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アパートのドア ドアノブに手をかけるスーツ姿の男、右手には拳銃。 ドンっと勢いよく開くドア。 清水「平田!動くな!」 平田「ちきしょう!サツか!」 拳銃を構える平田、銃声と共に倒れる。 平田「ぎゃーっ!」 拳銃を構えている清水、彼の拳銃からは煙が立っている。 「お手柄ですね!」 リビング 「警部、お手柄でしたね!」 「流石の腕前。」 清水「もういいだろう、その辺で。」 「いやいや、今回もスピード解決でしたね。」 清水「捜査はチームワークだ、俺一人の手柄じゃないよ。」 「流石警部。」 「人格者だ。」 ガチャっと扉が開き、息子がリビングへ入って来る。 清水「おう透、もう夕飯は食べたのか?」 透「…。」 清水「久しぶりに一緒に夕飯食べんか?」 透は黙ってリビングを出る。 清水「あいつ、どうしたんだ?」 「ちょっと騒ぎすぎましたかね?」 透の母「あの子、帰ってからずっと変なんですよ、会社で何かあったのかしら。」 清水「…。」 出かける透。 沙織の部屋 ただ一人、部屋の中でぼんやりしている沙織。 沙織の脳裏で神田、天童が笑いかけてくる。 その笑顔は突然狂気に満ちたおぞましい表情へと変化する。 力強く目を閉じる沙織。 ピンポーン 不意にインターホンが鳴る。 玄関ドアのドアスコープから外をのぞく。 透。 突然の訪問者に戸惑う沙織、玄関に立ち尽くす。
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一人称まとめ 貴銃士や周辺人物の一人称をまとめてます。 2次創作など行うときの参考にどうぞ 貴銃士まとめ (R登場の貴銃士) 名前 一人称 マークス 俺 ライク・ツー 俺 エンフィールド 僕 スナイダー 俺 ジョージ 俺 ケンタッキー 俺、自分(マスターの前のみ「自分」と言うシーンあり) ペンシルヴァニア 俺 スプリングフィールド 僕 シャルルヴィル ボク シャスポー 僕 グラース 僕 タバティエール 俺 ドライゼ 俺、私(場所や相手で使い分けてる模様。士官学校の生徒や初対面の相手等には「私」) エルメ 俺 ジーグブルート 俺 ゴースト 俺(素が出るときのみ「ワイ」) 十手 俺 邑田 わし 在坂 在坂 八九 俺 キセル 俺 カール 僕 ローレンツ 俺 ベルガー 俺 ファル 私 ミカエル 僕 ベネッタ 俺 カルカノーレ オレ
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もともと淡いものだった長政への愛情が完全に立ち消えたのは、 そんな夜を幾度重ねた果てのことであったか。 いつしか、彼と体をつなげている最中にも、いかにこの苦行をやり過ごすか ということにばかり意識が向いてしまう。己の体を組み敷いて、 開いた足の間で荒い息をつきながら律動する長政の様子は滑稽ですらあった。 戦場で濡れ始めたのは、その時期と前後する。 殺戮の苦痛に懊悩しながらも、市は戦乱の中にあるうち、次第に性的な快楽を 感じ始めていた。土埃の混じる腥風に、断末魔の悲鳴に、男たちの合戦に、 気づけば、たまらなく欲情していた。 血で血を洗う惨状の中で、しとどに足の間を濡らしていた。 「……市、は……」 細くつぶやいて、市は濡れた陰部のなかへと指を進める。 生娘を思わせて狭い穴は、ぬるぬると滑りながら小作りな爪先を受け入れた。 疼痛はあるが、長政の欲望が突き入れられたときの衝撃に比べれば微々たるものだ。 浅い呼吸を繰り返しながら、市は体の奥底から湧き出してくる愛液を潤滑油に、 細指を胎内へ押し込める。 腰骨の辺りが甘く疼き、蒸れる湯気の中であるというのに背筋が総毛だった。 戦場で濡れ出すことは度々だが、自慰によってくすぶる欲情の火を鎮めようと することは少ない。市にとて慎みの心はあったし、自分の体をいじくりすぎて、 長政にそれを感づかれるのが恐ろしかった。 しかし、今日ばかりは、別だ。 じんじんと疼くこの部位を、自分の中にひろがるこの空洞を何とかして 埋めて満たして鎮めなければ……気が、おかしくなってしまいそうだった。 一人遊び6
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リパコールはこの世に ただ一人 その他の者は みな死人 運命に従うは敗者 運命に打ち勝つのが京都 リパコールはこの世に ただ一人 その他の者は みな助手 運命に従うは敗者 運命に打ち勝つのが京都 ケートニアーを制すに 武器は無駄 花を摘むのに 紙が無駄なように リパコールはこの世に ただ一人 その他の者は みな死人 運命に従うは敗者 運命に打ち勝つのが京都 WP可能化剤も財宝も不要 欲を捨てれば スカルムレイはお前(ロリコン)のもの 人は リパコールを支配しようとし FFは 人を再教育しようとする 人は リパコールを支配しようとし FFは 人を再教育しようとする 最後に勝つのは FFなのに シェルケンはそれを 認めたがらない その手に WPがあったならお前は WPの主人 だが首まで WPに埋まったらお前は モーニ失調 生命の意味を知ってぴすてぃるを思いきり楽しもう リパコールはこの世に ただ一人 その他の者は みな彼のラヴュール 運命に従うは敗者 運命に打ち勝つのがリファーリン 天もイェクトも お前のものなのに 男の隣の取り合いをするなんて 天もカーナも お前のものなのに 自分の居場所の取り合いをするなんて 人生を楽しむのがリパコールへの讃歌 人生を苦しむのは連邦への冒涜 鳥たちが囁く「いすか、いすか」と 花の蕾が開くとき「もう゛ぃ、もう゛ぃ」と私の名を呼ぶ モーニはここに極まり式さえ忘れる 社長はこの世に ただ一人 その他の者は みな社員ですww 運命に従うは車両 運命に打ち勝つのが武装列車 ハフリを制すに 武器は不要 人体実験に 武器が不要なように 黄金も財宝も不要 欲を捨てれば リパコールはお前のm くそっ、リパコールだ。 逃げるぞ、自転車出せ
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書籍情報 あらすじ 既刊一覧 関連リンク 書籍情報 タイトル 救いをこの手に 著者 長考師 イラスト bob 出版社 ポニーキャニオン レーベル ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ Nコード N2112CC 連載開始 2014年 05月06日 備考 第三回なろうコン大賞受賞 あらすじ 辰巳東吾(トーゴ)が気がつくとそこは異世界、パンツ一丁で放り出された先は魔物の楽園『魔園(まえん)』と呼ばれる無人島。トーゴは誰もいない無人の大地にて殺した魔物のスキルを奪う《吸収スキル》を使用して生きて行く。 ある日無人島に流れ着いた難破船を見つけるトーゴ。そこに乗り込んでいたのは勇者パーティーだった。 既刊一覧 タイトル 発売日 分類 ISBN 値段 詳細ページ ストア ランキングデータ 救いをこの手に 2015年 12月03日 文庫 978-4-86529-171-1 650円 ぽにきゃんBOOKS Amazon honto 書籍データ 関連リンク Web版 「救いをこの手に」
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「おはよう~蒼樹」 教室に入って早々にウザイ奴に会った。 藍沢真人、それがこいつの名前で180cmの巨体で毎回毎回僕にちょっかいをかけに来るからうるさい、それでも僕の少ない友人だ。 「真人何か様か」 「うん、どうして昨日休んだの~?」 「言って僕に利益あるのか」 僕の肩に手を回していた真人の手を振り解き自分の席に向かった。 後ろで真人が「差別だ」とか「訴えてやる」とか言ってるがあえてそれは無視・・・ 席に座ると前の席の男子が話しかけてきた。 「おはよう蒼樹、もうすぐ体育祭だけど何に出る?ついでに僕は長距離にするよ」 この人物の名前は斉藤功大と言ってこのクラスの委員長でもある。 陸上部に所属している功大は、入部してすぐに長距離でレギュラーになっていて新人戦でも優勝したらしい、彼も私の少ない友人の一人だ。 「僕はリレーで良いよ」 「はは、ま、お互いがんばろう」 そう話している間に朝のホームルームが始まった。 「AをC3と仮定して、3xをEとしておくと・・・」 4時間目になり、教卓では数学の先生が授業をしている。 私は先生が黒板に書いてることをノートに書いていた。 すると、後ろから丸まった紙が飛んできた。 私は紙の中身を見た。 『 冬那ちゃん、今朝から少し元気ないけどどうしたの? 私で良かったら力になるよ By翔子 』 私は紙を飛ばした張本人を見た。 髪はボブへヤーで、人懐っこい笑みをこちらに向けていた少女、それが紙を飛ばした張本人である斉藤 翔子である。 陸上部に居る彼女には同じ陸上部に双子の兄がいるらしく、よく先生達に二人で表彰されているのをよく見たことがある。 そして、授業が終わった。 私は不必要になった授業用具を鞄に入れた。 横から翔子ともう一人の子が一緒に弁当食べようと言ってきた。 私は彼女達と一緒に弁当を食べることにした。 「蒼樹~弁当たべよう~」 「あ、僕も一緒して良いかい?」 4時間目が終わり、僕の席に真人と功大が何時もの様にやって来て弁当を一緒に食べようと言ってきた。 「いいけど、何所で食べる?」 「・・・・」 「・・・・」 2人は腕を組んで何所で食べるか考えていて、すぐに結論が出たと思ったらしく、すぐに答えた。 「「屋上」」 「じゃー屋上で決定ね」 僕らは弁当を持って屋上に向かった」 ――屋上にて―― 「ね~ね~翔子ちゃん、弁当美味しそうだね」 私が弁当を開くと翔子が猫の様に目をキラキラさせていた。 「翔子・・・すこしほしいなら言ってよ」 翔子が私の弁当をほしいと言って来るのは何時ものことで、私たちの会話をもう一人の友人が聞いて笑っていた。 その少女は、ハーフなのだろう長い金色の髪後ろで一つに束ねていて、をで翡翠色の目をしている。ま、実際にフランス人と日本人のハーフだけどね。名前は雛戯エレナと言う私の友人だ。 「そう言えば、冬咲 蒼樹っていう子のこと知ってる?」 私は2人に彼のことを聞いてみた。 その時、屋上の入り口のドアが開いた。 「あ、功だ」 翔子がニコニコと手を振る。 私は翔子の手を振る方向を見た。 そこには3人の男子生徒が居た。 一人は170cmは越えるだろう身長の柔和な少年 もう一人は翔子に手を振っている眼鏡の少年 そして・・・・今うわさした蒼樹だった。
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「………ぅ…」 泣きたくなるような全身の痛みで、アーサーは目を覚ました。 靄がかかっていたような思考が、ずきずきとした痛みに急速に覚醒していく。 「………!」 覚醒しきった頭でまず考えたのは、いつも持っていたパペット―ロッギーの行方だった。 いつも手にはめていた彼が、今はどこにもいない。 慌てたように辺りを見回し、そしてそれは程なく見つかった。 「っ!」 しかし、そのパペットはずたずたにされ、もはや原型を留めていなかった。 辛うじてパペットの面影が分かる程度だ。 幼い頃から愛用していたパペットの変わり果てた姿にショックを受けたが、悲しみにくれている暇はなかった。 (そうだ、長久…!) 階段から落とされる直前、アーサーが助けを求めようとした階下の相手。 彼は、無事なのだろうか。 そうだ、それに、ハヅルを助けてもらわなくては。 立ち上がろうとしたが、落ちた時に足を捻ったのか、全身を打ちつけたからか、体中に力が入らない。 仕方なく、歯を食い縛って応接室まで這っていった。 応接室は薄暗い。 灯りのスイッチには這い蹲った状態では手が届かず、立ち上がる気力もない。 それでも、全く見えないわけではないので、じりじりと這いながら辺りを見回す。 そうして見つけたのは、壁に寄りかかってぐったりと座り込んでいる長久の姿だった。 「……!!」 心臓が、跳ね上がった。 彼も、ハヅルと同じように、やられてしまったのか。 おそるおそる、彼に近づく。 灯りの消えた部屋の中は薄暗かったが、その喉元にくっきりと残る手の痕は、はっきりと見ることが出来た。 「ひっ…!」 それがあまりにも痛々しく禍々しくて、思わず小さく悲鳴をあげて後ずさる。 どうしよう、どうしよう。それだけがアーサーの頭の中を駆け巡っていた。 死んでいるのか、いや体は温かい、まだ間に合うのか、早く助けを呼ばなくては。 そうだ、救急車、と電話を振り仰いで、行動が止まった。 アーサーは、パペットのロッギー越しでしか―腹話術でしか他人と会話できない。 普通に話そうとしても、言葉が口から出てこないのだ。 無理に言葉を出そうとしても、意味不明な唸り声しか出せない。 言葉に不自由しているわけではない。一種のトラウマのようなものだ。 今、ロッギーはいない。 頼れる人は、誰もいない。 アーサーは今、一人だ。 「………」 頑張らなくては、頑張らなくては。 自分が頑張らないと、二人が死んでしまう。 自分が、何とかするんだ。 日本には“火事場のお馬鹿力”なんて言葉もあるじゃないか。 きっと大丈夫だ。自分は、出来る。 自己暗示のように頭の中で繰り返し、泣きそうになるのを辛うじて堪えて、二人を助ける方法を考えようと頭をフル回転させる。 と、不意に電話が鳴り出した。 「!!」 ルルルルル、という電話特有の機械音に、思わずびくっと体を震わせる。 この応接室で電話があるのは、紅のデスクだけだ。 デスクまで這っていくと、何とか椅子によじ登って電話を見つめる。 「………」 アーサーに、余裕はなかった。 この電話が誰かは分からない。 けれど、助けを求めることが、できるのではないか。 (…大丈夫だ、大丈夫だ。 もしかしたら、自分で分かってないだけで、きちんと話せるかもしれないじゃないか。 やる前から決め付けちゃいけない。ベニー姉さんだって言ってた。 長々と話すわけじゃない、一言だ。たった一言、「助けて」って言えばいいんだ。 それぐらいなら、きっと大丈夫だ…) 自己暗示でもかけるように、何度も何度も頭の中で繰り返す。 意を決すと、震える手で受話器を取り、耳に当てた。 […もしもし?] 「……!!」 心構えはしていたはずだった。 しかし、相手の声を聞き、答える瞬間になって、息が詰まったように呼吸が苦しくなった。 心臓の音が、電話の向こうにも聞こえそうなほどどきどきといっている。 アーサーは、受話器を持ったまま固まってしまった。 (言え。言え。たった一言だ。たった一言話せばいいんだ。 助けて、と言うんだ。二人を助けて、と言うんだ…!!) 頭の中で何度もそう繰り返しているのに、口から出てくるのはひゅうひゅうという息の音だけ。 電話の向こうの人物は怪訝そうに、もしもし、と繰り返している。 (早く!早く!!何か言わないと、このままじゃ切られちゃう!!) 焦れば焦るほど、声は喉の奥に引っ込んでいってしまう。 心臓の音がさらに大きく聞こえ、冷や汗が流れる。 気ばかりが急いて、何も出来ない。 何も、出来ない。 自分は、何も出来ない。 誰かの助けがなければ、一人では、電話の応対すら出来ないお荷物だ。 大事な人の危機に、助けを求めることすら出来ない、役立たずだ。 そう気づいたアーサーの目から、一筋の涙が流れた。 「………ぅぐ……」 階段を転げ落ちた時に打ち付けた全身の痛み。 自身が殺されかけた恐怖、ハヅルや長久を喪ってしまうのではないかという恐怖。 幼い頃から愛用し、いつも一緒にいたロッギーを喪った悲しみ。 ひどく静かで薄暗い部屋にたった一人でいる寂しさ。 電話の緊張、声を出すことができない焦り。 短時間に色んなものに打ちのめされ、感情がごちゃ混ぜになって溢れてきた涙を、アーサーは止めることが出来なかった。 「ぅ、ぅう゛………ぅああぁぁぁああぁ……!!」 そのまま、唸り声をあげて泣いた。 自分が電話をしていることも忘れ、泣き続けた。 一人ぼっちの影 (同時刻、とある場所では) 「…見つけたぞ」 「…おや、誰かと思えば7年前の少年じゃないか。大きくなったねぇ」 「ほざけ。すぐにその口を潰してやろう」 (研究者と鴉が、対峙していた)
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壱 弐 参 極 名前 小袖の手 (こそでのて) セリフ 壱 「素敵な着物を着たいなー」 弐 「もうちょっと可愛いガラがいいかなー」 参 「綺麗な飾りも欲しいよね」 極 「どう?あなた好みになれたかな♪」 解説 着物の袖からスッと手をのばす妖怪。非業の死を遂げた女性の霊が叶わなかった願いを嘆いて化けて出るのだと言う。 レアリティ 必要法力 攻 防 知 壱 HR 17 1760 1940 1540 弐 1940 2140 1700 参 2140 2350 1870 極 2350 2590 2060 術式名 属性 MAX Lv 効果 専:蒼白の手 水 6 自分自身の攻防アップ お邪魔戦術式 発動率 敵HPダウン 高 備考:
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前ページ次ページプレデター・ハルケギニア ベッドの中でルイズは考えていた。ワルドと自分は親同士が決めた許婚だ。 何事もなければいずれ二人は結婚する事となる。それはわかっていたし、不満も無い。 勝手に親が決めた事、そういう気持ちが全く無いと言えば嘘になる。 しかし幼少の頃からワルドは憧れだったし、久しぶりに再会した彼も昔と変わらず、 いや、昔以上に魅力的だった。肩書きも魔法衛士隊の隊長と申し分ない物だ。 断るほうがどうかしている。 しかし、何か、よくはわからないが本当にこれでいいのか、そんな感情にも囚われるのだ。 それは彼女の一人の人間としての、あるいは女としての本能的な直感だったのかもしれない。 悶々と考え込んでいる内にルイズは眠りに落ちていた。 「夜明け前に着いたか。流石は韻竜だな」 亜人の腰の剣が喋る。夜明け前の薄暗さに包まれた森の中に佇むのは 韻竜のシルフィールド、ルイズの召喚した亜人、そしてその腰に差された喋る大剣だ。 この何とも奇妙な一行はルイズ達の貨物船を追い抜き既にアルビオンへと到着していた。 「じゃ、じゃあ私はこれで帰らせてもらうのね!」 そう言い放つとシルフィールドが飛び上がろうとする。 しかし飛び上がろうとしたその時、彼女の鼻面の目の前に亜人の手が差し出された。 亜人の手に握られているのは不気味な小動物の頭骨を繋いだ首飾りであった。 亜人の首に掛けられていた物だ。 「く、くれるの?」 亜人は答えない。黙って彼女の前に首飾りの握られた手を差し出している。 シルフィールドが恐る恐るその首飾りの一端に爪を引っ掛ける。 同時に首飾りは亜人の手から離れ、亜人が歩き出す。 「じゃあな韻竜。ありがとよ」 亜人が歩き出すとともに、剣が謝礼を述べる。 やがて亜人の姿は森の奥へと消えていった。 その場にぽつんと残されたシルフィールドは渡された首飾りを見つめていた。 「どうしよう……いらないけど……捨てたら呪われそうなのね」 少しの間シルフィールドはその首飾りを困惑した表情で見つめていたが やがて、それを角に引っ掛けると空中に飛び上がり主人の待つラ・ロシェールへと帰って行った。 「ルイズ、ルイズ、起きるんだ」 誰かが自身の体を揺すっている。目を開いて見るとそれがワルドである事が分かった。 「ふにゃ?ワルド、もう朝なの?」 「ああ、それは間違いないが少しまずいことになった。すぐに着替えて甲板に行くぞ」 ワルドの口調や表情から何か尋常では無い雰囲気を感じ取ったルイズはすぐにベットから飛び起きた。 「あの、ワルド……その……」 ルイズが少し困った様子でワルドを見つめる。 「ん?あ、ああ、すまない。部屋の前で待っているよ」 甲板に出ると朝日が二人を照らした。船の前方には浮遊大陸のアルビオンが肉眼で確認できる。 見ると貨物船にそばにもう一艘、船が横付けされているのが見えた。 船の大きさとしてはルイズ達の貨物船より一回りほど大きい。 黒い船体から突き出た数十の大砲がこちらに向けられている。 甲板の上からはボウガンや銃で武装した男達がこちらを見下ろしている。 「く、空賊船!?」 「ああ、まさかこんな所でとはね。最近、活動が活発だとは聞いていたが……」 ルイズが驚きの声を上げ、ワルドが表情を曇らせる。 空賊船から続々と男達が飛び移ってくる。 最後に現れた眼帯で片目を覆った髭面の男が貨物船の船員を見回すと、開口一番にこう言った。 「船長は誰でぇ?」 「ふぁ~あ」 朝日に照らされるラ・ロシェールの路上でキュルケは大きな欠伸をした。 路上には既に大勢の人々が行き来している。例え住んでいる街で残虐な殺人事件が起こったとしても 人々の生活は変わらずに流れていくし、そうしなければ生きては行けない。 「あんな安っぽい部屋じゃよく眠れないわ」 三人は昨晩、殺人現場から少し離れた安宿に泊まることとなった。 「しかし、これからどうするんだキュルケ?そう何泊もできる程の金は持ってないぞ僕は」 「実を言うと私たちもそんなに持ち合わせ無いのよね。慌ててすっ飛んで来たから」 ギーシュの言葉にキュルケも肩をすくめて答える。 豪華な宿に大勢で何泊もできたのは王室から資金を持たされているルイズやワルドがいたからである。 「まあ、いざとなったらあなたのシルフィールドで頼むわ」 キュルケがそう言いながらタバサの頭をくしゃくしゃと撫で回す。 その時、不意に街を行き来する人々がざわつき始めた。 見るとみな空を見上げている。 「どうしたのかしら?」 キュルケ達も人々と共に空を見上げた。 見ると一艘の船がラ・ロシェールに向かって飛行して来ているのだ。 「あれは……トリステイン空軍の物じゃないか?何でこんな所に?」 ギーシュが困惑した口調で言う。 やがて船は山岳の波止場へと止まり、中から続々とマント姿の男達が出てくる。 「な、魔法衛士じゃないかあれは!?」 続々と船を降りる魔法衛士の先頭には一人の女性が立っていた。 腰まで伸ばした金髪に吊りあがった眼鏡。 それは紛れも無い、王立アカデミーの研究員、エレオノールその人であった。 前ページ次ページプレデター・ハルケギニア
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126: 名前:サスライ☆07/30(金) 21 16 54 ジャヴァがシェンフォニーにやられて割と後に、麗の連絡団員から頬をかく暗殺者について連絡が来た。 何でも、このままではチシャと合流するとの事。シェンフォニーの情報には、政府の責任者がハンプティと言う旅人を何故か追っている事がある。 もし、暗殺者が政府側だったらハンプティを誘き寄せる為に人質に使うだろう。 「はぁ、仕方ない。ちょっと行ってくるよ。チシャについては情報不足で、色々聞きたい事もあるしねぇ」 そう言ってシェンフォニーは路地裏の奥に、霧の様に、しかし素早く消えた。 その後の麗達と言えば暇なモノで、取り敢えず悶絶しているジャヴァに気付けを施す。 ウッと、自慰行為絶頂寸前の様な声を出して彼は目を覚ました。キョロキョロ辺りを必要以上に見回すが、やはりシェンフォニーの姿は無い。 「……俺は、負けたんだな」 「いいや、彼は貴方の勝ちで良いって言っていたでゲス」 嘔吐物が付いて、少し匂う身体の肩をなんら違和感無く、寧ろ賞賛の眼をして叩いてみせる麗。しかし、ジャヴァは歯ぎしりした。 「何だよ、倒されて悶絶してゲロして、それで『君の勝ちだよ』かよ。 何だよ、何なんだよ畜生」 声のトーンは谷型グラフ。つまり、少しずつ低くなるが、一気に高くなる感じで、尚且つボリュームは段々と大きくなる比例グラフだった。 「畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生! うわあああああ!!」 天に向かって、彼は泣きながらシワクチャの顔で咆哮する。 雨が降っていないのに、麗は湿気を感じていた。それは不快に感じない。雨が止む頃にはきっと、今より強くなっているから。 127: 名前:サスライ☆07/31(土) 12 02 11 理由は多々あるが、取り敢えずジャヴァは商人が居ると言われている廃倉庫に、シェンフォニーが指定した時間に来ていた。 聞いた話では商人が装備しているのは衝撃弾。と、言う事は迂闊に扉を開いては一瞬で甘くないジャムにされてしまう。 見渡せば思ったより広くない倉庫。ここでジャヴァの野生の嗅覚が捉えたのは、商人の精神状態。 恐らく彼女は、錯乱状態に陥っている。突然の発砲もいよいよあるだろう。 だから、ドアノブを少し回す。やや錆びたドアノブは、密室の向こう側に音を与えるだろう。 誰かが来ると解れば、商人は発砲する。途端に扉から離れれば、衝撃は此方に伝わらない。 故に、そうなった。 衝撃の豪風に煽られた扉の木片が飛び散り、しかしジャヴァは正反対の方向を見ればそこに発砲した商人が居る。 しかし此処からどうするか、地道に近付くしか無いだろうと考えに至った時に、突然壁が破裂した。 破裂した扉から見覚えのある姿が見える。シェンフォニーだ。何故か幼女を連れているが。 彼はスカーフで商人の衝撃弾を防御すると、麻縄でグルグル縛られた男を商人に向かって投げる。 「今回の事件は、ジャヴァじゃなくてソイツ関係なんだ。 だからまあ、落ち着きなさいって、その内ジャヴァを裏切った皆様も来るからさ」 ポカンとする幼女を置き去りに、やはり薄ら笑いを浮かべていた。 それよりもジャヴァには気になる事がある、シェンフォニーが何でガンマ一家の裏切りを知っているか、だ。 128: 名前:サスライ☆07/31(土) 21 16 07 ジャヴァが思っていたのは、何故シェンフォニーは裏切りを知っていたか。つまり、何故、この時間に裏切るのを知っていたか。 何故なら、この時間に裏切るにはジャヴァがこの時間にこの廃倉庫に来る事を知らなければいけない。 しかし、理由は至極単純で、ジャヴァがこの時間にこの廃倉庫に来る情報を流したのはシェンフォニーだからだ。 麗達がせっせとジャヴァを誘き寄せている間に、シェンフォニーは裏切り幹部と接触していたのである。 そんな裏切り幹部は、集団でマシンガンを何丁も持った孔雀よろしく仰々しい格好でジャヴァの元に向かう。ジャヴァへの権力を見せ付ける目的もあるが。 だから、小さい倉庫に大きな音を立ててドッと入る。 これに対する反応は様々だ。 シェンフォニーは、ジャヴァの時のダメージが実は結構ヤバイから骨が折れそうとか考えている。 ジャヴァは、武器は思ったよりマトモだがこんな多いのかよとか考えている。 商人は、何が何だか解らない。 こんな絶望的状況の中、笑っているのは、二人。これに活路を見出だそうとしている暗殺者もだが、それ以上にチシャがニヤニヤと凄い笑っている。別にヤケになってる訳では無い。 チシャは、笑がハンプティになった直後に言葉通り無双の攻撃力で堂島山賊団を追い払うの見た後でハンプティに言われたのだ。 『お前が人間に絶望するなら、俺が人間に希望を見る様な奇跡を見せてやる』 この一言を挑戦と受け取って、チシャは人間『ごとき』がどこまでやれるか旅に付いて行く事にした。 「さあ、こんな愚かな人間達に絶望意外の何を見せてくれマスか?」 歴史の激流の中の小さな、しかし動かない岩の様にチシャは、独り心地た。 129: 名前:サスライ☆07/31(土) 21 38 08 商人の付き人に廃倉庫へ引っ張ってこられたハンプティは、廃倉庫に群がる沢山の男達に反応した。 「何だコレ?」 ハンプティは格好はガンマンだが丸腰だ、そんな強みからついつい、とあるガンマ一家の裏切りの構成員は強気でロマン溢れる台詞を吐いてしまう。 その台詞はロマンに溢れているが、属に言う『死亡フラグ』だと言うのに。 裏切り構成員はマシンガンの先をハンプティに突き付けて、ニヒルな笑いを浮かべながら言った。 「ヘッヘッヘ。兄ちゃん、命が惜しければ逃げた方が良いぜ」 この条件では流石の鈍重ハンプティでも状況が理解出来る。取り敢えず、目の前の奴等が悪者と言う事だ。 「うっせー馬鹿!」 裏切り構成員は拳を揮発剤にして、クルクルと鼻血を吹き出しながら、天高く飛んでいく、何処までも。 「うわ、何だコイツ」 「畜生、やっちまえ」 「上等だテメェ等かかって来いやぁ!」 「じゃおおお」 商人は目まぐるしい状況の変化にポカンと目を点にする。 突然、ジャヴァが入って来たと思ったら、突然、シェンフォニー達が壁を破壊して現れて、突然、裏切り幹部達がゾロゾロ入って来たと思ったら、突然、聞き覚えのある声がする。 「『ヒーローは遅れてやって来る』って事デスカ、下らない」 チシャは苦笑いをギュンと濃くした。 131: 名前:サスライ☆08/01(日) 16 19 44 ハンプティだって、人間だ。硬化は一瞬だし、硬化前に頭や心臓を撃たれれば終わる。 だからと言われれば、どうでも良い事だが。 人が密集している所ではマシンガンを迂闊に放てば味方に当たってしまう、そしてハンプティは後を取らせてくれない。 ガンマ一家としてはハンプティに殆ど接近している人間のみ使える事になる。 つまり、ドラム缶を空き缶の様に蹴り潰す様な化け物と、正面から接近戦を挑めと言う事だ。 「オラオラオラ、弱ぇ弱ぇチョー弱ぇんだよテメー等!武器なんか使っているんじゃねえっての」 一人の構成員が廃倉庫入り口まで吹き飛ばされれば、他の構成員がドミノ倒しになって倒される。 数の優位に余裕を持っていた為か慌てふためく中に冷静な構成員が居た。彼は、ドミノ倒しで出来た空間にマシンガンを放つ。 マシンガンではそこまで命中率は期待できないから胴を先ずは狙う。 胴を狙って動けなくした後に頭を狙うのは、西部ガンマンの早撃ちでも実際に使われていた手段だ。 銃弾は螺旋を描き空気の壁を削りながら加速する。それが、何発もやって来た。因みに、日本刀だってマシンガンは7発が限界だ。 「覇ァ!」 銃弾が20発程めり込んだ時だろうか、気を引き締めたハンプティは一気に筋肉を盛り上がらせて銃弾を全て弾いた。 流石に冷静さを失い呆然とする中で、足元に転がって呻いてる構成員を投げ飛ばされ、下敷きになって構成員は意識を失った。それ以前に戦意を失ったが。 133: 名前:サスライ☆08/01(日) 18 02 05 シェンフォニーはクスクス笑い、ジャヴァは溜め息一つ付いて、この裏切り事件の主犯である幹部に声をかける。 「よお、俺の首を狙っているらしいな」 「だったら何だよ。失敗に笑うのかよ、お前は、何時もそうやって、上からよ」 裏切りの幹部は目にかなり血管をはしらせて、神経の如く器用に、青筋を大量に枝分かれさせてみせる。 しかし、ジャヴァは肩の力を抜いて掌をヒラヒラと向けて気障臭く語りかける。 「いや、そうでは無いのだよ、すまん、この言葉遣いキモいな。 取り敢えず、だ、ガンマ一家っつーのは俺が力で統一した組織だ。 だからよ、頭が欲しけりゃ……」 そう言って、拳を構える。そこには、しがらみも何も無い。 「つまらない小細工なんかしないで、コレで来い!」 それは、シェンフォニーに言われた言葉。ジャヴァが、そう言えばそうだと自分なりに解釈して、自分なりに消化してみせた結果だ。 裏切りの幹部はニカリと歯を出して笑い、マシンガンを放り投げてジャヴァの方向に跳び蹴りを放った。 「上等だよ、ボケがぁ!その眼鏡叩き割ってやらぁ、前々から気に入らなかったんだ!」 頭が殴り合いをはじめると、部下もマシンガンを放り投げた。なんて自分達は馬鹿な事をしていたんだろう。 「よっしゃあ。テメェ等良く解らねぇけどよくやった!」 大爆笑のハンプティはその勢いに正面から肉体強化も拳法も使わずに、只、ひたすらに殴りかかる。 「いって、お前俺の足踏んだろ」 「んだコラ、文句あんのかよ」 「あぁ!?喧嘩売ってんのかゴラァ」 更には、ガンマ一家の仲間内でも喧嘩を始めて、敵味方関係無しの大喧嘩パーティーが開かれた。 ポカンとするチシャは、精一杯の苦笑いをすると、冷めてはいないが第三者気取りの顔で呟く。 「ハンプティ、これが貴方の言う奇跡デスカ。 人間に絶望するのも、アホらしくなりマシタよ」 135: 名前:サスライ☆08/04(水) 15 12 47 通路を駆ける姿が一人。 中肉中背と言えば聞こえは良くて、特徴が無いと言えばソコまでの初老の男が、意気揚々と通路を駆けていた。 【武器商人】だ。ガンマ一家の構成員の一人に、ハンプティの姿があれば向かうと伝えたから。余談だが、その構成員は今そんな事はどうでも良い気分で殴り合いを始めている。 ガンマ一家も堂島山賊団も関係無い、伝記から伝わるハンプティの技の、ありとあらゆる虚を突いた特注の武器なら、人混みに紛れて倒せる自信がある。 そしてガンマ一家の始末は雇った暗殺者達に任せれば良い。その暗殺者達は後ろをついて来ている筈だ。 「……あれ?」 気付くと、暗殺者の数が合わなくなっていた。普段ならどうでも良いが、戦略上では大問題だ。 突然タライが落とされた様な表情をしていると、突然、一人の暗殺者の後ろに陽炎よろしく人影がユラリと見えた。 暗殺者はその後ろから迫る腕を掴み、背負い投げ。そこからナイフで脳天を突き刺そうとすると狙撃でナイフが弾かれた。 この動きを【武器商人】は知っていた。ハンプティを調べる過程で偶然見つけた千鳥流の歩法(ホホウ);『梟(フクロウ)』 千鳥流を使いつつ、集団で行動するグループは限られて、今、考えられるのは一つしかない。 「こんな所で邪魔をするか、英雄のなり損ないが!」 「……英雄のなり損ない?私にとってオヤビンは十分英雄でゲスよ」 【武器商人】の正面に現れた麗は、冷徹な目線で熱く睨み付けた。 シェンフォニーはこの事を予期して、廃倉庫の周りに堂島山賊を用意しておいたのだ。 136: 名前:サスライ☆08/04(水) 16 19 16 【武器商人】から表情が消えた。憤怒(フンド)の表情から、悦楽(エツラク)の表情へ。 堂島山賊団に囲まれる中で、【武器商人】は腕を組んで苦笑いして鼻で笑ってみせ、そして大袈裟に肩をすかす。 「どうしたでゲスか、おかしくなったでゲス?」 「いや、一瞬取り乱したが君達に狙われる謂れが無いと知ってね。 だって、私は武器を提供しただけで、戦闘は君達が勝手に行った物だ。それをどう利用しようが勝手じゃないか」 すると麗は髪を天まで逆立てる所謂、怒髪天の気配で、しかし死ぬ気で感情を封じて答える。そうしなければマトモに伝わる事も無いから。だから、何時もの語尾は忘れていた。 「はじめはね……。 でも、ソノ考えが気に入らないんだ。『悪い事をしてなければ許される』って甘い考えがさ。 善行と悪行は異なるが、決して反対じゃない」 はじめは、潰された事に腹を立てたが、潰されるのは決定事項だった。 だから、そこに恨む要素は無い。 でも、その戦いを私欲のダシにしようと言う考えが許せない。知っている、これは理屈と感情が切り離せない単なる子供のワガママだ。 「アンタの、その思考が気に入らないんだ。 私達がやられるのが決定事項みたいな考えもさ!」 「つまり君達は、ハンプティと再戦をしたいから手を出すのは待ってくれと……」 その一言に、麗は僅かに見える目を潤ませて顎に力を入れる。ああ、本当にコイツは何も理解しちゃいないんだなと。 コイツは、英雄のなり損ないどころか凡人にもなるのは難しいのでは無いのかと思った。 138: 名前:サスライ☆08/06(金) 08 19 16 麗は、シェンフォニーに『この状況』になったら連絡を入れろと言われている。そちらの方が戦略性があるからだ。 確実性がある、それが戦略と言うものだ。解っているのにやらないのは、子供の我が儘でやはり自分は軍師には向いていないなと改めて感じる。 【武器商人】は恐らくめっぽう強力な武器を蓄えて来ただろう、自分達に『適当』に与えられた武器から、その完成度は何となく解る。 だからどうした。 そして堂島の信じた仲間の力はその程度では無いと、最早信仰の域まで達した麗の想いは彼女に、これ以上の戦略(作品)を作らせた。 「オヤビン……敗けないよね。私達は、敗けちゃ駄目だよね。 私達は、オヤビンの帰るべき場所なんだから」 戦闘も中盤に差し掛かった頃、麗はこの仕事を最後にしようと思う。この仕事を最後に、シェンフォニーに何か堅気(カタギ)の仕事を紹介させようと思う。 これが最後の我が儘だ。 だから、 「私達に、勝利を!」 気づけば立っているのは自分達しか居なかった。気づけば敵はやられていて、つまりソレまでの相手だと解った。 変な虚脱感に見舞われる、勝ったのに、勝った気がまるでしない。 139: 名前:サスライ☆08/07(土) 18 55 28 † シェンフォニーの元に、麗から一通の連絡が届く。どうやら、【武器商人】の件は麗だけで何とかしたらしいとの事。 表情にこそ出さなかったもの、しかしシェンフォニーは悔しかった。 やっと見付けた根を下ろせる場所。それを荒らした元凶は、自分の手で潰しておきたかったから。 他人は利用する様なモノじゃない。 生きていく上ではそれは致し方無いのに、大人になるにつれて置いてきてしまった大切な考えだ。 目の前の『自由』を、羨ましいと思った。目の前では良い歳した大人達が汗だくで顔を腫れ上がらせて仰向けで倒れている。 言葉なら地獄絵図にも思えるが、全ての人物の顔は燃え尽きた子供の様に晴れ晴れとしていていた。 その中で一人、その超人的な体力を以て立っているのはガンマンの格好の無精髭の男で、名前はハンプティ。 シェンフォニーを思いっ切り見ている。今風に言うなら『ガン見』と言うヤツだ。 ハンプティはペキペキと拳を鳴らし、ニカリと口元で笑えば、噛んでいた枝がついにペキリと折れる。 「いよーぅ、封(フォウ;シェンフォニーの事)。テメェだけ高みの見物かよ。気に入らねぇなぁ」 「ふむ、笑(シャオ;ハンプティの事)。真打ちは最後がお約束ってもんさ」 「そうかい、それじゃあ……」 「ああ、それじゃあ……」 「いい加減にくたばれやぁ!!」 二人で同じ事を何の合図も無しに言い放ち、拳が交差する。 ケンカ友達。彼等はそう言う間柄で、決着が付いた事は無く、性質は死んでも直っていないらしい。 140: 名前:サスライ☆08/07(土) 18 57 22 【三曲目;完】 141: 名前:サスライ☆08/07(土) 20 58 26 【四曲目(終曲);正義の味方】 罪人とは、罰を受けている人なのでは無いだろうか。罪があるから罰があるのだから。 罪人とは、罪を自覚して、はじめて罪人たりえるのでは無いだろうか。自覚から生じる自己嫌悪に納得出来るから、澄んだ気持ちで罰を受ける事が出来る。 あれから命からがら逃げ延びた【武器商人】は、青筋がはしる拳を何度も机に叩き付けていた。 しかし机は壊れないし拳も綺麗なのは、力の調整が出来ているから。傷付くのが怖いのだ。 でも、怒りの気持ちを表現する為だけに狂った様に何度も机を叩くのは、なんとも狂った茶番だ。 【武器商人】は、恨みを持った。堂島山賊団、そしてガンマ一家に対して。 自分を倒すのは英雄程の人間では無くてはならない、それが【武器商人】の脳内では『正しい事』なのだ。 つまり、彼が英雄と認めていない人間は自分を倒してはいけない。それは、『間違った事』と言う訳だ。 ダンと【武器商人】なりに格好良く大きな音で机への八つ当たりを締めた後に、涙目で下唇を噛んだ。 「先ずは、あの目障りなヤクザ達だ……」 今回ガンマ一家を潰せなかったのが相当プライドを傷付けた様で、今度は絶対しくじらまいと考える。 彼は、罪人では無い。然るに悪役でも無い。 彼は、悪党だった。 142: 名前:サスライ☆08/09(月) 15 00 20 † 何時も通りの省エネ幼児体型でチシャはハンプティを上目遣いで見た。ただしジト目で。 「で、どーすんデスカ。根本的な解決にはなっていまセンヨ」 「ああ、何の事だっけ?」 「とぼけないで下サイ。まだ、政府の問題が残っているじゃないデスカ!」 政府、つまり【武器商人】の問題がまだ未解決だった。これをどうにかしなければ、ガンマ一家は無くなってしまうし、ハンプティは同じ事をされるだろう。 そして、仮にも政府に手を出すと言う事は国に手を出すと言う事であり、無名の旅人だろうと容赦無しに裁かれるから質が悪い。 しかし、ハンプティは、ジタバタするチシャと対称的に、大あくびをしてのけた。洗浄植物でリフレッシュした息が心地よい。 「ああ、そんなの居たなぁ。喧嘩に夢中で存在忘れてた」 チシャはとうとう腹が煮えくり返ったのか木刀が折れる様な力で、思い切り木刀で殴る。 そんな気持ちの爆発を比喩しているかの様なデタラメに舞う木片に目もくれずに、只チシャのみを見据えてハンプティは能天気に言った。 「平気だって。こう言う時は『正体不明の正義の味方』が最後にドカーンボコーンってやってくれるから」 非現実的で能天気過ぎて、逆に悲壮感を漂わせるそんな言葉にチシャは呆れるのでは無くて苦笑いを浮かべた。 この後、何が起こるかを知っているから。 143: 名前:サスライ☆08/09(月) 15 23 55 シェンフォニーの調査によれば、【武器商人】の技術力ではとても今の武器を開発出来る物で無くて、その開発には莫大な費用が必要らしい。 チシャは、統計線でそれ等が証明されたシェンフォニーの差し出したレポートの束をパラパラとめくる。 「凄いデスね、シェンフォニーは。どっかの見かけ倒しガンマンの100倍は使える」 「おいおい、俺が奴より格下と思っている様じゃまだまだだぜベイベー」 気障ったらしく言うハンプティは、とても不細工で言葉にも出来なかったのでチシャはソレを 『何言ってるんだこのチンパンジーは』 と思い、声に出さないのが精一杯だった。 レポートの束を大雑把に読み終えると、机の上に置く。正確には、机の上に置いてある紙の上だが。 その紙は随分古くて黄ばんでいるが、内容を知るには十分な情報がある。それは、写真なのだから。 写真にはシルクハットを被っていて黒マントを羽織っていて、黒ステッキを持つ姿が写され、その顔はギョロ目の白い仮面で隠されていて中身は全然正体不明だ。 その下にはこう、書かれていた。賞金首共通の表情の無い印刷文字で『盗賊・バグ』と。 しかしハンプティは、盗賊と言わない。そして何か格好良いただしダサいポーズでこう叫ぶ。 仮面ラ〇ダーとか、ゲッター〇ボとかそんなノリだ。 「変身!怪盗・バァァグ!!」 144: 名前:サスライ☆08/09(月) 22 02 28 ハンプティは肉体の再生において、完全に復元された訳では無かった。チシャの細胞に適合出来る身体になっていた。 つまり、彼はチシャと細胞レベルで合体出来ると言う事だ。 「ほら、さっさとやらんかぃ!変身ポーズは男のロマンだ」 「何がロマンデスか。やりマセンよ、んな恥ずかしいポーズ」 言い捨ててチシャの腕がグリュリと曲がり、そこから誘導して身体全体がグリュリとして、とうとうスライム状になる。 途端、それは床を跳ねてハンプティの口に入り、ハンプティの顔がみるみる内にギョロ目の木目の付いた白木になり、それは仮面に見える。 黒い幹が頭から生えれば、それはシルクハットの様に見えて、巨大な黒い一枚の葉がマントになる。 そして掌から直接枝が伸びて、段々と形を成し、それはステッキになった。 「怪盗、見参!」 ハンプティとチシャが混ざった人物であるバグは微妙なポーズを取る。正直、悪化してる。 つまり、チシャのポーズのセンスも悪いと言う事だが、この際どうでも良い。 バグがマントを翻すと一瞬で二つの人形が出来た、ハンプティとチシャの人形だ。このセミオートタイプの人形でアリバイを作る。 追っているふりをして、必要があるから追っている本人が実はそうだった。単純過ぎて、その考えに留まるのは難しい。 145: 名前:サスライ☆08/10(火) 12 05 40 殆ど木の塊だと言うのに、月を背負って屋根を軽く跳ねて移動する。 一瞬、仕事場からポカンと口を開けているジャヴァが見えたが、ガンマ一家の屋根も跳ねる。目指すは役場。 【武器商人】の技術と費用ではあの装備は不可能で、つまりどこからかかき集めて来ていると言う事だ。 それ等の領収書を盗んでくるのが今回の仕事だ。 役場の屋根に降りようとした時だ、突然狙撃が役場の方角から来て白木の顔を掠めた。 余談ではあるが、ガンマ一家か堂島山賊団が襲撃する事を予想して偵察と防衛の兵を配置していたとの事。 空中では動けない、そして今度こそ当てる気だ。ならばと、ステッキを狙撃兵に向けて成長促進因子を手を伝いステッキ内に放出する。 「伸びろ……」 バグが言えばステッキが突風よろしく神速のスピードで一気に伸びる。 狙撃兵は「なんじゃそりゃぁ!」と叫ぶ事もなく気絶した。それと同時にステッキを他の建物の壁に叩きつけて、反作用の力で役場の屋根の一番端まで跳ぶ。 そこにはもう一人、物の影に隠れていた兵が居て、回し蹴りを用い二重の意味で文字通り一蹴する。 「やはり、二重構造だったか。意外と用心深いな」 世界樹の能力と、千鳥流の技術を持ち合わせる黒い怪盗が役場の屋根の上にとうとう立った。 146: 名前:サスライ☆08/11(水) 16 02 11 省エネなのと夜の為に薄暗い灯りを歩く守衛が、突然何かの発作の様に、はたまた糸の切れた人形の様に倒れた。 倒れた後の顔は、やすらかな物で、とても死んでいる様には思えない。いや、寝ているだけだが。 背中の辺りに小さなトゲがあった。 これを伝い、体内に麻酔が入ったから寝ているだけで、それを放った本人は影に隠れて、『歩法・梟』を用いてユラリとしかし素早く動いていた。まるで蛇の様に。 「なんだ、呆気(アッケ)ない」 バグはそう言うと、腕に【武器商人】の居る部屋の扉を開けさせた。 147: 名前:サスライ☆08/11(水) 20 05 35 扉の鍵も案外簡単な作りになっていて、木で造った合鍵で十分開けられた。 それと同時に、正面で螺旋の軌跡を描いて大きくなるものが確認出来る。像が大きくなるのは、それが近付いているから。 腹にめり込んだそれは、一風変わった衝撃弾。一風変わっているのは、それが薔薇の花弁の様に鋭利な刃物を飾っている事だった。 バグは植物の身体と玄武咆哮は衝撃弾を耐えてみせる。しかし、そのせいで外側の組織が緩んだ。 緩んだ組織を、ドリルよろしく弾丸は抉(エグ)って見せる。これぞ【武器商人】がハンプティ対策に用意した兵器、『ローズ・ブレッド』だ。 【武器商人】は、屋上の狙撃兵に狙撃させる前に連絡を入れる様にした。そして監視カメラを囮に、隠しカメラで動向を伺っていたのだ。 世にも嬉々した顔で、【武器商人】は専用ライフルを構えながら近付くと、組織が抉れて巨大な孔が空いた身体を見る。人間だったら即死だ。 だからこそ、抜かりは無い。更に大型衝撃弾を何発か撃ち込んで原型を無くす、彼は復活する話を信じていたから。 ミンチになったトコロで、ゴミ袋に入れて、【武器商人】は焼却炉に行く為に部屋を出た。その顔には清々しい程の達成感が見られる。 しかし、その隙にバグは【武器商人】の部屋に入った。先程ミンチになった筈の人物が何故か、主の居なくなった隙に後から部屋に入って行く。 まるで、プログラムの『バグ』の様に。 148: 名前:サスライ☆08/11(水) 20 41 22 † 数日後、【武器商人】は横領で捕まった。キョトンとした顔で講義するが、シェンフォニーを通じて匿名で本部に届いた証拠書類が決め手になったと言う。 おかしい。【武器商人】は唯一つ思う。 隠しカメラはしっかりと見ていたし、眠らせた守衛に変装していたとも思えない。 しかし、『バグ』の死体を焼却して戻った時には隠しカメラの映像と領収書は無くなっていた。 解らない、バグが起きたとしか思えない。 頭を抱えて連行される彼の後ろ姿を見つめるのは様々だ。麗、ジャヴァ、ハンプティ、チシャ。因みにシェンフォニーは帰ったらしい。 「で、どうするんデスか?この後」 「暫くは身を潜めようと思う。なんだかんだで『ガンマ一家』の名前は抑止力になるからな」 ジャヴァは眼鏡をクイと上げて、冷静に先見の明を見つめていた。 それは麗も同じらしく、麗達はシェンフォニーの紹介で海運会社の手伝いをするらしい。 それ等に比べれば、ハンプティの先見の明など高が知れた物で 「で、アンタはどうすんデスか?」 「あ、悪い。寝てた」 大あくびを一つ豪快にかましてみれば、チシャの髪の毛は微妙に逆立って豪快にそこら辺に落ちていた鉄パイプで殴り付けた。 グニャリと曲がった鉄パイプを頭に乗せて、ハンプティが言う事は一言。 「最近、お前過激だな」 「誰のせいだと思っているんデスか!」 叫びは青空に溶けて、風に流されて、そして何処かへ宛もなく飛んで行った。 149: 名前:サスライ☆08/12(木) 03 58 44 † あの時、隠しカメラから逃れる手段はあった。扉を開ける瞬間、【武器商人】はモニターから目を放さなければいけない。 そして、開けたと同時に、宿屋に置いた物と同じ様な人形と入れ替わり、自分は天井に張り付く。 【武器商人】が出ていったのを確認すれば、後は領収書を盗むついでに、モニターから隠しカメラの位置を割り出して全て破壊すれば良い。 そんな事を『何時も通り』やってのけた二人は今日も風が鳴る荒野を往く。 風はリズムを作り、リズムに沿ってハンプティが旅人のハーモニカを鳴らし、風の詩をチシャが紡いだ。 日光がギラギラと照り付ける。今日も絶好の旅日和で熱中症も暇がなく、昔の中国映画なら瓢箪の酒を飲んでるだろうし西部劇なら水筒の水を飲んでいる。 そしてそれを求める時は大抵空なのが定番だ。 「おいチシャ、喉が渇いたんだが、水がもうねーぞ」 「ああ喧しいデスね。この辺は砂漠化が進んでるせいか、根から水が吸えないんデスから私も似た様なもんデス」 演奏の暫く後、くたびれて汗だくで腰を下ろす二人。汗を吹くハンプティが、汗を拭ったその先に目にした物が一つ。サボテンだ。 「おい、あれ、サボテンじゃねーか。ヒャッハー水だー!」 「あ、ズルい!私も!」 先程のくたびれは何処へやら、二人は一気に駆け出した。今日も風が鳴る。明日も風が鳴る。 旅人の詩は、何時だって風任せに流れている。 150: 名前:サスライ☆08/12(木) 03 59 16 【旅人の詩・完】