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罪穢れの澱みを着せて ◆TPKO6O3QOM (一) 太陽が昇り、月の光で冷えていた空気が温もりを取り戻してきた。そよぐ風を長い耳に受けながら、てゐは跳ねる様な足取りで道を進んでいた。 「“幻想郷”……、そんな土地の話は初めて聞きましたよ。てゐさんのお話は実に興味深い」 「てゐでいいわよ。しゃっちこばられると、こっちが肩凝るし」 肩に乗ったユーノと名乗る鼬を目の隅に捉えながら、てゐは気さくな風を装って笑った。 道中、てゐに興味を示したらしいユーノに、暇つぶしにと“幻想郷”の世界ことを少し教えてあげたのだが、それが彼の好奇心に火を付けてしまったらしい。 質問攻めにされ、少々面倒とは思ったものの知っている限りのことを虚実織り交ぜて教えてやると彼は面白いように丸呑みしてしまう。 ユーノもまた妖怪の類のはずだが、“幻想郷”を耳にしたこともないというのは多少疑問に思う。人間ですら知っている者がいるというのに。 てゐら二人から少し離れて、ギロロという赤い達磨のような妖怪が付いてくる。彼の鋭い眼が、時折てゐを貫くのを彼女は感じ取っていた。 ギロロは自分を信用していない。 それはそれでいい。少なくともユーノは彼女を疑ってはいないし、何より彼らと長く居るつもりはないのだ。無理に疑いを晴らすことはないだろう。 やがて、街並みが見えてきた。“幻想郷”と比べれば、酷く虚ろな生命力の途絶えた通りが北へと続いている。まだ墓地の方が生気を感じ取れるというものだ。 「大丈夫だよ。てゐのことは、ギロロさんが守ってくれる。僕も、囮ぐらいにはなれるしね」 てゐが立ち止ったのを、慄きによるものを勘違いしたのだろう。ユーノが優しく語りかけてくる。振り返れば、ギロロは嫌そうな顔でもしているだろうか。 てゐは弱弱しく頷いてみせると、通りに足を踏み入れた。 生き物の影は全く見えない。風音だけが耳を通り抜けていく。ぺたぺたと、足裏が路を叩いていく音だけが響く。 『さて、素晴らしい闇の時から忌々しい日の出を迎えることになったが……』 突然、吹き荒ぶ凶風のような声が通りに響き渡った――。 (二) ふんふんと地面の匂いを嗅ぎながら先頭を歩いていた銀がふと立ち止まった。 駅へ向かっているうちに、カエルたちは大通りへと出ていた。軒を連ねる店舗に嵌められた窓硝子が、互いを虚構の世界に映しこんでいる。 彼の記憶にある“街”の風景とは、一つにも似ていない。敢えて言うならば、ロボの居た、クロノたちの時代よりも更に遠い時代の景色に多少似たものを感じ取れるだろうか。 それに、破壊痕はないものの、人の居ない荒廃した空気には近しいものがある。 さて、前方で立ち止った銀に顔を突き合わせたグレッグルが頬を膨らませた。それに対し、銀の耳や尻尾が小刻みに揺れる。何事か会話しているのだろう。銀はしきりに頭を左右に傾げ、ふんふんと小さく鼻を鳴らしている。 加わろうにも、こっちからの一方的な情報しか発信できないのだから仕方ない。ただ、銀の尻尾の張りつめた様子から何かしらの変化を感じ取ったらしい。 辺りを見渡していると、何処からか、キュウビの禍々しい声音が流れてきた。銀の感じた変化はこれのことだったのだろうか。 手始めに、キュウビは魔法を用いて禁止区域の説明の補足を始めた。 グレッグルと銀は、突然の暗闇にこそ驚いた様子だったが、内容には興味を持たなかったようだ。後々重要になるだろうと、カエルはとりあえず地図に印だけは付けておく。 『この六時間で目出度く殺され、喰われた畜生の名を呼ぶとするか』 キュウビがこう続けても、二匹は気にせずにどんどんと先へ進んでいく。グレッグルには連れがいたはずだが、絶対に死んでいないという確信でもあるのか――単に薄情なだけか。 キュウビは名前を告げていく。あの畜生がヒグマの大将と呼び挙げたときだ。銀が弾かれたように天を見上げ、悲鳴のような声を上げた。愕然とした表情で、髭がぴんと立っている。 狂ったように、銀はその場で回りながらわふわふと鳴いていた。それをグレッグルがはたき倒す。痛みで多少落ち着いたのか、銀は尻尾と耳を垂らし、くぅんと弱々しく鳴いた。 と、南東の空が一瞬明るくなり、爆音が響いた。 「あの鳥が居た方角だな……」 思わず漏らした言葉に、グレッグルが頷いた。グレッグルは銀の背中をぽんぽんと叩き、カエルに顎でしゃくって見せた。光った方へ向かおうとでも言いたげな面持ちだ。 「見に行くのか? たしかに、ただ駅に向かうよりは誰かに遭遇はしそうだが」 そう独りごちると、グレッグルは馬鹿にしたように小さく鳴いた。グレッグルは単に好奇心からなのだろう。 グレッグルは気だるげな歩調で店舗と店舗の間の細い路地に、こちらを振り向くことなく入っていく。当然付いてくるものと思っているらしい。 とりあえず、グレッグルの知り合いの名前は呼ばれなかったようだ。それを確認しておけば十分だろう。 カエルは一つ嘆息すると、まだ呆けた様子の銀を抱きかかえてグレッグルの後を追った。 路地を抜け、銀を下ろしてやる。先行していたグレッグルは道の真ん中を東に歩いていた。東の空の光はもう消えていて、薄い青空が広がっている。 足元の銀の耳がぴくと動き、おもむろに西に鼻を向けた。何かを嗅ぎつけたのか、ひくひくと鼻を蠢かしている。 釣られてカエルも首を動かした。背中にグレッグルの不満げな声がかかったが無視する。ようやく二人が付いてこないことに気づいたらしい。 しばし銀の見つめている先を眺めていると、曲がり角から二つの人影が歩いてきた。 桃色の衣を着た女の子と、その後ろに恐竜人を思わせる赤い肌の異人の二人組だ。遠目だが、女の子の髪の毛からウサギの耳のようなものが覗いている。 向こうも気づいたのだろう、歩みが止まっている。 銀が少し嬉しそうに尻尾を振り、二つ三つ吠えた。他人と組んでいるからといって殺し合いに乗っていないとは限らないのだが。 爪が路面を叩き、銀が彼女らに駆け寄ろうとしたとき――。 「あの犬よ! ヒグマさんを殺したのは!」 女の子が悲鳴のような大声を上げた。 (三) てゐの言葉にギロロは訝しげな表情を刻んだ。 「てゐ、あの犬が銀で間違いないのか?」 爆音を追って来て遭遇したカエル型の異星人――異界人といった方がいいのかもしれないが――と日本犬、そしてカエル型の生物。見た目こそ怪しいが、危険な臭いはしない。 それは軍人として積んできたキャリア故の勘のようなものだ。土壇場以外でそれを信じきることもまた、愚行ではあるが、少なくとも彼らに敵意はない。犬の方は激しく吠えたてているが、雷に怯えたときのようなものだ。ただ戸惑っている。 (やはりケロン人はカエルなどとは一つも似ていないではないか。ああいうのをカエルというのだああいうのを) 内心唸っていると、てゐが憤然と振り返った。 「間違いないって! 出会い頭に名乗ってきたでしょう!?」 「そ、そうか……。いや、俺は犬の言葉は分からなくてな……」 告げると、てゐはきょとんとした表情を浮かべた。 「僕にも、わんわんとしか……」 「……そっか。貴方たちには分からないんだ」 てゐの肩の上のユーノにも言われ、てゐは顔を伏せて小さくつぶやいた。伊達にウサ耳ではないらしい。 しかし、とギロロは胸中で独白する。 ユーノの胆力は大したものだ。戦友の死を知らされた時もさして取り乱すこともなく、今も状況の変化についていき対応しようとしている。 軍人としては当然の対応だが、中々どうして出来ることではない。ただ、ギロロには彼女が無理をしていることが分かっている。それゆえに、少し痛々しく感じる。 てゐの慰めも多少効果はあったのか。そういう意味では、彼女の存在はありがたかったと言えるかもしれない。 完全に警戒を解いたわけではないが、てゐに対して、ある程度は安心していい相手という評価をするようになっていた。 「そこのお二人さん。貴方たちは彼が何をしたか知っていて、行動を共にしているわけ?」 びょうびょうという吠え声を無視して、てゐはカエル男とカエルに話しかけた。 「そう言われてもな。連れの言葉が何も分からないんでね」 こちらに聞こえるよう、カエル男が大声で答えると、カエルはそれを横目に三回ほど頬を膨らませた。カエル男の方は、犬とカエルとの会話ができないらしい。それで行動を共にしているのだから、彼らに何か相通じるもの――漢気とかそういう類のものを感じ取ったのだろう。 カエルに何か言われたのだろうか。てゐはカエルを一睨みすると、さっきから吠え続けている犬に目を向けた。 「銀さん。そこまで言うなら、貴方の話を聞くわ。ただ、二人っきりで。彼らにはあなたの言葉は通じないみたいだし」 そう言って、てゐは互いの中間ほどの位置にある喫茶店を指差した。その提案に犬は嬉しそうに尻尾を振る。 「いいのかい? そんな提案をして。それも二人きりだなんて、危険すぎる」 「これだけ人目があるんだし、彼も下手なことは起こさないでしょ。まあ、あっちの二人がグルでない保証はないんだけど」 肩に乗ったユーノを地面に下ろしながら、てゐは微笑んだ。 「それに、危なくなったら貴方が助けてくれるんでしょ?」 上目づかいで、てゐはギロロを見やった。 あの犬の様子からして、少なくとも故意にヒグマを殺した可能性は著しく低いと思われる。それが演技だという証もないのだが。 一先ず、てゐに了承してやる。 てゐは踵を返し、犬とともに喫茶店の中へと入って行った。 ガトリングガンの引き金に指を添えながら、二人が出てくるのを待つ。 「この間に向こうの方たちと情報交換だけでもしておいた方がよくありませんか?」 肩によじ登ったユーノを一瞥し、ギロロは首を横に振った。 「まだ敵でない確信が得られていない。万が一を甘く見れば、次の放送とやらで名前を呼ばれるのは俺たちだ。てゐが出てきてからでも遅くはない」 言いながら、カエル男たちを見やる。彼らは縁石に腰を下ろしていた。こちらを気にしてはいるようだが、歩み寄ってこようとはしない。カエルの方はこっちに全く興味を示してないようにも見えるが、何分カエルの顔というものは感情を読み取りにくい。 「………………」 黙ってしまったユーノを目にし、幾許かの罪悪感を覚えたが、現状でベストの選択には変わりない。死神は天地開闢以来の性差廃絶主義者なのだから。 それに、カエル男の方は、佇まいからして相当なキャリアを積んだ戦士だとわかる。敵として、戦場では出会いたくない類の人間だ。あの剣が抜かれたら、ガトリング一挺で対処しきれるかどうか――。 と、俄かにてゐたちが入って行った喫茶店が騒がしくなった。激しい吠え声が聞こえ、何かを争うような物音が断続的に聞こえる。悲鳴のようなものも混じっていた。 カエル男たちも、その変化に腰を浮かせた。 ばんと音を立てて扉が開け放たれ、てゐが転がり出てきた。 「た、たすけ――!」 その背中目掛けて、暴悪な吠え声を立てながら犬が襲い掛かる。先程とは表情が一変していた。鼻面にしわを寄せ、牙をむき出しにした犬は殺気に満ち溢れている。 自分は判断を誤っていたのか。 とにもかくにも、万が一が起こってしまった。 「しゃがめ!」 てゐが身を伏せたのを確認するか否かの内に、無意識に銃口は上げられ、何かが繋がった感覚と共に引き金を引く。 激しいマズルフラッシュと共に、轟音が路地に響き渡った。跳ね上がりそうになる砲身を必死に抑え、重心を落として姿勢を保持する。排出された空薬莢がばらばらに飛び散り、アスファルトの上で耳障りな音を奏でた。 その中に、犬の甲高い悲鳴が確かに聞こえた。 混乱しているのか、立ち上がったてゐはギロロたちの脇を駆け抜けて行ってしまった。 「ユー――!」 「ウォータガァッ!」 カエル男の叫びと共に、水の奔流がギロロに襲いかかった。その圧力に弾き飛ばされ、しばしの浮遊感を味わった後でギロロは背中を路面に打ち付けた。衝撃で息が詰まる。そのまま転がり、商店の壁にぶつかって漸く止まった。 致命的な隙を曝してしまった。舌打ちをする間もなく、止めの一撃がギロロに打ち込まれることだろう。 しかし、その一撃は訪れることはなかった。時間からすれば、ほんの数瞬だろう。目を開けると、カエル男とカエルの姿はどこにもない。 すぐ傍でのびていたユーノを拾い上げ、辺りを見渡す。 「てーゐっ!」 呼ぶも返事はない。 また、路上にも犬の姿はない。死体は彼らが持ち去ったのか。そうであるならば、尚更彼らがエゴのままに殺し合いに乗っているとは考えにくい。それはカエル男がギロロに止めを刺すことよりも、犬の回収を優先したことで補完される。 あのとき引き金を引いたのは間違いだったのではないか。その自問に、ギロロは口をゆがませた。 元居た場所に戻れば、アスファルトの上に血痕が残っている。だが、致死量とは程遠い。 「俺が外したというのか……」 愕然として、ギロロは自分の右手を見下ろした。直前、あの犬は回避行動のようなものを取っていたような覚えはある。だが、それを計算に入れていない自分ではない。 「あ、あのてゐさんは……?」 漸くユーノも気がついたらしい。 「分からん。近くにはいないようだ」 「あの人たちは?」 「……逃げられたよ。さて、てゐを探すか」 大きくため息をつき、ギロロは無人の路地を見渡した。 (四) 大通りを二つの影が躍るように駆けて行く。 カエルに抱きかかえられたまま伸びている銀を見上げながら、グレッグルは頬を膨らませた。 「よォ、連中追ってこねェみたいだぜ?」 「………………」 「このまま駅までランデヴーする気かよ? ……ったく、こっちの言葉が通じねェっなァ、面倒で仕方がねェ。あんとき、テメェがあの達磨に止め刺しときゃ、こうして逃げる必要はなかったンじゃねェか? 水鉄砲じゃ、たかが知れてるんだしよ」 受け取り手の居ない毒を零す。銀が目を覚ましてくれなければ、八つ当たりする相手もいない。 そうこうする内に駅前の広場に付いた。ロータリーを抜け、駅舎の中に入る。そうして漸く、カエルは足をとめた。 券売機の前に、彼は銀を横たえた。そして、すぐさま、彼は銀の負傷の確認に移った。 出血は銀の左前足の付け根からだ。しかし、浅い。銃弾は一発だけ、銀の足を掠っただけだったようだ。 カエルがマントを割いて、その傷に巻いていく。それを見ながら、グレッグルは感心したように呟いた。 「……あんだけ撃たれて、足の肉を少し削られたぐらいで済んだのかよ。あのボンクラ、歴史に残るヘボだな。赤ん坊に持たせた方がマシなんじゃねェか?」 あの赤達磨が嵌めていた武器はとても魅力的だったが、あのキュウコンは支給先を間違えたようだ。 「水を探してくる」 「あいよ……しっかし、よく眠ってやがるなァ、おい。ケツに溶けた鉛でも流し込んでやろうか?」 立ち上がったカエルに生返事を返しながら、グレッグルは銀の頬を引っ叩いた。 「おい、何してるんだっ!?」 「気付けだよ、気付け。つか、言葉分かンねェくせに疑問形で喋るんじゃねェよ、ボケ」 三発目で、銀の瞼が動いた。 アーモンド形の瞳が開かれるのを待って、グレッグルはその寝ぼけ眼に笑いかけた。 「惜しかったなあ、旦那。あれか? 発情期か? 見境なしだな。ウサ耳アマの次はドンファンでも襲うのか? ブーバーはやめとけよ。二重の意味でヤケドすっか――」 「あの人間の女――! あの女、言ったんだ! 嗤いながら、あいつ……!」 銀が突然激しく吠えた。いや、自分がウサギ耳の人間を話題に出したからか。 「落ち着きな。さっきも言っただろ? クールに行こうぜ、ボス。激したまンまじゃ回るもんも回らねェ。あのアマがどうしたって? あんたのママでも馬鹿にしたか?」 「あの女だったんだよ。あの女が、大将を殺したんだ! 勝ち誇ったように、あいつがそう言ったんだ」 「ありゃ、人間のメスガキだぜ? あんたが会ったクマってな、手乗りか?」 グレッグルは鼻を鳴らした。リングマは人間の男ですらどうこうできる相手ではない。グレッグルの言葉に、銀は耳を垂らして小さく鳴いた。 「俺が大将に怪我をさせたから、きっとまともに動けなかったんだ……」 「ふぅん。ま、素直にゃ受け取れねェが、この状況であのアマが偽る理由もねェ。どうにかして、大将とやらを殺し、その罪をあんたに着せようって腹なわけだ。中々、太ェガキだな。そうすっと、赤達磨たちもあのアマに妙なこと吹き込まれていたのかもしれねェ」 頭を掻きながら、グレッグルは頬を膨らます。銀は立ち上がると、痛むのか、少し顔を歪ませた。 巻かれた布を口で弄くりながら、訊いてくる。 「……あのてゐっていう人間はどうなったんだ?」 「んー? 逃げたよ。ンで、オレたちはあの赤達磨から逃げてきた。ここはあんたが行きたがってた橋の入り口だ。電車ってもんを待って、それに乗りゃ崖の上まで連れてってくれる」 「……そうか」 「で、どうするよ? クマ公の仇を探すのか。仇のクマ公に会いに行くのか。オレらはどっちも部外者だ。正直、どうでもいい。だから、あんたの判断に任せるよ」 言うと、銀は少し考えて、当初の予定通り行くと答えた。言ってから、彼は溜息のような声を上げた。 「ただ、仲間を増やせなかったのが気がかりだ」 「駄目だったもんは仕方がねェ。それに、こっちの色男が中々面白い飛び道具を持ってやがった。戦術によっちゃ、犬ッころ百匹よりも有効だ」 言いながら、カエルを見やる。彼は、疲れたように外を見ていた。疎外されているのだから仕方ないかもしれないが。一つ鳴くと、カエルがこちらを向いた。 改札口の方を指し、行くぞと伝える。カエルは肩をすくめると、ゆっくり立ち上がった。 「カエルは、俺たちの言葉が分からないんだろ? なのに、どうして付き合ってくれるんだ? 彼にとっての情報は、てゐの言葉だけのはずだ」 改札口に向かいながら、銀が問う。たしかに、銀と言葉を交わせないカエルがまだ付き合っているのは不思議だ。言葉が通じるのだから、向こうに行ってもおかしくなかった。 ただ、真っ先に銀を助けに行ったのもカエルだ。疑問に思うが、知る術はなく、あったとしても訊くのは嫌だ。恥ずかしくて訊けるものではない。 だから――。 「知るかよ」 結局そう吐き捨てて、グレッグルはホームへと向かった。 (五) 使用済みのキメラの翼を握りつぶし、てゐは安堵の吐息をついた。 目の前には、あの小学校がある。 綱渡りのような危うい状況になってしまったが、結果としては構想の通りになった。今頃、ギロロたちとカエルたちは殺し合っていることだろう。 共倒れが一番だが、まあ、それは望みすぎというものか。武器からして、ギロロたちの圧勝と見るべきだろう。 そうなれば、今度はギロロたちがカエルたちと殺し合っていたという情報を流布させようか。少し色を付けて、無抵抗の獣を襲っていたとでも加えた方が効果的かもしれない。 先程の放送では死んだ獣は九匹と言っていた。自分が生き残るには、まだ残りが多すぎる。キュウビの言葉の通り、もっと積極的に殺し合ってほしいものだ。 しかし――と、てゐは笑みを零した。 銀は実に扱いやすかった。彼女が彼の言葉に納得したフリをした途端、同行者のこと、赤カブトという危険な獣こととペラペラと喋ってくれた。最後に、彼女がヒグマの大将を殺したと告げた時の表情も傑作だった。犬というのは、実に表情豊かな獣だと初めて知った。 計算違いとしては、その後、彼が見せた身体能力が犬の域を優に超えていた点か。最初の一撃を避けられたのは偶然に他ならない。実のところ、驚いて転んだだけだ。 喫茶店から脱出し、ギロロが発砲するまでのことを思い出すだけで、未だに冷たい汗が出てくる。 とはいえ、銀は死んだ。死んだ獣のことを考えるのは、もうやめよう。 さて、次はどこへ向かおうか。 【B-4/B‐4駅ホーム/一日目/朝】 【カエル@クロノトリガー】 【状態】:健康、多少の擦り傷、疲労(小)、魔力消費(小) 【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん 【所持品】:支給品一式、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、マッスルドリンコ@真・女神転生 【思考】 基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する 1:グレッグルの動向に従う? 2:赤カブト退治に付き合う? 3:アマテラス、ピカチュウ、ニャースの捜索。 4:撃退手段を思いついた後に深夜に見かけた鳥を倒しに行く。 ※グレッグルの様子から、ペット・ショップを危険生物と判断しました。 ※銀の様子から赤カブトを危険な生物と判断しました。 ※銀がヒグマの大将を殺したというてゐの言葉を聞きました。 ※てゐを人間だと思っています。 【グレッグル@ポケットモンスター】 【状態】:健康 【装備】:なし 【所持品】:支給品一式、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、シロモクバ一号@ワンピース(多少破損。使用に支障なし) 【思考】 基本:当面はカエルに付き合う。でもできれば面白そうな奴と戦いたい(命は取らない) 1:電車を待ってA-6に移動。 2:赤カブト退治を早くやりたい。 3:カエルにちょっと親近感+連帯感 4:ピカチュウとニャースは一応ピンチに陥っていたら助ける 5:あの玉、どこかで見た気が… ※しらたまについて何か覚えているかもしれません ※銀と情報交換しました ※てゐが暗躍していることを知りました ※放送を真面目に聞いていません。 【銀@銀牙 -流れ星 銀-】 【状態】:使命感、精神的疲労(小)、左前足の付け根に銃創(小)、無念 【装備】:包帯 【所持品】:支給品一式、不明支給品1〜3個(確認済・治療系のものはなし) 【思考】 基本:赤カブトとキュウビを斃す。 1:A-6へ向かう。 2:仲間を集め、軍団を作る。 3:高架橋を渡って赤カブトの元へと赴く 【備考】 ※参戦時期は赤カブト編終了直後です。 ※ヒグマの大将と情報交換しました。大将の知り合いの性格と特徴を把握しました。グレッグルと情報交換しました ※会場を日本のどこかだと思っています。 ※他種の獣の言葉が分かるのは首輪のせいだと考えています。 ※小熊(アライグマ)、雌の狼(アルフ)は既に死亡したと考えています。 ※放送をまともに聞いていません。 【B-5/商店街/一日目/朝】 【ユーノ・スクライア@リリカルなのはシリーズ】 【状態】健康、びしょ濡れ、悲しみ 【装備】:なし 【道具】:支給品一式、手榴弾(11/12)@ケロロ軍曹、消化器数本 【思考】 基本:打倒主催。 1:てゐの捜索 2:B-4の駅へ向かう。 3:対主催のメンバーを集める。 4:ケロロ、ザフィーラとの合流。 【備考】 ※参加者を使い魔か変身魔法を用いた人間だと思っています。 ※会場はミッドチルダではないが、そこよりそう遠くない世界だと思っています。 ※首輪について 人間化は魔力を流し込むことによって、 結界魔法などは魔力を吸収することによって妨害されています。 ※銀、カエル、グレッグルを危険な獣と認識しました。 ※東方世界の幻想郷について知りました。しかし、てゐのせいで正確性には欠いています。 【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】 【状態】健康、びしょ濡れ、戸惑い 【装備】:ガトリングガン@サイボーグクロちゃん(残り89%)、ベルト@ケロロ軍曹 【道具】:支給品一式、バターナイフ、テーブル、キュービル博物館公式ガイドブック・世界編 【思考】 基本:死ぬ気はさらさらないが、襲ってくるものには容赦しない。 1:てゐの捜索 2:B-4の駅へ向かう。 3:ケロロ、ザフィーラとの合流。 4:てゐに少し違和感 【備考】 ※銀、カエル、グレッグルを危険な動物かどうか、判別しかねています。 ※ユーノを女と思っています。 【C-4/小学校前/一日目/朝】 【因幡てゐ@東方project】 [状態]:健康 [装備]:なし。 [道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×2@DQ5、 エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、不明支給品0?個(ギロロ、本人確認済)、ニンジン×20 [思考] 基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる 1:小学校で一度休憩するか、町とは反対の方向に行って情報を集める 2:参加者に会ったらギロロたちの悪評を広める 3:ぼのぼのと遭遇したらヒョウヘンダケを渡す 【備考】 ※銀、赤カブト、カエル、グレッグルの情報を得ました。 ※銀、カエル、グレッグルは死んだと思っています。 時系列順で読む Back 本日の特選素材 Next 朝日と共に去りぬ 投下順で読む Back 本日の特選素材 Next 朝日と共に去りぬ 051 白兎は秘かに笑う ギロロ伍長 075 異界の車窓から 051 白兎は秘かに笑う ユーノ 075 異界の車窓から 051 白兎は秘かに笑う 因幡てゐ 088 白い兎は歌う 043 蛙は意外と速く走る グレッグル 074 熊嵐 043 蛙は意外と速く走る 銀 074 熊嵐 043 蛙は意外と速く走る カエル 074 熊嵐
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ノア 封印の剣に登場するキャラクターで、クラスはソシアルナイト→パラディン。~ 7章でNPCとして登場するので、ロイかゼロットで話すと仲間になる。~ ~ イリア傭兵騎士団の一員として、ゼロット、トレックと共に、ロイに従軍する。~ イリアの傭兵という仕事柄、仲間の戦死や敵対を何度も経験しており、仲間を失う怖さから、あまり他人と深い関係を持とうとしない。~ しかし、その割にフィルとの支援会話ではあっさり「君が好きだ」と告白する。~ この辺の言行不一致と、後述するユニットとしての弱さからか、~ 2chではネタキャラの部類に入れられている。~ なぜかスレでは「ノアどの」と「どの」をつけて呼ばれることが多いが、ゲーム本編でこう呼ぶのはフィルだけである(他は呼び捨て)。~ プレイヤーとしてもこの呼び方がまず目に飛び込んでくるので、やはり第一印象として大きいのだろう。 ユニットとしてはそこそこの初期値をもち、技の成長率も高いが、それ以外の点はぱっとしない。~ 一応、剣の初期レベルはCであるあたり(サカの剣士であるフィルの修行相手が務まるぐらいには)槍よりも剣のほうが扱いが上手い、という個性は与えられているようだが…。 逆に、先輩的なポジションを与えられたせいか、他のソシアルナイトよりレベルが高めの7で加入する割に、初期値自体はちょっと上程度でしかないので、大抵は同レベルまで育ったアレンやランス、トレックに劣ってしまう。 特に力と速さの期待値が、ソシアルナイトの中で最も低いのが痛い(成長率は共に30%)。 というか同僚のトレックと(レベルや初期値はともかく)成長率を比べると、勝っているのは技と魔防のみ。という体たらく。コレはひどい。 トレックよりはイケメンなハズだし、フィルさんに色々と教えたりするあたり人生経験豊富な頼れるキャラクターに見えるのだが…。現実は非情である。 それでも、初見の人からはトレックよりもスタメンに選ばれることが多いようだ。剣と槍、そして斧まで使いこなすオールラウンダーな活躍を見せるか、期待値どおりの残念なイケメンに成り下がるかはプレイヤー次第である。 支援相手は、ゼロット、トレック、ユーノ、フィル、カレルの5人。~ 傭兵団の3人とは仲間の戦死や敵対が起こる傭兵の境遇について、~ フィルとは恋愛、カレルとは幼いころの出会いが話題となっている。~ 関連【イリア】【ゼロット】【トレック】【ユーノ】
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【地図】 imageプラグインエラー 画像URLまたは画像ファイル名を指定してください。 【場所名】━【登場人物】 【総合学園】 ┣【学園長室】━【ベル様/ロベルタ】 ┣【幼少部階層】━【】 ┣【小等部階層】━【】 ┣【中等部階層】━【黒子】 ┣【高部階層】━【リグル】 ┣【大部階層】━【こなた】 ┗【職員階層】━【ハク】 【アパート】━【みゆき/レン/リン】 ┣【自室】━【】 ┣【号室】━【】 ┣【号室】━【】 ┣【号室】━【】 ┗【号室】━【】 【ネオ・アキハバラ】━【】 ┣【虎の穴】━【ブロリー/サーニャ】 ┣【カラオケ】━【】 ┣【ゲーセン】━【】 ┣【大型家電量販店】━【】 ┣【非合法科学技術販売所】━【やらない子/アチャ子】 ┗【路地裏】━【】 【ベルベルショップ】━【アンリエッタ】 【非合法オカルトショップ】━【比良坂初音/ベホイミ】 【スラム】━【エヴァ】 【第二空港】━【鞠也】 現世↑ 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 前世 【場所名】━【登場人物】 【学校】 ┣【教室】━【薔薇水晶/ハルヒ/黒井こなた/天海春香】 ┣【職員室】━【ファサリナ/黒井ななこ】 【自宅/はやての家】━【やる夫/フェイト/なのは/はやて/ユーノ/キョン子】 【ボロいビルの地下】 ┣【牢屋】【最大収容人数:6】━【桂ヒナギク/モブ・ギャルA】 ┗【調教部屋】━【】 【大嘘吐きルーム】━【】 【路地裏】 【本屋】━【向坂環/奏(天使)】 【寂れた孤児院】━【折原臨也/風浦可符香】 【音楽ハウス】━【天海春香】 【護身用具店】━【バラライカ/チンク】 【アダルトグッズ屋】━【高町なのは/ユーノ】 【オカルトショップ】━【エヴァ/忍野メメ】 【銭湯】━【やらない夫/範馬裕次郎】 【ぼろいアパート】━【ファサリナ】 【病院】━【範馬裕次郎/ナギ】 【ガチレズの館】━【アーカード/サトシ/華琳】 【警察署】━【阿部高和】 【古手宅】━【古手梨花/羽入】 【やらない夫のビル】━【やらない夫】 【やる夫の実家】━【】 【テスタロッサ家】━【プレシア(死)】炎上 【はやての家】━やる夫/フェイト/なのは/はやて/ユーノ/キョン子】 現世↑ 前世↓ 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 場所一覧 【学校】 ┏【屋上】━【】 ┣【教室】━【薔薇水晶/ハルヒ/ティアナ・ランスター/枢斬暗屯子/メカ沢/キョン/黒井こなた】 ┣【3年教室】━【朝比奈みくる/琴吹紬】 ┣【図書室】━【小牧愛佳/長門有希】 ┣【職員室】━【ファサリナ/アサギ/山中さわ子】 ┣【部室】━【黒井こなた】 ┗【軽音部】━【琴吹紬/山中さわ子】 【雑居ビル】【最大収容人数:24】 ┏【屋上】 ┣【3階】━【部屋:4】━【鶴屋】 ┣【2階】━【部屋:4】━【高町なのは/丸井みつば】 ┣【1階】━【部屋:4】━【やる夫/ギル/真紅・ローゼン】 ┣【地下1階】┳【牢屋:12】━【八雲紫】 ┃ ┣【調教部屋】━【】 ┃ ┗【下水】 ┗【大嘘吐きルーム】━【キョン子】 【やる夫/佐々木/這い寄る混沌】のみ入室可能 【娼館】━【運営 鶴屋】【娼婦ナギ/真紅・ローゼン】 【路地裏】 【公園】 【本屋】━【ライダー/ランサー】 【綺麗な館】━【リリアーヌ/ロベルタ】 【寂れた孤児院】━【折原臨也/風浦可符香】 【町外れの汚い洋館】━【イリヤ/バーサーカー】 【ルルイエ海遊館】━【H・P・ラヴクラフト/たこルカ】 【音楽ハウス】━【天海春香/琴吹紬】 【護身用具店】━【バラライカ/チンク】 【ホームセンター】━【古手梨花】 【アダルトグッズ屋】━【】 【モデルガンショップ】━【ティアナ・ランスター】 【オカルトショップ】━【弓塚さつき】 【裏闘技場】━【アサギ】 【銭湯】━【やらない夫/範馬裕次郎】 【ぼろいアパート】━【ファサリナ/やる夫】 【黒子の家】━【白井黒子】 【ナギの家】━【ナギ/キョンの妹】 【範馬病院】━【範馬裕次郎/佐々木萌】 【病院】━【範馬裕次郎/ナギ】 【高級そうなマンション】━【朝比奈みくる】 【下級商人のマンション】━【キース=ロイヤル/範馬裕次郎/峰 不二子】 【紫の家】━【八雲紫 】 【ガチレズの館】━【アーカード/サトシ/華琳】
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第8話 もう一人の魔法少女 バラージの一戦を終えた後、ビートルを失った為に帰る手段を失い意気消沈していた時、突如何処からもなく現れた一隻の浮遊船。 時空管理局の保有する次元航行船アースラである。 その全長は現代である巨大タンカーと同じかそれよりも二回り位大きい。 そして、その次元航行船アースラの中にある部屋に連れて来られた。 其処にあったのは畳に盆栽にと和風をイメージしているのだろうがハッキリ言うと誤解しているようにも見て取れる。 その証拠にその部屋を見た途端ムラマツキャップが微妙そうな顔をしていた。 そして、その部屋の奥には一人の女性が座っていた。 翠色の髪を後ろに束ねたポニーテールと呼ぶべきだろう髪型に綺麗なルビー色の瞳をし紺色の制服を纏った綺麗な女性だ。 「困っていた所を助けて頂き有難う御座います。私は科学特捜隊のムラマツです。それでこちらに居るのが隊員のハヤタ、イデ、アラシ、そして特別隊員の兜君に高町君です」 「宜しくお願いします。高町なのはで」 「マママ、マイネームイズ、コウジ・カブト。ディスイズアペン。ハウアァユー」 なのはは普通に挨拶を交わしたが甲児は何故か片言の様な英語を話し出した。 しかも半分以上が解読不明の様な。 「どうしたんだい甲児君」 「だだだ、だぁってよぉハヤタさん。あの人外人だろう? 俺英語苦手なんだよぉ~」 どうやら目の前の女性が明らかに外人に見えた為に日本語は通じないだろうと判断しての事だろうか甲児がハヤタに泣きが入った。 それを見ていた女性がクスリと口元を隠しながら笑う。 「心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと日本語も話せますから」 「本当ですか? そりゃ良かった」 ホッと胸を撫で下ろす甲児。 そんな甲児を見て皆がドッと笑い出したのはご愛嬌である。 そんなお茶目な一面もさておき、一同は用意された座布団の上に座るとその女性の話を聞いた。 「自己紹介が遅れましたね。私は時空管理局所属のアースラ艦長であるリンディ・ハラオウンと申します。貴方達の戦いですが、失礼ですが見させて貰いました」 (ギクリッ!) リンディのその言葉を聴いた途端ハヤタは思わず肩が震えた。 もしかしたら自分の変身する瞬間を見られたのでは? そう思っていたのだ。 そんなハヤタに向かいリンディは微笑んだ。 (心配しなくても貴方の正体は誰にも伝えませんよ) 「!!!」 すると、ハヤタの脳裏にリンディの声が伝わってきた。 驚きである。まぁ何はともあれ皆にばらされないのであれば一安心である。 そんな訳で会話は続いた。 「私が貴方達を救助したのには実は理由があるんです」 「理由、それは一体何なのですか?」 「はい、その理由はそちらにいらっしゃるなのはさんです」 「え、私ですか?」 突然自分を指されたので思わず自分を指差した。 何せ指名されるなど思ってもいなかったのだから。 「なのはが? 一体何で?」 「それは、貴方が使ってるインテリジェントデバイスの事と、貴方が集めているロストロギアについてです」 「ロストロギア? それってもしかしてジュエルシードの事ですか?」 イデが鋭く尋ねる。 それにリンディは頷いた。 だが、隣でアラシは首を傾げていた。 「ロスト何チャラだのジュエルシードだの、俺はどうもそう言った難しい単語は苦手だ」 どうやらアラシには理解するのは難しいようだ。 そんなアラシは放っておき会話は続いた。 「それで、貴方はそのジュエルシードの捜索をしているみたいだけど、それは一体何故?」 「えっと、頼まれたんです」 「すみません、僕から説明します」 答えに渋るなのはに代わりユーノが説明を行った。 彼がジュエルシードを見つけた経緯。 輸送中に謎の事故により殆どのジュエルシードが地球に散らばってしまった事。 それを集めようと向かったは良かったが力が足りずなのはに協力を申し出た事。 その後の事も全て話した。 「成る程ね、自分で起こしてしまった事件を自分の手で解決しようとしたのね。偉いわ」 「い、いえ…それ程では」 「でも、同時に無謀でもあるわ。何故、事前に私達に通報しなかったの? 貴方一人ではどうしようもない事位分かってたんじゃないの?」 「す、すみません」 今度はユーノが更に小さくなってしまった。 体がフェレットなだけに更に小さく見える。 そんなユーノを見てリンディは軽く溜息を吐く。 「それより、そろそろ元の姿に戻ったらどう? 何時までもその姿じゃ窮屈でしょ?」 「へっ? 元の姿」 「何言ってるんだよリンディさん。ユーノは元々フェレットだったんじゃねぇの?」 なのはが甲児が不思議そうに尋ねる中、ユーノの体を閃光が包み込む。 そして、彼の姿が瞬く間に人間の少年に変わったのだ。 金髪に奇妙な柄の入った服を着てマントを羽織った少年であった。 「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだね」 「ゆゆゆ、ユーノ君がぁぁぁ!」 「おおお、お前人間だったのかああぁぁぁ!」 振り向いたユーノの先では仰天して腰を抜かした甲児となのはが居た。 幾ら何でも驚き過ぎでは? 「あ、あれ? 僕前にこの姿見せてなかったっけ?」 「見せてないよ! 最初からフェレットだったよぉ!」 「お、お前! どうやって変身したんだよ!」 どうやらお互い意志の疎通が出来てなかったようだ。 「ふむ、まぁ君達の事は後で思う存分話してもらうとして、それでリンディ艦長。私達を此処に連れてきた目的とは?」 驚く三人をとりあえず置いておいて、ムラマツキャップは話を進めた。 其処は流石と言うべきである。 「本来なら私達時空管理局が以降のジュエルシード捜索を一手に引き受けたいと言いたいのですが、この地球には私達の常識を遥かに超えた存在が多数居る事が分かったのです」 「怪獣に宇宙人、それに機械獣の事だな」 「うむ、私達も怪獣には手を焼いています。ウルトラマンが居なければ我々は満足に怪獣を撃退する事が出来ない。何とも歯痒い話だ」 「そうですね」 苦虫を噛み潰したような顔をするムラマツにリンディは同情の言葉を述べた。 そして、一呼吸を置こうと置かれたお茶に手を伸ばす。 そして、何故か横に置かれていた砂糖の入った瓶を取ると主室にお茶の中にそれを入れたのだ。 その光景には一同が眼を疑った。 「あ、あのぉ…リンディさん? それ砂糖なんじゃぁ…」 「えぇ、皆さんもお使いになります?」 「い、いえ! 僕は結構です」 流石のイデもそれは願い下げだったようだ。 「しかし何故お茶に砂糖を? 折角茶菓子があるのに口が返って甘味で濁ってしまうのでは?」 「私この飲み方が好きなんですよ。勿論お茶菓子も食べますよ」 ムラマツの問いにリンディが何の迷いもなく答える。 流石のアラシやハヤタも若干引き気味に見ていた。 しかしムラマツは流石と言うべきか全く動じていない。 「確かに味覚は人それぞれと言うでしょう。しかし甘いお茶とは今まで飲んだ事ないなぁ」 そう言って懐からパイプを取り出して口に咥える。 タバコの草を入れて火をつけようとした際にハヤタが止めに入った。 「キャップ、此処でタバコは控えた方が宜しいですよ」 「む、そうか。いやぁ申し訳ない。つい癖なもので」 赤面しながらパイプを仕舞うムラマツキャップ。 普段ならお咎めなしなのだが今回はなのはやユーノなど子供が居る。 子供の成長に悪影響を及ぼすので科学特捜隊としてはそんな事はNGなのでハヤタが止めたのだ。 かなり話が逸れてしまったので此処でリンディが強引に話を戻した。 「簡潔に言います。ジュエルシードの捜索ですが、我々時空管理局もご協力致します」 「それは有り難い。イデの開発したジュエルシード探索装置も此処でなら有効に利用出来るでしょう」 「いやぁ、時空管理局の皆様から比べたら僕の発明なんて子供騙しみたいなもんですよぉ」 謙遜しながら自作の探索装置を目の前に出すイデ。 何気に嬉しそうだ。 リンディがそれを手元に引き寄せてマジマジとそれを見る。 するとリンディの眼の色が変わった。 「とんでもない! イデさん。これは素晴らしいですよ。私達の技術でも此処まで正確な探索技術は作れません。是非私達のところで使って宜しいですか?」 「え? 本当ですか! そりゃもう喜んでお願い申し上げる所存で御座います」 イデがとても嬉しそうに頭を下げる。 その光景を見て隣のアラシが笑っていたが今は別に気にしない。 「と、なるとこれからはジュエルシードの捜索の際にはこのアースラを基点として行う事になるみたいですが、移動手段はどの様にすれば宜しいですかな?」 「それならば必要ありません。要望があれば我々がこちらに転送致します」 何とも至れり尽くせりな事であった。 これなら移動でビートルの燃料を使う必要もない。 「それから、甲児さん」 「は、はい!」 「貴方のマジンガーZですが、こちらで格納しておきますね。そうすれば何処でも瞬時に転送出来ますから今回の様に探し回る必要が無くなりますよ」 「本当ですか? そいつは助かります」 甲児としてもそれは嬉しい事でもあった。 今回の捜索は本当に疲れた。 何せ広大な砂漠の中マジンガーZを探し回ったのだから。 もうあんな思いは御免であった。 「それからなのはさん。貴方も私達が自宅にお送りしますね。もう何日も帰ってないのでしょう?」 「はい、有難う御座います。お父さん達きっと心配しているでしょうし」 「なのは、折角だから暫くはジュエルシードの事は忘れてゆっくりすると良いよ」 「ユーノ君?」 いきなりユーノが持ち出したのは以外な言葉であった。 それに驚くなのはにユーノは続ける。 「此処数日連戦続きだからきっとなのはも疲れてるだろうし、なのはも学校があるし、良い機会だよ」 「でも、ジュエルシードの捜索はどうするの?」 「その辺は大丈夫だよ。僕と科学特捜隊、それに時空管理局の皆で捜索はする。だから思い切り羽を伸ばしてきなよ」 「その通りだよなのはちゃん。子供ってのは思い切り遊んで勉強するのが仕事なんだよ。ジュエルシードの捜索は我々に任せなさい」 「ムラマツキャップ…はい、分かりました」 皆の言葉もあってかなのはは頷いた。 「あれ? もしかして俺も学校に行かなきゃなんねぇの?」 「当然だろう。君も学生なんだから」 「げぇっ、折角学校サボれると思ったのになぁ~」 ガッカリした顔で愚痴る甲児に部屋に居た全員が声を出して笑ったのであった。 「そう言えばなのはちゃん、貴方年は幾つ?」 「今年で9歳になりますけど、どうかしましたか?」 「いえね、貴方を見てると家の子供を思い出しちゃってね。丁度なのはちゃんより4つ位上の感じなのよ」 リンディがそう懐かしむように言う。 「それで、そのお子さんは何処に居るんですか?」 「今丁度別任務中で此処には居ないのよ。丁度地球の調査に行ったとこなんだけど、変な事に通信が出来ない状態になってるのよねぇ。大丈夫かしら」 途端に心配そうな顔をする。 が、今此処でどうこう出来る問題でもなさそうな事でもあったのは事実だった。 *** 「ただいまぁ!」 リンディの計らいで家の前に転送して貰ったなのはは早速家の扉を開いて大きな声で帰宅時に言う言葉を発した。 すると真っ直ぐに家族全員が飛んできたのだ。 どうやら皆心配していたようだ。 すぐさま抱き寄せられて押し潰されんばかりに抱きしめられたり頬ずりされたりとかなり大変な目に会うのではあったが、なのははそれが苦とは感じられず、寧ろ嬉しくも感じられた。 それから、直ちに夕食の支度が行われ、久しぶりのなのはの帰宅と言うのもあってか目の前には豪勢な料理がズラリと並んだ。 「なのはが無事に帰ってきてくれて嬉しいから、お母さん腕によりを掛けて美味しいご飯作ったからねぇ」 「お、そりゃ嬉しいなぁ。さ、頂こうか」 両手を合わせて皆が揃っていただきますした後、各々が料理を取り食べ始める。 その間話題になった事と言えば数日間に起こった出来事である。 「ふぅん、甲児君とキャンプした際に怪獣と出くわしたのか。そりゃ災難だったなぁ。竜ヶ森だっけ? あれニュースにもなったしなぁ」 「父さん、それを言ったら砂漠の怪獣も出たじゃないか」 恭也が父士郎に向かい言う。 どうやら怪獣の出現は直ちにニュースになったようだ。 あれだけでかいのだから余計に目立つのは当たり前だろう。 「ま、何はともあれなのはが無事に帰って来てくれた父さん達は凄く嬉しいよ。後で甲児君にはお礼を言っておくとしよう」 「うん!」 その後も夕食は楽しい話題で持ち切りになった。 その後、夕食を食べた後自宅の風呂に入り数日間の戦いの汚れを洗い流し自室で眠る事にした。 久しぶりの自分のベットの感触が妙に心地よく感じられた。 そうして、物の数分で忽ちなのはは深い眠りに落ちてしまった。 翌日は久しぶりに友人のアリサとすずかに会った。 二人共数日間帰らなかったなのはを凄く心配していたのだ。 そんな二人になのはは謝罪した。 もしかしたら今後同じ様に友達を心配させてしまうかも知れない。 そんな思いがなのはの中にあったのだがその胸中の思いに気づきはしなかった。 「それで、学校は進んでる? 私授業出てなかったから心配なんだけど」 「学校なら休校状態よ。竜ヶ森で出た怪獣のせいで授業どころじゃないってさ」 アリサがそう言った。 どうやらさきの竜ヶ森でのベムラーとの戦いの件で学校は授業どころではなく休校状態になったと言うそうだ。 まぁなのはからして見れば一人だけ授業が遅れる心配がなくなったので嬉しい事ではあるが。 「そうだったんだ。何だか私が居ない間に大変な事があったんだねぇ」 「って、現場に居たあんたが何言ってるのよ! 聞いたわよ。あんた怪獣が来た際に竜ヶ森でキャンプしてたそうじゃない! 危うく踏み潰される所だったんじゃないの!」 流石アリサ。鋭い洞察力である。 まぁ其処はなのは自身上手く誤魔化したと言う事にしたので幸いなのはがその事件に関与していた事は二人には知られる事はなかった。 *** 付近の雑木林。 其処に数匹の子猫が戯れていた。 そんな時、一匹の子猫が青く輝く石の様な物を見つける。 その石に興味を引かれた子猫がその石に手を触れる。 すると、その石、ジュエルシードが眩い光を発し、子猫を包み込んでいく。 閃光が止んだ時、其処に居たのは先ほどの子猫の姿ではなく、おぞましい姿をした化け物の姿が其処に居たのであった。 アリサとすずかとの会話を終えて帰り道を歩いていたなのは。 時刻は既に夕刻に差し掛かっており空は茜色に染まり日は西に傾きだしている。 そんな中、なのはは一人帰り道を歩いていた。 ジュエルシードの捜索は一先ずユーノや甲児達、そして時空管理局が行ってくれている。 なのはは一先ず束の間の休息を楽しむ事にしていた。 そんな時、首筋に嫌な感じを感じ取った。 人間の心理の様な者で、敵意のある物、危険性のある物が近くにあるとてき面この現象が起こる。 「レイジングハート…もしかして?」 【はいマスター。近くにジュエルシードを感じます。この反応からすると既に発動した模様と思われます】 「大変! 早く封印しないと!」 付近に誰も居ない事を確認したなのははレイジングハートを起動させてバリアジャケットを纏いデバイスを手に持つ。 「レイジングハート。私一生懸命頑張るから一緒に戦おうね」 【勿論です、マスター】 なのはの言葉にレイジングハートは頷く。 そして、雑木林の中を突っ切っていく。 其処には数匹の子猫が怯えているのが見える。 そして、その子猫達の前には一匹のおぞましい姿をした怪物が其処に居たのだ。 「な、何あれ?」 【どうやら動物と融合したみたいです。気をつけて下さいマスター】 なのはにとって動物と融合したジュエルシードとの遭遇は初めてな事であった。 怪獣の時はウルトラマンや甲児の助力のお陰でどうにかなったが今回は一人しか居ない。 応援を呼ぶと言う手もあるが時間が足りない。 一人でやるしかない。 覚悟を決めてデバイスを構える。 すると化け物がなのはに気づいたのか彼女の方を向く。 その姿はまるで豹の様な姿をしていた。 しなやかな体つきをしており機敏に動きそうである。 化け物の口から牙が姿を現し不気味な唸り声をあげる。 その唸り声が人間の中に眠る恐怖心を煽りたてる。 幾ら魔導師として戦う覚悟が出来たとしても彼女はまだ9歳の少女なのだ。 普通に怖い物は怖いのだ。 だが、怖がってなどいられない。 自分が戦わなければ更に大勢の人達が怖い目に会う事となってしまうのだ。 「怖いけど…私が頑張らないと!」 自身にそう言い聞かせて恐怖心を振り払い、デバイスから数発の魔弾を放った。 桜色の閃光の魔弾が化け物目掛けて飛んでいく。 だが、その全てをしなやかな動きで華麗に化け物はかわした。 そしてかわしざまになのはに向かって飛び掛ってきた。 「きゃぁっ!」 咄嗟に倒れたから外れた物の、あの牙に噛まれたら一溜まりもない。 一撃貰えば終わりなのだ。 「レイジングハート! ディバインバスターは撃てないの?」 【危険です! 此処の様な狭い空間でディバインバスターを撃てば被害は甚大です。それにあの様に動きの素早い相手には不向きな武器です】 レイジングハートの言う通りだった。 ディバインバスターの威力はなのは自身が一番良く知っている。 マジンガーZやウルトラマンの武器が通じなかったあのアントラーを一撃で葬った武器なのだ。 あれをこんな雑木林の生い茂った場所で使おう物なら付近に甚大な被害が出てしまう。 また、魔力のチャージに時間のロスが発生してしまいその間無防備な状態となってしまうからだ。 即ち大技で仕留める事は出来ないのだ。 「それじゃ、アクセルシューターとかバインドで仕留めるしかないって事?」 【そうなります】 とは言うものの、あの様に機敏に動く化け物を相手にまだ戦闘面で不慣れななのはがアクセルシューターやバインドで仕留めるのは難しい。 だが、やるしかないのは事実なのだ。 「シュート!」 なのはが叫びデバイスから魔力弾を放つ。 しかしそのどれも華麗にかわされてしまう。 かわした隙にバインドを掛けようとしたがやはり駄目であった。 動きの素早い化け物を相手にバインドで固めるのは相当の錬度が必要なのだ。 その点ではなのはにまだそれが欠けていた面があったのだ。 その上、敵の動きが素早く狙いが付け辛い。 それが更に敵の厄介さであった。 「くっ…あ、当たらない…早くて狙いが定まらない」 【落ち着いて下さいマスター。焦っていては当たる物も当たりませんよ】 レイジングハートが注意するも敵から放たれる威圧感とジュエルシードを早く封印しなければと言う使命感の為かなのはの中で焦りは募っていくばかりだった。 それが災いとなり一気に化け物が間合いに入るのを許してしまった。 化け物の鋭い爪が唸りを上げて襲い掛かってきた。 咄嗟になのははレイジングハートのデバイスでそれを受け止める。 が、力の差が有りすぎた為になのはの手からデバイスが弾かれてしまいその拍子になのは自身も地面に叩きつけられてしまった。 其処へ化け物が上に圧し掛かってきた。 両手を押さえつけて動けない状態のなのはを見下ろすように化け物が唸りを上げる。 ダラリ… 化け物の口から垂れた唾液がなのはの頬に掛かる。 嫌な匂いが鼻についた。そして、その匂いが同時に彼女の中にあった恐怖心を更に煽り立てた。 必死に逃げ出そうともがくが子供の力では振り解く事などできず無駄にじたばた動くだけで終わった。 そんななのはに向かい化け物が雄叫びを挙げる。 勝利の雄叫びだ。 もうなのはに抵抗する力などない。 今やもう食べられるだけの餌と成り果てた。 そう言う意味の篭った雄叫びだったのだ。 そして雄叫びを挙げ終わった後、なのはに向かい巨大な牙を突き出してきた。 「い、いやぁ!」 咄嗟に首を右に思い切り捻った。 それが幸いしたのか化け物の牙は地面に突き刺さった。 なのはに外傷はない。 しかし、それも唯のまぐれだ。 次はない。 次こそは確実に自分の体に鋭い牙が突き刺さる。 そう感じ取ったのだ。 (嫌だ、嫌だ! こんな所で死にたくない! 助けて、ハヤタさん、甲児さん、ユーノ君! 誰か、誰かぁ!) 声にならない叫びを上げる。 しかしそんな叫びを上げた所で誰も助けに来る筈がない。 無情にも化け物の牙が迫ってきた。 が、その時、化け物を横から何かで弾き飛ばしたかの様に横っ飛びに吹き飛んでいく。 吹き飛ばされた化け物は付近の巨木に体を激突させて地面に倒れこむ。 「え? 誰!」 誰かが助けてくれた。 そう思えたのだろう。 なのはは化け物とは反対の方向を向く。 其処には一人の少女が居た。 年頃はなのはと同じ年であろう。 金色の長い髪を両端に束ねた髪型に黒を基調としたバリアジャケット。 そして鎌か斧のどちらかを思わせる形をしたデバイスを手に持っている。 「間に合って良かった」 「えっと、貴方は?」 「下がってて、アイツの相手は私がするから」 それだけ告げると少女はなのはを通り越して化け物の前に立つ。 そして持っていたデバイスを構える。 化け物が今度は少女に狙いを定めて唸りを上げる。 「ジュエルシード…回収させて貰うよ」 静かに、澄んだ様な声でそう呟く少女。 その直後、一瞬の内に少女の体は化け物の目の前に来ていた。 それには化け物は勿論なのはも驚かされた。 「は、早い!」 それが思わずなのはの口から出た言葉であった。 あの少女はとても素早く動けるのだ。 その目の前で少女がデバイスから発せられた光の刃を思い切り化け物に叩き付けた。 化け物の腕に傷が付き化け物が痛みの叫びを上げる。 カウンターに腕を振るったが、そんな物に少女が当たる筈もなくかわされカウンターに今度は顔面に刃が叩きつけられた。 「凄い、あの子…凄く強い」 圧倒的であった。 なのはでは全く歯が立たなかった相手を圧倒しているのだ。 それ程までに少女はなのはよりも実戦慣れしていると言う事が伺える。 すると、化け物が少女に背を向けて逃げ出した。 恐らく少女には勝てないと判断したのだろう。 だが、それに対し少女がデバイスを振りかぶる。 「逃がさない。切り裂け! ハーケンセイバー!」 叫び、デバイスを思い切り振るった。 すると振るわれたデバイスから光の刃がブーメランの様に化け物目掛けて飛んでいく。 その刃が化け物を縦一文字に両断する。 断末魔の悲鳴と共に化け物の体が閃光に包まれ、やがて閃光が収まると其処には幼い子猫が横たわり、その横にジュエルシードが落ちていたのだ。 「良かった。怪我もなく済んで」 子猫に大した怪我がない事を知り安堵した少女がデバイスをジュエルシードに近づける。 そして、それを封印し、この場の脅威は去った。 「あ、あの…」 「ん?」 後ろからなのはが声を掛けた。 それを聞き少女は振り返る。 「あ、有難う。助けてくれて」 「君も魔導師なの?」 「えっと、うん!」 「そ、だったら…今すぐ止めた方が良い。君の腕前じゃその内ロストロギアに殺されるから」 そう言い残すと少女は飛び去っていく。 「あ、名前…行っちゃった…まだ自己紹介してなかったのに…」 なのはの前では大空へと飛び去っていく少女の後姿だけが見えた。 今から大声を発した所で聞こえる筈がない。 なのはからしてみれば命の恩人であり自分と同じ魔法少女との出会いだったのだ。 出来れば名前を聞きたかったし、どうせなら友達にもなりたかった。 だが、あの少女はジュエルシードの回収を終えるとその場から立ち去ってしまったのだ。 「あの子もジュエルシードを集めてるんだよね。だったら、きっとまた会えるかな? その時は、ちゃんとお礼を言って、名前を聞かせて貰わなきゃ。その為にも…もっと強くなる! もう皆のお荷物にならない様にもっと強くならなくちゃ!」 なのはの中である決意が芽生える。 少女に認められる為に。 そして、仲間達と肩を並べて戦う為に。 少女は更に強くなる事を決意した。 そんな少女を黙って夕日が見つめて、やがて沈んでいった。 つづく 次回予告 少女は強い決意の元己を磨きだした。 そんな少女はある出会いを果たす。 それは、他人に運命を弄ばれた一人の不幸は青年との出会いであった。 次回「仮面の戦士」 お楽しみに
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駒城王国領木更津領主テスタロッサ家令嬢。王女なのはの乳姉妹 名剣バルデッシュを駆り自ら武勲を立てる漢女 当初は嫁入りのために全うに春香と料理の修行もしていたが、新城の脅しを間に受けた結果武勲を立てて新城に嫁入りを狙うように 対騎士戦闘でキルスコア2をマークする歴戦の戦士 バイパー村の位置を探るべく名主の息子ユーノとそのお供にエリオを派遣したのは彼女
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なんでも投票箱 無記名で投票できます。今後の参考にする場合があるので どんどん押してやってください 移転したR.O.D.O.Tはどうですか? 選択肢 投票 いいネ (192) 前の方がよかった (22) そんなことよりもっと翠星石を出せ! (37) リリカルに改変中。さてどのキャラを出そうか?(アリサはデフォです) 選択肢 投票 なのは (94) フェイト (131) はやて (5) ユーノ (25) クロノ (9) ヴィータ (9) シグナム (3) シャマル (3) ザフィーラ (4) アルフ (7) エイミィ (1) すずか (13)
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「う~、寒いよ~」 時空管理局所属の魔法少女、高町なのはは南極の大地を一人飛んでいた。 理由は単純。この世界の南極のある遺跡にロストロギアらしき反応が確認されたからで ある。 よってそこに向かっているのだが、いかんせん寒さはバリアジャケットでも防げない。 「こんなときユーノ君がいたらなぁ」 と言いつつ、友達を首に巻く自分を想像。 あわれユーノ。 と、ようやく遺跡の近くに来たのだが、 「あれは…!」 遺跡の周りで異形の怪物たちと二体のロボットが戦っていた。 怪物は自らの体を変質させ攻撃する。 しかしロボットたちはよけ、防ぎ、逆に倒していく。 どうやらロボットたちは遺跡を守っているらしい。 やがて、怪物が残り一体になったとき、その目がなのはを捉えた。 「…えっ、まさか」 「キシャアアアア!」 そのまさか。 怪物は腕を尖らせ、文字通り伸ばしてきた。 しかしその腕は上から飛んできた刃によって途中から断たれる。 「キシャアアアア!?」 突然のことに怯む怪物。 しかしなのははその隙を見逃さない! 杖を向け、カートリッジをロードする! 「ディバイン、バスタァー!」 桜色の魔力の奔流が怪物を飲み込んだ。 戦闘が終わり、なのはは上を見上げ叫ぶ。 「フェイトちゃ~ん!ありがとー!」 それを聞き上空にいた黒の魔法少女、フェイトは微笑んだ。 『えっと、君たちは…?』 ロボットの方から通信が入る。 「あっ、あの私達は…」 その言葉は突然の地響きによって中断された。 「なっ、何!?」 『遺跡からだ!!』 遺跡に向かうと大勢の研究者たちが避難を始めていた。 「親父はどこだ!?」 ロボットから降りてきた少年ージョッシュが研究員の一人に問いかける。 話を聞いているとその親父さんは中心部にいるらしい。 そのとき、ロボットから降りてきた少女ーリムが叫ぶ。 「お父さん、お父さん!」 「リム、お前は避難しろ。親父は俺が連れ戻す!」 「お兄ちゃんも?それなら私も…」 なのはは面倒になりそうなのでリムをバインドで拘束、コクピットに放り込む。 その間にフェイトはジョッシュを説得し同行の許可をもらう。 「フェイトちゃん、気をつけて」 「なのはもね」 このとき、この出来事がこれからの戦いの始まりになると、誰が予想できただろうか。 魔法少女&スーパーロボット大戦D 続かない 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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※(第2話としての「高町なのは」の概要はこちら 「大丈夫の前に、海鳴を放っておくほど、私は故郷捨ててないからね。それに私を指名した理由も、気にはなるから」 概要 この物語の主人公にして魔導師。地球、海鳴市出身の、元時空管理局一等空尉(大尉にあたる)。 声優は田村ゆかり。 療養を勧められていたこともあり、管理局から身を引いて、ミッドチルダで小さい喫茶店を開いていた。営業成績はそこそこの模様。 だが3月15日の20歳の誕生日に、時空管理局の次元牢、拘置所から犯罪者の大量脱獄を聞いた彼女は、 多数の犯罪者たちが海鳴に向かっているということもあり、再び戦いの場に赴くこととなった。 なお、前回海鳴に来たのは成人式の出席のため。 フェイトやアリサ、すずか、はやてとは子供の頃からの親友にあたる。 特にフェイトとはお互いを守りあう、支えあうと約束した本当の親友同士。 ヴィヴィオは彼女の娘(血のつながりはなく、彼女が引き取った)。現在は単身赴任状態なので ヴィヴィオとは電話や通信での連絡がせいぜい。 穏やかで元気印の誰にでも好かれる明るさが、周りの人間を集めていく不思議さを持つ。 以前に比べると性格が穏やかで平和主義気味にやわらかくなっている。喫茶店の営業と子育てで 自然と肩の力が抜けたらしい。 (メタなことを言うと、原点「とらいあんぐるハート3」の性格に寄っただけなのだが) また本人の自覚は薄いが、正義の心はとても熱い。 ユーノとは今だ友達以上、恋人未満の状態が続いている。が、そのことをつつかれるとあたふたすることから、本人もまんざらではないのかもしれない。 事件では海鳴を拠点として動いている。実家に戻っている状態である。 リーバルト・ダイオスはある種気になる犯罪者であるとともに、「さん」付けしている 唯一の犯罪者。 前述のとおり今回も主人公ではあるが、登場は1話の最後と遅かった。 むしろその話の主役はフェイトだったし…… + 彼女が管理局を辞めた理由 なのはが管理局を辞めた理由だが、療養自体は嘘ではないのだが、実は深い理由があった。 喫茶店を開く前から、夢で見るもの。 頻繁に見る悪夢、死人の山の中にいたり、血濡れの丘に立っていたり、声をかけたとたんにその人がいなくなったりという悲惨な状況などの夢ををしょっちゅう見るようになって、 自分が怖くなっていたのである。 第30話で洗脳されて以降、さらにそのトラウマは強くなり始めてくる。 それが因果なのか、下記の魔力の正体にもつながってくるのであるが。 + 彼女の魔力の正体 なぜ一介の地球人の彼女が、ここまで高い魔力を持っていたのか。それは彼女の前世に関係があった。 その前世とはミッドチルダにかつていた魔導師、エルリア・エムループ。 強大な魔力を持ちながらも周りから疎んじられていた人間である。 のちのキング・ハーツ首領となるディアブロ・カルソニクスの以前の名前であるセラフィム・タイロープとは恋人のような友達のような、不思議な関係が続いていたが、 「破壊と絶望」の力で本人が望まずともすべてを壊してしまう状況が続いていた。 そしてその滅ぼす力でセラフィムを捕縛、呪いをかけたのだが、その時にエルリアも砲撃魔法によって致命傷を負い、その場に倒れた。 セラフィムに、次元等から出られない呪いを残して。 そしてその口から出た言葉は…… 「……一人では、行かせない……なぜなら……私は……君が好きだから……」 愛するが故の、呪いと言う事であろうか。 + 結末は…… 魔導師が次元中から消えてしまうという現実を目の当たりにしたこと、セダンから追い打ちをかけられたことで、 ついになのはは倒れてしまう。 彼女の目を覚まさせたのは、ユーノの存在だった。 ここで、なのはとユーノはお互いに絆以上の絆、恋心ではっきりと結ばれることとなった。 それ以降の展開は、本編、ストーリー展開を参照してほしい。 + レイジングアーマー 戦闘スタイル 魔力の収束と放射が得意で、攻撃力と防御力はかなり高いものの、唯一の弱点ともいえる 機動力の弱さがあり、近接戦闘は苦手(それでも、子供の頃と比べるとだいぶ進歩している)。 ステータス 魔導師ランク AAA 攻撃力 A 防御力 A 機動力 D 魔法防御力 B 以前のSクラスからAAAクラスに魔力が減少している。 以前からの無理強いが祟ったというのが強く、回復はあまり見込めないということ。
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「―――そう、事情は分かりました」 正気に戻った医師がハヤテをまず押しとどめ、何とか対話の方向まで持っていくことに成功した。 中々抵抗は厳しかったのだが、「お金の事は今回は何とか考えます」の言葉が効いたのか、少なくとも隙あらば逃げようという姿勢は鳴りを潜めたようだ。 保険証はともかくお金も無いから逃げるという患者は少なくは無いが、こんな若さならの少年がどうして、と思わなかったわけではない。しかし、カルテとは別に脳内に纏めたメモの、今ベッドで横たわらせている患者から聞いた事情を見直して納得する。 綾崎ハヤテ。現在高校一年生の十六歳。 幼少の頃より浪費癖かつ借金まみれの両親のもとで食うにも困る生活を続け、年齢を誤魔化して普通は成年が就くようなアルバイトを幾つも行う事で食いつなぎ、学費や生活費も全て自分で賄ってきた。 が、今日夕方に両親から強制的に借金を押し付けられる事で、かろうじて支えてきた生活の堤防が決壊。借金取りからは着のみ着のまま命からがら逃げ延びたものの、身体に限界が来て―――その後の顛末が今だ。 お金も貴重品も、私物の一つすら持ち出さず。 「要するに、原因は栄養失調と睡眠不足、疲労にストレスと、それに伴う肉体の消耗―――若いから何とかなってる、ってぐらいね」 言外に普通なら危険なのよ、という意味を込めて告げるが、相手は今さら慣れっこなのか、反省しているからなのか、反応が鈍い。 事情が事情なだけに強くは言えないが、念を押すように問いかける事でようやく返事を引き出した。 「はぁ……すみません」 「ほんまびっくりしたんよ? あんな夜中にいきなり倒れるから、どないしたらええんか分からんかったし」 「そういえば、その事についても聞いておかなきゃね。どうして、外出してたのかな?」 矛先がこちらに向いてしまい、うわ薮蛇、とはやてはうめく。医師の顔は笑っているが、目が笑っていない。 「えっと、それは、まあ……ごめんなさい」 「ふう……まあいいわ。それはまたおいおい、ね」 ちっ、ごまかされへんかったかと突然黒く舌打ちするはやてに驚きおののきつつも、ハヤテは肝心な事を聞き忘れていた事に気付いた。 「あの、すみません。結局、僕はいつまでここにいればいいんでしょう?」 少年はさっきからずっとそわそわとしている。これも彼曰く、病院みたいな場所に来るのすら生まれて数回しか無いと言うのに、ましてやベッドでのんびりと寝ているなんてブルジョアな行為がひどく落ち着かないとの事だ。 「今日一日は、安静の為にここで入院してもらうわ」 「えっ!? そ、そんな―――」 「今の貴方に必要なのは休養よ。それも身体だけじゃない、心も。特に身体に関しては、数日は絶対安静必須よ。 せめて今日一日ぐらい、働くことも借金も忘れて、ちょっと話を聞かせて貰ってから、ゆっくり眠ってても罰は当たらないと思うわ。今日はクリスマスイヴなのだから」 そう微笑んで告げる医師に、しばらく躊躇ってはいたものの、やがてハヤテは決心して眠り出そうとする。 すきま風が吹き荒れ、ボロボロの畳の上に敷く布団の上で、借金取りからの油断を欠かすこと無く警戒しながらの睡眠とは、天と地の差であった。 ハヤテを入院させ、あまつさえ金の工面をつけると申し出たのは、特別憐憫の情や同情からだけでは無かった。 いや、そこから繋がると言えば否定は出来ない。八神はやては幼い頃から両親と死に別れ、親類の遺産管理があるとはいえほぼずっと一人暮らし。綾崎ハヤテも両親はいたが、味方どころかほとんど敵の状態で、幼い頃から友達と遊ぶ前に夜逃げや身の合わぬ労働続き。 両方とも、本質的には独りぼっちなのだ。 だからこそ、同じ家に住まわせてみればどうだろう、と思ったのだ。 はやての脚の病気に対しては様々な手段を講じてはいるが、どれも効果的な手段であるとは言いがたく、むしろ長年のうちに悪化の気配すら見せている。 精神的な方向からの支えも行ってみたいとは思うものの、自分は忙しい医者の身、どうしてもはやてだけにかかりきりという訳には行かない。ましてや一緒に暮らすこともかなわない。 その代わりといっては何だが、この少年を一緒に住まわせ、支えてもらうことで、はやての精神的な、またはいざ発作が起きたときの支えとなってもらうように考えた。 そして、病状が回復に向かうのであればそれは重畳である。 ただ、彼がそれに相応しい人間か、見極めなければいけない。はやてが初めて会った人間にあんなに遠慮無しに突っ込みを入れる相手は珍しく、さっき少し話した程度でも良い性格であるとは思う。 だが、はやてを任せて良いのかはもう少しはっきり話をしてから、と判断する。自分とて生まれて三十年を越えている医師だ、それなりに人間の見分けはつくつもりである。 そんな自己中心的だと自覚した腹積もりで、彼女はハヤテを入院させた。結局、他人にしてははやての事を十分すぎるほど考えているのだが。 「話をするのは、はやてちゃんを送ってからかしらね」 しかし、その話の予定は二度と達成される事が無くなるとは、今の彼女には知るよしもなかった―――。 結局石田医師にしぼられてから、はやては我が家の前に帰還した。 さっきまでの賑やかな空気の時間が、まるで数日前のように遠く感じる静寂。日々が同じ事の繰り返しの中、何が起こるか分からないような―――楽しかった出来事はどれほどぶりだったろうか、と思い返すが、殆んど思い返せないので考えるのをやめた。 先程の少年を思い返す。貧相な顔の、からかうと面白そうな少年。直感だが、あの人は多分いい人だ。そして、いろんな意味で楽しい人。 あんな人と一緒にいたら、日常が面白いだろうなと考える。きっと、誘拐事件に巻き込まれたり、豪華客船沈没事件に巻き込まれたり――― 「……あかん、何かおかしい考えになってる」 夢の時間は終わり、今からは再び現実の時間、ひとりぼっち。 防犯のために、出掛ける前に電気付けっぱなしやったかなと思い出しながら玄関の扉の鍵を開け、 ―――お願いです、話を聞いてください どこからか聞こえる囁くような声を、受け取ったのだった。 天使と言う言葉を聞き、普通の人々はどう連想するだろうか。 神に仕える存在。無垢なる者。白い翼を生やした、想像上の産物。 だが、世界にはごくまれに存在するのだ。黒い翼を生やし、俗世に堕ち、神に仕えることを止めてまで、一つの感情を知ろうとする者が。 天使は無垢であり、それ故に愛を知らず、知ろうともしない。 それを知る事が、知ろうとする事自体が、自らを傷つけなければいけないからだと、本能で感じ取っていたからかもしれない。 それでもなお、自分を傷つけても、苦しめても、その感情―――愛情とは何かを知るために、人の世界に降り立つものがいた。 彼女―――遊羽もまた、その一人であった。 尤も、彼女に関しては事情が多少異なってはいたが。 「あちゃー……参ったわね」 遊羽は俗に言うゴスロリドレスで包まれた華奢な身体を、地面で汚れることに何の躊躇いもなく倒れ伏しながら、少しも参っていない様子のおどけた声で現状をぼやく。 だが第三者から見れば顔は血の気が引いており、指の二、三本や顔以外はほとんどピクリとも動こうとせず、軽口で済ませるような状況ではないのは一目瞭然だった。 むしろ、刻々と命のろうそくが消え去ろうとしていた。周囲の寒さが、灯火を弱らせていく。 少しでも早く、助けを呼ばなければ―――そんな事はとうに理解しているのだが、まず周りがよく見えず、何処にいるのか分からない。大声を出す元気もない。這って進む気力すらない。 以前の人間界でのとある問題行動から遊羽は『病気』にかかり、天界の病院に入院を余儀なくされた。 が、彼女の友人の調べた結果、遊羽は治療をされていると見せかけ、徐々に衰弱して死んでいくように毒を投与されていたと判明。 幸い友人が天界でエリートの位置にいた事と、遊羽自身が入院当初は抜け出して人間界に降りていた事から、病院から抜け出すことは何の不自然もなかった。 せいぜい、「ああ、久しぶりにまたやったか」と思われるぐらいだろう、それはそれで複雑ではあるが。 「ずっとは無理だけど、しばらくはこっちで誤魔化し続けるわ。その病気ですぐ死ぬって事は無いはずだから、逃げなさい」 「……うん、またね」 天界での最後のやりとりをかわし、遊羽は人間界へのゲートに飛び込む。 また、出逢える事を信じて。 ただ、誤算が存在した。地上へと降りる前に、今まで投与されていた毒物が予想以上に遊羽の身体を蝕んでおり、ゲート転移に耐えきれなかったこと。 そのせいで、彼女の予想していない場所に飛ばされた事。 そして、今まさに身体を動かす体力すら残っていない事。 故郷には居る事も出来ず、人間界の知人の元にも向かえず、このまま誰知らず朽ちていくしかないのか。 微かな幸いと言えば、彼女がここがどこかを全く理解していないところか。 空には静かに舞う白い雪、木々がほんの少しやさしくざわめく夜。 その音を子守唄として、僅かに開かれていた瞳が今まさに閉じようとしていたその時。 「だ、大丈夫ですか!」 「え……誰? どこにおるん?」 開けたドアの奥や左右、後ろを見ても人の姿形は見当たらない。なんや空耳かあと気を取り直したが、 『そこの、車椅子に乗ったあなたです』 確かに、少年の声が聞こえる。聞き間違いでは、無い。しかも頭の中に聞こえるような気がするが、それにしても何処にいるのだろうか? 「なあ、どこにおるん?」 『待っててください、今姿を現しますから』 その言葉と共に、はやての前に姿を現したのは――― 「……茶色いねずみ?」 本当はフェレットが近いのだが、想定外の生き物が現れた為、つい大雑把なまとめ方の言葉しか出てこない。これは色々な意味でツッコミを待っているのか、素人ドッキリで本人は暗闇の奥で笑いをこらえているのか、そもそも何を話せば良いのか。 そしてフェレット―――ユーノ・スクライアの方も、この世界に来たばかりでねずみとフェレットの違いが分からず、否定も肯定もしなかった。こちらも、どう話を切り出すべきかで悩み、反応を窺いながら黙りこくる。 しばしの沈黙が流れる。両手の指で数えられないぐらいの秒が経過した時、ユーノがこらえきれず用件を話そうとして、 「ようできたぬいぐるみやねえ」 「って、違いますよ! 僕はぬいぐるみじゃないです」 「冗談やって」 いったいどんなからくりかは分からないが人語を話しているフェレットを前にして、はやてはあっけらかんとしている。つい先程の変人の件で、耐性が出来ていたのかもしれない。 もしくは、そんな細かい事を気にしない性格であるのか。 実際のところ、はやてにはもちろん驚きの思いはあった。この現代日本において、一般的に動物が喋ることがあるという夢物語や妄想を信じるほど、はやては子供ではない。 だが、それを些細なものとするほど、強い感情が彼女の心を塗りつぶす。 ―――こんな面白いコト逃したら、また退屈な日に逆戻りや! 小さな胸の中に響き渡る鼓動が、止まらない。友達とも遊べず、身体をめいいっぱい動かしたい盛りであるだろうにそれもできないはやてだからこそ、沸き上がる強い思い。 今自分は、普通には出会わない事に足を突っ込んでいる! 嬉しかった。嬉しいとしか言葉が浮かばなかった。騙されているならとことん騙されてやれとも思った。 もし足が動かせるのなら、冷凍マグロを抱えて水中エレベータに乗り込んだり、忍者ごっこをして記憶喪失の兄を困らせたりするぐらい奇抜な行動を起こしていただろう。 非論理的で支離滅裂ではあったが、それぐらいユーノという存在の登場は、はやてにとって衝撃を与えた。 もっとも、衝撃が大きすぎて、結局当たり障りの無いボケをかます事しか出来なかったが。 どちらにせよ、特に驚きも怯えもしない相手に慌てる必要は無いと感じたのか、ユーノは本題を切り出す事にした。 「僕は、ユーノ・スクライアです。公園で先程、赤い宝石を拾いませんでしたか?」 「私は、八神はやてって言うんよ。……ああ、そういえばさっき拾ったよ」 言われてようやく思い出し、ポケットの中にしまったままの赤い石を取り出した。今の今までまで人生で一、二を争うほど濃すぎる時間を送り、つい忘却の彼方に放り投げていた。 「もしかして、これユーノさんの?」 「ユーノでいいよ、同い年ぐらいみたいだし。そう、この世界に来てしまった時に落としてしまったんだ」 「この世界……って?」 「なるほど、そこからだね。実は……」 綾崎ハヤテは、病院を抜け出していた。何て事はない、忘れ物をしたからである。 普通の人間がたった一晩、しかも二、三時間程度では、いくら命の危険から生まれる火事場の馬鹿力で全力疾走しても、三つも遠くの街まで逃げることは出来ないのである。 自称一般人のハヤテもそれは例外ではなく、もっと速く逃げる手段―――途中借りた放置自転車で相手の車とカーチェイスを繰り広げながら逃げてはいたものの、時速二百キロ以上の平均速度走行に先に自転車が息絶えてしまい、仕方無く偶然見つけた廃ビルに置いて眠らせてきた。 短時間ながら苦楽をともにしたもはや相棒とも呼べる存在、後で取りに来ようとは思っていたのだが、後は知る通りの顛末である。はやてと出逢い、倒れて病院へ行き、安静を命じられる。取りに行く暇など、無かった。 (少し眠って回復出来ましたし、書き置きを残して来たから大丈夫でしょう) そんな事をしても怒られるのは必然であるのだが、ハヤテは行ってすぐに戻ってくるつもりであるので、たかをくくっていたのであった。 そして、そんな考え方こそが、死亡フラグもといトラブルフラグである事に本人は気付いていないのである。 廃ビルに到着して、果たして自転車はすぐに見つかった。そろそろ本気で寒くなって来た夜風にコートがはためくが、臨時の相棒を眠らせた屋内はそれほどでもない。 ついさっき雪まで降ってきたのに、やっぱり直接風が来ないからだろうか、とどうでも良いことを考えながら、自転車の容態を確認する。 フレームがボコボコに折れ曲がり、チェーンが外れてはいたが、タイヤは奇跡的に無事だった。ドリフトが平気で出来そうなぐらい磨り減っていたが、これなら病院に戻って落ち着いて直してやれば息を吹き返すだろう。 「……え?」 ほっとしたその時、ハヤテの視界の片隅にキラリと光る何かが飛び込んで来た気がした。 見間違いかと思い、目をパチクリと瞬かせるが、月の光を呼び寄せては弾いているのか、暗闇の中で確かに何かが光っている。 いや、よく見ると…… 少女が、仰向けになって倒れていた。顔は美少女と言っても通用する形、中肉中背で、遠くから見る限りでは外傷、暴行の痕ならびにひどい出血は無さそうだと分かり、少しほっとする。 だが、ハヤテをそのまま絶句させたのは、廃ビル内にあるまじきその姿に驚いたからでは無かった。 全身が黒一色の、ひらひらがこれでもかと付いた、ゴスロリと言われるワンピース風の衣装、おまけに頭部にはメイドのようなヘッドドレス。しかもこんな冬の夜中だと言うのにそれ一着。それだけでも十分おかしいと言うのに、僅かに見える背中の部分から黒い一対の翼の飾り。 これをコスプレと言わずして何と言うのか。年に数回ある大型イベントにて見られるような姿ではないか。ついそんな言葉が脳裏をよぎったハヤテは、内心まずい人に出会ったなあと思いつつも、流石に見なかった事にも出来ず、近寄って呼び掛ける。 「だ、大丈夫ですか!」 つい言葉が上ずってしまったが、何も反応が無い。いや、彼女の開きかけの瞳が逆に閉じてしまった事で、何やら嫌な予感を感じた。 もう一度状態を確認。熱は無く、平熱程度か。服の乱れも外傷も無い。手首を握って脈拍を確かめる……生きてはいるが、かなり小さい。 「ん……う?」 色々探られている事に気が付いたのか、閉じた瞳が重々しくながら再び開き、困惑と疑問の視線で見られていることにハヤテは気付く。とりあえずまだ生きていることにほっとしながらも、ハヤテは出来るだけ不審がらせないように声をかけた。 「大丈夫ですか? 今すぐ、病院に連れていきますから」 「ん……たい、き……じゃ、ない?」 一瞬何の事か分からなかったが、それが人の名前だと言う事に気付く。 それは誰なのか、どうしてこんな奇妙な格好で、こんなところにいて、まるで息も絶え絶えな状態で倒れているのか。聞きたい事はそれなりにあったが、まずはそれを棚上げにして病院への帰還を優先する事を選択。 「痛いところとか、ありますか?」 「全身が……軋んでるみたい。かなり、痛いかも」 「今から背中に背負います、病院で見てもらわないと」 「え……っと、多分、こっちの病院は無駄だと思う」 「なんで、そんな事を? 諦めちゃダメですよ、コートで縛って固定しますから、背中に掴まっていて下さい」 「うん……これ、向こうの病気だし。そもそも、病気なのかな?」 後半の言葉はしかしハヤテには届かず、少年は少女を背負い、有らん限りの速さで走る。この状態での二人乗りは流石に危険な為、再び自転車を置いていかざるを得なかったが。 ユーノ・スクライアは異世界からの来訪者である。 彼らの世界は魔法が科学とならんで発達しており、宇宙人どころか異世界人の存在も特に珍しいものでは無い。 そして、魔法は既に一般生活には無くてはならないものとして、浸透しきっているものだ。 ちなみにそれを聞いたはやては、「ようある魔女っ娘やのうて、えすえふの方なんやね」と感想。 閑話休題。 彼は若くして、一族とともに世界を巡る考古学者として働いており、主に遺跡の調査・発掘を行っていた。彼らの世界は年齢よりも魔導師としての実力やその仕事の知識量で上下が重視されるが、弱冠9歳にして一つの発掘現場の指揮を任されると言えば、その実力も知れるだろう。 今回も、とある世界で新たに見つかった謎の魔導遺跡を調査中だった。最奥部に未知なる装置の存在する、年代すら不明の遺跡。 しかし、調査中に不意に遺跡の中心にあった謎の装置が起動し、気が付けばこの世界に飛ばされていたのだと言う。 「管理内世界では今まで知られていない魔導体系。何千年も昔と思われる材質。そして、その遺跡はかつて『根の世界への門』と言われていたそうです……話を戻します」 その後、突然異なる世界に飛ばされたという事は理解したものの、元の世界―――せめて見知った世界に戻る事すらすぐには難しいのだという。 突然海の真ん中に放り出され、地図と大した装備の無い船だけを渡されたのと同じようなもの。目的地は分かる、向かう手段もある。だが、そもそも自分がどこを出発地点にしているかが分からない。 無闇に世界移動を繰り返すわけにはいかない。それにも魔力が必要だし、いざと言う時のために魔力は温存しておきたい。 そういった話を一通り聞き、はやては頷いた。 「つまり、帰り方がハッキリするまで、置いといてほしいってことやね」 「ええ……って、そこまで飛躍していいの?」 ユーノ個人としては数日、せめて一日身体を休められる場所があればよかっただけなのだが、はやては何言うてるのとカラカラ笑う。 「ええんよ、ユーノ君みたいなかわええ動物がおったら、大歓迎やって」 (動物……って、今の姿はそうだった) 「それに、誰も知り合いがおらんと、世界にひとりぼっちってのも、寂しいで?」 妙に実感のこもったような言葉に少しつかえる何かを覚えたものの、それは脇に置いておき、ユーノは長いフェレットの首を丸く曲げて感謝を言葉に変える。 「……ありがとうございます」 「ええねん、そんなかしこまらんでも。それで、この石は返した方がええんやった?」 「いいえ、それは―――はやてが預かっていて」 思わぬ返答に、目を丸くする。そして視線で問いかける、これは君のとちゃうの、と。 声に出していない思考を読み取ったか、ユーノは懐―――動物体のどこに懐があるのかは謎だが―――から石を取り出し、掲げる。 はやてが拾ったのとそっくりの、赤い石。 「僕には、こっちのレイジングハートがあるから」 「この石って、そんな名前なん? レイジング……えっと、ストーム?」 「ハートです。これはデバイス―――分かりやすく言えば、魔法の杖の元なんだ」 「って、そこは魔女っ娘なんやなあ。それと、ツッコミ薄いで」 SFからファンタジーへ逆戻りした話に苦笑しながらもその目は、はよ教えてえなと食い付きを見せる。 はやてとて年齢一桁の少女、まだまだそういったものに対する興味は、強い。テレビから出てきたような存在が目の前にいれば、尚更だ。 ただ、魔法の杖と聞いたとき、この時はやては呪文を唱えてマハリクマハリタやぴんぷるぱんぷるなどの幻想的なものを想像していたのも無理はないだろう。 まさか数ヵ月後に、友人になった相手の杖から荷電粒子砲まがいの一撃を食らわされようとは、神ならぬはやてには想像しようがない。 「僕の―――いえ、僕らの世界のデバイスは、調整と本人の努力があれば、ある程度は誰でも起動できて、使用できる。だけど……」 きゅい、とマッチ棒のような指でユーノははやての持つ石を指差す。 「それは、デバイスとしては異質な存在なんだ」 「使ってる人が、大変な目に逢うとか?」 「そんな危険なデバイスは無い……訳じゃなかった気がするけど、その話は今は置いておくね」 言葉通り右から左へ物を運ぶ仕草をするフェレットを見て、和む。かわええなあ。 「以前ある遺跡から発掘されたそれを解析したところ、それもまた偶然『レイジングハート』って名前だって分かったんだ」 「じゃあ、ユーノのは発掘されたんや無いって事?」 「僕のは……って、それもまあ置いといて」 しかし、それ以外に分かることが全くといっていいほど無く、おまけに今まで何人もの魔導師が装備しようとしたが、誰もが反応すら無かった。 はっきり分かっているのは、どうやら意識がある―――インテリジェンスデバイスではないかという事だが、 「その意識がやっかいなんだ。この石は人を―――適合者を選ぶ」 「適合者? 使って欲しい人の事?」 「まあ、そうだね。それは今まで誰にも反応を見せなかった。光ることすらしなかったんだ。だけど―――」 「もしかして、私が公園で拾ったときの事?」 急いてはやてが尋ねると、ユーノはただ頷くのみ。語らず、あの時光ったのを見た、と目で告げられているように感じた。 「何か、心当たりはある?」 「ええっと……」 公園でこれを見つけたとき、光っているのを見たから拾えたわけだが、よくよく考えると暗い所で光っているからといって、そんなに簡単に闇の中で見つけられたものだろうか? もしかしたら、この石が私を呼び寄せていた? と考え、 「……いや、なんもあらへんわ」 「そうか……いや、別に気にしなくていいから」 「あ、うん。 さっきの話やけど、持っててええんやったら、私が持っとくわ。せやけど、ほんまに私が持っててええの?」 指でつまみ上げた小さく新たな知人は、しかし公園の時とは反応がまるで嘘のように沈黙していた。 「それに、私は具体的に何すればええの? 魔法とか言われても、私は何にもでけへんし」 「持っていてくれるだけでいい。正直、何が出来るかもそれが何を伝えたいのかも全然分からないし、選ばれたはやてと一緒にいれば、もしかしたら何か分かるかも―――」 ふと、言葉が途切れる。言い間違えて言葉を訂正しようとしているのか、さもなくばして欲しい事を思い出したのかとも思ったが、それにしては妙に表情が厳しいのに気付く。 何を考えているのか、呆然としているだけなのか、フェレットは長い首を天に向けたまま硬直している。 きょろりきょろりと、細長い首の先にある頭が二度三度、何かを確かめるように振られる。 迂濶に尋ねられず黙り込む事数秒、小動物の豆のような口から零れた呟きは、驚き。空中で鮫が泳いでいるような非常識を目撃したような、あり得ないと否定したがっている声。 「どうして……」 「ん、どないしたん?」 「―――行かないと!」 復帰するが早いか、ユーノは突然駆け出していく。逃げたわけでは無さそうだが、いきなりの奇行にはやては無視された事も忘れ、車椅子を動かし始めた。 ついさっき知り合った友達を、追いかける為に。 「何なんやろ……いったい……」 胸騒ぎがこだまする。さっきまでの面白さを覚える非日常では無く、嫌な予感がする方のそれを、彼の突如の言動からはやても感じずにはいられなかった。 銃を持った奴が相手なら、覇王○○拳を使わざるを得ない。そんなフレーズが浮かぶ程に、ハヤテは窮地に立たされていた。 繰り返すようだが、ハヤテは長年の貧窮生活によって、大抵の事なら何でも切り抜けられる力を身に付けている。 背中に妙齢の少女を背負っている程度、重荷にも感じない。雪が降るような寒空の下でも、大した活動阻害にもならない。 が、それも体調が万全の時には、だ。精神と肉体がともに消耗しきっている現在であれば、取るにも足らなかった筈の障害がとても邪魔なものとなる。 「くっ、は―――あっ」 骨や神経を通じて全身に染み渡る、まるで氷のナイフで抉られるような冷えた痛みに、ともすれば後ろの荷物を落としそうになる。が、堪えて背負い直し、一歩を進める。 「やっぱり、安静にしておけばよかったかな」 誰にも聞こえないように、後悔しつつ呟くハヤテ。彼女は再び気を失ったのか、静かなものだ。 医師の言う事を聞かず、勝手に自転車を取りに行った自分が悪いとは分かっていたのだが、 (取りに行かなきゃ、この人はどうなっていたか分からないだろうし……うん、いい方向に考えよう! 大丈夫、借金取りから逃げ切りましたし、何とかなります! ……なるのかなあ) 空元気で気勢をあげようとするが、いかんせん大元の元気が足りない。 脚の感覚が薄い。スポンジになってしまったかのように、一歩一歩の安定性が足りなくなっている。 手に力が入らない。自分が何の何処をおんぶしているのか、つい忘れそうになる。 そして、目がほとんど開かない。視界が狭い。きっと自分の顔を見ている誰かに感想を聞けば、遮光型土偶のような目だと言うだろう。 「―――あ」 転んで倒れ伏したのに気付いたのが、その事実から数秒も経ってから。 何故か何とかしないとと言う意識が働かず、身体は指一本も動かせない筈なのに、感覚だけが鋭敏になっている。 我が身を冷やす原因は、薄く積もった雪が原因か、それともコンクリートか。頭の回転が妙に速くなっているのか、段々と周囲の時間がゆったりと重みを増してくる。 同時に、昔に振られた彼女の事、ここで肉を食えとサファリパークで放り出された事、ついさっき親に売られた事。俗に言う走馬灯が頭の中を流れつつも、目の前を横切る雪の塊の粒々一つ一つや地面のでこぼこすらもはっきり認識できた。 (確か、これは頭の処理速度が向上されている事で起こることだって、どこかで聞いたかな) 目が覚めたら、自分は新たな世界の創造主になっているのか、どこかの女の人と人格交換でもしているのか。あるいは、時の滅びた世界に魂だけが投げ出されてしまうのだろうか。 こんな時でもそうつまらない事を考えてしまえる余裕がある辺り、もしかすると自分は心の片隅で終わりを望んでいたのかもしれない。 守られる筈の両親から押し付けられる枷。急激に何度も訪れる環境変化。終わりの見えない借金。 そして、願ってももがいても手に入らない、普通の生活。 (もう、――――――) 最期に想ったのは何だったのか。 全てのしがらみから解き放たれたかのように、ハヤテの瞳は固く閉じられた。 強く強く、何者をも寄せ付けないかのように―――。 前へ 目次へ 次へ
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