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■ 周囲は、一面が炎に包まれていた。 「ティア、ティアッ! 聞こえたら返事して!」 炎が生み出す大気の乱流は、音を完全に遮断する。人の声など徹る筈も無い。 それでも、叫び続ける。 通信は滅茶苦茶、上官はおろかパートナーの姿さえ見つからない。 カートリッジは無く、武器の全ては砕け散り、前後左右さえも曖昧で。 自分が何故ここにいるのか。何をする為にここにいるのか。ここはどこなのか。何があってこうなったのか。 そんな事すらも思い出せない程に、意識が沸騰していく。 ―――揺らめく炎の隙間から、白い影が見えた気がした。 何の躊躇いもなく、炎の壁に飛び込んだ。 熱が肌を焼き、髪を焦げ付かせた。白かった鉢巻は煤に黒く汚れ、端は既に黒焦げになっている。 それでも、誰かの手を掴んだ。目に映るのは、橙色の髪の色。 「ティア!」 抱き寄せようとして、ふと違和感を感じた。 軽い。 減量してたのかな? などと場違いな考えを持ち、 腰から下と左肩の先が無い、ティアナ・ランスターの屍を見た。 悲鳴を挙げようとして、足首を掴む腕に気付く。 腕が着ているのは、カーキ色のツナギ。 それは、あの遺跡発掘現場で見たものと同じ――― 心臓を撃ち抜かれた青年が、こちらに怨嗟の眼差しを向けていた。 頭蓋を潰された発掘員達が、怒りに拳を震わせていた。 声無き声の輪唱が響く。 『何故間に合わなかった?』 『何の為に魔導師になった?』 『何をするべきか分かっていたのか?』 罅割れた鐘のような、死者達の声。 炎の合間から、それを統べるように立つ影が見えた。 深海のように蒼い外套。 悪魔のように歪んだ両腕。 刃物のようにくすんだ金髪。 魂までも焼き尽くさんと燃え盛る、鬼火の翠眼がこちらを見据え――― ―――そこで目が醒めた。 「ッは、あ……夢、か」 寝間着が汗塗れで、雑巾のように絞れそうだ。 痛いほどに握り込んだ拳の中からも汗が溢れている。 窓の外はまだ暗い。枕元の時計を見る。 午前四時四四分。嫌なものを見てしまった、と思う。 ティアナは―――起きていない。ベッドの上で静かな寝息を立てている。そのことに僅かに安堵し、しかし、 ……何であんな夢、見たんだろう…… 分かり切っている。昨日の任務だ。 死者五名―――襲撃の第一波、通報とほぼ同時に死亡していたとは聞いた。 だから気に病む必要は無い、自分をそう励ました髭面の男は、しかし額に青筋を浮かべ瞳に怒りを湛えていた。 そして、あの男。 機械兵器の相手、あるいは模擬戦しかしたことのない自分にとっては、全く未知の相手だった。 膂力、速度、技術。その全てが自分の上を行っていた。しかし、それは大した差ではない。 殺意。 倒す為ではなく殺す為に放たれる攻撃は、外見は同じでもその圧力は桁が違う。背筋を駆け上る、氷で冷やした針のような寒気。 戦闘の昂揚が無ければ、初撃の時点で戦意を挫かれていた。膠着から自ら攻撃を選択したのは、その緊張で戦意が磨耗し切れば勝ち目が無いと悟ったからだ。 隙を突かれることを恐れてカートリッジの再装填もせず、ただ最速のみを望んだ正拳突き。 やれと言われて出来るかどうか分からない、最高の一撃だったと今も確信している。 だがそれもあっけなく捌かれ、危うく死に掛けた。否、シグナム副隊長が一瞬でも遅ければ確実に死んでいた。 そして、あの両腕。 ほんの少しだけ、それ体験した。 いや、体験したというよりはまったく理解を超えていた。 特殊な魔法だとか戦闘機人だとか、そんなチャチなものじゃ、断じてない。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。 ……でも、 そんな力で、あの人は遺跡の人達を護り抜いたという。 破壊にしか使えない力でも、人を助けることはできる。 あの空港火災の日、夜空の下で気付いていた筈なのに、 何故か、胸を打たれた。 ―――陽は未だに昇らない。 醒めた眠気が帰ってくるのを妨げる為に、ゆっくりとベッドから降りた。 ……外行って、ランニングでもしよう…… 冷えた空気の中を走れば、煮えた頭も冷めるだろう。 ■ 耳を衝くアラーム/枕元に置いた目覚し時計―――上部を叩いてアラームを停止。 午前四時三十分/カーテンを開く/まだ外は薄暗い。電灯を点ける/腕時計型の端末を操作―――行動予定の表示。 戦力査定試験―――十三時より/陸戦用空間シミュレータにて/支給した制服を着用との事。 クローゼットを開く。破れた部分に接ぎが充てられた青いコート/新品の軍服/ジャージ/その他生活用品etc。 再生の完了した左腕を軽く振る/僅かな違和感。 屑篭に放り込まれたアルミ缶が二つ/珈琲/紅茶―――シグナム二等空尉との会話/予定/『七時半に食堂で』。 三時間―――試験に備えて、身体を動かしておくのも悪くない。 ジャージの掛かったハンガーに手を掛けた。 ■ とりあえず、隊舎の周りをランニングしよう。 そう考え、朝靄の中へと走り出した。服装はいつも通りだ。一通りの準備体操を終え、待機状態のキャリバーにカウントを指示。 「マッハキャリバー、計測お願い。周回ごとのタイムも記録しておいて」 『O.K.……Ready?』 スリー、ツー、ワン、と数えられ、 『GO!』 駆け出した。速度は半分以下に抑え、持久走に適した姿勢とテンションを作り出す。 冷えた朝霧が顔に当たる、その感触さえ心地よい。 ペースを維持したまましばらく走っていると、道の前方に人影が見えた。 青色のジャージを着た長身の影。規則的な足音は自分より僅かに早い程度。 だが、カーブの外側を走る男は、内側を走る自分と同等以上の速度を持っている。体格が生む歩幅の広さがその源だ。 何故か、対抗心が湧いた。 ゆっくりと回転数を上げていく。蹴り足のエッジングは強く、自らの鼓動と同期するように加速。 足音が重く早く変化する。応じ、影も振り返らぬまま加速した。 重心は僅かに前方へ。崩れる体勢さえ利した加速を行いつつも、何かに固執するように外側を走り続ける。 ハンデだ、インコースは譲ってやる―――そう言いたげに。 ■ 朝六時、何事もなく起床した。窓から差し込む陽の光が眩しい。 寝坊した、と思って大いに慌て、今日は訓練が無かったことを思い出す。アップが要らないなら一時間程度の余裕はできる。 昨日の出動の後始末に隊長達が駆り出されているらしく、教導を行える状態にないとのこと。デスクワークと自主トレーニングのみが指示されていた。 にしても、妙だ。 いつもは私が起きる前にスバルがセクハラまがいの行動をしでかすのに――― 「って、スバル?」 奴は朝は早いタイプだ。寝坊することもまず無い―――現在進行形で悩みのタネだが。 朝っぱらからあのテンションについていくのは低血圧には辛いのだ。冷たく振り払うのも気まずいし。 眼を擦りながら起き上がると、枕元に置かれた紙片に視線が行った。 『起きる頃には帰ると思う スバル』 千切られたメモに残ったボールペンの筆跡は、紛れも無くスバルのもの。 「何してるんだか……」 まったく、と呟きながらベッドから降りた。 ■ 『……新記録ですね、マスター』 マッハキャリバーの声が、心なしか冷たい。 「……ありがと」 自分の声は、溜息が出そうなぐらい弱々しかった。 マラソンじみた疾走は、頭を冷やすどころか心臓を爆発寸前に追い込んだ。 その上、追っていた影には肉薄すら出来ず、いつの間にか消えていた。 ……幽霊とかじゃないよね……? 陸戦魔導師と足を競って―――それも腹立たしいことにハンデ付きで―――勝つなど、生半可な鍛え方で出来ることではない。 しかも、疲労によるペースの乱れや足運びのミスさえ、一つとして無かった。一切の減速を無しに、加速のみで延々と走り続ける―――人間業ではない。 芝生にごろりと寝転がり、土と草の冷たさで背筋を冷やす。 視界に映るのは、青い空、白い雲―――あれ? 「……マッハキャリバー。今、何時?」 ■ 「……それで、六時半にようやく部屋に帰ってきた、と…… 訓練が無かったからよかったけど、普段やったら叩きのめされるわよ?」 「うん……」 「でも不思議ね、アンタに持久走で圧勝するなんて……顔は見てない?」 「結構背は高くて肩幅も広かったから、男の人だとは思う。 六課のジャージ着てたから……あ、事務の人?」 「それは無いでしょ……まあ、後で隊長達の誰かに聞いてみるのがいいわね」 二人の歩みは、ようやく食堂に差し掛かる。 出入り口に程近いテーブルに、見慣れた顔ぶれが並んでいた。 「おはようございます。ヴィータ副隊長にシグナムさん、エリオ、キャロと……?」 「おはようございますー……ってええ!?」 否、正確に言うなら、見慣れない顔も一人混じっていた。 金髪翠眼の男が、マグカップに入ったコンソメスープを啜っている。 ■ 「アレックスさんはこれからどうするんですか?」 「十三時から戦力査定試験だ。管理局に入るのは決まったが詳しい進路はその結果が出てから、だな」 「そうですか……試験、頑張ってください」 「エリオ、励ますのはいいが心配する必要は無いぞ。こいつは強い……私でも互角かどうか」 「でもよ、すげえなあオマエ。左腕落とされたままシグナムと闘ってたんだろ?」 「左腕っ!? ……エリオ君、それって戦える傷なの?」 「無理だよキャロ……痛いと思うし」 「痛い以前に出血で死ぬでしょうに……どんな手を使ったんですか?」 「……まともな傷では死なん、そういう身体なのでな」 「そうですか……こらスバル、人のチキンソテーを取るなっ!」 「えー? ティア減量中でしょー?」 「だから炭水化物摂ってないでしょうが……アンタはアレックスさんに聞くことないの?」 「え、えーと……」 「一手ご指南承りたく候―――というのなら私が先約だぞスバル」 「んなこと言い出すのはなのはかシグナムぐらいしか……いや、エリオはどうなんだよ」 「僕ですか? 正直そこまでバトルマニアには……」 「……おまえも、私をそう呼ぶのだな……」 「ああっ! シグナムさんの髪が真っ白にっ!?」 「エリオ……」 「エリオ……?」 「エリオ君……」 「スバルさんにティアナさん、キャロもどうしてそんな責めるような眼で!?」 「エリオお前……」 「ヴィータ副隊長までっ! 女の人は怖い……アレックスさんは僕の味方ですよね!?」 「……」 「どうして眼を瞑って腕を組んで首を横に振りますか―――!?」 ■ 前へ 目次へ 次へ
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元スレURL 侑「カップリングSS自販機?」@ 概要 安価で寒い時期に効くあったか~いお題カップリング短編集12組 タグ ^高咲侑 ^虹ヶ咲 ^μ’s ^Aqours ^Liella! ^ほのぼの 名前 コメント
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ヴァルケンハイン=R=ヘルシング (CV:清川 元夢) 六英雄が一人 眠れる戦狼 ヴァルケンハイン=R=ヘルシング 推参!! プロフィール 身 長 / 191cm 体 重 / 78kg 誕 生 日 / 9月15日 血 液 型 / A型 出 身 地 / 不明 趣 味 / 盆栽 好きなもの / 懐中時計 嫌いなもの / 品性のないもの 性格 穏やかで毅然としており、余計なことは口にしない。 ただ、レイチェルに危害を加えようとする者に対しては、一切の容赦がない。 バックストーリー 先代の頃からアルカード家に仕えている老齢の執事。 執事として非常に優秀なだけでなく、多種多様な知識にも長けている。 カグツチの異変に気づき、城から抜け出したレイチェルのあとを追う。 カラー 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 当wikiはアークシステムワークス株式会社が権利を有する「BLAZBLUE コンテンツキット Ver2.2」の画像を使用しています。 カラーはCSの物になります。 (C) ARC SYSTEM WORKS
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スールシング(スール・シング) ムガル帝国の君主の系譜に登場する人物。 マールワール王。 関連: ウダイシング (ウダイ・シング、父) マンバーヴァティーバーイー (マンバーヴァティー・バーイー、娘)
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このサイトは花王不買運動と関係ありません。 ヘルシアコーヒーは危険か 花王『ヘルシアコーヒー』で脂肪は減らない 普通のコーヒーをイカサマ試験で無理矢理トクホに 【Digest】 ◇一般のコーヒーと大差ないクロロゲン酸含有量 ◇なぜ「高濃度」とうそをつく必要があったのか ◇体脂肪減少の臨床試験はあてになるか? ◇一般的日本人は既に十分なクロロゲン酸を摂っている http //www.mynewsjapan.com/reports/1806 クロロゲン酸栄養成分効果辞典 wikipediaクロロゲン酸 単一のクロロゲン酸、これを含む成分を大量に摂取した場合、便秘になるなど一過性の不快症状を招く場合があります。 クロロゲン酸メタボの栄養 クロロゲン酸にはキレート作用があり、様々な金属と結合します。代表的なものには、鉄、銅、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり、このキレート作用による障害として、体内の鉄分とビタミンB1の吸収阻害が報告されています。また、クロロゲン酸を含むヤーコンのなどの料理では、アルミ製の鍋ではアルミニウムを体内に取り込んでしまうことが考えられるため、アルミ製の鍋は使わないようにしたほうが良いでしょう。 臨床栄養士のひとり言 クロロゲン酸には強力な金属キレート作用があり、主に鉄、銅、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルと結合するキレート作用があります。このキレート作用によって、これらのミネラルが体外に排泄を促されるだけでなく、これらのミネラルが補酵素として働く栄養素の働きにも影響が出る可能性があります。その1つとして鉄欠乏性の貧血傾向の人は、Green Coffee Beans Extractに含まれるクロロゲン酸によって鉄の吸収が抑制され貧血症状が悪化する可能性、クロロゲン酸がビタミンB1およびビタミンB2を破壊することで吸収が阻害される可能性があることです。 消費者委員会新開発食品調査部会 第 4 回議事録 - 内閣府 ○□□委員 有効性のところですけれども、今回のクレームは体重を減らすということだと思いますけれども、これを示したデータ、臨床試験の結果が、普通の解析だとほとんど有意差がないというデータなわけです。特殊な検定をして、Paired t-testというようなことでやって、それで有意差があるから、だから有効なんだというような評価をしていますけれども、こういう評価をしたことは私は今まで一度も見たことがないんですね。それから、100 人を超える人を使って検査していますけれども、その中には男の人も含まれるし、女の人も含まれるということで、言い方は悪いですけれども、犬と猫を合わせて解析したような、そういうデータ解析なのです。個別のデータが出ていないので、例えばどのくらい増えた人がいるのかとか、 増えた人が何人で、 減った人が何人かということがわからないです。男性に多かったのか、女性に多かったのかもわからない。 これはサマリーだと思って、ちょっと探してみたのですけれども、個別のデータが見当たらないので、その辺の判断ができなかったのですが、一般的な臨床試験の解析としては、私としては、とんでもないデータだなと思っています。 第1回 新開発食品調査部会 議事録 ○□□委員 そういう意味では素人なので科学的知見は皆様方に教えていただきたいのですけれども、そもそも健康食品とは世にある食品が薬効はなくても健康のために役立つということで許可して売り出してくださいまでいっているんだろうと思うんですが、こういうふうに科学的ないろんな作用でもって現時点、世にある食品から姿を変えてというようなイメージがあるんです。前の花王の油と同じように、それとこれとは考え方、理念において違うものでしょうか、同じものなんでしょうか。特保のこの食品というのはこういうものに当たるものなのかどうかというのをどなたか教えていただければと思います。
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■ その瞬間、トーレの脳裏を埋め尽くしたのは恐怖だった。 体表面センサの弾き出した値から逆算される、男が放った砲撃の温度、威力―――推定温度にして摂氏数万度。 直径百ミリに満たないその光条が人体に直撃すれば、余波で半径三十センチ余りの風穴が開く。 それは半人半機であるトーレとて例外ではない。否、より的確に表現するなら、耐熱金属さえ瞬時に気化させる超高熱の前に、その程度は些細な差ですらない。 姿勢は崩れ、新たな回避軌道への移行にコンマ四秒。機械の知覚を凌駕するあの弾速に対して絶望的なまでに―――コンマ二秒ほど遅い。 ―――何か、一手。一手あれば、辛うじて逃れられるものを……! ほんの十分の一秒でいい。砲撃を遅らせることができれば。 臨死の思考圧縮が、マイクロ秒単位の思索を呼び起こす。 クアットロに、幻術による援護を要請する―――不可。幻像の構成速度は距離に比例して遅延する。この距離では一秒を超えるラグ。 こちらから攻撃を仕掛け、狙いを逸らす―――この距離だ。四肢のみを武器とする自分には不可能。 命中させる必要はないが、届く武器そのものが存在しないのではどうにもならない。 ……届く、武器? 否、それすらも間違いだ。武器である必要などない。ほんの一瞬、集中を妨害できればそれでいい。 ―――そうか! 右肩部と右腕部のフレーム、その連結を解除する。 痛覚遮蔽はしない。いや、できない。通常巡航ならともかく、戦闘機動では僅かな感覚の狂いが生死を分ける。 全ての感覚を、完全に維持したまま―――右腕の加速機構を超過駆動させ、 「ぐ……があああぁぁぁっっ!」 右腕を、肩口から引き千切りつつ音速超過で射出する―――! トーレの視界、その人間部分が真紅に染まるほどの激痛。血―――を模した潤滑油が噴出することはない。循環系は閉鎖している。 脳髄を削るが如き苦痛と腕一本。だが、それだけの代償を支払った価値はあった。 アレックス―――キースシルバー/完全な戦闘型ARMSの知覚能力と反応速度は、極度の集中も相俟って、その一撃を完全に捕捉していた。 一瞬にして照準を修正、大気摩擦で赤熱しつつ迫る砲弾は、砲撃の前に一瞬で蒸発―――それこそが、トーレの狙いだ。 硬直する脚を必死に動かし、軌道上から退避。照準の修正によって辛うじて回避可能。 嫌な軋みを上げる躯は、それでも最高速度を維持。急速に戦場を離脱した。 ■ 「……奴には敵わない、か。予想通りとはいえ悔しいね。退却とチンクの回収は?」 「セインが往復輸送しています。ルーテシアに協力させると情報が漏れる危険性があるので。 『チェシャキャット・エミュレータ』を使用させたました。早ければもう帰還するかと。ですが、あれは―――」 「ああ、間違いなく『ネフィリム』、それも私が直に開発した個体だ……やれやれ。シューティングアーツのデータ収集が目的だったのに、予想外の大当たりが出たものだね。 エグリゴリと人間の間に生まれた巨人の名を持つ、戦闘機人の雛形にして完成形のひとつ……何処から流出、いや、何故生存している? こればかりは予想外だ。よりによって、アレの居る部隊の人間が……いや、だからこそ、か? アドバンスト適合者の生体情報から補整して、崩壊時期を先延ばしにしたのか? だとすれば―――むしろ、実験方針の正しさが証明された?」 「紛失した三十二体の『ネフィリム』の内、後に死亡を確認されず、ドクターの手が入っているものは六体、存在します。 管理局に捕獲された個体の追跡調査を怠った、私の責任です。申し訳ありません」 「いや、いいよ。なら―――ん?」 「……秘匿回線に、通信?」 『――――――貴方たちに、依頼があります』 ■ 「……チッ」 舌打ちひとつ。またしても逃した。かつてない―――いや、『死んだ』時以来二度目の失態。 実戦を離れて勘が鈍ったか。眼前の表示/高度計を確認し、床を蹴って宙へと飛び出す。 両腕を大きく広げ、空気抵抗によって速度/姿勢制御。 「前線に出る。俺の行動は―――」 『障害を片っ端から排除するだけでええよ。手始めに、グリーン陸曹が戦ってたアレから頼むわ』 「……奴は、殺さなければ止められないが?」 腕を列車に叩き込んで速度を殺し、着地。思考する。 この組織の法体制は聞いた。 殺人/傷害を異様なまでに嫌悪し、ゴムスタン弾の使用すら、否、火器の存在そのものを否定する。 だというのに/故に、魔導師を――― 『構わへん。大体、止めるんやったらさっき撃つ前に止めとる。 ……そや。同士討ちだけは避けてくれんと困るで。あと、できれば周囲の被害も』 「冗談を言うな、八神はやて。砲撃を使わず仕留められるほど、甘い相手ではない」 『撃ったら二次災害確定かいな……ならええよ。最悪でも結界で修復できるし、どうせ責任取るのはうちやない』 「……そうか。奴の武器については、可能な限り記録を取っておいてくれ」 通信を切断し、余計なウィンドウを全て消去。前方の敵―――キース・レッドに集中する。 両腕のARMSに加え、左手に短剣、右手に槍。四つの武器/漆黒と真紅。 「何故貴様がここにいる、レッド」 「それは私の台詞だ、シルバー。おまえが何故ここにいる。 エグリゴリとて、別の惑星に渡るような技術を持っているものか」 「……互いに、話す気は無いようだな」 左腕/砲撃を叩き込む―――躊躇い無く。ブリューナクの槍が噴き伸びる。 閃光/焦熱音。 影―――レッド、地を這うような低姿勢で突撃。 迎撃/疑問。荷電粒子は確かに直撃させた。だというのに無傷とは、 「喰らえ!」 「く……」 思考中断/腹を薙ぐ軌跡の短槍を受け流し、返す刀に放たれたグリフォンの刃を掴み止める。 「無駄だっ!」 レッド/超震動打撃。左手が分子の塵と吹き飛んだ。失策―――では、ない。 列車の屋根を蹴って踏み込み、跳躍/鳩尾狙いの膝蹴りが入る。 ARMSにダメージが入る攻撃ではない。目的は、回避のできない空中に移動させること。 「知っている―――消し飛べ、失敗作が」 「う、おっ!?」 右腕から放たれる光条―――荷電粒子ビーム『ブリューナクの槍』に、破壊できぬものなど存在しない。 そして、足場の無い空中では、避ける術もまた存在しない。 その、筈だった。 短剣を、さながら護符のように突き出す/硝子を切り裂くような、耳障りな音。 ただそれだけで、必殺の一撃が不可視の殻に逸らされる。 「なん……だと……!?」 「その過信がおまえの隙だ、シルバァァッ!」 着地から一瞬/神速の突き―――判断が遅れる/回避が遅れる/電子回路にも似た刃が左肩を抉る。 飛び退き、牽制の一射。辛うじて安全距離を取った。 「その武器が高強度の磁界で逸らしたか……だが、二度通じると思うな」 「一撃は……入ったぞ」 「それがどうした? この程度の傷、ARMSの移植者ならば……」 すぐにでも再生できる。そう言おうとした瞬間、違和感。 超震動によって砕かれた左腕は、再生が進んでいる。既に掌までは戻り、指を残すのみ。 だが、左肩の傷は、再生が極めて遅い。 これは――― 「再生できるとでも、思ったか?」 「……まさか、その槍は」 「そうだ。『ガ・ボウ』……癒せぬ傷を与える槍の名だ」 「『ARMS殺し』を、模倣した武器ということか……!」 危険/不利/戦力差―――その発生。遅々として進まない再生=蓄積されるダメージ。 電子回路のような刃/ARMS殺しと同様のプログラムを流し込む。 「便利な道具だな、キース・レッド。だが―――ひとつだけ欠点がある」 「……何だと?」 「名前がケルト神話とは、あのホワイトに匹敵する悪趣味だ」 「……ッ! いつまで強がっているつもりだ。キース・シルバー! そしてこれはオレの命名ではない!」 「やはり、バックが居るのか……ふん、当然だな。そんなものを貴様が一人で作れる筈がない」 「おまえは、おまえ達は、いつも、そうやって……!」 最低限の情報は引き出し―――策も出来た。 この男はプライドが高い。そこに付け入る隙がある。 ■ 「いつまでも見下していられると思うなァァッ!」 跳躍から、左の短刀を叩き下ろす。 シルバーが右腕を構える。光―――舐めるな! 「無駄だと言っている!」 赤い短剣の機能を発揮。電磁障壁で荷電粒子を逸らす。 視界は無いも同然だが、このまま槍を振り下ろせば関係ない。切り刻んでやる! 「それはこちらの台詞だ。レッド」 「何……!?」 身を捻り、左半身をこちらに向けている。当然の帰結として、左肩に刃が喰い込み、止まった。 咄嗟に蹴りつけて引き抜こうとするも、易々と避けられる。この隙は―――! 「……スターレンゲフォイルッ!」 死を覚悟したその瞬間、閃光と轟音が放たれた。 同時、身体に何かが侵入する感覚。 これは――― 『威勢良く飛び出しといて、なぁーにボロ負けしてんだよレッドぉー』 「アギトか!? 来るなと……」 『言われたのはルーと旦那だけだ。あたしは聞いてねえ。 それに、おまえが負けっぱなしなのが悪いんだ。有利になった途端に反撃されやがって。 知り合いが噛ませ犬になってるのなんざ見てられねえのは当然だろ』 「貴様、よくも言いたい放題―――何をする!」 あろうことか、身体を勝手に動かされた。槍から手を離し、高架下に飛び降りる。 止めようとするが、できない。 「コアに直結して制御を奪ったのか!? 槍を置き去りにするな解析されたらどうする! 身体を返せ!」 『はい分かりましたよ―――っと』 高架下に飛び降りつつ、振り返りざまに指先に固めた炎を弾き飛ばす。 肩に突き刺さったままの槍に着弾し、爆裂した。槍が粉砕され、平衡感覚が麻痺している奴が転倒。 『さて、このままルーかセインに送って貰って、研究所まで帰るぜ』 「何故だ。私は奴を超えられると証明せねばならんというのに……!」 『……別に、制御は返してもいいけどよ。そら』 身体に自由が戻る。高架の支柱を三角跳びの要領で蹴り飛ばし、上に戻ろうとすると、 『あ、ユニゾンは解かねえぞ。で、おまえが戦ってる最中に』 「邪魔してやるとでも言うのか? 丁度いいハンデだ。そんな脅しで俺は止まらん」 『そう言うと思った。だから、全力で援護してやる。それで倒せても、証明とやらにはならねーと思うぞ』 「な……」 『おまえな、少しはあたし達の気持ちってのも考えろ。兄妹みたいなもんだろ。死なせるかよ』 「……俺にとって、兄弟とは憎むべき相手なのだがな。そこまで言うなら退いてやらんでもない」 拍子抜けしたような、独特の倦怠感がある。 それに任せたまま、地から生えた足首を掴む手に目をやった。 ■ 『……こちらとしては、先に申し上げた条件に同意して頂けなければ、更に有用な情報等を提供する準備があります』 「相互に協力したい、ということですね? では、こちらの条件は―――失礼……ええ、六番の無菌ポッドに。とりあえず、安静にしておきなさい」 『部下の方ですか?』 モニターの向こう側に、女性の声。 特殊な隠蔽魔法によって詳細な目鼻立ちは判別できず、声も個性を消されている。 「ああ、そうだとも……そして、大事な娘でもある。 待たせた上に申し訳無いが、行っても良いかね? 君との交渉はウーノに一任しよう」 『お気遣いなく』 とん、と肩を叩いたドクターが、チンクの治療に赴くため部屋を出た。 チンクのことは、任せておいて大丈夫だろう。託された役割として、長い金髪の女性との交渉を続行する。 ■ スバルとエリオが召喚師を捕えに走り出したとき、ティアナもまた、別の方向へ移動していた。 攻撃の要である第二、第三分隊長を欠いた108部隊の援護に向かうためだ。 「こちら、機動六課スターズ分隊員、ティアナ・ランスター二等陸士です。援護に行きます。座標を」 『オ前か……第一分隊長のラッド・カルタス二等陸尉ダ』 通信回線からは、独特の訛りが聞こえてきた。 スバルの姉の上司―――ということで、ラッド・カルタスとティアナの間には面識があった。 研修の際に108部隊へ行ったことから、その個性も知っている。 彼の一族の出身地である第23観測指定世界には、惑星の公転、自転周期や大気組成、地質の関係から、砂漠を更に極端にしたような環境しか存在しない。 昼間の熱量兵器じみた日光は、生物から脆弱な肌を駆逐し、その異常な光量は、進化から視覚を持つという選択肢を消し去った。 対して摂氏零度を遥かに下回る夜間の気温や、特殊な大気が弱い光を侵入させないための、欠片の光さえないという事実も同様だ。 そんな世界で文明を成り立たせる『人類』は、多くに比して強靭で、異形だ。 ウィンドゥに映る相貌。 眼から頭にあたる部分は、銀色の竜革で作られたターバンを巻いている。 鷲鼻の下には犬歯を覗かせる口があり、全身を覆うのは肌とも鱗ともつかない暗青色だ。六本の指には鍛鉄並みの強度の鉤爪がある。 『敵は退いテいル。援護は要らン―――六課ノ落とさレた三人は、既に第二分隊が回収していル。 そチらの通信コードを貰ってイれば、伝達もできタのだガな』 「すいません……と、敵が退いた?」 『あア、間違いナい。残ってイるのは、上空と召喚士の傍にヒトりずツだケだ』 視覚を持たないということは、即ちそれに代わる手段を有するということだ。 『特殊な』人材ばかりが集まる108部隊の中でも、彼の探知能力は群を抜いている。 だからこそ、第一分隊がバックアップを一手に引き受け、第二第三が強襲に専念するという体制が成立していた。 「部隊長の方の通信コードを送ります。報告はそちらで。 ……何か、聞き取れた事はありませんか?」 『列車の上ノはグリーンの関係者らシいな……気をつけロ。この事件は何カおかシい』 「同意します……では、指示を」 そう、この状況は、最初からおかしいのだ。 ラッド・カルタスがあの程度の情報しか得られない―――敵は、会話を交わさない、あるいは何らかの手段によって傍聴を防いでいること。 ここに来て撤退を始めていること。諦めたと取れなくもないが、ガジェットを先に撤退させる意図が分からない。 そして何より、強襲能力に特化した108部隊が、護衛任務を担当していること。 やばそうだなあ退かせるべきかなあと考えるティアナの心中を読んだかのように、ラッドの指示が来た。 『総員、可及的速やカに退ケ。そちラのエース殿ガ無事なラ、仕留めラれたモのを……』 「了解です。シグナム副隊長と……アレックスさんには指示が出せないので、八神部隊長経由でお願いします」 『……正気カ? 了解しタ』 「さて、と。スバルにエリオ、聞こえる?」 ■ 「はいはい聞こえてる聞こえてるー!」 召喚士を護衛している一体以外、あらかた敵は退いたから撤退しろ。そういう話だった、気がする。 正直よく覚えていない。何故なら、 「このっ!」 「………」 その一体が、とんでもない化物だったからだ。撤退さえ許されない。 思考などしている暇はない。黒い影が独特の振動音を響かせ横に高速滑空し、空圧の鎚が避けられる。 射撃魔法では狙う事さえできない速度。エリオは初撃を防いだものの吹き飛ばされて、今は瓦礫に埋まって気絶している。 召喚士は、薄い紫の髪をした大人しそうな女の子だった―――出会い頭に無言でコレをけしかけてきたが。 瓦礫の山の上に静止した影は、さながら人型の虫だ。躊躇わずウイングロードで突っ込んだ。 振動音が一際高まったその瞬間、姿は残像と化して消え去り、胸元に衝撃が走る。 「……ガリュー、帰るよ」 女の子の声。 遠ざかる景色を見て、自分が吹き飛ばされたと気付いた。 ■ ヴァイス・グランセニックは悩んでいた。 ヘリのセンサを稼動させつつ、上空を周回していたのだが、 「ゼスト、か? 生きてたのかアイツ……の割には老け過ぎだよなあ」 旧知と思しき顔を発見してしまった。だが彼は死んだ筈で、親族はいなかった。一人として。 しかし武器は同じ槍で、技も変わらない。確かに、自分がスコープ越しに死を確認した男と同じだ。 「どうすっかねえ……と」 その瞬間、シグナムと対峙している男が構えを変えた。 槍を右手一本で持ち、左腕を肘から引く独特のフォーム。 「おいおい……マジにあの野郎なのか?」 ■ 「くそっ!」 レッドを仕留め損なった。 空中に突如出現した閃光/轟音―――さながらスタングレネード。 数秒間は全ての感覚を奪われる。気付けば転倒し、奪い取った筈の槍は原型を留めず焼き尽くされている。 「ロングアーチ、聞こえるか! 奴らは何処に逃げた!」 『分かりません。地面に着地した時点で、反応が途切れています……転移反応もありません!』 「……地下、か? 構わん。燻り出してやる……!」 飛び降りつつ、右腕/砲口を地に向ける。 共振は捉えられないが、奴の機動力ではそう遠くへは逃げられない。手始めに一発叩き込んで――― 『ちょ、ま、待って下さい! 今報告が来ました地下にもいません!』 「何? ならば、奴はどこに消えたのだ……?」 ■ シグナムは、急激に魔力を高めていく。男の防御は、槍の技によるもの以上に魔力操作技法が強い。 半端な攻撃では容易く凌がれる。使うのは最大威力の剣撃『紫電一閃』だ。限界まで剣身に魔力を集束する。 そして、 「レヴァンティン―――カートリッジロード!」 『Explosion.!』 カートリッジから弾き出された魔力の全てを推力に変換し、放つは炎を纏った神速の太刀―――! 同時、男が構えを変える。槍を片手持ちに変え、左はさながら掌を打ち込むように。 ……構うか! シグナムは勢いを殺さず、更に加速。剣先が水蒸気の尾を曳く。それほどの剣速だった。 ―――それが、致命的だった。 「な……!」 ゼストもまた一歩も退かず、槍を剣の切先に合わせて突き込んだのだ。 寸分のずれも無い鋼同士の衝突は、火花を散らし軋みを上げる。 そして、身を捻っての左掌打が、その拮抗を縫うように放たれる。回避不能、必中の一撃――― それを回避できたことこそ、シグナムの全力が生んだ奇蹟だった。 鋼の軋みが限界を超え、一瞬にして双の刃が砕け散る。勢い余ったシグナムは、そのまま横を通り過ぎた。 「くっ!」 双方とも、行動は極めて迅速だった。背は向けず、空中を急速逆進。 シグナムははやての指示、ゼストは自身の判断によって、戦場を離脱する。 ■ 「ドクター。チンクとトーレの様態は?」 「持ち直したとも。さすが私だ……そちらはどうなったね?」 「計画において障害になり得る人物、百名余りの情報を受け取りました。部隊戦力や特殊技能者についてが主で、108部隊のラッド・カルタスをはじめ、既知のものも多いですが」 「それは重畳だ……『依頼』とは?」 「『アインへリアル』とARMSに関する資料を要求されました」 「それは覆せなかったか……どちらの、だね?」 「誤魔化せませんでした。現状、稼動している方のアインへリアルです……宜しいのですか?」 「構わんさ。あれはどの道捨て駒だ……しかし、アインへリアルとARMSの情報を欲しがる……何者だ? その二つの存在を知っているというのは…… 海の人間か『騎士団』の一部……エグリゴリの残党という線もあるな。機械部分の高度なメンテナンスは、資料が無いと難しい」 「地上の諜報員だとすると、こちらの行動が読まれているということになりかねませんが」 「ARMSについては、存在さえ知らない筈だ。今は、まだ。アインへリアルも、メンテに必要な情報は渡してある。 ……ふむ、ではこうしようウーノ。既に地上に渡っている情報だけを提供して、様子を見る」 「了解しました、ドクター」 ■ 「あ、危なかった……あのまま撃たれてたら、一区画があらかた停電するところだった……」 「スターズ03、沈黙……敵、全反応が消失しました」 誰とは知れず、ふう、と息を吐いた。状況は集束し、しかし被害は甚大だ。 主要メンバーの殆どが行動不能に陥り、シグナムはデバイスを砕かれた。 ■ 「戦闘、終わったらしいわよ。負傷者も殆どいないって」 「……そうかい。そりゃあ良かった」 「……拗ねてるの?」 「そりゃあ、ね。スバルは?」 「負けて瓦礫の下。駄目駄目ねあの子……負けそうならすぐ退くように教えた筈なのに」 「僕がフォローに行ってれば……と」 士官用の病室のドアが、二度ノックされた。 インターフォンからは、ただ無愛想な声が響く。 『俺だ、グリーン。入るぞ……色々と聞きたいことがある』 ■ 医務室での検査は、予想よりも早く終わった。 閃光音響手榴弾のような魔法/アイゼンゲフォイルとやらに近いらしい―――の後遺症は一切見つからず、肩口の傷も易々と完治した。 所詮は模倣、ということか。しかし、戦闘中には再生の遅れが致命的なダメージを生むこともある。 対策を考えつつ廊下を歩み、目的の病室に到着。ドアを叩く。 「俺だ、グリーン。入るぞ……色々と聞きたいことがある」 『兄さんか……ギンガ、鍵を開けてくれ』 かちり、と金属音がしたのを確認し、ノブを回して扉を開いた。 中には士官と思しき長い青髪の女性と、 「グリーン……」 「久しぶりだね。シルバー兄さん」 ベッドから上半身だけを起こした、キース・グリーンがそこにいた。 「早速で悪いが、聞かせてくれ」 「何をだい?」 「全て、だ。おまえが何故ここにいるのか、あれから何をしていたのか……全てを、だ」 「……分かったよ。兄さん」 ■ 陸士108部隊 主にクラナガン近郊での、強力な武力を有する個人や組織に対する強襲・制圧を担当する部隊。 部隊番号の下一桁は主な任務の種類を。それ以外は担当区域を表している。 かつては陸士08部隊がそれを担当していたが、ある事件の後、部隊としての活動を完全に凍結されたため、108部隊が新設された。 短時間だが強力な白兵戦能力を発揮する第二、第三分隊が陽動を行い、夜間や暗・閉所戦闘と索敵に長ける第一分隊が制圧するという戦術を主とする。 しばしば高位魔導師との直接戦闘を強いられるため、給料は良いが危険が極めて大きい。また、前線部隊は常に人手不足。 故に、何らかの事情を抱えた人材が多く集まり、優秀な者だけが生き残った結果、各々が特化した技能への依存が大きい、特殊な形の少数精鋭となった。 前へ 目次へ 次へ
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新米ディーラー「アーニャ・ヘルシング」 読み:しんまいでぃーらー「あーにゃ・へるしんぐ」 カテゴリー:Chara/女性 作品:Rio RainbowGate! 属性:光 ATK:1(+2) DEF:3(+3) [自動]自分の OS:Rio RainbowGate! の光属性のキャラがバトルによるダメージを相手のキャラに与えた場合、そのキャラを【レスト】にする。 RR:は、初めまして、リオ先輩 SP:イタタ…! illust: Rio-018 RR SP 収録:ブースターパック 「OS:Rio RainbowGate! 1.00」
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"水着"で実況「アーニャ・ヘルシング」 読み:"みずぎ"でじっきょう「あーにゃ・へるしんぐ」 カテゴリー:Chara/女性 作品:Rio RainbowGate! 属性:光 ATK:8(-) DEF:6(+1) 【登場】〔自分の手札のキャラカード2枚を控え室に置く〕 『先制攻撃』 リオ先輩対リンダさんのゲートバトルをお伝えします! illust: Rio-020 U 収録:ブースターパック 「OS:Rio RainbowGate! 1.00」
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【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】13 No. タイトル 作者 登場人物 時間 022 火神——マーズ—— ◆Qpd0JbP8YI アレックス、シグナム、ティアナ・ランスター 1日目深夜 029 舞い降りた翼 ◆9L.gxDzakI 八神はやて(A s)、セフィロス、アレックス、シグナム 1日目深夜 042 Little Wish(前編)Little Wish(後編) ◆Qpd0JbP8YI 八神はやて(A s)、セフィロス、シグナム、アレックス、柊かがみ 1日目黎明 049 光が紡ぐ物語 ◆jiPkKgmerY L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ 1日目早朝 081 Amazing Grace(The Chains are Gone)(前編)Amazing Grace(The Chains are Gone)(後編) ◆Qpd0JbP8YI L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ 1日目朝 091 変わる運命(前編)変わる運命(後編) ◆HlLdWe.oBM L、ザフィーラ、アレックス、柊かがみ、万丈目準 1日目午前 121 這い寄るもの ◆9L.gxDzakI アレックス、L 1日目昼 138 Change the world ~変わる世界~ ◆vXe1ViVgVI アレックス、L、金居、アーカード 1日目日中 145 共振~バイブレーション~ ◆HlLdWe.oBM キース・レッド、アレックス 1日目午後 153 13人の超新星(1)13人の超新星(2)13人の超新星(3)13人の超新星(4)13人の超新星(5)13人の超新星(6)13人の超新星(7) ◆WslPJpzlnU 柊かがみ、新庄・運切、エネル、キース・レッド、アレックス、相川始、金居、ヴィータ、キング、ヴィヴィオ、高町なのは(StS)、天道総司、アーカード、柊つかさ、万丈目準、浅倉威、プレシア・テスタロッサ、リニス、『フェイト』 1日目夕方 157 D.C. ~ダ・カーポ~ SURVIVED.C. ~ダ・カーポ~ 戦いは終わるD.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 ◆HlLdWe.oBM 浅倉威、柊かがみ、相川始、キング、金居、ヴィータ、キース・レッド、アレックス、L、高町なのは(StS)、天道総司、ヴィヴィオ、エネル、新庄・運切、アーカード、プレシア・テスタロッサ、リニス、『フェイト』 1日目夕方 161 E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(前編)E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(後編) ◆jiPkKgmerY キース・レッド、アレックス、天上院明日香、八神はやて(StS) 1日目夕方 165 Round ZERO ~KING SILENT ◆HlLdWe.oBM ヴィータ、アーカード、八神はやて(StS)、金居、アレックス、プレシア・テスタロッサ、リニス 1日目夜 【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】10 No. タイトル 作者 登場人物 時間 035 魔獣~ジャバウォック~ ◆RsQVcxRr96 神崎優衣、キース・レッド 1日目深夜 051 ちぎれたEndless Chain ◆jiPkKgmerY ミリオンズ・ナイブズ、高町なのは(A s)、カレン・シュタットフェルト、キース・レッド 1日目早朝 067 孤独の王 ◆RsQVcxRr96 ミリオンズ・ナイブズ、キース・レッド 1日目早朝 076 絶望の罪人~夜天の主~絶望の罪人~フタリボッチノセカイ~絶望の罪人~双翼~絶望の罪人~大災害、そして終わらない宴~ ◆jiPkKgmerY アーカード、セフィロス、八神はやて(A s)、アレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、アンジール・ヒューレー、キース・レッド、フェイト・T・ハラオウン(StS) 1日目朝 097 Reconquista(前編)Reconquista(中編)Reconquista(後編) ◆HlLdWe.oBM ブレンヒルト・シルト、チンク、天上院明日香、ユーノ・スクライア、ルーテシア・アルピーノ、キース・レッド 1日目朝 122 誇りの系譜(前編)誇りの系譜(後編) ◆HlLdWe.oBM キース・レッド、ユーノ・スクライア、ブレンヒルト・シルト 1日目昼 145 共振~バイブレーション~ ◆HlLdWe.oBM キース・レッド、アレックス 1日目午後 153 13人の超新星(1)13人の超新星(2)13人の超新星(3)13人の超新星(4)13人の超新星(5)13人の超新星(6)13人の超新星(7) ◆WslPJpzlnU 柊かがみ、新庄・運切、エネル、キース・レッド、アレックス、相川始、金居、ヴィータ、キング、ヴィヴィオ、高町なのは(StS)、天道総司、アーカード、柊つかさ、万丈目準、浅倉威、プレシア・テスタロッサ、リニス、『フェイト』 1日目夕方 157 D.C. ~ダ・カーポ~ SURVIVED.C. ~ダ・カーポ~ 戦いは終わるD.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 ◆HlLdWe.oBM 浅倉威、柊かがみ、相川始、キング、金居、ヴィータ、キース・レッド、アレックス、L、高町なのは(StS)、天道総司、ヴィヴィオ、エネル、新庄・運切、アーカード、プレシア・テスタロッサ、リニス、『フェイト』 1日目夕方 161 E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(前編)E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(後編) ◆jiPkKgmerY キース・レッド、アレックス、天上院明日香、八神はやて(StS) 1日目夕方
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■ 「さて、突然だが―――力が欲しいかい?」 「……何だ、また地獄か」 「おやおや、随分な言い草だね?」 「目を醒まして開口一番、力が欲しいか、などと聞かれる世界だ。碌なものではあるまいよ」 「尤もだ。ではもう一度聞こう―――力が、欲しいかい? 何者にも負けぬ力が。最強を証明出来る力が。自身を唯一足らしめる力が―――欲しいかい?」 「―――当然だ」 それが契約の言葉。 手に入れたのは、剣と槍。『輝く貌』と称された、盟友に裏切られ死した英雄のそれと同じ名を持つ異端の武器。 そして、彼の支払うべき代償は―――――― ■ 「お、のれ……シル、バ、ァァ……」 莫大な熱を伴う光条が、鳩尾の左辺りを中心に――― 着弾の余波として生まれる衝撃で、仰向けのまま数メートルを吹き飛ばされた。列車から落ちなかったのは幸運以外の何者でもない。 首から下の感覚はない。首元までもが蒸発し、神経が物理的に存在していないのだから当然だが。 強烈な共振が、頬に刻まれた傷痕を疼かせていた。 眼球と目蓋を動かし、自身の状況を確認する。 皮一枚で首、右肩から腹が繋がり下半身はほぼ無事。最も不安なのは、赤い短剣『ベガルタ』を握った左腕だが―――肩から千切れてはいるものの、手を伸ばせば届く距離に落ちている。 『無事か? レッド』 「当然だ……貴様らは、手を出すなよ。奴は、オレが倒す」 『……無理は、するなよ』 「トーレ、誰に物を言っている? ルーテシアとゼストにも言っておけ。危険だから近付くな、とな」 左脚で地を叩き、一挙動で立ち上がった。 見渡す―――グリーンはいない。逃走したか。 肺も心臓も骨格も神経も、既に再生されされている。右手で左腕を拾い上げ、肩の傷口に押し付けた。 「レリックの回収は?」 『……ドクターは、気にせず戦えと』 「ふん、分かってるじゃないか」 接合された左腕を軽く動かし、調子を確かめる。反応速度、筋力、瞬発力、『ベガルタ』の動作。 ―――万全だ。 「俺の方に来るのは何人だ?」 『恐らく、おまえの望む一人のみだ』 「何? 『不屈のエース』とやらはどうした?」 腰に提げていた長鞘。その半ばを空いた右手に掴んで引き抜く。 殆どの相手に対しては、さして役に立たない武器。しかし奴が―――ARMSが相手となるのなら、これは極めて有効な武器だ。 ―――鞘が展開される。 刃が抜き放たれるのではなく、赤い鞘に無数のパーティングラインが走った。そしてそれぞれが分割され内部機構を剥き出しに。 倍以上に伸長した蛇腹状の構造体が、余剰した外装を組み替えることによってクリアランスを埋め補強。 『……たった今、私が叩き堕とした』 最後に、柄だった部分が蛭巻の布を破り散らし擬装を解除。ある種の集積回路にも似た、独特の紋様を走らせる穂先が現れる。 その間半秒。鞘が、真の姿を顕した。 角ばった形状と、鮮血じみた配色と、異形の刃を併せ持つ、魔獣の角とでも形容すべきメカニカルな短槍。 ―――槍の名を称して『ガ・ボウ』。ケルトに語り継がれし能力は――― その半ばを右手に掴み、ヘリから身を乗り出し砲撃を放つ男を見据えた。 ■ 時間は、僅かに遡る。 「……来たか、機動六課!」 立ち上がったトーレの視線の先にあったのは、ヘリから飛び出すや立て続けにガジェットを撃ち落とす、桜色の輝き。 ―――『WR・E』起動。伝達、演算処理系リミッター解除。 『ライドインパルス』の超加速を生み出すのは、全身十七箇所に埋め込まれた加速機構。 その周囲に展開される力場の統合とバランス制御能力が、トーレという筐体の持つ特質だ。 ―――大腿、両膝、足首を除く加速機構十一箇所を閉鎖。残存六箇所の力場展開方向を限定化。 後者の特性を最大限に活用することによって、瞬間の大加速と急激な方向転換への機動性特化を可能とする。 それこそが『ホワイトラビット・エミュレータ』。ナンバーズが三女トーレの切り札のひとつ。 ―――動作パターン解凍、インストール成功。出力系リミッター解除。バランサー開放。 桜色の光を見据える。両の脚に力を込め―――戦闘機動開始。 両脚が三つの光輪を纏い大推力を吐き出した瞬間、彼女の意識から音が消失。 ただの一刹那で音速に肉薄した自身の速度。脳の生体部分が脳内麻薬の過剰分泌によってそれを認識している。思考の圧搾において、ときに人体は機械を凌駕する。 故に、亜音速戦闘において無用な情報が無意識にカットされ、無音の世界を彼女は翔けた。 ■ 聴覚や魔力感知による察知をほぼ不可能とする音速の奇襲。 高町なのはがそれに反応できたのは、ひとえに視覚による警戒を怠らなかったからだ。 下方より接近する―――否、眼前に突如出現した敵影。両脚に光を纏う長身の女。 咄嗟に右手を突き出し魔力弾生成、数は八。押し包む軌道を描いて女を狙う。 同時に空薬莢が宙を舞い、杖を中心に半球状の障壁が張られる。インテリジェントデバイスとの連携による、複数術式の並列展開。 魔導師の空戦においても、背後を取られることは致命的な失策となり得る。白兵型同士ならば、或いはある程度の距離があればともかく、砲戦魔導師が至近で背後を取られて勝てる道理は無い。 だが、この距離から背後に回るのは不可能と言って良い。それが可能なのは壁さえ足場として跳び回る一部の陸戦魔導師、あるいは足場の併用による大加速を得れる超一流の近接魔導師のみ。どちらにしろ、空中ではありえない。 故に選んだ術は障壁『プロテクション・パワード』。一人と一機の判断は、極めて順当だった。 目の前にいる相手が、その不可能さえ覆す、規格外のひとつでなければ。 ■ 桜色の魔力弾が、四方八方に現れた。同時に魔力障壁が展開され、直進が封じられる。 機動力の代償として防御的機能を一切持たない自分では、強引に突破するような戦術は取れない。通常ならば退くべき状況。 『通常』ならば。 つまり、この状態ならば―――違う。 炉心加圧、右脚の加速機構を出力最大、三つの光輪が高速相転。さながら足裏で宙を蹴り飛ばすように、静止状態から亜音速にまで一挙に加速。 向かって左上の隙間に身を捻って滑り込み背後に移動。左の足裏を進行方向に向け、推力を発し静止―――最大加速。残像のみを残して離脱。 ―――殺さぬ程度には、手加減できるか? そう考えつつも迷うことはなく、人体の反応速度を凌駕する迫撃を、白い首筋へと解き放った。 ■ 「え……?」 それは、唐突に。 ヘリから飛び出し、次々に飛行型ガジェットを撃墜していた高町なのはが――― 糸が切れたように、地上へと落下した。 後方からモニターしていたロングアーチスタッフには、それこそ人形が全ての繰り糸を一瞬で切られたかのような、正体不明の現象としか捉えられなかった。 確認できるのは、そこに立つ紫色の人影のみ。故に、五人と一体の意識が驚愕に満たされ―――しかし刹那で復帰する。 「スターズ01、撃墜されました……!?」 「そんな!」 「バイタルはどうなっとるんや! 敵のデータは!」 「血圧、体温の低下や、魔力暴走の兆候はありません……ですが、意識が! レイジングハートは稼動中!」 「あかん、ライトニング04、全速離脱―――!」 遅かった。否、いかに速かろうと、それを阻むのは不可能だったろう。 女の姿が掻き消えるや、フリードリヒの頭が跳ね上がる。女の蹴りを喉元に叩き込まれ、滑空しつつ落下した。 「……撃墜、されました……!」 『てめええええええぇッッ!』 宙へと飛んだ紅の鉄騎が、戦鎚のヘッドから爆炎を噴き加速。高速旋回からの打撃を叩き込んだ――――――紫色の残像に。 刹那を刻み音を渡った女の回し蹴り。勘で辛うじて防いだものの、ガードの上から地上へと吹き飛ばされる。 「ヴィータ副隊長まで!?」 「敵影、魔力は感知されていません。ですが……これは、この動きは……」 「―――戦闘機人、か!」 副官であるグリフィス・ロウランが手元の立体鍵盤を叩き、大型モニターの一角にウィンドウを展開。 分隊から受け取ったデータから、エネミーに関するものを表示。幾人かの姿が映し出される。 今や見慣れたガジェットの群れ。 宙に留まっているそれと同じ、長身の女。 眼帯の上に銀髪を流す小柄な少女。 そして、異形の剣腕と紅い短剣を振るう軍服の男。 「出会い頭に撃破された一体が、戦線復帰したのか!? 見逃すなんて、108分隊は何をやっていたんだ!」 「いえ……サーチャーの記録、解析出ました。出力が感知可能な域にまで上昇した、その直後に攻撃を行った模様! これでは止められません!」 「……ッ! 北東より魔力反応、二つ! 大きい……推定ランク、AAです!」 「シグナムを回しい! もう片方は、108分隊に」 「入電! 『隊長二名の戦線離脱により、戦術を形成できず。支援を要請する』」 「スターズ04に通信コードを送信しろ!」 「魔力反応、転送反応、多数出現……召喚魔導師!?」 「この上数まで増やされたら……手に負えんようなる! レリックもガジェットも、ひとまず無視してええ。最優先で召喚者を落とす!」 『―――了解!』 「頼むで……皆」 ――――――その言葉は、司令室の喧騒に溶けて、消えた。 ■ 「……なのはさん、キャロ、ヴィータ副隊長っ!?」 降下の為に高度を下げたヘリの中、スバル・ナカジマが眼を剥いた。上官二人と同僚が攻撃を受け、地面へと落下していったが故だ。 当然のように救助に向かおうとするが―――止められた。 「やめなさい馬鹿っ! ……はい、了解しました。では、予定通りエリオには私から指示を出します」 「でもティア! なのはさんとキャロが!」「そうですよティアナさん!」 「じゃあ聞くけどね……私たちの任務は、何?」 「それは、レリックの回収と」「ガジェットの撃破ですけど……」 「ですけど、何? 大体、あのレベルの相手に私たちが向かっていっても、一瞬で落とされるだけよ。 犬死にするのはやめなさい。ギンガさんとグリーンさんまで離脱して、予定より六人も戦力が減ってるんだから」 二人の声を、ティアナは封殺する。彼女は、何処か醒めた眼で現在の状況を観察していた。 ―――“火”の制御。意識の白熱している部分を、表層と深層の中間に隔離し、俯瞰する感覚。 「ロングアーチからの情報だと、命に別状は無い。バリアジャケットは残ってたから、落下の衝撃も緩和できる。 他の二人も同じ。なら、私たちのするべきことは何?」 「だけど、誰かが牽制しておかないと……」 「俺がやろう……三射で落としてやる。 ……先程、グリーンと言ったな? それは108分隊の魔導師の名前か?」 アレックス―――異形と化した腕から放たれる砲撃で、地上の敵機を片端から破壊していた男は、表情を揺るがせてさえいないかった。 女が宙を走った際、微かに右目を見開いただけだ。 それも一瞬。今はわずかに眼を細め、狙撃の機会を窺っている。 「ええ、そうですけど……? それはそうと、お願いします。降りるわよ、スバル、エリオ」 「了解した……八神はやて、例のオーダーはキャンセルだ」 これで問題はないと言わんばかりに、返事を待たず飛び降りた。 表情に僅かな不満を浮かべながらも、二人は後に続く。 ■ 「……トーレの『エミュレータ』は、充分に実戦に堪えるようですね」 「当然だともウーノ。空戦―――こと砲戦魔導師が相手なら、あれに抗し得る者は存在しない。他でもないこの私が、そのように作ったのだから。 しかし、いかにリミッターが掛かっているとはいえ、あのクラスの空戦魔導師と、竜種をも一蹴できるとは。 手加減するまでもなく、多少は苦戦するかと思っていたのだがね」 『……申し訳ありません、ドクター』 「ああ、別に構わないよトーレ。あれだけの成果を出せたのだから、差し引いて余りある。 正面からでも倒せる見込みが大きければ、あんなしち面倒な策を採る必要は無いからね」 『いえ、そうではなく……』 空中に留まるトーレは、ち、と小さく舌打ちし、 『あの砲戦魔導師、思っていたよりはやるようです。蹴りを打ち込んだ瞬間、障壁の指向性を切り替えて炸裂させ、反撃してきました。 右脚の加速機構に影響が出ています。出力系にノイズが……』 「……エミュレータの使用に影響は?」 『これ以上は危険だと判断しますが』 「なら、直ちに通常起動に回帰させて撤退したまえ」 『了解……ッ!』 エミュレータを終了。動作状態を高速巡航用に変更、伝達、演算処理系が書き換わる感触に身を震わせ――――――その、一瞬未満の隙に狙いを定め、攻撃を放った者がいた。 その一撃の速度に比べれば、音速など牛歩に等しい。 トーレの左半メートル。超高熱の光条が、周囲の大気を歪めつつ通過した。 ■ 両腕を突き出し狙いを定める/磁気マップを読み解く/極限の集中―――引き伸ばされた空で、僅かに敵がみじろぎする。 左腕射撃/吹き伸びる光条―――外した。向かって右/上腕部から千切れかかった左腕を抱えるように宙を横滑りし、余波から逃れる。 それなりに速い―――が、ホワイトラビット/巴武士に匹敵しようかという動きは見る影もない。 照準修正/出力加圧/やや下方を狙い右腕射撃。身を捻って宙を掻き、回避――― 「―――無駄だ」 一瞬にして加熱された大気/発生する乱気流/姿勢制御を妨害。 姿勢を崩した敵に向かい、本命の両腕射撃を叩き込む――― ■ スバルの展開したウイングロードを伝い、高架の下へ駆け下りた。 柱の陰に三人で並び、索敵を打つ。本来のフルバックであるキャロがいない以上、センターである自分がやるしかない。 ……近場に敵はいない、と。なら、 「エリオとスバルは、召喚魔導師を捕えに行きなさい。位置は北東に百六十メートルよ。 もう一人の方は、シグナム副隊長が倒しに行ってるわ。 私は108分隊を援護して、残ってるガジェットと召喚体を倒す。質問は?」 「なのはさんと、ヴィータ副隊長、キャロの救助は……」 「まだ言うの? ……そうね。三人とも進路上に落下してる筈だから、安全を確認するだけならいいわよ。 ただし、必ず二人一組で行動すること。分かったわね」 「……うん!」 「はい!」 二人とも、顔を輝かせる。この単純さは変わらないな、と思いながらロングアーチへと通信し、108分隊への通達を頼んでおく。 ついでにもうひとつ、スバルの懸念を振り払っておこうと考えた。走り出したスバルの背中に念話を飛ばす。 『スバル。二人とも無事に帰還したそうよ。アクシデントがあったらしいけど』 『良かった……て、アクシデント?』 『グリーンさんが、身体強化の使い過ぎで、腿が内出血まで起こしてたのに簡易治癒だけで再出撃しようとして』 『ギン姉に無理矢理止められた?』 『テンプルにいいのを入れたらしいわよ』 『最近会ってなかったけど、二人とも相変わらずだね……』 『あの……その名前って……?』 『108分隊のツートップよ。スバルの姉さんと……何て言うのかしらね。ああいう関係は』 『居候……かなあ。でも、今は隊舎使ってるし……相棒?』 『それが無難ね。まあ、そういう人よ』 ■ 「ッせァああああああッッ!」 「ゥオオオオオオォォッ!」 袈裟懸けに振り下ろされた長槍を、長剣の斬り上げが受け止め、数十回目の火花を散らした。 反発し合う磁石のように互いが飛び退き、展開した三角形の魔法陣の上で構えを取り直す。 シグナムは、左腰の鞘に剣を収めた居合いの構え。 対するゼストは、穂先を倒し右後方に刃を向けた、最速で槍を薙ぎ払う為の構え。 ―――お互いに、出会った瞬間、倒すべき相手だと確信した。 言葉が意味をなさない相手だと、さながら鏡に映った自分を見るように、理解した。 双方とも、顔には疲労の色がある。 だが、瞳から窺える闘志は、欠片の陰りも見せてはいない。 (……この男、なんと堅固な槍術だ。付け入る隙が無い) (……この女、なんと苛烈な剣術だ。返しの槍を放てぬ) (*1) (だが、次の一撃で確実に落とす!) (ならば、後の後ではなく、先の後を狙う!) ただ二人 だけが、世界から切り離されたかのように、純粋な闘争を続けていた。 ―――その間に、何が起こっているのかも知らず。 ■ 前へ 目次へ 次へ