約 545,827 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/466.html
野生のゆっくり霊夢を少しの余裕のある広さの水槽に閉じ込める そこが安全で餌の調達をしてもらえることを悟ると次第にくつろぎはじめる 「ゆっくりしていってね!」 「うっめ!めっさうっめ!パネェぞこれ!」 「ゆー、しあわせー♪」 餌を食べ終え幸せそうに笑みを浮かべるゆっくり霊夢 満足すると、水槽の中を元気に飛び跳ねて回る 「ゆー?なにもないよ、たいくつだよ」 「たいくつだからかまってね!」 と、いうことなので退屈させぬべく性的な刺激を与えてみることにした 「ゆゆゆゆ!」 手を乗せて小刻みに振動を与える 「ゆゆゆ、やめてね!ゆっくりさせてよね!」 手を乗せられて重いのか、はてまた振動が落ち着かなくて嫌なのか 身体を上下させて抵抗する 気に留めず行為を続行すると次第にその顔は艶を帯びていく 「ゆっゆっゆっ」 やがて抵抗を止め行為を受け入れる、その顔もだらしなくゆるみ紅潮している 「ゆっ、ふっ、ふっ」 目が虚ろに変わり、息が荒くなる すると、ゆっくり霊夢は自ら手に身体を擦り付けるようになる それから5分は経過しただろうか 「ハァハァ!…もっとだよ!もっとぶるぶるしてねっ!」 刺激に対して催促するような発言をしはじめた 身体は強く赤みを帯び、体温も相当上がっているようである 目はすでに焦点を失い、ゆるんだ口からは涎が垂れている 「たりないよっ!もっとつよくぶるぶるしてねっ!」 最初に刺激を与え始めてから10分が経過した 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 催促していた発言も止み、ただ声を荒げるのみとなっている 間々にフンスフンスと鼻息をはさむ 涎は水溜りのように床に広がっており、焦点の合わない瞳は上を向いてしまっている 「フシュッ!フッ!ゆ゙っ!フッ!フシュルッ!」 さらに継続して刺激を与え続けていると、全身は真っ赤に変色し、体中に青筋を立て始めた 歯を強く食いしばりながらフシュフシュと息を続ける、口の横には泡が溜まっている 「ジュルッ!ブシュッ!ん゙ぃ゙っ!」 涎をすすりながら声を漏らすゆっくり霊夢 その姿を確認した後、刺激を中止し手を離す 「フシュッ!どお゙じでっ!ジュルッ!どうぢでやめ゙る゙のっ!」 「もっとッ!ゆっくりさせッ!てよンクッ!フシュッ!」 荒げた息が邪魔で上手く喋れていないようだ 刺激を中断したことに対し必死に抗議する 「ハァハァ…どおしてっ…どおしてなのっ」 髪をふりみだし全身は汗と体液で濡れている 顔はくしゃくしゃに歪ませて目は血走っており、その姿はあまりに醜い やがて唸りながらて歯軋りしはじめたあたりで再び刺激を与えはじめる 「そ、そそうだよ!も、もっとゆっくりさせてねっ!」 汚らしい笑みで嬉々とするゆっくり霊夢 「ゆふっ!これだよっ!ふひっ!ぶるぶるだよっ!」 貪欲に快感を貪る そして再び快感の渦中へと意識をトリップさせていった 刺激を再開して10分が経過したあたりのことである 「ンカッ!クッ!ん゙ひっ!クカッ!」 ブシュ 突然音をたてて身体の底部から放水をし始めた 失禁である 当の本人はもはや意識が無く、快感に身を任せて放尿行為を続けた 「ヒィーッ!エヒッ!エヒッ!エヒッ!」 声は笑い声のようにも、泣き声のようにも聞こえる 次に変化が現れたのは刺激を再開してから20分が経過した頃である 「フッシュルッ!ゆ゙ふっ!フシュッ!フッ!」 「…フングッ!…フングッ!」 「ん゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙っ!!」 身体を大きく上下させながら ビクン、ビクン と強く弾いたように痙攣しはじめる オーガズムである 「エ゙ィレッ!ゥ゙ィッ!ブシュッ!」 食いしばった歯の隙間から涎が勢い良く飛び出す 醜悪な顔つきで大量の涙を流すが、その顔はどこか淫らな悦の表情を浮かべている 「…エヒッ!…エヒッ!」 絶頂を過ぎクールダウンに入るゆっくり霊夢 「フシュ…す、すっきり…んゆゆ゙っ!?」 その絶頂を過ぎた後の敏感な身体に、再び電流が流れる 「ん゙い゙いっ、も、うッ!やめてッ!」 オーガズムに達したことを確認したにもかかわらず 刺激を与える手はその行為を続行する 「やめ!フシュッやめ!…フシュッ!フッ!」 再び襲い来る性的な快感 呼吸は乱れ、まともに息ができない 「ん゙い゙ーっ!はなしてえーっ!いや゙ーーっ!!」 悲痛な叫び 満たされた性的欲求 続く性的快感 「…ンカッ……ンカッ……」 その過剰な性欲の供給に、ゆっくりの精神は崩壊していくのである やがて完全に意識を失ったゆっくり霊夢 ピクリとも動かず、謎の汁を垂れ流しながらただ水槽の床にへばりついている それでもまだ刺激を与えることをやめない さらに さらに刺激を さらに刺激を与え続ける ゆっくり霊夢が失神してからどれほどの何時間が経過しただろうか いまだに止まないその振動にゆっくり霊夢は刺激され続けていた ぐったりとしながら泡を吹くゆっくり霊夢、その顔は赤みを肥えて青白く変色している 「ゆ゙ッ……ゆ゙ッ……ゆ゙ッ……」 規則正しい感覚で小さく声をあげる 恐らく失神して見ている夢の中でも快感に襲われているのだろう その行為は夜が明けても続いていく まるで終わることを知らないように… その後、刺激を与えることを中断してから2日後のことである ゆっくり霊夢の意識が戻ったようだ 「ッ゙ぐりッてぇねェッヒッ!」 と声をあげながら身体を引きずって水槽をねり歩く その身体は平衡感覚を失い斜めに傾いてしまっている 右目はこちらを見ているものの、左目は完全に白目をむき続け、まぶたは痙攣している 「ッぐぃッ!ひぇい゙ぇねヒッ!」 涎を垂らしてこちらに挨拶をする どうやら過度な性的快感の供給が、中枢神経障害、脳障害を引き起こしたようである 自我があるのかないのかひたすら壊れた挨拶を繰り返すゆっくり霊夢 しかし、壊れたのはそれだけに限らなかった その状態で数時間ほどたっただろうか ゆっくり霊夢は餌を与えても反応せずに挨拶だけを繰り返していたのだが 突然、その挨拶を止めて身体を上下にポンプのように動かし始めた 「ッぎりぁええおぉっ」 謎の叫びを上げながらゴロゴロと水槽の底を転げまわる 顔を真っ赤にしながら叫び続け、何かを訴え続けている やむなく、水槽に手を入れてみたところ手に向かって全身を擦りつけてくる 「んほぉお゙お!ッいりいえッェ゙ィえっ!」 顔を淫らに歪ませて手を相手に行為を始めるゆっくり霊夢 手が体液でベタベタである その後、刺激を与えてあげるとその癇癪が止まることが判明した つまり中毒症状である 性的快感を定期的に短い間隔で与えないと、その発作が起こるようだ その後、水槽に水の入った2リットルのペットボトルをいれてみる ゆっくり霊夢はペットボトルなぞに目もくれず挨拶を繰り返す そのゆっくり霊夢を掴み、ペットボトルにぐいぐいと押し付ける すると、ゆっくり霊夢は悦とした表情でペットボトルに身体を押し付けて身体を振動させる 「んほおお゙っ!ぃぃいぐいェッえッ!」 凄まじい剣幕で行為を行うゆっくり霊夢 ゆっくり霊夢の興奮は冷めることはもうない ペットボトルを相手にゆっくり霊夢は餓死を迎えるまで延々と自慰行為に倒錯するのであった ~ゆっくりひとりでできるもん~END 想像してると腕が疲れますね。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2735.html
博麗神社の裏で子鬼が寝ていた。 小さな百鬼夜行 伊吹萃香だ。 昨夜も宴会で朝まで飲んでいたようですでに日は真上に昇っている。 「ん~?」 まだまだ寝ていたいのだが騒がしい声に目を覚ます萃香。 見ると目の前には最近幻想郷で大量発生しているゆっくりがたくさんいた。 ゆっくり霊夢に、魔理沙、ちぇぇぇんにみょんの四種類だ。 宴会のために天界から持ち出した桃の余りをそいつらは食していた。 籠に入れておいたのだがこいつらが籠を倒したようで、桃はそこらに散乱してる。 見る限り無傷なものは一つもない。 「あーっ!後で霊夢と一緒に食べようと思ってたのに!」 思わず叫んでしまう。 その声にゆっくりたちが反応する。 「ゆっ、おねえさんゆっくり寝てたね!」「ゆっくりしていってね!!」 「このくだものおいしーよ!!」「おねえさんもゆっくりたべる??」 「ちーんぽっ!」「まだあるよー、わかるよー」 30匹はいるだろうか。それだけの数のゆっくりが一度に話しかけてくるのでうるさいし聞き取れない。 「うるさいねぇ。ま、好きに食べていいよ。どうせすぐに取ってこれるし」 天界には山ほどの桃の木があるのだ。それはもう飽きるほどに。 寝てる間に食べられたのはちょっと癪だけど、わざわざ怒ることもない。 しかしすぐに取ってこれると言う言葉にゆっくりたちは目敏く反応する。 「ゆっくり取ってきてね!!」「むきゅ、ゆっくりまってるね!」 「ゆっくりはやくもってきてね!!」「やさしいおねえさんはゆっくりできるね!」 やはりうるさかった。相手をするのも面倒なので「あー、はいはい」とあしらうとその場を立ち去ろうとした。 その時いつも持ってる瓢箪、酒が無限に湧く瓢箪が手元に無いことに気がついた。 「あれ? どこかにやったかな」 見回すが見つからない。 くるりと回って後ろも見る。あった。 ただし瓢箪の周りにもたくさんのゆっくりが群がっていて 「次はれいむの番だよ!!」「ちがうよ!まりさの番だよ!!」 瓢箪の口から湧く酒を奪い合っていた。中にはすっかり出来上がったものもいて、地面にぺにょーんとだらけたゆっくりもいた。 「そんなとこにあったのか。ほら、返してもらうよ」 萃香は特に気にする様子もないし、特に怒りもしないで瓢箪をゆっくりの群れから取り上げる。 「ゆっ!! つぎはまりさの番だよ! 取らないでね!!」 「ゆっくり返してね!!」「それはゆっくりたちがみつけたものだよ!!」 生意気な事を言ってるけど萃香は無視した。こいつらと問答しても聞かないだろうから。 しかしゆっくり達は続ける。 「ゆっくりできないならそれを置いてでてってね!!」 「ちちちーんぽっ!」「むきゅむきゅむっきゅ~ん!!」 「どろぼうはでてってね!!」 萃香を罵倒しながら体当たりしてくる。ゆっくり達は酔っていて普段よりぷにぷにボディなので衝撃はほぼ0だ。 ここまでされると流石の萃香もいらついた。 なんでただの饅頭如きにこの鬼である私が攻撃を受けてやらないといけないのか。 「いい加減やめなさい。お前たち達が私に敵うわけないよ」 萃香は妖気を発しながら威圧するように話しかける。普通はこれで大抵の妖怪や妖精は震えて逃げ出す。 しかしゆっくりは萃香の想像より遥かに下回る鈍感さをもっていた。 「みんなでかかれば倒せるよ!!」 「ゆっくりしんでね!!」「ゆっくりたおれてね!!」 体当たりしてくるゆっくりが増えてきた。ここら一帯に集まっていたゆっくりが萃香を取り囲んで攻撃する。 反撃しない萃香をみて体当たりが効いてるとでも思っているのだろうか。 舐められたものだ。 そう言えば霊夢も神社の食料を求めて集まるこいつらの相手にはうんざりのようだった。 そしてここは神社の裏、霊夢のためにも灸を据えてやることにした。 「身の程を教えてあげた方がいいようだねぇ。この鬼の力、特別に見せてあげるよ」 萃香はスペルカードを発動する。 萃符「戸隠山投げ」 萃香の能力で周囲の石や岩を萃(あつ)めて敵へぶん投げる豪快な技だ。 ただし今回萃めるのはゆっくり達だ。 3mほど宙を浮かんだ萃香の右手に妖力が集中する。そしてその右手に向って辺りの空気が吸い込まれていく。 「ゆゆーっ!?」「すいこまれるよー、わからないよー」 「ゆっくりできないよ!やめてね!!」「むぎゅぅぅ」 事態を把握できないゆっくり達が萃香の右手の先に為すすべなく萃められていく。 全部で50近くいたそれはものの数秒で直径2mぐらいの饅頭の塊になった。 恐らく中央付近のゆっくりはすでに潰れて餡子と皮だけの存在になっているだろう。 「そらっ、技はまだこれからだよ!」 萃香は腕をぐるぐる回す。これからゆっくり達の塊を投げるための勢いづけだ。 「ゆ”ーー!!」「ゆ”っぐりでぎない”~!!」 「まわずのゆ”っぐりじでぇぇ!!」 塊の外側にいるゆっくりはまだ話せるようで悲鳴を上げる。 「ゆっくりしたい? ならゆっくりさせてあげるよ」 この時萃香は自分が楽しんでいることを感じた。 こいつらの悲鳴を聞いてると何とも言えない気持ちになるのだ。 このまま地面に勢いよく叩きつけたらどんな反応を示すだろう。 それを早く見たくなった萃香はいつもより本気でゆっくり達の塊を地面に向けて投げ付けた。 ゆっくり達が投げられたことを認識するよりも前にゆっくりの塊が地面に激突する。 「ゆ”べっ!!」「ぅ”あ”!!」 途端に弾ける大量の餡子。そして断末魔。 ゆっくり達の塊のうち、4/5は一瞬にして餡子と化した。 なんとか形を保っているのは地面に激突したのと逆側にいた残り1/5のゆっくりだった。 それでも激突した衝撃が伝わって驚愕の表情のまま絶命しているものがほとんどだった。 「ちょっとやりすぎたみたいだねぇ」 そう言う萃香だったがその顔は綻んでいた。 「ゆっ、ゆ”」「あ”あ”あ”」 苦しそうな声を出すゆっくり達。だがその数はたったの四匹。ゆっくり霊夢一匹とゆっくり魔理沙の二匹、ゆっくり橙が一匹だ。 しかし焦点が合わないもの、皮が破れて餡子が他の死んだゆっくりたちの餡子の湖に流れ出ているもの、 舌が取れてしゃべれないもの、嘔吐しているものと無傷のものなど一匹もいない。 萃香はそのうち二匹を天界へ持っていくことにした。他の二匹はおそらくこのまま死ぬだろうからほうっておく。 天界の一角に萃香は現在住んでいた。天人の娘と闘って得た場所だ。 一面に花が咲き誇り、天敵となるものもいない。楽園と呼ぶにふさわしい場所だったが萃香にとっては少し退屈だった。 そこで今回生き残った二匹のゆっくり、れいむとまりさを飼って退屈を紛らわせる道具にしようと考えていた。 死にかけのゆっくりに桃をしぼって与えると少し元気を取り戻したようだ。 目立った外傷もないようだし後は放っておけば治るだろう。 「さて、今度こそ神社に遊びに行くかねぇ」 萃香はいくつかの桃をゆっくり達の周りに置くと、桃をもって再び神社へと遊びに行った。 翌朝 萃香は天界へ再び戻ってきた。 ゆっくり達は治ったかなと思いながら見に行くと、それはもう元気に跳ねまわっていた。 ゆっくり達は萃香を見ると元気に挨拶する。 「「ゆっくりしていってね!!」 萃香は少し驚いた。自分に何の恐れも抱いてないとは。 まあゆっくりは記憶容量が小さいのだ。きっと昨日のは忘れたのだろう。 「おねえさんれいむたちのおうちに何の用?」 「いっしょにゆっくり出来る??」 さらに萃香の場所を自分の場所だと主張する。 困ったものだ。これはお仕置きしないといけないな。 萃香に芽生えたSな感情がふつふつと湧き上がる。 「何か勘違いしてるみたいだねぇ。ここはお前たちのおうちじゃないよ」 「ちがうよ!! れいむとまりさのおうちだよ!!」 「ゆっくりできない人はゆっくりでていってね!!」 「そうかい。口で言って分からないなら体で覚えてもらうしかないねぇ」 昨日と同じようにゆっくり達を自らの腕へと萃める。 「ゆっ!?」 この吸い込まれる感覚は味わったことがある。なんだっけ? 確か昨日こんなことがあったような。 「!! や、やめてね!!」 「あ”あ”あ”!! ゆっぐりざせでぇ!!」 ゆっくり達は思い出す。この吸い込まれる感覚。その後起きた惨劇。 「さて、この後はどうなると思う」 萃香は今にでも投げるぞと示すように腕をくるくる回す。 「やめてえぇぇ!! まわざないでぇ!!」 「ごめんなざいぃぃ!!!」 命乞いの声に何かが満たされるのを感じた萃香はさらに続ける。 「何がごめんなさいなのか言ってごらん?」 「わだじだちがわるがったよ”おぉぉぉ!!」「ゆるじでぇぇぇ!!」 「じゃあここは誰のおうちだい?」 「れ”いむだちのおうぢぃぃ!!」 「まだ分からないのか。じゃあ投げるよ!!」 「「お”、お”ねえざんのおうぢでずうぅぅ!!」」 「分かったなら降ろしてあげる」 ぽとりと地面にゆっくりを落とす。目が回ったのかフラフラしている。 さてここで終えるのも勿体ない。もっとゆっくり達が自分を恐れる声を聞きたかった。 攻撃をすると簡単に潰れるからできない。楽しめないから。 どうしたものかと考えた結果、瓢箪から出る酒を使うことにした。 「ほら、元気が出る飲み物をあげるよ。口を開けな」 「ゆっ!飲み物! 欲しいよ!!」 「ゆっくり飲ませてね!!」 目が回ってフラフラしていたのはどこへやら。一瞬で元気になりぴょんぴょん跳ねておねだりを始める。 「じゃあ口を開けて並びな」 二匹は言葉に従って並ぶと、口を大きく開けてこっちを見上げてくる。 「ゆっくりはやく飲ませてね!!」 「はいはい、すぐ飲ませるよ」 昨日のは甘い桃の酒。 しかし今回は酒豪の萃香も満足できるほどの強い酒だ。こいつらには刺激が強いだろう。 瓢箪からゆっくりの口へと酒が流し込まれる。次の瞬間ゆっくりの顔が固まる。 急いでもう一方のゆっくりにも飲ませる。 「ゆ”ばばばびぃ!!」「がふっがふっ」 今までにない反応だ。これは楽しい。 ゆっくり達は口の中の燃えるような感覚に転げまわった。 「大袈裟だねぇ。でもおいしいだろ?」 「お”いじっ、ぐない”ぃ!!」 「がら”っ、い”の、い”や”、だよ”おぉ!!」 涙を流しながら萃香を睨めつける。 「ゆっぐりあやまってね!!」「ひどいおねえさんとはゆっくりできないよ!!」 「なに、これからゆっくり出来るよ。体がポカポカしてきたろ?」 「ゆ?」 言われてみると確かに体がポカポカしてきていた。それになんだかゆっくりした気分になってくる。 そう言えば昨日も甘い味のする水を飲んだときも同じようにゆっくりした気分になった。 もちろんこれはお酒を飲んだからなのだが、ゆっくり達には不思議だった。 「おねえさん、ゆっくりできるよ!!」「ぽかぽかー!!」 「それはよかった。ならもっと飲むかい?」 笑顔でゆっくり達に酒を勧める萃香だったが、その眼は観察をする眼だった。 ゆっくり達は隠された悪意に気付かない。今はとにかく不思議な水をもっと飲みたかった。 「ゆっくりのませてね!!!」「でもからくないのにしてね!!!」 「ふふっ、いいよ。辛くない酒だね」 今度は瓢箪から甘いお酒を出す。しかしアルコール度数は高い。 萃香はゆっくり達を限界まで酔わせてみようとしていた。 「「ごーく、ごーく、しあわせー!!」」 それから十分近くゆっくり達にお酒を飲ませ続けていた。 明らかに体積より多く飲ませているが、まだ飲んでいた。 「さて、そろそろいいかな」 ゆっくりの様子を見て萃香は二匹に酒を与えるのを止める。 「ゆ~? もっろのませれよぉ」 「まだのめるよ! もっとのませてね!!」 ゆっくり魔理沙はべろべろに酔っ払って舌が回らないうえ、見るからにふらふらで右へふらふら左へふらふら揺れていた。 それに対してゆっくり霊夢は比較的まともだ。 しかしこれはお酒の強さとは関係がない。 萃香はゆっくり魔理沙に与える酒だけ強いお酒、ゆっくり霊夢には1%程度のお酒とも言えない程度のお酒を飲ませ続けていたのだ。 「な~にひてんのぉ!! まりふぁはもっろのめるぉ!!」 「その前にいいことしてあげるよ」 萃香はゆっくり魔理沙を後ろから両手で抱えるとゆっくりと揺さぶる。 以前、人形遣いがゆっくりにやっていたことの真似ごとだ。 ゆっくり達はこうやって揺さぶってやると発情するらしい。普段なら。 しかし泥酔状態の今ならどうか。 萃香自身は酒で潰れないので体感的には分からない。 だが前に神社で宴会をしたときに見たからどうなるか大体知っている。 珍しく酔っ払った霊夢を悪ふざけで揺さぶったら…いや、言うまい。 あの後しばらく霊夢は口を利いてくれなかった。 ともかくだ。酔っぱらった状態で頭を揺さぶるとひどいことになる。 ゆっくり魔理沙も揺さぶられて、性と酔いの二重の快感に酔いしれていた。 しかし少しずつ、いや急激にそれは込み上げてくる。 口をだらしなく開けていたゆっくり魔理沙が「うぐっ」と言ううめき声とともに口を必死に閉じる。 絶えず襲ってくる吐き気。 「んぐっ、むぐっ」 頬を中心にゆっくり魔理沙が膨らんでくる。吐いてしまうのを必死で耐える。 とても苦しいのだろう。涙が滝のように流れている。 「ゆっくりできるでしょ。ほらほら、もっと揺さぶってあげるよ」 「んむぐぅぅぅ!!」 ゆっくり魔理沙は「ゆっくりできないよ! すぐにやめてね!!」と言いたいがそれはできない。 口を開けたら途端に中身を吐き出してしまうだろうから。 しかしいくら吐き気を我慢しても萃香は揺さぶる手を止めない。 我慢の限界ももうすぐそこだ。 その時ゆっくり霊夢はと言うと呑気に 「まりさばかりゆっくりさせてもらってずるいよ!! れいむもゆっくりさせてね!!」 ゆっくり魔理沙が苦しんでいるというのに酔ったゆっくり霊夢はそれに気付かない。 ゆっくり霊夢は早くゆっくり魔理沙と代わって欲しくて萃香の周りをぐるぐると飛び回る。 萃香はゆっくり魔理沙に耳打ちする。もちろんゆっくり霊夢に聞こえぬように。 「お前のお友達はひどいね。苦しんでるお前を助けようともしない」 「んぐ~~!!」 お前が苦しめてるんだ。と萃香に避難の目を向けるゆっくり魔理沙だったが、 確かにゆっくり霊夢は自分を助けようとしない。それどころかぴょんぴょん跳ねてゆっくりしている。 ゆっくり魔理沙は絶望してしまった。そして絶望が諦めを誘発した。 「ぅごぇえぇぇぇぇぇぇ!!! お”べええええええ!!!」」 逆流する餡子に耐えきれず、ゆっくり魔理沙は餡子を吐いてしまう。 それは半端な勢いじゃない。明らかに生きるのに必要な分の餡子まで出してしまうほどだ。 美しい天界の花畑を汚らしい餡子がびちゃびちゃと汚していく。 汚したのはそれだけではない。 萃香の周りを跳ねまわっていた霊夢にもそれはかかってしまう。 「あ”あ”あ”! なにこれぇぇ!!?」 「ははは! 友達の餡子だよ。ほら、すごい勢いだよ?」 ゆっくり魔理沙から吐き出される餡子をさらもゆっくり霊夢へと浴びせる。 「や”、や”めで~~! ま”り”ざがしんじゃうよおお!!」 「そうだねぇ。このままだと死ぬかもねぇ」 そう言って未だ吐き続けるゆっくり魔理沙を地面へと置く。 「ほら、餡子を戻してやらないと死ぬよ?」 「がほっ、げぼっ、じに、だぐな”い、おげっ」 吐きながらも死にたくないと訴える友達をゆっくり霊夢は放っておけるわけがない。 ゆっくり霊夢は餡子まみれになりながらも、吐き出された餡子を自らの口に含んでゆっくり魔理沙に 口移ししようとする。 しかし、口移ししたそばからそれ以上の量の餡子が吐き出されるのだから意味がない。 「まりざぁ、あんこを飲んでよぉぉ!! しんだらゆっくりできない”よぉ!!」 だがゆっくり魔理沙は答えない。答えられない。 すでに瞳に光はなく、口から出るのは餡子だけだ。 「まりさぁぁぁ!! あんこをのんでぇぇぇぇぇ!!」 ゆっくり霊夢はバカの一つ覚えのように餡子をゆっくり魔理沙の口へと運び続けていた。 何度かそれを続けるとようやくゆっくり魔理沙が餡子を飲み込んだ。 「ゆっ!」 ゆっくり霊夢はこれでまりさが回復すると希望を持てたのだろう。 「もっとのんでね!! あんこいっぱい戻したらまた一緒にゆっくりしようね!!」 次々と餡子をゆっくり魔理沙の口へと運び続ける。その動きはさっきよりずっと生き生きしていた。 萃香はその様子をずっと見続ける。その顔には満足が浮かんでいた。 (これは確かに面白いねぇ。あの人形遣いや氷の妖精なんかが熱心になる理由がよく分かる) ゆっくり魔理沙はとっくに死んでいた。餡子を体に詰めなおしたところで生き返りっこない。 萃香はそれも分からずに回復するかもと、希望にすがるゆっくり霊夢をニヤニヤ眺めていた。 ゆっくり霊夢が二度とまりさが動かないと理解したのは、半日も経ってからだった。 ゆっくり霊夢はぴくりとも動かなかった。 まりさが死んだことを理解したくないのに死んだことを理解してしまったゆっくり霊夢は、何も考えたくないと現実から逃避してしまっていた。 「あーあ、こんなになっちゃったらもうつまらないや」 反応がないと虐めがいがない。萃香はゆっくり霊夢を掴むと神社へ遊びに行くことにした。 (このゆっくりは霊夢と一緒に食べるとしよう) そして帰りにゆっくり達を調達しよう。 次は何してみようか、何をさせたら面白ういだろう。 この先のことを考えると楽しくて仕方がない萃香であった。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1047.html
その夏、そこは猛暑に見舞われた 「今日も暑いねぇ」 「あついけど、ゆっくりしていってね!」 ゆっくり霊夢もあまりの暑さに汗が止まらない様子 冷蔵庫から冷えたプリンを取り出し、ゆっくり霊夢と俺は半分個して食べることにする 「あまあま!」 「つめたくってとってもおいしいね!」 盛り上がるゆっくり霊夢 「この『冷蔵庫』の中はとっても涼しくてね、入れていたものが冷え冷えになるんだよ」 「すごい!」 ゆっくり霊夢は冷蔵庫に興味津々である 「今日の気温は今年一番になるそうだからね」 「そうだ、冷蔵庫の中は涼しくて快適だよ、入って見るかい?」 「うん!ゆっくりするね!」 嬉々として冷蔵庫の中に入っていく、大きさは丁度くらいだ 「すごい!ほんとにすずしいよ!ゆっくりできちゃう!」 ゆっくり霊夢は生まれて初めての体験に大喜びである 「ゆっゆっ!しめて!しめて!」 俺も微笑みつつ冷蔵庫のドアを閉める、すると 「ゆっ!?」 「くらくなったよ!?こわいよ!」 冷蔵庫の中の明かりが消えたのに驚くゆっくり霊夢、しかし外からの反応は無い 「ゆっゆっ!」 ドアを開けようと内側から押してみるが、当然冷蔵庫は内側からは開かない 次第に冷蔵庫内の温度は低下していく 「ねえ!おにいさん!あけて!あけて!」 「さむいよ!しんじゃうよ!」 体温が低下し青くなっていくゆっくり霊夢 寒さに全身が震え、最後は体の感覚が無くなっていく… 「ゆっくり…させ…てよ…」 意識は遠のいていき、やがて静寂が訪れる そろそろ良い頃合だろうか、コンビニから買ってきたお茶を片手に冷蔵庫の前に立つ こう暑い日はやはり冷えたお茶と饅頭に限る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/290.html
幻想郷でもひときわ目立つ真紅の建物。紅魔館。 悪魔の館と名高いそこには、とても綺麗な紅い髪をした妖怪がいた。 紅美鈴。 紅魔館の門番である。 美鈴は困っていた。 ここ連日、なぜかゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の大群が、この紅魔館を目指して襲撃してくるのだ。 一週間で、少なく見積もっても500匹は叩き潰したはずだ。 ゆっくり種というのは、簡単に言えば「動いて喋る饅頭」だ。決して妖怪ではない。 岩魚坊主と似た類の妖怪かと思っている人間もいるが、絶対に違う。あえて言うならナマモノだ。 ただの饅頭にスペルカードルールは適用されない。 わざわざ弾幕を張る必要がない戦闘。いや、殺し合い。むしろ虐殺。 拳打の一撃、足刀の一撃が文字通り必殺となって、ゆっくりたちを引き裂いていく。 美鈴は久しぶりの運動に心身が喜ぶのを感じていた。が、それも最初の二、三日だけだ。 四日目からは弾幕を織り交ぜた。 運良く接近してきたゆっくりたちも打撃で潰した。 五日目はもう、弾幕を張るのも億劫になって、気でやたらめったら吹き飛ばした。 その技に名前はなかったが、あえてつけるなら、かめはめ……とかそんな感じで吹き飛ばした。 そして、八日目の今日、美鈴は門を離れ、紅魔館周辺の森林に潜りこみ、元凶を探していた。 今、紅魔館門前には門番隊六大天王が陣取っている。 六大天王とは、門番メイドの中でも選りすぐりの精鋭で、虹符「彩虹の風鈴」の後に出てくるあいつらのことだ。 妖精ではあるが、ゆっくりなんぞが束になっても太刀打ちできるような相手ではなかった。 鬱蒼と茂る木々の間を、紅い髪が流れるように移動していく。 美鈴の服は暗緑色なので、森林のなかでは、普通に保護色の役目を果たしていた。 なんという、偶然ッ!!! やがて美鈴の広域レーダーに特異な気配がひっかかった。多い。200は蠢いている。 美鈴はこのレーダーに「円」と名前をつけている。最大半径約2kmのスグレモノだ。紅魔郷ではこれを使って、接近する紅白と白黒の迎撃に向かった。 結果は言わずもがな。 やがて、森の中でも一際暗い、多くの葉に包まれた場所に出た。 食肉植物が生息していても不思議ではないほどだ。美鈴はそこらじゅうに点在するゆっくりの姿を認めた。 それぞれが談笑し、思い思いにゆっくりしている。全てひとつの群れのようだ。 美鈴は一度目を閉じ、みっつ数えてから目を開いた。すでに戦闘モードに移行している。 「……っ!!」 不意打ちに声をかける馬鹿はいない。 美鈴は飛び出し、着地すると同時に強く足を大地に打ちつけた。 森が揺れる。 数多の木の葉がひらひらと落ち、リスなどの小動物は巣へと逃げ帰り、鳥の群れは空へと飛び立っていった。 美鈴はあたりを見回すと、ゆっくりに生き残りがいないことを確かめた。 今のは、足から放出した膨大な気を、大地に伝播させて広範囲の敵を屠る必殺の魔技だ。 人間が死ぬ程度の威力を持たせ、放った結果、先ほどまで存分にゆっくりしていたゆっくりたちは、皆そのままで死んでいた。 まるで死んでいるとは思えないほどに綺麗な顔をしていた。 「!?」 美鈴は気配を察知し、向き直る。そこは大きなしだの葉で巧妙に隠されていたが、洞穴があった。 巨大な気配はそこから出ていた。 よもや今ので死んでいないとは!そう思い飛び込む。 「んなにぃっ!?」 驚愕の声。その洞穴には巨大なゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいた。 「だれ?ここはれーむとまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!」 「まりさたちはおねーさんとゆっくりしてるひまなんかないの。じゃぁね!ばいばい!」 大きい。 高さは美鈴よりも高い。2メートルほどだろうか? その表面に触る。どこか滑らかで確かな存在感を持ったそれは、もはや饅頭の感触ではなかった。 「あんたたち、身篭ってるね?」 「ゆ?み=ご?もってないよ?」 「そんなゆごすのいきものなんかしらないよ」 「あ~~~、お腹ン中に子供がいるでしょ?」 なんだか意味の分からないことを言い返されたので、馬鹿でもわかるように言い直した。 とたんに朗らかになる二匹。子供が出来るのはどんな生き物でも嬉しいことなのだろう。とても幸せそうだ。 美鈴は慎重に気配を探る。これは? 「……やたら重なってる?ひょっとして」 思い浮かぶは先刻の光景。洞穴の前、おそらく、ゆっくりできる庭としていたであろうあそこに、思い思いにたむろしていた多数のゆっくり。 「外にいたやつらは、あんたらの子供?」 「ゆ!?こどもたちにあったの?どう、どう?」 「と~ってもかわいかったでしょ?ゆっくりめでていってね!」 「全員ブチ殺してやったわよ」 静寂。 「どぉしてそんなことしたのぉぉぉおおおぉぉおっぉっっ!!!」 「ゆるせない!ゆるせないよ!!おねー、おばさんはゆっくりしね!!」 怒気が膨れ上がった。洞穴内で渦巻くそれはまるで暴風のようだ。 「ハッ!望むところよ!こちとら食えない饅頭を叩き潰す日々にくさくさしてたんだ!お前らで鬱憤を晴らさせてもらう!!」 怒っているのはこちらも同じ。 この洞穴で、2メートルものゆっくりは飛び跳ねることは出来ない。天井がすぐそこにあるのだ。 では、この二匹の巨大ゆっくりたちはどうしたか?簡単だ。ただ美鈴に向かって倒れただけ。 しかもここまで巨大化するまでに、それなりの経験を蓄積したのか、空気を吸い込み出来るだけ転がりやすい形になっている。 相手が人間であればそれで終わっていただろう。そう、ただの人間であれば。 しかし紅美鈴は妖怪だった。 それをただ手を添えるだけで止めてしまった。 「ゆ?」 「ゆゆ?」 「てめぇら、おもてぇ出ろぉ~っ!!!」 巨大ゆっくりの表面を掴み、思い切り引っ張って無造作に投げ飛ばした。 「ゆぅううぅぅ~~~っ!?」 「ゆゆゆゆゆ~~~!?」 暗い洞穴を、地面と平行に飛んで生き、入り口を覆っていた葉を突き破り、陽光の下にさらされた。 「ゆげぇっ!?」 「ゆっぐ!!」 ずんっと音を立てて着地する巨大ゆっくり。 「ゆゆゆゆゆ」 「ゆ~~~」 痛みで身動きがとれないのか、ぶるんぶるんと揺れている巨大な塊。追って洞穴から飛び出す紅い髪の妖怪。 その澄んだ青い目は殺る気に満ち満ちていた。 だが巨大ゆっくりはすでに戦意を喪失していた。最大の攻撃だった押しつぶしが通用しなかったのだ、まだ飛び掛るというのが残っているが、身重でそれはできない。 「ゆっゆ!ゆっくりゆるしてね!ゆっくりごめんなさい!」 「おばさんっていったことはあやまるよ!ゆっくりさせてね!!」 「…………」 つかつかと近づく美鈴。そのまま平手打ち。中身が詰まっているからとてもいい音が森に響いた。 「ぶぎゅぅぇっ!」 「れいむぅうぅっ」 「お前も!」 「ゆげぇっ!」 「まりさぁぁああっ」 「うっさい!」 このまま殴り殺しても美鈴の気が晴れない。ぴたぴたと二匹の表面を撫でる美鈴。 「ゆっゆふふふふっ!ゆふっゆふっ!くっくっくすぐぐぐぐ」 「ゆっふっふふふふふ!や、やめてね!くすぐったいよっほほほほほ」 「ここか」 ずぶおぉっ! 「……っ!!」 思い切り息を吸う巨大ゆっくり霊夢。次の瞬間、 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「れ゛、れ゛い゛む゛ぅう゛ぅ!」 美鈴の腕は巨大ゆっくり霊夢の腹に刺し込まれていた。 いや、刺さっているわけではない。もともと開いている穴に突っ込んだだけだ。 口ではない、もっと下。そう、産道にだ。 そのままもぞもぞと動かす。 「う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!」 「へぇ~、あんた達の中ってこんなんなってるんだぁ~」 「や゛、や゛め゛でぇ~~~!れ゛い゛む゛がじん゛ぢゃう゛ぅう゛ぅぅぅ~~~!!」 「あ、これってあんたたちの赤ん坊?」 「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」 「な、おねーさん、なにするきなのぉっ!?」 「ごたいめ~~~ん♪」 じゅりゅりぃっ。 美鈴の細腕の先には粘液にぬめったゆっくり霊夢が掴まれていた。 しかしまだ早かったのだろう、未熟児どころか、まだ目、鼻、口が開かれておらず、皮と髪の区別もなくリボンなどは影も形もない。 「なに、こいつ。変なの」 「れ、れいむのあ゛がぢゃん、かえ゛ぢでぇ。お゛な゛がに゛も゛どじでよぅ、まだゆっぐりざぜないどだめなのぉお」 「ふ~ん」 「がえぢでぇっ!もどじでよぅっ!!」 「うるさいなぁ。ほれ」 美鈴は浮かび上がると、手に持った物体を巨大ゆっくり霊夢の口に入れてやった。 「!?!!?」 「ちゃんとおなかにもどさないとね」 そのまま腕を肩まで突っ込んで、喉の奥まで入れてやる。 「お、おねぇいさ~~~ん!なにじでるのぉおおおおお!!」 巨大ゆっくり魔理沙が蒼褪めながら叫んだ。巨大ゆっくり霊夢のほうは、目を紅白させてがくがくと震えている。 「ん?おなかに入れてあげたんだよ?アレが自分で言ったでしょ、お腹に入れてって」 「ち、ちがうよぅぅおぉぉおおおぉぉお!!ちがうおなかだよおぉぉぉぉぅぅぅっぅ!!!」 「へー、そうなんだ~」 「う゛っう゛あ゛っう゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」 巨大ゆっくり霊夢がいまさら叫ぶ。見れば涙を流しているではないか。身体が大きいから流す量も相当で、すでに地面には水溜りが出来上がっている。 「そういえばあんたたちの中に何匹詰まってんのさ?気配が重なり合っててよくわかんないんだよね、50匹くらいかなぁ?」 「っぴぃ!?」 「あっははははは!なぁにぃ?ぴぃって、鳥のまね?」 「や、やめてね!おねがいだからやめてね!」 「あんたは後回しだよ」 美鈴は巨大ゆっくり霊夢に向き直った。 「そうそう、逃げても無駄だよ。あんたたちの臭いは覚えた」 再び刺しこまれる美鈴の腕。 「ゆっぎゃぁああぁあああぁぁぁあああああっ!!!」 「そぉれ!いっぴきにひき~さーんびきよぉ~んひきごひきろぉ~っぴきなぁな~ひき」 「あ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っ」 お腹の中をかき回しては、引きずり出して、ごみのように投げ捨てる美鈴。 べちゃりべちゃりべちゃり、と音を立てて崩れていく未成熟のゆっくりたち。 二匹の目には紅い髪をした悪鬼にしか見えないに違いない。 おおよそ5分後、鬱蒼としていた植物たちは、饅頭の色をしたねろねろの物体に蹂躙されていた。 「ん~~~?もう打ち止め?赤玉なんか出てないゾぉ~?」 美鈴は、産道に刺しこんだ腕を肩までめり込ませて中を探っている。 巨大ゆっくり霊夢の胎内はこれ以上ないほどにかき回されていた。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「おーい、話聞いてる?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「蓄音機か?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「いや、もういいから」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりじでっ!!」 美鈴は肩口まで突っ込んだ腕をそのまま持ち上げるように動かし、巨大ゆっくり霊夢を縦に引き裂いた。 顔面を真一文字に切り裂かれ、餡子をブチ撒ける巨大ゆっくり霊夢。死んだのか、そのままぺちゃりと潰れていった。 「あらら、潰れちゃった。まぁ中身もあんまり残ってなかったしねぇ」 まるで血振るいのように、腕を振り粘液を落とす美鈴。すでに巨大ゆっくり魔理沙に向かっている。 「ゆふふゆふゆふゆふふふ」 気が触れてしまったのか、薄ら笑いを続ける巨大ゆっくり魔理沙。口からはよだれが垂れていたが、涙は枯れていた。 そんな巨大ゆっくり魔理沙にぽんっと軽く手を触れると、焦点の合っていない目が次第に鮮明になっていった。 狂気の世界に旅立った巨大ゆっくり魔理沙を正気の世界に引き戻したのだ。 気を扱う程度の能力ならではの荒業であろう。 「ゆ?ゆゆゆっ!?れ、れいむ?れいむ、だいじょうぶ!?」 「んにゃ、お亡くなりになりました」 「れ、れ゛い゛む゛ううううう!!!」 絶叫。 しかしそれに応えるものはもういない。 「いやぁ、50匹は詰まってるとは思ってたけど、凄いね!90匹近く入ってたよ」 「ゆ、ゆっくりさせてね!おねがいだよぅ!!おねがいじばずっ!!ぎれ゛い゛な゛お゛ね゛ーざん゛!!」 「わかった。ゆっくりしてあげるね♪」 ずぶり。 「ゆっぎゅぅうううぅうぁあぁぁぁぁっん!!!」 ゆっくりと産道に刺し込まれてくる長い異物。巨大ゆっくり魔理沙の視界がぱちぱちと発光したように眩しくなる。 神経がショートしているのだろう。 「お、いたいた。そぉれ!い~ち!にぃ~い!さぁ~ん!よぉ~ん!ごぉ~お!ろぉ~くぅ!なぁ~な!」 巨大ゆっくり魔理沙のお願いどおり、ゆっくりと取り出していく美鈴。おおよそ10秒に一匹のペースだ。 巨大ゆっくり霊夢と同じだけ入ってるとして、約15分も地獄の責め苦を受けることになる。 そして、美鈴が極力正気を保つように気を操作しているので狂ってしまうことも出来ない。 「あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!」 巨大ゆっくり魔理沙はなんで自分達がこんな目にあっているのかわからなかった。 約15分経過。 巨大ゆっくり魔理沙も随分とぺっちゃりとしていた。皮がたるみ、当初の張りと艶が夢だったかのようにべろべろだ。 美鈴の背後には、まだ多くの粘液に包まれた物体が点在していた。 やはり打ち止めなのか、巨大ゆっくり霊夢の時と同じく肩口まで産道に腕を突っ込み、胎内を引っ掻き回している。 「ぼも゛っ、も゛う゛や゛べでね゛っ!も゛う゛な゛に゛も゛な゛い゛よ゛ぅ!!ぜん゛ぶでぢゃっだの゛ぉぅっ!!」 「う~ん、こっちも100の大台にはいかなかったかぁ、残念」 「お゛ね゛がい゛でず!ゆ゛る゛ぢでぐだざい゛!ごべん゛な゛ざい゛!ゆ゛づじでぐざざい゛!」 「もう怒ってないよお」 「……ぼん゛どぅでづが?」 「もちろん」 「あはっ、あははっあははははは。ゆっくりしていってね!!!ゆっくりさせてね!」 「さ、次は全部お腹に戻してあげるね♪」 「えっ」 「お友達のゆっくりの分もぜ~んぶ、お腹に戻してあげる♪」 「い」 「い?」 「いやぁあぁぁぁああああああああっ!!!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「うぉい、またか」 「ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「ふぅ」 「ゆっ!」 美鈴のしなやかな人差し指が巨大ゆっくり魔理沙の眉間に深々とめり込んでいた。 たったそれだけで巨大ゆっくり魔理沙は声を発することが出来なくなってしまった。 「……!……!!~~~~~!!!~~~~~!?」 口をぱあくぱあくと動かすがそこからは何の音も発しはしない。 「さぁ、お片づけの時間ですよ?」 美鈴の蒼い目がぞっとするほど綺麗に深まった。 終わり。 美鈴大好きです。でも変にノってしまって、こんな話に。美鈴好きな人たち、ごめんなさい。 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/121.html
ここはゆっくり霊夢の家族が住んでいる巣 お母さん霊夢を中心に5匹ほどのゆっくり霊夢の子供達が中むつまじく生活している。 このお母さん霊夢は成体で、繁殖をしても黒ずんで朽ちることなく無く今も娘達を優しく守っている。 この平和なゆっくりの巣に発情させたゆっくりアリスを放り込んでみた。 だらしなくよだれを垂らしながら「ゆっゆっゆっくりしていってねええええええええ!!!」とわき目も振らずにお母さん霊夢に突進するゆっくりアリス。 がっちりとゆっくりアリスに押さえ込まれたお母さん霊夢、すぐさま交尾が始まった。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」苦しげなお母さん霊夢。 小刻みに震え、切なげな声を出すゆっくりアリス。 娘霊夢たちはわけもわからずガタガタ震えることしか出来ない。 そして「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」と一際大きなお母さん霊夢の声、交尾が終わったようだ。 頭から茎を伸ばしながらもこれでゆっくりできると一安心のお母さん霊夢、だがそこで終わりではなかった。 すぐさま連続して交尾に移ろうとするゆっくりアリス、さすがのお母さん霊夢も「ゆ、ゆっくりしようよ!!!」と危険を察したのか娘達をかばいながらあとずさる。 「れ、れいむううううううううううううう」飛びかかるゆっくりアリス、交尾を終えたばかりで体力を失っているお母さん霊夢が逃げられるわけも無く、再び行われる交尾。 2回目の交尾が終わり、茎ももう一本生え息も絶え絶えなお母さん霊夢、だが発情したゆっくりアリスはお母さん霊夢が朽ちないことが分かると更に交尾をするためにお母さん霊夢に飛びつく。 そうして繰り返される交尾。 発情期のゆっくりアリスの持久力は凄まじく、勢いは衰えることは無い。 お母さん霊夢は限界が近いのか「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と朽ち果てる前に出すような異様な声を時折出すようになってきた。 ただならぬ気配を感じたのか「ゆ゛っぐり゛や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」と娘霊夢達が泣きじゃくる。しかしゆっくりアリスは小刻みに身体を動かし交尾をやめる様子は全く無い。 何度交尾があったかわからなくなった頃、もう母体が限界に近いので、ゆっくりアリスを巣から引っ張り出す。 ようやく解放され、巣には平穏が戻った。 残されたのは「ゆ・・・ゆ・・・」とうつろな目で体中から大量の茎を伸ばすお母さん霊夢。 そして、ただただ泣く事しか出来ない娘達である。 やがて生まれてくる大量のゆっくり霊夢の赤ちゃん、その数は50匹を越えている。 ゆっくりアリスの襲来という酷いことがあったにせよ、家族がいっぱい増えて「みんなでゆっくりしようね!!!」「家族が増えてたのしいね!」と赤ちゃんや娘はおおはしゃぎしている。 お母さん霊夢も回復し「みんなゆっくりしていってね!!!」と満面の笑みである。 だが問題が発生する、巣が狭すぎるのだ。 生まれたばかりの赤ちゃん霊夢は小さいにせよ数が多い、元々は家族がゆっくりできたであろう広い巣も今では学校の教室くらいの人口密度になっている。 しかし巣の広さはまだ何とかなる方であった。 食糧の問題は更に深刻であった、赤ちゃん霊夢は食欲旺盛で「おなかすいたよ!」「ごはんがたべたいよ!」と大合唱。 お母さん霊夢とお姉さん霊夢が必死になって虫や木の実などを集めてきても「まだたりないよ!」「おなかすいたよ!」と焼け石に水状態である。 しかし、どんなにお母さん霊夢達が頑張っても集められる食料の量には限界があり、一部の赤ちゃんゆっくり達は食べ物が手に入らず「ゆ…ゆ…」とうめき声を上げることしかできずに衰弱していった。 更に赤ちゃんゆっくり達は成長スピードが早く、1週間も経つ頃には生まれたときの3倍以上の大きさになり、巣はラッシュ時の駅構内のような大混雑になっていた。 しかし、満足に餌が食べられなかった赤ちゃんゆっくりは身体も小さくもう巣の隅の方でぐったりしているだけになっていた。 そこで起こるのが体の大きな赤ちゃんゆっくりによる共食いである、生まれてからずっと空腹状態の赤ちゃんゆっくりにとって弱ったゆっくりは最早餌にしか見えていなかった。 お母さん霊夢達が巣の外へ餌を探しに出ているタイミングを見計らい、弱ったゆっくり達の元へ集まる赤ちゃんゆっくり達。 「ゆっくり食べられてね!」この言葉が引き金となり共食いが始まった。 「ゆっくりやめてね!ゆっくりやめてね!」必死に命乞いをするがそんなものが聞き入れられるはずも無く、捕食されていく弱ったゆっくり。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 「うっめ、メッチャうめ!」 「ゆ゛っ゛ぐ゛り゛じだがっ゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「うまうまー」 巣に帰ってきたお母さん霊夢が見たのは以前より少しだけ広くなった巣、床や壁に飛び散った大量の餡子、そして数が減った赤ちゃんゆっくり達であった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 お母さん霊夢の慟哭がこだまする。お姉さん霊夢達も何が起きたのかを理解したのか涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして震えている。 「どお゛じでぞん゛な゛ごどずる゛の゛?」 「み゛ん゛な゛でゆ゛っ゛ぐり゛じよ゛う゛っ゛でい゛っ゛だの゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 お母さん霊夢の叫びが赤ちゃん霊夢達に向けられる、そして赤ちゃん霊夢達は自分たちが取り返しがつかないことをしてしまったと気づいた。 「お゛があ゛ざん゛ごめ゛ん゛な゛ざい゛い゛い゛い゛い゛」 「み゛ん゛な゛ごめ゛ん゛な゛ざ゛い゛」 涙を流しながら謝罪の言葉を口にする赤ちゃん霊夢達、巣ではゆっくり霊夢達の鳴き声が一晩中続いた。 3日後 あの惨劇を乗り越え、ゆっくり霊夢の家族はより一層強い結びつきとなり、巣は家族がゆっくりできる環境になっていた。 赤ちゃんゆっくりの数が減り、残ったゆっくり達も満足な量ではないが皆で分け合い、生きていくのに必要な量の餌は確保できるようになっていた。 「今日もみんなゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢の声がゆっくりの巣に響く。 今回はお母さん霊夢のおかげで共食いがあったにせよ巣は平和になった。 第2段階として明日にでも再び発情したゆっくりアリスを巣に放り込み、限界ぎりぎりまで繁殖をさせる予定である。 更にゆっくりの数が増え、今回共食いをした赤ちゃんゆっくりはどういった行動を取るのか、ゆっくりの知能ではどうなるかは想像に難しくない。 しかしお母さん霊夢が居る限り巣の平穏は保たれるであろう。 最終的にはゆっくりアリスに最後まで繁殖をさせ、お母さん霊夢を朽ち果てさせる計画である。お母さん霊夢が居なくなった後、大量の赤ちゃんゆっくり達がどうなるか大変興味深い。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1318.html
この頃、人間の里で住居や畑が荒らされたり、食糧が奪われたりという被害が相次いでいるらしい。 犯人はやはりと言うべきか、あの憎きゆっくり饅頭達であるそうだ。 「ゆっくりしていってね!!」 もはや耳にタコが出来るほど聞き慣れたこの台詞を撒き散らしながら、 我が物顔で幻想郷を闊歩(正確に言えば闊跳だろうか)するゆっくり饅頭達。 繁殖力が強いのか、急激に数が増えた彼らは、私の住む魔法の森でもよく見る事が出来る。 そして何を隠そうこの私も、ゆっくり饅頭の襲撃を受けたのだ。 あれは、一週間程前の事だったろうか――……。 ■ ■ ■ 「おねーさんだれ!? ここはれいむのおうちだよ!! ひとのおうちにだまってはいらないでね!!!」 その理解不能な言葉を聞いたのは、私が買い物から帰ってきた時だった。 留守にしていた間に、どこからか侵入してきたのだろう。 ふてぶてしい下膨れの顔を恥ずかしげもなく紅潮させたゆっくり霊夢が、 キッチンに置いておいたとっておきのクッキーを貪り食いながら、家主たる私に向かいそう言い放ちやがったのだ。 「でていってね! れいむのおうちからでていってね!!」 唖然として何も言えないのを良いことに、声を張り上げ畳み掛けてくるゆっくり霊夢。 立ち尽くす私の向こうずねの辺りに顔を押し付け、「ゆうっ、ゆうっ、ゆうっ、」と追い出そうとした。 饅頭頭が圧されてなんとも不細工な表情に変形していたのが印象に残っている。 一所懸命に踏ん張るゆっくり霊夢を見ていたら、 ハッと気がついて追い出されるべきは私で無い事を言わなくてはならないと思った。 「あのね、ここは私の家なのよ。分かる?」 「ちがうよ!! ここはれいむがみつけたの!!!」 「いやね、だから――」 「うそつき!! おねーさんはどろぼうさんだね!!!」 「えぇ!? 何でよ、もう……」 「だってれいむがここにきたときだれもいなかったよ!!」 「それは――」 「うそつき!! うそつき!!! どろぼうさんはゆっくりでていってね!!!」 「ぐっ……」 なるべく優しい口調で、それも語りかけるように。 しかし何を言っても無駄、無駄、無駄だった。 所詮、餡子脳の持ち主には、何を言っても聞かないのだという事を悟る。 これ以上舐められるのも屈辱であるし、こうなったら体で分からせるしかない。 そう判断した私は、実力行使に出る事にした。 足元に転がるゆっくり霊夢をひょいと摘まんで、 「ゆ、ゆゆっ!!」 私の顔の高さまで持ち上げる。 「あなたが私の話を聞かないのが悪いのよ……」 「なに!? はなしてよ、なにするの!!?」 左手の上に載ったゆっくり霊夢は、突然の事に驚き動き回っている。 ゆっくり霊夢の接地面がもぞもぞと気持ち悪い。 「おろしてね! ゆっくりおろしてね!!」 ぽいんぽいんと落ち着きがなかったが、ややあって私の目を見ながら何度も何度も下ろせと言ってきた。 構わずに、向かって右の頬を軽くつまむ。 「ゆぁ!?」 弾力性に富み、やわらかでもちもちとした感触。まるで乳房を握っているような錯覚に陥る。 この行動でゆっくり霊夢は、完全に私を敵と認識したようだった。 「ゆっふひはなひへ!! はなさなひほこふよ!! (ゆっくりはなして!! はなさないとおこるよ!!)」 顔をますます赤くして、ぷんぷんと今にも湯気が出てきそうな状態だ。 目を鋭く細め、私に対して敵意を丸出しにするゆっくり霊夢は尚も声を大に訴えてくる。 「あら……残念ながら、その要求はのめないわ――」 しかし、私は取り合うつもりなど毛頭ない。 だってまだ、 「ゆ、ゆぅ゛!?」 ゆっくり霊夢をちぎってないんだもの――。 私はそのまま右手に力を入れて、思いっきり逆方向に引っ張った。 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛があゃあっぁや゛あ゛ゃあ!!!」 突然の衝撃に耐えられなかったゆっくりの頬。 皮も餡子もごそっと一塊、丁度私の手の大きさ程度もぎ取れた。 「れいむのお゛ぉ゛! れいむのがらだがぁあ゛ぁ゛あ゛ぁああっ!!」 泣き叫び、私の左手の中ででのたうち回るゆっくり霊夢。 壮絶な痛みと、体の一部分を失った悲しみでいっぱいいっぱいなのだろう。 「ほら、ほらこれを見なさい! 出ていかないともっとひどいことするわよ!」 手に握り締めた、先程までゆっくり霊夢を構成していたモノを見せつける。 「ひどい゛ぃぃ!! ひどいよぉお゛お゛ぇえ゛ろろぉぉぉ!!!」 鼻水に涙、それに人間で言う所の胃液とおぼしき粘性のある液体を口から吐き出し、 恐怖でぐじゅぐじゅになったゆっくり霊夢。 「分かった!? ここは私の家なの!! お前は私の留守中に紛れ込んだだけなのよ!!!」 「どおじでぇえ゛ぇぇっ!? れいむのおうぢなのに゛い゛ぃぃぃ!!」 こいつ、まだ言うか。 体の一部を失っているにも関わらず……それなのに厚顔無恥は改めようとしない――。 滝のように涙を流し、自分は丸っきりの被害者でいわれのない暴力を受けている。 そう言いたげな顔だった。 もう、我慢できない。 「ああっ、黙れ! ここは私の家だ!! 泥棒はお前なんだよこのクソまんじゅうっ!!!」 更にゆっくり霊夢をひっ掴み、 「ゆる、ゆゆゆゆるじでぇ!! いだいのはもうゆうぎゃあぁあ゛あ゛゛あ゛ああがあ゛ゃやあぎゃあ!!!」 今度は、顔を半分引きちぎった。 断面からはたっぷり詰まった餡子が丸見えになってしまっている。 しかし、ゆっくり霊夢は真っ二つになりながらも、 「いぢゃいいぢゃいよお゛お゛ぉ!! れいむ゛はんぶん゛になっちゃっだぁああ゛あ゛あ゛!!」 ある意味元気一杯に吼えている。 「なんだお前!! 体半分なくなっても生きてられるの!!? 気持ちわるいわねぇっ!!!」 「れいむじぬっ、れいむじぬぅぅぅっ!!! お゛ねーざんのばがぁゃやゃあ!!!」 死ぬ気配の一片も見せやしないで、何が「じぬぅぅぅ」だ。 ゆっくり饅頭は中の餡子が空っぽになってなければ、部位欠損ぐらいどうってことないそうじゃないか。 「嘘つけ!! それなら何で今しゃべってるのよ!!!」 「いだいぃ゛ぃ! こっ、ごろざれるぅ!! れいむはぁ、このあく゛まにぃ゛ぃ!!! あぐまとはゆっぐりでぎないよぉおお!!」 そう……。 中身の餡子が空っぽになってなければ、だ。 「うるさいっ!! 良いわっ、だったら殺してやるわっよ!!! 悪魔になってやるわよっ!!!」 ゆっくり霊夢は、少しだけ生意気過ぎたのだ。 ゆっくり霊夢は、少しだけ私を怒らせ過ぎたのだ。 「ゆっ、ゆぐうぅ!!」 叫び声をあげるゆっくりの断面に、目にも止まらぬ速さで右手を突っ込んで、 「ほらっ、こうやってお前の中から餡子を掘り出してやるっ!!!」 「やぁっやめでぇぇ!! うびゃあ゛ぅゃあ゛がゃぐゅりゅう゛あ゛ああ゛!!」 一掻き、 二掻き、 三掻き、 四掻き、 「あはっ、あはははははははは!!! ほら、ほらほらほらほらほらほらほらほらほらああぁっ!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!! だめぇ゛れいむしんじゃううぅ゛ぅ!!!゛」 「良いのよ良いのよ! 死んで良いのよお前なんかぁ!!」 ――ぼとっ、ぼとぼとぼとっ。 「れいむ゛のながみぃ、れいむ゛の……」 「何よ、もう死ぬの!? あっけないわねぇ、このバカまんじゅうっ!!!」 「ゆっ……ゆぐっ……」 ――ぽと、ぽとぼとっ……ぽたっ……。 「あははっ、もう皮だけじゃない!! ねぇ、死ぬの? 皮だけになって死ぬの!?」 「……ゅ……………」 ――ぽ……た…………。 「何痙攣してんのよ!? 早く死になさいよ!!」 「……………っ………」 ――………………。 ■ ■ ■ あの後すぐ、ゆっくり霊夢は動かなくなった。 いや、もはやゆっくり霊夢とは言えない、ただの皮袋に成り果てていたが。 そして、あいつはとうとう、私の家は自分のものだという主張を変えることはなかった。 ゆっくり霊夢は最後まで、私の家を自分のゆっくりプレイスだと信じていた。 何という低能な生命体――。 思い出すと、今でも虫唾が走る。 全く、根っからの害獣である。 明日、件の事を受けて、ゆっくり駆除作戦が里で展開されるらしい。 それに私も微力ながら協力する事に決めた。 まずは里の周りを徹底的に潰し、その後徐々にサーチする範囲を広げていく。 人形達もフル活用して、どんどんゆっくり饅頭達を追い詰めていこう。 巣に逃げ込んだら……火計も有効かもしれない。 目標はもちろん、ゆっくり饅頭の全滅である。 幼いゆっくりだろうが関係ない。 あいつらの顔を見ないで済むように出来るのなら、私は何だってするだろう――。 ※実際はゆっくり饅頭たちが大好きです。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/396.html
ゆっくりいじめ系110 髪飾りの続きです。 前の騒動の際に拾ったゆっくり霊夢。 こいつは仲間の死を見たせいか、仲間を殺してしまったせいか、ずっと固まったまま動かない。 口に物を入れれば食うし、生きてもいるようだが心が死んでしまっている。 俺自身も痛みを与えたり、髪飾りを死んだゆっくりの物交換してみたりと色々な方法を試みたが、何一つ反応を見せない。 「こうなったら代案ならぬ代餡として、中身でも入れ替えてみるか……? でもなぁ……」 それではつまらない。このゆっくり霊夢だからこそ期待できるものがあるのだ。 悩んでいても大して良い案は浮かばずに数日が過ぎた。 今日も今日とて歩きながら考えていると、道脇の草むらで何かが動いた。 「ゆぅ……くりぃ……」 ゆっくり魔理沙だった。どうやら傷ついて餡子が減っているらしく、かなり皮のたるみが目立つ。 別にどうでもいいか、と無視しようとした時、ふと妙案が思い浮かび、足をゆっくり魔理沙の前で止める。 「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」 「ゆっ……りぃ……」 うーむ、我ながらうそ臭い演技だ。しかし、ゆっくり魔理沙の方は本当に重体らしく、返事をする元気すらない。 おそらく何らかの理由餡子を吐き出してしまったため、生きていくぶんの餡子が足りていないのだろう。 「よいしょっ、と……!」 ゆっくり魔理沙を抱え上げて、家に走り帰る。早くしなければ死んでしまうかもしれないのだ。 「待ってろ……! すぐに助けてやるからな!」 家に帰り、ゆっくり霊夢用の餡子とオレンジジュースを与えると、ようやく危機は脱したように見えた。 さっきよりも少しふくらみ、顔ツヤも良くなっている気がする。 「ありがとぅ……おにいさん……」 「無理に喋るな。とりあえず、ここでゆっくりしていけよ」 「うん、ゆっくりしていくね……」 ゆっくりぱちゅりーぐらいのか細さである。これは休ませておいた方がいい、と判断し、その日は俺も就寝した。 寝る前にゆっくり魔理沙をあえて、ゆっくり霊夢の近くに置いておいた。 次の日、ゆっくり魔理沙の様子を確認すると、本調子ではなさそうだったが、昨日よりかは随分良くなっていた。 「どうだ? 身体はもう大丈夫か?」 「ゆっくりやすめたから、すこしだいじょうぶになったよ」 やはり、答える声にはゆっくり種特有の無駄な元気さはない。もう少し置いてやるべきかな。 「ゆっ、おにいさん、あのこどうしたの?」 「ん、ああ、ゆっくり霊夢か……」 ゆっくり魔理沙は置物のように鎮座したゆっくり霊夢を気にしていた。ゆっくり同士の連帯感故だろうか。 思惑通りに事が進んでいる。俺はいくらか考えたふりをして話してやった。 「あのゆっくり霊夢は家族がみんな死んでしまって、酷い目にあったんだ。それで動かなくなっちゃったんだ……」 簡潔すぎるほど簡潔だが、ゆっくりに小難しい話をしても分からないだろう、と判断して適当にまとめた。 「……ゆっ!」 傷が癒えきっていない身体で飛び跳ね、ゆっくり霊夢の隣に行くゆっくり魔理沙。そして、いつもの言葉。 「ゆっくりしていってね!」 「………………」 相変わらず、反応しないゆっくり霊夢。……よし、実験開始。 「なあ、ちょっといいか?」 「ゆ?」 「このゆっくり霊夢を見ててやってくれないか? 食べ物はちゃんと渡すし、見てるだけでもいいんだが」 「いいよ! ゆっくりみてる!」 心なしか元気が戻ってきているように見える。やけに聞き分けがいいところにが何かありそうだ、と感じさせる。 『ゆっくり同士の交流で心は戻るか』という目論見であるが、どちらに転んでもどうでもよかった。 その日から、俺は朝食と昼食二匹分の食べ物を渡し、仕事をして、夜にまた食べ物を渡しながら一日の経過を聞くという生活になった。 ゆっくり霊夢は自分から食べようとはしないため、誰かが与えてやらなければならなかったが、それはゆっくり魔理沙がやってくれた。 ゆっくり魔理沙もゆっくり霊夢のことが気になるらしく、傍から見ていても姉のように甲斐甲斐しく世話をしている。 それが理由なのか、近頃ではゆっくり霊夢が微妙に反応を示し始めている。 小さくだが「ゅ……ゅ……」という声が聞こえるのだ。それを聞いて、ゆっくり魔理沙は嬉しそうに語りかけたりしている。 ゆっくり魔理沙は出来ないことも弁えているらしく、「れいむをあらって、すっきりさせてあげて」などと頼まれた。 ゆっくり霊夢は動かないので、ゴミや埃が積もって汚れてしまうのだ。 ついでにゆっくり魔理沙も洗ってやろうとすると、「まりさはいいよ」と拒否したので無理やり洗ってやった。 くすぐったそうにしながらも、暴れずに大人しくしているゆっくり魔理沙。 ゆっくり種としてはその聞き分けの良さ、おとなしさは奇妙というか異常であった。 俺は今までの経緯や行動から、ゆっくり魔理沙の事情をだいたい予測していた。確証を得るために語りかける。 「なあ、魔理沙。お前、仲間からいじめられたりしてたんだろ。だから、あんなに傷ついてたんじゃないか?」 「…………」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢が乗り移ったかのように黙り込む。やがて、ゆっくりと口を開いた。 「まりさはね、ぼうし、なくしちゃったんだ……」 「そうか……」 それだけ聞けば何があったのかは予想できる。そして、現在のゆっくり魔理沙は帽子をつけている。 「他のゆっくりから取ったのか?」 ゆっくり魔理沙は一瞬迷ってから、言った。 「しらないゆっくりの、しんじゃったゆっくりのぼうし、ひろったんだ」 「知らなくて、しかも死んでるなら別にいいんじゃないか? 誰も使わないわけだし」 俺はてっきり、生きているゆっくりから帽子を奪ったから、いじめやリンチにあったんだと思っていたのだが。 むしろ、帽子やらリボンやらがないと、元いた群れであっても仲間扱いされなくなるのは前回の実験で判明したことだ。 「しんじゃったゆっくりのぼうしだとね、みんなからきらわれちゃうんだ……」 嫌われる……? どういうことだ。帽子をかぶってるのにいじめられただと? まさか、ゆっくりは分かるのか。そいつに合っていない髪飾りや、死んだゆっくりの髪飾りを使っているのが。 これは、非常に興味深い。俺はゆっくり魔理沙から当時の状況を詳しく聞くことにした。 ゆっくり魔理沙の言ったことをまとめてみると、 1、「帽子を失くす」といじめられた。群れから無視される立場となる。 2、「生きている他のゆっくりの帽子」を奪ったら、仲間として認められた。しかし、帽子を奪い返されると、以前の立場に逆戻り。 3、「死んでいるゆっくりの帽子」をかぶったら、群れの仲間どころか、行く先々のゆっくりに攻撃された。で、倒れて拾われる。 という経過らしい。 ……成る程。ゆっくり種の髪飾りにはここまで意味があるとは。驚愕の思いを隠しきれない。 そして、ゆっくり魔理沙がゆっくり霊夢を世話するのも、群れから追い出されて寂しかったからだろう。 しかし、もしもゆっくり霊夢が目を覚ましたら、どんな行動を取るのだろう。 それはそれで楽しみである。 「ゆっくりしていってね!」「ゆぅ!」 ある朝、二匹分の声で目が覚めた。まさか、と思い居間へ確認しに行くと、そこにはゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が仲良く並んでいた。 「おにいさん、ゆっくりおはよう!」「ゆっ!」 「……帽子、気がついてないのか?」 ゆっくり魔理沙の言うことが真実なら、ゆっくりには死んだゆっくりの帽子を判別する能力があるみたいなんだが。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりしてるよ!」「ゆゅ!」 と、そこで気づく、家にいたゆっくり霊夢は大きさであれば、それなりに成長してる個体のはず。 しかし、先ほどからまるでほとんど喋ってしない。精々、「ゆ」の一文字文ぐらいだ。 思い浮かんだのは幼児退行という言葉。しかし、そんなのゆっくりにも起きるのか? 疑問を持ちながらも、さらなる観察を続けることにした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっ!」 最初に気づいたのは、このゆっくり霊夢は「ゆっくりしていってね!」と一切言わないことだった。 ゆっくり子霊夢ですら「ゆっくりちていってね!」と返事するのに、何度も呼びかけても何も返さない。キョトン、としたままだった。 ゆっくり種としての常識でもぶっ壊れてしまったのだろうか。 個の識別は出来ているようである。ゆっくり魔理沙は当然としても、俺ですら家族の一人のように反応する。 しかも、言葉の識別も出来ているらしく、「お~い」と呼ぶと普通に寄って来て、「ご飯だ」と言うとやたらと速く寄って来る。 何故だか身体能力もあがっているらしく、己の背丈を越えるほどの跳躍力を見せることもあった。 それに引っ張られるように、ゆっくり魔理沙の能力も上がってきている。単純に傷が癒えた、というだけでは説明がつかない。 傷の治りが妙に早かったり、語彙が増えたり、知能が上がっているような気配すらある。 ゆっくりとしての禁忌を破ったからなのだろうか。よく分からない。 こうなってくると、最早ゆっくりとは違う種とすべきか! と一人盛り上がってみたが、即断するにはまだ早い。 近頃では二匹が仕事を手伝ってくれるようになった。仕事といっても農作業だが。 「おんがえしだよっ!」「ゆ~!」 と言っては泥だらけになるのも構わず、文句も言わずにせっせと働いている。いや、楽だね。 今日もまたゆっくりたちが俺の手伝いをしていると、草むらから音がした。ぴょん、と飛び出る塊。 「ゆっくりしていってね!」 野生のゆっくり魔理沙であった。それだけなら別にどうということはないのだが、今はまずい。 「ゆ……!? ゆっくりしねぇ!」 「ゆぐぅ!?」 野生ゆっくりが、俺のところのゆっくり魔理沙を見た途端、人格が変わったように体当たりをしてくる。 相手が大きかったこともあり、吹っ飛ばされるゆっくり魔理沙。野生ゆっくりは攻撃の手を緩めない。 「ゆっくり! しね! しねっ! しねぇぇっ!!」 「ゆぶっ! ぎゅぶ!」 鬼のような形相で攻撃し続ける野生ゆっくりと、口から餡子が出始めているゆっくり魔理沙。 放置するのも面白いのだが、まだやってもらわねばならないことがあるので助けようとする。 と、そこへ駆けつけるゆっくり霊夢。ゆっくりとは思えない速度で野生ゆっくりにぶつかる。 「ゆーーーー!!!」 「ぐべぇ!?」 二倍近く体格差があったように見えるのだが、それを物ともせず、今度は野生ゆっくりが弾き飛ばされる。 どれほどの力が込められていたのか、野生ゆっくりは木にぶつかると、餡子を撒き散らして潰れた。 普通のゆっくりとは比べ物にならない力の強さである。普通のゆっくりだと、集団で攻撃してようやく一匹を潰せる程度の力だ。 ゆっくり霊夢は野生ゆっくりのことなど眼中になく、すぐさまゆっくり魔理沙のところに駆けつけた。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 ゆっくり霊夢が悲痛な叫び声を上げる。何事か、と見てみれば、ゆっくり魔理沙の皮が破れて餡子が飛び出していた。 どうやら、吹っ飛ばされた時に木の枝にひっかけてしまったらしい。 「ちっ……まずいな。大丈夫か?」 「ゆぅぅ……」 だらり、と返事も出来ずにへたりこんでいるゆっくり魔理沙。そこまで、餡子の流出が大きいのかとも思ったが、何か違う。 身体がぶるぶると震るわせ、悪夢にうなされているように「ゆっ、ゆっ、ゆっ」と呻いている。 とりあえず、症状を観察するのは後回しにしてゆっくり魔理沙を家の中に運び込むことにした。 一応の手当ては終了した。傷口にテープを貼り、オレンジシュースを飲ませておく程度のものであったが、応急処置にはなる。 状態が良くなったわけではないが、傷よりも精神的に弱っているようだった。 「みつかった……みつかっちゃたよぅ……」 涙を流すわけでもなく、生気の抜け落ちた顔でぶつぶつと呟き続けている。 ゆっくり種の禁忌を犯しているゆっくり魔理沙は、制裁を恐れているのだろう。 「大丈夫だって。襲ってきたやつは潰しただろ? もう来ないんじゃないか?」 「そうかな……?」 怯え切った顔つきだ。俺としてもゆっくり種にそこまでの探知能力はないと思う。第一発見者がいなければ犯罪は露呈しない。 「もう、ゆっくりできないできないよぅ……」 なおも呟き続けるゆっくり魔理沙。どうしたものかな、と思った時、 「ゆぅ、ゆっ、ゆ、ゆっくり、しない、でね!」 なんとゆっくり霊夢が喋り始めた。ぴょんぴょん、と跳ねながら、頑張って話そうとしている。 「ゆっくり、しなくても、だいじょうぶ、だよ? おかー、さんは、れいむが、まもるよ!」 たどたどしく、けれど、はっきりと宣言した。 母親と認識していたことにも驚きだが、「ゆっくりしなくていい」とはゆっくり種としての存在意義に関わるのではないだろうか。 「さっきのは、ちがう、ひと。れーむたち、とは、なんかちがうの」 どうやらゆっくり霊夢は明確な境目を他のゆっくりに感じているらしい。 これは……面白い。その背中を押してみるべきだろう。 「そうだ、違うぞ。。あいつらはお前たちみたいなのが嫌いなんだよ」 「? どーして?」 「お前たちの髪飾り、リボンや帽子は死んだゆっくりのものでな。普通のゆっくりはそういうのを許さないらしい」 「だから、おかーさんを、いじめたの?」 「そうだ」 簡潔に伝えてみると、ゆっくり霊夢は身体をぶるぶると震わせ始めた。 怒りの感情かもしれないが、そこには何かしらの決意みたいなものが感じられた。 「じゃ、れーむは、ゆっくりじゃなくていい! そんなこというひと、みんなおいはらうよ!」 「へぇ……」 そっちの方向へ行くのか、と俺は感心していた。種であることよりも親を守る。 もしかすると、自分が既にゆっくり種から受け入れられないと分かっているのかもしれない。 「お前はもうゆっくりしないのか?」 「しないよっ!」 「じゃあ、お前は今度から『ゆっくりまんじゅう』っていう名前にしてみたらどうだ? ゆっくりとは違うってことで」 「ゆっ!? ゆっくりまんじゅう! れーむはゆっくりまんじゅうだよ!」 思いのほかあっさり承諾した。むしろ、喜んでいる。俺としては、人づてに聞いた小噺から思いついたものなんだが。 これで、本当にゆっくりとは違うものになったんだろうか、明日はどうしてみようか。 そんなことをワクワク考えながら、俺たちは眠りについた。 夜中。声と気配で目を覚ます。ゆっくりまんじゅうたちのいる部屋からしているようだ。 「なんだ……まさか!?」 急いで、居間に繋がっている扉を開けようとする。が、何かにつっかえているらしく、僅かの隙間しかできない。 その隙間から声が聞こえてきた。 「おかーさん! おかーさん! やめぐっ!?」 「ゆ、ゆゆ……」 「ゆっくりしないでね!」「ゆっくりできないよ!」「すっきりさせてね!」 まんじゅうゆっくりたちとは別の無数の声。俺は事態を察して、扉からではなく、窓から外に出て、玄関へと向かった。 「うわっ……」 表から見ると、玄関は開け放たれており、何匹ものゆっくりが部屋に入ろうとしていた。 しかし、既に入っているやつが多すぎて入れていない。それでも、まだ部屋の中に入ろうとしている。 「邪魔だ! どけっ!」 玄関周辺のゆっくりを潰して道を作る。ようやく、部屋の中を見るとそこには床一面にゆっくりが蔓延っていた。 「ゆっくり!」「ゆっくりできないやつはしね!」「じゃまなひとはどっかいってね!」 どうやら、俺には全く感心を抱いていないようだ。ゆっくりまんじゅうたちを目で探してみると、 「ゆぅ! ゆっ!? ゆぅぅぅぅぅ!!」 多くのゆっくりに圧し掛かられているまんじゅう霊夢がいた。 力で押し返そうとしているが多勢に無勢。潰されてはいないが、完全に身動きを封じられていた 「おかーさん! おかぁ、さん!」 その声で今度はまんじゅう魔理沙を探すと、テーブルの上で何匹かゆっくりがまとまっていた。 まさか、とテーブルに手を伸ばすが、玄関からでは遠く、突っ込むにはゆっくり達で動けない。 「ゆ、ゆ……ゆ。ごめんね、ごめんね……」 テーブルでは魔理沙が頭から食べられていた。何度も謝罪の言葉を呟きながら。誰に向かって謝っているのだろう。 「ゆっ、ゆっ! あのひとたち、へんなゆっきゅだよ! しんじゃえばいいのに!」 「みたよ、おひるにここのおうちでゆっくりしてたよ! ゆっくりじゃないのになまいきだよ!」 他のゆっくりよりも嬉々として、ゆっくりまんじゅうたちに攻撃を加えている二匹のゆっくり魔理沙。 あれは、もしかして昼間の野生ゆっくりの家族だろうか。現場を見られていて、仲間に場所を伝えたというわけか。 第一発見者がいなくても、第二発見者がいれば犯罪は露呈するか。くそ、あの後、周辺を警戒しとくんだったな。 「れーむもおかーさんも、だれにもめーわくかけてない! やめて、やぶぎゅ!?」」 動き回ってゆっくりたちを引き剥がそうとするが、さらに多くのゆっくりに圧し掛かられて、餡子が出そうになる。 「ゆっ、くりぃぃぃぃ!!」 その光景を見た魔理沙は最後の力を振り絞って、もう半分以上、無くなっている身体で飛んだ。我が子を守るため。 霊夢の近くに落ちる魔理沙。その衝撃と気迫に驚いて、群がっていたゆっくりたちはわらわらと散っていく。 「おかー、さん? おかーさん!? おがーざぁん!?」 「ごめんね……ごめんね……」 「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 最後まで謝りながら息絶えていく魔理沙。泣きすがる霊夢。 「ようやくしんだの? ばかなの?」「あとひとつ、つぶせばゆっくりできるね!」「すっきりしようね!」 口々に汚く罵るゆっくりたち。流石に見ていて腹が立った。俺がやってみたかったのに。 先ほどの、場所を教えたゆっくり魔理沙がまんじゅうへと寄ってくる。 「ゆっくりたべるよ! どいてね!」 餡子を食う気だろう。完全に余裕の笑みを浮かべている。 「おいしそう~♪ あ~ぐぎゃ!?」 ゆっくり魔理沙は食べようとして突如、吹き飛ばされた。壁にぶち当たって、中身が飛び散る 「ゆっくり!? ど、どうしたのぉ!?」「ゆっくりしんじゃったよ!」 「ゆっくり……」 ゆっくりたちが声した方を見る。ゆっくりたちの認識において、そこには潰され、食べられる予定の獲物しかいないはずだった。 「ゆ、ゆ!?」「ゆゆゆ!?」「ゆぅ!?」 「ゆっくり、するなぁぁぁぁっ!!!」 そこにいたのは狩人だった。否、狩人という言葉すら生ぬるい。それは戦士だった。 周囲のゆっくりを比較にならない力と素早さによる体当たりで叩き潰すまんじゅう。その凄まじい勢いにゆっくりたちは恐慌を来たす。 「い゛や゛ぁ゛ぁぁ!?」「おうぢがえる! おうぢにがえりだいよぉ!」「だじでぇぇっ!!!」 先を争って俺の方、すなわち玄関へとへ向かおうとするが、数が多いのが災いして思うように動けない。 その様子を見てから、俺はまんじゅうに声をかけた。 「おい、まんじゅう。一人で出来るか?」 「ひとりで……ひとりでできる! まかせて! みんな、ゆっくりできなくさせるよ!」 「だ、そうだ。お前ら、全員そこの『まんじゅう』にやられちまえよ」 指でまんじゅうを指し示してやってから、ゆっくりと玄関の扉を閉める。外にいたゆっくりもついでに放り込んでおく。 俺自身もイラついていたのだ。気分的には収穫しようとした果実を目の前で掻っ攫われた気分に似ている。 中の様子を窓から見てみる。 多数のゆっくりが外に出ようと扉に張り付いているが、結局開かず、後ろから来た他のゆっくりに潰されている。 「だぢでぇぇ!! ごごがらだじでぇ!」「 ゆ゛っぐり、じだいよおおおお!」「まんじゅういやぁぁ!!」 皆が逃げようとすればするほど、潰されていくゆっくりたち。しかし、後ろから今だ危機が迫っているのだ。 「ゆっ、くりぃ!」 まんじゅうは上空から勢いをつけて、一匹のゆっくりを叩き潰す。広がる餡子。見せつけるようにまんじゅうはそれを食べた。 「むしゃり! むしゃり! ぺっ!」 リボンを吐き出す。さらに震え上がるゆっくりたち。 髪飾りを盗った許せないゆっくりがいると知って群れで潰しに来たはずなのに。しかし、現実は過酷だった。 「どうじでぇ!? どうじでこうなるのぉ!?」「ゆっぐりざぜでね!?」「「まんじゅうはこないでぇぇぇぇ!」 「どうして? ゆっくりたちがれーむの、ゆっくりまんじゅうのおかーさんをころしたからだ!!」 今更、たわ言を抜かしていたゆっくり魔理沙を潰す。それは母に似ていても、決定的に母ではなかった。 「まんじゅう!?」「まんじゅうごわ゛い゛!」「ま゛んじゅう゛、やべでぇ!」 「ぼうしやリボンをなくしたゆっくりは、まんじゅうになってイジメられるんだ! おぼえとけ!」 「お゛ぼえ゛る゛! お゛ぼえ゛る゛がら゛だずげでぇぇ!」「ゆっぐいじだがっだよ゛う゛!」 「じにたくないよ゛おお゛お゛お゛お゛お゛!」「ぎゅっぐりぃ!!」「おがあざぁん!」 まんじゅうは飛び上がって、扉に群がっているゆっくりに思い切り体当たりをぶちかます。その勢いで扉が開け放たれた。 既に大半のゆっくりはやられていたが、それでも残ったゆっくりが我先にと逃げ出していく。当然、仲間に潰されたゆっくりもいた。 「まんじゅう゛ごわい! ま゛ん゛じゅうごわいよぉ!」「ま゛んじゅうなりだぐな゛いぃぃぃ!!」 「ずっぎりじだがっだだげなのにー!!」「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!???」 それぞれがまんじゅうに対して恐怖を口にしながら、どこかへ行った。 「いいのか、そこそこの数を逃がしたけど」 まんじゅうの狙いは分かっていたが、あえて聞いてみる。 「いいよ。あれで、まんじゅうがこわいっておもってくれれば、いいんだよ」 やはり計算してやっていたか、と少し感心していると、まんじゅうが俺の方を向いて小さくお辞儀をした。 「なんだ、どうした?」 「おとーさん、いままでそだててくれて、ありがとう。ここにいると、ゆっくりがいっぱいきて、めーわくがかかるからどこかにいくね」 「何……?」 俺ってお父さん扱いだったのか、と思いながら、なんとなくある推論が思い浮かんだ。 このゆっくり霊夢、もといゆっくりまんじゅう霊夢は、本当にゆっくり種とは違うものに変質しまったのではないだろうか。 きっかけは先日の惨劇であり、髪飾りを変えたことかもしれない。 しかし、俺や元ゆっくり魔理沙と暮らすことでゆっくりとしての常識を失っていったのかもしれない。 あの身体能力はそんな中でも生き残るために発揮されている、所謂「火事場の馬鹿力」だろうか。 そうだとすると、その寿命は長くは保てないだろう。 これはこれで興味深い事例であった。 俺はまんじゅうに、餞別として潰れたばかりの餡子を包んでくれてやった。 面白いものを見せてくれた礼でもある。 「元気で、とは言えないが、まあなるべく死ぬなよ?」 「うん。おとーさん、おかーさんのぶんまでしなないよ。ばいばい」 どこか穏やかな顔つきでまんじゅうは、消えていった。 その後、やけに強いゆっくりとして、まんじゅうの存在はたまに人々の噂にされることもあったが、死んだかどうかは分からない。 普通に考えて、いくらまんじゅうでも敵の数が多いと生き残れないのではないか、と思う。 それでも、時折だが山からある叫び声が聞こえるそうだ。そう、 「ま゛ん゛じゅ゛う゛ごわ゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ!!??」 と。 ここらで一つ、後書きっぽいものをどうぞ。 ゆっくりに「まんじゅうこわい」と言わせたかった結果がこの長文だよ! 「髪飾りの失くしたゆっくり」だと長いので適当に名前をつけてみたら、「まんじゅう」になった。反省している。 「ゆっくりまんじゅう」を正式名称にしたのは、流石に「ゆっくり」って言葉がついていないとマズイだろ、という判断から。 地の文で書く時、または他のゆっくりが呼ぶ時には「まんじゅう」になります。「饅頭」に非ず。 「まんじゅう」の脳内設定も一応書いておきます。使っても使わなくても、どっちでも構いません。 名称だけ使うとかも大丈夫です。設定改変もご自由に。 ……そもそも、こんな設定を使ってくれる人がいないだろうけど。 「ゆっくりまんじゅう」 髪飾りを失くしたゆっくりのこと。 髪飾りが無くなったゆっくりは種として迫害される運命にある。特に仲間の死体から髪飾りを盗んだ者は絶対に許されない。 「ゆっくりまんじゅう」は、それでも生き残るために変化した突然変異型ゆっくり。 髪飾りを失くしただけでは変異しないが、他のゆっくりったいによって迫害されることで変異することがある。 身体能力や知能は通常のゆっくりを遥かに凌駕するが、それは体内餡子の糖分を使っているため。 故に、通常のゆっくりよりも寿命は短く、中の餡子も甘みがなくて不味い。 「ゆっくりするな!」などの「ゆっくり」という言葉に対して否定的な言葉をぶつける。 自分から他のゆっくりを襲うことはしないが、襲われたら相手がれみりゃであろうと、群れであろうと死ぬまで戦う。 子ゆっくりであろうと容赦せず、相手の餡子を食らうことも平気でする。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/834.html
前 「おかあさん、だいすき!」 ――ああ、これは娘の声だ。 目の前をぴょんぴょん飛び跳ねている赤ちゃんゆっくり霊夢は、目の中に入れても痛くないほど可愛い存在だ。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 それが、七人。 皆、元気があって、頭も良くて、何よりすごくゆっくりしている。 まりさは、それだけが嬉しかった。 まりさは五人姉妹の末っ子として誕生した。 父はゆっくり魔理沙、母はゆっくり霊夢。 自分以外の姉妹の種族はゆっくり霊夢種。 自分だけがゆっくり魔理沙種。 だけど、家族皆仲の良い、本当にゆっくりした家族だった。 だが、その生活は一変する。 おうちが胴体付きのゆっくりれみりゃに襲われたのだ。 すると父親であるゆっくり魔理沙は、家族を犠牲にして逃げ出した。 最低のゴミクズだった。 幸いにも、ゆっくりれみりゃはまりさたちを無視し、家族の中で一番太っていて美味しそうなゆっくり魔理沙を追いかけていった。 家族は全滅の危機を逃れた。 ゆっくり魔理沙がどうなったかは、誰も知らない。 ただ、近くで帽子だけが見つかったから、きっと死んだのだろう。 もし生きてまりさたちの前に現れたとしても、帽子がないから父親だと認識出来なかっただろうが。 そんなことがあって以来、まりさは姉妹たちにいじめられるようになった。 まりさが家族を捨てて逃げ出したゆっくり魔理沙と同じ種族だから、理由はそれだけだった。 母はそれに気付いていたようだったが、止めることはしなかった。 それどころか、あからさまに食事の量を減らされるようになった。 少ないと文句を言うと、末っ子で一番身体が小さいんだから我慢しろと逆に怒られた。 なんでまりさがこんな目に合わなくちゃいけないの? まりさは酷く悲しかった。 そして、もし自分が親になることがあれば、絶対に、何があろうとも、家族だけは守ろう。 そう誓った。 目の前を、七人のゆっくりが飛び跳ねている。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 そのうちの一匹が、突然眼前から姿を消した。 「……ゆっ!?」 慌てて周囲を見渡す。すると、遠く離れたところに、黒い霧のようなものの中に引っ張り込まれている赤ちゃんの姿があった。 「おかあさん、たすけてー!」 赤ちゃんが泣いている。 急いで助けないと。 だって、まりさはお母さんなんだから。 あのゴミクズの父親とは違う、ちゃんと子供を守るお母さんなんだから…… でも、あと一歩というところで、黒い霧は子供をすっぽりと飲み込んでしまい、そのまま掻き消えてしまった。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 まりさは悲しくて咽び泣いた。 ふと、気配を感じて後ろを振り向く。 するとそこには、残り六人になった姉妹たちが、感情のない目でまりさを見上げていた。 「み、みんな……」 「どうしてころしたの?」 一人のゆっくりが、ぽつりと呟いた。 「ま、まりさはころしてないよ!?」 「うそだよ。ほら、うしろをみて」 背後を振り向く。 するとそこには、先程消えてなくなってしまった赤ちゃんの無残な死体が転がっていた。 「あ、あがぢゃぁぁぁぁぁぁん!!?」 「れいむたちのいもうとをころすなんてひどいおやだね」 「ゆっくりできないよ」 「ゆっくりできないおかあさんはゆっくりしんでね」 「や゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛ないでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!!」 可愛い子供に罵られ、まりさは慟哭の声を上げた。 違う。 まりさはやっていない。 やったのは、あの黒い霧だ。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは…… 「この後に及んで、まだ言い訳か」 突然、どこからかそんな声が聞こえた。 そして、まりさの意識は薄れていった。 「ねえ、お兄さん……」 「ん? どうした?」 最後の赤ちゃんゆっくり霊夢が死んで、数時間が経った。 未だに夏の暑さが続く気怠い昼を迎え、少しでもスタミナが付くようにと知人の夜雀が経営している屋台で購入したまま保存してあった八目鰻を食べていると、ペットのゆっくり霊夢がおずおずといった様子で話しかけてきた。 「まりさ、そろそろ許してあげてほしいよ……」 「なんだ、またその話か」 おかずの野菜を食みつつ、俺はぴしゃりとゆっくり霊夢の進言を跳ね除けた。 「駄目だ駄目だ。許してやるわけにはいかん」 「でも……」 「あのな、ゆっくり霊夢」 箸の先をぴしっとゆっくり霊夢に突き付ける。 「悪いことしちゃいけないってのは、知ってるだろ?」 「知ってるけど……」 「俺はな、人間や妖怪、ゆっくりに関わらず、悪いことしたやつは大嫌いなんだ。悪いことをするやつには当然、裁きが与えられる」 「ゆ……」 「あのゆっくり魔理沙たちは悪いことをした。だから、あんな仕打ちにあった。当然の結果だ」 ゆっくり霊夢は納得しかねる、といった顔をする。 言いたいことは分かるがやりすぎだ、そう言いたいのだろう。 だけど俺は気付かなかったフリをして、食事を進めることにした。 確かにあれは、どう考えてもやりすぎだった。 何故なら、八割以上が俺の趣味だったから。 『涙目で必死なゆっくりが見たい』 そのために、俺はあらゆる手段を尽くした。 そして、目論見は成功したと言って良い。 あの時間は夢のような時間だった。願わくば、もっかいやってみたい、とも。 ただ、そのためにはまた悪いゆっくりを捕まえなければならない。 流石に善良なゆっくりをいじめて悦に浸れるほど、罪悪感の欠片も持っていない人間ではないんだ、俺は。 いじめというのはやってはいけない行為。 それをやるからには、正当な理由が必要とされる。 だから俺は、悪いゆっくりしかいじめない。 元々、ゆっくりは可愛いと思ってる人間だ。 あいつらがきちんと礼儀良くしていたのなら、俺は大層歓迎していたことだろう。 だから、悪いのはあっち。 俺は悪くない、うん。 偽善者なのは分かってるよ。 きっと地獄行きだろうね。 でもゆっくりいじりは止めない俺。 「ゆっくり霊夢も悪いことするなよ。もし悪いことしたら、『ゆっくり出来ないようにする』からな」 「ゆっ!?」 ゆっくり出来ないようにする。 それはゆっくり霊夢のトラウマを抉る禁句だ。 かつて悪いことをしたせいで、地獄のような苦しみを体験した一週間。 それを思い出し、ゆっくり霊夢はぶるぶる震えだした。 「れ、れいむは悪いことなんてしないよ! きちんとゆっくりしてるよ!?」 「分かってるよ。可愛いなぁ、ゆっくり霊夢は」 優しくゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は複雑そうに微笑んだ。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 だが、目を覚ましたという表現が正しいのかどうか、ゆっくり魔理沙には判断がつかない。 そこは暗かった。 星明りも届かぬ夜の世界、それよりも更に深い暗闇が身を包んでいる。 そして、今までゆっくり魔理沙が味わっていた圧迫感が続いていた。 自分はまた閉じ込められたようだ。 ここはどこだろう。 確か、自分はお兄さんに、自分を殺して欲しいと頼んで…… そこからの記憶が定かではない。 あの後、自分はどうしたんだっけ? 「……」 思い出そうとして、面倒になったので止めた。 もう、どうでもいい。 大好きだった赤ちゃんを守れなかった。 原因は、自分自身。 自分が赤ちゃんを殺したのも同然。 これから先、例え生きて森に帰れたとしても、心の底からゆっくりすることなんて出来ないだろう。 なら、もういい。 ゆっくりしないまま、死が訪れるのを待つだけだ…… ―――― 「?」 右隣から、何者かの息遣いが聞こえる。 生きることに億劫になったゆっくり魔理沙だったが、疑問に無関心になったわけではない。 純粋な興味につられ、右を振り向こうとして、 「……ゆ……」 振り向けない。 思ったより自分を包む箱(?)は狭く、身動きが取れなかった。 ようやく気付いたが、息苦しさも今までより遥かにキツい。 仕方なく、ゆっくり魔理沙は唯一自由に動かせる視線だけを右に移した。 するとそこには、 「……ぅー……ぅー……」 「!!?」 眠りこけるゆっくりれみりゃの姿があった。 先刻、自分の子供を無惨に殺害したゆっくりれみりゃと同種と認識。 だが復讐の炎が燃え上がることはなく、逆に本能的な恐怖が瞬時に湧き上がり、ゆっくり魔理沙は先程まで死が訪れるのを待っていた自分を忘れて悲鳴を上げた。 か細い声が風に乗って耳まで届いたので、俺は腰を上げた。 ようやくゆっくり魔理沙がお目覚めらしい。 妙に元気の無くなってしまったゆっくり霊夢を残し、玄関から庭に出る。 縁側なんて洒落たものは存在しない。 そもそもこの家自体借金して建ててもらったもので、未だ返済は終わっていない。 返済するためには働く必要がある。 働けば時間がなくなり、ゆっくりをいぢる機会が減ってしまう。 これでは俺の心が満たされない。 この幻想郷の何処かには日々の全てをゆっくりいじめに費やしている人間がいるらしいが、どうやって彼らは日々の時間と生活費を同時に捻出しているのだろうか。 俺も噂に聞いた幸せを呼ぶチェンジリングのゆっくりでも探してみようかねぇ…… などと取り留めの無いことを考えているうちに庭に到着。 そこには、地面に不自然に刺さった竹が一本、異様な存在感を放っていた。 俺はその竹の真上に陣取り、竹穴に耳を近づけた。 すると、 「いだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざをだべな゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 待ちわびたゆっくり魔理沙の悲鳴が。 俺が想像していた通り、ゆっくりれみりゃに身体を齧られたようだな。 俺はにやにや笑いを隠すことなく、竹の中に声を響かせる。 「おーい、ゆっくり魔理沙ー」 「ゆ゛っ!?」 ギクリと身を強張らせたような声。 だがすぐに痛みが戻って来たのか、穴から涙声が返ってきた。 「おね゛がい゛じまずっ、ま゛りざをだじでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ!!!」 「死にたいんじゃなかったのか?」 「い゛だいのや゛だぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!! ごろ゛ずん゛な゛ら゛はやぐごろ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなこと言わずに、ゆっくりしていけよ」 「ごれじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 顔が見れないのは少々残念だが、簡単に想像は付くのでまずは満足。 装置は完全に機能しているようだ。 俺は二つの透明な箱を用意し、片方にゆっくり魔理沙、片方にゆっくりれみりゃを入れた。 二つの箱は、少し位置がずれるように連結。ゆっくりれみりゃの口が丁度ゆっくり魔理沙の頬の部分に当たっている。 そして、その部分の壁に穴を開け、排除。 ゆっくりれみりゃの入っている箱は大きくてゆとりがあるが、ゆっくり魔理沙の入っている箱はかなり狭いので、どうしても隙間である穴から頬が押し出てしまう。 つまり、頬がゆっくりれみりゃの口の部分に侵入する。 だから、ゆっくりれみりゃはゆっくり魔理沙の頬『だけ』を齧ることが出来、完全に食べることは出来ない。 そしてゆっくり魔理沙を入れた箱の天井に更に穴を開け、そこに空気穴兼言語伝達用の竹(デカい)をセット。 ちなみにゆっくり魔理沙はこの竹穴が丁度口の部分になるよう位置を調節してある。人間でいうなら仰向けの状態だ。 口の部分は不用意に閉じられないよう、鉤で広げたまま固定。 これで全ての準備は完了。 俺はこの装置を重力で餡子が漏れ出ない程度に斜めにして地中に埋め、二匹が起きるのを待っていたのだった。 「は、はやぐごろじでよぉぉぉぉ……はやぐ、てんごくのあがぢゃんだぢのどごろに……」 ゆっくり魔理沙が少し落ち着いた様子で懇願してくる。 どうやら、食べられる部分の頬を全て齧りとられてしまったようだった。 今頃、ご飯が全然足りないゆっくりれみりゃが不満気にうーうー唸っているのだろう。 「まぁまぁ、その前に食事と行こうじゃないか」 俺は懐に用意してあったオレンジジュースを取り出し、竹の中に流し込んだ。 ただのオレンジジュースではない。 永淋さん特性のゆっくり回復促進剤を混ぜられたジュースだ。 「ゆぐぐぐっ!!?」 突然振ってきた液体に驚いた様子のゆっくり魔理沙の声。 だが口は開かれたまま固定してあるので、零れることなく口の中へと収まっていく。 「ご、ごーくごーく…………ゆ!? 痛いのがおさまってきた……よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 流石永遠亭特性の妖しい薬、効果は抜群のようだ。 オレンジジュースを飲んだゆっくり魔理沙の傷は瞬時に癒える。 癒えた身体は箱の質量を超え、ゆっくりれみりゃ側の箱にはみ出る。 それを嬉々としてゆっくりれみりゃが食べる。 ゆっくり魔理沙はまた激痛を感じる。 これが俺の考えた『強制無限激痛発生装置』だ。 後は適当に飢えないよう餌をやりつつオレンジジュースを飲ませればいい。 雨が降っても大丈夫なように、傘を作る必要もあるな。 俺が飽きるまで、この拷問は永遠に続く。 暗い闇の中、何も変化のない世界で、ただゆっくりれみりゃに食べ続けられるだけの毎日。 それは一体、どんな苦しみなのだろうか。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐりじだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛っ!!!」 これ以上ないくらいの、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 俺は胸の中から溢れて垂れ流さんばかりの快感に包まれ、ひとしきり笑い続けるのだった。 ゆっくり霊夢は全てを見ていた。 ゆっくり魔理沙の家族が死んでいく様を、ずっと見てきた。 いつも優しく、自分をゆっくりさせてくれる主人。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちを嬉々として殺害していった主人。 どちらが本当の主人なのだろうか。 分からない。 ほんのちょっと遊んだだけの仲だったが、ゆっくり魔理沙は友達だった。 加工所から引き取られ、主人の家でずっと暮らしてきたゆっくり霊夢には、友達と呼べる存在はいなかった。 だから初めて友達が出来て、とても嬉しかった。 でも、その友達は…… 主人はゆっくり魔理沙が悪い、だから罰を与えている、と言った。 でも、あそこまでやられるほど、悪いことをしたのだろうか。 それとも、自分が無知なだけで、あれくらい普通なのだろうか。 自分も悪いことをすると、あんなことをされるのだろうか…… 以前の『お仕置き』を思い出して、ゆっくり霊夢はギュっと目を瞑る。 ゆっくり魔理沙。 きっと、数日もすれば、顔も思い出せなくなってしまうのだろう。 何故なら、自分たちゆっくりは、そういう風に出来ているのだから。 余程の強い刺激がない限り、ありとあらゆる物事を忘却してしまう。 主人に感じた『恐怖』も忘れ去り、また主人との楽しい日々に戻るのだろうか。 ゆっくり霊夢は生まれて初めて、自分がゆっくりであることを呪ったのだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1351.html
がさ。 がさがさがさ。 「ん……?」 何やら耳元で音がする。 不快感を呼び起こす騒音に、眠気が少しずつ引いていく感覚。 瞼越しに伝わる光量からすると、時刻は丁度目覚めるのにいい時間帯だろうか。 がさがさがさがさがさがさがさ。 しかしなんだこの音は。 まるで何かが這いずり回っているような…… 「…………うぉっ!?」 目を開けた瞬間映った光景に、俺は驚いて跳ね起きた。 俺の周囲、円状に集まっている、虫の大群。 カブトムシやらコオロギやらゴキブリやら、その種類は半端なく多い。 生理的嫌悪を催す光景に、鳥肌がぷつぷつ浮かび上がる。 こんなことを仕出かす犯人を、俺は一人しか知らない。 「リ、リグルちゃんか……!」 朝の目覚ましモーニングサービスだかなんだかで、こういう事業を始めたことは知っていたが。 ちゃんと丁重にお断りしておいたのになぁ。 後で文句言わないと…… 「こ、こっちに来ないでね! ゆっくり離れてね!」 「……ん?」 何やら慌てた声が聞こえ、俺は声がするほうを向いた。 「ま、まりさは美味しくないよ! ゆっくりしないでどっか行ってね!!」 昨日、透明の箱に閉じ込めたゆっくり魔理沙。 その周囲に、虫たちが群がっていた。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れいむたちはごはんじゃないよぉー!!?」 「ゆっくりできないよぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢の周囲にも、虫たちが興味津々といった様子で集まっている。 赤ちゃんゆっくりたちは可哀相にすっかり怯えてしまい、中央に固まってゆーゆー泣いていた。 ちょっと萌える。 「お、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 そして我が愛しのマイペット、ゆっくり霊夢は眠りから眠りから覚醒した俺に気付き、必死に助けを求めていた。 むっ、これはいかん。 俺は虫を踏まないよう慎重に足元を確認しながら、ゆっくり霊夢を閉じ込めた透明箱を抱え上げ、テーブルの上に避難させた。 「お、お兄さん、魔理沙たちも助けてね!!!」 「おに゛いざん、ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 他のゆっくりたちからも救助の声が上がるが無視。 だってこいつらの泣き顔見るのが超快感なんだもん。 涙を流しながら必死な表情で右往左往しているゆっくりは、鼻血が出そうなほど可愛いと思う。 こんな光景が見られたのなら、虫たちに少し感謝してもいいくらいだ。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢の箱を開けると、一匹だけ取り出した。 「ゆっ、たかいたかーい♪」 「あ、いいな!」 「れいむたちもたすけてね!」 虫たちの包囲網から救出してもらえたと思ったのだろう、俺に掴まれた赤ちゃんゆっくり霊夢が歓声を上げ、他のゆっくりたちが文句を言う。 俺はにこりと微笑むと、足元でうぞうぞしている虫たちに優しい声で言った。 「お前たち、餌をやるぞ」 「……ゆっ?」 何を言ってるのか分からない、といった感じの赤ちゃんゆっくり霊夢。 俺はそいつが理解するよりも早く、手の中のゆっくりを床にぽとりと落とした。 「ゆっ、ゆ゛ーーーっ!!?」 途端、涙声で逃げ出そうとする赤ちゃんゆっくり霊夢。 虫たちはそれなりに頭が良いのか、いきなり襲い掛かろうとはせずに、逃げ場を少しずつ埋めるように移動していく。 「や、やめてね! 赤ちゃんを助けてね!!!」 ゆっくり魔理沙の慌てた声。 俺はそんなゆっくり魔理沙に指をびしりと突きつけた。 「問題!」 「ゆっ!?」 「ゆっくりアリスは一度の交尾で、ゆっくり魔理沙との子供を六匹作ることが出来ます。七度ゆっくり魔理沙に襲い掛かったら、何匹子供が生まれるでしょうか?」 「ゆゆっ!? まりさは七回もこども生めないよ!?」 「はい、スタート。答えられたら子供は助けてやる」 有無を言わさず開始宣言。 ゆっくり魔理沙は悩みだすが、ゆっくりアリスに襲われる自分を想像してしまうのだろう、時々小刻みにぶるぶる震えていた。 俺は残り五匹となった赤ちゃんゆっくり霊夢たちに近付き、力付けるように言う。 「お前たちのお母さんがあのゆっくり霊夢を助けてくれるみたいだぞ!」 「ゆっ、本当!?」 「で、でも……」 一瞬明るい表情を見せる赤ちゃんゆっくりたちだが、すぐに暗い顔で俯いてしまう。 昨日、妹の一人が見捨てられた(実際は無理難題だったわけだが)ことを思い出したのだろう。 「まぁ、信じてな」 俺はそう言って、虫たちの群れに放り込んだ赤ちゃんゆっくり霊夢を観察し始めた。 涙目でぴょんぴょん飛び跳ねながら、全力で逃げようとしているその姿は果てしなく愛らしい。 しかし逃げようとした矢先に虫たちに回り込まれ、別の方向に逃げようとして、やはり回り込まれる。 ……む、面白い趣向を思いついた。 俺は机の引き出しから下敷きを取り出すと、姉妹である赤ちゃんゆっくり霊夢たちの閉じ込められている箱まで下敷きを使って虫を払い除け、道を作ってあげた。 「れいむ、こっちだよ!」 「ゆっくりしないでこっちにきてね!」 「ゆっ、れいむがんばるね!」 姉妹たちの声に勇気付けられ、赤ちゃんゆっくり霊夢は必死の力で床を飛びはね、箱に近付いていく。 しかし後ろから、どんどんと迫る虫たち。 まだ外の世界にいたころ、金曜ロードショーで見たアニメに出てくる王蟲の大群を思い出す光景だ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢は見事に箱の前に辿り着いた。 が、しかしそこはやはりゆっくりブレインだった。 「ゆっ!? 中に入れないよ!!?」 そう、それが箱である以上、壁の内側に入れないのは当然なわけで。 ようやく姉妹の所に戻れてほっとしたのも束の間、赤ちゃんゆっくり霊夢は涙目で壁に体当たりを始める。 「いれて! そのなかにいれてよ!」 「ゆゆっ、はいれないの!?」 「どうすればいいの!!?」 身体に似合わない滂沱の涙を流しながら、身体を寄せ合うゆっくりの姉妹。 だけどその間は境界を分かつ絶対的な壁が存在し、まるで天国と地獄の様相だ。 そうこうしているうちに、とうとう痺れを切らした一匹の虫が、赤ちゃんゆっくり霊夢にかぶりついた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅっ!!?」 悲鳴。 齧られたのは表面を少しだけ。だが黒い餡子がちょっとだけ漏れ出る。 それまで外の姉妹を何とかしようと壁に張り付いていた赤ちゃんゆっくりたちは、その光景にドン引きしたかのようにゆっくりらしくない素早さで後退した。 「ゆ゛っ!? い゛がな゛い゛でぇぇぇ!!!」 心の支えであっただろう姉妹の身体が遠く離れてしまったことに、赤ちゃんゆっくり霊夢は絶叫する。 そんなゆっくりに追い討ちをかけるように、他の虫たちも赤ちゃんゆっくり霊夢に群がり、ほんの少しずつ咀嚼する。 仲間意識があるのだろう、統率された虫たちの行動は訓練された兵隊のように澱みなく、抜け駆けして丸呑みしようとする虫一匹現れない。 仲間たちにきちんと行き渡るよう、一度噛み付いたらすぐに離れ、別の虫に場所を譲る。 だが赤ちゃんゆっくり霊夢からしてみれば、これ以上ないくらいの嬲り殺し、永遠に続くかのような拷問だった。 「れ゛いむ゛のあ゛んこだべな゛い゛でぇ゛ぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉっ!!!」 聞いてるこっちまで痛みが伝わるような慟哭。 箱の中で震える赤ちゃんゆっくりたちは、涙に塗れた瞳を母親へと向ける。 「おかあさん、はやくしてね!」 「いもうとをたすけてね!!!」 だがゆっくり魔理沙は、青ざめた顔で動かない身体の代わりに眼を忙しなく震わせるだけだった。 「さ、さんかいめでじゅうはちひき、よんかいめで……ゆーっ!! よんかいもできないよぉぉぉ!!!」 発情したゆっくりアリスの幻影でも浮かんでいるのか、イヤイヤするようにその身体を揺り動かす。 虫たちの餌になっている赤ちゃんゆっくり霊夢は、既に身体が半分になっていた。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 そして、トドメなのだろう。 壁際から虫たちの中心に運ばれた赤ちゃんゆっくり霊夢は、虫たちに一斉に飛び掛られ、その短い生涯を終えた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」 今際の際の悲鳴。 どれだけ苦しかっただろうか。 まだ生きたかっただろうに。 またも姉妹を失った悲しみに、赤ちゃんゆっくり霊夢たちは声を上げて泣いた。 そこに間髪入れず、俺が囁く。 「あーあ、またお前たちのお母さんは答えられなかったな」 びくり、と赤ちゃんゆっくりたちの身体が震える。 「答えられたら、あのゆっくりもお前たちと再会出来てたのになぁ。虫に食べられることなく、お前たちとゆっくり出来たのになぁ。お母さんが問題に答えさえしてればなぁ……」 成人したゆっくりだったら、そもそも先程の赤ちゃんゆっくり霊夢を虫たちの中に放り込んだ俺を糾弾していたかもしれない。 だが未だ幼稚な頭脳しか持たないゆっくりたちは、俺の言葉に見事なまでに惑わされ、ふつふつと母親への怒りを充填させていく。 「ひどいよおかあさん!」 「おかあさんがれいむのかわりにしねばよかったのに!!」 「おかあさんはゆっくりしないでしんでね!!!」 昨夜よりも激しい母への憎悪の発露。 あまりに理不尽すぎる状況と、それでも回答出来ていたら子供は助かっていたはずという罪悪感で、ゆっくり魔理沙は狂ったように泣き叫ぶ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ、お゛があ゛ざん゛にぞんな゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 ゾクゾクゾクゾク!!! 背筋に走る衝撃。全身を包み込む恍惚感。 ゆっくりが泣く姿は、どうしてこう、俺に充足感を与えてくれるかなぁ!? 心の内より溢れて垂れ流さんばかりのこの感情を何と呼べばいいのだろう。やはり萌えだろうか。 俺は笑いを抑えることが出来なかった。 一息つき、虫たちが帰ったところで朝食の準備に取り掛かる。 台所から立ち上る香ばしい匂いを呼吸用の穴から嗅ぎ取ったゆっくりたちは、涎を垂らして俺に催促し始めた。 「ゆっくりたべさせてね!」 「おなかすいたよ!」 「たくさんちょうだいね!」 やれやれ、さっき家族が死んだばかりだというのに切り替えの早い奴らだ。 俺は人間二人分の料理を完成させると、一つはテーブルの上に乗せ、もう一つを半分にしてゆっくり霊夢の箱の中に入れた。 ゆっくり霊夢の箱は大きいので、箱の中でそのまま食事をすることが可能なのだ。 ゆっくり霊夢は何か言いたげに俺を上目遣いに見つめていたが、結局無言のまま料理に口をつけ始めた。 頭のいい奴。だから大好きなんだ。 そしてもう半分を床に置き、米粒を五粒だけ掴むと、赤ちゃんゆっくりの箱の中に投げ入れた。 「ほら、朝食だぞ」 「ゆっ、すくないよ!?」 「もっとたくさんちょうだいね!」 目の前にお腹いっぱいになれるだけの料理があるのに、何故これっぽっちしか貰えないのか。 空腹を抱えた赤ちゃんゆっくり霊夢たちはゆーゆー文句を言って飛び跳ねる。 俺はその声を無視して、ゆっくり魔理沙の箱に近付いた。 相変わらず大きさが不釣合いの箱の中に押し込められたゆっくり魔理沙は、息苦しそうに呻いている。 顔面を変形させ、いつもの小生意気な顔から今にも屋上から飛び降りて自殺するいじめられっ子のような弱々しい顔をしたゆっくり魔理沙は、相変わらず俺の心を掴んで放さない。 しばらく眺めていたい衝動に駆られるが、そこはぐっと我慢。 箱に顔を近づけ、赤ちゃんゆっくりたちに聞こえない程度の声量で、そっと耳打ちする。 「今からお前を箱から出してやるが、もし妙な真似をしたり何かおかしなことをしゃべったりしたら、お前ら全員加工所送りにしてやる」 「ゆっ……」 「妙なことさえしなければ、ちゃんと朝食を食べさせてやる。分かったなら二秒間だけ目を閉じろ」 ゆっくり魔理沙は数瞬視線を彷徨わせた後、言われた通り目を閉じた。 よしよし、計画通り。 俺はゆっくり魔理沙を箱から出してやった。 窮屈な箱から解放され、ゆっくり魔理沙はしばらく床を跳ね回る。 「すっきりー!」 だが、すぐにハッとした様子で、慌てて赤ちゃんゆっくりたちの元へ向かおうとする。 「おっと」 だが俺はゆっくり魔理沙の頭を掴み、それを阻止する。 「ゆ、ゆーっ!!?」 何をするんだ、と言わんばかりに俺に講義の視線を向けるゆっくり魔理沙。 しかし俺が加工所、と小声で囁くと、すぐに大人しくなった。 「さぁ、朝食の時間だ。たんとお食べ」 俺はわざわざ赤ちゃんゆっくりたちの前に置きなおした朝食の前に、ゆっくり魔理沙を持ってくる。 野菜炒めや焼き魚など至って普通のメニューではあるが、ゆっくりにとって野生にいたころからは考えられないご馳走だろう。 ゆっくり魔理沙にとって――勿論、赤ちゃんゆっくり霊夢にとっても。 「おかあさんだけそんなにいっぱい、ずるいよ!」 「れいむたちにもわけてね!」 予想通り、何も貰っていないも同然の赤ちゃんゆっくりたちが俄かに騒ぎ出す。 ゆっくり魔理沙はおろおろした様子で、俺を見上げた。 「ま、まりさはいいから、このごはんは赤ちゃんにあげてね!」 「駄目だ」 しかし、俺はぴしゃりと遮る。 「お前が全部食うんだ」 「で、でも」 「さもないと……」 ゆっくり魔理沙は慌てて食べ始めた。 最初は遠慮がちだったが、やがてゆっくりとしての本能が現れ始めたのか、 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 と下品にがっつき始める。 それを見て不満が出てくるのが、無論赤ちゃんゆっくりたちである。 自分たちはこれだけしか食べてないのに、何故お母さんはあんなに食べられるのか? 自分たちの姉妹を見殺しにした母だけが、何故!? 憎悪と殺意が満ち満ちた視線で、己の母親を睨みつける。 「なんでれいむたちにごはんくれないの!!?」 「ゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりできないおかあさんはしねっ!!!」 「「「ゆっくりしねっ!!! ゆっくりしねっ!!!」」」 「ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ!!!」 謂れの無い中傷を浴びて、ゆっくり魔理沙は大泣きしながら子供たちの下に駆け寄ろうとする。 だけど俺がきっちりガード。言うこと聞かなかったお仕置きとして、赤ちゃんゆっくりたちから見えない角度でゆっくり魔理沙の背の皮を抓り上げた。 「ゆ゛ぐぅぅぅっ!!?」 「そのまま食事を続けろ。それと、食べ終わったら子供たちに向かって今から俺が言う台詞を言うんだ。いいか――」 「――ゆっ!? そんなこと言えないよ!!!」 「じゃあ、全員加工所送りだな」 「……」 ゆっくり魔理沙は気落ちした様子で、食事を再開した。 止まらない、子供たちからのブーイング。誤解を解くことの出来ないこの状況、親としてどんな気持ちで受け止めているのだろうか。 昨日まで、この家族は幸せの中にいたのだろう。 家族全員でゆっくり出来る、素晴らしい毎日を過ごしていたに違いない。 それが、今ではどうだ。 子供七匹のうち二匹が死に、しかもその責任を負わされ、弁解するチャンスもない。 ゆっくりが、ゆっくりすることが不可能なこの状況。 最高だ。 ゆっくり魔理沙は朝食を食べ終わると、赤ちゃんゆっくりたちのほうを振り向いた。 数秒、躊躇する。 だが俺が少し手を動かすそぶりを見せると、諦めたのか、早口に捲し立てた。 「美味しかったよ! れいむたちはそこでゆっくり餓死していってね!」 「――っ!!!」 怒りを覚えながらも、それでも心の片隅で、信じ続けていたお母さん。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちの中で、その信頼という形が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが、俺にもハッキリ伝わった。 「ゆっ……ゆ゛っ……!!!」 「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!!!」 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉぉぉっ!!?」 「お゛があ゛ざんな゛んでも゛う゛おがあ゛ざん゛じゃな゛い゛よぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじん゛でね゛っ!!!」 「も゛う゛がお゛も゛み゛だぐな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉっ!!!」 怒号。悲鳴。絶叫。 ありとあらゆる不の感情の放出。 そしてそれに晒される、ゆっくり魔理沙。 「あ゛っあ゛あ゛ああああ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛ああああ゛あ゛ああ゛あ゛あああ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁっっっ!!! 一生分とも呼べそうな涙を流し、身を引き裂かれるような心の苦痛でじたばた暴れまわる。 きっと、伝えたいのだろう。 自分が親として、どれほど子供を愛しているのか。 子供が死んでしまったとき、どれだけ哀しみを共有したかったのか。 だけど、言えない。 言ったら、それこそ全てが潰える。 伝えたい、だけど伝えられない、極限のもどかしさ。 「――!!!」 これだ。 俺が求めていたものは。 俺が見たいのは『必死』なゆっくり。 そしてこのゆっくり魔理沙は、他のどのゆっくりも、究極的に『必死』だった。 その後、俺は加工所に赴き、『あるもの』を入手してきた。 その正体は後ほど披露するとして、その前に仕込みをしておかなければならない。 俺はお菓子を与えることを条件に、赤ちゃんゆっくり霊夢たちの生まれた順番を教えてもらうことにした。 そしてその順番通り、赤ちゃんゆっくり霊夢のリボンにマジックで番号を振る。 「ゆゆっ!? れいむのりぼんにいたずらしないでね!」 とか言われたけど無視。 ちなみに最初に死んだのは六女、先程虫に貪られたのは四女らしかった。 現在、箱の中には赤ちゃんゆっくり霊夢1、2、3、5、7の五匹が身を寄せ合って「ゆっくりできないよ!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙はまた狭い箱の中に閉じ込めた。ご飯をたらふく食べた分体積が増えたので、苦しさが増したようだった。 ゆっくり霊夢は他のゆっくりたちを助けるよう呼びかける声が五月蝿くなってきたので、申し訳ないと思いつつも猿轡を噛まさせてもらった。 後で好物のハンバーグを食べさせてあげるから許して欲しいところである。 「さて、と」 どうせなら、全部奇数にしてみるか。 俺は2の番号が書かれた赤ちゃんゆっくり霊夢を摘み上げた。 「ゆーっ!?」 「おねえちゃーん!」 「お、おにいさん、おねえちゃんをゆっくりはなしてね!」 姉妹たちがぴょんぴょん飛び跳ねて阻止しようとするが、赤ちゃんゆっくり霊夢2は既に俺の手の中だ。 いや、しかし冷静に見てみるとやっぱり可愛いよなこいつら。家を荒らさなければ思いっきり愛でてやったのに。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢2を床に降ろすと、加工所からの帰り道で拾った木の枝に糸と爪楊枝を結びつけただけの即席釣竿を構える。 そして赤ちゃんゆっくり霊夢2のリボンを解くと、素早く爪楊枝に結びつけた。 「ゆっ!? れいむのりぼんかえしてね!」 ゆっくりにとって、付けている装飾品を奪われることは死活問題に繋がる。 人間にとってゆっくりたちが身に付けている装飾品はただ食べられる素材で出来た食品に過ぎないが、ゆっくりたちにとって装飾品は固体を区別するための重要な機能らしい。 装飾品を奪われたゆっくりは目の前で奪われたのを目撃された場合のみを例外として、大抵ゆっくりたちから『ゆっくり出来ない存在』として忌み嫌われることになる。 理由はよく分からないが、そういうものらしい。 たとえ親兄弟だろうと、装飾品を奪われたゆっくりはその時点で『他人』となり、場合によっては暴力を振るわれることすらある。 だからゆっくりたちは装飾品に触れられることを嫌がり、取られた場合は取り返すために躍起になり、酷い時は他のゆっくりの装飾品を奪うこともあるという。 ちなみに死んだゆっくりの装飾品はその時点で死臭のようなものが漂い、身に着けてもすぐにバレるらしかった。 まったく、ゆっくりの生態はワケが分からなくて興味深い。 「かえしてね! ゆっくりかえしてね!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2はジャンプして爪楊枝に結びつけたリボンに食いつこうとするが、俺はギリギリのところで枝を固定しているため、届かずに落下してしまう。 「ゆ、ゆーっ! とどかないよ、どうしてー!?」 無駄な努力だと気付かず、半泣きでリボンに飛び掛る赤ちゃんゆっくり霊夢2。 うはー、かーわえー。 今俺の中では今すぐリボンを返して慰めたい気持ちとこのまま必死なゆっくりを観察したい気持ちが大体4 6くらい。 別にゆっくりが憎くてこんなことしてるわけじゃないしな。 ゆっくりは普通に可愛いと思う。 そして可愛いからこそ、こうして悪戯をしたいと思うのだ。 「ほらほら、どうしたー? もう少しで届くぞー」 「いじわるしないでかえしてね!」 息を切らしながらも、それでも死活問題なので意味の無い苦労を重ねる赤ちゃんゆっくり霊夢2。 姉妹ゆっくりたちも、その光景を固唾を呑んで見守っている。 目の前でリボンを取ったから一応姉妹だということを認識しているらしい。このままリボンを取り返せなかったら姉妹扱い出来なくなるから頑張って欲しい、といったところか。 ゆっくり魔理沙は体積が大きくなった分、箱の中の酸素が薄くなってしまったからか、とても息苦しそうだった。 おっと、これはいかん。 俺はゆっくり魔理沙の箱の蓋を開き、ゆっくり魔理沙の口が蓋側になるよう調節してやった。 「ゆ?」 困惑した様子で俺を見つめるゆっくり魔理沙。助けてもらえたのは嬉しいが、何故お兄さんがそんなことを、といった表情だ。 俺はにこりと微笑むと、爪楊枝からリボンを引き抜き、呼吸のために大きく口を開けていたゆっくり魔理沙の口内に放り込んだ。 「ゆっくり!?」 慌てて吐き出そうとするゆっくり魔理沙を押さえつけ、口が箱に押し付けられるような位置に調整し直す。箱内部はキツく狭いので、これで口を開くことは出来まい。 そして俺は一連の光景を呆然とした様子で眺めていた赤ちゃんゆっくり霊夢に、わざとらしいくらい大袈裟に言った。 「わー、お前のお母さん、お前のリボン飲み込んじゃったぞ!」 「ゆっ!? ……ゆっ……」 「リボンを失ったゆっくりがどうなるか、勿論お前のお母さんが知らないわけないよなぁ? つまり、お前のお母さんは、知っててわざと飲み込んだんだな!」 「んーっ、んんーっ!!?」 違うよ、間違いだよ、といった風に身体を小刻みに揺らすゆっくり魔理沙。己の口で俺の言い分を否定したいに違いない。 リボンを外して口に入れたところをちゃんと目撃したよね、と言いたいのだろう。 だが、赤ちゃんゆっくり脳の単純さを侮ってはいけない。既に母への信頼が0になっていたところに、俺の言葉が乾いた大地に落とした水のように染み渡ったのだ。 赤ちゃんゆっくり霊夢2にとって、俺はもう眼中に入っていない。こいつにあるのは『母が自分のリボンを食べた』その一点だけだ。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛う゛うう゛ううう゛うぅぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛うぅ゛ぅ゛ぅぅぅ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙と共に絶叫を上げ、ゆっくりにあるまじき凄まじい怒りの表情で母の入った箱に体当たりを仕掛けた。 「ひどい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 壁に当たって跳ね返っても、また果敢に体当たり。 ゆっくりとしてのアンデンティティを奪った相手を完全に抹殺しようとする、野生の生物としての本能。 憤怒。憎悪。殺意。 そしてそれらの悪感情を一心に浴びせられるのは、 「ん゛んっん゛ん゛ん゛ん゛んんんっー!!!」 今までこの赤ちゃんゆっくりを愛情込めて育て上げた母、ゆっくり魔理沙だ。 これまでの遠くから罵声を浴びせられる、ある意味まだ余裕があった間接的攻撃と比較して、これは直接自分を害しようとする行為を見せ付けられる最上級の拷問だ。 嗚呼、このゆっくり魔理沙の絶望と傷心と阻喪の入り混じったこの表情をカメラに保存して一生残しておきたいっ! 人はこのゆっくり魔理沙を哀れに思うだろうか。 でもしょうがないよね。 悪いことしたのはあっちだし。 この状態で赤ちゃんゆっくり霊夢2が家から逃げ出そうとすることはないだろう。 そう考えた俺は、一旦家の外に出ることにした。 扉の横には、加工所で購入した大小二つの箱が置いてある。 俺はそのうち、小さな箱を手に抱えた。 大きさは掌に収まるサイズ。 遠目から見れば結婚指輪を収納するアレに似ているかもしれない。 もっとも、中に入っているものはそんな幸せアイテムとは似ても似つかないものなのだが…… 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」 扉を開けて家に戻ると、まだやっていた。 昨夜から今に至るまでで、ゆっくり魔理沙の精神はどれだけ磨耗しただろうか。 虚ろな眼でただ虚空を眺めているだけの生物になりかけている。 これ以上は危険だな。 破壊してしまっては面白さが半減どころの騒ぎではない。 まだ赤ちゃんゆっくりはたくさんいるのだ、これが終わったら少し休憩にしよう。 俺は体当たりを続けている赤ちゃんゆっくりを摘み上げ、その身体に糸を巻きつけ始めた。 身体を縛るロープ代わりである。 「ゆっ!? はなしてね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は俺の手からぴょんと逃れて離れようとするが、糸の長さまでしか遠くに行くことが出来ない。 糸がぴんと張ったところで無様にぶしゃっと床に潰れ、ゆーゆー泣き始めた。 「それじゃ、ご開帳っと」 糸の先を左手の小指に巻きつけ、俺は外から持ってきた箱を開けた。 中に入っているのは、 「ちょっと、とかいはのありすをはやくだしなさいよね!」 生後まだ二週間にも満たない、赤ちゃんゆっくりアリスである。 大きさは赤ちゃんゆっくり霊夢2よりほんの少し大きな程度。 俺はその赤ちゃんゆっくりアリスの身体に、赤ちゃんゆっくり霊夢2と同じように糸を巻きつける。 「な、なにするのよ、ゆっくりできないじゃない!」 ぶーぶー文句を垂れる赤ちゃんゆっくりアリス。 だけど俺が用があるのはプライドの高い普通のゆっくりアリスではなく、他のゆっくりから恐れられている性欲魔人としてのゆっくりアリスである。 俺は糸の先を今度は右手の小指に巻きつけると、赤ちゃんゆっくりアリスの身体を人差し指で揺すり始めた。 「ちょ、ちょっと」 最初は嫌がって離れようとする赤ちゃんゆっくりアリス、だが次第に熱を帯び始め、呼吸が荒くなっていく。 ゆっくりを発情させることはゆっくり霊夢にやってあげているので日常茶飯事だが、発情しがゆっくりアリスの様子はゆっくり霊夢のそれとは大分違っていた。 口元のゆるみっぷりは半端無く、熱も溶けるんじゃないかってくらい上昇している。息も荒く、重い病気にかかった人間のようだ。 そして何よりも、目がヤバい。白目の部分を血走らせ、獲物を探して右往左往している瞳の動きは、はっきり言って気持ち悪いを通り越して、怖い。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!!!」 指を離そうとしたら、物凄い勢いで擦り寄ってきた。俺の指を孕まそうとしてるんだろうか。 俺は若干の恐怖を感じながら、赤ちゃんゆっくりアリスを箱から出して床に降ろしてやった。 すっかり発情した赤ちゃんゆっくりアリスの視線の先には、先刻から繋がれた糸をどうにかしようとぴょんぴょん飛び跳ねていた、赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿。 「れ、れれれ、れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ、ゆゆっ!!?」 とても成熟していない赤ん坊とは思えぬ素早さで赤ちゃんゆっくり霊夢2に襲いかかろうとする赤ちゃんゆっくりアリス、赤ちゃんゆっくり霊夢2はその剣幕にビビって逃げ出そうとする。 ピン。 「ゆべっ!?」 糸が最大限まで張り詰められ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は勢いよく転倒する。 その間に距離を詰める赤ちゃんゆっくりアリス、その口からはご馳走を前にした獣のように涎が溢れまくっている。 「が、がわ゛い゛ぃい゛い゛いよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉぉれ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆーっ!?」 まさに絶体絶命、赤ちゃんゆっくり霊夢2が慄いて悲鳴を上げる。 赤ちゃんゆっくりアリスは狂気の目で、赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛び掛った。 「り゛ぼん゛の゛な゛いれ゛い゛む゛もぞう゛じゃな゛いれ゛い゛む゛もあ゛り゛ずの゛ごども゛をう゛ん゛でぇぇぇぇぇぇ!!!」 ピン。 「れ゛い゛っむ゛ぐぅ゛!?」 しかし、ギリギリの位置で糸が届かず、赤ちゃんゆっくりアリスも転倒してしまった。 「ど、どう゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!? ごう゛びざぜでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 涙を溢れさせながら、それでも相手を孕ませるために前に出ようとする赤ちゃんゆっくりアリス。赤ちゃんゆっくり霊夢2からすれば、恐怖以外の何者でもない。 「さて、今こうして俺が糸を持っているから、均衡が保てているわけですが」 俺は奇妙な静止状態に陥った空間に、静かに言い聞かせるように告げる。 「俺がこうして少しでも糸を緩めると」 言いながら、赤ちゃんゆっくり霊夢2の糸を結びつけた小指を少しだけ前に出してやる。 「ゆっ、はなれたよ!?」 その分糸にゆとりが出来、赤ちゃんゆっくり霊夢2は危機からほんの少しだけ遠ざかることになった。 ゆっくりアリスは歯をギリギリ食いしばって悔しがっている。怖っ! 「逆にこっち側の糸をゆるめると」 今度は右手を前に。 すると赤ちゃんゆっくりアリスを押さえつけていた糸が緩み、ゆっくりアリスは猛牛のような勢いで赤ちゃんゆっくり霊夢2に接近する。 最初の時に比べてかなり近付いており、吐く息がお互いに届くくらいだ。 だけどくっつくことはかなわない。流石俺、ナイス調節。 「こうなるわけだ」 「や、やめてね! ありすのいとをゆるめないでね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2が涙声で俺に訴えかける。 当の赤ちゃんゆっくりアリスは既に相手を妊娠させること以外頭にないのか、俺の言葉が耳に届いていないようでハァハァ言いながらじっと赤ちゃんゆっくり霊夢2だけを見つめていた。 こいつ本当に赤ちゃんなのか? まったく、ゆっくりアリスという種族は末恐ろしい。 「では、ここで問題です」 俺は膠着状態に陥った二匹をしばらく観察した後、足で器用にゆっくり魔理沙の入った蓋を開けた。 そのまま足先でゆっくり魔理沙の身体を回転させ、口をしゃべれる位置にまで持ってきてやる。 勿論、ジャンプして逃げられないように押さえつけるもの忘れていない。 「ゆっくり魔理沙が答えられたら赤ちゃんゆっくり霊夢の糸をゆるめてあげます。間違えたなら赤ちゃんゆっくりアリスの糸をゆるめてあげます」 「ゆ……」 ゆっくり魔理沙はまたか、とでも言うように眉を顰めた。 だけど娘の命がかかっている。どうせ選択権もないし、やらざるを得ない状況だ。 ゆっくり魔理沙は何か言おうと口を開きかけ、 「やめてよね!」 と、怒りの篭った声が割り込み、口を噤んだ。 驚いてそちらを見ると、そこには赤ちゃんゆっくりアリスから少しでも離れようと身体をひしゃげながら、母に敵意を向ける赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿があった。 「おかあさんがこたえたられいむしんじゃうもん! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「そ、そんなことないよ! おかあさんはれいむのために」 「だまっててね!」 キッ、とキツい視線を浴びせられて言葉を詰まらせるゆっくり魔理沙。 やがて、じわじわとまた涙が溢れ出してくる。 「ど、どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 「おかあさんがいるとゆっくりできないからだよ! おかあさんはゆっくりしね!」 吐き捨てるような口調。 今まで黙ってことの成り行きをハラハラと見守っていた他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちも、賛同したように口を揃えて非難の声を上げた。 「そうだよ、おかあさんはゆっくりしね!」 「いもうとをかえしてね!」 「おかあさんのせいでぜんぶこうなったんだ!」 「おかあさんはもうゆっくりしなくていいよ、ゆっくりしないでとっととしんでね!」 リボンを失って少し時間が経過したゆっくりより、子供を裏切った母への怒りのほうが大きいようだった。 ここに、ゆっくり魔理沙の味方は一人もいない。 そろそろ『そんなれいむたちはまりさのこどもじゃないよぉぉぉ!』とキレるかと思いきや、俺が思ってた以上にゆっくり魔理沙はあくまでも母親だった。 「はやくもんだいだしてね!」 罵声の雨の中、それでも我が子を守ろうとするゆっくり魔理沙の姿に、俺はちょびっとだけ感動してしまった。 まぁ、全員助かった後で説明したらきっと分かってもらえるだろうという、ご都合脳なだけなのかもしれないが。 でも心を動かされたのは事実なので、問題は簡単なやつにしてやろう。 「では問題。答えは簡単、身体が弱くて喘息気味のゆっくり種といえば何でしょう?」 「ゆっ! 答えはぱちゅりーだよ!」 自信満々の回答。余程答えに間違いがないと確信しているのだろう。 ゆっくり魔理沙は今までの陰鬱な雰囲気はどこへやら、明るい表情で「さあ、赤ちゃんをたすけてね!」とのたまっている。 赤ちゃんゆっくり姉妹も、そんな母親を驚いた、だけど少し誇らしげに見つめていた。 やはり、母は母だったのだ、と。 俺はふっと笑い、 「ぶー、残念外れです」 僅かに見えた希望という光を問答無用で叩き潰した。 「な、なんで!? からだが弱いゆっくりはぱちゅりーしかいないよ!?」 納得出来ない様子のゆっくり魔理沙が俺に抗議の目を向ける。 俺はこの場にいる全ゆっくりに聞こえる大きさで、正しい解答を発表する。 「問題はちゃんと聞こうな。最初に言ったじゃないか。『答えは簡単』って。だから答えは『簡単』だよ」 「……ゆっ!?」 そんな馬鹿な話があるか、といったゆっくり魔理沙の表情。 何か変なことを言う前に、俺はまた芝居がかった声を出した。 「本当に赤ちゃんを助けるつもりがあったのなら、ちゃんと答えられたはずなんだけどなぁ。やっぱり赤ちゃんなんてどうでもいいから、助ける気なんてさらさらないんだね!」 「ち、ちがうよ! まりさは」 「はい、罰ゲーム!」 俺はゆっくり魔理沙が言い切る前に、右手の糸を緩めた。 今までお預け状態で気が狂いそうなほど我慢を強いられていたゆっくりアリスの枷が外れ、嬉々とした様子で赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛びつく。 「ゆ゛ーっ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は逃れようとするが、そちらの糸は緩めていないので、逃げ場はない。 「はぁはぁはぁ、れ゛い゛む゛ぅぅぅ、がわ゛い゛い゛ごをだぐざんづぐろ゛う゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「や、やだよ! れいむはまだあかちゃんなんてつくれないよぉぉぉぉぉ!!!」 「あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっい゛い゛よ゛おおぉぉぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅんほぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛っぐりや゛め゛でぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 激しい律動。 赤ちゃんゆっくりアリスは摩擦で燃え上がるんじゃないかと心配になるくらい自分の身体を赤ちゃんゆっくり霊夢2に擦りつけ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙をぼろぼろ流して逃れようとしている。 押し潰して殺してしまわないよう、成長したゆっくりアリスではなくその子供を連れてきたわけだが、そのゆっくりを押さえつける力は親にも引けをとらない 自分が気持ちよくなれば相手はどうなってもいいという身勝手な性行為。 元となったアリスさんとまったく似ても似つかぬ(まぁ、ゆっくりの大半は元の人物と似てないんだが)横暴さに、少し気分が悪くなってきた。 涙目で必死に逃げようとする赤ちゃんゆっくり霊夢2は可愛いんだけどね。 他の姉妹たちはその光景を見て、「はやくにげてね!」「おねえちゃんにへんなことしないでね!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙は子供を助けようと、俺の足の下でもがいていた。 そうこうしてるうちにやがて快楽の頂点に達したのか、赤ちゃんゆっくりアリスは感極まった声を上げた。 「イグッイグよ゛おおぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「や゛だぁぁぁぁイギだぐな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、……すっきりー!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 一際大きな声を上げたと思ったら、ゆっくりアリスはぶるっと一瞬震え、そして満ち足りた表情で身体を離した。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は壮絶な表情で固まっている。 やがて、にょき、と赤ちゃんゆっくり霊夢2の頭から蔦が伸び始め、植物界の常識を覆す速度で実を生らせた。 しかし、本来は子供が生るべきその場所は、泥団子しか存在しない。 当然だ。成熟していないどころか、この世に誕生してまだ一週間以上経過していないゆっくりが、子孫を残すことなんて出来るはずもない。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は苦痛としか形容出来ない表情のまま黒く朽ち果て、その短い命を終えた。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 ゆっくり魔理沙はまたもや子供を救うことが出来なかった悲しみで、何度目になるのか分からない涙を流す。 しかしそこに浴びせられるのは当然、 「なにうそのなみだをながしてるの!?」 「おねえちゃんをころしたのはおかあさんだよ!」 「かえして! おねえちゃんをゆっくりかえしてねっ!!!」 更に憎悪を増した子供たちからの罵倒の言葉だ。 先程、俺が言った言葉をまた思惑通りに受け止めてくれたらしい。 ゆっくり魔理沙はその言葉を聞いて、また悲しみに打ち震えて暴れだす。 俺はそんな光景に満足しながら、すっきりして落ち着いた様子の赤ちゃんゆっくりアリスを持ち上げ、残り四匹となった赤ちゃんゆっくりたちの箱の中に落とした。 「ゆっ!?」 予期せぬ闖入者、しかも相手は先程自分たちの姉妹を殺したばかりのゆっくり。 姉妹は警戒して距離を開くが、赤ちゃんゆっくりアリスがその辺を事情を知っているわけがなく。 「しょうがないから、あんたたちいなかもののゆっくりををとかいはのありすのおともだちにしてあげてもいいよ!」 とゆっくりアリス特有の上から目線で話しかける。 しかし、その言葉は姉妹の神経を逆撫でする結果にしたかならなかった。 ゆっくりアリスの丁度後ろに陣取っていた一番の長女、赤ちゃんゆっくり霊夢1が、まったくの無警戒の赤ちゃんゆっくりアリスのお尻に噛み付いた。 「ゆ゛ーっ!?」 突然の痛みに吃驚して悲鳴を上げる赤ちゃんゆっくりアリス、それが皮切りだったように、他の姉妹たちもゆっくりアリスに突撃した。 「ゆっくりしねっ!」 「や、やめなさいよ、やめでぇぇぇぇ!!!」 「ゆっくりしねっ、ゆっくりしねっ!!!」 「あ、あ゛り゛ずいな゛がも゛の゛でい゛い゛がら゛ぁぁぁぁぁ!!! だずげでえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 四方からのリンチにたまらず赤ちゃんゆっくりアリスが泣き叫ぶが、姉妹たちは聞く耳持たずに行動を続ける。 その様子を眺めながら、俺はゆっくり魔理沙の耳元にそっと囁きかけた。 「おやぁ、子供たちは赤ちゃんゆっくりアリスを殺すつもりだぞ? 止めなくていいのか?」 「ゆっ、ゆーっ!!!」 ゆっくり魔理沙はじたばた暴れるが、閉め直した箱が開くはずもなく、徒労に終わる。 ゆっくりがゆっくりを殺害することは禁忌だ。 例えどのような理由があろうと、ゆっくりがゆっくりを殺害すると他のゆっくりたちから何されようと仕方の無い状態になってしまうらしい。 だからもし他のゆっくりを殺さなければならない状況の場合、親が相手のゆっくりを殺害し、子供たちに非難が及ばないようにする。 それがゆっくりたちの流儀……らしい。 ちなみに性行為は殺害の範疇に当たらない。 「み、みんな、やめてね!」 ゆっくり魔理沙は子供たちを止めようとするが、興奮した子供たちにその声は届かない。 やがて赤ちゃんゆっくりアリスの皮が裂け、中のカスタードが漏れ始めた。 「……ゆっ!?」 漂い始めたいい匂いに、たまらず姉妹たちはごくりと唾を飲み込んだ。 朝は何も食べていないに等しく、一粒の米と少量のお菓子しか食していない空腹のゆっくりにとって、その香りはあまりに魅力的すぎた。 「お、おいしいよ、これ!」 「ひぎぃ!? ありすのかすたーどすわないでぇぇ!!!」 「ゆっくりたべるね!」 「あまくておいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「い゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 空いた穴という穴からカスタードを吸われ、赤ちゃんゆっくりアリスが悲鳴を上げる。 だが段々力を失って悲鳴が小さくなっていき、そして脱力し、その場に崩れ落ちた。 絶命。 子供たちがゆっくりを殺してしまった光景に、ゆっくり魔理沙はただただ泣き叫ぶしかなかった。 そしてその表情を見て、俺はまだまだ満足するのだった。 残り四匹。 まだまだ快感を味わえる。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5122.html
『ゆっくりを求めて2』 〜注意〜 虐待仕様のゆっくりではありません。 前作はおまけで本当に書きたかったのはこれ。 あきらかに無理ゲー。 このサイトからの持ち出し突撃は絶対にダメ!! この作品の設定を使うのは禁止です ゆっくり虐待 からの続き 建ち並ぶビル、汽笛を鳴らす電車、行きかう人々。 動きこそが生命というのなら、ここは命が満ち溢れる場所である。 喧騒のなか一人の男がこの町にたどり着いた。 「あ゛ー、ひでぇめにあった……」 ため息を一つつき、近くのベンチに腰を下ろした。 落ち着いたところで、手の中にあるゆっくりれいむ――逃げている途中で拾ったのだ――が動き出した。 「ゆっくりしていって――ゆ゛っ」 叫び終わる直前で男はそれを軽く捻った。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 あっさり瀕死となるゆっくり、その皮から漏れた餡子を口に含む。 「美味いには美味いが、甘さもうまみも変わらないな……やはり産地(設定)が違うせいか? 虐待に対するレスポンスはいいが単語のレパートリーが少ないのは今一だったな」 男はそんな感想を漏らしながらのんびりと食べていった。 「もっと……ゆっくりしたかった……」 そんな言葉を残し最後の一欠けらが口に入っていった。 甘いものを食べて落ち着いた男は自分の姿を確認した。 「これはまた……ひどいありさまだな」 男がこぼし感想はもっともであった。 つけていたサングラスはひび割れ、コートの裾はぼろぼろとなっている。 靴のつま先はなく、そこから足の指先がのぞいている。 さらに転んだのか引っ掛けたのか服は所々破れ、砂と泥と餡子に汚れている。 どこを見ても無事なところはなかった……唯一身に着けている手袋を除いて。 「あの女ときたら空まで飛んで追っかけてきやがる。執念深いったらありゃしねぇ」 食の恨みは根深い故に地獄の底までついてくる勢いであった。 巫女の放つ攻撃は速く大量であった。 必死で避けるたび周りでは、 「ゆっくりし…… \ピチューン/ 」×? 「ゆげぇ! \ピチューン/ 」×? 「<○><○> うわぁぁ! \ピチューン/ 」×? とゆっくり達が大量に消し飛んでいる。 所詮は饅頭そんなものだ。 どうにも逃げられないと悟った男は懐にあった日本酒『さむらい』を片手に交渉を試みた。 食の恨みは食で晴らす、なんとも安直な考えである。 しかし、巫女は目の色を変えて喜び、 「まぁ、ゆるしてあげるわ。今度お賽銭を持って神社にきなさい」 と言い残し飛んでいった。 怒った顔がうれしそうな笑顔に変わった瞬間など、とても可愛らしいものであった。 「―――今度おまいりに行こうか……ってどこの神社だ?」 肝心な神社の場所は名前も聞いていないので判らなかった。 こうして巫女は大切なお賽銭源を逃したのだった。 ――――――――閑話休題―――――――― 話は戻り、ここは大きな地方都市である荷湖道市とよばれるところである。 先日いっていた二海峡市には及ばないものの多くの観光客が訪れる。 それと共に多くの技術者が切磋琢磨し今も町を拡大しているのだ。 「おー、すげぇ。このCMうち(虹浦市)の方ではやってないんだよなぁ」 街頭テレビに映るコマーシャルを見て素直な感想をもらす。 映像には『初○ミク』の3Dダンスと共に曲が流れネギを宣伝するものであった。 そのCMの一つに特に興味が引かれたものがあった。 『電話一つでお伺いいたします』 『《早い》《安い》《安心》を合言葉に 〜ル○ール運送〜』 『ゆっくりもうしこんでね!!!』 その社長と思わしき人物が荷物を持って疾走するさまは印象的であった。 何より、目に付いたのは最後に出たゆっくりれいむである。 男が普段目にするゆっくりよりも大きくゆっくりとした(むかついた)顔をしている。 それにあの変に甲高い声だ。男にとっては耐えられないだろう。 「なん……だと……! この不況の真っ只中で糞饅頭ごときが仕事にありついてるだと!? ありえん! 人間様が仕事に就けないというのにどうかしている!!」 さらにムカつくところは、この男、つい最近会社を首になったばかりなのである。 ……リストラって怖い。 そんなこんなで、そのむかついたゆっくりを虐待すべく無限町までやってきたのだ。 懸命な読者様ならお気づきだろうが……明らかに死亡フラグである。 どれほどの死亡フラグかというと、真性の虐待鬼井山の家に入って部屋を荒らし、 「おい、くそじじい! さっさとあまあまをよこすんだぜ!」や 「でいぶはやさしいから、どれいにしてあげるよ! さっさとこのうんうんをたべてね」とか 「れいみゅはちゅよいんだよ!(ピコピコ)」に 「まりしゃはちーちーするよ! すっきりー!!」など この世で一番自分が強く、美しく、可愛いなどという妄想をしながら罵倒するくらいである。 なおこの糞饅頭は最長で二ヶ月ほど苦しみ潰れている。 無限町に着いた男はあたりを見直すと怪訝に感じた。 なにせ町のいたるところで戦いが起こっているのだ。 しかし、周りの住人は慣れたものとのんびり観戦までしている。 普通なら大騒ぎで警察が駆け込んでとめにくるはずだ。 「そうか、ここでは争いごとは日常茶飯事! だからいきなりゆっくりを潰しても何も言われないんだ!!」 という結論に達した。 あながち間違いではない―――できるかどうかは別だが。 その後では、 「最終狼牙!」「コンナハズハー」「シッショー!」「さすが幕末」「幕末ゆえ仕方なし」 と戦っていたものが両成敗を受けていたが、見えていないので意味がない。 「ゆっくり……待っていてくれ。必ず虐待してやるからな。あの星に誓って!」 北の空では北斗七星のそばにやたら輝く星が見えた。 何だかんだで歩き回っていると目的の近所にたどりついた。 「会社の住所によるとここら辺のはずなんだが……」 メモの切れ端を見ながらあたりを見回すと変な声が聞こえてきた。 「おとどけもので〜す」 そんな台詞をはきながら目の前をゆっくり霊夢が通り過ぎていったのだ。 「ヒャッハー! ゆっくりだ! 我慢できねぇ虐待だ!?」 条件反射でゆっくり霊夢の前に躍り出て潰そうとするが、 「あ、じゅうしょまちがえた」 と荷物と一緒に男はどこかに運ばれていってしまう。 「こら! はなせ! って言うかどうやって掴んでんだ!」 そこは謎饅頭である突込みを入れてはならない。 「ぐほっ!! かはっ! はぁはぁ……糞饅頭の癖になんなんだあれは」 男は掴まったまま逃れることはできずにどこかの壁にぶつけられ悶絶していたのだ。 その横ではゆっくり霊夢がふんぞり返っていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 先ほど男を運び壁に叩きつけたゆっくりである。 体の痛みで幾分冷静になった男はそのゆっくりを観察してみた。 黒い野暮ったい髪、それにへばりつくような赤い布切れ。 その目は世の中なんでもいいやというような幸せなで知性の欠片もなく。 口は人を馬鹿にしているかのように半開きでいる。 全体的に丸っこい輪郭をしている。 目の前にいるだけで殴り飛ばしたくなるような存在である。 「だいじょうぶ、このぎょうざをたべてげんきになってよ」 ゆっくり霊夢はそういいながらどこからともなく取り出した餃子を持って近づいた。 男はすばやく立ち上がり距離をとる。 「この声は……広告に出ていた糞饅頭か」 男は喜悦の笑みにより口元をゆがめ高らかに叫んだ。 「ヒャッハー!! ゆっくりだ!! 我慢できねぇ虐待だ!!?」『Round1 Fight!』 「ゆー きゃん のっと えすけいぷ」 袖口から針を抜きだし高速で投げ放ち、それを追従するように駆け出す。 放たれた数条の銀光は吸い込まれるようにゆっくり霊夢の飛んでいく。 針はあくまで牽制である。 先ほどのように掴まれてはかなわないので針を投げつけ怯ませる事により楽に捕獲するつもりだったのだ。 普通のゆっくりであれば、針が刺されば悲鳴を上げその場で転げまわる。 それを掴んでゆっくりと虐待すればいいのだ。 「ゆぅ……ゆっくりしていってね!!!」 「ぐ! 馬鹿な!?」 しかし、男の目論みはあっさりと覆された。 ゆっくり霊夢の皮に針が刺さりわずかに呻いたもののまた叫びだしたのだ。 その叫びは物理的な圧力となり男にダメージを与えひるませた。 威力はすさまじく当たり所が悪ければ人が昏倒するほどのものだ。 それをカウンターで受ける形となった男にはかなりのダメージを受けることとなった。 「ゆっくりしていってね!!!」×10Hit 驚きと打撃により無防備になった男に叫び声という暴力的な圧力が襲い掛かる。 この現象と身体に受ける痛みは情報という衝撃となって男の頭に打ち据え混乱させた。 「うそだ……糞饅頭ごときがこんな事ができるはずがない! はは、これはきっと夢なんだ。 きっと今頃ベッドの中で寝ていて、起きたらゆっくりを虐待するんだ。 『おちょいよ、くちょじじい!』とか 『きゃわいいれいみゅはおにゃかすいちゃんだよ』とか 『はやくごはんをもっちぇきちぇね!』とか 『おちびちゃんのいうとおりなのぜ。はやくあまあまをもってくるのぜ』とか 馬鹿で愚かで我侭な発言を繰り返すゴミクズを 『ごめんなちゃい。ごめんなちゃい』や 『ばりざはぎだないおぶづでず。ぞんざいじてごべんなざい』 みたいな心地よい鳴き声を聞くはずなんだ」 現実から目を背け幻覚を見ながらつぶやいている―――誰がどう見ても病院送りです。 「ゆっくりしていってね!!!」×40Hit 男が現実逃避をしている間にゆっくり霊夢は延々と叫びを上げ続けていた。 「…………えぇい! 鬱陶しい! 少しくらい放っておいてくれ」 あまりのやかましさにわれに返り、背負っていたギターケースを盾にしつつ後に下がる。 しかし、受けたダメージによりよろけ地面に転がる。 それと同時にゆっくり霊夢は空高く跳び上がった。 「うえからくるぞ。きをつけろ」『K.O.』 その宣言と共にゆっくり霊夢は『下から』生えてきた。 だが、転んだ男はギターケースでガードをしていたので特にダメージもなくすんだ。 「いちじてったい」 ゆっくり霊夢もそんなことを叫びながら後に引いていった。 その動きは恐ろしくスムーズであり通常のゆっくりとは比べ物にならないものである。 男の顔は眉をひそめ半眼となり険しいものに変わる。 「糞饅頭なら糞饅頭らしく素直に虐待されろっての。もういい――てめぇはつぶす!!」『Round2 Fight!』 「あの、わたしよわいのでてかげんしてね」 その発言にゆっくり霊夢は返答をするが当然のごとく男は無視である。 再び袖口から針を抜きだし高速で投げ放ち、それを追従するように駆け出す。 放たれた数十条の銀光は吸い込まれるようにゆっくり霊夢の飛んでいく。 先ほどと同じ流れではあるが、その量、速度、威力、気迫どれをとっても段違いである。 「ゆぅ」 皮に針が刺さり僅かにひるんだ隙に男はブーツから錐を抜き放ち構えを取った。 錐を構え、刺し、抜き、構え、刺し、抜く。 この動作を正確に素早く行うことにより無数の突き連続となる。 繰り出す速度は高速で残像すら見えるほどのものである。 「ふん! まだだ!!」 二十数回ほど錐を付きたてたあと身を翻し、後回し蹴りを側面に叩き込む。 後退するゆっくり霊夢にさらに踏み込みギターケースから取り出した大鎚で上空へと跳ね上げる。 「汚物は消毒せねばならんな」 腰から取り出したチャッカマンの出力を最大にして構える。 落ちてきたゆっくり霊夢が地に着く寸前に炎を放った。 「ヒャッハー! 汚物は消毒だ!!」 高圧圧縮されたガスは劫火となり襲い掛かる。 その炎を吐き出すさまは火炎放射器だ。銃刀法違反? ナニソレ? オイシイノ? ガスを使い果たし火の勢いが弱くなる。そこに現れたのは炭になったゆっくり霊夢が――― 「いたい」 「なん……だと……!」 男の目の前に現れたのは無傷のゆっくり霊夢であった。 多少疲れはあるのだろうが、刺さった針はどこにもなく、高速で突き刺した錐の痕も見当たらない。 よくよく考えれば蹴りのあたりで顔が削り取られ後退することは考えられない。 さらに大鎚など当てれば消し飛んでいるはずである。 「くそ! なんだこの悪夢は……何か言えこの糞饅頭!」 「さぁ、きなさい! じつはわたし、いっかいたたかれただけで、しぬぞぉ」 「嘘だ!」 理由がわからずに話をふるが、相変わらず人を馬鹿にした顔で戯言をはなつ。 男は知らないだろうが無限町では日常である。 (ゲーム中にダメージグラフィックとかできないからねぇ) 「えぇい! つぶれるまで続ければいいだけだ! 消えろ!」 開き直った男はゆっくり霊夢に殴りかかった。 乾いた音と共にゆっくり霊夢の真ん中に拳が当たる。『K.O.』 「わたしはすろーすたーたーなんです」 そんな言葉を残しゆっくり霊夢は天に向かって飛んでいった。 残されたのは呆然とした男と古臭い円柱のポストだけだった。 「……! なんだったんだいったい」 しばらく時間がたち、我に返った男は辺りを見回す。 あたりにはごく普通の町並みと道のど真ん中にある円柱の古臭く赤いポストである。 「どこにもいねぇ。逃げられたのか?」 男は肩を落としため息を付いた。 「針で刺して、錐で貫いて、蹴り飛ばして、鎚でつぶして、炎であぶったが……虐待した気にならん。 これだったら前の町のほうが反応は今一だったが、断然ましだ」 不平をもらしながら歩いていると、 「ゆっくりしていってね!!!」 先ほどのゆっくり霊夢と似たような声が聞こえた。 辺りを見回すとそこにいた。 人を馬鹿にした顔とトレードマークのトンガリ帽子のシルエットはまさしくゆっくり魔理沙である。 しかし、カラースプレーをかけられたのか、金箔を貼ったのかその全身は金色であった。 「獲物は違うがこの際虐待できればいい。色が変なのも虐待されたからに違いない」 虐待された獲物ならば弱いはずである―――だから捕まえて虐足してやるという思考なのだろう。 男はゆっくり魔理沙に襲い掛かった。 「ヒャッハー!! ゆっくりだ!! 我慢できねぇ虐待だ!!?」『Round3 Fight!』 「わたしのえいちぴーは53まんです」 男の雄たけびにゆっくり魔理沙は変台詞をはき迎撃の構え?をとった。 「くらえ!」 先の戦いと同じく針を投げた。 「おとうさん、そっちはざんぞうですよ」 などという台詞と共にゆっくり魔理沙は針をすり抜ける。 「は?」 あまりのことに理解が追いつかない。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 ×3 先ほどのゆっくり霊夢よりもさらに遠い間合いから衝撃を受け。 「ほろびのばーすとすとりーむ」 そんな気の抜ける宣言と共に口からドススパークと似たようなものが吐き出され。 「とうてんじまんのひとくちぎょうざでございます。ゆっくりたべていってね」『K.O.』 さらに掴まれ口の中に餃子を詰め込まれる。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ」 などと勝どきを上げ、ゆっくり魔理沙は飛んでいった。 「誰だよ……弱いって言ったの。前の糞饅頭よりやばいじゃねぇか」 激しくぼろぼろになった男はフラフラと立ち上がった。 町に着いてから買いなおしていた服はずたずたのぼろ雑巾になりサングラスはフレームが変形し使い物にならない。 「なんだあの饅頭どもはこの町は地獄か? ……ん?」 男が町について悩んでいると遠くからキャタピラで走行する音が近づいてきた。 目をそちらに向けると男は驚愕の表情で凍った。 なんと戦車がこちらに向かってきているのだ。 その上には先ほどボコボコにしたゆっくり霊夢のにやけ顔が乗っかっている。 「ありえねー! 勝てるか! ツーかどうやって動かしてる!」『Round4 Fight!』 またも理解できない状況に叫びを上げる。 「ますたーすぱーく」「しぱぱぱぱ」「しゃんはーい」「でてこいわがしもべ」『K.O.』 「てんしょんあがってきた」 何もできないまま遠距離からボコボコにされた。 こちらが身構えると同時に砲門から光線が放たれ、口から針が吐き出された。 さらに人形が刃物を回転させながら襲い掛かり、果ては何か幸が薄そうな女性もつっこんできた。 明らかに無理ゲーです。本当にありがとうございます。 たとえ動けたとしても戦車などという重装甲を貫くことなど用意ではないだろうが。 「……手はある。ようは相手の攻撃があたらずこちらの攻撃を当てればいいのだ」 しかし男は諦めなかった。目に決意の炎を燃やしギターケースを掴む。 中から取り出すのは一振りのハンマー、これが一筋の光明と握り締める。 「そもそも、この町には虐待にきたんだ。今度の獲物は逃げてないだから捕らえる!」『Round5 Fight!』 立ち上がると同時に駆け出した。 「ますたーすぱーく」 戦車の砲門から光線が吐き出される僅かの隙で懐にとびこんだ。 そして握り締めたハンマーを力の限り戦車の装甲に叩きつける。 強烈な手ごたえと共に爆音が鳴り響く、装甲が貫かれ車体が震えだす。『K.O.』 「おっと、まずい」 ハンマーの柄を放り捨て慌てて下がる。 このハンマーはHEATハンマーと呼ばれ頭の部分が指向性のHEAT(成形炸薬弾)になっており、使い捨てである。 威力は今実践したように戦車の装甲をも貫くほどだ。 「よっと、ようやく捕まえたぞ。糞饅頭」 爆発する戦車の車体から放り出されたゆっくり霊夢を捕獲する。 あの爆発だというのにゆっくりは無傷である。 「さーて、散々待たせてくれたんだ。いい声を聞かせてくれよ」 今までの疲れを忘れ、ゆっくり霊夢に微笑みかける。 しばらく虐待をしていないので、男は相当ストレスがたまっていたようだ。 「本当に楽しみだ―――きっといい鳴き声をあげてくれるはず。 『くそじじい、れいむのみりょくてきなからだにふれないで』が 『つぶらなひとみがー』とか 『まりさにほめられたすてきなおりぼんがー』や 『れいむのびきゃくがー」など 叫びを上げてくれるだろう! そして 『ごべんなざい、ぞんざいじででごべんなざい』 なんて鳴き声に変わるような虐待をしてあげるよ」 男は―――駄目だこいつ……早く何とかしないと……。 「君、うちの社員に何か用かな?」 そんなトリップしている男に渋い男の声がかかる。 彫りの深い顔に金髪、赤いスーツを優雅に着こなし、その服の下には鍛えているであろう筋肉がみてとれる。 その姿はしばらく前に街頭テレビのCMに出ていた社長である。 口元は敵意がないかのように笑みを浮かべ語りかけてくる―――しかし、その瞳は笑っていない。 「えーと、これは、その」 「落ち着いて答えたまえ。君は、社員に、何をしようとしているのだね?」 口調は落ち着いているものの、社長からは確かな殺気がにじみ出ていた。 おそらく、トリップ中に発言していたことを聞いていたのだろう。 「答えられないのかね? ならば……死ねぃ!」 「うわっ!」 男が返答に窮していると突然襲い掛かってきた。 ゆっくりを手放し、紙一重でよける。 「いきなりなにをするんだ!」 「なに、この町では日常だよ。それに貴様も同じことをしていたのだろう?」 男の問いに社長はさらりと返答した。まるで今晩の献立を聞かれたので答えたかのような気軽さである。 「怖がることはない。少々教育をしてそのあと遠くに運ぶだけだ」 社長はゆっくりと歩み宣言した。 「お手並み拝見といこうか」『Fainal Round Fight!』 「いやだーーーーー!」 よく晴れた昼下がりに絶叫があがる。 しかし、これもまたこの町では日常であった。 to be continued? あとがきぽいもの 面白いから書いてたらゆっくり以外のネタのところが倍くらいあったから削ったよ。 虐待を期待した人ごめんなさい。 M.U.G.E.N産ゆっくりの登場 キャラクターの詳細スペックなどは「ニコニコMUGENwiki」あたりでも参考にしてください。 結構強い上、金箔饅頭(通称:12P、ゴールドゆっくり)になると凶悪この上ないキャラになります。 さらに霊夢戦車になるともっと無理があります。 うちの主人公の「男」は普通ー強キャラ性能ぐらいなので結構無茶な相談です。 作品に出る男の追加武装および能力 ・HEATハンマー 巨大な金槌。対ドス用の武器として持ち歩いている。爆発物取締罰則? なにそれ、美味しいの? 本編では一撃必殺技扱い。 ・ゆっくりがいる世界に入り込む程度の能力 「ゆっくり」が存在する場所にたどり着くことができる能力。 本人に能力の自覚はまったくない。 前の町も今回の町も普通に歩いていたらたどり着いた。 HEATハンマーについては反動が馬鹿にならないとか、手が折れるだろうと思うかもしれませんが、 「まぁ、こういう話しだし」「MUGENだからなぁ」という寛容な心でお願いします。 色々突っ込みどころが多いとおもいますが、苦言などよろしくお願いします。