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【名前】ラルク 【出典】聖剣伝説 LEGEND OF MANA 【種族】獣人 【性別】雄 【年齢】死亡時22歳 【外見】赤毛の人狼 【性格】シスコ――――姉思い 【口調】 一人称:俺 【備考】 不死皇帝との戦いでの奮戦から「砦落としのラルク」という異名を持つ。 仲間の裏切りによって奈落に落ちたのち、ティアマットの要請を受けて彼のドラグーンとなる。 装備武器は片手斧。「地閃殺」と言う独自の必殺技を持つ。 以下、動物キャラ・バトルロワイアルにおけるネタバレを含む +開示する ラルクの本ロワにおける動向 初登場話 016:二つの思惑 死亡話 登場話数 9話 スタンス 奉仕型危険対主催 現在状況 1日目午後の時点で生存 現データ 103 未完成の自画像 キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 シエラ 敬愛 シエラ 実姉 オーボウ 殺害? 対主催へと勧誘される。再会後、ウマゴン殺害を契機に決裂 016:二つの思惑 ヨッシー 殺害 パックントカゲ シエラの枷となると判断し、殺害する 039:流れ行くものたち クロ 敵対 黒猫 殺し合いに乗ったと判断 045 罅ぜるは刹那の夢 イカルゴ 敵対 クロの仲間と判断 045 罅ぜるは刹那の夢 ウマゴン 殺害 シエラの役に立たないと判断し殺害する 076 闇の梯子 ギロロ伍長 友好 助勢する。シエラのことを頼む 080 Crossfire ユーノ 友好 助勢を請われる。シエラのことを頼む 080 Crossfire パスカル 敵対 ギロロを襲っていた 080 Crossfire まん丸 敵対? ペンギンの子供 力を試し、殺害する 096 RAINLIT DUST/――に捧ぐ ムックル 敵対 白虎 襲撃されるが返り討ちにして殺害する 103 未完成の自画像 最終状態 【G-4/豪邸/一日目/午後】 【ラルク@聖剣伝説Legend of Mana】 【状態】極軽度の凍傷、左腕に銃創(極小) 【装備】スティンガー@魔法少女リリカルなのはシリーズ×1、手榴弾(3/3)@ケロロ軍曹、ユーノのメモ(ギロロたちが駅に貼っているものと同種) 【道具】支給品一式×4(ラルク、ウマゴン、オーボウ、パスカルの分。その内オーボウの分には食料、水は無し)、不明支給品0~3(確認、武器は無し) 、ハーメルのバイオリン@ハーメルンのバイオリン弾き、ラスタキャンディ@真女神転生if... 【思考】 基本:キュウビの打倒に対し、シエラの障害になる者は殺す。役に立ちそうな相手なら、場合によっては多少協力する。 0:シエラが無事であってほしい 1:武器が欲しい。出来れば斧 2:シエラとは戦いたくない。そうなる可能性があるので、会うのも避けたい ※参戦時期はドラグーン編の「群青の守護神」開始より後、「真紅なる竜帝」より前です。 ※ここが自分の世界(ファ・ディール)ではないと気付いていません。 ※また、死ねば奈落に落ち、自分は元あった状態に戻るだけだと考えています。 ※伝説の剣@ハーメルン が武器として使い物にならないことを知りました。 踏破地域 1 2 3 4 5 6 7 A■■■■■■■ B■■■■■■■ C■■■■■■■ D■■■■■■■ E■■■■■■■ F■■■■□□■ G■■■■■□□
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12月2日 なのは、リンカーコアの蒐集を続けるヴィータの襲撃を受け、戦闘に。 なのはが初めて体験する、カートリッジシステムを使用して魔力を瞬間的に強化する「ベルカ式」魔法の一撃に なのはは負傷。レイジングハートも破損するが、そこに救出に現れたのはフェイトとユーノだった(A sDVD/第1話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 戦闘。 フェイトとヴィータの戦いにアルフ、シグナム、ザフィーラが加わる。劣勢な戦いになのはは傷ついた体を押して 結界破壊のスターライトブレイカーを放とうとするも、シャマルの手によってリンカーコアを奪われてしまう。 そしてクロノは映像によって「闇の書」の存在を確認する。(A sDVD/第2話) なのはとフェイト、ギル・グレアム提督と出会う。 フェイトの保護観察官にあたるグレアムは「自分を信頼してくれている人を裏切らないこと」条件に、 フェイトの行動を制限しないことを約束した。(A sDVD/第3話) リンディ、クロノたちアースラのスタッフが、「闇の書」の捜索、魔導師の襲撃事件の担当になる。 アースラは修復中のため、臨時作戦本部をなのは宅の近所に決定。アリサとすずかも引っ越し先を訪れ、 フェイトと初対面。一方、ヴォルケンリッターとの対戦で破損したレイジングハートとバルディッシュは、 自らの強化「ベルカ式カートリッジシステムの搭載」を願い出る。(A sDVD/第3話) ある日の出来事。はやて・守護騎士一同と、なのは・フェイトらが、偶然同じスーパー銭湯へ。 すずかとはやて、アリサとヴィータなど、偶然の出会いはあったものの、なのは・フェイトと ヴォルケンリッターの遭遇はなし。(A sサウンドステージ01/第3.5話) フェイト、聖祥大付属小学校へ編入。なのはと同じクラスに。(A sDVD/第4話) レイジングハートとバルディッシュの修理が完了。 転入1週間後のフェイト。徐々に学校に馴染み、友人たちとの日々を過ごす。(A sTHE COMICS/ReporIV) クロノはユーノに無限書庫での「闇の書」についての調査を頼む。 クロノは自分の師匠であるリーゼ姉妹を訪ね、ユーノの調査への協力を依頼する。(A sDVD/第6話) はやての夢の中で管制人格と出会う。 闇の書の歴史と守護騎士たちの過去を知って悲しむが、目覚めた時にはその記憶を一時的に無くしていた。 (A sサウンドステージ02/第6.5話) 再び現れた仮面の戦士 管理局に捕捉されたシグナム・ヴィータ・ザフィーラ。仮面の戦士は、なのはの攻撃からヴィータを救い、 その数分後に別の場所でシグナムと戦闘を繰り広げていたフェイトの背後からリンカーコアを掴みだした。 (A sDVD/第7話) 捜査司令部がアースラに戻される。 「闇の書」対策の最後の切り札となる反応砲「アルカンシェル」を搭載したアースラ。 フェイトのリンカーコアが奪われたことや、駐屯所の管制システムがハッキングされたこともあり、 司令部はアースラへと復帰。(A sDVD/第8話) ユーノは「闇の書」の本来の名前が「夜天の書」ということと、本来の目的と、その改変の変遷を報告する。 無限書庫での調査を続けるユーノ。引き続き「闇の書」の停止や封印方法について調べを続ける。(A sDVD/第8話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12月13日 はやてのお見舞いに行ったなのはとフェイト。「闇の書」の主・はやてとの初めての出会い。 守護騎士たちじゃ見舞いの際を避けることで出会わないようにつとめる。 そして「闇の書」がはやてを侵食する速度が上がってきていることも判明する。(A sDVD/第8話) 12月22日 「闇の書」の収集が残り60ページまで進む。 守護騎士たちは入院を続けるはやての元に戻らず、ひたすらに収集を続けていた。(A sDVD/第9話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12月24日 蒐集から戻った守護騎士たちと、はやての見舞いに訪れたなのはとフェイトが病院で鉢合せをする。 シグナムたちからはやてが闇の書の主であることを聞かされ、ユーノのレポートで「闇の書」の過去を知っていた なのは達とフェイトは真実を伝えようとするが、騎士達はそれを聞き入れず、戦いとなる。戦いに最中、乱入した 仮面の戦士によって守護騎士たちのリンカーコアが強奪。それによって完成した「闇の書」と守護騎士達が消滅 させられたことに衝撃を受けたはやてによって封印が解かれ、「闇の書の意志」が目覚めてしまう。(A sDVD/第9話) 事件の背後にはグレアムの姿が。 2人の仮面の戦士はクロノによって、リーゼ姉妹であることが判明。仮面の戦士の動きは「闇の書」の完全なる封印を 狙ったグレアムによるものだった。(A sDVD/第10話) 「闇の書」内部に吸収されるフェイト 激しい攻防を繰り広げる「闇の書の意志」となのは・フェイト。懸命に事態収束にあたるが、フェイトは 「闇の書」内部に吸収される。フェイトは「闇の書」の中で自分の過去と記憶に向き合い、同時にはやても 「闇の書の意志」と対話する。フェイトは過去の記憶に別れを告げ、はやても「闇の書」の防御プログラムを切り離し、 管理者権限を得る。(A sDVD/第11話) 「闇の書」の防衛プログラム「闇の書の闇」を破壊、「闇の書」事件は解決する。 「闇の書の意志」に「祝福の風・リインフォース」の名を贈ったはやて。守護騎士プログラムも復旧し、騎士達は再生する。 そして、暴走を始めた「闇の書の闇」のコアを宇宙空間の軌道上へ転送、アルカンシェルにより、完全消滅させる。 (A sDVD/第12話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― リインフォースとの別れ。 はやてへの侵食は止まったものの、再び狂った防衛プログラムを生成してしまう、というリインフォースは 自ら消滅することを選び、騎士たちの見守る中、愛する主であるはやての前で「世界で一番幸福な魔導書」 としてその長い生涯を閉じる。(A sDVD/第13話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 事件その後 グレアムは希望辞職の形となり、故郷へ帰ることに。フェイトは「執務官になりたい」という夢を語り、 なのはも魔法と向き合い、管理局の仕事を継続するつもりであることを語る。ユーノは無限書庫の司書へ。 はやても嘱託魔導師として、守護騎士たちも管理局任務への従事という形で保護観察を受けることに。(A sDVD/第13話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1月4日 任務を終え、平和な時間を過ごすなのはとフェイト。はやてはそんな2人にリインフォースへの思いを馳せる。 (A sTHE COMICS/ReportIV) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― なのは・フェイト・はやて、時空管理局に仮配属。 資格取得、試験や研修などで忙しい日々を過ごす。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4月 4年生になったなのは・フェイト・はやて・アリサ・すずか、5人で一緒のクラスに。 足も徐々に良くなり復学を果たすはやて。そして土曜日、リンディ運営のお花見が開催される。その席でフェイトは、 リンディからの養子縁組の申し出の答を出す。はやてはリインフォースの名を継ぐ自身のデバイス作成プランを考え、 融合型デバイスの作成を決める。(A sサウンドステージ03/第14話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5月 なのは、フェイト、はやては時空管理局に正式に入局。 なのはは武装隊の士官候補生、フェイトは執務官候補生としてアースラに勤務。はやては特別捜査官候補生に。 シグナムたちはは武装隊の特別捜査官補佐になっていた。(A sTHE COMICS/TheEpilogue of ACES) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6月~12月 はやて、特別捜査官として正式採用。 ロストロギア関連の事件解決に才覚を発揮。なのはとフェイトもそれぞれの部署で士官として正式採用され、 キャリアを重ねる。リンディは艦長職を退き、本局勤務へ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後、新春 はやての手によって、リンカーコアを分け与えるという形でリインフォースIIが誕生。 八神家の末っ子として日々を過ごし始める。同時期、聖王教会の関連任務で招かれた先で、はやては カリム・ヴェロッサの義姉弟と知り合い、古代ベルカ式継承者同士として友人に。以降、互いに気安い仲となる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後、冬 教導隊入りを目指して日々を過ごしていたなのは、武装隊の演習でヴィータや隊員たちとともに異世界に。 その際、「事故」が発生。なのは、負傷する。(StrikerS THE COMICS/Episode2「A s to StrikerS」Phase2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2年後冬-3年後、夏 フェイト、半年に一度の執務官試験に2連続で落第。 (StrikerS THE COMICS/Episode3「A s to StrikerS」Phase3) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3年後、夏 なのは現場復帰。リハビリ生活を続けながら、再び夢を目指し始める。 秋口には実質上の完全復帰、魔導師ランク「S」を取得。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3年後、冬 フェイト、執務官試験合格。(SoundStageM TheStrikerS) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4年後、春 なのは念願だった教導隊入りを果たす。(SoundStageM TheStrikerS) フェイト、魔導師ランクS取得。同時期に携わった事件で、研究施設から1人の少年「エリオ・モンディアル(当時4歳)」 を保護。数か月の仮保護期間を置いた後、正式に保護責任者となる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4年後、秋 はやて、上級キャリア試験受験、合格。指揮官としての道を進み始める。 リインフォースII、局員採用試験合格。それを受けて、はやてはそれまで彼女と共用で使用していた魔導書型ストレージ 「蒼天の書」を正式にリイン専用とし、自身用のストレージを作成。その名を、かつて自身の運命を開いた魔導書と 同じである「夜天の書」とし、「夜天の主」の名とともにその使用を開始する。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6年後=新暦71年、春 なのは・フェイト・はやて、私立聖祥大付属中学校の3年生に。 「ちょっとした同好会的任務」へ向かう。(A sDVD/第13話) その任務で出会ったロストロギア「レリック」が、後の一同の運命を大きく変えることになることを、一同はまだ知らなかった。 (StrikerS THE COMICS/Episode1~2「A s to StrikerS」Phase1~2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― その後2週間後 休暇を利用して、はやての研修・演習先であるミッドチルダ北部へと遊びに行ったなのは・フェイト。 同日、ミッドチルダで暮らす少女、スバル・ナカジマとギンガ・ナカジマは、父・ゲンヤ・ナカジマが部隊長を務める 部隊に遊びに来る予定だったが、突然の空港火災が発生。スバルとギンガの2人はそれに巻き込まれる。 臨時協力の魔導師として、現場の救助に向かったなのはとフェイト。スバルはそこでなのはに救出され、 以降、自らの道を進み始める。(StrikerS/第1話) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦71年 はやての「自分の部隊を持ちたい」という夢が、カリムの協力によって早い時期での実現の可能性を帯びてくる。 管理局地上本部が持て余すロストロギア「レリック」の保守管理・対策部隊としての構想で部隊の準備が進み始め、 はやてに協力するフェイトは部隊の人材探しに取りかかる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年2月 フェイト、ある事情から竜召喚師の少女キャロと出会い、行き場のなかった彼女を保護。 保護責任者としてキャロの立場を確保する。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年5月 フェイトの希望指名によって、本局勤務の通信士兼デバイスマイスター、シャリオ・ルフィーニが 執務官補佐となり、フェイトと行動を共にしはじめる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦72年6月~ スバル・ナカジマ12歳。ミッドチルダの管理局陸士訓練校に入行。当時13歳のティアナ・ランスターと出会い、 「自作デバイス持ち同士」ということから、ルームメイト兼コンビに。 以降、魔導師としての道を進み始める。未熟なスバルに最初は苛立ってばかりのティアナだったが、 スバルが秘めた思いやその前向きさに少しづつ共感を覚えてゆく。なお、ティアナはこの時期スバルの紹介で ギンガに出会っている。(StrikerS THE COMICS/Episode4~5「Starting Stars」Phase1~2) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦73年5月 スバル・ティアナ、訓練校卒業。陸士386部隊・災害担当突入隊へと配属される。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦75年3月 機動六課、4月からの正式稼働を前に準備が進んでゆく。隊舎セッティング開始。 エリオ・モンディアル、管理局員としての研修課程を修了。管理局員となり、機動6課への配属が決定。 キャロ・ル・ルシエ、辺境自然保護隊から機動六課への配属が決定。アルトやヴァイスら、 一同が機動六課へと集結してゆく。(StrikerS THE COMICS/Episode7「Started Riot 6」) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 新暦75年4月 スバル・ティアナ、魔導師ランク試験「陸戦Bランク」を受験。 そして、なのはとスバルは再開する…。(StrikerS/第1話)
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第14話 砕かれる友 リインが再び倒れて2日が経った。命に別状は無いがリインは目を覚まさない。 ヴェロッサは目を覚まさないリインに付っきりになって、ろくに食事も取っていなかった。 そんなヴェロッサにヴィヴィオ達は心配して色々世話をしようとするもヴェロッサは「後でいい」などと言って、他の事をしようとしなかった。 「身体的には問題はないわ。意識が戻らないのは精神的ショックが原因ね。現実を恐れてるのね」 シャマルが廊下でクロノと二人で話し合う。 「しかし、このままの状態が続くとリインや他の子達の状態も……」 クロノの言う通り。クロノが窓から外を見てみると、外ではスバルとティアナが少し思い雰囲気で座り込んでいた。 「なのはさんのせいなの?」 「そうは言ってないよ。でもなのはさんはよくわかってないんだよ。何気なくやったことがどれだけ相手に影響を与えるか…」 「なのはさんはなのはさんなりにやったんじゃ…」 「だから余計に許さない。自分のものさしで考えてたから……」 スバルの顔に怒りが少しにじみ出る。 「ニコニコしてて、いい事してるつもりでも、ズレてるの。なのはさんは痛いってことがわからないのかな?」 スバルがそう思っていた頃、なのはは庭でユーノと話していた。 「ねえ、ユーノ君」 「何?」 「私間違ってのかな?」 なのはもなのはなりに落ち込んでいた。 「小学1年生の頃、アリサちゃんがすずかちゃんとからかってたのを見て、私思わず手を出した事があるんだ」 なのははふと過去の事を思い出す。なのはが魔法と出会う何年も前、1年生の頃同級生であったアリサ・バニングスが同じクラスの月村すずかのリボンを取ってからかっていた時、 なのははそれを見てみぬ振りが出来ず、なのはは思わずアリサに平手を打ちをかました。 なのははその時、アリサにこう言った。 (痛い? 私だって痛いよ。でもそれ以上にあの子が痛いんだよ!) その言葉でなのはとアリサがケンカしかけたが、それをとめたのがいじめられていたすずかであった。 それ以降3人は仲良くなり、なのはが魔法と出会ってしばらく経つまでは3人はよき友達として仲良く過ごしていた。 「今の私を見たら、アリサちゃんなんて言うんだろう……」 「僕にはよくわからないけど、なのはが間違ってるとは思ってないよ」 「ユーノ君」 なのはが改まってユーノの方を見る。 「ただ少しやり方が違っただけ。僕はそう思うよ。だってなのはは本当は優しい子だって僕は知ってる」 なのはが魔法と出会うきっかけを作ったのはユーノである。魔法と出会って以降なのははユーノをよきパートナーでよき友達として接していた。 そしてもう一人なのはを支えてくれた人がいる。 「なのはーーーーー、なのはーーーーーーー」 フェイトが走ってなのはの下に駆け寄る。 そうもう一人とはフェイト・テスタロッサである。 「フェイトちゃん」 「なのはここにいたの」 「フェイトちゃん……私……」 「私はなのはを責めるつもりは無いよ」 「フェイトちゃん」 「なのはは少し不器用なだけだよ。私にはわかる。だってなのはは私の大事な友達だもん」 なのはは泣きかけていた涙を拭いて笑顔で礼を言う。 「……ありがとう、ユーノ君、フェイトちゃん」 そんな時ゼラバイア急襲の警報が鳴り響く! 「行かなきゃ…」 「なのは、無理しないでね」 「うん」 司令室に向かうシャーリー達の前に既にヴェロッサが司令室にいた。 「ヴェロッサさん、いいんですか?」 「リインのそばにいなくても…」 「確かにリインの事は気になるけど今はゼラバイアの方が優先しないと…」 「……、わかりました」 シャーリー達はヴェロッサの事を心配しつつもオペレートに入る。 「ゼラバイアは廃棄されたダムの上に着陸した模様」 「ジャミングが展開されて、これ以上は状況がわかりません」 「ヴェロッサさん、GシャドウとGストライカーにファントムシステムの搭載が完了したそうです」 「ロッサ、グランナイツの動揺があるようだが本当に戦えるのか?」 クロノが心配そうにヴェロッサに尋ねた。 「だがこれしか道は無い」 グランナイツの方も皆集合して、それぞれ自分の機体に乗り込もうとすると……。 「スバル」 「はい?」 「今日はグランカイザー、私が乗りたいけどいいかな?」 「なのはさん」 なのはは少しでも罪滅ぼしがしたいのか、スバルは少し考えた末答えを出す。 「わかりました。今日はなのはさんが乗ってください。あたしはGアタッカーにします」 「スバル……、ありがとう」 なのははスバルに礼を言ってグランカイザーに乗り込み、スバルもGアタッカーに乗ってそれぞれ発進した。 「現場の状況は不明。ゼラバイアの分析が終わるまで無理な行動はしないでくれ」 『了解』 皆が現場に着く。現場に着いた途端ゼラバイアはグランディーヴァを攻撃する。 「いきなりか…、早く合神しましょう」 「確か2機は無人よね」 「このまま合神したらグラヴィオンの出力61%、かなりのリスクになる」 「合神はもう少し様子を見てからの方がいいかも……」 フェイトの忠告を受けたのか、なのはは合神を控えようとする。 「各員で攻撃」 なのはがそう言うとグランカイザーは敵に突っ込んでいく。 グランカイザーのパンチでは相手の固い装甲を壊す事は出来ない。しかし相手はその固い装甲をパージさせ、いくつもの小さなゼラバイアへと分離させた。 「増えた!」 「きゃああああ!」 「スバル!」 なのははゼラバイアの攻撃を受けているGアタッカーをすぐに救援した。 「なのはさん!」 「合神します!」 「…わかった」 なのはがヴェロッサに承認を求め、ヴェロッサも承認する。しかしなのはとヴェロッサはどこか焦っているようでもあった。 「グランナイツの諸君、合神せよ!」 「エルゴ、フォーーーーーム!!」 ヴェロッサの承認を受け、なのはが叫びグランカイザーからエルゴフィールドが発せられいつものように合神使用としたその時、 突然モニターにゆがみが生じる。それは分離したゼラバイアがエルゴフィールドに侵入。グランカイザーと強制合体したのだ。 「うううう、ああああああああ!」 なのはは苦しむ。そして合体を邪魔されたため、各グランディーヴァは吹き飛ばされた。 その様子はジャミングが無くなった司令室でも確認されていた。 「こんなやり方、卑怯よ!」 「合神の瞬間を狙って、グランカイザーを封じるとは……!」 「……、まさか!?」 ヴェロッサには嫌な予感がした。その影にカリムの存在を見た。 「ゼラバイア、グランカイザーに侵食していきます」 グランカイザーに取り付いたゼラバイアはなのはの意思に関係なくグランカイザーを操る。 「きゃあああああああああああ!!」 「「なのはさん!」」 「なのは!」 スバル、ティアナ、フェイトがなのはの身を案じる。 「ゼラバイア、グランカイザーの重力子エネルギーを吸収しています」 「このままだとパイロットが付加に耐え切れません」 「なのはさーーーーーーん!」 「グランカイザーを食いつくそうって言うのね。だったら左右から攻撃してなのはさんから離すけどいい?」 「「わかった」」 フェイトとティアナが了解して、合神の為分離していたGドリラーを合体させて空からGアタッカーと共同で攻撃しようとする。 しかしグランカイザーからグラヴィトンアークに似た技がゼラバイアの部分から放たれ、Gアタッカーをかすめる。 「うわああああああ!」 「スバル! 動いてよ! 私の言うとおりに動いてよ! グランカイザーーーーーーーー!!」 なのはは叫ぶがその叫びは届かず、グランカイザーはゼラバイアの思い通りに動く。 「ダメです、これ以上近づけません!」 「でもこのままだとなのはが……」 Gドリラーが近づこうとするもグランカイザーからエネルギー波が連射されてうかつに近づけない。 そのうちの一つがGドリラーの前に放たれ、Gドリラーは吹き飛ばされる。 「ティアナ、フェイトちゃん!」 グランカイザーは暴れ続ける。 「お願い! もうやめて! もうやめてよ! グランカイザー!」 なのははその時、前に見たグランΣが世界を壊した時の映像を思い出し、皆に告げる。 「私を殺して」 『え!?』 「このままじゃ、グランカイザーが完全暴走して、この世界がランビアスみたいに…、パイロットがいなくなればグランカイザーは止まるはず、 もう嫌! 私のせいで誰かが傷つくのはもう嫌!」 「なのは……」 「何言ってるんですか!? あなたは!」 スバルは怒る。 「そんな事したらヴィヴィオや他の人が悲しむだけです! 絶対あたし達で助けます、なのはさん!!」 「私には人を守るなんて出来ないんだ。もういいの、お願い早く殺して……」 「なのは、今僕が行く!」 ヴェロッサが指令室を出ようとするとなのはが呼び止める。 「ヴェロッサ、私約束を守れなかった…」 「なのは!!」 その時、フェイトが覚悟を決めた顔でGドリラーを分離させようとした。 「フェイトさん! 何を!?」 「ゼラバイアはグランカイザーから重力子エネルギーを吸収している。 その真上に接触して、引き出されたエネルギーをGドリラーの重力子巡回システムに介して増幅させれば、グランカイザーを…、なのはを救い出せるかもしれない」 「そんな事出来るんですか?」 ティアナが不安そうに聞くとフェイトは手を胸の前にして手と手の間に何か光るものを出す。 「私ならできる。私は母さんに作られた『プロトグランディーヴァ』だから……」 「え!?」 「『プロトグランディーヴァ』? どう言う事ですか?」 「フェイトちゃん」 「ヴェロッサがミッドチルダに来て少し経った頃にプレシア母さんと会って、ヴェロッサの技術と母さんの科学者としての力で生み出されたのが私、フェイト・テスタロッサ」 フェイトが光りだすのは司令室でもわかっていた。 「フェイトさんがプロトグランディーヴァ……」 「フェイトさんがプロトグランディーヴァモードに移行します!」 「遮断して!」 「ダメです! 全グランディーヴァ制御不能。機能を全部フェイトさんに抑えられてます」 全グランディーヴァがフェイトの支配下に置かれ、フェイトは単身グランカイザーに突っ込んでいく。 「ダメ、フェイトちゃーーーーーーーーーーん!!!」 フェイトの乗るGドリラーに向かってエネルギー波が放たれ、Gドリラーに直撃する。 「きゃあ!」 「フェイトちゃん!!」 「はああああああああ!!」 それでもフェイトは負けじとGドリラーを突っ込ませた! 「フェイトさん!」 「フェイトさん! 戻って! エリオやキャロやルーテシアが悲しみます!」 エリオとキャロもまた元々は浮浪児だったのをフェイトが拾い、聖王教会に住まわせたのだ。 ルーテシアはいなくなった母の代わりをフェイトが務めていたのだ。 (私が死んでも……、代わりが……) フェイトの強気、想いがGドリラーに届いたのかGドリラーの先端がゼラバイアの部分を貫こうとし、ゼラバイアにひびが入る。 「生きてね………、なのは………」 しかしGドリラーはエネルギー波をまともに受けていたが為に、ゼラバイアがバラバラになったのと同時にGドリラーは砕けちり大爆発した。 「ああああああああ、フェイトちゃゃゃーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」 現場からはものすごい爆音が鳴り響く。エリオ、キャロ、ルーテシア、ヴィヴィオも司令室に入ってくる。 エリオはあまりの出来事にひざをつき、キャロは顔を手で覆い隠す。 「そんな……」 「フェイトさん……」 ルーテシアもヴィヴィオもその様子をただ見ているだけだった。 『フェイトさん……』 皆がフェイトの死を悼む。その大爆発の中、金色の光が空に向かって飛んでいった事を誰も気付かないほどに…。 「嘘ですよね……」 スバルやなのはも信じられないという顔をし続ける。 しかしまだ戦いは終わっていなかった。バラバラになったゼラバイアは再度合体し、今度はグランカイザーに似た形態へと変化していた。 「まだ……!」 「なのはさん、逃げてください!」 ティアナの忠告よりも先にゼラバイアの攻撃の方が早かった。ゼラバイアの伸びる腕がグランカイザーを襲うが、その前にティアナの乗るGドリラーがそれを阻む。 しかし分離しているGドリラーでは明らかにパワー不足。Gドリラーの後ろからわずかに火の手が上がる。 「ああ、ああああああああ!!」 「ティアアアアアアアアアア!!」 ティアナはGドリラーの中で気絶したままGドリラーはダムの中に入っていった。 「Gドリラーレフトコックピット反応消失。パイロット……応答ありません」 「そんな……」 「もう嫌だよ」 皆が現実から背を向けたかったがゼラバイアはそんな事お構いなしに攻撃する。 「あああああああああああ!!!」 ゼラバイアの足がグランカイザーの胸部分に刺さり、トドメを刺そうと腕を斧に変化させ、その斧を振り下ろそうとしたその時! 突然ゼラバイアの腕が吹き飛んだのだ! 「な、何!?」 スバルは突然の事で驚く。それはゼラバイアも同じだった。 ゼラバイアは何者かと思い、後ろを振り向く。そこには先ほど自分の腕を吹き飛ばしたブーメランがその持ち主の下へと帰って行き、その持ち主は山の上に立つ謎のロボットだった。 「グラヴィオン、いや違う……」 その謎のロボットグラントルーパーにはヴィータが乗っていた。 「行くぜ、野郎共!」 その隣には他にも4機ものグラントルーパーがあった。 「アタックフォーメーションV」 『了解!』 5機の機体はヴィータの機体を先頭にして、後ろに並び3機は横に並ぶ。 そしてヴィータの機体の胸が展開される。 「ライトニング、デトネイターーーーーーーーー!!」 その叫びとともに胸に集まった魔力砲がゼラバイアに直撃し、ゼラバイアは爆散した。 この様子を見ていたクロノはつぶやく。 「地上本部は量産型グラヴィオンを完成さえたのか」 「ドゥーエ……、これが君の求めたものか」 ヴェロッサの言う通り、これはドゥーエのもたらしたものだが、それがドゥーエの求めたものかはわからない。 「グランカイザー……、何と言う事だ」 グランカイザーのボロボロの姿を別のグラントルーパーに乗っているヴァイスは悲しんだ。 「帰還するぞ」 ヴィータの指示通り、グラントルーパー全機がその場を離れた。 なのははボロボロのグランカイザーのコックピットで涙を流しながらこうつぶやいた。 「空っぽだね」 前へ 目次へ 次へ
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第十三話「悪あがき」 12月14日 0910時 ??? 今、海鳴市で一番怒っている人は誰か?と問われたら八神さん家のヴィータちゃんと答えるだろう。 それも、まあ仕方の無いことではある。 今日の朝になって、あの傀儡兵を使うこの世界の傭兵と共同戦線を張ることになったと ヴォルケンリッターのリーダーたるシグナムから、いきなり告げられたのだ。 アタシは何にも聞いてないぞ!と突っかかってもシグナムは、さらりと受け流すだけだった。 (アタシだけハブられてたのかよ!?) 話を聞いていくうちにシャマルやザフィーラもこの件について知っていたらしい。 まさか、自分が仲間から隠し事をされるとは夢にも思っていなかったヴィータの怒りは最高潮に達していたのだが はやてがいる前で言うわけにもいかず、そのまま家を飛び出してしまったのだった。 さて、今ヴィータの回りは闇に包まれている。 かといって、落ち込んで雰囲気が暗くなっているわけではない。 物理的に光が入ってこないだけなのだ。 (シグナムやシャマルを騙せてもアタシは騙せないぜ) 重度のバトルマニアである烈火の将や、どこかうっかりとした所がある泉の騎士が 騙されているのだということはすでに紅の鉄騎の頭の中では決定事項であった。 (必ずシッポを掴んでやるぜ・・・あ、イテッ) グッと拳を握り締めるヴィータ だが、その直後ヴィータのいる所がガクンと縦に揺れ、ヴィータは頭を強く打ってしまう。 その衝撃に涙目になりながらも、ヴィータは証拠を掴む為にここに潜伏し続ける。 そう、宗介が運転する車のトランクの中に・・・・ さて、何故ヴィータが宗介たちの車のトランクに乗っているのか? 時間は少し前に遡る。 宗介が出発の準備を終え、泉川に向けて発進しようとした時に うっかり自分の部屋の鍵をセーフハウスに置きっぱなしにしているのを思い出したのだった。 幸いにして出発前に思い出したので、ドアを爆破して部屋に入るなどということは回避されたのだが 宗介は自分らしくないと自戒しながら鍵を取りに行くためにクルツたちがいるビルに戻った。 そして、その光景を見ていた一つの小さな影・・・ た ま た ま、この道を 散 歩 していたヴィータは宗介が帰ってくる前に車に近寄り遠隔操作でトランクのロックを開け、中に入ろうとする。 しかしトランクの中には大量の火器が入っており、ヴィータは思わずウゲっと顔を歪めるのだが エレベーターが動き出したのを見て、慌てて銃器の隙間に体を押し込めトランクを閉める。 それと同時にエレベーターのドアが開くのだが、まさにタッチの差でトランクが閉まるところは宗介の目に入らなかった。 宗介自身も、まさか武器が満載しているトランクの中に護衛対象が隠れているなど夢にも思っていなかった。 12月14日 1356時 時空管理局無限書庫 あれからレティ提督に管理局の制服を無理やり着替えさせられ無限書庫に連行された。 なんだか提督の目が異様に輝いていたが、気付かないふりをすることにした。 「あの~」 「なあに、ユーノ君?」 大量の書類を捌きながら、無限書庫の古文書を読むユーノは作業の手を休めてレティ提督に声をかける。 「なんで管理局の制服に着替えさせられたんですか?」 「仮にも管理局の内部文書に目を通すのよ?一般人に見せれるわけないじゃない」 もちろん知る権利を行使すれば管理局に資料請求してある程度の書類に目を通すことはできる。 しかし、時空管理局は混沌とした次元世界に睨みを利かせている軍事組織としての一面も持っている。 機密の二文字の元に目を通すことを阻まれる書類もたくさんあったりする。 ユーノが目を通しているのはそういう物だ。 「それは理解できるんですけど・・・あ、この書類とこの書類の数字が一致してない」 何か言いたそうになるがうまく言葉にならず、作業を再開するユーノは書類の不備を発見する。 のちにこの数字の食い違いから、巨大横領事件が発覚するのだがそれはまた別の話である。 「スクライア一族って、みんなこんなに優秀なのかしら?うちの部署にもうニ、三人ほしいわ」 「僕の一族は論文を読むか書く以外で机に座るのが苦手なんですよ だから多分、勧誘しても無理だと思いますよ?」 スクライアは遺跡から遺跡へと渡り歩く流浪の一族 一箇所に落ち着くということを全くと言っていいほど考えていないのだ。 「それならユーノ君はスクライアの中でも変わり者の部類に入るのかしら?」 「そうかもしれません」 苦笑いしながらユーノはレティ提督の意地悪な言葉に答え、新しい古文書に手を伸ばす。 分厚い古文書を僅か十数分で読み終えることができる検索魔法と速読魔法 スクライア一族の門外不出の秘術である。 「僕からもいいですか?」 「なあに?できる限り答えるわよ?」 「今回の事件で、身内を疑ってるんですよね?」 古文書から目を離し真っ直ぐ提督を見据えるユーノ 「・・・念話に切り替えましょう」 無限書庫は無人だが、どこに人の耳があるか分からない こうして分かりやすいように調査しているのだから、後ろ暗い奴が一人や二人が監視してる可能性もある (じゃあ、話すわね。身内といっても管理局にも派閥はあるのよ。穏健派に武闘派、海と陸その他諸々・・・ 今、海は穏健派がイニシアチブを握ってるけど、それをよく思わない連中は無視できない程度にはいるの) (その人たちが、『闇の書』を手に入れようとしていると?) (それはまだ分からないわ。でも、魔法文化のない第97管理外世界の軍人が結界内に侵入できるのは 何者かの手引きがあるんじゃないかって、私やクロノ君は考えてるの) (でも、それでなんで身内を疑うことになるんです?) (あまりにうまく行き過ぎてるからよ。こんなに見事な術式の改竄なんて見たことないわ。 だから管理局の手口を一番よく知っている連中が絡んでるんじゃないかと思ったの) 管理局が捜査の手口、人避けの結界を張って当たり一帯を封鎖するなどなど これらの手法を一番よく理解してるのは、誰であろう管理局をおいて他にない。 「まあ、そうでなければ一番いいんだけど。私の仕事は身内を疑うことだから」 運用部と監査部を統括するレティは少し悲しそうにため息をつき、机の上に置いてある紅茶を啜った。 12月14日 1516時 セーフハウス 宗介はラジオを聞きながら自分のリビングに並んだ火器と睨めっこしている。 どの武器が、あの非常識の塊に対して有効であるかを考えていた。 M9の戦闘記録を見る限り、チェーンガンレベルなら問題なく奴らの装甲を抜くことができそうだ。 ゆえに同じ12.7㎜弾を使う対物ライフルは持っていくことを決めていたのだが サイドアーム関連も真剣に考えとくべきだ。 「あの黒衣の魔導師相手・・・シャマルが言うには執務官とやらにサブマシンガンの弾は利かなかった。 しかし、不意打ちで貫通力の優れた武器ならばあるいは・・・・」 そういって100メートル先にあるボディアーマーを貫くことができるとされるベルギー製の自動拳銃を拾い上げケースに収める。 その他にもC4爆薬やクレイモア地雷、グレネードランチャーなど色々な武器を見繕っていく。 「単純に大火力で相手をねじ伏せるのも、一つの手だが・・・」 12.7㎜弾を使う重機関銃は歩兵が持って撃てるものではない。 反動や火器そのものの重さなど、様々な問題点があるのだ。 「俺たちも奴らのようにバリアジャケトなるものでもあればな」 いや実際ASは乗る兵器ではなく着る兵器、つまり強化服のようなものなのだ いわば、こちら側のバリアジャケットがASという考えもあながち間違っていない気もする。 「AS、強化服・・・・・」 あるではないか、ASのパワーアシスト機能と高い防弾性を兼ね備える装備品が 宗介は手をポンと叩き、近くの貸し倉庫に眠っているとある売れ残り商品を引っ張り出す必要が出てきた。 ちょうどそのとき、ラジオからあるニュースが流れてきた。 どこぞの国で開かれている国際会議で、とある兵器を廃絶する為の条約が結ばれるようだ。 その兵器は広い範囲の敵を殲滅するのに非常に有用だが、不発弾となる割合が多く 民間人に被害が出るため非人道的だというのが理由らしい。 「排除されるべきもの・・・」 では、『闇の書』はどうなのだろう。 12日に起きた戦闘で自分達は『闇の書』力の一端を見た。 あの魔力爆撃での物理的被害はなかったが、シャマルに言わせればそういう風に設定したからだそうだ。 つまり、物理的被害も出そうと思えば出せると言うことだ。 しかもまだ『闇の書』は完成していない もし完成した時どれほどの破壊力を発揮するのか宗介には想像もできなかった。 「忘れろ。俺は最後まで任務を果たすしかない」 頭を振り、必死にそのことを頭から消そうとしたが脳裏にこびり付いたそれを忘れるのことは無理だった。 ピリリリ・・・ピリリリ…ピリリリ 着信音、自分の携帯が鳴っていることに気付いた。 「相良だ」 『ソースケ?私』 もう二週間以上聞いていない声だが、それが誰であるか宗介はすぐに分かった。 「千鳥か。どうかしたのか?」 『いや、どうかしたのか聞きたいのはこっちよ』 かなめの言葉に首をかしげながら、宗介は話を聞く。 なんでも今日の学校に自分とクルツの写真を持った男が来たらしく この人達のこと何か知らないか?とかなめに聞いてきたという。 『一応、曖昧にとぼけといたけど』 「賢明な判断だ。それでその男はどうした?」 『さあ?そのまま帰っちゃったけど』 不機嫌な声が携帯の向こうから聞こえてくる。 どうやら、ハイジャック事件での嫌な記憶が蘇ったらしい。 「それについては謝罪する。すまなかった」 「・・・もういいわよ。特に変な事されたわけでもないし それより、あんた今度は何したのよ?」 宗介はしばらく押し黙った。 任務内容は話せない。 当然だ。情報漏洩になる上に、どこに耳があるとも知れない。 だが―――――――――――― 「千鳥・・・俺は今、護衛任務についている」 俺は何をしている?こんなことを千鳥に話しても何になるというのだ? それにこれは重大な機密漏洩をしているのだぞ。これではプロ失格ではないか。 だが、それでも宗介は喋らずにはいられなかった。 それから宗介は自分が今していることを、かなめに話しはじめた。 その護衛対象達が所有している物が危険なものであること 過去、何度もそれのせいで被害が出たらしいということ しかし、それを完成させなければ一つの命が失われてしまうということ そのために護衛対象のうちの数人が、東奔西走しているということ 細かい説明は省いている上に、言ってることは滅茶苦茶だということは承知だ。 それでもかなめは黙って、話を聞いてくれている。 「今までの俺なら、何の疑問もなく護衛対象からその危険物を奪取して破壊しただろう。 だが、今回はどうしてもそれができなかった。こんなことは初めてだ」 一、二分の沈黙の後、かなめはそっと話し始めた。 『・・・あたしには深い事情がよく分からないし、あんまり要領を得ないけど ソースケは、あたしを殺したいと思ったことはある?』 「何を馬鹿なことを、俺が君を殺そうなど・・・」 かなめの問いに宗介は、即座に否定の言葉を返す。 北朝鮮の山中で確かに自分たちを置いて一人で行かなければ殺すと言ったが それは彼女に行動を促すための脅しの部分が多かった。 『でもね、ソースケ。あたしはウィスパードなんだよ』 ウィスパード―――ラムダドライバなどを支えているブラック・テクノロジーの源泉 その技術を欲しがる連中から自分は千鳥を守るためにミスリルから派遣されたのだった。 『実感はないけど、あたしの中にも、それがあるわ。 その知識が悪用すれば、どんな酷いことも起こせる・・・』 そう例えば、西太平洋戦隊が運用している強襲揚陸潜水艦は、あの米海軍ですら探知できない。 それはつまりテッサがその気になれば世界中のありとあらゆる都市や基地を 誰にも気付かれずに消滅させることが可能ということだ。 冷戦を灼熱の最終戦争に変えることもできるだろう。 『あたしはその人達のことをよく知らないけど、結局は使う人によるんだと思うの。 ・・・それにそういうことはソースケが一番よく分かってると思ってたんだけど?』 その言葉にハッする。 そうだ。自分は戦場でその様な光景を幾度も見てきたではないか。 危険性? 確かにそれはいつでも付きまとう。 そう、いつだって何にだって付きまとうのだ。 『って、なに偉そうに言ってんだろ、あたし。ゴメン、今のは忘れて』 「いや・・・・」 千鳥と話して自分が何に迷っていたのか分かった。自分は、あの騎士達と自分を重ねて見ていたのだ。 どんなことをしても、どんな困難に遭おうとも大切な人を守りたいと思うその姿に自分もこうありたいと、思っていたのだ。 だから、彼女達から『闇の書』を奪うということに迷った。 それをしてしまえば自分と千鳥も同じような運命を辿るのではないか。そう漠然とした思いに自分は圧迫されていた。 「いや、千鳥。ありがとう」 どうやら自分は諦めが良すぎたようだ。全く、北朝鮮の山中や香港で一体、何を学んだのか。 確かに『闇の書』は危険なものかもしれない。 だが、それはそういう風に使おうとする意思があってこそだ。 ならば自分達は、彼女たちが『闇の書』を使わなくていいような環境になるまで つまり『闇の書』が完成するまで、今の任務を続ければいい。 それでも不安なら大佐殿に自分達が海鳴を去った後でも情報部が彼女たちを護衛、監視できるように頼めばいい。 もしくは自分達が手引きをしてミスリルの庇護下に入ってもらうか・・・これは相手の同意が必要だが。 とにかく打てる手は、まだまだたくさんある。諦めるには早すぎる。 ならば自分は続けるべきだ、悪あがきを・・・・ 『そう?まあ、あんまりクヨクヨ迷ってるのはソースケらしくないもん。 いつもみたいに、問題ないって感じにしてればいいのよ。 あ、あと早めに帰ってきなさいよ。追試を合格しなくちゃ一緒に3年に上がれないんだからね?』 その言葉に宗介はフッと笑い、かなめの注文どおりこう答えた。 「問題ない」 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはA s 魔法少女リリカルなのはA s サウンドステージ02 魔法少女リリカルなのはA s サウンドステージ02(Amazon) 発売元・販売元 キングレコード株式会社 発売日 2006.01.12 価格 2500円(税抜き) 内容 はやて、帰宅 管制人格 無限の旅路〜友へ〜 歌:シグナム(清水香里) なのは&フェイト、本局内部見学 なのは&フェイト、二人の将来? 海鳴大学病院 はやて、闇の書の意思と出会う 闇の書の意思、騎士たちの過去を語る なのは&フェイト、クロノと なのは、ユーノと電話 フェイト、夜空の下で 翼 歌:フェイト・テスタロッサ(水樹奈々) はやてと、闇の書の意思と 記憶の彼方 八神家の午後 夜〜夜天の主、星空を見上げて Snow Rain 歌:八神はやて(植田佳奈) 次回予告 備考
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【第1回放送までの本編SS】 【オープニング】 No. タイトル 作者 登場人物 000 それは最悪の始まりなの ◆UOleKa/vQo 高町なのは(A s)、クロノ・ハラオウン、プレシア・テスタロッサ、アリサ・バニングス 【深夜】 No. タイトル 作者 登場人物 002 Wolkenritter ◆9L.gxDzakI シャマル、シグナム 003 武人と魔女 ◆yZGDumU3WM ゼスト・グランガイツ、C.C. 001 少女の泣く頃に〜神流し編〜 ◆WslPJpzlnU エネル、シャーリー・フェネット 010 特別捜査、開始 ◆9L.gxDzakI ギンガ・ナカジマ、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング 006 なごり雪 ◆Qpd0JbP8YI 八神はやて(A s)、セフィロス 004 オタクと吸血鬼とレバ剣と ◆UOleKa/vQo アーカード、泉こなた、スバル・ナカジマ 005 反逆の探偵 ◆ga/ayzh9y. L、ザフィーラ 007 二人の兄と召喚士 ◆jiPkKgmerY ミリオンズ・ナイブズ、殺生丸、キャロ・ル・ルシエ 008 駆け抜ける不協和音 ◆gFOqjEuBs6 浅倉威、矢車想、ヴィヴィオ、エネル 009 Heart of Iron ◆WMc1TGFkQk エリオ・モンディアル、シェルビー・M・ペンウッド、柊かがみ 011 悪魔とテロリスト ◆Qpd0JbP8YI 高町なのは(A s)、チンク、カレン・シュタットフェルト 012 Railway Track ◆9L.gxDzakI ルルーシュ・ランペルージ、ディエチ 013 少女、その想い ◆UOleKa/vQo フェイト・T・ハラオウン(A s)、早乙女レイ 014 CROSS CHANNEL ◆WMc1TGFkQk クアットロ、アレクサンド・アンデルセン、アンジール・ヒューレー 015 狂奔する正義 ◆Qpd0JbP8YI 八神はやて(StS) 016 非常食? ◆9L.gxDzakI 武蔵坊弁慶、アグモン 017 勇気の選択 ◆Qpd0JbP8YI クロノ・ハラオウン 018 家族(前編)家族(後編) ◆gFOqjEuBs6 ヴィータ、キング、ギルモン、八神はやて(StS) 019 ギブアンドテイクの契約 ◆9L.gxDzakI ゼスト・グランガイツ、C.C. 020 不思議な出会いⅡ ◆Qpd0JbP8YI ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 021 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? ◆Qpd0JbP8YI 遊城十代、柊つかさ 022 火神——マーズ—— ◆Qpd0JbP8YI アレックス、シグナム、ティアナ・ランスター 024 SWORD DANCER meet TYPOON ◆jiPkKgmerY アレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード 025 君想フ声 ◆9L.gxDzakI フェイト・T・ハラオウン(StS) 026 残る命、散った命(前編)残る命、散った命(中編)残る命、散った命(後編) ◆gFOqjEuBs6 高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、金居、柊かがみ 027 楽園への小道 ◆Qpd0JbP8YI ギンガ・ナカジマ、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング 028 誰がために彼の者は行く ◆RsQVcxRr96 天道総司、相川始、シャーリー・フェネット 029 舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI 八神はやて(A s)、セフィロス、アレックス、シグナム 031 最初からクライマックスなのか!? ◆WslPJpzlnU 相川始 032 仮面の告白 ◆Qpd0JbP8YI 八神はやて(StS)、キング、ヴィータ 033 コピーベントの罠! ナンバーⅤ危うし(前編)コピーベントの罠! ナンバーⅤ危うし(後編) ◆9L.gxDzakI 万丈目準、チンク、天上院明日香 034 空への翼 ◆WslPJpzlnU 新庄・運切 035 魔獣~ジャバウォック~ ◆RsQVcxRr96 神崎優衣、キース・レッド 037 クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY 武蔵坊弁慶、アグモン、ヒビノ・ミライ、アーカード 【黎明】 No. タイトル 作者 登場人物 023 アイズ ◆Qpd0JbP8YI L、ザフィーラ 030 童子切丸は砕けない(前編)童子切丸は砕けない(後編) ◆jiPkKgmerY インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、ギンガ・ナカジマ、殺生丸、ミリオンズ・ナイブズ、キャロ・ル・ルシエ、高町なのは(A s)、カレン・シュタットフェルト 036 シャーリーと爆砕牙 ◆Qpd0JbP8YI 天道総司、シャーリー・フェネット 038 夢・オ・チでリセット! ◆RsQVcxRr96 フェイト・T・ハラオウン(StS)、柊つかさ、遊城十代 039 幻惑の銀幕 ◆RsQVcxRr96 アンジール・ヒューレー、クアットロ、シャマル 040 大食漢走る 巨人の鼓動 ◆yZGDumU3WM 武蔵坊弁慶、ゼスト・グランガイツ、C.C. 041 Little Wish(前編)Little Wish(後編) ◆Qpd0JbP8YI 八神はやて(A s)、セフィロス、シグナム、アレックス、柊かがみ 042 盟友(前編)盟友(後編) ◆WslPJpzlnU ヒビノ・ミライ、アグモン、ヴィータ、アーカード、クロノ・ハラオウン 043 切なくていとおしいほど、想いは時空を越えて ◆9L.gxDzakI ルルーシュ・ランペルージ、ディエチ、泉こなた、スバル・ナカジマ 044 意思の証 ◆RsQVcxRr96 ブレンヒルト・シルト 045 虚 ◆9L.gxDzakI 八神はやて(A s)、セフィロス、遊城十代 047 遠い声、遠い出会い ◆Qpd0JbP8YI ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 048 GUNMAN×CHAPEL×BLADE ◆9L.gxDzakI ヴァッシュ・ザ・スタンピード、アレクサンド・アンデルセン、アンジール・ヒューレー 054 Fate/cross dawn ◆RsQVcxRr96 早乙女レイ、フェイト・T・ハラオウン(A s)、新庄・運切 056 されど嘘吐きは救済を望む(前編)されど嘘吐きは救済を望む(後編) ◆WslPJpzlnU チンク、天上院明日香 060 敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、金居、武蔵坊弁慶 062 闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE 万丈目準 【早朝】 No. タイトル 作者 登場人物 046 残酷な神々のテーゼ(前編)残酷な神々のテーゼ(後編) ◆RsQVcxRr96 相川始、矢車想、エネル、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、ギンガ・ナカジマ、キャロ・ル・ルシエ 049 光が紡ぐ物語 ◆jiPkKgmerY L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ 050 あの蒼穹に磔刑にしてくれたまえ ◆9L.gxDzakI アーカード 051 ちぎれたEndless Chain ◆jiPkKgmerY ミリオンズ・ナイブズ、高町なのは(A s)、カレン・シュタットフェルト、キース・レッド 052 勇気のアイテム(前編)勇気のアイテム(後編) ◆gFOqjEuBs6 天道総司、シャーリー・フェネット、浅倉威、ヴィヴィオ、キャロ・ル・ルシエ 053 Shooting Bullet(前編)Shooting Bullet(後編) ◆9L.gxDzakI ルルーシュ・ランペルージ、ディエチ、泉こなた、スバル・ナカジマ、ミリオンズ・ナイブズ 055 それでも台風は微笑う。そして奔る ◆jiPkKgmerY アンジール・ヒューレー、アレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード 057 Subaru s Adventures in Parallel world ◆7pf62HiyTE ルルーシュ・ランペルージ、スバル・ナカジマ、泉こなた、早乙女レイ 058 やわらかな温もりに瞳閉じ ◆C1.qFoQXNw フェイト・T・ハラオウン(StS)、柊つかさ 059 ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI チンク、天上院明日香、ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ 061 戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI セフィロス、八神はやて(A s)、アーカード 063 不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI 高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、金居、武蔵坊弁慶 064 ピカレスク ◆9L.gxDzakI ディエチ、ミリオンズ・ナイブズ 065 クアットロがもってった!セーラーふく(前編)クアットロがもってった!セーラーふく(後編) ◆7pf62HiyTE クアットロ、シャマル、遊城十代 066 パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY 八神はやて(StS)、キング、ヒビノ・ミライ、ヴィータ、天道総司、キャロ・ル・ルシエ 067 孤独の王 ◆RsQVcxRr96 ミリオンズ・ナイブズ、キース・レッド 【第一回放送】 No. タイトル 作者 登場人物 068 第一回放送 ◆RsQVcxRr96 プレシア・テスタロッサ、リニス、アリサ・バニングス
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床に転がした電話機が鳴っている。 丁度コートに手を掛けたところだったダンテは、器用に受話器を蹴り上げると、そのまま空中でキャッチして耳に押し当てた。 「デビル・メイ・クライだ。生憎だが、出張の為しばらく休みだぜ。期限は未定だ、よろしく」 受話器から響く怒声とも懇願ともつかない雑音を聞き流しながら、無造作に放り投げる。 キンッと音を立てて、輪投げよろしく電話機の上に乗っかった。 最初から興味など無かったダンテは、それを尻目にコートを羽織る。 久方ぶりに袖を通した、ダンテの性格を体現する真紅の服装に自然と笑みが浮かんだ。やはり、この格好が一番しっくりくる。 「そう言うワケだ、レナード。後は頼んだぜ」 「……何日も事務所空けっ放しで、俺に連絡も寄越さないでおきながら、いきなり帰って来てそれかよ」 そこだけ新品同様になっている入り口のドアの傍に立っていたレナードは、弱弱しく悪態を吐いた。 もはや、この男に何を言っても無駄だと悟っている。 大仕事をこなし、報酬も入って万々歳という直後にそのまま消息を晦ましたダンテをレナードが今の今まで気に掛けていたのは、もちろん安否を気遣う理由ではない。 便利屋としても裏の世界に名の知れ渡っている<Devil May Cry>に、唯一まともに仕事を斡旋できるのがレナードの強みの一つだからだ。 ダンテが帰って来ていきなり無期限の休業宣言をすれば、一番ワリを食うのは誰か言うまでも無い。 「ここ最近、キナ臭くなってそこら中の組織が殺気立ってるんだ。腕っ節の立つお前さんだって引く手数多さ。 ……それを、いきなり全部キャンセルはねぇだろ!? 頼むよ、話もつかねえとなったら俺が酢豚にされちまう!」 「キャンセル? 話も聞いてねえよ。人の都合も考えずに勝手に請け負うからだ。せいぜい料理されないようにダイエットに励みな」 「ひ、人事だと思ってよ……!」 レナードの悲壮な訴えなど歯牙にもかけない。 これが無力な一般人の叫びなら良心が痛まないわけでもないが、相手は小ずるい腹黒の小悪党だ。自業自得というものだろう。 それでもレナードは得意の口八丁で何とかダンテの考えを改めさせようと食い縋る。 「ダンテ! 金払いのいい依頼かもしれないけどな、さっきも言ったとおり最近何処も殺気立ってるんだ。 そんな時期に、管理局からの長期の仕事なんて引き受けてみろ。どの組織からも睨まれるぜ? 便利屋としての信頼もガタ落ちだ、公的組織に尻尾振る飼い犬だってな!」 「言わせたい奴には言わせとけよ。外に知り合いを待たせてあるんだから、足引っ張るな。もう行くぜ」 「外? あのスゲエ車に乗った綺麗な金髪のオンナか?」 「ああ、美人だろ?」 「お前さんの好きそうなタイプだよ。アンタの事務所の前じゃなかったら、強盗と好きモノの変態が群がってくるだろうぜ……」 「あんないい女なら尻尾を振ってもいい、そうだろ?」 ダンテは舌を出して『ハッハッハ』と犬の真似をしながらおどけて見せた。 二本の<得物>を仕舞ったギターケースを引っ掴むと、縋るレナードへウィンク一つ寄越して事務所のドアに手を掛ける。 「それじゃあな。俺のいない間、事務所の管理は頼むぜ」 「ダンテ! いつまで待ちゃいんだ!? 帰って来るんだろ!?」 答えず、気楽に手を振すると、ダンテは事務所から出て行った。 閉まったドア越しに『ちくしょー、この悪魔!』という嘆きが聞こえるのを耳に入れず、ダンテは意気揚々と手持ち無沙汰に待つフェイトの元へと向かった。 「待たせたな」 「私物は、それだけでいいんですか?」 「あまり物は持ち歩かない主義でね」 後部座席にケースを放り込み、自分は助手席へと腰を降ろす。 ここへの道すがらと同じ、勝手知ったるリアシートを後ろへ押し倒すと、ダッシュボードの上に足を投げ出した。 他人の車でここまでリラックスできるダンテの図太さに呆れながら、言っても無駄だと悟っているフェイトはため息一つで済ませ、車を走らせる。 死にかけた街の景色が前から後ろへと流れていく。時折、その景色の中に人の姿も見かけた。 なけなしの現金を抱えてベンチに横になった男。派手に着飾った娼婦。そして、路地裏の影で寄り添うように座り込んだ子供達。 それらを見る度に、フェイトはやるせない気分になっていた。 「華やかなりし街の影ってところか」 フェイトの心の内を代弁するように、ダンテが呟いた。 繁栄の在る場所には格差もまた存在する。完全な平等などというものは、文明の停滞の下でしかありえないのだから。それはこの世界においても例外ではない。 多くの次元世界との交流が複雑に絡み合うミッドチルダにおいて、訪れる人はその種と同じだけ差が存在するのだ。 「首都に住んでいると忘れてしまいがちな……これが現実だと、分かってはいるんですけれど」 「気にするな。ここも、そう悪いもんじゃない。 ――ところで、コイツか? <悪魔>と繋がりがある次元犯罪者ってのは」 一介の執務官と便利屋が世情を嘆いても仕方ないとばかりに、ダンテは話を切り替え、情報の表示された電子ボードを睨み付けた。 ダンテほど物事を割り切れないフェイトだったが、質問には頷いて答える。 「ジェイル=スカリエッティ。私が追っている、大物の犯罪者です。各所のレリック強奪に関わるガジェットは彼の差し金、最近になって<悪魔>との繋がりも濃厚になりました」 「こいつが俺の事務所を吹き飛ばしてくれた張本人ってワケだ」 「奴と会話を交わしたんですよね。本人と接触したのは、多分ダンテさんが初めてです」 「ベラベラとよく喋る、胡散臭い奴だったよ。俺は自分よりお喋りな奴は嫌いなんだ」 不機嫌そうに鼻を鳴らす。 フェイトは肩を竦めた。ダンテの証言から、スカリエッティの人物像を少しでも把握しようと思ったが、この様子ではあまり積極的に語ってはくれないだろう。 だが、打算的ではあるが共通の敵が出来ることは、共に戦う上で都合がいい。 「情報は少ないですが、スカリエッティに関しては帰ってからダンテさんにも詳しくお話します。 それで……今のところ奴の協力者として可能性の高い<バージル>という男に関してなんですけど……」 「まとめて一緒に話してやるよ」 <バージル>という名前が出た途端、目に見えて変わったダンテの雰囲気にフェイトは口を噤んだ。 ただ敵意や怒りを抱くだけではない、悲しみと懐かしさも入り交ざった複雑な表情を浮かべている。 自分とスカリエッティがそうであるように、ダンテとバージルには浅からぬ因縁があるらしい。 彼の敵であるならば、やはり自分にとっても敵となる。 得体の知れぬ<悪魔>という存在を交え、複雑に、そして肥大化していく暗黒の気配を感じながら、フェイトは車を進める先に敵の姿を幻視した。 これまで漠然としていた、自分たちが真に敵対すべき者達の姿が徐々に形となり始めている。 <奴ら>はこちらの思惑の届かぬ場所で、一体何を企み、何を成そうとしているのか――。 エンジンの僅かな振動だけが響く車内、お互いに似た懸念を抱きながらダンテとフェイトは沈黙を続けていた。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十八話『Dear My Family』 「――そこまで! <インターセプトトレーニング>終了!」 ティアナが最後の誘導弾を撃ち落した瞬間、なのはが訓練の終了を告げた。 絶え間無い疲労の蓄積から解放された安堵に、ティアナは大きく息を吐く。張り詰めた神経が解れていく感覚と同時に脱力感が全身を重石のように襲った。 座り込みたい、が。堪える。 デバイスをホルダーに差し込み、直立不動で次の指示を待つティアナの意地とも言える気丈な姿を見て、なのはは微笑した。 「今日の個人教導はこれにて終了。休め」 「はい!」 ようやくティアナの体から強張りが抜ける。 愚直なまでに公私の区別を付けたがるティアナの生真面目さも、もうなのはには慣れ親しんだものだった。今はそれすら好ましく思える。 少し気の緩んだティアナのぼうっとした視線とぶつかり、二人はしばし見詰め合って、湧き上がった奇妙な可笑しさに一緒に小さく笑った。 教導官と訓練生としての時間は終わる。ここからは少しだけプライベートだ。 「完璧だったね。次からはワンステップ先に進めるよ、ティア」 「ありがとうございます、なのはさん」 それはつまり、こういう呼び方をするようになった二人の新しい関係だった。 「誘導弾の操作も大分精度が上がってきたね。小手先の技だけど、二種類の射撃があるだけで攻撃の幅は驚くほど広がるよ」 「最近、直線射撃に偏ってる自覚はしてましたから。なのはさんのお墨付きなら、矯正は成功ですね」 「ティアならあまり細かく言わなくても自分で使いどころ考えられるよねぇ……うーん、なんか物足りないなぁ」 「いや、教導官の方が訓練に疑問持ってどうするんですか?」 「だって、あの日から意気込んで色々訓練考えてるのに、ティアってば結構難なくこなしちゃうんだもん」 以前の自分と立場が入れ替わったかのようななのはの言動に、ティアナは苦笑した。 あの模擬戦を経て、心を開いた夜――あれからティアナの日常は少し変化し、自身の中では大きく何かが変わった。 なのはは基本を教えながらも教導にティアナの要望を取り込むようになり、ティアナはそれによって過酷になった訓練を一皮向けた精神力によってこなすようになった。 もう焦りは無い。戦いへの苛烈な意志はそのままに、周囲を見渡す冷静さと余裕を持つようになったのだ。 なのはの望む、新人メンバー達のリーダー格という器になりつつあるティアナにとって、残された問題は彼女自身の戦闘力の向上だった。 「――やっぱり、一撃の威力が欲しいと思うんですよね」 訓練やチームワークについて以前より遥かに気安くなった雰囲気でアレコレと交わす中、自身の話へと移って、ティアナはおもむろに告げた。 「あたしの弱点は、ここぞという時の切り札が無いことだと思うんです」 ティアナは自己分析を冷静に口にした。 なのはは頷く。 「そうだね、射撃型はどうしても魔力容量と出力が攻撃力に直結する。 魔力弾を量はそのままに、圧縮して濃度を上げるっていうティアの方法は、上手くその弱点をフォローしてると思う。でも、限界はある」 「一発で、大ダメージを与えられる攻撃方法が欲しい。<ファントム・ブレイザー>じゃ駄目なんです」 「確かにあの魔法は、正直ティア向いてないかな。 威力と範囲はカバー出来るけど、消耗率が高すぎるよ。魔力量を効率で補ってるティアに適したものじゃない」 「どちらかというと、なのはさんのバスターと同じ系統の魔法ですからね」 近くの木の幹に腰掛け、談笑する様は降り注ぐ木漏れ日も手伝ってひどく穏やかな雰囲気を漂わせていたが、交わされる言葉は真剣そのものだった。 「……やっぱり、タイプの違うわたしじゃアドバイスは難しいのかなぁ。わたしの考えることはティアも既に考えてるみたいだし」 「存在そのものが必殺のなのはさんに、必殺技のコツを尋ねても難しいですよね」 「何その物騒な評価! ティアまでそんなこと言うの!?」 時折、そんな場を和ます冗談も交えながら語り合う。 少し前までは考えられない、なのはとティアナのやりとりだった。 「参考になるか分からないけど、わたしの場合は鍛える時短所を補うより長所を伸ばす方法を取ったよ。 例えば、当時必殺技だった放出系魔法を改良しようと思った時、発射シークエンスを変更する方法を取ったんだ。まだ未熟だったからチャージ時間が長くて高速戦では使えなくて――」 「発射の高速化――じゃないですね。なのはさんなら、チャージタイム増やして威力を上げたんじゃないですか?」 「当たり! 使いどころはとことん選ぶけど、信頼出来る切り札になったよ」 「その見かけによらない博打好きな人柄に惚れます」 「にゃにゃ!?」 真顔で告げるティアナに対して、なのはは奇声を上げながら頬を赤くした。 もちろん、当人は誤解を恐れない本音を告げただけである。なのはの性格に、どこかダンテと共通する部分を感じ取ったのだった。 なのはは気を取り直すように咳払い一つすると、改めて自分の助言をティアナに告げた。 「まあ、要するに。持ち味を活かす、っていうのが重要だと思うの」 「持ち味……」 「例えば、ティアの場合はわたしにも真似出来ない命中精度とか魔力の圧縮率。その辺にパワーアップの鍵があるんじゃないかな? 新しい魔法を覚えるより、ずっと近道だと思うよ」 「……なるほど」 ティアナは神妙な顔で頷いたが、対するなのはは自分自身の助言の余りの曖昧さに少し落ち込んでいた。 「ごめん。あんまり参考にならないよね……」 「いえ、そんなことないですよ」 首を振るティアナの眼に、誤魔化しや気遣いは無い。本心だった。 「なのはさんのおかげで、ちょっと試してみたいことを思いつきました。ありがとうございます」 何かを得た興奮と決意が、自然と力強い笑みを形作っていた。 「ははっ、どういたしまして」 そんなティアナの様子を頼もしいと思うと同時に、なのはは更に大きく落ち込んでしまう。 「……なんか、やっぱりティア自分一人で解決しちゃったみたいだね……」 出来が良すぎるというのも困りもの。 あの夜には、目の前の少女を鍛える為に一大決心したものだが、蓋を開ければ『アレ、わたし実は要らない子なの?』と思わずにはいられない現状だった。 「あ、いや。なのはさんのおかげですよ、閃いたの! ホント! ありがとうございます!」 「いいよぉ、そんな気を使わなくて……。どうせ、わたしに教導なんて向いてないの。部下の気持ちも分からない独りよがりな女なの……」 「なんでそんなに打たれ弱くなってるんですか!? なのなの……いや、なよなよしないで普段通りに戻ってくださいよ!」 模擬戦の時のように眼が死んでるなのはをティアナが慌てて慰めていた。 もちろん、半分はじゃれ合っているようなものである。互いの弱さを笑って話せる程度には、二人は分かり合っていた。 雨降って地固まる、とは正にこの事。 ――そして、もう一つ固めるべき地があることをティアナは理解していた。 「おーい、なのは。こっちの訓練も終わったぞ」 駆け寄ってくるのは同じく個人教導を行っていたヴィータとスバル。 例の如くスバルは、時にヴィータにぶっ飛ばされ、時に自ら転がり、痣と土汚れだらけだった。 「お疲れ様。スバルの調子はどう?」 「ギリギリ合格点ってところか。馬力は上がってるけど、前に指摘した部分を十分に改善できてねーな。長所を伸ばしすぎだ」 「ハハ……すみません」 一見するとヴィータとスバルの二人は同じ突撃思考タイプに見えるが、そこは年の功。 猪突猛進気味なスバルの戦闘方法に生じる粗をヴィータは前々から懸念していた。しかし、矯正の効果はあまり見込めていない。 「索敵とか位置選び、細かい点を相棒のティアナに任せすぎてたな。一人になると、その辺が隙になっちまうぞ」 「……すみません」 ヴィータの的確な指摘に、スバルは気まずげに俯いた。 チラリ、とティアナの方を一瞥し、それから何かを堪えるように口を噤んでまた俯く。 普段の快活なスバルらしくない仕草だった。 その分かりやすい態度を、ティアナはもちろんなのは達が気付かないはずはない。 あの日――模擬戦以来、それはどうしようもないことなのかもしれないが、スバルとティアナの間に小さな溝が出来てしまっているのだった。 日常の中で、二人は以前と同じように寝食を共にし、会話もしているが、やはり以前と同じように心を通わせることは出来なくなってしまっていた。 「……まあまあ、ヴィータちゃん。とりあえず、訓練はこれで終了。 スバル達はシャワーを浴びて着替えたら、オフィスに集合してね。はやて部隊長から何か発表があるらしいよ」 重苦しい程ではないが、どうにも形容しづらい微妙な二人の雰囲気を払拭するようになのはが告げた。 それじゃあ、と。これまでなら嬉々としてティアナを伴っていた筈のスバルが一人で隊舎へ向かう背を眺め、なのはは無言を貫くティアナに小声で問い掛けた。 「やっぱり、スバルとは仲直り出来てない?」 「寝る前とか、話すタイミングを計ってるんですけど……なんか、普段通りに返されると曖昧になっちゃって……」 「スバルなりの気遣いなんだろね『気にしてない』っていう。実際は、気にしちゃってるみたいだけど」 「アレは、完全にあたしの方に非がありますから。負い目の分、強く切り出せないんです」 「きっかけがあれば、だね?」 「ありますか?」 「任せなさい」 ティアナにスバルへの謝罪と仲直りの意思があることを確認すると、なのはは満足げに笑ってドンッと胸を叩いて見せた。 その仕草に小さく笑みを浮かべ、感謝の意思を込めて一礼すると、ティアナもまたスバルの後を追うように隊舎へと向かった。 なのははその背中をいつまでも見守っていた。 懸念は残っている。しかし、不安はない。 ティアナは、きっとスバルとの絆を取り戻すだろう。あるいはそれ以上のものを。 好意の反対は無関心だと言う。 模擬戦で見せたスバルへの苛烈な反発がティアナの偽らざる感情ならば、それが一端に過ぎないスバルを想う心もまた本物なのだ。 良くも悪くも、あの頑なな少女がスバルという存在を自らの内まで踏み込ませ、心を許しているという事実が、なのはには微笑ましく映るのだった。 「ホント、不器用なんだから……」 「おめーが言えたことじゃねーだろ」 年上ぶって苦笑してみせるなのはの後頭部を、ヴィータがグラーフアイゼンでコツンと叩いた。 オフィスには制服に着替えたフォワードのメンバー達とシャマルやシャリオなどの手の空いた一部の隊員だけが集められていた。 新人達もすっかり板についた一糸乱れぬ整列を、向かい合う形ではやて達隊長陣が眺めている。 その上司達の中に二人――六課では本来在り得ぬはずの姿があった。 「――もう聞き及んでると思うけど、機動六課に外部協力者を迎え入れることになった」 自分の傍らに立つ二人の人物へ隊員達の視線がチラチラと向けられるのを感じながら、はやてが厳かに告げた。 「いずれも任務の際に遭遇した<アンノウン>に対抗する為、特別措置として一時的に六課へ出頭することになった人物や。 正式なメンバーではない為、いろいろと制約と自由の違いはあるが、私らの手助けをしてくれる力強い味方である事は間違いない。皆、仲良くするよーに」 最後はちょっと茶化すように告げる。 場の空気が和んだところで、はやてが促すまま二人が一歩前に出た。 「まず、皆顔くらいは会わせてるやろ。数日前から六課にいて、今日正式に契約を交わしたダンテさんや」 「ダンテだ。ま、よろしく頼むぜ」 以前とは違う借り物の制服姿ではない、真紅のコートに身を包んだ彼本来のスタイルでダンテは軽く挨拶をして見せた。ウィンクもおまけに付ける。 既にほぼ全てのメンバーと交流のある彼の参入は好意的に受け入れられた。スバルが軽く手を振るのを、隣のティアナが諌めるのが見えて苦笑する。 そして、もう一人。こちらは新人達には全く見覚えの無い男に紹介が移った。 「こちらは本局から来ていただいた、無限書庫のユーノ=スクライア司書長や。 私よりも偉いので、言うまでも無いけど失礼のないように。気さくな人やけど、高町隊長とプライベートな関係やから玉の輿狙う娘は命賭けてなー」 「はやて……」 真面目な顔で冗談とも本気とも取れないことを告げるはやての傍らで、ユーノとなのはが引き攣った笑みを浮かべていた。 一方で、この意外な人物の登場に初耳のメンバーの中ではどよめきが起こっている。 本局勤務の重役が、身一つでやって来たのだ。個人的なコネや要請でどうにか出来る人物ではない。 ティアナや一部の聡い者達が疑念を抱く中、ユーノは咳払い一つして、人当たりのいい笑みを浮かべた。 「ユーノ=スクライアです。未だに情報の少ない<アンノウン>に関しての分析などでサポートする任に就きました。所属としてはロングアーチに位置します。どうぞ、宜しく」 簡単な紹介が終わると、堅苦しい場はそこでお開きとなった。 レクリエーションのような軽い雰囲気の中、オフィスのメンバーは二つに分かれる。 隊長陣を中心としてユーノの下に集まる者と、既に大半のメンバーと親しくなっているダンテのグループだ。 「これからお願いします! ダンテさん!」 「空中戦のログ見せてもらいました! スゴイです! あの、剣も使うって本当ですか? 良かったらボクと模擬戦……」 「エリオ君、いきなりそんなこと言ってもダンテさん困っちゃうよ。あの、これからよろしくお願いします」 『キュクルー』 抱きつかんばかりに駆け寄ってきたのは新人メンバーだった。 若さゆえの素直な性分か、真っ直ぐな好意を向けてくる三人にダンテはらしくもなく尻込みしていた。 スバルはもちろん、控え目ながらも初対面とは変わって警戒心の無いキャロの笑み。エリオに至ってはダンテに向ける視線がテレビの中の有名人に向けるそれである。 荒事ばかりの人生のせいか、尊敬と敬意を持たれるのはどうにも慣れていない。警戒混じりのフリードの素っ気無さくらいで丁度いいのだ。 「ハハッ、ここまで歓迎されるとこっちが度肝を抜かれちまうな。まあ、猫の手だとでも思って気楽に接してくれ」 何とも言いがたいむず痒さを苦笑に変えて、ダンテは言った。 そして、まるで流れ作業のように次々と見知った顔が前に現れ、言葉を交わしていく。 「ダンテさんの剣はデバイスと一緒に預かっておきます。メンテナンスもバッチリ任せてください!」 「頼もしいな。ティアがいなかったから、デバイスの方はしばらく触ってないんだ」 「ティアナのクロスミラージュも相当ですけど、ダンテさんは更に過激な扱いしてますね。二人してデバイス泣かせですよ?」 「デリケートな扱いは苦手でね」 「でしょうね。……剣の方ですけど、すこーし解析させてもらってもいいですか?」 「……分解はしないでくれよ」 シャリオの言葉に苦笑いを返し、 「六課に歓迎しますぜ、旦那」 「ああ、まったくいい所だ。美女に囲まれた理想的な職場だな。これで花の首飾りとキスで歓迎されれば文句無しだ」 「そいつはフェイト隊長にねだってください。ハグなら、俺がなんとか」 「男と抱き合う趣味は無いぜ」 「俺もです」 数少ない同性同士、妙に気心の知れた笑みを浮かべ合いながらヴァイスと軽く拳をぶつけ合う。 そうして一通りの挨拶を終えると、ダンテはあからさまに『今気付いた』と言わんばかりに驚きの表情を浮かべて、離れた場所で佇む最後の一人を見つめた。 「Hey! こいつは驚いたな、俺の知り合いにソックリだ。つい最近振られたばかりの相手でね」 「うっさい! ……あの時は、悪かったわよ」 3年ぶりの再会を数日前に自ら台無しにしてしまったティアナは、ダンテのいつものジョークに対して少しばかり気まずそうに返した。 あの時は、色々問題を抱えていて素直に再会を喜べなかった。 現金な話だが、その問題が解決した今、誰よりも彼に話を聞いてもらいたい。そんな想いをおくびにも出さず、腕を組んで不機嫌な表情を作る。 もちろん、その全ての虚勢を見透かしたダンテは、笑いながら静かにティアナの下へと歩み寄った。 「あの時は傷付いたな。こう見えて、中身は結構ナイーブなんだ」 「……ごめん」 「冗談さ」 「分かってる。でも、ごめん。アンタから……逃げたわ」 最悪のタイミングでの再会だった。 彼から教わった信念を何一つ貫き通せず、敗北し、惨めな自分の姿を見られたくなかった。精一杯の虚勢で拒絶し、そんな行動の中で自分は一瞬彼に縋ってしまおうかとも考えたのだ。 情けなさと悔しさ、自己嫌悪が蘇って、それを堪える為に唇を噛み締める。 「そういう所は相変わらず不器用な奴だな」 そんな変わらない性格を、ダンテは苦笑して受け入れた。 「でも変わったよ、お前。3年前とは見違えた」 「……本当?」 「スタイルの話じゃないぜ?」 「バカ。真面目に言ってよ」 「こいつは失礼。雰囲気というか、顔つきがな……ティーダに似てきた」 ティアナは驚いたようにダンテを見上げた。穏やかな微笑みが浮かんでいる。 彼が時折見せる、挑発するものでも茶化すものでもない――それこそどこか兄の面影を感じる、包み込むような優しい笑顔だった。家族に向ける顔だった。 「あたしが、兄さんに……?」 自己嫌悪など吹っ飛んで、ティアナはダンテの発言の真意を確かめるように尋ねた。 途端、真摯で真っ直ぐだった瞳が悪戯っぽく歪む。 「ああ。アイツ、女顔だったからな」 「もうっ!」 それがダンテなりの照れ隠しだと長年の付き合いで分かっていたが、上手くかわせるほど老練もしていないティアナは頬を膨らませて胸板を殴りつけた。 怒り任せにしては随分と軽い音が響き、そのまま二人の間に沈黙が走る。 「……ありがとう」 「ああ――会いたかったか?」 「たぶんね」 「釣れないな」 そして、二人はごく自然に抱き合った。 異性としてのそれではなく、家族として。激しくは無く、ただ静かに。 3年という月日で離れた距離をたったそれだけで埋め合える、酷く穏やかな抱擁だった。 「こういうの、何て言うんだったか……」 「感動の再会、でしょ?」 温もりを感じ、軽口を返して、ティアナはその時ようやくダンテとの再会を果たせたような気がした。 しばらく動かずにその体勢のままでいる。 心地良かったが、心の片隅で違和感を感じていた。 ――はて、何か忘れちゃいまいか? 「…………グスッ。よかったね、ティア」 聞き慣れた相棒の声と鼻を啜る音を聞いて、ティアナは瞬時にダンテの懐から飛び退った。 我に返ったティアナは自分の置かれていた状況を思い出し、戦慄と共に周囲を見回す。 返って来たのは映画のクライマックスを見守る観客のような生暖かい幾つもの視線だった。具体的にはニヤニヤしていた。 当のスバルは涙と鼻水を垂らしながらも笑みを浮かべるという感激の極みといった表情で、その傍らではエリオとキャロがどこか羨ましそうにこちらを見ている。 親愛に満ちた二人の抱擁は、家族の愛に飢えた子供達を大いに刺激したらしい。 「な、な、な……っ!?」 ドモるどころか言葉にも出来ず、壊れたように繰り返すティアナが顔を真っ赤にしながらダンテの方を見ると、こちらは相変わらず飄々とした態度で肩を竦めていた。 全て分かっていて続けていたらしい。 怒りと羞恥で脳みそが破裂しそうな感覚を味わいながら、この混沌とした心境をどう表せばいいのかも分からず、更に混乱する。 そんなパニック状態のティアナにスバルがトドメを刺した。 「記念に一枚撮っておこうか?」 理性の糸をぷっつんと切ってしまったティアナは、奇声を上げながらスバルに殴りかかった。 賑やかなダンテを中心とした集団から離れて、ユーノとそれを囲う旧知の者達がそれを見守っていた。 「大人気だね」 「絵になるからなぁ、ちょっとしたアイドルや。士気の面でもええ効果やね」 苦笑するユーノにはやてが相槌を打った。 ダンテとユーノは同じ立場のはずだが、こちらにははやて達三人の隊長陣とヴォルケンリッターが静かに寄り添うだけだ。 人望の差――などと卑屈に考えることはないが、自分の役職の重さが肩に乗っかっているような気がして、ユーノは人知れずため息を吐く。 こうして10年来の友人と再会しても、子供の頃のようにはいられない。 なのはとオークションで再会して以来、時折そんな切なさを感じることがあるのだった。 「でも、驚いたよ。ユーノ君が来るなんて、わたしギリギリまで知らなかったんだから」 あえて黙っていたのであろうはやてに対して少し怒るように、なのはが言った。 フェイトも同感だった。 「理由はともかく、よく無限書庫を離れられたね?」 「書庫の管理体制には以前から改善案が推されててね。今回は、その新しいシフト設置に乗じて暇を貰ったワケ。定期的な連絡は必要だけどね」 「それにな、ユーノ君が六課に来たのは呼んだからやない。本人からの要望と本局の許可があったからや」 その予想外の答えに、全員がユーノの顔を見つめた。 ユーノが<アンノウン>の情報解析に必要な人材だと判断する根拠も分かっていないのに、それを本人が志願したというのだから当然だった。 奴ら――<悪魔>との遭遇は、ユーノにとってあのホテルでの一件が初めてのはずだ。奴らを一体何時知り得たというのか? 「――詳しい内容は、後で改めて話すよ。あのダンテさんも交えて」 皆の疑念に満ちた視線を受け止め、ユーノは小さく頷いた。 「今、言えることは……僕はずっと前から奴らを知っていた。もちろん、知っているだけで、その存在を信じるようになったのはつい最近だけどね」 「どういう、ことなの?」 「何もかも不確定だけど……奴らの記録自体は実ははるか昔からあったんだ。ただそれを誰も現実として受け止めなかっただけでね。 僕はあのオークションの日まで、個人的にその記録を調べていた。神話や物語を読むような気分で。だけど、あの日確信した。 <悪魔>は、実在する」 狂人の戯言とも取れるユーノの発言を、その場の全員が全く疑いなく受け止めていた。改めて突きつけられる現実への戦慄と共に。 これまで遭遇し、それでも尚別のモノへと結び付けようとしていた逃避にも似た認識を、ユーノの言葉がハッキリと切り捨ててしまった。 「ハッキリと確証は持てないし、まだまだ分からないことは残ってる。だけど、あのオークションの事件を切欠に僕なりに色々調べてみたんだ」 もはや周囲の誰もが沈黙し、ユーノを見つめていた。 ダンテ達の喧騒が酷く遠くに思える。 「全て説明するには時間が掛かる。だから結論だけ告げておくよ――この事件の黒幕の一人は、おそらくウロボロス社のアリウスだ」 ユーノの唐突な発言に呆気に取られるしかないはやて達を尻目に、彼は捲くし立てるように続けた。 「そして敵の目的はこちらの世界と悪魔の存在する世界――<魔界>を繋げることだよ」 確証は無く、ただ確信だけを胸に告げるユーノの脳裏には、あのホテルでの一件以来何度も思い出す本の一文が繰り返し浮かんでいた。 されど魔に魅入られし人は絶えず。 彼らは魔を崇め魔の力を得んと欲し、大いなる塔を建立す。 その塔、魔の物の国と人の国とを結び 魔に魅入られし者は魔に昇らんと塔を登れり。 そはまさに悪業なり。 そはまさに<悪業>なり――。 彼は夢を見ていたらしい。 その夢の中で彼は、初めて手にした剣で迫り来る黒い敵を延々斬り続けていたのだが、その黒い敵の姿形は、時として醜い肉塊のような化け物であったり、亡者の如き骸骨の群れであったり、あるいは彼に生き写しの弟の姿であったりした。 最後に切り裂いた影の姿が、ぼんやりと記憶に残る母親の顔をしていたような気がしていたが、そこで我に返った彼の立つ場所は、いつの間にか巨大な塔の頂上に変わり、瞬きする間にはこの世ならざる魔の河が流れる異空間へと行き着いていた。 取り返しのつかないミスを犯したことに気付いた彼は激しい怒りと喪失感に叫び声を上げるのだが、その時にはまたも場所は移り変わり、其処は無数の墓石が並ぶ墓地となっていた。 人間の名前、悪魔の名前――墓石に刻まれた文字はその全てが彼の知る者達の名前だったが、最後の墓石に刻まれた名前が自分自身のものであると気付いた途端に目が覚めるのだ。 誰が、何の為にかは分からない。何度も繰り返される問いかけを耳にして。 《――更なる恐怖を、望むや否や?》 深夜。 主が出て行って間もないその事務所には、早くも灯りが戻っていた。 看板が<Devil May Cry>の文字をネオンの輝きで描く。その光を見るだけで、暗闇に潜む者たちは背を向けて立ち去った。 悪魔さえ泣き出す男の所在を、その輝きは示しているのだから。 「デビル……メイ……クライ」 光と静寂の満たす事務所の中で、男は佇んでいた。 ドアだけが新調され、荒れ果てた内部を一通り見回り、自らの目的が達せられないことを悟ると、彼はただ静かに座る者の居ないデスクを眺めている。 目を細め、耳を澄ませて、つい先日までここで生活していた者の残滓を手繰るように。 「――ダ、ダンテェッ!?」 唐突に、飛び込んできた騒音によって静寂は破られた。 不快感を欠片も表に出さず、ただ淡々と振り返った男が見た者は汗だくになって駆け込んで来たレナードの肥満体だった。 滅多にしない運動によるものだけではない汗も、そこには混じっている。 追い詰められた必死の表情が、事務所の中に居た男の姿を捉えた途端希望に輝いた。 「な、なんだよ……戻ってきてたのかよ、ダンテ!? 助かったぜ!」 「……」 縋り付くレナードを無感情に見下ろし、男は近づいてくる複数の人の気配を感じて視線を入り口に戻した。 粗野な性格をそのまま格好にも表した、明らかに堅気ではない男が数人乗り込んでくる。 いずれも良く言えば屈強、悪く言えばチンピラのような風情の者達ばかりであった。 「レナァァードォッ! 前金返すか、命で支払うか!? 選べって言ってんだろぉがっ!」 「ヒィッ、だからもう全部使っちまったって言っただろぉ!?」 「仕事も果たさねぇで、フザケタこと抜かしてんじゃねえ! テメェ、あのダンテに渡りを付けられるって売り文句はどうしたい!?」 リーダー格らしい男の怒声の中に含まれた言葉に対して、男はようやく反応らしい反応を見せた。 「……ダンテ」 呟き、鉄のように動かなかった表情が僅かに震える。 「あん? なんだぁ、このアンチャンは?」 「すっげ、シャレた格好してるなぁ。目立つ目立つ」 「お~、見ろよこの剣」 「ヘンな剣だな?」 「オレ、知ってるぜ! これ日本刀だろ?」 チンピラ達の顔に悪意と愉悦が滲み、はやし立てるように男を取り囲んだ。 男の整った顔立ちやスラムには見られない小奇麗な格好に対する暗い妬みと、ソレに対する暴力的な衝動が彼らを動かしていた。まるでそれが彼らという種の本能であるかのように。 しかし、周囲の有象無象に比べれば幾らか理性的なリーダー格の男は、値踏みするような視線を向けていた。 「……銀髪に奇妙な剣を持った男。オイ、アンタはまさか……」 「そ、そうだよ! このレナード様は請けた仕事はしっかり果たすぜ? こいつがダンテだ!」 男の背後で震えていたレナードは、ここぞとばかりに捲くし立てた。 管理局に向かったダンテが何故戻って来たのかは疑問だが、今はとにかく首の繋がった安堵感が勝っている。 先ほどまで殺気立っていたチンピラ達へ身代わりとなる生贄を捧げるように、レナードは男の背を押した。 「なるほど、アンタか。レナードの話じゃあ、しばらく依頼は受けないと言ったらしいな? だが、テメェの都合なんて関係ねぇ。いくら腕が立とうが所詮便利屋だ。オレ達のような組織の恩恵無しじゃ、ロクに生きていけねえことくらい分かるだろ? ん?」 「……」 脅すような視線と嫌らしい笑みを浮かべながら、自分こそ強者であると強調するように男の顔を覗きこむ。 しかし、そこに在ったのは全く変わらず貫き通された無表情だけであった。 「何、気取ってんだぁ!? 噂だけの優男がよぉ、こんなご大層なモンぶら下げやがって――」 目の前のリーダー格が理想としているらしい『静かなる威圧』が実効を示さず、怯えの欠片も見せない男の様子に業を煮やした仲間の一人がおもむろに手を伸ばした。 その手が、男の握る刀の柄に触れようとした瞬間――指が五本とも根元から落ちた。 「あれ?」 肉と骨が見える綺麗な五つの切断面を眺め、痛みよりもまず疑問を感じる。 その一言が彼の遺言だった。 斬り落とされた指と同じ末路を、彼の胴体と頭が辿った。 「え――」 仲間の体が一瞬で幾つものパーツに分かれ、床に転がる生々しい音と光景を現実として受け止め、男を囲っていたチンピラ達の何人かが間の抜けた声を出す。 「ひ――」 そして、それが悲鳴と怒号に変わる前に、全てが終わった。 今度は狙い済ましたように顔だけ。周囲のチンピラ達の首から上がスライサーに掛かったかのように輪切りにされ、驚くほど静かな出血と共に床に崩れ落ちた。 遅れて胴体の転がる音が響き、最後に小さくキンッという金属音が鳴る。 いつの間にか抜刀された、男の持つ刀が鍔を鳴らす音であった。 「……ひっ、ひぃぃぃぃッ!? ダンテェ、何やってんだよぉぉぉ!!?」 死体となった者達の代わりに背後で尻餅をついていたレナードが悲鳴を上げる。 ダンテ――そう呼ばれているはずの男は、その言葉に全く反応すら見せず、来た時と同じように淡々とした足取りで事務所のドアを潜った。 そして、チンピラ達の中で唯一生き残った――目の前の惨劇に、生きているという自身の幸運すら分からずただ呆然としていたリーダー格の男は、すぐ横を通り過ぎた<蒼い影>を見て我に返った。 「テ、テメェェーーーッ!!」 怒声というよりは悲鳴に近い叫び声を上げて、懐から取り出した武器を立ち去ろうとする男の背に向ける。 肩越しに振り返り、男はその武器の正体を把握した。 「魔導師か……」 震える腕で突きつけているのは片手杖型の汎用デバイスだった。 性能的には何の変哲もないが、正式な登録を抹消された違法品である。正確には元魔導師であり、今は犯罪者に身を落とした人間だった。 「そうだ! 言っとくがコイツの殺傷設定は……っ!」 言葉は、文字通り寸断された。 再びキンッという鍔鳴りが響く。誰も、男の抜刀の瞬間を見極めることなど出来なかった。 いつ抜かれたのかも分からない刀が鞘に戻った瞬間、超高速の太刀筋に時間が追いつく。 突きつけられたデバイスの先端に切れ込みが出来たかと思うと、そこから真っ直ぐな亀裂が走り、その先にある腕を伝って持ち主の体を真っ二つに斬り裂いた。 デバイスと人体を切断した斬撃はそのまま背後の事務所にまで到達してようやく止まる。入り口のドアが斬り崩され、その上にあるネオンの看板まで破壊した。 もはや人間技ではない。 全てを見ていたレナードは、言葉もなくただ恐怖に震え、漏らした小便で濡れた床にへたり込み続けるだけだった。 「あ、悪魔……っ」 奇しくも、ここを去るダンテに告げたものと同じ言葉が漏れる。 男は――少なくとも『ダンテと瓜二つの顔を持つ』蒼いコートの男は、惨劇の場と化した事務所からやはり淡々と歩き去って行った。 凄まじい斬撃によって半壊した<Devil May Cry>というネオンの看板が火花を散らして、まだ辛うじて瞬いている。 一部の光が消えたそこに残された文字は――<Devil>と、ただそれだけであった。 《――魔とは何か?》 誰が、何の為にかは分からない問いかけが何度も男の耳を打つ。 《鼠に鳥の気持ちが分かろうか? 人の子よ……貴様らは見上げる空を知るのみ。限られた幸運な存在……》 場所も時間も関係なく、ふと気付けば囁きかけてくるこの声は幻聴などではなく、あるいは男に残された人間としての部分の警告なのかもしれない。 《――無知とは祝福なり》 あるいは、その人間としての部分に気付いた悪魔達が呪いを掛けてでもいるのか。 だが、いずれも無意味なことだった。 男はもはや止まらない。 その淡々とした歩みのまま、暗闇を渡り歩き、人と悪魔の屍を残しながら、死の淵に向かって歩み寄っていく。 《この広大な世界。仰ぐしかない空の広さを知った瞬間……絶望のうちに貴様は死ぬだろう!》 「――空が青いことなど、世界を一周せずとも分かる」 そして地獄の底から響くようなその呪詛を男は――バージルは一刀の下に切り捨てた。 そっくりの顔。そっくりの力。 しかし、共に生まれた双子の歩む道は決定的に違えてしまった。 「いずれ成る。これが運命とでも言うならば……」 夜の静寂に包まれた街を、バージルは歩いていく。 おそらく同じようにここを歩いていただろう、自らの半身との再会を予感して。 「こういうのを、感動の再会と言うらしいな――ダンテ」 to be continued…> <悪魔狩人の武器博物館> 《剣》マーシレス 絡み合う蛇の装飾が施された細身の剣。 細身といっても異常な長さの刀身との比較であって、標準的な両刃剣と同じくらいの幅である。 入手経路は不明だが、アリウスの私物としてオークションに出品されていた。 同時に出品された人形が事件の切欠となっている為、この剣も管理局に押収され、現在分析中である。 その実体は、機能や魔力の付加されていない一般的な刀剣でありながら、リベリオンと同じくダンテの魔力に耐え得る魔剣。 それ自体に力は無く、長い年月で魔への耐性を付けたようだが詳しい経歴はやはり不明。 細身な為リベリオンより軽く、長い刀身も合わせてスピードとリーチに優れた武器である。代わりに威力は僅かに劣る。 だが、今のところ実戦での使用は確認されていない。 前へ 目次へ 次へ
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____ / \〟 i──────┐ ヽ | ⌒ヽ ⌒ヽ\ | | | >|・ |─-|_ / j ーc ─ ′ ヽ ⊂____ /! _ノ _(\ \ \ __/ / (─ ヽ、 ` ─_──イ- 、 ヽ二_ノ \/|/\ / \ \ 向坂 環の子。 出自と環境のせいか、大人びている。 周りに同年代の子が居らず、結構寂しい思いをしている。 最近ユーノやすずかと交流を持ち出した。 将来身内同士の争いを生まない為に政治の分野から遠ざけられている。 「そんな訳で僕は将来は、多分後継者の護衛とかじゃない? キチンと仕事をしないと物理的に首が飛びそうだけど」 とは、本人の弁。 銃の取扱や知識に秀でている。 水銀燈に「ガン=カタ」を伝授した。
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BlackCatの整備に追われながら、オレはずっと妙な頭痛に悩ませられていた。どこか遠くから、呼んでいるような声が聞こえる。そんな感覚なのだ。 「なあ、さっきからなにかおかしくないか?頭が痛いんだが…」 オレと同じく顔をしかめている黒猫を見つけて、そう声をかけた。 「うん。感じる。なんだろう、これ…」 やはり黒猫も何かを感じているようだ。二人してその感覚の正体を確かめようとしていると、MkⅡとLv.57が心配そうな顔をしてやってきた。 「どうしたんだい?躰の具合でも?」 「二人とも顔色よくないですよ?」 口々にそういう二人を見て、黒猫が訳を話す。 「うまく言えないけど…なんか変なんだよ、このコンペイトウの周り。すごく…」 「変…?そりゃ、殺気みたいなものは感じるけどねぇ。」 「僕的には、二人とも医務室で休んでたほうが良いと思いますよ。まだ昨日の戦いの疲れも残ってるでしょ?」 「…そうだな…黒猫、一緒に医務室に行こう。これじゃ作業に集中できないしな。」 「だね。じゃあ整備士長、レベッカ、あとはよろしく。わたしのRXちゃんと直しといてね。」 「まかせな。ダンボールがパーツは届けてくれたし、星一号作戦には間に合わせるよ。」 「修理のことは心配しないでください♪」 そんな訳で、オレと黒猫は医務室へと向かった。途中でハルヒとキョンが話しているのに出くわした。 「どうしてもあの機体を直したいのよ!あれはいいものよ!ジオンのMSをいじれる機会なんてそうないでしょ!」 「だからって無い物ねだりしても始まらないだろ?ジオンMSのパーツなんてダンボールは持ってきてないぞ。」 「だからコンペイトウの中を探してきなさいって言ってるの!使えるパーツは片っ端から集めてきなさい!さもないと死刑!!」 「無茶いうなよ…」 どうやらハルヒがまたよからぬ思いつきをしたみたいだ。キョンの表情がそれを物語っている。 「おいハルヒ、また悪巧みか?」 「楽しそうだね。」 オレと黒猫が声をかけると、二人とも我が意を得たというような顔になった。 「二人とも協力してちょうだい!」 「二人ともこいつを止めてくれ!」 ほぼ同時にそう叫んだハルヒとキョンを見て、オレと黒猫は思わず吹き出した。二人はいがみ合うような視線を互いにぶつけている。 「ちょっと、二人が私をとめる訳ないでしょう!?」 「あのな、軍規違反に大事なパイロットを巻き込むな!」 「あんたはいいって言うわけバカキョン!」 「お前のわがままに振り回されるのは慣れてるよ。」 「二人だってそうよ!」 「お前なぁ…」 いつまでたっても口論が続きそうだ。とりあえず事情を聞いてみる。なんとなく予想はつくが。 「落ち着けハルヒ、キョン。いったい何の話をしてたんだ?ジオンのMSがどうとか言ってたが。」 [削除][編集][コピー] 10/16 02 44 Windows(PC) [401]エルザス 400 「バルディッシュよ、バルディッシュ!」 「バルディッシュって、フェイトの機体?」 黒猫がハルヒに訊いた。ハルヒは腕を組んで自信満々にうなずく。 「そう。ジオンのMS技術をふんだんに取り込んだ傑作よ。あれをこのまま格納庫に放置しとくなんてもったいないわ。なんとか損傷を直して実戦で利用すべきよ。」 「誰が操縦するんだ?」 キョンがもっともな質問をする。ハルヒは無頓着な調子で答える。 「さあね。捕虜のフェイトって娘に操縦させるわけにはいかないし…黒猫中尉、どう?」 「わたしは嫌だよ。RXがいい。」 「いっとくがオレもBlackCatは降りないぞ。」 「じゃあシンかしらね。ディステニーは一番ひどくやられたから、ひょっとしたら作戦に間に合わないかもしれないし。」 「やっぱりそんなにひどいのか?」 「動いてたのが信じられないくらいよ。今はアースラに行っちゃってるからあまり詳しくはわからないけど、見た目だけでも酷いものだったわ。アララギ君とツンデレちゃんが見てるけど、このあとキョンが応援に行くわ。」 ハルヒがヒタギ・センジョウガハラのことを「ツンデレちゃん」と呼んでいたのは意外だったが、とりあえず事情は呑み込めた。 「それでキョンにアースラへ向かう途中でコンペイトウをうろついて、使えるパーツを持ってこいって言ってたんだな?」 「その通りよ。そしたらキョンったら気が進まないなんて言っちゃって。だらしないわね。」 「そういう問題じゃないだろ?勝手に敵の機体を直してどうするって言ってるんだ。」 「ハルヒ、オレもバルディッシュを直すことには反対だ。投降したとはいえ、やはりあれは敵のMSだ。いっそ完全に破壊してやりたいくらいだ。」 語気を強めてそう言った。自分でも熱くなりすぎてるのはわかっていた。だが、あれはジオンのMSなのだ。ジオンは敵だ。憎い敵だ。 「ナガモン中尉、あなたが考えてることはわかるは。あなたはジオンを憎んでる。だからあの機体も憎いのね。」 「当然だ。バルディッシュは黒猫やシンやナノハや、このブラックハウスまでも沈めようとしたんだぞ?」 ますます冷静でなくなっていく。自覚はしている。黒猫が猛るオレの腕にそっと手を触れる。ハルヒはそんなオレに対して硬い表情のまま淡々と言葉を紡ぐ。 「わかってるわ中尉。わかってる。でも中尉だって、それがあの機体やフェイトのせいじゃないってことくらい理解してるでしょ?彼女は責務を果たしただけだもの。」 あぁ、理解はしてるさ。だけど… 「それでもオレの感情は変わらない。ジオンは憎い。フェイトは偉いとは思うよ?たった一人で敵陣に飛び込んで、最後まで戦おうとしたんだ。尊敬もする。だが、それとこれとは別だ。彼女は敵だ。」 「それを、本人の前で言える…?」 一番嫌な質問がきた。そう、オレはそれを一番恐れていたのだ。彼女と面と向かって出会うことを。彼女はシンやナノハと一緒にアースラにいる。オレはまだ直接会ってはいない。ちょっと前まで本気で殺し合ったいた相手とどんな顔をして会えばいいのかまったくわからない。シンとナノハはどうやってフェイトと会話しているのだろう?不思議ですらある。 だけど… 「言ってやるさ。お前はオレの敵だってな。」 そう言った瞬間、ハルヒは急に寂しそうな顔になった。黒猫がオレの腕を掴んでいるところからも、急に悲しみが流れ込んで来るみたいだった。それで、オレは一抹のむなしさをおぼえた。いつまでも憎しみあっていたって、どうしようもないじゃないか。そんな考えが頭をよぎった。 だけどそれは、思い出された屈辱の記憶にかき消された。そうだ、ジオンは汚い。口先だけの正義で汚いことを平気でやってのける。やっぱり憎い敵だ。 「言ってやるとも!フェイトにはっきりと、お前はオレの敵だってな!!」 今度は叫んでいた。そうだ。それがオレの戦う理由なのだから。ジオンの奴らを少しでも苦しめられれば、オレはそれでいい。 「わかったわ。行きましょう、キョン。」 ハルヒは組んでいた腕をほどき、足早に立ち去った。キョンまでもが、オレを憐憫の目で見ているようなきがした。だがオレには関係ない。そう自分に言い聞かせる。 気がつくと、黒猫がオレの腕にほとんど抱きつくようにすがり寄って来ていた。 「…ナガモン、恐い。」 「別に、いつも通りさ。」 言い放って、医務室へ向かって歩き始める。黒猫はオレの腕に掴まったままついてくる。 二人分の足音だけが廊下に響く。無言。 [削除][編集][コピー] 10/16 02 44 Windows(PC) [402]エルザス 401 黙っていると自分がフェイトのことを本当はどう思っているのかを考えてしまう。もし彼女がもっと大人で、あるいはもっと醜い姿をしていたら、こんなことで悩みはしなかったのだ。オレはただ単に彼女を憎めばよかった。だが、彼女は美しかった。その戦う姿は儚くて、それでいて芯があった。自らの身は顧みず、崩れそうになる自分に仲間のためだからと言って鞭をうつ、どこか無茶な、いや無鉄砲な彼女。 そんな彼女がバルディッシュのパイロットだったからこそ、オレはこんなにも惨めな気持ちで廊下を歩いているのだ。自分の言ってしまったことがむなしい。なぜ彼女を受け入れられないのか、自分が恨めしい。 黒猫に目をやる。うつむいて歩く彼女は泣いているのかも知れない。フェイトと直接戦ったのは彼女なのに、黒猫はフェイトを受け入れようとしていた。昨日、宇宙にただようRXをオレと魔理沙が回収したとき、気を失っていたはずの黒猫は確かにつぶやいた。「フェイトを許してあげて」と。 一歩踏み出す時が来ているのかも知れない。 そう思った。過去に別れを告げ、今とそして未来を生きるために、オレは乗り越えなくてはならないのかも知れない。 今までにもそう思ったことは何度かあった。だけどそのたびにオレはあの恥辱を思い出して、ジオンへの復讐の思いを新たにしていた。答えのない毎日が続いた。 それが変わるときなのかも知れない。今度こそオレは自分と向き合わなければいけないのかも知れない。本当の自分がどっちなのか。ジオンが憎いか、本当はそれを忘れたいのか。 答えは自分で探すしかない。自分の中にしか答えは無い。それを探すのがどれほどつらいか、オレはわかっているつもりだ。だから逃げ出したい。だけど… オレはうつむいたままの黒猫に目をやる。彼女をこれ以上悲しませたくない。いや、黒猫だけじゃない。ハルヒやキョンだってオレのことを心配してくれてるだろう。MkⅡやLv.57だってそうだ。 「黒猫。」 呼んでみると、黒猫は涙に濡れた瞳をこちらに向けた。 「フェイトに会ってみる。そのときオレが彼女を許せるように、力を貸して欲しい。」 「ナガモン…?」 「オレは変わらなきゃいけないんだと思う。これ以上お前を悲しませたくないしな。本当はオレがどうしたいのか、フェイトに会ったら確かめられると思う。だから…ついてきて欲しい。」 「うん、わかった!」 黒猫はそう言って、涙を流しながら微笑んだ。 「わたし、ついていくよ。どんなにつらいことがあっても、ナガモンがそれを乗り越えたいと願うなら。そして、わたしがその役にたてるなら。」 「ありがとう。」 「ううん。ごめんね、わたしはナガモンの痛みを分かち合うこともできなかった。」 「そんなことはない!」 「嘘はナガモンらしくないよ。わたし、ずっとナガモンの力になりたかったんだ。だから嬉しいんだ。フェイトと出会うことで、ナガモは運命を変えられるかもね。」 「すべては神様がご存じさ。」 「そうだね、二人に幸あれだね。」 黒猫が言った「二人」が誰をさすのか、オレにはよくわからなかった。オレとフェイトのことか、それともオレと黒猫のことか。どっちだっていい。良い結果になることを祈るのは悪いことじゃない。 [削除][編集][コピー] 10/16 02 44 Windows(PC) [403]エルザス † † † † † 突然、光が瞬いた。その光は一隻のマゼランを貫いて、マゼランは火玉に呑み込まれて爆発した。場所はコンペイトウのすぐ外側だった。 つづいてやはり要塞の表面にいたジムが光に貫かれ、爆発した。爆発はあちこちで起こった。砲台、輸送艦、戦艦、そういったものが次々に光に貫かれていく。 レビル将軍は要塞の中央司令室でその報告を受け取っていた。だが、報告には敵がどこにいるのかわからないと記してあった。副官の一人が要塞表面の監視棟と連絡を取り合っていた。 「現場なら敵が見えるだろう!?こっちはまだ電気系統の整備が終わっちゃいないんだ!見えるわけがないだろう!…おい、どうした?38エリア?38エリア?…将軍…」 副官がレビルを振り向き、連絡が途絶えたことを伝える。レビルは各部隊へ状況を連絡し、見えない敵に対して警戒態勢をとるよう指示した。 ブラックハウスからは魔理沙、アリス、パチュリーの三人が緊急発進して要塞周辺の索敵にあたることとなった。ブラックハウス隊の中では、この三人のMSがいちばん無傷に近かったのである。とはいえ、アリスのストロードールは先の戦闘でAI制御のボール「シャンハイ」を失っていたし、他の二機もジークフリートとの戦闘で弱冠の損傷を負ってはいた。それでも彼女たちが出撃したのは、それだけ他の機体の受けた傷が大きかったことを表していた。 「ミノフスキー粒子がえらく濃いから、レーダーは役に立たないわね。自分の目だけが頼りよ。魔理沙、アリス、周囲の警戒を怠らないで。」 リトルデーモンに乗るパチュリーがすばやく状況を確認する。 「あそこ!マゼランがまた一隻やられたぜ!」 マスパを操る魔理沙は光に包まれてゆくマゼラン級から目をそらさない。 「魔理沙!周囲を警戒してっていってるでしょ!ちゃんとやってよ!」 アリスがすかさず注意する。魔理沙は「わかってるって」などとぼやきながら辺りに異常がないか目を光らせる。だが、なにもおかしなところはない。敵の姿が全然見えないのだ。 「おかしいわね。ほんとに敵影が見えないわ。いったいどこから…?」 パチュリーがつぶやいた途端、さらに一隻のサラミスが艦橋から火を噴いた。 「何隻やられてるんだ!?」 あきれたような口調で魔理沙が叫ぶ。そのとき、アリスが一機のMSを発見した。 「後方斜め下、白いMSよ!パチュリー、確認して!」 「了解!」 パチュリーが素早い手つきでパネルを操作し、捉えたMSのデータを照合する。 「あら、ガンダムね。アムロ・レイのガンダムだわ。」 そう、彼女達が発見したのは敵機ではなくガンダムだった。アムロ・レイの操縦するガンダムは、一度立ち止まって何かを感じ取っているかのようにじっとしていた。かと思うと、今度は何かを見つけたかのように一気に加速し、コンペイトウから離れていった。 「なにか見つけたのかな?」 アリスがガンダムを見ながら言った。 「あとを追いましょう。敵機かも知れないわ。」 パチュリーがそう宣言し、三機は並んでガンダムを追っていく。パチュリーは念のために機体に搭載されているカメラで撮影を始めていた。肉眼で確認できなくても、なにかが映りこむかも知れないと考えたのだ。レンズは最大望遠に設定してある。 ガンダムはしばらく進んだかと思うと、おもむろに停止してしまった。 [削除][編集][コピー] 10/16 02 48 Windows(PC) [404]エルザス 403 「あらら、止まっちゃったぜ?」 「見失ったみたいね。どうする?パチュリー?」 「もう少しだけ進んでみましょう。レーダーに少しだけ反応が現れたわ。たぶん、ゲルググって機体だと思う。」 パチュリーの言葉通り、リトルデーモンのレーダーは小惑星の上にたたずむゲルググを捕捉していた。しかし、小惑星にしては反応がおかしい。 「11時の方向に何か見えない?」 正体を確かめるべく、パチュリーが具体的な方角を指示する。魔理沙とアリスが必死に目をこらし、二人は同時に赤い点のようなものを発見した。 「ひょっとしてあれがMSか?」 「ずいぶん遠くだけど、そのようね。その横に緑色の大きなものが見えない?」 「確かに。コムサイ…じゃないし、MAかな?パチュリー、確認できたか?」 「そう簡単にはいかないわ。まだ遠すぎる。あっ、引き返していくわ!」 「あとを追うか?」 「…ダメ、もうレーダーの外に出たわ。すばしっこいわね。」 「私たちも戻りましょう。ソロモン…じゃなくて、コンペイトウからだいぶ離れたわよ。」 「そうね。どうやらカメラには写ったみたいだし。どうやらあの緑色のは、小惑星なんかじゃなくて新兵器らしいわね。」 「お手柄だな、パチュリー!見えない敵の写真を撮るなんて。」 「まだこれが見えない敵の正体と決まった訳じゃないわ。だいたい問題は見えないところからの攻撃をどう避けるか、よ。写真だけでは意味がないわ。」 「ほめてやったのに。」 「ありがとう。協力してくれて感謝してるわ。」 「へへっ、どういたしまして。」 「二人とも、そろそろ無線封止しなさい。無駄話しは後回し。」 「「了解。」」 アリスのつっこみに魔理沙とパチュリーがおとなしく従い、三人はコンペイトウへの帰途についた。 この時パチュリーが写真に納めた敵機こそ、ララァ・スンの駆るMA「エルメス」だったのである。そしてエルメスに付き添っていた赤いゲルググがシャア・アズナブルの乗機であったのは言うまでもない。 [削除][編集][コピー] 10/16 02 49 Windows(PC) [405]エルザス † † † † † オレは黒猫とともに、アースラのフェイトを尋ねていた。フェイトは黒いパイロットスーツのまま独房に入れられていた。相変わらず沈んだ表情でいる彼女は、オレが憎んでいた卑しいジオン兵の姿とは似ても似つかないものだった。庇護が必要だと思った。彼女はまだほんの子供だ。 「シン・ナガモン、こっちは黒猫。サイド6で会ってるよな。」 独房の中に入ってにそう声をかけた。黒猫も入ってきたが、監視役のクロノは外から扉を閉め、鍵をかけた。まだフェイトを警戒している様子だ。 「はい。お久しぶりです。ナガモンさん。黒猫さん。」 「わたしは昨日話したけどね。戦いながら。」 黒猫が言った。驚くことにこいつは笑顔だ。 「フェイト、強いんだね。わたしMS戦であそこまでやられたの初めてだよ。」 黒猫はなおも明るい口調で話し続ける。緊張しながらも、フェイトはすこし照れたような様子でそれに答えた。 「そんな…私はあの時必死だったから、無我夢中で…」 「ほんとに大したもんだよ。たった一人で仲間のために時間稼ぎなんて。わたしには真似できないなぁ。」 「大切な人がいるから…みんなを守りたかったから…」 「うんうん、わかるよその気持ちは。でも、その気持ちをきちんと行動にうつせるところが偉い。」 「…だけど、そのせいでみなさんを危ない目に遭わせてしまいました。一度は一緒に食事もしたのに…」 「気にすることないよ。たまたまわたし達とフェイトが違う陣営にいただけ。運命ってときどき残酷ないたずらするから。わたしだってフェイトと本気で戦おうとしてた。フェイトに罪があるとしたらわたしも同罪だよ。ね、ナガモン?」 突然オレのほうに話しを振ってきた。オレはすこしびっくりして言葉に詰まる。 「う、あぁ…そうだな。同罪というか…まぁお互いに軍隊にいるから仕方ないってことかな…」 「じゃあ…ナガモンさんは、私を許してくれますか…?」 核心の問題をフェイト自らが持ち出してきた。オレはますます言葉を失う。そうだ、オレは彼女を許すためにここへ来た。だけどこれじゃあんまり急だ。まだ心の準備ができていなかった。自分と向き合わなければいけない時がこんなにはやく訪れるとは思ってもみなかった。だが、彼女を前にして、「許さない」とはとても言えない。そこにいる少女はあまりに可憐で、儚くて、美しいからだ。 だけど、言葉が口をついて出てこない。頭では彼女を許しているのに、彼女を憎んだって仕方ないとわかっているのに、言葉にできない。まるで自分の口がオレの意志に反乱をおこしたみたいだ。プライドとかメンツの問題じゃなかった。そこでまた蘇る屈辱の記憶。 忘れられない恥辱。なんども悪夢で繰り返し見た汚い男達の卑しい笑い。手足を押さえれれ、服をはぎ取られ、躰中に何本もの手が伸びてきて、それが肌を這い、オレをおもちゃのようにさんざんに犯して、オレが泣きわめいてもまだ犯して、気を失うまで犯して、オレは最後には理性すら失いかけて、それでも犯すのをやめない男達。そういったことが頭の中でグルグル回って、オレはいま自分がどこにいるのかすらわからなくなる。 [削除][編集][コピー] 10/18 23 13 Windows(PC) [406]エルザス 405 目の前には捕虜になったジオンの少女。同じ女の捕虜なのに、なぜこいつはオレのような目に遭わない?不公平だ。お前も同じ苦しみを味わえばいい。 オレをじっと見ている少女の顔に恐怖が浮かぶ。そうだ、もっと怖がれ。オレを恐れろ。泣きわめけ。理性を失うまで。 オレは少女に腕を伸ばす。乱暴に髪を掴み、ぐいと引き寄せる。少女は痛みと恐怖で声もでない。片手で少女の首を絞めながら、真っ黒なパイロットスーツをナイフで切り裂く。ナイフの切っ先は時々少女の肌をも傷つける。破れた黒のスーツから透けるような白い肌がのぞき、そこをしたたる鮮血が綺麗なコントラストを描く。スーツの裂け目に手を突っ込み、乱暴に引き裂いていく。あらわになる少女の躰。いやがる彼女を押し倒し、馬乗りになる。すべて壊してしまいたい。この少女のなにもかも、すべてを。 「ナガモン!!」 黒猫に呼ばれて、オレは我にかえった。頭を抱えて下を向いていた。手にはナイフなんて握っていない。顔を上げれば、心配そうにこちらを見る黒猫とフェイト。フェイトのパイロットスーツは傷一つ無く彼女の素肌を包んでいる。 幻覚、あるいは妄想だった。 「よかった…」 心からそう思った。オレはまだ彼女に手をかけていなかった。どっと疲れを感じた。同時にほっとしたような気持ちになる。まだ大丈夫、彼女とは仲直りできる。それがうれしかった。 「ナガモンさん、大丈夫ですか?」 フェイトは真剣な眼差しでこっちを見ていた。オレはその瞳をまっすぐに見返し、彼女の手を取った。 「すまなかった。オレが間違っていた。君に罪はない。悪かったのはオレのほうだ。君にはなんの罪もなかったんだ。ほんとうにすまなかった。」 一気にまくし立てた。彼女はあっけにとられて、なんのことかわからないという表情をしていた。それはそうだ。 「オレは…君のことを憎んでいた。ただ、君がジオンだっていうそれだけの理由で。だけど、それは間違ってた。君は君だ。ジオンだとか連邦だとか、関係ないんだ。君は君なんだ。かけがえのない存在なんだ。」 思うがまますべてを口にしていた。さっき言葉に詰まったのが嘘みたいだった。まとまりはなくても、思いが次から次に言葉になって、口をついて出てくる。 「君はもっと自分を大事にしなきゃいけない。君はみんなを守るって言ったけど、みんなに守ってもらって良いくらいだ。だけど君は強いから、そういう不器用な生き方しかできないんだよな…」 そういって、オレは彼女を抱きしめていた。ぎゅっと強く、抱きしめていた。彼女は誰かに似ていると思っていた。今ようやくわかった。 オレ自身だ。 守りたいけど守って欲しくて、けどそれは絶対に表には出せないで、不器用に、それはもう不器用に生きている。そうだ、彼女はオレに似ていたんだ。 だからオレは彼女を許そう。そうすれば、オレは自分さえも許すことができる。汚されて、たくさんの人を殺して、仲間を守れなかったオレだけど、オレはこれからそんな自分を許してやれると思う。それはとてつもない救いで、その救いを運んでくれたフェイトに、オレは精一杯の感謝の気持ちを伝えた。 そして、それを黒猫が見守っていた。そうだ。こいつもオレに救いを運んでくれた。こいつがオレを呼んで目覚めさせてくれなかったら、オレは本当にフェイトに酷いことをしていたかも知れない。思えば、オレがくじけそうな時、黒猫はいつもそばにいてくれた。自分だって悲しいだろうに、黒猫はオレを励ましてくれた。 なんで今まで気づかなかったんだろう。こいつのことが好きなのはとっくにわかってたのに。オレはこいつのことはちっともわかってなかった。とにかく確かなのは、オレにはこいつが必要不可欠ってこと。こいつなしの未来なんてオレは嫌だ。 一番守りたいもの、それってつまり一番愛してるものなんだろう。黒猫。オレはお前を守りたい。だからお前を愛してる。 † † † † † ナガモンの胸に顔をうずめながら、フェイトは眠りの底へ落ちていった。極度の緊張から解き放たれ、たまっていた疲れがどっと押し寄せてきたからだ。ナガモンが自分を許してくれたらしいこともなんとなくわかった。ナガモンに抱き寄せられて安心できたのはそのせいに違いない。 気がつくとフェイトは幻想を見ていた。幻想の中ではやさしい母がフェイトと、フェイトの姉のアリシアとを抱き寄せていた。 アリシア――――フェイトの母プレシア・テスタロッサの最愛の娘にして、5歳にしてプレシアの実験に巻き込まれて命を落とした悲劇の少女。彼女を失ったプレシアは狂的なまでに嘆き、ついにはアリシアのクローンを生み出した。そのクローンこそが、フェイト・テスタロッサであった。フェイトはプレシアからガンダムの捕獲を命じられ、ツィマッド社特務隊に同行していたのだ。以来、プレシアは精神の均衡を失ったかのようにフェイトを虐げ続けてきた。フェイトが危険に身を晒しながらもガンダムの打倒に全力を挙げていたのは、ガンダムを倒せばプレシアからやさしい愛をうけられるかもしれない、という儚い希望があったからだ。だが、プレシアのフェイトに対する冷たい仕打ちは変わることはなかった。 いまフェイトが幻想に見ているプレシアは、そんな冷酷な人間とはまったく違う、優しく暖かい母の姿であった。その母の胸に抱き寄せられて、そばには本来生きているはずのないアリシアもいて、フェイトは幸せだった。だが、彼女は気づいていた。これが幻想にすぎないことに。それから冷めてしまえば、また冷たい現実が彼女に襲いかかってくることに。それでも、フェイトはその現実に立ち向かわなければならないと思っていた。 幻想の中のアリシアが、フェイトの顔をまっすぐに見た。二人を抱き留めていたプレシアの姿が消え失せて、二人は太い幹の大きな木の下に座っていた。雨が降っている。二人の容姿は当然よく似ていた。だが、わずか5歳で命を落としたアリシアの姿は幼い。フェイトはアリシアに話しかける。 「ねぇ、アリシア。これは、夢…なんだよね?」 「……」 「私とあなたは、同じ世界にはいない。あなたが生きてたら、私は生まれなかった。」 「そう…だね…」 「母さんも、私にはあんなに優しくは…」 「優しい人だったんだよ。優しかったから、壊れたんだ。死んじゃった私を、生き返らせるために。」 「…うん。」 「ねぇ、フェイト。夢でも良いじゃない。ここにいよう?ずっと一緒に……私、ここでなら生きていられる。フェイトのお姉さんでいられる。皆で一緒にいられるんだよ?フェイトが欲しかった幸せ、みんなあげるよ?」 フェイトの表情は晴れない。雨は降り続ける。 「ごめんね…アリシア。だけど、私は行かなくちゃ。もう…」 アリシアの表情に悲しみが広がる。寂しそうな、でもどこかその答えを待っていたかのようなアリシアは、黙ってフェイトに抱きつくと、そっと目を閉じた。それだけでフェイトはアリシアが自分を理解してくれたとわかった。 「ありがとう…ごめんね、アリシア…」 震える声でフェイトは絞り出す。 「いいよ。私は、フェイトのお姉さんだもん。待ってるんでしょ?優しくて強い子達が。」 「うん…」 「じゃあ、いってらっしゃい、フェイト。」 「うん…」 二人はほんの一瞬、互いに見つめ合う。 「現実でも、こんな風にいたかったなぁ…」 アリシアの躰が消えていく。フェイトは手から、幼いアリシアの感触が消えていく。その最後の光が消えたとき、フェイトは現実へと帰って行った。 [削除][編集][コピー] 10/18 23 14 Windows(PC) [408]エルザス † † † † † わたしは、感情の流れを感じていた。ナガモンとフェイト、二人の思いが流れ込んでくる。二人とも、自分の迷いに一つの答えを見出したみたいだった。わたしはこの時初めて、自分がニュータイプかも知れないと考えていた。他人の幸せを感じ取れる存在、それがニュータイプなのだとしたら、それはどんなに素敵なんだろう。 だけどそれと同時に、わたしは二人の悲しい気持ちも感じ取っていた。二人とも悲しい過去を背負ってここまで来たんだ。似たもの同士抱き合って、涙なんか流してる。独房の外のクロノは、そっぽを向いて見て見ぬふりを決め込んでいた。だからわたしも二人を抱きしめてみる。ますます思いが伝わってきた。これがニュータイプ。そうなのだ。 わたしは、この力をみんなが幸せになるために使おうと思った。一人でも多くの人が悲しい過去を乗り越え、新しい自分になるために一歩を踏み出す、そのために役立てようと思った。それがニュータイプの力だ。 [削除][編集][コピー] 10/18 23 14 Windows(PC) [409]エルザス † † † † † コンペイトウ要塞の一画にある倉庫で、ユーノ・スクライアがナノハとたたずんでいた。彼の目の前には山積みにされたジオン製MSの部品があった。 「これを、使えないかな?」 ユーノはナノハにそう切り出した。彼はハルヒと同様、フェイトの愛機であるプロトタイプケンプファー「バルディッシュ」の再建を目論んでいたのである。 「使えるんじゃないかなぁ。でも勝手に持って行っちゃっていいの?」 「戦術アドバイザーの権限なら、敵のMSを回収して研究するくらいのことはできるよ。問題はバルディッシュがブラックハウスにあることなんだ。」 ユーノもナノハも、アースラの一員であった。しかし、バルディッシュが保管されているのはブラックハウスの左舷格納庫なのである。バルディッシュを直すには当然ブラックハウスの整備士の力を借りることになる。しかし、この部隊に配属されてまだ日の浅いユーノは、ブラックハウスのクルーとはほとんど面識を持っていなかったのだ。 「ん、おまえらなにしてるんだそこで?」 不意に背後から声をかけられて、ユーノとナノハは飛び上がって驚いた。振り向くと、ぶっきらぼうな顔をした男が一人、ユーノとナノハを交互に見ていた。 「キョンくん!」 ナノハが男の顔をみて声をあげた。彼女は宇宙にあがるまで、短い間ではあるがブラックハウスで勤務していた。そしてSOS団の整備士キョンもまた、一時的にアースラで勤務していたのである。だから二人が顔見知りであることは不自然ではなかった。 「ナノハか。こちらは戦術アドバイザーのユーノさん、だったな。」 「ユーノ・スクライアです。どうぞユーノと呼んでください。」 「じゃあ、ユーノ、それにナノハ、ここで何してたんだ?パイロットは艦内待機じゃないのか?」 二人とも一瞬返答に詰まった。正直に答えて良いか迷ったからだ。そのまま黙っていると、キョンが深くため息をついた。 「はぁ~。まぁだいたいわかっちゃいるがな。どうせバルディッシュを直すためのパーツ集めだろ?」 図星だったので、二人は互いに顔を見合わせた。どうやらここにも同じ考えの者がいたらしい。 「じゃあ、じゃあ、キョンくんもバルディッシュを直すつもりなんだね!?」 ナノハが嬉々としてキョンに訊いた。バルディッシュは今まさにSOS団の管理下にあるのだ。 「俺の意志じゃない、ハルヒが直そうとしてるんだ。まったく、こっちはそのわがままにつきあって倉庫あさりだ。」 キョンがぼやくと、彼の背後から一台の小型トラックが倉庫に入ってきた。運転台には笑顔を絶やさない優男が座っている。 「おぅ、来たか、コイズミ。こっちだ。」 キョンがコイズミを迎え、山積みのパーツのそばに駆けていく。ユーノとナノハもそれを追った。コイズミはトラックから降りるとうずたかく積み上げられたパートを隅々まで観察していた。 「大変な量ですね。この中からバルディッシュにあうパーツを選ぶのは、かなり骨が折れそうです。」 顎に手を当て、いかにも思案中といった仕草でコイズミが言った。 「だいたいの見当はつけてある。問題は見つかったときどう言い訳するかだ。勝手に倉庫に入っただけでもやばいってのに…」 言いながらキョンは、黙々とお目当てのパーツ類を探し当てていた。倉庫内は半無重力だから、重い装甲板でも軽々と運ぶことができた。ユーノはどんどんパーツを選ぶキョンを見ながら、案外彼も乗り気なのではないかと考えていた。協力できそうだった。 「あの、それなら問題ないです。僕の研究材料と言えば、たいていの器材は持ち出せるはずです。」 キョンとコイズミがさっとこちらを向き、ユーノはおもわず一歩後ずさった。なにかまずいことを言ったか…? キョンはコイズミとアイコンタクトを交わすと、互いに頷き合った。 「ひとつそれで頼む。こっちはハルヒの命令だから達成できないと厄介だ。」 キョンがユーノに言った。あっさりと協力者が見つかって、ユーノは拍子抜けしたような感覚だった。ハルヒがそこまで執心というのなら、バルディッシュも修理はSOS団主導でやって貰えるだろう。自分は解析したバルディッシュのデータをもとに、その方法を指導すればよい。 「喜んで協力させてもらいます!」 ユーノは嬉しくて、キョンに頭まで下げて見せた。
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1 この作品にはあるネタが含まれています。TS、逆転、反転などにティンとこられて嫌悪成される方は読み飛ばしていただけると幸いです。 なのは「あのね、シン君」 それは、放課後の帰り道の途中。 唐突に語られた言葉だった。 高町なのはとシン・アスカは、日が沈みかけ、夕日によって赤く染め上げられかけている町を二人で歩いていた。 季節は春の様相を見せながらも、未だ肌寒い。 なのはは厚手のセーターに身を包み、シンもまた長袖を着用している。 もっとも、シンは袖をめくり、襟元もネクタイを緩めたままであるのだが・・・ その姿がなのはは嫌いではなかった。 ぼさぼさの黒髪に、鋭い瞳の彼にはその姿がやけに似合っていたからだ。 かといって、それが粗野には見えないような絶妙なライン。 粗野ではなくラフとワイルドの間にあるような妖しさ。 シンは不思議そうになのはを見やる。 シン「・・・なんだよ、いきなり」 なのは「うん、あのね。ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・」 シン「重要なことなのか?」 なのは「うん、割と」 なのはを見つめる気だるげだったシンの赤い瞳に真剣さが宿るのを見て、なのははつと見上げていた視線を下げる。 唇を少しだけかみ締めて、己の本心が悟られないように。 シン「腹も減ったしな・・・スタバでも行くか・・・」 なのは「ううん。歩きながらでいいよ。シン、今月はお小遣いピンチでしょ?」 シン「いいんだよ。俺が今すぐコーヒーが飲みたいんだからな」 ぶっきらぼうな、それでいて分りやすい気遣い。 なのはに対して大切なことを話すためにどこか場所を設けようと言うのだろうが ばればれだよ、シン君 内心でそっと微笑み、再びシンを見つめなおす。 最近自分の身長を追い越した彼を見つめて なのは「あのね・・・この間、なんだけどさ・・・・」 ユックリと大きく息を吸い込む。 陽射しは暖かくとも、冷たい空気が肺の中に広がり自分自身が冷静になるような錯覚に陥る。 無論、それは錯覚でしかなく、冷たさが冷静さに転じることなどありえるはずも無いのだが。 赤い瞳からさっさと話せというような死線に突き動かされるように、なのはは言葉をつむぐ。 なのは「ユーノ君から・・・告白されたんだ」 なのはのその一言に、シンは大きく目を開き、歩みを止めて シン「はぁ!?」 信じられない問いばかりに大げさに声を荒げた。 シンとなのはは幼馴染 ~四月馬鹿の大盤振る舞い~ お、おちつけ!! シンは視線だけを動かして内心でそう叫んだ。 冷静になれと心の中で繰り返し、息を吸い込もうとして、やめた。 そんなことをしても意味はないと思ったからか、それとも別の理由からなのかは彼にもわからなかったのだが・・・ シンとなのはたちには共通の友人がいる。 一人は金の髪を持つハラオウン家の養女、フェイト・T・ハラオウン。 一人は茶色の髪を持つ、明るい彼女達のムードメイカー、八神はやて。 彼ら四人は、幼い頃から死線をかいくぐった戦友同士であり、一線級の魔道師である。 笑い、怒り、悲しみ、時には喧嘩することさえあったとしても、その認識に間違いはなく、前線においてその力を遺憾なく発揮した。 しかし、そんな四人以外にもう一人。 影の立役者というべき者が存在する。 彼らのように華々しい戦果を上げるわけでもなく、彼らを率いる将でもない。 時には彼らの戦いをその知略で救い、その優しさで和ませ、勇気を持って前線へと赴いた者。 ユーノ・スクライア 彼女達のように卓越した魔力も、攻撃手段も何も持たずに。 それでもなお彼女達と共に戦い抜いた戦友である。 だから、なのはの呟いた言葉にその名前が出てきたこと自体が信じられなくて シン「・・・告白、されたのか・・・?」 なのは「・・・うん」 シン「いつ?」 なのは「えと・・・この前の任務の後だから・・・一週間前、かな?」 シン「誰、からだ?」 なのは「えと・・・ユーノ君」 なのはの言葉を、一つ一つかみ締めるようにシンは空へと視線を向ける。 赤い空、赤い雲、そしてわずかばかりの暗い藍色へと変化しつつあるそれらを見つめて何を言えばいいのかとわずかばかり口の中で反芻しながら、とりあえずの言葉を探し出した。 シン「・・・そうか・・・」 なのは「そうかって・・・なんかいい加減だなぁ」 本気で相談してるのに、となのはがふてくされるのを気配で察したが、シンにとってはそれは仕方の無いことだった。 その内容はあまりにも重大で、唐突で。 ぶっちゃけ信じられないことではあったのだけれども・・・ シン「それは、まぁ・・・重大だな、割と・・・」 なのは「うん。かなり、かな」 分りきった社交辞令でしかなかったが、返された言葉にシンはため息を付きたくなるのを懸命にこらえた。 これ以上の不幸なんていらないし、それがただの迷信だとしても、確率としては排除していきたいのだ。 まぁ、それでも一言文句は言っておかねば気がすまないのだが。 シン「ていうか、そんな重大な話を帰り道で言うなよな・・・」 なのは「だって、シン君と二人っきりなんて今くらいしかないんだもん」 シン「しかし、だからって・・・」 なのは「フェイトちゃんやはやてちゃんにも相談なんて出来ないもん・・・あの二人が何を言うかなんて決まってるんだから」 シン「あー・・・まぁな」 うねるような納得の言葉に、シンはここに居ない二人の戦友を思い浮かべた。 彼女たちはどういうわけか、彼に想いを寄せている。 それこそ、普段は人の好意に対して鈍感なシンでも気が付いてしまうほどに。 しかし、彼らは距離が近すぎた。 戦友として男女の区別なくいられた時代から、当たり前のように共にいたのだから、それもやむなしである。 本来ならば、彼女達の誰か一人と心を通わせればいいというだが。 シンにはそれが出来なかった。 あまりにも皆が近すぎて、皆で共にいるのが当たり前すぎて。 誰一人として離れて欲しくないなどと思ってしまうほどに。 ある意味では、シンこそが彼女達に依存しているといえるほどなのだが・・・ 余談ではあるがそんな彼を見て某喫茶店の長男は「このヘタレが!!」という言葉と共に末の妹に頭を冷やされたと言う。 ちなみにその日、桃色の光が地上から夜空へ向かっていると言う目撃情報が多数確認された。 その後、なのはが夜空を見ながら某野菜人の一人が言った「花火に対する悪口」を口にしていたのはいまだに忘れがたい思い出だった。 ある重病患者は、その光を見て自分の命を懸けた手術に挑む決心をして、見事成功したという話があるが今は関係ないので割愛する。 ともあれ、そんな風にシンを中心としたスクェアラー(実際はもっと多いのだが)が展開し、だれか一人が抜け駆けしようとすると他の二人に阻止されると言う現状が続いていた。 また、これを見て某提督の息子は「これぞアスカ三分の計」とのたまった後に金色の稲妻にその身を焼かれることとなった。 だからこそ、動かせるとしたらシン本人しかおらず、誰も彼もがどうなるのかとトトカルチョに目を向けている中。 突如として外部からの侵攻を許してしまったのである。 これを、フェイトとはやてが知れば嬉々としてユーノとくっつくように仕向けられてしまうだろう。 さらには、他にもえげつない手を打って出てくるのかもしれない。 親友同士でそれはどうなのかと思わなくは無いのだが、普段の暴走した彼女達を良く知るシンにとってはそれは用意に想像できる最悪の未来予想図の一つであった。 親友同士で良いボートなんて冗談じゃないぞ・・・ 心の中で呟いて、なのはを見やる。 なのはも、どうしていいのか分らないのか、シンを見つめたまま彼の出方を伺っていた。 しばしの沈黙が流れ、シンはつと前を向き歩みを再開させる。 なのは「あ!ちょっとシン君!!まってよ~」 いきなり帰り始めた想い人に、なのはが文句を言いながらも追いつく。 そのまま横に並び、頬を膨らませシンをジト目でにらむ。 なのは「・・・いきなり逃走って、ひどくない?」 シン「いつまでもあんな所で青春物語なんざやってられるか・・・歩きながらでいいだろうが」 なのは「歩きながらのほうが、恥ずかしい気がするけど?」 シン「それでも誰が聞き耳立ててるかわからないんだ、こっちのほうが良い」 なのははそういうものなのかと呟く。 やはり、男の子というものは良く分らない。 これまで十年近くを共に過ごし、お互いが空気のようになっていてもいまだ彼との間には大きな溝がある気がする。 それは、男と女という大きすぎる溝ではあるのだが・・・ シン「俺は」 考えていたなのはの思考を無視するように、シンが口を開く。 その唐突な一言に、なのはもにらみつけるのをやめて、静かに彼の言葉を待つ。 シン「俺は、お前の気持ちを尊重する」 なのは「・・・シン」 その言葉に、なのはは無性に悲しくなった。 まるでなんでもないかのように、彼女などなんでもないかのように感じられて。 気持ちの降下に従うように、視線が地面を向いてしまう。 一体何を期待したのかと、これまで誰も選べなかった彼に、どうしろと言うのかと。 暗く、重い感情に支配され なのは「・・・それって、さ。わたしがユーノ君と付き合ってもいいって事なの?」 シン「選ぶのは、お前だ・・・幾ら俺が何を言ったって。お前の気持ちが違うのなら・・・仕方ないさ」 なのは「私が・・・シン君以外の誰かと一緒にいてもいいっていうの?」 シン「それも含めた上での尊重、だ。なにせ、俺は臆病だからな」 なのは「わたし、シンのそういう自嘲的なところ、好きじゃないな」 シン「別に、性分だからな」 あぁ、彼はいつまでも彼なのだと、なのはの瞳が潤み始めた時。 シン「けどな」 なのは「・・・?」 これまでの自嘲を含んだ声ではなく、しっかりとした芯の通った声に、なのはが顔を上げる。 シンの顔は少しだけ歩幅を広げたせいかあまり見えない。 シン「もし、お前が離れて行くっていうのなら・・・許さない」 なのは「え?」 なるほど。 確かになのはとユーノはお似合いだろう。 なのはのように光が燦々と降り注ぐような明るく、優しげな風貌に心には。 ユーノのような穏やかで優しい笑みが良く似合う。 それは自分のように斜に構えた性格でも、人を小ばかにするような言葉や笑いでもなく。 ただ壊すことしか出来ない自分などでは到底たどり着けない境地であることは理解している。 しかし・・・ シン「お前は・・・お前らはもう俺の一部なんだ。それなのに、勝手に誰かのものになろうとするな。そんなことは許さない」 なのは「えと・・・どういうこと?」 シン「~~~~ッ!!だから!!」 なにやらちぐはぐなことを言い始めた彼に、なのはの疑問が刺さる。 シンはそれに対して肩を怒らせ始めながら、何かを噴出させるように。 シン「お前らは!その、あの・・・俺のなんだよ!!だから、その・・・お、お前らの気持ちなんて知ったことか!!」 前を向いたまま、顔を背けて言い放った。 なのははその言葉をユックリと吟味しながら、しかし彼は言葉をとめない。 シン「大体!!俺は選ばないんじゃない!!全員を選んだんだ!!それをあの人は・・・自分だって義理の妹やらイギリスのご令嬢やら忍さんやらがいるくせに・・・好き勝手言いやがって畜生!!」 なのは「いやいや、お兄ちゃん忍さん一筋だし。てかシン君、さっきと言ってること変わってるよ?私の気持ちを尊重するんじゃなかったの?」 シン「はぁ!?だから尊重してるだろうが!!俺から!お前らを!離さない!!これ以上ないだろうが!!」 なのは「うわ、幾らなんでもそれは男尊女卑じゃない?すこし引くよ?」 シン「やかましい!!」 歩幅を増やして前を行くシンを見て、なのははクスリと笑う。 潤んだ瞳をそっと手でぬぐい、彼の側へと駆け寄るために。 その傲慢で、優しい、きっと今頃は頬を赤らめ「なぜあんなことを言ってしまったのか」と心の中で悪態を付いているであろう彼女の暴君の下へと向かい シン「あぁ、それと一つ聞かせてくれ」 なのは「なに?」 いつもよりも当社比2倍は鋭い瞳に、ドキドキさせるなのはに対して。 シン「ユーノって・・・女だろう?」 そういう趣味なのか?と戦友にして異界の親友に思いをはせ、これから彼女にどうやって顔を合わせればいいのかと思考していたシンに対し。 なのは「あぁあれ?嘘だよ。今日ってエイプリルフールだし」 まるでなんでもないかのようにのたまった。 ちなみに、この後なのははシンにしばらくの間口を聞いてもらえなくなったと言う。 その姿を見てフェイトとはやてはネタに走った親友に対して最敬礼を送ったのは、また別の話である。 ユーノ・スクライア。 遺跡発掘などを生業とするスクライア家に生を受ける。 その後、PT事件や闇の書事件などへと関わりながらも自身の研究分野へと躍進していった。 女性であるのだがその名前と一人称が僕であることやその口調から性別を間違えられることがある。 ちなみに現在恋人は居ない。 しかし、片思いの相手がいるらしいのだが、ライバルが多すぎてどうしても一歩が踏み込めないとのことである。 また、彼女が酔っ払った時にロケットを開いて中にある写真に対し 「ぼくだってがんばってるんだよ~」 「う~・・・もっとかまってよ~」 「ひっく・・・ぐす・・・ンのばか・・・・」 などと呟いている姿が確認されたと言う。 2 なのはとシンは幼馴染・外典 なのは「フェイトちゃんはかわいい。そしてシン君はかっこいい」 なのは「金髪の美少女と、黒髪の美少年が、一見平凡だけど実は凄い才能を持った美少女(私)を奪い合う」 なのは「百合、戦闘、お色気・・・様々な要素を凝縮し、それでいて修羅場も恋愛も併せ持つ・・・展開に」 なのは「まさにこれぞ私の夢!!私の業!!」 なのは「わが世の春が来た!!なの!!」 なのは「そう考えていた時期が私にも無かったの」 シン「ここまで言っておいてなかったのかよ!?」 なのは「え?だって、女同士とかありえないじゃない?」 はやて「せやな。非生産的やしな」 フェイト「私も、あんまりないかな?」 なのは「だって、女同士ってなに考えてるか微妙にわかっちゃうから・・・なんていうかありえないの」 シン「そういうもんなのか?」 はやて「あれー?シン、なんでわたしを見ながら聞いてくるのかなー?」 なのは「そりゃ、フェイトちゃんとはよく一緒に寝るし、思わず美人でかわいくて色っぽくて、うらやましいって思うけどさ」 はやて「たまに殺意を覚えてまうけどな。あの色っぽさは。特に胸の大きさとか!!」 なのは「あ、でも同性でもたまにむらっときちゃうような感じはあるの」 シン「おいこら」 なのは「なんていうのかな・・・コウノトリを信じている子供に無修正のポルノを見せ付ける感覚・・・っていうのかな」 はやて「俗に言う、純真無垢な子ほど汚してみたいっていうあらわれってやつやな?」 シン「はやて、なんで俺に相槌を打つようにいうんだ?」 なのは「だから、もしかしたら私がそういった感情を得ていた可能性はあるけれど・・・」 はやて「あー・・・なるほどなー」 シン「ん?どうかしたのか?」 フェイト「二人とも、なんでこっちを見てるの?」 なのは「あれを見てるとそういう感情も起こらなくなるの」 はやて「せやな」 フェイト「え?どういうこと?」(座っているシンに抱きついたりごろごろしている) シン「?」(拒絶することなくそれを当たり前に受け入れている) はやて「あんな小さい頃から子犬みたいに付きまとってるの見せられたら・・・そんな気も起きんわな」 なのは「寧ろ私もあんなふうに抱きつきたい。抱きしめたい。ごろごろしたいの。甘えたいの」 はやて「でも、あんまりなのはちゃんがそういうのをやってるところ見んな。どして?」 なのは「いや、その・・・は、恥ずかしい。から・・・」 はやて「乙女発言いただきましたー!!」 シン「んで、二人はなんであんなオーバーリアクションで小声なんだ?」 フェイト「どうしてだろうね?あ、シン枝毛があるよ」 シン「・・・お前もなんで俺に当たり前みたいに抱きついてるんだよ・・・この季節は暑いんだからな・・・」 3 「う・・・あ・・・」 八神はやては朦朧とする意識の中目を覚ました。 茹だる様な熱とまとわりつくような湿気が肌に汗の結露を結んでいる。 体は風邪をこじらせたようなけだるさとあやふやな感覚を伝え、まるで夢のように感じさせた。 しかし、この熱と雄と雌のすえた匂い、そして首に感じる圧迫感がそれを否定する。 まるで糊でとめられていたような瞼を渾身の力をこめてゆっくりと時間をかけて開いていく。 瞳に入る光量は少ないが、もともと暗闇に慣れた身にはさしたる不都合もなく、周囲を観察することができた。 一番最初に映ったのはコンクリートの床と薄暗い部屋。 それなりの広さはあれども目覚めたばかりで 薄暗いために完全には見通すことができない。 そして、 「あぁ、目が覚めたんですね」 自分につけられた首輪から伸びた鎖を、椅子に腰掛けながらもてあそんでいる一人の少年。 黒い髪に鋭い赤色の瞳、何も上半身にまとわずに白い肌をさらけ出しているそのよく知っている姿を確認して。 「し・・・ん・・・」 「えぇ、おはようございます。はやてさん・・・いや」 少年はにまりと、まるで獲物をいたぶる捕食動物のような笑みを浮かべて 「遅かったじゃないか、このメス豚」 彼、シン・アスカは言い放った。 ここから先は≪禁則事項です≫されました。 せっかくだから赤い扉を選ぶぜ!!という猛者はわっふる!わっふる!!のボタンを押してください 。