用したという。 上述の通り開発期間に追われていたこともあり、さくま氏は「いずれ完全版を作りたい」ともコメントしていたが、その後の桃太郎シリーズは電鉄シリーズにほぼ一本化され、伝説シリーズは完全版開発を迎えることなくそのまま停滞してしまった(一応、本作後にPSで一作出てはいるが「新」とは別物である)。 2012年3月1日付でハドソンがコナミデジタルエンタテインメントに吸収合併され法人格を失い、さらにはそのコナミスタッフとの軋轢があったらしく、2012年9月1日には氏のツイッターにて「これが最後の桃鉄」「もう桃太郎シリーズは作らない」という宣言が出されたこともあった。 その後、電鉄シリーズは紆余曲折を経て任天堂より発売された『2017 立ち上がれ日本!』をもって復活したものの、過去作に関しては「ハドソン側が伝説シリーズのプログラムを紛失し、電鉄シリーズも11以前のプログラムを廃棄してしまったため、旧作のリメイクや移植は不可能だ」と氏自身がホームページで言及している。 偶然の一致であるが、本作の前後にハドソンが出した『天外魔境II』、『大貝獣物語』もまた、トラウマ級の虐殺展開があることで知られている。 なお『天外魔境II』において監督・脚本をした桝田省治は、桃太郎伝説シリーズの開発にも大きく関わっているため、一方はあながち無関係でもないとも考えられる。 回復系の術を使用すると使用者の素早さに補正が入り、ターンの最初に回復できる可能性が高くなる仕様がある。 これは後のハドソンの作品である『天外魔境ZERO』や『大貝獣物語』に受け継がれた。 貧乏神のモデルが当時『ジャンプ放送局』のレイアウトを務めていたデザイナーの榎本一夫氏であることは当時から知られていたが、貧乏神の名前を氏にちなんだ「えのっぴ」「えのもと」「えのん」のいずれかにすると 「ガワンバッチョ!酷い名前なのねん!ひーん!ひーん!」 と泣き出し、パーティとして連れ歩いている際に一歩進むごとにお金を落としてしまう、という迷惑な裏技が仕込まれていた。 しかし『ジャンプ放送局』の読者を中心に前述の3つの名前を付けるプレイヤーが多かったために、結局裏技としての意外性は殆どなかったという。 読者からも『榎本社長、残念ですがついに倒産です!』などといったネタ葉書が届いたり、『えのんを探せ!』というコーナーが大人気だったり、氏をモチーフにしたネタには必ずと言っていいほどお金が絡んでたりと、すっかり『貧乏だが愛されるネタキャラ』としての地位を確立していた。 そんな榎本一夫氏だが、2022年10月に引退を宣言するまで自身の設立したデザイン会社『有限会社バナナグローブスタジオ』の代表取締役として活躍していた。HPに載っている自画像も当時のタッチのまま。 当たり前だが榎本氏本人は全く貧乏ではなく、むしろ食道楽者(グルメ)として知られている。ただし、所謂B級グルメも大好きらしく、そっちの話題になると盛り上がるらしい。 当時のファンの語り草になっているダンジョンとして『怨みの洞窟』が挙げられる。 これは攻略する前に自分が1番~3番目に嫌っている人の名前を入力すると2・3番目に嫌っている人の名前の敵が雑魚として、1番嫌っている人の名前の敵がボスとして、それぞれ出現するという身も蓋もない趣向のもので(*30)、当時の『ジャンプ放送局』にも「怨みの洞窟を愛用している」旨の内容のお便りが多数寄せられたという。 微笑みの村で開催されている『天下一ダジャレ大会』の出場者の名前には当時の『ジャンプ放送局』の常連投稿者の名前が採用されている。