約 2,051,490 件
https://w.atwiki.jp/shosensyojodokusen/pages/565.html
■あらくれお嬢様はモンモンしてる(連載中) 主人公の椿と超マジメの起立のラブコメ 椿は気持ち悪い男たちから言い寄られた経験で男嫌いだが起立が気になってモンモンしてる 起立の気を引こうとノーブラで校内歩きまわったことあり(気づかれたかは不明) 独占的にはおすすめできない 同級生の男女のサブカップル化が始まろうとしている
https://w.atwiki.jp/imagin-of-aaa/pages/135.html
身長:155cm 体重:45kg 誕生日:不明 血液型:B 趣味、特技:メイド 携帯サイトのFLASHゲームのご褒美ヴォイスは 『好きにすればいいわ』 最近発見された、ワータイガーと化した女の子。 どうせなら服を着るのを嫌がっていたころの姿をカードに・・・いや、なんでもない。 ステラ様が巫女服姿で登場した巫女セレクションと同時期に発売されたメイドセレクションにメイド服姿で登場、見事パッケージを飾る。 この時のフレーバーテキストは“まだ熱い?ふーふーする?” この時のイラストがプロモになったり本家のプレミアムフレームになったりしてるんだからどうせならステラ様も巫女服姿でプロモになれば良かったのに、と思う今日この頃。 かつての白虎姿は今とはまるで違う。 「私を解き放つのは、誰だ……」 と鎖を引きちぎり全裸(もちろん完全に獣のものである)で威圧する姿から今のメイド姿を想像するのは難いであろう。ちなみに七瀬葵イラスト。 メイド服はブランシュを拾ったじーさんばーさんの趣味である。 アクエリアンエイジストーリーズ初回の主役で東海林光と絡んだ。 最近本家ではフェンリルらとともに一糸まとわぬ姿を披露した模様。 まあ大事なところは隠れてますが。 319 名前:名無しプレイヤー@手札いっぱい。 投稿日:2010/01/01(金) 17 41 53 ID hg1JlxX30 あけおめ 今年はブランシュの年だな>寅 320 名前:名無しプレイヤー@手札いっぱい。 投稿日:2010/01/01(金) 23 33 36 ID 5We0ul1H0 虎徹「呼ばれ…てないか 321 名前:名無しプレイヤー@手札いっぱい。 投稿日:2010/01/02(土) 08 53 24 ID GCq2bcro0 おっとそれはワータイガーがいない極星帝国に対する挑戦か? と思ったらこっそり追加されていたな 656 名前:名無しプレイヤー@手札いっぱい。 投稿日:2009/11/21(土) 22 59 49 ID zLFXGwyGO 悪い人間に捕まって見せ物にされて虐待されてたのにそれを憎まず そこから助けてくれた人を見習って、自分も困ってる人を助けたいと思う ブランシュはいい子だよなぁ 地球の覇権がどうのとか考えてるbitchどもはブランシュの爪の垢を煎じて飲むべきです! 657 名前:名無しプレイヤー@手札いっぱい。 投稿日:2009/11/22(日) 13 01 20 ID reVNrKah0 ブランシュ厨うぜぇ 665 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/29(金) 01 05 11 ID NF7WmkrL 急に寒くなって耐えられないのでワーウルフっ娘に添い寝してもらいます とりあえずぽちは貰っていきますね 666 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/29(金) 01 37 23 ID cgbuY+22 アヌビスならもう俺の腕枕ですうすう可愛い寝息をたててるよ 667 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/29(金) 14 05 22 ID qG9Zod7s ミリィだったら黄と黒の二人の自分の狭間で懊悩してたところにセーラー・スーツでE.G.O.ファクター足したら耐え切れなくなって一ヶ月くらい前に廃人になったよ 台風が近づいてるからかやたらと吠えてるな 668 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/29(金) 21 51 38 ID xZX6+jSI フェンリルなら毎晩一人じゃ寒いって俺の布団にもぐりこんでくるぜ 氷狼ってくらいだしそもそも服着てないから寒い筈がないんだが 669 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/30(土) 00 06 41 ID oO5RhADM ルシアを全裸で外に締め出した 気温はどんどん下がるし全裸だから敷地内に出ることは出来ない さてどうなるか見物だな 670 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/31(日) 00 37 36 ID zcMySllT 全裸のチカ・タイガーフィートをこたつで丸くさせるぜ 周囲にナイフやガラス破片を突きたてて少しでも動けば突き刺さるようにした状態でこたつをセットして最大出力で焙るぜ 671 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/31(日) 23 41 01 ID kmUsX7ZU うぅ、本当に急に寒くなったな。布団被っても眠れん… それにしてもワーウルフは人懐っこい子が多くていいなあ、特に 668のフェンリル… 「(もぞもぞ)狼がどうかしたの」 …うお、ブランシュなにしてん… 「メイドの仕事だ」 は? 「寒い夜にはご主人様に添い寝して暖める仕事だ」 …んな間違った知識、どこで覚えたの 「違うのか?ご主人様の『萌え萌えメイドさん大全』という本に書いてあったが」 ちょ、何勝手に読んでるの… 「ご主人様の好みを知るために勉強するのはメイドの務めだ」 つーかブランシュ、なんで裸なの? 「ご主人様の本は裸の女が載っているのばかりだ。女の裸が好きと思った」 ……純粋無垢な瞳をしてそんなことを言われても… 「む、違うのか?それとも私の裸は嫌いか?」 いや、嫌いなわけないんだけどね、その…(変なことしたら引っかかれそうだしなあ) 「なら問題ないな、寝るぞ。おやすみなさいご主人様(ぎゅっ)」 ……うぅ、寝れねぇ…… 明日エロ本どっかに隠さないと…
https://w.atwiki.jp/nybbas/pages/190.html
フランシスカ 攻撃力D 命中B 攻撃回数1 消費MP80 物理 片手 購入可(8000) ハルトハンマーと並ぶ買ってすぐ使える超お手軽狩り武器。 燃費はハルトハンマーより重くなるが、攻撃回数と命中のよさで 空振りが凄く少ないというのがこちらのメリット。 人の多い時間にはこのぐらいの燃費でもちょうど良い事も多いし 普段は狩り武器なんて持ってないって人にはオススメ。
https://w.atwiki.jp/rixyougi1234/pages/376.html
概要 マルセイユ洋上学園都市の学生。落第街北東地区を根城にする違法学生団のリーダー。《バグズ》モラン。 合衆国のアイルランド系移民街出身。貧乏人の子供。 ボルサリーノとダークグレーのスーツに身を包んだ男。 レイチェル・チャンドラーの幼馴染。 来歴 シカゴのギャングであるオバニオン一家の一員であったが、ニューヨークの別のギャングによって組織は壊滅。 兄貴分のハイミー・ヴァイスと共に組織を立て直したが、またも襲撃を受ける。 本人は事前に白い服を着た男に呼び止められ会話をしていたことで時間に遅れ生存したものの、部下が大勢殺され彼は激怒。復讐しようとするがヴァイスに止められ仕方なくそれに従う。 その後二級学生としてマルセイユ洋上学園都市に入学、ほとぼりが冷めるまで時間を潰すつもりだったが《大消失》が発生。敵は壊滅したと思い込んだ彼はシカゴから迎えが来るのを待つが密航してきたジム・モリアーティから《大消失》によってヴァイスや他の仲間が死亡したことを知る。 空しさのあまり空虚な日々を送っていたが、復讐の相手であるアル・カポネは《大消失》に巻き込まれていなかったと知り、復讐のため力を求め願いに応えた鐘によって異能を手にした。 能力 《月光の雫》 … 異能。酒に精神を操作する力を付与する。 本編での活躍 異能によって自身の勢力を拡大させていたところ、事件を調べていたJJとレイチェルを捕縛。 思わぬところで再会したレイチェルを仲間に引き入れようとするが、彼女には拒絶される。 そして狂気に陥った彼はJJを殺そうとするが駆けつけた風紀警察と統治会により形勢は逆転。ジョウの援護を受けたJJに敗北し、風紀警察に逮捕された。 元ネタ シカゴのギャングスター、ジョージ・モラン。 登場作品 黄雷のガクトゥーン ノベルアンソロジー 関連人物 レイチェル・チャンドラー 名前 コメント 合計: - 今日: - 昨日: -
https://w.atwiki.jp/livly-wiki/pages/45.html
トランシロンカード このページはどなたでも編集可能です。 意味不明の内容、公序良俗に反する内容を保存した場合、編集規制をします。 このページのアクセス数 合計: - 今日: - 昨日: -
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/874.html
フランシスカ 種族:人間族 登場作品:魔導巧殻 解説 リリエッタの娼館で働く娼婦。 処女を捧げたヴァイスハイトとの行為をきっかけに客をお兄ちゃんと呼ぶプレイを身につけており、また後に懇意になった彼に身請けもされた。 リリエッタ同様間者なのか、あるいはヴァイスハイトの力となる為に学んだのか、弓騎士として戦う事も可能。 雑感・考察 クリアするだけなら仲間にする必要は無いキャラ。 戦闘可能なのは上記解説の様な何らかの理由がある訳ではなく、単にゲーム上は設定とか無関係にユニットとして使えるよってだけかもしれない。 名前
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8151.html
(あ……、ブリジッタ、髪がさらさらしてる) 視線の先にいる少女・ブリジッタの艶やかな長髪を、ルイズは羨望の眼差しで見つめていた。 (ベアトリスは頭が小さくて肖像画のモデルみたい……) 続いて、壁に寄りかかって女子生達と何やら話している長身の少女・ベアトリスに目を向ける。 (ミス・ロングビル……、この間クラスの男子が話してた……。やっぱり綺麗ね……) 心の中でそう呟いて、ルイズはひとつ溜め息を吐いた。 (それに比べて私って……) 「じゃね、ルイズ。バイバーイ」 「また明日ね」 「バイバイ」 校舎を出たところでルイズはキュルケ・モンモランシーと別れ、自室がある女子寮への帰路に着く。 (今日もいつも通りの帰り道。そして窓に映るいつもの私……) 教室の窓に映るルイズの上半身は、胸元から腹部にかけてなだらかな曲線を描いていた。 「せめてこの胸が洗濯板じゃなかったらいいのに……。パッドを入れててはみたけれど不自然なだけだもの」 溜め息をついて歩き出すと、女子寮玄関近くの長椅子に少女用にアレンジされた水兵服姿に長い黒髪の少女が目を閉じて座っていた。 ルイズが召喚した少女・メグだ。 「うわあ……、いつ見ても可愛いわね……。こんな可愛い……ううん、綺麗なの使い魔どころか人間にだって見た事無いわ……」 ルイズがしばらく見とれていると、メグはルイズの接近を感知したかのように目を開けた。 「ガラスみたいな黒い瞳……」 無言のまま立ち上がったメグだったが、その足取りがおぼつかない。 すぐにふらついてルイズの肩にしがみつく。 「ね、ねえ、何か具合悪そうだけど、大丈夫なの?」 ルイズがそう声をかけると、メグは木立の中からわずかに見えている小さな建物の方向を指差した。 「あの建物に連れていけばいいのね」 メグを連れて向かったその建物は少々大きめの小屋程度の大きさで、扉の横に大振りの窓があった。 「あんな建物、あったかしら……? 今まで気が付いた事無かったわ。いつも通る道なのに」 扉の前に置かれている黒板にただ一言「Doll Shop」と書かれている事に気付いて、ルイズは訝しがる。 「『Doll Shop』……人形屋? 学院内に?」 ――チリン…… 扉を開けると、ドアベルが涼やかな音を立てた。 「ちょっといいかしら」 「いらっしゃいませ」 ルイズが声をかけると、人形でいっぱいの店の奥から1人の若者が姿を現した。 「あ、私の使い魔が具合悪そうにしてて……」 「それは大変です。きっと外の空気にあてられたのでしょう」 若者はルイズから受け取ったメグを抱きかかえ、手近にあったソファーに横たわらせた。 そこで若者はルイズの顔をちらりと眺め、 「……何かお悩みのようですね。ここで会ったのも何かの縁です。私に相談に乗らせてください」 「いえ、いいのよ、そんな」 と固辞したルイズだったが、店内にずらりと並んだ人形を眺めて溜め息を吐く。 「人形、可愛いわね……」 「僕がカスタムした人形達なんです」 「胸も大きいし、綺麗な目。手も足も細くて小さい顔。こんな風になりたいっていう女の子の理想が、みんな詰まってるわ。私の使い魔みたい……」 そう言ってドレスを纏った人形を1体抱き上げたルイズに、若者は予想外の言葉をかける。 「あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょうか?」 「えっ?」 「さあ、望みを言ってください」 「私の望みは――」 ――願いを叶えるドール・ショップ とても美しいドール達 大きな瞳に綺麗な髪 誰もが心を奪われる―― 「ルイズ! 早く準備しなさいよーっ」 部屋の外からキュルケが声をかけてきた。 「うーん……、わかってるわよ……」 上半身だけを起こしたルイズは、目を擦りつつ昨日の奇妙な店での記憶を思い返した。 「……あれ、朝じゃない? あの店って夢だったのかしら? 私いつ部屋で寝たのかしら」 ぼんやりしつつも制服に着替えるべく寝間着の上着を脱ごうと胸元に手を伸ばして、ふと違和感を覚えた。 視線を下に向けると、ルイズの胸が寝間着に2つの大きな膨らみを形成していた。 「えっ、これ、私の胸!? あの店、夢じゃなかったんだわ!」 ルイズの脳裏に、若者の言葉が蘇る。 ――あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょう。 制服に着替えてからも、ルイズは胸が変わった自分の姿を姿見に映して何度も微笑んだ。 (こんな事信じられる? ずっと夢見てた大きな胸。大きさが変わっただけで、何だかいつもよりちょっと可愛く見えるのは気のせい?) 「ルイズ!! どうしたの、その胸!?」 「シリコン入れた!?」 教室に入ってきたルイズの胸に、キュルケ・モンモランシーは驚愕の声を上げた。 「うふふ、内緒よ」 「ずるーい!!」 「ごめんごめん、ほんとはよくわからないのよ」 自分でも上手く説明できる自身が無かったため適当にあしらおうとしたルイズだったが、その返答にキュルケは激しく抗議した。 そこにモンモランシーから、予想外の言葉がかけられる。 「ルイズって、結構可愛いよね」 「え……、そ……、そうかしら?」 「絶対胸元開けてた方が可愛いって!」 思ってもいなかった言葉に嬉しさ半分困惑半分といった表情になるルイズだったが、モンモランシーに続いてキュルケも、 「うん、その方がいいわ!」 その直後の授業が終わった後の休み時間、 「今まで思わなかった事なのに……」 女子トイレの鏡の前でじっと自分の顔を見つめているルイズの姿があった。 (ダイエットしてみようとか、薬用リップを色付きに変えてみようとか、いつもと違う服を選んでみようとか。私を少しだけ変えるには十分な魔法の言葉。少しだけ可愛くなれる魔法ね) それから半月ほど経って……。 「ルイズって最近変わったよね」 「うん」 「ちょっと痩せた?」 「そうでもないわよ」 軽く否定したルイズだったが、その表情には隠しきれない喜びが色濃く出ている。 (本当は5リーブルダイエットしたわ。シャンプーもちょっと高いのにしてみたし、お小遣いだって洋服と化粧品で全部使っちゃってる) 「もっと頑張れば、もっと『可愛く』なれるのかしら……。もっと、もっと……」 ふと気付くと、ルイズの目の前に1つの扉があった。 「……あれ? この扉……、あの人形屋(ドールショップ)の扉? いつの間にこんな所に……」 不審に思って周囲を見回すと、まるで霧に閉ざされているかのように白くぼんやりとしていた。 そこでようやくルイズはつい先程ベッドに入った事を思い出した。 「ああそうか、私夢を見てるんだわ」 「その扉を開けちゃ駄目。そこは『ドールショップ』なのよ」 聞こえてきた声に振り向くと、そこにはメグが立っていた。 その表情は召喚以来の無表情ではなく、深い悲しみが色濃く出ていたものだった。 「メグ……、なぜそんな悲しそうな目で私を見るの? 怖いくらいに綺麗な瞳……。何が悲しいの?」 その翌日、ルイズがキュルケ・モンモランシーと共に談笑しつつ廊下を歩いていると、 「あ!! ミス・ロングビル!! クラスの男子に大人気なのよね」 「うわー!! 隣の人、ワルド子爵じゃない!!」 突然2人が上げた声に、ルイズははっとしてキュルケ達が見ている方向に視線を向ける。 するとそこには羽飾りを付けた帽子を被った青年と眼鏡の女性が、楽しげに微笑み合っていた。 「何かあの2人、凄くお似合いね」 「2人並んでると別世界って感じ」 「別世界……」 モンモランシーの何気無い一言に、ルイズは硬直した。 (私も少し憧れたわ……。ただの憧れだったのは、私じゃつり合わないのがわかっていたから。何であの子はあんなに可愛いのかしら。私がどんなに頑張っても、あの子みたいにはなれない……。でも……、あと少し目がぱちっとしてれば? 口元が……、鼻が……。あと、少しだけ……) そんな事を考えていたルイズが顔を上げた時、彼女の目の前に昨夜夢で見た扉がいつの間にか存在していた。 「あの扉、『Doll Shop』? 何で校舎(ここ)に!? ねえ、みんなっ……」 ルイズは慌てて後方を振り返りキュルケ達を呼んだ。 しかしその時既にルイズの周囲からは人影が1人残らず消えていた。 「いない!?」 『――あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょうか?』 ルイズの脳裏に、メグを抱きかかえた若者の姿と言葉がフラッシュバックした。 『――さあ、望みを言ってください』 『――その扉を開けちゃ駄目』 若者の声がルイズを誘い、メグの声がルイズを止める。 わずかな躊躇の後、ルイズはその扉を開けた。 ――チリン…… 扉を開けると、ドアベルが涼やかな音を立てた。 「お待ちしていましたよ、お客様……」 扉の向こうでは、ティーセットを載せたトレイを持った若者がにこやかにルイズを出迎えた。 (私が来る事知ってたみたい……) ――願いを叶えるドール・ショップ 今日もドアが開く音がする 店に訪れた少女たちは たちまちドール達の虜―― 「――そうですか……。女の子というのはそれだけで宝石のように素晴らしいと思うのですが……」 ルイズの話を聞いた若者は、慣れた手付きでティーカップに紅茶を注いでそう答えた。 「でも可愛くないとやっぱり駄目なのよ! その人形達みたいに……」 若者の言葉を強い口調で否定したルイズは、テーブル上に座らされている人形に視線を向ける。 すると次の瞬間、 ――ざわ…… 突然店内がざわめいたようにルイズには感じられた。 ――ざわ……ざわ……ざわ…… 気のせいかとも思ったがそうではなかった。 そのような事などありえないにもかかわらず、店内の人形達がざわめいているかのように奇妙な気配を放っていた。 「え……? 何これ……。人形が騒いでるの?」 事ここに至り、ルイズにもようやくこの「Doll Shop」が尋常ならざる場所である事が理解できた。 理屈ではなく本能的にここから離れなければと考え、慌てて立ち上がる。 「わ……、私そろそろ帰らないとっ……!!」 しかしその行動を封じるように、いつの間にかルイズの背後に回っていた若者が彼女の肩に手を置く。 (……いつの間に私の後ろに!?) 「普通彼女達は言葉を持ちません。でもいろいろな事を考え、感じています。店にいる娘(こ)達は特にです」 若者の続ける言葉は異様なまでに淡々としていて、明らかにルイズに……いや、誰かに聞かせるような口調ではなかった。 「私は彼女達の『望み』を叶えて、カスタムしてあげました」 「何の事を言ってるのよ?」 ――クスクス……クスクスクス…… 「新しいお友達?」 「そうみたい」 「お友達ね……」 突然聞こえてきた笑い声に周囲を見回すと、いつの間にか店内には何人もの少女が微笑みを浮かべつつルイズ・青年を見つめていた。 ある少女は東方風の服を、またある少女は豪華なドレスを、さらに別の少女は**を……。 「この店人形しかいなかったのに、いつからこんなに人が!? ……わ、私やっぱり帰るわ!(この店、変よっ!)」 店内の異様な雰囲気に怯え、踵を返すルイズ。 しかし扉の所に立っていた見覚えある少女の姿に、思わず立ち竦む。 「メグ……」 「なぜまた『お店(ここ)』に来てしまったの? 駄目って言ったのに……」 「え……?」 メグの言葉を不審がるルイズ。しかしそこに、 「あなたの望みは、『もっと可愛く』『もっと綺麗に』でしたね」 「!!」 自分の心の中を見透かしたかのような青年の言葉に、ルイズは驚愕の表情で振り返った。 「お友達よりも、肖像画よりも、あの男性の隣にいた女性よりも。この人形達のように……」 「『この人形達のように』……」 ルイズが虚ろな視線で青年の言葉の最後を反復すると青年は怪しげな笑みを浮かべ、 「僕が叶えてあげますね」 「もっと可愛くなりたい、もっと……」 羨望を込めて見ていた、ブリジッタ・ベアトリス・ロングビルの姿がルイズの脳裏を過ぎる。 「もっと……」 ルイズの手から握っていた杖が落ち、床に転がって音を立てた。 ――ガラスの様な綺麗な瞳 惹かれたならばもう帰れない 店員が耳元で囁く 「貴女も綺麗になりませんか?」―― 「知ってる? この辺で生徒が行方不明になったんだって」 「うちのクラスでも……」 「嘘ー」 「えー、プチ脱走じゃないの?」 「真面目な子だったんだよー」 ルイズが行方不明になってから数日後、噂話に興じる少女達を気にも留めず「Doll Shop」のショーウィンドーを覗いているタバサの姿があった。 「……可愛い……」 「ありがとうございます。この娘(こ)はカスタムが終わったばかりなんですよ」 人形の可憐さに、タバサの表情にかすかな羨望が宿る。 「……私も……こんな風になりたかった……」 「その望み、少しだけ叶えてあげましょうか?」 そんな2人の視線の先にいる人形は、美しい桃髪と豊かな胸を持ち魔法学院の制服を纏っていた……。 ――願いを叶えるドール・ショップ 次々と増えるドール達 店に訪れた少女達の 行き先を知る者はいない 甘く誘う魅惑の言葉 頷いたならもう逃げられない もしも私の店に来た時は 「貴女もドールにしてあげましょう」――
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6152.html
前ページ次ページ虚無のパズル 「さっき『トライアングル』がどうとか言ってたけど、どゆこと?」 ふらふらと、疲れた足取りで食堂へ向かうルイズに、アクアが話しかけた。 ルイズがめちゃくちゃにした教室の片付けが終わったのは、昼休みの前だった。 罰として、魔法を使って修理することが禁じられたため、時間がかかってしまったのである。 もっともルイズはほとんど魔法が使えないので、あまり意味はなかったが。 ルイズは文句を言うアクアに教室の片付けを手伝わせた。使い魔として当然のことだからだ。 しかしその小さな体の見た目通り、アクアは非力で、ほとんど役に立たなかったので、結局ルイズがほとんどの後片付けをするはめになった。 「…魔法の系統を足せる数のことよ。それでメイジのレベルが決まるの」 ルイズは憮然とした様子で答えた。 「例えばね、『風』系統の呪文はそれ単体でも使えるけど、『水』系統を足すと、より強力になるの。そんなふうにして、『風』『風』『水』と、三つ足せるのがトライアングルよ」 「同じのふたつ足してどうすんの?」 「その系統がより強力になるわ。ちなみにふたつ足せるのは『ライン』メイジ。もっとも二年生でもラインクラスはあんまりいなくて、ほとんどが一系統だけの『ドット』メイジだけどね。あと、4系統足せるのは、さらに強力な『スクウェア』メイジよ」 「なるほど、そんなふうに魔法使いの技量分けがされてるんだね。ドット、ライン、トライアングル、スクウェア」 指折りながらアクアは復唱する。 「で、ゼロ」 アクアはルイズを指差して、言った。 もしも他の生徒がこの場に居合わせたなら、ビシッ!と、空気が凍る音を聞いたことだろう。 「ゼロのルイズ。いや上手いこと言うもんだね。魔法の系統足せる数ゼロ。成功の可能性ゼロ。あっはっは!」 ぶるぶる震えるルイズに構わず、アクアはけらけら笑う。基本的にアクアはいじめっ子体質なのであった。 「ごめん。ほんとごめん。人の失敗笑うなんて最低だよね」 アクアは笑いを噛み殺しながら、ルイズへのフォローを入れる。 「でもさ、傑作だったんだもん。ファイヤーボール、ボカーン!失敗!失敗であります!自慢のピンクブロンドが黒コゲであります!ぶわっはっは!」 フォローは完全に失敗した。 「こ…」 「こ?」 ふとアクアがルイズの方を振り返る。ルイズの肩は怒りで震えていた。 「こここ…」 「…こここ?」 声も震えていた。やばい、からかいすぎた。アクアはようやくそのことに気付いた。 「こここ、この使い魔ってば。いいい、いい加減にしなさいよね。どどど、どれだけ人のことを馬鹿にしたらきききき、気がすすすすむのかしら」 ルイズは怒りのあまり、言葉を発するのにもひと苦労だった。 「ここ子供だとおもって、わわわたしあんたに優しすぎたわ」 「あー、その。マジでごめ…」 「ダメ!許しません!これからあんたベッドに寝るの禁止!あと当分ご飯抜き!これ決定!絶対!」 メシ抜きの刑は速やかに執行され、アクアは昼食にありつくことができなかった。 「ちぇっ、わかってるよ。ちょっとやりすぎたってさ」 そんなことを呟くアクア。 ルイズのあれは、本気で怒っていた。半分泣きそうになっていた。 今更ながらにアクアに少し罪悪感が芽生える。 そんなわけで、昼からずっと一人のままふらふらしていたのだった。 ぐう。 そろそろ午後の授業も終わる時間である。腹の虫が栄養を要求していた。 実のところ、アクアにとって食事抜きはそれほど深刻ではなかった。メイドのシエスタはアクアを可愛がってくれるので、泣きつけばまかないに簡単にありつけるだろう。 しかしアクアは反省の意味もあって、空きっ腹を抱えたまま学院をさまようことにした。 ぐうぐう。 アクアの足が、ふらりと調理場に向かった。結局のところ、生理的欲求には逆らえないのであった。 「おう嬢ちゃん!よく来たな」 アクアが厨房にやって来ると、四十過ぎの太ったおっさんが歓迎してくれた。 丸々と太った体に、立派なあつらえの服を着込んだ、コック長のマルトー親父である。 平民であるのだが、魔法学院のコック長ともなれば、収入は身分の低い貴族なんかはお呼びも付かなく、羽振りはいい。 「おっちゃん、おんぶー」 「おう、まかせろ!」 がっはっは、と豪快に笑うと、アクアを背負い、そのまま厨房を切り盛りし始める。 マルトーにおぶわれていると、厨房の臭いがアクアの鼻を突く。晩のメニューはシチューのようだ。立ちこめるシチューの匂いに、アクアは空腹を刺激される。 「軽いな、嬢ちゃんは!もっとたくさん食わんと、大きくなれねえぞ!」 マルトー親父は、アクアのことを特に可愛がってくれていた。孫でもできたような感覚なのだろう。 「あらアクアちゃん、どうしたの?」 配膳の準備をしていたシエスタがこちらに気付き、声を掛けてきた。 「や、シエスタ。お腹すいちゃってさ」 そう言うのと同時に、タイミングよくアクアの腹の虫が主張する。 「ご飯、もらえなかったの?」 「ゼロのルイズってからかったら、食堂からつまみ出されちゃった」 「まあ!貴族の方にそんなこと言ったらいけませんよ」 窘めるシエスタに、マルトーは鼻を鳴らす。 「ふん、かまうもんかい。あいつら魔法が使えるからって、いい気になってんのさ。よく言ったぞ、嬢ちゃん。俺ァますますお前が好きになった」 マルトーはアクアの頭をくしゃくしゃと撫でた。 シエスタは少し呆れた目で、2人を見る。 マルトーは、羽振りのいい平民の例に漏れず、魔法学院のコック長のくせに貴族と魔法を毛嫌いしていた。 「ほれ、食いな。こいつは晩に貴族連中に出すもんだが、なに、構うもんか。じゃんじゃん食ってくれ」 暖かいシチューの入った皿に、アクアは飛びついた。 「ありがと、おっちゃん。おいしいよ、これ」 アクアは夢中になってシチューを食べ、マルトーとシエスタはそんなアクアの様子をニコニコと見つめていた。 夕食の時間になっても、ルイズの怒りはおさまっていなかった。おいしいシチューの味も、どこか上滑りしていく。 アクアはあれっきり姿を見せていなかったけど、ふん!知るもんですか! 「なあ、ギーシュ!白状しろ!今は誰と付き合ってるんだよ!」 教室の一角で、男子生徒が騒いでいた。シャツのポケットに薔薇をさした、金の巻き髪の気障な同級生、ギーシュ・ド・グラモンとその友人たちであった。 「付き合う?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 ギーシュは芝居がかった口調で、友人たちに答えた。自分を薔薇に例える、救いようのないキザっぷりだった。 すこぶる機嫌の悪いルイズは、頼むから死んでくれとギーシュに呪いを送りつつ、シチューの残りとの格闘に戻った。 イライラしていたせいで食が進まず、ルイズの食事は遅れていた。早くしないと、そろそろデザートが配膳される時間だ。 そんな折り、ギーシュの席の方から 「おい、ポケットからビンが落ちたよ」 と、なんだか聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「これは僕のじゃない。君は何を言ってるんだね?」 「はあ?あたしはこの目で見たんです。こいつはあんたが落としたんだよ」 ばっ!とギーシュの席の方を向くと、ギーシュとあの小憎らしいアクアが口論をしていた。 アクアは大きなエプロンを身に付け、ギーシュと睨み合っている。そばに立っている黒髪のメイドがケーキを載せた大皿を持ったまま、おろおろしている。 あいつ、何やってんのよ!ルイズは頭を抱えた。 アクアは、シチューのお礼に、給仕の手伝いをすると言い出した。 えらそうなルイズの命令はあまり聞く気が起きなかったが、受けた親切に返すのは当然のことだと思ったからだ。 そんなわけで、シエスタの手伝いとしてケーキの配膳をしていたのだった。 色とりどりのケーキが食卓を飾り付けていく中、アクアはふと、ギーシュのポケットから綺麗な小瓶が落ちるのを見とめた。 まったくの親切心からアクアはそれを教えたのだが、ギーシュは知らないと言いはった。 こうして、話がややこしくなりはじめたのだった。 「おお!その香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」 その瓶の所在に気付いたギーシュの友人たちが、大声で騒ぎはじめた。 「そうだ、その鮮やかな紫色!モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」 「そいつが、ギーシュ、お前のポケットから落ちてきたってことは、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている。そうだな?」 「違う。いいかい、彼女の名誉のためにも言っておくが……」 ギーシュがなにか言いかけたとき、一年生のテーブルに座っていた茶色のマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かってコツコツと歩いてきた。 マントと同じ栗色の髪をした、可愛い少女だった。 「ギーシュさま……」 そして、涙をボロボロとこぼした。 「やはり、ミス・モンモランシーと……」 「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心に澄んでいるのは、君だけ……」 しかし、ケティと呼ばれた少女は思いっきりギーシュの頬をひっぱたいた。 「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証拠ですわ!さようなら!」 ギーシュは頬をさすった。 入れ違いに、見事な巻き毛の女の子、モンモランシーがギーシュにつかつかと歩み寄った。 アクアは彼女に見覚えがあった。召喚の儀式の日、ルイズと口論していた女の子だ。 「モンモランシー、誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールに遠乗りをしただけで……」 ギーシュは冷や汗をかきながら弁明をはじめたが、モンモランシーは聞く耳を持たず、テーブルのティーカップに注がれたお茶を、ギーシュの頭の上からごちそうした。 そして、「うそつき!」と怒鳴って去っていった。 突然の修羅場に、食堂に一時の沈黙が訪れる。 ギーシュはハンカチで顔を拭いながら、芝居がかった仕草で言った。 「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 ぷっふー!と、吹き出す声が、静かな食堂に響き渡った。 ギーシュはカチンと来て、笑いの起こった方をみる。 「シエスタ!今の聞いた?なかなか言えないよね!『薔薇の存在の意味を理解していないようだ』ひゃあ、かゆいかゆい!」 それは、おせっかいにも香水のビンを拾った女の子だった。薔薇の存在を云々の下りは、身振り手振りを加えての熱演であった。話しかけられたメイドは、蒼白な顔をしてオロオロしている。 それをきっかけに、食堂がどっと笑いに包まれた。 ギーシュは笑いを努めて無視して、すさっ!と足を組み、アクアの方に体を向けた。 「小さなお嬢さん。君が軽率に、香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、2人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだい?」 少女の保護者であろうか、黒髪のメイドは目を白黒させながら、「も、申し訳ありません!」と平謝りしていた。 しかしアクアはそんなシエスタのことを気にかけるふうもなく、鼻を鳴らした。 「知らないよ。二股かけてるあんたが悪い」 「その通りだギーシュ!お前が悪い!」 生徒たちからヤジが投げかけられる。 とりつくしまなしと見たギーシュは、標的をメイドのシエスタに向ける。 「君ねえ、平民の教育はどうなっているんだね?子供とはいえ、礼を欠くことは許されることではないんだよ」 「申し訳ありません!申し訳ありません!」 ネチネチとシエスタをいびるギーシュ。シエスタはひたすら頭を下げるばかりだった。 そんなギーシュに、アクアはまたも挑発的な言葉をかける。 「ちょいと、坊や。シエスタを責めたってあんたが二股野郎だってのは変わらないよ」 ああ、アクアちゃん、もうやめて。シエスタは卒倒寸前であった。 「さ、シエスタ。駄目だよこんなケダモノに近付いちゃ。汗の匂いでも嗅いでみなさいな、妊娠しちゃうから。おお、怖い!」 ギーシュの友人たちはもう、笑い過ぎて床を転がり回っていた。 そうしてシエスタを引っ張って厨房に戻ろうとするアクアを、ギーシュが呼び止めた。 「待ちたまえ。どうやら、お嬢さんは貴族に対する礼を知らないようだ」 あくまで格好を付けながらそう語るギーシュ。アクアは舌を出してそれに返した。べろべろバーカ。 いくら小さな子供とはいえ、ここまでの無礼を働かれては、さすがのギーシュも黙っていられなかった。 「君に礼儀を教えてあげよう」 そもそも貴族社会とは、下々のものが貴族を恐れ、敬うことで成り立っている。 貴族への敬いのない子供は、いずれ社会を混乱させることになるだろう。 で、あるからして。子供の時分よりきっちりと『教育』して差し上げる必要があるのである。これ貴族としての義務なのであるからして。 そんなギーシュ理論が成立し、かくして彼は、正義の執行者、秩序の番人としてアクアの前に立つことになったのである。 これに比べれば、二股問題など取るに足らない事柄なのであった。 「付いてきたまえ。平民の血で貴族の食卓は汚せない。『ヴェストリの広場』にて」 アクアはフン、と鼻を鳴らし、ギーシュの後を追う。と、そんなアクアの腕に、腰を抜かしたシエスタがすがりついてきた。 「だ、だ、だめよ。あなた、殺されちゃう……!」 蒼白な顔で、シエスタはなんとか声を絞り出した。 ルイズが後ろから駆け寄ってくる。 「あんた!なにしてんの!見てたわよ!」 ものすごい剣幕でアクアに食ってかかる。さっきまでの怒りは、事件のインパクトのせいでどこかへ行ってしまっていた。 「なに貴族に喧嘩吹っかけてんのよ!ていうかね、あんた、普段の物言いからしてまずいのよ!」 アクアの態度に眉をひそめながら、それでも許してこれたのは、ルイズだからであったと言えるだろう。 プライドの高い貴族の中には、アクアの生意気に本気で怒り出す者も珍しくないに違いない。ちょうど、先ほどのギーシュがそれだった。 アクアの不遜な物言いは、普通にしているだけで貴族全員に喧嘩を売っているようなものだった。 「謝んなさい。ギーシュに謝んなさい。今なら許してくれるかもしれないから」 「あたし、アイツ嫌い」 「嫌いとかそんなこと言ってるんじゃないの。メイジに平民は絶対に勝てないのよ!あんたは怪我するわ。それで済めばいいけど」 ルイズは強い調子で言う。しかしアクアは、飄々とした態度を崩さない。 「大丈夫、あたし強いもん」 「あんたねえ!」 「だいたいね、言わなかったっけ?あたしも魔法使いだって」 はっ、とルイズは思い出す。 アクアは一言目から「大魔導士」と自分を呼んでいた。でも、アクアはこんなに小さいし、とてもそんなふうには見えないので、子供の言うことと真面目に取り合わなかったのだった。 「あたしの魔法、見たいんだろ?ちょうどいいから、見せてやるよ」 そう言ってアクアは不敵に笑う。まさか、本当に? 「それにあたし、アイツ嫌い。キザったらしくて、カッコ付けで」 アクアの口の端が、ぎにい、と凶悪につり上がった。 「だから、みんなの前で、恥かかせてやる」 ああ、この子、Sなんだ。いじめっ子なんだ。 ルイズはなんとなく理解した。 前ページ次ページ虚無のパズル
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5384.html
前ページ次ページ未来の大魔女候補2人 今日も今日とて彼は朝っぱらから全力疾走していた。 理由は言わずもがな、遅刻である。 息を切らせながら朝露に濡れる中庭を掛け抜け、食堂の裏の勝手口を目指す。 彼の名前は平賀サイト、二ヶ月前に雇われた調理場の雑用係である。 二ヶ月前は貧弱な坊やだったが、今では宿舎から調理場まで走ってもあまり息切れしない程度には逞しくなっていた。 乱れた息を落ち着け、手櫛で髪を整える。 そして勝手口を引き開けて、オズオズと謝りながら戸をくぐる。 「やだぁ、失敗失敗。遅刻しちゃった♪ んもぉ、みんな起こしてよねっ」 「ドゥアラ―ッ!」 「ジャビット!?」 調理場に入ると同時、裂帛の気合がサイトを打つ。 そして、積み上げられた木箱を巻き込んでもんどりを打ったところで、サイトは自分が殴り飛ばされた事に気が付いた。 痛む頬を庇いながら顔を上げると、そこには鉄拳の持ち主が仁王立ちでサイトを睥睨していた。 「こっの、クルピラ野郎がっ! 雑用係のくせして、お寝坊さんで遅刻とは良い度胸だな! チャーミングに入って来たって、誤魔化せやしないぜ!?」 語気を荒げて矢継ぎ早に説教を飛ばしてくるその人物は、学院の厨房を預かるマルトーその人である。筋肉を昂ぶらせ、全身に鬼気を纏うその姿は、トロル鬼もかくやという風体であった。 尋常ならざるマルトーの様子にサイトはアタフタとうろたえ、何とか矛を収めてもらうよう必死に訴えかける。 「いや、ちょっと待って下さいよぉ。遅刻の理由も聞かずに即体罰!? これは悲しい事です!」 「遅刻の理由? どうせエロい夢とか見てたんだろ!?」 しかしマルトーは、取りつく島もなくつんけんと答える。 「エロい夢!? とんでもない! 言わせてもらいますけどね、しつこく求婚してくるマルトーさんを、抓ったり棒で突っついたりで散々な夢だったんですよ!?」 サイトは驚愕の声をあげて、今朝見た悪夢を身振り手振りを交えてありのままに語る。 いかにその憶測が、言いがかりに過ぎないと言う事を声高に主張するのだが、サイトに向けられる眼は限りなく冷たい。 マルトーは、汚物を見るかのような眼でサイトを見てからスタッフを見渡し、青筋を浮かべた顔のまま告げる。 「え~、この人かなり頭がアッパッパーなので、新しい雑用係を雇いたいと思います。 誰か意見のある人は手を挙げてからドウゾ」 突然の解雇通告にうろたえ、マルトーに追い縋る。抱きつかれるマルトーは、いかにも鬱陶しそうに顔を顰める。 「えーっ! 俺、アッパッパーじゃないっすよ! だからソレだけは勘弁して下さい! 詳しく説明しますから、誰か紙とペンを!」 無様に追い縋って喚くサイトを見て、誰ともなしに呟きが漏れる。 「……やっぱ、アッパッパーだ」 それは、いつもの朝の風景であった。 ※『サザンがサイト伝』始まりません。 未来の大魔女候補2人 ~Judy Louise~ 第7話『休日前の魔女2人』 「あ゛う~」 神経質そうな教師が教鞭を執る講義室の一角に、少女が机に突っ伏して呻いていた。 少女はペールピンクの髪と、黒いマントで覆われた小柄な体をだらしなく机に預けている。 「何やってんのよヴァリエール、あの先生に見つかったら面倒くさいわよ?」 ルイズの斜め後からキュルケが身を乗り出し、教壇に立つ教師を指差して注意をしてくる。 ルイズは顔を顰め、顔を覗きこんでくるキュルケを横目で一瞥してから、毅然と姿勢を正す。 が、しかし…… 「ううぅ…… か、体が軋む……」 無理に姿勢を正したせいか体の節々が悲鳴を上げ、再びルイズは机に突っ伏す羽目になった。 「なに? 貴女、筋肉痛なの? みっともないわねぇ」 背中を縮こまらせるルイズに、隣に座るモンモランシーが呆れたような声を掛けてくる。 モンモランシーは、口元とソバカスの浮いた頬を僅かに歪ませてせせら笑いを浮かべており、その後頭部では、大きな赤いリボンが揺れている。 ルイズは苛立たしげに2人を睨みつけてから、プイと顔を背けた。 「ふんっ!」 「なによ、その態度!? 失礼しちゃうわ!」 その態度が気に障ったのか、モンモランシーはいきり立ち、憤慨の声をあげる。 だがしかし、ルイズはだんまりを決め込み、モンモランシーの顔を見ようとさえしない。 暫くモンモランシーは文句を言っていたが、やがて諦めたのか忌々しげに一睨みをしてからそっぽを向く。 「はんっ! もういいわよ!」 並んで座る少女が互いにそっぽを向く様を見て、キュルケはニヤニヤと薄笑いを浮かべる。 ルイズは何となく、キュルケがどんな表情をしているか予想は付いていたが、あえて無視した。なぜなら、僅かな動作においても筋肉痛が襲い掛かってくるからである。 日ごろの運動不足が祟ったなどという問題ではない。 それというのも、昨日の教室爆破のペナルティの所為である。 密閉空間で発生した爆発のお陰で、いたる所が大なり小なり破壊された講義室を修復するのは、ルイズ1人ではどだい不可能な話であった。 よって、ルイズに命じられた作業は、破壊された物の撤去及び、備品の補充。そして、室内の清掃であった。 それであっても、半日がかりの重労働である。 講義室とゴミ捨て場を何度も往復し、備品倉庫から重たい机や替えのガラスを運び出す。 全ての作業が終わった頃には陽は暮れなずみ、ルイズは埃と汗に塗れていた。 そして、今日の筋肉痛というわけである。 『ちょっと失敗した程度であの罰はないわ! 大体、片付けなんて、使用人か業者に頼むのが筋じゃないの? 生徒1人に押し付けるなんて、教育システムの重大な欠陥を感じるわ!』 ルイズは心の中で愚痴をこぼす。 延々と繰り返される不満ごとは、張り上げられた声で中断された。 若い男の声がルイズの耳朶を打つ。 「諸君! 『風』の事をよく知っているかね? 『風』を知らずして系統魔法を語ることはしてはならない。 『風』の力は強大だ! 大地でさえ『風』の力によって削られ、その姿を変える。 どんなに巨大な炎でさえ、『風』の前ではロウソクの火に過ぎない! また……」 教壇の上に立ち、講義という名の演説を行っているのは、自称スクウェアメイジの『疾風』のギトーである。 その内容は『風』系統魔法の他系統魔法に対する優位性、とどのつまり『風サイキョー』という事だった。 ルイズはその高慢で不遜極まりない理論に辟易する。 それは教室にいる皆も同じであり、ウンザリとした表情を隠し切れてはいない。何故ならば、講義の度に同じ事を繰り返し聞かされているからだ。 下手に止めようにも教師と生徒では実力の違いは明らかであり、ギトーの『風』の餌食になるだけだ。結局、耐える以外の選択肢はない。 しかし、それでも慣れとは恐ろしいものであり、既にルイズは右から左へと聞き流す事など造作もない境地を会得していた。 不意に背中をつつかれ、ルイズは胡乱気な表情で振り返る。 「ねえねえ、なんでポセイドンが縮んでる訳? 教えなさいよ?」 「あっ、それは私も気になるわ」 ルイズと同じく教師ギトーの『風』TSUEEE談義を無視したキュルケが机の上に乗ったポセイドンを指差して、興味丸出しの表情で訊ねてくる。 さらに、モンモランシーもそれまでの態度を豹変させ、目を大きくして話に割り込んでくる。 いずれ聞かれる事だろうと思っていたので、ルイズは溜息を吐いてから、しょうがないといった体で話し始める。 「仕様です」 「「はぁ?」」 2人は声を揃えて、意味が分からないといった顔を浮かべている。 ルイズは慌てて言い直す。 「えー、そうじゃなくて。そういう特徴というか、えと…… そう! 体の大きさをある程度変えられる幻獣なのよ!」 「そうなの!? それは凄いわね! 流石、東方の幻獣ね!」 「そ、そう……」 モンモランシーは目を輝かせる。 予想外の食い付きの良さにルイズは圧倒され、機械的に相槌を打つ。 不意にポセイドンの隣にいたロビンが、モンモランシーの頭に飛び乗った。 モンモランシーは恍惚とした表情を消し、少し慌てた声でロビンに弁明する。 「や、やだ。違うのよロビン。一番は貴方よ。ええそう……」 なんだか浮気を誤魔化している様だ。その光景を見て、胡乱気にそう考えるルイズの背中が後ろに引き寄せられる。 素早く振り向くと、間近にキュルケの顔があり、周りに聞こえない声量で囁き掛けてくる。 「ねえ、ポセイドンが縮んだのって、ファミリアの特性?」 「……うん」 ルイズは問いの意図が読み取れず、素直に頷く。 すると、キュルケは吐息が掛かる程に顔を近づけ、キツイ瞳でルイズを射抜く。 「だったら、もっと上手く誤魔化しなさいよ。 モンモランシーだったから良かったけど、他の人なら絶対にボロが出てるわよ」 「誤魔化せんだから良いじゃない!」 ルイズも額をぶつけるほどにキュルケに詰め寄り、ヒソヒソ声で噛みつく。 「アンタはそれで良いかもしれないけど、もしばれたら如何なるかしらね? ジュディは好奇の目に晒される破目になるわね」 「それは駄目だわ」 「そうならない様に上手くやりなさいって言ってるのよ。おわかり?」 「……そうよね、私がシッカリしないと」 ルイズは自分に言い聞かせるように繰り返す。 「……やっぱり、仲が良い」 キュルケの隣に座り、一連のやり取りを横目で眺めていたタバサがポツリと呟いた。 ◆◇◆ 太陽が天頂を過ぎた頃、白い雲が浮かぶ空に1つの影があった。 その影は鳥よりも早く飛翔し、縦横無尽に飛び回っている。 春の柔らかな陽射を存分に浴びるその姿は、空と同じ蒼穹の鱗を持つドラゴンである。 巨大な皮膜の翼に鋭い鉤爪。長大な尻尾に尖った牙。そのどれもが恐るべき武器となり得る代物である。 しかし、その瞳に宿るのは理性の輝き。跳ねる様に飛ぶその姿は稚気に溢れ、暴力と破壊の権化とは程遠い存在であった。 「お~肉を喰べましょう~ きゅい、きゅい♪」 その巨体でとんぼ返りを打って、楽しげに歌う。 上空には強風が吹き荒れているが、竜はそれを物ともせず、時に逆らい、時にその身を委ねて奔放に舞い踊る。 「今日も良い天気なのね、きゅい!」 突如、蒼い竜以外は存在しない筈の大空に元気の良い少女の声が響いた。 「明日も明後日もこんな天気が続けばいいのね。 特に明日はお姉さまとお出かけだから、絶対に晴れてほしいのね。きゅいきゅい。 ここなら誰も居ないから喋り放題。きゅい」 驚くべきことに、その声は竜の口から漏れ出でていた。 竜は陽気な声で続ける。 「今日のご飯も美味しかったのね。 お肉が食べたいと思ってたら本当に出て来たのね。あの黒頭、馬鹿そうだけど良い奴なのね。きゅい!」 昼ご飯に食べた肉塊の味を思い出し、舌なめずりをする。 ひとしきり騒いだ後、再びとんぼ返りを打つと、鋭く旋回をして複雑な軌跡を描く。 それはおおよそ、他の飛行生物には真似のできない芸当であった。 ふと、背面飛行をする竜の視界の隅に何かが映る。 「きゅい?」 体を回転させて水平飛行に戻し、遥か下方に目を凝らす。 「きゅい。お仲間なのね」 そこに居たのは赤い竜であった。その赤い竜は、蒼い竜よりも随分と小さく1/5程度しかない。 竜は嬉しそうに一声嘶くと、赤い竜を目指して急降下を始める。 ほんの一瞬で赤い竜の元までたどり着くと、先住言語で呼びかけた。先住言語とは、古代の幻獣が用いていた言語であり、使い魔間の会話は、通常これを以って行われる。 「きゅい。きゅいきゅい? きゅーい、きゅい!」 「?」 しかし、赤い竜は首を傾げるばかりである。 「きゅい! きゅいきゅい、きゅい!」 「??」 なおも懸命に呼び掛けるが、芳しい反応は得られない。 しかし、諦めずに再び話しかけようとした瞬間、赤い竜が口を開いた。 「ごめんなさい。こっちの言葉は分からないの」 「きゅいっ!?」 返ってきたのは、小さな女の子の声であった。 それに青い竜は顎が外れんばかりに驚き、赤い竜を強引にひっ掴む。そして、一気に上昇すると、噛みつかんばかりにがなり立てる。 「ダメなのね! あんな低い所で喋ったら、誰かに聞かれるのね! お仕置きされるのね!」 「どうして?」 必死に説教をするが、赤い竜は分かっていないらしく、不思議そうな瞳で蒼い竜を見詰めるばかりである。 その態度に青い竜は苛立ちを隠せず、さらに捲し立てる。 「どうしたもこうしたもないのね! 普通、竜は喋らないのね!」 「でも、アナタも喋ってるじゃない?」 「上げ足とるんじゃないのね。このチビ助! シルフィは韻竜だから喋って当たり前なのね! きゅい! きゅい!」 「韻竜ってなあに?」 「自分の種族の事も知らないなんて、とんだマヌケなのね! オマエいったい幾つなのね!?」 「んーと、2歳……かな?」 赤い竜は小首を傾げ、自信なさげに答える。 「……シルフィの1/100じゃしょうがないのね。 このシルフィードおねえさまが、オマエに常識を教えてやるのね! 心して聞くがよいのね! きゅいきゅいきゅい!」 「うん、ありがとう」 シルフィードと名乗った蒼い竜は、尊大に胸を逸らして赤い竜に言い放つ。 「まずは、お前の名前を教えるのね。きゅい!」 「この子はイアぺトス。ヨロシクネ」 赤い竜はそう名乗ると、シルフィードの下顎に鼻先を擦りつける。 すると、シルフィードはますます気を良くして大空を翔るのであった。 ◆◇◆ 昼下がりの魔法学園の中庭、火の塔へと続く道をジュディとルイズは歩いていた。 ジュディは昨日の言いつけ通り、コルベールの研究室を目指しているのである。 ならば何故、ルイズが同行しているかというと、それは昼食後の会話に起因する。 当初ルイズは、午後はお茶でもしてのんびりと過ごすつもりであった。 そしてどうせならとジュディを誘ったのだが、用事があるとやんわりと断られてしまったため、道案内をかってでたのであった。 幸い今日はダエグの曜日であり、午後の授業はない。 均等に刈り取られ、青々とした柔らかい芝生を踏みしめながら歩を進める。 中庭には幾人かの生徒が屯しており、使い魔の姿も見える。 穏やかな雑談で溢れる中庭を抜け、火の塔の正面に立つ。 「あそこがミスタ・コルベールの研究室よ」 そう言ってルイズは、塔の日陰になっている建物を指で指し示す。 その建物は、年代を感じさせる汚れが染み付いた、レンガ造り研究室であった。 窓にはすりガラスがはまっており、中を窺う事は出来ない。 「しょっちゅう爆発や異臭騒ぎを起してる学院の名所よ。出来る事なら、余り近づきたくない所ね。本当に行くの?」 「約束したから、ちゃんと行かなくちゃ」 「まあ、それもそうよね……」 ルイズはそれ以上止めることはせず、2人は研究室の入口に立つ。 『コルベールの研究室』と書かれたプレートには、デフォルメされて、気難しい表情を浮かべたヘビのイラストが書かれている。 ジュディは、そのプレートのかかった扉を背伸びをしてノックする。 小気味よいノック音が響くと、部屋の中からドタバタとした足音が聞こえてきた。 扉に設えられている覗き窓のカーテンが僅かにずらされ、誰かの眼がルイズを映す。 「誰ですか?」 「ジュディです。コルベール先生に会いに来ました」 「ん? ああ、昨日の…… ちょっと待っててね」 中の人物はジュディに視線を移す。 ガチャガチャと鍵を外す音が響き、扉が開くと薄暗い室内から少年が現れた。ハルケギニアでは珍しい黒髪黒眼だ。 ルイズは訝しげな顔を浮かべるが、ジュディは少年に嬉しげに話しかける。 「あっ、サイト君だ。何してるの?」 「ん? 昼飯持ってきたら、助手の真似事してくれって先生に頼まれてさ。 まあ、なにするのか知らないけど……」 「助手ぅ? 魔法の実験に平民が役に立つの?」 ルイズは疑わしそうにサイトをジロジロと見る。 締りのない顔は見るからに、少々頭が足りない様に思え、これでは助手など務まる筈がない。と、ルイズは思う。 サイトはチラリとルイズを一瞥してから、わざと聞こえるような声でジュディに耳打ちをする。 「何なのこのツンツンした人。俺はジュディちゃんだけって聞いてたんだけど、関係あるのこの人?」 「関係ない訳ないでしょ! 失礼なやつね!」 ルイズは怒りを露わにするが、サイトはニヤニヤと、薄笑いを浮かべてさらに続ける。 「え~? お貴族様に失礼な態度なんかとるわけないっすよ。特に『ゼロ』のヴァリエール様には、ね?」 「……躾が必要なようね?」 「2人とも喧嘩は駄目だよ。早く中に入ろ?」 「うっ…… しょうがないわね。でも、次に言ったらわかってるわね?」 サイトは薄笑いを堪えて、入口の脇に寄る。 「おっと、そうだった。先生は中にいるよ」 サイトはそう言うやいなや、おもむろに渾身の力で扉を支えるふりをしながら叫ぶ。 「さあ! 俺に扉を支える力が残っている間に早く通り抜けるんだ!」 「おじゃましまーす」 「……アホらし」 2人が中に入ると、サイトは扉を閉めて後をついてくる。 すえた薬品の臭いがする室内を進んで行くと、背を向けて用途の知れない様々な機器を弄るコルベールが居た。 所狭しと資料や実験機器が置かれているその光景は、コルベールの性格を良く反映している。 コルベールは3人に気が付くと、振り向き、ぱっと顔を明るくする。 「おお、来てくれたようだね! 待っていたよ!」 頭頂部と、白い歯を光らせながら、コルベールは両腕を大きく広げ、歓迎の意を表す。 ルイズとジュディは、それぞれ挨拶をしてから、目の前にある機器に注目する。 そこには、円柱型のモノ、球を半分に切った形をしているモノ等が置かれており、その中で一際目立つのは、2段重ねの机のような形状の装置であった。 その装置には、賽の目状の模様の描かれたロール紙が2つセットされており、可動式の針のようなペンが左右に動いて波線を描いている。 その奇妙な装置を見て、ジュディとルイズは用途の程が知れずに首を傾げ、サイトは眼を剥いて驚きを露わにする。 コルベールは3人の反応を見て楽しげに笑う。それは、悪戯が成功した子供のような屈託のない笑顔であった。 「どうだね、どうだね? 素晴らしいと思わないかね? さあ! 早く始めようか!?」 それを遮るように、サイトは片手を軽く挙げてコルベールに質問する。 「あのー 先生? それで俺は何をすればいいんですか? 何にも聞かされてないんスけど?」 「おお! そうだったね。ではまず、実験の概要を説明しようか!」 ソワソワと忙しなく体を揺すりながら、コルベールは説明を始める。 なんとなく3人は、説明が長くなる予感がした。 「そうだね…… 先ずは、私なりに調べた術具の調査結果を伝えねばなるまい。 結果からいえば、なにも分からなかった。 デティクトマジックを駆使して調べてみたのだが、やはり我らの系統魔法とは当て嵌まらない魔法体系の産物だという事が良く分かりました。 こちらのマジックアイテムと比較してみても、感じられる魔力の質というか術理が根本から異なるのです。 それは、つまり……」 「あの、いいですかミスタ・コルベール?」 「? 何だね?」 話の腰を折られたコルベールは、別段気にも止めずにルイズに視線を送る。 「一気にそんな事を言われても、理解が追い付かないんじゃないでしょうか?」 「ふむ……」 コルベールはルイズから視線を外し、ジュディとサイトに向ける。 するとルイズの言うとおり、キョトンとした4つの眼がコルベールを見ている。 「ならば、実験の手順を説明しましょうか。 ジュディさんが術具を使う。それをこれらの装置と、私自身のデティクトマジックを用いて観測する。 以上です。シンプルでしょう?」 「はあ…… その装置で何が出来るんですか?」 ルイズは、一見ガラクタにしか見えない装置を指差して訊ねる。 コルベールは、その質問を待っていたとばかりに目を光らせて、嬉々とした表情で装置の一つを手に取った。 「気になるでしょう! 気にならないわけがないでしょう! ならば、説明せねばなりなせぬな!」 眼に狂気にも似た光を宿すコルベールを見て、ルイズは自らの失言に気が付いた。 しかし、時はすでに遅く、ルイズの鼻先には装置の一つが突き付けられ、コルベールがにじり寄ってくる。底光りするメガネが不気味だ。 「さあ! 手に取って良くご覧なさい! これらの装置は、用途の異なるデティクトマジックを発信するマジックアイテムなのです。 それぞれが、火、水、土、風の魔法を細密に感知し、分析するのです!」 ルイズは突き付けられた装置を手にとって、まじまじと観察する。 その装置は、半球状の入れ物の外側に、色んな物がごてごてと取り付けられた様な形をしている。 なるほど、見てくれは不格好だが、一応はマジックアイテムらしい。 コルベールは満足気に頷いてから、ベルト、手袋、靴、そしてサポーターのような形状をした装置を手にとって、詳しい説明を始める。 「それを頭に被り、左右に付いている紐を顎の下で縛って固定するのです。 あと、これらの装置を身に付けて魔法を使えば、術者の魔力の流れを観測できるという仕組みなのです。 スッゲーでしょ!? 私は自分の才能が恐ろしい! スンゲー!」 コルベールは両手を何度も振り上げて力説するが、サイトとルイズはゲンナリとした顔をして溜息をつく。 しかし、コルベールは気が付きもせず、次に円柱型の装置を指差す。その装置は、同じものが4つある。 「さらに、この装置は囲んだ範囲で魔法が使われたなら、それを感知し、分析するという優れものです! すごいぞー!」 再び腕を振り上げて咆哮を響かせる。 ルイズは、勘弁してほしそうな顔をしているが、コルベールの説明はまだまだ続く。 未だに紙を自動的に送り出し、可動式のペンが波線を描いている2段重ねの机型装置の傍らに立つ。 その装置には、1段毎にペンは4つづつ備えられており、それぞれ色が異なる。 赤、青、黄、緑のインクが充填されたペンが、自動的に送り出されるロール紙に異なる軌跡を描き出している。 「そして、これらの装置で得られた観測結果は、この装置に送られ、この紙に記録されるのです! どうです!? さあ、惜しみない賞賛を浴びせるがよいですぞ! 遠慮せずに、さあさあ!」 コルベールに促され、3人は疎らに拍手をする。 そんな拍手でもコルベールは満足らしく、ふんぞり返って気を良くする。 コルベールはひとしきり高笑いをした後、ごちゃごちゃとした実験机から発掘した水光晶輪をジュディに手渡す。机には先日、ジュディが預けた4つの術具も置かれている。 「この実験中、この水光晶輪と各術具は、ジュディさんにお返ししておきます。 それでは、ここでは狭すぎますから草原に移動しましょうか。 サイト君、それらの装置を持ってついて来て下さい」 「……これを、全部、ですか?」 「そうです」 「俺一人で?」 「そのために助手を頼んだのです」 サイトは目を点にしてコルベールに問いかける。 流石に1人で運ぶのは、物理的に困難な量であるのだが、返ってくるのは非情な答えであった。 サイトは愕然とした面持ちで装置一式を見つめる。 「がんばってね、サイト君」 「ぷっ…… 遅れずについてきなさいよ?」 2人は労いの言葉を掛けるだけで、手伝ってくれそうにはない。ルイズはともかく、ジュディは手伝ってくれるかもといった憶測は、呆気なく裏切られた。 サイトは1つ小さくため息をついてから、円柱型の装置を一本持ち上げる。 「ああ、そうそう。すぐにでも始めたいので、一括で運んでくださいね」 コルベールはそう言い残して、研究室から出て行く。 ルイズとジュディもその後を追いかけて出て行き、研究室にはサイト1人が取り残される事となった。 「俺って不幸……」 ポツリと漏れた呟きが、研究室に虚しく木霊した。 ・ ・ ・ 今回の成長。 ルイズは、鋼の意志がL2に成長しました。 ジュディは、イアぺトスがL2に成長しました。魔道板を読み解き『デテクトアニマル』を習得しました。 第7話 -了- 前ページ次ページ未来の大魔女候補2人
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2006.html
翌日の天気は快晴だった。明けきったばかりの文字通り雲一つ無い蒼穹から、 暖かな陽光が降り注いでいる。絶好の探検日和、と言えるかもしれない。 まだ授業も始まらない早朝、ギーシュは自室で向こう数日分の大荷物をパンパンに 詰めた鞄を手に唸っていた。 「ぬぬっ・・・どうにも重い・・・今までレビテーションに頼りすぎてたな」 手に持った瞬間から苦しげな顔を見せながら、それでも魔法を使わないことには 無論訳があった。今回の小旅行――と言ってしまってもいいだろう――の目的は、 まず第一に探検であるわけで・・・つまりは人跡未踏の森林や遺跡の奥深くに まで足を踏み入れる可能性がある。となれば、そこを根城にしているであろう オーク鬼やゴブリンといった好戦的な化物に襲われることも覚悟しなければ ならない。よって、ここは出来る限り無駄な魔法の行使は控えるべきである ――ということがその理由であった。 両手で鞄を吊り上げて、ギーシュはよたよたと正門へ向かう。寮を出た所で、 「ギーシュ!」 待っていたようにそこに立つモンモランシーと出会った。 「モンモランシー!どうしたんだね、今朝はやけに早いじゃないか」 「ま、まあね・・・」 問い掛けるギーシュに、モンモランシーは何故か眼を逸らしながら答える。 「・・・ねえ、明日は虚無の曜日でしょ」 「確かそうだね それがどうしたんだい?」 「・・・・・・こ、香水の材料が切れたのよ それで、明日城下に買い物に――」 「おっと、すまない僕のモンモランシー そろそろ待ち合わせの時間だ」 「え?」 「ちょっと数日ほど旅行に行ってくるよ 君と会えないことを思うと胸が 張り裂けそうだが、どうか泣かないでおくれモンモランシー きっとこれは 始祖の与え賜うた試練なのさ」 「な、ちょっと・・・」 「名残惜しいがしばしのお別れだ 僕の無事を祈っていておくれ それではね」 「待っ――・・・!」 相変わらず人の話も聞かず、ギーシュは薔薇をかざしながらそれだけ言うと 荷物を抱き上げてそそくさと走り去ってしまった。一人この場に残されて、 モンモランシーは豊かな金糸を震わせながら呟いた。 「何よ、バカにして・・・!」 大荷物の人間を6人も乗せては、いかに風竜と言えど長時間の飛行は出来ない。 ましてシルフィードはまだ幼生である。必然、近場から順々に潰して行くことに なった。 一行が最初に向かったのは、打ち捨てられた寺院だった。もはや村であったこと すら判らない程に荒廃した廃墟にあって尚形を失わないそれも、しかしかつての 荘厳さはとうに消え失せ、今はただ物悲しい静寂だけが満ちている。 永久に続くかとすら思われたそのしじまを、突如響いた爆裂音が消し去った。 ルイズの爆破に、この村を廃墟に変えた魔物――オーク鬼の群れが寺院の中から 眼を血走らせて飛び出した。 「んだァ?豚の化物かありゃあ」 長らく手入れされず伸び放題に成長した大木の枝に悠然と腰掛けて、ギアッチョは 興味深そうに眼下を眺める。その横で、化物が怖いかはたまた落下が怖いのか、 シエスタがひしと幹に抱きつきながら応じた。 「オ、オーク鬼です 獰猛で人間の子供を好んで食べる・・・私達の天敵みたいな 存在ですね」 プリニウスやプランシーがこの場面に遭遇すればさぞかし眼を輝かせることだろう。 巨大な棍棒を手にし、申し訳程度に毛皮を纏い二本足で立つニメイルを越す豚の 魔物。妖異と非現実の極致。彼らで無くとも、ギアッチョの世界の人間ならば 誰もが眼を釘付けにされるであろう光景だ。 最初に出て来た数匹が、ギョロギョロと辺りを見回す。十数メイルの正面に一人の 人間を確認するや否や、 「ぶぎィいいぃいいィィイいいぃィッ!!」 耳障りな鳴き声を上げて突進した。その背後を、次から次へと現れる仲間達が 土煙を舞い上げながら追い駆ける。だが彼らのターゲットであるところの少女は、 逃げも隠れもせずにただ一人その場に棒立ちしていた。 そう、ルイズは囮であった。寺院の中に恐らく十数匹単位で潜んでいるであろう オーク鬼達をギリギリまで引きつけて、両脇の茂みに隠れるキュルケ達が 一網打尽にする。それが彼女達の作戦であった――のだが。 「ワ、ワルキューレ!突撃だ!!」 実物の食人鬼に恐怖したか、ギーシュがはやった。先頭のオーク鬼目掛けて 七体のワルキューレが一気に攻撃を仕掛ける。七本の長槍がオーク鬼の腹を 突き刺したが、厚い脂肪に阻まれて致命傷には至らなかった。 「ぴぎぃいぃぃいいッ!!」 「あっ!?」 狂乱したオーク鬼が棍棒を滅茶苦茶に振り回し、七体の騎士はあっと言う間に 粉砕されてしまった。そのまま槍を拾いワルキューレが出てきた方向へ突進 しようとするオーク鬼を、空を切って飛来した炎が焼き尽くす。一瞬遅れて 出現した氷の矢が、崩れ落ちた魔物の背後に控える数匹の身体を貫いた。 「・・・で?どーするのよ」 茂みから姿を現して、キュルケが投げやりな口調で言う。先の攻撃に警戒を 強めたオーク鬼達は、再び寺院の中へと隠れてしまっていた。 「と、突撃あるのみだよ!」 「バカ、メイジだけで敵陣のど真ん中に突っ込めばどうなるか解るでしょ!」 「うっ・・・」 本来護衛とするべきワルキューレを使い果たしてしまったギーシュは、ルイズの 指弾に反論出来ずに呻いた。 「寺院ごと燃やすわけにはいかないし・・・このまま篭られちゃあ打つ手が 無いわよ」 小さく溜息をついて、キュルケが意見を求めるようにタバサを見た瞬間、 「・・・来る」 いつもの無表情にほんの僅か警戒を滲ませて、青髪の少女は静かに杖を構えた。 その刹那――鋭い破砕音を上げて、寺院の三方に設えられた窓が同時に破られた。 「なッ!?」 扉を含む四箇所から、潜んでいたオーク鬼達が一斉に外へ飛び出す。集まっていた ルイズ達を、先程の七倍はいようかという魔物の群れが見る間に包囲して しまった。 「し、しまった・・・!」 「・・・形勢逆転」 「飛ぶわよッ!!」 一瞬の機転で、キュルケはルイズを抱き寄せて叫ぶ。同時に唱えたフライで、 必殺の間合いに入る寸前に彼女達は間一髪上空へ脱出した。 そのまま十数メイルの距離を開けて着地するルイズ達目掛けて、オーク鬼の 群れが猛然と走り出す。 「ルイズ、足止めをお願い」 タバサは顔をオーク鬼の集団に向けたままそれだけ言うと、間髪入れずに詠唱を 開始した。 「分かったわ」 自分を信用し切ったその行動に、ルイズは逡巡無く答える。小さな杖を突き 出して、次々と爆発を放った。 「ぶぎぃいいッ!!」 眼前で前触れ無く起こる爆発に、オーク鬼の足が鈍る。致命傷を与える程の 威力は無いが、足止めには十二分に効果を発揮した。 最短のコモン・マジックで、壁を作るようにルイズは休むことなく弾幕を張る。 クラスメイト達心無い者が見ればそれは失笑を誘うような光景だろう。しかし、 ――・・・それが何だって言うのよ 今のルイズに恥ずかしさや後ろめたさは微塵も無かった。たとえ失敗であろうと、 自分の魔法が仲間の役に立っているのだ。化物の大群を前にしても、その事実 だけでルイズの心には無限に勇気が湧いて来る。 やがて、ルイズの横で二つの魔法が完成する。オーク鬼の群れ目掛けて、 タバサのウィンディ・アイシクルが空を裂く音と共に驟雨の如く降り注いだ。 無数の氷柱に貫かれ、数匹のオーク鬼は声も上げずに絶命する。怯んだ魔物達に 畳み掛けるように炎の渦が押し寄せ、更に数匹を焼き払った。 「あっ・・・お三方とも凄いです」 老木の枝からおっかなびっくり身体を乗り出して言うシエスタに、ギアッチョは 仏頂面を変えずに応じる。 「いや」 「えっ?」 「いいセンいっちゃあいるが・・・間に合わねえな」 よく解らないながらも、シエスタはギアッチョに向けた顔を荒れ果てた庭に戻す。 その僅かな時間の内に、そこは様相を変じていた。 「――――っ!!」 ルイズ達は思わず耳を塞ぐ。残る十匹余りのオーク鬼の怒りの咆哮が、彼女達の 鼓膜を破らんばかりに廃墟中に響き渡った。 仲間を倒されたオーク鬼達の怒りは、今やルイズの爆破への怯えを完全に 上回っていた。手にした木塊を振り回しながら、聞くに堪えない叫び声と共に 怒涛の勢いで突進する。もはや一匹たりともルイズの爆破に気を留める者は いなかった。 「くっ・・・」 倍近く速度を増して迫り来る魔物の群れに、キュルケは僅か眉根を寄せる。 見誤っていた。敵が予想外に強靭で想定の七割程度しかダメージを 与えられなかったこともあるが、それにも増して埒外だったのは―― オーク鬼達のこの速度だ。逃走しながら呪文を唱えてはいるが、この距離と 速度では魔法は撃てて後一度――しかしその一度で殲滅出来る可能性は相当に 低い。だが、かと言ってレビテーションで逃げることは出来ない。「風」の フライと違い、コモンであるレビテーションは物を浮かせるというだけの単純な 魔法である。フライのような瞬間的な加速の出来ない性質上、高く浮かぶには 時間がかかる。今から方針を変えていては間に合うものではない。そして フライによる脱出もまた、系統魔法であることとキュルケとタバサしか使用 出来ない現状では難しいと言わざるを得ない――結局の所、望みに賭けて このまま攻撃することが最善の、そして唯一の手段であった。 「・・・イス・イーサ・・・」 タバサも同じ結論のようだった。小さな口から迷わず紡がれる呪句で、彼女の 無骨な杖に再び冷気が集まり始め、 「・・・ウィンデ」 冷たく小さな声が止むと同時に、無数の氷の弾丸が一斉にオーク鬼へと撃ち 出された。それを確認してから、キュルケは小さく杖を振る。氷柱の軌跡を 追いかけて、業火の螺旋が続けざまに忌むべき魔物の群れを襲った。 氷と炎が爆ぜて巻き起こる黒煙と砂埃が、オーク鬼達をその断末魔ごと覆い 隠す。しかし、油断無く後退を続けるルイズ達が僅かな期待の視線を煙幕に 向けるよりも早く――オーク鬼の残党が四匹、憤怒の咆哮を撒き散らしながら 姿を現した。 生き残った四匹の人喰い鬼達は、更に速度を増してルイズ達に襲い掛かる。 「く、くそっ!」 なけなしの魔力で作り出した青銅の槍を構えて、ルイズ達の前にギーシュが 飛び出した。しかし、その力の差は誰が見ても歴然である。血走った眼を ギーシュに向けると、オーク鬼はまるで路傍の石を排除するが如き気安さで 棍棒を振りかぶった。 「ミ、ミスタ・グラモンが・・・ギアッチョさん!!」 シエスタは悲痛な声でギアッチョを振り向く。だが数秒前まで彼が座って いた場所から、ギアッチョの姿はいつの間にか消えていた。 三匹のオーク鬼達は、一体今何が起きたのか理解出来なかった。自分達と先頭の 仲間との間に、「何か」が落ちた――次の瞬間、仲間の首は見事に胴体と泣き 別れていたのだ。必死に情報を整理しようとする自分達を嘲笑うかのように、 仲間の首を刎ねた「何か」はゆっくりとこちらに向き直る。その正体が人間で あると気付いた時には、更に二つの首が宙を舞っていた。 「ぶぎィィイイイイッ!!!」 最後の一匹になった化物が、あらん限りの咆哮で大気を震わせる。男が一瞬 眉をしかめた隙を逃さずその脳天に人の胴体程もある棍棒を振り下ろしたが、 男は身体を半身にずらして難無くそれを回避した。同時に剣を握った左手では 無く何も持たない右手を突き出すと、静かにオーク鬼の胸に押し当てる。理解の 出来ない行動にオーク鬼は思わず動きを止めたが、すぐに棍棒を持つ腕に再び 力を込めた。理解は出来ないが、殺すことに問題は無い。 「・・・・・・?」 オーク鬼は漸く気がついた。拳に力を込め、手首に力を込め、腕に力を込め。 男の頭を粉砕するべく腕を振り上げる――常ならば意識することすらしない、 単純な動作。ただそれだけのことが、どう意識しても「出来ない」。まるで 彫像にでもなったかのように、己の腕はピクリとも動こうとしないのだ。 …いや。腕だけでは無かった。気付けば腰も、足も、そして首も―― 五体全てが、凍ったようにその動きを止めていた。 「・・・・・・!!」 凍ったように? 否。 オーク鬼の身体は文字通りの意味で、いつの間にか完膚無きまでに凍結 されていた。そしてそれに気付いた瞬間。原因や因果を考える暇も無く、 オーク鬼の身体は粉々に砕け散った。 「あ、ありがとう・・・助かったわ」 血糊を拭いた木の葉を投げ捨てて、ギアッチョは少しばつが悪そうにして いるルイズ達に向き直った。 「そんな顔すんな おめーらに落ち度はねぇよ 悪ィのは・・・」 つかつかと歩み寄ると、ギーシュの金髪に容赦無く拳を振り下ろす。 「あだぁあっ!!」 「こいつだ」 「このマンモーニがッ!おめー一人のミスでよォォォ~~~~、全員殺られる とこだったじゃあねーか!ええ?」 「うう・・・すいません・・・」 地面に正座するギーシュの頭上から、ギアッチョの叱責が降り注ぐ。長らく 使われなかったマンモーニという呼称がショックだったのか、ギーシュは肩を がっくりと落とすが、ギアッチョは一切容赦をしない。 「フーケとアルビオンの時ゃあちったぁ見所があるかと思ったが・・・ おめーは追い込まれねーとマトモに戦えねーのか?ああ?」 「い、いや・・・それは」 「それは何だ」 「そ、」 「うるせえ!」 「酷ッ!」 ギアッチョは両手でギーシュの頭をぎりぎりと掴んで立ち上がらせる。 「あだだだだだ!」 「よォーーく解った・・・おめーには度胸と根性が足りねえ!」 「そ、それは追々身に着けていこうかと・・・」 「やかましいッ!帰ったら一から叩き直してやっから覚悟しとけッ!!」 「えええええ!?」 ギーシュが物理的に地獄に落ちることが決定した瞬間だった。 へなへなと地面にくずおれるギーシュに眼を向けて、三人の少女は同時に 溜息をつく。 「ま、これでちょっとは成長するかしらね」 「因果応報」 「・・・あれ?ところで何か忘れてない?」 「ギアッチョさーん・・・」 古木の幹にしがみつきながら、シエスタはか細く悲鳴を上げる。 「み、皆さーん・・・下ろしてくださいぃー・・・」 彼女が救出されたのは、それから十分後のことであった。