約 2,051,490 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5384.html
前ページ次ページ未来の大魔女候補2人 今日も今日とて彼は朝っぱらから全力疾走していた。 理由は言わずもがな、遅刻である。 息を切らせながら朝露に濡れる中庭を掛け抜け、食堂の裏の勝手口を目指す。 彼の名前は平賀サイト、二ヶ月前に雇われた調理場の雑用係である。 二ヶ月前は貧弱な坊やだったが、今では宿舎から調理場まで走ってもあまり息切れしない程度には逞しくなっていた。 乱れた息を落ち着け、手櫛で髪を整える。 そして勝手口を引き開けて、オズオズと謝りながら戸をくぐる。 「やだぁ、失敗失敗。遅刻しちゃった♪ んもぉ、みんな起こしてよねっ」 「ドゥアラ―ッ!」 「ジャビット!?」 調理場に入ると同時、裂帛の気合がサイトを打つ。 そして、積み上げられた木箱を巻き込んでもんどりを打ったところで、サイトは自分が殴り飛ばされた事に気が付いた。 痛む頬を庇いながら顔を上げると、そこには鉄拳の持ち主が仁王立ちでサイトを睥睨していた。 「こっの、クルピラ野郎がっ! 雑用係のくせして、お寝坊さんで遅刻とは良い度胸だな! チャーミングに入って来たって、誤魔化せやしないぜ!?」 語気を荒げて矢継ぎ早に説教を飛ばしてくるその人物は、学院の厨房を預かるマルトーその人である。筋肉を昂ぶらせ、全身に鬼気を纏うその姿は、トロル鬼もかくやという風体であった。 尋常ならざるマルトーの様子にサイトはアタフタとうろたえ、何とか矛を収めてもらうよう必死に訴えかける。 「いや、ちょっと待って下さいよぉ。遅刻の理由も聞かずに即体罰!? これは悲しい事です!」 「遅刻の理由? どうせエロい夢とか見てたんだろ!?」 しかしマルトーは、取りつく島もなくつんけんと答える。 「エロい夢!? とんでもない! 言わせてもらいますけどね、しつこく求婚してくるマルトーさんを、抓ったり棒で突っついたりで散々な夢だったんですよ!?」 サイトは驚愕の声をあげて、今朝見た悪夢を身振り手振りを交えてありのままに語る。 いかにその憶測が、言いがかりに過ぎないと言う事を声高に主張するのだが、サイトに向けられる眼は限りなく冷たい。 マルトーは、汚物を見るかのような眼でサイトを見てからスタッフを見渡し、青筋を浮かべた顔のまま告げる。 「え~、この人かなり頭がアッパッパーなので、新しい雑用係を雇いたいと思います。 誰か意見のある人は手を挙げてからドウゾ」 突然の解雇通告にうろたえ、マルトーに追い縋る。抱きつかれるマルトーは、いかにも鬱陶しそうに顔を顰める。 「えーっ! 俺、アッパッパーじゃないっすよ! だからソレだけは勘弁して下さい! 詳しく説明しますから、誰か紙とペンを!」 無様に追い縋って喚くサイトを見て、誰ともなしに呟きが漏れる。 「……やっぱ、アッパッパーだ」 それは、いつもの朝の風景であった。 ※『サザンがサイト伝』始まりません。 未来の大魔女候補2人 ~Judy Louise~ 第7話『休日前の魔女2人』 「あ゛う~」 神経質そうな教師が教鞭を執る講義室の一角に、少女が机に突っ伏して呻いていた。 少女はペールピンクの髪と、黒いマントで覆われた小柄な体をだらしなく机に預けている。 「何やってんのよヴァリエール、あの先生に見つかったら面倒くさいわよ?」 ルイズの斜め後からキュルケが身を乗り出し、教壇に立つ教師を指差して注意をしてくる。 ルイズは顔を顰め、顔を覗きこんでくるキュルケを横目で一瞥してから、毅然と姿勢を正す。 が、しかし…… 「ううぅ…… か、体が軋む……」 無理に姿勢を正したせいか体の節々が悲鳴を上げ、再びルイズは机に突っ伏す羽目になった。 「なに? 貴女、筋肉痛なの? みっともないわねぇ」 背中を縮こまらせるルイズに、隣に座るモンモランシーが呆れたような声を掛けてくる。 モンモランシーは、口元とソバカスの浮いた頬を僅かに歪ませてせせら笑いを浮かべており、その後頭部では、大きな赤いリボンが揺れている。 ルイズは苛立たしげに2人を睨みつけてから、プイと顔を背けた。 「ふんっ!」 「なによ、その態度!? 失礼しちゃうわ!」 その態度が気に障ったのか、モンモランシーはいきり立ち、憤慨の声をあげる。 だがしかし、ルイズはだんまりを決め込み、モンモランシーの顔を見ようとさえしない。 暫くモンモランシーは文句を言っていたが、やがて諦めたのか忌々しげに一睨みをしてからそっぽを向く。 「はんっ! もういいわよ!」 並んで座る少女が互いにそっぽを向く様を見て、キュルケはニヤニヤと薄笑いを浮かべる。 ルイズは何となく、キュルケがどんな表情をしているか予想は付いていたが、あえて無視した。なぜなら、僅かな動作においても筋肉痛が襲い掛かってくるからである。 日ごろの運動不足が祟ったなどという問題ではない。 それというのも、昨日の教室爆破のペナルティの所為である。 密閉空間で発生した爆発のお陰で、いたる所が大なり小なり破壊された講義室を修復するのは、ルイズ1人ではどだい不可能な話であった。 よって、ルイズに命じられた作業は、破壊された物の撤去及び、備品の補充。そして、室内の清掃であった。 それであっても、半日がかりの重労働である。 講義室とゴミ捨て場を何度も往復し、備品倉庫から重たい机や替えのガラスを運び出す。 全ての作業が終わった頃には陽は暮れなずみ、ルイズは埃と汗に塗れていた。 そして、今日の筋肉痛というわけである。 『ちょっと失敗した程度であの罰はないわ! 大体、片付けなんて、使用人か業者に頼むのが筋じゃないの? 生徒1人に押し付けるなんて、教育システムの重大な欠陥を感じるわ!』 ルイズは心の中で愚痴をこぼす。 延々と繰り返される不満ごとは、張り上げられた声で中断された。 若い男の声がルイズの耳朶を打つ。 「諸君! 『風』の事をよく知っているかね? 『風』を知らずして系統魔法を語ることはしてはならない。 『風』の力は強大だ! 大地でさえ『風』の力によって削られ、その姿を変える。 どんなに巨大な炎でさえ、『風』の前ではロウソクの火に過ぎない! また……」 教壇の上に立ち、講義という名の演説を行っているのは、自称スクウェアメイジの『疾風』のギトーである。 その内容は『風』系統魔法の他系統魔法に対する優位性、とどのつまり『風サイキョー』という事だった。 ルイズはその高慢で不遜極まりない理論に辟易する。 それは教室にいる皆も同じであり、ウンザリとした表情を隠し切れてはいない。何故ならば、講義の度に同じ事を繰り返し聞かされているからだ。 下手に止めようにも教師と生徒では実力の違いは明らかであり、ギトーの『風』の餌食になるだけだ。結局、耐える以外の選択肢はない。 しかし、それでも慣れとは恐ろしいものであり、既にルイズは右から左へと聞き流す事など造作もない境地を会得していた。 不意に背中をつつかれ、ルイズは胡乱気な表情で振り返る。 「ねえねえ、なんでポセイドンが縮んでる訳? 教えなさいよ?」 「あっ、それは私も気になるわ」 ルイズと同じく教師ギトーの『風』TSUEEE談義を無視したキュルケが机の上に乗ったポセイドンを指差して、興味丸出しの表情で訊ねてくる。 さらに、モンモランシーもそれまでの態度を豹変させ、目を大きくして話に割り込んでくる。 いずれ聞かれる事だろうと思っていたので、ルイズは溜息を吐いてから、しょうがないといった体で話し始める。 「仕様です」 「「はぁ?」」 2人は声を揃えて、意味が分からないといった顔を浮かべている。 ルイズは慌てて言い直す。 「えー、そうじゃなくて。そういう特徴というか、えと…… そう! 体の大きさをある程度変えられる幻獣なのよ!」 「そうなの!? それは凄いわね! 流石、東方の幻獣ね!」 「そ、そう……」 モンモランシーは目を輝かせる。 予想外の食い付きの良さにルイズは圧倒され、機械的に相槌を打つ。 不意にポセイドンの隣にいたロビンが、モンモランシーの頭に飛び乗った。 モンモランシーは恍惚とした表情を消し、少し慌てた声でロビンに弁明する。 「や、やだ。違うのよロビン。一番は貴方よ。ええそう……」 なんだか浮気を誤魔化している様だ。その光景を見て、胡乱気にそう考えるルイズの背中が後ろに引き寄せられる。 素早く振り向くと、間近にキュルケの顔があり、周りに聞こえない声量で囁き掛けてくる。 「ねえ、ポセイドンが縮んだのって、ファミリアの特性?」 「……うん」 ルイズは問いの意図が読み取れず、素直に頷く。 すると、キュルケは吐息が掛かる程に顔を近づけ、キツイ瞳でルイズを射抜く。 「だったら、もっと上手く誤魔化しなさいよ。 モンモランシーだったから良かったけど、他の人なら絶対にボロが出てるわよ」 「誤魔化せんだから良いじゃない!」 ルイズも額をぶつけるほどにキュルケに詰め寄り、ヒソヒソ声で噛みつく。 「アンタはそれで良いかもしれないけど、もしばれたら如何なるかしらね? ジュディは好奇の目に晒される破目になるわね」 「それは駄目だわ」 「そうならない様に上手くやりなさいって言ってるのよ。おわかり?」 「……そうよね、私がシッカリしないと」 ルイズは自分に言い聞かせるように繰り返す。 「……やっぱり、仲が良い」 キュルケの隣に座り、一連のやり取りを横目で眺めていたタバサがポツリと呟いた。 ◆◇◆ 太陽が天頂を過ぎた頃、白い雲が浮かぶ空に1つの影があった。 その影は鳥よりも早く飛翔し、縦横無尽に飛び回っている。 春の柔らかな陽射を存分に浴びるその姿は、空と同じ蒼穹の鱗を持つドラゴンである。 巨大な皮膜の翼に鋭い鉤爪。長大な尻尾に尖った牙。そのどれもが恐るべき武器となり得る代物である。 しかし、その瞳に宿るのは理性の輝き。跳ねる様に飛ぶその姿は稚気に溢れ、暴力と破壊の権化とは程遠い存在であった。 「お~肉を喰べましょう~ きゅい、きゅい♪」 その巨体でとんぼ返りを打って、楽しげに歌う。 上空には強風が吹き荒れているが、竜はそれを物ともせず、時に逆らい、時にその身を委ねて奔放に舞い踊る。 「今日も良い天気なのね、きゅい!」 突如、蒼い竜以外は存在しない筈の大空に元気の良い少女の声が響いた。 「明日も明後日もこんな天気が続けばいいのね。 特に明日はお姉さまとお出かけだから、絶対に晴れてほしいのね。きゅいきゅい。 ここなら誰も居ないから喋り放題。きゅい」 驚くべきことに、その声は竜の口から漏れ出でていた。 竜は陽気な声で続ける。 「今日のご飯も美味しかったのね。 お肉が食べたいと思ってたら本当に出て来たのね。あの黒頭、馬鹿そうだけど良い奴なのね。きゅい!」 昼ご飯に食べた肉塊の味を思い出し、舌なめずりをする。 ひとしきり騒いだ後、再びとんぼ返りを打つと、鋭く旋回をして複雑な軌跡を描く。 それはおおよそ、他の飛行生物には真似のできない芸当であった。 ふと、背面飛行をする竜の視界の隅に何かが映る。 「きゅい?」 体を回転させて水平飛行に戻し、遥か下方に目を凝らす。 「きゅい。お仲間なのね」 そこに居たのは赤い竜であった。その赤い竜は、蒼い竜よりも随分と小さく1/5程度しかない。 竜は嬉しそうに一声嘶くと、赤い竜を目指して急降下を始める。 ほんの一瞬で赤い竜の元までたどり着くと、先住言語で呼びかけた。先住言語とは、古代の幻獣が用いていた言語であり、使い魔間の会話は、通常これを以って行われる。 「きゅい。きゅいきゅい? きゅーい、きゅい!」 「?」 しかし、赤い竜は首を傾げるばかりである。 「きゅい! きゅいきゅい、きゅい!」 「??」 なおも懸命に呼び掛けるが、芳しい反応は得られない。 しかし、諦めずに再び話しかけようとした瞬間、赤い竜が口を開いた。 「ごめんなさい。こっちの言葉は分からないの」 「きゅいっ!?」 返ってきたのは、小さな女の子の声であった。 それに青い竜は顎が外れんばかりに驚き、赤い竜を強引にひっ掴む。そして、一気に上昇すると、噛みつかんばかりにがなり立てる。 「ダメなのね! あんな低い所で喋ったら、誰かに聞かれるのね! お仕置きされるのね!」 「どうして?」 必死に説教をするが、赤い竜は分かっていないらしく、不思議そうな瞳で蒼い竜を見詰めるばかりである。 その態度に青い竜は苛立ちを隠せず、さらに捲し立てる。 「どうしたもこうしたもないのね! 普通、竜は喋らないのね!」 「でも、アナタも喋ってるじゃない?」 「上げ足とるんじゃないのね。このチビ助! シルフィは韻竜だから喋って当たり前なのね! きゅい! きゅい!」 「韻竜ってなあに?」 「自分の種族の事も知らないなんて、とんだマヌケなのね! オマエいったい幾つなのね!?」 「んーと、2歳……かな?」 赤い竜は小首を傾げ、自信なさげに答える。 「……シルフィの1/100じゃしょうがないのね。 このシルフィードおねえさまが、オマエに常識を教えてやるのね! 心して聞くがよいのね! きゅいきゅいきゅい!」 「うん、ありがとう」 シルフィードと名乗った蒼い竜は、尊大に胸を逸らして赤い竜に言い放つ。 「まずは、お前の名前を教えるのね。きゅい!」 「この子はイアぺトス。ヨロシクネ」 赤い竜はそう名乗ると、シルフィードの下顎に鼻先を擦りつける。 すると、シルフィードはますます気を良くして大空を翔るのであった。 ◆◇◆ 昼下がりの魔法学園の中庭、火の塔へと続く道をジュディとルイズは歩いていた。 ジュディは昨日の言いつけ通り、コルベールの研究室を目指しているのである。 ならば何故、ルイズが同行しているかというと、それは昼食後の会話に起因する。 当初ルイズは、午後はお茶でもしてのんびりと過ごすつもりであった。 そしてどうせならとジュディを誘ったのだが、用事があるとやんわりと断られてしまったため、道案内をかってでたのであった。 幸い今日はダエグの曜日であり、午後の授業はない。 均等に刈り取られ、青々とした柔らかい芝生を踏みしめながら歩を進める。 中庭には幾人かの生徒が屯しており、使い魔の姿も見える。 穏やかな雑談で溢れる中庭を抜け、火の塔の正面に立つ。 「あそこがミスタ・コルベールの研究室よ」 そう言ってルイズは、塔の日陰になっている建物を指で指し示す。 その建物は、年代を感じさせる汚れが染み付いた、レンガ造り研究室であった。 窓にはすりガラスがはまっており、中を窺う事は出来ない。 「しょっちゅう爆発や異臭騒ぎを起してる学院の名所よ。出来る事なら、余り近づきたくない所ね。本当に行くの?」 「約束したから、ちゃんと行かなくちゃ」 「まあ、それもそうよね……」 ルイズはそれ以上止めることはせず、2人は研究室の入口に立つ。 『コルベールの研究室』と書かれたプレートには、デフォルメされて、気難しい表情を浮かべたヘビのイラストが書かれている。 ジュディは、そのプレートのかかった扉を背伸びをしてノックする。 小気味よいノック音が響くと、部屋の中からドタバタとした足音が聞こえてきた。 扉に設えられている覗き窓のカーテンが僅かにずらされ、誰かの眼がルイズを映す。 「誰ですか?」 「ジュディです。コルベール先生に会いに来ました」 「ん? ああ、昨日の…… ちょっと待っててね」 中の人物はジュディに視線を移す。 ガチャガチャと鍵を外す音が響き、扉が開くと薄暗い室内から少年が現れた。ハルケギニアでは珍しい黒髪黒眼だ。 ルイズは訝しげな顔を浮かべるが、ジュディは少年に嬉しげに話しかける。 「あっ、サイト君だ。何してるの?」 「ん? 昼飯持ってきたら、助手の真似事してくれって先生に頼まれてさ。 まあ、なにするのか知らないけど……」 「助手ぅ? 魔法の実験に平民が役に立つの?」 ルイズは疑わしそうにサイトをジロジロと見る。 締りのない顔は見るからに、少々頭が足りない様に思え、これでは助手など務まる筈がない。と、ルイズは思う。 サイトはチラリとルイズを一瞥してから、わざと聞こえるような声でジュディに耳打ちをする。 「何なのこのツンツンした人。俺はジュディちゃんだけって聞いてたんだけど、関係あるのこの人?」 「関係ない訳ないでしょ! 失礼なやつね!」 ルイズは怒りを露わにするが、サイトはニヤニヤと、薄笑いを浮かべてさらに続ける。 「え~? お貴族様に失礼な態度なんかとるわけないっすよ。特に『ゼロ』のヴァリエール様には、ね?」 「……躾が必要なようね?」 「2人とも喧嘩は駄目だよ。早く中に入ろ?」 「うっ…… しょうがないわね。でも、次に言ったらわかってるわね?」 サイトは薄笑いを堪えて、入口の脇に寄る。 「おっと、そうだった。先生は中にいるよ」 サイトはそう言うやいなや、おもむろに渾身の力で扉を支えるふりをしながら叫ぶ。 「さあ! 俺に扉を支える力が残っている間に早く通り抜けるんだ!」 「おじゃましまーす」 「……アホらし」 2人が中に入ると、サイトは扉を閉めて後をついてくる。 すえた薬品の臭いがする室内を進んで行くと、背を向けて用途の知れない様々な機器を弄るコルベールが居た。 所狭しと資料や実験機器が置かれているその光景は、コルベールの性格を良く反映している。 コルベールは3人に気が付くと、振り向き、ぱっと顔を明るくする。 「おお、来てくれたようだね! 待っていたよ!」 頭頂部と、白い歯を光らせながら、コルベールは両腕を大きく広げ、歓迎の意を表す。 ルイズとジュディは、それぞれ挨拶をしてから、目の前にある機器に注目する。 そこには、円柱型のモノ、球を半分に切った形をしているモノ等が置かれており、その中で一際目立つのは、2段重ねの机のような形状の装置であった。 その装置には、賽の目状の模様の描かれたロール紙が2つセットされており、可動式の針のようなペンが左右に動いて波線を描いている。 その奇妙な装置を見て、ジュディとルイズは用途の程が知れずに首を傾げ、サイトは眼を剥いて驚きを露わにする。 コルベールは3人の反応を見て楽しげに笑う。それは、悪戯が成功した子供のような屈託のない笑顔であった。 「どうだね、どうだね? 素晴らしいと思わないかね? さあ! 早く始めようか!?」 それを遮るように、サイトは片手を軽く挙げてコルベールに質問する。 「あのー 先生? それで俺は何をすればいいんですか? 何にも聞かされてないんスけど?」 「おお! そうだったね。ではまず、実験の概要を説明しようか!」 ソワソワと忙しなく体を揺すりながら、コルベールは説明を始める。 なんとなく3人は、説明が長くなる予感がした。 「そうだね…… 先ずは、私なりに調べた術具の調査結果を伝えねばなるまい。 結果からいえば、なにも分からなかった。 デティクトマジックを駆使して調べてみたのだが、やはり我らの系統魔法とは当て嵌まらない魔法体系の産物だという事が良く分かりました。 こちらのマジックアイテムと比較してみても、感じられる魔力の質というか術理が根本から異なるのです。 それは、つまり……」 「あの、いいですかミスタ・コルベール?」 「? 何だね?」 話の腰を折られたコルベールは、別段気にも止めずにルイズに視線を送る。 「一気にそんな事を言われても、理解が追い付かないんじゃないでしょうか?」 「ふむ……」 コルベールはルイズから視線を外し、ジュディとサイトに向ける。 するとルイズの言うとおり、キョトンとした4つの眼がコルベールを見ている。 「ならば、実験の手順を説明しましょうか。 ジュディさんが術具を使う。それをこれらの装置と、私自身のデティクトマジックを用いて観測する。 以上です。シンプルでしょう?」 「はあ…… その装置で何が出来るんですか?」 ルイズは、一見ガラクタにしか見えない装置を指差して訊ねる。 コルベールは、その質問を待っていたとばかりに目を光らせて、嬉々とした表情で装置の一つを手に取った。 「気になるでしょう! 気にならないわけがないでしょう! ならば、説明せねばなりなせぬな!」 眼に狂気にも似た光を宿すコルベールを見て、ルイズは自らの失言に気が付いた。 しかし、時はすでに遅く、ルイズの鼻先には装置の一つが突き付けられ、コルベールがにじり寄ってくる。底光りするメガネが不気味だ。 「さあ! 手に取って良くご覧なさい! これらの装置は、用途の異なるデティクトマジックを発信するマジックアイテムなのです。 それぞれが、火、水、土、風の魔法を細密に感知し、分析するのです!」 ルイズは突き付けられた装置を手にとって、まじまじと観察する。 その装置は、半球状の入れ物の外側に、色んな物がごてごてと取り付けられた様な形をしている。 なるほど、見てくれは不格好だが、一応はマジックアイテムらしい。 コルベールは満足気に頷いてから、ベルト、手袋、靴、そしてサポーターのような形状をした装置を手にとって、詳しい説明を始める。 「それを頭に被り、左右に付いている紐を顎の下で縛って固定するのです。 あと、これらの装置を身に付けて魔法を使えば、術者の魔力の流れを観測できるという仕組みなのです。 スッゲーでしょ!? 私は自分の才能が恐ろしい! スンゲー!」 コルベールは両手を何度も振り上げて力説するが、サイトとルイズはゲンナリとした顔をして溜息をつく。 しかし、コルベールは気が付きもせず、次に円柱型の装置を指差す。その装置は、同じものが4つある。 「さらに、この装置は囲んだ範囲で魔法が使われたなら、それを感知し、分析するという優れものです! すごいぞー!」 再び腕を振り上げて咆哮を響かせる。 ルイズは、勘弁してほしそうな顔をしているが、コルベールの説明はまだまだ続く。 未だに紙を自動的に送り出し、可動式のペンが波線を描いている2段重ねの机型装置の傍らに立つ。 その装置には、1段毎にペンは4つづつ備えられており、それぞれ色が異なる。 赤、青、黄、緑のインクが充填されたペンが、自動的に送り出されるロール紙に異なる軌跡を描き出している。 「そして、これらの装置で得られた観測結果は、この装置に送られ、この紙に記録されるのです! どうです!? さあ、惜しみない賞賛を浴びせるがよいですぞ! 遠慮せずに、さあさあ!」 コルベールに促され、3人は疎らに拍手をする。 そんな拍手でもコルベールは満足らしく、ふんぞり返って気を良くする。 コルベールはひとしきり高笑いをした後、ごちゃごちゃとした実験机から発掘した水光晶輪をジュディに手渡す。机には先日、ジュディが預けた4つの術具も置かれている。 「この実験中、この水光晶輪と各術具は、ジュディさんにお返ししておきます。 それでは、ここでは狭すぎますから草原に移動しましょうか。 サイト君、それらの装置を持ってついて来て下さい」 「……これを、全部、ですか?」 「そうです」 「俺一人で?」 「そのために助手を頼んだのです」 サイトは目を点にしてコルベールに問いかける。 流石に1人で運ぶのは、物理的に困難な量であるのだが、返ってくるのは非情な答えであった。 サイトは愕然とした面持ちで装置一式を見つめる。 「がんばってね、サイト君」 「ぷっ…… 遅れずについてきなさいよ?」 2人は労いの言葉を掛けるだけで、手伝ってくれそうにはない。ルイズはともかく、ジュディは手伝ってくれるかもといった憶測は、呆気なく裏切られた。 サイトは1つ小さくため息をついてから、円柱型の装置を一本持ち上げる。 「ああ、そうそう。すぐにでも始めたいので、一括で運んでくださいね」 コルベールはそう言い残して、研究室から出て行く。 ルイズとジュディもその後を追いかけて出て行き、研究室にはサイト1人が取り残される事となった。 「俺って不幸……」 ポツリと漏れた呟きが、研究室に虚しく木霊した。 ・ ・ ・ 今回の成長。 ルイズは、鋼の意志がL2に成長しました。 ジュディは、イアぺトスがL2に成長しました。魔道板を読み解き『デテクトアニマル』を習得しました。 第7話 -了- 前ページ次ページ未来の大魔女候補2人
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2006.html
翌日の天気は快晴だった。明けきったばかりの文字通り雲一つ無い蒼穹から、 暖かな陽光が降り注いでいる。絶好の探検日和、と言えるかもしれない。 まだ授業も始まらない早朝、ギーシュは自室で向こう数日分の大荷物をパンパンに 詰めた鞄を手に唸っていた。 「ぬぬっ・・・どうにも重い・・・今までレビテーションに頼りすぎてたな」 手に持った瞬間から苦しげな顔を見せながら、それでも魔法を使わないことには 無論訳があった。今回の小旅行――と言ってしまってもいいだろう――の目的は、 まず第一に探検であるわけで・・・つまりは人跡未踏の森林や遺跡の奥深くに まで足を踏み入れる可能性がある。となれば、そこを根城にしているであろう オーク鬼やゴブリンといった好戦的な化物に襲われることも覚悟しなければ ならない。よって、ここは出来る限り無駄な魔法の行使は控えるべきである ――ということがその理由であった。 両手で鞄を吊り上げて、ギーシュはよたよたと正門へ向かう。寮を出た所で、 「ギーシュ!」 待っていたようにそこに立つモンモランシーと出会った。 「モンモランシー!どうしたんだね、今朝はやけに早いじゃないか」 「ま、まあね・・・」 問い掛けるギーシュに、モンモランシーは何故か眼を逸らしながら答える。 「・・・ねえ、明日は虚無の曜日でしょ」 「確かそうだね それがどうしたんだい?」 「・・・・・・こ、香水の材料が切れたのよ それで、明日城下に買い物に――」 「おっと、すまない僕のモンモランシー そろそろ待ち合わせの時間だ」 「え?」 「ちょっと数日ほど旅行に行ってくるよ 君と会えないことを思うと胸が 張り裂けそうだが、どうか泣かないでおくれモンモランシー きっとこれは 始祖の与え賜うた試練なのさ」 「な、ちょっと・・・」 「名残惜しいがしばしのお別れだ 僕の無事を祈っていておくれ それではね」 「待っ――・・・!」 相変わらず人の話も聞かず、ギーシュは薔薇をかざしながらそれだけ言うと 荷物を抱き上げてそそくさと走り去ってしまった。一人この場に残されて、 モンモランシーは豊かな金糸を震わせながら呟いた。 「何よ、バカにして・・・!」 大荷物の人間を6人も乗せては、いかに風竜と言えど長時間の飛行は出来ない。 ましてシルフィードはまだ幼生である。必然、近場から順々に潰して行くことに なった。 一行が最初に向かったのは、打ち捨てられた寺院だった。もはや村であったこと すら判らない程に荒廃した廃墟にあって尚形を失わないそれも、しかしかつての 荘厳さはとうに消え失せ、今はただ物悲しい静寂だけが満ちている。 永久に続くかとすら思われたそのしじまを、突如響いた爆裂音が消し去った。 ルイズの爆破に、この村を廃墟に変えた魔物――オーク鬼の群れが寺院の中から 眼を血走らせて飛び出した。 「んだァ?豚の化物かありゃあ」 長らく手入れされず伸び放題に成長した大木の枝に悠然と腰掛けて、ギアッチョは 興味深そうに眼下を眺める。その横で、化物が怖いかはたまた落下が怖いのか、 シエスタがひしと幹に抱きつきながら応じた。 「オ、オーク鬼です 獰猛で人間の子供を好んで食べる・・・私達の天敵みたいな 存在ですね」 プリニウスやプランシーがこの場面に遭遇すればさぞかし眼を輝かせることだろう。 巨大な棍棒を手にし、申し訳程度に毛皮を纏い二本足で立つニメイルを越す豚の 魔物。妖異と非現実の極致。彼らで無くとも、ギアッチョの世界の人間ならば 誰もが眼を釘付けにされるであろう光景だ。 最初に出て来た数匹が、ギョロギョロと辺りを見回す。十数メイルの正面に一人の 人間を確認するや否や、 「ぶぎィいいぃいいィィイいいぃィッ!!」 耳障りな鳴き声を上げて突進した。その背後を、次から次へと現れる仲間達が 土煙を舞い上げながら追い駆ける。だが彼らのターゲットであるところの少女は、 逃げも隠れもせずにただ一人その場に棒立ちしていた。 そう、ルイズは囮であった。寺院の中に恐らく十数匹単位で潜んでいるであろう オーク鬼達をギリギリまで引きつけて、両脇の茂みに隠れるキュルケ達が 一網打尽にする。それが彼女達の作戦であった――のだが。 「ワ、ワルキューレ!突撃だ!!」 実物の食人鬼に恐怖したか、ギーシュがはやった。先頭のオーク鬼目掛けて 七体のワルキューレが一気に攻撃を仕掛ける。七本の長槍がオーク鬼の腹を 突き刺したが、厚い脂肪に阻まれて致命傷には至らなかった。 「ぴぎぃいぃぃいいッ!!」 「あっ!?」 狂乱したオーク鬼が棍棒を滅茶苦茶に振り回し、七体の騎士はあっと言う間に 粉砕されてしまった。そのまま槍を拾いワルキューレが出てきた方向へ突進 しようとするオーク鬼を、空を切って飛来した炎が焼き尽くす。一瞬遅れて 出現した氷の矢が、崩れ落ちた魔物の背後に控える数匹の身体を貫いた。 「・・・で?どーするのよ」 茂みから姿を現して、キュルケが投げやりな口調で言う。先の攻撃に警戒を 強めたオーク鬼達は、再び寺院の中へと隠れてしまっていた。 「と、突撃あるのみだよ!」 「バカ、メイジだけで敵陣のど真ん中に突っ込めばどうなるか解るでしょ!」 「うっ・・・」 本来護衛とするべきワルキューレを使い果たしてしまったギーシュは、ルイズの 指弾に反論出来ずに呻いた。 「寺院ごと燃やすわけにはいかないし・・・このまま篭られちゃあ打つ手が 無いわよ」 小さく溜息をついて、キュルケが意見を求めるようにタバサを見た瞬間、 「・・・来る」 いつもの無表情にほんの僅か警戒を滲ませて、青髪の少女は静かに杖を構えた。 その刹那――鋭い破砕音を上げて、寺院の三方に設えられた窓が同時に破られた。 「なッ!?」 扉を含む四箇所から、潜んでいたオーク鬼達が一斉に外へ飛び出す。集まっていた ルイズ達を、先程の七倍はいようかという魔物の群れが見る間に包囲して しまった。 「し、しまった・・・!」 「・・・形勢逆転」 「飛ぶわよッ!!」 一瞬の機転で、キュルケはルイズを抱き寄せて叫ぶ。同時に唱えたフライで、 必殺の間合いに入る寸前に彼女達は間一髪上空へ脱出した。 そのまま十数メイルの距離を開けて着地するルイズ達目掛けて、オーク鬼の 群れが猛然と走り出す。 「ルイズ、足止めをお願い」 タバサは顔をオーク鬼の集団に向けたままそれだけ言うと、間髪入れずに詠唱を 開始した。 「分かったわ」 自分を信用し切ったその行動に、ルイズは逡巡無く答える。小さな杖を突き 出して、次々と爆発を放った。 「ぶぎぃいいッ!!」 眼前で前触れ無く起こる爆発に、オーク鬼の足が鈍る。致命傷を与える程の 威力は無いが、足止めには十二分に効果を発揮した。 最短のコモン・マジックで、壁を作るようにルイズは休むことなく弾幕を張る。 クラスメイト達心無い者が見ればそれは失笑を誘うような光景だろう。しかし、 ――・・・それが何だって言うのよ 今のルイズに恥ずかしさや後ろめたさは微塵も無かった。たとえ失敗であろうと、 自分の魔法が仲間の役に立っているのだ。化物の大群を前にしても、その事実 だけでルイズの心には無限に勇気が湧いて来る。 やがて、ルイズの横で二つの魔法が完成する。オーク鬼の群れ目掛けて、 タバサのウィンディ・アイシクルが空を裂く音と共に驟雨の如く降り注いだ。 無数の氷柱に貫かれ、数匹のオーク鬼は声も上げずに絶命する。怯んだ魔物達に 畳み掛けるように炎の渦が押し寄せ、更に数匹を焼き払った。 「あっ・・・お三方とも凄いです」 老木の枝からおっかなびっくり身体を乗り出して言うシエスタに、ギアッチョは 仏頂面を変えずに応じる。 「いや」 「えっ?」 「いいセンいっちゃあいるが・・・間に合わねえな」 よく解らないながらも、シエスタはギアッチョに向けた顔を荒れ果てた庭に戻す。 その僅かな時間の内に、そこは様相を変じていた。 「――――っ!!」 ルイズ達は思わず耳を塞ぐ。残る十匹余りのオーク鬼の怒りの咆哮が、彼女達の 鼓膜を破らんばかりに廃墟中に響き渡った。 仲間を倒されたオーク鬼達の怒りは、今やルイズの爆破への怯えを完全に 上回っていた。手にした木塊を振り回しながら、聞くに堪えない叫び声と共に 怒涛の勢いで突進する。もはや一匹たりともルイズの爆破に気を留める者は いなかった。 「くっ・・・」 倍近く速度を増して迫り来る魔物の群れに、キュルケは僅か眉根を寄せる。 見誤っていた。敵が予想外に強靭で想定の七割程度しかダメージを 与えられなかったこともあるが、それにも増して埒外だったのは―― オーク鬼達のこの速度だ。逃走しながら呪文を唱えてはいるが、この距離と 速度では魔法は撃てて後一度――しかしその一度で殲滅出来る可能性は相当に 低い。だが、かと言ってレビテーションで逃げることは出来ない。「風」の フライと違い、コモンであるレビテーションは物を浮かせるというだけの単純な 魔法である。フライのような瞬間的な加速の出来ない性質上、高く浮かぶには 時間がかかる。今から方針を変えていては間に合うものではない。そして フライによる脱出もまた、系統魔法であることとキュルケとタバサしか使用 出来ない現状では難しいと言わざるを得ない――結局の所、望みに賭けて このまま攻撃することが最善の、そして唯一の手段であった。 「・・・イス・イーサ・・・」 タバサも同じ結論のようだった。小さな口から迷わず紡がれる呪句で、彼女の 無骨な杖に再び冷気が集まり始め、 「・・・ウィンデ」 冷たく小さな声が止むと同時に、無数の氷の弾丸が一斉にオーク鬼へと撃ち 出された。それを確認してから、キュルケは小さく杖を振る。氷柱の軌跡を 追いかけて、業火の螺旋が続けざまに忌むべき魔物の群れを襲った。 氷と炎が爆ぜて巻き起こる黒煙と砂埃が、オーク鬼達をその断末魔ごと覆い 隠す。しかし、油断無く後退を続けるルイズ達が僅かな期待の視線を煙幕に 向けるよりも早く――オーク鬼の残党が四匹、憤怒の咆哮を撒き散らしながら 姿を現した。 生き残った四匹の人喰い鬼達は、更に速度を増してルイズ達に襲い掛かる。 「く、くそっ!」 なけなしの魔力で作り出した青銅の槍を構えて、ルイズ達の前にギーシュが 飛び出した。しかし、その力の差は誰が見ても歴然である。血走った眼を ギーシュに向けると、オーク鬼はまるで路傍の石を排除するが如き気安さで 棍棒を振りかぶった。 「ミ、ミスタ・グラモンが・・・ギアッチョさん!!」 シエスタは悲痛な声でギアッチョを振り向く。だが数秒前まで彼が座って いた場所から、ギアッチョの姿はいつの間にか消えていた。 三匹のオーク鬼達は、一体今何が起きたのか理解出来なかった。自分達と先頭の 仲間との間に、「何か」が落ちた――次の瞬間、仲間の首は見事に胴体と泣き 別れていたのだ。必死に情報を整理しようとする自分達を嘲笑うかのように、 仲間の首を刎ねた「何か」はゆっくりとこちらに向き直る。その正体が人間で あると気付いた時には、更に二つの首が宙を舞っていた。 「ぶぎィィイイイイッ!!!」 最後の一匹になった化物が、あらん限りの咆哮で大気を震わせる。男が一瞬 眉をしかめた隙を逃さずその脳天に人の胴体程もある棍棒を振り下ろしたが、 男は身体を半身にずらして難無くそれを回避した。同時に剣を握った左手では 無く何も持たない右手を突き出すと、静かにオーク鬼の胸に押し当てる。理解の 出来ない行動にオーク鬼は思わず動きを止めたが、すぐに棍棒を持つ腕に再び 力を込めた。理解は出来ないが、殺すことに問題は無い。 「・・・・・・?」 オーク鬼は漸く気がついた。拳に力を込め、手首に力を込め、腕に力を込め。 男の頭を粉砕するべく腕を振り上げる――常ならば意識することすらしない、 単純な動作。ただそれだけのことが、どう意識しても「出来ない」。まるで 彫像にでもなったかのように、己の腕はピクリとも動こうとしないのだ。 …いや。腕だけでは無かった。気付けば腰も、足も、そして首も―― 五体全てが、凍ったようにその動きを止めていた。 「・・・・・・!!」 凍ったように? 否。 オーク鬼の身体は文字通りの意味で、いつの間にか完膚無きまでに凍結 されていた。そしてそれに気付いた瞬間。原因や因果を考える暇も無く、 オーク鬼の身体は粉々に砕け散った。 「あ、ありがとう・・・助かったわ」 血糊を拭いた木の葉を投げ捨てて、ギアッチョは少しばつが悪そうにして いるルイズ達に向き直った。 「そんな顔すんな おめーらに落ち度はねぇよ 悪ィのは・・・」 つかつかと歩み寄ると、ギーシュの金髪に容赦無く拳を振り下ろす。 「あだぁあっ!!」 「こいつだ」 「このマンモーニがッ!おめー一人のミスでよォォォ~~~~、全員殺られる とこだったじゃあねーか!ええ?」 「うう・・・すいません・・・」 地面に正座するギーシュの頭上から、ギアッチョの叱責が降り注ぐ。長らく 使われなかったマンモーニという呼称がショックだったのか、ギーシュは肩を がっくりと落とすが、ギアッチョは一切容赦をしない。 「フーケとアルビオンの時ゃあちったぁ見所があるかと思ったが・・・ おめーは追い込まれねーとマトモに戦えねーのか?ああ?」 「い、いや・・・それは」 「それは何だ」 「そ、」 「うるせえ!」 「酷ッ!」 ギアッチョは両手でギーシュの頭をぎりぎりと掴んで立ち上がらせる。 「あだだだだだ!」 「よォーーく解った・・・おめーには度胸と根性が足りねえ!」 「そ、それは追々身に着けていこうかと・・・」 「やかましいッ!帰ったら一から叩き直してやっから覚悟しとけッ!!」 「えええええ!?」 ギーシュが物理的に地獄に落ちることが決定した瞬間だった。 へなへなと地面にくずおれるギーシュに眼を向けて、三人の少女は同時に 溜息をつく。 「ま、これでちょっとは成長するかしらね」 「因果応報」 「・・・あれ?ところで何か忘れてない?」 「ギアッチョさーん・・・」 古木の幹にしがみつきながら、シエスタはか細く悲鳴を上げる。 「み、皆さーん・・・下ろしてくださいぃー・・・」 彼女が救出されたのは、それから十分後のことであった。
https://w.atwiki.jp/nyorohebi/pages/30.html
2008/01/30 久しぶりにウィキ更新、ネタバレと隠しキャラのページを作っときました。 メニューとFREEページにリンクを張ってくれた方、有り難う御座います^^ by 闇魔斗 2008/02/02 ページ名を変更。 下位ページのページ名を" / "で区切る方式にしてみました。 例>FREE の キャラ アウリオン の場合 ページ名「 FREE/登場キャラ/アウリオン 」 by ニョロヘビ 2008/02/02 数ページ、何枚か画像を載せました^^ by 闇魔斗 2008/02/25 モンスターの絵を描きました。 それと、一部のモンスター絵を置き換えました。 見えない画像とか合ったら 修正 or 報告ヨロ by オオギ 2008/04/19 ラートのページを大きく変更。 見にくくなったなんて言わないでorz(ぉ 暇あれば他のキャラクターもやらせて頂きます。 よければね(´・ω・)( by黎空 2008/04/20 いやいや黎空さん、GJです^^ 全然見にくくないですよ^^ もうどんどんやってください(・ω・´) by闇 2008/04/20 ニート魂爆発のためアウリオンのページが中途半端で終了。 次修正させておきますorz とりあえず今日はもう働きたくないです(ぁ 2008/04/27 『剣舞』が更新されたので色々と編集しました。 ついでに「イフリートブルク」の絵を描きました。 だ・・・誰か描き直して・・・・・ by闇 2008/08/1 『FREE』の登場キャラページにレミ追加。 ついでにhideさんのハンネ変更、及びマリィ称号変更に伴い各ページ修正。 by闇 2008/08/05 FREEの攻略ページに外部リンク(くろのあさんの所)を追加 自分が行きやすいためにってのは無しかな? by オオギ 2008/08/11 画像が途中で切れていたので修正しました。 by おたまY 2009/02/07 FREEにボスキャラ ☆ キタコレ(゜∀゜) と言う訳で、FREEのページにボス情報追加。 ついでにネタバレ「隠しキャラの出し方」にパスワードを表示。 by 息抜き中の黒い人 2009/03/08 ラスボス(代理)のコンボを一部掲載 by ニョロ○ビ 2009/03/08 ラスボス(代理)の攻略ページを更新 気休めにしかならないという罠 by V&S 2009/03/19 FREEのネタバレ「隠しキャラの出し方」の補足に文章追加。 くだらないなんて怒らないで byちりか 2009/03/20 (代理)さんの隠しコマンドを載せました(^^) 知りたい方は『FREE/ネタバレ/隠し技』へGO!! by (全角5) 2009/04/12 マリィの「レバー下攻撃」を更新しました。 ps,ニョロさん、お引越しお疲れさまです(^^ by 玄 2009/04/12 サイペスのページを少し更新しました。 by (誰) 2009/04/12 まさかの一発準完成!? ニョロさんのモチベーションが高すぎて全俺が震撼したっ!! と、いうわけでグロガロスのページを作成しちゃいましたw 格好良いよグログロ格好良いよ(ゴロゴロ by プリン好き 2009/05/03 ダッシュタイプという概念が追加されたので、 各キャラにダッシュタイプの項目を追加 by 虫鉈-金 2009/05/18 追加と修正。 by TEDDY
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/549.html
『青銅』のギーシュ⑤ 間違いない・・!今のオレの力は!確実に上がっているッ!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ ルイズの行動により、黄金の精神を取り戻し、復活したブチャラティ。戦いを再開する! だがその際に彼にとある変化が起きていた・・・・。 そしてその変化は、ルイズにも起こっていたッ!! 「アイツの後ろにいる『霊』はなんなの・・?アイツは・・一体・・?」 ルイズにはブチャラティの"スティッキィ・フィンガース"が見えているのか・・? ギーシュもまた驚いていたッ!! 「ブチャラティ・・・・一体何をしたんだ・・?一瞬で・・・僕のワルキューレを・・?」 その変化に一番驚いていたのは他でもないブチャラティ! 「これはジョルノの時のような感覚の暴走などでは断じてないッ!!これはまぎれもなくオレ自身に変化が起きているッ!!」 そして、体の痛みが少し引いているのに気づく!! 「足が・・・・まだ動く!!」 ギーシュに向かって走るッ!! ギーシュが動かないッ!!やはりショックは大きいか? 「・・・・・なぁーんてショックを受けると思ったかい!? そのルーンが光ったら強くなるなんてスデに想定の範囲内だッ!!」 ギーシュが造花の花弁を散らすッ!そしてワルキューレ(×7)!! 「僕はすでにこの戦いをずっと前から感じ取っていたんだ。精神が覚えていると言えばいいのかな。 そんなパワーアップくらいではこのギーシュ・ド・グラモンはうろたえないッ!!」 ワルキューレが突進するッ!!ブチャラティが構えるッ!! (オレに起こった変化・・・。まずこれだけの重傷でなお動く事が出来る・・) 2体のワルキューレの槍が捉えるッ!! ズバッ!ズバッ! 「ああ!剣で真っ二つに!」 ギャラリーも思わず息を呑むッ!! (二つ目・・・。本体のオレ自身が剣を自在に使えるようになっている・・・。) 彼は一応パッショーネで銃火器などの扱い方もスタンドの扱い方と一緒に学んでいたが、剣は素人のハズだったッ!! だが今のブチャラティはまるで何十人、何百人もの剣豪を斬り捨ててきた達人のような動きをしていたのだッ!! (そして何より三つ目・・!これはかなり大きな利点ッ!!) ブチャラティが後ろに控えていた3体のワルキューレを捉え・・! 「"スティッキィ・フィンガース"!!」 スタタァン!! まさに一瞬の出来事ッ!!その3体のワルキューレが『打撃』一発で粉々にぶち割れたッ! 「何ッ!?『打撃』だと・・!?だがさっきまでは一発では・・。」 ギーシュがそう言ってブチャラティがこっちを見ているのに気づくッ! 「落ち着け・・。まだあいつのスタンドとやらの射程距離には入ってない・・。 絶対に2メイル近づかずに『伸びる腕』に警戒すれば・・! "ワルキューレ"!今から新しく出す奴と連携して奴を・・!」 ボグシャア!! 突然の打撃ッ!ブチャラティはまだ5メイル先にいるのに!腕も伸ばしてなかった! 「ぐあああ!!」 ワルキューレごと後ろに吹っ飛んだッ!! 「そんな・・・まさか・・!」 「S・フィンガースも合わせて強化されている!!パワーは一撃で青銅を粉々に! スピードはそれを3体相手に一瞬でやってのけるほどにッ!! 射程距離に至っては5メートルに伸びているぞ!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 一方ギーシュは不幸中の幸い!ワルキューレを寸前に出していたおかげでギリギリ決定打には繋がらなかったッ!! 「ク・・・フフ、そうこなくてはいけないな!決闘を侮辱するよりはいい展開だぞブチャラティッ!!」 ギーシュがかまえ直すッ!! 「射程距離は5メイルに伸びたんだったな!ならさらに遠距離からッ!!」 ジャンプと同時に石礫ッ!!衝撃でさらに後ろにッ!! だが着地するときッ!! ミシッ! (く・・・。やはりあまり無理は出来ない・・・。もうこっちの魔力も尽きようとしている・・・。あまり戦いを長引かせることはできない・・・。) だがそれはブチャラティも同じッ!! (一時的に動けるとはいえオレのダメージが消えたわけではない。動きすぎて自滅なんてマンガのやられ役みたいな展開だけはゴメンだ・・・。) ((お互い、次の攻撃で勝負が決まる!!)) ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがブチャラティを助けるために跪いてからまだほんの百数十秒しかたっていない・・・ 二分程しかたっていない・・・・・・。 あとその半分にも満たない時間で最終の決着はつくであろう・・・ 彼らをつつみ込む運命を変えることだけは・・・ どんな魔法でも、どんなスタンドにもできないのだ・・・ 次に動いた時!最後の勝負は始まるッ!! 「なんか使い魔の奴・・。剣持った時から強くなってないか・・?」 「ああ・・。なんかあの見えない『打撃』、今はアイツからほとばしるオーラそのものが攻撃してるように感じるんだけど・・・。」 (・・?みんなには『アイツ』が見えていないの・・?存在を感じ取っているだけ・・?) ルイズはブチャラティの後ろの存在に今なお困惑していた・・・。 (アレは・・・ブチャラティが動かしているの・・?ブチャラティ・・・ただの平民じゃない・・? 私だけがハッキリ見ているのは私がアイツの主人だから・・?) 使い魔とメイジは一心同体。使い魔はメイジの目となり、手となり、足となる存在。 その絆がルイズの感覚に変化を表したようだ・・・。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。 「『錬金』!!一体のワルキューレに青銅を集中させるッ!!」 先に動いたのはギーシュッ!! ピタッ ピタッ ピタッ 「耐久力を強化・・。そして魔力を極限まで脚部に集中させて強化ッ!!」 タンッ! ブチャラティが駆け出す!! 「いけッ!強化ワルキューレよ!!」 スタッ!!強化ワルキューレが迎え撃ったッ!! 「速いッ!!さっきまでより凄く速くなっている!!」 「さらに耐久力も上がって一撃では破壊できないッ!!」 そしてブチャラティと強化ワルキューレが接近した!! 「忘れたか・・?オレには『ジッパー』があるんだぜ・・。"スティッキィ・フィンガース"!!」 「かかったなアホがッ!!」 ギーシュが叫ぶッ!! 「ジッパー?よく覚えているさ・・。それがあれば耐久力は関係ないだろう・・。 だが逆に考えると、耐久力を上げればおまえはジッパーを使わざるを得ないだろう?」 ギーシュが造花を前におもいっきり突き出す!! 「ああっ!!まさかッ!!」 「君のジッパーは打撃と比べ、出した後にほんのわずかながら大きな隙が出来ているッ!!一瞬。だがこの一瞬を僕は待っていたんだッ!!」 ギーシュが『石礫』を唱え始めた! 「僕との間に直線上に強化ワルキューレを置き、その直線のラインを渡っていけば、 君はワルキューレを攻撃するためにそのまま直線状に走るだろう。だがそれが狙いだ! ブチャラティからみて僕がワルキューレの影、『死角』に入りジッパーを使ったために隙が出来る、この一瞬を待っていたんだッ!! この最後の石礫は発射されてからじゃあ対応できない!突進力を重視したのは彼に考える暇を与えないためだッ!」 いままでで一番高密度、超硬質に練り上げられた礫ができあがる!! 「ギーシュが優位に立ったぞッ!!」 「ギーシュが勝つのかぁ!?」 「ブチャラティさん逃げてぇーーーーーッ!!」 シエスタが叫ぶッ!! 「あ・・あ・・ブチャラティ・・・!間に合わない・・!」 ルイズが負けを確信する・・! 「勝ったッ!!こいつをくらって終われッ!!」 「なるほど・・・死角ができる一瞬をねらうつもりだったか・・・。 危なかった・・。こっちも策を練ってなければやられていた・・。」 「えっ!!?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。 意外ッ!その男は背後にッ!! 「い、い、いつから!?どうやって僕の後ろに!?」 「言っただろ?オレにはジッパーがあると・・。」 ブチャラティが地面に指差す。そこにはッ!! 「じ、地面にジッパーが・・?」 「ジッパーは何も切断だけが使い道ではない。オレのS・フィンガースのジッパーは壁や地面に貼ればそこに『中の世界』を作り出す事ができるッ!! さらに開閉はオレの意思で自在に行うことができるッ!!」 ギーシュはジッパーを目で辿るッ!ブチャラティとワルキューレのいた所から自分の背後までジッパーは伸びていたッ!! 「あ、あれかッ!あれで『ゼロのルイズ』の爆発からやり過ごしていたんだッ!! だからアイツは無傷だったんだッ!!」 キュルケも思い出すッ!! 「じゃあ最初の日、私たちの目を欺いたのもアレと言う事なの!?」 「まあ図で説明するとこういうことになる。」 ● →ワルキューレ ∥ →ジッパー縦。 = →ジッパー横 ① ギーシュ ●突撃方向―→ ←― ブチャラティ 「こうやって普通に突撃を行う。すると、」 ② ギーシュ ●→ ←ブチャラティ ↑ ↑ 『石礫』用意 こっちからはギーシュが見えない。 「こうやってワルキューレで死角を作りオレに止めをさすつもりだったんだろ? だがオレは・・・。」 ③ ===ギーシュ==============●=∥ ←ブチャラティ (中に入った。) ↑ ↑ 実は彼からも見えない。 ジッパーを貼って中に入る。。 「お前の見えない角度から地面にジッパーを貼ってその中に入る。 おまえ自身も呪文でトドメを指す事に集中して足元に気づかない。後は・・・。」 ④ ブチャラティ ===ギーシュ==============●=∥ ←―――――――開け!ジッパー! 「ジッパーの持ち手を持ちながらジッパーを開けば、お前に気づかれる事無く射程距離内に難なく入る事ができると言うワケだ。」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ 「な、なぜ今までそれをもっと速く使わなかった・・?」 「実戦であろうがなんだろうが、切り札は最後のいよいよ危なくなった時に使うものだろう?」 場の空気が張り詰めるッ!! 「ブチャラティが・・・逆転した・・・!」 「ギーシュが危ないッ!!」 「逃げろギーシュ!!」 ジリ・・・・。 「無駄だ。オレのS・フィンガースのスピードと射程距離は・・・すでにお前を捉えているッ!! 逃げる事は・・・不可能だ!!」 モンモランシーが息を呑む! 「いや・・・・・。まだよ・・。」 「・・・・・・・フフフフ・・。ハハハハハハハハハ!!!!!!!! なぁ~んで僕が逃げなきゃ行けないのかなぁ!?わざわざそっちからトドメをさされに来たのにさぁ!!」 ギーシュがブチャラティに造花を向けるッ!!その先には・・・発射準備の完了した『石礫』!! 「僕の作戦が失敗しようが・・、それがどうした!?いくら僕に攻撃を当てるためとはいえ、ここまで至近距離まで近寄ればもうハズす事はない!! 最終的に・・・攻撃さえ当たればよかろうなのだぁ――――ッ!!」 「・・・・・・・・・・・。」 ブチャラティは石礫に目を据えるッ!! 「さらにッ!こうしている間に強化ワルキューレは戻って来ているんだぜッ!! 罠に嵌め返したつもりが、嵌ったのは結局君だブチャラティッ!!」 ガシャンガシャン!! 強化ワルキューレが猛スピードでこちらに向かうッ!! 「ああ!ブチャラティ!!もうダメ!降伏してッ!!」 「もうおそい!脱出不可能だッ!喰らえッ!!」 その瞬間誰もがギーシュの勝利を疑わなかったッ!! だがブチャラティはッ!! (見える・・・。見えるぞ・・・!) ズバッ!ガキンッ!! 「な・・・・え・・?」 ほんの、一瞬の出来事だった。 ワルキューレが剣で見事に切り刻まれていた。そして! 「ぐうッ・・・おりゃぁぁぁぁ!!!」 バキィィン!! 石礫を剣だけでぶっ壊したッ!! 「な・・バ、バカな・・・!こんなはずは・・!」 「・・・・ゲーム・・・・セットだ・・!!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 右頬、顎、左肩、胸、右膝、両脛… 至る所を殴り付け確実な勝利をもぎ取るッ!! 最後の力を振り絞った渾身のラッシュだったッ!! 「ぶっ!ぐおっ!がっ!ぐあっ!ぐえっ!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 ドッバァ――――ッ!! 「ブァガァーーーーーーーッ!!」 バラッ! 「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」 ドタドタドタッ!! 「う、うわあああああああっ!ぼ、僕の体がぁーーーーーーッ!!」 「ひいいええええーーーーっ!ギーシュがバラバラにぃーーーッ!!」 誰もが悪夢をみていると錯覚したッ!!あのギーシュが!トドメを刺されたと思ったら、次の瞬間、頭!胴体!腰!右腕!右手首!左腕!左手首!右足!左足! 計9パーツのバラバラ状態に変わり果ててしまったのだ! これにはルイズも顔を青ざめさせるッ! 「ブ、ブチャラティ・・・!何も・・!何も殺さなくたって・・!!」 「安心しろ。死んじゃあいない。『今』はな。」 ブチャラティがギーシュに近づく。 「さあ、オレの勝ちだ。ここから先はお前をどうしようとオレの勝手だよな。」 「あ・・・。あ・・。僕は・・・・勝てなかったのか・・?」 ブチャラティが髪のところをニンジンを掘るように持ち上げる。 「さて、ルイズ。約束通り『晒し首』を見せてやったぜ。」 「ぼ、僕は死ぬのか!?このまま死ぬのか!?」 ルイズは口をアングリさせた。 「え・・?生きてる!?どうやって生きてるのコレ!?」 「どうだ?何か感想はあるか?」 「あ、あるわけないでしょ!この馬鹿使い魔!!無茶しすぎよ・・・!」 ルイズはもはや展開についていけなかったが、ギーシュは生きていたので安心したようだ。 そしてブチャラティがギーシュに顔を向ける。 「さてギーシュ!お前はもう死んだも同然だがまだ生きている。 だがそれもいつまでも続かないぞ・・・?そろそろ息が苦しいだろう?」 「い、息が・・・・出来ない・・!」 ギーシュの顔がどんどん赤くなるッ!酸素が足りなくなっているのだッ! 「このまま体に繋がなかったら、そうだな、あと4,5分でマジに死ぬぞ。 それがイヤならこのまま降伏し、あとルイズに対する非礼も詫びてもらおう・・。」 モンモランシーが心配そうに見ている。 「ギーシュ・・・。」 「わかった・・・。僕の負けだ・・・。 ルイズに対する僕の失言についても謝るよ・・・。」 ギーシュは俯いて言った。 「そうか・・・・・・。」 「ブチャラティ・・。もういいじゃない・・。何もここまでやる必要なんてない・・。」 ブチャラティはギーシュの胴体を見る。 「そうだな・・。軽はずみな発言についカッとなってしまったが、コイツはこのまま殺すには惜しいものを持っている・・。ここは『殺害』と言う形ではなく・・・。」 ギーシュの頭を繋ぐ。 「頭だけ繋いで『再起不能』という形にさせてもらおう・・・。残りは他の誰かに繋いでもらうんだな・・・。」 ヨロ・・・。 ルイズが肩を持つ。 「ブチャラティ!大丈夫!?」 「大丈夫・・。一人で歩ける・・。」 「早くケガを直してもらって来なさいよ!もうゆっくり休んでなさい!」 「そうだな・・・。もうオレは疲れた・・・。」 ブチャラティは学院に向かって歩き出した・・。 「バカ・・・。無茶するんだから・・・!」 「ギーシュ!大丈夫か!?」 「ギーシュ!しっかりして!!」 モンモランシー達数名がギーシュの元に駆け寄る。 「う・・ううん・・。」 「ギーシュ!大丈夫!?生きてるわよね!?」 モンモランシーが腕を繋ぎながら言う。 「モンモランシー・・・。すまなかった・・。 結局・・・僕は・・・勝つことが出来なかった・・・。」 「もうしゃべらないで・・!ケガに響くわよ・・・。」 ギーシュは空を向いて言う。 「結局・・。僕は無様なまま終わってしまった・・・。 運命を変える事は・・できなかった・・。」 モンモランシーは少し黙ってから言った。 「そうね・・。あんたは運命を変えられなかった・・。 でもこれだけはいえるわ。運命を変えようとがむしゃらになったあんたの姿は、とても輝いてた。それこそ、どの宝石にも勝るほどにね・・。」 「モンモランシー・・・。」 モンモランシーは続ける。 「あんたは確かに成し遂げる事はできなかった。でも私は見ててこう思った。 本当に大切なのは、何かを成し遂げようと行動する強い意志のほうじゃあないかって。 だから・・・。もういいじゃない・・。もう・・・。」 ギーシュのパーツは修復完了した。 「・・・フ・・。何言ってるのさ・・。いつも言ってるだろう?一番素晴らしいのは 君の、女王陛下も顔負けな神々しい美しさに決まっているじゃないか・・。」 「それだけ口が聞ければ大丈夫そうね。」 ギーシュが手をついて上体を起こす。 「しかし・・・。ブローノ・ブチャラティ・・。結果論とはいえ、結局最終的に彼によって成長のための機会を作ってもらってしまったようなものだ・・。 彼を見ていると、まるで僕を正しい道へと導いてくれるチームリーダーのように見えるよ・・。」 ギーシュは偶然か核心をついていた・・・。 「ルイズ。結局彼は・・・ブチャラティは何者なんだ・・? 彼のあの実戦慣れした動き、能力、何より彼から痛いほど感じられた『覚悟』・・・。 戦い終わってから、急に知りたくなったんだ・・。僕は何者と戦っていたのか・・。」 「・・・アイツは、」 バタッ!! 「あ!アイツ倒れちまったぞ!?」 「ブチャラティ!んもうッ!結局世話かけてッ!!」 ルイズがブチャラティのほうに向かおうとして、一度止まった。 「・・・アイツは、私の使い魔よ・・・。 それ以上でもそれ以下でもない。私が知ってるのはそれだけ。」 そう言って、ブチャラティの元に走っていった。そして思った。 「アイツが何者?そんな事、私が一番知りたいわよ・・・。」 ギーシュもふと呟いた。 「やれやれ・・・。得体の知れない男だ・・。完敗だな・・。」 ―※― ―――――我々はみな『運命』の奴隷なんだ。 形として出たものは変える事はできない・・・。 現に君はその運命によって命を落とした・・・。 誰の・・・声だ・・? ―――――まさか生き返るとは思わなかった。こればかりは僕も見落としていた。 君はまだ運命の形を留めていないのだ・・・。 何だ?何を言っている? ―――――君たちがこれから歩む『苦難の道』にはきっと何か意味があるのだろう・・。 かつて君が・・・かつての仲間達と歩んだあの道のように・・・。 君たちの苦難はやがて、あの少年に受け継がれたように、どこかの誰かに希望として伝わっていくような何か大いなる意味となる始まりなのだろう・・。 僕には何も出来なければ無事を祈ってやることもできないが、君が『眠れる奴隷』であることを祈ろう・・・。 何か意味のあることを切り開いていく『眠れる奴隷』であることを・・・。 ―※― 「・・・ラティさん・・。ブチャラティさん・・・・。」 「ブチャラティさん!!」 起こしたのはメイド服の少女だった・・。 「シエスタ・・。」 「よかった!もう5日も眠っていたんですよ!? 病室だった。どうやら途中で倒れてしまったようだ。 「本当に・・・よかった・・。もしかしたら・・・もう目覚めないかもしれないと思って私もうどうしようかと・・!」 「お、おい・・。オレは大丈夫だから・・涙を拭きなよ・・・。」 ブチャラティが涙を拭いてやる。そして自分の体の異常を確かめた・・。 「これは・・・。ケガが完全に直ってる・・。1ヶ月は安静にしたほうがいいかと思っていたのに・・。」 「ええ、治癒の魔法の効果なんですよ。すごい大怪我だったから直るかどうか 気が気でなかったのですが・・・。でもよかった・・。脈拍も呼吸も良好です!」 「・・!!・・・そうか・・。」 そう言ってブチャラティはふと疑問に思った。 「シエスタ。君がオレを看護してたのか・・?」 「いえ。あなたを看護していたのはミス・ヴァリエールですよ。 シエスタの指した先には、疲れきってブチャラティにもたれかかって眠っていたルイズがいた。 「ブチャラティさんをここまで運んだのも、「『治癒』の呪文のための秘薬の代金を払ってくれたのも、ミス・ヴァリエールなんです。」 ブチャラティがルイズの肩に毛布をかけてやって言う。 「後で、礼をいわなくちゃあいけないな……秘薬って、やっぱり高いのかい?」 「平民に出せる金額でないことは確かですね」 そう言って、意地悪そうにシエスタは笑った。 「5日間ずっと付きっきりで看護していたんですよ・・。包帯を取り替えたり、顔を拭いたり……。 ずっと寝ないでやってたから、今はお疲れになったみたいですけどね」 「そう・・・・か・・・・。」 ブチャラティはルイズの寝顔を見ながら、どこか微笑ましい気持ちになった。 「んん~。アンタご主人様を心配させるんじゃないわよ・・・。ムニャ。」 「生意気で、ワガママで、傲慢な女だと思っていたけど、けっこうカワイイところがあるもんだな。 ・・・・ありがとうな。ルイズ。」 ブチャラティは頭を撫でながらそう言った。 そして思った。オレの命を救ってくれた恩を返すまでは・・・。 そして、イタリアに変える方法を見つけるまでは・・・。 ――――――――――――――――こいつの使い魔でいても、いいかな 「あーオホン。お取り込みのところ悪いんだけど・・。」 全身包帯グルグル巻きの正体不明の男がいた。だがその声に 聞き覚えがあった。自分の声に似てたから。 「もしかして、ギーシュか?」 「ああ、正真正銘"青銅"のギーシュ・ド・グラモンさ。」 だがその痛々しい姿はブチャラティもビビッた! 「お前・・・そんな怪我になるほどぶん殴った覚えがないんだが・・・。」 「まあ・・・いろいろあってね・・・。実は・・・二股ではないことがバレたんだ・・。」 ―※― 「さあ、アンタも治療を受けにいくわよ。」 「ああ・・・。」 ギーシュ様―――――――――――!!!!! 「「えっ!?」」 「ギーシュ様!お怪我は大丈夫ですか!?」 「負けてもかっこよかったですよ!ギーシュ様!」 「すぐ応急処置を!私"水"使いだから直せますよ!」 「何よ!私だってできるわそれくらい!」 ガヤガヤ!ゴタゴタ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ 「ひい、ふう、みい・・・・12人ね。ケティも入れたら合計十四股だったって事・・。 ふぅ~~ん・・・。」 ギーシュが身の危険を感じ取るッ!! 「じょ・・じょうだんだってばさぁモンモランシー!ハハハハハ。 ちょ、ちょっとした茶目っ気だよぉ~~ん!たわいのないイタズラさぁ! やだなぁ、もう! ま…まさか、もうこれ以上殴ったりしないよね…? 重症患者だよ。全身骨折してるし絶対安静にしてないと・・・。ハハハハハハハハハハ・・。」 「もうアンタにはなにもいうことはないわ・・・。 ・・とてもアワレすぎて・・・。 何も言えないわ。 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 「ちょ、やめ!骨折部分にひび・・グワァ!!」 右頬、顎、左肩、胸、右膝、両脛… 至る所を殴り付け断罪を下すッ!! 怒りの力を振り絞った渾身のラッシュだったッ!! 「ぐあっ!ぐえっ!わ、悪かった!僕が悪かったからもう・・!ゆるグパァ!!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 ドッバァ――――ッ!! 「ブァガァーーーーーーーッ!!」 バラッ! 「アリーヴェデルチ!(さよならよ)」 ―※― 「と言うわけで・・ね・・。」 「・・・・・そうか・・。それで、もう懲りたのか?」 「まさか!僕はグラモン家の人間だよ?これからも全ての女性を愛でる薔薇でいつづけるよ。 それより、君には負けた。君の黄金の精神にはいずれ一矢報いて見せるよ。 これからもよろしく!ハッハッハ!」 ブチャラティは半ば呆れつつも、 「やれやれ、これからもいろいろ大変そうだ。」 半ば楽しみにしていたりもするブチャラティだった。 ギーシュ・ド・グラモン――――再起不能――――まさかのダブルアリアリで 全治半年(『治癒』のおかげでで2週間) モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ―――それでもギーシュの看護を行った。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――部屋に連れて行ってもらうとき ブチャラティに お姫様ダッコを されていたことに顔を赤らめ、ぶん殴る。 シエスタ―――――――その騒動の後、ブチャラティに食事を作ってやる。 ブローノ・ブチャラティ――――再起不能から離脱。 to be continued・・・-
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2889.html
前ページ次ページゼロのMASTER ようやく薔薇の少年に追いつく。どうやら気付いていないようだから、後ろから声をかけた。 「すみません、これ。落としましたよ」 しかし、なぜか少年は苦い顔をした上、意外な言葉を返してきた。 これは僕のものじゃない、と。どういうことだろう?確かにこの香水は彼が落としたものなのだが。 すると、彼の周りにいた子供達が突然騒ぎ始めた。 「おい、その香水はモンモランシーのじゃないか?」 「本当だ!その紫色の奴はモンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」 「そいつがギーシュのポケットから落ちたってことは、さてはお前、あいつと付き合って…」 どうやらこの派手な少年はギーシュという名らしい。しかも、私は実に不味いタイミングで渡してしまったようだ。 子供達の冷やかしを受けて、ギーシュ少年が慌て始める。 「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが、僕は…」 そのとき、私の隣に座っていた少女がいきなり立ち上がった。 少女は悲しそうな顔をすると、ギーシュの前に歩いていって 「ギーシュさま、やはりあなたはミス・モンモランシーと…」 「ケティ、誤解だよ。僕の心の中に住んでいるのは…」 言い訳をしようとしたが、いささか遅かったようだ。庭園に痛そうな音が響く。 ケティはギーシュに向けて怒りの言葉を叫ぶと泣きながら走って行ってしまった。 さらに不味いことに、この騒ぎを聞きつけたのか、モンモランシーもやって来た。 彼女も彼女でギーシュ少年にキツイ言葉を浴びせると、テーブルに置いてあったワインを彼にひっかけて去ってしまった。 …気の毒なことをしたのかな。僕は。 「あのレディ達は薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 ギーシュは顔をハンカチで拭いながら言う。 自業自得だろうとか、二股かけてたお前が悪いとか、そういった声が聞こえるが気にはしない。 そして、喧騒に紛れてこっそりと去ろうとしていた一人の男性を呼び止める。 「待ちたまえ。確か君はゼロのルイズが呼び出した平民君だったな。 君の軽率な行動のおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」 「ギーシュ君。二股は良くないよ…」 キートンが気の毒そうに言うと、周りの子供達もどっと笑い出す。 これがカンにさわったのか、ますますギーシュの機嫌が悪くなった。 「どうやら君は貴族に対する礼を知らないようだな…。よかろう、君に礼儀を教えてやろう」 そういうと、大げさに身体を翻して 「ヴェストリの広場で待っている。準備が出来たら来たまえ」 怒りのオーラを身にまといながら、さっさと歩いていってしまった。 あとに残されたキートンは頭を掻きながら呟く。 「まいったなァ…」 「ありゃ?おい、ここにあったモンモランシーの香水は?」 「あれ、なくなってる・・・」 「あんた、なにやってんの!!」 庭園にルイズの怒声が響く。キートンの帰りが遅いから見に来てみればこれだ。 それも、相手がギーシュときている。貴族と平民が争えばどうなるか―――ルイズは知っていた。 「やあ、ルイズ。どうも困ったことに」 「謝ってきなさい、ギーシュに。いますぐに!それともまさか、あんた決闘を受けるとか言わないでしょうね?」 キートンの声を遮り、ルイズが怒鳴る。ここでもし決闘を受けると言えば一大事だ。良くて怪我だろう。 「まさか、子供相手に喧嘩なんて出来ないよ。それに、僕は暴力が嫌いなんだから」 「じゃあ謝ってきなさい」 「わかっているよ。それに、彼が嫌な目に遭ったのも、僕にも原因があるしね」 キートンはそう言うと、さっさと広場の方へ向かおうとした。と、途中なにかに気付いたのか戻ってくる。 「これ、お茶とクックベリーパイ。待たせて悪かったね」 ルイズにお盆を渡すと、キートンはさっさと走っていってしまった。 「どうやら逃げずに来たようだな」 ギーシュは花をいじりながら気障っぽく言う。決闘の話を聞いたのか、他の生徒達が集まってきた。 さながら闘技場の観客のように、キートンとギーシュの周りをぐるりと囲んでいる。 キートンはキートンで、何を考えているのか、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま立っている。 「それで決闘を受ける気になったのかい?」 「ああ、ちょっと、そのことでね・・・」 キートンはズボンから手を出すと、指を口に突っ込んだ。 生徒達は何を考えているのか、といった表情でキートンを見る。 口から指を出すと、キートンは高く手を上げる。数十秒間、そのままの体勢でいたが、不意に手を下ろした。 「ギーシュ君。私の不注意で君に不快な思いをさせたことを謝るよ。すまない」 「フン…。では、決闘する気はないのかい?」 キートンは黙る。そして遠くにあるテーブルを指差した。 「いや、ちょっと面白いゲームをしたいんだ。あそこにテーブルがあるだろう。 今から私がテーブルの上に置かれている花瓶、あの花瓶の花を打ち落とす。成功したら、この件は許してほしい」 これには生徒も目を丸くした。テーブルの位置はかなり遠い。その上、花瓶ではなく、花を打ち落とすというのだから。 ギーシュも何を言うのか、というふうに 「あんな遠くの花を打ち落とすだって?魔法も持たない君がか?面白い! やってみたまえ。ただし、花瓶に少しでも傷を付けたら・・・」 「わかってる。その時は、君になんでもするよ。約束する」 二人がこの遣り取りをしているとき、ルイズが走ってきた。 「あ、あんた!何を勝手な…」 「ルイズ」 ルイズははっとして黙る。この雰囲気、いままでのぼうっとしていたキートンとは違う。 ちょうど、午前中の授業のとき、自分を助けてくれたときのような力強い声でキートンは言葉を続ける。 「大丈夫、僕は失敗はしない。僕は君の『使い魔』なんだからね」 そう言うと、急にキートンはにこにこして、ルイズの頭をぽんぽんと撫でた。 ルイズは―――黙って見送るしかなかった。なぜかそれ以上、止めようという気が起きなかったからだ。 「準備はできたかい?」 「ああ、もういいよ」 キートンは位置に立つ。テーブルは遠い。ここからだと、花瓶の花はまるで豆粒のようだ。 それでも物怖じせず立つこの男を生徒達は不思議そうな目で見ていた。 今日は風が強い日だった。 瞬間、キートンが振りかぶって何かを投げる。それはまるで弾丸のように飛んでいって――― 軽い音がした。花瓶は倒れていない。観客の一人、マリコルヌが慌てて見に行き、花瓶を手にとって見ている。 「すごいぞ!本当に花だけ打ち落としている!花瓶には傷一つ付いてないぞ!」 「馬鹿な…」 ギーシュは呻いた。いくらなんでも、あんな小さな的を打ち落とすなんて!一体何者なんだ。 飄々としていて、たいした実力など持っていそうにないのに。 「もういいかな?」 キートンがまたにこにこしながら、ギーシュに話しかける。 「う、うぬ…!き、貴族に二言は無い。さっさと行きたまえ!」 「どうも」 ギーシュに向けて片手をあげると、キートンはさっさと歩いていってしまった。 あとに残されたのは、騒ぐ生徒達とギーシュ、ルイズ。 「ルイズ、彼は…あの男は何者なんだ?」 ギーシュはルイズに話しかける。ルイズはふるふると首を振った。 「知らないわよ!でも…」 「でも?」 「昨日召喚されたあいつと、さっきのあいつ。雰囲気がまるで別人みたいだった」 キートンは遠くで何かを拾うと、口をもぐもぐしながら消えていった。 この一部始終を見ていた者達がいた。 トリステイン魔法学院のトップに立つ老人、オールド・オスマン。 中年の男性コルベールの二人だった。 『遠見の鏡』で広場の喧騒を見ていたオールド・オスマンは重々しく口を開く。 「見たかね、ミスタ・コルベール。あの男…」 コルベールは頷く。心境は複雑だった。"ゼロ"のルイズと嘲られる少女が召喚した男。 外見はまったく冴えないのに、今しがた見せた技には驚くしかなかった。 それに、ミセス・シュヴルーズを助けたとき――― 彼女曰く、気絶する前に見た感想は「疾風のようだった」とのことだ。 どうも、彼は我々とは明らかに違う何かがある。そして、コルベールが知ったもう一つのこと。 「オールド・オスマン。あの平民は只者ではありません。それに、あの男の左手のルーン! この『始祖ブリミルの使い魔たち』に出てくるガンダールヴのルーンと…」 「まったく同じだと?」 コルベールは興奮したように再度頷いた。 「はい。それに先ほど、彼が物体を投げる瞬間・・・明らかにルーンが光っております! これは世紀の大発見ですよ、オールド・オスマン!ただちに上へ報告を…」 興奮するコルベールをオスマンは制止した。 強大な力を持つ者が現れた場合、たいていは喜ばしいことではあるが、同時に面倒なことも多い。 「ミスタ・コルベール。この件は私と君だけの秘密じゃ。 ボンクラ貴族どもがこのことを知ったら、面倒になるからのう。彼については、もう少し様子を見よう」 コルベールは少し残念そうな顔をしたが、すぐに同意した。 その様子を見ている影が一つ。 「まったく、大事にならなかったから良かったけど!勝手な真似をしないでよね!」 ルイズの自室に戻ったキートンは、彼女にこってりと絞られていた。 「すまない、すまない。今度から勝手なことはしないから」 キートンはキートンで彼女に謝っている。ルイズは一つ気にかかることがあった。 さきほど広場で見せたキートンの技…。 「ねえ」 「なんだい?」 「どうしてあんなに綺麗に飛んで、綺麗に花に当たったの?」 キートンはしばらく天井を見ていたが、やがて口を開いた。 「風、だよ」 「風?」 頷くと静かに話し始める。 「ああ。ギーシュ君との決闘の前に、風の向きを調べたんだ。 僕は指を掲げて風の向き、強さを調べた。その結果、最適だったのがあのテーブルの方向だったってわけさ」 「で、でもいくら風が強くても、あんな遠くに…」 「風を舐めちゃいけない。原始武器や投擲でも驚くほど飛距離や威力が上がることがあるからね」 ルイズはキートンの話を興味深そうに聴いていた。 でも、今回は予想より飛び過ぎたような気もするな…。キートンは少し気になった。 前ページ次ページゼロのMASTER
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7118.html
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 年末の二つの月が重なる日の翌日、トリステインとゲルマニアの連合軍六万を乗せた大艦隊がアルビオンへ攻め入る日が来た。 その出港の日の朝、ルイズ達は侵攻軍の大艦隊が浮かぶ、ラ・ロシェールの港町へとやって来ていた。 「また来る事になったわね…」 乗っているシルフィードから身を乗り出し、眼下に広がるラ・ロシェールの町並みを見渡す。 以前はジャンガとキュルケとギーシュと、そして…ワルドと来た所。 その時はアンリエッタに頼まれて、ウェールズ皇太子から手紙を回収する為に、アルビオンへと行った。 今度はそのアンリエッタを助けに此処へ立ち寄り、アルビオンへと行く。 あの時はワルドの裏切りで任務を果たせず、皇太子までも死なせてしまった。…だが、今度は違う。 今度は絶対に死なせない。必ずアンリエッタを助け、自分も無事に戻る。そう約束したのだから。 決意に身体を振るわせるルイズの肩を誰かが、ポン、と叩く。キュルケだ。 「あんまり気を張り詰めないのよ、ヴァリエール。色々気負っているのは解るけど、いつもそんなじゃ持たないわよ?」 「そうね」 ルイズは軽く笑いながら返事を返す。 ちなみに今のシルフィードの乗員はルイズ、タバサ、ジャンガの他に、キュルケとモンモランシーも雑ざってる。 キュルケとモンモランシーは本来ならば実家に戻るべきだったのだが、ジャンガが無理やり連れてきたのだ。 だが、強引とは言え…二人ともそれほど嫌な感じは無いようだ。 キュルケは祖国の軍に志願して、女子だからと認められなかったから、この誘いは渡りに船とばかりに喜んで付いて来たのだ。 モンモランシーは表面上嫌がってはいたが、心配だったギーシュと一緒に居られる事になったので内心喜んでいた。 とまぁ、各自思惑は色々なれど、結局は一緒に居るメンバーだった。 そうこうしているうちに、一行を乗せたシルフィードは艦隊が出港の時を待っている港へと到着した。 港は世界樹の枯れ木を利用している物だ。何本もの枯れ枝の先に何十隻もの軍艦がぶら下がっている。 枯れ木とは言え、巨大樹に軍艦が何十隻もぶら下がっている姿は壮観であり、ルイズ達は目を奪われた。 「凄いわね…」 「本当…、これから戦争に行くって事を嫌と言うほど実感させてくれるわ」 キュルケもモンモランシーも呆然と呟く。 そんな彼女達を尻目に、ジャンガはシルフィードの足に結わえ付けていた荷物を外している。 布に包まれて解らないが、結構大きい物だ。 ルイズはジャンガの傍へと歩み寄り、彼が外しているそれを覗き込んだ。 「ねぇ」 「ンだ?」 「それってなに? 夕べ一晩中コルベール先生の研究室に籠もってたようだけど、それと何か関係有るの?」 「さ~て…、どうだと思う?」 笑いながらそう返すジャンガの言葉を聞いて、ルイズは「別に」と言った。 答える気は無いと判断したのだ。流石に彼女も彼の扱いには慣れてきていた。 ジャンガは外したそれを背中に担ぐと歩き出した。 「オラ、行くぞ?」 「あっ!? ちょっと、待ちなさいよ!」 さっさと行ってしまうジャンガの後を、ルイズ達は慌てて追いかけた。 乗る予定の艦は直ぐ見つかったが、その直後に護衛の兵を伴った将校に出迎えられた。 「クリューズレイと言います。ミス・ヴァリエールは何方でしょうか?」 「あ、わたしですけど?」 ルイズが名乗り出ると将校はルイズと使い魔であるジャンガのみを別の艦へと案内した。 案内された艦は『ヴュセンタール』号と言った。竜騎士隊の運用に特化された艦である。 「あの…わたし達はどうしてここに?」 ルイズが気になって尋ねたが、士官は答えない。 迷路のような狭い艦内をジグザグに移動し、やがてとあるドアの前で止まった。 士官がノックをすると中から入室を促す声が聞こえてきた。士官はドアを開け、二人を中に入れた。 随分と広々とした部屋だった。大きなテーブルが中央にあり、豪勢な衣装に身を包んだ将軍達が席に座っている。 従兵が席を勧め、ルイズはその席へと座り、ジャンガは隣の席に無遠慮に腰掛ける。 当然、将軍達は苦々しい表情でジャンガを睨み付けて怒鳴ったが、当の本人はまるで意に介さない。 少しは空気を読んで欲しい、とルイズはため息を吐く。 と、一番上座に腰掛けていた将軍が手を上げ、他の将軍達を宥めた。 その将軍はそのままルイズに視線を向ける。 「アルビオン侵攻軍総司令部へようこそ。ミス・”虚無”<ゼロ>。総司令官のド・ポワチエだ」 その言葉にルイズは緊張した。訳も解らず案内された先での総司令官といきなりの対面だ、無理も無い。 「こちらが参謀総長のウィンプフェン。そして、ゲルマニア軍司令官のハルデンベルグ侯爵だ」 紹介された二人の将軍が頷く。 それからド・ポワチエは会議室に集まった将軍や参謀達に、ルイズを紹介する。 「さて各々方、こちらが陛下直属の女官にして我々の切り札でもある”虚無”の担い手、ミス・ヴァリエールですぞ」 だが、会議室は盛り上がらない。未だ胡散臭そうにルイズと使い魔であるジャンガを見比べるばかりだ。 そんな将軍達にド・ポワチエは更に言葉を続ける。 「先のタルブでの戦いの折、敵の軍勢を食い止め、『レキシントン』号を落としたのは彼女達なのです」 その言葉に将軍達はようやく関心を持ったのか、表情を一変させてまじまじとルイズ達を見つめた。 ド・ポワチエは演技が混じった笑みを浮かべる。 「いきなり司令部に通されて驚いただろう? いやすまん。この艦が旗艦だと言うのは極秘なのだ。 見て解るだろうが、何しろ竜騎士を搭載する事に特化した艦でな、大砲も積んどらん。 敵にバレて狙われては面倒な事になるからな」 「は、はぁ……、しかし、どうしてそのような艦を総司令部にしたのですか?」 「ンな事も解らねェのかよ?」 将軍達が答える前にジャンガが口を開く。 ルイズはジト目で睨んだ。 「解らないから聞いてるんだけど?」 ハァ~、と大仰な仕草でジャンガはため息を吐いてみせる。ルイズはカチンときたが、あえて何も言わなかった。 「戦艦は戦闘のために大砲やら、火薬やら武器を積まなきゃならねェだろが? ンな物でごちゃごちゃしてる船にこんな広い部屋は用意出来ねェ。 だから、そう言った物が無い船が選ばれんだよ……解ったかよ?」 「良く解る説明ありがとう」 ルイズは殆ど棒読みの口調で、形だけの礼を言った。 「雑談はその位にして、軍議を続けましょう」 ゲルマニアの将軍の言葉に会議室から笑い声が消えた。 率直に言ってしまえば、二人が――正確にはルイズ<虚無>が――呼ばれたのは、アルビオン侵攻の助力を頼むためだ。 アルビオンへと連合軍六万の兵を無傷で上陸させる為には、二つの障害が在る。 一つは未だ有力なアルビオン艦隊。 先だってのタルブ戦役でレキシントン号を落としたが、その数はまだ四十隻以上を残しているようだ。 対する連合軍はトリステイン・ゲルマニアを合わせて六十隻ほどの戦列艦を保有しているが、 指揮系統の違いなどで混乱が予測されており、数の差は無くなってしまうかもしれないのだ。 もう一つは上陸地点の選定。 アルビオン大陸で六万の兵を降ろせる要地の候補は二つ。 首都ロンディニウムの南部に位置する空軍基地ロサイスと、北部の港のダータルネスだ。 港湾設備の規模から、ロサイス上陸が連合軍にとっては望ましい。 しかし、真っ直ぐそこへ向かっては敵にその意図を教えているようなもの。 迎撃の準備と対策を立てる時間を相手に与えてしまう事になるのは間違いない。 ここで消耗してはアルビオン首都ロンディニウムを落とす事は叶わず、陛下の救出すら不可能となってしまう。 冷静に戦力を分析しながら一同に告げる参謀長の言葉に、将軍達は揃って難しい表情を浮かべた。 連合軍にとって今必要なのは奇襲である。 敵の抵抗を受けずに六万の兵を無傷でロサイスへと上陸させたいのだ。 その為には敵軍に連合軍が『ダータルネスへと上陸する』と思わせ、そこへ吸引するしかなかった。 敵の艦隊とロサイスへの無傷での上陸、この二つが現在総司令部が抱える問題だった。 「どちらかに”虚無”殿の協力を得られないだろうか?」 参謀の一人がルイズを見ながら言った。 「タルブの戦の時と同様に敵の艦隊を吹き飛ばせないだろうか?」 「それは無理です。あれほどの『エクスプロージョン』を放つには、余程の精神力が溜まっていないと不可能です。 精神力が溜まるのも、あと何ヶ月、何年掛かるか…」 参謀達は、やれやれ、と首を振った。 「そんな不確かな”兵器”は切り札とは言わん」 直後、その参謀は背筋が震えるような感覚に襲われた。誰かの鋭い視線を感じたのだ。 その視線を感じる方へ目を向け、参謀は息を呑んだ。 ――”虚無”が自分を見つめていた。 その目は細められ、冷ややかな視線を此方へと投げかけている。 まるで獲物であるカエルを睨み付けるヘビのような、殺し屋のように冷たい視線だ。 その身体からは冷たいオーラの様な物も漂っている。 ルイズはその参謀を静かに見つめながら口を開く。 「お言葉ですが、わたしは”虚無”の担い手であるだけで”兵器”などではありません。 陛下直属の女官であるラ・ヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。 わたしがこの場にいるのは、大恩在るアンリエッタ女王をお救いする事に、陛下直属の女官として”協力”する為。 そのわたしを”兵器”呼ばわりする事は、わたしのみならず、ラ・ヴァリエール家、そして陛下に対する侮辱となります」 ルイズの視線の冷たさが増す。 「故に、軽々しい発言はどうか慎んでください。そして…わたしは”虚無”ではなく、 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールですので、ご了承の程をお願いします」 参謀は小さく頷くと、椅子の背凭れに倒れ込むようにして寄り掛かった。 ルイズはそんな参謀の様子に小さくため息を吐いた。 そんなルイズの様子を見ながらジャンガは含み笑いをする。 (キキキ…こいつも少しは出来るようになったじゃネェか? 中々の殺気だゼ) 自分の影響であるのだが、そんな事を気にしたりはしない…寧ろ楽しんでいるジャンガだった。 場を取り成すかのようにド・ポワチエが口を開く。 「艦隊の方は我々が引き受けよう。きょ――いや、ミス・ヴァリエールには敵の陽動を引き受けてもらいたい」 ”虚無”殿と言い掛けて、ルイズの冷たい視線を感じたド・ポワチエは、慌てて言いつくろった。 「陽動とは?」 ルイズの言葉にド・ポワチエは誤魔化すように咳払いをする。 「先程議題に上がったとおりの事だ。我々がロサイスではなく『ダータルネスに上陸する』と敵に思い込ませてほしい。 伝説の”虚無”ならばそれ位の事が出来る呪文はあるのではないかね、ミス・ヴァリエール?」 ルイズは暫し考え込む。 敵に自分達が全く別の場所へと居るかの様に思い込ませる呪文――そんな物が在るだろうか? そう言えば”ディスペル・マジック”を覚えた時、デルフリンガーが言っていた。”必要があれば読める”と…。 ルイズは頷き、顔を上げる。 「解りました。作戦までには使用できる呪文を探しておきますわ」 おお頼もしい、と微笑むド・ポワチエ。…相変わらず演技の混じった笑みだ。 それで用が無くなったのか、二人は退室を促された。 「ホント…嫌な感じだったわ」 自分達が乗る艦へと戻ったルイズは開口一番、そんな感想を口にした。 広々とした部屋の中には彼女とジャンガ、再度合流したタバサ、キュルケ、モンモランシーが居る。 「ま、軍人なんてそんなものよ。戦争にどうやって勝つとか、勝ったらどうするかしか頭に無いんだし。 その総司令官の将軍も、結局は自分の出世の事しか頭に無かったりするんじゃないかしら?」 爪の手入れをしながら、つまらなそうにキュルケは言う。 忠誠心に疎いゲルマニアの貴族だからこその発言だった。 当の本人を見て来たルイズも頷き、同意する。 そんな二人のやりとりを欠伸をしながら見ていたジャンガは、ふと窓の外をボーっと眺めているモンモランシーに気付いた。 「ヨォ、どうしたドリル頭?」 「何よ?」 「オイオイ、心配して声を掛けてやったってのに、冷てェな…キキキ」 「あんたに心配される必要はないわ」 「キキキ。ま、それはともかくだ…」 窓の外を覗き込む。空を行く数多くの艦隊が視界に飛び込んでくる。 ルイズとジャンガが艦へと戻った直ぐ後、連合軍艦隊はラ・ロシェールを出港したのだった。 ジャンガはそれらの艦隊を暫し眺め、モンモランシーを振り返る。 「あの気障ガキが心配だったんだろ?」 「……さぁ、どうかしら?」 モンモランシーはそっぽを向く。しかし、その頬が僅かに染まっているのをジャンガは見逃さない。 顔を近づけ、小さな声で耳打ちする。 「そんなに連れなくすんじゃねェよ…。折角、寂しがってると思って連れて来てやったんだからよ」 「う、うるさいわね。わたしは寂しがってなんかいないわ。あいつなら心配ないんだし」 「そりゃまた、信頼してるじゃねェか?」 「ギーシュはこんな事で死なないわよ。あんたと決闘してからも何だかんだで生き残ってる位だし」 「キキキキキ、違ェねェ。テメェのようなバカみたいに付き添う女、ほっぽりだして死ぬほどバカな事もないしヨォ~」 ちょっと引っかかる物言いだったが、モンモランシーは反論を飲み込んだ。 「それよりも…、ねぇ何か考える事が在るんじゃないの?」 無理やりに話題変換を試みてモンモランシーはルイズに声を掛ける。 ルイズは困った表情を浮かべる。 連合軍六万を無事にロサイスへと上陸させる為には、『ダータルネスに上陸する』と敵に思い込ませる必要がある。 さてさて、どういった手段が有効なのか皆目見当もつかない。 これが人間とかならば精巧なゴーレムでも作って身代わりに出来るのだが、今必要なのは艦隊だ。 艦隊の偽者などどうやって用意すればいい? ”虚無”でもそのような事が可能な呪文があるかどうか…。 「立体映像でも使えりゃ簡単なんだがよ…」 ジャンガが呟いた。 「立体映像?」 気になったタバサが聞き返す。 「簡単に言えばな、人の姿や全く別の景色を空なんかに映し出す物だ。 俺のいた世界じゃそれほど珍しい物じゃないし、ガーレンの野郎もご大層な演説に使ってたからな。 まァ、ここにそんな物が在る訳ねェし…、無い物ねだりしても仕方ねェゼ」 「それよ」 ポツリとルイズが呟く。 ジャンガが怪訝な表情を浮かべる。 「それって何だ?」 「今あんたが言ったの! リッタイエイゾウとかってやつ!」 「だから、無ェって言っただろうが?」 「別にそれ自体を欲しいって言ってるわけじゃないわ。重要なのはそれがどう言う物かの説明よ」 ジャンガのみならず、その場の全員が首を傾げた。 そんな事は気にも留めず、ルイズは祈祷書を開いた。そんなルイズの行動にジャンガは眉を顰める。 「おい、どうしたんだよ? 説明が重要ってのはどう言う意味だ?」 「あんた、そのリッタイエイゾウとかって物の説明でこう言ったわよね。 ”人の姿や全く別の景色を空なんかに映し出す”って」 「ああ、そうだがよ。それがどうした?」 「それを聞いて思いついたのよ。何も陽動にゴーレムの様な傀儡を用意する必要は無いって事を。 ”それが居る”って解ればいいのよ、”視覚的”に」 「あン? そりゃまた…どう言う意味だ?」 ジャンガは聞き返すももうルイズは答えない。目を閉じて大きく深呼吸をした後、カッと目を見開いた。 精神を集中させながら、祈祷書のページを一枚一枚慎重に捲っていく。 そして、ついにあるページが光り出し、新たな呪文のルーンが現れた。 その呪文の内容を理解し、ルイズはしてやったりと言った感じで微笑んだ。 ――翌朝…、事態は急変する事になった…。 午前八時…朝の八点鐘が鳴り、戦列艦『レドウタブール』号での見張りが交代する時だった。 突如、砲撃の音が響き渡り、戦列艦の内の一隻が爆発、炎上して轟沈したのだ。 それだけではない…、虫の様な幻獣らしき物が艦隊のあちらこちらに突如として現れ、暴れ出したのだ。 突然の事に指揮系統は一気に混乱に陥ってしまった。 「チッ、何だってんだ…こんな朝っぱらからよ!?」 突然巻き起こった謎の襲撃による騒ぎで、ジャンガ達は就寝中の所を叩き起こされる事となった。 それに苛立ちながら、ジャンガは飛んで来た赤と緑の虫に爪を振り下ろす。 ガキン、と硬い物が砕かれる音がして、その虫は真っ二つに割られた状態で廊下に転がった。 その廊下に転がった物を見つめ、ルイズ達は怪訝な表情を浮かべる。 「虫……いや、生き物じゃないの?」 バチバチ、と音を立てながら火花を散らす、その虫の様な物はどう見ても生き物ではなかった。 よく見ると、どうやらそれは鉄などで出来ているらしかった。 『ガレンヴェスパ』――ガーレンが製造した赤い蜂の様な形をした小型メカ。 本来は同じガーレン製造の巨大メカ『バグポッドD』から射出される支援用の機体である。 装甲は薄いが、その速度は並みの飛行機械の比ではない。 大群で敵を取り囲み、その速度を活かした突進攻撃を得意としている。 『ガレンビートル』――ガーレンが製造した緑色の甲虫の様な形をした小型メカ。 『ガレンヴェスパ』同様、本来は『バグポッドD』から射出する支援用の機体である。 速度は若干劣るが、装甲は厚くなっている。 攻撃よりは捕獲に特化しており、ハサミの様な形状をした二本のマニピュレーターで敵を挟み込むようにして捕らえる。 「ガレンビートルにガレンヴェスパ…、あの野郎…大層な出迎えをしやがるゼ」 ジャンガは忌々しそうに舌打をし、部屋への中へと舞い戻る。 何をする気だ? とルイズ達が思う間も無く、ジャンガは部屋から再び出るや、廊下を駆け出した。 その肩には例の荷物が担がれている。 「ちょっと、どこへ行くのよ!?」 「外に決まってんだろうが!」 ルイズの叫び声にジャンガは止まらずに叫び声で返した。 荷物を抱えたままジャンガは甲板へと出た。 轟沈した艦から立ち上った黒煙は、まだ薄っすらと残っている。 艦隊のあちらこちらから悲鳴や魔法などの音が響いてくる。 無数に飛び交うガレンビートル、ガレンヴェスパの姿も確認できた。 そしてジャンガは鋭い視線で辺りを注意深く見回す。まるで何かを探すように…。 と、ようやくルイズ達が追いついて来た。 「も、もう…、勝手に走り出さないでよね!?」 「……」 「ちょっと! 聞いてるの!?」 「…静かにしろ」 「え?」 真剣な表情で周囲を見回しているジャンガにルイズは何かを感じた。 「…一体どうしたってのよ?」 「敵艦を探してるんだよ」 「敵艦?」 言われてルイズ達は周囲を見回す。 しかし、周囲に見えるのは見方の艦隊ばかりだ。 「そんなもの…何処にも見当たらないじゃない?」 「…いや、居る」 「居るって言っても…」 「ガレンビートルとガレンヴェスパ……どちらも航続距離はそれほど長くは無いはずなんだよ。 だってのに、こんな空のど真ん中にあれは居た。って事はだ…考えられるのは一つだけだ」 ジャンガの言葉にタバサが答えた。 「何かによってここまで運ばれた?」 「ああ。それに、あれだけの数となればそれなりの大きさの物だろうゼ。 加えて、先程の艦の轟沈の際には砲撃音も聞こえた。だから探してるんだよ…」 言いながらジャンガは周囲に視線を向ける。 やはり敵艦は陰も形も無い…が、何か違和感はあった。 (何処だ?) 違和感の在る場所を特定するべく、神経を集中させる。 ――砲撃音が再度響き、数隻が炎に包まれた。 「そこか!!!?」 叫ぶや、ジャンガは担いだ荷物を包んだ布を取り去る。 その下から現れた物を見てルイズ達は驚きの表情を浮かべた。 「あんたそれって…『破壊の箱』じゃないの!?」 それは『土くれのフーケ』によって盗まれ、それの操るゴーレムを撃退する為に自分が使用した『破壊の箱』だった。 確か、これは使い捨てとかジャンガ本人が言っていたはずだが…。 「それ…使えるの?」 「その為にあいつの研究室使わせてもらったんだよ」 言いながらジャンガは『破壊の箱』…否、『ミサイルポッド』を構える。 新たに取り付けた照準機を覗き込みながら、砲身を艦隊の前方へと向ける。 その狙いが何も無い空へ向けていられる事に気が付き、ルイズはジャンガに言った。 「ちょっと、そっちには何も無いじゃないの!?」 「黙って見てろ…」 そう言ってジャンガは集中する。 何も無い空の一点…、そこに照準を合わせ、引き金を引いた。 発射音が響き渡り、四発のミサイルが飛ぶ。 夕べコルベールの研究室で即席で作った物だが、出来は上場だ。 勢いよく飛び出したミサイルは数百メイルの距離を一気に突き進み――消えた。 「え?」 ミサイルが唐突に掻き消えたのを見て、ルイズは目を見開く。他の皆も同様だ。 ジャンガだけはニヤリと笑う。 「なるほどな…、そう言う事か」 そう呟いた瞬間、凄まじい爆発音が響き渡った。 直後、水滴が落ちて波紋が広がる水面のように、前方の空が震える。 その震えは徐々に強くなり、完全に歪んでしまった。 やがて震えが治まった時、前方にはそれまで無かった物が姿を現していた。 「どう言う事…?」 ルイズは呆然と呟く。それは全員の意見でもあった。 ――距離にして三百メイルも無い所に、三十隻以上の敵艦隊の姿が在った。 殆ど目と鼻の先に敵艦隊が突如姿を現した為、味方艦隊のあちらこちらから驚きの声が上がった。 ジャンガはミサイルポッドを肩から下ろし、床に置いた。 そこへルイズ達が声を掛けてくる。 「ね、ねぇ、あれってどう言う事!? いきなり艦隊が現れたわよ!?」 「どう言う事ってよ……昨日言ったやつの応用だ」 そのジャンガの言葉にタバサは口を開く。 「立体映像」 「え? じゃあ何…、あの艦隊は偽者だとでも言うの!?」 ルイズの言葉にジャンガは首を振る。 「…ちと違う。あれ自体は本物だ。その証拠に、今撃ったミサイルで燃えた艦が一隻落下して言ってるだろうが」 確かに、炎上する艦が一隻落下していったのが見えた。 その艦を一瞥してジャンガは言葉を続ける。 「ようするにだ、今の艦には立体映像の装置が積んであったんだよ。 艦隊の前方で、自分達の目の前の広い範囲に何も無い空の映像を映し出し、艦隊の姿を隠してたって訳だ」 「こんな近くにまで接近されても気付かれないなんて…」 とんでもない戦略性の高さだ。 これだけの距離で不意打ちを食らっては、味方はそうそう体勢を立て直す事は出来ない。 敵艦隊からは砲撃が繰り返され、次々と例の虫型のガーゴイルと思しき物が飛んで来る。 ジャンガは舌打し、ルイズを振り返る。 「オイ! 例の呪文は上手く使えんのか!?」 「え? ええ…、いけるわよ。でも…敵の艦隊が邪魔をしているじゃない?」 確かに、ダータルネスに行こうにも敵艦隊に道を塞がれている。 ジャンガは続けてタバサを振り返る。 「タバサ、シルフィードだ!」 「解った」 二つ返事で口笛を吹く。甲板に即席で建てられていた竜舎からシルフィードが出て来た。 キュルケがジャンガに尋ねる。 「どうする気なの?」 「そんなもん決まってる。道を作ってやる」 「道って……あなたまさか!?」 驚くキュルケの顔を見ながらジャンガはニヤリと笑う。 「ちょっと正気!? あの艦隊の中にシルフィードだけで飛び込んだら、ただじゃすまないわよ!?」 「んな事は百も承知だ。それに…別にあの艦全部を沈める気も無ェ」 「じゃあ、どうする気なのよ?」 聞き返すモンモランシーの言葉に、ジャンガは艦隊を見つめる。 艦隊の一番奥、一隻だけポツンと孤立するような形の艦が在った。 「”頭”をぶん殴るだけだ」 「頭?」 「あの艦隊を指揮している旗艦…人体で言う所の頭を潰す。手や足を潰しても、痛みを我慢して仕掛けてきたりもするが、 頭はそうは行かねェ。完全に潰せば動かなくなるし、ぶん殴っただけでも効果はある」 そしてジャンガはタバサに続き、やって来たシルフィードの背に乗った。 ルイズは慌てた。 「ちょ、ちょっと!?」 「俺とタバサで頭をやる。身体の動きが止まったら、テメェはダータルネスに向かって虚無ぶっ放せ」 「どうやって行けばいいのよ!?」 「シルフィードだけ戻す。テメェはただ、艦隊の動きが鈍った所で飛び出せばいいんだよ! やれ、タバサ!」 「解った。シルフィード、行って」 「きゅい!」 ジャンガとタバサを背に乗せたシルフィードは一声鳴き、甲板から勢い良く飛び立った。 前ページ次ページ毒の爪の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/332.html
第二話 青銅ギーシュ・ド・グラモン現る! ジーニアスは目覚めた。床で寝たので体中が痛い。 空を見る。少し太陽が昇り始めている。 「ルイズー、おきろー。朝だよー」 ルイズは学生である。よって、学校に登校しなければならない。そのためには先ず 起きなければならない。 「うーん…嘘よ…そんな奴じゃないはずなのに…」 なんだかルイズの顔が悪魔を見て震え上がったような顔である。悪夢でも見ているのだろうか。 まだこのあたりの事を知らないジーニアスはルイズが起きるのを五十分ほどまった。まだ起きない。 するとどうだろう、扉がバガッという音とともに勢いよく開く。 「ルイズ、いつまで寝てるのよ、登校時間とっくに過ぎたわよ」 「うーん…キュルケ!?なんで入ってきてるのよ!」 「登校時間とっくに過ぎてるから先生から呼んで来いって言われたのよ。寝ぼけのルイズ」 「誰が寝ぼけのルイズですってぇぇぇ!」 どうやら犬猿の仲のようだ。 「あれ、それ、使い魔?」 キュルケのそばにいた赤い生物を指差し、ジーニアスはたずねる。 「そうよー。サラマンダーよー。ブランド物よー」 「そいつはベッドに近づけないで。焼け焦げるわ。それと、ジーニアス、何で起こさなかったの!?」 ルイズは額に血管が浮き出てきている。 「起こしたよ。それでも起きなかったからほっといただけさ」 「起きるまで粘りなさいこのバカ使い魔!」 「バカとはなにさ」 これでもジーニアスは五つ年上よりかは頭がいいほうである。 「じゃ、私達は行くけど、早く支度してきなさいよー」 ばたむ、と言う音とともに扉がしまる。いまだルイズは額に血管が浮いていた。 「服、とりなさい」 「僕が?使用人じゃないんだからさ」 「いいから取りなさい」 「わがままだなァ」 「五月蠅いわねッ!」 花瓶が飛んでくる。ジーニアスはそれを見ても落ち着いていた。 ジーニアスはポケットにしまっておいた剣玉の尖ったところで花瓶を叩き落し、割った。 「あぶないじゃないか!」 「アンタが服を取らないからよ。さっさと取ってきなさい」 まったく、と呟きながらも服を取ってきた。はい、と差し出す。 「着せて」 「何処までもわがままだなァ」 「使用人がいる時は貴族は一人では着替えないわ」 「僕は使用人じゃないんだけど」 呟きつつも着せてやった。 「下着」 「男に対して恥じらいを知らないわけ?」 「男以前に使い魔でしょ、ほら、はやく」 どうやらジーニアスはタダの使用人扱いのようだ。 結局着替えさせるのに十分かかってしまった。朝食も食べる暇がなさそうだ。 「あ、ゼロのルイズがきたぜ!」 「使い魔召喚できなかったからってそこらへん歩いてた平民連れてくるなよ!」 わーっはっはっは、と教室は大笑い。 「五月蠅いわね風邪っぴき!」 「だれが風邪っぴきだ!風邪なんてひいてないぞ!」 「あんたのガラガラ声が風邪をひいてるみたいなのよ!」 ギャーギャーわめき散らす。先生らしき人が入ってくる。 ジーニアスはルイズに、先生が来たことを話す。が、全く耳に届いていない。 「そこ、うるさいですよ」 とうとう先生に叱られてしまった。 「えー、皆さん個性的な使い魔を召喚したようですね」 「とくにルイズはな!」 教室中の生徒全員が笑う。 「静かに」 その一言で全員が笑いをやめた。 ジーニアスはその後話された錬金の授業をおとなしく聞いていた。立ちながら。 そして昼食の時間。生徒全員が食堂に集まる。 「へぇ、ここにいるの全員が魔法使い?」 「メイジよ」 驚くのもしかたあるまい、長い三列のテーブルに、沢山の人が座っているのだ。 ざっと五百人はいるはず。 料理も凄い。とてもやわらかそうなパン、美味しそうなフルーツ、 こんがりと焼けた鳥一匹、ワインまでもがある。 「僕も食べようっと」 と、椅子に座ろうとするジーニアスだが、 「待ちなさい」 ルイズが止める。 「ここは貴族だけが入れるところなの。私の特別な思慮で、貴方は中。 ただし」 ルイズは床のほうを指差し、 「食事はこれだけよ」 堅そうなパン一枚と、なんだか小さなスープ皿に入った量の少ない具無しシチュー。 「ありえないね」 「そういうなら取り上げ!」 「それはひどいんじゃないかな?」 冗談抜きでご飯を抜かれてしまった。 その後、腹が持つはずが無かった。 ルイズには付き合わず、少しでも動かないように、人が居なくなった食堂で、 座る人の居なくなった椅子に座っている。腹の虫がなる。本日昼食から五回目である。 だんだんジーニアスは目の前がくらくらとし始める。仕方なしに、厨房へ向かう。 「すいません、何かあまり物を…」 そういっても反応は無し。ぐぎゅるるると腹の虫がなる。本日六回目。 ジーニアスの体力を数値化するなら12。殴られたら直ぐに倒れそうなぐらいやつれていた。 足につまずき転ぶジーニアス。立ち上がる気力もない。 パンさえあれば何か作れるのに、と思いつつも、意識はスターツアーズ中。 そんなとき、人影が目に入った。 スターツアーズして終わらなくてすんだ。 メイドのシエスタと料理長が賄い食を恵んでくれたのだった。 「このシチュー、美味しいね。味付けには何を使ってるの?」 「おう、これかい?溶き卵を一緒にしてルーを作ったんだ」 「へぇ、それで独特の味に。参考になるよ。 やっぱり料理も一つの魔法かな、こんなに美味しく出来るんだもの」 「同じ事考えてんだな、あんたも。料理できるのかい?」 「人並みにはね。自分で作らないと生きていけないから」 姉の料理の腕は壊滅的だから、とは言わない。 食べ終わったジーニアスは、すくっと立ち上がる。 「有難う、本当に美味しかったよ」 「賄いや余り物でよかったらまたいつでもご馳走しますよ」 「おう、賄いなんて一人増えても変わらないからな!ワッハッハ!」 いい人たちだ。好感が持てる。シルヴァラントもこんな人ばかりだったら、 人間牧場も作られなかっただろうに。 「そうだ、何か手伝えないかな?折角食べさせてもらったんだもの、 何かしなきゃ割に合わないよ」 「いえ、お気にになさらずに」 「いや、何かさせてよ。今、魔法の授業ないみたいだし、何かしたくてウズウズしてたんだよ。 いいでしょ?」 「そこまでいってくれるなら、食後のケーキを運んでください」 まかしといて!といって、両手にケーキの乗った皿をもち、走っていった。 「落とさないでくださいね。後で私も行きますから」 広場に行ったジーニアスの目に最初に飛び込んできたのは、金髪の少年とそれを取り巻き 騒いでる光景だった。皿を二つとも渡し、厨房に戻ろうとしたところ、金髪の少年のポケットから 独特の色をした香水が入ったビンが落ちた。 「そこの金髪の人、落し物だよ」 返事はない。 「ほら、落し物」 香水を取って顔の前に突きつけた。 「そ、それモンモランシーが特別に作ってる香水じゃないか」 「やっぱモンモランシーと付き合ってたんだな!ギーシュ!」 そして一人の少女がギーシュと呼ばれた少年に近寄った。 「やっぱりあの一年に手を出してたのね…」 「いや、誤解だ!」 そのビンが何よりの証拠よ!と言う叫びとともに頬に強烈なビンタを喰らう。 さらに。 「あの人とも付き合ってたのね…」 今にも泣き出しそうな顔で、ギーシュを見ている。多分こっちはモンモランシーだ。 「まて、誤解だ!誤解ったら誤解だ!!」 「不潔よぉぉぉぉ!」 モンモランシーはギーシュの頭にワインをだぼだぼとかけて走り去った。 「…おいそこの平民」 「なに?ギーシュさんとやら」 「君のせいで二人の女性が傷ついた。如何責任とってくれるんだ?」 「二股カケてる君が悪いよ。うん、絶対」 そうだそうだ!と周りの少年も囃し立てる。 「貴族に対する礼儀を知らないな君は!」 怒りを買ったらしい。その証拠に握りこぶしに力を入れすぎ、手から血が出ている。 「決闘だ!ヴェストリ広場で待ってる。後できたまえ! いや、君のような礼儀を知らないバカな平民では場所もわからないかな? はっはっは!」 「ふーん、貴族ってあんな奴ばっかなのかな?」 「ジ、ジーニアスさん…」 「大丈夫。あの二人の女の人、かわいそうじゃない?アイツに謝らせなきゃ」 昔はこんな事言わなかったはず。ロイドの熱血がうつっちゃったかな、と思いつつも、シエスタに問う。 「ヴェストリ広場ってどこ?」 ジーニアスは目だけ笑っていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/257.html
決着は互いに剣を買って終結した。 もっとも武器としての剣を欲していたのではなく話す剣から情報を引き出すのが目的だったのだが。 剣の名はデルフリンガーというらしく相変わらず兄貴と呼んでくる。 長い上に兄貴と呼んでくる事もありペッシと呼ぶと言うと 泣きながら?『デル公でもいいですからペッシだけはやめてください兄貴』と言われた。そんなに嫌か?ペッシは 3日程経過 特に何事も無く時間の流れに身を任せていたが、プロシュートは奇妙な違和感を感じていた。 「……この視線…人の物じゃあねぇな。とすると…使い魔か…?」 ここ数日明らかに何者かに監視されているという感覚がある。さすがにどこぞの吸血鬼のように『貴様見ているなッ!』というわけにはいかない。 人ならば誰が見ているかというのは分かる。だが探ってみても自分を見ているヤツなど確認できない。 とすると残る選択肢は使い魔を通しての監視しか無い。 夜になりルイズの部屋でどの辺りかを考える。 だが心当たりが無い。イタリアに居た時ならそんな心当たりなぞそれこそ星の数程あったが生憎この世界ではそんな心当たりは無い。 「昼間は仕掛けてこねぇとは思うがな…」 「…何か言った?」 「オメーには関係ねーこった」 「あんたの関係無いは私の不幸に直結してる事が多いから不安なのよ!」 (向こうからこねーならオレ自身を餌にして早めに炙り出す…か) 暗殺者という職業柄プロシュート達は徹底した現実主義者だ。 危険を危険として受け止め、それに対しての対策を素早く練りそれが終われば後は日常と変わらずに過ごす。 先の恐怖を先取りし縮こまるという事はしない。だからこそボスの娘の情報が手に入った時即座に行動を起こしたのだ。 (監視の時点で悩んでも仕方ねーことだな) そう考えると探りたければ探らせればいいという結論に達し…寝た。 (今は……な) 「…でプロシュートはどちらの剣を使うのかしら?」 翌々日例によってルイズとキュルケが揉めていたのだが、その内容がルイズとキュルケの買った剣どっちを使うかというものだった。 武器としての剣が欲しいのではなく欲しいのは情報なのだが二人にとっては意地の張り合いというものがあり揉めていた。 なんだかんだで第三ラウンドに発展し出た結論が 「「決闘よ!」」 「オレの関係無いとこでなら好きにしろ」 我関せずを貫こうとするプロシュートだが決闘内容が「自分を吊るしてそのロープを魔法で切った方が勝ち」などという提案が挙がった時は無言で二人を見据え ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ (この目は…) (間違いなく…) ( (老化させてやろうか?と思っているッ!) ) 二人がそう思った瞬間 「「ごめんなさい」」 さすがの二人も年取って放置されるというのは絶対に嫌らしく同時に謝っていた。 夜になりルイズとキュルケ、タバサの三人が中庭に集まり決闘を始めようとしてるがプロシュートは居ない。 二つ出ている月の元の草原。そこにプロシュートが佇んでいる。無論、月を見ているわけではない。 「早いうちに炙り出されてくれると楽に済むからな…」 学園からある程度離れた場所、夜、そして一人。襲撃するにはこの上ない条件と言える。 襲われる事を知っての行動。 相手もそれは承知の上だろうが確実にやるならこの条件しか無い。 自らを釣り餌にした行動だ。 しばらく経ったが何も起こらない。 ――が僅かな匂いを感じた瞬間 (毒かッ!?) 瞬時にそう判断し姿勢を低くつつ風上に向かう。 風上に移動しつつ周辺を探るが辺りに人は見当たらない。 だがその間も流れてくる匂いは途切れない。 (風上に移動してるってのに誰も見えねぇ上に匂いも途切れやしねぇ…どういう事こった…?) 視界が良好というわけではないが月明かりがある。誰かが居れば分かるはずだった。 (何の毒が知らねーが…これ以上はマズイな…探す発想を『四次元』的にしなくてはいけないんだ…! 使い魔で監視するって事は相手はメイジって事だ…ヤツらを探すにはオレ達の常識外の発想が必要だッ!) 移動しながら考えるがある事に気付き―― 「なるほどな…同じ高さで見つからないって事は下か上って事だ」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 上を見上げる…居た。プロシュートから10メートル程離れた上空に揺れるようにしてそいつが居た。 「オレの移動に併せ絶えずそれを流し続けてたってわけか…」 「気付いたみたいね…でもあいつの射程は精々1~2メイル ここまでは絶対に届かない。次はあの薬で――」 そう言おうとした瞬間己の身に力が入らない事に気付いた。 「気温が低い夜とは言え…老化は確実に進行しているんだぜッ!!」 最初に香りを感じた瞬間スデにグレイトフル・デッドの広域老化を発動していたのだが気温が低めな夜という事もあり効果が出るのに時間が掛かった。 「何で…!?あの時は近付いてなきゃ攻撃できてなかったのに…!」 高度が下がり始める。効果は低いとはいえ疲労感を起こさせるには十分だ。よろめいたように地面に着地し…その時それが誰か分かった。 「テメー…あのマンモーニに香水ブチ撒けてたヤツか。確かモンモランシーとか言ったな… どういうつもりか知らねーがオレを倒す覚悟があるって事は倒される覚悟はできてるんだろうな…」 モンモランシーは答えずこちらを凝視してきている。攻撃を仕掛けるべく近付くが 「何…ッ!?」 急に体の感覚が無くなった。正確に言えば、触覚が完全に麻痺し体の動きも鈍い。 「さっきの匂いの正体は…麻痺毒ってわけか」 「麻痺毒?少し違うわね…麻痺してるのは確かだけど痛覚だけは残すっていう高尚なものよ」 「趣味の悪りぃもん作りやがったな…」 「『悪魔憑き』に趣味が悪いって言われたくないわ、ギーシュを虫ケラみたいに殺しておいてッ!」 杖を向け魔法を唱えてきた。恐らくは水系統の魔法。 迎撃しようとするが体の動きが鈍い。つまりグレイトフル・デッドの動きが鈍くなり迎撃が不可能だ。 全て命中した。命中したはずだったがプロシュートはそこに平然とというわけではないが依然として立っていた。 「命中した…はずなのに!」 「賭けだったが…魔法ってのはスタンドに干渉できねーようだな…」 スタンドはスタンドでしか傷付ける事はできない。それを利用し命中する直前グレイトフル・デッドを全面に展開させ全て『受け止めた』のだ。 体の動きが鈍いがG・デッドを前面に出し突き進む。 魔法が飛んでくるが全て命中しない。いや、命中はしているが当たる直前で弾かれている。 触覚が無いため平衡感覚が取れてないが何とか接近し――掴んだ だが、掴んで互いの目が合った瞬間何を狙っていたのかを理解する。 ああ、そうかこいつのこの目 ――こいつ…テメーの命を的にしてやがる バギィ 杖をヘシ折りそのままの勢いで投げ飛ばす 「…どうして殺さないのよ!ギーシュを踏み潰した時みたいに!」 「ハン!こんな人気の無い場所でオレがオメーを殺せば今度は決闘の時みてーにはいかねーからな」 この状況下で正当防衛を主張したとしてもあの連中の事、プロシュートが不利になるのは自明の理だ。 「今のオレの任務は『護衛』だ。この状況でオメーを殺るとルイズを護衛するしない以前の問題になるからな…」 唯でさえ状況が危ないのにここでモンモランシーを殺せば確実にルイズが責任を取らされる事になる。 それでは護衛の失敗だ。 本来なら老死させるとこだが、プロシュートの能力が老化という事はスデに知れ渡っている。 暗殺者とヒットマンの違いがこれだ。暗殺者は常にバレないように相手を殺す。 ギーシュの時は自身の能力を見せ付ける事で恐怖心を周りに植えつけさせこれ以上決闘なんぞを挑まさせる気を無くすのが目的だったが今回はそれが仇になった。 「…ここで私を殺さないとまた襲ってくるかもしれないわよ?」 「来たければ来やがれ、そのぐらい『覚悟』している だが、一つ言うがオレの任務は『護衛』だ。オレじゃあなくルイズを狙えば容赦はしねぇ」 「…………」 その場をふらつきながらに立ち去るプロシュートをモンモランシーはただ黙って見送るしかできなかった。 モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ ―― 完全敗北(再起可能) 二つ名 香水 「思ったよりヤバいな……」 麻痺しかけた体を半分引きずるようにして中庭まで戻ってきたが毒が回ってきたのか本格的に体が動かなくなってきた。 「助けてくれ兄貴ィィィィィィイイイ!」 遥か上空から声が掛かり上を見てみると…デルフリンガーがロープに吊るされていた。 そしてその下に杖で構えている問題児が二名。 「……何やってんだ?」 「決闘よ。ロープを魔法で切った方の剣をプロシュートが使うかを決めるためのね」 「兄貴ィィィィィイイイ死んじまうぅぅぅぅぅ」 「…別に剣を吊るす事たぁねーだろ」 上の方から「そうだぞー」という声が聞こえるが 「そっちの方がやる気がでるじゃない」 と、スデにやる気満々で止める術は無い。 ルイズがロープを狙い杖を構え魔法を使ったが―― ドッグォーz_ン 「テメェェェェェェ俺を殺す気かァァァァァァアアアア」 デルフリンガーの後ろの壁が見事に爆発しヒビが入った。 「失敗しても爆風でロープが切れると思ったのに…!」 「最初から爆発が前提ェーーーーーッ!?テメー魔法ナメてんのかァァァァァァアアアア」 ギアッチョの如くデルフリンガーがキレる。当然だがキュルケは大爆笑だ。 「ロープじゃなく壁を爆破するなんて『ゼロ』は本当に器用ね!あっはっは!」 敗戦ボクサーのように膝を落とすルイズを後ろ目に今度はキュルケが狙いを付ける。 「『微熱』の二つ名の由縁見せてあげるわ」 杖の先から火球が現れロープに向かい真っ直ぐに飛んでいく。 キュルケの十八番『ファイヤーボール』だ。 「兄貴ィィィィ落ちる!落ちて折れる!折れて死ぬぅぅーーーーーーッ!」 地面に落ちていくデルフリンガーだが上空でシルフィードと共に待機していたタバサが『レビテーション』をかけ激突は免れた。 「私の勝ちね、ヴァリエール!」 勝利宣言も高らかに勝ち誇るキュルケだが、敗者の方はというと…ショボーンという音が聞こそうに座り込み『の』の字を書いている。 だが、地面が揺れる。 「な、なに!?」 全員が思わず息を飲む。 「ゴ、ゴーレム!?でもこんな大きいの見たことない!」 ギーシュ(故)のワルキューレなどとは比べ物にならない程の大きさだ。 蜘蛛の子を散らす。そんな表現がピッタリ当てはまる勢いでルイズとキュルケがゴーレムの移動線上から逃げた。 だが、一人逃げない者が居た。否、逃げれなかった者が居た。 「くそ…今頃回ってきたか」 地面が派手に揺れたせいで倒れたのだが体が麻痺しているせいでこれ以上動けないのだ。 その場を動かないプロシュートに我を忘れたルイズが駆け寄る。 「な、なんで逃げないのよ!あんたってば!」 「後始末の後遺症でな…!」 ゴーレムが近付き二人の頭上でその巨大な足を上げる。 「オレに構うなッ!」 「く…重いのよあんた!」 引きずってでも動かそうとするが体格差が大分ある二人だ。ゴーレムの足からは逃れるには至らない。 覚悟を決めた瞬間シルフィードが滑り込み二人を足で掴み上げた。そしてそのまますり抜けるようにして上空に舞い上がった。 その下でゴーレムがひびの入った壁を破壊し中に進入。 しばらくしてからまた肩に乗りモンモランシーと戦っていた草原へと向かっていく。 「土のゴーレム!?…あの大きさだと操ってるのはトライアングルクラス…以上ね」 「…随分と派手にやってくれたじゃあねーか」 体さえ動けばゴーレムの肩に乗ってロープを着ているヤツに直触りを叩き込んでやるとこだが生憎体は言う事を聞いちゃくれない。 そうしてるとこにルイズが自分を危険に侵して助けようとした事を思い出した。 「助かったから良いが『構うな』と言ったはずだぜ?」 それにルイズが当たり前のように言い放つ 「問題があるとは言え私の使い魔なんだから見捨てたりするわけないじゃない」 「……言ってくれるじゃあねーか」 そう言い放ちまだ少しだがルイズの『覚悟』を認めた。 翌日…当然の事ながら学院は大騒ぎだ。 何せ宝物庫の壁を物理的な力のみでブチ破り壁に 『破壊の杖、確かに領収致しました。土くれのフーケ』 と犯行声明が残されていたのだから。 「土くれだとッ!?盗賊風情が魔法学院に手ぇ出すなぞナメやがってクソッ!」 「HOLY SHIT!衛兵と当直は何をやってたんだね!」 「OH MY GODッ!破壊の杖を盗まれるとは…ドジこいたーーーッ!こいつはいかーーん!王室がお怒りになられるチクショーーー!」 とまぁ教師達がディ・モールトベネな具合にテンパっている。 完全にテンパり責任の擦り合いをしている教師達を尻目にオスマンに眼鏡の女性―ロングビルがフーケの居場所を掴んだ事を知らせていた。 「至急王室に報告を!王室衛士隊に頼んで、兵を向かわせなければ!」 そうU字禿コルベールが叫ぶがオスマンがその年齢らしかぬ怒気を含んだ叫びを上げる。 「王室なんぞに知らせている間に逃げられたらどうするんじゃ!S.H.I.Tッ!! それにこれは我が身の不始末!魔法学院の問題を我々で解決できねばどうする!」 オスマンが捜索隊を結成するため有志を募るが…教師陣は誰一人として杖を掲げようとしない。全員お互いの顔を見合わせるだけだ。 「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!」 犯行現場を見ていたため呼ばれていたルイズが杖を掲げる。 「何をしているのです!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて……」 「誰も掲げないじゃあないですか」 『覚悟』を決めた強い言葉がシュヴルーズの言葉を遮らせる。 それに続くようにしてキュルケ、タバサが杖を掲げた。 それを見てオスマンが笑った。 「そうか。では頼むとしようか」 幾人かの教師達が生徒達だけでは危険だとオスマンに進言するが 「では、君達が行ってくれるかね?」 と問われると全員黙り込んでしまう。 「彼女達三人に勝てる者が居るなら一歩前に出たまえ。 居らんじゃろう?それに彼も居る事じゃし心配あるまいて」 全員の視線がプロシュートに集まった。 「「「悪魔憑き…」」」 どちらかというと教師達はルイズ、キュルケ、タバサの三人よりプロシュート一人にビビっている。 得体の知れない力で一瞬にして人を老化させメイジを顔色一つ変えず殺す事ができるのだからそれも無理ない事なのだが。 誰も前に出ない事を確認するとオスマンが四人に向き直った。 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 ルイズとキュルケとタバサが真顔になり直立し―― 「杖にかけて!」 と同時に唱和した。 プロシュート兄貴 ―― ザ・ニュー任務! 二つ名 悪魔憑き 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5926.html
前ページ次ページ魔法陣ゼロ 6 昼 学院中の人々が、突然の揺れと轟音に驚いていた。 塔の最上階に位置する学院長室は、特にひどい揺れであった。 溜め込んだ結果積みあがった書類は派手に崩れて、学院長の机は悲惨なことになっていた。 「ふう、やっとおさまったわい。 ミス・ロングビル、今のは何じゃろうか?」 床に落ちた水キセルを拾ってから、ここの学院長であるオールド・オスマンは秘書に尋ねた。 学院長の秘書、ミス・ロングビルは、自分の机で書き物を続けながら答える。 「学院が砲撃されたようには見えませんね。 また、あの子が魔法を失敗したのでは?」 「ヴァリエール家の三女か。じゃが、あれはさっきあったではないか? しかも、それにしては衝撃が大きすぎるような気もするのう。 ミス・ヴァリエールは、今何をしておるのかね?」 「罰として、失敗の後片付けをしているはずです」 「そうか。では、ちょっと様子をみてきてくれんか」 「了解しました、オールド・オスマン。 ……ああ、少々お待ち下さい」 イスから立ち上がろうとしたミス・ロングビルは、足元から見上げる視線を察知して動きを止めた。 一旦伸びたオスマンの鼻の下が、元に戻った。 「なんじゃ、はよ行かんか」 「ええ。しかし、このまま立ち上がると、ついうっかりネズミか何かを踏み潰してしまいそうで」 「チュッ!?」 ~~~ しばらくの間、沈黙に包まれていた教室。 呆然としていたキュルケが、我に帰った。 「な、なんだったのよ……? ククリちゃん、今の、あなたがやったの?」 キュルケに話しかけられたククリが、ハッと気付く。 「あっ! これって――」 ククリは、以前に聞いた『バトーハの塔』にまつわる悲劇を思い出した。 恋人を想う強い気持ちが生んだ、300年前の、突然の悲劇。 ちょっとした意見の相違から、ミグミグ族の少女は恋人を50年間も封印してしまった。 封印された少年が目覚めた時、時代は変わっており、少女もすでにこの世にはいなかったと伝えられている。 その状況に似ている。いや、それよりもひどい。 「ど、どうしよう! ニケくんとルイズさんを、封印しちゃった!」 「封印って、この下にルイズとニケが!?」 「そうなのよ……う、う、 わあああああああん!」 ククリは、声を上げて泣き出してしまった。 キュルケが張り付く布を剥がそうとする。が、全く歯が立たない。 「爪が痛いわねえ。 じゃあ、これでどうかしら?」 キュルケの杖の先に、青白い火球が出現した。 握り拳程度の小さな球だが、高温の炎の塊だ。通常なら、鋼の盾でも貫通できる威力。 しかし―― 「嘘!?」 中のルイズまで焼き尽くさないように、表面を焼くだけにしようとした。 だが、火球は布に接触した瞬間、消滅した。 燃えるどころか、焦げ目すら付かない。 さらにディテクト・マジックをかけたが、何も分からない。 アンロックもレビテーションも錬金も、強固に張り付いた封印を解くことはできなかった。 「あたしの魔法が効かないなんて……。 あら、なんか書いてあるわね。文字かしら?」 地面を塞ぐように張り付く×印の隅に、何かが小さく書いてあった。 「ほ、ほんとだ。えっと……500年?」 「へ?」 ククリは、ギリを封印できるほどの魔力を持ち、その後もレベルが上昇している。 さらに、300年前の件のような、非常にささいな不一致ではなく、キスを奪われたという事実に対しての反応である。 封印の効力は、桁違いだった。 「この封印が解けるまで500年…… あたし、それまで一人で生きていかなきゃいけないのね」 「いや、それ無理でしょう」 そのとき。 ×印の中心が、少し浮き上がった。 「え?」 さらに、二度、三度と、浮き上がる。 そのたびに、振動と爆発音が大きくなる。 そして―― 爆音とともに、封印が吹っ飛んだ。 「ハア、ハア、……なな、なんなのよ、今のは!」 「ゲホッ、ゲホッ。ルイズ、もっと丁寧にできなかったのかよ」 「ニケくん!」 ススまみれのニケに、ククリが抱きついた。 「もう……もう、ずっと会えないかもって思ってたのに…… ごめんなさい、ごめんなさい」 「謝るのはこっちだよ。キス、されちゃってさ。 避けようと思えば、避けることもできたんだ」 「いいのよ。ルイズさんは契約で、しかたなかったんだから。 良かった、また会えて……」 ニケの腕の中で、ククリはポロポロと涙を流す。 「教室が、また汚くなっちまったな。 ククリ、もう一回、あれできるか?」 「うん、もちろん」 再びシエスタ(?)が現れ、あっという間に教室を片付けた。 封印された時と爆破された時に、教室の床はボロボロになっていたが、修繕もなされている。 「そろそろ腹が減ったな。厨房に行こうぜ」 「うん」 そして、ルイズとキュルケは、忘れ去られている。 「ルイズ、あの子について、聞きたいことが色々とあるんだけど」 「今は、答える気にならないわ…… わたし、もう一回着替えてから食堂に行く……」 ふらふらと歩きだしたルイズを、慌ててキュルケが支えながら、二人は寮塔に向かう。 そんな二人を目撃するミス・ロングビルが、彼女達の背後に立っていた。 「あれは……ヴァリエールとツェルプストー? 仲が悪いと聞いていたけれど」 ミス・ロングビルは、掃除の結果を確認しようと教室に入る。 貴族の箱入り娘が、魔法抜きでまともに掃除できるとは、誰も考えていない。 罰として掃除させると言っても、結局はメイド達に仕上げを指示することになる予定だった。 「さて、どれだけ片付けられたか――ありゃ?」 どうせ大きな屑を取っただけだろうと思いつつ見た教室は、完璧以上の掃除がなされていた。 壁や天井は、学院に着任して日の浅い彼女には見た事のない白さであった。 「どういう事……? ヴァリエールは魔法が使えないハズなのに……? ああ、そうか。ツェルプストーが手伝ったのね。実は仲いいんじゃないの」 結局揺れの正体は分からなかったが、原因はどうでも良い。問題は結果だ。 彼女の観察眼は、学院そのものに起きた変化を見逃していなかった。 ~~~ 「シエスタ、メシくれ~!」 厨房の入り口から、ニケが大声で呼んだ。 ニケの辞書に遠慮という言葉は無い。 「シエスタさーん、いないの?」 いくら呼んでも、シエスタは出てこない。 代わりに、ヒゲ面な料理人風の男が出てきた。 「シエスタ! ……じゃなかった」 「俺はコック長のマルトーだ。 シエスタは、いねえよ。休ませてる」 「体調でも悪いのか? 今朝は元気そうだったけどなあ」 「今日のあの子は、どうやら様子がおかしいらしくてなあ……。 笑いながら廊下を走るシエスタを、何人ものメイドが目撃してるんだ。 なんでも、あまりの迫力に、まるで巨人のように見えたそうだ」 「へえ、そうなんだ」 「だから、しばらく使用人部屋で静養させて―― ん? なんだ?」 近づいてきたメイドが、マルトーに何かを耳打ちした。 「な、何? また笑いながら走ってたって!? 参ったな、まじめでいい子だったんだが…… 貴族の奴らにいじめられて、精神的にまいってたんだろうな。 実家に帰すのが、シエスタのため、か。 しかし、こうなると人手が足りなくなっちまうなあ……」 「メイドさんって、大変なお仕事なのね」 「お、おい、ククリ、ちょっとこっち来い!」 ニケが青い顔でククリを引っ張った。 マルトーから離れて、ひそひそと話す。 (どうしたの、ニケくん) (笑いながら走ってたって、あのグルグルのことなんじゃないか?) (あ、そっか。あたしが作ったグルグルを、本物のシエスタさんと勘違いしてるんだ) (誤解を解いておくべきかな……) 「おい、メシが欲しいんだろ? そこの鍋の中は、好きに食え。食器はあの棚にある。 俺は昼食の準備で忙しいんだ。じゃあな」 マルトーはそう言うと、厨房の奥へ消えてしまった。 とりあえず腹は減っているので、昼食を取ることにした。 ククリが二人分をよそい、ニケに皿を渡す。 「ねえ、あたしたちって、食べてばっかりじゃない? お礼に、準備を手伝ってあげようよ」 「いいじゃんか、どうせ余り物なんだから―― あ、でも、シエスタがいないのはオレ達が原因なんだよなあ……」 「そうよ。だから、ね?」 「そうだな。ついでに、誤解も解いておくか」 食事を終えた二人は、厨房の奥に向かった。 マルトーが指示を飛ばしている。 「ねえ、人手が足りないんでしょ? あたしたちも手伝うよ。食事のお礼がしたいから」 「本当か? そりゃありがてえ。 じゃあ、そのデザートを配ってくれ。二番目の列だ」 ククリが、ケーキが並ぶトレイを持った。 茶色いケーキからは、甘そうな香りが放たれている。 「なあ、シエスタのことなんだけど――」 「ワイン運べ! あとフォーク! サラダのはしばみ草入れすぎだ! 奴らどうせ残すんだから減らせ! おい、その鍋もう火からおろせ! 深皿が足りない? じゃあ倉庫から出して来い!」 「あ、あの――」 「お前も手伝ってくれるんだよな? 頼むぞ!」 マルトーは、笑顔でニケにはさみを渡す。 ……言い出せなかった。 「あ、お前はちょっと汚ねえなあ。あのメイド服にでも着替えな」 二人が厨房から出ると、食堂には貴族達がパラパラと着席し始めていた。 テーブルの上の皿には、料理がまばらに並ぶ。昼食の準備が終わるには、もう少し時間がかかりそうだ。 使用人達が何人も歩き回り、料理や食器を配っている。 「食事の準備をする方は、大変ね……」 まず、料理の種類が多い。さらに人数も多いので、並ぶ皿の枚数が半端ではないのだ。 人手が足りてないのは、本当のようだ。 「早く運んで、話をしたいよ」 隣の列は、すでにデザートが配られていた。 それを真似した配置で、ケーキを置いていく。 半分ほど行ったところで、ニケは後ろから肩を掴まれた。 「ちょっと、変態使い魔。なんでメイドの真似事なんかしてんのよ。 あんたのせいで、私の香水が――」 「今は忙しいんだよ、あとで」 罵詈雑言を背中に受けつつ、仕事を続けた。 その間にも続々と貴族達が食堂に入ってくる。やがて、席はほとんど埋まった。 一通り配り終えて、厨房に戻る。ケーキが一つ余ったので、二人で処理することにした。 「チョコレートのケーキ…… こっちの世界には、こんなおいしい物があったのね!」 ククリはうっとりしている。MPが全回復した! 一口食べて甘ったるさに気持ち悪くなったニケは、しばらく休んだあと、再びマルトーと話そうとした。 「今朝のことなんだけど――」 「おお、ご苦労! じゃあ、次は……塩とコショウの補充だ! あの瓶を持って行って、減ってる瓶と交換してくれ」 「いや、だからグルグルで――」 「グルグル? いや、テーブルの周りを一周づつグルっと回ってくれればいい。そうすぐには減らん。 おーい、その鍋洗っておけ!」 ……誤解を解くのは、もうすこし後になりそうだ。 再び食堂に入ると、すでに食事が始まっていた。 テーブルの脇を歩いていき、ルイズの近くに来た。 「あんた、なにやってんのよ?」 「見ての通り、厨房の手伝いだよ」 「……あんまり勝手な事しないでちょうだい」 「いいじゃんか、オレの勝手だろ」 さらに行くと、なにやら騒がしい領域があった。男子生徒達が恋愛話で盛り上がっている。 その中心では、キザな金髪の男が、無駄に手振りを交えつつ何やら語っていた。 彼らのテーブルを見ると、コショウが切れていた。 空き瓶を回収しようと、椅子の間から手を伸ばす。 と、その時。 「薔薇は多くの人を楽しませるために――」 バラを左に、グラスを右に持つ手が、大きく広がった。 勢い良く動いた手が、ニケの腕とぶつかる。 グラスが大きく傾き、水がこぼれた。 「うわっ、何すんだよ、お前! 服にかかったじゃないか!」 「ん? なんだ、メイド……なのか? 早くテーブルを拭きたまえ」 「やだよ。そっちが変な動きしてたからこぼしたんだろ」 「何を言うんだ君は? この僕に責任があるとでも言うのか?」 「ああ、そうだよ」 「なんだと? どう考えても、君がそんな所にいたからだろう。まったく、礼儀を知らない平民だな。 魔法学院も堕ちたものだ、こんな無礼者が僕達の側に存在しているなんて」 睨み合う二人に、横から割り込みが入った。 今朝、ニケとトイレで対面した金髪縦ロールの女だった。 「ちょっと、ギーシュ! なんでそんな変態と一緒にいるのよ!」 「ああ、モンモランシー! このメイドもどきが、僕に粗相の責任をなすりつけようとしてるのだよ。 しかし、変態ってどういうことだい? こいつは無礼なだけでなく、変態でもあるのか? 確かに女装はしてるが」 「そうよ。わたしが今朝トイレに行ったら、そいつがいたのよ」 「な、なんと! けしからん!」 「しかも、ギーシュにあげようとしてた香水が流されてどっか行っちゃったのよ!」 「おい、あれはお前が勝手に魔法で流したんだろ!」 「あんたがいなかったら、魔法を使うことなんて無かったんだから!」 ピクピクと震えていたギーシュが勢い良く立ち上がり、ニケにバラの花を向けた。 「貴様! 僕と愛しのモンモランシーに対しての侮辱、さらに彼女の好意をへし折った罪、そして覗き! 謝って済むものではないぞ!」 「ギーシュ様……愛しのモンモランシーって?」 わめくギーシュの後ろに、涙目の女が立っていた。 「やはり、ミス・モンモランシーと……」 「ご、誤解だ、ケティ。いいかい、僕の心に住んでいるのは、君だけだ」 「やっぱり、あの一年生に、手を出してたのね?」 「モンモランシー、誤解だ。彼女とは――」 「嘘つき! バカ! 変態 !覗き魔!」 モンモランシーはニケからコショウの瓶を奪い、ギーシュとニケの顔に投げつけた。 二人は痛みにうめきつつ咳き込む。 「ゲホッ、ゲホッ、なんでオレまで」 「もしかして、金髪の覗き魔が女子トイレに現れたって噂は…… ギーシュ様、まさかあなたなの!?」 「それこそ完全に誤解だ、ケティ。二股はともかく、断じて覗きなどしていない!」 「じゃあ、二股は本当なのね?」 「そう、僕はモンモランシーと……ゲフンゲフン、違う。どっちも誤解だ!」 「嘘よ! もう信じられない!」 ギーシュは頬をひっぱたかれた。乾いた音が痛々しい。 「さようなら!」 (オレも、さようなら……) ケティは離れたテーブルへ戻って行った。 混乱に乗じてニケも厨房に戻ろうとしたが、ギーシュに気付かれた。 「待て、メイドもどき! もうお前は許さないぞ、決闘だ! 二度と貴族に歯向う気にならないように教育してやる!」 「やつあたりだろ! あと、オレはメイドじゃない」 「そりゃあ……そうか、ルイズの使い魔か。だが、そんなことはどうでもいい。 ヴェストリの広場まで来たまえ、逃げるんじゃないぞ!」 ギーシュは友人たちを引き連れて、どこかに去って行った。 「さて、帰るか」 もちろん決闘などに行く気は全くなく、ニケは食堂から出た。 厨房では、チョコレートクリームがこびりついたボウルと、ククリが格闘していた。 「なんか騒がしかったけど、どうしたの?」 「変なやつに絡まれただけだよ。ほっときゃいいさ。 ところで、午後も授業はあるんだよな?眠いだけだから行きたくないよ」 「うん、あたしも……」 「じゃあ、今から学院の中を探索してみないか? さっき建物を歩き回ってたから、だいたいの構造は分かったぜ」 「うん、行く。じゃあ、ルイズさんに言ってくるね」 ククリが厨房を出ると、食堂では生徒たちが妙にざわついていた。 「ルイズさん、午後はニケくんと学院の中を見に行きたいんだけど、いい?」 「そうね……寝言がうるさいだけだし、授業は出なくていいわ。 ところで、平民がヴェストリの広場でギーシュと決闘するとかいう話が流れてきてるんだけど、なんか聞いてる?」 「決闘? ううん、知らないよ」 「そう。あんたたちは、揉め事を起こさないように気を付けてね」 「うん、分かった。じゃあ、行ってきまーす」 ククリは着替え終わったニケと合流し、揃って厨房を出た。 今日も空は晴れていて、散歩するにはいい陽気だ。 前ページ次ページ魔法陣ゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7459.html
『召喚者』 分類名。タグではない。クロス召喚した人物のタグのみをつける事。複数人のメイジがクロス召喚した場合は、全員分つける事。ただし、クロス召喚された対象の敵方などが召喚されていた事が序盤以降に判明する場合(以降、追加召喚という)は、ネタバレ防止の為につけない事。 ルイズ ルイズがクロス召喚した場合につける。召喚されたのがサイトであった場合もつける。 タバサ タバサがクロス召喚した場合につける。 キュルケ キュルケがクロス召喚した場合につける。 モンモランシー モンモランシーがクロス召喚した場合につける。 ギーシュ ギーシュがクロス召喚した場合につける。 マリコルヌ マリコルヌがクロス召喚した場合につける。誤字に注意。 その他学院 上記以外の学院関係者がクロス召喚した場合につける。例:生徒、教師、フーケ、オスマンなど。 イザベラ イザベラがクロス召喚し、かつ作品のメインとなる場合につける。 ジョゼフ ジョゼフがクロス召喚し、かつ作品のメインとなる場合につける。誤字に注意。 ティファニア ティファニアがクロス召喚し、かつ作品のメインとなる場合につける。 学院外人物 上記以外の学院外の人物がクロス召喚し、かつ作品のメインとなる場合につける。 『召喚形態』 分類名。タグではない。召喚の形態。召喚完了時の姿で判断する事。クロス召喚された対象に当てはまるものをつける事。追加召喚となる対象は考慮しない。 単独 クロス召喚された対象が単独であった場合につける。 複数 複数の対象がクロス召喚された場合につける。クロス召喚と共にサイトが召喚された場合にもつける。例:ルイズが2体召喚、ルイズがサイトと他1体を召喚、ルイズとタバサが1体ずつ召喚、など。 『召喚対象』 分類名。タグではない。召喚された対象の特徴。召喚完了時の姿で判断する事。複数召喚された場合は全員分つける事。ただし、特徴が重複する場合は一つのみつける事。例:人間男性が三人召喚された場合は「人型」「男性」のタグを一つずつ。追加召喚となる対象の分はつけない事。 人型 人間的な外見を有する生物。ゴブリンなどの亜人、ケンタウロスなどの半人。サイボーグ、アンドロイドも人型ならここ。 動物型 犬、猫、鳥と言った実在する動物。恐竜などの絶滅動物。ドラゴンやグリフォンなどの幻獣。サイボーグ、アンドロイドなども動物型ならここ。 メカ ロボット。搭乗可能な人型・動物型ロボ。原動機により稼動する機械。 物体 剣や本、薬などのアイテム類。原動機を必要としない機械。 サイト ゼロ魔原作に登場するサイトが召喚された場合につける。追加召喚の場合はつけない。サイトの特徴は全て「サイト」で表し、その他の特徴である、「人型」「男性」などは、それらの特徴を持ったモノが追加召喚以外で召喚されていない限りつけない。例:サイト以外に動物のメスが召喚された場合は、「サイト」「動物型」「女性」。 男性 生物学的なオス。外見的特徴がオス。 女性 生物学的なメス。外見的特徴がメス。 その他性別 両性、無性など。 『召喚元公式ジャンル』 分類名。タグではない。クロス作品の原作が該当するジャンルのタグをつける事(複数可)。対象が複数召喚された場合、全員分つける事。ただし、重複する場合は一つのみつける事。追加召喚となる対象の分はつけない事。 ファンタジー 超自然的、幻想的、伝奇的要素が特徴の作品。 SF 空想科学的要素が特徴の作品。 現代 作品の舞台となる時代がWW2後。 歴史 作品の舞台となる時代がWW2終了時点まで。 特撮 変身ヒーロー、ロボット、怪獣などが特徴の実写作品。 ギャグ ギャグ描写が特徴の作品。 その他ジャンル 上記以外のジャンルの場合つける。オムニバス形式の原作の場合につける。