約 738,027 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1412.html
ここは、広大なゆっくり平原。 ゆっくり名所である川に沿って上流へ向かうと、おなじく名所である林に入る。 さらに上流へと足を進めると、そこはもう山だ。 天を突くほどに伸びた木々は、その身に枝葉を思う存分茂らせ、さまざまな木の実をつけている。 数多の木々が作り出す静寂とした空気。 山にある森は知るゆっくりぞ知る、ゆっくり名所であった。 だが、山はゆっくり名所でありつつもゆっくり難所でもある。 なぜか? それは動物の数が下流の平原よりもはるかに多いからだ。 よほどの経験を積んだゆっくりでもなければ、山の森で暮らそうなどという者はいない。 そんな森の中に、 「ゆっくりしていってね!」 という声が漂ってきた。 2匹のゆっくり魔理沙だ。この山の中を飛び跳ね、餌を探している。 この2匹はつがいで、2回目の出産を経て、ようやく産後の肥立ちから回復したのだ。 交尾してから久しぶりの夫婦水入らずの狩りだった。 2匹がやってきたのは、川原だ。 水源にはまだ遠いが、この上流の水はとても綺麗で、きらきらと輝いて見える。 この水を毎日飲んでいれば、それはすくすくと育つだろうと思わせるほどだ。 この川には、ゆっくりを捕食する生き物も集まるが、餌も豊富というリスクに見合うリターンが確実にある場所だった。 しかも、今2匹の目の前には、魚がぴちぴちと跳ねていた。 川の中ではない。地べたで、だ。 2匹のゆっくり魔理沙は天の恵みとばかりにそれに近づいていった。 「おさかなさん!ゆっくりしていってね!」 「ごちそうだね!」 そう言って、わずかに体の大きいほう、年長のゆっくり魔理沙がその魚を口に含んで飲み込んでしまった。 無論、食べようとしているわけではない。巣への運搬のために一端体内に保存しているのだ。 鵜飼いとは違うが、あれを想像してもらえるとわかりやすいだろう。 2匹でびちびちと活きの良い魚を一尾ずつ飲み込んで、 「ゆ!まりさたちのえーよーになってね!」 「あわてないで、ゆっくりしていってね!」 などとご満悦の表情だ。 「あとは、きのみとかとっていこう!」 「そうだね、おさかなさんがいるから、それでじゅうぶんだね!」 来たときよりも重めの体を全力で飛び跳ねさせる2匹。 2回の子作りで、群れも10匹と大きなものになった。 上の四匹の子供達はそろそろ本格的に狩りに連れて行っても良い頃合だろう。 家族で狩りという、夢膨らむ素敵な想像に、2匹は浮かれつつも巣への帰路へとついた。 日が傾き、空が橙色に染まりつつあるころ、森もその様相を刻一刻と変化させていった。 木々の陰はゆっくりと伸びていき、まるで生き物のように森を昏い色で飲み込んでいく。 夕闇が迫りつつあった。 10匹のゆっくり魔理沙たちは、狩りの成果を思う様堪能していた。 年老いた大木の洞のなかをねぐらにしているので、広さは十分にある。 地面に並べられたご馳走は、無数の木の実に、色鮮やかなツツジの花。 そしてメインはなんといってもお魚さんだ。 もう1尾は明日の食料として、奥のほうで笹の葉に包まれている。 「はふはふ、うめぇ!めっちゃうめぇ!おさかなさんおいちい!」 「ゆっくりあじわってね!」 「おちついてゆっくりしてね!」 子供達の旺盛な食欲を温かく見守るのは、2匹の親ゆっくり魔理沙だ。 その表情は母といって差し支えないものだ。 子供達もそんな母たちの見ている中、喧嘩ともいえないようなじゃれ合いをしながら、ご馳走を食べている。 赤らんだ顔に溌剌とした眼差し、張りのよい高い声、あふれる覇気を支える柔軟性に富んだ動き。 その全てが健康状態が良好であることを示している。 さらに、はちきれんばかりに発揮されている元気から、この子らがのびのびと成長していることも存分にうかがえる。 ゆっくりにとって理想の家族像がこれだと言われたら、信じてしまいそうな情景だった。 この家族であれば、どんな苦難が降りかかろうとも、身を挺して子供達を守るに違いない。 そう、親が子を、姉が妹を、何を措いても守るのだろう。 年少のゆっくりは、そんな年長のゆっくりの行動を指標とし、さらに年少のゆっくりに対して同じように接するだろう。 ゆっくりたちにも受け継がれる意志があるのだ。 これは秋に起こったこと。 日々を満腔の幸福で彩っていたゆっくり親子を襲った黒い絶望のお話。 橙色の空が、恐怖に蒼褪めたように暗くなり、とうとう墨を流し込んだようになったころ、ゆっくり親子は巣でゆっくりしていた。 最年少の子供たちはすでに夢の中へと潜りこみ、安らかな寝息を立てている。 4匹がそれぞれお互いの顔を見合わせるような、円陣を組んだような体勢。寝付くまで年少組だけでおしゃべりに興じていたのだ。 そのすぐ隣には、年少組より二回りほど大きな4匹が、これまた円陣を組んでおしゃべりをしている。 年長組だ。 2匹の親ゆっくり魔理沙が狩りに出かけている間、年少組の世話をするのが日々の仕事だった。 むろん、簡単な狩りの真似事ならお手の物で、妹たちが蝶々や飛蝗をねだると、それらを取ってやっていた。 そんな年長組だから、妹たちが寝付いたときから、ぽそぽそと声を潜めてお話をしていた。 けれど、迫る睡魔に抗する術も持たないのか、すでに目がとろんとしていてまぶたも落ちかかっている。 「あしたもゆっくりしようね」 「みんなでゆっくりするよ」 と今日へのお別れを口にしていた。 親ゆっくり魔理沙たちは、8匹の子供たちが、全て寝静まるのを確認してから眠りにつくことにしている。 だから、真夜中の来訪者に気づいたのも、当然のことながら2匹の親ゆっくり魔理沙だった。 巣が揺れる。 地震だろうか?いや、違う。 何かがぶつかっているような音がしている。 それだけではない、みしみしと巨木が軋む音がかすかに聞こえてきている。 「ゆっ?なに?」 「ゆっくりかんがえてもわからないよ!みてくるね!」 「ゆっくりきをつけて!」 勇敢にも大きいほうのゆっくり魔理沙は、入り口から外を確認にしにいった。 片親は8匹のそばに跳ねていく。 まだ眠りの門は破られていないのか、安らかな寝息は乱れていない。 ほっと安堵の表情を浮かべる親ゆっくり魔理沙。 子供らを背に、入り口へと向き直ると、愛するつがいの怒声が聞こえてきた。 「うるさいよ!こどもたちがおきちゃうでしょ!ゆっくりいなくなってね!!」 続く静寂。 迷惑な来訪者は去ったのだろうか? いや、揺れはおさまってはいない。それどころか大きくなっている気配すらある。 何かがあったに違いあるまい。 即座に子供達を起こし始めるゆっくり魔理沙。 寝ぼけ眼をしぱしぱさせて、 「ゆっくりねむたいよ」 と口々に言う子供達。 「ゆっくりできないよ!おきてね!」 「ゆっ!?」 「ゆ゛っ!」 親ゆっくり魔理沙の声色にただならぬものが含まれているのに気づいたのか、姉ゆっくり魔理沙たちはしゃきりと身を持ち直す。 「ゆっくりおきてね!えらいことになるよ!」 「ほらほら、ゆっくりして!」 1匹1匹がそれぞれ年少組をきちんと起こし始める。 ゆっくりとは思えないほどのしっかりとした行動。 親ゆっくりへと連綿と受け継がれた教育がしっかりと根付いていることがうかがえる。 それからいくらもしないうちに、年少組を含めた8匹の子ゆっくり魔理沙たちは完全に覚醒していた。 9匹でそろりそろりと入り口の穴へと向かう。 当然先頭は親ゆっくり魔理沙だ。 その後ろに姉と妹でペアになった、4組の姉妹ゆっくり魔理沙。 親ゆっくり魔理沙は、入り口の穴から体を出しているつがいの後ろ姿を見つけた。 「まりさ!どうしたの?」 問いかけるも返答がない。 訝しんだゆっくり魔理沙が、それに触れるとぐらりと倒れた。 生きた匂いを感じさせないその動きは、9匹に冷たいものを与えた。 倒れたゆっくり魔理沙の体表面からは暗い色の塊が見える。餡子だ。それには顔がなかった。 「ゆ゛っ!?なかみがみえでるよ゛っ!!おがおがないぃいいぃいっ!!ぶりゅっ!!!」 つがいのゆっくり魔理沙が、その体の前半分を削り取られたことを理解すると、絶叫する親ゆっくり魔理沙。 声を上げた瞬間、その体躯に太いものが突き刺さった。 毛むくじゃらのそれは、たやすく親ゆっくり魔理沙を絶命せしめ、そのまま壁に叩きつけた。 「あ゛、あ゛~~~っ!」 「おが~~~ざ~~んっ!!」 それは、甘い匂いのするほう、姉妹ゆっくり魔理沙たちの方へと動き出した。 がりがりという音。荒い息遣い。 これはきっとバケモノだ。がたがたと震え始める遺された8匹。 恐怖にまみれているが、入り口から入って来れないのが救いと思っているのか、逃げようとしていない。 いや、そもそも裏口などと言うものがないのだ。 この巣は天然自然の作り出した洞穴。 ゆっくり魔理沙たちに、地面を掘り進むほどの膂力はない。 そもそもなだらかな地面には噛み付けるような場所も見当たらない。 「ゆっくりでていってね!」 「ゆっくりできないよっ!!」 「どこかへいってね!」 口々に叫ぶ姉妹。それが功を奏したのか、もぞもぞと探るように動いていた毛むくじゃらのバケモノはゆっくりと外へ戻っていった。 そのままじっとしていると、そのバケモノは本当にどこかへ去っていったのか、巣の揺れも鎮まっていた。 自分達の、8つの荒い呼吸音が重く響く。 どれほど経ったのだろう?じっと動かずに入り口を凝視していた8匹がやっと動き出した。 ふたつの遺骸を巣の奥へと運ぶ。 生前、2匹は自分達が何かで死んだら、その体を食べて栄養にしてね!と子供達に言い聞かせていた。 子供達は嫌がりながらもそれを受け入れた。それが埋葬という概念のないゆっくりたちの鎮魂なのだった。 しかし、そんなことはずっと遠い、想像することも出来ないくらいゆっくりと訪れる遠い日のことだと思っていたのだ。 姉ゆっくり魔理沙たちは、涙をかたく堪えながら、ただの大福と化した物言わぬ塊を運ぶ。 それに対して妹ゆっくり魔理沙たちは誰憚ることなく泣いていた。泣けるうちに泣いておいたほうがいい。涙は悲しみを流してくれる。 姉たちは妹たちに、自分達の分まで泣いておくれと、願っていた。 次の日、恐怖の晩が去り、辛い現実を受け入れたのか、静まりかえった巣の中では8匹のゆっくり魔理沙たちが、親の亡骸をむさぼっていた。 味に対する言葉を何も吐かず、食べられる幸福を見知らぬ誰かたちに伝えようともしていない。 ただ、親の死肉を口にしている。 その食事は、おそらく彼らにとって荼毘に付すのと同じ意味を持つ行為なのだろう。 粛々と進む、ゆっくりにあるまじき食事行為。 8匹の姉妹に去来しているのは昨日までの両親の笑顔か。 やがて、亡骸を全て8匹が身に納めると、とたんに騒がしくなる。野生生物は悲しんでばかりいられない。これからを両親の分まで生き延びなければならないのだ。 幸い、親の遺産とも言うべきお魚さんが巣の奥にある。数日はそれだけで乗り切れるだろうが、程なく飢えることは想像に難くない。 早急に狩りを習得しなければいけなかった。 姉妹は皆で協力して狩りをすることに決めた。2匹の姉ゆっくり魔理沙と2匹の妹ゆっくり魔理沙を一組として、二手に分かれていった。 数時間後、巣に集合した8匹の収穫は、木の実が多かったがまずまずというところで、彼らに自信を与えた。 「ゆ!これならまりさたちだけでもくらしていけるね!」 「ゆっゆっ!よかったね!おかーさんたちのきょういくのたまものだね!」 一斉に喜んでいる8匹を襲う揺れ。 「ゆ……っ!!!」 とたんに顔を蒼白に染める。また来たのか?あれが!? みんなで入り口に向かうと、案の定毛むくじゃらのバケモノが暴れていた。 がりがりと地面を掻き毟っていて、それはまるで穴を掘っているようだ。いや、ようだ、ではない、それはまさに穴を掘っているのだ。 それに思い至ったのか身をすくめて震える姉妹たち。両親を昨晩に亡くしたばかりで、もう彼らの命は風前の灯。 勇敢にも震えを抑えてそれに飛び掛る1匹の妹ゆっくり魔理沙。 「もうやめてね!ゆっくりでてってね!ゆっくりできないの!ゆっくりさせてね!」 飛び跳ねて、涙ながらに訴え、それに体当たりをしている。小さいながらも家族を守ろうと必死なその様子は、他の家族たちに勇気を与えた。 一斉に飛び掛る姉妹ゆっくり魔理沙。だが悲しいかな、最初の犠牲者はその勇気を与えた妹ゆっくり魔理沙だった。 「ゆぅ~~、はなしてね!ゆっくりさせてねっ!」 それに捕えられ、引きずり出される。そして外に連れて行かれた。 「まって!いまたすけるよ!!」 「いもーとをはなせっ!」 追いかける姉妹。 「ゆ゛ぅう゛ぅう゛う゛ぅう゛ぅう゛ぅぅっ!!!」 断末魔とそれに続く咀嚼する音。 「う゛わ゛ぁあ゛ぁぁぁっ!!」 妹の仇!とばかりに外に飛び出す姉妹。この毛むくじゃらのバケモノをどうにかしないと、これからもゆっくりできなくなる!そんなのは嫌だ!! 体の奥にある勇気を奮い立たせて次々と外に向かっていく。 「ゆ゛っ!?」 まごうことなき家族の仇を前にしたゆっくり魔理沙たちは、そんな声をあげて硬直していた。 その毛むくじゃらのバケモノは、それの一部に過ぎなかったのだ。 その巨大な獣は現れた甘い匂いのするものをじっくりと見下ろしていた。その口元には餡子とわずかの皮が付着している。 妹が食べられたことを悟っても、ほかのゆっくり魔理沙たちは身動き一つ出来ない。 絶対者の視線に射抜かれて、竦んでいるのだ。 それは熊だった。それも「山の神」と謳われるほどの羆だった。 おおきい。おそらくは400㎏は下らないその巨躯は、ゆっくり魔理沙たちに死を悟らせるのに十分だった。 右腕を振り上げ、振り下ろす。 たったそれだけの行動で、7匹のゆっくり魔理沙たちは次々と吹っ飛び、屠られていった。 何故羆がゆっくりたちを?その理由は川で親ゆっくり魔理沙たちが見つけた魚が、この羆が獲った餌だったからだ。 熊は総じて執着心が強い。 一度自分の物だと定めたものを奪われたら、それを奪い返すために執拗に追いかけてくるのだ。 この家族の運命は、両親が魚を見つけたときに決まっていたのだった。 ここは広大なゆっくり平原。 ありとあらゆるゆっくりが、思う存分ゆっくりできる場所。 しかし山に暮らすゆっくりたちは、1年ともたない。 秋になると、冬眠を控えた熊の餌になるからだ。 万が一、運良く逃れたとしても、冬眠に失敗した「穴持たず」に、冬篭り真っ最中の巣を襲われ、根こそぎ食い尽くされてしまう。 山に入って、春を迎えられるゆっくりは存在しない。また、山から帰ってきたゆっくりもいない。 だから、平原にいるゆっくりたちの何割かは、毎年まだ見ぬ新天地を求めて山へ向かうのだ。 自分達の体から漂う甘く、美味しそうな匂いが、もっとも危険な獣を引き寄せることも知らずに。 終わり。 陸上最強生物の羆さんにお出まし願いました。 参考文献:三毛別羆事件の記事 熊こえ~ 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/155.html
人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。 日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、 小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。 そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。 他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。 だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。 ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。 ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。 まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。 そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。 無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。 あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。 ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。 「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」 「…………」 ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。 「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」 「…………」 偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。 もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。 ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。 普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。 肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。 そして、 「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。 ―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。 全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。 一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。 今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。 「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。 このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。 「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」 それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。 「むきゅぅーん……」 ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。 もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。 そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。 もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。 「だから……!(福山潤の声で)」 翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。 ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。 もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。 ……新たな餌を、発見した。 数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。 体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。 今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。 ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。 そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。 好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。 だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。 もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。 決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。 大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。 どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。 そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。 森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。 地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。 射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――! その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが…… 王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。 世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。 そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。 「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」 食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。 ぐしゃり。 決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。 嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。 助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。 助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!! と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆! 「たすけろ、だってさ」 「おお、いやだいやだ」 大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。 どうしてこんな顔を向けられるんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに…… 「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」 「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」 「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」 「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」 「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」 「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」 「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」 「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」 彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 DEAD END 選択肢 投票 しあわせー! (3) それなりー (4) つぎにきたいするよ! (18) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/82.html
●至高のゆっくり料理 まず、二匹のゆっくりを捕まえ、 数日間餌を与えずに放置します。 最初は、 「お腹空いたよ!ここから出してよね!」 「何か食べさせてよね!」 などと元気に騒ぎたてますが、無視しましょう。 「ゆっ…ゆぅ…」 と身を寄せ合って小さく呻くだけになるのが、 大体の目安です。 この頃には、ゆっくりのサイズも最初の三分の二ほどに 縮まっているはずです。 砂糖漬けの果物、あるいは無塩バター、 好みによってはチョコレートなどを用意します。 どれもゆっくりの大好物であり、 ご馳走を手にしてやってきた貴方に、 ゆっくり達は大喜びするはずです。 「ゆっくりしていってね!」 「早く!早く食べさせてね!」 ですが、この「ご馳走」は ゆっくりのうち、どちらか片方(より小さい方が好ましいです) にしか食べさせてはなりません。 「!!は、放してよね!ゆっくり食べさせてよね!」 「一緒にゆっくり食べたいよ!」 長い監禁生活に耐えて来たゆっくり達の間には 一種の連帯感が生まれており、二匹とも大騒ぎするでしょうが、 この「ご馳走」はあくまで片方にしか食べさせることはできない、 もう一匹には、あとで別のもっとたくさんの餌をあげる、と 説明してあげてください。 知性の低いゆっくり達はなかなか納得しないでしょうが、 結局は餓えが仲間を裏切らせることになります。 「あとで、ゆっくり食べてね!……うまうま!めっちゃうめぇ!」 「ゆっ!ゆぅぅうううううっ!!」 おあずけを食らわされたほうのゆっくりが泣き叫ぶ中、 もう一匹のゆっくりは浅ましくご馳走にかぶりつきます。 明らかに一匹では食べきれないほどの食べ物を、 がつがつと貪りくらうのです。 「うまぁ…ゆっくり食べたよ!」 「ゆ…ゆぅ…」 満腹して幸せそうな顔で叫ぶゆっくり。空ろな目をして呟く仲間のことなど、 忘れてしまったかのようです。 さて、これで下ごしらえは完了です。 次に皮剥き器を用意します。 「ゆ?ゆ、ゆっくりしていってね!」 満腹した方のゆっくりを捕らえ(急激な飽食で、身動きも取れなくなっており、簡単です)、 「ゆ”!ゆ”!」 絶叫を無視して、満腹ゆっくりを「剥き」ます。 「ゆ”ぅぅ!ゆ”っぐりや”べてよぉぉ!」 中を破いてしまわず、表層の皮だけを削りとれるよう、細心の注意を払って 作業しましょう。帽子やリボンは勿論、髪や目などもとってしまって構いません。 歯は抜き取り、口と舌だけは残しておくのが本場のやり方です。 腕に覚えがある調理者は挑戦してみましょう。 平行して、後頭部に穴をあけ、餡子を吸出します。 取りすぎると死んでしまいますし、穴が深すぎると、さっき食べさせた 「下ごしらえ」と餡が混ざってしまうので、注意しましょう。 「……!!!」 餓えた方のゆっくりには、仲間を助けるだけの力は残っていないので、 放置しておいて大丈夫です。たとえ余力があったとしても、 さっき自分を裏切った「仲間」を助けようとするかは疑問ですが…。 恐怖に震えるゆっくりに、 「これが済んだらご飯にしようね」とやさしく告げ、 満腹して膨らんでいたはずの仲間が、 また小さくなっていくのをたっぷりと見せてあげましょう。 震えているもう片方のゆっくりと見比べ、 「ちょうど良い」大きさまで処理できたら、 その、もはや「ゆ”っ!ゆ”ぅ…ぐりぃ…」 と意味の分からないことを呟いているだけの塊を横に置いてください。 もはや薄皮一枚しか残っていない状態だと思うので、 破かないように、丁寧に扱ってください。 「さぁ、今度は君が食べる番だ。たーんとお食べ……」 未処理のゆっくりに、「それ」を示してあげてください。 「?…!!!やぁっ、ゆっくりできないよぉ!」 理解しても、すぐには食べようとしないでしょう。 自然界ではゆっくりの「共食い」は特定種間以外では見られないものです。 それに、こちらが餓えに餓えた状態であり、そしてあちらがいくら「小さくなった」とはいえ、 どちらもサイズ的には大差ありません。 このままの状態では、「ゆっくり食べていってね」とはいかないでしょう。 そこで、こちらのゆっくりも処理することになります。 包丁でもって、ゆっくりの口を大きく切裂き、広げてあげてください。 「ゅゅゅ!ゆ”ぅぅぁぁぁあああああっ!」 邪魔なので歯は抜いてしまってください。 更に、開いた口から手を入れ、ゆっくりの消化器官を最大まで押し広げてやってください。 長い断食の間にかなり萎縮しているはずなので、思い切り力を込めなければなりません。 やはり後頭部に小穴を空けておき、餡子を少し出しながらだと上手くいくでしょう。 「ゆ”…ゆ”…ゆ”…」 そうして、「ご馳走」が入るだけのスペースが空いたら、 待ちに待ったお食事のお時間です。 果物と餡がたっぷり詰まった小饅頭―すなわち第一のゆっくりを、第二のゆっくりの中に 詰め込んであげてください。 「ごぉお!ゆごごぉりぃぃいい!」 久しぶりの食事に、感動に打ち震えている外側ゆっくりのお口を縫い合わせて、料理は完了。 これこそが至高のゆっくり料理、「ゆっくりのゆっくり詰めびっくりゆっくり饅頭風」! 食べる直前に、管を挿し、最上質のこしあんを入れると、 一時的にゆっくりが元気を取り戻し、いきの良い食感が味わえます。 「「ゆ”ぅっぐり…じでいってねぇ…!」」 内と外、二匹のゆっくりの奏でる二重奏を楽しみながら、 ゆっくり食べていってね!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3042.html
(編注:@wikiモードでは容量制限に引っかかったため分割) ゆっくりの靴 幻想郷には冬がある。 冬は厳しい季節だ。食べものはほとんどとれなくなるし、道はふさがれ村から村への移動も困難になる。そして何より寒い。 だが、逆境があるからこそ生物は進化し、人間は新たな知恵を生み出していく・・・。 では、近年幻想郷に発生した「ゆっくり」と言われる生物はどうか? ゆっくりは脆弱な生物だがその繁殖力は高く、その繁殖力を生かして冬を種族としては乗りきっているようだ。 だが、個々では頭があまり良くないため冬ごもりまでに餌を十分に集めることをせずに凍死する個体も多くいる。 さて、ゆっくりにとって安全に冬を越す条件とはなんだろうか? 1.まず第一に餌が十分に確保できていること。これはゆっくりが群れで狩りという名の採集をすればなんとかなるかもしれないが、群れの個体が多すぎた場合は絶望的だ。 2.次に寒さを防ぐことの出来るねぐらを手に入れること。だがこれはゆっくり以外の動物も同様なので既に空いている洞穴や穴倉を探すのは非常に難しく、ある程度の長い期間を使って自分で作るしかない。 この二つが絶対条件なのである。 今は既に秋口を通り越し落ち葉の数もめっきり減ってきた。冬はもうそこまで来ている。 しかし、今群れには何も考えずに繁殖してしまった結果赤ゆっくりや子ゆっくりが大量に居る上にリーダーのぱちゅりーの言うことを聞かずに餌も十分に集める事もしなかったため 冬を越す為の貯蓄はまさに絶望的だった。 たとえ赤ゆっくりが居なかったとしても、冬を越すことは出来ないだろう。 そして巣穴だが、これも明らかに不足している。 秋にすっきりーしてしまったため、今ある巣穴では既に全員が入りきることが出来ないのだ。今から増築?増穴?しても間に合わないだろう。 既にこの群れの未来は八方塞がりに見えた。 そう、もう正攻法に頼るわけにはいかないのだ。 そしてリーダーぱちゅりー他、ゆっくりにしては頭の回るゆっくり達・・・その数10匹がこの群れを捨てて人間の里に行くことを決意した。 「むきゅっ、みんな聞いてね。このままじゃ冬を越せなくなってみんな死んじゃうよ。だからぱちゅりー達は人間の里に行って人間さんのお家で働かせて貰うよ!」 「ゆゆっ?!人間さんは危ないよっゆっくり出来ないよっ!ぱちゅりーはバカなのっ?」 「ゆゆー!なんで働かなくちゃいけないの?それじゃあゆっくりできないよ!ぱちゅりーはバカだねっ!」 「「ゆゆ~ゆっきゅりできないぱちゅりーはゆっきゅりいらないよっ!ゆっきゅりごはんをおいてでていっちぇねっ!」」 「わからないよー・・・人間の里はゆっくりできないんだよー・・・・・わからないよー」 やはりこれだ。 自分たちがどれほど危機的状況にいるのか全く分かっていない・・・ 確かに人間の里にゆっくりが行くのは危険を極める状況になるだろう。だが、今ここで動かなくては全滅は必至。 ぱちゅりー達ゆっくりの群れにはもう選択できる余地など他になかったのだ。 ならば起死回生の策を取るしかない。それがぱちゅりーが出した苦渋の決断だった。 そしてぱちゅりー率いる10匹のゆっくりは群れの仲間達に追い出される感じで群れをあとにしたのだった。 人間の里。 ぱちゅりーの仲間達は、ぱちゅりー他れいむが2匹、まりさが3匹、ちぇんが2匹、ありすとみょんが1匹ずつの小さな集団で人間の里の入り口まで来ていた。 さて、ここからが問題である。 人間には自分たちを愛護してくれる人、特に関心はないけど悪さをしなければ攻撃してこない人、そして・・・無条件で地獄より苦しい事をして虐待してくる人たちがいる。 ちなみに加工場の職員は虐待の人に分類されている、ゆっくり達にとってはだが。 ぱちゅりー達はこの里の中で、愛護してくれる人か関心はないけど攻撃してこない人達と交渉してなんとか冬の間だけでも住むところと、持参してきた食料で足りない分を 与えてくれる人を探さなくてはならない。 そしてまず考えたのはゆっくりを飼っている人のお家でお手伝いをしながら冬の間の住まいを貸してもらう事だ。 運良く飼いゆっくりのバッジを着けたまりさとありすが居たのでぱちゅりーは代表してそのゆっくり達に飼い主に会わせて貰いたいとお願いに行ったのだ・・・・ が、飼いゆっくりも全てが性格の良いゆっくりというわけではない。 「ゆゆっ!薄汚いゆっくりね!全然都会派じゃないわっ、こんな汚いゆっくりをお家に連れて行ったらお姉さんに迷惑だわ!」 「ゆゆ~、野良ゆっくりの分際でお兄さんとお話したいだなんてとんでもないぶれーものなんだぜっ!さっさと山に帰って不味い葉っぱに虫さんでも食べればいいんだぜ!まりさ達は美味しいご飯で ゆっくりするんだぜっ!」 そう言ってそれぞれお家に帰っていった。 「むきゅぅ~、同じゆっくりなのに酷いんだわ・・・・」 「本当だよっ!ぷんぷんっ!」 「許せないんだぜっ!美味しいご飯を食べて自分だけゆっくりできるからあんな酷いこと言うんだぜ!」 「そうよ、ぱちゅりーは悪くないわ。気にしちゃだめよ?」 「わかるよー、ぱちゅりーはとっても頭の良いゆっくりだよー」 「ありがとうみんな、ここでくじけちゃったら冬は越せないわ!みんなで手分けしてがんばりましょ!」 そうしてゆっくり達は2匹一組になって自分たちを冬の間だけ置いてくれる人を探して回った。 そして、幸運なことにぱちゅりーとありすの組はなんとか冬の間だけ床下を貸してくれる家を見つけることが出来た。 条件は床下に居る蟻や虫を冬の間に全部駆除・・・食べてしまう事。 やはり村の家は木で出来ているため、害虫は発生しやすいし虫に家を喰われてしまうと家がすぐに壊れてしまうため家を守るための害虫駆除は必要であった。 こうしてこの組は冬の間の住処と食料を手に入れることが出来たのである。 次に、ちぇんとれいむの組だが猫好きなお兄さんが飼ってくれることになった。 この組はかなり幸運だろう。 暖かい寝床と美味しいご飯が与えられる飼いゆっくりになれたのだから。 みょんとまりさは残念なことに虐待お兄さんに捕まってしまった。 ただ、この虐待お兄さんの変わっているところはただ叩いたり蹴ったりして虐待を楽しむタイプではなく どちらかというと研究者としてゆっくりを観察するお兄さんだったのだ。 そのお兄さんが前に使っていたれいむとまりさの番の子供が沢山いたのだが その子供の世話をする代わりに、まぁ寝床と死なない程度のご飯は与えられることになった。 春になったら開放されるとは限らないしいつ処分されるかもわからないが、お兄さんの研究がどんなものなのかは賢いとは言えゆっくりには理解できないので仕方がない。 さて、残ったのはれいむとまりさの組とちぇんとまりさの組だ。 れいむとまりさは草履職人の家にやっかいになることになった。 草履職人は一人暮らしで近年親元を離れて生活するようになった若いお兄さんだった。 このお兄さんは初めての一人暮らしで少々の寂しさを感じていたので、冬の間だけ・・・と言うのならばとゆっくりを飼ってみることにしたのだ。 餌はお兄さんが草履を作るときに必ずに余ってしまう長さの藁である。 まぁ当然これだけでは少ないので料理のたびに出る残飯等も食事として与えられる事になった。 あとは、職業柄で床がすぐに藁の粉で汚れてしまうのでそれを舐め取るのが仕事として与えられた。 最後のちぇんまりさ組はとうとう住むところが見つけられずに途方に暮れていた所で偶然れいむまりさ組のお兄さんに拾われた。 今回はこのれいむにまりさ×2とちぇんの家での話しになる。 青年は困っていた。 確かにこのゆっくり達はゆっくりにしてはとても賢かったため、生活のじゃまをされたり家を壊されたりしなかったのでゆっくり被害的には問題なかった。 だが、お兄さんは駆け出しの草履職人なのであまり収入がなかったのだ。 細々と生活する分には何とか生きていけただろうが、流石に4匹分のゆっくりを十分に養って行くことはできなかったのである。 「ゆぅぅ、お兄さん顔色が悪いよ・・・ゆっくりしてねっ」 「わかるよー、ちぇん達のせいでお兄さんが困ってるんだねー、とっても申し訳ないよー」 「でもまりさはお腹ぺこぺこなんだぜ!お兄さんご飯を用意して欲しいんだぜ!」 「そうだぜ!まりさたちはお仕事してるんだからお兄さんはご飯を用意してね!」 見て分かるように、ゆっくり出来るようになりそれぞれが地の性格を出してきていた。 れいむにちぇんは元々優しい性格で飼いゆっくりには向いていると言えた。 ちなみに市場では賢いありすや性格が良く飼いやすいれいむを押しのけちぇんが一番人気のゆっくりだった。 ちぇんはそれ程賢くはないが、賢さとは別に人の気持ちを酌むことが出来る性格なのと見た目にも可愛いしっぽが生えていているのがその理由だ。 だが、まりさは最初は従順に見えていても慣れてくるとすぐに贅沢になりどんどん強欲になるのである。 今もれいむやちぇんは懸命にお兄さんに与えられた仕事である床舐めをして床掃除をしているが、まりさ2匹は時々落ちてくる枯れ草の切れ端を狙って食べるだけである。 しかも食事時にお兄さんが与える餌を我先にと食べれいむやちぇんの分も多めに食べてしまうのである。 足りると言うことをを知っているちぇんとれいむは不満はありながらも、同じ群れから出てきた仲間で自分たちより元々は年下だったまりさのために我慢をしていたのだ。 それとは裏腹にまりさ達の傲慢さは止まることを知らない。 ついにはお兄さんの仕事道具である藁にまで手を出してしまったのだ。 「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」 「むっしゃむっしゃ!まりさにはこんな枯れ草ふさわしくないんだぜ!お野菜を食べさせるんだぜ!」 「ゆゆっ!!だめだよっ!それはお兄さんの大切な仕事の道具だよっ!!それがなくなったらお兄さんが仕事できなくなっちゃうよっ!ゆっくり食べるのを止めてねっ!」 「わかるよー!そんな事をしたらお兄さんがゆっくりできなくなるんだよー!ゆっくりわかったら食べるのを止めてねー!!」 「むーしゃ、むーしゃ・・・れいむ達はバカなんだぜ!まりさたちはお兄さんに言われている仕事をしてるんだからご飯を食べるのはとーぜんのけんりなんだぜ!」 「ゆへへへへっ!バカなれいむとちぇんはそこで餓えてればいいんだぜっ!」 もう何を言ってもまりさたちは聞く耳を持たない。 このままではお兄さんに迷惑がかかってしまう・・・。 そしてれいむとちぇんは覚悟を決めてまりさたちに体当たりをした。 「ゆゆっ!!まりさはすぐに藁さんから離れてねっ!そして食べるのを止めてね!」 「ゆべっ!」 「わかるよー!まりさ達は悪い子だからゆっくりお仕置きするんだよー」 「ゆべしっ!」 まりさ達は体当たりをくらって壁にむかって転がっていった・・・。 れいむ達はこれでまりさ達も分かってくれるだろうと思っていた。しかし・・・・・ 「ゆっ!痛いけど大したことないんだぜ!」 「そうだぜ!もうまりさはちぇんよりも強いんだぜ!!」 そう、今までまりさ達はれいむ達のご飯を奪いながら多く食べていたため既に昔はお姉さんだったれいむ達より強くなっていたのだ。 そしてまりさ達の反撃が始まる。 まりさAは飛び上がりれいむを踏みつぶした。 「ゆぎゃぁっっ!」 「ゆへへ・・・あの強かったれいむお姉ちゃんも今は哀れなもんなんだぜっ・・!!」 そう言いながらまりさはれいむをさらに踏みつける。 どんっどんっどんっ! 「ゆぎゃ!ぎゃっ!ゆっ・・・」 れいむはみるみるうちに形を変え潰されていく。 その悲鳴も最初は大きかったが踏みつけられるたびに小さく弱くなっていく。 「わ、わがらないよーー!このままじゃれいぶがじんじゃうよっ!もう止めてあげてねー!?」 目の前で潰されていくれいむを見て気が動転しているちぇんはれいむを助けてくれるように懇願する。 その隙を突いたまりさBがちぇんの後ろに回ってそのしっぽに噛みついた。 がぶりっ! 「にゃっ!!い、いだいよーーー!!わがらないよーーーーー!!!!」 突然尻尾に走った激痛にちぇんは飛び上がる。しかし、尻尾に噛みついているまりさは動じることなくそのままちぇんを引き摺り回す。 「ゆっゆっゆっ!おひほよひのひぇんはばがなんだぜーーー!」 「いたいよーーー!はなしてねー!!い、いだいよーー!!」 引き摺り回してちぇんが弱って来ていたので今度はまりさBも大きく飛び上がりちぇんを踏みつぶした。 普段のちぇんならゆっくりとしてはかなり素早いので踏みつぶすことが出来なかったはずだが、引き摺り回されて弱っていたので逃げることも出来ずに踏みつぶされた。 「みぎゃっ!!ゆ、ゆっぐりどげでねぇ・・・っ、ぐ、ぐるじいよぉ。わがらないよぉ・・・」 「弱いちぇんだぜ!まりさに狩りを教えてくれたちぇんお姉ちゃんももう情けない弱虫なんだぜっ!」 昔は自分より強くて色々な狩りを教えてくれたちぇんを圧倒できるのがうれしいのかまりさの攻撃は過激になっていく。 どすんっどすんっどすんっ! 「ゆぎゃっ!ぶっ・・・!ゆげぇ・・・・・」 小柄なちぇんはついに耐えきれずに餡子を吐きだしてしまった。 そうしてしばらくれいむとちぇんをいたぶっていたまりさたちは飽きてきたのか。そのまま体当たりで二匹を床から土間に突き落とした。 どんっ・・ごろごろごろ・・・・・べちゃっ! 「「ゆげっ!」」 形が変わるまで踏みつけられたれいむに、既に餡子まで吐いてしまっているちぇんは虫の息。 あろう事かまりさたちはその二匹に土間の上からしーしーをふっかける。 「ゆっへっへっへ・・・!おぉあわれあわれ」 「強いまりさ様のしーしーをかけていただけるなんて幸せなゆっくりなんだぜーー!!ゆはーゆはーゆははっ!」 「ざこのれいむ達は冷たい土間でゆっくり反省するんだぜっ!!」 既に雪の積もっている外と直接つながっている地面の土間はとても冷たく寒く、このまま弱った体では死んでしまうかも知れない。 とくに餡子を吐き出してしまっているちぇんは危ない状況かもしれない。 踏みつけられたとは言え、外傷がないれいむは何とか冷たい地面を這いながらお兄さんの作った草履を二つ敷いてその上にちぇんをのせてあげた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ちぇん我慢してね・・っ、今お草履のうえに乗せてあげるからね・・・・・っ」 「・・・・・ゆぅ・・・ごめんねだよー・・・・れいむも辛いのにごめんね・・だよー・・・・・」 「ゆぅしょ・・ゆぅしょ・・・」 踏みつけられ変形してしまっているれいむは何とかもう全く動きを見せなくなってしまったちぇんを草履の上に乗ようと少しずつちぇんを押していく。 その様子を上からまりさたちはニヤニヤと見てヤジをとばす。 「ゆへへ・・・れいむ頑張るんだぜぇ?早くしないとちぇんが大変なんだぜぇ!」 「おぉくさいくさい。くさいれいむとちぇんは仲良く土間がお似合いなんだぜ!」 なんとかゆっくりながらちぇんは草履の上に乗り、地面からの冷気を少しだけ和らげられたのか弱々しくもその呼吸音が聞こえてくるようになった。 しかしれいむはそこで力尽きたのかちぇんに寄り添いながらもそのまま気を失ってしまった。 動かなくなったれいむ達を見るのもつまらなくなったのか、まりさ達はまた藁を食べに戻ってしまった。 お兄さんが作った草履を売りに行って戻ってきたのはこの事件があった2時間後だった。 お兄さんが玄関をあけたときにまず見えたのは、土間の草履置き場で弱々しい呼吸をしながら眠っているちぇんと、その傍らで永遠にゆっくりすることになってしまったれいむだった。 何があったのか? 突然の事態で驚いたお兄さんだったが、地面に直接座っていては寒いだろうと思い2匹を抱き上げる。 そのとき初めてお兄さんはれいむが既に冷たくなってしまっていた事と、草履が餡子でちぇんにくっついて一緒に持ち上がって来たことに気付いた。 お兄さんはそのままちぇんを自室の寝間に連れて行き座布団の上に乗せて火鉢の近くに座らせてやった。 残念だがれいむはもう事切れていたので台所に持って行き食料貯蔵庫に入れておいた。 これもゆっくりとの約束だったのだ。 もし自分たちがここで永遠にゆっくりすることになったらお兄さんが食べても良いと。 そして先ほどから見ないまりさがどこか別の場所で死んでしまっているのでは無いのかと思い二匹を探すことにした。 結論から言うと二匹はすぐに見つかった。 お兄さんの仕事部屋で。 だが仕事部屋にあった草履用の藁が食い散らかされ、まりさ達は図々しくも残りの藁に埋もれて幸せそうに寝ていた。 「ゆ~ゆ~、もう食べられないんだぜー」 テンプレートな寝言を言いながら・・・。 この時点でお兄さんは大旨の状況は理解できていた。 流石に日頃からの様子を見ていればまりさ達がずるをしてれいむたちを困らせていたことは知っていたからだ。 だが、特に愛護しているわけでもなく教育熱心でもなかったお兄さんは、まぁ別に放置していても問題ないと思っていた。 しかしどうだ?この状況は。冬用の藁靴を作るのには大量の藁が必要なのに、このゆっくり共はそれをあろう事か食べてしまったのだ。 正直これでは今年の冬を越せるのかどうか大きな問題になってしまった。 とりあえず、今すぐに叩き潰したいところだがお兄さんは我慢してまりさ達をそっと透明な箱に詰め込んだ。 さて、問題は山積みである。 まりさ達の処分は当然として、このままだとこれから作る藁靴は予定の半分程度しか作れなくなってしまう。 それだと、さすがにお兄さんもこの冬を越すことが出来なくなってしまうのだ。 この危機をどうやって乗り切ろう・・・・? そもそもこのゆっくりが来たせいでこんな目に・・・。 いや、そもそも寂しさを紛らわせるために飼い始めたペットのようなものだ、そのペットが悪さをしたからといって・・・ こうしてお兄さんの思考は堂々巡りに入っていた、その時やっとちぇんが意識を取り戻し始めた。 「ゆ・・・・ゆぅ、お、お兄さんだよ・・・」 「ん?おぉちぇん大丈夫か?お前ずいぶん弱っていたんだぞ」 意識はしっかりしてきたのか、体は動かせないまでも耳がぴくぴくと動く。 「ゆぅ~・・・お兄さんれいむは?れいむはどこにいるの?わからないよ~・・・」 座布団に乗っているのが自分だけでどこを見てもれいむが居ないのが気になるのか弱々しい動きであたりを見る。 しかし、やはりどこにも見あたらない・・・・。ちぇんの脳裏に嫌な予感がよぎる。 「・・・あのな、ちぇん。れいむなんだが・・・・お前達流に言えば永遠にゆっくりすることになっていたぞ」 「ゆーー!!?わ、わがらないよーー!わがらないよぉーー!!でいぶーーー!!」 同郷の仲間を失ったのが悲しいのだろう、ちぇんは泣き叫びながられいむの名を呼び続けた・・・。 しばらくしてある程度落ち着いてきたちぇんに事情を聞いてみた。 そうしてやっとこの事件の概略が分かった。 要するにやはりまりさ二匹が大切な商売道具を食い散らかし、そしてそれを注意したれいむとちぇんに攻撃を加えてそのうちれいむを殺してしまったと言うことだった。 「ごめんなさいだよー。ちぇんはお兄さんの大事なものを守れなかったよー」 そう言ってちぇんは謝りながらもこれから追い出されるかもしれない、もしかしたらここで潰されてしまうかも知れないという恐怖で耳を伏せてぶるぶる震えていた。 とりあえず、まりさ達は別としてお兄さんとしてはちぇんを潰すつもりはなかった。 ゆっくりにしては珍しい忠義者であったし、なにより別にお兄さんは虐待鬼意山ではないのだから。 そして気になっていた事を聞いてみることにした。 「なぁちぇん、お前が潰れて気を失っていた時に草履を敷いていたけどありゃなんでだ?」 「ゆぅ・・・あれはちぇんが餡子を吐いて弱っていたかられいむが地面から体が冷えないように乗せてくれたんだよー・・・でも、れいむは・・・わがらないよぉ・・・」 「そうか、つまりれいむは最後の力を振り絞ってお前を草履の上に・・・・」 そう、れいむは地面の冷たさからちぇんを守るために草履の上にちぇんを乗せてやったと言うのだ。 ここでお兄さんはある考えが閃いた。 『履き物には足を地面の冷たさから守る効果が必要』なのだと言うことを。 当然と言えば当然のことだが、冷気から体を守るというのは死にかけのちぇんが助かってそこそこの負傷だったれいむが死んでしまうと言うまでの明暗を分ける結果になったのだ。 もしかしたら・・・と思ったお兄さんは早速試してみることにした。 「おいちぇん、お前ちょっとお兄さんの指を咥えてみてくれ」 「にゃっ?わからないよー?ちぇんはお兄さんは食べられないよー?」 「まぁ良いから咥えてみろって」 お兄さんはちぇんの口に指をつっこんでみた。 「・・・はむっ」 ちぇんの舌は猫独特のざらざら感があり、そして・・・・・・温かいのだ! そう、生きているゆっくりの中身は温かいのだ。 お兄さんの頭には既にある商品の設計図が完成していた。 後はあの二匹でそれを実行すれば良いだけだ。 「よし、わかったぞ。お前はとりあえずこれでも喰ってゆっくりしてろ」 そう言ってお兄さんはれいむだったモノを半分に切ってちぇんに渡す。 「にゃっにゃぎゃーーー!わがらないよっ!ちぇんはれいむを食べたり出来ないよっ!」 まぁ同族食いには抵抗があるのだろう。別に食べなくても良かったが、とりあえずこのちぇんは大分弱っているので出来るだけ栄養のあるモノを食べさせたかったのだ。 「いや、良く聞けよちぇん。れいむはお前を助けるために死んだんだ。だからお前がそのれいむを食べてれいむの生きた証になるんだ」 「ゆぅ~わ、わがっだよー。わがらないげど、ぢぇんでいぶを食べてゆっぐりずるよぉ~」 そう言って涙ながらにちぇんはれいむを食べはじめた。 ゆっくりいじめ系1813 ゆっくりの靴 後編に続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5048.html
俺設定 いじめ分はあんまりないです すっきり描写あり ***************************************************************** ゆっくり絶滅作戦 ***************************************************************** 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆゆ? にんげんさんはゆっくりできるにんげんさん?」 「ゆっくりできるならあまあまをちょうだいね、 ゆっくりできないならゆっくりしんでね!」 瞬間、床に餡子の花が咲き、俺の手が黒く染まった。 ***** ゆっくり。 数年前から出没するようになった人語を話す饅頭型の生命体。 発見当初はああ不思議生物かーへーで済まされたものの、 いざ数が増えてみれば、畑が食い荒らされていたり、人家に住み着いたり、 道行く人に食い物を要求したり・・・・・・などとうざいことこの上ない。 挨拶というか開口一番に「ゆっくりしていってね!!!」と言う割には、 全然こちらをゆっくりさせるどころか、ひたすら面倒を強いる。 このことについて暇な日にてとことん問い詰めた所、 「ゆっくりをみれたにんげんさんはとってもゆっくりできるんだよ!」 「それにゆっくりしていってね、までいわれてとてもしあわせものなんだよ!」 「だからにんげんさんはゆっくできるおかえしをしなくちゃいけないんだよ!」 と吐いてくれた。即食った。おいしかった。 つまり奴らは人間に会った時、 (ターゲット発見、ゆっくりサセテ対価ヲ要求シマス) 「ゆっくりしていってね!!!」 (契約・・・・・・完了、カウント開始) (1秒・・・目ノ前ノ人間ハ死ヌマデゆっくりノ奴隷、同時ニ食物供給義務発生) (2秒・・・コノ人間ノ子孫モゆっくりノ奴隷、食物ノ質ヲランクアップ) (3秒・・・コノ人間ノ血族モゆっくりノ奴隷、住居授与義務発生) (4秒・・・全テノ人間ガゆっくりノ奴隷確定) (5秒・・・世界ガゆっくりノモノ確定) (6秒・・・・・・) などと俺推測で何とも恐ろしいことが行われていたのだ! 「だからゆっくりを絶滅させよう! な!!」 と友人に話したところ、 「うるさいもう寝ろ」 「だから・・・」 「寝言は寝て言うものだろ、だからとっとと寝てくれ頼む」 とのきついお言葉と共にうざったいという目で俺を見る友人。 「これは世界の危機だ! 決して寝言などでは・・・・・・」 「そうか、起きているから戯言と言いたいのか」 軽くあしらおうとしているのは俺の目にも明確。 「だいたいお前がゆっくりが~って話をするのはこれでもう10回目だぞ」 「ゆゆ?俺そんなに話してないよ!」 「ゆっくりのマネをしてとぼけても無駄だぞ」 ゆっくりの話し方は意外と使える。 例えば文末に「だからあまあまちょうだいね!」と付けると、 どんないい説法ももれなく台無しにしてくれる。 「今お前はゆっくりを食っているがな、いつか食われる日が来るぞ!!」 「お前のゆっくり終末論を聞いてるとさ~ 頭がおかしくなってつい変なもの作っちまったんだよ」 「お前はゆっくりの口の中で『どぼじでぞんなごどずるのおおお』ってさけ・・・ん?」 「今なんて言った、友人よ」 「つい『変なもの作っちまった』」 「ずばりそれはゆっくり絶滅に・・・・・・」 「ああ、貢献するだろうな」 それだけあしらっておいてこんなドッキリとは・・・・・・。 友人は間違いなくツンデレというやつである。 「んほおおおおぉぉぉぉ!!!」 「喜ぶのはいいが近寄らんでくれ、頼む」 ****** 友人宅には地下室がある。 そこ何かしらの研究に使っているという。 借家住まいにとっては憧れの存在。 地下 実験 のキーワードでこれまでどれだけのロマンを生み出してきたか。 だが・・・・・・。 「ここいつ来ても暑いな」 「言うな」 風通し0。とにかく暑い。 「昔の人の想像した冷気を出す機械を導入しようぜ」 「普通にクーラーと言えよ」 と邪険にしながら何かを持ってきた友人。 「よし、これがお前がレベル上げしている間に完成させた作品」 「そこ痛いとこだから言わないで」 目の前に出されたのはゆっくりれいむの入っている水槽。 何の変哲もないれいむのようだが・・・・・・。 「ゆ~ゆゆゆ~♪ゆっくり~♪」 「作品というか作詞か?」 「そうかしばかれたいか」 「いや、おうた歌っているからてっきり」 「お楽しみはこれからだぞ」 と友人は水槽のなかにゆっくりまりさを投入した。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 いたって普通のゆっくりの挨拶である。 そのまま体を寄せ合ってす~りす~り。 ひょろひょろとした舌でお互いにぺ~ろぺ~ろ。 「これは潰していいゆっくり?」 「いいから黙って見てろ」 こんなところでゆっくりの団欒風景を見せられるとは思わなかった。 すりすり、ぺろぺろ、ゆゆ~、すべてが俺のストレッサーを加速させる。 そしてとうとう俺の手の制御が外れそうになったその時! 「むしゃ!!」 「ゆぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」 れいむがまりさのほほの辺りに噛み付いた。 そのままれいむは「むーしゃむーしゃしあわせ~♪」に移行する。 噛み付かれたまりさは「ゆ?ゆ?」と状況をよく理解できていない様子。 「どぼじでぞんなごどずるのお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」 「まりさのあまあまさんはとってもゆっくりできるよ~♪」 「まりざあまあまざんじゃない゛い゛い゛ぃ゛゛ぃ゛ぃ゛!!」 「あまあまさんはゆっくりできるんだよ!!むーしゃむーしゃ」 「やべでえ゛よお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!! ばりざをだべだいでえ゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 「しあわせ~♪」 先ほどまでの団欒がうってかわって食う食われるの関係へと変化した。 幸福のシーソーが大きく傾いていく。 「ばりざばれいぶどおなじゆっぐりでじょお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 「そうだよ!れいむとまりさはゆっくりだよ!!」 「だがらぞんなごどじ」 「でもれいむはまりさのあまあまのほうがすきだよ!!!」 「ゆっぐりでぎない゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 無慈悲なるれいむの牙、というか飴細工の歯は、 まりさの目を皮をあんよを飾りをすべてを砕く。 そして辞世の句を読まないまままりさはこの世を去った。 「たべおわったら?」 「ゆっくりごちそうさまでした!!!」 満腹で今にも眠りそうなれいむからは、 何回も同じ殺しをやってきたようなオーラが漂っている。 「友人よ・・・これは・・・」 「ああ、れいむにちょっとしたことを教えてやったのさ」 「それはつまり―――」 「同族の味だ」 友人の話によると、普通のゆっくりはゆっくりの中身があまあまである、 ということを知らずに生きている。 それはゆっくりの「ゆっくりしたい」という欲求のおかげだ。 なぜなら仲間の中身があまあま分かれば、友人同士隣人同士食い合ってしまう、 というなんともゆっくりできない環境が誕生してしまう。 なので「ゆっくりしたい」欲求はあえてゆっくりの中身はあまあまという情報を消し去っているのだ。 そこに目を付けた友人はあえてその禁忌を犯させた、とのことだ。 「あくまで俺の想像だがこれで間違いないとは思う。 もし違ってたらゆっくりなんてものはこの世界からひっそりと消えているはず」 「そうであって欲しかったな、友人よ」 いたって単純な方法で、俺にでもできそうなことだ。 これで明日やることは決まった。 山に赴いてゆっくり捕獲、そのままバトルロワイヤル。 そこで生き残ったゆっくりは同族の味を覚えて、 解放した後もゆっくりを食い荒らすだろう。 負けたりはしないのか?あえてそれは考慮しない。 なぜならバトルで生き残ったゆっくりは相当強いゆっくりだからだ!! 「だから俺明日山に行ってゆっくり捕まえてくるわ」 「お前のやりたいことはだいたいわかるが、たぶん骨折り損に終わるぞ」 「なぜそう分かる」 「どんなゆっくりも家族は食わないだろう? それはなぜか? 愛があるからだ。 毎日安定した食料を得たらゆっくりはつがいを作って勝手に増える。 ゆっくり食いゆっくりを作ったところで、それはゆっくりを絶滅させたことにはならない」 「でもこの前家に侵入してきたゆっくりをボコって『家族食えば助けるよ』って言ったら普通に食ってたぞ。そういや途中で目つき変わってたなー」 「ただし武力介入を除く、だ」 「えー」 途中で愛とかどうとかポエマーになりかけてたところを笑ってやろうかと思ったが、 本気でしばかれるとレベル上げに支障が出るのでその心は胸にそっとしまっておいた。 ***** 「しかし友人よ、今回君にしてはえらく手を抜いてないかね」 「まあ・・・手抜きだろうな」 「このままだと人間がゆっくりに虐待される日も違いぞ!」 「そんなことを言うと思って第二弾を用意してみた」 再び水槽を持ってきた友人。 今度は中にゆっくりありすが入っている。 「おにいさん!はやくとかいはなまりさをつれてきてね!!」 「ありす×まりさ、読めたぞ友人よ」 「まあだいたいお察しのようだな。ほれ」 水槽の中にまりさを放り込む。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 と挨拶が終わるや否や、まりさに体を擦り付け始めるありす。 「ゆゆ~ん♪まりさのほっぺきもちいいわ!! す~りす~り」 「ありすもまんざらでもないのぜ!! す~りす~り」 す~りす~り。確実に怒りゲージをためていく。 お、今ゲージが1本満タンになったぞ。 「ところで友人よ」 「何だ?」 「まりさって『~だぜ』口調とそうでないやつがいるけどなんでなんだぜ?」 「知るか」 と他愛もないことを話していると、 す~りす~りからヌッチャヌッチャと気色の悪い音に変化していた。 ネトネトとした汁が徐々にお互いの体に広がっていく。 それを擦り込むようにより強く、より激しくすりすりを・・・・・・。 「これはゆっくりの子作りでは・・・・・・」 「正式には『すっきり』と言うらしい。俺が考えたんじゃないぞ」 「そんなのに興味があったなんて・・・・・・引くわー」 「勘違いもほどほどにしろよ、な」 ヌッチャヌッチャはさらに加速している。 ゆっくり共はもはやゆっくりとは言いがたい速度でのすりすり。 「いいよおおおおぉぉぉ!!まりさきもちいいわあああぁぁぁ!!!」 「ありすぅ!ありすもきもちいいんだぜえええぇぇぇ!!!」 激しく震えるゆっくり、そしてその先に待つのは、 「ありすいっちゃううううぅぅぅ!!!おかしくなっちゃうううぅぅぅ!!!」 「まりささまもいっちゃうんだぜえええええぇぇぇ!!!」 「「んほおおおおおおおおぉおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」 「「すっきりいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」」 すっきり、具体的に何がすっきりしたのかはあまり口に出したくはない。 「つまり爆発した性よ」 「だから言おうとするなって友人」 「とってもゆっくりできたわ、まりさ!」 「さいこうだったんだぜ!ありす!!」 あの激しい動きがゆっくりできた? と疑問符を浮かべずにはいられないが、 とにかくゆっくりがゆっくりしているんだから幸せなんだろう、たぶん。 しかしどこか違和感がある。 「ん? 待てよ。こいつらニョキニョキーって赤ちゃん生まれるんじゃないのか?」 「ようやく気づいたな、そこが今回のポイントだ」 「もういっかいすっきりしましょう! まりさ!!」 「すっきりするんだぜ!!」 と話している間にも再びヌッチャヌッチャと音を立てるありすとまりさ。 それをBGMにしながら友人は話してくれた。 ゆっくりが好きな言葉は思いつくところが3つある。 ゆっくり、あまあま、そしてすっきり。そのいずれもゆっくりに強く結び付くからだ。 今回はそのすっきりについて着目した。 本来ゆっくりはゆっくりできるすっきり大好き生物なのだが、 すっきりしてしまうとあかちゃんが産まれてしまうので、いろいろと面倒だ(中にはできたらできただけ産んでしまう個体もいるそうだ。あかちゃんは『ゆっくり』できるから)。 しかしすっきりの代償であるあかちゃんが産まれなかったら? ゆっくりは恐らくすっきりをし続けるだろう。 なぜならすっきりはゆっくりできるからだ。 ちなみにゆっくりは生きるためにゆっくりしているのではなく、 ゆっくりするために生きている。なので何よりゆっくりを最優先する。 生きることはゆっくりする手段に過ぎないのだ。 だから目の前にゆっくりできるすっきりがあればそれをし続ける、 それこそ朽ち果てるまで。 「なのでゆっくりの生殖機能をマヒさせました」 「これは教育とかどうとかレベルじゃないな」 「そのまさかで今回は鷹の爪を少々」 「甘味の敵は辛味だからな・・・って料理かよ!」 「ちなみに作り方は・・・」 「「んほおおおおぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉ!!!」」 「「すっきりいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」」 「以上」 「いや、友人よ余裕で聞こえなかった」 大切な機会を失ったようなので、腹いせに三回戦に突入しかかっている 淫乱饅頭を口に入れた。餡子の甘ったるい味に変なソースかかってる!! 「じゃあこれを野に放てば・・・」 「せいぜい1匹しか仕留められないな。早い話―ー」 「役に立たない、と」 「全員に改造を施したとして・・・」 「まあ、亡骸を食うのが妥当で死にはしないだろ」 「でもこれだったらゆっくりは一応絶滅するな!」 「その自信はどこから沸いて来る」 「なぜなら『ゆっくり』が『すっきり』という名前になるからだ!!」 バチコーン!! ああ、これで明日のレベル上げは難しくなりましたね。 「ところでさ、友人。何でそんなにゆっくりについて詳しいのさ」 「それは・・・・・・本にあった」 「本書いた人って何でそんなにゆっくりについて詳しいのさ」 「それは・・・・・・そういえば」 「俺が思うにさ、著者って実はゆっくりじゃないかと」 「ふーん。で、その心は?」 「にんげんさんにゆっくりのことをしってもらえればゆっくりできるよ!! とか」 「でその結果がこれか」 「そうだとすればずいぶんと気の毒なお話だこりゃ」 ***** その後 俺はゆっくりが世界を滅ぼすとかもうどうでもよくなっていた。 もしこんなでたらめなものに世界が滅ぼされるのならば、 それこそ世界自体がとんでもなくでたらめなものだからだ、と思えるようになったから。 実はそれ以外にも世界って結構でたらめだよね。 例えば、俺に彼女がいないとか・・・・・・。 「というわけで俺に彼女ができないのは世界のせい。間違いなくガイアの陰謀」 「流石に整形費用を調達するのは自分でやってくれ」 間違っているのは世界じゃない。俺の顔だ!!! そう叫んでみた帰り道、通りすがりのおばさんがバナナをくれた。 とりあえず家に帰ってから泣いた。 終 ***** おまけ 「お前ゆっくり飽きちゃったのか、せっかく面白いもの作ったのに」 「饅頭が世界を支配しようだのおごがましいと思わないかね友人!!」 「だが面白いものは?」 「見るぜ」 と、用意されたのは水槽とあのまりさを食っていたれいむと、 まりさを(いろんな意味で)食っていたありす。 「問題、この2匹はどんな行動をするでしょうか! 見事正解したら手術費出してやる」 「あまり俺を馬鹿にしないでもらいたい、れいむがありすをむしゃむしゃしあわせーだ」 「ファイナルアンサー?」 「ファイナルファイナル」 「では正解は、こちら」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむ!ありすとすっきりしましょう!!」 「いいよ!!すっきりはゆっくりできるよ!!」 とわずか5秒ほどですっきり行為の開始。 ヌッチャヌッチャと音を立てながら例の汁が垂れ始める。 そして、 「「んほおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」 「「すっきりいいいいぃぃぃぃ!!!」」 とこれまた開始30秒ほどでフィニッシュ。 とここでれいむがおかしな行動を取り始めた。 「ぺーろぺーろ!」 とありすの全身にこびりついたすっきりの際に分泌された汁を舐め取っている。 それもまりさを食べていた表情で。 「れいむ、すっきりさんをぺろぺろしてどうするの? とかいはじゃないわ!!」 「すっきりさんはあまあまでゆっくりできるよ!! ありすもぺろぺろしてね!!」 「ぺーろぺーろ! ゆゆ? とってもとかいはなあまあまさんね!!!」 「あまあまさんをぺろぺろしたらまたすっきりしようね!!」 「すっきりしたら、あまあまさんをぺろぺろしようね!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ヌッチャヌッチャ 「というわけで正解は、『すっきり汁で無限すっきり』でしたー」 「んなもん分かるか!」 「でもさ、なんだかんだいってゆっくりがゆっくりできていいじゃない」 「ならば俺がそのゆっくりをぶち殺す!」 ブニュ トカイハー 「むーしゃ♪むーしゃ♪ うげげ・・・。やっぱりすっきり汁ってまずくね?」 「俺は結構好きだぞ?」 「友人・・・。お前すっきりゆっくり好きなのか・・・」 「そういえばあのときのまりさ、楽しみに置いといたのに、 何でかいなくなったんだよな。あの後食おうと思ってたのだが」 「彼女は神隠しに遭いました」 「しらばっくれなくてもいいぞ、お前の胃の中に隠されてたんだろ?」 「ギクッ」 「全部お見通しなんだよ!!」 バチコーン!! バチコーン!! バチコーン!! バチコーン!! バチコーン!! 終 ***************************************************************** 久しぶりに書くと結構いじめかたを忘れたりする。 今まで書いた作品 初めての制裁 僕のうさばらし ゆっくりは死んだ 見せあいっこ ゆっくりの伝道師 妄想お兄さん 赤ちゃんのゆっくり返し お家宣言アラカルト このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/115.html
最近つくられたその施設は、甘い香りで満たされていた。 「ようこそ、おいでくださりました」 年配の男が一人、立ち上がって少女を迎え入れる。 その出迎えに、少女は恐縮気味にぺこりと頭を下げた。 「すいません、ご多忙の折に無理をいってしましまして」 「いえいえ、構いませんよ」 営業用の笑顔が男の唇に浮かぶ。 「では早速ですが、先日のお約束どおり、今日はうちの施設についてご案内いたしますね」 「お願いします」 簡潔な了承を得て、男は施設の奥へと少女を伴って歩き出した。 ついていこうとする少女。 ふと、真鍮のプレートが視界に入る。 『ゆっくり加工所』 そこが、少女の目的の場所だった。 「ここが、捕獲した『ゆっくり』の貯蔵庫です」 男が背の高い柵を指差していた。 柵の隙間には、押し付けられて膨らんだ顔が並ぶ。 「ゆゆゆ……」 少女が上から覗くと、中にひしめき合う「ゆっくり霊夢」と「ゆっくり魔理沙」の一群。三十匹はいるだろうか。 これは、最近幻想郷で見かけるようになった奇矯な生き物たち。 発生源や種のあらましもまったく不明だが、よく似た顔の実在人物とは関係がないことと、中身が餡子などでできていることだけは知られていた。 幻想郷の甘いものが好きな庶民にとっては、甘味を手の届きやすい値段に押し下げた恩人たちといっていい。 そのゆっくりたちは押し込められ、柔らかい体をひしゃげながら、視線の定まらない瞳で虚空を眺めていた。 「ゆっくり?」 が、その瞳に少女の姿が映し出されるなり、一斉に騒ぎ出す。 「おねーさん、ここからだして! おなかすいたよ! おうちかえる!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、柵をぎしぎしと揺らすゆっくりたち。 「ここにいるのは、全て捕獲したものですか?」 「ええ、お客さんの中には天然ものがいいという方もいるので」 少女と男の会話に、ゆっくりの必死の言葉を意に介した様子はない。 「私なんぞは味にうといものですから、繁殖したものと天然ものの違いなんてわからないのですがね」 ハハハと乾いた笑い声を上げる男。 少女も、お愛想の微笑で応じる。 男は冗談が通じたことに一応の満足。 「では、次はその繁殖場面へご案内します」 「はい」 二人、ゆっくりに背を向ける。 「ゆ! ゆっくりしていってよー!!!」 柵をびりびりと震わす声も、扉を閉めるとかすれて消えていった。 「繁殖の成功と効率化は、この事業が成り立つための最大の課題でした」 しみじみと男は呟く。 男と少女の二人が並んで立つのは、背の低い柵の前。 その中には、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が一匹づつ紐で結ばれて転がっている。 「最初に繁殖に成功したのは、この組み合わせです。ですが、問題がありまして」 言うなり、男は無造作に柵に手をつっこむ。 「ゆっ!?」 そのまま、二匹をわしづかみにするなり、手首をぶるぶると小刻みに振るわせ始める。 「ゆー!!! ゆー!!!」 揺すられるがまま、甲高い声を上げ始める二匹。 「ゆー、ゆー、ゆーっ!」 やがて、声がとろんと艶をはらんでいく。 男の手首がさらに激しく蠢動を重ねると、ゆっくりの口がだらしなく開かれ、赤みが濃い色彩を帯び始めた。 「ゆゆゆゆゆゆゆ」 目つきが熱を帯びたところで、男は手を止めた。 「ゆ? ……ゆっくりしていってー!!!」 切なげな声が男の手を追いかけるが、すでに男は少女と向き合っていた。 「こうやって発情させた後、二匹だけにして暗がりに放置しないと繁殖を始めないので、手間がかかる上、数を増やせないという欠点がありました」 「なるほど」 「ですが、ここで繁殖力旺盛なゆっくりアリスという新種を発見したのが事業の転機となりました。今日、ちょうどその繁殖予定日となっています」 男が部屋の奥に視線を投げると、その視線を受けた従業員らしき男が両手にゆっくりを二匹抱えて近づいてくる。 ゆっくり魔理沙より短めの金髪で、赤いヘアバンドが目を引く、珍しいゆっくりだった。 従業員は、柵の中へゆっくりアリスを放り投げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 本能なのだろうか。 突如あらわれた同類を見るなり、ゆっくり魔理沙は大きな声でご挨拶。 だが、次の瞬間、表情が固まる。 「まっまっまっ、まりさ!!!」 弾けるように、二匹のゆっくりアリスは魔理沙の元へ。 「ゆ゛っく!?」 定番の台詞も、密着したアリスの頬に邪魔されて満足に動かない。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」 それでも懸命に台詞を口にしようと足掻くゆっくり魔理沙の上に、もう一匹のゆっくりアリスが容赦なくのしかかる。 もはや聞こえてくるのは、ゆっくりアリスの荒い息遣いのみ。 ほほをすりあわせて、よだれをこぼしていたアリスも、ぐいぐいと魔理沙を壁際に押さえつけて動けなくする。 壁に押し当てられた魔理沙は、苦しいのかようやく涙がぽろりとこぼれ、間近でその様子を見るはめになったゆっくり霊夢は柵の隅でガタガタと震えだす。 「い゛、い゛や゛あああ」 ゆっくりしていられない、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 それも、アリスの声でかき消されていた。 「ゆっくりイってね!!!」 紅潮した声でそろって叫ぶアリスたち。 途端に、ぶるぶると小刻みに震えだした。 「あ、ちょうど繁殖がはじまりましたね」 こともなげに解説をはじめる男。 「もうすぐ、押さえつけられている方が白目を見開いて、裂けそうなほど口を開いた驚愕の表情で固まってしまいます。 そうなると、この個体は徐々に黒ずんで朽ちるのみですが、その頭から蔓のようなものがのび、その先に複数の同種が実ります。ゆっくりアリスの素晴らしい点は、そうなるとすぐに次にゆっくり霊夢で生殖行動を続行することですね」 手馴れた口調で説明を重ねるが、一向に少女の反応はない。 「あ、お嬢さんにはちょっと嫌な光景でしたか。申し訳ありません」 少女の肩が心持ち震えていることに気づいて、男は慌てて謝罪する。 気丈に、少女は微笑んだ。 「いえ、そのことではありません。それに、お願いしたのはこちらですから、お気遣いなく」 男は頭をかきつつ、少女の気遣いに痛み入る。その間にも「ゆっゆっ」と気ぜわしい声が聞こえていた。 「では、こちらはここで切り上げましょう。次は繁殖に成功して増産したゆっくりを使った飼育事業についてご案内します」 異存はない。 「んほおおおおおおおおおおおおお!」 切なげな絶叫が響く部屋を後にする二人だった。 男に案内されたのは、屋外の小屋だった。 いや、二階建ての家屋に等しい大きさでは小屋と言い難い。むき出し木の骨組みと、壁の代わりに金網で覆っただけの粗末なつくりは、小屋そのものではあったが。 男は、ここを厩舎と呼んだ。 「今日は曇り空なので何も覆っていませんが、この生き物は日差しに弱いので、晴天時は上にシートをかぶせています」 そんな説明を聞き流しながら少女が厩舎に近づくと、中から獣のうなり声が聞こえてきた。 「うー! うー!」 奇怪かつ陽気な声に近づいてみれば、ゆっくりの顔の両脇に蝙蝠の翼を生やした、謎の生き物がふわふわと飛んでいる。 「肉まん種の、ゆっくりれみりゃです。ご覧の通りある程度飛べるので、この厩舎は全体を金網で覆っているのですよ」 「ずいぶんと機嫌がよさそうですね」 少女の言葉のとおり、れみりゃは鼻歌が出そうなニコニコ顔で飛び回っている。 「さっき、餌のゆっくり霊夢を与えたからでしょう」 「ゆっくりを?」 「ええ、出荷間近なのでゆっくり霊夢を餌に与えています。味がよくなるとのことで。れみりゃは高級食材などで引く手あまたですから、十分元がとれるといわけです」 なるほど、少女はれみりゃの毛並みの良さの理由がなんとなくわかった。 「大切に育てられているのですね」 「ええ、肉の質を高めるために運動も欠かさずやっています」 男の言葉が合図だったかのように、突然れみりゃが動きを止めた。 れみりゃの視線の先には、れみりゃよりも一回り小さな金髪のゆっくりが一匹。異様さでは類を見ないゆっくりだった。 翼らしきものはあったが、宝石を並べたような代物。瞳は見開いた真紅。 「ゆっくりフランです。」 男にその名を紹介された異種は、れみりゃの周りを満面の笑みで飛び回る。 れみりゃもあどけない笑顔で向き合ってはしゃぎまわっていた。 傍目には、仲睦まじい姉妹かナニカのように見えるのだが。 しかし、それは突然だった。 「ゆっくりしね!!!」 フランの口から拳のようなものが伸び、れみりゃの顔面中央に突きささる。 その拳に顔面をへこまされたれみりゃは呆然と身動き一つしない。 拳がフランの口に戻ってから、ようやくぽろぽろぽろと、とめどなく流れる涙。 「……! ……!!」 口は嗚咽にゆがんで、動転を言葉にする術を知らぬよう。 「うー! うー!」 ただ一匹、フランのみが楽しげに笑っていた。 フランは、再びれみりゃの正面に向きなおる。 「うあー! うあー!」 泣きながら逃げ回るしかないれみりゃ。 「ご覧の通り、なぜかフラン種の方が強いので、フランにはれみりゃを追っかけ回す役をさせています。他にもれみりゃの誘導など、とても助かる存在ですよ」 「牧羊犬みたいなものですか」 少女の言葉に、我が意を得たりといいたげな男の微笑み。 「さて、お次は最後。ゆっくり霊夢、魔理沙からの餡子の回収方法です」 ついにその時がきた。 少女は腕に抱えるそれをぎゅうと抱きしめる。 遠めにもわかる、巨大なゆっくりが部屋の中央の檻に鎮座していた。 その体躯は、高さだけでも少女の背を越していた。 横幅も広く、その重量は計り知れない。 「あれが、巨大種。ゆっくりレティです」 ぷっくりと膨らんだその生物を、男は指差す。 「雑食性ではゆっくりユユコに及びませんが、許容量ではゆっくり一でしょう」 この巨体を前に、男の声は説得力に満ち溢れている。頷くしかない少女。 ゆっくりレティは眠っているのか、目を閉じてくうくうと静かな呼吸音を奏でていた。 遠目には可愛らしいのだが、巨体の異様さは拭いがたい。 「今、先ほどの食料を消化中なのでしょう。そろそろ、お腹が空いて起きる頃です。ちょっとお待ちください」 その言葉を残して、男が部屋から姿を消す。 しばらくして、男はゆっくり霊夢を一匹抱えて戻ってきた。 「おじさん、今日もゆっくりしようね!!!」 その言葉と、黙って抱えられている様子に、ゆっくり霊夢の男への信頼が伺える。 恐らく、その無垢な信頼感は繁殖から育てたゆえだろう。 推察を重ねる少女へ、男は静かに語りかけてきた。 「では始めますよ」 少女の頷きを確認するなり、レティの檻に放り投げられるゆっくり霊夢。 「ゆっ、ゆっくり!?」 遠ざかっていく、ゆっくり霊夢の驚愕の表情。 レティの体躯にあたり、ぽよんとはねて転がる。 同時にのっそりと動き出すレティ。 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 一目散に檻の入り口へ。 しかし。 「早く扉を開けてね!!! 」 すでに男によってロックされた後だった。 地面が揺れる。 ゆっくりレティが飛び跳ねながら近づいてきていた。 「おじさん! ここから出して! もっと、ゆっぐりじだい゛いいいい!!!」 「レティ種は鈍重なので扱いやすいのが利点となります」 扉越しの哀願も、男の穏やかな眼差しを動かすことはできない。 やがて、ゆっくり霊夢の上に差す巨大な影。 レティが、真後ろにいた。 ゆっくり霊夢の顔がくしゃくしゃに歪むのと同時に、開けっ放しのレティの口から分厚い舌がのびる。 霊夢は瞬時に舌に巻き取られた。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 悲しげな絶叫を残して、ぺろんとレティの口の中へ。 少女は見た。 飲み込もうとしたレティの口の中にうごめく、何匹ものゆっくりたちを。 レティのベロに抑えられて身動きもできず、滂沱の涙を流して視線を男に向けている。 「レティ種は、リスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える癖があるんです。最長で二週間は保存されていますね」 ゆっくりたちの視線に、男は興味を示さない。少女に自らの事業を説明することの方に傾注している。 「餡子の回収は、レティが熟睡した後に、後ろに穴をあけて搾り出します。定量を絞ったら、塞いでまたゆっくりを与えるのです。秘伝のタレを継ぎ足し、継ぎ足し使っている焼き鳥屋を思い浮かべてください」 言われてみれば、寝床に戻るレティの後頭部に隆起部分が。 「ちなみに、一度レティ種に消化させることで、甘味がまろやかになって質がよくなることと、混ざり合うことでの品質の均一化が図れます。生産者にとって大切なことは、量産性と高品質、そしてその維持です。このシステム構築は、私の ゆっくり業者としての矜持なのですよ」 誇らしげな男の言葉が少女の印象に強く残っていた。 職業人魂。 男の言葉を、少女は強く理解できる。 なぜなら、自分も人形という分野で職人的な魂に触れているからかもしらない。 そう。少女は、アリスだった。 可憐な彼女には場違いなその加工所を後にしたアリスは、夕焼けの空に時間の経過を知る。 「今日はずいぶんと大人しかったわね」 一息ついて、見学の間中、両手に抱えていたソレに今日初めて話しかける。 「それにしても、いいお話が聞けたわ、魔理沙」 アリスの腕の中でぶるぶる震えているその生き物は、正確には魔理沙ではない。 数ヶ月前、魔法の森で捕まえたゆっくり魔理沙だった。 「でも、今から震えてどうするの? 魔理沙をあそこに預けるのは、明日よ」 アリスの真顔に、冗談のニュアンスは欠片もない。 「い゛や゛あ……」 ゆっくり魔理沙からこぼれる弱弱しい悲鳴を聞きつけて、アリスは嬉しげな顔を紅潮させる。 「だって、私があんなに優しくしてあげているのに、あなたは逃げ出そうとするんですもの」 言いながら、息も荒くなる。 「だったら、あそこでゆっくりしていってもらうだけよ」 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだくない、じだぐないよおおおお!」 「あらあら、ゆっくりにあるまじき言葉ね」 涙やらなにやらで醜く濁ったゆっくりの言葉を、恍惚の表情でまぜかえすアリス。 「どうしても嫌だというのなら、仕方ないわね。その代わり、わかっているかしら?」 「うん! つねったり、踏んだり、……しても、いいから!」 しゃくりあげながらのゆっくり魔理沙を、アリスは一転して慈母の笑みで見つめる。 ぎゅうと、愛情をこめて抱きしめつつ話しかける。 「そこは『いいんだぜ』にしなさい」 「わっ、わかったぜ!!!」 「ああ、本当に可愛い、魔理沙!」 宵闇が迫る夕べを背景に、一つに重なる影。 何やら、それなりに幸せそうな一人と一匹であった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2073.html
虐待描写薄め。と言うかほとんどないかも 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪ゆぎゃっ」一本の矢がゆっくりれいむを貫く。 「どうしたの、れいむ?ゆがっ」突然のれいむの絶命に驚く間もなく、ゆっくりまりさも矢の餌食になる。 「なんだ、普通のゆっくりか」茂みから現れた男が、自らが狩った獲物に落胆した声を出す。 彼は、名もなき狩人。この山の山菜と山の動物を狩ることを生業としている。 突如、ゆっくりと呼ばれる物が大発生し、彼の住む山にも多く見かけるようになった。 だが、彼の暮らしは1つの取引が増えただけで、大して変わらなかった。 「おきゃあちゃぁぁぁん」「ゆっくりできないよぉぉぉ」「しょりじょうはいやぁぁぁぁぁぁ!」 山菜や、捌いたシカや猪、熊の肉や皮を人里に卸すように、赤子ゆっくりを処理場へ卸すこと。 それが増えた取引の内容であった。 ある日、取引を終えて、家に帰る途中のこと。 いつものように、古い洋館から聞こえる音色を聞いていたとき、黒い帽子をつけた金髪の一匹のゆっくりを見つけた。 最初は、ただのまりさ種かと思い、気にも留めていなかった。だが、よく見ると違う。 金髪ではあるが、短髪。黒い帽子ではあるが、帽子の先に月を模したような飾り。 「ゆっくり…ルナサ?」 男がそう呟くと、聞こえたのかゆっくりがこっちに振り返る。 「ゆっくりしたけっかが、うつだよ…」 ルナサを模したゆっくりが、けだるそうに呟く。 珍しいものを見つけた。男はそれを掴みあげると、そのまま家に持って帰った。 「はぁ…」家についても、ゆっくりるなさ(いま命名)はまだ沈んでいた。 生態資料用の事典に記載ないゆっくり。まずは中身を調べてみなくては。 るなさの後頭部を目立たないように傷をつける。 「うぁぁぁぁぁぁぁ!」さすがに悲鳴を上げるるなさ。その傷口にスプーンを刺し、中身をすくう。 「あぁぁぁぁ…わたしのなかみが…きあつがさがる…」 嘆き、沈むるなさを尻目に、すくった中身を食してみる男。 「甘さの中にほんのりとした苦味…これはビターチョコか…」 傷口をココアでふさぎ、これはどうしたものかと考えたが、とりあえず今日は寝ることにした。 「あぁ…きょうだけでこんなひどいめにあうのなら、あしたはもっとひどいめにあうんだろうか…うつだ…」 るなさの嘆きがまだ続いていた。 次の日、るなさは変わり果てていた。要するに死んでいた。 口の中を調べてみると、舌と思われる部分を噛み切ったようだ。 ゆっくりって、舌を噛み切っても死ぬのか?そもそも自殺できるのか?と色々考えたが、死んでしまったものはしょうがない。 とりあえず、今日のの朝餉にしよう。 「…ぐはっ!にがっ!!」 るなさの遺骸に入ったチョコは、昨日とは比べ物にならない凄まじい苦味があった。 かろうじて、味はチョコだとはわかる。だが、甘味が全く消えていた。 なんとか、るなさを腹に収める。この味は、外の世界から来た『99.99%』というラベルの貼ったチョコに似ているなと、忌まわしいことを思い出した。 数日後、いつものように、古い洋館から聞こえる音色を聞いていたとき、今度は白い帽子ののゆっくりを見つけた。 「めるぽ!」 また、事典にないゆっくりである。 「え、えーっと、ゆっくりメルラン?」 男がそう呟くと、ゆっくりがこっちに向って叫ぶ。 「ゆっくりはっぴーになってね!めるぽ!」 やかましいな、と思いながらも、ゆっくりめるらん(命名)を持ち帰る男。 「はっぴーはっぴーめるぽっぽ~」家に帰っても、まだ明るい、というか明るすぎるめるらん。 動物の毛皮から血を抜くように、目立たぬ場所に傷を入れる。中身確認である。 「ささってるささってる!めるらんになにかささってるよ!」 ちょっと危ないんじゃないか?と思うような、悲鳴というより喜びの叫びをあげるめるらん。 「白くて甘い…ホワイトチョコか」 「おいしい!?めるらんのなかみおいしい!?しろくてどろっとしたなかみおいしい!?」 中身を食べられたと言うのに、この超ハイテンション。さすがに男はちょっとイラついたのかめるらんを叩く。 「がっ!したのね?!もっとしてもいいよ!めるぽ!」 ますますテンションが上がってしまったのか、さらに叫ぶめるらん。ガッと叩き返す男。 「めるぽ!」ガッ「めるぽ!」ガッ「めるぽ!めるぽ!」ガッガッ 「めるぽめるぽめるぽめるぽ!」ガッガッガッガッ! その繰り返しは、いつまでも続いた。 男の方も脳汁が流れ出そうなほどにテンションが上がってしまっていた。 ・ ・ ・ ・ 男が我に帰ったとき、めるらんは無残な姿になっていた。叩きすぎたのであろう。 だが、このめるらんの恍惚とした死に顔は何だ?こんな顔で死ねるのか? とりあえず、めるらんの遺骸を食すことにした。食べ物を放置することはできない。 「…あんまぁ~~~」 疲れが一発で吹き飛ぶような甘さ。というか、甘すぎる。普通の砂糖でもここまで甘くはない。 とりあえず、さっきの狂乱の疲れは取れたようだ。 また、数日後。古い洋館近くに行くと、茶髪で赤帽子のゆっくりを見つけた。 「今度はリリカか…」 「ゆっくりしていってね!」 まあ、これも珍しいと、男はまた持って帰った。 「ここがりりかのおうち?ゆっくりしていってね!」 家にゆっくりりりか(命ry)を持ち帰った男は、りりかの中身確認を淡々とはじめた。 「うぎゃぁぁぁぁぁ!なにをするの!おじさん!ゆっくりできないよ!」 「…普通チョコクリームだな」 「なかみをたべないでよおじさん!ゆっくりできないよ!ゆっくりできないやつはゆっくりしね!」 なんというか、りりか自身は事典には載っていないのだが、行動は普通のゆっくりそのものである。 「ほら、はやくりりかにゆっくりごはんをもってきなさいよ!いってることわからないの?ばかなの?」 悪態をつくりりかに、かなりイラッとした男は、りりかをボコる。 「ゆべっ!なにするのよ!(ガッ)ぎゃっ!やめてよ!(ガッ)ゆっくりさせてよぉぉぉ!」 男の折檻が続く。やがて限界が来たのか 「ぼっどゆ゛っぐりじだがっだよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 と、なんとも普通な断末魔を上げてりりかは死んでしまった。今回は素だった。 遺骸を食してみたものの、やっぱり普通のチョコクリームだった。 後日、プリズムリバー姉妹の下に、とあるファンから、チョコの香りのする香水がプレゼントされた。 男は姉妹の大ファンだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/925.html
前 代表ゆっくり(後) 翌朝、晴れやかな寝覚めを迎えた。今日は仕事も休みだ。 耳栓をしていたのを思い出し、外してみるともう子ゆっくりたちの声は聞こえなくなっていた。 まさかあの状況で眠ったのだろうか? お仕置き部屋にいって確認してみる。 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」 相変わらず糞真面目に返事を返し続けていた。が、それだけだ。 それ以外に文句を言ったり、眠れないと騒いだりはしなかった。 どうせ誰にも聞いてはもらえないし、体力の無駄だからだ。 身体が反応するままに任せ、半分意識が飛んだような状態で子ゆっくり達は起きていた。 電気が勿体無いので、蓄音機を停止させる。 ようやくゆっくり地獄から解放された子ゆっくり達は、一斉に俺に向かって突っ込んできた。 なんだ、元気そうじゃん。やっぱりゆっくりに眠りは必要無いのだろうか。 「おはよう! よく眠れたかい?」 「ゆ゛がぁぁぁぁああ゛ぁぁぁ!!ね゛むれるわげないでじょお゛ぉぉぉぉ!!!」 「へんなゆっぐりがずっとおごじでぎだのぉぉぉぉぉおおぉぉ!!」 「ぜんぜんゆっぐりねむれながっだよ゛ぉぉぉぉおおぉぉぉぉ!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 「あ゛や゛まれ!!ばりざだぢにあ゛やま゛れ゛ぇぇぇぇぇ!!」 「じね!!ゆっぐりでぎないおじざんはゆっくりじないでじね!!!」 「まあまあ、お前らの代わりにお母さんがゆっくり眠ってくれてるから心配すんな。ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」 あーおもしれ。 と、子ゆっくり達の攻撃が止んだ。なにやら辺りを伺うようにしている。 「ゆっ!?なんだかいいにおいがするよ!!」 「おじさん!!もしかしてそれれいむたちのあさごはん!?」 「おかあさんがおきるまえにたべさせてね!!」 「ゆっくちはやくおろちて!」 子ゆっくり達は興奮から収まったのか、ようやく食べ物の匂いに気付いたようだ。 そう、俺はこの部屋に来る時すでに朝ごはんを持ってきていたのだ。 起き抜けの親まりさにさっそくゆっくりしてもらうためにね。 しかし面白いなあ。「おかあさんがおきるまえに」ってことは、子供達に意地悪してるのは俺じゃなくて お母さんってことになってるわけか? 絶対者であるお母さんが俺を弛んだ顎で使ってると。ムカつく認識だぜ。 「うーん、どうしよっかな~。お前たちをゆっくりさせていいものか……」 「ゆっゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「まりさたちをゆっくりさせないおやなんかにあげるごはんはないよ!!」 「これからはれいむたちをゆっくりさせてね!!おにいさんもいっしょにゆっくりさせてあげるね!!」 急に媚び始めた子ゆっくりども。今さっきまで「しね」とか言ってた分際でお早い変わり身である。 まあゆっくりたちのこんなところが好きなんだけどね。虐待的な意味で。 「でもやっぱり駄目だな。お母さんはお前たち一家の代表として罰を受けてるんだからね! 子供にまでお仕置きをしたら俺がお母さんに怒られちゃうよ!」 「ゆ゛ぎぃぃぃぃいぃぃぃ!!な゛んでぞんなごどい゛うのお゛ぉぉぉぉぉぉ!?」 「おじおぎじゃないよぉぉおぉぉぉぉ!!ゆっぐりはいいごどでじょおおぉぉぉぉお!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!」 「お゛があざんのいう゛ごどなんできかなぐでいい゛でじょぉぉぉぉぉぉ!!!」 「でいぶだぢがゆっくりでぎないのも、あのばがお゛やがだいひょうどがいっでちょうしにの゛っでるぜいだぼ!!!」 「ごろじで!!お゛があざんをごろじでね!!ばりざだぢをゆっぐりざぜでねぇぇぇ!!」 過激な発言が飛び出し始めたな。耳当てをつけて寝ている親まりさだが、聞いたらどう思うだろうか? 「あのさあ、静かにしてよ君ら。これからお母さんまりさを起こすんだからね。 もしお母さんまりさがゆっくり出来なくなったらどうすんの?」 「ゆ゛っ!あんなやじゅゆっぐりでぎなくなればいいよ!!」 「じゃ、もしお母さんが『ゆっくりできないかられいむたちをころしてね』って言ったらどうする? 俺はゆっくりさせなきゃいけないから、殺さないといけないんだけど?」 「ゆ゛ぐっ・・・」 子ゆっくりたちは死の恐怖からか黙りこくった。あわれ。 一応、子供のためにゆっくりしているはずの親まりさがそんなことを言うとはあまり思えないが、 もう子ゆっくりたちからの信頼は無いに等しいのだろう。 正直、そういうこと言い出してもおかしくないとは俺も思うが。 さて、そんな渦中の親まりさから俺はそっと耳当てを外してやる。その刺激からか起き出すまりさ。 「ゆぅ・・・ゆ?ゆっくりしていってね!」 「お早う!ゆっくりしていってね!」 「ゆ?なんだかゆっくりいいにおいがするよ!!たべものがあるんだね!!」 「ああ、朝ごはんの用意が出来てるよ。さっそく食うかい?」 「まりさおなかすいてるよ!!ゆっくりごはんたべるよ!!むーしゃ、むーしゃ・・・しあわせー♪」 「ゆ゛ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」 寝起き早々さっそくゆっくりし始めた親まりさに、子れいむたちは尋常ならざる狂気の視線を向けた。 恨みでゆっくりが殺せるなら、この親まりさは十回は連続で即死しているだろう。 「ゆ!からだがべたべたするよ!ゆっくりねてるときにあせをいっぱいかいたよ!!」 「へー(ほんとに汗かくんだ……)、じゃあ水浴びでもするかい? スッキリするよ」 「ゆ~ん!みずあびですっきりしたいよ!!」 部屋の隅に置いてある皿を持ってきて水を注ぐ。ゆっくり用プールの完成だ。 ゆっくりの底が浸かる程度の深さしかなく、決して溺れることなく水遊びを楽しめる。 親まりさはその中に飛び込み、全身に水をまぶすように転がって遊びだした。 汗を流し、水に濡れたまりさの身体をタオルで拭ってやる。 「ゆゆー!すっきりー!」 「おっと、髪に寝癖がついてないか? 梳かしてやるよ」 「ゆ!まりさのきれいなかみをきれいにしてね!やさしくやってね!!」 俺はまりさの髪の毛を丁寧に綺麗にしてやる。 虐待経験から殺さない程度の暴力加減というのを心得てるので、ゆっくり相手なら繊細な作業もお手の物だ。 「ゆー!かみがきれいになるともっとゆっくりできるよ!! こどもたちはかみがぼさぼさだね!!ちょうどいいからゆっくりしないでそのままでいてね!!」 「「「「ゆ゛があ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」 確かに夜通しのた打ち回ったせいか、子ゆっくりたちの頭髪はボサボサに乱れている。 しかし、すっかり自分から言葉責めするようになったな。もう俺が煽る必要もない。 人間に生まれていたら友達になれたかも知れん。饅頭とは永遠に、1ミリたりとも解り合えないけどな。 すっきりしたまりさはシーソーで遊びたいと言ってきた。片一方を俺が漕ぐように指で押してやる。 一番高いところに来た時にぽーんと飛び跳ねると、浮遊感が得られて気持ち良いらしい。 その様子を見た子ゆっくり達も、なぜか虚ろな目でぽんぽん飛び跳ね始めた。大丈夫かこいつら。 あ、子ゆっくりの朝飯忘れてた。まあいいや。あとでブランチに雑草でもやるか。ずっとそれ食えってお母さんの言いつけだしな。 暴言をも封じられた子ゆっくりは、餡子混じりの涙(餡涙?)をだらだら流しながら歯軋りしていた。 俺はそのほっぺたを突いて遊んだ。 で、まあそんな生活を五日ほど続けたわけだ。仕事? 休暇だ、休暇! どんどん頬がこけて色が悪くなっていく子ゆっくりとは対照的に、親まりさの張りや色艶は増すばかりである。 俺の甘やかしに増長まくり、わがままの度を越すこと高跳び新記録を達成する勢いであった。 定期的に子供達に向かって非ゆっくり的罵倒を繰り返し、その攻撃性を磨いていたのだから当然だ。 それでも親まりさは未だに、頑なに「自分はいいことをしている」と信じ続けていた。 だがその笑みはどんどん邪悪さを増すようであった。 子ゆっくりどもは、まずい雑草しか食べられない、ゆっくり遊べない、眠ることもできない、 そんな荒廃した生活を母親に強制され、瞳から光が失われるのにそう時間はかからなかった。 代わりに深い闇を湛え始めた。徐々に子ゆっくりどもの中からゆっくりという概念が薄れ、心境に変化をもたらした。 もはや最初のように母まりさを羨ましがったり、妬んだり恨んだりということはなくなっていた。 口にはあまり出さなかったが、奴らは母まりさを蔑み始めた。 確かに自分達はゆっくりしたかった。しかし、ゆっくりした結果はどうなのだ? 家族であったはずの自分達に笑顔で苦しみを強い、目の前で怠惰と強欲の限りを尽くす醜い駄豚。 この世で最高のゆっくりを享受しているのが、このゲスまりさだ。 ならばゆっくりとは、そんなに素晴らしいものか? ゆっくりすれば、自分達もこの醜悪な生物と同じになるのではないか? そんな思いから、子ゆっくりどもはゆっくりへの憧れ、母親への情を捨て去った。 堪え性の無い奴らですよね。 もはや、お母さんは自分達のためにゆっくりしているなどという建前は忘れ去られ、耐え難い苦痛のみが残った。 というかこいつら、結局一度も母まりさの建前を信じることなんてなかったんだな。一度は自分達を救った母なのに。 やっぱりゆっくりなんて、ゆっくり出来ればそれでいいだけの生き物なんですかねえ。今はそんな生き物ですらなくなりつつあるが。 俺もそろそろ限界を感じていたし、ぼちぼち仕上げにかからなければなるまい。 親まりさはすっかり気に入ったふかふかクッションの中で、もぞもぞと身体を揺すっていた。 「まりさ、どうした?」 「ゆー、まりさ・・・れいむとすっきりしたいよ!」 「ん? れいむって……つがいのれいむか」 「そうだよ。まりさのじまんのおよめさんだよ!!もりにあるおうちでるすばんしてるんだよ!!」 生きてたのかよ。全然話に出さねーから、れみりゃにでも食われたか出産時に朽ち果てたかと思ってたぜ。 しかし性欲を抑えきれなくなってようやく思い出される嫁ってのも哀れだ。こいつに家族持つ資格は無いな。今更だが。 「おにーさん、そろそろれいむにあいたいよ!つれてきてね!!」 「無断で家に入ったゆっくりへのお仕置きなんだから、関係ないゆっくりは連れて来れないなあ」 「ゆ!じゃあもうゆっくりここからでるね!おしおきはおわりでいいよ!!」 何でお仕置きをやめるかどうかこいつが決めるんだか。根拠のない全能感が肥大化したようだ。 しかしここでのゆっくりライフを打ち切りにしてまで帰りたいとは、相当辛抱たまらんらしいな。 俺は親まりさをひょいと手の平に載せて持ち上げる。 「ふーん、じゃあお仕置きはお終いだな。お前は自由だ」 「ゆっ!わかったらはやくまりさをもりのおうちまでつれていってね!! それからおいしいおかしとおもちゃももっていってね!!それでれいむといっしょにゆっくりするよ!!」 「おーいみんな、見てるか?」 「ゆっ?」 声をかけると、子ゆっくりどもの死んだ目がこちらに向けられる。そこには何の感情も無かった。 「ゆゆっ!みんなもいっしょにかえるよ!みんなのぶんもたっぷりゆっくりしておいたからね!!」 「ナックルボール!」 「ゆ゛びゅぼべっ!!?」 子ゆっくりどもの目の前の床に向けて、親まりさをぶん投げる。 顔面から床に叩きつけられた親まりさは、放射状に餡子を飛び散らせている。 そんなまりさを無表情に見下ろす子ゆっくりたち。親まりさは息も絶え絶えに顔を上げる。 「な、な゛にずるの゛お゛ぉぉぉぉお゛に゛いざん、ま゛りざをいじめないでね゛・・・」 「良いかい? こいつは人の家に忍び込むという罪を働いたにも関わらず、 存分にゆっくりさせられてしまったゆっくりだ。こんな風に一切反省の色などなく、 せっかくまた自由になっても、懲りずに人の家でわがままを言って人間に迷惑をかけ……この有り様だ」 「ゆ゛びゅゆ゛ゆ゛ゆ゛っっ!!??」 親まりさの餡子は凍りついた。今言ったことは、自分がゆっくりすると決まった時にこの人間が説明したことではなかったか? まりさは子供達をそんな目に遭わせないために……あれ? 何で自分はあんなにゆっくりしていたんだっけ? 餡子脳が飛び散ったせいで思考がままならなかった。飛び散らなかったところでまともに考えるだけの頭があったかは疑問だが。 混乱に目を白黒させる親まりさを、子供達は特別汚いゴミでも見るような目で見下ろしていた。 「みんなはそんなクズとは違うよね。責任は全部クズの代表者に取らせようね!」 「ゆ・・・ゆっくりしね」 「ってねゆっくりしんでいってねゆっくりしんでいってねゆっくりしんでいってねゆっくりしんでいってねゆっくりし」 「おまえがだいひょうでれいむたちたすかったよ!でもめざわりだからゆっくりしないではやくしんでね!」 「ゆ゛がぁぁぁあ゛ぁぁぁぁぁ!!どぼじでぞんなごどいう゛の゛ぉぉぉぉぉ!?がぞぐでじょおおぉぉぉぉ!!」 「うるさいよ!おまえみたいなみにくいぶたはかぞくでもなんでもないよ!このよからきえてね!!」 「おいおい、そりゃ豚に失礼ってもんだろ……」 「ゆ!ゆっくちちね!」 子供達から浴びせられるのは、強い拒絶の言葉。もはや親子として、ゆっくりとしての対話すら成り立たない。 仕切り板の向こうのパラダイスにいた頃は、「みんなはゆっくりしなくていいよ!!」などと嫌味で返していただろう。 しかし今、餡子を飛び散らせながら地べたにへばりつく汚物としての親まりさに、そんなことを言える後ろ盾は無い。 「どぼじて・・・ばりざはびんなのだめをがんがえで・・・」 「あのねえ、そりゃお前が存分にゆっくりするのために自分に言い聞かせてただけだろ。 自分は何もしないで好きなだけ良い思いだけして、それが何か家族の為になると本気で思ってたわけ? ん? いや、為になってるか! 子供達はお前を醜い生き物だと正しく認識出来たわけだからね!」 「ゆ゛ゆ゛ぅぅ゛ぅぅぅ!!」 俺の足の裏に押さえ込まれながら呻く親まりさ。無表情だった子供達も、口角が吊りあがるのを押さえきれないようだ。 「ぞんな゛・・・み゛んなばりざにかんしゃじでね・・・」 「それでは、人の家に迷惑をかけたゆっくりに、代表として改めて罰を受けてもらいまーす!」 「「「「「ゆー!」」」」」 「ゆ゛ゆ゛ー!!ゆ゛っぎがぐががががげげげげっご、ぐびょ、ぱびびゅっ、ぢょぺっ」 ゆっくりに対する罰らしく、ゆっくり圧力をかけて踏み潰した。潰れかかってたからあまり意味無かったけど。 そして後に残った餡子ペーストに子ゆっくり達が群がり、たちまち食い尽くした。 ここ数日まともな食事もしてなかったからなあ。床に落ちた時の甘い匂いだけでもう生唾ゴックンだったろう。 更に一週間近くゆっくりして丸々肥え太り、死際の絶望で甘味も増している。なかなかしあわせー!な食事だったのではないか。 しかし食べながらニヨニヨと口元に笑みを浮かべるものはいても、陽気に歌いだしたりするものはいなかった。 「おやおや、家族の代表を食べちまったな」 「ゆ!!あんなのだいひょうじゃないよ!!」 「だいひょうなんていらないよ!!れいむたちはみんなでかぞくだよ!!」 「いいこともわるいこともみんないっしょなのがかぞくだよ!!」 泣かせること言うじゃねーか。家族を切り捨てて生きる饅頭のくせに。 「でもお前らはその家族を食べたね。家族を食べるゆっくりは悪いゆっくりだよね! だからお仕置きが必要だよ。でも代表がいなくなったから、みんなでお仕置き受けないとね」 「ゆ?れいむたち、ゆっくちできゆの?」 「「「「「ゆゆっ!?」」」」」 赤れいむの無邪気な言葉に、子ゆっくりたちの瞳が揺れ、わずかな光が宿る。 この数日の強烈な体験から、俺の言うお仕置き=ゆっくりさせるだと思ってるんだな。 心が荒んでいても、ゆっくりはゆっくり。ゆっくりしたいという本能が徐々に鎌首をもたげてきたらしい。 「ゆゆ!ゆっくりゆっくり~!!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!! 「まりさもゆっくりしたいよ!!ひとりじめなんかしないよ!!」 「れいむたちみんなでゆっくりするよ!!はやくむこうにはこんでね!!おかしももってきてね!!」 ゆっくりしたい。自分達はあんな豚なんかとは違う。正しくゆっくりすることが出来るはずだ。 完全に復活したゆっくり願望に、子ゆっくりどもの目には生気が戻っている。 俺はそんなゆっくりたちにニコニコしながら話してやる。 「誰がゆっくりさせるなんて言った?」 「ゆ?うるさいよ!!はやくゆっくりさせてね!!」 「お前ら頭の餡子腐ってんのか? ゆっくりをゆっくりさせたらお仕置きになんねーだろうが」 「ゆゆっ!?おにいさんなにいってるの?ばかなの?」 「言っておくけど、俺はお前らを飼う気もなければここから出す気もないから」 「ゆ゛ゆ゛!?」 「ヒャッハァー、皆殺しだ!!」 「「「「「「ゆ゛がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」」」」」」 正直こいつらにも飽きたんで、事は一両日中に済ませることにした。 あるゆっくりには、口の中に破裂するほど雑草を詰め込み。 あるゆっくりには、塩水のプールに押し込んでゆっくり溺れてもらい。 あるゆっくりには、花の種を埋め込んで苗床として花壇に植えられてもらい。 あるゆっくりには、タオルケットに包んで俺の投球練習に付き合ってもらい(餡子が飛び散らないので処理が楽)。 あるゆっくりには、針つきシーソーで串刺しのまま死ぬまで揺さぶられてもらった。 で、最後に残ったのは子ゆっくりの中でも一番大きなまりさ。 最初に俺に帽子を取られた奴だ。そういえばあの帽子はケツ拭くのに使って流した。 せっかくなんで髪もバリカンで剃り上げた。坊主饅頭の出来上がり。残った毛根がいっそう気持ち悪い。 家族が虐殺される一部始終を目撃したこのまりさには、しかしもはや流す涙も残っていなかった。 「何か哀れっぽいなあ。出す気無いって言ったけど、やっぱりお前だけは帰してやろうか」 「ゆ・・・?ほんと?」 「おうちにお母さんれいむがいるんだろ? 一人だけ残したら寂しいもんな。お前が代表として帰ってやれ」 「ゆゆ!まりざおうぢがえるぅぅうぅぅぅ!!」 俺はまりさへの餞別に、美味しそうなダンゴをいくつか持たせてやった。ゆっくりコロリだ。 帰ったらお母さんと食べろよ、と言っておいた。お母さんだけ残したら可哀想ですもんね。 まりさは「おにいさんありがとう!」とお礼を言って、家から飛び出していった。 俺は様子を見届けるため、こっそりまりさの後をつけた。ゆっくりを尾行して気付かれたことはない。 やがて森の奥の巣らしき場所に辿り着くと、「ゆ!ゆっくりしていってね!!」と感極まった声をあげた。 巣の中から出てきたのは親らしきれいむ。と、同じくらいの大きさの成体ありす。 それに赤ちゃんれいむや赤ちゃんありす数匹だった。 「ゆゆ!?れいむおかあさん、そのゆっくりたちはなに!?」 「ねぇれいむ、あのはげまんじゅうなにかしら?」 「しらないよ!れいむのこどもにあんなはげはいないよね!!」 「ゆ゛ーー!!まりさははげじゃないよ!!れいむおかあさんのこどものまりさだよ!!」 「うそいわにゃいでね!れいみゅおかあさんのこどもはれいみゅとありしゅだよ!!」 「はげでうそちゅきなんてすくえにゃいまんじゅうだね!!」 「ゆっくちちね!」 「ゆ゛ぶぎぃぃぃぃぃ!!な゛んでぇぇぇえぇぇぇ!?ぞごはばりざだちのおうちでじょおぉぉぉぉ!! ありずだぢはででってねぇぇぇえぇぇぇ!!」 どうやら親れいむは、親まりさたちが家を空けている間に別のゆっくりと家庭を作ったみたいだな。 もう前の家族のことなんて覚えているかどうか。 地獄を脱し、ようやく安息の地である我が家に辿り着いたと思ったのに、すでに居場所を奪われていたまりさ。 顔を真っ赤にして赤ありすに体当たりする。赤ありすは吹っ飛ばされ、口からカスタードを吐き出して苦しそうだ。 「れいむのあがぢゃんがぁぁあぁぁぁ!!」 「ゆ゛がぁぁぁぁあぁぁぁ!!!でいぶおがあざんのこどもはばりざなのぉぉぉぉ!!」 「とかいはありすのこどもをいじめるいなかはげはゆっくりしないでじねぇぇぇぇ!!」 ゆっくり一家によるハゲへのリンチが始まる。 消耗していたハゲは「どぼじでごんなごどにぃぃぃ」とか言いながらなすすべなく敗れ去り、一抹の餡子と化した。 どうしてこんなことに……口ではそんなこと言いながら、実際は何も考えちゃいないんだろうな。 やがてれいむたちは、ハゲまりさの持ってきたダンゴに目をつける。 「ゆ!はげのくせにおいしそうなおかしをもってるよ!!」 「みんなでゆっくりたべようね!!」 「わーい!おかちおかちー!!」 「おかちたべてゆっくちちたいよー!!」 ほくほく顔でダンゴを回収し、巣の中で引っ込んでいくゆっくり一家。 しばらくするとゆっくりたちの悲鳴が聞こえたので、巣の中を覗いてみる。 全員中身吐き出して死んでた。 俺は家に取って返すと、本棚から一冊の本を取り出し、資格勉強を始めた。 明日からまた仕事だ。頑張るぞ。 ―完― このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2559.html
※作者はふらんが大好き。 「ゆぴゃぁぁぁぁ、おきゃーしゃーん!」 薄暗い中、愛するれいむと子供たちのいるおうちへの道を急ぐ一匹のまりさがそんな声を聞いた。 「ゆゆっ、これはゆっくりしていない赤ちゃんのこえだね」 夜は、夜行性である恐ろしい捕食種、れみりゃやふらんが本格的に活動し始める時間だ。そのために家路を急いでいたまりさは、当然、様子を見に行くか迷った。 「おきゃーしゃーん! おきゃーしゃーん!」 ひたすら母親を呼ぶ声から、その赤ちゃんゆっくりが迷子になったであろうことが容易に知れた。暗くなるというのに、あんなに大声を出していたら、あっという間に捕食種がやってくるだろう。 「赤ちゃん、どこにいるの! ゆっくりしてね!」 まりさは逡巡した後、その声がする方へとぽよんぽよんと跳ねていった。自分にも最近子供ができた。どうしてもほうってはおけなかった。まだおうちには遠い所だが、まりさは自分の足には自信があった。 「ゆぴぃ、おきゃぁしゃーん……」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっきゅりちていっちぇね!」 まりさがその姿を見つけて声をかけると、赤ゆっくりは嬉しそうに返事をした。まりさと同じ種の赤まりさだ。 「まいごになったんだね。おうちはどっちかわかる?」 「ゆぅ……おうちは……」 「ゆゆ?」 さっきまでの張り裂けんばかりの大声はどこへいったのか、小声でぼそぼそと言う赤まりさへ、まりさが近付いて声を聞き取ろうとする。 がさがさっ―― そばの繁みが音を立てたのはその時だ。 「ゆっ!?」 そちらへ目をやって、まりさの目は、限界まで見開かれてしまった。 「うー」 「ゆ、ゆ、ゆ」 悲鳴を上げようとして、それが喉で詰まってしまったように、まりさは細切れの音声を吐いた。 「うー、ゆっくりしね」 「ふ、ふらんだぁぁぁぁぁぁ!」 それは、出会えばゆっくりできなくなること確実の凶暴な捕食種。同じ捕食種のれみりゃと似た姿をしているが、れみりゃよりも恐ろしいふらん種であった。 それほど大きくないまだ子供のふらんだったが、子ふらんでも通常種の大人ゆっくりを平気でなぶり殺してしまうだけの力がある。 「うー」 「うー」 「うー」 「ゆ……ゆぎゃぎゃぎゃああああ!」 まりさは、つかえていた悲鳴が一気に溢れ出たかのように絶叫した。一匹でも恐怖する以外になかったふらんが新たに三匹、別の繁みから飛び出したのだ。 「「「ゆっくりしね!」」」 ふらんたちが声を揃えて言った。まりさのただでさえ容量の少ない餡子脳には既に対処不可能な事態である。硬直してまったく動けなくなって当然の状態でありながらも、なんとか逃げ出した。 「ゆっくりごめんね!」 この状況では、赤ちゃんなど守りようがない。そして赤ちゃんが自身を守れるはずなどない以上、100%助からない。それならば、まりさが全力で逃げた方がまだまりさだけは生き残れる可能性がある。限りなくゼロに近くはあるが……。 あのふらんが空腹ならば、望みは無いこともない。捕まえやすく美味な赤まりさにまずは殺到するに違いないからだ。だが―― 「うー!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛、やべでえええ!」 ふらんたちは赤まりさには目もくれずに逃げ出したまりさを追い、すぐさま追いついた。そして、一匹のふらんが帽子を噛んで持ち上げた。 「ゆ゛あ゛あ゛、おぼうじがぁ!」 まりさの大切なお帽子をくわえたふらんが、嬉しそうに「うー!」と鳴いた。他のふらんは少し悔しそうにそれに唱和した。 れいむと子供たちのために一生懸命集めた食べ物がぶちまけられる。その中には、ふらん種が食べるものも入っていたが、当然、一番の御馳走があるのだから、そんなものは無視である。 「ゆっくりしね!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛」 次々にふらんがまりさに噛み付く。力の強いふらん種といっても、子供である。大人ゆっくりのまりさは容易に持ち上がらなかったが、帽子をくわえていたふらんが、それをぺっ、と吐き出して加わると、とうとうまりさの底部は地面から離れてしまった。 「や゛べぢぇぇぇぇ! はなぢでえええええ!」 必死に暴れるまりさだが、ゆっくりに牙を突き立て中身の餡子を吸い出すことができるふらんの噛む力は強い。四匹のふらんはぶんぶんと振り回されながらも、決してまりさを離そうとはしなかった。 「うー!」 「ゆ゛っ゛」 ふらんたちが甲高い嬉しそうな声を上げるのと同時に、まりさのただでさえ緊迫していた顔が、さらに切羽詰ったものになる。 「ず、ずわないでえ、ぢゅーぢゅーしないでえ」 遂に、ふらんたちがまりさの中身を吸出し始めたのだ。 子供とはいえ、四匹に一辺に吸われたのだからたまらない。まりさは見る見るうちにしぼんでいってしまった。 「もっどゆっぐり゛じだがっだ……でいぶ……あ゛がぢゃん゛」 もはやこうなっては覚悟を決めるしかなかったが、どうしても断ち難い未練は、自分の帰りを待つ愛するゆっくりたちであった。 まりさを襲った出来事は、確かに不幸には違いなかったが、それでもふらん種に捕食されたゆっくりにしては楽に死ねた方であったろう。 あまり空腹ではないふらんは、捕まえたゆっくりをいたぶって殺すことが多いからだ。 「うー、おちびたち、あまあまおいしかったかー 死の寸前、まりさの視界が捉えたのは、おそらくこの子ふらんたちの親であろう、胴付きふらんであった。その掌の上に乗っているさっきの赤まりさを見て、まりさはもう一度、二度と会えない子供たちのことを思い出した。 子れいむと子まりさが二匹ずつ、赤れいむが二匹、赤まりさが三匹の子供たち。友達のぱちゅりーとありすには、無計画にすっきりしすぎだと怒られたけれど、まりさが頑張って狩りをして一度も飢えさせたことはない。 しかし、自分が死ねば、自分ほど狩りが得意ではないれいむに同じだけの食べ物を集めることは不可能だろう。それが、どうしても未練だった。 胴付きふらんが、赤まりさを乗せた掌の上に、もう一方の掌を被せた。 ――ああ、あの赤ちゃんもたべられちゃう。ゆっくりさせてあげたかったよ。 そう思った次の瞬間、まりさの意識は途絶えた。限界を超えて中身を吸い出されてしまったのだ。 だから、その後に起こったことをまりさが見ることはなかった。見たら、とても信じられなかっただろう。ふらんは捕食種、まりさは被捕食種、その常識を覆す光景だったからだ。 「うー、いいこいいこー」 優しい顔をした胴付きふらんが、優しく優しく、赤まりさの頭を撫でていた。 赤ちゃんまりさは、自分の家族が大好きだ。 やさしいおかあさんと、いっしょにあそんでくれるおねえさんたち。 そして、なんといっても嬉しいのは、狩りを成功させた時におかあさんが頭を撫で撫でしてくれること。その瞬間、まりさはとってもゆっくりできるのだ。そのために、まりさは狩りのお手伝いをしていた。 「なんでばりさがふら゛んどいっじょにい゛う゛のぉぉぉぉ!」 狩りの獲物にはよく言われる。しかし、なんでと言っても、そんなの家族だからとしか答えようがない。 「うー、そろそろふゆさんがくるの、きょうもあまあま狩りにいくよ」 おかあさんの号令に、姉妹たちはパタパタと飛び回る。狩りは生活のためであると同時に楽しみであった。 飛べないまりさは、おかあさんの掌の上に乗って狩りに出発だ。 「ゆぅ、暗くなってきたよ……」 れいむは、不安そうに呟いてハッとして後ろを見た。 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 お姉さんたちの声に合わせて舌足らずだが、元気一杯の声を上げる赤ちゃんたち。自分の弱気な言葉が聞かれていなかったことに、母れいむは安堵した。 「おうちまでもう少しだよ、ゆっくりするのは後にして、すこしだけ急ぐよ!」 まだ、おうちは遠い。このままでは帰り着く前に完全に陽が落ちてしまう……。そんな内心の不安を表に出さずに、母れいむは子供たちを励ます。 「おうちに帰ったらゆっくりしようね!」 あくまでも、ゆっくりするために家路を急ごうと促す。こういう時、暗くなったられみりゃがくるよ! ふらんがくるよ! などと下手に脅かすと、子ゆっくりはともかく赤ゆっくりはパニクって動けなくなるだろうから、この判断は賢明であった。 急ぐだけ急いで、赤ちゃんが疲れたらおくちの中に入れて行こう、それでなんとか間に合うはず。と、母れいむは算段する。 「ゆわぁぁぁん、もうあるけにゃい~!」 しかし、赤ちゃんたちが母れいむの計算よりも遙かに早く音を上げてしまった。このれいむは賢いゆっくりだったが、餡子脳の限界と言うべきか、未来予測がどうしても楽観的過ぎた。 「ゆゆっ! おちびちゃんたち、おかあさんのお口にはいってね!」 予定よりは早いが、母れいむはそれでもまだ楽観論者であることを止めようとはしない。急げば間に合う、急げば間に合う、と思い続けていた。 赤ちゃんたちは大喜びで母れいむの口の中に入る。れいむが二匹、まりさが三匹、みんなが入ったところで口を閉じて、ぴょん、と一飛び。 「ゆっ!」 これは行ける、と確信して、母れいむはゆっくりとした笑顔になる。 口の中に赤ゆっくりがいるために、小刻みに跳ねていると、やがて口の中から、赤ゆっくりたちの寝息が聞こえてきた。 「ゆぴぃ~」 「ゆゆぅ……ゆゆぅ……」 ゆっくりしたおねむの声を聞きながら、母れいむはますますゆっくりした笑みを浮かべた。 しかし…… 「ゆぅ~、もう歩けないよ……」 「つかれたよ、あんようごかないよ」 やがて、子ゆっくりたちまでもがもう進めぬと訴え始めるに至って、母れいむはようやく自分の見込みが甘かったことを悟った。母れいむの算段では、子ゆっくりたちはおうちに着くまで元気に飛び跳ねていられるはずだったのだ。 「ゆぅ……おちびちゃんたち、がんばって進んでね、くらくなるよ」 母れいむの激励に応えようとはする子ゆっくりたちだが、苦しそうな顔をしている。母親に甘えているのではなく、本当に疲労困憊してしまっているのだ。 「くらくなったら、れみりゃとかふらんがくるよ、ゆっくりできなくなるよ!」 とうとう、控えていた脅し言葉を口から出すが、子ゆっくりたちは恐怖をあらわに必死に跳ねようとするものの、すぐに止まってゆひぃゆひぃと荒く息をついたり、転んで泣いたりする。 「ゆゆぅ……」 母れいむは困ってしまって唸るばかり。 口の中の赤ゆっくりたちを外に出して、子ゆっくりたちを口に入れようかとも考えるが、子れいむ二匹と子まりさ二匹はさすがに入らない。 妙案は浮かばず、思いつくのは泣き言ばかりだ。 「ゆぅ、まりさがいてくれたら……」 番のまりさがいてくれたら、子ゆっくりたちを運んでくれただろう。まりさはお帽子を被っているので、半分を口に入れ、半分をお帽子に入れることが可能だ。 そもそも、こんな追い込まれた状況になっているのは、番のまりさが行方不明になってしまったことが原因である。 行方不明――と、言っても、ほぼ十中八苦死んでしまっているだろうことは母れいむにはわかっている。まりさは、自分や子供を捨ててどこかに行ってしまう無責任なゆっくりではない。強くて優しくて、自分がゆっくりする時間を全て削ってでも、大勢の子供たちの腹を空かせまいと夜明けから日没まで狩りに励んでいた立派な大黒柱だったのだ。 子ゆっくり四匹に赤ゆっくり五匹を養うのには、その優れたまりさの能力と献身が必要だった。れいむには、まりさほどの食べ物を集めることはできなかった。備蓄はすぐに尽きた。 友達のありすとぱちゅりーは狩りに行っている間に子供の面倒を見てくれたり、色々とよくしてくれたが、彼女たちもそれぞれ家族があり、食べ物の援助などはやはり最低限のものにならざるを得なかった。 遠出の狩りに、子ゆっくりはともかく、五匹もの赤ゆっくりを伴ったのは、どう考えても失敗であったと言わねばなるまい。赤ゆっくりたちは、ありすとぱちゅりーに預けるべきであった。 しかし、ゆっくりを全てに優先させるゆっくり脳である。まりさがいなくなってからというもの、必死に得意でない狩りに一日を過ごし、ろくに子供たちとゆっくり遊べずに眠り起き、狩りに出かけることを繰り返していた母れいむは、赤ちゃんたちがそれに不満を漏らして「もっちょおかあしゃんとゆっきゅちちたい!」と訴えたのに心動かされてしまったのだ。 「それじゃあ、きょうはみんなでゆっくりと狩りにいこう!」 と、母れいむが言ってしまったのが、今朝のことだ。もちろん子供たちは大喜び、狩りとは言っても、実態はピクニックみたいなものであった。 一家は幸い外敵にも遭遇せずに、元気に愉快に森を進んだ。そして、草花が咲き乱れ、虫さんたちが這い回り飛び回り、おひさまが照りつけるゆっくりプレイスを発見し、そこで思う存分ゆっくりした。そのあまりの居心地のよさに、この近くに引っ越してもいいのではないかと思ったほどだ。 結果、ゆっくりとし過ぎた。正に、ゆっくりとした結果がこれである。 母れいむを擁護してやるならば、彼女は心の底から今日の子供たちとのゆっくりを活力に明日からまた頑張ろうと思っていた。しかし、そんな擁護もなんの役にも立たない。明日を迎えられるかが危うくなりつつあるのだから。 「ゆぴゃぁぁぁぁん! おきゃーしゃーん!」 「ゆゆっ!」 赤ゆっくりらしき泣き声が聞こえてきたのはその時だ。 一瞬、母れいむはそれが自分の口の中の赤ちゃんのものかと思ったが、声の聞こえてくる方角から、すぐにそんなことは無いとわかった。 「おかあさん、赤ちゃんがゆっくりしていないみたいだよ」 疲れる体を引きずるように動かしながら、子供たちが言う。 「ゆゆぅ、ゆっくりしてるばあいじゃないけど、赤ちゃんがないてるのはほうっておけないよ」 声のする方は、おうちへの最短距離からは少しズレてしまうのだが、やさしい母れいむは、そちらへとあんよを向けた。 「ゆえーん、ゆえーん」 「あ、いた。まりさだね」 泣きじゃくる一匹の赤まりさを見つけて、そばに行くと叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ? ……ゆっきゅり、ちて、いっちぇね!」 餡の繋がらぬ他ゆっくりでも、赤ちゃんの舌足らずな挨拶には、見聞きするゆっくりをゆっくりさせる効果がある。母れいむも、それに遅れて跳ねずにずーりずーりとやってくる子供たちも、赤まりさの挨拶にゆっくりと微笑む。 「どうしたの? まいごになったの?」 「あんよがいちゃくてあるけにゃいの!」 話を聞くと、おうちの場所はわかるのだが、歩けないので帰れずに途方にくれていたらしい。 「ゆゆ? おうちはすぐちかくなの?」 「うん、ありゅければ、しゅぐにつくよ!」 赤まりさがそうならば、相当に近いのだろう。母れいむはこの子を送ってあげることにした。 「おちびちゃんたち、ゆっくりおそとにでてね」 口を開けて、体を傾けると、ころころころりと口内で寝ていた赤ゆっくりたちが転がり出る。もちろん、優しく衝撃を与えぬようにしているし、そこは心得たものでおねえさんの子ゆっくりたちが赤ゆっくりたちを受け止めて上げる。 「ゆゆ? もうおうちにちゅいたの?」 「このおちびちゃんをおうちに送ってくるから、少しここで待っててね! おねえさんたちの言うことを聞いてね!」 「ゆっ!?」 そう言われて、家族以外の赤まりさがいることに気付く。 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 赤ちゃん同士の挨拶に、とってもゆっくりした気分になった母れいむだが、ゆっくりしている場合じゃないことを思い出し、赤まりさに頭の上に乗るように促す。口の中に入れては、道案内をしにくいからだ。 子ゆっくりたちに手伝ってもらって、赤まりさは母れいむの頭上に乗った。 「ゆゆーん、おしょらをとんじぇるみちゃい~」 「ゆぅ、いいにゃあ、いいにゃあ」 「ゆっきゅちちてるね! うらやまちぃね!」 おかあさんの頭上で楽しそうな赤まりさを羨望の眼差しで見つめる赤ゆっくりたち。 「すぐにかえってくるから、おうちにかえろうね。おうちにかえったらゆっくりあそぼうね」 母れいむがそう言って赤ゆっくりたちを宥める。 「みんにゃのおうちはどきょにゃの?」 頭上の赤まりさが尋ねる。ちょっとここからは遠くて、今から急いで帰っても真っ暗になる前に着けないかもしれない、と言うと、赤まりさは言った。 「しょれなら、まりしゃのおうちにおとまりしゅればいいよ!」 「ゆゆっ」 そう言われてみれば、そうすることができるのならば、願っても無い申し出である。詳しく話を聞くと、赤まりさの家族は、子供は赤まりさだけで、両親ゆっくりとの三匹家族。その上におうちが広いのでスペースがかなり余っているらしい。 「しょれに、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、かりのめーじんなんだよ! おうちにはおいちーあまあまがたーくしゃんありゅよ!」 さらに、この言葉である。 おうちに帰るのに精一杯で、食料の備蓄も乏しい事情から、今晩のごはんはおうちの近くに生えている美味しくない草さんを食べるしかないと覚悟していた母れいむの心を動かすには十分過ぎた。 「あまあま!」 「あまあまちゃべたいよ!」 「ゆっきゅちおとまりしよーよ!」 もちろん、子供たちの心は一気に赤まりさのありがたい申し出を受ける方に傾く。 「まりしゃをおうちにつれていけば、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、おれいにあまあまをくれりゅよ」 「ゆっ、それじゃえんりょせずに、ゆっくりおとまりさせてもらうよ」 状況が状況であるから、母れいむもありがたく受けることにした。母れいむがこの赤まりさの両親の立場だったとしたら、大事な子供をおうちに連れてきてくれたゆっくりには精一杯のおもてなしをするのが当然と思う。きっとこの赤まりさの言うように、両親は快くゆっくりと歓迎してくれるに違いない。 「それじゃあ、おうちのほうを教えてね!」 「ゆー、あっち!」 赤まりさがそう言いながら、母れいむから見てやや右斜め前方を向くが、頭の上に乗っているために、母れいむからはそれが見えない。 「こっちだよ!」 「きょっち、きょっち!」 しかし、子供たちがそれを見て、そっちの方へと跳ねて行くので、それを見て、母れいむは方向を知ることができた。……当初は自分だけで送って行こうとしていたのだが、そうしたら方向がわからなかっただろう。その辺は餡子脳である。 まだまだ遠い道のりと思えば、余力が残っていても、それを振り絞る気力が無くなってしまいがちだ。すぐそこでゆっくり休めて美味しいものも食べられると知って、子ゆっくりたちは先ほどまでの疲れを吹き飛ばして、ぴょんぴょんと跳ねていく。おかあさんのおくちの中で休んだ赤ゆっくりたちもすっかり元気になっていた。 「きょきょだよ!」 赤まりさの言った通り、おうちはすぐだった。 「それじゃ、ゆっくりおじゃまします」 「ゆっくりおじゃまします」 「ゆっきゅちおじゃましみゃす」 礼儀正しく、挨拶しておうちに入っていくれいむ一家。おうちは、天然の洞窟で、中は確かに凄く広かった。一家がおとまりしても、それでもなお広いぐらいだ。 「ゆわわわわ!」 「あみゃあみゃだー!」 そして、さらに、おうちの隅にこんもりと積み上がった、とっても甘い臭いのする大量のあまあま! 黒い山、白い山、黄色い山と、色とりどりのそれはどの色もとっても美味しそうだ。 「ゆっくりしてね! まだたべちゃだめだよ!」 今にもそのあまあま山の登山を開始しそうな子供たちを、母れいむは制止する。大事な赤ちゃんを送り届けたれいむたちへのお礼に御馳走してくれるだろうことは全く疑っていなかったが、それでも一応、両親に許しを得るべきであろうと思ったのだ。この辺り、母れいむはゆっくりとしてはだいぶ自制心がある方だ。 「おとうさんとおかあさんはいないの?」 しかし、その許可を取るべき両親が見当たらない。おそらくは、赤まりさを探しに出ているのであろうが、いつ帰ってくるのかわからない。 「ゆぅ、赤ちゃん……」 おうちの入り口の所にいる赤まりさへと声をかける。とりあえず子供たちは母の制止に従って、よだれをダラダラと垂れ流しつつも、おとなしくあまあまの山を見つめているが、あれだけの御馳走を目の前にしては、そう我慢は続かないだろう。 だから、赤まりさの許しを得ようと思ったのだ。もちろん、赤まりさが、 「まりしゃをおうちにつれてきてくれちゃみんにゃにごちそーすりゅよ!」 と、言ってくれることは疑っていない。 「……ゆびゃっ!」 しかし、それどころではないものを赤まりさの背後に見てしまい、母れいむは短く絶叫して硬直してしまう。 その声を聞いて母れいむを見て、その硬直ぶりを見て母れいむの視線の先を追った子ゆっくりと赤ゆっくりたちも同じく、 「ゆぴぃ!」 「ゆああ!」 「ゆ、ゆゆぅぅぅぅ!」 と、震える声で叫んで硬直し、すぐにガタガタ震え出し、赤ゆっくりたちは全員残らずしーしーをもらした。 「うー!」 赤まりさの背後、つまりおうちの入り口の所に、胴付きのふらんが立っていた。 すぅ、と右足を上げる。その先には赤まりさがいる。 ――潰される! 母れいむたちは、もちろんそう思った。しかし、ふらんは大きく足を踏み出して、赤まりさをまたいだ。 ほっ、としたのも束の間、ふらんがそうやっておうちの中に入ってくるのと同時に、その背後から四匹の子ふらんが羽をパタパタさせて現れる。 「ゆあああああああ!」 「ふ……ふらんだあぁぁぁぁ!」 「きょわいよー!」 「おきゃーしゃーん!」 たちまち恐怖の叫びが上がり、子供たちは一斉に母親の元へと集まっていく。 「ゆびぃぃぃ……」 もう完全にビビりまくって涙ぐんでいた母れいむだが、そうやって子供たちに頼られて、なけなしの勇気を総動員した。 「おちびちゃんたち! いそいでおくちに入ってね! ゆっくりしたらだめだよ!」 あーん、と大口を開けて、子ゆっくり四匹と赤ゆっくり五匹をその中に受け入れる。口の中がパンパンになるが、すぐに母れいむは、ぷくーっ、と空気を吸いこんで膨れた。 これは、威嚇であると同時に、口の中のスペースを広げて、子供たちがぎゅうぎゅう詰めになって苦しむのを防ぐ効果があった。 ――おちびちゃんたちは、れいむが守るよ! 声は出せないが、れいむは心中で叫んだ。ちらりと赤まりさを見た。 ……かわいそうだが、この状況ではとても助けられない。とってもゆっくりとした赤ちゃんなので心は痛むが、しょうがない。 胴付きふらんが、後ろを振り返って赤まりさを掴み上げた。 自分が子供たちを口の中に隠してぷくーっと威嚇したので、とりあえず赤まりさを捕獲したのだ、と母れいむは思った。 「うー、いいこいいこー」 「ゆ! ……」 だがしかし、思わぬ光景に、声を出すまいと決意していたのに、少し声を上げてしまう。それはそうだろう。凶悪さで知られる捕食種ふらんが、赤まりさの頭を撫でて、あろうことか、赤まりさがとってもゆっくりした笑顔で言ったのだ。 「おきゃーしゃん!」 と。 「……」 ――ど、どぼい゛う゛ごどな゛のぉぉぉぉぉぉぉ! と、叫び散らしたいのを必死でこらえる母れいむ。 「うー、よくやったー」 「うー、たいりょー(大漁)」 「うー、うー」 子ふらんたちも、そのまりさの周りを飛んで、彼女を誉めている。まりさは、とても嬉しそうだ。 ――なんで? なに? なんなの? なにがどうなってこうなってるの? 母れいむは、全く事態を把握できない。餡子脳ゆえではなく、通常種ゆっくりの常識とあまりにも乖離した事態だからだ。 まりさは、産まれた時のことを今でも覚えている。 「ゆ、ゆっきゅちちていっちぇね!」 本能に従って、生まれ落ちた瞬間に元気に挨拶した。 「うー!」 目の前には、パタパタ飛び回るおねえさんたちがいた。でも、はじめはそれをおねえさんとは認識できなかった。 「ゆゆ?」 このゆっくりたちは誰だろう? まりさと餡の繋がった姉妹たちはどこにいるのだろう? 「ゆべ!」 後ろから、そんな声が聞こえた。ゆっくりと振り返ると、そこには飛び回るおねえさんたちと同じ顔をして、胴体と手足がついたゆっくりがいた。 「うー! ゆっくりしていってね!」 「ゆ! ゆっきゅちちていっちぇね!」 まりさは、心の底からわき上がるゆっくりとした気分を吐き出すように、元気に答えた。 「うー、ゆっくりしろ」 飛び回っていたゆっくりたちも、そう言ってまりさを祝福してくれているようだった。 「うー、これたべる」 「むーちゃ、むーちゃ、……ち、ちあわちぇぇぇぇ!」 彼女たちがくれた黒っぽいものは、信じられないような美味しさだった。 狩りをしたのは、生後すぐだった。わけがわからず、その辺に放置されてしまい、悲しくて泣き喚いた。ゆんゆん泣いていると、一匹の大人のまりさがぽよんぽよんと跳ねて来た。 はじめて見る同類だった。一緒に住んでいるふらんというゆっくりたちよりも自分に似ていることに、まりさは親近感を抱いた。 「ゆゆ、赤ちゃん、どうしたの?」 だが、そう言って近付いてきたその大人まりさは、ふらんたちが現れると目を見開いて絶叫し、後ろを向いた。しかし、後ろにもふらんがいることを知ると右左と視線を走らせ、そちらにもふらんの姿を見出すと、泣き喚いてその場で動けなくなった。 まりさには、それが不思議だった。何をそんなに怖がっているのか? ふらんたちは、とてもやさしいのに。 そのやさしいふらんたちが大人まりさをなぶり殺すのを、まりさは呆然と眺めていた。 「うー、まりさ、これたべろー」 大人まりさの中に入っていた黒っぽいもの。そうか、あれはそういうものだったのか、と思った。普通ならば、そんなものは食べられないと思うところだが、まりさは何しろ生まれて初めて食べたものがそれで、しかもその美味は忘れ難いものであった。 「ゆ、ゆっきゅちたべるよ!」 戸惑いながらも、食欲のままに食べてしまった。 胴付きふらんを、おきゃーしゃん、胴のついていないふらんたちを、おねーしゃん、と呼んで、まりさに似たゆっくりや赤いリボンをつけたゆっくりなどの中身を食べて暮らしているうちに、まりさは、自分が姿こそ違えどふらんたちの側――つまり、帽子やリボンのゆっくりたちを捕食する側――であり、姿こそ同じだが、帽子をかぶったゆっくりたちが捕食される側であると認識していった。 狩りのお手伝いについてもゆっくりりかいした。最初は寂しくて泣いていたが、その内に、意識してわざと泣くようになった。 獲物たちは大概、まりさがふらんと一緒に暮らしていて、その狩りを手伝い、ゆっくりを食べていることを口を極めて非難した。おかしい、ひどい、ゆっくりしてない! 「まりしゃ、ゆっきゅちちてるよ」 だが、とってもゆっくりしているまりさはいささかの痛痒も感じない。そのゆっくりとした笑顔に、獲物たちは絶望する。本当にゆっくりしているいい笑顔だからだ。 まりさは、すっかりふらん一家の一員であることの幸福を喜び、ゆっくりするようになっていた。なにしろ、ふらんは、家族たちは強い。ゆっくりたちは、その姿を見ただけでしーしーちびって泣き喚くほどである。 生物として相当弱い部類に属する赤ゆっくりとしては、そんなふらんに頼もしさを感じ、それを恐れ抵抗らしい抵抗もできずになぶられ食われていくゆっくりに軽蔑を感じざるを得ない。 見た目こそ同じだが、まりさはあいつらとは違う。強い強いふらんたちの仲間なのだ。そのことへの幸運に感謝する。 まりさは、この家族の一員であることを当然だと思っていた。だって、ゆっくりできるのだから。 胴付きふらんは、成果に満足していた。生まれたばかりの四匹の子供たちのためにゆっくりれいむを狩って来た。頭からは茎が生え、その先には五つの赤ゆっくりがゆっくりと誕生の時を待っていた。 「うー、やった。ごちそう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 当然、れいむは泣き喚いているが、ふらんの力には到底かなわない。 おうちに帰ると、早速、赤ゆっくりたちを収穫して一匹ずつ子供へと与える。ふらん種の本能か、子供たちは教えられずとも、赤ゆっくりたちを軽く殺さない程度に痛め付ける。 と、言っても、まだ生まれる時期でないところを無理に茎からもぎ取られた赤ゆっくりだから、すぐに死んでしまった。 「……うー!」 胴付きふらん、最後に一匹残ったまりさを見ていて思いついた。 元々、ふらん種はゆっくりの中でも知能が高い方である。同じ捕食種で性質や能力も似ているれみりゃが馬鹿で、そこを衝かれると通常種に敗北することもあるのに対し、ふらんにそのような例が稀であるのはそのためだ。 その胴付きふらんは、かつて自分の親が、一匹の赤ゆっくりをすぐに殺さずにその辺に放置して、その泣き声を聞いてやってきたゆっくりたちを捕獲していたのを思い出し、自分もそれをやってみようと思った。そして、親が囮に使った赤ゆっくりをすぐに食べてしまったのに対し、すぐ殺さずに囮として使い続けようとした。 子供たちが襲わないように、これは姿形は違えど妹なのだ、と言って聞かせた。それでも、殺されてしまったらしょうがないと思っていたのだが、幸い、子ふらんたちは赤まりさを妹として扱っていた。赤まりさを囮にした狩りが順調で、一度たりとも空腹にさせたことがないせいであったろう。 親ふらんも、この赤まりさには、人間が使い馴染んだ道具に持つのに似た愛着を抱いていた。いざとなれば、真っ先に食料にすることは動かなかったが。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 ぷくーっと膨らみながらも混乱の絶頂の母れいむ。ふらん一家は、赤まりさを誉めるのにかかりっきりでれいむたちのことを忘れてしまったかのようだ。 ――いまならゆっくりしなければにげられるかもしれないよ。 母れいむは、ぽよん、と全力の跳躍をした。口の中に子供たちがいるので、当然その飛距離は悲しいほどに短い。 もちろん、ふらんたちはれいむのことを忘れていたわけではない。ただ単に、出入り口を完全に塞いでいるから逃げられっこないと判断していたので平気で目を離していただけだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛」 母れいむも、逃げ道が完全に絶たれていることにたちまち気付いた。 ぷくーっ! 膨れる。それぐらいしかやれることが無いのだ。 「ゆゆぅ、ぎゅうぎゅうしてるのがすこしきついけど、ゆっくりしてるよ!」 「さすがのふらんも、おかあさんのぷくーにはなにもできないんだね!」 「しゃすがおきゃーしゃん!」 「ゆっきゅちできるよ!」 「しゅーり、しゅーりしようにぇ!」 特に何も起こらないので、口の中の子供たちは、母れいむの威嚇にふらんたちが恐れをなして手出しができない素晴らしい情景を想像してゆっくりしている。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ」 喋ったら、ぎゅうぎゅう詰めの子供たちが零れ落ちそうなので、母れいむは唸ることしかできない。 「うー、そろそろちいさいあまあまであそびたい」 「うー」 やがて、恐れていた瞬間が来た。子ふらんたちに言われて、親ふらんが母れいむの方へと向かってきた。 「うー、くちのなかのあまあまよこせ」 「ゆ゛ーっ!」 母れいむは頑として拒否する。 無造作に親ふらんのパンチが母れいむを叩く。凄まじい衝撃。ごろんと転がった母れいむの口の中に子供たちの悲鳴が響き渡る。 「ゆっくりできないよ! なんなの!」 「おかーさん! どうしたの! ゆっくりさせてね!」 「ゆあああ、いちゃいいいい」 「ゆべっ」 「お、おねーしゃんがしんじゃうよ!」 一匹の子れいむは、丁度殴られた所にいたため、母れいむの頬越しとはいえ衝撃をモロに食らってしまった。 口の中に、甘い味がしたのに、母れいむは恐怖する。中の子供たちが負傷か、或いは餡を吐いたかに違いないからだ。 「うー、うー、うー」 ぼこ、ぼこ、ぼこ、と滅多打ちにされ、母れいむの頬は腫れ上がる。口の中の悲鳴も一層大きく、切迫感のあるものになっていった。 「いぢゃい゛ぃぃぃぃぃ!」 もう、痛みを訴えるしかできなくなったようだ。それでも、母れいむは口を開けなかった。 「うー」 親ふらんは、少し迷った。このまま殴り続ければ口を開かせることはできるだろうが、その時には、中の子供たちは死んでいるだろう。ただ食べるだけならそれでもいいが、食べる前にあそぶのがふらんの習性であり、子ふらんたちもそれを楽しみにしている。 「うー、ればてぃん!」 子ふらんの一匹が言った。 「うー、おかーさんのればてぃんみたい」 「うー、みたいみたい」 他の姉妹たちも、それに唱和し出す。 「うー」 親ふらんは頷いて、奥の方に行った。そこには狩りの途中で見つけた色々なものが置いてある。その中から、ればてぃんを取り出す。 胴付きふらん種は、棒状の武器を使う時にそれを「ればてぃん」と呼称することがある。 ただの木の棒だったりすることが多いが、この親ふらんが持っているのは、人間がキャンプをした時に忘れていったナイフであった。 「ゆ゛っ!」 親ふらんが離れたので一息ついていた母れいむは、その光に本能的な恐ろしさを感じてずりずりと後ずさった。 しかし、そんなのお構い無しに親ふらんはずんずん近付いてきて、母れいむを押さえつけた。左手一本でだ。それほどに胴付きふらんとごく普通のゆっくりれいむの間には力の差がある。 突き刺しては中の子供を傷つけてしまうので、母れいむの頬を軽く切った。一度目は浅すぎて表面が切れただけだったが、何度かやっているうちに、切れ目が頬に口を開けた。 「うー!」 切れ目に指を突っ込んで左右に思い切り広げる。 「ゆ゛びびび」 右頬にぱっくりと口が開き、震える子供たちが丸見えになった。 「うー」 親ふらんは手を突っ込んで、どんどん子供たちを取り出していってしまう。 「うー、あそぼあそぼ!」 「うー、なにしてあそぶ?」 「うー、ぽんぽん」 「うー、ぽんぽんやろー」 たちまち、子ふらんたちが群がって来て、一匹の子れいむをくわえて行ってしまう。 「おぢびぢゃんがああああああ!」 「おねーさんつれてかないでええええ!」 「ゆわーん、きょわいよー!」 残された母れいむと子供たちは、それを見ていることしかできない。子供たちはダメージと恐怖で動けないし、母れいむは子ふらんたちの邪魔をしないように、親ふらんが押さえつけている。 子ふらんの一匹が子れいむをくわえたまま飛び上がり、他の三匹が地面に降りる。 「うー!」 子ふらんが、くわえていた子れいむを離した。 「ゆっ、おそらを、ゆべ」 とんでるみたーい、とお決まりの台詞を続けようとした子れいむだが、その前に、衝撃を受けて中断。 衝撃は、地面への衝突によるものではなく、下にいた子ふらんが羽で叩いたためであった。 「うー!」 ぽーんと飛んでいった子れいむの先にいた子ふらんが、羽で子れいむを叩く。後は、その繰り返しだ。最初に上から子れいむを落とした子ふらんも地上に降りてそれに加わる。 ぽんぽん、と子ふらんたちが呼んでいる遊びだ。いわば、ゆっくりを使った蹴鞠のようなものか。 「うー!」 「いぢゃい!」 すぐに殺さないように、それほど強くは叩かないが、それでも子ゆっくりには相当な激痛だ。一定の間隔を置いて連続して加えられる痛みというのも精神へのダメージは大きかった。さらには、子ふらんが打ち返し損なえば、地面に落ちて痛い目を見る。つまりは、なにがどう転んでもこのまま子れいむは死ぬまで痛みを感じ続けるのだ。 「うー、こいつもうおしまい」 しばらくすると、子れいむが悲鳴を上げなくなった。まだ生きてはいるのだが、このぽんぽん遊びは打つ度に上がる悲鳴も楽しみの一つである。 「ゆっ、しょれたべちぇいい?」 子ふらんたちのぽんぽん遊びをゆっゆっと楽しそうに見ていた赤まりさが涎をたらしながら、尋ねる。 「うー、いいよ」 「ゅゅゅ、や……め……ちぇ……」 「ゆわーい、むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」 「うー、おいしいか」 半死半生の子れいむの言うことなど全く聞く耳持たずにそれを貪り食らう赤まりさ。地獄のような光景を見る子れいむの姉妹たちの目に浮かぶのは一様に恐怖、というわけでもなく、そこには恐怖を上回る羨望があった。 ――なんで、あのまりさはあんなにゆっくりできているの。 強いふらんたちにいじめられるどころか可愛がられて、むーちゃむーちゃして、ちあわちぇで、自分たちと同じ通常種のゆっくりなのに、どうして自分たちはふらんになぶられ殺され食べられるのを恐れてゆっくりできないのに、なぜあのまりさはその逆なのだ。 「うー、べつのでやろー」 「うー、まだまだたーくさん」 「うー、ぽんぽんできるおおきいの三ついる」 子れいむ一匹が鬼籍に入ったが、まだ子れいむ一匹、子まりさ二匹がいる。赤れいむ二匹と赤まりさ三匹もいるが、これは小さいので数に入れていない。あまり小さいと打ち返すのが困難で地上への落下で死んでしまうことが多いため、ぽんぽん遊びには適していないのだ。 「うー、こんどはくろいの」 「ゆびぃぃぃ、やべで! やべでええええ!」 くわえられた子まりさが絶叫して懇願する。おそらをとんでるみたい、などと言う余裕も無かった。さっきの子れいむのようになぶられ生きながら食べられて殺される。そんな運命を受け入れられるわけはない。わけはないが、それに抗うことなどできない。聞く耳持たれぬに決まっている懇願を繰り返すだけ。 そして、子まりさもまた当然同じ運命を辿った。ただ、子れいむと少し違ったのは、途中で帽子が脱げてしまったことだ。 「うー」 「いぢゃい! おぼ!」 「うー」 「おぼうじ! いぢゃ!」 「うー」 「ばりざのおぼ!」 「うー」 「おぼ、いぢゃ!」 痛みへの悲鳴と、帽子を求める悲鳴が混ざり合ってわけのわからぬことになり、この悲鳴には子ふらんたちは大喜びであった。 「うー、こいつもおしまい」 「うー、こいつはたのしかった」 「うー、おぼうしかえしてやろうか」 「……ばりざ……の、おぼ……がえじで……」 死に掛けの状態だというのに、帽子をくわえてきた子ふらんに向かって懇願する子まりさ。 「ゆー! そのおぼうちちょうらい!」 だが、ふらん一家の赤まりさが言うと、子ふらんは赤まりさの方へと帽子を落とした。そもそも、帽子を返してやろうというのは気紛れ以外のなにものでもなかったのだから、家族の「妹」である赤まりさの方を優先するのは当然と言えた。 「うー、これくしょんにするのか」 「ゆん! このおぼうちカッコいいにぇ!」 人間の目からは全く同じに見えるゆっくりの装飾具だが、ゆっくりたちはこれで個体識別をするので、違いがわかる。それゆえに、ゆっくりの目から見ると、中にはカッコいいと分類されるものもある。この赤まりさは、自分と同じまりさ種の帽子で気に入ったものをコレクションしていた。もちろん、死ぬ前にまりさから離れて死臭がついていないものに限ってだが。 「ゆ゛ぅぅぅ」 赤まりさが嬉々として自分のお帽子を持ち去ってしまうのをなす術なく見ながら、子まりさは絶命した。 (後編へ?)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/450.html
ここは、広大なゆっくり平原。 ゆっくり名所である池や、川、森、山など、ゆっくりたちが思う存分絶頂にゆっくりできる場所。 そんなゆっくり平原の辺境の森で、ゆっくり霊夢は空を飛んでいた。 もちろん自力ではない。 自力で飛べるゆっくりなど、捕食種であるゆっくりれみりゃとゆっくりふらんだけだったのだ。 ゆえにゆっくり霊夢は夢見心地だった。まさか空を飛べる日が来るだなんて。 頬が風を切って進む感覚。 ぐんぐんと流れていく景色。 徐々に、だが確実に遠くなっていく地面。 視界は広がり、遥か彼方まで見渡せる。 生まれてから死ぬまでに見ることなど、絶対に叶わない素敵な光景。 ゆっくり霊夢の小さな胸は感動でいっぱいだ。 それもこれも、みんなこの「うーぱっく」のおかげだった。 「わぁい!おそらをとんでるみたい!」 「ばかだぜれいむ!まりさたちはおそらをとんでるんだぜ!」 「うー!」 「とんでる!とんでるよ!!うわぁ~♪とりさんよりはやいや!」 「う~♪」 ゆっくり霊夢はご満悦の表情で、自分とゆっくり魔理沙を乗せて飛んでいる二匹のゆっくり種を 見ながらついさっきのことに思いを馳せた。 うーぱっく。 外見はゆっくりれみりゃを直方体にしたものだが、性質はそこまで強暴ではない。 なぜなら、出会い頭に襲撃してこなかったから。 いや、たしかに急に近づいてきたから、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の二匹は思わず死を覚悟した。 自分たちも、今までにいた他の仲間と同じようにゆっくりれみりゃに食われるのだと思った。 だが、目を瞑り震えながら身を固めていた二匹に聞こえたのは「うーうー!」という人懐っこい声だった。 恐る恐る目を開くと目前にぱたぱたと浮遊しているそれ。 「ゆぎぃっ!」 恐怖の声をあげる二匹。 しかし覚悟した苦痛はいつまでもやってこない。 よく見るとそれは一つの動作を繰り返している。しかもにこにこ笑顔で、だ。 顎を上げるようにしているそれをゆっくり霊夢はこう解釈した。 「ゆぅ……?なぁに?の、のせてくれるの?」 「うー♪」 いかにも!と言うように返答する。 「だっ、だめだぜれいむ!あぶないぜ!それはれみりゃだぜ!!」 ゆっくり魔理沙が警告する。多少見た目が違い、少し人懐っこいからといってそれはゆっくりれみりゃに 違いないのだ。どんなに懐いていたとしても、それが猛獣だと忘れてしまったら危険な事故が起こる。 自分たちより圧倒的に強い相手には、警戒はいくらしてもしすぎると言うことは無い。 だが、ゆっくり霊夢はそれの誘いに乗った。 すでに死んだ身だという気持ちだったからだろうか? 「ゆっくりはいるよ!」 言って飛び跳ねると、ゆっくり霊夢の体はそれの頭頂部に開いている窪みに収まった。 「ゆ?ゆ、ゆ、ゆゆゆ?」 徐々に浮かび上がってくる。飛んでいるのだ。 目線が高くなる恐怖にいくらか震えていたが、ゆっくり霊夢はすぐに慣れてしまった。 それがゆっくりと静かに飛翔していることも関係しているだろう。 「まりさー!すごいよ!おそらをとんでるみたい!」 「れいむ、うらやましいんだぜ!はやくかわるんだぜ!!まりさによこすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、それに乗ってくるくると飛んでいるゆっくり霊夢を見て顔をゆがめていた。 「ねぇねぇ、れいむはいいからまりさをのせてあげて!ゆっくりおねがい!」 しかしそれはゆっくり霊夢の言うことに反応しない。ただ「うー」と鳴くだけだった。 もどかしげに身を震わせ、声を張り上げる。 「ねぇ!ゆっくりきいてるの?まりさとかわってあげてよ!ゆっくりしていってね!」 「うーうー!!」 それをかき消すかのような大きな声でそれは鳴いた。 「ゆっ!?」 するとどこからともなく同じような泣き声が聞こえてくるではないか!やがて、いくらもしないうちに もう一匹のそれが姿を現した。 「うーうー」 「うー」 「うっうー」 「うぅ~」 何らかの意思の疎通。そして後から現れたそれはすぐにゆっくり魔理沙へと降下していった。 「ゆぅ?のせてくれるのか?だぜ」 「う~♪」 「ゆゆゆぅ~~~!」 感極まったような高めの声で慌てて飛び乗るゆっくり魔理沙。 どっしりと座ったようなそのおさまり具合は、まるでそれが自分のために存在しているかのような 錯覚をゆっくり魔理沙に与えた。 素晴らしい一体感。 これを覚えてしまえばゆっくりアリスの強制すっきりなど物の数ではない。 「すごいぜ!ゆっくりとんでるんだぜぇ!!」 「まりさ!まりさぁああぁ!!」 「れいむぅううぅぅううぅぅぅ!」 二匹はランデブーするかのようにお互いの周りを旋回し、揃って空を飛ぶ幸運を堪能し始めた。 並んで飛行し、川を越え、枝を飛び越えて流れるように飛んでいく。 地面を飛び跳ねているだけでは、決して味わえない愉悦。ゆっくり霊夢たちは今、幸せの絶頂にいると 思った。自分たちはなんて幸せなんだろう!そして、この出会いに感謝したくなった。 「ゆ?そうだ!おなまえをゆっくりおしえてね!」 「うー?」 「おなまえだよ、お・な・ま・え。れいむはゆっくりれいむっていうんだよ!れいむってよんでね!」 「うー……ぱっく……」 とまどいがちに伝えるそれ。 うーぱっく。 ゆっくり霊夢はそれを聞くと目を輝かせて 「うーぱっくっていうんだね!ゆっくりしようね!うーぱっく!」 と頬を紅潮させて言った。 「まりさも!ゆっくりするぜ!ゆっくりまりさっていうんだぜ!」 二匹のうーぱっくはゆっくり霊夢たちを乗せて何処までもいつまでも飛んでいた。 木に成っている実を貪り食べていた二匹は、いつのまにか日が傾いていることに気づいた。 空は茜色に染まっていて、吹く風も冷ややかになり、鴉の鳴き声がどこか哀愁を誘う。 沈む夕日を今までに無い高みから望んで、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は思わず涙ぐんだ。 圧倒的な情景。 空を翔る鳥たちは、いつもこんなものを見ているのか。 髪を撫でて耳を抜けて過ぎ去る風は、こんなにも冷たく、もの悲しいものだったか。 二匹に去来する思い。 それがなんなのか理解できないし、言葉にもできない。だが、ただ「そこにある」と感じることは出来た。 二匹はなんだか無性におうちに帰りたくなっていた。 「ねぇうーぱっく!ゆっくりかえりたいよ!ゆっくりかえしてね!」 「う、うー!」 うーぱっくは一声鳴くと、もと来た空を引き返し始めた。 ゆったりとしたその飛行は、余計に「帰る」ということを意識させ、二匹の心は逸っていく。 大地が近づき、森の深緑に包まれる。 木と土の匂い。慣れ親しんだそれが二匹の鼻孔をつくと、言い知れぬ安心感がにじんだ。 ゆっくり霊夢はおうちに帰ったら家族に今日のことを言って聞かせてあげようと考えていた。 うーぱっくとの出会い、初めて大地から離れたこと。 風を切って飛ぶ感覚。 大空の青。流れ往く雲の白。夕焼けの茜色。 お日様が沈んでいくと、風が寂しく聞こえること。 きっと妹たちは羨ましがるに違いない。母はそれは凄い体験だったね!とまるで我が事のように 喜んでくれるだろう。そうだ、明日は妹達も誘ってうーぱっくとも遊ぼう!ゆっくりしたいい考えだね! ゆっくり霊夢は自然と表情が緩んでいった。 「れいむ!れいむ!!」 「ゆ?」 そんな物思いに耽っていたゆっくり霊夢を、親友のゆっくり魔理沙は緊張したような声で必死に呼びかけていた。 「どうしたの、まりさ」 見ればゆっくり魔理沙はどこか緊張した面持ちで、やや汗ばんで見える。 「かおいろがわるいよ、まりさ。ぽんぽんとらぶる?」 「ちがうよぅ!まえをみるんだぜ!!」 「?」 ゆっくり魔理沙の必死の訴えに、きょろきょろと見回すゆっくり霊夢。 「ゆゆっ!?」 そこは見たことのない場所だった。 森の中でも他に類を見ないほどに木々が鬱蒼と茂っており、空のように広がっている木の葉のせいか どこか音が遠くにあるもののように聞こえてくる。 夕暮れではあるが、ここは特に暮色が濃い。夕闇の彼方から何か得体の知れないものがひっそりと 這いずり出てきてもおかしくないと思えるほどだった。 「ここどこぉおぉおお~~~っ!?」 「うー!うー!」 「ゆっくりかえしてほしんだぜ!おうちにかえすんだぜ!」 「うっう~~!」 ゆっくり霊夢たちの叫びに声を返すうーぱっく。しかしそこに意思の疎通は皆無だ。 「うー!うー~~~!!」 誰かに呼びかけるような嘶き。 するとどうだろう、周りの森林から唱和するように同じ泣き声が聞こえてくるではないか! そしてがさがさと枝葉を揺らして現れるのは五匹のゆっくりれみりゃだ。 「ひぃっ!!」 五匹は悲鳴をあげたゆっくり魔理沙を、そのにこにことした笑顔の目のままでねめつけると 二匹のうーぱっくを取り囲むようにして羽ばたき、進み始めた。 その先には洞穴があった。 そこは巣だ。 ゆっくりれみりゃの巣窟なのだ。 「うーうー!」 「ぎゃおーーーー」 わずかに漏れ出てくる泣き声が、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を心胆寒からしめた。 二匹は恭しく運ばれる供物のような態で奥へ奥へと連れて行かれる。お互いを見詰め合うが どちらも涙目で震えていて歯の根があっていない。 うっすらと月光のような冷たく柔らかな光を皓々と発する岩々が過ぎ去り、湿った空気が まるでからみつくように流れている。しっとりとした天井の岩肌からは、時折水滴が落下しており 水の弾ける音がこだましている。 平常であれば、涼しくて水滴の音も耳に心地よいこの洞穴は、とてもゆっくり出来る場所であろうが すでにゆっくりれみりゃの巣になっており、それ以上に二匹はうーぱっくに連れられゆっくりれみりゃに 囲まれているのが現状だ。とてもゆっくりする暇などない。 唯一できることは、ゆっくりと死の覚悟をすることだけだろう。 どれほど進んだろうか?先にはまばゆく光るものがある。 巣の広間なのだろう、今までになく明るいそこにはたくさんのゆっくりれみりゃがいた。 体のないやつ、あるやつ、小さいやつ、大きいやつ、うーぱっく。 さまざまだ。 さまざまだが、それぞれが思う存分ゆっくりしていた。 ゆっくりと、していた。 左に目をやれば、そのゆっくりれみりゃはうーぱっくと五匹ほどで小さなゆっくりぱちゅりーを空中で キャッチボールのようにして遊んでいる。地面には親と思しきゆっくりぱちゅりーが声を上げて、弱い体を なんとか飛び跳ねさせているが、空中のそれらには決して届くことはない。 「むっぎゅぅ~~!むっぎゅぅうううぅぅ!!」 「……むきゅっ!……みきゅぅうぅ!!」 弄ばれている子ゆっくりぱちゅりーは生来の脆弱さもあいまって、すでに半分以上死に体だ。 投げ飛ばされ受け止められているので、ゆっくりれみりゃの牙で帽子はずたずたになり髪もぼろぼろ、 肌に至っては蒼白を通り越して蝋のように白くなっている。見れば右目が飛び出てぶら下がっている のがわかるだろう。 しかしそのゆっくりれみりゃたちは気にしない。玩具だからだ。下で必死に取り返そうと飛び跳ねている 親ゆっくりぱちゅりーが、とうとう口から紫色をしたクリーム状のものを吐き出していても相も変わらず にこにこ笑顔で放り投げ、受け止めて別のゆっくりれみりゃに放り投げていた。 右を見れば、そこには大きなゆっくり魔理沙がいた。 本当に大きい。1メートルくらいはあるだろうか。それに3匹のゆっくりれみりゃが群がっていた。 それらは胴体が生えていて、ぷにぷにとした手足もしっかりと動いていた。 「いいこえでなくんだどぉ~!」 「もっとだどぉ~~~!」 「そんなんじゃまんぞくできないんだっどぉ~♪」 一言ごとに平手や拳、蹴りを叩き込んでいる。その一撃ごとに大きなゆっくり魔理沙は 「ゆぐっふ!ぶぎゅぎゅっ!だべっ!やべでよぉおっ!やべっでゅんだぜ!!ぶめぎゃっ!?」 と声を上げていた。見れば皮は裂け、目は片方が飛び出しており、ところどころに餡子が滲み出ている。 「へたくそなんだぞぉ~」 「いぎゃっ!」 一匹が口に手を差し込み、歯をへし折ったのだ。これでゆっくり魔理沙の口の中には歯がなくなってしまった。 「まりゅしゃしゃみゃに……きょんなこちょしちぇ、ひぃ、たぢゃでしゅむとおみょうにゃ!だじぇ!!」 怒りと復讐心を湛えた燃えるような目。それに見つめられても三匹はにこにこ笑顔を崩さなかった。 むしろ、嘲笑の色が混じっていた。 「う~♪おまえのむれはもうないんだっどぉ~~」 「わすれたのか?どぅー」 「みんなみんな、れみりゃたちでくってやったんだどぉ~~~♪」 「なかなかうんまかったんだどぉ~☆」 「ほめてやるんだどぉ~~」 「ゆっ!?」 そうだ。そうだった。 大きなゆっくり魔理沙の脳裏にあの光景がよみがえる。 このゆっくり魔理沙は運が良いゆっくりだった。幼い頃、家族が獣に襲われたときもそれに跳ね飛ばされて すぐ側の茂みに転がり込んだことで一匹だけ助かった。その後、仲間と狩りをしていて二手に分かれたバッタ を追いかけたときも、相棒のゆっくり霊夢が追いかけた先には蜂の巣があって死んだのだった。 それから大きくなり、自分が支配する群れを持ったときまでその運の良さは発揮されていた。さらに言えば 体が大きくなったことで、自身を脅かすものが比較的少なくなっていたことも災いした。 脅威を、自分たちゆっくりは弱い立場であり、それを脅かすものが存在するということを、失念していたのだった。 それが致命的だった。 夜に、ゆっくりれみりゃの襲撃があったのだ。 自分を頂点に、おおよそ50匹はいた群れ。そのほとんど全てがたった3匹の、今目の前にいるゆっくり れみりゃによって屠られてしまった。群れには自分に及ばないまでもそれなりに大きなゆっくりもいたというのに、 まるで手も足も出なかった。 虐殺と蹂躙の限りを尽くした3匹は自分を含めた何匹かのゆっくりをこの場所に運び入れて、 自身の群れの餌や玩具としてゆっくり魔理沙たちを扱った。 それから続いた地獄の毎日がその恐るべき夜の記憶を薄めたのだった。 「これをみるがいいどぉ~~~」 一匹が飛び上がり、もたもたと上昇してゆっくり魔理沙の帽子をひっぺがした。 「ゆ゛っ!」 帽子を剥がされるという、今まで感じたことのない刺激に、思わず声を上げてしまう。 頭頂部は露出し、うっすらと餡子が滲み出て甘い匂いが漂い始めた。 すると、あたりのゆっくりれみりゃたちの目がこちらに向く。だが、その3匹はそれらを無視して 剥がしたものをゆっくり魔理沙の眼前で広げたのだ。 「ゆげぇえぇえぇえぇぇぇんっ!?!?」 帽子から、剥がれた髪の毛が垂れているが、問題はそれではない。 そこには苦悶の表情を浮かべたゆっくりたちの顔の皮がいくつも貼り付けられていたのだ。 どれもこれも苦痛と怨讐に満ちており、まるで見ているゆっくり魔理沙を恨みぬいているようであった。 自分は今までこんなものを頭にくっつけていたのか!? 「こっちはおまえのこどもなんだどぉ~~!さいごまでおとーさんおとーさんやかましかったんだどぉ~~~」 「これはれいむだどぉ~」 ゆっくりれみりゃは憤怒の形相で歪んでいる顔の皮を指す。 「こいつはぁ、こどもをまもろうとしてとびかかってきたから、ひっぱたいたらすぐしんだんだどぉ~」 「あれはもろかったんだどぉ~!わらえたんだどぉ~~~☆」 「こどものさけびが、すっごくたのしかったんだどぉ~☆」 「なかみがよじれてしぬかとおもったんだどぉ~~♪」 「ゆっぐっぐぐぐ!!!」 ゆっくり魔理沙は目の前に広げられた家族のデスマスクに悲しみの嗚咽を上げていた。 やがてその様子に飽きたのか、三匹のゆっくりれみりゃはそれを放り投げると、周りで様子を伺っていたほかの ゆっくりれみりゃたちに向かって 「こいつはもういらないんだどぉ~☆」 「すきにするんだどぅ~~♪」 「ちゃんととどめはさすんだどお~~~」 と言い放った。 「ゆっ!?ゆっぎゅりだずげでね!?」 「おまえはもうあきたんだどぉ~~」 「もっとおもしろいこといえ!」 「うっうー!うあうあ♪」 「いやあぁあぁあああぁぁぁ!!」 たくさんの爛々と輝く瞳。それらが一斉に大きなゆっくり魔理沙に向かって飛び掛っていった。 楽しそうな声に混じり、痛みをうったえ命乞いをする声が聞こえ、さらに大きいゆっくり魔理沙の皮を引き裂き 肉をかき混ぜ、引きちぎり、咀嚼する音によって覆い隠されてしまった。 また別のほうを見れば、そこにはうーぱっくやゆっくりれみりゃに餌をやっている胴体付きのゆっくりれみりゃがいた。 子ゆっくり霊夢を思い切り放り投げて、それを口で咥えて捕るというゲームじみたものだった。 「やめちぇぇええぇっ!!たちゅけちぇぇえぇぇえええぇぇ!」 「いじわりゅしにゃいでゅぇぇえええぇぇ!」 「おかあちゃあぁあぁあああぁぁぁん!!」 「うるさいんだっどぉ~、おかあちゃんならあれだどぅ~☆」 ゆっくりれみりゃの指差す先には、ただの肉塊があるだけだった。あたりに餡子を撒き散らし、わずかに見える リボンの赤が、それをゆっくり霊夢だと理解させるただひとつのものだった。 おそらく頬を左右に引っ張ったのだろう、顎下あたりから無残に二つに裂けている。 「おかぁちゃぁああぁああぁぁぁん!!!」 「いっぱいたべるんだどぉ~、たっくさんあるんだっどぉ~~♪」 「うー!うー!」 「うっう~~!」 「うぁー!うあー!」 何処もかしこもそんな様相だ。 これがゆっくりれみりゃの食事なのだった。 ゆっくりれみりゃにとって、ゆっくり霊夢やゆっくり魔理沙などのゆっくりは、餌であり玩具なのだった。 だから軽々しく弄び、蹂躙する。壊れてしまうなんて構いやしない。 壊れてしまえば捨てればいいのだ。 玩具はそこらじゅうにたくさんあるのだから。 「それはなんだどぅ~?」 大きなゆっくり魔理沙を虐めていたゆっくりれみりゃが一匹、うーぱっくのほうへとやってきた。 そのふわふわとした浮遊は、とても飛んでいるといえる速度ではなかったが、それでも囚われたゆっくり霊夢と ゆっくり魔理沙の二匹にとって脅威であることに変わりはなかった。 「うー!うあ~!」 「うあー♪うっうあ~♪」 うーぱっくが何を言っているかはわからない。しかしひょっとしたら自分たちは食べられないかもしれない。 ゆっくり霊夢たちはそんな淡い希望めいたものを抱いた。 「まりさをたすけてほしいんだぜ!!はやくはなすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙も身をよじりながら必死に訴えかけている。だがゆっくりれみりゃはそれらを無視して うーぱっくの言葉に耳を傾けている。 「ごはんをじぶんでとるなんて、えっらいんだっどぉ~~☆」 「うあ~~☆」 「どおじでぞんなごどい゙ゔの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉぉぉっ!!!」 「たべちゃだべだんだぜええぇぇっっ!!おいじくないんだぜえええええ!!!」 「う~?」 「おどもだぢっ!ぜっがぐれいぶだぢど、おどもだぢになれだどおぼっだのにぃいぃいぃぃぃっ」 「あじだはがぞぐどいっぢょにもっどゆっぎゅりじだがっだのにぃぃいいいい!!」 「なんでだばじだの?どおじで!?どおじでぇえええええぇぇぇぇっ!!??」 涙をだくだくと流しながら絶叫するゆっくり霊夢。 しかしうーぱっくは意に介さず、ただ一言 「うー!」 とだけ鳴いた。 「あっぁつぁつっ!!へんだよぉっ!!れいむぅっ!!へんなんだぜぇ!」 ゆっくり魔理沙が声を上げる。今までにない声色に、ゆっくり霊夢は嗚咽を上げながらも振り向いた。 「どうしたの、まりさ」 「なんかからだがへんなんだぜ!おかしいんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、自身に襲い掛かりつつある異変に気づいた。体が崩れ始めているのだ。 「と、とけてるううぅうううぅぅぅ!!!まりざのかりゃだがどげでりゅんだじぇぇえええぇぇぇ!!!」 左右に体を暴れさせるゆっくり魔理沙。しかしその体はにちゃにちゃとした粘液が付着し、とろとろの 液状になり流れ始めていた。 これがうーぱっくの最大の特徴だ。 うーぱっくはゆっくりれみりゃの変種である。つまり捕食種なのだ。しかしうーぱっくは成長すると 経口摂食をしないようになり、このようにゆっくりを自身に乗せてじょじょに溶かしていってしまうのだ。 何故かはわからない。 しかし自然界にも似たような生き物が存在するのだから、それほど不思議なことでもなかった。 「うわあああぁあぁああぁぁっっ!!まりゅいざをだじゅげでぇええぇぇっ!!おねがいいぃい!!」 「うー?」 「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 よくわからないと言うように唸るうーぱっくに、ゆっくり魔理沙の絶叫は続く。 「まりざああああぁぁぁっ!!ま゛ぁり゛ざあああああぁぁぁぁっ!!!!」 さらにゆっくり霊夢の絶叫も重なる。思わず聞きほれたくなるほど甘美なる合唱。 そこにゆっくりれみりゃが声をかけた。 「すのばしょをいえばたすけてやるんだどぅ~」 「ゆっ!?」 「さっきかぞくっていったんだど~~~♪」 「えらぶんだどぉ~~~★」 「いっ、いやだよ!!かぞくはだいじだもん!」 「どっちでもいいんだっどぅ~~☆」 いつのまにか、うーぱっくの周りにはあの三匹のゆっくりれみりゃが集まっていた。 「おねぇしゃんおしょいね?」 ちっちゃなゆっくり霊夢は巣の中で不安そうに母ゆっくり霊夢に話しかけた。 「だいじょうぶだよ!まりさといっしょだったし、きっとまりさのすでゆっくりしてるんだよ!」 「ゆっ!きっとしょうだにぇ!うりゃやましいよ!」 母ゆっくり霊夢の言うことを素直に聞き、よそのおうちにお泊りをする姉を羨ましがる妹。 よくある家族像だった。 このゆっくり霊夢の家族は母ゆっくり霊夢に、ゆっくり霊夢、妹ゆっくり霊夢の三匹だった。 出産環境が劣悪だったせいか、母体になったつがいのゆっくり霊夢から生えた蔦には未熟な実がいくつか 成ったが、しっかりと生れ落ちたのは二匹だけだったのだ。それでも片方は未熟児だったが。 しかし朽ちたゆっくり霊夢の黒ずんだ死骸は二匹の子の最初の栄養となり、その血肉のなかに脈打っている。 母ゆっくり霊夢は、つがいのゆっくり霊夢の、文字通り化身とも言える二匹の姉妹をとてもゆっくりと大事に 育て上げていた。ゆっくり霊夢は健康そのもので、すくすくと育ち元気に野原を駆け巡り、今では母と一緒に 十分な餌をとれるほどになった。 もしかすると巣を出るなどと言い出すかもしれないが、それもまたひとつの生き方だ。そのときは祝福して しっかりと送り出してやろうと、母ゆっくり霊夢は考えていた。 思えば自分も若い頃は親の庇護から飛び出し、この平原で将来つがいになるゆっくり霊夢と出会ったのだ。 愛し子であるゆっくり霊夢にゆっくりした未来がありますように。 そうして母ゆっくり霊夢は、もうひとつの愛し子、目の前でゆぅゆぅとしている妹ゆっくり霊夢を見る。 生まれたのはゆっくり霊夢と一緒だったが、こちらは未熟児ゆえに発育が悪いのだ。もうしばらくゆっくりと 母ゆっくり霊夢が育てる必要があった。 外は夜の帳も落ち、そろそろゆっくり眠る時間だ。妹ゆっくり霊夢を巣穴の入り口から守るように身を寄せる。 お互い肌をすり合わせて、眠気を誘う心地よい震えが全身をゆっくりと包み始めた。 「ゆぅ~~、ゆぅぅ~~~」 妹ゆっくり霊夢はすでに半分眠っていた。母ゆっくり霊夢はそのゆっくりとした様子を微笑みながら優しい眼差し で見つめ続けて、体を揺らしていた。 やがて母ゆっくり霊夢にも眠気がやってきた頃に、それは来た。 「う~、おまえのすのばしょはまりさがはいたんだどぅ~♪」 「!?」 ゆっくり霊夢はじめじめとした狭い場所に押し込められていた。ここはゆっくりれみりゃの食料庫で 岩肌にあいた穴にそれぞれさまざまなゆっくりたちが無理やり押し込められていた。 ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙、ゆっくりぱちゅりー、ゆっくりさくや、ゆっくりめーりん。他にも ゆっくりみょんや、ゆっくりちぇんと、種類も大きさもまちまちなゆっくりたちが穴に納まっている。 特筆すべきは、そのどれもが生きているということ。 ゆっくりれみりゃは、食事と遊戯を一緒に行う傾向があるのだ。さんざん弄び、傷つけ、恐怖を植えつけ、 自身の暴力を味わわせた後に、ゆっくりとそれらを食す。 餌を壊す感触と、耳を振るわせる悲鳴と嗚咽、傷つく皮とそこから噴出す餡子が目を楽しませ、ゆっくり れみりゃの食事をより一層味わい深いものにするのだった。 「ど、どおいうごどぉおおおおぉぉぉっ!!!」 「たすけてやるかわりにいわせたんだっどぉ~~」 このゆっくり霊夢はうーぱっくに食べられる運命にあった。 だがしかし、絶叫と共に飛び出た「家族」という言葉がそれを変えた。ゆっくりれみりゃがその家族ごと 食べてやろうと考えたのだ。 しかし一向に巣の場所を言おうとしないので、この場所に安置しておいたのだ。 「あのまりさはとけるより、おまえをうるほうをえらんだっどぅ~~~♪」 「ゆぅううぅぅ」 「ばかなやづだっどぉぉお☆」 「ゆあぁあぁあぁああぁぁぁっ!!!」 「いまごろまりさはかぞくとゆっくりしてるんだどぉ~~」 「ゆぎゅううううう」 「おまえはかぞくとここでくわれるんだど~~~☆」 「ゆぐぁああぁああぁあ!!まりざあああぁああああああ!!!」 「かぞくがそろったら、いっしょにくってやるんだどぅ~~♪」 そう言うと、ゆっくりれみりゃは近くの窪みにはまっているゆっくりみょんを掴み取った。 「ち、ちんぽ~~~」 「こうやってくってやるんだど~~」 「きょせいっ!?」 そのままがぶりとやった。ゆっくりみょんは白眼を剥いて痙攣している。それを二口で食べてしまった。 「ああ、あああ、あああああ!!!」 「おもしろいかおなんだどぅ~!ゆかいだどぉ~~~♪うっう~、うあ♪うあぁ♪」 やがて、家族がそろったのかゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに引き摺られてあの広間へと来ていた。 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっきゅりはなちちぇにぇ!!」 そこには案の定、ゆっくり霊夢の家族がいた。 羽ばたいているゆっくりれみりゃに咥えられていて、うかつに暴れようものなら地面へと落下してしまう。 二匹には抵抗のしようがなかった。 だがそれだけではなかった。 その場所には他にもゆっくり魔理沙の家族もいたのだ。 「ゆっくりおろしてほしいんだぜ!まりさはおいしくないんだぜ!!!」 「ゆっきゅりおろしゅんだじぇ!」 「ゆぅううぅぅっ!?どうじでなんだぜ!?どおじでまりさのすをおしえたんだぜ!れいむううぅぅぅぅっ!」 その叫びはゆっくり霊夢のお友達のゆっくり魔理沙のものだ。 「まりさがさいしょにうらぎったんでしょ!!れいむはしってるんだよ!れいむのすをおしえたって!!!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、怒りをあらわにしてゆっくり霊夢は声を荒げた。 「まりさなんかとけちゃえばよかったんだよ!!どおじでれいむのすをしゃべったの!?」 「し、しらないんだぜ!まりさはなにもいってないんだぜ!!」 「じゃぁどおじでれいむのかぞくがこんなどごろにいるのおぉぉおっ!!!」 「れいむがまりざのずをしゃべるからだぜえええぇええぅ!!!」 ゆっくり霊夢の追求に、ゆっくり魔理沙の絶叫が重なる。 「ぞんなのまでぃざがれいびゅのじゅをじゃべるがらでじょおおおおおお!!じがえじだよっ!!」 「だからじららいっでいっでるんだぜえええええっ!!!ひどいんだぜぇぇ!!」 泣きながら言い争う二匹を、周りのゆっくりれみりゃたちはにやにやと笑いながら眺めていた。 ゆっくりれみりゃはこの二匹をはめたのだった。 お互いがお互いを裏切ったと思い、復讐に お互いの巣の位置を喋ったのは、ゆっくりれみりゃたちにとって愉快の種だった。 「じゃぁどおじでれいびゅのかじょくがごごにいりゅのぉおおっ!?」 「れみりゃが、れいみゅがまでぃじゃのじゅのばじょをいっだっでいっだんだぜ!!」 「まりしゃがれいびゅのしゅをおしえたっでぎいだよぉお!!」 「うーうー!」 そんな言い争う二匹をよそに、うーぱっくがゆっくりれみりゃになにかをうったえた。 「う~!そろそろでなーだどー!」 「うーうー!うあうあ~~~♪」 「うーぱっくはれいむとまりさをたべるといいどぉ~」 「れみりゃはちっちゃいまりさをいただくんだっどーー☆」 「じゃぁれみりゃはおっきなれいむをたべちゃうぞ~~~♪」 「やめちぇね!おいちくないちょ!!やめてっていっちぇるにょにぃ!!」 「こっちはおいちくないいだじぇ!まりしゃはどくなんだじぇ!!ちんじゃうんだじぇ!!」 「やべでええぇえぇっ!!そのこがなにじだっていうのぉおおぉぉっぉっ!!」 妹ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに握り締められて、中身を漏らした。ゆっくりれみりゃはそこから ゆっくりと中身を吸い上げていく。じゅるじゅると音を立てて萎んでいく妹ゆっくり霊夢。 中身と一緒に元気を吸い取られているようだった。 母ゆっくり霊夢は叩かれ殴られ、千切られて止むことのない悲鳴をあげ続けて食われた。少しでも声を 上げることをやめると苦痛を与えられるのだ、最期には口の下あたりが自然と裂けていた。 ゆっくり魔理沙の家族たちも体中を弄ばれて、痛めつけられながら食べられている。 「れいむのばがああぁぁぁつ!!おまえがうーぱっくなんがにのるがら゛っ!!」 「ぶぎゃっ!までぃざだってのっだでっじょっ!?!?」 うーぱっくに乗せられてもなお、罵声を浴びせあっている二匹。 その体はぐずぐずに蕩けていてもう満足に動くことは出来やしない。 もはや眼と口を動かしてその意識を失うまで緩慢な痛みに身を委ねるしかない状態になってしまった。 二匹にとって幸いなのは、傷みがほとんどないことだろう。 きっといつ自分が死んだのかもわからないほどゆっくりと食べられるに違いなかった。 ここは、広大なゆっくり平原。 森に行けば優しい風が木々を揺らし、耳ざわりの良い音楽を葉が奏でるゆっくり名所のひとつだ。 そんな心地よい音に混じって声が聞こえてくる。 どこか畏れを含んだような、何かを知りたがっているような、そんな声。 「うー♪」 「ゆゆ?……乗せて、くれりゅの?」 「うぅ~~♪」 「ふわっ!しゅごいしゅご~~~い!!おしょりゃをとんでゅぇりゅにょぉおおお~~♪」 終わり。 後半失速してしまった。 狩りの時、うーぱっくは体付きのゆっくりゃを乗せて自由に空を駆けます。 ガンダムのドダイやゲターみたいな感じなのですw 飛行速度:ゆっくりふらん≧ゆっくりれみりゃ>うーぱっく>ゆっくりれみりゃ(体つき) 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける