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8 「……うえぇ……」 夜の職人街にて、金髪のスケバン少女が溜息をついていた。 「……何よ。お陰でたくさん情報を絞れたんだから、別に良いじゃない」 「いや、そういう問題とは別にッスね、アタシ、確かに今まで人死には何度か見てきたんスけど、ハラワタ撒き散らしながら胴体真っ二つになった人は初めて見たわけなんスよ……。っつーか、ああいうのってまず最初に腕や足がもげるモンなんじゃないッスか?」 「魔術的に力の負荷を腹部分に集中させてるのよ。勿論、関節の痛みも拷問の関係上重要ですから、痛覚だけはそのままにしてありますけど」 何てことないように答えるSM系ボンテージ魔術師に、ノーマル系スケバン魔術師はドン引きだった。 結局、あの後ノーランド司教はすべてを吐いて、一人から二つになった。 すべての謀反者の情報は既に清教の上層部に伝達してあり、今夜中にも全ての謀反者は捕らえられ、宗教裁判にかけられることになるという。裁判なしで現行犯ブッチされたノーランド司教に比べたらまだマシかもしれないが、どっちもどっち、自分が迎えたい結末ではないな、とハーティは思った。 ちなみに、彼が誘拐した少女たちの所在についても拷問中に彼自身が吐いた。何でも少女たちは来るべき大魔術のいけにえにささげるために魔術的に肉体を精錬させていたらしく、全員無傷で旧王立天文台《ロイヤルオブザバトリー》の地下に監禁されていたらしい。少女たちを助けた時、助けられた少女たちが一番最初に見たハーティをヒーローだと言ってわらわらと集まり、その対処に追われたハーティがヴィクトリアに助けを求めたといった一幕もあったが、これは割愛する。 何にしても、これで事件は解決である。二人は、清教の女子寮に戻るために徒歩で移動しているところだった。 「……というか、魔法の船《スキーズブラズニル》使えば良いじゃない。いちいち徒歩なんてめんどくさいですよ」 「いや、いくら夜でも未確認飛行物体の目撃例出したら駄目ッスよ!!」 「だいじょーぶだいじょーぶ、イギリス清教は学園都市と同盟結んでるわけだし、学園都市製の新型飛行機のテスト運転って言えば誤魔化せるわ」 「でも、どっちにしても『幻影の王』に使わせないと動かすことすらできないから駄目ッス」 「……つくづく貴女の魔術って『幻影の王』任せなのね」 一人だけでは意外と役立たずなことが判明した金髪スケバンに、ハーティは呆れたように溜息をついた。 「それにしても、『龍脈と縄を対応させる』とはね……」 「いやぁ、正直相当マズかったッスよね? あんなことされてたら、イギリスが滅亡してたッスよ。……あれ? とすると、アタシたちもしかして英雄ッスか!?」 うひょー!! もしかして昇進ッスかー!? と喜ぶ現金なスケバンは無視して、ハーティはまた溜息をついた。 「……そのことについてもあるけど、ノーランド司教……ああ、もう司教ではなかったわね。ノーランドの一派の動きが過激だな、って思ったんですよ」 もう今頃他のエージェントに始末されてるでしょうけど、と呟き、ハーティはまたまた溜息をつく。 「そりゃ、随分と辛酸舐められてたっぽかったッスしねー」 「それもそうですけど、それにしたっていきなり飛びすぎてます。普通なら、最大主教《アークビショップ》に陳情するなりするはずよ。そして、ノーランドの自供にもそんなことは含まれていなかったわ。貴方も聞いてましたよね?」 「……いや、あんまりにも凄惨だったモンで……」 「……もう良いわ。とにかくそうだったのよ」 呆れたように溜息をつくハーティに、ヴィクトリアは少しだけむっとした。 「……さっきっから溜息ばっかッスね。何が言いたいんスか?」 「……はぁ、別に。ただ、『もしかしたらノーランドは外部から反乱を唆されたんじゃないかな』って思ったのよ」 「ええー、でも、拷問の最中にはそんなこと言ってなかったんスよね?」 「そうです。でも、稀にあるんですよ。『拷問されても自分の情報を吐かれないよう、相手の意識に残らないように唆す』輩が」 相手の意識に残らないように唆す輩。……それは即ち、『さらなる黒幕』の存在を意味していた。イギリス清教を……いや、イギリス全土を巻き込む災害を、初手からいきなり齎そうとした、そんな『黒幕』の存在を。 そのことについて考え、二人はしばし沈黙した。 「……にしても、謀反、ねぇ……」 「何です? 思うところでもあるの?」 やがて口を開いたヴィクトリアに、剣呑な声色で問いかけるハーティ。ヴィクトリアは気だるそうな動きで首を振る。 「最近、カーテナのクーデターも終わって、第三次世界大戦も終わったばかりじゃないッスか。イギリス全体だって、まだ万全な体制とは言い難いッス。これから益々増長するだろう学園都市との戦いを前に、こんな調子で大丈夫かな、って思ったんス」 「……むしろ、そのための準備、じゃない?」 憂うような調子のヴィクトリアに、ハーティは案外気楽そうな調子で返した。 「準備?」 「そう。学園都市との戦争に向けて、余計な反乱分子を排除するように動いているのよ。さっきも貴女が言っていましたけど、今回の事件はかなり危険なところまで言っていました。あの最大主教《アークビショップ》が、これほど危機的な状況の陥る段階まで反乱分子を見逃すはずがないわ。ノーランドは、最大主教《アークビショップ》に対して奇襲を仕掛けているつもりだったんでしょうし、黒幕の暗躍があったのかもしれませんけど、結局のところ全員が彼女の掌の上で踊っていたに過ぎなかったんだと思います」 「……、」 あれほどの死闘が、数え切れない下準備の一つ。 ヴィクトリアは、その意味を静かに噛み締めていた。彼女達の立ち位置が、『主役』からしたら如何に端っこで、如何に矮小であるか、というその意味を。 「なに辛気臭い顔してるんです。確かに私たちは大きな機械の歯車のひとつかもしれない。でも、歯車がなければそもそも機械は動かないのよ。ならば、そのちっぽけな歯車のひとつが大きな機械の動きを変える事だって、可能かも知れないわ」 少女は知っている。その一例を。あのクーデターの最中、英国女王《クイーンレグナント》から分配された天使の力《テレズマ》を受けて、一つ一つの歯車が大きな機械の動きを変えた出来事を。あの、万聖節の前夜祭《ブリテン・ザ・ハロウィン》を。 「……そうッスね」 「そうよ。私たちは私たちで、変えていきましょう。一つの歯車として、このイギリスという大きな国家《きかい》の行き着く先を、少しでも良い方向に」 前へ 戻る
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「申し訳ありません(パクパク)。食事中は(モグモグ)上官殿でなければ(ガツムシャ)話を聞く事(ムグッムグッ)、が……(モッシャモッシャ)」 《キャラクター》 【名前】ヴィクトリア・S・エルウィード 【年齢】16 【出身】??? 【身長】156cm 【体重】42kg 【概要】 対フィーンド掃討用戦術的人工兵器「Saber-Weapon 003」通称「S-W.3」 フィーンドへの対策に軍が決行した人工人間製造企画、その三番目の機体である。 三番目の機体であり、一番目、二番目は失敗。三番目にやっとのことで成功したが、一番目、二番目に失敗した分のコストも合わせて、コストが異常であり、それを取り戻す為に倒さなければならないフィーンド総数は常人の20倍以上はあると言われている。 言語能力に問題があるわけではなく、複数の思考が入り混じっているからか、言語機能が複雑で、珍しい言動を示す事もある。 思考が混じっているせいであると思われる。 複数のセイバーユニット搭乗者の死因、フィーンドの回路から死因となる物を「デジャヴ」として直感することで回避する事が可能。 ヴィクトリアの能力の中でも特に秀でて、後述する回避前提の低装甲のセイバーユニットで生存できたのはこれが理由でもある。。 その身体はセイバーユニット搭乗の為に改造されており、女性としての機能はセイバーユニットに搭乗する為に女性ホルモンが分泌されているだけで 生殖機能は存在せず、体の何処からでもエネルギーを補給し、セイバーユニットへと変換できる構造になっている。 この機能が成功した試験体が三番目のヴィクトリアであり、後に04,05と開発したがそれも失敗。現状では不明瞭な部分も多く、奇跡的な成功として扱われている。 その為、厳密には排泄行為すら必要としない。 体内構造に置いてもその差は大きく、腕は細いが、内部機能的にはかなりの強度を誇り、他に比べコンディション維持の為の睡眠に極端に少ない。一日に20時間の活動が目安であり、一週間の連続稼働までは可能であるといわれている。 しかし、本人はかなり燃費が悪い。よくご飯を食べる。瞳は輝いているようにも見える、とか、声は多少の抑揚が見られる、とか、嬉しそう、とか、美味しそうに食べる、とか。 …………ちなみに、可愛い女の子にしてください、という要望があったそうだが、これは発案者の趣味である。 【性格】 冷静沈着、無表情というような正に作り物。 声も非感情的で、合理主義、と絵にかいたようなロボット。 髪はポニーテール、保護色からはかけ離れた紅い髪。 ――――なのだが、どこかでは悲しそうな表情を浮かべ、僅かの表情の変化が、大きな変化に見える。 墓地に顔を出して、何時間もそこで座り込んでいる――等、奇怪な行動報告が多々ある。 この点からも、感情が無い訳ではなく、ヴィクトリア自身も「感情のある兵器は失敗作」と自らの事を評している。 その実は、今までのセイバーユニット搭乗者の戦闘データ、フィーンド等の破片パーツから取り込まれた幾重もの人間の集合体。 故に、その真の情緒は不安定。感情抑制を実験段階中に実行され、今に至る。 無感情に見えるのはその為で、哀愁のみが残ってそれが切欠で感情が零れてしまう。 ヴィクトリアはその自らの突出した部分も含めて、前述のとおり「失敗作」と自らの事を思っている。どうしようもない、戦闘に不必要な悲しさだけが体に残り続ける存在。と――――――実際はどうなのか、というのは闇の中。 逆に、フィーンドと対抗した場合は、想いの欠落と、集合が募り驚異的な集中力、思考力、敵対意識を見せる。 その時のヴィクトリアは普段では見せない位の鋭い瞳と、威圧感を発揮する。 機械である自分と、人間的である自分の存在に困惑し、どちらかに傾きつつある状況を綱渡りな状況と思っているが、それに対しさしたる危機感がないのは不明。 本人も言われれば確かに、と問題を頭の中で提起するが、それを重要に取り扱わないのは、人間的部分が大丈夫と機械的に判断しているから、というのは現状では気づけないだろう。 最近、アイスと甘酒を飲んだ。甘くて、それでほんのり苦い味がするのに、嫌いになれない。 《搭乗セイバー》 【名称】BOL.03-F 【概要】 BreakOverLimit.03-Falcon. 性能を極限まで高める事を目標に製造された、限界突破武装といわれるセイバーユニットの一つ。 三つのユニットが製造されたが、どれも人の手に余る代物――つまりは、負担がかかりすぎる物の為、製造は中止、長らく埃を被っていた物なのだが、ヴィクトリアが製造に成功。念願の実戦投入に成功する。(念願だったのは作成者含む数名の実であるが) しかし、限界突破武装はチューンはされたものの、製造自体は現代より前であり、当時ほどのオーバーパワーははない。 それでも人を度外視したユニット、力は強力である。今回ヴィクトリアが装着している物は、強襲型のFalconと呼ばれる物。 【フォルム】 フィーンドの核に装甲の強化、更には伝達から信号までの誤差を無くすために首元にFalcon自体とチューブにより接続された信号を送るパッチがつけられており、そこからダイレクトに信号の通信を行う事で機敏性を極端に追い求めた、速度重視の強襲型セイバーユニット。紅を基調とした造形であり、ヴィクトリアはこれを装着する際、髪を解いている。(邪魔になるから) 搭乗する、というよりは装甲服の側面が強く。装着型ユニットという方が正しいかもしれない。 太腿まである脚部装甲、腕部装甲、背部に装甲がついており、それを装着(形式的には穿く、着るといったほうが近い)する事でこのセイバーユニットを装備した状態となる。 背部ブースターユニット、そこから体に対し垂直方向に伸びた追加ブースター、補助スラスター、合計12の加速装置により音速での行動が可能。 また、首元につけられた信号パッチからヴィクトリアが体内で生成したエフ=フィールドを供給する事も可能な為、期待の燃費はよく、消費を抑える必要がない(本人の燃費は悪い) それに耐えられるようにパイロットは調整されており、ヴィクトリアは体への負担を最小限に抑えつつ、最前線へ切り込み、進路を開く切り込み隊長としての役を行っている。 本来、セイバーユニットは着脱のしやすさの為に露出部分が多いが、BOLは他の装着者が存在しない為、パーツの回収を行っても意味がなく、その為パイロットの死=Falconの死である。 よって、生存目的でのパーツ製造はされておらず、緊急時の脱出には時間がかかる。 元々装甲が薄いが、ヴィクトリアが選んだ武装もあって、装甲の薄さを機動性による回避に任せているところが大きい。 エフ=ディフェンサー等の武装もあるが、それでも装甲の薄さは一撃で致命傷ともなり得るレベルで、この部分も搭乗者がいなかった理由と考えられる。 ヴィクトリアは左手にエフ=スライサー、右手に試作型ゼロ距離用エフ=シューターという武装を装備している。 また、火力という火力は積んでいるものの、大型機、重装甲機に比べ火力、破壊力は劣る物があり、大型機との戦闘は基本的に向いていない。 【兵装】 背部ブースターユニット 背部中央に取り付けられたブースターユニット。 両脇には高度調整用の小型ロケットブースター装着されている。(形状的には、ロケットの固形ロケットエンジンが近い) Falconのメインブースターであり、背部のブースターで速度調整を行い、両脇のロケットエンジンで高度調節を行う。 エフ=ディフェンサー、小型補助スラスター。 本来は各部位につけられた小型スラスターにおける細部調節が目的であったが、そこからエフ=フィールドを発生させる事により実現した局地的防御機能。 肩部、裏膝、足の踵につけられたスラスターパーツからエフ=フィールドを瞬間的に発生させ、空気抵抗、摩擦を減少させる事による体への負荷の減少、それに伴う速度維持が目的。 また、この元来の目的から発展させ、エフ=フィールドを集約させる事で、薄い膜のバリアを形成する事が可能。 攻撃を逸らす、または吸収し、無効化する機能をとりつけた物。 元は補助ユニットの流用の為、大型の攻撃に耐える事は難しいが、取り付けられている位置の関係から体の全体を覆うバリアを張る等の行動ができ、応用力は高い。 エフ=ディフェンサーを防御に回している間スラスターからの補助ができない為、機動力と細部の動作性が落ちる。 バリアの強度をある程度上昇させることもできるが、その間は停止状態になる必要がある事 元々Falconはヴィクトリアの「デジャヴ」による回避を前提している事、緊急時のどうしようもない時以外は使用されず、使用する状況は焼け石に水な事が多いという理由により、使用される機械が殆どない。 それでも、流れ弾等の、他の機体なら損害にもならない程度の物ですらFalconなら致命傷に繋がる為、かかせない武装である事に変わりはない。 エフ=スライサー 本来は別機体の武器だが、ヴィクトリアが好んで使用している物。 トンファーのように短い持ちて部分があり、それを持つ事によって使用する対フィーンド用近接武器。 また、左手を覆うようにして装甲が追加されている。 いざという時はこの左手の装甲部分での防御が可能だが、装甲部分が小さいため、攻撃を逸らす、または衝撃の緩和以上の使い方は期待できない。 元は超振動によって切断力を上昇させたナノスライサーという武器だったが、それにエフ=フィールドの効果を相乗させる事により、エフ力場を相殺し、直接一閃する一撃必殺の武器となっている。 エフ=フィールドはFalconとヴィクトリア自身から供給される為、他の機体よりも燃費が良い。(良いというよりかは、バックパックが追加されているだけだが) その分ヴィクトリア自身の燃費はよくない。食費的に。 試作型ゼロ距離用エフ=シューター 対戦車用ライフルなのだが、中に弾丸は込められていない。 その変わりFalconからエフ=フィールドを弾丸として凝縮し、発射する為の機構を取り付けてある。 トリガーを引くと、砲身内部でエフ=フィールドを凝縮し、弾丸として発射するという代物になっている。 本来取り付けられていない機構の為、エフ=フィールドが形を保っていられる時間が極端に短い。 安定して使う為には零距離、またはそれに近い超近距離が目安となる。 相手へと押し付ける形で撃ち、超近距離における圧倒的火力でねじ伏せる試作兵器。 弾丸を持たない理由として、弾丸の装填、重量等を考慮した結果、無い方がいいという判断との事。 ヴィクトリアの独自解釈における結論なので、それが正しいのかはわからない。とりあえず戦果は出てる。 日記 つけたほうがいいと言われたので、つけてみます。 とりあえず本日。晴れ、ご飯おいしい。訓練あった。終わり。 +フランス奪還作戦、ぜんじつ コンディションによる若干の変調か、それに類する事象により睡眠時間が僅かにズレた為、甲板に。 隊長殿にあった。終わり。 +フランス奪還作戦、ついき 同期に日記を書いている所を偶然見られ、これの何処が日記なんだと呆れられた。 人間らしい書き方という物を教わったので、戦闘時における柔軟な思考の練習として記してみる。 前日の詳細な話。 前日は隊長殿に対して、随分と失礼な態度を取った。恐らく自らの頭の中にあった幾人かのデータに当て嵌まったのだと思われる。 隊長殿の入隊時期にもよるが、世話になった人間もいる可能性がある。それに引かれたのかもしれない。 無礼な態度をとった事で処罰を受けるかと思ったが、そんな事も無かった……律する時間もない程、フランス奪還作戦は厳しい物になるのかもしれない。 それにしても、人間と機械の明確な差。それが私以上に彼ら、彼女らにはわかっているのだろうか。 気になる。とても。すごーく。 +フランス奪還作戦、けっこう 生きて、帰ってこれた。 機体の損傷が激しいが、五体は満足。 後遺症もない。 今私が死ねば、開発にかかった費用の三分の一も回収できない。頑張らねば。 …………ただ、この理由の為だけに戦う事に、何処かしっくりきていない自分がいる。 何故だろう。これは深刻な問題かもしれない。 解決しないのであれば、近々検査を受ける事も視野に入れよう。 ただ、この時期は人一人ですら欲しい時期、今問題が発覚した場合、戦線に出れない。悩む。 +じゆうじかん ――――また無礼な行為を働いてしまった。 どうしてだろう。考え込もうと思ったが、正直今現在の私の脳みそは頼りにならなそうだ。 情報パターンが足りない。新しい選択肢を開拓するには時間がかかる…………。 にしても、隊長殿はもしかしたら機械に対しての性癖の偏りがあったのだろうか。 もしそうなら本当に詫びなくてはならない。 +じゆうじかんそのに 副隊長殿にあの後話しかけられたのは何かだかなんだかの嫌がらせのように感じる。 殴れば解決する…得tンそれくらい単純であればよかったのだろうけど、それで解決しないのはわかる。 そもそも階級無しの私がそれをしたら投獄ものだ。それでも、言いたい事は分かった。 ……がんばろう、うん、がんばろう にしても、副隊長殿は何度か独房に入れられている筈なのに、どうやって切り抜けてきたのだろう。 もしかしたら参考になるかもしれない、ちょっと聞いてみたい気もする。
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【ビーストバインド・ニューテスタメント】 プレイヤー名:聖マルク 《パーソナルデータ》 人の名:ヴィクトリア・ペンドラゴン 魔の名:魔竜ヴィクトリア 年齢:自称11 性別:女 身長/体重:142cm/35kg 髪/目/肌:青/金/白 一人称:私(わたくし) 容姿:金髪の巻き毛にふりふりひらひらの衣装。いつも自信たっぷりな表情を浮かべている。 設定:竜胆アカネを一方的にライバル視している西洋竜族の娘。過去に何かあったとかなかったとかいう話である。 実家の権力と財力を笠に着てわがまま放題に育ち、まあ今も同じような感じである。 使用経験点:0 《ブラッド》 プライマリ/セカンダリ:ビースト/デーモン カヴァー:小学生 《ライフパス》 出自:公子/親がドミネーターである 特徴:カリスマ/自分が登場しているシーンへの[登場判定]に+2 変異:乗用車より一回り大きい程度の竜。 《能力値》 FP:21 人間性:13 行動値:5 体力:12[8] 白兵:3/+11 耐性:1/+9 敏捷:10[2] 射撃:/ 運動:3/+5 運転:/ 感情: 9[2] 意志:/ 魔力:1/+3 知性: 9[3] 知識:/ 機械操作:/ 知覚:/ 社会: 7[2] 交渉:/ 情報/魔物:1/+3 情報/噂話:1/+3 《HA/A》 [ハイパーアーツ] 《神獣撃》 《獣の生命》 《歪曲する真実》 [アーツ] 名称 LV タイミング 判定 コスト 時間 射程 対象 解説 理より外れしもの - 常時 - - - - - 吹き散らすもの:炎 3 メジャー 白兵 4 メインプロセス シーン 範囲 炎 +15の[特殊攻撃] 獣の気 2 オート 自動 3 メインプロセス - 自身 [特殊攻撃]のダメージ+[LV×4] 殺戮者 - 常時 - - - - - 与えるダメージ+5 殺戮の宴 - セットアップ 自動 6 シーン - 自身 判定の達成値+3、ダメージ+1D6 爵位 1 常時 - - - - - 与えるダメージ+[LV+【知力】] 真なる魔 - セットアップ 自動 7 シーン - 自身 自分のダメージ属性 闇 、軽減不可 《絆/エゴ》 名前 関係 絆 竜胆アカネ 好敵手 エゴ 誇り 傲岸 《武器/防具/一般アイテム》 [武器] 名称 種別 隠匿 常備化 技能 命中 攻撃力 位置 解説 吹き散らすもの 特殊攻撃 - - 白兵 11 炎 +24 - 常時修正計算済、範囲 [防具] 名称 種別 隠匿 常備化 位置 回避 防御力(斬/刺/殴)(その他) 解説 ( / / )( ) ( / / )( ) 合計 ( / / )( ) [一般アイテム] 名称 種別 常備化 解説 携帯電話 サービス 0 最新式 情報屋:魔物 サービス 2 [情報収集]達成値+3 情報屋:噂話 サービス 2 [情報収集]達成値+3 再生薬 消耗品 3 マイナーアクションで【FP】2D6回復
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ヴィクトリア・ショウをお気に入りに追加 ヴィクトリア・ショウのリンク #blogsearch2 ヴィクトリア・ショウとは ヴィクトリア・ショウの41%は犠牲で出来ています。ヴィクトリア・ショウの18%は果物で出来ています。ヴィクトリア・ショウの16%は覚悟で出来ています。ヴィクトリア・ショウの10%はアルコールで出来ています。ヴィクトリア・ショウの8%は睡眠薬で出来ています。ヴィクトリア・ショウの4%は明太子で出来ています。ヴィクトリア・ショウの3%は宇宙の意思で出来ています。 ヴィクトリア・ショウ@ウィキペディア ヴィクトリア・ショウ ヴィクトリア・ショウの報道 美貌の歌姫 MVで着用した「金のホットパンツ」がなんと博物館に所蔵されていた(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ヴィクトリアM】団野最年少Vだ ディアンドルでつかむ!結果残しG1でもコンビ - netkeiba.com 「ヴィクトリアズ・シークレット」、名物のド派手なファッションショーを中止 - WWD JAPAN.com 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 ヴィクトリア・ショウのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ヴィクトリア・ショウの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ヴィクトリア・ショウ このページについて このページはヴィクトリア・ショウのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるヴィクトリア・ショウに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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子羊を誘う羊飼いが誘われたモノ MARDOLL s_Tears. 1 『対立職業《カウンタージョブ》』。 魔術業界において、ある魔術師が何らかの働きかけを行えば、またある魔術師がそれを食い止めようとする動きのことだ。 人を殺して自分達の富を築こうとする魔術結社が生まれれば、それを阻止する魔術結社が現れる。人の財産を奪って自分達の富を築こうとする魔術結社が生まれれば、それを阻止する魔術結社が現れる。 魔術業界はそうして新たな勢力が生まれては食いつぶされ、有機的な活動を行いながらも一定の規模を保っている。『対立職業《カウンタージョブ》』というのは、そうした動きを説明する為に使われる用語である。 たとえば魔術サイドの治安維持に多大な貢献をしている 必要悪の教会《ネセサリウス》も、『魔術サイドの治安を乱そうとする』魔術結社に対する 対立職業《カウンタージョブ》であると言える。 ただ、それは別に一〇〇%の善意から生まれた行動というわけではない。 人を殺して自分達の富を築こうとする魔術結社の動きを妨害する魔術結社は、その妨害する動きによって彼らの富を横取りできる。人の財産を奪って自分達の富を築こうとする魔術結社の動きを妨害する魔術結社は、その妨害する動きによって依頼主との良好な関係を築くことができる。 必要悪の教会《ネセサリウス》は、魔術サイドの治安を守ることで『自分達が頂点に立っている秩序』を維持することができる。 このように、あらゆる魔術結社の動きの裏には、『自分達の利益』が存在する。 人間というのは、根本的にそういう生き物なのだ。何か自分達に得がなければ、動くことはできない。まして、魔術師は個人主義であり、魔術結社は個人主義の人間達の集まりだ。動くとなれば、少しでも多くの人間に共通の価値を感じさせるもの――即物的な利益が一番有効となる。 …………尤も、そうした『利益』を度外視して、単純な人助けに励む 対立職業《カウンタージョブ》も、ないことはないのだが。 2 「う・み・ッスよ――っ!!」 ドパァン!! という水飛沫が上がりそうな勢いで、真夏のビーチに少女の雄叫びが響き渡る。雄叫びをあげた高校生くらいの少女は、『びくとりあ』と胸元に書かれたスクール水着を着ていた。普通ならば小学生が着るようなモノを着ている為か、胸回りがとんでもないことになっているのはご愛嬌だ。 普段は腰くらいまで無造作に流されているだけの金髪は、今は頭の後ろでお団子になっている。キラッキラに輝く碧眼と言い、限界まで持ち上げられた口角と言い、少女はもはや完全に海水浴モードになっていた。 少女の名はヴィクトリア=ベイクウェル。 こんな有様だが、一応悪い魔術師をやっつける『必要悪の教会《ネセサリウス》』に所属しているエージェントの一人である。 「……エージェントと言えば聞こえは良いけど、実際には戦闘馬鹿のコミュ障が集まっているだけだものね……」 そんな少女を遠巻きに眺めて、自分に納得させるように溜息を吐く少女が一人。 ブロンドの髪を肩くらいで切り揃えた、どこか冷たい印象を与える少女だ。肌も西洋人らしい白だが、その瞳だけは東洋人を思わせる黒い色をしていた。……何にせよ、こんな風にビーチで海水浴なんて雰囲気を楽しむようには見えない。 ハーティ=ブレッティンガム。 元は 処刑《ロンドン》塔で罪人に対して 拷問《オシオキ》を行う拷問官だったのだが、今は色々あって悪い魔術師をやっつけては現場で 拷問《オシオキ》する 必要悪の教会《ネセサリウス》のエージェントとなっている。 ただ、そんな出自のせいか彼女の人づきあいの悪さは相当のもので、ぶっちゃけて言うと常識人であるように見せかけておいて彼女こそ戦闘馬鹿のコミュ障の代表格のようなものなのだが、最近はこの海水浴モードのスク水少女つながりで少しずつではあるものの同僚の顔と名前が一致し始めている――つまりある程度の社交性を獲得しつつあるのだった。 その拷問官少女は現在、黒革製の『これ下手したら全裸よりエロくね?』といった感じのビキニを身に纏い、両手首に銀色に輝く手錠をかけていた。もっとも、手錠といってもそれらを繋ぐ鎖はだいぶ間隔を長く取られている為、実際に動きを束縛されるようなことはないようだが。 「もー、ハーティってば相変わらずノリ悪いッスねー。海ッスよ海!! いっつもいっつもイギリスのクソ寒いところで『子供を煮込めば天使になれるんじゃね?』とか『来世で頑張れば神様超えられるんじゃね?』とか言い出す馬鹿魔術師をやっつけてるアタシ達が、何と今日は南の島でバカンスッスよ!! これはもうはしゃぐしかないじゃないッスか!!」 「……今回も一応、そんな馬鹿魔術師をやっつける為のお仕事なんですけどね……」 そう。 彼女達二人が真夏のビーチに来ているのは、当然のことながらバカンスの為などではない。 「このオセアニア方面センターオーシャン島に『世界樹の根に巣食う蛇』とかいう、イギリスを中心にアレな活動をしている魔術結社が商談に来ているから、叩き潰してこい。……確か、オーダーはこうだったわよね。それがどうして、こんなことになっているんですか?」 「どうしてってそりゃ、北半球は今真冬なんですから南半球は真夏に決まっているじゃないッスか」 「そんなことは分かっているのよ」 ゴガン!! と鈍い音が響いた。 SM系魔術師の前でボケるのは、いつも命がけである。 布地が少ない……というか殆どない水着のどこから取り出したのか、愛用の鉄槌を手でぱしぱしやりながら、ハーティは続ける。 「必要がないじゃない、必要が。私達の目的は『世界樹の根に巣食う蛇』の討伐です。こんな海辺でバカンスなんて不自然すぎるでしょ。大体、第三次世界大戦によって生まれたグレムリンの宣戦布告の影響で清教の魔術師がてんやわんやしている中で私達二人だけオセアニア行きっていう時点で納得がいかないというのに……」 「ふふん。ハーティもまだまだッスねー。南国によそ者が来る理由なんてバカンス以外あり得ないじゃないッスか」 ヴィクトリアは頭からそこはかとなく出血しながら紺色の水着で覆われた胸を張り、 「むしろこんな風に水着を着て、『休日にはしゃぐ間抜けな観光客』を装っておくのが良いんスよ」 「……何だか釈然としないけど……」 「あーアタシの発案だってんで信用してませんねハーティ。心配しなくても、この作戦は土御門の発案ッスから」 「……ツチミカド?」 「あれ、ハーティってもしかして土御門のこと知らないんスか? まあ、知らなくても仕方ないかもしれないッスけどねー。殆どイギリスにいませんし。ちなみに、土御門ってスゲー物知りなんスよ!! 会うたびにアタシにジャパンの情報を教えてくれますし!!」 「……、なんだかよく分からないけど、とりあえずあなたは騙されていると思うわ」 ヴィクトリアの言う人物が誰だかは分からないが、とりあえず出会ったら一発ブン殴っておこうと思うハーティだった。 「大体、何よその水着。一〇〇歩譲って胸に名前を書いた布を貼っているのは良いとして、なんで日本語の、しかもひらがななんですか? 確かあなたは日本語はひらがなカタカナくらいまでなら行けるって言っていたわよね?」 「ああ、これッスか。これも土御門の情報ッス。今のジャパンじゃこれが流行の最先端らしいッスよ!! なんでも、高校生くらいの半端に成熟しきった少女が幼女の身につける水着を身に纏っているアンバランスな背徳感がサイコー!! らしいッス!!」 「やっぱりあなた絶対騙されているわ!! そしてそのツチミカドとかいうロリコンは世界平和の為にも私が殺します!!」 友人を陥れる変態ロリコンの存在に思わず慄くハーティ。まだ世界には彼女の知らない闇があるのであった。というか、ここまであからさまな劣情を叩きつけられておいて全くその意図に気付いていないスク水少女は、完璧に土御門の言葉を専門用語の羅列と切り捨てているらしいのであった。 「大体、あなたはその格好に違和感を感じないの? 現場に溶け込むというのであれば、もうちょっとまともな水着があると思いますけど」 「こんなオセアニアのリゾート地じゃ確かに流行の最先端は目立つかもしれないッスけどね。でも、完璧にスタンダードを貫きすぎても周囲から浮いてしまうモンなんスよ。少しくらい主流から外れていた方が良いという訳ッス」 明らかに第三者からの入れ知恵だとわかる見解を披露したスク水高校生少女はそう言って、 「それより、ハーティの『それ』の方が目立つんじゃないッスか? いくらなんでも、プライマリースクールに通っているような女の子がそんなオトナな水着ぐべぇッ!? ぎゃあ!! スンマセン!! 調子コキましたッス!!」 「……ひとつ言っておくと、私は一四歳です。もうプライマリースクールに通うような歳ではないわ」 「は、はひ……」 無礼者に怒りの鉄槌(文字通り)を浴びせたハーティはふんと鼻を鳴らすと、それで矛を収めた。常人ならばギャグでは済まない状態だが、そこはそれ。ツッコミ代わりに炎剣を叩きこんだり叩き込まれても笑い話で終わらせるのが、 必要悪の教会《ネセサリウス》のエージェントである。 「流石に私だって『認識阻害』の術式くらい使えるわ。今だって、少なくとも魔術の心得がない者相手なら、不審に思われることだってないです。それに、これにだって一応魔術的意味が存在しているのよ。究極的に小石とお絵かきできるだけの地面があればいつでもどこでも魔術を行使できるあなたと違って、私は服装も含めて魔術に利用していますから。いくらビーチに来ているとはいえ、襲われないとは限らないわ。もしも襲われた時のことを考えて、魔術的に拘束具の要素を込めた水着を着ているんです」 『これ、作るの大変だったんだからね』と小言を漏らすハーティ。しかし、ヴィクトリアが反応したのはハーティの用心深さではなかった。 「……ハーティ。わざわざこの日の為に水着を作って来てくれたなんて……もしかして、意外と楽しみにしてたんスか?」 「……っ!!」 とんでもない方向からの指摘に、ハーティは思わず言葉を詰まらせる。 「もー。それならそうと言ってくださいッスよー!! 何だかんだでハーティがいやいやなのかと思って、ちょっとガッカリだったんスから!! そういうことならしっかり楽しんでそれから仕事しましょう!! いやー楽しくなってきたッスねー!!」 「…………、」 「うん? ハーティ、どうしたんスか? 顔赤くして?」 「赤くなんて、なってないっ!!」 「ぎゃあ!? なんかデジャヴっ!?」 ドガバキグシャゴッキンドゴバゴガガガ!! と連続した暴力の音が響き。 学習能力ゼロのアホスク水少女が海を赤くしたらしい。 ちなみに、北欧神話において海は大巨人ユミルの血から出来たんだそうな。神話のユミルも同じような感じで海を作ったのかなーとかちょっと神話の世界に思いを馳せてみるヴィクトリアだった。 3 そんなわけで一通りばしゃばしゃと水着シーンで尺を稼いだ二人は、事前にチェックインしておいた観光客用のホテルに戻ってきていた。 結局それなりに楽しんでいたわけだが、ヴィクトリアも流石にそれを指摘したりはしない。彼女の友達は照れ屋なのである。 ともあれ、お遊びの時間はこれで終わりだ。半日かけて『おバカな観光客』を装ったお陰で、島民からの警戒心もだいぶ薄れてきている。既に日も暮れつつあるが、ここからが正念場だった。 『それで、今回の標的となる「世界樹の根に巣食う蛇」についてですけど』 黒革製のビキニから、SM嬢が着るような、いつもの黒革ボンテージに着替えたハーティは、ベッドに腰掛けて盗聴対策の念話霊装を用いてそんなことを言う。組んだ足は米軍払下げかと思うような編み込みブーツに覆われ、両手首は相変わらず手錠に戒められていた。露出度でいえば、どちらもあんまり変わらない有様である。 「……なるほど。ハーティの服装に違和感を感じていたんスけど、その違和感は『水着で街中を闊歩しているように見える』ことに対する違和感だった訳ッスね」 「……また殴られたい?」 「い、いえッス」 すぐさま否定したヴィクトリアも、既に水着から着替えている。 普段着の、一昔前の日本の女子学生が着ているようなセーラー服に着替え、お団子にしていた髪を下ろしたヴィクトリアは、そう言って部屋に備え付けられているデスクに腰掛ける。真夏の南国にいるからか、普段は上に羽織っているブレザーのような上着はなく、セーラー服も半袖仕様だった。 鉄槌をちらつかされてすっかり委縮したスケバンは、気を取り直して霊装を使い話す。 『えーっと、清教からの情報によるとッスね、このオセアニア方面センターオーシャン島は、学園都市の技術協力によって誕生した人工+浮揚島ッス。尤も、領土関連の問題から一応オセアニア方面に留まるように条約によって定められているようッスけど、そんなことよりとにかくその成り立ちに学園都市が関係していて、なおかつ運営には学園都市は関係していないっていうポジションが重要なんス。明らかに科学サイドッスけど、ちょっかいをかけても別に科学サイドへの攻撃とは見做されない。そういう関係から、魔術サイド的には完全に勢力の空白地帯となってしまっているようッスね』 『……それはつまり、人員の洗浄《ロンダリング》に最適という訳でもある』 『そう。勢力が及んでいない空白地帯ということは、そこで起こっていることは感知されづらいということ。太平洋のド真ん中ってことも関係ありそうッスけどね。ともあれ、よそで誘拐してきたアワレな子羊を一旦ここに連れて来て、ここで痕跡を消してまた別の場所へ飛ぶ……っていう、一種のシステムまで生まれているそうッスよ。中にはそれを使って儲けている連中もいるとか』 『逆に商売敵も多いから、今回のように私達 必要悪の教会《ネセサリウス》にわざと情報をリークするという潰し合いも散発しているようですけどね。そんなことを続けていればそのうち私達の勢力が根付く足掛かりが生まれてしまうかもしれないというのに、馬鹿な連中』 『「世界樹の根に巣食う蛇」はどちらかというと現地系ではなく、イギリスに本拠を置く魔術結社ッスね。だからこそアタシらに狙われる羽目になったんスけど。どーも近々大規模な儀式を行いたいらしく、最近は頻繁にこのオセアニア方面センターオーシャン島を訪れているようッス。主な取引先は……おおう、「誘拐者」とか、色々名前が挙がってるッスねー』 『……「誘拐者」。ヨーロッパを中心に活動している非戦闘要員の魔術師でしたっけ』 『そうッス。魔術によって子供を誘拐し、「市場」に売りこんでいるゲスッスね。必要悪の教会《ネセサリウス》の方でも始末したい魔術師として長年挙がっているんスけど、それをすると背後の魔術結社が絡んで来て色々と面倒っていう……』 『私達が言えた義理ではないけど、救いようのないゲスね』 ハーティはそう言って、改めて気を引き締め直す。 『ただ、何も「世界樹の根に巣食う蛇」のようなゲスだけがこの島の情勢を支配しているわけではないッス』 『……「対立職業《カウンタージョブ》」。魔術業界においてある役割が台頭すると、それに対抗するように現れる「利害が対立した役割」です。……当然、空白地帯だろうとそれはお構いなしに発生する。この場合は、誘拐した子羊達を遠くに売り飛ばす組織の 対立職業《カウンタージョブ》ですが』 だが、それは単純にハーティ達の仲間が増えるという意味ではない。 『……敵の敵は味方、という風にならないのが面倒なところね』 誘拐業の『対立職業《カウンタージョブ》』が絶えず発生しているのは、別に誘拐なんていう非人道的なことを許せない善人がいるから、という話ではない。単純に、誘拐を阻止することで一定の利益を得ることができる立場の人間がいるという、ただそれだけの話だ。 そして、単なる利害の関係において、『敵の敵は味方』という法則は通用しない。誰かが利益を得れば、結果的に他の全員が損をするのだから、敵の敵は別の敵にしかなり得ない。 『まあ、お陰でアタシらみたいな怪しいよそ者が来ても怪しまれずに済んでいるって訳ッスけどね』 『でも、「仕事」をする上で余計なノイズは避けたいところよね』 そう言って、ハーティはベッドから立ち上がる。 『まずは、歓迎パーティをこなしておきましょうか』 次の瞬間、ゴガッ!! とハーティの持つ鉄槌から爆音が響き、とてつもない勢いで『釘』の形に押し込められた空気がドアめがけて叩き込まれた。ドアの向こうからくぐもった悲鳴が響き、人が倒れるような音がハーティの耳に聞こえてくる。 『チッ……。予想はできていたけど、早速私達を監視している人員がいるわ。私達の目的はバレていないと思いますけど。念話の術式を使っていて良かったわね』 『……というか、相変わらずハーティは先手必勝ッスねー……』 『当然でしょ。私達のいる世界で、「敵の敵は味方」なんてやさしい法則は成り立ちません。「あの少年」がいれば別でしょうけど……ともあれ、戦場で会えば「とりあえず」戦う程度の存在に容赦をする必要はないわ』 『……まあ、それが正論なんスけどねー』 言いながら、ヴィクトリアはどこから取り出したのか、何やら紋様の描かれたカーペットのようなものを取り出す。 ハーティは今まで見たことのないヴィクトリアの霊装に、思わず首をかしげた。 『……それは?』 『「幻影の王」を呼び出す為の「塚」ッスよ。アタシだって、いつまでもお絵かき遊びしかできない訳じゃないんスよ? いちいちルーン文字で魔法陣を書くのは面倒だし時間もかかるッスから、こうやって小道具を用意して時間を短縮することにしたんス』 ルーン文字の儀式場を耐久性の高いカーペットに刻み込むのは骨が折れたッスけど、とヴィクトリアは苦笑する。 ヴィクトリアの扱う『幻影の王』は、豊穣神でありスウェーデンの国王でもあったといわれているフレイが、ミドガルズから去った後三年間もその威光だけで国の平和を保ったという伝承から、フレイの墓である『塚』を築くことでフレイの幻影を生み出し使役する術式だ。 しかし、その本体である『塚』には複雑なルーン文字による魔法陣を刻む必要があり、また防護術式や隠蔽術式を何重にも重ねがけする必要がある為、今までは実際に術式が稼働しだすまでにある程度時間がかかっていた。 だが、魔術というのは常に流動的だ。 たとえ最強に思える魔術が生み出されたとしても、しばらくすればそれに対抗するような術式が考案され、最強に思われた魔術はあっさりと零落する。 そんな魔術を扱う魔術師も、常に自らの命を預ける術式を磨かないといけないというわけだ。 『準備まであと三〇秒弱かかるッス。とりあえず、ハーティは部屋の前を見て来てくださいッス』 『分かったわ』 ヴィクトリアに言われるまでもなく、ハーティは慎重にドアの元まで行き、『釘』によって開けられた穴から外を覗く。部屋の前の廊下には、腹に見事に透明の釘が刺さった哀れな魔術師がいた。ハーティは周囲の状況を確認すると、さっさとドアを開ける。 「……あなたは?」 「……ぐ。答えると、思っているのか?」 問いかけるが、男の返答は色良いものではなかった。 カチリと、ハーティの表情の『質』が明確に切り替わる。 「そう」 ドガッ!! と男の横っ面に鉄槌が叩き込まれ、みしみしと嫌な音が響いた。 躊躇はなかった。 悪の魔術師を退治するという『正義の魔術師』であるハーティだが、それは彼女自身が善人ということではない。『やっていることが正義だから、結果的に彼女自身が善人に見えている』だけなのである。どう取り繕っても、彼女の本質はこうしたときに冷徹な判断が行える『立派な拷問官』だ。そもそも、問題の解決にいちいち血みどろの暴力しか選択できない人種が、本当の善人であるわけがない。 「ごッ……がッ……!?」 「最初に一つ言っておくわ」 拷問中に失血死するのを防止する為の措置なのか、釘が腹に刺さっているにもかかわらず一滴も血が垂れていない男を無理矢理に引き起こすと、ハーティはそのまま迅速に男を部屋の中に叩き込む。 「私は、別に魔術を使ってあなたの死体から情報を抜き取っても良いんです。ただ、それは『少しばかり』リスクが大きくて面倒なの。これは取引よ。あなたが自発的に情報を喋ってくれれば、最低限生命の無事は保証しましょう」 嘘だ。 ハーティがいくら拷問官とはいえ、さすがに死体から情報を抜き取るような術式は持っていない。そもそも、そんなことができればハーティはわざわざこの男を甚振ったりはしなかっただろう。 だが、男はそんなことを知る由もない。明らかに論理に穴があったとしても、痛みと恐怖と焦燥がその穴を塗り潰す。『取引』という単語が、感情ではなく利害で行動する世界に慣れ切った男の心を揺り動かす。 「ぐ、あ……」 「あなたの所属する魔術結社は、そこまで義理を感じるようなものですか? どうせ、ゲスの中のゲスみたいな連中が集まっている結社でしょう?」 ハーティの問いかけに、男はぴくりと体を反応させた。 (……動いた) 拷問官であるハーティの前で、男のリアクションはまさしく致命的であった。カクン、と男の瞳から光が失われる。あるいはそれは、男に対する慈悲だったのかもしれない。 「単刀直入に聞くわ。貴方は、誘拐する側? それともそれを妨害する側?」 「…………俺、は……誘拐……妨害……運ばれてきた、奴隷、を……強奪、……別ルートに……」 「結構」 これが、対立職業《カウンタージョブ》の実態だった。 悪と対立するのは、必ずしも正義ではない。 悪と対立するのは、多くの場合はまた別種の悪。闇の中で、別の闇同士が足を引っ張っているという、目も当てられないほど醜い惨状が、この世の多数派だ。 ハーティはそれ以上聞かずに話を切り替える。 「では、質問を変えます。あなたが所属する結社の名前は? この島のどこに潜伏しているんですか? 「名前は……、……「暁光を齎す者」……。……場所は……南東……、……別荘用に、売り出されていた……ペンション……に…………」 そこまで言うと、男は完全に意識を失った。 『……かなり「協力的」でしたッスけど、一体何をしたんスか?』 一部始終を見ていたヴィクトリアは、怪訝そうな表情を浮かべてハーティに問いかける。 『ちょっとしたお呪《まじな》いよ』 対するハーティは、何でもないことのようにあっさりと答えた。 『……どう見ても、魔術的に自白を強要したようにしか見えないんスけど……』 『まあ、扱い方は「拷問官」風に仕立てていますけど、基本的な術式は単なる精神安定みたいなものです。恐怖と焦燥で基盤を緩めて、意図的に自分の所属する組織に対する不信感を煽った上で、「心を平静にする」術式を使ってあげたのよ。もっとも、どういうルートを経て「心の平静」を保つかについては、私の方で意図的に誘導させてもらいましたが』 『うへぇ……、相変わらずえげつないッスねぇ』 『傷をつけていないだけマシだと思ってもらいたいわね』 『で、これからどうするんスか? コイツの言っていたペンションに?』 『いえ。流石にそれは短絡的すぎです』 ハーティが返すと、言外に短絡的呼ばわりされたヴィクトリアはちょっとむっとする。 『とりあえず、コイツは人目に付くところに置いておくわ』 『……へ? それじゃあ、アタシたちが攻撃したってことがバレちまうじゃないッスか』 『そんなことは遅かれ早かれバレることよ。それより、私達の目的が何だか忘れたんですか?』 『……ええっと、「世界樹の根に巣食う蛇」の討伐?』 『でしょう? なら、この男の所属結社を潰したところで私達の目的は達成できないのよ』 『……つまり?』 『まずは揺さぶりをかけて、出方を窺う。……まあ、展開によっては、全ての魔術結社を潰すことになるかもしれないですけどね』 4 『動きがあったわ』 宵闇。 昼間は暑いくらいだった外は、今は潮風によって肌寒いくらいになっている。そんな宵闇の中に、ハーティとヴィクトリアは潜んでいた。 海が近いのか、二人の耳には微かに波の音が聞こえてきていた。防風林によって隠れているが、おそらくその向こうは昼に時間を潰していた海水浴場だろう。 『うぅ~、寒いッス~』 『まったく。夜間の活動を計算に入れていないからそうなるんですよ。せめて上着の一つくらい持ってくれば良かったのに』 『だって~……。……っていうか、ハーティは寒くないんスか? そういえばハーティは海に入ってたのに髪の毛ゴワゴワしてませんよね……』 『当然、寒さなんて魔術で防いでいるわよ。海の方は「水責め」対策の応用です。海に入るのは分かっていましたからね。上がった後にべたべたするのは嫌だったから術式に組み込んで対策していたのよ』 『そ、そんなに綿密な対策を……、あ、いや、何でもないッス』 思わずその海水浴に対する用意周到っぷりに感嘆の声をあげかけたスケバンだったが、それを言うと拷問官サマが怒りそうなのを察して黙った。実に賢明な判断である。 『でも実際、いちいちそんな霊装の役割も込めた水着を作るなんて面倒じゃないッスか?』 『いえ、実はそうでもないんですよ。今回の為に「水責め」対策の要素を霊装に加えたのはそうだけど、水着そのものはこの普段着を変形させたものだから。ちょっと形を整えれば普段着にも水着にもできるようにしているのよ。だから、コレはまだ「水責め」対策の要素も残っているんです』 『へぇ~……。……アタシもそういうの作ろうかなぁ……。……ああでも、北欧神話で海にまつわる神話ってそんなにないんスよねー。一応エーギルとかニョルズみたいに海の神はいるんスけど、どっちも威力が高すぎたり港を司ってたりで、海水浴用に応用するのは難しいんスよ。巨人ユミルは規模がでかすぎるッスし』 『単純にあなたの技量不足なだけのような気がしますけど……』 辛辣な意見にちょっとショボンとしたスケバンはさておき、ハーティは様子を窺うようにあたりを見渡す。 『さて。とりあえず「種」は撒きました。連中も私達の素性は分かっていないだろうから、「斥候に出してみた連中が何者かによって倒された」という以外の確定情報はない。……となると、私達があの男をやったという可能性を含め、「かねてから対立していた結社が横槍を入れてきた」などあらゆる可能性を考慮しないといけない。すると発生するのは……、』 瞬間、宿の方からゴガガガッ!! !! !! という轟音が発生した。 明らかな『異』日常。 しかし、それ以外の部分で島の日常は続いていた。それが逆に、ちぐはぐな世界観の違いを生み出して結果的に異常をことさら際立たせている。 ただ、それも当然な話だ。 『……疑心暗鬼になった結社同士の小競り合い』 この『異』日常は、それを日常としている魔術師にしか感じ取ることができないものなのだから。 『……なんというか、本当に、なんというかッスね。まあ、一応「人払い」は徹底しているみたいッスけど』 『もちろん、「そうなる」ように状況に意図的な誘導は加えていますけどね。これは専門ではないから、私がやったのなんて本当に微々たるものよ。こうなるだけの火種は、もともとこの島そのものが抱えていたんでしょう』 『それで、どうするんスか? これじゃあ、目的の「世界樹の根に巣食う蛇」の討伐が余計面倒になったような気がするんスけど』 『問題ないわ。窓口はちゃんと確認してありますし』 『窓口?』 『考えてみなさい。こんな状況になった時、一番フットワークが重いのは?』 『……、』 『答えは「集団」よ。意思決定をしなくてはならない分、どうしても個人より大規模な行動指針の決定には時間がかかる』 『……逆にフットワークが軽いのは、意思の疎通を行わなくても良い「個人」ってことッスか?』 『珍しく察しが良いですね。つまりそういうことよ』 うっすらと笑みを浮かべるハーティに、ヴィクトリアは思わず背筋に寒気が走った。さすが元拷問官なだけに、特定の誰かを『追い詰める』ことに関しては、彼女が今まで見てきた誰よりも優れている。 『……窓口っていうのは、「誘拐者」の事ッスね』 ヴィクトリアは、呻くような気持ちでそう言った。 『「誘拐者」はそもそも、「世界樹の根に巣食う蛇」の一員ではない単なる雇われッス。島全体に争いの雰囲気が漂えば、早々に商談を片づけて厄介事から逃れようとする。だから、そこを叩いてしまえば良い。向こうは元々清教に目をつけられていた背教者ッスから大義名分は揃っていますし、最大の問題点である「誘拐者」の「殺そうとすれば利害が絡んだ連中からの妨害を受ける」という性質も……勢力的空白地帯であるオセアニア方面センターオーシャン島という地理と、現在の敵味方入り乱れた乱戦環境が無効化してくれているッス』 『ご名答』 ハーティはくるりと手元の鉄槌を回転させる。 『場を乱し、勝手に尻尾を巻いて逃げだした「誘拐者」を捕まえてそこから「世界樹の根に巣食う蛇」を引きずり出し叩き潰す。簡単な構図になったでしょう?』 『よし。そうと決まればさっさと動きましょうッス。アタシの方も、準備は万端ッスから!』 『……実はもう、行動は終わっているのよ』 『え?』 ヴィクトリアが、そんなことを言った瞬間だった。 ドゴッ!! という炸裂音が響き、ヴィクトリアの傍らにいた『幻影の王』に何か鋭い物が突き刺さった。 「な……ッ!?」 「……君達は一体何者なんだ? この騒ぎに何か関係しているのか?」 金髪碧眼の青年だった。年の頃は大学生……いや、髪型をオールバックにしている為大人びてはいるものの、実際の年齢は高校生くらいだろうか。淡い色の長袖のTシャツにベージュ色のズボン、黒色のケープを身に纏っている。比較的特徴の薄い外見だが、ケープにつけられた紫色の花と黒紫色の実を模したアクセサリーだけが何か歪な存在感を放っていた。第一印象としては『慈善活動でもしていそうな好青年』だが、この状況の中で当たり前のように立ちまわっていることでそれら全ての印象が『整えられているもの』だと周囲に喧伝してしまい、却って全体的な印象に悪影響を及ぼしている。 「いや、聞く必要はないな。この場所、タイミングで『そんなもの』を携えているんだ。十中八九、俺の商売敵だな」 「……『誘拐者』、ッスね?」 「それも聞く必要はないだろう? 今こうして俺の前に立っているんだ。君達だって織り込み済みの展開じゃないのかい?」 「……、」 『誘拐者』。 『世界樹の根に巣食う蛇』の窓口。 そうハーティが呼んでいた男が、今目の前に立っている。だが、彼自身は非戦闘要員でありながら、その佇まいは冷静そのものだった。 彼の身の安全を保証していた複雑な権力事情は、オセアニア方面センターオーシャン島の成立過程と意図的に引き起こした結社同士の乱戦によって破壊されているにも拘わらず。 まるで何か他の手札を抱えているときのように、にやりと不敵な笑みを浮かべ、必要悪の教会《ネセサリウス》に所属しているエージェントを目の前にして冷静さを保っている。 「……明らかに現代人ではなさそうだったから、大方魔術生命体か何かだと判断して優先的に無力化しようとしたのだが……、……どうやら、それは間違いだったようだ」 ヌゥ、と『幻影の王』がゆっくりと立ち上がり、ハーティとヴィクトリアの前に立つ。その頭部には、金色に鈍く輝く物体が突き刺さっていた。しかし、『幻影の王』の動きに陰りはない。伝承において豊穣神フレイは、不在となってもその力を発揮した。この術式における豊穣神フレイもまた『既にいない』豊穣神フレイの力を基にしている為、『いないがゆえに殺しようがない』のである。 「……これは、黄金ッスか?」 『幻影の王』に引っこ抜かせた物体を一目見たヴィクトリアが、ぼそりと呟く。 黄金を用いた魔術といえば、ヴィクトリアが最初に思い浮かべるのはやはり北欧神話だ。十字教にも貴金属を射出する類の魔術は存在しているが、それは『銀の弾丸』であり、黄金とは合致しない。 その点、北欧神話において神々の扱う武具といえば、それはたいていが 黒小人《ドヴェルグ》によって鍛えられた黄金だった。親和性で考えれば、北欧神話以上に黄金に適した魔術体系はそうないだろう。 「不思議かい? まあ、君達に教えてあげる義理はないけどな……。だが、ここらで一つ……さらに絶望するものをお見せしてあげようか!」 そう、『誘拐者』が言った瞬間だった。 ゴガバッッッ!! !! !! と黄金の津波が発生した。 「ヴィクトリア!」 「はいッス! 『幻影の王』ッ!!」 そんな黄金の津波を前にして、ヴィクトリアは素早く右手を振る。それだけで、『幻影の王』の手の中に細身の剣が浮かび上がり――、 ズガァッッ!! !! !! と。 絶望的なまでの勢いで放たれた黄金の津波が、いとも簡単に真っ二つになった。 これが、ヴィクトリアの扱う魔術。豊穣神フレイのレプリカたる『幻影の王』を操ることにより、豊穣神フレイが扱う『接続術式』を疑似的に再現し、それによって普段は完全に引き出せない霊装のスペックを最大限に引き出す。 「まだまだァ!」 「ぐ、うおおおお!?」 黄金の津波を切り裂いた『幻影の王』の斬撃は、津波を切り裂くだけに留まらずその先にいる『誘拐者』にまで襲いかかる。ドガガガガザザギギギギ!! !! と火花を散らしながら突き進む斬撃をすんでのところで回避した『誘拐者』は、小さく舌打ちする。 「……さすがにまだ調整は不完全、か……。黄金操作の精度も甘い。このままだと少し分が悪いかな……」 「……逃がしません、よッ!!」 ドッ!! とハーティが即座に鉄槌を振り、空気で『釘』を生み出し叩き込む。しかし、これは黄金に防御され中ほどまでめり込むに留まった。 「……何を言っているのやら。この状況で俺が逃げる理由が見当たらないけどな」 波が引くようにずれた黄金の向こうで、『誘拐者』は笑みを浮かべていた。その姿にはやはり、一定の余裕のようなものが感じられる。 「おかしい、という顔をしているな。まあ当然か。君達からすれば戦闘が得意ではなく、『自分を取り巻く環境のお陰で今まで生き残って来ていた』俺が具体的な戦力を持っているんだ。これほど不思議なことはない」 言って、『誘拐者』は勝ち誇った笑みを浮かべてハーティ達を嘲る。 「だが、君達は勘違いをしていた。大体、確かに事実上俺はこの『誘拐』による収益で生活しているわけだが、こんなものは俺にとってはアルバイト――いや、それ以前の『お遊び』にすぎないんだよ。それ以外の部分に労力を回す余裕はいくらでもあったんだ。……何故、その余裕で術式の開発を行ったと思わなかった?」 「……!!」 ゴガガガガガガ!! !! と地面を削りながら黄金の塊が押し寄せ、それを『幻影の王』が斬り飛ばす。しかし、今度は『幻影の王』の攻撃が『誘拐者』のところまで届くといったことはなかった。 「調整は既に半分以上完了している!! この術式は完璧だ!! この黄金を扱う術式と俺が元々持っている性質や技術があれば、もはや敵などいない!!」 明らかに、こちらが少しずつ追い詰められている。 ハーティは、その事実を淡々と認識していた。 「……おかしい」 「何がッスか?」 ズゾザザザザと不規則に『誘拐者』の周りをうごめく黄金を見つめながら呟いたハーティに、ヴィクトリアが問い返す。ハーティは牽制の『釘』を打ち込みながら、 「私の魔術は、攻撃を与えたものの回路に干渉することで魔力の循環を乱し、魔術の発動を失敗、対象にダメージを与える術式よ」 「……それは、分かっているッスけど」 「魔術師が霊装を扱う場合、その霊装を自分自身とすることで回路の拡張を行い、内部で魔力を循環させて魔術の使用を可能にしています。……つまり、あの黄金が霊装であれば、『釘』が刺さった時点で内部の魔力循環が乱れて術式が失敗していないと、話の筋が通らないのよ」 「あ!」 ヴィクトリアは、盲点を突かれたといった様子で声をあげた。 つまり、『誘拐者』が扱っているあの黄金は明らかに通常の物理を離れた存在でありながら、魔術的な回路を備えた霊装ではない……という矛盾した状況が生み出されていることになる。 そこに『誘拐者』の扱う術式の秘密が隠されているはずだが……、 「どうやら作戦会議がしたいようだが、俺がそれを許すとでも思っているのかなぁ!?」 即座に、『誘拐者』の操る黄金の波がハーティ達に襲いかかる。今は『幻影の王』によって躱せているが、これにしたっていつまでも続く均衡ではないだろう。 その上、『誘拐者』はハーティ達に話し合う時間を与えたくないらしい。 『……まあ、こちらを使えばいいだけの話だけれどね』 とはいえ、だからといってハーティ達が手詰まりというわけでもない。ハーティ達は海千山千の魔術サイドにおいて名乗るだけで相手に一定の警戒をさせることができる 必要悪の教会《ネセサリウス》の人員なのだ。個人レベルでは実現が難しい出力の魔術を持っているとはいえ、それだけで万策尽きるというほどのものではない。 『ふぁっ!?』 『…………そうよね。貴方はそんなこと考えもしないですよね』 だが、彼女の相棒にとっては違ったようだ。 内心で呆れつつ、ハーティは魔術的な手法を使うことにより現実よりも隙のない対話を始める。 『まず、相手の扱う術式は十中八九「黄金を生み出す」類の魔術ね』 『ええ。……おそらく、何らかの方法で黄金を生み出し、 黒小人《ドヴェルグ》の加工技術の応用で黄金を操っているといったところッスかね? 扱っている術式の色は、まず間違いなく北欧神話系ッス』 あっさりと相手の術式を看破したハーティにかぶせるように、北欧神話系の術式を専門に扱っているヴィクトリアが自身の見解を述べる。 『確かに「黄金を基にした霊装」でも黄金を操って具体的な攻撃力として機能させることはできます。でも、「黄金を生み出す魔術」と「黄金を操る魔術」を使うことでも、あの現象は十分に実現できるし、私の魔術が効かない理屈になります』 『まあ、方式の違いッスね。同じような現象でも、扱っている法則が違うっていうのは魔術業界じゃよくあることッスし、少し観察すれば分かることッス』 あくまで表面上は黙々と黄金の津波を捌きつつ、ヴィクトリアは冷静に目の前の現象を分析する。 問題は、此処から先だ。 確かに、北欧神話では黄金を利用する伝承の例は神々の武具を始めとして枚挙に暇がない。しかし、反面『黄金を生み出した伝承』というのはあまり例がない。それも、これほどまでに大量の黄金を生み出した話など、あの隻眼の主神絡みの伝承でさえ存在しないだろう。 考えられるものといえば、 『……邪神ロキが賠償金を捻出したときの伝承を基にした術式か、あるいは美神フレイヤが夫オーズを探しに旅をしているときに流した涙が黄金に変わったという伝承ッスかね?』 『幻影の王』に黄金の津波を捌かせながら、ヴィクトリアはそんなことを呟いた。北欧神話の専門を相棒に持った関係で最近北欧神話関係の技術にも詳しくなりつつあるハーティも、そんなヴィクトリアの言いたいことを即座に理解する。 『邪神ロキが賠償金を捻出したときの伝承……確か、アンドヴァリの持つ財産を増やす魔法の指輪「アンドヴァラナウト」でしたっけ。だけど、アレは確か同時に所有者を不幸にする呪いも宿していたはずよ。攻撃用の魔術に用いるには、少し余計な「色」が混じりすぎていませんか?』 『だとすると、美神フレイヤの涙のエピソードが有力ッスかね……』 美神の涙。 長旅に出た夫オーズを恋しがって探しに出た美神フレイヤが流した涙が黄金となって少しずつ大地にしみ込んでいったという伝承だ。このことから黄金は美神フレイヤの別名にちなんで『マルデルの涙』と呼ばれ、この伝承は同時に世界中で黄金が少しずつ産出される理由の説明も兼ねている。 確かに、このエピソードならば数少ない北欧神話の方式で黄金を生み出すことができる。 しかし、これには問題があった。 『ただ、無尽蔵に財産を増やす「アンドヴァラナウト」と違い、美神フレイヤの涙によって生み出せる黄金の量は「ごく少量」ッス。あの黄金の量は、さすがに説明がつかないんスけど……』 説明がつかない現象が、実際に目の前で現実になっているという矛盾。 ハーティは、その事実に直面し、いつも感じたことのある感覚をおぼえた。 問題を解決する為のピースがありながら、それが見つけられないという、魔術戦が佳境に入った時に感じる感覚だ。 (何か……何かあるはず。少量しか生み出せないはずの方式で、あれだけの黄金を生み出している『何か』が……) そう、ハーティが考えた瞬間だった。 彼女の足下の地面がゴバッ!! !! と粉砕し、中から黄金の奔流が溢れだしてくる。 「ま、さか……ッ!! 地面を掘りながら!?」 「ただ操るだけが能じゃない!! 黒小人《ドヴェルグ》の黄金加工術式を基にした黄金操作は、単純な『操作』の技能ゆえに多大な自由度を得ているんだよ!!」 「は、ハーティ!!」 モロに黄金の激流を浴びたハーティはノーバウンドで数十メートルも吹っ飛び、ドパァン!! と黄金ごと海に叩き込まれる。 メギャギャギャ!! !! と黄金の激流の余波を受けた防風林が、根こそぎ吹き飛ばされていく。 もはや生存すら絶望的な攻撃。 「……水責め対策を施しておいて正解だったわ」 だがそんな攻撃を受けてなお、ハーティは佇んでいた。 他でもない、海水の上で。 「いくら黄金を防いでいても、海に落ちてしまっては話にならないものね」 そんなことを言って水の上を軽快に走るハーティの体には、黄金の激流を叩き込まれた傷跡は一切存在していない。 タンタンタン!! と大きく飛び上がったハーティは、女豹のような身のこなしで蠢く黄金の上に立つ。 「こ、の、舐めやがって……!!」 一瞬遅れてハーティの動きを感知した『誘拐者』は、即座に黄金を鋭くとがらせてハーティを刺し貫こうとする。 その動きと同時に、ハーティが右手の鉄槌を素早く振った。 ゴイィン!! という金属音が響き渡る。 「この鉄槌は本来拷問用だから、こういう使用法は専門ではないんだけど」 ハーティは依然、黄金の上で佇んでいた。 「北欧神話において、鉄槌は 黒小人《ドヴェルグ》の道具だったという話もあるくらいだしね。北欧神話系の色付けがなされた黄金なら、付け焼刃の魔術でもどうにかなるものだと思っていましたが……まさかこれほどまでに簡単とは」 「な……!? こちらの操作システムに、横槍を入れただと!?」 「おかしいとは思っていましたが、やはりこの手法は貴方の専門ではないようですね。構成も甘いし、何より横槍の可能性をあまりにも考慮していない。だからこの分野に関しては素人である私の介入も許してしまう。教えてもらった技術の半分も生かしていない」 「ッ!?」 「そもそも、貴方は元々戦闘専門の魔術師ではない。そんな貴方がこの短期間でこれほどの大規模な術式を得たということは、第三者からの技術提供を示しています。術式というのは、一から全て自分で考えるからこそフルに活用できるのよ。他人からシステムを教えられただけで全てを完璧に扱えるほど、魔術は簡単ではないわ」 「ッ……この、だが、付け焼刃の術式でこの大容量を捌き切れるかァ!?」 ゴッ!! !! !! と。 今までの一〇倍以上もの質量の黄金が、一気に生み出される。 その総量は、確かに美神フレイヤの方式では生み出すことが不可能なはずの量だ。いくらハーティが 黒小人《ドヴェルグ》の加工技術を応用した制御への横槍を行ったとしても、とてもさばき切れる量ではないだろう。 「……ただ根本の問題として、それが必ずしも美神フレイヤ『一人分』の量とは限らないのよね」 瞬間。 生み出された黄金は、その八割以上が一気に虚空に溶け失せた。 「……は?」 指揮棒を振るように腕を振って黄金を操っていた『誘拐者』は、そのままの姿勢で間抜けな声を上げた。 「……その術式の核は、ケープについている霊装ッスね」 そう言ったのは、この場において最も北欧神話の術式について詳しいはずの少女だ。 「美神フレイヤの夫探しには、続きがあるッス」 スケバン衣装に身を包んでいる少女は、『幻影の王』が持っていたはずの細身の剣を手に持って話を続ける。 「諸説あるッスけど、美神フレイヤは最終的に無事夫を見つけることができた、と言われているッス。そして、夫オーズがいた場所は……『天人花』の傍」 天人花。 紫色の花を咲かせ黒紫色の実をつける、実在する双子葉類の植物だ。 そして、『誘拐者』が身につけているケープには、紫色の花弁と黒紫色の実のアクセサリーがつけられていた。 「術式における美神フレイヤは、貴方ではなかった。貴方はさっき、『この術式と自分の持っている技術や性質があれば』と言いましたね。貴方は誘拐し、貴方自身が本来得意とする『洗脳』の術式によって操った子羊達を用いて、同時にたくさんの黄金を生み出していたんです。……大方、その霊装はあなた自身を夫オーズと置くことで、黄金の発生場所とタイミングをコントロールする為の細工だろうけど」 「もともと、この術式は多数の『フレイヤ』によって生み出された黄金を無理矢理一か所に集中制御させるというめちゃくちゃな構成ッス。だからこそ、適当な横槍を入れてしまえば簡単に構成が崩れてしまう。……そこの黄金みたいに」 ヴィクトリアはそう言って、黄金に刻まれた剣の痕を指差す。 大きな『×』の印。 「こ、れは……!?」 「ルーン文字ッスよ。北欧神話と親和性の高い、ね。意味はgebo。……『贈り物』ッス。まあ、あなたが無理矢理作った子羊達との魔術的ルートを介して『送り返す』っていう意味合いなんで、量的に全てを送り返すことはできなかったッスけど」 「でも、これだけ制限できれば十分」 「ば、馬鹿な……。何でこんな……あっさりと……完璧な術式だったはずなのに……」 「あら。貴方、魔術師のくせにそんなことも分からないんですか?」 そう言って、ハーティは彼女の相棒である魔術師を横目で見る。今回の為に、術式に改良を加えたという彼女の姿を。 「……この世に完璧な術式なんて、存在しないのよ」 カチリ、と。 言い終わった瞬間、ハーティの表情が明確に切り替わる。 今までの『どうすれば敵を倒せるか』を考える戦闘者としての表情から、『どう痛めつければ最短の方法で最大の情報を引き出せるか』を考える拷問官の表情へと。 カァン!! という甲高い音が響いた。 瞬間、ドバッ!! と残っていた黄金が『誘拐者』を覆い尽くす。 「聞こえているかしら?」 ハーティは、ゆっくりゆっくりと黄金の塊に近づいていく。ぐにゃぐにゃと不定型に形を変えて行く黄金の塊は、やがて雄牛の姿に変わった。 「古代ギリシャにはファラリスの雄牛、という処刑法がありました」 カツカツと、意図的に足音を響かせる歩き方をしながら、拷問官の少女は見えないと知りつつ酷薄な笑みを浮かべる。 「真鍮で形作った、中が空洞になっている雄牛の置物を用意し、中に有罪となった罪人を閉じ込め、その雄牛を火にかけるの。真鍮は黄金色になるまで熱せられ、当然中に入っていた人間は熱のあまり炙り殺されます。まあ、こちらは黄金だから完璧なファラリスの雄牛とはいかないけど、これでも十分よね」 コンコンと、ハーティは鉄槌で雄牛の側面を叩く。もはや黄金は『誘拐者』の制御を離れ、鉄槌を用いたハーティの 黒小人《ドヴェルグ》式に完全に制御されてしまっていた。 「このファラリスの雄牛の最初の犠牲者は、名誉欲しさにこの処刑道具を設計した真鍮鋳物師自身だったらしいわ。……欲は身を滅ぼすという典型例ね」 そんなことを言うハーティの後ろには、いつの間に準備したのか、細身の剣をレーヴァティンになるように細工したヴィクトリアの姿があった。 「中にあった鋳物師の死体は骨だけが焼け残り、その骨も真鍮のコーティングで宝石のように輝いていた為、アクセサリーとして用いられた、と言われているわ」 その様子を確認したハーティは、もはや妖しげな艶やかささえ感じさせるほどの声色でそっと呟く。 「あなたも、アクセサリーの仲間入りをしてみます?」 ハーティの言葉が聞こえていたのだろうか、雄牛の中からはのたうちまわる『誘拐者』の声が響き渡る。そんな彼を無視して、『幻影の王』が巨大な火柱となったレーヴァティンをファラリスの雄牛にぶつける。ゴォオオオッ!! !! と空気を熱する音をたて、見る見るうちに雄牛は赤く熱を持っていく。 雄牛の中から、ジュゥゥウウウ!! !! という肉が焼ける音と、男の悲鳴とも怒声ともつかない声が響き渡る。 少しだけそれを聞いていたハーティは、静かに鉄槌を横に振った。距離を超越して鉄槌と黄金が接触したような金属音が響き渡り、雄牛の口が大きく開いて中から『誘拐者』が飛び出す。 「心配しなくてもいいですよ。私の専門は拷問だもの。情報を搾り取る前に殺したりはしないわ」 全身がまんべんなく焼け爛れ、ところどころに溶けた黄金が張り付いた『誘拐者』は、自分の手の皮膚がずり剥けるのも気にせずにハーティに縋りつく。 「はうっ、あっ、あっ、な、何でもっ、何でも話す!! 金が欲しかっただけなんだ!! それだけなんだ!! もう二度と誘拐なんてしない!! だからっ、だからっ、命だけはっ!!」 その言葉を聞いたハーティは、にっこりと笑みを浮かべて鉄槌を構える。 それを見ていたヴィクトリアは、見ていられないとばかりに頭を振るだけだった。 「『Recipio022《我が身に全てを打ち明けよ》』。金が欲しいならあそこにいくらでもあるわ。……それが嫌なら、全てを話しなさい」 5 結局、『誘拐者』は生かしておくことにした。 だが、それは別に『誘拐者』に情けをかけた訳ではない。多くの結社が争いを始めたあの局面におけるオセアニア方面センターオーシャン島で、全身に大やけどを負った男が誰かに見つかれば、まず無事では済まないだろう。ハーティ達が手をかけるまでもなく、『誘拐者』は死ぬしかないのだった。 オセアニア方面センターオーシャン島に存在していた人身売買を生業とする魔術勢力は、今回の一件でかなり力を弱めるだろう。そして、そこに清教の勢力が攻撃を仕掛ければ、もう詰みだ。また、清教の勢力図が拡大することになる。 「いやーしかし、今回もなかなかのエグさでしたッスねー。なんか慣れつつある自分が怖いッスけど」 「実際、身体延長刑で真っ二つになったノーランドや 圧迫の船《プレスヤード》で押しつぶされたフレデリックよりは、まだ五体満足なだけマシな死に方だと思うけどね。ええと、何だっけ? 本名はダーフィット=シュルツだったかしら。アレから搾り取った情報のお陰で『世界樹の根に巣食う蛇』も無事壊滅できましたし、こうして無事にロンドンまで戻って来れているのですから、私自身も少しばかり手心を加えたつもりだけどね」 それに、拷問官時代から悪感情を抱いていたキース=ノーランドや、相棒を殺されたと勘違いしていたフレデリック=モンドリオと違い、今回のダーフィット=シュルツに関しては『誘拐を頻繁に行い、あまつさえ誘拐した子羊達を魔術の道具に使うクズ』という以外に、ハーティが個人的に悪感情を抱く要素がない。拷問の内容が甘めになるのも当然なのであった。 もちろん、一般的な感覚でいえばそれでも激辛になってしまうのがこのハーティ=ブレッティンガムという少女の性質なのだが。 ともあれ、そんなわけでいつものように徒歩でロンドンの清教女子寮まで歩いて帰っているハーティとヴィクトリアなのだが、いつものように腑に落ちない部分があった。 とりあえずとらわれの身だった子供達を放置しておくのは夢見が悪いので、結社同士が争っているうちに大方の結社の子供達は開放しておいたのだが、そのうちの『世界樹の根に巣食う蛇』の本拠地で異常なことが起こっていたのだ。 「……『誘拐者』が扱っていたあの天人花の方式は、あくまで『生み出した黄金を自分のもとに引き寄せる』為のもの。その方式を逆用して送り返したのですから、『世界樹の根に巣食う蛇』の本拠地には大量の黄金がなくてはおかしいのですが……」 「……なかったッスねぇ、黄金」 あの黄金は、魔術的に存在させているものだ。だから、魔術の効力が切れれば簡単に消滅してしまう程度のものでしかない。だが、その魔術を発動しているのは子供達であって『誘拐者』ではない。したがって子供達を殺した訳でもないのに黄金が消滅しているのは不自然なことなのだが……。 「それに、結局あの術式、『世界樹の根に巣食う蛇』から教えられたものではなかったのよね」 あの後、当然ハーティは『世界樹の根に巣食う蛇』の面々も一人ひとり丁寧に拷問し、今後清教の脅威になりそうな魔術師の情報などを搾り取っていたわけだが、その中で当然『誘拐者』の証言の裏もとったりしていた。 『誘拐者』が使っていた黄金操作の術式は、まず十中八九彼が自ら開発した術式ではない。 彼が本来扱っている術式は童話『ハーメルンの笛吹き男』をモチーフにした『ハーメルンの笛吹き男《MIND CONTROL》』という術式であり、間違いなく十字教の法則を扱った術式だった。 その彼が、北欧神話のエピソードを用いてあれほどの術式を開発できるはずがない。 だが、彼が証言したのは『北欧で出会った魔術師に教えてもらった。細かい特徴は覚えていない』の一点張りだったし、当の『世界樹の根に巣食う蛇』に関しても、『今回の「誘拐者」との商談はその術式の扱い方をこちらに伝えるというのも含めたもので、こちらの知るところではない』という回答以外は得られなかった。 つまり、完全なる第三者の介在。 今までのようにイギリス全土を巻き込んだ形ではなかったが、『世界樹の根に巣食う蛇』が今回の術式を手に入れてイギリスで暴走していれば、壊滅とまではいかないだろうがそれでもそれなりの被害は受けていたことだろう。 「ただ収穫はあったッスよ。今回の事件に一枚噛んでいたヤツに関しては『北欧で活動している魔術師』だと分かったんスから。それに、扱っている術式も北欧中心でしょうし。他の事件の連中はまだ不明ッスけどね……」 「でも、おかしいわよね」 ハーティはそう言って、静かに天を仰いだ。 「今回『世界樹の根に巣食う蛇』の討伐が依頼された理由は、イギリスに本拠を置く魔術結社が大規模術式の準備を進めていたからよ。でも、その魔術結社を潰しに向かったら、ちょうど何者かから強力な術式を得た魔術師が問題の中心にいた、なんて」 「……どういう意味ッスか?」 「星座、十字教、北欧神話。……扱う術式は違えど、『高度な術式を問題の首謀者に教えて』『結果的にイギリスに甚大な被害を与え』『なおかつ自分自身の素性は殆ど教えない』という性質を持った魔術師、あるいは魔術結社が存在している。……それら全てが、全く別の犯人だというのは、少しばかり不自然ではありませんか?」 「……もしかして、全て同一人物、あるいは同一の結社による行動、ってことッスか?」 それはつまり、『第三次世界大戦の戦勝国である』イギリスに対し明確な敵対行動をとる勢力が存在している、という意味でもある。 「………………まあ、実際のところどうかは分からないけどね」 精一杯溜めたところで、ふっとハーティは眉間から力を抜くと、そう言って締めくくった。思わず拍子抜けしたヴィクトリアは、かくっと態勢を崩す。 「何なんスか、もう……。良いところで」 「だって、敵の全貌が何なのかなんて、私達が考えたところで仕方がないじゃないですか。相手が何だろうとどうだろうと、私達はイギリスに害なす勢力を叩き潰すだけよ。それより、確か明日の朝食の当番はオルソラ=アクィナスだったはずです。もう遅いし、早めに寝ないと食べそびれてしまうわ」 「う、うわ!! オルソラの朝ごはんは逃せないッス!!」 そんなことを言いながら、少女達は姦しく帰途に就く。 英雄たちが問題の中心へと足を運んでいるその時、舞台の端っこではそんな物語が繰り広げられていたのだった。 前へ トップ 次へ
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名前 評価 画像1 画像2 レアリティ 職業タイプ コスト 勢力 欠片 初期ステータス 攻撃力 防御力 HP 先制値 スキル種別 初期スキル内容 最終スキル内容 パッシブスキル 必殺スキル 特殊スキル 通常スキル 評価 概要 長所 短所 プロフィール 身長 体重 CUP 職業 誕生日 年齢 性格 嫌いなもの 好きなもの
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登場シナリオ:浮遊大陸エリクティス 種別:放浪人材 人間の魔法戦士。 名前 コメント
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術・技名 分類 備考 ストライダースピア? 特技 槍を突き出しながら突進するアーツ技ヴィクトリア版・裂駆槍 ウィンドスピア? 特技 風を纏った槍で周囲を横薙ぎするアーツ技ヴィクトリア版・旋風槍 クラッシュスピア? 特技 槍を地面に叩きつけ、隆起した岩を突き刺すアーツ技ヴィクトリア版・轟破槍 サンダースピア 特技 槍を回転させ打ち上げた相手に落雷を浴びせるアーツ技ヴィクトリア版・天雷槍 トリプルスピア? 特技 前進しながら蹴りと槍の三段攻撃を行うアーツ技ヴィクトリア版・瞬迅槍 ウインドキルランス? 特技 蹴りと槍の連撃のあと、圧縮した風を槍とともに振り下ろすアーツ技ヴィクトリア版・裂風瞬迅殺 メテオクラッシュ 秘奥義 巨大な隕石を槍で打ち上げ、相手に落とす秘奥義
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ヴィクトリア・ウッドをお気に入りに追加 ヴィクトリア・ウッドのリンク #blogsearch2 ヴィクトリア・ウッドとは ヴィクトリア・ウッドの91%は世の無常さで出来ています。ヴィクトリア・ウッドの7%は微妙さで出来ています。ヴィクトリア・ウッドの2%は鍛錬で出来ています。 ヴィクトリア・ウッド@ウィキペディア ヴィクトリア・ウッド ヴィクトリア・ウッドの報道 東京を代表する邸宅マンション「オパス有栖川」内にOEOスタジオがデザインを手掛けたラグジュアリーレジデンス竣工 - PR TIMES 【マイルCS】女王グランアレグリア集大成 美浦ウッドで楽々2馬身先着 中2週も藤沢和師「マイルなら大丈夫」(東スポWeb) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ウインマリリンを半姉にもつウインルシファーが横山武史騎手でデビュー/関東馬メイクデビュー情報(netkeiba.com) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【府中牝馬S予想】ヴィクトリアマイル組が苦戦! 過去10年のデータはいかに/JRAレース展望 - netkeiba.com ヴィヴィアン・ウエストウッド“オーブ輝く”秋色レザーグッズ、ハート型バッグやミニ財布 - Fashion Press 『オールド・ガード2』始動 シャーリーズ・セロンらがカムバック、女性監督がメガホン(クランクイン!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 人気下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」が、「エンジェル」制度を廃止することを発表 女優プリヤンカー・チョープラー、サッカー選手のミーガン・ラピノーらが新たな広告塔に - tvgroove - TVグルーヴ・ドット・コム ウッドが苦手ならチェック!左ヒザはフォローまで正面に向ける - Regina(レジーナ) アクティブでおしゃれな女性ゴルファーへの発信源 【ヴィクトリアM】道悪もこなせるデゼル 2頭出し友道厩舎は雨なら勝機倍 - スポーツニッポン新聞社 【ヴィクトリアM】美浦レポート マジックキャッスル(戸崎騎手) | 競馬ニュース - netkeiba.com - netkeiba.com 祝・ヴィヴィアン・ウエストウッド80歳!生涯現役を貫く「パンクの女王」の人生とクリエイション。 - VOGUE JAPAN 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 ヴィクトリア・ウッドのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ヴィクトリア・ウッドの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ヴィクトリア・ウッド このページについて このページはヴィクトリア・ウッドのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるヴィクトリア・ウッドに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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概要 近年増加しつつある外界関連の事案などを解決するべく設立された独立機関。環世一族の序列一位である黄檗桜崖が総本部長。 羽田空港旧国際線ターミナルビル跡地を利用して総本部が構えられている。 外界に関する全ての事案に対応するべく超大型飛行艇を複数保有しており、関東近郊だけではなく北海道から沖縄まで遠征可能。 十三階段、十二門徒とは別け隔てなく関わりを持っている。 時空管理局選抜隊である『ルームズ』は顔役としてもになっており広報も行っている。また派遣隊として十三階段や十二門徒と共に行動することが多い。 『ルームズ』は半年に二回優秀な隊員をメンバーとして指名するため、基本的なコンディションに囚われずに戦うことが可能。 メンバーに選出されたものは専用のジャケットに袖を通すことが許され、これを着ることは時空管理局に所属する者の憧れである。 企業都市である名古屋とは唯一時空管理局を支援・援助を行っている。 M.A.T.O.I system 時空管理局独自の装備システム。Magia Animal Trans Obey Integratedの略。 魔獣からリソースをくみ取り結晶を生成し専用の変換機を介して変身する。いわゆる非術者の人間を与える。 遺伝子・生態データを結晶化する技術は名古屋と共同で製作したらしい。 今のシステムが生まれる前はアンプルを打ち込んで変身していたが、打ち込んだ本人に甚大な問題が発生したため廃止された。 関連部署 総合課 全体をまとめあげる時空管理局の最高権限 (時空管理局局長)【統鎧装 タヴァネル】 (時空管理局副局長)【冥鎧装 ラスヴォス】 (時空管理局書記官)【世鎧装 シフォー】 (時空管理局総合司令)【突鎧装 ゲル】 (時空管理局規律審長)【斬鎧装 ギル】 次元観測課 各次元世界をリアルタイムで観測。半年に一回はそれぞれの次元世界に赴いて目視で調査する (次元観測課課長) (次元観測課副課長) 記録課 葛川満 榊紫 課 犯罪系クランの検挙・大規模犯罪の取り締まりを担当 天神昌幸(特務公安四課長) 鞘師遊麻(特務公安四課副長) 斑田創志 朝霞鞠花