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「油ああああああ!」 俺は森でゆっくりしているゆっくりを見つけると即座に油をぶっ掛けた! ゆっくり達は途端にゆっくり出来ない表情になって騒ぎ始める。 「ゆゆっ!なにこれ!?ぬるぬるするよ!?」 「それに、すごくすべるよ!?」 「「なんかしらないけど、ゆっくりできないよ!」」 そんなことを抜かすのはゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 ようやく俺の存在に気づくと、ぷくぅっと頬を膨らませて怒りを露にする。 俺が油をかけるところを見たわけでもないのに酷い言いぐさだ。 まあ、正解なんだけどな。 「ぬるぬるはおにいさんのしわざだね!」 「はやくもとにもどしてね!これじゃゆっくりできないよ!」 「それをどうにかする方法はただ一つ!ドスまりさに舐めてもらうことだ!!」 勿論、嘘八百である。 俺の目的は大方の予想通りドスまりさ虐待だ。 しかし、ここの森のドスまりさは不可視能力を持つかなり高等なドスらしい。 「ゆゆっ!だったらはやくどすになめてもらうんだぜ!」 「ゆっくりいそぐよ!」 不可視能力はゆっくり同士だと効果を発揮しない。 しかし、森のゆっくりでない限りそもそもドスが何処にいるかも分からない。 というわけで・・・俺はあの2匹の道案内をお願いしたと言うわけだ。 そんなわけであっという間にドスのもとに到着。 しかし、あんな訳の分からないものとまともに遣り合おうと考えるほど俺は馬鹿ではない。 集落の場所を一旦把握したところで、家にしこたま用意しておいた油を取りに戻った。 「みんな!ゆっくりぐっすりのじかんだよ!」 で、ゆっくりどもが寝静まった後、俺は家から運んできた300リットルにも及ぶ油を奴らの集落にぶちまけた。 翌朝、ドスまりさが目を覚ますと集落の地面がぬるぬるしていた。 元気良くおうちから飛び出してきたまりさはすってんころりん、何の前触れもなく転んでしまった。 更に、いつも朝も早くからすりすりいちゃいちゃしているありすとれいむが泣きじゃくっていた。 なんでも「ほっぺがぬるぬるですべってちゃんとすりすりできない」らしい。 しかも、このぬるぬる・・・なんか臭い。 その臭いにやられた、体の弱いぱちゅりーが痙攣していた。 元気良くおうちから飛び出してきた他のゆっくりも滑って転ぶ。 家族で愛情表現をしようにもろくにすりすりが出来ない。 今までに経験したことのない異常事態にドス以外のゆっくりが一斉に泣き出してしまう。 「う~?あまあまがいっぱいいるどぉ~♪」 「「「「「いっぴゃいいるど~☆」」」」」 「みんなでたべるど~!」 「えれがんとなでな~だど~♪」 更に不運なことにまともに動けないものばかりの群れをれみりゃが空から襲撃してきた。 「「う~、うぎゃ!?」」 「「「「「うぎゃ!?」」」」」 「いだい、いだいどおおおおおお!?」 が、なんと、地面に降り立ったれみりゃまでもが転んでしまった。 ぬるぬるのせいで起き上がることが出来ず、じたばたとあばれるれみりゃ達。 その姿に集落のゆっくり達は脅威が去ったことを悟り安堵するが・・・ 「「「ゆっくりしね!」」」 なんと、今度はゆっくりふらんまで現れた。 そして、さっきのれみりゃ同様に地面に降り立った瞬間、転倒した。 「「「ぎゃっ!?」」」 再び危機は去ったかに見えたが・・・・・・ 「「「「「「「「「「「んほおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」」 今度はレイパーありすがやってきた。 が、群れの仲間は誰一人として全く動じなかった。 オチが見え透いていて狼狽しようがなかった。 「「「「ゆぎゅ!?」」」」 「な、なんなのごのぬるぬる!?」 「ぜんぜんどがいはじゃないわ!?」 予想通り、ありす達もぬるぬるに嵌ってしまった。 しばらくはそれでも欲求不満を解消するために近くの同種とすっきりしようとしていた。 しかし、ぬるぬるが滑りすぎるせいで上手くできず、やがてそれも諦めた。 その頃にはれみりゃとふらんも暴れるのをやめていた。 勿論、それは彼女達の意思ではなく、ドスまりさのゆっくり光線によるものなのだが。 何にせよ、ぬるぬるまみれになったゆっくり達は起き上がることも出来ず空を見上げながら思った。 ゆっくりできてるから何でもいいや、と。 このSSに感想を付ける
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※作者がシムゆっくりをやりたい欲望を輝夜に託して書きました 「あ、あれ・・・ちょっと、えーりん、たす。あ、あぁ・・・」 パソコン画面には「ゲームオーバー、もっとゆっくりしたかったよ」と表示される。 「あ、あれ、終わちゃったんですか」と隣で見ていた鈴仙が苦笑する。 「仕方ないでしょ。急に大寒波が来るなんて・・・そうだわ。鈴仙、あなたがやってみなさいよ」 鈴仙は渋々、パソコンの前に座りリトライを選択する。 「えーっと、初心者だから設定を初月にして・・・災害をなしに、捕食種の襲来をなしに・・・」と、 初心者向けの難易度にわざわざ設定してくれる姫を見て、常日頃もコレだけ活発に働いてくれれば良いのに。と思う鈴仙。 「所持金は・・・10万まで引き上げれば問題ないわね。さ、どうぞ、何かあればその都度教えていくわ」 『シムゆっくり~難易度:ゆっくりれいむを育てよう』 箱庭が表示され、サイドに気象状況やゆっくりれいむのステータスが表示されている 画面下部にはツールバーが表示され、りおんなアイコンがある。 「まずはご飯アイコンを使って餌を与えるの」 「えーっと、これですね」 ご飯アイコンをクリックすると画面上にいくつか選択肢が出てきた。 「満腹度がそうね、ご飯のボリューム。リッチさというのがご飯の質よ。あまり質の悪いものを食べさせると病気になるわ」 「じゃあ、この高級ケーキがいいですね」 「待ちなさい。お金って項目もあるでしょ」 「えーっと・・・1万円」 「所持金は10万円なのよ。そんなの買ってたらすぐに破産よ」 「じゃあ・・・」 「最初はこれよ」 そう言って輝夜が指差したのは『クズ野菜大盛り』だった。 満腹度は8(最高が10)と多いものの、リッチさは3(最高は10)と低かった。価格は100円ととても手ごろだ。 「えー、リッチさが低いじゃないですか」 「安いし、当面は満腹度だけあればいいのよ」 「ほら、これフードってあるじゃないですか」 「あー、市販の餌ね。満腹度もリッチさもいいし、お値段も手ごろだけど」 「だけど?」 「ゆっくり自体があんまり好きじゃないのよ。あなたも紫が外から持ってきた保存食食べたでしょ?」 「あのパサパサしてクッキーみたいだけど、甘くなくて・・・アレな食べ物でしたね」 「それだと思ってくれれば良いわ」 「うーん、じゃあ、野菜で」 鈴仙は『クズ野菜大盛り』をクリックすると、画面には木箱に入れられた野菜が表示される。 ゆっくりれいむはそれを見つけると一心不乱に食べ始める。 空腹のステータスが回復していく。 「基本は餌とコミュニケーションよ。ほら、手のアイコンがあるでしょ。そこをクリックして」 言われるままに鈴仙は操作する。 ご飯の時と同じようにいくつかの選択肢が表示される。 「えーっとあ、撫でるってありますよ。よーし、撫でちゃうぞ」 鈴仙は撫でるアイコンをクリックしてしまう 「 あ」 「え?」 食事中に撫でられ、ゆっくりれいむは少し怒る。 『おしょくじちゅうだよ。ゆっくりたべさせてね!!』 というメッセージが表示される 「・・・怒られちゃいました」 「何かしてる時に手のアイコンでできるアクションはやらない方が良いわ」 「このお家?のアイコンは何ですか?」 「建築アイコンよ。クリックしてみて」 また同じようにいくつか選択肢が出てくる。 「○○の木系は食糧を自動的に供給してくれるのよ。けど一本じゃ量が少ないからたくさん植えなきゃいけないの」 「でも、一番安いリンゴの木で10万円しますね」 「だから、最初の方はあまり意味がないの」 「この供給量と供給速度って何ですか?」 「下に何が供給されるか書いてあるでしょ。リンゴの木ならリンゴ、畑ならクズ野菜盛り合わせって」 「はい」 「リンゴの木を見てみなさい。供給量は三個、供給速度は二日に一回」 「あ、でも、畑は安いし供給量3個で供給速度は一日一回ですよ」 「※マークがあるでしょ。クリックしてみなさい」 畑はゆっくりゆうかがいないと作物を供給できませんというメッセージが表示される。 「特定のゆっくりがいないと使えない建築物やアイテムもあるから気をつけなさい」 「難しいですね」 「慣れるわよ。さ、ゆっくりれいむにお家を建ててあげて」 鈴仙は建築アイコンで出た選択肢の中から家を選ぶ。 「小さな家と大きな家がありますけど」 「一匹だけだから小さな家で良いわ。あと、作る場所に注意なさい」 輝夜のアドバイス通り、鈴仙は岩肌までカーソルを持っていく。 すると、今まで藁葺き小屋だった家が洞窟に変化する。 「岩肌なら洞窟に変化するわ。藁葺き小屋よりも耐久力があって敵からも見つかりにくいわ」 「あ、木の上にカーソルを持ってくると鳥小屋になりますよ」 「ええ、それはりゅっくりれみりゃやゆっくりふらんみたいな飛べる子専用だけどね」 「じゃあ、とりあえず、洞窟を作りますね」 残金が8万9900円になる 「あとは、ゆっくりれいむをクリックして。移動でこの場所まで連れてくれば良いわ」 「はーい」 「家を作ると、いろんなイベントが発生するから注意深く見守るのよ」 すると、突然画面が揺れだす。 「わっ、地震ですか?」 「災害イベントは起こらないようにしてるから、たぶん」 『ゆっくりしていってね!!』 「ドス・・・まりさ?」 「あちゃー、最初の訪問者がコイツか」 「ダメなんですか?」 『やぁ、れいむ、ドスまりさだよ。さいきんここにきたんだね。ドスのむれにはいらない?』 選択肢が表示される。 ・群に入る。 ・群に入らない。 ・戦う。 「戦うは無理よ。今はゆっくりパチュリーぐらいしか撃退できないわ」 「じゃあ、群に入るんですか?」 「ハイリスクハイリターンなのよ。人間と交渉したりや捕食種を倒してくれたりするんだけど」 「失敗する事も?」 「そうなの。『育てよう』ってクリア条件だから断るのが無難ね」 鈴仙は群に入らないを選択する。 『ゆ?!どうじでぞんなごどいうの!!』 「怒っちゃいましたよ」 「良かったわ」 「え?いいんですか?」 「ここで怒るって事はあまり良い個体じゃないのよ。断って正解だったわ。このゲームだと性格の良い子は基本的に能力も高いって覚えて」 ああ、いくら性格の良いゆっくりパチュリーだからってゆっくりちぇんみたいな速さで動けるって事はないわよと輝夜は付け加えた。 「あ、雨が降ってきました」 「特に注意することはないわ。大雨に発展する事はないから外に出さなければいいだけよ」 しばらくするとステータスの清潔さが下がってくる。 「これはどうすれば?」 「どうしようもないわ。晴れた時に外に出してあげれば回復するから今はそのままよ」 しばらくすると雨がやむ。 「茶色くなってる地面は泥濘よ。そこに移動させると清潔度が下がるから注意して」 「はい・・・こっちに誘導して」 「そうそう、あとはゆっくりれいむをクリックして、日向ぼっこを選択よ」 「日向ぼっこ・・・と」 「じゃ、しばらくは自分で動かしてみて。私は適度なところでアドバイスするわ」 「あ、その前に質問して良いですか?」 「何かしら」 「所持金ってどうやって増やすんですか?」 「まず建築アイコンよ」 鈴仙はそう言われるとまず建築アイコンを開く。 「そこにある出荷箱を作って、そこに森で採ったキノコや山菜を入れるとお金がもらえるの」 「へー、なんだか猟師みたいですね」 「ゆっくりゆうかが仲間に入ると栽培もできるんだけどね。れいむだと山菜かキノコ採集しかないわね」 なるほどと答えながら、出荷箱を作る位置を探す。 「なるべく巣の近くが良いわ」 そう言われ、巣のすぐ傍に出荷箱を設置する。 その間に輝夜はメモを書いてくれた。 出荷できるもの:採れる、製作できるゆっくり(必要な建築物やアイテム) ・山菜:全て(茂み) ・キノコ:全て(木) ・魚:にとり(池) ・果物:全て(各果樹) ・人形:ありす(特になし) ・野菜:ゆうか(畑) ・お花:ゆうか、めでぃすん(畑) ・花束:ありす(お花) ・薬草:パチュリー、えーりん(茂み) ・丸薬:えーりん(薬草) ・木材:ドスまりさ(木) 「普段もコレぐらい細かかったら・・・」 「声に出てるわよ」 ムスッとしながら輝夜が答える。 「あ、いえ・・・その、詳細なメモをありがとうございます」 「季節は春だから山菜が取れるわよ」 輝夜はゆっくりれいむを茂みまで誘導し、採集するをクリックする。 メーターが表示され、だんだん溜まっていく。 「これが一杯になったら採取完了よ。採取は連続でできるけど」 輝夜がステータスを指差す、疲労度が徐々に溜まっていっている。 「これに気をつけてね。日向ぼっこや巣でゆっくりさせたり、水辺で水浴びさせたら回復するから」 それから鈴仙は採集と休憩を繰り返す。エサを適度にやり。ゆっくりれいむはすくすくと育つ。 ~チュートリアルクリア、ゆっくりさせてくれてありがとう!!~ 「あ、あれ?もう終わりですか?」 「チュートリアルだもん。さ、次はキャンペーンモードよ!」 鈴仙は翌日、寝不足でミスを繰り返し永琳にこってり搾られた。 ~CM~ 虐待&愛護プラスキットや新ゆっくり発見風神&地霊キットも合わせてご購入ください。 ご注文のお問い合わせは、分割手数料は全てお客様が負担、すきまネットやくもへ by118
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01の続き ========== 「だ、だれなんだぜえぇぇ!! まりさは目をつぶってるから、正直に名乗り出るんだぜえぇぇ!?」 「あ、ありすおねえさんは、まりさと一緒にいたよ! だから、ありすおねえさんとまりさは違うよ!」 「…まりさ…ひろばに戻るときは…わたしたち…別々に戻ったわ……」 「あ、ありすおねえさん…! ち、違うよ! まりさじゃないよ! まりさは…!」 犯ゆんを特定しようと足掻くもの。 「だ、だれだあぁぁ?! で、でいぶは死なないよっ! ぜっだいにいぎるよおぉぉ!」 「ゆ…ゆふふ…死んじゃうんだね…れいぶだぢ…みんな死んじゃうんだね…ゆっくりりかいしたよ…」 生に執着するもの。生を諦めるもの。 「ゆやあぁぁ!! れいみゅたち、ちんじゃうのおぉぉ?! きょわいよぉ…」 「うー!? いやなんだどー!? じぬのはいやなんだどー!! さぐやー!!」 「ゆ、ゆっ! だ、だいじょうぶだからねぇぇ! れいむのおちびちゃん達ぃ…! おちびちゃんは、おかあさんが絶対に守ってみぜるがらねえぇぇ!!」 ただ恐怖に震えて寄り添い合う母と子。 長ぱちゅりーから知らされた驚愕の事実は、ゆっくり達にとって、何の救いにもならなかった。 いまや、仲間だと思っていたゆっくり達の、誰もが信用できない。 隙を見せれば、次に死ぬのは自分かもしれない。 身動きする事すら恐ろしく、ゆっくり電車がガタゴトと音を響かせる中、沈黙が場を支配する。 「そ、そうよ! あのゆっくりの中身は餡子さんだったわ! だったら、おさとありすは、犯ゆんじゃないでしょ!?」 沈黙を破ったのは、ありすだった。 「……むきゅ…ありす…それは私も考えたわ… でも…例えば犯ゆんが私とまりさを殺したとして、まりさのお帽子を私の死体に被せて、自分は私のお帽子を被れば、 まりさの餡子さんを残して私になる事もできるのよ。絶対ではないの…」(※121ページ 図1参照) 図1 ▲ ⌒ ? ま ぱ 犯 ↓ 無 ▲ ⌒ ま ぱ 犯 餡 ま ぱ ←ゆっくりにはこう見える 「……そう。つまりぱちぇは、ありすも疑ってるのね…」 「……」 「…おさ…おさを信用して聞くわ。何か犯ゆんを見つける方法はないの…?」 再び沈黙が流れた後、口を開いたのはやはりありすだった。 このまま事態を動かせず、いたずらに疲弊するよりは、勝負に出る事を選んだのだった。 「むきゅ…むきゅう……」 長ぱちゅりーは考える。 今まで、群れの皆が困ったときに助けてくれたのは、経験と知識。 つまりは、お兄さんがくれた思い出達だった。 だから、きっと今度もぱちぇを助けてくれる。 そう信じて、長ぱちゅりーは、お兄さんとの思い出を振り返る。 …… むきゅん!? おにいさん いきなり どうしたの!? おにいさん…き…きもちいいわぁ~ ぱちぇのなかの くりーむが とろけちゃう… もっと もみしだいて~ ……! 「むきゅうっ!!」 「おさ、何か思いついたのね。ありす達に説明してちょうだい。」 「むきゅ、いいこと? みんなこれから、ふたりずつで一組になってちょうだい。 そして、お互いに体をくっつけあって、他の組とは離れるの。」 「ゆ…? どおおしてそんなことするのぉ?」 「まだ続きがあるの。ゆっくり聞いてちょうだい。もし、その状態で誰かが襲われて死んだとするわ…」 「い、いやなんだどー! まだじにたくないどー!?」「ゆんやあぁぁ!!」 「しーっ! れいむのおちびちゃん達! ゆっくりおさの言うことを聞いてね!」 「うー…」「ゆぅぅ…」 「…他の組のゆっくりを殺すには、自分が組になっているゆっくりから離れなければならないわ。 だから、誰かが襲われた時に、他の組がみんなお互いに離れていなければ…」 「襲われたゆっくりと組んでいたゆっくりが犯ゆん…なのぜ」 「そうよ。そして、他の組で離れたゆっくりがいれば…」 「その組のゆっくりのどちらかが犯ゆん…ということね」 「むきゅ。そうね。その場合は、どちらが犯ゆんかは決まらないわ…可愛そうだけど、同じ組のゆっくりには…」 一回で理解したありすと運転士まりさを除く他のゆっくりに何回か説明をした後、 赤ゆっくり以外の全員がようやく長ぱちゅりーの作戦を飲み込む。 「で、でも?! それって誰かひとりは襲われるってことでしょおぉぉ! それに犯ゆんと同じ組になったら、むじつなのに殺されちゃうかもしれないよぉぉ! れいむはいやだようぅぅ!! じにだぐないよおぉぉ!?」 真っ先に異を唱えたのは、痴ゆんれいむ。 他のゆっくりの中にも、口にこそ出さないが、戸惑いを隠せない者はいる。 「このまま一人ずつ殺されてゆくよりは、よっぽどマシでしょ! 他に何か手があるの?! れいむ! 覚悟を決めなさい! とかいはじゃないわよ!」 「ゆ…ゆう………ゆっくりりかいしたよ…」 「…また霧さんが出てきたんだぜ…」 運転士まりさの声を機に、ゆっくり達が互いに組を作り始める。 長ぱちゅりーとしんぐるれいむ ありすと若まりさ 運転士まりさと痴ゆんれいむ つがいれいむと、二匹の赤ゆ達 段々と霧が深くなって行く中、青ざめたゆっくり達を乗せ、ゆっくり電車はひた走る。 「むきゅ! みんな! 犯ゆんがわかったら、戦えるゆっくりは全員でかかるのよ! 倒せなくてもいいわ! でんしゃから落とすだけでいいの! 逃げ切れば私達の勝ちよ!」 「とかいはに生き残るわよ!」「ゆ、ゆう…!」「だぜぇっ!」「でいぶはじぬもんがぁ!」 「ゆふふ…もうどうでもいいよ…れいむはおちびちゃんに会いにいくよ…」 「おちびちゃん達は絶対に守るよ!」「ゆぅぅ…きょわいよぅ…!」「うー♪」 そして霧が全てを包み隠す。 ========== 「むきゅ? おそらを…むきゅうううぅぅぅ!?!?」 「「「「おさあぁぁぁ!?!?」」」」 「むきゅうう!! みんなぁっ! まだうごかないでっ!! むぎゅうううっっっ!!!!!」 「だ、誰か離れた?! ありすとまりさは離れてないわ!」「ま、まりさはありすおねえさんと一緒だよ…!」 「まりさとれいむも離れてないんだぜ!」「で、でいぶはいぎでるよぉ!!」 「おちびちゃん達は絶対に離さないよ!」「おきゃあしゃあん…!」「うー♪ なんだかたのしいんだど~♪」 「ゆふふふ……」 長ぱちゅりーは、帽子ごと何かに髪を掴まれ、宙に浮いていた。 じたばたと身を捩り、髪が何本か抜けるが、それで逃げられる訳がない。 「むきゅうう!! みんなぁっ! まだうごかないでっ!!」 生け贄の羊は自分自身だった。 だが、それでいい。元より、自分が考えた策だ。 あとは、ありすが…最悪、ありすが犯ゆんだった場合、運転士のまりさなら皆を引っ張ってくれるだろう。 不意に、スッ…と、体が下に下がったかと思うと、次の瞬間、激痛があんよを襲った。 「むぎゅうううっっっ!!!!!」 一瞬遅れて、体が地面に擦りつけられているのだと気付く。 高速で走行するゆっくり電車に、地面を引きずらている状態だ。 「むきゅううぅ!! いたいいたいいたいぃぃ!!! はなしてぇぇ!」 細かい砂がざりざりざりっと底部の饅頭肌を削り取り、尖った小石が高速で掠めて長ぱちゅりーのあんよを切断する。 傷口から漏れだした生クリームが、乾いた地面に白い筋を何本も描いて行く。 なんとか痛みから逃れようと、体をくねらせて、地面とあんよが平行になるようにする。 ただ引きずられていては、あっという間に体を削り取られて絶命する。 地面を跳ねる事で、設地する時間を減らすのだ。 せめて、霧が晴れ、皆が反撃の体勢を取れるようになるまで、生きて、時間を稼ぎたい。 その一心で、長ぱちゅりーは大きく跳ねようとする。 だが 何か、巨大な力が、ぱちゅりーの頭を押さえつけていた。 跳ねようと、上に向かった力は、全てその力に押し返される。 地面と、上からかかる力に挟まれ、長ぱちゅりーのあんよが、凄まじい勢いでガリガリと削れて行く。 あんよの皮が一瞬でベロリとめくれ、千切れて、体から離れていった。 ゴポリと、大量の生クリームが地面に零れる。 「むぎょぉぉっ?!?! たすけてえぇぇっ!!! お そこで下顎がなくなり、それ以上は声を出せなかった。 生クリームが漏れ出す度に、その中の記憶が流れ出すのか、走ゆん燈のように、長ぱちゅりーの記憶が脳裏に浮かんでは消える。 その記憶の中に 森のけんじゃは、真実を見い出した ========== 霧が晴れる。 「ぱちぇえええぇぇえぇぇっっ!?!?」 「「「「「おさあああああぁぁっ!?!?」」」」」 ゆっくり達の絶叫が響き渡る。 ゆっくり達の真ん中に横たわっていたのは、口から下がなくなった長ぱちゅりーだった。 見開いた目からは涙が溢れ、電車の床を濡らしている。 口より上の部分からも相当量の中身が漏出しているのか、長ぱちゅりーの後頭部はベッコリとへこんでいた。 「ぱちぇえぇっ!! ぱちぇえええっ!! いやあっ!! こんなのいやああぁっ!!」 ありすの声に反応したかのように、長ぱちゅりーの上唇が微かに動く。 最後の力を振り絞って、仲間達に何かを伝えようとするように。 (…犯人……は…………) しかし、もう長ぱちゅりーの体に、声を出すための機構は存在しない。 長ぱちゅりーの瞳から最後の涙が零れ落ちると共に、唇の動きも止まった。 「ゆふふふ……」 ゆっくり達の視線がその声の元に集まる。 殺気と畏怖を込めた視線を向けられながら、しんぐるれいむは笑っていた。 ありすが最初に動いた。 みょんの亡骸に刺さっていたはくろーけんを咥え、しんぐるれいむに突進する。 「ゆ゛っ…」 はくろーけんが、グシュと音を立てて、しんぐるれいむの下腹に突き刺さり、しんぐるれいむは僅かに呻く。 「ゆ…ゆわぁぁぁ…!!!」 「ゆ゛ぎっ…」 若まりさが帽子から小ぶりな枝を取り出し、しんぐるれいむのあんよに突き刺す。 「よぐもれいぶのまりざをぉぉ!!!」 「ゆ゛がっ…」 つがいれいむが、死んだまりさの帽子から枝を取り出し、しんぐるれいむのあんよに突き刺す。 「じねえええっ!! よぐもぱちぇをぅぅ!! ゆっぐりどじだ! とかいはなぱちぇだっだのにぃぃ!! いっづも! むれのごどばがりかんがえでる! ゆっぐりどじだ! おさだっだのにぃぃぃ!!!!」 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛げげっ……」 ありすが、叫びながら、はくろーけんを抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返す。 「ありす…もういいのぜ…その怪我なら…ソイツはもうまともに動けないのぜ… それに…今のありすを見たら…おさは…とかいはじゃないって言うのぜ…」 運転士まりさの言葉に、ようやくありすの動きは止まり、ポロリとはくろーけんを取り落とした。 ========== 「ゆ゛っ…ゆ゛げっ…ゆ゛っ…ゆふふ……」 二本の枝が刺さったまま、しんぐるれいむが、壊れた呻き声を上げ続ける。 「ぱちぇ……ぱちぇぇ……」 「ゆうう……ありすおねえさん……」 ずっと泣き続けているありすに、若まりさがそっと寄り添い、頬を押しつける。 「れいむのおちびちゃん達…もう大丈夫だよ…ぜんぶ…おわったからね…」 「ゆぅぅ……おきゃあしゃん……」「うー! ぷっでぃーん♪ たべたいんだど~♪」 「ゆ…そうだね…おうちに戻ったら、ごはんさん、むーしゃむーしゃ、しよう…ねぇ…!」 赤ゆ達をあやしながら、れいむが車窓から外を見やる。 林道は崖沿いの道に差し掛かり、遙か下には広い地面が広がっている。 ゴンッ… 「ゆ?」 何か硬い物が床を叩く音に、れいむや他のゆっくり達の注意が向く。 音のした場所には、人間の握り拳大の石が転がっていた。 そこに、 ゴンッ… もう一つ、同じくらいの大きさの石が降ってくる。 「上から来るんだぜ! 気をつけるんだぜ!!」 運転士まりさの声に、ゆっくり達が一斉に上を見上げると、ちょうど三つ目の石が落ちてくるところだった。 (え……?) 降ってくる石を見ていたありすの目が、視界の下端、床の方に何か動くものを捉えた。 次の瞬間、ありすの体が何かに強く押され、バランスを崩したアリスの体がコロコロと、車内を転がる。 崖下を望む、ポッカリと開いたゆっくり電車の乗車口へと向かって。 「ゆああぁっ?!」 「ゆっ?!」 ありすが悲鳴を上げるのと、若まりさがありすの窮地に気付いたのはほぼ同時だった。 ありすの体が乗車口から転げ落ち、崖下へ向けて一直線に落ちて行く。 だが、落下はすぐに止まる。 「ゆ…ぎぎぎ……!」 間一髪、若まりさが飛びついて、ありすの髪を咥えて落下を阻止していた。 しかし、成体になり立てで、まだ小さい若まりさの体では、ありすの体を支えきることはできない。 若まりさの体も、ずりずりと乗車口の外に向けて引きずられ、コロンと落下する。 「まりさあぁぁ?!」 「ゆうぅぅ~?!」 しかし、またも落下は阻止。 今度はつがいれいむが、若まりさの髪を、痴ゆんれいむが、つがいれいむの髪を咥えて支えていた。 それでも、まだ危機が去ったわけではない。 「「ゆーえす! ゆーえす!」」 二匹のれいむが、若まりさとありすの体を引き揚げようとするが、仮にも成体二匹の重量。 一気にひっぱりあげられる物でもない。 そして、新たな破滅の綻びが生まれた。 ビリ 「ゆぎっ?!」 綱引きの綱の一番弱い部分、若まりさのまだ弱い頭皮がわずかに破れた。 「まりさ…?」 「だ、だいじょうぶだよ! ありすおねえさん! すぐに助けるからね!」 ビリ ビリ 「ぎっ!!」 「ゆ? ゆあぁぁ?! ま、まりさのあたまが破れちゃうよおぉ!!」 気付いたつがいれいむが、後ろから叫ぶ。 「…! まりさ! ありすを離しなさい! このままじゃ、ふたりとも死んでしまうわ!」 「ゆうう! やだああぁぁ!! まりさはありすおねえさんを守るんだぁぁ!」 「ま、まり…さ……」 「まりさは、ありすおねえさんとゆっくりしたいよぉぉ!! ずっといっしょにゆっくりしてほしいよぉぉ!!」 「………まりさ………ありがとう……ゆっくりしていってね…」 「ゆゆっ? ゆぴゃあっ?!」 突然、若まりさの片目に何かが飛び込み、驚いて咥えていたありすの髪を思わず離してしまう。 「ゆ…ゆああぁぁ!!! ありずおねえざあぁん!!!!」 若まりさが、無事な方の目を下方に向ける。 その瞬間には、ありすの体はまだすぐそこに浮いていた。 ただし、もはや若まりさからは絶対に届かない距離だが。 そこで、ありすは、にっこりと笑っていた。 ニュルリとした精子餡が滴るぺにぺにを、若まりさの顔に向けておっ勃てたまま。 「あら、失礼♪ ありすったら、とんだいなかものね!」 ありすの笑顔はすぐに小さくなって行き、やがて崖下へと消え去り見えなくなった。 ========== 「ゆうぅぅ…! ゆうぅぅ…!」 「どうしてぇ…どうしてありすが死ななきゃいけないのぉ…もう殺ゆん鬼は倒したのにぃ…」 「おきゃあしゃん…」「うー?」 「………」 若まりさがすすり泣き、つがいれいむも、赤ゆ達に擦り寄られながら涙を流す。 痴ゆんれいむは何も言わず、運転士まりさは、何も考えないようにしているのか、前を見据えたまま電車を操る事に専念している。 「…ゆっ! れいむ、いい事考えたよ!」 「「「ゆ?」」」 痴ゆんれいむが唐突に、そう宣言し、他のゆっくり達が疑問の声を出す。 「ゆ…れいむ…おねーさん…?」 ニコニコと笑いながら近づいてきた痴ゆんれいむに痴ゆんをされた記憶が蘇り、若まりさが顔を引きつらせる。 そのれいむの背中、若まりさからは死角にあったものを見て、つがいれいむが直感にまかせて叫ぶ。 「まりさ、逃げてぇぇっ!!」 「ゆ……?」 つがいれいむの叫びが届いた時には、痴ゆんれいむが隠し持っていたはくろーけんが、若まりさの口から背中までを貫いていた。 「ゆ……なん…で…ゆ…?」 ゴボリ、と若まりさの口から餡子が漏れ、体が痙攣を始める。 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ……ありず…おねえ…ざん……ごべんな…ざい…………」 「どおおおじでごんなごどずるのおぉぉ!?!?」 「なにするんだぜぇぇ?! でいぶぅぅぅ!?!?」 痙攣が止まった若まりさの体から、はくろーけんを抜いた痴ゆんれいむに向けて、つがいれいむと運転士まりさが叫ぶ。 「ゆっ! このまま帰ったら、れいむは痴ゆんの罪で捕まって群れを追放されちゃうんだよ! でも、れいむひとりしか帰らなかったら、れいむは無罪だよ! かんっぺきっな作戦だね! ゆっくりりかいしてね!」 「このげずうぅぅ!! ゆっぐりじでないげずは、ゆっぐりじないでさっさどじねえぇ!!」 「死ぬのはれいむの方だよ!」 はくろーけんを咥えて突進してきた痴ゆんれいむに対して、つがいれいむは身を捩って交わす。 頬を掠めたはくろーけんが、つがいれいむの饅頭皮を切り裂く。 痛みに怯んだ隙を逃さず、痴ゆんれいむが体当たりをしかけ、弾き飛ばされたつがいれいむは電車の壁にぶつかって、餡子を吐く。 「ゆぶぶ…!」 「れいむ! これを使うんだぜ!」 運転士まりさが自分の帽子から枝を取りだし、つがいれいむに向けて放り投げる。 枝を拾ったつがいれいむは、殺気の籠もった目で痴ゆんれいむを見据える。 「おお、こわいこわい! こわいから、れいむは赤ちゃんから殺すことにするよ!」 「ゆ?! ゆあああぁ?! やべでえぇぇ!!」 「ゆんにゃあぁぁ! きょないでえぇぇ!! おきゃあしゃあん!! たしゅけちぇぇ!!」 「うー…」 つがいれいむが飛びかかるより先に、痴ゆんれいむは赤ゆ達のすぐ隣まで跳ね、一匹の赤れいむにはくろーけんの切っ先を向ける。 「ゆふふ! れいむの赤ちゃんはとってもゆっくりできるね! れいむ、赤ちゃん助けたい? 助けたければどうすればいいか、ゆっくりりかいしてね!」 「れいむ! だめなんだんぜ! れいむはきっとみんな殺すのぜ! 言うことを聞いたらゆっくりできなくなっちゃうんだぜ!」 「うるさいよ! まりさ! まりさは群れの近くに着くまでは殺さないであげるよ! だから大人しく運転しててね!」 「ゆ…ゆぅぅ………」 つがいれいむが悔しげに歯を食いしばるが、すぐに枝を放り捨てる。 「ゆぷぷ! じゃあ、れいむから殺してあげるから、ゆっくりとこっちにきてね! そうしたら、赤ちゃんだけは助けてあげるよ! ほんとだよ! れいむはうそつかないよ!」 「おきゃあじゃああん!! きょわいよぉぉ!! おねいちゃああん!!」 「うー…なんだがこばらがへってきたんだどぉ……そうだどー! おやつのじかんにするどぉ~♪」 「ゆ?」 ========== 何? 何がおきたの? どおおして… 痴ゆんれいむは困惑していた。 赤ゆが生意気にも噛み付こうと飛び掛ってきたので、もみあげで叩き落した…はずだった。 だが、次の瞬間、自分の体に激痛が走っていた。 「ゆ゛っ…ゆがあああっ?! いだあいいっ!! ゆぎいぃっ!! どぼじでえぇっ!?」 痛い 痛い 痛い 頭が痛い おめめが痛い 何? 何がおきたの? どおおして… つがいれいむは困惑していた。 れいむの赤ちゃんが、あのれいむに飛び掛ろうとしていた。 制止の声すら間に合わず、れいむのもみあげが動き、赤ちゃんを叩こうとする。 だが、次の瞬間、あのれいむの頭がもみあげごとゴソッと欠けていた。 右のほっぺから、右目の中心を通って、頭頂部やや右側まで。 何かで抉り取ったように、無くなっていた。 「うー!!」 むしゃむしゃと何かを咀嚼する音が聞こえる。 それからまた、痴ゆんれいむの頭が、更にゴッソリと欠けた。 「ゆ゛がっ…ゆ゛ががっ…でい…ぶは…じぬ…もんが……じにだぐ……な………」 「うー♪ …うー? なんだか、あんまりおいしくないんだどー…こんなものはぽいっするどー!」 赤れいむが、半分ぐらいに減った痴ゆんれいむを電車の外に投げ捨てた。 そして、くるりと向きを変え、もう一匹の赤れいむに顔を向ける。 「うー♪ こっちのほうがおいしそうなんだどー! えれがんとなおぜうさまのおやつにふさわしいんだどー!」 「ゆぅ…? おねい…ちゃん…?」 「ゆぴいぃぃいぃっ?! おねいちゃあんっ! れいみゅいちゃいよぉぉ! はなちちぇぇ! どうちてこんにゃゆぎいぃっ?!」 「うー♪うー♪」 「お、おちびちゃん! やめてあげてね! いもうとのおちびちゃんがいたがってるでしょおぉ!!」 赤れいむが赤れいむに噛み付き、ズゾゾゾ…と中の餡子を吸っている。 赤れいむの凶行を止めようと、つがいれいむがリボンに食いついて引っ張るが、 赤れいむの小さな体はびくともせず、リボンだけがすっぽ抜けて髪から外れた。 「「…ゆ……? れ、れ、れみりゃだああぁぁぁ!?!?」」 つがいれいむと運転士まりさが同時に叫ぶ。 飾りがなくなり、「れいむである」認識が消えると同時に、ゆっくりの餡子脳は認識の更新を始めた。 水色の髪、赤い瞳、鋭い牙、二枚の羽。 トレードマークの帽子こそないが、それがれみりゃだと認識するには十分だった。 「ゆやあぁぁ…!? ゆびっ…?! だじゅげ…おきゃあじゃあゆびゅっ? …ゆびゅっ…ゆびゅっ……もっ…ゆ…」 「うー♪ さっぱりあまあまでおいしいんだどー!」 成体の胴なしれみりゃに中身を吸い尽くされ、赤れいむはしわしわの皮だけに成り果てた。 「れいぶのがわいいおぢびぢゃんがああぁぁ!!」 「ど、どおじで、れみりゃがいるんだぜえぇぇ?!」 「このごみはいらないんだどー! ぽいっなんだどー!」 そう言って、れみりゃが赤れいむの皮を電車の外にポイ捨てする。 「あああがぢゃああん!! よぐもれいぶのぎゃばいいおぢびぢゃんをぉぉ!!」 捕食種への恐怖も忘れ、れいむがれみりゃに突進するが、れみりゃはパタパタと羽ばたいて軽く突進を交わす。 勢い余ったれいむはゴロゴロと転がり、隅に放置されていたしんぐるれいむにぶつかった。 「ゆべしっ!?」 「ゆげ…」 「おぜうさまは、まだはらはちぶんめなんだどー! おまえもくわれるんだどー!」 れいむの背後から、れみりゃが迫る。 「ゆっ…! ゆっ…! ゆゆっ!?」 「いただきまずなんだ… プスッ うぎゃあああぁぁ!!」 れみりゃの悲鳴が上がる。 れいむが、しんぐるれいむに刺さっていた、つがいのまりさの枝を見つけて引き抜き、 振り向き様にれみりゃの頬を突き刺したのだ。 だが、十分に狙いを定める余裕がなかったため、急所から大きく逸れる。 「うがー! おぜうざまのかりずまなびぼうに、なにずるんだどー!!」 ベシッ! ベシッ! ベシッ! 「ゆぶっ! ゆぶっ! ゆぶっ!」 怒り狂ったれみりゃが、左右に羽を振り回し、ベシベシとれいむの頬を打つ。 最初のビンタで枝を取り落としてしまったれいむは、なすがままに往復ビンタの洗礼を受け、みるみる内に頬が腫れ上がる。 「ゆひぃ…! ゆひいぃぃ…!」 「おとなしくしないから、いたいめにあうんだどー!」 戦意を喪失し、しーしーを漏らしながら震えているれいむの姿に満足したのか、れみりゃはいつもの笑顔にもどる。 そして、れいむの頭上へと上昇し、あんぐりと口を開けた。 「うー! いただきま 「だぜえぇっ!!!」 ぶぎゃっ!!」 まりさが、ゆっくり電車を岩にぶつけ、電車がガクンと揺れる。 その衝撃でれいむの体が転がり、れいむめがけて急降下したれみりゃは、顔面から床に激突した。 「うー!? うー!? いだいんだどー! れみり゛ゃは ごーまがんのおぜうざまなんだどー!?」 無様に大声を上げて泣き喚くえれがんとなお嬢様。 「れいむぅ! なにやってるんだぜぇ!? いまのうちにれみりゃを倒すんだぜぇ!」 「ゆぅ…ゆぅ……」 運転士まりさの叱咤が飛ぶが、れいむのあんよはブルブルと震えて言うことを聞かない。 「はやぐ! はやぐずるんだぜぇ! 永遠にゆっくりしちゃったおちびちゃんの仇を取るんだぜぇ!」 「ゆ…だめだよぉ…れいむにはむりだよぅぅ…おぢびぢゃん…ごべんねぇ…おがあざんをゆるじでねぇ…」 …その時、れいむのもみあげが、ピクリと動いた。 「うー!! もうゆるざないんだどー!! おぜうさまはおこったんだどー!!」 ようやく泣きやんだれみりゃが、恐怖に怯えるだけのれいむの方を振り向き、ゆっくりと近づいて行く。 もう不意打ちを食らわないように、じわじわと距離を詰め、そして、れいむの目の前で、口を開く。 「うっぎゃああああぁっ!?」 鳴り響いたのは、れみりゃの悲鳴。 驚きに目を見開くれいむの目に映るのは、涙を流して悲鳴を上げるれみりゃと、その後ろにいる、しんぐるれいむの姿。 先程まで、ピクリとも動かなかったしんぐるれいむが、背を向けたれみりゃの羽に噛み付いていたのだった。 「はなぜー! はなぜー!! うぎゃあぁ!!」 「…れいむは……れいむは…しんぐるまざーで…かわいそうなんだよ…」 羽が千切れそうになる痛みにも構わず、れみりゃが体を振ってしんぐるれいむを引き剥がそうとするが、 半死半生のしんぐるれいむの何処にそれだけの力があったのか、その歯がしっかりとれみりゃの羽に食い込んだまま、剥がれない。 「うがああぁぁっ!! ちょおじにのるなあぁ!!」 「かわいいおちびちゃんまで…しんじゃって…とっても、とっても…かわいそうなんだから…」 れみりゃが、電車の壁に、しんぐるれいむの体を叩きつける。 仲間達に付けられた傷口から餡子がボロボロと零れるが、それでも、れいむはれみりゃの羽を離さない。 「いだいんだどぉー!! やべるんだどぉー!!」 「優しくしないと…だめ…なんだよっ!!」 れみりゃが、無我夢中で更に激しく暴れる。少しずつ羽が千切れてきている事にすら気付いていない。 一層激しく叩きつけられたしんぐるれいむは、片目が潰れ、体内の餡子を半分近く失って縮んでいた。 それでも、れいむはれみりゃの羽を離さない。 「ざぐやー! さぐやー! おぜうざまをだずげるんだどー! どうじでだずげでぐれないんだどー?!」 「だがら…かわいそうなれいむに…ひどいごどずるれみりゃはあぁ…!」 戦意喪失したれみりゃを引きずりながら、しんぐるれいむが、ずりずりと這う。 そして 「ゆっぐりじないでさっさどじねええぇぇ!!!!!」 れみりゃを道連れに乗車口から転がり落ちた。 「うぎゃああぁぁっ!! ざぐやあぁぁーーっ!!」 疾走する電車から落下したれみりゃは、まだ羽に噛み付いているれいむのせいで飛ぶ事もできず、 れいむともつれあったまま堅い地面に激突した後、勢いよく転がり、 木や岩に体を打ち付け、餡子と肉まんの具を撒き散らしながら、瞬く間に見えなくなって行った… ========== ガタゴト… ガタゴト… 夕日に赤く染まり始めた山道を、ゆっくり電車が揺れて行く。 じっと前を見据えてゆっくり電車を操る運転士まりさ。 その横で、れいむがまりさにもたれかかってた。 「ゆうぅぅ…まりさ…みんな死んじゃったよぉ…みんな…とっても…ゆっくりしてたのにぃ…ゆっくりできないよぉ…」 「…れいむ…ゆっくりできないけど…それでもまりさ達はゆっくりしなきゃいけないのぜ… じゃないと…みんなもゆっくりできないんだぜ…」 「………ゆん……」 吹き付ける風に、れいむの赤いリボンがたなびき、まりさの体をくすぐる。 ……… 「………れい…む…?」 「ゆ?」 「…れいむ達の…おりぼんさんは…自分でつけられるのかぜ…?」 「れいむ達のおりぼんさんは…自分ではつけられないよ。誰かにつけてもらわないとだよ」 「じゃあ……あのれみりゃに…れいむの赤ちゃんのおりぼんさんをつけたのは……誰なのぜ…?」 「………」 二匹の言葉が止まる。 いや、言葉だけではなく、体の動きも瞬きすらも止めて、互いに互いを見つめていた。 一瞬たりとも、相手の動きを見逃さないとするかのように。 そして、張りつめた空気を破るかのように、一陣の風が吹いた。 「!? ゆあああぁぁっ?! ばりざのおぼうじがああぁぁーーーーーーー 木のバッジがついた帽子が風に舞い、まりさの視線は帽子を追った。 ========== 「ばりざのおぼうじがああぁぁーーーーーーー ぁぁぁ……あ~あ、行っちゃった…まあ、いいか。十分楽しませてもらったし」 まりさが地面に足を降ろして、すぃーを徐々に減速させて止める。 「ふう~…しっかし、下り坂とは言え、この大きさだと足だけで操るのはきっついなぁ… いや、俺が特別な訓練を受けていなければ無理だったよな、実際のとこ」 「ま、まり…さ……? どこ……行ったの……? お兄さん……だれ……?」 カタカタと震えるれいむに、"まりさ"は満面の笑みを向けた。 「やあ。僕は ========== 「ゆうぅ…おそいのじぇ…」 沈みかけた夕日の中、群れの広場でゆっくり電車の帰りを待つ子まりさズ。 ゆっくり電車のお迎えも、彼らの仕事。 「ゆっ! きたよ!」 赤い太陽に照らされながら、ガタゴトと、ゆっくり電車がやってくる。 「ゆゆっ! おかえりなさ……?」 ガランとしたゆっくり電車に乗るのは一匹のゆっくりのみ。 「ゆ~? どうして、れいむおねーさんが運転してるのじぇ?」 「ゆぅぅ…みんなはどうしたの?」 「ゆ? まりさ、おそらを飛んでるみた~い♪」 れいむの腕が、子まりさズを抱え上げた。 「終点『ゆっくりプレイス』だよ~ 『ゆっくりプレイス』だよ~ …ゆっくり楽しませてね?」 おわり ========== あとがき というわけで、ゆっくりの群れに電車を与えて、 よくあるラッシュの風景+よくある暴走特急の風景で「ミニ社会化」としてみたのですが、 こんなテーマ解釈でよろしかったでしょうか? 後半部分は「ベタなパニック(サスペンス?)物風味」を書いてみたかったのですが、自分の力量ではどうにも。 深刻な破綻箇所とかあるかもしれませんが、お手柔らかにお願いします。 餡子ンペ出展は作者名が必要との事なので、これを機に「お説教されたいあき」と名乗らせていただきます。 以下は、虐待成分が少なかったとお嘆きの貴兄と私へのささやかなオマケ、兼、わかりにくい?ネタを補うための何かです。 ========== 『れいむの記憶』 「……! ……!」 「さあ、れいむ。これを食べてごらん。楽しいモノが見られるかもしれないよ?」 れいむが、憎しみに満ちた目を男に向ける。 男に飛びかかろうとするが、男の手にしっかりと頭を押さえつけられ、体がひしゃげるのみ。 ガムテープで塞がれた口からは、くぐもった呪詛の声がわずかに漏れ聞こえてくる。 男が、容器の中でマーブル模様を描く餡子とクリームをスプーンで掬い取り、れいむの頭に開けた切れ目から差し入れた。 れいむの中に何かが流れ込んでくる。 『れみりゃだああぁぁぁ!!』 『だずげでええぇぇ!!』 『どおぉじで、れみりゃがいるのおおぉぉっ!?』 陽光が降り注ぐゆっくりプレイス。 れいむの目に映るのは、逃げ惑う仲間達の姿。聞こえるのは、悲鳴。 『うー♪ あまあまたべちゃうどー!!』 『ゆぎゃああぁ!! た、たべないで! れいむをたべないでえぇぇ!!』 れいむの口から悲鳴が発せられる。 眼前にれみりゃの牙が迫り、次の瞬間、れいむの頭に激痛が走る。 『でいむー!? わがらないよー!!』 『ゆ゛っ…もっと…ゆっぐり……じだがっだ……』 ブツンッ 不意に、テレビの電源が落ちたように、その光景と音が消え、別の何かがれいむの中に流れ込んでくる。 『ゆぇぇぇん!! おきゃあしゃあん!! どきょー!? まりしゃ、きょわいよおぉぉ!!』 れいむのおちびちゃんの泣き声。 (おちびちゃん!どこにいるの?!おかあさんはここだよ!) 叫ぼうとするが、れいむの口から漏れるのは、おちびちゃんの泣き声だけ。 『おちび! はやくにげるんだぜ! ここにいたら、れみりゃに食べられちゃうんだぜぇ!! まりさのお帽子の中に隠れるんだぜっ!!』 お帽子に木のバッジをつけたまりさが、れいむを咥えてお帽子の中に隠す。 ぐにゃり そこで、視界が歪み、目の前の光景が消える。 そしてまた、流れ込む。 餡子の持ち主の記憶が。 『ゆゆっ? なんだかひろばのほうがにぎやかだね! みんな、何してるのかな!』 『ゆっ! ゆっくり見に行こうね!』 『やあ! ゆっくりしていってね!』 れいむの目の前に男が立ちはだかる。 『ゆっ? ゆっくりしていってね! お兄さんはゆっくりできるひと?』 『全然できない人だよ』 風を切る音と共に、何かを握った男の腕が動いた。 ブツンッ 『ゆぅぅ…にゃんだか、ゆっくちできにゃい こえがしゅるよ…れいみゅ、おきちぇね!』 れいむが話し掛ける先には、石の影ですやすやと寝ているれいむのおちびちゃん。 『ゆぴー…れいみゅ、もうちゃべられにゃいよ…』 『どうちて おきにゃいのぉぉ? ゆ?』 頭上を遮った影に、上を仰ぎ見ると、れみりゃと男がこちらを覗き込んでいた。 『ゆええぇぇ…! れいみゅのおりぼんしゃん、かえちてー!』 『うー! おぼうじとらないでほしいんだどー!』 『我慢しろ。あとでぷっでぃーん食わせてやるから』 『うー…』 男が涙目のれみりゃの髪に赤いリボンを結ぶ。 『ほら、できたぞ。ソイツは食っとけ。皮も残さず食えよ』 『うー! おどりぐいだどー!』 『ゆにゃああぁぁ?! れいみゅー! おきちぇー! たちゅけちぇー! いちゃああいっ!』 『ほら、こぼすな、バカ肉まん。それ食ったら後は休んでていいぞ。昼寝でもしてろ』 『うー! おぜうさまはしぇすたのじかんだどー♪』 『ゆぴっ! ゆぴいぃぃっ!! おぎゃあぢゃあぁ…あ…ぁっ…!』 赤れれみいりむゃの牙が食い込み、れいむの体はグシャグシャに砕かれながら闇に飲み込まれていった。 ブツンッ 男はすぃーの上に散らばったゆっくりの中身もれいむの頭に流し込む。 『むきゅううぅ!! いたいいたいいたいぃぃ!!! はなしてぇぇ!』 霧に閉ざされた白い闇の中で、ガリガリとあんよが削れて行く感覚が流れこんでくる。 『むぎょぉぉっ?!?! たすけてえぇぇっ!!! お』 兄さあああんっ!! むきゅ… お兄さん…?! お兄さんのおてて…? お兄さんとおんなじ…強くて大きい…おてて!! 伝えなきゃ みんなに伝えなきゃ ぱちぇは"おさ"よ みんなを守らなきゃいけないのよ その思考と繋がるようにして、あるゆっくりの顔が脳裏に浮かぶ … "ぱちゅりー!" … …! 違う…! ぱちぇは"ぱちゅりー"じゃない!! ぱちぇは…ぱちぇは"おさ"よぉ!! 霧に閉ざされていた視界が開け、ありす達の顔が映る。 ごべんなざいぃぃ! ぱちぇが間違ってたのおぉ…! 犯"人"は…犯人は人間さんなのよぉ…! れいむじゃないのよぉ…! 人間さんはおててがあるから、離れたところからでも私達を殺せるのよぉ…! 涙を流しながら、何かを叫んでいるありす達の後ろで、アイツがクスリと笑いを浮かべた。 おまえがっ! おまえがぁぁ…!! ブツンッ 『ゆふふふ…』 俯いて泣いているゆっくり達をどこか達観した気分で眺めながら、れいむの口から笑いが漏れる。 あんよとおなかがズキズキと痛むが、何故だかそれがどうでもいい事のように思える。 その視界の中で、石が飛び上がり、重力に引かれて落ちる。 ゴンッ… 石が床に落ちると同時に、もう一つ石が飛び上がる。 あるゆっくりの背中越しに。 三つ目の石が飛び上がった時、そのゆっくりが叫んだ。 『上から来るんだぜ! 気をつけるんだぜ!!』 どうでもいいよ… ぐにゃり 『ゆええぇ…うんてんちしゃん…まりしゃたちもちんじゃうのぉ…?』 頭の上からおちびちゃんの泣き声が聞こえる。 『大丈夫なんだぜ! おちび! あそこにまりさのでんしゃがあるんだぜ! まりさのでんしゃなら、れみりゃでも絶対においつけないのぜ! ゆ?』 『やあ、まりさ』 『ゆっ! 人間さん! 助けてほしいんだぜ! 悪いれみりゃがまりさ達を…』 (だめえええぇぇっ!!! にげでええぇぇっ!!!) 『まりさが、あのすぃーを運転しているのかい?』 『そうなんだぜ! まりさは、うんてんしなんだぜ…ゆあっ?! ば、ばりざのおぼうじ! とらないでなんだぜっ?! ばっじさん!! ばりざのばっじさんがえぜぇぇぇ!! ゆぎぴぃっ?!』 れいむのおなかに男のつま先が食い込み、頭の上にいたれいむのおちびちゃんと一緒に地面に転がった。 『ふんふふん~♪ 運転手は僕だ~死体は君だ~♪』 ピーラーを握った男の手がれいむの肌を撫で、肌色の饅頭肌の切れ端が次々に舞い落ちる。 『ゆびいいいっっ!!! どおじでっ!! どおじでごんなごどずるんだぜぇぇ!! ゆびいぃっ!! いやだあああぁぁ!! ばりざ、じにだぐないいぃぃ! うんてんじになっだのにぃぃ!! ばりざ、いっばいがんばっだのにぃぃぃ!!! じにだぐないよおぉぉ!!!!』 『はいはい、ゆっくりゆっくり』 ブツンッ 『…だのにぃぃぃ!!! じにだぐないよおぉぉ!!!!』 グシャッ グシャッ グシャッ 『ゆっ…ゆわっ…ゆわっ……』 『んー、どうしたのかなー? おちびまりしゃちゃあん? そんなに、ちーちー漏らしちゃってぇ。 大丈夫でちゅよー? まりしゃちゃんのちっちゃなお帽子さんは取らないからねー だからね? 別に用はないから…』 頭上に男の足が見える。 それは、れいむのおちびちゃんが見ている光景か、それとも 「『ゆっくり死んでね」』 『ゆやああぁぁぁ!!!! おきゃあしゃああああああん!!!!!!!!』 ブツンッ…! ……… 「さあ、───。これを食べてごらん。楽しいモノが見られるかもしれないよ?」 これまでに書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 229 たくすぃー ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物 ふたば系ゆっくりいじめ 404 ただ一つの ふたば系ゆっくりいじめ 471 えーき様とお義母様 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 社会崩壊とか、笑えない -- 2016-03-12 00 00 01 人間の歌は踊る駄目人間かな -- 2014-07-22 16 00 55 ヤバイ、これはアカン -- 2014-07-10 17 58 14 こうしてみるとちゃんと伏線は張ってあるんだよな 前半の「ぱちゅりー! どうしたんだぜ!」とか ただ恐怖に震えて寄り添い合う母と子の部分で赤れいむの一匹がれみりゃのセリフだったとか 長ぱちゅりーが死ぬ時の(…犯人……は…………)とか -- 2013-12-12 05 24 35 少し変なところもあったが凄い面白くて素直に関心した。 -- 2012-07-19 18 59 53 痴ゆんとか電車描写にワロタw -- 2012-02-20 04 48 34 明らかにおかしいだろ!と思うところでも気づかないのは読んでて楽しいな。 うーうー言ってるの見るたびに笑っちゃったよ れみりゃだけかと思ってたから人間登場は驚いた ってか下り坂だし進むのは足だけでどうにかなるとしても曲がりはどうしてたんだw ぱちゅりーが人間の関与が分かったのは手の感触、誰が人間か分かったのはいつもなら「おさ」と呼ぶのに「ぱちゅりー」って言ったから? -- 2011-05-07 16 10 15 ↓別に推理しろなんて誰も頼んで無いし、読者にも推理させる本格ミステリーとして作った作品とも書いていない。 勝手に推理ごっこ始めといて、何を人様にミステリーの十戒とかほざいてるんだい? -- 2011-01-12 19 22 54 人間がどうやってハンドルもないすぃーを運転してたんだ? 最後になって特別な訓練を受けていましたとか言われても推理できないよ 特別な技能というよりかはもう超能力レベルだし あとぱちゅりーの犯人が分かった理由が瀕死の自分を見て笑ってたからって 言われても、その描写も無かったし推理のしようがないよ ミステリーの十戒だか二十戒だかにふれるんじゃないのこれ -- 2010-12-12 02 17 52 まさかのどんでん返しでびっくりした -- 2010-12-05 00 06 25 面白かったけど… 人間とゆっくりじゃ大きさ全然違うだろ、気づけよww -- 2010-10-14 17 37 12 面白かった! れみりゃのせいかと思ってたけど違かったのね -- 2010-09-17 09 15 21 普通に面白かった。 -- 2010-07-04 02 36 36 ラストの鬼意山はパチュリーの元飼い主? -- 2010-06-11 22 39 54
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作品の後ろにある文字の説明はジャンルマークについてに纏めてあります。 作者名の改名は、お気軽にお申し出下さい。ご自分で編集して変えていただいても問題ありません。 作品の一覧追加も、漏れがありましたらお気軽にお申し出下さい。これまたご自分で編集していただいても問題ありません。 あ~な行で始まる作者別アールグレイ アイアンマン アイアンゆっくり 赤福(ゆっくりしたい人から改名) アサシンの人 甘党 天海 アルコールランプ アンノーマン エイム 大貫さん オズ お題の人 お帽子の人 『オマケ』 小山田(通称:ゆっくり加工場の人) 御湯栗 俺とゆっくりの人 俺魔理沙の人 怪僧トンポ 課本 書き溜め 希少種の人 キノコ馬 キャベツ頭(ハチの人から改名) きめぇ丸大好きっ子 虐待おにいちゃん 巨大(ryの人 クラムボン ケイネスキー ケラ子 剣客みょん 懲りない男 さすらいの名無し しゃべらないゆっくり 十京院典明(”ゆ虐の友”従業員から改名) 少女Q(ゆっくりゃバーガーの人から改名) 白い人 神社バイト 神父 推進委員会の人 睡眠不足な人 すまれみりゃの作品集 ダイナマイト横町 タカアキ 高菜の人 チェンジリングの人 チェンマガツ ちはる ちゃわんむし(762) 町長 超伝導ありす ツェ ティガれみりゃの人 デストラクション小杉 同志ゆっくり小町 土下座衛門 ドスまりさとゆうかの人(仮名) ななな 七連星の人 茄子 名も無き作者 のりたま あ~な行で始まる作者別 アールグレイ ゆっくりいじめ系638 少年と木ゆっくり虐無 ゆっくりいじめ系651 ユルジンと魔法のランプ虐家性共 ゆっくりいじめ系903 因幡の白ゆっくり ゆっくりいじめ系1238 ゆっくりsacrifice アイアンマン アイアンマンの作品集? アイアンゆっくり ゆっくりいじめ系2668 まりさの馬鹿 ゆっくりいじめ系2713 ゆっくり地縛霊 れいむ親子の場合 ゆっくりいじめ系2772 ゆっくり教えてね!! 1 ゆっくりいじめ系2819 ゆっくり地縛霊 まりさ達の場合 ゆっくりいじめ系2824 鬼斬 1 ゆっくりいじめ系2863 ゆっくり教えてね!! 2 ゆっくりいじめ小ネタ529 世界で一番短い虐待? ゆっくりいじめ系2882 怪奇現象虐制強希無 ゆっくりいじめ系2948 ゆっくり地縛霊 ありすの場合虐制家共強希無 ゆっくりいじめ系3086 恐るべきゆっくり 前半 赤福(ゆっくりしたい人から改名) ゆっくりしたい人の作品集? アサシンの人 ゆっくりいじめ系761 ゆっくり兵 ゆっくりいじめ系955 ゆっくりアサシン~お兄さん遊び編 ゆっくりいじめ系1360 焼き串? ゆっくりいじめ系1890 ゆっくり護身術? ゆっくりいじめ系2022 ゆっくりになった男1 ゆっくりいじめ系2295 ゆっくりになった男2 ゆっくりいじめ系2296 ドスのいる村 ゆっくりいじめ系2301 食ゆ植物 ゆっくりいじめ小ネタ412 ゆっくりミキサー車? ゆっくりいじめ系3093 GSPOゆっくり課 ゆっくりいじめ系3095 GSPOゆっくり課2 ゆっくりいじめ系3103 GSPOゆっくり課3 ゆっくりいじめ系3104 GSPOゆっくり課4 甘党 甘党の作品集 天海 天海の作品集? アルコールランプ アルコールランプの作品集? アンノーマン ゆっくりいじめ系1087 潜入!ボスの群制無 ゆっくりいじめ系1111 協定破棄復無 ゆっくりいじめ系1120 加害者ありすの献身虐制性無 ゆっくりいじめ系1296 栄光のユックリンピース制性環無 ゆっくりいじめ系1517 走れマリス ゆっくりいじめ系1647 侵入!ボクの家 エイム にとり×ゆっくり系2 見本市? その他 大会に行こう! ゆっくりいじめ系332 大会に行こう! そして、それから… ゆっくりいじめ系356 ある可能性 その他 うん、この味? ゆっくりいじめ系811 ある森の危機制捕無 ゆっくりいじめ小ネタ292 私は大抵はもらい物で済ませる物? ゆっくりいじめ系2213 ある可能性の否定 大貫さん 大貫さんの作品集? オズ ゆっくりいじめ系270 ゆっくりスイーツ(笑)虐無 ゆっくりいじめ系680 ゆっくり刷り込みしてね!!!虐共無 ゆっくりいじめ系1188 漢方『湯繰丹』 お題の人 お題の人の作品集? お帽子の人 お帽子の人の作品集 『オマケ』 ゆっくりいじめ系2131 ゆっくりはつらいよ 花粉篇 ゆっくりいじめ系2171 ゆっくりは死なん ゆっくりいじめ系2274 邪悪の使い ゆっくりいじめ系2365 ゆっくり恐怖症 ゆっくりいじめ系2659 ゆっくりしてほしい ゆっくりいじめ系2786 飼われなかったゆっくり ゆっくりいじめ小ネタ324 ゆっくりのおまけ? ゆっくりいじめ小ネタ325 あかちゃんはどこからくるの?? ゆっくりいじめ小ネタ365 薪割り? 小山田(通称:ゆっくり加工場の人) ゆっくり加工場の人の作品集 御湯栗 ゆっくりいじめ系159 ゆっくり飾り Part.1虐家共無 ゆっくりいじめ系160 ゆっくり飾り Part.2虐家共無 ゆっくりいじめ系175 ゆっくり飾り2 Part.1虐家無 ゆっくりいじめ系2138 ゆっくり飾り2 Part.2 俺とゆっくりの人 ゆっくりいじめ系21 俺とゆっくり 虐環 無 ゆっくりいじめ系97 俺とゆっくり2(前編)制無 ゆっくりいじめ系165 俺とゆっくり2(中編)制家無 ゆっくりいじめ系214 俺とゆっくり2(後編)虐家性無 ゆっくりいじめ系561 俺とゆっくり2(終編)虐制家捕無 ゆっくりいじめ系636 俺とゆっくり2(完結編)虐環捕無 俺魔理沙の人 ゆっくりいじめ系61 ゆっくり俺魔理沙そ ゆっくりいじめ系70 NTR 制 ゆっくりいじめ系330 電子生命ゆっくり誕生制捕無 ゆっくりいじめ系663 ルチャゆっくり虐無 怪僧トンポ ゆっくりいじめ系73 こどもたちが屠殺屋ごっこをしたはなし1虐共家 ゆっくりいじめ系81 こどもたちが屠殺屋ごっこをしたはなし2虐共家 ゆっくりいじめ系224 ゆっくり藍の憂鬱虐無 ゆっくりいじめ系225 ゆっくりたちの生き地獄制家環無 課本 ゆっくりいじめ系383 畑番めーりん制そ ゆっくりいじめ系522 ゆっくりめーりんの話虐無 ゆっくりいじめ系550 体付きゆっくりの冬虐家捕無 ゆっくりいじめ系675 一人きりの子育て虐性家 書き溜め 書き溜めの作品集 希少種の人 希少種の人の作品集? キノコ馬 キノコ馬の作品集 キャベツ頭(ハチの人から改名) ゆっくりいじめ系896 ハチとゆっくり ゆっくりれみりゃ系いじめ49 冬のれみりゃ1? ゆっくりれみりゃ系いじめ59 冬のれみりゃ2? ゆっくりいじめ系1335 ゆっくりおろしていってね!!! ゆっくりいじめ系1372 都市型ゆっくりの受難 きめぇ丸大好きっ子 ゆっくりいじめ系764 究極お兄さん制無 その他 きめぇ丸といっしょ? ゆっくりいじめ系820 きめぇ丸といっしょ2 ハロウィンゆっくり虐家捕無 ゆっくりいじめ小ネタ144 改造お兄さん? ゆっくりいじめ小ネタ148 ゆっくりりぐる? 虐待おにいちゃん 虐待おにいちゃんの作品集 巨大(ryの人 巨大(ryの人の作品集? クラムボン ゆっくりいじめ系41 ゆっくり一家と俺の冬 前編 制家無 ゆっくりいじめ系42 ゆっくり一家と俺の冬 後編 制家共無 ゆっくりれみりゃ系いじめ12 ゆっくりゃたまねぎ責め虐制 ゆっくりいじめ系449 あるゆっくり姉妹の話そ ケイネスキー ゆっくりいじめ系306 ゆっくり改造職人のお話 前編虐そ無 ゆっくりいじめ系340 ゆっくりダイビング虐環無 ゆっくりいじめ系466 ゆっくりに激しいぼうこうを加えるお話虐 ゆっくりいじめ系475 ゆっくりイクと俺虐 ケラ子 ゆっくりいじめ系509 紅い弾丸 ゆっくりいじめ系601 ある新人ゆっくりーだーの話(前編)制無 ゆっくりいじめ系647 ある新人ゆっくりーだーの話(後篇)制共無 ゆっくりいじめ系711 ある植物型奇形妊娠の話 ゆっくりいじめ系748 ある動物型奇形妊娠の話 ゆっくりいじめ系807 あるロボットゆっくりーだー達の話(前編) ゆっくりいじめ系844 あるロボットゆっくりーだーの話(後編) ゆっくりいじめ系1437 ゆっくりー島の悲劇 剣客みょん (暫定的に作者名を勝手につけました。一作品目が名前にそのまま出来そうなタイトルでしたので。微妙な場合はご遠慮なく改名要請お願いします。by管理人) ゆっくりいじめ系1528 剣客みょん ゆっくりいじめ系1547 合戦 ゆっくりいじめ系1561 ゆっくり冬将軍 ゆっくりいじめ系1576 怨念 ゆっくりいじめ系1633 ゆっくりさん ゆっくりいじめ系1644 ここが奇跡のゆっくり村!鬼意山は舞い降りた!! 懲りない男 懲りない男の作品集 さすらいの名無し さすらいの名無しの作品集 しゃべらないゆっくり ゆっくりいじめ系630 狭き門?虐環家共無 ゆっくりいじめ系653 ゴッドかなこ虐共 ゆっくりいじめ系690 ゆっくりとカビ虐性家無 ゆっくりいじめ系715 不可侵条約虐無 ゆっくりいじめ系765 子沢山(植物篇)虐性無 ゆっくりいじめ系1054 子沢山(にんっしんっ篇) ゆっくりいじめ系1166 ゆっくりによる裁判 十京院典明(”ゆ虐の友”従業員から改名) 十京院典明の作品集 少女Q(ゆっくりゃバーガーの人から改名) 紅魔館×ゆっくり系8 ゆっくりゃバーガー?虐 ゆっくり加工場系18 ゆっくり連環腿?虐薬道 慧音×ゆっくり系5 ゆっくり奇々怪々(上)? 慧音×ゆっくり系6 ゆっくり奇々怪々(中)? 慧音×ゆっくり系9 ゆっくり奇々怪々(下)? その他 にちょりは仲良く暮らしたい。? ゆっくりいじめ小ネタ213 ゆっくり鞭打? ゆっくりいじめ系1600 ゆっくりくずまんじゅう 白い人 その他 ようむ?そ ゆっくりいじめ系616 ゆゆほーる虐道無 神社バイト 神社バイトの作品集? 神父 その他 辻斬り妖夢譚 ディレクターズカット版 (前編)?虐性料 その他 辻斬り妖夢譚 ディレクターズカット版 (後編)?虐料 小悪魔×ゆっくり系5 パティシエールな小悪魔?虐料 小悪魔×ゆっくり系6 パティシエールな小悪魔2?虐料 ゆっくりいじめ系1800 パティシエールな小悪魔3?虐料 推進委員会の人 ゆっくりいじめ系577 ゆっくり推進委員会_1虐環無 ゆっくりいじめ系578 ゆっくり推進委員会_2虐環無 ゆっくりいじめ系666 ゆっくり推進委員会2虐環家無 ゆっくりいじめ系747 ゆっくり推進委員会3虐環捕無 ゆっくりいじめ系774 ゆっくり推進委員会4虐環捕無 ゆっくりいじめ系1182 悪徳の栄え1虐環無 ゆっくりいじめ系1226 悪徳の栄え2虐環無 睡眠不足な人 ゆっくりいじめ系718 ドスまりさのお願い(前) ゆっくりいじめ系719 ドスまりさのお願い(後) ゆっくりいじめ系743 楽園 ゆっくりいじめ系875 楽園2-裏側 ゆっくりいじめ系879 あるゆっくり家族の話 すまれみりゃの作品集 すまれみりゃの作品集 ダイナマイト横町 ダイナマイト横町の作品集? タカアキ タカアキの作品集? 高菜の人 ゆっくりいじめ系1523 じゃがいも ゆっくりいじめ小ネタ228 高菜? ゆっくりいじめ小ネタ322 ふりだしにもどる? チェンジリングの人 チェンジリングの人の作品集? チェンマガツ チェンマガツの作品集 ちはる ゆっくりいじめ系924 ゆっくり姉妹 前編 ゆっくりいじめ系925 ゆっくり姉妹 後編 ゆっくりいじめ系967 カントリーガール 1 ゆっくりいじめ系968 カントリーガール 2 ゆっくりいじめ系1540 ゆっくりと悪魔のような子供達 ゆっくりいじめ系1670 ゆっくりと悪魔のような子供達2 ゆっくりいじめ系1671 ゆっくりと悪魔のような子供達3 ゆっくりいじめ系1672 ゆっくりと悪魔のような子供達4 ちゃわんむし(762) ちゃわんむし(762)の作品集? 町長 ゆっくりいじめ系642 満員電車とゆっくり虐環無外 ゆっくりいじめ系662 大岡裁き虐家無 ゆっくりいじめ系858 ゆっくりセラピー ゆっくりいじめ系913 頭外 ゆっくりいじめ系1190 ゆっくりの巣 ゆっくりいじめ系1729 年の瀬とゆっくり虐 超伝導ありす 超伝導ありすの作品集? ツェ ツェの作品集 ティガれみりゃの人 ティガれみりゃの人の作品集 デストラクション小杉 デストラクション小杉の作品集? 同志ゆっくり小町 ゆっくりいじめ系1401 男と一家 ゆっくりいじめ系1421 きめぇ丸の恩返し 丙 ゆっくりいじめ系1438 きめぇ丸の恩返し 丁 ゆっくりいじめ系1459 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 ゆっくりいじめ系1508 楽園の終焉 ゆっくりいじめ系1579 感染拡大 ゆっくりいじめ系1626 内から侵食 ゆっくりいじめ系1766 ゆっくりの逃避行 丙 ゆっくりいじめ系2159 ゆっくりの逃避行 丁 ゆっくりいじめ小ネタ404 王様とゆっくり? 土下座衛門 土下座衛門の作品集? ドスまりさとゆうかの人(仮名) ドスまりさとゆうかの人の作品集? ななな ゆっくりいじめ系77 くたばれゆっくりぁあああああ!!!!虐そ ゆっくりいじめ系95 しにさらせゆっくりぁあああああ!!!!そ 七連星の人 七連星の人の作品集 茄子 茄子の作品集 名も無き作者 ゆっくりいじめ系100 ピタゴラゆっくり虐家無 ゆっくりいじめ系106 小ねたっぽいゆっくりいじめ虐環 ゆっくりいじめ系288 ピタゴラゆっくり2虐機無 ゆっくりいじめ系301 ゆっくりゃかわいがり(笑)虐無 その他 ゆっくりクッキング?そ のりたま ゆっくりいじめ系1145 硬いお菓子 ゆっくりいじめ小ネタ163 小ネタ? 7eu
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本編(未完) ゆっくりいじめ系808 ティガれみりゃ ゆっくりいじめ系817 ティガれみりゃ2 ゆっくりいじめ系821 ティガれみりゃ3 ゆっくりいじめ系842 ティガれみりゃ4
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※独自解釈が満載です。 ※虐待してないですね、これ…… ※過去最長。……これでも削ったんですよ? ※『ふたば系ゆっくりいじめ 410 お尋ねゆっくり』の外伝みたいなお話です。 書いた奴:一言あき 山の裾野に広がる森とは広い平野を挟んで反対方向にある寂れた農村。 その一角にある大きな家の土蔵の中は、今日もゆっくりさせて貰えないゆっくり達の悲鳴で騒がしかった。 「さくやぁぁぁぁっ!ざぐや゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!」 「はなすんだどぉおおおお!!れみぃはこーまかんのおぜうさまなんだどぉおおおおお!!」 「ぼぅやじゃああああ!!おうぢがえるぅううううう!!」 「う゛ー!!う゛ー!!」 そこそこ広い土蔵の中を埋め尽くすかのように置かれていたのは、無数の金属で出来た檻。 猛犬等を入れておく為に設計されたそれは、今は本来の主の代わりにある生物(なまもの)を体内に収めている。 俗にZUN帽と呼ばれる不思議な形状の帽子を被り、背中に一対の蝙蝠の羽根を持つそれはゆっくりれみりゃと呼ばれていた。 「あがぢゃぁああああん!!うまれちゃだめなんだどぉおおおおお!!」 抵抗もむなしく、十字に組まれた拘束台の上でもがく胴付きれみりゃから一匹の赤れみりゃが生まれ落ちる。 胎生にんっしんっで生まれた為か、生まれたての割には充分子ゆっくりと呼べるサイズの赤れみりゃは、母親にご挨拶をするべく口を開き、 「う゛~っ☆まんまぁ~☆ゆっく「おっ、ちゃんと生まれたな?じゃあ早速回収だ」ゆ゛っ゛!?」 母の姿を一目見る事無く、無造作に伸びて来た手に掴まれてどこかに消え去った。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!れ゛み゛ぃ゛の゛お゛ぢびぢゃ゛ん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 嘆く間もなく、れみりゃの体に注射針が刺さる。 音を立てて注入されていく液体から動かない体を必死に揺らして逃れようとするれみりゃ。 「ぼう゛や゛じゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!あ゛がじゃ゛ん゛う゛み゛だぐな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 泣き叫ぶれみりゃに構わず、最後の一滴まで注ぎ込まれると同時にれみりゃに劇的な変化が起こる。 ゆっくり特有の下膨れ気味な顎の下辺りがみるみる内に膨らみ、それが胴の方へ移動していく。 「あがぢゃぁああああん!!うまれちゃだめなんだどぉおおおおお!!」 そして同じ光景が繰り返される。 よく見れば拘束されているのは所謂胴付きばかりではない。 胴無しと呼ばれる、通常のゆっくりに羽根を付けただけの種も同じく拘束され、同じように子供を生産している。 そう、『生産』だ。 先程の注射器の中身はにんっしんっ促成剤と精子餡の混合液である。 そうして生まれたれみりゃ達は生まれ落ちた瞬間に親から隔離され、人間について徹底的に仕込まれる。 人間はれみりゃよりも強い、人間に逆らってはいけない、人間に生意気な事を言ってはいけない等々。 教育の過程で駄目出しされたれみりゃは、他のれみりゃ達の目の前で容赦なく叩き潰され見せしめにされる。 最初は反抗的な態度を取るれみりゃも、同族の無惨な死を見せつけられる内、次第に人間に従順になってくる。 そうして特に見込みのあったれみりゃを先程の蔵に拘束し、赤ちゃんを『生産』させるのだ。 これを繰り返す事で、ゆっくり達の中枢餡に『人間への絶対服従』を刷り込み、労働奴隷に仕立て上げる。 それがこの研究の目的だった。 『捕まりゆっくり ~あるいは彼女達を取り巻く状況について~』 『検体二十七号(三世代目)』と書かれた檻の中で拘束されている胴無しれみりゃも、例に漏れず出産を間近に控えていた。 ゆっくりのにんっしんっ期間は植物性で約三日、胎生でも約七日程度。 それを促進剤で無理矢理半日に短縮した上、休み無しでにんっしんっを繰り返しているのだから母体に掛かる負荷は尋常ではない。 「う゛ーっ!!う゛う゛ーっ!!!」 ここに繋がれてからもう十日、同族の姿は見えない。壁の向こうから聞こえてくる阿鼻叫喚だけが一人ではないことを実感させてくれる。 自慢の羽根をいくら羽撃かせても、拘束された体は動かすことも出来ない。れみりゃの世界は鋼鉄と悲鳴と慟哭で塗り潰されていた。 ここはいやだ、おそとにでたい、あかちゃんはもう、うみたくない。 必死に訴えるれみりゃの言葉は悲鳴に掻き消され、誰にも届かない。 もういやだ、どうしてこんなことに、れみぃはなにもわるくないのに。 それでも尚、れみりゃは叫び続ける。我が身に降り掛かった不運を嘆くように、恨むように。 たすけて、だれか、たすけて。 声にならない助けを祈る。ゆっくりには祈るべき神など居ないと言うのに。 だがその日、どこに居るかも解らない神はれみりゃに微笑んだ。 「おい、二十七号の様子が変だぞ?」 「……ストレスみたいですね。にんっしんっはしてるようですし、一度ここから隔離して見ますか」 「おいおい、今更ストレス程度で特別扱いかよ?ここじゃ衰弱死だって珍しくなかろうに」 「今孕んでる分だけですよ。こいつはもう限界でしょうし、生まれたら母体は処分の方向で」 「……おっかないねぇ。虐待派の俺でさえ引くわ」 「いちいち実験動物に感情移入してどうします?結果が出なければ生ゴミも同然でしょう、こんなの」 「……解った解った、んじゃこいつは隔離ってことで良いな?拘束外すぞ」 「ああ、今移送用のケージ持って来ます……ってもう外してるし」 「ん?このまま持ってけば良いんじゃないのか?どうせ逃げられないだろ」 「……まあ良いです。それじゃ、本棟の方に移送しましょう」 「本棟ったって、俺ん家の母屋じゃねーか」 「れみりゃ使うのだって貴方が言い出しっぺなんですから、それ位我慢してくださいよ」 「しょうがねぇな。んじゃ持ってくぞ……痛ぇ!!」 「ああっ!?何やってるんですか!!急いで捕まえないと!!」 「くっ、この!ちょろちょろとしやがって!!」 「窓!窓閉めてください!!急いで!!!」 「馬鹿!何やってんだ!!そこじゃない、天窓だ!天窓!!」 「あっ!?……くそ、逃がしたか!!」 「……悪い。まさか噛み付いてくるとは思ってなかった」 「事前教育の成績は悪くなかったんですがね。環境の激変で我を忘れたんですかね?」 「……教育どうこう言うより、ここに居るのが耐えられなかったんじゃないか?結構必死だったぞ」 「まあ仕方ありません。それより怪我は大丈夫ですか?」 「これ位なら大したことは無ぇよ」 「それはよかった。じゃあ欠けた分を補充して来てくださいね」 「……また第一世代から仕込むのか?非効率だろそれ」 「たまに餡統をリフレッシュしないと出生率が落ちるんです。丁度良い機会ですし、あの森で二、三匹ぐらい………」 胴無しれみりゃは身重の体を抱え、必死になって羽撃く。 赤ちゃんが生まれていないのにれみりゃを閉じ込めていた檻が開き、体を縛り付けていた拘束が外され、人間の手に抱えられて運び出される。 何がなんだか解らなかったが、今が逃走の好機であることは理解できた。 自分を抱える人間に噛み付き、両手の拘束を振り払って換気のために開けてあった小窓から飛び出す。 日が沈みきって夜闇が広がり始めた時間帯であったことも幸運であった。 尤も、日光溢れる時間に窓を開けたりすれば蔵の中のれみりゃが全滅するので、換気はいつもこの時間に行われているのだが。 折角、千載一遇の大チャンスを捉えたのだ。ここで無にする訳にはいかない。 背後で騒ぐ人間を振り切るように、れみりゃは一目散に逃げ出した。 人間に捕まる訳にはいかない。捕まったら最後、再びあのゆっくり出来ない所に押し込められてしまうだろう。 人間の居ない所に、人間が来ない所に!! れみりゃは無意識のうちに、夜の闇に浮かぶ木々の影を目指して飛んでいた。 山の裾野に広がる森の奥地、木々が密集して昼なお暗い陰鬱な場所に生える一本の老木。 長い年月風雨に晒され、腐れ落ちた痕に出来た大きなうろの中で、れみりゃは出産の時を迎えていた。 ここにたどり着けたのはまたしても幸運だった。何やら自生していたキノコが邪魔ではあったが、今はそれがマット代わりになってくれる。 夜露を凌ぐ程度には過ごし易く、何より周囲を囲む木々のお陰で朝日が遮られ、れみりゃに届かない。 昨晩から続く幸運の連続を、れみりゃはただ当たり前の如く享受するのみだった。 ゆっくりには神は居ない。 それは『ゆっくりにご利益を授ける神が居ない』事を意味するのではなく、『ゆっくりには感謝や懺悔を捧げる対象が居ない』事を表しているのだ。 神への感謝は謙虚な心を育て、神への懺悔は反省の心を促す。信仰とは即ち、道徳心を育むための土台なのだ。 しかし、ゆっくりにはそれがない。 ただ怠惰にゆっくりすることを望む彼女達には、反省も、謙遜も、善悪の区別さえも不要だからだ。 れみりゃもまたそのあり方のままに、幸運への感謝も自然への畏敬も無く、只腹の中の子を産み落とすことだけしか頭に無かった。 余りにも傲慢なその姿に、流石に幸運を授けていた神も憤慨したのだろうか? 普段よりも数倍に増した陣痛に耐え、生まれた胴無しれみりゃの子供は、 「う~☆まんま~☆ゆっくりするんだどぅ~☆」 「う゛う゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?!?!?」 下膨れの顔の下に人間を思わせる胴体を付けた、胴付きれみりゃであった。 胴無しから胴付きが生まれる、あるいは胴付きから胴無しが生まれる可能性は低くない、らしい。 『らしい』と付くのは、野生においてそんな親子関係が成立しているゆっくりが居ないからだ。 人工繁殖の際に確認された事例から、親と違う種が生まれる『取り替え子現象』よりは多い程度だと思われる。 このれみりゃはその決して多くはない確率に含まれてしまったのだ。 それはこの親子の悲劇の幕開けであった。 「うーっ!うーっ!」 「まんまがなんていってるかわからないんだど~!」 何故自然界でそんな親子関係が見られないのか、その答えがこれだ。 胴無しと胴付きの会話は成立しないのだ。 元々捕食種は薄皮饅頭をベースとする被捕食種と違い、皮が厚めの中華まんをベースとすることが多い。 その分、餡子に値する具材の量が同じ大きさの被捕食種に比べ少なくなる傾向にある。 そして必死に逃げるゆっくりを捕まえる運動能力にその大部分を割かれてしまう為、人語を理解する能力を持たないのだ。 その為、胴無しは『うー』という唸り声で会話をする。他の種には理解できなくても、同種同士の会話には不自由しない。 一方、胴付きは運動機能を胴体の具材に割り振っている。 そのため餡子に余裕があるので人語を理解できるが、代わりに胴無しの会話が理解できなくなった。 日本で育った外国人が、母国語を忘れるようなものだろうか。 親子間での会話が成立しないという、最悪にゆっくり出来ない事態に直面した親の選択は一つしかない。 生まれた子供を間引くこと。ゆっくり出来ないものを拒絶するゆっくりなら簡単に選ぶであろうそれを、 このれみりゃは選べなかった。 あの蔵で生まれた子供達、ご挨拶も出来ずに奪われた子供達の分まで、この子を育てよう。 少し変わっているけれど、大切な自分の赤ちゃんなのだ。必ず立派な『おぜうさま』にして見せる。 れみりゃの決意を言葉にするならこうなるだろうか。この日から、たった一人での子育てが始まった。 季節は巡る。 日々秋の気配が深まっていくある日の夜更け。 虫さえも寝静まる真夜中、胴無しれみりゃと胴付きれみりゃの親子は獲物を探して森を徘徊していた。 獲物とは勿論ゆっくりである。 日光に弱いれみりゃ種の狩りは大抵日が落ちると同時に行われるが、この親子はうっかり寝過ごした所為でこの時間に狩りを始めたのだ。 当然、出歩くゆっくりなぞ何処にも居ない。 そうこうしている内に東の空が薄らと明るくなっていく。夜明けの前兆だ。 日光に弱いれみりゃ達にはこれ以上は危険だ。時間切れである。 大慌てで引き返し、ねぐらである老木のうろに到着した頃にはすっかり明るくなっていた。 「う~☆おなかすいたんだどぉ~☆」 「う~!」 結局獲物が見つからないまま一晩中飛び回ったため、子れみりゃが空腹を訴える。 それを宥めながら、親れみりゃはうろの奥から大きな塊を引っ張り出す。 「…………!………………!!」 それは舌を引き抜かれ、大きな石で口を塞がれたれいむであった。 片方しか無い目を限界まで見開き、子供のようにしーしーを漏らしながら、体を左右に振ってれみりゃの拘束から逃れようとしている。 「ごはんはおとなしくしてるんだど~☆えいっ☆」 「………っ!!!」 もがくれいむを両手で押さえつけて、子れみりゃは満面の笑みを浮かべながられいむに噛み付いた。 「いっただきますなんだど~☆がぶっ☆」 「!!!!!!!!!」 れいむの一つしか無い瞳が絶望に染まる。音を立てて吸い上げられて行く餡子。 徐々に力を失っていく体が突然痙攣し出した辺りでれみりゃは口を離した。 「う~☆こいつはもうおしまいなんだどぉ~☆」 「う゛ーっ!?」 親れみりゃが慌てて近寄るが、既にれいむは事切れていた。 こうなってしまっては仕方が無い。渋い顔で残った餡子を啜る親れみりゃに、子れみりゃがふてぶてしい笑顔でお代わりを要求した。 「う~☆なんだかまたおなかがすいてきたんだど~☆まんまの『おりょうり』、おかわりするんだどぉ~☆」 「う~!!」 再び巣の奥に飛ぶ親れみりゃが引っ張り出して来たのは、両目のあるまりさだった。 だがその舌は引っこ抜かれておらず、石の代わりに毒々しい色のキノコが大量に詰められていた。 「もがぁああああ!!むがぁあああ!!」 まりさの目は焦点を結んでおらず、盛んに何かを叫んでいる。 その姿はまるで何かと戦ってるようにも見えた。 「……この『おりょうり』はまだできあがってないんだどぉ~☆」 「……うー、うー」 暴れるまりさを見た子れみりゃが母に抗議するも、親れみりゃも首を横に振るばかり。 「……ひょっとして、『おりょうり』はこれでおわりなんだど!?」 「うー……」 この親れみりゃ特製の『おりょうり』とはゆっくりを生かしたまま捕らえ、動けないように痛めつけてから巣へ運び、 うろに自生するキノコを詰め込んでから石で口を塞いで放置すると言うもの。 たったこれだけなのだが、この処置を施したゆっくりの餡子は非常に美味になるのだ。 決め手はうろに自生するキノコにある。 このキノコ、実は幻覚作用を持つ毒キノコなのだ。 以前、産後の肥立ちが悪くて狩りに出られず、空腹に耐え切れず食べてしまった親れみりゃが昏倒し、幻覚に襲われたことがある。 親れみりゃが見た幻覚、それはあの蔵に閉じ込められた日々を延々と繰り返すものであった。 このキノコは食したもののトラウマを幻覚として見せる作用があるらしい。それに気付いた親れみりゃが思い付いたのがこの使い方だ。 ゆっくりの餡子は苦痛を与えれば与える程に甘くなり、味わい深くなる。 身体への直接的な苦痛でもいいのだが、甘くなりきる前に死んでしまうことも多い。 その点、このキノコなら精神的な苦痛を断続的に与え続けるため、余程のことが無ければ死ぬことは無い。 キノコを食わせる事で飢え死にする事も無い。じっくり甘くなりきるまで生かしておけばそれでいいのだから、まさにお手軽な料理法だと言えるだろう。 キノコを食べさせるゆっくりは何でもいいのだが、たまに見掛ける片目の無いゆっくりを使うとより味に深みが増す。 どうやら普通のゆっくりよりも深いトラウマがあるらしく、キノコの幻覚が与える苦痛が並ではないのだ。 しかし、片目の無いゆっくりは『おりょうり』するまでもなく美味なため、この森の捕食種達は我先にと競って捕まえようとする。 その上普通のゆっくり達と違って中々に手強いのだ。現にこのれみりゃも先日片目の無いまりさを取り逃がしている。 そういう入手しづらい材料を使うので、今回のように切らしてしまうことも珍しくない。 その為、一回で喰い尽くすのではなく何度も小分けにして餡子を啜り、生かさず殺さず長期に渡り保存していたのだが……… 「なんでなんだどぉ!!まんまはれみぃがかわいくないんだどぉ!?」 「う゛ー!!う゛ー!!」 短い手足をばたつかせ、子供のそれを数倍醜悪にしたような駄々をこねる子れみりゃを必死で宥めようとする親れみりゃ。 尤も、泣きたいのは親れみりゃの方であったが。 親れみりゃはこの『おりょうり』を冬の蓄えにするつもりであった。 それでなくても簡単に手に入らない貴重なゆっくりを使っているのだから、可能な限り長持ちさせたいというのが本音である。 しかし子れみりゃはそれを理解しない。今回のようにまだ使える『おりょうり』すら一食で喰い尽くすのだ。 それを諌めようとしてもまた別の問題が立ち上がる。 子れみりゃの言葉は親れみりゃに問題なく通じている。問題はその逆だ。 自分の意思を子れみりゃに伝えようとしても、『なにいってるのかわからないんだどぉ~☆』で終わってしまう。 言葉が通じないと言うハンデは、親れみりゃが思ったよりもずっと重い現実となってのしかかって来ていた。 「おなかすいたんだどぉ~!!このままじゃうえじにしちゃうんだどぉ~!!」 ジタバタと駄々をこね続ける子れみりゃ。先程ほぼ一匹分の餡子を啜った事などすっかり頭から抜け落ちている。 最初こそどうにか宥めようとしていた親れみりゃだが、余りの我侭っぷりに堪忍袋の緒が切れたようだ。 「うわぁああ!!さくやー!!ざぐやぁああ「う゛ー!!」ぶぴっ!?」 泣き叫ぶ子れみりゃの顔面に、親れみりゃの体当たりが決まる。 体当たりとは言っても極々軽いそれを受け、子れみりゃが目を白黒させて泣き止む。 「う~、まんまぁ……、もしかして、おこってるんだどぅ……?」 怖ず怖ずと問いかけてくる我が子に、『う゛ー!!』と肯定を示す親れみりゃ。 普段は柔和に微笑んでいるその顔に怒りを浮かべ、自分を睨みつけてくる母の姿に子れみりゃが折れる。 「……ごめんなさいだど、まんま。れみぃ、もうおやすみするんだど……」 「……う~、う~」 神妙な表情を浮かべて大人しく寝床に向かう我が子の姿に、親れみりゃは溜め息を吐く。 会話が通じないこの親子にとって、先程のような遣り取りは日常茶飯事だ。 足りない部分はボディランゲージで補っているのだが、この通り非常に荒っぽいため親子の会話がDV気味になってしまう。 こうなる事は分かっていた。それでも子れみりゃを育てる事を選んだのは自分である。 立派な『おぜうさま』にする為には甘やかすだけでは駄目なのだ。 それが分かっていても、立ち塞がる障害の困難さに親れみりゃの決心は挫けそうであった。 一方、子れみりゃもまた現状に不満を持っていた。 (……きっと、まんまはれみぃがきらいなんだど!だからでなーもすくないんだど!!) 胴無しはその素早さや小回りの良さを活かし、群れから逸れた獲物を追いつめる方法で狩りを行う。 一回の狩りで得られる獲物は多くて三匹。親子が暮らすには充分だ……普通の胴無し親子なら。 胴付きの食事量は胴無しより多い。胴体を維持するため、かなりの栄養が必要になるからだ。 その分、力や器用さの点に置いて胴無しに勝る胴付きの狩りは、群れの襲撃などの大規模な方法になる。 今日のように獲物が見つからない事も考えると、子れみりゃが必要とする栄養には全く足りていない。 決して親れみりゃの狩りが下手と言う訳ではないが、そこら辺の事情を知らない子れみりゃには愛情の欠如に見えてしまうのだ。 その上、親子のディスコミュニケーションが更なる拍車を掛けた。 親れみりゃの言葉は子れみりゃには理解できない。 精々『うー』という鳴き声のイントネーションの違いで喜怒哀楽を聞き分けるのが精一杯だ。 それでは到底ゆっくり出来ない。 生まれた直後からゆっくり出来ない環境に取り囲まれていた子れみりゃのストレスも、親に負けない勢いで溜まっていた。 互いにゆっくり出来ない思いを抱えながら、凸凹親子は眠りに着いた。 「もがぁああああ!!むがぁあああ!!」 未だ幻影と戦い続けるまりさの叫び声を子守唄にして。 季節は巡る。 森の奥に密集する木々の合間から白いものが漏れてくる冬の朝。 あちこち朽ちた老木にさえ霜が降りる程冷え込んだ空気も、れみりゃ親子が暮らすうろの中には届かなかった。 「う~☆さむくないんだどぉ~☆」 「う~♪」 正確には届いては居るのだが、親子の周りに置かれたそれが寒波を防いでいたのだ。 巣のあちこちで蠢く影の正体、それは口を塞がれた大小様々なゆっくり達であった。 今年の秋は例年に無く寒くなるのが早かった。賢いゆっくり達はそれを察知して冬籠りの準備を早めた。 しかしれみりゃ親子にとってこれが初めての冬籠りになる。当然、そんな事に気付く筈も無かった。 そして周囲の捕食種達が冬の準備を終わらせたのを見たれみりゃ親子が慌てて準備を始めた頃には、殆どの群れが冬籠りに入ってしまっていたのだが……。 幸運にも冬籠りの準備もせず遊び呆けていたゆっくりの群れを見つけ、ちょくちょく襲っては片っ端から『おりょうり』したのだ。 そして全くの偶然ではあったが、多めに作った『おりょうり』達は防寒具としての役目も果たしてくれた。 幻覚と争い、無駄に体力を消耗してくれるおかげで巣の中は過ごし易い環境になっている。 出口辺りに配置したゆっくりは凍り付いていたが、うろの中にはまだまだ沢山のゆっくりが居るので問題ない。 「う~☆はやくはるになるんだど~☆」 「う~♪う~♪」 春の訪れを心待ちにする親子。しかしその心中は大きく食い違っていた。 (……はるになったら、れみぃもりっぱな『おぜうさま』なんだど~☆そうしたら、れみぃの『こーまかん』をみつけるんだど~☆) 子れみりゃは既に巣立ちの覚悟を決めていた。 ゆっくりの成長は早い。生後一月もすれば赤ゆ言葉も抜け、半年もすれば一人で狩りも出来るようになり、一年経てば成人したと見なされる。 人間に例えるなら、生後一月は赤子から小児、生後半年までは小学生から中学生、一年経つ頃が大学卒業に値するようなものだろうか。 春になる頃、子れみりゃは生後半年を迎える。 先程の例で言えば高校に入学したばかり、まだ巣立ちには早すぎる年頃だ。子れみりゃとて無謀な事である事位は察しがつく。 それでも言葉の通じない母の元で暮らすよりマシであろうと、一人で気ままにゆっくりする事を決めたのである。 (れみぃのけいかくは、まんまにはないしょなんだど~☆おしえないんだど~☆) こんな事を母に打ち明ければ、また体当たりを喰らって止められるだろう。 だから子れみりゃは、母に内緒で巣立ちを行うつもりであった。所謂、家出である。 自分をゆっくりさせない母から解放される日を夢見ながら、子れみりゃは春の訪れを待ち望んでいた。 親れみりゃは悩んでいた。 我が子の様子が明らかにおかしい。冬に入る前まであんなに我侭一杯に振る舞っていたのに、今は嬉々として自分の言う事に従っている。 ひょっとして、今までの教育の成果が現れたのだろうか?だとしても急すぎる。こんな短期間で豹変する程ゆっくりしていたようには見えないのだから。 真意を問いただそうにも言葉の通じない自分達では不可能だ。 だが何にせよ、我が子が素直な『おぜうさま』になってくれるのなら喜ばしい事だ。親れみりゃはそう思って心にわだかまる不安を振り払った。 今はただ春を待とう。春になったら子れみりゃを連れてもう一度あのゆっくり達で狩りをしよう。 あれだけの規模の群れだし、きっと大勢生き残っている筈だ。子れみりゃも満足できるだけの獲物を狩れるし、一緒に狩りをすれば母の苦労も分かってくれる。 我が子との楽しい日々に思いを巡らせながら、親れみりゃも春の訪れを待ち望んでいた。 名残り雪を融かす春の木漏れ日に誘われて、越冬を終えた蟲や獣達が森のあちこちで目を覚ます頃。 老木のうろを利用した『こーまかん』に住むれみりゃ親子もまた越冬を終え、後片付けを開始していた。 「う~☆まんま~、こいつもいいんだどぉ?」 「う~!」 母の許可を受けて、子れみりゃは生き残った『おりょうり』に牙を突き立てる。 冬の間は貴重な食糧だったので生かしておいたが、残った『おりょうり』は皆一様に活きが悪いものばかり。 だが冬の間生かさず殺さずを続け、フラストレーションの溜まっていた子れみりゃにとっては啜り放題である事自体が最高のスパイスだ。 嬉しそうに餡子を啜る子れみりゃの脇で、親れみりゃは冬の間に凍り付き、春になり解凍されてぐちゃぐちゃに崩れた『おりょうり』達を捨てる作業に没頭していた。 「………ゅ゛っ゛!!」 溶け出した時に出た水分で帽子と髪が癒着してしまったまりさを突き落とし、親れみりゃは一息入れた。 この老木は結構背が高い。他の木々も同じ位あるからこの老木が特別と言う訳ではないだろうが、それでもゆっくりにとっては致命的になる高さだ。 先程のまりさのようにまだ息のある『おりょうり』もいるが、こんなになってしまっては如何に味が良くても食べる気にはならない。 老木の根元は潰されたゆっくりで大惨事になっているが、巡り巡って老木の滋養にもなるのだからエコロジーな処分方法には違いない。 幽かに響いてくる『おりょうり』の断末魔を聞きながら、親れみりゃはこれからの予定を立て始める。 今『こーまかん』にある『おりょうり』を食べ尽くしたら、早速狩りに行かねばならない。 冬になっても遊び呆けていたあの丘の群れを狙おう。結構大きな群れだったし、簡単に捕まえる事が出来るから労力も少ない。 親れみりゃはそこまで考えると、夜に備え自分も腹を満たすべく子れみりゃの元へ向かった。 夜。通常種達が夢の中へ旅立つこの時間こそが、捕食種にとっての狩りの時間だ。 獲物に気付かれないよう、れみりゃ親子は無言のまま木々の合間を縫いながら飛んで行く。 やがて森が開け、闇夜に丘のシルエットが薄らと浮かぶのが見えた。 れみりゃ親子はじっくりと獲物を探して廻り、バレバレの偽装が施された大きめの巣に狙いを定めた。 親れみりゃが勢子となって巣に侵入し、巣の出口で待ち構える子れみりゃに捕らえさせる。 素早さに優れた胴無しと、力で勝る胴付きのコンビであるこの親子にだけ可能な方法であった。 (……う~っ!) (わかってるんだど~!ここでまってるんだど~!) 互いの役割を確認し、親れみりゃが巣の中に侵入する。 星明かりすら届かない地中に掘られた巣穴は中々広いが、ゆっくりの姿は見えない。 もしや、奥の方にいるのか?そう考えた親れみりゃは音を立てないよう慎重に巣の奥へ向かう。 今気付かれたら巣の奥に立てこもられて、親れみりゃはともかく子れみりゃでは手が出せなくなってしまうだろうから。 しかし、何処まで行っても巣の奥に辿り着けない。やがて巣の奥から星明かりが差し込むのを見た親れみりゃは思わず舌打ちした。 この巣には出入り口が二つあったのだ。そしてれみりゃの侵入に気付いたこの巣の主はまんまと裏口から脱出したのだろう。 獲物に出し抜かれた事に腹を立てつつ、親れみりゃは入口で待つ子れみりゃの元へ飛んで行く。 そして巣穴の外に出た親れみりゃの目に飛び込んで来たのは、 「ま゛ん゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だずげでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 「ゆっ!れみりゃがでてきたよ!みんなでせいさいするよ!」 「「「「「ゆっゆっお~!!!!!」」」」」 ボロボロになった我が子と、それを取り囲む十匹程のゆっくり達だった。 突然の光景に理解が及ぶよりも早く、リーダーらしいまりさの命令と共に飛び掛かるゆっくり達。 怖れる様子も見せず高く跳ね上がるゆっくり達の体当たりをまともに喰らい、親れみりゃは地面に叩き付けられた。 「う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!?!?!?」 「ま゛、ま゛ん゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」 子れみりゃが挙げる驚愕混じりの悲鳴を聞きながら、親れみりゃは必死に状況を把握しようとしていた。 親れみりゃが巣穴に忍び込んで少し経った頃、入口で獲物を待ち構えていた子れみりゃに何かが投げ付けられた。 「う゛っ!?いたいんだど!?」 涙目の子れみりゃが拾い上げたのは小石。 角張っていて痛そうなそれを手に、子れみりゃは投げ付けられたであろう方向へ目を向ける。 「ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!れみりゃはいますぐここからでていってね!!」 そこにはバレーボール程の大きさのまりさが居た。ゆっくり独特の体を膨らませる威嚇のポーズで子れみりゃを睨みつけている。 「……おまえがれみぃにいしをぶつけたんだど~!?ゆるさないんだど~!!」 生意気な獲物に腹を立て、子れみりゃはまりさに躍りかかった。 だがまりさは身を翻してそれを避ける。勢いが付きすぎていた子れみりゃがたたらを踏んだ瞬間、まりさが叫んだ。 「いまだよ、みんな!」 「「「「「ゆぅうううううう!!!!」」」」」 それに応えるようにあちこちの暗がりから何匹ものゆっくりが現れる。 まりさ、ちぇん、みょん、少ないながらありすも居る。それらが一斉に体勢を崩した子れみりゃ目掛け突進して来たのだ。 「うわぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」 母の庇護のもとで育って来た子れみりゃにとって、このような逆境は初めてである。 パニックに陥り手足をばたつかせて抵抗するが、ゆっくり達は怯まず体当たりを繰り返してくる。 「……まりさおねーさんのいったとおりだね、こうやってみんなでたいあたりしていれば、れみりゃはおそらをとべない。 おそらをとべないれみりゃはぜんぜんこわくないよ。それにほんとうにまりさたちよりおばかみたいだしね」 その様子を見ていたリーダーを務めるまりさが安心したように独り言を漏らす。 この巣は、まりさがとあるアドバイザーの助言を受けて作った罠なのだ。 去年の秋に大人達が全滅して子供しか居ないこの群れにとって、れみりゃ等の捕食種から身を守る術の確立は急務だった。 身体能力に勝る捕食種と正面切って戦うのは無謀だし、素早く逃げ出そうにも子供だけでは不安がある。 そこで考え出されたのが、偽の巣穴を作って捕食種を騙す作戦であった。 トンネル状に掘った巣穴に不自然な偽装を施して見張り役のゆっくりを置き、襲って来た捕食種を誘い込む。 トンネルは広く長く掘られており、忍び込んだ捕食種に気付いた見張りが脱出して群れに伝える程度の時間は稼げる。 見張り役のまりさから連絡を受けて現場に急行したまりさ達が、罠の前で立ち尽くしている子れみりゃを見て即座に考え出したのがこの作戦だった。 作戦の内容はこうだ。 まず、まりさが小石を吹き付けてれみりゃの注意を引き、挑発する。 そして突っ込んで来たれみりゃをギリギリで躱し、体勢を崩した所で待ち伏せていたゆっくり達の体当たりで地面に叩き落とし、皆で取り囲んで攻撃する。 反撃の機会を与えないよう休みなく繰り返してぶつかり、飛び立てないうちに仕留めるのだ。 れみりゃが本当に馬鹿であるなら、見え見えの挑発であってもあっさり引っ掛かるだろうし、きっと待ち伏せにも気付くまい。 そう考えての作戦だったが、思った以上の効果があったようだ。 捕食種への恐怖で怯えていた仲間達も、実際にはれみりゃがそれ程強くない事を知ると、 「まりさがれみりゃをやっつけるんだぜ!!」 「れみりゃはよわいんだねー!わかるよー!」 「『はくろーけん』のさびにしてやるみょん!」 「れみりゃってばいなかものね!とかいはのありすがやっつけてあげるわ!」 と調子に乗って攻撃を続ける。 その間、子れみりゃも黙って攻撃を喰らい続けた訳ではないが、 「やっ、やべるんだど!!れみぃはこーまかんのおぜうさまなんだどぉ!!」 何度も反撃を試みるも、地に落ちたまま体勢も正せない状態ではどうしようもない。 獲物に過ぎないゆっくり達に手も足も出せない自分、それは子れみりゃのプライドを砕くには充分に過ぎた。 「ま゛ん゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だずげでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 とうとう心が折れた子れみりゃが母に助けを求めた丁度その時、親れみりゃが外に出て来たのだった。 親れみりゃがゆっくりの一撃を喰らって地に堕ちたのを目にしたとき、子れみりゃは只唖然とするしか出来なかった。 言葉が通じなくても親である。きっと自分の苦境を救ってくれる筈だと子れみりゃは信じていた。 だがその信頼はあっさりと崩れ去った。 抵抗らしい事もしないままに地面に叩き落とされ、再び空に舞い上がる事も出来ずに袋叩きになる母。 その情けない姿を見ているうちに、子れみりゃの心に沸々と怒りがわき上がる。 あれが誇り高き捕食種の姿だというのか?『こーまかん』の主の姿だというのか? (……あんななさけないやつ、まんまじゃないど!!) 母と同じく餌に反撃を受けて抵抗できない自分の姿を棚に上げ、心中で子れみりゃは母を激しく罵る。 怒りに任せて手足を振り回し、しつこく集ってくるゆっくり達を強引に振り払うと、即座に子れみりゃは空へと逃げ出した。 「ゆっ!?みんな、おおきいれみりゃがにげるよ!!」 「なかまをみごろしにするんだねー!!わかるよー!!!」 「れみりゃってばよわむしね!!とんだいなかものだわ!!」 「う゛う゛ぅううううううう!?」 口々に挑発してくるゆっくり達と、自分を見捨てる我が子に驚愕する親れみりゃを尻目に、子れみりゃはそのまま森の奥へ飛び去っていく。 何故、見捨てる?立派な『おぜうさま』にする為に頑張っていたのに、我が子はそれを分かってくれなかったのか? 一度も振り返らないまま遠ざかる子れみりゃの姿に、親れみりゃが絶叫する。 「う゛わ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!!!!」 それが子れみりゃを呼び戻す為なのか、今までの苦労や決意を完全否定された事に対する絶望から来たのか…… おそらく親れみりゃ自身にも分からなかったに違いない。 長い長い絶叫が終わると、親れみりゃは一切の抵抗を止めた。 突然の絶叫に驚いたゆっくり達が攻撃を中断しても、親れみりゃは地に伏せたまま動かなかった。 その虚ろな目に、とどめを刺すべく駆け寄って来たまりさの姿を映しても尚、親れみりゃは逃げ出す素振りすら見せる事は無かった。 「……まりさ、にげたれみりゃはどうする?」 「……いいよ、ほっとこう。それより、みんなにけがはない?」 「みんなけがしちゃったけど、しんだりじゅうしょうになったりしたこはいないよ!!」 「……よかった……もういちど、わなをしかけておこう。きょうはもうおそってこないだろうけど、けいかいはひつようだからね。 ……あと、そのれみりゃはうめておくよ。ほっといたら、もりのどうぶつさんをひきよせちゃうからね」 「「「「「わかったよ、まりさ!!」」」」」 ……暫くしてゆっくり達が引き上げた後、そこには何も残っていなかった。 再び季節は巡り、夏。 子れみりゃは未だ老木のうろで暮らしていた。 元々母から逃げ出す為に独り立ちしようとしていたのだ。母が居なければここから出て行く必要は無い。 「れみ☆りゃ☆う~☆」 出鱈目に手足をばたつかせるだけの『かり☆しゅま☆だんす』を踊りながら、子れみりゃは『おりょうり』を喰い散らかす。 「……………っ!!」 舌を引き抜かれ、口一杯に例のキノコを詰め込まれたありすの無言の断末魔をBGMにしながら、子れみりゃは一人暮らしを満喫していた。 だが、子れみりゃは決して今の生活に満足している訳ではない。 「あのなまいきなやつらをやっつけるんだどぉ~☆おぜうさまをばかにしたばつなんだど~☆ ……でもあいつらはてごわいんだどぉ。れみぃだけじゃかてないんだどぉ……」 子れみりゃは母の仇を取りたい訳ではない。自分達を侮辱した生意気な獲物を制裁したいだけだ。 その為には奴らを圧倒する力を整えなければならない。そう、数で勝る奴らを蹂躙する力が。 だが子れみりゃは一人だった。親れみりゃもその特殊な育ち故、仲間と共に過ごす事は無かった。 子れみりゃは自分が弱いとは思っていなかったが、一人だけであの群れに勝てるとも思っていない。 姉妹も家族も居ない自分だけではどうしようも無い。 「どうすればいいんだどぉ……」 八方塞がりの手詰まり状態に、子れみりゃは餡子脳をフル回転させて対策を練る。 「う~……おもいつかないんだどぉ…………こんなときはあまあまをつかまえてでなーにするんだど!」 が、五分もしないうちに考える事を止め、狩りに向かう子れみりゃ。 あの襲撃の夜からずっとこのパターンを繰り返しているのだ。 因みにこの他には寝る、食べる、踊るの選択肢しか存在しない。これでは名案が浮かぶ訳も無い。 詰まる所、子れみりゃはいたずらに時間を浪費していたに過ぎないのだ。 今日もまた、子れみりゃはいつもと同じ日常を繰り返す。 「う~☆はじめまして、なんだどぉ~☆」 「うぅ~っ!?」 だが、今日はそこに少しだけ変拍子が加わったようだった。 森の奥地に広がる鬱蒼とした密林は、同時にこの森の捕食種達の楽園でもあった。 子れみりゃも狩りなどの際に他の捕食種と面識はあったものの、実際に会話をする程親密な関係にはなっていない。 それは胴無しである親れみりゃの存在の所為でもあったが、子れみりゃ自身が母以外会話する事さえ無い箱入りであった事も大きかった。 その母とでさえ碌に会話が成り立たなかったため、子れみりゃは生まれてから今に至るまでまともな会話をしなかった事になる。 それ故、一人暮らしとなってからも積極的に仲間や友達を得ようとはしなかったのだ。 「れみぃはれみりゃたちのことをよ~くしってるどぉ☆いつかおともだちになりたかったんだどぉ~☆」 「……わかったんだどぉ~☆きょうかられみぃたちはおともだちなんだどぉ~☆」 狩りに向かう途中、突然自分と同い年位のれみりゃに話し掛けられ、なし崩し的に友誼が結ばれた後、子れみりゃはある集会に案内された。 捕食種は群れを持たずに家族単位で暮らすものだが、それでは自分達を取り巻く状況に取り残されてしまう。 それを防ぐ為にそれぞれの種毎に集まって、情報交換を行うサロンの役目を果たすのが集会である。 件のれみりゃの紹介で、子れみりゃは森の奥に住まう胴付きれみりゃ達のコミュニティの一員になった。 とはいえ、所詮れみりゃの集まりである。 ふらふらと集まったれみりゃ達が思い思いに踊り狂って、それを見たれみりゃがやっぱり思い思いに評価を下す。 実にグダグダな集まりであったが、子れみりゃにとって有益な収穫も幾つかあった。 自分を追い詰め、母を殺したあの群れは結構有名だったらしい。 かつて森中にその名を知られた『おかのおいしゃさん』と呼ばれたぱちゅりーが率いる群れ。 襲撃するも事前に察知され、即座に隠れてしまう為に殆ど獲物にならず、いつしか誰も襲わなくなったのだと言う。 代を重ねるに連れて昔の鋭さを無くしていたらしいが、去年の秋頃に群れが激減したのを切っ掛けに再び以前の手強さを取り戻したそうだ。 ……それも、随分凶暴な方面に。 「れみりゃだけじゃないど……れみぃのすてでぃーも、あいつらにかえりうちになったんだど……」 どうやらあの群れの被害を被ったのは、れみりゃ親子だけではないらしい。 話を振ってみれば出てくる出てくる、あちこちから噴出する怒りの声と賛同する声。 何時しか武勇伝を語る場となっていた集会の皆の話を聞いているうちに、子れみりゃは恐るべき事に気付いて青くなった。 (あいつら、だんだんつよくなってるんだどぉ~!?) れみりゃ達の話を時系列毎にまとめると、どうも一番最初の被害者はれみりゃ親子であったようだが、時を経るにつれ手強くなって来ているらしい。 子れみりゃ達はだまし討ちの上で数十匹がかりのリンチだったが、徐々にその数が減っている。 やがて三匹掛りで抵抗して来るようになり、ごく最近に至ってはなんと一対一で負けたものが出たそうだ。 やり方も非常に巧妙で、子れみりゃのように罠に掛かったものも居れば、狩りの最中に待ち伏せされて袋叩きになったものも居る。 一対一で負けたものなどは、挑発されて必死に追いかけ回した挙げ句、空も飛べない不利な地形におびき出されて返り討ちになる始末。 このままでは何れ手に終えなくなると直感した子れみりゃの脳裏に、ある名案が浮かぶ。 「……あいつらはなまいきなんだどぉ!!このままじゃ、れみぃたちのごはんがたりなくなるんだどぉ!!! だからそのまえに、みんなであいつらをねこそぎやっつけてやるんだどぉ!!」 子れみりゃの提案とは、この森のれみりゃ達全員であの丘のゆっくりを狩り尽くすと言うものだった。 これ以上手強くなる前に潰す、単純ではあるが最も有効な手段である。 問題は、コミュニティのれみりゃ達にそれを理解できる頭が無かった事だった。 「なんで、れみぃがおまえのいうことなんかきかなきゃいけないんだど~!」 「やりたかったらじぶんだけでやるんだど!れみぃはかんけいないんだど!」 このコミュニティは群れと言う程の強制力を持たない、情報交換という噂話や互いのダンスを披露する場のようなものである。 長などの役職も存在せず、従うべき掟も無い。 新入りの子れみりゃがいくら声を張り上げても、それを聞き入れる義理は無いのだ。 子れみりゃの主張に耳を傾けるゆっくりは居なかった。 それでも子れみりゃは諦めなかった。 森のれみりゃ達を片っ端から訪問して廻り、丘を襲撃する必要性を説得して廻る。 自分一人だけでは勝てないなら、襲撃する頭数を増やせば良い。 それが多ければ多い程有効なのは違いないのだから。 「おねがいなんだど!!れみぃといっしょにあいつらやっつけるんだど!! ……だれか、れみぃのはなしをきくんだどぉ~!!!」 そんな子れみりゃを、コミュニティは次第に敬遠するようになった。 集会でダンスを披露して盛り上がっていても、子れみりゃが空気を読まずに騒ぎ立てて場の雰囲気をぶち壊す。 あまつさえ『こーまかん』に押し掛けては同じ事を繰り返すのだ。ゆっくり出来る筈が無い。 そもそも新参者が自分達に指図するなど、生意気にも程がある。 子れみりゃは再び孤立してしまった。 子れみりゃの村八分が始まって二週間程が過ぎた。 その日、最早完全にシカトされていた子れみりゃの『こーまかん』である老木に、珍しく来客があった。 「れみりゃ、げんきにしてるかだどぉ~?」 村八分にされて『こーまかん』に引き篭ってしまった子れみりゃを、集会に誘ったれみりゃが様子を伺いに来たのだ。 しかし誰にも話を聞いてもらえなかったために、重度のゆっくり不信に陥っていた子れみりゃは顔も見せない。 「れみりゃ、げんきだすんだどぉ~☆れみりゃがげんきないと、れみぃもさみしいんだど~☆」 それでもれみりゃは諦めなかった。老木のうろを利用した『こーまかん』の外から励ましの声を張り上げる。 東の空が明るくなるまで、れみりゃは声援を送り続けた。 次の晩、れみりゃは再び子れみりゃの元を訪れた。 昨晩と同じく『こーまかん』の外から声援を送り、夜明け前に帰っていく。 引き蘢る子れみりゃにとって、ただウザいだけの無意味な行動。 狩りに向かう以外、外界へ一切の興味を持てなくなった子れみりゃには迷惑千万な話でしかなかった。 翌日もれみりゃは来た。昨日と同じように声援を送り、昨日と同じく夜明け前に帰る。 翌日も、そのまた翌日も、れみりゃは毎晩子れみりゃの元へ通い続けた。 子れみりゃは相変わらず一切無視していた。 森がすっかり紅く染まり、木々の合間を吹き抜ける風が段々冷たさを増してくる頃、れみりゃはぱったりと現れなくなった。 とうとう諦めたのか、と子れみりゃは安堵し、冬籠りの準備に専念する。 冬の合間の食糧兼防寒具となる『おりょうり』を作るため、沢山の獲物を集めなければならない。 子れみりゃは他のれみりゃ達と顔を合わせないよう、薄暗い森の奥と言う地の利を生かして日中に狩りを行っていた。 今日の獲物である元の姿が解らない程ズタボロだった禿饅頭を抱えて『こーまかん』に向かう道すがら、子れみりゃは疑問に思う。 (なんで、ほかのれみりゃがいないんだど~?) 子れみりゃが日中に活動しているのを差し引いても、全然見掛けないのは異常だ。 密集した森の木々に日の光が遮られ、昼尚暗い森の奥地で日中に活動するれみりゃは少ないながらも存在する。 流石に子れみりゃのように狩りを行うものは居ないが、ダンスの特訓や子供に太陽の危険性を教えるには絶好の立地条件だからだ。 なのに、子れみりゃが冬籠りの準備を始めてから全く姿形も、狩りの痕跡さえ見られないのだ。 競争相手が居ないのは喜ばしいが、何とはなしに不安が沸き上がってくる。 (……きっと、れみぃよりもはやくふゆごもりしてるんだど~☆そうにきまってるんだど~☆) 漠然とした不安感を押し殺し、子れみりゃは冬の準備を続行した。 子れみりゃは気付かなかった。いや、気付けなかった。 初めて出来た仲間との接し方が解らなかった為に、一方的に自分の主張を通そうとして村八分にされていたから。 初めて出来た友達への接し方を知らなかった為に、心配してくれた友達から向けられた好意を無視し続けたから。 既に森の奥に住まうれみりゃ種は、子れみりゃを残してほぼ壊滅状態であったと言う事実を、引き蘢っていた子れみりゃには知る術が無かったのだ。 切っ掛けは、子れみりゃの元に日参していたれみりゃであった。 集会に集まるれみりゃ達の中でも一番の社交性を持っていたこのれみりゃは、多くの友達を得る事を生き甲斐にしていた。 そんな折、胴無しと一緒に暮らす胴付きれみりゃを見掛けたれみりゃは早速友達になろうとした。 胴付きと胴無しでは会話が通じないにも拘らず、胴無しと胴付きでコンビを成り立たせているこの親子にその秘訣を教えてもらおうとした訳だが…… よくよく観察してみると、この親子はコミュニケーションが完全には成立していなかった。 体当たりと罵声で一方的に言うことを聞かせている親れみりゃを、れみりゃは次第に嫌うようになり、子れみりゃを助け出したいと考え始めた。 実際には親れみりゃは子れみりゃを虐げてるつもりは全く無く、体当たりも只のボディランゲージだったのだが。 そしてあの夏の夜、子れみりゃが一人で狩りに出ているのを目撃したれみりゃは早速声をかけ、友達になった。 聞けばあの胴無しれみりゃは狩りの最中に丘の群れに手を出して死に、今は一人で暮らしているという。 これは良い機会だと集会に子れみりゃを紹介して、あの丘のゆっくり達の情報を教えた途端に子れみりゃの様子が一変。 『こーまかん』に押し掛けてまであの丘のゆっくりの殲滅を訴える子れみりゃに、流石にれみりゃも呆れて村八分に加担する事にしたのだ。 だが時間が経つにつれ、れみりゃにも子れみりゃが何故執拗にあの群れを滅ぼそうとしたのか、だんだん解って来た。 最早誰も奴らには手を出せなくなっている。 罠、囮、待ち伏せ。捕食種との能力差を埋める高度な戦術を用い、丘に侵入する捕食者は次々と撃退される。 こうなる前に潰すべきだったのに、それを主張した子れみりゃが新入りだったからと言う理由で黙殺してしまった。 あまつさえ今の状態を予期して助言してくれた子れみりゃを、よりにもよって厄介者扱いして除け者にしていたではないか! なまじ高い社交性を持っていた為に、己の行動が重大な背信行為である事に気付いたれみりゃは、謝罪しようと子れみりゃの元へ赴き、拒絶された。 それも追い返されたり、罵声を浴びせられるでもない、全くの無反応という形で。 れみりゃは諦めなかった。 次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、れみりゃは子れみりゃの元を訪れ続けた。 れみりゃ種の持つ悪癖に『かりすま』がある。 自分は特別な『おぜうさま』だから、自分がゆっくり出来るよう他の全てが傅くのは当然、と思い込むものだ。 他の種にも存在する悪癖だが、れみりゃ種のそれは群を抜く。 何かと言うと出てくる『さくや』も、従者が居て当然という思い込みの賜物。 手足を振り回すだけの『だんす』すら、見てもらうのでは無く『見せてやる』つもりでいる。 『かりすま』が全ての免罪符だと信じて疑わないのだ。 れみりゃ達が群れを持たないのもこれが原因である。 何処までも自分しかない我侭尽くしの集団が、群れなどという高度な社会を維持できる訳が無い。 精々集会で情報を出し合うのが関の山。それすら少しでもそりが合わなければ容易く崩壊する程度のものだ。 そんなれみりゃ種の中にあって、このれみりゃは自分をある程度わきまえている珍しい個体だった。 友達が多かったのも、我侭を言い合って衝突することが無かった為である。 それを見込まれ、集会の進行役や諍いの仲裁等を頼まれる事の多かった彼女を持ってしても、子れみりゃの拒絶という壁はなお高かった。 しかし、悪いのはこちらであるという負い目が彼女を突き動かしていた。 だが、毎晩子れみりゃの元へ向かっても顔すら見せてくれない現状はれみりゃの精神を鑢掛けしたかの如くに磨り減らして行く。 夏が過ぎ、秋の気配が深くなるにつれてそろそろ冬に備えなければいけない時期になる頃、彼女は限界に達した。 「わかったんだどぉ!あのおかのやつらをれみぃがやっつければ、きっとれみりゃもゆるしてくれるんだどぉ!!」 れみりゃは遂に正気を失った。 わきまえていた筈の自分への評価も、今やあの丘の群れはこの森一番の実力派になってしまった事実も、錯乱した彼女には通じない。 全てはあの丘の群れが原因に違いない、だから彼女達を滅ぼせばきっと子れみりゃは許してくれるに違いない筈だ。 そんな妄想に取り付かれたれみりゃは周囲の制止を振り切って、たった一人であの丘へと乗り込んだ。 れみりゃが丘に辿り着いたのは夜半を過ぎた頃であった。 夜の闇に乗じて辿り着いた丘はひっそりと静まり返り、いつかと同じくゆっくりの寝息が聞こえて来る。 早速れみりゃは獲物を探し始める。これもいつかの焼き直しのような風景。 あの親子と違うのは、それが捕食の為ではなく殺害を目的にしている事であろう。 そんなれみりゃの目に飛び込んで来たのはバレバレの偽装が施された大きめの巣。 まともな状態であったなら、これが罠である事位は気付ける程度の知能はあっただろう。 尤も正気を失った今のれみりゃに、そんな冷静な判断が下せる筈もなかった。 「みつけたんだどー!!いますぐみなごろしにしてやるんだどー!!」 あの夜とは対照的に、絶叫と共に巣穴へ突入するれみりゃ。 巣穴は大きめに掘ってあるが、それは通常のゆっくりに合わせての事。成体の胴付きれみりゃでは潜り込むのが精一杯だ。 それでもれみりゃは強引に突き進み、巣の最奥に開けられた脱出口に辿り着いた。 「にがさないんだどー!れみぃがおまえたちをぼっこぼこにしてやるんだどー!!」 れみりゃが通るには狭すぎるそれを強引に突破し、地表に現れた彼女を待っていたのは、 「ゆっ!れみりゃがでてきたよ!!」 「じゃあ、いつものじんけいでいくよー!!」 「ぺにーす!!」 待ち構えていた三匹のゆっくり達であった。 たった三匹とはいえ、この群れに属するゆっくりである以上は強敵に違いない。 侮る事は出来ない、筈だった。 「そこをうごくなだどぉおおおお!!いますぐころしてやるんだどぉおおおおお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 精神の均衡を失ったれみりゃには、そのような考えが一切浮かばなかった。 侮る、侮らない以前に、そのような理性的な行動が取れなくなっていたのである。 目の前にいる獲物を殺す。もっと殺す。もっともっと殺す。もっともっともっと殺す。 既に彼女の脳裏にはこの丘のゆっくりを殺し尽くす事しかなかったのだ。 三匹のゆっくりが縦一列に並んで相対した意味にさえ気付かないまま、れみりゃは馬鹿正直に真っ正面から躍りかかった。 「いっくよー!えーい!!」 「うあ゛っ゛!?」 だが渾身の一撃は、先頭に立っていたちぇんの体当たりで不意にされてしまった。そのまま無様に地面に転げ落ちる。 ちぇん種はゆっくりの中でも最高の瞬発力を持っている。 最高速度ではまりさに負けるにしても、スタートダッシュならどのゆっくりにも負けはしない。 その瞬発力が最大に活かされるのが、俗に『ぴょんぴょん』と呼ばれる跳躍なのだ。 通常のゆっくりが八十センチ程度跳ねるのが限界であるのに対し、ちぇんは一メートル以上飛び跳ねる事が出来る。 空中にいるれみりゃを地上に撃墜するのに、正にうってつけの種と言えよう。 しかし、その一撃は到底れみりゃを倒し切れるものではない。 「……よくもやってくれたんだど~!!れみぃのいかりがうちょう『ゆぷっ!』ぴぎぃいい゛い゛い゛い゛い゛!?!?!?」 悪態をつきながら起き上がろうとするれみりゃの目に激痛が走る。二番手に控えていたまりさが吹き付けた小石が命中したのだ。 石吹きはゆっくりにとって体当たりと並ぶ重要な攻撃手段である。 ゆっくりの皮は饅頭と同じ小麦粉を練った生地だが、人間で言えば肌に当たる外側はむしろ大福に使われる求肥に近い。 『ぷくーっ!』や『のーびのーび』等で表面積を二倍近く膨らませる事が出来るのはその恩恵だ。 そしてそれだけ膨らむと言う事は、同時に『風船のように大量の空気を溜めておける』と言う事でもある。 それを最大限活用したのが石吹きだった。 時にガラスすら突き破る程の威力を発揮出来るそれが、このまりさの必殺技だった。 れみりゃはそれを喰らったのである。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!れ゛み゛ぃ゛の゛ぶり゛ぢー゛な゛お゛べべがぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!」 「……ちーんぽ−……」 そして最後尾に控えていたみょんが、激痛にのたうち回るれみりゃに向けて踏み出した。 みょん種には不思議な習性が幾つかある。 『ちんぽ』、『まら』、『ぺにす』等の男性器を表す隠語で会話するのもその一つだが、最大の特徴は『武器を使う』事にある。 鋭く尖った長い枝を『ろーかんけん』、短めの枝を『はくろーけん』と呼び、口に銜えて戦うのだ。 驚くべき事に原始的ながら体系付けられた剣術まで存在しており、ゆっくりの中で一番の武闘派な種と言われているのも頷ける。 大抵の群れで荒事担当になる実力は伊達ではない。 「……まらっ!!」 「う゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!!!!!!」 勢い良く振り抜かれた『はくろーけん』は、れみりゃの右頬を深く斬り裂いた。 厚めの皮を具材が覗く程深く抉った傷口から肉汁を撒き散らし、れみりゃは絶叫しながら苦しみ悶える。 「もういちどいくよー!!」 「こんどこそとどめだよ!!」 「ぺにーす!!」 霞む視界の端に再び陣形を整えるちぇん達を捉えた瞬間、れみりゃの心は折れた。 我を忘れる程の怒りも、子れみりゃへの罪悪感さえも跡形なく吹き飛ばされ、残ったのは『死にたくない』という思いだけ。 生存を望む本能に突き動かされ、れみりゃはためらいなく逃走を選んだ。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ざぐや゛ー゛!!じゃ゛ぐや゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 何処にそんな力が残っていたのか、一瞬でちぇんすらも届かない高度まで飛び上がり、れみりゃは一目散に逃げ出した。 「ゆっ!?れみりゃがにげるよ!?」 「きょこん!?……びっぐぺにす!!!」 「まって!まりさたちだけじゃあぶないよ!!みんなをよぼう!!」 慌てて追いかけようとするみょんとちぇんを、まりさが引き止める。 まりさ達はこれが初陣だ。群れで鍛えられた実力は疑うべくも無いが、用心に越した事はない。 まりさは自分達だけで追うよりも、経験豊富な群れの仲間と共に追撃を掛けた方が確実だと判断したのだ。 「ぜんいんでおいかけるんだねー!じゃあ、ちぇんはれみりゃのあとをつけるよー!めじるしをおいておくから、それをたどってきてねー!!」 「きをつけてね、ちぇん!」 「いんけい!!」 背後に聞こえるまりさ達のやり取りすら耳に入らずに、れみりゃは只々必死で森の奥へ逃げていった。 木々が鬱蒼と生い茂る森の奥地は騒然としていた。 皆の制止を振り切ってあの丘へ向かったれみりゃが、瀕死になって戻って来たからである。 錯乱していたとはいえ、交友関係の広かったれみりゃだけに人望も厚い。緊急の集会が開かれ、近隣の胴付きれみりゃの殆どに招集が掛けられた。 とはいってもそれ程数は多くない。二十に満たない人数でぐるりと輪になって口々に勝手な事を言い張っていく。 「れみりゃのかたきをとるんだど!!みんなでかかればこわくないんだど!!」 「でも、あいつらはてごわいんだど…………れみぃはあいつらとかかわりたくないんだど……」 やがて集会の意見は『全員で敵討ち』派と『無視を決め込む』派の真っ二つに分かれた。 しかし敵討ち派とて丘の群れの強さは理解しているし、無視派にしてもれみりゃを虐めた奴らへの仕返しはしたいのが本音だ。 互いに決め手に欠け、会議は踊るを地でいく終わりなき対立に夢中になっていたれみりゃ達は、大木の影から様子を伺うちぇんに全く気付けなかった。 それが彼女達の命運を尽きさせた事にも。 「……なんか、いいにおいがするんだど~☆」 「う~?……あまあまのにおいだど~☆」 集会の外周に陣取っていたれみりゃがその前兆を嗅ぎ取った時には、既に状況は詰んでいたのだ。 「……いまだよ!うちかた、はじめ!!」 「「「「「「「「「「ぷしゅっ!!」」」」」」」」」」 突然四方から吹き付けられる石礫。 闇に乗じてれみりゃ達を包囲した丘の群れが、一斉に石を吹いたのだ。 「いじゃっ!?」「う゛あっ!?」「な、なんなんだどぅ!?」 いきなりの事にれみりゃ達が大混乱に陥る。状況が全く把握できないまま、痛みに転げ回る彼女達目掛けて更なる石礫が降り注ぐ。 唯一、逃げ帰って来たれみりゃだけが、何が起こっているのかを理解できた。 「あ、あいつらだど!!れみぃをおいかけてきたんだど!!」 数刻前、手も足も出せずに一方的な敗北を喫した記憶が甦り、れみりゃの体を恐怖で縛る。 抉り切られた右頬の激痛が恐怖と共に増していくような錯覚が、れみりゃの戦意を拉ぎ折る。 「ぼぅやじゃああああ!!じゃぐやぁあああああ!!」 幼子のように泣き叫んでその場に蹲るれみりゃの目は、石礫により満身創痍となった集会のれみりゃ達に飛び掛かるゆっくり達の姿を映さなかった。 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘。 朝靄にけぶる丘の稜線が見えて来た事に安堵しながら、まりさは後続のゆっくり達を顧みる。 「みんな、もうすぐおかにつくよ!ぱちゅりーたちにおくすりをよういしてもらってるから、いちばんひどいけがをしてるこからみてもらってね!」 「「「「「「「「「「ゆぅ~……」」」」」」」」」」 後続のゆっくり達の様子は酷いものだった。 何かに殴られたような跡を残すもの、大事なお飾りを破かれてしまったもの、中には髪の毛を引き千切られたり目を潰されたりしたものさえ居る。 重傷軽傷あらゆる怪我人を揃えた見本市のような有様。夜を徹しての戦闘行為で、疲労もまた限界に達しつつある。 だが、全員が何処か誇らしげで、喜びに堪えない表情を浮かべていた。 それもそのはず、このれみりゃ追撃での戦死者はゼロ、全員が見事生還できたのだから。 (あんなにたくさんのれみりゃとたたかったのははじめてだけど、なんとかみんなでかてたよ! ……もうそろそろ、おかあさんたちのかたきをうてるかな?) この群れがこれ程の実力を身に着けた理由、それは復讐であった。 昨年の秋の終わりに群れを襲った不幸、その元凶を打倒するために過剰とも言える戦闘力を欲していたのである。 だが相手は余りにも狡猾で強大な相手だ。下手をしたら今の群れでさえ勝ち目はないかも知れない。 後一つ、何か決め手でもあれば良いのだが。 今後の動向を練りながらまりさは丘の麓に辿り着き、そこで待ち構えていた人影に気付いて立ち止まった。 「むきゅ、おそかったのね」 「……ただいま、おさ」 そこに居たのは厭らしいニヤニヤ笑いを浮かべたぱちゅりーだった。現在のこの群れを率いる長である。 今度のれみりゃ追撃、まりさは危険すぎると反対したのだが長ぱちゅりーは断行を決定し、全面指揮をまりさに任せて自分は丘の後詰めに付いたのだ。 「それで?れみりゃはやっつけたのかしら?」 「……ばらばらににげたさんにんいがいは、みんなやっつけたよ。にげたれみりゃもけがしていたから、もうここにはこないとおもうよ」 「ほら、ごらんなさい!ぱちぇのさくせんにまちがいはないのよ! まりさもおくびょうものにしてはよくやったわ!とくべつにぱちぇにさからった『おしおき』はやめてあげるから、かんしゃなさい!!」 「……うん、ありがとう。おさ」 まりさの報告を受け、長ぱちゅりーは嬉しそうにふんぞり返った姿勢のまま、まりさの労をねぎらう。 だが、その上機嫌もぱちゅりーの言葉をまりさが無表情で受け流し、怪我した仲間を治療する指揮を執るべく振り返るまでだった。 「むきゅっ!どこいくの、まりさ!?」 「……みんな、おおけがをしてるんだよ。 ぱちゅりーにおくすりをつくっておいてって、れみりゃたちをおいかけるまえにおねがいしてるから、それをもらいにいくんだよ」 「ぱちぇはそんなこときいてないわ!」 「……おさのことじゃないよ。まりさのともだちのぱちゅりーだよ」 まりさの言うぱちゅりーとは、『がっこう』で同期だったぱちゅりーのことである。 主に薬草を中心とした医療知識が豊富で、まりさも何度か世話になっている位だ。 「むきゅうぅうううっ!そうじゃないわ!ぱちぇのありがたいおことばをさいごまできかないなんて、どういうつもり!?」 どうやら長ぱちゅりーが問題にしているのは『自分の話を遮られた事』だったようだ。 一瞬だけ苦い草でも噛んだような顔をしたまりさだが、すぐに元の無表情に戻って言い返す。 「……みんなおおけがをしてるんだよ。すぐにちりょうしないとしんじゃうこもいるかもしれないよ。 そうしたらきょうのかりができなくなって、ごはんさんがとれなくなるんだけど………おさはそれでいいの?」 理路整然とした反論に、長ぱちゅりーが一瞬怯む。 すかさずまりさは畳み掛けるように言葉を続けた。 「ちがうよね?かしこいおさはそんなゆっくりできないこと、いわないよね?まりさのおもいちがいだよね?」 単なる否定では済まさずに、あくまでも長を持ち上げるまりさ。 長ぱちゅりーはそれに気を良くしたのか、再びふんぞり返ってまりさに命令を下す。 「むきゅ!そのとおりよ!はやくみんなをちりょうしてあげなさい!そのかわり、きょうのかりののるまはにばいよ!」 「…………わかったよ。じゃあ、まりさはいくね」 疲労困憊の状態で、普段の二倍もの獲物が集まる訳がない。だが、それを指摘して時間を取られては本当に死者が出てしまう。 出掛かった拒否の言葉をぐっと飲み込み、無茶な命令を承諾したまりさは傷ついた仲間達の元へ急いだ。 長とは言っても、このぱちゅりーは群れに何の貢献もしていない。実質、群れを統率しているのはこのまりさであった。 しかし群れの誰一人として現状に疑問を挟まない。皆、長ぱちゅりーの我侭に黙って従っている。 その事実に満足している長ぱちゅりーは増々増長し、どんどん堕落して行く。 それこそがまりさや群れの目的である事に気付かないまま、長ぱちゅりーは今日も砂上の楼閣で虚栄を貪っていた。 広大な森を睥睨する山がすっかり雪化粧に覆われた、冬のある日。 鬱蒼とした森の奥地に生える一本の老木の中で、子れみりゃは寒さと飢餓に震えていた。 「なんでさむいんだどー!!なんで『おりょうり』がすぐにしんじゃうんだどー!!」 子れみりゃが用意した『おりょうり』は去年の半分程。 日中の狩りで集めていたので、森の奥地に迷い込んで来たゆっくり位しか獲物が居なかった所為である。 しかもその数は段々減っていく一方だ。 原因ははっきりしている。子れみりゃが死ぬまで餡子を吸い尽くすからだ。 子れみりゃもなるべく生かしておこうとするものの、あっさり限度を忘れさせてしまう。 現在、何とか生き残ってる『おりょうり』は十匹ほど。これだけで春までの数ヶ月を生き延びねばならない。 死が身近になった今になって、子れみりゃは親れみりゃが何故あれほど厳しく接したのかようやく理解し始めた。 「まんま……ごめんなさいだど…………ゆるしてほしいんだどぉ…………」 子れみりゃは親れみりゃと同じ言葉が話せなかった。だから子れみりゃは親れみりゃが自分を嫌っていると、憎んでいると思い込んだ。 だが、本当は逆だった。母の言葉が理解できなかった子れみりゃこそが、親れみりゃを嫌っていたのだ。 母が必死で教え込もうとしていた『おぜうさま』の教養、それはいずれ独立するであろう子が一人で生きる為の知恵そのもの。 狩りの方法、『おりょうり』の作り方、冬籠りの時期やその準備等々……。 一人で冬籠りを始めてから半月も経たない内に、子れみりゃは母から教わった筈のそれらを殆ど覚えていなかった事に気付いたのだ。 (まんまはゆっくりできないど~☆れみぃはこーまかんのおぜうさまだからゆっくりするんだど~☆) 思い返せば、母の教育を受けている間に考えていたのはサボる事ばかり。これでは教わった事が身に付く訳がない。 それが解っていたからこそ、親れみりゃは時に暴力に訴えてまで子れみりゃを矯正しようとしていたのだ。 「れみぃがわるかったんだどぉ……まんま、たすけてなんだどぉ…………」 尤も、今更気付いた所で後の祭り。 母を見殺しにしたのは他でもない子れみりゃ自身なのだから。 後悔先に立たずを体現しながら、子れみりゃは只ひたすら春を待った。 うーん、いい天気だなぁ。 ……おや?三軒隣の御仁井さんじゃないですか。こんな所でどうされました? 俺ですか?いえ、一寸ふきのとうを集めにね。 ……れみりゃの捕獲?またですか? 確か秋頃にもそんな事言ってませんでしたか? ……れみりゃの数が激減してる? それはまた……、乱獲がたたったんですかね? ……へ?それだけしか捕まえていないんですか? ……あ、そりゃそうですね。 言われてみれば、あいつらが食べるからゆっくりの数は増えない訳ですし、乱獲なんかしたら畑の被害はもっと深刻になりますよね。 ……にも拘らず森全体でれみりゃが急速に数を減らしてると。今回の捕獲は生態調査を兼ねた頭数の確認なんですか。 いつもながらご苦労様です。 ……あれ?でも御仁井さんの所でれみりゃ増やしてますよね? ほら、あの土蔵を改造した研究室で。あいつら放してやれば…… ……人間の生活環境に合わせた人工繁殖だから、自然では生きられないと? 成程、そりゃ道理だ。まして調子に乗り易いゆっくりなんかじゃ、弱肉強食の環境で生き残れる筈もありませんし。 ……そう考えると、何であいつら絶滅しないんでしょうね? 弱っちい癖にすぐ人間を怒らせるし、餌と見れば喰い尽くすし、雨に溶けるし、頭悪いし…… 正直、ここまで数を増やせた事自体が有り得ないと思うんですが。 ……それを研究していた学者が軒並み失踪した? 書き置きに『あいつらは悪魔だ』って書き残して? ……どんなホラーですかそれ。 ……それ以降、学会でゆっくりの研究はされていない、と。 へえ、今ゆっくり研究をしてるのは民間の研究者だけなんですか。 まあ、学者さんが匙を投げたんだったら、自分達で調べるしかありませんものね。 俺たち百姓にとっちゃ只の厄介な害虫ですし、ゆっくりの駆除法さえ解れば充分ですよ。 ……ええ、それじゃ。頑張ってくださいね。 ……はぁ、やれやれ。 しかし御仁井さんも凄い人だねぇ。私設の加工所持ちは伊達じゃないんだな。 ……れみりゃの激減か……案外、今まで喰われていた連中が反撃を始めたとかだったりして。 ……………そんな訳無いか。有り得ないにも程があるっつうの。 ……ん?そういや、秋の終わり頃に森へぶん投げたぱちゅりーがそんな事言ってたよな…… ……いやいや、それは無い。あんな死に掛けの戯言、いちいち付き合ってられるかよ。 さて、続き続き。ふきのとうって灰汁抜きしないと渋いのに、ゆっくりはこれも喰い尽くすからな。 あいつらが冬籠りしてる間にさっさと集めないと…… 山の裾野に広がる森の奥地、木々が密集して昼なお暗い陰鬱な場所に生える一本の老木。 長い年月風雨に晒され、腐れ落ちた痕に出来た大きなうろの中で、子れみりゃは瀕死になりながらも越冬を成功させた。 「…………っ!!!!!」 「…うぅ……ごちそうさまなんだどぉ………」 うろに残った最後の食糧である禿饅頭を生クリームの一滴も残さず啜り、残った皮さえ貪り尽くした子れみりゃは溜息を吐く。 これでもう食糧は尽きた。狩りに出なければ明日の月すら拝めまい。 時刻は太陽が燦々と降り注ぐ真っ昼間。しかし森の奥地ならこの時間でも活動は出来る。 問題は、子れみりゃ自身が最早限界だった事だ。 「…うぅ……あれっぽっちじゃ、たりないんだどぉ……」 元々足りなかった『おりょうり』だが、冬籠りの半ばを過ぎた頃には先程の禿饅頭一匹しか残らなかった。 たった一匹、それも死なさないように節約しながらでは一日分の量などたかが知れている。 子れみりゃは完全な栄養失調に陥っていたのだ。 「……おなかが…………すいたんだどぉ…………」 ふらふらした足取りでうろの外へ向かう子れみりゃ。 うろの縁に足を掛け、背中の羽根を羽撃かせて空へ飛び出し…… そのまま老木の根元に墜落した。 最早飛ぶ力さえ残されていなかったのだ。 「……ぴぎゃっ!?」 結構な高さから地面に叩き付けられたにも拘らず、子れみりゃは死ななかった。 原因は老木の根元に積もったゆっくり達の死骸。 栄養豊富なそれを苗床に育った様々な植生が、子れみりゃを受け止めたのだ。 正に幸運。それは、親れみりゃが人間の元を逃げ出せたのと同じ位の幸運であった。 「……う゛ぅ゛……な゛ん゛でれ゛み゛ぃ゛がごん゛な゛べに゛…………」 しかし、命を救った奇跡や幸運に、子れみりゃは感謝の気持ちなど一片たりとて湧かなかった。 あったのは自らの境遇を嘆く怨嗟の声だけ。悲劇のヒロイン気取りの、与えられたものを怠惰に受け取るだけの傲慢の表れ。 ……母と同じ醜い性根の発現に、仏の顔が尽きたのか、それとも神の博愛が尽きたのか、あるいは単に子れみりゃの悪運が尽きただけだったのか。 子れみりゃの元に、死神が降り立った。 「……ゆ゛わ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「う゛ぁ゛っ゛!?!?!?」 半ばやけくそで捨て鉢な雄叫びと共に跳んで来た物体にぶつかって、子れみりゃの体が跳ね飛ばされる。 栄養満点な状態であればなんて事は無いであろうそれは、今の子れみりゃにとって正しく致命傷となり得るものだった。 立ち上がろうと両足に力を込めるも、弱り切った足は時折痙攣するように震えるのみ。 せめて何が起きたのかを把握しようとぶつかって来た物体に目を凝らすが、霞む両目の視界は丸いシルエットを捉えるのが精一杯。 「おばえの!おばえのせいで、ばりざは………!!ぜったいに、ぜったいにゆるさないのぜ………!!」 子れみりゃに決死の体当たりを敢行したのは、一匹のまりさだった。 だが、子れみりゃの目がまともに働いていたとしても、それをまりさとは認識できなかっただろう。 まず、まりさ種の特徴であるお帽子が無かった。 更には頭頂部の金髪がごっそり抜けて地肌を晒しており、その顔は無数の痘痕のようなもので覆われている。 長い間風雨に晒された落武者の晒し首を金髪にすればこうなるだろうか。 見るものに恐怖すら覚えさせる程の壮絶な有様であった。 「ゆぐぐ……!!ばりざのおぼうぢと、がみのげざんのがたき……!!じねぇえええ゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!!!!」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!?!?!?」 既に立ち上がる力さえ失った子れみりゃに猛然と飛び掛かるまりさ。 そのまま子れみりゃを踏み付け、何度も飛び跳ねる。 「じねっ!じねっ!!じねっ!!!じねっ!!!!じねっ!!!!!じねっ!!!!!!じねっ!!!!!!!」 「ゆぎっ…ゆぶっ……ゆべっ………ゆがっ…………ゆげっ……………ゆばっ………………ゆぐっ…………………」 執拗に踏みつけられる子れみりゃの悲鳴が段々小さく、弱々しくなっていく。 断末魔の言葉さえ放つ事が出来ないまま、子れみりゃのゆん生はあっさりと幕を閉じた。 「じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!じねっ!」 子れみりゃが永遠にゆっくりしても尚踏み付けを止めない禿まりさ。 禿まりさがようやく子れみりゃの死体から下りたのは周囲を夜の闇が覆い始めた頃だった。 「ゆぐっ……まりさのゆっくりしたおぼうし…………まりさのきれいなきんぱつさん……………」 しゃくり上げながら、禿まりさは自慢のお帽子と髪を一遍に失ったあの日の事を思い返していた。 禿まりさがまだ普通のまりさだった頃、彼女は八人姉妹の末っ子だった。 れいむとまりさというスタンダードな番であった両親が『はやくあかちゃんがみたい!』と願った結果、 充分に育ち切らず未熟なまま生まれ落ちたまりさは、良心を咎めた両親と姉妹から過保護なまでに甘やかされて育ち…… 増長して一人で狩りに出た所を胴無しと胴付きのれみりゃ親子に捕まった。 そのまま一冬をれみりゃ達の巣で過ごし、春先に高い木の上から突き落とされたのだ。 冬の間に凍り付き、春の日差しで溶け出した際に癒着してしまった髪とお帽子は、突き落とされた拍子に気を失っている間に無くなっており、 クッションとなってまりさの命を救ってくれた無数の屍の上で、餡子塗れのお顔を皮ごと蟻に喰われる痛みで目を覚ましたまりさが半狂乱になって探しても見つからなかった。 そして、何とか自分の群れに辿り着いたまりさを待っていたのは、餡子のつながった実の両親と姉妹からの冷たい拒絶と、故郷のゆっくり達からの迫害だった。 「やべてぇえええええ!!ばでぃざはばでぃざだよぉおおお!!わぎゃらないのぉおおおおお!!!」 「うるさいよ!れいむはあかちゃんがしんじゃったかわいそうなれいむなんだよ!!そんなれいむをだまそうなんて、げすなはげまんじゅうはせいっさいっするよ!!」 「まりさのおちびちゃんはきれいなかみのけさんとりっぱなおぼうしがついてたんだぜ!!おかざりもないはげまんじゅうが、まりさのおちびちゃんなわけないぜ!!」 「「「「ゆっくりできないはげまんじゅうは、ゆっくりしないでしね!!」」」」 「「「ゆっくりしね!!」」」 「ゆぅううう!!ゆっくりできないやつがいるよ!みんなでやっつけるよ!!」 「「「「「「「「「「ゆ~!!!!」」」」」」」」」」 身の危険を感じたまりさはそのまま逃げ出した。 そして行く先々で迫害に遭いながらも冬を越し、当ても無く彷徨っていた時に見覚えのある胴付きれみりゃを見つけたのだ。 なにやら弱っているれみりゃに勝機を見出したまりさは決死の思いで体当たりをぶつけ、地面に転がった所へ容赦ないストンピングを浴びせて、 元の姿が判別できないまでグチャグチャに踏み潰したのである。 一時の激情が過ぎ去り、少し落ち着いた所で禿まりさはそれを見た。 先程自分が作り出したれみりゃの成れの果て。原形を留めていないそれを見て、彼女は確信した。 (まりさはれみりゃよりつよいのぜ!まりさこそがゆっくりのおうさまなんなのぜ! ……あんなゆっくりできないやつらなんて、おやでもおねーちゃんでもないのぜ!まりささまがじきじきにせいっさいっしてやるのぜ!!) ミンチと化したれみりゃの死体の中で、唯一残っていたZUN帽。 無くしたお帽子の代わりにそれを禿頭に被り、まりさはその一歩を踏み出した。 ……邪悪な笑みに歪んだ顔のままで。 ※お久しぶりです。……忘れられてるかも。 前作のラストに出てきた化け物まりさの過去話です。……メインはれみりゃですが。 これでこのお話も後一話で完結です。 ……これを書いてる途中でいろいろネタが湧いて来たんですが。 もし、この群れの興亡史をまだ読みたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、番外編と言う形で続けたいと思います。 ……時間はかかると思いますが。 何はともあれ、お読みいただき有り難うございました。
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「ゆっくりれいむ」 俺はめったに見かけない、胴付きのゆっくりれいむを飼っている。 理由は、炊事洗濯掃除等をやらせるためだ。一人暮らしなのでやる人間が自分しかいないのだ。 しかし、家のれいむは物臭なゆっくりらしく、洗濯も掃除も余りしようとしない。 毎日やるように言っても、 やらないので何度か、山の奥に捨てに行こうかと思ったが、 今も一緒に暮らしている。 「さーて、今日は風呂に入るぞ」 俺の言葉ににれいむは、びくっと反応した。 「な・な・ななにいってるのおにいさん、れれ・れれれいむはまだきれいだよ」 いくら風呂が嫌いだからって、 どもりすぎだろう。 「知るか、とにかく一緒に入るぞ」 「いやぁぁぁあ!!、おゆさんはゆっくりできないぃぃぃ!!!」 俺は、嫌がるれいむを引きずりながら風呂場に向かった。 一般人にたまに間違えて覚えている人間がいるが、 ゆっくりの全てが、水に溶けるわけではない。 ゆっくりにとりや、ゆっくりすわこ等は、溶けないどころか、 水中で生活できるし、その方が、生存率が高かったりする。 そして、胴付きゆっくりは、水に溶けにくかったりする。 胴付きゆっくりは、 体の表面に数mm程度の特殊な皮が形成されている。 この特殊な皮が耐水性をもっているらしい、 ちなみに、饅頭が人型でも崩れたりしないのもこの皮の為だとか。 だからと言って、毎日胴付きゆっくりを風呂に入れるのはまずい。 水に溶けないので、問題がないように思えるが、 実は、ゆっくりは体が腐らないように、 防虫防腐効果のある、物質を体の表面に分泌しているのである。 風呂に入ると、この物質も汚れと一緒に流してしまうのだ。 ゆっくりんぴーすとかいうゆっくり愛護団体の研究報告によると、 夏場に毎日、胴付きゆっくりを風呂に入れると、 一月で半身が腐ったゆっくりになるんだとか。 そんなわけで、れいむは風呂が嫌いで、 そんなわけで、俺は、れいむを風呂に入れるのは4日に一度にしている。 「あ~~~~、いいゆだよ~~~、ゆっくりできるよ~~~」 とは言え所詮ゆっくり、 風呂に入ってしまえば風呂嫌いを忘れたように風呂でゆっくりする。 「体は洗ってやったんだから、溶ける前に出ろよ」 俺が、れいむと一緒に風呂に入るのは、 そういう趣味があるからではなく、 れいむがゆっくりしすぎて、溶けるのを防ぐためである。 他意はない。 体を洗い終わった俺も、湯船に入った。 「ゆゆんゆ、ゆんゆんゆん、ゆ!ゆゆ~ん」 れいむはご機嫌そうに歌っている。 「ゆゆんゆ・・・ねえおにいさん、これなんなの?」 れいむは、俺のすね毛を掴みながら聞いてきた。 「これは、すね毛って言って、足を守るためにあるんだぞ」 「ゆ!すねげさんがあるとおにいさんはゆっくりできるんだね!!」 少し違う気もしたが、めんどくさいので、 「そうだぞ~、ゆっくりできるぞ~」 と、答えた。 ゆっくりを飼ってよかったことは、早起きになったことか、 朝5:00には、「ゆっくりおなかがへったよぉ」と、起こしにくるのだ。 どこのお年寄りだ。 今日も、朝早くに起こしに来た。 「おにいさんあさだよ。ゆっくりごはんつくってね」 自分で作れよこんちきしょうとは思うが、 もう一年近く同じよう名やり取りをしているので、諦めている。 「あ~まだ眠い」 働きに出るまで、約3時間ある、その分もう少し寝ていたいが、 飯を作るまで、れいむは起こし続けるし、 飯を作ったら、眠気は覚めていたりする。 なので諦めてさっさと起きる。 「ゆっくりおはようおにいさん」 「ん~おはろ~」 起きるとれいむがいつも通りすぐそばにいた。 いつものように、料理作るわけでもないのに、 エプロンをしている。 エプロンを着る時は、なぜか、いつもの巫女装束を着ない。 「はだかエプロンは、おにいさんがゆっくりできるよ!!」 とか、この間理由を聞いてもないのに言っていた。 俺をゆっくりさせるつもりがあるなら、ぜひもっと家事をしてもらいたい。 「さきに、いってまってるからゆっくりしないでごはんつくってね!」 「・・・あ~い」 冷蔵庫の中には、 パンとか調理しないでも食べれるものはいくらでもあるのに、 何でこいつは、わざわざ俺に朝飯を作らせるのだろうか? 台所のテーブルに行くれいむの後姿を見ながら思う。 それにしても、せっかくの裸エプロンも、 こいつでは、魅力は6割減といったところだろう。 あまり、肉付きが良くない体型だし、 ゆっくりだし、なんか表面がテカテカしてるし、 脚にすね毛がびっしり生えてるし、 すね毛? 「ほわぁぁぁぁ!!!!?!」 「ゆひぃ!?どうしたのおにいさん、わるいゆめでもみたの」 「今!現に!悪夢見てるよ!て言うか! お前がどうしたんだよ!こっちの台詞だよ! 何だよそのもっさりした脚!」 「?・・・!すねげさんのことだね! すねげさんがあるとゆっくりできるから、 きのうのよるにすねげのかみさまにおねがいしたんだよ!」 すね毛の神様がんばりすぎだろ、 俺だって誰かに頼られたりしたら、 張り切ってがんばったりもする事もあるさ。 「ゆゆ~んすねげさんとってもゆっくりしてるよ~」 きっとすね毛の神様も、 頼られて張り切っちゃったんだろうな、 何せ、すね毛だ。 『すね毛を生やしてください』 なんて極レアなオーダー、 きっと神生(?)初だろうよ。 今後あるとも思えない。 ダカラ、 レイムニ スネゲハエテモ シカタナイヨネ? 「なんて言うと思ったかこのやろぉぉぉ!!!!」 ブチブチブチブチィ 「ゆぎゃぁぁ!!」 俺は、れいむのすね毛を掴んでそのまま引きちぎった。 「なにするのぉぉぉ!! すねげさんがないと、おにいさんが「ゆっくりできねぇよ!!なんで俺が胴付れいむに、 すね毛が生えてないとゆっくりできない人間になってんだよ!! どんなHENTAIお兄さんだよ!! 上級者通り越して超級者の位置だよ!」 「おらぁ!ゆっくりできないすね毛はゆっくりしないで消えろぉ!」 ブチブチブチブチィ 「ゆぎゃああああ!ゆっくりできないぃいい!」 「ガムテープだぁぁ!まとめて抜けろぉ!」 ブチブチブチブチィブチィ 「れいむのすねげさんがぁぁぁ!!」 「オラオラオラオラ」 ブチブチブチブチブチブチ 「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」 「オラ!」 「ユ!」 「」 「すねげさんがないとゆっくりできないよぉぉぉ」 部屋の隅で、泣き喚くれいむ、 部屋中に飛び散るすね毛、 飛び散って張り付いたすね毛まみれのガムテープ 地獄絵図だ。 と、こんなことしている間に、 もうそろそろ家を出ないと会社に間に合わない時間だ。 「れいむ!俺は会社に行ってくるからな!部屋の掃除くらい頼んだぞ」 朝飯は我慢しよう。食ってたら間に合わない。 あ~、疲れた。 朝飯食ってなかったし、 朝っぱらから暴れたので、いつもよりも疲れた。 「ただいま~」 朝、掃除しろと言ったのを、珍しく実行してくれたらしく。 家の中は片付いていた。 「ゆっ、おにいさん、かえってきたんだね」 居間には、巫女服に着替えたれいむがいた。 もうすね毛は生えていない。 すね毛は・・・ 「おにいさんのおかげでぜんぜんゆっくりできなかったよ。 でも、もう気にしてないよ、もっとゆっくりできる、 ふわふわさんがれいむに生えたんだからね!」 「・・・うん、その『ふわふわ』が何なのか一目みてわかったよ。 ありえねぇよ!何だよそれ! その腋毛?気持ち悪いよ! 生えてきたってレベルじゃねぇよ!もっさりしすぎだよ! 自分の頭ぐらいの大きさの腋毛玉なんて始めて見たよ! もっさりしすぎて、さっきから、 『人類は十進法(以下略)』のポーズしか取れてねえじゃねぇか! 俺が会社行ってる間何してたんだよ!腋毛の神様にお願いでもしたのか!」 「なにいってるのおにいさん?わきげさんはかってにはえて 「こないよ!腋毛は勝手に生えてこないよ、そんなには! こっち来い、そんな腋毛修正してやる!」 「やめておにいさん! そんなことしたらおにいさんがゆっくりできなくなるよ!」 どうやら、こいつは 毛が生える=俺がゆっくりできる という式を、確立したらしい。 証明もしてないのに。 だめだこいつ 早く何とかしないと・・・ ~あ~と~が~き~ 初期のゆっくりっぽいものを 書こうとしてたんだ。 書こうとしただけで終わったけど。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2074.html
うーぱっくと果樹園 その男は幻想郷でも珍しく果樹園を持っていた。 果樹園とはいえ大規模な物でもなく、リンゴ、ミカン、桃、柿、ブドウなどスタンダードな果物の木がそれぞれ1、2本ずつ。 そして、スイカやメロンといった厳密に言えば果物ではない作物がが少しと、男一人が管理できる精一杯で構成された物だった。 季節は秋の初め。 スイカやメロン、桃といった夏の作物は既に収穫し、好評の内に売り切れた。 今度は柿やブドウ、リンゴ、ミカンを収穫する番である。 作業を始める為に男は物置小屋へと道具を取りに行く。 物置小屋は妙に乱雑で、あちこちにダンボール箱が散乱している。別にこの男はズボラで片付けが下手という訳ではない。 男は誰もいないと思われる物置の中でパンパン、と手を叩きながら言った。 「おーいお前達起きろー。仕事だー!」 するとどうした事か。物置のあちこちに散乱していたダンボール箱がにもぞもぞと動き出し、 「「「「「うー!!」」」」」 という声と共に一斉に飛び起きた。 このダンボールはうーぱっく。 ゆっくりれみりゃ(以下ゆっくりゃ)種の亜種であり、その体は肉まんではなくダンボール箱とゆっくりゃの翼で構成されている。 特筆すべきは「契約」の概念を持っているということである。ゆっくりゃに限らずゆっくりは自分勝手で、一方的な要求しかしないモノなのだが、うーぱっくは違う。 うーぱっくは「空飛ぶダンボール」という自分の特性を生かし、他のゆっくりを自分の身に乗せ、輸送し、その対価に食料を貰って生きている。 契約の相手はゆっくりに限らず、対価さえもらえれば人間、妖怪問わずうーぱっくは物を運ぶ。 男は野生のうーぱっくの群れと契約し、果樹園の手伝いをさせていた。 男は梯子を持つと、果樹園へと向かう。うーぱっくも仲良く行列を作って後に続いた。 最初にリンゴの木に梯子をかけ、上っていく。 実ったリンゴは綺麗な赤色をし、一つ一つが爽やかな芳香を放っている。 男はうーぱっくを呼ぶと、その中にもいだリンゴを一つ一つ丁寧に詰めていく。 リンゴの収穫が終わると今度はミカンだ。こちらも天気に恵まれたこともあり、例年以上の収穫があった。 ミカンの収穫が終わり、日が暮れる頃には、沢山いたうーぱっく達の中身は果物で一杯になっていた。 「よし、今日はこれ位にして帰るぞ!」 「「「「「うー!!」」」」」 中身が重いのか、多少ふらつきながらうーぱっく達は家の中に入ってゆく。 男は収穫物を一つ一つチェックし、商品になるものとそうでないものを選別する。 商品になるものは木箱に丁寧に詰め、傷物や虫食いのあるものは労働の対価としてうーぱっく達に振舞う。 今年は収穫も多いため必然的にうーぱっく達の分け前も多くなる。いつもより多いご馳走にうーぱっく達もホクホク顔だ。 そんなうーぱっく達の様子を木陰から窺う者がいたのだが、うーぱっく達は勿論、男も気付かなかった。 翌日、男は収穫した果物を売りに里へと出かけていった。 うーぱっく達は外で思い思いに飛び回っていた。うーぱっく達だけでは収穫を行う事はできない。その為、男が不在の時は休日として羽を伸ばしても良いようになっている。 男としてもうーぱっく達の仕事ぶりには満足しているため、それくらいの事は当然として受け止めている。 そんな中、群のリーダーであるうーぱっくが一匹のまりさに気付いた。 まりさは、ひとしきり辺りをキョロキョロと見回していたが、しばらくすると森の中へ戻っていき、十数匹の仲間を率いて戻ってきた。 「ゆっへっへ!あのじじいはるすみたいなんだぜ。いまのうちにここのくだものはまりささまがいただいていくんだぜ」 人間全てが善人ではないように、ゆっくりにも悪い個体が存在する。その最たる例がこのまりさの様な通称「ゲスまりさ」である。 狡賢いまりさ種のなかでも輪をかけて悪知恵に長け、その性格はまさに下衆。強盗紛いの事をして他のゆっくりから餌や家を奪い、自分の快楽の為に強姦し、いざとなれば仲間はおろか餡子を分けた親姉妹まで裏切るという始末。 人間は勿論、同じゆっくりからも嫌われている鼻摘み者だ。 しかし、人間にもチンピラに迎合するような考え無しな者が大勢いるように、ゲスまりさにも多くの手下がいた。 まりさと同じ様な下衆な性格な者もいれば、単純に「このまりさと一緒にいた方が効率良く餌にありつける」と考える打算的な者など、この群にいる理由は様々だ。 「ゆゆっ!さすがまりさ!これだけあればとうぶんはしあわせ~だね!」 「うふふ、きょうのらんちはとかいはにふさわしいふるーつばいきんぐね!」 「たいりょうなんだねー、わかるよー」 「ちーんぽ!」 などなど、各々好き勝手な事を喚き散らしている。 そんな中、リーダーのゲスまりさがリーダーうっぱっくに話しかける。 「おい、うーぱっく!もたもたしないではやくまりささまをあのきのうえまではこぶんだぜ!」 「う、うー?」 うーぱっく達は困惑した。あの木は今の雇い主の物だ。どこの馬の骨とも知れぬゆっくりに好きにさせるわけにはいかない。 群で相談を始めたうーぱっく達に業を煮やしたのか、ゲスまりさは怒鳴り始めた。 「あーもう、じれったいんだぜ!とれたくだもののはんぶんはくれてやるからとっととまりさたちをのせるんだぜ!!」 その言葉にすぐにうーぱっく達は反応する。基本的にうーぱっく達は「契約」に基づいて行動する。今の雇い主よりも良い条件で雇うと言うものがいるのなら喜んでそれに従う。 うーぱっく達はゲスまりさの群を乗せ始めた。 「ゆっへっへ!さいしょからすなおにそうしていればいいんだぜ」 うーぱっく達が木に辿り着くと、ゲスの群は枝に飛び移り、たわわに実った果実をかじり始めた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!なんだぜ!」 その食べ方は汚い事この上なく、一口齧っては別の実に齧りつき、中には意味も無く枝葉を揺らし、折角の果物を落とす者までいる。 そんな様子を見て、うーぱっく達は不安になっていた。自分達は分け前にありつけるのだろうか?このままあの群に自分達の分け前まで食べられてしまうのではないだろうか? そう考えたリーダーうーぱっくは、リーダーのゲスまりさを問い詰めた。 「うー!うー?」 「ゆゆ?うーぱっくたちもきのみがほしいのかだぜ?ゆっへっへ!さいしょからそんなやくそくまもるきなんてなかったんだぜ!やっぱりうーぱっくはばかなんだぜ!あのれみりゃのなかまだけあるんだぜ!」 「うーぱっくのくせにおいしいものたべようだなんてばかなの?しぬの?」 「とかいはのらんちのじゃまをするなんてやっぱりいなかものね!」 「ぶすいなんだねー、わかるよー」 「おおおろかおろか」 口々にうーぱっくを嘲笑するゲスの群。 そんなゆっくり達に対するうーぱっくの行動は迅速だった。 うーぱっく達はゲスゆっくり達を木から突き落とし始めた。 いつもニコニコとどこか締まりの無い笑顔のうーぱっくではあったが、その時の笑顔からは楽しげな様子は一切無く、容赦の無い冷たいものを含んだ笑顔に変わっていた。 もっとも、人間はおろか、ゆっくりにすらわからぬほどの変化ではあったが・・・。 「契約」をもって生活するうーぱっく達にとって、契約不履行は死にも勝る大罪である。 口約束でハナから守る気は無いとはいえ、ゲスまりさの群は「収穫の半分を対価として渡す」という契約を交わしたのだ。だからこそうーぱっく達は群を木の上まで運んだのだ。 それを破ったゲス達は死んで当然とうーぱっく達は考えていた。 一方、落とされたゆっくりたちにとってはたまったものではない。さっきまで言いなりだったうーぱっく達が急に自分達を突き落としたのだから。 「なにするんだぜ!はやくまりさをたすけるんだぜぇぇぇぇ!!」 いくら粋がっても所詮は饅頭。木から落ちれば命はない。他のゆっくり達も皆必死に自分を突き落としたうーぱっく達に助けを求める。 「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!!じにだぐないぃぃぃぃ!!」 「いなかものでいいからだずげでぇぇぇぇぇ!!!」 「わからないよー!!」 「ぢんぼーーーー!!」 意外な事にうーぱっくは地面に激突する寸前でゆっくり達を助けた。 さっきまで死の危機に瀕しみっともなく泣き喚いていたゆっくり達は俄然強気になる。 「このまりささまをころそうとするなんていいどきょうなんだぜ!せいさいしてやるんだぜ!!」 と、うーぱっくのなかで必死に暴れるゆっくり達。しかし、日頃大量の果物を運び、丈夫になったうーぱっくにはびくともしない。 うーぱっく達は暴れるゆっくり達をものともせず、どんどん上昇してゆく。 「ゆーっ、ゆーっ・・・。きょ、きょうはこれくらいにしといてやるんだぜ!さっさとまりささまをおろすんだぜ!」 暴れてもびくともしないうーぱっくを相手に疲れたのか、まりさは抵抗をやめ、負け惜しみを言った。 しかし、聞いているのかいないのかうーぱっくは降りる気配を見せない。 「はやく!はやくおろすんだぜ!」 「うー♪」 意外なほどあっさりとうーぱっくはゆっくりを降ろすことに決めた。 ただし、地上10mの高さから、である。 ゆっくり達が無駄な抵抗を試みているうちに、うーぱっく達はずっと上昇を続けてきた。 高さがある程度まで達したと見るや、うーぱっく達は見事なまでに整った編隊を組んで一斉にバレルロールを行った。 「おーい、今帰ったぞー!」 「「「「「うー♪」」」」」 男が里から帰ってくると、うーぱっくの群が出迎えてくれた。 庭を見るとゆっくりの残骸と思しき潰れた饅頭があちこちに広がっていた。 念の為収穫していない柿やブドウの木を確認すると、一部ゆっくり達が食い荒らした実があるが、全体としてそれ程酷い被害ではなかった。 「お前達が退治してくれたのか?偉いぞー!」 留守にしていて事情を知らない男は、適当にうーぱっく達が木を荒らしに来たゆっくり達を退治してくれたということにし、齧られて商品にならなくなった柿をうーぱっく達にくれてやった。 「さぁ、明日も収穫するからしっかり働いてくれよ!」 「「「「「うー♪」」」」」 賑やかなうーぱっく達と共に男は明日の収穫に思いを馳せた。 あとがき 今回はうーぱっくに出張ってもらいました。 前回のゆっくり剥製ではゆっくりのセリフが殆ど無かったため、ゆっくりにも喋って貰ったんですが、どうにも難しいですね・・・。 何より泣き喚く時にいちいち濁音をつけなきゃいけないのがなんとも面倒臭いです。 他の作家様のSSとは比べ物にならないほど酷く、虐待描写も少ない文章ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 このSSに感想を付ける
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『ゆっくり釣っていってね!!!』 「ゆっくり釣っていってね、か」 私の前にはそびえ立つドーム状の建物。 その入り口上方の大きな看板にはれいむとまりさが「ゆっくり釣っていってね!!!」と絵の中で叫んでいる。 ここは屋内式の釣堀、それもゆっくりを釣るための釣堀だ。 大きな建物の中には2mほどの深さ、面積は3m四方程度に掘られた穴の中にゆっくりが何匹も閉じ込められている。 そんな釣堀が建物の入り口から向こう側までズラリと並んでいる。 このゆっくり釣堀は数ヶ月前、『キャッチ&イート』の宣伝文句と共に開かれて大ヒットを博した。 使うのは釣竿と釣り糸、釣り針といった基本的な釣り道具。 後はゆっくりを釣る為の餌、さらにはこの釣堀にある様々な特徴を持つ釣堀に合わせたルアーである。 それらの道具は全て無料でレンタルできるので手軽にゆっくり釣りを体験できる。 そして釣ったゆっくりは宣伝文句の通りにその場で食べて良し、持ち帰っても良しである。 ただしその場で叩き潰したり、釣堀の中のゆっくりを殺すようなことをするのは他の客にも迷惑なので止めましょう。 というよりもそんなことしたらガチムチの店員さんに追い出されます。 まあ、ルールというかマナーを守れば在る程度自由が利く。 それがこの釣堀の人気に繋がったのだろう。 かくいう私もこの釣堀が気に入っており、今や常連である。 いつもは釣りを楽しむために来ているのだが、今日はうちで飼っているゆっくりの遊び相手を釣りに来た。 釣り道具を持参する私はまず受付で店員に会員カードを渡し、レンタル不要の旨を伝える。 後は店員から番号札を受け取りって会場へと入場した。 ゆっくり釣堀の建物に入るとまず聞こえるのはゆっくり達の悲鳴だ。 「あ"あ"あ"あ"あ"!!」 「ごっぢごないでー!!」 「い"や"あ"ぁ"ぁ"ぁ"! あがじゃんがえじでぇぇ!!!」 「ぼうしかえして! あああ!!! ぼうしたべちゃらめぇぇ!!!」 とまあこんな具合で建物全体に響いて一つのBGMとなっている。 私はその心地よいBGMに聞きほれながら目的の釣堀へと歩いていく。 複数ある釣堀には難易度が設定されていて、入り口から遠いものほど難易度は高い。 私が目的としているのは五本の指に入る難易度の釣堀の一つで、期間限定の釣り堀だ。 割と奥の方にあるのでそれなりに歩く必要はあるが、着くまでに他の釣堀の様子を眺めて楽しむこととしよう。 例えば入り口近くにある釣堀。 そこからはゆっくりの元気な声は聞こえない。 釣堀の中にいるゆっくりはどれも飢えさせられている。 そのためゆっくり用の餌を釣り針にセットしてぶら下げれば入れ食いである。 そんなわけで難易度は最低レベルだが釣り上げる楽しみを知るにはちょうどいいかも知れない。 しかし慣れた人なら釣る以外の楽しみ方が出来る。 ちょうど一人の男がやっているそれもその一つ。 「………」 「ゆあー……」 その男が垂らす餌の周りのゆっくりは皆一様に大口を開けて阿呆みたいに空を見上げている。 中には飢えて体力が少ないのに必死で跳ねるゆっくりもいる。 男は釣り針に付いた餌をゆっくりがギリギリ届かない高さに調整してゆっくり達の物欲しそうな顔を見て楽しんでいるのだ。 どんなに頑張っても届かない餌。 怒る元気もない飢えたゆっくり達はただ餌を見上げるぐらいしか出来ない。 ここで男は餌をほんの少しだけ降ろす。 「…ゅっ!!」 「ゆー!」 その微妙な動きに飢えたゆっくり達は敏感に反応し、もう少し降りてきたら食べてやるぞと言わんばかりに構えた。 餌はまだ届かない高さにある。 今飛び跳ねても無駄だと分かっているこの釣堀のゆっくり達はただ構えるのみ。 また餌がほんの少し下がった。 「ゅ…っ!!」 「……!!」 ゆっくり達の体がピクリと動く。 また餌が少し下がる。 ゆっくり達はまた体が反応してピクリと動く。 また餌が下がる。 またピクリと動く。 そして、とうとうゆっくり達の届く高さまで餌が下がった。 「ゆゆー!!」 「そのえさもらったー!!!」 「ゆぅー!!!」 気合満点に餌へと飛びつくゆっくり達。 大きく口を開けて餌へと食いつく――はずだった。 ゆっくりが餌に食いつく寸前に餌はスルスルとまた空へ昇っていった。 そして餌はゆっくり達の届かぬ高さで停止する。 「ゆぅぅぅぅ!!!」 「あどぢょっどだったのにぃぃぃ!!!」 悔し泣きするゆっくり達をその男はニヤニヤと眺めていた。 しかしこの男、いいフェイントテクを使う。 餌に食いつかれる寸前で引き上げる。これは言ってみれば簡単だが実際にやるのは難しい。 この釣堀にいるゆっくり達のスピードや動き出すタイミングを熟知していなければ出来ることではない。 恐ろしい男だ。そういえば一週間前からこの釣堀にずっといた気がする。 その中でこのテクニックを身に付けたのだろう。 今度は飢えたゆっくり達を煽って内輪揉めを始めさせたようだった。 他にはこんな釣堀もある。 「んぼぉぉぉぉ!! まりざああああ!!!」 「こっぢでずっぎり"じまじょっ!?」 こちらは発情ありすの釣堀だ。 ちょうど今一匹釣れたようで、まりさルアーに付いている針に刺さっている。 ここはゆっくりの姿をしたルアーを使えば簡単に釣れる。 発情したありすは他のゆっくりを犯したくてたまらないので、動かない人形のゆっくりルアーでも迷わず飛びつくのだ。 そしてすりすりしようとすると釣り針が突き刺さってフィッシュされるわけだ。 逆にそれ以外の物、例えば釣り餌なんかじゃ中々引っかかってこない。 ゆっくりルアーを使えば難易度は相当低い釣堀である。使わなくても中程度だ。 もちろんこの釣堀でも他の楽しみ方も出来る。 見てみるとちょうど釣る以外の楽しみ方をしている男がいた。 「い"や"あ"あ"あ"あ"!! やべでっ! おろざないでえええ!!!」 「おねーぢゃーん!!!」 「やめでぇぇぇ!! まりざのごどもをがえじでぇぇ!!」 他の釣堀で釣ったまりさなのだろう。 生きた子まりさは頭から釣り糸付きの楔を打ち込まれて宙に浮いている。 そして男の脇にある透明な箱にはその子まりさの家族が収まっていた。 まりさ家族は泣き叫びながら男にやめてと懇願していた。 ここがどんな釣堀で、降ろされたらどうなるか良く分かっているのだろう。 特に子まりさは顔を真っ青にして震えていた。 「まりざはやぐおりでぎでぇぇ!!」 「おねーざんどいっじょにずっきりじまじょうよ!!!」 「おとなにじであげるわよおぉ!!!」 子まりさの下では複数の発情ありすが子まりさの投下を待っていた。 人間で言えば主に黒光りする蟲で溢れるプールに飛び込むような、そんな嫌悪感を子まりさは抱いていた。 あんな小さい子供のまりさでも知っているのだ。 発情したありすに捕まったら何をされるか。その結果自分はどうなってしまうのかを。 「もうい"や"だよ"お"ぉ"ぉ"!! はやぐおろじでえぇぇ!!」 「おっけー」 「ぢがっ、ぢがうの"っ! おろざないでぇぇぇ!!!」 子まりさは安全な場所に降ろしてと言ったのだろうが、あの言い方じゃ仕方ない。 男は子まりさの発した言葉に従って行動に移す。釣竿を持つ手をちょっと傾けるだけだ。 それだけで子まりさはありす達へと近づく。 しかしまだありす達はジャンプしないと子まりさには届かない。 「もうぢょっとおりできてねぇぇ!!」 「そうしたらまりさのはじめでうばってあげゆうぅぅ!!!」 「ああああ! もうがまんできないぃぃぃ!!!」 「ゆひっ!? ぎもぢわるいよぉぉ!!!」 我慢できないありす達はジャンプして子まりさにぺろりと舌を這わせる。 ジャンプしないと届かないのでスリスリは出来ないが、舐めるぐらいなら十分出来る。 涎を塗りつけるように舐めてくるので子まりさは下半身を中心に涎まみれになってしまった。 気持ち悪い舌の感触、不快な涎の臭いが子まりさの気力を削いでいく。 「きもぢわるいよ"…もうやだよ……」 体を塗らす液体はもはや子まりさの涙なのかありすの涎なのか判別が付かない。 このままずっと続けていたら皮がふやけて破れそうな勢いだった。 「おにーざん! もういいでじょ! まりざのごどもをだずげでね"!!」 「まりさおねーさんをゆっくりさせてあげてよぉぉ!!」 「おっけー」 男は子まりさの家族の言葉を聞き、子まりさを地面すれすれまで降ろした。 確かにこれなら永遠にゆっくり出来る。それまでが苦しいのだけど。 早速ありす達はスリスリできる高さまで下がった子まりさに襲い掛かった。 集団レイプである。 「まりざまりざまりざぁぁ!!!」 「たくざんすっぎりじまじょうねー!!」 「ありすいろにそめであげるぅぅぅぅ!!!」 「ゆぎぃぃぃぃ!! はなれでっ!! ぎもぢわるいよ"!! はなれでえええええ!!!!」 吊るされた上にありすに360度きっちり押さえ込まれたまりさの唯一できる抵抗は言葉だけ。 しかしそれも発情したありすからすれば喘ぎ声にしか聞こえない。 ありすは粘液の分泌量を増しながら子まりさへのスリスリを激しくしていく。 「やめでぇぇぇ!! ありずやめでよおおお!!!!」 「まりさのごどもがらはなれでよぉぉぉ!!!」 子まりさの家族の必死な叫びもありすからすればBGM、もしくは声援である。 「んほぉっ、みられてるともえるわー!!」 「まりさのかんじてるかおをおかーさんにみせてあげましょうねえぇぇ!!!」 「ゆ"う"ぅ"ぅ"!! みないでっ、みないでぇぇぇ!!!」 しかし発情ありすはいつみても気持ちが悪い。 普段のありす種は理知的だというのに発情するとこうも変わるものなのか。 「はぁはぁ、まりさ"ー! ありずすっきりしぢゃいそうよぉぉお!!!」 「ありすのあいをうげどっでねぇぇぇ!!」 「んほおっ! もういっぢゃう!!」 「いっしょにすっぎりじましょうねぇぇ!!!」 ありす達はそろそろすっきりするようだ。 子まりさの方はもう四方からありすが押し寄せてくるので苦しそうだ。少なくともすっきりとは程遠い。 「んほおぉぉぉぉ!!! すっきりー!!!」 ありす四匹は同時にすっきりし、子まりさに子種を植えつける。 後はもう四本の茎に栄養を吸われて死ぬのみ。 「あ"あ"あ"あ"あ"!! なんでずっぎりじぢゃうのぉぉぉぉ!!!」 「ありずがおねーぢゃんをごろじだぁぁ!!!」 「よーし次は赤ちゃんまりさをすっきりさせてあげようか」 「あがぢゃんだげはやべでぇぇぇ!!!」 「ゅ? あそんでくれゆの??」 男は何が起きているのか分かってない赤ちゃんまりさを掴む。 あの男はいつもああやって家族を次々とありすの釣堀に吊るして犯させている。 きっと何かそういう特殊な性癖の持ち主なのだろう。 目的の釣堀に行く前にちょっとレア種でも見てこようと、レア種を集めた釣堀に向かう。 そこではかなこ、てるよふ、もこう、おりきゃら…などなど、 そこいらでは中々見ることの出来ないゆっくりを釣ることが出来る。 ただし―― 「ゆっくりいじめてね!!」 「てんこをつりあげてね!!」 レア種の釣堀に放たれた大量のドMてんこを釣らずに突破出来たらの話である。 ドMてんこは痛めつけられること、苦しめられることが大好きな変り種のゆっくりだ。 なので釣り針なんて見ようものなら涎を垂らして釣られに来る。 そんな訳でレア種狙いなら難易度は最高レベル。逆にてんこ狙いならゆっくりでも釣れるレベルだ。 「くそーっ、またてんこかよ!! 俺はもっこもこもこたんが欲しいんだよぉーっ!!」 「もっといって! もっといって!!」 「あーもう! 何度でも言ってやんよ! てめーなんていらねぇんだよ!! 死ねよ糞てんこ!!」 「いい…!! もっとばとうしてね!!」 「畜生…! もこたんINしてくれよ…」 とまあレア種を狙うのであればてんこのウザさに耐え抜く強さが必要である。 ちなみにもこうに熱を上げるこの男は三日連続チャレンジして、すでに釣ったてんこの数は百を越えた。 それだけ釣ってもてんこが釣堀から消えないのは店員がレア種を取られぬように逐次てんこを追加しているそうだ。 「うおぉぉー! だが俺は諦めんぞぉ!!!」 大した奴だ。知らない人だが心の中で応援しておく。 さて、寄り道をしてしまったが私もそろそろ釣りを始めるとしよう。 目的としていた釣堀へ着いた私はまず最初に中のゆっくり達の様子を見る。 ここは元気なゆっくりが集められている釣堀で、数日前に森で捕まえたゆっくりの群れが放し飼いにされている。 ただ単純に放し飼いにされているならば知識が無いので釣るのは簡単。 しかしここのゆっくり達は事前に危険な物を教えてもらっているので釣り餌や魅力的なルアーに引っかかることはほとんどない。 なのでここのゆっくりを釣り上げるには釣り針を直接ゆっくりに突き立てる必要がある。 自由に動き、小回りの利くゆっくりに釣り糸の先に垂らした釣り針やルアーを直接ぶつけるのは難しい。 ぶつけるにはゆっくりの動きを上回る釣竿捌きが必要になるのだ。 まあ粘っていればいずれ釣れるのでゆっくりの動き回る様子を眺めつつ適当に釣りをするならここが一番いい。 私の場合は元気なゆっくりを持ち帰りたいと思ってここに来たわけなので、とりあえず狙うゆっくりを決めるとしよう。 釣堀の中のゆっくり達はれいむ種とまりさ種のみで形成される群れだった。 親子や恋人同士のゆっくりもいるし、大人から赤ちゃんまでのゆっくりが揃っている。 ただし赤ちゃんはこの釣堀が開いてからの数日で釣り針に体を千切られたり、逃げ惑う仲間に潰されたりでほとんどいない。 なので狙うなら最低でもバレーボールサイズ程度の子ゆっくりサイズ以上になる。 ざっと見回して目についたのがれいむ種の親子だった。 お互いに身を寄せ合ってじっとしている。 きっと狙われてないうちは体力温存のために動かないでいるのだろう。 その証拠に二匹は背中を釣り堀の内壁に付け、お互いの死角をカバーするように辺りを見回していた。 中々出来るゆっくりのようだ。 あいつらにしよう。そう決めた私は持参した釣りセットを袋から取り出して準備を始める。 「ゆぅぅぅぅぅぅ!!!」 「まりさぁぁぁ!!!」 準備しているうちに他の客がゆっくりを釣り上げたようだ。 これはうかうかしてられない。 準備の整った私は釣竿を構えて狙いをつける。 狙いはれいむ親子、まずは子れいむからだ。 子れいむはすでに私が狙っていることに気が付いていたらしく、こちらを見て身構えていた。 それなら真っ向勝負だ。 釣竿をしならせ、ルアーを子れいむに向けて放つ。 「ゆっ!? れいむあぶないよ!!」 「ゆっくりよけるよ!!」 言った割には素早い動きでその場から離れる子れいむ。 子れいむがさっきまでいた場所の少し右の壁にルアーが当たった。 軽く回避されたがそうでなくてはつまらない。 釣竿に微妙な加減で力を加えて釣り糸の先にあるルアーを操って逃げる子れいむを追う。 私の持つルアー"すりすりちようね!"は赤ちゃんれいむを模したルアーだ。 大きく目立つ釣り針が二つ取りつけてあるので疑似餌にはならないが、大きな釣り針は逃げる相手を引っかけるのには向いている。 ちなみにリモコン操作で『すりすりちようね!!』と音声を発する。だが目立つ釣り針のせいで効果の薄い無駄機能だったりする。 「ゆっくりしてね! おいかけないでね!!」 そんな事を言いながら逃げる子れいむはジグザグに逃げるので狙いが定まらない。 だが追うことがまずは大事なのだ。 残念ながら相手が動き回れるうちに捕まえられるほど私は上手くない。 しかし無理することは無い。子れいむが疲れて動きが鈍くなるまで追い続ければいいだけのこと。 逃げる子れいむを私の赤ちゃんルアーが追いかける。 大きい釣り針をぶら下げて、可愛い笑顔で子れいむに抱きつこうとする。 人間だったら大きなハサミを持った子供に追いかけられるような感じかな。 少なくとも追いかけられる側からすればたまったもんじゃないだろう。 あっちこっちに逃げる子れいむと、それを何とか助けようとする母れいむをボーっと眺めながら釣竿を操る。 もうかれこれ30分は経っただろうか。 子れいむはさすがに疲労困憊といった様子で動きは随分と鈍くなっていた。 「ゆ、ゆぅ…っ、ゆぅ…! どうじで、れいむばっかりねらうのぉ!?」 でも一応叫ぶ程度の元気はあるようだ。 30分も走ってまだ喋れるのは実は結構すごい。だからどうだってこともないけど。 「にんげんさん! れいむをねらうなられいむをねらってね!!」 母れいむは私に向って何か叫んでる。 どっちもれいむ種だと個別に呼ぶとき大変だろうなぁ。大家族だと「れいむ」と呼べば全れいむが一斉に返事しそうだ。 なんて漠然とどうでもいいこと考えていると子れいむが床にへたっていた。 これはチャンスだ。 そしてせっかくなのでリモコン操作で赤ちゃんルアーを鳴かせてみる。 『すりすりちようね!』 実際に録音したというほのぼのした音声とは裏腹に凶器を付けた赤ゆルアーが子れいむに襲いかかる。 だがそれも、子れいむを守ろうとする母によって阻まれた。 「ゆっくりごめんね!!」 「ゆ"っ!?」 母れいむは娘に体当たりして身代わりになることを選んだ。 赤ゆルアーの釣り針二本が母れいむの右頬に突き刺さる。 さすがは母性のれいむ種と言われるだけあって大した親子愛だ。 釣り上げられた母に気付いた子れいむは悲しげに叫ぶ。 「ゆぅ"ぅ"ーん"っ!! おがーざん!!!」 「れいむっ…れいむ…っ!! ゆっくりしてね!! ゆっくりしていってね!!!」 泣きながら母を、娘を呼び続けるゆっくり達。 なんだろう。私が悪者みたいな気分だ。 でもお金払って釣りをしてるわけだし悪くないよね。 今生の別れみたいに叫んでるけど、すぐに子れいむも釣ってまたすぐに一緒になれるさ。 「おがぁざん、ゆっぐい"じでい"っでね"ぇ"…ゆっぐりぃぃ……」 子れいむは大泣きしている今ならそれも簡単だろう。 母れいむを持参したバスケットの中に詰め込む。 するとバスケットの中から母れいむが話しかけてきた。 「に、にんげんさん! おねがいだかられいむはゆっくりしてあげてね!!」 「んあー?」 「れいむはたべてもいいかられいむはたすけてあげてね!!」 どうも勘違いしているようだった。 私は少なくとも今日釣ったゆっくりを食べるつもりも、殺すつもりすらない。 あくまで家で飼ってるゆっくりの遊び相手になってもらうのが目的なのだから。 「安心しなよ。別にお前さんを食べるつもりはないよ。 娘さんと一緒に助けてやるのさ」 「…ゆ? にんげんさん れいむたちをたすけてくれるの!?」 「ああ、でも私の家に来てもらうよ? うちのゆっくりの遊び相手になってほしいんだ」 「ゆっくりわかったよ! にんげんさんたすけてくれてありがとう!!」 「いいんだよ。本当、気にしないで」 助けると言ってもゆっくり出来るわけでも楽になれるわけでもないんだけどね。 でもまあギャーギャー騒がれるのも嫌なので信頼させておくとする。 感謝の言葉を並べて結局喧しい母れいむを無視しつつも再び釣竿を奮ってルアーを放り投げた。 標的は変わらず泣きじゃくる子れいむだ。 子れいむは泣いてばかりで赤ゆルアーの接近に気付いていなかった。 このまま隠密フィッシングもいいけどせっかくなのでリモコンをポチッとな。 『すりすりちようね!』 きっと単純なゆっくりはこの可愛らしい声に振り向くこと間違いなし。 子れいむもやっぱり振り向き、その瞬間を狙って赤ゆルアーをぶつけて釣り上げる。 「ゆ"う"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"っ!?」 子供サイズには大きすぎる釣り針が刺さって相当痛いようだ。 しかしゆっくりは刺し傷に強いから大丈夫。きっとね。 「やだよ! ゆっぐりでぎないよ"!! ゆっぐりざぜでぇ"っ!!」 この世の終わりのような声を出す子れいむは何とか逃げ出そうと足掻いているが、 ぶら下げられた状態で、それも首だけの生物が何をしたところで抜け出せはしない。 私の元に来る子れいむは恐怖で見開いた目で私を見ていた。 すぐにゆっくり出来るさ。 私は子れいむに刺さった釣り針を抜くと、母の待つバスケットの中に詰め込んだ。 「ゆぅーん"っ!! だじでー!! ゆっぐりじだいよ"ぉ"!!」 なんて泣き叫ぶ声が聞こえたが、すぐにお母さんの存在に気付いたらしい。 感動の再会で親子揃って泣きはじめた。正直うるさい。 だが邪魔するのも野暮というもの。 目的は果たしたわけだしこの二匹は放っておいて釣り道具の片づけでもするとしよう。 「よし、そろそろ行くかぁ」 片付けの終わった私はれいむ達の入ったバスケットを持って受付へ行く。 そして番号札を渡して規定の料金を払ってゆっくり釣り堀を後にした。 家までの帰り道はバスケットの中で楽しげなれいむ達の会話を聞いていた。 しかし途中で音痴な歌を歌いだしたり、狂ったように「へぶんじょうたい!!!」を連呼しだした時は流石にぶん投げようかと。 だが可愛いペットのためにそれは我慢した。 うちのペットは元気なゆっくりと遊ばせてやりたいのだ。 ゆっくり釣り堀から歩きで一時間。 バスケットの中で騒いでいたれいむ達も疲れたようで今は静かにしていた。 家へと入り、廊下を抜け、ペットのための部屋へと入る。 「うー! うー!」 部屋に入ると体無しのれみりゃが笑顔で出迎えてきた。 私の頭の周りをグルグルと飛び回る。 しばらくすると私の頭の上に乗っかった。 適度な重さと温かみが心地よい。 「ただいまれみりゃ」 「うー!」 「今からお前の遊び相手を出してやるからな。 いきなり手を出しちゃだめだぞ」 「う~!」 れみりゃが羽を寝かせて待ちの状態になったのを確認した私はバスケットの蓋を開ける。 中のれいむ達は薄目でほとんど寝た状態だったので声をかけて起こしてやった。 「着いたぞ。今日からここがお前たちのゆっくりプレイスだ」 そう言ってれいむ達をバスケットから取り出して部屋の絨毯の上に置いてあげた。 れいむ達は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回し、そしてれみりゃと目が合った。 (さあ怯えて逃げ回るといい) れいむやまりさの天敵と言えばれみりゃだ。 赤ちゃんゆっくりですられみりゃを見れば怯える。 しかし…この親子はどうしたことだろう。 「うー! うー!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむとれいむはおやこだよ! ゆっくりしようね!!」 なん…だと? 怯えるどころか親しげに挨拶をしてるではないか。 今までの遊び相手はどのゆっくりもれみりゃを見ただけで逃げようとした。 中にはトラウマでもあったのか餡子を吐き出して死ぬものすらいた。 それなのにこのれいむ達は何でこんなに無警戒にれみりゃに話しかけられるんだ? そんな私の疑問もよそに、れいむ達はれみりゃに名前を聞いていた。 「ゆっ! おなまえはなんていうの?」 「ゆっくりおしえてね!!」 「れみりゃ、うー!!」 れみりゃであることも知らなかったらしい。 普通は赤ちゃんゆっくりでも知ってるというのに… 釣り堀の説明では森から捕まえてきたとあったが、いったいどこの平和な森で捕まえてきたんだろう。 疑問は尽きないが、れみりゃというゆっくりをこれから良く知ることになるのだからどっちでもいいか。 「それじゃ、れみりゃの遊び相手になってくれ」 「ゆっくりわかったよ!!」 「ゆっ、でもおにーさんはどこにいくの? いっしょにゆっくりしたいよ!!」 「いっしょにゆっくりあそぼうよ!!」 「ま、食事の時にまた来るよ」 私は部屋を出て扉の鍵を閉めた。 いつもすぐにお友達を壊すれみりゃだが、今回のお友達は元気がいいから幾分持つだろう。 それにれみりゃも最近は加減を覚えたようだしね。 後は勝手に遊んでくれるようだから食事時まで昼寝でもしようかね。 夕食時になって目を覚ました私は、れみりゃ達の餌を持って部屋へ入った。 「うー!」 「……ゅ」 「ゆっぐ…ゆっくい"」 出迎えたのはれみりゃの元気な姿と扉の前で瀕死のれいむ親子だった。 久しぶりの生きた玩具にれみりゃも張り切っちゃったのかな。もう少し放っておいたら死んでたかもしれない。 でもこの程度なら餡子を食わせてジュースをかけておればじきに復活するはずだ。 「うー! うー!」 「おおそうか。楽しかったかれみりゃ」 「う~!!」 れみりゃはご機嫌だった。 お友達が出来たのが嬉しいようだ。 「ゆっ、ゆゆっ…」 「やめてね。ゆっくりさせてね…」 そのお友達は意識を取り戻したようで部屋の隅で怯えきっていた。 そんなれいむ達に私は歩み寄る。 ビクッと身を震わせる二匹。 「明日からもれみりゃと遊んでくれよ」 そんな二匹にそれだけ伝える。 れいむ達は返事も出来ずに震えあがっていた。 それから二か月 母れいむが死んだ。 今までのお友達は一週間と持たなかったというのに随分と長く生きたものだ。 最後の一週間は外部からの刺激にほとんど反応しなくなって子れいむがひどく心配していたが。 残った子れいむはそれまでそこそこ元気にやっていたが、母が死んでからというもの日に日に元気が無くなっていった。 肉体的には私が治しているから問題ない。 だが精神的支えのいなくなった子れいむが死ぬのも時間の問題だった。 まるでただの饅頭のような子れいむにれみりゃもつまらなさそうにしている。 そろそろ次のお友達を連れてくるとしようかな。 私は釣り道具を用意する。 ゆっくり釣り堀へ出かける前にれみりゃの部屋へ行き、 「もう食べていいぞ」 と、そう伝えた。 今度はどんなゆっくりをお友達として釣ってこようかな。 私は今、それだけを考えていた。 終 by 赤福(ゆっくりしたい人) このSSに感想を付ける
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微笑みの村 (1.ゆっくり旅立ってね!) すべてのゆっくりが幸せに暮らせる場所があるという。 そこには外敵がおらず、善良なゆっくりたちが集うゆっくりの楽園。そこでは捕食種さえゆっくりに危害を加えることなく、 ゆっくりたちと同じものを食べて共存しているらしい。 満ち足りた日々に、住民の微笑みは絶えることはない。 いつしか、その村は憧憬をこめて「微笑みの村」と呼ばれるようになっていた。 ゆっくりまりさ一家がそんな桃源郷の噂を聞いたのはたった今、隣のれいむ一家の引越しの挨拶の折だった。 「ここじゃゆっくりできないから、ほほえみの村目指して旅立つね!」 三日前、外敵に子供を四匹を奪われ、残る三匹の子供を連れたれいむ一家。昨日まで泣きはらした真っ赤な目をにこすりながら、 まりさ一家と別れを惜しむ母れいむ。 お互い励ましあって厳冬を乗り切ったことある間柄だけに、送り出す母まりさの目も悲しげだ。 そんな親たちの様子を遠巻きに見ていた母まりさの子供たち。その九番目の子供、まだ人間の握りこぶし大の末っ子が、遊び相手の 旅支度に興味を引かれてとてとてと走ってくる。 「どこいくの!?」 「西だよ! こっから七日ぐらい西に行くとね、いつまでもゆっくりできる場所があるんだよ!」 「ゆっ! ほんと!」 末っ子まりさは目を輝かせる。 れいむ一家が半壊して以来で、この地域のゆっくりは誰一匹としてゆっくりできていない。 手早く餌をかきこみ、周囲に怯えながら這うように家に帰る毎日。 どれだけきれいにお花が咲き誇っても、水浴びを誘う清浄な小川が流れていようと、見とれたりのんびりできない。すぐに母親に 叱られ、口に飲み込まれて強制的に穴倉の中へ。末っ子まりさはそれがいやだった。9匹の大家族で、姉たちはほとんどが一人前に 近い大きさ。おうちは常にぎゅうぎゅうだ。すし詰めの息苦しさに比べて、草木香る春風の草原はどれだけゆっくりできることか。 「いいな! まりさもゆっくりできる場所にいきたい!」 新緑の草原に寝転んだ自分を想像してよだれをたらす末っ子まりさを、れいむ一家は微笑ましそうに見つめる。 母ゆっくりれいむだけが、末っ子まりさから、その親へ視線を戻していた。 「まりさもいっしょにいこうよ! そこって、れいむたちを食べる子がいないみたいし、みんな幸せに暮らせる場所なんだって! 他所から来た人もすぐ受け入れてくれるんだよ!」 希望に目をキラキラさせて、れいむはまりさとその家族を誘う。 れいむに残された三匹の子供たちもぴょんぴょん跳ねて賛同を促していた。 でも、母まりさは渋い顔。 それは、たくさんの子供を抱えるまりさ一家では飲めない提案だった。 「ゆー……うちは子供が多いから、移動がたいへんだよ! 家族の少ないれいむたちが羨ましいね!」 その返事に母れいむの表情がこわばる。 好きで減らしたしたわけでもないだけに、その言い草が気に障っていた。 だから、母れいむもそれ以上、その話題を続けなかった。 自分たちが何に襲われ、何に気をつければいいのか。そんな大切な情報を教える気が消えうせてしまったゆっくりれいむ。 「気が向いたらまりさもきてね!」 お義理に言い残して、まりさと別れていく。 れいむが旅立ったとなれば、当然れいむの巣穴は空いていた。 ゆっくりまりさの当面の不満は、自らの住居がれいむの巣穴に比べて狭いこと。 れいむとの別れから三日がすぎてそのことに思い至り、母まりさは主を無くした巣穴に別の種が住み着いていないか確認に行く。 子供たちは、遊びにいった時に見知っていたれいむ一家の巣穴がもう自分たちのものになると決めつけて、この部屋は誰の部屋だ なんだのとわいわいと話し合っていた。 結果として、それは無駄な会議となることも知らずに。 れいむ邸に残された、れいむたちが持っていけなかった分の食料。母まりさがそれに舌鼓をうっているうちに、事態は取り返しの つかない方向に流れていく。 姉妹みんな、それぞれの部屋を持とうね笑いあっていた巣穴の中に、突然の疾風。 吹き込むのならば、まりさたちも経験がある。 だが、吸い出されるのは初めて。 入り口から激しく吸い上げる力に引かれ、ころころと転がりだす子まりさたち。 「ゆー、おもしろーい♪」 「らくちーん♪」 状況判断をあっさりと放棄して、きゃいきゃい騒ぎ、喜びだす。 れみりゃや他の捕食種の侵入を防ぐため、小さな出入り口とそこへつながる通路。そんな、ちょうどゆっくり一匹分の広さの通路に 到着順に一列に並んでいく。 「ゆっ! まりさがいちばーん!」 未知の力で吸い上げられているのに、誇らしげなゆっくりまりさ。 部屋の奥で遊んでいた子ありさと、末っ子まりさの2匹を除く6匹が数珠繋ぎなって、不思議な現象に無邪気なはしゃぎ声。 「次はまりさがいちばんだよ!」 ぷううと膨れる他のまりさ姉妹が思い思いに散ろうとしたその瞬間だった。 風の音がごううううと洞窟に轟くなり、比べ物にならない暴風がゆっくりまりさ姉妹を襲った。 まりさたちの帽子が一瞬で吹き飛び、吸い込まれていく。 同時に砂埃や住処に拾い萃めたゆっくりたちの宝物、家族9匹を養うための食料。巣穴のあらゆるものが外に吸い出されて消えていく。 子まりさ自身も同じだった。 吸い上げられ、すべる体。異変に気づいて踏ん張ろうとしても、土に食い込ませた体がその浮いた土ごと引き寄せられる。 圧倒的な力。 砂埃舞う暴風に目をしかめていた子まりさたち。そのうち一匹が、顔を真っ赤にして何とか目を薄く開く。 そして、見た。今日は快晴で青空が広がっているはずの出口。だが、今は真っ赤にてらてらと光る何かに、入り口をすべてが 覆われていた。そしてその奥で揺れるのどちんこに、今か今かと子ゆっくりを待ち受け蠢く舌。 それは、ゆっくりゆゆこの口腔だった。 体つきこそ母まりさと同じか少し小さいぐらいだが、自分より体積の大きな2m級ゆっくりですら飲み込んでしまう食欲の魔王。 それが今、ゆっくり一家の声を聞きつけて、巣穴の中身すべてを丸呑みしようと吸い上げ始めたのだ。 ゆっくり子まりさたちは、自らをひきつける暴風の意味をようやく悟った。 だが、すでに事態は手遅れとなりつつある。 「ゆぎいいいいい! 吸い込まれるうううう!!!」 ゆゆこの咽というシュワルツシルト半径が及ぼす引力圏にとらわれ、ずりずりと引き込まれていくゆっくりまりさたち。 ゆっくりまりさのゆっくりした歩行速度では、脱出速度には到底達していない。 「やめでええええええええ、だずげでえええええええ!」 ゆゆこの口という事象の地平線にみるみる近づいていく先頭のゆっくりまりさ。 一列に規則正しく縦に並んでゆゆこのもとへ。 「おがあぢゃあああああああん!!!」 岩に体をこすりつけて母の名を叫んで奇跡を願うが、そこの母まりさはれいむの巣穴の中。子供用にとっておこうとしたもう一山の 食料を、ついついつまみ食いしている最中だった。 まりさたちが待ち望む、ゆゆこを後ろから跳ね飛ばして颯爽と登場する母の姿。 しかし、引き寄せられる体はそれまでもたないとばかりに、ぎりぎりと悲鳴を上げている。 ゆゆこのそばへ行くほど、さらに強烈になっていく吸引力。 先頭のまりさがこぼす涙も、流れた先からゆゆこの口の中に消えていった。 「おねえぢゃん! まりざをだずげでええええええええ!」 もう、自分の力だけでは限界だと、後ろに控える姉まりさの髪をかみしめる最前列のまりさ。 「いだいいいいいいい! やめでええええ! ひっばらないでへえええええええええ!!!」 後ろから妹にまで引っ張られて、姉ゆっくりも半狂乱。 「まりさをはやくひっぱってね!」 自分だけが二匹分を支えるのは不公平だと、さらに前のまりさの髪をかむ。 無論、そう考えるのはその二匹だけではない。 その動きはとうとう最後尾のまりさにまえ伝わった。最後尾のまりさの後ろ髪を引く、五体分の重み。 「おへーはん、ひっはってええええええ!」 五匹とも、口々に最後尾のまりさに嘆願する。 姉妹すべての救出を勝手に託されて、最後尾のまりさは一切の身動きが封じられた。 「やめでえええええ! じにだぐないいいいいい、はなぜえええええええええ!!!」 六体が並んだことで前のまりさが風よけになり、こそこそ逃げるタイミングをはかっていた最後尾まりさ。 だが、ぎりぎりとかみ締める姉妹の歯の力によって、いつのまにやら一蓮托生。 「お願いいいい! はなじでよおおおおおおおおお!」 生憎、噛み付く姉妹は狂乱の最中。最後尾まりさの嘆願を無視して、かみ締める力をひたすらに高めていた。かすかにあった二、三匹の 犠牲で終わる可能性は、完全にここに費える。 こうして、ゆっくりまりさ8姉妹のうち、6匹分の運命は決した。 「ひぎぎぎぎぎ!」 背中を吸い込もうとする凄まじい吸引に耐えていた最後尾のゆっくりまりさ。 抵抗の終わりを遂げたのは、くぐもったびりりという破裂音。 なぜか、突然体が軽くなった。 「ゆぐうううう!」 後ろに視線を向けて驚愕する。 風圧によって、自らの背中に裂け目が生じていた。 最初は5cmほど一直線の切れ目、そこからぽとぽとと餡子が吸い込まれていく。止まってえええと声ならぬ悲鳴を上げるが、 望みはかなわなかった。 びりりりりと裂け目が広がっていく。 餡子が消えていくすさまじい喪失感。 一呼吸する間にもぽろぽろと勢いはとまらない。 自分の体が半分になったのを朦朧とした意識で感じながら、みるみるしぼんでいくゆっくりまりさ。 やがて餡子がすべて抜け落ち、目玉までも吸い込まれた状態でびくんびくんと震えるまりさの体。かろうじて強くかみしめた歯だけが 残っていたが、やがてかまりさの皮も何もかもがゆゆこの口に吸い込まれて消えていった。 そのまりさに噛み付かれていたまりさは、後ろから噛み付くまりさの消失に心底ほっとする。 だが、最後尾にいたまりさがかみ締めて自らの後頭部に裂傷が生じていたことを、最後尾まりさの知らなかった。自分に、同じ運命が 待ち受けていることも。 ぶぼっと、くぐもった音がしたかと瞬間、まりさの餡子の半分が、塊となって地面を転がっていく。 ふわりと浮き上がり、ゆゆこの口へ。 同時に、密度の少なくなった体に改めてゆゆこの吸引が襲い掛かる。 餡子の抜けたからだで、ひょろひょろと浮き上がるまりさ。 「ゆゆゆーっ! なんでまりさ、おそらとんでいるのおおおおおお!!!」 叫んだのがまずかった。 姉の髪という命綱を放して、今度こそ完璧にテイクオフ。何者にもとらわれることなく中空へ。 かつて赤子の頃、母親の体から飛び降りた頃の、あの初めての浮遊感を思い出していた。 「わーい、おそらをとんできゃふうぅぅぅ……」 あどけない声も遠くなり、唐突に途絶れる。 子まりさは、ほのかな笑顔のままゆゆこの口に消えていった。 「おねえざああああん!」 かろうじて奥に逃れた二匹の呼び声も、続けざまの悲鳴にかきけされていた。 「まっ、まりざのがわが、ながみがああああああああ! いやだああああ、いぎだくないいいいいいい!!!」 ずるずると、犠牲者の位置まで引き寄せられていく3匹目の声。 後続の子まりさたちを引き連れて、死の暴風圏に到達し、同じ運命をたどる。 3匹目、4匹目、5匹目、みんな無慈悲にゆゆこの口に消えていった。 4匹目からは踏ん張ることに疲れ果てて力なく吸い込まれていき、体が破れることもなかったが、その分生き地獄を味わうことに なったのかもしれない。 ゆゆこの口の中に吸い込まれた子まりさは、すさまじい潮汐力で飴のようにねじれ、渦巻きながら細長くのびきってゆゆこの咽の 奥に消えていく。 その消える瞬間まで、ありえないほどにひしゃげた体の、奇想天外な位置に移動した目で外を見つめる姉妹のうつろな瞳を、 残された二匹の姉妹は生涯忘れることはできないだろう。 生きたまま棒状となって消えていったまりさ姉妹がどんな光景を見ているのか、恐ろしくて想像もできない巣穴の奥にいる二匹。 「なんでええええええ! だれもだずげでぐれないのおおおおおお……ぉぉ……」 最後の6匹目の声も遠くなり、「腹八分目~♪ あと九割二分は入るわねえ♪」というゆゆこらしき声が遠ざかるのを聞いて、 恐る恐る姿をあらわすゆっくり姉妹。 ゆっくり姉妹は、もう二人きりの姉妹となってしまったことを知った。 姉たち姿も、姉たちの痕跡もない、大切に萃めた姉たちの宝物も何もかも、消えうせて影も形もない。 二匹だけで静まり返る巣穴。 あの狂乱もまるで嘘のようで、二匹は夢をみていたのだと思い込もうとした。今にも遊びに行った姉妹たちが帰ってくるのでは ないか、と。 淡い期待をだいて待つが、がらんどうの巣穴と過ぎていく時間は、ゆっくりと二匹に現実とその成れの果てを思い知らせていく。 確信したのは、帰ってくるだろう姉妹を入り口に迎えに出ていた妹まりさがくわえて来た、一つだけ飲み込まれなかった姉まりさの帽子。 「どうじでごんなごどになるのおおおおおおお!!!」 「かくれんぼ、まりさのまげでいいがら、でてぎでええええええ!!!」 姉妹それぞれの悲嘆に応えるものはなく、ただおいおいと鳴き続ける姉妹。 深い絶望感に包まれていた。 また、ここにゆゆこが来るかもという危惧は浮かぶが、もうこの喪失感の最中ではどうでもよくなっていた。 「ゆっくりしていたー?」 そん折、外から陽気な声が入り込んでくる。 母ゆっくりまりさだった。 「れーむのおうち、広かったよ! 食べ物はなかったけど、ゆっくりできそう!」 わざとらしい笑顔で入り口を、先刻、娘たちが泣き叫びながら消えていった道を降りてくる。 そうして、二匹の有様に惨状を知った。 「どうじでなのおおおおおお! れいむのあがぢゃんがああああああああ、こどもがああああああああ!!!」 子供たちは母親の慟哭に、本当に姉たちが死んでしまい、もはやどうしようもなくなったことをようやく悟る。 「ひっぐ……おねえぢゃんと……もっど、ゆっぐりじだがっだあああああああ!!!」 呆然として、流すことすら忘れていた涙が子まりさの頬を幾重にも伝っていく。 いつしか、親子はお互いの涙をこすりつけあうように一塊となって、ひたすらに泣き喚いていた。 「……もう、ここにはいられないね」 未だ姉妹がしゃくりあげる声の中、ぽつりとこぼれた母親の言葉。 子まりさたちは即答できない。中で熱くじんじんと響く悲しみの衝動と、先ほどまでの広い巣穴に家族みんなで暮らす夢から 急転直下の事態に、まだ心が順応できていなかった。 母まりさ、姉まりさ、末っ子の妹まりさの三匹に、沈黙が降りる。 が、捕食種に居場所が知られている母まりさには理性が戻ってきたのか、苛立ちの表情。 「ここにいると、ゆっくりできないんだよ!」 母まりさの瞳には、ゆっくりしすぎて娘たちを失った自責と、残された娘たちだけでも守りたいという新たな信念が燃え上がっている。 強い口調に頷くしかない子まりさたち。 末っ子まりさが呟く。 「こんな想いをしなくていい、ゆっくりの楽園にいこうよ……」 現実から少しでも目を逸らそうというのか、うっとりとした声。 子まりさの脳裏にあったのは、今日の朝、ゆっくりれいむから聞いた夢の楽園の情景。微笑みの村。 そんなところ、本当にあるのだろうかと姉と母は内心考える。 それでもその案はゆっくりまりさ一家に垂らされた蜘蛛の糸。 糸が切れませんようにと祈りながらすがることしか、生きていく道は残されていなかった。 「ゆっくりいそぐよ!」 お母さんまりさの声に急き立てられて、生まれ育った我が家を後にする三匹だけのゆっくり一家。 ほっぺ一杯に集めた家族の分の食料のせいでまん丸に近いお母さん、まるで遠足のようにその母の後ろで跳ね回る妹。 「うん、いってくるからね!」 ゆっくりお姉さんは最後方。少し大きめの形見の帽子を深めに被って、巣においてきた自分の帽子を眺めている。 置いていく自分の帽子は、かつてここで暮らしていたその幸福の墓標。 姉妹の分まで幸せになって、お母さんを助け、幼い妹まりさを守っていかなければならない。 修羅場を潜り抜けた姉まりさの目には決意がにじんでいた。 「しゅっぱーつ!」 妹ゆっくりの声に、意を決してもう戻らない道を歩き出すゆっくり一家。 姉まりさは春先の日差しに導かれるように、新緑まぶしい森の中へ分け入っていく。 この一歩ごとに、至福にゆっくり生活に近づいていくんだ。 そう心から信じることで、不安に震える姉ゆっくりを駆り立てていく。 こうして、一家は藪の向こうに消えていった。 (2.ゆっくりしね!) 春先の穏やかな季節とはいえ、ゆっくり親子三匹で遠出をするのは無謀以外の何者でもない。 勝手知ったる我が家の周辺では、ゆっくりたちだけが知る身を隠せる場所がいくらでもある。 しかし、未知の地形では獣に追われたら近くに避難場所があることを願って一度きりの賭けに挑まなくてはならなかった。 また、日暮れに旅の疲れを癒せる場所も未知の領域。 眠っているうちに穴倉の元の主、狐や蛇の類が忍び寄ってきたらもうおしまい。 「ここはまりさたちのおうちだよ!」 一応はそう主張するだろうが、登記簿謄本の複写を持ってくる人間すらほとんどいないのに、悠長に異議を唱える野生生物が いるわけがなかった。大抵は、賃貸料としてまりさ一家の体を朝食として回収するだけ。いつもにこにこ現物払いだ。 そんなことにならないよう、まりさ一家はゆっくりなりに細心の注意払う。 日が暮れて完全没した午後七時に寝床に入ると、母まりさだけはそのまま眠らず、暗がりの中で草むらを踏む外敵の物音に注意を注ぐ。 強行軍でつかれきった体が欲する眠気を、死んでいった娘たちの姿を思い浮かべて必死にこらえていた。 午前0時、母ゆっくりの体がぶれて限界に達すると今度は姉まりさの出番。 午前5時の夜明けの暁を見て母と妹を起こし、再び森の奥へと一列に並んで歩いていく。 本能に刷り込まれた睡眠欲を耐え抜いての行軍。 気を抜けばふらふらとゆっくりしたくなる体に鞭うっての苦難の道だった。 次第に生気がなくなっていくゆっくり一家。最初は張り出す木々の小枝を器用によけていたが、すでに朦朧とした意識でその中を 突っ切っていく。 ほっぺにざっくりと線を残しながら、その痛みで眠気を振り払って歩みを続ける。 跳ねて進んでいたのは最初の一日だけ。 今はずりずりとなめくじの歩み。 そのあまりの鈍さに、いつになったら村とやらにつけるのだろう。そして、それは本当にあるのだろうかと疑心暗鬼になっていく まりさ一家。 それでも、倒れた倒木を越すために頭に妹まりさを乗せ、その上に立たせたときの「引き上げてあげるね、お母さん!」という 無謀な言葉に、思わず微笑んでしまう姉まりさ。 この子が助かって本当によかった、母まりさと二人きりなら、もう心が折れていたかもしれないと、姉まりさは心から思っていた。 目の前を雪解け水を集めて急流と化した川が横切っていたときも、途方にくれていた自分と妹れいむに母ゆっくりがセリの一束を くわえてきてくれて、その青い香りを味わって気を取り直すことができた。 川伝いに歩いて、人間のかけた丸太橋を見たときは三匹とも感涙に震えて、その幸福を喜びを分かち合う。 そして運命の七日目、ゆっくりれいむの言葉によればゆっくり村にたどりつく日数。 同時に、それはゆっくりが旅をできるぎりぎりの日数だった。 ゆっくり親子三匹はぼろぼろに汚れ、擦り傷のない部分はほとんどない。その上、三匹ともふらふらで、立つのもやっという有様だった。 「ゆっくり……少しずつ進もうね……」 三匹、体を寄せ合ってお互いが体を支えあうようにして這っていく。 肌の張りは完全に失われ、皮も垂れ下がり気味。表情は痛みと苦しみと空腹、それにゆっくりできなかった七日間で泣き笑いのような 表情。こうなると、もう大きななめくじに帽子をかぶせた生き物にしか見えなかった。 こんな脆弱なゆっくりたちがここまで生き延びた理由。 それは、子まりさが我侭を言わなかったことと、母まりさが最後まで自分が親であることを忘れなかったことと、何よりも捕食種に 襲われなかったという幸運があった。 だが。 「ぎゃおー♪」 その幸運は、まさに後一歩のところで尽きようとしている。 空からの声に、歪む母ゆっくりの顔。 三匹、転がるように草むらへ。 だが、春先のために育ちきっていない露草の一群は背が低く、水平から見ても母ゆっくりの頭が少し見えるほど。ましてや、上空からは 緑の中に黒と肌色の点が三つ見えるだけで、目立つだけの有様だった。 しかし、平原の只中にいるゆっくり一家には、他に身の伏せようもなく、息を殺して絶望の悲鳴を飲み込むだけ。 「うー♪ いいにおいがするどおー♪」 一匹のれみりゃが草むらのそばに降り立った。 目を開けばすぐそばに肌色の餌が見えるのに、最初ゆっくりの匂いを感じた鼻をさらにくんくんさせて、それで相手の位置を探ろうと している。 助かったというより、相手のお馬鹿さで終幕が少し伸びただけの状況。永遠にアンコールに応えてくれるとは思えない。 息を殺して様子を伺う三匹。ふと、姉ゆっくりが横をみると、母ゆっくりが音をたてないよう、妹ゆっくりに青草をこすりつけて 草の匂いをまとわせようとしていた。窮余の策。 「ゆっくりじっとしていてね」 声を殺して言い残し、草の上を這っていく。 「ゆ?」 不思議そうに母ゆくりと姉ゆっくりを見比べる妹まりさ。 姉ゆっくりはある種の予感に震えながら、声を出すことができない。 草むらの向こうに、突然大声が響いた。 「こっちだよ!」 草むらから飛び上がって見える母ゆっくりの姿。 まりさ種特有の憎たらしい顔でれみりゃを挑発すると、一目散に背をむけて駆け出す。 「おばかなれみりゃから、ゆっくり逃げ切っちゃうよ!」 「れみりゃはかしこいどぉ~!」 真っ赤になって追っていくゆっくりゃに、母親の作戦を理解する姉ゆっくり。同時に、二度と会えないことも感じ取っていた。 なんで、ここまできてお母さんを失わないといけないだろうと、泣き叫びたい絶望に震える姉ゆっくり。 しかし、声を出せば母ゆっくりの想いと避けられない死が無駄になる。 目をつぶり、うづくまってあふれ出そうな悲鳴を押さえ込む姉ゆっくり。 その耳に飛び込んでくるのは、草むらの上をのたうつ重い音と、上機嫌なれみりゃの声。 「とったど~♪」 その言葉に、姉ゆっくりの真っ赤な顔からこらえようもない涙がこぼれ、下に抑えていた妹まりさの上に落ちる。 妹まりさが母の窮状を知ったのは、この瞬間だった。 「おがあぢゃんをはなぢでねええええええ!!!」 甲高い、全身全霊を込めた声が響いた。 小さな体をぶるぶる震わせた妹ゆっくりの声。ゆっくり一家全滅の運命を知らせる終幕のベル。 どさりと、草むらの上に何かが落ちて「ぐびゃ」と母のうめきがもれた。 「うー♪ こどものほうがおいじいの、れみりゃしってるどー♪」 「まっ、まっでえええええ! まりさのほうがおいじいいよおおおおお! こどもはらめえええええ!!!」 後を追う母まりさの絶叫に耳も貸さず、ゆっくり姉妹のほうへ一直線。 無論、ぱたぱたと風にそよぐ羽毛のような速度なのだが、疲労の極にあるゆっくりの足はさらに遅い。 そもそも姉まりさは逃げようとはしなかった。 姉まりさは妹を草むらに押し込んで隠し、飛来する捕食種に向き直る。 「まっ、まりざが……い゛ち゛は゛ん、た゛へ゛こ゛ろ゛だよおおおおおお! だぐざん、たべられるよおおおおお!!!」 泣きながら、自らの旬を知らせるまりさというのもそうはいまい。 ただ、姉まりさにとって最悪なことに、れみりゃはゆっくりまりさが期待するほどの知恵がなかった。 「うー!!! れみりゃ、ちいさい方をたべるってきめたどぉ~♪」 言いながら、最初から目をつけていた子供のまりさに手を伸ばす。 「まりざがおいじいって、いっでるでしょおおおおおお!!!」 ぶるぶる身を震わせて絶叫する姉の前を素通りして草むらへ突っ込むと、すぐに中から陽気な声が聞こえてくる。 「でざーど、みつけたど~!」 言うなり、デザートこと妹まりさを掲げてふわりと空へ。 「うわーん、お空をとんでるみだいいいいいい!」 自分の運命が薄々わかっているためか、現実逃避しているためか、泣きながら喜んでいる妹まりさ。 今すぐにでも我が身を引き換えにしてでも助けたいが、相手は手の出しようがない空にいる。 「あ゛あ゛あ゛ああああ……どうじでっ声だしだのおおおおおお! やああああああ!!! まりさのこども、だれがだずげてえええええ!!!」 母親が絶叫を残して泣き崩れていた。 れみりゃの襲撃で昏倒をしてもおかしくなく出餡量だが、興奮と怒りがそれを上回っている。 「れみりゃああああ! そんな未熟な子よりも、まりざのほうが成熟じだ大人のみりょぐあるよおおおおおおおお!」 姉まりさがなおも叫ぶも、れみりゃは妹と姉を見比べて、いーっと、姉に向けて舌を出した。 「おおきいのは、ぽいなの!」 言うなり、大きく口を開く。 その口腔に光る牙、それがまさに妹まりさに突き刺さろうとしたその時。 「うまうま」 妹まりさがかじられるよりも早く、れみりゃの声が聞こえてきた。 「いっだいいいい!!!」 続く悲鳴もれみりゃのもの。 いぶかしんで見上げると、そこには妹ゆっくりにまさに噛み付かんとするれみりゃの、その頬をさらに噛み付く別のれみりゃがいた。 「うああああ、ざぐやああああああ!」 その状況が理解できないようで、泣きわめきながら癇癪のままに妹まりさを振り落とす。 「まりざのこどもがああああ!」 母まりさの絶叫。 2mぐらいの高さとはいえ、体のあちこちが敗れたゆっくりの体。硬い土の上に落ちれば弾けて死ぬ。 必死に妹まりさを追う姉まりさだが、瞬きほどの間に地面に迫る妹ゆっくりの体。 思わず目をつぶったそのとき、妹ゆっくりの声が聞こえてきた。 「ゆ!? 痛くないよ!」 野草の密集した場所に落ちたのだろうか、ほっとして目を開く姉まりさの動きが止まる。 襲ってきたれみりゃと、そのれみりゃの頬を噛む別のれみりゃ、それらとはまた違うれみりゃが一匹、ピンクのスカートを広げて 妹ゆっくりを受け止めていた。 もう姉ゆっくりにはどうすればいいのかわからず、固まるしかない状況。さらには西の空に二体のゆっくりゃの新手を見て、完全に 姉まりさの思考はショートする。 母まりさの方は、先ほどの絶叫で体力を使い切ったのか、へにゃりとつぶれたように平べったくなって気絶していた。 姉ゆっくりは意識こそあるが、頭の餡子が焼ききれたように身じろぎ一つしない。最初のれみりゃが後続のれみりゃたちに噛みつかれ、 嬲り者にされて、間抜けな声をあげて息絶えても、微動だにしていなかった。 姉まりさの意識が現実に戻ってきたのは、その体が浮遊感に包まれたとき。 気がつけば、れみりゃに抱えられて空を飛んでいた。 自分だけではなく母も妹も。れみりゃの胸に抱えられてゆっくりと空を行く。 ああ、これから巣で食べられるんだと、冷静な思考で現状を認識する姉まりさ。 感情を爆発させすぎたせいだろうか、今はひたすらあらゆることが面倒くさい。 でも妹だけは、助けたかったな。 ぼんやりと悔いを感じながら、旅の終わりを受け入れつつあった。 そうなれば、冬の名残を残す春風に凍えた体が、れみりゃの服越しの体温で温められるのも悪くない。 そんな考えを思い浮かべているうちに、景色は小高い丘を越えていく。 その奥に開けた、山間の谷に降下していくれみりゃたち。 こうしてたどり着いた、ゆっくり一家の旅の終焉の舞台には、奇妙な配役たちがひしめいていた。 ゆっくりれいむに、ありす、まりさにぱちゅりー、他もろもろのゆっくりたちがわいわい騒ぎながら、自分たちを見上げている。 誰一匹、れみりゃの存在に臆することもなく。 「ゆっくり間に合ったね!」 「うー♪ うー♪」 集団の先頭に立つゆっくりアリスが呼びかけると、姉まりさを持っていたゆっくりゃからご機嫌な返事。 そのまま、ゆっくりたちの集団の前に降ろされると、ゆっくりゃたちはどこへともなく飛び去っていく。 代わって、ゆっくりたちがまりさ一家を取り囲んだ。 「小さいまりさは気を失っているだけみたいだね!」 「大きいまりさは手当てが必要だね! 止餡用のはっぱを、ゆっくり持ってきてね!」 その言葉に、まりさは自分たちが救われようとしているのだと、おぼろげに気づいていた。 これは幻想ではないか。声を出して確かめようとする。 「ゆうううう」 震える咽の響きが、現実だとまりさに教えてくれた。 その声にかけよる一匹のゆっくりアリス。 「気がついたの? ゆっくりしてね!」 安心させるようなその微笑。 表裏のない満面の笑みに、姉まりさはここがどこか、ようやく思いあたる。 「ここはもしかして微笑みの……」 「うん、そう呼んでる子もいるみたいだね! とにかく、もう大丈夫! ここにきたからにはあんなこと、二度と起こらないから、 いつまでもここでゆっくりしていいんだよ!」 「そうだよ、ゆっくりしていってね!」 アリスの言葉を裏付けるように、周囲のゆっくりたちからも歓迎の言葉が続いて、じんわりとにじむ姉まりさの涙。 「ゆっ、ゆぐううう!」 一度あふれ出すと止まらない。 暖かい涙が、次から次からこぼれてくる。 ゆっくりアリスは優しい眼差しで、姉まりさの気持ちが落ち着くのを待ち続ける。 「ゆっぐり、じでいぐよおおお!」 そんな嗚咽交じりの挨拶を、村に住むゆっくりたちは極上の微笑を受け止めていた。 姉まりさの心にわきあがる安堵。 それともに、緊張がとけて遠くなっていく意識。 「アリスによりかかって、ゆっくり休んでね」 アリスの言葉と頬にふれるその体温に触れているうちに、ふうと景色が暗くなっていく。 幸せそうな寝息をたてはじめる姉まりさ。 こうして、笑顔あふれるこの村での生活が始まった。 続く このSSに感想を付ける