約 439,895 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4610.html
甲賀忍法帖より甲賀弦之介 ゼロの視線-01 ゼロの視線-02 ゼロの視線-03 ゼロの視線-04 ゼロの視線-05 ゼロの視線-06 ゼロの視線-07
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1467.html
「金色のガッシュ・ベル」のデュフォー ゼロの答え-01 ゼロの答え-02 ゼロの答え-03 ゼロの答え-04 ゼロの答え-05 ゼロの答え-06 ゼロの答え-07
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1250.html
6話 ヴェストリの広場は、魔法学院の「火」の塔と「風」の塔の間に位置する、西側の広場である。 この場所は西側ということもあって、日中はあまり日が差さない。 つまり目立ちにくい、ということで、決闘なんてことをするのにはうってつけの場所である。 ……はずだったが。 「諸君、決闘だ!」 などとのたまって薔薇の杖を掲げる目立ちたがり屋のおかげでヴェストリの広場はまさに大盛況、 前後左右人だらけ――まあ生徒ばっかりだが、とにかくそういう状況になってしまった。 目立ちたがり屋とは、言うまでも無くギーシュのことである。 そして前述したとおりにギーシュが杖を掲げてカッコつけた台詞を吐くと、 周囲の生徒達から大きな歓声があがった。 「ギーシュが決闘するんだってよ!」 「相手はルイズだ!」 「魔法使えないのに決闘するのかよ!?」 「いや、ひょっとしたら決闘するのはルイズの使い魔なんじゃないか?」 「ペリッソンを気絶させたヤツじゃないか! ギーシュは大丈夫なのか?」 「キノコを最初に食べた者を尊敬する……」 「族長(オサ)! 族長(オサ)! 族長(オサ)!」 そんな歓声に、ギーシュは満面の笑みで手を振って応える。 そして、それから広場の反対側に立つルイズをぐっと睨みつけると、広場の中心に向かって歩を進める。 ルイズもそれを見て、広場の中心へと歩き出した。 ホワイトスネイクは、ルイズの後ろに空中を滑るように移動して続く。 「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてあげるよ、ルイズ」 「私のほうこそ、コソコソ逃げなかったあんたに感心してるぐらいよ、ギーシュ」 まずは舌戦。 古来より続く、戦いの基本である。 ここでガマンが効かなくなってうっかり攻撃を開始しちゃったりすると、 相手の策にハマったりして大変なことになるものなのだが―― 「っ! ……いいだろう、そこまで大口が叩けるなら、準備は万端のようだな!」 ギーシュはルイズの安い挑発にあっさり乗ると、杖を振るう。 その動作で、杖から一枚、花びらが地面に舞い落ちると―― 「……ホウ」 「それ」を見たホワイトスネイクが、感嘆した様子で声を漏らす。 ギーシュの杖から舞い落ちた花びらは地面に落ちると同時に、甲冑を着た女戦士の人形に姿を変えたのだ。 その高さは人間とほぼ同じ。 その表面は深い緑色――青銅色に輝いている。 「僕は『青銅』のギーシュ。君が魔法を使えようと、使えなかろうと、 僕はこの青銅のゴーレム、『ワルキューレ』でお相手するよ、ルイズ」 (『青銅』……ト名乗ッタナ、アノ小僧ハ。 ツマリアノ人形……『ゴーレム』、ダッタカ? アレハ青銅デ出来テイルノダナ) ギーシュがカッコつけた口上を聞いて、ホワイトスネイクはそんなことを思った。 そして一方のルイズは、 「ホワイトスネイク」 「何ダ、マスター?」 「あんたに命令するわ」 来たな、とホワイトスネイクは思った。 マスター、もといルイズは魔法を使えない。 どんな魔法を使っても、きっと授業のときのように爆発する。 だとすれば……あの青銅のゴーレムに勝つ手段は、ルイズにはない。 それでもルイズがギーシュに勝とうとするなら、自分に――ホワイトスネイクに、頼るしかない。 だからきっと、「わたしの代わりに戦いなさい」と命令するだろう。 その方が確実だし、決闘でぶちのめす、という目的も果たせるからだ。 そう、ホワイトスネイクは考えていた。 「私が戦える限り戦い切るまで、あんたは手を出しちゃダメ」 しかしルイズの命令は、ホワイトスネイクにはまったく意外なものだった。 つまり、ルイズは自分であの青銅のゴーレムと戦おうと言うのだ。 無謀にも程がある。 勝算はあるのか、何故そんな意味のない事をするのか。 そういう言葉が口をついて出かけたが、ぐっと堪える。 自分はスタンドだ。 スタンドは本体に意見などしない。 スタンドは本体の力そのものでしかない。 力は、持ち主に意見しない。 そう言い聞かせて、自分には到底理解できないであろうこの命令を、 「……了解シタ」 渋々ながらホワイトスネイクは了解し、自分自身を解除した。 ホワイトスネイクの姿がルイズの背後からフッと消える。 それを見て、今まさにワルキューレをけしかけようとしていたギーシュは、 「ルイズ、君は使い魔を引っ込めるのかい?」 驚いた様子でそう言い、ワルキューレの動きをピタリと止めた。 ギーシュもまた、自分がホワイトスネイクと戦わねばならないものと考えていたからだ。 そしてワルキューレを止めたのは、予想外の事態に、ギーシュの生来の小心が「危険だ」と囁いたからである。 しかし、そんなギーシュに対してルイズは、 「そうよ。何を驚いてるの? 御託はいいから、早く仕掛けてきなさいよ、ギーシュ」 さも当然とでも言うような態度で言い放って杖を抜く。 既に、自分に勝算があるかのような態度だ。 「そうか……ならばもう遠慮はするまい! 行け、ワルキューレ!」 ルイズの再三の自分を見下ろした態度で、完全に戦闘体制に入ったギーシュは、すかさずワルキューレに指令を出す。 ワルキューレが、青銅製の重い足を軽やかに持ち上げて一歩を踏み出した。 そしてニ歩目、三歩目と徐々に加速し、ガシャガシャと関節を鳴らしながらルイズの方へ突進する。 ルイズはそれを確認すると、ワルキューレと距離をとるようにしてニ、三歩下がる。 だがその程度では駆け足でルイズに迫るワルキューレとの距離は取れない。 ついに、ルイズとワルキューレとの距離が五歩まで縮まる。 そして四歩、三歩と瞬く間に距離は縮まり、距離が二歩になったところでワルキューレがぐん、と拳を振り上げる。 重いワルキューレの体重を十分に乗せたパンチが、来るッ! それを認識した瞬間、ルイズは横っ飛びにワルキューレの正面から逃れた。 直後、ルイズがいた空間をワルキューレの拳が薙ぐ。 そして体重を十分に乗せたパンチが、逆にワルキューレ自身の重心を崩す。 ぐらり、とワルキューレがよたける。 この瞬間を、ルイズは待っていたッ!! 素早く体制を立て直し、杖をワルキューレへ向ける。 そして短くルーンを唱え、ワルキューレに向けた杖を振り下ろすッ! ドモンッ! ワルキューレの体内で、鈍い共鳴を伴った爆発が巻き起こるッ! ワルキューレの体内は空洞ッ、 そしてその空洞の中に閉じ込められた爆圧はワルキューレの細くくびれた腰周りを風船のように肥大させ、 さらにその胴体につながれた脆弱な間接を、根こそぎッ、もぎ取るッ! バギョアァッ! 金属が引きちぎれる甲高い音とともに、ワルキューレはッ! バラバラに砕け散ったッ!! 自身を支える両足どころか両腕までもを失い、さらに腹を爆圧で膨らませ、 まさしくダルマ同然の姿になって地面に転がるワルキューレ。 自分が目の前の、コモン・マジックさえまともに使えない少女に対して、 絶対の自信をもって送り出したしもべが晒した無様な姿に、ギーシュは声にならない呻き声を上げた。 その様子を横目に、ルイズは表情を崩さずに言う。 「今朝の錬金の授業で……知ったのよ。 わたしが錬金に失敗すると、錬金の対象だったものは、その中心から爆発する。 石ころみたいなのに使えば、まず間違いなく粉みじん、よ。 ま、考えてみれば当然よね。 錬金は、対象の物質を構成するものをまったく別のものに変換する魔法。 だから魔法に失敗して爆発が起きれば、対象の中心から爆発が起きる。 そして今……わたしはあんたのワルキューレの全身を砂に錬金しようとした。 そして魔法は失敗するから……ワルキューレはその中心から爆発する。 つまり……爆発はワルキューレの中心、つまり空洞のお腹から始まる。 さて、どうしたの? 早く次のワルキューレを出しなさいよ。 あんたの精神力なら、まだ六体は出せるはずよ、ギーシュ」 冷静に、自分のしたことを説明して見せるルイズ。 その様子にギャラリーは完全に静まり返る。 あの「ゼロ」が? まさかあんな手段でギーシュのワルキューレを? 誰もが、ルイズのしたことを半信半疑に見ていた。 そして一方、土を付けられた形となったギーシュは、 「くそ……僕を……甘く見るなッ!」 そう言って、手に持った杖を力任せに振るう。 再び杖から花びらが舞い落ち、それぞれがワルキューレへと変化する。 その数六体。 今ギーシュが出せる限界にして最大の数だ。 そしてギーシュはそれら全てを自分の前にずらりと整列させ―― 「君の言うとおり、これが僕が出せるワルキューレの残りの数だ。 そして一体のワルキューレに丸ごと錬金をかけるようなことをしたなら、 時間も精神力も余計にかかってしまうのは僕にだって分かる! 集中力だって多く必要になる! つまり、君はさっき僕のワルキューレを倒したやり方では、この六体を倒すことは出来ない! もう分かるだろう! 今この瞬間で、君の負けだ、ルイズ! 君にはもう、僕のワルキューレに殴り倒される未来しか残っていないぞッ!」 そう、大声で叫んだ。 決闘が始まる以前のカッコつけたギーシュはここにはいない。 今のギーシュには、カッコつける余裕なんて無い。 確かに状況においては、なるほどギーシュがルイズよりかなり優位に立っているだろう。 しかしルイズはギーシュを圧倒していた。 精神の面で、ギーシュを圧倒していた。 そのことがこの圧倒的優位な状況にもかかわらず、ギーシュから余裕を奪い取っていたのだ。 そしてルイズはギーシュの言葉を一通り聞くと、 「そうね……確かに、状況はわたしが圧倒的に不利。 でもそれはわたしが決闘を降りる理由にはならない。 わたしはわたしで決めて、ここにいるのよ。 だからどんなに不利でも、そんなのは関係ない! やれるだけやるまで、杖を落とすまで、杖を折られるまで、わたしは決闘を続けるわッ!」 高々と宣言するかのように、そう言った。 そんなルイズの姿を見て、周囲の生徒達はようやく理解した。 自分たちの目の前にいるルイズは、もう自分たちが知るルイズではない。 何かは分からないが、だが確実に、ルイズは以前より成長している、ということを。 そして、それは相対するギーシュにも感じ取れた。 今まで見下していたものが、いつの間にか自分よりもずっと先にいる。 技術とかの問題ではない。 何か、何かよく分からないものにおいて、ルイズは自分より遥か先にいる。 それが、気に入らなかった。 自分でもそれを認めてしまうのが、なおさら気に入らなかった。 ギーシュはそんな思いを無理やり胸中にしまいこむと、苦し紛れに叫んだ。 「くっ……行けぇッ、ワルキューレ!」 ギーシュの号令とともに、ワルキューレたちが動き出す。 どれか一つが抜け駆けすることも無い、一つの青銅の壁のようにルイズに迫る。 それを見て、ルイズは覚悟を決める。 あれから逃れる手段は、自分には無い。 先ほどワルキューレを破壊したやり方では、あの壁は突破できない。 なら、どうするか。 もう考えていられる時間は幾分も無い。 5秒もしないうちに、ワルキューレたちは自分のところに到達する。 何か、何か手段は―― そうやって必死に策を探すルイズの脚に、何か硬いものがぶつかった。 思わず下に目を向けるルイズ。 そして――閃いた。 あのワルキューレを突破する手段が、起死回生の方策がッ! ルイズはすぐに足元に無数に転がるそれを、思い切り、迫り来るワルキューレの方へ蹴飛ばす。 蹴飛ばされたそれは、迫り来るワルキューレのうちの一体にぶち当たり、跳ね返って地面に転がる。 しかし跳ね返ったとはいえ、それにはいくらかの重量があり、遠くまでは転がらない。 はたしてそれが落ちた場所は、迫り来るワルキューレの正面、すぐ近く。 そしてワルキューレのうち一体がそれを――先ほど破壊されたワルキューレのパーツを跨ごうとした瞬間―― ドッバァァァアアアアン! パーツが、炸裂したッ! 炸裂を引き起こしたのは、ルイズの「錬金」の失敗魔法ッ! 破裂したワルキューレのパーツはまとまった一つの金属。 だからこそ、内側より解放されるその爆発力は、手榴弾さえ上回るッ! そして強烈な爆圧は、パーツを跨いだワルキューレと、その両脇のワルキューレを転倒させ、 さらには地面の土を盛大に巻き上げ大きな土煙を作るッ! 興奮した周囲からわあっ、と歓声が上がる。 それを聞いてギーシュは思わず舌打ちした。 何をそんなに騒ぐんだ。 まだ自分のワルキューレは三体が無傷で動いている! 転倒した三体が起き上がるのには時間がかかるが、 まだ立っている無傷の三体があれば、あっというまにルイズを…… そこまで思ったところで、ギーシュは奇妙なものを感じた。 ワルキューレがルイズを攻撃する音が、まだ聞こえてこない。 ワルキューレは青銅の塊だ。 それで人間を打てば絶対に音がする。 それなのに……その音が聞こえない。 爆発の直前のルイズとワルキューレとの距離を考えれば、もうルイズに到達したはず。 なのに何故ワルキューレは、まだルイズを攻撃していな…… その瞬間だった。 自分の正面、約数歩先。 もうもうと立ち込める土煙からルイズが飛び出し、自分の方へ一直線に駆けて来るのが見えたのは。 ルイズは衣服のところどころを何か鋭いもので切っており、血が滲む場所も少なくない。 その上、土煙を突破してきたため体中泥まみれ。 自分が起こした錬金の爆発に自分から突っ込むことでワルキューレを振り切り、 さらにギーシュの目を誤魔化すために土煙の中を突破した結果だ。 傷の中にはいくらか雑菌が入ったことだろう。 それでも、そんなことはお構い無しと言わんばかりに、こちらに突っ込んでくる。 その姿はあまりにも前向きで、そして、あまりにも誇り高かった。 一直線に土煙を駆け抜け、ギーシュの前まで駆け抜けたルイズは、ギーシュに杖を突きつけ、高らかに宣言する。 「杖を捨てなさい。わたしの、勝ちよ」 さっきの爆発のときよりも、数倍大きな歓声が、巻き起こった。 ルイズが、「ゼロ」と呼ばれて蔑まれたあの少女がギーシュに勝ったのだ。 その事実が周囲の生徒達を、より大きい興奮に包んでいた。 だが――そのとき、ルイズには二つだけ、しかし致命的なミスがあった。 そして一つの不運があった。 一つのミスは三体のワルキューレを土煙の向こう側に残したままだったこと。 もう一つのミスは、ギーシュがまだ杖を持っていたこと。 そして一つの不幸は――周囲から巻き起こる歓声のため、後ろから迫り来る、ワルキューレの足音に気づけなかったこと。 ギーシュは、湧き上がる歓喜を顔に出さないようにするので必死だった。 結局この「ゼロ」は、最後の最後でツメが甘かった。 まだ自分は杖を持っている。 土煙の向こうにいるワルキューレを操ることが出来る。 そしてこの歓声があれば――ルイズにばれることなく、背後からルイズを倒せる! グラモン家の男児たるこの僕が、魔法一つまともに使えない「ゼロ」に、負けるはずなど無かったんだ! そうほくそ笑みながら、三体のワルキューレのうち一体を、土煙の中に隠れるように操作する。 これで周囲からはこのワルキューレの動きは見えない。 そして、土煙の中から、ルイズの方へ突進させるッ! いつもなら、ガシャガシャとうるさい音がするはずのワルキューレの歩みも、この歓声のおかげでそれが聞こえない。 ワルキューレの姿が、土煙の中からでも ルイズには、これを受けきれるだけの体力は残っていないッ! 勝ったッ!! そう、ギーシュが思った瞬間だった。 ズゴンッ! 鈍い音とともに、ルイズのすぐ後ろまで迫っていたワルキューレが吹っ飛ばされたッ! 突然の轟音に、大騒ぎしていた周囲の生徒達が一斉にシン、と静まる。 そして、今更になってギーシュは気づいた。 ルイズに、「そいつ」がいたことを。 「そいつ」は――ホワイトスネイクは、今の音に驚き、振り向いたルイズに向かって、 しかしルイズには背を向け、ワルキューレを吹っ飛ばした方向を見据えながら言った。 「マスター……ココカラハ、私ノ領分ダナ」 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1790.html
猫の姿なぞ見えないのに猫の鳴声がするだのでプチ幽霊騒ぎが起こっているが、正体はもちろん猫草である。 その猫草がヴァリエール家に住み着いてから約二ヶ月。 「…マジか?」 「ええ、明日の夜ぐらいに着くって姉様がフクロウで」 「ウニャ!ニャ!ニャ!ニャ!」 ボールを転がして遊んでいる猫草の鳴声を背景に出た言葉が『マジか?』である。 覚悟はしていたが遂に来た。元ギャングをしてこれほどの反応を示す物。 つまり、遂にルイズがここに帰ってくるという事だ。 無駄に広い領地なので老化もあるし、まぁ大丈夫だとは思うが一応警戒態勢に入らねばならない。 「ニャギ!フギャ!ニャン!ニャ!」 「ルセーぞ」 何かヒートアップしてきた猫草の上に布を被せる。 しばらくもがいていたが、寝たようだ。自由奔放もいいとこである。 草だが猫。猫だが草。奇妙という言葉が最も似合う生物。 そして、その奇妙な生物を見て一発で猫だとのたまったカトレアのド天然さも。 ある意味似た者同士かもしれない。違うのは健康の問題ぐらいか。 この後、カトレアが先発して旅籠まで出迎えに行った。もちろん、動物満載の馬車で。 なお、猫草は居残りである。こいつ、猫だけあって人の好き嫌いが結構激しい。 多分、エレオノールあたりを見れば空気弾を撃ちこみかねない。 布の下でゴロゴロ音を出して爆睡している猫草の顎の下を触る。 紛れもない植物の感触に僅かに伝わる音の振動。…イタリアは猫が多いが、こいつ程好き勝手やってる猫もいねーだろとマジに思う。 とりあえず今は、来るべき来訪者に備え仕事を済ませておかねばならなかった。 そのヴァリエール家領地を進んでいるのは、ルイズ、エレオノール姉様、犬、シエスタの四名。 この前から三日後。さらに犬がアンリエッタとキスしていたという事で、色々格下げである。 まぁそれだけ気になっているという事かもしれんが。 職業メイドたるシエスタも何故居るかというと、エレオノール曰く『ど、道中の侍女はこの娘でいいわ』とのことだが、実際のところ理由は別にある。 ルイズを連れ戻しに学院に乗り込んだ姉様であるが、幾分勝手が分からないので見当違いなところまで入ってしまっていた。 「まったく…あの子ったら、戦争に着いていくなんて勝手なことを言って」 文句たれながら院内を歩くエレオノールだが、戦争という事でそれなりにルイズの事を心配しているようだ。 次に入ったのは風の塔。いい加減魔法でこちらの存在をアピールしようかと思ったが、そんな事やったら多分マズイので自重する。 人に聞けばいいのだが、不機嫌オーラ全開でドS丸出しのエレオノールに近付きたがる人はあまり居ないらしい。 メイジであれ平民であれドMはそうそう居ないものだ。 段々ムカついてきたのだが、倉庫の前で声が聞こえた。 丁度いい。人が居るなら聞こう。というか口を割らす。 ギャングの考え方になってきたが、妖精さんの件で一杯一杯なのである。 だが、入ると同時にエレオノールの顔が歪む。 視線の先には水兵服とスカートに身を包んだ…いやそれだけならまだいいが、小太りの『メーーーーーン!』だったからだ! 「はぁ…んぉ、ハァハァ…かか、かわいいよ…」 しかもなにやら悶えているご様子。扉を開けた様子にすら気付いていない。 「ぼ、ぼくはもう…う、うあああ」 生涯初めて見てはいけない物という物を見てしまった気がするが、気の強いエレオノール。これしきの事でひるんだりはしない。 「あなた、なにやってるの!」 「ひぃぃいいいいい」 その声に逃げようとした人が足をもつれさせ床をのた打ち回っていたが、その近くには『嘘つきの鏡』があった まず真っ先に嫌悪感が先行したし、こんな人の居ないとこでコソコソ怪しい事をやているということで、その背中を思いっきり踏んだ。 「使用人の分際で、こんな場所でなにやってるのかしらね…しかも、そんな格好で…汚らわしいわッ!」 踏んでいる足の力を強める。あの使用人(兄貴)に頭が上がらなくなったせいで、ストレスというものが溜まっているのだ。 「あ!んあ!あ!ふぁ!」 豚のような悲鳴をあげていたが、少々上気した顔で男が答え始めた。 「こ、この服があまりんも可憐すぎて…で、でもぼくには着てくれる人が居ないから…う、うぉぉお!」 「それで自分で着て、その『嘘つきの鏡』でって事?…情けないわねッ!」 グリィ! そんな音が聞こえそうなぐらい足をグリグリと動かすと、男が悲鳴をあげるが、どことなく悦んでいるような気がする。 「ハァハァ…あの時見た姿はまさに感動だ!ぼくのハートは可憐な官能で焦げてしまいそうさ! だから、その想いのよすがに、せめてこの鏡に自分の姿を映して…ああ、ぼくは…ぼくはなんて可憐な妖精さんなんだ…!あぁああああッ!」 即席とはいえ士官訓練を二ヶ月終え、空軍に配属され水兵服を見て彼が思い出したのは、あのルイズの姿。 乗艦する前に水兵服を一着かっぱらい、わざわざ抜け出して学院に戻ってきてのご乱行である。 そして『妖精さん』。今最もエレオノールが聞きたくない言葉にして忘れたい言葉だ。 それをわざわざ思い出させてくれたこのド変態をどうしてくれようかと思い、さらに踏む力を強める。 「あ!ああ!誰か知らないけど、あなたみたいな美しい人に踏まれて、我を忘れそうだ!う、うお、うおお!」 「おだまり!」 「ふひぃぃ!こんなところで可憐な妖精さんを気取ってしまったぼくにもっと罰をッ!お願いだ!ぼくの顔を踏んでくれ! 我を忘れた僕の罪と一緒に押しつぶしてくれ!そうだ、圧迫だ!呼吸が止まるぐらい!もう耐えられないッ!踏んでくれ!早く!」 「 『 圧 迫 祭 り 』 だ ッ ! ! 」 「まだ言うか!」 二回目の禁句。それに従い、顔を思いっきり踏み付け、鞭を取り出し打つ。 「もっとだ!もっと乗って!強くッ!ふぎぃ!?あぐ!ほごぉ!あぎぃ!」 「黙れと言っている!この豚!」 「ぶ、豚……?ああ、そうさ、ぼくは豚だ…!この醜くて卑しい豚にもっと罰をォーーーーーーー!!あ!あ!んああぁああああ!」 別世界に到達した男が気絶したが、その表情は達している。 「まったく…平民はこれだから…」 養豚場の豚を見るような目で気絶した男を見ているが、実際のところ平民ではなく、ここの生徒である。 が、扉の方から音。 そこにいたのは、かなり顔を赤らめているメイド。ご存知シエスタだ。 「ああ…やっぱり貴族の方達って、あの小説に書かれているような事を……」 『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』 トリスタニアで今人気の読み物らしく、倹約派のシエスタも自費で購入し読んだばかりである。 内容は『高貴な女性の口にはできない欲求が積もり積もって…』。言うまでもなくR指定相当の物だが、この世界にそんな概念など無い。 今のシエスタの目の前の光景は、どう見てもドMの豚に鞭を振るって悦に入っているドSの女王様なのだから、そう思うのも仕方無い。 小説にもそんな話があっただけに、もう間違いない。 ふとエレオノールと視線が合う。 マズイ。イケナイモノを見てしまったと思い、下手すれば次に鞭が振るわれるのは自分だと判断したようだ。 「ごご、ごめんなさい!」 踵を返し走り去ったが、テンション絶賛上昇中である。 どこか、うっとりしたような感じで顔を赤らめながら走っているが、まぁ無理も無い。 だが、エレオノールはそうはいかない。 『HOLY SHIT!』である。当人にしてみれば、そんなつもりは無かったが、状況的にそうなってしまっていると今更ながら理解した。 顔を踏んでいた足。手に持った鞭。『豚』発言。 状況証拠だけで殺人罪が立件できそうな勢いだ。 そしてそれを見られてしまった。 「ごご、ごめんなさい!」 そう言って顔を赤らめさせながら逃げ出したメイドを見て、血の気が本気で引く。 『妖精さん』だけではなく『女王様』という称号まで頂いてしまえば、再起不能どころか自殺モノだ。 さらに平民の中での噂が伝わる速度が恐ろしく早い事も知っている。 そして、それは何時か貴族の中にも… 『ヴァリエール家の長女が婚約を解消された理由は、夜な夜な伯爵を鞭で打っていたからだ』 「ま、待ちなさい!ていうか待って!お願い!」 そんな噂が貴族社会で流れる事を想像しながら、必死になって追いかける。 生涯これ程焦った事は無い。前回の件を一気に更新して最高記録である。 そして誰も居なくなった倉庫の中で、散々踏まれ、鞭で打たれ、罵られた男。 マリコヌルが達してしまっている顔で何かに目覚めていた。 というわけで、必死こいて説明し監視も兼ねて連れてきたという事である。 なお、半分涙目だったのは言うまでも無い。 「サイトさん…世の中知っちゃイケナイ事って結構あるんですね…」 「一体何が…」 どこか遠くを見て達観したような表情のシエスタと才人が乗った馬車と その後方にエレオノールとルイズが乗った馬車が続くが、前の馬車よりも立派な後ろの馬車からは妙なオーラが滲み出ている。 「ね、姉様…学院でなにふぁいだ!いだい!あう!」 「いい事、ちびルイズ?世の中には知らないでいい事が沢山あるの。それなのに、なんで見に寄ってくるのかしらね……?見なくてもいいものをッ!!」 今にも、この世はアホだらけなのかァ~~~~ッ! と言いながら目に指を突っ込まんばかりにルイズの頬をエレオノールがつねる。 今ならギャングのボスも立派に務まりそうだ。 「わ、わかりまひた…」 「戦争に行くだなんて。あなたが行ってどうするの!しっかりお父様とお母様に叱ってもらいますからね!」 「で、でも…この前の任務の時は…」 「あなた、戦争がどういう物か分かってるの?街での任務なんかとは一緒にしない!」 情けない声をあげて押し黙るが、エレノオールですらこれだ。ルイズには烈風を説得できるか非常に不安だった。 そんなギャングのボスと化さんばかりのエレオノールを乗せた馬車の前の才人だが、気分は暗い。 ルイズが戦争に参加するという事は、自分もゼロ戦ひっさげての参陣となる。 戦争なぞ17年生きてきて初めての体験だ。正直言えばやりたくなぞないが あの時のアンリエッタを見て『この可哀想なお姫様の手助けをしてやりたい』という気持ちが湧き上がっていた。 そういえば、姫様も結構胸が大きかったなー。 ああ、この戦争終わったらセーラー服着た姿見たい。多分、いや絶対似合う。清純そうだし。 そんな、けしからん妄想を犬がしていると、シエスタが曇った顔をして話しかけてきた。 「サイトさんも、アルビオンに行くんでしょう?」 「え?…ああ、うん」 シエスタも似合いそうだなー。と引き続き煩悩モード満載だったが、とりあえず現実に戻った。 「わたし、貴族の人達が嫌いです…自分達だけで殺し合いをすればいいのに…わたし達平民も巻き込んで…」 「戦争を終わらせるためだって言ってたけどな」 「戦は戦です。サイトさんが行く理由なんて無いじゃないですか」 元が同じ故郷という事で、それなりに、というかかなり親しくはなった。 「そうなんだけど…あいつが、そのままいるんだったら…多分、ルイズと一緒に行ってたと思うんだ。だから俺も」 実際のところ、その『あいつ』は親玉狙いで真正面からドンパチやる気は全く無い。 「死んじゃ嫌ですからね…知ってる人がいなくなるってのは、もう見たく無いんです」 ああ、もう可愛いなチクショー。ルイズとは大違いだ。いや、ルイズも可愛いけど精神的な意味で。 そんな事を思いつつも、プロシュートとの距離は確実に狭まっていた。 「こんなもんか」 一通りの仕事を終えて一息つく。 後ろで猫草がゴロゴロ鳴きながら寝ているのがムカつくがまぁ良しとしよう。 後は他のヤツに任せて適当にバックレてれば大丈夫なはずだ。 大体何時も飯食うときにあんな人並ばせる必要があんのかと。 刺客が紛れてたら死ぬぞ。と、元暗殺者として常々思う。 メイジといっても飯時を狙われたらどうしようも無いはずだ。 常に警戒してんのか、単に城の中に居るから安心しきってんのかのどっちかだとは思うがイタリアなら軽く2~3回は死んでいると考えなくもない。 プロはリスクを恐れてこういう所はあまり狙いたがらないのだが、追い込まれてテンパったカタギが自爆覚悟で襲撃してくる事がある。 後先考えていないだけに、そういう素人が一番怖い。 もちろん、暗殺チームはそんな事関係無しに殺ってきたが。 適当にバックレてる間に飯も終わったようで、一応の警戒はしているが視界の範囲にルイズの姿は無かった。 が、カトレアの部屋の方からルイズの短い悲鳴。数人の使用人が何事かと出てきたが 続いて『ニャーン』という鳴声が聞こえたので猫草だな。と納得した。 普通はああいう反応だろう。やはりカトレアは何かが違う。 次いで遭遇するとマズイのがシエスタだが これは、性格的に勝手が分からない場所だけあって、あまり部屋の外から出ないから大丈夫なはずだ。 そして、問題無いのが才人だ。 老化してりゃあバレやあせんだろうし、顔を合わせたのも一回だけだ。 むしろ、ここは後退するより前に出て才人から近況情報手に入れるのが得策かもしれないと判断した。 そう決めると早速行動開始だ。軽く捜したがすぐ見付かった。 つーか、負のオーラ全開でマンモーニさを限りなくアピールしていた。 説教した後のペッシがあんな感じだ。 元暗殺者に完全ロックオンされたとは露知らず、改めて身分差というものを痛感させられていた才人が浸っていると声を掛けられた。 もちろんヴァリエール家仕様で、髪型変えて、老化しているダンディさ300%増しのプロシュートである。 「シケた面してなにやってやがる。使い魔がルイズの側にいなくていいのか?」 「え、ああ。凄い城なんで、なんだか気後れしちまって。って、いいんですか?お嬢様を呼び捨てにして」 「構うこたぁねー。バレなきゃいいんだよ。バレなけりゃあな」 限りなくタメ口で軽く話しかけてきた男に気が緩んだのか、多少才人が明るくなる。相変わらず立ち直りだけは早いようだ。 「で…どんなだよ?使い魔ってのは」 「どんなって……優しい時もあるけど、犬って言われたり、鞭で叩かれたり…」 叩かれていたりするのは、まぁ自分に責任があるのだが、ダーティ入っている時、人はどんどんそっちに進むものである。 「たっく…全然、変わってねーな」 「昔から、あんなだったんですか?」 昔っつっても、月単位の事だ。そうそう変わりはしない。 「ああ、一回怒ると中々おさまんねーからな。そんなに嫌なんだったらさっさと逃げちまえ。稼ぎ口ぐらいは紹介してやんぜ?」 「それはできませんよ。一応、俺はあいつの使い魔だし……それに逃げたら、前のヤツに負けたような気がして」 (意地だけは一端ってワケか) よもや目の前の男が、先代だと思っていないようでどんどん話してくれるが 纏めると『あまりの貴族っぷりにビビって身分の違いを思い知り凹んでいる』という事らしい。 「少しそこで待ってろ」 プロシュートが厨房に消えていったが、しばらくすると壜を一本持ってきてそれを投げてきた。 「うわ!危ねぇ…これ、何ですか?」 「見りゃ分かんだろ。酒だ」 落としそうになったがなんとか受け取る才人だったが、不思議そうな顔をしている。 「いや、それは分かりますけど」 「適当にかっさらってきたが…まぁそこいらの安酒よりは良いモンだと思うぜ」 「いや、いいんですか?ここで働いてるのに」 「ハッ…!言ったろーが、バレなけりゃあいいんだよ。部屋がアレだろーからな。酒ぐらいは良いモン飲んでも構わねーだろ?」 全ての思考は、『ギられた方が悪い』。まさにギャング。 「あ、ありがとうございます」 「じゃあな。面倒だろうが、やるならトコトンやりな」 ナイスミドル!! 軽く笑いながらの顔を見て才人が本気でそう思う。 今の精神状態ならホイホイついていってしまいそうだ。 無論、誘ってもいないので、ついて来られても困るのだが。 ヴァリエール家に来てようやく人間扱いを受けたような気がして泣きそうな才人だったが とりあえず、廊下で飲むのもなんなので部屋に戻る事にしたのだが、先客がいた。 「遅い」 「…シシ、シエスタさん?」 部屋の中には、グビィと荒れている英国貴族を髣髴とさせる飲みっぷりのシエスタがいた 目が完全に据わっている。なんというかギャングっぽい。 「せっかく遊びにきたのに、居ないってのはどういう事れすか」 「い、いや、ちょっと話してて」 「ミス・ヴァリエールとですか。なんだかんだ言ってやっぱりそうですか」 「俺はルイズの事はなんとも…」 「まぁいいサイト。お前も飲め」 スゴ味を含ませた声でシエスタが呟く。ドスが効いててなんか怖い。 「い、いただきます」 怖いので差し出されたままの酒を飲む。 この後、才人が潰れるまで酔っ払いと使い魔によるほぼ一方的な酒リレーが行なわれる事になった。 酒リレーが開催されている中、ルイズはカトレアの部屋にまだ居た。 何故か知らんが、猫草を挟んで一緒に寝ている。 最初は驚いたものの、猫草が出す空気クッションが気に入ったらしい そのうちルイズが毛布被って外に出て行ったが、向かった部屋の先はある意味地獄に近かった。 「あら、いらっしゃい。ミス・ヴァリエール」 「なな、なんであんたがいるのよ!」 「する事が無いので遊びにきただけれすけど」 酒で顔を赤くしているシエスタと、なにか分からんが喰らえッ!的な感情で赤くしているルイズ。 こちらも対照的である。 そして、潰れている才人。もう少し飲んでいれば、ドッピオみたいに釘を吐いているような姿が見られたかもしれない。 「ミス・ヴァリエール」 「な、なによ…!」 こんな部屋でなにやってたのかと想像して、沸騰しかけのルイズだったが、シエスタの妙な迫力に押されていた。 「飲め」 ズイィっと差し出される酒瓶。プロシュートが見るに見かねて才人にギってきたのを渡したやつだが、もう半分程開いている。 「どうしたのよ、これ」 「とりあえず、飲め」 「そんな事いいから、自分の部屋に戻りなさい」 負けじと言い返したが、シエスタがルイズに顔を近づけてきた。 「サイトさんの事、好きなんでしょ?ハッキリ言ったらどうですか」 「な、な…!」 唐突に本丸を攻められルイズがうろたえる。『ジャーーーン ジャーーーーン』という音が聞こえそうなぐらいに。 「ち、違うわよ!な、なんでこんなヤツ…」 必死になって否定したが、気になっている事は確かで、現在心拍数絶賛上昇中だ。 そんな様子のルイズをシエスタがジーっと見つめ… 「……汗かいてますね」 「こ、これは暑いだけで、べ、別に…ひゃわん!」 ルイズの頬を伝う汗を舐めたッ! 「この味は…嘘をついてる味です…!ミス・ヴァリエールッ!」 「あ、あう…うぅ…ふひゃあ!」 「どうなんですか?…質問は既に…拷問に変わってるのれす」 汗を舐められるなぞ初体験だったので戸惑っていたのだが、続けざまにシエスタがルイズの平原…もとい胸を触っている。エロイ 「や、やめ……この、ぶぶぶ、無礼者…ひぁ!」 「無駄です。無駄無駄。そんな板じゃサイトさんは振り向いてくれません。わたしが大きくしてさしあげます」 遂に両の手でガッシリとつかみ始めた。…つかむ箇所があるかどうか知らんが。 「い、板じゃないもん」 「一度言った事を二度言わなきゃ分からないってのは、その人の頭が悪いって事です。贔屓目に見ても板です」 完全にギャングと化したシエスタだが、構わずにルイズの平原を掴んで手を動かしている。 とりあえず満足したのか手を離すと転がっていた酒瓶を抱えると外に出ていった。 「ひっく。早めに捕まえないと待ってるだけになるんですから」 「あ……」 少しだけ落ち着いた口調でそう言ったが ここ数ヶ月任務やら、ザ・ニュー・使い魔のおかげで頭の隅に追いやってあまり考えなかったが、意味する事に空気の読めないルイズも気付いた。 「そういえば、そうだったっけ…死んだかもしれないなんてとてもじゃないけど言えないわ……」 実際のとこ生存云々どころか同じ場所にいるのだが、全く気付かれては無いというのはプロと素人の差というやつだろう。 そして、寝るべく廊下を闊歩しているプロシュートの視界に入った珍妙な生物がそこに居た。 「…なんだこいつは」 目の前に映るのは、空の酒瓶抱いて廊下で倒れている非常によく見知った顔。 さすがにメイド服ではないが、猫草に負けないぐらい爆睡かましているシエスタだ。 「うお…酒クセー。なんであいつにやった酒持ってんだこいつ」 とりあえず、邪魔というか、こんなとこで寝てられても困る。 こんだけ潰れてれば起きないだろうとして抱えると運ぶ。とりあえず、部屋の場所は聞き出せたので運んだ。 「オレはこんなキャラしてねーぞ」 文句言いながら、シエスタをベッドに放り投げるように運んだが、介護キャラじゃあない。 相手を介護が必要にさせるように追い込んだ事は数え切れないが。 そんな事を考えながら、ドアの方に向き直って外に出ようとしたが、後ろからプレッシャーというかスゴ味を感じた。 そう…擬音が出んばかりにシエスタが立ち上がっていたからであるッ! 「な…ッ!バカな…こいつ起きて…!うぉおおおお!?」 急だったので、さすがの元ギャングも対処できずに押し倒される形となったが、色々とヤバイ。 何だ、この状況は!?カタギに元ギャングが倒されるってどういう事だよッ! それ以前に、このヤローどういうつもりだ!起きてたならせめて言いやがれ!クソッ馬鹿にしやがってッ! いや、この場合ヤローって言うのか?男じゃねーしな。あー、もうそんな事はどうでもいい。メローネでもいいから助けやがれってんだド畜生が! http //www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0411.jpg http //www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0409.jpg 0.5秒の間にそんな事を考えたが、バレちまったモンは仕方無い。 ルイズとかにバレるよりはマシだ。 失敗は前向きに利用しなくてはならないとリゾットも言ってたはずだ。 「おい、オメー…とりあえず退け。どういうつもりか知んねーがな……こいつ……寝てやがる」 反応が無いので妙だと思ったがどうも寝ボケていただけのようだ。 一先ず安堵したが、そう安心してられない。 こんだけ焦ったのも久しぶりだ。 シエスタを引っぺがすが、スーツに涎が付いている。ヴァリエール家の私物の方だからいいが、持ち込んだ方だったら説教かましてるとこだ。 壁に背を預け溜息を吐いたが、引っぺがしたシエスタが重力に従ってもたれ掛かってきた。 試しに頬を少し強めにつまむ。 反応は無い。まぁ大丈夫だとは思う事にした。 というか、最近マジで胃が痛くなってきたかもしれない。今度水のメイジにでも診てもらおう。 手を離したが、シエスタは変わらない顔で爆睡している。 「しっかし…のん気そーな面ぁしてやがんぜ」 ペッシを除いた暗殺チームは寝ている時もかなり神経使っていた。 ギアッチョやイルーゾォはともかくとして、プロシュートは殆どの時はスタンドを出して寝ている。 今もそうだ。これも結構スタンドパワーを使うのである。 ルイズ達もそうだったが、かなり無防備な寝顔のシエスタを見て、少しばかり羨ましくなった。 襲撃を気にせず寝ていた時なぞ何時以来だったかと思ったが、思い出せそうに無い。 難儀な商売やってたなと思ったが、別段後悔はしない。 相変わらず、涎垂らして爆睡決め込んでいるシエスタだったが、なんかの夢でも見ているのだろうか腕を掴まれた。 「…やっと捕まえ…もう離しま……から……」 「なに見てやがんだかな」 この元ギャング、よもや自分の事だとは全く思わないし、思おうともしない。この元ギャングも大概ド天然である。 いい加減出たいので、腕を振るが、ガッシリと掴まれて離れない。 手でこじ開けてもすぐ、また掴んで離れない。 「……起きてんじゃねーだろうな」 これで狸寝入りだったら相当黒い。ブラック・サバス並に真っ黒だ。 どうしたもんかと、髪掻きながらマジに考えたが対処法が思いつかない。 典型的な強打者タイプのボクサーだ。普段が打つ方だけに、こういう打たれ方をされると弱い。 しかも、悪意無しにされると反撃のしようも無い。ある意味、こういうのが真の邪悪というのかもしれない。 「こいつまだ持ってたのか。メローネに売りつけられたモンなんだがな…そんな良い物か…?」 面倒だと思いながら視界に入ったのは、この前くれてやった飾りだ。 メローネに半分押し付けられんばかりに売りつけられたのだが、案外気に入っていた。 それを欲しい言われた時は、まぁ世話なってたしくれてやったのだが、他人がそこまで常備するようなモンでも無いだろとは思う。 徹夜で他のヤツの仕事引き受けて、バックレるための暇作っていたため、多少なりとも寝ておきたかったのだが 現状、無理矢理引っぺがすにしても何か知らんが妙に喰らいついてくる。 腕を飛ばされようが脚をもがれようともな!と言わんばかりに これ以上強くやると起きて面倒な事になりかねない。かといってこのまま寝ると洒落にならない気がする。 「仕方ねー…気が済むまで居てやっが、これでゼロ戦の貸しはねぇからな」 その内離れんだろと思っていたが、結構粘る。一時間経っても離れやしない。 「くそ…何なんだこいつ…」 元ギャング。しかも暗殺者にこんだけ遠慮が無いヤツってのは見た事が無い。 いい加減もうどうでもよくなってきた。 出たとこ勝負。そう考えると寝る事に決めた。 眠いものは眠い。こいつが起きるより早く起きればいい事だ。 バレたらバレたで黙らせばいい。こんだけ広けりゃルイズ達には聞こえないだろう。 何時もと同じようにグレイトフル・デッドを出したが思い直す。 横でアホみたいに涎垂らして爆睡しているヤツを見たら、スタンド出して寝るのがバカらしくなってきたからだ。 メタリカなら気にしなくてもいいんだがな、と思うと寝た。 同じ場所で寝る元ギャングと現役メイド。相変わらず実に奇妙な組み合わせであった。 ルイズ― 潰れている才人を見てムカついたのか一発蹴り入れてカトレアの部屋に戻った。 …が板と言われた上、色々やられたので部屋に付く頃には半泣きだった。 猫草―常に18時間ぐらいは寝て、起きている時は食ったり遊んだり、犬とは違って充実している。 マリコルヌ―覚☆醒! 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5346.html
遊戯王デュエルモンスターズより海馬瀬人を召喚 ゼロの社長-01 ゼロの社長-02 ゼロの社長-03 ゼロの社長-04 ゼロの社長-05 ゼロの社長-06 ゼロの社長-07 ゼロの社長-08 ゼロの社長-09 ゼロの社長-10 ゼロの社長-11 ゼロの社長-12 ゼロの社長-13 ゼロの社長-14 ゼロの社長-15 ゼロの社長-16 ゼロの社長-17 ゼロの社長-18 ゼロの社長-19 ゼロの社長-20 ゼロの社長-21 ゼロの社長-22 ゼロの社長-23 ゼロの社長-24
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1152.html
まるで鮮血で染まったかのような紅い空で、二つの影が、同じく二つの月をバックに対峙していた。 一つの影は、シルフィードを駆るタバサ。 そして、もう一つは右手に杖を握り、フライの魔法で浮遊するルイズであった。 普通ならば、このような対比は有り得ない。 何故なら、フライの魔法で飛行していると、他の魔法を使う事が出来ず、戦闘では的以外の何者でも無いからだ。 しかし、ルイズは違った。 フライの魔法で空を飛んでいた所で、今の彼女にはホワイトスネイクが居る。 生半可な魔法など、その両の手で叩き落し、接近戦であるならば、通常の人間以上の動きで攻撃を仕掛けてくる。 さらに、その手は頭部に触れると問答無用で対象の『記憶』をDISCとして引き出し、魔法すら奪う、悪魔の手だ。 近づけば負ける。 だが、それは反面、近づかなければ負けないと言う事でもある。 フライの魔法は空を飛ぶのに確かに便利であるが、風韻竜である自分の使い魔には速度と移動距離、共に劣っている。 さらに言えば、向こうはフライで飛んでいる限り、接近戦しか出来ないが、こちらは魔法を遠距離から唱えられる。 相性的に言うのであれば、自分達は敵に勝っている。 しかし、タバサは心の底から湧き上がる不安感を拭い去る事がどうしても出来なかった。 「ウオシャアアアアアアアアアアア!」 獰猛な毒蛇を思わせるホワイトスネイク独特の声と共に繰り出されるラッシュは、ルイズの元へ飛来してくる氷の矢や空気の塊、風の刃を全て叩き落す。 今の所、ルイズにダメージはゼロだが、それは向こうにも言えた事。 攻撃を叩き落しながら、シルフィードを追いかけているルイズであったが、向こうのスピードは自分のフライの速度よりも速く、このままでは何時まで経っても追いつく事が出来ない。 追いつけなければ、自分のホワイトスネイクを、あのクソ生意気な眼鏡の顔に叩き込む事が出来ないのだ。 (空中戦じゃあ勝ち目が無い! でも、だからってどうすれば良いの!?) 二度目であるはずのホワイトスネイクの戦闘運用であるが、効率的な運用方法がルイズの頭には浮かんでこない。 戦いとは、装備やそれを使う者の能力も必要であるが、最も重要なのは経験である。 何時、何処で、どのようなタイミングで繰り出すのが効果的なのか。 戦闘のセンス、或いは。戦術的な戦い方。 それらを鍛えるには、戦いの中で、自分で学び取るしかない。 一度目の戦いの時は、そんなものは必要無かった。 ホワイトスネイクは相手のワルキューレの何もかもを上回っていたし、勝負自体も一瞬で片付いた。 しかし、その一瞬で片付いた所為で、ルイズは戦いにおける経験を、まったくしていない。 模擬戦すら、まともに行っていないルイズには、諸事情により、ちょっとした百戦錬磨になっているタバサの相手は荷が重い。 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」 タバサの詠唱が空に響く。 先程の氷の矢では無く、一回りも二回りも大きい、氷の槍。 蛇のようにシルフィードを回るその槍が、一直線にルイズへと襲い掛かる。 「ホワイトスネイク!!」 「不可能ダ」 あのサイズともなると、完全に弾くのは無理がある。 元の自分の性能なら可能だろうが、ルイズが本体となってから、ホワイトスネイクの破壊力は一段階下がっている。 無理を悟ると、ルイズはフライの魔法を切り、朱色の空から落下する。 その後を追うジャベリンに、キュルケのDISCから引き出した炎が喰らいつく。 外面は一気に気体にまで昇華させたが、芯は、まだ形を保っている。 「弾きなさい!!」 右腕を振るい、小さくなった氷の槍を弾く。 しかし、魔法による串刺しは免れたが、目の前まで迫った地面による死が間近に迫っている。 フライ、否、間に合わない!! 「なら、浮きなさい!」 フライよりも詠唱の短いレビテーションにより、墜落死の運命を書き換える。 だが、浮かぶ事しか出来ないレビテーションは、フライなどよりももっと、もっと簡単に当てる事の出来る的であった。 「来ルゾ!!」 二本目のジャベリンが、ルイズの身体に風穴を開ける為に、放たれる。 冗談じゃない。こちとら、嫁入り前なのよ、 すでに地面に近かった為、レビテーションを切り、地面へと着地する。 そして、ありったけの魔力を込めた火球をもう一度、ジャベリンにぶち当てた。 ジュウウウウと言う耳に残る音と共に、結びつきを無くす氷達は、芯すら残さずに空気中へと拡散する。 そうして拡散した水蒸気は、霧雨のようにルイズとホワイトスネイクを取り囲む。 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」 そして、紡がれる詠唱。 その詠唱にルイズの頬が引きつった。 この呪文は、確か空気中の水蒸気を凍らして、氷の矢とする呪文……即ち――― 「チェックメイト」 タバサの無機質な声が、終わりを告げる。 ルイズの周囲を囲む水蒸気が、一瞬にして50を優に超す数の氷の矢に変質し、目標へと一斉に放たれた。 キュルケは走っていた。 いや、片足を引き摺り、動く度に口元から溢れ出る朱色ののものを拭う彼女は、予想以上に歩みが遅く、彼女は走っているつもりでも、他人から見ると歩くよりも遅く歩を進めていた。 顔は苦悶の表情しか表さず、動くだけで激痛を彼女が感じている事を物語っている。 だが、止まらない。 否、止まれない。 「すっごい……わがままなのよ……私はっ!」 紅い液体と共に吐かれた言葉は誰に向けたものなのか。 少なくとも、自身では無い。 キュルケは、基本的に良い奴と言う認識が、学園ではされている。 勿論、その明け透けな性格から恨みを買う事も多いが、友人間の間では広く信頼され、頼りにされている。 だが、キュルケ本人は自分の事を、すっごい我侭な奴と思っている。 自分は、自分のしたい事しかやっていない。 誰かを好きになったから、その人と愛を語り、誰かが困っているなら、自分が相談に乗りたいから相談に乗る。 元にあるのは全て、自分の意思。 これを、我侭と言わずなんと呼ぶのか。 キュルケは、くすりと微笑みと血を口元に張り付かせる。 今だってそうだ。 あれだけ拒絶され、殺されそうになるぐらいに恨まれている娘に自分は会いに行こうとしている。 あの娘らしく無い。 ただそれだけを戒め、そして出来ることであるならば、また共に歩きたいと思うが為。 言ってしまった言葉は戻らない。 やってしまった行動は覆らない。 「だから……どうしたって……言うのよ」 そんなことは知っている。 だから、どうした!? 覆らないのならば、戻らないのならば、償わなければならない! そうだ……向こうにそんな気が無くたって、私は、私は!! 「私は……あの娘の味方でありたい―――!!」 最後まで絶対に諦めない!! 周囲を囲む50を超す氷の矢に、ルイズの思考は一瞬停止する。 頭に浮かぶのは、氷の矢で串刺しになり、屍を晒す自分の姿。 それがあんまりにも、おぞましくて、ルイズはその運命に抗った。 「アァァァァアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!」 天を轟かさんばかりの咆哮と共に、ホワイトスネイクの腕と足が、ルイズを中心に四方八方へと繰り出される。 拳打と蹴打の結界。 限界を超えんとばかりに振るわれる四つの衝撃の前に、氷の矢は次々に塵芥へと還っていく。 その数―――10―――20―――30―――40―――44!! 44も守りぬけた事を褒めるべきなのか、それとも、完全に守りきれなかった事を貶めるべきなのか。 ホワイトスネイクの拳が44個目を砕いた時、続く45本目がルイズの右肩を貫いた。 「あぐっ!」 スタンドのダメージが本体に伝わるように、本体のダメージもまたスタンドへと伝わる。 ルイズの右肩のダメージにより、右腕を使用できなくなったホワイトスネイクの結界に綻びが生じる。 46、47本目を砕くが、48本目が今度は、ルイズの横っ腹を直撃した。 同時にホワイトスネイクにもダメージが伝わり、動きが一瞬停止してしまった。 後は、もうどうにもならなかった。 なんとか頭部へと覆い被さる事で、本体の頭へと矢が刺さる事を阻止したが、それ以外の場所には余す事無く矢が突き刺さる。 「――――――ッ!!」 もはや、声すら出なかった。 殺到する氷の矢は、強姦魔の如く、少女の身体を自らの身体を持って陵辱する。 穿った場所から滴る血は、氷の矢が纏う冷気により、瞬時に固まり、無用に血で彩るのを禁止する。 それは、一つの彫刻であった。 少女から生える、無骨な氷の長躯。 彩るは、鮮血の朱色と桃色の細糸。 黒のローブを地とするそれらは、見る者にある種の感動すら沸き上がらせるだろう。 まだ幼き少女を、その彫刻へと変えた蒼の少女は、自らが駆る竜から降り、地面へと降り立った。 蒼の少女は、竜に何事かを伝えると、竜は僅かに頷き、空へと消えていく。 それを確認してから、少女は右手に杖を握り締めながら、ゆっくりと口を開いた。 「復讐に我を忘れ、力に酔った貴方は……危険」 それは果たして、桃色の少女にだけに向けた言葉だったのか。 蒼色の少女が、桃色の少女を見る目は、まるで自分の末路を見るように、絶望に彩られている。 復讐の失敗者を処断する、復讐者。 その、あまりの憐れさに、蒼色の少女は絶望していた。 絶望していたが……油断はしていなかった。 彫刻と化した少女から漏れる僅かな呼吸音。 驚くべき事だが、あの少女は、全身を氷の矢で貫かれていながら、まだ生きているのだ。 おまけに、その絶え絶えな息は、規則的では無く、少女が今だ意識を保っている事をタバサに告げていた。 「このまま、貴方を生かしておく訳にはいかない」 もし、このまま彼女を生かしたままとすると、彼女は間違いなくタバサの前に立ち塞がるだろう。 自らを傷付けた、その代償を貰いに―――――― 今回は、辛くも勝利したタバサであるが、次がどうなるかは分からない。 いや、今回のような真っ向勝負になるのなら、まだ良いが、日常に、あの白い使い魔が牙を剥いて来たとしたら…… ルイズを生かしておく事に、メリットなど存在しなかった。 「完全なるとどめを……刺す……」 他の学生達と違い、ある事情から自国の厄介事を請け負っているタバサは、人を殺した経験も勿論あった。 初めてで無い事に躊躇いなど存在しない。 ただ、ルイズを殺したら、キュルケと、これまで通り友人してやっていけなくなるであろう事を考え、それだけが胸に僅かな痛みを抱かせた。 (…………ごめんなさい) 心の中で友人に謝罪し、詠唱を始めようとした時、ルイズの身体が小刻みに振動し始めた。 「――――――くっ―――くくっ―――クククッ―――ク――――」 笑いを必死に噛み殺しても、噛み殺しきれない笑いが喉を、身体を揺らしている。 その認識にタバサが至ったと同時に、杖を握っていた右腕に激痛が奔る。 焼き鏝を直接当てられたかのような痛みの原因は、地面から伸びる青銅の剣。 鉄よりも柔らかいが、肉を断つには、まったく問題無いそれが、タバサの右腕に突き刺さっているのだ。 咄嗟に呪文を放とうしたが、今度は槍が地面から生え、杖を弾き飛ばす。 「あは―――あはは―――アハハハハハハハハハハハハッ!!!」 そんなタバサを、ルイズが哂いを噛み殺すの止め、耳元まで裂かんばかりに口を開き、禍々しいまでの嘲笑を持って、見つめていた。 その顔に苦悶は無く、まるで痛みすら感じていないようである。 「不思議かしら? あんな串刺しにされながら、呪文の詠唱を終えていた事が? んっ?」 ルイズの言葉に、タバサは耳を貸さない。 確かに疑問はある。 あんな傷だらけの身体では、痛みによって詠唱の為の集中など出来ないであろうに、彼女は自分が降り立つまでに錬金の詠唱を終えていた。 それは、つまり、あの串刺しの最中から詠唱をしていた事に他ならない。 「私のホワイトスネイクは『記憶』をDISCとする。 そして抜かれたDISCの『記憶』を失う。 これはその応用なんだけど、『痛覚』を『記憶』DISCにして抜いた訳よ。 痛覚さえ無ければ、痛みで詠唱の集中を邪魔される事も無かったわけ」 耳を貸すな……あれは、優越から来る油断だ。 今、この状況を打開するには、この油断の最中しかない。 考えろ、考えろ、考えろ。 この状況を打開する手段を。 「正直、あんたがここまで頑張れるなんて思わなかった。でも、それもお仕舞い。 ホワイトスネイク! あいつのDISCを私の手に!!」 傷だらけの白い身体が、歩き始める。 ルイズの元から離れ、ゆっくりとタバサの方へと。 「怖がる事は無いわ。 あんたの場合は、『才能』も『記憶』も両方奪ってあげる。 苦痛なんて無い……だから安心して、眠りなさい」 謳うように諦めろと言うルイズにタバサは、僅かに口に動かす。 「――――――――――――」 「何? 何か言い残す事でもあるの?」 遺言ぐらいなら聞くわよ、と言うルイズに、タバサは確りと首を振り 「遺言では無い。もう十分と言った」 確りした口調でそう言った。 「もう十分? 何、もう十分戦いましたとでも言いたいの?」 「もう十分引き付けた。後は貴方の仕事」 タバサの言葉に答えたのは、風を切り裂くブレスの轟音であった。 「風竜!? そんな、今まで何処に!?」 ルイズは知る訳が無い。 頭上でブレスを吐いたその竜が、すでに絶滅されたとする風韻竜であり、その身を今まで先住魔法により、空と同化させていたなどと。 いや、知っていた所で、これからの結末を変える事など彼女には出来なかった。 「ぐっ、ぐぐぐぐっ―――!」 無理矢理に身体をブレスの着弾点から移動させようとするが、彼女の身体の足は、すでに足として機能できないまでに壊れている。 例え、痛覚が無くなっていたとしても、壊れているモノは動かない。 頼みの綱のホワイトスネイクも、タバサの近くへ行っている為に間に合わない。 「――――――――――――――――――あっ」 今まで立っていた事が奇蹟のルイズの身体は、無理矢理に動かした事により、 ゆっくりと地面へと倒れ落ちようとしていた。 このまま倒れ落ちたら、多分、死ぬ。 いや、倒れなくても、このままブレスの直撃を受けて…… そこまでルイズの思考が辿りつくと、その先は、もうゼロだった。 何も考えられない。 何も考えたくない。 無我の境地と言えば聞こえは良いが、それは、現実を拒否する者の至る所。 忘却の果てのゼロに至ったルイズは、ぽかんとした顔で自分を完膚無きまでに 破壊するブレスを見上げ――― 「ルイズ!!」 何処か懐かしい、赤髪の少女に突き飛ばされた。 「そうして……君は“此処”に辿りついたと言う訳か…… ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 何もかもを委ねたくなるような、壮言な響きにルイズは、顔を上げた。 そこには、柔らかそうなキングサイズのベッドに身体を横たえ、ワイングラスを片手に大きな本を読む半裸の男が居た。 何者だろうこの男? いや、それよりも、此処は一体? 「“此処”において名などあまり重要では無い そんなモノで分類できるものなど、存在しないのだからな。 まぁ、それ以上に、私にとって名前は、意味は無い。 所詮、今の私は、君のスタンドの『記憶』から作り出された残滓なのだからな」 人の考えを読むように、疑問に答えた男は、僅かにワイングラスを傾け、それを口元へと運ぶ。 「そして“此処”だが……“此処”は君の中だよ、ルイズ」 私の……中? 「正確には、君の中に居るホワイトスネイクの『記憶』と 君の中の『才能』により、復元された『世界』だ」 どういう意味? 私の才能? それに世界って…… 「本来、ホワイトスネイクは『記憶』を扱う能力しか無い。 だが、あるスタンドと融合する事で、人々を天国へと到達させる存在へと成る。 あぁ、そんな怪訝そうな顔をするな。天国と言っても精神的なものだ。 何も、全ての者を死に絶えさせる存在じゃあ無い。 特異点へと加速をし『ゼロ』へと至る、そのスタンドの名を 『メイド・イン・ヘヴン』と呼ぶ」 そこで、一拍置き、私の理解できない頭を余所に男は話を続ける。 つうか、さっきの質問の答えにまるでなって無いわよ。 「天国へと至る為に、最も必要なのは特異点へ『ゼロ』へと至る事だ。 何故ならば、時の加速は、『ゼロ』に対する引力によって行うからであり、その場所に至らなければ、天国を実現することなど夢のまた夢」 さっきから『ゼロ』『ゼロ』『ゼロ』腹が立つんだけど…… と言うか、あんた、一体何が言いたいの? 「済まなかったな。では簡潔に言うとしよう。 ルイズ、君にはすでに天国へと至る準備が整っている。 特異点であるはずの『ゼロ』を内包し、天国へと至った『記憶』を持つホワイトスネイクを従える君には、辿り付けるはずなのだよ。 我々が望んでやまなかった。全てが『覚悟』を元に、運用される、天国に……な」 言っている事が訳分からないし、まぁ、でも、なんというか…… あんた……私に何かやらせる気なの? 「私がやらせる訳では無い。 全ては引力により、動いている。 人が誰と出会い、誰と恋し、誰と殺しあうのか。 全ては引力により決定され、我々にそれを変える術は無い。 その術を持つのは、『始まりから終わり』を持っている君だ。 君だけは、どんな世界であろうと『運命』の束縛に縛られる事は無い。 故に、君が天国へと至るのであれば、それは君の意思によるモノだ。 なぁに、難しく考える事では無い。 残念だが、今の君ではまだホワイトスネイクすら完全な性能で扱えていない。 今は成長の時だよ、ルイズ。 友と競い、学びあい、談笑しろ。それが君の精神を高め、スタンドを強める鍵となる」 …………私に……そんな相手なんか…… 「果たしてそうかな? 忌み嫌う相手だとしても、少し見方を変えるだけで、違って見えてくる。 私もそうだった。見下し、忌み嫌っていた相手が、無くてはならない友であることに気が付いた。 今では、もはや彼と私は文字通り、一心同体だがね」 ………………………………………………………………………… 「さぁ、目覚めるが良いルイズ。 君にとって必要な友を助けるか助けないかは、君が判断すれば良い」 ……助ける? 私……誰を助け………… ――――――ルイズ!!―――――― …………キュルケッ!! なんで!? どうして、私なんか…… 貴方の才能を奪って『ゼロ』にしたのは、私なのに……どうして!? 「それが友と言うものだからだ…… さぁ、もう行くが良い。それと、このホワイトスネイクに残滓として残っている『世界』を君に預けよう。 どうせ、『記憶』に過ぎない私には扱う事など出来ないのだからな。 もう、僅かな力しか残っていないが、相応しい持ち手にDISCの選定者である君が渡してくれたまえ……」 男はそう言うと、私の頭に、自分の頭から取り出したDISCを挿し込む。 すると、ベッドしか無かった空間に靄が掛かり、少しずつ何もかもが消えていく。 そうして、全てが消えたと同時に、私の頭は、この出来事すら忘れて現実へと帰還していった。 「キュルケッ!!!」 ルイズは、自身を突き飛ばした赤髪の少女の名を叫ぶ。 自身を呼ぶ声に気付いたキュルケは、ルイズへ微笑み、最後に鮮血で真っ赤に染まっている口元を動かす。 ――――――ごめんなさい―――――― それが謝罪の言葉であると理解した瞬間、ルイズの頭を血が駆け巡る。 もうキュルケのすぐ傍まで迫ったブレスが、彼女を吹き飛ばすのに、後一秒も掛からない。 一秒……それで十分だ。 何が十分なのか良く分からないが、とにかく十分だとルイズは感じていた。 その感覚は、吐き気を催す程の不快さをルイズへと与えてくるが、それに耐え、ルイズは、自分の身体に宿る、ホワイトスネイク以外の何かを『発動』させた。 キュルケは死を『覚悟』していた。 無論、自分には、まだまだ先があり、これから先、もっと生きていたいと言う欲求は確かにあった。 しかし、その欲求は、目の前で今にもブレスでバラバラにされそうな少女を見殺しにしてまで叶えたい願いでは無かった。 穴だらけのルイズを突き飛ばし、自分もブレスの着弾点から離れようとしたが、 すでにホワイトスネイクに踏みつけられた事で負傷をしているのを、鞭を打って移動していたキュルケの身体は、最悪のタイミングで限界を迎えてしまった。 先程のルイズと同じように崩れ落ちる身体。 ふと、キュルケはルイズと目が合った。 色々と言いたい事はあったが、この一瞬で伝えられる事は限られている。 だからこそ、彼女は、心の底からの謝罪の言葉を口にした。 「ごめんなさい……」 残念ながら、満足に口が動かず発音は出来なかったが、なんとか伝わってくれただろうか。 そんな疑問を胸に抱きながら、キユルケは死を受け入れようと目を瞑り…… 凄まじい衝撃音を耳にした。 あぁ、自分は死んでしまった、とキュルケは感じた。 あの物凄い轟音は、ブレスが着弾した音で、自分はその着弾点の中心でその音を聞いている。 (死ぬ時ぐらいは、もっと静かに死にたかったと言うのに……耳を塞げば、聞こえなくなるかしらねぇ) ルイズを助けた事で、何も思い残す事は無くなったキュルケは、何時も通りのノリに戻り、他愛も無い考えをつらつらと考えていた。 (お迎えは、まだかしらねぇ……と言うか、あの世に良い男って居るのかしら?) まぁ、あの世なんだから、良い男ぐらい居るでしょ、と自分で自分の疑問に答えたキュルケは、なんというか、違和感を感じ始めていた。 死んだはずだと言うのに、なんというか、痛い。 ルイズの使い魔に、踏みつけられた背中と、たぶん中身のどれかが潰れた腹の中が、もの凄く痛い。 (何よ! 死んでも痛みって感じるなんて、ちょっと! どう言う事よ!?) そんな理不尽な文句を、誰とも言えぬ誰かに言っていたが、 何者かに身体を抱き起こされる感覚に、キュルケは閉じていた目を開く。 そこには、桃色の髪を血で紅く染め上げた少女が、泣きそうな顔で自分を見つめていた。 ―――ルイズ……なんで?――― 疑問を口にしたかったが、声が上手く出ない。 それでも、ルイズには伝わったのか、自分もボロボロな癖に身体を持ち上げ、なんとか立ち上がらせてくれる。 そうして、見えたきた光景にキュルケは目を丸くした。 自分のすぐ横、その地点が、滅茶苦茶に抉れている。 間違いなく、シルフィードのブレスによる痕跡である。 しかし……何故? キュルケは、自分は確かにあそこに居たはずなのに、何故、位置がズレているのか、 もの凄く疑問だったが、その事をルイズに訊ねる前に、自分の頭に何かが入ってくる感触が彼女を襲っていた。 その何かは、まるで最初から自分の頭の中にあったように、ピタリとハマり、キュルケの中にあった喪失感を、まるごと消去する。 「……返す」 素っ気無いルイズの言葉に、キュルケは、ようやく、この少女が自分を取り戻してくれたのを悟るのであった。 ホワイトスネイクは、最初、何が起こったのか理解していなかった。 ただ、上に居る竜の吐いた何かに本体が潰されるのを、赤髪の女が庇い――― その女が、まるで『時を止めた』かのように、着弾点から一瞬で移動していた。 (コレハ……ルイズ……君ガ?) ホワイトスネイクは、彼にしては珍しく混乱していた。 時を止める。 その力は、彼の知る限り、両方共、消失しているはずであった。 一つは、彼自身の手で葬り、もう一つは、彼自身が取り込んだ。 なのに……何故? 赤髪の女を助け起こし、才能のDISCを返却する本体に目もくれずに、ホワイトスネイクは、ルイズが先程まで立っていた場所を調べる。 すると、そこには、一枚のDISCが落ちていた。 DISCの表面には、屈強な肉体を持つ右半身が砕けた人型が見て取れる。 DISCに封じられし、スタンド名は『世界』 ホワイトスネイクが吸収し、内に取り込んだはずのスタンドであった。 第四話 戻る 第六話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/561.html
「……ズ………さい……ゥ~…」 寝ているルイズの頭に何か声が聞こえるが寝起きが壊滅的に悪いルイズだ。当然この程度では起きはしない。 「…イズ……なさい……フゥ~…」 今度はさっきよりも大きく、そしてはっきりと聞こえた。妙に重圧感のある声だったのでさすがのルイズも目を開ける。 「ルイズや…起きなさい…ブフゥ~~」 辺りを見回すが何も居ない。だが景色には見覚えはあった。生まれ故郷のラ・ヴァリエールの屋敷の中庭だ そして何故かベッドがそこにあった。 何故ベッド?とルイズが頭に「?」マークを浮かべていると突如 グォォォオオォォ という音と共にベッドに四肢と頭が生える。 ベッドが突然縦も横も巨大な男になったのである。正直言ってビビる。そりゃあジョルノだってビビる。 「……あんた…誰?」 恐る恐るサモン・サーヴァントをし平民を召喚した時のように目の前の男に問うがその返答は実に意外だったッ! 「ブフゥ~~…私はあなたの杖の精です…ブフ~~~」 「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」 そう叫び一目散に逃げる!自分の杖の正体がこんなのだったのだから半泣き、いやもうマジ泣きだ。 「ブふぅ~逃げないで、逃げないでっていうか引かないで。ブフ~~~ 今日は私…ブフゥ~~~爆発を起こしてもめげずに頑張るあなたを応援しにまいりました。ブフゥゥゥ~~」 さすがに応援という言葉にルイズも立ち止まる。 「さぁこの精霊様に何でも言ってみさないブフゥゥ~~っとね」 「そ、それじゃあ精霊様!一つだけ聞きたい事があります! わたくし…使い魔が問題を起こし続け酷い有様です…この先ずっと問題を起こす使い魔なのでしょうか?」 さっきまで思いっきりドン引きし逃げようとしていたのに現金なものだが、当の精霊様の返事は 「もぐ、もぐもぐ…まーねぇ。ブフゥ~~」 クラッカーを食べながらそう即答した。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 もうさっきよりもマジ泣きしながら逃げ回る。顔から色んな汁とか出しながら。 「ま、待ちなさいルイズ!…ブフゥ~今の無し、ノーカン!ノーカン!ブフゥゥゥ」 焦りつつも自分の指ごとクラッカーを食べる精霊様がマジ泣きして逃げるルイズが思わず足を止める言葉を吐き出す。 「ルイズ…ブフゥ~~よくお聞き。寝ている場合じゃあないのよ。ブフーーー 今、君たちにディ・モールトデンジャーが迫っているのだよ。ブふーー」 「……え?……ディ・モールトって何ですか?」 「ブフゥ~~…『非常に』ってこと」 「………デンジャーって?」 「『危険』なこと。ブフ~~~」 「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」 「寝ながら何喚いてんだ…ウルセーから起きろ」 目を開けると悪夢の元凶がそこに居た。 覗き込むようにして起こされたため思わず顔が赤くなる。 「……あんたが原因よ」 「そいつは悪かったな」 もちろん、クラッカーの歯クソほどにも悪いと思ってはいないのだが。 「…ってなんであんたがここにいるのよ?」 ドアには鍵が掛かっており鍵を持っているワルド以外入ってこれないはずだ。 「人がベランダで月見ながら酒飲んでるとこにアホみてーな叫びがしたから来てみればっつーわけだ」 よく見れば窓が開いている。つまりそこから入ったという事だ。 「不法侵入じゃない…ワルドに見つかったらどうするのよ!?」 「使い魔扱いしといて今更でもねーだろうが」 「…実際、使い魔なんだから仕方ないじゃない」 それに返事せずに部屋から見える普段とは違う一つになった月を見る。 「大きさは違うが…一つだけだとイタリアで見るヤツとあまり変わんねーもんだな」 もっともその心中は(ギアッチョがこれ見てりゃあ間違いなく『引力を無視してんじゃあねぇ!コケにしやがってッ!ボケがッ!』とブチキレてるだろうな)であるが ルイズの方はそれを別に受け取っていた。 「…イタリアって所に帰りたいと思ってるの?」 「…戻る手段がありゃあな。あっちではオレの残りの仲間が命を賭けて戦っている オレが生きてるのに戻らないってわけにもいかねーからな。だが、今のとこ戻る手段が無い以上オレの任務はオメーの護衛だ」 「……悪かったわよ」 「何がだ?」 「…わたしが『ゼロ』のせいで、そんな大事な事してる時にこっちに呼び出しちゃって」 一瞬訪れる気まずい沈黙。だがそれを打ち破ったのはプロシュートだ。 「言ったろーがよォーーーオメーに召喚されてなけりゃあオレも死んでたってな それにだ。オメーはまず『自信を持て』…『自信』を持っていいんだぜ!オメーの爆発をよォーー」 「…それって褒めてるのか貶してるのかどっちなのよ?」 「あの爆発をマトモに食らえば人一人軽く消し飛ばせるからな」 「ok貶してるって事ね?ちょっとそこに座りなさい。ご主人様を貶すって事は躾が必要なようだから」 どこからともなく鞭を取り出すが依然としてプロシュートは冷静だ。 「今のでキレるってギアッチョかオメーは、一体何歳だよ」 「16だけどそれが何か関係あるのかしら?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴという音とドス黒いオーラを噴出させているルイズだがプロシュートは別の事で飲みかけのワインを思いっきり咽ていた 「ガハッ!ガッ!ゴフッ!……マジかよ?精々12~14ぐれーだと思ってたが」 ボスの娘―トリッシュ(プロシュート達は名前を知らないが)ですら15である。あのルイズをそれより年下と思っているのは当然だッ! 「な、なななななんですってェーーーーーッ!そ、そそそそう言うあんたは何歳なのよォーーーーーッ!!」 「…22だ」 そう聞いて今度はルイズがぶっ飛ぶ番だった。 「OH MY GOD!28ぐらいだと思ってたのに人の事言えないじゃない!」 プロシュートの爆弾発現に思わずさっきまでの怒りがどこかに消し飛んだ。 「ウルセーな…そういやあのワルドってのはどうなんだ?」 「ワルドは…確か26のはずよ」 「お前……あの髭よりオレを上と思ってたってのはどういう事だよクソッ」 思わずギアッチョの口癖がうつったが気にしない。 「確か婚約者とか言ってたな」 「昔、わたしとワルドの父が交わしたのよ。確かに憧れてたけど十年前別れて以来会ってなかったから正直どうしていいのか分からない…」 (6と16って地球じゃあ犯罪だぜ?おい) さすがにこれは文化と価値観の違いなので口には出さないが若干引いている。 「……ワルドから結婚を申し込まれたんだけどどうしたらいいと思う?」 「…憧れてたんならすりゃあいいじゃあねーか。まぁオレに聞かねーと結論が出ねーようじゃあ止めといた方がいいな」 「自分でもよく分からないのよ…ずっと憧れてたのに…何かか心に引っかかる…」 「オレが言えるこたぁテメーで選んだ選択を後悔するような生半可な『覚悟』はすんなって事だ」 「…その覚悟っていうのがよく分からないから聞いてるんじゃない」 「言葉じゃなく心で理解するもんだから説明できるもんじゃあねぇ」 それを最後に言葉が途切れるがその沈黙も長くは続かない。 「チッ…!ナイフを土くれに変えたっていうから予想はしてたがな」 プロシュートの視線の先には月を遮るようにして巨大な物体がそこに存在していた。 月明かりをバックに写るは巨大な人型。さらによく見ればそれが岩で構成されている事が分かる。 そしてその巨大な質量の上に鎮座している長い髪の人物は―― 「オメーか『フーケ』。どうやって脱獄したか知らねーが…今回はババァになるだけじゃあ済まねーぜ?」 「感激だわ。覚えててくれたのね」 「心配するな、すぐに忘れるからよ。…ただしお前が『老化して』オレをだ」 「お、お礼をしにきてあげたのに、あ、あああいかわらずおっかないわね……」 その言葉に手を掴まれ己の体が急激に朽ち果てていくような感覚を思い出したのかフーケが怯む。 「白仮面とマントの男ってのがそいつか…随分と手の込んだ真似をしてくれるな」 フーケの横にその男が立っているが何も言わない。いや言わないが身振りで『やれ』と言っているようだった。 「それじゃあ、わたしからのお礼を受け取って頂戴!」 「土産なら必要ねぇッ!」 その言葉と同時にゴーレムの拳でベランダが粉砕されるがそれよりも早くプロシュートがルイズの腕を掴み部屋を離脱していく。 だが階段を降り一階に向かうがそこも戦場と化していた。 ワルド達が下で飲んでいたのだがそこに傭兵の一部隊に襲われたのだ。 ワルド、タバサ、キュルケが応戦しているが数があまりにも違いすぎ手に負えないでいる。 床と一体化している机の脚をヘシ折りそれを盾にしているが 傭兵たちは手練でメイジとの戦い方を心得ているらしく、緒戦の応酬で魔法の射程を見極め、その射程外から矢を射かけてくる。 傭兵側が暗闇を背にしているというのも不利な点だった。 「これじゃあジリ貧ね…!」 魔法を唱えようにも少しでも姿を見せればそこに矢が射掛けられる このまま行けば間違いなく精神力が途切れたところに突入され突撃されるのは自明の理だ。 「この前吐かせた連中もこいつらの仲間ってわけか」 そこに二階からプロシュートとルイズが降りてくる。身を隠そうともしないプロシュートに矢が飛んでくるが全てその手前で止まっている。 グレイトフル・デッドでガートしているのだ。そしてそのまま机の影に滑り込む。 「この様子だとラ・ロシェール中の傭兵が集結してるみたいだね」 入り口の先にはフーケのゴーレムの足も見え下手すればこのまま建物ごと潰される恐れがあり、それがプロシュートとタバサを除いて焦らせていた。 「いいか諸君。このような任務では、半数が目的地にたどり着けば成功とされる」 タバサが本を閉じ自分とキュルケを杖で指し「囮」と呟く そしてプロシュート、ルイズ、ワルドを指し「桟橋へ」と呟いた。 それに応えるかのようにしてワルドが裏口にまわるように促すが、プロシュートは動こうとはせず口を開いた。 「囮ってのは悪くねーが人選ミスだ。タバサとキュルケだけで支えきれるもんでもねぇ。…だがオレとタバサが居りゃあ5分でカタが付く」 「言ってくれるな…だが、君がそれでいいというのなら任せよう。裏口に回るぞ」 ルイズはあの時以来のアレを使うつもりだと思っていたが、そこにプロシュートが自分のために囮を買って出たという吊橋効果もいいとこな思考でキュルケが口を挟む。 「ダーリン…あたしのために…無事会えたらキスしてあげるから死なないでね」 「オメーのためでもねーし、その呼び方は止めろ」 三人が姿勢を低くし移動する。当然矢が飛んでくるがそれはタバサが風を使い防いでいた。 「どうして貴方が囮に?」 「確か二つ名が『雪風』だったな。氷を作れる事と、何より口が硬そうってのがある 対応策を知ってるヤツは少なければ少ないほど良いし合流するのに竜が使えるからな…」 「氷?」 「老化を抑える」 それだけ言い放ち広域老化を仕掛けようとするがそれをタバサに止められた 「あそこにも人がいる」 そう言って杖で指した方向には貴族とここの主人がカウンターの下で震えていた。主人に至っては腕に矢を食らっている。 氷が作られるのを確認すると無言で貴族の客と主人に氷を投げつけ、1~2発頭に当たったのか貴族が文句を言おうとするが 「死にたくなけりゃあ黙って持ってろ」 その、スゴ味の効いた声に全員が押し黙る。 そしてタバサが自分の氷を作ったのを確認すると己の分身の名を宣言するかのように叫んだ。 「ザ・グレイトフル・デッド!」 突入を仕掛けようとしていた傭兵達の動きが急激に鈍くなる。 クソ重い鎧を着込みこちらに矢を射掛けているのだ。当然――フルスピードでカッ飛ばした車のように『温まって』いる 「頭痛がする…吐き気もだ…この俺が気分が悪いだと…?疲労感で…立つことができないだと……!?」 それに呼応するかのように次々と自らの鎧の自重に耐え切れず崩れ落ちる傭兵達。 それを巨大ゴーレムの上で見ていたフーケだが正直気が気ではない。 「傭兵達が倒れていくって事はあの使い魔が残ったって事ね… それにしても、あんな魔法反則じゃあない…無駄に範囲が広いし射程に入ったら即あんな風になるわね…」 「分散させる事ができれば問題無い」 「あんたはそうでも、わたしはそうはいかないさね…あいつに掴まれた時の事は今でも夢で見るんだから…」 「……よし、俺はあいつを相手にする」 「…わ、わたしはどうすんのよ」 フーケが眼下の惨状に恐怖しつつ引きつりながら男に問う 「好きにしろ。逃げようとも前の勝手だ。合流は礼の酒場で」 男がゴーレムから飛び降りると倒れている傭兵を避けるかのようにして宿屋に入っていく。 「何考えてんだか…勝手な男だよ」 そう苦々しげに呟くフーケだが攻撃を仕掛けるか逃げるかまだ迷っているようだった。 だが、さすがに傭兵達の悲鳴が地の底から聞こえるようね呻き声に変わった時決断は決まった。 「………逃げるんだよォーーーーーッ!スモーーーーキィーーーーーーーッ!」 ゴーレムをジョセフ・ジョースターのように走らせその場を離脱した。 「…片付いたようだな」 酒場の中はスデに阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。 なにせ鎧姿の傭兵達が全て倒れ伏せ呻き声をあげている。 大半は生きているようだが体が温まっているのだ。寿命が尽きるのは目前だった。 だがそこに一人、仮面の男が乱入してきた。 (新手か…!?…老化してねーようだが氷でも持ったか?) 広域老化で老化してないのなら直しかない。即座にそう判断し接近戦を仕掛けるべくデルフリンガーを抜き距離を詰める。 「やっと…俺の時代が…長かった…冬が…」 白仮面の男が黒塗りの杖を握ろうとする。剣を振ったのでは間に合わない。そう判断し突進しつつ蹴りをブチ込み酒場の外に吹っ飛ばした。 「チッ…!さすがに杖は離さねーか」 吹っ飛ばされながらも杖はしっかり握っておりプロシュートに向き直り杖を構えている。 「兄貴ィ!魔法が来る!」 白仮面が呪文を唱えているがデルフリンガーに言われるまでもなく男との距離を詰めようと駆け出している。 右手に持ったデルフリンガーで斬りかかる。甲高い音が鳴り響き白仮面が杖でこれを止めている。 だがこれは陽動だ。人間見えているものに注意がいけばそれ以外の場所が疎かになる。 「…掴んだッ!」 プロシュートの左手が男の腕をガッシリと掴んでいる。直触りを仕掛けようとしているのだ。 手加減の必要など微塵も無い。スタンドパワー全開の直触り。白仮面の男は確実にミイラになるはずだった――― 「…何の真似だ?」 だが白仮面の男は老化した気配など微塵も見せずにそう答える。さすがのプロシュートもこれには動揺したッ! 「バカなッ!直触りを受けて『老化しない』だとッ!?」 「兄貴ィ!ヤベーぜッ!そいつから離れて構えてくれッ!」 だが、遅かった。離れた瞬間、白仮面の男周辺の空気が冷え空気が弾け閃光がプロシュートの体を貫いた。 「~~~っがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「兄貴ィィィィィィィイイイ!『ライトニング・クラウド』かよぉ!」 一瞬意識が飛びそうになるがそうなれば傭兵達の老化が解除される。それだけは避けようとし意識をギリギリのところで意地するが正直ヤバイ。 「たまげたな…今のを受けてまだ生きているか」 (左腕の感覚がねーな…おまけに直を受けて老化しないだと?話てるって事はゴーレムの類じゃあねーしどういうこった!?) 生物である以上グレイトフル・デッドの老化からは逃げられないはずだ。ましてこの男は魔法まで使っている。 いかに体を氷で冷やしていようとも直触りを受ければ確実に老化するはずなのだが、こいつは老化してない。それが珍しくプロシュートを焦らせていた。 白仮面の男が第二撃を仕掛けようと呪文を唱えようとする。だがそこに上空から風の塊が白仮面の男を襲い吹き飛ばした。 「早く乗って!」 タバサがシルフィードの上から『エア・ハンマー』を唱え白仮面の男を吹き飛ばしたのだ。 一瞬白仮面の男を見据えるが、すぐに考え直す。 (どういうわけか知らねーが直が効かない以上老化は役に立たない…か。腕もヤバイし時間稼ぎは達したな) そう判断しシルフィードに飛び乗る 「直が効かない理由は分からねーが…この借りは兆倍にして返すぞッ!」 その言葉と同時にシルフィードが上空に飛び立ったが事実上の敗北と言ってもよかった。 プロシュート兄貴 ― 左腕―第三度の火傷 スーツ損傷率17% ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3893.html
タイトル ゼロの軌跡 元ネタ 英雄伝説6 空の軌跡シリーズ (Falcom) 召喚されるキャラ レンとパテル=マテル ゼロの軌跡-01 第一話 天使の彷徨 ゼロの軌跡-02 第二話 虚無の扉 ゼロの軌跡-03 第三話 杖とオーブメント ゼロの軌跡-04 第四話 乙女の決意 ゼロの軌跡-05 第五話 お茶会への招待 ゼロの軌跡-06 第六話 貴族の道 ルイズの道 レンの道 ゼロの軌跡-07 第七話 狂ったお茶会 ゼロの軌跡-08 第八話 別れの舞踏 ゼロの軌跡-09 第九話 公爵令嬢のクエスト ゼロの軌跡-10 第十話 蝕、繋がる世界 ゼロの軌跡-11 第十一話 絆の在り処 ゼロの軌跡-12 第十二話 貴族と平民 ゼロの軌跡-13 第十三話 タルブ動乱 ゼロの軌跡-14 第十四話 銃火のマドリガル ゼロの軌跡-15 第十五話 トリステイン魔法学院 ゼロの軌跡-16 第十六話 タルブ村の死闘 前編 ゼロの軌跡-17 第十七話 タルブ村の死闘 後編 ゼロの軌跡-18 第十八話 希望の翼 ゼロの軌跡-19 最終話 ゼロの軌跡
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8188.html
「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~」よりポロンを召喚 ゼロの賢王 プロローグ ゼロの賢王 第01話 ゼロの賢王 第02話 ゼロの賢王 第03話 ゼロの賢王 第04話 ゼロの賢王 第05話 ゼロの賢王 第06話 ゼロの賢王 第07話 ゼロの賢王 第08話 ゼロの賢王 第09話 ゼロの賢王 第10話 ゼロの賢王 第11話 ゼロの賢王 第12話
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3641.html
「魔獣戦線(無印)」の真理阿を召喚。 第一部 『 魔獣 来たる 』 ゼロの魔獣-01 ゼロの魔獣-02 ゼロの魔獣-03 ゼロの魔獣-04 ゼロの魔獣-05 ゼロの魔獣-06 ゼロの魔獣-07 ゼロの魔獣-08 ゼロの魔獣-09 ゼロの魔獣-10 ゼロの魔獣-11 ゼロの魔獣-12 ゼロの魔獣-13 ゼロの魔獣-14 第二部 『 回天 -トリステイン拳獣士- 』 ゼロの魔獣-15 ゼロの魔獣-16 ゼロの魔獣-17 ゼロの魔獣-18 ゼロの魔獣-19 ゼロの魔獣-20 ゼロの魔獣-21 ゼロの魔獣-22 ゼロの魔獣-23 ゼロの魔獣-24 ゼロの魔獣-25 ゼロの魔獣-26 第三部 『 2nd Kiss 』 ゼロの魔獣-27 ゼロの魔獣-28 ゼロの魔獣-29 ゼロの魔獣-30 ゼロの魔獣-31 ゼロの魔獣-32 ゼロの魔獣-33 ゼロの魔獣-34 ゼロの魔獣-35 ゼロの魔獣-36 ゼロの魔獣-37 ゼロの魔獣-38 作品解説 魔獣戦線 石川賢 少年アクション75年9/8創刊号~76年9/20休刊号掲載 単行本全4巻(THE COMOLETE版は3巻 文庫版は2巻) 新人類の誕生を目指し暗躍する科学者『13使徒』と、彼らに母を殺され、その身を魔獣へと改造された少年・来留間慎一の 戦いを描いた、石川賢先生のバイオレンスアクションです。 物語の根底に存在する『神』の目覚め、魔獣同士のおぞましい死闘等、 後年先生自身が語っている通り、『デビルマン』の影響を強く受けた作品である一方、 『ガムシャラな狂気で行動する主人公』『生物の進化・無限の吸収能力』といった、 石川作品を語るに欠かせない諸々の要素が萌芽した初期の傑作です。 掲載誌の休刊に巻き込まれたため後半は展開が急変し、衝撃のラストを迎えています。 真説・魔獣戦線 石川賢 チャンピオンRED02年10月創刊号~04年8月号 単行本全4巻(コンビニ版は全2巻) 20年以上の歳月を超えて描かれた魔獣戦線の続編です。 超科学力で自然をコントロールし世界を牛耳る十三使徒と、永い眠りから覚めた魔獣・慎一の新たな死闘を描いています。 作風の大幅な変化に伴い、血みどろの伝奇アクション風だった前作に比べ、 ハリウッドアクション的なスピード感、破壊力を重視した描写が全面に押し出されています。 話の整合性なんぞ知ったことかと言わんばかりに、ダイナミックに暴走していく展開が素敵です。 余談ではありますが、石川宇宙最強と噂されるラスボス・時天空が登場するのはこの作品です。 本SSの時間軸は、無印と真説の中間、光の中に消えた慎一が富三郎に回収されるまでの空白の期間を舞台にしています。 尚、本SSでは後年復刻された『魔獣戦線 THE COMPLETE』の加筆部分も設定に組み込んでいます。 また、『ゲッターロボ』『虚無戦記』『極道兵器』など、他の石川作品の要素も、一部展開に取り込んでいる事をご了承ください。