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※原作キャラが出てきます。 ※虐待はぬるめです。 ※ゆっくり信仰していってね!の若干続きです。 ゆっくり体調管理をしていってね! 「今日も良い天気ねぇ…参拝客の人やゆっくりも沢山きてくださるし…」 「むきゅう…本当ね、八坂様の信仰も集まるし最高だわ」 神社の参道では掃除を行う緑色の巫女と、ゆっくりぱちゅりーの姿があった。 ここは守矢神社。 外の世界で信仰が集まらなかったために幻想入りしたのだが、こっちで集めた信仰はうなぎのぼり。 調子に乗った神様とその傘下に入って日夜研究開発を行う河童が闊歩する神社の巫女とそこで強化された核ぱちゅりーである。 「最近身体の調子はどう?」 「むきゅッ、大丈夫よ。八坂様のご加護のおかげですこぶる元気だわ」 このぱちゅりーは守矢神社のぱちゅりー・ちぇん種をまとめるリーダーぱちゅりー。 当初は早苗に対しても敬語で喋っていたが、早苗が別に対等で構わないと言ってからはこんな感じで仲良しのご様子。 ちなみにここで言うご加護は餡子の代わりに搭載された核融合炉の事である。科学技術の塊であり、神託も加護もあったもんじゃない。 「そう、良かったわね。他のみんなはどうなの?」 「それも大丈夫よ、八坂様や早苗、信者のみなさんがくれるお野菜のおかげで普通のぱちゅりー種より元気だわ!」 「そっかー…そうだね、元気なのに越したことはないわね!」 「むきゅ、早苗は大丈夫なの?」 「う、うん…この間霧雨さんと弾幕ごっこをした時から…ちょっと風邪気味かな」 「むきゅう~♪早苗も体調管理は…「たいへんだよぉおおおお、わからないよぉおおおおお!!」むきゅ!?」 大声をあげて駆けてくるのは群れのゆっくりちぇん(核非搭載)だ。 神社の石段を4段飛びで駆け上がってくる。 「どうしたの!?」 「たいへんだよ!れいむがいっぱいこっちに向かってくるよ!いっぱいすぎて数がわからないよぉおお!!」 すぐさま1人と1匹と1体は階段から山の麓を見下ろす。 するとそこには紅葉でもないのに、赤のコントラストが山道を埋め尽くしていた。遠目に見てもわかる、ゆっくりれいむの群れである。 「むきゅきゅ!また性懲りもなく神社を狙ってきたのね!」 「どうするのーどうするのー!?」 「むきゅう…ひーふーみー…1000はくだらないわね」 3つ数えただけで1000と判断するのはどうかと思われるが、確かにそのくらいの数のれいむ種が階段を昇ろうと大挙している。 どこかの地域ではれいむ種のみで構成された群れにいくつもの群れが壊滅させられたと聞く。 今回の群れはそこまでの数ではないものの、普通に考えて1000を越えるゆっくりの集団は群れを通り越して大量破壊兵器である。 「どうしましょう、神奈子様も諏訪子様も今は幻想郷神様会議で留守にしていますし…」 「わからないよー!!」 「むきゅっ、流石にあの数になると早苗のスペルカードでも一掃は難しいわね。ちぇん!みんなを呼んで頂戴、迎撃戦よ!」 「撃退するんだね!?わかるよー! 急遽集められたゆっくり達は、ゆっくり守矢守備隊として作戦会議を始めた。 会議に参加しているのは核ぱちゅりーに核ちぇん、そして群れの中でも有事の際に備えて格闘訓練をしていた白兵ちぇんと武装ぱちゅりーだ。 「むきゅっ、ここは八坂様が戻られるまで防衛するべきだわ!」 「無理だよー!敵の数が多すぎるよー!」 「取りあえず核ぱちゅりー部隊は先行するわ!少しでものんでぃれくしょなるれーざーで数を減らすのよ!」 「「「「「「「むきゅーん!!」」」」」」」 「ちぇん達はどうするのー?」 「核ちぇんも先行するよー!ちぇんとぱちゅりーは早苗さんと一緒に鳥居で食い止めるんだよー!」 「「「「「鳥居が防衛ラインだねーわかる、わかるよー!!」」」」」 「むきゅううううううう、戦闘準備よぉおおおお!!」 と言ったものの群れの一般ゆっくりで戦えるのはちぇんが20にぱちゅりーが15、他のゆっくりも投石等で応戦体制を取っているが、相手は4桁だ。 広場に誘えば早苗のスペルカードなら数百単位で消滅させれるが、それでも一撃と言う訳にはいかない。 その隙に数で攻めてこられては少なからず非戦闘ゆっくりに被害が出てしまうだろう。 それに早苗は風邪気味で本調子ではない。ゆっくりを守りきれないどころか自分が返り討ちに合わない保証は無い。 何としても階段を昇りきる前に奴らを殲滅する必要がある!! 「むぎゅう!総員一斉射撃よ、長距離砲撃で一気に叩くわ!」 「「「「「「「むきゅーーーーー!!のんでぃれくしょなるれーざー!!」」」」」」」 「ゆべぇえええええええええええ!!」 「で、でいぶのほっぺがなぐなっだあああああああ!!」 「ゆーんゆーん!おぎゃあじゃーん!あんよがいだいよぉおおおおおおおお!!」 「まむまむにあながあああああああぁぁぁぁ!」 8本のレーザーが眼下のゆっくり達を貫通して行く。先頭から中腹にかけてのれいむ達は阿鼻叫喚の地獄絵図だ。 「ゆがっ、や、やべで!!でいぶをぶみづぶざないで…」 「ゆっゆっゆっ、しにぞこないのれいむはそこでゆっくりしていってね!れいむたちがゆっくりせいあつするよ!」 貫通し死に掛けたゆっくりを踏み台にして後方のれいむ達が駆け上がってくる。 1本で10体は貫通しているだろうか、だがれいむの数は全く減っていなかった。 「むむむきゅ!?全然倒せていないわ!」 「まだよ!諦めずに次弾装填、第二射行くわよ!」 「「「「「「「むきゅーーーーー!!のんでぃれくしょなるれーざー!!」」」」」」」 再度8本のレーザーがれいむに襲い掛かる。 しかしぱちゅりーは気がついていた…心なしか第一射よりもレーザーが細くなっている。 「ゆがぁああああああああ、あ、あづいよぉおおおおお!」 「ゆぐぅ…でいぶのみぎめがみえないよぉ…」 「あつっ!ゆっくりやけどしたよ!へんないやがらせはゆっくりしないでやめてね!」 「む、むきゅう…」 ダメージの割合が減っている…ぱちゅりーの不安は的中していた。 れいむは初撃の時よりも近づいているから効果は上がっているはずなのに、致命傷を受けたゆっくりの数は少なくなっている。 にとりは説明していなかったが、ぱちゅりー達は薄々気づいていた。のんでぃれくしょなるれーざーにある2つの問題に。 1つはレーザーの太さだ。 ぱちゅりーの口から放出されるレーザーは直径が5cmから最大出力で10cm程度。 威力と射程は必殺技に相応しく、ドスさえ一撃で貫通するが、この太さは一般ゆっくりでさえ中枢餡子に当たらなければ致命傷にはならない。 ゆっくりはその特性上、貫通攻撃に強い。 痛みはもちろんあるが、中枢餡を貫かれない限りは即死する事はない。被弾が頬の場合に至っては我慢すればそのまま活動できる。 2つめは発射回数。 動力こそ核燃料で半永久的に活動する事ができる核ぱちゅりーだが、のんでぃれくしょなるれーざーは別だ。実際はレーザーとは名ばかりの超高速餡子砲だから。 これは微量の餡子を高速で放射し、目標を駆逐する攻撃方法だ。つまり発射する餡子が必要になる。それがぱちゅりーの後頭部にあるレーザー用餡子だ。 これを核エネルギーで圧縮し効率的に発射する、しかし効率的と言っても限度はある。 まして身体のほとんどを融合炉に消費しているため、レーザー用餡子の備蓄量は少ない。ノーマル核パチュリーで4発が限度だろう。 リーダー核ぱちゅりーは試作追加ぷろぺらんとを帽子の中に内蔵しているため、6発まで発射ができる…たったの6発だ。 「むきゅう…このまま照射していても殲滅はとても無理ね」 「どうしたものかしら?」 ぱちゅりー達に流れる不穏な空気…彼女達は気づいていた。 その気になれば自分達は生き残る事ができるが、とても後方の仲間を、早苗を守りきるのは不可能だ。 「むきゅきゅきゅきゅ…」 「むっ…むむむきゅーん!むきゅーん!!」 賢いが故に理解してしまう絶望。 想像できる結末。 「むきゅうぅー…リーダー…「めがふれあ」ならどうかしら?」 「むぎゅう!?」 “ばくふ・めがふれあ” ぱちゅりー達がその機密保持のために使用する事ができる最終手段である。 「ダメよ!あれは機密保持の手段であって、攻撃用の装備じゃないわ!」 「むきゅっ、でもこのままレーザーで迎撃しても半分も倒せないわよ!」 「むっきゅーん…」 もう無理だ。 口には出さないがぱちゅりー達の全員がそう結論付けた。 どれだけ強くなっても結局は単体決戦用だ。これだけの物量の前には核ぱちゅりーでさえも無力であった。 そんな時、絶望するぱちゅりー達に陽気な声がこだました。 「ちぇんたちの出番だねー!」 「わかる、わかるよー!」 「1000匹くらい楽勝だねー!」 ゆっくり核ちぇんだ。 「何言ってるの?悪いけど体当たりだけじゃどうやったって勝てっこないわよ!」 「そんなことないよー!」 「ちぇん達にはぱちゅりーに負けない攻撃手段があるよー!」 そう言ってちぇんはぱちゅりーに背中を見せた。 いつもの二股尻尾…いや、このちぇん達は尻尾ではなく棒が刺さっているのだ、それも六角形のかなり長めの棒だ。 「これは制御棒っていうんだよーわかるねー?」 「これを押し込めば物凄い熱量をもつんだよー、すごいよー!」 「その状態で3匹並んで階段を転がれば、れいむなんて全部溶かしつくすよー!」 「「「わかる、わかるよー!」」」 「むきゅ!そんな凄い能力があったのね!」 「早速制御棒を押し込みましょう!」 「ダメだよー階段を転がって一掃するから、もっと上まで引き付ける必要があるよー!」 そして数分後、れいむの群れは階段のすぐ上まで辿り着いた。 「さんひきでれいむたちをとめようなんて、ばかなの?しぬの?」 「ゆっゆっゆ、ばかなちぇんたちをたおして、れいむたちのゆっくりぷれいすをてにいれるよ!」 「「「「ゆーっ!」」」」 「今だよ!制御棒を押し込んでねー!」 「むきゅ、みんな行くわよ!」 「「「「「「「ゆーしょ、ゆーしょ!」」」」」」」 ガコン、と音が鳴ったと瞬間にちぇんの目が青白く輝きだした。 それと同時にぱちゅりーはちぇんから妙に暖かさ…いや、熱さを感じ出した。 「む、むきゅう…かなり熱いわ…ちぇんは大丈夫なの?」 「…大丈夫じゃないよー」 「臨界開始だねーわかるよー!」 「ぱちゅりー…お別れだよー」 「むきゅっ!?」 臨界の始まったちぇんは周囲に数百度の高温を撒き散らす。そして最後には燃え尽きてしまうのである。 「さぁみんないくよー!」 「ちゃんと均等に並んでねー!」 「わかるねー転がるよー!」 「むきゅ、貴方達待ちなさい!」 「「「ぱちゅりー今までありがとうねー」」」 「むぎゅう!!」 「ゆゆゆっ!?ちぇんがころがってくるよ!」 「たったさんびきでくるなんて、おお、おろかおろか」 「行くよー!」 「熱いねーわかるよー!」 「れいむなんて全部丸焼けだよー!」 階段から転がるちぇん。そこから先はれいむ達にとっては地獄でしかなかった。 火の玉ですらない、青色に輝いたちぇんが来たかと思えば、自身の身体や親友、仲間が次々に溶け出しているのである。 「ゆぎゃああああああああああああああああ!!あづぃうばぁああああああ!」 「ゆぐっ、ゆっぐり、で、でぎばい…」 「ゆぎゃぎゃぎゃ…ぎゃ…ぎ…ぎ…うべぇ」 「で、でいぶだぢ…にげで…… 「あぶないよ、すぐにおかあさんのなかにはいってね!」 「ゆっくちわきゃったよ!」 「おきゃーしゃんのなかはちゅめたくてゆっきゅりー!」 「……あぎゃぎゃぎゃぎゃ、あづいぃいいいいい!」 「おきゃーしゃん!?ゆっきゅりあちゅいよ!」 「ゆっきゅりできにゃいよ!」 「ごごごべんんえあがぢゃんだぢいいぃいいいいいい!!」 「ちっともすずちくにゃらにゃい、おきゃーさんはじねぇええええ!」 「あぎゃぎゃ!あぢゅいよぉおおお!」 「ゆっ!?なんだかうえがさわがしいよ!」 「たいへんだよ、うえのほうのれいむがとけちゃってるよ!」 「ど、どぼじでとけちゃうのおおおおおおお!」 こうして半分以上を降っただろうか。 れいむの群れも1/3程度が融解し、跡形もなくなっていた。 溶けながらも鳴り止まない悲鳴に恐怖し、下山するれいむと、上を目指すれいむが衝突し、そこでも地獄絵図は続いていた。 「ゆがぁ!なんでおりてくるの!」 「はやぐ!はやぐおりで!でいぶたちもどげちゃうでしょ!!」 「いみのわからないれいむはゆっくりしね!」 そしてちぇん。 「ぎにゃあああああああああああああああああ!!」 「わがらないよぉおおおおおおおおおおおおお!!」 「が、がまんするんだよぉおおおおお!もう少しで本隊に到着するよぉおおおおおおお!」 周りのゆっくりを溶かす勢いの熱だ、本体が無事なわけはない。 皮はとっくにただれており、中から融合炉の一部が見えている。 転がりながられいむと階段周辺の草木を燃やしつくし、徐々に転がるスピードと熱が上がっていく。 「ガガががガガガアアああアあああああああ!!わがらないぎぎぎぎぎぎ!」 「らんしゃまぁあああああああああああ!!だずげでぇええええええええ!」 「も、もう少しだよー……もう少しで敵の本隊だよぉ……」 「も、もうげんがいだよぉ…」 「らんじゃまぁ…あづいよぉ、だずげでぇ…」 「が、頑張るんだよー…三匹一緒に本隊に辿り着くんだよー……でないと…は…はじ…はじけな…さいが……でき…な…」 もはや限界に近づいた核ちぇん達。 リーダーちぇんだけが辛うじて意識を保っているが、それももう風前の灯火だ。 れいむだけではない、彼女たちもまた地獄の中にいるのだ。 そんな彼女達の前に、一片の光が差し込んできた。 「ち、ちぇぇえええええええええええええええええええん!!」 れいむの本隊から聞こえたのは幻聴ではない。 本物のゆっくりらんだった。 神奈子の庇護の下にいても、何か物足りない生活…その足りなかった物が、ちぇんの目の前にいた。 「らんじゃまぁあああああああああああああ!!」 「ぼんもののらんじゃまぁああああああああ!!わがるよぉおおおおおお!!」 「………………」 「ちぇぇぇぇぇぇええええん!」 「………ダメだよー、らんしゃまの側に着いたら……予定通りめがふれあをするよー……」 何を言ってるんだこいつは。二匹は揃って同じ事を考えていた。 大好きならんしゃまが目の前にいる、こんな屑れいむなんてさっさと倒して、らんしゃまに熱いのを取り払ってもらおう。 なのにこいつはらんしゃまを……爆破する!? 「わがらないよぉおおおおおおおお!」 「なにをいっでるのぉおおおおおお!あいではらんじゃまだよぉおおおおおお!ばがなの、じぬのぉおおおお!?」 「らんしゃまが原因だよぉおお!わかってよぉおおお!!」 この騒ぎの原因はゆっくりらんだった。 らんは風の噂でちぇんが沢山いる神社がある事を聞いた。そこでは数多くのちぇんが幸せに暮らしている。 最初はそんな話だったが、神社に近づくにつれて話は変化していき、近辺のゆっくりは軒並み排除され、無残に殺されていくと言った話に変わってきた。 そんな場所はゆっくりできない。 ゆっくりできない神社にちぇんがいる。 つまりちぇんは神社に囚われている! ちぇんを助けないと! ゆっくりらんはちぇんのためならゆっくりとは思えないほどの頭の回転を始める。 そして考え付いたのが、少し前に聞いた“山のようなれいむの群れ”の話。 れいむ種を集めて襲わせる。その隙にちぇんを助けて下山する。 れいむは腐るほどいるし、先導しやすい。ゆっくりの楽園があると言いくるめる(実際少し前はそんな噂だった)、他は子供を人質に強制させる等。 そうやって数を揃えた。 そして助けに来たちぇんは…目の前で青く光ながられいむを溶かし、転がっている! 「でも…でもっ!」 「らんじゃまをだおずなんででぎないよぉおおおお!」 「やらないとみんなやかなこさまにめいわぐがががるよッ!!」 ちぇん達は叫びながらも終点に辿りついた。 ガキンッ!とゆっくりには無縁の音を鳴り響かせ、ゆっくりらんの手前5m程の地点に着地、いや着弾した。 「ちぇん!?だいじょうぶ?あついぞちぇん!」 「ら…ん…しゃ…」 「わが…る…らん…じゃ…」 「……み、みんな…は、はじけ…」 満身創痍だ。 はじけなさいはおろか、らんしゃまに近づく事もできない。 周囲にはちぇんたちを避けたれいむがまだ100匹ほど残っている。 100匹なら風邪気味の早苗様やぱちゅりー達でも倒せるかなぁ。 もう…眠ってもいいよね。 最後まで正気を保っていたリーダーちぇんも限界だった。 しかし。 「うぎぎ…がが……いうだげいっでねぢゃうのはずるいよぉー」 「わわわわ…わがるーわがるよー…りーだー、ざいごまでじっがりじでねぇー」 まだ二人は耐えていた! 「ぢぇんは、ぢ、ぢいざいとぎにらんじゃまにきいたよー…」 「わるいごどをずる、ゆっぐりはばづをあだえないどねー…ら、らららんじゃまもれいがいじゃない、よぉー」 「ざ、ざいじょは、ひ、ひひ、ざじぶりにらんじゃまを、ををを、みだから、と、とととまっどったけどー」 「わわわわわ、わるいらんじゃまは、せいばいずるよぉー…や、やざがざまの、おお、おしえだねぇー…わがががる」 二人は泣きながら自分達の過ちを認めた。 例え最愛のらんしゃまでも、悪いゆっくりは殲滅しないといけない。ぱちゅりーや八坂様がいつも言っていた事だ。 「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええんッ!!」 ああ、らんしゃまの声だ。 大好きならんしゃま。 でもらんしゃまはいつも言っていたよね、悪い事はしちゃいけないって。 らんしゃま、どうしてれいむを連れてきたのかな? 1人で来てくれれば、みんなでお迎えしたのに。 れいむを倒さないと上のみんながゆっくりできない。八坂様にも迷惑がかかる。 神様に迷惑をかけるのは悪い事だ。 らんしゃまは悪いゆっくりだ。 大好きだけど…倒さなきゃ!! りーだーちぇんの目がカッと開く。 「ぶだりども!いぐよ!!」 「わがるー」 「わがるねー」 「ちぇん!?」 「ぱちゅりぃいいいいい!今までありがどうねぇえええええええええ!」 「ざなえざまぁぁぁぁぁ!おがらだは大事にねぇぇぇぇぇぇ!」 「やざがざまぁぁぁぁぁぁ!!ちぇんだちはどでもゆっぐりでぎまじだぁぁぁぁあ!」 もうそんな声を出せる状態じゃないのに。 境内のぱちゅりー達や他のゆっくり、そして早苗もその叫びを聞いて涙は止まらなかった。 途中でやってきたにとりも泣いていた。 「はじけなさい!」 「はじけなさい!」 「はじけなさい!」 「「「ばくふ・めがふれあ!」」」 3匹のちぇんが叫んだ瞬間、ゆっくり達は消滅した。 跡には若ぱちゅりーがめがふれあを使った時より大きなクレーターが3つ。 後期開発のちぇんはぱちゅりーより若干融合炉が大きいのと、ちぇん種の身体能力が原因だろう。 それでも殲滅しきれなかったれいむ達も極少数いたが、一般ちぇんによって全て叩き潰された。 ぱちゅりー達はこのれいむ達もゆっくりらんの被害者と言えなくもないが、ちぇん達の核ちぇんへの想いを考えるとしょうがないだろうと思った。 そして時が過ぎ、クレーターは埋められ、また平和な守矢神社が帰ってきた。 近場の里はもちろんの事、遠方の里も迷惑していたゆっくり。 そのゆっくりの中でもれいむ種がほぼ消滅し、紆余曲折の上ででた結論は、新たな守矢神社のご加護だったと言う事で神社の信仰はさらに上がっていった。 ただ早苗だけが、その信仰を手放しに喜ぶ事ができなかった。 守矢神社の隅には4つの墓と立て札がある。 『守矢神社を守るために散った勇敢なゆっくり達、ここに眠る』 あとがき 主役側ばかりが優遇されている気がしないでもないので吹っ飛ばしてみました。 “史上最弱が最も恐ろしい”の影響を凄く受けています。 正直、あんな数のれいむが里を襲ったら、妖怪や有力者の力を借りないと絶対に勝てないなと。 そしてタイトルの体調管理はあまり関係がなかったー そろそろメインのゆっくりかなこを出して守矢神社編とは別のものでも書こうかと思ってます。 書いた作品 ゆっくり信仰していってね! ゆっくり新技術を導入していってね! おまけーね 当時にとりは開発本部でぱちゅりー用ぷろぺらんとの量産計画を検討していた。 そんな中で鳴り響く突然のレッドアラーム。 ぱちゅりー達が大規模なゆっくり駆除を行う等の話は聞いていない。聞いていたとしても、頻繁にめがふれあを使う状況があるはずがない。 大慌てで境内に駆けつけるとそこには神社のゆっくりが総動員されており、階段付近に早苗と核ぱちゅりーがいた。 早苗と並んで階段の下を見つめると、そこには融解したれいむのおびただしい数。 そして炸裂する閃光…あれはめがふれあの爆発だ。 にとりの涙は止まらなかった。 その夜、一連の事件と核ちぇんの健闘を聞いた神奈子は… 「にぃとりぃいいいいいいいいい!!」 怒り狂っていた。 境内に神の怒号が響く。 一連の行動はにとりが扇動したわけでもないのだが…「ちぇんが爆発=核が原因=にとりが原因」このゆっくりにも負けない超理論が神奈子の有頂天の原因だ。 にとりが流した涙は、最初から自分のためのものだった。 「私は…生きて川に帰れるのかな…」 きっと無理かもしれない。 このSSに感想を付ける
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ゆっくりおうえんしていってね!!! 4KB 短いです、下らないです、虐待は無し ゆっくりおうえんしていってね!!! 「ただいまー…ん?ゆっくりがいるな…」 俺が家に帰ってくると、そこには一匹のゆっくりまりさがいた 窓に目をやると、どうも鍵を閉めていなかったどころか、窓を開けっぱなしだったらしい 「ゆゆっ!?」 俺に気付いたのか、まりさは驚いたような声を上げた。 やっちまったか、面倒な事になったなぁ、泥棒じゃないだけマシか、荒らされてはないみたいだな、 ここはまりさのおうちだよ!とか言うんだろうなぁ等と いろいろ考えていると、そのまりさが口を開いた。 「ここはおにいさんのおうちなの?ごめんなさい!だれもいなかったからまりさかんちがいしちゃったんだよ!」 なんだ、拍子抜けしたな、今まで家に勝手に入ってきたゆっくりは大抵「おうち宣言」してきた所謂ゲスだったのに… こいつは割と性格の良いヤツらしいな。 グウゥ ん?何の音だ? 「ゆうう…」 …まあ今日は機嫌もいいし、飯くらいやるか… なぜ機嫌がいいかって?今日は俺が贔屓にしてる球団の「双葉虹裏トッシーズ」が本拠地の双葉ドームでライバルチームに大勝したからさ! 「おにいさん!これほんとうにたべていいの!?」 「ああ、そんなもんでよけりゃ食ってくれよ」 「ゆゆ~ん!ありがとう人間さん!」 あんまり自然で食えないようなお菓子とかをあげると、舌が肥えて従来の食い物が食えなくなるらしいから 余ってた野菜をくれてやったが、ここまで喜んでくれるとは。 「そんなにうまいか?」 「うん!すごくおいしいよ!おにいさんありがとう!」 ハハハそうかそうか、ゆっくりと言えばゲスのイメージが強かったが、善良なヤツは可愛いもんだな。 しかし…こいつ肌や髪はまぁまぁ綺麗だけど…帽子が汚いなぁ…… 「おい、お前が飯食ってる間その帽子洗濯してやるよ」 そう言って俺はまりさの帽子を取り外した。 「ゆ~ん!おにいさん!まりさのすてきなおぼうしかえしてね!」 「そんな怒るなよ、洗濯するだけだって、この帽子綺麗にしてやるからさ、それまでかわりにこれでも被ってな」 俺は自分が被ってた「双葉虹裏トッシーズ」のキャップをまりさに被せた。 「ゆゆゆっ!?」 なんだ?まさか他の帽子を被せると死ぬとか?んなワケないか。 「ゆっゆっゆ~ん♪虹裏トッシーズの心得は~♪いつもエンジョイ・アンド・エキサイティング~♪」 これはッ!?「双葉虹裏トッシーズ」の公式応援歌だとッ!? 「がんばれがんばれ虹裏トッシーズ~♪」 これは…!使える!! 「まりさ!頼む!俺と一緒に暮らしてくれ!」 「ゆっゆ~♪…ゆゆっ!?そ、そんな、おにいさん!いきなりそんなこといわれても、まりさこまっちゃうよ…」 「たのむ!まりさ!俺にはお前が必要なんだ!」 「ゆぅぅ…まりさのほうこそ…これからよろしくおねがいします…」 こうして、まりさは晴れて我が家の飼いゆっくりとなった。 数日後、俺は虹裏トッシーズの試合を見に来ていた。 もちろん、あのまりさも連れてきてだ。 「よーし!いいぞまりさ!もっと歌え!全身全霊でトッシーズを応援するんだ!」 「ゆっゆっゆっ~♪E&Eの~精神で~♪がんばれがんばれトッシーズ~♪」 九回裏二死満塁、トッシーズ逆転勝利の大チャンス!勝てる!勝てるぞこれは! まりさもかれこれ二時間ほど歌い続けているが、疲れた様子は見えない。 むしろ歌うことを、この試合を見ることを楽しんでいる! 「水分補給用にオレンジジュースも持ってきたが…杞憂だったようだな…」 「ゆゆっ!おにいさんもちゃんとトッシーズを応援してね!」 「おおそうだったな、いかんいかん」 ゆっくりに応援の注意をされるとは、ハハハ、俺もヤキが回ったか? 『打ったー!!!これは大きいぞー!!!』 おおっ!やった!やりやがった!!流石は我がトッシーズの四番バッター!イカすぜ! しかもこっちに飛んできてるぞ!オーライ!オーライ! 「ゆぶっ!」 何っ!ホームランボールがまりさに直撃だと!? 「ゆぅぅ…おにいさん…まりさはほんもうだよ…トッシーズのほーむらんぼーるでしねるなんて…こんなにうれしいことはないよ…」 「まりさ!死ぬな!まりさー!!こんなとこでお前に死んでもらっちゃ困るんだよ!誰か!助けてください!まりさを助けてください!」 と、ここまで叫んだところでオレンジジュースを持ってきてたことを思い出したので大急ぎでまりさにぶっかけた。 そしたら何事も無かったかのようにまりさは元通りになった。 「ゆっくりー!まりさはまだしねないよ!これからもトッシーズをおうえんしつづけるよ!」 よかった…本当によかった…まりさ!これからもトッシーズを応援し続けような! 「うん!おにいさん!これからもゆっくりおうえんしていってね!」 「ああ!我がトッシーズは永久に不滅だぜ!」 この日の試合、トッシーズは見事に逆転満塁サヨナラホームランを決めた。 しかし… あのホームランボールは結局他のヤツに拾われてしまった…orz GOOD END!!! 我ながらものすごく下らないSSだと思います トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 念のこもったお飾り(ユニフォーム帽子)に影響を受けるのかwww あまり見ない新しい設定でウケたww -- 2018-01-02 13 52 45 久々にゆっくり! -- 2013-08-23 10 58 04 ちょっとこれはゆっくりできないよ! -- 2013-07-09 00 10 49 いろんな奴が居て良いねぇ -- 2013-01-19 10 18 02 作者はケフィアシリーズww ワロタwww -- 2011-02-13 21 59 48 ホームランボールwwwwww -- 2010-11-23 09 09 08 ゆっくりは奥が深いな・・・・ -- 2010-10-14 21 27 11 ホームランボールで即死してた方が笑えたけどまあいいや -- 2010-09-27 21 44 14 ゆっくりできるSSだな。 -- 2010-07-22 00 25 40 発想の勝利wwww -- 2010-07-19 13 08 17 wwww -- 2010-05-21 20 59 17
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『ゆっくりさとっていってね!!!』 25KB 虐待 同族殺し 希少種 現代 時間つぶしにどうぞ 初めましての方は初めまして 他作を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 単発物です。希少種優遇です。 饅・即・虐の方はご注意。 また、東方神霊廟のキャラクタや台詞をモチーフにしたネタが登場します。 それでいて本来のキャラクタからかなり外れています。 ご理解の上、お読みください。 ――――某日、午後6時、バス停前―――― 「おでがいじばずううううううう!!!! でいぶだぢをがいゆっぐりにじでぐだざいいいいいいいい!!!!」 帰路についていた俺はいつも通るバス停前で変わり映えしない台詞をほざくクソ饅頭を見かけた。 駅前の他にも、こういった人がただ立っていることの多い場所は 絶好の物乞いスポットと考えられているようだ。 人目がある為か、潰す人が少ないのも理由のひとつである。 「おぢびぢゃんはうまれでがらいぢどもゆっぐりじでばぜん!!! ぜめで!ぜめでおぢびぢゃんだげでもゆっぐりざぜであげでぐだざいいいいいい!!!」 道の隅っこにある電柱の影には一かたまりのクソチビ饅頭共がいた。 泣いていながらも騒がないところを見ると、空腹がかなり危険な域に入っているものと思われる。 「おぢびぢゃんはおなががずいでいづもないでいばず!! うばれでいぢどもゆっぐりでぎでないがらがわいぞうなんでず!! だがら!だがらおぢびぢゃんだげでもおおおおおお!!!」 ぼせい(笑)に満ちた発言にも聞こえるがゆっくりなら誰でも言っている台詞なのと 本当に『おちびちゃんだけ』となった場合の親の行動を計算に入れると評価はむしろマイナスである。 俺は喚いているクソ饅頭に声を掛けた。 「おちびちゃんとやら、飼ったら何だというのだ?」 「ゆ゙っ!?おにいざん!!どっでもゆっぐりじだおにいざん!! でいぶだぢをがいゆっぐりにじでぐだざい!!おでがいじばず!!」 「質問に答えろ。そのチビ共を飼って俺に何の得がある?」 「おぢびぢゃんはどでもがわいぐでゆっぐりでぎばず!!! おぢびぢゃんがゆっぐりざぜでぐれるがらほがになにもいりばぜん!!! だがらがっでえええええええええ!!!!」 「ほう、おちびちゃんがいればゆっくりできるんだな?」 「ぞうでずうううううううう!!!!!」 「他には何もいらない、と?」 「ぞのどおりでず!!でずがら!!でずがら!! でいぶだぢをがっでええええええええええ!!!!」 「成る程成る程、おちびちゃんがかわいいからごはんも、おうちも、つがいもいらないね! YEAH!問題は全て解決!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆんやああああああああああああ!!!! ぢがううううううううううううううう!!!!! まっで!!まっでええええええええええ!!!!!!」 この程度は至ってポピュラーな屁理屈論破である。 変わり映えの無い要求に、変わり映えの無い反応を返したに過ぎない。 それだけのはずだったのだが……。 「わをもってたっとしとなす。わたしたちに、あらそうりゆうなどありません」 場違いにも程がある、落ち着いた声色の小難しい台詞が聞こえた。 「な、何だ?お前は…?」 「わたしは、みこ。『とくせいおう』とよばれることもありますね」 そこには明らかに他のクソ饅頭とは違った異質の雰囲気を纏ったゆっくりがいた。 「ゆっ…!?ゆっぐり!ずごぐゆっぐりじでるよおおおおおおおおおおお!!!!! ぎいでね!ぎいでね!ごのにんげんざんがでいぶにいじわるずるのおおおおおおおお!!!!! でいぶなんにもわるいごどじでないのにいいいいいいいいいいい!!!!」 「ちょwwwおまwww」 思い出した。こいつは最近話題になっている新種のゆっくりだ。 猫耳のように逆立った後ろ髪とヘッドホンのようなお飾り。 名乗ったその何も聞き覚えのある『ゆっくりみこ』だった。 「ことばはふようです……なるほど。 あなたのうまれるまえからすべてをみさせていただきました。 なかなかふぐうのいっしょうをおくられてきたようですね」 「ゆ゙、ゆ゙ゔゔ……?」 「おや、あなたには『よく』がふたつかけている。 『いきる』ことへのしゅうちゃく、『し』へのせんぼう。 これはいったい……なるほど、そういうことですか」 「???」 おそらくれいむはみこの言葉の半分も理解していないだろう。 当然だ。俺にだってついていけないぐらいなのだから。 「わからない、というかおをしていますね。 にんげんもゆっくりも、じゅうのよくをみればほんしつがわかるのです。 いまあなたがかんじているぎもんも、そしてあなたがたのかくしつもです」 「……俺とこいつの間に『確執』ってほどの大げさなものなど無いぞ。 チビを引き取ったところで俺がゆっくり出来るはずもないし それに」 「なにいっでるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!??? おぢびぢゃんはゆっぐりでぎるにぎまっでるでじょおおおおおおおおおお!!!???」 「うるさいぞ!」 話が出来ないくらいに大声で台詞を遮ったれいむにイラつく俺だが 聞き役であるみこは至って涼しい顔で告げた。 「かまいませんよ。わたしはじゅうのことばをどうじにきくことができるのです。 あなたのいいぶんも、れいむのことばも、わたしがどうじにききましょう。 おすきなようにおはなしください」 「???……………そうか」 「でいっぜいっじろおおおおおおおおおおお!!!! でいぶのおぢびぢゃんはゆっぐりじでるんだああああああああああ!!!!」 ……………………… ……………… ……… 数分後。 俺はうるさく騒ぎ続けるれいむをみこの言った通り無視して普通に喋った。 一通り事情の説明が終わってからさらに数分かかって、れいむが大人しくなる。 「おふたかたのいいぶんはわかりました。 ……にんげんさん、あなたはひとつだけごかいをしています」 「…なにが?」 「れいむのことばにうそいつわりはなにもありません。 れいむはいのちをなげだすかくごでこのばにのぞんでいます。 じぶんがころされてもかまわない、じぶんがかわれなくてもかまわない。 いずれにしてもこどもたちをたすけるにはにんげんさんのちからをかりるしかないからです。 あなたはれいむがこどもたちだけをひきとることにさいしょからなっとくするきがなく またじっさいにかってみればにんげんをみくだすようになるとおもっているようですが そのような『よく』はれいむのなかにありません」 「………本当に?」 ゆっくりの中に善良な個体はいる。 ただしそれは全体から見て一割、いや一分、いや一厘にも満たないかもしれない。 それ以前に、まるで説法のようなみこの話は胡散臭さしか感じられない。 「いま、あなたは『うさんくさい』とおもいましたね?」 「わかってるんだったら、最初から言うなよ」 「いいでしょう。でしたらわたしもふくめ、れいむたちをかってみてください」 「……はぁ?」 「れいむがあなたのおもったとおりのゆっくりでしたら、にるなりやくなりすきにするといいです。 わたしもうりとばそうと、いのちをうばわれようとかまいません。 わたしはかくしんをもっているのです。 このれいむはしんようできます。あなたにかっていただければ そのこういをもってそれをしょうめいするでしょう」 ……全く、本末転倒なことを言う。 だがしかし希少種、それも新種が自らを人身御供としようとしているのだ。 確かにこいつらだけならともかく、みこも一緒なら例えれいむがゲスであろうと みこを売り飛ばしてしまえば元が取れるだろう。 「いいだろう、しかしその言葉忘れるなよ」 「もちろんです。わたしはわたしじしんのしんじんにちかってうそいつわりはいいません」 俺は鞄にしまっていたエコバッグを取り出し一家をその中に、みこを抱えて家路に着いた。 「ゆ…?ゆゆぅ………れいむ、がいゆっぐりになれるの……?」 結局最後までれいむは俺達の会話についてこられなかったようだが。 ――――翌日、午前8時、自宅―――― 次の日の朝俺は、会社に『体調を崩した』と嘘をついて有休をとった。 目的は勿論、昨日うちに来たゆっくり共の様子見という名の監視のためである。 ……が、結果を先に言えば監視とかそういう以前の状況に陥っている。 「ちーちーちゅるよ!ちゅっきりいいいいいいい!!!」 「おぢびぢゃああああああああああああん!!?? そんなどごろでしーしーしちゃだめでしょおおおおおおお!!!???」 「ゆんやあああああああああああああ!!!! おながずいだのぜえええええええええええええ!!!! ごはんしゃん!!!ごはんしゃんむーちゃむーちゃちゅるうううううううううう!!!!」 「ごはんさんはさっぎもらっだでじょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???」 俺は部屋の窓際に胡坐をかき、無表情で座っていた。 「……………………」 対して横に居るみこは引きつった表情で冷や汗をかきながら、小刻みにカタカタ震えていた。 「……………………(ダラダラダラダラ)」 件のれいむに番はいない。奴らの言うところの『しんぐるまざー』というやつだ。 だが子供は六匹。れいむとまりさが半分ずつである。 ……冷静に考えれば当たり前である。これで教育が行き届いているはずが無いのだ。 「おい!くしょどれい!!まりちゃちゃまにあみゃあみゃもってくるんだじぇ!!」 「ちょーだちょーだ!!そっちのゆっきゅりちてにゃいゆっくりにゃんかほっちょいて きゃわいいれいみゅにあみゃあみゃもっちぇきちぇにぇ!!しゅぐでいいよ!!」 れいむは粗相をしたチビや泣き叫ぶチビにかかりっきりで こちらの致命的な方のクソチビを止めることに気が回っていなかった。 「なにやっちぇるにょ!?ぶしゃいきゅなちゅらをぶらしゃげてにゃいではやくしちぇにぇ!!」 「あんまりおしょいとぷきゅーしゅるのじぇ! ちーちーもらしちゃこわがりゅといいのじぇ!ぷきゅー!」 昨晩の夕食と今朝の朝食を用意しただけで俺を奴隷認定した二匹はすっかり付け上がり 赤ゆっくり特有の甲高い声で好き勝手なことをほざいていた。 「……これは、どういうことかな?」 全員が全員うるさくて本来なら俺の言葉が聞き取れるか怪しいのだが 奴らを含めても『十の言葉を同時に』の範疇に収まるため、あえて普通に話した。 「これは、その、おそらく、おやのれいむが『にんげんにかかわらないように』そだてていたけっかでしょう。 れいむじしんはきんばっじをほじしていたゆっくりだったんです。 かいぬしがかってきたまりさとつがいになったのはいいですが まりさがげすかしたようでれいむはともどもすてられたのです。 こどもがうまれたのはそれから。 ですがそうそうにまりさが『たかい』し、こどくにこどもをそだてていたようで。 そのなかでにんげんさんとのかんけいはにんげんさんはゆっくりできないといいふくめるだけで せっしょくのきかいをもたせなかったから、かいゆっくりとしてのちしきはもちろん にんげんさんとのかんけいをりかいしていなかったのでしょう。 そもそも…」 「分かった。もういい」 「……………………(ダラダラダラダラ)」 現状を見る限り親れいむは子供達をしっかり叱ることが出来るし、教育もしていけるだろう。 みこの言葉にはひとつも嘘偽りはなかったように思う。 しかしよくよく考えてみれば、みこが保障したのは親れいむの内面的問題だけだった気がする。 早く言えば。 ゲスの因子を色濃く受け継いだ上に人間との関係を学ばなかったチビ共はゲスだということだった。 「……確か、お前を好きにしていい条件ってのは 『れいむがおれのおもっていたとおりのゆっくりだったら』だっけか。 その『れいむ』には目の前にあるアンポンタンも含まれるのか?」 「れいみゅをゆびさしゅなじじい!れいみゅがけがれりゅでしょ!」 「……………………(ダラダラダラダラ) わ、わかってて、そういうことをきくのは、はんそくだとおもうんです………が…………」 「もうがみゃんのげんかいなんだじぇ!やくにたたにゃいどりぇいにゃんか かっててもしょうがにゃいのじぇ!ちね!ちね!」 俺の膝辺りにポヨンポヨンと当たるゴミを無視してそのまま話を続ける。 「……結局お前は何がしたくてあの時の俺を説得したんだ?」 「……………………」 「…………??」 みこの様子が変わった。 先程までとは違った妙に沈んだ雰囲気に少しだけ飲まれてしまう。 「わたしは、ただ、ゆっくりがむいにしんでいくのがいやだったんです。 にんげんさんはながきにわたる『れきし』のなかでえいがをきわめていきました。 ですがゆっくりにえいがはおとずれません。 にんげんさんも、いつかはほろびゆくときがくるでのしょう。 しかしにんげんさんがいまじゅうじつしたまいにちをおくっているようにゆっくりのおもいがみたされるには にんげんさんのちからをかりてゆっくりするだけで、ゆっくりとしてのしあわせをいちぶすてなければなりません。 わたしたちゆっくりも、しぜんをうけいれ、あるがままのすがたでしあわせになるみちはなかったのか。 ゆっくりはただうまれて、ただほろびるしかないのか。 どうしても、そのようにかんがえてしまうのです」 「ちね!ちね!どーなにょじぇ!いちゃいのじぇ! いまあみゃあみゃもっちぇくるならゆるしちぇやってもいいのじぇ?」 みこの考え方はかっとんだ理想論である。 しかし歴史上で我々人間がやってきたことも、ある種今俺の目の前で体当たりを繰り返す ゴミクズと大した差は無いのかもしれない。 そう考えると、少々虚しさを感じなくも無い。 「確かに、お前の言う通りかもしれないな」 「にんげんさん……」 みこの方へ視線をやる。みこの表情は少しだけ晴れやかだった。 俺はおそらく今までの俺だったら考えられなかったほどの優しい笑顔を浮かべているだろう。 自分自身こんな思いや考え方に共感するのが意外だった。 だがしかし。 「ゆへー……ゆへー……やしぇがみゃんしちぇないで、とっととこうしゃんするのじぇ! さいっきょうっのまりちゃちゃまのこうげきをうけちぇむきじゅで……ゆびぃ!?」 「こいつらが腹立つ存在なのは歴史上どうあっても変えられない事実だよなぁ……?」 「ええ……なんだかわたしももうれつにはらがたってきました……!」 赤まりさを右手で掴むと、徐々に力を込めて握り締めていった。 「ゆぴぃー!!ゆぴぃー!!はなしゅのじぇ!!はなしゅのじぇ!! まりちゃがゆびいいいいいいいいいいいい!!!! ちゅぶれ……ちゅぶれりゅうううううううううううううううううう!!!!」 ぐねぐねした感触が気持ち悪いが、今の怒りの感情に対してそのようなものがストッパーになるはずも無い。 「おにぇーちゃんをはなちぇ!どりぇいがきちゃないででれいみゅたちにしゃわっていいとおもっちぇるのきゃ!」 「なら、あしならいいんですね?」 言うやいなやみこがジャンプし、赤れいむの上に飛び乗った。 「いじゃあああああああああああああ!!! ちゅぶれりゅうううううううううううううう!!! おみょいおみょいおみょいよおおおおおおおおおおおお!!!!」 「ひどいですね。かれんなおとめにたいして『おもい』だなんて。 『おもい』というのは、こういうことをいうんです……よっ!!」 「いっ!じゃ!やべ!でい!びゅ!じゅぶ!れ!」 みこは上下に身体をゆすり、質量以上の重さをもって赤れいむを圧迫する。 「これが!いのちの!おもさです!!それが!!あなたに!!わかるんですか!!!!」 「ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!」 「おい待て!落ち着け!それ以上やったら本当に死ぬぞ!」 一回の『ゆ゙っ』の度に少量の餡子を噴出していた赤れいむ。 「はーっ……はーっ……はーっ……はーっ……」 「ゆ゙っ……べっ……」 俺の声に反応したみこが圧迫をやめたが、今の赤れいむの痙攣は既に末期症状の状態。 オレンジジュースでもあれば治るんだろうが、生憎と俺はそんな甘いものを飲むような性質ではなかった。 「「「「「………………」」」」」 俺たちの大声から異常に気付いたのか、目の前に居たクソチビ二匹以外の五匹もみこの凶行を目撃してしまった。 「ゆんやあああああああああああああああ!!!! れいみゅもきゃわいいきゃわいいいもーちょぎゃあああああああああああああ!!!!」 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおお!!??」 「おぢびぢゃん!!ゆっぐりなおっでね!!べーろべーろ!!」 「ばりざもべーろべーろずるよ!!べーろべーろ!! どぼじでなおらないのおおおおおおおおおおおお!!!??」 「おにいさん?」 「…………え?あ、何だ?」 この狂乱とは真逆の邪気の無い笑顔でみこは俺に問いかけた。 「こんなことになってしまったいじょう、やっぱりわたしはおにいさんにころされてしまうのでしょうか?」 「……………ああ、いや、別に俺は気にしていない」 「………ほんとうですか?」 「いや、気にしていないといえば嘘になるが、今となってはお前を害するつもりはない。 今死んだ奴にも同情はしないし、こいつらは今日のうちに捨てることになるだろうが………お前はどうするんだ?」 「こう……します………よっ!!!!」 グチャ!!!! 「……………………………ゆ?」 親れいむと、おそらく長女であろうまりさがぺーろぺーろという名の必死の看護をしていた赤れいむ。 「ふっ…………ふははは…………あははははっ…………あははははははははは!!!!!」 そいつが居た場所には今、餡子にまみれて狂気に満ちた笑い声を上げるみこが居た。 「ゆ……ゆんやああああああああああああああああああああああああああ!!!!! どぼじでええええええええええええええええええ!!!!!」 「れいみゅ!!れいみゅ!!へんじじで!!へんじじでよおおおおおおおおおお!!!!」 「あははははははははははははは!!!! ばかですね!!!れいむはしんだんですよ!!! よわくて!!!ぐずで!!!のろまで!!!やくたたずなれいむはしんだんです!!! だれもしぜんのせつりにはさからえないんです!!! あはははははははははははははは!!!!」 ここでみこが笑いながらも涙を浮かべていた、というのなら少しは感動的なシーンだったのだが…。 「れーみゅをごろじだげじゅはじねええええええええええ!!!!」 「まりちゃがこわいこわいぷきゅーするよ!!まりちゃのぷきゅーでしんじぇね!!! ぷきゅうううううううう!!!!」 「じね!!じね!!じね!!!」 「まりちゃのこうげきでしにゅんだじぇ!!!じね!!」 「あはははははははははははははは!!!! それがこうげきですかぁ!?ぷくーがこわいとおもってるんですかぁぁぁぁぁ!!?? すくいようのないおばかさんたちですねえええええええええ!!!!」 「ゆびゃ!!!!」 みこは心底楽しそうにチビ共を馬鹿にしその内の一匹、体当たりをかましていた赤まりさを逆に跳ね飛ばした。 「こうげきっていうのはこういうものをいうんですよお!! り・きゃ・い・できましゅかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」 跳ね飛ばした赤まりさを踏みつけ、身体をひねるようにして踏みにじった。 「どぼじでえええええええええええええ!!!! どぼででばりざのだいあだりでじにゃにゃいにょおおおおおおおおお!!!??」 「きっとやせかみゃんしてりゅんだよ!!! ゆっくりできないゆっくりにはみんにゃでぷきゅーしゅるよ!!」 「ぷきゅーだよ!!ぷきゅうううううううううううううう!!!!」 残った三匹が横一列に並んで一斉に膨れ上がった。 そんなことをすれば、今のみこには逆効果だというのに。 「あはははははははははははは!!!! ぷきゅーですって!!ぷきゅーですって!!!! それしかできないんですかぁ!?だったらわたしもしてあげますよ!! ぷくうううううううううううううううううう!!!!!!!」 ボスッ!!! 「ぶぎゃああああああああああああああ!!!!!」 ぷくーと言いつつ全力突進で中央に居たれいむをぶっ飛ばした。 飛ばされたれいむは転がった後、横になった姿勢のまま餡子を嘔吐し始めた。 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ……!!」 「あははははははは!!!!『ゆ゙っゆ゙っ』ですって!!!! わたしのぷくーは『さいっきょうっ』ですね!!! あはははははははははははははは!!!!!」 「ふっ…ふじゃけりゅなああああああああああああああああ!!!! いまののどきょがぷきゅーだああああああああああああああ!!!!」 「わかっちゃんだじぇ!!!いままでまりちゃたちがやられちゃのは こいちゅがひきょーなてをちゅかったせいだじぇ!!! こんどはじぇったいにまけにゃいのじぇえええええええ!!!!」 まりさがみこの正面から体当たりを敢行する。 「ゆっきゅりじにぇええええええええええええ!!!!」 「あははははははははははは!!!! それはしにたいからするんですね!!??あなたはわたしにころしてほしいんですね!!?? だったらおのぞみどおりころしてさしあげますよ!!!!」 正面からの体当たりをみこは口を開くことで応じた。 何も考えずにそのまま体当たりを行った赤まりさは口の中に入ってしまう。 「ゆっ!?なに!!まっきゅらだよ!!きょわいよ!? どぼじでぎゅうによるざんがぎだのおおおおおおおおおおおべっ………!!!!!」 「むーしゃむーしゃ!!!むーしゃむーしゃ!!!まずっ!!!こいつめっちゃまずっ!!! べっべっ!!!くそのやくにもたたないとんだごみくずですね!!!! いきていてはずかしくないんですかぁ!!?? あ、もうしんでますね!!!あははははははははははははは!!!!!」 最後に一匹残ったれいむはようやくというべきか、力の差を思い知ったようだ。 「やじゃああああああああああああああああああ!!!!! ぼうおうぢがえるうううううううううううううううううう!!!!!」 「………ゆ?ゆうううううううううううううううう!!!??? どぼじでおぢびぢゃんがじんでるのおおおおおおおおおおお!!!!????」 あまりといえばあまりな事態に、思考停止していた親れいむがようやく再起動したようだ。 「おがーじゃ!!おがーじゃ!!!あいづゆっぐりでぎにゃいよおおおおおおお!!!! はやくごろじでよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「ゆ!?ゆうう!?おちびちゃん!!れいむのおくちのなかにはいってね!!!」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」 赤れいむを口に収め、所謂ドヤ顔でみこに向かい合うれいむ。 「おちびちゃんはこれであんっぜんっだよ! げすなゆっくりからおかーさんのてっぺきのまもりでまもるよ!!」 「うふふ………てっぺき、ですか………」 みこは先程の狂気の笑いを引っ込めてれいむに話しかける。 「れいむさん、あなたはここにきてゆっくりできてますか?」 「ゆっぐりじでるわげないだろおおおおおおおおおおお!!?? おまえが!!おまえがおぢびぢゃんをごろじだんだああああああああ!!!!」 「ではあなたはゆっくりしていないゆっくり、つまりげすなんですね?」 「でいぶはゆっぐりじだゆっぐりだあああああああああああ!!!! げすはおまえだろおおおおおおおおおおお!!!!!」 「いま、ゆっくりできてないんですよね?」 「ゆっぐりでぎるわげないだろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「ではいまゆっくりしていないんですから、ゆっくりしてないゆっくりですね?」 「でい…ぶ、は、ゆっぐりじだゆっぐりだあああああああああああああああ!!!!」 「ではゆっくりしているゆっくりですから、あなたはいまゆっくりしていますね?」 「でいぶ、は、ゆっぐり、でぎるわげないだろおおおおおおおおおお!!!!」 「ではゆっくりできていないから、ゆっくりしていないゆっくりですね?」 「でい…っぶは…ゆっぐ…り……?ゆっぐり………ゆっぐ……り…………… ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!」 『ゆんやあああああ!!!!おがーじゃんゆっぐじざぜでええええええええ いじゃああああああ!!!!でいびゅのぎゃわいいおがおが、ぶびゅ!!!』 「ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!」 「…………ふぅ、おわりました。これで、なにもかも」 親れいむが非ゆっくり症を発病し、中の赤れいむがその余波で食いちぎられた後。 みこは思い溜め息を吐いてうつむいた。 「非ゆっくり症って、こんなに簡単に発病するものなのか?」 「………こどもをころされたというのもありますが いっぱんてきなゆっくりは『ゆっくり』にぎもんをもつことがきんきとされています。 じっさいはいまわたしがやったようにことばじりをとらえてやりこめるだけで かんたんにしょうじょうがおきます。 ………こんなそんざいだから、ゆっくりはきらいなんです………」 みこは重苦しい空気を纏ったまま、俺の方へ向き直った。 「……こんなことになってしまったいじょう、おにいさんはわたしをどのようにでもするけんりがあります。 わたしのりそうがまちがっていたかどうかはわかりませんが、わたしのちからでじつげんはふかのうにおもえます。 どうぞなんなりと、わたしのしょぐうをおもうしつけください」 「……そう捨て鉢になるな。むしろ、俺はお前を本当に飼いゆっくりにしてみたいと思う。 交換条件とか処遇とかじゃなく、お前と一緒に暮らしたい。どうだろう?」 「おにいさん………」 みこは少し考える様子を見せた後、深々と頭を下げてこう言った。 「ふつつかものですが、よろしくおねがいします」 「え?あ、ああ、よろしくたのむ」 その台詞を聞いて自分の言った言葉とその返しがなにやら妙に顔が熱くなった。 「そ、そういえば、まりさが一匹残ってたんだっけ?こいつも殺すか?」 「………??おにいさんの手のまりさなら、もう死んでいるように見えるのですが?」 「え?あ………」 無意識に握り締めていた赤まりさは白目をむいて餡子を吐いていた。 吐いたというよりは握り締めた拍子に飛び出したというのが正確かもしれないが ともあれ絶命しているのは誰の目にも明らかである。 「ま、まあ後は、そこのうるさい奴を片付けないとな!」 「ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!ゆっぐぢ!」 「そうですね。ごめんなさい、部屋を汚してしまって……」 「いいって、気にするな。 それに、先程のお前さんはなかなかに楽しそうだったぞ? 俺の虐待歴もそう短くは無いつもりだが、あそこまで楽しんでやったことは数えるほどだ」 「い、いわないでください…!あのときのわたしは、さくらんしてたんです……!!」 ――――後日、某時刻、自宅―――― 「ゆんやあああああああああああ!!!! どぼじでごんなごどにいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「ごのうぞづきいいいいいいいい!!!!!」 「よぐもばりざざまをだまじだなああああああああああああ!!!!」 「あはははははははははは!!!! ゆっくりがゆっくりできるわけないじゃないですか!!!!」 「むきょわあああああああああ!!!!! ていのうのぶんざいでもりのけんじゃにざがらうなんでむ゙ぎゅっ!!!」 「いちいちいちいちせりふがながいんですよおおおおおおおおお!! どうせおなじことしかしゃべれないんですから なにもいわなくていいんですよおおおおおおおおおお!! こどもをかかえているゆっくりなんてどうせゆっくりできるわけないんですから!!!! あははははははははははは!!!!」 「ふっふざげるなあああああああああああああ!!!!! ばりざは!!ばりざはゆっぐりずるんだあああああああああ!!!! ぐずでのろまなぢびなんでじるがああああああああああああ!!!!」 「げすですね!!あなたさいていのげすですね!!!! あははははははははははははは!!!!! ぐずでのろまなちびならさいしょからうまなければよかったんですよ!!!! そしてあなたもうまれなければよかったんですよ!!!! あははははははははははははは!!!!!」 「ばりざはぜがいのおうになるゆっぐりなんだあああああああああああ!!!! ばりざがいないどずべてのいぎものがゆっぐりでぎないだろうがああああああ!!!!」 「あははははははははは!!!! ここまでさいていのばかはひさしぶりですね!!! せかいにはあなたのようなごみくずなおうさまがはいてすてるほどいるのに!!!! いっそのことあなたたちだけでせんそうしたらいいんですよ!!!!! まあわたしはあなたをころしてゆっくりしますけどねええええええええええ!!!!」 「ぶぎゅ!!!いだいいいいいいいいいいいいいいいい!!!! ずべてをみどおずばりざのおべべがあああああああああ!!!!」 「あははははははははははは!!!! すべてどころかめのまえのげんじつすらみえていないめなんてひつようないですよね!!!! もうかたほうもとってあげますよ!!!!せきにんをもってすててあげますからねええええええ!!!」 「やじゃああああああああ!!!!やじゃあああああああ!!! ばりざが!!!!ばりざがわるがっだでずううううううううう!!!!!」 「あはははははははははは!!!!めがないほうがげんじつがみえるなんてさいあくですね!!!! ひつようがないならさいしょからめなんてついてないほうがよかったですねえええええええ!!!!」 「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 ……………………… ……………… ……… 「お疲れさん」 「あ、おにいさん。ありがとうございます」 ストローのついたスポーツドリンクを渡すとちゅーちゅーと飲み始めた。 みこは本当に楽しそうにクソ饅頭を虐待する。 俺も見習うべきところであるな。 「おにいさん。わたし、さいきんおもうんですよ」 「何が?」 たっぷりと間を溜め、今までとは比にならない晴れやかな笑顔で言った。 「ゆっくりって、ゆっくりしないためにいきてるんじゃないでしょうか」
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※個人設定がいっぱい&ジョジョネタです。 ※しかも若干の厨二成分が含まれています… ※これらが苦手な方はご注意下さい。 荒れ狂う砂嵐、果て無き砂丘。 そんな砂漠の中を一人の男がさ迷い歩いていた。見ると手元には一振の抜き身の剣が握られている。 その身なりも普通ではない、砂漠のど真ん中だというのに軽装で荷物も、そして水すらも持ってはいない。 「俺に斬れないものは居ない……コイツさえあれば俺は無敵なんだ……」 そんな事を呟きながら男はさ迷っていた。 どの程度さ迷っただろうか、日は完全に落ち込み、焼き尽くすよう熱風と照りつける日光はナリを潜め、 辺りは闇と極寒の世界に変わっていた。 しかし男はそれすらも気にした様子は無く、夜空の下でただ飢えていた。斬るべき獲物に… 「今日も、獲物にあり付けなかった…。斬り足りん…斬り足りんぞオオォォォッ!!」 と、男が喚き散らしていると。 「ゆっゆっゆ。ゆっくりはこぶよ!!」 ポン!ポン!と軽快な音と共に、頭にサボテンの花を乗せた生首が現れた。 「ゆ!おじさん!そこはれいむたちの縄張りだよ!!ゆっくり出てってね!!」 普通の人間ならここで驚き慄いている所だろう。夜の闇の中、生首が跳ねて、しかも物を言っているのだ。 しかし、男は驚いた様子も無かった。 むしろ、その顔は歓喜に打ち震え、恍惚とも取れる表情をしていた。 「イ…ヒヒ…獲物だ。獲物だああアァァァ!!ヒィ…ヒヒヒヒ…ッ!!!」 男は叫ぶや否やその凶刃を霊夢に振りかざした。 だがその時、ソレは発動した。 「ゆゆ!あすとろん!!」 鈍い音と共にその凶刃は弾かれ、剣は男の手から離れた。 するとどうだろう、男の体は断末魔と共に一気に干からび枯れてしまった。 その亡骸は見る影も無く、悠久の時を生きた老人の様だった。 「おじさんは選択を誤ったんだよ!正解は大人しくそこをどくことだったんだよ!!」 霊夢は亡骸に言い放つ。ふと、男が持っていた剣に眼が行った。 その剣は怪しく輝き、霊夢を誘っているようだった。 「ゆぅ~、きれいなかたなさんだね!おみやげにもっていくよ!!」 と、剣を咥えようとしたその時、霊夢の頭の中に声が響いた。 「霊夢、霊夢、お前は力が欲しくはないか?」 「ゆゆ?だれ!?ゆっくり姿を現してね!!」 「ケケケケ、霊夢、今お前の目の前に見えているだろう。」 声は、剣から直接霊夢の頭に響いているようだ。 当然困惑する霊夢、そんな事はお構いなしに声は続ける。 「この剣を取れ、お前に力をやろう。お前と俺が組めば敵は無い。好きなときに好きな物をぶった斬れるぞ。」 「ゆ?かたなさんが喋ってるんだね!ゆっくりしていってね!!」 「なッ!?挨拶はいい、力が欲しいかと聞いているんだ!」 事態を把握すると霊夢は暢気に挨拶をした。 剣は予想外の反応に困惑しつつ、霊夢への誘惑を続けた。 「ゆ?力?それってゆっくり出来るの??」 「あぁ、敵が居なければゆっくりし放題さ。邪魔する奴が居ないからな。ケケケ…。」 「ゆ~!じゃあ欲しいよ!かたなさん!ゆっくり力をちょうだいね!!」 「あぁ、お前に力をやろう……さぁ、俺の柄を咥えるんだ。」 「ゆ?こぅ?」 と霊夢は器用に舌を使い剣の柄を咥えた。 「あぁ、それでいい、後一つ言い忘れていた事があった。」 「ゆ?なぁに?」 「力の代価の事さ、力を得るには相応の代償が要る、それは……お前の体だよおォォォォッ!!」 どす黒い何かが霊夢の心を包んでいく…霊夢の体は浅黒く変色し、顔は邪悪な笑みを浮かべている。 「ゆぐぐぅぅぅ!!」 「ケキャキャキャ!!お前の意識を頂くぞ!!」 「……ゆふふ、ぜったいに負けないよおぉぉぉぉ!!!!」 霊夢は吼える、その叫びは砂漠の風にかき消されていった。 「ケケケ、貰った…少々不便だが貴様の体ッ!使わせてもらおう…。」 もう一度、欲望のままに殺戮を繰り返せる…その喜びを表すかの様にに刀身は震え、輝きを増していた。 しかし、剣は異変に気付く。体の動きが鈍い、いや、動かないのだ。 剣の意思とは裏腹に霊夢の体は動く事を拒否していた。 「ど、どういう事だ!体も心も完全に支配したハズッ!ありえん…有り得ん事だッ!!」 確かに、有り得ない事だった。 今までにこんな事は無かった、支配した人間はいとも簡単に操る事が出来た。 そう、人間では… 「…くり…る…よ…!」 その時、霊夢の口からある言葉が発せられた。 「ゆっくり…する…よ…!」 「馬鹿なッ!俺の支配に抗うだと!?」 「ゆっくりするのぉぉぉぉ!!!!」 その叫びと共に普段のふてぶてしい表情が彼女に戻っていく。 それと同時に剣の意識がある感覚によって急激に侵されていった。 「なんだ、この感覚は…俺の体から殺意が抜けていく…!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!」 意識の中に霊夢のふてぶてしい笑顔が広がっていく。 殺意が削られ、そして「ゆっくり」が意識を侵していく… 「やめろ…やめてくれ…俺に近寄るなぁぁぁぁッッ!!」 「ゆっくりしていってねぇぇぇぇぇ~!!」 霊夢が剣を咥えてから何時間が経っただろうか。 色こそ浅黒いままだが、そこにはいつも通りの霊夢がふてぶてしい笑みを浮かべていた。 そして、口に咥えた剣からはもう邪悪な声は聞こえなくなっていた。 ただ聞こえてくるのは、「ゆっくり~♪ゆっくりしていくよ~♪」という間の抜けた声だけだった。 「ゆっふっふっふ!かたなさん!れいむを支配しようなんて百万年早いよ!!」 剣の声こそ間が抜けているが、力はそのまま霊夢に宿ったままだった。 今度こそ、霊夢は自らの意思で砂漠に響く程の声で叫んだ。 「ゆっくりしていってねえぇぇぇぇ!!」 叫び終わると「すっきり~♪」と呟き、剣を咥えたまま頭にサボテンの花を乗せ、ポンポンと跳ねていってしまった…… 数ヵ月後、砂漠の街には一匹の剣を咥えた生首の噂が流れていた。 「ゆっくりしていってね!!」と鳴き、砂漠の巣に住む同族を守り、傷つける者は何人たりとも打ち倒し、それでいて決して殺めはしない。 その代わりに、食料と水を要求し、持ってこなければ何処までも追い掛け回される。 そんな生首の噂が……… 「絶対に負けないよおおぉぉぉッッ!!」 fin 霊夢△ -- 名無しさん (2010-11-25 17 44 37) 名前 コメント
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『人間社会でゆっくりしていってね!』 57KB 愛で 虐待 観察 考証 加工場 創作亜種 独自設定 考証) 社会描写 ※初投稿ですが、よろしくお願いいたします ※死なないゆっくりたちがいます ※ストーリーはありません、情景描写のみです ※ほぼ全面的に独自設定です ※決定的なミス描写があったため上げ直しさせていただきました。もうしわけありません。 「おはよーございます、おおきなおうちのにんげんさん! 」 毎日、玄関先の元気な甲高い声の合唱がこの家の朝の訪れを告げることになっている。 エントランスには、サッカーボール大の成体のゆっくりまりさが二体、後ろにはぱちゅりーとちぇんが待っている。 彼らは四匹で棒と板切れで固定された大きなポリバケツを神輿のように担ぎあげながら、家人が出てくるのをニコニコとした笑顔で待っている。 その声に、まだ眠そうなこの家の奥さんが出てくる。手にはポリ袋を一つ。 「あらあら、ゆっくりさんたち。おはようさん」 「おはようございます、おねーさん。まりさたちはごみのかいしゅーにきたのぜ!」 四匹のリーダーらしいまりさが、元気な笑顔で返事をする。 「はいはい、毎朝ごくろうさま」 と奥さんはゆっくりたちが担ぐポリバケツを開けて、手にしたポリ袋を放り込み蓋を閉める。 少し重量がふえたが、一日分の一般家庭のごみなら彼らは慣れたものである。 誇りにまみれた小麦粉色の肌の顔色一つ買えず、少し身をかがめるように決まり文句を唱える。 「むきゅ「「にんげんさん、いつもごみをありがとーございます!」なんだねーわかるよー」なのぜ」」 「またあしたもくるよ!」 とリーダーまりさが最後に締めて、ゆっくりたちは器用に彼らの言う「ごみさんおみこし」の向きを変えて、エントランスから門を出ていく。 門については毎朝、この家のご主人が新聞を取りにきたついでにゆっくりたちのために開けておいてあげている。 帰っていくゆっくりたちの背中に奥さんは労をねぎらうために、言ってあげる。 「みんなも今日はゆっくりしていってね」 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 と振り向けないのでそのまま彼らはベストのタイミングで合唱する。 これがこの街、M市のゆっくりたちの一日の始まりであった。 ※ ゆっくりたちが世に現れて10年という年月は、人間にとってはこの謎の多い『不思議饅頭』たちを社会に受け入れさせるのに十分な長さであり、ゆっくりたちにとっては良くも悪くも人間社会に適応させるのに十分なほどの世代交代を重ねた永遠に近いような年月であった。 その中でもM市はゆっくりたちの社会利用に先鞭をつけた都市でもあったが、多かれ少なかれゆっくりたちは、現在のところ社会に溶け込み、有効活用されている。 もしも、アンケートをとれば『ゆっくりは益獣である』という返答が圧倒する筈だ。 気の早い学者によっては、「ゆっくりたちは人間に与えられた新たなるパートナー」と定義づけている者たちさえいる。 「「「「んーしょ、んーしょ」」」」 まだ人通りが少ない中、「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが歩道をできるだけ邪魔にならないように進んでいく。 通勤時間前に運び終えるよう義務付けられている彼らはおみこしをかついでいるためぴょんぴょんすることはできないが、できるだけ早いずーりずーりで担当の家を回っていく。 だいたい成体四匹一組で1班。1班ごとに3-4件回ることになっている。 また、朝よりも昼や夕方のほうが都合の良い家庭やアパート、マンションなどもあり、朝に「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが歩道に殺到するというようなこともない。 そのあたりのローテーションについては、市の清掃局の担当官が厳密に管理している。 それでもそこここから、家々やアパートマンションのゴミ集積所を回った「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが現れ、ある目的地に向かって集まっていく。 ただし彼らが歩道を占拠するようなことはない。きちんと列を作って、一列縦隊にゴミバケツを担いだゆっくりたちは進んでいくのだ。 どのゆっくりたちも、ニコニコ笑顔を、むしろ不気味なぐらい崩さないようにして一生懸命進んでいく。 「「「「んーしょ、んーしょ、んーしょ、んーしょ」」」」 私語は許されない。甲高い彼らのしゃべり声は、さわやかな朝の中には少々うるさすぎる。 そして、少しずつ郊外に出始め、人通りが少なくなっていくうちに、人間の目が離れていくにしたがって、彼らの顔から人懐っこい笑みが失われて、だんだんと苦しみと悲しみを背負った苦悩の表情への変わっていく。 ゆっくりと、ゆっくりしない表情に。 「ゆぅ……」「ゆぐっ」「ゆひぃ」「ゆっゆっゆっ……」「ゆゆ……」「ゆっぐ……」「ゅう」などなど。 それでも悲鳴も私語も漏らさずに、ただ何か生きることそのものに耐えるような声が彼らの餡子の中から漏れでてくる。 そのうち彼らは一様にだらだらと目から涙を溢れさせながら、綺麗な縦隊を形成していく。 仲間たちの涙を踏みしめながら、ずーりずーりと進んでいく彼らが通ったあとには、ぬらぬらと糖分を含んで濡れる軌跡が刻まれていくのであった。 いつしかその道は「ゆっくり涙道」と呼ばれるようになっていた。 ※ 「にんげんさんたち! くつみがきするよ! あんよをきれいきれいにしていってね!」 M駅前の広場の一角にゆっくりまりさたちが10匹ほど並んでいる。靴磨きゆっくりだ。 「ゆっ! 人間さんいらっしゃい。あんよのおかざりさんをぺーろぺーろするよ?」 「ああ、お願いするよ」 彼らの前にある靴台に足を置いたサラリーマンの靴をまりさは一生懸命舐めていく。 地方都市であるM市は、まだまだ緑地や土の残る場所も多く、また通勤路によっては田んぼや畑のあぜ道を通ってくる人も少なくない。 そんな人たちにとって、駅の「ゆっくり靴磨き」は大変便利なものであった。 何しろ無料である。 彼らへの報酬はただひとつ「生きて良い」ということのみ。それだけで十分すぎる。 革靴についたドロやホコリやゴミを器用に舐めとっていくまりさ、どんな生まれをしてもどれだけ繰り返しても慣れない屈辱を勤労精神あふれる笑顔に隠すよう訓練されている。 だが、それでもうなじに疲れとは別な嫌な汗がじっとりと滲んでくるのは止められない。 「おい、まりさ」 「な、なに? にんげんさん」 「なにか忘れていないか?」 びくっ、と舐めるのを止めたまりさの顔に今度は別に冷や汗がはっきりと頬に流れ落ちてくる。 「は、はぃぃぃぃ!」 真っ青な顔になったまりさは、慌てて靴舐め作業を再開する。ただし、今度はBGMを自ら奏でながら。 「ぺーろぺーろ、しあわせー! にんげんさん、あんよをまりさにぺーろぺーろさせてくれて、ありがとうございます!」 目尻に涙を浮かべながら笑顔で靴を舐めていくまりさの様子を見てサラリーマンはうなずく。 別にサラリーマンはゆっくり虐待趣味があるわけではない。 ゆっくりという不思議饅頭は、あらゆる言葉や行動の一欠片でも隙があれば、それを極限にまで拡大解釈して増長する。 駅前の靴磨きのようにゆっくりにしては専門的な職場を与えられたゆっくりは、特に増長しやすい。 先ほどのように「ああ、お願いするよ」とか「いつもありがとう」などという人間からの感謝や挨拶を際限なく大きく解釈したあげく、ほぼすべてのゆっくりが「くつをぺーろぺーろして、にんげんたちをゆっくりさせてやってる」という思考に辿り着き始めるのだ。 そうなってしまえばあっさりと。本当になんのためらいもなくそのゆっくりは加工所行きだ。 いくら生き地獄の中に生きているゆっくりと言えども加工所よりは遥かにマシなのは、人間たちもゆっくりたちも骨身にしみて理解している。 むしろ、そのサラリーマンはわりとそのまりさを気に入っていて、毎日そのまりさに靴を舐めさせてやっているので、少しばかり思い入れがあった。 他のまりさたちに比べて舌が足首などにかかったりすることもないし、早く終わらせようと雑な仕事をすることもなかった。 なので、増長して加工所送りにならないように、あえて厳しい言葉をかけてやっているのだ。 それが彼、いや今の日本におけるゆっくりに対する「愛で方」でもあった。 それにもう一つ、ゆっくりを「ゆっくりさせない」ことが「愛で」に繋がる理由もあるが、それは後述する。 「ぺーろ、ぺーろ、し、しあわせー……」 だんだん声に元気がなくなっていく。 まりさの心のなかのゆっくりがどんどん消耗していくのが傍目にもわかってくる。 ゆっくりの通常種たちの中でも特にプライドの高いまりさにとって、本能的に「にんげんのあんよをぺーろぺーろするのはゆっくりできない」と精神に突き刺さっていくのだ。 蔑むようなサラーリーマンの視線がその重いを特に強くしている。 「お、おわったよ……、にんげんさん」 サラリーマンがひと睨みする。 「あんよをまりさにぺーろぺーろさせてくれてありがとうございましたぁっ!」 ヤケクソ気味に答えるまりさの顔は小麦粉の皮が透けて餡子色に褪めている。 どういう原理かゆっくりも、血の気が引いて顔色が青褪めることができる。 色は餡の種類ごとに違うが、中身が餡子のまりさとれいむは、特に人間の「土気色」に近い顔色になるため、表情がわかりやすいと評判であった。 「よし、まりさ。じゃあ今度は左足だ」 とサラリーマンは足を靴台に載せ替える。 「ひっ!」 まりさは悲鳴をあげるが、それでも気を取り直して靴を舐め始める。 「ぺーろぺーろ、しあわせー! ぺ、ぺーろぺーろしあわせー!」 と、ひたすら繰り返すまりさはもうゆっくりが枯渇しそうだ。 駅前の靴磨きがまりさ種ばかりなのは、特に選別されているわけではない。 この仕事を特に屈辱と感じることによって、増長することが少なく、加工所行きになることが少ないため自然に淘汰されそうなった結果であった。 そして、まだこの屈辱的な仕事はゆっくりにとっては「接客」というスキルが必要とされているだけ上等な種別に入る。 「ぺーろぺーろ……、にんげんざんのあんよをぺーろぺーろできて、まりざはじあわぜでずう!」 やがて涙ははっきりと頬をつたい、声が悲しみに滲むようになってきたあたりで、ようやくまりさは仕事を終えることができた。 本来、出勤時のサラリーマンにとってまりさに靴を舐めさせる5分は貴重なものだ。 大半のにんげんにとっては、そんな時間を割くより自分で靴を手入れして、少しでも朝にゆとりが持てるようにするものだ。 それでも毎朝のようにまりさの客になってやってるのは、間違いなく愛情であると言えよう。 だから一仕事終えてゆっくりを枯渇しているまりさに言ってやるのだ。 「まりさ。今日もゆっくりしていってね」 その言葉にまりさの精神はすっかり賦活し、全身でうれしそうにしながら返答する。 「ゆっくりしていってね!」 もちろん、言葉ばかりではない。 サラリーマンは靴台にしかけられている引き出しを開け、まりさに中にある錠剤を渡してやる。 人間にとっては、ちょっとツマミを回して開くだけで済むが、ゆっくりにとっては絶対に開くことのできない仕掛けになっている引き出しの中には、10個ほどの錠剤が入れられている。 しかもご丁寧なことに、その錠剤の容器は人間用のものと同じく一つ一つがプラスチックとアルミ箔でパッケージングされている。 つまりは、誰かが意志を持って与えてやらない限り、ゆっくりたちにその錠剤が渡ることはないのである。 「おにーさん! いつもありがとうなんだぜ!」 と、ゆっくりできないことばかり言うし、目つきも怖いが、いつも錠剤をくれるサラリーマンにまりさはお礼を言う。 だが、ゆっくりの反応速度ではすでに電車に向かっている背中へ言うのが精一杯だ。 そして周囲のまりさたちの羨ましそうな目にゆっくりを味わいながら、おさげの上の錠剤をお帽子の中にしまい込んだ。 この錠剤は糖衣錠であり、ゆっくりたちが全身全霊を使って求めている貴重な「あまあま」だ。 ただ、糖衣の甘味に反してその味や匂いはとてもじゃないがゆっくりできないものだ。 というのもこれはゆっくりたちのためにあるのではなく、ゆっくりの唾液を消毒殺菌し、また革靴の皮革に艶を与える成分を加えて「靴用クリーム」としての役割を与えるものだからだ。 だいたい一足分でその効果が消費されるために、「報酬」として与えられるようにしてあるというわけだ。 匂いや味そのものはゆっくりできないが、それでもゆっくりたちにとっては羨望の的になる貴重な「あまあま」だ。 また、このまりさが優秀なのは、その「あまあま」をすぐに食べてしまわず、お客が来るまでしっかりとお帽子の中に保存しておくことだろう。 仕事をはじめる前に「このあまあまはぺーろぺーろの前に食べるんだよ」と駅のゆっくり担当員に教えられているが、それの記憶をうんうんとともに排出せずに保っていられるゆっくりは少ない。 なので、きちんと舌を整えて接客することのできるまりさには、そのサラリーマン以外にも何人か常連がいる。 増長しなくても客のこない、つまり靴台の中の錠剤が減らない靴磨きゆっくりは一週間ほどで加工所送りだ。 そうやって淘汰されていくため、それなりにM駅前の靴磨きゆっくりは優秀なゆっくりたちが生き残っている。 彼らは駅のコインロッカーを改造されたおうちの中でも「おっきいほう」に住むことも許されているし、駅員からゆっくりフードも与えられている。十分に幸せなゆっくりであった。 自分に向けられた「ゆっくりしていってね」の余韻を味わいつつ、駅前広場を這う清掃ゆっくりたちを見ながら、まりさは自分の幸福を噛み締めるのであった。 ※ 清掃ゆっくりの登場は、一時期最悪の害虫とまで呼ばれたゆっくりたちの評判を回復させるきっかけになったと言えるだろう。 今では駅前や公園、繁華街、商店街、住宅街などに必ず存在する清掃ゆっくりたちは、路上のゴミや犬や猫、愛玩ゆっくりの糞、動物の死骸などを食べることを「許された」ゆっくりたちだ。 「ゆぐぇっ、ゆげぇえええええええ、まじゅいいいいいい!」 「ゆぎゃうえろろろろろ、これどくはいってる!」 「ゆぶぇええええええ、どくっどくっどぐううううう」 「でいむ゛じぬ゛うううううううう、じんじゃうよおおおおおおお」 早朝、まだ暗い内から声を押し殺しながらゆっくりたちが飛び出した目、吹き出すよだれや涙などを噴出させながら、のたうち回っている。 原因は彼らの中央に置かれている容器の中にある液体だ。 色はオレンジ色であり、それを与える「ゆっくり清掃所 ユックリーン・コーポレーション」の職員が持っている瓶には、ニッコリと笑うれいむの顔が描かれたラベルと「ゆっくり用オレンジジュース『ゆーぽん』」と書かれている。 確かに『ゆーぽん』はオレンジジュースといえば言えるのかもしれないが、『果汁0%』の表示でわかるように、人工香料と甘味料と着色料で作られたオレンジジュース()である。 だが「思い込みの不思議饅頭」にとってはそれで十分であり、十分にゆっくりたちの栄養剤、回復剤、治療薬として機能するのだ。 もちろん愛玩用やそれを対象にしたサービス業や医療などでは、果汁100%のものや柑橘類をふんだんに使われたものが使用される。 だが、現在の研究では人間の自己満足とゆっくりが「これはこうっきゅうなおれんじじゅーすさんなんだよ!」と思い込ませるための演出効果でしかないことが証明されている。 『ゆーぽん』はその中でも特に生産性のみに特化したオレンジジュースであり「ゆっくり専用ですので、絶対にゆっくり以外には与えないようにしてください」と注意書きが記されているような代物である。 とはいえ、かろうじて無数の実験用ゆっくりという、いくら消費してもほとんどコストがかからない物たちを数万単位で犠牲にした末に、「ゆっくりには害にならない」ということだけは証明されている。 そんな『ゆーぽん』に清掃業者が消毒剤や殺菌剤、芳香剤などが混ぜられて清掃ゆっくりたちには与えられている。 清掃ゆっくりなどに与えるようなものだ。わざわざゆっくりのためにそれらの薬剤が調整されているわけがない。 「ゆっくりが即死しない程度の」であればどんな毒物や劇薬であろうが、あとは勝手に『ゆーぽん』のオレンジジュースの色と匂いと甘味でゆっくりたちの生命は保たれるのである。 そしてこれらを与えられるゆっくりたちにとって、いくら「これどくはいってる!」と反応してしまうような味であっても、貴重なあまあまなのだ。 そして、ゆっくりにとっての「どく」であったとしても、かすかに残る『ゆーぽん』の味と匂い以上の「あまあま」など、彼らには「ほぼ」与えられることはない。 「どぐっ……もっと、ゆっぐ……」 のたうちまわった挙句、死ぬゆっくりも珍しくはない。 黒ずんで死んだありすの死骸にゆっくりたちは顔をしかめる。どうやら「ほぼ」の例外がきたようだ。 「あー、死んだか……ほれ、今日最初のゴミだ」 と職員はありすの死骸をのたうちまわりながら『ゆーぽん』をむさぼるゆっくりたちの中に蹴り入れる。 仲間の死体という「あまあま」。 ズザザザザザ。 と早くも発しはじめたありすの死臭にゆっくりたちは飛び退いていくが、逃げ出すわけにもいかない。 「早く済ませといたほうが、出勤時間まで休めるだけマシだぞー」 職員はゆっくりたちのために忠告してやる。比較的ゆっくりが好きなのでゆっくり清掃所に就職した彼は「愛でお兄さん」である。 きちんと社会におけるゆっくりの活かし方を知っており、できることなら『アレ』を使いたくない優しさを持っている。 「あ、あでぃずぅ……」 ゆっくりたちの中で泣いてるれいむがいた。 「あー、このありすお前のつがいだったのかー」 「は、あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い」 職員はゆっくりが好きなだけに、同情してやる。 ゆっくり清掃所で生きているような管理されているゆっくりにはすっきり制限などはされていない。 というよりも、むしろゆっくりたちが勝手に繁殖することについては推奨していると言ってもいいほどだ。なので彼らの中でつがいは珍しくもない。 「じゃあ、お前が最初に食ってやれ。お前のあんこにしてやれ、な。臭くてゆっくりできないだろうが、きっと今のありすも臭くてゆっくりできないだろ? だから、お前の中でありすもゆっくりさせてやれ」 と優しく言ってやる。 ほとんどマニュアル化しているが、同僚の死については「死んだ本人も臭くてゆっくりできないから、食ってゆっくりさせてやれ」という説得で、死体を自主的に処理させられるようになっている。 「あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛、あでぃずううううう」 とありすの死体に飛びかかるれいむ。 「ぐざいあああい、ぐざあああい、むーしゃむーしゃ、じばあぜえええええ、あ゛でぃずうううう、でいむのながでゆっぐりじでいっでねえええええ」 泣きながら食べ始めるれいむを見て、職員は周囲のゆっくりに目配せする。「お前らも食え」と。 れいむだけが食ってしまえば、とてもじゃないが腹一杯になってしまい、清掃の効率が落ちてしまうのだ。 全員で死体処理を分担させるのが職員としての仕事だ。 もたもたしていると、ありすのカスタードとゆっくりできない仕事によって蓄積されてきた甘味に夢中になっていくれいむがみんな食べてしまうだろう。 職員は腰に差した棒に手をかける。その途端にその場に居る50匹ほどのゆっくりたちが一斉に、 「「「「「「「ゆぎゃああああああああああああああああああ!」」」」」」」 と悲鳴をあげてありすの死体にむしゃぶりつこうとして押し合いへし合いする。 「あー、おちつけ。『ぼうさん』は出さないから落ち着いて食え」 と言った途端に沈静化するほど、職員が腰につけている棒状のものの威力は絶大である。 この単純に『ゆっくり棒』と呼ばれている長さ1メートルほどの金属製の棒は、ゆっくりに関わる仕事をしている人間なら誰でも持っているゆっくり用の基本装備とも言える棒だ。 普段は芳香剤つきの革製の鞘に入れられている『ゆっくり棒』はその先に古くなった加工所のゆっくり加工機械の廃材を原料とする金具が取り付けられている。 一日数千匹のオーダーで処理されていく加工所のゆっくりたちの『死臭』───現在ではゆっくりたちの糖の残留成分がゆっくりの餡子脳を刺激することによって、生きているゆっくりに死んだゆっくりの死ぬ直前の記憶を再生させてしまう現象を指す───が数年分蓄積されている金属である。 これをより死臭が強く拡散するように薬剤、熱などの処理を行ない、形状をそれぞれのメーカー独自のノウハウによって加工することによって製造される。 これだけでも半径5メートルのゆっくりたちが再生される壮絶な記憶により破裂即死し、半径50メートル以内のゆっくりが精神的な圧迫により餡子を吐き始めるという代物だ。 ドスまりさでさえ触れただけで即死するという、ほとんどゆっくりに対する最終兵器とも言える道具なため、虐待鬼意惨にはかえって人気がないとまで言われる威力の棒だ。 しかし、この『ゆっくり棒』の普及により、ゆっくりによる農業や食品産業の被害はほぼ皆無となり、また社会によるゆっくりの管理が一気に進んでいったという。 このため、人によっては「加工所の最大の役割はゆっくり棒の材料供給である」と言われるほどだ。 ちなみに、使用される金属の素性により威力は異なり。 最高級品である「中枢餡処理ライン」を原材料とし、専門の『ゆっくり棒』職人によって作られた一品物は「ユックリスレイヤー」と呼ばれ、厳重に加工所で管理されているという。 その威力たるや鞘ごと持ち歩くだけでも半径100メートルのゆっくりたちが破裂して死ぬ、という都市伝説があるが、その真偽を確かめた者はいない。 ただ、ゆっくり被害が酷かった地域で、野良ゆっくり飼いゆっくりの区別なく、地域一帯のゆっくりが全滅したという事件が起きたりするのも事実である。 常に証拠も発見されなければ、そもそも司法もゆっくりの死など、飼いゆっくりが加わったとしても熱心になるはずがなかった。 「加工所に通報するぞ」 というのはゆっくりだけでなく、飼いゆっくりの飼い主、ゆっくり関係の産業など、ゆっくりに携わる人間全てが恐れる事態であり、ゆっくりの管理は各地域の人間たちの義務と責任でもあるのであった。 ゆっくりとともにあるためには、厳重な管理が必要なのはむしろ当然という時代であった。 やがてありすの死体も容器の『ゆーぽん』も跡形もなく舐め取られていく。 「あー、出勤時間までゆっくりしてていいぞ」 職員はゆっくりたちにそう声をかけてやる。 「お前ら。今日もゆっくりしていってね」 「「「「「「「ゆっくりしていってね」」」」」」」 ※ うつむき加減で卑屈にずーりずーり歩いて行く出勤後の清掃ゆっくりは本当に存在感がない。 彼らは街路樹の枯葉、捨てられたゴミ、動物やゆっくりの死骸と糞などを口に入れ、消化できるものは食べてしまう。 金属やプラスチックなど消化できないものは、胴回りに付けられたビニールのゴミ袋に入れていく。 その全てはゆっくりできない味や臭いや食感であるが、ある意味、口当たりの良い『ゆーぽん』で飲み込めるが、あとでのたうち回る各種薬剤の毒性に比べたら軽いものでしかない。 それにどうしても飲み込めないものはゴミ入れに入れてしまえばよい。 虐待目的ではなく清掃目的であるから職員たちも無理に飲み込ませることはないのだ。 だから清掃中のゆっくりたちは静かだし寡黙である。 物を飲み込む時の、 「むーしゃ、むーしゃ、ふしあわせー」 段差や坂などにのぼったときの、 「おそらをとんでるみたい」 という中枢餡に刻まれた本能的なセリフについては口を出してしまうが、それすらも小声だ。 ゆっくりたちの甲高い声による騒音について少しでも気に入らなければ、お飾りに付けられた認識札の電話番号宛に通報が入る。 またサボっているゆっくりが見つかっても同様だ。 通報は実に簡単にお飾りの認識札にあるバーコードや磁気コードを携帯電話かスマフォで読み取れば、担当職員のところに認識番号とともにゆっくりの個体レベルで特定された通報がメールされてしまう。 通報の内容についてはガイダンスに従い番号入力だけで「騒音」「職務怠慢」「通路妨害」「盗難」「単独行動」「その他」などの罪状も添えることもできる。 もちろんその通報がいたずらで行われることも依然として多い。最近特に多いのは、ゆっくり用スマートフォンなどを持った飼いゆっくりによる気まぐれな通報だ。 だが、それについての真偽が問われることはない。 通報されたゆっくりは即座に営業所内にある「回収箱」送りとなり、一週間に一度ゆっくりの補充にくる加工所行きになるだけである。 清掃ゆっくりなど使い捨ての存在でしかないのだ。 あまりにも通報量が多い場合は、連帯責任で班ごと全回収となることも珍しくはない。 そのためゆっくりたちは人間が管理していなくても相互で監視しあっている。 清掃ゆっくりたちが担当地域に連れられたあとほぼ自由行動をさせるているのは、社会的な管理通報体制の完備と、ゆっくりたちの相互監視、そして一切の情の挟まれない加工所処理への恐怖によるものだ。 「んーしょ、んーしょ。とれてね、がむさんはゆっくりどうろさんがはなれてね」 と支給されたアイスの棒によく似た形状のヘラを使い道路にこびりついたガムを削り落とそうとするゆっくり。 ゆっくりにとっては重労働だが、前述したようにどこに人間の目が光っているかわからず、二匹から五匹の班行動を義務付けられているゆっくりたちの相互監視により、彼らは実に職務に忠実である。 それでも清掃ゆっくりたちたちは、まだ人間社会の目の見える職場で働いているだけ幸せだろう。 「おにーさん、あまあまおみずさんごーくごーくしたら、ごみさんちょーだいね」 道端をスポーツドリンクのペットボトルを飲んでいた少年に、れいむ二匹の清掃チームが声をかけた。 あまあまに関する嗅覚は彼らの本能だ。 かなり正確にスポーツドリンクを飲みおえた様子を見つけたれいむたちは、目を輝かせて少年を見上げる。 少年の方も虐待趣味はない。 また、M市ではゴミのポイ捨てが許されていても決して街がゴミだらけにならない理由は、彼らがたちまち片付けてしまうからだということは、今となっては社会の常識だ。 「ゆげぇ……いぬさんのうんうんはゆっくりできないいいい……ぐざあああい、ぐざあああい」 その向こうではまりさが出したてのほやほやの犬の糞を、必死でまだ柔らかく体温の残る犬糞をヘラで持ち上げ、ゴミ入れに入れようとしている。 「ほら、まだ少し残ってるぞ。あっちのまりさにも舐めさせてやりな」 と一口だけ残したスポーツドリンクのペットボトルを少年はれいむに渡してやる。 「ありがとーおにーさん!」 嬉しそうにペットボトルをうけとったれいむたちは、まっさきにまりさの方に向かっていく。 「まりさー、にんげんさんからあまあまなおみずさんもらったよ! がんばってうんうんさんかたづけて、みんなでぺーろぺーろしよっ」 彼らはトリオでこの周辺を見回っている。 清掃ゆっくりたちは、ほとんど無償で加工所から払い下げられるゆっくりたちで、その餡質も悪く、教育も受けているわけでもない。 だが、加工所出身だけに臭いだけでも瀕死になる加工所の地獄を骨身に沁みている。 あっさりと同僚たちが回収箱行きになる光景を餡子の隅々まで刻み込まれるほどよく目にしている。 さきほど相互監視と表現したが、ほとんどのゆっくりたちにとって、厳しすぎる人間社会において生き残るために否応なしに助け合うようになる例は比較的多い。 そうした関係からつがいになり、夜中のうちに感情が盛り上がってしまった末にすっきりをしてしまう例も少なくない。 当然、妊娠率ほぼ100%を誇るゆっくりのことであるから、子供ができてしまう。 しかし、植物型、胎生型を問わず妊娠したゆっくりが仕事を休ませてもらえるなどということは、天地がひっくり返ってもありえない。 額に実ゆっくりをぶら下げたり、腹の中に胎児ゆっくりを抱えたりしながらも、妊娠したゆっくりたちが通常業務を怠ることは許されない。 簡単に落ちる実ゆっくり、ちょっとした衝撃で死んでしまう胎児ゆっくりを、なんとか守りながら働き続けるのだ。 もちろん、事故、単なる人間や動物・飼いゆっくりたちの気まぐれ、与えられる『ゆーぽん』の毒性、自然環境からのストレスなどでめったにその努力が実ることはない。 ほとんどの場合、妊娠したゆっくりとそのつがいは、死んだ「おちびちゃん」をゴミとして自分たちで処理することになる。 それでも極稀に無事に赤ゆっくりとして誕生する「おちびちゃん」も存在する。 だが、赤ゆっくりが生まれたからと言って、なんらかのケアがされることは、当然ない。 毎朝の栄養補給の『ゆーぽん』や夜のエサに殺到する成体ゆっくりたちに巻き込まれれば、赤ゆっくりなど即死だ。 しかも、成体ですらのたうちまわり、時に死に至る含有された薬剤に赤ゆっくりが耐えられるわけがなかった。 もちろん「おちびちゃん」のために仕事中にエサを探すなど許されるわけがなく、怠慢姿勢が見られたら即回収箱行きだ。 そのため彼らは乏しい栄養状態の中から、自分の餡子を赤ゆっくりに吸わせることによって子育てを行う。 だが、自分たちの皮を傷つけて餡子を露出させる行為は、ゆっくりにとっては内臓を食わせるような行為であり、傷口を塞ぐ薬も朝の毒性にのたうち回りながら摂取する『ゆーぽん』ぐらいしかない。 また、自分の赤ゆっくりを連れ歩きながらの清掃作業は母子ともに負担となり、簡単な事故、栄養不足、厳しい自然環境などにより、やはり簡単に赤ゆっくりは死ぬ。あるいは母子ともに衰弱して死ぬ。 清掃局の人間たちはゆっくりたちが番を作ることもすっきりすることも制限したりはしない。 だが、一方で一切の支援も行わない。 それでも、極めて稀な例として働けるぐらいにまで育った子ゆっくりを同じ班で一緒に働かせてるやる程度にはゆっくりへの優しさはあるのであった。 自分のつがいやおちびちゃんたちと共に働き、生活できるというのは、ゆっくりたちにとっては極めてゆっくりできる行為であり、それはゆっくりであるかぎりどんなに渇望しても滅多に叶えられることのない夢であった。 ゆえにゆっくりたちは微かな希望にすがり極めて確率の低い賭けに出る。 そうして損耗するゆっくりの数は決して少なくはないが、彼らの勤労意欲を物欲や人間への恐怖や敵意などを煽るリスクなしで向上させることができるのだ。 どうせ清掃ゆっくりなどローコストでいくらでも補充される。 「おくちのなかがくさいくさいなのぜ……」 「まりさ! ぺーろぺーろするといいよ」 「ゆっくりぺーろぺーろしてね」 ゴミ箱を探さなくてもいいのだから、三匹で人間一口分のジュースの報酬ぐらい与えてやってもよいだろう。 ただし、明確な形での「ご褒美」や「謝礼」としてゆっくりたちに「あまあま」や食べ物を与えることは、「ゆっくり管理の阻害となりますのでお断りさせて頂きます」と広報されているためできない。 少しでも感謝している態度を見せようものなら「にんげんたちをゆっくりさせてやってる」と解釈し増長するのがゆっくりというものなのだ。 もし計画的にそういう行為を行なっていれば、損害賠償を求め訴訟沙汰も清掃会社は辞さない。実際、「例の理論」が発表されたあとに壊滅的な打撃を受けたゆっくり愛護団体の残党が、清掃ゆっくりの餌付けなどを行なっていた件で損害賠償を請求されたという事件が起きている。 裁判となった末、清掃局側の全面勝訴となった上に、すでに「財産権への侵害」以外での処罰を行うべきという法整備の検討されなされるようになっている。 今やゆっくりとその管理は社会を円滑に動かすための重要な部品なのだ。 「ぺーろぺーろ、しあわせー!」 「おいしーね、まりさ!」 三匹は順番にペットボトルのジュースを舐めあっていく。その間も一匹だけは必ず清掃作業を続けている。 一班全員で休もうものなら、どこで通報されるかわからないのだ。 「じゃあな、ゆっくり。ゆっくりしていってね!」 と少年はきちんとゆっくりたちが働いているのを確認して最後に労ってやる。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 彼らの餡子の一番奥に刻まれている三大欲求以上の生存理由とさえ言える言葉のやりとりによって、彼らの餡子は賦活する。 今日一日は、これだけで元気に働いてくれるだろう。 そもそも彼らは「清掃ゆっくり」の中でも恵まれたほうなのだ。 一番多い清掃ゆっくりは企業や公的施設などに配置され、ひたすら消毒薬と洗剤を口に含みながら便器を舐め続けて清掃し続ける便所掃除用の清掃ゆっくりなのだから。 ※ 街を回るゴミ回収のゆっくりたちや、清掃ゆっくりたちが集めたゴミは、「分別所」と呼ばれる場所に一旦集められる。 M市郊外にいくつもある分別所だが、地方都市なために広大な敷地が贅沢に使用され、田舎の高校の体育館ほどの大きさの屋根と周囲を取り囲む壁がゆっくりたちを外敵と雨風から守っている。 「おーらい、おーらいよ……むきゅ」 「おーらい! おーらい!」 ゆっくりたちが背負ってきた「ごみさんおみこし」が一列縦隊で順番に広場に集められ、順慎重に中身が集められる。 まったく分別されていないゴミたちは、何が入っているかわからずゆっくりたちにとっては危険物となるものも多い。 この分別所で主役となるのはぱちゅりー種だ。 体も精神も耐久力の弱いぱちゅりー種は、中身が生クリームであるため食用としての需要も高いが、比較的知能も高いため分別所では、指揮と分別指導の役割を担わされている。 がらがらと盛大な音を立ててゴミの山が築かれていくが、その過程に巻き込まれて死んでいくゆっくりも少なくない。 ぱちゅりーたちはいちいち声をかけて注意していくが、存在自体が死亡フラグと言われるゆっくりが、その程度で死なないわけがない。 人間たちの分別の手間を省くために無造作につめ込まれた「ごみさん」たちの山は、周囲に耐え難い悪臭を放つが、郊外で周囲に人家はない土地に分別所は作られる。 ゆっくりたちはそこで生まれ育ったものが大半であるため鳴らされてしまっている。 この「分別所」には1000匹ほどのゆっくりが生活しているが、その詳しい数は把握されていないし、人間たちは把握する気もない。 市役所から派遣された3人ほどの管理人が、ゆっくりたちの分別作業の進捗状況について監視しているだけだ。 もちろん、彼ら一人ひとりが「ゆっくり棒」を腰に刺しており、いつでもその気になれば1000匹以上のゆっくりはたちまち駆除される。 「むきゅ、けさのぶんはこれであつまったわね」 分別所の総リーダーであるぱちゅりーが、ひと通り持ち込まれたゴミと「ごみさんおみこし」とトラックで持ち込まれたコンテナを確認する。 分別所の指導指揮用ぱちゅりー種たちだけは多少のコストがかかっている。 彼女たちを養成するために、一匹の金バッジクラスのぱちゅりーが必要とされる。 加工所ではなくゆっくりブリーダーによって大事に育てられた金バッジクラスの知能を持つぱちゅりー。 これに子ゆっくり時代から教育用のケージに栄養剤を点滴しながら徹底的にごみの分別と作業管理のみを教育し、それ以外の行動を一切させない。 食事も睡眠も排泄すら許さないまま24時間体制で「教育」が続けられる。 こうして教育というよりも一方的な情報の入力と言ったほうが良い工程により金バッジぱちゅりーの生クリームのほぼすべてがゴミの分別と分別作業管理の情報体となる。 だが、もはや生命体としての自律行動さえ不可能になるほど生クリームの組成を作り替えられたぱちゅりーが、実際の作業に使えるわけがない。 この金バッジぱちゅりーは完成後、ただちに解体され、情報体となった生クリームを加工所で生産されたぱちゅりーたちに注入する。 デタラメ不思議饅頭のゆっくりの記憶や学習は、中身の餡のゆ糖と呼ばれる八炭糖(オクトース)の組成によるものであり、これらは物理的なやりとりができる。 このように、ゆっくりたちの記憶や学習は餡の注入や交換によっていくらでも操作可能であることが判明したのも、ゆっくりたちの管理や利用法が確立される大きな助けとなった。 こうして1体の金バッジぱちゅりーを消費するごとに約50体ほどのぱちゅりーが、生クリームを注入されることによってごみの分別作業の指揮がとれるほどの学習をした状態にできるのである。 こうしてパチュリーたちの指揮の下、生ごみ、食用油、ゆっくりゴミ、生きびん(リターナブルびん)、雑びん(透明)、雑びん(茶色)、雑びん(水色)、雑びん(緑色)、雑びん(黒色)、容器包装プラスチック、ペットボトル、雑誌・その他紙類、燃えるゴミ、スチール缶、アルミ缶、ダンボール、布類、破砕・埋立、なべ・釜類、電気コード類、蛍光管・電球類、新聞・チラシ、乾電池類とM市が定めた基準によって分別される。 M市では一般家庭が排出するゴミの量は一日あたり約100トンほどである。M市には30箇所ほどの分別所存在し、それぞれ約1000-2000匹ほどのゆっくりたちが作業を行なっている。 このうち、生ゴミと食用油とゆっくりゴミ、燃えるゴミの一部が分別所のゆっくりたちの食料となる。 極めて脆弱なゆっくりたちにとっては分別作業は極めて危険な作業だ。 「ゆぎゃあああああ! あんよがあああ、いだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛、どっで、どっでええええ!」 「でいむもふんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛あ、い゛だい゛い゛だい゛」 「まりざのてんくうをかけるぺがさすのようなあんよさんがああああ!」 誤って蛍光灯を落としてその破片を踏んでしまったまりさがのたうち回ることでさらに破片を全身で回収してしまっている。 びったんびったんと暴れるまりさに巻き込まれ、隣にいたれいむも蛍光灯の破片を踏んで皮を傷つけてしまっている。 「ああならないように、きをつけてはこぶのよ!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」 指導役のぱちゅりーが反面教師としてもみあげで、餡子を撒き散らしもはや跳ねまわる体力も失われのーびのーびして痛みから逃れようとするまりさとれいむを指す。 誰も助けようなどとは考えない。 さしてめずらしくもなく毎日のようにおきる事故である。 回収されたゴミのほとんどは、脆弱なゆっくりたち傷つけ殺す、重さ、硬さ、鋭さなどを持っている。 驚くほど簡単にゆっくりたちはこの作業で傷つき、餡子と命を撒き散らしていく。 だからといって人間がごみを加減するわけがないし、処理しきれないくなっていけば、すぐさま彼らは連帯責任で加工所行きだ。 そしてまた別の「運が良い」ゆっくりたちが処理用ゆっくりとして加工所から送られてくる。 だから精一杯生きるために彼らは慎重に、指導役のぱちゅりーから作業のコツを教えてもらいながら、力を合わせてごみの分別作業を行なっていく。 「ゆーしょ、ゆーしょ」 「ゆげぇ、これどぐづいでるうぅぅぅ」 「ゆっ、まりさ、おさげじゃなくておくちでくわえるんだよ」 だいたいの作業はゆっくりの舌と口を使って行われる。 汚物、酸、塩分、味、匂いなどを嫌っておさげやもみあげを使おうとすれば、力も精度も足りずによくておさげやもみあげが切れることになる。 たいていの場合は前述のまりさのように事故に遭い死ぬ。 少しでも作業精度を上げて死なないために彼らは舌と口でごみの分別作業を行うのである。 人間が見ていればその手際の悪さにイライラするような緩慢さであるが、ゆっくりたちはそれでも数時間かけて作業を行なっていく。 炎天下の夏や冬の日などはゆっくりたちは暑さ寒さにって自然死してしまう数が増加するが、さすがにそういう日は『ゆーぽん』が管理人の手で噴霧されるときがある。 朝の回収時間の分別が終わるのはだいたい午後になってからだ。 「むきゅ、かんりにんさん。あさのおしごとはおわったわ」 分別所のリーダーぱちゅりーが部下たちの報告を受けてマスク姿の管理員に告げる。 このぱちゅりーだけは「分別所」の外にある管理員の詰所に来ることを許されている。 報告を聞いた管理人はいつものように各コンテナに分別されたゴミを回収にくる業者に連絡する。 こうしてリサイクルできるものはリサイクルされるし、完全な廃棄物については、それぞれの分野に特化改造された処理場ゆっくりによって餡化される。 ゆっくりたちの数に任せた分別作業は一匹一匹の作業そのものは取るに足らない。 だが、一日二回に分けて各家庭、アパートごとに回収していくことと、コストが極限まで抑えられる上に、一箇所につき1000-2000匹というオーダーで命がけで行われるため、馬鹿にできない分別精度と効率を実現している。 実際、M市においてはゴミ問題はほぼ解決している上に、各家庭でも「ゴミの日」などに気を使わず、ゆっくりたちに出たゴミを任せれば済むのが大きかった。 現在ゆっくりにゴミの処理だけでなく分別にも使用するという試みはM市での成功を受けて全国的に広まろうとしている。 都市部では土地の利用が難しいとされているが、地下化や高層化、密閉型などさまざまな形式が検討されているという。 ちなみにさらに厄介な産業廃棄物については、前述した処理場ゆっくりの話となる。 「おー、ごくろうさん。今日もがんばってたな」 全身を作業服にマスク姿というのは、匂いや危険物に対する対策もあるが、一番の理由はゆっくりたちに個体識別をつけさせないことにある。 ゆっくりたちは人間たちの力関係を驚くべき嗅覚で把握する。 もし誰かが誰かに頭を下げているのを目撃されたら、「あのにんげんはしたっぱだよ」と自分たちとの力関係については考えずバカにした態度に出る者も少なくないのだ。 そもそもすぐ死に至る仕事と簡単に加工所行きとなる恐怖によって締め付けられているだけで、知能も教育も劣る量産品しかいない。 もちろんそんなゆっくりは問答無用で加工所行きであるが、管理人たちもまた多くがゆっくりが好きでこの仕事をしている者が多いし、また無駄に損失を出す必要もない。 管理人たちはやがて、ゆっくりたちに個体識別をつけさせず、みんな平等に「かんりいんさん」として恐怖され畏怖され感謝される存在であることが、もっともゆっくりたちのためであり自分たちのためであることを考えてこのような姿でいるのであった。 「んー、ぱちゅりー。今日はなにがいい?」 管理人はやさしく聞いてやる。ぱちゅりーは少し考えて、 「きょうはちょこれーとさんにするわ。りくえすとがいちばんおおかったの」 と答えた。一番安いお徳用のチョコレートをひとつかみリーダーぱちゅりーの特権である腰につけた「ぽしぇっとさん」に入れてやる。 毎日、りーだーぱちゅりーには作業が滞り無く完遂させたご褒美として、ゆっくりたちが求めてやまない「あまあま」───格安のチョコレート、キャンディー、クッキーなど───を一掴みほど与えてやる。 この「あまあま」の使い方については、いくつかの例を教えてやるだけで、基本的にリーダーぱちゅりーの裁量に任される。 非常用や医療用として貯めこむぱちゅりーもいれば、毎日作業のはかどった者の賞品とするものもいる。 部下の指導役のぱちゅりーたちに与えて裁量に任せる者もいる。 それぞれの使い方によって作業効率は微妙に異なったりもするが、許容範囲であればこのあたりはゆっくりたちの自治に任されている。 ちなみに、ぱちゅりーのおぼうしと髪の色によく似合ったピンクの革製のポシェットは、元々はとある分別所のゆっくり好きの管理人が、担当のぱちゅりーにつけてやったものであった。 だが、それにより作業効率の向上やゆっくり損耗率の低下という効果があったため今では全分別所で採用されている。 どうもゆっくりたちには、このぽしぇっとは「すごくゆっくりしている」ものに見えるらしく、リーダーぱちゅりーたちの指導力と権威を高める効果があるようであった。 またこの中に先ほどのような褒美の菓子や、対ゆっくり用の武器、医療用のオレンジジュースの小瓶などが入れられている。 「チョコレートは溶けやすいから早く食えよー」 「むきゅ、きょうはしょうきんさんにつかうわ」 そう言ってぱちゅりーは 中では次の回収に備えて、ゆっくりたちの食事を兼ねた生ゴミ・ゆっくりゴミ・燃えるゴミの処理が行われている。 彼らにとってはほぼ食事は地獄だ。 「がーつ、がーつ、ゆぐぅえええええええ、すこしどくはいっでるううう」 「まじゅいよう、まじゅいよう、でいむおいじいものだべだいいいい」 「むーしゃ、むーしゃ、ふしあわせのさんばいー」 「にぎゃい!にゃにごれえええええ」 「ゆぎゃあああああああ、からからざんだああああ、いだぃぃぃぃぃぃぃ」 生ゴミの匂いだけではない。腐った酸味、なにがなんだかわかったものではない苦味、人間も食えなくて残したであろう強烈な塩味、そもそも食べ物の範疇ではない燃えるゴミ、そしてゆっくりたちの死骸やうんうんなどを必死で口の中に入れては飲み込んでいく。 好き嫌いなど許されない、目の前にそれぞれ自分たちに分けられた「のるま」をすべて消化せねば仲間たちで「せいっさい」である。 もちろん「せいっさい」などで殺してはもらえない。全身を痛めつけられて結局は周囲によって倍以上ののるまを口の中に詰め込まれるだけなのだ。 そもそも毎日の過酷な作業により餡子が欠乏してしまっているために、なんとしててでも口に入れて自分の餡を補充せねばならないという、生存本能がいつでも全開に作用しゆっくりたちの空腹感を煽っているのだ。 消化したら「おといれ」に走ってうんうんとして出して、また食べなくてはならない。 朝の処理は次に夕方の回収が控えているため、食事処理の時間は決められているのだ。 「あっ、あまあまだよ!」 「あまあま?」「あまあまちょうだいねちょうだいね」「あまあまはゆっくりできるよ!」「ばりざのものだあああああああ」「わがらないよおおおおお」「でいぶにじあわぜざぜろおおおお」「あまあまあまあまああああ!」「ぐるなああああごれはありずがみずげだのおおお」「でいぶのものだよ!」「さいっきょうのまりさにこそふさわしいんだぜ!」「みょんによごぜえええええ」 極稀に甘味が人間が捨てた生ゴミの中に含まれているときもある。その時はさらに地獄絵図だ。 食事時で理性が失われているゆっくりたちの自制はたちまち崩壊し、あまあまの取り合いで殺し合いが起きる。 こればかりは指導役のぱちゅりーたちも手に負えないし、いちいち管理人たちもこんなことで介入したりもしない。 夕方の回収時間までほぼこの繰り返しであった。 ※ ゆっくりが人間社会に登場してすぐのころの人間社会の混乱は、ひとえに「ゆっくりとはなんなのか?」という正体不明さによるものであった。 生物としての概念をあらゆる意味で超越した所に突然現れたこの不思議饅頭は、脆弱な肉体と自分たち以外のあらゆる存在に敵対しようとする極めて不可解な精神を有していた。 特に彼らは好き好んで人間たちの家屋におうち宣言を行い、人間たちを見下し、畑を荒らし、ゴミ袋を漁り、ところかまわず糞尿を撒き散らし、性行為を行い、そのことごとくに人間たちの怒りを誘うセリフを実況するという極めて理解に苦しむ言動を行なう。 この奇妙な存在は、いったい何をしたいのか?人間にとってどういう存在なのか? 中には『善良』とされる個体やペットとして可愛がられるゆっくりなども現れ、その混乱に拍車をかけていく。 ある者は存在自体を駆除しろと主張し、ある者は虐待しがいのある存在として喜び、ある者は人間のパートナーになるべき存在だと認識し、ある者はただ盲目的に愛護しようとし、ある者は商用利用の道を考え、ある者はただの饅頭として扱おうとした。 それら一致しない人間たちの態度が、ゆっくりたちが絶滅する前に社会に蔓延り、増長する要因となっていったと後世では分析されている。 なぜなら、後の研究でそれらすべてがゆっくりたちが存在し行動する原動力となっていることが判明したからだ。 『十炭糖生命理論』 とある生化学研究者によって発表されたこの理論を嚆矢とするゆっくり研究の末、ゆっくりの生態とその行動原理がほぼ解明され、人間たちはついにゆっくりたちに対処するための統一見解を持つ至る。 それまで人間たちが発見していた九炭糖とはまるで組成の違う新発見の糖分、十炭糖『デカトース』こそがゆっくりの生態と行動律のすべての原動力であった。 ゆっくりは、彼らが生成する餡の中に含まれるデカトースを燃焼させるエネルギーによってすべての行動を行なっている。 さらにデカトースにはゆっくりの体内で糖分同士が複雑なニューロンにも似た組成ネットワークを築き上げるという性質を持っており、その糖化ネットワークと電気信号がゆっくりたちの知能や記憶などを司っているのである。 そのデカスートネットワークの中心でありオクトースの塊となるのが「中枢餡」である。 ちなみに比較的体内の餡にオクトースが少ない辛味のゆっくりであるめーりんが「じゃおーん」としか喋れないのは、言語中枢を司るデカトースのネットワークが不足しているためである。 また、このオクトースは極めて強固な糖分であり、彼らは糖分を酸化させることによって極めて強力な酸を口内と体内作り出す。 これはゆっくりたちの糖化ネットワークの司令によって行われるが、酸化した糖分はそのままうんうんやしーしーとして輩出せねばならないため、消費は最低限に抑える必要がある。 ゆっくりたちが『食べ物』として認識できないものを消化できず、また美味い不味いについてうるさいのも、彼らは自分の体内のエネルギーや記憶や知能の源泉となる糖分を消費して消化を行わねばならないためであった。 彼らにとっては消化して糖分にしやすいものが『美味しいもの』であり、その極限が糖分である『あまあま』になるのは当然であった。 彼らにとって『あまあま』とは直接取り込めるエネルギーであり、体を作る餡の主成分であり、知能と記憶のもととなる糖化ネットワークの原動力である。彼らがほぼ例外なく全身全霊をかけて『あまあま』を求めるのも無理はないのである。 そして、人間たちにとって彼らの扱いを決定づけたのが、ゆっくりが昔から言われているように「ゆっくりは虐待されれば虐待されるほど甘くなる」という現象の解明であった。 これは実に単純な話で、ゆっくりたちにとって「ゆっくりできる」という状態は体内の糖分をひたすら消費している状態なのであった。 ゆっくりたちは虐待やストレスや運動そのものなど「ゆっくりできない」状態に置かれれば置かれるほど、中枢餡を中心した糖分ネットワークが活性化してデカトースを精製する。 このためゆっくりは「ゆっくりできないほど甘くなり」、かえって生命力やエネルギーを増していくのだ。 つまりゆっくりたちは当人たちの主観では「ゆっくりできない」状態に置かれることによって生命維持をしているのである。 これによって長年の人間たちの疑問であった「ゆっくりたちはどうして危険や死亡フラグを招き寄せるような行動を人間や動物、大自然に対して行うのか?」という不可解さが解明される。 彼らは本能的に自分たちで望んで「ゆっくりできない」状態に陥ることによりデカトースを作り上げ、その糖分によって活動のすべてをとり行い、体を作り、知能や記憶を形成しているのである。 いわゆる「餡子脳」と呼ばれるゆっくりたちの精神構造は、当人たちの主観とは別に完全な本能により自らを「ゆっくりできない」状態に追い込むために人間や動物を挑発し、さらにわざわざゆっくりできない場所へと飛び込んでいくのである。 完璧な飼育条件でかわいがっていた飼いゆっくりが、それにもかかわらずゲス化するのも、「ゆっくりした状態」が続いてしまうことにより彼らは存在そのものの維持が危機に陥っていくためであった。 今までどうしても解明されなかった「金ゲス」問題や「大事に育てていたゆっくりが野良や野生より先に死ぬ」という不可解な生態の原因がこれであった。 つまりゆっくりとは、知能や知識において必死で「ゆっくりする」ことを渇望しながらも、「ゆっくりできない状態」に追い込まれていないとエネルギー、体組成、知能、記憶などのすべてが維持できないという、矛盾を抱えた存在なのである。 『十炭糖生命理論』を提唱した研究者グループたちは、このゆっくりたちの生態の解明により全員がため息をついたという。 なんという悲惨な矛盾を抱えてしまった『生命』なのであろう? この『十炭糖生命(ゆっくり)』たちは……。 何度とない反証実験の末『十炭糖生命理論』が証明されて以降、まずゆっくりの愛護団体が全滅した。それもそうだろう、彼らが行なっている愛護活動こそが、ゆっくりたちの存在を否定しまうのだから。 そして、多くの人間たちは憐れみながら、全力でその保護と管理に当たったのである。 ゆっくりをゆっくりさせないために。 ※ 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりたちをゆっくりさせないための管理保護の中心となるのが、やはりこの加工所である。 どんなに他の場所でゆっくりできない状態に置かれているゆっくりたちも、未だに加工所だけは共通して地獄のように恐れている。 しかし、現在の『十炭糖生命理論』によって洗練された加工所では、それほど目新しい虐待行為を行なっているわけではない。 ただ、解明されていくゆっくりたちの生態にしたがって最も効率的な「ゆっくりできない状態」を作り出すかに特化しているだけの話だ。 ゆっくりの生態が解明されてみれば、ある意味これほどゆっくりたちに忠実に仕えている存在もないだろう。 現在、デカトースの精製に使われているゆっくり生産ラインの構造は単純である。 1000匹1セットのゆっくりをスプリンクラーで噴霧しているオレンジジュースの霧の中で成長させ、天井の無数のスピーカーで1秒間に3回のスピードで『ゆっくりしていってね!』という声を聞かせ続けているだけである。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ」 原種ゆっくりたちの頃よりゆっくりにとって最大の存在意義である『ゆっくりしていってね!』という言葉は、ゆっくりたちの中枢餡の奥底に染みこんでいる言葉である。 『ゆっくりしていってね!』と挨拶を交わすことはねもっとも大切な「ゆっくり」である。 この挨拶を交わすことによる「ゆっくり」は、「あまあま」や「おちびちゃん」や「すっきりー」以上のものである。 もちろん、この挨拶さえできないゆっくりは、すぐさま制裁されてもしかたがないというほどにまで、ゆっくりたちの存在そのものに染み付いたものだ。 加工所では、このゆっくりたちの最も重要な本能を利用して、1秒間に3回というゆっくりたちが認識できる最速のスピードで多数のスピーカーでエンドレスで呼びかけ続ける。 もちろん、ラインのゆっくりたちがそれに挨拶を返せるわけもなく、次々と返さねばならない「ゆっくりしていってね!」が彼らの脳裏に本能に刻み込まれていくのである。 ゆっくりたちにとって『ゆっくりしていってね!』と返すことが出来ないほど「ゆっくりできない」ことはない。 これが1秒間に3回のペースで、しかもゆっくりが認識できるスピーカーの数だけゆっくりの体内に刻み込まれていくのである。 単純な仕掛けであるが、これほど効果的なゆっくりに対する「ゆっくりできない」仕掛けはないらしく、加工所は常にさまざまな手段で虐待を行なってデカトースの量を計測しているが、現在のところ量産可能とするには最も効率の良い工法であると、デカトースの増加量で証明されている。 「ゆ? ゆっくり? ゆ? ゆっくち!」 生まれてからラインに投げ込まれたゆっくりたちは、最初懸命に挨拶を返そうとするゆっくりたちは、やがて「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆ」とひたすら最初の文字を連呼していく。 そのうち痙攣のように「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ」という音を発し始めるが、これは決して「非ゆっくり症」になったわけではない。 というよりも1秒間に3回という数字は「ゆっくりに非ゆっくり症になる余裕さえ与えない」ための速度であった。 つまり、ゆっくりたちは明朗な意識を維持しながら、噴霧された『ゆーぽん』の糖分と栄養によって生存を続け、成長し、体内のデカトース濃度を濃くしていくのである。 極限までゆっくりできない状態により急速に糖分を精製させるゆっくりたちは、赤ゆっくり状態から強制的に成長させられ、わずか1日で成体ゆっくりにまで成長してしまう。 このデカトース工法の強みは、極限まで突き詰めた「ゆっくりさせない」ことによる強制的な糖分精製が行なわれた結果、ゆっくりの成長促進作用という副産物も伴っていたことにある。 現在ではこの「ゆっくり生産ライン」は全世界的に普及している。 ちなみに清掃ゆっくりや分別ゆっくり、などもこの工程で成長させられたものばかりだ。 彼らは特に教育しなくてもこのラインで生まれたというだけで人間社会を天国に思い、なおかつ加工所の恐ろしさを餡子に刻みつけられている。 さらにもっとも「生産効率として有効」な3週間ほどを経過したゆっくりが遠心分離によってお飾りと皮を剥がされるラインに送られ、そのままデカトース由来のアルコールことバイオデカノールとして精製される。 ゆっくりを1日で成体として成長させてしまうほどの強力なデカトース精製を3週間も続けていると、ゆっくりたちの餡は餡と呼べないほど純度の高いデカトースとなっており、透明感すら帯びるようになってくる。 この透明感ある餡は1万倍に希釈してもゆっくりを、そのゆっくりできなさで死に至らしめるほどの純度の高いゆっくり忌避剤となる。 このような純度の高いデカトースから精製されるバイオオクタノールは非常に高い燃焼効率を持っており、現在ではほぼ全世界の自動車や発電の燃料として使用され、エネルギー問題の福音として評価されている。 また一部の貧しい国ではそのまま酒として売られることもあるようだが、現在のところ人体への害はないようだ。 さらに人間社会で問題を起こしたゆっくりが流される処罰ラインでは、ゆっくりたちは同じ工程を1年ほど通される。 ほぼ処罰と見せしめと「加工所への臭い付け」のために行われるこの工程の映像は、ゆっくりたちが働く現場では一つはなんらかの置いてある。 1年もたちともはや餡そのものが完全にデカトース化し皮さえも糖化してしまっている。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」とさえ言えなくなるまで餡が糖化した純粋なデカトースは透明であり、中央の中枢餡が気味悪いほどのスピードで蠕動しているのを見ることができる。 ゆっくりたちは本能で「ここまでされてもまだ意識ははっきりして、ゆっくりできないままにされている」ということを悟って、その映像だけでも気の弱いものは卒倒してしまう。 むしろ「処罰」が一年になっているのは、さらに糖化が進みすぎるとデカトース濃度が臨界を超えて発火を始めるからである。 透明化した「かつてゆっくりだったデカトースの塊」はデカトース分はゆっくりのゆっくり出来ない記憶を固めた存在となり、ゆっくりの極めて強烈な毒薬となり駆除などに使用される。 また道路や家屋などにも塗り込められゆっくりがごく自然に近づかないようにされている。 そして蠕動している中枢餡は天然成分のオレンジジュースのプールで生命維持をさせられ続け、1週間ほどで不純物やゆーぽんの成分やアクが完全に抜けたところで固められて厳重な検査の末に食用とされる。 生命維持用のオレンジゼリーの中に含まれたゆっくりの中枢餡は『罪と罰』という名前を付けられて売られているが、非常に高価で貴重なものであり、その甘味と口当たりはあらゆるすべてのスイーツの頂点とされるほどのものだという。 ただ、一つ欠点があるのは、これを食べてしまうと一週間ほどゆっくりたちにとっては死神そのものに見えるほどに「ゆっくりできない」においが漂うらしく、体質によっては近くに通っただけでゆっくりたちが餡を吐いて死んでしまうために、市販されていないという点だろう。 他にも加工所には赤ゆっくりたちを生産するラインやゆっくりたちのエサ作るライン、食用ゆっくりを生産するラインが存在するが、これらについては機会があったら語ることもあるだろう。 ※ 「むきゅ、きょうのおしごとはこれでおしまいね、みんなおつかれさま」 「「「「「「「ゆっくりがんばったよ!」」」」」」」 夕方の回収と分別を終えてリーダーぱちゅりーが終礼のようなものを行なっている。 もちろん、人間たちのように整列したしせず、また義務付けられているわけでもない。 ただ、リーダーぱちゅりーは終礼のときに、功績のあったゆっくりや、「おたんじょうび」(分別所にきて『たくさんのひ』ということだ)や、子ゆっくりをきちんとそだてることのできたゆっくりなど、いろいろな基準で人間から与えられた「あまあま」を配ってくれるので、自然に集まるようになっていた。 時たま、力づくでリーダーぱちゅりーの「ぽしぇっとさん」を奪おうとするゲスも現れることはある。 だが、ぱちゅりーは前述したゆっくり忌避剤を塗りこめた棒をいつでもポシェットから抜けるようにしている。 もちろん自分も非常にゆっくりできないので、出来れば使いたくない武器だ。 ちなみに管理人もできるだけ立ちあうように指導されている。まだまだ「分別所」については試行錯誤のまま運用されているため、トラブルも改善の余地も多いからだ。 「まりさ、れいむ」 「ゆっ! なんなんだぜ……」 どことなく元気のないまりさとれいむが現れる。 「あなたたちは、きょうがんばって『はばねろさん』をしょりしてくれたわね」 もちろんこういうゆっくりにとっての劇物とて容赦なくゴミの中に含まれる。 運悪く割り当てられてしまった二匹は、何度も死にかけながら、指導役のぱちゅりーに「ひとつずつ、つばをかけてから、ゆっくりとのみこむのよ」という教えを守って処理を終えたのであった。 「がんばったわね。よってごほうびにかんりにんさんにもらったちょこれーとさんをあげます」 「まりさおめでとーなんだねー」 「はばねろさんをたいじしさまりさはゆうしゃなんだみょん」 「れいむもがんばってたわ」 祝福をうけながらチョコレートを受け取る二匹。 「だいじにたべるのよ」 「ゆっ! まりさはたべないんだぜ!」 「れいむもだよ!」 とチョコレートをまりさのお帽子につめこむ二匹。 「まりさとれいむは、けっこんするのぜ!」 「おちびちゃんのために、あまあまはとっとくんだよ!」 と胸を張る二匹。 「むきゅ、こまったわ……ちょこれーとさんはとけやすいのよ」 困ったように教えるぱちゅりーにまりさが答える。 「ゆっ! とけてもぺーろぺーろすればいいんたぜ!」 「あー、ちょっといいか?」 びくっ! と条件反射的にゆっくりたちは上から聞こえた人間の声に振り向いた。 どの顔も恐怖に歪んでいるが、それはいつものことなので管理人は気にしない。 「チョコレートにこだわらんなら、こっちのキャンディーにしとくか? 紙に包まれているし少しは保存しやすいだろ」 と両側が捻られた紙に包まれたキャンディーをふたつリーダーぱちゅりーの前に置いてやる。 あくまでも管理人はリーダーぱちゅりーを通してしか物を与えない。これは絶対の服務規程でもある。 「まりさ、れいむ、このきゃんでぃーさんでもいいかしら?」 「まりさ、いいよね? このほうがおちびちゃんのためにとっときやすいよ!」 「わかったんだぜ、ぱちゅりー。このちょこれーとさんとこうっかんなんだぜ」 と二匹はリーダーぱちゅりーにチョコレートを返し、キャンディを受け取る。 その後もゆっくりらしい要領の得なさでありながらもなんとか終礼のようなものを終える。 「よーし、おつかれさん。これでお前らの仕事は終わりな。今夜もお前ら『ゆっくりしていってね!』」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」 と最後の挨拶をしめて、ゆっくりたちは一日の重労働を終える。 管理人はゆっくりたちの前から出ていくと厳重に分別所の扉を閉めていった。ガチャンと鍵の音がする。 この密閉される音で、むしろゆっくりたちは安心するのだ。 やっとゆっくりたちだけの時間がくる。 そして、彼らは初めて素顔を見せる。 それは道で見せる泣き顔をさらに強めた滂沱の涙だ。 「ゆええええええええん、ゆぇぇぇぇぇぇぇん」「ひっぐひっぐ……」「わきゃらにゃいよー、わきゃらにゃいよー」「とかいはじゃないわー、こんなのとがいはじゃないわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「ゆえええええええええん」 恥も外聞もなくゆっくりたちは泣きじゃくる。 幸せな生活の筈だ。加工所でのゆっくりどころかすべての生命活動が「ゆっくりできない状態」にされるための機械的なラインの上よりも、ぜんぜん幸せな筈だ。 人間たちは基本的にゆっくりにやさしい。 どの人間たちもゆっくりの生態を理解し、社会のためになる益獣として愛している。 ゆっくりが誕生して以来、ここまで人間社会にゆっくりが受け入れられ、愛されている時代はないだろう。 ゆっくりはその生態も存在もすべてが理解され、そしてその存在は人間社会の生態系の中にしっかりと組み込まれようとしていた。 「ゆっくりしていってね!」 今、人間社会はすべてがゆっくりたちに向かってそう言ってくれている。 そのことを誕生から成長から理解させれる仕組みの中に生き、そして死んでいく中にあってさえ、ゆっくりたちはどうしても人間たちが見ていない(と思い込んでいる)所では、恥も外聞もなく泣きたくなってしまうのだ。こんなにもゆっくりが受け入れられ、愛される時代であり、理解され尽くした社会であり、加工所にいた頃に比べたら幸せなのに、どうして泣きたくなるのだろう。 「「「「「「「「ゆぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん !ゆぇぇぇぇぇぇぇん」」」」」」」」 いつしか種にかかわらずその泣き声は一つになっていく。 それを聞いている夜勤の管理人は、ゆっくりたちがしっかりと生命維持の糖分を精製していることに安心しながら、防音について少し対策が必要だな、と報告書に記していくのであった。 「ゆっくりしていってね……、と」 ゆっくりたちが理論的に愛でられた世界で。
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虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける
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「ゆっくり記憶していってね!」 「んんにゅふううううううううぅぅぅぅ!!!」 「んほおおおおおおおおおすっきりしちゃうよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」 この日、二匹のゆっくりは同時に達した。 口からは涎、目からは涙、全身からなんとも形容しがたい体液を漏らしながら、びくびくと痙攣している。 「ゆふぅん……ゆふぅ…」 「す、すっきりしたよぉ…まりさぁ…」 余韻に浸る二匹。 思い出すのは、自分達が今までゆっくりしてきた記憶だ。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむは、生まれたときから仲良しだった。 自分のお母さんであるまりさとれいむの仲がよかったために、この二匹も幼い頃から共に遊んでいたのだ。 片方が池に落ちると、もう片方が助ける。 片方が蜂に追われると、もう片方が隠れる場所を教えてあげる。 片方が人間の畑でゆっくりしてると、もう片方がその危険性を教えてあげる。 そんな風に互いが互いを支えあい、今までゆっくりしてきた。 この二匹が俗に言う『夫婦』の関係になったのは、今から二ヶ月前である。 昔から仲がよかったので、夫婦になってからも二匹は仲良くゆっくりしてきた。 一ヶ月前に見つけた今のおうちも、二匹にとってはぴったりだが… 今から生まれるであろう赤ちゃんも含めると、もしかしたら狭くてゆっくりできないかもしれない。 そしたら新しいおうちを探さなきゃね、と微笑む二匹。 そうこうしているうちに、れいむの頭から蔓が生えてきた。 そして数時間後。 「ゆ!!ゆっくりそだってね!!」 「ゆっくりいいこになってね!!」 赤ちゃん達が生まれるのを、今か今かと待ち望んでいるゆっくり夫婦。 何かが起こると感じ取ったれいむが、ぶるぶると震え始めた。 「ゆ!?…ゆゆゆゆゆゆゅゅゅ…」 ぷちっ! ぽとん!! 「ゆ!ゆっきゅりちていってね!!」 「う、うまれたよ!!まりさたちのあかちゃんがうまれたよ!!」 喜びを隠せないまりさ。 一匹目の誕生に続いて、次々と赤ちゃんが蔓から落ちていく。 「ゆぷ!ゆっきゅいちていってね!!」「ゆっくりちていってえ!!」 生れ落ちたのは、合計5匹のゆっくりれいむだった。 自分と同じ種がいないことにまりさは少し寂しく感じたが、自分の子供が無事生まれたことを思えば些細な ことだった。 「みんな!!いっしょにゆっくりしようね!!」 涙を流しながら呼びかける母れいむ。 それに答えるようにして、子れいむたちは一斉に声を上げた。 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 その姿こそ、親ゆっくりにとって最高の幸せ。 二匹のゆっくりは涙を流しながら、頬をすり合わせていた… 数ヵ月後。 すくすくと成長した子れいむたちは、母れいむの半分ぐらいの大きさになった。 もう親に頼らず、自分で餌を取るようになる時期である。 「ゆっくりいってくるね!!」「ごはんたくさんたべるよ!!」 「みんな!!ゆっくりきをつけてね!!」 5匹の子供たちを見送る、母れいむとまりさ。 野性の世界で、親が二匹とも無事でいられるのは珍しいことだ。 大抵は交尾の段階で片方が朽ちるか、子供の成長を待たずして捕食種や他の野生生物の犠牲となってしまう。 そういった意味で、この一家は他のゆっくりに比べれば格段に幸せだった。 「ゆゆゆぅ…れいむぅ…いっしょにすっきりしようねぇ!」 「ゆふん、いいよぉ…でももっとおくにはいろうね!」 子供たちが視界から居なくなったのを確認して、互いに誘い合って巣の中へと入っていく二匹。 今いる子供たちももうじき独立するだろう。ならば、親のするべきことは新たな子供を作ることだ。 二匹は完全にその気だったのだが…第三の声が、二匹を邪魔した。 「やあ!!ゆっくりしてるかい?」 「ゆゆ!?」 巣の外からの突然の声に、二匹は驚いた。 これからすっきりしようというのに、どうして邪魔をするのか。 知らない人が居たら、気になってすっきりできないではないか! すっきりモードに入っていた二匹は、来客に対して大いに不満を漏らした。 「ゆ!!おにーさん!!じゃましないでね!!」 「これからまりさとれいむはすっきりするんだよ!!ゆっくりどっかいってね!!」 「あぁ、ごめんごめん…そうか、君達には子供がいるんだね。じゃあ子供が戻ってくる頃にまた来るよ!」 そう言って立ち去ろうとする、見知らぬお兄さん。 「もうにどとこないでね!!」「すっきりをじゃましたおにーさんとはゆっくりできないよ!!」 巣の出口までやってきて、お兄さんを罵倒する二匹。 お兄さんはそんなの気にせずに去っていき…二匹の視界から完全に消えた。 「ゆふん…これでやっとすっきりできるよぉ…♪」 「まりさぁ、ゆっくりおくにいってすっきりしようねぇ…♪」 夜。ご飯を食べ終えて、一家で眠ろうという時間帯だ。 昼間の交尾では赤ちゃんは出来なかったが、チャンスはいくらでもある。 二匹は何とかして、新たな赤ちゃんを授かろうと考えていた。 「ゆ!!れいむいもうとがほしいよ!!」 「おかーさん!!ゆっくりいもうとをうんでね!!」 「ゆゆ…おかーさんたちがんばるからね!!ゆっくりまっててね!!」 と、家族計画を話題に談笑する一家。そこへやってきたのは… 「お!今度は子供たちも揃ってるね。ゆっくりしていってね!!」 昼間すっきりを邪魔したお兄さんだった。 「ゆゆ!?ゆっくりしていってね!!」 とりあえず本能に従って挨拶を返す子れいむたち。 それに対して、親二匹はお兄さんに対して明らかに警戒心を示していた。 「ゆ!?おにいさんはだれ!?ゆっくりできるひと!?」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさたちのおうちだよ!!」 ゆっくりたちにとっては、ゆっくりすることが全てである。 ならば、ゆっくり出来ない者は人間であろうと何であろうと、自分の家に入れるわけにはいかない。 親二匹は、ゆっくりの本能に従って…そして、親としての責任をもって、外敵を排除しようとしていた。 「いや、お兄さんはゆっくりできるよ。皆をもっとゆっくり出来る場所に案内しようと思ってね」 「ゆゆ!?ほんとう?おにーさん、はやくれいむたちをゆっくりできるばしょにつれてってね!!」 あっさりとお兄さんに懐柔されてしまう子れいむたち。 『ゆっくり出来る』という言葉を聞いて、親二匹も興味を持ち始めた。 「れいむもいくよ!!はやくゆっくりしたいよ!!」 「よしよしわかった。今から案内するからついて来てね」 一家は笑顔でお兄さんのあとについていく。 だが、この行動が一家の命取りになることを…一家はまったく予想できなかった。 お兄さんに招かれて、お兄さんのおうちに入っていく一家。 案内された部屋は冷房が効いていて、しかもとても広かった。 「ゆゆ!!すずしいね!!」「ここならゆっくりできるよ!!」 「おかーさん!!おうたうたって!!」 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆーゆゆーっ♪」 母れいむの歌を聞いて、楽しそうに踊る子供たち。 遠くから眺めているまりさも嬉しそうだ。 「ここをれいむたちのおうちにするね!!」 「きょうからここがまりさたちのおうちだよ!!」 「「みんなでゆっくりしようね!!」」 あまりにも快適なので、すぐにここを自分達の家にすることに決めた。 お兄さんも笑って賛成してくれたから、れいむたちはとても安心していた。 それから一週間。 気がつくと、母れいむが居なくなっていた。 「おにーさん!!おかーさんがいなくなっちゃった!!」 「れいむがいないよ!!どこにいったの!!」 優しいお兄さんは、優しく説明してくれた。 「皆のお母さんは病気を治すために、僕が狭い箱に入れてあげたんだ。今は別の部屋でゆっくりしてるよ」 「ゆ!!おにーさんがびょうきをなおしてくれるの!?」 「おにーさんやさしいね!!」 感謝の声を上げる一家に対し、お兄さんは説明を続ける。 「病気が治ったらすぐに箱から出してあげなきゃいけない。 みんなだって、狭い箱に閉じ込められたままなんて、いやだよね!」 「ゆゆ!!いやだよ!!」「せまいところじゃゆっくりできないよ!!」 「でもね、箱の中から出るには鍵を開けなきゃいけない。皆にはその番号を覚えて欲しいんだ!」 お兄さんはニヤッと笑う。 一家は最初困惑して、お互いの顔を見合わせたが… 「れいむおぼえるよ!!ゆっくりおしえてね!!」「ゆっくりおしえてね!!」 お母さんのためなら、多少の困難は乗り越えられる。 根拠の無い自信を持っている子れいむたちとまりさは、お兄さんの願いを受け入れることにした。 「よし、今から言うからゆっくり覚えてね」 「ゆっくりおぼえるよ!!」「れいむもおぼえるよ!!」 「その番号は…115だよ!」 『いち・いち・ご』 その番号が、一家のゆっくりメモリーに刻まれる。 「いちいちご、だね!!」「いちいちご!!ゆっくりおぼえたよ!!」 「みんな覚えたかな?それじゃあお兄さんはもう番号を忘れちゃうからね。 みんなが番号を忘れちゃったら、お母さんは箱から出られなくなっちゃうよ!!」 「だいじょうぶだよ!!れいむぜったいわすれないよ!!」 「れいむもわすれないよ!!こんなかんたんなばんごう、わすれるわけないよね!!」 えへんと胸を張って、子れいむは自信を見せた。 「そうだよね!!お母さんを助けるための、たった3桁の番号を忘れるわけが無いよね!!」 お兄さんはケラケラと笑っていた。 さらに一週間。 母れいむはまだ戻ってこないが、残された子供たちとまりさは仲良くゆっくりしていた。 今までは自力で食料を調達する必要があったが、今となってはそれは不要な努力だ。 なぜなら、好き勝手にゆっくりしていればお兄さんが食べ物を持ってきてくれるからだ。 以前は母れいむが歌を歌っていたが、今は代わりにまりさが歌を歌ってあげる。 「ゆゆ~ん♪ゆっゆっゆ~ん♪」 「おうたじょうずだね!!」「もっとうたってー!!」 母れいむほど上手ではないが、まりさの歌も子れいむたちにとってはお気に入りだった。 お兄さんは、部屋の中で退屈している子れいむたちの遊び相手にもなってくれた。 特に子れいむたちが気に入っているのは、一匹ずつ手のひらに乗ってお兄さんと部屋中をお散歩することだ。 「わぁい!!おそらをとんでるみたい!!」 この時だけは、普段なら経験できないほど高い場所から周りを見渡すことが出来る。 子れいむたちは、まるで自分が鳥になったような気分だった。 「はやくおりてきてね!!つぎはれいむのばんだよ!!」 「ちがうよ!!こんどはれいむがのるんだよ!!」 順番をめぐって言い争う子れいむたち。 そんな子供たちを、お兄さんは優しくなだめる。 「喧嘩はしないでね。ちゃんと全員乗せてあげるからさ」 「わーい!!おにーさんはやさしいね!!」「おにーさんだいすきー!!」 そういうと、お兄さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。 そしてある日、お兄さんが透明な箱を一家の目の前に置いた。 その中には… 「みんな!!ゆっくりあいたかったよ!!」 一週間前から別の部屋でゆっくりしていた、母れいむの姿があった。 「ゆゆ!おかーさんだ!!」「おかーさん!!さみしかったよぉ!!」 あっという間に箱のまわりに群がる子れいむたち。 後からやってくるまりさも、嬉しさが顔全体に染み渡っている。 「まりさ…」「れいむ、ゆっくりまってたよ!!」 そして全員でお兄さんを見上げる。 「おにーさん!!おかーさんをここからだしてあげて!!」 「れいむをだしてあげてね!!これからぜんいんでゆっくりするよ!!」 すると、お兄さんは満面の笑みでこう言った。 「そうだね。それじゃ皆でお母さんを出してあげてね!」 「ゆ…?」 最初、皆はどういう意味か分からなかった。 お兄さんは、分かるようにゆっくり説明してくれる。 「この前教えてあげた番号、覚えてるよね。その番号をお兄さんに教えてくれれば、開けてあげられるよ」 「……………ゆ?」 不思議そうな顔をする一家。 …しばらく考え込んで、ある子れいむが飛び上がった。 「ゆゆ!!ずっとまえにおにーさんにばんごうをおしえてもらったよ!! そのばんごうがわかれば、おかーさんはそとにでられるんだね!!」 「そうだよ、よく分かったね」 褒めるお兄さん。しかし、問題はその後だった。 「みんなゆっくりばんごうをいってね!!おにーさんにばんごうをおしえてあげてね!!」 箱の中の母れいむは早く出たいのだろう、まわりのゆっくりたちを急かす。 しかし、母れいむを除く一家は考え込んだまま何も言おうとしない。 「ゆゆ!!ばんごうおぼえてるでしょ!?ゆっくりおしえてね!!」 「ゆぅん…ゆっくりわすれちゃったよ!!まりさおかーさんは!?」 「ゆゆゆゆゆ………あ、おもいだしたよ!!いちごだよ!!」 「は?イチゴ?」 まりさの答えを聞いて、お兄さんは困惑顔だ。 「番号は3桁なんだよ。まりさは『15』の2桁しか思い出せなかった。 きっと十五とイチゴの語呂合わせで覚えたんだね。でも、あと1桁分からないと開けられないよ!」 「ゆぎゅうううううう!!!どおしてわすれちゃったのおおおおおおお!!??」 母まりさが、悲痛な叫びを上げる。 番号がわからない状態で一番困るのは自分だから、当然といえば当然だ。 「ゆゆ!ごめんね!!でもおもいだせないよ!!わすれちゃったよぉ!!」 「ばかばか!!みんなのばか!!そんなばかなこたちとはゆっくりできないよ!!」 顔を真っ赤にして激怒する母れいむ。 でも、箱から出てこられないのでまったく怖がらない子れいむとまりさ。 「でもおかーさんがはこのなかにいても、れいむたちはゆっくりできるよ!!」 「そうだね!!そばにいるならだいじょうぶだよね!!」 「おかーさんはずっとそのなかにいてね!!れいむたちはそのまわりでゆっくりしてあげるよ!!」 必死な母れいむとは正反対に、あっさりと諦める子れいむとまりさ。 母れいむの呼びかけもむなしく、まわりのゆっくりたちは勝手にゆっくりし始めた。 「どおじでええええええええ!!!がんばっでおぼいだじでよおおおおおお!!!」 「おかーさんはそこでがまんしてね!!れいむたちがおうたうたってあげるからね!!!」 「うたはいらないのおお!!こんなせまいところでゆっぐりでぎないいいいいいい!!!」 「ゆ~ゆゆ~ん♪ゆゆ~yぶぎゃあ!!??」 歌が途中で途切れた。 歌っていた子れいむのほうを見ると、お兄さんの拳が子れいむだったものを押しつぶしている。 ニコッと微笑むお兄さんがその拳を上げると、その手から餡子がボトリと落ちた。 「ゆぎゃあああああああああ!!!まりざのごどもがああああああああああ!!!」 「おにーさんひどいいいいいいいいい!!!どおじでぞんなごどずるのおおおおおお!!??」 「まったく…大切なお母さんを見捨ててゆっくりするなんて、酷いなぁ!」 怒っているようだが、顔は相変わらず笑っている。 お兄さんは立ち上がると、逃げ惑う子れいむたちを片っ端から潰し始めた。 「ゆぎゃッばびぃいいいいいいいいい!?」 「まったく!!」 「ぐべえああああおあおあおあおあおあ!!!」 「お母さんを何だと思ってるんだ!」 「ふぎゅおうおおあおあおあおあおおお!!??」 「しかも番号を忘れちゃうなんて…!」 「るばっやああああああああああああ!!??」 「どうして!!たった3桁の番号を…君達は忘れちゃうんだ!?」 子供を全て潰し終えると、お兄さんは立ち上がる。 お兄さんは、泣いていた。顔は笑っているが、泣いていた。 箱の中の母れいむの横で、まりさはお兄さんの顔を見上げる。 「ゆ?おにーさん……ないてるの?」 子供を潰された怒りよりも、目の前のお兄さんが泣いていることに対する興味が勝った。 今まで自分をずっとゆっくりさせてくれたお兄さん。 子供を全員殺されたが、お兄さんが泣いている原因を解決すれば、またゆっくりさせてくれるかもしれない。 そんな期待がまりさにはあったのだ。 「ゆっくりなかないでね!!まりさがなぐさめてあげるよ!!」 「……」 お兄さんは無言でまりさのほうへと歩み寄る… が、まりさの横を素通りして、箱に収まったれいむの目の前に座り込んだ。 「ゆ!?おにーさん!!ばかなこどもをころしてくれてありがとう!! こんどはゆっくりここからだしてね!!」 もはや母れいむの関心は、ここからどうやって脱出するか…そのひとつしかない。 自分を見捨てた子供も…かつて愛を誓い合ったまりさも、もうどうでもよかった。 「ふふふ…あっはははははははははははは!!!」 お兄さんは優しい笑顔のまま、狂ったような笑い声を上げる。 母れいむとまりさは、完全に怯えきってしまった。 まりさに至っては、恐怖のあまり硬直してしまってその場から逃げることも出来ない。 「どうして!!どうして君達はそんなに馬鹿なんだ!! 3桁の!!たった3桁の!!簡単な番号を!!どうして忘れるんだアアアアアァァァァァァ!!!!!」 バァンッ!!! 箱を思い切り叩くお兄さん。母れいむがびくっと震える。 お兄さんは何かを発散しようとしているようだった。 内に秘めた黒い感情を、すべて消化しきってしまおうとしているようにも見える。 「あぁゾクゾクするよ!!君達の馬鹿っぷりにゾクゾクするよ!! どうして君達は到底敵わない人間に喧嘩を売るんだ!!どうして人間の作物を荒らすんだ!? もうどうしようもない馬鹿だ!!可哀相で可哀相で、笑いが止まらないよおお!!! 君達はどうして!!どうして!!どうしてどうしてどうしてどうして!!! どうしてそんなに!!!馬鹿なんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」 大声とともに腕を振り下ろすお兄さん。 居場所が悪かったためか、その腕がまりさに直撃し… 「ゆぶぎゃあああああ!!??」 まりさは破裂した。あっけない最期だった。 「ゆゆ!!ゆっくりやめてね!!ゆっくりここからだしてね!!」 「ふふふ…出せるわけないだろう。あの子達が、番号を覚えてなかったんだから…」 くくくと笑うお兄さん。顔は優しい笑みだが…その笑い声に、唯一生き残った母れいむは恐怖する。 「でも安心してね。れいむはこの中にいればずっと安全だよ。お兄さんも守ってあげるからね」 「ゆゆ!!やめて…ここじゃゆっくりできない……ゆっくりだしてよ!」 お兄さんは笑みを崩さず、首を横に振る。 そしてれいむが収まっている箱を抱きしめて、その場に寝転がった。 「馬鹿な子供たちは殺してあげたよ。馬鹿な恋人も殺してあげたよ。だかられいむ…お兄さんとずっとゆっくりしようね」 一体何をどこで間違えたのか。 母れいむは必死に記憶をさかのぼるが、どうしてもわからない。 どこをどうすれば、こんな目にあわずに済んだのか… 餡子脳の記憶容量では、さかのぼれるのはせいぜい数週間前まで。 唯一わかるのは、いまさら考えても遅いということだけだ。 れいむの入った箱を優しくなでる優しいお兄さん。 その笑みは、狂気に蝕まれてる。 「ふふふ…れいむ…君は一生その中でゆっくりしていってね!」 「イやだよおおおおおおオオオオオおおおおおおお゛お゛お゛お゛!!!!」 その日から。 れいむはずーっと、お兄さんとゆっくりし続けた。 晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も。 れいむは箱の中で、狭い箱の中でゆっくりし続けた。 出して、と言ってもお兄さんは出してくれない。 定期的に食べ物を与えられて、ゆっくりし続けるだけ。 お兄さんが、おじさんになって。 おじさんが、おじいさんになって。 その間も、れいむは窮屈な箱の中でゆっくりし続けた。 ある日、おじいさんが二度と目覚めなくなった。 おじいさんが布団の中からいなくなって…れいむだけが取り残された。 れいむはとてもお腹がすいてきた。そのうち意識も朦朧としてきた。 迫りくる死の影を目の前にして…れいむはやっと安堵の表情を浮かべて、こうつぶやいた。 「ゆっくりしていってね…!」 あとがき 優しいお兄さんを書いてたら、いつの間にか変なお兄さんになってたよ!! ゆっくりしていってね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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第十五章 別れと出会い 「ゆぐっ、ゆぐぅぅ」 「泣いちゃダメだよ、ゆっくりしようね!」 夏の前から親しんできたおともだちたちと 別れることになったゆっくりたち。 大使館を去っていく人影に、 涙ながらに帽子やリボンを振った。 「離れてもおともだちだよ!」 「またいっしょにあそぼうね!」 別れがあれば出会いがある。 ゆっくり村により近い集まりから 入れ替わりにおともだちがやってきた。 今度の集まりはもっと人が多くて 楽しそうだ。 そんな人たちにゆっくりがかける 言葉はひとつ。 「ゆっくりしていってね!!!」 (ゆっくり数:1278頭) ========================== 第十四章 かりそめの勝利 首都を攻められた敵軍は ゆっくり村のオアシスに 起死回生の攻撃を仕掛けてきた。 「に゛ゃあぁ、れいむ゛のあんごがあぁ!」 「ゆっ、ゆぐっ、ゆっくぶぎゃっ!」 潰されながらも戦うゆっくりたち。 苦戦の果てに敵を倒すことができた。 やがて始まる停戦交渉、そして……。 「またお手紙だよ! まけましたって!」 「ゆううう! ゆうううう!」 「ゆっくりできるよおぉぉぉ!!」 狂喜乱舞するゆっくりたち。 村は祭りになり、みなが歌い、騒ぎ、 飲み食いし、すっきりした。 「ぱちゅりぃぃ!」「まりさぁぁ!」 「すっきりー!!」 だが、ゆっくりたちが浮かれ騒いで いられるのは、つかの間のことだろう。 南方のオアシスを奪い、勢力を強める、 新たなおそろしい敵の影があるのだ……。 (ゆっくり数:1070頭) ========================== 第十三章 真実、そして…… 「わるいひとからお手紙がきたよ!」 「むきゅっ? 読ませて」 ゆっパルトで攻撃中のゆっくり軍に手紙が届き、 ゆっくりぱちゅりーが読みあげた。 「わたしはわるくないです。 おともだちがわるかったんです。 わたしは はんげきしただけです。 ほろぼしていません」 「……」「……」 ゆっくりたちはその意味を ゆっくりと考えた。 ゆっちゅりーがみんなを見回す。 「どうしたらいいかしら!」 「れいむはもっとしげんがほしいな!」 「ゆっパルトもかなり壊されちゃったぜ!」 「うっうー、れみりゃおなか減ったぞー!」 「じゃあ、こうげきぞっこうね!」 ゆっくりたちに難しいことはわからない。 相手が泣いて謝ってくるまで 攻撃は続きそうだった……。 (ゆっくり数:1013頭) ========================== 第十二章 決戦! ゆっくりできない人 「みんな、たいへんだよ!」 「ゆゆっ、どうしたの!?」 それは北方のおともだち村が ゆっくりできない人に攻められ 滅びてしまったという知らせだった。 「どうしてそんなことするのぉぉ!?」 「悪いひとはゆっくりとしね!」 ゆっくりたちは戦うことに決めた。 普段ゆっくりしている饅頭生物でも ゆっくりできなくなれば戦うのだ。 ゆっちゅりーに村を任せ、 元気なれいむと強いまりさ、 素早いゆっくりゃたちが隊列を組んだ。 そして今回は、わるい人の村を壊す ゆっパルトまで作られた! 「がおー、食べちゃうぞー!」 「ゆっくり!」「ゆっくり!」 「ゆっくり!」「ゆっくり!」 「ゆっくり!」「ゆっくり!」 「ゆっくり!」「ゆっくり!」 英雄れみりゃに率いられ ゆっくりたちは敢然と出撃していく。 饅頭にすぎない彼女らに はたして勝ち目はあるのだろうか……。 (ゆっくり数:1013頭) ========================== 第十一章 ささやかな喜び 「れっれっれれいむぅぅぅ!」 「まっまっまっまりざぁぁ!」 「んほぉぉぉぉ、すっきりー!」 不穏な情勢の中でも愛は育まれる。 今ここに、また新たな命が生まれた。 「ゆっゆっ、ゆっくりちちぇってね!」 「ゆっくりしていってね、赤ちゃん!」 「れいむの赤ちゃん、かわいいね!」 顔を見合わせて微笑みあう 母れいむと母まりさ。 たった二人の新しい村も すぐに他の二つの村のように にぎやかになるだろう。 「ここはみんながすっきりできる すっきり村だよ!」 (ゆっくり数:754頭) ========================== 第十章 戦雲 ザム、ザム、ザム、ザム 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 饅頭皮で大地を踏みしめ 数百の戦士たちが行進の訓練を続ける。 南方のおともだち村が次々と 襲われているというのだ。 いずれゆっくりたちも遠征に 出なければならないだろう。 「うっうー、食べちゃうぞ~!」 頭上を飛んで行くのはゆっくりれみりゃ。 彼女らは騎兵代わりに先鋒をつとめている。 「戦争だってさ」 「おお、こわいこわい」 ひそひそとささやきあう 留守番ゆっくりたちの頭上に 暗い雲が垂れ込めていた……。 (ゆっくり数:671頭) ========================== 第九章 真打ち登場 「ゆうっ、手ごわいよ!」 「ゆぐっ、ゆっくりしていってね!」 オアシスの動物は強く ゆっくりたちは苦戦した。 だがそこに駆けつけた 勇ましい姿があった! 「ゆっくりしんでね!」 ゆっくりせずに敵を倒す彼女の名は―― 「まりさ!」 「れいむ、もうだいじょうぶだよ!」 「村は、たっぷり村はいいの?」 「子供たちにまかせてきたよ!」 再会を喜ぶれいむとまりさたち。 「ここはれいむたちのおうちだよ!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりするよぉ…!」 待ち焦がれたオアシスを手に入れ、 ヘヴン状態になるゆっくりたちだった……。 (ゆっくり数:367頭) ========================== 第八章 新・ゆっくりプレイス 「ゆぐぐっ、生まれるよぉ!」 きゅー、ぽんっ! 今日もまた村にゆっくりが生まれた 見渡せばあちらにもこちらにも ゆっくりが大勢遊んでいる 「ずいぶん仲間が増えたね!」 ゆっくりれいむが言うと 親友のまりさが真剣な顔で言った。 「れいむ、まりさは新しい ゆっくりプレイスを探しにいくよ!」 「ゆゆっ、どうして!?」 「みんなの餌場を増やした ほうがいいと思うの!」 別れるのはつらかったが まりさの言葉はもっともだった。 「すてきな村を作ってね!」 「またゆっくりしていってね!」 声援を浴びながら三角帽子の 開拓まりさたちが旅立った……。 (ゆっくり数:251頭) ========================== 第七章 ゆっくりなのに速い! かぶとをかぶった戦士れいむと 盾を持った戦士ゆっちゅりーの数は 順調に増えつつあった。 しかし古参のれいむやまりさは ただ防備を固めるだけでは いけないと思い始めていた。 「まわりの人間さんたちは どんなことをしているのかな?」 「ゆっくりできない人たちだと 困るぜ……」 「ゆー、ゆっくりちたいよ!」 若いゆっくりたちも賛同した。 「誰か周りの村を調べにいってね!」 そこで選ばれたのがゆっくりちぇん! ゆっくり一のすばやい動きと身軽さで 他の村に忍び込んだ。 「わかるわかるよー!!!」 そしてゆっくり村に 貴重な情報をもたらしたのだった……。 (ゆっくり数:184頭) ========================== 第六章 ゆっくりの防人(さきもり) 「あっはっは、たっぷりもらったよぉ!」 ゆったりれいむの下でオアシスを巡り これまでにない獲物を得たゆっくりたち。 「ゆっくりしようね!」 喜び勇んで村へと帰ってきたが、 彼女らはあることを見落としていた。 「ゆっ、村をだれもまもってないよ?」 「ゆっくりした結果がこれだよ!」 そう、遠征に出ている間 村はがらあきだった! これではいけない。 ゆっくりたちの餡子頭に危機感が 高まった、そのとき―― 「むきゅぅ~、村はまかせて!」 立ち上がったのはゆっくりぱちゅりー! 動かないゆっくりと酷評される彼女だが 防御力は天下一品。 防具工場で作られた鎧を身にまとい、 村の守りを固めるのだった……。 (ゆっくり数:124頭) ●以下、プロフ2 → ========================== 第五章 輝けるゆっくり まるい体のゆっくりたちは 日夜ゆっくりと開拓を続け 森や畑を豊かにしてきた。 「いっぱい取れるようになったね!」 「これでゆっくりできるね!!!」 暖かな日差しの中、土手に並んで ゆっくりと安らぐゆっくりたち……。 しかし彼女らは自らに足りないものを 自覚していた。 「次はなにをしようかなあ…」 「誰かゆっくりと決めてね!」 そう、この村にないもの それは全員をひとつにまとめるリーダー。 そこで一頭のゆっくりが起ちあがった! 「れいむがみんなをまとめるよ!」 館が建てられ、集中的な特訓が施される。 やがて見違えるほどの風格を備えた ゆっくりれいむが生まれた。 その名も―― 「ゆったりしているよぉ、あっはっは」 ゆったりれいむ! 英雄の旗のもと結束を強める ゆっくりたちだった……。 (ゆっくり数:108頭) ========================== 第四章 ゆっくりのお友達 「ゆぅ~、そろそろわるい人が来そうだよ」 「ゆっくりできるお友達を作ればいいよ!」 ゆっくりたちはお友達を探すことに決めた。 付近の村を回り、うわさ話を聞いて、 仲間になってくれそうな集まりを探す。 やがて、ある集まりが見つかった。 「よさそうな人だよ!」 「おじさんたちはゆっくりできる人?」 「いっしょにゆっくりしていい?」 その人々はウザうるさく空気の読めない 奇妙な饅頭生物たちを、 ゆっくりと快く迎え入れてくれた。 「おじさんたちありがとう!!!」 「れいむたちもがんばるね!!!」 「むきゅ~ん」 頭は柔らかいが頼りにならないゆっくりたち はたして同盟で うまくやっていけるのだろうか……。 (ゆっくり数:90頭) ========================== 第三章 引きこもるゆっくり 「あんまりおいしくなかったよ!!!」 「ゆぅ~、いっぱい歩いて疲れたよ……」 ゆっくりれいむたちは いくつかの放置村を巡ったが、 労力に見合った収穫はなかった。 もとより饅頭生物の彼女らは 戦争に向かない。 しかし頭のいいゆっくりぱちゅりーが 素晴らしいことを思いついた。 「むきゅ~、食べ物を隠せばいいよ!!!」 そう、木のうろに物資を溜めることは ゆっくりにとって得意中の得意。 「ここはれいむのおうちだよ!!!」 「ゆっくり食べ物を集めようね!!!」 かぶとを投げ捨て、ひたすらに 物資を溜め込んでいくのだった。 (ゆっくり数:63頭) ========================== 第二章 軍くつのゆっくり 「ゆゆっ? 資源が足りないよ!」 「取ってくればいいんだぜ!」 ゆっくりたちは遠征を思いついた。 選ばれたゆっくりれいむが 皮がすり切れるほど 厳しい訓練を受け 丈高いかぶとをかぶった。 「ゆっくり狩ってきてね!!!」 「ゆっくり行ってくるよ!!!」 餡子まんじゅうにすぎない彼女らに はたして無事戦利品を持ち帰ることが できるのだろうか……。 ========================== 第一章 ゆっくりたちの目覚め 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくりたちが農耕を始めた。 紅白のゆっくりれいむ 黒白のゆっくりまりさ 紫のゆっくりぱちゅりー みなで畑を耕し森をひらく。 「ゆっくり種をまくよ!!!」 「ゆっ、ゆゆっ!」 「むきゅぅん、早く育ってね」 テスト鯖での経験があるとはいえ しょせんは知能の低いゆっくり ウザ可愛い生き物の彼女らが はたしてこのおそろしい世界で 無事生き残れるのだろうか……。 ========================== YT 名前 コメント
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『ゆっくりくさっていってね!!!』 27KB いじめ 虐待 ギャグ 変態 希少種 現代 暇つぶしにどうぞ 初めましての方は初めまして 他作を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 単発物です。希少種優遇です。 饅・即・虐の方はご注意。 ――――某日、某時刻、自宅―――― 俺の住んでいるアパートのベランダからは駐車場を挟んだ先に、木造の廃屋が見える。 以前はこのアパートのオーナーが住んでいたらしいが 今は誰も管理する人間がいないらしく、荒れ放題。 戸は外れてしまっているし、窓は割れ、壁は腐っている。 とても人間の住める場所ではなくなっていた。 が、ゆっくりの視点から見ればその限りではない。 度々おうち宣言が行われ、饅頭共が入り浸ることになっていた。 もっともある程度賢いか、或いは善良な個体ならばそれが 人間の建てた物と分かるらしく、ここに住み着く奴はゲスが多い。 故に、時たま虐待を嗜む俺はちょくちょくその廃屋から出てくるクソゲス饅頭を失敬していた。 ところが、だ。 ここ数日廃屋から饅頭共の声がしなくなっていた。 あそこにクソ饅頭が住み着けば、ことあるごとに駐車場でアパートの住人相手に 物乞いや恐喝(笑)や強盗(爆笑)やリサイタル(腹筋崩壊)などが行われていたのだが。 ――――某日、午後6時、自宅アパート駐車場―――― そんな日々がさらに数日続いた頃だった。 久しぶりに駐車場で饅頭一家を見かけた。 俺は明日の休日の予定を虐待に変更しつつ、回収しようとする。 ところが 「どぼじでえええええええええ!? どぼじでゆっぐりでぎないのおおおおおおおお!!??」 「ゆんやあああああああああ!!!」 「おうぢざんほじいよおおおおおおおお!!!! どぼじでゆっぐりじだおうぢざんみづがらないのおおおおおおおお!!??」 「???」 廃屋を『ゆっくりしたおうち』と称するゆっくりは数多く見てきた。 しかし戸が外れて入り口の概念が薄く、見るからに無人の建造物を前に 『おうちがみつからない』とは一体どういうことか。 「ぐざいよおおおおおおおおお!!」 ………臭い? 「ゆっぐりじないであっぢいごうよおおおおおお!!!! おうぢがえるううううううううう!!!!」 「もうやだ!!!ぼうやだ!!!まりざもうづがれだああああああああ!!!」 「ごごぐざいいいいいいいい!!!ゆっぐりでぎないよおおお!!!」 何度かこいつらの言う『くさいにおい』を嗅ごうとしてみるがピンと来なかった。 しかし良く見ると、こいつ等は積極的に移動しようとはしないものの あの廃屋から離れるように身体を引きずっているようにも見える。 あそこに何かあるのだろうか? 俺は好奇心に負けて廃屋の中を覗いてみることにした。 ――――同日、同時刻、廃屋―――― 外れかけた戸をくぐると木の臭いが鼻をついた。 腐っているし先日の雨で多少湿っているようだ。 「…………?」 少し進むと、妙な臭いが漂ってきた。 なにやら形容しがたい臭いだ。 これがあいつらの言っていた臭さなのだろうか? 倒れた椅子や床に散乱した食器らしき破片をかわしながら少しずつ進んでゆく。 そして進むごとに、その臭気は強く漂っていた。 俺が入ってきた入り口は勝手口だったようだ。 キッチンを抜け、廊下を進むと、ますます臭いは強くなる。 「おいおい、一体何があるんだよ……」 まさか死体遺棄でもされているのではないだろうか? などという不安とも好奇ともとれる感情を持ちながら 臭いを辿ってボロ小屋を進んでいった。 ブーーーーーーーーーーーーーーーーン!!! 「うおあ!!!!????」「ゆっ!!!???」 2、3匹のハエが目の前に現れ、大声を上げてしまった。 すると同時に、ゆっくりらしき鳴き声が聞こえた。 驚きから鼓動の早くなる心臓を押さえつつ、俺は声がした部屋にたどり着く。 中を覗いてみると 「うぇっ……!!!!」 「あら?にんげんさんですか?」 思わず鼻と口を手で覆った。 そこにはクソ饅頭共の死体、死体、死体。 しかも潰したばかりの新鮮なものではなく、あちこちが腐って変色した腐乱死体であった。 言うまでもなくそれらには大量のハエがたかっており、強烈な臭いを発していた。 確かにゆっくりの死体がこれだけあれば、普通のゆっくり共は死臭で近寄れないだろう。 人間の俺でさえここには長居したくないと思うほどなのだ。 「……にんげんさん?どうしたんですか?」 「…………え?……ああ、あれ??」 死体の方に意識が行っていた俺は声を掛けてきたゆっくりにきちんと反応できなかった。 ゆっくりに話しかけられていることを認識した俺は少しずつ気を落ち着けて、改めて向き合った。 「ゆっくりしていって…ね?」 「はい!ゆっくりしていってくださいね!!!」 「……?」 友好の証としてゆっくり式の挨拶を交わすが、途中で少しつっかえてしまった。 目の前にいるゆっくり……こいつには、見覚えが無い。 れいむでもまりさでもありすでもぱちゅりーでもない。 希少種図鑑でも見たことが無い。何だこいつは? 「……ここは、お前の『おうち』か?」 「そうよ!ここはせいがのおうちよ!ゆっくりしていってね!!!」 『せーが』?いや、『せいが』か。 名前を聞いても覚えが無い。 「お前さん、『せいが』って名前なのか?」 「せいがはせいがよ!せいがにゃんってよんでもいいですよ!」 せいがにゃん?ひょっとしてゆうかにゃんみたいな変種だろうか? しかしゆうかにゃんに対するゆうかの様な元となる種が思い当たらない。 外見的な特徴といえば、まずは水色の髪。 頭頂部には結わえられた髪が輪っかになっている。そして結び目にはかんざしのような長い棒。 それとオプションと思われる白くヒラヒラした……羽衣、だろうか? 胴付きではない野良のゆっくりとしては小ざっぱりしていた。 あくまで野良基準だが、綺麗な方である。 せいがと名乗ったそいつはニコニコとこちらを見ていた。 クソ饅頭共にありがちなニヤついた腹の立つ笑みとは違う純粋な笑顔だった。 「こいつらは……お前がやったのか?」 「そうよ!せいがの『これくしょん』よ!」 コレクションだと……?? 「ゆっくりを捕まえて、殺して、ここに放置しているのか?」 「うん?まだしんでないのもいるよ!ほら!」 せいががピョンピョン跳ねて一匹の子れいむの残骸に近づいて示す。 ひどいものだった。 子れいむはパッグマンよろしく口を縦に90度開いて、下をだらんと垂らしていた。 歯はほとんど残っておらず、右目はくりぬかれており、髪の毛もまだらな状態であった。 それ以上にひどいのはカビだ。 体のいたるところが染みのようにグレーに変色していて、皮は部分的に剥がれ落ちていた。 ところがよくよく観察すると、下の根元辺りがぴくん、と動いた。 確かに死んでいるかそうでないかと言われると、死んでいないようであった。 「何故ここに放置しているんだ?」 「だって、かわいいでしょ?」 耳を疑った。 かわいい、だと? 現実逃避気味にれいむ種の『かわいくてごめんね!』を連想した。 しかし今の流れからしてこいつは自分のことではなくこの部屋に転がっている 生ゴミ以下のギリギリ生きている死骸もどきを指して『かわいい』と言った。 俺は別のくさった死体を指して言う。 「そっちもか?」 「ええ!くさっててかわいいでしょ?」 間違いない。 信じがたいことに、こいつはゆっくりは勿論のこと人間でさえ 不快感を覚えるゴミを可愛いと思っている。 何かやばい気配を感じつつも、俺は再びせいがを見た。 相変わらず機嫌が良さそうにニコニコしている。 こいつはそれなりに、いやかなり可愛いと思う。 俺はせいがの機嫌をとるために、話を合わせることにした。 「そうだな、可愛いな」 「そうでしょ!かわいくて、ゆっくりできるわ! こっちのありすなんてすごいのよ!みてみて!!」 共感出来たことが嬉しかったのか、次々に腐ったクソ饅頭談義に付き合わされた。 時折寄ってくるハエを払いながら、そんな時間が数十分は続いた。 ――――同日、午後7時、廃屋―――― 「おにいさんはとてもゆっくりしたひとね!」 「ああ、お前も、すごく、ゆっくりして、るぞ?」 「ありがとう!おにいさん!」 長時間腐臭にさらされた俺の鼻は若干バカになってきている。 臭いと死体と腐った饅頭談義に付き合ったことでげんなりしてきたが これまでの時間で色々なことが分かった。 片手間に携帯でデータを洗ってみたが、こいつは間違いなく未発見のゆっくりである。 死体を集めて、腐らせて、それを並べて鑑賞するのが趣味。 捕食種ではないが、ゆっくりを口にすることのさほど抵抗が無い、等。 呼び名も『にんげんさん』から『おにいさん』に変わる程度には信頼度が溜まってきた。 そこまできて俺は、せいがをお持ち帰りしたいと思い始めている。 「なあ、せいがはずっとここで暮らしていくつもりか?」 「ゆ……せいがはのらだからいつまでもここにはいられないかもしれないわ……」 一斉駆除や虐待鬼意山を見たことでもあるのだろうか。 声のトーンが落ち、少し暗い顔になる。 「なんだったら、家に来ないか?」 「ほ、ほんとう?せいがをかいゆっくりにしてくれるの?」 「……ああ。だがしかし、ここにある『これくしょん』はどうするんだ?」 「うーん……ざんねんだけど、おいていくしかないわ…… せいがにははこびきれないし……」 四畳半と思われる部屋の半分を埋め尽くす腐乱死体を 原形を留めたまま運び出すのは不可能に近い。 「でもいいわ!せいがの『これくしょん』はながもちしないし またあつめればいいんだから!」 「…………」 俺は質問の二つ目の意図の答えを聞いて頭を抱える。 せいがは腐乱死体をコレクションすることを至上のゆっくりとしている。 それを切り離すのはかなり難しいだろう。 こいつとてゆっくり。 ゆっくりからゆっくり出来ることを捨てさせるのは専門のブリーダーでも困難を極めるのだから。 かと言って、アパートにある俺の部屋をハエのたかる生ゴミ屋敷に変えるわけにもいかない。 そこで俺はせいがにいくつかの提案を持ちかけ、めでたく飼いゆっくりとすることに成功した。 ――――数週間後、某時刻、自宅―――― 虐待鬼意惨の中には、れみりゃやきめぇ丸等のゆっくりを相棒として共に虐待を行う者もいる。 とりわけ希少種は人間と仲良くなれるケースが多いので、愛で派の人にも需要が高い。 そして今回俺が出会った『せいが』は希少種は希少種でも、新種のゆっくりであったようだ。 何故それがあっさり分かったのかというと、全国で同時多発的に発見されていたからであった。 『きょうこ』『みこ』『かせん』……そして『せいが』。他にも数種類、ネット上で一躍有名となっている。 そんな時代背景はさておき。 銀バッジ取得試験を通過し名実共に飼いゆっくりとなったせいがと俺は虐待にいそしむ日々を送っていた。 ちなみに金を取っていないのは、銀以上に金や時間がかかるのと せいがの『趣味』を鑑みた結果少々合格が危ぶまれるからである。 「ただいま」 「はぁ………かわいいわぁ……(うっとり)」 俺が帰宅したことにも気付かず、ゆっくりの腐乱死体の鑑賞を続けているのは件のゆっくり、せいがである。 「帰ったぞー?」 「あ、おかえりなさい、おにいさん。 このれいむ、くさっててかわいいでしょ?」 「……そうだな」 せいがが羽衣で指したのは、数日前に腐り始めた赤れいむの成れの果てであった。 オレンジジュースの点滴を受けているため、命の灯火は未だ消えていない。 「………っ……え゙……………」 なにやら口が動いたような気がするが声は出ていない。 虐待時に行う体力回復の為ではない点滴である為、数時間に一滴程度の量が中枢餡に注がれている程度のものである。 生かすため、というよりは死なせないための措置である。 「はぁ………ゆっくりできるわね、おにいさん……」 「そうだな」 可愛いには同意できないがゆっくり出来る、には同意。 これほどみじめな死に様、いや生き様をさらせるゆっくりはそういない。 虐待好きにはなかなかにゆっくり出来るオブジェであった。 部屋の真ん中、俺達の目の前にあるのは密閉保存用の大型タッパーである。 ゆっくりに空気穴は不要なので、完全密閉を前提に用意したもの。 この中にはまず、すのこを敷き、土を被せ、水で湿らせ、ある程度の雑草を植えてある。 その環境下でゆっくりは確実にカビに侵食され、腐りゆく。 透明なタッパーであるためそれは鑑賞し放題である。 内部に仕込まれたオレンジジュースの点滴も相まって、簡単に死んで形を失ってしまうことも無い。 「おにいさん、きょうも……」 「あー、ちょっと待て……ほれ、デジカメ」 デジタルカメラをせいがに渡すと、羽衣で器用に操って前後左右から赤れいむの様子を撮影していった。 せいがの写真の『これくしょん』はアルバムとデータを合わせると千を下らない。 結果的にこの『真空保存』と『写真』によってせいがの趣味の質が飛躍的の向上した。 まあ、自然のままゆっくりをとっ捕まえて放置するだけよりも人工的な力に頼るほうがいいに決まっている。 腐り加減の調整や長期保存ができ、せいがは以前よりも遥かにゆっくりを満喫するようになったようだ。 「おにぃさぁん………すごくかわいいわぁ………すてきよ………」 頬を染めて上気した顔、そして声を聞いて『お前のほうが可愛い』という台詞をギリギリで飲み込んだ。 上着をハンガーに掛けてせいがの近くに腰を下ろす。 手に持っているのは虐待鬼意惨御用達の透明ボックスである。 「前の奴を捨てて空きが出来たからな。今日は新しい奴を回収して来たぞ」 「ほんとう!?おにいさん、ありがとう!!」 新たな『素材』に目を輝かせるせいが。 そして部屋の隅にあった空の真空タッパーを示す。 「じつはもうあたらしいはこのよういができてるの!」 見ると、中には既にすのこや土といった必要な物が敷き詰められている。 「用意がいいな。では……」 「はなぜえええええ!!!まりざざまにぎだないででざわるなあああああああああ!!!!」 透明ボックスから成体のまりさを取り出した。 途端に防音効果が失われたそいつの喚き声が響いた。 『素材』はゆっくりならば何でも良いだのが、俺が持ってくるのはゲスが中心。 勿論、元々は俺の趣味だったのだが… 「うふふ、くちきたないことをいうげすはきょういくがひつようですね?」 せいがは先程のうっとりとした微笑とは違った、どこかサディスティックな笑みを浮かべている。 どうもこいつは、邪な素顔が見え隠れするような気がする。 その証拠の一つとしてゲスと見ると攻撃に躊躇が全く無く、徹底的に痛めつけるのだ。 ずいっとまりさの前に躍り出ると、羽衣を大きく振り上げる。 「ゆっ?ゆっへっへ、なかなかのびゆっくりなんだぜ! とくべつにまりさがかわいがってやるからまむまむをこっちへ、ぶべ!!!」 せいがの羽衣が鞭のように振るわれ、まりさの右頬を打った。 ワンテンポ遅れて、まりさが癇癪を起こす。 「なにずるんだぜええええええ!!!ずっぎりどれいのぶんざいでまりざざまにべばぁ!!!」 「ごめんなさい、いまのじょうたいのあなたにはあまりきょうみがないの♪」 「なにいっで、ゆぶ!!ご、ごのびば!!ゆべぇ!!もう!!やべ!!ぶびゃ!!おうび!!」 最初はゆっくりだった羽衣の攻撃が徐々に速くなってゆく。 「ぶっ!びゃ!がっ!びっ!ばっ!…っ!!ゆ゙っ!!」 「ほらほら!どうしたんですかぁ!?わたしをすっきりどれいにするんでしょう!? はやくやってみてくださいよぉ!!さぁさぁ!!」 初めの何倍もの早い速度で襲い来る羽衣が上下左右からまりさを打ち据える。 「ゆ゙っ!ぎゅ!べ!ば!あ゙!ぎ!げ!ぼ!」 右に弾け飛んだら右から、上に持ち上がったら下へ叩きつける。 まりさの顔は瞬く間に赤く腫れ上がっていった。 刃物でも鈍器でもない羽衣は対象に大きな傷をつけることも無く それでいて着実にダメージを与えていった。 ……………………… ……………… ……… 「ぼっ……………ゆ゙る゙……じ……………ばり゙ざ゙………じん…じゃ……………………」 「あらあら、これくらいじゃしにませんよ?おおげさですねー」 十分後。 さすがのせいがも疲れてきたのか、荒い息をしながら『きょういく』を終えた。 ……?なにやら表情が恍惚としているような……。 「かるくいっちゃいましたわ………♪」 「余計なことは言わなくていい」 「ふふっ……♪」 ペロリ、と唇をなめる仕草がいやに頭に残ったが、気にしないことにした。 「だずげ………に゙ん゙………げん゙ざ………ごろ゙……ざ………れ゙……………る゙………!」 これはひどい。 一部始終を見ておいてなんだが、まりさの顔面はさながらア○パ○マ○のように要所要所が真っ赤に腫れていた。 目と口は腫れた外皮に圧迫され、ほとんど見えない。 動けなくなるまでいたぶられたそいつを持ち上げ、せいがが用意していたスィートルームにご招待した。 「心配せんでも、殺しはしない。 お前さんはそこでずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと ゆっくりしているだけでいいんだ」 「あ゙でぃ…………が…………ど……………ご…………………」 「もう喋るな、今日は休め。あ、少々チクっとするぞ」 「ぴっ…………!」 オレンジジュースの点滴針をトンガリ帽子の頂点から中枢餡近くまで刺し込み、瞬間接着剤で固める。 少し引っ張って抜けないのを確認すると、真空タッパーの蓋を閉めた。 そのタッパーを専用のテーブルにビニール紐とガムテープで固定し、準備は完了。 一連の作業が終わった後、俺とせいがは目配せをしてから声を揃えて言った。 「「ゆっくりくさっていってね!!!」」 ――――翌日、某時刻、自宅―――― 「ゆがあああああああああああ!!!! だせ!!だせ!!!まりささまをここからだすんだぜええええええええ!!!!」 「おにいさん、どうですかこれ?」 「ああ、悪くないな。さすがだ」 ある程度ダメージから回復したまりさは専用ボックスの中で暴れていた。 声はさほどうるさくは無い。本当にうるさくなったら透明ボックスを蓋代わりに被せれば万事問題ない。 もっとも、俺達は気にせずに日常を送っていた。 しかしながら、たまにせいががからかう目的でまりさと言葉を交わしている。 「どれいいいいいいいいいいい!!!! はやくまりささまをだせええええええええ!!!! せいっさいっしてやるのぜえええええええ!!!」 「あらあら。でられないのにどうやってせいさいするのかしら? さいじゃくでむのうでおばかなまりささま?」 「ゆがあああああああああああ!!!!! ばりざをばがにじだなあああああああ!!!! ごろず!!!ごろず!!!ごろじでやるううううううううう!!!!」 「ですから、でられないのにどうやって?」 「おまえがここからだせばいいだろおおおおおおおおおお!!!!!」 「まあ、おばかさんですね! せいさいされるのにわたしがだすわけがないでしょう?ばかですか?しぬんですか?」 「~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!! じねえええええええええええええええええ!!!!!」 「まあまあ、いいかえせないとなったらしね、としかいえないんですね! あなたはすじがねいりのおばかさんですね!!!」 「だまれええええええ!!!だまれえええええええええ!!!! ばりざはざいっぎょうでゆっぐりのおうになるうつわだぞおおおおおおおおお!!!!」 「おやおや!これはしつれいいたしました!あなたはそのはこのなかのおうさまでしたね! そのなかではあなたはなんでもじゆうにできるんですから! 『そのなか』だけですけどね!!」 「ゆっがあああああああああああああ!!!!」 せいがはタッパーの中のまりさを徹底的におちょくっていた。 まあ、このペースが続くのもせいぜい今日明日限りだろう。 ――――開始から三日後、夕食時―――― 「おでがいじばずうううううううう!!!! ばでぃざにごはんざんをぐだざいいいいいいいいい!!!!」 「むーしゃむーしゃ、ふーどさんおいしいですねー! とってもゆっくりできますねー!」 「ああああああああああああああ!!!! おでがいじばず!!ひどぐぢ!!ひどぐぢだげでも!!! ひどぐぢだげでもわげでぐだざいいいいいいいいいい!!!!!」 「うーん、しょうがないですねー。 さいごのひとつぶくらいあげましょうかねー」 「あ……あでぃがどうございまず!!あでぃがどうございまず!! はやぐむーじゃむーじゃざぜでええええええええ!!!!」 「あらいけない。ふんでしまいましたわ」 「ああああああああああああああ!!!! どぼじでええええええええええ!!!! ばりざのごはんざんがああああああああああああ!!!!」 「こんなこなごなになったふーどさんはたべられませんねー」 「ごなごなでもいいです!!!ひどがげらでもいいでず!!! ばでぃざにぐだざいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「えー、ですが『ゆっくりのおう』のまりささまにこんなものをおだしするわけには。 わたしがせきにんをもってたべておきますね♪」 「だべええええええええええ!!!やべでええええええええええ!!!! ばりざにだべざぜでええええええええええええ!!!!」 「うん、こなごなになってもあじはかわりませんね♪」 「ゆんやああああああああああああああ!!!!!!」 ひとしきりまりさをからかった後、せいがが俺の近くに寄ってきた。 「おにいさん、こういうあそびもいいですねー」 「お前、多分俺より虐待上手だぞ……」 「おやおや、ひとぎきのわるいことをいわないでください。 これはただのよきょう。『これくしょん』せいさくのよだんにすぎませんわ♪」 「ソウデスカ」 「それよりおにいさん。すーりすーりしてくれませんか? ゆっくりはさびしいとしんじゃうんですよ?」 「俺はまだ食事中だ」 ――――開始から一週間後、夜間―――― 「うふふふふふ。いまどんなきもち?ねぇいまどんなきもち?」 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙っ………ぼ……ぼうやだ……… ずっぎりじだいぃ……!ゆっぐりでぎないぃ…………!!!」 「ほらほら、まだぐーらぐーらしますよ?」 「ぼ………ぼうゆらざないで………… べにべに………ばりざのべにべにごわれじゃう…………!!!」 「まだまだねをあげるのははやいですよ? すっきりをしてしそんをのこすことも『おうさま』としてとうぜんのつとめですから」 「ばりざはおうざまなんがじゃありばぜんんんん…………!!! ゆっぐりでぎないごみぐずでずがら……!!おでがいだがらいじべないでぇ……!!」 「おやおや、あなたはゆっくりできないゆっくりだったんですね?」 「ぞうでず!ぞうでず!!だがら……」 「じゃあゆっくりさせてあげません♪」 「どぼじでええええええええええええ!!!!!」 「ゆっくりしてないゆっくりなんでしょう? ならゆっくりするのってへんじゃないですか?」 「おでがいだがらあああああ!!!おでがいじばずううううううう!!!! ばりざを、ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!!!」 「あら?すっきりしたいんじゃなかったんですか? ほら、ぐーらぐーらですよ?」 「ずっ……ずっぎりじだいいいいいい!!!!」 「あら?ゆっくりしたいんじゃなかったんですか?」 「ゆっぐり……ゆっぐりじだいいいいいいいいい!!!!」 「あら?すっきりしたいんじゃなかったんですか?」 「ずっぎ……ゆっぐ……ゆっぐり…………………………? ぼうやだああああああああああああああ!!!! おうぢがえるううううううううううううう!!!!!」 「あらあら、おばかさんですね。おうちってどこですか?ここじゃないんですか? どこがおうちかわかってるんですか?」 「ゆっ……ぐっ………もう!もういじべないでええええええええ!!!! ばりざをゆっぐりざぜでえええええええええええええええ!!!」 「あら?すっきりしたいんじゃなかったんですか?」 「ぞんなごどじらないいいいいいいいいいいい!!!!!」 「あら?ゆっくりしたいんじゃなかったんですか?」 「ゆんやあ!!!!ゆんやああああああああああああああああああ!!!!!」 「あらあら、おへんじもちゃんとできないんでちゅか?まりちゃちゃんは? ほら、ぐーらぐーら」 ……………………… ……………… ……… 「ふう、ながくたのしむってたいせつですねー」 「…………」 せいがは奴に暴れる元気が無くなったため、固定していた紐とテープを外して欲しいと頼んできた。 まさかそれが箱を揺らして強制的に発情状態に持っていくためだったとは。 「おにいさんも、ゆっくりできましたか?」 「まあ、それなりには……」 「あらら、それなりなんですか? もっといんしつでのうこうないじめのほうがおこのみでしょうか?」 そうじゃない。いや、虐待自体は見ていて楽しい。 だが、それ以上に虐待をして嬉しそうなせいがの姿を見ているほうがゆっくりできるのだ。 その現れの一つとして、虐待を撮影するふりをしてせいがの方をカメラに収めている。 いかんなぁ。虐待派から、愛で派になりそうだ。 いやむしろHENTAI派に向かっているような気がするのだが気のせいだろうか? ――――開始から二週間後、夜間―――― 「うふふ、ついにはえはじめましたね♪」 「……………………………ゆ?なに、が…………?」 「かびさんですよ。ほら、あなたのかおに」 「…………ゆ?ゆやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!!! かびさんはゆっくりできない……!!どっで……!どっでよぉぉぉぉ………!!」 「あらあら、おにいさんならともかくわたしにかびさんをとるなんてむりですよ」 「だっだらにんげんざんにだのんでぐだざいぃ………!! ばりざ、かびざんがはえるのいやぁぁぁぁ………!!!」 「ざんねんですか、おにいさんはあなたのようなごみくずにさわったりしませんよ♪」 「ばりざはごみぐずじゃないいぃぃ…………!!! ごみぐずじゃないがら、ごれをどれぇぇぇぇ…………!!!!」 「おや?『ゆっくりできないごみくず』ってじぶんでいったんじゃないですか。 もうわすれたんですか?さすがごみくずのあんこのうですね。 いいえ、もうすぐそののうみそもかびがはえたごみになるんでした」 「お……おでがいじばずぅぅぅ……!!なんでもじばずがら……!! なんでもじばずがら………ばりざをだずげでぐだざいぃぃぃ………!!」 「なんでもするといいますが、なにができるんですか?『ごみくずまりささん』?」 「ばりざはがりがどぐいでずぅぅ……!!ゆっぐりじだごはんざんをあづめらればずぅぅ……!!」 「ゆっくりしたごはんさんとは?」 「むじざんでも……ぐざざんでも……おはなざんでも……!! ばりざならどっでごれまず………!」 「あら、おにいさんのもってくる『あまあまさん』のほうがはるかにおいしいですよ?『ごみくずまりささん』? ほら、むーしゃむーしゃ、しあわせーですね♪」 「あ……あばあば…………あばあばぁぁぁ…………………!!! ぞれ………ぞれぐだざい…………ばりざ……………じにぞうなんでずぅ…………!!!」 「うふふふふふ、しんぱいしなくてもとうぶんしにませんよ。 いえ、かんたんにしんでもらってはこまるのです。 あなたはかびにからだじゅうをむしばまれ、くるしんで、くるしんで、くるしみぬいていきるんです。 『ごみくずまりささん』にはおにあいでしょう?」 「ゆんやあ……ゆんやあ………やだぁ………やだぁ………… ばりざ、ゆっぐりじだい………ゆっぐりじだい…………ゆっぐりざぜでぇ……………」 「ですから、あなたはゆっくりしていない『ごみくずまりささん』なんですからゆっくりできないんですよ。 どうしてゆっくりしようなんてかんがえるんですか?」 「ばりざだっで……ばりざだっでいぎでるんだよぉ………? がげがえのないいのぢなんだよぉぉ………………? どぼじでばりざがごんなめにあうのぉぉ…………?」 「ですから、ゆっくりしていないからですよ『ごみくずまりささん』? ゆっくりしていないゆっくりはせいっさいっされるものだって みんなしっているでしょう?」 「ごんなのぉぉ………ごんなのやりずぎだよぉぉ………どぼじでごんなごどずるの…………」 「ですから、あなたがゆっくりしていない『ごみくずまりささん』だからですよ?」 ……………………… ……………… ……… せいがとまりさの話が単調になってきた。 もういくばくの思考力も残っていないのだろう。 まあ、何を言っても『ゆっくりしていない』と言われてしまうだけなので 会話する気力も失せるというものだが…。 「おにいさん、かびさんがはえてきましたよ。そろそろですね♪」 「ああ、そうだな」 まりさとは対照的に、せいがはどんどん活き活きとしてくる。 やっぱり自身が言っていた通り、腐らせるのが本来の目的なのだろう。 待ちきれないといわんばかりにワクワクした様子で元気の無い『ごみくずまりさ』を見ていた。 ――――開始から三週間後、昼過ぎ―――― 「いじゃあ…………いじゃいぃぃ…………なにごれ…………なにごれぇ………!!!」 「とうとうはじまりましたね♪」 「だずっげっ……だずげ………がっ………ばりっ……ざっ………じ………じに……………」 「ふふ、いつもいっているとおり、あなたはしにませんよ。 かびさんがぜんしんにはえていますからね。 なかのあんこさんにもえいきょうがではじめたのでしょう」 「いだ…………いだい…………いだ…………あん……ごっ………ざん…………ゆぐう………!!!」 「いたいですか?くるしいですか?ですが、まだまだはじまったばかりですよ。 これからあなたはさらにかびがはえ、こけがはえ、くさってうごけなくなっても、いきつづけるんです。 そして、かわいくなれるんですよ♪よかったですね。 さいごのさいご、ゆっくりできるそんざいになれるんですから♪」 「ぞんっ………な…………のっ…………ゆっ……ぐり………じゃ………な………… ゆっぐ………り………っで………………………ばり……………ぼっど……ゆ……………ぐ……………………」 「あらあら、しにもしないのに『もっとゆっくりしたかった』なんて。 おにいさんがさいしょにいったとおり、あなたはここで ずうううううううううううううううううううううううううううううううっとゆっくりできるんですよ♪よかったですねー」 「………………………………………………………」 ――――開始から二ヶ月後、夕刻―――― 「このまりささん、もうしんでしまいましたか?」 「……の、ようだな。眼球運動も全く無くなった。 腐るのもピークを過ぎただろうか」 「はぁ………でも、かわいいですねぇ…………」 「そうか……」 真空タッパーの中でまりさはカビと苔、キノコまで生えた身体をしていた。 あまりに何でもかんでも生えたその姿は右目を残して完全にカビ、苔、キノコに覆われて見えなくなっていた。 もはや、ちょっと箱を動かしただけで崩れゆく存在だろう。 「まりささんのあるばむもいっぱいになりましたから、そろそろ……」 「ああ、もう捨てごろだろう」 まりさが会話できなくなってから今までの期間、何を思って生きていたのかは分からない。 しかし、ゆっくり出来ていなかったのだけは確かである。 「ちょっと、なごりおしいですね……こんなにかわいくしあがったのに……」 「はっはっは………こうなってしまってはさすがに『腐ったゆっくり』の範疇を超えている。 もうこいつはまりさであった別の何かになってしまってると言っていいだろう」 「ふふ、そうですね。それに、しゃしんはいっぱいとりましたし わたしたちをたのしませてくれたぶん、まりささんもおそらのゆっくりぷれいすでゆっくりしてもらいましょう。 あるかどうかわかりませんけどね」 よいしょ、と俺が箱を持ち上げると案の定まりさは形状を保っていられずに崩れた。 あとはそこらへんの山にでも埋めてくるとしよう。 「それよりおにいさん、こちらのありすさんもそろそろいいくさりかたをしてきましたよ」 「そうだな…」 「ああ………なんてかわいいのでしょう………♪」 俺は相変わらず、せいがの趣味は理解に苦しむが、言葉責めを中心とした虐待はわりと好みだった。 今度、たまには身体的な虐待の方も勧めてみようか? そちらはそちらで、サディスティックな面を覗かせるせいがの新たな趣味を確立することになりそうだが…。 「ゆ………が……………じに………だい………ごろ………じ……で………おでがい……………」 「そんなかなしいことをいわないでください。 いまのあなたはとってもかわいくて『とかいは』ですよ♪」 まあ、俺はこの『かわいい』とうっとりするせいがが可愛いと思うので この状態をもうしばらく維持するのも悪くないかもしれない。 ――――某日、某時刻―――― 朝、俺が目を覚ますといつの間にか胴が付いたせいがが俺の上に跨り 白くて臭い液体にまみれているのという事件があったが、それはまた別の話。 「うふふふ…………おにいさんの……………かわいいわぁ……………♪」 ゆんやあ。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 挿絵:
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ゆっくりこしていってね! 4KB 小ネタ 実験・改造 加工場 現代 独自設定 うんしー 属性、うまく選べてないです ごめんなさい *セールス 漢字って素晴らしいですね セールスあきさんに触発されました 虐待描写うすいです 今日も始まってしまいました、通信販売コーナー 担当しますは私、作者ですよろしくお願いします! はい、本日紹介する商品はこちら! 非常時用飲料確保器です (ゆ?あかるくなったよ?) 地震、洪水、火山の噴火、あるいは渇水 怖いですよね いつ来るか分からないですものね え?これから行くよって告げてくる災害のほうが怖いって? 「私、(台風)15号、今あなたの沖合いにいるの」 こうですか?わかりません ま、それはさて置き、早速商品の紹介に移りましょう! 当番組の飲料水製造器はそん所そこらに売っている簡易濾過器とはわけが違います 多少手間はかかりますが、なんと! 精製された水に含まれる大腸菌その他の数、検出可能数以下! 泥やごみを取り除くだけではありません 気軽に飲める、安全な水を作るのです 津波、地震、近年でも沢山ありましたね それら災害に遭われて命かながら脱出に成功されても、その後に体調を崩されて亡くなられた方は大勢います その中でも特に多いのは疫病、様々な雑菌に侵される感染症です 普段衛生的な都会に住んでいて免疫力の弱った現代人の体 それに更に追い討ちを加えるかのような強大なストレス 徐々に響いてくる、空腹による体力の損耗 健康な大人と言えどこれでは堪りません! 老人、子供、病人ならば以ての外!一コロです でも大丈夫、この濾過器さえあれば、それらはすべて解決します 先にも述べましたように以下の機関(画面下のテロップ)に検査を依頼した処、 10機関中9機関が有害な細菌群を検出せず、 残りの一軒の検査結果も検出するはしたものの 人体に害を及ぼすには10000倍以上に増殖してようやく食あたりを起こせるかどうかといったレベルの非常に清潔な水との評価です コロリ、赤痢、どんと来い、掛かって来なさいO-157! これならば避難所でも安心して水が飲めます また単に清潔なだけではありません、 適度なミネラル分やカロリーをも含んだ、理想の飲料水です では次に使い方を実演しましょう 取り出したるは濾過器の本体、ゆっくりです 「ゆっくりしていっt」 はい、うるさいよー カポンッ (ぇね!?ゆゆゆゆゆゆゆ!?) このステンレス製の箍を口にはめ込み、大きく開かせます 次にこの…浣腸器じゃ無いですよ、そこの娘さん 餡軟化剤と餡排出剤を口に投下します チューっとな (ゆ、ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ お、おに゛ゃかがいぢゃいいい、からだにちからざんがはいらないいい) しばらくすると餡子を排出し始めるので付属の容器で受け止めてください これも重要なパーツなのでしっかり密閉してください 体積が2/3程になったら模様が浮き出てきますので付属の栓を挿入し、スイッチを押してください ガッ (あ、あにゃるがざけるぅぅぅぅ) 内部で傘が開き、しっかりと固定されます その際、この様に挿入が浅いと (ゆっぎゃああああ……、も…っどゆっく…りじだ…かっ…) 皮が裂けてしまい使用できなくなるので、ラインまでしっかりと差し込んでください 後はこの専用のアクリル製の箱に本体を入れ、蛇口を挿入します プスッっとな (ちーちーこうぎゃぁぁ、ざ、ざけでる、やべで) はい、組み上がった濾過器の上に漏斗を設置し (おぶっ、おどになにがざざってるうう) 台の上に載せ、水を…水責めとか言うもんじゃありません、お嬢さん…注入します (お、おぼれりゅ) ゆっくりが溺れないのかって? 呼吸もしないのに溺れるはずがありません 饅頭なのに溶けないかって? そこがゆっくりの良い所! 外部からの水との接触には極端に弱いが、内部からの水の接触ではまず溶けない不思議材質 その分雨には十分ご注意ください お、そろそろ良いようですね では早速試飲してみるとしましょう ゴクッン ほんのり甘くておいしいですね どうですか?まぁまぁ一口どうぞ そうでしょう、そうでしょう なぜ、こんなに甘くないのかって? 種明かしをしますと先ほど使用した薬がタネです 通常のゆっくりの分泌物は(意外にも)清潔ではありますが、ひどく甘く飲料用には向きません しかし多くの餡子を失った個体の分泌物は必死に溶質を確保しようとするので、かなりのうす味となります そこへ大量の水が加わったのだから、のど越しさわやかっ!なこの味が実現されます 非常時だけでなく湯上り、運動後、発熱時、様々な生活の場でお役に立つこと請け合いです 20lほど濾過をすると損耗し始めるのでその辺りになったら 原水に先ほど付属の容器に詰めた餡子を小さじ一杯ほど大まかに溶かして注ぐだけで再生できます また加える量、間隔により、お好みに合わせて甘さを調節することができます 更に更に今回だけの特別サービス! 紅白、黒いのだけじゃない!牙がぷりてぃな青いの黄色いの、も一つおまけだ! ひまわりマークがオシャレ!緑のもつけちゃう!これでお値段据え置き、9980円、9980円 社長の涙が止まりません ご注文の電話も止まらないよう、よろしくお願いします! 0120-xxx-xxxx~、通販ゆんごく♪ …これはさっぱり売れなかった しかしその後復讐に燃えた社長が幾多の涙としーしーを飲み干した執念の果てに開発した 「ゆくりすえっと」の前身となることをまだ誰も知らない はい。このような駄文を読んで頂き、ありがとうございます。 ちなみに(台風)15号さんは伊勢湾台風をイメージしていただけると幸いです あんまり短いんで上げようかどうしようか悩んだのですが、 現在作成中の長編SSの完成の目処が立たないので、思い切って上げることにしました ごめんなさい 最後になりましたが、前作を読んで、更にコメントまでしてくださった皆様 この文末をお借りしましてお礼申し上げます ありがとうございます! 前作 ふたば系ゆっくりいじめ 468 ありす観察日誌 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓×8 薬剤と器具が高いんだろ。(むしろゆっくりはイラネ) 病原菌が出ないのは魅力的だが、ゆっくりの保存方法&保存期間と甘い水が問題だな。 ポカリ&アクエリに近付けた発想はスゴイ。 -- 2018-04-12 18 06 59 緊急時にしては時間かかりすぎ -- 2016-05-10 22 19 06 ms -- 2014-05-31 01 25 41 ↓↓↓ちゃんと読めよ雑魚!馬鹿なの?死ぬの? -- 2014-05-31 01 25 14 ゆっくりゆうかはやめろ -- 2012-07-28 00 27 19 ・・・・・ -- 2012-03-27 21 00 29 ↓↓原材料がゆっくり?なに言ってるの?ばかなの? -- 2011-01-16 17 32 11 青いのと黄色いのとひまわりうんぬんの緑だけでもその値段出せると思うんだが -- 2010-09-15 14 25 15 原材料がゆっくりなのに9980円は高すぎ。 -- 2010-08-18 15 49 45