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魔法少女リリカルなのはGE(黄金体験!) クロス元:ジョジョの奇妙な冒険 プロローグ 第一話 第二話 TOPページへ このページの先頭へ
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魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム ◆19OIuwPQTE /01「決死の一手」 少し遠くで激しい戦闘音が聞こえる。 確認するまでもなく、なのはとキングが戦っているのだ。 それに引き摺られるように、仮初めの世界が鳴動する。 その振動でヴィヴィオの首筋に当てられた真紅のレイピアが僅かにぶれ、出来 た傷から血が一筋溢れる。 ユーノは思わず駆け寄りそうになるが、辛うじて自身を押し留める。 「どうした、応えられないのか?」 「………………ッ!」 そんなユーノの様子などお構いなしに、金居は答えを要求する。 ユーノは拳を握り、歯を食いしばる。 そして搾り出すように、ゆっくりと答えた。 「…………僕たちはこの【E-5】にあると思われる、“参加者を望んだ場所に転 移させる魔法陣”を使って脱出を考えていた」 その話し方から、ユーノが時間を稼ごうとしている事を、金居には容易に推測 できた。 だが金居は、ユーノが喋っている間は待ってやってもいいと判断した。 「もちろん、その魔法陣がまだ残っているとは限らないし、あったとしても脱 出に使えるかどうかは判断がつかない。 それにもし脱出できたとしても、僕たちは首輪から解放されてずいぶん経っ ている。 当然、危険な罠だって用意されているはずだ」 その理由は、絶対的優位から来る余裕。 もとよりヴィヴィオを捕らえている限り、脱出に関する利は金居にある。 「それでも、僕達にはこれしか方法がなかった。 たとえどんなに部の悪い賭けだろうと、どんなにリスクが大きかろうと関係 ない。 僕たちは絶対に諦めない、最後まで足掻き続ける。そう誓ったからね」 それに自分はアンデット。何が起こったところで、容易に死ぬ存在ではない。 故に金居は、僅かでも情報があればいいと、ユーノを止めることをしなかった のだ。 「だから僕たちはここに来たんだ。 このエリアの何処かにある魔法陣を見付け出して脱出をするか、それが出来 なくても何かの助けになればいい、そう願って調査・解析するためにね」 そしてそこまで聴いて金居は、少しだけ襲撃を早まったか、と思った。 金居(ついでにキング)は一度、八神はやてと共に魔法陣による転移を経験し ている。 つまりその場所も、その有用性も知っているという事だ。 だが自分たちは魔導師ではない。 つまり魔法陣を起動させることは出来ないということだ。 だがあと少し襲撃を遅らせていれば、ユーノ達を誘導し、魔法陣を起動させた ところで、シルバーケープを使って紛れ込むなり、無理矢理便乗する事も出来 たかもしれない。 そうすれば、たとえ転移に失敗しようが、転移した先に罠があろうが関係ない。 もし失敗しても、その時はその時。予定通りに行動すればいい。 それに自分たちはアンデッド。 たとえどんな罠があろうが、この会場から出てしまえば決して死なないからだ。 だが、それほど深く考えることでもない。 何故ならここには、二人も魔導師がいる。 なのはの方はキングが殺すだろうから使えないが、魔法陣を起動させるだけな ら一人だけでも十分すぎる。 従わなかった時は、殺せばいいだけだ。 金居はユーノの話を、そう結論づけた。 「それで話は終わりか?」 「残念ながらね……」 「そうか。 ならばついて来い、お前たちには魔法陣を起動してもらう。魔法陣の場所も 知っている」 「――――――ッ!」 「もっとも、何かの隙に反旗を翻されても困るのでな。可能であるのならば、 いつでも起動可能なようにしてもらう。 無論、拒否すれば殺す」 「わかった」 金居はそう言うと、ヴィヴィオに刃を当てたまま、魔法陣のある場所へと歩き 出した。 その時金居は、妙に物分かりの良いユーノに僅かな疑念を抱いたが、どうでも いいことと捨ておいた。 それが、ユーノの決死の策の、微かな失敗と気づかずに。 /02「エースオブエース その手の魔法」 地面に膝を付き、肩で大きく息をする。 対する相手は、傷一つなく、息も乱れた様子がない。 自らを最強と自負する敵――キングは、その言葉通りに圧倒的な力を持ってい た。 最強となるのに、複雑な技や入念な策などいらない。 すべてを砕く剣と、すべてを防ぐ盾があればいい。 キングの所有する最強とは、つまりそういう類のものだった。 その剣は、まともに受ければなのはのシールド魔法であっても容易に砕いた。 その盾は、なのはの砲撃魔法を防ぎきり、キングの死角からの攻撃にも対応し た。 かと言って、より強力な砲撃を行おうと足を止めれば、念動力でレイジングハ ートを奪おうとしてくる。 剣技自体はそれほどでもなく、遠距離攻撃にも乏しいのが救いといえば救いだ が、それでもその攻撃は苛烈だ。 防御し続ければ、容易に魔力を削られるので、回避するしかない。 それでも何度か攻撃は通っていた。 なのはが見つけた、キングの盾のただ一つの隙。キングが剣を振るって攻撃す る瞬間の、その剣筋のライン。 いかなる理由からか、そこにだけは、盾によるオートガードが発生していなか った。 なのははその僅かな隙に、幾度もシューターによる攻撃を行った。 だがその効果は薄く、ダメージを受けた端から再生していく。 今でこそ直接的な傷はないが、バリアジャケットはすでにボロボロだ。 このままでは、いつか決定的なダメージを受けてしまうだろう。 『大丈夫ですか、マスター』 「大丈夫、とは言いえないかな」 むしろ最悪と言ってもいい。 こちらの攻撃は殆ど効かず、あちらは一撃当てればそれだけで優位になる。 そうなる前に、どうにか効果的な一撃を当てなければならない。 「やっぱり、あれしかないかな」 『現状ではそれしかないでしょう』 「剣を交わしてその隙に砲撃を撃つか」 『盾の張れない零距離から、やはり砲撃を撃つ、ですね』 だがそれは、どちらもキングの剣を避けきることが前提となる。 なのはのバスターはその性質上、どうしても撃つ時に足を止めなければならな い。 もし砲撃を躱されたり、逃げる時間を稼げるだけの効果がなければ、その瞬間 にキングの剣がなのはを捉え、殺されるだろう。 だが、躊躇している余裕もない。 魔力には限りがあるし、倒すべき敵もまだいる。 さらには残された時間もあと僅かしかない。 なのはは少しでも可能性を上げるために、“最後の切札”の使用を決意する。 立ち上がってレイジングハートを構え、キングを睨みつける。 応じるように、キングも一歩ずつ踏み出してきた。 そしてここまで頑張ったなのはに、彼なりの賞賛を送った。 「さすが最強のエースって呼ばれるだけの事はあるね。まさかここまで粘るな んて。 けど、本当の最強は君じゃない、この僕だ。 だからさあ、早く死んじゃってよ」 その言葉になのはは、キングが優勝するために戦っているのではないことを知 った。 キングは、ただなのはが最強と呼ばれているのが気に入らないだけなのだと悟 った。 そして感じたのは落胆と、激しい怒り。 そんな事のために二人を殺したのかという、憎悪にも似た感情だった。 だからその間違いを正すように、自らの考え、あるいは感情を口にした。 「…………くだらないよ、そんな事」 「ん? なにか言った?」 「くだらないって言ったの。 誰が強いとか弱いとか、どっちが最強だとか。 私にはどうでもいい事でしかない」 「……なんだって?」 それは、キングにとっては信じられない言葉だった。 思わず自身の耳を疑い、なのはへと訊き返す。 「それは、一体どういう意味なのかな」 「言葉通りの意味だよ。 私は別に、自分が最強だなんて思ってないし、最強になりたい訳でもない。 私はただ、誰にも悲しい思いをしてほしくなかった。 私の知りうる限りの世界では、みんなに笑顔でいて欲しかった。 だからせめて、自分の手の届くところに居る人たちだけは助けようって、一 生懸命に頑張っていたの。 そうしたらいつの間にか、最強のエースオブエースだなんて呼ばれてただけ」 もともと「高町なのは」という少女は、どこにでもいるような、人より少し優 しいだけの女の子でしかなかった。 彼女が魔法を手にした理由ですら、偶然彼女に魔法の素質があり、偶然ユーノと出会い、そして必然的に彼女は、自分に出来ることをしようとしたに過ぎな い。 「私はね、みんなが笑顔でいてくれるのなら、強くなんかなくていい。 みんなが幸せでいられるのなら、世界で一番弱くたってかまわない」 「……………………」 それはつまるところ、この戦いにおけるキングの理由の全否定。 もしキングが「僕が最強でいいよね」と言えば、なのはは「うん、いいよ」と 返すだけの、無意味な独り相撲でしかなかった。 だが、なのはにとって、この戦いの理由は違った。 「この手の魔法は、悲しみと涙を撃ち抜く力。 泣いている人たちが、笑顔になれる場所まで導く翼。 だから、笑いながら平気で人を傷付けるあなたなんかには、 絶対に負けないッ!!」 なのははただ、キングが許せないだけ。 キングかこれまでにしてきた非道に怒り、 これからもするであろう凶行を阻止しようとしているだけだった。 「…………もういい。君、つまらない」 「ッ…………!」 キングはその事実を理解すると同時、心の内に在った熱が冷めていくのを感じ た。 後に残ったのは、怒りにも似た嫌悪感。 どうしてこんなヤツが、最強の称号を持っているのかという、拒絶にも似た感 情だった。 キングが気だるげに足を踏み出す。 そこには先ほどまでの、“遊び”に対する気の緩みはない。 普段キングは、その圧倒的優位な状況から、相手をなぶる様に戦う。 そのキングが、今度は自分から動く。そこに如何なる差異が生じるのか。 それを見極めるため、なのはは限界まで集中力を高めていく。 「こんなつまらない戦いなんか、早く終わらせよう」 「レイジングハート! ブラスターシステム、リミット1、リリース!!」 『Blaster set.』 “最後の切り札”の一枚目を切り、不屈のエースオブエースは、最後の死闘へ と赴いた。 /03「反撃の時」 「ここだ」 周囲には粉砕されたコンクリや亀裂の走ったアスファルト。目の前には『魔力 を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』と書かれた看板。 金居が案内したそこに、目標とした転送用の魔法陣があった。 「さあ、とっとと起動可能にしろ」 「……わかりました」 だが、その感慨にふける間もなく、金居が魔法陣の起動を急かす。 ユーノは言われたとおりに魔法陣に魔力を流し込み、同時に“解析”を掛ける。 そして魔法陣の緑色の光がある程度強まった頃、ユーノが口を開いた。 「駄目ですね、この魔法陣はある程度魔力を注ぎ込めば自動で起動するタイプ で、待機状態にする事は出来ません」 「そうか」 その事に金居は僅かに落胆するが、もともと魔法陣を待機状態にするのは保険 であり、出来なかったところで、さしたる問題は無かった。 「なら―――」 「ああそうだ、一つ言い忘れてた事がありました」 ないと思うが、そのまま魔法陣を使われて逃げられても面倒だと、ユーノに魔 法陣から離れるように言おうとして、その直前でユーノに口を挟まれる。 その事に僅かに苛つきながらも、その言い忘れた事とやらを聞く事にする。 その理由は先ほどと変わらない。 つまりは“余裕”からだ。 「何だ、言ってみろ」 「はい、わかりました。 これは直接的には、脱出とあまり関係がありませんけど、それでも言ってお きます」 だがその口ぶりから、金居はユーノへの警戒を僅かに強める。 ユーノは魔法陣へ手を当て、金居に背を向けたままだ。 「このデスゲームにおいて僕たちは、首輪と言う制限か掛けられていました。 と言うより、首輪があったからこそ、このデスゲームが成立したと言っても 過言ではありません。 ですがこの首輪は、ある時期を境に、容易に外せるようになってしまいまし た」 それは今この会場に生き残っている人間なら、誰でも知っている事だ。 それをなぜ今さら語るのか。 「その時期とはおそらく、第四回放送。 向こうに何か事情があったのなら、前回と同様代理に任せればよかったはず です。 それなのに、何故か十分遅れでプレシアが放送したあの時からでしょう。 僕たちは、あの時点でプレシアがこのデスゲームから去った可能性があると 考えました」 「そんな事は俺も気付いている。それがどうしたと言うんだ」 「それは即ち、このデスゲームの破綻を意味しています。 その理由は、一度放送の代理を行った人物です。 彼女たちはナンバーズと呼ばれ、様々な能力を有しています。 おそらく十分遅れの放送を行ったのも、変身能力を持つ彼女の姉妹でしょう」 「だからそれが何だと言うんだ。 無駄口を叩くだけならば今すぐにでも殺すぞ!」 ユーノの回りくどい言葉に、金居は段々と苛立ちを募らせていった。 だがそれさえも、ユーノの決死の策の一つだった。 「問題は彼女たちの背後、創造主とも言える人物です。 名前はジェイル・スカリエッティ。 研究者でもある彼の目的はおそらく、このデスゲームに使われた技術でしょ う。 そしてプレシアを退場させた時点でスカリエッティの目的の前提条件はク リア。 後は早々に離脱するだけ、長居をする必要なんて何処にもない。 証拠となるモノを処分して、さっさと退散すれば良いだけです」 そこまで聞いて、金居にもユーノの言いたいことが予想できるようになった。 そしてそれと同時に、内心に僅かな疑念と不安、強い焦燥が湧きあがり始める。 「目的を達成した時点で、彼にとって僕たちの結末はどうでもいいでしょう。 そして、ここが人工的に作られた世界であるのなら、その破棄は容易です。 この世界を構成するにあたって核となるモノを、停止か破壊すればいい。 そうすればこの世界は自動的に崩壊し、後には何も残らない」 世界全体が鳴動している。 心なしかそれは、先ほどよりも大きく聞こえた。 「……お前は、何が言いたい」 「タイムリミットですよ、このデスゲームの。 僕たちが考えたゲーム終了のリミットは約一時間。 次の放送までです。そして―――」 否。それは気のせいではない。 確実に、そして着実に大きくなっていく。 そしてユーノは、己が策の成就を宣言した。 「そのリミットは、もうすぐだ」 瞬間。 一際大きな振動が、仮初の世界を揺らした。 その振動によって金居は、僅かに体勢を崩す。 それと同時、ユーノが光と共に消えた。 「転移か!」 そう判断した金居は、ようやくユーノの策に気付いた。 彼はずっとこの機会を待っていたのだ。 そして自分は、ユーノの策にまんまと乗せられたのだと気付いた。 次にどこに逃げたのか、何故ヴィヴィオを平気で見捨てたのか。 そう考え、再び訪れた振動に足を取られる。 その直後だった。 「ケリュケイオン!」 『Set up.』 背後から逃げたはずのユーノの声がした。 思わず振り返り、同時に抱え込んだヴィヴィオの体が光る。 その光に一瞬眼が眩んだ。 瞬間、警戒の薄かった真正面から身体を断ち切られた。 「グウッ!?」 『Plasma Smasher.』 「――――――ッ!!」 痛みに耐えながら、即座にその方向へとレイピアを振るうが、ゼロ距離から放 たれた砲撃魔法によって吹き飛ばされる。 大したダメージはない。即座に体勢を立て直し、襲撃者を睨みつける。 そこには黒い戦斧を構え、自分のデイバックとシルバーケープを抱えたユーノ。 隣には何故か服装の変わったヴィヴィオがいた。 「ッ!! 逃がすか!!」 金居は即座に赤いレイピアで斬りかかる。 だがアンデッドに変身していない金居では、その行動は僅かに遅かった。 ユーノはシルバーケープを着こみ、ヴィヴィオを抱えると、 『Sonic Move.』 その音だけを残して消え去った。 遅れてレイピアが空を切る。 金居は振り抜いた姿勢のまま動かない。 この結末の理由。 それはこの事態を予想していた者と、そうでない者の、心構えの差だった。 「くそぉ!!! 次は殺すッ!!」 近くの瓦礫へと、力の限りレイピアを叩きつける。 行き先は簡単に予想が付く。 金居はアンデッドへと変身し、彼らが向かうであろう場所まで駆けだした。 「ここまでくれば、とりあえずは大丈夫か」 バルディッシュによる高速移動を解除し、岩陰に隠れる。 その際、シルバーケープによる光学迷彩も一緒に解除する。 「ヴィヴィオ、怪我は大丈夫?」 「大丈夫。でも私よりユーノさんの方が」 「僕だって大丈夫だよ。こんな傷、スバルや天道さんの受けた痛みに比べれば、 どうって事ない」 そう言うユーノの肩口は、明らかに血で滲んでいた。 これは不意打ちを行った際に受けた傷だった。 先の不意打ちにおいて、重要な役割を担ったモノが三つあった。 それは「念話」と「バリアジャケット」、そして「会場の崩壊」だ。 本来リンカーコアを持たない者に、念話もバリアジャケットの装着は行えない。 だが、ヴィヴィオには疑似リンカーコアが残っていたおかげで、一応だがそれ らの行使が可能だった。 更にユーノは、魔法陣を調べた際にそれを通じて会場の状態を“解析”し、崩 壊が起こり始めるおおよその残り時間を割り出したのだ。 結界魔導師であり、スクライアの一族として幾つもの遺跡を発掘した事のある 彼にとって、それは容易な事だった。 そして念話によって彼らは、金居に知られる事なく奇襲を計画する事に成功し たのだ。 後は会話によって金居の注意をヴィヴィオから外し、 転移によってユーノが逃げたと金居が誤解したところを不意打ちし、 バリアジャケットを装着する際の一瞬の光を目くらましに利用したのだ。 「ヴィヴィオ。僕はソニックムーブでの移動に専念するから、君は金居のデイ バックから使える物がないが探してくれ。 可能な限り揺らさないようにするけど、一応ヴィヴィオも気をつけて」 「うん、わかった。ヴィヴィオ、頑張る」 「ありがとう、ヴィヴィオ。 バルディッシュ、頼んだ」 『Yes, sir. Sonic Move.』 目的地はなのはの元だ。 キングと金居が組んでた以上、なのはを一人にしておくのは危険だと判断した からだ。 もし金居がなのはの元へ向かった場合、あの強敵相手に二対一となってしまう。 それでは流石のなのはでも勝ち目が薄い。 だから、たとえ戦力にはならなくても、足止めくらいにはなってみせる。 心の内で、ユーノはそう決意した。 ヴィヴィオを所謂お姫様抱っこで抱え、再びバルディッシュによる高速移動を 再開する。 その直前、ユーノは抑えきれない感情を呟いた。 「なのは、無事でいてくれ」 Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 時系列順で読む Next 魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者 Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 投下順で読む Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 高町なのは(StS) Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) ユーノ・スクライア Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) ヴィヴィオ Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) キング Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 金居
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第11話 アースラ内救護室 疲れてはいたが、不思議と眠気は訪れなかった。 2~3度寝返りを打ったが一向に眠気が訪れないため、仕方なく体の位置を仰向けにし、リンディの到着を待つ。 途中大きな音がしたため自然と首を嵌め殺しの窓の方に向けると、夜の様にほの暗かった景色か金属で出来た壁に変わっていた。 おそらく本局内のドックだろうと結論付けたナイトガンダムは首を戻し、天上を見据える。 「(・・・・今更だが・・・・ラクロアではベッドで寝る事など、ほとんど無かったな)」 ラクロアでの生活は9割、いや10割が旅と言っても過言ではなかった。 湖でフラウ姫を助けそのまま城へ行き、そこでサタンガンダムの存在を知り討伐の旅に出た。 旅ゆえ、殆どを野宿で過し、たまに止まる宿でも値段からか、布団が硬かった事を思い出す。 それに比べ、月村家で自分に提供された部屋のベッドは逆に居心地が良すぎ、当初は全く眠れなかった。 「あの時は隠れで床で寝ていたなんで・・・言えはしないな・・・・」 今ではその様な事は無く、ふかふかのベッドの感触を味わいながら眠る事が出来るようになった。 自分としては凄い成果だと思う。(アリサには猛烈に笑われたが) 今寝かされているベッドも、月村家の物に負けず劣らず心地よい。それでも眠気が襲ってこないとなると、 体質によるものか、見知らぬ部屋だという無意識の警戒心によるものだろう。諦めるしかない。 「・・・・昔の私も・・・そうだったのだろうか・・・・」 自分という存在がラクロアに何時からいたのか、正直今でも分からない。 気が付いたら焼け野原の真ん中にいた。それ以前の記憶など全く持ち合わせていなかった。 あの時は景色、建物、食べ物に関しても、見る物全てが新鮮だった。どれも知らない物ばかり。 剣の腕に関しては記憶には無いものの、体に染み付いていたため剣士だったのかという予想しか出来ない。 まさに自分の事は何一つ知らない。だが、この世界に来る切っ掛けとなり、三種の神器の力を借りてどうにか倒す事ができた強敵、 『サタンガンダム』に関しては別だった。奴の名前は、当時はレビル王からはじめて聞かされたため、記憶になかった。 だが、奴の姿を見た瞬間、邪悪な気配と途轍もない魔力に圧倒されはしたものの、初めてとは思えなかった。 「・・・・奴に・・・会った事があるのか・・・・・」 ならあの戦いの時、奴が自分に何かを言ってくる筈。もし、以前の自分か奴に手を貸していたのなら尚更だ。 だが、奴は自分を『自らの城に潜入してきた敵』としか見ていなかった。自分を全く知らなかった。 「・・・・知っていたのは私だけ・・・・・ならば私は・・・・・やめよう」 軽く頭を振り、考える事をやめる。手掛りがない以上何を考えても仮説で終ってしまうからだ。 「お待たせ~」 そのタイミングを待っていたかのように扉が開き、トレイに軽食をもったリンディが入ってきた。 リンディが持って来たサンドイッチとスープの軽食を、ナイトガンダムはお礼を言った後黙々と食べた。 自分でもこれほど空腹だった事に驚きながらも全て平らげ、スープを飲み干す。 その光景を満足げに見つめていたリンディに改めてお礼を言った後、今回の戦闘に関しての報告を事細かに説明した。 フェイトを人質に取った仮面の男。 守護騎士達は主に内密に収集活動を行っている事。 闇の書の主は争いを望んでいない事。 そして、闇の書の力が主に必要不可欠なこと。 「なるほどね・・・・・それなら、彼女達の行動も納得がいくわね・・・・」 10年前の闇の書事件の時の彼女達と比べると行動が積極的でない事、人間に対してはリンカーコアから魔力を吸収するのみに留めている事、 そしてアルフとナイトガンダムの報告から纏めると、今回の主は闇の書の完成を望んではいない、その力を欲してはいない、これはほぼ確定と言って良いだろう。 それなのに彼らは闇の書の完成を望み、魔力を集めている。 「闇の書の力が主に必要不可欠ね・・・確かにガンダム君の言う通りね・・・そうとしか考えられない」 「はい。ですが、主が望んでいないのに、なぜ彼らは集めるのでしょうか・・・・そういえば、 闇の書が完成したら絶大な力が手に入るとしか聞いてませんが、その力に他に使い道があるのでは?」 それなら彼女達の行動にも納得がいく。絶大な力といっても、三種の神器のような、ただ自分の力を底上げするだけではない筈。だが 「いえ・・・・それは無いわ。無限書庫・・・ああ、とても大きな図書室と考えてくれて良いわ。ユーノ君がね、そこで闇の書に ついて調べてくれてるの。さっき途中結果を報告してくれたんだけどね・・・・」 躊躇するように言葉を詰まらせた後、リンディは報告通りに話し始めた。 闇の書の本来の姿、使い道。そして、持ち主に対する性質の変化。 「一定期間、魔力の収集が無いと、持ち主の魔力や資質を侵食し始めるのよ」 「なら、彼女達の行動も理解できます。主を救うためには十分な理由です」 それなら、自らの誇りを踏みにじってまで魔力を集める彼女達の行動も理解できる。だが、 「だけどね、もし完成したらそれこそ主の命を縮めるのよ。完成した闇の書は持ち主の魔力を際限なく使わせる。 無差別破壊の為に。だからね、ここで疑問が出るのよ。なぜ彼女達はあえて完成を急がせるのか? 確かに一定期間、魔力の収集が無いと、持ち主の魔力や資質を侵食し始める。だけど完成させたら結果は同じ、矛盾している」 たしかにそれでは矛盾している。間を置いて収集するならまだしも、シグナムの様子から、闇の書の完成を急いでいたように見える。 これでは逆に主の命を縮めることにる。だが、剣を交えたからこそ分かる。シグナムが嘘をついてはいないと。心から主を救おうとしていることを。 「・・・リンディ殿、闇の書の力というのは、本当に無差別破壊のみにしか使えないのでしょうか?」 「ええ、局のデータに残っている物や、ユーノ君が調べてくれた昔の物まで確認したけれど、それ以外で使われた事はないわ。 主に関しても、完成後、全員が・・・・・・」 「その時、シグナム・・・・守護騎士達はどうしていました?やはり主の護衛を?」 ナイトガンダムの質問に、リンディはハッとする。 そういえばそうだった、自分達は『闇の書』そのもに関しては徹底的に調べているのに対し、守護騎士に関しては殆ど調べを進めいていない。 『主を守るための騎士』それで十分だと思っていた。 「ちょっと待って、前回の事件なら今すぐ調べられるわ」 リンディは早速、端末を取り出し前回の闇の書事件のデータを漁る。 程なくして、目的である『闇の書完成後の守護騎士』についての報告書を発見、その内容にただ呆然とする。 「・・・・・前回の事件、彼女達は主によって『収集』されているわ・・・・・・彼女達はリンカーコアからなる『魔法生命体』 『収集』されたとなると・・・・消滅、人間で言うと死と同じ事ね」 「ならば・・・・・まさかだとは思いますが、シグナム達は闇の書の完成が主に齎す本当の影響を知らないのでは?」 「まさか」と声を出し否定しようとするが、リンディはその言葉を咄嗟に飲み込む。 そう、よく考えてみれば可笑しい。なぜ闇の書事件は今まで同じ様な末路を辿ったのだろうか? 確かに効力からして主に逃げ道は存在しない。だが、今までの主は収集を率先して行っていた。正に自滅である。 魔力の収集に関しても『一定期間』であり、直に収集が滞ると侵食されるわけではない。いっそ、ある程度集め、 繰り返し使ったほうが効率としてはいい筈。だが、主達は完成を急いだ。 (守護騎士達を戦力として使用したケースもあるか、結果的には完成させている) 闇の書に操られての行為かと思ったが、そうなると今回のケースは当てはまらない。 それ以前になぜ守護騎士達は主を侵食する事を話さなかったのか?確かに完成させるために彼女達が収集されるケースもある、 だが全てではない。だからこそ末路を知ってる筈。 主に使える守護騎士である以上、いかに外道な主でもその事を言わないのは可笑しい。ならなぜ闇の書の長所のみを説明したのだろうか? 考えられる可能性は一つしかない。守護騎士達がその事を忘れているという事。 そもそも闇の書自体、悪意のある改変が原因で恐ろしいデバイスと化している。その影響が守護騎士達に反映されていても可笑しくはない。 自然とリンディは目を閉じ腕を組み、自分の中で考えをまとめていく。 そして自分の中の考えがまとまったのか、ゆっくりと瞳を開け、ナイトガンダムを見据える。 「・・・・・確かに、主を想っている彼女達が、早期に闇の書を完成させようとするのは可笑しいわね。 本当に影響を知らずに、絶大な力が手に入るとしか信じていない。ガンダム君の考え・・・・間違ってはいないかも知れない。 とにかく、今までの守護騎士達についても調べてもらうように頼んでみるわ。ああ、ガンダム君はすずかさんの家に戻らないとね。 あと、君の鎧は治しておいたわ。傷だけだったからアースラの設備でもそれ程時間は掛からなかったわ」 その好意に早速お礼を言おうとしたが、『すずかさんの家』という単語を聞いた直後、ナイトガンダムは目に見えて慌てた。 「リ・・・リンディ殿!!私はどの位眠っていましたか!!?今は何時でですか!!!何時ですか!!!朝ですか!!?」 「ふふっ、落ち着いて。あの戦闘から一日しか経っていないわ。すずかさんの家にも、私の家に泊まる事になったって連絡は入れてあるから大丈夫よ」 その言葉に心底ほっとするナイトガンダムに、リンディは悪いとは思いながらもつい笑ってしまう。 その笑みに、ナイトガンダムもまた、目に見えて慌てた自分の恥を隠すかのように俯いた。 「さて、私は行くわね。帰るときは本局の転送装置を使うと良いわ。あと、よかったらフェイトさんの様子を見てあげて。 君にお礼がいいたいって言ってたわ・・・・あと、これだけは言わせて、本当にありがとう、フェイトさんを助けてくれて」 笑顔で手を振りながら退出するリンディを見送ったナイトガンダムは、一度大きく背伸びをした後ベッドから下りる。 「・・・・・新品のようだ・・・・・感謝しなくては」 そして、近くの机に飾られる様に置かれた自分の鎧を一度関心の瞳で見つめた後装着し、部屋を後にした。 アースラ内救護室 「よかったよ、命に別条が無くて」 「・・・・・うん・・・・・・」 心から安心するナイトガンダムとは裏腹に、フェイトの表情は重病人ではないかというほど曇っていた。 その表情にナイトガンダムは何か言葉をかけようとするが、それより早くフェイトは言葉を吐き出した。 「私・・・・役に立てなかった・・・・騙されて・・・・捕まって・・・・リンディ提督が優しい言葉をかけてくれたけど、 私に・・・・・・そんな言葉をかけてもらう資格なんて・・・・・無い!!!」 シーツを握り締め、吐き出す言葉にナイトガンダムは沈黙で答える。 フェイトもまた、感情に任せて吐き出した事に、今になって後悔した。 「(私・・・・何を言っているのだろう・・・・・・まるでガンダムを攻めるかのように言葉を吐き出して。 彼は自分を助けてくれて・・・・・心配してくれるのに・・・・・・最低だ)」 静まりかえる病室が心を重くする。もう何も言いたくは無かった。一人になりたかった・・・・否、消えてしまいたかった。今すぐこの場から。 「・・・・・フェイト・・・・・・」 名前を呼ばれただけで体をびくつかせてしまう。 いつもよりナイトガンダムの声は重かった。こんな自分に怒っているのだろう。当然だと思う。 だからこそ怖くて顔を向ける事が出来なかった。自然と体をこわばらせる。そして ビシッ! 平手にしたナイトガンダムの腕が、フェイトの頭に軽く打ち付けられた。 俗に言う『空手チヨップ』を受けたフェイトは、呆気に取られながらも、顔をガンダムの方へと向ける。 其処にいたのは、フェイトが予想していた怒った表情をしたナイトガンダムではなく、 いつもの笑顔で優しく自分を見据えるナイトガンダムだった。 「フェイト、自分を責めてはいけないよ。誰にでも失敗はある。誰にでもだ。だからこそ、今回の失敗を次の教訓にすればいい」 「・・・・でも・・・・・」 自分の中で納得が出来ないのか、フェイトは再び俯こうとする。だが、それより早くナイトガンダムの掌が、彼女の頭に優しく置かれた。 「それに、失敗をしない人なんていない。私やクロノ、リンディ殿さえ失敗はする。 失敗というのはね、物事を行ないう時には必ず体験する事なんだ。問題は経験した失敗に押しつぶされるか、 その失敗を今後の糧にするかだよ。私は、フェイトになら出来ると信じているよ」 「・・・ガンダム・・・・・」 「それに、君はリンディ殿だけじゃない・・・・なのはやアルフ、色々な人に甘えていい。君は確かに優秀な魔道師だ。 だけど、それ以前に君は子供なんだ。甘える事に資格なんて必要ないよ」 優しく頭を撫でられながら語りかけるナイトガンダムに、フェイトは恥ずかしいと思いながらも、暖かい気持ちに包まれる。 だからこそお願いしてみようと思う。恥ずかしいけど、早速実行に移してみようと思う。 「ガンダム・・・・その・・・・お願いがあるんだけど・・・・・」 やはり恥ずかしい。言葉が出ない。だけど・・・・・やってもらいたかった。だからこそ勇気を振り絞った。 「・・もうちょっと・・・撫でて・・・・ほしいな・・・・・」 顔を真っ赤にし、俯くフェイトに、 「かしこまりました。お姫様」 ナイトガンダムは一度恭しく頭を垂れた後、再びフェイトの頭を撫で始めた。 これで本局へ来るのは3度目、さすがにナイトガンダムの存在に慣れたのか、すれ違う局員からの目線も珍しい物を見るような瞳で 自分を見るような事は少なくなってきた。 後は特に用事は無いため、真っ直ぐに転送装置室に向かうナイトガンダム。すると、後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。 声からしてクロノだろうと思い、後ろを振り向く。案の定声の主はクロノだった。だが、彼の後ろには見覚えの無い女性が二人立っていた。 「(・・・・・・顔が似てる、双子か?・・・・それに獣の耳と尻尾・・・・使い魔か?)」 クロノには使い魔はいない筈、そうなると彼の知り合いの使い魔だろう。だが、ナイトガンダムはそれ以前に気になる事があった。 双子の使い間の内、髪が短い方の女性が、一瞬ではあるが自分に殺気を放った事に。 「クロノ・・・・彼女達は?」 「ああ、紹介するよ。僕の恩師の使い魔で、僕の魔法の先生でもある」 「リーゼアリアよ」 「リーゼロッテだぞ~!」 優しく微笑みながら自己紹介をするリーゼアリアと、無邪気に微笑みながら自己紹介をするリーゼロッテ、 数年来の友の様に気さくに挨拶をする二人に、ナイトガンダムは先ほどの殺気はただの気のせいとして処理する事にした。 「クロノの先生でしたか。私は(知ってるよ」 自分も膝をつき、頭を垂れ自己紹介をしようとするが、先ほど明るい声で自己紹介をしたリーゼロッテに止められる。 「異世界『ラクロア』から飛ばされた次元漂流者にして闇の書事件の協力者にしてクロノの友人である騎士、ガンダム君、噂は聞いてるよ。 今じゃ本局じゃちょっとした・・・・かなりだね、有名人だしね」 『有名人』と聞かされ、恥ずかしい気持ちになる。ある程度は覚悟してはいたが面と向かって言われるとその覚悟も簡単に折れてしまう。 「あ~も~照れちゃって、可愛いね~、クロノと一緒に可愛がってやりたいよ~」 「ロッテ、そんなにからかわないでくれ・・・・・帰るのかい?」 クロノのフォローに内心で感謝をし、これから月村家へ帰る事を簡潔に伝える。 なにか用事があれば少しの時間だか手伝うと申し出たが、クロノはその好意を直に断った。 「気持ちはありがたいけどね。君はなのは同様、ここの事を秘密にしている。君が世話になっている家に何時までも帰らないのは不味いな。何か進展があったら 連絡するから、今はゆっくり休んで来ると良いよ。アリア、ロッテ、僕達は急ごう。立ち話をしている時間も、今は無駄には出来ないからね」 何も知らない人から見れば、クロノがさっさとナイトガンダムの元から去るかのように行動しているかのように見える。 だが、実際にはそうではなかった。これにはクロノなりのナイトガンダムへの気遣いが含まれていた。 「(悪いね。でも、この二人と一緒だと別の意味で君が危険なんだよ)」 これ以上会話を続けると、ロッテあたりがナイトガンダムに何をするか(十中八九悪戯だろうが)分かった物ではない。 彼はとにかく真面目だ。彼女の悪さの良い鴨になる事は間違いない。 過ちは繰り返してはならない・・・・・生贄はユーノだけで十分だ。 だからこそ、彼には速やかに休息を与えてあげようと考えたクロノは二人を急かし、その場を立ち去ろうとする。 有無を言わさず歩き出すクロノに、リーゼ姉妹も一度手を振った後ナイトガンダムを見るのを止め歩き出した。 本当ならこれで終わり、クロノ達はエイミィの元へ向かい、ナイトガンダムは転送装置室に向かう筈。だが、 「あっ、クロノ、一つだけいいかい?今回の事件に関してなんだけど」 ナイトガンダムはクロノを呼び止め、リンディの話した闇の書事件の自分なりの予想を簡潔に話した。 一応リンディも納得した予想だったため、現場のリーダーでもある彼にも聞いてもらいという彼なりの配慮。 要点だけを話し、詳しい事はリンディに聞くように言った後、ナイトガンダムは一度頭を下げ、今度こそ転送装置室へと向かった。 「・・・・・・ねぇ、クロノ。彼の意見、どう思う?」 「簡潔に聞いただけだけど、納得出来る部分が多い・・・・・一度母さん・・・・提督に詳しく聞いてみるよ」 「そっか~」と天上を見ながら呟いたロッテは、ゆっくりとアリアの方へと顔を向け彼女の瞳を見据える。 「(計画を早める必要・・・・ありそうかもね・・・・・・)」 「(あの騎士・・・・実力もさることならがら頭も切れる。まったく、厄介なお客さんを連れてきたよ、クロノ達も)」 クロノの後ろを歩きながら念話で会話をする二人。当然クロノに聞かれては不味い内容。だが、ロッテは隠す事無く顔を顰める。 時より通りかかる局員が彼女の表情に体をびくつかせながらも、その表情を崩す事は無かった。 「(ロッテ、感情丸出しはやめなって・・・・・クロノに気付かれるよ。さっきも殺気を出していたでしょ?)」 「(ああ、ごめん。あの時の戦闘を思い出すと・・・・・・ついね。)」 あの戦闘のことを思い出すと否が応でも腹が立つ。あの一撃のダメージは今でも完全には抜け切れていない。 もし此処に自分達しかいなかったら遠慮なく攻撃を加えていただろう。 「(でもさ、あいつ正直厄介だよ。下手すれば父様が望む結果を滅茶苦茶にしかねない・・・・・消す?)」 確かにロッテの言う通りだと思う。正直、今回の闇の書事件を担当するアースラのクルーは自分達の思い通りに動いてくれている。 重要なポジションにいる人物は友や知り合いや弟子で構成されており、主戦力も執務官という立場からクロノが満足に動けない以上、 力はあるが、実戦経験に乏しいあの子供達だけとなる。確かにあの二人は素質があり下手な魔道師よりは戦力にはなるが所詮それだけ。 自分達では行動はせずにクロノ達の指示に従うだけの所詮経験が浅いお子様、どうとでもなる。いや、民間人が混じっている以上、クロノ達も行動を自首する筈。 後は表向き強力体制を取り、裏では仮面の男となって活動すればいい。 システムのクラッキングやリンカーコアの収集など、今の所全て上手くいっている・・・・いや、いっていた。 「(私もロッテと同じ考えを持っていたわ。あの騎士が話した『闇の書事件の予想』当事者じゃないかという位に当たっている。 だけどね、あのプログラム達がその事を『はいそうですか』って信じると思う?大方あのトンカチが『ふざけんじゃねぇ!!!』って叫びながら 襲い掛かってくるのがオチよ・・・・・ある意味では可哀想な連中・・・・いえ、哀れね)」 アリアは正直、守護騎士『ヴォルケンリッター』には多少だが同情の念を抱いていた。 主を救うために死に物狂いになりながらも、主を消して救う事が出来ない彼女達に。 慕う主を知らずに自分達の手で死に追いやっている彼女達に。 使い魔として生きている自分達も、主である父様には絶大の信頼と忠誠を誓っている。 だからこそ、あの連中の気持ちも分からなくはないし同情もしたくなるが、所詮それだけ。救ってやろうという気持ちは微塵も持ち合わせていない。 「(な~る、確かにアリアの言うとおりだ。それなら、特に計画の変更は無しって事で)クロノ!さっさと行くよ!」 突然大声と友に背中をたたかれた事に、クロノは遠慮なく顔を顰めるが、ロッテは笑顔でそれを受け流し、彼の肩を押す。 その光景を「やれやれ」と言いたそうな顔で見ていたアリアも、二人に続くように歩みを速めた。 今日はつくづく人に会う日だとナイトガンダムは思う。 「あっ、ガンダムさんだ~!!!」 転送装置室に到着し、いざ中に入ろうとした所で、聞き覚えのある幼い声に自然と歩みを止め、顔を向ける。 其処には声の主であるスバルと姉のギンガ、そして笑顔で軽く手を振る母親のクイントがいた。 スバルはナイトガンダムを見つけるや否や、真っ先に走り出し抱きつき、ギンガもまた抱きつきはしなかったが 嬉しそうに近づいてきた。 「あらあら、モテモテね。家の主人が見たら『娘はやらんぞ~!』って言いそうな光景だわ」 どう見ても目の前の光景を面白がっているクイントに、ナイトガンダムはスバルの頭を撫でながら乾いた笑いを漏らす。 「・・・・それで、クイント殿はどうして此処へ?確か地上本部という所での勤務なのですよね?」 昨日の昼食で、此処とは違う地上本部の局員の筈の彼女が、昨日に引き続き此処にいることに疑問に思ったため何となく尋ねてみる。 クロノから聞いた話だが、地上本部に勤めている人間が此処に来ることはあまりないらしい。何でも不仲など、色々と理由があるらしいが。 だからこそ、昨日に引き続き地上本部の局員であるクイントが本局にいる事に疑問を抱く。 まぁ、不仲といってもおそらく上に立つもの同士の事だろう、クイント個人が嫌いとは思えない。 「・・・スバル達と一緒という事は・・・・・見学でもさせているのですか?」 「あ・・・・・・・え、ええ、まぁそんなところ。もし駄目だなんて言うと、またスバルが一人でどこかに行っちゃうから。 それで、ガンダムさんは今帰り?」 曖昧に答えた後、その話題を無理矢理終らせるように話題を変えるクイントに少し不審感を抱きながらも、彼女の問いに答える。 だが、その答えに不満を抱く人物が目の前にいた。 「え~!?ガンダムさん、遊ぼうよ~!!」 スバルである。本当なら昨日の昼食の後、彼女はギンガと一緒にナイトガンダムを遊ぶつもりだった。 だが、あの時はナイトガンダムに急な仕事(クイント曰く)が入ったため、我慢して諦めた。だからこそ、今日こそ遊んで欲しい。 「ねぇ?お姉ちゃんも遊びたいよね?」 彼女も妹であるスバルと同じ気持ちであった。だが、迷惑ではないのか?仕事帰りで疲れているのではないかという彼女の 気遣いが、本当の気持ちを押しとどめていた。 「スバル、私も同じ気持ちだよ。だけど、ガンダムさんも疲れてるから、また今度にしよ?」 「そうよ、お姉ちゃんの言うとおり。ガンダムさんが好きなら、家に帰してあげましょ?」 大好きな母と姉に諭されたスバルは、頬を膨らませ不満を表しながらも、納得したのかナイトガンダムから離れる。 シュンとするスバルに申し訳ない気持ちになりながらも、正直ギンガとクイントの気遣いには感謝していた。 疲れに関してはゆっくり眠ったため残ってはいなかったが、あの月村家襲撃事件以来、全く顔を合わせていないイレインの事が気がかりだったからだ。 「今度日を改めて遊ぼう。それまでいい子にしてるんだよ」 笑顔でスバルとギンガの頭を優しく撫でた後、転送装置の中に入るナイトガンダム。 後は扉が閉まり、ハラオウン家が借りているマンション内に設置されている転送ポートに転送されるだけ。誰もがそう思っていた。 閉まる扉に滑り込むようにスバルとギンガが入ってこなければ。 スバルはあまり我侭を言う少女ではない。それに他人の気持ちを理解できる子でもある。 だからこそ、母と姉の言う事もちゃんと理解し、ナイトガンダムと遊ぶ事を諦めた・・・・かに見えた。 「(でも・・・・今度は何時会えるのかな・・・・・・)」 よく考えてみたら、ナイトガンダムと会えたのは全て偶然だった。決して連絡を取ったりしたわけではない。 また偶然が続くのか?そう考えるといてもたってもいられなくなる。 「(ねぇ、お姉ちゃんもそう思わない?)」 「(・・・・・・・うん、スバルの言う通りかな・・・・)」 母親であるクイントには内緒にしているが、スバルとギンガには心の中で互いに話す事ができた。 念話と言われる魔法に似ているが、自分達はまだ魔法は一切使えない。おそらく自分達の体が特別だからだろう。 互いに近くにいないと伝えられないという欠点はあるが、この能力は自分とスバルを繋ぐ絆のような物だと感じていた。 「(だからさ・・・お姉ちゃん)」 スバルが考えたアイデア(スバルは『作戦』と言っていた)にギンガは危ないから止めようと言おうとしたが、結局言う事ができなかった。 理由は簡単、ギンガもまた、スバルと同じ気持ちだったからだ。 「(・・・・・わかった。私もガンダムさんと遊びたいから・・・・・・お母さんには一緒に怒られよ)」 こうして、二人の作戦は見事に成功し、一人の騎士と二人の幼い姉妹は、海鳴市へと転送された。 海鳴市 「・・・・・・二人とも~・・・・・・大胆な事をしてくれたわね~・・・・・」 端末越しにニコニコと笑顔で二人の娘に話しかけるクイント、だが、その笑顔を向けられているスバルとギンガは怯えきっており 彼女達の後ろで様子を見ていたナイトガンダムもまた、圧倒されたかのように一歩後ろへと下がった。 「(・・・・なんとう覇気・・・・・・これが母親というものか・・・・・・)」 顔は笑顔そのものだが、端末越しからでも分かるクイントのオーラにナイトガンダムは感心すると同時に 情けない事にスバル達同様恐怖を感じていた。だが、このままでは二人は怒られっぱなしになってしまうのではないかと思ったため 意を決して、二人の変わりに対応する事にした。 「クイント殿、二人も悪気が会ったわけではありません。もうそれくらいでよろしいでしょう?」 「・・・・まぁ、ガンダムさんがそういうのなら・・・・・・でもごめんなさいね、迷惑かけちゃって。 貴方も疲れてるでしょうに・・・・・それに貴方がお世話になっている家にも迷惑が掛かるんじゃ」 「その様な事はありません。とても親切な方々ですよ。お二人は私にお任せください」 歳が近いすずかとなら良い友達になれるだろうと思う。 お世話になっている月村家の人達に嘘はつきたくはないが、管理局の存在を隠す以上、 スバル達に関してはクロノの従妹と言う事でどうにかごまかすしかない。 「ありがとう。私は手続きを終えてからそちらへ迎えに行くわ。君達がいる地球は管理局の管理外世界だがら 許可やら手続きを取らないと行く事はできないのよ。少し掛かるかもしれない」 「それでしたらリンディ殿に相談をされてみてはいかがでしょうか?今、アースラスタッフは此処に拠点を置いています。 話しの分かる方ですし、迎えに行く位でしたら簡単に許可をいただけると思いますよ。おそらくまだ本局にいる筈ですから、 こちらで連絡を入れておきますよ」 「そう?それじゃあ御願いするわね。最後にスバルにギンガ、もう怒らないけど、こんな無茶をしちゃ絶対駄目だからね」 先ほどとは違い柔らかな笑みで諭すよう語りかけるクイントに、スバルとギンガはゆっくりと頷いた後、声を揃えて謝った。 1時間後 :月村家正門前 ナイトガンダムのおかげで苦労せずにリンディと会う事ができたクイントは、彼女のおかげで 驚くほど時間を掛けずに地球へ来る事ができた。 「だけど・・・こうもあっさりと・・・・いいのかしら?」 ナイトガンダムの態度から、リンディ・ハラオウンという人物は自分と同じ局員だとばかり思っていた。 実際そうだったのだが、提督とう地位はクイントに必要以上の緊張感を与える事となった。 提督といえば地位は勿論の事、次元航行艦・・・・しかも艦隊クラスの指揮権まで持つ事が出来るほどの地位である。 自分が所属している隊の隊長よりはるかに偉い。緊張するなという方が無理である。だが 「ああ、クイント・ナカジマさんね?ガンダム君から話を聞いてるわ」 緊張していた自分が馬鹿だったかのように、リンディ・ハラオウンは気さくな人物だった。 自分の地位を鼻に掛けないで、まるで友人と話すかのように話しかけるリンディに、 クイントは呆気に取られながらも緊張していた自分を恥じた。 そしてあっという間に許可をとる事ができ(と言っても「ええ、どうぞ、家の転送ポートを使って」というあっさりとした許可だったが) 此処へくる事ができた。ちなみに、直に許可が取れたにも拘らず此処まで来るのに一時間を要したのは リンディにお茶の誘いを受けたからであったのだが・・・・・今ではその事を猛烈に後悔している。 子を持つ親同士、話しはとても弾んだ・・・だが、出されたお茶は宜しくなかった。 「あの味覚・・・・・息子さん、糖尿病にならなかったのかしら・・・・・・さて、この月村さんの家にいるはずだけど」 良くない思い出だけをさっさと忘れたクイントは、改めて表札を確認した後、インターホンのボタンを押した。 「手加減無用!!覚悟ぉ!!!」 アリサの声と友に、力の限り投げられたバレーボールが容赦なくスバルを襲う。だが、 「えい」 可愛い声と友に片腕でアリサの必殺魔球を軽々と受け止め、 「やぁ」 同じく可愛い声で投げ返した。 アリサに迫り来るバレーボール、可愛い声とは裏腹に、どう見ても子供が投げたとは思えないスピードで迫り来る。 だが、そのボールがアリサに直撃する前に、すずかが前へと出て片手で受け止めた。 すずかの掌に直撃した瞬間、激しい音が響き渡り彼女の髪が棚引く。傍目から見てもそれなりの衝撃がすずかを襲ったかに見えたが、 彼女は顔を顰めるどころか相手を称えるかのように微笑む。そして、ボールの勢いが殺されないうちに、掴んだ腕を1回転、 「それっ!」 遠心力を加えて投げ返した。 すくい上げるように投げられたボールは回転しながら突き進み、スバルの隣にいるギンガに襲い掛かる。 大の大人でも当たれば悶絶間違いなしの剛速球。だが、ギンガは逃げる事無く両手を差し出しボールをキャッチ、 体を踏ん張ってはいたが、反動で体が無理矢理後ろに引きずられる。だが、受け止める事には成功した。 「・・・やるね、ギンガちゃんにスバルちゃん」 「すずかさん達も・・・・・すごいです」 「まぁ、アタシとすずかのペアに喰らいついていく実力は褒めてあげるわ!!だけど、これまでよ!!」 「アタシとお姉ちゃんも負けないぞ~!!!」 一方、外野では 「ねぇ・・・ガンダム。これって遊びよね?」 既にボールを当てられたイレインが木にもたれ掛りながら、同じくボールを当てられたガンダムに尋ねる。 時より聞こえるアリサの叫び声、何かが土にめり込む音、ボールが強く当たる音。 それらを乾いた笑いと友に受け流すナイトガンダムは 「・・・・・・おそらく・・・・・」 かなり間を空けた後、短く答えた。 「・・・・思うんだけどさ、アリサ、このままじゃ不味いんじゃない?この中じゃまともな人間、彼女だけよ?」 彼女なりにアリサを気遣うが、その言葉にナイトガンダムは引っかかりを感じた。 確かにすずかは夜の一族の血を引いているため、常人より体力はある。だが、スバルとギンガは普通の人間の筈。 見た所力はあるが、魔法はまったく使っていない。仮に使ったとしてもイレインが察知できるとは思えないが。 「イレイン、その言い方は感心しない。確かに力はあるが、それではまるで人間ではない様な言い方だ」 その発言にイレインは心底不思議な顔をする。そして腕を組んで数秒考えた後、確認するかのようにナイトガンダムに尋ねた。 「・・・・まぁ、すずかの事は謝るわ、だけどあのスバルとギンガって子、貴方本当に知らないの?」 「どういう事です?」 ナイトガンダムの表情から、本当に知らなかった事にイレインは意外そうな顔をする。 数秒沈黙した後、別に隠す必要もないと結論付けたイレインは、顔をスバル達の方へ向け呟くように答えを明かした。 「あの二人はまともな人間じゃない。私やノエル達と同じよ」 「いや~、最近の子供はパワフルねぇ~」 日当たりの良い庭に置かれたテーブルと椅子。この家の主である月村忍はその椅子の一つに腰掛け、 右手に紅茶が入ったカップを持ちながらすずか達の様子をうかがっていた。 彼女に向き合うように座っていたクイントもまた、忍の言葉に釣られたかのようにスバル達の様子をうかがう。 歳が近い子と楽しく遊ぶスバル達の様子に、自然と顔が綻ぶ。 正直、この笑顔を見られただけで彼女の心は温かい気持ちになった。 スバル達はその存在から、未だに学校などに通わせるような事はしなかった。そのため、同年代の友達などは未だにいない。 だからこそ、歳が近い子達と遊べるのはとても良い経験だと思う。 「ありがとうございます。スバル達もとても楽しそうで・・・それにこんなに美味しいお茶もいただいて」 「気にしない気にしない、ガンダム君の知り合いなら、私達の知り合いでもあるから気にしない。だけどあの子達、スゴイ運動神経ね~。何か習い事でもしているの?」 以前顔を向けたまま尋ねる忍に、クイントは言葉を詰まらせるが、特に何もやっていないと答えた。 「・・・・・ふ~ん・・・・・そうなんだ・・・・・」 意味ありげに頷いた後、忍はゆっくりと顔をクイントの方へと戻し、紅茶のカップを置く。そして 「当然よね?あの子達、体に機械が埋め込まれている、ただの子供じゃないんだから?」 クイントはその言葉に反応するかのように即座に立ち上がろうとする。だが、 「クイント様・・・お座りになっていてください」 先ほどまで自分達の様にスバル達の様子をうかがっていた筈のメイド『ノエル』が、クイントに気配を感じさせる事なく後ろに立っていた。 そして、彼女の両肩に手を置き、無理矢理椅子に座らせるかのように押し付ける。 「(何?この人!?なんて力なの!)」 違法とは分かってはいるが、魔力で体を強化し、無理矢理抜け出そうとする。 だが、それでももがくのが限界、脱出する事は出来なかった。 脱出が不可能と痛いほど理解したクイントは、せめてもの抵抗とばかりに忍を睨み付ける。 「・・・・貴方・・・・・いったい何者・・・・・」 射殺さんばかりに睨み付けるクイントの視線を忍は微笑みながら受け流す。 そして顎に手を乗せ、正面からクイントを見据えながら、ゆっくりと話しだした。 「何者っていってもねぇ・・・・・私はここの家の主、月村忍。決して火星人でも木星人でもないわ。 だけど驚いたわ・・・・あんな小さな子がいるなんて・・・・・世界は広いわね・・・・」 クイントは忍の言葉を信じてはいなかった。戦闘機人の技術は公式に公開されてはいない。 それこそ一般人、しかも管理外世界の住人が知る筈がない。 なのに目の前の女性はスバル達を機械が埋め込まれている人間『戦闘機人』と見抜いた。 彼女の態度から、カマを欠けたとは思えない。絶対の自信からでた結論だろう。 検査もしないで見抜けるという事は『戦闘機人』関係に詳しい人物、それこそ開発に関わった人物でもない限り不可能と言っても良い。 「・・・・・・で、貴方は何が望み・・・・・・」 局員としての性格からだろう。クイントは脱出を諦め、忍の話しに付き合う事にした。 『戦闘機人』に詳しい以上、彼女を無視するわけにはいかない。だが、後ろのメイドは無論、下手をしたらナイトガンダムとも戦わないといけなくなる。 正直勝ち目は無い。おそらく自分に出来ることは、救難信号を送り、管理局にこの場所を知らせる事くらいだろう。 おそらく向こうも自分が何かしらの行動を起こすと思っている筈。だが他に方法は無い。 「・・・望みねぇ~・・・」 目を瞑り、考え込むように黙りこむ。時間にして10秒程度、だがクイントには数時間にも感じられた10秒。 「まぁ、考えるまでも無いんだけどね」 以前自分を睨みつけるクイントの目線を正面から受け止めた忍は、ゆっくりと自分の望みを呟いた。 「スバルとギンガ・・・あの子達を私にちょうだい」 前へ 目次へ 次へ
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【L change the world after story】 血塗れの包丁 シャマルに支給。 Lがミッドチルダに来てから、初めて捜査協力した事件で使われた凶器。 犯人の女性が浮気をしていた恋人を刺した時のもので血が刀身全体に付着している。 菓子セット アグモンに支給。 Lが考え事をする時に重宝する菓子のセット。甘いものが大量にある。 【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】 修行僧衣 武蔵坊弁慶に支給。 第14話においてウルトラマンレオことおゝとりゲンが着ていた墨染めの衣。 ナイトブレス シェルビー・M・ペンウッドに支給。 ウルトラマンヒカリに変身するための青いブレスレット。ブレスレット本体にはナイトブレードが収納されている。 ナイトブレードをナイトブレスに装填することでウルトラマンヒカリに変身することが可能。 ウルトラマンメビウスのメビウスブレスと合体することで、ウルトラマンメビウスはメビウスブレイブへとパワーアップすることが出来る。
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魔法少女なのは☆マギカ クロス元:魔法少女まどか☆マギカ 最終更新 11/06/08 第1話 子供の頃、夢に見てた 第2話 古の魔法のように 第3話 君はまだ夢見る記憶 第4話 君が望むモノは何? 第5話a 光を呼び覚ます 第5話b 願い TOPページへ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3178.html
ホテル・アグスタ襲撃事件、後にそう呼ばれる事となる今回の事件は、一夜にしてミッドチルダ全土を震撼させた。 事の発端はオークション会場でもあるこのホテルにガジェットが襲撃、更にその後に現れた魔導師の手によってアグスタは崩壊、 警備に当たっていた管理局員のうち、六課前線メンバーは奇跡的にアグスタの瓦礫の中から救出されたのだが、 本局の局員は被害を被り、死傷者・行方不明者合わせて数十名という未曾有の大惨事となった。 そして今回の警備責任者で六課の部隊長でもある八神はやては、数日後に開かれる六課の是非を問う審議会を控えていた。 リリカルプロファイル 第十七話 手札 事件から数日後、此処六課の訓練所にはヴィータとなのは、そしてティアナの姿があった。 だがその中にスバルの姿は無く、なのははスバルの事をティアナに問いかける。 「ティアナ、今日もスバルは……」 「……はい」 襲撃事件から三日後、目を覚ましたスバルは部屋に引きこもり、食事も睡眠すら取らずにいた。 そんなスバルの様子を心配したティアナはスバルに優しく話しかけるが、 スバルは暫く一人にして欲しいと一言呟くと、じっと一点を見据え指にはカシェルから貰った指輪がはめられていた。 ティアナは、…今スバルには一人の時間が必要なのだろう…と考え、スバルの言葉に応じ部屋を出て別の部屋で寝泊まりする事となった。 しかし訓練所や何処かへ行く際には必ず、スバルに声を掛け毎日食事を届けているのだが、未だスバルの傷は癒えぬまま現在に至っているのである。 そして今日も訓練所に来ないスバルに対し、ティアナは落ち込む表情を見せながら俯き口を開く。 「スバルはもう……駄目かもしれません………」 「ティアナ……」 ティアナは思わず悲観的な言葉を口にする。 …スバルはきっとカシェルの死を受け入れる事が出来ないでいる、そして今ある現実から逃げている… スバルの様子を改めて思い返し、そう考えるティアナ。 するとなのはは、瞳を閉じゆっくりと息を吐く、そして瞳を開くとティアナに語りかけるように言葉を口にする。 「ダメだよ…ティアナがそんな事言っちゃ」 その言葉にティアナは顔を上げると、なのはの瞳は怒りとも哀しみとも取れる色を宿していた。 そしてなのははティアナの肩に手を当て話を続ける。 「ティアナはスバルの友達なんだよ?」 「なのはさん……」 「それに…スバルの傷を癒せるのはティアナだけなんだから」 なのはのその言葉は、ティアナの過去を知っているからこその発言であった。 “大切な者を失う痛み”それを知っているティアナだからこそ、スバルの力になれるハズだとなのはは語る。 その言葉にティアナは俯き目を閉じる、…今まで自分はスバルが現実から逃げていると思っていた。 だがそれは違っていた、自分もまたスバルから逃げていたのだ…と。 ティアナは何かを決意したかのように頷き顔を上げる、するとその表情には迷いが無く決意に満ちていた表情を表していた。 「なのはさん!私スバルの所に行ってきます!」 「うん分かった、いってらっしゃいティアナ」 なのはの了承を得たティアナは、早速スバルがいる部屋へと向かい、その後ろ姿を見届けるなのは達。 辺りが沈黙に包まれる中、今まで黙っていたヴィータの口が開く。 「んで、どうすんだよ今日の訓練は」 「そうだね……今日は一日中ヴィータちゃんと模擬戦…かな」 「ゲッ!マジかよ!」 そう言ってヴィータの顔を見るなのは、その顔は笑みを浮かべていたが、 その目はまるで獲物を見つけ狙いを定めたかの様に細く鋭く光っており、ヴィータは思わず青ざめる。 あの敗戦後、なのは達は知らず知らずの内に己の力を過信していたと考え、それぞれ鍛錬を始めていた。 幸い此処六課には鍛錬に相応しい人物が集まっている。 そしてスターズはスバルがいない分、午前中は二人でティアナが動けなくなるまで鍛え上げ、 午後はヴィータとなのはが模擬戦を行う形を取っていた。 しかし今回はティアナがスバルの元へ向かった為、朝からなのはと一日中模擬戦へと変わったのである。 ヴィータは明日は筋肉痛は確実だなと考えつつグラーフアイゼンを起動させ構えるのであった。 一方ティアナはスバルがいる部屋の扉の前にいた。 ティアナは深く深呼吸をすると、覚悟を決めスバルが居る部屋へと入る。 部屋の中は暗くカーテンも閉め切っており、部屋の中心にはスバルが座り込んでいた。 スバルの目は虚ろで隈が出来ており一睡もしていない様子で、後ろには朝ティアナが持ってきた弁当が手つかずに置いてあった。 スバルは通常勤務なら四・五日寝なくても平気なのだが、今のスバルは 苦悩や悲観や憎悪、そしてカシェルへの想いが頭を駆け巡り、精神的に疲弊している状態なのである。 そんな目を背けたくなる様子のスバルだが、ティアナは真横へと近づき両膝を付く形で隣に座る。 そして辺りは沈黙に支配され、一分すら悠久の時の長さにすら感じる部屋の中でスバルの口がゆっくりと開き始めた。 「……ティア」 「…うん」 「私ね…カシェルの事、好き……だったんだと思う…」 そう言うとスバルはカシェルとの思い出を話し出す。 最初はただの男友達だった…しかしカシェルは優しく、色々と手を貸してくれた。 一緒に訓練や学習をしたり、自主練に付き合ってくれたり、宿題に付き合ったり…それに食事を奢ってくれた事もしばしばあった。 そしてそれらが積み重なっていくうちに、自分に兄が出来たような感覚を覚えたと。 自分には二つ上の姉がいる、それ故にカシェルに姉の面影を重ねていたのかも知れない…その事をカシェルに話してみると、 微笑みを浮かべ、スバルの頭を撫でながらカシェルもまた自分の事を妹のように思っていると答えたと。 そう嬉しそうな雰囲気で思い返しているスバルにティアナは問いかけた。 「今でもカシェルを兄として?」 「……………分かんない」 今スバルの胸の内に広がるカシェルへの想いは兄としてなのか、男としてなのか…今はもう判断出来ない。 だがどちらにせよ、カシェルといた時間は、何よりも充実していたとスバルは微笑みを浮かべながら語るが、すぐに笑みが消え暗い表情に変わる。 カシェルの励ましもあり六課に編入したスバルは強くなる為に努力し、またいつかカシェルと会える事を楽しみにしていた、だがその願いは無惨にも打ち砕かれた。 カシェルは見るも無惨な姿となってスバルの前に敵として現れた。 その時自分はカシェルに対し何も出来なかった、カシェルを救い出すことも、カシェルを苦しみから解放させる事も… そして今、カシェルの為に何が出来るのか自分は悩み続けていると囁くように語った。 「ねぇ…ティア……」 「うん?……」 「私…カシェルに何をしてあげればいいんだろう」 スバルの言葉にティアナは瞳を閉じ考え込む、そして五年前の自分を思い出していた。 …あの時、兄を無くした自分は涙が枯れるまで泣いた。 犯人を恨み復讐を誓おうともしたが、犯人は自首し更に自殺した為それすら適わなかった。 そして兄の為に自分が出来る事…それは兄の夢を引き継ぐ事、その決意は“大切な者を失った痛み”を和らげ今に至っている。 そしてスバルは五年前の自分と同じ状況にいる、しかしスバルと自分では大きな違いが一つ在る。 それは敵討ちの相手がいる事だ、だが心優しいカシェルが復讐など望んでいるハズがない。 ならばスバルがカシェルに出来る事は一つしかない、そう考えるとスバルの肩に手を当て優しく答えた。 「……それは勿論、カシェルの為に泣いてあげる事よ」 スバルが泣いて悲しんであげる事でカシェルが生きていた“証”になるとティアナは語る。 その言葉にスバルはティアナの顔を見上げる、ティアナは優しい笑みでスバルを見つめていた。 スバルはティアナのその表情にカシェルの陰を見ると、今まで胸の内に溜めていた様々な感情が込み上げていく。 そしてティアナの肩を掴み顔を胸に埋めると、込み上げた感情が声となり涙となってティアナの胸の中で解き放たれた。 「っ!…カ…シェル……うっ…うぁぁああああああああ!!!」 スバルは泣いた…泣き叫んた…声が枯れる程に…涙が枯れる程に… そして…その感情を優しく包み込むようにスバルを抱き締めるティアナ。 「強くなろう…スバル……」 ティアナの言葉に頷きつつ涙を流し続けるスバル、それを全身で受け止めるティアナであった。 それから数日後、八神はやて率いる六課の是非を問う審議会が此処本局にある審議室にて行われる事となった。 部屋は広く、はやてを中心に左の席にはクロノ提督、レジアス中将、カリム少将と並び、右側の席には伝説の三提督の姿があった。 そして審議席にあたる後方の位置には複数のモニターが設置されており、管理局の一佐から三佐までの顔を表示されていた。 だがその中にはやてが師匠と呼ぶゲンヤの姿は見受けられなかった。 そしてはやての正面には巨大なモニターが設置されており、更に上には左から順に青・赤・黄色の最高評議会のエンブレムが映し出されたモニターが設置されていた。 そして巨大モニターの隣には竜を模した杖を携える老将の姿があった。 ガノッサ提督、かつて伝説の三提督と共に一時代を築き、生涯現役を今も貫き通す、自称神を屠る者と呼ばれる人物である。 今回はガノッサが審議の中心となって指揮を取るようである。 …そして開始時間になり審議会が開幕された。 「これより六課の是非を問う審議を執り行う」 まず今回のアグスタ襲撃によって被った被害は本局の局員数十名、ホテル・アグスタの崩壊、そして歴史的価値のあるロストロギアの破損・消失などが上げられた。 そして今回はやては六課…いや管理局の切り札とも言える能力リミッターを解除を承認した。 しかし結果は上記の通り、その被害結果により、はやての指揮官能力へと審議は移る。 するとモニターの審議者達が今回の結果に対して次々に述べ始めていた。 「…所詮二佐とはいえ小娘、部隊長としての技量など知れたものだったのでは?」 「いくらレアスキルを持っていてもな…些か特別扱いし過ぎたのではないだろうか」 「そうかもしれんな…それに彼女は闇の書事件の当事者であるしな」 するとクロノはモニターの審議者の最後の言葉に対し、手を挙げ異議を唱える。 「待ってくれ!今回の審議の内容ははやての指揮官能力の是非についてだ!闇の書の事件は関係ないハズだぞ!!」 クロノの言葉に一同はざわめくと、ガノッサは静粛を促し更に話を続ける。 今回において能力リミッター解除は結果的に有力ではなかった。 つまり貴重な切り札を無駄に切ったと言うところにある。 それは指揮官としてどうなのかはやてに問いかけると、はやてはこう答えた。 「確かにあの場で切り札を切るんはどうかと思いました、せやけどあの時あの犯人、 レザードをこのままにしとくんはミッド…ひいては次元世界全てに被害が被ると思うたからです」 はやての力強い発言に頷くクロノとカリムに対し、ガノッサはエンブレムが映し出されているモニター、最高評議会に問いかけると赤いモニターが反応する。 「如何しましょう?最高評議会の皆様……」 「……古代遺物管理部第六課の解散を要求する」 「何故ですか!」 最高評議会の決定に今度はカリムが申し立てる。 六課は設立して数ヶ月のうちにロストロギアであるレリックの回収や、リニア事件から姿を現した不死者の解析など、様々な功績を立てたと。 今回の失態一つで今すぐ解散を促すのは如何なものかとカリムは主張する。 するとカリムの主張に黄のモニターが応え始める。 「確かに古代遺物管理部第六課は設立されて日が浅いうちに様々な功績を立てた。 だが…今回の失態はそれらの功績を積み上げても手に余るのだよ」 故にこの様な判断を下したと語り、その判断に不服はないかとガノッサは問いかけると、はやては口を開く。 「…確かに今回の失態は大きいと思います、せやけど六課のみんなは頑張って仕事をしております! それにこれからの事を考えれば六課の存在は必要なるん思います! せやからお願いです!今回の失態、私の首一つで片付けてもらえませんか?」 「……状況を飲み込めて居ない様だな八神二佐、事態は貴様の首一つで収まる状態では無いのだ」 はやての申し出に対し今度は青いモニターが話し始める。 今回の六課の失態で、民衆は魔法に対し大きな不信感を抱きつつある。 管理局は魔法に対し質量兵器とは異なり比較的クリーンで安全な手段だと謳っていた。 しかし今回の事件によって魔法による破壊工作及び殺人行為が可能だという事が、露呈し広まってしまったと。 その情報は管理局の意向に反した情報、しかも一夜にして全土に知れ渡ってしまった。 その発端を作ったのが六課であり、あの男レザードの所業であると。 レザードはアグスタを魔法によって崩壊させ、更に失踪事件を引き起こし失踪者を用いて不死者を製造した人物でもある。 そんな人物がミッドチルダに潜伏している、次は何処を狙われるか…誰が狙われるか…民衆は不安で仕方がない。 そしてそれらを払拭する為にも、今回の事件を招いた六課の解散は否めないと語る。 「元々古代遺物管理部第六課は実験的に設立した部隊、そして…このような失態を生んだ部隊に最早存在価値など無い」 最高評議会は吐き捨てるように事実を叩きつけると、はやては何も言えず萎縮する。 そんなはやての姿を後目に、ガノッサは最高評議会の意向を受け六課解散を宣言した。 次にはやてに対するの処分の審議を始めようとすると、レジアス中将が割り込むように挙手する。 「何かな?レジアス中将…」 「八神二佐の処分、それは儂に任せて貰えんか」 思わぬ人物の提案にガノッサは顎に手を当て考え込む。 …あのレジアスが自ら動くとは、だがあの男ならば甘えなど無く処分を言い渡すだろう… それに今のはやては本局にとっては“害”に過ぎない、それ故に地上本部が引き取ってくれるのであれば願ってもない事かも知れない。 その旨を最高評議会に話してみると満場一致で了承し、八神はやての処分はレジアス中将に一任する事となり審議会は閉幕した。 「では八神二佐、ついて来たまえ」 レジアスはそう言うと席を立ち、はやてはレジアスの言われるがまま、ついて行く事となった。 それを苦虫を噛み締めるような表情で見つめるクロノ達であった。 …審議会を終えたクロノは自分の船、クラウディアへと戻りブリッジへ続く通路を歩いていた。 そしてブリッジへと辿り着くと、金髪の青年がクロノを出迎える。 彼の名はロウファ、本局の一等空尉でクロノの補佐を務めている。 クロノは席に座ると深くため息を吐く、その様子にロウファは質問を投げかけた。 「お疲れさまです艦長、審議会はどうでしたか?」 「…どうもこうもないな、あれではただの吊し上げだ」 今回の審議の結果に頬に手を当てふてくされた様子で話すクロノ。 今回の審議会はまるで六課の失態を期に解散させようとする雰囲気に満ちていた。 そして結果的に六課は解散を余儀なくされ、はやては本局から追い出される形で地上本部に出向になったと。 一通り説明を終えたクロノであったが、未だその顔は不機嫌なままであった。 其処へお茶を持った那々美一等陸士が姿を現す。 「艦長、お茶を用意いたしました」 「あぁ、すまない那々美」 クロノは手を伸ばしお盆からお茶を持つとゆっくりと啜る。 するとクロノの口の中に甘ったるく濃厚なミルクの味が広がり、思わず喉を詰まらせる。 何故ならその味はかつて母が飲んでいたお茶の味をしていたからだ。 その味にクロノは那々美に問いかける。 「なっ那々美、このお茶は一体?!」 「この前送られて来たんです、緑茶ラテと言うそうです」 送られてきた緑茶ラテの量はダンボール一箱分、送り主はリンディ・ハラオウン、クロノの実の母親である。 そして同封された手紙にはこう記されていた、【疲れた時には甘い物をとって疲れを癒してね】と。 クロノは思わず頭を押さえる、何故ならばクロノは甘い物は苦手であるからだ。 更に量はダンボール一箱分、確かに疲れている時には甘い物は有効だ。 だがそれにしたって量が半端ではない、寧ろ糖尿病に掛かってしまうレベルだ。 クラウディアにはクラウディアで新たな問題が発生したとクロノは頭を抱え左右に振ると、オペレーターである夢瑠一等陸士が暗号通信を受信したとクロノに伝える。 「誰からの通信だ?」 「え~っと、ガノッサ提督からみたい……です!」 クロノの指示のもと夢瑠は暗号を解析、通達された内容は指定された場所と日時に信頼できる部下を一人引き連れて来るようにという事であった。 その内容にクロノは腕を組み考え込む、あのガノッサ提督からの通達ではそうそう無碍には出来ない。 クロノは半ば諦めに近い形で内容を受託、早速クラウディアは指定された場所へと進路を取り始める。 その中、ロウファはクロノに問いかけた。 「それで現場には誰と?」 「そうだな…ジェイクと、だな」 「成る程、あの人なら安心ですね」 クロノの放った名に納得するロウファ、ジェイクリーナス一等陸尉、数々の実績と経験を兼ね備え、教官資格も取得している人物である。 そしてクロノ率いるクラウディアチームは一路ガノッサが指示したポイントへ向かうのであった。 場所は変わり此処はゆりかご内のレザードの施設、中ではレザードが入手した操呪兵設計図面を基にゴーレムを作成していた。 その中何かに気が付いたレザードが声をかける。 「覗き見とは感心しませんね、セイン……」 そう言うと床からセインが飛び出すように出て来た。 レザードはセインを横目に頭を横に振る、どうやら訓練から逃げ出してきた様子だ。 「またサボったのですか?仕方がない人ですね」 「だって私偵察型だよ?戦闘型と一緒に訓練したらコッチが持たないよ」 「やれやれ…そう言えば、黄金の鶏はどうしています?」 「コッコの事?今日はウェンディが面倒を見ているよ」 コッコとは黄金の鶏のあだ名らしく、コッコの面倒はナンバーズが一日交代で面倒見ていると。 そう言うとセインはレザードが作成しているモノに目を向ける その姿は頭部が小さくモノアイで、上半身は巨大で腕は太く、下半身には足の代わりに浮遊体のような球体が二つ付いた姿をしていた。 「…博士、これは一体何です?」 「これですか?ゴーレムですよ」 「あぁ、例の設計図の」 セインの言葉に頷くレザード、しかし設計図通りに造るのは面白くないと考えガジェットの技術やアレンジを加えていると話す。 ゴーレムの動力源は人造魔導師の技術を応用しリンカーコアを起用、 表面の装甲は軽くて強固なミスリル銀、内部材質は弾力と耐久力を持つダマスクス、そして頭部・腕の外装甲は特別にレザードのデバイスと同様オリハルコンで造られていると。 そしてリンカーコアを搭載させている事で、ある程度の魔法を使用する事が出来る。 そして今の完成度は80%と自慢げに語った。 「へぇ~、それでコレって名前あるの?」 セインの言葉に考え込むレザード、確かに名前が無けれは色々と不便である。 そしてどんな名前にするか考えていると、かつて自分が造ったホムンクルスの名を思い出し、思わず苦笑する。 「どうしたの?博士」 「いえ何でもありませんよ………名前ですが、ベリオンと言います」 「ベリオンかぁ」 そう言ってベリオンを見つめるセイン、すると入り口からウェンディの呼ぶ声が響く。 「あぁ!!こんなとこに居たんッスかセイン姉!トーレ姉がカンカンッスよ!」 ウェンディに窘められたセインはレザードに別れの挨拶を交わし足早に去っていく。 レザードはまるで台風にでも遭ったかのような印象を受けていた。 一方、審議会を終えた二人はハイヤーで地上本部へと向かっていた。 車内はレジアスとはやてが乗っており、カーテンは締め切られて、外の様子が全くわからない造りをしていた。 暫く車内は沈黙に包まれているとレジアスがはやてに問い掛ける。 「八神二佐、突然ではあるが、君はホワイトナイトという株用語を知っているかね?」 突然の質問に困惑するはやてだが、レジアスの質問に答える。 ホワイトナイトとは株用語の一つで、買収される企業にとって友好的な第三者の事を指すと。 はやては話し終えると今度はクラウンジュエルの事を聞いてくる。 クラウンジュエルとは、買収する企業において資産価値、収益力、事業力などが最も魅力的な部門を指すと答えた。 はやては一通り説明を終えるが、疑問を感じていた。 何故株用語を聞いてきたのか、まさか自分に株でもやれとでも言うのだろうか? そう考えているとハイヤーが止まり扉が開く、はやてはハイヤーから降りると此処はかつての機動隊の隊舎で、入り口にはゲンヤが出迎えていた。 はやては困惑していると、レジアスとゲンヤが付いてくるようにはやてに指示、三人は隊舎の中へと赴いた。 隊舎の中は綺麗に掃除されており、とても八年前の建物とは思えない作りをしていた。 三人は通路を道なりに歩いていると、ドアへと辿り着く。 そしてドアを開くとその光景にはやては唖然とする、ドアの先に広がる光景とは六課のロングアーチとよく似た施設が広がっていたからだ。 はやてが唖然としている中、レジアスがはやての処分を言い渡す。 その内容とは、此処機動隊の隊舎を基に新たな部隊の部隊長を任せると。 だがその任はまるで、もう一度六課を設立しろと言っている印象をはやては受けていた。 そしてはやては深々とお辞儀をし、大声で感謝の弁を述べる。 「有り難う御座います!こんな私に―――」 「八神二佐、何か勘違いしているようだな」 レジアスの言葉に頭を上げ首を傾げるはやて、レジアスの主張はこうである。 今回の事件で一番の問題点は六課の失態ではなくあのレザードという存在であると。 奴の存在によってミッドチルダの安全神話は崩壊した。 奴をこのまま野放しにすればミッドの地上は危うい、そこで今回の失態により株価が落ちたはやてに目を付けたという。 だが、はやてに現状に存在している部隊を渡すのはもったいないと考え、この様な処置を与えたと語った。 「機動隊は我が地上本部の汚点とも言える存在、つまり…本局の汚点と言える貴様に地上本部の汚点を与える、此ほどの相応しい処分は無いと思われるがな」 そう言って悪意に満ちた笑みを浮かべるレジアス、更に機動隊の隊舎を与えるという事は、最前線で戦ってもらう事の意味も含めているという。 何故ならレザードという前代未聞の犯罪者に、地上本部の局員を全面に押し出せば此方の戦力はがた落ちとなる。 それを防ぐ為の部隊でもあるとレジアスは付け加えた。 だがはやてはその言葉の裏に潜む意味を理解すると同時に、レジアスが車内で問い掛けた質問を意味を理解する。 レジアスは六課の存在を本局のクラウンジュエルとして見立てていた。 そして地上本部と言うホワイトナイトによって六課を回収する為この様な処置を行ったのであろう。 だが六課の再建は管理局…いやレジアスの株を下げ痛烈な非難を浴びる事になる。 しかしレジアスはそれを覚悟でこの様な処置に至ったと…するとはやての目に涙が浮かび上がっていた。 だがはやては涙ぐむ目を左腕で拭い敬礼を行う。 「八神はやて二等陸佐、謹んで処分をお受けいたします」 その返事を聞いたレジアスははやてに背を向けると、まずゲンヤが出て行き、レジアスがドアの前まで向かうと立ち止まり大きな声で独り言を喋り出す。 「しかし…今の時期に新たな部隊に戦力を渡してくれる者など居るだろうか? まぁ、いざとなったら最近解散した六課とやらの人材でもかき集めるがいいだろうな 何も知らぬ素人より役に立つかも知れんしな」 そう言うと後にするレジアス、その場にははやてが一人ぽつんと立っていた。 だがはやての顔は徐々に笑みを浮かべ始め、まるで子供が新しい玩具を手に入れた時のような表情を現していた。 「ヨッシャァァ!!やったるでぇぇ!!」 気合いとともに叫ぶはやて、六課はまだ終わってはいない、此処からまた六課を作り直す!…そう意気込むはやてであった。 その意気込みをドアの向こうで聞いていたレジアスとゲンヤ。 そしてゲンヤは通路を歩き出すと目だけをレジアスに向け呆れた口調で話す。 「相変わらず…大きな独り言だな」 「フンッ………」 ゲンヤの言葉に一言で答えるレジアス、そして二人は今度こそ、その場を去っていったのであった。 一方クロノはガノッサが指定したポイントに辿り着く。 そこは研究施設のようでクロノとジェイクリーナスは通路を進んでいくと突き当たりのドアに辿り着く。 其処には先に到着していたガノッサが佇んでいた。 ガノッサの隣には青髪の女性がおり、ガノッサの秘書を務めているようである。 ガノッサはクロノの姿を確認するとドアを開け中へと入る。 そしてクロノも後に続き中に入ると、部屋の中にはバリアジャケットや騎士甲冑を着込んだ男女十名が整列していた。 その姿にクロノはガノッサに問いかけてみると、ガノッサは秘書にモニターを起動させるように指示、 起動させたモニターには最高評議会のエンブレムが映し出されると、クロノの問い掛けにモニターが答えた。 ―――“人型デバイス”エインフェリアであると――― 前へ 目次へ 次へ
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「スバル、ティアナ!それにナノハ!」 「ジャン……」 ゲキレッドに呼ばれた3人は、立ち上がり、声を揃えてレッドに視線を送る。 「お前達も、やるぞ!一緒に!」 「一緒に……?」 「でもジャン、魔力と激気は……」 「そんなの関係無い!!」 「……ッ!?」 ティアナの言葉を遮るゲキレッド。スバルも、ティアナ同様驚いている様子だ。 「魔法も激気も関係無い!俺達なら、できる!感じろ、体の奥から漲る力を!」 「体の奥から……漲る力……」 レッドに続き、呟くスバル。 「そうか!僕達の技を合体させれば……!」 「……魔法とゲキ技の融合……」 ジャンの口ぶりから、言わんとする事を理解したゲキブルーが一歩前へ出る。そしてティアナがそれを復唱。 「スバル達の魔法と、私達の獣拳を……うん!やれるよ、私達なら!!」 「ラン…………そうだね、やろっか!大技!!」 ゲキブルーに並ぶゲキイエロー。スバルも力強く頷いた。 ゲキレッドの言葉に、何か……体の奥から沸き上がる何かを感じる一同。 「凄い……これが、激獣拳……」 「なのはさん?」 「スバル、ティア……」 なのはも立ち上がり、レイジングハートを構え、ゲキレッドの横に並ぶ。その表情は、自信に満ち溢れていた。 「見せ付けよう……私達の、全力全開を!!」 「「はい!」」 スバル達も嬉しそうに答え、なのはの横に並ぶ。これなら本当に出来るかもしれない。 「参ったぜ……本当に力が沸き上がってくるみたいだ……!」 「押忍ッ!そうと決まれば、やろうぜ皆!」 「ゴウさん……ケンさん……!」 微笑むティアナ。ゲキバイオレットとゲキチョッパーも拳を握り締め、並んだ4人の横に駆け寄る。 「そうだよね……私達の力を合わせれば……」 「倒せない物なんて無い!見せてやろう、激気と魔力の合一を!」 「ラン……レツ……!」 ゲキイエロー・ゲキブルーも皆の後に続く。立ち上がった二人に、スバルも笑顔になる。 「行くぜ、皆……ギュオンギュオンだッ!!」 「うん……やれるよ、ジャン!」 気合いを入れるゲキレッド。凄まじい気迫だ。そんなゲキレッドを見て、なのはは力強く言った。 ゲキレンジャー5人と、なのは・ティアナ・スバルの計8人が肩を並べる。壮観だ。 「「「はぁぁああああああああああああッ!!!」」」 スーパーゲキレンジャーの三人の背中から、激しい過激気が噴射される。バイオレットやチョッパーの体からも、紫激気・激気が吹き出しているのが解る。 「凄い……私達の魔力が……!」 「皆の激気と、混ざり合ってる!」 それに当てられ、なのは達3人の魔力も急激に上昇する! 感覚的には、全身から、激しい魔力が噴き上がるような感覚だ。体の奥から沸き上がる魔力に、3人の気迫もレッドゾーンに突入する。 「「「スーパーゲキバズーカ!!!」」」 スーパーゲキレンジャーは、ゲキバズーカを構え、激気を込め始める。 「一撃……必殺!ディバインバスター!」 スバルは、左右のマッハキャリバーから蒼い、魔力でできた翼を展開させ、右腕を振りかぶる! これがスバルの全力全開……ギアエクセリオンだ。 「クロスファイアシュート!」 ティアナは二丁拳銃であるクロスミラージュを構える。同時に無数の橙色をしたスフィアが現れる。 ゲキバズーカを構え、スーパー激激砲の構えに入るスーパーゲキレンジャー。その左右で、スバルとティアもそれぞれの技の体勢に入る。 「私達も行くよ、ディバインバスター!」 『Yes,My Master.Divine buster ,Extension.』 レイジングハートエクセリオンを構えたなのはは、ディバインバスターの発射体制に入る。 「行くぜ、厳厳拳!!」 ゴングチェンジャーに紫激気を集中し、厳厳拳の構えを取るゲキバイオレット。 「押忍ッ!サイブレードフィンガー!!」 激気研鑽により、右手に構えたサイブレードフィンガーに激気を集中させるゲキチョッパー。 ディバインバスターを発射しようとするなのはの左右で、二人がそれぞれのポーズを取る。 後はこの激気を撃ち出すだけだ。 「激気!!」 大きな声で叫ぶゲキレンジャーの5人。 「魔力!!」 続いて、スターズの3人が叫ぶ。 「「「合一!!!」」」 ラストは8人、声を揃えて、それぞれの技を発射した! 凄まじい激気を込めて発射されたスーパーゲキバズーカ。 それに、スバルが発したディバインバスターと、ティアナが放ったクロスファイアシュートが螺旋を描いて交わる。 一方で、レイジングハートから発射された桜色の魔力。 その閃光に、ゲキチョッパーが放った紫の光弾と、サイブレードフィンガーにより発射された無数の弾丸が螺旋を描いて交わる。 二つの巨大な閃光と化した激気・魔力合一は、目標目掛けて真っ直ぐに飛んでゆく。 これが最強の力……激気と魔力の合一! ケン「押忍ッ!という訳で、今回はゲキ技と魔法の合体技を投下してみたッス!」 ゴウ「まさかいきなりこんなクライマックスシーンとは……参ったぜ」 スバル「まぁまぁ、こんなのでも話のネタ程度にはなるんじゃない?」 ゴウ「ま、そうなりゃいいけどな!」 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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