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主人公 虹浦ゆうき(高町ゆうき) 高町なのは フェイト・T・ハラオウン 八神はやて 時空管理局 ユーノ・スクライア クロノ・ハラオウン リンディ・ハラオウン 三原新弥 敵対勢力 グラス・ビグフォン 海鳴市の人々 アルフ 高町士郎 高町桃子 高町恭也 高町美由希 アリサ・バニングス 月村すずか 稲本しょうき 田門りょう 吉池れな(稲本れな) 井隼あまつ 如月ゆきえ
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主要キャラクター ヴィヴィオ 高町なのは フェイト・テスタロッサ ユーノ・スクライア 時空管理局 クロノ・ハラオウン リンディ・ハラオウン レジアス・ゲイズ 機動六課 ギンガ・ナカジマ スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター 八神家 八神はやて ヴィータ ザフィーラ シグナム シャマル リインフォース その他キャラクター 月村すずか プレシア・テスタロッサ ナンバーズ ジェイル・スカリエッティ チンク ウーノ セッテ Vivid アインハルト・ストラトス オリヴィエ・ゼーゲブレヒト ヴィクトーリア・ダールグリュン ViVid Strike! フーカ・レヴェントン リンネ・ベルリネッタ マテリアルズ 星光の殲滅者/シュテル・ザ・デストラクター 雷刃の襲撃者/レヴィ・ザ・スラッシャー 闇統べる王/ロード・ディアーチェ 砕け得ぬ闇/ユーリ・エーベルヴァイン 魔法少女リリカルなのはシリーズ ViVid ViVid Strike!
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 空を飛ぶ竜の背で感じる風は一時も休まることなく頬を叩き髪をなびかせる。 目に入りそうになった髪の一筋をかき上げたキュルケは指の間から見えるひときわ大きな雲の中におぼろげに光る何かを見つけた。 髪に当てた手をそのままに目をこらしていると、それは横に広がる輪郭を雲の中に映していき、なんの支えも無く宙に浮くその姿を見せていく。 「見つけたわ。あれ」 それこそがアルビオン。霧のベールをまとうが故に白の国とも呼ばれる浮遊大陸である。 その大陸にそびえる山に積もった万年雪が日の光を照り返し、まるで自らの内から発していたかのように輝いていたのだ。 キュルケが見たものと同じ光を見たタバサが、自らの使い魔である風竜の耳元で囁くと、それは翼を大きく羽ばたかせ首をアルビオンに向けた。 アルビオンの周りを囲む雲が後ろに流れるたびに、それまで淡い影だった大陸は徐々にはっきりとした輪郭と色を得ていく。 「ギーシュ、出番よ」 「ふふん。ぼくのヴェルダンデにまかせたまえ」 シルフィードの背に乗りラ・ロシェールから飛び立ったものの、キュルケ達はルイズがアルビオンのどこに行ったかは全くわからない。 それを見つけるための決め手こそギーシュの使い魔ジャイアントモールのヴェルダンデなのだ。 「さあ、頼むよ。ヴェルダンデ」 ギーシュが使い魔に命令する、と言うより麗しい女性のように頼まれたヴェルダンデは鼻を少し上げて左右に振り始めた。 モグラは元々嗅覚に優れた動物である。ジャイアントモールの嗅覚はさらに優れており、地中深くにある宝石を探し出し、嗅ぎ分けることすらできる。 それならヴェルダンデの嗅覚を使って水のルビーを見つければ、それをつけたルイズも見つけることができる。 ギーシュはそうラ・ロシェールでヴェルダンデと再会した後に蕩々と語ったのだ。 「ふんふん、なるほど」 「どう?ルイズはどこにいるの?」 ギーシュはさらさらの髪をかき上げ、ふっと鼻で笑うと答えた。 「わからない、だってさ」 「タバサ、ちょっと宙返りして。余計なもの捨てるから」 それを聞いたタバサは全く躊躇することなく真顔で頷く。 「わ、わ、わー、ちょっと待ってくれたまえ」 ギーシュの必死の叫びに何か思うことがあるのか、タバサはシルフィードの傾きかけた体を水平に戻す。 ただ、後ろを向いてギーシュを見る目は一見いつもと変わらないものであったが、被告人の言葉を聞く冷酷な裁判官のようでもあった。 「いいかね。いくらヴェルダンデの鼻が優れていると言ってもアルビオン全部の宝石の臭いが分かるほどじゃないんだ」 「それで?」 キュルケの二つ名は微熱。 だが、その言葉は吹雪よりも冷たい響きを秘めていた。 ──つまらないことだったら落とす とでも言いたげに。 「アルビオン全部はムリだけど見える範囲くらいなら十分嗅ぎ分けられる。それでも目で探すよりはずっと早いし確実なはずさ」 ギーシュはさらに説明を続ける。 ここで落とされたらメイジといえどもたまったものではない。 フライやレビテーションの魔法を使うにも限界はあるのだ。 「だからアルビオン上空をくまなく飛んで欲しい。必ず見つかる。いや、見つけてみせる」 「それしかないわね」 もう一度アルビオンを見たキュルケは溜息を一つついた。 ヴェルダンデが現れた時にはアルビオンが見つかればすぐにわかるというように聞かされていたのに随分と話が違ってしまった。 だからといってキュルケはここでルイズ探しをやめる気はない。 それどころか絶対に見つける気でいた。 「あなたが起きていればもっと別の方法もあったかも知れないわね」 キュルケは胸に抱いていたフェレットのユーノの背を毛並みに沿って撫でる。 まだ死んではいない。 しかし血を流しすぎた白い獣からは温かさよりも冷たを感じる。 「思ったとおりにはいかないものね」 シルフィードが雲の中に滑り込んだ。 視界が一瞬だけ白く覆われ、すぐに晴れる。 雲を抜けるとその下にはもうアルビオンの大地が広がっていた。 ──思ったとおりにはいかない まさしくその通りだ。 キュルケとギーシュは竜に乗り慣れていない。 タバサもシルフィードの主人ではあるものの未だ竜の乗り手として熟練しているとは言いがたい。 特に移動するアルビオンまでの航路の知識は船乗りには及ばないし、フネとの速度差も実感してはいなかった。 故に彼女らが思ってもいないことが起こっていた。 窓の外を見るルイズの目に映るいくつもの雲は流れては消え、また消えては流れる。 だが、それは瞳に映るのみで心は全く違う二つのものを見ていた。 1つは彼女の婚約者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 手を引かれてラ・ロシェールの港に走っていくのはまるでおとぎ話の1シーンのようでもあり、夢のようでもあった。 彼がいればこの任務を必ず果たせると確信できる。 それに彼は魔法も満足に使えない自分のことを覚えていてくれたし、結婚まで申し込んでくれた。 その時のことを思いだし、ルイズは頬を赤らめ、ほうと溜息をついた。 もう一つは彼女の使い魔、ユーノ・スクライア。 剣と魔法を操り、無数の傭兵の前に立つ彼の後ろ姿は自分よりもずっと年下なのにとても頼もしく見えた。 彼は今一番近くにいて欲しい人。 だけどその後ユーノは追いかけては来なかった。 その時のことを思いだしたルイズはレイジング・ハートを固く握りしめた。 (ユーノ、私はここよ。こっちよ) 声は届かなくても念話なら届くかも知れない。 届けば空を飛べるユーノなら必ず追いかけてくるはず。 (早く来て) ワルドの申し出にどう答えるか。 その答えはもう決まっていた。 だけど、どうしても言えずにいた。 ワルドの前に行こうとする足は止まり、答えを伝えようとすれば喉がつまる。 ──ユーノならきっと喜んでくれるわよね そうすればきっと答えられるような気がした。 ルイズは再び外を見る。 青い空が見えた。流れる白い雲が見えた。眼下には大地が見えた。 アルビオンはまだ見えなかった。 ユーノはどこにも見つからなかった。 これはシルフィードがアルビオンの大地に影を落としたのと同じ時刻のこと。 ルイズの乗るフネは未だアルビオンを離れた空にあった。 ヴェルダンデの鼻があるとはいえ、どこにいるかわからないルイズを見つけるにはアルビオン中を飛び回るしかない。 しかしシルフィードの背に乗り、空を飛ぶギーシュ達はルイズを見つける前に逆に見つけられていた。 「うわああ、来た、来た、来た!」 酷くうろたえてギーシュはちらちらと後ろを伺う。 「ちょっとは落ち着きなさい」 「そりゃそうだけど」 アルビオン大陸中央部に入ってからすぐの事だ。 たまたま後ろを見ていたギーシュは雲間に小さな影を見つけた。 何かと考えているうちにどんどん接近してくるそれを見続けていたギーシュは思わずそれはもう情けない顔──モンモランシーには見せなくない──をしてしまった。 それは風竜だったのだ。 ただの風竜ではない。背中に人を乗せている。つまりは竜騎士だ。 アルビオンはほとんどレコン・キスタの勢力下にあるという。 だったら、こんなところを飛んでいるのは間違いなくレコン・キスタ側の竜騎士だ。 杖を振りかざして「降りろ」と合図を送っているのが見えるほどに近づいたが、冗談ではない。 アルビオン王家に接触しようとしているトリステイン貴族が捕まってただですむはずがないではないか。 ルイズと一緒にいるワルドがレコン・キスタに着いていると予想されている今ならなおさらだ。 「もっとスピードは出ないのかい?このままじゃ追いつかれる」 「無理」 完結に答えたタバサの後ろでまたもギーシュは情けない声を上げる。 シルフィードも風竜ではあるがまだ子供。しかも、こちらは3人乗りで向こうは軽装の1人だけ。 どう見ても向こうの方が速い。 「ど、ど、ど、どうするんだよ」 追いつかれるのも時間の問題だ。 これ以上速度が上げられないシルフィードの下を村が通りすぎ、街道が通りすぎる。 草原を通り過ぎた後は森が広がっていた。 タバサは握りしめた杖の頭を上に向ける。 「私に考えがある」 タバサがあの時──学院で大砲を持ったゴーレムと戦った時──と同じように呟いた。 サウスゴータ地方に配属された竜騎士である彼はいつもの通り哨戒を続けていた。 すでに王国軍が一掃されたこの辺りの任務で退屈をしていた彼は、大あくびの途中で思いがけないものを見つけた。 こんなところを風竜が飛んでいたのだ。 しかもその背に乗っているのはレコン・キスタに参加しているとは思えないどこかの学生らしき人だ。 つまりは不審竜と不審者である。 ぴしゃりと頬を叩いて眠気を晴らした彼は手綱を操り、風竜の速度を上げ不審な風竜を追った。 近づいて合図を送るが速度をゆるめる気配はない。 それどころか速度を上げて逃げようとまでしたのだ。 当然彼も任務を果たすべく速度を上げて追う。 逃げられるはずがない。風竜の大きさもさることながら乗っている人数の差から考えても無駄なことだ。 そうしてサウスゴータ近くの森林上空まで来た時だ。 逃げる風竜の周囲にいくつかの光点が突如発生したのだ。 「なんだ?」 彼もメイジだ。 その光点が何かはすぐに知れた。 魔法で作られた火球がカーブを描きながら飛んでくる。 自動的に目標を追いかける火の魔法、フレイムボールだ。 「くっ」 この風竜は残念ながら使い魔ではないが彼も竜騎士になったばかりの新米ではない。 音に聞こえた無双ともうたわれるアルビオンの竜騎士なのだ。 普段の訓練通りにマジックアローを飛ばし、一つずつ火球にぶつけ相殺していく。 「やるな」 その火球の起こす爆発に彼はいささか舌を巻いた。 火球の速度、大きさから考えても腕の悪いメイジではない。 おそらくトライアングル以上のメイジだ。 爆風が晴れると逃げる風竜が急激に上昇を始めていた。 「これを狙っていたか」 上空には折り重なった分厚く、濃い雲があった。 「しっかり捕まって」 タバサはそうぽつりといつものように言うと、キュルケの返事も聞かずにシルフィードの首を真上と見まごうくらい高く上げた。 「ひっ」 後ろからのギーシュの悲鳴を聞きながらキュルケはシルフィードの背びれに両手でしっかりとしがみついた。 途端、目の前に厚すぎて灰色になった雲が迫る。 その分厚さにキュルケは目の中に雲が入ってくるような錯覚を覚えて思わず目をきつく閉じた。 それは手ばかりでなく足でもしがみついているギーシュや不思議な掴まり方をしているジャイアントモールのヴェルダンデも同じだった。 逃げ続ける風竜が雲の中に隠れても彼はまだ余裕があった。 相手の風竜を操る乗り手の腕は悪くない。いや、彼の所属する竜騎士団の中でも中の上には位置するだろう。 まるで風竜に言い聞かせるように自在に操っている様子から考えると、あの風竜は使い魔なのかも知れない。 だが、いかんせんあの風竜には荷物が多すぎたし、乗り手は空戦の経験に不足しているようだ。 分厚い雲に隠れるという発想はいいが、入り方がいかにもまずい。あれでは飛ぶ方向がはっきりわかってしまうではないか。 先ほどの魔法の応酬で距離は開いてしまったが追跡に問題はない。 彼もまた手綱を引いて竜の首を上げ、雲に飛び込んだ。 ──このままやつの頭を押さえる 視界が雲に覆われても焦りはなかった。むしろ余裕すらあった。 このような時には経験がものを言う。 その差を確信したが故に彼は目前にぼんやりとした竜の影を見つけた時、笑みさえその顔に浮かべた。 首の後ろをひんやりとしたものが掴んだ それが何かを確認する暇さえなく、突如無数の針に首を刺されたような痛みを感じた瞬間、彼の心と体は力を失い自らの竜の背に身を横たえた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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それは、小さな願いでした。 望んだのは静かな日々。待っていたのは遠く離れた大切な友達との再開。 ……だけど、訪れたのは突然の襲撃者。 出会い、戦い、大きな力……。 運命が、今静かに動き初めて 嵐の中での、心を繋げた絆を信じて…… 宇宙の騎士リリカルなのはBLADE…… 始まります。 いつも通りの静かな夜だった。 美しい月を映す水面は、優しい風に吹かれて静かに波を立てる。そんな静かな夜の出来事…… 「あはは、そっか……そうだったんだぁ」 ここはバニングス邸。 家の中から少女の声が聞こえる。 声の主はアリサ・バニングス。今は友達のすずかと電話中だ。 「……でも、フェイトに会えるのちょっと楽しみよね」 『でも私達でもこんなに楽しみなんだから、フェイトちゃんとの思い出が たくさんあるなのはちゃんは、もっともっと楽しみなんだろうね』 電話の相手、すずかもうんと頷きながら言う。 「フェイトがこっちに来るって聞いて、なのは本当に嬉しそうだったもんね~」 アリサは言いながら、机に並べたフェイトや自分達の写真を眺める。 「フェイトのお迎えイベント、今のうちから考えておこうか!」 そこでアリサは「いいこと思い付いた!」といった感じに立ち上がる。 『いいね~』 「うん。パーっとやろ~」 『誰のお家でやる?』 「喫茶翠屋とか♪」 アリサは笑いながら提案した。 第2話「赤い戦慄エビル」 「民間人への魔法攻撃……軽犯罪では済まない罪だ」 「何だテメェ?管理局の魔導師か?」 バルディッシュを向けられたヴィータが、フェイトに質問する。 「時空管理局嘱託魔導師……フェイト・テスタロッサ。」 フェイトはヴィータのそばにいる白い魔神……ブレードを気にしながらも名乗る。 「抵抗しなければ、弁護の機会がキミにはある。同意するなら、武装を解除して……」 「誰がするかよっ!」 だがフェイトの説明を聞かずに一気に後退し、ビルから飛び出すヴィータ。 「逃がすか!」 それを見たブレードはすぐに後を追うようにビルを飛び出す。 「あ……ちょっと!」 フェイトは飛び出していったブレードに声を掛けようとするが、凄まじい速度で飛んでいったためにそれを断念。 そこでフェイトは一瞬なのはを見て…… 「ユーノ、なのはを頼むよ!」 「うん!」 フェイトもブレードの後に続くため、ビルから飛び出した。 「ユーノくん……」 「うん。」 ユーノはなのはに右手を当て、治療しながらこれまでの経緯を説明する。 フェイトの裁判が終わり、なのはに連絡をとろうとするも失敗。さらに海鳴市に張られた結界を観測し、今に至る、と。 「そっか。……ごめんね。ありがとう……」 「あれは誰?なんでなのはを?」 礼を言うなのはに、今一番の謎を聞くため核心に迫るユーノ。 「わかんない……急に襲ってきたの……」 なのはも少し暗い表情で呟く。いきなり襲われる覚えなど無いというのに…… 「……でも、もう大丈夫。フェイトもいるし、アルフもいるから」 「……あの、白いテッカマンは……?」 大丈夫と告げるユーノに聞き返すなのは。『テッカマン』……さっきヴィータが呼んでいた名称だ。 ユーノにもテッカマンなど心当たりは無い。 「それが……僕たちにもよくわからないんだ……」 「そうなの……」 「でも、多分……」 ユーノは「多分」と言い、ビルから外を見上げた……。 「くっ!」 ガキィン! 鋭い音をたてて、ヴィータのグラーフアイゼンとブレードのテックランサーがぶつかり合う。 「なんなんだテメェは!」 「お前はラダムか!?」 ヴィータはブレードに向かって叫ぶが、ブレードがその質問に答える事は無い。 「何訳わかんねぇこと言ってんだ!」 ヴィータはグラーフアイゼンでブレードを弾き、距離を取る。 「グラーフアイゼン!」 『シュワルベフリーゲン』 そして4つの小さな鉄球をグラーフアイゼンで叩き、ブレードへと飛ばす。 ヴィータの中距離誘導型射撃魔法だ。 シュワルベフリーゲンはブレードに向かって飛んでいくが…… 「ふん!」 ブレードは飛んで来た4つの鉄球すべてをたたき落とし、そのまま突っ込んで来る。 「……な!?障壁!」 『パンツァーヒンダネス』 シュワルベフリーゲンをたたき落とされた事に驚きながらも障壁を張る。 次の瞬間、ブレードのテックランサーがヴィータの障壁に衝突。 「うおぉぉおおお!!」 「(な……なんて威力だ……!このままじゃ破られちまう……!)」 明らかに押されているのはヴィータだ。テッカマンの力が予想以上に強かった。 そこへ…… 「バリアァ……ブレェェェイクッ!!!」 「なに……!?」 下方向からの攻撃。アルフの放ったパンチ……バリアブレイクが、ヴィータを守る障壁に直撃。 ただでさえブレードの斬撃で破られかけていた障壁に亀裂が生じ…… 障壁は大きな音をたてて破られ、消滅。 「……ンのやろぉーッ!」 怒ったヴィータはアルフの目前まで急降下、グラーフアイゼンを振り下ろす。 「ふんっ!」 「あぁっ!」 咄嗟にアルフも防御魔法を発動するが、たやすく破られ地面へと落下するアルフ。 「……!?」 アルフに攻撃し、一瞬動きが止まったヴィータ。だがすぐに右方向から飛んできた攻撃に気付く。 ヴィータは飛んできた何かを咄嗟にかわす。 「これは……テックランサーか!?」 ヴィータの横を掠めていったのはブレードが投げたテックランサーだ。 ブレードは接近しながらテックランサーを投げ、すぐにワイヤーで回収、そして再びヴィータに切り掛かった。 「答えろ!お前はラダムの手先なのか!」 「ンなこた知るかよッ!」 言いながらブレードの攻撃をかわすヴィータ。この相手の攻撃を正面から受けるのは危険だ。 それはさっきの接触で証明されている。悔しいが今はかわすしかない。 一方、アースラ。 スタッフ一同は、アースラの整備を後回しにして海鳴市の広域結界を解こうとしていた。 もちろんモニターは何も表示しようとはしない。 「(無事でいて……なのはちゃん、Dボゥイ……!)」 リンディは砂嵐を映すだけのモニターを見て冷や汗を流す。 「術式が違う……ミッドチルダ式の結界じゃないな」 「そうなんだよ……どこの魔法なんだろ?コレ……」 結界の解析完了まであと少し。 クロノとエイミィはこの「ミッドチルダ式では無い術式」に不安を感じていた…… 「……ッ!?」 一方、ヴィータはアルフのバインドにより自由を奪われていた。 「終わりだね。名前と、出身世界……目的を教えてもらうよ」 フェイトはバルディッシュをつきつけながら言う。 ブレードはそんなヴィータを黙って見つめる。 「(奴はラダムとは関係無いのか……?いや……)」 近付いてくる何かの気配に気付いたブレードは、再び力強くテックランサーを握りしめた。 そしてブレードの予感は的中する…… 「……なんかヤバいよ!フェイト!」 アルフもまた何かに気付き、警告するが…… 「……!!」 時すでに遅し。突如現れた女がフェイトに斬り掛かってきたのだ。 咄嗟にバルディッシュで受けるが弾き飛ばされるフェイト。 ヴィータは自由を奪われながらも「……シグナム?」と女の名を口にした。 「レヴァンティン、カートリッジロード。」 シグナムと呼ばれた女は剣状のデバイス『レヴァンティン』に命令し、剣の柄から「カートリッジ」を排出させる。 そしてレヴァンティンは炎を纏い…… 「紫電一閃ッ!」 『Jar』 フェイトに向かって急降下、そのままレヴァンティンを振り下ろした。 「なっ!?」 バルディッシュで受けるが、レヴァンティンの圧力に堪えられずに切断される。 そしてシグナムは再び剣を振り下ろすが…… 『ディフェンサー』 切断されたバルディッシュが咄嗟に防御魔法を展開。致命傷は避けることができたが、それでも吹っ飛ぶフェイト。 そしてフェイトはユーノの付近に落下し、激しい轟音と共にビルの壁を突き破った。 「フェイトーーーッ!」 アルフは墜落したフェイトに駆け寄ろうとするが、銀髪の男に阻まれそれを断念する。 一方、シグナムもヴィータを捕縛していたバインドを破壊。 「あまり無茶はするな。我らが主が心配する」 「わぁってるよ!」 優しい口調で言うシグナムに、少し不機嫌気味に答えるヴィータ。 「それから、落とし物だ。破損は直しておいたぞ」 「……ありがと。」 シグナムはヴィータの帽子を手渡し、ヴィータもボソッと礼を言いながら受け取る。 そしてぶつかり合うアルフとザフィーラを眺めながら状況をまとめるシグナム。 「状況は……3対4。いや……」 「4対4だな!」 シグナムに割り込んでヴィータが言う。 フェイト・なのは・アルフ・ブレードvsシグナム・ヴィータ・ザフィーラ…… これならば4対3のはずだが……? 「ああ、そうだな。一対一なら、我らベルカの騎士に……」 「ふふ…」と笑いながら言うシグナム。そして…… 「負けはねぇッ!!」 シグナムに続けてヴィータが言い、二人は再び戦場へと赴く。 「状況は4対4」。その意味とは……。 「(……俺が感じた気配はあの女達の物では無い。ならば……)」 シグナムもザフィーラもさっきブレードが感じた気配とは違っていた……。 つまり、まだ誰かが来るということだろう。そして…… 「……ッ!!」 上空から突如として飛んできた短剣。ブレードは咄嗟にそれを弾く。 「ラムショルダー……だと?」 そしてこの武器の持ち主には心当たりがある。ブレードは「まさか……!」とラムショルダーが飛んできた方向を見上げる。 そこにいたのは、赤いテッカマン。 「久しぶりだね、兄さん……」 「エビルッ……!」 しばらく睨み合う二人。相手は赤い悪魔、『テッカマンエビル』だ。 「やはり生きていたか、エビルッ!」 「当たり前さ。兄さんとの決着をつけるまでは、死ねないよ」 嘲笑うかのように言うエビル。 「……俺もお前達を滅ぼすまでは、死なないッ!」 刹那、ブレードはエビルに急接近。二人のテックランサーがぶつかり合い、火花を散らす。 「はっきり言ってくれるじゃないか?兄さぁんッ!!」 「……っ!」 次の瞬間、ブレードはエビルのテックランサーに弾き飛ばされていた。 「……なるべく急いで帰りますから。……はい、それじゃあ。」 シャマルはシグナム達の戦闘を眺めながら主であるはやてに通信を入れる。 あまり遅くなって心配されるのもまずいのだ。 「……そう。なるべく急いで、確実に済ませます。」 シャマルはぽつりと呟き…… 「クラールヴィント、導いてね」 言うが早いかシャマルの指輪……『クラールヴィント』のクリスタル部分が宙に浮く。 一方フェイトは切断されたバルディッシュをリカバリーし、再びシグナムとぶつかり合っていた。 『フォトンランサー』 バルディッシュの機械音声が術名を告げる。 「……レヴァンティン。私の甲冑を。」 『パンツァーガイスト』 フェイトの狙いに気付いたシグナムは防御魔法を発動。シグナムの体をピンクの光が包む。 実に冷静な対応だ。 「打ち抜け……ファイアッ!!」 そしてフェイトは4つの光り輝くスフィアをシグナムへと発射。 だがシグナムは全く動じない。間違いなく直撃ルートだ。しかし…… 「……な!?」 「魔導師にしては悪くないセンスだ。だがベルカの騎士に一対一を挑むには……まだ足りん!」 シグナムは防御魔法、パンツァーガイストでフェイトの放ったフォトンランサーを全て弾き、再びフェイトに斬り掛かる。 カートリッジをロードし、渦巻く炎を身に纏ったレヴァンティンでだ。 「レヴァンティン!叩き斬れッ!!」 「……ッ!!」 再びフェイトは弾き飛ばされ、ビルの壁を突き破った。ビルの持ち主からすればこの上無く迷惑な話だ。 「フェイトちゃん!」 なのははユーノが張った回復・防御を兼ね備えた結界の中で叫んだ。 悔しいが今のなのはには何もできない。 ふと、別の方向を見上げると白と赤の閃光がぶつかり合っているのが目に入る。 「あれは……テッカマン?」 「俺達は双子だよなぁ!?兄さんの好きな兄弟愛はどうしたんだい!?」 言いながら突き刺すようにテックランサーを振るうエビル。 「なんの話だッ……!」 攻撃を受け、フェイトと同じようにビルの壁を突き破るブレード。 そしてエビルは追撃のために接近する。 「俺にあるのは……ラダムへの怒りと憎しみだけだッ!」 エビルがブレードのレンジに入った瞬間、背中のスラスターを噴射。エビルを蹴り飛ばす。 「……くっ!」 「うぉおおおおッ!!」 さらにエビルを追撃するブレード。お互いのテックランサーが火花を散らしながら上空へと昇っていく。 「(シンヤ……)」 シグナムはレヴァンティンにカートリッジロードさせながら一瞬エビルを見るが、再びフェイトへと目線を戻す。 「(あれだ……あの弾丸みたいなの……)」 フェイトもこの力量の差の秘密の一つがカートリッジであろうことに気付く。 「終わりか?抵抗しなければ命までは取らん」 「誰がッ……!」 シグナムの挑発に反応し、フェイトは再び立ち上がる。 「いい気迫だ。私はベルカの騎士、ヴォルケンリッターの将、シグナムだ。そして炎の魔剣、レヴァンティン……お前は?」 シグナムは興味のある相手の名前しか知ろうとはしない。そのシグナムから 名前を聞かれたということは、それなりに認められているのだろう。 「ミッドチルダの魔導師。時空管理局嘱託魔導師……フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ……」 フェイトもシグナムと同じ高度まで上昇し、自分の名を名乗る。 「テスタロッサ……それにバルディッシュか……」 シグナムはどこか気持ちの良さそうな顔で「ふふっ」と笑いながら復唱した。 「そんなものなのかい?えぇ!?兄さぁんッ!!!」 「ぐぁッ……!」 エビルはテックランサーでブレードのテックランサーを弾き、もう片方の腕に装着したラムショルダーで ブレードの装甲を切り裂いた。それにより地面に落下するブレード。 それと同時に、ザフィーラの攻撃を受けたアルフもブレードのそばに墜落する。 「く……エビルゥッ!」 「その声……アンタまさか、Dボゥイかい!?」 エビルを見上げ唸るブレードに、犬の姿をしたアルフが問い掛ける。 「……そう言うアンタは……?」 「アルフだよ、フェイトの使い魔の……!」 お互いに相手を認識する。 「Dボゥイ、ここは一つ連携といかないかい?」 アルフはブレードに提案するが…… 「断る!……奴は俺一人で倒すッ!」 「ちょ、ちょっとDボゥイ!」 ブレードはアルフの提案を拒否。再び背中のスラスターを噴射し、エビルに向かって突撃していった。 「何なんだい……まったく!」 「話は済んだようだな。」 「チッ……!」 愚痴るアルフに再び牙を剥くザフィーラ。アルフは飛び上がりそれを回避する。 なのはは結界の中でこの戦闘を見ている。 ユーノvsヴィータ。 シグナムvsフェイト。 アルフvsザフィーラ。 そして、赤と白の二人のテッカマン。 様々な色の閃光が驚異的な速度でぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返している。 「助けなきゃ……私が皆を、助けなきゃ……」 なのははフラフラと歩き始める。すると、突然レイジングハートから桜色の翼が飛び出す。 「レイジングハート……」 『撃ってください。スターライトブレイカーを』 「そんな……無理だよ、そんな状態じゃ!」 スターライトブレイカーの発射を指示するレイジングハート。だがレイジングハートはヴィータの攻撃により すでにボロボロで、コアには大量の亀裂まで入っている。こんな状態でスターライトブレイカーを撃つのは避けたいが…… 『撃てます』 「あんな負担のかかる魔法……レイジングハートが壊れちゃうよ!」 『私はマスターを信じてます』 「…………。」 『だから私を信じてください』 なのはは考える。だが、答えはすぐに決した。 「……レイジングハートが私を信じてくれるなら……私はレイジングハートを信じるよ!」 なのははスターライトブレイカーの発射を決定し、他の皆に念話で伝える。 「フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん……それから、テッカマンさん!」 なのはに呼ばれたブレード以外の3人はなのはを見る。ブレードには聞こえていないのだろう。 「私が結界を壊すから、タイミングを合わせて転送を!」 なのはの正面に桜色の魔法陣が展開される。それを心配そうに見る一同。特にフェイトだが…… 「なのは……大丈夫なのかい?」 「大丈夫……スターライトブレイカーで撃ち抜くから!!」 そして…… 「レイジングハート!カウントを!」 『All light Count……Nine……Eight……』 レイジングハートのカウントが始まる。途中で音声が途切れそうになる。 だがそれでもレイジングハートは大丈夫だと言う。 『……Seven……Six……』 「兄さぁぁぁぁぁんッ!!!」 「エビルゥゥゥゥッ!!」 二人は何度も激しくぶつかり合う。ブレードのテックランサーがエビルを切り裂き、エビルもまたブレードを切り裂く。 『……Five……Four……』 フェイトとシグナムもまたお互いのデバイスをぶつけ合う。 レヴァンティンとバルディッシュは鋭い効果音と共に弾け合い…… 『……Three……Two……』 アルフはザフィーラに頭突き攻撃。それにより吹っ飛ぶザフィーラ。 お互いに動物形態になり、二匹の獣が激しくぶつかり合う。 『……One……Zero……』 「……ッ!?」 次の瞬間、なのはの勢いは静止した。 胸から何者かの腕が伸びているのだ。愕然とする一同。もちろんなのはも含めて。 その腕は小さな桜色の光を掴んでいる。 苦しむなのはに比例し、光も小さくなっていくが…… 『Count……Zero』 「……スターライト……ブレイカー……!」 それでもなのははスターライトブレイカーを発射。凄まじい威力の桜色の閃光が、 「ドゴォン!」というこれまた凄まじい轟音を響かせながら空を目掛けて駆け抜け、協力な結界をブチ破った。 まったくもって凄まじい威力だ。味方さえも恐怖を抱くという…… 「結界、破れました!映像、来ます!」 アースラのモニターに映し出されるのは4人のヴォルケンリッターと、二人のテッカマン。 「何これ!?どういう状況!?」 慌てるエイミィ。 「これは……こいつら……」 続けてぽつりと呟くクロノ。 「あれは……?」 そしてリンディの目に映るのは白い魔神『テッカマンブレード』。 「結界が抜かれた……!?皆、一度散って、いつもの場所で集合!」 シャマルの声に反応し、散り始めるヴォルケンリッター。 「チッ……いいところで……!」 エビルも不服だがシャマルに従い、このエリアから離れることにする。 「待てエビル!逃げるのか!?」 ブレードは逃げようとするエビルを追撃しようと追い掛ける。 「フン……今回は見逃してやるよ。命拾いしたね、兄さん……」 「何だと……!」 「ふふ……それに、もうすぐテックセットしてから30分たつんじゃないのかい?兄さん?」 「……くっ!」 「だから今回は見逃してやるよ。……次会った時、兄さんに確実にトドメを刺してやるからさぁ……!」 エビルはそう言いながら立ち去ってゆく……。 「……あれは!?」 一方、クロノはモニターに映る映像を見て愕然とした。 それはシャマルが持っている黒い本……。 そして、それはクロノ……いや、ハラオウンの者にとって少しばかり嫌な因縁を持っていた。 戻る 目次へ 次へ
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ゴールデンウィーク特別企画【LYLICAL RIDER WARS】 この企画は当サイトチャットで発案・採用された、SS書き手諸氏による合同企画です。 「リリカルなのはのキャラクター達を、仮面ライダーに変身されたら」というテーマの下に、 それぞれが読み切りSSを執筆・投下していく、短編集的な企画となっています。 SSとやる気があれば参加は自由。 ただし、登場ライダーの被りを避けるために、参加したいという方は、一度チャットの方までお声をかけてください。 なおこの企画は、通常のSSの投下を制限するものではありません。 期間中に、企画に関するもの以外のSSを投下してもOKです。 クロス元:仮面ライダーシリーズ 最終更新:2010/8/14 EPISODE01:スバル編 (作者:ししおー氏) EPISODE02:ユーノ編 前編 中編 後編(作者:T-2改氏) EPISODE03:ヴィヴィオ編 前編Aパート 前編Bパート(作者:アイゼン氏) EPISODE 特別編:仮面ライダー×仮面ライダー ユーノディケイド&スバルクウガ(作者:T-2改氏)
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-―‐ ´ `丶 / \\ / ヽ、 丶.\ /, | iハ | い ヽ // i | | i |^| ! │ │ | ' ハ ' ' / | | | i i |八 | │-‐!─|-i | | i | i /イ i | |_|」 _ i | |ハ |∨l八| |... j | | | | i八´| i| l 八| \|/ィ爪苅ア|. / 八| │ | | i ヽ代芋テミ. 弋/(ソ' j//jハ| | |八八 ハ 弋/ソ / .イ)} |. ∨\{\ト∧ ' 厶イ |'´i |. \ \| | . - イ | | i | | レ介ト | i| | i │ | . | | |i ‐r ´ /ヽ| | i | | | | |i 几. _/ | | i │ | . | |i j/| ∧∧ /| |\ | | j リ r'7//l Y⌒Yヘ.///| | `\ | |. / // |//,'|人__人 ///| | `丶、 【固有能力】 [ ガードスキル:ディストーション / 互いの攻撃の威力が半減する、常時発動型固有能力 [ ガードスキル・エンジェルズウイング / 任意のモンスターの枠を3枠減らす。まだ、成長の余地がある [ ガードスキル・ハーモニクス / 選択したモンスターと同じ行動を行う分身を生み出す。選択された対象が行動の対象にされた場合、両方がその行動を受ける。1戦闘1回 【汎用能力】:方向性…【防御】+【速度】(師匠:殺せんせー) 【不屈】(防御1段階目) / そのターンの間、戦闘不能になるダメージでもHP1で1度は踏みとどまる 【鉄壁】(防御2段階目) / このターンの味方のダメージを半減させる、これは貫通できない 【速攻】(速度1段階目) / そのターン、味方1体に最速行動を与える 【猛襲】(速度2段階目) / 味方1体をそのターンの終了時に再度行動させる。指示は先行入力する。 【速攻蹂躙】(速度3段階目) / そのターン味方全員が【最速行動】を追加で得る (最速行動+通常行動1回分の扱い) ※9スレ目・A本選時点での能力 現在の主力 名前 種族 性別 備考 ブギーポップ ??? ? 戦闘竜のお見合いに行った際に遭遇した魔物。最終個体…? スピリット・オブ・アース ??? ? 模擬戦で登場した最終個体。植物系ギガの系譜 レシラム ??? ? 模擬戦で登場したギガ盾。ポケモン盾系譜の最終個体 バラン バラン+13? ♂ 戦闘竜と竜王の息子。氷華の兄。レジェンズ族のグリードー種の魔物。極度のシスコン 過去に確認した仲間 名前 種族 性別 備考 ホーリー ホーリーエルフ ♀ 王天君の妻で、やる夫のグラディス、奏のミントの母。女神の祝福、ホイミ、スクルトを持った回復役 ガードナー ビッグ・シールドガードナー ♂ かばう際にダメを軽減する【強固な盾】、確率でカウンターダメージを与える【弾く盾】持ちの盾役 ミント ミント・アドネード ♀ 王天君とホーリーの娘。グラディスの姉。ホーリー同様、回復役だった様子 梔 梔 ♀ ミントの娘。コミュニケーションをとる際は、スケッチブックに文字を書いて伝える。母親までと違い、回復以外の能力も覚えたらしい インデックス インデックス ♀ 梔子の娘。【完全記憶能力】で覚えた能力を【禁書目録】を使い無効化や【磨滅の声】、【強制詠唱】などの妨害手段も持つ。 br()山茶花の種族問題解決の際によく相談を持ち掛けた フシギバナ フシギバナ ♂ メガ盾。【護身獣】による枠軽減能力持ち。やる夫のメガ盾血統同様、「生命の種」植え付けからの持久戦型。 ザフィーラ ザフィーラ ♂ ガードナーの子孫。お化け屋敷世界のアルフと似たようなスキル構成の盾役 一姫 紫木一姫 ♀ 曲弦糸を重ねて、相手へのダメージを与える場を整える絡め手のサポーター。 ヒグチ 篚口裕也 ♂ インデックスの夫。【禁書目録】へのアクセス能力持ちだった? 美穂子 福路美穂子 ♀ インデックスの子孫。先祖由来の回復能力がさらに伸びた他、妨害などもするようになった。また、【魔眼】(先読みの魔眼)要素にも覚醒している。ユーノの血統と組むことで禁書により、自軍に有利な場を作ってゆく ユーノ ユーノ・スクライア ♂ ザフィーラの子孫。盾役。自陣への攻撃誘導や大防御など防御に磨きがかかっている。また、【禁書目録】へのアクセス能力を習得。【リーダー】と組むことで自軍に有利な場を作る ウォルター ウォルター・C・ドルネーズ ♂ 一姫の子孫のワイヤー使いな執事。速さ自慢の弦月を抜くほど、素早さが高い。戦術は先祖同様に、ワイヤーを重ね相手を削るといったもの カビゴン カビゴン ♂ 7スレの模擬戦で新たに登場した、メガ盾の血統。フシギバナの血統がギガアタッカーに役割を変えた代わりに、盾役を務める。主な役目は、フシギバナ血統の守りやサポートなど ビオランテ ビオランテ ♂? フシギバナの子孫。隠し味でのギガ化に伴い、盾役から攻め手に役割を変更した。基本スタイルは生命の種を植え付け、場を晴れにした後からの暴れまくりによる蹂躙 ベルフェゴール ベルフェゴール ♂ A本選のVS御堂筋戦の観戦で確認した魔物。ウォルターの子孫? アレトゥーサ アレトゥーサ ? ビオランテの子孫。先祖同様、日本晴れからの生命の種やあばれまくりによる蹂躙スタイル リオレウス リオレウス ? 新しい【ギガボディ】の魔物。 ラッキー ラッキー ? カビゴンの子孫?【変異個体】のメガボディ【護身獣】もち。[ 変異個体 / 本来なら通常サイズのモンスターだが、変異しておりサイズが異なる。「タマゴうみ」を使い、庇う合間に回復もする スカルグレイモン スカルグレイモン ? 【ギガボディ】の【破壊獣】。[ 破壊獣 / 枠を緩和し、1枠分減らすことができる。攻撃行動以外を取ることができない。「あばれまくり」持ち 赤司 赤司征十郎 ♂ A本選時の奏PTのリーダー。美穂子の子孫の【軍師】。最上位の先読み系魔眼の【天帝の眼】持ち。アリスの天敵タイプの能力持ちのモンスター コロナ? コロナ・ティミル ♀ A本選の決勝、VSアリス戦でAAのみ確認。編成数やAAの原作的つながり的に奏のモンスターと予想し明記。ユーノの子孫? 竜王 竜王 ♀ 戦闘竜の妻で、バラン、氷華の母親(自称)竜の頂点に立つ者。1軍に組み込み予定の血統の子 過去の戦闘データ 模擬戦(3スレ・新人4人運用時) 模擬戦(7スレ・告白バトル?な模擬戦)
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第8話 もう一人の魔法少女 バラージの一戦を終えた後、ビートルを失った為に帰る手段を失い意気消沈していた時、突如何処からもなく現れた一隻の浮遊船。 時空管理局の保有する次元航行船アースラである。 その全長は現代である巨大タンカーと同じかそれよりも二回り位大きい。 そして、その次元航行船アースラの中にある部屋に連れて来られた。 其処にあったのは畳に盆栽にと和風をイメージしているのだろうがハッキリ言うと誤解しているようにも見て取れる。 その証拠にその部屋を見た途端ムラマツキャップが微妙そうな顔をしていた。 そして、その部屋の奥には一人の女性が座っていた。 翠色の髪を後ろに束ねたポニーテールと呼ぶべきだろう髪型に綺麗なルビー色の瞳をし紺色の制服を纏った綺麗な女性だ。 「困っていた所を助けて頂き有難う御座います。私は科学特捜隊のムラマツです。それでこちらに居るのが隊員のハヤタ、イデ、アラシ、そして特別隊員の兜君に高町君です」 「宜しくお願いします。高町なのはで」 「マママ、マイネームイズ、コウジ・カブト。ディスイズアペン。ハウアァユー」 なのはは普通に挨拶を交わしたが甲児は何故か片言の様な英語を話し出した。 しかも半分以上が解読不明の様な。 「どうしたんだい甲児君」 「だだだ、だぁってよぉハヤタさん。あの人外人だろう? 俺英語苦手なんだよぉ~」 どうやら目の前の女性が明らかに外人に見えた為に日本語は通じないだろうと判断しての事だろうか甲児がハヤタに泣きが入った。 それを見ていた女性がクスリと口元を隠しながら笑う。 「心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと日本語も話せますから」 「本当ですか? そりゃ良かった」 ホッと胸を撫で下ろす甲児。 そんな甲児を見て皆がドッと笑い出したのはご愛嬌である。 そんなお茶目な一面もさておき、一同は用意された座布団の上に座るとその女性の話を聞いた。 「自己紹介が遅れましたね。私は時空管理局所属のアースラ艦長であるリンディ・ハラオウンと申します。貴方達の戦いですが、失礼ですが見させて貰いました」 (ギクリッ!) リンディのその言葉を聴いた途端ハヤタは思わず肩が震えた。 もしかしたら自分の変身する瞬間を見られたのでは? そう思っていたのだ。 そんなハヤタに向かいリンディは微笑んだ。 (心配しなくても貴方の正体は誰にも伝えませんよ) 「!!!」 すると、ハヤタの脳裏にリンディの声が伝わってきた。 驚きである。まぁ何はともあれ皆にばらされないのであれば一安心である。 そんな訳で会話は続いた。 「私が貴方達を救助したのには実は理由があるんです」 「理由、それは一体何なのですか?」 「はい、その理由はそちらにいらっしゃるなのはさんです」 「え、私ですか?」 突然自分を指されたので思わず自分を指差した。 何せ指名されるなど思ってもいなかったのだから。 「なのはが? 一体何で?」 「それは、貴方が使ってるインテリジェントデバイスの事と、貴方が集めているロストロギアについてです」 「ロストロギア? それってもしかしてジュエルシードの事ですか?」 イデが鋭く尋ねる。 それにリンディは頷いた。 だが、隣でアラシは首を傾げていた。 「ロスト何チャラだのジュエルシードだの、俺はどうもそう言った難しい単語は苦手だ」 どうやらアラシには理解するのは難しいようだ。 そんなアラシは放っておき会話は続いた。 「それで、貴方はそのジュエルシードの捜索をしているみたいだけど、それは一体何故?」 「えっと、頼まれたんです」 「すみません、僕から説明します」 答えに渋るなのはに代わりユーノが説明を行った。 彼がジュエルシードを見つけた経緯。 輸送中に謎の事故により殆どのジュエルシードが地球に散らばってしまった事。 それを集めようと向かったは良かったが力が足りずなのはに協力を申し出た事。 その後の事も全て話した。 「成る程ね、自分で起こしてしまった事件を自分の手で解決しようとしたのね。偉いわ」 「い、いえ…それ程では」 「でも、同時に無謀でもあるわ。何故、事前に私達に通報しなかったの? 貴方一人ではどうしようもない事位分かってたんじゃないの?」 「す、すみません」 今度はユーノが更に小さくなってしまった。 体がフェレットなだけに更に小さく見える。 そんなユーノを見てリンディは軽く溜息を吐く。 「それより、そろそろ元の姿に戻ったらどう? 何時までもその姿じゃ窮屈でしょ?」 「へっ? 元の姿」 「何言ってるんだよリンディさん。ユーノは元々フェレットだったんじゃねぇの?」 なのはが甲児が不思議そうに尋ねる中、ユーノの体を閃光が包み込む。 そして、彼の姿が瞬く間に人間の少年に変わったのだ。 金髪に奇妙な柄の入った服を着てマントを羽織った少年であった。 「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだね」 「ゆゆゆ、ユーノ君がぁぁぁ!」 「おおお、お前人間だったのかああぁぁぁ!」 振り向いたユーノの先では仰天して腰を抜かした甲児となのはが居た。 幾ら何でも驚き過ぎでは? 「あ、あれ? 僕前にこの姿見せてなかったっけ?」 「見せてないよ! 最初からフェレットだったよぉ!」 「お、お前! どうやって変身したんだよ!」 どうやらお互い意志の疎通が出来てなかったようだ。 「ふむ、まぁ君達の事は後で思う存分話してもらうとして、それでリンディ艦長。私達を此処に連れてきた目的とは?」 驚く三人をとりあえず置いておいて、ムラマツキャップは話を進めた。 其処は流石と言うべきである。 「本来なら私達時空管理局が以降のジュエルシード捜索を一手に引き受けたいと言いたいのですが、この地球には私達の常識を遥かに超えた存在が多数居る事が分かったのです」 「怪獣に宇宙人、それに機械獣の事だな」 「うむ、私達も怪獣には手を焼いています。ウルトラマンが居なければ我々は満足に怪獣を撃退する事が出来ない。何とも歯痒い話だ」 「そうですね」 苦虫を噛み潰したような顔をするムラマツにリンディは同情の言葉を述べた。 そして、一呼吸を置こうと置かれたお茶に手を伸ばす。 そして、何故か横に置かれていた砂糖の入った瓶を取ると主室にお茶の中にそれを入れたのだ。 その光景には一同が眼を疑った。 「あ、あのぉ…リンディさん? それ砂糖なんじゃぁ…」 「えぇ、皆さんもお使いになります?」 「い、いえ! 僕は結構です」 流石のイデもそれは願い下げだったようだ。 「しかし何故お茶に砂糖を? 折角茶菓子があるのに口が返って甘味で濁ってしまうのでは?」 「私この飲み方が好きなんですよ。勿論お茶菓子も食べますよ」 ムラマツの問いにリンディが何の迷いもなく答える。 流石のアラシやハヤタも若干引き気味に見ていた。 しかしムラマツは流石と言うべきか全く動じていない。 「確かに味覚は人それぞれと言うでしょう。しかし甘いお茶とは今まで飲んだ事ないなぁ」 そう言って懐からパイプを取り出して口に咥える。 タバコの草を入れて火をつけようとした際にハヤタが止めに入った。 「キャップ、此処でタバコは控えた方が宜しいですよ」 「む、そうか。いやぁ申し訳ない。つい癖なもので」 赤面しながらパイプを仕舞うムラマツキャップ。 普段ならお咎めなしなのだが今回はなのはやユーノなど子供が居る。 子供の成長に悪影響を及ぼすので科学特捜隊としてはそんな事はNGなのでハヤタが止めたのだ。 かなり話が逸れてしまったので此処でリンディが強引に話を戻した。 「簡潔に言います。ジュエルシードの捜索ですが、我々時空管理局もご協力致します」 「それは有り難い。イデの開発したジュエルシード探索装置も此処でなら有効に利用出来るでしょう」 「いやぁ、時空管理局の皆様から比べたら僕の発明なんて子供騙しみたいなもんですよぉ」 謙遜しながら自作の探索装置を目の前に出すイデ。 何気に嬉しそうだ。 リンディがそれを手元に引き寄せてマジマジとそれを見る。 するとリンディの眼の色が変わった。 「とんでもない! イデさん。これは素晴らしいですよ。私達の技術でも此処まで正確な探索技術は作れません。是非私達のところで使って宜しいですか?」 「え? 本当ですか! そりゃもう喜んでお願い申し上げる所存で御座います」 イデがとても嬉しそうに頭を下げる。 その光景を見て隣のアラシが笑っていたが今は別に気にしない。 「と、なるとこれからはジュエルシードの捜索の際にはこのアースラを基点として行う事になるみたいですが、移動手段はどの様にすれば宜しいですかな?」 「それならば必要ありません。要望があれば我々がこちらに転送致します」 何とも至れり尽くせりな事であった。 これなら移動でビートルの燃料を使う必要もない。 「それから、甲児さん」 「は、はい!」 「貴方のマジンガーZですが、こちらで格納しておきますね。そうすれば何処でも瞬時に転送出来ますから今回の様に探し回る必要が無くなりますよ」 「本当ですか? そいつは助かります」 甲児としてもそれは嬉しい事でもあった。 今回の捜索は本当に疲れた。 何せ広大な砂漠の中マジンガーZを探し回ったのだから。 もうあんな思いは御免であった。 「それからなのはさん。貴方も私達が自宅にお送りしますね。もう何日も帰ってないのでしょう?」 「はい、有難う御座います。お父さん達きっと心配しているでしょうし」 「なのは、折角だから暫くはジュエルシードの事は忘れてゆっくりすると良いよ」 「ユーノ君?」 いきなりユーノが持ち出したのは以外な言葉であった。 それに驚くなのはにユーノは続ける。 「此処数日連戦続きだからきっとなのはも疲れてるだろうし、なのはも学校があるし、良い機会だよ」 「でも、ジュエルシードの捜索はどうするの?」 「その辺は大丈夫だよ。僕と科学特捜隊、それに時空管理局の皆で捜索はする。だから思い切り羽を伸ばしてきなよ」 「その通りだよなのはちゃん。子供ってのは思い切り遊んで勉強するのが仕事なんだよ。ジュエルシードの捜索は我々に任せなさい」 「ムラマツキャップ…はい、分かりました」 皆の言葉もあってかなのはは頷いた。 「あれ? もしかして俺も学校に行かなきゃなんねぇの?」 「当然だろう。君も学生なんだから」 「げぇっ、折角学校サボれると思ったのになぁ~」 ガッカリした顔で愚痴る甲児に部屋に居た全員が声を出して笑ったのであった。 「そう言えばなのはちゃん、貴方年は幾つ?」 「今年で9歳になりますけど、どうかしましたか?」 「いえね、貴方を見てると家の子供を思い出しちゃってね。丁度なのはちゃんより4つ位上の感じなのよ」 リンディがそう懐かしむように言う。 「それで、そのお子さんは何処に居るんですか?」 「今丁度別任務中で此処には居ないのよ。丁度地球の調査に行ったとこなんだけど、変な事に通信が出来ない状態になってるのよねぇ。大丈夫かしら」 途端に心配そうな顔をする。 が、今此処でどうこう出来る問題でもなさそうな事でもあったのは事実だった。 *** 「ただいまぁ!」 リンディの計らいで家の前に転送して貰ったなのはは早速家の扉を開いて大きな声で帰宅時に言う言葉を発した。 すると真っ直ぐに家族全員が飛んできたのだ。 どうやら皆心配していたようだ。 すぐさま抱き寄せられて押し潰されんばかりに抱きしめられたり頬ずりされたりとかなり大変な目に会うのではあったが、なのははそれが苦とは感じられず、寧ろ嬉しくも感じられた。 それから、直ちに夕食の支度が行われ、久しぶりのなのはの帰宅と言うのもあってか目の前には豪勢な料理がズラリと並んだ。 「なのはが無事に帰ってきてくれて嬉しいから、お母さん腕によりを掛けて美味しいご飯作ったからねぇ」 「お、そりゃ嬉しいなぁ。さ、頂こうか」 両手を合わせて皆が揃っていただきますした後、各々が料理を取り食べ始める。 その間話題になった事と言えば数日間に起こった出来事である。 「ふぅん、甲児君とキャンプした際に怪獣と出くわしたのか。そりゃ災難だったなぁ。竜ヶ森だっけ? あれニュースにもなったしなぁ」 「父さん、それを言ったら砂漠の怪獣も出たじゃないか」 恭也が父士郎に向かい言う。 どうやら怪獣の出現は直ちにニュースになったようだ。 あれだけでかいのだから余計に目立つのは当たり前だろう。 「ま、何はともあれなのはが無事に帰って来てくれた父さん達は凄く嬉しいよ。後で甲児君にはお礼を言っておくとしよう」 「うん!」 その後も夕食は楽しい話題で持ち切りになった。 その後、夕食を食べた後自宅の風呂に入り数日間の戦いの汚れを洗い流し自室で眠る事にした。 久しぶりの自分のベットの感触が妙に心地よく感じられた。 そうして、物の数分で忽ちなのはは深い眠りに落ちてしまった。 翌日は久しぶりに友人のアリサとすずかに会った。 二人共数日間帰らなかったなのはを凄く心配していたのだ。 そんな二人になのはは謝罪した。 もしかしたら今後同じ様に友達を心配させてしまうかも知れない。 そんな思いがなのはの中にあったのだがその胸中の思いに気づきはしなかった。 「それで、学校は進んでる? 私授業出てなかったから心配なんだけど」 「学校なら休校状態よ。竜ヶ森で出た怪獣のせいで授業どころじゃないってさ」 アリサがそう言った。 どうやらさきの竜ヶ森でのベムラーとの戦いの件で学校は授業どころではなく休校状態になったと言うそうだ。 まぁなのはからして見れば一人だけ授業が遅れる心配がなくなったので嬉しい事ではあるが。 「そうだったんだ。何だか私が居ない間に大変な事があったんだねぇ」 「って、現場に居たあんたが何言ってるのよ! 聞いたわよ。あんた怪獣が来た際に竜ヶ森でキャンプしてたそうじゃない! 危うく踏み潰される所だったんじゃないの!」 流石アリサ。鋭い洞察力である。 まぁ其処はなのは自身上手く誤魔化したと言う事にしたので幸いなのはがその事件に関与していた事は二人には知られる事はなかった。 *** 付近の雑木林。 其処に数匹の子猫が戯れていた。 そんな時、一匹の子猫が青く輝く石の様な物を見つける。 その石に興味を引かれた子猫がその石に手を触れる。 すると、その石、ジュエルシードが眩い光を発し、子猫を包み込んでいく。 閃光が止んだ時、其処に居たのは先ほどの子猫の姿ではなく、おぞましい姿をした化け物の姿が其処に居たのであった。 アリサとすずかとの会話を終えて帰り道を歩いていたなのは。 時刻は既に夕刻に差し掛かっており空は茜色に染まり日は西に傾きだしている。 そんな中、なのはは一人帰り道を歩いていた。 ジュエルシードの捜索は一先ずユーノや甲児達、そして時空管理局が行ってくれている。 なのはは一先ず束の間の休息を楽しむ事にしていた。 そんな時、首筋に嫌な感じを感じ取った。 人間の心理の様な者で、敵意のある物、危険性のある物が近くにあるとてき面この現象が起こる。 「レイジングハート…もしかして?」 【はいマスター。近くにジュエルシードを感じます。この反応からすると既に発動した模様と思われます】 「大変! 早く封印しないと!」 付近に誰も居ない事を確認したなのははレイジングハートを起動させてバリアジャケットを纏いデバイスを手に持つ。 「レイジングハート。私一生懸命頑張るから一緒に戦おうね」 【勿論です、マスター】 なのはの言葉にレイジングハートは頷く。 そして、雑木林の中を突っ切っていく。 其処には数匹の子猫が怯えているのが見える。 そして、その子猫達の前には一匹のおぞましい姿をした怪物が其処に居たのだ。 「な、何あれ?」 【どうやら動物と融合したみたいです。気をつけて下さいマスター】 なのはにとって動物と融合したジュエルシードとの遭遇は初めてな事であった。 怪獣の時はウルトラマンや甲児の助力のお陰でどうにかなったが今回は一人しか居ない。 応援を呼ぶと言う手もあるが時間が足りない。 一人でやるしかない。 覚悟を決めてデバイスを構える。 すると化け物がなのはに気づいたのか彼女の方を向く。 その姿はまるで豹の様な姿をしていた。 しなやかな体つきをしており機敏に動きそうである。 化け物の口から牙が姿を現し不気味な唸り声をあげる。 その唸り声が人間の中に眠る恐怖心を煽りたてる。 幾ら魔導師として戦う覚悟が出来たとしても彼女はまだ9歳の少女なのだ。 普通に怖い物は怖いのだ。 だが、怖がってなどいられない。 自分が戦わなければ更に大勢の人達が怖い目に会う事となってしまうのだ。 「怖いけど…私が頑張らないと!」 自身にそう言い聞かせて恐怖心を振り払い、デバイスから数発の魔弾を放った。 桜色の閃光の魔弾が化け物目掛けて飛んでいく。 だが、その全てをしなやかな動きで華麗に化け物はかわした。 そしてかわしざまになのはに向かって飛び掛ってきた。 「きゃぁっ!」 咄嗟に倒れたから外れた物の、あの牙に噛まれたら一溜まりもない。 一撃貰えば終わりなのだ。 「レイジングハート! ディバインバスターは撃てないの?」 【危険です! 此処の様な狭い空間でディバインバスターを撃てば被害は甚大です。それにあの様に動きの素早い相手には不向きな武器です】 レイジングハートの言う通りだった。 ディバインバスターの威力はなのは自身が一番良く知っている。 マジンガーZやウルトラマンの武器が通じなかったあのアントラーを一撃で葬った武器なのだ。 あれをこんな雑木林の生い茂った場所で使おう物なら付近に甚大な被害が出てしまう。 また、魔力のチャージに時間のロスが発生してしまいその間無防備な状態となってしまうからだ。 即ち大技で仕留める事は出来ないのだ。 「それじゃ、アクセルシューターとかバインドで仕留めるしかないって事?」 【そうなります】 とは言うものの、あの様に機敏に動く化け物を相手にまだ戦闘面で不慣れななのはがアクセルシューターやバインドで仕留めるのは難しい。 だが、やるしかないのは事実なのだ。 「シュート!」 なのはが叫びデバイスから魔力弾を放つ。 しかしそのどれも華麗にかわされてしまう。 かわした隙にバインドを掛けようとしたがやはり駄目であった。 動きの素早い化け物を相手にバインドで固めるのは相当の錬度が必要なのだ。 その点ではなのはにまだそれが欠けていた面があったのだ。 その上、敵の動きが素早く狙いが付け辛い。 それが更に敵の厄介さであった。 「くっ…あ、当たらない…早くて狙いが定まらない」 【落ち着いて下さいマスター。焦っていては当たる物も当たりませんよ】 レイジングハートが注意するも敵から放たれる威圧感とジュエルシードを早く封印しなければと言う使命感の為かなのはの中で焦りは募っていくばかりだった。 それが災いとなり一気に化け物が間合いに入るのを許してしまった。 化け物の鋭い爪が唸りを上げて襲い掛かってきた。 咄嗟になのははレイジングハートのデバイスでそれを受け止める。 が、力の差が有りすぎた為になのはの手からデバイスが弾かれてしまいその拍子になのは自身も地面に叩きつけられてしまった。 其処へ化け物が上に圧し掛かってきた。 両手を押さえつけて動けない状態のなのはを見下ろすように化け物が唸りを上げる。 ダラリ… 化け物の口から垂れた唾液がなのはの頬に掛かる。 嫌な匂いが鼻についた。そして、その匂いが同時に彼女の中にあった恐怖心を更に煽り立てた。 必死に逃げ出そうともがくが子供の力では振り解く事などできず無駄にじたばた動くだけで終わった。 そんななのはに向かい化け物が雄叫びを挙げる。 勝利の雄叫びだ。 もうなのはに抵抗する力などない。 今やもう食べられるだけの餌と成り果てた。 そう言う意味の篭った雄叫びだったのだ。 そして雄叫びを挙げ終わった後、なのはに向かい巨大な牙を突き出してきた。 「い、いやぁ!」 咄嗟に首を右に思い切り捻った。 それが幸いしたのか化け物の牙は地面に突き刺さった。 なのはに外傷はない。 しかし、それも唯のまぐれだ。 次はない。 次こそは確実に自分の体に鋭い牙が突き刺さる。 そう感じ取ったのだ。 (嫌だ、嫌だ! こんな所で死にたくない! 助けて、ハヤタさん、甲児さん、ユーノ君! 誰か、誰かぁ!) 声にならない叫びを上げる。 しかしそんな叫びを上げた所で誰も助けに来る筈がない。 無情にも化け物の牙が迫ってきた。 が、その時、化け物を横から何かで弾き飛ばしたかの様に横っ飛びに吹き飛んでいく。 吹き飛ばされた化け物は付近の巨木に体を激突させて地面に倒れこむ。 「え? 誰!」 誰かが助けてくれた。 そう思えたのだろう。 なのはは化け物とは反対の方向を向く。 其処には一人の少女が居た。 年頃はなのはと同じ年であろう。 金色の長い髪を両端に束ねた髪型に黒を基調としたバリアジャケット。 そして鎌か斧のどちらかを思わせる形をしたデバイスを手に持っている。 「間に合って良かった」 「えっと、貴方は?」 「下がってて、アイツの相手は私がするから」 それだけ告げると少女はなのはを通り越して化け物の前に立つ。 そして持っていたデバイスを構える。 化け物が今度は少女に狙いを定めて唸りを上げる。 「ジュエルシード…回収させて貰うよ」 静かに、澄んだ様な声でそう呟く少女。 その直後、一瞬の内に少女の体は化け物の目の前に来ていた。 それには化け物は勿論なのはも驚かされた。 「は、早い!」 それが思わずなのはの口から出た言葉であった。 あの少女はとても素早く動けるのだ。 その目の前で少女がデバイスから発せられた光の刃を思い切り化け物に叩き付けた。 化け物の腕に傷が付き化け物が痛みの叫びを上げる。 カウンターに腕を振るったが、そんな物に少女が当たる筈もなくかわされカウンターに今度は顔面に刃が叩きつけられた。 「凄い、あの子…凄く強い」 圧倒的であった。 なのはでは全く歯が立たなかった相手を圧倒しているのだ。 それ程までに少女はなのはよりも実戦慣れしていると言う事が伺える。 すると、化け物が少女に背を向けて逃げ出した。 恐らく少女には勝てないと判断したのだろう。 だが、それに対し少女がデバイスを振りかぶる。 「逃がさない。切り裂け! ハーケンセイバー!」 叫び、デバイスを思い切り振るった。 すると振るわれたデバイスから光の刃がブーメランの様に化け物目掛けて飛んでいく。 その刃が化け物を縦一文字に両断する。 断末魔の悲鳴と共に化け物の体が閃光に包まれ、やがて閃光が収まると其処には幼い子猫が横たわり、その横にジュエルシードが落ちていたのだ。 「良かった。怪我もなく済んで」 子猫に大した怪我がない事を知り安堵した少女がデバイスをジュエルシードに近づける。 そして、それを封印し、この場の脅威は去った。 「あ、あの…」 「ん?」 後ろからなのはが声を掛けた。 それを聞き少女は振り返る。 「あ、有難う。助けてくれて」 「君も魔導師なの?」 「えっと、うん!」 「そ、だったら…今すぐ止めた方が良い。君の腕前じゃその内ロストロギアに殺されるから」 そう言い残すと少女は飛び去っていく。 「あ、名前…行っちゃった…まだ自己紹介してなかったのに…」 なのはの前では大空へと飛び去っていく少女の後姿だけが見えた。 今から大声を発した所で聞こえる筈がない。 なのはからしてみれば命の恩人であり自分と同じ魔法少女との出会いだったのだ。 出来れば名前を聞きたかったし、どうせなら友達にもなりたかった。 だが、あの少女はジュエルシードの回収を終えるとその場から立ち去ってしまったのだ。 「あの子もジュエルシードを集めてるんだよね。だったら、きっとまた会えるかな? その時は、ちゃんとお礼を言って、名前を聞かせて貰わなきゃ。その為にも…もっと強くなる! もう皆のお荷物にならない様にもっと強くならなくちゃ!」 なのはの中である決意が芽生える。 少女に認められる為に。 そして、仲間達と肩を並べて戦う為に。 少女は更に強くなる事を決意した。 そんな少女を黙って夕日が見つめて、やがて沈んでいった。 つづく 次回予告 少女は強い決意の元己を磨きだした。 そんな少女はある出会いを果たす。 それは、他人に運命を弄ばれた一人の不幸は青年との出会いであった。 次回「仮面の戦士」 お楽しみに
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※(第2話としての「高町なのは」の概要はこちら 「大丈夫の前に、海鳴を放っておくほど、私は故郷捨ててないからね。それに私を指名した理由も、気にはなるから」 概要 この物語の主人公にして魔導師。地球、海鳴市出身の、元時空管理局一等空尉(大尉にあたる)。 声優は田村ゆかり。 療養を勧められていたこともあり、管理局から身を引いて、ミッドチルダで小さい喫茶店を開いていた。営業成績はそこそこの模様。 だが3月15日の20歳の誕生日に、時空管理局の次元牢、拘置所から犯罪者の大量脱獄を聞いた彼女は、 多数の犯罪者たちが海鳴に向かっているということもあり、再び戦いの場に赴くこととなった。 なお、前回海鳴に来たのは成人式の出席のため。 フェイトやアリサ、すずか、はやてとは子供の頃からの親友にあたる。 特にフェイトとはお互いを守りあう、支えあうと約束した本当の親友同士。 ヴィヴィオは彼女の娘(血のつながりはなく、彼女が引き取った)。現在は単身赴任状態なので ヴィヴィオとは電話や通信での連絡がせいぜい。 穏やかで元気印の誰にでも好かれる明るさが、周りの人間を集めていく不思議さを持つ。 以前に比べると性格が穏やかで平和主義気味にやわらかくなっている。喫茶店の営業と子育てで 自然と肩の力が抜けたらしい。 (メタなことを言うと、原点「とらいあんぐるハート3」の性格に寄っただけなのだが) また本人の自覚は薄いが、正義の心はとても熱い。 ユーノとは今だ友達以上、恋人未満の状態が続いている。が、そのことをつつかれるとあたふたすることから、本人もまんざらではないのかもしれない。 事件では海鳴を拠点として動いている。実家に戻っている状態である。 リーバルト・ダイオスはある種気になる犯罪者であるとともに、「さん」付けしている 唯一の犯罪者。 前述のとおり今回も主人公ではあるが、登場は1話の最後と遅かった。 むしろその話の主役はフェイトだったし…… + 彼女が管理局を辞めた理由 なのはが管理局を辞めた理由だが、療養自体は嘘ではないのだが、実は深い理由があった。 喫茶店を開く前から、夢で見るもの。 頻繁に見る悪夢、死人の山の中にいたり、血濡れの丘に立っていたり、声をかけたとたんにその人がいなくなったりという悲惨な状況などの夢ををしょっちゅう見るようになって、 自分が怖くなっていたのである。 第30話で洗脳されて以降、さらにそのトラウマは強くなり始めてくる。 それが因果なのか、下記の魔力の正体にもつながってくるのであるが。 + 彼女の魔力の正体 なぜ一介の地球人の彼女が、ここまで高い魔力を持っていたのか。それは彼女の前世に関係があった。 その前世とはミッドチルダにかつていた魔導師、エルリア・エムループ。 強大な魔力を持ちながらも周りから疎んじられていた人間である。 のちのキング・ハーツ首領となるディアブロ・カルソニクスの以前の名前であるセラフィム・タイロープとは恋人のような友達のような、不思議な関係が続いていたが、 「破壊と絶望」の力で本人が望まずともすべてを壊してしまう状況が続いていた。 そしてその滅ぼす力でセラフィムを捕縛、呪いをかけたのだが、その時にエルリアも砲撃魔法によって致命傷を負い、その場に倒れた。 セラフィムに、次元等から出られない呪いを残して。 そしてその口から出た言葉は…… 「……一人では、行かせない……なぜなら……私は……君が好きだから……」 愛するが故の、呪いと言う事であろうか。 + 結末は…… 魔導師が次元中から消えてしまうという現実を目の当たりにしたこと、セダンから追い打ちをかけられたことで、 ついになのはは倒れてしまう。 彼女の目を覚まさせたのは、ユーノの存在だった。 ここで、なのはとユーノはお互いに絆以上の絆、恋心ではっきりと結ばれることとなった。 それ以降の展開は、本編、ストーリー展開を参照してほしい。 + レイジングアーマー 戦闘スタイル 魔力の収束と放射が得意で、攻撃力と防御力はかなり高いものの、唯一の弱点ともいえる 機動力の弱さがあり、近接戦闘は苦手(それでも、子供の頃と比べるとだいぶ進歩している)。 ステータス 魔導師ランク AAA 攻撃力 A 防御力 A 機動力 D 魔法防御力 B 以前のSクラスからAAAクラスに魔力が減少している。 以前からの無理強いが祟ったというのが強く、回復はあまり見込めないということ。
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―――傷を負った獣は、自身の痛みしか理解できない。 問答無用、もはやどんな言葉を呼びかけたとしても相手は応えない。 半ば覚悟の上の出来事だったとはいえ、こうも容赦も無くいきなりに殴りかかられれば高町なのはとて動揺する。 ……それに何より、悲しかった。 ただ只管に、激情に駆られるだけの怒れる獣でしかない今の目の前の男の姿が。 高町なのはには、悲しかった。 「聞いてカズマ君! 私は―――」 「喋んなっつってんだろうがッ!」 聞く耳持たない、そんな様子も顕に突き込んで来る相手の拳をプロテクションを発動して受け止める。 今までの比ではない圧力を防御壁越しに激突の瞬間に感じる。事前にこうしてリミッター解除をしていなければ、これだけで勝負がつけられていたかもしれない。 今のカズマは本気だ。本気で、こちらを叩き潰してくる心算だ。 問答無用で叩きつけられてくる肌を焼くような激しい怒気と殺気がそれを証明してもいた。 生存本能を嫌が応にも刺激させられる。このまま行けばこちらもまた危ない。 「シェル……ブリットォォォオオオオオオオオオオ!!」 プロテクションを突破しきれないことを苛立ったように、カズマは雄叫びと同時にその鎧纏う強靭にして鋭利な右腕を更に輝かせる。 右腕の甲が開き、背中のプロペラのようなローターを焼き切らんばかりに激しく回転させていく。 防御壁ごと打ち抜く心算、その自分のお株を奪うような無茶苦茶な力技の行使を察したなのはもまた、レイジングハートの先端に魔力を収束させる。 瞬間、拳の先端から放出される黄金の光のエネルギー波を、なのはもギリギリ発動を間に合わせたディバインバスターで迎え撃つ。 激突する黄金と桜色のエネルギーは暗雲で覆われた空すらも焼くほどの輝きを瞬間的に発生させる。 しかし視界を焼く閃光を潜り抜け雄叫びを発しながら、獣の拳が再び襲い掛かる。 なのははありったけのアクセルシューターを形成、物量を伴った面制圧にてその特攻を仕掛けてくる相手を迎え撃つ。 前後左右、あらゆる角度から防ぎきることもかわしきることも不可能と言わんばかりの勢いで魔力弾が次々にカズマへと向かって直撃していく。 リミッターという枷を外した本気の魔力弾は例え非殺傷設定であろうとその威力はこれまでカズマが散々に食らってきたものの比ではない。 ……がたとえ威力が増し受けるダメージが今まで以上になろうとも、今の怒れる獣であるカズマにとって痛みなどというものは既に忘我の彼方に置き去ったものでしかない。 たとえこの身が砕け散ろうとも、諸共にこの拳の一撃を叩き込み相手を粉砕する……彼の思考に存在していたのはそれだけだった。 そしてその反逆の信念は桜色の猛攻を問答無用で被弾しながらも強引に突っ切ることで、遂に眼前の標的にまでそれが迫る。 流石にこの猛攻を潜り抜けて来たことはなのはにとっても驚愕に値する事だったのだろう。その一瞬、驚きに見開かれた彼女の表情はその動きすらも止めていた。 その一瞬を逃すことなく、渾身の一撃を輝きを纏ったシェルブリットへと込めながらカズマは相手へと接近すると同時に叩き込む。 流石にそれでもなのはとて呆然としたままそれを直撃する愚だけは犯さない。咄嗟にプロテクションを展開しながら……されど勢いと威力に押し負けて弾き飛ばされる。 それを逃さずに追撃を敢行するカズマ。いくらでも防御できるのならし続けるがいい、最後にはそれごと打ち砕いてぶっ飛ばす、それしか彼の思考の中にはありはしなかった。 前へ前へ前へ! 攻めろ攻めろ攻めろ! 只管に、ただ只管に一心に、視野を狭めて集中、余計なものを視界と思考から全て除外して、相手をぶん殴るというその一点のみに己の全てを注ぎ込む。 今も昔もこれからも、自分はそうありさえすればそれでいい。……ああ、それで良いのだ。 しかし高町なのはとていい様に相手の猛攻ばかりにやられているわけにもいかない。兎にも角にも今の暴走した状態であるこのカズマを止める事、それこそが今の彼女にとっての最優先事項である。 なればこそ、こちらももはや躊躇ってはいられない。迷いは隙を生み、それは致命的なものとなり即敗北に繋がる事を眼前の相手と何度も戦いその身で理解していた。 故に、ここからはこちらも本気、全力全開。こちらもまた持てる全てを以ってしてお相手しよう。 その決意を固めた瞬間、フラッシュムーブを発動。上昇し迫り来る拳をかわす。咆哮を上げながら拳をかわされた事に苛立ったように逃げるなと言った様子で相手も上昇し追いかけてくる。 追ってくる相手へと振り向き、上昇してくるカズマへと向けなのははショートバスターを叩き込む。右腕のシェルブリットでしゃらくさいといった様子で弾きながら、尚も勢いを止めずに接近を続けてくるカズマ。 なのはとてショートバスター程度で今のカズマを如何こう出来るとは最初から思っていない。そのまま続けて再びシューターの弾雨を連続して叩き込んでいく。 しかしそれも温い。そう言うかのように最低限のものだけ弾き飛ばしながら、降りかかってくる魔力弾のことごとくを問答無用の前進にて無視しながらやはり向かってくるカズマに勢いの衰えは無い。 凄まじい、そう正直になのははカズマに対して戦慄と賞賛に近いモノを同時に抱いていた。猪突猛進とてここまで極められ、それが自身の身へと降りかかってくれば流石にゾッともする。 ……だがしかし、ここでそれに負けるわけにはいかないのも事実。今のカズマを相手には負けられない、譲れない意地がなのはにもあった。 なのはの次手――チェーンバインド。空中に出現した魔力で編まれた鎖、ユーノ直伝の拘束魔法はカズマへと殺到すると共にその身を雁字搦めに拘束しようとする。 だが…… それすらも物ともしない、自身を縛り付けることなど認めない、許さないと言わんばかりに群がる鎖を強引にカズマは引き千切っていく。 バインドの強度にはこれでも自信があったというのに、凄まじいとしか言い様のない相手の信じ難い馬鹿力には呆れにも近いものを正直、抱かなかったわけでもない。 だがそんなどうでもいいものこそ二の次。引き千切られたとはいえ僅かな間であろうともカズマの動きがそこで一度止まったのも事実。 この好機、逃がすほどに”白い悪魔”とまで畏怖されたエースオブエースは甘くは無い。 「レイジングハート!」 『All right, Strike Flame.』 レイジングハートの穂先に次の瞬間には形成される魔力刃。突撃槍と化したそれの穂先の照準をしっかりと下方のカズマへとブレも無く指し示す。 「A.C.Sドライバーッ!」 『Charge.』 その宣告がなされた瞬間だった。凄まじい加速と魔力による衝撃を付加した槍による突撃が鎖を引き千切った直後のカズマへと迫る。 上から下へ、重力の正しき流れにも従った勢いすらも後押しの味方に加え、シェルブリットで受け止めたカズマを地面へと叩き落すように一気に畳み掛ける。 真正面から押し返すはずの拳が自身ごと地面に向かって押され始めているのをカズマも自覚。同時、抱く屈辱の怒りは今までのものの比ではなく彼を際限なく燃え上がらせる。 「なめ……ん、なぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 こんな奴を相手に己の土俵で負けるわけにはいかない。退いてなどいられない。下がることなど恥辱の極みだ。 そんなものは断じて受け入れられない、それを証明するように押され始め、亀裂が入り始めていたシェルブリットがまるで補強でもされるように再び輝きを増していく。 一気に押し返す……否、そのまま突っ切ってぶっ飛ばす。そう決意しながら拳を前へと押し込もうとしたまさにその瞬間だった。 拮抗を生じさせるレイジングハートよりロードされる三発のカートリッジ。 槍の先端に膨れ上がるように発生する魔力の渦に、カズマの鍛え上げられた戦闘本能が相手が何をしようとしているのかを瞬時に悟る。 しまった、そう思った時には既に遅く。己の認識違いが致命的なミスを犯した事、それを歯噛みする猶予すらカズマには与えられなかった。 ……そう、最初から高町なのははこの槍による突撃で勝負を決めようなどとは考えていなかったのだ。 最初からいつだって、勝負を決める切り札は常に磐石のものとして鍛え上げて完成させてきたそれでしかない。 「ブレイク……シューーーートッツ!」 今も昔も高町なのはにとって決して他者に劣らぬ自負を持つその長所。 鍛え抜かれた魔砲の一撃を発射しながら、桜色の閃光がなのはとカズマ、両者を包み込み―――爆発した。 捨て身覚悟の保身無きゼロ距離射撃。 今ではほぼ自身でも禁じ手として封じていたエクセリオンバスターA.C.S。 自らもダメージ覚悟で叩き込んだその一撃は確実にカズマへとダメージを叩き込み、彼を地面まで叩き落した。 だが肩で息をつき、全身に走る激痛に顔を顰めながらも、それでもなのははまだ立ち止まらない。 まだ足りない、彼は立ち上がる。 それが確信として胸にあったからこそ、今度は油断も容赦もせずレイジングハートを眼下のカズマへと向け、新しいカートリッジを叩き込んでのリロード。 全力全開、真っ向からの砲撃で撃ち抜いて……決める! 「ディバィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン」 全弾リロードされたカートリッジを排出し、更に新しいカートリッジをレイジングハートへと勢いよく装填する。 漸くにダメージが抜け切らない様子ではあるが、何とかふらつきながらも立ち上がったカズマへとなのははその瞬間を狙って、膨張する桜色の魔力砲の渦を一気に叩き込む。 「バスタァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 タイミング、そして威力。どちらをとっても防御も回避も不可能。 それどころか現状のカズマでは対応そのものがおぼつかず。 出鱈目と評していい戦艦の砲撃染みた魔砲の光はカズマを包み込み、吹き飛ばした。 視界を焼く桜色の極光。 今まで感じたことも無い程の全身をバラバラに吹き飛ばされたのではと錯覚しかねない衝撃とダメージ。 完膚なきまでの最大出力で撃ち込まれてきた高町なのはの砲撃。 その桜色の魔砲の渦に吹き飛ばされ、地面へと勢いよく叩きつけられながら、手綱を手放しかけた自己の意識を無理矢理に引っ張り込んで維持する。 とはいえ全身に喰らったダメージの影響で指先一つピクリとすら動かせない。思考とて己を保っているとは断言も仕切れない朦朧としたもの。 確実に、もはや戦闘続行が不可能という状態にまで自身が追い込まれた事をカズマは自覚した。 ……強い。 先の戦いでも正直に思い、実感したことだがこれはもはや悪魔染みたというレベルですらない。 完全に圧倒され、蹂躙され、そして叩きのめされた。 ……負けるのか、そんな弱い考えすら恥も外聞も無く正直に抱きかけ――― (……冗談じゃ……ッ……ねえ……ッ!!) ―――歯を食い縛ってギリギリで、その弱い考えを無理矢理に振り払う。 負けられない。……そう、負けられないのだ。 もう、絶対に……自分は負けるわけにはいかない。 それがこの女だろうが、劉鳳だろうが、誰であろうが変わりは無い。 当然だ、何故なら――― (負けるかよ……ッ……負けられるわけ……ねえだろう! なぁ、君島―――ッ!?) 君島邦彦。 その名を背負い、刻み続けている限りは絶対に負けられない。 負けることなど、許されない。 君島はカズマにとって生涯最高で恐らくは最後となる相棒でありダチだ。 彼はチッポケなこんな自分なんかを信じ、その強さに憧れ、希望を抱いて最後には誇りを持って逝ったのだ。 “シェルブリット”のカズマにとって相応しい無二の相棒として………。 ならば、そんな自分がどうして負けられる。膝を屈することが許されるというのだ。 許されるはずが無い、認められるはずが無い。 ここで自分が誰かに負けてしまえば、それはそのままイコールで君島の死すらも敗北と言う形で穢してしまう事になる。 最期まで誇りを持って、確かに勝ち誇って逝ったアイツの、とても満足な打ち立てられた『生きた証』を、一体何処の誰が穢す事が出来るというのだ。 出来るはずが無い、許されていいはずが無い。 だから……だから、絶対に負けられない。負けることは許されない。 “シェルブリット”のカズマである事を選んだ以上。 アイツを置き去りにしてまで進むと決めた道である以上。 死んだって、もはや誰にも負けるわけになどいかないのだ! だから――― 「………嘘」 気味の悪いデジャヴを体験しているようだ。そう正直に高町なのはは思った。 絶対にもう立ち上がれない、そう自分が確信を抱くほどに非殺傷設定でなければ生命の保障もできかねないレベルと言っていいほどにまで徹底した勢いで自身の全力を叩き込んだはずだ。 だというのに――― 「……負け……ねえ……ッ……負けらん…ねえ……んだよ……ッ!」 ふらつく足取り、辛うじて立っていると言っていいボロボロの状態。 であるにも関わらず、初遭遇によるあの時の戦闘と同じように、再びカズマは立ち上がってきた。 正気の沙汰では無い。命知らずだとか異常なタフさだとかそんなレベルですらない。 あっていいはずがない、否、あってはならない。 駄目だ、もうこれ以上は駄目だ。そうなのははカズマへと思い、叫びだそうとした。 だがソレすら遮るように先んじて、消え入るような掠れた独り言をカズマは呟き続ける。 「……負けるわけには……いかねえ。ここで負けちまったら……俺は―――」 ―――ただのクズに戻っちまう。 “シェルブリット”のカズマとしていられなくなる。 駄目だ、それだけは駄目だ。絶対に許容できない。 君島はいない、もう何処にもいない。 背負ったのだ、アイツを。アイツの誇りも信念も、やり遂げた『生きた証』も。 これだけは……もうこれだけは、絶対に誰にも奪わせない。 “カズくん”へは二度と戻れない以上、この生き方を奪われるわけにはいかない。 ただのクズになどもう……戻れない! だから――― 「負けられねえんだよ! 俺は―――――ッ!?」 決意の咆哮、誓いの雄叫び。 諦めを踏破した反逆の決意。 今この現状で勝てないというのなら、更なる力を欲する。 絶対に負けられない以上、ただ只管に欲し、願い、掴み取る。 力を、勝利を! その為になら――― 「……いらねえ……もう、何も……いらねえ!」 ―――命すら! その瞬間だった。 カズマの更なる力を欲する、命を代価に差し出すことすら厭わぬ願いに天は応えたのか。 再びの虹色の粒子を発生させ、大地を天を揺るがさんばかりの気合を込めた咆哮を発しながら“シェルブリット”が彼の右腕へと顕現される。 だが駄目だ、これだけでは足りない。 まだ必要、まだまだ力が必要。 そして引っ張ってくるには―――まだまだ力はある。 だから、 「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 貪欲なまでの力を欲する獣の咆哮は、その虹色の輝きを黄金へと変質させ、それだけでなく、 「!? そんなっ!?」 目を見開き驚愕の叫びをなのはが思わず上げてしまったのも無理は無い。 何せ彼女の眼が目撃したのは、今までに見たことの無い信じられぬモノ。 カズマの右腕を覆う“シェルブリット”。それが右腕だけでなくもう一方の左腕にまで現れたからだ。 信じられない光景……更なる形状の変化……否、これは『進化』か。 兎に角、土壇場でカズマは無理矢理に限界の先の力まで引っ張り出してきたのである。 だがそれは……… 「駄目だよ、カズマ君! それ以上力を使ったら君の身体が!」 アレは駄目だ。彼自身の身体にとっても危険すぎる。 先の再隆起の時にも感じたが、アレは人間の力で振るうにはあまりにも大きすぎる。 今のカズマの身体では、その負荷に耐え切れるとは思えない。 このままではアルターに逆にカズマ自身の身体が侵食されてしまう。 そんなこと……させるわけには、いかない。 決意を込めて、彼を止めようと動き始めたその瞬間だった。 その輝く両腕をしっかりと握り、拳を固めたカズマが咆哮を発しながら凄まじい勢いで跳躍、こちらへと向かって突撃を敢行してくる。 相手の勢いと発する気迫、そして速度がなのはに回避を間に合わせない。故に彼女が選んだのは自身の頑丈さを信じた防御。 カートリッジロードを用いて形成したプロテクション・パワードが迫るカズマの右拳を受け止める。形状そのものは変わらぬ筈のソレだが、打ち込む事に勢いや威力が確実に上がってきていることをなのはは実感した。 だがそれでもまだ押し負けるわけにはいかない、その意地と魔力を込めて強度を上げた障壁でかろうじて未だその拮抗を維持する。 ……そう、右拳だけならばまだ拮抗は辛うじて可能だった。 しかし、今の彼にはもう一方――その驚異的な『進化』にて引き出した左拳が残っている。 なのはとてそれを忘れていたわけでも注意を払っていなかったわけでもない。しかしながら、右の拳だけを受け切るので精一杯であったというだけのこと。 そしてそれは高町なのはの側の都合に過ぎず、相手――カズマには一切の関係が無いこと。 元より眼前のこの女を斃すためだけに引き出してきた力だ。躊躇いや気兼ねなど抱く必要性すらない。 ―――故に、 「吹き……飛べぇぇぇえええええええええええええええええええ!」 右の拳に重ね合わせるかのように、もう一方の左の拳もまた雄叫びと同時に障壁へと全力で叩き込む。 黄金の輝きを増す両拳は難攻不落の代名詞であるはずだった桜色の鉄壁に、遂に崩壊の牙を突き立てる。 硝子細工を連想させるように、獣の両腕の打撃はあっけなくなのはのプロテクションを粉砕。それだけでなく貫通した打撃と衝撃はそのまま彼女へと叩き込まれ、弾丸のように吹き飛ばす。 ダンプカーとでも……否、もっと大質量の列車とでも衝突したかのような衝撃を叩き込まれながら、高町なのはは地面へとそのまま粉塵を上げる勢いにて叩き落される。 バリアジャケットを纏っていなければ即死だっただろう。遅れてやってきた痛みと衝撃が全身に走りのた打ち回りたいのを戦士としての鋼の自制心にて押さえ込みながら、レイジングハートを杖に何とか立ち上がる。 同時、数メートルの距離を取ってカズマが危なげもなく着地。両拳を合わせそれを威嚇するように示しながら再びこちらに向かって突撃してくる機を測っている様子であった。 愚図愚図していればすぐさま追撃が来る。それが理解出来ていたからこそ激痛と痺れが走る体に鞭を打ちながらなのははレイジングハートをしっかりと握り直して命じる。 「……レイジングハート、ブラスターモード――――リリース」 レイジングハートはその命に一瞬躊躇うかのような素振りを明滅にて示すが、しかしなのはは有無を言わさぬ気概にてそれを押し通す。 ……これ以上の負荷が危険な事は分かっている。レイジングハートの気遣いに感謝を抱いていないわけでもない。 だが今のままでは無理だ。エクシードのままではどうやら届きそうにも無い。 ブラスターは可能な限り使わない。事前にはやてにも約束していたがこの状況ではそんな事を言っている暇すらも無い。 たった一撃の被弾とはいえ、それだけで彼女は身をもって悟っていたのだ。相手の形振り構わぬ尋常ならざるその異常なまでの戦力強化を。 あれはただシェルブリットが左でも打てるようになっただとかそんな単純なレベルではない。根本的な引き出してくる相手の力の量が異常と言っていいまでに増えている。 ふざけたバランスブレイク、理不尽なシーソーゲーム、冗談のようなパワーバランス。 文句ならば幾らでも出てくるだろうが、得意の地力でまさかここまで上回れるとは思っていなかった。 今のカズマは恐らく聖王であったヴィヴィオを力で上回っているだろう。とんでもない状態である。 だからこそ、これ以上先のレベルで戦うためには、彼を止めるためにはもはや保身や出し惜しみ云々と言っていられる場合ではない。 ……どうやら、本格的に命を懸ける無茶を行わなければならないらしい。 命を代価に更なる力を引き出す為に、高町なのはもまたこの瞬間、諸刃の剣を引き抜いた。 ユーノ・スクライアは優秀な人間である。 若干十九歳という若さで管理局においても重要な役割を示す機関の一つである『無限書庫』、ここの責任者と呼んでいい司書長の役職に就いているのだからその辺りは察して然るべきものであるともいえる。 加え、人当たりもよく性格も穏やか、知的であり紳士的でもある。 これだけの要素を並べられれば、『こいつ何て完璧超人?』とでも言われて異性からは好意や興味、同性からは羨望や嫉妬を抱かれたり向けられたりしてもおかしくはない。 実際、顕著でこそない水面下での出来事ではあるが、ユーノ・スクライアがそのような感情の対象とされている事実が無いわけでもないのだ。 敵こそ少ない、というより本質が和に近い性分や性格のせいだろうが、嫉妬以上のマイナス方面での感情を向けられることは少ない。 だが逆に、好意……それも思慕に属する類の感情を抱かれているという事実は本人自身が無自覚なだけで多々あったりもする。 こう見えてユーノ・スクライア、隠れた優良物件である。 さて、そんな若きユーノ青年であるが、周りから見たらそれこそ勝ち組と言われても疑いないようにも思えるのだが、実は本人自身はそうは思っていなかったりする。 実の所、ことソッチ方面において彼は己を半ば負け組だとも思いかけており、それこそ内心で悩んでいることも多々あった。 ユーノを悩ませている原因……これは少々彼にとっては根深いものだ。 何せ十年、思えばそんなにも自分はこのある種の病と付き合ってきている。 ……そう、世間一般で言うところにある『恋の病』というやつだった。 延々と壁際の棚に並べられた本が支配する広大な円筒形の空間。 曰く、『世界の記憶を収めた場所』 ―――無限書庫。 ユーノ・スクライアはいつものように此処の責任者である司書長として、勤労に励んでいた。 十年前の『闇の書』事件を皮切りに、彼が編み出したある探索魔法が有効に活用された結果として、ユーノは管理局にスカウトされ此処で働くようになった。 勿論、自らの意志で此処に勤めることを決め、見る見るうちに頭角を現し若くして現在の地位に就くようになったのは彼が才能と共にそれを無駄にせず努力を惜しまなかった結果以外の何ものでもない。 此処の仕事がユーノに向いていたこと、これも大きいだろう。遺跡発掘を生業とするスクライア一族にとって探索というのは得意分野だ。それが遺跡だろうと本だろうと変わりはない。 此処の仕事は気に入っているし、充実感だって抱いている。若輩の自分を嫌な顔一つ見せずに立ててくれる優秀で気配りの出来る司書たちにも感謝の念を抱くことは忘れてもいないし、上司として彼らに慕われているという自負は多少なりともある。 現状、仕事においてこの十年、不満と呼べるほどの不満は特にない。殺人的な仕事量に関しては時折逃げ出したくなったりもするが、基本的に責任感が高い故にやり遂げるという使命感も持っていれば、自分も一端の高給取りである以上は仕方のないことだとも思っている。 そう、仕事面に関してユーノは不満を持っていない。ならば次に当然ながら思うプライベートではどうだろうか。 最近ではスクライアの生業である遺跡発掘にも個人的に着手でき、研究論文を学会に発表できそれなりの評価を受けられているという事実は嬉しい。 遺跡発掘も研究も行き詰っているというわけでもなく、これからどんどん興味深いテーマにも着手できるかと思えば心だって躍ってくる。 根っからの学者気質のユーノにとって、そんなプライベートもまた充実した日々だった。 ならば何から何まで順風満帆の道を万進しているように見える彼だが、悩みがないわけではないのだ。 ……そう、先にも触れたが彼は大きな悩み……十年来も患っているとある病がここ最近では再燃しかけてもいたのだ。 ……そう、恋の病というやつだ。 ユーノ・スクライアは高町なのはの事が好きである。 所謂LikeではなくLoveとしての好きである。 幼なじみである彼女に彼がそんな感情を抱いたのはいったいいつの頃からか。 正確には彼自身も分からない。きっと十年前に出会い、ジュエルシードを巡るあのPT事件からが切っ掛けになっているのは事実なのだろう。 ……尤も、ユーノ自身としても彼がそれに気づいたのは実はつい最近になってからの事だったのだが。 実際、ユーノにとってなのはは幼なじみであり、異性としては最も身近と言っても良い友人だった。 ああみえて体育会系な彼女と基本文科系の彼なのだが、話していると色々とウマが合うし楽しい。傍に居るとずっと居て欲しいと時に思うほどに安心感や安らぎも抱く。 同じ幼なじみであるフェイトやはやてにも友情は感じるのだが、なのはに抱くような思いが湧いて来たこともない。 八年前、彼女が再起不能になりかけた大怪我を負ったあの時。ユーノもまた酷く心配し、彼女を案じて自分までもが体調を崩して倒れかねない事態にもなりかけたこともある。 それが好きな女の子の安否を思ってのことだったのだということは今振り返ってみても自覚出来る事なのだが、当時のユーノはそれを罪悪感と責任感から生まれてしまったものだと思っていたのだ。 ……そう、なのはが大怪我を負ってしまったのは自分のせい。 自分が傍にいてあげられず、護ることも出来ず、無茶を当たり前のように行おうとする彼女の疲労を気付いても止めることも出来なかった。 ……否、そもそもそれ以上に元を糺せばなし崩し的であったとはいえ、自分が彼女と出会いこちらの都合に巻き込んでしまったのが原因だとも思っていた。 その原因であったにも関わらず、肝心な時に彼女を護れなかった。一番の友達であったはずの、自分を助けてくれたはずの、高町なのはを。 それが負い目となり、激務に追われる事も多くなったのも相まってか、彼女が何とか復帰した後にも微妙に距離を取った感じになってしまっていたのは事実だ。 疎遠になったとか仲が悪くなったとか、そう言ったわけではなく、ただ彼女と会うと嬉しく思うのと同時にどこか申し訳なく思う居心地の悪さを抱くようになっていたのだ。 このままではいけないとは思っていた。これでなし崩し的に彼女という存在が遠くなってしまうのではないかと考えれば、それは真剣に危惧すべきことでもあった。 何とかせねば、何とか状況を改善しなければと悩みながらも会う回数も少なくなり段々と時が過ぎていった日々のこと。 状況改善の切っ掛けは、それこそひょんな偶然から転がってきた。 考古学者の端くれとしてもそれなりの評価も貰える様になったある日のこと、オークションに出展される危険性の少ないロストロギアの解説役を頼まれてミッドチルダへと久々に訪れた時のことだった。 まさかそのホテルで護衛任務に就いていたのが他ならぬなのはが所属していた部隊だったのは何たる偶然だろうか。 ……否、後からこっそり聞いた話によればあの時に自分にこの話を持ってきたアコース査察官は実ははやてと協力し、手を回してこのような舞台が整うように手配していたのだという。 気の利いた粋な計らい、はやてには感謝してもし足りないことだとは自分でも思っている。 兎に角、あの時は自分も勿論彼女もまた偶然による久方ぶりの再会だと思っていたので、嬉しく思うのと同時に時が過ぎて自分の負い目の感情もそれなりに緩和したのか、思っていた以上に彼女とはすんなり話をすることが出来た。 関係の修復を成功し、直接見るのは実に久しぶりと言って良い彼女の笑顔を見た時に、不意に胸の奥が不規則に激しく、そして熱く高鳴ったのが不思議だった。 恐らくは、それが彼女へと抱いた恋と言う感情なのだろうが、その時には不思議と思えど自覚は出来ないままだった。 次にその感情の正体を知ることになった時、そこで漸く彼女に抱いてきたこの十年間の想いの正体が何だったのかは自分でも理解できるようになった。 ユーノ・スクライアにその感情を理解させる切っ掛けとなったのはある一人の少女だった。 名をヴィヴィオ……そう、後に他ならぬなのはが自分の娘として正式に引き取ったあの少女だ。 『見て見て、ユーノ君。この娘がヴィヴィオ、私の娘だよ』 まだあの公開意見陳述会が行われるよりも前、彼女が一応の責任者としてヴィヴィオの事を預かる事になった時の事だ。 なのはママと呼ばれ、フェイトと共にヴィヴィオに母のように慕われるのが嬉しかったのだろう、久方ぶりの近況報告を交し合った通信での際、なのはは嬉しそうにその少女を自分へと紹介した。 その紹介した時の彼女の言葉にユーノの思考が即座に停止し、胸の奥に物凄い衝撃を受けたことは今でも彼には忘れられないことだった。 私の娘、確かに彼女はそう言ってきて、画面に映っている少女もまた彼女の事をはっきりとママと呼んでいた。 ユーノとて流石にこの歳になってまでまさか赤ん坊をコウノトリが運んでくるのだとかいう戯けた冗談を信じていたわけではない。子供を作るということが男女間でアレをナニしちゃったりするという行為の結果として誕生するのだということも知っている。 女性一人では子供は産めない。無論、体外受精等の例外があるのは知っているが、正直先制攻撃のダメージが強すぎたユーノにそんな考えを抱く余裕も無い。 それどころか容姿からして人種も違うのが明らかだったわけだが、これもまたユーノがそれに気付くだけの余裕がなかった。 ただただその時のユーノは、立ち直るには相当に困難なダメージを受け、ノックダウン寸前だった。 なのはの娘、なのはの子供。つまりなのはが産んだという事。出産するには当然子作りをせねばならず、そして子作りとはアレでナニすることであり、しかもそれは一般的に男性とするもの。そもそも子作りも出産も愛がなければ普通はしない、なのはが愛も無しに誰かと子作りをするような女性だとも思えない、そもそも生みたいから生んだはずなのだから子供は文字通りその相手との愛の結晶。つまり、なのはにはそんな愛する誰かがいるのだということ。 ……そして残念ながら、それが自分でないことだけは明らか。 そこまで思考が思い至ったのと同時に、ユーノ・スクライアはショックで卒倒した。 ショック、そう物凄くショックだった。 今までであれと同じだけのダメージを受けたことのある経験と言えば、それこそあの八年前くらい。 またしても彼女のことで心揺さぶられることになったユーノは、それこそ頭を抱え込んで真剣に悩み……否、悲しがり悔しがった。 そう、悔しかった。それが何故かは分からない……否、分からないままでいたかったのだがもうそういうわけにはいかない。 ふとした切っ掛けで気付いてしまった己の本音をユーノ自身も誤魔化すことが出来なかった。 ……要するに、自分は彼女が好きであり、だけどその彼女が自分以外の他の男が好きだったというこの事実を認めたくなかっただけ。 これでも異性としては最も彼女にとって身近な存在であり、そして幼なじみとして付き合いも長く、重ねた時間や結んだ絆の強さはきっと誰にも負けていないと思っていた。 ……何たる驕りだろう。ただ今の関係が気に入っていてそれを壊したくなかったから、ただ気付かぬ振りをしてこれ以上は踏み込む勇気もなく逃げていただけだというのに。 格好をつけるなユーノ・スクライア。お前はただ言い訳を重ねて逃げていただけだ。負い目を理由に彼女と素直に向き合う事を放棄しただけ。 ただ逃げただけ、逃げ続けていただけ、自分の想いにすら嘘を吐き誤魔化し、けれど都合の良い過去からの積み重ねだけを支えにそれで安心を得ようとしただけだ。 その結果がこれ、彼女に想いを伝えるどころか気付いてももらえず、もう自分ではない別の誰かを選んで彼女は先に進んでしまった。 置いていかれた、取り残された……自業自得であり、そして酷く無様だった。 「……そっか、僕は負けたのか………」 正確にはそれにすら劣る。勝ち負けの云々ではなく自分は勝負の舞台にすら立っていない。顔も名前も分からぬ誰かを相手に、否、相手にもしてもらえずに勝負をするまでもなく自分は負けたのだ。 最低で最悪な、後悔以外は残らないような惨めな己の遅すぎる初恋の終焉を理解し、ユーノは一人隠れて悔しく泣き続けた。 「……それが誤解だったって知った時は、それこそ驚く以上に信じられなかったけどね」 苦笑を浮かべた独り言を深夜の誰もいない無限書庫内でユーノは漏らす。 今日も今日とて残業。相変わらず殺人的な過密スケジュールに仕事量。世の労働基準法に違反しているのではないかと思われそうなものだが、そこはクロノと並んでのワーカーホリックである彼の事、責任感と使命感は疲労は訴えても不満は訴えない。 「……なのはたちにも関わってくることだしね」 そう、ユーノが今請け負っている仕事の内容は機動六課が現在従事している任務にも関わってくる調査である。 期日までに資料を探索し纏め上げ、彼女たちにも理解し易い形で情報をフェイトにまで提供しなければならない。 まだ納期に時間はあるのだが、聞く限りでも現状の動向はどうにもキナ臭い事態となっているようであり早目に届けた方が彼女たちにとっても助かるはずだ。 「……こんな形でくらいしか、僕はもうサポート出来そうにもないしね」 探索や防御をはじめとした各種補助魔法のエキスパートと呼んでいいくらいの腕を誇るユーノではあるものの、元々が学者畑の人間であり戦闘は専門外。十年前のあの時のような活躍の方が彼にとっては例外中の例外と言って良い程だった。 それにあの時から比べれば、もはや戦場には一度だって立ってない以上、腕や勘が錆び付いてしまっているのは語るまでもなく明らか。 そもそも九歳の時点で当時素人だったなのはのサポートに回らざるを得なかった時点で、己の力量など誇れるようなものではないとユーノは思っていた。 誰かと争ったりするのも好きではない。戦いという形で他者に自分が勝てると素直に思えたこともあまりない。 ……それに正直に告白して、戦闘自体を怖いと思っているのも事実だ。 だからこそ、無限書庫で働くようになって以降、自分の特性を活かせる場に出会い、これが彼女たちを助けられる自分なりのやり方だと思うようになり、その為の努力も惜しまなかった。 此処に世界の全ての知識が眠っているというのなら、そしてその知識が少しでもなのはの戦いの役に立つというのなら、一秒でも早く正確で間違いのない情報を届ける。 同じ空で飛べず、遠くに感じるようにもなってしまった彼女との繋がりとして残る己なりのサポートをずっとユーノは続けてきたし、それはこれからもきっと変わらない。 「だからこそ、早く見つけ出して届けないといけないんだけど……」 現状、探索は上手く行っているとは言えず意気込みだけが空回りをしている感は否めなかった。 ユーノが抱えているのは六課から受けた仕事だけではない。日夜、激務に追われる本局の別部隊から優先度も高い依頼も引っ切り無しに舞い込んでいる。 司書長である彼以外にも優秀な人材は多くいる、が舞い込む案件数と人員数の絶対数を比べてみればそれでも火の車であるのは明らか。 だが司書長としての責任感や使命感は、それら他の依頼どれ一つ取っても決しておざなりにも投げ出すことも出来ないのもまた事実。 だからこそ殺人的仕事量、過密スケジュールの中で、他の仕事も平行しながらこうして深夜にまで及ぶような残業上等な状況がここ数日ずっと続いていた。 よく仕事を手伝ってくれるアルフなどからは、いい加減に休まないと倒れるぞと遂に今日の昼間に苦言を漏らされる始末となったが、苦笑を浮かべて曖昧にそれを誤魔化した。 「……それに確か、ヴィヴィオにも本を探してあげる約束をしてたな」 ふと思い出した大事な約束を取り敢えず忘れない内に済ませておくかと、作業の休憩がてらに現状の探索を中断、別の探索魔法をマルチタスクで併用し探索を掛けながら、お姫様のご所望たる本を見つけ出し、自分名義で借りておく。 明日彼女はやってくるはずだからその時にでも渡そうと思う。きっと喜んでくれるのではないかという少女の笑顔を想像して思わず自分の顔も綻びかける。 いかんいかんと首を振りながらも、しかし自分に衝撃を与え、本当の気持ちを気付かせる原因ともなった少女の事をユーノは嫌っていなかった。 むしろこちらを慕い好意を向けてくれる相手を嫌いになるほどユーノは人間として捻くれてはいない。惚れた女の娘であるというのは対応の距離感が掴み難い事実ではあるが、他意を抱いて接しようとも思えないのも事実。 「……きっと僕は彼女が好きなんだろうね」 無論、妹だとか娘だとかそう言った対象に向けるLikeである。間違ってもLoveを抱くほどにユーノとて剛の者ではない。 そう、これは娘に抱く愛情に近い感情なのではないだろうか。尤も、未だ二十年も生きていない若造たる自分が娘を持つ気持ちというのもおこがましいものなのかもしれないが。 まぁヴィヴィオの方からすればこちらはお友達感覚、良くても親切なお兄さんと言ったところか。 自身のママの真似をして、こちらの事を『ユーノ君』と呼んでくることは微笑ましい姿と見るべきなんだろうが、正直十以上も歳が離れた女の子に君付けされるというのもどうかとは自分でも思っているのだが、この呼称に関しては向こうも頑として譲ってくれない。 こういうところは母親譲り……本当に、血が繋がっていなかろうとも良く似た親子だとユーノは思う。 「……僕が入り込む余地なんて、無いのかな」 出来ればユーノお兄さん、否、ユーノパパと呼ばせたいのが密かな願望だったりするのだが、そもそも彼女の父親に自分が成れそうかと言えば今のところ可能性は限りなく低い。 何せ彼女のママ……なのはに自分の想いを伝えることすら出来ていないのだ。 「……結局、僕は逃げたままなのかな」 仕事の忙しさを言い訳に、彼女の都合もあると考え、今だって碌に会う事すらままならない。 会おうと思えば何とかすれば会う時間だって作れるだろう。この想いを伝えたいと思うなら勇気を持ってその時を逃さずに告げればいい。 だというのに…… 「振られるのが怖いから告白も出来ないなんて、本当に情けないな」 今の関係はユーノにとってもある意味ではベストであり、最も居心地がよいものであったというのも事実だ。 一番仲の良い友達の一人、近過ぎず遠過ぎず、適度な距離で互いを支えあうことが許される。 そんな今の状態が心地良すぎるせいで、一歩でも踏み込んでもし今の関係すらも崩してしまうのかと思えば……怖くて、どうしても二の足を踏んでしまう。 分かっている。これがどんなに卑怯で無様で情けないことなのかくらいは。 要するに、自分は我が身がやはり可愛いのだ。振られることで傷つくことを、寄る辺としている安らぎを台無しにしてしまうことが耐えられないのだ。 今のまま、今のままを保っていれば、なのはは傍にいてくれる。ヴィヴィオとだって良好な関係だって作れる。 別に男女の恋愛が全てじゃない。黙して語らず、秘めるだけの愛があったって別に――― 「―――違う、そうじゃない」 自分が考えた思いを否定するように、ユーノは強く首を振った。 そうじゃない、そうじゃないだろう、ユーノ・スクライア。 嘘を吐くな、誤魔化すな、逃げるな。 そんな都合の良い、高潔な考えを維持できるほどに自分は人間出来てはいないだろう。 ……そう、そんなもの無理だ。無理に決まっている。 少なくとも、ユーノ・スクライアの高町なのはへと抱く想いとしては適応外だ。 あれだけヴィヴィオの時に痛い経験と共に学んだというのに、今更また同じ徹を踏めるのか。自分を騙しきれるのか。 出来るわけが……ない。 なのはの隣に自分ではない別の男がいて、彼女がその男に自分には見せたこともないような笑みを見せる……それに耐えられるか? ―――否。 ヴィヴィオが自分以外の者に懐いて、その男の事をパパと呼び慕いながら、親子三人仲良く笑う姿を見て自分は耐えられるのか? ―――否。 周りの皆が全員、そのなのは達の事を祝福する中で、自分もまた同じようにおめでとうと祝福の言葉と笑みを本心から贈る事ができるのか? この気持ちに決着すらつけないで! ―――否、断じて否! 「……出来るわけない。出来るわけないじゃないか」 そう、出来るわけない。そんな負け犬になる姿を、それでも残っている自分のチンケななけなしの意地が許そうとなどしない。 決着も付けず、ただ惰性と臆病を理由に逃げ続けておいて潔く身を引くなどと言うことが本当にその場面に遭遇した時に出来るわけがない。 嘘で誤魔化し続けて、依存の対象にして、自分の都合だけで傍に居続けることが彼女への想い? 違う、断じて違う。そんなものはただの自己愛だ。 それでは自分がなのはが好きなのではなくなってしまう。それでは自分が本当に好きなのはなのはが好きな自分であるのと同じだ。 自己満足の捌け口でこの十年すら汚してしまうこと、彼女の側がそれでも疑わずに抱いてくれている信頼を裏切るようなこと……許されて、いいはずがない。 勇気を出せ、ユーノ・スクライア。 意地があるだろう、男の子には。 たとえ振られたとしても、ちゃんと選ばれなかったという勝負を挑んだ上での玉砕と、気付きもせずに逃げてばかりな結果による言い訳と、いったいどちらがマシかなど分かりきったことだろう。 本当に彼女が好きだというのなら、ハッキリと言えるだけの度胸を持て。 これは誰の為でもなく、自分自身が向かい合うべき戦いだ。 だから……… だから――― 僕は――― 「―――ユーノ君」 不意に名を呼ばれたことに気付き、ハッとなって慌ててユーノは背後を振り向いた。 職員は全て帰したはずの無人の無限書庫内で残っている自分以外にこの場所に他の誰かが居る筈が無い。 ましてや、先程の聞きなれたあの声は――― 「…………な…のは………?」 思わず呆然と信じられないような思いも顕に漏らした言葉。凝視する振り返った先に居る相手からユーノは目を逸らせない。 ……何で、どうして? そんな疑問が当然のように浮かぶのは当たり前、幾らなんでもこのタイミングでこの人物の登場はタイミングが良すぎるだろう。 それに彼女は現在あのロストグラウンドと呼ばれる大地に赴いている最中であり、此処に来れるはずなどないではないか。 彼女の事を考えすぎた余り、ヤバイ妄想まで形として見えるようになったのかとユーノは本気で疑いだしてもいた。 ……というより、本当に彼女は本物の高町なのはなのだろうか? そんな疑問が拭えず、彼女を凝視したまま立ち竦むユーノになのははいつものあの彼が最も好きな微笑を浮かべながら言ってきた。 「急にごめん。何だか会いたくなって……来ちゃった」 夢を、夢を見ていました。 それはとても荒々しく、激しく、そして悲しい夢でした。 夢の中のあの人はいつかのようにあの白い女の人と対峙して戦い続けています。 沸き出でる激しい感情……憎悪や憤怒に塗り固められた思いをその拳に込めて叩き込むように。 夢の中のあの人はとても強く、本当はずっと強いはずの白い女の人すら圧倒してその拳を振るい続けています。 きっと女の人は勝てない、わたしにもそれが分かる中ですら、けれどあの人を止める為に必死に手を差し伸べ続けています。 必死にあの人に呼びかけ続けています。 あの人の―――名前を呼んで。 けれどあの人の中にある憎悪や憤怒の感情は、もう収まりがつかなくて。 振り上げた拳を下ろす場所すらも何処にもなくて。 それが自分自身でも分かっているからこそ、もう目の前の女の人以外にそれをぶつけられる相手もいなくて。 悲しい……それがとても悲しくわたしは思います。 あの人がもう止まらない事に対して悲しく。 女の人の言葉が届いてくれないこともまた悲しくて。 やめて、やめて……もう、やめて! わたしが必死に呼びかけても、それも無駄なだけ。 わたしはただ見るだけの存在、見ていることしか出来ない存在。 本当に無力で、情けなくて、何も出来ない。 止めて……誰か、誰かあの人たちを止めてあげてください。 このままじゃ、このままじゃ、きっとあの人たちは――― ■■くんと■■■さんは――― 誰か、誰かお願いします! あの二人を、■■くんたちを――― 誰か、止めてあげてください! ……お願いします……お願い……します。 誰か……誰か……お願いだから、二人を――― 黄金の輝きを放つ獣の咆哮が、ロストグラウンドの大地を震わせる。 疾走と共に跳躍、空を翔ける魔法使いへと自身の自慢の拳たるソレを叩きつけんために迎え撃つ魔弾のことごとくを打ち払い、弾き飛ばしながら接敵。憤怒と憎悪、その他諸々の感情を上乗せした破壊の拳を持ってかの敵を粉砕せんと叩き込む。 対する魔導師――高町なのはにとってその直撃は文字通りの戦闘不能へと直結する結末。是が非でもその結末を覆さんとするのは当然の判断。 展開するバリアは黄金の拳の接触と同時に、その表面を爆発させる。 バリアバースト。 バリアの表面を魔力を操作して爆発させることにより対象を弾き飛ばす、攻性の防御魔法。 以前の戦いの際、バリアジャケットバージョンとも言えるリアクティブパージの経験があったとはいえ、相手の対応が受け止めることから弾き飛ばすことへと切り替わったその事実にカズマは忌々しげに舌打ちを吐く。 今更に表面上の見せ掛け程度の爆発に臆す必要も無ければ大したダメージなど負うことも無い。むしろ叩き潰せと自身を急かすこの衝動をこの程度の小細工で凌ぎ切れると思うなとすら感じる。 事実、なのはの心境もまたカズマがそう苛立ち抱き評価を下した通りのものではあるのだが、それでもその小手先の技術で何とか凌ぐのが現状で手一杯であったのは事実だ。 猪突猛進自体は相も変わらずだが、勢い威力とも最前までの比ではなくなれば、手の打ちようすら無くなるほどの脅威となるのも事実、この押され続けている現状がその証明であったこともまた間違いない。 既にブラスター2まで解放しているにも関わらず、発する力の差は刻々とその溝を深めるばかりだ。フルスロットルのギアを踏み続けているのは互いに変わらぬはずなのだが、やはり馬力は向こうとこちらとでは桁違いの差があるらしい。 ブラスタービットがカズマを拘束するようにその周囲を旋回、発生したバインドにて動きを縛るもまるで枷にもならぬように次の瞬間には引き千切ってくる。 だが拘束を破るその一瞬、そこを狙うように叩き込む魔弾の数々……ショートバスター以外では相手の猛攻にバスターでは対応が間に合わないのでこうした戦法を取る他に無い。 しかし小手先の攻撃が通用するような相手でないのは既に何度も戦闘を繰り返し証明済みでもある。これが焼け石に水でしかないのもまたなのはとて承知の上だった。 それでも現状、場を凌ぎきる手段としてこれしかない。迫り来る豪腕の猛攻を必死に潜り抜けながらも、徐々にジリ貧に追い詰められているのは明らかではあった。 何とかしなければならない。百戦錬磨の魔導師としての思考がなのはの中で目まぐるしく対処法の数々を検討していくが実際に有用と判断されるものが一向に出てこない。 ……否、出てきてはいるのだがそれが間に合わないのだ。 「がぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!」 型も何も無い力任せの大上段からの拳骨に近い打撃を繰り出してくる右拳の側に向かって素早く避ける。反対側に空いた左の豪腕を回避先に受けないための処置だったのだが、しかしなのはの予測を遙かに超えた追撃をカズマは敢行してきた。 振り下ろした右拳がかわされることも、左拳の範囲外である右側に回避することも予想していたのか……否、単純に出鱈目な身体能力に物を言わせたのだろう。 空を切る拳の勢いをそのまま利用しながら体を捻るカズマ。そのまま独楽の様に回転した勢いをつけてリーチを伸ばした左のバックブローが間髪入れずに迫る。 咄嗟に後ろへと飛び前面に障壁を展開するも、しかし圧倒的な物理的破壊力はそれらを物ともせずになのはを吹き飛ばす。 ハンマーで殴られる方がどれ程にマシかと思える激痛と痺れが全身に走っている事実に顔を顰めながらも、即座に態勢を立て直すと共に迎撃態勢を取る。 格闘に関しては生来の運動オンチとも相まってなのはとて所詮は素人に毛の生えた程度の技量と知識しか無い。……が、同じように格闘技など修めていないにも関わらず無茶苦茶な喧嘩殺法を実現できる異常な身体能力が向こうにはある。 加え、どう攻め、どう動けば対象を落とすことが出来るのか、勢いと共に本能的な部分でカズマはそれを理解している。 研ぎ澄まされ、爆発力が増す一方の相手の攻めは段々とこちらの対処や予測を上回ってきているのだ。 二手、三手とその凌ぎきれた範囲を次の激突では一足飛びに超えてくる……まさに戦いの中で成長していく闘争の悪鬼とでもいったところだろうか。 高町なのはが積み上げてきた、研ぎ澄ましてきた戦闘理論、戦いにおける布石や絡め手の数々……小賢しいとばかりにここまで一蹴されてしまえばもはや悔しさすら沸いてこない。 ……見事だ。彼は本当に強い。そう素直になのはとて認めている。 だがそれでも――― 「―――それでも、今の君にだけは負けられない!」 命をかなぐり捨て、完全燃焼すらも辞そうとしない、未来など見ずにこの瞬間に果てようとする一匹の獣。 高町なのはにとってそれは絶対に負けるわけにはいかない相手だ。 ましてや少女との約束が、親友の引止めを前にしても止まらなかった、今のなのはの貫こうとしている信念からすればそれは尚更の事。 故に――― 再び迫る豪腕の猛攻。 それをギリギリで掻い潜りながら、忍ばせていたブラスタービットを展開。 クリスタルケージが檻となりカズマを閉じ込めたと同時にフラッシュムーブで瞬時に距離を取る。 次の瞬間には豪腕一閃にてクリスタルケージを粉砕して飛び出てくる獣へと、既にカートリッジロードを済ませたレイジングハートの照準は定まりきっていた。 しかしそれは散々その身で喰らってきた獣からしても既に予想済み。であるにも関わらず、躊躇うことなくそのままその射線上を直進しての突撃をカズマは躊躇わない。 「ディバィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイン」 不屈にして無敵、己の代名詞とも言えるこの十年の全ての戦いの中で磨き、詰め込んできたものを相棒の魔法の杖、その先端に収束して解き放つ。 「シェルブリットォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ」 意地にして誇り、反逆という己の生き方の全てを詰め込んできた自慢の拳たるその両腕。ソレを以って眼前の壁を完膚なきまでに粉砕する。 どちらにとっても退けはしない、後など無い事を分かりきった一世一代の正念場。 負けるわけにはいかない、眼前のこの相手にだけは! 共通するその想い、信念を用いそれを解き放つ為に――― 「バスタァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 「バァァアアアアアアアアアアアアストォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 いつかの邂逅の焼き直しとも言える、桜色と黄金の再激突が始まった。 回避など無い。防御も無い。 注ぎこむは全力、この一撃にありったけの信念と意地を込めて。 迫り来る今まで散々にこちらを蹂躙してきた桜色の極光を前に、カズマは黄金に輝くその自慢の両拳を突き出すように突撃する。 拳どころか全身すらも覆う光の渦の中、激流に問答無用で流されるかのような体験を擬似的に感じながら、それでもカズマは拳を決して下げることなく光の渦を切り裂くように進み続ける。 前へ前へ、只管に前へ。 後も先も、未来も何もかも関係ない。この戦いの先に例え死が待っていたとしてもそんなものすら関係なく。 躊躇すら抱かず、恐れなど無論のことあるはずもなく。進む、ただ只管に進み続ける。 もはやこの道しか無い以上、この道しか残されていない以上、ただその上を駆け抜け続ける。迷うことなく、最速でだ。 いつだって、どんな時でも、誰が相手であろうともそれは変わらなかった。ならば今回だってそれは同じ。 故にこそ――― 「てめぇにだけは………絶対に負けねぇッ!」 こちらにアイツを思い出させる、アイツの面影を纏わりつかせる、アイツの思い出を穢すこの女にだけは! 例え死んだって負けるわけにはいかない。 だからこそ――― 「今日こそ……てめぇを………斃すッ!!」 今この場所で、立ち塞がる壁を粉砕する! 全身全霊の一撃。最大出力を以って繰り出した魔砲の一撃。 だが黄金に自身を輝かせた獣の勢いはそれすらも切り裂かんと徐々に迫ってくる。 最初の激闘、その幕引きとなった最後の一撃をぶつけ合った瞬間がなのはの脳裏に蘇る。 ……このままでは、負ける。 直感的にそれを悟った。理屈云々を抜きにした数多の戦場を駆け抜けた彼女の中の本能がその未来を垣間見させたといってもいい。 だがだからといって、否、尚更にこそそれを簡単に受け入れるわけにもいかない。 負けられないのはこちらも同じ。退けないだけの信念が、意地がこちらにもある。 何よりも背負った想いが、なのは自身が彼へと伝えたい言葉がその敗北という現実を引き寄せることを認めようとはしない。 「女の子にだってね―――意地があるんだよ!」 その宣戦布告にも似た叫びと同時、なのははあのゆりかご戦以来禁じてきた最後の封を解き放つ決意を固めた。 無茶を承知で、それが己の信念に反することだとしても……ここで負けてしまっては意味が無い。 今ここで彼に勝たなければ、彼を止められなければ、彼を相手にぶつけてきた今までの己の全てが無となってしまう。 それだけはノゥ! 断じてノゥ! 絶対にノゥだ! だから――― 「レイジングハート―――ブラスター………3ッ!!」 敗北というその運命に―――反逆する! 体内のリンカーコアが焼ききれんばかりに稼動、濃縮され搾り出されてきたありったけの魔力の全てをレイジングハートへと注ぎ込む。 桜色の極光の渦……それが更なる輝き、その勢いと威力を増して解き放たれていく。 更に勢いを増した極光の猛攻。 問答無用でそれを切り裂き、それを発射している相手までもう少しといった所で、遂にソレに押し返され始める。 激流の中で足を釣って溺れてしまったかのように、吹き飛ばされるようにドンドンと後ろへ後ろへと追い返されていく。 突き出す自慢の拳、その黄金の両腕すら遂には耐え切れないかのように亀裂が走る。 カズマにとっての唯一の拠り所、誇りが今砕かれんとしていた。 その現実、その敗北を認めることなど………ああ、断じて出来るはずなど無い。 喉を裂けよとばかりに咆哮。もはや木々すらざわめかすだろう絶叫に近いそれを腹の底から勢い良く放出しながら、しかしカズマは逆にどんどんと取り入れようとしていた。 此処ではない何処か。明確なイメージが出来るわけでもなければ、理屈だって無論の事ながら説明できない。名称すらも分からない、そんな訳の分からぬ意味不明な空間。 だが其処にはあった。カズマが求めて、欲してやまないそれが、まるで際限など無いと言うほどに莫大に。 ―――そう、『向こう側』と呼ばれるその場所にはカズマが求める”力”が確かに存在していた。 チャンネルを繋げるように、さっきも出来たのだからもう一回だって出来るだろう。そんな理屈を前面に押し出しながら無理矢理に引っ張り出そうとする。 命すら惜しまずに貪欲に、体を蝕む痛みや不快感の一切を無視したように只管に。 そう、もっとだ。もっと、もっと、もっと! もっともっともっともっともっともっともっと! 限界など定めるな。例えそんなものが仮に存在したとしても問答無用で叩き潰せばいい。 叩き潰せない壁など存在しないのだ、そう言い張るかのようにもっと上があるだろうと、アイツを超える力があるはずだと。 只管に、ただただ只管に―――引っ張り出す! 大気を震わせるような絶叫を最後の足掻きとでも言うようにカズマが搾り出した次の瞬間だった。 先程のシェルブリットを左腕にも纏った時と同様と思われる虹色の光の収束と、その終了と同時に輝きだす黄金の光。 桜色の極光の中に身を置きながらも、陰る事も無いと言わんばかりに全身よりそれを発し、覆う彼の姿に変化が発生する。 「―――なッ!?」 思わず信じられないと息を呑んだ叫びをなのはが上げたのも無理なきこと。 己が魔砲の砲撃、それに吹き飛ばされようとしていたカズマの全身を突如として覆っていくその変化を目にしてしまったのだから仕方が無い。 押し負けて砕け散ろうとしていた両拳へと纏っていたシェルブリット。それが再生するかのようにその損傷を修復していったかと思えば、今度は腕だけに留まらずに彼の全身へとそれは覆っていくのだ。 その形は猛々しい彼の獣としての性を象徴としたような獅子を模した鎧。弱肉強食の大地において獣の王として君臨する彼の闘争本能を形としたものなのか。 兎も角、あれもまた彼のアルターたる”シェルブリット”。恐らくはこれにて最後と思いたい更なる『進化』を遂げたその姿と言う事だろうか。 どちらにしろ、一目見た瞬間に驚愕と同時になのはの背にそれは戦慄を走らせた。 黄金の獣は猛る様に、その咆哮と共に再び押し返されかけていた勢いの中で、それを巻き返すかのように瞬時に再び魔砲を切り裂きながら進んでくる。 先程までの比では無い勢い、発し叩きつけてくる圧倒的なプレッシャー。 それでも胸に抱く不屈の信念が高町なのはに敗北も撤退も許さじと、ありったけの力を砲撃に込めさせる。 しかし――― 「―――これが!」 勢いは止められない。絶望的とも言っていい、理不尽なまでの侵攻をもって遂に彼女のいるその前まで相手に到達を許してしまう。 「俺の……自慢のッ!」 桜色の砲撃を突っ切り、あの時と同じように眼前へと拳を掲げてみせる獣の姿。 回避も防御ももはや間に合わない。……否、そもそも相手が今繰り出そうとしている一撃を前にすればそれら全てが無駄な行いでしかないことは明らかだろう。 ………私、負けちゃったのかな? やけにスローモーションにも感じられる繰り出される拳が己の身へと到達するまでの刹那の時になのはの脳裏に漠然と過ぎったのはそんな思考だけだった。 「拳だぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」 瞬間、その雄叫びと同時に堰き止められるかのように停滞しているかに思われた時間が急速に元へと戻ってくる。 咄嗟に障壁を展開しようと腕を前へと出す。だがそれすら粉砕して障壁を砕き、それどころかそのまま前へと出した腕までもが嫌な音を立てて拉げていくのを呆然と見ているしかなかった。 痛みや熱さを感じる以上に、それら全てを先んじてすっ飛ばした物理的な衝撃が己の身へと叩きつけられ吹き飛ばされるのを感じて、高町なのはの意識は断絶した。 「……負けちゃったね」 目の前で苦笑と共に告げてくる幼い少女が示したその結果に高町なのはが答えるべき言葉は無かった。 負けた……敗北。確かにその通りかもしれない。 全力全開、全てを出し切って望んだ一撃を持ってしても、不敗を誇った己が無敵の砲撃を用いてすら相手にそれを上回られた。 言い訳はしない。ベストは尽くしたなどと言い逃れる気もない。 自分は負けた。結果的に彼を止めることが出来なかった。 「……悔しいの?」 「……うん。凄く悔しいね」 負けたこと……それもあるが少女の言葉になのはが答えた悔しさとはそれとはむしろ別種のものだ。 彼を止められなかった。暴走し、己も他者も傷つけ続ける彼を止めることが出来なかった。 彼の心を護ってあげられなかった。彼を助けてあげられなかった。 由詑かなみの願いを叶えてあげることが出来なかった。 「……悔しい。うん、凄く………悔しいよ」 少女を前にしてみっともなく涙を流す己の姿を自覚できればこそ、尚更に今の自分は惨めであり無様すぎた。 エースオブエースの称号も、英雄と持て囃されたその功績も。 たった一人の男の子を救うことも出来なければ彼女にとっては何の意味も無かった。 何の為にスバルに大見得を切り、クーガーの庇護の下から飛び出し、はやてを説き伏せてまで彼の元へと向かったのか。 向けたくもない魔法を向けてまで、傷つけたくない相手と争ってまでそれでも戦おうとしたのか。 皆に顔向けも出来なければ、支えてくれていた、護ってくれていた想いまでをも無駄な結果になってしまうではないか。 嫌だ……ああ、そんなのは嫌だ。 それは許容できない。納得できない。 誰かが傷つくのを見るのが嫌だった。 誰かが泣いているのを見るのが辛かった。 そんな人たちに何もしてあげることのできない自分が我慢ならなかった。 だからこそ、だからこそそれらを覆すことの出来る力を手に入れた時、嬉しかったのだ。 ―――魔法。 それは子供の頃に憧れた、御伽噺に登場するような万能の力でも都合が良いものばかりでもなかった。 けれど何も出来ない、何も無かった高町なのはにとっては初めて手に入れられた自分を変える事の出来た確かな切っ掛けでもあったのだ。 『なのはちゃんにしか出来ない事、きっとあるよ』 その言葉通りの、己の不確かだった未来を確かなものへと切り開いていくことの出来た力。 自分の想いを通すことの出来る、護りたい人たちを護ることの出来る力。 何処かの誰かの未来を、幸せを、笑顔を護ることが出来るはずの力。 ずっとそう信じて、そうやって使うために戦い続けてきたはずだった。 けれど――― 『まぁハッキリ言ってしまえば―――なのかさん、あの馬鹿に貴女の声は届きません』 結局は、そのクーガーが予期した通りの結果がこれだった。 伸ばした手は届かない。かけるべき言葉も聞いてもらえない。 こういう事態、結果が初めてというわけじゃない。今まで管理局員として戦い続けてきたこの十年、似たようなケースはそれこそ幾らでもあった。 本当にお話をしたいのに、そうすることも出来ない、拒絶を示される。 世界がそんなにも都合が良くないことも、優しさばかりで救いが絶対にあるばかりでないことも分かっている。 自分のやっている事が一方的で、相手からすれば見下すに近い物言いだと反発を受けたことだって何度だってある。 だがそれでも、そうだとしても――― 「……けどね、それでも助けてあげたいって思うことは間違ってるのかな」 どうしても見ていて放っておけない。知らぬふりでは済ませられない。 大きなお世話、手前勝手な易い自己満足……これらが全て偽善であることくらい分かっている。 だがたとえそうだとしても、これが他者から見れば偽善に過ぎない鬱陶しいだけの行いだとしても。 「……助けてあげたいんだよ。傷ついてばかりの生き方なんて……そんなの辛すぎるよ」 痛みはいずれは慣れるもの。流した涙もいずれは乾き、感覚だってどんどん鈍くなっていく。 だがたとえそうであったとしても、傷口からは血が流れ続けていく。 それはたとえその流す本人が無自覚であろうとも、きっと痛くて辛いはずなのだ。 それを感じられなくなってしまうことこそ、一番悲しいものだとなのはは思う。 痛むものに痛みを感じられなくなること、苦しいのに、辛いのに、それに耐える事しか出来ない、それしか知らないこと。 それは一番見ていて放っておくことなど出来ないものだ。 そう、かつてフェイト・テスタロッサと出会った時にそう思ったように。 今のカズマは彼女と同じであり、そして同時に過去の自分だ。 誰にも助けてもらえなくて、助けてもらうということも知らずに、ただひとりぼっちで耐えるしかない、そんな子供。 高町なのはに目に映る、怒りに猛る獣の姿と本質はまさにそれだった。 だからこそ――― 「助けてあげたいんだ。彼を、彼らを……カズマ君とかなみちゃんを助けてあげたい」 この大地に自分が来たことの意味の中に、役割としてそれがあると思った。 不屈の魔法使いとしての意地が、信念がそれを貫けと自分に言ってくる。 「じゃあその為に、まだ立ち上がるの?」 少女が疑問も顕に尋ねてくるその言葉になのはは涙を拭き、そしてしっかりと頷いた。 何度振り払われようが、それでも手を伸ばす。 何度でも届かせるように、想いと言葉を投げかける。 何度でも―――そう、彼の名前を呼んで。 「本当にお節介で、大きなお世話な魔法使いだね」 そのなのはの決意に少女―――十年前のかつての自分は呆れたように告げてくる。 なのははそれに苦笑を浮かべながら、ごめんと謝る。 彼女がこの先に駆け抜ける結果、その末路とも言える自分がこれから先を信じている小さな自分の前でいつまでもいじけてはいられない。 だからこそ、今はハッキリと彼女へ向けてなのはは告げる。 「勝手でごめん。―――けど、これがやっぱりわたしだから」 十年前、己で悩み、それでも信じて進むと決めた道。 何処かの誰かの未来と幸せ、そして笑顔を護る魔法使い。 最後まで何度叩きのめされようと、負け続けようと、拒絶されようと、否定されようと、それでも変えられない。変えてはいけないとそう思う。 だから――― 「負けちゃ駄目だよ、未来のわたし」 「うん。私は負けないよ―――絶対に!」 今再び、この翼をもって舞い上がろう。 勝った。遂に、打倒した。 「はは……ははは………はははははははははははっ!」 痛快だ。最高だ。その事実を、歓喜を顕に勝ち鬨の哄笑を示す獣。 散々苦渋を舐めさせられ、虚仮にされ、立ちはだかってきた壁。 それを今この瞬間、遂に打倒してやったのだ。 「……勝った……勝ってやった……なぁ、俺の勝ちだぞ、君島ぁ!」 ちゃんと見ていたか? 俺は護った、護りきったぞ。 お前の生き様を、信念を、俺たちの意地を。 この拳一つで、確かに護りきった。 「これだ、これだよ、この力だ!」 そう、この力だ。この力さえあればいい。 もう何も奪わせない、何も傷つけさせない。 虚仮になどさせない、見下させなどしない、立ちはだかせなどしない。 俺が傷つけ、俺が奪う―――俺だけの力! もうこれだけでいい。これさえあれば何も要らない。何も欲しくない。 欲しいものがあるならば、この力で奪い取ればいい。 気に食わない奴がいるなら、この力で叩き潰せばいい。 そう、それが出来る。今の自分にならば造作も無く可能だ。 「だって俺が一番強い……ああ、俺が強えんだよ」 弱肉強食、その理が示すとおりに、王者として君臨してやればそれでいい。 力を持った奴が偉いのだから。勝った奴が一番正しいのだから。 そして自分はそれに全て当て嵌まっているのだから。 だから――― 「………カズ…マ……く…ん………」 その時だった。消え入りそうなほど小さく掠れた、けれど聞き逃すことも出来るはずもない忌まわしい声を耳が拾ったのは。 それこそカズマは信じられぬと言った様子でその視線を、声が聞こえた方向へと向け直した。 「………テメエ……ッ!?」 口汚く罵る言葉も、戦慄く身体を無く、ただただ憎悪に焦がされた感情を握った拳へと溜め込みながら、獣はその相手を睨み据える。 先程、自分が確かに打倒したとそう確信したはずの憎き仇敵のその姿を。 夢を、夢を見ていた気がした。 『マスターッ!?』 「……うん、大丈夫……大丈夫だよ、レイジングハート」 相棒からの気遣う言葉に無理矢理に平気な表情を浮かべようと努めながら、まだやれるとその意志を魔法使いは己が杖へと示した。 「……夢を……夢を、見ていたんだ………」 本当なら口の中から血塊でも吐き出してしまいたい程に、身体に激痛も走っていれば、気分も最悪だが、それでも不思議と紡ぐ言葉をやめられなかった。 「夢の中の私は……昔のわたしと出会ってて、わたしの言った指摘に……情けないけど私は泣き言を漏らしちゃって……」 『………マスター?』 主の要領を得ないその意味の分からぬ呟きに、デバイスは主の身に真剣な危惧をもまた焦りと共に抱いていた。 予想以上の相手の戦力。バリアジャケットやプロテクションを物ともしなかった相手の打撃。左腕はもはや使用どころか見るも無残に破壊され、叩き込まれたダメージもまた即死でもあってもおかしくなかった威力。 今の現状きっと誰が見たとしても、高町なのはの戦闘続行は不可能と断じても良かった。 むしろこうやって、意識を取り戻してかろうじてとはいえ立ち上がっていられる状態の方が奇跡である。 「……でもね……それでも私は、やっぱり諦められなくて、諦めちゃいけないとも思って………」 加えてこの奇妙な言動。正常な判断力が彼女に残っているのかすら、レイジングハートからすれば正直疑わしかった。 だからこそ、主を支えるデバイスとして、彼女の相棒、戦友としてレイジングハートに具申できる案は一つしかなかった。 『……マスター、此処は一度撤退を』 既に勝敗は決した。悔しい……デバイスである己の身がこのような感情を抱くこと自体がおかしく、或いは錯覚なのかもしれないが、それでも今はそれを押し殺してでも選ぶべき選択こそがそれだと判断した。 このままでは主は殺される。無論、そのようなこと断じて許せるはずもない。だからこそ、ここは無念だろうとも再起の可能性を信じて退くべきだ。 此処から先は無茶でもなければ蛮勇でもない。それにも劣る、単なる自殺行為にしかならない。 なのはを死なせるわけにはいかない。主を護るデバイスの責務としてレイジングハートはそれを遵守しなければならなかった。 しかし――― 「……駄目だよ、レイジングハート。……ここは逃げる場面じゃない」 しかしレイジングハートからのその忠言に対しても、高町なのははそれを否定するように首を横に振る。 当然、レイジングハートからすれば受け入れられるはずもない。なのはの無念は承知の上だが、それでも今は撤退以外の選択肢を彼女に取らせるわけにはいかなかった。 だからこそ、説得するために彼女が反論を許さぬよう畳み掛けるレベルの言葉を投げかけようと言葉を発しようとするも――― 「……ここで私が逃げ出したら、今のカズマ君を誰が助けるの?」 『しかし、マスター!』 「……ここで彼を止めなくちゃ、彼はもう、戻ってこれなくなる。永久にひとりぼっちになっちゃう」 そんなものは駄目だ、駄目なのだとなのはは首を振る。 レイジングハートから見れば主のそれは聞き分けのない子供の我が儘も同じ。怒鳴りつけてでも覆さなければならない、度し難い愚者の選択だ。 命を溝に捨てるようなもの……彼女が最も許さないはずの無茶そのもの、否、それにすら劣るものだ。 一心同体を誓った身であれど、これとそれは明らかに別のはずだ。 だからこそそれを何とか覆そうと論破へとかかろうとするも…… 「レイジングハート――――――――お願い」 ただ一言、主からのそのたったの一言に、レイジングハートは二の句が告げなかった。 その一言、その言葉はレイジングハートがレイジングハートであるために決して無碍には出来ない、自身のアイデンティティにも関わる言葉でもあったが故に。 ……そう、あろうことか主は彼女の願いを叶える魔法の杖を自負するこの身へとその言葉を言ってしまったのだ。 「お願い」と……。 『……卑怯です、マスター。それを言われたら私には返す言葉が無いではありませんか』 不屈の魔法使いの願いを叶える魔法の杖。 それがレイジングハートの自身へと課した本分、その存在意義。 主が願うその未来を、自分の及ぶやり方で手助けをして叶えるのがレイジングハートがこの十年にも及ぶ日々の中で誇りともしてきたこと。 万能ともほど遠い、出来る事に限りがある身であれど、それでもこの少女の為に力を貸し、戦い続けてきたという忠誠の形。 デバイスとして……否、魔法の杖としての誇りがあればこそ、尚更にその一言には逆らえない。 「……うん、ごめんね………レイジングハート」 それを恨み言としてぶつけられたからこそ、告げた本人たる高町なのはもまた理解している。 そしてレイジングハートが断りきれないことを承知の上で、あえてその一言を言ったのだから。 ……確かに、これは卑怯であり最低だろう。それを言い訳にする心算はもはやなのはにもない。 だがそれを選んだ責任として、貫き通すことを誓った決意として、撤退を選べない以上は無理矢理にでもこう言うしかなかったのだ。 『……謝るくらいなら、最初から言わないでください』 「……うん、そうだね。……本当に、ごめんなさい。でもそれ以上に―――」 ―――ありがとう、私の魔法の杖。 嘘偽り無き感謝を込めて、この共に戦い続けてくれた十年分の想いも上乗せして、高町なのははレイジングハートへと、そう感謝の言葉を告げた。 レイジングハートはそれに言葉を返さない。返さずとも充分だということは自分も……そして主もまた理解をしていたのを知っていたから。 そう、もはや言葉など不要だ。 この十年、言葉などでは言い尽くせないだけのものを互いで積み重ね、駆け抜け続けてきた主従関係だったのだから。 故にこそ、己もまた覚悟を決めようとレイジングハートはその決意を固めた。 この身はデバイス……否、不屈の魔法使いの願いを叶える魔法の杖だ。 たとえ相手が怪物のような格上の相手だろうが一歩も退かない。 この身砕け散るその瞬間まで、ただ只管に主と共に戦い尽くそう。 出来る出来ないではない、やるのだ。 アルターだか何だか知らないが……あまり魔法少女の魔法の杖を舐めてくれるな。 「行くよ、レイジングハート!」 『All right, my master.』 そして―――不屈の想いはこの胸に。 ……何故だ、何故倒れない? 圧倒的な力の差を見せつけ、蹂躙と呼んでも過言では無いだけの猛攻を受け、既にボロボロと化しているにも関わらず。 どうして、どうして眼前のこの女は倒れない? どうして、どうしてそのムカつく眼が絶望や後悔に染まらないのか? 強いのは俺だ、圧倒しているのは俺だ、負けていないのは俺だ。 だというのに……だというのに…… どうして――― 「何で……テメエは倒れねえんだよォォォオオオ!?」 しつこいとかしぶといとか、そんなレベルではない。 甚振って苦しめるとか、そんな考えはとうに捨てて今は殆ど倒す心算で攻撃を叩き込んでいた。 だというのに倒れない。地に叩き落しても直ぐに立ち上がり迫ってくる。 不気味……そう、それはあまりに不気味だった。 「しつけえんだよッ!」 その眼……こちらをまるで憐れんでいるかのようなその眼が気に入らない。 勝手に枠へ嵌めこんだ不幸とこちらを憐れんでいるかのような態度が気に入らない。 何処までいってもどれだけいっても、決して変わらない相手のその姿勢。 お門違いの救世主気取り……ッ! 「舐めんのも……大概にしやがれぇぇぇえええええええッ!」 故に許さない、許してはなるものかと拳を振るう。叩きつける。 この女を、この目の前の壁を、二度と立ち塞がれぬよう、完膚なきまで粉砕する為に。 自慢の拳をただ一心にて叩き込む。 小賢しい障壁など微塵も介さず、どれだけ強固に固めようが杖で防ごうが問答無用の拳の一撃が相手へと直撃―――吹き飛ばす。 白き魔法使いがその身を吹き出す赤へと染めながら倒れていく様を見て、今度こそと獣は己の勝利を確信する。 だが――― 「―――カズマ、くん………」 それでも尚、再び震える体に、マトモとは言い難きボロボロのその身へと鞭打ちながらそれでも女は立ち上がった。 彼の……獣の……己の名を、呼びながら。 他の誰よりも近しい、そして愛しい者だったはずの少女と聞き間違えるほどに酷似したその声で。 名前を……呼んでくる。 「――――――ッ!?」 脳裏に走った姿は、もう傍にはいない大切な誰か。 置き去り、そしてその結果として奪われた一人の少女――― 違う………こいつは、違うッ! その脳裏に浮かんだ少女と眼前の女を一瞬でも重ね合わしてしまった事実を否定するように、苛立ちと共に尾を振るい眼前の女を叩き飛ばす。 今の“シェルブリット”を纏ったカズマは、その姿通りに繰り出す全ての打撃がシェルブリットクラスの一撃を付加している。 尾の一撃とて決して例外ではない。叩き飛ばされ近くの岩壁にめり込みかねない勢いで叩きつけられながらも、それでも女は間を置くことなく立ち上がる。 ふらつく足元、立っているのが精一杯の、重傷と認識して良いほどに酷い姿を曝しながらそれでも――― 「………カズ…マ……く……ん………」 一歩一歩、遅々とした速度にも関わらず、血反吐を吐きかねない掠れた声でありながらも――― ―――こちらの名前を呼んで、歩み寄り手を差し伸ばしてくるのを決して止めようとはしない。 ……何だ、こいつはいったい何だというのだ? 分からない、自他共に馬鹿と認めているはずの自分ですら思わず馬鹿だと叫び出してやりたくなるほどに理解できない。 否、理解したくない。理解してしまえば、理解しようと思ってしまえば、きっと――― 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」 訳も分からぬ言語にも成り切っていない母音の羅列を叫び上げる奇声を発しながら、カズマは眼前の女に向かって拳を振りぬこうと殴りかかった。 もはや圧倒的なまで充足感も、気に入らなかったはずの宿敵を圧倒していた時に感じていた満足感も何もありはしなかった。 そんなものを越えて、カズマが眼前の女に対して植え付けられたのは―――恐怖。 そう、前しか見ない。恐れるものなど何も無い。 ノゥとしか言わず、全てのモノに反逆を行うはずの反逆者である自分が抱くにはあまりにも相応しくない感情。 恐怖、そして精神的に押し負けてしまったという敗北感と屈辱。 ……そう、屈辱だ。 これをそのままにして置くわけにはいかない。 もう誰にも負けない、奪わせないだけの力を得たはずの自分が。 こんな女を相手にそんなものを抱き続けていい道理などあるはずが無い。 故に、砕く。打ち砕く。 この自慢の拳で、このあってはならない存在を、その肉体ごとすべて……打ち砕く。 それだけがやるべきことだと言う様に、咆哮と呼ぶにも無様な叫びを上げながら。 カズマはその拳を――― 「………どうして……止めるの………?」 眼前スレスレにまで迫った己の視界をほぼ全て覆っていると言っても良い黄金の拳。 直撃すれば、命を落とすことも避けられないであろうことは間違いない、本気のカズマの拳。 けれど、それでもギリギリ届いてはいないその拳。 いつかのような寸止めの再現を前にして、今度はあの時のように問いの言葉を投げかけたのはしかしあの時とは違う人物。 またしても自分の前で拳をピタリと止めたその男に対して、今度はなのはがその問いを投げかけていた。 「……何だよ……何なんだよ……テメエはッ!?」 しかしなのはの言葉に応える様子も見せずに、拳を寸止めしている当人たる男の方が、ただこの事実が信じられないと言ったように激しく苛立ちながら首を振る。 「テメエは何だ!? いったい何がやりてぇ!? どうしてこんなにしつこく、しぶとく、俺に付き纏ってくるんだよ!?」 苛立たしい、度し難いと掛け値なしの憤怒と憎悪を顕にしながら睨みつけ、怒鳴りつけてくる。 その姿は必死なほどに、虚勢を張った張子の虎のように頼りなく映り。 なのはの目から見れば、それはとても辛そうに、苦しそうに、そして何より悲しそうに見えた。 ……だから、放っておけない。このままには出来ない。 孤独と後悔と罪の深さに、その闇に彼を落とさせるわけにはいかなかった。 固く握られた眼前の拳。拒絶を示すソレへと彼女は優しく手を乗せる。 握った拳と握手は出来ない。 確かにそれは事実。故にこそ、こちらの手を握ってはもらえない。 ならばこそ、せめて優しく包み込む。慈しむように、もういいと教えてあげるように。 そして、彼女は告げる。 「……カズマ君……もう、良いんだよ」 名前を呼んで、重ねた手にも想いを乗せる。 自分にとっての精一杯、自分に出来る精一杯を。 その想いの全てを、言葉と重ねた掌へと乗せながら。 彼女は彼の―――カズマの名前を呼び続ける。 「……良くねえ……何も……ッ……何も良くなんてねえんだよッ!?」 しかしそれを否定するように、振り払うように、カズマは只管に憎悪の猛りを決して静めようとはしない。 荒々しく重ねてきたその手を振り払う。固めた握り拳は決して解かれることもない。 当たり前だ、何も良くなんて無い。良い筈も無い。 「君島は死んだんだ! テメエらに殺されたんだッ! 俺からアイツを……ダチを……ッ……それにかなみまで、全部、全部奪った分際で何が良いってんだ!?」 そうだ、君島もかなみもその全てを奪われ、帰るべき場所も、背負うべきものも、何もかも、何もかもを奪われてどうして、何が良いと言えるのだ? 言えない……言えるはずなどない。言わせてもいいはずが無い。 だからこそ、だからこその復讐。こちらから奪ったものがどれ程大事だったかを思い知らせ、報いを受けさせてやらずに収まりなどつくはずがない。 これはそういうものだ。そうでなければならない。 “シェルブリット”のカズマとして、君島邦彦の相棒として、カズマが選ばなければならないこと。 ―――アイツを置き去りにしてでも、アイツの“カズくん”でなくなってでもしなければならないこと。 そう自分は選んだ、選び取ったのだ。 今更に選ばなかった道を惜しんで、立ち止まってなどいられない。 「……だからもう……遅えんだよ……ッ!」 何もかもが、全て手遅れだ。 そう、もう何もかもが――― 「遅くなんて……ない……ッ!」 しかし怒鳴り散らすカズマのその言葉すら掻き消すほどの勢いを持って、それを上回るかのような気概を見せながらなのはが言葉を発する。 思わぬ彼女の勢いと迫力に、怒り狂っていたはずのカズマですら思わず気圧され、たじろぐ。 だがそんなものも気にした様子も無く、ただ只管にカズマから目を逸らさずに真っ直ぐとその視線を重ね合わせながらなのはは告げる。 「何も……まだ何も手遅れなんかじゃ……ないよ。やり直せる……やり直せないことなんて……絶対に……ッ……絶対に、ありはしないよ!」 そう、まだ手遅れでは無い。 やり直せないことなどない。 全てを失ったと、背負うものも何もかもを無くしたとカズマは言ったが、それは大きな間違いだ。 まだ残っている。カズマには大切なものが、背負っているものがちゃんとある。 護り続けられるものが、まだちゃんと残っている。 「かなみちゃんは……かなみちゃんは、まだ君の事を信じて、戻ってきて欲しいって願って……ちゃんと待ってるんだよ?」 そう、あの少女が由詑かなみが居続ける限り、彼の事を信じて戻る事を待ち続けている限り。 「……カズマ君……まだ君は―――ひとりじゃないんだよ」 そう、決して一人などでは無い。一人きりになどさせない。 傍に信じていてくれる人がいる限り、その人が帰りを待ち続けてくれる限り。 決して、その絆と想いは彼を孤独の底へと落しはしない。 もし落ちかけているというのなら、自分が救う。引っ張り上げて、救い上げる。 そして……彼女の元へと、送り届ける。 振り払われたその手を、再び優しく差し出しながら。 だから――― だから―――この手を取って、カズマ君。 偽善だ、欺瞞だ、そして茶番だ。 そんなことあるはずがない、そんなことあって良い筈が無い。 そんな道など、もう今更やはり選べるはずなど無い。 馬鹿だ、クズだ、愚かだ、道化だと、嗤い蔑まれようとも。 「……もう、止まれねえよ」 止まれない、止まらない。 止まり方だって分からない。 だったらこの選んだ先を進み続けることしか――― 「だったら―――私が止めるよ」 止めてあげる、止めてみせる。 そしてもう一度、道を選べる選択肢にまで戻してみせる。 絶対に、絶対に! だから――― 「少しだけ……痛いの、我慢してね」 「―――――ッ!? テメエッ!?」 『Restrict Lock.』 瞬間、なのはが持つ杖―――レイジングハートがそう言葉を発した直後にカズマの四肢を連環の束が次々と拘束し、その場へと彼を縛り付ける。 不意打ちにも等しかったこととも相まって、カズマがその事実に気付き苛立たしげに自らを縛る拘束を力づくで引き千切ろうとした直後には既になのはは上空にまで距離を取り、痛々しい片腕に必死に力を込めながらレイジングハートの切っ先をカズマへと向け終えていた。 レイジングハートを中心に、周りを囲むようにブラスタービットもまたその切っ先を寸ぷん違わず正確に、カズマへと向ける。 収束を始める強大な魔力の渦。 先のディバインバスターすら比では無いほどの、掛け値なしに限界を超えた多方向からの魔力の収束。 自らの体内で駆動するリンカーコアからだけでなく、周囲に満ちている微量な魔力要素すら根こそぎかき集めての尋常でない魔力量。 「……防御を抜いて……一撃で魔力ノックダウン。……いけるね、レイジングハート?」 『いけます。……しかし、これではマスターの方が………』 レイジングハートは気付いていた。 ただでさえ重傷と言って良い負傷を既に負い、ここまでに至るまでの激闘ですらリンカーコアを酷使し続けた。 もう……限界越えだなどと言ったそんなレベルですらない。 この一撃を放とうものなら彼女は――― 「―――大丈夫」 語尾を濁し、明滅を躊躇いの証として見せるレイジングハートに、しかしなのはは穏やかとすら言っていいような笑みを、レイジングハートの不安を払拭させる為に見せる。 「私は大丈夫……大丈夫じゃないのは分かってるけど……大丈夫」 大丈夫だから、そう優しく微笑もうとする彼女の表情と言葉。そこに込められた決意の深さを窺い知れないレイジングハートではない。 だからこそ覚悟を決めて、苦言の全てを押し込んで、無理矢理に押し黙るしかなかった。 きっとそうしなければ見っとも無く無様であろうとも彼女を止めようと喚き立てたはずだから。 けれどそれは出来ない。してはならない。何故ならそれが彼女の『願い』なのだから。 魔法少女の魔法の杖は、彼女の『願い』を叶える義務がある。 今更にそれを反故にはできない。それは彼女への忠誠を裏切るのも同じ。 ……だから、止めない。 元よりこの身は彼女と一心同体。ならば最後のその瞬間までただ共に駆け抜けるのみ。 故に――― 『…………All right, my master.』 ――今はただ、この言葉をもって彼女の決意を受け止めるのみ。 「やるよ、レイジングハート!」 『Yes,my master.』 眼下のカズマがレストリクトロックを今、力づくで引き千切った。 同時、なのはもまた最大限にまで溜めきったその一撃を解き放つ。 これが最後。正真正銘の全力全開、己の全てを込めた一撃。 「スタァァァァアアアアアアライトォォォオオオオオオ―――」 高町なのはが保有する自身にとっての最強の魔法。 十年前、親友との戦いとの決着に全てを賭けて解き放った己にとっての全ての思いの結晶。 「ブレイカァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 これが私の全てだ、となのはは解き放ったその一撃をカズマへと叩き込んだ。 今までの比ではないレベル。視界を焼くとかそんな規模すら軽く超越した多方から叩き込まれる桜色の極光。 文字通りの空を照らす星の輝きに匹敵する……否、星そのものを叩きつけられているかのような衝撃と圧力が全身へと叩き込まれる。 全身を覆う鎧と化したシェルブリットは本来ならば最強の防御も兼ねた無敵の強度を誇っていたはず。 にも関わらず、先のディバインバスターすら凌駕したはずのシェルブリットの全身に次々と亀裂が走っていく。 圧縮され叩き潰されんばかりの衝撃が、五体をバラバラに消し飛ばされかねない激痛が、次々と無敵であったはずのカズマにレッドアラームをかき鳴らさせる。 やばい、このままだと耐え切れない。 遂に膝を地に着けることになったカズマの脳裏に走ったのは、そんな誤魔化しようもない焦りだった。 これに耐え切れるのか……耐え切れなければ、それは終わり。敗北だ。 ………負ける、この俺が? 「ふざ……けん……なぁぁぁあああああああああああああああああああああッッ!」 己を焼き尽くさんばかりに叩き込まれている桜色の極光の中で、カズマは再び雄叫びを上げながら負けじと自らもまた眩いばかりの黄金の輝きを全身から発する。 外部から叩き込まれているこの圧力。全身を覆うこの敵の一撃を弾き飛ばし、否、消し去らんとせんために。 耐えろ、耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ――――ッ! ここで屈したらすべて終わりだ。負けたら何も残らない。自身の全てが奪われる。 背負った君島の生き様すら……汚される! そんなことには耐えられない、我慢ならない、認められない。 だから負けない。負けられない。 もう二度と、誰にも絶対に。 「……ましてや……ッ……テメエに、だけは……ッ……なぁぁあああああああああああ!!」 負けられない、この女にだけは負けられない。 なぁ、そうだろ? 君島―――――――ッ! 負けられない、彼にだけは絶対に負けられない。 今の彼にだけには、絶対に、絶対に負けられない。 スターライトブレイカーの多角面からの一撃を直撃しているにも関わらず、カズマは逆に弾き返さんと言わんばかりの黄金の輝きを全身から発しながらその場で耐え凌ごうとしている。 耐え切られ、凌ぎ切られれば、その時点でこちらは敗北。 それが承知の上だったからこそ、なのはは更にリンカーコアを本当に焼き切れんばかりにまで駆動させ、底の底から、文字通りに己の命を燃やし尽くして更に魔力を搾り出す。 当然、そんなことをして人間の体が耐えられるはずもない。 「―――ごふっ!?」 思わず口腔から血が溢れ出し喀血する。ただでさえ全身に負った重傷で身を引き裂かれんばかりの痛みを感じているというのに、それに加えて今度は内部から自分の体がバラバラにされるかのような激痛が全身の隅々にまで駆け抜ける。 ……痛い、本当に痛くて、苦しい。 泣き叫んでいいのなら、それこそ恥も外聞も気にせず、プライドすらかなぐり捨ててそうしたいとも思う。 (……でも……ッ……でも……きっと、私よりも……君の方が……ッ!) きっと、自分などよりもカズマの方がずっと痛くて苦しいはずだ。 彼の心はバラバラにされかねないほどに傷ついている。 それを護ってやれなくて、救ってやれなくて何の魔法か。 だから―――痛みに屈してる暇など自分には無い。 今すべき事は、思うべきことは、きっとそんなことではない。 彼を救うために、彼に伝えるべき言葉と思いを届ける為に今は――― 「ブレイクゥゥウウウウウウウウウウウウ―――」 込める、更なる量を。更なる密度で。 魔力を、想いを、願いを、己が伝えたい全てを込めて。 今度こそ……今度こそ、ここで彼を止める為に。 少女との約束を、その願いを叶える為に――― 「シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーートッッ!!」 己の中の何かが焼き切れるのを感じ取りながら、しかしそれすらも覚悟の上で自分の中の想いの全てを上乗せして。 最後の一撃を押し切る為に彼女はこの一撃に己の全てを注ぎ込んだ。 共鳴現象。 それは強い力、意志を持つ者同士がぶつかり合い『向こう側』に触れることによって起こる現象のことである。 今回のロストグランドで起こったかつての大隆起現象を再現しかねないレベルでの再隆起現象。 これはカズマと劉鳳、二人の強い力と意志があの空間の中でぶつかり合い、共鳴を果たしたからこそ起きた結果でもある。 そう、この地は確かに再び『向こう側』へと繋がった。 今この場所、再隆起が起きた直後たるこの地域は未だ完全には閉じ切っていない『向こう側』の残滓が漏れ出ているいわば入り口に近い場所。 本来ならば現時点では最終進化に至るにはまだほど遠い過程にいるはずであったカズマが急速な進化を果たしたのも、彼がこの地にいたこととまたこの地の『向こう側』への開いた入り口が完全には閉じ切っていなかったことが最大の要因ともなっただろう。 そう、この地はこの瞬間において言えば『向こう側』へと今最も近い場所でもある。 故に『向こう側』を貯蔵庫とするアルター能力の活性化も激しく、そして引き出される力もより大きなものとなる。 尤も、現時点ではカズマの本来ならばまだありえないはずの最終進化は一時的なものに過ぎず、完全に全てを引き出しきるにも未だ遠かった。 故に引き出せたのは本人自身が思っているよりも底には遠い、精々半分を少し超えるくらいを引き出せたかどうかと言った程度だ。 無論、それでも人間が如何こう抗うには度の過ぎた力であるのは事実だが。 そしてカズマが無理矢理に再び閉じかけた直後に『向こう側』の扉を開けようなどとしたものだから当然この場に再び負荷が掛かったのは道理。 加え、不安定にも近いこの場にまったくベクトルの異なる魔法などという異物にも等しい力が凡そ最大規模でいきなり注ぎ込まれればいったいどうなるか? 結論から言えば……とんでもないことになった。 そう、空間が不安定で歪みかけている場所で最上級のエネルギー同士のぶつかり合い。 辺りを覆うほどの大規模な爆発が発生したとしても、それは無理からぬことだった。 暗雲を切り裂くように新生した閃光。 その光と爆発が中心点にいる両者を包んでいき――― 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 前へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3316.html 次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3318.html
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