約 545,826 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/272.html
ある男のゆっくりレポートのおまけ ゆっくり霊夢一家の越冬(誤算編) ゆっくり霊夢一家は師走の寒さの中家路を急いでいた。 「さむい! さむいよおかあさん!」 「おうちにかえったらゆっくりしようね!!」 そんな返事しか出来ないお母さんゆっくり。 それも当然だ、今までこの時期は巣の中で皆でゆっくりしていたのだ。 しかし今年はそれが出来なかった、出来なくなってしまった。 「いそいでかえってゆっくりしようね!!!」 ともかく家路を急ぐ事しか出来ない、雪に埋まってうまく進めない中、懸命に家まで進んでいく。 日が完全に落ちようとしていた頃、ようやく自分達の巣に到着できた。 「ゆー?」 中を覗いてみるが気配はない、入り口にはドアを塞ぐのに毎年使っている石と松葉が転がっていた。 しかし、既に外気にさらされて冷え切っているが、確かに先ほどまではゆっくり魔理沙一家が居た形跡が感じられた。 「いまのうちにうちにはいろうね!」 のんびりもしていられない、雪の中を進んできた体は凍りそうなほど冷たくなっていた。 今か今かと待っていた母親の号令で、急いで中に入る一家。 お母さんとお姉さん達が急いで入り口を塞いでいく。 何時もならゆっくりしながら数日かかる作業が、あっという間に終わり入り口は綺麗に塞がれた。 これで外気が入ってくる心配はない。 依然として寒い室内だが、だんだんと暖まってきている。 次第に、一家の顔にも暖かさが戻ってくる。 「よかったね!」 「あったかいね!」 「はるまでゆっくりしようね!!!」 「はるになったらみんなでゆっくりしようね!!!」 無事に巣が戻ってきたことが嬉しいのだろう、口々に出るのは越冬の間の楽しそうな計画と、春になってからのゆっくりする計画だった。 「いっぱい歩いて疲れたからごはんにしようね!」 お母さんゆっくりが提案する。 ふと、ゆっくり魔理沙一家が蓄えておいた食糧はどこだろう、と巣の中を見渡す。 綺麗な鳥の羽、大きくて綺麗な石、そんな素敵なものは多々あったが肝心の食料は何処にもなかった。 「たべものがないよ!」 焦るお母さんゆっくり、何時もなら冬の前に実り豊かな山の幸をたっぷりと蓄えて冬を越す。 いや、蓄えなければ途中で凍死か餓死してしまう。 その大事な備蓄が今年は出来なかった、何時までも暖かい部屋に居た所為で季節感覚が狂ってしまっていたのだ。 「おかあさん、たべものならあるよ!!」 「ゆっくりできるよ!!」 今年生まれた子ゆっくり達だ。 当然、この六匹はまだ越冬を経験していない。 明日にでも取りに行けば良い位に思っているのだろう。 「だめだよ! それたべたらゆっくりできないよ!!!」 あの男から貰ってきた綿菓子の袋に口を伸ばそうとしたところを、お姉さんゆっくり達が止める。 小さくても、越冬の経験だけは頭に残っているらしく皆の表情は必死だった。 「これはれいむがもらったおかしだよ!!」 「れいむのだもの!!!」 口々に文句を言ってくる、お母さんゆっくり達が何とか今の状況を伝えようとするが、なかなか伝わらない。 「あしたになったらみんなでおさんぽにいって、そのときにあつめればいいよ!」 「あしたゆっくりあつめるよ!!!」 「それよりも、おうちさむいよ!!!」 「すとーぶをつけてね!!!」 「おかあさんすとーぶつけてゆっくりしようよ!!!」 「すとーぶ♪ すとーぶ♪」 お母さんゆっくりは困り果てた、どうしても今の緊急事態が理解してもらえなかったからだ。 今も、お姉さんゆっくり達が懸命に説明しているが、おそらくは徒労に終わるだろう。 「おねえちゃんたち、れいむのおかしかってにたべようとしてるの!!?」 「ずるい! ずるいよ!」 「ゆっくりできないなら、おうちからでていってね!!!」 同時に、お姉さんゆっくりに飛び掛る。 妹とはいえ、既に十分成長したゆっくりの攻撃を食らった数匹のお姉さんゆっくりは壁まで吹っ飛んだ。 「ゆ!! このおかしは、ゆっくりできるれいむたちがたべるんだよ!!!」 「おかあさんたちは、ゆっくりできないからたべれないよ!!」 プンプン、と再びお姉さん達に襲い掛かろうとする。 「ゆっくりごめんね!!!」 吹っ飛ばされたのは襲い掛かろうとしていた子ゆっくりの方だった。 「ゅー、ぃたいよ……ゆっくりでぎないよぉ!」 「どうじでゆっぐりざせてくれないの! ゆっくりじだいよぉ」 弱々しく呟く子ゆっくり達、既に大半の餡子は外に飛び出していた。 半ば瀕死のそれを、躊躇なく踏んでいく大きなゆっくり。 先程まで、子ゆっくりと残りのゆっくりを天秤にかけていたお母さんゆっくりだった。 「ほかのゆっくりがゆっくりできなくなるから、ごめんね!!!」 必要以上に潰してくお母さんゆっくり、姉たちも真意を理解したようで母に倣って他の子ゆっくりを潰していった。 その一方的な虐殺は、あっという間に終わりを迎えた。 先程とは打って変わって静寂が辺りを包む。 泣き叫ぶ子ゆっくりは見る影も無く、床に転がっている皮と餡子が混ざった物体がその名残を残しているだけだ。 「あのこたちのぶんも、ゆっくりふゆをこそうね」 「うん、ゆっくりこそうね」 今や十匹ほどに減ったしまった巣の中で、お母さん霊夢と他の霊夢達がお互いに口々に話す。 残念ながら、そこに罪悪感が有るのかは窺い知る事は出来ない。 それから数日が経った。 既に潰れた子ゆっくりの餡ペーストを少しずつ食べながら、越冬するゆっくり一家。 少なくなったことで室内の温度は下がってしまったが、それでも越せないことは無い。 去年と同じ人数になっただけだ。 どのゆっくりもそう思っていた。 だから、誰も不満も言わずじっと寒さに耐えていた。 大寒時、美味しかった餡ペーストも後僅か。 その頃には、子ゆっくりとその餡ペーストを結びつけるゆっくりはいなかった。 殺したことは覚えているが、今食べているこれが野山を駆け巡っていたとは、既に思っていないのだろう。 巣の中も当初は寒かったが、段々となれてきた一家には徐々に口数も戻ってきた。 「おいしいのすくなくなってきたね」 「だいじょうぶ! もうすぐさむいのおわるから!!!」 「でもこれだけだと、あたたかくなるまえにゆっくりできなくなるよ」 「おじさんからもらったおかしがまだのこってるよ。これだけあればゆっくりふゆをこせるよ!!」 「じゃぁこのおいしいの、いまたべちゃってもだいじょうぶだね!!」 「おかあさん、たべていい?」 「ゆゆ……。 ! なんとかぶじにふゆをこせそうだから、きょうはゆっくりおいわいしようね!!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 久しぶりにお腹いっぱいご飯を食べれるゆっくり達はご機嫌だ。 「むしゃ、むしゃ、おいしいよ♪」 「むっしゃむしゃ♪ ゆっくりできるね!!!」 「ゆっくりたべようね!!!」 床がピカピカになるまで舐め終えて、その日の楽しい食事は終わった。 最後の晩餐は、とても賑やかなモノになったようだ。 翌日、お昼頃に目を覚ましたゆっくり達は食事を取ろうと、あのわたあめの袋を運んできた。 一日半分ずつ食べれば間に合う、長年の経験からお母さんゆっくりはそう思っていた。 本当に袋の中にそれに見合うだけの中身が入っていたならば。 「ゆゆ!!?」 「ないよ! ないよ!!!」 大きな袋の中身は殆どなく、そこには微かに甘い香りのする中に、米粒程の塊が入っているだけであった。 「なんで!? なんでないの!?」 「これじゃあゆっくりできないよ!!!」 「おいしいわたあめがないよ!!!」 おじさんの所で出された中でも、特に美味しかったわたあめ。 そのおいしかったわたあめが、袋の中に入っていない。 ゆっくり達には無くなった理由など分かるはずもなく、巣の中はパニック状態だ。 「お、おがしがないよー!!!」 「れいむのおがしがーーー!!!」 「もってでるときはあっだのにー!!!」 必死で他の袋も開け始める、勢いよく飛びつき袋を食い破るゆっくり達。 が、全て同じ、小さな塊が出てくるだけだ。 ボロボロに引き裂かれた袋、訳が分からず叫び続けるゆっくり一家。 丼一杯にも満たない塊、これが今この家にある全食料だった。 それから、数日が経った。 既に一家の顔は青白くなり、目もトロンとしている。 「しんだ、ゆっくりたちの、ために、ゆっくり、ふゆを、こそうね」 「「……ゆっくり、こそうね」」 まるで合言葉のように、死んでいった仲間のためにも、と呟きながら懸命に寒さと空腹に耐え続ける。 この頃には、自分達で殺した子ゆっくり達が他の原因で死んだと思っているらしい。 いつもはゆっくりゆっくり騒がしいゆっくりの巣だが、今は雪が降り続ける外の方が賑やかなくらいだ。 次第に意識が朦朧としてきた、目に映るのはぼんやりとした家族の姿。 それが、段々と輪郭を失っていく。 「……ゆ!」 輪郭を完全に失ったそれは、大きな饅頭の姿になってゆっくりの目に映りこんだ。 「たったべもの!!! ゆっくりできるよ!!!」 一匹が力を振り絞ってもう一匹にかぶり付く、周りでは同じように数匹がかぶり付いていた。 「ゆ! いだいよ! れっ、れいむはたべものじゃないよ!!!」 「やめて! ゆっくりやめてね!」 「むしゃむしゃ、はぁはぁ、うめぇ、めちゃうめぇ!!!」 「ごくんっ! はぁはぁ、ゆっぐりたべるよ!!!」 既に正常な判断が出来なくなっているゆっくり達は、ただ生きるために目の前の饅頭に貪り付いていた。 家族なんてものは関係ない、まさに弱肉強食、たべれれている方が霊夢や魔理沙で食べているほうがれみりゃやフラン、それと同じことだ。 「やめてね!!! みんなでゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢が大きく膨らんで残った数匹の子供達を隠す。 ゆっくりが子供を守る時の常套手段だった。 「うっめぇ! このおおきいまんじゅうもうっめぇ!!!」 「これだけあればゆっくりできるよ!!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛! み゛ん゛な゛でゆ゛っぐり゛じでよ゛ーーーー!!!」 突進するでもなく、殴りつけるでもなく、ただただその大きな饅頭を食べていく。 後ろに隠れていた子供達も、段々と母親の声が小さくなっていくのが分かる。 か細くなっていく声、それがあるときぴたりと止んだ。 今聞こえるのは何かを咀嚼する音のみ、その音はどことなく、ゆっくりれみりゃのそれと酷似していた。 「……ぷはぁ!」 「!!!」 今まで守ってくれていたお母さんゆっくりの背中から、ゆっくり霊夢が顔を出した。 一匹、また一匹とその数は段々と増えていく。 おそらく全員が顔を出したのだろう、一匹のゆっくりがこう叫んだ。 「みんなでゆっくりしようね!!!」 「…………!!!」 巣の中にはゆっくりが数匹、これが巣の中に残っている全ての食料だ。 「むっしゃむっしゃ♪ う~すっきり~!!!」 最後の一口を綺麗に食べ終え、ご満悦のゆっくり霊夢。 どうやら、これで最後の晩餐が終わったようだ。 だが、ユダさえも居ない一人さびしい晩餐だった。 「!! おかあさんたちどこ? どこにいるの?」 正気に返った霊夢は辺りを見回すが、母親達の姿はない。 皆、お腹の中に入っているのだから。 「わかった! たべのもさがしにいったんだ! れいむはゆっくりまってるよ!」 キラキラと目を輝かせて部屋の真ん中に佇む。 時折、体を揺らしてリズムを取りながら母達の帰りをワクワク待つ。 このゆっくり霊夢が犯した間違いは二つ。 一つは、家族は全て自分が食べてしまったという事。 二つ目は、大事な食料を何の考えもなしに全て食べ尽くしてしまったという事。 「ゆっくりまってるから、はやくかえってきてね♪」 雪が津々と降る二月の山の中、あと一ヶ月以上も続くこの冬は、彼女をいったい何時まで生かしておいてくれるのだろうか。
https://w.atwiki.jp/yukkurinikonama/pages/78.html
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/76.html
ある男のゆっくりレポートのおまけ ゆっくり霊夢一家の越冬(誤算編) ゆっくり霊夢一家は師走の寒さの中家路を急いでいた。 「さむい! さむいよおかあさん!」 「おうちにかえったらゆっくりしようね!!」 そんな返事しか出来ないお母さんゆっくり。 それも当然だ、今までこの時期は巣の中で皆でゆっくりしていたのだ。 しかし今年はそれが出来なかった、出来なくなってしまった。 「いそいでかえってゆっくりしようね!!!」 ともかく家路を急ぐ事しか出来ない、雪に埋まってうまく進めない中、懸命に家まで進んでいく。 日が完全に落ちようとしていた頃、ようやく自分達の巣に到着できた。 「ゆー?」 中を覗いてみるが気配はない、入り口にはドアを塞ぐのに毎年使っている石と松葉が転がっていた。 しかし、既に外気にさらされて冷え切っているが、確かに先ほどまではゆっくり魔理沙一家が居た形跡が感じられた。 「いまのうちにうちにはいろうね!」 のんびりもしていられない、雪の中を進んできた体は凍りそうなほど冷たくなっていた。 今か今かと待っていた母親の号令で、急いで中に入る一家。 お母さんとお姉さん達が急いで入り口を塞いでいく。 何時もならゆっくりしながら数日かかる作業が、あっという間に終わり入り口は綺麗に塞がれた。 これで外気が入ってくる心配はない。 依然として寒い室内だが、だんだんと暖まってきている。 次第に、一家の顔にも暖かさが戻ってくる。 「よかったね!」 「あったかいね!」 「はるまでゆっくりしようね!!!」 「はるになったらみんなでゆっくりしようね!!!」 無事に巣が戻ってきたことが嬉しいのだろう、口々に出るのは越冬の間の楽しそうな計画と、春になってからのゆっくりする計画だった。 「いっぱい歩いて疲れたからごはんにしようね!」 お母さんゆっくりが提案する。 ふと、ゆっくり魔理沙一家が蓄えておいた食糧はどこだろう、と巣の中を見渡す。 綺麗な鳥の羽、大きくて綺麗な石、そんな素敵なものは多々あったが肝心の食料は何処にもなかった。 「たべものがないよ!」 焦るお母さんゆっくり、何時もなら冬の前に実り豊かな山の幸をたっぷりと蓄えて冬を越す。 いや、蓄えなければ途中で凍死か餓死してしまう。 その大事な備蓄が今年は出来なかった、何時までも暖かい部屋に居た所為で季節感覚が狂ってしまっていたのだ。 「おかあさん、たべものならあるよ!!」 「ゆっくりできるよ!!」 今年生まれた子ゆっくり達だ。 当然、この六匹はまだ越冬を経験していない。 明日にでも取りに行けば良い位に思っているのだろう。 「だめだよ! それたべたらゆっくりできないよ!!!」 あの男から貰ってきた綿菓子の袋に口を伸ばそうとしたところを、お姉さんゆっくり達が止める。 小さくても、越冬の経験だけは頭に残っているらしく皆の表情は必死だった。 「これはれいむがもらったおかしだよ!!」 「れいむのだもの!!!」 口々に文句を言ってくる、お母さんゆっくり達が何とか今の状況を伝えようとするが、なかなか伝わらない。 「あしたになったらみんなでおさんぽにいって、そのときにあつめればいいよ!」 「あしたゆっくりあつめるよ!!!」 「それよりも、おうちさむいよ!!!」 「すとーぶをつけてね!!!」 「おかあさんすとーぶつけてゆっくりしようよ!!!」 「すとーぶ♪ すとーぶ♪」 お母さんゆっくりは困り果てた、どうしても今の緊急事態が理解してもらえなかったからだ。 今も、お姉さんゆっくり達が懸命に説明しているが、おそらくは徒労に終わるだろう。 「おねえちゃんたち、れいむのおかしかってにたべようとしてるの!!?」 「ずるい! ずるいよ!」 「ゆっくりできないなら、おうちからでていってね!!!」 同時に、お姉さんゆっくりに飛び掛る。 妹とはいえ、既に十分成長したゆっくりの攻撃を食らった数匹のお姉さんゆっくりは壁まで吹っ飛んだ。 「ゆ!! このおかしは、ゆっくりできるれいむたちがたべるんだよ!!!」 「おかあさんたちは、ゆっくりできないからたべれないよ!!」 プンプン、と再びお姉さん達に襲い掛かろうとする。 「ゆっくりごめんね!!!」 吹っ飛ばされたのは襲い掛かろうとしていた子ゆっくりの方だった。 「ゅー、ぃたいよ……ゆっくりでぎないよぉ!」 「どうじでゆっぐりざせてくれないの! ゆっくりじだいよぉ」 弱々しく呟く子ゆっくり達、既に大半の餡子は外に飛び出していた。 半ば瀕死のそれを、躊躇なく踏んでいく大きなゆっくり。 先程まで、子ゆっくりと残りのゆっくりを天秤にかけていたお母さんゆっくりだった。 「ほかのゆっくりがゆっくりできなくなるから、ごめんね!!!」 必要以上に潰してくお母さんゆっくり、姉たちも真意を理解したようで母に倣って他の子ゆっくりを潰していった。 その一方的な虐殺は、あっという間に終わりを迎えた。 先程とは打って変わって静寂が辺りを包む。 泣き叫ぶ子ゆっくりは見る影も無く、床に転がっている皮と餡子が混ざった物体がその名残を残しているだけだ。 「あのこたちのぶんも、ゆっくりふゆをこそうね」 「うん、ゆっくりこそうね」 今や十匹ほどに減ったしまった巣の中で、お母さん霊夢と他の霊夢達がお互いに口々に話す。 残念ながら、そこに罪悪感が有るのかは窺い知る事は出来ない。 それから数日が経った。 既に潰れた子ゆっくりの餡ペーストを少しずつ食べながら、越冬するゆっくり一家。 少なくなったことで室内の温度は下がってしまったが、それでも越せないことは無い。 去年と同じ人数になっただけだ。 どのゆっくりもそう思っていた。 だから、誰も不満も言わずじっと寒さに耐えていた。 大寒時、美味しかった餡ペーストも後僅か。 その頃には、子ゆっくりとその餡ペーストを結びつけるゆっくりはいなかった。 殺したことは覚えているが、今食べているこれが野山を駆け巡っていたとは、既に思っていないのだろう。 巣の中も当初は寒かったが、段々となれてきた一家には徐々に口数も戻ってきた。 「おいしいのすくなくなってきたね」 「だいじょうぶ! もうすぐさむいのおわるから!!!」 「でもこれだけだと、あたたかくなるまえにゆっくりできなくなるよ」 「おじさんからもらったおかしがまだのこってるよ。これだけあればゆっくりふゆをこせるよ!!」 「じゃぁこのおいしいの、いまたべちゃってもだいじょうぶだね!!」 「おかあさん、たべていい?」 「ゆゆ……。 ! なんとかぶじにふゆをこせそうだから、きょうはゆっくりおいわいしようね!!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 久しぶりにお腹いっぱいご飯を食べれるゆっくり達はご機嫌だ。 「むしゃ、むしゃ、おいしいよ♪」 「むっしゃむしゃ♪ ゆっくりできるね!!!」 「ゆっくりたべようね!!!」 床がピカピカになるまで舐め終えて、その日の楽しい食事は終わった。 最後の晩餐は、とても賑やかなモノになったようだ。 翌日、お昼頃に目を覚ましたゆっくり達は食事を取ろうと、あのわたあめの袋を運んできた。 一日半分ずつ食べれば間に合う、長年の経験からお母さんゆっくりはそう思っていた。 本当に袋の中にそれに見合うだけの中身が入っていたならば。 「ゆゆ!!?」 「ないよ! ないよ!!!」 大きな袋の中身は殆どなく、そこには微かに甘い香りのする中に、米粒程の塊が入っているだけであった。 「なんで!? なんでないの!?」 「これじゃあゆっくりできないよ!!!」 「おいしいわたあめがないよ!!!」 おじさんの所で出された中でも、特に美味しかったわたあめ。 そのおいしかったわたあめが、袋の中に入っていない。 ゆっくり達には無くなった理由など分かるはずもなく、巣の中はパニック状態だ。 「お、おがしがないよー!!!」 「れいむのおがしがーーー!!!」 「もってでるときはあっだのにー!!!」 必死で他の袋も開け始める、勢いよく飛びつき袋を食い破るゆっくり達。 が、全て同じ、小さな塊が出てくるだけだ。 ボロボロに引き裂かれた袋、訳が分からず叫び続けるゆっくり一家。 丼一杯にも満たない塊、これが今この家にある全食料だった。 それから、数日が経った。 既に一家の顔は青白くなり、目もトロンとしている。 「しんだ、ゆっくりたちの、ために、ゆっくり、ふゆを、こそうね」 「「……ゆっくり、こそうね」」 まるで合言葉のように、死んでいった仲間のためにも、と呟きながら懸命に寒さと空腹に耐え続ける。 この頃には、自分達で殺した子ゆっくり達が他の原因で死んだと思っているらしい。 いつもはゆっくりゆっくり騒がしいゆっくりの巣だが、今は雪が降り続ける外の方が賑やかなくらいだ。 次第に意識が朦朧としてきた、目に映るのはぼんやりとした家族の姿。 それが、段々と輪郭を失っていく。 「……ゆ!」 輪郭を完全に失ったそれは、大きな饅頭の姿になってゆっくりの目に映りこんだ。 「たったべもの!!! ゆっくりできるよ!!!」 一匹が力を振り絞ってもう一匹にかぶり付く、周りでは同じように数匹がかぶり付いていた。 「ゆ! いだいよ! れっ、れいむはたべものじゃないよ!!!」 「やめて! ゆっくりやめてね!」 「むしゃむしゃ、はぁはぁ、うめぇ、めちゃうめぇ!!!」 「ごくんっ! はぁはぁ、ゆっぐりたべるよ!!!」 既に正常な判断が出来なくなっているゆっくり達は、ただ生きるために目の前の饅頭に貪り付いていた。 家族なんてものは関係ない、まさに弱肉強食、たべれれている方が霊夢や魔理沙で食べているほうがれみりゃやフラン、それと同じことだ。 「やめてね!!! みんなでゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢が大きく膨らんで残った数匹の子供達を隠す。 ゆっくりが子供を守る時の常套手段だった。 「うっめぇ! このおおきいまんじゅうもうっめぇ!!!」 「これだけあればゆっくりできるよ!!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛! み゛ん゛な゛でゆ゛っぐり゛じでよ゛ーーーー!!!」 突進するでもなく、殴りつけるでもなく、ただただその大きな饅頭を食べていく。 後ろに隠れていた子供達も、段々と母親の声が小さくなっていくのが分かる。 か細くなっていく声、それがあるときぴたりと止んだ。 今聞こえるのは何かを咀嚼する音のみ、その音はどことなく、ゆっくりれみりゃのそれと酷似していた。 「……ぷはぁ!」 「!!!」 今まで守ってくれていたお母さんゆっくりの背中から、ゆっくり霊夢が顔を出した。 一匹、また一匹とその数は段々と増えていく。 おそらく全員が顔を出したのだろう、一匹のゆっくりがこう叫んだ。 「みんなでゆっくりしようね!!!」 「…………!!!」 巣の中にはゆっくりが数匹、これが巣の中に残っている全ての食料だ。 「むっしゃむっしゃ♪ う~すっきり~!!!」 最後の一口を綺麗に食べ終え、ご満悦のゆっくり霊夢。 どうやら、これで最後の晩餐が終わったようだ。 だが、ユダさえも居ない一人さびしい晩餐だった。 「!! おかあさんたちどこ? どこにいるの?」 正気に返った霊夢は辺りを見回すが、母親達の姿はない。 皆、お腹の中に入っているのだから。 「わかった! たべのもさがしにいったんだ! れいむはゆっくりまってるよ!」 キラキラと目を輝かせて部屋の真ん中に佇む。 時折、体を揺らしてリズムを取りながら母達の帰りをワクワク待つ。 このゆっくり霊夢が犯した間違いは二つ。 一つは、家族は全て自分が食べてしまったという事。 二つ目は、大事な食料を何の考えもなしに全て食べ尽くしてしまったという事。 「ゆっくりまってるから、はやくかえってきてね♪」 雪が津々と降る二月の山の中、あと一ヶ月以上も続くこの冬は、彼女をいったい何時まで生かしておいてくれるのだろうか。
https://w.atwiki.jp/kobaari/pages/73.html
5月1日、火曜日 多摩南部鉄道の一部路線にて ゆっくり霊夢による自動車内アナウンスを導入!! ※ジョークじゃないよ、ホントだよ!! 自動放送で誰の声を使おうかを迷っていたときに、「ゆっくり霊夢」と出会い、試行錯誤を行った結果、遂に自動車内アナウンスに使用されることになった! イントネーションこそ、本物とはまだかけ離れるものの、リアルに近いゆっくり自動放送をお楽しみください。 注意 この自動放送を聞いて、車内で吹いたり、「饅頭め…」と殺意を抱いたりするのはおやめ下さい。 モデルはJR東日本の自動放送。英語アナウンスは「Microsoft Sam」で行っています。 概要 導入日 2012年5月1日 導入路線 新宿線・橋本線<今後順次導入予定> 声の担当 ゆっくり霊夢(日本語)・Microsoft Sam(英語) 自動放送サンプル 新宿線 各駅停車 新宿行き 多摩平発車時放送 自動車内アナウンス搭載車両は「車両トップページ」の自動車内アナウンス搭載車両覧に表記してあります。 自動放送サンプリングの掲載はしばらくお待ちください。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/127.html
ゆっくりという種族が幻想郷に突如蔓延して、どのくらい経っただろうか。 畑を荒らす害獣として駆除されたり、加工所というところでお菓子にされたりするくらいには、既に浸透していると思う。 中には俺のように、ペットして飼うものも少なからず存在していた。 「今帰ったぞ~」 「ゆっ!」 仕事が終わり、帰宅して扉を空けると、部屋の真ん中に鎮座していた生首が声を上げて駆け寄ってきた。 赤いリボンが特徴的な、ゆっくり種の中でも一番数が多いとされるゆっくり霊夢だ。 博麗の巫女によく似た顔で(と言うと、霊夢さんは怒るかもしれないが)、性格は基本的に温和で純粋無垢。 それ故にトラブルを起こすことも多々あるのだが……まぁ、その話はもうちょっと後で。 「ゆっくりしていってね!」 仕事で疲れてる俺に対する労いの言葉――ではなく、単にこいつらの口癖なのだが、兎にも角にも癒される。 可愛いなぁ、くそ。 俺の友人たちはよくこいつを買って食べているが、正直薄目に見れば人の顔そのものであるこいつらによく噛み付けるものだ。 しかも食う時に痛々しい叫び声上げるんだぜ? 悲痛すぎて言葉が出ない。 友人曰く、「お前もその内分かるようになる」らしいんだが……そういう日が来ないことを願う。 「待ってな、今晩飯作るから」 「ゆっくり待ってるね!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて晩飯を心待ちにしていることをアピールするゆっくり霊夢。 うぅん、ぷりちー。 気持ち悪がる人もいるが、俺にとっては可愛いペットだ。 晩飯を食べ終わると、読書タイムとなる。 最近友人になったパチュリーさんから借りた本を読みながら、まったりとした時間を過ごす。 ゆっくり霊夢は何をするでもなくぼーっと、たまにぴょんぴょん部屋を飛び跳ねて、「ゆっくりしてるね!」と言っていた。 ゆっくりの声には癒し効果でもあるのか、意識を阻害されることなく読書に集中出来る。 やがて切りのいいところで本を片付け、ゆっくり霊夢と遊ぶことにした。 「ほら、取って来い!」 「ゆ! ゆ!」 フリスビーを家の壁に穴を開けない程度に軽く投げ、ゆっくり霊夢に取って来させる。 ゆっくり種はその口癖と名前から勘違いされがちだが、飛び跳ねたり、野原を駆け回ったりと意外とアクティブな存在だ。 だから運動不足にならないよう、こうして遊んであげる必要がある。 俺が仕事に行ってる間に外に出してもいいんだが、もし野生のゆっくりアリスやゆっくりれみりゃと遭遇したときのことを考えると……駄目だ、放し飼いは認められない。 「取ってきたよ!」 口にフリスビーを加えたゆっくり霊夢が戻ってくる。 「おう、偉い偉い」 ゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は嬉しそうな顔をした。 その顔を見ていると、こっちの頬まで緩んでくる。 ……それと同時に、ある感覚が心の内より現れた。 「っ……」 「?」 不思議そうにこっちを見つめるゆっくり霊夢になんでもない、と首を振り、もう一度フリスビーを投げる。 せっせと追いかけるゆっくり霊夢を見つめながら、湧き上がる感情に戸惑いを覚える。 ――ゆっくり霊夢をいじめたい。 別に虐待をしたいわけではない。可愛いペットにそんな真似をしたくはない。 しかし、こう、なんというか……ううん、説明出来ない。 「ゆっくり取ってきたよ!」 再び戻って来るゆっくり霊夢。 俺は心のもやもやを打ち払うようにゆっくり霊夢の頭を撫で、そして振動させた。 「ゆっ!?」 小刻みにバイブレーション。 最初は驚いて逃げようとしたゆっくり霊夢の顔が、少しずつ赤らんでくる。 「ゆゆゆ、ゆー!! ゆー!!!」 甲高い声。時間の経過と共に、ゆっくり霊夢はどんどん発情していく。 荒んだ心を癒してくれる礼として、こうしてゆっくり霊夢に快感を与えてあげることは毎日の日課だった。 「……」 だが、今日の俺はなんとなく、手を止めてしまった。 中途半端なところで快感をストップされたゆっくり霊夢は慌てたように俺の手に擦り寄って、 「ゆ、ゆっくりして! もっとゆっくりしていって!」 潤んだ瞳で俺を見上げるゆっくり霊夢。 その視線を浴びて、 「……!」 何故か身体がゾクゾクする。 もっと見たい。 もっとこの目で見つめられたい。 「ゆー!!! ゆー!!! ゆー!!!」 だが、それと同時に可哀想だという感情も浮かび上がってくる。 俺は手をもう一度律動させ、ゆっくり霊夢を絶頂へと導いてやった。 未知の感覚に戸惑いながら、一週間が経過した。 臨時教師として慧音さんの手伝いをした俺は彼女と彼女の友人である妹紅さんと一緒にまったりとお茶を飲みながら歓談し、上機嫌だった。 「おーう、今帰ったぞー!」 扉を開ける。 ――瞬間、先程までの高揚した気分が嘘のように蒸発した。 俺はゆっくり霊夢に、家の中はどこをうろついてもいいから絶対に机の上には乗るなと言い聞かせてあった。 机の上には俺の大事なものがたくさん置いてある。 ゆっくり霊夢はそのことを理解したかどうかは知らないが、厳しく言っておいたので飼い始めてから三ヶ月、ずっと机の上に乗ることはなかった。 だが。 帰宅した俺を待ち受けていたのは机の上に鎮座してゆっくりと眠っているゆっくり霊夢の姿だった。 「……」 俺は机に近寄って、その惨状を目撃した。 綺麗に整頓されていた机の上は見事に荒らされ、物体のほとんどが破壊されていた。 アリスさんがくれた人形も、 妖夢ちゃんが作ってくれた剣神像も、 てゐから珍しく受け取った四葉のクローバーも、 幽香さんから頂戴した花も、 にとりさんと協力して発明したトランシーバーの試作機も、 みんなみんな、見るも無残に破壊され尽くされていた。 「……」 俺はどろどろとした心のまま、ゆっくり霊夢を起こした。 「ゆ……?」 とろんとした目を開け、俺が目の前に立っているのを認識するや否や、 「ゆっくりお帰りなさい!」 いつもの挨拶。 だが、俺の心はいつものように癒されはしない。 「なぁ、ゆっくり霊夢」 「どうしたの?」 「お前、なんで、机の上に乗ってるんだ……?」 「……ゆ!?」 俺の怒りのオーラを感じ取り、ようやく約束を思い出したのか、ゆっくり霊夢は慌てたように頭を下げた。 「ご、ご、ごめんなさいだよ!」 「謝るのは後でいい、理由を説明しろ」 「あのね、蝶々がね……」 ゆっくり霊夢が言うことには昼頃、窓の隙間から現れた蝶々を捕まえようと四苦八苦し、ようやく机の上で捕まえて食べ、そのまま眠ってしまったらしい。 あまりにも夢中で、俺との約束など「うっかり」忘れてしまっていたようだった。 うっかり。 それだけの理由で、俺の大切なものは破壊され、二度と元には戻らない。 俺はゆっくり霊夢を叩こうと腕を振り上げ、 「ゆーっ!!!」 目を閉じ、ぶるぶると震える姿を見て、静かに下ろした。 とんでもないことをしたとはいえ、三ヶ月間ずっと一緒に暮らしてきたペットだ。 暴力を振るうことは、俺には出来ない。 溜息をつき、ゆっくり霊夢を持ち上げ、そっと床に降ろした。 「ゆ……?」 「晩御飯にしようか」 ぱぁ、とゆっくり霊夢の顔が明るくなった。 「ゆっくり用意してね!」 先程の殊勝さが嘘のように、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを露にする。 「ふぅ……」 甘いな。 まったく甘い。 俺は、許してやるなんて一言も言ってない。 その日から、俺は帰りにある場所へ寄るようになった。 必然的に帰りは遅くなり、ゆっくり霊夢と遊ぶ時間はなくなる。 更に意識して朝飯と晩飯の量を減らしたので、ゆっくり霊夢は少しずつ文句を言うようになった。 「早く帰ってきてね!」 「たくさん遊んでね!」 「もっと食べたい!」 だが、俺はその声を悉く無視した。 少し胸は痛んだが、それでもこいつにはやったことの重大さを分からせてやらねばならない。 でないと、俺の怒りが収まらない。 俺のただならぬ様子を見かねた鈴仙さんから貰った精神鎮静剤を飲みながら、俺は準備が整うのを待った。 そして――三日後。 全ての準備は整ったのだった。 ゆっくり霊夢はまどろみの中にいた。 最近は自分の主人があまりゆっくりしてくれなくなり、寂しい思いをしていた。 だが昨日の夜、寝る前に彼は言ってくれたのだ。 「ここのところ、遊んでやれなくてすまなかったな」 「一週間の休暇を取ってきたから、ずっとゆっくり過ごそう」 「ご飯も今まで少なかったけど、豪華にするぞ」 「さ、今日は一緒の布団で寝ようか」 感激したゆっくり霊夢は、わくわくした気持ちのまま眠りに付いた。 一週間も、優しい主人とゆっくり出来る! だから、早く起きないと。 ゆっくり霊夢は寝返りを打とうとして――打てない。 「……?」 身体が動かない。 自分は今だ夢の中にいるのだろうか? なんだか息苦しい…… ゆっくり霊夢は静かに目を開いた。 「……!?」 そして映った光景に飛び上が――ることが出来ず、身体を震わせた。 自分の身体は、四角い箱の中に閉じ込められていた。 『んん゛っん゛ん゛ん゛ん゛……んん゛!?』 ゆっくりしていってね! 種族反射的にそう言おうとして、言えなかった。 自分の口に猿轡が噛まされており、更にその上からガムテープを貼られている。 周りは暗い。しかし自分の視点の場所だけ小さく四角い穴が開けられており、そこから外の様子が映し出されている。 そこには―― 「すぅ……すぅ……」 「ゆ……ゆっく……」 布団で眠っている、見慣れた主人と、ゆっくり霊夢の姿があった。 『ゆ!? ゆゆゆ!!?」』 混乱して喚くゆっくり霊夢、突然の事態に理解が追いつかない。 何故自分はこんなところにいる? 主人と一緒に眠っているゆっくり霊夢は何者だ? 「うぅん……」 と、その時。 主人が眠りから目を覚まし、起き上がった。 目をこすり、横で一緒に眠っていたゆっくり霊夢を見て―― ――惚れ惚れするような太陽の笑顔で、 「ほら、起きろゆっくり霊夢、いい朝だぞ」 『ちがうよ! そいつは偽者だよ!!!』 叫びたい。 しかし、その声は届かない。 やがて偽者のゆっくり霊夢が目を開き、開口一番、 「ゆっくりしていってね!」 「おう、ゆっくり朝飯にするか。昨日の約束通り豪華にいくぞ」 「ゆっくり作ってね!」 『待って! 気付いて!!!』 ゆっくり霊夢は泣きながら、自分と偽者が入れ替わっていることに気付いてくれと願う。 だが無情にも、主人はふんふんと鼻息を歌いながら台所に向かっていった。 『あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』 絶望が心を支配する。 だが、気付いていないのはゆっくり霊夢のほうだった。 これはまだ、始まりにすぎないのだと。 (見ているか、ゆっくり霊夢?) 俺は料理を作りながら、心の中でほくそ笑んだ。 一緒にいたのが偽者だということくらい、先刻承知している。 何故なら二人のゆっくり霊夢を入れ替えたのも、本物のゆっくり霊夢を閉じ込めたのも、全部俺だからだ。 (それがお前への制裁だ。ゆっくり楽しんでくれ) ぞくぞくするような背徳感を感じながら、意識して本物のゆっくり霊夢が閉じ込められている箱を見ないように努める。 ゆっくり霊夢は現在、透明の四角い箱に入れられ、更にその四方と天井をダンボールの壁で一枚一枚覆っている。 そんな面倒なことしなくてもそのままダンボールを被せればいいじゃないか、と思う奴もいるかもしれないが、まぁこれにはちゃんとした理由がある。 その理由は後ほど語るとして、偽者のほうを説明しておこう。 こっちのゆっくり霊夢は三日前、ゆっくり加工所に行って手に入れたゆっくりだ。 所員に事情を説明し、余っている預かり部屋を利用して仲良くなった。 こいつには一週間、俺の家で一緒に暮らせると伝えてある。 何か変なことを言い出さないかだけ少し心配だったが、流石ゆっくり、あまり深くは考えない性質のようだ。 俺は今から、この偽者ゆっくり霊夢を最大限にもてなす。 そしてその様子を、本物のゆっくり霊夢に見せ付けるのだ。 本来なら自分が得られたはずの待遇が、突然現れた自分の偽者に奪われる。 しかもその様子をまざまざと見せ付けられ、自分は食べることも、遊ぶことも許されない。 お仕置きとして、これ以上のものはそうそうないだろう。 さぁ、ゆっくり霊夢。 お前がどれだけのことをしでかしたのか、分かってくれよ? 『う゛わ゛あ゛あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』 ゆっくり霊夢は絶望の淵にいた。 どれだけ暴れても、どれだけ祈っても、自分の置かれている状況はこれっぽっちも変化しない。 朝食は豪華な豚カツだった。自分は何も食べていない。 昼飯までの間、二人はゆっくり過ごしていた。自分はきつい箱の中で息苦しかった。 昼飯は二人でどこかに出かけていた。孤独感が自分を押し潰すようだった。 夕食まで、二人はずっと遊んでいた。自分はただ身体が痒いのを我慢しているだけだった。 夕食は今まで食べてきた中で一番美味しかったお寿司だった。でも、やはり自分は食べられなかった。 そして、 「ゆー……ゆゆゆゆゆ……」 偽者のゆっくり霊夢は現在、主人の手によって振動を与えられていた。 「どうだ? ゆっくりしてるか?」 「ゆ……ゆっくりぃ……してるよぉ……♪」 『ゆっくりしてない!!! れいむは全然ゆっくりしてないよぉ!!!』 ゆっくり霊夢は快感を与えられている偽者の姿を滝の涙を流して見ていた。 滂沱のごとく流れ出る溢れ出る涙。何故、自分がこんな仕打ちを受けないといけないのか? ゆっくり霊夢の頭の中に、既に約束を破ったことは残っていない。 「んほおおおおおおおおおお!」 偽者ゆっくり霊夢が絶頂を迎えた嬌声を聞きながら、本物ゆっくり霊夢はこれがいつまで続くのだろうと考えていた。 それから太陽が昇り、また沈み、そして再び昇った三日目の朝。 空腹で朦朧とした意識を抱えながら、ゆっくり霊夢をうっすらと目を開いた。 映る光景は変わらず、静かに眠る主人と、そして主人の腕を枕に眠る偽者。 ようやく暴れたり叫んだりして体力を消費することが愚かだと気付いたゆっくり霊夢は、呆とした意識のまま、事態が変わることを待っていた。 がさ……がさ…… (……?) ふと気付く。壁の右側から何か音がする。 一体何だろうか? 確かめようにも、壁があって何も見えない。 やがて偽者ゆっくり霊夢が起き出し、ぴょんぴょん飛び跳ねて主人を起こす。 「ゆっくり起きてね!」 「む……もう朝か……」 ふわぁ、と欠伸をする主人。まだ眠り足りないようだった。 「ゆっくりご飯作ってね!」 「おう……だけどその前に」 「ゆ?」 「待ってる間暇だろ? いい遊び道具があるんだ」 そう言って。 主人はゆっくりと、自分の方向へ近寄ってきた。 『!!!』 これは千載一遇のチャンスかもしれない。 ゆっくり霊夢はありったけの力で出来る限り身体を震わせ、自分がここにいることをアピールする。 『れいむはここだよ! ゆっくり探してね!』 やがて映るのは主人の足のドアップ。そして、頭上から声。 「えーと、これだこれだ」 得心したような声。 同時に、ゆっくり霊夢の右側の闇が、突如として払われた。 『……!?』 どうやら、右側の壁が取っ払られたらしい。 もしかしたら脱出の糸口になるかもと、ゆっくり霊夢は明るくなった右側を、 見た。 「――――――ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」 声にならない悲鳴。 閉じ込められたときよりも大きい、今までで一番の驚愕。 「ほら、蛙さんの人形だぞ」「ゆっくり楽しむね!」という主人たちの声も聞こえない。 何故なら。 そこにいたのは。 『うー♪』 『だずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 自分と同じく箱詰めにされ、自分と同じゆっくり霊夢を食べている途中の、ゆっくりれみりゃの姿だった。 (気付いたかな……) 俺は朝食の準備に取り掛かりながら、昨夜のことを思い出していた。 ゆっくり霊夢の起床・睡眠時間は、永淋さんに頼んで作ってもらった気体状睡眠薬で周到に設定してある。 それをゆっくり霊夢の死角から呼吸用に空けておいた穴に流し込んで、眠気を調節するのだ。 だからゆっくり霊夢が起きる前に俺は起床し、加工所で買ったゆっくりれみりゃを入れた透明の箱を隣にセット。 同じく加工所で購入したゆっくり霊夢を中に入れ、準備は万端というわけだ。 箱の大きさはゆっくり霊夢に使った二倍、ちゃんと食べられるスペースはある。 ちなみに都合上ゆっくりれみりゃの口は防げないので、こちらの箱は少し値段の張る防音処理だ。 更にその上に右側――いや、ゆっくりれみりゃから見れば左側か、そこだけ空けた箱を被せてある。 偽者のゆっくり霊夢がゆっくりれみりゃに気付いて怯えたりしたら計画が台無しだからな。 そして全てを終えた俺は先程まで眠っていたフリをしていたわけだ。 自分の天敵がすぐ傍にいる恐怖。更にそいつは自分と同じ顔のゆっくりを目の前で食べているのだ。それも、毎日。 それがどれだけの恐怖か、俺には分からない。 俺の都合上、ゆっくりれみりゃは一日一匹のゆっくり霊夢しか食べられないので、かりかりして目の前のゆっくり霊夢をどうにかして食べようと躍起になるだろう。 それが更に、ゆっくり霊夢を襲う辛苦となる。 ゆっくり霊夢はどうするだろうか。 怯えてぶるぶる震えるだろうか。 我を忘れて泣き叫ぶだろうか。 それを想像するだけで、俺は――たまらない高揚感を得る。 あれから何日経過しただろうか。 ゆっくり霊夢には、もう時間の感覚が存在していなかった。 毎日毎日、自分が過ごすはずだった幸福の日々を目の前で見せ付けられる苦痛。 自分を食べようと、いらいらした様子で飛び回っているゆっくりれみりゃの恐怖。 それが何も口にしていない空腹と身動きが取れないことの不快感とごちゃ混ぜになり、混沌と化していた。 『ゆっくり……したい……』 考えることはもはやそれだけ。 些事を考える余裕など、今のゆっくり霊夢にあるはずもなかった。 「美味しかったなぁ、ゆっくり霊夢!」 「ゆっくり美味しかったね!」 ゆっくり霊夢が食べたことのない、ブ厚いステーキを食べ終わって、主人と偽者ゆっくり霊夢は満足した様子だった。 ステーキ。幾度となく食べたいと主人に言い、その度にあしらわれて食べる機会のなかったステーキ。 本来なら自分が食べていたはずの、ステーキ。 ゆっくり霊夢の中に偽者への憎悪が込み上げ、だがすぐに虚脱感に襲われ萎んでしまう。 もう、何をする気にもなれなかった。 右側には未だにゆっくりれみりゃが自分を食べようと、ぱたぱた飛び回っている。 壁がある限り襲ってこないとは分かっていても、本能的な恐怖は拭い去れない。 もう、ゆっくり霊夢の精神はボロボロだった。 「さて、遊ぶか」 「ゆっくり遊んでいってね!」 「そうだ、今日は面白い玩具があるぞ」 「本当!?」 「おう。ちょっと目隠しするぞ、楽しみにしておけ」 「ゆっくりわくわくするね!」 食事の片付けが終わった主人は、偽者ゆっくり霊夢に目を布で縛っていた。 そして、本物ゆっくり霊夢の方向に歩み寄る。 『……!』 主人が自分の方に近付くのは、どれだけ久しいことか。 ゆっくり霊夢の中に、淡い希望が芽生えた。 もう身体を震わせる体力は残っていない。 ただ、主人が自分を見つけてくれることを祈るだけだ。 「えーと、何処だったかな……」 しかし、主人は期待も空しく、ゆっくり霊夢の死角へと移動してしまった。 希望が潰える。しかし、落胆する体力すらない。 自分の左側からがそごそという音。 結構時間がかかっている。 「お、あったぞ!」 ようやく主人が喜びの声を上げた。 と、同時。 いつかのときと同じく、ゆっくり霊夢の左側の壁が取っ払わらわれた。 反射的に、視線がそちらへ泳ぐ。 そして。 また、いた。 『れ、れれ゛い゛むぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ううぅ゛ぅ゛!!!』 『ゆ゛! ゆ、ゆゆゆゆ゛っく゛り゛し゛て゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 発情し、顔は真っ赤にして目を血走らせたゆっくりアリスと。 そのアリスに襲われ、世にも恐ろしい顔で絶叫を上げる同種のゆっくり霊夢の姿があった。 『…………!!!』 世にも恐ろしい光景に、悲鳴を上げることも出来ず、咄嗟に目を逸らすゆっくり霊夢。 だが逸らした先には、 『うー!!!』 空腹で般若の表情をしたゆっくりれみりゃが、自分を食べようと壁をかりかり引っ掻いている。 『……!! …………!!!』 まさに前門の虎、後門の狼。 ゆっくり霊夢はただ、この状況をなんとかしてくれと願いしかない。 やがてゆっくりアリスが交尾を終えると、ゆっくり霊夢は黒く朽ち果てるのと同時に蔦を伸ばし、子供を生む。 ゆっくりれみりゃの箱より更に四倍は大きい箱の中で、小さな赤ちゃんゆっくり霊夢がぽんぽんと生まれた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆっくりしていってね!』 『れ、れいむ……れ゛い゛む゛ぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!』 だが、その瞬間。 発情が収まらないゆっくりアリスが、なんと赤ちゃんゆっくり霊夢に襲い掛かった。 『ゆ゛!? ゆ゛ゆ゛っ!?』 赤ちゃんゆっくり霊夢は突然の出来事に暴れるが、成人したゆっくりアリスに力で適うはずもなく。 他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、怯えて隅に固まる。 そして交尾は終わるが、赤ちゃんゆっくりは黒ずんだだけで、子供を生むことはなかった。 ゆっくりアリスはその様子はじっと見つめた後、 ぎらり、とその視線を他の赤ちゃんゆっくりたちに移した。 その顔は、未だ発情したまま留まっており。 始まる、地獄絵図。 ゆっくり霊夢が覚えているのは、ここまでだった。 ついにゆっくり霊夢は意識を失い、失神してしまった。 冷たい、空気。 ゆっくり霊夢が目を開くと、そこは今まで暮らしていた部屋の中だった。 「……ゆっく!?」 吃驚して声を上げる。 声が、出る。 ゆっくり霊夢はもう猿轡をしておらず、狭い箱の中にも閉じ込められていなかった。 何が起こっているのか。 周囲を見渡すが、左右にゆっくりれみりゃやゆっくりアリスの姿は見当たらない。 あるのは、激しい空腹感だけ。 「ゆ、ゆっくりー!!!」 とにかく、理由は分からないが助かったことだけは分かり、ゆっくり霊夢は歓喜の声を上げた。 と、そこに、 「おう、起きたか?」 台所で朝食の支度をしていた主人が、ゆっくり霊夢の方を振り向いた。 「ゆっ……」 その顔を見た瞬間、今までの監禁生活で押さえ込んでいた様々な感情が溢れ出し。 ゆっくり霊夢は号泣しながら、主人の足元に飛びついた。 「う゛わ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛ん゛!!!」 「おいおい、どうしたんだよ?」 主人は優しくゆっくり霊夢の身体を抱きかかえ、その涙を拭ってやる。 「ゆ、ゆ゛っく゛りて゛きる″! ゆっくりできるよぉぉぉ!!!」 「あぁん、お前何言ってるんだ……?」 わけが分からん、といった具合に主人は首を捻った。 だがその顔が笑いを堪えていることに、果たしてゆっくり霊夢は気付いているのだろうか? 「まぁいいや、朝食にするぞ」 「ゆ! 朝ごはん!?」 とにかくお腹が空いていた。寿司、ステーキ、自分が食べられなかった数々の豪華な食事を思い出し、思わず涎がこぼれそうになる。 激しい期待を込めて、調理中の料理を覗き込むゆっくり霊夢。 「……ゆ?」 だが、そこにあったのは、人参、椎茸などの普通の野菜ばかり。 しかもその量はかなり少なく、この空腹を満足させられる代物だとは到底思えなかった。 「も、もっといっぱい欲しいよ!」 「あー、悪い。今まで一週間贅沢したツケでな。今日から一ヶ月くらいこれで我慢してくれ」 「ゆっくり!?」 嘘だ、とばかりにゆっくり霊夢は絶叫を上げた。 「やだ! 食べたい!! れいむもステーキとかゆっくり食べたい!!!」 「お前、あんだけ食べてまだ足りないのか? 少しは限度ってもんがあるだろ」 「食べてない! れいむは食べてないよ!!」 「嘘をつくなよ!」 主人の厳しい叱責。びくりとゆっくり霊夢の身体が震える。 主人にとって、あの偽者が本物だったのだ。 あまりの理不尽に、ゆっくり霊夢は涙を流して訴える。 「違うの! 今までのれいむは偽者だったんだよ!! だかられいむは食べてないの!!!」 「いい加減にしろ!」 主人はがっしりとゆっくり霊夢の頬を掴み、言い聞かせるように耳元に囁いた。 「これ以上文句を言うなら、『ゆっくり出来ないようにする』ぞ」 「――!!!」 ゆっくり、できないように、する。 その一言は、ゆっくり霊夢のトラウマを蘇らせた。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 絶叫。涙の奔流が止め処なく溢れ出る。 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は今までの人生で味わったことのない幸福感に包まれていた。 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、謝罪の言葉を口にするゆっくり霊夢。 その哀れな表情が……この上なく、俺の快感となる。 「じゃあ、文句は言わないな?」 「うん……」 「よーし、いい子だ。早苗さんから貰った野菜だぞ、ゆっくり味わって食べろよ?」 「ゆっくり食べるよ……」 消沈した様子のゆっくり霊夢。 それを見て、愛しさが込み上げてきた。 「ああもぅ、可愛いなぁお前は!」 ゆっくり霊夢を抱きしめて頬ずりする。 やっぱりこいつは最高のペットだ! 酷いことしたと思うって? でもそれって俺の愛なんだ! 愛ならしょうがないよね!!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1580.html
ある昼下がり 幻想郷の深い森の奥にある、木々の開けた小さな草原 その草原にゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が二匹で寄り添っている ゆっくり霊夢の下腹部は大きく膨れあがっており、出産間近であることが伺える 「ゆ~♪ ゆ~♪」 ゆっくりと体を左右に揺らしながらゆっくり霊夢は歌を歌う 「ゆ~ゆ~♪」 「すごいおじょうず!れいむはおうたのてんさいだね!」 隣の魔理沙はその歌に大喜びである 「おうたがじょうずなれいむは、きっといいおかあさんになるね!」 魔理沙のほめ言葉に思わず照れながら微笑むゆっくり霊夢 なんとも仲睦まじいやりとりである そのまま夕暮れまでゆっくりすると、やがて二匹は巣へと戻っていった 「ゆ゙ぎぎ…!!」 その晩のこと、ゆっくり霊夢の陣痛がはじまった 「い、いたいよ…!ゆっくりできないよ…!!」 涙で顔を皺くちゃにして痛みを訴える霊夢 「ゆっ! れ、れいむ!ゆっくりしていってねっ!」 その声にゆっくり魔理沙はおろおろとする しかしゆっくり魔理沙には声をかけてあげることしかできない ゆっくり霊夢が陣痛を訴えてしばらくすると… プシッ 巣に小さな水音が響いた するとゆっくり霊夢の底部にある小さな穴、いわゆる産道からぬらぬらした透明な粘液が水溜り状に広がっていく 破水である 出産が開始されるのだ ゆっくり霊夢は体を後ろに傾けて壁にもたれかかると、荒い呼吸で出産を開始した 「ゆぎっ! ゆぎっ!」 顔を真っ赤にしながら必死にいきむゆっくり霊夢、その顔は汗で湿っており額中にびっしりと血管が浮き出ている その姿からは痛みの凄惨さが見て取れる 「いぎぎ…!ま、まりさぁ…!!」 「れいむ!がんばってね!げんきなあかちゃんをうんでね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の傍で懸命に声援をかけつづける しばらくするとゆっくり霊夢の産道周辺がヒクヒクと痙攣しはじめる その痙攣にあわせて、普段は目に見えないゆっくりの膣孔が見えるようになる 膣孔からは、ゆっくり霊夢の呼吸にあわせて粘液が漏れ出している ゆっくり霊夢の膣孔が菊紋を描くのを確認すると、ゆっくり魔理沙はその小さな穴を舐めはじめる 舌で刺激することによって、出産を促すのである 溢れる粘液を舐め取るように、中の粘液を吸いだすように、ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の底部に舌を這わす 「ひぃ゙~ッ!!ひぃ゙~ッ!!」 「がんばってね!がんばってね!」 痛みのあまり泣きながらいきむゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の為に懸命に底部を舐め続けた やがてゆっくり霊夢の下腹部の膨らみは産道のほうに偏りはじめる 胎児が移動しているのだ それにつれ産道周辺がこんもりと膨らみはじめる 「んぃ゙ぎッ!!んぃ゙ぎッ!!」 髪を振り乱しながらさらに強くいきむゆっくり霊夢 するとぴったりと閉じていた産道がミチミチと音を立てて開いていく 「ん゙お゙お゙っ!!」 開いた産道の奥にはゆっくりの赤ちゃんの顔が見える 「れいむ!もうすこしだよぉぉ!!あかぢゃんもはやぐでてきでねぇぇっ!!」 応援しているゆっくり魔理沙の顔ももう涙でぐしゃぐしゃである 「あ゙がちゃッ…!!あ゙がちゃッ…!!」 満身創痍のゆっくり霊夢 ゆっくり霊夢は白目寸前の目つきで口を大きく開け、荒く呼吸しながらうわ言のように赤ちゃんの名を叫ぶ …と、すぐゆっくり霊夢の動きが止まった 凄まじい形相のまま固まったと思うと、プルプルと体を震わせはじめる すると ズポッ と赤ちゃんが飛び出してきた 地面にぶつかってコロコロと転がると、 「ゆっきゅりしていっちぇねぇ!」 力強い声でそう言った 「……れ゙」 「れ゙、れ゙いむ゙ゔゔ!あがぢゃんゔまれたよおおっ!!よぐがんばっだねええっ!!」 「ゆ゙っぐりじでいっでね゙ぇぇぇっ!!」 「びぇぇぇぇぇっ!!」 これ以上の無い歓喜である 二匹は号泣しながら新たな命の誕生を喜んだ 生まれたのはゆっくり霊夢の赤ちゃん まだ母親の体液で体がぬらぬらと光っているが、その姿はとても可愛らしく健康的である 好奇心旺盛に巣の周りをキョロキョロと見渡し、両親の姿を見つけると 「みゃみゃ、ぴゃぴゃ、ゆっくちちようね!」 と言って満面の笑みを浮かべてその場でピョンと飛び跳ねた ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は赤ちゃんに寄り添ってほお擦りをする 赤ちゃんはそれをくすぐったそうにしながらも受け入れた だいすきなお父さんとお母さん、おいしいご飯に静かな森での幸せな生活… その目はきらきらと輝き、将来の希望に満ち溢れていた ──バキバキッ 「ゆ?」 「なんのおと?」 その時突然巣の中に大きな音が響いた ゆっくり一家は喜びの抱擁を中断し、部屋の周りを見回す すると… ──バキッ! ひときわ大きな音を立てたと思うと入り口の扉を突き破って何かが巣の中に飛び込んできた 人間の腕である ゆっくりの巣を見つけた人間が、ゆっくりを捕獲しようと巣の中に手を伸ばしてきたのだ 「ゆ゙!?ゆ゙ゔゔ!!?」 「な゙に゙ごれ゙ぇえッ!!?」 巣の中に突きこまれた腕はゆっくりを求めて巣の中を激しく動く 勿論突然の侵入者に動揺したゆっくり一家は、それが何なのか理解することができない 「み゙ゃみ゙ゃぁああああっ!!」 生まれたての赤ちゃん霊夢は突然の衝撃とあまりの恐怖に泣き叫びながら盛大に失禁する 幸い穴が深かったため寸手のところで人間の手がゆっくり一家に届くことは無かった それでも一杯に差し込まれた腕はゆっくりを探してバタバタと激しく動く ゆっくり一家は壁際に固まって、その腕から必死に遠ざかる ゆっくり霊夢もゆっくり魔理沙も何が起こっているのか理解できない ただ、我等の巣が何かに強襲されているということだけは理解できた 「ごわ゙い゙よ゙お゙お゙お゙っ!!!」 「あ、あかちゃんはかくれてねっ!」 「れいむもあかちゃんもまりさがまもるよ!」 ゆっくり魔理沙は家族を庇う様に前に出て、辺りの餌やら石やらをその腕に吹きつけはじめた 「びゃああッ!!ごわいよお!!ごわいよおおっ!!」 ゆっくり赤ちゃんは恐怖した ひたすら恐怖し続けた まともな思考など働く余地が無いほど震え上がり叫んだ 危機から身を守らねば 隠れるところを探さねば そうして赤ちゃん霊夢は隠れる場所を求め 先ほどまで自分が居た母親霊夢の産道にもぐりこんだ 「ゆ゙ゆ゙っ!?あかちゃん!なにしてるのっ!?」 今まで自分がずっと居た場所、一番信頼できる安全な場所 赤ちゃん霊夢が選んだのは母親の胎内だった 「ゆぐぐ!くるしいよ…!」 出産の影響もあり、ゆっくり霊夢の膣孔の皮は伸びきっていた為そこにもぐりこむのは難しく無かった それから間も無く、ゆっくり魔理沙の善戦あってか腕の主は捕獲を諦めて巣から去っていった しかし問題はそれで済まなかった 恐怖のあまり、赤ちゃん霊夢はゆっくり霊夢の産道にもぐりこんで出てこないのである 苦しむ母霊夢などお構いなしに、赤ちゃん霊夢は恐怖でガチガチと歯を鳴らしながら奥へ、さらに奥へと進んでいく 「ん゙ぃ゙ぃ゙!ん゙ぃ゙ぃ゙!」 「あかちゃん!もうだいじょうぶだからはやくでてきてね!」 ギリギリと歯軋りをしながら苦しさと痛みに耐えるゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙も必死に呼びかける 再び体積が増えた苦しさに、必死にひり出そうとしても赤ちゃん霊夢は抵抗して出てこない 再び赤ちゃんを包んだ膣孔は再度ぴったりとその口を閉じてしまっており その穴からはただただぬらぬらと透明な粘液を垂らすばかりである 「赤ちゃんでてきてぇーっ!!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の膣孔に口をつけて必死に吸い出そうとする 巣にはただただ淫猥に粘液の水溜りが広がっていくばかりであった 戻るゆっくり ~END~ 自分で書き込みした話をSSにしてみた 満足している。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/166.html
ゆっくりという種族が幻想郷に突如蔓延して、どのくらい経っただろうか。 畑を荒らす害獣として駆除されたり、加工所というところでお菓子にされたりするくらいには、既に浸透していると思う。 中には俺のように、ペットして飼うものも少なからず存在していた。 「今帰ったぞ~」 「ゆっ!」 仕事が終わり、帰宅して扉を空けると、部屋の真ん中に鎮座していた生首が声を上げて駆け寄ってきた。 赤いリボンが特徴的な、ゆっくり種の中でも一番数が多いとされるゆっくり霊夢だ。 博麗の巫女によく似た顔で(と言うと、霊夢さんは怒るかもしれないが)、性格は基本的に温和で純粋無垢。 それ故にトラブルを起こすことも多々あるのだが……まぁ、その話はもうちょっと後で。 「ゆっくりしていってね!」 仕事で疲れてる俺に対する労いの言葉――ではなく、単にこいつらの口癖なのだが、兎にも角にも癒される。 可愛いなぁ、くそ。 俺の友人たちはよくこいつを買って食べているが、正直薄目に見れば人の顔そのものであるこいつらによく噛み付けるものだ。 しかも食う時に痛々しい叫び声上げるんだぜ? 悲痛すぎて言葉が出ない。 友人曰く、「お前もその内分かるようになる」らしいんだが……そういう日が来ないことを願う。 「待ってな、今晩飯作るから」 「ゆっくり待ってるね!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて晩飯を心待ちにしていることをアピールするゆっくり霊夢。 うぅん、ぷりちー。 気持ち悪がる人もいるが、俺にとっては可愛いペットだ。 晩飯を食べ終わると、読書タイムとなる。 最近友人になったパチュリーさんから借りた本を読みながら、まったりとした時間を過ごす。 ゆっくり霊夢は何をするでもなくぼーっと、たまにぴょんぴょん部屋を飛び跳ねて、「ゆっくりしてるね!」と言っていた。 ゆっくりの声には癒し効果でもあるのか、意識を阻害されることなく読書に集中出来る。 やがて切りのいいところで本を片付け、ゆっくり霊夢と遊ぶことにした。 「ほら、取って来い!」 「ゆ! ゆ!」 フリスビーを家の壁に穴を開けない程度に軽く投げ、ゆっくり霊夢に取って来させる。 ゆっくり種はその口癖と名前から勘違いされがちだが、飛び跳ねたり、野原を駆け回ったりと意外とアクティブな存在だ。 だから運動不足にならないよう、こうして遊んであげる必要がある。 俺が仕事に行ってる間に外に出してもいいんだが、もし野生のゆっくりアリスやゆっくりれみりゃと遭遇したときのことを考えると……駄目だ、放し飼いは認められない。 「取ってきたよ!」 口にフリスビーを加えたゆっくり霊夢が戻ってくる。 「おう、偉い偉い」 ゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は嬉しそうな顔をした。 その顔を見ていると、こっちの頬まで緩んでくる。 ……それと同時に、ある感覚が心の内より現れた。 「っ……」 「?」 不思議そうにこっちを見つめるゆっくり霊夢になんでもない、と首を振り、もう一度フリスビーを投げる。 せっせと追いかけるゆっくり霊夢を見つめながら、湧き上がる感情に戸惑いを覚える。 ――ゆっくり霊夢をいじめたい。 別に虐待をしたいわけではない。可愛いペットにそんな真似をしたくはない。 しかし、こう、なんというか……ううん、説明出来ない。 「ゆっくり取ってきたよ!」 再び戻って来るゆっくり霊夢。 俺は心のもやもやを打ち払うようにゆっくり霊夢の頭を撫で、そして振動させた。 「ゆっ!?」 小刻みにバイブレーション。 最初は驚いて逃げようとしたゆっくり霊夢の顔が、少しずつ赤らんでくる。 「ゆゆゆ、ゆー!! ゆー!!!」 甲高い声。時間の経過と共に、ゆっくり霊夢はどんどん発情していく。 荒んだ心を癒してくれる礼として、こうしてゆっくり霊夢に快感を与えてあげることは毎日の日課だった。 「……」 だが、今日の俺はなんとなく、手を止めてしまった。 中途半端なところで快感をストップされたゆっくり霊夢は慌てたように俺の手に擦り寄って、 「ゆ、ゆっくりして! もっとゆっくりしていって!」 潤んだ瞳で俺を見上げるゆっくり霊夢。 その視線を浴びて、 「……!」 何故か身体がゾクゾクする。 もっと見たい。 もっとこの目で見つめられたい。 「ゆー!!! ゆー!!! ゆー!!!」 だが、それと同時に可哀想だという感情も浮かび上がってくる。 俺は手をもう一度律動させ、ゆっくり霊夢を絶頂へと導いてやった。 未知の感覚に戸惑いながら、一週間が経過した。 臨時教師として慧音さんの手伝いをした俺は彼女と彼女の友人である妹紅さんと一緒にまったりとお茶を飲みながら歓談し、上機嫌だった。 「おーう、今帰ったぞー!」 扉を開ける。 ――瞬間、先程までの高揚した気分が嘘のように蒸発した。 俺はゆっくり霊夢に、家の中はどこをうろついてもいいから絶対に机の上には乗るなと言い聞かせてあった。 机の上には俺の大事なものがたくさん置いてある。 ゆっくり霊夢はそのことを理解したかどうかは知らないが、厳しく言っておいたので飼い始めてから三ヶ月、ずっと机の上に乗ることはなかった。 だが。 帰宅した俺を待ち受けていたのは机の上に鎮座してゆっくりと眠っているゆっくり霊夢の姿だった。 「……」 俺は机に近寄って、その惨状を目撃した。 綺麗に整頓されていた机の上は見事に荒らされ、物体のほとんどが破壊されていた。 アリスさんがくれた人形も、 妖夢ちゃんが作ってくれた剣神像も、 てゐから珍しく受け取った四葉のクローバーも、 幽香さんから頂戴した花も、 にとりさんと協力して発明したトランシーバーの試作機も、 みんなみんな、見るも無残に破壊され尽くされていた。 「……」 俺はどろどろとした心のまま、ゆっくり霊夢を起こした。 「ゆ……?」 とろんとした目を開け、俺が目の前に立っているのを認識するや否や、 「ゆっくりお帰りなさい!」 いつもの挨拶。 だが、俺の心はいつものように癒されはしない。 「なぁ、ゆっくり霊夢」 「どうしたの?」 「お前、なんで、机の上に乗ってるんだ……?」 「……ゆ!?」 俺の怒りのオーラを感じ取り、ようやく約束を思い出したのか、ゆっくり霊夢は慌てたように頭を下げた。 「ご、ご、ごめんなさいだよ!」 「謝るのは後でいい、理由を説明しろ」 「あのね、蝶々がね……」 ゆっくり霊夢が言うことには昼頃、窓の隙間から現れた蝶々を捕まえようと四苦八苦し、ようやく机の上で捕まえて食べ、そのまま眠ってしまったらしい。 あまりにも夢中で、俺との約束など「うっかり」忘れてしまっていたようだった。 うっかり。 それだけの理由で、俺の大切なものは破壊され、二度と元には戻らない。 俺はゆっくり霊夢を叩こうと腕を振り上げ、 「ゆーっ!!!」 目を閉じ、ぶるぶると震える姿を見て、静かに下ろした。 とんでもないことをしたとはいえ、三ヶ月間ずっと一緒に暮らしてきたペットだ。 暴力を振るうことは、俺には出来ない。 溜息をつき、ゆっくり霊夢を持ち上げ、そっと床に降ろした。 「ゆ……?」 「晩御飯にしようか」 ぱぁ、とゆっくり霊夢の顔が明るくなった。 「ゆっくり用意してね!」 先程の殊勝さが嘘のように、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを露にする。 「ふぅ……」 甘いな。 まったく甘い。 俺は、許してやるなんて一言も言ってない。 その日から、俺は帰りにある場所へ寄るようになった。 必然的に帰りは遅くなり、ゆっくり霊夢と遊ぶ時間はなくなる。 更に意識して朝飯と晩飯の量を減らしたので、ゆっくり霊夢は少しずつ文句を言うようになった。 「早く帰ってきてね!」 「たくさん遊んでね!」 「もっと食べたい!」 だが、俺はその声を悉く無視した。 少し胸は痛んだが、それでもこいつにはやったことの重大さを分からせてやらねばならない。 でないと、俺の怒りが収まらない。 俺のただならぬ様子を見かねた鈴仙さんから貰った精神鎮静剤を飲みながら、俺は準備が整うのを待った。 そして――三日後。 全ての準備は整ったのだった。 ゆっくり霊夢はまどろみの中にいた。 最近は自分の主人があまりゆっくりしてくれなくなり、寂しい思いをしていた。 だが昨日の夜、寝る前に彼は言ってくれたのだ。 「ここのところ、遊んでやれなくてすまなかったな」 「一週間の休暇を取ってきたから、ずっとゆっくり過ごそう」 「ご飯も今まで少なかったけど、豪華にするぞ」 「さ、今日は一緒の布団で寝ようか」 感激したゆっくり霊夢は、わくわくした気持ちのまま眠りに付いた。 一週間も、優しい主人とゆっくり出来る! だから、早く起きないと。 ゆっくり霊夢は寝返りを打とうとして――打てない。 「……?」 身体が動かない。 自分は今だ夢の中にいるのだろうか? なんだか息苦しい…… ゆっくり霊夢は静かに目を開いた。 「……!?」 そして映った光景に飛び上が――ることが出来ず、身体を震わせた。 自分の身体は、四角い箱の中に閉じ込められていた。 『んん゛っん゛ん゛ん゛ん゛……んん゛!?』 ゆっくりしていってね! 種族反射的にそう言おうとして、言えなかった。 自分の口に猿轡が噛まされており、更にその上からガムテープを貼られている。 周りは暗い。しかし自分の視点の場所だけ小さく四角い穴が開けられており、そこから外の様子が映し出されている。 そこには―― 「すぅ……すぅ……」 「ゆ……ゆっく……」 布団で眠っている、見慣れた主人と、ゆっくり霊夢の姿があった。 『ゆ!? ゆゆゆ!!?」』 混乱して喚くゆっくり霊夢、突然の事態に理解が追いつかない。 何故自分はこんなところにいる? 主人と一緒に眠っているゆっくり霊夢は何者だ? 「うぅん……」 と、その時。 主人が眠りから目を覚まし、起き上がった。 目をこすり、横で一緒に眠っていたゆっくり霊夢を見て―― ――惚れ惚れするような太陽の笑顔で、 「ほら、起きろゆっくり霊夢、いい朝だぞ」 『ちがうよ! そいつは偽者だよ!!!』 叫びたい。 しかし、その声は届かない。 やがて偽者のゆっくり霊夢が目を開き、開口一番、 「ゆっくりしていってね!」 「おう、ゆっくり朝飯にするか。昨日の約束通り豪華にいくぞ」 「ゆっくり作ってね!」 『待って! 気付いて!!!』 ゆっくり霊夢は泣きながら、自分と偽者が入れ替わっていることに気付いてくれと願う。 だが無情にも、主人はふんふんと鼻息を歌いながら台所に向かっていった。 『あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』 絶望が心を支配する。 だが、気付いていないのはゆっくり霊夢のほうだった。 これはまだ、始まりにすぎないのだと。 (見ているか、ゆっくり霊夢?) 俺は料理を作りながら、心の中でほくそ笑んだ。 一緒にいたのが偽者だということくらい、先刻承知している。 何故なら二人のゆっくり霊夢を入れ替えたのも、本物のゆっくり霊夢を閉じ込めたのも、全部俺だからだ。 (それがお前への制裁だ。ゆっくり楽しんでくれ) ぞくぞくするような背徳感を感じながら、意識して本物のゆっくり霊夢が閉じ込められている箱を見ないように努める。 ゆっくり霊夢は現在、透明の四角い箱に入れられ、更にその四方と天井をダンボールの壁で一枚一枚覆っている。 そんな面倒なことしなくてもそのままダンボールを被せればいいじゃないか、と思う奴もいるかもしれないが、まぁこれにはちゃんとした理由がある。 その理由は後ほど語るとして、偽者のほうを説明しておこう。 こっちのゆっくり霊夢は三日前、ゆっくり加工所に行って手に入れたゆっくりだ。 所員に事情を説明し、余っている預かり部屋を利用して仲良くなった。 こいつには一週間、俺の家で一緒に暮らせると伝えてある。 何か変なことを言い出さないかだけ少し心配だったが、流石ゆっくり、あまり深くは考えない性質のようだ。 俺は今から、この偽者ゆっくり霊夢を最大限にもてなす。 そしてその様子を、本物のゆっくり霊夢に見せ付けるのだ。 本来なら自分が得られたはずの待遇が、突然現れた自分の偽者に奪われる。 しかもその様子をまざまざと見せ付けられ、自分は食べることも、遊ぶことも許されない。 お仕置きとして、これ以上のものはそうそうないだろう。 さぁ、ゆっくり霊夢。 お前がどれだけのことをしでかしたのか、分かってくれよ? 『う゛わ゛あ゛あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』 ゆっくり霊夢は絶望の淵にいた。 どれだけ暴れても、どれだけ祈っても、自分の置かれている状況はこれっぽっちも変化しない。 朝食は豪華な豚カツだった。自分は何も食べていない。 昼飯までの間、二人はゆっくり過ごしていた。自分はきつい箱の中で息苦しかった。 昼飯は二人でどこかに出かけていた。孤独感が自分を押し潰すようだった。 夕食まで、二人はずっと遊んでいた。自分はただ身体が痒いのを我慢しているだけだった。 夕食は今まで食べてきた中で一番美味しかったお寿司だった。でも、やはり自分は食べられなかった。 そして、 「ゆー……ゆゆゆゆゆ……」 偽者のゆっくり霊夢は現在、主人の手によって振動を与えられていた。 「どうだ? ゆっくりしてるか?」 「ゆ……ゆっくりぃ……してるよぉ……♪」 『ゆっくりしてない!!! れいむは全然ゆっくりしてないよぉ!!!』 ゆっくり霊夢は快感を与えられている偽者の姿を滝の涙を流して見ていた。 滂沱のごとく流れ出る溢れ出る涙。何故、自分がこんな仕打ちを受けないといけないのか? ゆっくり霊夢の頭の中に、既に約束を破ったことは残っていない。 「んほおおおおおおおおおお!」 偽者ゆっくり霊夢が絶頂を迎えた嬌声を聞きながら、本物ゆっくり霊夢はこれがいつまで続くのだろうと考えていた。 それから太陽が昇り、また沈み、そして再び昇った三日目の朝。 空腹で朦朧とした意識を抱えながら、ゆっくり霊夢をうっすらと目を開いた。 映る光景は変わらず、静かに眠る主人と、そして主人の腕を枕に眠る偽者。 ようやく暴れたり叫んだりして体力を消費することが愚かだと気付いたゆっくり霊夢は、呆とした意識のまま、事態が変わることを待っていた。 がさ……がさ…… (……?) ふと気付く。壁の右側から何か音がする。 一体何だろうか? 確かめようにも、壁があって何も見えない。 やがて偽者ゆっくり霊夢が起き出し、ぴょんぴょん飛び跳ねて主人を起こす。 「ゆっくり起きてね!」 「む……もう朝か……」 ふわぁ、と欠伸をする主人。まだ眠り足りないようだった。 「ゆっくりご飯作ってね!」 「おう……だけどその前に」 「ゆ?」 「待ってる間暇だろ? いい遊び道具があるんだ」 そう言って。 主人はゆっくりと、自分の方向へ近寄ってきた。 『!!!』 これは千載一遇のチャンスかもしれない。 ゆっくり霊夢はありったけの力で出来る限り身体を震わせ、自分がここにいることをアピールする。 『れいむはここだよ! ゆっくり探してね!』 やがて映るのは主人の足のドアップ。そして、頭上から声。 「えーと、これだこれだ」 得心したような声。 同時に、ゆっくり霊夢の右側の闇が、突如として払われた。 『……!?』 どうやら、右側の壁が取っ払られたらしい。 もしかしたら脱出の糸口になるかもと、ゆっくり霊夢は明るくなった右側を、 見た。 「――――――ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」 声にならない悲鳴。 閉じ込められたときよりも大きい、今までで一番の驚愕。 「ほら、蛙さんの人形だぞ」「ゆっくり楽しむね!」という主人たちの声も聞こえない。 何故なら。 そこにいたのは。 『うー♪』 『だずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 自分と同じく箱詰めにされ、自分と同じゆっくり霊夢を食べている途中の、ゆっくりれみりゃの姿だった。 (気付いたかな……) 俺は朝食の準備に取り掛かりながら、昨夜のことを思い出していた。 ゆっくり霊夢の起床・睡眠時間は、永淋さんに頼んで作ってもらった気体状睡眠薬で周到に設定してある。 それをゆっくり霊夢の死角から呼吸用に空けておいた穴に流し込んで、眠気を調節するのだ。 だからゆっくり霊夢が起きる前に俺は起床し、加工所で買ったゆっくりれみりゃを入れた透明の箱を隣にセット。 同じく加工所で購入したゆっくり霊夢を中に入れ、準備は万端というわけだ。 箱の大きさはゆっくり霊夢に使った二倍、ちゃんと食べられるスペースはある。 ちなみに都合上ゆっくりれみりゃの口は防げないので、こちらの箱は少し値段の張る防音処理だ。 更にその上に右側――いや、ゆっくりれみりゃから見れば左側か、そこだけ空けた箱を被せてある。 偽者のゆっくり霊夢がゆっくりれみりゃに気付いて怯えたりしたら計画が台無しだからな。 そして全てを終えた俺は先程まで眠っていたフリをしていたわけだ。 自分の天敵がすぐ傍にいる恐怖。更にそいつは自分と同じ顔のゆっくりを目の前で食べているのだ。それも、毎日。 それがどれだけの恐怖か、俺には分からない。 俺の都合上、ゆっくりれみりゃは一日一匹のゆっくり霊夢しか食べられないので、かりかりして目の前のゆっくり霊夢をどうにかして食べようと躍起になるだろう。 それが更に、ゆっくり霊夢を襲う辛苦となる。 ゆっくり霊夢はどうするだろうか。 怯えてぶるぶる震えるだろうか。 我を忘れて泣き叫ぶだろうか。 それを想像するだけで、俺は――たまらない高揚感を得る。 あれから何日経過しただろうか。 ゆっくり霊夢には、もう時間の感覚が存在していなかった。 毎日毎日、自分が過ごすはずだった幸福の日々を目の前で見せ付けられる苦痛。 自分を食べようと、いらいらした様子で飛び回っているゆっくりれみりゃの恐怖。 それが何も口にしていない空腹と身動きが取れないことの不快感とごちゃ混ぜになり、混沌と化していた。 『ゆっくり……したい……』 考えることはもはやそれだけ。 些事を考える余裕など、今のゆっくり霊夢にあるはずもなかった。 「美味しかったなぁ、ゆっくり霊夢!」 「ゆっくり美味しかったね!」 ゆっくり霊夢が食べたことのない、ブ厚いステーキを食べ終わって、主人と偽者ゆっくり霊夢は満足した様子だった。 ステーキ。幾度となく食べたいと主人に言い、その度にあしらわれて食べる機会のなかったステーキ。 本来なら自分が食べていたはずの、ステーキ。 ゆっくり霊夢の中に偽者への憎悪が込み上げ、だがすぐに虚脱感に襲われ萎んでしまう。 もう、何をする気にもなれなかった。 右側には未だにゆっくりれみりゃが自分を食べようと、ぱたぱた飛び回っている。 壁がある限り襲ってこないとは分かっていても、本能的な恐怖は拭い去れない。 もう、ゆっくり霊夢の精神はボロボロだった。 「さて、遊ぶか」 「ゆっくり遊んでいってね!」 「そうだ、今日は面白い玩具があるぞ」 「本当!?」 「おう。ちょっと目隠しするぞ、楽しみにしておけ」 「ゆっくりわくわくするね!」 食事の片付けが終わった主人は、偽者ゆっくり霊夢に目を布で縛っていた。 そして、本物ゆっくり霊夢の方向に歩み寄る。 『……!』 主人が自分の方に近付くのは、どれだけ久しいことか。 ゆっくり霊夢の中に、淡い希望が芽生えた。 もう身体を震わせる体力は残っていない。 ただ、主人が自分を見つけてくれることを祈るだけだ。 「えーと、何処だったかな……」 しかし、主人は期待も空しく、ゆっくり霊夢の死角へと移動してしまった。 希望が潰える。しかし、落胆する体力すらない。 自分の左側からがそごそという音。 結構時間がかかっている。 「お、あったぞ!」 ようやく主人が喜びの声を上げた。 と、同時。 いつかのときと同じく、ゆっくり霊夢の左側の壁が取っ払わらわれた。 反射的に、視線がそちらへ泳ぐ。 そして。 また、いた。 『れ、れれ゛い゛むぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ううぅ゛ぅ゛!!!』 『ゆ゛! ゆ、ゆゆゆゆ゛っく゛り゛し゛て゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 発情し、顔は真っ赤にして目を血走らせたゆっくりアリスと。 そのアリスに襲われ、世にも恐ろしい顔で絶叫を上げる同種のゆっくり霊夢の姿があった。 『…………!!!』 世にも恐ろしい光景に、悲鳴を上げることも出来ず、咄嗟に目を逸らすゆっくり霊夢。 だが逸らした先には、 『うー!!!』 空腹で般若の表情をしたゆっくりれみりゃが、自分を食べようと壁をかりかり引っ掻いている。 『……!! …………!!!』 まさに前門の虎、後門の狼。 ゆっくり霊夢はただ、この状況をなんとかしてくれと願いしかない。 やがてゆっくりアリスが交尾を終えると、ゆっくり霊夢は黒く朽ち果てるのと同時に蔦を伸ばし、子供を生む。 ゆっくりれみりゃの箱より更に四倍は大きい箱の中で、小さな赤ちゃんゆっくり霊夢がぽんぽんと生まれた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆっくりしていってね!』 『れ、れいむ……れ゛い゛む゛ぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!』 だが、その瞬間。 発情が収まらないゆっくりアリスが、なんと赤ちゃんゆっくり霊夢に襲い掛かった。 『ゆ゛!? ゆ゛ゆ゛っ!?』 赤ちゃんゆっくり霊夢は突然の出来事に暴れるが、成人したゆっくりアリスに力で適うはずもなく。 他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、怯えて隅に固まる。 そして交尾は終わるが、赤ちゃんゆっくりは黒ずんだだけで、子供を生むことはなかった。 ゆっくりアリスはその様子はじっと見つめた後、 ぎらり、とその視線を他の赤ちゃんゆっくりたちに移した。 その顔は、未だ発情したまま留まっており。 始まる、地獄絵図。 ゆっくり霊夢が覚えているのは、ここまでだった。 ついにゆっくり霊夢は意識を失い、失神してしまった。 冷たい、空気。 ゆっくり霊夢が目を開くと、そこは今まで暮らしていた部屋の中だった。 「……ゆっく!?」 吃驚して声を上げる。 声が、出る。 ゆっくり霊夢はもう猿轡をしておらず、狭い箱の中にも閉じ込められていなかった。 何が起こっているのか。 周囲を見渡すが、左右にゆっくりれみりゃやゆっくりアリスの姿は見当たらない。 あるのは、激しい空腹感だけ。 「ゆ、ゆっくりー!!!」 とにかく、理由は分からないが助かったことだけは分かり、ゆっくり霊夢は歓喜の声を上げた。 と、そこに、 「おう、起きたか?」 台所で朝食の支度をしていた主人が、ゆっくり霊夢の方を振り向いた。 「ゆっ……」 その顔を見た瞬間、今までの監禁生活で押さえ込んでいた様々な感情が溢れ出し。 ゆっくり霊夢は号泣しながら、主人の足元に飛びついた。 「う゛わ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛ん゛!!!」 「おいおい、どうしたんだよ?」 主人は優しくゆっくり霊夢の身体を抱きかかえ、その涙を拭ってやる。 「ゆ、ゆ゛っく゛りて゛きる″! ゆっくりできるよぉぉぉ!!!」 「あぁん、お前何言ってるんだ……?」 わけが分からん、といった具合に主人は首を捻った。 だがその顔が笑いを堪えていることに、果たしてゆっくり霊夢は気付いているのだろうか? 「まぁいいや、朝食にするぞ」 「ゆ! 朝ごはん!?」 とにかくお腹が空いていた。寿司、ステーキ、自分が食べられなかった数々の豪華な食事を思い出し、思わず涎がこぼれそうになる。 激しい期待を込めて、調理中の料理を覗き込むゆっくり霊夢。 「……ゆ?」 だが、そこにあったのは、人参、椎茸などの普通の野菜ばかり。 しかもその量はかなり少なく、この空腹を満足させられる代物だとは到底思えなかった。 「も、もっといっぱい欲しいよ!」 「あー、悪い。今まで一週間贅沢したツケでな。今日から一ヶ月くらいこれで我慢してくれ」 「ゆっくり!?」 嘘だ、とばかりにゆっくり霊夢は絶叫を上げた。 「やだ! 食べたい!! れいむもステーキとかゆっくり食べたい!!!」 「お前、あんだけ食べてまだ足りないのか? 少しは限度ってもんがあるだろ」 「食べてない! れいむは食べてないよ!!」 「嘘をつくなよ!」 主人の厳しい叱責。びくりとゆっくり霊夢の身体が震える。 主人にとって、あの偽者が本物だったのだ。 あまりの理不尽に、ゆっくり霊夢は涙を流して訴える。 「違うの! 今までのれいむは偽者だったんだよ!! だかられいむは食べてないの!!!」 「いい加減にしろ!」 主人はがっしりとゆっくり霊夢の頬を掴み、言い聞かせるように耳元に囁いた。 「これ以上文句を言うなら、『ゆっくり出来ないようにする』ぞ」 「――!!!」 ゆっくり、できないように、する。 その一言は、ゆっくり霊夢のトラウマを蘇らせた。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 絶叫。涙の奔流が止め処なく溢れ出る。 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は今までの人生で味わったことのない幸福感に包まれていた。 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、謝罪の言葉を口にするゆっくり霊夢。 その哀れな表情が……この上なく、俺の快感となる。 「じゃあ、文句は言わないな?」 「うん……」 「よーし、いい子だ。早苗さんから貰った野菜だぞ、ゆっくり味わって食べろよ?」 「ゆっくり食べるよ……」 消沈した様子のゆっくり霊夢。 それを見て、愛しさが込み上げてきた。 「ああもぅ、可愛いなぁお前は!」 ゆっくり霊夢を抱きしめて頬ずりする。 やっぱりこいつは最高のペットだ! 酷いことしたと思うって? でもそれって俺の愛なんだ! 愛ならしょうがないよね!! 選択肢 投票 しあわせー! (27) それなりー (3) つぎにきたいするよ! (2) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/138.html
ここは、広大なゆっくり平原。 柔らかな草で満たされ、さまざまな花が咲き、穏やかな彩りを見せている。 さわやかな風が吹けば木々の枝が揺れ、くすぐったい音が奏でられる。 青い青い空にゆっくりと浮かんでいるお日様からは柔らかな光が燦々とふりそそぎ、 平原はまるで母の慈愛に満ちた抱擁を受けたかのように平穏に包まれている。 また、夜ともなれば風は涼しさを帯び、虫たちはここぞとばかりに歌いだす。 満天の星々は瞬き、冷たさを感じさせる月からはきらきらと綺麗なものが零れ落ちていき、 大地がそれらをゆっくりと受け止めてくれる。 そんな綺麗なものたちの間で、ゆっくりたちはくる日もくる日もいっしょうけんめいゆっくりしていた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり」「して」「いって」「ね」「!」 ゆっくり霊夢の群れだ。母ゆっくり霊夢が一匹、子ゆっくり霊夢が五匹いる。 母ゆっくり霊夢に比べて、子ゆっくり霊夢は個体によってまちまちだが、一回りから二回りは小さい。 群れを成すゆっくりは動物性が濃いのか、複数回の繁殖期を経てからゆっくりと朽ちていく。 逆に植物性の濃いゆっくりは、一度の繁殖で次世代へと全てを遺して朽ちるのだ。 ゆっくり平原のところどころにある、蔦を帯びた黒ずんだゆっくりがそれだ。 動物性の濃いゆっくりの子に植物性の濃いゆっくりが生まれたり、その逆もある。 なぜそんなことが起こるのかは謎で、その判別は繁殖期にならないとできない。 また、植物性の濃いゆっくりのほうが一回の繁殖で産む子の数が多いらしい。だが総じて見ると、ほぼ同数だというのは生命の神秘だろうか。 その群れがいるのはゆっくり平原でも屈指のゆっくり名所。池だ。 綺麗な水に、魚や虫たちがいて餌も豊富。多くのゆっくりたちが思い思いのやり方でゆっくりしている。 母ゆっくり霊夢は子ゆっくり霊夢を一匹一匹丁寧に水を含んだ舌でこすっている。 「ゆっくり♪ゆっくり♪」 「くすくす~ くすくす~」 体表についている汚れをなめ取って食べているのだ。 その間、他の子ゆっくり霊夢たちは水をかけあったり、口にふくみ水鉄砲のように噴出したりして遊んでいる。 水辺の花によってきた蝶々や蜂を追いかけて、狩りの真似事をしている子ゆっくり霊夢もいる。 「びゅーびゅー」 「きゃっきゃ~」 「ゆっくりてふてふしていってね!」 いつもどおりの、何の変哲もない平和な日常。昨日まではゆっくりできた。今日も、そして明日からもゆっくりしたい。 そんなことを考えられるはずもないが、そう願っていても不思議ではない。 「ゆぐっ!?」 だが、平穏というものはいつだってたやすく壊れてしまう。 子ゆっくり霊夢がゆっくり魔理沙に踏まれている。群れで一番小さなゆっくり霊夢だった。 「ゆ゛っぐでぃやべでねぇえ゛ぇ!」 苦しげにうめく子ゆっくり霊夢。 ゆっくり魔理沙の顔はふてぶてしく、まるでガキ大将のようだ。いつ歌いだしてもおかしくない。 あたりに他のゆっくり魔理沙は見当たらない。群れを離れているわけではないようだ。 植物性の濃いゆっくりから生まれたのだろう、そういう種は自立心が強いが、総じて協調性に欠けている。 そのゆっくり魔理沙もご多分に漏れず、自分のために邪魔なゆっくり霊夢の群れを追い出そうとしているのだろう。 手始めに弱いやつから。 「さっさとどっかいってね!ここでゆっくりしないでね!」 跳ね上がり、潰す。跳ね上がり、潰す。もはや泥団子だ。 「い゛やじゃあ゛ぁぁあ゛ぁぁあぁぁッッ!!?」 「なんでっ!なんでぇぇぇぇ!?」 「や゛べだげでよぉおぇぇええぇぇッ!!」 それを見ていた子ゆっくり霊夢たちは、あまりの衝撃に震えながら叫ぶことしか出来ない。 しかしもとよりゆっくり魔理沙に聞く耳はない。そんな涙ながらの訴えかけなどどこ吹く風と、むしろ勢いを増している。 「ゆっくり♪ゆゆっくり♪ぃゆ~っくりぃ♪」 「やべっ、やべでっ、ぶぶっ!ぶびゅッッ!!」 餡子が飛び出た。これはもう助からない。 それを見てけらけらと気持ちよさそうに笑うゆっくり魔理沙。 さぁ、次の獲物はどれだ!?とばかりに他の子ゆっくり霊夢を値踏みするように順繰りに見ていく。 そこに水が飛んできた。目に当たる。 「ゆ゛ぅう゛ぅぅぅッ!?」 身を震わせて転げまわるゆっくり魔理沙。なみだ目になりながら飛んできた先をにらむ。 そこには敵意をあらわにした母ゆっくり霊夢の姿が。 なにか言おうとして口を開くゆっくり魔理沙だが、母ゆっくり霊夢がまだ口に含んでいた水を勢いよく飛ばす。 「ゆっぐふっ!ぐぶぐぶっ!」 「ゆっーー!!ゆッーー!!」 「ぐふっ、やべでっ、さっさとやべでねっ!」 喉の奥に勢いよく水を当てられてむせるゆっくり魔理沙に、容赦なく水を浴びせていくゆっくり霊夢。 口がからっぽになったのか、ゆっくり魔理沙がひるんでいる間に、飛びかかるゆっくり霊夢。 「ゆっくりしないでねっ!!」 「い゛やあ゛ぁぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あッ!!」 引きずり倒し、体当たりし、噛み付く。乗っかって跳ね回り、体を回転させて踏みにじるゆっくり霊夢。 「ゆびゅー。ゅぶー。」 「ゆっくり!ゆっくりっ!!」 ゆっくり魔理沙はもはや虫の息だが、二度とこういうことをしないように、どちらが上でどちらが下かを刻みつけるように踏みつけるゆっくり霊夢。 声を出さなくなったゆっくり魔理沙から、格付けは済んだとばかりに飛び降りるゆっくり霊夢。 「そこでゆっくりしててねっ!」 吐き捨てるように言い放ち、泥団子になった子ゆっくり霊夢の残骸へと跳ねていく。 そこにはすでに他の子ゆっくり霊夢たちがいて、痛ましいまなざしで見つめていた。 「ひっぐ、ぐすっ。ゆっぐぅ~」 「ゆぅ~」 「もっとゆっくりしたかったよ?」 「あの世でゆっくりしててね!」 思い思いのことを言うゆっくり霊夢たち。母ゆっくり霊夢も寂しげなまなざしでそれを見つめていた。 突然、子ゆっくり霊夢の一匹が凄い勢いで飛んでいった。どれだけゆっくりすればそんなことができるのか想像もつかない。 ゆっくり霊夢たちが飛んでいった先を見ると、その子ゆっくり霊夢は蛙の口に挟まれていた。 「ゆっぐ!?」 大きい。母ゆっくり霊夢くらいはあるだろうそいつは、ゆっくりと獲物を呑みこんだ。げこげこと満腹だと言わんばかりに鳴く。 蛙の中からは 「くらいよー?おかーさん、どこー?ゆっくりしよー」 という声が薄く聞こえている。 ガサリ。 蛙が近づいてきた。 「いやぁっ!いやぁっ!」 「おがーざーーーん!!」 「……っっ!!」 子供たちを守るように、再び敵に向かい飛翔する母ゆっくり霊夢。「ゆーーー!」という掛け声も勇ましい。 今吐き出させればまだ助かる。そんな意識もあったかもしれない。 だが、その跳躍をあざ笑うように飛び立つ蛙。母ゆっくり霊夢以上の跳躍を見せ、その顔に着地する。 「ゆびゅっ!?」 視界をぬめぬめとした蛙で覆われ、着地に失敗した母ゆっくり霊夢。しかし伊達に年は食っていない。 落下の痛みにゆっくりしていないで、すぐさま身を起こす。だがもはやそこには子を食ったにっくき蛙の姿はなく、水面に波紋だけが残っていた。 今朝までゆっくり出来たこの場所はもはやゆっくり出来ない場所だ。 そう思った母ゆっくり霊夢は引越しを決意した。 母が一匹に子が三匹のゆっくり大移動。 と言っても、川辺を変えるだけだが、ゆっくりたちにとっては一大決心と言える。 日のあるうちは新天地を求めて移動し、子ゆっくり霊夢が疲れたと言えばゆっくりと休んだり遊ばせたりした。 夜は木の根元で身を寄せあい、母ゆっくり霊夢は子ゆっくり霊夢たちが眠りにつくまで体をこすりつけて、寝心地よくしていた。 そんな今までとは一味違う毎日が続いているが、ゆっくりの本能なのか、目先のゆっくりが最優先されるので、あっちへふらふらこっちへふらふら。 母ゆっくり霊夢もそこはゆっくり。多少の責任感めいたものを持ってはいるが、子ゆっくり霊夢たちと一緒に遊んでしまうこともあった。 安住の地は見つかるのだろうか? 悲しき別離の日から五日、今日も今日とてゆっくり強行軍だ。母ゆっくり霊夢を先頭に、三匹の子ゆっくり霊夢が続く。 と、真ん中の子ゆっくり霊夢が何かを見つけた。 「きれいなちょうちょ!どこいくの?」 と叫ぶや、そのアゲハチョウを追いかけてゆっくりと跳ねていく。 「うわぁ、きれー」 「まってーゆっくりしていってー」 他の子ゆっくり霊夢もそれに追いすがらんと一所懸命に飛び跳ねていく。たちまち取り残される母ゆっくり霊夢。 「まっでー、おいでがないでー!」 頭を痛めて生んだ子を一気に二匹も失ったあの日を思い出したのか、泣きながら追いかける母ゆっくり霊夢。 べしょべしょと飛び跳ねていくと、聞きなれた子ゆっくり霊夢の笑い声が聞こえる。と、なにかにぶつかった。 涙で前が良く見えなかったのだろう、跳ね返り反り返る。 しばらく青い空が見えた。 「きれー」 とたんに起き上がり小法師のように元に戻る母ゆっくり霊夢。 「ゆっくりしていってね!」 目の前にはゆっくり魔理沙。かつて母ゆっくり霊夢のいとし子を潰した奴ではない。別のゆっくりだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしようね!」 ゆっくり魔理沙は一匹なのか、母ゆっくり霊夢に近づくや体をこすり付ける。その親愛の表現に、母ゆっくり霊夢も同じように頬をこすりつけた。 これで二匹はお友達だ。ゆっゆっ!と喜びを全身で表して飛び跳ねる二匹。 ゆっくり魔理沙と一緒になって駆け出す母ゆっくり霊夢の頭には、どこかへ行った子ゆっくり霊夢を追いかけようという考えはない。 子ゆっくり霊夢たちも大きくなり、もうすぐ育ちきって群れを離れることになるからと考えたわけではないだろうが、心配だとは思ってもいなかった。 何より、久しぶりの開放感。今は新しいお友達と何気負うことなく遊んでいて、以前よりもずっと高くずっと遠くへと跳べそうだった。 「ゆっくりー!」 「ばった!ばった!」 「おーいしーー!!」 「これまじゅーいっ!ぺっぺっしてね!」 そこらへんに生えている草や飛んでいる虫などを食べたり、意味もなく飛び跳ねたりしているうちに、母ゆっくり霊夢は本当に晴れやかに笑顔を浮かべた。 「ゆっくりしていってねー!!」 それはきっと今までで一番いい叫びだったろう。ゆっくり魔理沙もそれに唱和した。二匹はさっき出会ったばかりだというのが信じられないほどに仲良くなっていた。 二匹が日が暮れたことに気づいたのは空が赤く染まっていたからだった。朝からずぅっと遊びまわっていたことになる。 わずかに肌寒い風を受けたとき、母ゆっくり霊夢は未だ戻ってこない子ゆっくり霊夢たちに思いを馳せた。 だがすぐに思い直す。子ゆっくり霊夢たちもすぐにひとり立ちするのだ、いつまでも庇護下におくのが親でもあるまい、と。 ゆっくり魔理沙に声をかけられ、そちらを見ると、ゆっくり魔理沙は飛び跳ねて草を押さえつけて今宵の寝床を作っている。 あたりは背の高い草ばかりなので木の根元でなくてもよさそうだとゆっくり思った。なによりわざわざ作ってくれたのだ、文句など言えない。 「ゆっくりできるね!」 「ゆぅっくりしようねぇ!」 二匹はにっこりと笑った。 しばらくはゆっくりとしていたが、どちらからとなく体をこすり合わせ始めた。それは親愛の表現よりもゆっくりとした動きだ。 なにより頬をこすりあわせているのではなく、顔の前面をこすり合わせている。口が交差するときにお互いついばんでおり、やがてゆっくりと求愛行動に移っていた。 「ゆゅっゆゅっゆゅっゆゅっ!」 「ゆふっ!っ~~ふぅん」 円を描くようにお互いの顔をこすり合わせ、接吻の時間も長くなっていく。 二匹とも頬が好調し、赤らんでいる。表面はしっとりと濡れていき、もちもちとした質感を帯びているようだ。 もし今のこの状態のゆっくりを食べたとしたら、今までにない歯ごたえと吸い付くような食感を味わえたことだろう。 それほどまでに何かに満たされていることがわかるのだ。 こすり合わせる行動はいつの間にか前後に揺れるような動きになっていた。 それは向かい合っている二匹の顔がくっついて離れ、またくっついては離れるという動きだった。むにむにと形を変えていく二匹。 その目はとろりと蕩けており、まるで煮込まれているようだ。 「ゆんゆんゆん~」 「ゆっふぅうぅん」 嬌声は口が繋がっているのでくぐもっているが、たしかな快楽を感じているようだ。 寝床の草が湿り気を帯びていた。二匹の体から分泌される体液だ。ぬとぬとするそれは餡ではあるが、どちらかといえば葛餡に近いかもしれない。 やがて二匹はほぼ同時に声ならぬ声を上げて果てた。 だが、その頭頂部には何の変化もない。きっと発情期ではないからだろう。 「「すっきりー!」」 どことなく艶めいた二匹は晴れ晴れとした表情で叫んで眠りについた。 目を閉じてから十数える間にゆっくりとした寝息が聞こえてくる。ゆっくりたちがどんな夢を見るのかはわからない。 翌日、子ゆっくり霊夢は目を覚ました。差し込む日差しがまぶしかったのだ。 まわりには今まで一緒に過ごした二匹の子ゆっくり霊夢がまだ安らかな寝息をたてている。 「ゆっくりしていってね!」 早くみんなともっとゆっくりしたいと、その子ゆっくり霊夢は朝一番の泣き声で起こそうとした。 二度三度とそれを続けると、ようやく二匹の目が開く。 「「ゆっくりしていってね!」」 三匹は飛び跳ねた。これで今日もみんなでゆっくりできると言っているようだ。 「おかーさんどこいったんだろうね?」 「さがそーさがそー」 「ゆっくりさがそーね!」 そう言いつつ野原を跳ね回る。 朝食はばったなどの虫やそこらじゅうに生えている草だ。 「おいしーい!」 「むぐむう」 「ゆっくりたべるよ!」 やがて満腹したのか、ゆっくりとする三匹。ぽかぽかと食後の日向ぼっこを満喫している。 ゆっくりとしたその表情はまさにゆっくりといえる。見ているとこちらまでゆっくりしたくなってくる。 見れば一匹はよだれまでたらしている。 「ゆっ!おかーさんをさがさないと!」 ゆっくりしすぎて目的を見失っていたが、一匹が思い出した。 すぐさまゆっくりと捜索活動を始める三匹。 しかしあたりから「ゆっくりしていってね!」という声がたくさん聞こえる。 そう、ここはゆっくり平原。 ゆっくりたちが数多く生きているのだ。一匹のゆっくり霊夢を探し出すのは困難だろう。 だが、母子の絆があるはずだ。 子ゆっくり霊夢たちがそんなものを信じているかはわからないが、探すことをやめようとはしない。 「おかーさーーんっ!!」 「もう、どこにいったのー?」 「れーむたちはここだよぉ~」 声を上げつつゆっくりと移動していく。 そうしているうちに日も高く昇り、頂点にさしかかろうとしている。 「ぜ~ぜ~」 「みつからないよう」 「ゆっくりやすもう?」 三匹は体力が限界なのか、舌を出して息を整えていた。汗のようなものも流れている。 さいわい水場は近い、ゆっくりと休養をとれるのは間違いない。 三匹は背の高い草を掻き分けて、水の匂いのする方へとゆっくり進んでいく。 進むにつれて他のゆっくりたちの声がだんだんと小さくなっていることに、まったく気がつく様子のない三匹。 「ゆっ♪しずかになってきたね」 「ゆっ!ゆっくりできるよ?」 「これならゆっくりやすめるねっ!」 濃い緑の草を押しのけて飛び出すと、そこには子ゆっくり霊夢たちが今まで見たことのない生き物がいた。 蛇だ。 綺麗な鱗をそなえたそれは、しゅるりと舌を出し入れし鎌首をもたげて突如現れた闖入者を睥睨している。蛙だったら動けなくなってるだろう。 だがそこはゆっくり、物怖じせずに声をかける。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしようね!」 「ゆぅゆぅっ♪」 蛇はしゅるりと鳴くと矢のように身を翻して跳んだ。一番前にいる子ゆっくり霊夢に向かって大口を開けている。 「ゆぐっ!?」 くわえられた一匹は当然のこと、ほかの二匹も何が起こったのかわからなかった。 「ゆっ!?ゆ゛ぅぅぅう゛う゛ぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ~~~~ッ!!!」 「ゆっくり?ゆぐっゆっ!?」 「ゆぅ~~~~~」 ぐいぐいと飲み込まれていく子ゆっくり霊夢。叫びながら身じろぎするがびくともしない。 それを見て泣きながら叫ぶ二匹。 やがて蛇はそれを全ておさめると体を左右に振る。 蛇の体内からは 「せまいよっ!ゆっくりのまないで!さっさとはきだしてね!!」 などと叫ぶ声が聞こえる。が、それもつかの間すぐにその声は痛みを帯びたものに変わった。 「ゆ゛っゆぐぐぐ!ぜま゛い゛っぜばいよ゛ぅう゛うぅうぅうぅ」 卵を呑みこんだ蛇が体内にある骨で殻を割って中身を出すように、呑まれた子ゆっくり霊夢は自身が引き裂かれるのを感じた。 そして押し出されるのは何よりも大切な命の餡子。のぞんでいないのにゆっくりともれていく。 「いだいっいだぁいっ!いだいよぅっ!いだいいだいいだいッッ!!」 「い゛ぃや゛ぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛」 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でっ!!だじであ゛げでぇっ!お゛ね゛がい゛ぃぃぃぃいぃいぃっ!」 やがてなにも聞こえなくなる。餡子が残らずひねり出されたのだ。 蛇が鎌首をもたげて口を開く。 びくりと身を寄せ合う残された二匹。おびえきったその顔は涙にぬれてふやけていた。 ぺっ。 音がしたわけではないが、蛇がなにかを吐き出した。 それは子ゆっくり霊夢の片方にかぶさる。 「ゆっ!ゆぅっ!とって!とって!」 「ゆっくりまってね!」 ただでさえおびえていたところに、急に真っ暗になったのだ。がくがくと余計に暴れる子ゆっくり霊夢。 それをくわえて引っ張ると二匹はそれがなんなのか理解した。とたんに青ざめる二匹。 黒い髪に赤いリボン。そして自分たちと同じ顔立ち。 違うのは厚さがないことと、穴があいていることだけだった。たったそれだけの違いだが、それはもう二度と動かない。 「い゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 「う゛あ゛ぁあ゛あ゛あっ!な゛に゛ごれ゛な゛に゛ごれ゛ぇ゛え゛ぇえ゛!?」 ぞろりと這い寄ってくる蛇。明らかに獲物を狙う目つきだった。 「ゆっくりしていってよー!」 「もっとゆっくりしてていーよー!」 「「こっちにこないでねっ!!」」 逃げ出す二匹。丸呑みされて皮だけにされる恐怖に汗だくで滂沱の涙を流している。 蛇はゆっくりと獲物の追跡を開始した。 涙と汗でたるんだ皮をべしょべしょとゆがませて、跳ねている二匹の子ゆっくり霊夢。 二匹の胸中にははやく母ゆっくり霊夢と合流してゆっくりしたいということしかなかった。 「ゆぅっひうっ!おがーじゃーん!どこー!?」 「はやくだじげでよー」 「ゆっぐりじだいぃいいいぃぃ」 「ゆっぐじゃぜでぇええ!」 逃げ出してからずうっと喋っているのだ。すこしでも静かにゆっくりしたら背後からしゅるりという音が聞こえそうで怖いのだ。 あたりからだんだんと他のゆっくりの声が聞こえてきた。 「ゆっゆっ!もうすぐおかーさんとあえるね!」 「そしたらきちんとゆっくりしたいね゛っ!?」 「ゆっくりしたいねー」 「ゆっゆっゆゆぅゆゅぅゆ」 「ゆぅ?」 明らかにおかしい様子に子ゆっくり霊夢は振り向いた。 「ぎゃあああああああああああああああ」 蛇がいた。口の間には後ろにいたはずの子ゆっくり霊夢の顔が見え隠れしている。 一目散に逃げ出す子ゆっくり霊夢。 「や゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!ま゛っでえ゛ぇ゛え゛ぇえ゛ぇえぶりゅりっ!」 飲み込まれつつある子ゆっくり霊夢は、自分を見捨てて逃げ出す子ゆっくり霊夢を見ながら、絶望の泣き声をあげて餡子をひねりだされた。 再び蛇の追跡が始まった。 あとにはこれ以上ない絶望と苦痛に彩られたデスマスクだけが残されていた。 「ゆふぅー!ゆひゅぅううぅぅ!!やー!やなのー!」 逃げる子ゆっくり霊夢はいまだかつてないほどゆっくりしないでいた。 あとでゆっくりできるのなら、いまはゆっくりできないでもいい。 表情がそう語っていた。 まわりからは他のゆっくりたちの声が聞こえている。が、その子ゆっくり霊夢は自分がいまだ狙われていることを察していた。 ゆっくりと締め付けるような視線を感じるのだ。 「ゆっくりーゆっくりー」 「ゆっくゆぅっく」 どこか聞き覚えのある声。その方向に向かって跳ぶ! 深い茂みを抜けるとそこにはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいた。 母ゆっくり霊夢だと思ったのだろう、一端着地し、渾身の力で抱きつこうと再び跳ぶ子ゆっくり霊夢。 「おがーざーーーーん゛ん゛ぅっ!?」 だが、無様に地面に叩きつけられる。 「びぃいぃいぃっ!!!やだーー!おがーざんっだぢげでぇぇえぇぇぇ!!!」 食いつかれていた。がっちりと。激しく体を揺らすが決して離れようとしない。 ゆっくりと自分の体が飲み込まれていくのがわかる。ずるり、ずるりと音がする。 「ぴィーーーーーーッ!ぴィーーーーーーッ!!」 うったえる様に泣く子ゆっくり霊夢。しかしその視線の先にいたゆっくり霊夢は隣のゆっくり魔理沙と一緒にどこかへと跳ねていってしまった。 決してその子ゆっくり霊夢をかえりみることはなかった。 「あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛ッーーー!!」 子ゆっくり霊夢の視界はゆっくりと暗黒に包まれていった。 母ゆっくり霊夢は見たこともない生き物に飲まれていくゆっくり霊夢が、自分が頭を痛めて生んだ子ゆっくり霊夢だと一目で理解していた。 だが、子ゆっくり霊夢を助けることよりも、ゆっくり魔理沙と一緒にもっとゆっくりすることを選んだ。 母ゆっくり霊夢は、もはや母ゆっくり霊夢ではなく、ただのゆっくり霊夢だった。 夜。 こうもりのような影がゆらゆらと飛んでいる。 ゆっくりれみりゃだ。 「うー!もちもち!うまー!」 「うまうま!もちもちー!うまー!」 ご満悦の様子で踊るように飛び回っている。 その下には、踏み固められたように倒されている草と、その上に並んでいる黒い帽子と赤いリボンだけが残されていた。 おわり。 お付き合いくださりありがとうございました。 丸呑みって怖いですよね? 著:Hey!胡乱
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1187.html
ある昼下がり 幻想郷の深い森の奥にある、木々の開けた小さな草原 その草原にゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が二匹で寄り添っている ゆっくり霊夢の下腹部は大きく膨れあがっており、出産間近であることが伺える 「ゆ~♪ ゆ~♪」 ゆっくりと体を左右に揺らしながらゆっくり霊夢は歌を歌う 「ゆ~ゆ~♪」 「すごいおじょうず!れいむはおうたのてんさいだね!」 隣の魔理沙はその歌に大喜びである 「おうたがじょうずなれいむは、きっといいおかあさんになるね!」 魔理沙のほめ言葉に思わず照れながら微笑むゆっくり霊夢 なんとも仲睦まじいやりとりである そのまま夕暮れまでゆっくりすると、やがて二匹は巣へと戻っていった 「ゆ゙ぎぎ…!!」 その晩のこと、ゆっくり霊夢の陣痛がはじまった 「い、いたいよ…!ゆっくりできないよ…!!」 涙で顔を皺くちゃにして痛みを訴える霊夢 「ゆっ! れ、れいむ!ゆっくりしていってねっ!」 その声にゆっくり魔理沙はおろおろとする しかしゆっくり魔理沙には声をかけてあげることしかできない ゆっくり霊夢が陣痛を訴えてしばらくすると… プシッ 巣に小さな水音が響いた するとゆっくり霊夢の底部にある小さな穴、いわゆる産道からぬらぬらした透明な粘液が水溜り状に広がっていく 破水である 出産が開始されるのだ ゆっくり霊夢は体を後ろに傾けて壁にもたれかかると、荒い呼吸で出産を開始した 「ゆぎっ! ゆぎっ!」 顔を真っ赤にしながら必死にいきむゆっくり霊夢、その顔は汗で湿っており額中にびっしりと血管が浮き出ている その姿からは痛みの凄惨さが見て取れる 「いぎぎ…!ま、まりさぁ…!!」 「れいむ!がんばってね!げんきなあかちゃんをうんでね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の傍で懸命に声援をかけつづける しばらくするとゆっくり霊夢の産道周辺がヒクヒクと痙攣しはじめる その痙攣にあわせて、普段は目に見えないゆっくりの膣孔が見えるようになる 膣孔からは、ゆっくり霊夢の呼吸にあわせて粘液が漏れ出している ゆっくり霊夢の膣孔が菊紋を描くのを確認すると、ゆっくり魔理沙はその小さな穴を舐めはじめる 舌で刺激することによって、出産を促すのである 溢れる粘液を舐め取るように、中の粘液を吸いだすように、ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の底部に舌を這わす 「ひぃ゙~ッ!!ひぃ゙~ッ!!」 「がんばってね!がんばってね!」 痛みのあまり泣きながらいきむゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の為に懸命に底部を舐め続けた やがてゆっくり霊夢の下腹部の膨らみは産道のほうに偏りはじめる 胎児が移動しているのだ それにつれ産道周辺がこんもりと膨らみはじめる 「んぃ゙ぎッ!!んぃ゙ぎッ!!」 髪を振り乱しながらさらに強くいきむゆっくり霊夢 するとぴったりと閉じていた産道がミチミチと音を立てて開いていく 「ん゙お゙お゙っ!!」 開いた産道の奥にはゆっくりの赤ちゃんの顔が見える 「れいむ!もうすこしだよぉぉ!!あかぢゃんもはやぐでてきでねぇぇっ!!」 応援しているゆっくり魔理沙の顔ももう涙でぐしゃぐしゃである 「あ゙がちゃッ…!!あ゙がちゃッ…!!」 満身創痍のゆっくり霊夢 ゆっくり霊夢は白目寸前の目つきで口を大きく開け、荒く呼吸しながらうわ言のように赤ちゃんの名を叫ぶ …と、すぐゆっくり霊夢の動きが止まった 凄まじい形相のまま固まったと思うと、プルプルと体を震わせはじめる すると ズポッ と赤ちゃんが飛び出してきた 地面にぶつかってコロコロと転がると、 「ゆっきゅりしていっちぇねぇ!」 力強い声でそう言った 「……れ゙」 「れ゙、れ゙いむ゙ゔゔ!あがぢゃんゔまれたよおおっ!!よぐがんばっだねええっ!!」 「ゆ゙っぐりじでいっでね゙ぇぇぇっ!!」 「びぇぇぇぇぇっ!!」 これ以上の無い歓喜である 二匹は号泣しながら新たな命の誕生を喜んだ 生まれたのはゆっくり霊夢の赤ちゃん まだ母親の体液で体がぬらぬらと光っているが、その姿はとても可愛らしく健康的である 好奇心旺盛に巣の周りをキョロキョロと見渡し、両親の姿を見つけると 「みゃみゃ、ぴゃぴゃ、ゆっくちちようね!」 と言って満面の笑みを浮かべてその場でピョンと飛び跳ねた ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は赤ちゃんに寄り添ってほお擦りをする 赤ちゃんはそれをくすぐったそうにしながらも受け入れた だいすきなお父さんとお母さん、おいしいご飯に静かな森での幸せな生活… その目はきらきらと輝き、将来の希望に満ち溢れていた ──バキバキッ 「ゆ?」 「なんのおと?」 その時突然巣の中に大きな音が響いた ゆっくり一家は喜びの抱擁を中断し、部屋の周りを見回す すると… ──バキッ! ひときわ大きな音を立てたと思うと入り口の扉を突き破って何かが巣の中に飛び込んできた 人間の腕である ゆっくりの巣を見つけた人間が、ゆっくりを捕獲しようと巣の中に手を伸ばしてきたのだ 「ゆ゙!?ゆ゙ゔゔ!!?」 「な゙に゙ごれ゙ぇえッ!!?」 巣の中に突きこまれた腕はゆっくりを求めて巣の中を激しく動く 勿論突然の侵入者に動揺したゆっくり一家は、それが何なのか理解することができない 「み゙ゃみ゙ゃぁああああっ!!」 生まれたての赤ちゃん霊夢は突然の衝撃とあまりの恐怖に泣き叫びながら盛大に失禁する 幸い穴が深かったため寸手のところで人間の手がゆっくり一家に届くことは無かった それでも一杯に差し込まれた腕はゆっくりを探してバタバタと激しく動く ゆっくり一家は壁際に固まって、その腕から必死に遠ざかる ゆっくり霊夢もゆっくり魔理沙も何が起こっているのか理解できない ただ、我等の巣が何かに強襲されているということだけは理解できた 「ごわ゙い゙よ゙お゙お゙お゙っ!!!」 「あ、あかちゃんはかくれてねっ!」 「れいむもあかちゃんもまりさがまもるよ!」 ゆっくり魔理沙は家族を庇う様に前に出て、辺りの餌やら石やらをその腕に吹きつけはじめた 「びゃああッ!!ごわいよお!!ごわいよおおっ!!」 ゆっくり赤ちゃんは恐怖した ひたすら恐怖し続けた まともな思考など働く余地が無いほど震え上がり叫んだ 危機から身を守らねば 隠れるところを探さねば そうして赤ちゃん霊夢は隠れる場所を求め 先ほどまで自分が居た母親霊夢の産道にもぐりこんだ 「ゆ゙ゆ゙っ!?あかちゃん!なにしてるのっ!?」 今まで自分がずっと居た場所、一番信頼できる安全な場所 赤ちゃん霊夢が選んだのは母親の胎内だった 「ゆぐぐ!くるしいよ…!」 出産の影響もあり、ゆっくり霊夢の膣孔の皮は伸びきっていた為そこにもぐりこむのは難しく無かった それから間も無く、ゆっくり魔理沙の善戦あってか腕の主は捕獲を諦めて巣から去っていった しかし問題はそれで済まなかった 恐怖のあまり、赤ちゃん霊夢はゆっくり霊夢の産道にもぐりこんで出てこないのである 苦しむ母霊夢などお構いなしに、赤ちゃん霊夢は恐怖でガチガチと歯を鳴らしながら奥へ、さらに奥へと進んでいく 「ん゙ぃ゙ぃ゙!ん゙ぃ゙ぃ゙!」 「あかちゃん!もうだいじょうぶだからはやくでてきてね!」 ギリギリと歯軋りをしながら苦しさと痛みに耐えるゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙も必死に呼びかける 再び体積が増えた苦しさに、必死にひり出そうとしても赤ちゃん霊夢は抵抗して出てこない 再び赤ちゃんを包んだ膣孔は再度ぴったりとその口を閉じてしまっており その穴からはただただぬらぬらと透明な粘液を垂らすばかりである 「赤ちゃんでてきてぇーっ!!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の膣孔に口をつけて必死に吸い出そうとする 巣にはただただ淫猥に粘液の水溜りが広がっていくばかりであった 戻るゆっくり ~END~ 自分で書き込みした話をSSにしてみた 満足している。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1091.html
ゴホゴホ 軽く咳き込む ここのところ不規則な生活が祟ったのか、あまり体調が思わしくない 自宅のマンションに帰宅する道中、ふと身体のダルさが気になった 明日は休日である、ゆっくり休むとしよう 自室に到着するとゆっくり達がそれに気づく 「おかえりなさい!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりごはんつくってね!」 玄関でピョンピョンと飛び跳ねて挨拶するゆっくり達 飼育しているゆっくりはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の二匹 いつもの仕事帰りの光景である 荷物を置き、スーツをかけて、シャワーを軽く浴びる 頭が重い… シャワーを浴び終わると、たまらずそのままベットに倒れこんだ 「ゆっ、ごはんは!?」 「おなかすいたよ!」 ゆっくりの声が遠くなっていくのを感じる やがて意識はまどろみの中に消えていった 翌朝、目が覚めると凄まじい寒気が身体を襲った 喉が痛い、熱もあるようだ… 間違いなく風邪の症状である いかん、いかんぞ、明日から出張だというのに なんとしてでも治さねばならない っと、鼻がでてきた、ティッシュ、ティッシュ ゴホゴホと咳き込んでいるとゆっくり達が近寄ってくる 「ゆっ、おはよう!ゆっくりしていってね!」 「おはよう!ゆっくりごはんのしたくしてね!」 そういえば昨晩から食事をとっていない、食欲は無いが食事はとっておいたほうがいいだろう しかし家に風邪に効くような栄養のある食べ物なんてあったろうか… 布団から起き上がると軽く眩暈が襲う、一応歩けないこともないようだ ふらふらしながら冷蔵庫の扉を開ける 野朗の一人暮らしの冷蔵庫などたかが知れている 中に入ってるのは水と…漬物とビールだけであった ビールっていう選択肢はないだろう、とりあえず朝食はおかゆを摂ることにする 台所からもどり、ベットの上でおかゆをすする やはり食欲が出ない、半分も食べないうちにお椀をお盆に戻し再び布団に包まる 「ゆっ!ごはんだよ!」 「ゆっくりいただきます!」 ゆっくり達は食べ残しにありつけてご満悦のご様子だ うっめ!うっめ!とご飯を頬張るゆっくり達を横目に俺は再び眠りに落ちていった 次の日の朝、目覚ましの音で布団から跳ね起きる 体調もいくらか回復したようだ、軽く咳は出るものの仕事に差し支えない程度のものである 休日を潰したのは些か不満だが、一日で回復したのだからまあいいとしよう 「ゆっくりいってらっしゃい!」 「ゆっくりしにいってね!」 ゆっくり達のいつもの声を背に、出張先へと赴くのであった 「おーしくーらまんじゅ♪」 「おーされーてなくな♪」 見送りが済んだ後、二人は仲良く遊び始める それはいつもの仲睦まじい光景であった 「ゆっゆっ♪…ハァハァ」 やがてゆっくり霊夢の息が上がっていく 「ゆっくりやすむよ!」 「ゆっくりしていってね!」 いつもよりも少し早く遊びを切り上げると、ゆっくり霊夢は突然咳きをしはじめる 「コホッコホッ!」 「ゆっ?」 ゆっくり魔理沙はその姿に興味深々だ 新しい遊びと思いこみ、ゆっくり魔理沙も真似ながらコホコホと続いた 「ケホッ!ゆっ…ゆっ…ケホ!」 ぐったりと咳を続けるゆっくり霊夢 その様子にゆっくり魔理沙は笑顔でゆっくり霊夢のまわりをピョンピョン飛び跳ねながら「コホコホ!」と騒ぎ立て続けた やがて日が落ちると、ゆっくり霊夢は自分の身体の異変に気がついた 「ゆっ!からだがあついよ!」 動いてもいないのに息が上がるのだ 心なしか食欲も出ない、今まで感じたことのない不快さである 一方、ゆっくり魔理沙は机の上にあった茶菓子を黙々と食べている 「うっめ!めっちゃうっめ!」 「れいむはたべないの?」 ゆっくり魔理沙が見ると、ゆっくり霊夢は部屋の隅でゼェゼェと息をあげて斜めになっている 「ご、ごはんいらないね!」 「それなら、ぜんぶまりさがたべてあげるね!」 そういってゆっくり魔理沙はその日の夕飯をゆっくり霊夢の分まで全て平らげてしまった 「ごちそうさま!あしたもゆっくりしようね!」 満腹になったゆっくり魔理沙は満足そうに眠りについた 次の日、ゆっくり霊夢の体調は最悪の状況をむかえていた 顔は真っ赤に変色し、えずくような咳を繰り返す 斜めに傾きながら、白めを剥いて全身を震わせている 「ゆっ!れ、れいむ!?」 さすがの魔理沙もあまりの惨状に動揺を禁じえない ピョンピョン飛び跳ねながら必死に声をかける しかし、ゆっくり霊夢からの返事が返ってこない 「ゅ…ゴホゴホッ!ひゅぅ、ひゅぅ、ゴホッ!ゴホッ!」 強烈な咳を繰り返し、呼吸がうまくできないのか喉の奥からひゅうひゅうと音を立たせる こんなゆっくり霊夢の姿を見るのははじめてである ただならぬ雰囲気にうろたえるゆっくり魔理沙 すると、突然ゆっくり霊夢の身体がポンプのように上下しはじまる 「…ッ!…ッ!」 と、次の瞬間 「んんえ゙れ゙ッ」 ゆっくり霊夢は嘔吐した 咳と嘔吐を繰り返すゆっくり霊夢 涙と涎で顔も完全に歪んでしまっている 「れ、れいむ!れいむ!」 ゆっくり魔理沙は心配そうに声をかけるが、状況が読み込めずただ見ているしかできない ブルブルと全身が震え、滝のように流れる汗 危機迫る表情に気圧され、ゆっくり魔理沙はそこから後ずさった その晩、暗闇の中で咳と嘔吐の音のなか必死に助けを求めるゆっくり霊夢の声が混じって聞こえてきた しかし、ゆっくり魔理沙は恐怖からただ聞こえぬそぶりで、寝た振りを続けたのだった ~ゆっくりと風邪~END