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がさ。 がさがさがさ。 「ん……?」 何やら耳元で音がする。 不快感を呼び起こす騒音に、眠気が少しずつ引いていく感覚。 瞼越しに伝わる光量からすると、時刻は丁度目覚めるのにいい時間帯だろうか。 がさがさがさがさがさがさがさ。 しかしなんだこの音は。 まるで何かが這いずり回っているような…… 「…………うぉっ!?」 目を開けた瞬間映った光景に、俺は驚いて跳ね起きた。 俺の周囲、円状に集まっている、虫の大群。 カブトムシやらコオロギやらゴキブリやら、その種類は半端なく多い。 生理的嫌悪を催す光景に、鳥肌がぷつぷつ浮かび上がる。 こんなことを仕出かす犯人を、俺は一人しか知らない。 「リ、リグルちゃんか……!」 朝の目覚ましモーニングサービスだかなんだかで、こういう事業を始めたことは知っていたが。 ちゃんと丁重にお断りしておいたのになぁ。 後で文句言わないと…… 「こ、こっちに来ないでね! ゆっくり離れてね!」 「……ん?」 何やら慌てた声が聞こえ、俺は声がするほうを向いた。 「ま、まりさは美味しくないよ! ゆっくりしないでどっか行ってね!!」 昨日、透明の箱に閉じ込めたゆっくり魔理沙。 その周囲に、虫たちが群がっていた。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れいむたちはごはんじゃないよぉー!!?」 「ゆっくりできないよぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢の周囲にも、虫たちが興味津々といった様子で集まっている。 赤ちゃんゆっくりたちは可哀相にすっかり怯えてしまい、中央に固まってゆーゆー泣いていた。 ちょっと萌える。 「お、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 そして我が愛しのマイペット、ゆっくり霊夢は眠りから眠りから覚醒した俺に気付き、必死に助けを求めていた。 むっ、これはいかん。 俺は虫を踏まないよう慎重に足元を確認しながら、ゆっくり霊夢を閉じ込めた透明箱を抱え上げ、テーブルの上に避難させた。 「お、お兄さん、魔理沙たちも助けてね!!!」 「おに゛いざん、ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 他のゆっくりたちからも救助の声が上がるが無視。 だってこいつらの泣き顔見るのが超快感なんだもん。 涙を流しながら必死な表情で右往左往しているゆっくりは、鼻血が出そうなほど可愛いと思う。 こんな光景が見られたのなら、虫たちに少し感謝してもいいくらいだ。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢の箱を開けると、一匹だけ取り出した。 「ゆっ、たかいたかーい♪」 「あ、いいな!」 「れいむたちもたすけてね!」 虫たちの包囲網から救出してもらえたと思ったのだろう、俺に掴まれた赤ちゃんゆっくり霊夢が歓声を上げ、他のゆっくりたちが文句を言う。 俺はにこりと微笑むと、足元でうぞうぞしている虫たちに優しい声で言った。 「お前たち、餌をやるぞ」 「……ゆっ?」 何を言ってるのか分からない、といった感じの赤ちゃんゆっくり霊夢。 俺はそいつが理解するよりも早く、手の中のゆっくりを床にぽとりと落とした。 「ゆっ、ゆ゛ーーーっ!!?」 途端、涙声で逃げ出そうとする赤ちゃんゆっくり霊夢。 虫たちはそれなりに頭が良いのか、いきなり襲い掛かろうとはせずに、逃げ場を少しずつ埋めるように移動していく。 「や、やめてね! 赤ちゃんを助けてね!!!」 ゆっくり魔理沙の慌てた声。 俺はそんなゆっくり魔理沙に指をびしりと突きつけた。 「問題!」 「ゆっ!?」 「ゆっくりアリスは一度の交尾で、ゆっくり魔理沙との子供を六匹作ることが出来ます。七度ゆっくり魔理沙に襲い掛かったら、何匹子供が生まれるでしょうか?」 「ゆゆっ!? まりさは七回もこども生めないよ!?」 「はい、スタート。答えられたら子供は助けてやる」 有無を言わさず開始宣言。 ゆっくり魔理沙は悩みだすが、ゆっくりアリスに襲われる自分を想像してしまうのだろう、時々小刻みにぶるぶる震えていた。 俺は残り五匹となった赤ちゃんゆっくり霊夢たちに近付き、力付けるように言う。 「お前たちのお母さんがあのゆっくり霊夢を助けてくれるみたいだぞ!」 「ゆっ、本当!?」 「で、でも……」 一瞬明るい表情を見せる赤ちゃんゆっくりたちだが、すぐに暗い顔で俯いてしまう。 昨日、妹の一人が見捨てられた(実際は無理難題だったわけだが)ことを思い出したのだろう。 「まぁ、信じてな」 俺はそう言って、虫たちの群れに放り込んだ赤ちゃんゆっくり霊夢を観察し始めた。 涙目でぴょんぴょん飛び跳ねながら、全力で逃げようとしているその姿は果てしなく愛らしい。 しかし逃げようとした矢先に虫たちに回り込まれ、別の方向に逃げようとして、やはり回り込まれる。 ……む、面白い趣向を思いついた。 俺は机の引き出しから下敷きを取り出すと、姉妹である赤ちゃんゆっくり霊夢たちの閉じ込められている箱まで下敷きを使って虫を払い除け、道を作ってあげた。 「れいむ、こっちだよ!」 「ゆっくりしないでこっちにきてね!」 「ゆっ、れいむがんばるね!」 姉妹たちの声に勇気付けられ、赤ちゃんゆっくり霊夢は必死の力で床を飛びはね、箱に近付いていく。 しかし後ろから、どんどんと迫る虫たち。 まだ外の世界にいたころ、金曜ロードショーで見たアニメに出てくる王蟲の大群を思い出す光景だ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢は見事に箱の前に辿り着いた。 が、しかしそこはやはりゆっくりブレインだった。 「ゆっ!? 中に入れないよ!!?」 そう、それが箱である以上、壁の内側に入れないのは当然なわけで。 ようやく姉妹の所に戻れてほっとしたのも束の間、赤ちゃんゆっくり霊夢は涙目で壁に体当たりを始める。 「いれて! そのなかにいれてよ!」 「ゆゆっ、はいれないの!?」 「どうすればいいの!!?」 身体に似合わない滂沱の涙を流しながら、身体を寄せ合うゆっくりの姉妹。 だけどその間は境界を分かつ絶対的な壁が存在し、まるで天国と地獄の様相だ。 そうこうしているうちに、とうとう痺れを切らした一匹の虫が、赤ちゃんゆっくり霊夢にかぶりついた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅっ!!?」 悲鳴。 齧られたのは表面を少しだけ。だが黒い餡子がちょっとだけ漏れ出る。 それまで外の姉妹を何とかしようと壁に張り付いていた赤ちゃんゆっくりたちは、その光景にドン引きしたかのようにゆっくりらしくない素早さで後退した。 「ゆ゛っ!? い゛がな゛い゛でぇぇぇ!!!」 心の支えであっただろう姉妹の身体が遠く離れてしまったことに、赤ちゃんゆっくり霊夢は絶叫する。 そんなゆっくりに追い討ちをかけるように、他の虫たちも赤ちゃんゆっくり霊夢に群がり、ほんの少しずつ咀嚼する。 仲間意識があるのだろう、統率された虫たちの行動は訓練された兵隊のように澱みなく、抜け駆けして丸呑みしようとする虫一匹現れない。 仲間たちにきちんと行き渡るよう、一度噛み付いたらすぐに離れ、別の虫に場所を譲る。 だが赤ちゃんゆっくり霊夢からしてみれば、これ以上ないくらいの嬲り殺し、永遠に続くかのような拷問だった。 「れ゛いむ゛のあ゛んこだべな゛い゛でぇ゛ぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉっ!!!」 聞いてるこっちまで痛みが伝わるような慟哭。 箱の中で震える赤ちゃんゆっくりたちは、涙に塗れた瞳を母親へと向ける。 「おかあさん、はやくしてね!」 「いもうとをたすけてね!!!」 だがゆっくり魔理沙は、青ざめた顔で動かない身体の代わりに眼を忙しなく震わせるだけだった。 「さ、さんかいめでじゅうはちひき、よんかいめで……ゆーっ!! よんかいもできないよぉぉぉ!!!」 発情したゆっくりアリスの幻影でも浮かんでいるのか、イヤイヤするようにその身体を揺り動かす。 虫たちの餌になっている赤ちゃんゆっくり霊夢は、既に身体が半分になっていた。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 そして、トドメなのだろう。 壁際から虫たちの中心に運ばれた赤ちゃんゆっくり霊夢は、虫たちに一斉に飛び掛られ、その短い生涯を終えた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」 今際の際の悲鳴。 どれだけ苦しかっただろうか。 まだ生きたかっただろうに。 またも姉妹を失った悲しみに、赤ちゃんゆっくり霊夢たちは声を上げて泣いた。 そこに間髪入れず、俺が囁く。 「あーあ、またお前たちのお母さんは答えられなかったな」 びくり、と赤ちゃんゆっくりたちの身体が震える。 「答えられたら、あのゆっくりもお前たちと再会出来てたのになぁ。虫に食べられることなく、お前たちとゆっくり出来たのになぁ。お母さんが問題に答えさえしてればなぁ……」 成人したゆっくりだったら、そもそも先程の赤ちゃんゆっくり霊夢を虫たちの中に放り込んだ俺を糾弾していたかもしれない。 だが未だ幼稚な頭脳しか持たないゆっくりたちは、俺の言葉に見事なまでに惑わされ、ふつふつと母親への怒りを充填させていく。 「ひどいよおかあさん!」 「おかあさんがれいむのかわりにしねばよかったのに!!」 「おかあさんはゆっくりしないでしんでね!!!」 昨夜よりも激しい母への憎悪の発露。 あまりに理不尽すぎる状況と、それでも回答出来ていたら子供は助かっていたはずという罪悪感で、ゆっくり魔理沙は狂ったように泣き叫ぶ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ、お゛があ゛ざん゛にぞんな゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 ゾクゾクゾクゾク!!! 背筋に走る衝撃。全身を包み込む恍惚感。 ゆっくりが泣く姿は、どうしてこう、俺に充足感を与えてくれるかなぁ!? 心の内より溢れて垂れ流さんばかりのこの感情を何と呼べばいいのだろう。やはり萌えだろうか。 俺は笑いを抑えることが出来なかった。 一息つき、虫たちが帰ったところで朝食の準備に取り掛かる。 台所から立ち上る香ばしい匂いを呼吸用の穴から嗅ぎ取ったゆっくりたちは、涎を垂らして俺に催促し始めた。 「ゆっくりたべさせてね!」 「おなかすいたよ!」 「たくさんちょうだいね!」 やれやれ、さっき家族が死んだばかりだというのに切り替えの早い奴らだ。 俺は人間二人分の料理を完成させると、一つはテーブルの上に乗せ、もう一つを半分にしてゆっくり霊夢の箱の中に入れた。 ゆっくり霊夢の箱は大きいので、箱の中でそのまま食事をすることが可能なのだ。 ゆっくり霊夢は何か言いたげに俺を上目遣いに見つめていたが、結局無言のまま料理に口をつけ始めた。 頭のいい奴。だから大好きなんだ。 そしてもう半分を床に置き、米粒を五粒だけ掴むと、赤ちゃんゆっくりの箱の中に投げ入れた。 「ほら、朝食だぞ」 「ゆっ、すくないよ!?」 「もっとたくさんちょうだいね!」 目の前にお腹いっぱいになれるだけの料理があるのに、何故これっぽっちしか貰えないのか。 空腹を抱えた赤ちゃんゆっくり霊夢たちはゆーゆー文句を言って飛び跳ねる。 俺はその声を無視して、ゆっくり魔理沙の箱に近付いた。 相変わらず大きさが不釣合いの箱の中に押し込められたゆっくり魔理沙は、息苦しそうに呻いている。 顔面を変形させ、いつもの小生意気な顔から今にも屋上から飛び降りて自殺するいじめられっ子のような弱々しい顔をしたゆっくり魔理沙は、相変わらず俺の心を掴んで放さない。 しばらく眺めていたい衝動に駆られるが、そこはぐっと我慢。 箱に顔を近づけ、赤ちゃんゆっくりたちに聞こえない程度の声量で、そっと耳打ちする。 「今からお前を箱から出してやるが、もし妙な真似をしたり何かおかしなことをしゃべったりしたら、お前ら全員加工所送りにしてやる」 「ゆっ……」 「妙なことさえしなければ、ちゃんと朝食を食べさせてやる。分かったなら二秒間だけ目を閉じろ」 ゆっくり魔理沙は数瞬視線を彷徨わせた後、言われた通り目を閉じた。 よしよし、計画通り。 俺はゆっくり魔理沙を箱から出してやった。 窮屈な箱から解放され、ゆっくり魔理沙はしばらく床を跳ね回る。 「すっきりー!」 だが、すぐにハッとした様子で、慌てて赤ちゃんゆっくりたちの元へ向かおうとする。 「おっと」 だが俺はゆっくり魔理沙の頭を掴み、それを阻止する。 「ゆ、ゆーっ!!?」 何をするんだ、と言わんばかりに俺に講義の視線を向けるゆっくり魔理沙。 しかし俺が加工所、と小声で囁くと、すぐに大人しくなった。 「さぁ、朝食の時間だ。たんとお食べ」 俺はわざわざ赤ちゃんゆっくりたちの前に置きなおした朝食の前に、ゆっくり魔理沙を持ってくる。 野菜炒めや焼き魚など至って普通のメニューではあるが、ゆっくりにとって野生にいたころからは考えられないご馳走だろう。 ゆっくり魔理沙にとって――勿論、赤ちゃんゆっくり霊夢にとっても。 「おかあさんだけそんなにいっぱい、ずるいよ!」 「れいむたちにもわけてね!」 予想通り、何も貰っていないも同然の赤ちゃんゆっくりたちが俄かに騒ぎ出す。 ゆっくり魔理沙はおろおろした様子で、俺を見上げた。 「ま、まりさはいいから、このごはんは赤ちゃんにあげてね!」 「駄目だ」 しかし、俺はぴしゃりと遮る。 「お前が全部食うんだ」 「で、でも」 「さもないと……」 ゆっくり魔理沙は慌てて食べ始めた。 最初は遠慮がちだったが、やがてゆっくりとしての本能が現れ始めたのか、 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 と下品にがっつき始める。 それを見て不満が出てくるのが、無論赤ちゃんゆっくりたちである。 自分たちはこれだけしか食べてないのに、何故お母さんはあんなに食べられるのか? 自分たちの姉妹を見殺しにした母だけが、何故!? 憎悪と殺意が満ち満ちた視線で、己の母親を睨みつける。 「なんでれいむたちにごはんくれないの!!?」 「ゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりできないおかあさんはしねっ!!!」 「「「ゆっくりしねっ!!! ゆっくりしねっ!!!」」」 「ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ!!!」 謂れの無い中傷を浴びて、ゆっくり魔理沙は大泣きしながら子供たちの下に駆け寄ろうとする。 だけど俺がきっちりガード。言うこと聞かなかったお仕置きとして、赤ちゃんゆっくりたちから見えない角度でゆっくり魔理沙の背の皮を抓り上げた。 「ゆ゛ぐぅぅぅっ!!?」 「そのまま食事を続けろ。それと、食べ終わったら子供たちに向かって今から俺が言う台詞を言うんだ。いいか――」 「――ゆっ!? そんなこと言えないよ!!!」 「じゃあ、全員加工所送りだな」 「……」 ゆっくり魔理沙は気落ちした様子で、食事を再開した。 止まらない、子供たちからのブーイング。誤解を解くことの出来ないこの状況、親としてどんな気持ちで受け止めているのだろうか。 昨日まで、この家族は幸せの中にいたのだろう。 家族全員でゆっくり出来る、素晴らしい毎日を過ごしていたに違いない。 それが、今ではどうだ。 子供七匹のうち二匹が死に、しかもその責任を負わされ、弁解するチャンスもない。 ゆっくりが、ゆっくりすることが不可能なこの状況。 最高だ。 ゆっくり魔理沙は朝食を食べ終わると、赤ちゃんゆっくりたちのほうを振り向いた。 数秒、躊躇する。 だが俺が少し手を動かすそぶりを見せると、諦めたのか、早口に捲し立てた。 「美味しかったよ! れいむたちはそこでゆっくり餓死していってね!」 「――っ!!!」 怒りを覚えながらも、それでも心の片隅で、信じ続けていたお母さん。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちの中で、その信頼という形が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが、俺にもハッキリ伝わった。 「ゆっ……ゆ゛っ……!!!」 「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!!!」 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉぉぉっ!!?」 「お゛があ゛ざんな゛んでも゛う゛おがあ゛ざん゛じゃな゛い゛よぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじん゛でね゛っ!!!」 「も゛う゛がお゛も゛み゛だぐな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉっ!!!」 怒号。悲鳴。絶叫。 ありとあらゆる不の感情の放出。 そしてそれに晒される、ゆっくり魔理沙。 「あ゛っあ゛あ゛ああああ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛ああああ゛あ゛ああ゛あ゛あああ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁっっっ!!! 一生分とも呼べそうな涙を流し、身を引き裂かれるような心の苦痛でじたばた暴れまわる。 きっと、伝えたいのだろう。 自分が親として、どれほど子供を愛しているのか。 子供が死んでしまったとき、どれだけ哀しみを共有したかったのか。 だけど、言えない。 言ったら、それこそ全てが潰える。 伝えたい、だけど伝えられない、極限のもどかしさ。 「――!!!」 これだ。 俺が求めていたものは。 俺が見たいのは『必死』なゆっくり。 そしてこのゆっくり魔理沙は、他のどのゆっくりも、究極的に『必死』だった。 その後、俺は加工所に赴き、『あるもの』を入手してきた。 その正体は後ほど披露するとして、その前に仕込みをしておかなければならない。 俺はお菓子を与えることを条件に、赤ちゃんゆっくり霊夢たちの生まれた順番を教えてもらうことにした。 そしてその順番通り、赤ちゃんゆっくり霊夢のリボンにマジックで番号を振る。 「ゆゆっ!? れいむのりぼんにいたずらしないでね!」 とか言われたけど無視。 ちなみに最初に死んだのは六女、先程虫に貪られたのは四女らしかった。 現在、箱の中には赤ちゃんゆっくり霊夢1、2、3、5、7の五匹が身を寄せ合って「ゆっくりできないよ!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙はまた狭い箱の中に閉じ込めた。ご飯をたらふく食べた分体積が増えたので、苦しさが増したようだった。 ゆっくり霊夢は他のゆっくりたちを助けるよう呼びかける声が五月蝿くなってきたので、申し訳ないと思いつつも猿轡を噛まさせてもらった。 後で好物のハンバーグを食べさせてあげるから許して欲しいところである。 「さて、と」 どうせなら、全部奇数にしてみるか。 俺は2の番号が書かれた赤ちゃんゆっくり霊夢を摘み上げた。 「ゆーっ!?」 「おねえちゃーん!」 「お、おにいさん、おねえちゃんをゆっくりはなしてね!」 姉妹たちがぴょんぴょん飛び跳ねて阻止しようとするが、赤ちゃんゆっくり霊夢2は既に俺の手の中だ。 いや、しかし冷静に見てみるとやっぱり可愛いよなこいつら。家を荒らさなければ思いっきり愛でてやったのに。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢2を床に降ろすと、加工所からの帰り道で拾った木の枝に糸と爪楊枝を結びつけただけの即席釣竿を構える。 そして赤ちゃんゆっくり霊夢2のリボンを解くと、素早く爪楊枝に結びつけた。 「ゆっ!? れいむのりぼんかえしてね!」 ゆっくりにとって、付けている装飾品を奪われることは死活問題に繋がる。 人間にとってゆっくりたちが身に付けている装飾品はただ食べられる素材で出来た食品に過ぎないが、ゆっくりたちにとって装飾品は固体を区別するための重要な機能らしい。 装飾品を奪われたゆっくりは目の前で奪われたのを目撃された場合のみを例外として、大抵ゆっくりたちから『ゆっくり出来ない存在』として忌み嫌われることになる。 理由はよく分からないが、そういうものらしい。 たとえ親兄弟だろうと、装飾品を奪われたゆっくりはその時点で『他人』となり、場合によっては暴力を振るわれることすらある。 だからゆっくりたちは装飾品に触れられることを嫌がり、取られた場合は取り返すために躍起になり、酷い時は他のゆっくりの装飾品を奪うこともあるという。 ちなみに死んだゆっくりの装飾品はその時点で死臭のようなものが漂い、身に着けてもすぐにバレるらしかった。 まったく、ゆっくりの生態はワケが分からなくて興味深い。 「かえしてね! ゆっくりかえしてね!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2はジャンプして爪楊枝に結びつけたリボンに食いつこうとするが、俺はギリギリのところで枝を固定しているため、届かずに落下してしまう。 「ゆ、ゆーっ! とどかないよ、どうしてー!?」 無駄な努力だと気付かず、半泣きでリボンに飛び掛る赤ちゃんゆっくり霊夢2。 うはー、かーわえー。 今俺の中では今すぐリボンを返して慰めたい気持ちとこのまま必死なゆっくりを観察したい気持ちが大体4 6くらい。 別にゆっくりが憎くてこんなことしてるわけじゃないしな。 ゆっくりは普通に可愛いと思う。 そして可愛いからこそ、こうして悪戯をしたいと思うのだ。 「ほらほら、どうしたー? もう少しで届くぞー」 「いじわるしないでかえしてね!」 息を切らしながらも、それでも死活問題なので意味の無い苦労を重ねる赤ちゃんゆっくり霊夢2。 姉妹ゆっくりたちも、その光景を固唾を呑んで見守っている。 目の前でリボンを取ったから一応姉妹だということを認識しているらしい。このままリボンを取り返せなかったら姉妹扱い出来なくなるから頑張って欲しい、といったところか。 ゆっくり魔理沙は体積が大きくなった分、箱の中の酸素が薄くなってしまったからか、とても息苦しそうだった。 おっと、これはいかん。 俺はゆっくり魔理沙の箱の蓋を開き、ゆっくり魔理沙の口が蓋側になるよう調節してやった。 「ゆ?」 困惑した様子で俺を見つめるゆっくり魔理沙。助けてもらえたのは嬉しいが、何故お兄さんがそんなことを、といった表情だ。 俺はにこりと微笑むと、爪楊枝からリボンを引き抜き、呼吸のために大きく口を開けていたゆっくり魔理沙の口内に放り込んだ。 「ゆっくり!?」 慌てて吐き出そうとするゆっくり魔理沙を押さえつけ、口が箱に押し付けられるような位置に調整し直す。箱内部はキツく狭いので、これで口を開くことは出来まい。 そして俺は一連の光景を呆然とした様子で眺めていた赤ちゃんゆっくり霊夢に、わざとらしいくらい大袈裟に言った。 「わー、お前のお母さん、お前のリボン飲み込んじゃったぞ!」 「ゆっ!? ……ゆっ……」 「リボンを失ったゆっくりがどうなるか、勿論お前のお母さんが知らないわけないよなぁ? つまり、お前のお母さんは、知っててわざと飲み込んだんだな!」 「んーっ、んんーっ!!?」 違うよ、間違いだよ、といった風に身体を小刻みに揺らすゆっくり魔理沙。己の口で俺の言い分を否定したいに違いない。 リボンを外して口に入れたところをちゃんと目撃したよね、と言いたいのだろう。 だが、赤ちゃんゆっくり脳の単純さを侮ってはいけない。既に母への信頼が0になっていたところに、俺の言葉が乾いた大地に落とした水のように染み渡ったのだ。 赤ちゃんゆっくり霊夢2にとって、俺はもう眼中に入っていない。こいつにあるのは『母が自分のリボンを食べた』その一点だけだ。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛う゛うう゛ううう゛うぅぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛うぅ゛ぅ゛ぅぅぅ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙と共に絶叫を上げ、ゆっくりにあるまじき凄まじい怒りの表情で母の入った箱に体当たりを仕掛けた。 「ひどい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 壁に当たって跳ね返っても、また果敢に体当たり。 ゆっくりとしてのアンデンティティを奪った相手を完全に抹殺しようとする、野生の生物としての本能。 憤怒。憎悪。殺意。 そしてそれらの悪感情を一心に浴びせられるのは、 「ん゛んっん゛ん゛ん゛ん゛んんんっー!!!」 今までこの赤ちゃんゆっくりを愛情込めて育て上げた母、ゆっくり魔理沙だ。 これまでの遠くから罵声を浴びせられる、ある意味まだ余裕があった間接的攻撃と比較して、これは直接自分を害しようとする行為を見せ付けられる最上級の拷問だ。 嗚呼、このゆっくり魔理沙の絶望と傷心と阻喪の入り混じったこの表情をカメラに保存して一生残しておきたいっ! 人はこのゆっくり魔理沙を哀れに思うだろうか。 でもしょうがないよね。 悪いことしたのはあっちだし。 この状態で赤ちゃんゆっくり霊夢2が家から逃げ出そうとすることはないだろう。 そう考えた俺は、一旦家の外に出ることにした。 扉の横には、加工所で購入した大小二つの箱が置いてある。 俺はそのうち、小さな箱を手に抱えた。 大きさは掌に収まるサイズ。 遠目から見れば結婚指輪を収納するアレに似ているかもしれない。 もっとも、中に入っているものはそんな幸せアイテムとは似ても似つかないものなのだが…… 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」 扉を開けて家に戻ると、まだやっていた。 昨夜から今に至るまでで、ゆっくり魔理沙の精神はどれだけ磨耗しただろうか。 虚ろな眼でただ虚空を眺めているだけの生物になりかけている。 これ以上は危険だな。 破壊してしまっては面白さが半減どころの騒ぎではない。 まだ赤ちゃんゆっくりはたくさんいるのだ、これが終わったら少し休憩にしよう。 俺は体当たりを続けている赤ちゃんゆっくりを摘み上げ、その身体に糸を巻きつけ始めた。 身体を縛るロープ代わりである。 「ゆっ!? はなしてね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は俺の手からぴょんと逃れて離れようとするが、糸の長さまでしか遠くに行くことが出来ない。 糸がぴんと張ったところで無様にぶしゃっと床に潰れ、ゆーゆー泣き始めた。 「それじゃ、ご開帳っと」 糸の先を左手の小指に巻きつけ、俺は外から持ってきた箱を開けた。 中に入っているのは、 「ちょっと、とかいはのありすをはやくだしなさいよね!」 生後まだ二週間にも満たない、赤ちゃんゆっくりアリスである。 大きさは赤ちゃんゆっくり霊夢2よりほんの少し大きな程度。 俺はその赤ちゃんゆっくりアリスの身体に、赤ちゃんゆっくり霊夢2と同じように糸を巻きつける。 「な、なにするのよ、ゆっくりできないじゃない!」 ぶーぶー文句を垂れる赤ちゃんゆっくりアリス。 だけど俺が用があるのはプライドの高い普通のゆっくりアリスではなく、他のゆっくりから恐れられている性欲魔人としてのゆっくりアリスである。 俺は糸の先を今度は右手の小指に巻きつけると、赤ちゃんゆっくりアリスの身体を人差し指で揺すり始めた。 「ちょ、ちょっと」 最初は嫌がって離れようとする赤ちゃんゆっくりアリス、だが次第に熱を帯び始め、呼吸が荒くなっていく。 ゆっくりを発情させることはゆっくり霊夢にやってあげているので日常茶飯事だが、発情しがゆっくりアリスの様子はゆっくり霊夢のそれとは大分違っていた。 口元のゆるみっぷりは半端無く、熱も溶けるんじゃないかってくらい上昇している。息も荒く、重い病気にかかった人間のようだ。 そして何よりも、目がヤバい。白目の部分を血走らせ、獲物を探して右往左往している瞳の動きは、はっきり言って気持ち悪いを通り越して、怖い。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!!!」 指を離そうとしたら、物凄い勢いで擦り寄ってきた。俺の指を孕まそうとしてるんだろうか。 俺は若干の恐怖を感じながら、赤ちゃんゆっくりアリスを箱から出して床に降ろしてやった。 すっかり発情した赤ちゃんゆっくりアリスの視線の先には、先刻から繋がれた糸をどうにかしようとぴょんぴょん飛び跳ねていた、赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿。 「れ、れれれ、れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ、ゆゆっ!!?」 とても成熟していない赤ん坊とは思えぬ素早さで赤ちゃんゆっくり霊夢2に襲いかかろうとする赤ちゃんゆっくりアリス、赤ちゃんゆっくり霊夢2はその剣幕にビビって逃げ出そうとする。 ピン。 「ゆべっ!?」 糸が最大限まで張り詰められ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は勢いよく転倒する。 その間に距離を詰める赤ちゃんゆっくりアリス、その口からはご馳走を前にした獣のように涎が溢れまくっている。 「が、がわ゛い゛ぃい゛い゛いよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉぉれ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆーっ!?」 まさに絶体絶命、赤ちゃんゆっくり霊夢2が慄いて悲鳴を上げる。 赤ちゃんゆっくりアリスは狂気の目で、赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛び掛った。 「り゛ぼん゛の゛な゛いれ゛い゛む゛もぞう゛じゃな゛いれ゛い゛む゛もあ゛り゛ずの゛ごども゛をう゛ん゛でぇぇぇぇぇぇ!!!」 ピン。 「れ゛い゛っむ゛ぐぅ゛!?」 しかし、ギリギリの位置で糸が届かず、赤ちゃんゆっくりアリスも転倒してしまった。 「ど、どう゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!? ごう゛びざぜでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 涙を溢れさせながら、それでも相手を孕ませるために前に出ようとする赤ちゃんゆっくりアリス。赤ちゃんゆっくり霊夢2からすれば、恐怖以外の何者でもない。 「さて、今こうして俺が糸を持っているから、均衡が保てているわけですが」 俺は奇妙な静止状態に陥った空間に、静かに言い聞かせるように告げる。 「俺がこうして少しでも糸を緩めると」 言いながら、赤ちゃんゆっくり霊夢2の糸を結びつけた小指を少しだけ前に出してやる。 「ゆっ、はなれたよ!?」 その分糸にゆとりが出来、赤ちゃんゆっくり霊夢2は危機からほんの少しだけ遠ざかることになった。 ゆっくりアリスは歯をギリギリ食いしばって悔しがっている。怖っ! 「逆にこっち側の糸をゆるめると」 今度は右手を前に。 すると赤ちゃんゆっくりアリスを押さえつけていた糸が緩み、ゆっくりアリスは猛牛のような勢いで赤ちゃんゆっくり霊夢2に接近する。 最初の時に比べてかなり近付いており、吐く息がお互いに届くくらいだ。 だけどくっつくことはかなわない。流石俺、ナイス調節。 「こうなるわけだ」 「や、やめてね! ありすのいとをゆるめないでね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2が涙声で俺に訴えかける。 当の赤ちゃんゆっくりアリスは既に相手を妊娠させること以外頭にないのか、俺の言葉が耳に届いていないようでハァハァ言いながらじっと赤ちゃんゆっくり霊夢2だけを見つめていた。 こいつ本当に赤ちゃんなのか? まったく、ゆっくりアリスという種族は末恐ろしい。 「では、ここで問題です」 俺は膠着状態に陥った二匹をしばらく観察した後、足で器用にゆっくり魔理沙の入った蓋を開けた。 そのまま足先でゆっくり魔理沙の身体を回転させ、口をしゃべれる位置にまで持ってきてやる。 勿論、ジャンプして逃げられないように押さえつけるもの忘れていない。 「ゆっくり魔理沙が答えられたら赤ちゃんゆっくり霊夢の糸をゆるめてあげます。間違えたなら赤ちゃんゆっくりアリスの糸をゆるめてあげます」 「ゆ……」 ゆっくり魔理沙はまたか、とでも言うように眉を顰めた。 だけど娘の命がかかっている。どうせ選択権もないし、やらざるを得ない状況だ。 ゆっくり魔理沙は何か言おうと口を開きかけ、 「やめてよね!」 と、怒りの篭った声が割り込み、口を噤んだ。 驚いてそちらを見ると、そこには赤ちゃんゆっくりアリスから少しでも離れようと身体をひしゃげながら、母に敵意を向ける赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿があった。 「おかあさんがこたえたられいむしんじゃうもん! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「そ、そんなことないよ! おかあさんはれいむのために」 「だまっててね!」 キッ、とキツい視線を浴びせられて言葉を詰まらせるゆっくり魔理沙。 やがて、じわじわとまた涙が溢れ出してくる。 「ど、どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 「おかあさんがいるとゆっくりできないからだよ! おかあさんはゆっくりしね!」 吐き捨てるような口調。 今まで黙ってことの成り行きをハラハラと見守っていた他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちも、賛同したように口を揃えて非難の声を上げた。 「そうだよ、おかあさんはゆっくりしね!」 「いもうとをかえしてね!」 「おかあさんのせいでぜんぶこうなったんだ!」 「おかあさんはもうゆっくりしなくていいよ、ゆっくりしないでとっととしんでね!」 リボンを失って少し時間が経過したゆっくりより、子供を裏切った母への怒りのほうが大きいようだった。 ここに、ゆっくり魔理沙の味方は一人もいない。 そろそろ『そんなれいむたちはまりさのこどもじゃないよぉぉぉ!』とキレるかと思いきや、俺が思ってた以上にゆっくり魔理沙はあくまでも母親だった。 「はやくもんだいだしてね!」 罵声の雨の中、それでも我が子を守ろうとするゆっくり魔理沙の姿に、俺はちょびっとだけ感動してしまった。 まぁ、全員助かった後で説明したらきっと分かってもらえるだろうという、ご都合脳なだけなのかもしれないが。 でも心を動かされたのは事実なので、問題は簡単なやつにしてやろう。 「では問題。答えは簡単、身体が弱くて喘息気味のゆっくり種といえば何でしょう?」 「ゆっ! 答えはぱちゅりーだよ!」 自信満々の回答。余程答えに間違いがないと確信しているのだろう。 ゆっくり魔理沙は今までの陰鬱な雰囲気はどこへやら、明るい表情で「さあ、赤ちゃんをたすけてね!」とのたまっている。 赤ちゃんゆっくり姉妹も、そんな母親を驚いた、だけど少し誇らしげに見つめていた。 やはり、母は母だったのだ、と。 俺はふっと笑い、 「ぶー、残念外れです」 僅かに見えた希望という光を問答無用で叩き潰した。 「な、なんで!? からだが弱いゆっくりはぱちゅりーしかいないよ!?」 納得出来ない様子のゆっくり魔理沙が俺に抗議の目を向ける。 俺はこの場にいる全ゆっくりに聞こえる大きさで、正しい解答を発表する。 「問題はちゃんと聞こうな。最初に言ったじゃないか。『答えは簡単』って。だから答えは『簡単』だよ」 「……ゆっ!?」 そんな馬鹿な話があるか、といったゆっくり魔理沙の表情。 何か変なことを言う前に、俺はまた芝居がかった声を出した。 「本当に赤ちゃんを助けるつもりがあったのなら、ちゃんと答えられたはずなんだけどなぁ。やっぱり赤ちゃんなんてどうでもいいから、助ける気なんてさらさらないんだね!」 「ち、ちがうよ! まりさは」 「はい、罰ゲーム!」 俺はゆっくり魔理沙が言い切る前に、右手の糸を緩めた。 今までお預け状態で気が狂いそうなほど我慢を強いられていたゆっくりアリスの枷が外れ、嬉々とした様子で赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛びつく。 「ゆ゛ーっ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は逃れようとするが、そちらの糸は緩めていないので、逃げ場はない。 「はぁはぁはぁ、れ゛い゛む゛ぅぅぅ、がわ゛い゛い゛ごをだぐざんづぐろ゛う゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「や、やだよ! れいむはまだあかちゃんなんてつくれないよぉぉぉぉぉ!!!」 「あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっい゛い゛よ゛おおぉぉぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅんほぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛っぐりや゛め゛でぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 激しい律動。 赤ちゃんゆっくりアリスは摩擦で燃え上がるんじゃないかと心配になるくらい自分の身体を赤ちゃんゆっくり霊夢2に擦りつけ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙をぼろぼろ流して逃れようとしている。 押し潰して殺してしまわないよう、成長したゆっくりアリスではなくその子供を連れてきたわけだが、そのゆっくりを押さえつける力は親にも引けをとらない 自分が気持ちよくなれば相手はどうなってもいいという身勝手な性行為。 元となったアリスさんとまったく似ても似つかぬ(まぁ、ゆっくりの大半は元の人物と似てないんだが)横暴さに、少し気分が悪くなってきた。 涙目で必死に逃げようとする赤ちゃんゆっくり霊夢2は可愛いんだけどね。 他の姉妹たちはその光景を見て、「はやくにげてね!」「おねえちゃんにへんなことしないでね!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙は子供を助けようと、俺の足の下でもがいていた。 そうこうしてるうちにやがて快楽の頂点に達したのか、赤ちゃんゆっくりアリスは感極まった声を上げた。 「イグッイグよ゛おおぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「や゛だぁぁぁぁイギだぐな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、……すっきりー!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 一際大きな声を上げたと思ったら、ゆっくりアリスはぶるっと一瞬震え、そして満ち足りた表情で身体を離した。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は壮絶な表情で固まっている。 やがて、にょき、と赤ちゃんゆっくり霊夢2の頭から蔦が伸び始め、植物界の常識を覆す速度で実を生らせた。 しかし、本来は子供が生るべきその場所は、泥団子しか存在しない。 当然だ。成熟していないどころか、この世に誕生してまだ一週間以上経過していないゆっくりが、子孫を残すことなんて出来るはずもない。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は苦痛としか形容出来ない表情のまま黒く朽ち果て、その短い命を終えた。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 ゆっくり魔理沙はまたもや子供を救うことが出来なかった悲しみで、何度目になるのか分からない涙を流す。 しかしそこに浴びせられるのは当然、 「なにうそのなみだをながしてるの!?」 「おねえちゃんをころしたのはおかあさんだよ!」 「かえして! おねえちゃんをゆっくりかえしてねっ!!!」 更に憎悪を増した子供たちからの罵倒の言葉だ。 先程、俺が言った言葉をまた思惑通りに受け止めてくれたらしい。 ゆっくり魔理沙はその言葉を聞いて、また悲しみに打ち震えて暴れだす。 俺はそんな光景に満足しながら、すっきりして落ち着いた様子の赤ちゃんゆっくりアリスを持ち上げ、残り四匹となった赤ちゃんゆっくりたちの箱の中に落とした。 「ゆっ!?」 予期せぬ闖入者、しかも相手は先程自分たちの姉妹を殺したばかりのゆっくり。 姉妹は警戒して距離を開くが、赤ちゃんゆっくりアリスがその辺を事情を知っているわけがなく。 「しょうがないから、あんたたちいなかもののゆっくりををとかいはのありすのおともだちにしてあげてもいいよ!」 とゆっくりアリス特有の上から目線で話しかける。 しかし、その言葉は姉妹の神経を逆撫でする結果にしたかならなかった。 ゆっくりアリスの丁度後ろに陣取っていた一番の長女、赤ちゃんゆっくり霊夢1が、まったくの無警戒の赤ちゃんゆっくりアリスのお尻に噛み付いた。 「ゆ゛ーっ!?」 突然の痛みに吃驚して悲鳴を上げる赤ちゃんゆっくりアリス、それが皮切りだったように、他の姉妹たちもゆっくりアリスに突撃した。 「ゆっくりしねっ!」 「や、やめなさいよ、やめでぇぇぇぇ!!!」 「ゆっくりしねっ、ゆっくりしねっ!!!」 「あ、あ゛り゛ずいな゛がも゛の゛でい゛い゛がら゛ぁぁぁぁぁ!!! だずげでえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 四方からのリンチにたまらず赤ちゃんゆっくりアリスが泣き叫ぶが、姉妹たちは聞く耳持たずに行動を続ける。 その様子を眺めながら、俺はゆっくり魔理沙の耳元にそっと囁きかけた。 「おやぁ、子供たちは赤ちゃんゆっくりアリスを殺すつもりだぞ? 止めなくていいのか?」 「ゆっ、ゆーっ!!!」 ゆっくり魔理沙はじたばた暴れるが、閉め直した箱が開くはずもなく、徒労に終わる。 ゆっくりがゆっくりを殺害することは禁忌だ。 例えどのような理由があろうと、ゆっくりがゆっくりを殺害すると他のゆっくりたちから何されようと仕方の無い状態になってしまうらしい。 だからもし他のゆっくりを殺さなければならない状況の場合、親が相手のゆっくりを殺害し、子供たちに非難が及ばないようにする。 それがゆっくりたちの流儀……らしい。 ちなみに性行為は殺害の範疇に当たらない。 「み、みんな、やめてね!」 ゆっくり魔理沙は子供たちを止めようとするが、興奮した子供たちにその声は届かない。 やがて赤ちゃんゆっくりアリスの皮が裂け、中のカスタードが漏れ始めた。 「……ゆっ!?」 漂い始めたいい匂いに、たまらず姉妹たちはごくりと唾を飲み込んだ。 朝は何も食べていないに等しく、一粒の米と少量のお菓子しか食していない空腹のゆっくりにとって、その香りはあまりに魅力的すぎた。 「お、おいしいよ、これ!」 「ひぎぃ!? ありすのかすたーどすわないでぇぇ!!!」 「ゆっくりたべるね!」 「あまくておいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「い゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 空いた穴という穴からカスタードを吸われ、赤ちゃんゆっくりアリスが悲鳴を上げる。 だが段々力を失って悲鳴が小さくなっていき、そして脱力し、その場に崩れ落ちた。 絶命。 子供たちがゆっくりを殺してしまった光景に、ゆっくり魔理沙はただただ泣き叫ぶしかなかった。 そしてその表情を見て、俺はまだまだ満足するのだった。 残り四匹。 まだまだ快感を味わえる。 続く このSSに感想を付ける
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深夜、夜食調達がてら向かったコンビニの帰り道 ふと道路脇にゆっくり霊夢がぴょんぴょん歩いているのを見かけた 「こんばんわ!」 歩いてきた俺に礼儀正しく挨拶するゆっくり霊夢 この辺の家で飼われているのだろうか、何にせよこの時間帯にうろうろしているのは珍しいことである 「こんばんわ」 足を止めてこちらからも挨拶 「こんなおそくに、なにしてるの?」 キョトンとした顔で聞いてくる 「夜食を買出しにいってたのさ」 「やしょく?」 「夜に食べるおやつのことだよ」 「ゆっ?おやつ!おやつ!」 おやつという単語を聞くなりゆっくり霊夢は飛んだり跳ねたり大はしゃぎだ 俺は買って来たお菓子が入っているコンビニの袋を開いて見せる 「おやついっぱい!」 「おにいさん!たべていい!?たべていい!?」 「ん?仕方無いなぁ、お家の人には内緒だよ?」 「わかった!ゆっくりするね!」 袋の中に頭を突っ込んでお菓子をボリボリと貪り始めるゆっくり霊夢 「うめぇ!めっちゃうめぇ!」 「マジパネェ!」 コンビニ袋がガサガサと凄い音をたてている 袋の中ゆえ表情こそは見えないが、その声は嬉しさに満ち満ちている そのゆっくり霊夢が入ったコンビニ袋を持ち上げると、袋の口を硬く結ぶ ゆっくり霊夢は食べるのに夢中でその状況にまったく気がついていない そうして、俺は乱暴に片手でその袋を振り回し始めた 「ゆ゙っ!?」 お菓子を貪る行為に夢中になっていたゆっくり霊夢は現状を把握できていない 「ゆ゙っ!?ゆ゙っ!?」 振り回す速度をさらにあげていく 「まッ、わ゙るょっ!まゎッ、る゙よっ!ゆ゙っ…ぐり゙っできな゙ッ、いよ゙っ!!」 遠心力で袋の底に押し付けられて上手く喋れないようだ そのまま思い切り全力で袋を回転させる 「や゙ぁ゙ッ…め゙ぇッ!おに゙ぃ゙ッさッ…!!」 必死に哀願するゆっくり霊夢、しかし回転が止むことはない 俺は縦に、横に、八の字に、とにかく乱暴に振り回し続けた 「…ッ!!…ッ!!」 10分も振り回しただろうか、全力でやっただけにこちらも相当疲れてきた 振り回していた腕をとめ、袋の中からゆっくり霊夢を取り出す 「ゼッ!!ゼパッ!!ゼッ!!!」 身体を斜めに傾け、白目を血走らせながら歯を剥き出しに激しく息を荒げるゆっくり霊夢 その顔は茹で上がったように真っ赤に変色し、凄まじいほどの血管が浮き出ている 呼吸するのに精一杯で、言葉を喋ることもできそうにない 袋の中は涙と涎と鼻水で酷い有様だ やがて、意識があるのか無いのか、身体をガクガクと震わせながらも俺から必死に遠ざかろうとしはじめた 「ゼパッ!!ィハッ゙!!ィハッ゙!!」 あまりの苦しさに、荒げた息から声が漏れる そして間も無く、その足がピタリと止まる 「…ッ」 「………ッ」 「………ウッ!……ンッ!……ンッ!」 激しく荒げていた息は止み、身体は大きくポンプのように上下する 「……ッん゙ェ゙え゙!!!!」 ゴボッ 鼻と口と目の隙間から 大量の吐瀉物が吹き出る 「ん゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ッ!!!!」 決壊したダムのように、あるいは壊れた蛇口のように 茶褐色の吐瀉物が、無尽蔵に溢れ出てくる 「ェェ゙ッ!!!……カッ!!……ゼハッ!!」 やがて大量の嘔吐は止み、斜めに傾きながらも吐瀉物の海の中で必死に呼吸をするゆっくり霊夢 「…カッ!!…ハッ!!…ハッ………んんんィ゙ェ゙ッ!!」 しかし間をあけると、再びえづき、嘔吐をしはじめた 嘔吐のせいで呼吸が出来ないのだろう、口をパクパクとさせている ゴポッ 「んん゙ん゙ォ゙お゙え゙゙あ゙!!」 ボトボトとその音は止まない 「んっ!!んふッ!!んふッ!!カッ…ふッ!!」 ギリギリと歯を食いしばって吐き気を耐えるが、非情にも嘔吐感の波は間をあけてゆっくり霊夢を襲うのだった 「ゆ゙ぐッ…ッ!…んふっ!ゆ゙ぐッ…ッ!…ンエレ゙ッ!!」 ゆっくり霊夢の嘔吐音を背に、俺は再びコンビニに足を向けた ~ゆっくり霊夢と遠心力~ END 選択肢 投票 しあわせー! (12) それなりー (4) つぎにきたいするよ! (3) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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発情期の野生のゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を窓の無い白い4畳間ほどの部屋に閉じ込める そこが安全な場所であることを確認すると、やがて交尾を始める 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっゆっ!ゆ゙ーっ、ゆ゙ーっ!…」 白目を向き、歯を剥き出しに全身を強く痙攣させるゆっくり霊夢 次第にゆっくり霊夢は黒ずんで朽ち、頭から二本の蔓をのばしはじめる そして蔓から数個の子供達を実らせる 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 計5個の小さいゆっくり霊夢の赤ちゃん達 ゆっくり魔理沙も微笑みながら 「ゆっくりしていってね!」 と返事する ゆっくり魔理沙と一緒にその場でピョンピョン跳ね回るゆっくり霊夢の赤ちゃん達 夜にはみんなで大人のゆっくり魔理沙に寄り添いあって床につく、実にほほえましい光景である 「あしたもゆっくりしようね!」 「ゆっくりするね♪」 「ゆっくりするー♪」 翌日、起きた順に仲良く部屋の中を跳ね回るゆっくり達 「おはよう!きょうもゆっくりしていってね!」 「ゆっくり!ゆっくり!」 最後の1個が目を覚まし、みんなご機嫌だ しかし、部屋に閉じ込められてからというもの、食べ物が一つとして部屋に入れられて来ない 当然、部屋の中には蝶々もバッタも、それどころか水ひとつありはしない 遊び疲れておなかを空かせたゆっくり霊夢の赤ちゃん達もやがて騒がしくなってゆく 「ゆっくりできないよ!」 「おなかへったよ!」 「うー!うー!」 ゆっくり魔理沙もここに入れられてからずっとご飯を食べていない、ここには捕食できるものは何一つ無さそうだ 鍵のかかったドアを押してみるが開く様子は無かった 「おにいさん!ここからだして!ゆっくりしたいよ!おうちかえして!」 外に開放するよう訴えるゆっくり魔理沙 外の世界の存在など知らないゆっくり霊夢の赤ちゃん達はそれを不思議そうに眺める 叫んだらさらにお腹が減ってしまった…、しぶしぶとドアの前から立ち去る すると、ゆっくり魔理沙の視界に一緒に部屋に入れられたゆっくり霊夢の亡骸がとびこんできた おそるおそると口に運ぶゆっくり魔理沙、数日前一緒に行動を共にしたそれは予想外に美味しいものであった ゆっくり魔理沙が黙々とそれを食べている姿を真似し、次々とそれに口をつけていく赤ちゃんゆっくり達 「すごい!ゆっくりできるね!」 「あまあま♪」 ゆっくり霊夢の亡骸を平らげると、皆満足げに眠りに落ちていくのであった 翌日から、目を覚ましたゆっくり達はふたたび食糧難に悩むことになる 「おなかへったよ!」 「ゆっくりできないよ!」 しかし部屋には食べ物一つありはしない その状況が、1日、また1日と過ぎていく …そして4日間が経過した この間まで元気だったゆっくり霊夢の赤ちゃん達も静まり返ってしまっている 「おなか…へった…よ…」 「ひゅー…、ひゅー…」 育ち盛りの赤ちゃんが、生まれてから一度しか栄養を摂取せずにいたのだ、もはや餓死寸前の状況だ やがて、ゆっくり魔理沙の目に、もう意識の無いゆっくり霊夢の赤ちゃんが飛び込んでくる これだ これしかないのだ ゆっくり魔理沙はゆっくりと瀕死のゆっくり霊夢の赤ちゃんに近寄ると、頭から思い切りかぶりついた 「ゆ゙っ!ゆ゙!ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」 痛みで意識を取り戻す瀕死の赤ちゃん 「や゙め゙でよ゙お゙っ!ゆ゙っ゙ぐり゙じよゔよ゙おっ!」 必死に抵抗するが、先ほどまで瀕死で動くこともできなかった身である、大人のゆっくり魔理沙と体力の差は歴然だ 「ハァ、ハァ…うめぇ!めっちゃうめぇ!…ッハァハァ…!」 がしゅがしゅと涎を垂らしながら品もなく食事を続行するゆっくり魔理沙 ゆっくり霊夢の赤ちゃんは全身を強く痙攣させながら 「や゙めでぇ…」 と、うわごとの様に繰り返し続けた 「…っ!!…っ!!」 他のゆっくり霊夢達は恐怖で動くことすらできずにいた ここに生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきたゆっくり魔理沙が 自分達をまとめてくれていた、ゆっくり魔理沙が 自分の仲間を襲い始めたのだ 食ったのだ 「がしゅがしゅ…ハァ…ハァ…!うめぇ!がしゅがしゅ…ハァハァ!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の赤ちゃんを綺麗に食べ終わると、大きなゲップを残し眠りにつく 残されたゆっくり霊夢の赤ちゃん達は部屋の隅に身を寄せ合い、恐怖に震えながらその晩を過ごすのであった 翌日、ゆっくり魔理沙は朝、昼、晩、と1個ずつゆっくりの赤ちゃんを食べていった 必死に抵抗されたが、所詮は赤ちゃんである、食べる程度造作も無い こんなにお腹が膨れたのは何日ぶりだろう、ここなら外敵に襲われる心配もないし、気兼ね無く睡眠をとることができる 「ゆっ♪ゆっ♪」 ご機嫌そうにゆっくり霊夢の赤ちゃんに近寄ってくるゆっくり魔理沙、その顔はどこか艶めいている すると突然、ゆっくり魔理沙は、震える最後のゆっくり霊夢の赤ちゃんに頬ずりをはじめた 抵抗する余力も無いゆっくり霊夢の赤ちゃんはおびえながら身を震わせる 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっくり!!」 突然強く身体を押し付けるゆっくり魔理沙 「ゆーっ!ゆーっ!ゆーっ!」 「…!!??」 息を荒くしてゆっくりの赤ちゃんのしかかる 「ハァハァ!…ゆっくりしていってね!」 そう、食欲と睡眠欲を満たしたゆっくり魔理沙が生殖行為をはじめたのだ しかし、相手はまだ生まれて間もないゆっくり霊夢の幼生である 「…!?…や゙っ…や゙め゙っ…ゆ゙っぐっ…!」 懸命にもがき、言葉を口にしようとするが、密着した魔理沙の体が邪魔してうまく喋ることができない 「い゙や゙あ゙あ゙゙あ゙っ!!」 行為に耐えられず悲鳴をあげる最後の赤ちゃん その顔は、白目を剥いて、口の横から泡が溢れ出して痙攣している 「ングッ…ハァハァ…!…ハァハァッ!ッゆっくりしていってねっ!!」 ゆっくり魔理沙は声をあげると、途端にぶるぶると小刻みに身体を震わせはじめた 生殖の開始である 「んい゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙っっ!!」 切なげな絶叫が部屋に響いていく… 行為が終了して数時間後、ゆっくり霊夢の赤ちゃんは黒く朽ちはて、その頭からは蔓がのび、数個の実をつけていた しかし、そのうち2個をのこして、他の実は全てドロ団子である そのドロ団子は小刻みに震え、口と思わしきところをパクパクとさせている そう、それは形状を完成させることができなかった奇形のゆっくりの子供達 まだ、ゆっくり霊夢が成長しきっていない体にもかかわらず、生殖行為を強要された結果である その状態では、恐らく生まれてから一日と持つことはないだろう やがてボトボトと蔓から子供達が落ちてくる 衝撃で2個の元気なゆっくり霊夢の赤ちゃんが目をさます 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくり魔理沙の挨拶に答える2個のゆっくり霊夢の赤ちゃん達 3個は笑顔でその場をピョンピョン跳ねる それはいつかのような、微笑ましい光景であった ~ゆっくり永久機関~ END 選択肢 投票 しあわせー! (0) それなりー (5) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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俺は今、人間の里の商店街で行われているゆっくり加工工場主催のゆっくり福引抽選会場でガラガラに手をかけていた。 商店街でゆっくり加工工場認定の店で買い物をすると福引券がもらえ、この抽選会場でガラガラを回して出た玉の色を回すと商品がもらえるというよくあるな福引だ。 変わっている点といえば商品がすべてゆっくり関連なことくらいだ。 大体生ゆっくり一匹分程度の買い物をすると ハズレでもゆっくり餡子製のお菓子がもらえ、近所では『大したものは当たらないがそこそこ当たる』と評判の福引だった。 俺の持っている福引券は20枚。 ゆっくり20匹分は買い込み過ぎだろと思うかもしれないが、それでも俺にはどうしても欲しい商品があった。 一等景品『ペット用最高級ゆっくりフラン。』 このゆっくり福引の輝かしき一等景品の存在を知ったのは冬越しに必要なものを買い込もうと商店街のチラシを見ていた時だった。 あの圧倒的な暴力性、自らの存在より強いものは存在しないと信じる強大な自我 男の子なら一度はあこがれる百ゆっくりの王者である。 しかしゆっくりフランはかなりの希少種で繁殖力も低いため養殖も未だ軌道に乗っておらず市場ではほとんど出回っておらず 野生種の生息地域もかなり危険度の高い妖怪の住処の付近なため 食用は無論のことペット用の生きたゆっくりフランとなるとそこらの人間にはとても手が出せないほど高かった。 ゆっくりフランを一度で良いから間近で見てみたいものだ、そう思っていた矢先に舞い込んできたのがこの話であった。 ゆっくりフランが手に入るなら冬越しの食料がほとんどゆっくり餡子でも惜しくは無い、冬越し用の貯金はほとんどゆっくり食品に注ぎ込みここに立っているのだ。 その決死の覚悟こそが勝利を呼び寄せる。 ちょっとした買い物のついでに来た周りの盆百共とは格が違う。 贄は捧げた、さあ廻れ運命の歯車よ、我が手に百ゆっくりの王者を来たらせたまえ! ハズレ、8等ゆっくりの育て方Q&Aカラー図解付、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、6等ゆっくり魔理沙 ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、9等ゆっくり和菓子詰め合わせ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ 19回がらがらを回して急に冷めた。 何やってるんだ俺。 今年の冬ずっと餡子食ってるとかバカじゃねーのバーカバーカ。 脳味噌ゆっくりしろ俺。 これでゆっくりフランを手に入れられなかったらただのバカだ。 いや既にまごうこと無きバカだ。 自分のバカさ加減に心底嫌気がさしながら最後の一枚でガラガラを一回だけ回した。 するとコロン、と穴から金色の玉が転がりだす。 「お、お、おおおおおおおおおおおお!!!」 俺は思わず叫び声をあげた。 神様ありがとう、いや違う、これはそんなくだらない奇跡なんかじゃない。 この奇跡は俺の力で運命から勝利を捥ぎ取ったという証明なのだ。 「おめでとうございます!」 今年の冬はゆっくりフランと一緒に餡子入りパスタライフを送ろう。 さあ早くゆっくりフランを俺に渡してくれ店員さん。 「出ました!特賞、『ゆっくり霊夢一年分』!!」 なん…だと…? そういう訳で俺は加工工場製の箱詰めゆっくりに部屋を8割ほど占拠された状態で明かりも付けずにひざを抱えて涙目でプルプルしていた。 「ゆっくりはやく出してね!」「ゆっくりせまいいいいいいいい!!!」「ゆっくりうごけないよ!」「ゆっくり動きたいよ!」「こわい!おうちかえる!」 何が『おうちかえる!』だ、俺の方が実家に帰りたい、帰ってお袋や父と共に餡子の介入してこない食卓を囲みたい。 季節は冬になり、俺の家はゆっくりによる全食事への餡子介入が行われていた。 家にゆっくり霊夢が発生し、食料に打撃が与えられた場合 そのゆっくり霊夢を捕獲してゆっくり加工工場に売ってお金にして少しでも損害を補填するのがセオリーなのだが既製品は流石に加工工場も買い取ってはくれない。 そんなわけで、このゆっくり霊夢はすべて加工工場製だし自業自得なので工場に売り飛ばすというわけにも行かない。 流石にこんな事情では実家に帰ってたかるのも憚られる。 ということでゆっくりに冬越し用の貯金を全て注ぎ込んだ俺の食生活は餡子に蹂躙されるがままになっていた。 そんな生活が一週間ほど続き俺の中には沸々とゆっくりへの憎しみが湧き出してきていた。 「おにいさんゆっくりげんきだしてね!」 今俺を励ましたのは6等で当てたゆっくり魔理沙。 少しでもこの大量の餡子を減らすために外に出して運動させて餌に餡子を食わせている。 今のところなんの餡子かは気づいていない。 ああ、思えばこいつを当てた福引でゆっくりフランを当てられたかもしれないのに、そう思うとこのゆっくり魔理沙に対しても怒りが沸いて来る。 逆恨みなのはわかっているが、三食全て餡子生活を送っている俺の胃袋がムカムカして仕方ないと吼えて仕方が無いのだ。 復讐、この餡子まみれの現実から少しでも目を逸らすには俺にはもうこのゆっくり達に憎しみをぶつける以外の選択肢は無い。 それから俺は三日三晩、足りない頭で考えられる限りもっとも辛い拷問を考え続け、ついに考えうる限り最高の拷問を考え出した。 さらに準備に2日ほどかけ、今しがた、せめて冬の間に一食くらいは肉を食おうと思って残しておいた金で必要な道具を買い家に帰ったところだ。 完全に準備は整った、今こそ実行に移すときだ。 『ゆっくりしていってね!』 「お、ちゃんとゆっくりお留守番出来てたみたいだな、ほーらご飯だぞー」 玄関で待ち構えていたゆっくりに俺は懐に入れてある外から来た品の『たっぱ』 (大量の餡子と交換でいやそうな顔をする店主から手に入れた。)から餡子を取り出しゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢に与えた。 「わーい!」 「おにいさんだいすきー!」 「むーしゃ♪」 「むーしゃ♪」 『しあわせー♪』 二匹は仲良く餡子を分けて食べあう。 これだけおいしそうに食べられると天国のゆっくり霊夢(屠殺済み)も本望だろう。 ゆっくり魔理沙と一緒にいるゆっくり霊夢は二日前に箱から出してゆっくり魔理沙と遊ばせている。 無論餌は餡子だ。 いくら与えても何の餡子か全く気づかないのでもしゆっくり霊夢一年分が処理できなさそうな時は共食いさせれば大丈夫だと胸をなでおろしたものだ。 「さ、ゆっくり魔理沙もゆっくり霊夢もいい子だから今日はあっちの部屋で遊ぼうか?」 「あっちでもゆっくりしようね!」 「ゆっくりあそぼうね!」 「はっはっは、さあこっちだ」 俺は昨日の夜、計画を遂行するためにセッティングしておいた部屋にゆっくり二匹を抱えていった。 「ゆっくりだしてね!ゆっくりだしてね!」「ゆ゛っぐりおながずいでぎだよ゛ぉお゛おおお゛お゛」 「お゛うぢがえる゛~お゛うぢがえる゛~!」「ゆ゛っぐりう゛ごぎだい゛いい゛い~~!」 『ゆ゛!?』 部屋に入り、四方の壁一面にずらりと並べられこちらを見て助けを求める箱詰めゆっくり霊夢にぎょっとするゆっくり二匹。 「どうしてこんなひどいことするの!?」 「みんなもれいむみたいにゆっくりだしてあげてね!」 「こんなことするおにいさんとはゆっくりできないよ!!!」 ゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が抗議の声をあげた。 「めんごめんご鬼めんご、一度にみんな出したらぎゅうぎゅうづめになってゆっくり出来なくなると思ったから 少しづつゆっくり箱から出していこうと思ってさ、その証拠にほら」 「ゆー?」 そういって机の下で遊ばせていたゆっくり一家をひっぱりだす。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりちていってね!」 「ゆゆ?」 若いお母さん霊夢がゆっくり二匹に挨拶をし、それに続いて赤ちゃん霊夢たちが挨拶をする。 『ゆっくりしていってね!』 「おにいさんうたがってごめんね!」 「みんなでゆっくりしようね!」 『ゆっくり出していってね!!!!!』 その様子を見て安心したのか俺に謝罪の言葉を述べるゆっくり二匹。 それに続いて出してもらえると言われた周りのゆっくり霊夢たちも友好的な声音でこちらに声をかけてきた。 「ゆ~♪」 「ゆっ♪ゆっ♪」 「ゆっくり~♪」 「ゆっくりしてるね♪」 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙について机の上を跳ね回り、赤ちゃんゆっくりがそれを追ってころころところがっていく。 そんな風景を見てお母さん霊夢も満面の笑みで見守っていた。 そんな風に遊ばせて30分程度たっただろうか。 「さ、他のゆっくりたちも遊ばせなくちゃいけないからこっちでじっとしててね」 そういって、もともと入っていた箱の中にお母さん霊夢を戻し、赤ちゃん霊夢は、既に宿主の居ない空き箱にしまう。 「ゆ~!もっとゆっぐりぢだい~!!!」 「ゆっくりがまんしてね!」 お母さん霊夢がまだ遊びたいという赤ちゃんゆっくり達をなだめた。 さて、そろそろゆっくりした時間は終わりにして本番に入ろうか。 俺はゆっくり一家のことは一旦ほうっておいてゆっくり魔理沙に近づいて問いかけをした。 「ねえねえ、ゆっくり魔理沙はどのゆっくりが一番好き?」 「ゆゆっ!?」 突然の質問にゆっくり魔理沙は面食らった。 「ゆ…まりさはこのれいむがいちばんすきだよ!」 ゆっくり魔理沙は顔を少し赤らめながら笑顔でそう言うとゆっくり霊夢に近づいてほお擦りをした。 ふう、おにいさんがだいすきって言われたらどうしようかとちょっと緊張しちゃったよ。 これで思う存分拷問できるというものだ。 「ゆ…ゆ゛っ!?」 今度はゆっくり霊夢が面食らう番だった。 「れ、れいむもまりさがいちばんすきだよ!」 「ゆ!…ゆゆっ♪」 「ゆっ♪」 『いっしょにゆっくりしようね♪』 二匹にとっては衝撃の告白の後、お互いの友情を確かめ合った二人はうれしそうにほお擦りをしあっている。 それでこそこの二日間ゆっくり遊ばせて友情を育ててやった甲斐があるというものだ。 俺はむんづとゆっくり魔理沙と仲良くしているゆっくり霊夢の方の頭をつかむと箱にしまった。 「ゆゆっ!?」 「ゆ?れいむをはやくだしてあげてね!」 「はいはい、わかってるわかってる」 俺は別の箱から違うゆっくり霊夢を出すと高速でゆすり始めた。 「ゆ!?ゆ゛っゆ゛っゆ゛ゆ゛っゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!!!?」 「ゆ!まりさのだしてほしいれいむはそのれいむじゃないよ!ゆ゛!?ゆ゛っ!」 俺は抗議の声をあげるゆっくり魔理沙もつかむとこちらは軽くマイルドに振動させた。 「ゆ、ゆ~~~~~」 「ゆゆ…」 ゆっくり霊夢の方は完全に発情状態 ゆっくり魔理沙の方はぽっと顔を赤らめて少し息を荒くしている。 俺は既にゆっくり発情テクニックを『ゆっくりの育て方Q&Aカラー図解付』を読みながらゆっくり霊夢で練習することで完全にマスターしていた。 ちなみにその過程でやたらたくさん出来た赤ちゃん霊夢は普通のゆっくり霊夢餡子ばかり食べてた俺の食卓のいい彩になった。 完璧に出来上がったのを確認すると机の上に自作の柵を立てて二匹を放置した。 絡み合う熱っぽい視線、触れ合う吐息 やがてゆっくり霊夢の方が我慢出来ずにゆっくり魔理沙を押し倒した。 「ゆっくりイこうね!」 「ゆ…ゆゆゆ~!?ゆ゛、みんなみてるからゆっくりやめてね!ゆ゛っ!ゆ゛っゆ゛っ!」 最初は驚いて抵抗しようとしたゆっくり魔理沙だったが既に軽い発情状態にあったためだんだんと相手を受け入れていく。 悲鳴を上げたのはゆっくり魔理沙と親友のゆっくり霊夢だった。 「ゆ゛ぅぅう゛う゛ううううううう゛!!!そのまりさはれいむのおともだちだよ!!ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛!ゆゆ゛!き、きもちい…」 ゆっくり霊夢の激しい振動にゆっくり魔理沙が思わず媚声をあげてしまう。 「!?どうじでぇえ゛え゛!!!どうじでなのま゛りざぁああ゛ああ゛!!!」 「ぢがうのれ゛いむゆゆゆうううううう!!!」 「ゆ゛!いぐ!ゆっぐりいぐぅうううううううう!!!!」 「い゛や゛ぁああ゛あああ゛あ゛あ!!ま゛りざを゛よござな゛いでぇええ゛ええ゛え!!!」 ゆっくり霊夢が絶頂に達しそうになった時、遂に俺の計画が発動した。 「ハンマープライズ!」 「すっきゆでぶぢゃぁああああああ!?」 「ゆ?ゆ゛うううううううううう!?」 俺は特に意味の無い掛け声をあげつつ隠し持っていた金槌で絶頂に達した瞬間のゆっくり霊夢を一撃で叩き潰した。 ははははこの瞬間をこれまで待っていたのだ。 「どうじでええええええええ!!!おにいざんどうじでごんなごどずるのぉ゛おおおお!?」 一瞬前まで肉体を絡め愛し合っていた相手が餡子の塊になりはてゆっくり魔理沙は半狂乱になる。 『いやあああああああ!』『ゆっくりできないひとはかえってね!』『まりさのえっちー』 周りのゆっくりからも非難の声が上がったがそんなことは気にせず俺は別のゆっくりを取り出した。 「ゆ!?ゆっくりできないおにいさんとはいっしょにいられないよ!はやくはなしてね!」 つかまれたゆっくり霊夢が何か言っているがそんなことは気にせず俺は再び激しくゆっくり霊夢をヴァイヴレィションさせた。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ぅ!?ゆ、ゆゆゆゆゆぅ~」 俺の超絶テクニックの前に瞬く間に発情しとろんとした顔になる霊夢を俺は机の上に置いた。 こうなるともうゆっくり出来ないお兄さんなんてどうでもよくなる、大事なのは目の前のかわいいゆっくり魔理沙のことだけのはずだ。 「ゆ゛ゅ゛ゆ゛ぅ~!!!?」 再び繰り広げられる媚態。 「ハンマーチャンス!」 ゆっくり霊夢がイキそうになる寸前に俺は再びハンマーを振り下ろした。 「ゆ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 媚態と同じく再び繰り広げられる残虐劇、いやさ餡虐劇。 周りのゆっくり霊夢たちは一様に悲鳴と嘆きの声を上げた、ただ一匹を除いては。 「れいむのまりさにてをだすこはゆっくりしんでね!」 ゆっくり魔理沙の親友のゆっくり霊夢だ。 当初の予定通りなかなか面白い餡子模様になってきたが今はこの餡虐劇(グアンギニョル)を繰り返すのが楽しいので放って置いた。 っていうかノってきたぞ俺ヒャッハー。 「ゴルディオンハンマー!」 「すっきrゆわらば!?」 「ドッガバイト!」 「すっきゆわった!?」 「ハンマーミョルニル!」 「すゆってれぼ!?」 大分餡子塊が増えてきたところでそれぞれのゆっくりの様相も変わってきた。 「ゆ…ゆ…どうじで…」 連続交尾で息も絶え絶えのゆっくり魔理沙が俺に抗議の声をあげようとしているので耳を傾ける。 「どうじでま゛り゛ざばずっぎりざぜでぐでな゛いの゛ぉ゛お゛おお゛お゛!!!??????!!!!!!????」 待ちに待ったその言葉を聞いて俺はニヤリとした。 俺の拷問プログラム【ProjectO-nakin】が遂に実を結んだのだ。 そう、俺の考えたもっとも辛い拷問計画とはオナ禁、すなわち性欲を限界まで高め、尚発散させないことなのだ。 しかしただのオナ禁ではつまらない、そこで交尾の最中に相手を叩き潰してお預けを強制させ続けるという方法に出たのだ。 もし人間にこれをやったらPTSDから確実にインポテンツを患うだろうがそこはゆっくり、記憶力の悪さとその本能への忠実さからあっさり性欲に負けている。 【ゆっくりは非常に本能に弱く、しつけが難しいので注意してください】『ゆっくりの育て方Q&Aカラー図解付』P25より抜粋 と書いてあった通りだ。 そして他のゆっくり霊夢たちにも変化が出てきた。 「い゛や゛あああああああああ!ゆっぐりイ゛ギだくなゆ゛っ!ゆ゛っ!」 絶頂に達すると殺されるということを理解しだしたのだ。 しかし必死に俺のテクニックに対抗して性欲を我慢しようとするも結局は発情してすっきりしたところで金槌の餌食だ。 さて、そろそろ飽きてきたので次の段階にいきたいと思う。 俺はつかんだゆっくり霊夢に振動を与えずにそのまま机の上に放り投げた。 「ゆ?ゆ~これならゆっくりできるよ!まりさもゆっくりしようね!」 発情さえさせられなければゆっくり魔理沙と交尾して金槌でつぶされることも無い。 そう思ったゆっくり霊夢は笑顔で魔理沙に近づいていく。 「ゆ゛…ゆ゛おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 「ゆ゛!?い゛や゛あああああああああ!」 次の瞬間ゆっくり霊夢はゆっくり魔理沙に押し倒されていた。 「ゆっぐりイギだく゛な゛い゛いいいいいいいいい!!!や゛め゛でえ"え"え"ええ゛えええええ゛!!!!!」 「ごべんね゛!ごべんね゛!でもぎも゛ぢぃ゛い゛んほぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 ゆっくり魔理沙は自分の性欲に負けてゆっくり霊夢をレイプし始めた。 「ゆ゛ぐぅ!ゆ゛ぐぅ!ゆ゛ぎもぢぃい゛!いぐぅぅぅぅ!!!!!」 「ゴルディオンクラッシャァアアアアアアアアア!!!!」 結局ゆっくり霊夢の方が早く絶頂に達し金槌の洗礼を受けた。 実を言うとゆっくり魔理沙の方にはゆっくりの繁殖を抑えるためのヤゴコロ印のゆっくり発芽抑制剤を混ぜた餡子を与え続けておいたので そう簡単に絶頂を感じることは出来ないようにしてある。 ちなみに薬代はまだ払っていない、永遠亭は支払いを気長に待ってくれるのでこういう時は本当に助かる。 ただ集金に来る兎と目を合わせると罪悪感で頭がぐるぐるするのが困りものだ。 「あああああああああああああああ!!!!どうじでえええええええ!!!!どうじでまりざがずっぎりするまえにづぶじぢゃうのおお゛!? ま゛り゛ざがぎもぢよぐなっでがらづぶぢでよおお゛お゛!!」 ヤゴコロ印の薬の効果の程とゆっくり魔理沙が完全に出来上がってケダモノと化したのを確認した俺は最初にしまった赤ちゃんゆっくりに手をかける。 「ゆ?」 「!?ゆっくりはなしてあげてね!ゆっくりはなしてあげてね!」 まだ状況をよく理解できていない赤ちゃんゆっくりと事情を理解して必死に俺に懇願するお母さんゆっくり。 俺はお母さんゆっくりの懇願は無視して赤ちゃんゆっくりを机の上に置いた。 「ゆー?ゆ!まりさおねいさんゆっくりあそぼうね!」 「ゆ゛ゆ゛ぅうぅぅうぅぅ……ゆ゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 さっき遊んでもらっていたゆっくり魔理沙の所に連れてきてもらってご満悦の赤ちゃんゆっくりはぴょこんぴょこんはねながらゆっくり魔理沙に近づいていった。 その無邪気な姿を見てゆっくり魔理沙は一瞬戸惑ったが限界まで性欲をお預けされゆっくりアリスクラスの性闘士(セイント)となったゆっくり魔理沙は かまわず赤ちゃんゆっくりの体を押しつぶして激しく体をゆすり始めた。 「ゆ゛ぎぃぃぃっぃい!?お゛ねえ゛さ゛んやめでえ゛え゛え゛え゛えええええええ!!!」 「い゛や゛ぁああ゛あああ゛あ゛あ!!や゛べでえ゛えええ゛ええ゛え゛え゛ええええ!!!」 「ゆ゛ごお゛おお゛お゛!れ゛い゛む゛ぢっじゃぐでぎもぢい゛い゛い゛よ゛ぉおお゛お゛」 「おねえざんどうじでごんなごどずるのお゛お゛おお゛!?ぼっどゆ゛っぐりじようよ゛おおお゛!!!」 「むほぉおおおお!!!むほぉおおおおおお!!」 「れ゛い゛む゛のあがぢゃんをばなじでぇえ゛え゛え゛ええええ!!!! ゆっぐりざぜであげでええええええええ!!!」 顔中から餡子汁を出して快感を貪り食うゆっくり魔理沙と いっしょに遊んでくれていたゆっくり魔理沙がなぜこんな酷いことをするのかわからず泣き叫ぶ赤ちゃんゆっくり。 赤ちゃんゆっくりを陵辱されて絶叫するお母さんゆっくりの悲鳴の三重奏が俺の部屋で奏でられた。 「うそ…こんなのうそだよね…みんなはやくゆっくりしようね…」 そして親友の所業を信じられないという面持ちで見つめるゆっくり霊夢が居た。 「ぼっど…ゆっぐりぢだがdぐべちゃあああああ!!!!」 『あああああああああああああああああああああ!?』 赤ちゃんゆっくりがついにゆっくり魔理沙の行為に耐え切れずに弾けとび、ゆっくり魔理沙とお母さんゆっくりは同時に悲鳴を上げた。 二匹の悲鳴の意味は全く異なったものだが。 「れ゛い゛む゛のあがぢゃんがあああああああああああ!!!!!!」 「まだずっぎりじでだいどにいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 「ほーらそんなに悲観するなよ、まだまだお相手はたくさんいるんだから」 そう言うと俺は次々と赤ちゃんゆっくりを机の上に放り投げた。 『い゛や゛ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』 「ゆ゛…ゆっくりすっきりしようね!!!!!!!!!!!!!」 ゆっくり魔理沙に交尾を強要され次々と押しつぶされて餡子塊になっていく赤ちゃんゆっくり。 それを見てお母さんゆっくりは餡涙を流して暴れだした。 「そうかそうか赤ちゃんがつぶされて悲しいよなぁ…」 赤ちゃんゆっくりを全て潰させたところで俺はお母さんゆっくりに話しかけながら頭をつかむと机の上に投下した。 「ゆ…ゆ…ゆ゛っぐりじねま゛り゛ざああああああ!!!!」 「ゆぉおごおおお!?」 投下されるとすぐにお母さんゆっくりはすさまじい勢いでゆっくり魔理沙に体当たりを敢行した。 「おおっと!」 余りの勢いに俺の手作りの柵が壊れそうになって慌てて抑える。 「よぐもれ゛い゛む゛のあがぢゃんをおおおおお!!!」 「ゆぐぉっ!でぢゃう!あ゛んごでぢゃう゛う゛う゛」 命に関わるレベルで押し捲られてもしっかり体を振動させて快感を得ようとしているとは見上げた性欲だ。 しかしこのまま魔理沙が潰されてしまっては面白くない。 「むろ☆ふしっ!!!」 「ゆげぇ!?」 そこで俺は少し手加減して死なない程度にお母さんゆっくりを金槌で叩いた。 お母さんゆっくりの口から餡子が噴出す。 「ゆゆっ!すっきりしようね!いっしょにすっきりしようね!」 「ゆ゛べ゛ぇ!い゛や゛ぁ!い゛や゛ぁ!」 形勢が逆転したと見るやすぐさまゆっくり魔理沙がお母さんゆっくりを犯しにかかった。 なんという性欲、この魔理沙ならうまくセッティングすればアリスでさえレイプできるかもしれない。 どこかにちょうどいいゆっくりアリスがいないだろうか。 「ゆ゛っゆ゛っごべんね゛…おがあざんをゆ゛るじんほおおおおおおおおおお!!!!!すっきりー!」 「ま゛り゛ざも!ま゛り゛ざもすっきりさせてね!」 「もっこり断罪怒りの100tハンマー!!!!!」 「ゆばひょっぶ!?」 「あああああなんでま゛り゛ざだげえええええええええ!!!!!」 おっと変なことを考えていたら金槌を振り下ろすタイミングが遅れてしまった。 危ない危ない魔理沙を絶頂に達しさせてしまったらせっかくの楽しい拷問が終わってしまうところだった、失敗失敗。 そんなことをし続けて一刻半ほどたっただろうか。 「ま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛いま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛い ま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛いま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛い」 魔理沙が大分げっそりしてブツブツ言い始めた。 そろそろ潮時だろうと思い俺は最終段階に移ることにした。 「魔理沙や魔理沙や」 「ま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛いま゛り゛さ゛も゛すっき゛りし゛た゛い…」 「次の相手とはすっきりするまでゆっくりしてていいんだよ」 「ゆゆ゛!?もうとちゅうでひどいことしない!!?」 「ああ、もう途中で金槌たたきつけたりしないからゆっくり愛し合っていいんだよ」 「ほんと!?はやく!はやくすっきりさせてね!」 「そんなガッツかずにゆっくりしなって、ほら」 そう言うと俺は最初にゆっくり魔理沙と遊ばせていたゆっくり霊夢をそっと取り出して机の上に置いた。 「れいむ!れいむ!ハァハァまりさはれいむがいちばんすきだよ! まりさのだいじなはじめてのすっきりはれいむのためにとっておいたよ! だからはやくすっきりさせてね!」 ゆっくり魔理沙は親友のゆっくり霊夢とすっきり出来るとわかり大喜びでゆっくり霊夢に近づいていった。 「ざけんじゃねぇこのうすぎたないしろくろがっ!ゆっくりしねぇ!!」 「ゆげぇ!?」 無防備に近づいていったゆっくり魔理沙にゆっくり霊夢のカウンター体当たりがクリティカルヒットする。 「ゆ゛…な、なんでぇ…なんでなのれ゛い゛む゛ううううううう!!!!」 「まわりをよくみてから言ってね!こんなひどいことするまりさはゆっくりはやくしんでね!」 そういって餡子だらけになった机の上を見渡すと度重なる交尾で疲れきった魔理沙に ゆっくり霊夢が上に乗ってドスンドスンと飛び跳ねるとゆっくり魔理沙からビチッ、ビチャッと餡子が飛び散った。 「ゆげぇっ!ゆびゃあっ!やべっ!やべでれ゛い゛っぶべっ!?」 「れいむはしんじてたのに…ま゛り゛ざのごどじんじでだどに゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 上に乗っかってるゆっくり霊夢も餡涙を流すのであたりは飛び散る餡子ですごいことに、既に餡子まみれなので大差ないが。 「ゆべほっ!ま゛、ま゛り゛ざもずっぎりじだがっだの゛に゛い゛い゛い゛!!!!」 それがゆっくり魔理沙の断末魔となって、彼女は遂に潰れて死んだ。 それを確認して俺は金槌で上に乗っかっていたゆっくり霊夢を壁にたたき飛ばした。 ゆっくり霊夢はべちゃり、と壁際のゆっくり箱に張り付いてそのままずるずる落ちていく。 全てが終わり、俺の心は空虚さに支配された。 俺は昼食代わりにひしゃげて潰れたゆっくり魔理沙を手にとって口に入れた。 ああ、今ならわかる。 俺はゆっくり魔理沙が好きだった。 餡子付けの俺を慰めてくれる唯一の存在である彼女が好きだった。 だから、わかって欲しかった。 この胃のむかつき、もたれを。 だから彼女に同族の餡子を食わせ続けたのだ。 そして気付いて吐き出して欲しかった。 三食餡子尽くしの辛さを、擬似的にでも分かち合いたかった。 「どうして、どうして君はゆっくり餡子を三食ともあんなにおいしそうに食べてしまったんだああああああああああああああああああああ!!!!!!! うわあああああああああ!!!うわあああああああああああああ!!!!」 近所から苦情が来るまで俺の慟哭は続いたのだった。
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俺は森でゆっくり霊夢を拾ってきた 理由は抓りがしたいからである 俺は森の中でなるべく幼いゆっくり霊夢を探したら、あっさり見つかった クッキー1枚あげて「僕についてきたらもっとあげるよ」と言ったら飛び跳ねてホイホイ着いてきた 家に着くと、ゆっくり霊夢は俺より早く部屋にあがりこみ、中心で跳ねながら 「おじさん!はやくくっきーちょうだい!」と喚き始めた 俺は安物のクッキーを3枚ほどあげる 俺がゆっくり霊夢の口へ近づけようとしたら、先にゆっくり霊夢が飛びついてきて3枚とも持ってかれた 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!!」 ああもう粕をボロボロ零すな まぁいい、馬鹿饅頭のことだからこれで俺の事は完全に信用しただろう 「おじさん!はやくもっともってきてね!」 とりあえず残りの2枚を渡す。 「むーしゃむーしゃ」 いまだ、今しかない クッキーを食べきる前にゆっくり霊夢の饅頭を弱く抓る 「む?むーしゃ、むーしゃ」 この程度では頬を触られてるくらいにしか思わないのだろう。 俺はどんどん抓る力を強くしていく。 頬にひっぱられて口の食べかけのクッキーが床に落ちる 「ゆっくりたべさせてね!いたいよ!いたいよ!」 流石に痛くなってきたのか、俺の指から抜け出そうと体をぐいぐい動かしている 当然、指が離れる訳がない、俺は更に抓る力を強くする 「い゛た゛い゛よ゛!や゛め゛て゛ね゛!ゆ゛っ゛く゛り゛や゛め゛て゛ね゛!」 ゆっくり霊夢は我慢できない痛さになったのか、涙を流し始める。 まだまだいくぞ、俺はもう少しで頬が千切れるんじゃないかというほど抓り、捻りを入れてみる 「い゛だ゛い゛い゛ゆ゛っ゛ぐりでぎな゛い゛よ゛お゛」 ついには涙がだくだく流れるようになった 俺はこれくらいじゃ終わる気はなかった。 開いていた左手をゆっくり霊夢の頬のもう片方にもってきて、 最初からMAXパワーで抓る 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛だい゛よ゛お゛お゛お!」 幼い子供のゆっくりは抓りの痛さに耐えられなくなり、大声で泣き叫び始める 「ゆ゛っ!」という間抜けな声とともに頬が元に戻る。 抓られるのが終わったのがわかると、ゆっくり霊夢は途端に俺に体当たりしてきた 「あやまってね!ゆっくりあやまってね!」 体当たりがうざかったので俺は思いっきり頭から叩きつけてつぶしてやった 「ゆ゛ぐっ!」という間抜けな声とともにゆっくり霊夢は絶命した。 さ、明日もやるか。と、俺はギチギチに餡子と皮がつまったゴミ袋に残骸を詰めた
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お手軽な甘味として大勢に親しまれている「ゆっくり」たち。 ただ食べるのではなく、さまざまに趣向を凝らされているのが、長い流行の秘密だろうか? ふとある方法を試してみたくなってので野生のゆっくりを捕獲することに決めた。 外に目をやると日も落ちかけていて、空がゆっくりと暗色に染まっていく。 ゆっくりの生態について知らないことが多いのだが、やはり夜のほうが捕まえやすいのだろうか? 昼日中であれだけ動き回っているのだから、夜はゆっくりと休息をとっていると考えるのが妥当だが、 なんとなく夜中でも「ゆっくりしていってね!」と叫びつつ飛び跳ねているような気もする。 せん無いことを考えながらもすでに外に出て、ゆっくりを探しはじめる。 できれば夜中は遠出をしたくないと考えながら耳をすますと、草木のざわめきや虫たちの合唱にまじり、 あきらかに場違いな声があった。 奴らだ! 良かった、どうやら近くにいるようだ。今夜中に捕獲できることに安堵し、声の方向に向かう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりやすもうね!」 おあつらえ向きに二匹のゆっくりたちが今日の寝床であろう木の根元に寄り添っている。 思わず頬がゆるむ。 微笑ましいと感じたのではない、あまりにも幸先がいいから出た笑みだ。 そのまま捕まえてもいいのだが夜に騒がれるのは本意ではない。 「ゆっ、ゆっくりしていってね?」 「ゆっ!?」 「ゆゆっ!?」 泣き声を真似て近づいた。どもったのは恥ずかしかったからだ。 が、それが功を奏したのかゆっくりたちは無警戒に声をかけてきた。 人懐っこいとは聞いていたが、警戒させないにこしたことはない。 「ゆっくりしていってね!」 「おじさんもゆっくりする?」 赤いリボンに黒い髪。二匹とも「ゆっくり霊夢」と呼ばれる個体のようだ。 「ありがたい申し出だけど、ここじゃあゆっくりできないよ」 「どうして?ゆっくりできるよ!」 「ゆっくりしていこうよ!」 「ここは何でも食べちゃう妖怪の棲みかなんだよ。こんなところでゆっくりしたらむしゃむしゃと食べられちゃうよ」 「ゆ゛っ!?」 「ゆぐっ!」 かぶりつく身振りと共に言ってやる。子供騙しもいいところだが、表情を見るにすっかり信じたようだ。 何を想像したのか「ゆっぐりじだい!」「ゆっぐりざぜでえええ」となみだ目で震えている。 さて。 「ものすっごくゆっくりできる場所があるけど、いきたい?」 「いきたい!いきたい!」 「すっごくゆっくりしたい!!」 満面の笑みで言うゆっくり。それは媚びている笑みなのだろうか? そうして、二匹のゆっくり霊夢を抱きかかえて帰路につく。 「さ、ここでゆっくりしようか」 「「ゆっくりしていってね!」」 二匹をおろして扉を閉める。二匹は興味津々と言った態で家中を飛び跳ねている。 ここからが正念場だ。 ゆっくりと三和土からあがり、あぐらをかいて座ると笑みを浮かべながら二匹に声をかける。 「さ、いっしょにゆっくりしようか」 「ゆっくりしようね!」 「すっごいゆっくりしたい!」 近寄ってきたゆっくり霊夢たちをわしづかみにすると、そのままぎゅうぎゅうと押さえつける。 「ゆぎゅんぬぬぬぬぬぬぬ」 「ゆぐりじたいっゆぐりぃいい」 と声ならぬ声をあげるゆっくりの手触りからはみ出るかはみ出ないかの境界を推し量る。 なにぶん初めてだから失敗してしまうかも知れないが、なぁにそのときはまた持ってくればいいのさ。 中身が少しずれた感触が伝わってきたので、解放する。 「「ゆっ!!!」」 体が自由になり、怒りの言葉を出そうとする二匹。しかし口を開いた瞬間二匹を強くゆすった。 大きく、緩やかに、時にかきまわすようにゆする。 「ゆっゆっゆっくっりしっしして」 「いいいってっててってってねっね」 という泣き声が、しばらくすると 「ゆーゆーーゆーゆゆーーー」 「ゆ~ゆ~~~ゆ~ゆ~ゆ~」 と歌っているかのようなものとなる。 今度は小刻みに激しくゆする! すでに二匹の表情は赤らんでいて、目がうるみを帯びている。鼻息も荒くなり、明らかに熱を発している。 思い切り殴りつけたい気分を押し殺し、そのまま蠢動を続ける。 「「ゆっゆっゆっゆっゆっ」」 機械的に泣くようになったら、手を離して放置した。 一仕事終えたような感覚で、三和土の甕から水をすくって飲む。 振り返ると二匹のゆっくり霊夢は身を寄せ合って震えていた。 いや、これはお互いをこすりあっているのだ。それが徐々に鈍い動きになっていく。 いよいよか!と思い目を凝らすが違う。 二匹の体表に粘り気のある透明な液体が流れているのだ。粘度の高いそれはねとねとと音を立てて水溜りを作っていく。 掃除するはめになることにうんざりしながら見つめていると、粘液の音と「ゆっゆっ」という機械的な声に、 さらに荒い息遣いが混じって、とても精神衛生上よろしくない音が奏でられる。 吐き気を抑えるように水を一口ふくんだ。 しばらくすると、二匹が同時に 「ゆ゛ゆ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーッん!!」 と絶頂に達したように一声泣いた。 すると、これはもうやばいんじゃないかというくらい痙攣し始め、白目をむいて限界まで見開く。 さらには口もこれ以上ないほどに開かれ、まるで断末魔をあげているようだ。 表情の変化が終わると、痙攣も止まっていた。そのまま目に見えてわかるほどに色が黒ずんでいく。 二匹の頭の天辺から芽が出て、葉が伸び、蔦のように伸びていく。 蔦にいくつもの実をつける頃には二匹はからからに干からびていた。 身体をこすり合わせ始めてからここまでで、まだ一時間と経っていない。 植物か動物か定かではないが、生命の神秘の一端を垣間見た気がした。 同時に、あれだけ乱獲されているゆっくりが絶滅しない理由がわかったように思う。 やがて肉色の実は徐々に、だが確実にそれとわかる形を成していった。 黒い髪に赤いリボン。親と同じゆっくり霊夢だ。 一匹につき十個はあろうか、プチトマト程度の小さなゆっくり霊夢が並んでいるのは、壮観というよりは気色悪いと言えた。 そのまま観察していると、実のうちのひとつがゆっくりと震えはじめる。 眠りから覚めるように、糸のようにぴっちりと閉じられた目がゆっくりと開かれていく。 完全に見開かれると 「ゆっくりしていってね!」 と蚊の泣くような声で産声を上げた。 目覚めたゆっくり霊夢は、そのまま目だけできょろきょろと左右を見渡している。 蔦から離れないと自由に動けないのだろうか? 目があった。 「ゆっくりしていってね!」 その声はこちらに言ったものだろうが、それがきっかけになったのか他の実もぶるぶると震えだす。 二十個ものゆっくり霊夢のひとつひとつが目覚めて産声を上げている。 無事に繁殖は成功したのか、目覚めないものはひとつもなかった。 さぁ、長かったがここからが本番だ。 一番最初に目覚めたゆっくり霊夢に手を伸ばす。 「ゆぅ~?」 自分に近づいてくるそれをなんの危機感もなしに見つめているゆっくり霊夢。 そのまま無造作に蔦から引きちぎる。 「ゆ゛っ!」 一声なくとそのままぐったりしてしまった。手のひらで転がすがなんの反応もない。 しまった!早すぎたか!? そう思ったが、そのゆっくり霊夢はゆっくりと起き上がる。 「ゆっぐりじだがったのにぃ~~~」 涙をこぼしてこちらを見るゆっくり霊夢に安堵のため息をつくと、それを無造作に口の中に放り込んだ。 そのまま舌で口の中を転がすようにゆっくりと味わう。 時折、 「ゆっぶぅ~」 「ゆっぶりじゃぜでぇ」 「ぐらいよーっぜまいよーっごわいよーっ」 と口の中から聞こえてくる。お構いなしにゆっくりと味わい、咀嚼する。 「ゆっぎゃぶぅッ」 と聞こえたきり、なにも聞こえなくなった。 「あ……甘酸っぱいんだ……」 十分に成熟しきってないゆっくりは酸味があるようだ。食感も通常のゆっくり霊夢よりもいくらか歯ごたえがなかった。 お子様やお年寄り向けにできるかもしれないと思いつつ、次のゆっくり霊夢に手を伸ばす。 今度は口に入れたら弄ばずに即座に飲み込んだ。 ゆっくり霊夢の踊り食いだ。 これが一番やりたかったのだ。のどの奥から 「ゆっくり落ちるよ~!」 という声が伝わってくる。どこか滑稽で思わず噴出してしまった。 やがて胃に達したのか「ゆッ」という声とチャポンという音を聞いた気がした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしたいお?」「ゆっくりしようね!」 と聞こえてきて、すぐに 「ゆゆっ?」「とける?ゆっくりとけてる!?」「ゆっぐりじだいのにぃ」 となり「ゆっぐりざぜでぇえ…………」と沈黙した。 腹の中から聞こえるという不思議なことに興奮した。面白っ。 興奮した僕はゆっくり霊夢たちをちぎっては呑み、ちぎっては食べた。 声を上げてのどを通り過ぎていき、胃に落ちていく感覚に思わず熱い息をもらしてしまった。 腹から聞こえるゆっくり霊夢たちの声に、熱くほてっていく身体。 熱っぽい目で見ると、もうゆっくり霊夢は残り一匹になっていた。 それまでの惨状をおぼろげにも理解したのか、それはふるふると身を震わせていた。 ゆっくりと最後のゆっくり霊夢に手を伸ばし、やさしくつかみ、細心の注意を払ってちぎった。 声はあがらなかった。 それを手のひらにおき、見つめる。ゆっくり霊夢はなみだ目で震え、にっこりと笑うと 「ゆっくりしていってね!」 と言った。泣き笑いの表情と必死の物言いに、まるで命乞いをしているように見えてしまった。 思わず微笑み 「ゆっくりしようね」 というと、ゆっくり霊夢は満面の笑みを浮かべた。心からの微笑みに見えた。 それをやさしくつまみ、ゆっくりと持ち上げていく。 ゆっくりと口を開き、濡れた舌を出す。 ゆっくり霊夢をそこに近づけると 「ゆ、ゆっくり!?」 となぜか驚いたように言った。 そのまま舌に乗せると、飛び出そうとするのをかまわず口を閉じた。 口蓋に何かが当たった気がしたが、そのまま舌で口の中に転がし、存分に味わう。 泣き叫ぶゆっくり霊夢。 胃の中でどれだけが溶けて、どれだけが原型をとどめているかはわからないが 寂しくないようにと仲間のもとへと送ってやった。 プチトマトほどの大きさとはいえ、二十匹ものゆっくり霊夢をたいらげたので満腹だった。 げっぷに混じって、「ゆっくりしていってね!」という声が聞こえた。 おわり。 お付き合いくださりありがとうございました。 選択肢 投票 しあわせー! (55) それなりー (10) つぎにきたいするよ! (1) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前編へ 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 真夏の太陽を天に抱いた森の中、ゆっくりたちの声が木霊する。 大人のゆっくりのものが一つと、赤ちゃんゆっくりのものがたくさん。 群生する草を掻き分けて、最近の幻想郷ではよく見かけられるようになった、ゆっくり家族の姿が現れた。 「ゆっゆっ、おひさまきもちいいね!」 「ゆっくりできるね!」 「あ、アリさんがいるよ!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 生まれてまだ間もないであろう、ミニトマト程度の大きさしかない赤ちゃんゆっくりたちは、元気にはしゃぎまわっている。 種類は全てゆっくり霊夢種であり、小さなリボンをはためかせて元気いっぱい飛び回る姿は人間の子供たちと左程変わりない。 そしてそんな微笑ましい光景を、後ろから優しい顔つきで見つめるゆっくりが一匹。 「あまり遠くに行かないでね!」 ゆっくり魔理沙だった。 バレーボール程度もある身体を揺らして、四方八方に行こうとする自らの子供たちに注意を向けている。 「おかあさん、アリさんいっしょにたべよ!」 「お母さんはだいじょうぶだよ! みんなで食べるといいよ!」 「わーい♪」 「ゆっくりたべるね!」 「おかあさんだいすき!」 列を成して歩くアリの集団を見つけた赤ちゃんゆっくりたちは、小さな舌を伸ばしてアリを食べ始める。 近くに湖が存在し、生き物がたくさん生息しているこの場所は、ゆっくりたちが過ごすには快適すぎるほどのゆっくりスポットだった。 幸せそうにアリを頬張る赤ちゃんゆっくりたちの姿を慈愛の表情で見つめるゆっくり魔理沙。 その左頬は、他のゆっくり魔理沙と比べて、ほんの少しだけ歪な形をしていた。 二週間前、人間の手によって失われ、そして再生した結果だった。 そう――このゆっくり魔理沙は、あの無礼な態度のせいで『お仕置き』されたゆっくりだった。 あの後、怪我による衰弱で意識不明の重態に陥っていたゆっくり魔理沙は、偶然通りがかったゆっくり霊夢に助けられた。 一週間の看病の末、餡子の大半を失っていた身体は万全とはいかないまでも回復。 お礼を兼ねての親愛の表現として身体を寄せ合って揺すり合い、ついムラムラしてそのまま性交に発展してしまった。 助けてくれたゆっくり霊夢は黒ずんで朽ちてしまったが、代わりに可愛い赤ちゃんがなんと七匹も生まれたのだった。 それからゆっくり魔理沙は母として、赤ちゃんたちを育てている。 右も左も分からぬ森の中での生活だったが、暮らし始めてみれば今まで暮らしていた場所より遙かに快適で、既に安住の地と化している。 あの男が言っていた野良犬やゆっくりれみりゃ、ゆっくりアリスの姿も見かけない。 ……あの男。 顔を思い出す度に、ゆっくり魔理沙の左頬がじくじくと痛み出す。 あの男には酷いことをされた。 ――しかし、あの男を怒らせるようなことを、自分は仕出かしてしまったのだ。 そう考えるゆっくり魔理沙。別に知能が上がったわけではなく、単にトラウマが生じているだけなのだが、本人はそのことに気付いていない。 ――今でも怒っているのだろうか。 あれ以来、人里には近付いていない。場所が分からないということもあるが、近付いてあの時と同じような目に合いたいとは、二度と思わなかった。 「おかあさん!」 思考に没頭していたせいか、ゆっくり魔理沙は自分の子供が目の前に来ていたことに気付かなかった。 慌てて思考を中段し、微笑みを作る。 「ゆっ、どうしたの?」 「みてみて、アリさん!」 赤ちゃんゆっくり霊夢が舌をべっと伸ばす。その先には、踏まれてぺしゃんこになったアリの死骸がくっついていた。 「えらいね! ちゃんととれたんだね!」 「ゆゆっ♪」 褒められたことが嬉しいのだろう、赤ちゃんゆっくり霊夢はその場で踊るように飛び回る。 その愛らしい姿を見て、ふと電撃のような閃きがゆっくり魔理沙の脳裏に浮かんだ。 この可愛い赤ちゃんたちを見れば、きっとあの男も許してくれるに違いない! それは人間からすれば何とも愚かな考えだったが、今のゆっくり魔理沙にとって天啓ともいえる閃きだった。 早速赤ちゃんたちを全員呼び集め、高らかに宣言する。 「今からお兄さんのおうちへしゅっぱつするよ!」 「ゆ?」 「おにいさんってだれ?」 「ゆっくりできるの?」 「とてもゆっくりできるよ! おいしい食べ物があるし、れいむたちよりも大きなれいむもいるよ!」 「ゆゆっ!?」 「いきたい!」 大はしゃぎする赤ちゃんゆっくりたち。「ゆっ♪」「ゆっ♪」と楽しげにその場で飛び跳ねている。 それが静まるのを待ってから、ゆっくり魔理沙は記憶を頼りに道を歩み始めた。 「それじゃ、ゆっくり行こうね!」 「「「ゆっくりいこうね!!!」」」 時は少し遡り、早朝。 俺は知人の美鈴さんから習った太極拳を練習していた。 別に拳法に目覚めたわけではなく、ここのところ働き詰めだったので、健康のためにやっているだけだ。 ゆっくり魔理沙に『お仕置き』してから一週間くらい経ったころだろうか、俺の勤め先でちょっとしたトラブルが生じた。 それ自体は解決したのだが、それの尻拭いのために俺や同僚たちは朝から深夜までずっと駆り出され、今日まで一週間ずっと働きっぱなしだったのだ。 おかげでゆっくり霊夢には寂しい思いをさせてしまった。こういうとき、畑仕事をしている人が羨ましいと思ったりもする。 だけどまぁ、五年前に外の世界から迷い込んできた外来人である俺に土地なんてあるはずもなく、こうして家を持てただけでも大したものなのだろう。 「……ゆ?」 ゆっくり霊夢が眠りから目覚めたようだ。きょろきょろ周囲を見渡し、俺と目が合うや否や、 「ゆっくりしていってね!」 とお決まりの挨拶。 うぅん、相変わらずぷりちーなナマモノだ。 頬ずりしたくなる衝動をグッと堪えて、朝食の準備に取り掛かる。 その間ゆっくり霊夢はずりずりと腹ばいで俺の足元に近付き、ずっと身体を摺り寄せていた。 普段こいつが起きる前に家を出ていたので、久しぶりのスキンシップが取りたいのだろうか。 萌え死ぬ。 足の親指で頬のあたりをくすぐってやりながら、てきぱきと料理を作る。 外の世界のガスコンロと比べて竈は使い辛い(そもそも使ったことが無かった)が、今ではすっかり慣れたものだ。 今日は夕飯にも再利用出来るシチューを作る。 器に注ぎ、おひたしに鰹節を振りかけて醤油をかけた皿と丁度炊き上がったお米を並べて完成。 テーブルの上に乗せ、少量を別の皿によそうと、ゆっくり霊夢が食べやすいように床に置いた。 「いただきます」 「ゆっくりいただくね!」 ゆっくり霊夢は舌を器用に使い、零さず綺麗にご飯を平らげる。うーん、美しい。 おっと、感心してないで俺も早く食べなくてはな。 外の世界にいた頃と比べてずいぶん質素になった朝食を手早く食べ終え、皿を水の入った桶につけておく。帰ったら洗おう。 「じゃあ、行ってくる。今日は通常業務だからいつもの時間に帰れるよ」 「ゆっ、本当!?」 「ああ。それに明日はお休みも貰っている。一緒に遊ぼうな」 「ゆっくり待ってるね!」 ゆっくり霊夢に見送られながら、俺は家の扉を閉めようとして―― ごしゃん。 「……」 忙しくて修理する暇のなかった扉が、ついにご臨終なされたようだった。 なんか変な方向に曲がっており、動かそうとしてもビクともしない。 どうしよう、時間をかければ直せそうではあるが、そうすると仕事の開始時間に間に合わない。 扉は中途半端に開いたままだ。別に泥棒に盗られて困る貴重品はないが、野犬やゆっくりたちが入り込んでくる可能性もある。 仕方無いので、雨漏りの修理用に何本かストックしてある木の板を裏から持ってきて、扉の前に置いた。 あとは野犬の目の高さくらいの位置にいらなくなった新聞紙を米を糊代わりにしてくっつける。 突撃されたらすぐ剥がれてしまうが、多少の目眩ましにはなるだろう。 「いいか、知らない人が来ても追い返すんだぞ。お前のリボンにつけたペット証があれば、誰もお前を傷付けないからな」 「わかったよ!」 ちょっと心配だったが、仕事はしないといけない。 俺は何度も振り返りつつ、家を後にした。 時間は過ぎて、三時を過ぎたころ。 ゆっくり霊夢が主人の作ってくれた手製の滑り台で遊んでいると、何処からか自分を呼ぶ声が聞こえた。 どうやら玄関の方かららしい。この家に来客は滅多に来ないので、ゆっくり霊夢は多少警戒しながら扉に近付いた。 「ゆっ、誰かいるの?」 「れいむ! まりさだよ!」 「ゆゆっ、まりさ!?」 聞こえた声は、懐かしい知人のものだった。 二週間前、たった一日だけ遊んだ友達。主人から家に帰ったと聞かされて残念な思いをした記憶が蘇る。 板と新聞紙の隙間から外を覗くと、確かに見覚えのあるゆっくり魔理沙の姿があった。 「どうしてここに?」 「遊びに来たよ! ゆっくりさせてね!」 「ゆゆっ! ゆっくりしていっ……ん……」 「……? れいむ、どうかしたの?」 ゆっくりしていってね、とお決まりの台詞が聞けると思ったゆっくり魔理沙は、訝しげな視線をゆっくり霊夢に送る。 ゆっくり霊夢を引き止めたのは、主人が出かける前に言った言葉だった。 『知らない人が来ても追い返すんだぞ』 何者かがこの家に来たのなら、自分は追い返さなければならない。 しかし…… 「ゆっくり入れてよ! れいむに見せたいこどもたちもいるんだよ!」 「ゆっ、子供!?」 ゆっくりとしての本能を刺激する単語に、ゆっくり霊夢はぴくりと反応して顔を上げた。 「そうだよ! みんな、れいむにあいさつするんだよ!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、板の向こうから赤ちゃん特有の甲高い声が幾重にも折り重なって唱和された。 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃん、おかおがみえないよ!」 「はやくいれてね!」 「そこはゆっくりできるところなの?」 「ゆっくりさせてね!」 ゆー、ゆーと甘い鳴き声。ゆっくり霊夢は理性と本能のせめぎ合いでおろおろする。 主人は、ゆっくり魔理沙たちが部屋に入ることを是としないだろう。 しかし、赤ちゃんたちを見たい衝動が心の内よりどんどん溢れてくる。 主人への忠節を取るか、自身の抑えがたい興味を優先させるか。 悩みに悩んで、ゆっくり霊夢が取った行動は、 「今、この板をどけるよ! ゆっくり下がってね!」 ゆっくり魔理沙たちは知らないゆっくりじゃないから大丈夫だという、後先を考えない愚者の選択だった。 「おねえちゃん!」 「ゆっくりしていくね!」 「ゆっ、ゆっ♪」 赤ちゃんゆっくりたちに纏わり付かれながら、ゆっくり霊夢は幸せだった。 加工所で生まれ、この家に引き取られてからずっと、ゆっくり霊夢は赤ちゃんというものを見たことがなかった。 ペット用のゆっくりは英才教育を受けるために誕生してすぐ親元から引き離され、ゆっくりブリーダーと呼ばれる人間の下で厳しい訓練を受けることになる。 だが、生まれたばかりの蜂が教わらなくても狩りの仕方を熟知しているように、種族の本能的な部分は親と子の愛情関係を完全に理解していた。 赤ちゃんゆっくりたちを見てゆっくり霊夢の中に浮かんでくる感情は、間違いなく『愛』と呼ばれるものだった。 「うわー、すごいね! ゆっくりできるものがたくさんあるよ!」 「みんなでゆっくりしようね!」 ゆっくり赤ちゃんたちは大はしゃぎで、家の中を飛び回っている。 特に目を引いたのは、主人がゆっくり霊夢のために作ってあげた手製の玩具の類だった。 滑り台にブランコ、蛙人形やシーソーなど、さながら小さな遊園地といった風情である。 赤ちゃんゆっくりたちは玩具に駆け寄ると、思う存分ゆっくりし始めた。 列を作り、順番に滑り台を滑り。 ブランコに乗って、どちらがより高い場所まで行けるか競い合い。 蛙人形に群がって、ゆっくりれみりゃ退治ごっこをして。 シーソーを使って、自分の身体が沈んだり持ち上がったりする感覚を楽しんだ。 生まれて一週間、森の中でこんな遊びをしたことはなかったのだろう。赤ちゃんゆっくりたちは終始はしゃぎっぱなしだった。 ゆっくり霊夢もそんな赤ちゃんたちに付き添うように遊んでいたのだが、 「ゆ~……ふぁ……」 急に眠気を感じ、ふらふらと壁にもたれかかってしまった。 今日までの一週間、ずっと帰りの遅い主人を待ち続け、早く寝ないで夜遅くまで待っていた結果がこれだった。 眠ってはいけないと思いつつ、意識が闇の中へと沈んでいく。 やがてくぅくぅと寝息を立て始めたのを、離れて赤ちゃんゆっくりたちを見守っていたゆっくり魔理沙が発見した。 「れいむ、れいむ?」 「ゆっ……くぅ……」 揺すっても起きない。 赤ちゃんゆっくりたちが、心配したかのように駆け寄って来る。 「おかあさん、おねえちゃんどうしたの?」 「つかれて眠っちゃってるだけだよ! しんぱいしないでゆっくり遊んでてね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢は起きないよう、小さな声で告げる。 だが赤ちゃんゆっくりたちは動かない。集まってきたのは、ゆっくり霊夢が心配だったからだけではないからだ。 「おかあさん、おなかすいたよ!」 「なにかたべさせてね!」 朝食の蟻を食べてから、この家に来るまでずっと移動中だったゆっくり魔理沙たちは、その間何も口に入れていなかった。 それに加えて、今激しい運動をしてきたばかりである。 空腹を訴えるのも当然の行動だった。 「ちょっと待ってね! お兄さんが帰ってこないと……ゆっ?」 言葉の途中で、ゆっくり魔理沙は鼻をひくつかせる。 漂ってくる、いい匂い。 食欲を促すその香りは、台所の竈の上に置いてある鍋のほうからしていた。 「あっちに、ご飯があるよ!」 ゆっくり魔理沙は竈のほうへと近付いた。 そこにはこの家の主人が今朝方作ったシチューの入った鍋がある。 だが、鍋はかなり高い位置に置かれており、普通は届く距離ではない。 ただ竈は角の部分が先に行くほど少しずつ丸みを帯びていく構造になっており、角の先端はゆっくりにとってただの坂と呼んでも差し支えない形状になっている。 あの部分まで飛ぶことが出来れば、鍋に届くかもしれなかった。 「いくよ!」 ゆっくり魔理沙は助走をつけ、竈の少し手前で思い切りジャンプした。 浮遊感。一瞬の空白の後、坂道の部分にギリギリ身体が届いた。 間髪入れず、もう一度ジャンプしようとする。 だが坂道での踏ん張りが効かずにバランスを崩し、そのまま床に落下してしまった。 「ゆぶっ!」 衝撃。口から餡子が少しはみ出る。 「おかあさーん!」 赤ちゃんゆっくりたちが心配して駆け寄ろうとするのを、ゆっくり魔理沙は静かに押し留めた。 「だ、大丈夫だよ! ゆっくりそこで見ててね!」 ゆっくり魔理沙は何事もなかったかのようにニッコリ笑うと、もう一度チャレンジするために距離を取る。 無論、痛くないわけではないが、それでも子供たちを心配させないために我慢しなくてはならない。 それは親になったゆっくりとしての本能だった。 「……ゆっ!」 気を落ち着かせ、もう一度トライ。タイミングを見計らって、竈の坂道へ一直線に跳躍する。 べしゃっ、と身体が押し付けられる感覚。その感覚を維持したまま、ゆっくり魔理沙はもう一度ジャンプした。 一瞬の緊張。果たして自分はどうなった? 答えは、身体に触れる床の感触で分かった。 ゆっくり魔理沙は、見事に竈の上に着地していたのだった。 「ゆっ! ゆっ!!」 「おかあさん、すごい!」 遙か下方で、赤ちゃんゆっくりたちがやんややんやの喝采を母親に送る。 その声に満足しながら、ゆっくり魔理沙は鍋に近付いた。 この鍋を持って床に降ろすのは、物理的に不可能だということくらいゆっくり魔理沙の知能でも分かった。 ならば、方法は一つしかない。 「ゆっくり落ちていってね!」 体当たり。がん、という衝撃と共に鍋の位置が少しずれる。 もう一度アタック。ずず、ずず……と少しずつ鍋がぐらつき、そして…… がしゃーーーん!!! 豪快な音を立てて、鍋が竈から転がり落ちた。 床にぶちまけられるシチュー。掃除するのにかなり苦労することになるだろうが、無論ゆっくりたちはそんなこと知ったことではない。 赤ちゃんゆっくりたちは歓声を上げてシチューに群がり、ぱくぱく食べ始める。 「ゆっゆっ、つめたいけどおいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 その様子を幸せそうに眺めていたゆっくり魔理沙は、床に水の入った桶が置いてあるのを発見した。 後で皿を洗うために浸けていたものだが、ゆっくり魔理沙にとってその桶は飲み水にしか見えなかった。 「みんな、お水もあるよ!」 地面に慎重に下りると、ゆっくり魔理沙は躊躇無く桶も引っくり返す。 水が一面に溢れ出し、勢いよく流れ出た皿は地面を擦って何筋もの傷を付けた。 「ゆゆっ、ちべたーい!」 「おみず、きもちいいね!」 「ごくごく、おいしーい♪」 赤ちゃんゆっくりたちは大はしゃぎ。風呂代わりに水浴びしたりするゆっくりまで現れる。 皆にとって、ここは最高にゆっくり出来る環境だった。 「……ゆっ!? みんな、何してるの!?」 と。 先程鍋を落とした音で目を覚ましたゆっくり霊夢は、台所の惨状を見て驚愕の声を上げた。 「あ、れいむ!」 ゆっくり魔理沙はぴょんぴょん飛び跳ね、フリーズしているゆっくり霊夢に近寄る。 そしていかにも自分は幸福です、というような顔で、 「おにいさんがまりさたちのために用意してくれたばんごはん、美味しいね!」 「……」 ゆっくり霊夢は口をぱくぱくさせるだけで反応しない。 「……? どうしたの、れいむ?」 不審そうな表情を浮かべるゆっくり魔理沙。気付いた赤ちゃんゆっくりたちも二匹の周囲に駆け寄った。 「おねえちゃん、どうしたの?」 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃんのぶんもまだあるよ!」 悪意のない赤ちゃんゆっくりたちの言葉。 ゆっくり霊夢は何とか餡子の底から声を絞り出そうとして、 「ゆっくり霊夢っ!!!」 叫び声と、ぶち壊す勢いで開けられた扉の音にびくりと身体を硬直させた。 それは、ゆっくりが進入しないように置いておいた板が外れているのを発見し、慌てて帰宅した主人の声だった。 「ゆっ……ゆっ!?」 これはマズい、とゆっくり霊夢は思った。 何がマズいのかは分からなかったが、とにかく本能的な危険をゆっくり霊夢は感じていた。 どたどたという足音、そして、 「ゆっくりれいっ……む……」 惨状を見つけてしまう。 目を見開き、硬直する主人。 ゆっくり霊夢は固まったまま反応出来ない。 「……ゆっ!」 だが、大きな声に少し驚いたゆっくり魔理沙は、自分がここに来た目的を思い出した。 「みんな、来て!」 「ゆっ?」 「おかあさん、どうしたの?」 突然闖入してきた初めて見る人間の姿を興味津々に眺めていた赤ちゃんゆっくりたちは、母の言葉を受けてゆっくり魔理沙の周囲に集まる。 「みんな、お兄さんに『挨拶』するんだよ!」 「「「ゆっ!!!」」」 朝、ここに来る道中で母に教わった『挨拶』。 赤ちゃんゆっくりたちはぽかんと口を開けっぱなしの男に向かって、精一杯の愛らしい顔で、 「「「ゆっくりしていくね!」」」 言った。 ゆっくり魔理沙は順繰りに赤ちゃんたちを見渡し、 「お兄さん、この前はごめんね! 赤ちゃんたちをとくべつにかわいがっていいから許してね!」 そして、 「だから、みんなでここに住まわせてね!」 その日、ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど足元にも及ばない恐怖を味わった。 それはいつかの『お仕置き』すらも凌駕する、圧倒的なまでの修羅の形相だった。 「おにいさん、ここからだして!」 「おなかすいたよ!」 「ここじゃゆっくりできないよ、おうちかえる!」 赤ちゃんゆっくりたちの声。 俺はいらついた風を装い、ゆっくりたちを閉じ込めた透明の箱を蹴り上げる。 「五月蝿い、殺されないだけありがたく思え!!!」 「ゆゆっ!!?」 衝撃と振動。 赤ちゃんゆっくりたちは怯えて隅に固まり、震えながら泣き出してしまった。 「やめてね! 赤ちゃんたちに酷いことしないでね!!」 と、こっちはゆっくり魔理沙。 赤ちゃんゆっくりたちを入れた箱とは別の小さな透明の箱に詰められ、ずいぶんと苦しそうだ。 子供たちを庇おうとするその姿勢は、いつかの自分勝手な姿からは想像出来なくて少し吃驚する。 「お兄さん、まりさたちを許してあげて!」 更に別の箱、こちらは少し空間のゆとりがある透明の箱の中で、ゆっくりれいむは俺に温情を訴えかける。 ゆっくり魔理沙たちを家の中に入れてしまった罪で閉じ込められてなお、友達の安否を気遣うとは……流石我がペット。 ぶっちゃけた話、俺は別にそこまで怒り心頭というわけではなかったりする。 確かにあの惨状を目にした瞬間、ちょっと怒りの沸騰点が限界を超えかけた。 でもそこを鋼の精神でぐっと堪え、ゆっくりたちを閉じ込めるだけに留めている。 何故殺さなかったのか? 勿論『殺害』という直接的な攻撃を俺が嫌っているというのもある。 だがそれ以上に、 「ほーれほれ」 「ゆゆっ!? お、おかあさーん!」 「ゆっくりやめてね! 赤ちゃんを放してね!!!」 こいつらの泣き叫ぶ声と必死の表情が、最高に俺の心を満たしてくれる。 殺してしまったら、この愉悦は味わうことは出来ない。 自分の唇がすごい勢いでひん曲がっているのを感じる。 蓋を少し開き、赤ちゃんゆっくりの一匹を掴み上げた。 ああ、ゆっくり魔理沙の懸命な顔……そそる。 「しかしぷにぷにしてんなー、こいつ」 掌に乗せた赤ちゃんゆっくりの頬を突く。 最初は優しく、そして少しずつ力を込めて。 「ゆ、ゆゆっ、いたいよ! ゆっくりできないよ!!!」 最初はくすぐったそうにしていた赤ちゃんゆっくり霊夢だったが、力が入ると苦しそうな声を上げた。 その様子を見て、ゆっくり魔理沙が半狂乱で泣き叫ぶ。 「な゛ん゛でごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「何故? 分からないのか?」 いつかのような質問。あの時の痛みを思い出したのか、ゆっくり魔理沙がびくりと震える。 「ここは、誰の家だ?」 「お……お兄さんのおうちです……」 おぉ、覚えていたか。感心感心。 「で、お前は何をしていた?」 「あそんでました……」 「それは別に構わん。その次だ」 「お兄さんが用意してくれたおゆうはんを」 「違う」 赤ちゃんゆっくり霊夢にデコピン。 結構本気で叩いたからか、「ゆ゛ーっ!!!」と泣き出してしまった赤ちゃんの姿を見て、慌ててゆっくり魔理沙が訂正する。 「まりさたちのじゃないおゆうはんを勝手に食べてしまいました!」 「そして?」 「お水も勝手に飲んでしまいました!」 「ふむ」 もう一度デコピン。赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声が激しさを増す。 ゆっくり魔理沙は俺の動きを止めようと必死に箱をガタガタ揺らした。 無駄な努力ご苦労さん。 「さっき言ったよな? ここは俺の家だって」 「そ、そうです、だから赤ちゃんをゆっくり放してね!」 「あ?」 「は、放してください!」 ゆっくりが敬語を使ってるのは面白いなぁ。 「で、お前は人の家で、俺が俺のために作ったシチューを床にぶちまけたわけだ? お前の都合のために?」 「あやまります! あやまりますからまりさの赤ちゃんにひどいことしないでぇぇぇ!!!」 ゆっくり魔理沙の顔はもう涙で皮がべちょべちょになっていた。 うはぁ、やべぇ。超快感。 だけど台所の掃除と扉の修理で時間を使いすぎた。 はっきり言って俺は眠い。 今日はゆっくり魔理沙に『絶望』を知ってもらうだけで終わらせてしまうか。 俺は泣きながら俺の手を逃れようとする赤ちゃんゆっくり霊夢を指で掴むと、 「あーん」 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 大きく口を開き、奥歯に挟んだ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ!!!」 そんなに騒がなくても食わないよ。 まだ。 俺は奥歯に挟んだ赤ちゃんゆっくりを見せ付けるように、ゆっくり魔理沙と他の赤ちゃんゆっくりたち、そしてゆっくり霊夢の箱を順繰りに回る。 「いいか、今からお前に問題を出す」 うっ、しゃべりづらい。 「お前が十秒以内に答えられたら子供は助けてやる。答えられなかったら子供は食われる。分かったな?」 「わ、わかったからいそいでもんだい出してね!」 歯と歯の間で母の名を呼びながら泣き叫ぶ(口の中に振動が起きて少し気持ち悪い……)赤ちゃんゆっくりを見つめて、ゆっくり魔理沙は俺を急かす。 おやおや、ゆっくりのくせにゆっくりしないでいいのかな? まぁいいや。 「問題。ゆっくり魔理沙には七匹の子供がいます。ある日ゆっくりれみりゃに襲われて二匹殺されてしまいました――」 逃げた先でゆっくりフランの群れに遭遇してしまい、また二匹無残に殺害されました。 更に発情期のゆっくりアリスと出会ってしまい、ゆっくり魔理沙は子供の一匹を犠牲にして逃れました。 しかし家に帰ると、そこはゆっくり霊夢の一家に占拠されていました。 ゆっくり霊夢たちに押し潰され、また一匹子供が死んでしまいました。 そうこうしてるうちにお腹が空いてしまったゆっくり魔理沙は、残った子供をぺろりと食べてしまいました。 さて、子供は現在何匹残っているでしょう――? 「ゆっ!? ゆ、ゆっくり……」 ゆっくり魔理沙は顔を顰めて考え出す。 くくく、所詮ゆっくりブレイン、答えられまい。 しかもゆっくりれみりゃなどの天敵の名前をわざわざ出している。本能的な恐怖で冷静な思考なで出来ようはずもない。 「なーな、ろーく」 「ま、まってね! ゆっくりかぞえてね!」 「ごー」 焦ってるゆっくり魔理沙も可愛いなぁ。 その頬を引っ張りたい。 「さーん、にー」 「ゆゆゆゆっくりしてね!!! ゆっくりして」 「いーち」 「ゆ……う゛わ゛あ゛あ"ああぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛!!!」 「ぜろー、残念でしたー」 やっぱり無理だったか。 ゆっくり魔理沙は何とかしようと、目に見えて暴れ出した。 だが狭い箱の中、己を苦しめるだけだ。 俺は口の中から聞こえる赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声を聞きながら、他の赤ちゃんゆっくりたちを閉じ込めた箱の前に移動した。 「おにいさん、なんでこんなひどいことするの!?」 「はなして! いもうとをはなしてね!」 「ゆっくりできないおにいさんはゆっくりしんでね!」 口々に喚きたてる赤ちゃんゆっくりたち。だけど俺が箱を蹴ると大人しくなる。 「非常に残念だが、こいつは死ぬ。あーあ、残念だなぁ。お前たちのお母さんがちゃんと問題に答えられてれば、こいつも助かったのになぁ」 まるでゆっくり魔理沙が全て悪いような言い方。 勿論、どう考えても悪いのは俺なのだが、ゆっくりの餡子脳ではそんなこと分かるはずもあるまい。 「お前たちのお母さんのせいでこいつは死ぬのかぁ。あーあ。酷い親だよなぁ」 「ゆっ!?」 「そんな、おかあさん!?」 赤ちゃんゆっくりたちが一斉に母親の方を振り向く。 ゆっくり魔理沙は違うと言いたげに身体を少しだけ揺らした。本当は首を振りたかったのだろうが、箱が狭くて身動きが取れないのだ。 「ち、ちがうよ! おかあさんは赤ちゃんをたすけようとしたよ!」 「それなら赤ちゃんは助かってるはずだよなぁ。もしかしたら、お前たちも見殺しにされるかもなぁ」 論理の破綻した言葉。 だが、それは赤ちゃんゆっくりたちを突き動かす原理になる。 「ひどいよ、おかあさん!」 「ここにつれてきたのもおかあさんだったよね!」 「れいむたちがひどいめにあってるのもおかあさんのせいなんだ!」 「おかあさんはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!!! ゆっくりしね!!!」」」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇ!!!」 子供を護ろうと必死だった母親が、護ろうとした子供たちに糾弾されて泣き叫ぶ。 人間ならば同情を誘う光景だが、こいつらはゆっくり。 快感しか生まん。 「さて」 俺は再びゆっくり魔理沙の前に戻り、口の中を見せた。 相変わらず、奥歯に挟まってがたがた震えている赤ちゃんゆっくり霊夢の姿がそこにある。 「こいつを助けたいか?」 「だずげであ゛げでぐだざい゛ぃ゛ぃ!!!」 「うん、でも駄目」 ぷちん。 俺は口を開けたまま、見せ付けるように奥歯で赤ちゃんゆっくり霊夢を押し潰した。 飛び散る餡子。意外と美味しいが、それよりも生命を奪った生理的な罪悪感を覚えてしまうのは俺がゆっくりを愛している所以か。 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!!」 ゆっくり魔理沙のこれ以上ないという悲鳴。 いいね、ゾクゾクする。 先程の罪悪感はそれで消し飛んだ。 さて、じゃあ眠るとするか。 明日は休みだ。 もっと遊ぼうな、ゆっくり魔理沙…… 続く。 このSSに感想を付ける
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前 さて。 小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。 残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。 赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。 やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね? ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。 その表情、たまらん。 俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。 もうちょっとだけ我慢してほしい。 すぐ終わるからさ。 「おーい、起きろー」 俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。 「ゆっ、じしんだよ!?」 「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」 「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」 ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする! 俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。 「やぁ、起きたかい?」 「ゆっ、おにいさん!?」 「いまのはおにいさんがやったの!?」 「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!」 相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。 こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに…… とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。 「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」 「ゆっ!?」 姉妹たちが母親を見る。 ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。 そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。 いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。 当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。 「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」 「って、言ってるけど、信じる?」 普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。 だが、この家族は既に普通の家族ではない。 俺がそうした。 「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」 「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」 「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」 「わるいゆっくりはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」 もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。 憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。 しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。 姉妹を見殺し。 食事を独り占め。 昼寝すら邪魔をする。 果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。 否。 母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。 目の前にいるのは『敵』だ。 自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。 ――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか! 俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。 こいつら面白すぎる。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりせずにしね!」 「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」 「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」 おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。 いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。 で。 その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、 「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 やっぱり咽び泣いていた。 休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。 いいねいいねー。 泣くゆっくりはやっぱり可愛いな! 涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。 管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。 これでも現実は見ているつもりである。 「では、準備があるので少々お待ちを」 俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。 太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。 なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。 俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。 大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。 木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。 活きがいいな、これなら期待出来そうだ。 俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。 予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。 「ゆっ、なにそれ?」 「ゆっくりできるの?」 「ゆっくりしていってね!」 うむ、ではご期待に添えようじゃないか。 俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。 途端、 「うー!」 中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。 赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。 無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。 突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れ、れみりゃだ、こわいよー!」 「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」 「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」 ゆーゆー泣き出す姉妹たち。 くはっ、萌え狂う! っと、鼻血を出している場合ではない。 「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」 ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。 ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。 俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。 ああごめんよ、我慢してね。 俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。 「う、うぁー!?」 卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。 あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。 でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。 紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。 そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。 「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」 「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」 「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」 スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。 俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。 「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」 ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。 うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。 二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。 まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。 ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。 「さて、最後はこれだな」 俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。 途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。 「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」 「れみりゃをこわがらなくてすむね!」 「やーいやーい、れみりゃのばーか!」 中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。 ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。 このうーうーってやつ可愛い。 「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」 自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。 「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」 「……ゆ?」 「そ・こ・で」 俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、 「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」 「ゆ、ゆーっ!?」 赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。 「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」 「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」 「よ、よくないよーっ!?」 「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」 「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」 「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」 激嘘。 「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」 「な、なに!?」 「ゆっくりしないでいってね!」 「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」 つまりは今までと同じである。 当然、 「ゆっ、それはだめだよ!」 「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」 「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」 「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」 反発が起こる。 今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。 今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。 「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。 答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。 激しく嗜虐心をそそります、はい。 ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。 愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。 同情を買う? いいえ、滑稽です。 「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」 「そんなのしんじられないよ!」 「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」 赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。 最っ高! 「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」 「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」 「お、おねえちゃーん!!!」 俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。 するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」 「や、やだぁー!!!」 「ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。 「う、うわぁー!!!」 泣き出すゆっくりれみりゃ。 か、かわえぇ! っと、見とれている場合ではない。 このままでは不公平だしな。 俺はゆっくり魔理沙に向き直った。 「では問題です」 「は、はやく出してね!」 「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」 「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」 俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。 やれやれ、仕方無いな。 「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」 あ、『問題』じゃねーやこれ。 まぁいいか。 ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。 「そ、そんなこと言えないよ!」 「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」 「そ、それはだめだよ!」 「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」 「ゆっ……」 諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。 言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。 だが、それでも親の愛が勝るのだろう。 ゆっくり魔理沙は大声を上げた。 「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」 「ゆっ!?」 突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。 ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」 「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」 「ゆっくり!?」 そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。 今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。 「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「シチュー落っことしたじゃねーか」 もう忘れたのかよ。 「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」 「ゆ……」 再びの葛藤。 だがやらないと子供は助からない。 ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。 「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」 糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。 この全てに絶望したような顔、素晴らしい! これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。 さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。 「うー! うー!!」 「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」 「れいむっ、こっちだよ、はやく!」 「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」 成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。 なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。 対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。 自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。 しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。 考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。 ……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。 そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。 「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」 呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。 その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。 逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。 母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。 何度も、何度も。 そして。 ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。 どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。 しかしそれは、なんという自殺行為。 「うー♪」 「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「……ゆっ!?」 周囲に障害物はない。 身を隠す場所は、何も無い。 ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。 妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。 「うー!」 「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。 飛び散る餡子。 平べったくなった饅頭の肉体。 「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ゛……ゆ゛べっ……」 姉の悲痛な悲鳴。 それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。 大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。 無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。 「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」 「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」 赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。 皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。 「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「うー♪」 しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。 いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。 兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。 「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」 ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。 自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。 その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。 ……まぁ、それはそれとして。 「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」 「ゆっぐ!?」 ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。 そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。 ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。 慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。 先程までの70回くらいは全てパーだ。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。 そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。 「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」 「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」 ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。 間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。 「う、うぁー! うぁー!!」 顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。 姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。 気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。 「ゆっ、おいかけてきたよ!」 「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」 心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。 勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。 ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。 「うぁーーー!!!」 余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。 萌ゑる。 一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。 「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」 「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」 二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。 しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。 突如。 頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。 「…………ゆ?」 赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。 妹は何処へ行った。 と。 視界の端に、引っかかるものがあった。 黒い、点々とした影。 それが、何処かへと続いている。 赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。 そして。 妹は、そこにいた。 「……」 物言わぬ亡骸となって。 大量の餡子を撒き散らしながら。 「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。 刹那、 ごぅん! 一迅の風が舞う。 赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。 餡子を少量、付着させて。 ――つまり、なんだ。 妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。 ブランコを動かしたのは自分。 だから。 妹を殺したのは。 「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。 生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。 それが、死んだ。 自分が殺してしまった。 ゆっくり出来なくしてしまった! 赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。 身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。 だけど、そんな余裕でいいのかな? 「うー!!!」 ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。 悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。 箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。 ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。 「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」 「うっうー!!!」 ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。 思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。 「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」 口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。 ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 絶叫。 ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。 何度も、何度も。 「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。 食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。 苦しい。 痛い。 助けて。 そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。 だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。 もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 身体の中身がどんどん失われていく感覚。 段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。 しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。 今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。 先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。 激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。 もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。 ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。 復讐を完遂させて満足なのだろう。 幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。 「うー♪ うまうまー♪」 「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」 その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。 その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。 「おい、もういいぞ」 「……ゆっ?」 「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」 「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」 ああ、いい。 何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。 その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。 こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。 で。 七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。 可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。 だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。 さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。 壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。 なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。 ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。 感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。 「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」 子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。 色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう! そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。 だが。 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」 突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。 「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。 だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。 身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。 「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」 「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」 痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。 だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。 そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。 自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。 俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み! 感動しすぎてちょっと涙が出てきた。 「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」 お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。 力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。 「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」 「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」 「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。 だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。 「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」 「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆっ……じだ……だよ……」 「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」 「……」 「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」 「ストップ、そこまでだ」 事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。 未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。 「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」 「下をよく見ろ」 「……ゆっ?」 言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。 そこには、 「……」 物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。 「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」 「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」 「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」 勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。 だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。 元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。 箱に詰められたときに、それに気付いていた。 そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。 でも、生き延びることを許された。 そして、助かるチャンスはいくらでもあった。 どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。 ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。 だけど、答えられなかった。 何故? それは。 自分が、ゆっくりしていた、から。 赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。 それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。 今までのように騒いだりしない。 ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。 「……ころして」 「なに?」 「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」 俺は驚いた。 まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。 それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。 仲間のことはすぐ忘れたというのに。 過去に何かあったのだろうか。 ……まぁ、興味ないけど。 「殺して欲しいのか?」 「うん……ゆっくりせずにころしてね……」 「だが断る」 「……ゆっ!?」 ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。 俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。 「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」 だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。 「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」 続く。 このSSに感想を付ける
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スカ描写有り、注意 「ゆっくりしていってね!」 帰宅すると、今日もまた大きな声が部屋にこだまする 玄関の前には一匹のゆっくり霊夢がいる 何も返事はせずに荷物を置き、スーツをかける 「さあ、お水だよ、ゆっくり飲んでね」 ズボンのチャックを下ろす 「おみず!おみず!ゆっくりのむよ!」 仕事から帰ってくるまで水ひとつ口にしてなかったゆっくり霊夢だ、当然喉はカラカラである 嬉々として、ぴょんぴょん飛び跳ねる そして「ソレ」を確認すると、口を大きく開けて動くのをやめた こちらは、それを目掛けて用を足す 「んっんっ!おみず!んぐんぐ!!」 喉の渇きを潤すため、一滴も残さず飲み干すゆっくり霊夢 会社帰りのいつもの光景である 用を足した後は食事の支度に取り掛かる 冷蔵庫の中身を確認していると、チルドから謎の紫色の液体の入ったタッパーが見つかった どうやら茄子の漬物の変わり果てた姿のようだ 「れいむー、おかしがあるよー」 「ゆっ!おかし!おかしたべるよ!」 飛び跳ねながらキッチンに来る 「はやく!はやく!」 タッパーを開けて、中身をゆっくり霊夢の口の中に注いでやる 「ゆっ!ゆっ!ううっ!」 しょっぱさが堪えるのだろう、口に入れた途端ブルブルと身体を振るわせはじめる しかし、それでも文句ひとつこぼさず全てを飲み込んだ それもまたいつもの光景なのである 野球中継を見ながら、餃子と日本酒でその日の夕飯を終える 一服した後は皿の片付けだ 「れいむー、お風呂の時間だよー」 「ゆっ!すっきりするよっ!」 ゆっくりに台所用洗剤をかけて、水を垂らして泡立たせる 「ゆっ、ゆっ、ぶくぶくいっぱいだね!」 良く泡立ったゆっくり霊夢で食器を洗っていく 「おにーさん!くすぐったいよ!」 きゃっきゃと騒ぐゆっくり霊夢 後は皿とゆっくり霊夢をよく濯いで仕上げである 「すっきりー!」 ボロボロになったにもかかわらず、満足そうにゆっくり霊夢は声をあげた そういえば餃子を揚げた油がたっぷり残っている 「れいむ、ジュースだよー」 「ゆっ!ゆっ!」 皿洗いが効いたのか、半身をひきずりながら寄って来る 「あーんしてー、はい、あーん」 「あーん」 大きく口を開けさせると、フライパンの廃油を流し込む 「んぐ…んぐ…」 「はい、ごちそうさまー」 「ゆ…ごちそうさまー」 口がテカテカと光、口の奥からはニチャニチャと音がする 全て飲み干したゆっくり霊夢は、再び身体を引きずりながら寝床である新聞紙の上へと戻っていった 「ンカッ…ハァ…んい゙い゙…い゙…ぁぁ」 その晩、ゆっくり霊夢の寝床から食い縛るような呻き声がきこえた 翌朝、手際よく排便行為を済ませると、新聞紙の上にのせ 「朝ご飯の時間だよー」 と言ってゆっくり霊夢に排泄物を食べさせる 心なしか目は虚ろげである 「う…ハァハァ…ハムッ!はふはふッ!…ごはん!ごはん!」 食べ終わるのを確認すると、仕事の支度を整える そういえばゆっくり霊夢の顔色が良くない、顔にはいくつか吹出物が見られた もうかれこれ2週間か そろそろ変え時なのかもしれない、そう思いながら今日も家を出る 「ゆっくりがんばってね!」 閉めたドアからゆっくり霊夢の声が聞こえてきた ~地球に優しいエコゆっくり~END
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雨が降りしきる夜、家路をひたひたと急いでいると、街路樹の根元に丸く大きな影が転がっているのを見つけた。 何だぁ、と屈んで顔を近付けると、果たしてそれはゆっくり霊夢であった。 こんな人の多い所に居るなんて珍しい。青年は話しかけてみることにした。 「おい、お前何してんだ」 「…ゆ……ゆっ…くり……」 返ってきたのは弱々しい声。 ゆっくり饅頭たち特有の、少しインフレ気味なくらい元気な挨拶はどうしたのだろう。 「何だお前、大丈夫か? 具合でも悪いのか?」 傘をホッと横に放り、思わずゆっくり霊夢を抱き上げる。 じっとり湿っていて、接地面に擦過傷が多々見られた。 「おにーさん……ゆっくりできる…ひと……?」 え? ゆ、『ゆっくり出来る人』だと……? 今一意味は分からなかったが、 「あ、あぁ! 出来るぞ、俺はゆっくり出来る人だ!」 ゆっくり霊夢が息も絶え絶えに訊いてくるので、思わず肯定の答えをしてしまった。 恐らくは、敵意の有無を確かめているのだろう。 青年のゆっくり宣言を聞いたゆっくり霊夢は、安心したように軽く口の端を持ち上げた。 そして、 「おにーさん……ゆっくり……れいむのおねがいを…きいて…ね……」 ゆっくり霊夢はあるお願いをしてきたのだった。 「……れいむは…おかあさんで……れいむのいえにはこどもが……いっぱいいるの……」 話をまとめるとこうだ。 今、この目の前でしょぼくれているゆっくり霊夢には子どもが居て、毎日毎日一緒にゆっくりしていたらしい。 近くの林の中に穴を掘って住み処とし、お母さんであるゆっくり霊夢が子ども達のために餌を獲ってくる。 食べ盛りな子ども達は餌を見ると「ゆっ、ゆっ、ゆっ、」とご機嫌になり、美味しそうに口いっぱい頬張った。 決して楽ではないけれど、そんないとおしい子ども達の為ならばいくらでも頑張れたそうだ。 ――しかし、幸せな暮らしを送っていたゆっくり霊夢に重大な事件が起こってしまった。 三日前に餌を獲りに出たら急な雨に降られ、体が湿って帰れなくなってしまったのだ。 ずぶ濡れになりながらも体を引きずって何とか家に向かおうとしたが、ゆっくり霊夢はやはりただのお饅頭。 命からがら逃げ込んだこの街路樹の元で体力の回復を待ったが、雨はあれからずっと降り続いている――……。 「おにーさん……れいむのかわりに…こども…を……」 さぞや辛かったのだろう、ゆっくり霊夢は青年の腕の中で涙を流している。 「…こども……を……」 「わ、分かった! 分かったからもう喋るな!!」 これ以上無理をさせると、こいつ自身の命が危ない。 子ども達が助かったって、肝心の母親が居ないんじゃ悲しいじゃないか。 「おに、おに゛ーさん゛……」 冷たく降り注ぐ雨の中、こいつは気が気じゃなかったハズだ。 ずっと空を見上げながら、今か今かと雨が止むのを待ち続け、 頭に浮かぶのは親が居らずお腹を空かせて泣きわめく我が子達……。 絶対に助けてやる。 「子ども達は絶対に助ける。俺が迎えに行ってやる」 ゆっくり霊夢は目を瞑り、うん、うんと青年の言葉を噛み締める。 「だから……だから、まずはお前を助ける! 今から俺のアパートに連れていくぞ!!」 「ゆっ…ゆゆうっ……」 青年は傘を拾い上げると、ゆっくり霊夢を抱いたまますぐさま自宅へと走っていった。 ■ ■ ■ ぴしゃっ、ぴしゃっ、ぴしゃっとはね上がる水滴。 青年はまた、冷たい雨の中を走っていた。 全身雨ガッパの完全武装に身を包み、目的地へと急ぐ。 片手には道具が入った大きなカバン、反対側にはこれまた大きなポリ袋。 両方ともゆっくり霊夢チルドレンを輸送する為の秘密兵器である。 『じゃあ、今から行ってくるぞ。お前はしっかり体を休めておけ』 『ゆうっ……おにーさんゆっくりたすけてね……』 『あぁ、任せろ』 あれだけ萎んでいたゆっくり霊夢であったが、丁寧に体を拭いてやるとある程度元気になった。 傷には水で溶いた餅粉を塗り込み、たっぷりのホットミルクを飲ませてあげた。 今ごろは毛布にくるまって寝ているだろう。 ゆっくり霊夢一家の住み処である、林の中に入る。 あいつが言うには、入ってから少し奥の、切り開いた所にほら穴があるらしい。 ぬかるんだ土を蹴って進み、大きな岩を避けて、あぁ、これだ。 大股で駆けていくと、木の枝で入り口をバリケードした穴が広がっていた。 ゆっくり饅頭の家だから、かなり小さめの物を想像していたが、軽く屈めば問題なく入れそうである。 「よし、」 青年は意を決して侵入した。 独特の、鼻について離れない湿った土の匂いが漂っている。 カバンに入れておいた懐中電灯で足元を照らしながら、慎重に慎重に進んだ。 こつ、こつ、こつ、こつと地面を踏みしめ、周囲に注意を向けながら、 「……ん?」 奥の方で、何やら聞こえてくるような。 「………ゆ……し……」 「……ゆっ……ん……」 間違いない。 子ゆっくり達の声だ。 懐中電灯をさっと前に突きだし、暗順応を済ませた目を最大限に凝らす。 右へ、左へ……真ん中、右……左へ、右へ……あ、 右になにかある。 明るい楕円が、大きな一塊の影を捉えた。 表面がぐにぐにと蠢いており、ぱっと見では何だか分からず少し不気味だ。 「お、おい。お前ら……ゆっくり霊夢の子どもか?」 恐る恐る、青年は声を掛けてみた。 「お母さん霊夢の子どもか?」 反応は二度目で返ってきた。 「ゆっ、」「ゆっ、」「ゆっ、」「ゆっ、」「ゆっ、」「ゆっ、」 少し高めのゆっくりボイスと共に、塊は瓦解していく。 保護したお母さん霊夢よりも一回り、二回りは小さいだろうか。 個体差はあるものの、正しく子どもゆっくり霊夢が一列に並んだ。 全部で……ひーふーみー……っと、全部で九匹居るな。 「おにーさんだれ?」 「おにーさんはゆっくりできるひと?」 「れいむたちになんのよう?」 「ようがないならゆっくりでていってね!!」 あ、あれ? 何だ、別に元気じゃねえか……。 「いや……お前らのお母さんに頼まれて助けに来たんだけど……」 お母さん霊夢のしょぼくれ具合から考えて、正直白目むいてるのも居るんじゃないかと思っていた。 思っていたんだけど……。 「ゆっ!」 「おかーさん!? おかーさんはどこにいるの!?」 「おかーさんとゆっくりしたいよ!!」 「おかーさんのところにつれていってね!!!」 うーん、拍子抜けだ。 まぁ、元気なのは良いことだから問題はないだろう。 「よ、よし! じゃあ今からお前らをお母さんの所に連れていくからな!」 「ゆっ!」 「ゆっくりできる!」 「おかーさんとまたゆっくりできるね!!」 「はやくおかーさんとゆっくりさせてね!!」 ぴょんぴょこぴょんぴょこ跳ね回り、お母さん霊夢と再会できる事を喜ぶ子ゆっくり達。 青年は、早速その場にポリ袋を広げた。 外に出てから家に着くまで雨に濡れないように、自分なりに頭を使ったつもりだった。 「さぁ、この袋に入って! 今外は雨がざぁざぁ降りなんだよ」 「ゆうっ!」 「ぬれたくないよぉ!!」 「だから、ほら。この袋に入れば大丈夫!」 「ゆゆっ!」 「おにーさんあたまいい! ゆっくりふくろにはいるよ!!」 分かってくれたみたいだ。 一匹ずつ、手で広げた袋に飛び込んでくる。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、」と声をあげ、その度腕にボスッという感触が伝わってきた。 「よし、全員入ったかぁ?」 「ゆーっ!」「ゆーっ!」「ゆーっ!」「ゆーっ!」 袋越しに、合唱で答えるゆっくり霊夢チルドレン。 一応辺りを見回して、残りが居ないか確かめてから、 「じゃあ、口を縛るからな!」 きゅきゅっと捻り、片結びにポリ袋を閉じた。 あとは、もう走って戻るだけ。 お母さん霊夢に見せて、早く安心させてやろう。 「オッケー! 早くお母さんの所に行こうな!」 「ゆっくり!」 「ゆっくりしたいね!!」 「はやくみんなでゆっくりしようね!!!」 「あはは、それじゃあ出発!」 荷物をまとめて、青年はゆっくり霊夢一家のほら穴を飛び出した。 雨はまた一層激しさを増している。 青年は走った。 木々を縫って林を抜け、人の居ない裏道を通り、表の大通りに出る。 「ゆー! はやいはやい!!」 お母さん霊夢と出会った街路樹の脇を走り抜け、コンビニの前をぶっちぎり、角を曲がる。 あとはもう真っ直ぐ行くだけ。 ラストスパートとばかりにダッシュする。 早く家のドアを開けて、 『おーい! ほら、お前の子どもだぞ!!』 なんて一刻も言ってやりたくて、 足を思いっきり踏ん張って、 たまたまそこにあったマンホールで滑って、 青年が倒れ込んで地面にぶつかるまでのその間。 右手を離れて宙を舞うゆっくり袋の中、計十八個の目が青年を見上げていた。 ■ ■ ■ 静かに、玄関のドアを開ける。 「……ただいま」 流石に、両手に荷物を抱えた状態で全力疾走はかなり疲れた。 しかも、雨で滑って転んでしまったのだ。 うつ伏せに地面に突っ込む形になってしまい、血こそ出なかったものの顔やら膝やらが少し痛む。 ……胸とお腹は打たなかったから平気だけど。 「ゆっくり!! おにーさんおかえりなさい!!!」 下駄箱の上に荷物を起き、ごそごそと靴を脱いでいると背中越しにゆっくり霊夢の声が聞こえた。 「何だ、もう起きて良いのか?」 振り返り、ゆっくり霊夢の姿を確認する。 「ちがうよ! おにーさんをまってずっとおきてたよ!!」 少し仰け反って、誇らしげにするゆっくり霊夢。 なるほど、顔色が断然良くなっている。 毛布にくるまって、体温が上がったのだろう。 「ははっ、そうか。良かった良かった。今、またホットミルク持ってきてやるからな」 微笑ましい様子に、思わず声のトーンが増してしまう。 台所で急ぎ準備をしなくては。 「おにーさん、れいむのこどもは?」 体に、電撃が走った。 「……な、なに? き、聞こえなかったよ………」 背中を雨水ではない嫌な水滴が垂れていく。 「もう! だぁかぁらぁ、れいむのこどもたちはどこ!?」 頬をぷっくり膨らませ、まったく他人の話はちゃんと聞いてよね、そう言いたげな表情だ。 ヤバい、 どうしよう、 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう、 よし、これしかない、 「……落ち着いて聞いてくれ――」 「ゆ? れいむはいつもゆっくりおちついてるよ?」 「あのな……お前の子どもはな……」 「ゆっ?」 「野良犬に襲われて……全滅していたんだ……」 青年とゆっくり霊夢の居る空間が凍りついた。 しばらくは見つめあったままで、辺りを静寂が支配する。 「ゆっくりうそはやめてね! そんなわるいうそはつまらないよ!!」 突然に響く怒鳴り声。 ゆっくり霊夢は子どもの死を信じていないようだった。 当然だろう……。 「嘘じゃない。お前の子どもは野良犬に食いちぎられて、それは集めるがたいへ――」 「このままじゃおにーさんとはゆっくりできないよ!! はやくこどもたちをみせてね!!!」 ぼすっ、ぼすっと俺の腹に体当たりを食らわすゆっくり霊夢。 本気で怒っているらしい。 胃が痛む。 「分かった、分かったよ……」 やはり亡骸を見せるしかないようだ。 玄関に戻り、下駄箱に載せた荷物の内の一つポリ袋を掴む。 そんな青年の行動を、ゆっくり霊夢は赤く膨れながらもじっと見つめていた。 「気を確かに持てよ……」 諦めたようにそう言ってから、ゆっくり霊夢の前に袋をボスッと落とす。 重量感のある音にビクッとして「ゆゆっ!」と驚いていたが、眼前の袋の中身に気付いたのだろう、 「………………ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 ゆっくり霊夢は、低く、ぶるぶると震えた唸り声に近い叫びをあげた。 ポリ袋の中は濃い紫色の餡子で満ち満ちており、所々に肌色と赤い布の切れ端が覗いている。 そう。 この塊は子ゆっくり達の成れの果て。潰れてしまった饅頭達である。 もはや、個体の判別が出来ないまでにぐしゃぐしゃになっていて、一つのどでかいおはぎのように見える。 ゆっくり霊夢は、ゆっくりらしからぬ速さでそのおはぎの傍によった。 「どおじでぇ゛ぇ゛ぇ゛!? どおじでこんなごどぉお゛お゛ぉぉぉぉっ!!」 「だから、野良犬が――」 「ゆ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛! ゆ゛がああ゛ぁ゛あ゛ぁああっ!!」 駄目だ。 大量の涙を垂れ流し、ゆっくり霊夢は錯乱状態になっている。 「おっ、落ち着け! 落ち着くんだ!!」 「れい゛む゛のぉぉお゛お゛!! れい゛む゛のかわ゛い゛いかわ゛い゛いこどもがみんなしんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ゛ぁ!!!」 ポリ袋にすがり付くように寄りかかり、愛しい子ども達だったものに訴えかける。 「ゆっぐり゛じでだのにいぃ! まいにぢゆっぐりじでたのにい゛い゛い゛ぃ!! ぢいざなれいむだぢどながよぐみんなでゆっぐりじでだのにい゛い゛い゛ぁ゛あ゛あ゛!!!」 顔をぐいぐいと押し付け、子ども達の温度を感じようとした。 しかし、ほかほかの餡子とは程遠く、とても冷たい感触がゆっくり霊夢を更にどん底に突き落とす。 ふと、楽しかった日々がゆっくり霊夢の頭の中にぐるぐると回り始めた。 行きずりのゆっくり霊夢と交尾した事、 見事に受精し、自分の体を痛めながらも小さな命を産み落とした事、 その結果十二体のも可愛い家族が出来た事、 幼いゆっくりを巣に残して餌を探しに出て寂しくはないだろうかと心配した事、 子どもを守るため天敵と対峙した事、 初めて「ゆっくりちていってね!」と子どもが言葉を発して思わず泣いた事、 姉妹喧嘩をする子どもを叱った事、 子どもの寝言に思わず微笑んだ事、 今、それらが全てめちゃくちゃにされてしまった。 「ゆゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! れい゛む゛のぜいだ!! れい゛む゛がい゛え゛にいだら、れい゛む゛がかえ゛って゛た゛らあ゛あ゛あぁ!!!」 とうとう、ゆっくり霊夢は自分を責め始めた。 無理をしてでも帰宅して、家に居たら野良犬の餌食になんてさせなかった。 この身を犠牲にしてでも子ども達を守るつもりだった。 しかし、自分は遠くでガクガク震えていただけ。 寒さとかすり傷に震えていただけ。 ――子ども達はその頃、野良犬の牙に引き裂かれていたのに。 「ごめ゛ん゛ね゛ぇ!! おか゛あ゛さん゛のせいでごべんね゛え゛え゛ぇ!!!」 その後ろ姿は、どこまでも痛々しかった。 ■ ■ ■ 青年が倒れ込んで地面にぶつかるまでのその間。 右手を離れて宙を舞うゆっくり袋の中、計十八個の目が青年を見上げていた。 そして、ブブリリュッという感触。 「ゆぐぐりゃあ゛あ゛あ゛あ゛ああああっ!!!」 その悲鳴で全てを理解した。 青年は足を滑らせて転んでそのまま前に倒れこみ、胴体でゆっくり霊夢チルドレンが入った袋を潰してしまったのだ。 体はあちこち痛んだが、子ゆっくりの安否を確かめるべく急いで袋を引きずり出す。 「うわっ……」 思わずそう口にしてしまった。 考えうる最悪の状況だった。 突然の圧迫に小さな子ゆっくり達の体は裂けてしまい、中から大量の餡子が噴出していた。 赤くて可愛いリボンも解け、子ゆっくり達の「ひゅーっ、ひゅーっ」という呼吸音が耳にまとわり付いて来る。 「ゆっ……ゆぐぐ……ぐ……ゆぐ……ゆぐり……ゆぐりした……い゛、い゛、い゛、い゛、…………」 左のほうには、明らかに死を目前にした痙攣をしている子ゆっくりが居た。 反対側には、口の皮が吹き飛んでいて白目を剥いている子ゆっくり。もう死んでる。 真ん中には何も居なかった。餡子とちぎれた皮とがごちゃまぜになっているものしか目に入らない。 手で袋を揉みしだき、何とか生きている子ゆっくりを探す。 ぐにょり、ぐにょり、ぐにょりと中のものを動かして、何とか生きているゆっくりが居まいかと泣きながら探す。 あ、頭だ。 ゆっくりの頭だ。 急いで、急いでにゅるりと餡子を掻き分ける。 生きていてくれ、生きていてくれ、生きていてくれ、生きていてくれ、生きていてく、 顔の、下半分がなかった。 「うわああああああああああ!!!!」 青年は地面にゆっくり袋をぶん投げ、両足でどこどこ踏み潰した。 もうぐちゃぐちゃで分からなくなってしまえ。 もう只の餡子袋になってしまえ。 ――俺は知らない、俺は悪くない。 無駄に丈夫なポリ袋が悲しかった。 落ち着くと青年は餡子袋をそのまま抱え、とぼとぼと家を目指した。 ■ ■ ■ ゆっくり霊夢は長時間泣き喚いていたが、突然振り向いてここをもう出る旨を伝えてきた。 「大丈夫か、もう平気なのか? 良いんだぞ、もう少しゆっくりしていっても」 自殺でもしやしないか心配で思わずそう問い掛けたが、ゆっくり霊夢は良いんだと言う。 「れいむはもういくよ。このこたちのためにももっとゆっくりしなくちゃ」 「そうか……」 ゆっくり饅頭って意外にも強いんだな。 青年はゆっくり霊夢の赤く腫れた目を見ながらそう思った。 「これは……お前の子どもの亡骸はどうする?」 床に転がった、色々な意味で重いポリ袋。 「いらない。もっていってもそのこたちはいきかえらない」 「………………」 「だから、おにーさんにたべてもらいたい」 何かを決意したような、力強い声だった。 「れいむたちのなかみはあまいあんこだよ。おいしくたべてね」 皮もおいしいよ、食べられないところはないんだよ、わざとらしくゆっくり霊夢は笑った。 「……分かった、ちゃんと食べる。おいしく全部食べるよ」 「おにーさん、ありがとう」 今度は、安心したような笑みだった。 その後、すぐにゆっくり霊夢は青年のアパートから出て行った。 雨は降り続いていると思ったが、玄関のドアを開けた時には止んでいて雲が切れ始めていた。 「水溜りには気をつけろよ」 「うん、おにーさんもゆっくりしていってね」 「……ああ」 のそのそと、ゆっくりゆっくり日常にもどっていくゆっくり霊夢。 その後ろ姿は、青年の心に焼き付いていつまでもはなれなかった――。 ※実際はゆっくり饅頭たちが大好きです。 子ゆっくりが母親の持ってくる餌なしに元気だった理由 → 母の思い出 『十二体のも可愛い家族が出来た』 → 青年の確認した子ゆっくりの数 『全部で九匹居るな』 母親が居なかったのが三日だから、一日に一体ずつ……という事ですね。 見苦しい補足をしてごめんなさい。