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「……ってわけだ」 一通り話したが、もちろん手紙と元使い魔、虚無の事は伏せてある。 「小さい小さいと思っていたけど…ルイズも大きくなったのね」 感慨深げに言うのは黙って聞いていたカトレアだ。 もちろん、当人からしたら、まだ十分小さい域に入っているのだが、知らない間に紆余曲折を経て成長している事は嬉しいようだ。 しかしまぁ、それを見ているプロシュートはこの目の前の人物がその口から聞くまでルイズの姉などとは思ってはいなかった。 ハッキリ言えばマジに貴族か?と思ったぐらいだ。偏見っちゃあ偏見なのだが、今まで出会った貴族があんなのばかりだから仕方ない。 穏やかそうな顔立ち、雰囲気、これでもかと言わんばかりに振りまく優しさオーラ。後、結構ある胸。 似てるのは髪の色と目の色ぐらいであろう。メローネが居たらベイビィ・フェイスで遺伝子情報を解析させてるとこだ。 「これから、どうなさるおつもりですか?」 そんな事考えていると、どこぞの聖人かと思いたくなるぐらいの微笑を向けられそう聞かれた。 元ギャング的にこんなナマモノ見た事無いから仕方ない。 普通の状況なら一発説教かましに行くついでに学院にINしてもよかったが、この場合少し違った。 アルビオンへの侵攻計画があるかもしれないと聞いた。つまり戦争だ。 あのルイズの事。まず自身も参戦すると言い張る事は確実だ。 グレイトフル・デッドの能力を知っている以上、自分も付き合わされる事も確実だろう。 使い魔ではなくなったからには、付き合う義理も無くなったのだが、下手に能力が上の方にでも知れたら洒落にもならない。 半径200メートルの無差別老化能力。間違いなく単独最前線行きだ。 いくら射程が長いといっても、軍を相手にできると思っている程能力を過信していない。 魔法の射程よりは遥かに長いが、罠や砲などがあってはどうしようもないし、スデにガンダールヴではない。支えれたとしても局所的なものだろう。 仮にグレイトフル・デッドがトリステインの勝因に繋がったとしても、その後に待っているものが問題だ。 あの姫様はそう思っていなくても、周りの貴族どもはナニをするか分かったもんではない。 魔法という自らの特権を上回る力を持つ平民の存在。普通に考えれば暗殺対象になる事間違いなしだ。 ここに来た直後なら、まだそれでも国一つ相手にする気にはなれただろうが、現在においてはその認識を改めさせられている。 その原因に直結しているのが、ワルドだ。 対生物なら、例外なく発動する老化能力。それが全く…直触りすら通用しなかった遍在。 ムカつく相手だが、ある意味感謝すらしている部分もある。 死にかけはしたものの、そういうモノがある事を早いうちに知れたからだ。 相性が悪い。それも最悪にだ。スタンド能力ならワルドにだけ注意すればいいが、魔法ならそうはいかない。 同じ魔法を使えるヤツは必ず居る。不特定多数のそういうヤツに狙われたのでは確実にこちらが不利だ。 ギアッチョを相手にするよなものである。 使われるだけ使われて、必要が無くなれば冷遇され始末されるというのは、パッショーネに属していた時の二の舞だ。それだけは避けねばならない。 何より死んでいった仲間にどの面下げて会えたもんか分かったもんではない。 暗殺チーム全体の誇りに関わる事なのだ。 そういう事から、即返答するという事には至っていない。逃げるという選択肢は浮かんでいないあたりはさすがというべきか。 「まあ、まあ、まあ、まあまあ」 そう言ってカトレアが近付いてくる。何だと思いつつ何時もの顔でそれを見ていると、じっと見つめられた。 元ギャングの仏頂面と、見る人が見たら女神かと言いたくなるような微笑。極めて対照的だが、変わらない表情でブッ飛ぶような事を言われた。 「あなた、ルイズの恋人ね?」 オーケーちょっと待て。スタンド攻撃か。トーキング・ヘッドか。と何故か遭遇した事の無いスタンドとその能力が頭に浮かんだ程だ。 「ケンカでもしたのね。だからルイズのとこに行きたくないんでしょ」 楽しそうにそう言っているが、言われた方はたまったもんではない。 「…どこでそう思ったのか知らねーが、違う」 今なら、アンリエッタがルイズの部屋を訪れた時、同じような事を言われて人を『生物』呼ばわりしてくれた気持ちが分かる。 「腐れ縁みてーなもんで、面倒見てただけだ」 プロシュートにとってルイズの扱いは、多少なりとも成長を見せたとは言え未だペッシと同程度なのである。 まぁそのペッシと同程度という事が結構スゴイ事なのだが。 「あらあら、ごめんなさいね。わたし、すぐ間違えるのよ。気にしないで」 そう言いながら笑っているが、マジにそう思ったかは不明である。 なんせ常に同じような微笑を振りまいているのだ。リゾットの無表情とは対照的だが、その心中を正確に読むのがディ・モールト難しい。 ハッキリ言えば苦手なタイプに属するのだが、嫌な感じはしない。ごく僅かな例外を除いて人間こういうタイプを嫌うヤツは少ない。それは元ギャングとて同じ事だ。 まぁだからと言ってアテがあるわけではないのだが。 最悪、『魅惑の妖精亭』という選択肢もあったが、それはマジに最後の手だ。 あれもあれなりに結構目立つ。現在チップレース、歴代最高記録保持者に君臨しているのだ。 何よりあの一件があってからスカロンの側にはあまり居たいものではない。悪いタイプではないとは思うが、生理的にダメだ。ちょっとしたトラウマも受けているし。 思案を巡らせ、オスマンあたりに言えば何とかなるかもしれんという結論に達しかけたが、次のカトレアの言葉にそれを捨てる事になった。 「そうだわ…行く場所が無いなら、いい事があるの。あなたさえよければだけど」 さて、こちら魔法学院だ。 あれから数日経った今、ザ・ニュー使い魔こと才人は、絶好調ッ!誰もぼくを止めることはできないッ!!という具合に結構巧くやっていた。 トライアングルクラスを倒したからには、先代ほどではないにしろ、それなりに一目置かれるようになっている。 もっとも、当の本人にとっては、その先代の事が気になっていたりするのだが。 「なあ、デルフ。お前が言ってた兄貴ってどんなやつだったんだ?」 「んー、そうだな。一言で言うなら…かっこいいな」 二重ショック!剣にまでそう言われるという事は、本気でそうなんだろうと思ったが、もう一つのショックの理由はルイズにある。 あの後、ルイズにもどういうやつなのか聞いたのだが 「かか、関係無いじゃない!今の使い魔は、あ、あんたなんだから!」 という具合に、少しばかり顔を赤くさせて返答させられたのだ。 つまるところ、二重ショックの原因は『剣であるデルフが言うんだから間違いなくかっこいい』『かっこいいからルイズがそいつの事が好きだった』 と、まぁそう判断した。前者は間違ってはいないが、後者は少しばかり違う。 プロシュートの溢れんばかりの兄貴オーラのおかげでルイズ自身、好きというよりマジに『怒ると怖いが少し年が上の頼れるお兄さン』的存在に落ち着いていた。 要はすぐ上の姉、カトレアに対してのものと同じような感情である。まぁそれで他人にもって行かれたくないというとこがあった。 だからと言って、本人の前ではそうならなかったり、人から聞かれても、性格的に認めたくないのでその辺り勘違いされる要因だ。 当然、そんな事知ったこっちゃあない二代目からすれば凹ませる原因になっていたりする。 特に何があったっつーわけでもないが、あの決闘の時に自分をかばうようにして見せた姿を見た時ゲージが振り切れたっぽい。 このルイズ、比率で言うなれば4 6の割合でデレが優勢だ。言うなれば惚れ才人か。惚れ薬要らずである。 もっとも、当人の性格からして結構流されやすかったりするから、例によってキュルケに誘惑された時なぞかなりグラついてた。 さっそく手ぇ出す辺りさすがというべきか、過去は振り返らないタイプというかアレなのだが。 なんせ、『おっぱい星人』に属する彼からして、あのボリュームは凄まじいものがあったからだッ! 容姿のタイプ的にはルイズ、属性的にはキュルケ。 もち、ルイズがキュルケの部屋に飛び込むという形でケリがついたのだが、当然、説教タイムである。 鞭片手にプロシュート仕込の説教が開始されたが、本職には遠く及ばないのでいかんせん迫力が足りない。 「いい!?わたしが怒ってるのはね!あ、あんたがツェルプストーの女に尻尾なんて振ったからよ!サイト! そりゃあ、たたた、確かに、キュルケは…あ、あるわよ、むむ、胸とか!わたしだってスゴイと思う!」 こんな具合に、キュルケのアレと自分のアレを比較し怒ってんだか、絶望してるんだか分からないような声なので、どっちかというと可愛いというべきか。 そんな感じなので、当人全く応えていない。むしろ生暖かい目でそれを見ていた。 「平和だねー。兄貴が居た時じゃ考えられないね」 と、暇そうにしているデルフが言ったとおり、先代が居た頃に比べてかなり緩い雰囲気だが、両名とも何だかんだでそれなりに上手くやっているようである。 ちなみに、ゼロ戦だが現在コルベールが管理しているが、外装は修復されているため、機銃弾は装填されていないもののほぼ新品同然である。 それを見た才人が、この前イタリアで見付かったゼロ戦が何故にここにあるのかと聞いたのだが、こっちにあったものだと説明され驚いた。 そして、その持ち主の子孫がここに居ると聞いてさらにブッ飛んだ。 ご存知シエスタだが、曽祖父と同じ国から来たという事で、結構話をしたりするようになった。 才人としても同じタイプのスタンド…もとい血統という事で、良好な感じで互いに接している。 「やっぱり、ひいおじいちゃんは『日本』ってとこから来たんですね…」 ある時そう言ったのだが、心なしか声の調子が重い。さすがにそれに気付いたのか、どうしたのかと聞いたが、やっぱりちょっと暗い。 首から下げていた飾りを手に持つと、静かに話し始めた。 「これ、プロシュートさんっていう人に頂いたんです」 見せて貰うと裏面に、文字が刻まれていた。読めないが文体そのものは見覚えがある。 「ゼロ戦がサイトさんの世界に戻ったって事は、プロシュートさんは戻れたんですね」 まぁ戻れたどころか、目の前の少年とスデに遭遇しているのだが、そんな事はシエスタは知らないし、才人もあの『マシーン』がそれだとは知らない。 「…あのさ、どういうヤツだったのか聞かせてくれないか?」 度々出てくる前任者のが出てきたのでめちゃ興味はある。ルイズに聞いてもアレだったし、小太りに聞いたらビビって話したがらないし何も聞けていないからだ。 「…自分の向かう道を貫ける人…ってところですかね。凄い人でしたよ、なんていうか周りの人が引っ張られるぐらいに」 どこか遠くを見て言うシエスタに、さすがにどこかヌケていると評判の才人も気付いた。 「何回も助けて貰ってたのに、わたしったら何も恩返しできなくて…」 「でも、もう帰ったんだろ?それじゃあ…」 その続きを言う前に、シエスタが言う。 「わたしが、戻ってきてくれると思って待ってるだけですから」 それだけ言うと、元の明るい顔になり、その場を離れ残ったのは才人一人になった。 心中かなり複雑である。シエスタの話を聞く限り、ただかっこいいヤツというわけではない。 ただ、ぶっちゃけ贔屓目に見ても可愛い範疇に入る少女二人に好意を向けられても(一人はまぁちょっと違うが)平然と戻れるというとこが癪に障った。 「……ムカつくな」 非常に正直な感想で、万が一会ったら一発ブン殴ってやろうかと思ったぐらいにだ。 まぁ、自分も帰る時が来るかもしれない、というのは完全スルーしているあたりは、らしいといえばらしい。 再び場所が移り、こちら実家だ。 デカイ屋敷という事だけあって、多数の使用人が働いているのだが、黒スーツに眼鏡をかけた元暗殺者がそこに混じっていた。 スーツ姿がこれ以上なく似合うだけあって非常に馴染んでいる。ちなみに眼鏡は伊達だ。 主な仕事はカトレアが飼う動物、特に熊、蛇、虎などの一般的に言う猛獣系の世話だ。 長年勤めてきた使用人ですら、ちと危ない範囲に入るのだが、平然とそれをやるので一発採用相成った。 何故にそれができるかというと、誰も見てない所でグレイトフル・デッドを叩き込んだからだ。 負けた方が舎弟になるギャング世界の掟。動物の世界でもまぁ似たようなモンである。 ペッシは進んでああなった方だが、年が近いギアッチョとやりあって負けているため、そっちにも頭が上がらない。 能力的に言えばビーチ・ボーイならホワイト・アルバムの装甲を突破できるのだが、性格的な差が出た結果といえよう。 カトレアの誘いを受けた理由としては、ここが公爵家というのが最大の理由だろう。 王室に近い立場だけあって、情報がかなり流れてくる。 アルビオンに侵攻が本当に行われるかどうかにしても、情報はどうしても欲しい。 もちろん、使用人に流れてくる話など大したものがあるとは思えないが、そこはカトレアから聞き出せるので問題ない。 というか、動物の世話なぞほとんどついでである。 初っ端からギャング的行動をモロに叩き込んだので、世話なぞすぐ終わり時間を持て余している。 字が読めないという事で、空いた時間カトレア直々に他に内密に勉強会が始まるのだが 動物に囲まれた中、かなりファンシーな雰囲気でやっているので、結構居心地は悪い。 教えている方は、結構楽しそうなので問題無いだろうが、教えられている方は 猫とか子犬とかが脚の上にのったりするので、ちとアレだが受けている立場なのであまり何も言えない。 「…オレも結構ヤキが回ったな」 メローネあたりが見たら何を言われるか分かったもんではない。 そう呟くと、膝の上の猫を少し触って本に目を向けた。 プロシュート兄貴―ザ・ニュー職場! 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あれから貴族達は蜘蛛の子を散らすように才人から逃げていった。 あの、ゼロと呼ばれて切れかかっていたルイズや、心配をして見に来たシエスタすら、才人の5m以内に近寄ろうとしない。 至極当然だ。僕だって近寄りたくない。 才人が近づけば、近づいた分だけ後ずさり。 近づく。 後ろに下がる。 近づく。 後ろに下がる。 駆け寄ってくる。 全力で後ろに下がる。 「おい……、ちょっと待っ……」 「イヤァアアアアアアアアアアア! こっちに来ないでくださいィィィィイイイ!」 「許可しないィィィィィィイイイイイイイ! 使い魔が、私のそばに近づくことを許可しないィィィィィイイイイイ!」 「僕のそばに近寄るなァァァァァッ!」 「こいつはクセェー! ゲロの臭いがプンプンするぜぇーーーーッ! こんな平民には出会った事が無いほどなァ!」 才人は泣きそうになっていた。 僕はさんざんボロクソにいわれて、凹みきった才人を、何とか水場まで連れてくる。 はじめはシエスタが水場までの案内を勤めることになったのだが、上っ面は取り繕っていたものの、今にも泣き出しそうな様子だったので、僕が代わりに才人を水場まで連れて行くことになったのだった。 女性は大切に扱わなくてはならないからな。 「へっ……。どうせ俺はモグラさ……」 「良いから、早く身体を洗ってください」 しかし、今にもキノコが生えてきそうな、この才人はどうにかならないのか。 彼は調子に乗るのも、落ち込むのも早い。しかもどちらも天井知らずだ。 マッハで落ち込み、マッハで立ち直る。 きっと空気の速度を超えてるから、とことん空気が読めないのだろう。 僕はそう、自分の中で結論づけることにした。 身体は洗えるが、パーカーの方はどうしようもないので、洗濯して干すことになった。 勿論、洗濯は才人にやらせる。 替えの洋服なんて持っているわけが無く、上半身裸で、ひたすらに服を洗う姿は、何とも哀れみを誘った。 でも手伝わない。 ともかく、このままではルイズの元に戻ることも出来ないので、僕が学ランを貸してやる必要がある。 「もう、大丈夫だよな……?」 しきりに自分の臭いを嗅ぐ才人。 これを見ていると、どうも貸そうという気が起こらなくなる。 しかし、おいていくわけにも行かないだろう。 「気になるんだったら、コレを使ってください」 僕はズボンのポケットに入れていた、消臭スプレーを才人に手渡した。 秋葉原を歩くのに、常備していた奴だ。 正直、コレ無しで彼処は歩きたくない。 「ああ、サンキュー」 そういってスプレーを受け取り、才人は念入りに身体に吹き付け始める。 そういえば、この世界ではスプレーの換えはきかないんだな。 やむ得ないとはいえ、簡単に才人にスプレーを貸したことに、僕は少し後悔した。 彼がそこの所を、配慮してくれればいいのだが…… 「おし、もう大丈夫」 かけ終わったのか、才人は僕にスプレーを返してくる。 残量を確かめるため、軽く振ってみる。 チャポチャポと音がした。 結構使われてしまった様だ。 まだ新品だったのだが。 才人の方を向く。 フローラルな香りが鼻についた。 僕は思いっきりため息をつきながら、才人に来ていた学ランを渡した。 才人は受け取った学ランを見つめ、ぽつりとつぶやく。 「なあ、花京院」 「何です?」 「何で、秋葉原行くのに学ラン来てたんだ?」 「僕は学生ですから。ガクセーはガクセーらしくですよ」 「いや、理由になってないから」 やや身長に差があるためか、僕の学ランは才人には一回り大きかった。 僕にとっては膝下ぐらいまでだが、才人にとっては脛ぐらいまである。 学ランが汚れないか、少しそわそわしながら、僕等はルイズの部屋の方へと戻る。 途中、ルイズの部屋へと向かう螺旋階段を上りながら、才人が何かを思い出したように話しかけてきた。 「そういやさ、聞きそびれたことがあんだけど」 「何ですか?」 僕はどうせまた、空気の読めない事を言うつもりだろうと、聞き流すつもりでいた。 「あの決闘の時、お前から出てきた緑色のアレ、いったい何なんだ?」 「!」 「アレが前言ってた、スタンドって奴か?」 唐突だった。 今、彼はなんと言った? 僕のスタンドが見えた。といったのか? その一言を聞いて、今までの、スタンドが発現してからの思い出が、すっと僕の頭の中に浮かび上がっていく。 「お、おい。花京院? お、俺、今何か不味いこと言ったのか!?」 僕に気持ちが通い合う人が何人現れるだろうか。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号で一杯だ。 母には、父がいる。父には、母がいる。 TVに出ている人や、ロックスターにはきっと何万人も居るんだろう。 自分は違う。 自分にとって、真に心の通い合う友人は現れるのだろうか? 実を言うと、ここが異世界と解った時、ほんのちょっぴり期待をした。 記憶の僕のように、ここなら、ひょっとすれば、僕と真に心が通じ合う友人が出来るかも知れない。っと。 今、目の前の才人は、ずっと僕の目の前にあった、一つの柵を、何も無いかのように越えてきたのだ。 心に、ささやかな期待が生まれた。 何故見えたのか、そんな疑問は、その期待の前では些細なものだ。 「いえ…… 後で、詳しく教えます……」 「そ、そうか……」 ルイズの部屋の前に着く。 僕の心は、いささか弾んでいた。 あの時、ルイズが殺気を放っていたことすら忘れるほどに。 僕らは、部屋のドアを開けた。 鬼がいた。 「随分と、機嫌良さそうじゃない。ご主人様にあれだけふざけたまねをしておいて……」 鬼……この部屋の主、ルイズは右腕に乗馬用の鞭を持って、どっかりとベットの上に座っていた。 正直言って、僕らは目の前の少女にびびっていた。 足がすくんで、体中の毛が逆立ち、全身が凍り付いた。 胃が痙攣し、胃液が逆流してくる。 反吐をはく、一歩手前だ。 「勿論、覚悟は出来ているわよねぇ……」 底冷えがするような声だった。 「「HOLY SHIT! ヤッバアアアイイ!」」 「待ちなさぁ~い!」 結局、あれだけゼロゼロと連呼したことで、僕と才人は3日間の飯抜きを宣告されたのだった。 チャンチャン♪ To be contenued…… 戻る
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ドスッ!! 「な・・・」 (くっ・・・ガキどもに紛れているとは・・・心臓をやられてしまったからリプレイできねぇ・・・ 後少し…後少しで…ボスの手がかりが掴めると言うのに・・・俺は・・・終り・・・か・・・) 死により意識が遠のく寸前、誰かの声が聞こえてきた 「まだやれるさ、アバッキオ」 「?なんでオレの名を・・・・・・・知っているんだ? ・・・あんたは・・・・!!そうだ!!あんたはッ!! あんたはオレがワイロを受け取ったせいで撃たれて殉職した・・・・・・・!! 」 「アバッキオ お前はりっぱにやったのだ。私が誇りに思うぐらいにね。そしてお前の真実に『向かおうとする意思』は あとの者たちが感じとってくれているさ 大切なのは・・・・そこなんだからな」 「・・・あぁ、だからこそ最後に俺がやるべき任務は終らせる、ムーディブルース!!」 バゴォッ!! (ボスの顔と指紋だ・・・後は・・・任せたぜブチャラティ・・・ジョ・・ル・・・・ノ) 新たな進むべき道を選択したブチャラティ達を水平線から消えるまで二人は佇んでいた。 「・・・もういいのか?アバッキオ」 「…ありがとうよ、あんたが俺を支えてくれたおかげで俺はあいつ等にボスの手がかりを渡す事ができた…」 「いや…私は何もしてないさ、私はただきっかけを与えただけに過ぎない」 「そうか・・・んじゃ行くか」 「あぁ・・・ん?何だこの鏡?」 「あん?」 突如殉職した警官の前に現れた銀鏡、それを見た瞬間俺の中で「これは…ヤバイ」とアラームがなった。 「下がれっ!!」 警官を掴み自分の後方に投げつけた瞬間、鏡は行き成り進路を変えアバッキオを飲み込むように包んでゆく。 「なっ、アバッキオ!」 「来るなっ!!あんたも巻き込まれるぞ!!…チッ、やっぱギャングだから地獄逝きだな…」 「アバッキォォオオオ!!」 そして無重力の空間かのように体の感覚がおかしくなり・・・俺の視界は闇に閉ざされた・・・ 空は晴天、風は特に無し。ピクニックにはちょうどよい天候であった。 そんな中、トリステイン魔法学院の2年生たちは各々が召喚・契約した使い魔たちを自慢しあっていた。 ……ただひとり、ルイズ・フランソワーズ(中略)・ヴァリエールを除いてだが… 少々頭が寂しくなってる頭を持つ中年の男性が本日最後の召喚儀式を行う者の名まえを読み上げた。 「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 「はい!」 はきはきとした声でピンクの髪の少女が返事をした。 その声とは正反対に周りのギャラリーとしている少年少女たちは 「おっ、とうとうゼロのルイズの番だぜ!」「また爆発だろうな…」 「せっかく召喚した使い魔をすすだらけにしたくないから下がってよっと」 「逆に考えるんだ失敗しないルイズはルイズでは無いと」 …少女は少しこめかみをピクピクさせたが、すぐ気を取り直し呪文を唱えた。 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン 「…またか…」「まぁ何時もどおりと言えばそれ以上でもそれ以下でもないな…」 「Oh,my god 僕の使い魔がすすだらけにぃぃぃいい」「もうここまで来ると…ブラボー!おお…ブラボー!!」 周りの少年少女達はルイズが魔法を使うと爆発が起こるという事を非常識を常識としていたので、 焦らず普段どおり嘲笑の言葉を次々と爆発の張本人に送っていった。 (…どうして…どうして爆発だけなのよォオオオ~~~~~~~~ッ!!) ルイズは心の中で絶叫していた。まいどまいどの事とは言え初歩の初歩であるサモン・サーヴァントにまで失敗 …成功率ほぼ100%と言われるこの呪文にまで失敗する…私は魔法が全く使えないの運命だろうか… と深淵の底まで落ち込みながら「死にたくなった。」と言う誰かの幻聴まで聞こえ出し、目の前をぼーぜんと見ていると、 ふと周りのギャラリーの「あれ…?何か煙の中にいる…?」とつぶやきが耳に入った。 爆風によって見えにくくなった視界だったが何かの影がある事に気づいたので、 目を凝視してみると段々と煙が晴れてきその影…いや人影が倒れていた。 何か卵の殻のような帽子を被っている。 煙が完全に晴れるとルイズはゆっくりとその人物に歩いて行き見下ろしてこう言った。 「あんただれ?」 「あんただれ?」 「あ・・・?・・・ここどこだ?天国・・・ってわけじゃなさそうだな」 目の前にはピンク色の髪をした少女ってかガキがいた。 周りを見渡すとローブを羽織った怪しいガキども、頭のてっぺんがつるつるな中年の男 そしてわけわからん生物…まるでナランチャがフーゴに読んでくれってねだっていたファンタジーって光景だな・・ (まぁ、フーゴが仕方なしに諦めて読もうとして「何でファンタジーって言いながらSFの本持ってくるんだよ! このど低脳がぁあああ」とプッツンしてた気もするが・・・) ガキがよく読む絵本のような光景が俺の前に広がっていた。 「質問に答えなさいよ!」 「うっせぇなぁ…ちったぁ落ち着けや、何なら茶飲むか?」 「へ…平民風情の分際で貴族にそんな物言いする気!!」 「貴族に平民だぁ?」 周りの空気と建物的にヨーロッパのどっかのド田舎って感じだと思ったが、貴族やら平民やら… 時代錯誤もここに極まりって奴だな・・・ 「ん?待てよ、何で俺生きてるんだ?」 さっき俺は死んだと思ったのに銀鏡に吸い込まれた事により生き返った…?新手のスタンド使いにしちゃ 殺意が無いうえに、何故俺を生き返らすんだ…?それとも…罠…にしてはここまで移動させる意味が無い… と俺が考えている間にピンク髪のガキは中年のおっさんの方に 「ミスタ・コルベール!」 「何だね?ミス・ヴァリエール」 「再召喚させt「ダメだ」 「・・・まさかあの平民と契やk「神聖な儀式だからやり直しは認めない」 「「・・・」」 ・・・何か知らんが口論は終ったようだ・・・ ピンク色の髪をしたガキは俺をかなり恨めしそうな目で睨んでいるが知ったこっちゃ無い。 「感謝しなさい、平民が貴族にこんなことされるなんて一生ないんだから」 そんなえらそうな態度で言われても感謝できねーっつの 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 反射的に体をねじらせピンク髪のガキのキスを避ける。 「何で逃げるのよ!」 「何でキスしようとするんだ!!」 「だってあたしが召喚した使い魔だから契約しないといけないんじゃない!!」 「あん?って事はお前が俺を呼び出したって事か?」 「そうよ!!だからおとなしk「分かった」 「聞き分けいいわね・・・んじゃ「何を言ってるんだ、俺は帰らせてもらうぜ」 「な・・・何で平民の分際で逆らうのよ、第一どうやって帰るのよ!!」 「こうやるんだよ、ムーディブルース!」 アバッキオは構わず自分の分身でルイズをリプレイし始めた。 「な・・・何よこれ!何で私がいるのよ!!説明しなさいよ!!理解不能!理解不能!!」 「説明する気はない、これでさっき俺を呼んだ鏡が出たらそこに飛び込む・・・それだけだ」 周りは突如二人に増えたルイズが居る事が理解できずに沈黙かルイズと同じように理解不能!理解不能!!と叫んでいる。 しかしコピールイズは構わず詠唱する。・・・だがアバッキオは一つのミスを犯していた。それは・・・ 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン ルイズが呪文を唱えると必ず爆発すると言う重大な欠点がある事を知らなかった・・・。 「なぁあああにぃいいいいい!!」 何の脈絡も無い爆発に思わずどこぞの吸血鬼のような発言をしてしまい、爆風に吹き飛ばされてしまった。 (ちっ、まさか爆発するとは、だが早くあの鏡に飛び込まなくてはブチャラティ達に追いつけなくなる。 何で生き返ったかはまだ理解できねぇが…戻ってから考えるか・・・) 速やかに脱出しようとしたが、後鏡まで1mと言う時点で何かが悲鳴をあげながら鏡からアバッキオ目掛けて飛んできた。 「どわぁああああ」 「チッ」 何とかジャンプに成功し、鏡から出た何かをかわし鏡に飛び込んだ・・・と思ったら もう・・・鏡は消えていた。 「クソッ、何だ今出たのは…」 振り返ると…青と白のパーカーを着たアジア系のガキ?がヘッドスライディングしてる…? 何か関わりたくないが一応起こすか、茶で気つけしてやりたいがここだとさすがに作るのはまずい。 本当ならケリ入れたいが・・・平手打ちで起こすか… 「お~ぃ起きろ~」ペシペシ 「うぅ・・・ん?ここどこだ?」 「ん~…一応あいつらの会話聞く限りトリスティンって所らしいが…ところでお前の名前は?」 「あっ、俺の名前は才人、平賀才人って言います」 あぁ、またここに被害者が追加されるとは何て運命・・・ マルコリヌ 2回目の爆発時にキュルケに盾代わりに使われ重傷 再起可能 ギーシュ 2回目の爆発時に気絶したモンモラシーを人工呼吸と言う名目で服を脱がそうとした所で モンモラシーの目が覚め袋叩きにされ重傷 再起可能 To Be Continued →...
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「船長! 左舷後方に船影です!」 「ありゃこっちと同じ、貨物船だな。こんな時間に出会うとは、珍しい」 「どういうこと?」とルイズが会話に割り込む。 「出航する時に言ったとおり、風石ってのはえらく高くつくもんでしてね。風石を多めに 使っても構わない程の、よほど貴重な荷を運んでるんでもないと、こんな時間にこの辺り を船が通る訳がねえんですよ」 「なるほどねえ」 「ま、あっしらがここにいるのは、あのおっかねえ姐さんに脅されて無理やりなんで、風 石の不足分は何とかしていただきますぜ。でないと全員仲よくお陀仏ですからな」 「そりゃ大変よねえ」 「ですから早いところ、あのメイジの方を起こしてもらって、風の魔力の方を一つ……」 その肝心のメイジが水のトライアングルだと知ったら、この男はどれだけ慌てるだろう 。思わずバラしてしまいたくなる衝動に耐え、ルイズが本題に入る。 「そっちの方はうまくやるわよ。そんなことより朝食はまだなのかしら?」 「朝食って、さっき喰ってた肉じゃ足りないんで?」 そもそも勝手に喰うんじゃねえッ、とツッコミたかったが、そこは抑える。あのガンマ ンも怖いが、この傭兵の傍若無人さも、侮ったら痛い目を見ると本能が告げている。 「成長期なのよ」 『そうだぞルイズ、まだまだこれからだ。諦めるんじゃあない』 さすが実体を持たないポルナレフ! 常人には決して口にできない事を平然と言っての けるッ、そこにシビれる! あこがれるゥ! 空気を読めないのはむしろ特技だ。 「!」 ルイズが放った突然の凄みを、こいつは喰うといったら喰うスゴ味がある! と勘違い した船長が諦めたように言った。 「ちっ。また適当に見繕って済まして下さいや」 「そうさせてもらうわ。じゃあね」 何を諦めるなだってェ? とかなんとか、ぶつぶつ呟きながら船倉へ降りて行く、若い 傭兵を眺め、船長はやれやれとため息をついた。 「後方の船は、当船との併走コースに入るものと思われます」見張りからの報告が入る。 「そうか、この辺もそろそろ物騒な領域に入るからな。二隻で組んで行けるなら、それに 越したことはないだろう。砲門の数も倍になるしな」ちらりと笑みがこぼれる。 「よし、向こうもそのつもりだろうから、確認しておけ」 「あいあいさー」 船長の推測は道理である。しかし残念ながら、この状況は既にその埒外にあり、強引な 四人の乗客が予想して期待した、そんな展開を迎えようとしている。 「なんと言ってきた?」 「いっしょにあるびおんにいこうね。だそうです」 訊いた男の引きつった顔面に、獣の笑みが浮かぶ。コートの内にある鉄棒を布地越しに さする。いいぞ、とてもいい。 「で、ど、どうしますんで?」怯えきった声の男が問う。ルイズたちの船に追いつこうと している貨物船――身を軽くして急げと、全ての荷は捨てられているが――の、船長であ る。たまたま、そこに船があったというだけの理由で、この凶相の傭兵に徴発された、運 の悪い船の、運の悪い男だ。 「よろしくです。とでも言ってアレの横に着けろ。追いついたんだ、ここからはゆっくり でいい」 「へ、へい」あたふたと、船員に指示を出す。 手旗を振っている船員を眺めつつ、手下どもの待つ船室へ向かう男。その二つ名は白炎 という。 船ごと燃やして落とせとの指令だが、それじゃあつまらん。最後の一人が燃える匂いま で嗅いでやるのが、礼儀ってもんだ。特にあの女、あれは存分に抗いながら、いい香りで こんがり燃え尽きてくれそうだ。ああ楽しみだ。 「おうお前ら、仕事だ」 酒場での戦闘に参加させなかった十数名の傭兵、全員がメイジである部下たちに告げる 。どいつもこいつも、ろくでなしの貴族崩れだが、人殺しの経験だけは買える。おまけに 、死んだらカネで補充できる。さして高くもないカネで。こんな任務にはおあつらえ向き だ。 「いいか、焼いていいのは俺だけだ。殺す方は好きなだけ楽しめ」 「了解」 さあ戦だ。敵も味方も、存分に死ね。 「来るわよ」 朝食の干し肉を噛み千切りながら、王女の傭兵が主人のいる船室に入って報告する。二 日酔いでえらく不機嫌な姫が、気だるげに手を振る。もう一人は反射的に戦闘から離脱し てしまって、少し気まずい思いのアニエス。船の確保は果たしたとはいえ、状況から見れ ば同僚を戦場に捨てて逃げたと、思われても仕方がない。 「それは、この頭痛を晴らしてくれるくらいには、楽しめるのかしらね」 「さあどうだか。で、どうします? またわたしがこう、がつんがつんと」 「で、殿下! この場は何卒わたしにお任せを!」いささか切実な口調で懇願する。 「その呼び名は禁句ですよ、アニエス」 昨晩の安酒場で王女を云々と叫んでいた事など、さっぱり記憶にないアンリエッタが叱 咤する。 「まあ、それはともかく。わたくしがひと暴れする前の露払い、努めてもらいましょうか 」 「はっ、決してご期待には背きませぬ」 『おいおい。いいのかね、あの姉ちゃん行かしちゃって』 『いやいや、あの子はあれで侮れない実力があると見るぞ、私は』 元剣士の見立てだろうか、やけに自信のありそうな分析をするポルナレフ。かたやデル フは未だアニエスに握られたことがないので、その実力がどれほどか、その肝心なところ を知れないのが不満らしく、否定的だ。 「どうだかねえ」 「何だとコラ。わたしの腕が当てにならないと吐かすか!」 「あんたに言ったんじゃないわよ! って。そうよならないわよ! あんた昨日の――」 「やめなさい。仲よくしないと、わたくしが許しませんよ」 「ちっ」 「なな、何だその態度は! 畏れ多くもッ」 騒ぐ二人をぎろり、と睥睨するあらくれ。その瞳はもはや、高貴な光を湛えていない。 「……月夜の晩ばかりじゃないぞ」 「……あんたこそ、またブチのめされたくなかったら――」 猛る狂犬どもを従える面倒臭さにため息をついて、拳骨を二つくれたのち、王女は甲板 に上がった。 二隻の船が並ぶ。眼下に雲、天上に太陽。傍からその風景を見る者があれば、ちょっと 絵にでも描いてみようかと、思うかも知れない。 「行け野郎ども!」 「行くわよ!」 しかしそこで始まるのは戦だ。どちらかが必ず惨めに敗北する戦だ。 まるで開戦の合図があったかのように、二隻の船の船室から同時に飛び出す傭兵ども。 かたやわらわらと傭兵の群れ、こなた銃と剣の使い手が一人、と、杖を振り回すメイジが また一人。 「空賊だったっていうのか! この空域で、あの貨物船が?」 「船長! 鉤ロープで捕獲されました! 離脱不可能です」 「くそうっ。何なんだまったく。昨日から散々だ!」 とにもかくにも死んだら終わりだ。船員に一切の抵抗を捨て、状況が納まるまでどこで もいいから亀のように引っ込んで、決して動くなと指示を出す。そしてとても嫌そうに、 乗り込んできた一団の、首領とおぼしき人物へと向かった。もちろん、降伏をするために 。 「邪魔だ!」 両手を上げて甲板を進む船長を蹴り飛ばした、アニエスが怒鳴る。両手に銃把を握り、 双眸をギラつかせている。目標は殿下の覇道に転がる石ころ、容赦も慈悲も必要ない。連 射性能の望めないこれが有効なのは、初弾の二発。これを速攻で敵の首領にブチ込む。残 る雑魚共は剣で殲滅する、これで任務完了だ。このわたしの前に立ったこと、後悔させる 暇さえ与えない―― 必中の手応えを確認し、では残党を狩り尽くしてやるかと、火傷顔からその取り巻き共 に視線を移して甲板を蹴ろうとした瞬間、予想外の衝撃がその身体をブッ飛ばす。半身を 襲う、ぶすぶすと肉の焦げる臭い、尋常でない激痛が骨の髄まで轟く。 「なん……だと……」燻る右半身を反射的に上にひねって倒れながら、既に倒したはずの 男に視線をやり、その身体に血飛沫の一つもないことに絶望した。ありえない、そんな規 格外の暴威、銃弾すら凌駕する魔力だと、何だこれは。で、殿下ッ、この男は危険です。 わたしがすぐに参りますから、この男に近づくのは…… 「わたくしの盾に瑕をつけてくれたようですね」 部下の無残を前に毛ほども揺るがない、平静そのままの声でアンリエッタが高らかに宣 告する。執行が決まった死囚へ告解を施すような表情だ。神の執行代理人として裁定者と して、これから行うことが救済であると、行われなければならない断罪であると、覚悟を 求める顔だ。 「焼き応えのない姉ちゃんだったな。匂いがもの足りねえ」 「なればわたくしが、その炎を消して差し上げなければ参りませんね」 「できるか? やってみろ。受けてやる」背後の部下に向けて怒鳴る。「この女とサシの 勝負だ、邪魔をして俺の機嫌を損ねるんじゃあねえぞ!」 何しろ火線上にいた、というだけの理由で味方ごと、黒焦げの死体にした事のある男の 命令だ。誰だってわが身は惜しい。まあどうせすぐに終わるさ、と詠唱を中断して傭兵た ちはしばしの見物を始めた。 対峙する二人の背後に現れた、アルビオン大陸。『白の国』の形容そのままに、流れ落 ちる川の流れが霧と変わり、雲となり大陸を白く煙らす。氷の憤怒を纏う水の王女が、そ の力の根源を呼びながら進む。 「消し炭にしてくれる!」叫ぶ声が小さく、遠く聞こえる。 水の鎧を絶え間なくその身に現し続け、火の傭兵へと歩を進める。業火が踊っている甲 板を弛まなく歩む。一歩、足が触れるごとに、その周辺の炎が力を失い、掻き消える。ル ーンを刻む口唇が嘲るように歪んでいく。万人を鎮め、万物を水平に至らせる我が水の力 、侮るでない。 「『火』も『水』も無駄ッ!」その声と杖が放たれた瞬間、辺りの炎、その全てが霧散し た。 「なるほどたいしたもんだ」絶対の自信の源であった炎を無効化されたというのに、不敵 な笑みを浮かべたままの男がほざく。「火と水、相性が悪いとはいえ、この俺の炎を消し てみせるとは。だがな、魔法が効かないなら、効かせてやることもできるんだぜ」 杖代わりの鉄棒をすっと引き、構える。 「その杖を叩き落しちまえばなあッ!」 アンリエッタの手にする杖を、その身体ごとなぎ払わんと鉄棒が振るわれる。当たれば 杖は折れるだろう、細身の身体も無事では済まないだろう、当たれば。 「ぐお」杖を手放したのは、果たして傭兵の方だった。絶妙の払い流しが鉄棒の軌道を変 え、空振り甲板を打たせる。そこをすかさず巻き落しにて逆に捻ったのだ。どれほど力が 強くとも、関節の稼動域を超える作用に逆らうことはできない。間、髪を容れずアンリエ ッタの腕がしなり、その先の杖が腕部の急所――手首・肘・肩口――を突く。 相手の杖が甲板に転がるのを見やり、詠唱を開始する。技と力を封じられた傭兵の顔色 が褪めていく。ありえないことが二度続いたのだ、無理もない。 「……燃やしてやる……こんな現実は燃やしてやるよ……」棒立ちの傭兵から呟きが漏れ ている。少し、目が虚ろだ。 「跪け!」詠唱の完成と同時に杖を振り下ろし、命令を下すアンリエッタ。既に決してい るように見える勝負、しかしこのアンリエッタ容赦せん! とばかりに水の魔法が振るわ れる。水球が傭兵の頭部を丸ごと捕らえ、息を奪う。哀れな男がごぼごぼと息を吐き出し つつ倒れ、悶える。その姿を感慨もなく見下ろし、振り返る。「船長?」 「へ、へい」甲板と大砲の間に押し込まれた格好で震えていた船長が、恐る恐る顔を覗か せる。 「この男を拘束してもらえるかしら?」 「いますぐやりますですハイ」いつのまにか、立っている空賊が一人もいなくなっている ことに驚き、慌てて部下たちを呼び集め、指示を出す。ようやく水球から開放された男は 、おとなしくぐるぐる巻きにされている。苦しげに水を吐き出しながら。 「さて」縛られて転がる男に再度、杖を向けて問う。「そなたの炎、なかなかのものと見 たので欲しくなりました。わたくしに従うのであればその命、買い上げましょう」 苦しげな動作で頭を垂れ、肯定の意を示す男。ここで殺せなどと強がったら、一体どん な殺され方を味わうはめになるのか、想像もしたくない……。 「よろしい。その炎、以後はわたくしの為にのみ、揮いなさい」 火と水の戦いの間。船尾から隣の船に乗り移ったルイズは、ただ一つの動作に没頭して いた。休めの姿勢で見物に興じる傭兵どもの背後にまわり、ポルナレフに教わった、人体 を即死に至らしめる一点、腎臓に刺突を繰り返す。 「腎臓を中心に捉えて……刺す、腎臓を中心に捉えて……刺す、腎臓を中心に捉えて…… 刺す」声には出さず、そして声もなく苦痛もなく絶命する傭兵。簡単すぎて少し呆れなが ら―― だるそうな足取りでアニエスを引きずって、船室へ向かうアンリエッタの許に、一仕事 終えたもう一人の盾が歩み寄る。 「ありゃ、もう片付いちまいましたかい?」小刀の血糊を拭いつつ、軽口を叩くルイズ。 「ふふ、すっかり傭兵の口調が板についてますのね。ああ、あの者を雇うことにしました から、殺してはいけませんよ」と、空いた手を後ろの甲板で倒れ伏している傭兵に振る。 「そりゃ、まあ。って姉御!」 精神の消耗が限界に到達したアンリエッタが、膝をついた格好でアニエスをルイズの腕 の中に押し込み、崩れ落ちる。 『いい根性だ。この姫様には『黄金の意志』があるぞ、ルイズ』 「知ってるわよ。だから――」 何かを回顧するように、遠い目であらぬ方を見つめている、左手のポルナレフを振り回 しながら船室へ向かう。全開で死力を尽くした姫を、寝かせてやらなくては。アニエスは 床でいいか。つうかこいつ、服が焦げたくらいで終わっちまったのかよ。そんで主君に連 れられてご帰還とか、超へタレなんじゃないの? 二人をそれぞれ安置して、甲板で困惑顔の船長に声をかける。「どう? 生きてる?」 それが他の船員も含めての問いだと気づいた船長が答える。 「へえ、慌てて転んで足をくじいたのやら、小便を漏らしたのやら、みっともない次第で すが全員生きてますハイ」 それはよかったと頷き、焼け落ちた何枚かの帆を張りなおして、操船を再開させるよう にと命じると、舷側を蹴って隣の船に移った。 傭兵の死体をおろおろしつつ見つめている船員の肩を叩き、船長の所在を訊ねる。戦闘 が始まった拍子に一目散、船室へ駆け込んでそれっきりだそうだ。 「やれやれ」これならあっちの船長の方が十倍マシだわ。 船室のドアにはご丁寧に錠まで下ろされている。もう馬鹿にした笑顔満点のルイズが『 アンロック』を行う。もちろんそれは魔法ではなく、どちらかというと蹴りだ。 外開きのドアを無理やり内に蹴破って、船長らしき男を捜す。あ、あれだ。隅の暗がり に頭を抱えてうずくまり、尻をこちらに向けている男、あれに違いない。 「おい、おっさん。あんたが船長だろ?」尻に蹴りを入れるルイズ。 「ひゃい、い、命ばかりはお助けをー」 「ごろつきどもは始末した、もう死なねえから起きな」尻に蹴りを入れるルイズ。 「へ? た、助かったんですか?」 「ああそうだよ。だから起きろって」尻に蹴りを入れるルイズ。 安心より、尻を蹴る脚から逃れようと、よろよろと立ち上がる船長。貧相を絵に描いた ような顔の五十男が、卑屈な笑みを浮かべる。股間には特大の染みをこさえている。げ、 まさか濡れたとこ蹴ってないよな。ルイズは自分の船の船長の評価を、この男の五十倍に 修正した。 「あたしらはあっちの船の傭兵だよ」そういうことにしておくのが楽だと決めたルイズが 、靴に異常がないか確かめつつ言った。 「傭兵の方でございましたか、このたびはまことにありがたく――」 「まあ、それはいいからさ。この船はどこに向かう予定だったんだい?」 「ロマリアでございますです。積荷は捨てられてしまいましたが」 「へえ、それはよかった」そう、よかったのだ。ロマリアはアルビオンより遠い。風石も たくさん積んでいる。二隻でアルビオンに辿りつくのも可能だろう。いざとなればこの船 の風石を頂いて、アルビオンに向かう予定だったのだ、沈まずに済んだのは運がいい。 何がよかったのか理解できないでいる船長に、「いいからとりあえず船を動かせるよう にしな」と、やることを与えてやり、ルイズは自分の船に戻った。 「喜べ船長、予定通りに風石が届いたわよ」 「なんですと?」 すっかりメイジの魔力で浮力を補うとばかり、思い込んでいた船長が仰天した。そもそ もついさっきまで、拿捕されたり、降伏しようとしたり、魔法戦が始まったりと訳の判ら ない展開ばかり。その上お次は襲ってきた船が風石を届けにきてたって? 「で、ではあのメイジの方は……」 「疲れて寝てる。ちなみにあの姐さんは水のトライアングルだから」 「じゃ、じゃあ、あの船が」と指さし、「あの空賊どもがくるのを判ってたんで?」とさ らに混乱した船長が尋ねる。 「空賊じゃなくて、ごろつきどもに乗っ取られたんだけど、そんなところね。いきなり船 に火を放たれなかったのは、運がよかった。というか、あの大男の趣味が悪かったのがよ かった、そんな感じ」 「もう、なにがなにやらですよ」 「ま、あんまり考えない。悩むとハゲるわよ。風石の方は任せたからね」 仲間の元へ戻っていく傭兵の背を眺めながら、船長がひとりごちる。 「しかしまあ、一難去ってまた一難、それも終わっちまえば、もう何にもないだろうさ」 ――しかしそうは問屋が卸さない。悪いことのあとに良いことが待っているというのは 、そうなるといいな、という願望に過ぎない。 船内に平和が戻って半刻ほど経った頃だろうか。 「せ、せ、船長! 空賊です! また空賊です! 右舷上方!」 船を見ればそれ空賊と、すっかり思い込んでしまった見張りが叫ぶ。まったくこのこし ぬけどもが。俺はもう何がきても負ける気がしねえよ、この船の武装に敵う奴らがいてた まるか。 そんなヤケクソの境地に至った船長が、見張りの示す方向を見上げてつぶやいた。こり ゃまた、今度は軍艦かよ。砲門がずらっと並んでやがる。でもなんだ、どうせ乗り込んで くるんだろ? ご愁傷様だね。 「あの船は旗を掲げておりません!」ほらな。 「ようし、さっきと同じだ。停船して隠れちまえ。あ、隣の船にも伝えておけよ」 きびすを返し、傭兵たちのいる船室へ向かう船長。その顔には隠し切れない諧謔が現れ ていた。 「また出ましたよ。今度は軍艦ですよ」と船長が声をかけ、返事を待たずに船室へ入る。 あーあ、もう。何て緊張感のない人たちなんだ、まったく。 「起きて下さいよう」ゆさゆさとルイズの肩を揺する。 「んが」 「船長が起きろってよー、軍艦だってよー」と床に刺さった剣が喋る。 「もう……食べられないよう……」 「姐さーん、敵ですよー」と船長。 「姐さーん、敵だってよー」と剣。 「どうしたら起きてくれるんですかい、このお人は?」と、今度は剣に向かって船長。 「そうだねえ、大砲でもぶっ放せば起きるかもね」と剣が答える。 と、そこで実にタイミングよく、外から轟いた砲弾の音。ぼごん! その音が傭兵たちの何かのスイッチを入れたのだろう、ぐわしと眼が見開かれ、がばと 起き上がる二人、そして文字通り飛び起きる一人。 「なっ!? 寝たままの姿勢! 掌だけであんな跳躍を!」船長がぶったまげる。 「敵は何? 何人?」着地と同時に剣をつかんだルイズが船長に訊く。 「ぐ、軍艦でさあ、人数はいっぱいです!」 「あ、あれ? わたしさっき焼かれて……」五体満足に床から立ち上がったアニエスが首 をかしげている。 「わたくしの盾ですからね、治しておきましたよ」とアンリエッタ。 「おお、殿――ぐあっ」言いかけたアニエスに、笑顔で肘を叩き込むアンリエッタ。 「それはともかく、軍艦とはまたご大層な。まあよいですわ、手土産をもう一つ増やして 差し上げましょう」 「と、とにかくお願いしますよ!」まだ外の方が安全で平和だ、と察した船長が甲板に走 って消える。 「んじゃまたわたしが、こう、ずばんずばんと」と意気込むルイズ。 そこに羞恥で顔を染めたアニエスが割り込む。 「こここ、今度こそ、私めにお任せを!」 「無理じゃね?」鼻をほじるような声でルイズ。 「ば、馬鹿を言うな! 先ほどは少しばかり油断しただけだ!」 「まあまあ姐さんたち、ここは一つ協力し――ぐあっ」仲裁空しく豪腕パンチを食らうデ ルフ。 「ルイズ、アニエスもこのままでは浮かばれません、先陣は任せましょう」 『そうだぞルイズ、アニエスが可哀相だ。たまには――』空を切る右腕、ポルナレフは痛 くも痒くもない。 「ちぇっ、姉御がそう言うならそれでいいですよ」 「さ、お行きなさい。期待してますよ」 「ありがとうございます! で……姉御! いざ!」先の不様を反省したのか、銃を放り 出し、剣を抜いて甲板に走るアニエス。 「空賊だ! 抵抗するな!」とメガホンから空賊が怒鳴っている。 「どおりゃああ」と掛け声も勇ましく飛び出したるは王女の盾、アニエス。しかしその瞬 間、アニエスの頭が青白い雲で覆われた。アニエスは甲板に倒れ、寝息を立て始めた。 「眠りの雲……、確実にメイジがいるようだな」半笑いで冷静に状況を見るルイズ。 「……っ」こらえている、こらえているアンリエッタ。 「ありゃ。あそこで寝られたらちょいと厄介じゃないの?」デルフも冷静だ。 『うーん、あの子はやればできる子だと思ってたんだがなあ』ポルナレフは同情している 。 「しかたねえ、少し様子を見ますか姉御?」 「そ、そうねっ……っ」まだ何かをこらえている。 「船長はどこでえ」 おとぎ話の挿絵から抜け出たような、呆れるほど典型的な装いの、空賊の頭らしき男が じろじろと辺りを睥睨する。眼帯を巻いているので片目で。 階段の影からその様子を眺めていたアンリエッタが、予想だにしなかった、新たな方向 からの衝撃により、絶頂に達してしまったようだ。 「プッ ウヒヒヒヒヒヒヒ!! ハハハハハハハハーッ!」 腹を抱え、もう完全に無防備で爆笑を続けながら、空賊の頭へ向かうアンリエッタ。 そんな妃殿下の姿を唖然とした表情で見送るルイズ。空賊たちも同様だ。 「もうだめだ………こいつ、完全にイカれちまってるぜ……」 一人は眠らされ、一人は爆笑しながら頭の肩を叩いている。どうしたらいいんだオイ。 「フハハッ クックックック ノォホホノォホ……ホ、ひょっ、ちょっとあなた、こちら へいらっしゃい。ウヒ」 「な、なんでいおめえは」この容姿にも背後の軍艦にも動じることなく、俺の肩をばんば んと叩いて爆笑しているこの女は何だ。何がどうなってる。もしかしてこの格好、変なの かな……。 そうこうしつつも、ぐいぐいと腕を引っ張られ、船室に連れ込まれる頭。いいからいい からクックッフヒヒヒとまだ笑うアンリエッタ。困惑の極みながら、ルイズもついていく 。 首領を椅子に座らせ、呼吸を落ち着けるアンリエッタ。 「ぶ……っ、くはあ」よほど腹筋を酷使したのだろう、腹を押さえる表情が苦しげだ。 「何なんだと訊いている!」 「か……」 どうにか半笑いまでに回復したアンリエッタが頭に告げる。 「風吹く夜に」 「なぜそれをっ!」 「水の誓いを、ってこちらがわたくしの台詞よね。お久しぶり、ウェールズ・テューダー 」 「なんですと」ルイズが思わず突っ込む。このコスプレ野郎が皇太子だと。ありえん。 懐から鮮やかに青く光る指輪を取り出して、指先でくるくる回してみせるアンリエッタ 。 「しかし、君がなぜここに。そもそもまるで面影がないではないか」 「三年も経れば女は変わりますわ。あとは少しの変装で目を欺くなど容易いこと」 髪を煤けた金に染め、眉を細く酷薄な形に整え、鈍い色の口紅を差す。彼女が顔に施し たのはそれだけである。むしろその本質はその下、その豊かな双子の霊峰を、あらゆる方 向から締めつけ持ち上げ覆い、その造形を輪郭を一片も損なうことなく、遍く強調する黒 革の服だ。その拘束から唯一逃れるは中心に輝く丸窓から覗く峡谷、白磁のような透明感 と流水の滑らかさにて彩る絶景、漆黒と乳白が対照の妙を示す。闇の中のまたたく光だ。 老若男女を問わず、その威容を目にすれば、彼女の印象のほぼ全てはそこに集約される 。曰く、とんでもない谷間だった、と。顔の方は精々、おっかなかった、かな? という 程度で完結する。ちなみに、その更に下には膝上二十サントの短い、非常に短い黒革のス カートを纏い、腰にはゴツく太いベルトを無造作に巻いている。これはまたこれで、好事 家には垂涎の的になること請け合いだ。 「しかしあなたのそれは傑作ですわね」と、また発作がくるのを抑えつつ、アンリエッタ が言う。 「そうかな? 自分ではわりとよくできてると思うんだが」 「どれだけ装おうとも、あなたのそれは隠しきれませんわ。片方を塞いでいればなおさら です」 「こ、この眼帯がいけなかったのか?」 「眼帯をしている男がいたら、開いた方の目をどうしても注視しまうものです。そして、 そこにあるのが『王子様の瞳』では。これはもう笑ってしまいますわ」 「ううむ、やはり君には敵わないな」 「さあ、それを外してわたくしの美男子を見せて下さいな」 眼帯をアンリエッタに取り上げられたウェールズが、かつらを外し、べりべりとひげを はがす。美……美形だ! 「ああウェールズ。そうよ、そうでなくては……」 甘ったるい展開が始まりそうな予感に、ルイズは船室から逃げ出した。 ぽかんとした空賊たち、手を挙げるかどうか決めかねて困ってる船長、すやすやと眠る アニエス。ぐるぐる巻きの大男。ああもうしょうがねえなあ。 「船長、船を出す準備をしな。そんでお前ら、『王子様』はうちのボスと乳繰り合ってる から、ま、そういうことだ、元の仕事に戻りな。んで、起きろねぼすけ、オラ」アニエス に蹴りを入れるルイズ。 その言葉に目を丸くした空賊が訊ねる。 「え? あっしらの正体が割れちまったんで?」 「その喋り方ももういいから、ほれ、とっとと国に帰るんだよ」不機嫌そうにルイズが応 える。酒だ、今日はもう飲むぞ。 「皇太子が空賊の真似事とはねえ、いやあ、おでれーた」 『返り討ちにあって捕らえられたり、死んだりしたら、どうするつもりだったんだろうな 。国を滅ぼしたヴァカと、歴史に名を残してしまいそうなものなのだが……』 「うるさいわねもう。明日は戦争なんだから、今日は飲むのよ!」 担ぎ下ろした樽の蓋をデルフリンガーでこじ開け、杯をごぼりと沈めてワインを汲む。 穏やかな陽光の下、舷側を背に酒盛りを始めたルイズ。結果的にとはいえ、命を救われた とあって咎める者はいない。むしろ賞賛の目をちら、と向ける船員もいる。年齢で比べれ ば、この船の一番若い船員とルイズがどっこいであり、しかも女。そんな彼女がばったば ったとメイジの傭兵どもを切り伏せて見せたのだ、さもありなんである。 「ぷはあ、いい汗かいたあとの酒は格別!」 『しかしまあよく飲むな、私の祖国の連中といい勝負だ』 「フランス、だったわね」 『ああ、世界一のワインを醸す国だ。もっとも、この世界のワインを試したことがないの で、どちらが上かは判らないが』 「わたしがフランスのワインを確かめるわよ、いつかきっと」 『そうだな。君となら行けそうだ』 「姐さん! その時にはもちろん俺も一緒だよな!」 「そりゃ、杖を持たないで行ったら格好がつかないしね」 「ひゃっほー」デルフはとても嬉しそうだ。 『しかしデルフ、あっちの世界で抜き身の刀を背負っていたら、即、逮捕だぞ』 「心配すんなって相棒、その頃には姐さんも、もでる並みの立派な身体になってらい!」 「何よそのもでるって?」 「いやこれが相棒から聞いたんだけどさ、あっちの世界にはこう、すらっとした長身の超 絶美人たちが最高級の服を纏って、舞台を練り歩いたり本の表紙を飾ったりする仕事があ るんだと。しかもそれがそこいらの貴族なんぞより、がっぽり稼いでるっていうじゃねえ か!」 「ふうん、仕事にも色々あるのね」満更でもなさそうだ。 「いま十六だろ、姐さん。あと二・三年もすりゃ、凄いぜ。俺には判るね」 『秀逸な身体能力、鋼の精神、類いまれな食欲。私も同意する、ルイズ、君は伸びるぞ。 まさにあらゆる意味で』 「ちょ、何だって今日はそんなに褒めるのよ、何も出ないんだからね!」 「そりゃまあ、ほら。見ちまったからな。姐さんの『覚悟』を」 『敵と認めた奴ばらを、完膚なきまでに殲滅するのと同時に、味方、いや『敵ではない』 者の全てを決して傷つけさせない、その『覚悟』、尋常には身につかない黄金の煌きを、 見てしまった。かつて私が全てを託した男、その精神をすら越えんとする可能性を』 「わ、わたしは本能のままに暴れただけよ! 他の連中が死ななかったのは、運がよかっ ただけよ!」 「でもよ、あの姫さまとガンマンの姉ちゃんだけでここに向かってたら、酒場で全滅、船 に乗る前に全滅、傭兵の来襲で全滅、どう見ても三回は死んでるぞ、この船の船員も含め て」 「し、失礼ね! 姫さま一人だったら誰にも負けないわよ!」 「でもなあ、ほら、あの人は盾とか言ってるわりに、自分より部下の命を優先してるよう に見えるんだけど」ああ、確かにそう言われたら、そんな光景は想像に難くない。 『我々の期待がどうこうではないんだ。英雄を求めるのでもない。君が君のまま、立ちは だかる壁をぶち壊して拓く道を、並んで歩いて見たい。それがいまの私の望みだ』 「それだ! 俺もだぜ姐さん!」 「わたしもよ!」いい感じに盛り上がった雰囲気に押されて、つい。 そしてこの時、この日、三人(?)の心は一つとなった! 「ぶえっくしょっお」ぶち壊しのくしゃみが樽の向こうから炸裂する。うるさい、黙れ、 団体行動を乱すな。そもそもそのぐるぐる巻きをどうにかしろ。 ん? ああ、忘れてた! 傭兵の首領だっけ。炎の男だ。 「おっさん、あんたも飲むかい?」樽に話しかける。口調が傭兵のそれに戻っている。 「どうやって飲めってんだよ!」転がる男、ぐるぐる巻きの男が凄む。 「ああ、その格好じゃあ、辛いよねえ」 「縄を切ってくれたら礼を言うぜ」ぐるぐる巻きなのに生意気だ。上下関係というものを 骨髄に刻んでやらないといけないようね。 「あんたさっき、姉御に忠誠を誓ってなかったっけ?」 「あ、ああ。あれは駄目だ、逆らえねえ死にたくねえ」 「でもさ、あれであの姉御、すげえ手加減してたんだ。王者の技、喰らわなかったろ?」 「王者の技?」 「ああ、肉体言語さ。極められた瞬間に関節が『ありえない方向』に曲がるんだぜ、絶対 に逃れられねえ」 「……なん……だと……」 「でな、その姉御ほどあたしは優しくねえんだ。使えない奴、逆らう奴、反抗的な奴、全 部ブチ殺してきた(嘘)。死体は逆らわねえからな。お前が寸刻でも姉御の背後を狙って みろ。その瞬間が三十二分割に刻まれる経験を味わう人類最初の一人になるぜ(嘘)」 「……くっ、畜生。認めてやる! 認めてやるよお前たちを! だから! 俺を置いて、 仕えると決めた俺を置いて、先に行くんじゃねえ!」 「純情だな。ああ、純情、純真な男だ。おっさん、気に入ったぜ。今日から、おっさんは わたしの部下だ。……そんでおっさん、あんたの名前、何ていうんだい?」 「メンヌヴィル、“白炎”のメンヌヴィルだ。俺の炎は全てを焼き尽くし、そして匂いを 嗅ぐ」 「変態ね」 「ああ変態だな」 『変態以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!』 ついうっかり己の性癖を開陳してしまった白炎が、慌てて取り繕う。 「任務と仕事、それと『身を守る』以外に炎を振るったことはねえよ」 その残忍極まる雰囲気からして、身を守るの範疇が相当に逸脱しているだろう事は、難 なく予想できる。やはりこの男、変態だ。諦めろ、そして受け容れろ。 「まあ、変態でもいいか。あの姉御が見込んで雇ったんだ、役に立つのだけは間違いなさ そうだし」 「おう、使える男だぜ俺は」 「よし、今日からおっさんは“肉焼き名人”のメンヌヴィルだ。こんがり肉Gをたくさん 焼いて貰うぞ!」 「な、何だよそりゃ。俺を勝手に料理人にするな!」 「まあまあ。街に帰ったら高級肉焼きセットを買ってやるから、な?」 「く、くそっ。まあいい、お望みならば焼いてやるよ。俺も肉は食う」 「ようし商談成立だ」そう言うと、傍らに刺さったデルフを抜き、肉焼き名人の戒めを解 除する。 「飲むぞ!」 「おお、そうだな。飲ませて貰うぜ!」 酒宴の続く中、二隻の貨物船と一隻の軍艦がアルビオンを目指す。追い詰められ滅びの 淵にある国へ。明日は戦争だ!
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本日の医務室⇔自室2度目の往復を達成したルイズが凄まじい勢いで部屋に飛び込んできた。 その心中は「酒ッ!飲まずにはいられないッ!あの使い魔のせいで荒れているクソッ!」というところか。 「……さっきから何やってんだオメーは」 「何やってんのはあんたの方よォーーーーッ!決闘でギーシュ殺したって本当!?いや嘘よね!頼むから嘘って言ってぇ~~」 だが、そんなルイズの懇願虚しく 「決闘なんだから始末するに決まってんだろーが」 と1秒足らずでそれを肯定される。 ――――――終わった そう思いながら椅子に力なく座り込む。その姿たるや真っ白に燃え尽きた某ボクサーの如し。 「向こうから決闘を仕掛けてきたんじゃあねーか、返り討ちにして何か問題でもあんのか?」 分かってない、こいつは事の重大さを全く分かってない。 その時ルイズは本気で思った『死にたくなった』と 少し時間をバイツァ・ダスト 学長室に流れる緊張した空気、その原因は当然対峙する仙人もどきと暗殺者だ。 「で、では…私は外に控えておりますので…」 完全にビビりながら半分逃げるようにして退出するコルベール 「さて…お主、ギーシュ・ド・グラモンと決闘をしそれを殺したというのは事実かの?」 「ヤツが売ってきた決闘だ、返り討ちにして問題があんのか?」 「むう」とオスマンが息を呑む (こやつ…メイジを殺害しておいて目に迷いや戸惑いといったものが無いのぉ) スタンドは使い手の精神の象徴とも言われる。 プロシュートのグレイトフル・デッドは体温の上昇差で多少の違いこそあるが老若男女の区別無く『平等』に老化させる。 それが例え貴族や平民であっても一切の例外は無い。 つまりプロシュートにとって身分の違いなどは一切関係なく誰であろうと対等に扱おうとする。 「ヤツはオレを殺そうという『覚悟』があって魔法を使ったんだ… つまりオレに殺される『覚悟』があったという事だぜ?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ (怖っわいのぉ~何なんじゃこのプレッシャーは) 「そういえば、お主ミスタ・グラモンを老化させたと聞いたが事実ならそれちょびっとだけ見せてくれんかの」 手を合わせ拝むように頼んでくるが、さすがに自分の能力を見せるという事に少しながら躊躇する。 ズキュン! が、スデに知れ渡っているようなので花瓶に入っていた花を掴み直で老化させた。 「こんな魔法は見たことないのぉ…見たところ杖も持ってないようじゃしお主メイジでもあるまい」 「側に立つもの、人間の精神エネルギーの具現化でオレがいた世界じゃ『スタンド』っつーモンだ」 「お主、今『場所』と言わず『世界』と言ったな…こことは別の『世界』という事かね?」 「そうなんだが、ルイズに言っても信じやしねぇ イタリアってとこから来たんだが聞いた事ねぇか。他にスイス、フランス、ドイツ、ハンガリーとかがある」 「ふ~む…どれだったか聞いたような気がするのぉ…どいつじゃったか…ドイツじゃった…なんちゃって♪」 ズキュン! 「二度と言わないから老化は止めて、お願い…」 養豚場の豚以下を見るような目で老化を解除するが、老化させたはずのオスマンがあまり変化していなかった事に改めて異世界だという事を再認識させられる。 「そうじゃ、今ので思い出したわい、ドイツじゃ…って本当だから、これ本当!」 「…マジなら詳しく聞かせてもらおうか」 「ちぃっとばかし長くなるが構わんかのぉ?」 構わねーと目で話をするように促すとオスマンがそれを話し始めた。 ―あれは三十年ぐらい前じゃったかの…わしは森に秘薬の材料を採集にしいっておった… 「S.H.I.Tッ!何でこんなところにワイバーンが居るんじゃ!」 とジョセフ・ジョースターばりの走り方で猛ダッシュするのは今より若干若いオスマン。 そして、その後ろからはワイバーンが追ってきていた。 何故こうなっているかというと 秘薬!その素敵な材料がオスマンを行動させていたッ! ―じゃが雪が降っている森から材料を持って帰る時ワイバーンに襲われてしまってな… 「OH MY GOD!何でこんなとこに木の根なんかあるんじゃ!」 全力疾走していただけあって派手に転ぶオスマン。だがワイバーンは遠慮しない。 ―あの時は死ぬと思ってわしも覚悟を決めてたんじゃ… 「どうせ死ぬならピッチピチの娘の胸の中で死にたかったのぉ…」 もう偉大な魔法使いとは思えないような邪心溢れる思考である ―じゃが、わしにワイバーンが襲い掛かる前に爆発が起きて助かったんじゃ 「な、なんじゃあ~!?」 ―周りを見渡すと一人の男が杖のような物を持って立っておった 「ブァッカ者がァァァァァァアアア我がナチスの科学力は世界一ィィィィィ 露助どもの作った生物兵器などどうということはないィィィィィイイイ」 ―奇妙な男じゃった…爆風にフッ飛ばされてるわしに近付いて起こしてくれたんじゃが、後ろからワイバーンの群れが追ってきての… 「寝とる場合かァーーーーーッ!」 男がオスマンを半ば無理矢理起こす。 「スマンのぉ、助かったわい」 「喜ぶのは後だ」 「どういう事じゃ――」 ―あの時は本当に怖かったわい…なにせワイバーンが十数匹も居たんじゃから… だがその男は少しも慌ててなどいなかった…わしを庇うように立ち隠れていろと言ってきたんじゃ… 「フン、うろたえないィィィィィイイイドイツ軍人はうろたえないィィィィィイイ」 男に目掛けワイバーンが殺到するッ! 「そこの木の影に隠れていろ老人ッ!」 ―その男の妙な自信をなぜだか信頼する事ができてわしは迷わず隠れた… 「くらえ!露助の鳥公!30㎜の鉄板を貫通でき一分間に600発発射可能の徹甲弾をッ!!」 ―雷のような凄まじい音じゃった…じゃがその時男に異変が起きた… バギィ! 「何だとォォォォオオオ!物資不足の前線ではロクに整備もままならんかッ!」 ―急に音が止まって男がワイバーンに囲まれたんじゃ… 「聞こえるか…老人!」 ―そうして男がわしにある物を投げ逃げろと言ってきたんじゃ… 「ここはおれがどうにかする…それを持って逃げろ!」 「じゃがお主一人では…」 「フフ…老人と二人でこの数を相手にしても結果は変わるまい おれは誇り高きドイツ軍人!死ぬ覚悟などとうに出来ておるッ!それにそれがあれば一匹ぐらいなら何とかなるッ!」 ―わしは男の言うとおり逃げた… 「人間の偉大さは-恐怖に耐える誇り高き姿にある…か これを言うのは二度目だな…おれもお前の所に征くぞジョジョ!」 ―やっと安全な場所まで逃げたと思ったらあの場所から爆発が聞こえてな… 「自爆システム作動ォォォオオオ!我が祖国よ永遠なれえェェェェエエィッ!!」 オスマンが一息付く 「これがわしが知ってる限りの話じゃ…その男がわしに渡した物は 男が最初にワイバーンに使った杖らしき物と同じでわしらはその爆発を起こした魔法の杖を『破壊の杖』と呼んどる」 「確かに男が何回か『ドイツ』と言ったような気はするんじゃがな」 「オレの世界には魔法の杖なんて存在しねーからな…ま、ドイツっつー単語だけじゃあ判断できねーな」 「さて…本題じゃがお主にはミス・ヴァリエールと一緒に居てもらうぞ なにしろ前例が無い事じゃから王室に相談してみんことにはどうなるか分かったもんじゃないわい」 「もうスデに似たような状況なんだが」 「まぁそう言うな…どうなるか分かったら使いを寄こすからもう決闘なぞせんようにな。もっとも、生徒達がお主に挑むとは思えんがの」 部屋から出る。だが、その時眼鏡の女性とすれ違った。 「失礼します。オールド・オスマン」 「ミス・ロングビルか何かあったかの?」 「…あれが『悪魔憑き』…ですか」 「『悪魔憑き』何の事じゃ?」 「生徒達の間で噂になってますよ。人間の年齢を奪う『悪魔』に憑かれていると」 「なるほど…『悪魔憑き』か…言い得て妙じゃの。して要件はそれだけか?」 「あ、いえ紅茶をお持ちしたんですが一つ余分になってしまいましたね、というわけで二杯飲んでください」 そこには笑顔ながら飲め!という命令を下しているような秘書の姿があり―『死にたくなった』 プロシュート兄貴―「執行猶予中」 二つ名「悪魔憑き」 ←To be continued 『魁!ドイツ軍』 歌:ルドル・フォン・シュトロハイム ドイツ軍人の生き様は 色無し 恋無し 情け有り 戦争の道をひたすらに 歩みて明日を魁る 嗚呼ナチス男意気 己の道を魁よ ドイツ軍人の魂は 強く激しく 温かく 総帥の夢をひたすらに 求めて明日を魁る 嗚呼ナチス 男意気 己の道を魁よ 戻る< 目次 続く
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「ちょっと! さっさと起きなさいよ!」 怒鳴ってはみたものの、男が目を覚ます気配はない。 (勘弁してよ…。私が運ぶの? こいつを? 歩いて?) げんなりする。平民が貴族の前でいつまでも寝ているなんて。 そういえば、コルベールはコイツのルーンを珍しいと評していたが…… (『平民』って時点で珍しいどころの騒ぎじゃないわよッ、ボゲがッ!) 「とに、かく」 ルイズは歩き始めた。『男』の足を引き摺りながら。 ふと、コイツの『名前』が気になった。使い魔には名前を付けなくては、と思っていたが、 平民とはいえ、人間相手に勝手に名前を付けるというのも気がすすまない。 「まったく、この『ドクロヒゲ』……初っ端から、ご主人様に…フゥ」 「迷惑かけるとは、イイ度胸してんじゃーねーの……! ハァ」 「疲れているならワザワザしゃべらなくてもいいだろう」 「そりゃ…そうだけど……」 「いったいお前は何者だ? なぜこんな事をしている?」 「私は…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…よ。 なぜって…アンタが気絶してるからじゃあないの……」 「ならばもう足を離したらどうだ」 「……………………」 (なによコイツ、起きてたんじゃないのさ!) 「ア、アアンタ、いつから起きてたのよッ!」 「ついさっきからだ、そしていい加減足を離せ」 「言われなくても離すわよッ! そして使い魔が命令してんじゃあねーわよッ!」 「使…い魔? なんのことだそれは?」 (使い魔! そんな事もわからないのコイツはッ!) 『使い魔とは何なのか』を男に説明しながら、あらためて自分が召喚したのが 『平民』なのだということをルイズは痛感した。 その後も男はここはどこかだとか色々聞いてきたがルイズは律儀に答えてやった。 挙句の果てには『元の世界に戻る方法はあるのか』なんてわけのわからない事を聞いてきたが それは無視した。 一つわかった事は、コイツには常識が無い事。平民の上に、常識もない。頭が痛い。 「それで……アンタの名前はなんなのよ?」 男は立ち上がるとペコリと一礼をした。 (なによ急にかしこまっちゃって…) 「遅れましたが自己紹介させていただく……… 名は………『リンゴォ・ロードアゲイン』」 「それで…アンタはオレの『雇い主』……そうとって構わないんだな?」 ルイズ達が部屋に辿り着いてリンゴォの放った最初のセリフがこれだ。 「だから…雇うだとかそういったレベルの世界じゃないのよ『使い魔』ってのは!」 半ば呆れた様な口調でルイズは言う。 (結局あの後コイツが名乗ってから部屋につくまで、こっちがさんざ 話しかけてもシカトぶっこいといて、開口一番の発言がこれ!?) ルイズは苛立っていた。 呼び出した使い魔には『忠誠心』というものがまるで感じられない。 (なんで私だけ『平民』なのよッ) いっそ何も出てこないほうがなんぼかマシだったかも知れない。 せめて、忠誠心というものがあれば……。 だが、今更考えてもしょうがない、そう思い直した。 「まあ、とにかく…その辺の話は明日するとして……。 今日は、疲れたから寝るわ……」 そう言いながら服を脱ぎ始める。 「あ、そうだ。アンタも洗濯くらいはできるわよね。という訳で……」 リンゴォに脱いだものを投げつける。 「それ、洗濯しといて。明日ッから早速よ!」 「オレがか?」 「ほかに誰がいんのよ、アンタしかいないでしょ。 何も出来ない使い魔なんだから、せめてそのくらいはしなさいよね」 ルイズの裸を見ながらリンゴォは思った。まるでガキだな、と。 胸ではない、精神が、である。 そしてふと窓を見たリンゴォは、月が二つ有ることに気付く。 (どうやら、本当にここは異世界らしいな) しかしその事を別段問題だとは考えなかった。 前居た所に戻りたいとは思わなかったし、そもそも自分は敗北した死体なのだ。 危惧する事と言えばルイズから感じる甘ったれたにおい。 自分が決闘を挑む事の出来る男が果たしてこの世界にいるだろうか? リンゴォだって年がら年中決闘しているわけではないが、それにしたって 相手が一人もいないのは困る。 目の前で服を着替えるルイズを見てリンゴォはあらためて思う。 (曲がりなりにも)年頃の娘が、使い魔だかなんだか知らないが、今日出会ったばかりの 見ず知らずの男の前で肌を晒している。誘っているなどという気配は微塵もない。 完全に、安全を保証された上での行為だ。そう思った。 本当はそんな保証など無いかも知れないが、少なくともこの少女はそう『思い込んで』いる。 自分で保障したものではない。誰かから与えられた安全だ。それを、『当たり前』だと。 当たり前の世界など、前触れも無く崩れ去ると言うのに。 現にリンゴォの世界は前触れも無く変化した。わけのわからないファンタジーに。 そんなルイズを見るだけでも、ここがどれだけ『甘ったれた世界』なのか知れるというものだ。 リンゴォは貴族に縁が無かった。 リンゴォの生まれた世界にも貴族はいたが、リンゴォの生きた世界にそんな者はいなかった。 だから彼はルイズの放つ甘ったれた悪臭に強い不快を感じていた。 ネグリジェに着替えると、ルイズは布団にもぐりこんだ。 「ふぁ…」 間の抜けたあくびをすると、ルイズは毛布を投げてよこした。 「アンタはそこの床ね……じゃ、朝になったら起こすのよ…」 明かりを消すと、あっさりと寝息をたて始めた。 リンゴォもそれに倣ってさっさと寝ることにする。 視界には月明かりの差し込む窓。 (オレの墓標に名前は要らぬ。死すならば闘いの荒野で……) (そう思っていたのだが……) 望みは、叶わなかった。
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「少年よ、ある種の事柄は死ぬことより恐ろしい…」 闇の底から声が響いていた。 「お前の『肉体』やわたしの『能力』がそれだ………」 闇の一点が蠢き、人の形が現れる。 巨大な男の影、恐るべき力を持った魔人。 「わたしも、おまえも同じだ………」 男の姿が闇に溶け、そして次の瞬間そこには蒼い異形が立っていた。 『 化 物 』 だ ! ! 「……………ッ!!」 育郎が尋常でない勢いで飛び起きる。 「夢か…」 荒い息を整え、右腕の袖を肘辺りまで捲り上げると、そこには爛れた肌が見えた。 青い、そこは人間の肌にはありえない色をしている。 「どうした相棒?」 すぐ傍に立てかけてあった剣、意思を持つ魔剣デルフリンガーが育郎に声をかける。 「デルフ…いや、何でもない」 「そうかい?のわりにはうなされてたぜ、相棒」 服の袖を戻し、目を閉じて先程の夢を思い出す。 「悪い夢さ…」 「ねえルイズ、貴方の使い魔なんか変じゃない?」 ミセス・シュヴルーズの授業中、キュルケがひそひそとルイズに話しかける。 「別に普通じゃない?ていうか、何であんたがそんな事気にするのよ… まさかまだあいつの事狙ってるんじゃないでしょうね?」 「あら、まさか私がそんな簡単に諦めると?」 「なんですっムガ!?」 ルイズの口が、ミセス・シュヴルーズが杖を振って出現させた赤土によって塞がれた。 「ミス・ヴァリエール、授業中に大きな声を出してはいけませんよ。 そもそもむやみに声を張り上げるのは、淑女としても褒められたものではありません」 怒られるルイズを、ニヤニヤしながらキュルケが見る 「淑女失格ですってよ、ミス・ヴァリエール。貴方の胸とおんなじね」 「ムガー!!(なんですってー)」 「ミス・ヴァリエール!」 「ムガ……」 しゅんとするルイズの様子に、教室にどっと笑いがおこる。 「はいはい、みなさん静かに、静かに! ハァ…まったく、少しはミス・ヴァリエールの使い魔を見習いなさい」 その言葉に、何人かが教室の後ろに立っている育郎を『何で平民なんかに?』 という目で見る。 最初の授業の一件以来、ミセス・シュヴルーズは礼儀正しい育郎を気に入り、 このように授業中騒ぎが起こった時には、何かと引き合いに出すのだった。 当の育郎はその騒ぎをよそに、今日の夢の事を考えていた。 「『化物』か…」 夢に出てきた男について考える。 名前も知らない男だったが、忘れることの出来ぬ相手だった。 「………」 授業を受ける魔法使い達を見る。 あるいはあの男がこの世界に生まれていたらどうなっていただろう? 受け入れられ、ごく普通の人生を過ごすこともできただろうか? 周りの使い魔たちを見る。 見慣れた動物もいるが、地球には存在しない異形の生き物もいる。 しかし、それは地球で生まれた育郎から見た話であり、この世界で彼らは、 唯そういう生き物であるというだけだ。 自分が今ここで『あの姿』になったら、この人達は自分をどう見るだろう? 珍しい生き物ぐらいに思うだろうか? だがその『力』を見たら? 「きゅるきゅる」 気付くとキュルケのサラマンダー、フレイムが心配そうな顔でこちらを見ている。 (やめよう…考えても仕方の無い事だ。 あの力を使えばルイズにも迷惑がかかる。使わないに越した事は無い) しゃがみこみ、フレイムの頭をなでてやる。 「ありがとう、大丈夫だから」 「きゅる…」 「ムガ…」 ルイズがミセス・シュヴルーズにばれない様、そっと後ろを振り返ると、育郎が フレイムの頭をなでているのが見えた。 「ムガムガ(なによ、キュルケの使い魔なんかと仲良くして…) ムガムガ(キュルケが変とか言うから、具合が悪いのかと思ったじゃない)」 そう思うと何故か怒りがこみ上げてくる 「ムガムガー!(というかなんで私がそんなこと心配しなきゃいけないのよ!) ムガー!(先生に怒られたし!)」 「ミス・ヴァリエール、授業に集中しなさい!」 「ム、ムガ…(す、すいません…)」 「親父…今何してやがんのかな…」 そのころデルフリンガーは、一人ルイズの部屋に取り残された寂しさからか、 武器屋の親父の事を思い出していた。
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「レスピンジェレ(断る)」 「……はぁ?」 「聞こえなかったか?レスピンジェレ(断る)と言ったんだ」 話は多少前に遡る 「――でアンタの名前グレイトフル・デッドでいいの?」 不意に己のスタンドの名を呼ばれ警戒態勢に入るプロシュートだが思い当たる節があったのでそれを解く。 「……プロシュートだ」 「?アンタさっき『名前は?』って聞いた時そう言ったじゃない」 「オメーには関係ねぇことだ」 ここが自分が居た世界とは別の場所だと頭では理解していたが心のどこかでまだ信じきれないでいたプロシュートであったが 夜空に浮かぶ2つの月を見てそれを認めざるをえなかった。 「ここが魔法の国でオメーがオレを召喚し、ここがメイジとかいう貴族に支配されてるって事も分かった」 魔法を使えるメイジが貴族としてこの国を治めているという話を聞いたプロシュートだったが 彼に言わせてみれば『学院とやらで学べる以上メイジが貴族なんじゃあなく貴族がメイジで魔法を使えるヤツを管理して平民とやらを支配してるっつー事か』である。 「それでオレが聞きたいのは元の場所に帰れるかって事だ」 「無理よ… サモン・サーヴァントであんたを呼び出したのは私。 だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ…」 一瞬怒りの表情を露にするプロシュートだがブチャラティに列車から叩き落され地面に激突しそうになった事を思い出しそれを隠す。 (……認めたくはねぇがオレはこいつに命を救われた『借り』があるって事か) 「……それで使い魔ってのは何をすりゃあいいんだ?」 「平民を使い魔にしたなんて聞いた事無いもの…アンタでもできそうな掃除、洗濯ってところかしらね」 ここで時間が戻り冒頭の「レスピンジェレ(断る)」である。(ちなみにこの間僅か0.5秒) 「使い魔に拒否権なんてあると思ってるわけ?」 「そうなってくるとオレとしては脱走し資金・食料を得るためにどこかの貴族の館に押し入りそいつの家のベッドの上には見知らぬ老人の死体が転がってるって事になるな」 「……何が言いたいの?」 「使い魔の手柄は主人の手柄、使い魔の不祥事は主人の不祥事と言ったのはオメーのはずだぜ?」 「使い魔が貴族を脅迫する気!?」 昼間見せたこの男の不可解な能力を思い出しルイズが声を荒げる。 「交渉…と言ってもらいてぇな」 そう言い放ちプロシュートがルイズを見据える。 (こいつ…平民のくせして…でもこいつからはやるといったらやるという…スゴ味があるッ!) 「使い魔は主人を守ると言ったな、ならそれでいいじゃあねぇか。オレがオメーを『護衛』してやる」 「メイジやモンスター相手にそれがきるっていうの?」 「できねぇならできるなんて言いやしねぇ」 「……分かったわ、でも人が沢山居る場所であんな物騒な事しないでちょうだい」 何とか雑用という自分には全く向いてない仕事からは脱する事はできたが、護衛という任務に対し心の奥底で苦笑いをする。 (ボスの娘を奪おうとしていたオレがその娘と同じような歳の女を護衛する事になるたぁな) 「さて…いろいろあって疲れちゃったから寝るわ」 「それは構わねぇがオレは何処で寝りゃあいいんだ?」 ルイズが無言で床を指差し毛布を一枚投げつけてくる ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「な、何よぉー」 プロシュートから発せられる妙なプレッシャーにルイズが押される。 「フン」 それだけ言うとプロシュートが毛布を使い壁に背を預け目を閉じ眠りに入る。 プロシュートが眠りに入ったのを確認するとルイズも安心したのか眠っていった。 薄暗い闇が世界を覆う。 その闇の世界の中心にプロシュートが立つ。 (何処だ…?ここは) 辺りを探ろうとし体を動かそうとするが動けない。唯一動かせるのは首だけだ。 だが闇に目が慣れてくると自分の周りに何かある事に気付く。 (アレは…ソルベ、それにジェラードッ!?) ホルマリン漬けにされたソルベ、猿轡を喉に詰まらせ窒息して死んだジェラード、ボスに殺されたはずの二人の死体がそこにあった。 唯一動かせる首を動かし周囲を探るプロシュート、だがその行為も彼を驚愕させるに足る物を発見させるだけのことだった。 (ホルマジオ!イルーゾォか!?) つい先日ブチャラティ達に挑み敗北していった仲間達 そして彼の網膜に彼にとって信じたくないもの、認めたくないものが映る。 (バカなッ!?ペッシ…!メローネ…!ギアッチョ…!) バラバラに解体されたペッシ、舌を毒蛇に咬まれ絶命したメローネ、首に鉄棒を生やし倒れているギアッチョ。 そして彼の前にプロシュートが最も信頼していた人物が立つ。 (リゾットか!?これは一体どういう―――) だがリゾットも体中に銃弾を撃ち込まれ倒れていく。 (く…一体どういう事だッ!?) 周囲に散らばるチームの仲間達の死体、だがそのかつての仲間達の死体の目は全て等しくプロシュートに向けられている。 あまりともいえる光景に思わず後ろに下がろうと力を込める、だが体は動かない。 そうしている間に後ろから誰かに肩を掴まれる。 (何だとッ……!?) 首を向け後ろを見る、だがその目に映ったものは――――ボロ雑巾のように成り果てた己の姿だった。 この世界に入ってから唯一の音が聞こえる。それも自分の声でだ。 幽鬼のように立ち己の肩を掴むもう一人の自分から オメーハイッタイナニヲヤッテイル?――と もう一人の自分から滲み出るようにして現れる己の分身、無数の眼を持つ異形の悪魔―グレイトフル・デッドが自身の首を掴もうとその手を伸ばす。 己のスタンドが持つ最も威力がある攻撃『直触り』がプロシュートを襲おうとした。 「うおぁあああああああああッ!!」 飛び起き周りを確認する、異常は無い日が昇っている事以外は昨日と同じだ。 心臓の鼓動が早い、呼吸も荒い、立ち上がりスタンドを出す。 変わりない何時もと同じだ、何時もと同じように己の傍らに立つグレイトフル・デッド。 「夢……だと……?」 (あいつらがくたばる夢なんぞ見るなんて冗談じゃあねぇ!) あのしぶといヤツらがそう簡単にやれるとは思ってはいないが、あの夢はリアリティがありすぎた。 そのリアリティさがプロシュートの心に一抹の不安を残す。 「んふふふ……ざまぁみなさいキュルケぇ~」 不意に気の抜けた甘ったるい声がプロシュートの耳に届く。 その声の主に近付く。どんな幸せな夢を見ているのか知らないがモノスゲー笑顔で眠っているルイズがそこに居た。 「……起きろ」 一言声をかける、だが帰ってきた返事は 「そこに土下座すれば許してあげてもいいわ…zzz」 自分はこれ以上考えられないぐらいの悪夢、それに対しこいつはのん気に幸せそうな夢を見寝言までもたれている。 正直に言う「ムカついた」 近くにあった枕をルイズの顔に被せる、無論口と鼻が隠れるようにしてだ。 椅子に座り様子を見る。 5秒後―特に変わりなし 10秒後―少し動き始めた 15秒後―少し痙攣している 20秒後―「苦しいって…言ってるでしょうキュルケェーーーーーッ!!」 少しだけ笑いながらプロシュートが「起きたか」とルイズに言う。 「あれ……夢?」 (……キュルケを使い魔にしてたのに何で途中からアイツの胸に押し付けられて死にそうになんのよ!) 勿論、コンプレックス丸出しの夢を見た原因が枕で口と鼻を押さえられてたという事に気付く由も無い。 ボーっとした目でプロシュートを見ているが酸素が供給され脳も起きたのだろうが不意に 「服」 と言い出した。当然プロシュートには何の事かさっぱり分からない。 「何の事だ…?」 「着替えさせて」 「そのぐらいテメーでやりやがれ!」 「使い魔なんだから身の回りの世話もするのが当然でしょ?」 これ以上言っても無駄だと悟ったのか渋々着替えさせる。 ただ一つ、ほんの小さな声で 「マンモーニが」 という言葉を残して。 戻る< 目次 続く
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まるで鮮血で染まったかのような紅い空で、二つの影が、同じく二つの月をバックに対峙していた。 一つの影は、シルフィードを駆るタバサ。 そして、もう一つは右手に杖を握り、フライの魔法で浮遊するルイズであった。 普通ならば、このような対比は有り得ない。 何故なら、フライの魔法で飛行していると、他の魔法を使う事が出来ず、戦闘では的以外の何者でも無いからだ。 しかし、ルイズは違った。 フライの魔法で空を飛んでいた所で、今の彼女にはホワイトスネイクが居る。 生半可な魔法など、その両の手で叩き落し、接近戦であるならば、通常の人間以上の動きで攻撃を仕掛けてくる。 さらに、その手は頭部に触れると問答無用で対象の『記憶』をDISCとして引き出し、魔法すら奪う、悪魔の手だ。 近づけば負ける。 だが、それは反面、近づかなければ負けないと言う事でもある。 フライの魔法は空を飛ぶのに確かに便利であるが、風韻竜である自分の使い魔には速度と移動距離、共に劣っている。 さらに言えば、向こうはフライで飛んでいる限り、接近戦しか出来ないが、こちらは魔法を遠距離から唱えられる。 相性的に言うのであれば、自分達は敵に勝っている。 しかし、タバサは心の底から湧き上がる不安感を拭い去る事がどうしても出来なかった。 「ウオシャアアアアアアアアアアア!」 獰猛な毒蛇を思わせるホワイトスネイク独特の声と共に繰り出されるラッシュは、ルイズの元へ飛来してくる氷の矢や空気の塊、風の刃を全て叩き落す。 今の所、ルイズにダメージはゼロだが、それは向こうにも言えた事。 攻撃を叩き落しながら、シルフィードを追いかけているルイズであったが、向こうのスピードは自分のフライの速度よりも速く、このままでは何時まで経っても追いつく事が出来ない。 追いつけなければ、自分のホワイトスネイクを、あのクソ生意気な眼鏡の顔に叩き込む事が出来ないのだ。 (空中戦じゃあ勝ち目が無い! でも、だからってどうすれば良いの!?) 二度目であるはずのホワイトスネイクの戦闘運用であるが、効率的な運用方法がルイズの頭には浮かんでこない。 戦いとは、装備やそれを使う者の能力も必要であるが、最も重要なのは経験である。 何時、何処で、どのようなタイミングで繰り出すのが効果的なのか。 戦闘のセンス、或いは。戦術的な戦い方。 それらを鍛えるには、戦いの中で、自分で学び取るしかない。 一度目の戦いの時は、そんなものは必要無かった。 ホワイトスネイクは相手のワルキューレの何もかもを上回っていたし、勝負自体も一瞬で片付いた。 しかし、その一瞬で片付いた所為で、ルイズは戦いにおける経験を、まったくしていない。 模擬戦すら、まともに行っていないルイズには、諸事情により、ちょっとした百戦錬磨になっているタバサの相手は荷が重い。 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」 タバサの詠唱が空に響く。 先程の氷の矢では無く、一回りも二回りも大きい、氷の槍。 蛇のようにシルフィードを回るその槍が、一直線にルイズへと襲い掛かる。 「ホワイトスネイク!!」 「不可能ダ」 あのサイズともなると、完全に弾くのは無理がある。 元の自分の性能なら可能だろうが、ルイズが本体となってから、ホワイトスネイクの破壊力は一段階下がっている。 無理を悟ると、ルイズはフライの魔法を切り、朱色の空から落下する。 その後を追うジャベリンに、キュルケのDISCから引き出した炎が喰らいつく。 外面は一気に気体にまで昇華させたが、芯は、まだ形を保っている。 「弾きなさい!!」 右腕を振るい、小さくなった氷の槍を弾く。 しかし、魔法による串刺しは免れたが、目の前まで迫った地面による死が間近に迫っている。 フライ、否、間に合わない!! 「なら、浮きなさい!」 フライよりも詠唱の短いレビテーションにより、墜落死の運命を書き換える。 だが、浮かぶ事しか出来ないレビテーションは、フライなどよりももっと、もっと簡単に当てる事の出来る的であった。 「来ルゾ!!」 二本目のジャベリンが、ルイズの身体に風穴を開ける為に、放たれる。 冗談じゃない。こちとら、嫁入り前なのよ、 すでに地面に近かった為、レビテーションを切り、地面へと着地する。 そして、ありったけの魔力を込めた火球をもう一度、ジャベリンにぶち当てた。 ジュウウウウと言う耳に残る音と共に、結びつきを無くす氷達は、芯すら残さずに空気中へと拡散する。 そうして拡散した水蒸気は、霧雨のようにルイズとホワイトスネイクを取り囲む。 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」 そして、紡がれる詠唱。 その詠唱にルイズの頬が引きつった。 この呪文は、確か空気中の水蒸気を凍らして、氷の矢とする呪文……即ち――― 「チェックメイト」 タバサの無機質な声が、終わりを告げる。 ルイズの周囲を囲む水蒸気が、一瞬にして50を優に超す数の氷の矢に変質し、目標へと一斉に放たれた。 キュルケは走っていた。 いや、片足を引き摺り、動く度に口元から溢れ出る朱色ののものを拭う彼女は、予想以上に歩みが遅く、彼女は走っているつもりでも、他人から見ると歩くよりも遅く歩を進めていた。 顔は苦悶の表情しか表さず、動くだけで激痛を彼女が感じている事を物語っている。 だが、止まらない。 否、止まれない。 「すっごい……わがままなのよ……私はっ!」 紅い液体と共に吐かれた言葉は誰に向けたものなのか。 少なくとも、自身では無い。 キュルケは、基本的に良い奴と言う認識が、学園ではされている。 勿論、その明け透けな性格から恨みを買う事も多いが、友人間の間では広く信頼され、頼りにされている。 だが、キュルケ本人は自分の事を、すっごい我侭な奴と思っている。 自分は、自分のしたい事しかやっていない。 誰かを好きになったから、その人と愛を語り、誰かが困っているなら、自分が相談に乗りたいから相談に乗る。 元にあるのは全て、自分の意思。 これを、我侭と言わずなんと呼ぶのか。 キュルケは、くすりと微笑みと血を口元に張り付かせる。 今だってそうだ。 あれだけ拒絶され、殺されそうになるぐらいに恨まれている娘に自分は会いに行こうとしている。 あの娘らしく無い。 ただそれだけを戒め、そして出来ることであるならば、また共に歩きたいと思うが為。 言ってしまった言葉は戻らない。 やってしまった行動は覆らない。 「だから……どうしたって……言うのよ」 そんなことは知っている。 だから、どうした!? 覆らないのならば、戻らないのならば、償わなければならない! そうだ……向こうにそんな気が無くたって、私は、私は!! 「私は……あの娘の味方でありたい―――!!」 最後まで絶対に諦めない!! 周囲を囲む50を超す氷の矢に、ルイズの思考は一瞬停止する。 頭に浮かぶのは、氷の矢で串刺しになり、屍を晒す自分の姿。 それがあんまりにも、おぞましくて、ルイズはその運命に抗った。 「アァァァァアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!」 天を轟かさんばかりの咆哮と共に、ホワイトスネイクの腕と足が、ルイズを中心に四方八方へと繰り出される。 拳打と蹴打の結界。 限界を超えんとばかりに振るわれる四つの衝撃の前に、氷の矢は次々に塵芥へと還っていく。 その数―――10―――20―――30―――40―――44!! 44も守りぬけた事を褒めるべきなのか、それとも、完全に守りきれなかった事を貶めるべきなのか。 ホワイトスネイクの拳が44個目を砕いた時、続く45本目がルイズの右肩を貫いた。 「あぐっ!」 スタンドのダメージが本体に伝わるように、本体のダメージもまたスタンドへと伝わる。 ルイズの右肩のダメージにより、右腕を使用できなくなったホワイトスネイクの結界に綻びが生じる。 46、47本目を砕くが、48本目が今度は、ルイズの横っ腹を直撃した。 同時にホワイトスネイクにもダメージが伝わり、動きが一瞬停止してしまった。 後は、もうどうにもならなかった。 なんとか頭部へと覆い被さる事で、本体の頭へと矢が刺さる事を阻止したが、それ以外の場所には余す事無く矢が突き刺さる。 「――――――ッ!!」 もはや、声すら出なかった。 殺到する氷の矢は、強姦魔の如く、少女の身体を自らの身体を持って陵辱する。 穿った場所から滴る血は、氷の矢が纏う冷気により、瞬時に固まり、無用に血で彩るのを禁止する。 それは、一つの彫刻であった。 少女から生える、無骨な氷の長躯。 彩るは、鮮血の朱色と桃色の細糸。 黒のローブを地とするそれらは、見る者にある種の感動すら沸き上がらせるだろう。 まだ幼き少女を、その彫刻へと変えた蒼の少女は、自らが駆る竜から降り、地面へと降り立った。 蒼の少女は、竜に何事かを伝えると、竜は僅かに頷き、空へと消えていく。 それを確認してから、少女は右手に杖を握り締めながら、ゆっくりと口を開いた。 「復讐に我を忘れ、力に酔った貴方は……危険」 それは果たして、桃色の少女にだけに向けた言葉だったのか。 蒼色の少女が、桃色の少女を見る目は、まるで自分の末路を見るように、絶望に彩られている。 復讐の失敗者を処断する、復讐者。 その、あまりの憐れさに、蒼色の少女は絶望していた。 絶望していたが……油断はしていなかった。 彫刻と化した少女から漏れる僅かな呼吸音。 驚くべき事だが、あの少女は、全身を氷の矢で貫かれていながら、まだ生きているのだ。 おまけに、その絶え絶えな息は、規則的では無く、少女が今だ意識を保っている事をタバサに告げていた。 「このまま、貴方を生かしておく訳にはいかない」 もし、このまま彼女を生かしたままとすると、彼女は間違いなくタバサの前に立ち塞がるだろう。 自らを傷付けた、その代償を貰いに―――――― 今回は、辛くも勝利したタバサであるが、次がどうなるかは分からない。 いや、今回のような真っ向勝負になるのなら、まだ良いが、日常に、あの白い使い魔が牙を剥いて来たとしたら…… ルイズを生かしておく事に、メリットなど存在しなかった。 「完全なるとどめを……刺す……」 他の学生達と違い、ある事情から自国の厄介事を請け負っているタバサは、人を殺した経験も勿論あった。 初めてで無い事に躊躇いなど存在しない。 ただ、ルイズを殺したら、キュルケと、これまで通り友人してやっていけなくなるであろう事を考え、それだけが胸に僅かな痛みを抱かせた。 (…………ごめんなさい) 心の中で友人に謝罪し、詠唱を始めようとした時、ルイズの身体が小刻みに振動し始めた。 「――――――くっ―――くくっ―――クククッ―――ク――――」 笑いを必死に噛み殺しても、噛み殺しきれない笑いが喉を、身体を揺らしている。 その認識にタバサが至ったと同時に、杖を握っていた右腕に激痛が奔る。 焼き鏝を直接当てられたかのような痛みの原因は、地面から伸びる青銅の剣。 鉄よりも柔らかいが、肉を断つには、まったく問題無いそれが、タバサの右腕に突き刺さっているのだ。 咄嗟に呪文を放とうしたが、今度は槍が地面から生え、杖を弾き飛ばす。 「あは―――あはは―――アハハハハハハハハハハハハッ!!!」 そんなタバサを、ルイズが哂いを噛み殺すの止め、耳元まで裂かんばかりに口を開き、禍々しいまでの嘲笑を持って、見つめていた。 その顔に苦悶は無く、まるで痛みすら感じていないようである。 「不思議かしら? あんな串刺しにされながら、呪文の詠唱を終えていた事が? んっ?」 ルイズの言葉に、タバサは耳を貸さない。 確かに疑問はある。 あんな傷だらけの身体では、痛みによって詠唱の為の集中など出来ないであろうに、彼女は自分が降り立つまでに錬金の詠唱を終えていた。 それは、つまり、あの串刺しの最中から詠唱をしていた事に他ならない。 「私のホワイトスネイクは『記憶』をDISCとする。 そして抜かれたDISCの『記憶』を失う。 これはその応用なんだけど、『痛覚』を『記憶』DISCにして抜いた訳よ。 痛覚さえ無ければ、痛みで詠唱の集中を邪魔される事も無かったわけ」 耳を貸すな……あれは、優越から来る油断だ。 今、この状況を打開するには、この油断の最中しかない。 考えろ、考えろ、考えろ。 この状況を打開する手段を。 「正直、あんたがここまで頑張れるなんて思わなかった。でも、それもお仕舞い。 ホワイトスネイク! あいつのDISCを私の手に!!」 傷だらけの白い身体が、歩き始める。 ルイズの元から離れ、ゆっくりとタバサの方へと。 「怖がる事は無いわ。 あんたの場合は、『才能』も『記憶』も両方奪ってあげる。 苦痛なんて無い……だから安心して、眠りなさい」 謳うように諦めろと言うルイズにタバサは、僅かに口に動かす。 「――――――――――――」 「何? 何か言い残す事でもあるの?」 遺言ぐらいなら聞くわよ、と言うルイズに、タバサは確りと首を振り 「遺言では無い。もう十分と言った」 確りした口調でそう言った。 「もう十分? 何、もう十分戦いましたとでも言いたいの?」 「もう十分引き付けた。後は貴方の仕事」 タバサの言葉に答えたのは、風を切り裂くブレスの轟音であった。 「風竜!? そんな、今まで何処に!?」 ルイズは知る訳が無い。 頭上でブレスを吐いたその竜が、すでに絶滅されたとする風韻竜であり、その身を今まで先住魔法により、空と同化させていたなどと。 いや、知っていた所で、これからの結末を変える事など彼女には出来なかった。 「ぐっ、ぐぐぐぐっ―――!」 無理矢理に身体をブレスの着弾点から移動させようとするが、彼女の身体の足は、すでに足として機能できないまでに壊れている。 例え、痛覚が無くなっていたとしても、壊れているモノは動かない。 頼みの綱のホワイトスネイクも、タバサの近くへ行っている為に間に合わない。 「――――――――――――――――――あっ」 今まで立っていた事が奇蹟のルイズの身体は、無理矢理に動かした事により、 ゆっくりと地面へと倒れ落ちようとしていた。 このまま倒れ落ちたら、多分、死ぬ。 いや、倒れなくても、このままブレスの直撃を受けて…… そこまでルイズの思考が辿りつくと、その先は、もうゼロだった。 何も考えられない。 何も考えたくない。 無我の境地と言えば聞こえは良いが、それは、現実を拒否する者の至る所。 忘却の果てのゼロに至ったルイズは、ぽかんとした顔で自分を完膚無きまでに 破壊するブレスを見上げ――― 「ルイズ!!」 何処か懐かしい、赤髪の少女に突き飛ばされた。 「そうして……君は“此処”に辿りついたと言う訳か…… ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 何もかもを委ねたくなるような、壮言な響きにルイズは、顔を上げた。 そこには、柔らかそうなキングサイズのベッドに身体を横たえ、ワイングラスを片手に大きな本を読む半裸の男が居た。 何者だろうこの男? いや、それよりも、此処は一体? 「“此処”において名などあまり重要では無い そんなモノで分類できるものなど、存在しないのだからな。 まぁ、それ以上に、私にとって名前は、意味は無い。 所詮、今の私は、君のスタンドの『記憶』から作り出された残滓なのだからな」 人の考えを読むように、疑問に答えた男は、僅かにワイングラスを傾け、それを口元へと運ぶ。 「そして“此処”だが……“此処”は君の中だよ、ルイズ」 私の……中? 「正確には、君の中に居るホワイトスネイクの『記憶』と 君の中の『才能』により、復元された『世界』だ」 どういう意味? 私の才能? それに世界って…… 「本来、ホワイトスネイクは『記憶』を扱う能力しか無い。 だが、あるスタンドと融合する事で、人々を天国へと到達させる存在へと成る。 あぁ、そんな怪訝そうな顔をするな。天国と言っても精神的なものだ。 何も、全ての者を死に絶えさせる存在じゃあ無い。 特異点へと加速をし『ゼロ』へと至る、そのスタンドの名を 『メイド・イン・ヘヴン』と呼ぶ」 そこで、一拍置き、私の理解できない頭を余所に男は話を続ける。 つうか、さっきの質問の答えにまるでなって無いわよ。 「天国へと至る為に、最も必要なのは特異点へ『ゼロ』へと至る事だ。 何故ならば、時の加速は、『ゼロ』に対する引力によって行うからであり、その場所に至らなければ、天国を実現することなど夢のまた夢」 さっきから『ゼロ』『ゼロ』『ゼロ』腹が立つんだけど…… と言うか、あんた、一体何が言いたいの? 「済まなかったな。では簡潔に言うとしよう。 ルイズ、君にはすでに天国へと至る準備が整っている。 特異点であるはずの『ゼロ』を内包し、天国へと至った『記憶』を持つホワイトスネイクを従える君には、辿り付けるはずなのだよ。 我々が望んでやまなかった。全てが『覚悟』を元に、運用される、天国に……な」 言っている事が訳分からないし、まぁ、でも、なんというか…… あんた……私に何かやらせる気なの? 「私がやらせる訳では無い。 全ては引力により、動いている。 人が誰と出会い、誰と恋し、誰と殺しあうのか。 全ては引力により決定され、我々にそれを変える術は無い。 その術を持つのは、『始まりから終わり』を持っている君だ。 君だけは、どんな世界であろうと『運命』の束縛に縛られる事は無い。 故に、君が天国へと至るのであれば、それは君の意思によるモノだ。 なぁに、難しく考える事では無い。 残念だが、今の君ではまだホワイトスネイクすら完全な性能で扱えていない。 今は成長の時だよ、ルイズ。 友と競い、学びあい、談笑しろ。それが君の精神を高め、スタンドを強める鍵となる」 …………私に……そんな相手なんか…… 「果たしてそうかな? 忌み嫌う相手だとしても、少し見方を変えるだけで、違って見えてくる。 私もそうだった。見下し、忌み嫌っていた相手が、無くてはならない友であることに気が付いた。 今では、もはや彼と私は文字通り、一心同体だがね」 ………………………………………………………………………… 「さぁ、目覚めるが良いルイズ。 君にとって必要な友を助けるか助けないかは、君が判断すれば良い」 ……助ける? 私……誰を助け………… ――――――ルイズ!!―――――― …………キュルケッ!! なんで!? どうして、私なんか…… 貴方の才能を奪って『ゼロ』にしたのは、私なのに……どうして!? 「それが友と言うものだからだ…… さぁ、もう行くが良い。それと、このホワイトスネイクに残滓として残っている『世界』を君に預けよう。 どうせ、『記憶』に過ぎない私には扱う事など出来ないのだからな。 もう、僅かな力しか残っていないが、相応しい持ち手にDISCの選定者である君が渡してくれたまえ……」 男はそう言うと、私の頭に、自分の頭から取り出したDISCを挿し込む。 すると、ベッドしか無かった空間に靄が掛かり、少しずつ何もかもが消えていく。 そうして、全てが消えたと同時に、私の頭は、この出来事すら忘れて現実へと帰還していった。 「キュルケッ!!!」 ルイズは、自身を突き飛ばした赤髪の少女の名を叫ぶ。 自身を呼ぶ声に気付いたキュルケは、ルイズへ微笑み、最後に鮮血で真っ赤に染まっている口元を動かす。 ――――――ごめんなさい―――――― それが謝罪の言葉であると理解した瞬間、ルイズの頭を血が駆け巡る。 もうキュルケのすぐ傍まで迫ったブレスが、彼女を吹き飛ばすのに、後一秒も掛からない。 一秒……それで十分だ。 何が十分なのか良く分からないが、とにかく十分だとルイズは感じていた。 その感覚は、吐き気を催す程の不快さをルイズへと与えてくるが、それに耐え、ルイズは、自分の身体に宿る、ホワイトスネイク以外の何かを『発動』させた。 キュルケは死を『覚悟』していた。 無論、自分には、まだまだ先があり、これから先、もっと生きていたいと言う欲求は確かにあった。 しかし、その欲求は、目の前で今にもブレスでバラバラにされそうな少女を見殺しにしてまで叶えたい願いでは無かった。 穴だらけのルイズを突き飛ばし、自分もブレスの着弾点から離れようとしたが、 すでにホワイトスネイクに踏みつけられた事で負傷をしているのを、鞭を打って移動していたキュルケの身体は、最悪のタイミングで限界を迎えてしまった。 先程のルイズと同じように崩れ落ちる身体。 ふと、キュルケはルイズと目が合った。 色々と言いたい事はあったが、この一瞬で伝えられる事は限られている。 だからこそ、彼女は、心の底からの謝罪の言葉を口にした。 「ごめんなさい……」 残念ながら、満足に口が動かず発音は出来なかったが、なんとか伝わってくれただろうか。 そんな疑問を胸に抱きながら、キユルケは死を受け入れようと目を瞑り…… 凄まじい衝撃音を耳にした。 あぁ、自分は死んでしまった、とキュルケは感じた。 あの物凄い轟音は、ブレスが着弾した音で、自分はその着弾点の中心でその音を聞いている。 (死ぬ時ぐらいは、もっと静かに死にたかったと言うのに……耳を塞げば、聞こえなくなるかしらねぇ) ルイズを助けた事で、何も思い残す事は無くなったキュルケは、何時も通りのノリに戻り、他愛も無い考えをつらつらと考えていた。 (お迎えは、まだかしらねぇ……と言うか、あの世に良い男って居るのかしら?) まぁ、あの世なんだから、良い男ぐらい居るでしょ、と自分で自分の疑問に答えたキュルケは、なんというか、違和感を感じ始めていた。 死んだはずだと言うのに、なんというか、痛い。 ルイズの使い魔に、踏みつけられた背中と、たぶん中身のどれかが潰れた腹の中が、もの凄く痛い。 (何よ! 死んでも痛みって感じるなんて、ちょっと! どう言う事よ!?) そんな理不尽な文句を、誰とも言えぬ誰かに言っていたが、 何者かに身体を抱き起こされる感覚に、キュルケは閉じていた目を開く。 そこには、桃色の髪を血で紅く染め上げた少女が、泣きそうな顔で自分を見つめていた。 ―――ルイズ……なんで?――― 疑問を口にしたかったが、声が上手く出ない。 それでも、ルイズには伝わったのか、自分もボロボロな癖に身体を持ち上げ、なんとか立ち上がらせてくれる。 そうして、見えたきた光景にキュルケは目を丸くした。 自分のすぐ横、その地点が、滅茶苦茶に抉れている。 間違いなく、シルフィードのブレスによる痕跡である。 しかし……何故? キュルケは、自分は確かにあそこに居たはずなのに、何故、位置がズレているのか、 もの凄く疑問だったが、その事をルイズに訊ねる前に、自分の頭に何かが入ってくる感触が彼女を襲っていた。 その何かは、まるで最初から自分の頭の中にあったように、ピタリとハマり、キュルケの中にあった喪失感を、まるごと消去する。 「……返す」 素っ気無いルイズの言葉に、キュルケは、ようやく、この少女が自分を取り戻してくれたのを悟るのであった。 ホワイトスネイクは、最初、何が起こったのか理解していなかった。 ただ、上に居る竜の吐いた何かに本体が潰されるのを、赤髪の女が庇い――― その女が、まるで『時を止めた』かのように、着弾点から一瞬で移動していた。 (コレハ……ルイズ……君ガ?) ホワイトスネイクは、彼にしては珍しく混乱していた。 時を止める。 その力は、彼の知る限り、両方共、消失しているはずであった。 一つは、彼自身の手で葬り、もう一つは、彼自身が取り込んだ。 なのに……何故? 赤髪の女を助け起こし、才能のDISCを返却する本体に目もくれずに、ホワイトスネイクは、ルイズが先程まで立っていた場所を調べる。 すると、そこには、一枚のDISCが落ちていた。 DISCの表面には、屈強な肉体を持つ右半身が砕けた人型が見て取れる。 DISCに封じられし、スタンド名は『世界』 ホワイトスネイクが吸収し、内に取り込んだはずのスタンドであった。 第四話 戻る 第六話
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朝もやの中ルイズが一人で馬に鞍を付けていた。 そこに足音が聞こえルイズがその方向に振り向く。 プロシュートがデルフリンガーを手に持ち朝もやを掻き分けるようにしてこちらに向かってきている。 もやに隠れてよく見えないが視線が合った気がして思わず視線を下に反らす。 昨日見せたあの冷徹な殺意を持った目を思い出したからだ。 「出る準備をしてるって事は、あの姫さんの覚悟はできたようだな」 改めてプロシュートと視線を合わせるが、もうスデにあの目はしていなかった。 それを見てルイズが昨日の事を問いただす。 「昨日はなんであんなに怒ってたのよ…?組織とか反乱とか言ってたけどそれが関係あるの?」 答えるのに少し躊躇したがプロシュートが口を開いた。 「あの時も言ったがオレ達チームはある組織に属し任務をこなしていた。 だが命がけで任務を成しても何一つ信頼されずに『シマ』…まぁこっちでいう領地みてーなもんだ。 それすらも与えられず使い潰されるだけだった。それを不満に思ったオレ達の仲間のうち二人が組織のボスの事を探ったが二人とも殺された」 さすがに暗殺チームである事やホルマリン漬けにされた輪切りのソルベの事は話はしないが話を続けた。 「それからしばらくしてオレ達はある情報を掴みそれがきっかけで組織を離反し その情報で掴んだあるものを奪取しようとして敵と戦い150キロの列車から突き落とされた時にオメーに召喚されたってわけだ」 「だからルイズ。オメーには命を救われたっつー借りがある」 それだけ言って話を打ち切り馬に鞍と荷物を付ける。 「…それでも、姫様の手を踏み付けるなんて下手したら処刑よ?」 「それでオレを処刑しようとするなら向かってくるヤツを全員始末するだけの事だ」 グレイトフル・デッドの射程なら魔法の射程外から老化させる事も可能の上、火を放てば氷も効かなくなり直触り並みの速度で老化もさせる事ができる やろうと思えばプロシュート一人でもこの国を滅ぼせれるだけの戦力は持っているのだ。 言いながらルイズを手で呼ぶ。 「……なに?」 スッパァーーz____ン ルイズの頭をプロシュートが叩きいい音が辺りに鳴り響いた 「~~~~~~痛ッ!痛いじゃない…!」 「人を『生き物』扱いしてくれた礼だ」 数秒沈黙が流れ―― 「なに…?気にしてたの?……意外とかわいいとこあるわね」 ルイズが痛がりつつ半笑いになりがら言い放つが、言われた方は2発目を繰り出すべく手を振り上げていた。 だがその手を振り下ろそうとした瞬間僅かだが自然に発生したものとは違う風を感じルイズを突くと同時にその反動で自らも後ろに飛び下がる。 さっきまで自分とルイズが居た場所に突風が吹き荒れた。 「敵かッ!」 「おお?やっと俺の出番か?兄貴ィ」 相手の素性が知れなくともこちらを攻撃してくるからには敵と判断し即座にグレイトフル・デッドを発現させデルフリンガーを抜く 敵の数、位置、そしてこの視界の悪さからして直触りを優先するより武器を持ち本体の強化を選んだ方が良策と判断した。 朝もやの中から一人の男が現れたがプロシュートはそいつに見覚えがある。 アンリエッタの出迎えの時に見た羽根帽子の男だ。 (王女の近くにいたからには親衛隊か…それに類する連中か。そいつが攻撃を仕掛けてくるって事は…やはりオレを始末するつもりか?) プロシュートの目が瞬時に昨日見せたあの目に切り替わりルイズが息を飲む。 (ヤバイ…!プロシュートのこの目はやると言ったら確実にやる目だわ…!それに間違いなく姫様が仕向けた刺客だと勘違いしてるし…!) この冷徹かつ殺意を持った目をしている時にこの国の王女であるアンリエッタの手を踏み付けたのだ。 次は躊躇無くこの刺客を殺し次に向かう目標がアンリエッタであろうことはルイズにも容易に想像できた。 だが羽帽子の男はその殺意の篭った視線に気付いたのか口を開いた。 「僕は敵じゃあない。姫殿下より君達に同行するように命じられた者で女王陛下直属魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド子爵だ」 だがそれを聞いたプロシュートは視線を合わせたまま警戒体勢を解こうとはしない。 「攻撃までしておきながらテメーが敵じゃあないと信じるマヌケが居ると思うか?悪りーが杖をこっちに投げでもしない限り敵として扱わせてもらう」 微塵も油断する隙すら見せないプロシュートに対して『やれやれだぜ』と言わんばかりに男が首を振った。 「すまない。婚約者が殴られようとしてるのをしているのを見て見ぬ振りはできなくてね。しかし…その用心深さは賞賛に値するよ」 味方と判別できない以上どちらか分からない者は敵として扱う。暗殺者として当然の行動だ。 だがプロシュートの頭に「婚約者だと?」と疑問が浮かんだがその答えはすぐ理解できた。 「ワルド様…!」 プロシュートに突き飛ばれて倒れていたルイズが震える声でそう言った。 「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、抱き上げる。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」 「……お恥ずかしいですわ」 「彼を紹介してくれたまえ。どうやらまだ信用されてないみたいだ」 ワルドがルイズを地面に下ろし、苦笑しながら帽子を目深に被ってそう言った。 「あ、あの……使い魔のプロシュートです」 ルイズがプロシュートを指差して言ったが当の本人は未だ警戒態勢を解いてはいない。 「きみがルイズの使い魔かい?……そうか、グラモン元帥の息子を決闘で打ち滅ぼした平民というのはきみの事だったのか」 「その事もあるがな…ルイズがオメーを信頼しててもオレがそのまま信用したと思わないでもらいてーな」 「ワルド様なら大丈夫よ…わたしが保証するから武器を収めてちょうだい…」 「俺の出番これd……」 頼み込むような顔で懇願してくるルイズを見てデルフリンガーを鞘に収める。もちろんグレイトフル・デッドは控えさせたままだ。 それを見たワルドが気さくな感じでプロシュートに近付いた。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「………フン」 武器こそ収めたもののプロシュートの目は油断なくワルドを見ている。 「なるほど…その油断と隙の無さ。君があの『土くれのフーケ』を捕まえたという話も納得がいったよ」 そう言い放ち口笛を吹くと朝もやの中からグリフォンが飛んできた。 「さて…時間が惜しい、そろそろ出発するとしよう」 が、その時上空から羽音が聞こえ全員が上を向きルイズが驚いたように声を上げた。 「シルフィード!ってことはキュルケとタバサ!?」 地面に着陸したシルフィードからキュルケが降り立った。 「お待たせ」 それを見たルイズがキュルケに怒鳴る。 「何しにきたのよ!」 「あたしも昨日あそこに居たから話を聞いちゃってね一緒に行かないわけにもいかないし助けにきてあげたのよ」 タバサは何も知らずに寝ていたところを叩き起こされたため未だパジャマ姿でシルフィードの上で本を読んでいる。 ルイズが腕を組みキュルケと睨み合いを開始する。 ルイズを半ば無視する形でキュルケがワルドに迫るがそちらもほぼ相手にされていないようだ。 「馬はまだ慣れてねーからな、助かる」 それを尻目にプロシュートがタバサに礼を言いながら荷物をシルフィードの背中に乗せている。 フーケの事もありキュルケとタバサはそれなりに信用していいとは思うようになっていた。 「おいで、ルイズ」 ワルドがルイズを呼び抱きかかえたままグリフォンに乗り 「では諸君、出撃だ!」 グリフォンが駆け出したのを確認すると上空から三人の乗ったシルフィードが後を追っていく。 その光景を学院長室の窓から見ているのは昨日プロシュートに説教食らったばかりのアンリエッタだった。 プロシュートに左手を踏まれながら言われた言葉が心の奥底に引っかかっていた。 『生まれた時から平民を支配して当然と思っている』 実際そう思っている貴族がほとんどなため何一つ反論できなかったのだ。 「オールド・オスマン…彼は一体何者なのですか?」 実権を枢機卿が掌握しほぼ形骸と化しているが一国の王女に対して本気で怒りと殺意をぶつけてきた者がただの平民であるはずがないと思っていた。 「彼が言うにはハルケギニアではない別の世界から召喚されたと言っておりました」 「そのような世界があるのですか……?」 アンリエッタが遠くを見るような目になる。 プロシュートに踏まれた痛みがまだ残っているがそれを右手で押さえると小さな声で呟いた。 「『責任』と『覚悟』…ルイズ無事で…」 「さて…どうしたものかなこれは」 グリフォンとシルフィートを飛ばしてきたおかげでその日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着いたのだが 峡谷を進んでいる所に襲撃を受け松明を投げ入れらていた。 「メイジが居ねーのなら次に飛んでくるのは弾ってのが順当なとこだな」 「なんでそんなに冷静なんだか…」 それに答えるかのように無数の矢がシルフィード目掛け飛来してくる。 キュルケは慌て気味だがタバサとプロシュートは何時もと変わらず冷静だった。 タバサが風の魔法で小型の竜巻を作りだし矢を弾きプロシュートが抜けてきた矢をグレイトフル・デッドで受け止める。 矢を受けた衝撃はフィードバックされるが傷にはならない。 「夜盗か…山賊の類か?」 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも……」 「貴族なら弓なぞ使わんだろう」 ワルドの呟きにルイズがはっとした声でその可能性を上げるが魔法が飛んでこない以上メイジは居ない事は確実だった。 「連中銃も2~3丁持ってやがるな」 「シルフィードを低空飛行させてたのが仇になったわね…」 矢なら風で弾き飛ばせるが単発式の旧式銃とはいえ弾丸なら風を突破して上空に上がろうとするシルフィードに届く可能性があった。 「崖の上から狙ってるから魔法も届かないわね…!」 「一着しかねーからやりたくなかったが…そうも言ってられねーようだな…」 デルフリンガーを引っつかんだプロシュートが崖の下に向かいものスゴイ速度で登り始める。 ルーンの効果で体が羽の如く軽くなっているのもあるがそれに加えグレイトフル・デッドの手で崖を掴み登っているため手を使わず飛ぶようにして登っているように見える。 矢がプロシュートを狙い飛んでくるがそれはワルドとタバサが風の魔法で全て撃ち落し銃弾は的が小さい上に連射できないで当たらない。 そして崖の上へ飛び乗り数秒すると 「タコス!」 「おっぱァアアーッ」 「ドゲェーーッ」 などの面白い叫びをあげながら弓と銃で狙っていた男達が崖を転がるようにして全て叩き落とし 崖の上から飛び降りるようにして降りてくるプロシュートが下に転がっていた男をクッション代わりにして着地した。 もちろん、降りる時もスタンドの手で適度にブレーキを掛けながらのため怪我は無い。……踏まれた方はそうでもなさそうに悶えているが。 「驚いたな…彼は平民なのだろう?崖から飛んだ時に落ちる速度が普通より遅かった気がしたが」 「兄貴ィ…そろそろ俺使って攻撃してくr…」 デルフリンガーを鞘に戻し崖から落ちてきた男達を半分蹴り飛ばしながら一箇所に集めワルドが杖を向け尋問を開始する。 「ただの物取りか…捨て置いてもいいだろう」 だが、その答えに納得いってないプロシュートが反論する。 「ただの物取りがグリフォンや竜に乗っていかにもメイジですって自己主張してるような 連中に仕掛けてくるわけねーだろうが。物を奪える相手を襲うから物取りって言うんだぜ?」 「だが彼らは物取りだとしか言わないが…何かいい手でもあるのかね?」 その言葉を後にして男達をルイズ達から見えない岩場に連れて行きしばらくすると… ズッタン!ズッズッタン! 「うんごおおおおおおおおおお!!!」 ズッタン!ズッズッタン! グイン!グイン! バッ!バッ! 「うんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 ズッタン!ズッズッタン…… 妙に軽快なリズム音と男達の悲痛な叫びがその場に流れてきた。 「白仮面とマントの男とナイフを土くれに変えた女に雇われただとよ」 言いながらプロシュートが岩陰から出てくる。 「その言葉信用していいのかい?適当な嘘でこちらを騙そうとしているかもしれないぞ?」 「人間死ぬよりヤバイ目にあった時は本当の事しか言えねーもんだ」 「ふむ…後ろにメイジが関わってくるとなるとこの先も襲撃されるかもしれないな。注意するとしよう。 とりあえず今日はラ・ロシェールに一泊して朝一番の便でアルビオンに向かうとしようじゃあないか」 ワルドがそう言いルイズを抱きかかえグリフォンに騎乗し街に向かう。 プロシュート達もシルフィードに乗りその後を追うが、その上でキュルケがどうやって男達を自白させたのか聞いてきた。 「なに、猿轡をして一人づつ順番にゆっくりと直に老化させていっただけだ 全力でやるとすぐに気絶しちまうが、加減しながらやれば自分がどうなっているか理解しながら老化していくからな」 ゆっくりとは言っても通常ありえない速度で自らが老化していくのである。 老化している物が若いのならなおさらだ。肉体にダメージを与える拷問より余程効果的といえる。 「敵には容赦しないのね……でもそこが素敵!」 「危険」 シルフィードの上でキュルケがプロシュートに抱き付こうとするがさすがに危ないと思ったのかタバサが突っ込んだ。 アンリエッタの手紙取り戻し隊 ― ヤバイ『ラ・ロシェールに』IN! ←To be continued 戻る< 目次 続く