約 1,789,990 件
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/887.html
皇帝ジルノール3世、崩御。 リムノール中を震撼させたこの報は、デナール側の使者によって各地の諸侯に伝えられた。 デナール側は、各地に封じられている領主や諸侯に、帝都へ上ることを命令。 しかし、諸侯らは、理由は違えど答えは同じ、『拒否』であった。 ある者は、自らが皇帝になる野望を持っていたり。 ある者は、皇室への忠義を果たす為に。 ある者は、リムノールを見限り、独立した国家を築かんとするために。 これに怒ったデナールは、帝国中央軍を出動。 各地へと軍を進発させる。 手始めに、帝都サレム・ノティスのある、テル・ジ・リムノール地方北部にある城塞都市アルシを攻め落とし、ここを前線拠点とした。 デナールは、圧倒的軍事力を恃みとし、軍を三分。 一つは、テル・ジ・リムノール地方西部に位置する、ラタノール地方州都ジャコパールへ。 二つは、反対側の東部にあるテスコノール地方州都チャンスルへ。 三つは、二つ目の軍に追従し、チャンスルを陥落次第、北部にあるヤイマール地方州都クレイモンを攻め落とす為に、動き出した。 ラタノール領主である、コルノステ・ナッド・オルノディア公爵はこの報を聞き、前言を撤回して即座に降伏。 しかし、デナールはこれを許さず、コルノステは絞首刑に処された。 テスコノール領主アルマス・クォッド・ハルノーゼ公爵は、テスコノール中の軍をかき集め、帝国中央軍に対抗する。 しかし、中央軍総司令官であり、ブレウ・ドゥ・ラプテンディア(血絶の落日事件)の共謀者である、マーカス・アストリア・フラムドレインの巧みな軍略と、圧倒的兵力の前に打ち破られ、アルマスは戦死する。 そして、ヤイマール地方領主クロウン・デーチル・ファン公爵にいたっては、州都クレイモンを放棄し、東方へ逃亡中、部下に殺されてしまう。 こうしてデナールは瞬く間にリムノールの半分を掌握。 軍の整備を行い、次なる目標へと進む。 テスコノール地方チャンスルを落とした軍のうち、半数を守備においたマーカスは、そのまま軍を東方へと向ける。 即ち、次の標的。 それは、クリノール地方州都トリエストであった。 トリエスト郊外。 此処に張られた軍営に、トリエスト中から軍が集められた。 といっても、軍を置いている都市は此処、トリエストとシェルが太守を務めるデインガルド、あとは南方のトリノリーというところだけであった。 なので、数はそれほど多くはない。 総勢で、2万といったところだった。 「どんなもんだ、レイムッド」 「ティタルニアか。これは、ちょっと厳しいか……」 「向こうは、どれぐらいなもんだ?」 「チャンスル攻撃軍の公称は、35万だな」 「となると、実称は15から20万といったところか」 「半数は守備軍に残すらしいから、ここに来るのは10万前後とみていいだろうな」 二人は、軍営の中央部の本営で、軍議を行っていた。 二人でのことだから、軍議と言えるかどうかは曖昧だったが。 「しかし、2万か……」 「気を落とすな、ティタルニア。この2万は、精鋭中の精鋭だ。兵数で劣れど、兵力では劣らん。それに」 「それに?」 「トリノリーにも、まだ軍はある。ただ、あの人が来てくれるかどうかはわからんがな」 「老公様か。確か……」 「ああ、俺の、義理の父に当たる。ウィノナの父だからな」 クリノール地方南部のトリノリーは、レイムッドの義父で、妻のウィノナの父であるジェディア・アルマーズ卿が、太守を務めていた。 通称老公と呼ばれており、クォリアスと同い年で義兄弟の契りを結んだこともあるという。 ただ、如何な危急の事態であろうと、気が乗らなければ動かないその性格を読める者はいない。 したがって、今回彼が来てくれる確証を持っている者はいなかった。 「前の、ハン族だったか? 東方騎馬民族が攻めて来た時も、老公様は動いてくれなかったな」 「もしかしたら、今回も動いてくれないかもしれないな……」 二人はそう言うと、本営を出た。 外に出ると、丁度クラムディンが、地図を引っさげて、歩いているところだった。 「クラムディン、どうだ、頭の調子は?」 「まずまずといったところだね、レイムッド。総帥は、これ以上ないぐらい、働いているが」 「ランディール殿か。あの人も、本当ならばもう退官していてもおかしくはないのだがな」 ティタルニアが、外を走り回っているだろうランディールを慮る。 彼はかなり若く見えるが、実はクォリアスよりも二つほど、年上なのである。 「ともかく、少し休憩にしよう、クラムディン。こうも考えてばかりじゃ、頭の中が煮え切ってしまう」 「そうするか。本営の中に、何か飲みものはあったかな?」 「先日、シルクロード隊商から購った、唐産の高い茶があったはずだが」 「おいおい、レイムッド。あれはクォリアスがとっておいてくれと言っていた奴だろう」 「そうだったか? ならティタルニア、食糧庫から625年の葡萄酒取って来てくれ。俺が置いといたものだからな」 「分かった、レイムッド。クラムディンは、それでいいか?」 「構わないよ。付け合わせにクラッカーが欲しいかな」 ティタルニアは、右手をあげて、食糧庫の方へ向かった。 その後ろ姿を見送ると、クラムディンとレイムッドは、傍の木製机に折り畳み式の椅子を、三つ並べた。 暫くして、クラムディンがかなり年季の入った葡萄酒とクラッカーの籠を持って帰ってきた。 三人はそれを中央に置くと、しばし談笑する。 と、その時だった。 「伝令、伝令! トリエスト軍総帥レイムッド・ヴァンディール殿はいずこに?」 「ここだ、伝令。何事か?」 「ただ今、チャンスルの傍に配置してあった偵察隊から早駈けが参りました!」 「早駈けが出たのは、いつだ?」 「二日前の昼でございます!」 それを聞くと、クラムディンが持っていた地図を、机に広げる。 ティタルニアが人差指と中指を合わせて、辿って行く。 「二指5本分か。クリノールとの州境に到着するまで、5日。二日前のことだから、遅くとも三日後には州境に来る」 「そうか。伝令」 「はっ」 「直ちに軍営内に触れを出せ。二日後明朝、ここを発つ、と」 「畏まりました!」 伝令はきちっと姿勢を正し、そして駆け去っていく。 四分の一刻せぬうちに、軍営内があわただしくなってくる。 西の方では騎馬隊が原野に出て、最後の調練を施し始めた。 「いよいよ、戦争か。戦場はどのあたりだ?」 「荒地があり、出来るだけ隘路になっている場所だな」 「そうだな。こっちはそれほど騎馬隊がいないから、向こうの騎馬隊を封殺.せねばならん」 「州境付近でとなると……」 クラムディンが、人差し指で一か所を指す。 「グラムドロヌス」 「『堕.落の荒野』か」 「ここを超えられると、不味い」 「大丈夫だ。向こうからここを通るとなると、相当時間がかかる。それにトリエストからグラムドロヌスへは、半日でつく」 ティタルニアはそう言った。 三人は小さく頷くと、それぞれの幕舎へと解散した。 二日後、明朝。 トリエスト軍は、州境にあるグラムドロヌスへと進軍を開始した。 「寒気がするほどの、見事な朝焼けだな」 レイムッドは、中軍あたりで自分の馬に乗って、そう呟いた。 傍にいた兵が、恐る恐る聞く。 「あの……総帥?」 「なんだ?」 「我々は、勝てるんでしょうか」 レイムッドは、小さく微笑み、言った。 「勝てるさ。そう、信じている限り、な」 その兵は、喜色を浮かべ、そして力強く歩きだした。 レイムッドは、一抹の不安は感じながらも、さっきの自分の言葉に嘘はない、と思った。 史無国 拾弐へ
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/2405.html
【名前】 フライングフィッシュオルフェノク 【読み方】 ふらいんぐふぃっしゅおるふぇのく 【声/俳優】 田口亮 【登場作品】 仮面ライダー555 【登場話】 第16話「人間の心」第17話「巧、復活」 【所属】 スマートブレイン? 【分類】 オルフェノク 【特色/力】 遊泳態への変異、人間をオルフェノクにする水中銃での遠距離攻撃 【モチーフ】 トビウオ 【詳細】 「自転車の男」とされる人物が変身した全身にヒレを備えたトビウオの特質を備えたオルフェノク。 時速80ノットという驚異的な泳力を持ち水中での機動力の高さが売り。 ボウガンに似た大型の水中銃から青白く光る矢を放ち、200mからなら百発百中の腕を誇る。 更に陸の戦いも水中と同様、素早い身のこなしと手のヒレで空中を飛び石で切るかのように移動する事が可能である。 スティングフィッシュオルフェノク同様、遊泳態に変化する。 初登場時、水中銃で一般人を狙撃。用心深く逃走するも運悪くその場に居合わせた雅人に追跡され交戦。しかし、カイザの前に手も足も出ず、水中銃も失ったため橋から飛び降り遊泳態となって逃走する。 その後、森下義正に使徒再生を行い、駆けつけたファイズに追い詰められるも結花と出会い、オルフェノクを倒す事を迷っていた巧は止めをさせず、一転して反撃に移る。 オートバジンの援護も物ともせず戦いを有利に進めるも、後に到着したカイザには敵わず海にたたき落とされた。 カイザ戦後は逃げ延びていたのか、アルマジロオルフェノクとファイズの戦いに乱入して挟み撃ちの形にする。 しかし、チームワークは決していいとは言えず、迷いを振り切った巧に唯一の飛び道具の水中銃を叩き落とされたばかりか、アルマジロオルフェノクに誤って殴り飛ばされてしまい、最期はクリムゾンスマッシュを受け灰化した。 用心深かったのかはたまた臆病だったのかは不明だが、使徒再生後はその場から逃走、水中銃による遠距離からの攻撃、アルマジロオルフェノクとファイズを挟み撃ちにするなど、慎重な行動が目立つオルフェノクであった。 【余談】 モチーフはトビウオ。 「フライングフィッシュ」とはトビウオの英名であり、水上に飛び出し胸ビレを広げて滑空する様子から命名された。 「アゴ」という別名でも呼ばれ食用魚として漁獲され、主に塩焼きやフライなどで食べられる。 「アゴだし」と言われる出汁はトビウオの出汁であり、聞いたことがある人も多いのでは。 また卵はトビッコと呼ばれ寿司ネタなどに使われる。 トビウオが水上を滑空する理由としてはカジキなどの捕食者から逃げるためと言われている。 滑空時の距離は100mは余裕というが、勢い余って漁船に飛び込んでしまうこともあるとか。 トビウオモチーフの怪人は初。飛ぶ魚だが、スカイフィッシュとは関係ない。 スーツはマンティスオルフェノクを改造したもの。 後にマンティスオルフェノクに再改造されハイパーバトルビデオに再登場したが、胸部はフライングフィッシュオルフェノクのまま。
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/833.html
「んっ……」 目覚めはいつも清々しい。 時間は五時を示しているが、窓から入ってくる光は朝日ではなく、赤く沈みかかっている夕日だ。 「もう五時か……」 私はそう言ってしぶしぶ立ち上がり、背伸びをする。 そのまま私は台所に向かった。 「まだ残ってたかな?」 私は食糧庫と呼んでいる棚を開ける。 「後四個にもなってたか、注文しておかなきゃ」 私は食糧庫からカップ麺を取り出し、棚の戸を閉める。 最近カップ麺の中に入っている肉が変わったらしく、今持っているので変わる前の肉が入っているカップ麺とはさよならだ。 などと、対して思い入れもない事を考え、お湯を電気ポットで沸かす。この電気ポットはすぐに沸かせる優れもので、大変重宝している。ただ、電子レンジやらオーブンやらと一緒に電気器具を使うとブレーカーが時たま落ちるくらい電力消費が多いのがたまに傷だ。 私はポットに蛇口を捻り水をいれて、専用の器具に台座に差し込んでコンセントを差し込み、電源を入れる。 その後私はテレビを付ける。パソコンは常時動いているので、スクリーンセーバーを終わらせる為にマウスを軽く動かす。画面には株の情報がオンラインで上下している。 ここまで言えば分かると思うけど私は株、正確には主に仕手株の取り引きで生活している。といっても既に蓄えた金が十億に行くか行かないか程あり、税金もしっかり払っている。この仕手株というのはギャンブル株とも呼ばれる事もあり、その名前の通り、一日の落差が激しいのだ。これは株価の安い低位株で、空売りが可能で発行株数の少ない銘柄がターゲットにし、仕手と呼ばれる投機家が利益を得るために利用する事が多い株式である。しかしは流石に投機家というのはかなりの資産家でもあり、たまにとんでもなく幅が上がったり下がったりするが、大規模な時は少ない。 私がこの仕手株をやり始めたのは数年前の事だった。私は当時高校生だったのだが、家は俗に言うちょっとした富豪層あたりに属していて、親からいつも高望みをされていたのだ。私はそのことに嫌気がさし、通帳だけもって家出をした。 もちろん最初は働こうとも思ったが、結局働かずじまいで、私はとあるネットカフェで株を始めた。最初はもちろん数万程度だったがいつの間にか十万、二十万、三十万と増えて行き、私は通帳にあった五百万近くの金を五十万まで減らしてしまった。私にはもう後がなく、その時はとんでもない後悔をしていた。株なんてものに簡単につぎ込むのは馬鹿だった事をその時やっと気付いた。だが、家に戻る事も出来ず、絶望していた。私が仕手株を知ったのはそんな時だった。私は最後の賭けに出た。そしたらだ、その時丁度大規模な仕手戦が行われており、私はどういうものなのか詳しくもないのに適当にやって、結果は五十万だった残金が二百万まで増えたのだ。私にはこれしかないと思った。その後は普通の株も成功し、仕手株と合わせて一気に資金が膨れ上がった。二百万が更に増えて行き、一億を達したとき、家も一括で購入した。 その後は私は家の中にずっといた。要は引きこもりの様な状態で、世間的には無職とも呼ばれるだろう。 しかし今では私は家の中に完全に閉じこもっていたのであまり気にはしていなかった。 そこで電気ポットが湯を沸かし、電源が落ちたのを確認した。 私はカップ麺のビニールを剥がし、蓋を開けお湯を入れる。 相変わらず蓋に書いてある、お湯に入れて三分は長い気がしているので、いつも二分で食べている。 「飽きない?」 「飽きないわよ」 「体に良くないよ?」 「体は気にしてないわよ」 「ぬー」 「はー」 私は後ろから声をかけてきた「それ」に答える。 だけど私は後ろを見ない。それは誰か分かっているからじゃなくて、誰も「見えない」からだ。 いつも私の背中にくっついていて、時々声をかけてくれる。おかげで退屈も忘れそうだ。 だけど私はそれが何なのか知らないけど、知りたいと思う事もなかった。要はそれだけの「それ」なのだろう。 多分幽霊みたいなものだと思ってはいるが、幽霊じゃ声は聞こえないだろう。きっと幻聴なのかもしれないが、それでも別に良かった。私は何かも分からない「それ」といる時間が楽しい。
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/829.html
準備は整った。 よく二人とも、いや、皆さん踊っていただいた。 そろそろ私が出演する時間ですね。 主演は私、残りの皆さんは共演者、最後まで騙されるのはエキストラ。 それとも誰かが私の主役を奪う事など出来るでしょうか? 指示したとおりテロを行った事をテレビでも確認する。 「それでは君も行きましょうか」 「そうだな、御互いの勝利を祈って」 目の前の男、いや、獅戸 兇鑢と最後の杯を交わす。 獅戸は自分に都合が良ければ敵味方気にしない取引をして頂ける、最高の相手だ。それに彼は手筈を整えるのを早いのが時間を余りかけずに進めてくれた。 「それにしてもお前が黒幕だとあいつらはすでに分かっているんじゃないのか?」 「ええ、恐らくそうでしょうね」 「それだとサプライズにもならないな」 「そうですね、ですが輪廻は昔から少し鈍いところもありましたし」 「ああ、あいつは気づいて無さそうだな」 「一人だけでもサプライズになれば、楽しいじゃありませんか?」 「その性格嫌いじゃないぜ」 「君のその性格も私は嫌いじゃないですよ?」 「それにしても何故こんな事をするのか聞いて無かったな」 「それは聞かない約束でしょう。ですが、すぐに分かる事です」 「そうか、まあ俺も儲けになれば何でもいいしな。それにこれが終わったら園芝組からおさらばだ」 「そうでしたね、ところで移転先は決まってるのですか?」 「イタリアにな」 「ほう、それはいいですね」 「お前もこの後色々あるだろ、それが終わったら歓迎するぜ」 「それは楽しみですね。っと、こんな事している場合じゃないですね」 「じゃあ、行くか」 私は彼と最後の戦場へと向かう。 私は朝鮮第四連合最高指揮者、祖国の為に勝利を! ♯ 「緊急ニュースです」 権一の見ていたテレビが急に慌ただしくなった。 テレビに映し出されていた光景はあまりにも凄まじかった。 権一がチャンネルを変える毎に映し出される場所はどこも違ったが、光景はどこも似たようなものだった。 地獄とまでは言わないが、それに近いものである。その光景は建築物が炎上している。それもどれも大手企業である。自動車メーカー、電気機器、食品会社、チェーン店のグループ元など様々ではあるが、どこも日本産業を支えている企業である。 これが狐の言っていた同時テロなのか。それにしてもこんな大手なら警備も十分すぎるはずだ。簡単にこれほど同時に出来る事ではない。 だが、これは国としても一大事であるのは一目瞭然だ。テレビにも警察、消防、救急が大量に出動している。これがたったあれだけの武器でどうにか出来るはずが無いとまで思う。だが現に今起こっている事なのだ。信じがた事ではあるが。 権一がチャンネルを変えるのを止め、先ほど見ていたチャンネルにした。 「未だ犯人と思われる者からの要求等は無いようですが、政府では自衛隊の派遣を行う模様です。今入って来た情報によりますと、このテロは八ヶ所に上る同時多発によるテロが起こっている模様です。テロの被害にあっているのは、トヨダ自動車株式会社愛知本社、四菱電気株式会社本社、味の出汁株式会社本社、任店堂株式会社本社、株式会社ジャパネットたなか本社、イゾン株式会社本社―――」 そこで権一の電話が鳴る。 権一はそれをすぐに取り出し耳に当てる。 ただ頷くだけで、相変わらず話の内容は聞き取れなかったのだが、携帯を仕舞い、私に告げる。 「犯行声明が来たようだ」 私は今まで使用していなかったナイフ一式を服に仕舞う。権一もまだ準備は出来てはいないようで、私は先に車に乗り込む。 犯行声明はもちろん朝鮮第四連合のものであり、それもボスとも言えるような人物自らが姿までも現したようだ。 そしてその要求は園芝組、瀬戸組の解体であった。もちろんそんなこと聞きいれられるはずもなかったがそうもいかないのだ。同時多発テロにより大手企業が狙われ、その目的が私たちの組だと公に公表されたのだ。もちろん放送規制等は敷かれてはいるものの、すぐに民衆が広めていくだろう。正直これはもう手の打ちようがないのだが、その犯行声明はトヨダ自動車株式会社愛知本社で出されたものであり、解散までの猶予はあり、指定時刻は今から五時間後というまるで私たちに来いとでもいうようなものでもあった。 公園町から愛知県豊田市までは約三時間半掛かるものの、余裕があるが、あくまで到着までだ。解決するのには一時間半という短い時間しか残されていないのだ。トヨダ自動車株式会社愛知本社以外の場所には政府が乗り込むらしいが、私たちの向かう場所にはわざわざマフィアの方から警察や公安、自衛隊を向かわせた瞬間全ての場所を崩壊させるという事まで言ったようだ。 「輪廻様これを」 「ありがとう」 私は御付きから防弾ジョッキを受け取る。 「待たせたな」 「遅いわよ」 権一は普段使っている銃とは別に何処にあったのか、マシンガンなどを持って来ていた。 「権一様もこれを」 「ああ」 権一も防弾ジョッキを受け取る。 「それでは向かいます」 「お願い」 私たちは愛知へと向かう。 車内では空気が張り詰め緊迫していた。 私はこういう雰囲気が嫌いだった。でも私が一番気を張り詰めていたのかも知れなかった。それでつい言葉が出てしまった。 「それにしても安西と江崎とは長い付き合いね」 私は御付きの二人に声を掛ける。この二人は幼い頃から私の御付きとして、護衛として、教育係として様々な世話をしてくれた。私が落ち込んだ時にも慰めてくれたりもしたし、ナイフの使い方を教えてくれたのはこの二人だ。結果的には私の方が扱いが上手くなったものの、この二人がいなければここまで出来なかった。正直御父様よりも誰よりも頼りになると思っている。今では権一と一緒に行動しているものの、その前はずっとこの二人と行動を共にしたものだ。それに私がこんな役目をする事に涙を流したりもした。御父様よりも父親の様な存在なのかもしれない。 「ええ、そうですね」 「私も安西も輪廻様に付いてから十五年くらいになりますかね」 「それがどうかしましたか?」 「私は二人に感謝したいの」 「感謝? 何を言いますか。むしろ私たちの方こそ輪廻様に付けて光栄だと思っています」 「そうですよ、輪廻様に付けたからこそこれほど充実した刺激のある生活をさせて貰っているのですから」 「そう、かな?」 「輪廻様に付く前なんて事務仕事ばっかりでしたからね」 「そうそう、今だから言いますがあんな事もう正直したくないですよ」 二人は笑いながら言う。この会話は私はとても楽しい。 権一はずっと窓の外を向いていたのだが気になったのか、私たちの方を見ていた。 それは五月蠅いと思ったのか、それとも混ざりたいと思ったのか、それとも他の事なのか分からないけども、私はこれでしっかりこなせると思った。 だけど、これがもしかしたら最後の日になるかもしれない。 ♯ 時刻は十八時を過ぎていた。 連絡を受けてから既に四時間経っており、三十分早く着くはずだったが、案の定テロによる渋滞に巻き込まれたのが原因だが、その割には早く着けた。 「ここか……」 トヨダ自動車株式会社愛知本社のビルは十二階建てで、七階から九階までが炎上しているようだ。 「来たか」 そこには既に極陽が到着しており、組員二百人余りを引き連れている。 「「「若頭!お久しぶりです!」」」 組員は俺を見たそうそう一斉に言う。 その声に驚いたこのテロに群がっていた野次馬や、ここの関係者が俺達に視線を向ける。その視線は余りにも来るものがあるが、俺達に何も言ってこない。流石に原因ではあるが、俺達を敵に回したくないのだろう。 「久しぶりだな。だが、今こんな悠長にしている暇はないぞ」 「へぃ。それでは状況を申し上げます。ビル六階下の関係者は全員救助済みの様です。テロは関係者の話によりますと大量の銃声が聞こえ、小さい爆発が連続して起こったという話で、生存の確率は低いと思われます。警察、公安、政府上層部内部にもスパイが紛れ込んでいるものとして想定し、要求通りここには出動させていないようです」 「それと先ほどまた犯行声明があり、取り残された人を人質をして、残り時間一時間から十分毎に二十人づつ殺害していくというもので、これは八ヶ所で行い、十分で百六十人の犠牲者が出るものと思われます」 十分で百六十人か、しかし最後には一斉爆破だろう。 そう考えていた時だった。 ぐしゃ、と、何かが潰れた音がした。俺はその音の先に目を向けた。そこには、 「あれって……」 それは死体だった。だがその死体は内臓が飛び出し、骨が砕けたのか異様な体形で、近くにいた奴等に血が飛び散っている。その光景に恐怖の声も誰も出さない。それは余りにも悲惨な姿だったからだ。映画でもドラマ等とは全く違うその惨状。その光景に耐えられる者は多くはなく、いきなり泣き出す者、吐いてしまう者、失神してしまう者、だが誰も悲鳴というものを上げない。恐怖が大きすぎて叫び方を忘れてしまったかのようだった。 それからすぐに更に死体の近くに人が落ちてくる。それも同じようにぐしゃ、と、潰れる。 十分毎に殺害すると言っていたが、これが奴等の殺し方なのか、俺は落ちてくる先を見るとビルから、次々と人が投げ出されてくる。 「この落としてるのって此処の社員じゃないか?」 組員の一人が口にした。そいつは双眼鏡を持っており、 「そいつを貸せ!」 俺はそれを奪い取る。 確認すると確かに救助された社員と同じ制服を着ていたが、そいつがスパイという事は無さそうだ。わざわざ殺される様な場所に顔を出すはずもないし、口に何か張られている為、脅されているものだと考える。恐らくそいつは、仲間を落とせとでも命令されたのだろう。それはとんでもなくえぐい。 この光景を誰が予想したか。テレビのリポーターらしき人々もカメラの電源を落としている。 それから計二十人の落ちてきた人々は全員即死だった。手当をする事すらない。その死体は普通の怪我人と同様、救急車で運ばれて行く。 残ったのは静寂。 恐らく野次馬はここに来た事を後悔しただろう。記者も、消防も、救急も、誰もかもが後悔しただろう。脳裏に焼き付く事だろう。 それに輪廻も今にも泣きだしそうだった。 「お前大丈夫か」 俺は声を掛けると頭を縦に振るが、とても大丈夫そうには見えない。だが輪廻は目に滴らせるが、その涙を拭う。 「敵の規模はどのくらいなの?」 輪廻は涙を拭うと同時に気を引き締めたかのように聞く。いつもと違う気迫すら見せていた。 その言葉を復唱するかのように組員に聞く。 「二百五十人近くだと想定されています」 「多いな」 「ええ、ですがそれは全体でです」 「全体?」 「ですから、ここにはその一部、別の場所にもその一部と……」 「じゃあここは何人だ?」 「三十人から四十人だと思われます」 「そうか」 他の場所も同じような人数だろうが、それでもテロにしてなら結構な人数だろう。 「奴等の乗り込みの手口は分かるか?」 「数名はここの社員として紛れ込んでおり、テロを起こし、その騒ぎの間に一般人として紛れ込んでいた者が乗り込んだと見られます」 「じゃあ俺らはどこから突入すればいい」 「そのことですが……」 組員は口を閉ざす。 「それは俺が言おう」 そこに極陽が口を挟む。 「エレベーターは一切使えないのはもちろんだ。消防の奴等が救助に向かった際、六階と七階の間にある階段にある非常用ハッチが作動していて、それ以上上には行けない」 「通常ルートからは乗り込めない訳か」 「そうだ」 「それなら残るのは屋上だが」 「一気に乗り込む事が出来ない。全滅だって考えられる。さあどうする」 極陽はこんな状況下において、まるで楽しんでいるかの様だった。それもそうだろう。この男はそういう奴なのだ。 「どうもしない。俺がいく」 俺は淡々と告げた。このまま何も案が出ないとなれば、完全な敗北だろう。 「私も行く」 輪廻も俺の言葉に続く。 「それでは」 「私たちも」 安西と江崎と言ったか、この二人もさらに続く。 「それではお前等のお手並みでも拝見させて貰うか」 極陽は笑う。 これは恐らく怒りだろう。そして俺に期待をしているのだと思っておく。 それから組員の数人が名をあげる。 さぁ、久々の戦場だ。 ♯ 私たちが乗り込んだヘリコプターは救命救急センターのドクターヘリで、医師と看護師を派遣してきたもので、既にそれに乗っていた医師たちは医療に取り掛かっているものの、未だに緊急患者が出ていないため、無理を言って拝借したものだ。極陽が来るときに乗っていた物はあくまで極陽の移動手段であり、人数が乗れるものではなかった。 結局集まったのは、私と権一を含めて八人と操縦役の一人の計九人と少ないが、定員としてはぎりぎりであった。 そして私たちが準備している間にさらに十分が経ち、ビルから人が投げ出されてきた。 操縦はもちろんこちらの者で行っている。中は医療器具全てを出し切っていなかったのを全て外に出し、代わりに武器を入れていた。急いでいたためごちゃごちゃしているが、今はそんな事を言う事はできない。 「行くぞ」 そう言って権一はロケットランチャーを構え、屋上と同じ位置にヘリコプターが到着したとき、それを放った。 弾は屋上のど真ん中に当たり、大きな音をたてて弾ける。その行動には何の意味があるのかすぐに分かった。屋上に待ち伏せがいたという事だ。 何人かは吹っ飛んで行ったものの、やはり全員は無理だったようで、奴等はヘリコプターに向かって銃を撃ち放って来ている。そしてこちらは権一とは別の人物がロケットランチャーをもう一発放った。 「よし、行くぞ」 そう言って二人ずつ縄を伝って屋上に降り立つが、私の降りた直後にロケットランチャーを食らって尚まだ生きていた奴が、大砲の様な大きな物でヘリコプターに向かって放った。それは当り前のように命中し炎を上げて落ちて行く。その落ちたヘリコプターの中には操縦者と出遅れた一人の二人が命を落とした。 犠牲は付きものとは良くいったものだ。だが、その犠牲が出た事を嘆いても仕方ないのだ。それにまだ屋上には何人か生き残っている。 「どうやら注意するのはさっきの大砲だったのかも知れないが、気を抜くな」 そう言い物影に身を隠す。 相手も私たちが降りたら、あの大砲を撃ってきた一人以外はすぐに隠れたようだ。ちなみに大砲を撃ってきた奴はさっき呆気なく組員に射殺されている。 ここには合計最低三十人いると言っていたが、既に二十人も倒れており、隠れているのは三人だけのようだ。 相手の三人の隠れる瞬間を見ていたので、全員に隠れた場所を伝える。 「良く見ていたな」 権一は感心したかの様に言うが、ロケットランチャーの一発目と二発目の間に隠れていた事も告げる。 「隠れた後の行動も分かるか?」 そこで私は気になっていた事を告げる。 「分かるけど、ずっと隠れていて、銃も発砲してこなかったわ」 そう、直ぐに隠れた後何もしてこなかったのだ。まるで、 「何も知らない、或いはただの掻き集めかも知れないな」 私はそれを確かめるが如く身を張って隠れた場所に特攻する。 「おい!やめろ!」 権一の声を退けて、真正面から向かうと隠れていた奴が姿を現す、と同時に私は身を物影に滑らす。 そいつが姿を現したのを確認すると、後から誰かが発砲し、それは頭に命中したのを見たので即死だろう。そいつが持っているのは恐らくマシンガンという事よりも、ここまで近づいて分かったのが、手が震えている事だ。どうやら予測は正しいかもしれないが、全員がそうとは限らない。 「大丈夫ですか!?」 後ろから安西の声が掛かると、「大丈夫」、と言ってやった。この行為によって、相手が私たちの場所を把握しただろうが、正直相手から動いてこない気がした。あくまで足止めなのかもしれない。 そこで一旦時間を確認すると残り三十二分くらいだろうか、かなりシビアだろう。 その後残り二人も同じ手口で片付け、屋上の制圧を完了する。 屋上は流石にこれほどの企業になると建物もしっかりしており、先程のロケットランチャーでも凹むくらいで、穴が開くという事は無く、もし十二階に誰かいたらと心配したが、その心配はする必要が無さそうだ。 屋上から階段を細心の注意を払い、下に降りる。 しかし、物音も一切なく、廊下を進んでも誰も見る事は無かった。そして、部屋も一つ一つ確認するが、それでも誰もいないのだ。 「もしかしてどこか一ヶ所に纏まっているのか?」 それしかないとは思うが、まだ十一階と十階が残っているが、十階は既に火が回っているためいないだろう。それに此処でも下の火災の煙がやってくる。だから十一階にいるはずなのである。 私達はもう一度階段の場所に引き返すとそこには数人の人がいた。 そいつらは私達を見たそうそう銃を撃ち放ってくる。 私達は逃げようとしたが、後を振り返ると、また組員が一人撃ち殺されていた。 「はぁはぁはぁ」 「またやられたか」 権一は組員がやられた事を確認すると、武器を構え直す。私はまだ何も構えすらしていなかったが、ナイフを二本取り出す。 「変わった形してるな」 権一は私が取り出したナイフを見ると、私に言った。 一本は普通のサバイバルナイフで、もう一本はそのナイフは両端に刃が付いているもので、刃の先は少しカーブを描いているものだった。 普通のナイフは斬るのと刺すのを主に使用方法とするが、このナイフは差し込み、抜くときに思いっきりダメージを与えるような物だが、正直言ってこれはネタとかそういう類だろう。 「他にも変わったナイフがあるわよ。これが終わったら全部見せてあげるわ」 私は右手にサバイバルナイフを、左手両端に刃があるナイフを構えながらそう言うと、 「楽しみだな」 権一は初めてだろうか、笑顔を見せてくれたのは。 「で」 すぐに権一は緩めていた表情を戻す。 「輪廻、さっきの奴等の全員の数を覚えているか?」 「確認できたのは四人ね。纏まっていたから後ろにはもういないと思うけど。あと武器はさっきと違ってただのハンドガンみたいね」 「そうか」 そう言っているうちに私達以外の複数の誰かの足跡が近づいてくる。 「行くぞ」 そう言うと一斉に、バラけて迎え撃つ。 すぐに相手と面を合わせる。 私はここで何かしなければいけないと思った。いつもみたいに権一や安西、江崎に助けられるわけにいかない。 私には男みたいに力もなく、体力もそこそこで、度胸もない。だけど私はやるしかないのだ。このナイフで鍛えた時に一緒に鍛え上げられた反射神経、瞬発力、それを生かす時だった。 私は一気に相手の前まで近づき右のナイフで腹部を突き刺す。それを素早く引き抜き、首に突き刺す。その間に後にもう一人着ていたが、ナイフを引き抜き、後に転び、サバイバルナイフを投げつける。それはあたりはしなかったものの、一瞬怯み、私は素早く立ち上がり、左のナイフで裂こうをしたが、相手も後に避けた為、腕にしか当たらなかったが、深く入ったようで、 「くそっ!」 と、言うとそいつは一旦腕を押さえつつ退いて行った。 私は見えない場所まで行ったのを確認すると先程投げたナイフを拾う。 私は一回深呼吸をする。実戦というのは何度やっても精神的に追い詰められる。 一人は逃してしまったものの、もう一人は首に刺したため、即死だった。そして死亡を確認し他の人は大丈夫だろうかと直ぐに向かう。 「残りは五人か……」 一応あの後私が逃がした奴は江崎が発見して始末したようで、四人とも倒す事は出来たが、こちらも一人の犠牲が出ていた。 残っているのは私と権一と安西と江崎、それともう一人は名も知らない組員の五人と、正直きつい状況である。 「煙も多くなってきたな」 天井には黒い黒煙が昇り詰めていた。 「急ぐぞ」 階段から黒煙が昇っており、目が痛く、息も止めている状況だった。だが、十一階に降りたところに、予想していた待ち伏せがいなかった。いや、ここまで煙が多く此処で待機するのがきついとも思ったが、それならガスマスクでも用意しているものだとも思った。 階段の場所からそう遠くない場所で物音がした。それは歩いたりしているものではなく、どちらかというと暴れているかの様に激しい。 「あそこか!」 そう言って全員が一気に走り、その部屋を開ける。 そこには人質と、いかにも犯人と思わせるような覆面を被っている奴等がいた。 「てめぇらのボスはどこだ」 「お前が宮左御 権一か、指導者様から聞いてるぜ」 指導者か。変わった呼び方だと思った。 「そんなことどうでも良い。どこにいる」 「せっかちだな、指導者様は屋上にいらっしゃる。が、そろそろ時間だし見ていくか」 何を見せるのかと思い時間を思い出した。時間は残り時間が二十分になっていた。つまり四回目の犠牲者である。 「好きにしろ。俺は屋上に向かわせて貰う」 権一は人質を見捨てるかの様に背を向け、扉の外に出る。 「権一!放っておくって言うの!?」 私は叫んだが戻ってくる様子はなかった。 「園芝組ってのは冷たいんだねぇ」 覆面の一人がそういうと、 「てめぇ!」 名も知らない組員がそいつの脳天を撃つ。 それと同時に銃撃戦が始まるが、それは一方的なもので、向こう側に撃てば人質に当たってしまうからだ。 「輪廻様!ここは任せて屋上に!」 「でも、貴方達は」 「私達なら大丈夫です」 「後で私達も迎えに行きますから」 私は二人を信用し、屋上へ向かった。 私は誰かも知らないそのボス、指導者と権一が待つ場へ向かう。 黒煙は先ほどより広まっており、勢いよく駆けていく。 屋上に出るとそこには権一ともう一人が対峙していた。 そいつがボスなのだろう。月の光が雲に遮られていたが、その雲が徐々ずれていき、その姿を現した。 「久しぶりですね。輪廻」 ♯ 「御父……様……」 輪廻は驚きを隠せず硬直していた。 「何で……ここに……」 その小さい呟きはこの現実を受け入れられないかの様に、また、悲しみも隠せないかの様に、そう見える。 「何で何か聞かなくても分かるだろう、輪廻」 「嘘よ……嘘よ!」 それはまるで駄々をこねる子供のように、純粋な感情だろうか。だが、その感情すらも否定する。 「輪廻、悪いがこれは現実だ。私がこの朝鮮第四連合最高指揮者だ」 親が疑わしい事なんてはなっから分かっていただろう。でもそれを部下として、娘として否定していたのだろう。輪廻は地面に泣き崩れる。 「何泣いているんだい輪廻。私を捕まえる事が目的だったのだろう? 私はそう教えただろう?」 輪廻の親父、潺 白夜はそう言う。 いや、こう言おうか、 「本当のこいつの親父はどこだ?」 「え?」 輪廻はその言葉をしっかり耳に聞きいれたのか俺の方に振り向く。 そう、こいつは輪廻の実の父親ではないのだ。 「ほう、隠す必要も無さそうだね。これをとっておきのサプライズにしていたんだが、いつ気付いたんだい?」 「俺の知り合いが言ってたんだよ、『今の潺には似ておらんの』ってな。最初はいきなり何を言い出すのかと思ったが、こんな遠まわしに言われると思わなかったがな。説明もしておこうか、そいつは今の潺と違うという表現をしている。つまり一方的かも知れないがそいつはお前の事を、いや、以前のお前を知っていた。そしてお前がどこかで入れ替わった」 「でも、入れ替わったなら私は直ぐに気づくわ!」 確かに輪廻には記憶力がとんでもなく長けている部分はある。だが、 「冥途の土産にしては早いだろうが、全て教えてあげよう」 そう言うと白夜は語り始める。 「それは二十年ほど遡るかな。 当時私は表向きは取引相手として瀬戸組に出入りしていた。彼は当時輪廻と同じ若頭を務めていた。数人いる若頭の中でも一番有望な人物だったから彼を選んだのだがね。 この白夜を言う人物には最初は驚いたよ。とても寛大だった。それで且つ仲間思いで、私が言うのも何だが優しい者だった。 だが、逆に言うと扱いやすかった。そもそも私は日本に侵攻を掛ける為のスパイとしてやってきていた。だから連日のように瀬戸組にやってきても彼は歓迎してくれた。だが私はその間にも、彼の特徴を完全にまでとは言わないが覚えていった。仕事振りから癖、睡眠と起床の時間、風呂で洗い始める場所から全て聞き出した。そして顔まで完璧に分析し、そっくりに出来るようにまでした。 そして調度今から二十年前だ。彼と入れ替わりを決行したのは。実に容易だったよ。私を信頼しきっていたのだから、いつものように酒を交わした後に殺したよ。その後すぐに整形し全て覚えたとおり真似をしたら誰も入れ替わったことに気付かなかった。 これで西を仕切っていた瀬戸組を乗っ取り、我々の侵攻が進むと思った。だが、違った。それは輪廻という存在だった。 彼と妻の間にいつの間にか輪廻が出来ていたのだ。流石にいくら完璧に近い変装をしたとしても私がいづれDNAや血液検査すれば白夜本人とは違うと思われただろう。しかし幸運な事に彼の妻は君を生んだと同時に無くなったよ。君は帝王切開で生まれてきたから母体には負荷がきつかったのだろう。それで一つ目の邪魔は片付いた。もう一つは輪廻。私はばれない様に振る舞った。だが輪廻も幸運な事に特殊な記憶力を持っていたから、生まれた時には白夜本人の代わりに私が親に成りきっていた。そのお陰で本当の親とずっと信じ込ませることが出来て疑われずに済んだよ」 「……そう」 「納得して貰えたかい?」 「そんな昔から企てていたのか。そこまでは俺も知らなかったな。だが輪廻、これでお前もこの野郎に―――」 「……出来ないわ……」 「お前、まだそんな事を言ってるのか?」 「確かに本当の御父様じゃないかも知れない、だけどここまで育ててくれたのは!」 「もういい」 俺は呆れた。ここまで愚かだったとは。 「それでは権一君との一騎打ちとでも行こうか。と、その前にそろそろ時間か」 何やら時間を確認したあとそう言った。俺も時間を確認すると残り時間十分に迫っていた。時間はまだあったはずだ。だが、 下の階から大きな破裂音と爆発音、ガラスが割れるような音までし、その直後一気に炎の熱気が感じられた。 「何だこの爆発は!」 俺は不意の爆発に驚く。 「ああ、彼等自爆しましたね」 「彼等?」 「私の仲間ですよ」 「つまり……」 「ええ、人質諸共あの世行きでしょう」 自爆だと、それもかなりの大きさの爆発だった。 「貴様!まだ時間はあるはずだ!」 「確かにありますね。ですが悪人がそんなもの守るとでも思ってますか?」 当たり前の様に言った。 「それにこれなら君達は逃げれません」 「それはお前も一緒の話じゃないのか」 「ええ、ですが、祖国の為になら死を惜しむ事はありません。それに組の崩壊をさせるのは失敗しましたが、企業にはかなりの損失、そして君達二人を始末できるのであれば、私にとってはむしろ得かもしれませんね」 「じゃあ俺達を道連れって事か」 「そうです。ですがこのまま一緒に炎に包まれて死ぬのは権一君も癪でしょう」 「ああ」 「ですから」 「最後の無意味な戦いと行くか」 「行きますよ」 そう言うと懐から同時に銃を抜きだす。その速さは俺の方が勝っていた。これで引き金を引くだけだった。だが、 「ぐっ!」 俺の腹部に激痛が走る。 その場所に反射的に手を添えると、血が溢れ出していた。 「言ったでしょう? 悪人が約束を守って一騎打ちなんて物をするはずがないですよ」 そう言うとさらに俺に銃を打ち放ってくる。 俺は死んじまうのか……。 なぁ、狐。 死んじうまうのなら、生き返らせてくれとは言わねえ。 輪廻がこのまま生き残ったら、最後の願いを聞いてくれ―――。 ♯ 「権一……」 私は呟いた。反応も帰ってくる事がない。 「権一……けんいち……けんいちー!!」 権一は死んだ。呆気なく。 ドラマや映画やゲームのように奇跡なんて起こらない。 死んだのだ。私の目の前で、これほどまで呆気なく。 「ふぅ。スカッとしたぜ。こいつ嫌いだったし清々したぜ」 声がどこからともなく聞こえた。 「それじゃあな」 だがその声は少し喋っただけでパラグライダーで飛び立っていった。今までそいつがいたのか、それであいつが権一撃ったのか。 「どうしました? 輪廻。もう私達はする事もないでしょう。一緒に死にましょう」 私は何をしていた? 私は思考を巡らせる。 ただこの事実に潰されていただけで、それにあの爆発で安西、江崎も死んだだろう。そして権一。 三人も大事な人が殺され、実の親まで殺されていた。 私は逃げていた。全てから、最後まで逃げていただけだった。 私は今何をするべきなのだろうか? 安西も江崎も権一も私のせいで死んだようなものだ。 それを償う事ができるのだろうか? 私はこのまま二人で死ぬ? それは安西も江崎も望んでいないだろう。 それなら一緒に私も炎に燃やされる前に殺して貰う? それは権一が私の事を死んでも呪うだろう。 じゃあ、私が償う方法。 「いいえ、決着を決めましょう」 「ほう、父に向っての最後の悪足掻きかい」 私はもう騙されない、怯えない、逃げない。だから、 「いいえ、これは私の償い」 「そうか、それなら銃とはいかず」 白夜と呼んでいたボスは日本刀を取り出す。 「これで相手をしようか。といっても、銃よりも私はこっちの方が慣れているんでね」 日本刀か、日本人みたいな事して楽しいのかしら。でも相手が本気なら私も、 「私も本気でいくわ」 私は身につけていた一本だけナイフを持って、残りは全部放り投げる。 「これが私の本気」 もう使わないと思っていたナイフだった。 一度これを使ったとき、その使う感触に溺れてしまいそうだった程だった。 「この距離じゃ良く分からないが、ただのナイフじゃなさそうだね」 「ええ、私以外知らないとっておきの一品よ」 そのナイフは凶暴なものだった。刃の部分の面に大きな返しが大量に付いている。例えば釣りの針の先にもあり、要は抜けにくくするのだが、これを無理やり引き抜こうとすれば、抉れるのだ。それが人間の体なんて物なら簡単に銃以上の威力だろう。これは確実に仕留める為だけに用意していたもので、まさに今だった。 「さあ始めましょう」 「私は強いぞ」 「ええ、そうでしょうね。だけど私は―――」 誰も守れなかった私に、大切な人を殺した貴女に、 「私は貴方と共に裁かれましょう!」 私の掛声と共に私達は真正面に突っ込む。 白夜はそのまま刀を振り下ろす。私はそれを後ろに避け、いや違う。私は後に避けて着地した直後横へと動く。 日本刀は斬るよりも突くという方正しい使い方で、その突きは強力であり怖いからだ。 しかし突きは隙が出来る。私は体に目掛けてナイフを刺そうとするが、それをいとも簡単に避ける。白夜は一旦間合いを取る。そしてナイフというのは間合いが短いのに対し、日本刀というのはナイフを使うときの倍近くも射程距離である。だから一瞬の隙も見逃すことは出来ない。 私達は近づく事もなく離れる事もない、一定の間合いを取っている。 だが、白夜は一気に間合いを詰めてくる、私はそれを離そうとするが、間に合わない。左腕が大きく裂ける。私はその痛みに耐えようと歯を噛みしめた。しかしナイフを使っている右手じゃないのは良かったが、今のはかなりの深手で動きが鈍くなる。 流石というべきだろうか、ここまで重大な任務を渡されている最高指揮者と名乗るだけの事があると感心したが、そんな場合ではない。 「どうしましたか。そのままだと私がさっさと止めを刺しましょうか」 確かにこのままだと私は……。 「実の娘ではないとはいえ、少し来るものがありますが、仕方がありませんね。さようなら」 私は死ぬのか? やっぱり何も出来ないままなのか。 結局誰も守れず、ただの棒の様な存在だったのか。 いや、私は何の為に生まれてきたのかすら分からなくなってしまう。最後に、これが最後でいいから私に力をください―――。 そう願った。叶うはずもない望み。だけど、このまま本当に終わらす事は出来ない。 まだ私は生きている! 私は刀を避け、白夜に連続で仕掛ける。白夜は避けると同時に刀を振り回す。 この攻防は長く続く、いや、続いている。普段の私ならすでに刀に斬られているだろう。だけと私はそれを避けていた。左腕は余りの痛さに感覚を失っている。それどころか意識すら危ういかも知れない。だからもう終わりにしよう。勝っても負けても、これが最後だ。 「決まれー!」 私は大声で叫び、最後の腕を振り下ろした。 刺さった感覚があった。目も余り開かない状態でみるとしっかりと胸部に刺さっていた。私はそれを体重にまかせ抜く。 その後の事は覚えていない。白夜は叫んだり苦しんだりしたかも知れないが、私はその前に力尽きてしまっていた。 目をゆっくり閉じると体に冷たい物が当たる。 雪が降り始めた。
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/831.html
「柚姫起きなさい」 そう言いながら机に倒れこみながら寝ている私の親友を起こそうと揺さぶる。 「ふわぁ……おはよ……」 顔をあげた親友は呑気そうに起きる。 「おそよう」 私は挨拶されたので少し皮肉を入れて挨拶を返す。 もう既に本日最後の授業を終え、ホームルームの担任を待っているだけだった。 「それにしてもここ最近ちゃんと寝てる? 夜更かしのしすぎじゃないの」 「うーん」 柚姫は曖昧な返答をする。 これが私の昔からの親友の九十九柚姫、九十九なんて名前は、フィクションでしか存在し無さそうな名前にはよく初めて会った人には関心が持たれるようだ。それと一緒に惹くのは容姿だ。彼女はどんどん綺麗になっている。 しかしこれは良い事とは限らないのが現実だ。小学時代と中学時代に余りにもずば抜けてもてていて、告白も良くされていた。いや、異常なほどだった。それと同時にストーカー被害にもあっていた。それから彼女は中学三年の時学校には行かなくなった。これが原因で今では男性恐怖症を患っている。 だから私達は少し遠めの女子高まで通っていた。いや、正確には近くにも女子高はあったのだが、それは結構名の知れた私立の女子高で、偏差値も二回りほど高めだった。ここで問題になったのが柚姫の成績だった。柚姫は容姿端麗ではあるが、才色兼備とはいかなかったので、必死に一緒に勉強したものの私は受かったのだが、柚姫は落ちてしまった。もちろん私は彼女とここで別れる選択肢もあったが、私は一緒にいる事を選択した。 だが、これは良かった選択なのかもしれない。その理由はというと去年の十二月に大手企業を狙った大規模なテロがあり、その私が行こうとしてたあの学校の運営元が関係していたらしく、今年一杯で廃校になるそうだった。私達は今二年生なので、多少面倒になったかも知れない。 というのは新聞に乗っていた。 「席についてー」 担任が扉を開けて入ってきた。 手には大量のプリントがあったので少し嫌な予感がよぎった。 「まず初めにプリント配りますよ」 そういいって列ごとに数往復して、何枚かのプリントを配り、私達生徒は後に回していく。 「皆さんが二年生になって一ヶ月経ちますね。私も担任として、それどころか教師としてまだ一ヶ月しか経っていません。ですから私はまだ生徒の知らない事が多いので、今週中にその最後に渡したプリントに書いてきてくださいね」 などと言っていたのを軽く聞き流しはするものの、プリントを見ると、丁寧にいくつかの枠が出来ており、どう呼んで欲しいかとか、先生に質問したい事はないかとか、そんな事が書かれていた。真っ先に呼び方は「苗字で」と、書いておいた。名前の方で呼ばれるのは少し恥ずかしいからだ。 私のフルネームは城岬 乙女。昔は良くからかわれたけど、今はそんなに気にはしていないが、呼ばれると少し恥ずかしくなってしまう。 とりあえず私はそれだけ書いて鞄にしまう。 「後は各自で読んでおいてくださいね」 適当すぎるが、生徒にしてみればすぐに帰れるから別に良かったりする。 その後は委員の報告やらあって、最後に挨拶をしてホームルームは終わった。 そして私達はいつものように一緒に家に帰る。 通学には流石に男性恐怖症でも電車に乗らなければいけない訳で、事実少しでも男性に触れるのを極端に嫌っている。でもこれでもましになった方だ。引き籠った当初は男性の顔すら見たくないというような感じで、触れる事が出来ないにしろ、近づく事まで出来るようになったのは大きな進歩だと思う。 電車で座るときは柚姫が窓側に行くのはずっと変わらず、立っている時は背もたれでもない限りどうする事も出来ない。まあ女性専用車両という便利な物があるのでいいけど、毎回この時間になるわけではなく、女性専用になるのは朝は始発から九時まであるから良いが、帰る時は午後五時からなので、少し時間を潰さないとといけない。しかしこの時間帯はあまり私達の地域は乗客が少ないので、大体座る事が出来、運悪く出来なくても背もたれも使う事も出来る。 こんな事を考えたとおり、今日もちゃんと席は空いていた。 「ほら、座って」 「うん」 私に手招きされて、柚姫は先に窓側の席に座る。 「今日は大丈夫だった?」 「大丈夫だよ」 私は柚姫に問いかける。 先ほど説明したとおり、柚姫はもともと重度の男性恐怖症だったのは、未だに少しは思うとこがあるらしく、最近では男性に近付かれてもどうもならないが、時たま気分が悪くなったりする。 恐怖症というのは当人にしたら、かなり精神的に来るものだ。柚姫といたらそれは嫌でも思い知らされる。 「良かった。ところでせんせーの出したプリントどうする?」 ホームルームで配られた例のプリントについて聞いてみる。 「私もう書いたよ」 「うそっ!」 まさかホームルーム中既に書いていたとは、 「じゃあもう提出した?」 「まだだよ。一応まだ書ききれてないところもあるから」 「そっか、とりあえず見せて貰ってもいい?」 「いいよ」 柚姫は快く承諾し、プリントを見せて貰う。 うむ、相変わらずの字の汚さと言ったら、どうして容姿だけがずば抜けているのだろうか。恐らくゲームで言うとステータスで容姿に全部振ってしまったのだろう。そう思っておこう。 「えーと、呼ばれ方は「姫」」 「皆そう呼んでるから」 説明しなくても、柚姫だから姫、随分分かりやすい。 「何々、趣味は睡眠、好きな物はお菓子、嫌いな物は勉強と運動」 実に怠惰していらっしゃる。それに食っちゃ寝て運動してないくせにそのスリムな体形は喧嘩売ってるとしか思えない。 「色々言いたい事があるけど次々」 色々思ったけど口に出して言わないのは優しさである。 「……現在の財布の所持金……?」 なんつー事を質問してるのか。この担任は相変わらず何処か沸いているのだろう。 「三千円、って別に律儀に答えなくてもいいでしょ!」 「え? だって質問されてるんだから答えなきゃ」 ……もういいや。こういう子だし。 後の質問も意味がよく分からないのばかりで、そのプリントを破ってしまいたいという衝動に駆られが、とりあえず耐えきった。 「ただいまー」 私は鍵を開けて家に帰って来て、すぐ自分の部屋に入り制服から服を着替える。 それから私はリビングに向かうと、兄貴も久しぶりに帰ってきていた。 「あ、帰ってきてたのか」 「兄貴も帰ってきてたのね」 相変わらず何を書かれているのかよく分からないレポートを大量に読んでいた。 私の兄は既に大学を卒業しており、何処かの研究所で働いていた。兄はずば抜けて頭がよく、天才と言っても過言ではない人物で、研究所からスカウトされて働いている。ちなみに分野は生物生命という、とてつもなく難しい気がする物で、マッドサイエンティストと呼ばれてもおかしくはない。名前は城岬縁。性格は色んな意味で良いとは言えない。 「柚姫ちゃんは?」 と、もう一人が言う。 「柚姫は着替えに帰りましたよ」 「そっかそっか」 そう柚姫の姉さんにいう。 まあなんだ、ここに柚姫の姉さんがいるのは偶然ではなく、何が起こったのか私の兄、縁の恋人である。 名前は九十九 百々。ひらがなで書くと「つくももも」なの友人からはであだ名で「ももも」と呼ばれていたりするそうだ。 恋人になったのは恐ろしい事に中学生の時だったらしく、その頃から兄貴はこんな人物だったらしく、本当に百々は一体兄貴の何処に惹かれたのか不思議でしょうがない。 「乙女ちゃん、冷蔵庫にお土産のプリン買ってあるから柚姫ちゃんが来たら四人で食べよ」 「有り難う御座います」 「俺は要らないぞ」 兄妹揃って違う事を言うが、いつもの事である。 その余った一個は柚姫の胃の中に入るのは分かり切っていた。 とりあえず久しぶりに六人で夕食になりそうだ。 私達の家族構成は私、縁、父、母の四人家族で、共働きなので、帰ってくるのは七時くらいだ。 それに対して九十九家は、柚姫、百々さん、父、母の同じ四人家族で、共働きなのだが、二人揃って有名なデザイナーという夫婦で、今も世界の何処か遠い所にいる。今はフランスだったかな?それで、柚姫と百々さんは城岬家で面倒を見たりしている。まあ家がかなり近くにあるってのもそれが出来た訳だけど。 まあこれで城岬家に柚姫と百々さんを交えた六人で食事をとったりしているのだが、縁は研究所に泊まることの方が多く、家に帰ってくるのは結構珍しい。だから普段は五人の時の方が多い。 「お邪魔します」 そう言って柚姫が着替えて来て家に上がってきた。 「柚姫ー」 そう言って百々さんは柚姫を見た瞬間柚姫に抱きつこうをするが、サッと避ける。 「プリンだ!四個あるから二個貰っていいよね?」 いつものように縁は入らないと言うと思い、二個掻っ攫っていく。ちなみに行き場を無くした百々さんの体は壁にぶつかっていた。 プリンを食べ終え、私は自分のの部屋に向かった。 私の部屋良く柚姫が出入りするので、綺麗に整頓されている。逆に最近は柚姫の部屋に入ったことがなく、柚姫の家に行く事は時たまあるのだが、その時に入れてもらおうとしても嫌がるのだ。まあどうせ部屋が汚いのだろう。昔は入ったりしていて、その当時は部屋が散らかってばかりいたので、よく私と一緒に片づけて、それだけで一日が過ぎたりした。確かに柚姫はこんな性格だから分からない事もない。一応毎回家に行く時は聞いているのだが、一向に入れてくれる気配は無さそうだ。どれほど汚いのか想像はしたくはない。 ともかく私は柚姫を部屋に招き入れる。 私の部屋にはテレビやパソコンもあって、正直あまりリビングに出なくても生活は出来るが、リビングにある大きな液晶テレビとは違って、少し小さめなアナログしか映らないようなテレビで、そろそろこれも買い替え時かも知れない。もう少しでアナログが見れなくなるそうだし。それからパソコンも型が古いのでメモリも256Mbしかなく、最近みたいな2Gとかもない。まあ余り使わないから困りはしない。 他には今まで使った教科書があったり、好きな小説家の本が全巻揃えてあったり、なんとなく気になった漫画を中途半端に途中の一冊だけ買ったりしたのを、キチンと立ててあるとある本棚があり、私は服は余り持っていない為、中が結構スカスカなタンスがあったり、その上には化粧品やらが乗せてあったり、余り場所を取らない折りたためるベットがあったり、何の特徴もない四角の机があったり、そんな部屋だ。別に壁にポスターを張ったり、マイ冷蔵庫なんて物はない。 後あるのはすぐに人気の無くなったMDのコンポやゲームくらいだろうか。ゲームは昔はよく四人でやっていたが、余りやらなくなった頃から、リビングから移動して私の部屋の一部となっている。まあ今でも柚姫とやっていたりする。新しいゲームは買う事は無く、ずっと同じ物ばかりしてるけど。 私はまだ制服のままだったので、普段着に着替えようとタンスに直行する。流石に服のレパートリーが少ないので、ジーパンと長袖のシャツといつも同じチョイスになる。それに比べて柚姫は色々持っているので、良く見た目は女の子らしくていいなとは思う。中身については触れない。 私が着替えている間、柚姫にはリビングで待っていてもらっている。と言っても着替えて、制服をハンガーに掛けたらすぐで、別に化粧も余りしない。髪も特別長いわけでもないので、梳くのは風呂上がりくらいだ。 私は普段着に着替え終わると、柚姫を呼びに行く。 リビングでは柚姫と百々さんは二人で談笑していて、縁は何かの資料かレポートを片手に、テレビを見ていた。テレビに映っていたのは、昨年のテロを行われた企業に国が補助をようやく出す案が可決されたというものだった。国というのは手続きが面倒だそうだ。よく知らないけど。 「柚姫ー、いいよー」 私は柚姫に声を掛けると、柚姫は百々さんに一言言って私の方に向かってくる。 私はそのまま柚姫を連れて私の部屋に向かう。 柚姫は私の部屋に入るなり、すぐにカーペットの上に寝転がる。 私は学校の鞄の中から例のプリントを取り出し、机に向かう。 「さて、何書こうかな」 呼び方は苗字と書いていたのでいいとして、好きな物は読書と妥当な事を書いて、嫌いな物はむしろ饅頭がこわいと適当な事を書く。 とりあえずここまではいいだろう。しかしここからが問題であるわけで、 「うーん」 私が別に悩まなくていい事を悩んでいると、寝転がっていた柚姫は体を起こす。 「私が書こうか?」 「ん、断るよ」 「何で~?」 「柚姫に書かせたら碌な事にならないから」 「どういう意味ー」 「そのままの意味、だって字も汚いし、この間だって国語の抜き打ちテスト間違えまくってたでしょ」 「うー、あれは先生が悪いんだよ。いきなりテストとか」 「抜き打ちって言ってるでしょうが」 そう、この間あった春休みが終わって、始業式のすぐ後にあるテストとは別に、国語では抜き打ちテストがあり、春に出た課題以外の場所が問題に出た。と言っても、文章を抜きだすとか面倒なのは無くて、漢字の読み書きや四字熟語の意味(選択肢付き)など簡単な物だ。それに高校以前の中学に習った物が多く出ていたのだが、見事に柚姫は三十点満点中四点という記録を出したわけである。ちなみに平均は確か十点は超えていたはずだった。まさか六分の一しか取れないというのには少し呆れた。 その後はみっちり平均以下の生徒には課題も出された。柚姫は本気で破り捨てようとしていたのを止め、どうにか書いて提出させた。 まあ他にも変な事を書かれては困るというのももちろんある。でも何を書くのがいいのか、いっそ白紙でも良い気がしてきた。よし、そうしよう。 一々書くのも面倒だし、あの担任の事だ、別に書かなくてもどうも思わないだろう。 別に成績にも関係なさそうだし、そのまま私は三ヶ所以外の場所を白紙のまま鞄にしまう。 「ところで今日は勉強見なくてもいい?」 私はプリントを鞄に舞い終えると、柚姫に問いかける。 「今日は大丈夫だよ」 「良かった、昨日はあれだけやってまだ残ってたって言われたら困るからね」 私は成績があまり良くない……いや、普通に悪い柚姫に勉強を教える事がある。と言ってもただ単に学校で出された課題を教えながら二人でするだけだ。私も分からないところがある時は親に聞いたりしているし、縁がいる時は縁に教えて貰っている。なんだかんだ言っても、天才というだけあって、国立の大学を難無く卒業している。 特に昨日は柚姫がいくつもの教科の課題をするのを忘れていて、私が奮闘する羽目になった訳だ。たまにある事なのだが、これはこれで正直面倒な話ではある。まあ今日は無くて良かった。同じクラスだし、する事も一緒というのが不幸中の幸いとでもいうのか、恐らく言わない気もするが、今日は課題をどの教科も出さなかったので、柚姫の言葉が本当なら大丈夫だろう。 それから私と柚姫は数年前に買ってからずっとしている最高四人まで出来る双六形式のゲームをして時間を潰した。ちなみに柚姫はゲームに関しては私よりは強いが、飽くまでそれは二人だけの話で、世間的には私達は下手という部類な訳だ。コンピュータの普通にも勝てたり負けたりするくらいのレベルだが、まあ下手なりに楽しい部分もある。 「惨敗だー」 私はそう言って仰向けに倒れる。今日は見事なまでに突き放されて負けた。一周毎に行われるミニゲームもほとんど勝てなかったし、サイコロの目もひどかった。これだからゲームは、などと屁理屈を思ってみる。 「っと、そろそろご飯作らなきゃね」 時間は六時を示している。もちろん夕方である。 基本的に夜は親が帰ってくる前に私が作っている。朝は夫婦揃って早いので、作るのが面倒なので食パンだけというのが多い。 「今日は何作るの?」 「それは出来てからのお楽しみ」 そう言って私達は一旦リビングに下りる。 ごはんは朝炊いておいたので、おかずを作る。今日の献立は豚の生姜焼き、鮭のムニエル、レタスとブロッコリーのサラダ、と数日前に決めて買い溜めした物で作る。 比較的時間も掛からないのがいい。要は手抜きでもある。 サラダは最初に作っておく。適当にレタスをほぐし、茹でてあるブロッコリーを載せるだけで完成。ドレッシングは好みが違うので、取り分けてから、各自で掛ける事になっている。 生姜焼きのタレは市販のものではなく、自分で作る。醤油、味醂、酒、そして摩り下ろした生姜を入れ、掻き混ぜる。これを焼いた豚肉に絡めるだけで完成だ。中には砂糖も入れる人もいるそうだけど、うちの家庭では入れる事無い。 最後の鮭のムニエルは鮭に塩コショウを振って、小麦粉を塗して、バターと一緒に焼くだけで、ソースはさらにバターとしょうゆを混ぜたものという比較的簡単なものを作った。 と、料理の過程を説明するとこんなものである。 私が料理を作っている間に両親揃って帰って来ていたので、そのまま夕食にする。 「みんな運ぶの手伝って」 と、出来た事を伝えると、柚姫と百々さんと縁は皿と料理を運んでを配るのを手伝いに来る。 「流石乙女ちゃん、いつもながら美味しそう」 「百々、さっさと運べ」 「柚姫、私肉多目ね」 と、各々述べて皿を運んで行く。 兎にも角にも、私は最後に茶碗にごはんをよそって持っていくのだ。 テーブルの右側に百々さん、緑、お母さんの順に座り、左側に柚姫、私、お父さんの順に座って、食事の時はテーブルを囲んでいる。 うちでは、食事中はテレビをつけないのが鉄則で、要は家庭の絆をなんとやらという事だ。 ちなみに私としてはテレビを見ながらの方が会話が弾む気もしない事もない訳ではあるが、その辺りは録画しておけばいいだけなので、今となっては気に留める事でも無かった。 親との談笑もしつつ食事も進んでいるのだが、ここで一ついつもの出来事が起こる。 さて、テーブルには大皿に料理を盛ってあり、各々が小皿に取り分けていく事になっている。 故に取り合いと言うのも起こるが、同時に嫌いな物を食べないというのも起こる。と言う訳で、 「緑~、はい」 百々さんは勝手に縁の小皿の中にサラダをぶちまける。表現は間違っていない。 「……頼むからやめてくれ」 縁は余り野菜を嫌う所があるのだが、それを駄目だと思った百々さんは彼女として、健康的に野菜を食べてほしいと思って必ずとる行動である。基本的に研究所泊まりの緑なので、野菜をそこで少ししか食べてない為に、食べれる時は無理やりにでも食べさせようとしている。その考えはいいかも知れないのだが、極端であり、大皿に合ったサラダの大半が縁の小皿に入れられ、小皿からはみ出しまくっている。私も馬鹿ではないので、縁の小皿だけ私達以上の大きさにした事があるのだが、余計に入れられる量が増えて逆効果だったので、縁が帰って来ている時はサラダ全体の量を減らすという強行策に出ている。まあ縁は無理やりでも残さず食べてはいるようだ。 「ところで日曜日二人とも暇?」 百々さんは縁のサラダにドレッシングをこれもまた豪快に掛けながら、私と柚姫に向かって聞いてきた。 「私は大丈夫ですけど?」 「私も何も無いよ」 ああ、いつものかと思いつつ、暇な事を言う。 「じゃあさ、これ行こう!これ!」 百々さんは懐から何かのチケットを取り出した。 とりあえず説明しておくと、百々さんはよく突拍子もなく変わったものに興味を出したり、ふらっと何処か遠方まで遊びに行ったりする。これもその一つで、たまにクラシックや日本民芸などから、スポーツや美術品など様々な物に興味を出しては、それをしたり、見に行ったりすることがある。これは縁とのデートと称して良く二人で行っているのだが、縁は忙しい身分でもあり、行けない事の方が多いため、私達が誘われることがある訳だ。因みにお金は百々さんが出してくれるので、正直悪い言い方だが暇つぶしにはいい。今回はチケットと言う事は何かを見に行くのだろうか。 私と柚姫はチケットを見る。 「日本舞踊?」 「そうよ、このチケット手に入れるの苦労したんだがら。日本舞踊の有名どころが集っての公演だからプレミアまで付くほどなんだから。あ、これパンフレットね」 何処から取り出したのか疑問になるような大きさのパンフレットを受け取る。 日本舞踊の中からいくつかの舞踊が順番に見せるというものだった。出演者の中にはテレビでも聞いたことがあるようなないような名前も含まれていた。というか、こういうのは不祥事とかで名前を初めて聞くような気もしない事もない。 「でねでね、中でもこの麻倉 美月って人が一番の見どころでね、最近の新人さん何だけど、世界でも有名な人なんだよ」 百々さんは喜々としているが、もちろん私は知らない。 「ああ、私知ってるわ」 と、お母さんが口を挟んだ。 「あれでしょ、この間能楽の期待の新人ってテレビに取り上げられてた」 「そうそうそれですっ!」 どうやらその人は能楽をしている人らしい。私には能と狂言の違いも良く分からないけど、能楽の人ということを覚えておく。 「あの子凄いわよね。別に流派の本家とかの子じゃなくて、何処かから引き抜かれて来たそうじゃない。天才って言うのはああいうのを云うのよね」 「おいおい、うちの息子だって十分凄いじゃないか」 お父さんは縁の事を取り上げる。 「でも、どちらかと言うと辛気臭くて、折角ならああいう煌びやかな方が良かったわ」 見事に息子の存在を否定するが、これも家族愛なのだと思う。別に本気で思っている訳でもないしね。 とりあえず私と柚姫はどうせする事もないので、行く事を伝えた。もし大量の課題が出たら金曜日と土曜日に終わらせるのはきつい気もするのだが。主に柚姫が。 それから食事が終わると、百々さんと柚姫は家へと帰って行った。 「そういや縁、今回はいつまで残っているんだ?」 お父さんは縁に徐に聞く。一応日曜に行けないという事らしいから、最長でも土曜日には研究所へ戻るのだろう。 「明日にはもう戻るぞ」 「そうか」 お父さんは寂しそうに頷く。縁は一人暮らししてもいい歳だが、お父さんは未だに子離れ出来ないので、研究所以外の時はここに戻って来ているだけというのが正直な話だった。 「悪いな親父、今重要な件が進んでいてな。変わりと言っては何だが、酒位は一緒に飲むぞ」 「そうか!それならとっておきのを用意してあるぞ!」 そう言って何処かへとっておきの酒とやらを取りに行った。 私はその背を途中まで追って、自分の部屋に戻り、ベッドにうつ伏せに倒れる。 「ぐあ」 ちょっと勢いが付きすぎて、少し腹圧迫する。大した事ではないけど。 それから普通に風呂に入ったり、歯を磨いたり、美白効果とかある化粧品を付けて、睡眠を取った。 ♭ 寝惚けた顔が鏡に映る。 食パンだけの朝食を終え、顔を洗って歯磨きしている最中である。 朝起きると普段は既に出社準備しているお父さんとお母さんなのに、お母さんしか見えず、昨日お父さんは縁と一緒に飲み過ぎて酷い二日酔い状態になっているようで、有給を取ったようだ。だが縁は何も変わらず、ピンピンシテいた。若さというのがあるからだろうか?もちろん私は酒が飲める歳ではないので、その真偽は分からない。 歯磨きをし終え、もう一度顔を洗い、髪を整える。髪は少し癖が付いており、横の方に跳ねているので、それを押さえる。まあこれは一時凌ぎなので、時間が経てばまた跳ねてしまうのがちょっとした悩みだ。ワックスなどを付けるのが簡単なのだが、それはそれで正直面倒なので、櫛で何度も梳いて落ち着かせる。前髪は何故か横に流れているので、目にかかる事も少ないので、その辺りはそのままにして置いている。 最後の身支度を終わらせる為に制服に着替える為、自分の部屋に戻る。うちの高校は最近多くなってきているブレザーで、色は普通に紺色だ。しかし私立だからなのか多少値が張っている。因みに昔はここもセーラー服だったらしいが、数年前にブレザーに切り替えたらしい。学年毎の違いは胸ポケットに刺繍されている校章の色が違うという点だけで、それ以外は差はない。 「よし」 時間も少し早めだが、柚姫を呼びにいく。 柚姫は相変わらず、私以上の眠たそうな顔で玄関から出てきて、珍しく私が迎えに行ってすぐ出てきた。 普段は私が迎えに行くとまだ朝食中だったというのも珍しくは無い。確かに此処から学校まで遠い為、早く起きるのは必然になるので、私もそこまで早く起きるのは結構辛かったりする。だから柚姫はその後慌てて用意したりするのだが、今日みたいに早く準備している時がある。しかし何故かそういう日に限ってやたら眠そうなので、恐らく朝まで夜更かしでもしていたのかもしれない。 まあ一応身支度自体はちゃんとしているようで、長い髪もちゃんと梳いたりしたサラサラした髪で、制服もしっかり着ている。何気に忘れ物も余りする事もない。 「ほーら起きろー」 私は柚姫の頬を軽くペチペチと叩いてみる。 まあいつも通り頷くだけで、眠たそうな顔は覚めない。 柚姫の腕を引っ張り、駅まで向かう。 まだ5月と言えど、雲がない時は日光が降り注ぎ、多少気温も上がっては来る。まあまだ衣替えという時期にも早いので、気温もそこまで高くなる訳でもない。しかし直射日光は肌が黒くなるので、日焼け止めは良く持ち歩いている。対して柚姫はその辺りにはかなり気を使っているようで、肌はとても白くきめ細かい。流石外見だけは惚れ惚れする。 勉強にもこれくらい力を入れて欲しいものだ。 朝も早いので駅に向かう時は余り人にはすれ違う事もない。いるのは早朝からジョギングをしている人や、ペットの散歩をしている人、あとは会社通勤している人くらいで、流石にここまで少ないと、自然に行く先々顔を覚えてしまう。 駅に着くと普段よりも一本早い電車に間に合い、それに乗車する。 学校自体は駅の近くですぐ行けるが、その駅が快速列車か普通列車じゃないと止まらないので、普通列車では時間も更に掛るため、十五分に一本ある快速に乗っている。乗り込んだ女性専用車両は数人しか人が乗っていない静けさだが、そこでは化粧が行われてたり、コンビニで買ったような弁当を食べていたり、余り好ましくない光景だ。化粧は香水の匂いが漂い、弁当も結構臭う。 しかし柚姫の為しょうがない訳でもあるので、我慢できる範疇なので我慢している。 椅子はいくらでも空いているので適当に座る。 私達はこのまま一時間くらい電車に揺られる。 学校の校門は無駄に立派で、校門には不審者が入り込まないように警備員が立っていたりする。 警備員は流石に男性だが、ただ警備をして立っているだけなので、柚姫は気には留めていないそうだ。 それに女子高という事もあり、盗撮なども無いように塀も高く造られている。 校門を通ると直線に校舎があり、右にはグラウンドやテニスコートなどがあり、陸上部が朝練で大声を出しながら走っている。左には一階が食堂と運動系の部室で二階が体育館の建物があり、そこではボールの跳ねたり、叩きつけられる音が響いて聞こえてくる。 この学校では部活に入らなければいけないという事もなく、私達は部活に入ってはいないが、人数が少ない文化系の部活からは幽霊部員でいいから入って欲しいと誘われたりもする。それに文化系はかなりの数があり、マイナーな所は毎年部員がきついようだ。この学校は部員が五人と顧問の先生が付いてくれれば一応部活として認めてくれるようで、部室も片付けさえちゃんとすれば教室を貸してくれるそうだ。 ともかく入る予定は今のところ無かった。 教室には疎らに生徒が登校していた。 「おはよ」 「おはー」 「お早う御座います」 私は親しい友人に挨拶すると、私達に気づき挨拶を返してくれる。 「姫もおはー」 「……はよ」 柚姫も挨拶を返す。 「やっぱり姫は眠たそうだね」 「今日も授業中寝ちゃいそうですね」 友人は揃って柚姫がいつも通りなのを確認する。 先ほどから明るい声を掛けているのは、モロ運動系で柚姫と同じくらいの頭の悪さの夜鳥キツツキという変わった名前の子で、あだ名は夜と鳥で鵺さんという。 それに対し御淑やかなのが、名井 茜で、そこまで大きくない会社の社長さんの娘であり、どちらかというとちゃんとしている茜の方が姫というあだ名でもおかしくない気もする。 「ところであのプリント書いてきた?」 「あのプリントって?」 「ああ、あれですか」 鵺さんは何か分かっていないらしく、茜はそのプリントを取り出すと、 「ああ、それね!」 と気付いたようで、 「無くした!」 この辺りは柚姫以下だった。 「そうな事だろうとは思ったよ」 私は呆れる。 「私は書きましたけど、ほとんど白紙ですね。余り公するのは好ましくなかったので」 「私も大体白紙よ。でも柚姫ったらちゃんと書いててね」 「マジで?あんなの書いたの?」 「無くした人には言われたくないよ」 と、鵺さんには馬鹿にされたく無かったようで、チョップを食らわせる。 「ふふふ……そんな攻撃生ぬるいわ!」 どうやら一年の時に近くのアパートに引っ越してきたようで、そのアパートはどういう意味か分からないが凄いらしく、よくこういう攻撃を受けているようだが、別に苛めとかではないようだ。 しかしその言葉を受け、柚姫は鵺さんの腹に一発食らわせた。柚姫が運動音痴で、鵺さんが運動系でも流石に不意打ちの腹への攻撃は痛かったらしく、腹を押さえてうずくまる。 「馬鹿、やりすぎ」 「だって」 「だってじゃない」 そう言って頬を抓って罰を与えておく。 「保健室行きますか?」 「この位で勝ったと思うなよ……バタッ」 鵺さんは大丈夫そうだった。 勉強風景というのは至っておかしくもない、黒板に書かれた事を説明する教師の声とそれをノートに必死に書き込む音、それと外の木々のざわめきと車が通り過ぎる音と、何の変哲もない授業である。 それに今受けている歴史、日本史というのは覚えればいいだけだが、それを覚えるのは結構必至だ。似たような名前の付いた一揆や戦や条約などがあってどれがどれか分からなくなるし、人名もどうやって読むのか分からないのだってある。というか、昔の人の名前って悪く言えば今よりもどうかしてると思う。 しかし授業は流石に縄文から始めると、確実に現代まで終わらないので、歴史は江戸から進められていた。確かに縄文やらそんな事を言われても今ではある程度興味がなければ何の意味もない事でもあると私も思ったりしていた。 「城岬さん、1856年に下田に着任したアメリカの総領事は何ていう人ですか?」 不意に教師から指名を受けた。しかし苦手だとは言っても、一応予習として教科書を先に何度か読んでいたので、今から書かれている場所を探すことなく素早く椅子から立ち上がる。 「タウンゼント・ハリスです」 「はい、正解です」 そういうと、私は椅子に着席する。 因みに私が答えたこのタウゼント・ハリスって人は牛乳好きで、当時は高価だったものの農家から買って飲んでいた。と、教科書の端の方に載っていた。 その後も何度か質問も生徒に与え、授業の終わりを伝えるチャイムがなった。 「柚姫、次体育だよ」 「あ、うん」 柚姫はまだ黒板に書かれていた事をノートに書き写している最中だった。最早私には記号のようにしか見えない文字が刻まれており、読むというより解読に近い。まあ自分で読めるのであればいいけど、時々柚姫自身も何を書いているのか分からない時があるそうで、自分で読めるくらいには綺麗な字になって欲しいと願うばかりだ。 「た!い!い!く!だー!」 と、私が体操服に着替えようとしていたら、思いきり教室の扉が開いた。私の他に着替えていた生徒もその大きな音に、音の発信源を捉える。 そう言えば鵺さんがあのまま保健室で休んでたの忘れてた。 「体育だー体育だー」 鵺さんはそのまま自分のロッカーに向かい体操着を取り出す。 他の生徒は鵺さんと気づくや否や、何事も無かったかのように着替えを始める。 鵺さんは体育の時間にぴったし戻ってくるのはどうやら社会はサボっていたようだ。 運動嫌いな柚姫は体育なんて無くなってしまえと思っていそうだが、鵺さんにとっては体育だけが唯一授業と思えているようだ。まあ筆記は柚姫と変わらないけど。しかし実技は色んな競技で高評価を得ており、よく運動系の部活からも誘われているそうだが、あくまで体育内で行われる運動やスポーツが好きなだけであって、過酷といってはなんだが、筋トレとか基礎練習なんて物は大嫌いらしく、すべて断っている。しかし基礎は余りやらなくてもいいと誘うところもある。良く勧誘されるのは陸上部で、鵺さんは長距離走は苦手だが、スポーツ特待生でもないのに学校内で短距離走を一番走るのが早く、下手したら県の記録を抜くくらいだそうだ。 何と言っていいか、宝の持ち腐れとはこの事なのかも知れない。 この休み時間と体育の終わった後の休み時間は案の定着替えと移動だけで時間が潰れてしまう。むしろ早く着替えないと遅れそうになる事もしばしばある。 私と柚姫は着替え終わると運動場へと向かう。 体育は二時間連続で行われ、学年の半分で行われる。全学年六クラスまであり、その半分の三クラスずつが合同で行うのだ。とは言っても競技で三つに分かれているので、事実上は一クラスと同じ人数だ。 競技は学期ごとに変わり、現在一学期はバレーボールとソフトボールとテニスから選択出来るので、私と柚姫はソフトボールを選択していた。ソフトボールでは三チーム出来る為、二チームは試合をして、残りの一チームはキャッチボールなど簡単な練習をしている。 女子高という事もあり、大半の生徒は力がなかったりするので、一部の生徒が強いなんて事も良くあるので、その時はいくつかハンデもあることもある。ソフトボールも投手がその部員なので、未経験者や苦手な生徒には投げる位置を遠くしたり、ベースの距離を短くしたりといくつかルールがある。 私も体育の授業でしかやる機会がないので、遠めから投げて貰う事にした。いや、むしろ普通が短めの場所と言っていいほど、殆んどの生徒が遠めを希望していた。まあもちろんと言っていいほど、私と柚姫も含めて遠くから投げて貰ったとしてもバットにすら当たらないことの方が多かった。逆にうまい人は簡単に当ててそのまま外野を大きく通り越すなどかなりの差があったりもする。まあストライクが多く出る為、結構ゲームはスムーズに進む。 試合は現在七回の表で、点数は三-五とどちらもうまい人が頑張っていたという点数で、私の入っているチームが負けていた。時間もそろそろ片付けも含めると切りが良いようなので、これが最終回になりそうだ。 最初の打席はそのうまい人で、他の打席と同様安打を繰り出し二塁まで進む。次の打者は三振し、その次も同じくだった。 二アウトで打席は幸か不幸か柚姫だった。どちらかというと不幸というのは否めない。今まで全打席ファールすらない三振で、打つのは奇跡に近いような物で、二塁で待っている人は走る準備すらしていなかった。 その後は予想通りバットも振らないまま二ストライクを取られていた。 そして最後の一球が投げられた。いや、最後ではなかった。 大きな音を立てて、大きなアーチを描きながらボールが飛んでいく。 「……当たった」 柚姫は打ったのに走っておらず、打てたことに呆然としていたようだ。 生徒達もその当たりに歓声を上げていた。 だが誰も走れとは言わなかった。何故なら、 「ファール」 ボールはそのまま大きく横に逸れていた。 「惜しかったね」 負けたチームは片付けだったので、片付けをしながら私は柚姫に慰めの声を掛ける。 「でも、初めて当たって嬉しかった」 と、ファールだった事にもかからわず、嬉しそうな笑顔を見せた。 「良かった、もしかしたら悔しがってるかと思ったわ」 「そんなことないよ。でも当たった時がどんな気持ちになるのか分かった気がする」 などと玄人染みた事を偉そうに言っていた。 他の同じチームだった生徒も相手だったチームの生徒も姫と声を掛けて、あの時の事を賛美していた。確かに柚姫があの局面でファールだったが、打った事には私もかなり驚いていた。飛距離も長く、向きが違っていればホームランだったかも知れない。 普段は走る事もままならないのに、一体何処にそれほどの力を隠していたのか。本当は運動も出来る超人だという事を隠しているのだろうか……。 まあ絶対その確率は無いと思うけど。 体育は三時間目と四時間目の二時間行われているので、着替えたら食堂に向かう。 食堂にはバレーボールをしていた生徒達が着替えを後回しにして食堂に来ていた。 その中の一人に見覚えがあったので声を掛ける。 「茜」 「あら、城岬さんと九十九さん。体育お疲れ様です」 「そっちもお疲れの様ね」 茜は体操服のままタオルで汗を拭いていた。 「ええ、トスというのがなかなか苦手でして」 「私も苦手」 「柚姫は全部でしょ」 「でも、今日は頑張ったよ」 「九十九さん何かなさったんですか?」 茜はそう柚姫に聞くと、柚姫は得得意気にさっきあった事を伝えていた。 私は二人を後にし、先に券売機に向かっておいた。 食堂派と弁当派と購買の菓子パン派がいて、弁当派と菓子パン派が多く、それほど混んではいないが、時間が経つにつれ少しづつ列が出来てくる。後ろを見ると私が並んだ後も続々と列をなしていき、話していた二人もこの事に気づき列に並んでいた。 私は週替わりのランチセットを購入していた。このランチセットは量は少し少なめで、値段も安く、私個人には大好評である。 私は柚姫と茜の二人より先に購入したので、席を確保しておく。 「お待たせしました」 「先行かないでよ」 そう言いながら二人とも席に座る。 二人が購入したのは、茜は私と一緒のランチセットで、柚姫とはいうとカツ丼だった。 「よくそんなの食べれるわね」 私はそのボリュームを食べれる自信がない。 「私もそれはちょっと頂けませんね……」 茜もその多さにちょっと引いていた。正確には女子的には多いというだけで、縁みたいに男ならば普通に完食出来るくらいだ。 ちょっとその肉がどこの脂肪になっているのか、脇腹でも今度摘まませてもらおう。 「そういや鵺さんは食堂じゃ見ないわね」 「私も見たことないですね」 私はちょっとした疑問を口にしてみると、意外なところから返答が返ってきた。 「この間重箱抱えてるの見たよ」 と、柚姫が言う。 「重箱?」 俄かに信じがたい。 「うん、三段位の幅が大きいの」 「柚姫が嘘を言ってるとは思えないけど、別人だったとかってない?」 「絶対ないよ。だってあんな能天気なのは一人しかいないよ」 ちょっと鏡を見た方がいいと思う。 ともかく本当なのかも知れないが、確証は持てなかった。 この話題はそのまま迷宮入りとなった。 「って話なんだけど」 「これのこと?」 鵺さんは普通に重箱を取り出す。 「何でこんなのを……」 流石に一人で食べきれるとは思えない量で、それ以前に誰が作っているのだろうか。悪いようだが、鵺さん自身が作ってるとは思えない。 「これね、ちょっと私が住んでいるアパートの人が作ってくれててね」 「へー、いいじゃない」 「まあ弁当だけならね……」 そう言って顔を伏せる。 一体本当にそのアパート大丈夫か。ともかくこれ以上は話しかけると暗くなりそうだったので、会話を終了した。 そして睡魔と五時間目と六時間目を戦い勝利し、ホームルームも終わったので、私の例のほぼ白紙の状態のプリントと、柚姫のちゃんと書いたプリントを提出して帰路に着いた。
https://w.atwiki.jp/flyheight4/pages/14.html
エアクレスト一覧 報酬は10個でバブルインカム、20個でスピードシューズ、30個でラストクラウディア 1・エアシップ 格納庫 2.カイゼルシュルト城 会議室 3.グランドアーク7号車 4.レムヴァニア map右隠し通路先 5.ティディル南 宿屋ポルタ左の通路 6.レブマウトステートビル2F(ライと合流後) 7.ティディル北 map左中央(完全に見えない) 8.グランドランサー 五合目部屋1の隠し通路先 雪山五合目の洞窟1の隠し通路先にある階段登ったフィールド先。 ちなみにパールピアスの宝箱も落ちている。隠し通路と階段は洞窟の左下 9.フラスタルゲージ B50F 10.アルドニクス map左上 11.カイゼルゲート map右下 12.カイゼルシュルト市街地 街左下の民家ドア左前 13.カイゼルシュルト市街地 街右上テラス(要鍵) 14.レムヴァニアラグニナ map右時計回りに迂回した先 15.セントミラ市街地 ホテル二階隠し通路先 セントミラに入って一番手前の民家。回復ポイントがある二階に上がったら その階段の後ろに隠し通路がある。そこから部屋の右側に行ける。 16.セントミラ城 貴賓室 17.アルミスの街 map左上 18.マルキュロディン 鍾乳洞B3F 左上隠し通路先 19.マルキュロディン 神殿内部B364 右隠し通路先 20.セイントローズ 居住エリア ルームB 21.レブマデュラ 神の祭壇 map右上 22.レブマデュラ Ⅳ map右隠し通路先 23.レブマデュラ 神殿内部001 24.ログセルシウス 内部001A 隠し通路先 25.ログセルシウス 内部003 隠し通路先 26.ログセルシウス 内部004 map左上 27.アルドニクス ファインビットから出た先 28.レジベルトライン 29.ファインビット 30.名も無き島 宿屋隠し通路先 受付の上で右、上、左と進む 楽譜一覧 セントミラで音楽家ラルフを探すと回収できる。 エアシップ バトルルーム レム・ヴァニア map中央から右下 ティディル南 レブマウトステートビル2F グランドランサー 5合目map北西 アルドニクス map右上(宿屋や道具屋の下の方) カイゼルシュルト西宿屋2F カイゼルシュルト近衛兵待機所 カイゼルゲート民家 セントミラ王城 城中広間 レム・ヴァニア・ラグニナ map左の隠し通路先 マルキュロディン 神殿内部B076左下 セイントローズ エアドック レブ・マデュラ Ⅳ map上 レブ・マデュラ B999(たぶんボス戦後再入室) ログ・セルシウス 内部004 ログ・セルシウス フラスタルゲージB40F map下 レジベルトライン ファインビット 名も無き島 宿屋西隠し通路から出た木の陰 バトルグラフ「ゼロ」クリア後 エピルクリア後(2つ) 計23個
https://w.atwiki.jp/gakironri/pages/41.html
特性考察 特性 効果 備考 ふゆう 地面タイプの技を無効にする 蜉蝣げすなwwwww 技候補 技名 タイプ 分類 威力 命中 PP 備考 じわれ 地 物理 一撃 30 5 XYで習得が容易になったげすなwwwwww じしん 地面 物理 100 100 10 レベルでも覚えるげすなwwww あなをほる 地面 物理 80 100 10 じしん無効なので最強げすなwwwww りゅうせいぐん 竜 特殊 130 90 5 これでも立派なドラゴンげすなwwwww げきりん 竜 物理 120 100 10 暴れて粉砕げすなwwwww※4~5世代限定げすぞwww りゅうのはどう 竜 特殊 85 100 10 安定した特殊竜技げすなwww※4~5世代限定げすぞwww ドラゴンクロー 竜 物理 80 100 15 レベルでも覚えるげすうぞwwwww はかいこうせん 無 特殊 150 90 5 これもレベルで覚えられるげすぞwwww ギガインパクト 無 物理 150 90 5 ガライゴンの場合光線 ギガインげすなwwww かいりき 無 物理 80 100 15 岩を動かすげすなwww だいもんじ 炎 特殊 110 85 5 晴れパで最強げすなwwww ねっぷう 炎 特殊 95 90 10 ガブとの差別化げすなwwwww※4~5世代限定げすぞwww かえんほうしゃ 炎 特殊 90 100 15 安定した炎技げすなwwwww ほのおのパンチ 炎 物理 75 100 15 焼くげすぞwwww※3~5世代限定げすぞwww かみなりパンチ 電気 物理 75 100 15 ギャラドスに抜群げすなwwww※4~5世代限定げすぞwww ソーラービーム 草 特殊 120 100 10 虫タイプはこの技を覚える傾向があるげすなwwww ギガドレイン 草 特殊 75 100 10 攻防完璧げすなwwww※3~5世代限定げすぞwww ばかぢから 格闘 物理 120 100 5 これもXYで覚えさせやすくなったげすなwwwww いわくだき 格闘 物理 40 100 15 邪魔な岩を砕くげすぞwwww そらをとぶ 飛行 物理 90 95 15 かみなり無効げすなwwwww シグナルビーム 虫 特殊 75 100 15 ドラゴンフライは虫げすなwwwww※4~5世代限定げすぞwww ストーンエッジ 岩 物理 100 80 5 スカイバトルで最強げすなwwwwwww いわなだれ 岩 物理 75 90 10 リザードンやファイアローに刺さるげすなwwww かみくだく 悪 物理 80 100 15 ナックラーの名残げすなwwww アイアンテール 鋼 物理 100 75 15 フェアリー対策げすなwwww※3~5世代限定げすぞwww はがねのつばさ 鋼 物理 70 90 25 過去作持ってないならこれでもいいげすぞwwww 補助技 技名 タイプ 分類 命中 PP 備考 はねやすめ 飛行 へんか -- 10 回復げすなwwwwwww きりばらい 飛行 へんか -- 15 回避させないげすぞwwww※4世代限定げすぞwww じわれ型 特性 ふゆう 持ち物 たべのこし オボンのみ せんせいのツメ ヒメリのみ 確定 じわれ はねやすめ ギガドレイン 候補 ストーンエッジ いわなだれ はがねのつばさ あなをほる そらをとぶ じわれを撃つ型げすなwwwwwとんぼがえりやフェイントはがりえないwwww 晴れパアタッカーメトロ型 特性 ふゆう 持ち物 メトロノーム 確定 ソーラービーム あなをほる そらをとぶ 候補 りゅうせいぐん げきりん はかいこうせん ギガインパクト かいりきだいもんじ ねっぷう かえんほうしゃ ほのおのパンチ かみなりパンチばかぢから いわくだき シグナルビーム ストーンエッジ いわなだれかみくだく アイアンテール はがねのつばさ はねやすめ きりばらい 晴れのときはソラビぶっぱそれ以外のときはメトロノームで火力を上げる器用な型げすなwww特性も浮遊でガラードンとの相性は抜群げすなwwwwwタイプと特性のおかげでそらをとぶやあなをほる中でもかみなりとじしんが効かなくて無敵げすなwwwwぼうふう たつまき かぜおこしは当たるげすが前者は晴れのとき命中が下がるげすし後者2つはあまり使われないから対策しなくていいげすなwwww死角なしである意味最強の型げすなwww ガブリアスとタッグ型 特性 ふゆう 持ち物 メトロノーム たべのこし 確定 あなをほる そらをとぶ きりばらい りゅうのはどう 浮遊のおかげでじしん連発しても無傷げすなwwwwwwガブリアス側の技はドラゴンダイブ/じしん/アイアンテール/なみのりでいいげすなwwwwwフィールドでも水陸空両用なので最高のコンビげすなwwwwww まとめ 3世代のドラゴンガケモンげすなwwwwwww じわれは最強げすなwwww そらをとぶあなをほるで無敵になれる凄いガケモンげすなwwwww
https://w.atwiki.jp/flyheight4/pages/18.html
■水と風の庭園 神殿内部001 グルガン 冷酷な心or勇気の志 ■神の祭壇 Ⅹゲート EDGI=ZA ヒールピースor機械片 神殿内部 テル 博愛な心 ■フラスタルゲージ B70F-001 メルキス 純粋な心 ■レム・ヴァニア・ラグニナ オゴール 紫紺の木片 バラジット 不適な心 ■グレイヴェインの墓 レジベルトライン EDGI=OKS 錆びた合金 ロッカヴァルセ 星はすべてor黒雲の雫 ドロップ素材 ■ログ・セルシウス ヂューバル 濃厚な樹液 ■名もなき島 タルカセクト 濃厚な樹液 パワードロップ必要素材 ■フラスタルゲージ B70F-001 ボゲーノ 水晶の欠片 バイタルドロップ必要素材 ■ログ・セルシウス EDGI=B 漆黒の軟金 ■名もなき島 シャラニナ 漆黒の軟金 マジカルドロップ必要素材 ■ログ・セルシウス ラファタク ヒールピースor瞬く黒曜石 スピードドロップ必要素材 ■空 ラヴィレンス ラヴィレンスor虹の水羽 ■フラスタルゲージ B70F-001 ゼブルガン 精霊の雫 ■グレイヴェインの墓 レジベルトライン モグスロア 精霊の雫 ドリンク素材 パワードリンク必要素材 ■水と風の庭園 鍾乳洞B1 デグラバ ヒールピースor光る緑蜜 バイタルドリンク必要素材 ■神の祭壇 Ⅹゲート ペルビタ 尖魚の背油 マジカルドリンク必要素材 ■空 ワイバルジア 遊花の露 スピードドリンク必要素材 ■名もなき島 レーバ 蒼色の涙 武器ドロップ ■名もなき島 タルカセクト:ルナ専用武器【創造する世界】 モグスロア:ハント専用武器【エクスペリオン】
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/527.html
そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 見る人によると、今更になるが――説明しよう。 フォルテの私的空間、とは。 別名(正式名称)を『一線を越えた世界』と言う。 その世界を一言で言い表すために、生と死の狭間という言い方を借りれば――現と夢の狭間、であろう。 しかし、そこは決して平和で素敵な楽園ではない。 敢えて言うならば、牢獄だろう。 何故なら。 『諸事情』により此処に来た者は例外なく――フォルテ=ラインオーバーと成るからだ。 そして。 フォルテに成った者は、『不法侵入者』を幸せにしながら、長い年月を私的空間で過ごさなくてはいけない。 しかも、一人で。 たった、一人で。 孤独に、生きる。 ……ここで終わるとフォルテという役柄が最悪極まりないということになるので――補足。 そんな牢獄から出ることができる『いつか』が来た時、フォルテの願いが叶うのだ。 例えば、不治の病を患った婚約者を救いたい。 これは元・レオナルド――即ち、現・フォルテの願いである。 まあこれだけ長い前置きをしておいて何が言いたいかと言うと(勿論粗筋の役目もあるが)。 フォルテは一人で生活している。 つまりは――家事全般も一人でこなしている、ということである。 +++ 真っ黒な世界の中。 フォルテは長机を広々と使い、食事を取っていた。 ただしそれは料理経験が皆無の男が一人で作るような酷い類では、無い。 寧ろその逆。 見ているだけで楽しめるような――高級で綺麗で最高の料理なのだ。 フォルテはそれを、黙々と租借する。 しかし――何故か。 フォルテの対面に、白いエプロンをした少女が居た。 ニコニコと笑う――ショートヘアの女の子。 自己紹介はすでに済ませた。 名前は――レトル。 「ふふふ、どうだ。私の作った料理のお味は」 「まだお前の料理は食べてねえ。今食ったのはオレ様が作った分だ」 「そうかそうか。ふふふ、今から私の三ツ星料理を食した時のお前のリアクションが楽しみだ。わくわくドキドキするぞ――ん? 何だこの胸の高鳴りは……まさか、こ、これが恋か?!」 「はっ、馬っ鹿野郎が。それは恋じゃねえ、期待で胸が高鳴ってんだ」 眉を顰めて苦笑し、冷静にフォルテはそう返す。そして、おもむろに手を奥へと伸ばし――魚のムニエルが乗った一枚の皿を取る。 「お、遂に私の料理を食べるのだな……しかし、いつも以上に美味しそうに見える。あ、ちなみに今のは自画自賛ではないぞ? 褒めているのだ、この空間を」 何せ自己ベストな料理を作れたのは、此処の環境のおかげだからな。 と、レトルは続け――さらに、続ける。 「いやはや、いきなり此処に来たときは驚いたが、本当に最高の空間だな。食材はいくらでも手に入る、キッチンも素晴らしい設備が整っている。将来世界一――いや、宇宙一のシェフを目指す私にとっては夢のような場所だ」 目をキラキラと輝かせ、胸の前で手を組んでそう言う小さな料理人を――どこかフォルテは嬉しそうな顔で、しかし、呆れた顔で見つめてから、 「おい、そろそろ食っていいか?」 「ああ勿論。味わって食べてくれ」 その言葉に素直に従い、フォルテはナイフとフォークを優雅に使い、魚のムニエルを食した。 食して、味わい――飲み込んだ。 そして。 フォルテはレトルを見つめて、そして言う。 「不味い」 と、たったの一言で。 高級で綺麗で最高の料理を――評価した。 レトルは思いがけない言葉に一瞬硬する。 「……え? い、今何と?」 「不味いって言ってんだろうが」 「ま、まずいだと? それはつまり……お、美味しくないということか?! そ、そんな馬鹿なことあるのか……?」 明らかに、意気消沈、周章狼狽したレトルは必死に、フォルテに問う。 「な、なるべく、具体的に教えてくれ。罵倒や悪口になっても良いから……何処がいけなかったんだ?」 「あ? んなもん、向上心に決まってるだろうが」 フォルテは当たり前という顔をして言うと、ナイフとフォークを机に置き、立ち上がり――カツン、カツン、と靴を鳴らせながら、歩き出す。 「お前は何がしてぇんだ。世界一だとか宇宙一だとか――結局は一人の料理人なんだろ? なら『現在の料理で満足するな』。『過去や未来でも満足するんじゃねえ』」 オレ様みてえにグルメなやつに美味しいと言わせるには、そういう心構えが必要なんだぜ? と。 レトルがそんな説教を聞いているうちに、それは在った。 否――現れた。 真っ黒な世界に溶ける、同じく真っ黒なグランドピアノ。 「料理と音楽はそういう点では似ているのかもな。ま、そんな戯言はどうでもいいか」 とにかく、今は。 聞いてやがれ。 オレ様の三流の音楽を。 これから二流になる音楽を。 いつまでも一流にはならない音楽を。 聞け。 そして――心に銘じろ。 高級で綺麗で最高の料理なんてもんは、妄想の中でしか存在しないことを。 そして。 彼は最後に「まあお前の料理はオレ様のよりは良かったぜ」と早口で言ってから、 「オレ様の音楽に――酔いしれろ」 +++ 「――しかしやはりあの時の胸の高鳴りは恋だったと思うのだ。根拠は無いが、直感だが、それでも、思うのだ。まあおそらく……これも直感だが、これから一生会うことは無いだろうから、私の初恋は失恋となるだろう」 まあだけど、それでも良い――と。 とある三ツ星シェフはニコニコ笑いながら――棚に飾られた数多くの金色のトロフィーを眺めながら、一人語る。 「ふふふ、本当に、私はいつまで経っても――未熟だな」
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/826.html
明るい。 目を閉じているこの状態でも朝だと分かる。 カーテンもまだない窓からは、太陽の光が何も遮る事無く降り注ぐ。 ベットには薄い布団が一枚しか用意されてなく、かなり寒いし、ベットも硬くて、体が痛い。 時間は?ポケットの中に寝ていた間押しつぶされていた携帯を取り出す。時刻は七時五分。ルールの五分を過ぎている。まあこの程度なら権一もまだ危害を与える行動はしていないだろう。それに出てから帰ってきているのか。もしかしたらまだいない可能性もある。 私が部屋を確認すると、あのまずいメロンジュースと弁当が一個なくなっていた。つまり帰ってきて、誰かが私の部屋に入って来ているということだ。権一か、或いは例のマフィアか。前者だろう。それにしても権一は女の子の部屋に無断に侵入する行為も躊躇わずに行うらしい。私も「子」って歳じゃないけど。 まあ入ってきたにしても居るかの確認くらいだろうが、私は寝ていてその間の確認はできないが、多分ルールくらいは守る男だとは思う。だが、この五分間の間に入ってきていたのだとしたら、何かしているかもしれない。 私は部屋をひとつひとつ確認してみる。盗聴器の一つや二つくらいは有るかも知れないが、いちいちこんな事を気にしていたら埒が明かない。それに連絡ならこの他の場所で取ればいい。 それにしてもどうしてあのジュースを選んだのか、もしかしたら権一も好きなのかも知れない。それなら意外な発見だ。 とりあえず、まずは起きることにしよう。まずはそれからだ。 一階まで落りると、堅そうな木の椅子に座りながら権一がテレビを見ていた。見ているのはワイドショーで、司会はあの年収数億という稼ぎでありながら、庶民を名乗る胡散臭いおっさんだ。権一はそれをつまんなさそうに見ていた。ちなみに私は生理的にこのおっさんが嫌いだ。 まあ朝のこんな時間なんてどこも同じようなものだろう。 そして一面を見渡すと、色々な家電製品が揃っていた。権一が買ってきたのだろうか。まあそれ以外に考えられないのだが。 「おはよう」 こんな奴に挨拶するのもあれだが、礼儀も時には必要だ。 「……」 予想通りの無視だ。別に返してほしいわけでもなかったわけだが、もしを想像すると何故か滑稽に思える。 そこで私は鍵を渡すのを思い出した。鍵は二つありどちらも複製の物で、マスターキーはお父様が持っているのだろう。それは部屋に置いたままなので、二階に取りに戻る。 「はいこれ」 権一に鍵を差し出す。 だが反応はない。 「聞いてるの?」 私は手を肩に掛けようとしたが、ルールに触れてしまうのを思い出し、権一の前に立った。 「……聞いてる」 権一はそうは言うが、受け取る気どころか、動く気配すら見せない。とりあえず隣にあった椅子にでも置いておこう。失くしたとしても私は無視する。 それにしても、こんな生活が始まったが、別に特に変わったことはない。それどころかすることがなくて暇だ。確かにすることはあるが、まず何をしたら見当もつかない。それは多分権一も同じだろうから、テレビをみて寛いでいるのだろう。それとも或いはもう手は打っているのだろうか? ……駄目だ。こんな生活していたら全てを疑って深読みしすぎて、気疲れしてしまう。 今は何か事が起こるまで気楽に行ってもいいのではないだろうか? とりあえず私もテレビに目を向けると、芸能人が結婚したという報道がされていた。今は見たくなかった気分かもしれない。よく考えたらこいつと結婚した後はどんな生活になるのだろうか、一回も考えたことなんてなかった。どこかに幽閉でもしてしまおうか?それもそれで駄目な気も自分でもしてきたが。 そして後の幾つか内容も日常的な話で、強盗が捕まっただとか、景気問題だとか、歴史ある資料館が閉館したなどで、今の私には全く必要のない内容ばかりだ。それ以前に必要のある話題なんて取り上げられたら、それこそ問題という状況だ。落ち着いていけば問題は無いはずだ。 まあ今のところは何もないのだろう。部屋に戻って朝飯にでもしようか。 ♯ 俺は今からすることは決まっている。 例のマフィアを潰す。それだけだ。それさえ行えば、別に輪廻に手を出さずとも勝手にこの話は無かったことになる。 そもそも発端はこのマフィアの脅威に対するものだ。それならばそれを潰せば全てが終わる。後は勢力の衰えている、瀬戸組は放っておいても廃っていくだろう。 これに関して言えることは、例のマフィアのボスを見つけたとしても、瀬戸組は完全に潰すことはしないだろう。さっき言ったとおり、潰れてしまう事は、瀬戸組にとって苦しくなってしまうだろう。だが、全く手を出さなければ瀬戸組が逆に押されるという展開になり、園芝組にもその勢力は来るだろうから、生かさず殺さずといったところか。 何にせよ例のマフィアが全ての鍵を握っている。早く見つけ出さなければ。 だがまだ派手に動いているということもなく、手を出そうにも本部がどこにあるかさえよく分かっていない。それ以前に実態もきちんとした形で掴めていないのが実情だ。 朝鮮系というのも奴等が名乗っているだけで、本部が朝鮮半島にあるとも限らない。だが捕まえた奴等は基本的に朝鮮系で、他にはアフリカ系くらいしかいなかった。それから朝鮮に何人か偵察を放っているのだが、例のマフィアは朝鮮では全くと言っていいほど活動はしていないようだった。名前すらほぼ認知されていないようで、他の国にも向かわせたが全くだった。つまり日本国内だけで動いているようだ。もちろん状況なら日本に本部を構えていると考えるのがいいだろう。だが、ひとつ疑問に残る事がある。人員だ。これはとても重要な話で、朝鮮ですら名前が多少認知されているだけで、募集などは一切なかった。じゃあ日本国内では?それは無いだろう。募集なんてあったらすぐに気づくだろう。 今は動きがあるまで待つしかない。 そんな事を考えていたら二階から誰かが降りてくる足跡が聞こえてくる。ここには俺と輪廻しかいない。 輪廻は右手にコンビニ袋、左手にはゴミ袋を提げて降りてきた。 輪廻は階段を降り切るとその辺に放っておいた昨日俺が食べた弁当のゴミをゴミ袋に入れた。そして例の紙パックの飲み物に手を掛けた。が、すぐに下ろした。ゴミだと思って捨てようとしたのだろうが、その中にはまだ大量には飲み物が残っていた。 「残ってるけどまだ飲む?」 それは俺に言ってるのだろう。 「いらない」 「不味かった?」 「味覚を疑うな」 俺は正直に言った。正直飲めたものじゃなかった。まあ俺もこいつの味覚を確認せずに選んだのが悪かった。 「味覚はあなたよりはマシだと思うけど? 適当に選んだ私も私だけど」 つまりこいつも味なんて知らずに買ったのか。それなら納得がいく。じゃあこれを作った奴の味覚を疑うとするか。 「いらないなら捨てておくから」 そう言って台所に向かい、紙パックの中の液体を全て捨てた。そのままそれを潰して、ゴミ袋に入れる。 「ところで聞いていい?」 「なんだ?」 「何で居間なんかにテレビを置いてるわけ? あなたの部屋だけに置いた方がいいんじゃないの?」 「そんなことの理由か。いいだろう、答えよう。自分の部屋に置いたとしても音が漏れて意味もない。ヘッドフォンなんてしたら、テレビ以外の音に反応が出来なくなる。最後にこれはただの娯楽だ」 あ、こいつ娯楽なんて取るんだって顔を輪廻はしていた。こいつはいろいろ顔に出るな。 「娯楽ねー」 「他に何かあるか?」 「ないけど、頼みならあるわ」 面倒な奴だ。 「買い物行くわよ」 そういえば昨日そんな事を言ってたな。まあ今出来ることはない、それなら衣食住でも整えておくとしようか。 ♯ 同刻――。 面白いように、描いた通りに事が進む。 順調すぎて恐ろしいくらいだ。 すべて順調だ。園山組も大した事などなかったし、結婚を破棄させる件もうまくいっている。 だが、これでいい。これでいいのだ。 私が誰だか奴等も到底掴めまい。 さて、そろそろ遊戯を始めるとしようか。私の野望のために。 私は電話を取り出し何人かを収集をかけ、あの二人を襲わせに向かわせた。 「さぁ、革命の始まりだ!」 私としたことがあまりに興奮しすぎて、つい小さい声だが叫んでしまったが、誰もいないので気にすることもない。 私も私で行動を起こさせてもらうか。 ♯ 外は嫌になるくらい日が指しているが、冬という季節には勝てずやはり少し寒い。 といってもまだ十一月だ。そこまで着込む必要もないが、少し上着を着ておかなければ肌寒くはある。 もちろんいきなり同棲させられるとは思ってもいなかったので、今着ているものしかない。権一も同じ様で、昨日と同じ服を来ている。 とりあえず今日はまとめて全部買うことにしている。権一は電化製品しか買ってなかったので、家具やさっき言った服、そして食べ物。衣食住全部だ。 これだけ買えば帰る頃には夜にでもなっているだろう。 もちろん組に頼んで適当に持って来てもらってもいいが、権一の場合容赦なく銃をぶっ放すと思いやめておいてるが、服は自分で選びたい。一応女の子だし。 ちなみに今は玄関を出たところで権一が来るのを待っている。また誰かに電話しているようで、すぐに来ると言って待っていた。 「すまない」 権一が玄関を出てきた。 「誰と電話してたの?」 「愛人」 ジョークも言えるようだ。 権一は家に鍵をして、私の前に立った。 「行くぞ」 そして偉そうだ。 私たちは最寄駅のJRの長浜駅に向かう。行先は米原なので、時間はそんなにはかからないだろう。 なんなら米原に家を構えてほしかったが、いろいろ事情もあるのだろう。 まあ家から駅が近いというのは楽だ。 長浜は新快速が延長されて止まるようになってから、京都大阪方面へ通勤で使用する人が増えていたり、多少の賑わいはあるようだ。 そこで一つ思い出したことがある。何気に米原がJR西日本と、JR東海の境界で、長浜は東海側にあたる。 結構どうでもいい事だけど、私はIC○CAだが、権一はSu○caを取り出した。 「どうした?」 「何でもないわよ」 ちなみに相互利用されているので、どちらでもいける。 そう言いながら電子音を鳴らして改札を通る。 時間は九時くらいで通勤ラッシュの時間を過ぎてはいるが、ホームには多少まだ人は多くいる。 ちょうど電車も来て乗り込むが、もちろん席には座れる事はないので立っておく。 そこから十分近くで米原についた。 米原は大きい駅なだけあって、賑わいもある。 というか駅舎が大きくて、ややこしかったりもする。 「で、どこに行くんだ?」 「適当に」 権一は頭を押さえた。正直駅が大きいという理由だけで来て、探せばあるだろうという考えだった。新幹線も止まるようだし。 無かったら無かったで、別の場所にいけばいいだけだし。 私たちは見知らぬ場所に足を踏み出した。っていうほど大げさなものじゃないけどね。 ♯ 「まずは服を買いましょう」 何処にあるのかも分からないのに、輪廻は言う。しかし服屋なら大抵の場所にあるだろう。もっとも俺は服装はあまり気にすることはない。基本的にスーツを着ている。動きやすいし、客人を招くときにも向いている。 自然に輪廻を先頭に俺が後ろからついて行く。当たり前なのだが輪廻の赤く長い髪は人目を惹く。髪が左右に靡く度に、老若男女問わず目を向けているのが窺える。彼等から見て輪廻はどう思われているのか、珍走団のメンバーやヴィジュアル系バンドあたりだろうか。それなら俺はどうだ?あまり考えたくはないが、あまり良い様には思われてはいないだろう。まあ正解なのだが。 「まずはあそこに行きましょう」 輪廻が指を指した店に入ることになった。 俺はさっき言ったとおり服に関心がないので、ファッションなんてものには疎い。そんな俺を傍目に輪廻は服を見ている。この店は女性用ばかりで、俺には全く必要な場所ではなかった。そしてあまりにも場違いだろう。 「彼氏さんですか?」 少しの間立ち尽くしていた俺に声がかかった。この店の店員だ。多分彼女が彼氏を余所に服を漁っていると思われたのだろう。 「近しいところです」 俺はそういう曖昧な返答をした。ここで肯定しておいた方が怪しまれないだろうが、相手がこいつだと思ったら気が引けたからだ。だが、店員もよく分かっていないようだ。とりあえず俺は輪廻の方に向かう。 輪廻は右往左往しながら服を見ている。俺から見たらどれも似たようなものだ。 「決まったか?」 俺は後ろから声をかけた。 「何言ってるの、まだ入ったばかりじゃない」 店に入ってから二十分弱くらい経っているのだが、女性の買い物は長いものだ。そして輪廻も残念なことに例外ではないようだ。 その後も何度も試着して、一時間以上経ったところでやっと決まったようだ。両手一杯に服を抱えてレジに向かっていた。その姿は凄く滑稽に見えた。 レジの人はその量に驚いてはいたが、仕事なので会計をする作業に入る。結構な量なので、袋に入れる人も大変そうだった。 「合計二十一万四千八百円です」 やっと終わったようだ。そこで輪廻はクレジットカードを出した。もちろん黒の。 予想通り店員は驚いていた。あまり普通には目にかかれないからだ。 そして店員に見送りされてやっと出る事が出来た。 「じゃあ持って」 何にかけての「じゃあ」なのか分からないが、要は持てということらしい。ずうずうしい。 「自分で持て」 「レディーに重いもの持たせる気?」 「自分で持て」 「ケチ」 俺は決してケチではない。当たり前の事を言っているだけだ。だが、確かに結構な量を買い込んでいたので重そうなのだが、一体何着買ったのか。 「それじゃあ次行くわよ」 輪廻は相変わらず前で歩く。そして俺は後ろからついて行く。 そして輪廻は一つの店に先に入って行った。俺はその後から入っていく。女性用下着の店に。 「恥ずかしいでしょう」 入ったところで輪廻は振り返り俺の方に向かって言う。 多分男がこんな場所に入ったら、恥ずかしいと思うと決めつけているのだろう。世間的には間違ってはいないだろうが、俺にとってはただ単に縁のない場所と思うくらいだ。 「で」 俺はそれだけ言った。 そうすると輪廻はブラジャーをいくつか持ってきた。 「どれがいいと思う?」 色は黒、白、ピンク、水色の四色で、どれも単色のブラジャーだ。しかしカップが少し大きめな気もする。だが輪廻は良くいえば「スレンダー」、悪く言えば、 「貧乳」 「死にたいの?」 間髪入れずに笑顔で言う。 まあ見た目だけでよく分からずに、適当に言ってみただけなのだが、どうも図星だったようだ。「貧乳」が。 「でも貧乳と言われるほど小さくはないわよ」 しかしすぐに気にしていないように、平然そうに言う。しかしこめかみが少し震えているのが分かる。 「俺は胸の大きさなんて物は気にしない。要は権力だ」 「あなたらしい決め方ね」 何故か輪廻は落ち着いていた。表情が忙しい奴だ。 それから俺を無視して、試着もせずに適当に下着をレジに持っていく。 さっきと同じように、黒のクレジットカードに驚くという事もあったが、ここでの買い物は先ほどに比べてすぐに終わった。 「食事でもしましょう」 時間は十一時を過ぎそうなところで、そろそろ飲食店も混むような時間帯だ。 「そうしようか」 俺はその意見に頷いた。 午前は輪廻の買い物だけで時間を使い終わった。 ♯ 「どこで食べる?」 私はここから近くにある場所ならどこでもいいと思っていた直後だった。 爆発音がした。あまりにも大きな音で、音の先にはトラックが炎上していた。 「え?何これ?」 あまりにもいきなりで驚いた。私はトラックの周辺に集まった野次馬に交じり、トラックを確認した。不幸にも近くを歩いていた人が何人か倒れており、酷いのは体の一部が吹き飛んでいる。野次馬は阿鼻叫喚な者や、どこかに電話している者、何を考えているのか写メまで取ってる奴までいる。 野次馬の話を訊くと、トラック自体には誰にも乗っていなかったようで、いきなり爆発したそうだ。多分爆発物を仕掛けられていたのだろう。だが何故こんな場所でなのか? しかしテロの可能性もある、それ以外にも、 「伏せろ!」 権一が後ろから飛びかかってきた。 その直後私の近くにいた人が叫ぶ。状況が分からないが、沢山いた野次馬達が一気に散り始める。 「走れ!」 私は言われるまま立ち上がり、権一の後ろを追いかけていく。しかしあまりに野次馬が多く集まっていたらしく、前がつっかえているようだ。 「こっちだ!」 店と店の間の狭い通路に入り込み、ある程度行ったところで足を止めた。 「はぁ、はぁ、はぁ」 私は息を整えてる間に権一は拳銃を取り出す。 「はぁ、はぁ、ちょっと待ってよ、どういうことか説明してよ」 「お前はそっちの組で救援を呼べ!」 状況は把握しきれてないが、緊急という事は分かる。私は指を鳴らすと護衛に来ていた二人が現れる。 「これで足りるかしら?」 「車を用意しろ」 「なんなのよもう、車は用意してあるわよね?」 「輪廻様こちらに」 護衛を用意しておいてよかった。そして私は実感した。私は狙われていたということ、あの時何かが私に向かって来ていて、権一がいなければ私が負傷していたのだろう。そしてマフィアとの戦いが始まっているという事を。それを想うと私は今更体が震えあがる。怖い。今まで私は護られて育ってきたようなもので、いきなり狙われるような事は無かったのだ。 「……案内して」 私は冷静を取り戻し二人に言う。 二人は銃を取り出し、私と権一の前後を挟み走って移動する。爆発の後とはいえ、銃なんかを持っていると人目を惹いたり、逃げ出す者もいる。しかし今はそんな事を気にしている暇はなく、ただ走るだけだ。 私たちは車に乗り込み発進する。 「お前ら気付かなかったのか?」 「申し訳ありません」 乗ってそうそう護衛の二人に権一が説教をしている。 「はぁ、はぁ、まだあまり理解出来てないのだけど、説明お願いできる?」 「お前はスナイパーに狙われていたんだよ」 「スナイパー? じゃああの爆発もそうなの?」 「そうだろうな、あの爆発で注意を向けて、狙ったのだろう。それで且つ足も止めることも出来た。動くものより動かないものの方が当たりやすいしな」 「そういうこと、でもよく気付いたわね」 そうだ、あの状況でよく気付けたものだ。 「確かにあの爆発に目がいくが、あまりにも不自然だ。それに俺達を狙っているという可能性は外せないからだ。でも伏せたのは実は勘なんだがな」 勘って……、あの何でもないような状況だったらどうするのだろうか、まあ普通に立ち上がって何も無かったかのようにするでしょう。 「しかし狙撃主は確認する暇は無かったのは失態だったな、お前らはどうだ?」 「そちらも申し訳ありませんが」 護衛の一人が運転しながら答える。 「ですがこれからどこに向かいますか?」 「俺の組の方に向かってくれ、そっちの組長も呼んでおく」 「はい」 そういうと、権一は携帯を取り出し電話を掛けた。 それにしても私はとても情けない。何も出来なかったのだ。権一がいなければ死んでいたし、もし一発目が当たらなくても、二発目が撃ち込まれていただろう。本当に、今まで自分を過大評価していたのだろう。それを思い知った。目頭が熱くなり涙が零れそうになる。 「泣くな」 いつの間にか通話を終えていた権一が私の頭を撫でていた。 「泣いてないわよ」 「強がるな、所詮弱かったってだけの話だ」 「うっさいわね、あんたなんかに慰められたくないわよ」 でも私は弱かった。こんな奴と思っていた奴よりもとても測れないくらいの差で、こいつがあまりにも頼もしいと、思ってしまった。 「……馬鹿だな私……どうしようにもないくらい馬鹿だ」 「馬鹿は馬鹿なりに出来る事があるだろう」 つい思っていたことが声に出てしまっていた。それも誰にも言ったことのないような弱音を吐いてしまっていた。弱音か、小さい頃に吐いた気もするけど、それ以外は無かったな。ずっとちゃんとやってきたんだ。それでも所詮私のやってきた事は簡単な事ばっかりだったのだろう。 「臭いセリフ吐くんじゃないわよ」 私は出かけていた涙を拭い権一の方を向いた。 「…………」 「ばーか」 ♯ この席に集まったのは五人だ。 俺、輪廻、親父、輪廻の親父、そして、 「何故お前がいるんだ」 「金になりそうだからさ」 気に食わない。何故此処にこんな奴がいるのか。 園芝組若頭 獅戸兇鑢、俺と同じ立ち位置にいるやつだ。こいつはやたら金に執着心があり、武器の取り引きを主にしており、海外の戦争時の武器の取り引きには必ず名前が有る。そしてこんな状況でも金にしようとする。だが親父が呼んだらしい。明らかに何かをしようとしているような奴を。 「つまり奴等は本気という事だな」 「そのようだな」 俺は親父に相槌を打つ。粗方の事は車の中で説明しておいた。 「あとお前が見失った狙撃主なら見つかった。だが、身体中に爆薬を仕込んでおって自滅しやがった。始めから捕まる事を想定していて、捕まっても喋らない様にしていたんだろう。自滅を図るまでの忠誠心は中々だが、そのお陰でこっちもその爆発で負傷した者がでた。軽傷という事だが休養を取って貰った。こいつ等の話では狙撃主は顔を包帯で巻いており、顔すらも晒しておらず、国籍等の手掛りにすら成りそうではない。それと回収した銃は口径十二mmのライフル銃で、銃その物は調べてはみたが該当する物が無かった。恐らくオリジナルという可能性もある。入手経路は不明だ」 親父は俺が来る間にここまで掴んでいたのだ。これが園芝組十八代目組長である、宮左御極陽の凄さの一つだ。しかし何故兇鑢を呼んだのか分かる。武器の取引となれば専門の分野だからだ。 「兇鑢」 「経路を探ったが、このモデルに一致するものは無かったぜ。恐らく国内製造の一品物だろうな。国外からの輸入なら何かしら確実に情報が残る。大量生産というのも同じくだ」 「そうか」 親父は兇鑢から目を背け白夜の方に目を向ける。 「私の方では全くです。それに極陽さん以上に情報を集められませんよ。後どうせ一緒に西側からの入手経路も洗ってるのでしょう」 それにしてもこの白夜というのは話し方に拍子抜けする。あまりに緊張感のないように見える。娘が狙われたというのにこの状態だ。だが、昔からこんな人だというのを知っているし、俺が生まれる前の話も親父から聞いている。 「白夜さんといえども西ですからもちろん調べさせてもらいましたとも」 そう兇鑢が言う。当たり前の事だった。交友を築こうとはしているものの、まだ敵対関係にあるからで、信頼し切る事も出来ない。まだそれだけの関係という事だ。 その後も話合ったが、輪廻はその間一言も話す事はなかった。 話し合いも終わり俺はここにいる理由は無くなったので帰る事にしようと思ったが、輪廻は白夜と話をしていた。極陽も兇鑢と何処かに行ってしまっていたので、俺は輪廻を待つことにした。 輪廻と白夜は俺の近くで座って話しており、俺にもその会話が聞こえる。その内容はやはり親なのか、白夜は輪廻の状態を心配していた。相変わらず緊張感の無さそうな話し方だったが、しっかり心配はしていたようだ。 「権一君今回は本当に有難う。君のお陰で娘は無事に助かったよ」 「…………」 俺は何も言わない。俺自身もこの男をあまり信頼していない。こういう男ほど何を仕出かすか分からないが、あくまでそれはフィクションの中だけの話だ。しかし俺はそれ抜きでこの男を良く思っていない。簡単に言うと生.理的に受け付けないというものだろう。 「話は終わったなら行くぞ」 俺は先に部屋を出た。その後に輪廻は白夜に一言言って着いてきた。 「お腹減った」 この女はさっきの席では黙っていたと思ったが、車に乗り込んで来て口を開いた早々これか。そしてさっきまでの暗い顔では無く普段の人を見下す様な顔をしていた。暗いままでははりあいがなかったが、これはこれで少しいらつく。むしろ普段より増してだ。だが俺も食事を取りたいと思ったのは同じで、あの後すぐに此処まで来たのだ。そして時間は午後五時を回っており、もう晩飯のような時間帯だ。これならば此処で食べて行こうとも思ったが、親父の事なので他人を持て成す様な事をしないだろう。 「それではどこかに寄って行きましょうか?」 「そうして頂戴」 「畏まりました」 そういうと護衛の男は車を発進させた。 「あ、服忘れた……」 今更気づいたようだ。恐らく狙撃されて走った時にでも忘れたのだろう。俺も一々そんなことを気にしてられなかったので、あくまで可能性だが、あの時既に手には握って無かった気がするが、無くなってしまえばどこで忘れようが関係なかった。 「最悪、また買いなおさなくちゃ」 また付き合わされるのだろう予感がしたので先手を打っておく。 「すまないが、一緒に衣食住が揃う所に寄ってくれないか?この時間ならまだ大丈夫だろう」 護衛はミラーで輪廻の顔を見据えた。輪廻は縦に顔を振り、護衛も頷いた。 「それでは大型のホームセンターでもよりましょう」 「そうしてくれ」 これで後は二人別々に行動出来るだろう。 俺達はまだこのだけは夜は共に行動を続ける。