約 1,036 件
https://w.atwiki.jp/imperatorgirenv/pages/326.html
番号 略名 正式名 030 ジャミトフ ジャミトフ・ハイマン 階級 NT値 戦艦 航空 車両 MS MA 大佐 - ○ ○ ○ × × ランク 指揮 魅力 射撃 格闘 耐久 反応 S 15 15 10 6 11 8 A 14 14 9 5 10 7 B 13 13 8 4 9 6 C 12 12 7 3 8 5 D 11 11 6 2 7 4 E 参加陣営 参加時期 離脱 死亡 地球連邦 最初から 大佐D 第2部 ティターンズ発足時ジャミトフ・ハイマン(ティターンズ)へ変化 味方会話キャラ バスク・オム 敵戦闘時会話キャラ 友好キャラ バスク・オム ジャマイカン 専用機 戦闘前特殊セリフ機体 出典 ゲームオリジナル(*1) 寸評 後のティターンズの総大将。指揮や魅力は高めだが、一線級の艦長キャラと比べると射撃が控えめ。初期状態で搭乗しているマゼランは序盤における連邦宇宙軍の火力役でもあるため、シナプスやヘンケン辺りのサラミスでスタートする射撃の高い有能艦長に譲った方が良い。のちにティターンズと組まない場合、グラフィック変化後に第2部中盤で離脱してしまう。組まない場合には積極的に使う必要もないため、辺境や防衛に回すのもいいだろう。もっとも、中堅未満の無能艦長よりは全然使える人材であるため、余った艦を割り当てて艦隊戦力の一翼を担わせても良いだろう。第2部ではティターンズ版に変わるが、その際に階級が大将になる。地球連邦編では3人目の大将であり、ゴップやワイアットなどの無能将官の指揮を上書きできるため、彼らのお目付け役とするのも良いだろう。 うんちく等 連邦時代のジャミトフ。この時代だとジーン・コリニーの下についていたのだが、今作ではこちらからは友好関係にない(向こうは友好)。外伝作品ではたまに出てくる。ティターンズ版で説明しているようにかなり複雑な人なのだが、ただの策謀家か、地球至上主義者にされてしまうことが多い。実は生まれはフランスのセダン(ゼダン)なのだが、とてもフランス人的なエスプリがある人物ではない。唯一、後年ア・バオア・クーに自身の故郷の名前をくっつけているあたりが郷土愛にあふれるフランス人らしいといえるのだろうか……?なお、ムービーがあった系譜までではティターンズ結成時に「地球に巣くう薄汚いスペースノイドどもを追い出し…」というような演説をするが、これは戦略戦術大図鑑に出てくる同姓のハイマン将軍(一年戦争のアフリカ戦線指揮官)の発言「地球に巣くう、ジオンの猿どもは早々に追い出さねばな」を借用したものらしい。両者は同一人物かは不明(公式百科)とされているため、スタッフのお遊びに近いか。 このページ内で加筆、訂正があり、編集方法が判らない方は、下のコメントからどうぞ。編集が出来る方は気付き次第、編集お願いします。ページ内容編集に直接関係の無い内容は雑談用掲示板でお願いします。 射撃が低め。マゼランは合わないから降ろして別の奴を乗せよう。 -- 名無しさん (2012-09-30 18 08 13) 顔面の割には弱い。指揮がメインの人。バスクとセットで組ませがちだがバスクと比べると耐久とかは弱い、特に序盤は -- 名無しさん (2013-11-22 22 33 37) 連邦編で裏切るからと使わなかったがどうせBまで上がるし艦長キャラなのであまり経験が貯まらないことを逆手に取り上げすぎない程度に使ってやると腐っても総大将という活躍をしてくれた。他のティターンズ勢もエース故どんどんランクが上がるヤザンを除いたら使った方がいいかもしれない。明智光秀をどう使うかを考えている時と同じことをやってる気がする。裏切り者をどう使うかが将の見せ所よ -- 名無しさん (2023-06-01 11 26 35) 独立戦争記のソロモン攻略戦ムービーで、将軍たちの中に一人だけ大佐のジャミトフがいたのはどういうわけなのだろうか -- 名無しさん (2023-06-01 23 58 26) ランクが高ければ倒した時の経験値も増えるから使った方が良いかと。どうせ連邦2部の敵エゥティタなんて高い能力を活かせる機体殆どないし -- 名無しさん (2023-06-01 23 59 26) ティタとかユニット全体的に不遇な勢力だしかなり余裕が出来てから発生するから多少パイロットが強くてもたいした驚異にならない。ティタ組を後に敵対するからって初期から対アクシズまで使わずに冷遇して苦戦するなんて本末転倒。本編の連邦軍を笑えないよ -- 名無しさん (2023-06-02 00 15 49) エゥーゴルート予定の時の連邦二部加入のティターンズ兵士は使わないと言うか編成テキトーだなぁ。消耗前提の量産機に乗せたり -- 名無しさん (2023-06-03 20 37 46) 連邦編でのティターンズが弱いのはZ前半までの旧式ばかり使ってるから。パイロットや指揮官がSだろうとZZ期のアクシズを倒した連邦の敵じゃない。 -- 名無しさん (2023-06-03 22 35 41) 敵対峙ティターンズは調整不足だよなあ せめてバーザムやゼクアインを主力にすれば良かったのに -- 名無しさん (2023-06-03 23 36 55) 敵ティタは技術19あるから2部開始直後ならそれなりに強いかもって気がする。本当に酷いのは敵エゥーゴ(14・15・14) -- 名無しさん (2023-06-04 00 27 52) どちらの勢力でも連邦で敵に回すとジムⅢが大量配備&開発済みでよかった気がする。旧式機は生産リストから消去して最新機をガンガン再生産するようにAIを変えてくれれば連邦系勢力でも手ごわくなりそう。 -- 名無しさん (2023-06-04 10 21 51) 佐官なのに将官クラスの会議の上座にいたり大将のレビルにため口するガンダムに多いキャラの一人、1年戦争時からティターンズの二階級上はあったらしい -- 名無しさん (2023-12-18 17 04 32) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/pikatyuunozinsei/pages/44.html
891 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/25(月) 00 59 24 ID ??? ディグダの穴を抜け、ハナダの北にあるというポケモンコレクターの庭を目指す。 途中、ニビシティでは人間の家の玄関や街の木々にキラキラ光る飾り付けがされていた。 そうか…確か今日はクリスマスとかいう日だったな。 「うわぁ、綺麗ね~!」「すごいですね!」「きらきら~。」ミミロップ達がはしゃぐ。 「…騒ぐな、人間共に見つかるぞ。」「あ、そうだった。ごめ~ん。」 「それにしても人が多いですね。」 こんな日のせいか夜だというのに街には人間が出歩いている。 「いつもより街が明るいわね。」 闇に紛れようにもあの光る装飾のせいで難しい。 「どうするの~?」 「むう…。」どうしたものか……。 「ねぇ、ピカチュウ。」 策を考え黙っているとミミロップが話し掛けてきた。 「何かいい案でも浮かんだか?」 「ええと、その…今日は街を通るのは難しそうだし、それに折角のクリスマスだし…」 ミミロップはもじもじしている。 「…何だ。」 「ふ、ふたり…い、いや、みんなでパーティーでもどうかなーって。」 ………。 「却ッ…」 「あ、それいいですねー。」「たのしそう~!」 ………。 「ねぇ、みんなもああ言ってるし…どうかな?」 やれやれ…。 「わかったわかった。好きにしろ。」「やった~!」 「じゃあ、仮拠点に戻ってやりましょうか。」「ムウマージ、あのキラキラしたのちょっととってくる~!」 …まあ、たまにはいいか。 メリークリスマス 893 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/25(月) 20 09 40 ID YgOqpR+O 「クリスマスケーキです~」 「もぐもぐ」「まいう~」 「ピカチュウ、はい、あ~ん」 「馬鹿…自分で食える///」 「またまたー」 「あ、そういえばみんな、これクリスマスプレゼント」 ミミロップは皆にプレゼントを用意していたようだ。 「はい、ロゼリアにはこれ」 「…これは?」 「それはとても珍しい光の石。お守りに持っておいて」「ありがとうございますー」 「…で、ピカチュウには…」 「…チュッ」 「ば、ばかばかばかばかばか…何をするっ!?」 「私からの最高のクリスマスプレゼント」 「お~!」 「ひゅうひゅう~」「まさにクリスマスの夜ですね~」 「ま、まったく…/// お前ら、盛り上がるのはいいが程々にしろよ。 明日は朝一番に出発するからな」 クリスマスの夜は更けていった 897 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/25(月) 21 42 01 ID ??? くう~、さっきは油断した!まったく…なぜ突然あ、ああああんな…を…。 「えへへ~…。」 そういえばミミロップの顔が赤い。ん…?少し酒の匂いが…。 「あはは~、お酒って美味しいれすね~。」 「ほわわわ~ん。」 ロゼリアとムウマージがシャンパンの瓶を持ってくるくる回っている。 あ れ か ! まったく…ミミロップめ、酔いに任せて…あ、あんなことを…。 ええい、さっさと忘れるとしよう! 「ロゼリア!それの中身を俺にもよこせ!」 「ピカチュウさんも飲みますかぁ~?あはは!」 …………………… 「ふぅ…。」 飲んでも忘れられない…。 ミミロップは酔い潰れたのか寝ている。ムウマージはロゼリアとまだ騒いでいるようだ。 「あれ~?ピカチュウさん顔真っ赤ですよぉ~?ど~したんでぇすか?あはははは!」 酔っ払ったロゼリアがからんでくる。 「…ちっ、何でもない、少し飲み過ぎただけだ。少し夜風にあたってくる。」 あ~!俺は今どうかしている!頭を覚まさなければ! 898 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/25(月) 21 43 28 ID ??? ディグダの穴の外に出る。ひんやりした風が頬を撫でた。 「ふ…。」 酔いは大分覚めたな。 …焼けたトキワの森を見る。 ……………。 物思いにふけっていると後ろから肩をポン、と叩かれた。 「…大丈夫?」 後ろを振り替えるとミミロップが立っていた。 「お前か…。」 「隣、いい?」 「す、好きにしろ。」 …。 「さ、さささ先程の無礼はす、すぐに忘れてやる。お前も自分のやったことを忘れるがいい!」 「…?何の事?」 どうやら覚えていないようだ。ほっ…。 「な、ならばいい…。」 899 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/25(月) 21 45 06 ID ??? 「残念だったね、森…。」 ………。 「別に…一番長くいた所、と言うだけだ。未練は無い。」 「本当にそう思ってる?」 「…ああ。」 「…ふぅん。」 …………。 「…明日は早い。先に戻れ。俺はもう少し風にあたる。」 「…無理、しないでね。」 「大丈夫だといっているだろう。」 「うん…。」 ミミロップはディグダの穴に戻っていった。 …………………。 914 :名無しさん、君に決めた!:2006/12/30(土) 12 49 38 ID ??? お祭り騒ぎはおさまり、皆は酔って寝ている。 穴に戻ってきたピカチュウは手に石を持っていた。 キラリと光るその石をミミロップの側に置いた。 「・・・。」 ピカチュウは自然と顔を赤らめていった。 ピカチュウは横になった。 そしてこれからの事、シンオウのドンカラス達のこと。そして・・。 いろいろな事を考え、眠りについた。 そして朝。 922 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/02(火) 00 44 44 ID ??? ゲンガーの人生<小ネタ・進化>第1章(最終章)「因縁の対決 VSザングース【序章】」 さて、前回は森の洋館にビリリダマを放り込もうとして失敗したゲンガーだが、 その後修行を繰り返してとうとう正月となった。しかし正月といっても暇である。 皆さんの世界では塾やら部活やらもこの日では休みだし、勿論普通の奴は 修行とかなどする気が起きない。彼もその一人である。さて、今回はそのゲンガー様のお話。 平成19年1月1日 某時刻 ロストタワー 「ケッケケ、今日は正月だぜ。今度はどうやって突撃するか…いい案あるか?」 「正面突撃はどうでしょうか?オヤビン」「お前は10万ボルトを食らいたいのか?ゲンガーさまどうします?」 んー…と、ゲンガーが考えて2分後。ゲンガーが口を開きだした。 「あいつらの事だからきっとパーティでもしてるぜ…その隙を狙って忍び込みビリリダマを!」 「流石、ゲンガーさま!」 「ビリリダマといえばあの時言いたい事があったんですが…。」「…なんだ?」 「あの時、皆でビリリダマを仕掛けにいきましたがあの時は確か12月24日でクリスマスの1日前ですよ。」 「…ウゲゲッ!しまった…どーしてそれを教えてくれなかったんだ!」 「ケケッケ、子供みたいな間違え…オヤブンは馬鹿にも程があるぜ!えっ!う゛っ。すみませんでした。」 どうやらゲンガーにつねられたようだ。可愛そうなゴーストである。 「あまりにも張り切ってたもんで…言いにくかったんです。お前もそうだろ!」 「…知らなかった。オヤビンがそんな事を間違えるなんて…」「…」 場は沈黙した。――さてゲンガーの作戦を簡単におさらいをしよう。 森の洋館に突撃し隙を狙ってビリリダマを入れてドカンという子供でも思いつく作戦である。 こんな役に使われるビリリダマは可愛そうである。彼はモンスターボールに間違えられるらしいが 大きさまるっきり違う。本当に可愛そうである。さて今回の話の本題は、 可愛そうな奴と可愛そうな奴が激突する話である。 924 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/02(火) 01 21 00 ID ??? 平成19年1月1日 某時刻 森の洋館 「ゴースト共…、準備はいいかー?」「「「アイアイサー!」」」 「じゃあいくぜー!」「……」 ドアには鍵がかかっていたようだ。 「ケケケ…そうきたか。俺には(ゴースト)考えがあるぜ!俺に任せな、オヤブン!」 「あっけろ!あっけろ!さっさとあっけあっけろー!」「なるほど…騒音攻撃か。お前も中々やるぜ!お前等もやるぞ!」 ゲンガー達が騒音攻撃をしようと思った時、ヤツが出てきた。そう…ヤツである! 「さっきから五月蝿い。何様でござるか?…あの時の…!」 「テメーは……誰だったけ。」「そんな…ひどいでござる…。」 ザングースはゲンガーからも忘れられたようだ。可愛そうである。 「待て…今思い出すぜ…。」「まってください、オヤビン!」「ん…?」 「この前、オヤビン【あん?思い出せねえなら大した事じゃねえだろ。そのまま忘れとけ!】 とかいってたじゃないですか。多分大した奴じゃないっすよ!」 ゴーストにまで言われたようだ。そんなこんなで10分後、ゲンガーは思い出したようだ。 というわけでタイマン勝負の因縁の対決をする事になった。 「ケケッケ、素早さはおれさまの方が早い。また眠らせてやるぜ!」 ゲンガーが催眠術をかけようとしたその時、目の前にザングースが爪を向けた。 「残念だがそうはいかないでござる。」「そ…そのスカーフは!」 そう、こだわりスカーフである。あの時ジバコイルが落としていったのか。 「シャドークロー!」「ウゲゲッ!」 終わったか…そう思ったザングースだが簡単にやられる程ゲンガーは弱くは無い! 「ケッケケ!残念だったな…。」 「な…なぜ立ち上がれるでござるか?!」 なぜゲンガーは立ち上がれたか?後半へ続く。 925 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/02(火) 04 50 20 ID ??? 時は少し遡り十二月三十一日、シンオウのハクタイの館にて…。 洋館の食堂にドンカラス他、ハクタイの館に住むポケモン達が集まっていた。 ポケモン達はなにやら忙しそうに、料理を運んだり食堂を飾り付けたりしている。 ドンカラスは食堂のテーブルの上に乗り、その指揮をとっているようだ。 「もう少しで今年も終わりですぜ!さっさと準備しやがれってんだ!!」 「イエッサー!」 「いい匂いがするお~…。」 「そこ!つまみ食いすんじゃねえ!」 こっそり料理をつまみ食いしようとしていたビッパの額をドンカラスが嘴でガツンと突く。 「お゙っ!い、痛いお!少しくらいいいと思うお…ケチだお…。」 「少しくらい我慢しなせぇ。あ~!おい、ゴルバット!その飾りはもう少し上だ!上!」 「わ、わかったキィ。(…まったく、注文が多いオッサンだっキィ。)」 ケチをつけられたゴルバットはぶつぶつ文句を呟きながら飾りなおす。 「…おい、聞こえてやすぜ。あっしはまだ若いってんだ!」 ドンカラスは羽を拳のように器用に握り、ゴルバットの頭をゴツンと叩いた。 「あ痛っ!じ、地獄耳だっキィ…。」 何だかんだで準備は進む。 926 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/02(火) 04 51 21 ID ??? そんなこんなで準備をしていると、洋館の入り口の扉をドガッと乱暴に蹴り開ける音がした。 「ああ?なんでえ!?」 ドンカラスが様子を見に行くと、そこにはマニューラと三人のニューラの姿があった。 「ヒャハハハハ!勝手に来てやったぞ糞カラス!」 「オレたちも誘えっつーの!」「あたしらに黙ってこっそりやろうとしても無駄よ。」「カーラースくーんあーそーぼ!ギャハハ!」 「ちっ、またてめえらか糞ネコ供!クリスマスの時といい、どっから祭りの匂いを嗅ぎつけて来やがるんでえ!?」 悪態をつくドンカラスを無視しマニューラ達は勝手に上がり込みはじめる。 「それじゃ、お邪魔するぜ!ヒャハ!」 「上がらせてもらうっつーの!」「それにしても相変わらずボロい館ね…。」「やーい!お前んち、おっばーけやーしきー!ギャハハ!」 「おいっ!誰も上がっていいとは……ちっ、準備の手伝いくらいはしやがれよ糞ネコぉ!」 「へーへー。」 944 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/05(金) 03 47 20 ID ??? ところかわりカントーのディグダの穴。 ピカチュウ達は目的地のポケモンコレクターの家に行く旅の支度をしていた。 「折角、もうすぐ新年だってのに私達は旅に出るのね~…。」 ミミロップは袋に道具を詰めながらぶつくさ文句を言っている。 「うるさい。ついこの間、クリスマスのパーティーなどと言い、騒いだばかりだろう。」「ちぇっ。」 「こんばんは。みなさんお揃いかしら?」 そんな所にミロカロスが突然たずねて来た。 「!ミロカロス…。」「な、何しに来たのよ~?」 「ふふ、シンオウの洋館でドンカラス達が楽しそうな年越しパーティーをやろうとしていましたの。そこにあなた達もお連れしようと思いまして。」 「え~?ドンたちずるい~。」「でもどうやって行く気ですか?ここからでは遠いし絶対間に合いませんよ~?」 「それは、ひ・み・つですわ。」「何よ~!それ!」「(空間の力を使うつもりか…?)」 ピカチュウはイライラしながら言う。 「…おい、勝手に話を進めるんじゃない。まだ行くとは言っていないだろう。ただでさえ予定が狂わされているんだ、これ以上余計な時間を…」 「まあまあ、いいではありませんか。折角のイベント、楽しまなきゃ損ですわよ? さて、移動の方法を見られるわけにはいきません。少しの間、あなた達には眠っていてもらいますわね。」 ミロカロスの目が怪しく光る。 「おい、待っ…。」 …ピカチュウ達は眠ってしまった。 945 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/05(金) 03 48 51 ID ??? もどり、ハクタイの館。 パーティーの準備はもう済んでいるようだ。 「さて、後は年が明けるのを待つだけでえ。クァカカ!」 「「「かんぱ~い!」」」 ポケモン達が楽しそうに騒ぐ中、エンペルトが不安そうに、上座にどかっと座り酒を上機嫌そうに飲んでいるドンカラスに近づいていき小声で訪ねた。 「(うわ、酒臭いポチャ…。)ドン、大丈夫ポ…ごほん…か?ボス達がカントーで頑張っているのにこんなことしてて…。」 ドンカラスは上機嫌なまま答える。 「大丈夫だってんだ。こんなめでてぇ日だ、ボス達も楽しくパーティーをやってることでしょうぜ!」 「(あのせっかちで真面目なボスがそんなことやるとは思えないポチャ…。)もうどうなっても知らないポチ…よ。ボクは止めたからな。」 「大丈夫、大丈~夫!ボスも今ごろは酒によって、その勢いでミミロップの姐さんとあんなことやこんなことを…クァカカ…」 バチチィッ!バリバリィッ!突然、ドンカラスに電撃が放たれる! 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!…だ、誰でぇ!」 「…き・さ・ま・らぁっ…!」 「げ、げげぇーーーっ!?ボ、ボボ、ボボボスッ!?!!?!」 946 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/05(金) 03 50 06 ID ??? 「誰が酒に酔ってミミロップと…だとぉ…!?それに何だ!?この洋館の浮かれきった状態は…!?」 ピカチュウは怒り、電気を纏いバチバチと音をたてている。 「ク、クァハ…クァハハ…いや…そのあっしは…。え~… 「「「ご、ごめんなさい!すいませんでした~!!申し訳ない…。」」」 激怒するピカチュウにドンカラス達は土下座して謝る。 「(だからボクは止めたんだポチャ…。)」 ――――― ピカチュウは大きなため息をつく。 「はぁ…もういい。呆れて何も言えん。今回は許してやろう。」 土下座していたドンカラス達が一斉に頭を上げた。 「い、いや本当にすいやせんでした。ささっ、こちらへどうぞ!」 ドンカラスは今まで自分が座っていた上座の椅子を羽でささっと払い、ピカチュウを案内する。 「情けないポチャ…。」 947 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/05(金) 03 52 14 ID ??? 「さ、さあ、姐さん達もこちらへ!」 ドンカラスは今まで座っていたポケモンをどかし、ピカチュウの座る上座に近い席を譲らせる。 「あ、ごめんね~。」「それじゃ遠慮無く…。」「ぼわ~ん。」 食堂はシーンとしている。ドンカラスが恐る恐るピカチュウに訪ねた。 「あ~、それで、その…宴会の続きは…。」 ピカチュウはやれやれといった感じで答える。 「…好きにしろ。」 「「「イヤッホォォウ!」」」 ピカチュウがそう言うと、またポケモン達は楽しく騒ぎはじめた。 「やれやれ…。」 955 :場所間違えた :2007/01/06(土) 22 31 12 ID ??? ゲンガーの人生<小ネタ・進化>第1章(最終章)「因縁の対決 VSザングース【後編】」 さて、何故ゲンガーは生きていたのか。こういう時には必ず解説キャラ、三沢っちが現れる。 「ケケケ、オヤブンの気合のタスキだぜ。」「流石オヤビン!」 「っく…ピンチでござる。」 「ちょちょいと眠らせてもらうぜ!ケッケッケッケ。」 ゲンガーの催眠術でザングースは眠ってしまった。 「ピカチュウの技を決めさせてやるぜ…10万ボルト!」 「ぐはあ!うが…はっぐぅ…!」 ザングースはゲンガーの10まんボルトで起きた。 得意な技じゃないためか致命傷までにはならなかった。 「これ以上ダメージを受けるのは危険だ。これで決めさせてもらうぞ!ブレイククロー!」 「ケッケケ、そんな技くらわねぇーな。シャドーボール!ってあれ?」 「っくそー!シャドークロー!」「乱れひっかき!」「したでなめてやる!」 ………私たちはついつい大事なことを忘れてしまう。ここにもまた1つ 「お雑煮が1つ余ってるお。多分作りすぎた体お。勿体無いから僕が食うお!」 ここにもまた1つ 「ぷぅ・・・テレビの中でネズミ共を待ってるのに来ないなんてネズミ共臆病者だなー。」 962 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/07(日) 13 21 15 ID ??? 宴会も終わり翌日の朝になった。そろそろ帰るか。 「ミロカロス、元の場所に戻してくれ。」 そういえば俺たちはハナダシティのポケモンコレクターの家にいくんだったな。面倒だからミロカロスに運んでもらおう。 「――分かりましたわ。」 俺たちは森の洋館からポケモンコレクターの家についた。ちなみにあいつらは疲れて眠っている。 ミロカロスはいつのまにかどこかへ消えてしまった。…ディグダの知り合いはどんな奴だろうか。 そう思っていた頃、その家から声が聞こえてきた。 「コレを押せば元通りの体に戻れるんや…ポチっとな。」 「しまった!このスイッチは戻るときの場合外からしか押せないんや!どないしよう!」 963 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/07(日) 20 41 02 ID ??? 962じゃないけど… ――人間? ディグダの知り合いは人間なのだろうか。 人間に見つかるのは避けたい、それにこいつらも寝ている。 焦ることはない。俺は大都市ハナダシティの視察に行くことにした。 久しぶりに有名なキンタマブリッジでも見てみるか。 見に行く途中人間の声が聞こえてきた。 「何やってるんだ!そんなんだからカスミに勝てないんだぞ!!」 見てみるとトレーナーがポケモンを叱っている。しかも何とピカチュウではないか。 自分のためにポケモンを使い怒る人間、まさに俺のトレーナーと一緒だ。 一気に殺意が高まるのを覚えた。電気を溜める。 964 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/07(日) 20 41 43 ID ??? ――次の瞬間そのピカチュウから強い電撃がほとばしった。あれは、10万ボルト。 「よくやったなピカチュウ!やった!やったね!」 そのトレーナーはピカチュウを強く抱きしめていた。 そのピカチュウは、――とてもうれしそうだった。 「ご褒美のミックスオレが…ない。ちょっと取りに行くから待っててピカチュウ!」 そのトレーナーは自分の家に帰っていった。俺はそのピカチュウに話しかけてみた。 「おい、なぜ人間にあれだけ言われて我慢している。」 「彼は、とてもいいトレーナーだよ。僕たちのことをいつも気遣ってくれる。 そんな彼に答えてあげたいんだ。」 「正直に言え、人間は好きか。」 「僕は、彼がとても好きだ。」 そのピカチュウはまっすぐな目をして俺にそう言い放った。 「あ、来た。」 ――俺はトレーナーに見つからないようにその場を離れた。 俺も、そんな人間に出会えば考えが変わったのだろうか。 黒ピカの正体が分からないのでピカチュウの人間に対する見方を書いて見ますた。 却下でも良いです。 984 :名無しさん、君に決めた!:2007/01/11(木) 20 27 04 ID ??? 俺はあの黒いピカチュウが言ったことを思い出した。 「…お前にこき使われる手下の気持ちを考えたことはあるか?」 先ほどの人間とピカチュウを考えてみれば、確かにそんな気もしなくはない。 しかし、俺は自分でも戦った。ドンカラス、マニューラ、そしてアルセウス。 …俺は、何を考えているんだ。こいつらは確かに手下だが人間とポケモンのような関係など… 「おはようピカチュウ。」 「おはようございます」。 「おはよう~」 「…」 「どうしたの?」「どうしたんですか?」「ムウマージ、しんぱい~」 「なんでもない、行くぞ。」 こいつらは俺のことを心配してくれる。それに、俺は絶対こいつらを裏切らない。 「ディグタの知り合いはなぜか人間の可能性がある。注意していくぞ。」 「何かあったら私がピカチュウを守るんだからっ!」 ディグダに教えてもらった家を覗いてみると、怪しげな装置に入った見たこともないポケモンがいた。 そして、そのポケモンは人間の言葉をしゃべっている。 「…あかん、もう出られへん」 ちょっとぐだぐだ感が否めないかな…
https://w.atwiki.jp/qqqnoq/pages/97.html
項目立てしているものを、五十音順に並べたリストです。 ここにないもので項目を立てたい場合は、追加要望のページに書き込んでください。 各年のできごと 1990年・1991年・1992年・1993年・1994年・1995年・1996年・1997年・1998年・1999年 2000年・2001年・2002年・2003年・2004年・2005年・2006年・2007年・2008年・2009年 2010年・2011年・2012年・2013年・2014年・2015年・2016年・2017年・2018年・2019年 2020年・2021年・2022年・2023年 一覧の一覧 クイズサークルの一覧 クイズ大会の一覧 クイズ番組の一覧 形式・ルールの一覧 クイズ大会の会場となった施設の一覧 あ行 あ ISDオープン 青い 青天井 Academic Quiz Trial 朝霞市民会館ゆめぱれす アタック風サバイバル アップダウン あにわん! アメリカ横断ウルトラクイズ Answer×Answer アンサンブルクイズ 酔酔の酔!! い イージオスカップ 池上会館 池田市民文化会館 1年生オブザイヤー 一問一答 一問多答 一橋オープン 一心精進 一択 いろは インカレサークル イントロクイズ う Week Night Quiz Open ウイニングアンサー ウソフリクイズ 嘘問 裏取り え AQL abcabc関連用語 ABC abcmorphous EQIDEN 易問 エコノミクス甲子園 STU xyz FRK FNS1億2000万人のクイズ王決定戦! エポックなかはら MO m○n× m○n休 エントリー エンドレスチャンス→カルトQ方式 お 大田区民センター オープン 押し込み 押し負け お手つき 思い出シード 女だらけのクイズ大会 オンラインクイズ ONLY MY QUIZ か行 か 学習用bot 学生系 学連新人戦 葛西区民館 歌詞棒読みクイズ 勝抜杯 ガツオ風 かつしかシンフォニーヒルズ 上座クイズ 亀戸文化センター 空押し カルッツかわさき カルトオープン カルトQ方式 川崎市教育文化会館 川崎市国際交流センター 川崎市産業振興会館 川崎市民プラザ かんたんクイズ王決定戦 関東クイズ連合 き 記憶障害 企画 企画書 岸辺市民センター 北葛西コミュニティ会館 北九州クイズ愛好会 キャンパスプラザ京都 Q星群 Qリーグ Q〇 暁王戦・翠帝戦 競技クイズ 京都オープン 京都大学クイズ研究会 近似値クイズ く クイズ 「クイズ、愛、知、県」杯 クイズ王 クイズ王カーニバル クイズ王最強決定戦~THE OPEN~ クイズ!表参道GROUND杯 クイズ界 クイズゲーム クイズ検定 クイズ語辞典 クイズサークル クイズ作家 クイズ実力日本一決定戦 QUIZ JAPAN クイズ新人王・最強位決定戦 クイズ宅配便 クイズ知識 QUIZ DEAD OR ALIVE QuizKnock QuizKnock STADIUM Quiz Park クイズバースアール クイズは創造力 クイズ番組 クイズブーム クイズフェスティバル クイズフリー クイズプレイヤー クイズマジックアカデミー クイズ$ミリオネア クイズ山梨最強決定戦 クイズ用語辞典 クイズLIVEチャンネル クイズルーム ソーダライト Quiz Road Cup QUIZ WORLD クイズを描いた作品 QUIKnowledge 空席待ちクイズ QuarK杯 久栗杯 久保隆二杯 グランドスラム グランドスラム (用語) グロ問 け 慶應義塾大学クイズ研究会 KSC KQA杯 K-1グランプリ 賢押杯 限定 こ 誤 小岩アーバンプラザ 小岩区民館 高円寺会館 高校生オープン コース別 国立オリンピック記念青少年総合センター 5ジャンル制覇クイズ 個人杯 Qox 小松川区民館 コラム さ行 さ ザー 最強のふたり 最終問題 埼玉会館 サイドアウト 再放送 魁!!クイズ塾 ザ・クイズ THE クイズ神 差し込み サバイバル サンピアンかわさき し GTO JQSグランプリシリーズ στυ 鹿骨区民館 史上最強のクイズ王決定戦 地蔵 実際にやってみようクイズ 実力主義 次点 市販本 自分のレベルでみんながたくさんクイズ杯 Janitor Cup ジャンル 出題者は神 地雷 Sinker×Thinker 進級クイズ シングルチャンス 新宿スポーツセンター 「新人王」決定戦・「早押王」決定戦 人名問題 す~そ 水津康夫のクイズ全書 ストロベリーカップ スミス すみだリバーサイドホール スラッシュ スルー 正誤判定 責任押し せたなクイズオープン 0次予選 全国高等学校クイズ選手権 全日本クイズ選手権 千里丘市民センター 総会屋 た行 た~つ 大正会館 タイムレース 太陽の季節杯 高島平区民館 択一クイズ ダブルチャンス 短文 地下クイズ 知識検定 チャージ 長文 地歴オープン 通過クイズ て・と デカダンスカップ 徹クイ デリバティブ TVクイズ番組攻略マニュアル 天 電脳世界杯 10by10 10hits Combo 問い読み 東京大学クイズ研究会 東工大オープン 東大クイズ研のクイズ 東大風 東部区民館 東部フレンドホール トビ ドボンクイズ ドライバーズポイント DreamMatch!! とりにく一族オープン Dream Theater ¿don-dawn?・いちばん星 な行 ナイス勘 永田喜彰のクイズ全書 長屋クイズアリーナ 名古屋大学クイズ研究会 なぜ問題 ナチュラル知識 ナナマルサンバツ 浪速人権文化センター 奈良県文化会館 並べ替えクイズ 難問 2330 日本学生クイズ連盟 日本クイズ協会 日本特殊陶業市民会館 ニュース・博識甲子園 NYスタイル Never Ending Story 年間オープン 能勢一幸のクイズ全書 Knock Out~競技クイズ日本一決定戦~ は行 は PERSON OF THE YEAR HARD abc Hybrid 歯車杯 白鹿杯 はじめてのクイズ はじめて杯 パス ×[BAD] パネルクイズ アタック25 早押し機 早押しクイズ 早押しチャンピオンシップ 早押しボード 早立ち 原宿杯 パラレル 判定基準 ひ~へ BNS PCOQ ビジュアルクイズ 日付問題 必答 ひでぽん杯・くげ杯 一橋大学クイズ研究会 非リア王決定戦 VWX BOOTH 部内杯 PRIDE プラス1マイナス1 フリーバッティング ブルージャムカップ フレッシャーズオープン~社会人編~ ペーパークイズ ベタ問 ほ ポイント ポイント換算クイズ 法政オープン 法政大学クイズリバティ 暴発 ボードクイズ 北とぴあ ボタンチェック 北海道高校生オープン ホノルルクラブ 本質情報 POMFe 本名押し ま行 松江コミュニティ会館 マネーツリー ○×クイズ ○○本 ○曜オープン マロリー Man of the Year マンオブ風通過クイズ みんなで早押しクイズ 武蔵浦和コミュニティセンター 明治大学クイズイージオス 明大オープン Megalomania Tokyo めだまやき杯 もう一度 mono-series 森屋杯 問題集 問題潰し や行 八千代市市民会館 UNO U29クイズサークルチャンピオンシップ UNION 指勝負 よーいドン 代々木八幡区民会館 読ませ押し ら行 Rikutou 立命館大学クイズソサエティー リモートクイズバトル モノリス Ryu杯 リレークイズ ROOQIES レギュレーション 連戦 連答 連続クイズ ホールドオン! ローリングクイズ ロストジェネレーション LOCK OUT! わ行 World Quizzing Championships ワールド・クイズ・クラシック 若獅子杯 和光市民文化センター サンアゼリア 早稲田オープン 早稲田大学クイズ研究会 WHAT
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/198.html
=注記:仲上酒造が誇張して描かれています。 = これは、朋与とあさみが始めて訪問するから、です。 = 何もかも珍しくて大げさに感じている、と考えて下さい。 =5のあとがきで予告した新キャラは、ボツになりました。 新年度の始まり-6 がばっと眞一郎が抱き寄せる。背中に腕が回り、少しきつめの抱擁。 「えっ!? ちょっ!」 「比呂美ぃ~」 眞一郎はまだ寝ぼけていた。 「もう…、しょうがないなぁ~♪」 これ以上無いくらい甘ったるい比呂美の声が、朝日が差し込む部屋で響いた。 「ほぉ~らぁ~♪ 起きてぇ~♪ 眞一郎く~ん♪」 比呂美が自分の体を全て押し付けるようにして、眞一郎の腕の中でくねくねと 甘えるように暴れている。 「比呂美ぃ」 しかし、それを押さえ込むようにして、眞一郎の腕に力が入る。 「あっ、こらぁ♪ ダメだよぉ♪ 起きてぇ~♪ 起きてってばぁ~♪」 ますます声が甘くなる。"頬をすりすり"が追加された。 「ん~、比呂美を捕まえたぁ~」 完全に寝ぼけている眞一郎は、まだ夢でも見ているようだった。 「…」 比呂美の動きが止まった。 「放すもんかぁ~」 「うん、放さないでね…。私も…このままずっと…んっ…」 朝ごはんの為に起こしに来た事をすっかり忘れてしまったようだ。 1階から「二人とも! ごはん冷めるわよ!」の声がかかるまで、そのままの 姿勢で止まっていた。比呂美は大慌てで眞一郎を起こしてから、朝食をとった。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 「あっ! 来た来たっ! お~い!」 愛子が元気に手を振っている。 「よぉ、愛ちゃん!」 三代吉が駆け寄ってきた。 「遅い!」 「女の子を待たせるなんて!」 朋与とあさみは腕を組みながら、抗議していた。 「わりぃ、ちょっと家の手伝いを…って、何だか3人とも気合入ってんなぁ、 一番は愛ちゃんだけど」 愛子、朋与、あさみは"勝負服だろ? それ?"な格好だ。春らしく淡い色使いが 多いが、どれも良く似合っていた。 「愛ちゃん、似合ってるよ~」 三代吉がだらしない顔で愛子に擦り寄っていく。 「はいっ! 全員揃ったから、行こう!」 愛子が先頭に立って歩き始めた。 (うぅ…、眠い…) 朋与は夜遅くまであさみの電話に付き合い、寝不足だった。少しだけ元気がな いが、始めて眞一郎の家に行くのでそれなりに緊張していた。 (な、仲上くんのおうちかぁ…。部屋とか入ったり……うっ…) あさみは違った意味で緊張していた。眞一郎の家には比呂美がいる。自分では 明確に意識してはいないが、ある意味"敵地"と言うこともできた。 しかし、昨日の会話を思い出してしまう。 (『当たって砕ける?』) (「ああぁ、今当たったら、絶対砕ける…、砕け散っちゃう…」) あさみは少ししか眠れなかった。昨日の今日で、いきなりお宅訪問である。 しかも、眞一郎の両親がいるであろう家に。 (ど、どうしよう?…) 三代吉が愛子にあれこれと話しかけて、それに答えている以外には会話がない。 朋与とあさみは何となく言葉少なに歩いていた。やがて、仲上の家が近づいた。 「ほら! 見えてきたよ! あれ! あの敷地全部が眞一郎の家だよ!」 愛子が指差す先を見ると、 「えっ…」 「うそぉ…」 始めて見る朋与とあさみは言葉を失っていた。 「やっぱデケェよなぁ、眞一郎の家は。ほとんどが酒蔵だとしてもなぁ」 「そうだね、アタシ達は慣れてるけど、始めてだと驚くかもね? どお?」 愛子が朋与とあさみに振り向く。 「…」 「…」 まだ驚いているようだ。 「でもね? 実際に眞一郎が住んでるのは端の方だから、全部が家じゃないよ?」 愛子の声が耳に届いていないようだった。 「はいはい、さっさと行きましょう?」 後ろに回りこまれて背中を押され、やっと2人が歩き出した。 (マ、マジで? こんな家だったんだ…) 朋与は聞いていた話で何となく想像していたが、それ以上の規模と重厚な作りに、 驚きを隠せないでいる。 (仲上くん、やっぱり、すごいなぁ…) あさみの興味は家ではなく、眞一郎だった。やがて、4人は玄関にたどり着いた。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 訪問客を迎えるため、玄関は大きく開かれていた。 「こんにちはーっ!」 愛子が大きな声で呼びかけると、 「あれ? 愛ちゃん? まだ早いよ?」 大きな木の衝立の上から、眞一郎の顔がひょっこりと現れた。 「何か手伝うことがあればって思ってね!」 「そっか…、ありがと。丁度良かったかも…」 そう言いながら眞一郎が全身を現した。 「あれ~? 今日は和服なんだ?」 「馬子にも衣装か?」 眞一郎は着物を着ていた。それを愛子と三代吉に指摘されたのだった。 「あぁ、これね? 一応着るみたいなんだよね、今日は」 背筋を伸ばしてきびきびと愛子達の方へ歩いてきた。 「玄関は靴でいっぱいになるから、皆の分は向うに置こうかな? うん。 さあ、遠慮しないで上がって、こっちだから…」 眞一郎は勝手口の方へ案内した。その後、家の奥の方へ行き、 「比呂美ー、皆が手伝ってくれるってさー」 と、声をかけた。 振袖姿の比呂美が、襖の向うから眞一郎と共に何か小声で話しながらすすすと 歩いてきた。 「あれぇ? まだ1時間くらい早いよ?」 「比呂美ちゃん! やっぱり似合うね!」 「ありがとう、でも愛ちゃんも今日は可愛い服だね? あっ、朋与もあさみも、 うん、いい感じだよ~」 比呂美は朝から上機嫌を継続中だ。穏やかな笑顔で淑やかな対応だった。いか にも和服姿に合った声色だ。 「…」 「…」 朋与とあさみは、またも言葉を失っていた。 「どうしたの?」 小首を傾げながら比呂美が2人に近づく。 「あっ、うん。振袖、いいなぁと思ってね」 朋与はやっと我に返ったようだ。 「ちょっと、色々驚いちゃった…」 あさみが驚いたのは、眞一郎と比呂美の姿と、自分では言葉に出来ない二人の 一体感だった。比呂美へ話しかける時の動き、言葉、そしてそれに答える振袖 姿での仕草、佇まい。何よりも寄り添って並んだ時に眞一郎を見る瞳。 自分が羨望してやまないものが、目の前にあったのだった。 (あぁ、いい…それ……いいなぁ。うん…そう…それよ、それ) 「まあ、昼飯分は働かないとな? 俺や比呂美もそうだけど…」 「任せとけって、旨いもん食えると思って、朝メシ少なめにしてきたしよー」 「お前…、前にもそんなこと言ってたよな?」 「いいじゃねかよ…、そん時もちゃんと働いたろ?」 「まぁな、俺は三代吉と向う、比呂美は愛ちゃん達と母さんの方へ行ってよ」 「うん、眞一郎くん、またね?」 「ああ、後でな。じゃ、行こうぜ三代吉」 「おおっ! さあ、今日は何が食えるんだろうなーっ?」 「…」 眞一郎は三代吉を連れ、酒蔵の方へ行ったようだ。 「あっ! こんにちはぁ」 眞一郎の母へ気安げに声をかけたのは愛子だ。 「あらぁ、愛ちゃん。早いわねぇ」 着物姿で振り向いて笑顔を向けた。 「手伝いますよ! この2人も!」 「ありがとう、助かるわ。よろしくね?」 「はいっ」 「は、はいっ!」 必要以上に気合の入った返事は、勿論あさみだ。朋与は心配そうな視線を向け ていたが、あさみは気付かなかった。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 仲上家での"集まり"が大広間で始まってから、30分くらい経過している。 眞一郎の父が上座に座って、訪問客と話したり、自らが動いて酌をしたり、普 段とは違う顔を見せていた。母親の方は基本的に料理を運んだりしているが、 訪問客との会話も多い。自然と比呂美に負担がかかりそうな状況だが、近所の 主婦達も"集まり"が始まった時点で手伝うようになったので、それ程忙しくは なかった。結果的に、"特定の一人"の世話をするようになる。 「はいっ、眞一郎くん」 「おっ、ありがと。比呂美もなるべく食べなよ?」 「うんっ」 終始笑顔を崩さず、かといって大きな声で笑ったりはしていない。あくまでも 振袖に合った仕草は崩さなかった。しかし、きっちりと眞一郎の隣に寄り添い、 出来上がった料理を持ってきたりしていた。 上座で二人が仲良くしている姿は、とても微笑ましく訪問客の目に映っていた。 三代吉、愛子、朋与、あさみは、4人で上座に最も近い場所が割り当てられて いる。振舞われている料理は、仕出しと思われる高級そうなものに、心づくし の手料理が追加された、とても良い組み合わせだ。 「おおーっ、コレすげぇ旨いぜぇ~」 三代吉は上機嫌で食べていた。 「良くそんなに遠慮なく食べれるね?」 愛子が少し呆れ気味に話しかけるが、 「ん…んぐっ。え? だって、旨いぜ?」 「あのさぁ、周り見てみな? お偉方ばっかりだよ?」 愛子が指摘したのは、自分達と周囲との差だった。眞一郎の昨日の話では、大 した事無い"集まり"だったが、実際にはそれなりに地元の名士と言われている お歴々が勢揃いしていたのだ。しかし、自分達は普通の高校生だ。居心地がい いとは言えなかった。 三代吉以外の3人は、小さくなって少しずつ料理を口に運んでいた。 (ちょっと、何これ? 私達、いていいの?) 朋与も愛子と同じ様な感想を抱いていた。 (私も着物、着たいなぁ) あさみは違う意味で食事が進んでいないようだ。周りなんて見る余裕はない、 眞一郎が昨日から気になって仕方ない状態が続いている。さらに和服姿を見て からは、そちらばかり見ないようにすることで精一杯だった。 そんな時、眞一郎が自分の隣に戻ってきた比呂美と少し話し、その後に父親に 何か確認を取っていた。そして比呂美にもう一度何かを話すと、自分のお膳ご と4人の前に移動してきた。 「や、お邪魔していいよな?」 「どうしたんだよ? やっぱ、オレらといた方がいいんか?」 「まぁな。あ、比呂美はそっちな? あと何を持ってくればいいんだろ?」 「いいよ、私が運ぶから。眞一郎くんは座ってて」 「ん~、分かった。じゃあ、頼むな?」 「うん。ねぇ? 朋与とあさみも少し、飲んでみる?」 「えっ?」 「え?」 「ふふっ、お試しだよ? お試し」 と、笑ってから比呂美が何かを取りに行ったようだ。 「眞一郎、アタシ達に気を使ったの?」 愛子が何かに気付いて質問した。 「ん? まぁ、向うだと窮屈で、人がいっぱい来るし。ここの方が気楽そうだっ たからね。やっと食べれるようになるよ。朝から動いていて、腹減ってるん だよなぁ」 そう言って、眞一郎はいつもの表情で、ほとんど手付かずだった料理を食べ始 める。その様子は三代吉と変わらない。 (ふ~ん、眞一郎もそういう事が分かって、できるようになったのかな? それにしても、これだけの人の前でよくもまあ、堂々としてるわね。 どっちかって言うと、三代吉は馬鹿っぽく見えて、実は度胸があるのかな?) 愛子はそんな2人を見比べるようにしていたが、気付くと自分も普段の様な落 ち着いた気持ちになって、周囲があまり気にならなくなっていた。 「ん?」 よく見ると、三代吉の料理があまり減っていないことに気付いた。食べ始めた 眞一郎と同じくらいだ。 (え? 三代吉ってば食べてるフリして、騒いでいただけ?。アタシ達が緊張 してるのが分かってたの? 眞一郎は三代吉に気を使ってたんだ…) 「お待たせ~」 比呂美が料理などを沢山持ってきた。 「朋与とあさみは、後でね? はい、眞一郎くん、これ」 「ん? さんきゅ。おっ、きたきた~。おい、三代吉。湯のみ出せよ」 「あ? まだお茶なんて飲まねぇぞ?」 「いいのか? "特別なお茶"だぞ?」 その口調で何か気付いた三代吉の表情が変わった。 「お? そうかぁ、"特別"かぁ。ちっと、もらおうかな?」 「ほれ」 「お、うんうん。確かに"特別"、だな?」 「だろ?」 眞一郎と三代吉は、何やらニヤニヤしながら"特別なお茶"と料理を交互に楽し んでいた。 「ほどほどにね?」 比呂美がその様子を微笑んで見ながら、一応注意した。 「分かってるって。比呂美はやめといた方がいいよな?」 「うん、私は皆と話してるね?」 「了解。三代吉、もう少し、いるか?」 男同士で仲良く食べたり飲んだりしている。それを見てから愛子が比呂美に話 しかける。 「比呂美ちゃんも食べたら? 減ってないよ?」 「うん、これからやっとだよ~。愛ちゃん、どお?」 「そうだね~。何だか、すごいね? この"集まり"。ちょっとびっくり」 「え? そっち? お料理はどお?」 「あら、その話だったの? うん、おいしいよ。比呂美ちゃんも作った?」 「ううん、私は下ごしらえばっかり。"まだまだ"なんだってさ…」 「厳し~い」 「そうでもないけどね」 「眞一郎がいるから、耐えられる?」 「えっ? あ…あの……その…、えっと…」 言葉を詰まらせてしまう比呂美を見て、朋与とあさみも会話に加わってくる。 「せっかく振袖着てるのに~、いつもの比呂美になっちゃった」 「はははっ、ホントだぁ~」 「今のがどうして、"いつもの"私なのよ~」 これを機に4人にとって、ここがまるで"あいちゃん"にいる時のような調子で 会話が始まる。高校生らしい、騒がしい会話だ。 それを横目で見た眞一郎の目が少し細まる。リラックスして楽しげな比呂美の 様子に、安心したようだった。 時折眞一郎が呼ばれ、それに比呂美が付いていってその場にいなくなっても、 4人は緊張することなく、普段通りにしていた。楽しい時間はあっという間に 過ぎていく。二人が席を外している時に、眞一郎の父がやってきた。 「こんにちは。料理はどうかな?」 愛子が代表して応対する。 「とてもおいしいですよ! 今日はありがとうございます!」 「手伝ってもらったようだから、こちらがお礼する方だよ。家内がデザートを 後で用意するから、食べ過ぎないようにしてもらうと有難いな」 眞一郎の父は、なるべく優しい口調になる様に気をつけていた。 「はい!」 愛子の返事を聞くと、眞一郎の父が一つ頷いて、他の訪問客へ挨拶に行った。 「そろそろお開きかな? 帰る人がいるみたいだ」 眞一郎が言うと、 「じゃあ、私はお見送りしなくちゃ。眞一郎くんはどうするの?」 比呂美が聞いてくる。 「俺も行くよ。皆はまだここにいてくれる? 母さんがお手伝いのお礼するっ て言ってたし。」 「わかった。ここでだらだらしてればいいのか?」 「それか、奥の居間でもいいよ。場所、分かるだろ?」 「ああ」 「片付けは?」 愛子が会話に加わってきた。 「そっちは大丈夫、近所のおばさん達がしてくれるって」 「いいのかなぁ?」 「ああ、気にしなくていいって」 それだけ言うと眞一郎は見送る為に玄関へ向った。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 招待客を見送って玄関の扉を閉めた後、二人は立ち話をしている。 「ふぅ、疲れたぁ」 「結構大勢きたね?」 「比呂美、お疲れさん」 「うん、眞一郎くんも」 「俺はまだ大丈夫だけど、比呂美は着替えるのか?」 「そうしようかな? デザート食べたいもん」 「なるほどね。じゃあ、先に居間にいるぞ。待たせない方がいいだろ?」 「うん、そうだね。後でね?……ん…」 周囲を見回した眞一郎が、軽く唇を合わせた。 「もう…、慌てないで?」 「簡単に言うなよ、比呂美だって…」 「あ~っ! 私のせいにした~♪」 「ははっ」 笑顔でしばしの別れを惜しんで、それぞれ元の比呂美の部屋と居間へ向った。 すっと、襖を開いて居間に入ると、少し油断していた4人が、 「「「「わっ!」」」」 びっくりしていた。 「はははっ、何でそんなに驚いてるのさ?」 眞一郎は笑いながら座った。 「あのなぁ、オレはこういうの慣れてないんだよ~。ちっとは分かれ」 「あれだけ食べておいて、良く言うよなぁ」 「まぁな」 「眞一郎、お茶飲む?」 何故かお茶担当をしている愛子が聞くが、 「紅茶を比呂美が入れるみたいだから、それを待とうかな? ケーキだから」 の回答に、 「ケーキ!」 いち早く反応したのは、あさみだった。 「あさみ…」 朋与は、夜遅くまで延々と相談しておきながら、ケーキに反応したあさみを少 し睨んでいた。しばらく5人で話していたが、あさみの視線はちらちらと眞一 郎へ向けられている。朋与は心配だった。 (この子、何かする気? まさか…ねぇ?) そこへ、普段着に着替えた比呂美と眞一郎の母が、居間へやってきた。 「はい、遠慮しないで食べてね? 今日はお手伝いありがとう」 「みんな~、ケーキだよ~」 2人が座って、紅茶と一緒に配り始めたところで、眞一郎が立ち上がった。 「俺は着替えてくるから、先に食べてて」 「うん、分かった」 眞一郎が居間を出てから、遂にあさみが動いた。 「トイレ、借りていい?」 「うん、場所分かるよね?」 「大丈夫、一回借りたから…」 あさみも居間を出て行った。 (ま、ま、ま、まさか! あの子…) 朋与は大きな不安を感じていた。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― <サントラの"溢れ出る、気持ち"を再生しながら読むとアニメ風、かな?> <上手くペース配分して遅めで読むと、いいところでサビになるはず…> (どこかな? 仲上くん…) 朋与の不安は的中していた。あさみは眞一郎を探している。 (どこ? どこなの? 仲上くん…) 全身の神経を研ぎ澄まし、目で、耳で、肌で、眞一郎を探す。 (どこにいるの? 仲上くん…) 昨日、今日とずっと考えていた。体中を焦燥感が駆け巡り、自分でも抑えきれ ないくらいだった。 (もう見ているだけじゃイヤ。もっと近くで…もっと近くに…) 視界に入ったり、声が耳に届く度に心臓がどきどきしていた。 (仲上くん…。私に笑顔を向けて欲しい…、私を見て欲しい…、私に…) 自分を抑える為、普段通りにしていたつもりだが、それが気持ちの暴走を無理 矢理押し込む結果となってしまった。 (もっと……もっと……近くに、一緒にいたい……) 今、眞一郎は一人。いいチャンスだと感じた瞬間、体が動いていた。 (あの時…そう、あの時から…、雪の降る日に見た時から…) "当たったら砕ける"とか、比呂美の存在さえ頭にはない。今、あさみが感じる のは、眞一郎を想うことの心地良さ、他は何もない。 (仲上くん! 仲上くん! 仲上くん!) 眞一郎を追い求めることだけが、全ての思考を支配している。 「あっ…」 廊下の曲がり角で眞一郎の着物の色がすっと消えた。全身は見えなかったが、 何度も見ていた色だ、見間違いはない。彼の父親の色とは全然違う。 あさみが突撃する。眞一郎を想う心が体を動かす、背中が見えた。 そのままの勢いで抱きついてしまう。 抱きつかれた方は、"何かとても軟らかい物"が押し付けられ、ぐにゃっとした 感覚に体が固まってしまった。 「好きなの!」 「えっ?」 あさみの気持ちが心臓の鼓動となって、背中に伝わっていく。 続き…読みますか? END -あとがき- 7話風に切ってみました。この辺りから本格的に朋与とあさみが主役のはず。 さて、次はどうなることやら…。 この後も比呂美&眞一郎のイチャイチャ描写+朋与とあさみの奮闘路線で。 ありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5514.html
前ページ次ページスナイピング ゼロ 朝もやの中、トリステイン魔法学園の玄関前にルイズ達の姿があった。離れた場所では、衛兵がルイズ達を珍しい物でも 見るような目で見つめている。 「マスター、王宮の馬車はまだですか?」 「もうすぐ来るわ、もうちょっと待って」 始祖本を抱き締めたルイズが外を眺めながら、セラスに返答する。二人の使い魔は主人の背後で座り込み、何やら 話しこんでいる。 「と言う訳で、HELLSINGの連載が終了しちゃった訳だけど・・・次は何が来るかしら?」 リップがニヤニヤしながら尋ねる。 「私としては『以下略』を続けてほしいですね、真紀ちゃん見たいですし」 「私は『大同人物語』ね、続きが読みたいわ」 (なに話してるのかしら、あの二人は?) コソコソ話し合う使い魔をルイズが見つめている時、遠くから馬が歩む音が響いて来た。 「来たみたいね。二人とも、おしゃべりの時間は終わりよ!」 『は~い』と二人の返事が重なったと同時に、ルイズの目が点になる。 「・・・あれ?」 目の前に現れたのは、使者が乗った一頭の馬だった。後ろを見やっても、馬車は見当たらない。困惑していると、使者は ルイズに大声で訪ねた。 「学園長はいらっしゃるか、早急にお伝えしたい事が有るのだが!」 「学園長ですか? 多分、学園長室にいると思いますけど・・・」 オスマンの居場所を伝えると、使者は馬を走らせ学園の中へ向かっていった。呆然としていると、リップがルイズを 抱き上げた。 「追うわよ」 「へ? ちょ、ちょっと!?」 「行くわよ、セラス!」 「ヤー!」 二人は回れ右をして、学園長室へ向かった。 「宣戦布告じゃと!? それは本当かね?」 結婚式の出席のため準備をしていたオスマンは、突然の報告に顔色を変えた。目の前に立つ使者は、それ以上に顔色が 変わっている。額から幾筋もの汗を流し、両手が震えている。 「はい。そのため、姫殿下の式は無期限の延期となりました。学園に関しましては、生徒・教員の外出禁止令を願います」 「現在の王軍と敵軍の戦況は、どうなっておるのかね?」 「王軍は港町のラ・ロシェールに展開中です、敵軍はタルブの村を竜騎士で強襲。家や草原を焼き払い、艦隊から兵を 降ろして占領したと・・・」 使者は怒りを抑えながら、出来うる限り冷静に話した。握り締められた拳が、オスマンの目に映る。 「ゲルマニアに援軍を要請したのですが、派兵するには三週間は掛かると言われました」 (見捨てられたな・・・)と心の中で言いながら、オスマンは溜息をついた。 「アルビオンには条約を破られ、ゲルマニアには同盟を破られる。約束は紙より容易く破られるとは、まさにこの事じゃて」 学園長室の扉に耳を貼り付けていたルイズは、唖然としていた。結婚式に浮かれていた状況が一変、戦争状態に陥って しまったのだ。後ろを振り返り、セラスとリップを見つめる。 「大変な事になっちゃった・・・」 「そうみたいね」 何でもないとでも言いたげなリップの言葉に、セラスは告げる。 「まだシエスタさんがタルブに残ってるはずですよ、早く助けにいかないと!」 セラスの必死な表情を見やり、リップは指先で頬を撫でる。 「ま、あの子には色々と世話になったし・・・じゃ、行きますか」 「行くって、まさかタルブむrって、またなの!?」 再びルイズを抱き上げ、二人はルイズの部屋へと向かった。 「何事かと思ったら戦争か、あのシエスタって娘っ子も災難だねぇ」 操縦席の脇に立て掛けられたデルフが、呑気な口調で呟いた。セラスは操縦席、リップは副操縦席に座り、スイッチや ハンドルをいじっている。後部の座席にはルイズが座り、二人の様子を見つめていた。 あの後ルイズの部屋に戻った二人は、自身の武器を手に取りヘリへ向かった。小屋で眠っていたコルベールを叩き起こし、 完成した燃料をタンクに装填した。そして今、ヘリを飛び立たせようとしている。 途中で朝早くヘリを飛ばす事に対してコルベールが不満気な発言をするハプニングがあったが、リップが首に軽く手刀を 叩きこんで小屋に放り込み事なきを得た。 「ねぇ、本当に大丈夫なの?」 始祖本を抱き締めたルイズが、後ろから二人に話しかける。 「何が?」 被っていたヘッドセットを外し、リップが顔を向ける。 「タルブの上空はレキシントン号を含めた戦列艦で、制空権を奪われてるのよ。周囲は火竜を操る竜騎士が飛び交ってて、 近付くことすら難しい。そんな所に、こんな小さな飛行機械で突っ込むなんて・・・」 「あぁ、そう言うこと」 スイッチの一つに指先を当て、強く押しこんだ。カチッと言う音と共に、メインローターが回り始める。 室内にローターが空間を引き裂く音が響く中、リップは口元を歪ませながら嬉しそうな笑みをルイズに向けた。 「ヒッ!」 恐ろしい顔を直視したルイズは、思わずへたり込んだ。 「ダメですよリップさん、マスターを怖がらせちゃ」 「あら、ごめんなさい。戦争の濁流の堰が切れてるもんだから、つい嬉しくなっちゃってね」 「もう、気をつけてくださいね」 「そうだぜ相棒の相棒、主人を驚かす使い魔なんて聞いたことねぇぞ」 デルフと並んで注意しながら、セラスは操縦桿を握り締めた。ゆっくりと手前に引き、機体を浮き上がらせる。 「大戦争だわ・・・」 「何か言いました?」 外を眺めていたリップに、セラスは顔を向けた。 「いえ、別に」 ドーファンは更に上昇に、一路タルブの村へ機首を向け飛び去った。 ◇ トリステイン王宮の会議室では、怒号が飛び交っていた。将軍や大臣が椅子から立ち上がり、大声で怒鳴り合う状況が 続いている。巨大なデスクは書類によって埋め尽くされ、散乱していた。 昼を過ぎても意見はまとまらず、議論は続いている。その状況を、上座に君臨するアンリエッタは驚いた表情で、 新設された銃士隊の隊長であるアニエスは冷ややかな表情で見つめていた。 「伝令より報告、タルブ村の領主アストン伯が戦死。引き連れていた部隊も全滅です!」 「偵察に向かった竜騎士隊は帰還せず、敵軍の竜騎士隊は村のあちこちに火を放っています!」 「もはや開戦は避けられん! 今からでも王軍を編成し、ゲルマニアに軍の派兵を要請しよう!」 「何を言うんだ、そんな事をしたらアルビオンに全面戦争の口実を与えるだけだ! ここは特使の派遣を!」 意見が飛び交う中、マザリーニは結論を出せないでいた。外交か戦争かの瀬戸際に直面した中で、早急に答えを出す 事が出来ない。外交で解決したいという考えと、戦争でしか解決できないという想いが、彼を責め立てていた。 アンリエッタは、薬指に着けた風のルビーを見下ろしていた。王女として、どうする事が最善の策なのか? じっと考えて・・・そして、ボソリと呟いた。 「茶番です」 「殿下・・・?」 周囲から視線が集まる中、アンリエッタは上座を下りた。 「茶番です、と申したのです。アニエス、着いて来なさい」 「はい」 「どこへ行くつもりですか、殿下?」 扉へ向かうアンリエッタに、マザリーニが声をかける。アンリエッタは振り返ると、落ち着きながらも力の籠った声で 言い放つ。 「枢機卿、私はこれ以上は付き合いきれません。不毛な議論をしている間にも、何物にも代えられぬ民の血は流され続けて います。私はこの一連の事態を計画された攻撃行動と認識し、王軍を出動させ敵軍を殲滅いたします」 「そ、そんな!? そんな事をしては・・・」 「マザリーニ枢機卿、お伝えしましたよ」 アンリエッタの言葉に周囲が騒ぐ中、椅子に座り悩み続けていたマザリーニは顔を上げた。 「分かりました姫殿下、命令に基づきトリステイン軍の編成を行います」 「了解」 アンリエッタは会議室を出ると、部下を引き連れ自室へと戻って行った。 「アニエス、貴女はどう思いますか?」 「私がですか? そうですね・・・」 自室へと向かいながら、アンリエッタは腹心の部下に問うた。 「条約破りもいいところですね、あからさまな。時間が経てばたつほど、敵の思う壺です」 「ですが放ってはおけません。宣戦布告にしては、余りにも物騒すぎます」 自室の扉を開け、中に入る。背後でアニエスが扉を閉める音を聞きながら、ドレスを脱ぎ始めた。 「我が軍の竜騎士隊を退けてから、敵に動きはありません。自ら仕掛けては来ませんが、無視する事は出来ません。 近づけば攻撃してくる、これは典型的な示威籠城戦です」 「村は草原であり無限に広い庭でもあると言う訳です。そしてあの長射程のカノン砲、あの砲に近付ける物など ある訳も無い・・・」 ドレスをベットに脱ぎ捨て、下着だけの姿となる。その間にアニエスは部屋の奥から取り出していた一式の鎧を、丁寧に 着せてゆく。 「ですが、連中はもはや脱出出来ない。村を連中にとって地獄の釜の底も同然にしてやります。『レキシントン』艦上から 引きずり出し、そこに叩き墜とす。ですが、そのための方法がありません」 「左様です」 肩を落とす姫に対し、騎士は冷静に同意した。部屋の中が、しんと静まり返る。床を見つめていたアンリエッタは、 悲壮感を漂わせた表情を部下に向ける。 「艦隊や竜騎士も失った今、どうやったら・・・あの草原の空に君臨する鋼鉄の城塞を打ち崩せるか?」 「・・・姫殿下は、どうすれば良いと考えておられますか?」 アニエスは腕を組み、姫に問うた。鎧や剣が、ガチャリと音をたてる。 「そうですね・・・」 顎に手を当て、アンリエッタは考えた。 「大型艦船」 アニエスは、首を横に振った。 「NON 大型の物は壊滅しました、それに奴らが何時までも上空に船を停泊させているとは限りません」 「小型快速艦艇」 今度は、アンリエッタが首を横に振る。 「NON カノン砲や火竜の餌食になります、砲弾や紅蓮の炎に耐えられるとは思えません」 「竜騎士隊 直上からの降下」 再び、アニエスは首を振るった。 「NON 艦載の砲弾で、直上はおろか接近すら出来ません」 「残っている艦艇を大量に使用して ドラゴンの使用」 アンリエッタも、再び首を振る。 「NON 砲弾は誤魔化せても、竜騎士がいます」 まさに八方塞がりであった。敵に対し有効な反撃策が無い現状に、アンリエッタは溜息をつく。その時、アニエスは 後ろを振り向いた。直後に、ゆっくりと扉が開かれる。 「結論は」 現れたのは、青色のドレスらしき服を着た一人の女性だった。背後には、側近らしき女性の姿がある。 「カノン砲も火竜も、戦列艦をも物ともせず・・・草原に君臨する巨艦を大地に叩き落とす事が出来る、そんな方法です」 二人は、昨夜マザリーニが言っていた外交会議の代表者であった。すぐにアニエスは方膝を付き、頭を下げる。 「まさしく、無理難題です」 「いえ」 諦めたかのようなアンリエッタの言葉を、側近である女性が否定する。 「あります。一機種のみ、その無謀を適える機体が」 「それは本当ですか!?」 アニエスは立ち上がると、大声で叫んだ。女性は、ドレス姿の女性に小さな声で話しかける。その女性は、軽く頷いた。 「本当です。私の個人的な知り合いに、その機体を所持する者がいます。今から連絡を取ってみましょう」 「感謝いたします」 アンリエッタとアニエスは、同時に頭を下げた。 「もちろん、タダでは出来ません。現在、我が国はエネルギーの輸入や燃料の輸出が出来ず困窮しています。そのため、 トリステイン王国と貿易関係を築きたいのです。この要望、受けてくださいますか?」 「それは勿論、我が国に出来る限りの事をさせていただきます。貴女様の国との貿易は、トリステインにとっても有益な ことですから」 その言葉を聞いて、女性は側近に何やら話しかけた。側近の女性は一礼して、部屋を出て行く。扉が閉められると、女性 はアンリエッタに向き直る。 「あと一つ、お願いがあるのですが・・・よろしいですか?」 「なんでしょうか?」 「私と側近の者を、今から向かう戦場に同伴させていただきたいのです」 「「は?」」 突然の事に、アンリエッタとアニエスの台詞が被った。国交を結んだばかりの相手国の代表を戦場に同伴させるなど、 聞いた事が無かったからだ。額に浮いた汗を手の甲で拭いつつ、アニエスが口を開く。 「お言葉ではありますが、国家の代表であられる者を戦場に同伴させると言うのは・・・」 「非常識であるのは分かっています。ですが、友好国が危機的な状況にあるのを見過ごす訳にはいきません」 「しかし・・・」 女性はアニエスから、アンリエッタに視線を移す。 「お願いします。どうか、私を貴女達と共にラ・ロシェールにお連れください」 女性は二人に対し、軽く頭を下げた。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ・ド・トリステイン殿 」 「・・・殿下、どうなさいますか?」 困った表情のアニエスを横目で見ながら、アンリエッタは即座に答えを出した。どうせ拒否したら、敵軍の打破が可能な 機体の提供は却下されるだろう。元から、この願いに否定など出来ようはずも無い。アンリエッタは女性の手を取り、固く 握手を交わした。 「分かりました、お連れしましょう。新興国アザディスタン王国第1皇女、マリナ・イスマイール様 前ページ次ページスナイピング ゼロ
https://w.atwiki.jp/nocry/pages/191.html
お月見と猫 月見をする、というからついてきた。 チャトラである。 よくある、夜半のそぞろ歩き、見回りの衛兵が翳す松明の他はほとんど人工の光源のない闇の中を、月の明かりを愛でるために敷物でも敷いて酒を酌む。 ――のかと思えば、何のことはない。 大広間でのただの大宴会だった。 三補佐はもちろん、元帥だとか大将軍だとか、そういった軍籍の重鎮の主主。それから、大臣その他配下の数十名。 無礼講、という名の日頃の政務の息抜きと交流。それと少しばかりの面々の画策。 そこへ今夜は珍しく皇帝までもが参加しているのだから、嫌が応にも盛り上がるというもの。 もともと、皇帝がこうした催しに顔を出すこと自体が稀有だ。珍事、として扱われてもおかしくないほどそもそもが公務以外に、私の顔を見せる回数の極端に少ない男なのである。 ひとつはそうした騒ぎが好きではないこと。 ひとつはそうでなくとも体力的に日常業務だけで精一杯で、夜分に参加のできる余裕がないこと。 ひとつはこれを好機と媚を売る輩の多さに辟易としていること。 宮廷での宴席の際には、必ず上座に皇帝の席を設けることを形式上義務付けてはいたものの、その上座が本来の主によって占められるということは、片手の指でも有り余る。 珍事の原因を作ったのは、他でもない三補佐の一人、アウグスタ。 「月見」 の言葉に、皇帝お気に入りのチャトラを連れ出した。必然的に皇帝も参加せざるを得なくなる。 たまには参加して貰わないと、宴主である己の面子に関わる。 というのは建前の理由で、実際のところ、渋々ながら皇帝の重い腰を上げさせるのが単に面白いから、なのかも知れない。 そうした、瓢と判らぬところがこの補佐にはある。 まんまと仕組まれて、面白くないのは当の本人の皇帝である。 当初はあからさまに不愉快な顔で寝椅子にもたれかかり、訪なう家臣どもの挨拶を不遜に聞き流していた。その機嫌たるや、低気圧の渦の中心よりもなお低かった。 恐れをなして、普段は媚び諂いにやってくる輩が三割減ったほど。 酒宴が進みそれぞれがそれぞれの話に花を咲かせ始める頃合から、ようやくうっとりと煙る視線で酒を呷っている。 視線があいまいなのは、透明質な長い睫毛に剣呑な光が緩和されているからだ。 軍籍の重鎮や大臣その他に特別に親しいものがいるわけでもないチャトラは、「無礼講」をいいことに、宴席のあちらこちらへ顔を出し、好物の果物を掻っ攫っては皇帝の膝元へと戻る行為を繰り返していた。 それくらいしか、やることがなかったとも言える。 甘く芳醇な香りを放つ果実の表皮に、爪を立て薄皮を破る。滴る果汁に指先をべたべたに汚しながら、柔らかな果肉にかぶりつく。 橙色のその果実は、宮廷に来てから知ったチャトラの好物だ。 その満足げな顔を目にして、皇帝は機嫌を直したとも言える。 「――猫」 舌なめずる様子を興味深げに見ていた皇帝が、不意に杯をチャトラの目の前に差し出した。 弾みで受け取ったそれへ、なみなみと皇帝手ずから果実酒を注ぎながら、そら、と勧められるところへ、彼女は口をつけた。 飲めないわけではない。と言うよりも、年不相応にいける口だ。 理由は至極簡単で、真冬、チャトラが街の路地裏で寝泊りしていたころの手っ取り早い暖まり方は、酒を呷って寝てしまうことだった、から。 歯の根も合わない寒さにも、鈍った頭は役に立つ。 朝方目覚めて、元気のなかった隣のご同輩が、真っ白な霜を肌に張り付かせて冷たく固くなっていた――などと言う、洒落にならない殺伐とした状況も、一度や二度ではない。 次は、自分か。 思う時間のあることが、あの頃は一番怖かった。 男に注がれた、琥珀色のとろりとした果実酒は、喉元から臓腑にしみた瞬間かっと火の点いたように熱くなる。 それなりに度数の高いそれを、顔色ひとつ変えずに皇帝は今まで呷っていたと言うのだから、人は見かけによらないと思うチャトラだ。 一気に飲み干しかけ、思わず小さく咳き込むと、くすくすと可笑しそうに男が笑いを漏らした。 僅かにこぼれ顎に伝った滴を、指を伸ばして掬い取る。 舐めた。 赤い舌が淫靡だと思う。 「アンタ、酔ってるね」 「そうかもしれない」 常よりは眼光の薄らいだ色素の薄い茶の瞳。彼女が無遠慮に覗き込むことを、男は咎めない。 「猫」 「……なに」 「本来の趣旨を、叶えたくはないかな」 「本来、っていうと」 月見? 視線で尋ねたチャトラに、皇帝が小さく頷いてみせる。 「ここは少し、うるさいね」 「……それも、いいかもな」 チャトラの感覚では、どうにも、「御偉い方」についていけない。表と裏を巧みに使い分ける、よく言えば政治的手腕、歯に絹着させなければただの陰湿な大臣どもも、軍隊仕込みの無駄に大きな身振り手振りをする将軍どもも、苦手な部類だ。 そうした酔漢の胴間声にそろそろ辟易してきたチャトラは、男の提案を幸い、退場するつもりで立ち上がる。 続けてゆらり、と男が立ち上がる。どんな酒盃を重ねた席だとは言え、男の存在感は絶大だ。静かに緊張が走り、気づいた酒席の頭数十、慇懃に低頭する。 さすがに三補佐が立ち上がりかけたところへ、鷹揚に手を振って皇帝は窘め、 「――月を愛でて来よう」 言い置いてさっさと踵を返し、いつものように陰に控えたディクスが、音もなく付き従った。 * 「……あー煩かった」 寝室とは逆の方向の回廊を皇帝が歩むのを見て、たたた、と小走りに後を追いながら、チャトラが大きく伸びをした。 両腕にはちゃっかりと、お気に入りの果実、そうして男が呷っていた酒甕が二本。 前を歩く男の足取りは杳としてどこか頼りない。千鳥足、と言うわけではなく、これは元来の歩き方だ。 回廊の大理石の柱の影と、中天より差し込む月光の、黒と白のコントラストの中を男がふわふわと歩いてゆく。 青白い黒と、淡い黄味がかった白の中で、それはまるで絵画のようで、 「なぁ、アンタ」 「――うん、」 亡霊みたいだな。 その時、生の希薄な男に対してのチャトラの正直な感想がそれだったが、 「なんでもない」 さすがに男に対して失礼な言葉を発してしまいそうな気もしたので、チャトラは首を振って口を噤んだ。 ころころと表情を変えるチャトラに、どこか面白そうな視線を投げかけながら、それ以上男は追及してこない。機嫌が直っている。 やがて、回廊の突き当たりに辿り着くころには、広間の喧騒どころか人の気配もほぼない。居住区域だというのに生活感が皆無だ。 そこは、皇宮の中でも一番に奥まった建物。 俗に言う「後宮」と言うもので、数人、あるいは数十人の薫陶美姫が皇帝の訪れをまだかまだかと手ぐすね引いて待ち構えている状況が通例ではあったが、あいにく現エスタッド皇に後宮に住まわせる妾はいない。 どころか、三補佐が毎度頭を悩ませるほどに本妻との結婚すら無下に却下してしまうのだから、いるはずもない。 「夜の営みを行うことが不都合」 自身の体の弱さを楯にして、のらくらと言を逃れている様子は、傍観しているチャトラですら、三補佐その配下が気の毒になるほどだ。 原因を作っている当の本人は、涼しい顔をして主のいない向かい合った部屋の真ん中の通路を歩いてゆく。 「なぁ」 「うん」 「アンタさ、嫁さんもらわないの」 「貰って――どうするのかな」 想像した通りの答えが返ってきて、チャトラは苦笑う。 「なんか、お貴族様ならいろいろあるだろ。体裁とか」 「体裁で世継ぎはできぬ。それに嫁がされる女性が独り寝では、淋しいだろう」 「独り寝前提かよ。構う気なしかよ。んじゃ、一緒に寝てやりゃいいじゃん。ナニするかどうかは別としたって」 男の心臓には生まれつき穴が開いているのだそうだ。 夜の営みに耐え切れない体なのだと、男が自身でそう言った。 「他人の肌に触れる趣味が生憎と――なくてね」 「どの口がほざく」 しれっとした返答に、思わずチャトラは目の前の背中に呆れた声を投げつけた。 「毎晩毎晩毎晩毎晩。布団にもぐりこんでくるのはどこの誰ってうわ」 つと振り向いた皇帝が徐に手を伸ばし、チャトラが身構える。ところへ彼女が抱きかかえていた酒甕をひとつ手に取ると、無造作にひとくち、ふたくち。呷った。 日頃、優雅に席に着いて食事を摂る男の姿は、その食卓に強制的に面子に加えられているチャトラにとって見慣れたものであったものの、こうして行儀をどこかに置いた風情はそれなりに目新しい。 知らない男のようで、少しだけ不思議に思う。 最初の緊張を解いたチャトラの隙を突いて、二度男の腕が伸び、今度こそ彼女の体を引き寄せる。 「わぶ」 「どの口が言うかはお互いさまだろう」 鼻先から男の懐に衝突して、文句を言いかけたチャトラの耳朶に、男が低く囁いた。 「オレは何もシラきってねぇ!」 喚いたチャトラが前を向いた息を呑む。 いつの間にか、男の目的の場所に着いていたようだった。 「う……わ」 思わずチャトラは声を上げる。 「な、に……、ここ」 そこは小さな箱庭。 ひそやかな淡白色の月光が照らす中に、朧に光る小さな塊。ふわふわと浮き沈みするそれは、 「綿毛……?」 夜光虫なのかと腕を伸ばして捕まえたそれは、チャトラの手のひらの中でぼんやりときらめく。 とても柔らかな綿毛だった。 光るのは、その種子の部分だ。しげしげと眺めるチャトラの手のひらから、 「あ」 男がそっと取り上げ、息を吹きかけ宙へと放る。 どんな生態反応なのか、再び舞った綿毛は静かに黄色からもう少し淡い赤へと変色して見せた。 たゆたう水面に睡蓮が浮かび、壁と通路にはみっしりと蔦。訪れる者のない証拠に、まるで手入れをされていない。 名前もわからない小さな花がほころび、その間を発光する綿毛が泳ぐ。 「庭師もほとんど入らないものでね」 いつの間にかこうなってしまったのだよ。 引き寄せられたままチャトラの体は開放してはもらえなかったので、石畳に胡坐を掻いた男の膝上に自然、後ろから抱かれる姿勢になった。 「いいな……ここ」 幻想的な光景をうっとりと眺めたチャトラの首筋に、男の吐息が触れた。酒量をそれなりに超えたせいか、いつもより暖かな気がする。 「って。ちょっと。何してんだよ」 匂いを嗅ぐように男が鼻先をチャトラの肩口に埋め、乾いた唇が肌を啄ばむ。 「何」 無礼講だ。 ひそやかに笑いながら、肩口から首、耳朶を甘噛みしてくる男へ、 「アンタ……盛大に酔ってるだろ……」 このエスタッドと言う国を統べる、頂点に男はいるから。 誰かしらが必ず傍に待機して、護衛と言う名の監視を行うことは仕方がないことなのだろうと思う。 思う、が。 「おい。やめろよ」 控えたディクスの視線を気にして、チャトラは慌てて男を振り払う。 生まれつきそうした監視が日常茶飯事で過ごして来た皇帝はともかく、理解はできても慣れることはできないのがチャトラだ。 「ディクスさんがいるだろ」 「影と思えばいい」 「思えるか。ばか」 戯れだろうと本気だろうと、誰かの目の前でいちゃつく皇帝の気が知れない。 と言うより、 「アンタね。話の流れ理解してる?」 「流れ」 割と不思議そうに繰り返す男へ、チャトラは小さく溜息をついた。 「嫁さんの話してたんだよ。オレ」 「――セヴィニア辺りに吹き込まれたか」 「吹き込まれたって何をだよ。……アンタに縁談勧めろって?」 「そう」 「言われる訳ないじゃん。オレ、あの人に激しく嫌われてんよ?」 三補佐の中でも一番の鉄面皮を思い出し、チャトラは唇を尖らせた。 あの冷徹さは、苦手だ。 「ではなぜ」 「いや……別に理由はないんだけどな。疑問に思っただけ」 「――仮に。私が特定の女性の寝室へ通うことがあるとして」 「な……なんだよ」 不意に耳元に熱い吐息とともに囁きこまれ、ぞわぞわと背筋を震わせてチャトラは呟いた。 「お前が独りの目覚めを迎えると思うと、胸が痛んで到底実行できそうにないね」 「アンタ頭煮えてる?」 「いいや?」 「んじゃ酔っ払ってるんだよな」 「何故そう思う」 「だって。オレが淋しがると思うの?」 「淋しくは――ないか」 「……どうかな」 淋しいか淋しくないかと聞かれたら、目覚めた瞬間の、いつの間にか潜り込んできた男がまた横で寝ている、と言うげんなり感を感じないだけ、一人での目覚めの方がマシかもしれない。淋しいかどうかの以前の問題だ。居心地が悪いとも思わなかったが、それでも毎夜毎夜、親しい間柄でもないのに夜這う男の感覚と言うものが理解できない。 と。 そう言い切ることは簡単だったけれど、それはあまりにも心無い気がして、チャトラは口ごもった。 「淋しい――だろう」 言って、皇帝が彼女のうなじに再び唇を寄せた。 軽い水音を立てて啄ばんでくるのは、男が明らかにチャトラの反応を見て楽しんでいる証拠だ。髪をかき上げられ、耳朶を弄られて、体から力が抜けるのを自覚した。 「や、め」 「やめない」 つれないお前に拒否権はない。 言外にそう匂わされて、しまったなと心の中でチャトラは舌打ちする。 どうやら皇帝のへそを曲げさせてしまったらしい。 だが、後悔はする。反省はしない。 だいたい、やめろとチャトラが抗議してやめてくれたことが過去に何度あったか? 「淋しいだろう」 「……淋しくない」 「淋しいだろう」 「な、に……」 繰り返しながら上着の裾をたくし上げた手に気を取られ、思わず肩越しに振り返った男の目を見てぞくりとする。 「アンタ……」 「うん、」 続く言葉は声にならなかった。 ……なんて目でオレを見る。 深遠を覗き込む色をしていた。 火のようなのに、冷たい。 胸元まではだけられ、悪戯を仕掛けてくる男の顔に思わずチャトラは手を伸ばし、ひた、と手のひらを当てる。 軽くいなすかと思った男は、割と真面目な顔をしたままチャトラを見つめ返した。 男の薄茶の瞳の色は好きだと思う。 「……そうだな、」 この茶色の瞳が別の何かに一転注がれるとしたら、 「淋しいかもしんねぇ」 少しは。 譲歩かもしれない。じっと男を見つめたまま囁くと、意を得たりと男が不意に笑った。 その笑みに目を奪われ、チャトラは思わず言葉を失う。 ……淋しいのはきっとアンタのほうだ。 無防備な笑顔にそう思った。 (20100616) 皇帝と猫にモドル
https://w.atwiki.jp/sol-bibliomaniax/pages/298.html
夫婦茶碗と同居人 町家というものはもともと店家と書き、店舗と住居が一体化したものだ。おもに京都の商家にみられたという。 だが黄道暦現在、そんなものは博物館の中くらいにしか残っていない。代わりにここトランキライザーイーストヤードではその復刻版が日本風の街並みに彩りを添えている。狭い戸口や格子戸など一般的にイメージしやすい町家もあれば、仕舞屋や掘付などとよばれる商家部分のない町家も混在している。外見こそ当時を忠実に表現してあるが、見えないところではインターネット回線や電気が通っているし、トイレは水洗式、台所もシステムキッチンになっていたりする。けれども雅な外観はそれだけで心が和む。 石畳の道をゆるりと歩く人影がある。西洋人形のような出で立ちの少女だ。レースが垂れ下がる豪華な日傘に、烏のように黒い髪。少女趣味を全面に押し出したような洋服は、和風の町とあまりにも合わない。 革靴が石畳を蹴る。だが音はしない。ひどく気取った仕草の少女を見て、すれ違った住人が振り返り、慌てて見なかったふりをした。 「――――相変わらず、町家のくせに生活感がないことだね」 しばらく歩いて、その人物は一件の町家の前で足を止めた。総二階と呼ばれる二階建てで二階の窓にガラスと格子を採用した作りは、明治から大正にかけて流行した町家のスタイルだ。少女は家の前に立つと、目立たないように木でできているインターフォンを押した。涼やかな鈴の音が響き、ややあって格子戸が開く。奇妙に落ち着いた青年と、くせ毛が動物の耳のように跳ねた青年が出迎える。 「ようこそ、珠月様」 にこりともせずに片方が言った。珠月――篭森珠月は気にせずに手に持った包みを差し出す。 「こんにちは、緋月に遠。今日は夕飯御馳走になります。これ、お土産」 「ありがとうございます。でも、珠月様にはたびたび夕食に招いてもらっているのだから、気にしなくてもよかったのに」 「気持ちよ、気持ち」 緋月――戦原緋月は慇懃に手土産を受け取る。対象的に後ろの星谷遠は、大きく身を乗り出した。 「中身何だ?」 「抹茶のババロアと黒ゴマプリン、黒蜜カステラ、九条ネギの飴よ」 「プリン!?」「食後にいただきます」 今にも土産の袋をもぎ取りそうな遠から、さりげなく袋を遠ざけつつ緋月は言った。がくりと遠が項垂れる。珠月は苦笑した。 「相変わらずねぇ。じゃ、お邪魔します」 中に入ると町家は気温が変わる。一般的な家宅と違い玄関に当たるものはない。代わりに通り庭と呼ばれる細長い土間が続いており、ここが廊下になる。そこに面して並んでいるのが部屋だ。一番表に近いのが『見店』で、ここは商売を行うところである。商家ではない二人は、ここを応接間にしている。次にあるのが『中の間』あるいは『玄関』と呼ばれる部屋。本来はここに客が通されるのだが、半分身内に近い珠月はさらに奥に進む。ちなみに何か用事があって人が止まる場合、この家では中の間で寝かせていたりする。 奥の間から先が本来ならプライベートスペースになる領域だ。 「いい香りがする。お味噌汁?」 「蕪の味噌汁です」 キッチンに当たる部分は走り庭と呼ばれる、通り庭の奥の部分にある。本来はかまどがあるものだが、流石にシステムキッチンになっている。土間に見える部分も、土の形状を残した特殊タイルで、学内で開発された建築素材だ。見えないところではセキュリティシステムだって作動しているのだろう。 そしてキッチンに面するようにある『台所』と呼ばれる部屋が、食堂兼団欒空間になる。この家の場合はなぜかそこに掘りごたつが用意されている。理由は、町家に住みたがったくせに遠が正座を拒んだからだ。 ちなみにさらに奥に行くと『奥の間』と呼ばれる主人の部屋、風呂屋洗面所手洗い、そして坪庭と倉がある。倉は完全にウォークインクローゼットになっているようだが、珠月は入ったことがない。ちなみに二階は二人の私室だという。縁側もあり、夏は花火をしたりする。流石に現代らしく縁側にはガラス戸や雨戸が付いているし、土間と庭の間にはかぎ付きの扉がある。あちこちに鍵がかかる部屋だってある。それでもプライバシーからは遠い作りだと思う。 「…………彼女できないよ?」 「唐突だな」 「不吉な予言するんじゃねえよ」 珠月の言葉に緋月は不思議そうな顔をし、遠は嫌そうな顔をした。あえて説明はせず、珠月はさっさと靴を脱いで台所に上がる。 「わーい、緋月のご飯久しぶり」 「楽しみにしてもらって悪いが、だいたい普通だ」 「普通が一番。ここ最近、パーティと会食が多くてさ。美味しくてもうんざりするよね」 うきうきした表情で珠月は当然のように上座に座る。 本格的な和食では女性が下座にいるものだが、内輪のあつまりでそこまで気にする人間はまずいない。ついでにイギリスはレディファーストの国なので、常に女性が優先だったりするがそれもまた関係ない。上座にいるのは、単に珠月の人格で故である。 「今日のメニューはなに?」 「蕪の味噌汁、キュウリと白菜の浅漬け、鮭とイクラの親子炊き込みご飯、小松菜と油揚げの煮びたし、エビときのこの炒め物」 すらすらと緋月が答える。この家の家事全般は彼の仕事だ。 「わー、美味しそう。あれ? でもこれに肉を与えなくていいの?」 遠を指差して不思議そうに珠月は首を傾げた。遠は現代っ子らしく、肉好きのジャンクフード好きである。彼のいる食事で肉がないことは珍しい。こくりと緋月は頷く。 「昼間に……昼間から焼き肉食い放題の店に入っていくのを正午に見かけて、これ以上肉は必要なかろうと」「なんで同居人の栄養管理までしてるのかしらね、この子は」 やれやれと珠月は天を仰いだ。梁を生かした町家は、天井すら美しい。流石に電気が通っているが、伝統も町家の風情を壊さない、木と和紙でできた独特のものだ。 珠月と遠が座っている間に、緋月はてきぱきと料理を運び、箸や皿を並べる。箸置きが動物の形をしているのに気付いて、珠月は頬を緩ませた。珠月は猫、遠は犬、緋月はうさぎだ。彼らの仕事中の風景しか見たことがない人間がこんな様子を見たら、速攻で眼科か脳外科に駆け込むに違いない。 心の中で笑いながら、おひつと茶碗を持って現れた緋月を見て、珠月は動きを止めた。 「…………」 客を招いての夕食では、礼儀として家人も客と同じ客用食器を使う。日常で使う食器を見せるのは失礼だからだ。だが、よく遊びにくる珠月の場合は普通に普段使いの使いなれた食器が出てくる。それはいい。それはよく知っている。だが、その茶碗は珠月が前に来た時に見たものとは違っていた。 「…………茶碗変えたの?」 色々突っ込みたいところはあったが、ぐっとこらえて慎重に珠月は尋ねた。藍色に桜の花びらが散っている客用茶碗に炊き込みご飯を盛りながら、緋月は頷く。 「前のは遠が割った」 「落しちゃったの?」 ご飯茶わんを受け取りながら珠月は尋ねた。肝心なところが抜けている遠は、よくうっかりものを壊す。だが、緋月は首を横に振った。 「紙飛行機を飛ばしていて、それを捕まえようとして食器棚に激突した。そのとき、たまたま食器棚の戸が空いていて」「はいはい、お馬鹿な理由なのは分かったよ」 できの悪い教え子を見る目で、珠月は遠を見た。遠は頬を膨らませる。 「だって町家ってせまいんだぜ!? 棚くらいぶつかる」 「漫画の影響受けて『町家格好いい!!』とか言って無理やり住居を町家にしたのはお前だ。緋月はマンションに住みたがっていたのに」 「いいんだ、珠月様」 茶碗にごはんを盛りながら緋月は言った。 「マンションを選んだのは攻めにくく守りやすい構造だからで、この家も町家に見えて耐火と耐震はしっかりしてるし、セキュリティも問題ない。梁を使った立体移動も可能だし、悪くない」 色々と家選びの基準が間違っている。珠月は頭を抱えた。 「緋月……遠をかばい続けなくてもいいんだよ?」 「別に。俺にこだわりがないだけだ」 小さな音を立てて茶碗が並べられる。珠月はこめかみに手を当てた。頭痛がする。 「こだわりがないのはいい。けどね、その茶碗……」 「セットで売ってたんだ。いいだろ?」 けろりとした顔で遠は言った。そわそわしていてすぐにでも食べ始めたいのが目に見えている。その前には藍色の大きな茶わんがある。そして対になるようなやや小ぶりの赤い茶碗が緋月の前に置かれている。 「なぜ、その茶碗?」 「え? だって俺は【スカイブルー】だし、緋月は【クリムゾンレッド】だろう? 青と赤でぴったりだと思って」 悪意など欠片もない顔で遠は笑った。分かっていない。珠月は頭痛がひどくなるのを感じる。 「その茶碗、なんていうか知ってる?」 「え? なんとか焼みたいな高い奴なのか?」 「いや、普通の大量生産品だけど……そういう大きさの違う対の茶碗はね、『夫婦茶碗』っていって夫婦が使うものなの。大きいのが男性、小さいのが女性用ね。日系のくせにそんなことも知らないの?」 遠は口をあけたまま凍りついた。本当に知らなかったらしい。珠月は緋月を振りかえった。黙々とお茶を入れている。 「緋月は当然知ってたよね?」 「無論。だが、さほど気にすることでもないだろう。セット商品は安いし、そもそも誰かが見るものでもない」 「いや、私が見てるよ? 普通に見てるよ」 珠月はため息をついた。遠の馬鹿さと緋月の無関心さは、上司としてたまに心配になる。 これで話は終わりとばかりに、珠月以外の二人は手を合わせて食べ始める。夫婦茶碗の一件は無視することに決めたらしい。珠月も箸を取って食べ始めた。 「――――美味しい」 だが、茶碗が気になって集中できない。 「あのさ、見てるのが私だからいいけど、某広報部女性に見られたりしたら翌日には学園中に噂が広まってるよ?」 「大した問題ではない」「いや、割と大した問題だよ」 彼女ができなくなるという意味で。 「弓印の同人誌が出回っても知らないよ?」 ブラックシープ商会広報部に所属する弓納持有華は、学園でもっとも有名な腐女子である。腐女子とは男同士の恋愛物語に萌える女性のことで、特に弓納持は実在する生徒や先生をモデルに書いたBL漫画や小説で有名だったりする。 「――――手遅れだ」 「マジで!?」 珠月はお茶を吐きだしそうになった。緋月は淡々としている。遠は多分意味が分かっていない。 「まあ、基本的にランカーになったことがあるすべての男は餌食だから、驚くべきことではあるまい」 「そんなにあるの!?」 珠月は驚愕した。珠月の情報網は細かいが、そんな部分までは伸びていない。こくりと緋月は頷いた。 「人間の発想力というのはすごいものだな」 「感心してる場合じゃないし、なんでそんなこと知ってるの?」 「珠月様と同じことを調べても仕方ないと思い、珠月様が関知しない情報を中心に情報網を張っているから」 私のせいなのだろうか。珠月は一瞬だけ本気で悩んだ。 「……とりあえず夫婦茶碗はやめようよ。私が新しいの買ってあげるし。清水焼なんてどうかな?」 気を取り直して、味噌汁に口をつけながら珠月は言った。緋月は軽く首を振る。 「平気だ。次に壊れたらお願いする」 「いや、そういうものを大事に精神の問題じゃなくてさ。ほら、その茶碗は副菜盛るのに使うとか色々扱い道はあるし」 「これでいい」 もう一度緋月は首を横に振った。珠月はため息をつく。 「あのね、だからそれは夫婦茶碗でさ」「珠月様が変えろというなら変える。けれど、そうでないならこれがいい」 きっぱりと緋月は言った。珠月は胡乱な視線を向ける。 「まさか、気に入ってるの?」 「珠月様」 諭すように緋月は言った。 「遠が悩んで選んできたものだ。それを簡単に買い替えるなんて、失礼だろう」 真っ当だった。非のうちどころもなく真っ当だった。珠月はがっくりとうなだれる。 「いい子……本当にいい子に育ったね。緋月」 「? お褒めに預かりまして」 あまり褒めていない。 「そう……それでいいの? 夫婦茶碗で? それにここの客用食器は結構いいものなのに、普段使いはそんな大量生産品で……器だって料理の一部なんだよ? 見栄えが違えば食欲だって変わるのに」 「こだわるなぁ、社長。緋月は良いって言ってるぜ?」 「お前はもう少し悩め、駄犬」 ぼそりと珠月は呟いた。普通の人間では聞こえない程度の呟きだが、狼のトランスジェニックである遠にははっきりと聞き取れる声量だ。 「え? なんだよ、その言い方!!」 「珠月様」 茶碗とおくと緋月は片手を伸ばした。そして自分より年下で小柄な主の頭を撫でる。 「心配してくれてありがとう。だが、平気だ。俺は気にしていないし、遠も気にしていない。遠が選んだものなら、相棒である俺は喜んで使うべきだろうと思う。いい茶碗を贈ってくれるというのは嬉しいが、それはまた次の機会。もし、今のものが使えなくなったラ送ってくれればいい」 珠月は緋月を見上げた。そして、最後に心の底から染みでるようなため息をつく。 「もういい。この熟年夫婦め」 「? 同居人だが」 「一々反応しなくてよろしい。もういい、食べてやる」 無言で珠月は食べ始めた。機嫌が悪いことは分かるがなぜ機嫌が悪いのか分からず、緋月はうろたえる。遠は機嫌の悪さにそもそも気づいていない。 「はあ、美味い! 緋月、おかわり」 「あ……ああ」 珠月のほうを窺いながら緋月は茶碗に炊き込みご飯を乗せて返す。 びくびくしながら窺ってくるくらいなら、初めから黙って茶碗を変えればいいのに。珠月は内心呆れかえった。それでも前言撤回しないのはまあ、きっといいことなのだろう。昔に比べればずっと丸くなったし、自分で考えて行動するようになった。いい傾向だ。だが、 「――――――あんたら、結婚できないよ」 「また何だ一体?」 「さっきから不吉な予言してるんじゃねえよ!!」 自覚がないところが結婚できない一番の理由だよ。珠月は言いかけたがやめた。そして声にならなかった言葉を炊き込みご飯と一緒に深く飲み込んだ。 終わり
https://w.atwiki.jp/9darts/pages/39.html
DARTSLIVE2 設置店舗 VSPHOENIX S 設置店舗 D-1X 設置店舗 DARTSLIVE2 設置店舗 店名 住所 ポイント千葉店 ダーツショップ ルーツ 千葉県千葉市中央区富士見2-14-1 EXビル6F スポーツウェーブ鉄腕24 千葉県千葉市中央区浜野町1025-59 ビリヤード Joker 千葉県館山市館山95-8 NEXT 千葉県浦安市北栄4-21-2 清和浦安マンション2F Gump×708 千葉県千葉市稲毛区園生町391-6 ダーツ&ビリヤード スクーデリア 千葉県市川市相之川4-6-18 YKビル2F J s BAR 千葉県千葉市若葉区千城台西1-38-3-1F Cafe DartsBar B-DOG 千葉県我孫子市天王台1-1-2 GARUDA 千葉県船橋市本中山7-21-2 小川ビル2F プール&ダーツ トリガー 千葉県佐倉市上座558-18 Player s Cafe Style 千葉県成田市ウイング土屋172 GRANDEZZA201 Darts Sportsbar RULE! 千葉県千葉市美浜区高洲1-22-10 金谷ビル2F Cross Road 千葉県千葉市花見川区犢橋町1518-1 バレルカフェ Aims 千葉県習志野市大久保1-16-18 プラザグレミオ2E カフェレストラン たまーる 千葉県木更津市東中央1-4-6-2F HeartY海神DARTS 千葉県船橋市海神6丁目8-11 堀内ビル3・RF PIZZA Sportsbar VIVO 千葉県船橋市前原西2-13-13 アロー津田沼駅前ビル5F Pool Darts Beep 千葉県千葉市稲毛区作草部町592-2-2F TAKO TACO ISLAND 千葉県八千代市八千代台北1-11-3 丸豊ビルB1F ダーツショップ MJ 千葉県柏市北柏3-14-1-2F-B ブルズ ブラック 千葉県四街道市四街道1-3-15 吉川ビル2F TRENTE 千葉県佐倉市王子台1-27-10 豊田ビル2階 marvellous 千葉県佐倉市上志津1668-4 銚子エースレーン 千葉県銚子市前宿町496 NATURALNINE AROMA 千葉県千葉市中央区新宿2-5-1 ホテルモンセラトン2F Swell 西千葉 千葉県千葉市中央区春日2-21-11 コンド千葉WEST BAR KING 千葉県我孫子市我孫子1-4-5 我孫子ビル2F アミューズメントタウン タイガー 千葉県印西市中央南1-8 千葉ニュータウン駅前センタービル1F ダーツバー フランキー 千葉県白井市冨士32-8 Reel 松戸 千葉県松戸市松戸新田94-118 富士見台店舗2F Rising Sun松戸 千葉県松戸市常盤平5-23-1-2F DARTS MUSIC Tommy s 千葉県松戸市北松戸2-3-71F SPORTS DARTS DaRGON 千葉県市川市八幡2-12-8 牧野ビル2F R・POOL@本八幡 千葉県市川市平田1-10-22 春日コーポ2F メジャーグランプリ 千葉県市川市大町358 -Bachi 88 Bachi- 千葉県船橋市湊町2-1-22 第1ヤノビル3F AZURE 千葉県船橋市本中山2-23-6 ジュネパレス4F Pizza darts One s 千葉県八千代市勝田台1-27-25 原田ビル3F D D Bar La-bit 千葉県柏市泉町6-57 横井ビル2F DogHouse Club 千葉県柏市旭町1-3-14 寺島ビル3F BAR PARADISO 千葉県東金市田間961-4-2F GROW 千葉県四街道市四街道1-3-6 宏和ビル2F 闘技場 千葉県八街市八街ろ-131-11 Western Dream 千葉県市原市山倉160-1 BULAN 千葉県木更津市富士見2-2-12 Bar Darts MOBARA Style PEACE 千葉県茂原市町保7-93 栄町バー ほしもん 千葉県千葉市中央区栄町38-7 ブルズアイ千葉店 千葉県千葉市中央区富士見1-14-7 NSビル3F PEACE5 千葉県千葉市中央区栄町9-4 米川ビル1F Girl s BAR RAGAZZA 千葉県千葉市中央区浜野町134-1 snazzy 千葉県千葉市花見川区花園1-19-11 ゆあみランド2F Rock Wells 千葉県千葉市中央区富士見2-19-4 Sports cafe MJ 千葉県千葉市若葉区みつわ台2-13-9 Cocktail Bar STAND BY ME 千葉県松戸市新松戸1-218 AB 千葉県松戸市新松戸1-160 シャムロック 千葉県流山市江戸川台東2-251-1 CAFE BAR SHOWA 千葉県我孫子市天王台1-1-3 リバーフォービルB1F トリポーズカフェ 千葉県松戸市稔台1-1-8 松倉ビル1F DARTS BAR BLUE HORSE 碧 千葉県松戸市本町23-3 アーク松戸ビル2F PAPABAMP 千葉県松戸市松戸1139-2 ライオンズステーションタワー1F-103 居酒屋バー COMFY 千葉県市川市南八幡4-7-6 ダイヤモンドマンション2F201 Other Side 千葉県市川市湊新田2-3-4 ダーツ道場 投龍門 千葉県市川市大野町3-1991-2 コング 千葉県船橋市本町4-4-7 船橋NTビルディング3F Darts Bar MIX 千葉県船橋市本町3-33-11-2F POCKET ACE 千葉県船橋市湊町3-11-15 FUTURE 千葉県船橋市夏見3-25-21 Fullback Bullshooter 北習志野 千葉県船橋市習志野台2-6-17 鈴木ビル3F Darts Bar GORRION 千葉県船橋市習志野台2-13-25-2F 居酒屋 大喜 千葉県船橋市習志野台1-12-1 平田マンション101 Pool KAISER 千葉県習志野市大久保3-12-9 シルバーバック 千葉県八千代市大和田新田168-2 DINING BAR SiX 千葉県柏市東1-2-45 サンライズイシド101 Darts Bar stinger 千葉県柏市旭町1-10-6 道脇ビル3F ビリヤード パルコ 千葉県浦安市北栄1-11-1 ホテル醍醐2F DARTS DINING BACCHUS 千葉県佐倉市西志津4-8-1 れすとらん Bar BICO 千葉県成田市ウイング土屋174-2F sports bar Vintage 千葉県成田市飯田町2-92 Billiards 1or8 千葉県香取市佐原イ-4178 章平ビル3F Dining Bar A.N.T 千葉県市原市五井中央東2-14-14 岡田ビル1F BREAK PRISON 千葉県市原市五井8974 隠れ家 DINING 影 KAGE 千葉県市原市山倉747-10 バンガラング 千葉県市原市二日市場830-3 Darts Bar B・E 千葉県市原市牛久569 STICKY 千葉県木更津市畑沢南1-20-7 ラ セレナータ 千葉県鴨川市横渚1101-3 TonicDiner 千葉県袖ケ浦市今井1-1-33 VSPHOENIX S 設置店舗 店名 住所 D-1X 設置店舗 店名 住所
https://w.atwiki.jp/papayaga0226/pages/170.html
(帰りたいけど帰れない、そう、私はスパイだから。スパイとしてしっかり任務を果たさないと。) 己に自己暗示をかけるかの如く、里沙はひたすら心の中で任務を果たさないとと呟き続ける。 そうでもしないと、精神的疲労が激しすぎてパンクしそうなのだ。 バナナ1本でマジゲンカ寸前とか、加減して殴ろうとして気絶させちゃうとか、リアクション見たさに 転ばされたりとか、ささやかな胸を揉まれるとか、付き合ってもいないのに浮気とか言われるとか。 まぁ、とてもじゃないけれどふざけるなこの野郎って気分なのは仕方のないことだ。 凹まされてもくじけない、そうじゃないと世の中渡ってはいけない。 くじけてもすぐに気持ちを立て直さなければ、いつまで経ってもこの嫌な気分からは抜け出せないのだ。 そう、こんなことは慣れている、ダークネスで数年怖い先輩達に揉まれ続けたのだから。 「で、今から何しようってわけ?」 里沙の疑問の声が、9人いると若干暑苦しいリビングに響く。 いつの間にか、下にいたはずのリンリンも2階にあがってきたので全員集合と相成ったわけだが。 愛を上座にテキトーに座る面々を見る限りは、何か話し合いのようなものが開かれるようだ。 両手にさゆみと絵里をはべらせた愛が、無駄に爽やかに笑ってこう言った。 「第259回目くらい、リゾナンター会議を今から行うんやよー」 「へぇー、あ、そう」 会議なのは分かった、だが何故何回開いたかを正確に言えないんだこのリーダーは。 っていうか、何を話し合う必要があるのか全く分からない。 個人的に言いたいことなら沢山ありすぎるくらいなのだが、会議ともなるとやはり そういう発言は出来ないし。 何を話し合うのかは知らないが、こういうところで思わぬ情報を得られる可能性もある。 里沙はツッコミモードから一気にスパイモードへと頭を切り換え、会議の開始を待つ。 「えーと、今日の会議の内容なんだけどもー、リゾナンターに入って日の浅い里沙ちゃんのために 今日は里沙ちゃんから皆に聞きたいことがあったら何でも聞いてねってことにするやよー」 「何でも聞いていいんだ…ふーん」 「あ、でも内容によっては答えがもらえないこともあるがし。これでも、超能力者組織やから 機密事項もあるんよ。まだ日が浅い里沙ちゃんにはちょっと話せないこともあるし、そこは 勘弁してほしいんやよ」 女好きなだけかと思っていたら、意外とこのリーダーちゃんとしている。 っていうか、これってかなりチャンスだよね。 質問の仕方さえちゃんとしてれば、貴重な掘り出し物クラスの情報が得られるかもしれない。 そう思ったものの、里沙はやはり自分が聞きたいことを聞こうと思った。 と、いうよりも機密事項はいずれ教えてもらえるだろうし、今は自分の主張を言っておかねば気が済まない。 スパイとしてしっかり任務を果たさないと、という思いは日頃の思いをぶちまけられるチャンスに跡形もなく消え去った。 「じゃあ、質問その1。何で、超能力組織なのに超能力戦隊って名乗ってるわけ? 組織なのに戦隊っておかしくない?」 「あー、それさゆが言い出しっぺなんです。オーラの色が、何だか戦隊物みたいだって話で盛り上がったから じゃあ、組織の名前を超能力戦隊リゾナンターとかにしたら面白いかなぁって」 「言わせてもらってもいいかな、密かに戦隊物好きな女子として」 「どうぞなの」 「戦隊は5人しか認めません、9人とか多すぎ。4人は基地に待機して5人のバックアップとかなら まだ許せるけど、全員がメインなのはおかしいと思う。学芸会で全員がシンデレラやるような そんな違和感を覚えるので、戦隊って名乗るのはやめるべき。なお、超能力戦士リゾナンターに 改名するなら、9人でも何ら問題はないと思う、以上!」 一気に言い切って、里沙は少し息をつく。 以前から気になっていたことの一つに対する解答を得られた上、その解答に対する主張が出来たことで 里沙は小さな満足感に浸っていた。 ちなみに、戦隊物は5人じゃないと駄目なのに戦士となると9人でもいいという理屈は 里沙の好きなマンガ「美少女戦士モーニングムーン」の影響である。 モーニングムーンも最初のクールは5人+頭に太陽の模様のある猫という構成であったが、クールを 重ねる事に1人また1人と増えた。なので、戦士ならば5人以上いても問題ないというのが里沙の主張である。 1人満足げな里沙だが、他の8人はというと。 モーニングムーンを知っているのか、その主張にウンウンと頷いているリンリン。 後の7人はというと、惚けた顔で里沙を見つめている。 リゾナンターの中で唯一の常識人という認識が、この主張で崩れたことに里沙は気付かない。 気付かないまま里沙は一気に主張を続ける、さっき以上って自分で言い切ったというのに。 「だいたい、戦隊名乗るんだったら全身覆うスーツとか、光線銃とかロボットとか出して欲しいよね。 後、移動用のバイクとかさー。後、リーダーはレッドじゃないと駄目だし、イエローはカレー大好きじゃないと 許せないし、グリーンは陰が薄いんだけどいい人じゃないといけないし、ピンクがヒロインだけどピンクは もうちょっと可憐さの中に気の強さが見えて欲しいし、後ブラックがいないのはおかしい! ブラックのいない戦隊物なんて胡椒のかかっていない醤油ラーメンくらい味気ない!っていうか」 「ガキさん、落ち着くっちゃ。熱い思いは充分伝わったけん、とりあえずいつものガキさんに戻ってほしいっちゃ。 ブルーは沈着冷静・頭脳明晰キャラだけどれーなには合わんよね…」 「まさか、ガキさんが戦隊物オタだとは思わなかったの。とりあえずその理屈で行けばヒロインはさゆしかいないの。 唯一のヒロインだから皆にモテモテ…さゆにこれ以上ないぴったりな設定なの」 「えー、オレンジとかどうしたらいいのー?絵里だって何か役割欲しいよ、ピンチに颯爽と駆けつける憎い奴とかー、 決め台詞つきで超強い必殺技とか出しちゃって、一躍一番人気になるの」 「やった、小春がリーダー!やったやったー!主人公主人公!」 「…パープルとかどないしたらええねん。あれか、パープルはレッドとブルーを足した設定なら問題ないん?」 「ジュンジュンの色、何キャラになるダ?」 「リンリンは陰薄くないヨ?本当だヨ?バッチリデース?」 「あーし、別にカレーそこまで好きじゃないんだけどどうしたらいいわけ?里沙ちゃんの好みの女になるために、 好きでもないカレーを大好きって言いながら食べるべきなわけ?」 女3人で姦しいと書くが、女9人だとカオスなことになるもので。 第259回目くらい、リゾナンター会議(というより、里沙の主張大会)はまだまだ続く。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/968.html
ナナリィ 3 「女王陛下、お目覚めくださいませ」 声とともに軽く揺さぶる手に、ナナリィは目を覚ました。目を覚ますと言ってもナナリィは目が見えない。朝が来たのかどうかも良くわからない。ただ間近に温かみを感じる。 「・・・・・・あさ?」 「朝はまだにございます、陛下」 けれどと女官は言う。重臣らが、どうしても女王であるナナリィに来てほしいのだと。 ナナリィはうなずき、促されるままに起き上がった。ここ何日かナナリィは公務を行っていなかった。公務と言ってもナナリィは目が見えないし、歩くこともできない。重臣の奏上を聞き、あるいは謁見を行うくらいのことしかできない。それら限られた公務も、すべて重臣らが取り仕切っている。行うようにと求められたことの他は、どうすればいいかすらわからない。 それでもナナリィにはとてもつらいことで、永い奏上を聞いた後など、疲れ切って伏せることも少なくなかった。父王が生きていて、兄様がいてくれたころは、まだこれほど弱くは無かった。けれど今、ナナリィは女王なのだ。 女官に促されるまま起き、車椅子に乗せられて身支度の間へと連れてゆかれる。そこで髪を梳かし、着替えをして、重臣らの待つところへ向かうのだ。車椅子に乗せられたナナリィは抗うことも、また己の力で行うこともできない。ナナリィは目が見えない。 けれどほんの少しだけ、人とは違うものを感じることができる。たとえば、車椅子を押されて連れてゆかれた先の部屋に張り詰めた気を感じ取ることができた。 ねっとりと粘りつくような重い気だった。そのくせ肌はぴりぴりと粟立つように感じられる。とてもとても嫌な感じがするとナナリィは思った。きっと、嫌なことが起きているのだと。 重臣たちの立ち上がる気配がする。ナナリィを乗せた車椅子は、部屋の上座へしつらえられた席へと向かってゆく。そして女官に抱きかかえられてその席へと移る。そのナナリィへ向けて、お休みになられていたところをお目覚めいただき恐縮に存じますなどと重臣は言う。 「女王陛下、我らに「帝國」皇帝への親書を準備するようお命じください」 お命じください、ということをナナリィに断ることなどできなかった。問うても何の応えもないし、命じるまでそのままであるのだから。ナナリィは言う。 「それでは「帝国」皇帝への親書を準備してください」 「かしこまりました。女王陛下。祐筆はこれへ」 命じるように、と言われたときにはもう何もかもが終わっている、そんなことがたくさんある。今日もそうだ。祐筆はやってきてすぐに、親書原案を奏上いたしますと言った。 読み上げられるそれは、難しい言葉で語られていた。国と国との間に取り交わされる言葉は、話し言葉とは違う。けれど言うことはそれほど変わらない。ナナリィにはわかる。 読み上げられる親書は、話し言葉にすればこういっていた。 『とても偉大で、心広い「帝國」皇帝リランディア陛下へ、トイトブルグ王国女王ナナリィよりお手紙差し上げます。以前にあった「帝國」との誤解も、心広いリランディア陛下が良く良く察してくださったために、古くからの間柄のように元通りとなりました。ナナリィはたいへん感謝しております。 リランディア陛下の御心は、リランディア陛下のお遣わしになった大使がよくよく取り計らっていたため、ナナリィは心安らかに暮らすことができました』 読み上げられて、ナナリィは気付いた。その大使がいない。 大使は、国と国とのやりとりの間に立つものだ。今、ナナリィが聞いているようなむつかしいことばをよくよく聞きとって大使の国へと届けるのが仕事だと聞いていた。 だから普通は、大使に手紙を預ける前に、大使の前で手紙を読み上げ、大使にそれを示して、間違いが無いかどうか確かめさせたあと、大使の前で封をして預ける。 なのに今、大使が来ているとは聞かされていない。それでも読み上げる声は続く。 『今、王国は大変なこととなっております。リランディア陛下のお遣わしになった大使は、リランディア陛下のお心を良く表し、王国の助けとなってくれました。 しかしナナリィとリランディア陛下の仲を引き裂こうとするものが、その大使を殺めてしまいました。ナナリィは大変悲しみ、途方に暮れております』 聞き流しかけて、気付いた。 大使が殺められたと、今言った。 『リランディア陛下はどうかどうか心をお鎮めになられますよう。トイトブルグ王国とナナリィは、決して帝國に二心など持ってはいません。ナナリィをお信じくださいますよう心からお願いいたします』 ナナリィには大使の顔は判らない。けれど声は覚えている。何度も謁見した。おとしよりなのに大きな張りのある声で話す人だった。きっと体も大きな人なのだと思っていた。 読み上げは続く。王国は今混乱を極めていると。王国にあった「神々と神意をめぐる諸問題」が大きく取り上げられ、人々はあいあらそっている、と。 あまりのことに、胸が痛くなるほどだった。心の臓が止まりそうだった。何が起きているのだろう。いつの間にそのようなことになったのだろう。 父上様がおられたころは、王国は平和だったはずだ。兄上様の立太子の儀のときには、王宮前広場に王国の人々が集まってくれて、祝ってくれたのに。兄上様が王国を巡幸したときにも人々はこぞって道に詰め寄せたと聞いていたのに。 『ナナリィはリランディア陛下と陛下の大使のために、大きなお葬式を行ってお弔いをいたします。ナナリィは何より、リランディア陛下のお悲しみを察して止みません。お心の広いリランディア陛下は、きっとナナリィの本当の気持ちをお察しいただけると信じております』 悲しかった。今の今まで、誰もナナリィに教えてくれなかった。 何もできない。何もできない。どうすればいいのかもわからない。ぶるぶると体が震えて止まらない。 やっとわかった。謁見の間で騒ぎになったときにはもう、王国は今のようになっていた。胸が痛い。息ができない。震える指で胸を掴む。 「・・・・・・助けて」 「いかがなされましたか女王陛下」 「兄様・・・・・・」 「大変だ。侍医をここへ!」 「待て、駄目だ。女王陛下。御裁可を」 声は言う。 「陛下、親書御裁可をお示しください」 けれどナナリィは何も応えられなかった。何もかもが遠く聞こえる。そのまま、ふつりと切れた。