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【注意】 * 俺設定多数含みます。 * 虐待成分薄め * ネタかぶりはご容赦を。 「お邪魔するよ、室長」 「どうした、鬼意」 室長と呼ばれた私は、とある加工所で研究室長をしている。 日々、ゆっくりについて研究をする研究室の管理職で、私自身が研究をすることは無い。 その私の居室の扉を開けて入ってきたのは、研究員の鬼意だ。 立場は上司と部下になっているが、この加工所では同期だ。 たまたま私が管理職に、鬼意が研究職に向いていた結果に過ぎない。 「ちょっと、抱えてるレポートの内容で相談があってね」 「…今度は何をやったんだ?」 趣味の虐待が高じて研究の道に踏み込んだ鬼意は、時折変なテンションのスイッチが入ってしまい、与えられたテーマから研究内容が逸脱することがある。 もちろん、それを無かったことにして、正しい方向に軌道修正するくらいの常識を、鬼意は持ち合わせている。 が、まれに、闇に葬るのが惜しい成果が出ることがある。 そういう時、鬼意はこうやって私の部屋にやってくるのだ。 今度はどんな面白い結果が出たんだ? これまでの経験から、どうしても期待が湧き上がってしまう。 厳しい口調とは裏腹に、私の目は笑っていた。 「ゆっくり繁殖していってね!」 「今抱えてるテーマは『ゆっくりの効率的な繁殖方法について』なんだがね」 「ああ、れいぱーをけしかけても、母体と同種のゆっくりを回収したいっていうあれか」 ゆっくりの繁殖には、主に植物型と動物型の2種類があるが、これらに共通した、大量生産にかかるある問題がある。 生まれてくる子ゆっくりの種類を選べないことだ。 例えば、れいむ種とまりさ種を番にして繁殖させれば、子は当然、れいむ種かまりさ種が生まれてくる。 だが、その比率は調整することが出来ない。 統計的に見ればおおむね半々なのだが、時に緊急生産として、特定の種だけを繁殖させたい場合がある。 現在は、増やしたい種に特殊な調教を施してれいぱー化させ、必要に応じて同種の母体にけしかけるという方法をとっている。 れいぱー化調教とは、長期間発情状態を維持させつつすっきりさせないというもので、完全なれいぱーになるにはおよそ2ヶ月はかかる。 そうしてれいぱーになったゆっくりは、その後1ヶ月ほどで衰弱して死んでしまう。 れいぱーになる前も、なった後も、自由にすっきり出来ることなく欲求だけが高ぶっていくストレスが原因だ。 緊急生産は念に2,3回程度しかない。そのために、手間のかかる人工れいぱーを常時50匹ほど用意している。 何故50匹も? 加工所で扱うれいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇんの5種すべてについて、10匹ずつ用意しているからだ。 何故5種も? 問題はそこだ。 れいぱーに襲われて出来た子は、れいぱーと同じ種になることが非常に多い。 10匹以上も生った子全てがれいぱーと同じ種ということも珍しくは無い。 今のやり方では、生産したい種のれいぱーが必要なのだ。 「それについては、仕組みだけは大体わかったよ」 手にした紙束を丸めて肩を叩きつつ、鬼意が言う。 資料を広げるそぶりを見せないところを見ると、ここはそれほど面白い部分ではないようだ。 「結局のところ、ゆっくり同士のやる気の問題さ」 「簡単にまとめすぎだ」 鬼意は肩をすくめて見せると、癖のついた資料の中から数枚を取り出した。 それは、ありす種との交尾直後に解体されたれいむ種の記録だった。 植物型と動物型と、交尾の終了からの経過時間を1秒おきに。割られたれいむ種の写真は100枚を超えていた。 どちらの繁殖型にも共通しているのは、時間の経過に沿って体内のカスタード部分が増加していることだ。 植物型の場合は、カスタード部分が母体の皮に沿って額に移動し、そこから押し出されて茎となり、子を生らせた。 動物型の場合は、母体の皮が体内に伸びてカスタード部分を包み、その後に一部を残して二重になるように剥離して、子宮に相当する部分と子を形成した。 子の中身は最初こし餡とカスタードが混じってマーブル模様になっていたが、徐々にどちらか一方だけに変わっていった。 なるほど、ゆっくりの繁殖について研究したものは過去にもいたが、ここまで実証的に、徹底して解体記録したものは無かった。 無かっただけに、何故今まで誰もやらなかったのかが不思議に思える。 ゆっくりの不思議能力のひとつに、食べたものを餡子にしてしまう、餡子変換能力というものがある。 曰く、ゆっくりの生殖とは、生殖相手の体内に自身と同じ種の餡を生成することらしい。 生殖行為で生殖子が体内に侵入することにより、例えばありす種の生殖子がれいむ種の餡に触れれば、こし餡をカスタードに変換してしまうという。 鬼意のレポートによれば、この変換された餡を母体が異物として認識することで、にんっしんのプロセスが始まるという。 ゆっくりの体内に異物を埋め込むと、餡子に変換されることが知られている。 他の個体の生殖子が侵入した場合、相互に変換しあうことで餡が交じり合う。 これを仮に混合餡と呼ぶ。 植物型の場合は母体の皮を材料にして額に茎を形成し、そこに混合餡を追いやる。 動物型の場合は母体の皮で混合餡を丸ごと体内で包んでしまう。 隔離された先で双方の餡の変換合戦が行われ、いずれかの餡が他方をすべて変換しつくすと、それが子の中枢餡となる。 勝利した餡と同種のゆっくりが生まれるという寸法だ。 どちらが勝るかは、親となる個体の状態次第。 健康状態のいい方の、子供を望む気持ちの強い方の餡が活発になる傾向にあり、その分優勢になるという。 「母体の健康状態を良くして、子供がほしいと思わせればいいということになるのか」 「そう。つまり、事実上無理ということだよ」 鬼意の言うとおりだ。いかにゆっくりといえども、自分がレイプされている最中に、子供がほしいと思えるものではないだろう。 対してれいぱーは生殖行為にすさまじいまでの情熱を注いでいる。 変換合戦でどちらが優位に立つかは自明と言うものだろう。 「かつて本物のほうの魔理沙が、幻覚剤を使ってゆっくりに無性生殖をさせたことがあるらしい。今はそっちの方向からやり直しているよ」 そう言って、鬼意は来客用のソファに、疲れたようにもたれかかる。 他人の真似をするということが気に入らないようだ。 「それで、相談はどうした?」 繁殖に関するレポートはなかなか興味深かった。 誰もがおよそそうだろうとは思っていても、誰も調べなかったことだからだ。 だが、鬼意はレポート内容の相談があると言った。 つまり、一通りの体裁を整えたこのレポートに書かれていない、別の面白いことがあるということだ。 「ああ。繁殖の研究をしていたら、前から気になっていたことを思い出してね」 そういって鬼意はベータのビデオテープを取り出し、横手にあるビデオデッキに入れて再生ボタンを押した。 これらは外界から流れ着いたものを、河童の技術で修復したものだ。 録画再生機械はそこそこの数があるものの、テープは消耗品の上、流れ着く数が少ない。 何度も重ね録りされたテープの画像は、正直汚い。 だが、それだけ貴重なものを使って記録された研究に、私の胸は高鳴った。 画面には植物型にんっしんをしたれいむ種が映されていた。 そのれいむ種は、顔にあたる部分がすべて潰されており、さながらのっぺらぼうとなっていた。 動けないように、足は焼かれているようだ。 画面内にほかにめぼしいものは無い。 薄汚れた壁は鬼意の研究室なのだろう。 中に誰も入れたがらないのだから、掃除くらい自分でしろと何度言えば。 というか、明らかにゆっくりを投げつけて潰した跡は何なんだ。 そうこうしているうちに、生っていた赤ゆっくりたちがプルプルと震えだす。 出産が始まったのだ。 徐々に赤ゆっくりの動きが大きくなり、やがて1匹が茎から落ちる。 ぺたり、と床の上に潰れた赤ゆっくりは、ゆっくりと体を起こすと母親に向き直ると、満面の笑顔で口を開いた。 『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』 生まれて初めての挨拶を母親にする。 だが、いくら待っても期待した返事が母親から返ってくることは無い。 『ゆ? おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』 当然だろう、母親には口どころか顔さえない、返事が出来るはずも無い。 それでも我が子に何か伝えたいのだろう、動けない体を必死に揺すっている。 『ゆーん! おきゃーしゃん! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』 『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』 『ゆえーん! ゆえーん!!』 次々と赤ゆっくりが生まれては挨拶をするが、誰も母親からの返事をもらえない。 終いには赤ゆっくりたちは母親に体を擦り付けて泣き始めた。 『やあみんな! ゆっくりしていってね!』 そこに鬼意の声が入る。 やけに生き生きしているが、そこはスルーすべきだろう。 『ゆ? おじしゃんだれ?』 『れいみゅたちはおかーしゃんとゆっくちしゅりゅんだよ!』 『じゃまだかりゃあっちいっちぇにぇ!』 画面に映らない鬼意はカメラを構えているのだろう。 鬼意の声に反応した赤ゆっくりたちは、こちらを向いている。 『そんなこと言わないでよみんな! おじさんと一緒に加工所でゆっくりしていってね!』 『『『ゆ゛!?』』』 鬼意の台詞に赤ゆっくりが硬直する。 『あれー? どうしたのかなみんな! ここは加工所だよ! 好きなだけゆっくりしていってね!』 『…ゆ…ゆわ……』 『ゆわーーーん! かこうじょいやああああああああ!!!』 『かこうじょはゆっくちれきにゃいいいいいいい!!!』 そこで画面は止まった。 見れば鬼意が一時停止をしたらしい。 「ま、野生の子供はこんな感じだね」 「あいつら、どこで加工所なんて覚えてくるんだろうな」 生まれたての赤ゆっくりでさえ、加工所と言えば泣き叫ぶ。 ゆっくり発生当初、ゆっくり達は換金目当ての人間達に乱獲され、加工所に売られていた。 その頃のトラウマが本能に根ざしてしまった、ということなのだろうか。 鬼意がビデオデッキを操作している。 画面に映る映像は目まぐるしく変化していき、ある場面で唐突に止まる。 映っているのは、先ほどと同じ、顔を潰され植物型にんっしんをしたれいむ種だ。 だが、最初のれいむ種とは別の個体らしい。 「これは、さっきの場面で生まれた子供の1匹でね」 言いながら、鬼意はビデオの一時停止を解く。 「加工所はゆっくり出来ると思うように散々甘やかせて育てたんだ。 近年の加工所ゆっくりで、これほどゆっくり出来たやつはいないんじゃないかと思うほどにね」 「随分な手間をかけるんだな」 「それに見合った結果は出たよ」 鬼意に促されて画面を見ると、ちょうど1匹が生まれたところだった。 『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! …ゆぅ、おきゃーしゃん?』 『やあ、ゆっくりしていってね!』 『ゆ! おじしゃんだりぇ?』 『おじさんは加工所の人だよ! 君も加工所でゆっくりしていってね!』 赤ゆっくりの反応は、また泣き叫ぶのだろうなと思いこんでいた私には、予想外だった。 『ゆわーい! かこうじょはゆっくちれきりゅよ!!』 なんと、加工所と聞いて喜び始めたのだ。 『ゆっくちー! かこうじょかこうじょ!!』 『とってもゆっくちしちぇりゅよ!!』 次々に生まれる赤ゆっくり達も喜ぶばかりだ。 親が生まれたときのように泣き叫ぶものは、1匹もいない。 「ちなみに、この赤ゆっくりに『加工所は恐ろしい場所だ』と教え込んで同じことをすると、生まれた子供は加工所と聞くと泣き喚いたよ」 「つまり、親の知識が子に継承されると?」 鬼意は私の回答に、満足したようにうなづいた。 「記憶の継承には諸説ある。 継承を肯定する論文もあるが、大半は継承が行われなかった実例をもって反駁されている。 反駁の根拠は、ゆっくりは誕生のある程度前には知性が発現し、外部刺激によって教育が可能だという事実だね」 画面を一時停止させ、鬼意は映っている母体を指差す。 「親による教育の可能性を排除するため、母体からは口を取り除いた。 生まれる前の赤ゆっくりに傷をつけないよう、母体の足は焼いてある。 加工所に対する認識に影響を与えないよう、目を取り除いた。 同じ理由で、これらの処置は母体が睡眠薬で眠っている間に実施している」 興が乗ってきたのか、鬼意は立ち上がり、身振りを交えて話し始めている。 「ゆっくりさせた次代には恐怖、恐怖させた時代にはゆっくりと。 世代毎に逆のことを繰り返しても、子は正確に親の知識を基準にして判断している。 間違いないんだ、子は親の記憶を継承する。 問題は!」 ビッ!と音が立つような勢いで、鬼意は右手の人差し指を私の鼻先に突きつけた。 人を指差すとは失礼なヤツだ、お返しにその指先で鼻の脂を擦り付けてやったら、鬼意はしかめ面をして手を引っ込めた。 「問題は、それがどのような仕組みで為されているかだ」 ビデオテープが入れ替えられ、画面にはありす種が映っている。 『どがいばっ!!』 再生されるや否や、あっという間にありす種は縦に真っ二つにされた。 びくびくと痙攣する2つの塊の一方の断面が上に向けられ、そこに褐色の液体がかけられていく。 すると、カスタードの断面が青く変色していく。 色の濃い部分は頭頂部に集中し、足に向かうにつれ色は薄まっている。 「今かけたのはヨードチンキでね、デンプンに触れると青く変色するんだ」 「ヨードチンキって、擦り傷に塗るアレのことか?」 「そうさ。きっかけは外界から流れてきた本でね、外界の寺子屋で使われている教本らしい」 「寺子屋? 外界の子供はこんな高度なことを勉強しているのか?」 「なんとも恐ろしいところだよ、外界は。読み書きそろばんだけでは生きていけないらしいよ。ともあれ」 鬼意から資料を何枚か手渡される。 そこには、今画面で見たばかりのものと同じ有様のありす種の写真がたくさん並んでいる。 それぞれの写真の横には数字が添えてあるが、どうやら数字が大きいほど青色が濃くなっているようだ。 「横の数字は、それぞれの個体の記憶力テストの成績だよ。見てのとおり、出来が良いほどデンプンの反応が強い」 「頭が良い個体ほどデンプンを多く含むと?」 「その発想は逆だよ」 鬼意はソファに深々と座り直し、顔の前で指先をいじりながら、勿体つけるようにこちらを見た。 「学習したからデンプンが出来た、とは考えられないかい?」 そこから続いた鬼意の説明はこうだ。 ゆっくりの皮の成分を調べる研究で廃棄された個体を、たまたま見つけた。 皮に大きな青い染みを作って泣きじゃくるありす種を二つに割ってみたのも、ただの思い付きだった。 そこで目にしたのは、変色した皮の内側で、同様にわずかに変色したカスタードだった。 外界から流れ着いた教本で、青い染みに心当たりのあった鬼意は、ありす種を廃棄した研究者に確認を取り、ますます興味を深めた。 当初は餡の成分を調べているはずだった。 一体どこからデンプンのような不純物が紛れ込んできたのかと。 このときは、基礎データの収集のつもりで数多く実験をこなすことに重点を置いていたため、その結果の分析までは手が回っていなかった。 そして今回、効率的な繁殖方法について研究することとなり、れいむ種とありす種を大量に掛け合わせた。 中にはありす種が母体となるケースもあったが、最終的にはれいむ種が母体となるケースが大半を占めた。 同条件の大量の比較が必要な今回の実験では、少数のケースは最初から除外される。 今回の研究では不要になった真っ二つのありす種だが、自身の研究には役立つかもしれないと、ヨードチンキをかけてみた。 何かの役に立てば、その程度の軽い気持ちだったが、データの量が増えてきたときに、あることに気付いた。 ひとつは、種が確定する前の赤ゆっくりには、デンプンの反応がまったくないこと。 ひとつは、種が確定した赤ゆっくりは、時間の経過とともにデンプン反応が強くなること。 ひとつは、親よりも強いデンプン反応を示す赤ゆっくりはいないこと。 これらの意味を調べるために過去のデータを分析した鬼意は、ある仮説を立てた。 ゆっくりはデンプンを、あるいはデンプンを含む多糖類を記憶に用いているのではないか、と。 「また随分と面白い話だな」 額面通りの意味と、突拍子のなさを揶揄する意図を込めて私は言った。 デンプンとは、つまりは片栗粉だ。 その程度のものが記憶を司るなどと、どうして考えられる? 「試薬の関係でデンプンでしか検証を行えなかったが、他の多糖類も記憶に関連している可能性はある。 そうなれば、組み合わせで複雑な記憶を形成することも不可能ではない。 それと、この仮説に組み合わせるべき仮説がもうひとつあるんだ。これを見てくれ」 早送りされた画面には、ぱちゅりー種が映っている。 『むぎゅっ! ぱちぇのけんじゃなおつむになにするの!!』 いきなり脳天に突き立てられた大きな注射…いや、あれは浣腸器だな…それに不平を言うぱちゅりーだが、そんなことはお構い無しに生クリームを吸い上げる。 『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ぱちぇのなかみをすわないでえええええええええ!!!』 元が大きな個体である上に、吸われた生クリームは大さじ2~3倍程度だから、傷は大したものではない。 それからぱちゅりーは、 『むきゅっ! ぱちぇは! ひとあじ! ちがう! けんじゃ! だから! うんどう! だって! できる! のよ!』 研究室内に作られた坂路を上り下りする運動をしばらくさせられ、 『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! すわないでえええええええええ!!』 中身を吸われ、 『ゆべっ! ゆびっ!! や、やべでっ!! ゆぶぇっ!! ゆびゅううう!!!』 ハエ叩きで何度も弄られ、 『む゛ぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?』 中身を吸われた。 「左から順に、ゆっくりさせた後に採取したもの、運動後に採取したもの、虐待後に採取したものだよ」 そういって鬼意はテーブルに3つの器を並べた。 画面のぱちゅりー種から吸い出したのだろう生クリームには、ヨードチンキとはまた別な試薬がかけられている。 鬼意の言うとおりの順に、赤色が濃くなっていく。 左と真ん中の差はわずかだが、右の赤みは際立っている。 「赤みが強いほど、ブドウ糖が多く含まれるということさ」 「つまり?」 「つまり、単糖類もしくは二糖類が、神経伝達物質として働いているのではないか?ということだよ。 やはりこれも試薬の関係でブドウ糖でしか検証できていないがね」 鬼意はソファから立ち上がると、その場をうろうろと歩きながら話し始めた。 「ゆっくりは長く生きた個体ほど、餡がパサパサしてまずくなる。 これは、多くの記憶を蓄積した結果、餡に含まれる多糖類が過剰になり、味に影響したと考えられる。 ゆっくりは通常、記憶力に乏しい。 これは、神経伝達物質に用いるため、体内の多糖類が単糖類あるいは二糖類に分解されてしまうからだ。 ゆっくりは苦痛を味わうと、甘みを増す。 これは、生命の危機にあたり生存本能が刺激され、体内活動が活発になるに当たり、単糖類あるいは二糖類が大量に生産されるからだ。 ゆっくりに学習をさせるには虐待を加えることが最も効率が良い。 これは、苦痛により多糖類が分解されるに際し、生存に必要な記憶を優先して残すため、他を忘れてしまうからだ。」 仮説を元に推論を進める鬼意の話は、なるほど、筋が通っているように聞こえる。 だが、今日最初の話題の記憶とあいまって、私はふと思いついたことを口にした。 「それでは、母体の記憶が子に引き継がれる仕組みは?」 単に多糖類を摂取して記憶を引き継いでいるというのなら、何故共食いをした個体は記憶の混濁を起こさないのか? 自分で思い浮かべた疑問にもかかわらず、この時点で私は鬼意の回答に予想がついていた。 鬼意ならば、それを実験しないはずが無い。 「重要なのは消化というプロセスだよ」 ああ、やはり。 「ゆっくりにとって口というのは実に重要な器官だ。 手足の無い彼らにとって、移動以外に起こせる行動の大部分が口に依存する。 そして、食事という行為。 これはゆっくりの餡子変換能力を活性化する意味がある。 口を通して体内に入ったものは、ゆっくりが食物と認識した時点で餡子変換能力にさらされる。 すなわち、記憶を含んだ多糖類さえも餡子にされてしまうのだよ」 再び鬼意がビデオテープを入れ替える。 『やべでええええええ!! ゆるじでえええええええ!! いやあああああああああ!!!』 映ったのは虐待されるありす種である。 『あでぃずのどがいばなおかざりがあああああああ!!!』 カチューシャをへし折られ、 『ああああああああ!! がみざんぬがないでえええええええええ!!!』 髪を引きちぎられ、 『い゛ぢゃっ!! い゛ぢゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』 次々と竹串を突き刺されていく。 『お次はどこに刺そうかなっ♪ ここかなっ? こっちかなっ?』 『い゛っ! い゛だい゛っ! や゛べでっ!! や゛べえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』 『嫌がって見せるなんて、ありすはツンデレだね!』 『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』 それにしてもこの鬼意、ノリノリである。 『ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ…』 もはや痙攣するタワシにしか見えなくなった頃、画面の中の鬼意はありすを二つに割り、中のカスタードを掻き出した。 一瞬画面が乱れたあと場面が切り替わり、画面の中央にはまりさ種が映っている。 期待に目を輝かせたまりさ種の前に鬼意の手が伸び、カスタードが山と盛られた皿が置かれた。 『おじさん! これ、ほんとうにたべていいのぜ?』 『ああ、遠慮しないで好きなだけ食べるといい』 『ゆゆっ! ありがたくいただくのぜ! うっめ! これめっちゃうっめ!! がーつがーつ!!』 返事をするや否や、まりさは顔をカスタードに埋めて貪っている。 『なあ、まりさ。ちょっといいか?』 瞬く間にカスタードを切り崩し、半分ほどに減ったところで鬼意の声がまりさの食事をとめた。 『なんなんだぜおじさん! しょくじのじゃまなんだぜ!!』 『あまあまはおいしいか?』 『あまあまさん! すっごくうまいんだぜ!!』 『何か変なところは無いか?』 『ゆ? あまあまさんはあまあまさんなんだぜ! へんなわけないんだぜ!!』 『というように、経口摂取した場合はただのカスタードであり、被検体には何の影響も無い』 突然、鬼意の声がゆっくりから、視聴者であるこちらに向けられる。 『?? おじさんがわけのわからないことをいってるんだぜ! ばかなんだぜ!!』 『ご想像のとおり、このカスタードは、先刻虐待を施したありす種の内容物だ。 私の仮説どおりならば、これには苦痛を伝える単糖類もしくは二糖類と、苦痛の記憶を蓄えた多糖類が含まれている』 『おじさん! まりさはあまあまをたべたいんだぜ!! じゃまだからあっちにいくんだぜ!』 『それらが経口摂取の場合、本来の役割を為さず、ただの餡子に変換される。 では、こうしたらどうだろう?』 『ゆぎぎぎぎ… じじい! むししないではなしをきくんだじぇっ?!』 無造作に鬼意の左手がまりさに伸び、顔面を鷲づかみにして引き寄せる。 『ゆがああああ!! はなせじじい!! はなすんべぶぅっ!!』 そのまままりさを床に叩きつけると、顔が下になるように足で踏みつける。 『ふぁなふぇええええ!! ふふぉふぃふぃいいいいい!!!』 空いた手で取り出した大きな浣腸器を使い、皿の上のカスタードを残らず吸い上げると、 『ゆぴぃっ!?』 まりさ種の後頭部に突き刺し、 『ゆががががががががががが……』 そのままカスタードを全てまりさの中に注ぎ込む。 浣腸器が空になったところでまりさは解放される。 が、まりさはうつぶせのまま震えており、起き上がる気配を見せない。 『……ゆ………ゆ…ゆ……』 変化の少ない画面を見つめていると、突然、 『ゆぎゃあああああああああああああああ!!!』 絶叫を上げてまりさが飛び起きった。 『ゆぎゃっ!! やべっ! やべでっ!!! ばりざをざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』 あらん限りに血走った目を見開き、涙とよだれを撒き散らしながら、苦悶の表情ででたらめに跳ね回っている。 『いぢゃっ!! いぢゃいっ!! やぢゃっ!!! ざざないで!!! もうざざないでっ!! いぢゃああああああああ!!!』 念のために言うが、まりさについた外傷は、浣腸器を刺された穴以外にない。 それでもまりさは四方八方から突き飛ばされているかのように、身をよじって跳ね、転がり、のたうつのをやめない。 『今、まりさの中では虐待されたありすの記憶が再生されている。 いや、再生などと生易しいものではない。 まさに今、まりさの体は苦痛を体験しているはずだ』 『ゆひっ!! ゆひぃっ!! だぢゅげっ!! だぢゅぶっ!! ぶるぁあぁぁぁぁぁぁ!!!』 そのとき、まりさの体に変化が現れた。 鬼意はまったく手を出していない、なのにまりさの体に、ひとりでに無数の穴が開き始めた。 穴、穴、穴…まりさの体を隙間無く埋め尽くした穴は、それぞれは小さなものだ。 そう、ちょうど竹串を刺したら開く程度の。 『…ぼっ……ぼっど…ゆっぐり……じだがっ……』 全身から餡をにじませ、まりさが力尽きた。 ゆっくりは本来、中枢餡を破壊されるか大量に餡を失うかしないと死なない。 このまりさは再現されるありすの記憶の、死の瞬間までを体験して精神が死んだのだろう。 見れば、顔面を縦に貫くようにうっすらと亀裂が走っている。 ありすが最期に真っ二つにされたのを、ここまで再現したのだ。 鬼意の手がまりさの死体に伸び、亀裂に沿って二つに割る。 断面を見る限り、カスタードが残っているようには見えない。 バットにまりさの餡を掻き出し、細かく見ていくが、やはり出てくるのはつぶ餡だけだ。 『ご覧のように、体内に注入されたカスタードは全てつぶ餡に変換された。 ゆっくりは体内に侵入した異物を、餡に変換する能力を持っているからだ。 だが、他の個体の体験と記憶を移植できたことから、糖類が餡に変換されなかったことは明らかだ。 推論は簡単だ。 糖類は通常ゆっくりの体内に存在するものであるから、外部から混入されても異物と認識されなかったのだ』 「ここで疑問がいくつかある」 画面の言葉を引き継ぐように、鬼意が同じ声を上げる。 画面から鬼意に向き直り先を待つ私に、鬼意は言葉の代わりに箱を取り出した。 「疑問があるなら実験すればいい。 これがその結果だよ」 「はじめまして、室長! ゆっくりしていってくださいね!」 箱の中から出てきたのはありす種だ。 お辞儀のつもりなのか、顔を軽く伏せながら、大きすぎない声で挨拶をし、その後は笑顔でこちらを見たまま、特に何かをする様子も見せない。 礼儀正しい言葉遣い、落ち着いた所作、金バッジの個体かと思い髪飾りを見るが、金どころかバッジ自体が見当たらない。 「それは先週拾ってきた野生の個体でね」 「なんだと!?」 鬼意の言葉にはさすがに驚いた。 野生にもごくまれに知能の高い個体がいるが、それは知能の話であって、躾がなっているかとは別の話である。 金バッジ級の躾ともなると、餡統の良い個体でも数週間から数ヶ月を要するのが普通であり、野生の個体では時間を掛けるだけ無駄であることのほうが圧倒的に多い。 それが、たかだか1週間とは、にわかには信じがたい。 だが、鬼意が言う以上は真実に違いない。 「こいつは餡に片栗粉を混ぜたヤツでね。 最初の1日は痙攣しているだけだったが、それが治まると知能が急上昇していたんだ」 「簡単に言うが、これはすごいぞ…」 「ゆゆっ♪ 都会派のありすには当然のことよ♪」 言うまでも無く、金バッジ取得は飼いゆっくりのとって最高の栄誉であり、最大の難関だ。 金に物を言わせて調教を施したところで素質の無い個体には到達できず、素質に恵まれた固体であっても厳しい調教を乗り切らなければ辿り着けない。 それが、その辺で拾ってきた個体に片栗粉を混ぜただけでたったの1週間とは、裏技にしても法外すぎる。 「でも、すごいだけで何の意味も無いよね」 「ゆべしっ!?」 言うなり鬼意は拳を振り下ろし、ありすを叩き潰した。 「…ど……どぼちて……」 「こんな方法が知れ渡ったら、金バッジの価値が大暴落だからな」 「餡統商法は出来なくなるし、加工所的には損をするだけだよ」 「ゆがーん……」 「そろそろ時間だから、もうひとつも見てくれ」 「時間?」 いぶかしむ私の前にもうひとつ箱が置かれる。 今度の箱は、先ほどの箱より倍くらい大きい。 中にいるのは四つ目のゆっくり…いや、2匹のゆっくりだ。 左側3分の1を切り落とされたまりさ種と、右側3分の1を切り落とされたれいむ種が、その断面でつなぎあわされている。 防音の箱だったのだろう、ふたを外すと一気に部屋が騒がしくなった。 「いやぢゃあああああああああ!!! じにだぐないいいいいいいいいいい!!!」 「だぢゅげで!! おでがいじばず!! でいぶをだぢゅげでくだざい!!!」 「でいぶはどうなっでもいいがらばりざをだずげでね!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおお!?」 軽く阿鼻叫喚だ。 「2匹の境目には仕切りが作ってあってね、今頃どんどん餡子に変換されていってるはずだよ。 それが無くなって2匹の餡子が混じるのが、もうすぐのはずなんだが」 淡々とした鬼意の声と、汁という汁を撒き散らして箱の壁にすがりつく2匹の温度差がすさまじい。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ばでぃざをだずげろ゛ぐぞじじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「い゛や゛っ!! い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! じぬ゛の゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「「ゆぎっ?!!」」 突然、2匹同時に声を上げて動きが止まる。 2匹ともひびが入るほどに歯を食いしばり、自身の体内から来る破滅の呼び声に身を震わせている。 そして、 「「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」 致命的な変化が始まった。 「ゆげろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 まりさの頭からは茎が束になり、すさまじい勢いで伸びていく。 ご自慢の帽子を幹に吹き飛ばされても、嘆く余裕はまりさには無い。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………」 くすんだ金髪の全てが化けたかのように、次から次へと隙間無く茎が生えていくが、どれひとつとして実は生っていない。 そして、増える茎とは反対に、まりさはどんどんと縮んでいく。 「……ぉ…………ぉ………………」 やがて茎の勢いが収まった頃には、そこにはまりさを思わせる痕跡は何も残されていなかった。 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!」 方やれいむは、必死に口を閉じていた。 れいむのあごの下、腹にあたる部分が恐ろしい勢いで膨らんでいく。 その一方で、頭頂にあたる部分は逆にしぼんでいく。 パースが狂ったような形になっていくれいむの皮は、目でわかるほどに薄くなっていく。 透けるほどに薄くなった皮の下には、小さな黒い玉が無数に見え、なお数を増やしている。 「………………!!!」 そうしているうちに限界を迎えた皮は静かに破れ、黒い玉が箱の中にこぼれ広がった。 これだけの変化に、おそらく1分もかかっていない。 今この目の前の光景だけを見せられたら、ここに2匹のゆっくりがいたなどとは、にわかには信じられないだろう。 「どうだった?」 「どうというか……何だったんだ、これは?」 意識の混濁でも起こして、狂うか互いの区別がつかなくなるかだと思っていた私は、あまりに予想外の展開に言葉が無い。 そして、私の問いに答えた鬼意の言葉はなお予想外だった。 「生殖だよ、ゆっくりの」 「これがか!? ちょっとまて、ゆっくりの生殖は、精子餡を相手に突っ込んで起こるものじゃないのか? それともこいつらは精子餡だらけの絶倫饅頭だったとでも言うのか?」 「俺は精子餡なんて言葉を使って説明した覚えは無いが?」 唖然とする私に鬼意が続ける。 「通常の生殖では、体内の餡を生殖子として用いるんだ。 生殖子なんて言葉を使っているが、これは餡餡いってたら区別がつきにくくなるからで、実質はただのゆっくりの中身だ」 つまり、精子餡という概念から間違っていたと? 本当に、言葉が無い。 餡子変換能力は死んだ餡には無く、逆に生きた餡にはある。 だから、生きたままのゆっくりの中身同士が混ざれば、そこでは生殖反応が始まる。 通常ならば体内に送り込まれる他の個体の餡など、量は高が知れている。 だが、つなぎ合わされた2匹のゆっくりは、ひとつの体で2匹の餡が混ざったのと同じ状態になったのだろう。 結果、体内の全ての餡を生殖に使い尽くし、ご覧の有様となった。 2つの繁殖型が同時に起きたのは、2匹の中枢餡が別々の方法を選択したというだけのことだろう。 常識外のナマモノについての、常識を叩き壊されて呆然とする私の口元に、鬼意が何か差し出した。 見れば、まりさから生えた茎の一本だ。 「……食べられるのか、これ?」 「食べられないはずが無いだろう?」 味の良し悪しはあれど、ゆっくりの体で食べられない部分は無い。 だから、異常な生殖を行った結果の、この通常に比べて随分と太い茎も、食べられるはずだ。 とはいえ先の光景を簡単にはぬぐえず、恐る恐ると茎の端をかじる。 「…うまい」 「だろ?」 驚いたことに、実にうまい。 赤ゆっくりの最初の餌となる茎は、野生で生きるための味の基準となるべく、苦味も酸味もある。 有り体に言えば、人間には大してうまいものではない。 が、今食べたこれには、中に餡がぎっしり詰まっている。 餡の甘さに、それに合う苦味と酸味が組み合わされて、まるで果物のような味わいになっているのだ。 歯ごたえさえも、饅頭よりは果物のそれに近い。 「こっちも食べてみろ」 そう言って、今度はれいむの腹からあふれ出した黒い小玉を、片手にはこぼれそうなほど渡してきた。 一見すると餡子玉にしか見えないが、これがまた違う味わいになっている。 まずその触り心地なのだが、ふわふわと柔らかい。 押し返すような弾力が無いため、触っていることを忘れそうにすらなる。 それを口に含むと、はらりと解けていく。 表面を包む極薄の皮は、唾液に触れるとさっと無くなってしまう。 中からは赤ゆっくりに比べてもさらにゆるい、半ば液状の餡があふれてくる。 この餡の甘さ加減が上品で、甘さを感じたと思った次の瞬間には消え失せている。 「おお……」 舌触りも味も霞のように消えていく、初めて味わう感覚に、知らずにため息が漏れる。 もうひとつ、もうひとつと口に運んでいるうちに、鬼意から渡されたものはあっという間に食べつくしてしまった。 「これは…売れる」 「そう思うだろう?」 これほど売れると確信できる商品にめぐり合えることは数少ない。 それが今、2つも目の前にある。 しかも2つとも同じ生産方法とは願ったり叶ったりだ。 なのに、鬼意の顔はいまひとつ浮かない。 「何だ、問題でもあるのか?」 「レポートとしてどうまとめたものかと」 「そんなものはいい!!」 鬼意の両肩をがっしと掴む。 「さっきの資料とビデオと合体ゆっくりをもって営業部に行くぞ!」 「お、おい?」 「所長と社長も呼んだほうがいいな、この商材なら勝てる!」 「まてまてちょっとまて。さっきの結合ゆっくりなら作らないと無いぞ?」 「だったら今すぐ作れ! 5分で支度しろ!」 「ちょ、ま、5分っておい!?」 「見てろよ商品開発室め、いつもいつもうちの研究をナメた目で見やがって! 今日という今日は思い知らせてやる! ヒャア! プレゼンだー!!」 2ヵ月後、幻想郷では新商品のゆっくり菓子がブームを巻き起こしていた。 加工所直営の店舗には今日も長蛇の列が並び、運よく買えた者は袋を大事そうに抱え、笑顔で帰っていく。 甘味が幻想郷にもたらす幸せ、それは研究者達の日夜やまない情熱が支えているのである。 (完) ちょっと長かったかもしれませんね?
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昆布が漂っている あそこで固まっているのはネギだ 見渡す限りが茶色だか褐色だかで濁り、油揚げがいい色に染みている ・・・そう、例えるなら形成前の元素を掻き混ぜたミソスープのような混沌の中で、 宇宙船“ゆっくりしていってね号”は地球を出発してからたかだか数百万年もたたぬうちに停滞していた 「なんでこんなとこにいるんかのう」 「ハカセが面白がってワープしまくるからですヨ」 「だっていくら進んでも周りになんもいんじゃもん」 人類はあれやこれやで超長々距離の航宙技術を手に入れてから次々と自らを宇宙に放り出してきた その中でも“ゆっくりしていってね号”は名前通りにゆっくりと億単位の歳月をかけて航行するために設計された探査船であり、 そしてどういう因果か派遣隊として選出された葉加瀬博士と助手のジョシュ君なのである だがこの宙域へ突貫するに至ってから前進も後退も出来なくなっていた エンジン自体は正常に稼動しているにもかかわらずそれが推進力へと置換されないのが問題なのである 航宙技術といってもそれは物理法則が普遍的に広がっている前提のものでしかなく、 力系が整備されていないような宇宙の辺境では勝手が異なるようだ 「帰ったら設計者に文句言っちゃろ」 「帰れたらの話ですネ」 宇宙探査という仕事としてはある意味当たりとも外れとも言えるような状況ではある が、環境レコードなんかは自動で保存されるし他にやることもなかったりする 「ふてコールドスリープでもしてようかのう」 「HAHAHA!」 ・・・り 「む。ジョシュ君や、なにか聞こえんかね?」 ・・・ろーり 「そういえバ何か聞こえマース」 ・・・そろーり、そろーり 「!?」 船体に衝撃が走った それは先ほどからちょこちょこぶつかっている豆腐の比ではない 慌ててモニターを切り替えると巨大な顔面のどアップが映し出された 「なんやて!?」 むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~! かくしてタイヤキ型宇宙船“ゆっくりしていってね号”は宇宙を飛空するゆっくり霊夢に飲み込まれたのだった 暗 転 「そーゆー夢なのデス」 「夢落ちかい」 鯛焼きを頬張る ゆっくり研究所の一行は、時期の遅い花見を決め込んでいた。 「じゃが星海の向こうにでっかいゆっくりがいるなんて、まさに夢物語じゃの」 「ミソスープの海は辟易ですガ」 「ゆっ!れいむにもたいやきちょうだいね!」 「Hi、ドウゾ」 「しかし宇宙か・・・」 博士は空を見上げた 「そういえばユーフォーにのったゆっくりとかいたのう」 「・・・そう、あのゆっくりがもたらした超長々距離の航宙技術が全ての出発点でした」 「え?なんじゃと?」 「それを契機にして宇宙へと飛び出した我々は、やがて物理の限界にぶつかった しかし深宇宙を遊泳するゆっくりに呑まれ、同化する事によって深宇宙の航行能力も得る事ができるようになったのです」 「なにを言うとるんじゃ君は・・・?」 「地球には到底いる筈の無いゆっくりがいつの間にか隣人としている歴史に紛れ込んでいるのはなぜか」 「むーしゃ、むーしゃ、ゆ?」 「つまり」 「いったでしょう?この世界はコールドスリープ中の私達とゆっくりが共有した・・・そーゆー夢なのですよ」 きょとんと見上げたゆっくり霊夢の遙か真上 宇宙の彼方から“ゆっくりしていってね”と呼ぶ声が聞こえた、気がした・・・ 「・・・という夢をみたのじゃ」 「もうええわ」 「HAHAHA!」 「おあとがよろしいようで」 +蛇足 「という訳でゆっくり&鯛焼きシリーズもなんとか揃える事が出来たのう」 「気づいている人もいると思いマスが物語の作り方ページにあるプロットパターンA~Eをそれぞれ元にしまシタ しかし後になるにつれてゴーインに書ききった感がバリバリですネ」 「なにおう。たこやきれみりゃやヨコハマタイヤキさんのAAなんかこの為に用意したんじゃぞい」 「既存のAAをいじっただけじゃないデスか」 「しくしく」 「しかし元にした割にプロットの原型が見えないほど変わりまくってマスね」 「そうじゃなぁ・・・まーそこはそれ、こんなアレンジの仕方で作るSSもあると参考にでもなれば幸いじゃ」 「こんなちょこざいなSSもあるんだから、怖けずに皆どんどん発表していいんダヨ!的反面教師な意味で?」 「しくしくしく」 ヨコハマ鯛焼きは自作か。通りでガ板になかったわけだ ネタのためにAAを自作する根性に惚れた -- 名無しさん (2009-04-25 20 15 56) 名前 コメント
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カルマあきのSS感想用掲示板はこちら anko4171 ゆっくりそだっていってね!(前編) anko3617 くものいとさんはゆっくりしてるね!! anko3580 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続々・後編) anko3579 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続・後編) anko3578 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(後編) anko3564 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続々・中編) anko3563 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続・中編) anko3549 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(中編) anko3542 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(前編) anko3521 ゆっくりつかいすてていってね! anko2889 いっしょにゆっくりしていってね! anko2425 かけがえのないいのちなんだよ!(後編) anko2424 かけがえのないいのちなんだよ!(前編) anko2264 ゆっくりいじめはゆっくりできるね!(後編) anko2263 ゆっくりいじめはゆっくりできるね!(前編) anko2171 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(後編-2) anko2170 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(後編-1) anko1745 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(中編-2) anko1744 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(中編-1) anko1548 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(前編)
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「ただいま~っと」 時刻は午後八時。ようやく自宅にたどり着いた俺は、外界のものであ る扉についた鍵を開け、暗闇の部屋に向かって、帰宅の挨拶を交わした。 「一人暮らしの寂しさってやつかな」 そう、俺は両親を死別して三年。独り身のさびしい身の上だ。 そう自嘲した俺に向かって、 「わかるよー」暗がりの土間から声がした。 そうだ。俺は半年前にあるゆっくりを飼っていたのだ。 種類はゆっくりちぇんという、なかなかの希少種で、俺はこいつを ちぇんと呼んでいる。 「一人でさびしくなかったか?お昼御飯はちゃんとたべた?」 「わかるよー」ちぇんはぽよよんとはね、俺の胸元に向かってジャ ンプした。 ちぇん種とは、基本的に『わかるよー』と『わからないよー』しか 喋られない。あとは『ゆっくりしていってね!!!』くらいか。 ほかのゆっくり種だと何か気の聞いたことを言うのだろうが、あい にくこいつはゆっくりちぇんだ。 俺はこいつに何とかほかの言葉を覚えさせようとしたが、そのすべ ては徒労に終わった。いや、『ちぇん』といえるようになっただけ ましかもしれない。 部屋の灯りをつけると、おそらく昼にきちんと食べたのだろう、ち ゃぶ台に用意しておいたちぇん用の御飯がお皿を残してきれいにな っていた。 ちぇんはというと、俺の腕に抱かれながら、毛並みのよい二本の尻 尾を立てにおおらかに揺らしている。 このちぇんは、気分がいいときにこういう動作をする。 「ちゃんと一人で御飯食べたのか。えらいぞー」 「わかるよー」 俺はちぇんを抱いて和室の居間に入る。 「今日は仕事が多めだったよ。帰りが遅れてごめんな」 「わかるよー」俺はもともと部屋の片付けが苦手だったのだが、ち ぇんを飼うようになってからはものを散らかさないようにしている。 おかげで部屋の中はそれなりに整っていた。それにこのちぇんも近 頃ではよくわかっているようで、部屋のものを散らかし遊んだりは していない。 「そうだ、帰りにお土産を買ってきたんだ」 俺がそういうと、ちぇんは俺を見上げてうれしそうにもぞもぞした。 「わかるわかるよー」 「何だと思う?」 「わかるよーわからないよー」 面白い表現をするなぁ、こいつ。 ちゃぶ台前の座布団にすわり、ちぇんをお向かいに座らせる。 「じゃーん。人間の里で買った、どら焼きでーす」 「わかる、わかるよー」 相当にうれしいのだろう、ぴょん、ぴょんと座布団の上を跳ね回る。 ちぇんと俺の、二つ分だ。 紙袋から中身を取り出して、さらに取り分ける。 ここではたと気がついた。 久しぶりに味わう甘味に、お茶がないのは非常にけしからん。 「ちょっと待ってな、ちぇん」 俺はそういいのこして台所にお茶を沸かしに向かっていった。 半刻後ー 俺はお茶を入れた急須を手に、呆然とたたずんでいた。 ちぇんはお行儀よく居間の座布団の上で待っている。 だが、どう探しても見つからないのだ。ちゃぶ台においておい た、たい焼き二つが。 落ち着くんだ俺。とりあえず急須をちゃぶ台におこう。 ちぇんはいつもどおり、俺の動作一つ一つを興味深そうにみつ めてい……ない。むしろ俺と目を合わせないようにしていないか? 改めてちぇんの向かいの座布団に座った俺は、正座でちぇんにはなしかけた。 「ちぇんさん。ちぇんさん」 「わかるよー」 「たい焼き、どこいったか知らない?」 「わ、わからないよー」嘘だ。ちぇんの口元に餡子がついている。 「ちぇんさん、お話があります」 「わかるよー」 「俺はうそつきが大嫌いです。そういうことをする悪い子は加工所に 遊びに行ってもらいます」 「わ、わからないよー」『かこうじょ』の名前が出たとたん、ちぇ んの全身がぶるぶると震えだした。半分涙目で、だ。 「もう一度聞きます。たい焼きどこいったか知りませんか?」 「わかるよー」 「どこですか」 「……ちぇん」今にも消え入りそうな声でちぇんはいった。 「ふたつとも食べちゃったのですか?」 「わかるよー……」 ふう、と俺はため息をついた。 「俺はいやしんぼも嫌いです。でも、ちぇんさんは正直に言ったので 今回は許しましょう」 「わかる、わかるよー」俺に向かって、うれしそうにすりよるちぇん。 表情もパアッと、段違いに明るくなった。 「そのかわり、ぷにぷにもふもふの刑をします。覚悟はいいですか?」 「わからない、わかるよー」 そうして俺は、図らずして、一晩中ちぇんの尻尾をもふり続ける権利を 手に入れたのだった。 おわり。 山なし落ちなし意味なし。 ちぇんかわいいよちぇん 続き 『ほのぼの』系として、ちゃんと存在意義がありますよー。でも、確かにもう一味欲しいかなー。 -- 名無しさん (2008-10-20 17 53 03) どらやきが途中からたいやきになってますよー -- 名無しさん (2008-10-20 22 32 36) ドラ焼きうまそうだぬ・・・ → おお、たいやきもあったのか → あれ・・・ドラ焼きどこいったんだ・・・ -- 名無しさん (2008-10-29 23 04 25) 気が抜けるようなほのぼの、自分は好きです。 -- 名無しさん (2010-03-13 11 09 16) このちぇんみたいに可愛くて素直なゆっくりを飼いたいな♪ -- ゆっくり愛で派 (2010-03-28 05 15 58) ちぇんー 飼い主優しい 虐待お兄さんじゃなくてよかった -- 名無しさん (2010-11-04 22 14 27) どら焼きがたい焼きに変身したんだね わかるよー -- 名無しさん (2012-05-26 10 19 50) ちぇんたん・・wwマジかわいいwww 俺ももふりたいよーーww -- ゆっくり愛で助 (2012-10-13 02 42 07) 名前 コメント
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※原作キャラが出てきます。 ※虐待はぬるめです。 ※ゆっくり信仰していってね!の若干続きです。 ゆっくり体調管理をしていってね! 「今日も良い天気ねぇ…参拝客の人やゆっくりも沢山きてくださるし…」 「むきゅう…本当ね、八坂様の信仰も集まるし最高だわ」 神社の参道では掃除を行う緑色の巫女と、ゆっくりぱちゅりーの姿があった。 ここは守矢神社。 外の世界で信仰が集まらなかったために幻想入りしたのだが、こっちで集めた信仰はうなぎのぼり。 調子に乗った神様とその傘下に入って日夜研究開発を行う河童が闊歩する神社の巫女とそこで強化された核ぱちゅりーである。 「最近身体の調子はどう?」 「むきゅッ、大丈夫よ。八坂様のご加護のおかげですこぶる元気だわ」 このぱちゅりーは守矢神社のぱちゅりー・ちぇん種をまとめるリーダーぱちゅりー。 当初は早苗に対しても敬語で喋っていたが、早苗が別に対等で構わないと言ってからはこんな感じで仲良しのご様子。 ちなみにここで言うご加護は餡子の代わりに搭載された核融合炉の事である。科学技術の塊であり、神託も加護もあったもんじゃない。 「そう、良かったわね。他のみんなはどうなの?」 「それも大丈夫よ、八坂様や早苗、信者のみなさんがくれるお野菜のおかげで普通のぱちゅりー種より元気だわ!」 「そっかー…そうだね、元気なのに越したことはないわね!」 「むきゅ、早苗は大丈夫なの?」 「う、うん…この間霧雨さんと弾幕ごっこをした時から…ちょっと風邪気味かな」 「むきゅう~♪早苗も体調管理は…「たいへんだよぉおおおお、わからないよぉおおおおお!!」むきゅ!?」 大声をあげて駆けてくるのは群れのゆっくりちぇん(核非搭載)だ。 神社の石段を4段飛びで駆け上がってくる。 「どうしたの!?」 「たいへんだよ!れいむがいっぱいこっちに向かってくるよ!いっぱいすぎて数がわからないよぉおお!!」 すぐさま1人と1匹と1体は階段から山の麓を見下ろす。 するとそこには紅葉でもないのに、赤のコントラストが山道を埋め尽くしていた。遠目に見てもわかる、ゆっくりれいむの群れである。 「むきゅきゅ!また性懲りもなく神社を狙ってきたのね!」 「どうするのーどうするのー!?」 「むきゅう…ひーふーみー…1000はくだらないわね」 3つ数えただけで1000と判断するのはどうかと思われるが、確かにそのくらいの数のれいむ種が階段を昇ろうと大挙している。 どこかの地域ではれいむ種のみで構成された群れにいくつもの群れが壊滅させられたと聞く。 今回の群れはそこまでの数ではないものの、普通に考えて1000を越えるゆっくりの集団は群れを通り越して大量破壊兵器である。 「どうしましょう、神奈子様も諏訪子様も今は幻想郷神様会議で留守にしていますし…」 「わからないよー!!」 「むきゅっ、流石にあの数になると早苗のスペルカードでも一掃は難しいわね。ちぇん!みんなを呼んで頂戴、迎撃戦よ!」 「撃退するんだね!?わかるよー! 急遽集められたゆっくり達は、ゆっくり守矢守備隊として作戦会議を始めた。 会議に参加しているのは核ぱちゅりーに核ちぇん、そして群れの中でも有事の際に備えて格闘訓練をしていた白兵ちぇんと武装ぱちゅりーだ。 「むきゅっ、ここは八坂様が戻られるまで防衛するべきだわ!」 「無理だよー!敵の数が多すぎるよー!」 「取りあえず核ぱちゅりー部隊は先行するわ!少しでものんでぃれくしょなるれーざーで数を減らすのよ!」 「「「「「「「むきゅーん!!」」」」」」」 「ちぇん達はどうするのー?」 「核ちぇんも先行するよー!ちぇんとぱちゅりーは早苗さんと一緒に鳥居で食い止めるんだよー!」 「「「「「鳥居が防衛ラインだねーわかる、わかるよー!!」」」」」 「むきゅううううううう、戦闘準備よぉおおおお!!」 と言ったものの群れの一般ゆっくりで戦えるのはちぇんが20にぱちゅりーが15、他のゆっくりも投石等で応戦体制を取っているが、相手は4桁だ。 広場に誘えば早苗のスペルカードなら数百単位で消滅させれるが、それでも一撃と言う訳にはいかない。 その隙に数で攻めてこられては少なからず非戦闘ゆっくりに被害が出てしまうだろう。 それに早苗は風邪気味で本調子ではない。ゆっくりを守りきれないどころか自分が返り討ちに合わない保証は無い。 何としても階段を昇りきる前に奴らを殲滅する必要がある!! 「むぎゅう!総員一斉射撃よ、長距離砲撃で一気に叩くわ!」 「「「「「「「むきゅーーーーー!!のんでぃれくしょなるれーざー!!」」」」」」」 「ゆべぇえええええええええええ!!」 「で、でいぶのほっぺがなぐなっだあああああああ!!」 「ゆーんゆーん!おぎゃあじゃーん!あんよがいだいよぉおおおおおおおお!!」 「まむまむにあながあああああああぁぁぁぁ!」 8本のレーザーが眼下のゆっくり達を貫通して行く。先頭から中腹にかけてのれいむ達は阿鼻叫喚の地獄絵図だ。 「ゆがっ、や、やべで!!でいぶをぶみづぶざないで…」 「ゆっゆっゆっ、しにぞこないのれいむはそこでゆっくりしていってね!れいむたちがゆっくりせいあつするよ!」 貫通し死に掛けたゆっくりを踏み台にして後方のれいむ達が駆け上がってくる。 1本で10体は貫通しているだろうか、だがれいむの数は全く減っていなかった。 「むむむきゅ!?全然倒せていないわ!」 「まだよ!諦めずに次弾装填、第二射行くわよ!」 「「「「「「「むきゅーーーーー!!のんでぃれくしょなるれーざー!!」」」」」」」 再度8本のレーザーがれいむに襲い掛かる。 しかしぱちゅりーは気がついていた…心なしか第一射よりもレーザーが細くなっている。 「ゆがぁああああああああ、あ、あづいよぉおおおおお!」 「ゆぐぅ…でいぶのみぎめがみえないよぉ…」 「あつっ!ゆっくりやけどしたよ!へんないやがらせはゆっくりしないでやめてね!」 「む、むきゅう…」 ダメージの割合が減っている…ぱちゅりーの不安は的中していた。 れいむは初撃の時よりも近づいているから効果は上がっているはずなのに、致命傷を受けたゆっくりの数は少なくなっている。 にとりは説明していなかったが、ぱちゅりー達は薄々気づいていた。のんでぃれくしょなるれーざーにある2つの問題に。 1つはレーザーの太さだ。 ぱちゅりーの口から放出されるレーザーは直径が5cmから最大出力で10cm程度。 威力と射程は必殺技に相応しく、ドスさえ一撃で貫通するが、この太さは一般ゆっくりでさえ中枢餡子に当たらなければ致命傷にはならない。 ゆっくりはその特性上、貫通攻撃に強い。 痛みはもちろんあるが、中枢餡を貫かれない限りは即死する事はない。被弾が頬の場合に至っては我慢すればそのまま活動できる。 2つめは発射回数。 動力こそ核燃料で半永久的に活動する事ができる核ぱちゅりーだが、のんでぃれくしょなるれーざーは別だ。実際はレーザーとは名ばかりの超高速餡子砲だから。 これは微量の餡子を高速で放射し、目標を駆逐する攻撃方法だ。つまり発射する餡子が必要になる。それがぱちゅりーの後頭部にあるレーザー用餡子だ。 これを核エネルギーで圧縮し効率的に発射する、しかし効率的と言っても限度はある。 まして身体のほとんどを融合炉に消費しているため、レーザー用餡子の備蓄量は少ない。ノーマル核パチュリーで4発が限度だろう。 リーダー核ぱちゅりーは試作追加ぷろぺらんとを帽子の中に内蔵しているため、6発まで発射ができる…たったの6発だ。 「むきゅう…このまま照射していても殲滅はとても無理ね」 「どうしたものかしら?」 ぱちゅりー達に流れる不穏な空気…彼女達は気づいていた。 その気になれば自分達は生き残る事ができるが、とても後方の仲間を、早苗を守りきるのは不可能だ。 「むきゅきゅきゅきゅ…」 「むっ…むむむきゅーん!むきゅーん!!」 賢いが故に理解してしまう絶望。 想像できる結末。 「むきゅうぅー…リーダー…「めがふれあ」ならどうかしら?」 「むぎゅう!?」 “ばくふ・めがふれあ” ぱちゅりー達がその機密保持のために使用する事ができる最終手段である。 「ダメよ!あれは機密保持の手段であって、攻撃用の装備じゃないわ!」 「むきゅっ、でもこのままレーザーで迎撃しても半分も倒せないわよ!」 「むっきゅーん…」 もう無理だ。 口には出さないがぱちゅりー達の全員がそう結論付けた。 どれだけ強くなっても結局は単体決戦用だ。これだけの物量の前には核ぱちゅりーでさえも無力であった。 そんな時、絶望するぱちゅりー達に陽気な声がこだました。 「ちぇんたちの出番だねー!」 「わかる、わかるよー!」 「1000匹くらい楽勝だねー!」 ゆっくり核ちぇんだ。 「何言ってるの?悪いけど体当たりだけじゃどうやったって勝てっこないわよ!」 「そんなことないよー!」 「ちぇん達にはぱちゅりーに負けない攻撃手段があるよー!」 そう言ってちぇんはぱちゅりーに背中を見せた。 いつもの二股尻尾…いや、このちぇん達は尻尾ではなく棒が刺さっているのだ、それも六角形のかなり長めの棒だ。 「これは制御棒っていうんだよーわかるねー?」 「これを押し込めば物凄い熱量をもつんだよー、すごいよー!」 「その状態で3匹並んで階段を転がれば、れいむなんて全部溶かしつくすよー!」 「「「わかる、わかるよー!」」」 「むきゅ!そんな凄い能力があったのね!」 「早速制御棒を押し込みましょう!」 「ダメだよー階段を転がって一掃するから、もっと上まで引き付ける必要があるよー!」 そして数分後、れいむの群れは階段のすぐ上まで辿り着いた。 「さんひきでれいむたちをとめようなんて、ばかなの?しぬの?」 「ゆっゆっゆ、ばかなちぇんたちをたおして、れいむたちのゆっくりぷれいすをてにいれるよ!」 「「「「ゆーっ!」」」」 「今だよ!制御棒を押し込んでねー!」 「むきゅ、みんな行くわよ!」 「「「「「「「ゆーしょ、ゆーしょ!」」」」」」」 ガコン、と音が鳴ったと瞬間にちぇんの目が青白く輝きだした。 それと同時にぱちゅりーはちぇんから妙に暖かさ…いや、熱さを感じ出した。 「む、むきゅう…かなり熱いわ…ちぇんは大丈夫なの?」 「…大丈夫じゃないよー」 「臨界開始だねーわかるよー!」 「ぱちゅりー…お別れだよー」 「むきゅっ!?」 臨界の始まったちぇんは周囲に数百度の高温を撒き散らす。そして最後には燃え尽きてしまうのである。 「さぁみんないくよー!」 「ちゃんと均等に並んでねー!」 「わかるねー転がるよー!」 「むきゅ、貴方達待ちなさい!」 「「「ぱちゅりー今までありがとうねー」」」 「むぎゅう!!」 「ゆゆゆっ!?ちぇんがころがってくるよ!」 「たったさんびきでくるなんて、おお、おろかおろか」 「行くよー!」 「熱いねーわかるよー!」 「れいむなんて全部丸焼けだよー!」 階段から転がるちぇん。そこから先はれいむ達にとっては地獄でしかなかった。 火の玉ですらない、青色に輝いたちぇんが来たかと思えば、自身の身体や親友、仲間が次々に溶け出しているのである。 「ゆぎゃああああああああああああああああ!!あづぃうばぁああああああ!」 「ゆぐっ、ゆっぐり、で、でぎばい…」 「ゆぎゃぎゃぎゃ…ぎゃ…ぎ…ぎ…うべぇ」 「で、でいぶだぢ…にげで…… 「あぶないよ、すぐにおかあさんのなかにはいってね!」 「ゆっくちわきゃったよ!」 「おきゃーしゃんのなかはちゅめたくてゆっきゅりー!」 「……あぎゃぎゃぎゃぎゃ、あづいぃいいいいい!」 「おきゃーしゃん!?ゆっきゅりあちゅいよ!」 「ゆっきゅりできにゃいよ!」 「ごごごべんんえあがぢゃんだぢいいぃいいいいいい!!」 「ちっともすずちくにゃらにゃい、おきゃーさんはじねぇええええ!」 「あぎゃぎゃ!あぢゅいよぉおおお!」 「ゆっ!?なんだかうえがさわがしいよ!」 「たいへんだよ、うえのほうのれいむがとけちゃってるよ!」 「ど、どぼじでとけちゃうのおおおおおおお!」 こうして半分以上を降っただろうか。 れいむの群れも1/3程度が融解し、跡形もなくなっていた。 溶けながらも鳴り止まない悲鳴に恐怖し、下山するれいむと、上を目指すれいむが衝突し、そこでも地獄絵図は続いていた。 「ゆがぁ!なんでおりてくるの!」 「はやぐ!はやぐおりで!でいぶたちもどげちゃうでしょ!!」 「いみのわからないれいむはゆっくりしね!」 そしてちぇん。 「ぎにゃあああああああああああああああああ!!」 「わがらないよぉおおおおおおおおおおおおお!!」 「が、がまんするんだよぉおおおおお!もう少しで本隊に到着するよぉおおおおおおお!」 周りのゆっくりを溶かす勢いの熱だ、本体が無事なわけはない。 皮はとっくにただれており、中から融合炉の一部が見えている。 転がりながられいむと階段周辺の草木を燃やしつくし、徐々に転がるスピードと熱が上がっていく。 「ガガががガガガアアああアあああああああ!!わがらないぎぎぎぎぎぎ!」 「らんしゃまぁあああああああああああ!!だずげでぇええええええええ!」 「も、もう少しだよー……もう少しで敵の本隊だよぉ……」 「も、もうげんがいだよぉ…」 「らんじゃまぁ…あづいよぉ、だずげでぇ…」 「が、頑張るんだよー…三匹一緒に本隊に辿り着くんだよー……でないと…は…はじ…はじけな…さいが……でき…な…」 もはや限界に近づいた核ちぇん達。 リーダーちぇんだけが辛うじて意識を保っているが、それももう風前の灯火だ。 れいむだけではない、彼女たちもまた地獄の中にいるのだ。 そんな彼女達の前に、一片の光が差し込んできた。 「ち、ちぇぇえええええええええええええええええええん!!」 れいむの本隊から聞こえたのは幻聴ではない。 本物のゆっくりらんだった。 神奈子の庇護の下にいても、何か物足りない生活…その足りなかった物が、ちぇんの目の前にいた。 「らんじゃまぁあああああああああああああ!!」 「ぼんもののらんじゃまぁああああああああ!!わがるよぉおおおおおお!!」 「………………」 「ちぇぇぇぇぇぇええええん!」 「………ダメだよー、らんしゃまの側に着いたら……予定通りめがふれあをするよー……」 何を言ってるんだこいつは。二匹は揃って同じ事を考えていた。 大好きならんしゃまが目の前にいる、こんな屑れいむなんてさっさと倒して、らんしゃまに熱いのを取り払ってもらおう。 なのにこいつはらんしゃまを……爆破する!? 「わがらないよぉおおおおおおおお!」 「なにをいっでるのぉおおおおおお!あいではらんじゃまだよぉおおおおおお!ばがなの、じぬのぉおおおお!?」 「らんしゃまが原因だよぉおお!わかってよぉおおお!!」 この騒ぎの原因はゆっくりらんだった。 らんは風の噂でちぇんが沢山いる神社がある事を聞いた。そこでは数多くのちぇんが幸せに暮らしている。 最初はそんな話だったが、神社に近づくにつれて話は変化していき、近辺のゆっくりは軒並み排除され、無残に殺されていくと言った話に変わってきた。 そんな場所はゆっくりできない。 ゆっくりできない神社にちぇんがいる。 つまりちぇんは神社に囚われている! ちぇんを助けないと! ゆっくりらんはちぇんのためならゆっくりとは思えないほどの頭の回転を始める。 そして考え付いたのが、少し前に聞いた“山のようなれいむの群れ”の話。 れいむ種を集めて襲わせる。その隙にちぇんを助けて下山する。 れいむは腐るほどいるし、先導しやすい。ゆっくりの楽園があると言いくるめる(実際少し前はそんな噂だった)、他は子供を人質に強制させる等。 そうやって数を揃えた。 そして助けに来たちぇんは…目の前で青く光ながられいむを溶かし、転がっている! 「でも…でもっ!」 「らんじゃまをだおずなんででぎないよぉおおおお!」 「やらないとみんなやかなこさまにめいわぐがががるよッ!!」 ちぇん達は叫びながらも終点に辿りついた。 ガキンッ!とゆっくりには無縁の音を鳴り響かせ、ゆっくりらんの手前5m程の地点に着地、いや着弾した。 「ちぇん!?だいじょうぶ?あついぞちぇん!」 「ら…ん…しゃ…」 「わが…る…らん…じゃ…」 「……み、みんな…は、はじけ…」 満身創痍だ。 はじけなさいはおろか、らんしゃまに近づく事もできない。 周囲にはちぇんたちを避けたれいむがまだ100匹ほど残っている。 100匹なら風邪気味の早苗様やぱちゅりー達でも倒せるかなぁ。 もう…眠ってもいいよね。 最後まで正気を保っていたリーダーちぇんも限界だった。 しかし。 「うぎぎ…がが……いうだげいっでねぢゃうのはずるいよぉー」 「わわわわ…わがるーわがるよー…りーだー、ざいごまでじっがりじでねぇー」 まだ二人は耐えていた! 「ぢぇんは、ぢ、ぢいざいとぎにらんじゃまにきいたよー…」 「わるいごどをずる、ゆっぐりはばづをあだえないどねー…ら、らららんじゃまもれいがいじゃない、よぉー」 「ざ、ざいじょは、ひ、ひひ、ざじぶりにらんじゃまを、ををを、みだから、と、とととまっどったけどー」 「わわわわわ、わるいらんじゃまは、せいばいずるよぉー…や、やざがざまの、おお、おしえだねぇー…わがががる」 二人は泣きながら自分達の過ちを認めた。 例え最愛のらんしゃまでも、悪いゆっくりは殲滅しないといけない。ぱちゅりーや八坂様がいつも言っていた事だ。 「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええんッ!!」 ああ、らんしゃまの声だ。 大好きならんしゃま。 でもらんしゃまはいつも言っていたよね、悪い事はしちゃいけないって。 らんしゃま、どうしてれいむを連れてきたのかな? 1人で来てくれれば、みんなでお迎えしたのに。 れいむを倒さないと上のみんながゆっくりできない。八坂様にも迷惑がかかる。 神様に迷惑をかけるのは悪い事だ。 らんしゃまは悪いゆっくりだ。 大好きだけど…倒さなきゃ!! りーだーちぇんの目がカッと開く。 「ぶだりども!いぐよ!!」 「わがるー」 「わがるねー」 「ちぇん!?」 「ぱちゅりぃいいいいい!今までありがどうねぇえええええええええ!」 「ざなえざまぁぁぁぁぁ!おがらだは大事にねぇぇぇぇぇぇ!」 「やざがざまぁぁぁぁぁぁ!!ちぇんだちはどでもゆっぐりでぎまじだぁぁぁぁあ!」 もうそんな声を出せる状態じゃないのに。 境内のぱちゅりー達や他のゆっくり、そして早苗もその叫びを聞いて涙は止まらなかった。 途中でやってきたにとりも泣いていた。 「はじけなさい!」 「はじけなさい!」 「はじけなさい!」 「「「ばくふ・めがふれあ!」」」 3匹のちぇんが叫んだ瞬間、ゆっくり達は消滅した。 跡には若ぱちゅりーがめがふれあを使った時より大きなクレーターが3つ。 後期開発のちぇんはぱちゅりーより若干融合炉が大きいのと、ちぇん種の身体能力が原因だろう。 それでも殲滅しきれなかったれいむ達も極少数いたが、一般ちぇんによって全て叩き潰された。 ぱちゅりー達はこのれいむ達もゆっくりらんの被害者と言えなくもないが、ちぇん達の核ちぇんへの想いを考えるとしょうがないだろうと思った。 そして時が過ぎ、クレーターは埋められ、また平和な守矢神社が帰ってきた。 近場の里はもちろんの事、遠方の里も迷惑していたゆっくり。 そのゆっくりの中でもれいむ種がほぼ消滅し、紆余曲折の上ででた結論は、新たな守矢神社のご加護だったと言う事で神社の信仰はさらに上がっていった。 ただ早苗だけが、その信仰を手放しに喜ぶ事ができなかった。 守矢神社の隅には4つの墓と立て札がある。 『守矢神社を守るために散った勇敢なゆっくり達、ここに眠る』 あとがき 主役側ばかりが優遇されている気がしないでもないので吹っ飛ばしてみました。 “史上最弱が最も恐ろしい”の影響を凄く受けています。 正直、あんな数のれいむが里を襲ったら、妖怪や有力者の力を借りないと絶対に勝てないなと。 そしてタイトルの体調管理はあまり関係がなかったー そろそろメインのゆっくりかなこを出して守矢神社編とは別のものでも書こうかと思ってます。 書いた作品 ゆっくり信仰していってね! ゆっくり新技術を導入していってね! おまけーね 当時にとりは開発本部でぱちゅりー用ぷろぺらんとの量産計画を検討していた。 そんな中で鳴り響く突然のレッドアラーム。 ぱちゅりー達が大規模なゆっくり駆除を行う等の話は聞いていない。聞いていたとしても、頻繁にめがふれあを使う状況があるはずがない。 大慌てで境内に駆けつけるとそこには神社のゆっくりが総動員されており、階段付近に早苗と核ぱちゅりーがいた。 早苗と並んで階段の下を見つめると、そこには融解したれいむのおびただしい数。 そして炸裂する閃光…あれはめがふれあの爆発だ。 にとりの涙は止まらなかった。 その夜、一連の事件と核ちぇんの健闘を聞いた神奈子は… 「にぃとりぃいいいいいいいいい!!」 怒り狂っていた。 境内に神の怒号が響く。 一連の行動はにとりが扇動したわけでもないのだが…「ちぇんが爆発=核が原因=にとりが原因」このゆっくりにも負けない超理論が神奈子の有頂天の原因だ。 にとりが流した涙は、最初から自分のためのものだった。 「私は…生きて川に帰れるのかな…」 きっと無理かもしれない。 このSSに感想を付ける
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魔法の森に夕暮れが迫っていた。 アリスがその生き物と出会ったのは、自宅へ戻る途中。 里の子供たちを人形劇で楽しませて、のんびりと魔法の森を歩いていたところだった。 「ゆっくりしていってね!」 飛び跳ねるふくよかな生首。 アリスはあっけにとられていた。 幻想郷に様々な妖怪がいることは知っていたが、これほど珍妙な存在は初めて見た。 その生き物はそんなアリスの様子に構わず、陽気な声をあげながらアリスの周囲をぴょんぴょん跳ね回っている。 未知の生き物の行動にアリスは目が離せないが、敵対的な素振りを見せないので自分からは何も仕掛けない。 アリスはそっけない物腰ながら、実は親切で優しい魔法使い。 今も人里の子供たちのために、人形劇を演じて家に帰宅する途中だった。目障りだからといって無碍に排除はできない。よく見れば、ぷるぷると可愛い動きをしていることだし。 とりあえず、言葉を話すなら意思の疎通ができるかもしれない。 アリスはその生き物の目線に合わせて、精一杯屈みこむ。 「あなたは、なに?」 「ゆ? ゆっくりまりさだよ!」 元気な返事は大変よろしい。 だが、それはかえってアリスの困惑を深めていた。 なぜなら、この生き物が口にした名前は知人の名前。 霧雨魔理沙。 アリスと同じく魔法の森に住む人間の魔法使い。昔からの腐れ縁だった。トレードマークは魔女でございとでもいいたげな黒い帽子で、なるほど、この生き物も同じような帽子を被っている。さらさらの金髪もまったく同じ。 ただ、それ以外が違いすぎる。 もちろん見た目もそうだが、内面もまったく違うようだ。ゆっくりまりさは純真な人懐っこい眼差しでアリスを見つめている。 それに対し霧雨魔理沙は傍若無人で奔放だが気のいい性格で、アリスにとっては騒がしい隣人といったところ。ただ、悪癖がいくつかあるのが悩みの種。一つは窃盗癖、もう一つは…… 「ええと、まりさ。変なきのこでも食べたの?」 得体の知れない魔法の森のきのこを収集し、とりあえず食べてみることだった。 「ちがうよ、まりさは食べられるきのこ知っているよ!」 「そうよね、もしそうだったらどうしようと思っていたところだけど……あなたのこと、教えてもらってもいいかしら? 妖怪なの?」 相手の得体の知れなさに、アリスの相貌に警戒の色が宿る。 この生き物の愛玩用のぬいぐるみに似た、抜けた表情にすっかり気が緩んでいた。ぷううと、不満げに膨らむ風船のような顔を見ていると、張り詰めかけた警戒も霧散霧消してしまうのだが。 「ゆっくりまりさは、ゆっくりまりさだよ! 今度はおねえさんのこと教えてね、おねえさんはゆっくりできる人?」 答えにならない答えを返された上に逆質問。 とはいえ、それはゆっくりまりさには大切なことなのだろう。アリスをうかがうゆっくりまりさの目は真剣そのもの。 「変なことが起こらない限り、ゆっくりできるわよ」 例えば変な生き物が目の前にあらわれたりしなければ。そんな台詞を飲み込むアリス。 すると、ゆっくりまりさに花が咲き誇るような笑顔。 ぴょんぴょんとうれしげに体を揺らして、その微笑ましさに思わずアリスも笑顔。 「よかった! あのね、おねえさん、ゆっくり教えてね! まりさみたいなゆっくり、他に見なかった?」 「あなたが初遭遇よ。というか、他にもいるの?」 「うん、ゆっくりれいむとか!」 ゆっくり、れいむ。 霊夢? アリスの脳裏に浮かぶのは、あまりにさばけた性格の巫女の姿。魔理沙の親友。 もしかして、れいむといのは、あのれいむだろうか。 「れいむって、どんな子なの?」 「ええとね、頭に真っ赤なりぼんをつけて、かみが黒い子なの!」 間違いない。 あらあらご愁傷様とアリスの唇にもれる微笑。 このまりさも魔理沙本人がみれば、恐らく「私はこんな顔してないぜ!」と膨れるだろう。霊夢だって、いつもの悠々とした表情を崩して頭を抱えるかもしれない。見てみたいものねと、悪戯っぽい笑みだった。 そこで、ようやく期待をこめたまりさの瞳に気がつく。 「ごめんなさいね、やっぱり私は見てないわ」 「ゆっくりいいい、ざんねんだよー」 みるみるうちに、期待に膨らんでいたまりさの体がしゅるると萎み、ぺたりと平べったくなる。 そのユーモラスな動きに若干の申し訳なさを感じながらも、ついついアリスの頬は緩んでしまう。 まりさは気をとりなおしたのか、再びその体を引きこして、ぺっこり頭を下がるようなしぐさ。 「呼び止めてごめんなさい、おねえさん。ゆっくりしていってね」 「待って」 そのあまりの殊勝さに、アリスは思わず助け舟を出してしまっていた。 身を翻そうとしていたゆっくりまりさが、呼びかけられた驚いたように振り向く。 「力になれるかもしれないわ。どうしてはぐれたか、教えてもらえるかしら?」 「あのね……ゆっくりしすぎて、はぐれちゃったの。まりさが川でぷかぷか遊んでいたら、いつのまにか見えなくなっていたのおお……」 アリスの問いかけに律儀に答えるまりさ。ただ、その顔は今にも泣き出しそう。不安なのか寂しいのか。涙を堪える眉の歪みに、アリスの保護欲がかきたてられる。 どうしたものか、アリスは手近な岩に腰掛け、ゆっくりまりさに近い目線で話しかける。 「集まる場所とか、決めてないの?」 首を振るゆっくりまりさ。 その能天気な言動から、その答えをなんとく予想をしていたアリス。 用意していた次の質問に移る。 「どういうふうに探していたの?」 「あちこちいって、ゆっくりできる人がいたら聞いて回っていたの!」 まあ、確かにそれ以外に手はあるまいとは思うが、こんな鬱蒼とした森の奥では、いかにも迂遠に感じるアリス。 それに、第一、危険だ。 こんな無警戒で小さな生き物が、獣や知性の低い変化したばかりの妖怪が跋扈する森の奥底で、よくもまあ無事にいたものだ。 「あまり誰彼構わず声をかけてはだめよ。この森にはあなたぐらいの生き物なら、ぺろりと食べちゃうのがいるんだから」 「そうだね! ついさっきも『ゆっくりできるのかー』っていう妖怪さんに食べられちゃったよ!」 「ルーミアはどこでもうろうろしているのね。って、食べられたっ!?」 思わず腰を浮かしかけるアリス。 どういうことだと視線で問うと、ゆっくりまりさの瞳に浮かぶのも困惑の色彩。 アリスは一つ深呼吸をして、なるべくゆっくりまりさにあわせた言葉で問い直す。 「食べられたら、死ぬでしょう?」 「ゆ? なにいっているの? しんじゃっても、目がさめれば『おうち』に戻っているよね!」 同意を求められても困る。 蓬莱人でもあるまいし、死んだらおしまい。 この生き物は、そんな通常の生物の枠にあてはまらない生き物なのだろうか。 困惑に一時捕らわれたアリスだが、本来聡明なアリスの頭脳。こんな生き死にを繰り返す種族について、一例を思い出していた。 妖精。 この子たちはその亜種なのだろうかと、自分を納得させるしかないアリスだった。 とはいえ、死んでもすぐ復活するお気楽な身の上とはいえ、それゆえか、ゆっくりまりさの言動は幼い。 知らず、かきたてられるアリスの庇護欲。 夕暮れが近い。もう少し日が高く、日差しが届く野原ならゆっくりの気が向くまま、探しているのもいいだろう。だが、森の日暮れは一足飛び。 まっくらな中を、ともだちを求めて寂しげに探し回るゆっくりまりさを想像すると、どうしても心がきゅっと締め付けられてしまうのだ。 今日はゆっくりまりさに付き合ってあげよう。どうぜ、帰っても今日は人形の繕いだけ。 「ええと、まりさ。おねえさんでよければ、手を貸してあげるわね」 「ゆ、いいの! 寂しかったから、まりさうれしいよ!」 内心、拒絶されるかもと考えていただけにゆっくりまりさの反応は喜ばしいものだった。 実際の魔理沙もこれぐらい素直ならまだ可愛げがあるのだが、人の好意につけこむようなところがあって、アリスにはそこが少しだけ疎ましい。 そんな愚にもつかないことを考えていると、ゆっくりまりさがくるりと森の奥へと体を向けていた。 「じゃあ、ゆっくりさがそうね!」 「わざわざ、歩き回らなくてもいいわ」 アリスはその言葉とともに後ろから手を回し、ゆっくりまりさの小さな体を抱き上げる。 「ゆ!? おねーさん、どうしたの! まりさはひとりで歩けるよ!」 戸惑ったようなゆっくりまりさの言葉を聞き流して、魔法を唱える。 ふわりと、重力を無視して浮きあがるからだ。 地面がどんどん遠ざかっていく。 気がつけば、森の節くれだった木々を抜けて上空へ。 「すごい! まるで、そらをとんでるみたい!!!」 すさまじい順応の早さではしゃぐゆっくりまりさ。 アリスはそんなまりさが腕からこぼれないよう、胸の前でしっかりと抱きかかえていた。 「さて、あなたはどこあたりで仲間とはぐれたの?」 言いながら小川の流れる方向へまりさの顔を向けさせる。 きょろきょろと、その瞳を動かすまりさ。やがて叫んだ。 「向こうのだよ! あそこでゆっくりれいむと、ゆっくりありすとはぐれたの!」 「へー。って、え? 私もいるの!?」 つい先ほどまでは、ゆっくりれいむがいて、巫女もかわいそうと笑っていたアリス。 それがそのまま跳ね返ってきて、ありすは渋い顔だった。 そうして、改めて思う。 なんで、自分たちに似た格好をしているのだろう。 その謎の答えは、どうしても思い浮かばなかった。 うっかり、そのまま考えこんでしまうアリス。そのせいで、近づいてきたその影にアリスはまったく気がつかなかった。 「なに不景気な顔しているんだ、アリス?」 声の方向に慌てて向き直る。 そこには日が落ちかけた薄暗がりを背景に、箒にまたがって空に浮く魔女が一人。 霧雨魔理沙だった。 「何でもないわよ。それより、何? 私は今忙しいんだけど」 応じるアリスの声は不機嫌そのもの。 本当はいらだちよりも、呆けているところを見られた気恥ずかしさの方が強いのだが、微妙なライバル意識というものがつっけんどんな態度をとらせてしまう。 が、取り澄ましたアリスの態度は、騒ぎ出した手元のまりさによって無理やり中断される。 「みんなだ! みんな、ゆっくりしているのおおおお!」 歓喜の叫び。 夕闇に目を凝らしてみれば、魔理沙の箒の前後に二つの膨らみ。黒髪りぼんが目をひくゆっくりと、金髪へあばんどが目についてしまうゆっくりの姿。 あれが、私かと、一瞬遠い目をしてしまうアリス。 その二匹を拾ってきた魔理沙も、ゆっくりを前にして同じ心境だったのだろう。二人、しばらく沈黙する。 静まり返った二人の間を、夕暮れの烏の声と、お互いに気づいたゆっくりたちの呼び声が響いていた。 「まりさあああああ、さがしたんだよおおおおお!!!」 よほどうれしいのだろう。叫ぶだけでは満足できないというように、箒の上でぴょんぴょんと飛び跳ねる、ゆっくりれいむとありす。 あんな細い上でよく飛び跳ねられるものだと、そのバランス感覚に感心するアリス。 「ゆうっ!?」 と、思っていたられいむが落ちた。 「ゆっくうううううううううう……」 声が遠ざかっていく。 ついで、ぺきぺきと木の枝のしなり折れる音。 「あちゃー」 あまりに緊迫感のない魔理沙の声。 お前、何してんだよと、茫然自失から回復したアリスの胸に宿る怒り。 「あ、あんたね……」 このバカと怒鳴りつけたい思いを抑えてアリスは落下地点へ急ぐのだった。 杞憂。 アリスは、地面でぽよんぽよんとはねているゆっくりれいむを見て、その言葉を強くかみしめていた。 「ゆっくりえきさいてぃんぐ!」 「いいな、まりさもしたいよ!」 まん丸に空気を入れて膨らんだゆっくりれいむが弾んでいた。 あれだけの高度から落ちたというのに、外傷がまったくないのは一目瞭然。 「な、大丈夫だろ? こいつら、ゴムマリみたいに頑丈なんだよ」 のんびりとアリスに続いて降りてきた魔理沙のニヤニヤ笑いに、アリスはむっと顔を背ける。 そうして、こっそり手元のまりさのほっぺをぷにぷにと突くが、なるほど指先に十分な弾力が返ってくる。これでは、獣の牙ぐらいでは突き通すこともできないだろうし、叩きつけたところでその勢いのまま、投擲者に跳ね返ってくるだけだろう。 それを示すように、まりさの箒から趙著無く飛び降りるゆっくりありす。 そのまま、バウンドを繰り返すゆっくりれいむと、羨ましそうに眺めるまりさの間に入る。 「ようやく、みんな揃ったね!」 「うん!」 「おねえさんたちにお礼いわないといけないね!」 「うん!」 まとめ役なのか、お姉さんなのか、ゆっくりありすの殊勝な言葉に頷く素直なゆっくりたち。 三匹、先を争うようにアリスと魔理沙の前に転がり込んで、きれいに整列。 「おねえさん、ありがとう!」 「たいせつなともだちにまたあえたのは、おねえさんたちのおかげだよ!」 「たすけてくれたおねえさんも、もうともだちだよ!」 「だから、ゆっくりしていってね!!!」 最後の言葉は三匹同時だった。 その愛らしさに、正直アリスの目じりは下がりっぱなし。 魔理沙に気取られないよう気合をこめて、結果、出遅れた。 「ああ、ゆっくりするぜ。お前らもゆっくり帰りな」 「うん、ありがとう、箒のおねえさん!」 言いながら、何度も振り向いて森の奥へと消えていく、仲睦まじいゆっくりたち。 そっと言いそびれた同様の台詞を飲み込んで、アリスは膨れたように魔理沙をにらむ。 「なんだ、ゆっくりみたいな膨れっ面して」 だが、いけしゃあしゃあとした魔理沙の言葉に思わず微笑んでしまう。 笑ってしまったら、アリスの負けだ。 常にはない和んだ空気が二人の間に眺める。 「だめね、あのゆっくりに関わったら、なんだか気持ちまでゆっくりしちゃった」 「私もだぜ」 二人、頭をかきながら笑顔を向け合う。 いつもの言葉を弄する意味ありげなやりとりとは違う、素顔のままの二人。 二人を包んでいたのは、ゆっくりたちの残した爽やかな幸福感だった。 これは、ゆっくりたちが人間と幸福な共存を始める、そのほんの少し前のエピソード。 by小山田 プニプニ感が再現されていて面白かったです。 -- 通りすがり (2008-08-03 22 43 02) 続きが早く見たい・・・ -- 名無しさん (2008-08-04 01 21 24) だれかと思えば加工所の人かwあなたが書くSSはどっちも最高です -- 名無しさん (2008-08-09 17 31 17) ああ、こんだけ頑丈ならしっかり生きていけるよね。うまいわー。 -- 名無しさん (2008-09-10 13 51 50) いいね -- 名無しさん (2010-11-28 11 23 54) 名前 コメント
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それからややあって。 「で、だ。別に冗談を言ったりおちょくったりするくらいは構わんし、会話する気が無いとも言わん。 が、子供を使ってああいう物言いをするのは幾らなんでもやめておけ。いいな?」 「ゆぅ、ゆぐ……ゆぐ、り、りがい、じまじだ……」 散々叫んでのた打ち回ったまりさが息も絶え絶えに返事をする。 「ゆっぐりわがりまじだ……もうじまぜん……」 れいむの方は冷水を被っただけなので、まだ余裕があるようだ。 「本当に、判ったのか?」 流石にこの時ばかりはあまい顔は見せられないと、ドスの効いた表情と声を作る。 しかし、いかつい外見に反してこの男、律儀と言うか、硬い要素が多い。 実の所、内心ではある指摘がこないかと冷や汗を流していた。 今のは人間同士でやったとしても、冗談が通じない相手ならば不謹慎だと言われかねない。 それに少々の説教と折檻をかました所で、悪く言われるいわれも無いだろう。 しかし、約束ではうっとうしい言動を禁止するとは言っていない、その部分が引っかかっていたのだ。 ゆっくり相手では気苦労が耐えなさそうな精神構造である。 「ゆ……あかちゃんで、あそんだりしないよ……」 「ごめんね、あかちゃん……」 ……謝罪相手が違う気がする。 明らかに違うが、やった事自体についてはゆっくりなりに反省したようだ。 「よし。判ったならもういい。次はやるなよ?」 出来る限り重々しく言い渡して、折檻終了にした。 本当は言動に関しても言いたかったが、それに関しては、人間とゆっくりの力関係がわかればそのうちに改まるだろう。 どうせ2つ言っても覚えられないだろうしな。 手元にあれば、タバコの1本でも吸いたい気分だった。 「しっかし……どうするかね、これ」 部屋を眺め、その有様に自分が引き起こした事ながらも男は大きく嘆息する。 直接水をこぼした畳のみならず、壁や戸もまりさが吐いた塩水によってところどころ塩が浮いている。 どう考えてもやりすぎた。 戸板くらいならいいが、放っておくと壁紙や畳は面倒な事になるだろう。 「早い所拭いた方がいいわな、そりゃ」 面倒事が増えた、とばかりに肩をぐるりと回し、風呂場に道具を取りにいこうとする。 そこで、男の目にもうひとつ汚れているものが見えた。 「なぁ、まりさ」 未だに倒れたまま大きく息をつくまりさに呼びかける。 「その帽子、今すぐ洗わせろ」 実はずっと前から気になっていた事だ。 聞いた話だと「外してはいけない」「外されるのは嫌がる」との事だった。 だから、眠っている間とは言え外すのは止めようかと考え、起きたら言おうと思っていたのだ。 しかし、それからの騒動で、そんなささいな事はすっかり忘れていた。 したがって、この帽子、まりさを見つけたあの日から一度も洗っていない。 黒地の本体やリボンの上を泥水や餡子の跡が斑に彩っており、さらには所々破れている。 砂粒などは無くなっていたが、それも単に泥水が乾いて座布団や畳の上にばら撒かれただけの事。 はっきり言って、帽子と呼ぶとマトモな帽子が怒りそうな代物と成り果てていた。 「ゆ!? ぼ、ぼうしはやめてね! ぼうしはとらないでね!!!」 帽子について触れた途端、まりさは今まで見た事がないような狼狽振りを見せた。 あからさまに怪しい。 何かあるのだろうか。 大切な物を隠しているとか、あるいは武器とか。 無いな。 男は即座にそう決め付け、構わずに帽子に手を伸ばす。 すると、まりさはゆっくり的には機敏な動きで手から逃れた。 「なんだ……? お前、その帽子に何かあんのか?」 「な、なんにもないよ! なんにもないからぼうしはだめだよ!!」 怪しい。 あからさまに怪しすぎる。 その様子に、洗濯云々は置いておいて、男の中に単純な興味が沸いて来た。 「そうは言ってもよ、お前自分じゃ見えないだろうが破れてるわ汚れてるわで酷い有様だぞ、それ」 「ゆっ! まりさのぼうしはきたなくなんかないよ!! おじさんなんでそんなひどいこというの!?」 「いや、酷いも酷くないもだな、事実雑巾と同じくらい汚いぞ」 「そんなことないよ! おじさんうそつかないでね、まりさおこるよ! ぷんぷん!!!」 「口でぷんぷん言うな。いや、そうじゃなくて嘘も何もだな……」 そんな問答を繰り返す事しばし。 「あー、そういやお前らにゃ頭の出来期待しちゃいけなかったんだよな」 ゆっくりに付き合ってたら俺の頭までゆっくりになっちまったぜとひとりごちる。 「判った、ちょっと待ってろ。いい物見せてやるから」 そう言って、男は自分の部屋へと消える。 戻って来た時には、大きな木枠を持っていた。 身長ほどもあるそれの足を立てて、慎重に床に置く。 「ほら、見てみろ。これがお前だ」 男が持って来たのは姿見だ。 その中には、覗き込む格好で鏡に映った男の上半身と、薄汚れた帽子を被ったゆっくりの姿。 「ゆ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ!?!? なにごれ!? まりざのぼうじが、まりざのおぼうじがぁぁぁぁっ!!!!」 まりさが顔を引きつらせて叫ぶ。 さらにはたちまちの内に涙を滂沱と流し、赤くなり、青ざめ、目を見開き、口を意味もなく開閉し、全身を震わせ、また赤くなる。 そしてとうとう意味の判らぬ絶叫を上げながら部屋中を飛び跳ね転がりだした。 男も最初は笑ってみていたが、流石にその様子にただならぬものを感じて、隣のれいむに目を向けた。 「おい、れいむ。お前らの頭の飾りがが大切なものだってのは何と無く実感したが、何であそこまで泣き喚くんだ?」 問い掛けとは疑問だ。 疑問を持つと言う事は、回答を欲していると言う事。 そして、回答とは問いかけの元へと至る理由。 理由が解ると書いて、それはすなわち理解という事となる。 物について問えば、それは知識としての理解であるが、人を問うという事は、やがては心の理解に、そしてそれは人を思うという事へと繋がっていく。 今回の場合は残念ながら人ではなくゆっくりだが。 「まりさのぼうしはとってもだいじなの! だかられいむのりぼんはとらないでね!!」 しかし、返って来たのはどうにも的を得ない回答だ。 聞き方が悪かったかと思い、方向を変えて再度問い直す。 「じゃあ、もし帽子が無くなったり、帽子じゃなくなったりしたらどうなるんだ?」 「ぼうしがなくなったらゆっくりできなくなっちゃうよ! だからおじさんやめてね!!」 ゆっくりできない、か。 ゆっくりは基本的に言葉が足りないのは判っている。 「ゆっくりできない」のが自分なのか他人なのかが判別できないので推測になるが、 「帽子が無いと何故か自分の体調に異変をきたしたりしてゆっくりできない」 「帽子が無いと他のゆっくりからゆっくりだと認めてもらえないので群れや家族で一緒にゆっくりできない」 一番酷いのは「帽子が無いと攻撃を受けたり群れを追い出されたりするのでゆっくりできない」 そんな辺りだろうか。 それならまりさにとって一大事だというのも判る。 洗濯くらいならあるいは水溜りや小川などで何とかなるかもしれないが、裁縫となるとゆっくりには不可能だろう。 あるとすれば、他のまりさの帽子を奪う事だろうが、生憎ここは自然ではなく男の家なので、それは選択肢にない。 しかし、それではまだどうも話が合わない部分がある。 「じゃあれいむ、お前はあれが汚いが帽子だってわかるんだな?」 「ゆ? ぼうしはきたないけど、まりさはまりさだよ!」 ふむ。 まりさは自分だから当然としても、返答からすれば、少なくともれいむもアレを帽子とまりさだと認識できているようだ。 だとすると、一応問題は無いと言う事になるのだがやや考慮すべき要素がある。 少し考えて、男はその部分を埋めにかかった。 「お前があのまりさの家族だからとかじゃなくても、他のゆっくりからもあれは帽子と思ってもらえるのか?」 それが、一番の問題だ。 自分の子供であれば、バカでも可愛いなんて親はいくらでもいる。 ペットなどになると、ブサイクだろうがなんだろうがと、その傾向はより顕著なものになるだろう。 家族という特別な関係は、それだけ認識をゆがませる力を持つ。 こいつら2匹が特別な関係だから判るだけで、他もそうだとは限らなければ。 もしそうならば、後で野に離した時に待っているのは喜劇のような悲劇だろう。 「ゆ~~~~~~んゆんゆんゆん…………」 声にあわせてれいむの体がふらふらと左右に揺れる。 人間なら恐らく首を傾げるかその辺の動作だろうと思うが、生憎胴体だけの生き物なのでそれは誰にも判らない。 やがて考察がまとまったのか、自信に満ちた表情で胸?を張り、 「たぶんゆっくりわかるよ!!」 「おい、大事な事なのにえらい適当だな」 やはり肝心な所でも餡子脳は餡子脳だった。 しかし、これでおおよその答えがつかめた。 「と言う事はだ。あれは、単に自分の帽子の有様にショック受けてるだけなのか」 ややこしいと言うか、人騒がせと言うか。 男は深く嘆息する。 理由は聞いた。 推測含みではあるが、ある程度は理解できただろう、と思う。 そして、理解したゆえに、やる事は変わらない。 未だに唸りながら不振な挙動を繰り返すまりさに呼びかける。 「ほれ、嫁さんにまで汚いって言われてんだからこれで十分判ったろうが。破れた所も直してやるからさっさと帽子脱げ」 「や゛だ!!」 「やだ、ってな、お前ガキじゃねぇんだからよ。絶対に破ったり取ったりなんかしねぇから、帽子渡してくれよ」 「そんなのしんようできないよ! おじさんはぜったいさわらないでね! まりさはじぶんでなんとかするよ!!」 「あのな、自分でって……」 まりさがさらに真っ赤になった所で、これでは先程の二の舞だと男は自制する。 ゆっくりと会話をしていると、どうにも調子を乱されてしまう。 それは、泣き喚く子供を説き伏せるのとほぼ同じ様な感覚。 しかし、人間とゆっくりとでは大いに違う部分がある。 それは知性と知恵の違い。 「ほら、れいむ。お前からも言ってやれ。お前だってあの帽子は嫌だなって思うだろ?」 と言う訳で、交渉役交代。 人間が言って聞かないならば、同じゆっくりにやらせてみればいい。 このれいむはあの帽子を「汚い」と認識している。 今のところは自分と同意見であり、まず味方と見なしても良いだろう。 自分だけで正面突破が駄目なら搦め手を使ってみる。 これが知恵だ。 そもそも意思疎通は困難だが、その思考の単純さゆえにコントロールは簡単に出来る。 どうもこのれいむはまりさと違って単純なようなので、ある方法を使えば誘導は簡単だ。 それもまた、善し悪しは別として知恵は知恵。 「まりさ、ゆっくりぼうしあらってもらってね!」 「ゆ!? れ、れいむ!? なんでそんなおじさんのいうこときくの!!?」 「まりさのおぼうし、れいむがみてもすっごくきたないよ!!」 「どうしてええええ!? まりさのぼうしかっこいいっていってたのにいいいいいい!?!?」 いや、今自分でその帽子見て泣き喚いてたじゃないか。 しかし、俺が言うより効果はあるようだと、男は今の流れを強化するべくまりさを鏡へと向ける。 「ゆううぅぅぅぅっ!!!!」 まるでやり直したかのような反応。 だが、結果まで再現されては困るのですぐにれいむの方に向きを戻す。 「そんなまりさといっしょにいたら、れいむまでみっともないっておもわれちゃうよ!!」 「で、でもぼうしはいやだよ! れいむだっていやだよね!?」 ゆっくりにとって、飾りを取られる事は死活問題だ。 ましてや、それを人間に渡すなどと。 その事を持ち出して、まりさは必死でれいむから共感を得ようとする。 しかし自分の事ではないためか、それとも餌付けされた所為か、れいむの反応は冷たいものだった。 「おじさんはとらないっていってるよ! だからゆっくりあらってもらってね!!」 「ゆぐ、だ、だってそんなのしんようできないよ! おじさんじゃなくてもちゃんとあらえるよ!」 やはり飾りを誰かに渡すと言う事には抵抗があるまりさは、膨れ上がって反論する。 その目の端には、うっすらと輝くものが滲んでいるのは汗ではないだろう。 そして、れいむもそれに負けじと膨れて応じる。 しかし、家族の事を持ち出されると弱いのか、効果的な反論が出来ずにまりさが次第に押されていく。 いつの時代も母は強し。 それにしてもこのまりさ、幾ら事実とは言え酷い言われようである。 どうやらこういった類の言葉は、人間相手だろうがゆっくり相手だろうがお構い無しらしい。 だがれいむよ。 さっきまでお前も普通に近寄らせてたじゃないか。 一体どこまでコントな生き物なんだろうか、こいつらは。 面白いのは面白いのだが、理不尽やら黒い部分が多すぎて少々胃にもたれて来る。 だが、そうこうしている間にも、ゆっくりのゆっくりしていない話し合いは決着に向かって突っ走る。 「とにかくそんなきたないぼうしでれいむのあかちゃんにちかよらないでね! さっさとあらってきてね!!!」 「ゆ、ゆゆぅ~~~~」 完全に劣勢になったまりさは、眉間にしわを寄せつつもどんどん小さくなっていく。 人間だけではなく、自分の味方だと信じて疑わなかったれいむもその人間に唆される様にして、自分を責めるのだ。 どうして? かざりのことなんだよ? なんでにんげんのいうこときくの? さっきまで、二人であんなに仲良くしてたのに。 赤ちゃんの事や、それから先の事。 頬を寄せ合ってゆっくり話してたのに、なんでこんなことに…… 一度弱りだした心は、なかなか元に戻るものではない。 もはやまりさの精神力は風前の灯。 そこに、更なる追い討ちがかけられる。 「ほら、そんな帽子を見たら子供はどう思うよ? お父さんの帽子汚いね、そんなの被ってるお父さんも格好悪いね、とか言われちまうぞ? と言う訳で渡せ」 「ゆぐっ!!!!!!!」 その一言で、完全にまりさは固まった。 子供からの評価。 いつの時代だって、親は子供の、子供は親の目を気にするものだ。 ましてや、こうまで子供の誕生を楽しみにしていると言う事は、それはそれは愛情を持っているのだろう。 その子供からの評価が地に落ちる。 それはこのまりさにとって耐え難い事のはずだ。 「ゆぐ、ゆゆ、う、ぐ、ゆゆゆうぐぐぐぐぐぐぐぐ…………」 今、この餡子脳の中でどんな思考が行われているのかはまりさ以外には判らない。 しかし、誰がどう見ても、歯を食いしばって小刻みに痙攣しする姿が危険だと言う事は明らかだ。 このままだと、精神的負荷で壊れてしまうのではないだろうか。 精神的負荷で壊れるほどゆっくりの神経が繊細だとはとても思えなかったが、さきほどと違った意味で危険を感じた男は助けを出す事にした。 「えーと、ああ、判った。まりさ、こうしよう。お前の目の前で洗う。れいむにも見ててもらおう。その間、お前は帽子の端でも咥えていればいい。 俺が逃げようとしても、そのまま帽子を咥えてればいいだろう? これでどうだ?」 正直、人間が聞けば詭弁だと思うだろう。 そもそも、咥えた所で叩き落す事などいくらでも出来るし、そのまま川や穴にでも捨てられてしまえばお終いだ。 どう考えても一方的なもので、人間の心ひとつでなんとでもなってしまう。 だが、ゆっくりならば通じると思った。 ゆっくりは深く考えない。 ゆっくりの言動や思考は、ゆっくりはそれで納得しているようだが、人間からすればどう考えても理屈と結論が跳躍しているものが多い。 それならば、筋が通っていなくともあらかじめそれっぽい道を示しておけば、途中経過など考えずに示されたそれに食いつくはずだ。 「ゆぐぅ……わかったよ……それでいいからはやくあらってね……」 案の定と言おうか、子供から蔑まれる未来には耐えられなかったのだろう、しぶしぶながらもまりさはとうとう陥落した。 「よし、聞き分けが良くて賢いな、まりさは。すぐ道具を持ってくるから待っていろ」 心にも無い世辞を言った後、まりさの気が変わる前に始めてしまおうと、男は急いで風呂場へ向かった。 「こら、あんまり前に出るな。水被っちまうぞ」 そして舞台は再び縁側。 ゆっくりと男が帽子を挟んで格闘していた。 「ふぐぐ、ふぐぐぐふぐぐぐぐ!!」 「意味が判らん。ほい次、もう少しそっち噛んでろ」 「おじさん、ゆっくりきれいにしてあげてね!」 「あーはいはい、ってそっちじゃねぇ、そっちはさっき咥えてた方だろうが」 少しでも帽子を離すまいと噛み付くまりさと、その噛み付くまりさを水や泡で濡らさない様に洗濯をしようとする男。 そしてそれをでんと座って見ているれいむ。 傍から見れば滑稽そのものだが、当人達はいたって真面目なのがまた滑稽さに拍車をかける。 まりさが咥えている反対側を洗い、水で綺麗に流してから少し角度を変えてまた洗う。 そうやって鍔を洗い、それが終われば今度は本体へ。 一気に付け洗いが出来ればこの程度の洗濯はすぐに終わるのだが、今回はそうも行かない。 「っと、これじゃ使えないか。おい、ちょっと水替えて来るから待ってろ」 洗剤が浮いてすすぎの用を成さなくなった水を、庭に打ち水代わりに巻いて男が立ち上がった。 「まだ洗い終わってねぇからな? 子供に言われたくなきゃゆっくりしてろ」 先ほどのやり取りから得た切り札で釘を刺して、男は台所へ消えていく。 「ゆふふぅ……」 まだ終わらないのか。 まりさはその事実にため息をついた。 自分のお気に入りの帽子。 お気に入りも何も、ゆっくりにとって帽子と言うものは自分の物だけだが、それが見るも無残に汚れている事。 そして、人間の手で洗われている事。 とにかく気に入らない。 気に入らないが、外して目の当たりにすると、鏡で見た時以上にショックだった。 自分が誇っていた黒くて綺麗に尖がっていた姿はどこにも無く、薄汚れて曲がり、段がついていた。 真っ白だったリボンも、黒と茶色の斑染め。 そして、昔に格好良いと褒めてくれたれいむからもみっともないと言われた事と、何より赤ちゃんの事。 最後のものは男の出任せだが、一番心をえぐられたのはそれだった。 濡れてしおれた帽子と同じ様に、うつむいたまりさもどことなく萎れて見える。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりあらったらちゃんときれいになるよ!」 そんなまりさを見かねたのか、れいむが気遣うような声をかけた。 「きれいになったらあかちゃんだってきっとほめてくれるよ! だからゆっくりがまんしてね! れいむもまってるよ!」 赤ちゃんが褒めてくれる。 そして、その事をれいむも待ってくれている。 そうだ。嫌だけど、我慢して頑張ろう。 「お、ちゃんと大人しく待ってたか。後はこれで終わりだからな、しっかり咥えてろよ」 決意も新たに前を向いた所で男が戻ってきた。 桶には一杯に水が入っている。 経験から一瞬身が竦むが、これで最後だと、弱気を消す様に大きく息を吸い込み力を込める。 「なんだ、終わりって聞いたらえらいやる気になったじゃないか」 その様子に、ややからかう様な響きの、しかし温かみのある笑みを男が浮かべた。 そして、帽子についた泡をゆっくりと洗い流していく。 少しずつ本体についていた泡が消えていくと、下から現れるのは綺麗な黒と白。 「ゆゆ! まりさのぼうしがきれいになったよ!!」 「ゆっくり! すっごくきれいだね!!」 思わず感嘆の声を上げる2匹。 当然のように帽子はまりさの口から離れるが、まりさはそれに気づく事無く自分の帽子を凝視している。 石鹸で洗われた帽子は、今まで自分が洗ったどんな時よりも綺麗だった。 生まれたての頃でも、ここまで綺麗だったかどうか。 「ふむ。これくらいならなんとかなるか」 帽子に出来た穴を検分していた男が、帽子を持ったまま縁側から下りた。 「ゆっ! おじさんどこいくの? おわったらはやくぼうしかえしてよね!!」 「あのな、返してねも何も、こんな帽子被ったらふやけちまうだろお前ら」 男の動きに焦って、慌ててまりさも飛び跳ねて後を追った。 だが、普段はどうしてんだかなぁ、という声と同時、頭の上からべちゃ、と言う音と水が流れてくる。 「ゆゆっ! あめ? なに?? おみずはやめてね、おじさんたすけてね!!」 堪らず叫ぶと、一瞬のうちにそれは取り除かれる。 目の前には、しゃがんだ格好の男と、水を滴らせる帽子。 「な? 判ったら大人しく、乾くまで待ってろ。破れた所を治すのはその後でやってやるから」 「ゆぅ、わかったよ、おじさん……そのかわり、まりさのいうこときいてね!!」 さらに中書き 「ゆっ? ここどこ??」 「よくわからないよ! でもここはゆっくりできそうなばしょだね!」 「さくしゃさんもなんだかゆっくりしてたからね! きっとゆっくりしててもいいんだよ!」 「だったらここはれいむたちのゆっくりプレイスにしようね!!」 「ようし、そこまで。お前らとっとと部屋に帰れ帰れ」 「ゆ! やめてねおじさん! れいむたちはここでゆっくりするんだよ!!」 「そうだよ! おじさんひとりでゆっくりプレイスをひとりじめしようなんてずるいよ!」 「あー判った判った、もう⑥もほとんどできてるからな、ここでゆっくりしてないで俺達もさっさとそっちに行かなきゃならねーんだよ」 「⑥? そこはゆっくりできるところなの?」 「ああ、④⑤よりはゆっくりしてるさ。ほれ、お菓子やるからさっさと行こう、な? 俺だっていい加減ゆっくりしたいんだ……」 「おかし! じゃあしかたないね! ゆっくりいってあげるからちゃんとおかしちょうだいね!」 「へいへい。んじゃあ行くぞー。俺より遅かったらお前らお菓子無しな」 『ゆゆ! ゆっくりいそぐよ!! おじさんはゆっくりしていってね!!!』 ……ふぅ。やっと静かになったか。 と言う訳で、「俺」からのお知らせだ。 初期系から大きく予定変更したけど、何とか形になりそうなんでゆっくり待っててくれ、だとよ。 俺だってさっさとゆっくりしたいんだがね。 なんで作者はゆっくりの帽子を自己修復仕様にしなかったんだか。 そしたら俺だってこんな苦労しなくて済んだんだが…… ま、言ってもしょうがない。 待ってくれている人には悪いが、また⑥をゆっくり待っててくれよ。 じゃ、見てくれている人はまた次でな。 『おじさーーーん、⑥についたからはやくおやつちょうだいね!!!』 ⑥へと続く。 なんというほのぼの・・・これはゆっくりと⑥を待たざるを得ない・・・ -- 名無しさん (2008-08-12 22 42 16) ゆっくりしてるなこれ -- 名無しさん (2010-11-28 02 39 42) 名前 コメント
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時間は午後を少し回った頃。 太陽は中天を通り過ぎ、後は沈み行くばかり。 だが、そうは言っても少しばかり沈んだところで熱がすぐに失われるわけではない。 昼下がりの太陽は、沈み行く事に抗うように眩く輝いている。 「ゆぅ~~~~……あづいよぉ……はやくかわいてね……ゆっくりしないでね……」 その日差しの下。 1匹のゆっくりまりさがいる。 ゆっくりにしては珍しく、どう考えてもゆっくり出来ない日差しの下で佇んでいる。 いや、ただ佇んでいるわけではなかった。 その目線の先、やや見上げる位置には黒いものがある。 それは帽子。 リボンの部分を紐で結わえられるようにして、ゆっくりまりさのトレードマークの三角帽が干されていた。 このまりさは、自分の帽子を見上げていたのだ。 帽子があるのははまりさの正面、しかし跳ねても届かない高さ。 イジメではない。 下にあるのは当然のように庭の地面。 もし、まりさが帽子が無い事に耐えかね、跳んで落とそうものなら今までの苦労が水の泡となる。 まりさの要求と、現実的な問題との妥協点が、この位置であった。 最初のうちは干す前の出来事も忘れて帽子に必死で飛び掛っていたが、それも暑さに耐えかねて見ての通りだ。 当然ゆっくりには帽子を吊るすなど出来ようはずも無いので、誰かがそれをやった事になる。 そして、それを実行した誰かはと言うと、 「暑いって言うな、かえって暑くなる……」 まりさの横でそれ以上に伸び切っていた。 いかつい外見の男がみっともなく寝そべっている様は、ゆっくりのそれ以上に暑苦しさを感じさせる。 まりさの要求とは「なるべくぼうしをちかくにおいてね!」というものだった。 普通、洗濯物を干すならば庭、それも日当たりのよい場所だ。 男の家の庭へと出る縁側に屋根が無いわけではない。 だが、それも直射日光が遮られたところで恐ろしく暑い、がとても暑い、になる程度。 暑い事には変わり無い。 本来ならば男が付き合う理由も必要もないのだが、その常ならぬ姿と無理やり洗うように仕向けた事もあって、どこかいたたまれなくなり付き合うことにしたのだ。 しかし、夏の日差しの中で、ゆっくり待つと言う行為が実際これほどの苦行とは。 想像はしていたが、それ以上に厳しい現実に男は早くも後悔し始めていた。 「これはゆっくりできねぇ……」 これならば、やはり疲れようとも動いていられる分仕事場の方がいくらかマシだ。 憎憎しげにその原因を見やるが、その男の視線も力無い。 男は喉の渇きを覚え、水差しを手に取った。 それもまた不愉快な暑さを手に伝えてくる。 表面の状態からすれば、中の状態も押して知るべし。 さりとて、水を替えに行く気力も沸いてこない。 妥協して予想通りぬるい風呂のようなそれを飲み、隣のまりさの口元にも運ぶ。 「ほれ、水」 「ゆ、ん……あついよ、おじさん……」 まりさも一瞬顔をしかめるものの、文句のキレもまるで無い。 片割れのれいむはというと、帽子の洗濯を見届けさせた後は大事を取って奥に引っ込めておいた。 報酬と言おうか、おかきを少しだけ与えておいたが、まりさの帽子についてはあれから特に何も言う事無く、いつものようにふんぞり返っている。 「気楽なもんだぜ……」 「ゆ? おじさんまだなの? はやくかわかしてね……」 「そうは言ってもな、こればっかりはお天道さんに聞いてくれや……」 一応律儀に立ち上がって確かめはするが、触ったそれはまだ湿気の残った感触を返してくる。 「ゆふぅん、はやくゆっくりしたいよ…………」 身振りでそれが判ったのか、さらにまりさは萎れていった。 それを横目に見、男も力尽きるようにそのまま寝転がる。 床板と背に挟まれて体に張り付く服と、汗で濡れた後頭部の感触は非常に気持ちが悪い。 そう言えば、ゆっくりとこうも会話をするのは初めての事だったか。 男は今更のように気がついた。 彼がこのゆっくり達を家の下で見つけてからはもう半月以上、一月近くになる。 その間、自身の信条に従ってほとんど接触すらしてこなかった。 それは、ある意味では不干渉ではなく無視や拒否だったのかもしれない。 今でも、心のどこかで厄介ごとを抱えてしまったという思いはある。 事実、今は毎日が面倒だらけだ。 だが。 男はまりさに背を向けるようにごろりと向きを変える。 会話があると言うことそのものは楽しかった。 この家で来客相手以外に喋る事が無くなって、どれほど経ったろうか。 意志の疎通が出来る相手。 友人とは違うし、非常に不可解・不条理が山盛りだが、そこに理解があると言うのは面白かった。 ならば、このまま理解していければいつかいい関係が築けるのだろうか。 不可解な事、不条理な事、腹立たしい事、面倒な事、嫌な事。 それらはゆっくり相手でなくとも、人間同士でも当たり前のように存在する。 他人、知人、仕事仲間、友人、身内。 お互いがお互いを完全に理解できない以上、どこにでもあるものだ。 それを許容出来るかどうかは、お互いの理解度や関係から来る親密度によるものだろう。 こればっかりは、一朝一夕にどうこうなるものではない。 「ま、気長にやるか」 口にしたのは自分を納得させるためだったろうか。 子供が生まれてからすぐ出て行かせるにしろ、しばらくは置いておくにしろ、ゆっくりに対する知識がある事自体はマイナスに作用する事は無いだろう。 上手くすれば、自分だけでなく他人の役に立つ知識も得られる可能性だってある。 そうなれば、こいつらだってむやみやたらと殺されなくたって済むようになるかもしれない。 誰だって、生来の性だろうがなんだろうが、むやみやたらに死にたくなんぞ無いだろう。 だが、どうしたらいいんだろうか。 あるいは、別に何かをしなくとも、どうもしなくてもいいのか。 放っておけば、そのうち適当な位置に収まるだろうか。 暑さと、ゆっくりとゆっくりしている状況に、どろどろとそんな取りとめも無い思考に身を浸していく。 「済みませんが、どなたか居られませんかー?」 そんな思索を打ち破ったのは、女の声だった。 女と言っても、声だけで判断すれば若い。 子供ではないが大人でもない、微妙なところだ。 そう言った年頃の知り合いが居ないでもないが、今の時間にわざわざここまで来るだろうか。 あるとすれば、人づてに聞いて見舞いにでも来たか。 だが、それならば「どなたか」「居られませんか」と尋ねるのも変な話だ。 それに、声も聞いた覚えが無い様に思う。 無視するわけにはいかないか。 気だるさを飲み下して男は体を起こす。 「失礼、今出るので!」 その動きで、汗の滴が服に更なる陰影を生み出す。 文字通り汗まみれの姿で女性の前に出るのはまさしく失礼だろうが、時期も時期なのでそれは勘弁してもらおう。 そう思いながら腰を浮かせたところで、不安げにこちらを見上げるまりさと視線がかち合った。 大丈夫だ、と髪を撫でるついでにでこピンひとつ、そのまま庭を突っ切って玄関へと回る。 「済みませんね、裏に居たもんで……」 頭を下げつつ出てきた男の言葉が止まる。 そこにいたのは、声から予想されたとおりの少女。 だが、それは見た目だけの話。 幻想郷ではかなり有名な部類に入るだろうが、有名人ではない。 来訪者は人間ではなかった。 「新聞屋の、天狗?」 脳裏から引き出した記憶が、そのまま声を形作る。 「はい、文々。新聞の射命丸文です」 天狗は取材帳を片手に笑みを浮かべた。 「……で、こんな所に一体何の用で?」 発言した後に我ながら間抜けた質問だと気づく。 新聞を配るのでもなければ取材に決まっている。 あの新聞は個人で発行しているらしいので、それなら取材も自分でやるしかないだろう。 しかし、予想外の来客に加え、暑さで茹で上がり始めた頭はどうにも上手く働かない。 付け足すように、ここ数日あまり表に出ていないので周りの事はよくは判らんが、と左腕を掲げて見せる。 「それはますます好都合ですね」 それを聞いて、さらに天狗が笑みを深めた。 どうやら、天狗が気にするような話のネタがこの家の近くにあると言う事か。 俺はそれどころじゃなかったんだがな、と、男はここ数日の出来事を複雑な心境で思い出す。 その所為で気づかなかったにせよ、そんなネタになるような事がここ数日だったろうか。 男はボケた頭を覚まそうと首を2、3動かし、記憶をかき集めようと 「数日前の話なんですが、夜更けに何やらこの世のものとも思えぬ得体の知れない叫び声が聞こえた、と言う話を耳にしましてですね」 暢気に構えていた所へ、いきなり直撃がきた。 暑さも相まってへたり込みそうになるのは堪えるものの、抑えきれなかったため息が漏れる。 なんてこった、また厄介事が飛び込んできたか。 いや、とそれを否定。 そもそもここらには小屋などを除けばこの家以外の民家も無いし、そんな時間に出歩く人間もそうはいないだろう。 あの声を聞いた人物がいるとは考えにくい。 聞こえたと言う事ならば、ここらであると言うだけで、もう少し人里側での出来事かもしれない。 今の段階で近しい事と言えば日付と時間くらいだ。 「……もしかして、一昨日の夜くらいの話かい?」 「外へ出られていないという割には詳しいですね。なにやら思い当たる事でもありましたか?」 語っていない情報を男が口にしたことに天狗が食いついた。 しかし、男の姿はその視線の先にはない。 「おや、どうかしました? どこか具合でも……」 「ああ、いや、さっきまでじっとしていたから、暑さや立ちくらみやらなんやら……」 男は今度こそ堪えきれずにその場にしゃがみこんでいた。 実際暑さはかなり堪えているが、決定打はそんなものではない。 後悔先たたず。 思いきりヤブヘビだ。 こちらから聞いてしまった以上、知らぬ存ぜぬでは通らないだろう。 何故だ、何故、黙っていなかったのか。 最近ゆっくり相手の会話ばかりだったが、ゆっくり相手だととにかく詳しく聞かないと話が進まない。 合わせて、この暑さでぼーっとしていたため、考え無しについ口にしてしまったのだが、男にはそこまで分析する余裕は無い。 まぁ、いいか。 言い逃れは出来ないだろうし、そもそもゆっくりを見せれば済むだけだ。 ゆっくりの如き開き直りで復活し、庭へと案内するべくふらりと立ち上がる。 「それなら……」 そこで男は言葉を止めた。 この天狗を、ゆっくりたちに会わせていいものだろうか。 いきなり危害を加えたりという事は無かろうが、妖怪の考える事など判るはずも無い。 しかし。 いざそうなったとしても、天狗の前では男もゆっくりも、実力的にさしたる違いは無いだろう。 止められるかと言われれば、まず不可能。 なるようにしか、ならないか。 一旦言葉を止めた事に疑問の表情を浮かべる天狗へ男は自分の背後を指差した。 「ちょっと裏のほうに回ってもらえれば、多分判るかと」 「おじさんおそいよ! ゆっくりしてないでまりさのぼうしがかわいたかはやく……ゆゆっ!!?」 男一人が戻ってくるものだと思っていたのだろうまりさが、続いて出てきた来客の姿に目を白黒させた。 たちまちのうちに全身を震わせながらも、その目線が、男と、帽子と、屋内と。 3箇所をめまぐるしく動き回る。 部屋に逃げようにも、帽子を置いては逃げられないので帽子を取って欲しいが、その男の後ろには見知らぬ人物。 その人物から逃げようとするが帽子はやはり見捨てがたく……不審な動きの理由は、おおよそそんな所だろうか。 「おや、ゆっくり……ですか」 続いた、飼っているのですか、という問いを男は頭を振って否定する。 「まさか。住み着かれただけで、飼っているわけじゃない。が、さすがにこいつを放り出すのは忍びなくてね」 天狗へ断りを入れて、未だに混乱状態のまりさの横を素通りし奥へと向かう。 必要なのは、まりさではなくもう1匹のゆっくり。 「やめてねおじさん! ここはれいむのゆっくりプレイスだよ! かってにうごかさないでね!?」 「へーへー。放りだしゃしねぇから大人しくしてろ。持ち上げるから暴れるなよ」 「やめてね、あかちゃんがおちちゃうよ!! はやくはなしてね!!!」 相変わらずのおうち宣言を今は無視して引きずり出し、まりさの横へ並べる。 「あぁ、なるほど。見つけたときにはこうだった、と」 頭上の蔦だけで事情を察した天狗が意を得たりと頷いた。 それを見て、促されるまでもなくあの日の出来事を話し始める。 時折れいむからの茶々が入るが、それには取り合わず淡々と説明と簡単な質問に終始する2人。 元々大した話ではないので、確認など全部含めても10分ほどもかからなかったろうか。 「なるほど……時間も日付も確かですから、ほぼその話で間違いないでしょうね」 取材帳を書き終えて閉じ、それにしても、と天狗は2匹に向き直った。 「なかなかどうして。滑稽と愉快な記事以外にも、良い話の1つくらいはありますか」 「そうだよ! れいむはいいゆっくりだよ、えへん!」 自慢げにれいむがふんぞり返る。 だが、ゆっくりは気づかないだろう。 今の発言、どこか言葉以上に侮蔑的なニュアンスを感じないでもないが、これも一般的な範疇での評価だ。 この天狗の性格がことさら悪いと言うわけではない。 しかし。 今、それを聞いた男の心に浮かび上がってきたものは何だったのだろうか。 形になる前に一瞬でどこかへ消えうせてしまい、もうその欠片も残っていない。 代わりに出てきたのは、この天狗は、妖怪は、どうなんだろうか。 そんな単純な問い。 「ああ、そうだ。……ひとつ聞きたい事があるんだがいいか?」 「取材の事以外であれば構いませんよ? 答えるかはまぁ、内容にもよりますが」 頷きひとつで返して見せた天狗に、今度は迷わない。 「いや、大した事じゃないんだ。あんたや妖怪から見て、ゆっくりってのはどうなんだ、ってのが聞きたいんだが」 「ゆっくりが……ですか」 やや考えるような間があって、それから天狗は口を開く。 「今ひとつどう、の意味は図りかねますが、そうですね、存在としては取るに足らないでしょう。 誰もが好き好んで食べる訳でも無し、理も害も無く、別に居ても居なくてもそう変わりありませんよ」 紡がれる言葉は、やはり男の予想と違わない。 それはそうだろう。 人間でさえゆっくりを取るに足らないと見ているのだ。 その人間よりも強大な力を持つものたちなら尚更だろうな。 納得の表情を浮かべる男にさらに天狗は続ける。 「私個人の意見として、でしたら興味が無い、わけではありませんが。ネタとして新しいものがあるに越した事はありませんし」 これも新聞屋らしい意見だ、と頷く。 が、聞きたい意見としては若干違う。 そういったところではなく、もう少し単純な個人的好悪みたいなものを聞いてみたかったのだが。 しかし、あっさりと答えてもらったせいで、かえって深く聞きづらくなった。 だが、問うてみたい。 どういえば良いものかと、眉間にしわを寄せて考える。 その様子に、文も続きなり反応なりがあるのだろうと推測し、何も言わずに待った。 表情は変わる事無く薄い笑みを浮かべたままだが、今までとは違いどこか探るような色がある。 沈黙が、続く。 男と、天狗と、ゆっくりと。 じじ、じじ、とにぎやかしいセミの声。 ややあって、男ではなく文の声が沈黙を砕いた。 「ゆっくり、お好きなんですか?」 「……………………は?」 馬鹿のように口を開けたまま、男の首だけが天狗の方を向く。 「おや? ゆっくりについてわざわざああいう事を聞く人は初めてでしたので」 私が初めて出会うだけかも知れませんが、と補足するが男の耳にはまるで入っていない。 文には男がどういった精神状態かなど知る術も無いが、意味も無く口を開閉し、僅かにあ、だの、うー、だのと呻くばかり。 「あの、もしもし?」 男は完全に固まってしまっている。 それを眺める事しばし。 「……ふむ」 どこか呆れたように肩をすくめると、文はそのまま男に背を向けた。 「えーと……いい加減、大丈夫ですか?」 「……え? あ?」 肩を叩かれた衝撃で、男はようやく自失から回復した。 今、何が起こったんだったか。 何かとんでもない台詞を聞いた気がするが、何故か思い出せない。 「ああ、ええと……?」 「いえ、もう取材は終わったので帰ろうかと思ったのですが、なにしろそういう状態でしたので……」 「ええと……」 オウムの様に、再び繰り返す。 そうだ。 天狗が取材に来ていたのだ。 で、その取材が終わったので帰る、と。 「……っと、取材中に申し訳ない。どれくらいこんな感じで?」 「いえ、5分も経っていませんが……。それよりも、体調が悪いのでしたら無理はしない方が」 「いや、暑い中で待たせて済まない。ちょっとお茶でも持って来るんで、座っててくれないか?」 何か忘れている気がするが、それはさておき台所へと向かう。 これ以上もてなしも無しに客人を待たせてはさすがに失礼だ。 昼前にバカな事で消費した氷と茶を湯飲みに放り込むとすぐに踵を返す。 「済みませんね……って、何やってるんだお前ら?」 縁側に腰掛けた天狗とれいむ、それにようやく落ち着いたまりさがなにやら話していた。 「おねえさんとあかちゃんのおはなししてたんだよね!」 「そうだよ! あかちゃん、ゆっくりしてるねっていってたんだよ!!」 「ああ、これはこれは。……ん、私もゆっくりに取材をした事はなかったので、これはこれで面白いかと思いまして」 お茶を受け取ると、一気に半分ほどを飲んで天狗。 その横、ゆっくり2匹を間に挟んで自分も腰を下ろす。 「面白い、ねぇ。俺には難しいとしか思えんが」 「別に趣向なんて人それぞれ。好きなら好きで置いておけば良いし、嫌いなら嫌いで追い出してしまえば良いだけでは?」 「いや、そういうことじゃなくて、そもそもゆっくり自体俺は好きとも嫌いとも思っちゃいないんだが……」 思い出した。 さっきはゆっくりが好きかと聞かれて茫然自失に陥ったのだ。 「……やっぱり、家においてやってるだけでもそう見えるもんかね?」 「恐らくは、そうでしょうね。普通は放り出されるか、家に上げても後で処分というのがオチでしょうから」 「そうだよなぁ……」 男が力の無い声でぼやく。 だが、ゆっくりの方は黙っていない。 「ゆ!? ほうりだす!? お、おじさんもおねえさんもそんなことやめてよね!!」 「おじさんうそついたの!? うそつきはまりさのゆっくりプレイスからさっさとでていってね!!」 「そのゆっくりプレイスは誰の家だと思ってんだ! それにお前ら放り出すとは言ってねぇし、こういうときだけ元気になるんじゃねぇ!」 夫婦合わせてのゆっくりプレイス発言に、男はためらう事無くまりさの頭部にチョップを叩き込んだ。 「ゆぐっ! いたいよ、またたたいたね!? おじさんこそいいかげんにしてよね!!」 「喧しい、お前は頭に蔦ねぇから遠慮なく叩きやすいんだよ……?」 男はそこで動きを止める。 常ならぬ、視線。 れいむではなく、無論、天狗の視線だ。 それが、自分に注がれている。 「……もしかしなくても、こういうのは」 「正直、今のがどちらかという判断は微妙ですが、まぁ」 やや言葉を濁した返答に、深い、深いため息をついて男が肩を落とす。 その様子を見て、文は思う。 男自身はその気が無くとも、周りから見ればそう見える、その差異。 社会に属する以上、集団としてのルールやスタンダードといったものが存在し、それが常に考慮にある。 それは、文にも理解できる。 ゆっくり自体を「飼ってはいけない」と言う事は無い。 ただそれが物好きであるという認識があるだけだ。 しかし、その「集団の一般認識との差異」 この力は想像以上に人間を縛る。 基本的に、人間は群れなければ生きていけない。 その群れから異端の目で見られるというのは、物理的にはともかくも、大なり小なり精神的に負担を強いられることだろう。 誰もがそれからあっさり抜けだせるほど強くは無い。 人間と違う妖怪であっても、集団に属する故に文は男の苦悩を正しく理解していた。 そして、男は気づいているかどうか判らないが「何故」悩むのか、その理由もだ。 故に、先ほどの発言がある。 「こういう仕事をやっていれば、色々な生き物の色々な姿を見ることになりますから。さほど悩む事ではないと思いますがね」 文が男の背に優しく語りかける。 表面だけ取れば、助言の類。 だが、内実は全てが全てそうではない。 文からすれば、これはネタを生む可能性への投資も含まれる。 「だから、そういうことじゃなくて……」 ええい、と舌打ちをして男は頭をかきむしり、さらに思考の深みへとはまっていく。 愉快。 いつの間にか、今までとは違い、どこと無く意地の悪い笑みが天狗の顔に浮かんでいる。 「別に、バレなければ問題ないでしょう? 知られなければ、それは存在しない事と同じですし」 その知られていない事、隠されている事を調べ、記事にする。 それこそ我が生き甲斐也。 この天狗の性根を、当然のように男は知らない。 悩みを体現した姿の男を尻目に、さて、と天狗が立ち上がる。 「おねえさん、どこいくの? ゆっくりしていってね!」 「ああ、次の仕事があるんですよ。まぁ、面白いネタでも判ったら知らせてくださいな。また取材に来ますので」 「ゆぅ~~~、しょうがないね! こんどはゆっくりしていってね!!」 れいむとまりさの頬を軽く撫でてやり、天狗は男に向かって紙束を差し出した。 「それと、これは情報料の代わりとでも。一回で終わるとは思いませんでしたので、大したものを持ってきてはいないのですが……」 男がそれを受け取った事に満足そうに目を細めると、ではこれにて、と天狗は別れを告げて飛び去っていった。 「おねえさんいっちゃったね!」 「ゆっくりしてなかったけど、ゆっくりおはなしきいてくれたね!」 ゆっくり2匹は、男以外だと久しぶりの会話相手だったので非常に嬉しかったらしく、まだきゃいきゃいと騒いでいる。 人の苦労も知らないで、この饅頭共め。 悩みが増えたのは天狗の所為だが、根源はお前らだ、とばかりに睨みつけるが2匹はまるで気づかない。 その事に気づき馬鹿馬鹿しくなったので、男は手渡された紙束を広げてみた。 「文々。新聞……って、これ礼でもなんでもねぇじゃねぇかよ」 仕事場で暇つぶしに読む分には構わないが、家に置くのも邪魔なので、購読しようとまでは思わない。 しかも、これはもう読んだ事がある。 「ああ、暑い思いしただけかよ……」 今までの悩みも何もかもを体ごと放り投げるようにして畳に倒れこむ。 「そうだ、おじさん、あついよ! あかちゃんがよわっちゃうからはやくもどしてね!」 「まりさのぼうしもだよ! ゆっくりしてないではやくしてね!!」 「なんだよ、そうだ、って。自分の事じゃねぇか。お前ら今まで天狗と喋ったってはしゃいでただろ……あぁ、帽子は完全に忘れてたわ」 「ゆ゛! ふざけないでね! さっさとまりさのぼうしかえしてね!!」 まりさの踏み付けとタックルを足に浴びながら、男はぼんやりと考えていた。 まだ、厄介事は終わっていない。 訳の判らない事だって沢山ある。 まぁ、いい。 他に何かを忘れている気もしたが、今は暑くて頭が上手く回らなかった。 とりあえず、目の前の問題から片付けよう。 考えるのは後からだって、どこでだってできる。 しかし、天狗のあの言葉。 「別に趣向なんて人それぞれ。好きなら好きで置いておけば良いし、嫌いなら嫌いで追い出してしまえば良いだけでは?」 それだけが、やけに頭から離れなかった。 中書き 「ゆゆっ? れいむたちよりさきにだれかいるよ?」 「どうも、毎度おなじみ射命丸です」 「さっきのおねえさんだ! こんどはゆっくりしていってね!!」 「そうですね、前回ももうすぐ出来るとか言った割に全然仕上がらない作者でしたから、時間はあるかと……」 「ゆ! じゃあもっとゆっくりたくさんおはなししようね!」 「そう言いたい所ですが、やっぱり仕事が有りまして」 「ゆっくりしていったらいいのにね!」 「そうだね、おじさんもここはゆっくりできるっていってたからね!」 「ああ、では代わりといっては何ですがこれをあげましょう」 「ゆぅ~~~~ん、なにそれ、たべもの?」 「ちがうよ、ぴかぴかしてるからごはんじゃないよ! おねえさん、そんなのよりおかしちょうだいね!」 「これはお金と言ってですね、食べ物とか服とか、まぁ色々なものと交換できるものなんですよ」 「たべもの! だったらおねえさん、やっぱりそれちょうだい!」 「はい、そっちのゆっくりもどうぞ。さっきの話の礼をあなた達にはしていませんでしたからね、その分です」 「ありがとうね、おねえさん! で、これをどうしたらいいの?」 「さっきの方に渡せばきっとお菓子をくれると思いますよ。ああ、もう時間が無いので私はこれで」 天狗、どこかへ退場。それからややあって。 「お、ちゃんと着いてたな。どっか適当なとこで着いたとか言ってるかと思ったんだが」 「ゆっ! ばかにしないでねおじさん! まりさはかしこいからそんなまちがいしないよ! やくそくどおりおかしちょうだいね!!」 「判った判った、ちょっと待ってろ。……ん? お前ら何を口に入れてるんだ?」 「ゆゆ、わすれてたよ! はい、おじさん、おかね! これでおやつもっとちょうだいね!」 「ああん、金だぁ? おい、拾ったならまだいいが、まさか盗んだりとかはしてねぇだろうな……?」 「ち、ちがうよ、さっきのおねえさんがくれたんだよ! おはなしのおれいだって!」 「はぁん? ……まぁ、いいか。ほれ、取らねぇから見せてみ」 「ん! ちゃんとおかしにしてね!」 「判ってるって。うわ、涎まみれ。ばっちいなぁ……って、おい」 「ゆ、ゆゆっ!? ど、どうしたのおじさん!? よ、よくわからないけど、そんなにおこらないでね!?」 「あ、あの天狗…………!!!(現代日本円だと一円玉相当の硬貨を2枚握り締めながら)」 性悪 -- 名無しさん (2010-11-28 02 46 18) おお、ゆかいゆかい。 -- by空の上 (2012-08-13 20 17 31) 名前 コメント
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※ページタイトルにもあるように投棄場のSSです。 このSSにはゆっくり同士の交尾を含みます。 ※都合至上主義の設定注意。 以下本文まで空白を開けます。 みたくない人は戻ってください。 「ゆっくりの出産」 ここはゆっくりがたくさん住む森。 森はすっかり紅葉にまみれていた。 ゆっくりにとって秋とは備蓄をする季節だ。 冬になると体温調節機能のないゆっくりは凍死し、 体温調節機能のあるゆっくりちるのなど、まれな種が活動を始める。 食料がなくなると彼(彼女?)たちが人間から冬野菜をもらってくる。 これで備蓄が足りなかったとしても春まで生きていける。 「ありす、わたしあかちゃんがほしいの」 ここにいるのはゆっくりぱちゅりー。冬が近いというのに子作りを求めている。 「うれしい…でもいまからはふゆだからできないよ」 相手のゆっくりありすが言う。 今種がつくと実際に生まれる時は「寒中出産」となる。 正常に生まれてくる子供も少ないし、ゆっくりにとっては備蓄の問題もある。 ちるのやもこうに食べ物を持ってきてもらっても子供の分が足りるとは限らない。 「むきゅ。だいじょうぶよ。これをみて」 ぱちゅりーが指したもの、それはありすに内緒で貯めていた莫大な量の備蓄。 悪徳まりさが来ても、おそらく量に負けて食べられないほどの量。 ぱちゅりーは自分の種族故、冬を越してから子作りするとは考えられない。 体の弱いぱちゅりー種は冬の寒さだけで死んでしまうことがある。 おやがうまれながらにいないこはふこうだ。ぱちゅりーはそう考えていた。 春にありすと出会ってから貯めていた、一種の賭けである。 「わかった。じゃあくらくなってからにしようね」 ありすの同意が得られた。 夜。 ありすはぱちゅりーのおうちに行った。 成功すればありすはぱちゅりーのおうちに引越し、家族の一員となる。 ぱちゅりーは受けに回れない。 受けに回っただけでも、「まむまむ(ゆっくりの雌の生殖器官)」に「ぺにぺに(ゆっくりの雄の生殖器官)」を入れられた衝撃で餡幹部がやられて死亡、生きていても廃人になってしまうことがざらだ。 ゆっくりは雌雄同体であるので、攻めにも受けにも回れる。 「むきゅ///」 ぱちゅりーは「ぺにぺに」を出し攻めに回る。 「ありすもはやくまむまむだしてね!!!」 ところが。 「むきゅ?ありす、ぺにぺにがでてるよ」 受けなのに「ぺにぺに」を出しているありすに、ぱちゅりーは疑問符を投げかける。 「ゆぅ…じつは…」 ありすが話し始めた。 このありす、生まれた時から「まむまむ」がなかった。 気づいたのは強姦まりさに襲われた時。 その強姦魔は「ぺにぺに」をせり出し襲いかかってきたが、途中ですたこら逃げてしまった。 その結果わかったのが、「じぶんはあかちゃんをうめない」ということ。 ありすはきれいだったので幾多のゆっくりと付き合ったが、最後には「まむまむ」が出せないせいで みんな恋人からいい友達になってしまうのだった。 ああ、わたしのこいってみのらないのね。 ありすがそう思ったときだった。 「なら、ぱちゅりーがまむまむをつかうよ!!!」 「ゆ!それじゃぱちゅりーがしんじゃうよ!!!」 ぱちゅりーの予想外の一言に驚く。 「あさまでゆっくりすっきりすれば大丈夫だよ!だからしよう!!!」 ぱちゅりーは自分が受けですっきりしたいこともある。 そのとき、相手にゆっくりすっきりすることを要求すればいい。 母から教わったことだった。 「わかった!じゃあゆっくりすっきりしようね!!!」 ありすがゆっくりとぱちゅりーに近づいていった。 ぺにぺにがまむまむに入りきるまで1時間かかった。 「「ゆ…きもちいい…」」 まるで同一人物のように異口同音する。 「じゃあ…すりすりするよ…」 「いいよ…ゆっくりね…」 すり…すり…とゆっくり顔をこすりあう。 傍目には動いてないようにすら見える。 すりすりは朝まで続いた。 「はあ…はあ…もういくよ…」 すりすりした興奮でしっとりしたありすが言う。 「むきゅう…ぱちゅりーもうはじけちゃいそう…」 同じく興奮でしっとりしたぱちゅりーが行為の感想を述べる。 「「あ…あ…あああ!」」 双方求愛の頬ずりに近い速度ですりすりしあう。 お互いを絶頂に導いていくすりすり。 行為の終わりは近い。 交尾の終わりはゆっくりしたものだった。 普通の交尾の始まりほどの速度で体をこすりあう。 そして、他のゆっくりが起きそうな大声で絶頂のしるしを叫ぶ。 「「しあわせ~!!!!!!」」 そして、子作りは始まった。 ありすのぺにぺにからありすの体内のカスタードが出される。 それはぱちゅりーのまむまむの中のうぐいす餡と混じり、ひとつの新しい命を作る中身を生み出した。 1時間かけてゆっくりと抜くありす。 二人には何かを成し遂げた達成感を顔に表していた。 「ありす…やったね…」 「またすっきりしようね…」 その日は二人とも幸せそうな顔で明日まで寝た。 冬。 土でふさがれたおうちの中にぱちゅりーとありすがいた。 「ゆ゛!!」 「ど…どうしたのぱちゅりー!!」 「う…うまれる!!!」 たいへんだ。 あかちゃんがぶじにうまれてくるじゅんびをしなくちゃ。 そう考えたありすはまず備蓄を持ってきて、広い積みわらを作った。 ぱちゅりーとうまれる子供のうける衝撃を減らすためだ。 「がんばってこのうえにのってね!」 「ゆぐぐ…ぱちゅりーはつよいおかあさんだからがんばるよ!!」 もともとぱちゅりーがいた場所も積みわらで埋める。 また、可能な部分は壁も積みわらで柔らかくした。 「ありす!もうでてくるよ!」 ぱちゅりーが叫ぶ。 「ぱちゅりー!よこになってね!」 ありすに言われたとおりごろんと転がる。 「ゆうううう!!!」 出産が始まった。 右のほほが大きく膨らんでくる。 それが一部色を帯びてくる。 紫。黄色。白い色。 「ゆぱっ!」 ほほが切れて、積みわらに落ちた。 「やったねぱちゅりー!」 「あかちゃんはどこ?」 「そのふくろのなかだよ!」 ぱちゅりーは袋と呼ばれた元・自分のほほを口できれいに開けていく。 袋がばさりと下に落ちた時、3匹の赤ちゃんが生まれた。 赤ちゃんは目を閉じて眠っている。 「「みんな!!!ゆっくりしていってね!!!」」 すると、一斉に目を開けて 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 と返した。 「ゆ…こんにちは!うまれてきてくれてありがとう!」 ぱちゅりーとありすは涙ながらに子供たちと触れ合った。 その後、子供達は親と一緒に冬を越し、 他の家族の子供たちとすくすく育ち、 そして立派なゆっくりとして親元を巣立っていった。 思いついたのがアブノだったんで。 やさしいゆっちゅさんならどんなゆっくりの愛でも受け入れてくれると思ったんだ。 +... ふう・・・。 -- 名無しさん (2008-09-10 00 07 24) 名前 コメント
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各キャラ紹介文 プチゆっくり ここは ちいさな かわいらしい プチゆっくり たち を ほかんする ページ すれを やさしく いたわる しょうえね せっけい だよ! ゆっくり かわいがってあげてね!!! _人人人人人人人人人人_ _,,_ > ゆっくりしていってね! < -'' \ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ | ;ノ´∨\_,. -‐ァ _ __ _,.!イ,.ヘーァ'ニハ'ヽ、ヘ,_7 r , -`―'- 、イ、 . rー''7コ|_,‐"リ´V、!__ハ イi イ人ルレ ン、 !イ´,'イ ノヒソ _ ヒンY.i ! /ヒン__ ヒン)| i、| ( ,ハ" ヽノ ノ人 (" ヽノ " []ノ i ,)、 .ヘ,、)― ‐'´''レヽ ー―――'レル' _,,_ -'' \ | ;ノ´∨\_,. -‐ァ _ __ _,.!イ,.ヘーァ'ニハ'ヽ、ヘ,_7 r , -`―'- 、イ、ノ rー''7コ|_,‐"リ´V、!__ハ イi イ人ルレ ン、!イ´,'イ ノr=- r=ァY.i ! /r=- r=ァ | i、| これで満足か? ( ,ハ" ー=‐' "ノ人 (" ー=‐' "[]ノ i ,)、 .ヘ,、)― ‐'´''レヽ `ー―――'レル' +プ.プチゆっくり1 プ.プチゆっくり1 ■プチゆっくり ■おお、こわいこわい ■いっしょに泣くプチゆっくり ■プチゆっくりのむーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー!! ■ぷち霊夢とタイ焼き ■就寝 ■泣く ■怒る ■笑顔 ■ウインク ■キモんげ ■みんなで就寝 ■みんなのふれあい ■なめなめ ■KEEP OUT ■プチゆっくりとタイ焼き ■横取り ■横取り その2 ■横取り その3 ■グレたプチゆっくり霊夢 ■レミリアとプチゆっくり ■2段ゆっくり ■プチアリス ■ヲタ ■プチプリズムリバー三姉妹 ■三原則 ■愛娘 ■特訓 +チ.プチゆっくり2 チ.プチゆっくり2 ■縮小版 ■縮小版ブラック ■ミニ ■プチ秋姉妹 ■ミニキャラ姉妹 ■MT姉妹 ■マッスル・トレーサー ■プチゆっくりVSにちょり ■新・クリーチャー ■プチ鈴木山蝶子 ■プチリリー ■プチレミリア ■柱の男 ■Myぶーむ ■八頭身 ■ゲラゲラゲラ ■どんな気持ち? ■小尻 ■箕条晶 ■縮小版お燐&お空 +ゆ.プチゆっくり3 ゆ.プチゆっくり3 ■ペルソナ3 ■饅頭ライダー ■やわらか戦車 ■エビフライ ■スイーツ ■合体 ■いっぱい食べて大きくなりました ■車の代わり ■静葉舗装 ■草むしり ■ぃゃゃゎ(ボコスレより) ■スザク ■ルルーシュ ■月光蝶 ■プチパチュリー ■ハト帽子 ■静葉逮捕 ■縮小版みすちー ■一緒にお菓子を食べませんか? ■アンパンマン ■聖剣伝説 ■車のオモチャ ■餅!? ■ロックマン ■ミニ姉妹でゲラゲラゲラ +っ.プチゆっくり4 っ.プチゆっくり4 ■ちび橙にデレデレな藍しゃま ■プチルーミア ■お断りします ■媚びるプチ秋姉妹 ■プチみすちー ■プチ橙 ■ドス黒い感情 ■マトリックス ■魔理沙の独占 ■弾幕はパワー ■うるさい黙れ ■パン ■ののワさん ■首輪付き ■松岡修造 ■ょぅι゛ょ(全部小文字で会話するスレ) ■0080 ■全員集合 ■ちびゆっくり ■プチリグル ■チョコボみすちー ■アーマード・コア ■北斗の拳 ■グスタフVSトキ ■クリスマス ■プチヤマメ ■捕まった宇宙人 ■八頭身風 +く.プチゆっくり5 く.プチゆっくり5 ■おうちができたよ!!! ■ゆっくり育ってね!!!○グロウアップ ■行け!我が眷族達 ■ちびゆっくりのごはんとり ■ヴィクセン ■フォックスアイ ■ゆっくり魔理沙と霊夢 ■昇龍拳 ■チャーハンつくるよ! ■土曜夜の龍魚の怒り ■穣子とネタ帳 ■プチゆっくりプレゼント ■ミニ着ぐるみさくや ■プチ大ちゃん ■プチリリー ■プチ映姫 ■キャプ翼体型閻魔○こう見えた ■プチ小町 ■プチ映姫とプチ小町 ■プチパルスィ ■プチ萃香とプチ勇儀 ■プチ綿月姉妹 ■プチ秋姉妹とプチ綿月姉妹 +り.プチゆっくり6 り.プチゆっくり6 ■縮小版咲夜さん ■さいたま ■プチきめぇ丸 ■プチ咲夜 ■幽香さんと天子 ■プチお空とお燐 ■プチ古明地姉妹 ■プチさとり一家 ■東方風神録セット ■東方地霊殿セット ■東方永夜抄セット ■東方緋想天セット ■静HARD ■プチ神奈子 ■プチ諏訪子 ■縮小したら許されるとでも思ったか? ■ソッコーマン ■プチパチュリー ■プチ荒ぶるグリコのポーズ ■プチ荒ぶる秋のポーズ ■穣子が拡声器 ■ケロケロスワッチ ■プチ藍 ■温泉プチルーミア +も.プチゆっくり7 も.プチゆっくり7 ■フィーバータイム終了のお知らせ ■プチナズーリン ■プチ小傘 ■プチ一輪&雲山 ■プチブロントさん完全版 ■うまか姉妹 ■プチ幽々子 ■プチヨコサクさん ■どどんまい ■格の違い ■イモウマ状態 ■プチ白蓮 ■プチ寅丸 ■プチ村紗 ■プチぬえ ■東方星蓮船セット ■プラモデル ■流石の私もそれは引くわ ■ミニミニ魔理沙 ■AA表示環境チェック +ゆ.プチゆっくり8 ゆ.プチゆっくり8 ■ミニミニ魔理沙とミニミニ霊夢 ■霊夢の私服 ■体育座り ■星空 ■ダブル魔理沙でゲラゲラゲラ ■可動船長ムラサ ■落ち着け永江 ■雨宿り ■ごろ寝 ■溢れ出る親父臭 ■扇風機 ■Ex静葉 ■タクシー ■ちいさなてるよ ■ゲラゲラ穣子 ■サッカー ■モンスターエンジン ■たわしずはストラップ ■というお話だったのサ ■ドラグノフ ■自動的にHARDする銅像 ■タモリア ■秋魔超神 ■支援ジャー ■プチ三妖精 ■さよなら三月また来てサニー ■ゆったり ■こいし・てるよ ■でかピース ■卓上妖夢 ■お座りうつほ ■立ち上がりうつほ ■諏訪子熟考 ■プチリリーとごじゃえもん帽 各キャラ紹介文 プチゆっくり