約 1,838,570 件
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/34114.html
超無法秘伝レイジ・オブ・ヴィクトリー(VR) 火/水/自然文明 (6) 呪文:アウトレイジ ■アタックチャンス-アウトレイジMAX ■パワー4000以下の相手のクリーチャー全てを破壊する。 ■このターン、自分のクリーチャーが出た時、それに「ジャストダイバー」を与える。 ■自分の山札を見る。その中からクリーチャー1体を選び、相手に見せてから自分の手札に加える。その後、山札をシャッフルする。このようにしてクリーチャーを手札に加えたら、自分のクリーチャー1体を破壊する。 ■この呪文を唱えたターンに、自分がエグザイル・クリーチャーが出た時、この呪文を墓地から手札に戻してもよい。 ※殿堂入り 作者:白山羊 パワー4000以下のクリーチャーの一掃と、唱えたターンに出たクリーチャーに「ジャストダイバー」を付与、そして自分のクリーチャーを破壊することによるサーチを行う三色のアタックチャンス呪文。 効果を見て分かるように、完全に「ドロン・ゴー」持ちをサポートするためのカードであり、アウトレイジMAXの攻撃時にタダで唱えられ、メタクリーチャーを一掃しつつ、ドロン・ゴー先をサーチしつつ、ドロン・ゴー元の破壊、ドロン・ゴー先に一時的な耐性の付与とかみ合った性能をしている。 とはいえアウトレイジMAX専用なので、当初は単なる介護カードだと思われていた。 しかし、時は令和。 アウトレイジMAXには以下のようなカードが存在する。 《灼熱の闘志テスタ・ロッサ》 《勇気と知識テスタ・ロッサ&アリス/「行くぜアリス」「行けるわテスタ」》 これらはコスト2のアウトレイジMAXであり、どちらも手札交換能力を有しているため、早期にこのカードを引き込みつつ、早ければ3ターン目で唱えることが可能である。 これだけなら、ちょっと強いコンボどまりだが、 これらのカードはいずれも名前に「テスタロッサ」を含むカードである。 《灼熱連鎖テスタ・ロッサ》 サーチ能力を使ってこのカードを持ってくることで、わずか3ターン目に即死打点を形成できる。 現代デュエマで3ターンキルはありふれているが、この呪文には味方全体に「ジャストダイバー」を付与する能力があり、環境で採用される主要なトリガーのほとんどが意味を成さない。 さらにこの呪文は唱えたターンに、エグザイル・クリーチャーを出せば、墓地から自身を回収することができ、1度灼熱ドロン・ゴーが決まれば、そこから2回目、3回目の追撃を決めることが容易であり、ドラゴンズ・サインなどでブロッカーを展開しても、やすやすと突破してくる。 その理不尽な展開力と、たった2枚のパーツで完成するお手軽さににより、殿堂入りとなった。 という設定で作ったはいいけど、普通に環境の変移で消えそう…… フレーバーテキスト 勝利を掴め、カツキング! 【企画】環境破壊は気持ちいいZOY!殿堂入りカード選手権! カードリスト:白山羊 評価 エピソード3時代にジャストダイバーはなかったんですが…… -- はんむらび (2021-08-10 21 54 54) これE3時代のカードとして作ってないんですよ…… -- 白山羊 (2021-08-10 22 01 18) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ankasekai/pages/1087.html
__ ¨  ̄ ̄ ¨ //// /⌒> ´ \ 、 ` . //// / / / \ \ ', //// ' ' / . / . . ', 丶 //// / / / / i ハW/ \\ ', } //// イ ' ' {/''゙"{ 、 \\i } //// i /{ { i 八\八 {\ /\} } ' //// |' { { { {笊㍉ \{ ィチ示笊 八{ __ //// 当然です! 八 、 八 ⅣVツ Vツ ノ ' /i i i i i i i i i 〉 //// \{ \丶 乂 , ⌒7イ /i i i i i i i i i/ //// 私達は勇者一行なのですから! \{込、 _ __ ' /}/ニ=- i i i iイ //// | . .i .... `ー` イ } 「 ̄ ̄ } i i i i i〉 //// | . 「二{><「 ̄} }ニニニ{\i / //// | |ニニ}ヘ _ノ . , 八 --=ニニ=- _ //// _|. 八/只 . //=- _ ', //// /八//i /个\ rく/ニニニ=- V/// '-=rくi i i/i i i|i i i i 〉/⌒)ニニニ=- }/ {/⌒Vi i i i i|i i i// ハ⌒\ニニニ=-. / 〈i i i i/⌒ / ' V//}ニニニ=-. '. . '⌒. . . { { ∨〈\-=ニニ=- __\. { . {. 八{ . . . } 、\ __/ ̄ \〉=-- _. 人 . . 、 .\. , 人\-=ニニニニ」 . . . . =- . . -r< ⌒ . __ イ__/ニニ〉 \_/  ̄ \ . . . . . 、 L/^}i i{^ ¨¨〉ニニニ〈 -=ニ/__/⌒. . . } 丶 . . .\ イ }i i{ { ̄ ̄. \_/⌒\ . / . 人 \ . . . / { ニニニ . .イ V=- . . . イ \ 丶 . .}. / 八 }i i{ 〈 . / { 「⌒. . 〉 丶 \ \ . . イ 「⌒ ニニニ . . . 八_ 人 __r─ ‐へ \. . 、 . '. /〈//人ニ]ヘi i{/(⌒ー‐‐<ニニ〉_ ////〈i i i/i i i i i 〉 }. .} . . . . V. /////⌒V/⌒「-=「ニニニニニニ=-V/////∨i i i i i / , . /. . { . . { /___//-=ニ人__/-=ニ\_/⌒\-=ニニ///////〈i i i i i/ /. .八. . .、 . .、 ///////-=/⌒¨¨ . Vi i i i i ノ-=ニ////////∧__/ . . . '⌒\. .}⌒\ ////////-=/ \ ____ . / ∨「-=ニニ人///////// // )/ 丶 名前 ヴィクトーリア・ダールグリュン 原作 魔法少女リリカルなのは 出演物語数 2 勇者ミカヅキと魔王の娘 主人公、勇者一行の一員として登場。 魔王の娘であり現在記憶喪失中。 ジョブ 【パラディン】 + ネタバレ注意 ネタバレはここに書く Inheritance Story~霧の街コウマと光翼の錬金術師~ 西方の武門の家柄である名門貴族の才媛として登場。 霧の湖亭の前で生き倒れていた所を浦上に拾われ働く事となった。 + ネタバレ注意 ネタバレはここに書く
https://w.atwiki.jp/dragalia-lost/pages/106.html
ヴィクセル ヴィクセルヴィクセルの基本情報 ヴィクセルのステータス ヴィクセルのスキル、アビリティスキル アビリティ EXアビリティ ヴィクセルと相性のいいドラゴン、竜輝の護符相性のいいドラゴン 相性のいい護符 おすすめクエスト 編集者のコメント ヴィクセルの基本情報 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (halloween_elisanne.png) レアリティ 属性 武器種 評価 ー 最大レベル 80 マナサークル 50 声優 石川界人 キャラタイプ 称号 音を統べる者(アブソリュートマエストロ) 入手方法 レジェンド召喚「響き渡る愛の調べ」ガチャより入手 キャラクター詳細 音楽を愛する新進気鋭の指揮者。名門合唱団を卒団し現ジアは大陸各地のオーケストラでタクトを振るう。大人で寛容。音楽に対しては情熱的で指揮者の仕事にも誇りを持っている。 ヴィクセルのステータス HP 470 攻撃力 270 戦力 2328 ※マナサークル50、レベル80時のステータスです。入手時とは異なります。 ヴィクセルのスキル、アビリティ スキル ヒーリングハーモに 味方全員のHPを回復し、さらに15秒間継続回復する。 アジタートタクト 10秒間、パーティ全員の回復スキルの効果量を10%アップし、【やる気】を1段階アップ。【やる気】は5段階アップすると【超やる気】になり、攻撃・回復スキルが強化される。【超やる気】は適用スキル使用時に解除。 アビリティ HP満タンで回復+15% HP満タン時、回復スキルの効果が15%アップ 睡眠耐性+100% 「睡眠」状態になる確率が100%ダウンする 開幕スキルゲージ+50% クエスト開始時のスキルゲージが50%アップする。 EXアビリティ 回復スキル効果+6% パーティ全員の回復スキル効果が6%アップする。 ヴィクセルと相性のいいドラゴン、竜輝の護符 相性のいいドラゴン ドラゴン名 理由 ドラゴン名 理由 相性のいい護符 護符名 理由 護符名 理由 おすすめクエスト クエスト名 クエスト名 クエスト名 編集者のコメント 自由入力
https://w.atwiki.jp/loli-syota-rowa/pages/754.html
部下に任せた結果がこれだよ!! ◆v5ym.OwvgI 傘をさして、肩を寄せ合いながらヴィータと紫穂は進む。 紫穂はグレーテルからもらった『宝物』を掌の中で転がしては、怪しい笑みを浮かべるばかり。 ヴィータはそんな紫穂にいい加減嫌気がさしているが、『約束』の為に離れることはできずに。 そんなギスギスした空気の中、彼女らは歩き続け、 E-1にある橋をわたり、地図上の桜の木のところに差し掛かる。 ヴィータが気付いた。 暗がりに、誰かいる。 「誰だ……!」 炎の剣を構える。 しかし、相手はヴィータが構えるとすぐに、上空へ逃げて行った。 「あいつは……?」 残された桜の木の下には、何かを掘り起こしたような跡。 そこには黄色い服を着た、緑色の髪の人形が残っていた。 【F-1/桜の木の下/2日目/黎明】 【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】 [状態]:精神汚染。 [装備]:邪剣ファフニール@TOS、ワルサーPPK(銀の銃弾5/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD ショックガン@ドラえもん [道具]:支給品一式×3(水1.5人分パン二人分弱-一食)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、 きんのたま@ポケットモンスター、包帯、双葉の肉片セット、神楽とミミの眼球 [服装]:病人着 [思考]:ふふふ…… 第一行動方針:とりあえず「北東の街」を目指す。 第二行動方針:ヴィータとグラーフアイゼンを出会わせて、互いの反応を楽しみたい。 第三行動方針:参加者の復讐心や不和を煽る。邪魔者は消す。 第四行動方針:能力を見抜いたエヴァに警戒と敵意。機会があればエヴァを消す。 第五行動方針:機会があればまたグレーテルと会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。 基本行動方針:扇動、ステルス、実力行使、あらゆる手段を用いて殺し合いを加速させて楽しむ。 [備考]:紫穂は朝の放送ではやて殺害犯のことをヴィータに教える約束をしています。 北東の街にグラーフアイゼンがあるらしいことを、まだヴィータには伝えていません。 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:両腕に僅かに痺れが残る、左足に火傷跡、左手爪全剥、いらいら [装備]:祈りの指輪@DQ、フランヴェルジュ@テイルズオブシンフォニア [道具]:基本支給品(食料・水二人分-1食) ぬのハンカチ×20、マシカルアンバーミサイル×6@メルティブラッド 、 救急箱、はやて特製チキンカレー入りタッパー、ボロボロの傘 [服装]:普段着(ドクロのTシャツ、縞模様のニーソックス等) [思考]:あいつは……? 第一行動方針:当面紫穂に従う。 第二行動方針:はやてを殺した犯人を見つけ出し、殺す。 第三行動方針:エヴァはいずれ自分の手で殺す。 基本行動方針:はやての仇を討つ。その後、優勝してはやてを復活させる。 [備考]:「ヒント」からはやてを殺したのがなのはかもしれないとは思っていますが、 少なくとも決め付けるのはまだ早いと思っています。 エヴァとの会話で、紫穂のサイコメトリー能力に勘付きました(詳細までは知りません)。 ☆ ☆ トリエラは慎重に、市街を進む。 家屋と家屋の間を。 時折周囲を警戒しながら、されど遅くなり過ぎないように。 決して開けた場所は通らない。 決して目立つ行動はとらない。 慎重に、辺りを警戒しながらヴィクトリアの指定した場所へ急ぐ。 無差別殺人犯の吸血鬼、レミリアは今もこの街の何処かにいるはずだ。 グラーフアイゼンの証言で、物語にでてくる吸血鬼同様流水は渡れないらしいとは聞いている。 その為、この街の中で休息ととっている可能性は十分にあり得る。 そして同時に、そんな彼女でも、動き回れる可能性がある。 奴はレイジングハートを所有している。すなわち、バリアジャケットをまとうことができる。 それは、この豪雨の中でも自由に行動できることを意味する。 彼女に会ってしまえば、積みだ。 それに加え、これから会う人物も警戒しなければならない。 ヴィクトリア。 仲間なんて関係はおらず、自分以外の人間はすべて利用する存在。 太刀川ミミとの関係を考えれば、そんな非常に利己的な人間だということは安易に想像できる。 相手の持っている道具が分からないが、もし仮に狙撃銃の様なものがあったとしたら。 この雨の中狙撃は難しいが、これから行く場所はヴィクトリアが指定した場所なのである。 こちらを殺せる狙撃ポイントを見つけている可能性は十分にある。 こちらがグラーフアイゼンを持っていることは話したのだ。 ヴィクトリアはミッドチルダ式のデバイスがいいといい、バルディッシュを求めたが、 同じデバイスであるこちらで妥協する可能性は十分にあり得る。 なにせ、自分の首輪は外れているのだ。 微妙に違うらしいグラーフアイゼンで失敗しても、それは他人の首輪だ。 ヴィクトリアの気にしているらしい魔法に詳しい者ならばともかく、それ以外の人間、例えば自分など、 ヴィクトリアにとってどうでもいいであろう他人の首輪を解除する際に失敗したとしても気にしないだろう。 情報交換を持ちかけた相手を殺す。 それをやりかねない相手だと思うぐらい、トリエラはヴィクトリアのことを信用していなかった。 せめて、こちらから場所を指定しておけばよかった、といまさらながらトリエラは後悔する。 グラーフアイゼンのサーチ能力はあてにできるが、それに頼り過ぎてもいけない。 建物の影から影へ。そして周囲の警戒。 左右前後、そして常時と違い、空を飛ぶ人間への警戒のため、空へも注意を払う。 そんな、警戒していた彼女だからこそ、上空を飛んでいく「奴」を見つけることができた。 【G-1/市街地/2日目/黎明】 【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】 [状態]:頭部殴打に伴う頭痛。胴体に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、かなりの疲労。 右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。 [装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数8/8) ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ [道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図 US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×23 インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0) 回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1) [服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ [思考]:あれは……? 第一行動方針:“太刀川ミミ(ヴィクトリア)”と接触、交渉する。 第二行動方針:朝になったら作戦(※)に従い、シャナを捜索する。タバサに携帯電話の説明も。 第三行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう 基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?) [備考]:携帯電話には、『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。 トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。 ※トリエラの作戦 まずシェルターまで全員で行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう。 シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。 それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。 ☆ ☆ 「起きて、イエロー。トリエラを名乗る人物から電話が有ったわ」 ヴィクトリアはイエローを起こすべく、彼女の眠る部屋へ声をかける。 が、返事はない。 舌打ちをしつつも、彼女の下へいくが、彼女は依然、ひまわりを抱えたまま眠ったままだ。 「起きて、イエロー。起きて!」 ヴィクトリアは、イエローを揺る。が、起きない。 イエローは深い眠りに落ちてしまっている。 これぐらいのことで、起きる彼女ではない。 イエローの睡眠は、深い。 いつ、いかなるところでも眠ってしまえるのは、イエローの個性だ。 その睡眠は、かつて四天王のカンナが操るジュゴンに「ふぶき」をくらった時も、 しばらくたつまで目を覚まさなかったくらいだ。 このどこでも眠れてしまえる個性は、彼女本来の気質も関係しているのだろうが、 彼女の能力も大きく関係している。 イエローの持つ能力。 ポケモンの傷をいやし、その意思をくみ取る力。 後にポケモンの権威、オーキド博士に「癒す者」といわれることになる力。 この力には、反作用とでもいうべきものが存在する。 イエローが『能力』を使う。 ポケモンの回復や、その意思を読み取った後、その反動でイエローは急激な睡魔に襲われてしまう。 この殺し合いに呼ばれなかった未来では、戦闘中にもかかわらず眠ってしまったほどだ。 そしてイエローはヴィクトリアの指示のもと、数時間前その力を首輪に10分も使い続けた。 今まではいつだって一瞬しか使わなかったその力を、ポケモンとは異なる存在に向けて長時間。 その時にやってくる睡魔は、通常時に比べてはるかに大きかった。 それでなくても、昼間の行動での精神的、肉体的疲労も大きい。 彼女がなかなか目を覚まさないのも、当然と言えよう。 「起きなさい、イエロー!」 次第にヴィクトリアの揺る力は大きくなっていく。 それでも彼女は眼を覚まさない。 だがそんな彼女は眼を覚まさなくても、彼女の腕の中で眠っていたもう一人の少女は眼を覚ました。 「たたーーーい!」 イエローに抱かれていた、ひまわりだ。 ひまわりは、出会ったときからヴィクトリアの悪意に気づいていた。 なにもわからない幼子だからこそ、彼女の悪意を見抜き、「わるいひと」だと認識していた。 そんな彼女が、自分をやさしく抱いてくれていたお姉さんを攻撃していた。 少なくとも、彼女にはそう見えた。 ひまわりは、それをだまって見ているほど大人しい赤ん坊ではなかった。 イエローの腕の中で暴れて、ヴィクトリアをイエローへと近づけさせない。 それどころか、ヴィクトリアをイエローから引きはがした。 ただの赤ん坊に、ヴィクトリアを引きはがすだけの力はない。 だが、ひまわりにはかつてのび太をも打倒した必殺の武器がある。 ガードグラブ。その発生する力場を全てヴィクトリアにぶつけ、はじいたのである。 「く……この……!」 流石にこの行為にはヴィクトリアも怒りを抑えられない。 何もできない、何の価値もない赤ん坊にこけにされたようなものなのだ。 腹が立って当然だろう。 ひまわりのほうはというと、素早くイエローの腕の中から抜け出し、部屋から逃げる。 「この!」 ひまわりのことは無視してしまえばいいのに、 やはり腹が立っているのだろう、ヴィクトリアはひまわりを追いかける。 その手を伸ばし、捕まえようとする。 が、その瞬間ひまわりは直角レベルで方向転換をし、彼女の手から逃げ出した。 彼女ははいはいの天才だ。 その動きっぷりは時に、彼女の母親と兄、その両名から逃げ切ることができるほどの素早さを持つ。 人よりすぐれた力を持ってはいるが、赤ん坊に慣れていないヴィクトリア一人で、 本気で逃げる彼女を捕まえることは非常に難しいだろう。 無論、殺す気でいるならば流石にそうはいかないのだろうが、 ヴィクトリアにはひまわりを殺す気がない。 そこまではキレていない。 突然方向を変え、 机の下を潜り抜け、 机と椅子の間を器用に動き、 転がって横方向へ移動し、 ヴィクトリアの手をことごとく避け続ける。 「待ちなさい! まて!」 ヒートアップしたヴィクトリアが、ひまわりを追う。 が、ひまわりはまた机の下に潜り込む。 ひまわりに集中していたヴィクトリアは、机にぶつかり、そのまま盛大に倒れこみ、鼻を打った。 「っ~~~~~~~!!」 いくらホムンクルスといえども、これは痛い。 鼻っつらを抑え、痛みをごまかすようにごろごろと転がる。 そんなヴィクトリアを尻目にひまわりは逃げる。 「たや?」 だがふいに窓から視線を感じ、そちらに注意をそらした。 そこには、見たことがあるような、無いような生物が、 少なくとも人間ではないようだが、よくわからない生物がいた。 じっと窓の外の生物を見つめる。見つめ続ける。 そしてそのスキを見逃すヴィクトリアではない。 ひまわりを捕まえ、ゆかたの首辺りをつかみ、持ち上げる。 「さあ、つかまえたわよ……」 「ひ……ふぇ……」 が、その顔がよほど怖かったのか。 その大きな瞳が潤み、しゃっくりをあげだす。 ヴィクトリアがまずい、と思ったがもう遅い。 赤ん坊の最大奥儀、大泣きが始まった。 【H-1/住宅内一階/2日目/黎明】 【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】 [状態]:精神疲労(中)、肉体消耗(中)、首輪解除、太刀川ミミに瓜二つの顔、いらいら [装備]:i-Pod@東方Project、スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER [道具]:天空の剣@ドラゴンクエスト?、基本支給品×2(食料のみは1人分)、 塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、 魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー、ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×5@mother2 アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし) マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、 思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0~2 [服装]:制服の妙なの羽織った姿 [思考]:だまりなさい! 第一行動方針:ひまわりをだまらせる、イエローを起こす。 第二行動方針:トリエラと接触する。イエローを連れていく? 第三行動方針:首輪や主催者の目的について考察する。そのために、禁止エリアが発動したら調査に赴きたい(候補はH-8かA-1) 第四行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。インデックス、エヴァにできれば接触してみたい。 基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す 参戦時期:母を看取った後。能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。 [備考]:首輪が外れた事により能力制限が外れている可能性も有ります。 首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。 ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる? 更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。 【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】 [状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、左瞼に大きく切り傷、疲労(中)、頭部に打撲(生命に危険なし) 、熟睡 [服装]:ベルフラウの私服姿。 [装備]:レッドのグローブ、おみやげのコイン@mother2、エスパーぼうし@ドラえもん [道具]:共通支給品×3(食料?1)、浄玻璃の鏡@東方project(残り1回)、クロウカード×3(『甘』『火』『地』) スケッチブック、城戸丈の首輪、イエローの服(泥だらけ) 、リルルのICチップ、ベルフラウの帽子 [思考]:…… 第一行動方針:ヴィクトリアについていく。 第ニ行動方針:ベルフラウがどうなったか知りたい。 第三行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える。 第四行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ。 基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。 [備考]: トリエラ(外見)を「積極的なマーダー」だと認識しました。 トリエラ(名前)を「ククリやリルルの仲間で、良い人)と認識しました。 詳細名簿で上記トリエラの情報が結びつきました。 ネスからレッドの仇が「白い女の子」だと聞かされました。 レッドの仇に対しどういう態度を取るべきか、まだ考えが定まっていません。 ベルフラウの言葉と今の状況から、雛苺一行を危険な存在だと見なしています。 首輪内の生物の活動状態を把握可能 【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん】 [状態] 健康。しんのすけの死を信じていない、泣き叫んでいる [装備] ガードグラブ@SW [道具] ピンクの貝がら、基本支給品、生乾きの服 [服装]:海鳴温泉の浴衣(お子様用サイズ) [思考]:(おねえさんきらい!きらい!) 第一行動方針:(ヴィクトリアが気に入らない) 第一行動方針:(おにいさん(グリーン)を探したい。) 第二行動方針:(おねえさん(ククリ)の探している人を見つけてあげたい) 基本行動方針:(おうちに帰る) 北東市街。 数時間前に大乱闘を終え、あちこちにその傷跡が残った街の上空に、Q-Beeはいた。 目的はもちろん、死体の捜索。 現在は最優先といわれた太刀川ミミの捜索を行っていた。 P-Beeの死亡確認証言を元に、太刀川ミミの死亡地点に向かったQ-Beeは、 そこでヴィクトリアの首輪と、爆発した太刀川ミミの首輪のかけらを見つけた。 首輪を解除したヴィクトリアが、そこにおいていったのである。 ヴィクトリアの死体は野上葵と同じだろう。そうQ-Beeは考える。 だが、現在の捜索対象は太刀川ミミだ。彼女に比べてヴィクトリアは優先順位が低い。 こちらは死亡地点には首輪がない。死体もない。 捜索は困難だ。 彼女の死体の行方を野上葵の時と同じようにして探すことはできない。 太刀川ミミの首輪にいたQ-Beeは死んでしまっているのだ。 もちろん、ニアの時のように誰かに聞くこともできない。 あの特例は、リリスに対してだけ許されているのだ。 さて、どうしようか。 またもや良くない頭を振りしぼって考えるQ-Beeだったが、 (オナカ、スイタ……) その思考を止めるのは、空腹。 数時間前にキルアを捕食したにもかかわらず、もう腹が減ってきているのだ。 少し休んで、ご飯を食べに行こうか。 そう考えるQ-Beeだったが、ふと名案を思いつく。 P-Beeに確認をとった後進路をF-1、桜の木の下へと向けた。 (21バン、ククリ。17バン、カナリア、シタイカクニン) P-Beeから再度彼女達の正確な死体の位置を聞いたQ-Beeは、 直ぐに死体を掘り起こし、ククリと金糸雀の死体を確認した。 太刀川ミミと違い、こちらは死体の場所がはっきり分かっていた。 P-Beeは死体がいるかどうかはよくわからないと返答していたが、 ジェダは彼女らが埋まっていると言っていた。だからそこに死体がいると思った。 手間はせいぜい掘ることぐらいだ。 ノガミアオイやニアに比べて、はるかに楽だった。 そしてQ-Beeは、ククリの死体を見つめ―― 捕食した。 太刀川ミミの捜索を諦め、別の死体を見つけた理由。 それは別に、捜索を断念して次に行ったからではない。 死体のあるところに行きたかったからなのだ。 捜索対象の元へいったのは、Q-Beeには珍しい機転だろう。 だが何故、ジェダの言いつけを守らず幼子を捕食したのか。 一度悪いことをした人間は、味をしめ、再び悪いことを行う。 それは誰しも、一つくらいは覚えがあるだろう。 Q-Beeも、それと同じだ。 野上葵の死体の時はジェダの言いつけを守ってQ-Beeなりに我慢しようとしたが、 その我慢は、キルアを捕食したことで霧散してしまった。 最初の時よりも、幼子の捕食への我慢が薄くなっているのである。 リリスとの密約も、その思考を加速させる。 黙っていればばれないのだ。 ならば、いくら幼子を食べようと、ばれるはずがないではないか。 故にQ-Beeは、ジェダが見ていないのだからと、 遠慮もなく幼子を食べる。 (オナカ、イッパイ) そしてククリを捕食し終わり、一息ついた。 空腹だったお腹は満腹になり、満足した。 ジェダの指令も半分を達成したし、いうことなしだ。 Q-Beeは、ちらりと横を見る。 そこにはもう一つ、食べられる死体があった。 金糸雀ではない。人形の体は食べられない。 タバサと小太郎によってククリ達と共に埋められた、イシドロの死体だ。 お腹がいっぱいになったQ-Beeだが、目の前に食料があれば悩む。 もっと食べようか、我慢して次に行こうか。そう考えてた時に 「誰だ……!」 ヴィータの声が聞こえ、自分が見られたのだと理解する。 今回のQ-Beeはやや冷静だった。 Q-Beeは咄嗟にイシドロをつかんで飛び去り、姿を消した。 キルアの時のように、食事を邪魔されなかったという理由も大きいだろうし、 今は満腹で満足している状態だったのも間違いを犯さなかった理由だろう。 今度は幼子に見られることを避けることができた。 これが、一度目の遭遇。 北東市街上空でイシドロを食べ終え、 食べられなかった首輪を放り捨て、Q-Beeは考える。 残る捜索対象は太刀川ミミと、ヴィクトリア。 他に古手梨花がいるが、こちらはリリスに任せている。 もう一度太刀川ミミの死亡地点へ向かう。 だがやはり、死体はそこにはなく、あるのは首輪と、壊れた首輪だけ。 しかしQ-Beeはそこで捜索を止めず、周囲をしらみつぶしに捜索する。 手がかりが何もないが、だからといって死体の捜索を止めることはできない。 街中を飛び、捜索するが、やはり見つからない。 やがてあきらめたQ-Beeは、ヴィクトリアの捜索へと思考を切り替える。 ここでまた過去の経験が役に立った。 野上葵の時は、トマとレベッカ宮本が『首輪だけ』を運んでいた。 今回は逆のケース。誰かがヴィクトリアの『死体だけ』を運んでいるのだ。 そう、Q-Beeは考えていた。 普通の人間からしたらおかしな発想だが、Q-Beeにとっては死体は立派な食糧。 首輪だけ外したのも、それが食べられないからだ。 何らおかしいことはない。 Q-Beeは早速、周囲の目撃情報から、首輪のない死体の捜索を始める。 F-1、桜の木の付近にいる29番と85番 互いにすぐそばに一人ずついることを確認。あとやっぱり見られていた。 H-1、家の中 04番と51番がすぐそばに二人ずついることを確認。 G-1、家の中 83番が一人で暖かい雨の中にいるのを確認 G-1、別の家の中 10番と41番がすぐそばに一人ずついることを確認。 G-1、街の中 43番が一人で冷たい雨の中、すぐ近くにいることを確認……!? すぐにP-Beeの報告のあったほうを向く。43番トリエラがそこにいた。 死体の捜索に神経を集中していたせいもあるのだろうが、 事前の報告では集団で家の中にいたはずの彼女が外に出ていたことに気づかなかった。 それどころか、接近してきたことにも気づかなかった。 だが、見られたのなら、すぐに退散しなければ。 Q-Beeはすぐに、そこから飛び去った。 これが、二度目の遭遇。 トリエラの前から姿を消したQ-Beeは、再度P-Beeと連絡を取り、確かめる。 H-1、家の中 04番と51番がすぐそばに二人ずついることを確認。 04番と51番。 イエローとひまわりの首輪の中にいるP-Beeは、それぞれ他に二人の人間がいることを報告した。 しかしその場のP-Beeの数は2匹。 数があわない。 そこに、死体があるはずだ。そう考え、Q-Beeはイエローとひまわりの元へ向かう。 そして―― (……ハッケン) Q-Beeは、暗い部屋の中を除きこみ、そこに首輪のない人間を見つける。 首輪のない生きた人間。それも、ジェダに報告せねばならない存在だった。 そして、ジェダに報告しようとしたところ (ジョオウサマ、ゴホウビ、キタ) そのタイミングでご褒美の請求。55番、雛苺だ。 突然きた命令。しかもこちらが優先順位が上。すぐに動かなければならない。 しかし、今まさにジェダに報告をしようとした瞬間だったのだ。 二つの命令に、しばしQ-Beeは硬直する。 すぐにジェダに首輪のない人間の報告をしなければならない。 だが、ご褒美の配達は最優先の仕事のはずだ。 一度に来た二つの指令に、Q-Beeはパニックを起こす。 そして、ひまわりがこちらを見た。 まずいと思い、すぐに飛び去ろうとする思考が加わる。 ジェダの報告、 ご褒美の配達、 幼子に見られるな 3つの指令が重なり、Q-Beeの混乱はますますひどくなる。 火のついたような泣き声が響く。 その泣き声を聞き、Q-Beeは、あわててその場から去った。 これが、三度目の遭遇。 (エート……エット……) ひまわり達のそばから去ったQ-Beeだったが、相変わらずパニックはしたままだった。 あの場から去ったのも、別に見られてまずいと思ったからではなく、単に泣き声に驚いて逃げただけだ。 混乱はしばし続き、ようやく立ち直ったQ-Beeは、 ひとまず最優先だったはずのご褒美の配達をこなすことにした。 もし、Q-Beeが優秀だったら。 こんなにたくさんの参加者に見られることはなかっただろう。 妙なことで混乱をすることもなかっただろう。 こんなミスを犯すことはどなかったはずだ。 優秀な部下がいない。 その弊害は、大きい。 【Q-Bee@ヴァンパイアハンター】 [状態]:健康、疲労(小)、混乱 [装備]:不明(なし?) [道具]:ご褒美ランドセル(不明支給品0~1(補給した場合は1~3)) [思考]:ツギ、ナンダッケ……? 第一行動方針:ひとまず雛苺にご褒美を渡しに行く。 第二行動方針:ジェダの指令をこなす 第三行動方針:(……ゴハン) 基本行動方針:本能に逆らえる範囲内で、ジェダの指令を忠実にこなす [備考]:野上葵、ニア、グリーン、ククリ、金糸雀の死体の存在を確認しました。 キルアの殺害者を弥彦に偽装する事にしました。 ククリ、イシドロの死体を捕食しました。いずれもジェダに言うつもりはありません ※生きているヴィクトリア(太刀川ミミの姿)を確認しました。ジェダへの報告はまだしていません。 どちらで認識したかは次の書き手に任せます。 ※ヴィータ、紫穂、トリエラ、ひまわりに姿を見られました。 ですが、相手がそれをQ-Beeと認識したかは不明です。 それぞれの反応は次の書き手に任せます。 ※北東市街のどこかに、イシドロの首輪が落ちています。 上空から落としたため破損があるかもしれません。 ≪269 優しい微笑みを浮かべて 時系列順に読む 262 川音が喧しく響いていた≫ ≪270 口のない死人はよく喋る 投下順に読む 272 なまえのないかいぶつ≫ ≪248 ワルプルギスの夜/宴の支度 ヴィータの登場SSを読む 281 それぞれの再会 -ongoing-(前編)≫ 紫穂の登場SSを読む ≪267 彼女たちはこの島から逃れたい トリエラの登場SSを読む ヴィクトリアの登場SSを読む ≪255 月の下で イエローの登場SSを読む ひまわりの登場SSを読む
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/445.html
第028話 「動き出す闇(後編)」 地下を貫く正六角の通路が真暗な闇の彼方まで煉瓦造りを伸ばし、 けたたましいほどの足音を残響させている。 寄宿舎管理人室から姿を消したヴィクトリアだが、瞬間移動を用いた ワケではなく、ただ足元にこの空間を発生させ没入したに過ぎない。 そして喘ぐように息吐きながら駆けている。 母の肉片を喰らって生きてきた者が、母に似た少女に食人衝動を覚え ている。人間じみた情愛を人に抱いたせいで自らの怪物性をより深く 認識する羽目になっている。 今のように地下にいれば良かった。 光のない場所ならいかなる闇も常態として過ごす事ができた。 けれど暖かな景色を知ってしまったから、こうなっている。 いまはただ、一人になりたい。 それを叶えるためには、華奢な足を内角百二十度に窪んだ不格好な床 の上で運動させるほかなく、そのせいか足は時折もつれヘアバンチで 留めた艶やかな金髪も胸の前で乱れに乱れている。 不思議なコトに彼女の背後では避難壕の空間がすうっとかき消え、あ とは湿った土くれとなっている。 解除しているのだ。アンダーグラウンドサーチライトによって形成され る亜空間は、根来がシークレットトレイルにて斬り開く亜空間とはまた 異なり、存在さえ知悉すれば誰であろうと侵入は可能である。 現に斗貴子や千歳は特性を知らぬ状態で探し当てた。 だからこそヴィクトリアは逃走に際して自らの通りすぎた道を閉鎖し、 取りつかれたように疾走を続け…… 一体どれだけ駆けたか。 「……もう、十分な筈」 立ち止まると肩で息を荒くつき、酸素を何度も何度も取り入れた。 ひどく体が重く、熱い。走ったせいか、食人衝動の飢餓感と熱ぼったさ が腹部から全身に広がっている。汗がひどい。止まらない。背中はすで にぞくりとするほどの脂汗と冷汗に塗れて、肌着が不快に密着している。 六角形の一辺たる壁にもたれる。一瞬冷たく心地いい感触が走ったが 吹き出る汗のせいですぐさま不快な熱へと転じた。 地下は換気が悪い。淀んだ空気に熱が漂うばかりで埒が開かない。 嗅覚を集中するとなぜか仄かに草木の生々しい匂いもしたが、あまり 気休めにはならないだろう。 と判断したヴィクトリアの脇で紺碧の閃光が走った。 正確には壁からせりだしたというべきか。横幅二十センチほどの光が 無機質な煉瓦から現出したと見るや、その二十センチばかり上で同様 の光が発生し、以降厳正なる二十センチの間隔で光の線が上へ上へ と増殖していく。それは何かのメーターが増大する光景にも似ていた。 ライトグリーンの光が仄かに地下を照らし、ヴィクトリアの影を床に伸ば したのも束の間。 線の光は壁から生えた真鍮色の金具と化し、ヴィクトリアはそれに手を 掛け、上へ上へと昇り出す。いうまでもなく、アンダーグラウンドサーチ ライトの特性によって梯子を作り出したのだ。 やがて天井に六角形の亀裂が生じ、ヴィクトリアの身体は地上に出た。 見回すとタイル張りの歩道が足もとに広がっていた。 歩道は曲がりくねっており、その左手には雑草が申し訳程度に生えた 地面が広がっている。 右手では地面が盛り上がって草木をまぶし、視認できる限り全ての部 分で歩道に沿ってなだらかな丘を描いていた。地下で感じた青臭さは ここに群生する草木の根の匂いだったのかも知れない。 左の地面と歩道の境目には、白地に黒で「銀成市 菖蒲園(予定地)」 と描かれた看板が無造作に設置されている。予定地にも関わらず街 灯が何本か道を照らしているのは、歩道がどこかとどこかを繋いでい るからだろうか。目を凝らすと歩道の果てに赤茶けた煉瓦造りの建物 がうっすら見えた。 (下水道処理施設……) 知ったのは数日前だというのに、ひどく懐かしい。 記憶に残っているのは、自分の武装錬金と形が似ているからだろう。 教えてくれたのは千里だ。彼女は街の地理に不慣れなヴィクトリアに 市民だよりか何かのパンフレットを元に教えてくれた。 眼が潤む。戻れる物ならその当時に戻りたいとも思い…… そこで、息を呑んだ。 理屈さえ知っていれば簡単に分かるコトだった。 だから平生であれば冷笑を持ってあしらえただろう。 「ご苦労な事ね」と。 しかしこの時は冷えた瞳孔を引き締めるのが精一杯であった。 影を数える単位とは何であろうか。 枚? 個? 体? 思うに単位というのは管理のためにある。多数ある物の実数を踏まえ 販売や経理、生産に役立てるべく単位が発生するのである。 だが影をそうする者は……いないだろう。 影は影でありなんら実体を持たぬ。持たぬ物を社会規律の中で管理 せんとするのは、幽霊の見世物小屋を作ろうとするほど愚かしい。 よってヴィクトリアが十メートル先、街灯の光のふもとにある景色を下 記のように形容したのは、ある意味で間違いでありある意味では正し かった。 影が一体、佇んでいる、と。 もちろんそれは影ではなく着衣が黒いせいである。 着衣の黒は見慣れた黒でもあった。 学生服。 それを着た早坂秋水がいた。 彼も彼で走ってきたらしい。 近づいてくる彼は携帯電話片手に眉目秀麗な顔に汗を浮かべ、激し い息を意思の力で鎮静させつつあった。 千歳は浮かない顔で自分の武装錬金を見た。 ヘルメスドライブ。 特性は索敵と瞬間移動。見知った者なら画面内で追尾もできる。 ヘルメスドライブで亜空間の中へ千歳が移動する事もできたが、それ で説得できるかと言えばはなはだ難しい。 秋水に追跡を任せてみようと思ったのは、かつて彼が遠路はるばる ニュートンアップル女学院を訪ねてヴィクトリアを説得している場面を 目撃したのもあるが、実はもう一つの事情がある。 寄宿舎管理人室には激しい緊張が満ちていた。 電話を切った防人の口から指示が下る。千歳はそれを受けてヘルメス ドライブ付属のペンを画面に押し当て、寄宿舎管理人室からかき消えた。 ヴィクトリアは驚愕が去ると、追跡の光景がありありと浮かんできた。 この眼前にいる男はおそらく千歳と連絡を密に取り合い、ヴィクトリアが その背後で空間閉鎖するのをやめるのを見計らって亜空間に突入して くるつもりだったのだろう。 ただその為にヴィクトリアと同じように地上を疾駆し、あるいは地下の ように一本道でない地上で必死に狭雑物を避けてヴィクトリア以上の 速度で走っていたに違いない。 戦士がどうしてそこまでするのか。 とるべき態度としては斗貴子の方がまだ正しい。 それが自分に対する罵倒であったしても納得はできる。。 「ホムンクルス」なる錬金術の産物を嫌悪しているという共通項ゆえに。 戦士がホムンクルスを餌場たる寄宿舎に引きとめるコトの是非など、 本来は論ずるまでもない。放逐大いに結構。内通の疑念も正論だ。 なのに秋水はヴィクトリアを追ってきた。 それもきっと斃しにきたのではなく、連れ戻しに。 「……アナタ、いってもわからないの?」 蔑視を送る。送るほかない。この元・信奉者に対する不可解な感情を 不可解なままで留め置く事は、ただ百年来の嫌悪と侮蔑を冷えた眼差 しに乗せる事でしか達せられぬように思えた。 「まだ君が寄宿舎を去る必要は生じていない」 対する学生服の男は毅然とした声である。 苛立たずにはいられないヴィクトリアだ。 右足で左のふくらはぎをかくような仕草をとりながら、つま先を歩道に 軽く押しつけた。タイルがひび割れた。卵の殻にスプーンを当てるよう に小気味よく。それでも足らず、鼻を鳴らした。 「生じているわよ。少なくても私にとってはそう」 若宮千里。母親にどこか似ているその少女は、薄暗い感情を抱えた ヴィクトリアに親切で、いろいろ教えたり髪を梳いたりしてくれた。 だがそのせいで。 ヴィクトリアは千里がひどく愛しく思えてきている。 今から寄宿舎に帰って千里の部屋に入り、まひろがするような自然さで 千里に抱きつきたいと思っている。 そしてヴィクトリアの口はワニのように裂けサメじみた乱喰歯を生やし て、千里の柔らかな体に突き立てたい。 捕食していた母と似ているからこそ、そうしたくてたまらない。 「だがそれは既に予見できていた事だ。俺が以前伝えた通り、戦団側 でも備えはできている。だから……」 「だから寄宿舎に留まれ、そういいたいのかしら?」 唇を噛みしめて軽く俯いたのは、求めてやまぬ明るい笑顔のせいだ。 知識として、人型ホムンクルスが手の穴から人間を捕食するとは知っ ている。だがアレキサンドリアのクローンを経口にて百年ずっと摂取し てきたヴィクトリアは離乳食しか知らぬ子猫のようであり、食物は手先 でなく口で捕食するという未成熟な感覚しか持ち合わせていない。 口で思う存分白くて柔らかい体を堪能したい。 肉を噛み切りはぎ取り尽してミートパイに調理したい。 「俺は君が鎖された世界に戻るのは見逃したくない」 手を伸ばせば届くぐらいの距離にいる秋水を一瞥する。 「断っておくけど、いまさら戦団の力なんて借りたくないの」 因縁を無視し戦団の作る糧秣を食えなどいわれて、頷けはしない。 「だが……」 少し歯切れが悪くなった秋水を押しのけ、少しヒステリックな声を上げた。 「うるさいわね。もういいでしょ。放っておいて」 これ以上話していると自らの暗い部分を話さざるを得なくなる。 それは屈辱だ。 一世紀以上ぐらい年下で。 元・信奉者で。 今は戦士で。 人間の。 秋水へ心情を吐露するのがひどく憂鬱で恥ずべき行為に思えた。 その間にも嫌な熱が腹の底から湧いてきて、全身が火照る。 耳たぶがかつかつと赤熱する。柔肉を想い、唾液が分泌される。 どこか甘美な感情で母に似た少女を思う。求めてやまない。 ワケも分からぬという態で自らの血しぶきを浴びる千里が見たい。 掠れた声でヴィクトリアを呼ぶだろう。一縷の信頼にすがって。 しかしそれすら罪悪感の要素にはならず、むしろ香ばしいスパイスの 匂いにすら思え、倒錯的な食欲が芽生えてくる。 きっと四肢を欠損して血の海の中で虚ろな瞳を天井に向ける母親似の 少女を見ても、腹部を裂いて消化物の悪臭漂う臓物をすするコトしか 浮かばぬだろう。 人間ならもっと他にいる。 でもよりにもよって一番親愛を覚えて、自分の欠落した部分を緩やか に癒してくれる人に対して、そんな薄暗い欲求を覚えている。 制止もできない。飢餓が進行すれば血走った眼で千里に飛びかかる。 自分はやはり人喰いの怪物なのだと絶望的な気分になる。 ……気づいた時。 秋水が差しのべた手を、跳ねのけていた。 眼が合う。 相手の瞳は怒った様子もなく、ただ何か真摯な言葉を考えているようだった。 わずかだがヴィクトリアは罪悪を覚えた。 認めたくはないが、原始的な感情に哀切じみた罪悪感が確かにあった。 自分をひどく情けなく思ったのは、次の行動である。 三歩よろよろと後退すると、丈の短い青色のミニスカートをはためかせ ながら踵を返し、無言のまま闇に向かって走っていた。 武装錬金を発動せずそうした理由は分からない。 もしかするとホムンクルスではない、一人の少女としてのヴィクトリアが 逃げていたのかも知れない。 秋水はそんな彼女を追おうと踏み出し──… 空間におぞましい空気が満ち、そして爆ぜた。 重い音を立てて、何かが崩れ落ちた。 金色の光が地面に溢れ、零れる砂金のように雲散霧消していく。 ヴィクトリアはすでに遠ざかっている。視認はしていないが、背後から の足音がそう伝えている。 掌には、何かを斬り捨てた手応えと握り慣れた愛刀の柄の質感。 キラリと『足もとからの月光』を反射するソードサムライXの姿を視認し た時、ようやく秋水は自分が何をしたかを把握した。 無意識化での攻撃。 背後に現れた敵意目がけて身を翻しつつ無音無動作で武装錬金を発 動し、袈裟掛けに斬り捨てていたようだ。 黒い影が前のめりに倒れた。膝をつき、胴体を地に叩きつける。 それはひどく見慣れた衣装だった。 ……眼下でさらさらと闇に溶けゆく衣装は洒脱な燕尾服。 汗が噴き出る。 ただなる驚愕と警戒ならばそこまでは出なかった。 (予測できていた事態だ。だが、よりにもよって今、この時……!) ヴィクトリアの足音がますます遠ざかって行く。 斬り捨てた男は背中しか秋水に向けてはいないが、前面にあしらって いるボタンの形さえ、顔と合わせて克明に浮かんだ。 「やぁ。久しぶりだね双子の弟」 その男の口調はひどく調子が外れている。 鉤状に裂けた口からは高い不協和音しか奏でられないような気がした。 「いやはや、逆向君から聞いてビックリしちゃったよ。まさか君が錬金 の戦士になっているとはね。あの突撃槍(ランス)の少年への義理かな?」 歩道の向こう、ヴィクトリアが逃走した方角とは正反対から遠くにある赤 煉瓦の建物を背景に影が人さし指を立てつつ緩やかに歩いてきた。 実に百八十八センチメートルもの長身だがどちらかといえばやせ型で ひょろひょろとした頼りなさすら漂っている。 だがひとたび戦えばどれほど悪辣な消耗を強いる相手か。 「あ、そうそう。彼にはパピヨン君もずいぶんとご執心だったけど」 街灯の下にひどく戯画的な怪人が佇んでいた。 簡単にいえば、三日月の絵に目鼻をあしらったような男。 「あの程度の戦士の、いったいどこがいいんだろうね?」 「ムーンフェイス」 早坂秋水は静かに呟くと、ソードサムライXを正眼に構えた。 「リラックスリラックス。戦いに来たんじゃないよ。せっかくの再会だから ね、君にとって耳寄りな情報を持ってきてあげたんだ」 ムーンフェイスはいかにも心外という様子で指を弾いた。 既にその頃…… ヴィクトリアの足音はもう聞こえなくなっていた。 激しい焦燥が全身を駆け巡るのを秋水は感じた。 ヴィクトリアを追わなくてはならない。が、ムーンフェイスも見過ごせない。 放っておけば一般人が喰われる。秋水も背を向ければ命の保証はない。 葛藤で微動だにできない美青年を、白濁した瞳が面白そうに眺めている。 「銀成学園の生徒たちが寝泊まりしている所ってなんていったっけ?」 「寄宿舎」 粘っこく緩やかな口調に対して、秋水の返答はひどく気ぜわしい。 「それそれ。実はだね、もうすぐ──…」 ムーンフェイスはひどく現実味の薄い事を歌うように述べた。 「もうすぐ逆向君率いるL・X・E残党が総攻撃しにいくよ」 「な……!?」 当たり前のようにまひろの顔が浮かんだ。 先程まで平和に語らっていた少女が、ホムンクルスに喰いちぎられる 様を想像し、口の中が渇く思いがした。 「むーん。襲撃開始は午後零時だから……」 秋水はさきほど見た携帯電話の時刻表示を必死に手繰った。 確か十一時二十五分。それから五分は経過している。よって。 「残りはたったの三十分。早く戻るなり迎撃しに行った方がいいんじゃ ないかな? あ、そうそう。ちなみにこの件は君の上司たちにも連絡済 みだよ。レーダーの武装錬金を持つ戦士なら、私の話が嘘じゃないとい うコトは証明できるだろうね。……ほら、噂をすれば何とやら、だね」 秋水の学生服のポケットの中で鈍い震動が走った。 携帯電話に着信がきたらしい。出るべきか。だが目の前には敵がいる。 「おやおや、何もしないよ。安心して出たらどうだい?」 意を決して出ると、千歳の声が耳に響いた。 「戦士・秋水ね。実は……」 「ムーンフェイスなら目の前にいます。大体のあらましも既に」 それで事情を察してくれたようだ。千歳は素早く言葉を継いだ。 「残念ながらムーンフェイスのいう事は真実よ。L・X・Eの残党たちはい ま、銀成市北西部にある下水道処理施設の地下に待機中。ヘルメス ドライブでワープして確認したわ。かなりの規模ね。数は百体以上」 「下水道処理施設……?」 秋水はムーンフェイスの後ろに佇む煉瓦造りの建物を見た。 社会に疎い秋水でも、銀成市の施設についてはL・X・E時代に一通り 教えられている。だから気づいた。 「ええ。今あなたのいる場所からなら、五分以内に奇襲がかけれるわ」 それが何を意味しているか、秋水には分かった。 根来と剛太は入院中。 千歳と桜花は直接戦闘に不向き。 防人と斗貴子はまだケガの癒えない体。 (俺が行くしかない。行くしか──…) それが例え、ヴィクトリアを見捨てる事になろうとも。 葛藤に包まれる秋水をムーンフェイスはひどく面白がったようだ。 「さ、どうする?。もしこのまま判断を誤ったら、大事な大事な君の母校 の生徒たちが、ホムンクルスのディナーになってしまうよ。それは戦士 としてはちとマズくないかい? あ、でもそういえば」 次の言葉を聞いた瞬間、冷たい炎が、喉から丹田に突き抜ける気がした。 「君も姉といっしょに手引をしていたから、あまり関係ないのかな?」 「黙れ!」 気づけば激情のまま飛びこみ、逆胴を打ち放ち、怪人を上下に両断し ていた。滑る秋水の体が歩道脇の丘に乗り上げ、木が眼前に見えた。 「むーん。冗談冗談。ひどく緊張しているようだから、ほぐしてあげようと 思っただけだよ。まぁせいぜい頑張るコトだね。集合場所へ奇襲をか ければ、まだ寄宿舎に被害は少ないだろうから」 新たに現出したムーンフェイスがそれだけ告げて木立の中に消えた。 行くべき道は二つ。 寄宿舎を守るために奇襲をかけるか、ヴィクトリアを追うか。 「……戦士・秋水。分かっていると思うけど」 携帯電話から響く涼やかな声には「はい」としか応えるしかない。 心底からカズキがうらやましい。彼ならばこの二択も叶えただろう。 けれど秋水には寄宿舎を守るという選択肢しか取れない。 無力感に頬が引き攣る。ばらけた前髪から覗く片目に苛立ちの光が灯る。 携帯電話を切ると、手の甲を木の幹に叩きつけた。 蒼い落ち葉が降りしきり、皮膚が破れ、熱い痛みがじんわりと広がった。 (……すまない。本当にすまない) ヴィクトリアに幾度となく詫び、彼女の消えた方向を数度振り返ってか ら秋水は下水道処理施設へと駆け始めた。 「はっ! 何というしくじりでありましょう!」 その時、木の上で息をのむ者がいた。 「捕縛には絶好の機会でありながらついついやり取りに気を取られ……」 小さな影がしゅっと地面に降りたって、秋水の後ろ姿にハンカチを振った。 「心情を歌いますれば”さようならー さようならー 元気でいーてーねー”」 で、小札は腕組みをして考え込んだ。 「はてさていかが致しましょう。もしかするとここで力添えをしますれば 早坂秋水どのも我らブレミュに助力をする可能性も……いやはやしか しどうしたものでありましょう。しかし一つ確かなのは!」 ガタガタと身を震わせながら、小札は思った。 「夜道でみるムーンフェイスどのはひたすら恐ろしいというコト……」
https://w.atwiki.jp/gods/pages/112972.html
アレクサンドラオブデンマーク(アレクサンドラ・オブ・デンマーク) イギリス国王の系譜に登場する人物。 関連: クリスチャンキュウセイ (クリスチャン9世、父) ルイーゼフォンヘッセンカッセル (ルイーゼ・フォン・ヘッセン・カッセル、母) エドワードナナセイ (エドワード7世、夫) アルバートヴィクター (アルバート・ヴィクター、息子) ジョージゴセイ (ジョージ5世、息子) ルイーズヴィクトリアアレクサンドラダグマー (ルイーズ・ヴィクトリア・アレクサンドラ・ダグマー、娘) ヴィクトリアアレクサンドラオルガメアリー (ヴィクトリア・アレクサンドラ・オルガ・メアリー、娘) モードオブウェールズ (モード・オブ・ウェールズ、娘) アレクサンダージョンチャールズアルバート (アレクサンダー・ジョン・チャールズ・アルバート、息子) 別名: アリックス(26) アレクサンドラキャロラインマリーシャーロットルイーズジュリアオブシュレスヴィグホルスタインゾンダーバークグリュックスバーク (アレクサンドラ・キャロライン・マリー・シャーロット・ルイーズ・ジュリア・オブ・シュレスヴィグ=ホルスタイン=ゾンダーバーク=グリュックスバーク) アレクサンドラカロリーネマリーシャロデルイーセユリアアシュレスヴィグホルステンゾンダーボーグリュックスボー (アレクサンドラ・カロリーネ・マリー・シャロデ・ルイーセ・ユリア・ア・シュレスヴィグ=ホルステン=ゾンダーボー=グリュックスボー)
https://w.atwiki.jp/gods/pages/113378.html
フリードリヒサンセイ(9)(フリードリヒ3世) プロイセン王の一。 ドイツ皇帝、プロイセン国王。 関連: ヴィルヘルムイッセイ(14) (ヴィルヘルム1世、父) アウグスタフォンザクセンヴァイマルアイゼナハ (アウグスタ・フォン・ザクセン=ヴァイマル=アイゼナハ、母) ヴィクトリアアデレードメアリールイーズ (ヴィクトリア・アデレード・メアリー・ルイーズ、妻) ヴィルヘルムニセイ(12) (ヴィルヘルム2世、息子) シャルロッテフォンプロイセン(3) (シャルロッテ・フォン・プロイセン、娘) ハインリヒフォンプロイセン(4) (ハインリヒ・フォン・プロイセン、息子) ジギスムントフォンプロイセン(2) (ジギスムント・フォン・プロイセン、息子) ヴィクトリアフォンプロイセン (ヴィクトリア・フォン・プロイセン、娘) ヴァルデマールフォンプロイセン(3) (ヴァルデマール・フォン・プロイセン、息子) ソフィアティスプロシアス (ソフィア・ティス・プロシアス、娘) マルガレーテフォンプロイセン (マルガレーテ・フォン・プロイセン、娘) 別名: フリードリヒヴィルヘルムニコラウスカール (フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニコラウス・カール)
https://w.atwiki.jp/gods/pages/111266.html
アーデルハイトツーホーエンローエランゲンブルク(アーデルハイト・ツー・ホーエンローエ=ランゲンブルク) デンマークのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ゾンダーブルク=アウグステンブルク公の系譜に登場する人物。 関連: エルンストイッセイツーホーエンローエランゲンブルク (エルンスト1世・ツー・ホーエンローエ=ランゲンブルク、父) フェオドラツーライニンゲン (フェオドラ・ツー・ライニンゲン、母) フリードリヒハッセイフォンシュレースヴィヒホルシュタイン (フリードリヒ8世・フォン・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン、夫) フリードリヒヴィルヘルムヴィクトルカールエルンストクリスティアンアウグスト (フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴィクトル・カール・エルンスト・クリスティアン・アウグスト、子) アウグステヴィクトリアフォンシュレースヴィヒホルシュタインゾンダーブルクアウグステンブルク (アウグステ・ヴィクトリア・フォン・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ゾンダーブルク=アウグステンブルク、娘) フリードリヒヴィクトルレオポルトクリスティアンゲルハルト (フリードリヒ・ヴィクトル・レオポルト・クリスティアン・ゲルハルト、子) エルンストギュンターフォンシュレースヴィヒホルシュタインゾンダーブルクアウグステンブルク (エルンスト・ギュンター・フォン・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ゾンダーブルク=アウグステンブルク、息子) ルイーゼゾフィーフォンシュレースヴィヒホルシュタインゾンダーブルクアウグステンブルク (ルイーゼ・ゾフィー・フォン・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ゾンダーブルク=アウグステンブルク、娘) フェオドラアーデルハイトヘレーネルイーゼカロリーネパウリーネアリーツェイェニー (フェオドラ・アーデルハイト・ヘレーネ・ルイーゼ・カロリーネ・パウリーネ・アリーツェ・イェニー、娘) 別名: アーデルハイトヴィクトリアアマーリエルイーゼマリアコンスタンツェ (アーデルハイト・ヴィクトリア・アマーリエ・ルイーゼ・マリア・コンスタンツェ)
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/593.html
銀成市市街地の山の手に、いまは住む者のない屋敷がある。 通称オバケ屋敷。かつては蝶野一族──明治時代から続く貿易業を営む資産家──とそ のボディーガードたちが住まっていたが、この初春、彼らは忽然と姿を消した。 以来ここに住む者もなく打ち捨てられるままになっている。 人々は常に成功者のスキャンダラスな話題を求めている。 だからマスコミは蝶野家の人々の、失踪として片付けるにはあまりに不穏な痕跡の数々を 一時期これ見よがしにあげつらい、銀成市市民の耳を楽しませたものだ。 曰く、彼らの失踪に先駆けて長男が寄宿先から姿を消した。 曰く、失踪したと思われる日に多くの銃声が響いた。 曰く、その直前、傷まみれの不審な高校生が蝶野邸を訪れた。 曰く、住民の服だけが残されていた。 曰く、屋敷の至るところに争ったような跡があった。 曰く、にも関わらず血痕は蔵と書斎にしかない。 曰く、幾つかの蔵には猛獣が突進したような風穴が開いている。 曰く、その風穴を辿ると、まるで何かを衝突させ磔にしたような痕跡がある。 曰く、そういえば長男の失踪の直前にも寄宿先が原因不明の半倒壊を遂げた。 曰く、銃声のあと銀色に光る人影が「何か」を担いで立ち去った。 曰く、これまた見慣れぬ風体の男女数名、銀色の影を窺っていた。 などなど。 神隠しか資産狙いの強盗か、もしくは何らかの抗争かと所説は様々に渦巻き、果ては銀色 の影は宇宙人で大規模なキャトルミューティレーションが発生したというトンデモ学説も飛び出 したが、やがては銀成学園高校での集団昏倒事件に端を発する世界各地での謎の昏倒事件 へと人々の興味は移っていき、目下蝶野邸は話題の外。ただ門扉にキープアウトのテープを 貼られたまましばらく放置されている。 九月三日の銀成市は明け方より快晴であったが、山の手にある蝶野屋敷だけはうっすらと 霧が立ち込めており、道行く者は以前の事件と突き合わせて気味悪そうに遠望していた。 ちなみにここは市街からひときわの高台にあるため、下界からかなりの階段を上らねばキ ープアウトのテープすら直視できない。 (もっともそんな苦労するのは人間だけだけど) 蝶野邸の庭に穴が開いた。最初は六角形を模した光線だったそれは一瞬で人一人が通れる ほどにまで拡大し、亀甲模様を描きながらそれに沿ってブィンと無機質なドア開閉の音をあげ 地下へ通じる穴を開けたのだ。 出てきたのがヴィクトリアである以上、穴はアンダーグラウンドサーチライトによる物であるコ トはいうまでもない。 (高台でも地下は地下。地下なら電気を拝借してエレベーターで昇るコトぐらい造作もないわ) この武装錬金は地下に変幻自在の亜空間を作り出せるのだ。 フンと鼻を鳴らしてちょっとした優越感を覚えながら薄い霧にけぶる辺りを見渡す。 日本庭園。そんな形容がぴったりの場所だ。 足元には堅い石畳があり、すぐ横には大小様々な灰色の石で縁取られた小さな池と、うっす ら苔の浮いた石灯籠が並んでいる。視界の彼方には枯山水すら認められた。テニスコートほど の面積いっぱいに砂利を敷き詰め、そこに一抱えもある奇岩をぽつぽつと点在させる枯山水は 日本人なら多寡問わずわびさびを感じるところだが、欧米人たるヴィクトリアにはどうでもいい。 むしろその枯山水が接地する瀟洒(しょうしゃ)な建物こそ目を引いた。 蝶野邸。父・ヴィクターがかつて眠っており、今はヴィクトリアの飢餓を解消する場所。 だが。 「何ココ。こんなに広いなんて思ってなかったわよ」 元々釣りあがり気味の瞳を更にキツくして、記憶の中の総角に毒づいた。 庭を見た時もしやと思っていたが、眼前に広がる屋敷の広大さに確信した。 ここは広い。しっとりと立ち込める薄霧を差し引いても塀の影すら見えぬ。庭のところどころ に竹垣はあるがそれは何らかの日本庭園的な様式の区分で設けられているようであり外界 と隔絶する物ではない。 さればと振り返ってみればますます広大さを痛感しげんなりとした。 何故ならば寄宿舎の四分の一ぐらいはありそうな蔵が冗談のように林立していたからだ。 父の痕跡も飢餓解消の施設も、簡単には見つけられそうにない。 そう悟ったヴィクトリアは鼻白んだ。 「さていち早く到着いたしましたのは金髪眩しい白皙のお嬢様っ! うろうろうろ~と邸内へと 参ります! されどされどそちらは残念ながら不正解……」 竹垣の影からひょいと飛び出てヴィクトリアの後ろ姿を見た者がいる。 小学生並に小さな体。頭にはシルクハット。肩の前でちょんとくくったおさげ髪。……小札だ。 「むしろあちらこそ探るべきなのであります。とはいえもりもりさんからは教えてはならぬと申 しつけられておりますゆえ、不肖はただただ機を待つばかり」 マイク代わりのロッドを口から放して、蔵に目をやる。 「さ、さささて、どうなりますやら……場合によっては不肖も本格的に戦うワケでして」 どきどきとした緊張が小さな体から漏れる。 秋水が紫の竹刀袋を忙しく揺らしながら、無限に続くと思われる階段を一気に駆け抜けた。 (この霧……まさか) 元L・X・Eであり、その盟主と今向かう邸宅の関係を知悉する秋水にとって『霧』なるものが 立ち込めているのはひどく暗示的である。 事実目を凝らせば霧は自然の霧らしからぬ金属の光をチカチカ瞬かせている──… (総角) いまこういう霧を張れるただ一人の男を秋水は想起し、竹刀袋を握りしめた。 核鉄を持つ彼が今さら竹刀? いや、竹刀袋は先端が緩やかにしぼみ天に掲げれば布が だらしなく垂れるであろう。すなわち、袋の全長より短い『何か』が収められている…… 居間、玄関、応接室とひとしきり邸宅をめぐったヴィクトリアは、倦怠感と耐えがたい飢餓も 手伝ってひどく苛立ち始めていた。 彼女の求める者はまだ見つからない。要するに普通の家屋なのだ。 いや、正確にいえばあちこち破損しており尋常の物ではない。 桟も剥き出しに破壊された襖は一つや二つではないし、鋭利な何かで四つに斬られた障子が 部屋の内側に向かって散乱しているのも見た。 異様といえば異様だが、しかし置かれている物はまるで錬金術の産物とは無縁だ。 強いて言うならば破壊痕か。凄まじさから見てホムンクルスの仕業といえなくもないが、それ だけならば「ただの家庭が襲われた」ぐらいの、手がかりにならぬのを含めたあらゆる意味で ヴィクトリアが嫌悪する普通の家屋だ。 書斎に至っては床の中央にドス黒い血痕が染みついて、すぐ傍では机が引き出しを上に向 けて倒れている。机に乗っていたのだろうか。本や万年筆が散乱し、傘の割れた電気スタン ドが埃を被っていた。 結果的に、ココを訪れたコトが収穫に繋がった。 最初はアルバムを見た。よく似た顔の兄弟の成長記録があった。前髪を奇麗に真ん中で分 けた色白でやせ型の三白眼の兄弟たち。写真の下に添えられた文章によると双子ではなく 一つ年の離れた兄弟だったらしい。しかし兄の方が高校入学したのを機にアルバムは弟の 方しか写さなくなった。 そして「家督相続決定の記念にて」と注釈ある弟の記念写真を最後にアルバムは一枚の 写真もなくなった。その日付が今年の物だったから、おそらく失踪前最後の写真ではないか? と思ったヴィクトリアは同時にその弟の顔に少しデジャビュを感じた。 目や髪、色白の不健康そうな肌はどこかで見たコトがある。 ただし雰囲気は違う。『どこかで見た』顔はもっと傲岸で自信に満ち満ちていたが、写真の 弟はむしろ劣等感からようやく解放されたという風で弱々しい。 例えば、そう。途中で消えてしまった兄の方が雰囲気としては近い。 ひとまずアルバムを逆にめくって兄の写真のある所まで戻り、凝視した。視覚に焼きつかせ 記憶にある近しい顔を探る。 ヴィクトリアにとって幸いだったのは、百年来女学院で暮らしたコトだ。猫を被って接したの はほとんどが女子で、男性との出逢いは数少ない。 更には一般人に無関心であるから記憶に残っている男性というのは十指に限定される。 すなわち、戦士かホムンクルスか。嫌悪という一種最大の関心に基づく記憶から探ると、凝 視する写真の男と似た者は案外早く見つかった。 「……まさかあの時の蝶々覆面(パピヨンマスク)?」 古巣たるニュートンアップル女学院で遭遇した怪人のような男。 顔こそ秘匿されているが前髪と目つきは同じ。身長も同じだ。 となればである。母・アレキサンドリアは言っていた。彼は錬金術師だと。 そしてココは彼の住居であったコトは想像に難くない。 (けれど錬金術の痕跡はない。つまりあの男が秘密裏にどこかで行っていたワケね) が、推論は明確なる所在にはつながらない。すなわち振り出し。 (けど、蝶々覆面のコトを知れば手がかりが見つかるかも……気に入らないけど) ヴィクトリアが他に本を探そうとすると、足元で軽い衝撃が走った。 見れば万年筆を蹴ったらしい。机から落ちたままずっとそこにあると思しき万年筆を。 一瞬見過ごしそうになったヴィクトリアだが、一つ疑問が浮かんだ。 万年筆はフタを尻につけた状態でそこにある。つまり筆先が露出しているのだ。 (というコトは……) 机の傍で人の字になって這いつくばる本の背を摘みあげた。 (やっぱり 日記だ。達筆で日々の事柄が綴られている。もどかしげにページを一気に最初までめくり あげたが蝶々覆面がアルバムから消えたよりもっと後の日付。彼への記述はなさそうだ。 もっとも着想を得たヴィクトリアは幻滅するより先に日記の背表紙を見た。 笑みが浮かんで仕方ない。執筆者の几帳面さに助けられた。 背表紙には今年何番目の日記かナンバリングが施されている。金箔を押したような煌びや かな装丁なのはいかにもこの豪邸の持ち主らしくもある。 素早く背表紙の文字を目に焼き付けて書斎から該当する物を探す。あった。 一年平均二~三冊のペースで整然と並んでいる。そこからアルバムから兄の消えた頃の 物を引き抜いて流し読む。 結論からいえばやはり兄は死んではいない。高校入学と同時に難病を患い、闘病が進みに つれて徐々に期待が失われていく様が綴られていた。 そうしてたっぷりの文字を読んだ。実に二年分はあったろう。ヴィクトリアの求める核心があった。 ──あいつは時折蔵の中に閉じこもるようになり と病気の息子の奇行を嘆く文章にヴィクトリアは直感した。 (蔵の中なら……) 例えば百年前に父・ヴィクターをしばらく眠らせるコトは可能だったろう。 同時に錬金術に必要な様々な物を隠しすコトも。 気づいてしまえば何故初見で気付かなかったのか不思議なぐらいだ。 ヴィクトリアは立ち上がり、蔵へ向かって歩き出した。 その頃、秋水の駆け上がった階段とは別の、いわゆる裏口の方から密かに蝶野邸へ侵入し た影があった。 たおやかな黒髪を腰まで垂らしたその影は、何かを探るようにそろりそろりと霧の中を進んで いき、ピタと立ち止まった。視線の先には竹垣に隠れて向こうを覗く小さな影──… ようやく目的地についたというのに、ヴィクトリアは慄然としていた。 「やはりココに辿り着いたか」 一体この男はどうして何度振り払い邪険にすれど追ってくるのか。 むしろ恐怖に近い感情で相手を見たのは、ヴィクトリア自身否定はしているが内心の奥底で 協調したいと願っているからに他ならない。 早坂秋水は薄暗い蔵の中でヴィクトリアを直視した。手には紫の竹刀袋を持っているが、攻 撃するつもりはなさそうだ。 「少し考えれば分かるコトだった。俺は戦団ではなくこの場所をまず引き合いに出すべきだった」 何をいっているかは分かっている。ヴィクトリアの糧秣の獲得手段だ。確かに恨み深い戦団 よりはまがりなりにも父と縁のある場所に頼る方がいい。 されどヴィクトリアは。 本音をいうより先にアンダーグラウンドサーチライトを展開し、地下へ埋没。 自分でも煮え切らない、情けない、どうしようもなくつまらない行為だとは分かっている。 けれど対話を避けねばそれまでしがみついていた物が何もかも無駄になるような気がして 逃走を選ばざるを得なかった。 一体どれだけの距離を埋没しただろうか。 息せきながら天井を見上げ、全身全霊でここに通じる穴を封鎖する。 もはや外界から隔絶された亜空間の完成だ。煉瓦造りの六角通路に佇む心持は鉛を飲んだ ような重苦しさがある。だから秋水を振り払ったという事実を務めて忘れようとした。 だが。 武装錬金を使うが故の一種研ぎ澄まされた感覚が、異様な感覚を捉えた。 それは地上から轟々と沈み、確かに向かってくる。今まで感じたコトもない現象。 やがて。 ヴィクトリアは息を潜めてその光景を見た。 防護に徹すれば何者もの侵入を許さぬ、現に百年の長きにわたり母を外敵から完全守護 した地下深淵の避難豪。 それがいま、強制的な力で開けられている。 かつて千歳に開けられたコトはある。だがそれは千歳の探査能力を差し引いてもある程度 までは地下に彼女を容れるコトを良しとする母の意思あらばこそヴィクトリアも妥協した。 だが今! 完全に断固たる思いで閉じた筈の空間が、稲光と共に裂け──… 秋水が現れた。よほど無理な手段を講じたらしい。侵入と共に彼の右頬が張り裂け、長い羽 毛のような血しぶきをあげたのだから。 「一体どうして……」 「君以外にも亜空間に介在できる武装錬金を操る者がいる」 秋水の右手で鈍い金に光るのが『忍者刀』とはヴィクトリアには分からない。 ……先ほど秋水のいた場所には。 彼の名前を刺繍した紫の竹刀袋が無造作に打ち捨てられていた。 秋水はそれをヴィクトリアが沈むなり抜きはらい、シークレットトレイルで地面を斬った。刀を 袋で覆っていたのは病院からの道すがら、人目をはばかればこそ。 亜空間への退避を得意とするヴィクトリア。だが追跡はまるで不可能ではない。 「君以外にも亜空間に介在できる武装錬金を操る者がいる」 秋水が語るようにシークレットトレイルを用いれば亜空間への没入は可能。が、その際は本 来なれば根来のDNAを含む物体以外の透過は決して許さない。 では秋水は何故地下へ行けたか? その秘密は彼が身に纏う真新しい学生服にある。 根来はシークレットトレイルを渡しながらいった。 「使え。貴殿の衣装はすでに対応済みだ」 それで秋水は察した。根来が自らの着衣にそうしているように、学生服にも根来の毛髪が 編み込まれていると。 この一時を見るにおそらく防人と根来、そして千歳は秋水の思惑を知っているようだがそれ はまた別の話だ。 ともかくも彼はシークレットトレイルで地下へ行った。到達の際に頬から血しぶきが走ったの は追跡に気を取られたゆえの失策だろう。 根来ならばこういう。「顔を学生服で包まぬからそうなる」と。 だが秋水は良くも悪くも生来の気質ゆえに、一刻も早い追跡ばかりに気をとられ、余裕を持 てなかった。下手をすれば頭蓋だけ亜空間の拒絶で吹き飛んだかも知れぬのに。 慄いたヴィクトリアだが、すぐに冷たい目線で断固たる抗議を送った。 「私が聴いているのは手段の話じゃないわ。理由。どうして私につきまとうの? あなたは戦士。 私はホムンクルス。そこまでして……つきまとう必要なんてないじゃない。何の得になるのよ」 もはや悲鳴に近い声だ。 秋水の頬から流れる血に眼が吸いつけられて、それに対して人間らしい感情が沸き起こるの がどうしてもどうしても不可解で許しがたい。 「前にもいった」 秋水は頬の血を拭おうともせず、答えた。 「君が人を殺すとはどうしても思えない。だからだ」 時は前後する。秋水、そしてヴィクトリアが蔵に入るのを見た者たちがいる。 「むむ。これで計画の第一段階に突入!」 小札は竹垣の影からひょいと出てツカツカと蔵へと近づいた。 「あとはひと段落つきしだい、不肖のマシンガンシャッフルで秋水どのを捉えるのみ!」 「なるほどね。総角クンからあなたが命じられているのはそれだったのね」 「ハイ! 正にその……きゅうっ!?」 小札は咄嗟に身をよじった。同時にそこまでいた場所に何かが刺さり、慄然とした。 矢だ。羽のない西洋の。 「……え、矢……! 矢ぁ!? というコトはココに来てまさかまさかのご登場っ!?」 「昨日の夜、念のため学校の屋上を御前様に監視させておいて正解だったわ。おかげであな たちが何かを企んでるって分かったもの」 小札は見た。霧の中、アーチェリーを左手に装備した麗らかな女性が歩いてくるのを。ついで にその肩の上には二頭身で不格好な自動人形がふわふわ浮いているのも見た。 「よーロバ女! ……ってオマエ相変わらず貧相だな。桜花と同い年なのに」 御前が気の毒そうにいい、桜花は無言で微笑した。テストで満点取った秀才が追試受ける 人間に「頑張ってね」と呼びかけるような余裕の笑みだ。 すらりとした長身に豊かさを湛えながらもシルエットは細い桜花だ。モデル体型だ。 「う、うぅ。それは言わぬお約束……」 まったく身長が低くて少年よりも未発達で足もマッチ棒みたいな小札はしゅんとした。 「なぜに同じ十八歳でありながらこうも格差あるのでしょーか……い、いやそれはさておき」 小札は八メートルほど先にいる桜花にロッドをそろりと突き出した。 「戦闘回避の余地を求めていんたびゅー。物見遊山でありますか? あって欲しいのですが」 桜花の眼光が俄かに鋭くなった。 「今頃秋水クンは大事な説得の真っ最中。うまくいくかはまだ分からないけど、少なくても終わっ た後、あなたたちの目論みに利用されるのだけは許せない。秋水クンへの侮辱だから」 脛に傷持つ小札だからぐうの音も出ない。説得のセッティングは彼女の中では一番平穏な 解決のために考えた手段だが、突き詰めれば下心ありきなのは否定できない。 「もっとも総角クンが企みを回避するというのなら私も退きますけど、それは無理でしょ?」 「う、正にその通り……ゆえに不肖も退けぬワケで……」 桜花が矢を放つと同時に小札のマシンガンシャッフルが霧を散らした。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/122292.html
ヴィクトルイッセイモーリッツカール(ヴィクトル1世・モーリッツ・カール) ヴィクトルイッセイフォンラティボルの別名。