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サブの中のサブコンテンツ 一部 コンテンツの多様化のため コンパクトに圧縮します。 サブコンテンツの中でもサブに分類されるものはここにまとめておくことします。 隊員のお遊び場その1 隊員のお遊び場その2 一言 スロット配信準備 声劇特設ページ まあこ用の過去の事件まとめ 四大癌 睡眠部wikiの解答 武装信者とは バックステージパス ★私的URL ポケモンBW攻略wiki ポケモンHGSS攻略 ポケモンPt攻略 ♂たけひこの館♂ 第5世代対戦考察まとめwiki 第4世代対戦考察まとめwiki すおうの秘密のあそこ
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絶対に起こらないはずの鳴き声が広場に響いた 「キョオオ―――z______ン!!!」 「何ぃ!?!」 慌てて振り向くとそこには不敵な顔でこちらを見るペットショップの姿が。 よく見ると何処にも傷らしい傷は無い、ワルキューレに痛く殴られ、ギーシュの魔法が直撃したはずなのに無傷である。 どうやって防いだのか?疑問だらけのギーシュの目にキラリと光る物が映った。 「それは氷か!?それでワルキューレと僕の攻撃を防いだのか!?」 疑問に対する解を見つけたギーシュ。だが、彼はそれでも信じられなかった。 (あの一瞬で!ワルキューレの拳や『石礫』が当たる寸前に!攻撃を防げるだけの氷を張ったと言うのか!?) 荒唐無稽すぎる事実に脳の処理が追い着かず。一時的に錯乱。 遠目からでもはっきり分かる程うろたえているギーシュに、ペットショップは何も言わない――――いや。 ギーシュは見た!そして更に狂気の渦に引き込まれる事となった。 (わ、笑ってる!?) ギーシュの目にはペットショップの嘴が歪んで、笑みの形を作ったように見えた 獲物をどれだけ残酷にいたぶる事だけを考えてるかのような禍禍しい笑み。 今のペットショップに比べれば、どんな魔獣を見ても可愛いと思えるだろう。 「ワルキューレェェェェ!!!!」 完全に余裕が無くなったギーシュは全てのワルキューレに槍や剣などの武器を持たせて突撃させる。 ギーシュ自身は杖を掲げて石礫を放つ準備を整える。 「来るなら来い!!!」 恐怖を静め勇気を鼓舞するために叫ぶギーシュ。痩せても枯れても武門で知られるグラモン家の一員だけはある。 ワルキューレの集団がペットショップに殺到する様を、ギーシュは血走った目で見つめていた。 私は青銅の騎士の行動を注意深く観察するべく地面に立ったまま動かなかった。まあ、腹が空いてたから動きたくないのもあったが そして理解した。あの男はマスターの盾となる下僕の基準を満たしている事を。 攻撃力・・・・・合格レベル。急造とは言えども、私の氷の盾を素手で砕くとは中々だ。 防御力・・・・・これも合格。間接部は脆いだろうが、手加減したと言えどもまともにぶち当たっても少々凹んだだけなのには驚いた。 問題は素早さ・・・・・あまりにも遅すぎる。しかし、これは数を増やせば解消できる問題だろう。 一番重要な所だが、命を持たぬ人形故に、術者の命令には絶対服従する点。 それに、あの男自身もある程度の戦闘能力を持っているのが良い。 「来るなら来い!!!」 下僕となるべき男が何かを言っている。 あの青銅の女騎士全てが私に向かって突撃してくる、どうやら本気になったようだな 私もマスターの事が心配だ、蹴りをつけて早く帰らないと。 ―――――終わらせるとしようか 「キョオオ―――z______!!!」 私は一鳴きすると、手近な一体の人形に向かって突進した。 「キョオオ―――z______!!!」 ゴガッ! ペットショップが動いたと同時に、一体のワルキューレが空中に飛んだ。 観客の生徒達の目には不可解な現象として映っただろう、が。 極限まで集中しているギーシュの目には真実が映った! (体当たりでワルキューレを跳ね上げた!?そんなバカな!) 子供にも劣るような図体をしながら!体当たりだけで!青銅で構成された人間大の人形を上空にカチ上げる!常識を超越した行動。 だが、それは圧倒的な暴虐への序章に過ぎない、ペットショップの周りに突如冷気が集まり―――――氷の弾丸が発射された! それは朝、ルイズの部屋の前でキュルケとタバサにやった事を彷彿させる。だが、量と速度と強度が桁違いすぎる! 氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱!!!! マシンガンの掃射を超える勢いで発射されるそれは、もはや番鳥の猛攻と言うべき恐るべき行為!! ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッッッッ!!!!!!!! 空中に吹っ飛ばされて、回避も防御も間々ならないワルキューレは全弾をまともにくらう! 一瞬で青銅の女騎士が部品となり!破片となり!塵となる! 「!?」 絶句するギーシュ、あまりに非常識な出来事に頭が真っ白!一時的に心神喪失状態になる。 だがそれは致命的な隙! 「グガガガガガガ!!」 鳴き声を聞いて我を取り戻した時には遅かった。 目の前には何時の間にか至近距離まで接近していたペットショップの姿! 「うわぁっ!!!」 慌てて杖を振ろうとするギーシュ!だが!それよりも先にペットショップは! 足を!ギーシュの! 目の中に…………突っ込んだ! ----
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「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 生え際の後退著しい中年教師が意を決したように言う。 その教師――名はコルベールといった。 コルベールはここ、トリステイン魔法学校にて2年生が行う中では最重要とも言える行事である召喚の儀式の監督を務めていた。 そしてその結果は満足に値するものであった。 上位陣にはそれはもう美しい風竜を召喚したタバサ、火山竜脈のサラマンダーを召喚したキュルケがいたし、 それ以外の生徒達も十二分に成功といえる内容の召喚を行っていた。 これから儀式を行う、一人の女生徒を除いては。 彼女は別にヤサグレてる訳でもなかったし成績が悪かったわけでもない。 他の生徒とのコミュニケーションも十分に取れている。 しかしただ一つ。 本当にただ一つだが彼女には欠点があった。 そしてその欠点こそがコルベールを不安にさせていた。 が、そんなコルベールの心配をよそに―― 「はいッ!」 その生徒――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは威勢のいい返事をした。 といっても別に彼女自身がこの儀式に対して特別に自信を持ってたわけではない。 むしろその心中では、 (大丈夫よ大丈夫よ大丈夫よ! 使い魔の召喚の儀式なのよ? いくら私が『ゼロ』だなんてバカにされてても…これが成功しないハズはないわッ! だから自信を持つのよイズッ!!) 全力で自分に暗示をかけていた。 そしてそれに反映されるように既に召喚を終えた生徒たちは、 「なあ…成功すると思うか?」 「いやいくら『ゼロ』でも召喚の儀式ぐらいは…」 「でもあの『ゼロ』だぜ?」 「だよなあ…失敗するかもだよなぁ~~」 どうにもルイズの成功を期待していない。 そんな周囲のヒソヒソ声と、「ルイズが成功するわけが無いでしょう。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」みたいな態度の生徒たちをを横目に見て、 ルイズはいつものようにカチンときた。 同時にさっきまでの不安もそのムカツキで吹っ飛んだ。 (ふん! 見てなさいよあんたたちッ! 私があんた達の使い魔よりもずっとカッコよくてずっと強い使い魔を召喚してやるんだからッ!) そして詠唱する。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに答えなさいッ!!」 気合十分の詠唱ッ! 手ごたえは十分ッ! (やったッ! 成功す――) ルイズがそう確信した瞬間―― ドッグォォォォォオオオオオオオオン!!! 盛大な爆発が巻き起こったッ! その規模は場所が場所なら「今ノハ人間ジャネェ~~~」なんて声が聞こえてきそうなレベルッ! 同時に爆心に近かったルイズは体重の軽さも相まって勢いよく後ろに吹っ飛ばされるッ! そして2度3度後転を繰り返した後、ルイズはべちゃっと地面にキスするハメになった。 「オホッオホンッオホン!」 「ゲホッゴホッ! クソッまたやったな『ゼロ』!」 「使い魔の召喚にさえ…ゲボッ! 失敗するなんて君も筋金入りだなッ!」 周囲から聞こえてくる罵倒をうつぶせの姿勢のまま聞き――ルイズは泣きたくなった。 (なんで…どうして『成功』しないのよぉ~~~~~~~~~!) 目にはじんわりと涙が浮かび始めたが、必死でそれをこらえる。 たとえ「ゼロ」と呼ばれてしまうようなメイジだったとしてもルイズは由緒正しきヴァリエール家の3女である。 そのプライドが彼女をギリギリのところで支えたのだ。 だがルイズがそんな衝動と戦っている頃―― 「お…おい!煙の中に何かいるぞ!」 「ホントだ! でもあのシルエットは…」 「サルにしちゃあ背が高すぎるし…」 「人間にしたってあれはデカすぎる!2メイルくらいはあるんじゃないか?」 「じゃあ亜人? オーク鬼か何かってことか?」 「おい! 煙が晴れるぞ!」 周囲の会話にようやく気づき、そして周囲に気づかれないようにこっそり涙をぬぐったルイズの目に映ったのは―― 実に奇妙ないでたちの人間、いや亜人だった。 贅肉の一切見当たらない筋肉質の身体には文字のようなものがびっしり彫りこまれており、 頭には奇妙な形の頭巾、そしてその身に纏うのはいずれも紫がかった黒色の襟巻きと短パン、リストバンドにブーツのみで、 しかも襟巻きと短パンの二つが体の正中線で帯のようにつながっている。 民族衣装だとかその類だとしても、かなりきわどい、いや、むしろ変態的な格好だ。 しかもよく見てみれば、耳も鼻もこの亜人には無い。 削がれたような傷が無いあたり、生まれつきそれらを持っていないとでも言うのだろうか? (なに…何なのコイツ? こんな亜人、あたし図鑑でも見たことなんて…) そんなことを考えていると、突然件の亜人が文字通り「飛ぶようにして」ルイズの前に移動した。 その速度はドヒュウゥン! と空気を切るほどッ! 「きゃあ!」 思わず悲鳴を上げるルイズ。 周囲も唖然としている。 だが亜人はそんなことは気にもかけないという様子でルイズに話しかけたッ! 「オ嬢サンニ聞キタイ事ガアル」 何だかカタコトだが、そんなことを気にしている余裕はルイズにはない。 「な、なななな、何よッ! そもそもあんた、何者なのよッ!名前と種族を言いなさいッ!」 「質問ニ対シテ質問で答エルノハ無礼ニ相当スルノダガ…マアイイダロウ」 「私ハホワイトスネイク。種族ハ…ソウダナ。トリアエズ人間デハナイ事ハ確実ダ」 その答えにルイズの顔がぱあっと明るくなった。 そして周囲はどよめき始める。 「人間じゃないって事は…」 「『ゼロ』が召喚に成功したッ!?」 「信じらんねぇーーーーーーーーーーーッ!!」 「ウソだろ承太郎!」 「これは『現実』だッ!」 周囲がいろいろ言ってるが、今のルイズにはそんなたわごとは届きようも無い。 何故なら、何故なら今の彼女はッ! (やったわ! あたしが召喚したこいつが人間じゃあないってことは…あたしが使い魔の召喚に成功したということッ! やったわッ! あたしはやったのよッ!!) 「最高にハイ」ってヤツだったからだッ!! だがそんなルイズの心中をカケラも察することなく、亜人――ホワイトスネイクは再びルイズに話しかけた。 「サテ、私ガ君ノ質問ニ答エタノダカラ…今度ハコッチノ質問ヲ聞イテモライタイトコロダナ」 「あっ…そ、そうだったわね! さあ何? 何が聞きたいの? 何でも答えてあげるわッ!」 すっかりご機嫌&有頂天なルイズはお安い御用とばかりに言う。 「ココハドコダ?」 「ここはトリステイン魔法学校。あんたはあたしに召喚されてあたしの使い魔になったのよ」 「トリステイン魔法学校? ソレニ使イ魔ダト? 使イ魔トハ一体ナンダ?」 「メイジの目となり耳となって、メイジに忠誠を誓うもののことよ」 「メイジトハナンダ?」 「…は?」 いくらか問答を続けるうちに、とんでもない質問が飛び出した。 メイジとは何だ、だって? トリステイン魔法学校を知らないのは置いておくにしても、いくら未開の地の亜人だってメイジの存在ぐらいは知ってるはずだろう。 (あ…ひょっとしてこいつの一族ではメイジのことを別の呼び方でいうのかしら? うん、そうだわ。そうに違いないわッ!) ルイズは適当に脳内解釈を済ませるとホワイトスネイクとの質疑応答に戻る。 「メイジってのはね、簡単に言えば魔法を使える者のことを言うのよ」 「魔法…ダト?」 「………」 ここまでくると流石に脳内解釈はキツイ。 いやそもそも物を考えられる生物の中で、魔法を知らない者がこの世界にいるだろうか? コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい確実に、いないだろう。 「そもそもあんた…一体どこから来たのよ?」 「アメリカノフロリダ、ト言ウ所ダ」 「ふろりだ? どこのド田舎よ?」 「………」 今度はホワイトスネイクが沈黙する番だった。 「水族館」でエンリコ・プッチ神父とともにエンポリオに敗北したホワイトスネイク――もっともその時はメイド・イン・ヘブンだったが、 彼は本体のプッチ神父の死とともに消滅する間際、光る鏡のようなものに吸い込まれたのだ。 そして意識が戻ってみればこれだ。 周りは10代後半あたりであろうあどけない面を並べた小僧と小娘がお揃いの黒マントでズラリと囲んでおり、 その輪の中にはこれまた黒マントを着たピンクの髪の小娘がちょっぴり泥に汚れた顔でこっちを見ている。 しかもどういうわけか周囲の生徒も目の前の少女も自分の姿が見えているらしい。 ということは・・・こいつら全員がスタンド使いなのだろうか? 何故自分はいきなりこんなところにいるのか、とか何故本体であるプッチ神父を失った自分が存在し続けていられるのか、とか、 疑問はオキシドールと過酸化マンガンの反応から生成される酸素のようにムクムクと沸きあがってきていたが、 ホワイトスネイクはそれらの疑問をとりあえず置いておくことにした。 そして自分から一番近い小娘に話を聞いてみる。 するとその幼女は、トリステインだのメイジだのとホワイトスネイクが知りもしないような、 いやホワイトスネイクでなくても知らないような単語を当たり前のようにずらずらと並べて話をするではないか。 これには流石のホワイトスネイクも、 (マサカ我ガ主人トDIOガ目指シテイタ『新世界』トハコレノコトダッタノカ? 二人トモ私ニ内緒デ、随分ト変ワッタ趣味ヲ共有シテイタノダナ) などとまったく見当違いな事を考えざるを得なかった。 こうしてルイズとホワイトスネイクの間に気まずい空気が流れたところで、ようやくコルベールは我にかえった。 コルベール自身ホワイトスネイクのような使い魔を見るのは初めてだったし――ホワイトスネイクのド変態な格好をしていたのもあるが、 少しの間呆気に取られていたのだ。 コルベールは「オホン、ン」と軽く咳払いをすると、 「ミス・ヴァリエール。まだ使い魔との契約が終わっておりませんよ」 と言うと、ルイズもさっきのコルベールと同じようにハッと我に返り、 「ホワイトスネイク…だったわよね? あんたの名前」 「ソウダ」 「ちょっと屈みなさい?」 「何故ダ?」 「いいから屈みなさいよ。あんたの背が高すぎて届かないんだから」 ホワイトスネイクには何の事だかサッパリ分からなかったが、とりあえず言う通りにする。 ルイズはホワイトスネイクの頭が自分の身長と同じくらいにまで下がったのを確認すると、儀式に入った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・」 「待ってください、ミス・ヴァリエール!」 「え?」 突然コルベールがルイズの詠唱を遮った。 「…あなたはまだ使い魔との契約を済ませていない そうですね?」 当たり前のことを聞くコルベール。 「いきなり何を言い出すんだこのハゲは」とルイズは思ったが口には出さず、 「…はい。そうですけど」 当たり障りのない返答をした。 「そうでしょうね。私もあなたがこの使い魔を召喚してから、契約するところを見ていません。しかし…」 そこでコルベールは言葉を切ると、つかつかとホワイトスネイクのほうへ歩み寄る。 そしてホワイトスネイクの左手を取ると―― 「既に使い魔のルーンが現れているのです。この左手の甲に」 バァ―――――z______ン 「ウソ…」 その左手の甲に文字が浮かび上がっていた。 つまりルイズとホワイトスネイクとの契約は既に完了していたのだ。 こんなケースは召喚した本人であるルイズはおろか、教師であるコルベールにとっても見たことも聞いたことも無い怪奇であった。 そして二人ともそのことに沈黙している。 だが―― 「何ダ? コレハ…」 ホワイトスネイクはやはり空気を読まずに、自分の左手の甲にいつの間にか浮かび上がった奇妙な文字に興味を向けていた。 「と…とりあえず、この件は私が調べておきます。ではみなさん、今日はここまでです! 解散ッ!!」 と言って逃げるように、召喚の儀式のひとまずの終了を宣言する。 周囲の生徒達はなにやら状況が理解できていないようだったが、儀式が終了したことは理解したらしい。 そして次の瞬間、彼らはが突然ふわりと空中に浮かび上がったッ! さらにそのまま中世ヨーロッパの城のような建物へと飛ぶようにして移動し始める。 思わず目をむくホワイトスネイク。 しかしスタンドのヴィジョンが見えない以上スタンドに運んでもらっているわけではないようだ。 (確カコイツラハ『メイジ』トカイッタナ。 メイジトヤラハスタンド使イデ無クテモスタンドガ見エルモンナノカ? ソレニ…スタンド使イデナイノナラ…アイツラハ本当ニ魔法ッテヤツデ浮カンデルノカ?) などとホワイトスネイクが考えているとルイズから声がかかった。 「ほら、なにボケッとしてんのよ。あたしたちも行くわよ」 「君ハアノ空中ニ浮カベル力ヲ使ワナイノカ?」 当然ホワイトスネイクにとっては何気なく言った言葉である。 だがルイズはその言葉に一瞬顔を曇らせると、 「せ、精神力がもったいないから、使わないだけよ! 大体歩いていけば済むことなんだから、そんなことに魔法を使うなんてナンセンスよ!」 言葉の節々に何か言い訳じみたものを漂わせながらそう答えた。 そして逃げるように早足で、先ほどの建物の方へ行ってしまった。 「ヤレヤレ、ダナ」 そう呟き、ルイズの後を追おうとしたところで、ホワイトスネイクはあることに気づいた。 「コレハ…私ノ本体ガアノ小娘ニナッテイルノカ? トナルト…ソウカ、『契約』トハソウイウ事ダッタノカ」 そんなことを一人で勝手に納得しながら、ホワイトスネイクはルイズの後を追った。 To Be Continued...
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「わ…ワケわかんないこと言わないでよ! しかも『誰だ?』って また質問で返してるじゃないの!」 目の前の少女が怒っている。確かに、ワケがわからない。自分でも、そう思う。 混乱してるのかもしれない。冷静に考えてみよう。 ダメだ。何も思い出せない。 何もすることがないし、わからないので、ボーっと少女の行動を見ていた。 頭頂部の寂しい男となにやら言い争って、こっちに戻ってきた。なんだか顔が赤い。 「感謝しなさいよね、貴族にこんなことされるなんて、普通一生ないのよ!?」 どんなことしてくれるって言うんだ? そして何かごちゃごちゃしゃべりだした。 『我が名はルイズ……』だとか言っている。この子の名はルイズというのか。 少女、ルイズが手を動かしている。しゃがんで、と言いたいのだろうか。 多分そういうことだろうと推察し、しゃがんでやる。 キスをされた。唇が柔らかい。一瞬だけの口付けの後、ルイズは俺から離れた。 「ぐおっ!?」 突然、左手に猛烈な痛みが走る。 「心配しなくても、すぐに痛みは引くわ」 本当だ、もう痛くない。 気付いたらさっきの男が傍にいた。俺の左手を見ている。 「ふ~む、珍しいルーンだね」 その男は『る~ん』とやらから目を離して、俺の頭をちらちら見ている。 帽子がほしいんだろうか? それからその男が浮いた。名残惜しそうに帽子を見ている。 「すごいな……」 オレは思ったままを口に出した。 周りの奴らも、ルイズ以外が全員浮いた。人間って浮けたのか。 「なに? 魔法がそんなに珍しいわけ?」 「まほう?」 「魔法見たこともないわけ? こりゃ飛んだ田舎モン召喚しちゃったわ。飛んでないけど」 なんだ、魔法だったのか。人間って、魔法が使えたのか。 俺も飛んでみよう。 ダメだ、飛べない。 「どうやって飛ぶんだ?」 「聞いてなかったの? 魔法よ。でも平民のアンタにゃ一生無理ね」 へいみん? 平民ってどういうことだろう。 「飛べないのはお前も一緒だろ~? 『ゼロ』のルイズなんだからな!」 「飛べない同士、歩いて帰ってくるんだな!」 そんなことを言って、上の奴らは飛んでいってしまった。 「ほら、ボーっとしてないで、ついて来なさい!」 ルイズが俺を呼んでいる。特にすることはない。ついていくことにする。 原っぱの中をふたりで歩いていく。 ルイズは飛ぼうとしない。ひょっとして、オレが飛べないからだろうか。 ルイズは前を歩きながら平民がどうの召喚がどうのと呟いている。 「大体アタシ、ファーストキスだったのよォ~~!?」 「ルイズ」 「へ!?」 突然名前を呼ばれて驚いたようだ。立ち止まってこちらを振り返っている。 「いい天気だな…」 空を見上げる。ルイズも空を見る。 「…ええ…そうね………」 素敵な青空だった。
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目の前の超異常事態に多少放心気味のルイズであったが男がこちらに近付いてくる事に気付き我を取り戻す。 「これは・・・アンタがやった事なの!?」 だがプロシュートは何も答えずルイズにさらに近付く。 「ちょっと・・・ご主人様が聞いてるんだから答えなさいよ!」 「テメー・・・一体何モンだ?オレに何をした?」 「平民が貴族に向かってそんな口の利き方していいと思ってるの!?」 「2秒以内に答えろ……オレに何をした?」 「質問に答えなさい!」 ルイズが怒鳴り散らすがプロシュートは全く動じない。 「ウーノ!(1)」 「ひ、人の話を聞きな――」 「ドゥーエ!(2)」 ルイズは魔法成功率0とはいえメイジ…つまり貴族だ。 平民という存在より圧倒的に上の立場にいると言ってもいい。 だが組織の暗殺チームの一員とし幾つもの死線を潜り抜けてきたプロシュートから見れば「良いとこのボンボン」つまり「マンモーニ」にしか見えない。 そして、その百戦錬磨の暗殺者としてのプロシュートの「スゴ味」が自然とルイズに質問の答えを答えさせていたッ! 「……アンタを召喚したのよ」 「召喚だと…?」 「そうよ、本当ならアンタみたいな平民なんかじゃなく 皆が召喚したようなドラゴンとかを使い魔にするはずだったんだけど何処を間違ったかアンタが召喚されたってわけ」 「その左手のルーンがアンタが私の使い魔になったって印よ」 「左手…さっきの左手の痛みはそれの事か」 だがプロシュートがある違和感に気付く。 (待て…さっきの左手の痛みはいい、それは納得できる…) (だがオレはその左手を何で押さえたッ!?) プロシュートがその答えを得るべく疑問の先へ視線を向ける。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「何ィーーーーーーーーーーッ!!」 「ちょっと…そんなに大声出さなくてもいいじゃない。それに貴族にキス……って何言わせんのよ!」 使い魔の儀式のアレを思い出しルイズが顔を真っ赤にさせるがプロシュートにとっても問題は左手ではなかった。 そう、左手にあるルーンなどどうでもいい。問題は「左手」ではなく「右手」だった。 (バカなッ!?ブチャラティのスティッキィ・フィンガースに切断されたはずの右手がなぜ『付いて』いるッ!?) 「まったく…弟分がお前を引っ張ったその『糸』に救われたぜ」 記憶に映るのはあのフィレンツェ超特急でのブチャラティとの闘い。 「バカなッ!! ブチャラティィイッ!」 (オレの右手はペッシのビーチ・ボーイの糸を殴ったブチャラティの攻撃で確かに『切断』されたはずだッ!) そこまでだ。プロシュートにはそこまでの記憶しかない。いくら記憶を探ってもそれは同じ事だった。 だが地面に激突する瞬間何かの光に包まれたような気がする。 思考を中断し視線をルイズに戻す。 「……テメーの言ってる事はどうやらマジのようだな」 「理解できた?じゃあ早くこの老化を解いてちょうだい」 「断る」 「アンタ…平民、それも使い魔が貴族に逆らえると思ってるの?」 「平民か貴族なんてのはオレたちにとってはどうでもいい、何より使い魔ってのが気に入らねぇ」 「貴族を敵に回してここで生きていけると思ってるの…!?」 「それに使い魔って言っても奴隷とかそういうのじゃなくて主人を守り忠誠を誓うある意味平民にとっては名誉なものよ?」 ルイズが使い魔の事について説明を始める。 が、当のプロシュートは殆ど話を聞いていない。 プロシュートが再び思考を巡らす。だがそれは使い魔になるかならないかという単純なものではなかった。 (どうするか…) 思考の末プロシュートは三つの選択肢を作り出す。 (一つはこいつを殺しここから離脱する事だが…これは駄目だな。 もしこいつの言うとおりここが全く違う世界なら地理が分からねぇしどういうわけか言葉は分かるようだが文字が分からないってのが致命的だ) (二つはこいつを人質にしここから離脱する…これも却下だ。 チビとは言え人一人を無理矢理担いで移動するのは限界があるし何より目立ちすぎる。) (三つは使い魔とやらになったふりをし情報を集める…今の状況下ではこれが最善か…? 殺す事は何時でもできるしやはり何より今は情報が欲しい。それにこいつ…メイジとか言ったがスタンド使いではないようだな。) (スデにグレイトフル・デッドで殴りかかってみたが動揺一つせず汗すらもかきやしねぇ) 自身の状況を正確に把握し最善の策を見出す。それが暗殺者としてプロシュートが生き抜く為に身に付けた事だ。これは当然他のヤツらも持っている。(ペッシ以外だがな) プロシュートのかなり物騒とも言える思考を知らずにルイズが「早くルイズ様の使い魔になるって言いなさい」という視線を送ってくる。 「……大体の状況は理解した」 「そう、それじゃあ早く皆を元に戻してちょうだい!」 「使い魔とやらになってはやる、だが…オレを他の連中と同じと思わねぇ事だなッ!」 ズキュン! グレイトフル・デッドの能力が解除され倒れていた生徒達の老化が解除されしばらくしてコルベールが起き上がる。 「うう……一体何があったのだね?ミス・ヴァリエール。」 「もう大丈夫ですミスタ・コルベール」 「そうか……他の生徒達も大丈夫なようだね、各自教室に戻りなさい。」 生徒達が多少ふらつきながら戻っていく。だがプロシュートは空を見据えたまま動かない。 「ほら、早く戻るわよ!」 (ペッシ…メローネ…ギアッチョ…リゾット…すまねぇな、ボスを倒すと誓ったはずなのにしばらくそっちに戻れそうにねぇ) プロシュートにとって昨日まで一緒に居た仲間が急に遠くに感じられたが、今は状況を少しでも良くする為に前に突き進むしかなかった。 予断だがコルベールのU字ハゲが進行した事は言うまでもない。 戻る< 目次 続く
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食堂に着いた私は驚愕した。 (マスターが居ない!?) あの眠りの深さから見ても後一時間は起きないと予想していたが。 マスターの姿は何処にも無く、辺りには爆発の後だけがある。敵に襲われたのだろうか!? 下僕を調達するためとは言え、マスターから目を離した私の許されないミスだ。 自分で自分を殺したくなったが、すぐさまマスターの捜索を開始しようとする。 「あ!ペットショップさん!」 声が私を呼び止めた。 振り向くと、私に何故か感謝の言葉を述べたメイド服の女の姿が見える。 マスターの安否が気になる私はそれを無視して食堂から飛び去ろうとするが。 「ま、待ってください!」 慌てたように呼び止めて来た。何の用だ? ・・・・・・もしかしたらマスターの事で何か知っているのか! 私は期待を込めた視線をメイド服に向ける。 「ミス・ヴァリエールから食事抜きにされたと聞きまして、残り物ですがこれをどうぞ」 メイド服は盆に乗っている肉を差し出した。 そんな女に私は失望を止められなかった、確かに腹は空いている。 だが、そんなくだらない事で私の邪魔をするとはッ! 冷たい殺意を持って、メイド服を血祭りに上げようとしかけた寸前 「ルイズなら部屋に戻ってる」 本を読んでいる青髪眼鏡の女がそう告げる。 それが真実か考えるより先に、私は確かめるべく食堂を飛び出しマスターの部屋に飛んで行った。 何時の間にか直っているドアを足で開け、慌てて部屋に飛び込む。 居た!ベッドの上で横になっている。 「うーーーーん・・・・・・zzzz」 マスターの寝息が聞こえる、どうやら眠っているようだ。 私は安心してほっと一息つくと、部屋の外に出てドアの前に立つ。 「はぁはぁ・・・・・・ま、待ってくださいよ~ペットショップさん」 視線を向けると傍で息を切らせているメイド服が見える。 五月蝿い、マスターの睡眠を邪魔するな。やはり始末するべきか。 と、そこで疑問に思った。何故、あの女は私の名前を知っているのだ? 「私が教えた」 そのメイド服の横から、ひょっこり現れた青髪眼鏡が又してもそう告げ、何処かに歩いて行った。 ・・・・・・あの青髪眼鏡は私の考えが読めるのだろうか。気味が悪い。 メイド服の手には盆があった、私に食事を運ぶためだけにここまで来たのか?・・・・・・ありえない 盆の上に乗ってる肉を胡散臭く感じる、毒でも入ってるんじゃないだろうな。 (奴隷はまだ来ないのか?) 左右を見回すが影も形も見えない、全くどこで道草を食ってるんだ。 しょうがない、覚悟を決めるか。 「キョキョ」 盆の上に飛び乗り、足元にある肉を少しだけ啄ばむ。 胃に納めて、10秒、20秒、30秒、40秒――――特に何とも無い ・・・・・・私の思い過ごしだったようだ。 しかし、一口食べてしまった事により、空腹感が刺激されてしまった。 そのまま勢い良く齧り付いて、全てを綺麗に平らげる。 「ペットショップさんのお口にあってよかったです」 私が完食した事に対してメイド服は嬉しそうに微笑んだ。何処か笑える所でもあったのか? 「お腹が空いたらまた厨房に来てくださいね」 分かったからとっとと帰れ。マスターの睡眠の邪魔だ。 メイド服が去って数時間後―――― 「はははは。待たせてすまなかったねペットショップ」 脳天気に笑いながら下僕が現れた。遅いぞ。 ・・・・・・お前の後ろに付いて来ているモグラは一体なんだ? 「僕の使い魔ヴェルダンデさ。どうだい、美しいだろう?ルイズ様の使い魔である君にも引けを取らないさ」 美しい・・・・・・美的感覚が狂っているのか?まあ良い。 自慢そうに眼鏡を揺らしながら答え――――眼鏡?何故眼鏡を掛けているんだ? 「君にやられた傷がまだ完全に癒えて無くてね、目がまだぼんやりするんだ。 だから眼鏡を掛けているんだよ。」 なるほど良く分かった。それでだが・・・・・・お前に与えられた仕事は理解しているな? 「ルイズ様に害を成す敵の排除だね」 違う、それは私の仕事だ。 「ああ・・・外敵の攻撃からルイズ様を守る盾となる事だね?」 そうだ。その通りだ。 「はははは、青銅のギーシュの二つ名は伊達じゃないさ、君の期待にはきっちり応えて見せるよ・・・命に代えてもね」 等と言いながら、ルイズの部屋の前で立ち続ける、一人と一匹と一羽 どうでも良いがここは女子寮であるが、気にも留めてない所が素敵に無敵であった。
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自分の両足をギーシュの両目に突っ込んだペットショップ あまりの凄惨さに生徒達の大部分が目を逸らして俯く。 見方を変えれば、両目から鳥を生やしている少年と言う何かの戯画染みた姿となっている。 そう思えば笑えるかもしれない。多分。かもしれない。だったらいいなぁ 両目に突っ込んだ勢いのままに足を一気に引き抜くペットショップ! ドピュギィ! 「ギャアァァァァァァァ!!!」 引き抜かれた後、一拍遅れて。 激痛のあまりに絶叫しながら目を押さえて、地面をのた打ち回るギーシュ 『ギーシュは生まれて初めて心の底から震えあがった 真の恐怖と決定的な挫折に 恐ろしさと絶望に涙すら流した これも初めてのことだった ギーシュはすでに戦意を失っていた』 ペットショップの足にはギーシュの眼球は・・・・・・無かった 眼球の致命的な破壊はされておらず、秘薬を使えば普通に元通りにする事が可能だろう。 下僕の性能を落とすわけにはいかないペットショップの微妙な優しさだ。 この時点でギーシュは杖を落としており、決闘はペットショップの勝ちとなっていた。 が、そんなのは知ったこっちゃ無いペットショップはギーシュの肩に飛び付き、無理矢理地面に押さえ付ける。 鳥とは思えない力に、地面に叩き付けられた蛙のような体勢で歪むギーシュ。どれだけの力が加わってるのか、服が破れ、皮が裂け、肉が切れる。 私は足元の男を見る。 涙と鼻水を流しているのが見えて、何故か苛立たしさを感じた。 早く行動に移さなければ・・・・・・ 精神が折れるまで指の爪を一本一本剥がして刳り貫いて行くか? 神経を引きずり出して順番に千切って行くか? 全身の皮を剥いでその下の肉を啄ばん行くか? 手足の間接を指から順番に折って行くか? 鑢で削るように手足を削って挽肉にして行くか? 全身の骨を手足から少しずつ粉砕して行くか? どれもNO!NO!NO!NO!NO!NO!!時間が掛かりすぎる、それに下僕の価値も下がる。 私が欲しいのは怪我人では無い、五体満足で明日から動ける奴隷だ。 幾通りのパターンが頭に浮かび。次の瞬間、私の記憶に――― (DI・様から与えられた)(隷属させるための・・・)(肉の・・・・・・) 『少し思い出した』 私の体には下僕を傷を付ける事なく、完璧に服従させるための物がある! ここで使わないわけが無い、早速使おうとしよう! 私は背筋を伸ばすと、必要な物を口から『吐き出した』 ゲボゲボ・・・・・・ゲボッ! 「ゲボゲボ・・・・・・ゲボッ!」 体を振るわせて口から何かを出したペットショップ 『その何かは』は蜘蛛のような形をした肉片だった。 体外に出たその肉片は、何と驚くべき事に触手を出してギーシュの頭部に突き刺さった! 生徒達が見ていたら広場はパニックになっていただろう、だが。 ペットショップの体が影になっていて、角度も悪いせいもあってか、何が起こっているか分かっている生徒は居無かった。 ただペットショップが飛びついた瞬間から、ギーシュが悶え苦しみ始めたとしか理解できない。 白目を向いて痙攣するギーシュ、異常な激痛に失禁し、尿がズボンを汚して地面に流れる 「ガァァァァァァァ!!!」 悶え苦しむ哀れな少年、ペットショップに押さえ付けられた状態では這う事すら出来ない。 肉片・・・・・・『肉の芽』が脳に達した瞬間、ギーシュの震えが止まった。 それを確認したペットショップは満足そうに空に飛び上がると食堂へ戻って行った。 ペットショップが去った事により、周りで見ていた生徒達の時間がやっと動き出す。 「ギ、ギーシュ・・・・・・だ、大丈夫なの?」 「・・・・・・分からない」 ギーシュの悪友である風上のマリコルヌと、香水のモンモランシーが心配して近寄っていく。 マリコルヌはともかく、モンモランシーは食堂でギーシュを罵倒していたが、決闘をするギーシュの事が心配だったので一応見に来たらしい。こいつはとんだツンデレである。 地面に転がったまま反応しないギーシュ。割と半泣きになるモンモランシー レビテーションの魔法を使い、医務室まで運ぼうかと思い始めた時 ~私だ、私だよ。超ヤバイ、マジでヤバイんだよ~ ~どれぐらいヤバイかって言うと君が言葉を失う位ヤバイんだ~ ~君は何も言わず聞いてくれんるんだろ?わかっているさ心の友よ~ ~私には君の力が必要なんだ、返事はする必要はないさ・・・・友よ~ ~私達には言葉はいらない?そうだろう?なあ『ギーシュ』~ (●□!?×■!・・・・○▲!) 「ああ、大丈夫だよモンモランシー、マリコルヌ」 目と肩から血を流しているギーシュ。重傷である なのに、至って平静な声と調子で彼は立ち上がった。 「マリコルヌ。ちょっと目が開けられないから医務室まで案内してくれないかな?」 ちょっと擦り傷をしただけのような態度が、違和感を加速させる。 「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫なのギーシュ?」 更に心配になったモンモランシーがギーシュに触ろうとする、が。 「いや、本当に大丈夫だってさ。」 照れたような微笑を浮かべるギーシュ、それは何処にも異常が見当たらない普通の笑み。 だが、ここではその笑みは異常であり。モンモランシーとマリコルヌの背筋に悪寒が走る。 「早く案内してくれないかな?」 焦れたようなギーシュ。 得体の知れない不安感に襲われながらも、マリコルヌとモンモラシーはギーシュの手を引いて医務室に歩いて行った。 やっと医務室に辿り着いた世界と思った時。 担当のメイジはキュルケと教師A・B・Cの治療にてんてこ舞いで、手当てされない世界のままギーシュが数時間放置されたのは関係無い話しである
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トリステイン魔法学院本塔最上階学院長室 そこにどこからどう見ても仙人としか言いようの無い老人が椅子に座っていた。 動きは全く無く、見ようによっては精巧な人形と言えなくも無い。 「が、学院長!緊急事態です!」 そこに飛び込んできたのは学院の教師の一人であるU字禿のコルベールだ。 「………………」 だが、肝心の学院長の返事が無い・・・・・・・・・ただの屍のようだ。 「学院長!学院長ォォォォォ!!」 まさか老衰!?と慌てて近寄り、学院長――オスマンの肩を高速で揺さぶるコルベール。 ギロッ 「五月蝿いわい、ちゃんと聞こえておるから早く用件を言わんか」 コルベールの手を払い、片目を開けて睨み付けるオスマン。 最初呼んだ時に返事ぐらいしろとコルベールは不満に思ったが。気を取り直して話し始める。 「ミス・ヴァリエールがミス・ツェルプストーと追いかけっこしています!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 学院長室に微妙な空気が流れる。 (そんなアホな事を伝えにわしの部屋に怒鳴り込みに来るとはええ度胸じゃのうワレ) と、オスマンが思ったかどうかは定かではないが。 その微妙な空気を敏感に感じ取ったコルベールは慌てて続ける。 「ミス・ヴァリエールの二つ名をお忘れですか!? 爆発を起こしながら追いかけっこをしているので、学院の部屋や廊下は滅茶苦茶になっています! 更に、宝物庫の壁にまで爆発で罅を入れてるんですぞ!」 宝物庫の壁に罅の部分で、ミス・ロングビルがピクッと反応したが それに気付くほど余裕のある人間はこの部屋に存在しない。 「何じゃとぉぉぉぉ!?」 それよりも慌てるオスマン、目を見開き裏返った声で叫ぶ。 幾人ものスクウェア・メイジたちが力を合わせて『固定化』の魔法をかけた、我がトリステイン魔術学院が誇る宝物庫が………。 「どおりでさっきからドカンバゴンと爆発音が聞こえたり爆発の震動を感じるんじゃな!?」 その時点で気付けよ・・・・・・とコルベールは頭を抱えかけるが、何とか耐える。 と言うか、今もドカンドカンと爆発音が聞こえる。このペースだと学園が全壊するのも時間の問題かもしれない。冗談では無く 「ですから、『眠りの鐘』の使用許可を!」 爆発音からすこし遅れて届く振動に震えながらも、コルベールの訴えに急いで頷くオスマン。 これ以上学院が滅茶苦茶にされては溜まった物ではない―――― そんなこんなで。 ルイズとキュルケの起こした騒ぎに隠れたような格好となって、ヴェストリ広場の決闘は殆どの教師から無視されていた。 所変わって、場所代わりヴェストリの広場。 「え?」 歓声に包まれる広場の中心で、拍子抜けするギーシュ。 まさかペットショップがワルキューレの攻撃をまともにくらうとは思っていなかった。 飛んで回避すると予測していたが、あっさりと殴れた事に間の抜けた声が出る だが、油断はしない。と言うか、何故か嫌な予感を止められないギーシュは油断をする余裕が無い。 「なにかわからんがくらえッ!」 呪文を唱えて杖を振るギーシュ、その杖から生み出されたのは恐るべき破壊の奔流。標的は木に寄りかかったような格好で地面に倒れているペットショップだ。 軌道上のワルキューレが慌てて飛び退くと、その破壊の奔流『石礫』は倒れているペットショップに直撃した。 ドン!バキベキバキ! あまりの破壊力のため、直撃したペットショップの背後の木も勢いで圧し折れて無残な姿になる。 完璧に再起不能。と常人なら判断する、しかしギーシュは残心を解かないまま、倒れたペットショップを睨み続ける 5秒―――動かない、10秒―――動かない、15秒―――動かない、20秒―――― 「ふぅ・・・・・・」 一向に動かないペットショップを見て、漸く倒したと確信するギーシュ 何時の間にかダラダラと流れていた汗を拭いながら安堵の表情を見せる。 死なない程度に攻撃したが、それでも数ヶ月はまともに動けないだろうと推測。 (心配しすぎたようだね) ペットショップより自分が強かっただけだと、脳内で自己完結してワルキューレを花びらに戻そうとした―――その時
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『召喚の世界』 窓から空を見上げると、二つの月が浮かんでいる。 月が二つあるのは当たり前だが、今日はなんだか、それが不思議な気がした。 明日が儀式の日だからだろうか、そんな気分になるのは。 そのまま月を見上げながら、さり気なくテーブルの端に小さな箱を置く。 「いったいそれは何?」 「君へのプレゼントさ」 「どうしてプレゼントをそんな端っこに置くのよ?」 「君がその美しい腕を伸ばすところを見ていたいからさ」 決まった。完璧に決まった。 「貴方のその気障ったらしいところって、どうにかならないのかしら?」 言いながら箱を受け取る。言ってはいるが、内心満更でもないのだ、彼女は。 さて今宵は、この辺でお暇しよう。焦らすのもテクニックさ。 「あら、もう帰ってしまうの?」 「ああ、もっと君と一緒に過ごしたいけれど、君をいつまでも夜更かしさせるわけにはいかないよ」 「そう…ところで貴方、『浮気』……してないわよね?」 ギクリ。 「まさかだろ? この僕がそんな仕打ちを君に対して!」 証拠なんかありはしない。だからこそ余計にタチが悪いのだ、女の勘というのは。 「別に疑ってるわけじゃあないわよ。けど、嫌な気にさせたのなら謝るわ。 そのお詫びと言っては何だけど……」 ポケットの中で小瓶を転がしてみる。ひょっとして、これが渡したかっただけなのか。 そう思うと、なんだかばつが悪かった。 そして翌日、『儀式』が始まった。 いったいこいつに、どんな名前をつけてやろうか!? いくつか候補は決まっているが、やはり迷うな……。 召喚したばかりのジャイアントモールについてのギーシュの思考は、突如後方で起こった 爆発によって中断せざるを得なかった。 「ゲホ、ゲホッ」 土煙に咽ぶのは、今しがた契約を完了したばかりのキュ(略)・ツェルプストー。 「やってくれたわね…ゲホ、予想通りに、やってくれたわねぇ……」 「いつものこと」 特に動じていないのか、隣に立つ友人(タバサという)はそう言いながら 呼び出した竜の頭をなでている。高速で。 「またしても、またしても失敗かしらね、あの子は」 答える代わりに、タバサは土煙の中を指差した。 「人影」 成程、煙の中に二つの人影、一つはこの爆発を起こした張本人のものと、 もう一つ背格好の高い、確かに人型の影が確認できた。 「いえ…、あれはサラマンダーね」 「?」 タバサにはキュルケが何を言っているのかサッパリ理解できなかった。 「サラマンダーよ…火トカゲ、ヒトカゲ、ひとかげ……『人影』」 そう言うとキュルケは、チラリと何か期待したような表情で、タバサの顔を見た。 少々の思考の後、タバサの発言は―― 「かなり大爆笑」 「そう? 後でもっとジワッと来るから気をつけなさいよ。…ところで見て何アレ……」 男が、立っていた。 (何よ何よ、なんなのよ) 想定外。斜め上。いったいこれは、何なのか。成功なのか、失敗なのか。 周囲のどよめきが嘲笑、爆笑に変わっても、彼女はそれに対応するどころではなかった。 目の前に、男が立っている。紛れも無く、『男』…人間の……つまりは―― (平……民?) (落ち着きなさい、逆に考えるのよ……逆に…) (…うん、やっぱダメ。無し、アウト、チェンジ!) 「ミスタ・コルベール!」 彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは召喚のやり直しを 要求した。返答はNO! 当然である。この男と契約しなければならない。 それがこの神聖なる儀式の約束事である。しかしルイズにとってそれは―― (ファースト・キスッ! アタシってばわりと純情まっしぐらなのに!!) 気付くと、さっきまで立っていた男は仰向けにぶっ倒れている。 恐る恐る近寄るが動く気配はない。気絶しているのだろうか? (まあ、起きてる相手よりはやりやすい、かな) 寝ている人間の唇を奪う行為の是非は考えない事にした。 そっと口付けをする。ひげがくすぐったい。男は少し呻いたが、目覚めはしなかった。 ルーンの確認が終わると、みんな帰っていった。『みんな』…彼女以外の。 チラ、と男のほうを振り返る。 (変なヒゲ……ガイコツみたい)
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夜、陽気に賑わう酒場に、一人の男が入ってきた。 マントを着けているが、身なりからすると貴族とは思えない。 幅の広い帽子と、担いでいるこざっぱりとした荷物からすると旅人の様だ。 だが、酒場の喧騒の中その男に注目する者は居なかった。 その男は、大声で歌っている男の側を通り抜け、踊っている者たちを押しのけ、喧嘩をしている連中を避けてやっとカウンターにたどり着いた。 「お隣よろしいかな?」 緑色の髪の女に声を掛け男は席に着いた。 声を掛けられた女は気だるそうに顔を上げた。 「はん?…あんた誰よ?……さっきまで居たボーヤは?」 かなり呑んでいるらしい。ワリと整った顔は酒の為に火照っている。 年齢は二十代後半ぐらいだろか。 「坊やって…こいつの事かい?」 足元を指差す男。 見ると16、7の少年が酔いつぶれて寝ている。 「そうよ…いや、違ったかも………もうどうでもいいわ。マスター!もう一杯!」 「それじゃあ」 足元の少年を跨いで席に着く男。 「僕に奢らせてくれないか?」 「あら~いいの?じゃあ一番高い奴」 「おいおい…まあいいか。僕にも同じのを頼むよ。僕はジャック。君の名前は?」 少しの間、酒が注がれているグラスを見つめてから、女は答えた。 「…マチルダよ」 「マチルダか…ステキな名前だ」 「あら、口説いてるの?」 「そう聞こえるかい?」 グラスを受け取ると、ジャックはマチルダに向き直って言った。 「乾杯しないかい?」 「何によ」 「僕らの出会いに」 「プッ。何よそれ」 「では、アルビオン共和国の戦勝一周年を記念して」 「いいわよ」 「乾杯」 「乾ぱ~い」 神聖アルビオン共和国がトリステインに宣戦布告をしてから2年。 戦争はたった1年で終結してしまった。 当初、トリステインとゲルマニアが同盟を組むというと言う噂もあったのだが、開戦とほぼ同時に反故にされてしまった。 さらにトリステインのカリスマであるアンリエッタ王女が、開戦直後のタルブで戦死してしまったのだ。 突然の悲報に兵士達の士気は落ち、王宮勤めの貴族たちはアルビオンの事よりも、王女をタルブへ行かせたのは誰か?と責任を押し付け合った。 その様な状態では『空の怪物』『羽を持つ悪魔』『灰の塔』等とあざなされるレキシントン号率いる空中艦隊と戦えるはずも無く、トリステインはアッサリと降伏したのだった。 その後、ジャックとマチルダは他愛も無い話をしながら酒を楽しんでいた。 深夜に近づいているというのにあたりの騒音はいっそう酷くなってきている。 「所であんた仕事は何?あ!ちょっと待って当てるから……吟遊詩人?」 「ハッハッハ、何でそう思ったんだい?」 「いや、何か帽子がそう見えたからね。で、本当は何さ?」 「こいつだよ」 そういってジャックはマントをめくって見せた。 「杖…あんた貴族かい」 マチルダの顔が少し険しくなった。 「いやいや、傭兵さ。とっくの昔に没落しててね。貴族制が廃止されたんで少しスカッとしてるよ」 「フフ、あたしもだよ」 「君も…するとやっぱり傭兵でもやってたのかい?」 「まあね。この戦争のおかげでちょいと稼がせてもらったよ」 頬杖をつくマチルダ。 そんなマチルダにジャックが質問した。 「戦争の前は何をやっていたんだい?」 「何って…まあ色々さ」 「色々とは?」 「…レストランとか、宿屋で働いてたよ」 「それだけじゃないだろう?」 「…どういうことだい?」 ジャックの顔が険しくなった。 「魔法学院でも、だろ?」 「フン!傭兵にしちゃ礼儀正しいと思ったら…あんた何者だい?」 袖口に隠し持っている杖に手を掛けるマチルダ。 「早まるな」 手で制するジャック。 「ちょっと話を聞きたいだけさ」 「話って?」 杖に手を掛けたまま怪訝そうな顔になるマチルダ。 「あの日の事をだ」 「あの日…」 マチルダの顔に、一瞬怯えが過ぎった。 「そう。あの日だよ」 ジャックはマチルダにグッと顔を寄せた。息が掛かるぐらい近くに。 「…一体何があったんだ?」 「何って…」 喧騒に掻き消されそうな声で呟くマチルダ。 「3年4ヶ月前の春の召喚の儀式の日。トリステイン魔法学院の教師・生徒・使用人全員が死んだ。何故だ?」 「……」 「トリスタニアで検分書を読んだよ。全員即死。殆どの者に外傷は無い。被害者の死んだ場所はわりとバラバラで、厨房で死んでいた者。 洗濯物の山に埋もれていた者。廊下に倒れていた者。木に寄りかかっていた者。生徒全員が居眠りしている様に机に突っ伏して死んでいた教室も在るそうだ。 3人ほど、首の骨が折れていた者があったな。フライ中に落ちた様だが、フライを使ってて落ちるか?普通。落ちたために死んだのではなく、死んだために落ちたんだろうな。 そして二年生だけは全員サモン・サーヴァントを行っていたであろう広場で死亡していた…」 ジャックは溜息を付く様に一旦言葉を切った。 「検分書に因ると、二年生の誰かが悪質な病気を持った生物を呼び出したのだろうとある。確かに病気なら被害者たち殆ど無傷という説明が付くかもしれない。 だが、明らかに何者かから逃げて、狼に怯えた羊のように数人で寄り添って死んでいた者たちも見つかっている。病気の感染者から逃げたのか?違う。感染すると即死するのでこれは違うだろう。 では病気を持った生物から逃げていたのか?それも違う。スクウェアのメイジ達が検査したが生徒と生徒の使い魔以外の痕跡は見られなかった。 …というか、病原体や毒物の痕跡すら全く見られなかったのだよ!そしてそんな大惨事のなか…君だけが生き残った。何故だ!!」 ジャックに両腕をつかまれ、ビクッとするマチルダ。 「あ、あたしは……」 一瞬言葉に詰まる。 「あたしは何にも知らないよ」 ジャックの目が鋭くなった。 「隠してもために成らんぞ…」 「隠してるんじゃあない!本当に何も知らないんだよ!!あの日あたしは…」 マチルダことロングビルは辟易していた。 魔法学院に潜り込んだはいいが、あのスケベじじいが終始セクハラをして来るわ、忌々しい白鼠を使って下着を覗こうとするわ、あまつさえ昨日は着替えを覗かれたのだ。 これも辛抱、宝物庫からお宝を頂くまでの我慢だ!お宝さえ手に入ればこんな所さっさと辞めてやる!!ついでにセクハラの事を上に訴えてやろうか。 そういえば、今日は使い魔召喚の儀式があるんだっけ?使い魔を手に入れてハシャぐあまり、覗きをやろうとする生徒がいるから気を付けろってシュヴルーズが言ってたが、やれやれそんな奴はオールドオスマン一人で十分だよ… 等と考えながら学院長室の前に来たロングビル。 ノックしてから「失礼します」と声を掛ける。 ………………… おかしい。 いつもならスケベじじいが浮かれた声で招き入れるというのに、返事が無い。 「失礼します。入りますよ」 ドアを開けて中に入ると、いつもの席に座っていたオスマンが、ハッとこちらを向いた。 その瞬間、ロングビルは心臓が締め付けられるような嫌な感じを覚えた。 こちらを見たオスマンの顔には、はっきりと恐怖が表れていた。 何?何がどうしたのよ?まさかフーケだとバレた?!いや、そんな筈は無い! もしフーケだとバレたとしても、オスマンが恐怖を抱くだろうか?このあたしに。 ここに勤め始めてから初めて見たオスマンの恐怖。他人の恐怖が、ロングビルに言い知れぬ不安を与えた。 「ど、どうかなさったんですか」 オスマンはロングビルの方と遠見の鏡の方を交互に見た。 「大変な…大変な事が起こったんじゃ!!こ、こんな事が!!」 「オールドオスマン。落ち着いて下さい」 と言ったものの、自分も落ち着けぬロングビル。 「何が起きたのですか?」 「こ、これは!こんな事が!!まさかこんな!これはどういう事なんじゃ!!??」 日ごろからボケた様な事を言うオスマン。 しかし、これは違う。これはボケ老人の戯言ではない! 知能の高い者が理解不能の状況を目の当りにして混乱しているんだッ!!。とロングビルは思った。 オスマンはロングビルと遠見の鏡の方を交互に何度も見ている。 「ああ!何ということじゃ!!これは…そ、そういう事か!何ということじゃぁああ~!!!」 叫ぶと同時にイスから立ち上がり、ロングビルをビシッと指さし指示を出す。 「ミス・ロングビル!!急いでぜんs――」 指示はそこで途切れた。 唐突に。何の前触れも無く。糸が切れた操り人形が倒れるように、オスマンは崩れ落ちた。 「オールドオスマンッ!!」 持っていた書類を投げ出し駆け寄るロングビル。 鼻の前に手をかざすが、呼吸が無い。 首筋に指を当てるが、脈が無い。 死んでいる。 死んでいる、という事には多少慣れていた。 色々危ない橋も渡ってきた。 死を覚悟した事もあった。 目の前で人が死んだことも一度や二度ではない。 もちろん…殺した事もだ。 だが… だが……この『死』は異常過ぎる!! 矢を射られる訳でもなく、氷を射られる訳でもなく、炎に焼かれる訳でもなく、岩に潰される訳でもなく、唐突に『死』が現れた。 どうする?助けを呼ぶか?いや、死んだ原因は何だ?その原因はまだここにあるのか?オールドオスマンをも殺せるような原因が。 このオールドオスマンを殺せる…? 背筋に激しい悪寒が走った。 胃の中から何かがせり上がってくる。 駄目だ、助けを呼んでいる場合ではない!宝物庫なんて知ったこっちゃあない!!逃げるんだ!! 自分の盗賊としての勘がそう叫んでいる。 部屋を駆け出したロングビルは、手近な窓を見つけると、そこから飛んだ。 今まで出したことも無い速度で。 自分の荷物さえも置いて。 三日後。 トリスタニアの宿屋で、学院の人間が全員死んだと聞いたロングビルは、しばらく震えが止まらなかった。 「それだけか?」 ジャックの声は、落胆した声で聞いた。 二人は多少静かな方へ席を移していた。 「そうよ。だから言ったでしょ、何も知らないって…がっかりさせて悪かったね」 「いや」 気を取り直すようにジャックが言った。 「疫病ではないと確信できただけでも進展さ」 「フ。目の前で死なれて、その死体を触ったあたしが死ななかったからね」 と自嘲気味に言ってからグラスを煽るマチルダ。 酔いもスッカリ醒めてしまった。 「では僕はこれで失礼させてもらうよ」 そう言って席を立つジャック。 「協力を感謝する」 歩き出そうとした所をマチルダが引き止めた。 「ねぇ…一つ聞いて言いかい」 「何だね?」 「…あんた何でこの事件を調べてるんだい?」 「何でそんな事を聞く?」 「いや、何か随分がっかりしてたからさ…ちょっとした好奇心だよ」 「………大した事じゃあない。トリステイン魔法学院に許婚が居たんだ。それだけさ」 「そう。悪い事聞いちゃったね」 「いや。では今度こそ失礼する」 そう応えると、ジャックは酒場の喧騒の中へ消えていった。 一人残されたマチルダは、少し悩んでから、次のボトルを開ける事にした。 許婚か……一体どの『教師だったんだろう』…。…シュヴルーズ? 「まさかね」 呟いてから、新しいワインに口を付けた。 魔法学院で一体何が起こったのか?ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは生涯この謎を追い続けた。 家庭を築いて後も、暇を見つけてはトリステイン魔法学院跡地に赴き、時には家族と、時には一人で調査を続けた。 しかし、結局最後まで何も判らぬまま、その生涯を閉じる。 では、何が起きたのか?時は3年4ヶ月前に遡る。 春の召喚の儀式の日。 進級試験に臨んでいたルイズは、同級生が何の問題も無く使い魔を召喚して行った後に、自分が召喚したものが信じられなかった。 「……先生!召喚のやり直しをさせてください!!」 ルイズが叫ぶ。 現れた物は、一人の『おじさん』だった。 何の変哲も無い、普通の、どう見ても平民にしか見えない『おじさん』だった。 青い帽子を被り、パイプを咥え、青緑の上着を着ている、無精ひげを生やした『おじさん』……。 到底、使い魔にしたい相手でもなければ、コントラクトサーヴァントしたい相手でもない! 「残念ながら、ミス・ヴァリエール。儀式のやり直しは許可できません」 監督をしていた教師のコルベールが言う。 ルイズにとっては無情な言葉だが、コルベール本人も前代未聞の出来事にこれ以上の事を言えないのだ。 「そんな!!でも――」 「すみません」 「!!」 いつの間にか、コルベールとルイズのそばに来た『おじさん』。 「ちょっと質問したいのですが」 「な…なんでしょうか?」 コルベールが答える。顔に少し、緊張の色が見える。 「サンレミの病院は、どちらにいけば良いのでしょうか?」 質問しながら、帽子を取る男。 「サン・レミの…病院ですか?」 「何言ってるのよあんた。それより引っ込んでなさい!今は取り込み中よ!しかも!あんたのせいでね!」 「おや?」とルイズの顔を覗き込む男。 「な、何よ!」 「ちょっと待って。この私の事知ってますよね?そうでしょう?私ですよ」 知ってるんですか?という顔のコルベール。 「知らないわよ!こんなおっさん!見たことなんて無いわ!」 「そうですか…でも、今わたしを見て感動したでしょう?皆さんも」 と周りを見渡す男。え?という顔の生徒達。 確かに、この『おじさん』には何か引きつけられる物がある。何かわからないが。 「…あんた何なの?」 ルイズが聞く。 「わたしは…ヴィンセント」 パイプを咥えなおし、帽子を被る男。 「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。『ゴッホの自画像』です。昨日カミソリで耳を切り落としました………所で病院は、どちらでしょう…?」 こうして、同日中にトリステイン魔法学院は全滅した。