約 83,014 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/259.html
172 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 34 46 ID sFzVob2v 近頃の俺は欲求不満の状態にある。 他人が欲求不満と言っていた場合、大抵の人間はいかがわしい方向の欲求であると考えるだろう。 もしくは食欲が満たされないだとか睡眠時間が足りていないという意味で受け取るかもしれない。 だが俺の場合の欲求不満はそれとは種類が違う。 創作意欲。これが満たされないのである。 友人たちの中でも知る人ぞ知る俺の趣味は、プラモデル作りである。 俺はどうやら完璧主義者のケがあるらしく、少しでも色合いがおかしかったり小さな部品が欠けている だけでも落ち着かず、結果的にプラモデルを一つ作り上げるだけでも一ヶ月は余裕でかかってしまう。 毎日毎週欠かさずにプラモデルを作っているにも関わらず、である。 そんなペースだから、一日の制限時間である24時間をもっともっと有効に活用したいと思っているし、 作業台に向かう時間もさらに増やしたいと考えている。 そこでどうしてもネックになるのが、学校に行っている時間だ。 学生――いや高校生は生徒と呼ぶのか。 ともかく生徒である以上、朝は遅刻しないよう学校へ行き、午前中の授業を受け、昼食を食べ、 午後の授業を受けなければならない。その後は俺の場合は帰宅部なので即帰宅となる。 すでにこの時点で一日の大半を消費している。大きなタイムロスである。 それからようやく、趣味である模型作りに没頭できる……とはいかない。 その日に受けた授業の内容を復習し、宿題を全て片付けなければならないのだ。 弟は俺のこんな習性を見て感心しているようであるが、俺はやりたくてやっているわけではない。 勉強が生徒の仕事だからやっている、という綺麗事を言うつもりはない。 無論、学業の重要性はわかっている。だが俺のような趣味人間は成績などさほど重要視しない。 だというのになぜ俺が月曜から金曜までまじめに勉強をしているのかというとだ。 これも困ったことに俺の性格がそうさせているのである。 たとえば、俺が宿題をせずに模型作りを始めたとしよう。 宿題という己の身に課せられた使命を無視した場合、プラモデルの出来がひどいものになる。 著しく見られる傾向としては、技が雑になる。簡単に言えば手元が狂いやすくなる。 面相筆(塗装に使う筆のうちで最も細い筆)で溝にスミ入れをやったらラインを外す。 スプレーを使って塗装していたら吹きすぎて塗料を垂らしてしまう。 ニッパーでクリアーの部品を切り取っていたら力加減を誤ってヒビを入れる。 普段ならば絶対にやらない単純なミスをことごとく繰り返してしまうのだ。 その症状が、復習と宿題をきっちりやり終えた後であればいつもの調子に戻ってしまう。 おそらく――いや、これしか考えられないが、俺は心残りがあると集中できない性格らしい。 その事実を知ってから、今のように模範的な高校生の行いをするようになったのである。 ちなみに、復習と宿題が終わるのは早くて夕食前の七時ごろ。遅かったら九時になる。 それから風呂に入ったり、弟から要請があったら勉強をみたり、妹の殺意混じりの瞳を受け流したりして、 ようやく模型作りを始めることができる。 しかし。しかしである。 我が家には最大の敵、血の繋がった兄の子を産んだアウトローの母がいる。 母は俺がプラモデル作りをすることをよしとしていない。 母はシンナー系の匂いを苦手にしているのだ。 俺が部屋に篭っていると、母は防塵マスクを装着してまで部屋のドアをノックして邪魔をする。 作業中のノックの音は著しく集中力を乱す。母も当然それをわかっているのだろう。 もちろん俺も母が邪魔をしてくる状況に手をこまねいているわけではない。 廊下にラッカー塗料(ラッカーはシンナーの匂いがきつい)を魔除け代わりに置いて対抗している。 俺の部屋には換気扇があるが、廊下には換気扇など設置していない。 塗料を置いている間だけは母は近づいてこないのである。 しかし、いつまでも置いておけるわけでない。 父と弟と妹からも苦情が来るため、頃合いを見計らって塗料を回収しなければならないのだ。 母が邪魔をしにくる。俺が塗料を置く。家族からの苦情を受けて塗料を回収する。 おおまかにはこんなサイクルで俺と母の戦いは行われている。 このように、家庭における俺の創作環境は理想的とは言い難いものなのである。 173 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 36 17 ID sFzVob2v そんなわけで、普段から軽い欲求不満にある俺であるが、最近はとみに機嫌が悪い。 現状は何の障害もなく創作できる環境にあるのに、周囲の人間の協力が得られない状態である。 学校全体が何らかの物作りを行っているというのに、俺の周りの人間は無気力な野郎女郎ばかりで、 物作りなどよりその日の昼食の方が大事らしく、協力が得られない。 ちくしょうめ。文化祭開催の一週間前なのに、どうして俺のクラスはやる気がないんだ! ***** 「先生。新しいアクセサリーの提案があるんですが」 「却下します。もう文化祭の予算に余裕はありません。作るのなら自腹で作ってください」 「じゃあテーブルに置く小物なんかどうですか。さすがにテーブルクロスだけじゃ味気ないと思いません?」 「思いません。必要なものは小説本くらいです。余計な装飾は読書の邪魔になります。 大人しく本を読んでいてください。喫茶店を成功させるためには皆が本を読むことが必要です。 店員は文学についての最低限の知識を持っていないといけません」 そう言って、我がクラスの担任の国語教師は手元にあるハードカバーの本に視線を落とした。 ああ、今すぐ両手でハンマーを作ってこの独身女教師の無防備な後頭部に打ち下ろしたい。 もちろんやらないけれど、誰かのGOサインがあればそいつに責任をなすりつけて実行しかねない。 それほど今の俺はイライラしている。 なぜ俺が大正時代の小説家の本など読まねばならん。 何が楽しくてうちのクラスが文化祭で純文学喫茶を催さなければいかんのだ。 純文学喫茶とは、漫画喫茶の純文学バージョンである。命名は担任。 なんとも安直なネーミングである。もう少し頭をひねってくださいこの三十路越え独身教師。 色気が足りません。もっと遊んでください。 そんなんだから「活字と結婚した女」なんて噂が流れるんですよ。 落ち着いた雰囲気がいいとか、葉月さんが成長したらこうなるだろう、とまで生徒の間で噂されるほど 容姿がいいくせに、どうして毎日セーターとジーンズとスニーカーなんて組み合わせなんですか。 もったいないにも程があります。宝の持ち腐れとはあなたに一番ふさわしい言葉ですよ。 たまにはスーツぐらい着たらどうです。シャツの胸元を少し開くぐらいなら許されますよ。――年増でもね。 「どうかしましたか? まだ何か提案でも?」 提案しても即却下するくせに。 「……なんでもないです。戻ります」 回れ右をして、教壇から下りて自分の机――を合体させている机の集合体へと戻る。 クラスメイトと机を合体させているのは、文化祭の準備作業をするためである。 しかし、うちのクラスはすでに小道具の用意を終わらせているので、小説本を読むぐらいしかやることがない。 俺にとってはなにもしていないのと同じである。 自分の席の上には、大正時代に活躍した小説家の書いた本が置いてある。 読む気がゼロであるため、当然ページは開いていない。ただの机のオブジェである。 ただでさえ文学に興味がないというのに、なんたら喫茶を成功させる目的で読むわけがなかろう。 机に左腕を立てて、顎を乗せる。そしてため息をひとつ。 向かいの席に座っている女子生徒が、本に落としていた視線を俺に向けた。 入学当時から美しい容姿を持ち、今では一年の頃よりずっと綺麗になった葉月さんである。 「おかえり。どうだった……って聞くまでもなさそうだね」 「うん。せっかく葉月さんに考えてもらったんだけどさ。作るのなら自腹でやれ、だと」 「自腹かあ……私が出そうか?」 「いやいや、さすがにそこまでは――」 その時、唐突に視界がぶれた。 自分がクラスメイトに殴られたと気づいたのは、こめかみから脳天へ突き抜ける痛みのピークが通り過ぎてからのことであった。 「葉月さんが出すんなら、俺もだす!」 「俺もだ。ただ喫茶店をやるだけじゃ面白くないからな」 「せっかくだから、新しい衣装を買おうぜ! そしたら葉月さん、着てね!」 同じ机の集合体を形成していた野郎どもの野太い声が遠くから聞こえてくる。 それは俺の聴覚が狂っているからであって、男どもとの距離が離れているからではない。 どいつもこいつも勝手なことを。秋でも汗の臭いがしそうな貴様らにつきまとわれたら葉月さんが困るだろうが。 174 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 38 05 ID sFzVob2v 葉月さんへと視線を向ける。葉月さんは俯きながら何か呟いていた。 「よくも……殴…………ね。切り裂い……次に窓から…………投げ……捨て……」 おや、チキチキという音が聞こえてきたよ。 この音はカッターの刃を出す音に似ているね。 なんだか、葉月さんの垂れた前髪から覗く目がギラギラと光っている。獲物を発見した肉食動物の如し。 葉月さんが立ち上がった。彼女の右手から飛び出している物はカッターナイフの刃。 蛍光灯の光を鈍く反射する刃には等間隔で斜めに切り込みが入れられていて菱形のそれぞれに 殺意が宿っているかのようで――いかにも危険で流血沙汰の事態を招きそうだっ! 「まずは耳を――」 「葉月さんっ!」 机の上に身を投げ出して葉月さんの右手を掴む。 「痛っ!」 距離がありすぎた。葉月さんの手と一緒にカッターの刃を掴んでしまった。 だがこれでいい。クラスメイトの命の灯火を消すよりは俺の手の皮が切れた方がマシである。 「あ、あれ? どうして私の手を掴んでるの?」 皮膚を圧迫していた殺気が霧散した。葉月さんの瞳はすでに明るい色を取り戻していた。 「ああ、実は蚊が止まっていたから、ついね。ほら、血が」 血の付いた手の甲を葉月さんに見せる。手のひらは到底見せられる状態ではないから。 「えっ……ちょっと、大丈夫なの?」 「平気平気。ちょっと洗っておけば問題ないよ」 「そう? なら、いいけど……ありがとう」 「いやいや。それより、アクセサリーの件はなしで。俺の勝手でみんなに金を払わせるわけにはいかないよ」 「えー……」 葉月さんはしょぼんとした顔のまま、上目遣いで見上げてきた。 葉月さんがやると恐ろしい破壊力である。さっきまで攻撃色に染まっていたとは思えない。 「あー……また来年もあるから。その時でもいいよ。俺は」 「わかった。でも、やりたくなったら言ってね? いつでもいいからね?」 「覚えとくよ」 教室から出てトイレへ直行する。蛇口をひねり、握りしめていた手を開く。 傷口からあふれ出した真っ赤な血は握っていた手の隙間に染みこみ、手のひら全体を紅く染めていた。 よく見てみると、薬指と小指の関節が軽く切れていた。 軽く指を動かす。うむむ、やっぱり傷口まで開くな。 「こりゃ、保健室に行った方がいいかな」 そうだな。どうせ教室に戻っても読みたくもない本を読むか、寝るかしか選択肢がないんだから。 今から保健室に行って治療ついでにさぼってしまってもいいだろう。 水に浸したハンカチで血を拭い、傷口を押さえながら保健室へ向かう。 俺の所属する二年D組は三階建て校舎の二階の奥にある。 D組から保健室へ向かう際には、どうしても他の教室の前を通ることになる配置である。 文化祭一週間前ともなると、校舎のいたるところにポスターが貼られている。 合唱、演劇、お化け屋敷、喫茶店、ジュース販売、映画上映などなど。 ポスターは手作りであるがゆえに、生徒が楽しんでいることを感じさせてくれる。 我ら二年D組のポスターは生徒ではなく、書道五段の担任が作成した。 担任が自分が作ると言って聞かなかったのである。 結果、『純文学喫茶』と力強くでかでかと書かれた文字と、『場所:校舎二階奥』と小さく書いてあるポスターができた。 しかし、これはもはやポスターではない。書道の先生が書いた習字のお手本である。 文字が書いてあるのは画用紙ではなくぺらぺらの和紙。達筆の文字は恐ろしく上手。 ここまでやれば、ある意味で威勢の良さを感じさせてくれる。 もしかしたら担任は担任なりに文化祭を楽しんでやろうと考えているのかもしれない。 しかし、できるなら生徒も楽しめるように気を配って欲しかった。 175 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 40 51 ID sFzVob2v そもそもだ。二年D組は純文学喫茶をやるつもりなどなかったのである。 事が起こったのは今日からさかのぼること二週間前、その日の帰りのHR。 あの時、白熱した出し物議論は『コスプレ喫茶』と『演劇』にまで絞られていた。 俺はどちらでもよかった。コスプレ喫茶でも演劇でも、服や装飾品、飾り物などは作り放題だから。 うちのクラスには葉月さんがいるから、なにをしようと観客来客満員御礼間違いなし。 いつまで経っても出し物が決定しなかったので、投票で決めようという流れになったころだ。 教室に入ってきた担任が言ったのである。 『二年D組は純文学喫茶をやることになりました。すでに実行委員にも伝達済みです。 皆さん、長の会議お疲れ様でした。今日はもう帰っていいですよ』 あの時のブーイングの嵐はすさまじいものだった。 しかし、撤回しろという生徒の声は、担任のもう受理されましたの一言で全て蹴られた。 横暴もいいところである。美人なら何をしても許されるとでも思っているのであろうか。あの年増は。 十代の葉月さんよりも干支が一周する年数以上に年が離れているくせに、よくもやってくれたものである。 おかげでクラスメイトのやる気は削がれ、ここ二週間はダウナーな空気が常にD組を覆っている。 これはパワーハラスメントではないだろうか。校長かPTA会長に直訴したら勝てそうな気もする。 だが、気力ゲージゼロのクラスメイト達はすでに担任と争う気を無くしてしまっている。 どうせ逆らっても無駄だ。ならせめて葉月さんの着物ウェイトレス姿を楽しもう……という意識が 最近の皆の心をかろうじて文化祭へと向けさせているようである。 まあ、俺も楽しみだけど。葉月さんの着物姿。 当日の写真撮影は許可すべきだな。ただしシャッター一回につき100円で。 出し物のお茶やお菓子よりそっちの方が儲かりそうだ。 そうだ。葉月さんと言えば。 「好きだって言ってたよな。俺のこと……」 葉月さんが妹と俺を相手に我が家で大立ち回りをした日に、俺は彼女と電話番号とメルアドを交換した。 その日の夜に、葉月さんからさっそく電話がかかってきた。 嬉し恥ずかしの初通話は、葉月さんがやけにどもったり噛んだりするせいでわけのわからないまま終了した。 どうやら葉月さんは電話器を通して会話するのが苦手らしい。 以後、葉月さんとのやりとりはメールで行うことになった。 告白の返事を催促するようなメールは来ないが、それ以外のメールはたくさん送られてくる。 朝の挨拶から始まり、今日の天気や星座占いの結果などを教えてくれる。 葉月さんとメールのやりとりをするようになってから俺はかなり浮かれている。 最近の俺の様子は、弟曰く「兄さんは放っておいたら何も無いところで転びそうに見えるよ」。 転びそうなのではない。時々、本当に転んでいるのだ。最近の俺の行動はドジそのものだ。 油断したら電信柱にぶつかりそうになるし、階段は踏み外しそうになる。 憧れの女の子からのメールで俺はここまで腑抜けになった。 ため息を吐きたくなるぐらい、本当に腑抜けなのだ。まだ葉月さんに告白する勇気がない。 告白したらOKをもらえることは確実だろう。だけど、分かっていてもそれができない。 きっと、葉月さんは俺からの告白を待っている。 登下校時や休み時間に俺と一緒にいようとするのは、そういうことなんだろう。 そして、葉月さんから再度告白してくることは多分無い。 「女の人からの告白ではOKを出せない」と俺が言ったからだ。 面と向かっても、メールでも、告白する勇気がない。 どうしたらいいのだろう。こんなことは誰にも相談できない。 弟や父には恥ずかしくて言えない。学校の男子に言ったら袋だたきにされることは必至。女子は論外。 なるべく早いうちに、その場の勢いでもいいから、何とかして言わなければ。 ――葉月さんが俺に愛想を尽かすその前に。 176 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 42 07 ID sFzVob2v 考えているうちに保健室に到着した。授業中だから保健の先生もいるだろう。 そういえば、保健室にくるのは身体測定の時以来だ。 頑丈に産んでくれたことに関しては両親に感謝すべきだな。 一応、礼儀として三回ノックする。……反応はない。誰もいないようだ。 「失礼します」 引き戸を開き、保健室へと踏み込む。 かすかに薬品の匂いを漂わせた保健室には誰もいない――はずなのだが。 「あ、先生。すいませんけどちょっと手伝って……あれ?」 いた。椅子の上に。見知らぬ女子生徒が。 女子生徒は着替えをしていたわけではない。だが、なんとなく気まずい。 妹が体重を量っている現場に出くわしたような微妙な空気だ。 彼女は、どういうわけなのか俺の顔を見て固まっていた。 しばらく見つめ合っていると、彼女は何か思いついたように口を大きく開けた。 「あ、あなたは……!」 何かに驚いた様子であった。俺の顔におかしい部分でもあったのか? 「初めまして。アタシ――――」 女子生徒は笑顔を浮かべた。換え立ての蛍光灯のように眩しい笑顔であった。 そこには一切曇りが無く、無垢であるが故に脆さまで含んでいた。 だから俺は――保健室のドアを勢いよく閉めた。 「あ、あれ? あのー、先輩? なんで出て行くんですか?」 扉の向こうにいる女子生徒が何か言っている。 ――なんだ、あの子は。やばい。どれぐらいやばいかというと、葉月さんぐらい。 いや、妹に詰め寄ったときやクラスメイトにカッターを向けようとしたときのやばさじゃなくて。 そういう暴力的なものでなく――容姿が、レベル高すぎる。 どうしよう。逃げたい。なぜか顔を合わせたくない。けど、もう一度だけ見てみたい気もする。 違うんだ。別にあの子に一目惚れしたわけじゃなくって。 怖い物見たさに似た、興味本位によるものであって。 だいいち俺は葉月さんが……でもあの子をもう一目見たいし。 「ああ、ちくしょう! どうすればいいんだっ!」 「……あの、大丈夫、ですか?」 「はうっ!」 頭を抱えた状態で天井を見上げていたら、女の子から話しかけられた。 おそるおそる視線を下ろすと、そこには俺より背の低い女の子の上目遣いがあった。 「どこか具合でも悪いんですか?」 「あー……うん。実はちょっと怪我をしてね」 右手を差し出すと、女の子が両手で掴み注意深く見つめてきた。 駄目だ、ときめくな俺! 「指がちょっと切れちゃってますね。絆創膏貼らないと。中に入ってください」 「いや、これぐらいなら平気だから。だから、だから……」 手を離してください、と言いたいのに言えない。 むしろもう少し握っていてくださいとか言い――たくない! 言わないからな! 女の子は俺の腕をぐいぐい引っ張り、保健室の中へと引きずり込んだ。 保健室の空気は女の子がいることで様変わりしていた。 まるで赤白黄色の球根から生えるユリ科の植物の咲きほころぶ幻想的な庭園の光景を思わせて――。 「いるわけがないだろうが!」 「ひゃっ?! ど、どうしたんですか、突然?」 「……ごめん。ちょっと疲れてるみたいだ。中で休ませてもらっていいかな?」 「ええ。私は構いませんけど」 177 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 43 13 ID sFzVob2v 許可をもらい、ベッドの方へ行こうとしたら、女子生徒に腕を掴んで止められた。 「……なに?」 「休む前に、やっておかないといけないことがあるんじゃないですか?」 なんだって?俺が、やっておかないといけないこと? 見知らぬ綺麗な女の子と保健室で二人っきり。ナニをする気なんだ? 授業中とはいえ誰かが来ないとは限らない。 保健の先生は留守。だけどひょっこり戻ってくるかもしれない。 いけない。この状況はリスクが高すぎる。 やるんなら放課後とか誰もいない教室とか――って、また変な方向に考えが行ってるぞ! 落ち着け俺のMy脳ブレイン! 「たしか、アレはこのへんに……」 女の子はがさごそと保健室の棚を探っている。 アレってなんだ。わからない。自分が立っているのか座っているのかもわからない。 女の子の髪の毛は肩に触れない程度の位置でカットされている。チラチラ見えるうなじが何とも色っぽい。 学校指定の女子専用制服はどういうわけかミニスカートである。 そのため目の前の女の子もミニスカートであり、丈の長さの影響で健康的なフトモモの裏側が、 俺の位置からはばっちり見えてしまっている。 スカートから伸びた太ももは膝へ向かうにつれて少しずつしまっていく。 足のラインはふくらはぎのわずかな膨らみを通り過ぎると細い足首で収束する。 むっちりと肉感的でありながらも無駄のない、正真正銘の美脚であった。 女子生徒はスカートを翻しながらターンすると、俺の方へと歩み寄ってきた。 「やっぱりこれ、ありました。これがあればもう安心ですよ、先輩」 「ぁぁ……ぅん」 ドキドキして女の子の顔を見られない。いったい彼女は何を探していたのであろうか。 「それじゃ、ちょっとそこの椅子に座ってください」 軽やかなソプラノの声は俺を丸椅子へと導いている。俺の腰は操られているようにそこに下りていく。 女の子は手近にある椅子を持って俺の前へやってくると、椅子に腰を下ろした。 行儀良く揃えられた膝の隙間とスカートが組み合わさり、そこに三角形の空間ができた。 ちょっと背筋をのけぞらせれば中身が見えてしまいそうである。 もちろんやらない。やりたいなんて思ってないぞ! 「それじゃあ、出してください」 どくん。 「だ、出すって……?」 何だ?一体この子は何を出せと言っている?俺に何を要求しているのだ? 「さっき見せたじゃないですか。もう一回見せてください」 「……いや、何も見せてないよ」 数分前のことすら思い出せない精神状態であるが、アレを出していないのは確かだ。 さすがにそんなことをしたら嫌でも記憶に残るはず。 「もう。じゃあいいです。アタシが勝手にやりますから」 なっ――! 「……じっとしてて、くださいね。せんぱい……」 「ぁ……………………」 声が出ない。口がぱくぱくと空回りするだけだ。 まさかこんな場所で、高校の保健室なんて場所で。 女の子が俺の手を優しく握り、冷たくて柔らかいものを擦りつけてきた。 その動きが止まると、今度は指を柔らかいもので包み込まれた。 ごめん、葉月さん。君に何の返事もしないまま、こんなことを――――。 178 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 44 57 ID sFzVob2v 「よっ……と。はい、できましたよ先輩」 「……」 「あの、先輩……?」 「本当はこんな場所でやるつもりじゃなかった……。 両親と弟と妹が出かけた日の夜、薄暗い部屋の中で月明かりを頼りにしながら俺は……」 「聞いてた話とずいぶん違うなあ。……仕方ない。ここはひとつ……」 「はやる気持ちを抑えながらひとつひとつボタンを外していき、あらわになったその景色へと手を伸ばし……」 「先輩、失礼しますっ!」 ――あれ?なんでそんな怖い顔をしてるの?え、だめ?いや、ここまで来てそれはないでしょう。 ん?その構えはなんだかビンタのような――――。 「ていっ!」 「痛ぇっ! ――何するんだ! そりゃ初めてだったけどなるべく焦らないようにして……ん、あ、あれ?」 ここは、どこだ?俺はさっきまで自室で天国を味わっていたはずではなかったか? 「目が覚めましたか? 先輩」 正面には可愛い女の子。彼女は椅子に座っている。その点はさっきまでいた世界と同じだ。 しかし、今俺が居る場所は薬品の収められた棚や白いベッドの置いてある保健室である。 俺はどうしてこんなところへ来てしまったんだろう。 ああ、指を怪我したから、その治療をしに来たんだったな。 指を怪我した箇所は、右手の薬指と小指だったはず。 右手を見る。茶色の絆創膏が怪我をした二本の指の関節部分に貼ってある。いつのまに貼ったんだろう。 右手を見ながら記憶を掘り下げていたら、女の子が怪訝な様子で話しかけてきた。 「先輩が手を出してくれないから、勝手に絆創膏を巻いちゃいました。別に構わなかったですよね?」 「あ? ああ、うん。ありがとう……」 そうか。この子は手当をしたいから「(手を)出してくれ」と言っていたのか。 ま、そりゃそうだよな。 普通――この子の容姿は普通の可愛さではないが――の女の子が初対面の相手にいかがわしいことを 要求するはずがあるまい。俺は何を勘違いしてたんだか。 「ところで先輩。保健室に来たのは指だけじゃなくて体の具合も悪かったからですか?」 「いいや。指を怪我したから来ただけだよ」 本当はさぼるつもりでもあったのだが、そうは言わない。 だって、言ってしまったらまたこの子と同じ部屋の中で過ごさなければいけなくなる。 さっきのような落ち着かない気分は失せ始めたが、名前も知らない女の子と二人きりというのはどうも苦手だ。 早くこの場を去るに限る。 「手間かけさせてごめんね。それじゃあ……」 椅子から立ち上がり軽く右手を振る。そしてきびすを返して保健室の出口へと向かう。 ドアに手をかけたとき、異変に気づいた。やけに腹が苦しい。 下を見ると、ベルトが腹に食い込んでいた。もちろん、いきなり俺のウエストが増したわけではない。 「先輩。ちょーっと待ってくださいよ。教室に戻るんだったら、ついでに手伝ってくれません?」 いたずらっぽい笑みを顔に貼り付かせた女の子が後ろから俺のベルトを引っ張っていたのである。 その笑顔にまた心臓が脈打ったのは俺のせいではない。 この子が可愛いのが悪いのである。 葉月さんは生徒はもちろん教師までもが認める美人である。 彼女がいるだけで周囲に凜とした空気があらわれ、周囲もそれに流されてしまうような、 そんな類の美しさを彼女は持っている。 対して目の前の少女は、小さい女の子の持っている未成熟さからくる可愛さをそのまま残したような容姿をしている。 彼女を見ていて背徳感を覚えるのはおそらくそれのせいだろう。 葉月さんとこの少女、どちらを彼女にしたいか決をとらせたら、かなりいい勝負をくりひろげるのではないだろうか。 179 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 47 10 ID sFzVob2v そんなわけで、この少女から手を貸して欲しいと言われたからには、無下に断るのもなんだかもったいない気がする。 話だけでも聞いてみるか。 「何を手伝ってほしいって?」 「ちょっと捜し物をしてたんですけど、なかなか見つからないんです」 「捜し物? 保健室で捜すってことは、包帯とか?」 「違いますよ。あれです、あれ。たしか、クロ……なんとか」 「くろ?」 名称の頭二文字に『くろ』がきて、それでいて保健室に置いてあるもの。 何だろう。白いものなら保健室中に大量に置いてあるが。 「どんな形をしてるかわかる? そのクロなんとかの特徴でもいいけど」 「えっと、多分液体です」 「液体か。液体ね……消毒液じゃないの?」 「いえ、そうじゃなくって、治療に使うものじゃないんです」 「はい?」 保健室に来てまでして捜す物が治療に使う物でないと? 「なんか麻酔に使われているものらしいから保健室に置いてあるんじゃないかと思ったんです」 「麻酔って……誰か重傷でもしたの? それなら119番に電話した方がいいよ」 「いえ、誰も怪我はしてないです。……それに救急車がに学校に来てもらったら困るし……。 とにかく、アタシが捜している物はクロなんとかって名前で、液体で、麻酔みたいなものなんですよ」 「あー、ちょっと待って。頭の中を整理するから」 左手で女の子のセリフを中断させ、右手で自分の頭を抱える。 この子は一体何をしようと考えているんだ?麻酔なんか捜して一体どうする気だ? それに、救急車が来てもらったら困るとも言っていたな。救急がいたらまずいことでもあるのか? まさか、その麻酔を使って何かまずいことでもしようとしているんじゃないだろうな。 嫌な予感がするぞ。我が家の異常な環境によって鍛えられた勘が、頭の奥の方で何か叫んでいる。 警告だ。妹に包丁を持たせたときや母が父のために特別メニューを作っているときに鳴る警告音が、 頭の中で少しずつ、しかし確実にその音を大きくしていく。 この警告の意味は、その場から逃げろ、その状況に関わるな、だ。 くろ、黒、クロ。これが先頭に来る麻酔の一種。 ――もしかして、アレか?いや、さすがにそれはないだろ。 しかし、先頭がクロの麻酔と言ったらアレしかない。 「あ、思い出しました先輩! クロロホルムです、クロロホルム! ほら、よくドラマとかで布に染みこませたクロロホルムをかがせて気絶させるシーンがあるじゃないですか! アタシあれと同じ事を先輩の――――、ってなんで離れるんですか?」 「いやなに。そろそろ教室に戻らなくちゃやばいかなと思ってね」 嘘である。担任(独身、♀)に怒られるよりも目の前にいる少女に関わる方がずっとやばい。 彼女は俺が生徒だったからあっさり捜し物の用途をばらしたのだろう。先生相手であればばらさなかったはず。 思っていたとおり、彼女の捜し物はクロロホルムだった。 そして用途は誰かを気絶させるためである、と。 標的が俺でないのはありがたいが、このままでは学内にいる生徒の身に危険が及ぶ。 「あのね、君」 「いいながら後ろ手にドアを開けないでくださいよ。なんですか?」 言わねばならない。俺が見知らぬ少女の魔の手から見知らぬ生徒を守るんだ。 「……クロロホルムを嗅がせても人間は気絶しないよ」 俺がそう言ったら、女の子は目を大きく広げて声を張り上げた。 「ええ!? だって、ドラマだけじゃなくて漫画でもあんなに……」 「そりゃあずっと嗅がせ続けたらわからないけど、少し嗅がせたくらいじゃ体調を悪くする程度の効果しか 与えられない。やめといたほうがいい。人を気絶させていたずらしようなんてよくないよ」 「そんなあ……せっかく上手くやれる方法を見つけたと思ってたのに……」 180 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 48 48 ID sFzVob2v 女の子は俺の言葉にショックを受けたのか、白い壁に身を任せていた。 今なら、逃げられるか……? 「うう。それなら、それなら……先輩!」 女の子は唐突に眠りから目を覚ました猫のような動きで頭を上げ、俺を見た。 「手伝ってください! クロロホルムが駄目なら、先輩の助けが必要です!」 「いや、だからさ」 「先輩の口添えがあれば絶対にあの人は策にはまってくれます! だから、お願いします!」 さっきからこの子は何を言っているんだ? 俺の助けが必要? 「もしかして、君は俺の知り合いをどうにかしようと?」 「……そうです。けど、決して怪我させたりすることはありません。信じてください」 お願いします、と言って女の子は頭を下げた。 犯罪行為の手助けをしてくれとお願いされてもな。手伝うわけがないではないか。 俺が手伝えば成功させられるということは、俺がいなければ失敗するという意味なのか? ――だったら迷うことはない。 「ごめんね。頼まれごとをされるのは嫌いじゃないんだけど、そういう手助けなら話は別だ」 「そんなあ……」 「ほんとにごめんね。それじゃ!」 「あ、ちょっと待って……」 何か言おうとした女の子の言葉を遮り、保健室から出てドアを閉める。 競歩の足運びで2年D組の教室へ向かう。後ろから女の子が追ってくる気配はない。 俺が自分の教室に入った途端、本日最後の授業が終了したことを告げるチャイムが鳴った。 ***** そしてHR終了後。 担任は大小様々な小説本を両手に持って出ていった。 担任の持って行った本は、クラスメイトが文化祭の出し物に使うために自宅から持ち込んだものである。 四十名のクラスメイトが持ってきた本は、担任が毎日少しずつ自宅へお持ち帰りしている。 本人は本の内容が不適切なものでないか確かめるためだ、と言っている。 しかし、その行動が文化祭を成功させようという意志の元に行われていないのは明白である。 きっと、あの独身女は本が読みたいだけなのだ。 俺はこう思う。担任は生徒から本をかき集めるためだけに純文学喫茶などやらせようとしたのではないかと。 私利私欲による職権濫用。許し難い行いである。 教育機関に駆け込んでやりたいところだが、あいにく俺は両親が異常であるため強く出られない。 もし両親のことに首を突っ込まれたら、それこそ我が家崩壊の危機だ。 今まで隠し通してきたものを、たかが担任の蛮行ごときで日の当たる場所へさらけ出すわけにはいかないのである。 181 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 51 52 ID sFzVob2v 鞄を持って席を立ったとき、弾んだ声が俺の名を呼んだ。 声のした方を見ると、手提げ鞄を腰の後ろに回した葉月さんが、横からやってきていた。 「ねえ、今日は何か用事がある?」 葉月さんはご機嫌な様子である。待ち望んでいたおやつをようやく与えられたときの子供のようにも見える。 「いいや。今日もいつも通り何も用事はなし」 「じゃあ、じゃあさ。今日もいい……かな?」 頬を若干紅く染めて、葉月さんが上目遣いを繰り出した。 むう。真綿でじわじわと胸を締め付けられる感覚。甘い痺れが体の奥から湧き起こってくる。 今の会話だけを抽出するとなんだか色気のある会話であるが、どっこいそんなことはない。 「もちろんいいよ。帰ろうか、葉月さん」 「う、うんっ!」 俺が歩き出すと、葉月さんは早足で近寄り、俺と肩を並べた。 教室を出て行く寸前、ちらりと後ろを振り返る。 そこには獲物を狙う野獣のようなクラスメイトの視線があった。 男が俺を恨むのは分かる。 ついこの間まで地味で目立たなかった俺が人気者の葉月さんと仲良くしていたら、不機嫌になって当然だ。 俺が彼らと逆の立場だったとしても不機嫌になるはずだから。 女子生徒も男子生徒と同様、いやむしろ彼ら以上に恐ろしい目で俺を見ている。 彼女たちも男子生徒と同じく、葉月さんと仲のいい俺を快く思っていない。 同胞のクラスメイトからそんな目で見られては、普通は萎縮してしまうだろう。 だが俺は違う。俺はもっと恐ろしい、妹の瞳に日常的にさらされている。 加えて最近のクラスメイトからの無言の圧力によって俺の精神力はさらに上がっている。 学校プラス家庭での責めは、俺を少しずつ強くしているのだ。 だから、クラスメイトの視線をスルーしてそのまま教室を後にすることだってできるのである。 玄関で上履きから靴へ履き替えて、葉月さんと一緒に校舎を出る。 秋の深まりを感じさせる空気の中を、看板やはしご、ビニール袋を両手に持って歩く生徒の姿があった。 「みんな忙しそうだね」 「うん……」 彼らの姿を見ていると、自分が損をしているような気分になる。 文化祭に意欲的なクラスならば、今は準備に大忙しの時期だろう。 しかしうちらの2年D組は先週の時点で喫茶店で使う本を収める本棚の運び込み、テーブルの確保、 男女それぞれが着る着物の用意、お茶やお菓子の注文数決めなどをあらかた終わらせてしまった。 今はクラスの文化祭実行委員がぼちぼちと仕上げを進めている段階だ。 楽と言えば楽だが、楽すぎるのも問題だ。暇すぎるのである。 182 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 55 04 ID sFzVob2v 「ねえ、ちょっと行きたいところがあるんだけどいい?」 「別に構わないよ。どこに行くの?」 「ケータイショップ。ちょっと欲しいストラップがあって」 「へえ。どんなやつ?」 俺がそう言うと、葉月さんは人差し指で空中に何かを描いた。 「えっとね。形はハートマークをしてるの」 ほほう。なかなか可愛らしい趣味をしていらっしゃる。 男の俺の携帯電話にはとてもつけられるない。 「それでね、その……欲しいストラップはね、二つセットになってるの」 「へ…………え?」 さっ、と顔から熱が引いた。 「ピンクとライトブルーの二色でね。限定販売のやつだから、他に売っているものとは絶対にかぶらない 五桁の番号が両方に彫ってあるの」 「……つまり、おそろいのものってわけ?」 「そう。だからあ、だから……ね?」 葉月さんが携帯電話を取り出して俺の前にかざした。 ちなみに、俺の携帯電話と同じ機種である。最近になって突然買い換えた、と葉月さんは言っていた。 同じ携帯電話と同じストラップ。それらが意味することはつまり。 「片方のストラップ、つけて欲しいなあ?」 首を右斜め三十度に傾けつつ心臓麻痺レベルの笑顔を浮かべる葉月さん。 どうしよう。ストラップの用途を予想できた時点でやんわり断ることを考えていたのだが、 こんな笑顔を見せられては断るに断れない。 「私は青が好きだから、ピンクの方、つけてくれるかな?」 なに、ピンクだと? よりによってあんな淡い恋心の象徴であるかのような色をしたストラップをつけろと言うのか!? どうする。どうしよう。どうしたらいい。 「どうかな? だめ?」 「う、うう、……うむむ……」 他ならぬ葉月さんからの頼みだ。できることなら聞き入れてあげたい。 しかし、おそろいの、しかもピンクのストラップだぞ? 携帯電話を取り出す度にチラチラと見えてしまうではないか。 恥ずかしいからと外してしまったら、俺のことだからどこかになくしてしまう可能性もある。 ストラップを外している携帯電話を葉月さんが見たらどう思う?――傷つくに決まっている。 葉月さんの心が傷つくついでに、もしかしたら俺の体にまで消えない傷がつくかもしれない。 「お、俺は……」 ピンクのストラップを選ぶのか。それとも紅い鮮血を選ぶのか。 「だめかな……つけて、欲しかったのに……ぐす」 ああ、ああ、あああ。葉月さんが泣きそうだ。 綺麗な瞳。しみひとつない頬。あそこに涙が伝ったらそれはそれは美しい光景であろう。 だが、泣かせてはだめだ。もう、葉月さんの要求を呑むしか――ない。 183 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 56 21 ID sFzVob2v 意志を固め、口を開けた瞬間であった。 「あ! いた!」 突然の女子生徒の叫び声。 何事かと振り向くと、見知らぬ女子生徒が俺を指さしていた。 保健室で会った女の子とは違う。あの子と比べたらこの子は地味な印象しかない。 「えーと、なんて名前だっけ。……まいいや。先輩! 大変です!」 なんと失礼な。ツッコミを入れてやりたいが、葉月さんの手前、とりあえず我慢する。 「何が、あったの、かな?」 怒りを抑え、顎の筋肉を引き攣らせながら言う。 女の子は緊張を隠さないまま、俺の言葉に応えた。 「先輩の弟さんが、廊下で倒れてて! それで今保健室に連れ込まれたんですよ!」 「はあっ!?」 弟が倒れた?!あいつに貧血の気はなかったはずだぞ。 女子生徒の言葉を聞き、女子生徒の死角に移動して両手を伸ばそうとしていた葉月さんもさすがに驚いたようであった。 「ちょっと、大丈夫なの? どこか怪我とかしてなかった? 手当はしたの?」 「どこも怪我はしてなかったみたいですけど。一応ベッドには運んだけど、まだ目を覚まさなくって……。 どうしよう、……どうしよう。もし彼に何かあったら、私……」 「そうね。一大事だわ。私の義弟のピンチよ!」 「行こう! 葉月さん!」 返答せず、少しの時間すら惜しむかのように葉月さんは駆けだした。一瞬を置いて俺も続く。 どんどん俺との距離を開けていく葉月さんを追いながら、俺はある可能性を思いついた。 保健室。あそこで出会った見知らぬ可愛い女子生徒。 彼女が気絶させようとしていたのは、もしかして――弟なのか? いや、まだわからない。だけど、どうしてもあの子のことが頭から離れない。 一体彼女は何者だ?弟のなんなんだ? いや、何者でもいい。今の俺が願うことはこれだけだ。 ――無事でいてくれ、弟。 184 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/11/09(金) 00 59 14 ID sFzVob2v ***** どうしてあなたはそんなに飾らずにいようとするのだろう。 なぜその魅力を使い、アタシを惑わそうとするのだろう。 アタシの正体を知っていて、それでもあなたはアタシに対する態度を改めなかった。 構わないで、慣れているから。 そう言ったのに、あなたの耳には届いていなかったのだろうか。 それとも、あなたにとってはアタシの正体なんてどうでもいいものだったの? だから、いつまで経ってもその目の色が変らなかったの? アタシが、あのいやらしい目つきをした教師と話をしているとき、苦手な先輩と話しているとき、 決まってあなたが話に加わってきた。 嬉しかった。嬉しかったけど、怖かった。 いつか、あなたも他の人たちのように変ってしまうんじゃないかって。 アタシの抱く、あなたへの醜い想いを察したらきっとあなたは離れて行ってしまう。 アタシがそんな不安を抱いていることなんて知らないあなたは、毎日アタシの肩をたたく。 決して嫌なわけじゃなかったけど、やめてほしかった。 あなたが屈託のない笑みを浮かべるたび、アタシの胸の奥は切なく締め付けられるから。 抑えていたはずの気持ちが表にでようとして、どんどん大きくなっていく。 こんな気持ちを誰かに向ける日がくるなんて、思わなかった。 全部、あなたのせいだよ。 あなたが他の男とも仲良くするから。他の女ともイチャイチャするから。アタシだけを特別扱いしないから。 アタシはあなたに特別扱いされたい。あなたの特別になりたい。 あなたの想いを独占する、唯一の存在になりたい。 そのためにはどうしたらいいの? あなたはきっと、誰が何を言っても変らない。 その性格は生まれ持ったものだろうから。 あ――そうだ。アタシがあなたを生まれ変わらせてあげればいいんだよ。 アタシだけを見て、アタシだけに声をかけて、アタシだけに笑顔を見せる、そんな人にしてあげればいい。 最初から最後まで。生まれてきてから死ぬまで。アタシだけを構う人になって。 今のあなたも好きだけど、やっぱりアタシはあなたを独占したい。 だからアタシは、あなたを奪う。 あなたを一人にしてあげる。アタシとあなたの二人だけの世界に連れて行ってあげる。 アタシがいなければ、寂しくて悲しくて切なくてどうしようもない、そんな人間にしてあげるよ。 楽しみだよ。あなたの心が変ってしまう、その瞬間を目撃するときが。 想い人を完全に忘れてしまうとき、あなたはどんな言葉を吐き出して、どんな顔をするのかな?
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/261.html
125 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 43 10 ID NdS3V1VX 今このときの俺が追い詰められているのだとすれば、それはどれほどのものだと言えるだろうか。 ちょっとだけ、考えてみる。 夏休みの宿題が終わらず、膝ががくがくと貧乏揺すりをするほどか? 違う。あれはただ、時間に追われているというのにいつまで経っても終わらずイライラしているだけだ。 今の俺はぐらぐらしてはいるが、がくがくもイライラもしていない。 では、修学旅行のバスの中で尿意をもよおした時、次の目的地まであと三十分はかかると知らされたときか? これも違う。さすがにあそこまで絶体絶命のピンチの状態にまでは至っていない。 中学の修学旅行で実際にそんな目に遭ったが、今の俺はあの時のように白い便器と四角のタイルを恋しく 思っているわけでもないし、周囲に異常を悟らせないように苦心しているわけでもない。 時間に追われているわけでも、危機的状況に置かれているわけでもない。 それなのに追い詰められていると言えるのか? と問われたら、イエスと答えよう。 なぜなら、今の俺はとても眠いのである。 昨今の秋と冬の混じり合った季節においては、日光の暖かさがとてもありがたく感じられる。 自分から陽の当たる方向へと向かっていって、両腕を目一杯広げて幸せを噛みしめたくなる。 今の俺には陽が射しているわけではない。 しかし、それを浴びているときと同じ恍惚状態に置かれている。 うっとりとしつつ、ぼんやりとしている。とでも言えばわかりやすい。 ずっと前から眠気を覚まそうと、背筋を伸ばしたり目を強くつぶったりしているが、効果無し。 ものの十秒もしないうちに、意識が抜け落ちて倒れそうになる。 睡眠というのは人間の本能的な欲求であり、古代より金をかけずに人を幸福にさせてくれるものだ。 もしかしたら寝ることを趣味にしている人もいるかもしれない。 そんなに素晴らしい、眠りへの誘いを俺がなぜ断り続けているのか。 それはもちろん、眠る以上に大事なことがあるからだ。 眠いのに、大事な用がある。大事な用があるから、眠れない。 だから、いくら眠たくても我慢するしかないのである。 以上を踏まえ、俺がどれほど追い詰められているかを喩えて言うならば、決して赤点をとってはならない 学期末テストにおいて一夜漬けのツケによる睡眠不足で眠りたくて仕方なくなってしまった状態、ということになる。 「お……お待たせ……」 衝動と理性による苛烈な意識の縄張り争いを脳内にて繰り広げていると、控えめな声が耳に入った。 声の主は葉月さん。彼女が風邪をひきでもして声に曇りがあらわれてしまわないか、時々俺は心配になる。 「目、開けてもいいよ……でも恥ずかしいから、その、……あんまりじろじろ見ちゃ、やだよ?」 ずるい。そんな台詞を言って俺の男心をくすぐるのもずるいし、じろじろ見るなというお願いもずるい。 そんなことを言われたら、まだ活動していない俺の目玉に向けて、反骨精神をむき出しにして葉月さんを 見つめ続けろ、という命令を下したくなるじゃないか。 俺は、同化してしまったようにくっついていた上下のまぶたをゆっくりと開いた。 126 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 44 34 ID NdS3V1VX 「! う……、むぅぅ……」 そして、目の前にいる葉月さんの、制服姿とは違う装いを目にして、目がはっきりと覚め、感嘆に呻いた。 葉月さんが身に纏っているのは、二年D組が文化祭の出し物として行う純文学喫茶の女性用衣装である、 振袖と袴、それに草履という組み合わせであった。 淡い紫色の振袖には白いカトレアの花が咲いている。 胸の下の辺りで着付けられた袴。こちらは濃厚な紫色に染まっている。 足下を飾るのは真っ白い足袋と鼻緒のついた草履である。 とどめと言わんばかりに強いインパクトを与えるのは葉月さんの髪型だ。 ポニーテール。髪留めは濃紺のリボン。 しかも葉月さんたら黒のロングをそのまま後ろに流すのではなく、両肩にちょっとだけ乗せている。 そんなさりげないところが小粋で、いやなんともお美しい。 「どう? 似合うかな? ちょっと地味じゃ、ないかな?」 決してそんなことはない。 もし袴姿の葉月さんを目の前にして似合わないなどという暴言を吐く人間がいるなら、そいつの美的センスは 著しく劣化していると言っても大袈裟ではない。 総じて地味な色の組み合わせではあるが、素材のいい葉月さんのような人が着ると、紫の着物が瀟洒なものに見えてくる。 ビバ、着物。 日本の文化、万歳。 「うん、とってもよく似合ってるよ。葉月さん」 言った後で、なんだか陳腐な褒め言葉だな、と思ったが他に言い様が無かったのでどうしようもない。 「そ、そう? えへへ、ありがと」 はにかんだ笑顔を葉月さんが見せた。 いつもより数段魅力が増しているように感じるのは、着物の魔力のせいだろうか。 それとも、二人きりの状態で着物姿を拝ませてもらっているという特殊な状況によるものなのか。 「ところでさ、葉月さん」 「ん? なあに?」 葉月さんが手を後ろに回して前傾姿勢を取り、上目遣いで覗き込んでくる。 抱きしめたい誘惑を問答無用で殴り飛ばし、努めて冷静な気持ちで問う。 「どうして、俺をこんなところに連れ出したの?」 「えっと……それは、そのね」 俺の喉元の辺りに視線を送りながら、葉月さんが答える。 「あなたに、最初に着物姿を見てもらいたかったんだ。クラスの、他の誰よりも先に」 ――しゃっくりが出そうになった。びっくらこいた。 どうして葉月さんは、俺の心の純な部分をピンポイントに責めてくるのだろう。 これが葉月さん流のアプローチなのか。回りくどい部分の一切無い、正攻法。 してやられた。この場が決闘場であったならば、間違いなく俺は絶命している。 127 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 45 45 ID NdS3V1VX 熱くなった心を抑えるため、状況を整理・確認してみる。 まず、俺がいる場所は校舎二階の女子トイレの前である。隣接して、男子トイレが設置してある。 俺をここまで連れ出したのは葉月さんだ。……と、葉月さんが言っていた。 なんと、葉月さんは教室からここまで、眠りこけていた俺の手を引っ張ってきたのである。 教室から連れ出されたときのことを、俺はまったく覚えていない。 だから、目を覚ましたときトイレの前に立っていたから驚いた。 そして、葉月さんがすぐ目の前にいたのにはそれ以上に驚かされた。 俺がなぜ教室で眠っていたのかというと、単純に寝不足だから。 なぜ寝不足かというと、昨日の夜から今朝の五時まで眠っていないからだ。 俺は、学校で一晩過ごしたのである。 今日から明日にかけて催される、文化祭の準備を終わらせるために。 文化祭の準備と言っても、俺のクラスであるD組はとっくに準備を終わらせている。 俺が準備していたのは、自分のクラスの出し物ではなく、弟のクラスの出し物だ。 コスチュームプレイ喫茶。略してコスプレ喫茶。それが弟のクラスの催し物である。 なぜ学年の違う弟のクラスを俺が手伝ったのかというと、その出し物に魅力を感じたからだ。 別にメイドさんや巫女さん、婦警さんや女騎士が好きなわけではない。 多種多様な衣装作りを楽しみたかった。ただそれだけの理由で弟の同胞に力を貸したのだ。 プラモデル作りを趣味にしている俺であるが、作りたいものも、作れるものもプラモデルだけではない。 小学校時代に家庭科の授業で裁縫の技術を身につけて以来、服の修繕などは自力でできるようになった。 それだけでなく、作成可能なもので、必要な材料さえ揃っていれば衣装だって作れる。 弟もそのことを分かっているから、安心して俺に任せたのだろう。そしてその判断は正解だった。 俺が弟のクラスを手伝いに行った時点では、衣装作成の作業は三割、よくて四割といったところまでしか 済んでいなかった。当然だ。裁縫に慣れている人間が片手で数えられる人数しかいなかったのだから。 おまけに段取りも悪かった。女子の中に一人だけ明らかに裁縫に手慣れている人がいたのだが、 彼女にばかり負担が強くかかっていた。 他の生徒は、彼女からの指示を聞いてから動いていたのだ。衣装作成の段取りを掴めていなかったからだろう。 その結果、彼女の作業も遅れてしまい、いつまで経っても作業が進まなかったのだ。 そこで登場したのが俺である。 初めのうちはそれこそ腫れ物扱いだったが、クラスメイト(弟)の兄であると知り、俺のミシン捌きや針捌きを 見ていくうちに考えが変わったらしく、いつのまにか頼ってくるようになった。 その後は簡単だった。俺が難しい作業を請け負い、代わりに手空きになった裁縫上手な女子生徒に クラスメイトへの指示を出してもらった。 力を合わせた甲斐があり、見事に文化祭前日の昨日の夕方、全ての衣装作りを終わらせた。 後輩の男女にお礼を言われる経験をしたのは昨日が初めてだった。 自分の欲求不満を解消することが目的で始めた手伝いだったが、昨日の後輩たちの泣きそうな笑い顔を 見ていると、ああ手伝って良かったな、という感想を抱いた。柄にもなく、心と目頭にジンときた。 まあ、そんなわけで衣装作成は終わったわけである。 が、どうしても俺には我慢できないことがあった。 顎の下にあるほくろから生えた毛が気になるくらいに、どうしても看過できないものがあった。 衣装作成班とは別の班が作った、鎧やブーツなどの金属系の小道具の出来が非常に悪かったのだ。 銀色のスプレーを吹くだけの仕上げなど、俺は認めない。 新品の鎧を着ている歴戦の騎士や、砂にまみれた痕の無いプロテクターを着たヒーローがいるわけがない。 俺は、あいつらを汚さずにはいられなかったのだ。 放課後に家へ帰り愛用のツールをひっつかみ、学校へ引き返して、一人で黙々と作業を進めていくうちに、 次第にハイなテンションになってしまい、気づけば日付が変わっていた。 家に帰るのも面倒になったので、そのまま作業を続行。 宿直の教師に小言を言われ、後になって夜食の差し入れを頂き、途中で何度か記憶を失いつつ、朝を迎えた。 納得のいく出来になった作品を眺めていたら弟がやってきて、強制的に二年D組に連行された。 自分の席に着くなり俺は眠った。そして次に目を覚ましたとき、トイレの前に居て、葉月さんに見つめられていたのである。 128 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 50 37 ID NdS3V1VX 葉月さんの着物姿を視覚で堪能していると、次第に眠くなってきた。 劣情を催すほどに美しいものでも、睡眠欲求をゼロにしてしまうのはさすがに難しいらしい。 葉月さんに教室へ戻る旨を伝え、一路教室へ向かう。 教室内では、着物を纏ったクラスメイトがちらほらと居り、室内を喫茶店として改装すべく動いていた。 クラスメイト――主に男子が、葉月さんの姿を確認して視線を向けてくる。 ……まあ、なんだ。気持ちはわかる。 今日の葉月さんは着物姿だし、それに普段はしていない化粧までしている。 近づいたらいい匂いもする。いや、俺が匂いフェチ、もしくは変態なわけではなくて、香水の匂いがするという意味。 他の女子も普段より綺麗になっているが、葉月さんは頭一つ飛び抜けて煌びやかだ。 しかし、だからといってじろじろ見ていいわけではないのだぞ、男子諸君。 葉月さんに失礼だ。それに、君たちの反応は周りにいる女子達に対する侮辱も同然だぞ。 ほら、我がクラスきってのイケメンである西田君を見ろ。 いつまでも葉月さんをじっと見つめているから、彼の恋人(を自称している)の三越さんがやきもちを妬いて 西田君の足を机の脚で踏みにじっているじゃないか。 西田君が悲鳴をあげてうずくまったところに、無言で後ろからケリまで入れている。 総員、即刻葉月さんを観賞することをやめたまえ。このままではクラス崩壊の危機だ。 それに、だ。他の女子だっていつもよりイイじゃないか。 袴姿というのは人をおしとやかに見せる効果があるらしい。 小うるさい女子グループでさえも、今日ばかりはその姿を拝みたい気分になってくる。 こうやって見回してみると、うちのクラスの女子って結構容姿のレベルが高い――――? 「ん……んん?」 おかしなものを見つけてしまった。教壇の上に立って、クラスメイトに指示を出している女。 誰だろう。女子が身につけている振袖とは違い、普段着のような印象を思わせる地味なものを身につけている。 日常を思わせる、数世代前の女学生のような着物姿である。 ただ、細いフレームの眼鏡をかけたその顔、どこかで見たことがあるような。……誰だろう? 教室の入り口近くで立ち止まっていると、クラスメイトの一人がやってきた。 他人に人畜無害な印象を与えるスキルにおいては俺以上のレベルを誇る、友人の高橋だ。 だがその印象は、話をしているうちに得体の知れない違和感と共に変わっていく。 もちろん、悪い方向にである。 「やあ、戻ったのか。モテ男」 「誰がモテ男だ。俺はいまだかつて彼女を作ったことさえないんだぞ」 ごく短い期間だけ似たような相手はいたが、あれはノーカウントだ。 「ほお……たった今まで葉月嬢とこそこそ逢引していたくせに、よく言えたな」 「ぐっ……」 「自分のいる位置というものをしっかり把握しておくべきだな、君は。自分のためにも、大事な人のためにも」 この男の台詞の中に毒は含まれていない。スーパーで売られている果物以上に毒素が薄い。 悪意がないのだ。からかっているだけなのだ。そして、だからこそ性質が悪い。 心に思い当たるもの――ちょっとした罪悪感とか――を自覚させる台詞を口にする。 しかも言っていることが正論だったり、時には荒唐無稽なものだったりする。 どの場合も同じ表情、平坦な口調で言うから、心が読めない。 本気か冗談か、喜んでいるか怒っているのか、ということさえわからない。 129 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 52 11 ID NdS3V1VX 「聞きたいことがある。あそこにいる眼鏡の――」 「それよりも、だ。こっちの質問に先に答えるんだ。今まで、どこに行っていた?」 「どこと言われても……」 一瞬隠した方がいいと思ったが、やはり正直に答えることにする。 「葉月さんに連れられて」 「ふんふん」 「トイレに」 「あーあー、もういいよ。皆まで言わずとも、わかった。つまり、そういうことか」 「何がわかったってんだ」 高橋は目をつぶりながら右手を自分の頭に当て、左手の掌を俺に向けてくる。 そこで止まれ、と言いたげな動作であった。 「朝から盛んだな、君は」 「……何を誤解しているのかわからんが、盛るようなことは何一つなかったと言えるぞ」 葉月さんの着物姿に心を震わされたが、あれは興奮したのとは違うだろう。 眼鏡をかけた勘違い高橋君は、俺に耳打ちしてきた。 「いいんだよ。僕は君の味方だ。それに僕は、他の皆みたいに葉月さんに執着しているわけじゃない。 だから、君と葉月さんがどこに行こうが、どこに逃避しようが、どこで心中しようが看過しよう」 最後のひとつは看過したら駄目だろう。クラスメイトというより、人として。 「だが、他の皆はどうだろう。君が葉月さんとどこかに行ったとき、葉月さんが君を連れ出したところは 皆が見ているが、そこは問題じゃない。 問題になるのは、葉月さんに連れ去られるほど思われている君の身の安全が、皆の手によって脅かされる かもしれない、というところにある」 脅しか、この野郎。いや……違うな。こいつの言っていることは――。 「脅しじゃなくて、事実と状況を踏まえたうえで僕が君に厚意で行う、警告だよ。 気をつけた方がいい。不幸にも今日は学校内に人があふれる一日だ。……と、明日もか。 とにかく、一人で行動するのは避けた方がいい」 どこぞのサバイバルゲームでは、危険な状況でも一人で立ち向かっているが、やっぱり真似したら駄目か。 俺の場合、あのゲームではあえて行動しやすくするために、敵を消しているのだが。 ――無理か。俺を取り巻く環境では誰が敵かわからないし、敵になりそうな奴が多すぎる。 「そうだ。君の今日の運勢を占ってあげよう」 「要らん」 お前の占いは占術に頼って出したものじゃない。状況を把握したうえで割り出した推測だろう。 「そう言うな。今日の僕は冴えているんだ。機嫌がいいからね」 人差し指の先を額の中心に当て、エセ占い師は答えを紡ぐ。 「――君は今日、危機的な状況に陥る」 「……」 当たるも八卦当たらぬも八卦って、便利な言葉だよな。何を言ったってごまかせる。 言い訳に使える言葉の中では、ランクの最上級に位置するんじゃないか。 「黒い……場所。夕方だな。君は、男……女? に、凶器をつきつけられている」 「夕方、気をつけていればいいんだな?」 「うん、そうだ。けど、けれど……多分君は、自分からその状況に関わっていく。そう、出ているよ」 「はあ……?」 「僕に言えるのはここまでだ。あとは君次第で、状況は変わっていく。君の無事を祈っているよ」 「ああ、そうかい。ありがとさん」 不吉なことを言い残し、高橋は俺の前から立ち去ろうとする――って、おい。 130 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 53 45 ID NdS3V1VX 「ちょっと待て。聞きたいことがあったんだ」 肩を掴み、強制的に動きを止める。 振り向いたときの男は、なんだか意外そうな表情をしていた。 「何だ? 君から俺に話を持ちかけてくるなんて珍しい。事件か? いつぞや口にしていた弟と妹が、 とうとう一線を越えてしまったのか?」 「違う。そっちじゃない」 仮にそうだったとしたら、今頃俺は学校になんて来ていない。 妹と弟を前にして、今からでも間に合うから普通の兄弟に戻ろう、とか言っているはずだ。 その後、妹によってどんな目に合わされるかはわからないけど。 俺の身――いや、命の安全も保証できないけど。 「ほれ、あそこにいる女の人」 教壇の上に立ち、クラスメイトの動きを見守っている女を指す。 「あの人、誰だ?」 極めて単純に、的確に質問したつもりだった。 だが、どうやら俺の問いかけは、珍しいことに高橋の逆鱗の袖に触れてしまったようだ。 高橋の不機嫌は隠されもせず、眉間に皺となってあらわれた。 「君は馬鹿なのか?」 いきなりそれかよ。 「……どうだろうな。馬鹿にならないために日々頭を使っているつもりだけど」 「いいや。君は馬鹿だ。君が馬鹿じゃなければ僕はなんだ? なんだと思う?」 なんだかその質問変だぞ、という言葉は飲み込む。咄嗟に浮かんだ台詞を口にする。 「知らねえ」 「そんなこともわからないのか。やはり君は馬鹿だ」 嘆息。 やっぱり飲み込まずに言っておけばよかった。たぶん聞いてきたこいつもわかっていないに違いない。 高橋はこうやってわけのわからない台詞を吐いて煙に巻くのだ。 シュールなギャグ漫画のネタみたいな喋りをする野郎だ。 でたらめな方向に会話を持っていってなんとか生き残ってやがる。 あえてこっちもペースに合わせてやっていいんだが、高橋はどうやら怒っている様子なので、下手に出る。 「すまん。お前の言う通り俺は馬鹿だ。謝る」 「気にするな。それに……僕はそんな馬鹿が嫌いじゃない」 「そいつは光栄だ。で、すまんのだが」 「ああ、さっきの質問の答えだな。教えてあげよう。 あそこにいるのは我が二年D組の担任にして守護女神――篤子先生だ」 ……とうとう女神にまで昇格したか、篤子女史。 昨日までなんたらエルとかいう天使の一人娘だったように記憶しているが。 ちなみに担任はれっきとした人間だ。全ては高橋の妄想である。 俺としては、担任が天使でも悪魔でも神でも魔界の王でも構うところはない。 美人だったらそれでいい。見ているだけなら目の保養になる。 「そうか、先生だったのか。見違えたよ」 「だろう。今日は眼鏡までかけている。あれは僕が貸したものだ」 流石、普段から「篤子先生には眼鏡が似合う。かけてくれないかな。かけさせたいなあ」とか言っているだけのことはある。 ばっちり担任の細面に似合うフレームを選んでいる。 あの眼鏡、今日のために高橋が特注したんだろうな。こいつならそこまでやりそうだ。 131 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 55 35 ID NdS3V1VX 「お前としては、あれで満足か?」 「……八十七点というところかな。あとは髪の毛を肩の辺りで切りそろえてくれれば完璧だ。 いつもの髪型も決して悪くはないが、僕の好みをジャストミートしていないんだ。 もちろん、どんな髪型であっても僕の気持ちは変わらないが」 「言ってみたらどうだ? 髪の毛を少し短くしたらもっと綺麗になりますよ、とか」 「既に言っている」 あ、言ってるんだ。いや、言っていないはずもないか。 「でも先生は……これぐらいの長さがいいと言っていたから、と断った」 「そうなのか?」 「いったい、誰に言われたんだ。もしかして……心に決めた男が居て、そいつに言われたのでは……」 断言してもいい。それはない。 おおかた、小説に出てくる好きな主人公が「髪の長い女が好きだ」と言っていたから、みたいなオチだろう。 そりゃ、担任のプライベートまで知らないし知りたくもないから、恋人の有無なんてわからない。 だけど、担任の身に纏うあの空気を見ているとわかる。 彼女は、恋人とのラブロマンスより、文字の群れが紡ぐ恋愛模様の方が好きだ。 なぜわかるのかというと、俺が担任と似ているから。 葉月さんと出会ってからは考えが変わってしまったが、昔の俺は恋人と乳繰り合うよりニッパーを繰っている方が ずっと楽しいんだ、それ以外に幸せなんてあり得ない、とまで考えていたのだ。 おそらく、数ヶ月前の俺みたいな奴が成長し進化を遂げたら篤子女史のようになるのだろう。 担任と俺は、趣味に生きる人間という点に於いて同類なのである。 ちなみに、高橋がここまで担任に執心しているのは、話を聞いていればわかるように、恋をしているからだ。 俺には、担任のどこが魅力的なのかが理解できない。 年はずっと離れているし、純文学オタクだし、口の滑りがちょっとばかし良すぎるし――良すぎて滑って転んでいるし。 だが、人が恋をするのは自由だ。相手が異性である限り、俺としては友人の恋を応援してやりたい。 もちろんエールを送るだけ。エールさえ邪魔かな。生暖かい視線を送るだけにしておこう。 ぶつぶつ言いながら立ち尽くしている高橋を置き去りにして、クラスメイトの元へ。 教室の後ろ側はカーテンで仕切られている。そこが店員の控え室になっているようだ。 薄布のカーテンの向こうからは、準備に追われている女子の声が飛んでくる。 そこまで急がなくても、今日学校に来るような人間の年齢層の好みにかすりもしない喫茶店が忙しくなりは しないと思うのだが。やる気を出しているのはいいことだけど。 いくら美麗な衣装を身に纏った女子がいるにしても、古本屋のしけった本の匂いがする店に入ってきてまで 見物しようとする物好きな男もいないだろう。もし居たら、そいつはどうしようもない女好きだ。 ナンパ目的の男が入りそうにないものを選んだという点では、担任の出し物のチョイスを評価してもいい。 しかし、利益をあげそうにない喫茶店であることは否めない。 茶と菓子を出すところ以外、小説のみを扱う図書館みたいなもんじゃないか。 担任はどんな客層をターゲットにしているつもりだ。 もしかして……純文学喫茶を経営するのが担任の夢、なんだろうか。 二日間だけでもいい、夢を叶えたい。そんな想いで、この出し物をやらせたのか。 夢を追う大人ってかっこいい――――なんて思わないぞ。やはり担任の行いは許し難いものだ。 ……今更だな。文化祭当日になって、許すも許さないもない。 132 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 03 58 10 ID NdS3V1VX しかし、喫茶店業務の各担当はどのように割り振られているのだろう。 弟のクラスを手伝い始めた日から、ずっと自分のクラスのミーティングをさぼっていたからさっぱりわからない。 確定しているのは、葉月さんがウェイトレスだということ、担任が窓際の席を占領して本を読みふける迷惑な客の役 だということ、だな。だとすると、高橋も教室に入り浸るだろう。 俺は何を任されているんだろう。壁に貼ってある、担当者の割り振りが書かれたプリントを見る。 ウェイター……はやっぱりないか。臨むところだ。 お茶を沸かす役、菓子を皿に盛る役……でもない。 消耗品の買い出し役……ですらない? おいおい、俺の名前がどこにも書かれていないぞ。 名前と役がずらりと書かれた一覧表を、上から下、下から上へと何度も見る。……が、俺の名前はない。 とうとう皆は一致団結して、俺に対してスルーで対応することにしてしまったのか? いや、それも違う気がする。 高橋と話した時もだったが、クラスメイトから感じる気配に不快なものを覚えない。 では、なぜ俺に何の役も任せていないのだ? やめてくれよ。なんか、こう――家にいるときみたいに、のけ者になった気分になるじゃないか。 「どうかされましたか?」 切なさのあまり、心の中の雪原で粉雪を浴びていたら、担任に声をかけられた。 ポーカーフェイスの篤子先生がパン屋の優しいおばさんに見えてしまった俺は、寂しがり屋なんだろうか。 そろそろカウンセリングでも受けた方がいいのかもしれない。 「先生、黄昏れたい気分になったこと、ありますか……?」 「ええ。ほぼ毎日です。なぜ私は、あれほど美しい小説の登場人物ではないのだろう。 私が着の身着のまま列車に飛び乗り、車窓から遠い故郷を思っても、彼らのように様にはならない。 所詮、私は現実に生きる人間でしかないのだ、と思うと……切なくなりますね」 ……なんか違う。むしろこっちが切ない気分にさせられた。 この三十路が担任だったという経験は、俺の人生にとってなんらかのプラスになるんだろうか。 反面教師にせよ、という天啓が俺の知らぬ間に下っていたとでもいうのか。聞いていないぞ、天の人。 「先生、これ、見てください」 「はい……皆さんの役割分担が書いてありますね。でも、あなたの名前はどこにも書かれていない。 なるほど。それで、沈んでおられるのですね」 「なんで俺の名前が書かれてないんですかね……」 ああ、ため息、また一つ。 「……まじめですね。準備期間中は毎日熱心に相談を持ちかけてこられましたし。 他の皆さんもそうです。出し物が決まったときは不満そうだったのに、今では全員で協力して喫茶店を 成功させようという気概が感じられます」 「当日になってまでごねる奴なんていませんよ。当日になって暇になる男はいますけど」 ちくしょう。なんで俺は担任を相手に弱音なんて吐いているんだ。情けない。 「時間があるのはよいことではないですか。今日と明日は文化祭です。退屈はせずに済むはずですよ」 「一人で回っても面白くないですよ」 「一人もそれほど悪いものではないですよ。自分の時間を、他人に邪魔されずに自分のペースで楽しめます」 「そう、ですかね……」 ええ、と言って担任は頷いた。 俺は一人。これから、一人で生きていくんだ。 目の前にいる独身、三十路、オタクの三拍子そろった担任みたいに。 133 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 04 00 00 ID NdS3V1VX 「先生、俺は――」 口を開こうとしたら、かざされた右手によって言葉を遮られた。 担任は俺の顔を見ていない。今まで目につかなかったところに貼ってあるもう一枚のプリントに目を向けている。 「……なんです、一体?」 「あなたの役は、きちんとあるじゃないですか」 「えっ!」 「ほら、あそこのプリントに、書いてありますよ。大事な仕事です。しっかりやり遂げてくださいね」 返事をせずにもう一枚のプリントの元へ向かう。 皆、疑って悪かった。俺のことをしっかり覚えていてくれたんだな。 どんな仕事だろう。なんでもやるぞ。客引きだって、店の用心棒だって喜んでやってやる。 福沢諭吉の印刷されてある紙幣よりも輝いて見える文書の元へ、俺はたどり着いた。 そして、そこに書かれている四行の文字の羅列を見て――へけっ、と笑った。 頬がひきつっている。初めこそ笑い顔だったが、不意打ちでがっくりさせられて表情をへし曲げられた。 プリントの一行目には、俺の名前が書かれていた。このプリントが俺のために作られたものだと一目でわかった。 だが、それはいい。問題は二行目から。次のように書いてある。 『上の者、文化祭一日目二日目共に、教室にて座して過ごすことを命ずる。 教室から出ることは一切許可しない。この命に背いた場合、”あのこと”を公開する。 なお、クラスメイトは上の者を教室から出さぬよう、全力を尽くすこと。 以上』 つまり、何もせずに座っていろ、と言いたいのか。こんな理不尽な命令なんか聞きたくない。 それに”あのこと”ってなんだよ。わざわざダブルクォーテーションでくくるんじゃねえ。 俺は、何もやましいことなんか――――あるじゃねえか! ちくしょうめ! 両親のことは一言も漏らしたことなんかないけど、こんな文章書かれたら自信がなくなるよ! 誰だ、これ書いた奴! お前なんか仲間じゃない――敵だ! くそったれ――こんなことなら弟のクラスにいればよかった。教室に戻ってくるんじゃなかった……。 右手を黒板に当て、よりかかる。すぐに腕から力が抜けた。体重を壁に預ける。 このまま床に座り込みたい気分だったが、クラスメイト(不特定の一名を除く)の前だから、自重する。 そのまま目を閉じて眠ろうとしていたら、お盆を手にした葉月さんがやってきた。 「大丈夫? プリント、私も見たけど……残念だったね」 「う……ん、い、いや。別に大したことないよ。きっとヘルプ要員として待機してろ、っていう意味だから」 よりによって葉月さんの前で弱音を吐くわけにはいかない。 プリントに書かれた文章を読んだ程度で落胆しているなんて、思われたくないのだ。 「んー……たしかに、そう読めなくもないけど。前向きだね」 「そんなことないって」 ただの虚勢だからね。 「……まさかそんな反応をするなんて。落ち込んだところで声をかけたのに……」 「あれ、俺、落ち込んで見えた?」 「え! あ、ま、まあね。いつもより元気がないのは一目でわかったよ」 バレバレじゃないか。しっかりしろ、俺。 しかし、さっきから葉月さんの挙動がおかしい。一体どうしたというのだろう。 134 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 04 01 26 ID NdS3V1VX 「葉月さん、緊張してる?」 「そりゃそうだよ。バレちゃったらどうしようか、とか……」 「え? バレるって……?」 「ううん! なんでもないよ。あー、ちゃんと接客できるかなー。緊張するなー。 誰か、励ましてくれないかな。誰でも……じゃなくて、誰かに応援してもらいたいなー」 ちらちらと俺の顔を見ながら葉月さんが言う。 そこまで露骨に誘われると躊躇ってしまうな。周囲の男女からの視線もあるからなおやりにくい。 だが――時には気合いを入れて一歩踏み込むことも必要だ。 俺と葉月さんの距離も、強引にでも詰めなければいけないんだから。 「葉月さん」 「は、……はい」 「葉月さんがいれば、売り上げが校内で一番になるのも夢じゃないよ、きっと」 「ほっ、ホント!?」 「俺はそう思う。出し物が出し物だからハンデありまくりだけど」 「それは、その……どういう意味……?」 思っていることを言うのが恥ずかしい。でも、顔を紅くした今の葉月さんを抱きしめるよりは恥ずかしくない。 ちゃっちゃと言ってしまおう。 葉月さんに近寄り、耳打ちする。 「……今日の葉月さん、すっごく可愛いから」 「か、可愛い……ど、どれぐらい……」 「惚れてしまいそうな程に」 「あ! ……あう、あぅ……ありがとうございます! が、がんばります! 見ててください!」 右手に持ったお盆で敬礼し、葉月さんは教室の外へ向かっていった。 クラスメイトの白い目と、火傷しそうな熱視線と、舌打ちの音が遠いもののように感じられる。 『可愛い』。『惚れてしまいそう』。 言うのは簡単なのに――どうして、こんなに心が重くなるんだろう。罪悪感を覚えるんだろう。 眠すぎて頭がいかれてしまったのか? 自分の言葉に、自分の気持ちに自信が持てないなんて。本当に、俺はどうなってしまったんだ。 135 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 04 02 54 ID NdS3V1VX ***** 彼がいる。先輩――お兄さんに作ってもらった衣装に着替え、仮面を被ったヒーローになりきって接客している。 彼は他の皆と違い、今日一日だけしかクラスを手伝わない。 その代わり、今日だけで二日分の働きをする、と彼は言っている。 なんでも、二日目を丸一日自由行動に使いたいらしい。 理由を聞いても、彼は困った笑みを見せるだけだった。何かを隠していることは明白だ。 一体それがなんなのか、アタシにはわからない。少しだけならわかるけど。 自分が許せない。誰よりも愛しい彼のことを、全て把握できない自分なんて、違う。そんなのアタシじゃない。 アタシは彼の世界なんだ――これから、そうなるんだ。 だから、今の彼に関することは全て知らないといけない。だけど、今のアタシは彼のことを知らなすぎる。 アタシの器が彼を受け止めきれるほど大きくないのか、彼の存在規模が大きすぎるのか、アタシが彼のことを 過大評価しているのか。あるいは、それら全てが理由なのかもしれない。 ――いけない。 また、彼と会う前の自分の気持ちを思い出してしまった。 忘れなければいけない。アタシは、自分を卑下していた頃とは違うんだ。 彼はアタシを救ってくれた。彼はアタシに自信をくれた。 『アレ』を人より上手く扱えるなんて、特技でも何でもないのに、彼は褒めてくれた。 目を輝かせながら、すごいすごいすごい、と言ってくれたのだ。 根暗なアタシは、それだけで自信が持てた。彼と会う回数を重ねていくうちに、声が大きくなった。 でも、純粋な気持ちでいられたのは数ヶ月だけ。 その後は、恋しい気持ちと、それからくる独占欲――以上に醜い支配欲で、心の中がドロドロだった。 アタシは、ちょっとだけ彼と会う機会を減らした。 だって、彼が心の中に踏み込んできたら、アリジゴクのように引きずり込んでしまいそうだったから。 その甲斐あって、アタシは彼に危害を加えずに済んだ。 代わりにやってきたのは、息を詰まらせそうなほどの切なさ。 彼の存在は、既にアタシにとってなくてはならないものになっていたのだ。 毎日、彼と一緒に登校したかった。 一日中ずっと、彼の机とアタシの机をくっつけて授業を受けたかった。 昼休み、彼の口にアタシの箸であーんしてあげたかった。 放課後、部活動に励む彼を見続け、一緒に帰りたかった。 そして、アタシの家に来てもらい、甘い台詞を囁きながら抱いてほしかった。 毎日毎日そんな妄想ばかりが浮かぶ。止めようがなかった。 止めてしまったら、現実の彼に想いをぶつけそうだったから。 思いの丈をぶつけてしまおうと思ったことは幾度もあった。でも、実行していない。 彼がアタシを受け止めてくれないだろうことは明白だった。 136 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 04 04 32 ID NdS3V1VX ――あなたが好きな人は、あの人だから。 あなたがどれほど彼女を思っているのか、アタシは知っている。 彼女の姿を確認するためだけに、彼女の教室の前を通り過ぎていること。 体育の時間や部活中、校庭から彼女の教室を見上げていること。 その時に見せるあなたの目が、最初からアタシに向いていてくれればよかったのに。 そうすれば、強引な真似をする必要なんかなかった。 わかってる。悪いのはアタシ。純粋なあなたを自分の色に染めたくて仕方なくなっているアタシ。 あなたは悪くない。悪いところがあるとするなら、誰にでも優しい、八方美人ともとれるその性格ぐらいのもの。 この想いがどこまでいくのか、どんな結末を望んでいるのか、アタシにはまったく見えてこない。 はっきり言えるのは、アタシがあなたを支配したいと強く願っていること。 あと、もう一つ――――目的のために具体的に行動すると決定したこと。その二つ。 明日、あなたはあの人に会うつもりでしょう? だから今日頑張ろうって、決めたんでしょう? あの人には、絶対に会わせない。二人きりでデートするなんて許せない。 本当は、あの人をあなたの前から消したいけど、あなたはきっと悲しむよね。 あなたの悲しみは、アタシに会えないときだけ湧いてくれればいいの。無駄遣いしちゃいけないわ。 先にあなたを手に入れれば、あの人を消さずに済む。あなたも悲しまずに済む。 一石二鳥でしょう? もうすぐ、今日の一般公開の時間は終わる。 それからはアタシの時間。あなたを狩るための時間。 少し骨が折れそうだけど、アタシはしっかりやり遂げる。 覚悟はもう済ませている。一線を越えることに、もはや躊躇はない。 さあ、行こう。アタシと彼だけが存在する世界で生きるために、最初の命令を下そう。 137 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2007/12/14(金) 04 06 32 ID NdS3V1VX ***** 「ありがとう! また明日も来てくれ!」 マスクをしているせいなのか、いつもよりテンションの高い声で彼が最後の客を見送った。 教室を改装した喫茶店の中にいるのはコスプレしたクラスメイトだけだ。 皆、お互いの衣装を笑いあったり褒めあったりしている。 アタシは彼が誰かに話しかけるより早く、誰かが彼に話しかけるより早く、彼の肩を掴んだ。 振り向いた彼に向かって、労いの言葉をかける。 「お疲れ様」 「あ、お疲れ。いやー、マスクを被ってると疲れるね。動きづらいったらないよ。 スーツアクターの人の苦労がほんのちょっとだけわかった。君の格好もそうじゃない?」 「ん……そうでもないよ。ちゃんとアタシの体型に合わせて作ってあるから」 彼の着ているボディスーツはお兄さんの手作りだけど、アタシの衣装は違う。 今日の目的を達するために、実用性を重視した作りになっている。 喫茶店のウェイトレスとしての実用性ではなく、荒事に対応するためのそれだ。 動きやすく、軽装で――武器を隠し持てるように作っている。 実際、今も身につけている。けれど、ナイフとかメリケンサックみたいにわかりやすいものじゃない。 学校に通う生徒なら、誰でも手にできて、持ち運んでいても不自然じゃないもの。 仮にアタシが警察からボディチェックを受けても、絶対に引っかからない。 ――だけど、上手く使えば命を奪うことだって不可能じゃない。 どうやればいいのか、それもアタシには想像できる。 「いいなあ。僕も兄さんに頼んでおけばよかった」 「時間がなかったんだから仕方がないよ。今日家に帰ってから頼んでみたらどう?」 ――君は今夜から死ぬまで、家族の住む家には帰れないけどね。 「そうしてみようかな。でもなんだか兄さん、最近僕を部屋に入れたがらないんだよね……。どうしたらいいと思う?」 「アタシは一人っ子だからわかんない。でも、きっと大丈夫よ。いい人そうだから」 「そうだね。兄さんは本当、優しいから。僕と妹には……昔から」 彼に物憂げな表情をさせるお兄さんにちょっとだけ妬いてしまう。 お兄さんと妹さん、彼が居なくなったらきっと悲しむだろうな。 ……でも、予定は変更しない。今日こそ、彼の全てを手にするんだから。 「そろそろ帰ろうかな。じゃあ、僕、着替えてくるから」 「あ……ちょっと、待って」 「ん? 何か用?」 「うん。……あのね、今から、ちょっとだけ……」 やっぱり、いざ本番となると緊張する。けど、それを乗り越えないと目的は達成できないんだ。 「ちょっとだけ、この格好で歩かない? ほら、なんだかハロウィンみたいで楽しいじゃない」 練習してきた台詞をそのまま口にする。動揺を表に出すことなく、口にできたはず。 彼はアタシの顔を見ているみたいだ。どんな表情かはわからない。だってマスクを被っているんだもの。 「……ねえ、どう?」 アタシの催促に対し、少しの間を空けて、彼は頷いた。 それがこれからの人生の行く先を決定づける行動だとは知らずに。 続けて彼は、「いいよ、ちょっと歩こうか」と、言った。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/25164.html
オランブニヤン(オラン・ブニヤン) オランブニイの別名。
https://w.atwiki.jp/aki_sai/pages/73.html
レイ・ヤン 人物紹介 神楽山キャンパス高校2年。 (現在は銀雨RPGに『卒業生』が存在しないため、便宜上PBWとは違うものになっています) 香港人に養子として迎えられた少年。 元々は両親、双子の妹との4人家族。 両親を交通事故で亡くしており、その後は妹と共に孤児院で生活を送っていた所を、レイだけが現在の義父に引き取られた。 その後香港に移住し、15歳の冬まで完全に日本を離れていたが、同年12月に日本に帰国。 その翌年の4月に学園に入学し、現在に至る。 性格は社交的だが、かなりキツイ性質を持ち合わせており、オープンに毒舌。 人が言い難い事でもずばっと言ってしまう。 義父の家業は人様には言えない職業らしく、本人には跡を継ぐ気はないらしい。 なお、さり気なくトリリンガルである。 データ ⇒詳細 レベル20 経験値: 残り銀: 習得アビリティ ・ ・ 参加セッション PBWリンク
https://w.atwiki.jp/765druaga/pages/32.html
Top Page ヤング カイ [#f101c003] ヤング カイ [#f101c003]ステータス [#sf656c6a] 初心者向け講座 [#cc54ef0e] 特徴 [#af6128d7] フォース [#kbd11b67] アーツ [#q65c3bf0] スキル [#x76895d4] ランク [#odf9df34] 珍速 [#lea49c92] その他 [#o1145d29] メイン音楽:「カイの冒険」通常フロア曲 クリア時音楽:「イシターの復活」TOP OF THE TOWER開始(ショートバージョン) ステータス [#sf656c6a] HP AP 腕力 体力 知力 精神力 器用度 敏捷度 30 180 4 6 21 20 8 8 初心者向け講座 [#cc54ef0e] ヤング カイ/初心者向け講座 http //www.druaga-online.info/index.php?%A5%E4%A5%F3%A5%B0%20%A5%AB%A5%A4%2F%BD%E9%BF%B4%BC%D4%B8%FE%A4%B1%B9%D6%BA%C2 特徴 [#af6128d7] 囮を展開し常に逃げながら遠距離で攻める後衛キャラ。 一見装甲が薄いが、一定回数ダメージを無効化するプロテクションがあるためかなり丈夫。 しかしローパーやアーチンのような細かいダメージを複数回与えてくる相手に触れると一瞬で剥がされるので注意。 (逆にティアマットのボディプレスなど、他キャラが受けたら瀕死・即死の高ダメージ攻撃でも回数内なら無傷で耐えられる) 紙装甲なので常時プロテクションは切らさないこと。下手すればプロテクションが切れた瞬間即死ということもある。常に回避行動を念頭に入れること。 移動は常時ダッシュでほぼ瞬時に目標地点へ到達、ただし直線的な移動しかできず、到着後若干の隙がある。 溜め攻撃は3段階、最大溜めでファイヤーエクスプロージョンとなり範囲攻撃が可能。 ダッシュ移動直後に攻撃ボタンを押すとダッシュ移動入力になる場合があるので注意。 使いこなせば最強の火力。画面外まで届くAPを消費しない範囲攻撃(最大溜め)、壁などで隔離されていても関係なく自由に狙えるフォース。 中盤はコールギル→ファイヤーエレメント主体の戦い方。 終盤でサンダーボルトを覚えると火力が飛躍的に上がるのである程度はコールギル無しでいける。 (撃ちまくるとすぐAP切れるのでフォースを使うか使わないかの判断が腕の見せ所) フォース [#kbd11b67] 名称 消費AP 効果 ヒール 15 指定したターゲットのHP回復(対象が敵の場合、アンデッド系のみダメージが入る) br;フォースレベルが上がると回復量が増加する。 br;ヒールを強化すると回復量が増加する。 ファイヤーエレメント 30 画面をなぞった部分4箇所に数秒間炎を出現させる br;フォースレベルが上がると出せる炎が増える(最大8つまで) コールギル 20 ギルの幻影を召喚する。幻影は一定時間ごとにプロボークして敵を引きつける シールド 15 自分や指定した仲間の物理防御力・魔法防御力を上げる br;通常で30%アップ(効果時間60秒)以後、フォースレベルが上がるたびに各10ずつアップ アイスストーム 40 タッチしたターゲットに氷塊を落とす。落下地点の周辺にも攻撃判定がある。 br;フォースレベルが上がっても威力やHIT数は変化しない。 ヒートボディ 25 自分や指定した仲間が灼熱の炎に包まれ、攻撃してきた敵にダメージを返す br;ただし飛び道具や魔法攻撃、接触しているだけではダメ br;ヒートボディを強化すると効果時間が長くなる。 br;効果時間中は敵からの氷結攻撃に対する耐性を持つ。 サンダーボルト 50 タッチした場所に雷を落とす br;フォースレベルが上がると落ちる雷が増える アーツ [#q65c3bf0] 名称 効果 プロテクション 一定時間、または一定回数、敵からの攻撃を無効にする。物理・魔法攻撃どちらも防ぐことができる。 br;Iで3回、IIで4回、IIIで5回、IVで6回まで無効可能。 メディテイション その場で瞑想状態になりAP回復。瞑想中にアタックボタンで攻撃することはできない。 br;ダウン攻撃を受けるか、フォース・アーツ・移動すると解除される。Iで10,IIで15,IIIで20から回復していく。 コンセントレイション 一定時間、通常攻撃の溜め時間、フォースの発動までの時間(ターゲットの入力受付時間)、フォースアーツの再詠唱の時間、を短縮する。 br;所要時間は、Iで2/3、IIで1/2、IIIで2/5に短縮される。 チャーム ターゲットしている敵にを飛ばし、チャーム(魅了)する。チャームされた敵は一定時間近くにいる敵を攻撃する。 br;チャームを強化すると効果時間が長くなる。耐性のある敵は効果が出なかったり、早く効果が切れる。 アンシーン 一定時間、周囲に結界を張り、敵から見えなくする。敵の目の前で使っても効果あり。 br;攻撃に当ったり、移動とメディティションとアイテム使用以外の行動をとると効果が切れる br;アンシーンを強化すると効果時間が長くなる。 万物の息吹 ターゲットにしている味方のAPを一定量、瞬時に回復させる。Iで30,IIで50回復。タイムアップしているメンバーのAPは回復できない。 フォーカス フォーカス1回で一度だけ直後のフォースレベルを上げることができる。ただし、フォースレベルが+3を超えることはない。 br;Iでフォースレベル+1、IIで+2、IIIで+3の効果がある。フォーカスにも効果時間がある。 クリスタルボディ 一定のダメージを吸収、無効化するクリスタルを召喚する。耐久値以上のダメージを受けるか、一定時間経過すると効果が消える。 br;耐久値を超えると効果が消えた上、超過分はHPから引かれる点に注意。耐久値は最大HPに依存する スキル [#x76895d4] 名称 効果 加護 3秒毎にAPが1づつ自動的に回復する(IIで回復AP2、IIIで回復AP3) マナ 攻撃力が5%UPする(IIで10%UP、IIIで15%UP) レジスト 魔法防御力が10%UPする(IIで20%UP、IIIで30%UP) ランク [#odf9df34] ランク 取得技能 EXP ランク 取得技能 EXP ランク 取得技能 EXP F- プロテクション、ヒール 0 B- アイスストーム 20900 SSS- 万物の息吹II 199500 F 加護 200 B コンセントレイションII、マナII 24900 SSS フォーカスII 278500 F+ メディテイション、レジスト 600 B+ 万物の息吹 30100 SSS+ マナIII 365300 E- ファイアーエレメント 1000 A- ヒートボディ 37100 SSSS- クリスタルボディII 465800 E マナ 1500 A メディテイションII 43500 SSSS コンセントレイションIII 566000 E+ コンセントレイション 2600 A+ フォーカス 49100 SSSS+ プロテクションIV 1132000 D- コールギル 4000 S- 加護III 58100 EX- メディテイションIII 2264000 D プロテクションII、加護II 6800 S プロテクションIII 67300 EX フォーカスIII 3900000 D+ チャーム 9800 S+ クリスタルボディ 77700 C- シールド 12000 SS- サンダーボルト、チャームII 90700 C レジストII 14600 SS レジストIII 105200 C+ アンシーン 17800 SS+ アンシーンII 124500 珍速 [#lea49c92] カイに他のキャラのような珍速はないが、以下の式が満たされるときに所謂えいえいが可能となる。 size(18){(武器の重量÷16)<攻撃速度アップ率+1};; (攻撃速度アップ率は%を少数に直して計算すること。また右式と左式が=では成り立たない事に注意) br; 【重量10】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 0%】 【重量15】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 0%】 ※ここまで速度上昇なしで可能 【重量16】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 1%】 ※ここまでウイングカフスのみで可能 【重量17】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 7%】 ※ここまでフェザーグローブのみで可能 【重量18】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 13%】 【重量19】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 19%】 ※ここまでフェザーグローブ+クイッククリスタルで可能 【重量20】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 26%】 ※ここまでレッドクリスタルのみで可能 【重量21】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 32%】 【重量22】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 38%】 ※ここまでフェザーグローブ+レッドクリスタルで可能 【重量30】の武器の場合、必要攻撃速度は 【+ 88%】 ※ここまでバーサークのみで可能 【重量40】の武器の場合、必要攻撃速度は【+151%】※実質不可能 br; 攻撃速度上昇装備 名称 部位 ランク 上昇率 愛のフェザーグローブ 腕 EX +10% 封魔のフェザーグローブ 腕 SSSS +10% フェザーグローブ 腕 SSS +10% 愛のウィングカフス 腕 C- +9% 封魔のウィングカフス 腕 D- +7% ウィングカフス 腕 E- +5% 怒りを沈めしもの 飾り F- +6% 意思を留めしもの 飾り F- +7% 銀河の渦 飾り F- +12% 無限球 飾り F- +8% イドの輪・憎しみの発現 飾り F- +10% その他 [#o1145d29] ヤング カイ情報(したらば)
https://w.atwiki.jp/doragoso/pages/49.html
→週刊ヤングワロス
https://w.atwiki.jp/gods/pages/95325.html
バヤン(3) モンゴル帝国皇帝の系譜に登場する人物。 関連: コニチ(2) (父) サシブカ (サシ・ブカ、息子)
https://w.atwiki.jp/bleuvert/pages/22.html
ヤンテの法則 ヤンテという架空の町のルール十カ条。 控えめで平等を好む気質のデンマーク人を表す言葉として知られている。 1.Don t think that you are special. 自分が特別だと思ってはいけない。 2.Don t think that you are of the same standing as others. 他の方と自分が同じだとは思ってはいけない。 3.Don t think that you are smarter than others. 他の方より自分が賢いと思ってはいけない。 4.Don t fancy yourself as being better than others. 他の方より自分が優れているとは思ってはいけない。 5.Don t think that you know more than others. 他の方より自分が物知りだとは思ってはいけない。 6.Don t think that you are more important than others. 他の方より自分が大切であると思ってはいけない。 7.Don t think that you are good at anything. 自分一人で何でもできると思ってはいけない。 8.Don t laugh at others. 他の方を笑ってはいけない。 9.Don t think that any one of us cares about you. 気遣ってくれると思ってはいけない。 10.Don t think that you can teach others anything. 他の方に何かを教えられると思ってはいけない。 情報元 COURRiER Japon 七月号 「世界一の"幸福先進国"デンマークの秘密とは」より http //en.wikipedia.org/wiki/Jante_Law
https://w.atwiki.jp/gods/pages/78424.html
グウィヤント アーサー王伝説に登場する人物。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/16490.html
アバヤンダダ セムイボサツの別名。