約 1,871,244 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2517.html
前ページ次ページゼロと聖石 トリステイン魔法学院にフーケが現れ、宝物庫より『破壊の三魔銃』が盗まれる。 翌日、フーケ討伐隊が編成され、フーケの捕縛と『破壊の三魔銃』を取り返すことに成功。 フーケはそのままチェルノボーグの監獄に投獄。 討伐隊に志願し、フーケを捕らえた同学院の生徒達にはシュヴァリエ勲章を与える予定。 「瓦版にまとめるとこういった感じになるのかねぇ……」 投獄されてから衛兵や日常会話などから察せられる言葉から今後起こりうる展開をシミュレートする。 今現在で分かったことは、近々戦争が起こる。 それくらいのことだった。 フーケも捕らえ、フリッグの舞踏祭も例年以上に盛り上がっている。 キュルケは男子に囲まれ、タバサはテーブルの料理を食べ続けている。 私はというと壁の花に徹している。 一人、テラスで物思いにふける。 思い返すのはオールド・オスマンとの会話。 「あの、一つ聞きたいのですが。あの魔銃は私達の世界のものではないですね」 その言葉にオスマンは頷きをもって返した。 「やはり、この聖石と同じ世界のもの…どういう経緯で入手したんでしょうか?」 オスマンは椅子から立ち上がり、窓の前に立つ。 その瞳は空のみを捉えているようにも見える。 「昔の話じゃ。わしが森で散歩など楽しんでおったらワイバーンの群れに襲われての。 そのころは未熟で、数体倒したところで限界が来てしまった。そこに現れたのが、彼じゃった」 話しながら部屋据付のチェストを空け、何かを取り出す。 強い力でひしゃげているがシルエットや構造は破壊の魔銃と同じだ。 「そこに、すでに瀕死状態の男が現れて、この魔銃でワイバーンを撃っていった。 不思議なことにワイバーンが石化しての。この銃は彼がワイバーンの攻撃を防いだ際にこうなってしまった。 全てのワイバーンを倒した後、彼はそのまま命を落としてしまった。 最後の言葉は、『人をも超越した力ですら、平民は自由を得ることは出来ないのか』と、な」 そして、オスマンは椅子に座る。 「彼は丁重に埋葬し、彼が持っていたものは全て宝物庫にしまった。わしも一度だけ使ったことがあるが、危険だからの」 「そうだったのですか」 「さて、ルイズ君。わしは君の使い魔の事を危険視している」 「そうではないかと。先住魔法に近い魔法を持ち主に授け、人を狂わせるほどの魔力を持つ。 最初にきちんとした契約を結べないと、石から召喚した存在に魂ごと食われ、乗っ取られる。 これは、聖石という名前が与えられてはいますが、まるで人自体の欲望を表したものかと」 「だからこそ、君やシエスタ君が力におぼれ、悪魔に身をゆだねた時、わしは君等を殺さなくてはいかん」 「そのときはぜひ、私を殺してください。私はこの契約をしたときにその覚悟を済ませましたから」 「万が一の時、始祖の名に誓って、誇り高きあなたに殺されましょう」 「それでは、もう戻ってもよいぞ。今夜はフリッグの舞踏祭じゃ。ゆっくりと楽しみたまえ」 いざというときが起きたら私を殺してくれる。 そうならないことを、私は祈りつつ、月を肴にワインを煽る。 「いい月ね、そう思わない? シエスタ?」 私の後ろに、シエスタが立っていた。 本来、平民が入ることすら出来ない舞踏祭だが、今回の功績で参加が認められたのだ。 若干青みがかった白い生地のドレス。 「はい、とてもきれいな月です」 シエスタの手には年代物のワインが一本握られている。 なんでもコック長が持たせてくれたんだそうな。 シエスタが、私の隣に立つ。 静かに月を見上げ、呟く。 「戦士は剣を手に取り胸に一つの石を抱く。 消えゆく記憶をその剣に刻み、鍛えた技をその石に託す。 物語は剣より語られ石に継がれる」 お爺ちゃんが教えてくれた聖石の詩です、と嬉しそうに語るシエスタ。 「だとすると、聖石に継がれているのは技で、かつての記憶は剣に刻まれているってこと? 剣って一体何かしらね?」 その言葉に、微笑みながらシエスタは、 「私たち自身、って言うのはどうでしょうか?」 そう、語った。 その後、二人で笑いあった。 「ところでシエスタ、あなたのお爺様ってどんな人だったの?」 「一言で言ってしまうと、聡明で、不思議な力を使える人でした」 なにせ、辞書が武器でしたからとさらりと語る。 「辞書? あの用語とかの意味をまとめたぶ厚い本の?」 「ええ、昔はその力でトロール鬼を数体殺せるほどの力はあったとか」 それに、と付け加えて、 「私が剣を持てたのもお爺様が、『目の前で繰り広げられている不正や悪事を見捨てておけない人間がいる』 って、教えてくれたからですし」 その言葉で、彼女は本当にお爺様のことが好きだったと分かる。 だからこそ、シエスタは聖石に抗うことが出来たのだろう。 シエスタのお爺様に感謝しつつ、二人で月を肴にワインを飲み交わした。 そして、翌日。 「頭いたーい、気持ち悪ーい」 「大丈夫ですか、ルイズ様……うっぷ」 二人揃って二日酔い、調子に乗って五本も空けるからである。 その光景にキュルケはあきれ返りながら二人を介抱した。 そんなこんなで数日が過ぎた、ある昼下がり。 普段ならシエスタがせわしなく働いているころだが、見当たらない。 それに、いつもと違ってケーキの味が荒い。 厨房にいるであろうシエスタのところに向かう。 すると、厨房の皆さんが何かしらの怪我を負っている。 事情を聞くついでに新魔法の実験。 「清らかなる生命の風よ、天空に舞い邪悪なる傷を癒せ! ケアルラ!」 大怪我を負っていたコック長を含め、全員の怪我を癒す。 包帯をはずして怪我がなくなっているのを確認すると、コック長に詰め寄る。 「全て話しなさい。シエスタが今この場に居ないことが関係あるんでしょう?」 大まかな内容をまとめるとこうだ。 モット伯爵がやってきてシエスタを連れて行こうとした。 阻止しようとして返り討ちにあう。 そのせいで食事の準備にも影響がでて、特にデザートのコック補佐を担当していたシエスタが居なくなり味が低下した。 うむ、シエスタが連れて行かれた。 そのせいでデザートの質も落ちたと。 これは由々しき事態だ。 デザートもそうだが、モット伯は女癖が悪いと聞く。 これでシエスタが精神に深い傷でも負ってしまったら、私やオールド・オスマンの全存在をかけた戦いをしなくてはならない。 ただでさえ魔法無効の剣を持っているのに、その力が私達に向いたら世界滅ぶぞ? 「一つだけ聞かせて、シエスタはいつもの剣を、デルフリンガーを持ち出せた?」 その言葉に、頷きを返されると私は顔を青くした。 準備を整えないと。 急がないと、モット伯爵が殺されるかもしれない。 魔法は効かないし、剛剣で丸裸にされた後、新しい技を覚える実験台くらいにされそうな予感。 大急ぎで支度し、事情を話してタバサとキュルケにも付いてきてもらうことにした。 そしてたどり着いたモット伯爵の屋敷跡。 私はもとより、キュルケもタバサも驚きを禁じえないようだ。 そして三人の思考は一致した。 …遅かったか。 絢爛豪華な屋敷は見るも無残な姿をさらしている。 壁という壁には巨大な穴があき、倒れ付すメイジ達がそれに彩を加えている。 そして剣を持つ人影がこちらに向かって走りこんできて飛び込んできた。 「ルイズ様ぁーー!!」 「シエスタ!? 大丈夫、怪我は無い?」 はい、と頷き返すシエスタ。 「こんな服着せられて、部屋にモット伯が押し入ってきた時、怖くなって、私…」 多分、モット伯爵はもっと怖かっただろうに。 不憫と思いつつも自業自得なので同情はしないが。 シエスタを抱きしめつつ、頭を撫でて落ち着かせる。 「まぁ、特に問題も起こらなかったしこれで円満に解決ってことで」 「そうね、これ以上ここに居ても仕方が無いし」 「学院に帰還する」 「はい、皆さん助けに来ていただいてありがとうございました!」 こうして、モット伯のことなどすっかり忘れて帰ろうとした瞬間、瓦礫の一部が水に流される。 「貴様、平民風情がぁ!!」 膨大な水が渦巻き、こちらを押し流そうと鎌首をもたげている。 「新しい魔法覚えたから、最後に実験していくわ」 その言葉に誰も反対することなく、シエスタがデルフを構えて魔法を切り裂いて防ぐ。 その間にもルイズは詠唱を続ける。目標は目の前のバカ一体。 「時は来た。許されざる者達の頭上に星砕け降り注げ! メテオ!」 その二つ名である『波濤』をも飲み込み、隕石が着弾。 モット伯爵跡地は完全に更地となってしまった。 「威力が高すぎるから、封印ってことで」 「さすがにアレは俺にも斬れんわ」 こうして、メテオはめでたく封印されることとなった。 前ページ次ページゼロと聖石
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2373.html
前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 築かれた屍山血河に、仮面の男は立っていた。 降る雨の冷たさに、熱き衝動が冷めていくのを心地よいと感じながら。 「ハクオロ様」 鉄扇を握る獣耳の娘が、疲れた声で問いかけてくる。 「この戦、我々に勝ち目は……」 仮面の男は感情の無い声で答える。 「無い。もはや我が方の敗北は必至。 ギリヤギナの長とエヴェンクルガのもののふ、此度は彼奴等の勝利だ。 さすがは契約者といったところか……」 「……貴方様は我々の力になりながらも、なぜ契約をなさろうとしなかったのですか? 我々を、己が眷属になさろうとしなかった訳は」 「……さて、なぜだろうな」 契約者となった者に打ち込まれる楔。 願いの代償。 それらのものを、もしかしたら。 鉄扇を持つ彼女は、彼の沈黙の中に優しさを垣間見た気がした。 「ところでトゥスクルよ、この大戦が終結せし時、汝は如何にする? ワーベと共にオンカミヤムカイへ帰るのか?」 「……さて、どうしましょうか。國を流れてみるのも悪くないと思っております。 まずはケナシコウルペにでも行ってみようかと。 ……敗戦した國の行く末は知れております。少しでも力になれれば……と」 「そうか。ならば、気が向いたらヤマユラという里にも行ってみるといい」 「ヤマユラ?」 仮面の男は、そこでようやく言葉にわずかな感情を込めて言った。 「かつて、我がミコトと共に在った地だ」 第10話 招かれるもの 変な夢を見た。 いつもは、何か黒っぽい夢を見るのに、まったく知らない光景の夢。 なのになぜだろう、胸が熱い。郷愁の念に駆られてしまうのは。 ベッドから起き上がったルイズは、ベッドの隣の床で眠るハクオロを見た。 わずかにはだけた胸元のルーンが光って見えて、ルイズはまばたきをしてから、 もう一度よく見てみた。ルーンは光っていない。寝惚けてたようだ。 目を覚まそうと思って、ルイズは顔を洗いに行った。顔を洗えば目が覚める。 冷たい水でスッキリサッパリ。 そういえばどんな夢を見ていたんだっけと、ルイズは思い出してみる。 戦場跡と思われる場所に数多の屍が転がっている。 鉄の扇を持った獣耳の亜人が、ハクオロと何かを話して。 ギリヤギナとかエヴェンクルガとか、意味の解らない単語がいっぱい出てきた。 でもトゥスクルとかケナシコウルペとか、オスマンが語った言葉も出てきた。 本当に変な夢だ。 夢なんて普通、顔を洗う頃にはとっくに忘れている。 でも今日の夢は顔を洗った後も結構はっきりと覚えていた。 ただの夢? 違うんじゃないか、と思ったけど、所詮夢は夢。たいした意味なんて無い。 でも。 「ヤマユラとかミコトとか、ああいう名前はどこから出てきたんだろう」 月がひとつの世界のものの名前は、オスマンが語った分を除けば、 ハクオロが言ったクスカミ程度しか知らないのに。 「……ん~……まあ、いいや」 と、歯磨きを終えてから、 ルイズはようやくハクオロに朝の身支度を手伝わせてない事を思い出した。 叩き起こされたハクオロは、いきなりルイズが不機嫌な事に溜め息をついた。 どうやら主である自分より遅く目を覚ましたのが不味かったようだ。 それでもルイズは自分で朝の身支度を整えており、 ハクオロがやる事はもう残っていなかった。 朝食は、ちょっとだけ質と量がよくなっていた。 これならマルトーに頼らずとも空腹に苦しむ事はなさそうだったが、 やっぱり厨房で食べる食事の方があたたかみがあるとハクオロは思った。 待遇がよくなったとて、使い魔の範疇からはまだ出ていないのだ。 部屋の掃除を終えたハクオロは、洗濯物を持って洗い場に行く。 そこでシエスタと一緒に洗濯するのが日課なのだが、 今日のシエスタの表情は暗く、何か悩み事があるようだった。 「シエスタ、おはよう」 「あ、ハクオロさん……。おはようございます」 「元気が無いようだが、何かあったのか?」 「……今朝、実家から手紙が来て……」 洗濯をしながらシエスタは手紙の内容を話した。 ハクオロも洗濯をしながら聞く。 「今年は作物が不作で、村中困っていて……そんな時なのに、父が腰を痛めてしまって。 それ自体はたいした事ないんですけど、しばらくお仕事ができそうになくて、 家事する人もいないし……お父さん、困ってるんです」 「家事? 母親は……」 「私を産んだ後、体調を崩して……」 「すまない。つらい事を訊いてしまったな」 「いえ、いいんです。母の事は何も覚えていませんし」 「……そうか」 それからしばらく、二人は黙々と洗濯を続けた。 そしてシエスタは作業が終わろうとした頃、ようやく口を開く。 「一度、村に帰ろうかと思ってます。お父さんの怪我が治るまで」 「……君の故郷は、どんな所なんだ?」 「タルブっていう、取り立てて何も無い小さな村です。 田畑を耕して、収穫し、それを糧に生きていく。 けれどとっても綺麗な草原があって……森は危険だから入っちゃ駄目で」 「ふむ。……行ってみたいな」 「えっ!?」 突然の言葉に、シエスタは目を丸くした。 ハクオロもつい言ってしまった言葉に慌てる。 「あ、いや、この國の一般的な人々の生活に興味があってな。 トリスタニアには連れて行ってもらった事があるが、その、 色んな所に行けば記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないし」 嘘ではなかった。 それに、彼女が語ったタルブの村の様子には、なぜか懐かしさを感じる。 (もしかしたら、ヤマユラとやらもそういう村だったのかもな) ハクオロは、今朝見た奇妙な夢を思い返していた。 「――という訳なんだが、行ってもいいか?」 「ダメ」 午後のティータイム。ルイズはのんびりと紅茶を飲んでくつろぎつつ、 一応ハクオロの言い分は聞いてくれたものの、躊躇無く却下した。 「なぜだ」 「村に行ってどうすんのよ。メイドの親の面倒でも見るの? ご主人様の私を放ってまでする事じゃないでしょ。まったく、くだらない」 「しかしシエスタには日頃世話になっているし、恩返しがしたいんだ」 「私だって毎日あんたの世話をしてるじゃない」 寝床と食事を与えているだけのルイズと、 掃除洗濯その他身の回りの世話をしているハクオロ。 しかも食事は厨房に行けば何とでもなるし、寝床もルイズの部屋にこだわる必要は無い。 とはいえ記憶喪失のハクオロの身元保証人という立場は絶対的なものだ。 いや待てよ? 恩人の同郷の者というハクオロならば、オスマンに頼めば何とかしてくれるかも。 つまりもうハクオロはルイズの庇護無しに普通の生活を送れるのだ。 だがハクオロはルイズを妹や娘のように大切に想っているし、 使い魔である自分がいなくなればルイズの立場が悪くなるとも理解していた。 「記憶を戻すには、こう、色々な事を体験するのがいいと思うんだ。 シエスタから村の様子を聞いた時、懐かしさのようなものを感じた。 もしかしたら私は極普通の村に暮らしていたのかもしれない」 「あんた軍人っぽいキャラクターなんじゃなかったっけ? 武器を使えたり、作戦考えたり……でもメイジじゃないから、軍人は無いか」 「一週間でいいから」 「タルブの村ってどこにあるの?」 「ラ・ロシェールとかいう街を越えた所だとか……」 「片道三日はかかるじゃない。往復で六日、それに一週間足したらずいぶん長いわね」 「そうだ、ルイズも一緒に来ないか? 民草の生活を直接見て回るというのも、いずれ民を治める者としていい経験になる」 「んー、それもそうね。でもダメ」 「なぜだ」 「何となく」 ルイズの理由にハクオロはげんなりとしたが、事実本当に何となくなのだから仕方ない。 実を言うとハクオロがシエスタとかいうメイドのために一肌脱ごうというのが、 どうにも気に食わないのだ。自分の使い魔なのに、何で平民のメイドなんかのために。 だから、ダメなのだ。 「ダーリン、隣いいかしら?」 二人が座っているテーブルに、キュルケがやって来た。 返事を聞かずにハクオロの隣に座ると、 手近にいたメイドに紅茶とケーキを持ってくるよう指示する。 「あら、何だかご機嫌斜めね。ルイズにいじめられてるの?」 「いや、そういう訳ではないが……実は……」 ハクオロは事情を説明した。 「別にいいじゃないそれくらい。ハクオロだって記憶を取り戻すために、 やってみたい事をやったり、行ってみたい所に行く権利はあるわ」 「無いわよ。私の使い魔なんだから」 「狭量ねぇ。鞭ばかりじゃ使い魔はついてこないわよ」 事情を聞かされている間に運ばれたケーキを食べながら、 キュルケは冷めた目でルイズを見る。 「う、うるさいわね。あんたは関係無いんだから引っ込んでなさいよ」 「ねえルイズ。行き帰りも含めて二週間近くハクオロが留守するから駄目なのよね? じゃあ一週間だったらどうなの? あなたは許可する?」 「一週間なら別にいいわよ。向こうには一日か二日しかいられないでしょうけれど」 馬鹿にしたように笑うルイズから、確かに言質を取ったとキュルケは勝利の笑み。 「じゃあハクオロ、一週間だけタルブの村に行きましょう」 「いや、しかし、一週間のほとんどが移動でつぶれてしまうというのは……」 「タバサに頼めば一日とかからず行ける距離よ。 虚無の曜日に送ってもらって、次の虚無の曜日に迎えに来てもらえば、 往復時間をたいして費やさず、きっちり一週間村にいられるわ。 私が頼めばタバサはイヤとは言わないわ。だから、私も一緒に連れてって」 まさかタバサの風竜を使うとは思っていなかったルイズは、 慌てて反対したもののキュルケは言質を握っていたため、 結局キュルケが押し勝ってしまうのだった。 ルイズ最大の妥協点は、キュルケがハクオロにちょっかいを出さないよう、 自分もタルブの村へついていくという選択。 そしてキュルケはタバサに頼んだ。 「イヤ」 断られても頼んだ。 「面倒」 めげずに頼んだ。 「……」 無視されても頼んだ。 「解った」 渋々了承してくれた。 親友のキュルケにこうもしつこく頼まれては、さすがのタバサも折れるしかない。 「だからタバサって好きよ。さすが私の親友、愛してる!」 こうして翌日の虚無の曜日、みんなでタルブの村に行く事が決定した。 ルイズは授業を一週間休む理由を作るのに苦労したらしい。 キュルケは楽に適当な理由をでっち上げた。さすがである。 こうして翌日、風竜で帰省する事になったシエスタはビックリ仰天。 畏れ多いですとか自分は馬でとか断ったが、キュルケに押し切られて風竜に乗る。 「いざ! タルブの村へしゅっぱ~つ!」 その日のトリステイン魔法学院にて、キュルケとデートの約束をすっぽかされた男達が、 「またあの仮面野郎か!」と怒りの声を上げていたらしい。十人くらい。 ちなみに全然出番がないデルフリンガーだが、ちゃんとハクオロに背負われてたりする。 風竜に乗って、しかも貴族を三人(とオマケ)も連れてのシエスタの帰省は、 タルブの村の人々にとって大騒ぎになりすぐにもてなしの宴が催される事になった。 が。 「自分達はシエスタの手伝いに来たのであって、もてなされるために来たのではない」 即座に断るハクオロ。それもそうねと納得するキュルケと、何の反応もしないタバサ。 そしてルイズは平民の家に泊まる事に難色を示す。 シエスタの客人という事で三人が宿泊するのはシエスタ宅となったが、 元々父と娘二人で暮らしていた小さな家で余分なベッドなど無く、 空き部屋は物置と化しておりとても使える状態ではなかった。 父は療養中であるためベッドを奪う訳にはいかない。 だからシエスタの部屋のベッドにルイズとキュルケの二人が入らねばならない。 しかしそうなるとシエスタとハクオロの寝所が無くなる。 そこでハクオロは提案した。 「私は床で構わない。しかしベッドの持ち主であるシエスタも床というのは申し訳ない。 だからここに泊まるのは私だけにして、ルイズとキュルケは村長さんあたりの家に……」 「嫌よ」 「私も」 乙女心という強力な殺気に押されたハクオロは、何か解決策はと頭を抱える。 魔法で空き部屋を整理して寝床を作れないかという案も出したが、 シエスタの父に空き部屋の荷物を動かしたくないと断られてしまった。 その間にタバサは勝手に村長と交渉してベッドをひとつ貸してもらい、 レビテーションでシエスタの部屋まで運んで来ていた。 ルイズとキュルケが借りたベッドで、シエスタが自分のベッドで。 これで解決かと思いきや、犬猿の仲の二人が同じベッドでなど納得する訳がなかった。 しかしハクオロの「貴族とは平民が眠る場所を奪う権利でもあるのか」と睨みをきかせたら、 さすがはダーリンとキュルケが態度を一変させる。 それでも嫌だと言い張ったルイズは、シエスタのベッドで一緒に寝る言い出した。 ライバルのツェルプストーよりも、まだ平民のメイドの方がマシという事らしい。 ちなみにハクオロの寝場所はシエスタの父の部屋の床だ。 元々シエスタの父が怪我をしたため手伝いに来たのだし、 それに女性ばかりの部屋にハクオロが居座る訳にもいかない。 何とか割り振りの決まった一同は、とりあえずシエスタ宅の掃除を開始した。 学院で働いていたため留守にしていたシエスタの部屋は埃が積もっており、 掃除には時間がかかると思われたがキュルケとタバサが魔法で簡単にすませてしまった。 コモンマジックしか使えないルイズは手伝う事がなく、散歩に出かけてしまった。 シエスタは台所を片づけて、みんなの食事の用意にかかる。 ハクオロはシエスタの父が管理している畑の様子を見に行き、何事かを考え込む。 (作物の育ちが悪い……。どうやら他の畑も同じようだ。 この村は農作物を生業としているようだが、これでは収穫はあまり期待できんな。 何とかしてやりたいが……なぜだろう、何とかできるという確信がある) お昼になると、シエスタが芋粥を振舞ってくれた。 「お母さんが得意だった料理で、お父さんから話を聞いて作ったんです」 芋粥という、いかにも貧しい料理にルイズとキュルケは落胆する。 父親はその芋粥が好物らしいが、やはり貴族相手に出す料理ではないと指摘した。 「俺は腰を痛めただけで、病人じゃないんだから、別に芋粥でなくてもいいんだが」 落ち込むシエスタを元気づけたのはハクオロとタバサ。 「私はこういう家庭的な料理は好きだ。食べていると、胸があたたかくなって安心する。 それに……どこか懐かしいような、優しい味わいだ。料理した者の真心が伝わってくる」 「……おかわり、大盛りで」 なぜおいしいのかを細かに解説して喜ばせるハクオロと、 最小限の言葉で賛辞を送る貴族のタバサ。どっちも破壊力は十分。 けれどシエスタの乙女心からすると、貴族からのお褒めの言葉よりも、 大好きなハクオロさんの賛辞と笑顔が何よりも嬉しかった。 もしシエスタに犬の耳と尻尾があったら、その両方をピコピコと振っていただろう。 もっともシエスタには犬の耳どころか人間の耳すら無いのだが、 それを知るのはハクオロと父親の二人だけである。 おかわりを五杯も食べたタバサは、シルフィードに乗って満足気に学院へ帰っていった。 一週間後の虚無の曜日に迎えに来るまで、ハクオロとルイズとキュルケ、 そしてシエスタとその父親の共同生活が送られる。 シエスタにとっては、生涯忘れられぬ一週間が。 夜になって。 ハクオロはシエスタの父に肩を貸してベッドまで運んでから、彼の腰に薬を塗ってやる。 薬といってもメイジが調合したポーションのようなものではなく、 そこら辺に生えている薬草をすり潰しただけの簡単なものだ。おかげで金はかかっていない。 シエスタの父をベッドに寝かせ、デルフリンガーを脇に置いて部屋のランプを消すと、 毛布に包まったハクオロは慣れた様子で床に寝転がる。 すると暗闇の中、シエスタの父が話しかけてきた。 「すまないなぁ。客人を床に寝かせて」 「いえ、慣れてますから。それにシエスタのお父上を床で寝かせる訳にもいきません」 「俺のこたぁオヤジでいいよ。腰を痛めるような歳になっちまった、はっはっはっ。 ところでお前さん、ハクオロだったか。仮面もそうだがみょうちくりんな服を着てるなー」 「訳あってとても遠い國から来ましたもので」 「そうか、遠い国か……そうか……」 歯車はかみ合っていく。まるで、導かれるように。 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
https://w.atwiki.jp/whentheycry3-4/pages/190.html
Characters 1 右代宮 金蔵 右代宮 蔵臼 右代宮 夏妃 右代宮 朱志香 右代宮 絵羽 右代宮 秀吉 右代宮 譲治 右代宮 留弗夫 右代宮 霧江 右代宮 戦人 右代宮 楼座 右代宮 真里亞 主治医 南條 使用人 源次 使用人 紗音 使用人 嘉音 使用人 郷田 使用人 熊沢 古戸 ヱリカ Characters 2 ベアトリーチェ ワルギリア ロノウェ ガァプ 煉獄の七姉妹 右代宮 戦人 ラムダデルタ ベルンカステル 古戸 ヱリカ ドラノール・A・ノックス ガートルード コーネリア シエスタ00 シエスタ410 シエスタ45 シエスタ556 Tips アイゼルネ・ユングフラウ 赤鍵 青鍵 ノックス十戒
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/3840.html
416 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 28 48 ID uPUX5pgY 「ふああ」 窓際でルイズが居眠りから目を覚まし、伸びをする。 右手をんー、と思い切り伸ばし、小さな涙の粒が目の端に光る。 その仕草は、子猫を連想させた。 春眠、暁を覚えず。 才人の脳裏を、そんな言葉がよぎった。 ルイズはじっと見つめるそんな才人の視線に気づくと、頬を染める。 「な、何見てんのよ!」 寝起きを見られた気恥ずかしさを隠すために、ルイズは思わず怒鳴ってしまう。 そんな仕草も愛らしく、怒鳴られてもなお才人は笑顔のままだ。 「いや、欠伸するルイズ可愛いなー、って」 思わず本音が出る。 才人のその台詞にルイズの顔面が火を噴く。 「なななななな、何言って」 照れるルイズが面白くて、才人は続ける。 「ルイズ可愛いな、って言ったんだよ」 赤くなったまま俯いて、ルイズはちらりと才人の方を伺って、言った。 「ほ、ほんとう…?」 「ほんとほんと」 二人の間に流れる、妙に甘い甘い空気。 昼間だというのにそのままコトに及びそうな雰囲気を、扉が開け放たれる音が蹂躙した。 ばたんっ! 勢いよく扉を開けて現れたのは、シエスタだった。 そして彼女はなんの脈絡もなく言い放った。 「『オハナミ』行きましょう!『オハナミ』!」 417 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 29 58 ID uPUX5pgY 荒れ狂うルイズをなんとかなだめると、話を聞く雰囲気になった。 「で、何よ『オハナミ』って!」 私とサイトのストロベリータイムを邪魔するだけの価値はあるんでしょうね、と心の中だけで突っ込みながらルイズはシエスタに尋ねる。 荒れ狂ったルイズの飛ばした枕やら机やらシーツやらを元の位置に戻しながら、シエスタはにこやかに言った。 「『オハナミ』っていうのは、タルブの春の行事なんですよ。 って言っても、ひいおじいちゃんが植えた、『サクラ』の樹の花を囲んで宴をする、っていうものなんですけど」 そしてちらりと才人を見る。 才人は、案の定懐かしそうな顔をしていた。 「花見かあ…」 たしかにシエスタの曾祖父は才人と同じ日本人だ。 彼が望郷の念に駆られてこのハルケギニアで桜を探し出し、タルブに植えたとしてもなんの不思議もない。 それが実際行事となっていて、シエスタの故郷タルブでは、花が見ごろになると必ず催されるという。 「行きたくないですか?『オハナミ』」 シエスタのその質問は、この部屋にいる全員に投げかけられたものだったが、その主なターゲットはほかでもない才人だった。 そしてその才人は、一も二もなく頷く。 「行くよもちろん!」 そうすると、残りの一人もこうなるわけで。 「しょ、しょうがないわね、犬が行きたいっていうなら行ってあげてもいいわよ」 ミス・ヴァリエールはさそってないんですけどぉー、と心の中だけで突っ込み、シエスタは微笑んだ。 「じゃあ、早速準備しますね!」 418 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 30 45 ID uPUX5pgY そして、仕立てられたタルブ行きの馬車の中には。 タバサとシルフィードがすでに乗っていた。 「ちょっと、アンタがなんでここにいるのよチビっこ」 半眼で黙々と本を読み続けるタバサを睨みつけ、ルイズは言う。 タバサは本から目を離さず、応えた。 「…サイトが行くなら私も一緒に行く」 そしてぱたん、と本を閉じると。 ルイズと同じように半眼で、殺気のこもった視線を、ルイズに返す。 その視線はこう語っていた。 出先でサイトといい雰囲気になろうったって、そうは行かないんだから。 ちなみにタバサの今読んでいる本は、『素直になれない女主人 〜史上最強の執事〜 第3巻『明けの海は嫉妬に燃えて』』である。 つい弾みで執事を追い出してしまった女主人が、執事に絡んでくる女どもを見てやきもきする、というあらすじである。 「…なによ、喧嘩売ろうっての?」 今にも一触即発な雰囲気に二人をなだめたのは、当の才人だった。 「まあまあ落ち着けよ二人とも。みんなで仲良く行けばいいだろ?」 「そうなのねー。みんな仲良くすればごはんもおいしいの!きゅいきゅい」 才人の台詞に続けたシルフィードの声が、その場に満ちた闘争の気配を打ち消した。 …しょうがない、ここは。 …サイトに免じて、許してあげる…! 二人で全く同じことを考え、最後に視線で火花を飛ばし、その二人は馬車の席の対角線上に座ったのだった。 419 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 31 16 ID uPUX5pgY そして、一行の到着したタルブは。 なぜか、大騒ぎだった。 実家に着いたシエスタをまず襲ったのは、女王来訪の知らせ。 「えっ!?女王陛下が『オハナミ』にいらっしゃるんですかっ?」 シエスタは驚いて、自分も準備しなきゃ、と慌てて女王来訪に備える村の面々に加わった。 逆にルイズは冷静だった。 …やるわねあのわたあめ女王…!タルブの行事がサイト絡みだと踏んで、網を張ってきたか…! ルイズは、アンリエッタがタルブの『オハナミ』が才人の世界に関連する行事だと見るや、そこに才人が来るようなら自分も出かけるように網を張ったのだと予想していた。 そうなると、このタルブは戦場と化すだろう。 才人をめぐって、血で血を洗う争いが展開されるのは目に見えていた。 そして。 ルイズの視界に、同じように顔をしかめるタバサの姿が目に入った。 …シエスタはあんなだし。姫様に対抗するためには…。 そしてルイズは、そんなタバサに近寄る。 近寄ってきたルイズに、タバサは反射的に杖を構える。 そんなタバサに、ルイズはすっ、と手を差し伸べる。 「…気に食わないけど、休戦といきましょう」 そんなルイズに、タバサは満面に不審を露にしてルイズを見つめる。 ルイズははぁ、とため息をついて、タバサに語りかける。 「アンタも聞いたでしょ? もうすぐここには、サイトを狙ってアンリエッタ女王陛下がやってくるわ。 …悔しいけど、私一人の力じゃ、サイトを守りきれそうにない」 この村の状況を見るに、アンリエッタはその権力の全てを使って、才人と『オハナミ』する気だろう。 彼女の『相応の覚悟』は、王族だけあってとんでもないものだ。 タバサはその答えに納得し、その手を握り返した。 「…サイトを想うのは、私も一緒」 こうして、雪風と虚無の二人は、手を組んだのである。 420 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 33 09 ID uPUX5pgY シエスタはなんと、タルブの入り口で女王陛下のお出迎えをするという役目を申し付けられた。 それは、唯一肉眼で女王陛下を見た者であるという、至極真っ当な理由からだった。 「どどどど、どうしよう…!」 しかしいくら生で見たことがあるとはいえ、シエスタにとってアンリエッタは天上の人である。 才人を狙っているとはいえ、仕えるべき人であることに変わりはない。 ないのだが。 「…サイトさん独り占めしようとされたりしたら、私手ぇ出しちゃうかも」 心配事はそっちであった。 恋愛の前に全ての人々は対等となる。恋する資格に変わりはなく、愛する想いが全てを決める。 たとえ女王陛下とはいえ、才人の前では対等な女と女。 もし理不尽に権力を行使されたりしたら、サイトさんを連れて逃げよう、とシエスタは考えていた。 そうしてシエスタがタルブの入り口で待ち構えていると。 護衛の騎士を従えたトリステインの旗を閃かせた六頭立ての馬車が、村の入り口にやってきた。 間違いない。女王の馬車だ。 シエスタは深々と頭を垂れ、その一団を迎える。 すると、女王の馬車が彼女の前に止まり、その馬車の扉が開いた。 そして降りてきたのは…他でもない、アンリエッタ女王その人だった。 あまりの展開にシエスタが驚いていると。 「やっぱり!あなたシエスタさんね!」 アンリエッタはそう言って笑うと、シエスタの手をとった。 シエスタの身体が緊張に強張る。強気なことを考えてはいたものの、やはりいざ本物を目の前にすると萎縮してしまうシエスタだった。 アンリエッタはそのままシエスタを馬車の中へ引っ張っていく。 「あなたには、聞きたいことがたくさんあるんです。 『オハナミ』のこと、タルブのこと。 そして、サイト様のこと」 最後の一言とともにウインクし、アンリエッタはシエスタを馬車に載せてしまう。 御者はそれを確認すると馬に活を入れ、馬車を進ませる。 421 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01 34 30 ID uPUX5pgY 馬車の椅子の上で固まるシエスタに、アンリエッタは微笑む。 「ここは今、あなたと私の二人きりです。そんな硬くならなくてもよろしいですわ」 しかしそんなこと言っても。 「恋愛の前に全ての人は対等、ですもの」 その言葉に、シエスタははっとなる。 「そう、あなたも私も、サイト様を想う女同士。 でも、今彼の傍には、ルイズがいる」 そしてアンリエッタの目がぎらりと光る。 それは、トリステインを統べる慈愛に満ちた女王の顔ではなく。 嫉妬に狂う、アンリエッタという、ただ一人の女の顔であった。 シエスタは急に、この女王に親近感が沸いてきた。 「私にできることでしたら、なんなりと」 …正直私も、そろそろミス・ヴァリエールとは決着をつけたいと思っていましたし。 そして二人は、視線を合わせる。 「…あなたとは、いいお友達になれそうですわ…」 女王アンリエッタは、そう言って手を差し出す。 シエスタはその手を、しっかりと握り返した。 ここに、女王とメイドのタッグが誕生した。 523 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02 30 25 ID HhDlCW0h 女王の馬車はまっすぐ、タルブの外れにある『サクラ』の樹が咲く丘へと向かった。 アンリエッタはシエスタから伝え聞いた『オハナミ』の作法に則り、まずは『サクラ』の木の下に、宴席が設けられるのを待つことにした。 準備が整い次第お呼びいたしますので、と騎士の一人が馬車の中のアンリエッタに告げる。 「さて、それでは…」 アンリエッタはそう呟くと、馬車の中から外界と通じる窓の鎧戸を閉め、目の前に座るシエスタに視線を移した。 「ご存知のとおり…今、サイト様の傍らには、ルイズがいます。 彼女がいたのでは…サイト様と一緒に、ゆっくり『オハナミ』を楽しむこともできません…」 そのアンリエッタの言葉に、シエスタが付け加える。 「いいえ、女王陛下。まだ一人、厄介な者がおりますわ」 シエスタの言葉に、アンリエッタははて、と首をかしげる。 ルイズとこの娘以外に、サイト様に執心な女性がいたのかしら? 「それは?」 促すアンリエッタに、シエスタは応える。 「タバサとかいう、青い髪の小さな女の子です」 「あの、ガリアの騎士ですか…」 幼いながらにして騎士の称号を持つあの娘。ルイズと同等か、それ以上に厄介な相手だ。 どうしたものか、とアンリエッタは思索する。 そしてすぐに、ある作戦を思いついた。 「ありがとうシエスタさん。あなたの『オハナミ』の情報、さっそく役に立つ時がきましてよ」 そう言って、アンリエッタは微笑む。 その笑顔は、勝利を確信した者のそれだった。 524 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02 31 00 ID HhDlCW0h 「…何か、釈然としないわね…」 『オハナミ』の宴の席で、ルイズは憮然としていた。 おかしい。何かが変だ。 アンリエッタの計らいにより、『オハナミ』の席は華やかに設けられていた。 見事に咲き誇る『サクラ』の樹を囲んで、アンリエッタ一行の持ち込んだ酒やご馳走が振舞われている。 そして、平民も貴族も関係なく、同じく宴に興じている。 ルイズの指摘するのはそこではない。 これは、『オハナミ』特有の『ブレイコー』とかいう習慣で、『オハナミ』の宴に参加するものは、身分や齢に関係なく、対等に宴を楽しむ権利がある。 だから、アンリエッタお付の騎士がそのへんのおっちゃんに複雑怪奇な関節技をかけられていても、お付のメイドが村の男どもに女王のような扱いを受けていても、ぜんぜん問題ないわけで。 ルイズの感じている違和感はそこではない。 「どうしたんだルイズ?」 彼女の目の前には、才人がいる。 そう、才人が『単独で』そこにいる。 当然絡んでくるはずのアンリエッタが、そこにはいなかった。 それこそがルイズの感じる違和感の原因であった。 当のアンリエッタといえば、離れた場所でまるで給仕がごとく、あちこちのグラスに酒を注ぎまくっている。 それもまた、ルイズの違和感を加速させる原因となっていた。 ルイズはせっかくの才人の語りかけも無視し、アンリエッタをじっと見つめる。 …何を企んでいるの、姫様…!? そんなルイズの視線に気付いたのか、アンリエッタはにっこりと笑うと、人ごみを縫ってルイズの方へやってくる。 …な、なに…? 「あらー?ルイズ・フランソワーズ?グラスが空いてましてよー?」 みょーに高いテンションでアンリエッタがルイズの持つ空のグラスに酒を注ぐ。 頬がほんのりと赤い。 酔ってる。この女王酔ってやがる。 「酔ってますね姫様」 呆れたようにルイズは言い、アンリエッタの酌を受ける。 そんなルイズに、アンリエッタは半眼で反論する。 「女王が酔っちゃいけないっていう法律でもあるんですかー? ええー?答えなさいよルイズ・フランソワーズぅー!」 しかも絡み酒だ。 ルイズが飲むはしから、グラスに酒を注ぐ。 ルイズは仕方なしにその酒を飲み干す。 そしてまた、アンリエッタが問答無用で酌をする。 何度かそれを繰り返すと。 「も、もう飲めない…」 ルイズは酔いつぶれて、バタンと倒れると、眠ってしまった。 アンリエッタはゆらりと揺らめくと、今度はすぐそばにあった空のグラスに目をつけた。 つまり、才人のグラスに。 「グラスが空いてましてよぉぉぉぉぉサイトさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 問答無用で酌をした。 525 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02 31 59 ID HhDlCW0h そして、その反対側では。 「さあ村長、覚悟なさぁぁぁぁぁぁぁぁい」 「や、やめてくれシエスタ、これ以上はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 逃げようとする村長の首根っこをむんずと掴み、酔ったシエスタは黒光りするワインの瓶を構え。 村長の口に突っ込み、問答無用で流し込んだ。 「もう飲めっ、ごぼぉおぉぉぉぉぉぉ?」 瓶が空になったのを確認すると、シエスタは村長の亡骸(酔いつぶれ)を地面に放り投げる。 その周囲には、同じようにシエスタに酔い潰された屍の山が。 「任務…完了」 酔った振りのシエスタはそう呟くと、屍の山を後にした。 アンリエッタの計画はこうだ。 まず、火のつくような強さの酒を用意する。 それを、アンリエッタの水魔法でもって、飲みやすい味に加工する。 そしてそれを、『オハナミ』の席で問答無用で振舞う…。 片や、女王による絡み酌。 片や、メイドによる強襲酌。 これに抵抗できる者が、この宴にいるだろうか。いや、トリステイン広しといえどいないであろう。 そして、計画は実行に移され…。 アンリエッタとシエスタを除く全ての『オハナミ』参加者が、酔いつぶれて『サクラ』の木の下に倒れることになった。 余談ではあるが、これが後世に伝わり、『タルブのサクラの伝説』となるのである。 569 名前:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 55 12 ID pRs/OsHa 「…起きて、ルイズ」 酔い潰れて寝ているルイズを、ゆさゆさと揺り起こす者がいた。 その者は、酔い潰れた己の使い魔を介抱するために宴から離れていて、女王とメイドの魔手から逃れていた。 しかし、揺すられたルイズは。 「う、うぅ〜ん…」 眉をしかめて、唸るだけで起きようとしない。 どうやらまだ、酒が残っているようだ。 声をかけた主はルーンを唱える。 呪が完成すると、ルイズを青い光が包む。 『水』系統の呪文、『解毒』だ。 呪文の効果で、ルイズの体内のアルコールが毒物とみなされ、分解されていく。 「…っ!?何っ!?」 アルコールの抜けたルイズは、がばっ!と起き上がった。 その拍子に。 ごっちぃん! 顔を覗き込んでいたタバサにまともに頭突きをかましていた。 ルイズの目の前に火花が散り、地面に逆戻りする。 タバサは不自然な角度で仰け反り、倒れるのを堪えている。 「いった〜〜〜〜い!」 ぶつけたおでこをさすり、ルイズの意識は完全に目覚める。 そういえば私、姫様に無理やり酌されて…。 酔って寝てしまったんだ。 そしてルイズは、不自然な角度で上を向いているタバサに語りかける。 「チビっこ…アンタが助けてくれたのね…」 ルイズとてメイジの端くれである。この状況をみれば、自分が魔法で気付けされたことくらいは分かる。 タバサはルイズの声にゆっくりと体を立てる。 その赤くなった鼻から、つつー、と赤い筋が垂れた。 …あ。 「ご、ごめん!」 ルイズは慌てて懐からハンカチを取り出し、タバサの鼻血を拭く。 タバサはその手からハンカチを奪い取り、憮然とした顔で鼻を拭いて、言った。 「…一個貸し」 それが頭突きの貸しなのか、魔法による解毒の貸しなのかは分からなかったが。 ルイズはぽりぽりと頬を掻いて視線を逸らす。 そして気付く。 「サイト!サイトはどこっ!?」 見渡す周囲には、ルイズの求める姿はなかった。 570 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 55 55 ID pRs/OsHa 「アンタっ!サイトどこ行ったか知らないのっ!?」 頼みの綱は酒の席から逃れていたであろうタバサであった、が。 自分の両肩を乱暴に掴んだルイズの手を振り払い、タバサは首を振る。 「知らない」 タバサがここにやってきたとき、既に才人はおらず、累々と横たわるお付の者たちと村人たち、そしてルイズがいただけだった。 ルイズは悔しさに親指の爪を噛む。 やられた…! 酔った振りで、酒を盛って…! わたあめのクセに!乳牛のクセに! やるじゃないの…っ! 悔しがるだけのルイズに対し、タバサは冷静だった。 累々と横たわる酔っ払いどもの上から、周囲を見渡す。 そしてすぐに、目的のものを発見する。 タバサは杖を手にして、すっくと立ち上がった。 「…見つけた…!」 その瞳はその二つ名のごとく冷たく澄み、目標を捕らえる。 タバサの視線の先には。仲よさそうに寄り添って、腕を組んで森の入り口に入っていく、アンリエッタと才人がいた。 タバサの異変に気付いたルイズも、その視線を追う。 「あっ…!」 ルイズも慌てて立ち上がり、そして。 「こら犬、何やってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ものすごい勢いで、タバサを置いて走り出した。 「…静かにしないと気付かれる…」 タバサの忠告も虚しく、ルイズは土煙をあげて二人の消えた森へとかっとんでいった。 そしてタバサも、その後を追う。 愛する人を、取り戻すために。 571 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 56 54 ID pRs/OsHa 「…うまくいったわね」 「はい、大成功です」 二人の消えた森の入り口の見える村の外れの空き家で。 横たわる才人を脇目に、女王とメイドの二人は、お互いの手を合わせて作戦の成功を祝った。 そう、森に消えた才人とアンリエッタは、スキルニルである。 そのスキルニルには、しばらく逃げ回った後、適当な木陰で元の人形に戻れと命令してある。 ルイズとタバサは森の中を散々連れ回された挙句、二人を見失う、という算段だ。 タバサが酒を飲まないであろうことを見越した、二人の作戦であった。 「さて、それじゃあ…」 アンリエッタが、酔って眠る才人を一瞥する。 「ええ」 同じようにシエスタも、才人を見つめる。 二人の瞳は、すでに獣欲に曇っていた。 「楽しみましょうか、シエスタさん…」 「ええ、女王陛下…」 572 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 57 46 ID pRs/OsHa 目を覚ますと。 俺は全裸で椅子に縛り付けられていた。 え?コレどういう状況?? 辺りを見渡す。 どうやらここはどこかの部屋の中みたいだ。 窓から差し込む光の加減から、お花見開始からけっこう時間がたってるみたいだ。 そういえば俺、姫様の注いだ酒のんで酔っ払って、寝ちゃったんだっけか。 …で、なんで裸か? とりあえず記憶を探ってみるけど。 何も出てくるはずはずがなく…。 と、とりあえずこの縄外さないと。逃げることもできやしない。 で、俺ががたごと暴れていると。 いきなり背後から白いものが伸びてきた。 でもって、それは俺の首に絡みつくと。 むにゅ。 後頭部にやーらかいものが押し当てられる。 この。耳の後ろに当たってる突起物と、目の前の白い手から察するに。 生おっぱいぱ-------------------------------!? 「え、なにこれどういうことこれっ!?」 俺は後ろから俺を抱きしめているであろう人に疑問をぶつける。 その人は、俺のよく知った声で答えた。 「無駄な抵抗はおやめなさい♪サイトさん」 「え?シエスタ?」 その声はシエスタだった。 シエスタは楽しそうにそう言うと、おっぱいを俺のアタマに押し付けたまま、上から俺の顔を覗き込んできた。 柔らかく歪むおっぱいの向こうから、笑顔のシエスタが俺を見下ろしている。 そして心底楽しそうに説明する。 「サイトさんは今、囚われの身なんです。 私とある人を満足させないと、解放してあげません♪」 え?なにそれどういうこと? いやまあこのおっぱい帽子は重きもちいいんですけど。 ってかある人ってダレ!? とか思っていると。 俺から見える扉が開いて、とんでもないものが姿を現した。 573 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 58 15 ID pRs/OsHa そこから現れたのは、真っ白な、下着姿の姫様。 「って何やってんすか姫様ーーーーーーーーーーーっ!?」 思わず叫ぶ俺。 そんな俺に、姫様はにっこり笑って近寄ってきた。 そして俺の顎をそっと指でなぞると。 いきなりキスしてきた。 そしてすぐに身体を離すと。 「まだ、立場というものがお分かりでないようですね?サイト様…?」 へ?立場?立場ってナニ? 俺が混乱していると、姫様はガーターベルトに吊るされた、白いストッキングに包まれた脚を持ち上げて…。 シエスタのアタックですでにクライマックスの俺の電撃イライラ棒を踏みつけた。 ちょ、ちょっとまてちょっとまって! うらがわあしのゆびでこすらないでええええええええ! 「ちょ、ひめさまっ」 俺の必死の呼びかけに、姫様は。 「そうじゃないでしょう?サイト様…?」 なんかものすんごいいやらしい笑顔で、俺を見つめて。 コスっていた脚を、椅子に引っ掛けて止めた。 ちょ、そこで止めないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 「女王様と、お呼びくださいまし♪」 ギンギンになった俺のきかん棒に支配された俺の理性は、即時降伏の道を選んだ。 「じょ、女王様っ」 そんな俺に、姫様は一瞬身体を震わせると。 「よくできました…。ご褒美を、さしあげてよ。サイト様」 後ろに控えるシエスタに、目配せした。 574 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23 59 22 ID pRs/OsHa シエスタはアンリエッタの指示に、才人の前に立つ。 彼女はアンリエッタとは違い、全裸だった。ただ、頭にだけ、いつものカチューシャを付けている。 アンリエッタはそっとシエスタの背中から押しながら言った。 「まずは、メイドを差し上げますわ…。 さ、シエスタ」 「はい」 シエスタは頷くと、身動きの取れない才人の首筋にそっと手を絡ませ、身体を密着させる。 才人のモノと腹の間に腰を落として、言った。 「サイトさん、どうして欲しいですか?」 淫靡に笑いシエスタは、才人に発言を促す。 才人はちょっと考えていたが、股間で飢えを訴える己の分身の欲望を、そのまま口にした。 「シエスタの中に…入れたい」 その言葉に、シエスタは嬉しそうに微笑むと、応えた。 「わかりました…旦那様」 シエスタは腰を浮かせ、才人の肉棒にそっと白魚のような指を絡ませると、ひくひくと蠢いて牡を待ち構える己の裂け目に、才人を導いた。 くちゅっ 湿った音をたて、シエスタの秘唇が才人の先端に当たる。 「それでは…失礼します、サイトさん…」 ぐにゅっ 柔らかい弾力をもって、シエスタは才人を根元まで飲み込んだ。 「ああっ!サイトさんのがっ、奥までぇ…!」 「くっ、キモチいいよ、シエスタっ…!」 575 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 00 45 ID pRs/OsHa そんな二人の接合を後ろで見ていたアンリエッタは、おもむろに後ろからシエスタの胸を揉みしだいた。 「あっ、へいかぁっ、なにすっ」 シエスタの言葉に、アンリエッタは応える。 「女王を放っておいて、自分だけ気持ちよくなろうなんて、いけないメイドですわね」 言って、その手に力を込める。 シエスタの胸が歪にゆがみ、その喉から苦痛を伴った喘ぎが漏れる。 「へいかぁっ…いたいっ…」 「うふふ…痛がっている割に…」 アンリエッタはシエスタの耳元でそう囁くと、右手を胸から離し、才人とつながっている股間へと伸ばした。 ぐちゅ… シエスタのそこは、感じている証である淫らな水音をたてた。 「この潤いようといったら。とんでもない淫乱メイドね」 言ってシエスタの耳の中に舌を差込み、嘗め回し始めた。 「やぁっ、らめっ、へいかぁっ、らめれすぅっ!」 アンリエッタの責めに、シエスタは動いてもいないのに高みへと持っていかれる。 そして才人もまた、目の前で繰り広げられる淫靡なショーに、内なる獣を抑えられずにいた。 「あ、ひ、らめ、いく、いくのぉっ」 「シエスタ、俺もっ…!」 二人は軽く痙攣し、絶頂に達する。 繋がったままの二人の間から、溢れた才人の子種が零れた。 零れた才人の液体を見たアンリエッタは、ぐったりと才人にもたれかかるシエスタを、いつの間にか持っていた杖で魔法をかけ、宙に浮かせる。 そのまま脇の床に横たわらせると、言った。 「主人のお情けをこぼすなんて、躾のなっていないメイドですわね…。 失礼いたしましたサイト様。お詫びといってはなんですが」 言ってアンリエッタは、ルーンを唱える。 そして現れた小さな氷の刃が、才人を椅子に縛り付ける縄を切り裂き、自由にする。 「あなたに、自由を授けましょう…」 576 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 02 35 ID pRs/OsHa 才人は、縛られていた両腕をさすり、椅子から立ち上がった。 「ふう、酷い目にあった…」 口ではそんなことを言うが、そんなことは毛頭思っていない。 アンリエッタは、そんな才人の前に立ち、そっとその胸板に身を預けた。 才人は慌ててアンリエッタに問う。 「で、でで、今度はナニをすればいいんで?」 才人のその素っ頓狂な質問に、アンリエッタはくすりと笑うと。 シエスタに教わった、ある台詞を口にした。 「あなたの思うやり方で、この私に…奉仕、なさい」 そして才人は、その言葉を受けて。 アンリエッタを抱きしめ、その唇を奪った。 サイト様は、私の言葉に、優しくキスをしてくださった。 してださったんだけど。 その後、いきなり、私を後ろ向きにさせると。 後ろから、押し倒してきた…。 私は慌てて両手をつく。 すると。 私はいつのまにか四つんばいにされていた。 「え…?」 驚く私のお尻を、サイトさまの、サイトさまの手がぁっ! 「じゃあ、たぁっぷり『奉仕』させていただきますね、女王様?」 ショーツの中まで入り込んで、お尻を撫で回してきた…! まるで形を確かめるみたいに、ショーツの中をサイト様の手が這い回る。 でも。 肝心な所には、一切、その、触ってくださらない…。 わ、私が命令してるのにぃ…! 「あれえ、おかしいなあ。こんなに奉仕してるのに、女王陛下は濡れてらっしゃらないぞぉ?」 だ、だって、そこは、濡れるようなところじゃあっ…! 私はサイト様に抗議する。 「そんなところっ…。濡れませんっ…!」 私の言葉に、しかしサイト様は。 「では、濡れている場所を仰ってください、女王陛下」 …うー…!いじわるぅ…! 私は恥ずかしいのを必死で堪えて…言った。 「お、おま…です」 しかし、サイト様は意地悪に返してきた。 「声が小さくて聞こえませんでした。もう一度、大きな声でお願いできますか?」 …サイト様のっ…へんたいっ…! 577 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 03 44 ID fMr/JWmC 「おまた…です…」 その言葉に、何故かサイト様は驚いたような顔をしたけど。 「承りました、女王様♪」 やっと、いじってくれるんだ…。 私が期待に胸を膨らませていると。 サイト様は、私の履いていたショーツの横の結び目を解いて、脱がせると…。 ちゅっ 直に、いきなり口付けてきた…! や、だめ、ゆびでひろげないでっっ! じゅるるるるるるっ! 「やぁっ!だめぇっ!」 響いた淫らな水音に、思わず私は叫んでしまう。すると。 サイトさまが、止まった…。 「…え…?」 思わず呆ける私に、サイト様が信じられないことを言ってきた。 「女王陛下がダメと仰るなら、ここでやめるしかないなあ」 振り返ると、サイト様はいやらしい笑顔を貼り付けていた。 …うー、もう、この人わぁ…。 私は必死に恥ずかしいのを堪え、サイト様に、『お願い』した。 「命令です、やめないで…。 私が何を言ったとしても、奉仕を止めては、な、なりません…」 そして、サイト様は。 「承りました、女王様♪」 満面の笑顔で、そう応えた。 578 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 04 17 ID fMr/JWmC 才人に後ろから獣のように貫かれ、アンリエッタは歓喜の言葉を囀っていた。 「あっあっあっあっ、いいですっ、いいですぅっ」 その表情は淫らに崩れ、口の端からは女王にあるまじきだらしなさで、涎を垂らしている。 「サイトさまのっ、サイトさまがぁっ、いいのぉっ」 リズミカルに叩きつけられる腰からは、清貧女王のイメージからは程遠い、溢れんばかりの淫汁が飛び散っている。 才人を受け入れているその裂け目は、まるで娼婦のように才人を咥え込み、快楽を才人に送り込んでいた。 「サイトさまのぉっ、おちんちんがぁっ、おくにぃっ、あたってるのぉ!」 奥の奥まで犯され、アンリエッタはもう、完全に雌の本能に支配されていた。 喉が淫らに囀り、胸が卑猥に揺れ、腰が貪欲に牡を貪る。 やがて、その淫行は限界に達する。 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、いく、いく、いっちゃう、サイトさまぁっ、いっちゃうのぉ!」 「だ、出しますよ女王様っ!」 二人はほぼ同時にビクビクと痙攣し。 才人は、ぎゅうぎゅうと最後の締め付けを行うアンリエッタの淫壷の中に、己の欲望をぶちまけた。 「あ、ひ、ひぁ…」 熱い熱い迸りで意識までも灼かれ、アンリエッタは床に崩れ落ちた。 579 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 04 53 ID fMr/JWmC さて、と。 俺はゆっくりと立つと、目の前で満足しきって眠っている二人の女性を見下ろした。 さーて、ここまで好き勝手やられてましたけど。 こっからが本番さね? 俺はゆくりと眠るシエスタに歩み寄って、近くにあった細いロープでその両手を後ろで縛った。 そこまですると、さすがにシエスタは目を覚ました。 「あっ…な、なにしてるんですかサイトさんっ?」 なにってー?し・か・え・し♪ 「まぁだ立場ってもんがわかってないみたいだね?シエスタ?」 「え?」 俺は呆けるシエスタの股間の小さなお豆を、指でつまんだ。 「やぁんっ!」 「シエスタは捕まったんだよ?つまり、俺のされるがまま」 俺は言って、シエスタのあそこを、指でこれでもかと蹂躙した。 「やぁっ、あんっ、そんなっ、かきまわさないでぇっ、あっ…?」 そして、シエスタからおつゆが垂れ始めてきたころを見計らって手を止める。 「え、なんで…?」 途中で放置されたシエスタは、抗議を込めた視線を俺に向ける。 まあ当然だけど。 でも俺の逆襲は始まったばっかりで。 「さてシエスタ。きちんと『お願い』できたら、続きしてあげるよ?」 俺の言葉に、シエスタは恥ずかしそうに俯く。 そして言った。 「お、お願いします…。 だ、旦那様のお情けを、お情けを、シエスタにください…」 よく出来ました♪ 580 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00 05 29 ID fMr/JWmC 「今はアナタは女王陛下じゃないんですよ?わかってます?」 「あっ、わかりましたぁっ、アンリエッタは、アンリエッタは、サイトさまのぉっ」 「俺の、何?」 「サイトさまのぉっ、ドレイですぅっ」 「よくできました♪」 ……。 アンリエッタ女王とサイトを見失ってから、私たちは村に戻ってきたんだけど。 聞きなれた声に誘われて、私たちは『サクラ』の丘のそばにあった家の扉の前にいた 扉の向こうからとんでもない声が聞こえる。 隣では、ルイズが拳を握り締めて震えてる。 めき…。 樫の樹でできたとんでもなく硬いはずの私の杖が、悲鳴を上げる。 …たぶん、私も震えてる。 ていうか、なんでこんなに落ち着いてるんだろ?私? 目の前でサイトが、他の女とアレしてるのに。 でも、心とは裏腹に、喉は勝手にルーンを唱え…。 どかぁん! 全力の『エア・ハンマー』が、その家の壁をきれいに吹き飛ばした。 そこには、両手両足を拘束された裸のアンリエッタ女王と繋がっているサイトがいた。 ……。 ………………。 ………………………………………………………………。 「いっぺん、死んでみる? 犬 」 ルイズが私の心情を代弁して。 逃げようとしたサイトを、私とルイズの魔法が吹っ飛ばした。〜fin
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1073.html
~学生寮の部屋~ 「………!」 『こいつぁ……おでれーた』 エンヤホテル跡の階段を上って来たタバサとデルブリンガーは、目の前に広がる光景を見て目を丸くする。そこは何処をどう見てもこの二人、いや一人と一本が日々の生活を営んでいた、トリステイン魔法学院の学生寮の部屋そのものであった。 『……オレ達、帰って来たのか?』 「違う……」 半信半疑で呟くデルブリンガーの言葉を、タバサは即座に否定する。 エンヤ婆を倒しただけでハルケギニアに帰って来られるなど、絶対に考えられない。 タバサが始めて出会ったDISCのスタンド、エコーズAct.3も言っていたでは無いか。 「この道はレクイエムの大迷宮に至る為の通過点」であると……。 それに先程聞こえてきたあの「声」。 あの声が語る内容は、タバサを次なる試練へと誘う言葉では無かったか。 つまり、先程戦ったエンヤ婆は門番だったのだ。 タバサが次の試練に辿り着けるかどうかを見張り、彼女にその資格があるのかを見極める為のガーディアン。それならば、エンヤ婆を倒したことでタバサは次の試練に挑む為の資格は得たはずだ。そしてこの部屋の何処かに、次の試練―― 恐らくレクイエムの大迷宮へと至る道があるはずだ。まずは、それを探さねばならない。 「まだ途中。だから行かなくちゃ……」 『まだどっかに行くアテがあるってーのか?』 「うん。そうしないと、帰れない」 『……確かに、オレっちだって元の世界に帰りてえけどよ』 ふう、と嘆息してから、デルブリンガーはいつもとは違う落ち着いた口調で言葉を続ける。 『タバサ。あんた、オレに会うまで、今までずっと一人で戦って来たんだろう? そんなボロボロになっちまうまでよぉ。無理すんな……とまでは言わねえけど、もうちっと、その、なんだ。タマにはもうちょい能天気になっちまってもいいんじゃないか?』 タバサはすぐに何かを言い返したりはしなかった。 デルブリンガーが自分の身を案じて言ってくれていることは、はっきりと伝わってくる。 でもそれは難しい、ともタバサは思う。 自分の暗殺に失敗した為に、今度は合法的に惨死させるべく―― 憎むべき伯父一族から命を落としかねない危険な任務を次々と押し付けられ、傷だらけの戦いの日々を余儀なくされた自分に、果たしてそんなことが出来るのだろうか。 ましてや、この世界に来てからと言うもの、次から次へと襲い掛かる敵との戦いの連続だった。 少しでも気を緩めてしまったら、その瞬間に死ぬ。 それこそタバサは今までの15年間の生涯で、そのことを嫌と言うほど思い知らされていた。 きっと、デルブリンガーにもそのことはわかっているのだろう。 真実かどうかは知らないが、彼もまた、伝説に語られるような遠い昔の時代から、激しい戦争の中で生きてきたのだと言う。そうで無くても、彼という存在が武器として作られた以上、 戦いの中こそが彼の生きるべき世界であり、その為に自分と同じ世界で生き続けて来たタバサの痛みが、心の内がデルブリンガーにはわかるのだ。 そして、だからこそ。 今ここでタバサが決して立ち止まったりはしないだろうということも、わかってしまうのだ。 でも、それでいいとタバサは思う。 戦いの中で傷つくことは辛いことだけど、自分のことを理解して、心配してくれる相手がいる。 自分の側に立って、本当に守ろうとしてくれる人がいる。 それで充分なのだ。 自分のことを想ってくれている人達がいることを、確かなものとして実感出来るのだから。 今握り締めているデルブリンガーや、自分のことを「友達なんだ」と言ってくれた キュルケ達トリステイン魔法学院の皆、使い魔のシルフィード、この世界で出会ったエコーズAct.3らDISCのスタンド達だってそうだ。 そして自らの命を賭けて、自分のことを守ってくれた母―― 彼らは皆、今のタバサにとって掛け替えの無い大切な存在だった。 だから、無理はする。だけど絶対に負けたりなんかしない。 ハルケギニアに帰って、もう一度会いたい人達が、今のタバサには沢山いるのだから。 「……ありがとう」 『へ?』 「心配してくれて、ありがとう」 出来る限りの精一杯に感謝の気持ちを込めて、タバサはデルブリンガーに答えた。 『お、おう。なんかお前さんにそんなコトをハッキリ言われると照れちまうな…… ま、ともかくだ!これからはオレっちも一緒だ。 オレの力が必要な時は、遠慮なくガンガン使ってくれよな!』 「うん」 「――残念ですけど……」 突然のことだった。部屋の隅から、タバサ達に向けて若い女の声が聞こえて来る 「………っ!?」 タバサは周囲にも注意を払いつつ、その意識を声の主の方向へと向ける。 装備DISC、そしてエネルギーが不足気味ではある物の、射撃DISC共に問題は無い。 体力的にも、後一度戦うだけの余裕はあるだろう。 問題は――そしてこれこそが致命的なことのだが、手持ちの発動用DISCがゼロであることだった。 装備DISCの性能に頼った力任せのゴリ押しは、下策だ。 その時置かれた状況に応じて、手持ちのカードを最大限に駆使しつつも、その消費は最小限に抑えて危機を切り抜けなければならない。 それはこの世界の探検に限ったことでは無い、戦いの常道の一つだった。 しかしエンヤホテルでの戦いは、全てのカードを切らねば勝利を掴めぬ程の苦しいものだった。 だからタバサは、今持っているDISCだけで出来ることを考えて、それを実行に移さなくてはならない。 「誰?」 顔を見せると同時に、残りのエンペラーとフー・ファイターズの銃撃を叩き込んでやる。 タバサは声の聞こえて来た方向に両手を向けながら、静かに聞き返す。 「ここではデルフさんの力も、完全には発揮出来ないんですよ」 敵意を向けるタバサの態度にさして動じた様子も無く、声の主は堂々とタバサ達の前に姿を見せた。 「…………!」 『なぬぅ!?』 タバサとデルブリンガーが、再び驚愕に目を見開いて―― 剣であるデルブリンガーはあくまで気分だけの話であったが、 ともあれ一人と一本は、その見覚えのある声の主の姿から目が離せないでいた。 「シエスタ……」 「ごきげんよう。ミス・タバサ、デルフさん。お元気そう……には、ちょっと見えないかも?」 赤黒い血の跡を残してボロ雑巾同然の服を着込んだタバサの姿を見て、彼女は苦笑いを浮かべる。 少なくともタバサ達には、その声も姿も、そこに立っているのがトリステイン魔法学院でメイドとして働いている平民の少女、あの平賀才人に一途な思いを寄せているシエスタ本人にしか思えなかった。 『ちょっとちょっとちょーっと待てよお嬢ちゃん!なんでアンタがこんな所にいるんだよ!? いや別にいてもいいのか?いやもう、とにかくオレ様スッゲーおでれーたぜ!』 「……ううん。多分、違う」 タバサは射撃DISCを撃ち込もうとしていた手を降ろしながら、デルブリンガーの言葉を否定した。 トリステイン魔法学院の学生寮に、そこで働くメイドの姿があるのは確かに不思議なことでは無い。 だがそれでも、それは現在目の前に広がっている光景に対する正確な回答とは呼べない無いだろう。 事情の飲み込めないデルブリンガーより先に、冷静に真実へと思い至ったタバサは静かに尋ねる。 「あなたも……やっぱり?」 「ええ、その通りです」 タバサの問い掛けの中身を察知して、シエスタはゆっくりと頭を縦に振った。 「ミス・タバサの仰る通り、私もまた、皆様が存じ上げているシエスタの“記録”に過ぎません」 この世界に存在する者は全て、何処か別の世界にある実在の人々の“記録”が形になっただけであると、タバサは以前エコーズAct.3から聞いたことがあった。 本当の意味でこの世界で「生きて」いる者は、タバサやデルブリンガーのような別の世界から迷い込んだ者だけであると言う。この世界が全て誰かの“記録”で出来ていると言うなら、トリステイン魔法学院やシエスタのようなハルケギニアの“記録”がここに存在していたとしても不思議では無いのだろう。 ――だが、それでも。 タバサはほんの僅かにではあるが、希望を持っていたのも確かだった。 これが本当の魔法学院なら、元の世界に帰って来られていたら、どれほど良かっただろうか、と。 『記録……って、どういうこった?お前さん、シエスタじゃねぇのか?』 「うーん。全く違う、と言う訳でも無いんですけど……」 事情の飲み込めないデルブリンガーの問いに、シエスタは困ったように首を傾げる。 「……そっくりさん?」 「双子でもいいかも」 「ドッペルゲンガー」 「近いかもしれませんね」 「リビングゴーレム……」 「あ、それはちょっとひどいですわ、ミス・タバサ」 『――わかった!わかったわかった!いや、本当はわかんねーけど、わかったコトにする!』 デルブリンガーが二人よりも寧ろ自分に言い聞かせるようにして、放っておけば延々と掛け合いを続けそうなタバサとシエスタ?の会話を遮った。 『あんたはシエスタ、それで決まり!いいんだよな、それで!?』 「いいと思う」 「そう思って頂ければ何よりですわ、デルフさん」 女性二人の了承を取り付けて、デルブリンガーはふう、と自分を納得させるように溜息をついた。 どうやらこちらの世界の住人らしいこのシエスタ2号は兎も角、同じ世界からやって来たタバサと同じ知識を共有していないのは辛い。自分も早く、この世界について詳しく知っておかねばならない。知らなかったから、この先結果としてタバサの足を引っ張ってしまった、では済まされないのだ。現在の自分の持ち主であるタバサが、如何なる状況においても全力以上の力を振るえるように、彼女の側でその身を支える。 それこそが、武器としてこの世に生を受けた自分の役目では無かったか。 心の中で新たに決意を固めたデルブリンガーは――そこでふと、あることに気付く。 『なあシエスタ?』 「はい?」 『さっきお前さん、気になるコト言ってたよな?』 「気になること……ですか?」 『ああ。ここじゃあ、オレの力を完全に発揮出来ないとか何とか……ありゃあ一体、どういう意味だ?』 「……………」 『おい、シエスタ?』 「――その話は後にしましょう」 これ以上話すつもりは無いとでも言いたげに、シエスタはゆっくりと首を振る。 『何だって。おい、オメエ、一体どういう……』 「まずは先にやらなくちゃいけないことがありますから」 『やらなくちゃならないコトぉ?』 「はい。ミス・タバサに、今のような御格好をさせておく訳にはいきません」 大真面目な表情で、シエスタはデルブリンガーの問いに答えた。 「お体を洗って、お召し物を変えなくては。そうしないと落ち着いてお話も出来ないでしょう?」 『ウーム……』 確かにシエスタの言うことも一理ある。 タバサがトリステイン魔法学院の生徒であることを示す制服とマントはボロボロに引き裂かれ、ドス黒く変色した血痕があちこちに染み付いている。 トレードマークの眼鏡はどう見ても使い物になりそうにない程にひび割れて歪んでおり、まだ幼いが綺麗に整った顔には、未だに乾き切らない自身の血で滑っている。 そんな彼女の姿はあまりに痛々しく、見るに耐えなかった。 無論、自分の能力云々の話も気にはなるが、今のタバサをどうにかしてやりたいとデルブリンガーが思っていたのも確かだ。 「もしミス・タバサさえ宜しければ、私が手伝わせて頂きますが……」 その部分のみ、シエスタは遠慮がちに口を開いた。 ハルケギニアでは貴族と平民の差は絶対だ。 平民が貴族の命令で多種多様な労働に励むのは当然のことであったが、貴族の身繕いまで平民の使用人が手伝う、という話はあまり聞かない。 それは家臣である平民の前で、貴族が肌を晒すなどもっての他だ、という貞淑な物の考え方である。 例外があるとすれば、かつて権力に物を言わせて無理矢理シエスタを引き取って慰み物にしようとしたジュール・ド・モット伯や、普段は未だに平賀才人を使い魔扱いしているゼロのルイズぐらいな物だろう。 ハルケギニアの平民として、貴族に対して畏敬の念を抱くべしと教えられて育って来たシエスタには、貴族であるタバサの意志を最優先に尊重しなければならないのだ。 そして、そんなシエスタと寸分違わぬ考え方を、タバサ達の目の前にいるシエスタの“記録”は出来るということだった。 『どうするよ、タバサ?』 「………お願い」 さして逡巡した様子もなく、タバサはシエスタの言葉を受け入れた。 『……いいのかよ?』 それはデルブリンガーが、未だに目の前のシエスタを疑っている為の問い掛けだった。 「いい」 『――わかった。アンタがそう言うなら、オレはもうなーんも言わねぇ』 「うん」 それっきり、デルブリンガーはタバサを信じて何も口を開かなかった。 タバサもまた目の前にいるシエスタの“記録”を信じてみることにしたのだ。 もし万が一、シエスタの言葉が自分を罠に掛ける為の物だったとしても、構わないとさえ思った。 トリステイン魔法学院に来てからの暮らしは、タバサにとって掛け替えの無いものだ。 そこでタバサは、愛すべき大勢の人達に出会った。 例えただの“記録”であっても、その中の一人であるシエスタのことを、タバサは疑いたくは無かった。 もう二度と、魔法学院の皆と敵味方に分かれて戦いたくなんて無かったのだ。 「それじゃあ、まずは……ポルナレフさん?ポルナレフさーん?」 『呼んだかい、シエスタ』 シエスタに呼ばれて返事をしたのは、ベッドの下から這い出して来た一匹の亀。 よく見れば、背中の窪みに豪奢な造りの鍵が埋め込まれている。 『おや、君達は……』 『こりゃおでれーた…亀が喋ってやがる……』 のそのそと歩いて来る亀の姿を見て、デルブリンガーが本気で感嘆した声を上げる。 『何を言うんだ、君だって剣なのに喋っているだろう。一瞬、アヌビス神かと思ったぞ』 『オレの世界じゃ喋る剣なんて珍しかねーんだよ。 アンタみたいに喋る亀の方がよっぽどレアもんだぜ?』 『いや、私は亀じゃない。私は――』 そこで声が途切れたと思ったら、亀の背中の鍵から半透明の影がせり出して来る。 影はやがて人間の男性の形を取って、タバサ達の前にはっきりとした姿を見せる。 歳の頃なら三十代半ばぐらいの、逞しい体躯をした男性だった。 深く刻まれた傷を隠すように、右の頬を半透明の面で覆っている。 「御紹介しますわ、ミス・タバサ。 こちらはポルナレフさん、この亀さんの中で暮らしている、ええと――」 『ジャン・ピエール・ポルナレフだ。まあ、この亀に憑く幽霊だと思ってくれて構わん』 説明に窮するシエスタに、ポルナレフと呼ばれた男はそんなフォローを入れる。 『始めまして。ミス・タバサ……と言ったかな、それにそこの喋る剣君』 『オレ様の名前はデルフリンガーだ。よーく覚えといてくれよな!』 『そうしよう。君達とは長い付き合いになるかもしれないからな。 それでシエスタ、私を呼んだのはこの二人を紹介する為かい?』 「いえ、ちょっと亀さんの中に用がありまして。入ってもいいですか?」 『なるほどな。わかった、好きにしてくれ』 「では、失礼します」 そう言いながら、シエスタはポルナレフと亀の方に近付いて行き、そして―― 「!」 『おおっ!?』 驚愕する一人と一本を余所に、シエスタは亀の背中の鍵に吸い込まれるように消えて行く。 『なっ、なんだぁ!?これで何度目かは忘れちまったが、オレ様またしてもおでれーたぞ!』 「………スタンド」 驚きの声を上げるデルブリンガーとは対照的に、驚きから醒めたタバサは冷静に指摘する。 『その通りだ、タバサ。この亀のスタンドは、自分の体内に生活空間を作り出すことが出来る能力だ。背中の鍵をこいつの甲羅にハメ込んでやると、 スタンドを発動するように訓練されているらしい……私がかつて“死んだ”時も、こいつのスタンドにしがみ付くことで、今もこうして生き続けているんだ。 と言っても、私もそうしたポルナレフという男の“記録”に過ぎないがな』 「……だから、幽霊?」 精神だけが亀の中で生き残っているということと、何処かの世界で実際に起きたことの“記録”。 ポルナレフは二重の意味で、自分のことを「幽霊」と言ったのだとタバサは今、気付いた。 『そうだ……私自身もスタンド使いだったが、ある戦いの中でそれはもう失われてしまった。 この世界の何処かには、DISCとして残ってるかもしれんが。そして、その時に生まれたのが――』 「――お待たせ致しました」 ポルナレフを押し退けるような形で、亀のスタンドの中からシエスタが戻って来る。 両手一杯に抱えているのは、大小二つの桶、その中には何枚かのタオルに、今タバサが着込んでいるのと全く同じデザインをしたトリステイン魔法学院の制服、そして正方形の箱らしき物体が乗せられている。 『お、シエスタ。……一体全体何なんだい、そりゃ?』 「本当でしたら、貴族の方々が使われている浴場の方まで御一緒するべきなのでしょうが、ここにはそのようなものはございませんので……仕方がありませんので、こちらでミス・タバサのお体を拭かせて頂くことに」 『って、ちょっと待ってくれよ。風呂が無いって、そりゃまたどーいうこった?』 この部屋を出て、学生用の浴場まで行けば良いだけの話では無いか。 そう言いたげなデルブリンガーの言葉を遮るように、シエスタは説明の為に言葉を続ける。 「この世界にあるトリステイン魔法学院の“記録”は、この部屋しかありません。 この部屋を一歩でも出てしまうと、すぐにでも別のダンジョンへと繋がって行ってしまうのです。 ここだけがミス・タバサ、あなたにとって安全な拠点として、この世界に用意された空間なのです」 よいしょ、と荷物を床に降ろしてから、シエスタは厳かな口調で言った。 『なるほどな……だから風呂にも入れねーってのか?』 「はい。そして私とポルナレフさんは、この部屋でミス・タバサの御力になるように命じられました。 それがこの世界での、私達の役目なんです」 それが自分達の「運命」なのだ、とでも言いたげにシエスタは答えた。 今、目の前にいる彼女は、姿も、口調も、何から何までシエスタそのものだった。 だが、今言ったその言葉だけで、目の前の彼女が“ハルケギニアのシエスタ”とは違う存在だと言うことを、はっきりと証明していた。 平民の身分でありながら――貴族であるあのゼロのルイズに立ち向かってまで、自分が恋した平賀才人に強い思いをぶつけ続けている、あのシエスタとは。 そして、目の前のシエスタ達にそうした役割を与えている存在。それこそが、恐らく―― 「レクイエム……」 『そうだ。だが、それが全てでは無い』 タバサの呟きにに答えたのは、亀のスタンドから顔を出しているポルナレフの方だった。 『レクイエムは確かに、この世界を形作っている存在の一つだ。だが、その先には――』 「さあ、お話はこれぐらいにしましょう」 再びポルナレフの言葉を遮って、シエスタはぱん、と手を合わせて軽い音を立てる。 「と、その前に。デルフさんはポルナレフさんと一緒に、亀さんの中に入って頂きます」 『なぬぅ?』 あまりにも予想外だったシエスタの言葉に、デルブリンガーは素っ頓狂な声を上げる。 『おいシエスタ、そりゃー一体どういう意味だ?』 「いいですか、デルフさん」 ずいっ、とシエスタはタバサの持つデルブリンガーの方に顔を近付けて、言葉を続ける。 「貴族の方の――いいえ、レディの方の湯浴みを覗き見るなんて、許されないことです。 ミス・タバサが身支度を終えられるまで、デルフさんには亀さんの中で待って頂きます」 『しかし、んなコト言われてもなぁ……オレ、剣だし』 「ダメですよ。レディが身繕いを終えられるまで待つのは、殿方のマナーではありませんか」 『ムムムム……』 シエスタにめっ、と叱られて、デルブリンガーは言葉に詰まった。 見上げれば、タバサも困ったような表情で二人のやりとりを見つめている。 『……わーった、わーったよ。待っててやるから、なるたけ早めに済ませてくれや』 「ありがとうございます、デルフさん」 観念した様子で、デルブリンガーはシエスタの言う通りにすることにした。 「では大変失礼ですがミス・タバサ、デルフさんを少しお借りいたします」 「うん」 タバサは手に持っていたデルブリンガーをシエスタに渡し、それを受け取ったシエスタは再び亀の中へと姿を消して行く。 待つことしばし。 デルブリンガーを中に置いて来たシエスタが、部屋に帰って来る。 「大変お待たせ致しました、ミス・タバサ。 僭越ながらこの私が、ミス・タバサの御召し換えを手伝わせて頂きますね」 「………水」 「はい?」 「水は、どうするの?」 シエスタは先程からしきりに「湯浴み」という言葉を使っていた。 だが部屋の中を見返してみても、この部屋に水を供給出来そうな手段は思い当たらない。 魔法の杖さえあったなら、自分が魔法を使って水を「練成」することも出来ただろう。 だが、それはこの世界に来る前に、ハルケギニアに置き忘れてしまっていた。 平民のシエスタでは無論「水」系統の魔法など使うことなど出来はしない。 ハルケギニアにおいては、魔法を自在に扱える能力こそが、「貴族」と呼ばれる為に必要な唯一絶対の条件であり、あの「ゼロのルイズ」がそんな二つ名で呼ばれて蔑まれて来たのも、今まで満足に魔法を使いこなせた時が無かった為なのだ。 しかしシエスタはそんなタバサの疑問に、大丈夫です、と答えて、桶の中に入れて来た荷物を選り分ける。そして最後に、桶の中から正方形の箱を取り出して、タバサにもはっきり見えるように脇へ抱える。 「私も――そして今のミス・タバサも、魔法を使うことは出来ません。ですが」 シエスタは無造作に箱を開ける。その中には、色とりどりのDISCが何枚も挟まっている。 「この「形兆のDISCケース」の中にあるDISCを使えば問題ありません。 ここに水を生み出すことも、それをお湯に変えることだって出来ますから」 そう言ってシエスタは、ケースから黄金色に輝く装備DISCを一枚取り出して、頭に差し込む。 「ウェザー・リポートのDISC!」 そのままシエスタが発動させたDISCの能力によって、大きな桶の中に収まる範囲にだけ水滴が落ち始め、やがて水滴は雨のように勢いを強めながら降り注いで行き、桶を満杯にした所で止まる。 「水」――いや、「天候」を自由に操るスタンドか。 タバサはシエスタが発動させたDISCの正体に思い当たっている間に、シエスタは二枚目の、今度は能力発動用のDISCを取り出して、桶一杯に敷き詰められた水の中へと放り込む。桶の中の水はジュッ、と燃えるような音を立てながら、 一瞬にしてその温度を高めてお湯へと変わっていた。 水が熱湯になるDISCが力を使い果たしてボロボロと崩れ落ちて行くのを全く気にせず、シエスタは小さい桶にお湯を移して温度を確かめ、これでよしと言う風にタバサの方を向きやる。 「さあ、準備が出来ましたわ、ミス・タバサ。こんな簡単なお風呂で申し訳ございませんが、お湯が冷めてしまう前にお召し物をお脱ぎくださいませ」 戦闘に使う以外にも、DISCにはこうした使い方がある。 タバサは「こちらの世界の」シエスタの生活の知恵に感心しながらも、彼女に促されるままに、まずは顔に掛かっている眼鏡を外した。 自分ではあまり気にしていなかった物の、確かに酷い壊れようだった。レンズに走るヒビのせいで視界が悪いな、ぐらいにしか思っていなかったが、これでは二度と使い物にならないだろう。 元の世界に帰るまで外すことになるかもしれないと思いつつも、タバサは手に持った壊れた眼鏡を部屋の隅のベッドの上に置く。 そして同じように外したマントを眼鏡の側に放り出し、上着のボタンに手を掛ける。 一つ、二つ、三つ……タバサはゆっくりとボタンを外していく。 その度に、タバサの白く滑らかな肌が露わになっていく。 折れそうなくらいに細く、まだ幼さを残している物の、その身体は胸元から下まで女性としての柔らかい曲線をくっきりと宿している。スカートを外せば、繊細で脆さすら感じる程なのに、 どこか肉感的にすら見える、メリハリの利いたラインを引く純白の肌に覆われた脚が伸びている。 それまで自分の身に纏っていた衣服を次々に外して行ったタバサは、最後に下半身を包み込んでいる下着に手を掛ける。 迷いの無い所作で、ゆっくりと素肌を晒して行く姿を目の前で見せられると、湯浴みを手伝うなどと言い出したシエスタの方が、逆に気恥ずかしくなる程だった。 「……これでいい?」 「あ――は、はい。ではミス・タバサ。少しの間、失礼致します」 一糸纏わぬ姿のタバサに声を掛けられ、その姿に思わず見惚れてしまっていた自分の意識を取り戻して、シエスタはまず小さな桶に掬ったお湯に浸しておいた一枚のタオルを取り出し、自分の血で濡れたままのタバサの顔を拭い上げる。 タオルに赤い染みを移すような形で、タバサの顔から汚れが落ちて行く。 しばらくする内に、汚れに塗れたタバサの顔はいつも通りの美しさを取り戻していた。 「……ふう、お待たせ致しました。ミス・タバサ、次はこちらへ」 そのまま続いてシエスタに誘導される形で、 タバサは大きな桶の中に張られている湯の中にゆっくりと身体を沈める。 「はあ……っ」 適度な温度に調節されたお湯の感触が心地良い。 まるで、母の胸に抱かれるような安心感すら覚える。 本来なら自分に与えられる筈だった毒薬を飲み干して、心を傷付けられる以前―― その頃のタバサの母は、いつでも自分を優しく抱き締めてくれた。 そんな懐かしい思い出を、お湯の中でタバサは夢を見るような心持ちで思い返していた。 「ミス・タバサの髪、お綺麗ですわ」 湯の中で思う存分温まったタバサの身体を拭い、彼女の身体が冷えないようにと部屋の隅に置いていたマント以外の新しい制服を着て貰ってから、シエスタはお湯を含めたタオルを タバサの髪に絡めて、じんわりと滲んでいた髪の油を丁寧な動作でゆっくりと抜き出そうとする。 「ザ・サンのDISC」 タバサの髪にたっぷり水分を含ませた後で、シエスタはDISCケースから新しいDISCを取り出し、部屋の中に熱を帯びた発光体を生み出す。 そして先程と同じようにして、今度は別の乾いたままのタオルをタバサの頭へと滑らせる。 熱量を抑えて発動させたザ・サンの光と合わせて、程なくしてタバサの髪から水分が離れていく。 先程から自分の頭を刺激するシエスタの柔らかい手の感触が、タバサには心地良い。 タバサがこの世界にやって来てから、これほどまでに安らぐことが出来たのはこれが初めてであり、それは他ならぬこのシエスタがいてくれるからだ。 人の優しさは、どんな時であろうと心に染み入る程の強さを持っている。 それが人間を「黄金の精神」に目覚めさせるきっかけになって行くのでは無いだろうか。 どんなに気高い精神を胸に秘めていようとも、人は一人ではそれを見失ってしまうのだ……。 忘れてはならないとタバサは思った。 このシエスタの優しさを。共に戦うDISCのスタンド達の力を。ハルケギニアの大切な人々の思い出を。 例えこの先、どれほど苛酷な試練が待ち受けていようとも、 それを忘れない限り、自分の精神は決して砕け散ったりはしないであろう。 「――これでよし、っと」 その言葉と共に、シエスタの手が既に乾ききったタバサの髪から離れる。 勿体無いな、とタバサは心の中で思ったが、いつまでもシエスタに迷惑を掛けるのも気が引けたので、そのことは口に出さないで代わりにシエスタがここまでやってくれたことに感謝の気持ちを声に出して、言う。 「……ありがとう、シエスタ」 「いいえ、とんでもございません。こちらこそ、きちんと御力になれたかもわかりませんのに」 「ううん、平気」 タバサは換えのマントを身に纏いながら、もう一度シエスタにありがとう、と言った。 「うふふ。ありがとうございます、ミス・タバサ。それじゃあ、後は――」 まずこれだ、とシエスタは宙に浮かんだままのザ・サンの発動効果を解消する。 発光体がフッと消え去り、次にシエスタは先程タバサが外した眼鏡に視線を送る。 「やはりこの眼鏡ですね……う~ん」 「……無いの?」 「これと全く同じ物は、生憎と……こういう眼鏡ならあるのですが」 困ったような表情でシエスタが取り出したのは、確かに眼鏡には間違いなかった。 だが、やけにゴテゴテと派手な装飾の施されたそれは、レンズによる視力の矯正以前の問題で、到底タバサに似合うとは思えない代物だった。 「これは?」 「ミス・ヴァリエールが御実家から送って頂いたという眼鏡なんですが… 何でも、これを掛けて特定の方以外の女性をいやらしい目で見るとその気持ちに反応してそれを知らせるという効果があるとか……」 「………いらない」 「ですよね……」 タバサに即答されて、シエスタは申し訳無さそうにその眼鏡を懐へと収めた。 「ではやはり修理をするしかありませんね……少し勿体無いんですが、この際仕方がありません」 シエスタは失礼致します、と断わりを入れてからタバサの壊れた眼鏡を手に取り、もう片方の手で更に新しいDISCを自分の頭に放り入れる。 「――クレイジー・ダイヤモンドのDISC!」 ドラァッ!! シエスタが発現させたDISCのスタンドが、タバサの眼鏡に向けて全速力で拳を叩き付ける。 その瞬間、タバサの眼鏡が動き出したと思いきや、物凄い勢いで壊れる前の形を取り戻して行く。 やがてタバサの眼鏡は、傷一つ無い新品同様の状態まで回復していた。 「………すごい」 「本来の使い方とは少し異なるのですが、このDISCにはこういう使い方もありまして。 ――さあミス・タバサ、どうぞこちらをお掛け下さいまし」 シエスタから渡された眼鏡を受け取って、タバサはそれを顔に掛ける。 いつも通りの眼鏡の硬質な感触が、タバサの顔に伝わって来る。 眼鏡の修理は完璧だった。 そして今、新しい制服を着込んだタバサは、すっかり普段と変わらぬ姿を取り戻していた。 「――次にミス・タバサが行かれる場所は、レクイエムの大迷宮と言う場所です」 亀の中で待っていたデルブリンガーを引っ張り上げ、タバサはシエスタとポルナレフから次に挑まなければならない試練について説明を受けていた。 『レクイエムの大迷宮は、先程まで君達が潜っていたダンジョンよりも更に深い。 ……エンヤ婆を更に上回るような危険な敵も次々と姿を現すだろう』 何か嫌なことを思い出した、とでも言いたげにポルナレフが渋い表情で口を開く。 「また、今まで以上に数多くの制限や、逆により沢山のDISCやアイテムが発見出来るでしょう。 今更私が仰るまでも無いことですが、これらの全てを知り尽くし、使いこなさなければ、レクイエムの大迷宮の最深部まで辿り着くことは出来ないと思われます」 「……………」 テーブルの上に出されたシエスタの手作りケーキを頬張りながら、タバサは二人の説明を聞く。 真面目な話を聞いてる時に不謹慎だとは思ったが、実に甘くて美味しいケーキだった。 以前、タバサも元の世界の彼女からケーキの作り方を習ったことがあったが、今でもここまで上手にケーキを焼くことは出来なかった。 ただそれでも、夜中にこっそり練習していたのがバレた後、食べてくれた色々な人が「美味しい」と言ってくれたことは、嬉しかった。それが噂で広まって、一時期の間、学院中でケーキ作りが流行り出すことになったのは、タバサにも予想外だったが。 『今度はオレもタバサに付いて行くぜ!アンタ達がダメだって言っても、オレは行くからな!』 「はい、それは問題ありません。デルフさんも、どうかミス・タバサのお力になってあげて下さい」 力を込めて語るデルブリンガーに、シエスタはそう言ってこくりと頷いた。 『――っと、そこで思い出したんだけどよ』 「何でしょうか?』 『さっき言ってたよな?オレの力が全部は発揮出来ねえって……今度こそキッチリ説明してもらうぜ』 大真面目なデルブリンガーとは対照的に、ああ、そんな話もあったね、とケーキを味わう方に神経を向けていたタバサは、今になってようやくその話を思い出したのであった。 「わかりました。 ……単刀直入に申し上げますと、デルフさんが御力を使う為に制限がかかる、と思って下さい」 『制限?』 「回数制限……と言えばいいんでしょうか。幾らデルフさんでも、何時でも何処でも好きに御力を使っていたら、すぐにクタクタになってしまうでしょう? その為にデルフさんの御力を回復させられるアイテムも、ちゃんと用意されてますから」 『は?そんなモンがあるのか?』 「はい。本当は特別なんですが、御説明の為に一つだけお渡ししておきますね」 シエスタが今度取り出したのは、一冊の本。 表紙の絵を良く見れば、あのゼロのルイズにそっくりな絵が描かれている。 タイトルは、「ゼロの使い魔 4巻」。 それは時折、彼女の使い魔である平賀才人を指して呼ばれる呼称でもあった。 『フム……何かと思ったら、そんなコトかい。 よっしゃ、それならオレっちを使う時の判断はタバサに任せるとすっか。よろしく頼むぜ、タバサ』 「わかった。でも、あなたを剣として使うのはきっと無理」 一度頷いてから、タバサはゼロの使い魔の本を懐にしまいながら言った。 体術の心得も多少はある物の、本来の自分の戦闘スタイルは やはり魔法の力を操るメイジの物。剣を用いての戦いは、そもそも想定したこと自体が稀である。 まして、伝承に語られる「ガンダールヴ」の再来と称される、 デルブリンガーの本来の持ち主の平賀才人のように彼を扱うなど、タバサには到底不可能だ。 それはもうタバサに与えられた「役割」の埒外の話とすら言える。 手にした人間の能力や、触れた武器の性能を瞬時に理解する能力を持ったデルブリンガーも、そのことは良くわかっていた。だからこそ、彼もさして気にした様子も無く、鷹揚な口調で告げる。 『わかってるって。だけどよ、いざと言う時にはオレも何とかやってみるぜ。 この世界に転がっているDISCってヤツ……もしかしたら、面白い使い方が出来るかもしれねえ』 「うん」 自身有り気に言うデルブリンガーの言葉を信じて、タバサはこくりと頷いた。 「――じゃあ、そろそろ」 頬に付いたケーキのクリームを拭いながら、タバサは立ち上がってシエスタ達に会釈する。 そろそろ、自分達は行かなくてはならない。ここで平穏な時間を過ごすのはもう終わりだ。 レクイエムの大迷宮。ここを通り抜けて、自分は元の世界に帰らなければならない。 「はい。……レクイエムの大迷宮へは、こちらから行くことが出来ます」 シエスタがそれまでタバサが食べていたケーキの皿を置いたテーブルを動かすと、その下には既に見慣れた下り階段があった。この先がレクイエムの大迷宮に至る道。 シエスタから貰ったベルトでデルブリンガーを脇へと指しながら、タバサは自分の中から久方ぶりに鋭角的な緊張感が芽生えて来るのを自覚していた。 「行ってきます」 『じゃーな!世話になったな、二人とも』 「お気をつけて、ミス・タバサ、デルフさん」 シエスタとポルナレフをその場に置いて、階段を下るタバサ達の姿が見えなくなっていく。 『……行ってしまったな』 「はい」 『止めなくても良かったのか?この部屋の中で永久に暮らすことも、不可能では無かったろう』 「それは――無理ですよ。 あの方だって、それが出来たのに、この世界から出る為に何度も頑張り続けていたのでしょう?」 『……奴の精神の行き着く所は邪悪に過ぎん。本当なら、ここに永遠に封じられるべきだったのだ』 「だけど、自分が望んだ未来を手に入れる為に、決して諦めずに「運命」に逆らい続けた……。 目指す方向こそ違うけれど、タバサさんにも、そうした強い「意志」の光がある」 『そうだな……人は決められた「運命」を乗り越える為に生きている。 その結果がどうなろうと、最後まで「運命」に立ち向かっていく「黄金の精神」を彼女も持っているのだな……かつて私が出会った、若者達のように。 「運命」とは「眠れる奴隷」だ。彼女は今、それを解き放ちに向かったと言うことか……』 シエスタとポルナレフ。この世界が生み出した“記録”達は、 再び覚悟の道を歩み出したタバサが去って行った方向を、いつまでも見続けていた。 「ごきげんよう、ミス・タバサ。そしてようこそ、光り輝く「黄金の風」へ――」 シエスタの呟きを聞く者は、この部屋の中にはもう誰もいなかった。 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued… 第3話 戻る
https://w.atwiki.jp/moejinro/pages/1893.html
PEPPERMINT 朝になりました。村の広場に甘噛みされたリヴァインさんの死体が見つかったようです...。 PEPPERMINT /chjoin メイドイン 3 (メイドイン) ラスフィーノ なるほどこれも便利かもな PEPPERMINT 村人の皆様、今日も一日ゆっくりしていってね! 3 (メイドイン) ラスフィーノ いいこときいた PEPPERMINT 昼の部スタートです! 3 (メイドイン) こんぶて おおかみは 噛み先おかしいだろ 3 (メイドイン) Mrチキン だから好みなのですw (T) > jitto もっと全てをさらけだせよ! 1 (ぺんぎん村) メゾピ おはよーです 1 (ぺんぎん村) Garya 狩人居ないんですかねー 1 (ぺんぎん村) カルシファー 霊媒がー 1 (ぺんぎん村) あかみさと ここで霊噛み・・・? 1 (ぺんぎん村) るみや 狩人不在かしらん 1 (ぺんぎん村) シエスタSS まあ 1 (ぺんぎん村) おおかみん 霊が 1 (ぺんぎん村) カルシファー いないみたいですね 1 (ぺんぎん村) EVANS 昨日の発言見返した感じ、今日はシエスタさん吊りでいいんじゃない? 3 (メイドイン) ニキハウス 狩人いないのかな流石に 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 麗だよな 1 (ぺんぎん村) あかみさと 昨日結果見せといて今日噛むのか 3 (メイドイン) Mrチキン ほんとに霊媒かんだか 3 (メイドイン) リヴァイン おつかれーまぁ自分かむわな 1 (ぺんぎん村) メゾピ 穴狙いで共有護衛してたのかもしれない 1 (ぺんぎん村) おおかみん 狩人はいなそうだね 1 (ぺんぎん村) シエスタSS いや 3 (メイドイン) ラスフィーノ 狩人はBBLさんでしょう 3 (メイドイン) ニキハウス これで、狐ケアがますます… 3 (メイドイン) BBL 正直Gaviさん狩人なんじゃないかな? 1 (ぺんぎん村) jitto リヴァさんもしくは黒か・・・と思ってたら噛まれた 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 流石に 3 (メイドイン) ラスフィーノ って思ってましたけどw (T) アーリリーザ > これ、狼会話も抜けた方がいいのですか? 3 (メイドイン) リヴァイン 狩りさすがに死んでる世ねぇ 3 (メイドイン) BBL 私ならバーバラさん護衛するからなあ 1 (ぺんぎん村) あかみさと リヴァさん●はなくない?流石に 1 (ぺんぎん村) シエスタSS この状況でってあれだけど 3 (メイドイン) BBL 真ぽかったですし 1 (ぺんぎん村) カルシファー となるとまぁ狼はやっぱ2匹ですか 1 (ぺんぎん村) jitto いや・・・もしかしてと試行錯誤を繰り返したのだよ 1 (ぺんぎん村) おおかみん これで狼2狐不明 3 (メイドイン) リヴァイン ●疑いとかいわれたwww 3 (メイドイン) Mrチキン 狼さん、狐無視してね?w 1 (ぺんぎん村) Garya 昨日以前見返してもシエスタSSさんかなと思えます、ってこういう発言してるとEVANS-Garya見えてくるな 3 (メイドイン) ニキハウス 霊一人で偽とかいやだー 3 (メイドイン) ラスフィーノ 怪しいよね 1 (ぺんぎん村) EVANS おまえがいうなし 3 (メイドイン) BBL まさかの占い真狂狐? 3 (メイドイン) リヴァイン キツネ吊れたとか考えてそう狼 1 (ぺんぎん村) カルシファー 最大つり回数は4 (T) > アーリリーザ 残ってていいよ! 1 (ぺんぎん村) あかみさと 自分はいってんぞw! 1 (ぺんぎん村) メゾピ シエスタさんよりもjittoとあかみさとさん吊りたいんですけど 3 (メイドイン) ラスフィーノ リヴァイン、ライン戦押ししてたのに 3 (メイドイン) ニキハウス あ、リヴァインさんお疲れ様です 3 (メイドイン) Mrチキン リヴァさん●とかw 3 (メイドイン) リヴァイン おつかれー 3 (メイドイン) BBL だから噛みも狐探してないとか? 3 (メイドイン) こんぶて さて、俺のマクロが9日目までしか対応してないからそろそろ終わって欲しいんだが 1 (ぺんぎん村) メゾピ jittoさんでしたごめんなさい (T) > アーリリーザ 草葉の陰から見守ってあげるがよいです 1 (ぺんぎん村) シエスタSS ごめん 3 (メイドイン) リヴァイン wwww 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 今 3 (メイドイン) BBL お疲れ様でした 1 (ぺんぎん村) EVANS なんかGaryaさん昨日あたりからおもしろいんだよなー、釣りたくなくなってきた 1 (ぺんぎん村) あかみさと とりあえず私が気になってるのはGaryaさんかな 1 (ぺんぎん村) jitto また、俺かよ・・・・ 3 (メイドイン) BBL だったら怖いなあ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS グレー何人? 1 (ぺんぎん村) あかみさと Garyaさんは自分を怪しいって言ってたけどそういうのは結構人外目で見るよ 軽い感じで言って自分を外そうとしてるのかなと 1 (ぺんぎん村) Garya そういえば昨日忘れてたけどおおかみんさん狂の○もらいですよね、途中でメゾピさんとこんぶてさんにつりたがられてた (T) アーリリーザ > わかりました。背後霊頑張ります 3 (メイドイン) リヴァイン これ最終日までいくでしょうwってかいってほしいw 1 (ぺんぎん村) カルシファー グレーは一人ですかね 3 (メイドイン) Mrチキン これでリヴァさん●だったら最初から絶望村にもほどがあるw 1 (ぺんぎん村) Garya だねー逆囲いみたいにも見える 3 (メイドイン) PEPPERMINT いくかもなー 1 (ぺんぎん村) jitto どうしてそこまで俺を黒だと思うのかがわからん・・・ 3 (メイドイン) リヴァイン まったくだw 1 (ぺんぎん村) カルシファー あ、二人だ 3 (メイドイン) PEPPERMINT あと何人だっけ 1 (ぺんぎん村) あかみさと グレー3人じゃない? 3 (メイドイン) リヴァイン 残り9 つりは4 1 (ぺんぎん村) EVANS ぼくのなかで今村視できるのがメゾピさんとあかみさとさんかな、暫定だけど。 1 (ぺんぎん村) るみや 完グレはGaryaさんとシエスタさんですのう 3 (メイドイン) PEPPERMINT 9か 1 (ぺんぎん村) カルシファー シエスタ、Garya 1 (ぺんぎん村) メゾピ おおかみんさんはステ気味だったから吊りたいってだけだったんですけど 1 (ぺんぎん村) Garya 真占い考えるとカルシファーさん以外皆グレーだけどね、完グレーは2人 1 (ぺんぎん村) あかみさと あれ、違ったかすまんぬ 1 (ぺんぎん村) おおかみん うんこんぶてさんとメゾピさんに吊られそうになった 3 (メイドイン) BBL EVANSさんとGaryaさんは村っぽいかなあ 3 (メイドイン) リヴァイン GJ出るならここだけど流石に狩りしんでたなぁ 3 (メイドイン) ニキハウス もう、グレーより囲いの方が怪しく見えるなぁ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS オレかGaさんなら 1 (ぺんぎん村) Garya おおかみんさんは最初の○だから囲いには見えてないよ 3 (メイドイン) こんぶて めぞぴがんばってるからメゾピに勝って貰おう 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 発言的にGasannjane? 3 (メイドイン) こんぶて 狼ならしらん 3 (メイドイン) リヴァイン るみやさん メゾピさん辺り●で見てる 1 (ぺんぎん村) Garya えっちょっと見返してきてよ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS Gaさんじゃね? 1 (ぺんぎん村) EVANS まぁシエスタさん狐に見えるっていう人も多いし、多分2Wだから先に狼狙いの吊りにいくのもアリだとは思いますがね 1 (ぺんぎん村) メゾピ あかみさとさんの色見たかったですねー、そこが○だったらおおかみんさん吊りたくなったんですが 3 (メイドイン) ニキハウス あーやっぱそのへん怪しいですよね 3 (メイドイン) BBL おおかみんさんは吊るには遅い気も 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 自分で言ってたじゃんw 1 (ぺんぎん村) おおかみん 囲いがあるならるみやさんなんだよね 3 (メイドイン) こんぶて 確かにすげーおそい 1 (ぺんぎん村) Garya 厨二病はとにかく私は村発言してたよ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 正直 3 (メイドイン) アーリリーザ 墓場でも結構みんな推理頑張ってるんですね 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 自分のこと怪しいとかいう人って 3 (メイドイン) リヴァイン メゾピ○の日がねぇ るみやさんは前占いローラーノイズとかいってたし・・・ 3 (メイドイン) こんぶて 今更感はかなりあるね 3 (メイドイン) PEPPERMINT うむ 1 (ぺんぎん村) EVANS カルシファーさん暫定的な指定ある? 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 信用で禁止な 1 (ぺんぎん村) jitto リア狂アカン 3 (メイドイン) BBL だから狐打としたら狼が噛まなかったのが悪いということで村で見たいかな 1 (ぺんぎん村) メゾピ アーリさん吊ったなら、狐がーとか言う吊りして欲しくないなぁ 3 (メイドイン) PEPPERMINT お茶でものんで 1 (ぺんぎん村) あかみさと やたら叩いてくるメゾピさんを村認定してるのが辛くなってくるわw 最初の囲い位置だし強誘導が・・・ 1 (ぺんぎん村) カルシファー うーん 3 (メイドイン) PEPPERMINT まったりと推理するなり観戦するなり 3 (メイドイン) ニキハウス ここまで村進んでるのにログ早いな 3 (メイドイン) ラスフィーノ ちゃんと考えないと旨くなれないしね>アーリさん 3 (メイドイン) PEPPERMINT するがよいぞー 1 (ぺんぎん村) カルシファー EVANSさんが村っぽいって感じですかね 3 (メイドイン) Mrチキン 9>7>5 狼残り2だと3吊りじゃない? 私何か勘違いしてるか? 1 (ぺんぎん村) Garya 私は自分が吊られること前提で話してるから、少なくとも狐ではないよ、その点シエスタSSさんはすごく狐っぽいよね 1 (ぺんぎん村) るみや 意外と囲いに見せかけて村に○だしまくってたとかいうのをふと思い浮かんだけどちと微妙かしらん 1 (ぺんぎん村) EVANS できれば狼っぽいとこお願いします 1 (ぺんぎん村) Garya EVANSさんは村でいいです、狼から○だされてるし 1 (ぺんぎん村) シエスタSS ちょっとまて 3 (メイドイン) ラスフィーノ 上手な人の発言はほんとうに参考になります 3 (メイドイン) Mrチキン 3抜けた 1 (ぺんぎん村) シエスタSS なんで自分が釣られる前提が 3 (メイドイン) リヴァイン あってるかな? 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 村なんだ? 1 (ぺんぎん村) Garya あのタイミングは村だから村にしておいて怪しい人減らさないようにしただけ 1 (ぺんぎん村) Garya いや私は 3 (メイドイン) アーリリーザ はい、頑張ります 1 (ぺんぎん村) Garya 狼かもしれないよ?でもキツネはありえないじゃん 3 (メイドイン) BBL いまさらGaryaさんのネタっぽい発言突くのはどうなのかなあ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS この中で 1 (ぺんぎん村) メゾピ シエスタさんはまだ意見見えてるし、jittoさんより後で吟味したいですけどね 3 (メイドイン) ニキハウス GaryaさんとEVANSさんは村でみてるなぁ PEPPERMINT -----残り2分----- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り2分----- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り2分----- 3 (メイドイン) BBL これはシエスタさんも怪しくなるかな 3 (メイドイン) BBL 無理がある 3 (メイドイン) ニキハウス なので囲いに狼がいると予想 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 自分釣られる前提で今まで話した人とか 1 (ぺんぎん村) シエスタSS そんなにいたのか? 1 (ぺんぎん村) Garya シエスタSS→Garya→るみや→あかみさと 3 (メイドイン) こんぶて あかみさとさんは今回村でいい気がするなぁ 3 (メイドイン) リヴァイン 囲いしてるだろうなぁ 1 (ぺんぎん村) Garya これでよくないかなって思ってる 1 (ぺんぎん村) EVANS あくまで昨日の「どこつりたい」発言を統計しての話です、恨みはないのでごめんなさいね>シエスタさん 3 (メイドイン) ラスフィーノ あかみさんはだいぶ狼でみてたけどね 1 (ぺんぎん村) おおかみん Garyaさん村アピしないんだ 3 (メイドイン) ラスフィーノ おっと自分の○だから、当然村だよ! 1 (ぺんぎん村) Garya しないよするだけ無駄でしょ 1 (ぺんぎん村) おおかみん そうでもないのか 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- PEPPERMINT ------残り1分------ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ 3 (メイドイン) リヴァイン 狂は座ってろ 1 (ぺんぎん村) Garya まぁばっちりしてるとも言える 3 (メイドイン) BBL もう手遅れw 3 (メイドイン) ニキハウス ひどい扱い 3 (メイドイン) こんぶて hittoさんは釣りたいけどな 3 (メイドイン) ラスフィーノ 座は狂ってろ! 1 (ぺんぎん村) EVANS で、どこ釣ります? 3 (メイドイン) アーリリーザ 狂確定扱いw 1 (ぺんぎん村) あかみさと Garyaさんはずっと自分が怪しいと軽い感じでいい続けてるのがきになる かな 1 (ぺんぎん村) Garya けど私を無視したとしても村濃いEVANSさんに疑われてるんですからね 1 (ぺんぎん村) カルシファー 今日はシエスタさんいきますか 3 (メイドイン) リヴァイン ってかあれで狂じゃなかったら流石にやめてっていうわw 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 時間ない 1 (ぺんぎん村) メゾピ 2wいる可能性大ですし、指定お願いしたいですねー 1 (ぺんぎん村) あかみさと 朝も言ったか・・・ 1 (ぺんぎん村) シエスタSS まじか 1 (ぺんぎん村) EVANS おぉ、もういっちゃうか。了解。 1 (ぺんぎん村) メゾピ えー 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 狩人CO 1 (ぺんぎん村) あかみさと 指定了解よ 3 (メイドイン) Mrチキン Jittoさん メゾピさん シエスタさん 辺りで釣りたいな 3 (メイドイン) ラスフィーノ 狂人っぽくなかったじゃん 3 (メイドイン) アーリリーザ ワタシガ狂ダヨ 1 (ぺんぎん村) あかみさと うほ 1 (ぺんぎん村) るみや ぇ 1 (ぺんぎん村) カルシファー うわ 1 (ぺんぎん村) メゾピ 日記早くどうぞ 1 (ぺんぎん村) Garya 護衛先どうぞ 3 (メイドイン) ニキハウス 狼2は確定だろうなぁ 1 (ぺんぎん村) EVANS 指定変更はやめにおね 3 (メイドイン) リヴァイン 狂いにしか見えなかった 1 (ぺんぎん村) シエスタSS きょうはやめろ 1 (ぺんぎん村) jitto うわぁ・・・そう来た!! 3 (メイドイン) ラスフィーノ P鯖メンバーは占わないっていう 3 (メイドイン) ラスフィーノ きまりをきめたら 3 (メイドイン) リヴァイン 狼は座ってて ね? 3 (メイドイン) ラスフィーノ あーなった 1 (ぺんぎん村) シエスタSS まじでやめとけ 1 (ぺんぎん村) あかみさと どこ護衛したかだけでも言ってくれると 1 (ぺんぎん村) おおかみん 霊守ってない時点でなくない 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 1 (ぺんぎん村) Garya 護衛先に納得できたなら私吊りでお願いします PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 1 (ぺんぎん村) シエスタSS きのうは PEPPERMINT 夜が近づいて参りました。皆様、今日の尊い犠牲者を投票にてお選びください。(会話ストップ) 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----狼会話スタートです----- PEPPERMINT 投票は私にTellにてお伝えください。 3 (メイドイン) アーリリーザ 霊結果出てないから確定じゃない!w 2 (おいぬさま) あかみさと きっつwwww 3 (メイドイン) リヴァイン うむ (T) メゾピ > シエスタSSさん 3 (メイドイン) BBL 私昨日P鯖人狼参加したのに… 2 (おいぬさま) シエスタSS えへw (T) EVANS > るみやさん 3 (メイドイン) リヴァイン アーさんは○かもしれないよ! 3 (メイドイン) ニキハウス Garyaさんは自吊り押しすぎると、狼のいい的にされそう 2 (おいぬさま) シエスタSS Gaさんでw (T) jitto > リア狂怖い、Garyaさんへ 2 (おいぬさま) あかみさと おkw 3 (メイドイン) こんぶて 別にこの狩人は残していいけど、再指定ないのがつらいな 3 (メイドイン) ラスフィーノ BBLさんは、昨日大勝利したからいいでしょw 3 (メイドイン) リヴァイン カングレ狙うよりもう○から吊っていったほうがいい気がする 3 (メイドイン) こんぶて 共有守ってて霊抜かれた可能性もすごいある (T) Garya > シエスタSSさんに投票、今朝「まぁ霊だよな」って言ってるのに護衛しないとかおかしいよ? でもまぁ狩人残ってるんじゃないかなぁとも思ってたけどねぇー (T) カルシファー > シエスタSSさんでー (T) シエスタSS > Gaさんで (T) あかみさと > Garyaさん投票です (T) るみや > 投票 > シエスタSS さん 3 (メイドイン) アーリリーザ 今日の投票は荒れそう 3 (メイドイン) ニキハウス 共有守りますかね?あそこで 3 (メイドイン) BBL 墓地では私吊れ派が多かったみたいですけどね 3 (メイドイン) リヴァイン さすがにここで共有まもらないんじゃない? (T) おおかみん > シエスタさんに投票します。 4 (きゃっきゃうふふ) カルシファー シエスタSSさん村だったらごめんなさいー 3 (メイドイン) Mrチキン この時点で霊媒まもってなくて吊り対抗狩人COは 2 (おいぬさま) シエスタSS うーん 3 (メイドイン) Mrチキン 吊りでしょw 3 (メイドイン) ラスフィーノ まぁなんだろうね、狐かな 3 (メイドイン) ニキハウス 狩人はもういないと思うなぁ 3 (メイドイン) BBL 大勝利もなにもこんぶてさんが狩人噛んでくれなかったら勝てなかった 3 (メイドイン) こんぶて 俺狼だったら霊かまんし 4 (きゃっきゃうふふ) カルシファー ってしまったorz すいません 3 (メイドイン) リヴァイン 普通につるよねぇそんな狩り 3 (メイドイン) こんぶて 狐だとしても吊らないし 3 (メイドイン) Mrチキン シエスタさん狐かな 3 (メイドイン) リヴァイン まじでか 2 (おいぬさま) シエスタSS タイミングミスっちゃったな 3 (メイドイン) コピル ただいまー PEPPERMINT ------残り1分------ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- 3 (メイドイン) ニキハウス おかです 3 (メイドイン) BBL おかえりなさい 3 (メイドイン) Mrチキン おかえり 3 (メイドイン) リヴァイン さすがコンブテさん変態護衛するだけのことはある 3 (メイドイン) ラスフィーノ 潜伏の霊かもよ! (T) Garya > 【独り言】彼女が狩人だとしても狐だとしても噛まれない気がする。今日の噛みはEVANSさんかおおかみんさんになるんじゃないかな 3 (メイドイン) リヴァイン おかりー 3 (メイドイン) ラスフィーノ リヴァインは偽 2 (おいぬさま) シエスタSS どうなるかな 3 (メイドイン) こんぶて 狼のせいでもう狐分からないんだから飽和させればいいじゃない 3 (メイドイン) アーリリーザ 潜伏霊は・・・ないかな・・・ 3 (メイドイン) リヴァイン 狼いきなりよくいったよなぁ 3 (メイドイン) ラスフィーノ いやシエスタさんはやるw 3 (メイドイン) Mrチキン ・ワ・<きょうじんはだまるです 2 (おいぬさま) あかみさと んーむ 3 (メイドイン) ニキハウス 護衛三回くらい成功してる事ありますけど、鉄板守ると、出来ないですよね 2 (おいぬさま) あかみさと あの出方だと逝った気がするな・・・ 3 (メイドイン) コピル 酔っ払いが家の外で暴れてました(;´Д`) 3 (メイドイン) ラスフィーノ 僕は真だよ! (T) Garya > 【独り言】そしてメゾピさんが狼に見えてきたーよ? 3 (メイドイン) リヴァイン ・ワ・<オメーの発言ねーです 2 (おいぬさま) あかみさと と、とりあえず噛みどうしようかな PEPPERMINT さらばシエスタSSさん...あなたの勇姿は3秒くらい忘れない。 PEPPERMINT /chjoin メイドイン 3 (メイドイン) アーリリーザ いやでも狐吊れてる可能性も充分ありそうだけど 2 (おいぬさま) あかみさと アッー! PEPPERMINT 日没です。おとなもこどももおねーさんも寝る時間です。 3 (メイドイン) Mrチキン そこはひらがなでw (T) EVANS > 【独り言】まじかよwwww PEPPERMINT 役職の方は私にTellにて役職行動をお伝えください。 シエスタSS すきやきなびこ! 3 (メイドイン) リヴァイン そだったw 3 (メイドイン) こんぶて E鯖で霊鉄板で5日連続GJなかったっけw 2 (おいぬさま) あかみさと またLWか・・・^p^ 3 (メイドイン) ラスフィーノ ぶーぶー 3 (メイドイン) リヴァイン キツネ連れてる可能性あるよねぇ確かに 3 (メイドイン) BBL ありましたね 3 (メイドイン) ニキハウス 狼諦め悪すぎ! 2 (おいぬさま) あかみさと シエスタさんお疲れ 2 (おいぬさま) シエスタSS 頑張るのよ飛雄馬 3 (メイドイン) こんぶて 狼が延々噛んだやつ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT 本日もLWのお時間がやってきました 3 (メイドイン) リヴァイン 自分狼だったらキツネはもう連れてるって妄信でいくわ 3 (メイドイン) ラスフィーノ まぁ吊れたね 3 (メイドイン) BBL 確かペパさんの村だったような (T) Garya > 【独り言】んんー狙い通りとはいえ狼の票あわせに見えますねー困ったものです 3 (メイドイン) Mrチキン 狐がすでにつれてる可能性は普通にあるけどね 3 (メイドイン) ラスフィーノ あtった 2 (おいぬさま) あかみさと どうしてこうなるのか! 2 (おいぬさま) PEPPERMINT いけめんLWから先逝く狼たちへいけめんなセリフ 2 (おいぬさま) あかみさと LWは心臓に悪いんですよ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT 3 2 (おいぬさま) あかみさと またkwww 3 (メイドイン) ラスフィーノ 前に、狼が投げて 2 (おいぬさま) PEPPERMINT 2 2 (おいぬさま) PEPPERMINT 1 3 (メイドイン) ニキハウス 狼があんま狐配慮してないですよね?これ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT どうぞ! (T) るみや > うーん、眠気で頭が回らん・・・ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 俺真占いだったときだ (T) jitto > 俺もう皆の考えとることがわからん!! 3 (メイドイン) Mrチキン シエスタさんは人狼確定でいいでしょ 3 (メイドイン) ラスフィーノ つみまで言った 3 (メイドイン) こんぶて ここまで指定進行だろ? 3 (メイドイン) こんぶて 狐連れてる場面あったっけ 3 (メイドイン) リヴァイン シエスタさん吊ったか 2 (おいぬさま) あかみさと この村はもうだめだ勝てない お前らは先に逝っててくれ・・・ (T) おおかみん > うはー。LW?LW? 3 (メイドイン) Mrチキン 可能性ならあるんじゃない? 3 (メイドイン) ラスフィーノ ないと思うよ、今がはじめ 3 (メイドイン) ラスフィーノ モモさんとかか 3 (メイドイン) シエスタSS やってる? 3 (メイドイン) アーリリーザ シエスタさんつっちゃったんだね 2 (おいぬさま) あかみさと 最後まであがくけどな( ・´ー・`) 3 (メイドイン) ラスフィーノ 可能性はちょっとある 3 (メイドイン) シエスタSS おつおつぽ 3 (メイドイン) BBL 釣れてるならうんちやさんあたりかな 3 (メイドイン) リヴァイン うーんグレー残したくない気持ちわかるけどヤッパ○つってほしかったなぁ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT いけめんだ 3 (メイドイン) リヴァイン おつかれい 2 (おいぬさま) あかみさと せやろ 3 (メイドイン) ニキハウス お疲れ様です 3 (メイドイン) Mrチキン おちかれ 3 (メイドイン) BBL お疲れ様でした 3 (メイドイン) アーリリーザ おつかれさまです 3 (メイドイン) ラスフィーノ おつつー 3 (メイドイン) ニキハウス 寡黙吊りしていったので狐連れてるといいな 2 (おいぬさま) PEPPERMINT といわけで 3 (メイドイン) ラスフィーノ 今日は共有噛みだよね 2 (おいぬさま) PEPPERMINT がんばってくれたまえ 3 (メイドイン) コピル お疲れ様でした 2 (おいぬさま) あかみさと さて、シエスタさん吊られたなら共有は放置しとこうかなどうしようかな 2 (おいぬさま) あかみさと おうよ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT グッドラック 3 (メイドイン) ラスフィーノ あーでも狐探すかね (T) Garya > 【独り言】シエスタSSさんがチャット遅いのと狩人CO準備してなかっただけの狩人に見えてきた 3 (メイドイン) こんぶて もう探す気ないんじゃない 3 (メイドイン) リヴァイン あ 狩りCOしてたのか 吊るわそれは 3 (メイドイン) Mrチキン たぶん共有かんできそうかな 3 (メイドイン) ラスフィーノ まず共有かんでからかな 3 (メイドイン) BBL 狐探すならとっととおおかみんさん噛むべき 3 (メイドイン) ニキハウス どうでしょう、ここまで狐考えてなさそうですし 2 (おいぬさま) あかみさと もうここまできたらメゾピは噛めん 3 (メイドイン) BBL 狂が狐囲いしてる可能性は十分あるんだし 3 (メイドイン) リヴァイン ってかGJ出無かったし真狩りならCOする必要なかったな 3 (メイドイン) ラスフィーノ 狂人じゃないって 3 (メイドイン) Mrチキン 狐ケアはほぼ考えてないみたいですから 3 (メイドイン) BBL という意見 3 (メイドイン) ラスフィーノ おおかみんさんは村ですよ♪ 3 (メイドイン) Mrチキン 狐は勝手に吊れる進行じゃないかな?w 3 (メイドイン) リヴァイン 妄信進行だろうなぁ 3 (メイドイン) リヴァイン ここまでくるとそう考えてしまうわ 3 (メイドイン) BBL まあここまで吊らずに北なら村決め打ちしたほうがよさそうですよね おおかみんさんは 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り2分----- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り2分----- PEPPERMINT -----残り2分----- 3 (メイドイン) ニキハウス まぁ時期的にもいまさら狐探しはないんじゃないですかね 3 (メイドイン) シエスタSS 変態護衛しすぎたな 3 (メイドイン) アーリリーザ おおかみんさん全然見えてなかったな 3 (メイドイン) シエスタSS すげー怒られそう・・・ (T) Garya > 【独り言】そうなるとjittoさんがメゾピさんに怪しまれてるのとるみやさんあかみさとさんが怪しく見えるのとで狼3い…るんじゃない?メゾピさんもなんかこういやここは村で見 2 (おいぬさま) あかみさと EVANS噛むか、な (T) あかみさと > EVANSさんを噛みます! 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ PEPPERMINT ------残り1分------ (T) EVANS > 【独り言】多分狐で間違いないとは思うけど、何も今日釣らなくても・・・ 3 (メイドイン) BBL ソウダネー (T) > あかみさと らじゃりましたー! 3 (メイドイン) ニキハウス 霊抜きはちとキツかったですからね、狩人なら (T) Garya > 【独り言】よう。独り言で書き綴ってると後々皆に変な思考がばれて恥ずかしいよね。でもそれがまた、こう、ね? 3 (メイドイン) シエスタSS うー (T) EVANS > 【独り言】あー柱COしときゃよかった。村認定って言葉につい傾いてしまった、使えない村人だ! 3 (メイドイン) リヴァイン さすがにアソコは鉄板だとおもうよー 変態護衛できる自信あったんだろうけど (T) > Garya 推理は語れば語るほど当たってた時のいけめん度があがる 3 (メイドイン) こんぶて 俺は霊守らないしこの狩人も釣らないw 3 (メイドイン) コピル あの、すいません。その場所ってどうやって行くんでしょうか? PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 3 (メイドイン) BBL 変態護衛ならどこ守ったんですか? (T) Garya > 【独り言】毎回言うこと変わってるからそのうちどれかは当たってるんじゃないですかね
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9090.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 幕間その二「セーラー服騒動のゼロ」 これは、ルイズが誤って惚れ薬を飲み、才人たちがラグドリアン湖に水の精霊の涙を取りに 行く羽目になったことに至るまでの経緯である……。 ウルトラマンゼロが平賀才人という少年と一体化してから、結構な日にちが経った。ゼロは当初、 才人のことは正直今一つ頼りない、なよなよした少年だと思っていた。もっとも、それも無理からぬ ことだろう。才人は防衛チームの一員でも何でもなく、ずっと平和な社会の中で育った地球人の 普通の少年。これといって強い信念を持っている訳でもない。ハルケギニアに召喚されてから しばらくも、考えなしの行動を取って余計なトラブルを招くこともしばしばだった。 だが今は、評価を180度覆していた。最初のきっかけは、ギーシュとの決闘。その時の彼は、 ルイズの名誉のために最後まで強大な敵に屈することなく戦い続けた。ガンダールヴの力に 助けられることにはなったが、その時の彼は確かに、己自身の力で抗い続けた。よほどの勇気を 心に秘めていなければ出来ないことだ。 そして始まった、怪獣、侵略者の侵攻。次々と休む暇もなく現れる恐ろしい敵の数々にも、 才人は怖気づくことなく、ともに戦ってくれた。ゼロがどんな窮地の中にあっても、何度でも 立ち上がる力を出せたのは、才人の勇気もひと役買っている。 助けられているのは才人だけではない。ゼロも彼に、見えないところで大きく助けられていた。 才人には、深い感謝を抱いている――。 (――はぁ……) のだが、今の状況は、正直頂けなかった。才人が勇敢な、既に立派な自分の仲間であることは 十分に分かっているのだが、この場面を見せられると、その思いに疑念を挟んでしまいそうになる。 人間、いいところばかりではない。あまり贅沢を言ったらいけないのかもしれない。しかしそれでも、 どうにかならないのか。この再発した、才人の「病気」は――。 「うぉおおおおおおおおおおおおおおオオオオッ! おれッ、サイッコォオオオッ! シエスタも最高ぉおおおおオオオオッ!」 ゼロが隠れてため息を吐いているとも露知らず、才人はもだえくるって奇声を上げていた。 その目の前には、セーラー服を着たシエスタの姿。 今才人は、アウストリの広場で、露店で買い取って改造したセーラー服を、シエスタに 着せている最中だった。セーラー服を着た、ただそれだけのシエスタの姿を見て尋常でなく 狂喜する才人の心理を、ゼロは理解できずに頭を痛めていた。 そうしていると、シエスタの腕輪から、ジャンボットが声を上げた。 『サイト……。一体何をそんなに喜んでいるのだ。これはいわゆる軍服だろう? 戦争の 装束などをわざわざシエスタに着用させて、あまつさえ歓喜するなど……理解不能だ』 「バカ言うなッ!」 がばっとはねおきてジャンボットに詰め寄る才人。結果的にシエスタに詰め寄ることに なったので、シエスタはひっ、とあとじさった。 「こっちのぉおおオオッ! せせ、世界ではぁッ! 確かにそれは水兵服かもしれませンッ! でむぅぉおオッ! ぼくの世界でぇはァアッ! シエスタぐらいの年の女の子はそれ着て 学校に通うッ! 現在進行形で通っているぅううウウウウッ!」 『そ、そうなのか……』 「それはぼくの世界でセーラー服と呼ばれてますッ! 生まれてすいましぇえエエンッ!」 『いや、謝られても……』 異常なハイテンションにドンびきのジャンボットだが、シエスタの方は、自分に故郷の 装いをさせて悦ぶ才人を愛おしく感じて頬を染めた。恋は盲目とはよく言ったものだ。 「最初はサイトさんがおかしくなったと思ったけど……わかりました! どうすれば、もっと 喜んでもらえますか?」 シエスタの申し出で、才人はシエスタの姿を見つめ直して、真剣に、命がけに考えた。 どうすれば今のシエスタがもっと輝けるか! (違うことにその思考力を使えよ……) ゼロが心の中で嘆息した。 そして才人は結論を出した。 「回ってくれ」 「え?」 「くるりと、回転してくれ。そしてそのあと、『お待たせっ!』って、元気よく俺に言ってくれ」 さすがにひきながらも、言われた通りにするシエスタ。 「お、お待たせっ」 「ちがーうッ!」 「ひっ」 「最後は指立てて、ネ。元気よく。もう一回」 シエスタは頷くと、言われた通りに繰り返した。見ると、才人は泣いていた。 「きき、き、きみの勇気にありがとう」 ジャンボットは理解が追いつかずに、呆然とつぶやく。 『これが地球人の嗜好なのか……? 度し難いな……』 『誤解しないでくれ。全部の地球人がこいつみたいなんじゃないんだよ』 いや、俺も地球のことをよく知ってる訳じゃないけど……と考えるゼロだが、それだけは、 何の確証がなくてもはっきりと言えた。 「次はどうするの?」 「えっと、次は……」 それはともかく、シエスタと才人が話していると、ぎくしゃくした足取りの二人組がこちらに 歩いてきた。ギーシュとマリコルヌ。物陰から覗いていたらしい。 おほん、とギーシュがもったいぶって咳をする。 「それは、なんだね? その服はなんだねッ!」 ギーシュは何故か泣きそうな顔で怒っている。マリコルヌも、わなわなと震えながら シエスタを指差した。 「けけ、けしからん! まったくもってけしからんッ! そうだなッ! ギーシュッ!」 「ああ、こんなッ! こんなけしからん衣装は見たことがないぞッ! のののッ!」 「ののの脳髄をッ! 直撃するじゃないかッ!」 (こいつらもか……) ゼロは頭が痛くなってきた。 シエスタはギーシュとマリコルヌの様子に身の危険を感じて、仕事を言い訳に走り去っていった。 それをぼーっと見送ったギーシュたちが、才人に問いかける。 「な、なあきみ。あの衣装をどこで買ったんだ?」 「聞いてどうする?」 ギーシュは、はにかんだ笑みを浮かべて言った。 「あ、あの可憐な装いを、プレゼントしたい人物がいるんだ。いつもそばにいて、ぼくを 見つめ続けてくれていた可憐なまなざしを……。あの麗しい金髪を。芳しい、香水のような微笑を……」 才人とゼロは、モンモランシーのことを言っているのだと気づいた。 「ヨリを戻したくなったのか。お前ってほんとうに節操ねえのな」 「きみに言われたくない。さてと、では教えたまえ。どこで売ってた?」 「ふん。お前なんかに芸術がわかるかっつの」 「しかたない。今の出来事をきちんと報告したうえで、ルイズに尋ねてみよう」 「あと二着ある。好きにつかってくれ」 あっさり折れる才人だった。 予備のセーラー服を渡す口約束をしてしまった才人に、ゼロが問いかける。 『才人……お前いいのか? あんなこと言って』 「しかたねえだろ。ルイズにこのこと知られたら、あいつのことだから、何するかわかんないし」 『けど、あいつらが使ってるとこを、ルイズに見られるってことも考えられるぜ』 その可能性に初めて気づいて、うッとうめいた才人だが、思考を楽観的な方向に切り替える。 「なーに、あいつらにも理性ってもんがあるだろ。人前で堂々と楽しもうなんてしないって。きっと」 『だといいんだけどな……』 この時点で、ゼロは悪い予感を抱いていた。 だが翌朝、ギーシュがプレゼントしたセーラー服を、モンモランシーが教室に着てきてしまった。 当然ルイズの目にもつき、それが才人の買ったものだとすぐに気がついた。 「ねえ、あれってあんたが買った服でしょ? どうしてモンモランシーが着てるのよ」 才人はガタガタ震えながら答える。ゼロは今日も頭を痛めた。 「その、えへ、あ、ギーシュがくれって言うから……」 「なんでギーシュにあげたの?」 「え? だって、欲しいって言うから……」 ルイズは、才人の態度に怪しいものを感じた。 「ねえ、なにをわたしに隠してるの?」 「え? ええ? なにも隠してないよ! いやだなあ……」 そんな言い訳では、ルイズの疑念は晴れない。放課後になってもう一度問い詰められそうに なったので、才人は逃げることにした。 「ハトの小次郎に餌やらなくちゃ」 ありえない理由を言い残して、教室から走り去っていく。残されたルイズが、ひと言ツッコミを入れる。 「いつハトなんか飼ったのよ」 『だから言ったのに。とんでもないことになるぞ。やめてくれよ、俺まで巻き込むの』 「うるさいな! とにかく証拠隠滅だ! まだ間に合うッ!」 才人は厨房へと駆けつけると、マルトーらの歓迎をすり抜け、すぐに洗い物中のシエスタに囁きかけた。 「シエスタ、あの例の服を、仕事が終わったら、持ってきてくれないか?」 「え?」 「そうだな……、人目につかないところがいいな……。ヴェストリの広場に、塔に上がる 階段の踊り場があるだろ? あそこに持ってきてくれ」 「は、はい……」 用件だけ伝えると、才人はすぐに立ち去った。その後で、シエスタがうっとりと顔を赤らめた。 「どうしよう。ああ、わたし、奪われちゃうんだわ……」 『サイトがシエスタを奪う? 何を言ってるんだ。サイトは服を返してもらいたいんだろう』 ジャンボットが不思議そうに指摘したが、シエスタはひそひそと否定する。 「違いますよ! 男の人が、人目につかないところに、特別な格好を指定して呼び出すということは、 女の人を頂いちゃうということ以外にありません! 遂に、遂にこの時が来たんだわ……」 『意味がよく分からないが……シエスタ? もう聞いていないか……』 ロボットのジャンボットは、シエスタの言う「奪う」「頂く」の意味もよく理解できなかった。 そしてシエスタが陶酔してしまったので、それ以上呼びかけるのはやめた。 ここで、強引にでも彼女とよく話していれば、この後の惨劇は起こらなかったかもしれないのに……。 待ち合わせの場所にシエスタがやってきた時には、すっかり日が落ちていた。風呂で体を清め、 身支度を整えていたので、時間がかかってしまったのだ。 階段の踊り場には、才人の姿はない。樽が二つばかり置いてあるだけ。シエスタは心配そうに きょろきょろと見回した。 「サイトさん……」 心細げに呟くと、がたん! と音がして、樽の蓋が開き、中から才人が顔を出した。 「シエスタ」 「わ! サイトさん! なぜそんなとこに!」 「いや、いろいろと事情があって……、って、え?」 才人はシエスタの格好を見て、目を丸くした。セーラー服を着用している。 「き、着てきちゃったの?」 「え、ええ……。だって、こっちの格好の方がサイトさん喜ぶと思ったから」 才人は持ってきて、じゃなくて返してくれ、と表現するべきだったと後悔した。ここで 脱げというわけにもいかない。あたふたしていると、シエスタがくるりと回転して、 例のポーズを取った。 「えっと、その……、お、お待たせっ」 がたん! と背後で樽が揺れる音がした。シエスタがきゃっ! と叫んで才人に抱きついた。 樽からは、にゃあにゃあ、と鳴き声がする。 「なんだ、ネコか……」 『お、おい才人……』 才人は安堵するが、ゼロは震えた声を出した。しかし今の才人は、それに取り合っていられなかった。 シエスタの胸が押し付けられている。その感触から、才人の顔が青くなった。 「シ、シエスタって、その……」 「なんでしょう?」 「ブラジャー、つけてないの?」 シエスタはきょとんとした顔になった。 「ブラジャーってなんですか? メイド服のときはシャツの下にドロワーズとコルセットなら つけてますけど……今はなにもつけてません。短いスカートにドロワーズをはくとはみ出ちゃうので……」 ブラジャーが存在しないことと、今のシエスタが下着を着用していないことを知り、才人は 茹でダコのようになった。 『才人ッ!』 ゼロが強く呼びかけるが、その声も耳に届かなくなっていた。 「サイトさんは意地悪だわ……。わたし、貴族のかたみたいにレースの小さな下着なんて 持ってませんもの……。それなのに、こんな、こんな短いスカートをはかせて……」 『おい才人!』 ゼロの声はやはり、シエスタの恥ずかしそうな声にかき消される。 「あ、あの……こ、ここで、ですかっ?」 「え?」 「もう、ちょっと、その、人が来なさそうで、綺麗な場所がいいなあ。あ、でも! これ願望でして! サイトさんがここがいいって言うんなら、ここでも平気よ。ああ、わたし、怖いです。だって初めて なんだもの。母さま許して。わたしここでとうとう奪われちゃうのね」 シエスタは激しく勘違いしているようだ。才人はどうにか本当のところを説明しようと、 考えをめぐらせた。 しかしもう遅かったのだ……。背後で、もう一個の樽の蓋が垂直に跳ね上がった。 「な、なんだぁ!」 振り返った才人が見たのは、樽の中から立ち上がる、ルイズの姿……。その形相……。 『樽の中に、ルイズが隠れてるぞ……』 ようやく、ゼロの声が届いた。 「何でもっと早く言ってくれなかったんだよ!」 『聞かなかったじゃねぇか……』 ルイズの顔は怒りで青ざめている。目はつりあがり、全身が地震のようにわなないている。 思いっきり震えた声で、ルイズは呟いた。 「随分と素敵なハトを飼ってるのね。へぇ。可憐な装いをプレゼントね。まあいいわ。わたしは優しいから、 そのぐらいのことなら許してあげる。ご主人様をないがしろにして、ハトにプレゼントを贈ろうが、 別にかまわないわ」 「ルイズ、あのね?」 「しかし、そのハトはこう言ったわ。『こんな短いスカートをはかせて』。下着もつけさせずに、 『こんな短いスカートをはかせて』。最高。今世紀最高の冗談ね」 「ルイズ! 聞いて! お願い!」 「安心して。痛くしないから。わたしの『虚無』で、塵一つ残さないようにしてあげる」 ルイズは『始祖の祈祷書』をかまえると、呪文を詠唱し始めた。本気だ。才人は命の危険を感じて、 思わずデルフリンガーを抜いた。シエスタは怖くなって物陰に体を隠した。 「なによあんた。ご主人さまにさからおうと言うの? 面白いじゃないの」 そう呟くルイズが怖い。ワルドより、怪獣より、どんな侵略者よりも、ルイズ怖い。 「相棒、やめとけ」 デルフがつまらなそうに呟いたが、才人は蛮勇を発揮して剣を掲げた。 「きょきょきょ虚無がなんぼのもんじゃあッ! かかってこいやぁッ!」 途中詠唱のままルイズが杖を振り下ろす。ボンッ! と音がして、才人が踊り場から吹き飛び、 下の地面へと叩きつけられる。 才人は立ち上がるなり逃げ出した。踊り場から顔を出したルイズが追いかけ出す。 「待ちなさいよッ!」 才人とルイズがいなくなると、ジャンボットがぼそりと発した。 『有機生命体……。私の頭脳の理解を超えるな……。全く恐ろしい』 ビートスターもかつてはこんな気分だったのだろうか……。いや違うだろうな、絶対……、 なんて思うジャンボットだった。 『才人、これでお別れだな……。まさかこんな別れ方になるなんて、俺も予想もしてなかったぜ』 「不吉なこと言うなぁー!」 ルイズから必死に逃げる才人は、寮塔内をしっちゃかめっちゃかに走り回っていた。恐ろしいことに、 どんなに速く走ってもルイズの気配を振り切ることは出来ない。 このままでは追いつかれる、そんな気がしてならない。そう思ったので、誰の部屋かも確認しないで、 一番近くの扉を開け放って中に飛び込んだ。 中にいたギーシュとモンモランシーが、ワインで乾杯しようとした手を止めて目を丸くした。 ここはモンモランシーの部屋だった。 「なんだ! きみはぁ!」 「かくまってくれ!」 才人はギーシュたちに構わず、モンモランシーのベッドに飛び込んで身を隠した。 『無駄だぜ才人。こんなことしたってルイズは見つけるに決まってる……』 「あ、諦めるかぁー! 俺は一縷の望みに賭けるぞー!」 一縷の望みは儚かった。すぐにルイズが飛び込んできて、才人を見つけてしまった。 「サイト、出てきなさい」 「才人はいません」 せめてもの、無駄な抵抗だった。ルイズはテーブルの上のワインのグラスを取り上げ、 一気に飲み干した。モンモランシーがあっ! と声を上げたが、もう遅かった。 「ぷはー! 走ったら喉がかわいちゃった。それもこれもあんたのせいね。いいわ、こっちから 迎えにいってあげる」 ベッドの上の布団を、ルイズはひっぺがした。ガタガタと震えている才人がそこにいた。 「覚悟しなさい……、んあ?」 しかし、おかしい。才人を目の前にして、怒り狂っているはずのルイズが、いつまで経っても 何もしてこない。才人がいぶかしんで立ち上がると、何とルイズはいきなり泣き出した。 モンモランシーは態度を急変させたルイズを目の当たりにして、頭を抱えた。 「おい、ルイズ……」 声を掛けると、ルイズは才人を見上げ、その胸に取りすがった。 「ばか!」 「え?」 「ばかばか! どうしてわたしを見てくれないのよ! ひどいじゃない! うえ~~~~ん!」 ぽかぽかと才人の胸を叩くと、顔をうずめて大泣きした。 「な、何が起きてるんだ?」 『さぁ……』 ルイズの激しい怒りはどこへ吹っ飛んでしまったのだ。才人は命の無事を喜ぶより、ルイズの 心変わりに戸惑った。それはゼロも同じで、ただただ首を傾げるばかりだった。 こうして才人は、ラグドリアン湖へ赴く原因を作り出し、テペト星人の暗躍やギロン人の 罠に巻き込まれることになったのだった……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2462.html
前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 アルヴィーズの食堂を飛び出した康一だったが、しばらく歩いたところで座り込んでしまう。 「あー、お腹減ったなぁ・・・」 お腹がグルグルと鳴る。さっきまではこの異世界に気を取られて意識しなかったが、お腹が減ってしかたがない。 「そういえば・・・」康一は思い出す。 昨日は駅についてから昼飯を食べようと思っていたところを捕まったのだ。 つまり、これで丸一日食べてないってことになるんじゃないのかァー!? 「衣食住は保障されるんじゃなかったのかァ~?約束が違うよ~。」 さっき豪勢な食事を見たせいで余計につらくなってきた。 康一はお腹をおさえて溜息をついた。 「あら、コーイチさん。どうかされたんですか?」 え?と顔を上げた。黒髪のメイドさん。朝に会ったシエスタだ。 「ああ、シエスタか・・・。いや、大したことないんだけどさ・・・ルイズにご飯を抜かれちゃって・・・」 お腹がグルグルキュキュキュ~!と鳴いて、康一は顔を赤らめた。 「まぁ、それは大変でしたね!こちらにいらしてください。まかない食でよければお出しできますよ。」 シエスタは康一の手を取った。 「ええっ!いいのぉ~!?」 「もちろんです。ささ、こちらにいらしてください。」とシエスタは康一の手を引いてくれる。 シエスタの笑顔が天使に見えて、康一はちょっとだけ涙ぐんでしまった。 「ゥンまああ~いっ!」 康一はシチューをガツガツとすくった。 「よっぽどお腹が空いてたんですね。」 シエスタはクスクスと笑った。 康一がつれてこられたのは食堂の裏手にある厨房の一角だった。 大きな鍋やオーブンなどが並んでいる。あちらこちらに色々な食材が貯めてあるのが見える。 そこでシエスタは、康一のためにパンとシチューを持ってきてくれたのだ。 この世界に来てから初めて優しくされた気がする! お腹を満たす幸福感ともあいまって、康一はほろほろと涙を流した。 「こんなに美味しい食事は初めてだよぉ~!」 空腹は最高のスパイスというのは本当だ!と康一は思った。 「ふふ、大げさですね、コーイチさんは・・・」 シエスタは流れる涙をハンカチでそっと拭いてくれた。 たぶん、童顔で背の低い康一を年下の男の子だと思っているんだろう。 康一はたぶん同い年くらいだろうと思ってはいたが、優しさが心地よいのであえて何も言わなかった。 「ぼく、召還されてからこんなに優しくされたの、初めてで・・・本当にありがとうございます~!」 「いいんですよ。平民同士助け合わないと、ですしね。」 シエスタは笑った。 「それにしてもひでぇ話だ!」 40過ぎで太めの男がやってきて怒ったように言った。 彼はマルトーさん。この魔法学院で料理長をしているらしい。 康一を連れたシエスタが事情を説明すると、同情して食事を出してくれたのだ。 「無理矢理使い魔にしておいて、メシも与えないなんざ、平民をなんだと思ってやがる!」 康一の肩に手を載せる。 「貴族はいつも勝手なもんさ。平民がいなきゃなんにも出来ない癖して、いっちょ前にいばりやがって。おまえも災難だったなぁ。こんなもんでよけりゃいつでもご馳走するからいつでもこいよ?」 「はい!ありがとうございます!」 康一は初めて味方が出来た気がして嬉しくなった。 でも・・・とシエスタが康一を気づかうようにいった。 「あまりミス・ヴァリエールを嫌わないであげてくださいね?」 「どうして?」 康一は尋ねた。 「ぼく、あいつに召還されてから今までろくな目にあってないんだけど・・・」 「ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです・・・・」シエスタは目を伏せた。 話によると、シエスタが以前貴族にいびられているときに、ルイズが助けてくれたことがあるらしい。 「想像つかないなぁ~」 康一は首をひねった。 「多分ミス・ヴァリエールは焦っておられるんです。だから周りが見えなくなってるんじゃないでしょうか。」 「焦る?どうして?」 「えーっと、それはですね・・・」シエスタが言いにくそうに口ごもっていると、 「コーイチ!コーイチー!どこにいるのー!出てきなさーい!」 とルイズの呼ぶ声がする。 「噂をすれば、ってやつだね。」 康一は溜息をついた。でも、美味しい食事と優しさをもらった。しばらくがんばれそうだ。 「ありがとうマルトーさん。シエスタ。ぼく、行くよ。」 「そうか、がんばれよ。」 「またいつでもいらしてくださいね!」 二人に見送られ、康一はルイズの声がするほうへ走っていった。 康一が走ってくるのを見つけると、ルイズは怒ったように言った。 「どこいってたのよ。」 「ぶらぶらしてただけだよ・・・。」 厨房のことは言わなかった。何か言われたらたまったものではない。 さっき喧嘩したばかりで、少し気まずい康一に、ルイズが「これ。」と手を突き出す。手には一個のパンが乗っていた。 「・・・何これ。」と康一が聞くと、ルイズは少し顔を赤くした。 「お腹が減って倒れられたら困るでしょ!ほら、早く食べなさいよ!」 ルイズはパンを押し付けると、スタスタと歩き去っていく。 康一は押し付けられたパンを見た。多分食卓から康一のために取ってきてくれたのだろう。 ミス・ヴァリエールは本当は優しい方なんです。というシエスタの言葉を思い出す。 「ほら、早く来なさいよ!授業に遅れちゃうでしょ!」 いつまでもついてこない使い魔をルイズが呼ぶ。 「も~・・・しょーがないなぁ~」 康一はパンをくわえると、小さなご主人様(仮)を追いかけることにした。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8786.html
前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か 教室に入れば、いつものようにルイズに罵詈雑言が投げかけられる。 罵倒する声が小さいのが、いつもとの違い。 ルイズの隣に座るアセルスが原因だろう。 その事に気を良くしながらも、心に引っかかるのは自分が魔法を使えない事。 ルイズは今朝は夢見が悪く、早起きしたこともあって外に出ていた。 契約の魔法に成功したことで魔法が使えるようになったのではとわずかな期待を持って。 最も、希望はいつも通り魔法が失敗した為に打ち砕かれた。 ルイズが朝に洗濯物を運んだのは、失敗による汚れのついた服を隠すためである。 強大な使い魔を呼んでおきながら、自分は何一つ魔法が使えないまま。 素晴らしい使い魔さえ呼べば『ゼロ』ではなくなると思っていた自分の浅はかさ。 結局、魔法を使えなければ『ゼロ』のままではないか。 ルイズが自己嫌悪で憂鬱になったところに教師がやってきた。 授業が始まる。 ミス・シュヴルーズと名乗る教師は今年からの担任だ。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのが楽しみなのですよ」 教室を見回すシュヴルーズの視線が、ルイズとアセルスを捕らえる。 「ず、随分と変わっ……いえ、立派な使い魔を召喚したものですね?ミス・ヴァリエール」 空気を読めない失言に、生徒達から非難の視線がシュヴルーズに向けられる。 昨日アセルスによって被害を受けた太り気味の少年にいたっては、脂汗を大量に流している。 教師であるシュヴルーズは誤魔化すように授業を始めた。 アセルスは授業に興味がなかったために、ルイズを横目で眺めている。 何度も読み返したのであろう手垢まみれの教科書、熱心にメモを取る様子。 勤勉な生徒である事は間違いない。 にも関わらず魔法が使えないというのは何故だ? ここが学校ならば、教師達は失敗の原因を指摘しないのか? 「……土系統呪文の中でも、錬金は土のメイジの力量を測る最も分かりやすい手段と言えるでしょう」 シュヴルーズが呪文を唱えると、小石は金色に形を変える。 「ご、ゴールドですか!?」 輝きを見たキュルケが身を乗り出す。 「いえ、これは真鍮です。金への練成はスクウェアでなければ難しいでしょう。 わたしは……トライアングルですから」 勿体振って答えるシュヴルーズ。 続いて、生徒の中から一人に錬金をさせるために候補者を選ぶ。 「それでは……ミス・ヴァリエール。貴女にも錬金をやってもらいましょう」 シュヴルーズの指名に教室内がざわめく。 アセルスは蔑んでの行動かと思ったが、生徒達は本気で警戒している。 「ミス・シュヴルーズ、危険です!」 キュルケの警告に周りが同意する。 危険の意味が理解できていないのは教室に二人。 使い魔であるアセルスと教師であるシュヴルーズである。 「失敗を恐れていては何もできませんよ。気にしないでやってごらんなさい」 錬金で失敗したところで精々不完全な金属になるか石のままである。 土のトライアングルだけあり、シュヴルーズの錬金への認識は正しい。 危険というのもルイズをからかう為の言葉としか思っていなかった。 「……やります!」 長考の後、ルイズは立ち上がった。 アセルスに魔法が失敗する様を見られるかもしれない不安はある。 だからといって逃げるのはルイズのプライドが許さない。 ルイズが教壇へ向かうと、周りの生徒達は急いで机の下に隠れた。 中には教室から逃げ出す生徒まで現れる始末。 途中キュルケが止めるよう懇願するも逆効果でしかない。 石の前に立つと、集中して呪文を唱えようとする。 「錬金!」 呪文と同時に、教室は爆発により木っ端微塵に吹き飛んだ。 ──爆破された教室に残されたのはルイズとアセルスの二人のみ。 ルイズは教室の片付けを命じられ、アセルスはそんな彼女を手伝っていた。 教室内は静寂に包まれている。 先に沈黙を破ったのはルイズだった。 「なんでよ……」 蚊の鳴くような声だったが、アセルスの耳に届いていた。 「なんで、何も言わないのよ……」 アセルスには彼女の言いたい事が分からない。 「見たでしょ!?私は魔法が使えないのよ!どんな魔法でも使えば爆発する!!」 身体を怒りで震わせてアセルスに叫ぶ。 一度堰を切った感情は止まる事なく、流れ続ける。 「貴女は妖魔の君なのに!強力な魔法が使えるのに! なんで私なんかに従うのよ!?同情でもしてるつもりなの!? 無様だと思っているんでしょう!自分を呼んだ奴がこんな魔法も使えない落ち零れメイジだなんて!! 涼しい顔して腹の中で笑っているんでしょう!!」 支離滅裂な物言い。 ルイズにはもう彼女が妖魔である事も王族である事にも気遣う余裕はない。 憤りはアセルスに向けてのものなのか、自分自身へなのかルイズ自身にも不明だった。 沈黙を貫いていたアセルスが口を開く。 「……君は自分が嫌いなんだね」 アセルスの声色はどこか儚い。 「好きになれる訳ないわよ!こんな……こんな……『ゼロ』なんか……」 俯いて涙を零す。 ──認めてしまった。 自分が何一つ出来ない『ゼロ』であることを。 いや、本当はずっと前から分かっていた。 自分が魔法で出来たことといえば、使い魔を呼び出したのみ。 サモン・サーヴァントで呼ばれたのが、強大な使い魔だった事はルイズを却って追い詰めた。 アセルスの両手がルイズの頬を優しく包む。 俯いたまま泣きじゃくるルイズの顔をゆっくり上げ、眼を逸らさせないようにする。 「ごめんなさい、私は一つ嘘をついていた」 アセルスは左手で剣を鞘から取り出すと、自分の右手に突き刺した。 「な、何してるのよ!」 右手からは血が滴り落ちた様子を見て、慌ててルイズはその手を握る。 急いで治療室に連れて行こうとするルイズを制止して、アセルスは剣を右手から引き抜く。 「妖魔の血は青いわ」 「え……でも」 アセルスの手を握ったことで、ルイズの手にも血が付着している。 血は赤と青が均等に混ざったような色鮮やかな紫。 少し悲しそうな表情を浮かべたアセルスが次の言葉を紡ぐ。 「私は元々人間、妖魔の血を受けて半妖として蘇った。 半分人間、半分妖魔というこの世でたった一人の中途半端な存在になった」 アセルスの台詞だけが二人っきりの教室に響いた。 教室の片付けを終わらせ、昼食には間に合った。 アセルスは食堂ではなく、メイドに頼んでいた洗濯が終わったので服を着替えに行っている。 スカートが着慣れずに落ちつかないらしい。 ルイズは食事にも手をつけず、考え事をしていた。 アセルスから聞いたのは、荒唐無稽な御伽噺にすら思える物語。 しかし、今朝見た夢が事実だと確信させた。 夢は一種の感覚の共有ではないかとルイズは仮説を立てていたが、裏付ける証拠は無い。 アセルスは世界でただ一人の存在、半妖。 人間からも妖魔からも忌み嫌われていた中途半端な存在。 この話を聞いたとき、貴族にも平民にも馬鹿にされ続けている自分と重なった。 だから、ルイズは彼女に答えを求めた。 如何にして周囲の敵意を乗り越えたのか? 「もう人間としては生きられないならば、妖魔として生きるだけ。 そのために、私を血を与えた妖魔との決着をつけに城へと戻ったわ」 アセルスの瞳に黒い感情が揺らめいたのをルイズは確かに見た。 「他の妖魔も人間も全て屈服させるだけの力……私にはそれだけの力がある」 ルイズはアセルスの解決策に絶望した。 「……私にそんな力なんてないわ」 魔法が使えないから『ゼロ』だと馬鹿にされているのだ。 この世界における力とは魔法。 貴族が特権階級となっているのも、平民には使えない魔法を使える為なのだから。 「いいえ、力ならあるわ。ただ気付いていないだけ……」 アセルスの声はルイズの心の奥底に眠っていた仄暗いモノを揺り動かす。 「己の苦悩を周りの世界にまき散らしてしまえばいい。 欲望のまま、君を馬鹿にするものを足元にひれ伏せさせるんだ」 16年間、他人からの悪意を受けて塗り固められた黒い感情を…… 「ルイズ!」 名前を呼ばれ、意識が食堂に戻る。 いつの間にか隣にキュルケが座っていたのを気がついた。 「何よ?ツェルプストー」 「何よじゃないわよ、さっきからボーっとして」 思考の渦に飲み込まれていたルイズは全く気がつかなかったが、キュルケは先ほどから呼びかけていた。 「別に大した事じゃないわ、考え事してただけ」 ルイズの返答に納得したキュルケが頷く。 「ああ、また派手に教室を爆発させてたわね」 いつものからかうような表情を浮かべるキュルケ。 彼女は知らない。 軽い冗談のつもりである言葉が、ルイズにある負の面を刺激し続けている事に。 『己の苦悩を周りの世界にまき散らしてしまえばいい』 アセルスの言葉が脳裏に浮かぶ。 それを抑制しているのはルイズが持つ貴族としての誇り。 しかし、膨らみ続ける感情が破裂するのは時間の問題だと気付いていない。 ルイズが昼食を取っている頃、アセルスは一人のメイドを連れて着替えを行っていた。 メイドの名はシエスタ。 彼女は妖魔の君だと説明を受けていた為、アセルスへの対応は細心の注意を払う。 アセルスが着替えるために服を脱ぐと、シエスタは緊張も忘れて見惚れてしまった。 女性相手だと言うのに、アセルスのしなやかな裸体は妖しい魅力に溢れている。 「どうしたの?」 アセルスに声を掛けられて、正気に戻る。 「あ、いえ申し訳ありません!何でもないです」 慌てて頭を振るシエスタを見て、様子がおかしい理由は自分にあることを気付いた。 アセルスは魅惑の君と呼ばれるオルロワージュの血を受け継いだ為に、女性に対して虜化妖力が働く。 彼女も妖力に惹かれたのだろう。 そこでアセルスはルイズに虜化妖力が効いていないと気がついた。 アセルスの近くにいる以上は妖力に惹かれてもおかしくないはずだ。 虜化妖力が通用しないのは同等の力を持つか、精神力を強く持ち続けている場合のどちらか。 精神を強く持つのは何も前向きな感情によるものばかりではない。 ルイズのように他人の悪意を受け続ける事で、負の感情に囚われている場合にも当てはまる。 ふと、アセルスはシエスタがルイズに対して悪意を向けていなかったのを思い出す。 魔法が使えない為にルイズに対して使用人という立場の者。 平民ですら彼女を蔑む事実をアセルスは夢で見た。 だが、シエスタには悪意がない。 ルイズの前で目を輝かせた姿は彼女を尊敬すらしていると言っても過言ではないだろう。 「ねえ」 「は、はい」 シエスタの心臓の鼓動が一気に高まる。 「貴女、ルイズに恩か何かあるの?」 「はい。私は以前ルイズ様に一生掛けても返せない恩寵を頂きました」 シエスタはアセルスにかつての出来事を語り出した。 ──今から、半年ほど前。 シエスタは夜遅く仕事をしていた最中、階段から足を踏み外して全身を叩きつけてしまった。 助けを呼ぼうにも、怪我で声を上げる事すらできない。 意識はあったものの、身体を動かそうとすれば激痛に襲われる。 見れば右腕はあらぬ方向に曲がっており、足も折れている事が自覚できた。 シエスタが痛みと孤独に押し潰されそうになる中、人影が近づく。 魔法の練習で外に出ていたルイズが倒れているシエスタに気付いたのだ。 「ねえ、大丈夫!?」 慌てた様子で声をかけられ歓喜の表情を浮かべるシエスタだったが、 彼女が『ゼロ』と呼ばれるメイジであることに気がつく。 シエスタは陰口へ積極的に参加しないまでも、周りに話を合わせた事はある。 その際に彼女を悪く言ったのも一度や二度ではない。 自分が悪口を言っていたメイドだと気付かれていたら……と思うとシエスタは絶望した。 貴族が平民を、まして暴言を吐くような平民を相手に助ける事などありえない。 故郷に残した家族の事が走馬灯の様によぎり、シエスタは意識を失っていた。 ──シエスタが次に目を覚ましたのは、ベッドの上だった。 多少の痛みは残っているものの、体を動かせないほどではない。 助かったのだと安堵すると、後ろから声を掛けられる。 「起きたみたいですね」 シエスタが意識を取り戻したことで、治療を行っていた老婆のメイジが診断を行う。 「まだ身体は痛むかもしれないけどもう心配ないでしょう」 怪我が治った事を確認するとシエスタに告げた。 「あ、ありがとうございます」 「お礼なら私じゃなくてミス・ヴァリエールにしてあげなさい。 秘薬の代金を出したのは彼女ですから」 そう言い残して立ち去る老婆。 彼女の言葉でシエスタはようやく気付く。 重傷を治療するなら黄金並に高価な水の秘薬が必須だと。 思わず青ざめると、老婆との入れ替わりでルイズがやってきた。 「あ、あのミス・ヴァリエール!危ないところを助けていただきありがとうございます!」 お礼を言えたもののシエスタはこの後、どうしていいか分からずにいた。 一平民であるシエスタには治療費を払う手段はない。 「ねえ、シエスタ。貴女は平民で私は貴族だって事は知っているわよね?」 「は、はい……」 ルイズの言葉を聞いたシエスタに最悪の想定が浮かぶ。 借金と言う形を取れば、暴利を貪られて一生奴隷扱いという可能性もある。 奴隷制度自体はハルケギニアにおいても、とっくに廃止されている。 最も平民と貴族という階級差がある以上、奴隷の様な扱いを受ける平民の話は珍しいものでもない。 やはり貴族とはそういうものなのだと、シエスタは暗鬱としていた。 しかし、次にルイズの口から出てきた言葉はシエスタの予想を遥かに超えるものだった。 「だから心配しないで、治療費なら払う必要はないわ」 「え?」 シエスタは思わず間の抜けた返事を返す。 「困っている平民を助けるのは貴族の責務よ。 まして重傷を負った者を見捨てるなんて人として恥ずべき行いでしょう」 ルイズの言葉は確かに貴族として本来の義務である。 貴族は自らの領民を保護し、代わりに平民は労働力を提供する。 だが、そんな建前を律儀に守る者はいない。 貴族は金と権力を貪り、平民はそんな貴族のご機嫌取りを行い、気分を損ねたものは処刑される。 平民が事故で死のうが言いがかりで処刑されようが、気にする酔狂な貴族なんてものは存在しない。 シエスタを含めた、平民が持つ身分への認識。 それが今目の前の少女によって、あっさり打ち崩された。 「……ヴァリエール様」 「何?」 突然かしこまったシエスタを見て困惑している。 そんな彼女に構わず、ただシエスタは地面に両膝と頭をつけた。 祖父から教わった、相手へ最上級の敬意を示す姿勢。 シエスタが一般的な思想を持つ平民ならば、自らの行いを暴露しようとはしなかっただろう。 「私はヴァリエール様のように高潔なお方の施しを受けるに値する人間ではありません」 ただ、シエスタは自分が許せなかった。 「私は身分の差も省みず、ヴァリエール様を不当に評価しておりました。 魔法も使えないのに、家柄だけで貴族を名乗っていると」 これほど誰よりも貴族であろうとする少女に対して、周りに流されるままに彼女の陰口を叩いてしまった事を。 命を助けてもらうご懇情を賜りながら、感謝もなしに自分本位な思い込みで彼女に失望した己の卑小さ。 ただ自分に許されるのは頭を垂れ、地に伏せる事のみ。 「知っているわ」 シエスタが驚愕で思わず、ルイズの顔を見上げる。 「貴女の黒髪は目立つもの。 気にしてないわよ、別に中傷してたのは貴女だけって訳じゃないんだから」 自嘲気味にルイズは笑う。 シエスタは涙が止まらなかった。 彼女は自分が陰口を叩いた平民だと知りながら、怪我をしていたと言う理由だけで助けてくれたのだ。 シエスタが『初めて見た』の貴族の姿は何より尊かった。 「ヴァリエール様……この受けた大恩、私には返す手段がありません。 せめて貴女に生涯仕える事で、僅かですが返させて下さい」 涙を拭うことなく彼女の手を強く握り締め、再びシエスタは頭を伏せる。 「貴女の名前は?」 「シエスタといいます」 名前を聞いて、ルイズは少し思慮する。 ルイズにとっては、仕える平民にも誹謗されるのなんて日常茶飯事だった。 しかし、本人を前にすれば取り繕う為の方便を口にする。 魔法が使えないとはいえ、貴族相手に侮辱すれば処罰を受けるのは子供でも理解できるから。 このメイドは自らへの罰を覚悟で侮辱の非礼を詫びたのだ。 その上で、魔法も使えない自分に仕えさせて欲しいと懇願している。 「分かったわ、シエスタ。 貴女が私に仕えてくれるというなら、まず顔を上げて頂戴」 ルイズの言葉通りにシエスタは顔を上げる。 「それと私の事は名前で呼ぶ事、いいわね?」 ルイズが学院に来て初めて見せる笑顔。 その表情にシエスタは心奪われた。 こうしてシエスタはルイズの専属メイドとなった。 ただ学院で専属メイドを取れば、周囲がとやかく言うのは容易に想像できる。 なのでルイズが学院にいる間、シエスタは学院メイドとして働きながら仕える様に命じた。 ルイズの提案にシエスタは一も二もなく頷き、今に至る。 「私は本物の貴族というものをルイズ様に出会って、初めて知ったのです」 嬉しそうにルイズとの出会いを語るシエスタを見て、思わずアセルスはジーナの姿を重ねた。 ジーナと話したのは他愛のない話題ばかりだった。 それでも彼女との会話は息の詰まるような針の城で、 妖魔になった現実を受け入れられずにいた自分にどれだけ心の支えになった事か。 きっとルイズにとっても同じなのだろう。 夢では彼女の笑顔を見ることは一度もなかったのだから。 外が騒がしいことに気付いたシエスタが様子を見に、部屋を出て行く。 アセルスもルイズの元へ向かおうとすると、シエスタが血相を変えて戻ってきた。 「ルイズ様が!ミスタ・グラモンと決闘しているそうです!!」 前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1161.html
「サイトさん。お料理を作ったんですけど、一緒に食べませんか?」 メイドが朝から姿が見えないと思ったら、厨房にいたらしい。戻って来るなり部屋にいたサイトにそう言った。 今日は虚無の曜日、授業はお休みだし雨のお陰で騎士団の訓練も今日はお休みだった。 そんなわけで今日は朝からずっとサイトと二人っきりだったわけで、たまにはこんな雨の日も悪くないかな邪魔なメイドもいないし、 なんて考えていたルイズは一気に不機嫌になった。 「料理ぃ~?何でわざわざ学院であんたの手料理なんて食べなきゃならないのよ。いらないわ。そっちで勝手に処分なさい」 「あら。ミス・ヴァリエールには聞いていませんよ?私はサイトさんを誘っているんです。ミス・ヴァリエールは適当に食堂で食べてきたらどうですか?」 ルイズ相手に一歩も引かないシエスタ。恋する乙女は強いのだ。 「ね?サイトさん。たまには、良いですよね?東方の珍しいお料理なんですよ?」 シエスタの言葉にサイトは考える。 ずいぶん前の事になるが、シエスタが東方の珍しいお茶を飲ませてくれたことがあった。 それは日本人のサイトには実に懐かしい緑茶で、嬉しかったのを覚えている。 今回の東方の珍しい料理ももしかしたら、そう言うものかも知れない。そんな期待もあり、その言葉にサイトは答えた。 「へえ?シエスタの手料理か…そう言えばずいぶん食べてないな。分かった。ご馳走になるよ」 「ちょっとサイト!?」 ルイズが怒りで目をむく。せっかくの2人きりを邪魔された上にメイドの手料理、いけない。実にいけない。 だが、そんなルイズの悲鳴を無視するように、シエスタはパンッと手を打ち鳴らし、答えた。 「決まりですね。ちょっと待ってて下さい。暖め直して、持ってきますから」 「待ちなさいよ馬鹿メイド!」 さっさと部屋を出ていこうとするシエスタを、ルイズは呼び止めた。 「何ですかミス・ヴァリエール?」 「人の使い魔に勝手に餌付けしないでちょうだい。しかも、東方の怪しい料理なんて、おなかでも壊したらどうすんのよ」 「怪しい、じゃなくて、珍しい、です。人のお料理にケチつけないで下さい」 ルイズの言葉にシエスタも言い返し、辺りに剣呑な空気が漂う。 やばい。実にやばい、とサイトは思った。この手の喧嘩が始まるといつも巻き込まれるのだ。えらい目に遭うのだ。 「まあまあ二人とも、喧嘩はそれぐらいに…」 「黙ってなさい、サイト」 「サイトさんは黙っていて下さい」 きっつい視線をダブルで向けられてサイトは押し黙る。こうなってしまってはもはや止めることは出来ない。 「そこまで言うならいいわ。あたしもその東方の怪しい料理を食べて上げるわ。ただし、変なもの食べさせたら只じゃ置かないかんね」 「望むところです。ただ、ちょっと大人向けの味付けですから、お子様なミス・ヴァリエールには辛いかもしれないですけど、ね」 そう言って目線を下に向ける。そして、フッと馬鹿にした笑いを浮かべた。その瞬間、ルイズは切れた。そりゃもうぶっちりと。 「いいい今胸を見て言ったわね!?ここここれからだもん。これから大きくなるんだもん。これからはもう垂れるだけのあんたと違ってあたしには未来があるんだもん!」 わめき散らしながら杖を取り、魔法を唱えようとするルイズを必死になだめるサイトを尻目にシエスタはにこやかに笑って言った。 「じゃあ、ちょっとだけ待ってて下さいね」 結局、ルイズが我に返ったのは、シエスタが戻ってきてからだった。 うわ、なにこれ、不味そう。 それがルイズの料理に対するまごうことなき第一印象だった。 それは、お皿に盛りつけられているのは、ソースのかかったゆでた米だった。それはまあ良い。それだけなら普通の料理だ。 どうゆでられたのか、その米はぬめりが残って粒同士が微妙にくっついていた。それ以上に問題なのは、その上にかかっているソース。 それは、ソースと言うよりはシチューに近い代物だった。一口大に切られた根野菜と肉が入っている。 だが、泥のように黄土がかった茶色なんて、どう見ても食べ物の色じゃない。 やたら沢山のハーブとスパイスが混ざり合った、なんとも言えない刺激的な臭いが鼻を刺す。 こんなの、おいしいわけ無いじゃない。 そう思って、サイトの方を見る。どうやらサイトも同じ感想らしい。スプーンを持ってガタガタと震えている。 「さあ、さめないうちにどうぞ。お代わりも沢山ありますよ」 にこやかに言うシエスタの言葉にサイトがゆっくりと唾を飲み込み、震える手でその料理をすくう。 勝ったわね。 ルイズはそう思った。自分から誘っておきながら、出したのはどう見ても食べ物じゃない怪しげな料理。好感度ガタ落ちは必死だ。 だが、ルイズは知らない。サイトが震えていたのは未知の料理に挑まねばならない恐怖からではなく、驚愕と感動のためだったことに。 「うまい、うまいよシエスタ!」 一口食べた瞬間、サイトが絶叫する。その言葉にルイズは驚愕した。 「これだ、これだよ!この味、これこそ俺の求めていたものだ!シエスタさん、天才!マジ最高!」 考え得る限りの賛辞の言葉を叫びながら、怒濤の勢いで料理を平らげていくサイト。瞬く間に空になった皿をだし、お代わりをする。 よく見ると感動の余り涙すらこぼしていた。それがルイズには面白くなかった。 ななな何よ。料理ごときにこんなに喜んじゃって、馬鹿じゃないの? 腹立ちまぎれにソースだけをすくって料理を口に運ぶ。サイトの反応を見る限り毒とかは入ってないだろうし。だが、その判断ミスをルイズは後悔することになる。 辛かった。激しく辛かった。はしばみ草の苦さに匹敵するんじゃね?ってくらい辛かった。 思わずはき出しそうになる口をおさえ、水で流し込む。まだ口の中がひりひりする。涙目になりながらルイズはシエスタに抗議した。 「かかかか辛!?何これ、辛!ここここんなの食べられるわけないじゃない!」 「言ったじゃないですか。ちょっと大人向けの味付けだから、ミス・ヴァリエールには辛いかも知れないって。これは、そう言う料理なんです」 対するシエスタはどこ吹く風だ。 「だいたい、同じ料理をサイトさんはこんなに喜んで食べてるじゃないですか。ただ単にミス・ヴァリエールの口に合わなかっただけです。 それに、私はこれ、結構いけると思いますよ?確かに辛いですけど」 そう言いながら平然と料理を口に運ぶシエスタ。サイトの方は既に3杯目に突入していた。 「ふう~、食った食った。こんなに食べたのは久しぶりだ」 おなかを押さえ、満足そうにため息をつくサイト。それをルイズは恨めしそうに見ていた。結局辛すぎて、皿半分も食べられなかったのだ。 「どうでした?サイトさん」 「グッジョブ」 シエスタがにこやかにサイトに問う。それにサイトは親指を上げて一言答えた。2人の間に入り込めない何とも言えない空気が漂う。 ルイズの機嫌はますます悪化した。あによ、あの乳メイド、ちょっと料理がうまくいったからって調子に乗るんじゃないわよ。 サイトもサイトよ。あたしが辛くて食べられないって言ってるのにあんなに食べて、前にあたしが作って上げたときはあんなに喜ばなかったくせに… 「それにしても…」 ルイズの機嫌に気づかず、サイトはシエスタに話しかける。余りの感動に他の事が見えなくなっている。 「シエスタがカレーを作れるなんてびっくりだよ。これもひいおじいさんの残した料理?」 「いえ、ひいおじいちゃんも何度か再現してみようとしたけど、スパイスの調合が難しくて結局作れなかったって言ってました。 20種類以上も使うんですよね。私もあんなに沢山スパイスを混ぜたのは初めてだったのでちょっと大変でした」 「へえ。じゃあ、これはシエスタの研究の成果ってことか。ますます尊敬するよ」 その言葉に、シエスタは照れながら言う。今回の事件の黒幕の名を。 「いえ、実はカレーの作り方は、トニオさんに教わったんです」 時が、止まる。ルイズの周り限定で。その止まった時に気づかず、2人はにこやかに会話を続ける。 「実はこれから、お礼としてミス・タバサとトニオさんのピザを焼く窯を作るお手伝いをすることになってるんです。 もし良かったらサイトさんも一緒に、お手伝いしてくれませんか?」 「おやすい御用さ、シエスタ。こんなおいしい手料理を食べさせて貰って何もしないじゃ、恩知らずになっちゃうしな」 そう言って、部屋から出て行く。部屋にルイズが1人取り残された。 そして、時は動き出す。 「あんのクソコックゥゥゥゥウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ちいねえさまに飽きたらずメイドにまでロクでもない事を吹き込んだトニオに、ルイズはますます敵意を燃やすのだった。 「ありがとうございました。ミス・タバサ」 夜、シエスタはタバサの部屋を訪ね、お礼を言う。 「気にしないで。料理をおいしく作れたのはあなたの腕。私じゃこうはいかない。それにシエスタはかあさまの看病を手伝ってくれた、友達」 いつもの無表情でタバサは答える。 「でも、トニオさんならサイトさんの故郷の料理を作れるかも知れないって教えてくれたのはミス・タバサじゃないですか。 お陰で今日は…もし、何か困ったことがあったらいつでも言ってくださいね。何でもお手伝いしますから」 恭しく礼をして、シエスタは部屋を出て行く。それを見届けた後、タバサは振り返り、奧に居る人物に聞いた。 「これで良かったの?かあさま」 確かにルイズに打撃を与えることは出来た。だが、その分シエスタの株が上がった。これでは意味がないのでは、とタバサは思ったのだ。 「シャルロット、まずルイズから引き離すことが大事なの」 その言葉に、真の黒幕が答えた。 「残念だけど、サイト君はまだまだあのルイズに騙されていると気づいていないわ。今のまま挑んでしまったらこんなに可愛いシャルロットでも 玉砕してしまう。だからね、まずはサイト君に分からせなくちゃならない。ルイズにこだわる必要なんて無いことに。 そうなれば、きっとサイト君はシャルロットの可愛さに気づいてくれるはずよ。それにね、今回のことでシエスタさんに恩を売る事が出来たわ。 恋愛勝負ではね、友情と恩は非常に強力な武器になるの。恋愛では恩のある相手や友人を相手にしたとき、どうしても遠慮してしまうもの。 特にシエスタさんは優しい人。友人が相手になったときに、友情のために一歩出遅れるタイプ。それが彼女の最大の弱点。弱点をつくのは、戦いの基本でしょう?」 分かりやすい母の言葉にタバサはこっくりと頷いた。納得したのだ。 (それに…) ここから先は口に出さず、彼女は考えた。 (今回のことはきっと姉妹の絆の復活を確実に遅らせるわ。その時間の差が、勝敗を分けるとも知らずにね) そう、もっとも厄介なのはあの2人の絆が復活し、仲睦まじい姉妹に戻ってしまうこと。 心が読めると言って良いくらい察する能力に長けたカトレアがフォローすればルイズとサイト君の仲は安泰だし、 ルイズが邪魔をすることが無くなればカトレアの注意は100%こちらに向く。そうなればこちら側が勝つのは難しい。 (私が勝利する、娘も勝たせる。両方しなくちゃならないのが、母親の辛いところね) だが、負ける訳にはいかない。戦いはまだ始まったばかりなのだから。