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ちびちゃと 内容:部屋が多数あり、人数制限もあり。 機能:かわいいキャラクターでチャットができる。 人数:少なめ 年齢層:若い http //chat.moja.jp/animal.html
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「はぁ…」 私はため息をつく。 今日は、地元の高校の時の同級生が泊まりに来るのだ。 友達なんかじゃない。グループのボス猿みたいな奴で、私はパシリみたいに扱われていた。 男と翌日に遊ぶので、ついでに泊めてくれという事なのだ。図々しいにも程がある。 ピンポーン チャイムが鳴り、玄関へ向かう。 「あきこ~、ひさしぶり~」 「としこ、いらっしゃい」 としこは、靴を乱雑に脱ぐと、「おじゃまします」も言わずにとっととアパートの部屋の中へ。 「結構、片付いてんじゃん」 「うん…」 としこは、ベットに勝手に腰かける。 私は、としこの持つ変な鞄が気になっていた。 (なんだろう、あれ?) 嫌な予感がした。だいたい、こういう時の嫌な予感は当たるもんだ。 「あ、そうだ」 何かを思い出したかのように、その鞄を開けるとしこ。 「ゆゆ!せまかったよ!ゆっくりあやまってね!」 鞄の中から、1匹のゆっくりれいむが出てきたのだった…。 「れいむはれいむだよ!かわいくってごめんね!」 「いやーん、マジ可愛い~」 寝言をほざく、バスケットボール大の饅頭と、嬌声をあげる、としこ。 「どう?私の飼ってるれいむだけど、すっごく可愛いでしょ?」 「う、うん…」 可愛くねーよと心の声で否定する。 そもそも、人の家に急に泊まりに来るだけでも非常識なのに、なまもの連れとは何考えてんだ? それ以前に 「ね、ねえ、としこ…」 「何?」 「ここ、ペット禁止なんで、困るんだけど…」 そうなのだ。喋る饅頭なんか飼ってるなんて大家さんに勘違いされたら、追い出されちゃう。 「はあ?一晩泊まるだけでしょ?それとも、れいむだけ外へ出せって言うの?あんた、虐待派?」 まあ、としこのやつに常識云々を言うのは時間の無駄か…。 「う、うん、だから、できるだけ、ゆっくりを大人しくさせてね…」 「れいむは、大人しくてしっかりした子だから大丈夫だって!ねー、れいむ」 「ゆゆ?れいむは、とってもゆっくりしてるんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 意味わかんねーよ。つうか、言ってるそばから、声がデカいんだよ。 「おねえさん、あのへんなにんげんさんは、なんだかゆっくりしてないよ?」 「大丈夫よー、れいむは気にしなくて」 やりとりがウザいにも程がある。早く、寝てしまおう…。 「もう、私は寝るね」 「えー、もう少し折角だから話そうよ?お酒とかないのー?」 お前と話したくないから寝るんだよ。酒までたかるつもりかよ…。 「ゆゆ!れいむは、おなかがすいたよ!あまあまちょうだいね!」 でかい声で急に自己主張する饅頭野郎。 だから、夜中なのに声がデカいんだよ! 「ごめんねえ、お腹すいちゃったんだー。今持ってくるね」 「ゆっくりはやくしてね!れいむは、おなかさんがぺーこぺーこなんだよ!」 何だよ、ゆっくり早くって。ほんと、意味分からん…。 ビタン!ビタン!と跳ねて喚くれいむ。としこは、注意しようともしない。 隣りのおじさんが怒鳴りこんできたら、どうすんだよ! 「ねえ、あきこ。なんか甘い物無いの?」 持って来て、無いんかい!欲深饅頭の飼い主なら、甘味くらい常備しとけ。 「えーと…、冷蔵庫にヨーグルトならあったと思うけど…」 「じゃあ、それ早く持って来て!」 「はやくもってきてね!さっさとしてね!にんげんさんは、おねえさんのどれいなんでしょ?だから、れいむのどれいだよ!」 はぁぁぁ???何言ってんの?何で私、こんな奴にヨーグルトあげないといけないの? 「ぷっ、ウケる。れいむは、賢いね~」 「もちろんだよ!れいむ、かしこくってごめんね!」 冷蔵庫の前にいる私に、不愉快な会話が聞こえてくる。 そして、ヨーグルトを持って来て、としこに渡す。 「もう、寝るから…。としこも早く寝た方がいいよ…」 「オッケー、おやすみー」 はぁ…、やっと解放される。 はずだった…。 「ゆああああああ!!!!!すっぱいよおおおお!!!!!これ、どくはいってるううううう!!!!!」 急に泣き喚く、迷惑饅頭。 こっちが泣きたいわ! プレーンヨーグルトでも、ゆっくりには充分ご馳走のはずなんだが…。 「うるせえぞ!!!!!!!!!!!!!!」 隣りから、おじさんの怒声が…。 もう…、勘弁してよ…。あの、おじさん、頑固者で超怖いんだからね…。 としこに文句の一つでも言おうとした私に、あろうことか、としこが文句を言ってくる。 「ちょっと!甘い物って言ったでしょ!なんで、すっぱいヨーグルトなんかあげんのよ!れいむを殺す気!?」 「ああ、ごめん…」 お前も、確認しただろうが! てか、生ゴミや雑草を食うゆっくりが、ヨーグルトで死んでたまるか。 ゆっくりの方が食いもんだろうが。 多分、としこの奴が甘やかすだけ甘やかして、本当の甘味以外受け付けなくなっているんだろう。 迷惑極まりない。 「ゆあああ!!あのばばあが、かわいいれいむにどくを、たべさせたよ!れいむが、かわいいからいじめるんだね!」 だ・か・ら、騒ぐなよ…。また、注意されたらどうすんだよ…。 「れいむにあまあまをくれない、みにくいどれいばばあは、ゆっくりしんでね!」 さすがに限界だ…。 これが、リアルでいぶって奴か…。 甘やかされきって、自分がゆっくりする事が、この世の全ての正義だと勘違いしてやがる…。 私は鞄からラムネを取り出すと、れいむ…いや、でいぶの口に放り込む。 少し経つと、「ゆぴぴぴぴ…」と間抜けな寝息を立てて大人しくなった。 「ちょっと!れいむに何すんのよ!」 「としこ、落ち着いて。ゆっくりは、ラムネで眠るでしょ。眠らしただけよ」 「こんな、無理やり眠らせるなんて可哀そうでしょ!れいむに何かあったらどうすんの?」 面倒くさいにも程がある。 「あのね、あれ以上騒いだら、隣りのさっき怒鳴ったおじさんが乗り込んでくるよ?としこは、それでもいいの?」 としこは、不満いっぱいの表情だが、しぶしぶ引き下がる。 とにかくこうして、最低の一夜が過ぎていった。 翌日、としこはさっさとデートとやらに行ってしまった。 それ自体は、ありがたいことなのだが、最低最悪の問題が一つある。 でいぶ野郎が、まだ家に居るということだ。 としこのやつ、厚かましくも預けていきやがった。 とりあえず、今は寝ている。このまま永遠に目覚めなければいいのだが…。 「ゆ!ゆっくりおきるよ!」 起きやがった。 「おねえさん、ゆっくりおはよう!ゆっくりしていってね…ゆゆゆ??」 としこがいない事に気づき、キョロキョロするでいぶ。 「おねえさん?どこ?ゆっくりはやくでてきてね!れいむ、いまはかくれんぼさんはしたくないよ!」 そして、ようやく私を発見したようだ。 「ゆゆ!いじわるばばあは、おねえさんをはやくだしてね!」 「いま、お姉さんとやらは、いないわよ」 その私の返事に、涙目でぷくーをしながら抗議してくる。 「うそつかないでね!おねえさんは、あさいちで、れいむにあまあまをくれるしごとがあるんだよ!そんなことも、しらないばばあは、ゆっくりだまっててね!」 あーあ、としこの奴、しっかりこいつに”あまあま”を産む機械みたいに思われてるねえ。 甘やかした結果がこれだよ!ってね。 …。 「むしないでね!ばばあは、おくちがきけないの!?」 お前がゆっくり黙ってろって言ったのに。これが、餡子脳か…。 イラつくから、もっとラムネで眠らせるか…。 「ん?」 ボヨン!ボヨン! 足に体当たりをしてくる、腐れでいぶ。 「おまえでいいから、さっさとかわいいれいむに、あまあまちょうだいね!たくさんでいいよ!あまあまをくれないと、せいっさいするよ!」 蹴っ飛ばしたくなる気持ちを懸命に堪える。 「分かったから、その体当たりやめてちょうだい」 「ゆふふ!わかればいいんだよ!れいむ、つよくってごめんね!ついでに、かわいくってごめんね!」 勝ち誇る、でいぶ。 今まで、ゆっくりと関わりを持つことはほとんど無く、対した感情も持ち合わせていなかったが、こんなにムカつく物だったのか…。 ピンポーン ん?来客か。これからでいぶに、ラムネを食わせてやろうと思ったのに。 「はぁ~い!れいむいる?」 としこかよ…。丁度いい、そこに転がってる汚物を連れて一緒に消えてくれ。 「どうしたの?」 「ちょうど、この辺寄ったからさ、れいむを彼に会わせてあげようと思ってさ」 会わせて…か。言葉が間違ってるな。見せるで充分だろ、なまものなんだから。 「ゆゆ!おねえさん!ゆっくりしていってね!どこにいたの?れいむは、あまあまがほしいよ!ゆっくりはやくよういしてね!」 「ちょっと、あきこ。まだ、れいむにご飯あげてなかったの?」 「このいじわるばばあは、ぜんぜんつかえないよ!ばばあは、ゆっくりしんでね!」 はいはいゆっくりゆっくり。とっとと私の目の前から消えてくれ。 「ねえ、あきこ。何も無いの?」 「無いよ。そこら辺のコンビニで買えば?私は、もう出かけるからそいつも連れて行ってね」 私の怒りは限界に近い。言葉も荒くなる。 としこには、いつも言いなりだが、でいぶの言いなりにまでは堕ちたくない。 「はやく、あまあまたべたいよ!れいむ、もうがまんできないよ!ぱしたさんや、べーこんごはんさんでもいいよ!」 醜く顔を歪めて、ウネウネ気持悪く動いて、駄々をこねる。生理的に受け付けない。 「わかったから、れいむ、すぐに用意するからね。我慢してね。いつもあげてるでしょ?」 「ゆうう…。おねえさん、やくそくだよ!あまあまをはやくくれるなら、ゆっくりがまんしてもいいよ!ききわけよくって、ごめんね!」 「れいむは、いい子ね~」 茶番もいいところだ。 「あの、どうしたの?」 男がこちらへやってくる。この男が、としこの彼氏なのだろう。 離れた所で待っていたようだが、揉めているように見えたのか、不安そうな表情だ。 「ねえ、私が見せたいものがあるって言ったよね」 としこが、私が聞いたことも無いような媚びた声で男に話しかける。 「うん…」 不安そうに男が、私とでいぶに交互に視線を向ける。 「見せたい物って、このゆっくりかい?」 男が困惑したような、冷ややかな視線をでいぶに向ける。 「ゆゆ!ゆっくりできないかんじの、じじいだね!このばばあと、おなじかんじがするよ!」 でいぶが、としこの彼氏に暴言を吐く。 としこの奴、困ってやがる。ざまーみろ。 「ち、ちょっと…。何言ってんの…」 「ゆぷぷ!こんなやつ、どーでもいいから、やくそくのあまあま、はやくちょうだいね!れいむ、もうがまんのげんかいだよ!」 甘やかしに甘やかして、他人もないがしろにしてきたのだろう。 だから、人を見下すのが当たり前になっているようだ。 としこ、あんたは躾を間違えたんだよ。あんた自身も、アレだけどさ。 「俺は、ゆっくりって生理的に受け付けないんだ。しかも、こいつはすごいゲスだね…。これ、君のかい?」 としこに向き直る、彼氏。 目が泳ぐ、としこ。そして… 「ち、違う違う!見せたい物ってのは、そう、このキーホルダーのことなの!これは、この子の飼いゆだからさ!」 そう言って、私を指さすとしこ。 「そうなの?」 彼氏が私に聞いてくる。 「うん、私のだよ」 私は、そう即答する。 としこが、ホッとした表情になる。 「そうなんだ」 人間三人に静寂と一瞬の間が訪れる。 でいぶは、腹減ったと相変わらず醜く喚き散らしているが。 「お邪魔してごめんね。としこ、行こう」 「え、う、うん」 彼氏が静寂を破り、としこと共に去ろうとする。 「ねえ、としこ」 「な、何よ…?」 「こいつは、私の飼いゆだよね?」 「え、そ、そうに決まってるじゃない!」 私は、としこに最後にそれだけ聞くと、でいぶのりぼんに飼いゆ登録のバッチが無い事を確認する。 二人は去った。 「おねえさんはうそつきだよ!あまあまくれないなんて、おねえさんもくずだね!ばばあでいいから、ゆっくりはやくもってきてね!」 そう、この糞でいぶは私の飼いゆだ。 ドカッ! 私の蹴りが、でいぶの顔面にヒットする。 顔面がくぼみ、饅頭皮の表皮が少し抉れる。 「ゆぎゃあああああああ!!!!!いたいよ!れいむのおかおさんが、いたいいたいだよぉぉぉ!!!うああああんん!!!」 まるで、地獄の釜で茹でられてるかのように悲痛な声をあげる、でいぶ。 まあ、地獄を見るのはこれからが本番なんだけどな。 「ゆぐ…ゆぐ…ひっく…なんで、かわいいれいむにこんないじわるするの?れいむが、かわいいから、ばばあはしっとしてるの?ばかなの?しぬの?」 まだ、こんなくだらねえ事が言えるなら、元気そのものだな。 「ゆゆ?」 でいぶの目の前に、チョコを落とす。 「ゆゆ!あまあまだよ!ちょこさんは、ゆっくりできるよ!」 チョコに突進しようとする、でいぶの頭を踏みつけて動きを封じる。 「ばばあは、いじわるしないでね!れいむは、ちょこさんをたべるんだよ!」 そのチョコは元々、私の物だとかそういうことは一切考えないのか。 まあ、でいぶだしな。あまあまは、どれいが生やす物…なんだろ? 「私がいいと言うまで我慢したら、食わせてやる」 そう言って、頭から足をどかすと、でいぶはチョコに直ぐに飛びついた。 「ばかなこといわないでね!あまあまは、れいむのだよ!れいむは、ゆっくりすぐにたべたいんだよ!そんなこともわからないの?ゆっくりりかいしてね!」 でいぶが、チョコを一気に食べる。 「ゆぶぶぶぶぶぶ…ゆげぇ!!ゆげぇ!!これ、どくはいっでる”う”う”!!!!!」 バーカ。それは、としこが昨日残した煙草の吸殻にチョコを適当にコーティングしただけのもんだよ。 よほど気分が悪いのか、断続的に痙攣しながら餡子を吐いている。 私は、口を抑えて抱えあげる。 「まだ、死なせねーよ」 口をガムテープで塞ぐと、アイスピックを刺していく。力いっぱい顔面の方に。 ビタンビタンと痛みで、のたうち回るので、左手で抑えつけながら、右手で刺す。 今日は、隣りのおじさんも、別の隣人もいないらしいことを確認すると、ガムテープを剥がす。 「いだいいい!!!いだいいよおおお!!!れいむ、なにもわるいごどじでないのに!!!」 今は、このイライラも心地よい。なぜなら、発散できる事が分かっているからだ。 「ゆっぐりじね!ゆっぐりじね!ばばあは、そくざにじね!」 喚くでいぶの右目に、アイスピックを刺す。 ぐりぐりとねじり、一気に引く。すると、でいぶの右目は簡単に取れた。 「れいむのおべべざんがああああ!!!いだいよおおお!!!」 もう片方の目も、同じように抜き取る。 「なにもみえないよ!くらいよ!こわいよ!おひさまさんもみられないし、びゆっくりと、びゆっくりどうしで、みつめあうとこもできないいいい!!!ゆああああああんん!!!」 何が、美ゆっくりだ。寝言は寝てから言え。 次は、でいぶをコンロへと持っていき、あんよを火に押し付ける。 「あじゅいいいいいいい!!!!!もうやだおうぢがえるうううううう!!!!!」 こんがりと、あんよが焼け、甘く香ばしい匂いが漂う。 炭化したあんよはもう、跳ねることも這うことも出来ない。 「れいむのあんよさん…ぺーろぺーろするから、なおってね…。でないと、れいむはあるけないよ!ゆっくりりかいしてね!」 あんよに話しかけてんのか?ゆっくりの餡子脳は訳分からん。 最後は、まむまむ破壊だ。 れいむ種のぼせい(笑)は強く、おちびちゃんこそ最高のゆっくりというれいむも多いと聞く。 それだけに、それを奪われるのは凄まじい絶望感を味わうはずだ。 ナイフで執拗に、まむまむを切り刻む。 「ゆぎゃあああああ!!!やべでね!やべでぐだざいい!!!おぢびちゃんがうめなくなるよお”お”お”!!!」 でいぶが、これまで以上の悲鳴をあげる。 しかし、私はでいぶのまむまむを、ザックザックと容赦なく切り刻む。 しばらくすると、グズグズになって使い物にならないまむまむを晒したでいぶが完成した。 痛みで失神と痙攣を繰り返すでいぶ。 うわ言のように「れいむのばーじんさんが…」とほざいていた。 饅頭がバージンとか、きめえんだよ! 虐待が一通り終わり、放心状態のでいぶに声をかける。 「あんた、もう死ぬから」 それを聞いて、でいぶは目線をこちらに向ける。身体はもう動かせない。 「なんで、こんなひどいことするの?」 「分からない?」 「わからないよ…。れいむは、ゆっくりしてただけなのに…。れいむ、なにもわるいことしてないのに…」 「あなたは、悪い事をしたの」 「ゆゆ?!してないよ!へんなこと、いわないでね!」 「知りたい?」 私は、でいぶの傍へ寄る。 「あなた、ご飯はどうやって用意するか知ってる?」 「ごはんさんは、おねえさんがもってくるんだよ」 「じゃあ、お姉さんはどこから持ってくるの?」 「ゆゆ?」 でいぶは言葉に詰まる。質問の意味さえ理解してないようだ。 でいぶに一つ一つ分からせるなんて不可能だ。 何せ、自分は全て正しいと思っているんだから。 「これだけ分かってくれればいいわ。まずは、ゆっくりより人間は強いの。これは、良くわかったでしょ?」 でいぶにアイスピックを刺す。 「ゆぎゃぁぁ!わかります!にんげんさんは、つよいです!ちくちくさんは、もうやめてね!ゆっくりできないいい…」 「でね、私はあなたが不快なの。嫌いなの。強い人間さんに嫌われるような事をすることが悪いことなの、理解できた?」 れいむは固まっている。そして、 「ごべんなざい!れいむは、にんげんざんに、ゆっぐりでぎないばばあっていいまじだ!ゆるじでぐだざい!」 でいぶに罪を認めさせるなら、これくらい噛み砕いてあげないと。 まあ、罵倒された状態で殺してもスッキリ出来ないしね。 私は、でいぶにとどめを刺そうとする。 その時… ガチャリ… 家の扉が開く。 としこと彼氏が、そこに立っていた。 「あ、あんた…何やってんの…」 としこが、絶句する。かなり、ひいている。そりゃあまあ、そうだろう。 固まるとしこに変わり、彼氏が口を開く。 「実は、俺ととしこは別れたんだ」 どうやら、二人は別れることになったようだ。 彼氏の方から、一方的に別れを通告したらしい。 しかし、なぜ二人はここにいるのだろう? 「れ、れいむ…」 としこは、でいぶを迎えに来たようだ。 「これは、私の飼いゆだよ?」 私は、そう言い放つ。 「俺も、そう聞いたけど。録音もしてあるよ」 彼氏は、そう言って携帯の動画を見せる。あの場面だ。 「もう、あきことは絶交だから!」 としこは、半狂乱になりながら去っていった。 としこと絶交、なんて素晴らしい響きなのだろう。 「詰めが甘いよ。口約束じゃ、ごねられるよ」 彼氏がそう言ってくる。 「う、うん」 「楽しかった?」 彼氏は、眩しい笑顔でそう聞いてきた。 「楽しかった…」 「俺は、君に会いに来たんだ。君とは趣味が合いそうだから」 私は恋に落ちた。 二人の初めての共同作業は、でいぶを踏み潰すことだった。 グシャッ!!! はっぴーえんどだよ!
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ちびちゃ日記をたまに更新していきます。 3/25 ppY復活 なんと、今日久々にppYがちびちゃとに来ました!! おめでとうさん!! マヨ軍wwww(´゚д゚`) -- 巧海 (2011-04-05 22 55 16) 久々会えてよかったねっ☆ -- 稀菜 (2011-12-05 09 25 09) 名前 コメント
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楽しく皆で天鳳やりましょう 私達は闘う、喩え残り点棒が1000点だろうが0点だろうが闘う 全ての思いをその牌に乗せろ 終焉に見える栄光の為に闘うのだ さあ始めよう今宵の喜劇を・・・
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『穏やかな日常、少し増えた賑やかさ 後編.TXT』 31KB 愛で 制裁 思いやり 日常模様 引越し 家族崩壊 親子喧嘩 共食い 飼いゆ 野良ゆ 姉妹 都会 現代 前後編ものです こんにちは、かすがあきと勝手になのっている者です。 anko3893 : 穏やかな日常、或いは嵐の前の静けさ の続編で、 anko3901 : 穏やかな日常、少し増えた賑やかさ 前編 の直接の続きになります。 あらすじ 可愛いくて賢い飼いゆっくり れいむが、お部屋に侵入しようとしたでいぶ一家を頑張って、沈静化したよ。 でいぶ一家に虐げられえいる可哀想な子まりさがいるよ。 そんな子まりさを見て、可愛いくて賢い飼いゆっくり れいむは何かを決めたよ! ============================================= 「おにいさん。おねがいがあるよ!」 帰宅した僕にれいむが叫ぶ。珍しいなと思いつつ、お願いの内容を聞く。 興奮しているのか、なかなか言っていることがわからないが、要約すると、こうなるらしい。 ①でいぶの一家がこの部屋は自分たちのものだと言い、部屋への侵入を試みにやってきた。 ②でいぶ一家の中に、虐められている子まりさがいる。 ③可哀相だから助けてあげたい。 ガラス戸から外をみると、れいむの話が本当だということがわかる。 「なるほど、でもれいむ。なんでまりさを助けたいんだい?」 これまで2回、れいむはこの家族と同じようにラムネで眠らせたことがある。 その中にはまりさもいれば、赤ゆっくり、妊娠中のものだっていた。でも助命をしたことはなかった。 「れいむにも よくわからないんだよ。でも、あのまりさの め はとても かなしそうな め だったよ。 ゆんせいを あきらめているような め だったんだよ!まだ あんなに ちっちゃいのに! れいむは おかーさんを しらないけど、ぶりーだーの おにいさんや ぺっとしょっぷの おねーさん。 それに おにいさんに だいじに させてもらっているから さびくないよ。 でも あのまりさは おかーさんが いるけど だいじに されてないんだよ!そんなの かわいそうだよ!」 涙目で訴えるれいむの頭をそっとなでて、僕は優しくうなずいた。 ガラス戸を購入したときにサービスでもらった透明な箱(天井付き、ビッグサイズ)の中に、僕はでいぶと子れいむ2匹をいれる。 子まりさは床がよごれないようにと敷いたバスタオルの上だ。れいむは子まりさの傍にいる。 いつもなら、寝ているままゴミ袋にいれてゆっくり用のゴミ箱行きだが、 今回はれいむのおねがいの為と、ちょっとした興味からおこすことにした。 「ゆっくりしていってね!」 一家を起こすために、僕は挨拶をする。 「ゆっくりしていってね」×4 熟睡していた一家は返事を返す。 持ち上げても寝てたのに、挨拶ひとつで目をさますとはさすがは不思議生物(なまもの)。 「ゆゆ?どれいのれいむと しらないにんげんさん がいるよ。」 まだ眠そうな子れいむが傍にいることを確認し、安心したでいぶが言う。 「れいむ、おまえどれいだったの?」 「ちがうよ、おにいさん。れいむは おにいさんの かいゆっくりだよ!」 「はぁぁああ!?なに いっているの?でいぶに あまあまを けんじょうした どれい だろーが! さっさと あまあまを もってこい!とくもりでいいよ!」 吼えるでいぶに、僕は声をかける。 「まぁ、まてでいぶ。なんでこの家にきたのかを教えてくれたら、あまあまをあげるよ。」 「ゆ!にんげんさん!ここは でいぶの ゆっくりぷれいすだよ!でいぶの どれいの じじいが いるでしょ!? いじわるしないで はやくだしてね!あと あまあまを ちょうだいね。たくさんで いいよ!」 意味がわからない。が、助け舟は意外なところからきた。 「おかーさんは、むかし このいえに すんでいたのぜ。」 子まりさだ。 「たぶん このいえの かいゆっくり だったんだぜ。ありすと かけおちを して、のらになって、りこんを して、 まりさのおとーさんのまりさと けっこんしたのぜ。でも おとーさんが えいえんにゆっくりしたのぜ。 まりさ ひとりじゃ かぞくをやしなえない から、また この いえに きたのぜ。 えいえんにゆっくりさせられるのに。」 ああ、なる程。僕がここに越してくる前にここで飼われていたのか。 それにしても野良のくせに賢いやつだな、と思いつつ、少し質問をしてみた。 「なるほど。で、父まりさが死んで、なんでおまえ(子まりさ)が家族を養っているんだ?でいぶは何をしているだ?」 「それは……わからないのぜ。でもおかーさんが かりをしているところを まりさは いちども みたことが ないのぜ。」 「はぁ!?ばかなの?あほなの?でいぶは こそだてに いそがしいんだよ!かりなんて いけるはずないじゃない!」 相変わらずうるさいでいぶに、れいむが言う。 「でいぶ!まりさだって、でいぶの おちびちゃんでしょ!?だったら でいぶが まりさを ちゃんと こそだてしなくちゃいけないよ!」 おいおい、れいむって、こんな怒った顔できるんだ。今まで一緒に暮らしてきたけど、始めてみた。 「ゆ!?くずで むのうな まりさが えいえんに ゆっくりしちゃったんだから しょーがないでしょーが!!」 「しょーがないくなよ!それに、なんで まりさだけ よごれて やつれているの? ちゃんと ごはんさんを みんなでわけあっているの?」 オレンジとラムネの効果でまりさはやつれていないが、おそらくこの部屋にきたときはやつれていたんだろうな。 「かりが へたな くずまりさなんて うんうんでじゅうぶんだよ! じぶんも むーしゃむーしゃ したければ たくさん とってこればいいんだよ!そんなことより はやく あまあまをよこせぇ!」 「しょーだしょーだ!あまあまを もってきょい、このどりぇい!」 「いもーちょなんて、きゃわいい れいみゅの うんうんで じゅーびゅんなんだよ。 いもーちょは うんうんが ちゅきにゃ へんちゃいさん にゃんだよ。」 でいぶだけでなく子れいむ2匹の身勝手な話に、れいむが泣きそうな顔をしだした。 「ゆぷぷ。なきむしで どれいの れいむは さっさとでいぶに あまあまを もってきてね。すぐでいいよ。」 「ほら、でいぶ。あまあまをやろう。」 放置しておけば、うるさそうなので、僕はクッキーをいくつか手にとり、でいぶたちにみせる。 「おそいよじじい!でいぶと、でいぶにの かわいい おちびちゃんが おなかを ぺーこぺーこ させてたんだよ! でもでいぶは かんっだい だから とくべつに ゆるしてあげるね。もっとちょうだい!」 正直イラついたが、うるさいのもいやなので、クッキーを箱にいれる。 「ゆひゃぁぁあああ!くっきーしゃん!!れいみゅ、むーちゃむーちゃちゅるよ!」 「むーちゃむーちゃ……っちっっちちあわちぇぇぇぇえええ!!」 「うっめ!これっめっちゃうっめ!!ぱねぇ!まっじぱねぇえ!」 失敗した。餌をやれば黙るかと思ったが、かえってうるさくなった。 「ほら、まりさも食べな。」 僕はクッキーをまりさにも渡す。 「にんげんさん。まりさも たべていいのかぜ?」 「ああ、いいよ。」 「ゆっくりありがとうなのぜ。むーしゃむーしゃ……しあわせーー!」 まりさの口からカスが飛び出る。よかった、タオル敷いておいて。 「よかったね。まりさ。すーりすーり」 「や、やめるのぜ。れいむ。まりさは うんうんまみれの きたないゆっくりなのぜ。」 「そんなことないよ。まりさは かぞくのために いっしょうけんめいで とってもゆっくりした おちびちゃんだよ!すーりすーり」 れいむの綺麗な体に、まりさの汚れがついていくが、それでもれいむはすーりすーりを止めない。 「かわいそうな おちびちゃん。いいんだよ、おちびちゃんは もっとゆっくりしてて いいんだよ…… それに きたないのなら、れいむが きれいに してあげるね…ぺーろぺーろ」 まりさの体についた排泄物を舐めとるれいむ。 「ゆ?ま、まりさ……ゆっくりしても いいのかぜ?」 「ゆん。とうぜんだよ。ゆっくりして いいよ。れいむが おにいさんに おねがいするから、れいむに まかせてね。」 れいむはこっちを見直して、頭を床にこすりつける。いわゆる土下座だが、これも始めてみた。 「おにーさん。おねがいだよ。れいむは このまりさを ゆっくりさせて あげたいよ。 さめて さとおやさんが みつかるまで ここにいさせてあげたいよ。れいむが ちゃんと しつけをするよ。だから おねがいだよ。」 「れ、れいむ。だめだよ。のらゆっくりを つれこんだ かいゆっくりは せいさいされちゃうんだぜ?」 まりさはれいむを止めるが、れいむは逆にまりさを止める。 「おちびちゃんはだまってて。れいむだって しっているよ。でも、それでも おちびちゃんを みすてられないよ。」 必死に子まりさを引き取るよう懇願するれいむに僕は聞く。 「なぁ、れいむ。なんで そんなに そのまりさにこだわるんだ?」 「れ、れいむは……れいむは…」 「おちびちゃんが ほしいのか?」 「……そうだよ。れいむはおちびちゃんが ほしいよ。おかーさんに なりたいよ。でも れいむは にんしん できないよ。」 去勢されたれいむ種は特に母性が強くなると聞いたことがある。そのため、赤の他人(他ゆん?)を拾うことがあるという。 「だからといって よその おちびちゃんが ほしいなんて ほんきでおもったことは なかったよ。 でも、このおちびちゃんは かわいそすぎだよ。 まだ おちびちゃんなのに…おかーさんに きらわれて…うんうんだけたべて…… ゆぅ…ゆぅぅぅぅっわあああぁあああぁぁl!」 「れいむ…なかいないで…すーりすーり」 「おちびちゃん…すーりすーり…ぺーろぺーろ」 れいむと子まりさは泣きながらすーりすーりぺーろぺーろを続ける。まるで本当の親子だな。 「ゆぷぷ!どりぇいと うんうんまみりぇの いもーちょが しゅーりしゅーり ぺーろぺーろちてるよ。きちゃにゃーい」 「おちびちゃん。わらったらだめだよ。ああやってすこしでも ゆっくりしようとしている おろかな ゆっくりなんだから。」 「おかーしゃん、やしゃしー」 「ゆぷぷ。でいぶったら かんっだいで ごめんねー!」 本当の親と姉妹はクズだな。 「なぁ、まりさ。よかったら僕の飼いゆっくりにならないか?」 僕の言葉にれいむの顔が明るくなる。 「かいゆっくり?だめだよ。まりさは かぞくをすてられないよ。」 まりさの言葉にれいむは悲しそうな目をしている。 「家族か。でもまりさ。あいつらはそんなふうにおもってないぞ?」 「………それでも…かぞく なんだぜ。おとーさんだって いのちを かけて かぞくを まもったんだぜ。」 家族おもいのゆっくりもいたもんだ。ゆっくりの親子愛など、先日鬼姫さんのみせてくれたもの程度だと思っていたが。 「ゆびぇぇええん。くちゃいよー」 「おい、まりさにの くずで むのうな まりさ!うんうんが あふれているよ!さっさとたべな。くずはきらいだよ。」 餌を食べてたため、箱の中のでいぶたちは排泄をしていた。その排泄物をいつものようにまりさに片付けさせようとする。 「おいおい、今までは食べ物が少なくてまりさがうんうんを食べてたんだろ?まだクッキーをあげるから、うんうんは自分で片付けたらどうだ?」 「はぁあああ!?なにいってるの?うんうんは そいつがたべるもの でしょーが!?」 「おいおい、まりさは、かぞくだろ?」 「ぞいづは でいぶたちの うんうんどれい でしょーがぁぁ!!おい!うんうんどれい、はやくかたづけろ!」 こいつも報われないな。そんなまりさに少し同情してしまう。 「まりさ、うんうん食べたいか?」 「……たべたく ないのぜ……でも、まりさが かたづけないと…」 「家族だからか?」 「そうなんだぜ…」 「それは違うな。」 「ゆん?」 「こいつらはお前のことを家族だなんて思っていない。奴隷だと思っている。お前はこいつらとゆっくりを共有したことがあるか?」 「………ないのぜ……」 「だったら、こいつらは家族じゃない。むしろお前の家族はこのれいむだ。こいつはお前とすーりすーりして、ゆっくりを共有しただろ?」 「……すーりすーりをしてもらったことならあるのぜ…」 「父親が死んでからは?」 「……ないのぜ……」 「それだけじゃない。れいむはお前を助けるために、俺に頭をさげて、もしかしたら殺される化もしれないお願いを僕にしたんだよ。 お前のために。でいぶたちはお前のために危険を顧みずなにかをしてくれたか?」 「……」 「もし本当の家族ならば、お互いの幸せを思うものだろ。でいぶたちの頭には自分のことしかない。そんなやつは家族ではないだろ?」 僕はまりさをでいぶの前にもっていく。 「おいでいぶ。僕はこれからこのまりさだけ、あまあまをあげるよ。よかったね、おちびちゃんが あまあまを食べれて?」 「はぁぁぁあああ!?じじいは なにをいっているの? そんな うんうんどれいじゃなくて ようきひも かすんでみえる でいぶにこそ あまあまを わたすべき でしょーが!?」 「いや、でもさ。お前らはさっきいっぱい食べたし、それに自分の子供が幸せになれるのはうれしいだろ?」 「ふっざけるなぁぁぁ!!あれっぽっちで たるはずないでしょ!あほなの?しぬの? だいいち そいつはうんうんどれいでしょーが!」 「おかーさん…まりさは、おかーさんのおちびちゃんじゃないの?」 「あったりまいでしょーが!おまえみたいな くずで むのうなまりさが しょうとくたいしも ひざまづくほど ゆうしゅうな でいぶの おちびちゃんのはずないでしょーがぁぁああ! わかったら うんうんかたづけろ!でいぶにあまあまをくわせろぉぉーー!!」 うるさく騒ぐでいぶに、僕はクッキーを再び与え、静にさせようとする。 「たったこれっぽっちかい!まったく つかえない じじいだよ。でも でいぶは かんっだいだから とくべつに ゆるしてやるよ。 もっと ほかの あまあまを もっておきで!やまもりでいいよ!」 でいぶを無視し、実の親に子供じゃないといわれ、ショックをうけいているまりさに僕は声をかける。 「ほら、お前は家族じゃないんだってさ。お前のことを思ってくれる、家族は、このれいむだよ。」 汚い歓喜の雄叫びをあげるでいぶと違い、涙目のれいむが言う。 「おちびちゃん。れいむが おかーさんに なってあげるよ。」 「れぃ……ほ、ほんとかぜ?」 「ほんとうだよ。おちびちゃん。れいむの おちびちゃん。きれーきれーしましょうね。ぺーろぺーろ」 「おっ……ぉおおかーしゃん……」 「おちびちゃん!」 「おかーさん!」 れいむとまりさが涙を流しながら、頬を合わせる。うんよかったなれいむ、まりさ。 あと、タオルを敷いておいて本当によかった。 「れいむ。お話中悪いが、君たちを綺麗にしたいんだが、僕がやってもいいかな?」 「おにいさん。もちろんだよ。ありがとう。さ、おちびちゃん。おにいさんに きれいに してもらおうね。 しゃわーさんは とっても きもちが いいんだよ。」 「わかったぜ、おかーさん。おにいさん。よろしくたのむのぜ。」 僕は二匹を風呂場につれていき、ゆっくり用の石鹸で洗う。 まりさは最初怖がったが、れいむの励ましと、きもちよくなってきたからか、だまった。 二匹の水気をタオルで拭き取り、僕はれいむにそっと言う。 「れいむ。あの親子を片付けるから、わるいけど、先に二人で寝てくれないか? ちょっとひどいことをするかもしれないから、コレをつかってもいいかい?」 僕はれいむに、ゆっくり用睡眠薬であるラムネを見せる。 「おにいさん……わかったよ。ゆっくりねむるよ。さ、おちびちゃん。 おにいさんに おくすりをもらって、ねんねしようね。」 「わかったのぜ、おかーさん。」 二匹は僕の手からラムネを食べ、そして眠った。眠った2匹を、タオルを敷いた防音性の高い透明な箱にいれる。 これででいぶたちをどうしようとも、この2匹が目を覚ます心配はない。 明日は土曜日で仕事もない。僕は夜更かしをすることにした。 ============================================= 「さて、そういうことで、僕の飼いゆっくりであるれいむとまりさを泣かせて、 勝手に人の家に入ろうとしてたゲスなでいぶ一家を制裁するよ。」 鬼姫さんからもらったカメラの電源をいれ、録画ボタンを押し、話しかける。 「はぁぁあああ!?じじいが なにを いっているの!?ここは でいぶのゆっくりぷれいす だっていってるだろーが!!」 「うん。君の前の飼いぬしなら、ここにいないよ。だってもう引越していったから、3ヶ月ぐらい前に。 で、その後僕が引っ越してきたんだ。だから、今は僕のゆっくりプレイスなんだよ。ゆっくり理解してね。」 「ゆ?…………ゆっくりりかいしたよ。」 意外にも理解したようだ。最後まで前の飼い主をだせとわめくものだと思っていたが。 あのまりさの母親だから多少は賢いのかな? 「ゆん!でいぶは でいぶを おせわする じじいが かわっても きにしないよ。でいぶったら やさしくて ごめんねー! さぁ、あたらしい じじいは さっさと うんうんを かたづけて あまあまを ちょうだいね!すぐでいいよ!」 あまりにも斜め上の思考をいくでいぶに僕は言葉を失う。 なんで同じれいむ種でここまで家のれいむと違いがでるんだろうか? 僕はトイレ掃除用に購入しておいたゴム手袋をはめて、1匹の子れいむを持ち上げる。 「ゆ!おちょらちょんでりゅー!」 「いもーちょ ばっきゃずりゅいよ!つぎは れいみゅの ばんだよ。はやししてにぇ。」 これからの運命を理解していない子れいむを無視して、僕は箱の中にある餡子をてにとる。 「ゆん。ようやく じじいは じぶんの たちばを りかいしたんだね。 まったく ゆっくりしすぎだよ。さっさと うんうんを かたづけるんだよ!」 当然片付けるはずがない。僕は手にもった餡子を、持ち上げている子れいむに塗りたくる。 「ゆ~~!れいみゅは とりちゃんだよ!このおおぞらは みーんにゃれいみゅのもにょ… ゆびぇぇぇええん!どーじで うんうん ちゅけりゅにょ!?きちゃにゃいよーー!」 浮遊感を楽しんでいた子れいむが、突然汚物まみれとなり、泣き叫ぶ。 「ほら、でいぶ。おちびちゃんが汚れたぞ。綺麗にしないと。」 そう言って、でいぶの前に汚物饅頭をおく。 「おかーしゃん!たちゅけてぇぇぇ!!」 「おちびちゃん!くさいよ!あっちいってね!」 「どぼじでぞんにゃごどゆーにょー?」 「おいじじい!さっさとおちびちゃんをきれいにしろ!ってなにをしてるの!?」 「何って、もう1匹のおちびちゃんもうんうんをつけているのだよ。」 さも当然そうに僕は答える。僕の手には、もう1匹の子れいむがうんうんを塗りたくられている。 「よし。できた。ほら、箱の中のうんうんはきえたぞ。ぜんぶ、おちびちゃんにくっついているからな。」 「くちゃいよーー!おかーしゃん!たちゅけてーー!」 うんうんまみれの子れいむは母であるでいぶに助けを求めるが、でいぶはなにもできずにいる。 「ほら、でいぶ。ぺーろぺーろしてあげればいいじゃないか。綺麗になるよ。」 「できるはずないでしょーが!ばかなの!あほなの!じじいがやれー!」 「またまた謙遜して。でいぶは子育てが上手なんだろ?こういうときはどうすればいいか知っているだろ? ほら、おちびちゃんたちもお母さんにお願いしないと。」 「おかーしゃん。ぺーりょぺーりょしてほちいよー」 「ぺーりょぺーりょちてぇぇえ!」 「ゆがぁぁぁあ…」 困惑するでいぶ。やはり母性(笑)があっても、排泄物を舐めとるのは抵抗があるらしい。 他人(他ゆん?)に食べさせるのはよくても、やはり自分は嫌なんだな。 家のれいむは、まりさをぺーろぺーろするのに、なんの抵抗もなかったのだから、このでいぶよりも母性があるのだろう。 「しょーがないな。僕が綺麗にしてあげよう。でも、僕は子育てが下手だから、うまくできなかったらごめんね。」 そういって僕は子れいむを1匹もちあげる。 「ゆ、おちびちゃん。よかったね。じじいが きれいに するよ。 おねーちゃんの ほうは もうすこしだけまっててね、すぐに じじいが きれいに する!」 僕は子れいむ(どうやら妹のほうらしい)にスプレーを吹きかける。そう、鬼姫さんからもらった虐待用のスプレーを。 「!?ゆっびぃやぁぁぁああああ!!??」 子れいむが絶叫する。 「ああ、ごめんごめん。やっぱり、僕は下手だな…でもちょっとまって。まだ汚れているから。」 僕は再度スプレーをかける。そして、タオルで強くふく。 「ゆっびぎゃぁぁああ!ちゅ!!?ちゅぶれりゅーーー!!いじゃぁぁぁあ!!」 その間子れいむは何かを叫びつづける。 「よし!綺麗になったぞ!」 綺麗になった子れいむを再び透明な箱にいれる。 「じ、じぬぅぅぅうう!はだゃががぁぁぁあ!でいみゅのげかいをすべでみわだぜるめがぁぁあ! い…いぢゃぃぃぃいおおおーー…!!!」 子れいむは絶叫しながら箱の中を転がる。痛みでその場に留まれないのだろう。 壁にぶつかり、でいぶや子れいむにもぶつかるが気づかず、転がり続けている。 このスプレー、カプサイシンでゆっくりを苦しめ、少量のクエン酸と糖分でゆっくりの回復を促すことで、 殺すことなく痛みを長時間(話によると2時間)持続させるものらしい。 「……」×2 目の前で地獄の苦しみを訴える子れいむに、でいぶたちは言葉をなく、おそろしーしーをしている。 「ごめんね、でいぶ。やっぱり僕は下手で、君のように上手くできなかったよ。 そっちのおちびちゃんも同じめにあうけど、いいよね?」 「ゆみゃ?や、やだよ。れいみゅは おかーしゃんに きれーに ちてもらうよ!ね?おかーさん!?」 「え?そうなの?でいぶ、おちびちゃんは、君にうんうんを舐めとってほしいみたいだけど、どうする?」 「でいぶは…」 子れいむの視線を感じながら、でいぶは悩んでいる。 「でいぶみたいな優秀なお母さんなら、僕みたいに、子供を傷つけずに綺麗にできるんだろうな。すごいな、でいぶは。」 「しょ、しょーだよ。おかーしゃんはしゅっごいんだにょ。だから、おかーしゃん。れいみゅをきれーにちちぇぇ!」 「で…でいぶは……でいぶが…きれいにするよ…!でいぶは おかーさんだから! ゆうしゅうな おかーさんだから!ゆうしゅうすぎて ごめんねー!!」 キリっとした顔のでいぶが叫んだ。そして、子れいむのほうを向き、舌をだす。 キリっとしたでいぶの顔が臭気で歪んだ。 「く…くちゃぃ!でも、でいぶは がんばるよ!でいぶは ゆうしゅうなんだよ!でいぶ、ぺーろぺーろするよ!」 自分が優秀だといいきかせながら、でいぶは子れいむを舐める。 「ぐ!?……・・ぺーろ…ぺーろ…ぐ!?……ご…ごっくん…めちゃまずー」 やっとの思いで少しの排泄物を飲み込んだれいむが再びぺーろぺーろを始める。 「ま、まだまだ…でいぶはぺーろぺーろするよ…ぺーろ…ぺーろ…っぐく!?」 「ゆびっっびぎゃああぁぁぁああ!!??」 口内の排泄物を飲み込もうとでいぶが頑張っているとき、激痛で転がり続けている子れいむがでいぶにぶつかる。 「!?っぶ!?!?ぶぶっっぶぶぶぶ!!??っごっびゃぁぁああああ!!」 突然の衝撃と、排泄物が口内にあることでの精神的苦痛からか、でいぶは盛大に餡子を吐いた。 ぶつかった子れいむはすでに他のところを転がっているが、 「ゆっぴゃぁぁぁあ!!!??」 排泄物を舐めとってもらっていたほうの子れいむに、嘔吐物が盛大にかかる。 「げはぁ~…げはぁ~…げはぁ~…」 一通り吐き終えたでいぶが息を整える。 「おかーしゃんのばきゃぁぁ!!この くじゅおや!さっしゃと れいみゅを きれーにちろ!」 排泄物と嘔吐物まみれの子れいむが、でいぶに怒る。 「ゆ!ゆうっしゅうな おかーさんになにをいってるの!でいぶ おこるよ! もう しらいよ!おやを くずよばわりする げすな おちびは せいっさいだよ!」 僕には子れいむが怒るのは当然のことだと思うが、まぁ、でいぶは自分がクズ呼ばわりされたことがゆるせないのだろう。 「でいぶ、僕が綺麗にしようか?」 「じじい!さっさと きれいにしろ!さいしょから おまえが してればよかったんだ!」 「や…やぢゃーー!!いちゃいのはいやだーーー!ごべんにゃ゛ちゃーい゛!」 「ふん!げすなおちびはさっさとせいっさいされ…ゆ?おそらとんでりゅーー!」 僕はでいぶを持ち上げる。 「さぁ、でいぶ。綺麗にしようね?」 「なんででいぶなのーー!?きたないのは あのげすちび でしょーがぁぁ!!」 「いや、だってさ、でいぶ。君、餡子吐いたじゃない。口のまわり、汚いよ。」 そういって、僕はでいぶの口を拭いてあげる。紙ヤスリでだけど。 「む゛~~!!!?」 「ほら綺麗になった。」 「じ、じじい!でいぶにひどいごどずるど、ぜいざいだよ!?」 「最初にいったじゃないか、僕は綺麗にするのが下手だって。 それでも綺麗にしろって言ったのはでいぶじゃないか。制裁なんて酷いな。」 「ぞんなの じるかぁぁぁああ!!」 「はいはい。ごめんごめん。お詫びに、これをあげよう。」 僕はコーヒー飴(人間でも子供だったら食べるのを嫌がるぐらい苦いやつ)をでいぶの口にいれる。 「こ、こり どく はいってりゅぅぅぅ!」 そう叫び、コーーヒー飴を吐き出そうとするでいぶだが、僕は紙ヤスリで口を抑える。 吐き出そうと体(?)を動かすでいぶ。その度に、紙ヤスリで口が擦り切れ激痛が走っているはずだが、 それでも毒であるコーヒー飴を吐こうとする。 目は血眼になり、暴れるでいぶを僕は全力で押さえつける。 そして、左手で紙ヤスリを通じて口を抑え、右手で頭を上下に動かす。 しばらくすると、でいぶが静になる。飲み込んだようだ。 「え…えれ…げっふ…げっふ…」 僕はでいぶを急いで箱の中に戻す。 「ゆぴぴ!ざまーみりょだ、このくじゅおや!」 でいぶの様子をみていた子れいむが笑って喜ぶ。 そんな子れいむに復讐するかのように、でいぶは盛大に餡子を吐いた。 「っごっびゃぁぁああああ!!げっっぼーーーごっほ・ごっぼ!!っごっびゃぁぁああああ!!」 さすがはでいぶ。だてに太っていない。 大量の嘔吐物で、子れいむはみるみるうちに嘔吐物に飲み込まれた。 転がっているほうも、餡子にぶつかり、埋もれている。 「げはぁ~~げはぁ~~~…でいぶ…あんこさんはいちゃったよ…」 「盛大にはいたね、でいぶ。」 僕はさきほどスプレーをかけたほうの子れいむを吐瀉物の山からとりだす。どうやら気絶をしているようだ。 「どぼじで…どぼじでごんなごどずるの!? でいぶはじんぐるまざーなんだよ…やさしくしなくちゃいけないんだよ…」 「そうだね、じゃぁ、シングルマザーで可哀想なでいぶに、お饅頭をあげるよ。さ、目を閉じて口をあけてごらん。」 「ゆっぐりりがいじだよ…じじいはざっざとでいぶにおまんじゅうざんをちょうだいね。」 酷い目にあっているのに、簡単に僕のいうことを信じるでいぶ。甘味がもらえればなんでもいいのだろうか? 僕は気絶している子れいむのリボンをとり、でいぶの口にいれる。 「むーしゃ…むーしゃ…」 「ゆっぎゃぁぁぁあああ!??」 でいぶの口内から絶叫が聞こえる。 「っゆ!?むーしゅむーしゃむーしゃ!っししあわっちぇーーー!!」 口内から絶叫が聞こえるというのに、でいぶは意に介さず饅頭、子れいむを食べる。 ゆっくりは不幸な目にあうと、甘味をます。あれほど苦しんでいたのだから、今の子れいむはそうとう甘いだろう。 そしてそれは、でいぶの意識を味覚にだけに集中させているのだろう。 「でいぶ?聞こえる?」 「むーちゃぁむーちゃぁ…っちっっしあわせぇぇえええ!!」 「ゆっぎゃぁぁぁ!だ!だじゅげでーー!おぎゃーざぁぁぁあああーーー!!おねちゃぁああーー!!ゆぴぎゃぁ・・・」 やはり聞こえていない。口内から聞こえる我が子の絶叫も聞こえていないのだろう。 いつもよりも長い咀嚼が終り、でいぶは饅頭を飲みこむ。 「ゆっくりおいしかったよ。なかなかつかえるじじいだね。もっとたべたいよ!」 「それはよかったよ。でいぶ。ところででいぶ、これ、何かわかるかい?」 「ゆ!そ、それはでいぶにのかわいいおちびちゃんのおりぼんさん!なんでじじいがもっているの?おちびちゃんは!?」 「君がさっき食べただろ?」 「……??……??」 「だから、君が食べたお饅頭って、君のおちびちゃんのことだよ。」 「う、うそだよ!でいぶはおまんじゅうさんをたべたんだよ!おちびちゃんじゃないよ!」 「おきゃーさんがいもーちょをたべちゃった…」 「おや、目撃者がいるようだな。」 吐瀉物に埋もれていた子れいむがいつのまにか、ぬけだしていた。 「おちびちゃん!?そ、そんなうそはつかないでね。おかーさんおこるよ!」 「だぇ…だっちぇ…おかーしゃんのくちさんから、いもーちょのこえがきこえてきちゃよ…」 「そんなうそをつかなくなぁぁぁ!!おかーさんぷくーするよ、ぷくーー!!」 「……………ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…」 「お、おちびちゃん?どうしたの?」 「ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…ゆっくち…」 「で…でいぶににたがわい゛い゛おちびちゃんがぁぁぁぁ!!」 排泄物、吐瀉物まみれになり、姉を食べる母を見、そらに母からのぷくーをされた子れいむは非ゆっくり症を発症したようだ。 「じじい!おちびちゃんがびょーきになっだんだーー!!だ、だずげろーー!!なんどかじろーー!!」 「でいぶ、ざんねんだけど、この病気は不治の病なんだ。このまま苦しませるぐらいなら、いっそ殺したほうがいいんだよ。」 実際は大量のオレンジジュースなどを用いて、たくさんゆっくりさせれば、 治る症状だと参考書に書かれていたが、そのことは伏せておこう。 「ぞ、ぞんな…で、でいぶのおちびちゃんが……」 大粒の涙を流すでいぶ。 この涙は、子れいむのことを想ってか、はたまた、子供を無くす悲劇の自分に対してのものか、 僕にはわからない。 「それじゃぁ、でいぶ、やるよ。」 「ゆっくりおねがいするよ……じじい……」 「最後に、すーりすーりやぺーろぺーろはしないのかい?汚物まみれとはいえ、これが今生のわかれだよ。」 「…………」 でいぶは何も言わない。こいつの母性(笑)はこの程度のようだ。 僕は果物ナイフで、子れいむを真っ二つにした。 「おちびじゃぁぁぁあああああん!!」 我が子の遺体の前で泣きじゃくるでいぶ。 しかし、死臭がいやなのか、遺体の傍には決して寄らない。 「でいぶ。おちびちゃんたちが全部いなくなったね。」 「ゆん……ど、どぼじででいぶだげが…でいぶのがわいいおちびちゃんがぁぁ…… でいぶはふこうのほしさんのもどにうまれだの?」 妹のほうのれいむを食べたことを否定していたが、いつのまにか死んだことに納得している。 どういう思考回路をしているか、本当に不思議だ。 「そんなことはないさ。きっと新しい出会いがあるよ。だってでいぶは寛大で優秀で美しいんだから。」 「そ、そうだね。でいぶは あたらしいこいに いきるよ!」 さっきまで泣いていたのが嘘のように明るくなる。 「そういうわけで、僕の家からはでてってね。」 「ゆ?………はぁぁぁああああ!?なにをいってるの!?」 「だって、僕の家にいたら、新しい恋なんてできないよ。 僕は室内飼いしかしないから、出会いはないよ。だから野良に戻ろうか。 大丈夫、もうすぐ寒い冬がくるけど、大丈夫さ、根拠はないけど。」 「……ゆ!そ、そうだ!で、でいぶは しんぐるまざーだよ。やさしくしなくちゃ いけないんだよ!」 「え?だってでいぶの子供は全員死んだじゃないか?」 「なにをいってるのじじい?でいぶには まだ まりさにの おちびちゃんが いるよ!」 「うんうん奴隷のまりさは君の子供じゃないって、さっき言っていたじゃないか?」 「はぁぁぁあ!?そんな ひどいことを でいぶが いうはずないでしょーが!だーりんのまりさにの かわいい おちびちゃんだよ! まいにち すーりすーろして、ぺーろぺーろして あげてる だいじなおちびちゃんだよ! 何を言っているんだ?こいつは。 もし嘘を付いているとしたら、最低だ。記憶を都合のよいように改竄していたら、最悪だ。 「ゆ?そういえば まりさにの かわいいおちびちゃんは?じじい、だいじな おちびちゃんを どこにやったの? さっさとだして!あと、あまあまを ちょうだい。とくもりで いいよ!」 なる程、こういう最低最悪の生物だから、鬼姫さんのような虐待を好む人がでてくるのか。 でも、僕はイラつきよりもこの生物と関わるのにむなしさを感じてきた。 僕はでいぶに虐待用スプレーがなくなるまでかける。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! で!!でいぶがぁぁぁあああ!!めが、めがぁぁぁああああ!!! じじいぃぃぃぃいいい!ごごごっごごっごばぎゃああぁぁぁぁああああ!!!」 部屋中にでいぶの悲鳴が響き渡る。この部屋が防音でよかった。 そう思いながら、わめくでいぶのくちをガムテープで頑丈に固定し、 でいぶと、赤ゆっくりの残骸と吐瀉物の餡子をゴミ袋にいれる。 近所の公園まで、ゴミをいれたゴミ袋をもって歩き、公園に設置されているゆっくり専用のゴミ箱に捨てた。 帰宅後、シャワーを浴びることなく、僕は眠た。 ============================================= 翌日、目覚し時計の音で僕は目をさました。 そういえば、昨日は夕飯を食べていなかったな。 僕は朝食として、サンドイッチをつくる。(炊飯器の用意を忘れていたので。) 「ゆっくりしていってね!」 そして、箱の中で仲良く眠っているれいむと、子まりさを起こす。 「ゆっくりおきるよ………ゆ?ごめんね、おにいさん。れいむ、おにいさんをおこせなかったよ…」 躾をしてあるれいむは返事を返すことはない。 「ゆっくりしていってね!」 昨日まで野良だった子まりさは元気に返事を返した。 室内にレジャーシートを敷き、そこに朝食を並べる。 見たことのない食事内容に、子まりさは目を輝かせている。 「さ、食べようか?」 僕が声をかけると、 「ゆん。さぁ、おちびちゃん。おにいさんにかんしゃしようね。」 「わかったのぜ。おにいさんは かりと おりょうりの てんさいさん なんだぜ!」 「ゆっくり いただきます!」×2 僕と2匹が食事を始める。 「むーしゃむーしゃ……ごっくん……しあわせー!」 「むーしゃむーしゃ…っちっちあわっちぇぇぇぇ!!」 子まりさの食べ方は当然汚い。まぁ、こうなることがわかっていたらレジャーシートを敷いたのだが。 「おちびちゃん、おいしいね。」 「ゆん!まりさ、こんな おいしいものを たべたのは はじめてさんなのだぜ! さんどいっちさんは すっご くおいしいのぜ!」 「ぺーろぺーろ」 「ゆん?」 れいむの突然のぺーろぺーろに驚く子まりさ。 「でもね、おちびちゃん。ごっくんするまえに『しあわせー』を しちゃうと きれいな おかおさんや じめんさんが よごれちゃうよ。きたない ところで たべる ごはんさんは おいしくなくなっちゃうよね?」 「ゆ~~そ…それは…そうなのぜ・・・…」 今までの食事を思い出したのだろう。子まりさはゆっくりにしては珍しく、肯定した。 「むずかしいかもしれないけど、ごっくんしてから『しあわせー』をしようね。 そうしないと、おにいさんに めいわくを かけちゃうよ。」 「ゆぅぅ…おかーさんは おにいさんが すきなのかぜ?」 「もちろんだよ!」 「まりさよるもかぜ?」 子まりさが、不安そうな顔で聞く。 「そのしつもんさんは むずかしいよ。だって れいむは おちびちゃんと おにいさん、どっちもすきだから。 だって、みんなかぞくだからね。」 れいむが笑顔でこたえた。 「ゆ!そうなのぜ!まりさと おかーさんと おにいさんは かぞくなのぜ! だからまりさは おかーさんが すきな おにいさんの めいわくさんに ならないように がんばるのぜ!」 れいむの笑顔がまりさに笑顔をつくらせる。 「さっすがれいむのおちびちゃんだよ!すーりすーり」 優秀そうな子まりさだから、優秀なれいむならばキチンと躾ができるだろう。 「えらいな、まりさは。がんばれよ!」 だが、れいむばかりでは寂しいので、僕も躾に協力し、子まりさをなでてあげた。 「ゆ~ん……て、てれるのぜ……」 子まりさは頬を染めながらも嬉しそうな顔をした。 考えてみれば当然のことで、ゆっくりにも色々いるのだろう。 れいむみたいな善良なものや、でいぶみたいなゲスなものが。 善良なものを虐待することは僕にはできそうにない。 ゲスなものを虐待することは、昨日はやってみたが、次第にむなしさを憶えた。 都合の良いように記憶を改竄するゲスなゆっくりに制裁など無意味だ。 恐らく、僕がゆっくりを虐待することはもうないだろう。 だからといって、ゆっくりんピースみたいな愛護活動はしない。 あれはあれで間違っていると思う。 僕の大事な、ゆっくりであるれいむや子まりさが襲われれば、躊躇なく潰すだろうが、 できるだけ速やかに終えたい。 鬼姫さんとお近づきになるチャンスはなくなるが、あんなむなしいことをしたあとで、秘め事はしたくない。 男としては残念なことだが、今度鬼姫さんには正直に言おう。 僕の日常は、とても穏やかだ。 「おにいさん。きょうは どようびさん だから おしごとさんは おやすみだよね? もしよかったら、まりさに どうばっちさんを かってあげてほしいの。」 そんな穏やかな日常も、 「おにいさん。まりさは もっと さんどいっちさんが たべたいのぜ!」 「おちびちゃん。そういうときは『おかわりください』っていうのよ。」 「わかったのぜ、おかーさん。おにいさん、まりさは おかわりさんが ほしいのぜ!」 僕の日常は、少し賑やかになった。 2匹の飼いゆっくりとの穏やかな生活に、僕は満足している。 あとがき 長い長い駄文をよんでくださった方、おつかれまさまでした。 こうして愛川くんは立派な愛で派になりました。 前作の感想で、愛川くんがれいむを虐待したら最低だな、という意見を読みました。 よかった。みなさんがれいむのことを愛してくださっていて。 当然ですよね、あんなに可愛くて、賢いれいむを虐待するなんて、できませんよね。 もっとれいむ種が優遇されてもいいじゃないか! でいぶは何が何でも許しませんが。 冗談はさておき、SSというのは難しいものです。 れいむの心情や、子まりさの心情が上手に表現できません。 文才が欲しいものですが、ないので、日々是精進でがんばりたいと思います。 暇でしょーがない方、御仏のような心の方は、目が汚れますが、読んでください。 過去の作品 anko3893 : 穏やかな日常、或いは嵐の前の静けさ anko3901 : 穏やかな日常、少し増えた賑やかさ 前編 かすがあき。
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―8― 一週間前までは、二匹一緒に幸せだった。 れいむとまりさはそれぞれの両親と、友人のありす、そして群の長に正式につがいとなったことを 宣言して回った。 そしてまりさが見つけた――と、れいむは信じ込んでいる――ウサギの巣穴で、二匹一緒におうち 宣言をした。 「ここは、れいむとまりさのおうちだよ~っ♪」 勿論、誰からの反論もなく、晴れてその巣穴は二匹のおうちとなった。 枝分かれする暗い通路に光る苔を擦りつけ、奥まった場所にあった広い空間の一つに天日に干した ふかふかの干し草を敷き詰めた。湿気が少なく、風も通っている場所を見つけて食料庫と決めた頃に は日が暮れていた。 そしてその夜、まりさはれいむとの仔作りを求めた。一人っ仔だったまりさの、たくさんの家族へ の強い憧れからきた欲求だった。 この場所に住み始めた初日であり、食料の蓄えも無い状態であることを理由にれいむは何度も制止 したが、最終的にまりさに押し切られる形で二匹は仔を成した。 駄目だ駄目だとまりさを止めてはいたものの、できてしまえば産まれる前から我が子はかわいい。 ぽっこりふくらんだお腹に、れいむは優しく愛おしげに語りかける。 「おちびちゃん、ゆっくり育ってね。れいむのお腹の中でゆっくりゆっくりしていってね……」 ぽっこりふくらんだお腹に、まりさは明るく楽しげに語りかける。 「まりさもおちびちゃんといっしょにゆっくりしたいよっ! おちびちゃんはゆっくりしないでうま れてきてねっ!」 「……………………ゆ?」 にこにこしていたれいむの笑顔が一拍を置いて引きつった。 そんなれいむの様子は気にせず、まりさは軽妙に歌う、 「ゆっくりしないででておいで~♪ じゃないとゆっくりできないよ~♪」 「……なっ!? なんてこと言うの、まりさっ! おちびちゃんはまだまだれいむのお腹の中でゆっ くりしなきゃいけないんだよ? それなのになんでっ!?」 「ゆん? どうしたの、れいむ?」 気分良く歌っていたところを血相を変えたれいむに邪魔されて、まりさはぷくっと頬を膨らませる。 まりさには、れいむが何故怒っているか解らない。 何でれいむはまりさのお歌を邪魔すんだろう。おちびちゃんは、ゆっくりしないで産まれてこない といけないのに。 あ、そっか。れいむはこんな簡単なことが解らなかったんだね。なら教えて上げよう。 だって、 「れいむのおなかのなかにいたら、まりさがおちびちゃんとゆっくりできないでしょ?」 「……ま……りさ。本気で言ってる……の?」 「しつれーなこといわないでね! まりさはいつだってほんきだよっ!!」 「………………」 目をまん丸にして口を開けっぱなしにした、れいむのちょっと間抜けな顔を不思議そうに眺めてい たまりさだったが、れいむが凍り付いたように動かないことを良いことに、れいむのお腹をポコポコ 突っつきながら歌を再開した。 「で~ておいで~、でっておいで~♪ ゆっくりしないででておいで~♪ じゃないとゆっくりでき ないよ~♪ まりさがゆっくりできないよ~♪」 「……ゅ?……ゆぎぃっ!?」 「ゆっ!? どうしたのれいむ、だいじょうぶ?」 突然鋭く呻いたかと思ったら、表情の無かったれいむが一転して真っ青な顔になったことに気付き、 まりさは歌と軽い体当たりを中止すると心配そうにれいむに寄り添う。 だが次の瞬間、今まで見たこともない形相で、聞いたこともないような声で、れいむが叫び声を上 げた。 「……ゆっ!?……う゛ぁあああああ!!」 「ゆひぁっ!?」 「あッ!? アぁっ!? だめっ……だよおちびちゃん! まだれいむのお腹の中でゆっくりしてな きゃあ゛ッ!? ぎ……だめっ! だめッ! だ……ゆう゛ぁあアあァァッ!!」 れいむの大きく膨らんだお腹がビクリ、ビクリと激しく蠢動する。歯を食いしばり、口の端から泡 を零しながらもれいむは懸命にお腹の中に語りかけるものの、ついには身を裂くような激痛に耐えか ねて意識の手綱を手放した。 焦点を失った双眸をカッと見開き、吼えるように叫び続けるれいむ。 最初の叫びの時点で怖くなったまりさはれいむに背を向け、おへやの隅で帽子を深くかぶって震え ていた。 れいむの絶叫が高くなる度に、固く目を閉じていたまりさだったが、不意に水っぽい音が響いたこ とでうっすらと目を開いた。 いつしかれいむの叫びも止まっている。 恐る恐る振り向けば、パンパンに膨らんだお腹を上にして、ぐったりとしたれいむの姿があった。 先程までの激しい蠢動は見られないが、そのお腹は時折捻れるようにうねる。その度にれいむは力 無く呻き、内側より押し広げられたまむまむから黒い物がどろりと零れ落ちた。 べしゃっ、と床に広がる黒い物。 その上に、小さな丸く白い物が乗っていた。 まりさは引き寄せられるようにそれを覗き込むが、一体それが何なのか、皆目見当もつかなかった。 本来あるべき場所に無く、本来あるべき物がなければ、それが何であるかを想像するのも難しい。 しかし、膨らんだれいむのお腹に何が入っていたのかを認識していれば、想像するのは難しくない はずなのだが、 「……ゆん。さっぱりわからないよー?」 結局それが黒目のない目玉だと気付くことなく、まりさは小さな白い玉から興味を無くした。 その次の瞬間、 「……ゆう゛……う゛っ!」 れいむの呻きが間近くから聞こえてきたかと思ったら、まりさの大事な帽子がぽすっという音とと もに後ろへ飛んでいってしまった。 「おぼうしっ!?」 白い玉に吸い寄せられたまりさは無意識の内にれいむの前に立っていた。帽子を目深に被っていた せいでまったく気付かなかったが、揺れる帽子の先端の真正面にれいむのまむまむが口を開いていた。 そしてれいむが呻くと同時にれいむのお腹が一際大きくうねると、何かが勢い良く飛び出した。何 かは当たった帽子にくるまると、そのまま帽子ごと飛んでいったのである。 「まって、まってね! まりさのおぼうしさんっ!」 「……ゆ……ぅ……?」 そんな頭上の展開など知る由もないまりさは、訳も分からず飛んでいった帽子を追いかける。一際 大きい痛みと、それ以降の痛みが無くなったことでれいむが薄ぼんやりと意識を取り戻したことも気 付いていない。 背後の壁際まで飛んでいった帽子に辿り着いて安堵の溜息を吐いたまりさは、そこで自分の帽子に めり込んでいる何かを見つけた。 最初は黒い帽子に埋もれて解らなかったが、もぞもぞと動く、まりさと同じ黒いとんがり帽子をか ぶった小さな姿がそこにあった。 「ゆっ!? もしかして、まりさのおちびちゃ……ん?」 歓喜の声は急速に萎んだ。 確かに帽子はまりさに良く似た黒くてとんがった帽子。髪型も三つ編みが両側にあるものの、輪郭 だけを見ればその子はまりさに良く似ている。しかし髪の色は帽子に負けない艶やかな黒で、帽子に 結ばれたリボンは鮮やかな赤色、三つ編みを結わえたリボンは白色だった。 それはまりさの帽子から抜け出すのに四苦八苦していたが、暫くして帽子の縁の上まで転がり出る ことに成功した。 そしてまりさに良く似た瞳で見上げると、元気の良い第一声を放った。 「ゆーっ!」 「……………………ゆっくりしてないゆっくりがいるよ?」 まりさは上にゆっくりしてないゆっくりが乗っているのにも関わらず、おもむろに自分の帽子を引 っ張った。当然、それはころころと転がり落ちる。ただ、落ちたときの衝撃は大したことがなかった らしく軽く目を回す程度で済んでいた。 帽子についた皺を引っ張ったり軽く踏んだりして念入りに伸ばし、叩いてゴミを落とす。綺麗な状 態に戻ったことを確認して、まりさは大事な帽子を頭の上に戻した。その間、周りをゆっくりしてな いゆっくりが、何やらぐずつきながらうろうろしていたが一瞥もしなかった。 目を向けたのは、そいつが大声で泣き出してからだった。 「ゆぅーっ! ゆぅーっ!!」 「うるさいよ……!」 「ゆぴゅっ!?」 苛立たしげに吐き捨てると、まとわりついてくるそいつをお下げで振り払った。己の全幅と大差の ない幅の三つ編みの直撃を喰らったそいつは声もなく空を舞う。落下先がふかふかの寝床でなければ、 地面に叩きつけられた衝撃で爆ぜていたかも知れない。 むしろ、何故爆ぜなかったのかとまりさは思った。 震えながら身を起こそうとするそいつを寝床から引っぱり出し、涙を流して見上げてくるそいつを 冷たく見下しながら、まりさはあんよをゆっくりと持ち上げた。 覆い被さるように迫るまりさのあんよを、そいつはただ震えながら見上げていた。頭の上に触れた ときには、おずおずと頬をすり寄せてすーりすーりまでしてきた。 徐々に圧されて行く中で、何故こんな事をされるのか理解できなかっただろう。だからまりさは冷 淡に教えて上げた。 「ゆっくりできないゆっくりはいらないよ。ゆっくりしないでつぶれてね?」 「ゆ……ぅ?」 「まりさぁあああぁぁっ!!」 「ゆべぇっ!?」 そいつが潰れる寸前、意識を取り戻したれいむが横から体当たりをしてまりさを吹き飛ばした。 軽く餡子を吐いて転がるまりさ。そんなまりさと辛うじて命を繋いだそいつとの間に、憤怒の形相 のれいむが立ちはだかる。 「この仔はれいむとまりさのおちびちゃんでしょっ! なんでこんな酷いことするのっ!?」 「ゆ……ゆぐ……れ、れいむこそなんでまりさにいたいことするの!? だいいちそんなゆっくりし てないのなんか、まりさのおちびちゃんじゃないよっ!」 「……ゆ?」 「まりさをゆっくりさせてくれるのがまりさのおちびちゃんなんだよ? ゆっくりできないゆっくり が、まりさのおちびちゃんなわけないでしょぉっ!!」 「……」 れいむの形相に後ずさりはしながらも激しくまくし立てるまりさの台詞に、れいむは表情を消して 押し黙った。 漸く納得してくれたと思ったまりさは、笑顔を浮かべて歩み寄る。 「おおごえだしちゃってごめんね? ね、れいむ。あんなのはゆっくりしないでつぶしちゃって、つ ぎこそはゆっくりできるおちびちゃんをつくろうねぶっ!?」 言い切ったところで顔の中央に鈍い衝撃が走った。 軽く伸び上がってからの振り下ろすような頭突きを叩き込んでまりさを地面に打ち付けたれいむか ら、奥歯をギリギリと噛み締める音が聞こえてくる。 俯いた姿から、その表情を窺うことはできない。 ただ淡々とした声だけが、れいむから絞り出された。 「……まりさ。この仔がゆっくりできない姿で産まれちゃったのは、お腹の中でゆっくりしてなきゃ いけない時にまりさがゆっくりしないで産まれてきてねって、せっついたからなんだよ? にんっし んしたれいむのお腹を突っつき回すなんて何考えてるの? 産まれる前に永遠にゆっくりしちゃった おちびちゃんもいたの、わかってるの?」 「……ぎゅ……?」 「それなのに、またれいむにおちびちゃんを作れっていうの? それでまたお腹の中におちびちゃん が産まれたら同じ事になるよね……そんなのれいむは御免だよ」 「……ゆぶ……ばはぁっ!? ゆはぁ……ゆはぁ……」 言いたいことを言いきると、れいむはまりさから興味を失ったかのようにあっさりと身を離した。 放置されていた赤ちゃんゆっくりに寄り添い、今まで親の暴力に晒されていた影響で怯える赤ちゃん ゆっくりに優しく頬をすり寄せた。 「おちびちゃん、すーりすーりしようね。すーりすーり……」 「ゆっ!? ……ゆぅ……ゆうううぅぅ!!」 初めはおずおずと、やがて涙を流してしがみつくかのように頬をすり合わせる赤ちゃんゆっくりの 姿に、れいむは一滴の涙を流しながら微笑む。 そして赤ちゃんが疲れて寝入ってしまうまで頬を合わせていたれいむは、赤ちゃんを起こさないよ うにそっと身を起こし、凹んだ顔に四苦八苦しながら舌を這わせていたまりさに声をかけた。 「……まりさ、この仔はれいむが育てるよ。まりさにも責任をとって手伝ってもらうよ。ゆっくり理 解してね」 「ゆん? なんでそんなことまりさがしなきゃいけないの? ふざけないでね!」 「ふざけてるのはまりさでしょうがぁあああああ!!」 「ゆぎゃぁあああああ!?」 さも当然とばかりに即答で断るまりさに、れいむは辛うじて保っていた堪忍袋の緒を引き千切った。 それから暫く、余りの騒ぎに赤ちゃんが泣き出すまでの間、れいむは産後で体力を消耗していると は思えない怒濤の勢いでまりさを折檻した。 まりさがそいつに感謝したのは、それが最初で最後だった。 ―9― 「れいむ? それともまりさ?」 「ゆー?」 「ゆーん……。それじゃ、れいさ、れりさ、まりむ……」 「ゆぅ?」 「まいむ」 「ゆー!」 「ゆん、おちびちゃんはまいむなんだね。まいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ~♪」 れいむとまりさの仔は、胎内にできた直後にまりさに脅かされ揺さぶられて、まったくゆっくりす ることなく母のお腹から産まれてしまった影響なのか、れいむとまりさの特徴を混ぜたような姿をし ていた。 その上、言葉を話すことができなかった。「ゆっくりしていってね」すら言えず、ただ「ゆーゆー」 と鳴くか泣くだけで会話など成り立たない。 しかし、喋ることができないだけで話を聞くことと理解することはできると解ったれいむは、根気 強く語りかけては仔の反応をつぶさに観察することで何とかコミニュケーションを成立させた。この れいむかまりさかも解らない仔の気に入る名を付けることができたのはその最たる成果だろう。 見た目が変わっていることと、言葉を話すことができないこと。その二つに目を瞑ればまいむはと ても素直で聞き分けの良い仔だった。 だが、まりさにはその二つがどうしても無視できなかった。 れいむの目を盗んでまいむを殺そうとしたことも一度や二度ではない。その度にれいむから折檻を 受け、ついには寝室からも追い出されてしまった。 それでもおうちから追い出さなかったのは、食料の調達ができるのがまりさしか居なかったからだ った。 れいむは出産後で体力が落ちていたし、まりさとまいむを一緒に残していくことはまいむの命に関 わると悟っていたために、懇々とまりさに頼み込んだ。 まりさも最初から一家の大黒柱になるつもりがあったために食料調達を気安く請け負った。そこに はまりさから離れたれいむの心を引き戻そうとする下心もあったかも知れない。 「ゆっくりかえったよ! すごいでしょ、れいむ! まりさはこんなにたくさんごはんをとってきた よっ!」 「……まりさ?」 「ゆん? なに、れいむ」 意気揚々と出かけたまりさは、ほんの十数分で帽子をパンパンに膨らませて帰宅した。そして満面 の笑みで収穫を見せびらかしたところで、れいむが冷めた半眼で見据えていることに気付いた。 「……どうしたの? なんでそんなおめめでまりさのことみるの……?」 「まりさはれいむに狩りは得意だって言ってたよね……。たくさんたくさんの木の実さんや果物さん をれいむのおうちに持ってきて、『まりさはこんなにかりがじょうずなんだよっ!』っていってたよ ね……?」 「ゆ……っ!? そ、そうだよ、まりさはかりがじょうずなんだよっ! それがどうかしたの!?」 かつてれいむにプロポーズするために両親に頼んでかき集めてもらったご馳走のことを思い出し て、まりさの声が裏返った。総てまりさ独りで集めたということにしていたので、その話をされると そこはかとなく後ろめたい気分になる。 そんなまりさの挙動不審には目もくれず、れいむはまりさの収穫から一束の草を抜き取った。 「それ、食べてね」 「ゆっ! いいの!? ゆぅ~ん、つかれてかえってきたまりさにいちばんにごはんさんをくれるな んて、れいむはやっぱりよくできたおくさんだね♪ それじゃ、ゆっくりいただきまーす」 れいむが割と雑に投げ捨てた草は、まりさの目にはこの上ないご馳走として映った。 不慣れな狩りで疲れ、お腹が空いていたこともあり、まりさは飛びつくようにしてれいむが投げた 草を貪った。 「むーしゃーむーしゃー! むっちゃうぇっこれどぐばいでるっ!?」 「……はぁ。それは食べたらすっごく気分が悪くなっちゃう草さんだって、ぱちゅりーに習わなかっ たの? れいむは小さいときに群のがっこうで教えてもらったよ?」 「ばりざぞんなごどじらない……うぇ……」 「おちびちゃんくらいのゆっくりだと永遠にゆっくりしちゃうこともあるけど、おとなのゆっくりな ら気分が悪くなるくらいだって言ってたよ。しばらくすれば治るから、ゆっくり大人しくしていてね」 「ゆぅ……ぅ……」 笑顔で食らい付き笑いながら吐餡したまりさを冷ややかに一瞥し、れいむはまりさの収穫を黙々と 選り分けた。あの草を見つけたときには、まいむの毒殺を企んだのかと訝しんだれいむだったが、何 の躊躇も無く笑って毒草を食べたところを見てその認識が間違っていることを知った。 というか、まりさへの認識がそもそも間違っていたことに、れいむはそろそろ気付いていた。 まりさの採ってきた草はおうちの周辺に繁茂する、毒こそ無いが固くて味気のない草が大半を占め ていた。少し森の奥へ行かないと取れない木の実や、日当たりの良い丘まで行けば取れる甘い香りの 花などのご馳走は微塵も見あたらない。時期的に青虫なども多いはずだがそれも無い。 要するに、まりさの狩りは家を出た所に群生していた草を手当たり次第に採ってきただけだった。 未熟児として産まれたまいむは消化機能が極めて弱く、そういった堅い草はれいむがどれだけ噛み 砕いたとしても食べることができなかった。そんなまいむが食べることのできそうな柔らかくて口当 たりの良い草が、数本でも混じっていたのは不幸中の幸いと言ったところだろうか。 つがいになる前に見せた狩りの成果は嘘で、今目の前にある適当な草の山がまりさ本来の実力。思 い返せば、れいむが群のゆっくりたちと狩りの勉強に励んでいる時にまりさの姿を見た覚えがない。 一緒に居て楽しいところばかり見ていて、こんなあからさまな嘘を見抜けなかった。 その結果がまいむであり、産まれることなく永遠にゆっくりしてしまった子供だ。 「……むーしゃむーしゃ……ゆぶっ……んぐ。むーしゃ……」 選り分けた草の山を口にする。 堅い草、苦い草、棘のある草、えぐい草、時々混じる毒のある草。絶え間なく口内に迫り上がる餡 ごとゆっくりできない草の山を飲み下す。とにかく食べて、出産で失った餡と体力を――そしてこれ から先、一人でまいむを育てていくための力を蓄えなければならなかった。 まいむを見てゆっくりできないと言うのはまりさだけではない。ゆっくりなら多かれ少なかれそう いった感情を抱くだろうことは、れいむにだって理解できている。だから頼れる者は自分しかいない。 残したのは柔らかくて口当たりの良い草と、堅くて味気ないけど不味くはない草。 前者は当然まいむの為に。そして後者はまりさの為に残してあった。 「ゆーっ!? れいむ、なんでごはんさんひとりでむーしゃむーしゃしちゃったのぉっ!?」 「……まりさの分はそこに置いてあるでしょ。それを食べたらまた狩りにいってね。ゆっぷ……沢山 で、良いよ」 れいむは想う。美味しい食べ物を見分けることができないなら、せめて手当たり次第に集めてきて もらおう。 その中で、美味しい物をまいむに。不味い物はれいむに。余った物をまりさに。 まいむには育ってもらわないといけないから。れいむは力を蓄えなければならないから。まりさに は働いてもらわないといけないから。 「ゆー……これっぽっちじゃ、おなかいっぱいしあわせーってできないよ……。ゆっ!? そっちに おいしそうなくささんがあるよっ! まりさがたぺっ!?」 言うことを聞かないときには、ゆっくりできないけれど暴力に頼ろう。 気弱で臆病なまりさは少し脅すだけでも言うことを聞くだろうから。 「まりさの分は食べたでしょっ! れいむが取り分けたごはんさん以外を盗み食いしたら、お仕置き するからね! ゆっくり理解してねっ!」 「ゆひぃっ!? わかりましたぁあああああ!!」 れいむはお母さんだから、おちびちゃんをゆっくりさせるために思いつく限りのことをやろうと、 静かに覚悟を決めた。 その日から、れいむとまりさは一緒にゆっくりすることが無くなった。 それでもれいむは、まいむとの生活にささやかなゆっくりを味わっていた。 まりさに先導された群のゆっくりたちに、その命が打ち砕かれるその日までは―― ―10― ぱちゅりー、ありす、そして群のゆっくりたち。 その場にいる総てのゆっくりの視線がまりさに収束し、焦点のまりさは救いを探して右往左往して いる最中。まりむは誰の目に留まることもなく、母だったものの成れの果てに辿り着いた。 「ゆー……ゆっく……! ゆっくぃ……!」 頬を寄せ、舌で舐め、乏しい語彙で懸命に呼びかける小さな姿。「ゆっくりしていってね」と言え ば応えてくれるとでも思ったか、自由に動かない口で必死に挑んでいた。 その声は群のゆっくりたちにも届いている。 だがその姿を見ようとするゆっくりは一匹としていない。 まいむを見ようとすれば、自分たちが寄って集ってなぶり殺しにしたれいむの姿も目に入れること になる。 まりさの話を総て聞けば、れいむを殺めてしまったのはあまりにも筋違いだったと理解できてしま う。今更れいむを直視できるゆっくりなど、この群に一匹も居なかった。 だからその視線は、怒りと後ろめたさを孕んでまりさに突き刺さる。 そしてまりさは、この期に及んでも何故自分がそんな目で見られるのかが解っていなかった。 「ゆー……。ゆっくりできないおちびがいたことをだまってたのはわるかったとおもってるよ。けど、 こんなゆっくりできないのをれいむがしゅっさんっしたなんて、まりさははずかしくっていえなかっ たんだよ……?」 それなりに考えた挙げ句に思いついた怒られている理由は、ゆっくりできない仔がいることをみん なに黙っていたから、だった。 確かにゆっくりは奇形を殊更に嫌う。顕著な例では、ゆっくりが一番大切にする飾りに傷が付いて いるだけでも侮蔑し、無くしたら殺意を以て排斥するほどである。 れいむとまりさの特徴をまぜこぜにした容姿のまいむの事を秘密にしておきたい気持ちは、普通の ゆっくりなら共感できる。まいむを一息に殺してしまうことを積極的に容認するゆっくりも少なくは ないだろう。 だから、事の要点はそこではない。 「まりさ……」 ぱちゅりーが詰問した、れいむと暮らしたまりさの一週間。 まりさは覚えている限りの日々を包み隠さず、誇張も歪曲も無しに語った。 そしてこう言った。「れいむはまりさのことをゆっくりさせてくれない、ひどいゆっくりだったん だよっ!」と。 「あなたは……あなたが、『でいぶ』よ」 「ゆ……? まりさはまりさだよ? でいぶはれいむでしょ? まりさじゃないよ?」 「むきゅ、そうじゃないのよ」 困惑の表情を浮かべるまりさに、ぱちゅりーは悲しげな表情でゆるゆると首を振る。その悲しみは まりさの無知に向けたものか、それともれいむへの悔悟か。 それも一拍瞑目した後には綺麗に拭い去られていた。 群の長の顔に戻ったぱちゅりーは淡々とまりさに教える。 「でいぶっていうのはね、自分のゆっくりのためなら悪意無く他者のゆっくりを踏みにじる『ゆっく り』のことをそう呼ぶの。それがしんぐるまざーのれいむに多いから、れいむたちの悪口みたいにな っているけどね」 「ゆ……ゆ?」 「ぱちぇは間違ってれいむにも言ってしまったけど……まりさにも言うわね」 まりさの上目遣いで縋るような目を、傲然と躯を反らしたぱちゅりーの冷たい目が明確に拒絶する。 「ぱちぇの群にでいぶはいらないっ! まりさはぱちぇの群から追放するわっ!!」 「ゆ……」 ぱちゅりーの宣言を聞いて、目を点にしたまりさは暫く凍り付いたように制止していた。それも徐 々に言葉の意味が理解できるに連れてふるふると震えだし、目は潤み口が戦慄く。 「そんな……そんなのゆっくりできないよ……?」 右を向く。幼なじみのありすが、涙に濡れた目に敵意を込めて睨んでいた。 「まりさはゆっくりしたかっただけだよ? まりさはゆっくりしないといけないんだよ?」 左を向く。れいむの家族が、殺意に歪んだ表情で歯を軋ませていた。 「わるいのはれいむでしょ? まりさをぜんっぜんゆっくりさせてくれなかった、とってもひどいゆ っくりだったんだよ?」 周囲を見回す。だが一匹としてまりさに同情的なゆっくりはいない。 「わるいのはゆっくりできないあいつでしょ? れいむがあんなのをうんだからまりさはゆっくりで きなくなったんだよ? みんなもあれをみてゆっくりできないでしょ!? ねぇ!? ねぇ!!」 まりさを助けてくれそうなゆっくりを探す。 だが、こんな状況でも味方をしてくれたであろう優しい両親は、まりさとれいむがつがったその日 に永遠にゆっくりしていた。過労だったがまりさに知る由はない。 「やだ……やじゃ……やじゃやじゃいやじゃぁああああああ!!」 後はもう言葉にならない。 大声で喚き散らしておうちへ逃げ込もうとするまりさだったが、周囲のゆっくりに簡単に取り押さ えられた。彼らの頭上に担ぎ上げられたまりさは、泣き叫びながら群の外へと運ばれてゆく。 途中、何度も脱走を繰り返すがその度に手酷く痛め付けられるだけで逃げることはできなかった。 この時、最も苛烈に攻撃を加えていたのはありすだったという。 自発的に出ていかないゆっくりは岩場の崖から放り捨てるのがこの群の掟だった。まりさもその例 に倣って、遙かな高みから堅い岩の上に落とされた。 ゆっくりの命を奪うほどの落差ではないから、まりさはまだ生きている。 しかし群のゆっくりたちから受けた暴行の痕に、岩に叩きつけられた際に爆ぜた傷。重傷のまりさ はこの場から動くことも出来ず、静かに衰弱していくことだろう。 「まりさ……ただ……ゆっくり……したかっただけな……のに……」 その声を聞く者は、もう居ない。 ―11― まりさを担いでいった一団とは別に、その場に残ったゆっくりたちがいた。 先のれいむとの激戦で消耗しているゆっくりが大半だが、その中にぱちゅりーも残っていた。 まりさのことは、ありすたちに任せておけば問題はない。あそこまで怒りに燃えていれば余計な手 心を加える心配もない。 だからぱちゅりーはその間に後始末をするつもりだった。 一つはれいむの遺骸の埋葬。 野晒しにしたままでは可哀想だし、誤解で殺してしまった群のゆっくりたちの慰めにもなるだろう。 そしてもう一つはゆっくりできないものの排除。 「ゆっくぃ! ゆっくひ! ゆっく……ゆぅ?」 「ごめんなさいね」 「ゆきゅ!?」 未だに声を上げ続けていたまいむの背後に忍び寄り、気付かれたときには既にあんよで踏みつけて いる。後は体重をかければ一息で潰れることだろう。 「ぱちぇの群にゆっくり出来ないゆっくりは要らないの」 総てはぱちゅりーの群がよりゆっくりするために、 「ゆっくりできないゆっくりは大人しく潰れてちょうだい」 「――おカしィね?」 「……む……きゅ……?」 まいむを潰すために重心を前に移しかけたぱちゅりーの耳に、聞き覚えはあるけど不明瞭な声が聞 こえた。 その声は、明らかに聞こえるはずのない声。聞こえてはいけない声。 目を剥いて声の主を見やれば、片方だけの瞳と目が合った。 ミシリと口内の枝をへし折って屍が口を動かす。 ポトリと舌の端が零れ落ちるが発音は却って明瞭になっていった。 「こんナところに身勝手ナゆっくりのためにれいむのおちびちゃんヲを踏みにじろうとする、でいぶ がいるヨ?」 「むきゅ……ぅ、れ、れ、れいむぅっ!?」 「ねェ、ぱちゅりぃ……?」 ぱちゅりーはただでさえ白い肌を真っ白にして震えた。 何これ何これ何これ何なのこれは!? ぱちゅりーの口はガチガチガチガチ歯を打ち鳴らすことに忙しくて言葉が出ない。だからせめて心 の中で叫ぶ。 れいむは永遠にゆっくりしちゃったんでしょ? 何で動いてるの? 生きてたの? あんなに沢山 枝を突き刺されていたのに? 生きていられるわけないでしょ? 何で生きてるの? 何で近付いてくるの!? れいむのゆっくりできないおちびちゃんはまだ潰してないでしょ!? ほら、おちびちゃんは返してあげたでしょ? こっちこないでね、ゆっくりできないれいむはゆっ くりできないおちびちゃんと一緒にぱちぇの群の外で勝手にゆっくりしていってね、こっちこないで ね、お願いだからゆっくりしないで出てって…… 「むぎゅうぅぅ! おねがいだがらごわいでいぶばばぢぇにぢがづがないでえええええ!」 「れいむのおちびちゃんを、まいむをゆっくりさせないゆっくりは……」 ただ震えるだけのぱちゅりーにゆっくりゆっくりと近付いたれいむは、頬が触れるほどに身を寄せ て囁く。 その声は、不思議とその場にいた総てのゆっくりの耳に届いていた。 「れいむが……ぜぇえええぇぇったいにぃ許さないからねぇえええぇぇっ!!」 「ゆぎゃあああああっ!!」 まりさを捨てて戻ってきたありすが見たものは、泡や餡を吹いて卒倒したぱちゅりーたちの姿。 そして、ぱちゅりーの横で半ば崩れたれいむの姿と、 「ゆっくり! ゆっくりぃーっ!!」 母の躯に、漸く言えるようになった「ゆっくり」を贈り続けるまいむの姿だった。 ―12― 森のとある群に、子供を躾けるときの脅し文句にされる一つの言い伝えがある。 その群のゆっくりたちの餡に深く刻まれた恐怖と共に、永くこの群に伝えられる言い伝え。 「こらっ! みがってなゆっくりをしていると、でいぶがくるよ!」 「ぴぎゃあああああ!? でいぶこわいよおおおおお!!」 この言い伝えがあるお陰か、この群は森で一番のゆっくりしていたという。 その群の長は赤いリボンを巻いた黒い帽子を被っていたというが、真偽は定かではない。 ―終わり―
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『でいぶは人の手に負えない』 「なぁ、今回ばかりは許さんぞ。」 「なにいっでるのぉおお!?でいぶにおせっきょうなんて、なにさまなの!?このくそどれい!!」 「いや、飼い主様なんだけど。」 我が家の庭では、真昼間から俺とれいむの怒鳴り合う声が響き渡っていた。 俺はこのでいぶ化してしまった、醜く太ったれいむの飼い主だ。 一応、飼いゆっくり登録証の銀色のバッジからもわかるように、 ゆっくりショップでしっかり躾済みだったれいむなのだが。 こう言っちゃなんだが、こいつの性格がここまで悪くなったのは、 全部俺が甘やかしたせいだという自覚はある。 俺は甘い。 「・・・とは言ってもな。お隣のちぇんをいじめたのは許せん。」 「くそちぇんがなんだっていうのぉおお!?このかわいいでいぶに、おもちゃをかしてくれなかったんだよ!? あんなげす、せいっさいされてとうぜんでしょぉおお!?」 「だからって、怪我させちゃダメだろ。」 まあ、とっくに諦めているので、今さら俺に対して暴言を吐いたりワガママを言ったりはかまわない。 だが、お隣の子ちぇんに怪我させたとなると話は別だ。 飼いゆっくりは立派な財産なので、こういった事が続くと近所づきあい云々どころか裁判にもなりかねない。 下手するとれいむも、殺処分されることだってありえる。 可愛いペットとは言え、今日という今日は説教させてもらうぞ。 --------------------------------------------------------- 「でいぶはかわいいんだよ!せかいいちゆっくりできるんだよ!だから、ゆっくりさせなきゃだめでしょぉおお!?」 「いや、お前はハッキリ言って不細工だ。そんなことはどうでもいいから、話を」 その瞬間、でいぶは飼い主である俺の言葉を遮って叫んだ。 「ゆぁぁああ!?なにいっでるのぉおお!?でいぶはかわいいにきまってるでしょぉおお!?」 「はぁ。そんなのありえないだろ。だからそんな事はいいから話を聞け。今日は許さ」 「ゆぎぃいいいい!?わげのわがらないごどいうなぁぁあああ!!」 やれやれ。 「何言ってるんだ。お前みたいに不細工なゆっくり、野良でもお目にかかった事無いぞ。そんなわかりきった事を・・・」 「ゆぴぃいいいいい!!くそどれいぃいい!!くびにされたいのぉおお!?」 「クビ?はぁ、いいか、れいむ。お前は醜い。心身ともにだ。俺はマニアックな趣味だからお前を可愛がってるが、 この町中にお前を可愛がってくれるような人間、いや、ゆっくりもだが、ひとりたりとも居やしない。 そんな当たり前の事、今はどうだっていいだろ。それよりお隣の子ちぇんの事を・・・」 「ゆがぁぁあああ!?ゆっぐぢりがいできるかぁぁああああ!!」 話は平行線をたどる一方だった。 「はぁ、しょうがねぇなぁ。」 さすがにこのままでは会話にならないと思い、どうしたものかと頭を捻っていたところ、 ちょうどその時、生け垣の向こう、道路の方から、俺をを呼ぶ声が聞こえてきた。 「おにーさん!ゆっくりしていってね!」 「ん?ああ、まりさか。・・・ちょうどいい所に来たな。こっちに来てくれー!」 「ゆぅ?」 しばらくして、玄関の門に回り込み庭に入ってきたのは一匹の野良まりさ。 「ああ、ちょっと頼みがあってな。」 「ゆぅ?まりさにできること?」 「ああ。」 ちなみにこの野良まりさは、野良にしてはなかなか小奇麗で、目もくりくりとして非常に可愛らしく、 マナー違反だとはわかっているのだが、ちょくちょく餌を与えてしまっている野良ゆっくりである。 まあ餌とは言っても残飯とか、れいむの食い残した古い餌とかなんだが。 実は密かに、お隣でもお向かいでも餌付けしているようなので、性格も要領もなかなかいいようだ。 「・・・このれいむ、どう思う?」 「ゆ・・・おにーさんのかいゆっくりだよ?」 「じゃなくて、ゆっくりできるか?」 ・・・・・・。 俺の質問が発せられた後、我が家の庭は、そよ風の音がハッキリと聞こえるほどに静まり返った。 ふいっ。 野良まりさは、冷や汗をかきながら俺とれいむから視線をそらし、言葉を選びながら答える。 「ゆ、ゆぅ。ま、まりさはのらだから、にんげんさんのかんじかたとか、よくわからないよ・・・」 「いや。お前の感じた通りでいいんだ。俺もれいむも怒らないし酷い事もしない。」 「ゆふぅん!しょうじきにいっていいんだよ!それとも、れいむのびぼうにこえもでないの? まぶしくってみていられないなら、あまあまをもってきてもいいんだよ!とくべつにうけとってあげるよ!」 「ゆ・・・」 野良まりさは視線が定まらないまましばらく逡巡していたが、 俺の真剣なまなざしに耐えられなくなったのか、意を決したように口を開いた。 「しょ・・・しょうじきいって、ぜんぜんこのみじゃないよ・・・。」 ・・・・・・。 「ゆ、ゆ、ゆぁぁあああああ!?なにいってるの?のらのおめめはくさってるんだね! でいぶのびぼうがりかいできないなんて、あんこにかびがはえちゃったのぉぉおお!?」 野良まりさはれいむの剣幕に脂汗をかきながら、それでも必死に弁解する。 「ご、ごめんね、れいむ!でも、まりさはにんげんさんにうそなんてつけないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「ほら、やっぱり。」 「ゆぎぃいいいい!!ゆっぐぢざぜろぉおお!!ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃいいいい!!」 俺の想いと裏腹に、れいむは、事実を突き付けられた事に我慢ならなかったのか、 ますます話を聞いてくれなくなってしまった。 もはや、なだめる言葉も聞いてくれない。 しまいには、バタンバタンと庭にぶよぶよの体を叩きつけるように転げまわりながら、 俺に向かって絶縁宣言に近い事まで言い始めたのであった。 「このくそどれいぃいいい!!もうゆるさないよ!じじいはもうくびにするよ!! にどとあいたくないよ!!とっととでていけぇぇええ!!」 「いや、俺の家だし。出ていくなられいむだろ。」 「ゆがぁああああ!!ゆっぐぢいいがげんにじろぉおおお!!もうこんなおうち、でいぶからねがいさげだよぉおお!!」 すると、野良まりさがこの不毛な口論に割って入ってきた。 「ま、まってね!れいむ、そんなのゆっくりできないよ!!」 「ゆぎいいいい!!くちをはさむなぁぁあああ!!」 「ん?まりさ。」 まりさは怒り心頭のれいむに、それでも慎重に言葉を選びながら話を聞かせようとする。 「おにーさんのおうちからでていったら、のらになっちゃうんだよ!のらはたいへんなんだよ! ごはんもじぶんでさがすんだよ!おうちもじぶんでまもるんだよ!あめさんも、かぜさんもこわいこわいだよ!」 それは、野良生活を実体験しているまりさからの、精一杯の忠告だった。 だが、野良生活どころか庭から外に出た事もないれいむには、そんな言葉は伝わらなかった。 「ほら。まりさもああ言ってくれてるぞ。」 「くそまりさぁぁあ!!ゆっくりしたでいぶが、ひとりでいきていけないわけないでしょぉおお!! それに、かわいいでいぶなら、ほかのにんげんさんもゆっくりも、みんなでみついでくれるにきまってるでしょぉおお!!」 どうやら未だに理解できていないらしい。 そのれいむに対し、野良まりさはなおも忠告する。 「そんなのむりだよ。のらのゆっくりは、みんなたいへんなんだよ。れいむをゆっくりさせてあげるなんてできないよ。」 「そうだそうだ。れいむ。大体お前・・・そうだな。この庭で、ゆっくりしたご飯見つけられるか?」 「ゆゆっ!?」 俺の突然の言葉に、れいむはいったん怒りを引っ込め、庭を見まわした。 「・・・どこにもごはんなんてないでしょぉおおお!!」 「まりさ。ご飯を取ってきてくれ。」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 数分後、まりさは我が家の庭に生えていた雑草やそれに近い花、虫やらミミズやらを集めて持ってきた。 やはりこのまりさは優秀らしい。 「・・・これがごはんさんなわけないでしょぉおお!?まりさはばかなの?しぬのぉっ!?」 「れいむ。そいつが野良のゴチソウだ。」 「ゆゆっ!?」 まりさも心配そうな表情になって、れいむを諭す。 「れいむ。もうあやまろうよぉ。のらは、だれもまもってくれないんだよ。 れいむみたいなぜいたくなゆっくりは、だれもまんぞくさせてあげられないんだよ。」 「な、もうやめろよ。れいむ。お前には野良なんて無理だって。俺の所にいる以外生きる道なんて無いんだって。」 ・・・結論から言うと、残念ながら、俺のこの言葉が最後の引き金を引いてしまった。 「そんなめでみるなぁぁああああ!!でいぶはでていくよ!とめてもむだだよぉおおお!! じじいもまりさも、ぜったいこうかいさせてやるぅううううう!!」 結局れいむは、俺達の引きとめる声も届くことなく、家出してしまったのであった。 はぁ。やはり俺には荷が重かった。 そうだよなぁ。そんな簡単に躾けれたら、でいぶになんてなってないよなぁ。 ゆっくりの躾けって難しい。 ・・・まあ、どっちにしてもこうなる事はわかっていた。計算通りだ。 「・・・ところでまりさ。」 「ゆぅ?」 「お前いい子だな。」 「ゆ!ゆっくりありがとー。」 「・・・ウチで飼ってやろうか?」 「・・・ゆゆ!?」 --------------------------------------------------------- その日の夕方。 ガチャ。 「さーて、そろそろ夕飯買いに行くか。ん?」 「ゆ・・・くち・・・」 俺が買い物に行こうと玄関の扉を開けると、 扉の外側に寄りかかっていたのか、スイカ大の饅頭がゴロリと転がった。 「おお、れいむ。お帰り。」 「ゆ・・・ぐぢ・・・」 戻ってきたれいむの全身には、焼き鳥の竹串であろう細い串が、 まるで巨大なウニにしか見えないほどびっしり全身に突き刺されていた。 それこそ眼球の黒目部分とリボン、あんよを除いた全身にびっしりと。 ・・・れいむの家出は、わずか2時間少々で終わりを迎えた事になる。 「ご・・・べん・・・ざい・・」 「おお。よく謝れたな。今治療してやるからな。」 れいむはすっかり素直になって帰ってきたのであった。 「ゆぁぁああああ!!ごべんなざい、ごべんなざいぃいいい!!でいぶがゆっぐぢぢでながったんでずぅうう!!」 「もういいから。泣きやめよ。」 「おにいざん、ゆっぐぢぢでないでいぶで、ごべんなざいぃいいい!!」 「しょうがねえなぁ。今度はえらく甘えん坊になっちゃって。」 その姿をみて、我が家の庭に住み着く事になったまりさも、苦笑気味である。 「よかったね。れいむもおにーさんもゆっくりしてね!」 「・・・お前、ホントにいいゆっくりだな。」 「ゆっくりありがとー!」 この町近辺の野良ゆっくりは、まあ大半はまりさのように大人しいものなのだが、 一部すこぶる荒っぽい者達がいるらしい。 とりわけ元飼いゆっくり、要するに捨てられたゲス達には苛烈な攻撃を行うようで、 以前も捨てられたレイパーありす3匹を、野良子まりさが一匹で、返り討ちにした揚句去勢までしてしまったという。 そんな連中がうろついている町なのだから、れいむもさぞかし恐ろしい目に会った事だろう。 そんな土地柄のため、町の住民達が出した結論は『でいぶ・れいぱーの再調教は野良にやらせるに限る』だ。 荒っぽい野良達とはいっても、むしろそうだからこそかもしれないが、 手加減というヤツはそこらの人間よりはるかに上手い。 たとえば、今まで飼いでいぶをうまく誘導して家出させ、自分達の無力さを暴力で叩きこんでもらった飼い主は数多いが、 その中で飼いでいぶが死亡したケースはゼロだ。 致命傷どころか、発狂もさせず根性を叩きなおす手腕は脱帽である。 同じ躾を人間の調教師に頼むと、数週間の時間と○○万円の費用が費やされる事を思えば、 ゆっくり同士だからこそわかるコツ、と言うものがあるのだろう。 「いやいや、よかった。」 「ゆーん。にんげんさんも、れいむもゆっくりできたから、まりさしあわせーだよ!」 「いい子だなぁ。すーりすーり。」 「ゆぅーん!それに、のらのおともだちも、みんなゆっくりできるよ!」 「ん?そうなの?俺らはともかく、野良からすればなんか物騒な気がするし、まりさも外は怖かったんじゃね?」 「ゆっくりしてないでいぶがいると、のらのおちびちゃんとか、ゆっくりしたゆっくりもこわいこわいだよ。 みんななかよく、ゆっくりできるのがいちばんしあわせーだよ!」 「へー。れいむを痛めつけた野良も、やっぱ色々考えてんのかな?」 「きっとそうだよ!ゆっくりー。」 --------------------------------------------------------- ちなみにまりさは、その後も正式に我が家の飼いゆっくりとして、 一緒にゆっくりと暮らす事になった。 「まりさはのらそだちだから、おそとのほうがゆっくりできるよ!」 とか言って、今も庭で外飼いなのだが、まあ、一匹一匹の好みを尊重するのもいいだろう。 れいむはアレ以来外を怖がるようになり、庭にも出れなくなってしまったので、住み分けができて良かったかもしれない。 ところであのまりさなのだが、生け垣の向こうの野良ゆっくりとヒソヒソ話している姿を見かけることが多い。 その時のまりさは、普段私に見せる朗らかな笑顔がなりを潜め、ゆっくりらしからぬ鋭い表情を見せる。 ・・・あの時話をしている野良達は、友達なのだろうか?
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『ゲスとでいぶのあったか家族』 35KB 観察 ゲス 自然界 主要キャラは死にません 『ゲスとでいぶのあったか家族』 D.O ここは、人はおろか人工物の姿さえ見えない、広い広い、とある森。 さほど危険も無く、小さなゆっくりの群れが無数に点在する、そんな森の中だ。 この森には、さほど賢くは無いが善良なぱちゅりーを長とした、 成体だけで100匹ほどがいる、そこそこの大きさの群れがあった。 そして、まりさとれいむは、そんな普通の群れの、普通では無い夫婦であった。 ******************************** 「ゆふぅ~ん!おちびちゃん、れいむそっくりのびーなすさんみたいなねがおだよぉ~! ゆっくりはやくうまれてね!ゆゆ?…でもゆっくりゆっくりうまれてね~!」 大きな樹の根元を掘った、ゆっくりにしては広めのおうちの中では、 一匹のれいむが、とてもゆっくりした顔で自分の額から伸びる茎を眺めていた。 いや、正確には茎にぶら下がる、4匹の可愛らしいおちびちゃん達を。 と、そこにつがいであるまりさが帰ってきた。 「ゆぅ~。狩りから帰ったのぜ~」 「ねぇねぇ!まりさ!きょうもおちびちゃんが、とってもゆっくりしてるよ!!」 狩りから帰ってきたまりさに、弾むような声で話しかけるれいむ。 だが、まりさの反応はつれないものだった。 「…どうでもいいから、そのでかい図体をとっととどかすのぜ。おうちに入れないのぜ」 「な、なにいっでるのぉぉおおお!でいぶは、かりすまもでるさんもしっとにくるう、 きせきのすれんだーぼでぃのもちぬしなんだよぉぉおお!」 「はいはい、ゆっくりゆっくりなのぜ」 「ゆぎぃいいいいい!!」 と、ここまで会話を聞いているだけなら、冷たい態度のまりさが悪いように感じるだろうが、 実際のところ、そんなことはない。 「ゆ、ゆっぎぃぃいいいい!ばりざは、でいぶをもっどゆっぐぢざぜろぉぉおお!」 「…ふぅ。鬱陶しいのぜぇ」 なぜなら、 「そのぶよぶよのお腹をさっさとどかすのぜ」 「ゆばぁぉあああああ!!」 実際れいむの図体は無駄にでかく、まりさがおうちに入るのを邪魔していたからである。 れいむは、いわゆる『でいぶ』と呼ばれる、ゆっくり社会では忌み嫌われる駄ゆっくりであった。 その主な症状は、盲目的な自信過剰・ご都合主義・凶暴性、 そして自分と自分のおちびちゃんの幸せのためなら、他ゆっくりの命すらゴミ扱いする驚異の利己主義。 はっきり言って迷惑な存在である。 しかも外観がまた、暴食による肥満、知性を感じさせない表情、うるさい大声と、 まったくもって好感を持てない風貌ときては、好かれるはずもないであろう。 当然ながら難ありゆっくりなれいむは、群れの厄介者扱いだったのだが、 この群れ、長ぱちゅりーが変な平等主義に目覚めたせいで独身を原則禁止されており、 こんなれいむにも、つがいが必ずあてがわれる残念な群れだった。 しかも離婚の際には、群れ幹部達の過半数の許可が必要と言う徹底ぶりである。 だがその結果は、過去3度の離婚であった。 しかも3度目に至っては、れいむのつがいであったみょんが長ぱちゅりーに、 土下座を通り越して、額を地面に押し付けたまま逆立ちまでして、 『ころせみょぉぉおおん!りこんさせないなら、みょんをころせみょぉぉおおん!』 と叫ばせるほどであったという。 みょんとつがいだった頃のれいむと言えば、 おうちの中で食っちゃ寝を繰り返して外にも出ず、 みょんの集めた食料はみょんが口に入れる前に全部食べつくし、 疲労困憊で眠ろうとするみょんに、そのだらしない図体で子作りを求め続けるという 地獄のような毒妻っぷりだったそうな。 みょんが発狂寸前になるのも当然である。 せめてもの救いは、れいむ自身が自分の狩りの下手さだけは自覚していたため、 つがいがいなければ自分は生きていけない、という程度の事を理解していたことだろうか。 だからこそ、群れのルールを破ったり、殺ゆっくり・盗みなどに手を出さずにすんだのだろう。 で、そんなれいむのつがいとなったまりさなのだが、 こちらも当然ながら普通のゆっくりではなかったのだった。 「ゆがぁぁああ!あやばれ!どげざじであやばれぇぇええ!」 「…れいむ」 「ゆがぁぁあああぁぁぁ・ぁ・あ?」 「にんっしんしてるからって、何にもされないと思ってるのぜ?」 「ゆ・ゆ?ゆわ、や、やべで…」 やれやれと言った表情をしていたまりさは、 眉ひとつ動かさずに手近に転がっていた木の枝を加えると、 ずぼっ! 「ゆ、ゆびゃぁあぁあああ!ごべんなざい!ごべんなざいぃぃいいい!」 「しばらく反省しとくのぜ」 その木の枝をためらいなくれいむの眼窩にねじ込んだのであった。 「ぬいぢぇ!でいぶはんぜいじでまず!ゆっぐぢじまずぅぅぅううう!」 「うるさいからちょっと黙るのぜ」 「……っ!」 まりさは、いわゆるゲスだったのである。 れいむの眼球を傷つけず、木の枝を眼窩にねじ込む。 虐待お兄さん顔負けのことを表情一つ変えずに行うまりさは、当然ながら普通のゆっくりではない。 いわゆる『ゲス』と呼ばれる、ゆっくり社会では恐れられ、敬遠されるゆっくりであった。 ずる賢く打算的で、『ゆっくり』を共有するのではなく独り占めすることを好み、 自分の利益と生命のためには他ゆっくりなど平気で打ち捨てる冷徹さをもつという、 ゆっくりしていないゆっくりの代表格のような存在であった。 そんなまりさだが、その計算高さゆえに群れで暮らす利点を理解していたため、 群れのルールを破ったり、殺ゆっくり・盗みなどに手を出さずにすんでいた。 ただし、危険な雰囲気漂うまりさを好き好んでつがいに選ぶゆっくりも少なく、 結局売れ残りとなってしまっていたわけである。 2匹は別に、相性が良かったからつがいになったわけではない。 群れのルールだからというのが表向きの理由だが実際は、 れいむは狩りの得意なつがいを必要としていたからであり、 まりさに至っては、れいむのまむまむの具合が極上だったというだけの理由であった。 そうは言っても、ゆっくりは一度すっきり―すればにんっしん、 その後は最低2~3カ月にわたって子育てに追われ、すっきりーはご無沙汰になる、 と言う事を考えると、まりさには不利な取引だったと言えるだろう。 その辺はしょせんまりさもゆっくりだったということであった。 「ごべんね…ごべんね、まりさ…」 「次騒いだら、こんな優しくは済まないのぜ」 「ゆ、ひ、ひぃぃぃ…」 ちなみに2匹の結婚初日は、れいむが華麗にまりさを奴隷呼ばわりしたと同時に、 まりさが渾身の体当たりでれいむの奥歯3本をへし折り、 そのまま悶絶するれいむの口をこじ開けると、奥歯が折れた歯茎部分に、 ささくれ立った木の枝をねじ込んで追い打ちをかけるという、 まりさにしては大変優しい『しつけ』で終わった。 そんな『しつけ』が一日最低5回は続けられた結果、 現在ではさすがのでいぶも、表向きは従順なゆっくりに調教されていたのである。 たまにボロが出るが、まりさは気にもしていない様子であった。 そんなあったか家族に、今新しい命が誕生しようとしていた。 ******************************** れいむの頭上に実る4つの実ゆっくりが、 今母体から離れるため、ぷるぷると震える。 ぷるぷるぷるっ…ぷちっ …ぽてんっ 「ゅぅ・・・ゆ・・・・ゆっ・・・」 そして、落下の衝撃に涙ぐみながらも、母の頭上にぶら下がりながら夢の中でずっと練習していた、 生まれて初めての両親とのご挨拶を、赤まりさは元気いっぱいに発したのだった。 「ゆっきゅちちちぇっちぇにぇっ!!!!!」 新しい命、キラキラと希望に輝く瞳を両親に向ける一匹の赤まりさは、 この瞬間、厳しく、どこまでも広がる未知の世界へと羽ばたきはじめたのである。 そして、れいむとまりさはこの瞬間、母れいむと父まりさとなった。 だが… 「ゆっふぅぅうううん!れいむのおちびちゃぁあああん!ぺーろぺーろ、ゆっぐりぃぃいいい!」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「……」 「おとーしゃ…ゆぅ?」 父まりさは誕生のあいさつも交わさず、赤まりさの顔をまじまじと眺めていたが、 やがでボツリと最初の感想を述べた。 「れいむそっくりで、頭の悪そうな奴なのぜ。早死にするのぜ」 「ゆ、ゆっぴゃぁぁぁああああん!?」 「まりさぁぁああ!なにいっでるのぉぉおおお!?」 父まりさは嫌そうな表情でさらに続ける。 「こういう単純そうな顔した奴は、真っ先に死ぬのぜ。はぁ、育てるの大変そうなのぜ」 「どうしちぇしょんなこというのじぇぇぇえええ!」 赤まりさは、生まれて早々父から浴びせられる暴言に、 光り輝いていたはずの未来がどんどん薄暗く陰っていくのを感じていた。 そしてその間も赤まりさの姉妹達は、次々と生まれていく。 ぷちっ!ぽとり。 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっくりしていってね!ゆわぁああ!れいむそっくりの、とってもゆっくりしたおちびちゃんだよぉぉお!」 「さっきのより頭悪そうなのぜ。もう絶望しか見えないのぜ。はぁ」 「ゆぴぃぃいいい!?」 ぷちっ!ぽとり。 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっくりしていってね!ゆわぁああ!このこも、れいむそっくりだよ!」 「れいむそっくりの不細工なのぜ。性格だけでもマシなことを祈るのぜ」 「どうしちぇぇぇえ!?」 ぷちっ!ぽとり。 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっくりしていってね!ゆわぁああ!このこは、まりさそっくりだね!かっこいいよぉぉお!」 「こんなのと一緒にされたくないのぜ。上の三人よりはマシだけど、性格悪そうなのぜ」 「しょんなぁぁあああ!?」 「ゆっぐ…ゆぴぃ…」 「ゆっくち、させちぇえ…」 「めそめそすんななのぜ。生まれていきなり辛気臭えのぜ」 「まりさのせいでしょぉぉおおおお!!」 すっかり意気消沈した4匹のおちびちゃん達。 今回ばかりは極めて珍しいことに、母れいむの方が正しかった。 「まりさぁあああ!ゆぎぎ…もういいよ!はやくれいむのくきさんをぬいて、 おちびちゃんたちにたべさせてあげてね!」 「はいはいなのぜ」 「たべちゃだめだよ!」 「わかってるのぜ。まったく」 ぷちっ! 「「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!!」」」」 母体と実ゆっくり達がつながっていた茎は、生まれた赤ゆっくりの最初のごはんになる。 適度に甘く苦く、シャキシャキとした食感のこの茎は、 赤ゆっくり達の味覚を野生生活に調整する、大切な食べ物である。 これを食べる事で、草花や虫など、自然界の食料を美味しく食べることが出来るようになるのだ。 しかもこの茎は、母体の持つカビや雑菌、虫等への免疫を赤ゆっくりに与える、大切な薬でもある。 この茎を食べなかった赤ゆっくりは、虫に襲われたり、カビが生えて数日で死んでしまう。 さすがの父まりさも邪魔出来ない、大切で神聖な儀式なのであった。 …ただし、余計な事は言う。 「「「「ちあわちぇー!ちあわちぇー!」」」」 「泣いたと思ったらもう笑ってるのぜ。こんなのんきじゃ、長生きできないのぜ」 「「「「どうしちぇそんなこというにょぉぉおおお!」」」」 「まりさぁぁああああ!!」 「わ、悪かったのぜ。うるさいからもう怒るななのぜ」 父まりさは平然としていたが、 赤ゆっくり達にとっては、まことに前途多難な出発であった。 ******************************** おちびちゃん誕生から、数日が経った。 「じゃあ狩りに行ってくるのぜ」 「ゆっくりいってらっしゃい!」 「「「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」」」」 まりさが狩りに出発すると、おうちの中は母れいむと、おちびちゃん達だけの世界となる。 なんと言ってもまだまだおちびちゃんは生まれたての赤ゆっくり。 不器用なれいむの代わりにまりさがちょいちょいと作った、 干草だけでなく鳥の羽や綿まで編み込まれたフカフカおちびちゃん用ベッドは、 4匹のおちびちゃん達を、体だけでなく心まで暖めてくれる素晴らしいものだった。 父まりさは自分用のベッドのついでに作っただけなので、断固否定するところだが、 子供たちの方はこの快適なベッドこそが親の愛の証だと信じ、ゆっくりした気持ちを取り戻していた。 ただし… 「そのべっどさんはね、おかーさんがおちびちゃんのために、いっしょうけんめいつくったんだよ!」 「「「「おきゃーしゃんは、ゆっくちできりゅにぇ!」」」」 手柄は横取りされていたが。 母れいむには、父まりさに秘密の大きな企みがあった。 「おちびちゃん、これからは、おかーさんがせんせいだからね!」 「「「「ゆっ!!」」」」 「おちびちゃんたちが、ゆっくりしたゆっくりになれるように、いろいろおしえるからね!」 「「「「ゆっくちりかいしゅるよ!!」」」」 それは、夫婦分業のゆっくり家庭に置いて、母役だけが持つ特権をフルに活用することであった。 すなわち、おちびちゃん達への教育権である。 「おちびちゃんたち!おとーさんはゆっくりできた?」 「ゆっくちできにゃいのじぇ!」 「そうだよね!おかーさんもゆっくりできないよ!」 「でも、それならどうしちぇ…」 「おかーさんはね!おとーさんにだまされたんだよ!」 「ゆゆっ!?」 「うそついちゃの!?」 「そうなんだよ!おかーさんのびぼうをてにいれたくて、 おとーさんはおかーさんをゆっくりさせてくれる、っていってけっこんしたんだよ!でもね…」 「おとーしゃんは、ゆっくちしちぇにゃいよ!」 「しょーだにぇ!ゆっくちしちぇにゃいにぇ!」 「うしょつきおとーしゃんは、ゆっくちちね!」 父まりさ自体が実際ゆっくりしてないゆっくりなため、母れいむの誘導は実にうまくいく。 そう、母れいむはこうやっておちびちゃん達を自分の味方に引き入れ、 いずれは自分を養ってもらおうと甘い考えを持っていたのだった。 実際は、ゆっくりは核家族が基本なのでそうはいかないものなのだが、 母れいむとしては父まりさの亭主関白な家庭生活に、大いに不満なのである。 親としての権利を最大限主張し、子供の中で一番優秀そうな者に寄生して生きようという考えだった。 「はい!おかーさんはゆっくりさせる!」 「「「「おきゃーしゃんは、ゆっくちさせりゅ!」」」」 「おとーさんは、ゆっくりしね!」 「「「「おとー…」」」」 「ゆゆっ!?だめだよ、おかーさんのまねしないと!もういちど…」 「誰が死ぬのぜ?」 母れいむの背後には、随分前から父まりさが立っていた。 わざわざ気づかれないように、そっとおうちの中に入って全ての内容を聞いていたのである。 なお、母れいむの教育内容は、その大声のおかげで群れ中に筒抜けであったので、 父まりさの勘が鈍かったとしても、どうせ隠しおおせるはずもなかったのだが。 「ゆびゃぁぁあああああ!?ゆるじじぇぇぇええええ!」 「れいむは今日はご飯抜きなのぜ。おちび達はこのにがにがな草でも食っとくのぜ」 「「「「おとーしゃぁぁあん!ごめんにゃしゃいぃぃいい!」」」」 「まりさはイモムシさんをいただくのぜ。むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「「「「「ごべんなさいぃぃいいいい!!」」」」」 「…おとーしゃんはゆっくちできにゃいよ!」 「ゆっくちのくじゅだよ!ゆっくちちにぇ!」 そんなわけで、結局母れいむの画策とは全く無関係に、父まりさはおちびちゃん達から嫌われまくり、 その関係は最悪の状態へとなったのであった。 ******************************** そしてそれからさらに2週間ほどが経った。 父まりさとおちびちゃん達との関係は相変わらず最悪だったが、 その分おちびちゃん達は母れいむから甘やかされまくる事で、 心のバランスを取ることに成功していた。 「きょうこそ、おとーしゃんをやっつけるのじぇ!ゆっくちちにぇぇぇえええ!」 ぽにゅんっ! 「それは何なのぜ?体当たりのつもりなのぜ?」 「どうしちぇたおせないのじぇぇええ!まりしゃはさいっきょうなはずなのじぇ!!」 「その程度で最強とか、笑い死にさせる気なのぜ!?ゆっへっへぇ……」 と、 ニタニタと嫌な笑みを浮かべながら、我が子の反逆を叩き潰していた父まりさだったが、 急にひらめいた!といった表情になっておちびちゃん達に宣言した。 「そうなのぜ!今日は、おちびちゃん達も一緒に狩りに行くのぜ!」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 母れいむは、面倒くさがって同行しなかったが、 おちびちゃん達は生まれて初めて、家族5匹での狩りに出る事になったのであった。 だが、おちびちゃん達は生後20日も経過していない。 サイズで言えばキウイフルーツ程度であり、子ゆっくりと呼ばれるサイズに届くのはもう少し先である。 それは、あまりにも早い狩りデビューであった。 「まりしゃは、けんっきゃくをいかしちぇ、ばったしゃんをつかまえるのじぇ!」 「好きにするのぜ」 「ゆぅ~…れいみゅは、やわらかいくさしゃんをあつめるにぇ!」 「がんばるのぜ」 「れ、れいみゅはにぇ!おはなしゃんをあつめりゅよ!」 「せいぜい気を付けるのぜ」 「まりしゃにぇ!まりしゃ、みみずしゃんをつかまえりゅよ!」 「行ってこいなのぜ」 4匹のおちびちゃんは、ほとんど初めて見る広大な草原の中を、 目標とする大好物の獲物を目指して、縦横無尽に駆け回った。 もちろん、おうちから遠く離れた、危険な未知の土地だと思っているのはおちびちゃん達だけであり、 ここは父まりさが普段から使っている狩り場の中でも、一番安全な場所である。 父まりさ他、数匹の成体ゆっくり達が、狩りの間ケガをしたりしないように、 小石や尖った木の枝を丹念にどかして作った、目隠ししていてもケガをしない、平らな草原なのである。 まあさすがに、赤ゆっくりが跳ねまわれば擦り傷くらいは作るだろうが。 「ばったしゃん!まりしゃにつかまえられちぇにぇ!」 ぴょーんっ! 「ゆっぴゃぁぁああん!どうしちぇにげりゅのぉぉおお!?」 長女まりさは、姉妹で一番の健脚を自慢としていたが、所詮は赤ゆっくり。 ジャンプ一回で数センチしか跳ねられない赤まりさが、バッタさんを捕まえられるはずもなかった。 「まっちぇにぇ!」 ぽよんっ!…びょーんっ! 「まつのじぇぇええ!」 ぽよんっ!…びょーーんっ! 「ゆひぃ、ゆぴ…どうしちぇぇぇええ!」 びょーーーんっバクッ!! 「ゆぴっ!?」 「お父さんがいただいていくのぜ」 「ゆ?ゆゆ?」 だが、長女まりさが何度跳ねても届く事のなかったバッタさんが、 一瞬目を離した瞬間に、なぜか父まりさの口の中に収まっていた。 「ど、どうやっちゃの・・・?」 「さいっきょうのおちびちゃんが、ゲスでクズなお父さんに教わるのぜ?」 「ゆ、ゆぴ…」 それは、足の遅いゆっくりが虫を捕まえる際に使う、基本的な戦術、 いわゆる待ち伏せであった。 なんのことはない。長女まりさが虫を追っているのを見て、 虫が追い立てられる方向に伏せて隠れていただけだ。 そして、ジャンプ一回で届く距離に近づいたところで、ぱくっ!ということである。 「むーしゃむーしゃ!ゆふふ!さいっきょうのおちびちゃんから奪ったバッタさんは、最強にに美味いのぜぇ!」 「ゆぴゃぁあぁああん!まりしゃのばったしゃんがぁぁああ!」 なお、そのバッタを長女まりさにあげるほど、父まりさは優しくなかった。 というより、最初からこれが目的で狩りに連れてきているのであるが。 次女れいむの方は、やわらかそうでいい香りの草を、ブチブチと集めていた。 「ゆぁあん?何なのぜ?それ」 「ゆゆっ!?おとーしゃんはあっちにいっちぇにぇ!」 「やっぱりれいむの子はれいむなのぜ。そんな草さんしか集まらないのぜ?」 「いじわるいわにゃいでにぇ!」 父まりさは、次女れいむの言うとおりに意地悪な表情をして言った。 「その草さん。むーしゃむーしゃできるのぜ?」 「できりゅよ!むーちゃむ…にぎゃいぃいいい!!」 次女れいむは、少量の餡子と一緒に食べた草をまとめて吐き出した。 とても苦くて食えたものではなかったのだった。 「ゆっふっふ。いつも食べてるご飯がどれかもわかんないのぜ?やっぱり母親そっくりなのぜ」 「ゆっぴゃぁぁああん!!」 その後も、 三女れいむは花を手に入れようとしたが、赤ゆっくりのジャンプで届く高さの花が無く、 収獲ゼロで帰る羽目になった。 実際はその花が生えている茎の根元をかじり切ればいいだけなのだが、 赤ゆっくりの知力ではそこまで考えが及ばなかったようである。 末っ子まりさに至っては、ミミズがどこにいるのか最後までわからず、 草原のど真ん中で泣き続けて一日が終わった。 結局4姉妹の初めての狩りは、自分達の無力を全力で思い知らされる、苦い記憶となったのであった。 「さあ、楽しませてもらったし、そろそろ帰るのぜ!」 「「「「ゆ…ゆっくち…」」」」 ちなみに、他の一般的なゆっくり一家の中にあって生後2週間と言うと、 おうちからお外に踏み出してもいいかな?ということをそろそろ両親が考える時期なのである。 赤まりさ達がどれほどの才能を秘めていたとしても、とても狩りなど行える段階では無い。 父まりさは100も承知で狩りに引っ張りだしたのであった。 自分に敵意を向ける生意気な子供達に、自分の力を見せつけるだけのために。 おちびちゃん達は、結局それから数週間にわたって狩りに同行したが、 結局父まりさ以上の収穫を集めるどころか、毎日体力を使い果たして食事をモリモリ食べる分、 父まりさの負担を増やしただけに終わったのであった。 「「「「むーちゃむーちゃ!ち、あ、わ、ちぇー!」」」」 「た、食べ過ぎなのぜぇぇぇええ!!」 「れいむももっと、むーしゃむーしゃするよ!」 「お前は動いてないのに食い過ぎなのぜぇぇええ!」 このあたり、父まりさも詰めが甘いところである。 ちなみに、調子に乗っておちびちゃん達並に暴食を繰り返していた母れいむは、 木の枝をあにゃるに捻じ込み、うんうんが出せず腹痛に苦しむという 『うんうん地獄』なる『しつけ』を父まりさから与えられたのであった。 ******************************** その後も、主に父まりさの態度が(心底ゲスなのでしょうがないが)原因で、 親子関係は悪い状態のまま数週間が経過した。 この時期になると、おちびちゃん達ももう赤ゆっくりを完全に抜け出し、 野球の硬球並の大きさにまで成長して、いわゆる子ゆっくりと呼ばれる頃合いになっていた。 おちびちゃん達の同世代達も狩りデビューを果たし、 家族以外のゆっくり達、特に自分の同世代の子ゆっくり達と頻繁に会うようになっていく。 お友達グループを作って一緒に遊ぶようになるのもこの時期だ。 それは、次世代の群れの環境を形作る、非常に大事なコミュニケーションの時期でもあった。 「ゆぁ~ん、わからにゃいよぉ~!ばったしゃん、ちぇんにつかまっちぇよ~!」 「ゆっ!」 パクッ! 「わ、わきゃるよー!まりしゃはかりがじょうずだにぇー!」 「ゆぅ、そ、それほどでもあるのじぇ~」 そんな若いというよりはまだ幼い子ゆっくり中で、次世代の群れの主力を担うであろう輝きを放っていたのは、 意外にも、ゲスまりさとでいぶの子供たちである、あの4姉妹であった。 「どれがときゃいはなくさしゃんか、わきゃらないわ~」 「ゆゆっ!れいみゅにまかせてにぇ!」 「と、ときゃいはね!れいみゅ、ありがとう!」 4姉妹は、子ゆっくり達の集団にあって類まれな早熟さを示し、 食べられる草花の知識や狩りの方法、おうちの作り方や安全な場所の選定など、 成体顔負けの幅広い技能を習得していたのである。 原因は、当然と言えば当然だが、赤ゆっくりの時期に父まりさの嫌がらせで行わされた狩りである。 あの一件以降、父まりさと4姉妹の不仲は過去最悪のものになっていたが、 それとは別に、4姉妹の反逆精神と自立心がプラスの方向にも働いたのであった。 長女まりさは、父まりさをこっそり尾行して、狩りの仕方をしっかり見学するようになった。 次女れいむ達も自分達が食べている草花やキノコの種類を、食べながら必死に憶えるようになった。 これらはいずれも、4姉妹のプライドをズタズタにする父親に対して、雪辱を果たすために行っていた努力であり、 なおかつ、4姉妹がゲスな親から一刻も早く離れたいと思っての努力でもあった。 父まりさ自信は特に教育熱心なわけでもないはずなのだが、 子育てという意味では良い影響が出たわけである。 しかも、ゆっくりに限っては人間と異なり、早熟=有能、有能=早熟、と断定してよい。 ゆっくりの最も記憶力が高い、それゆえに能力が向上しやすい時期は、 普通の家族だとひたすら甘やかされているであろう、赤ゆっくり期~子ゆっくり初期なのである。 大抵のおちびちゃんが『怠惰にゆっくり過ごす事=至高のゆっくり』と言う事をみっちり学んでいる間に、 4姉妹は一生懸命、一流の生活力を持つゆっくりから指導を受けてきたのであった。 その生涯のしょっぱなでついた能力差は、順調に生きれば一生縮まることはない。 ゲスまりさ流英才教育が、ここに完成を見たわけである。 「むきゅーん!あのれいむとまりさのおちびちゃん達、凄いわ!」 長ぱちゅりーとしても大喜びである。 あの何を考えているかわからないまりさと、厄介者そのもののれいむから、 次世代の群れをしょって立つかもしれない有望な子供達が育っているのだから。 なので長ぱちゅりーは、自分が考えた掟『群れ全員明るい家族化計画』が上手くいったと本気で思っていた。 まあ、結果は良い方向に向かっている以上、間違いだったとも言えないのだが。 そして、4姉妹を見る周囲の目が変わったのと時を同じくして、 4姉妹が父まりさを見る目も変わりつつあった。 「まりしゃって、とってもゆっくちしたかりじょうずにぇ!」 「ゆ!?あ、ありがとうなのじぇ!」 「れいみゅって、ものしりさんだにぇー」 「ゆ、ゆっくちそんなこと…」 「れいみゅ!いっしょにおはなしゃん、むーしゃむーしゃしましょう!」 「ゆ、ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」 「まりしゃー!みみずしゃんのつかまえかた、みょんにもおしえてみょーん!」 「ゆっくちおしえりゅよ!」 ……。 「ゆぅ…まりしゃ、おとーさんのまねしてるだけなのじぇ…」 「みんな、しゅっごいほめてくれるにぇ…」 「ゆっくち…お、おとーしゃんのおかげなのかにゃ?」 「ゆん……」 何せ4姉妹は父まりさからバカにされて育ってきており、 しかも未だに、父まりさとの差が縮まっているような実感はまるでない。 どうやら自分達の親が(性格はともかく)非常に優れたゆっくりであることを、 4姉妹も薄々感じざるをえなくなってきていたのである。 そして、もうひとつの事にも… 「おちびちゃん、おかーさんはね。おとーさんにだまされたんだよ」 「ゆぅ…」 「おとーさんはゆっくりできないでしょ?」 「……」 「ゆっくりきいてる?おちびちゃん」 「ゆん…」 それは、母れいむの方はどうやら相当な駄ゆっくりであるという事である。 母れいむは、自分の仕事は子育てとおうちを守ることと言っているが、 新しいベッドを作ったり、食糧庫の整頓をしたり、 おトイレの掃除をしたり、おうちの入り口の閉じまりをしたり、 子供達の水浴びや、日光浴まで含め、 何のかんのと言いつつも全部父まりさがやってくれているのだ。 それは皮肉な事に、父まりさを越えようと執念深く観察していた長女まりさが特にひしひしと理解していた。 父まりさはその上狩りまでやっているのだから、 ハッキリ言って母れいむの仕事は 子供たちに念仏のように父まりさを貶める台詞を聞かせ続けることくらいである。 母への折檻の激しさや吐き捨てる言葉の辛辣さは未だにゆっくりできるものではないが、 少なくともやる事をやって、群れの掟は守りつつの振る舞いである以上、 十分評価に値するものであった。 なにより、こんなことに気づくことが出来たという時点で、 4姉妹は群れでも群を抜いて賢いゆっくりに育ちつつあったのである。 ******************************** パタ…パタパタ…パタパタ… 「「「「ゆ?」」」」 「しねー」 そんな恨みと尊敬の気持ちの間の葛藤で、4姉妹がゆっくりできない思いを抱き続けていた時、 群れに突然巨大な厄災が降りかかってきたのであった。 「ふ、ふふ、ふらんだぁぁああああああ!!」 それは、群れのゆっくりプレイスに突然舞い降りた捕食種、ゆっくりふらんであった。 「うっうー!しね!しね!」 「ゆびゃぁぁああああ!!」 「うー!」 「ゆぴぴぴぴ…ありすのかすたーどさん…すわない、で…」 胴付きではない。 胴無しのふらんが一匹、それもようやく成体になったかという若い個体であった。 本来夜行性のふらんが真昼間のゆっくりぷれいすの、しかもど真ん中に現れるなど、 そうそう起こりえる事では無い。 まさに事故、という他ない不幸であった。 「「「みょーん!みょんたちがあいてだみょん!」」」 「うー!しね!しねー!!」 「みょぉぉおおおん!やべでぇぇええええ!!」 「あ、ありすのみょんに、ひどいことしない『べしんっ!』ゆびぇっ!?」 「うーうー!!しね!しねー!!」 群れは大騒動になった。 群れと長ぱちゅりーの防衛を任されている近衛ゆっくり達が、各々木の棒を口に咥え、 10数匹掛かりでふらんを迎撃しているが、一匹づつ軽々と葬りさられていく。 さらにはその近衛ゆっくり達のつがい達も、伴侶に対して行われる処刑をおうちの前で見せつけられて、 我慢できずおうちから飛び出したところを捕まえられては、夫婦そろって餡子を吸われていった。 そうして夫婦そろって食い散らかされていった一家には、さらに総仕上げが待つ。 「「「ゆぁ~ん!みゃみゃ~、たちゅけちぇぇぇえ!」」」 「うー!!あまあまー!!」 「ふらんしゃん、ゆっくちしちぇにぇ!ゆっくちは、ゆっくちしにゃいとちんじゃうのよ!」 「うー!しね!しねー!!」 「「ゆっぴゃぁぁああん!ゆっくちさせちぇぇぇええ!!」」 むーしゃむーしゃ…げろまずー ぽいっ!べちゃ… 「ぴぇ……」 近衛隊の父ゆっくりが死に、母ゆっくりがおうちを飛び出したまま帰らないなら、 そのおうちの中は無防備と言う事だ。 これはすなわち、おちびちゃんまでふらんに捧げることに他ならなかった。 このふらんは、若くて力も経験も不足しているなりに頭を働かせて、 大好物である群れのおちびちゃん達を、根こそぎ食いつくそうとしていた。 群れは今、存亡の危機に立たされたのである。 ところでその頃。 群れのゆっくりが、成体も、生まれたてのおちびちゃん達ももれなく遊び尽くされ、 食いつくされていこうとしている中、あのゲスまりさとでいぶの一家はと言うと…… 「「「「ゆっぴゃぁぁあああん!おともだちのみょんも、ちぇんもたべられちゃぁぁぁあ!!」」」」 「ゆひぃ、ゆひぃぃいいい!ふらんごわいぃぃいいい!お、おぢびぢゃんだち!」 「「「「お、おきゃあしゃん!?」」」」 「みんな、おとりになってね!そのあいだにでいぶはにげるがらね!」 「「「「なにいっちぇるのぉぉおおおお!?」」」」 一匹を除いて、おうちの中で大混乱に陥っていた。 その騒ぎの中で一匹平然としているのは、例によって父まりさである。 「ゆっふっふ~ん。ふふ~ん」 というか、鼻歌交じりでおうちの倉庫内をゴソゴソと漁っていた。 「「「「おとーしゃぁぁああん!!」」」」 「何なのぜ~。うるさいのぜ」 「ばりざぁぁあああ!でいぶをだずげでね!でいぶのだんなざんでぢょぉぉおお!!」 「狩りの準備してるんだから、ゆーゆー泣くななのぜ。まったく」 「ゆわぁぁあああ!?ばりざが、ふらんがごわずぎで、おがじくなっじゃっだぁぁああああ!!」 あいかわらず鼻歌交じりの父まりさを、突き飛ばさんばかりの勢いでおうちの一番奥に飛び込んだれいむは、 おちびちゃん達が寄り添って泣いているところよりもさらに奥、貯蔵食糧の山に全身を押し込めると、 がたがたと震えるだけのデブ饅頭と化してしまった。 「ゆぁ~。まったく。ご飯の管理してるの、誰だと思ってるのぜ。後片付けが大変なのぜ」 「「「「おとーしゃぁん…ゆっくちしっかりしちぇぇ…」」」」 「……」 父まりさはため息を一つつくと、もう家族にいちいち構うのをやめて、一本の木の棒を取りだした。 それは、普段まりさが持ち歩いているオール兼武器の棒より、一回り長い。 そして父まりさは、悠々とおうちの入り口に向かうと、 母れいむが不器用なりに木の枝やらなんやらで固めたバリケード、いわゆるけっかいをどかしていった。 まるで今から本当に、いつも通りの狩りに出ると言った雰囲気で。 「お、おとーしゃん!」 「ゆあん?なんなのぜ?」 「おうちのそとにでちぇ、ふらんとたたかうのじぇ?」 長女まりさは、英雄を見るのに近い視線を父まりさに向けていた。 だがしかし、父まりさの返事は斜め上を行くものであった。 「なにいってるのぜ?狩りだって言ってるのぜ」 「ゆ…ゆぅ?」 そう言うと父まりさは、おうちのけっかいを完全に外して入り口を丸見えな状態にし、 そのままおうちの奥まで戻って来てしまった。 「ゆ…ゆ?おとーしゃん!」 「ゆん?何なのぜぇ、もう。まりさは忙しいのぜ」 「だ、だっちぇ、けっかいしゃん、どかしちぇ…」 「ああ。これからここにふらんが来るから、おちびちゃん達みんな食べられちゃうのぜ」 ……。 「「「「な、なにいっちぇるのぉぉおおおおお!!」」」」 その叫び声は、ゆっくりプレイスのど真ん中で殺戮を繰り広げているふらんまで、はっきりと届いた。 「「「「(ゆあーん!たべられちゃくにゃいぃぃいいい!!たしゅけちぇぇぇえええ!)」」」」 それは、ふらんが最も好物としている子ゆっくり達の声。 赤ゆっくりのようにフレッシュだが酸味がある餡子でもなく、 成体ゆっくりのようにパサパサした餡子でもない。 程よい風味が舌をとろけさせる、好物中の大好物であった。 「うっうー!しね!しねー!!」 ふらんはその声に誘われるまま空に飛び上がると、けっかいすらされていないガラ空きのおうちを見つけ、 そこから子ゆっくり達の叫び声が発せられている事を確認した。 「う~、じゅるり」 もはやふらんに躊躇や我慢の必要などない。 おうちに飛び込み、大好物を思うままに食い荒らすのだ。 そしてふらんははるか上空から一気におうちの入り口に降下し、体当たりするかのようにおうちへと飛び込んでいった。 中に見えるのは子ゆっくり、赤リボンと黒ぼうしが2匹づつ。そして… それが、ふらんの見た最後の光景だった。 太く長い木の棒で眉間を、そして中枢餡を貫かれたふらんは、 よだれを垂らした満面の笑みのまま絶命していた。 この木の棒、ただの一突きでふらんを『狩った』のは、もちろんあの父まりさである。 恐怖と、それからの解放の連続で茫然としている4姉妹の前で、 父まりさはまた理解不能な事をしゃべっていた。 「ちょうどいい所に獲物が来てくれたのぜ。これでしばらくゆっくり暮らせるのぜ~」 「お、おとうしゃん?」 「ゆっゆ~ん!…ゆん?何なのぜ、まりさは献立を考えるのに忙しいのぜ」 「…たべりゅの?」 「当たり前なのぜ。ふらんは大好物なのぜ」 「……ほかにもたべたことありゅの?」 父まりさは特に自慢するでもなくうなずく。 「れみりゃも美味しいけど、やっぱりふらんの方が口に合うのぜ。 でも、家族ができちゃったからふらんを狩りに行けなくなったのぜ。 まったく。ふらんをさがすのは大変なのぜ。 太陽さんがたくさん出て沈むまでかかっても、見つからない時もあるのぜ」 この話を聞いていたゆっくり達は、群れの全員、長ぱちゅりーも含めて全員が口をポカンと開けたまま、 しばらく一言も発することができなかった。 と、そんな話を父まりさ達がおうちの入り口でしていると、 そこに子ゆっくりが飛び出してきた。 それは先ほどのふらんとの戦いで両親と姉妹全員を失った、 4姉妹達とも友達である、子みょんであった。 子みょんは父まりさの横を抜け、ふらんの死体までたどり着くと、 その死体の上でジャンプし、思い切り踏みつけ始めた。 「みょぉぉおおん!おとーしゃんを!おきゃーしゃんをぉぉおお!かえしぇ!かえしぇぇぇぇええ!!」 「おぢびぢゃん…」 「かわいそうだねー…わからないよー…」 その悲痛な叫びに、長ぱちゅりーを始め周囲の全員が涙を流し、ともに嗚咽を漏らした。 ただし一匹を除いて。 例によって父まりさである。 「なあにやってるのぜぇぇえええ!!」 べちんっ!! 「みょっ!!?」 父まりさの本気の体当たりが子みょんに炸裂した。 周囲の群れのゆっくり達が茫然としているなか、父まりさによる子みょんへの折檻は続く。 「ひとさまのごはんを踏みつけて台無しにしようとするなんて、とんだゲスなのぜ! お仕置きしてやるから覚悟するのぜぇぇええ!」 「みょ、みょん…?」 「む、むきゅ、待って、まり」 「邪魔すんななのぜ」 「むきゅぅん…」 長ぱちゅりーは、もはや何も言えなかった。 その後、子みょんは父まりさによって、下半身(下膨れ)を地面に埋められたあげく、 延々半日にわたってお下げで顔をくすぐられ続けるという拷問まがいの折檻を受けた。 子みょんはそのせいで精神を病んでしまい、 この後2カ月以上もの間、介護無しではご飯も食べられない状態になったのであった。 もちろん、世話をさせられたのは長ぱちゅりーである。 ちなみに母れいむはと言うと… 「れいむもふらんをたべていいよね!ぐるめでごめんね!」 「…やるわけないのぜ。おちびちゃん達はいい餌になってくれたから、羽だけ食べさせてやるのぜ」 「「「「ゆわーい!ゆっくちー!!」」」」 ちなみにふらんの体は、あんまんである。 自分達を襲う心配さえなければ、大好物なのだ。 「どうぢででいぶはたべぢゃだめなのぉぉおおお!?」 「役に立ってない奴にあまあまはやらないのぜ」 「そ、それじゃあ、でいぶだってけんりあるでしょぉぉおおお!」 「……何言ってるのぜ?」 「だ、だって、だって、でいぶがおぢびぢゃんをうんだんだよぉぉおお!」 ……。 結局、母れいむには、ふらんの胃(正確には胃っぽい体内の空洞部分)の内容物を与えられた。 チョコやら生クリームやらカスタードやらが混ざった液体だったので、母れいむも大喜びだったようである。 ちなみに父まりさは、この日の夜にこんな事を4姉妹に教えている。 「ふらんが来たからお外に出て戦うなんて、馬鹿もいい所なのぜ。 あのみょん達もしょうがない奴らなのぜ」 「でも、でも、むれのみんなをたしゅけないといけないのじぇ!」 「ゆぁ~ん?なぁに言ってるのぜ。自分も助けられない奴らが、誰を守るのぜ?」 「ゆ、ゆぅ…」 長女まりさも他の3姉妹も、怯えきって叫んでいただけだったので、何も言えない。 父まりさは長女まりさが黙ったのを満足げに見て、話を続けた。 「だいたい、ふらんがきたらおうちに隠れて剣構えて、ガタガタ震えてりゃいいのぜ」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 「おうちに飛び込んできたら、ふらんなんて目の前からしかこれないのぜ。 剣で一突きなのぜ。なんのためにおうちがあるのか、誰もわかっちゃいないのぜ」 「「「「ゆ、ゆっくち…」」」」 「それに、このおうちは裏側にも出口を作ってるのぜ。 剣で相手出来ないくらい強いふらんなら、中に誘いこんでまりさ達だけ外に出て、 群れのみんなで生き埋めにしてやる事も出来るのぜ」 「「「「ゆ、ゆひぇ~」」」」 「…だから、そんなこともわからないゆっくりなんて、どうなっても知ったこっちゃないのぜ」 「「「「・・・・・・」」」」 つくづく、一言余計であった。 ただし、その暴言がもはや4姉妹の、父まりさへの見方に影響を与える事はなかった。 ******************************** そして時は流れ、ついにあのまりさとれいむのおちびちゃん達も、独立の時を迎えた。 もはやおちびちゃんとは呼べないだろう。 その体格は今では父まりさと同じくらい、母れいむの6割程度にまで育っている。 それはもう、立派な成体ゆっくりであり、子供達もまた、父や母になってよい時期であることを示していた。 「そろそろいくのぜ…」 「れいむもじゅんびできたよ」 「ゆっくりしゅっぱつだね」 「ゆぅ…さびしいよ…」 「おぢびぢゃっ!おぢびぢゃぁぁあああん!おがあざんをずでるのぉおおお!ゆっぐぢいが、いぎぎっ!」 「ようやく出ていくのぜ~。ついでにれいむも連れて行って欲しいのぜ」 さすがに巣立ちの時はしんみりきそうなものだったが、 母れいむはともかく父まりさは相変わらずである。 これでツンデレ親父なのなら可愛げもあるのだが、何気に本心から出ている発言なのは残念なことであった。 「おぢびぢゃ…ぎぎぎ…ぶべぇ」 「泣きすぎて餡子吐いてるのぜ。まあ、ちょっとは痩せた方がいいのぜ」 「「「「おとうさん…」」」」 「ああ、もういいからさっさと行くのぜ。どうせ群れの中なのぜ?また毎日会うのぜ」 それは事実である。 どうせ明日以降も毎日どこかで顔を合わせるだろう。 新しいつがいができたら、その数分後には群れ全体に情報が伝わるほどの狭い世界である。 だが、それはそれ、これはこれなのだ。 少なくとも、真っ当でない両親から生まれ、育てられながら、 これ以上なく真っ当に育ってしまった子供たちにとっては。 「「「「おとうさん……いままでありがとう!!」」」」 「ふぅん。お礼じゃ腹は膨れないのぜ」 「ゆぅ~。おとうさんはあいかわらずだよ~」 「わかってるんなら、今度来るときはお土産でも持ってくるのぜ。あまあまでいいのぜ」 「ゆんっ!ゆっくりりかいしたよ!」 最後の別れは、ゆっくりらしく元気いっぱいに、いつもの挨拶。 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 「ゆぶぇっ!…っぐぢぃ……」 母れいむ以外で。 ……。 子供達は、自分達のためのおうちと、家族だけの小さな小さなゆっくりプレイスを求めて去っていった。 どうせ明日以降も、狩り場やら群れの集会やらでいくらでも出会うだろう。 それは間違いないが、今日と言う日はやはり、長い間手塩にかけて育てたおちびちゃん達が、 一人前に育って旅だった記念の日なのだ。 そんな事を考えていると、餡子の奥にじんわりと熱いものを感じ、 母れいむは、深い達成感に包まれたのであった。 一方、父まりさは、子供たちのお土産にちょっとだけ期待しつつ、 これで久しぶりに母れいむの極上まむまむを使えるかと思い、にんまりしたのであった。 挿絵:D.O
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―8― 一週間前までは、二匹一緒に幸せだった。 れいむとまりさはそれぞれの両親と、友人のありす、そして群の長に正式につがいとなったことを 宣言して回った。 そしてまりさが見つけた――と、れいむは信じ込んでいる――ウサギの巣穴で、二匹一緒におうち 宣言をした。 「ここは、れいむとまりさのおうちだよ~っ♪」 勿論、誰からの反論もなく、晴れてその巣穴は二匹のおうちとなった。 枝分かれする暗い通路に光る苔を擦りつけ、奥まった場所にあった広い空間の一つに天日に干した ふかふかの干し草を敷き詰めた。湿気が少なく、風も通っている場所を見つけて食料庫と決めた頃に は日が暮れていた。 そしてその夜、まりさはれいむとの仔作りを求めた。一人っ仔だったまりさの、たくさんの家族へ の強い憧れからきた欲求だった。 この場所に住み始めた初日であり、食料の蓄えも無い状態であることを理由にれいむは何度も制止 したが、最終的にまりさに押し切られる形で二匹は仔を成した。 駄目だ駄目だとまりさを止めてはいたものの、できてしまえば産まれる前から我が子はかわいい。 ぽっこりふくらんだお腹に、れいむは優しく愛おしげに語りかける。 「おちびちゃん、ゆっくり育ってね。れいむのお腹の中でゆっくりゆっくりしていってね……」 ぽっこりふくらんだお腹に、まりさは明るく楽しげに語りかける。 「まりさもおちびちゃんといっしょにゆっくりしたいよっ! おちびちゃんはゆっくりしないでうま れてきてねっ!」 「……………………ゆ?」 にこにこしていたれいむの笑顔が一拍を置いて引きつった。 そんなれいむの様子は気にせず、まりさは軽妙に歌う、 「ゆっくりしないででておいで~♪ じゃないとゆっくりできないよ~♪」 「……なっ!? なんてこと言うの、まりさっ! おちびちゃんはまだまだれいむのお腹の中でゆっ くりしなきゃいけないんだよ? それなのになんでっ!?」 「ゆん? どうしたの、れいむ?」 気分良く歌っていたところを血相を変えたれいむに邪魔されて、まりさはぷくっと頬を膨らませる。 まりさには、れいむが何故怒っているか解らない。 何でれいむはまりさのお歌を邪魔すんだろう。おちびちゃんは、ゆっくりしないで産まれてこない といけないのに。 あ、そっか。れいむはこんな簡単なことが解らなかったんだね。なら教えて上げよう。 だって、 「れいむのおなかのなかにいたら、まりさがおちびちゃんとゆっくりできないでしょ?」 「……ま……りさ。本気で言ってる……の?」 「しつれーなこといわないでね! まりさはいつだってほんきだよっ!!」 「………………」 目をまん丸にして口を開けっぱなしにした、れいむのちょっと間抜けな顔を不思議そうに眺めてい たまりさだったが、れいむが凍り付いたように動かないことを良いことに、れいむのお腹をポコポコ 突っつきながら歌を再開した。 「で~ておいで~、でっておいで~♪ ゆっくりしないででておいで~♪ じゃないとゆっくりでき ないよ~♪ まりさがゆっくりできないよ~♪」 「……ゅ?……ゆぎぃっ!?」 「ゆっ!? どうしたのれいむ、だいじょうぶ?」 突然鋭く呻いたかと思ったら、表情の無かったれいむが一転して真っ青な顔になったことに気付き、 まりさは歌と軽い体当たりを中止すると心配そうにれいむに寄り添う。 だが次の瞬間、今まで見たこともない形相で、聞いたこともないような声で、れいむが叫び声を上 げた。 「……ゆっ!?……う゛ぁあああああ!!」 「ゆひぁっ!?」 「あッ!? アぁっ!? だめっ……だよおちびちゃん! まだれいむのお腹の中でゆっくりしてな きゃあ゛ッ!? ぎ……だめっ! だめッ! だ……ゆう゛ぁあアあァァッ!!」 れいむの大きく膨らんだお腹がビクリ、ビクリと激しく蠢動する。歯を食いしばり、口の端から泡 を零しながらもれいむは懸命にお腹の中に語りかけるものの、ついには身を裂くような激痛に耐えか ねて意識の手綱を手放した。 焦点を失った双眸をカッと見開き、吼えるように叫び続けるれいむ。 最初の叫びの時点で怖くなったまりさはれいむに背を向け、おへやの隅で帽子を深くかぶって震え ていた。 れいむの絶叫が高くなる度に、固く目を閉じていたまりさだったが、不意に水っぽい音が響いたこ とでうっすらと目を開いた。 いつしかれいむの叫びも止まっている。 恐る恐る振り向けば、パンパンに膨らんだお腹を上にして、ぐったりとしたれいむの姿があった。 先程までの激しい蠢動は見られないが、そのお腹は時折捻れるようにうねる。その度にれいむは力 無く呻き、内側より押し広げられたまむまむから黒い物がどろりと零れ落ちた。 べしゃっ、と床に広がる黒い物。 その上に、小さな丸く白い物が乗っていた。 まりさは引き寄せられるようにそれを覗き込むが、一体それが何なのか、皆目見当もつかなかった。 本来あるべき場所に無く、本来あるべき物がなければ、それが何であるかを想像するのも難しい。 しかし、膨らんだれいむのお腹に何が入っていたのかを認識していれば、想像するのは難しくない はずなのだが、 「……ゆん。さっぱりわからないよー?」 結局それが黒目のない目玉だと気付くことなく、まりさは小さな白い玉から興味を無くした。 その次の瞬間、 「……ゆう゛……う゛っ!」 れいむの呻きが間近くから聞こえてきたかと思ったら、まりさの大事な帽子がぽすっという音とと もに後ろへ飛んでいってしまった。 「おぼうしっ!?」 白い玉に吸い寄せられたまりさは無意識の内にれいむの前に立っていた。帽子を目深に被っていた せいでまったく気付かなかったが、揺れる帽子の先端の真正面にれいむのまむまむが口を開いていた。 そしてれいむが呻くと同時にれいむのお腹が一際大きくうねると、何かが勢い良く飛び出した。何 かは当たった帽子にくるまると、そのまま帽子ごと飛んでいったのである。 「まって、まってね! まりさのおぼうしさんっ!」 「……ゆ……ぅ……?」 そんな頭上の展開など知る由もないまりさは、訳も分からず飛んでいった帽子を追いかける。一際 大きい痛みと、それ以降の痛みが無くなったことでれいむが薄ぼんやりと意識を取り戻したことも気 付いていない。 背後の壁際まで飛んでいった帽子に辿り着いて安堵の溜息を吐いたまりさは、そこで自分の帽子に めり込んでいる何かを見つけた。 最初は黒い帽子に埋もれて解らなかったが、もぞもぞと動く、まりさと同じ黒いとんがり帽子をか ぶった小さな姿がそこにあった。 「ゆっ!? もしかして、まりさのおちびちゃ……ん?」 歓喜の声は急速に萎んだ。 確かに帽子はまりさに良く似た黒くてとんがった帽子。髪型も三つ編みが両側にあるものの、輪郭 だけを見ればその子はまりさに良く似ている。しかし髪の色は帽子に負けない艶やかな黒で、帽子に 結ばれたリボンは鮮やかな赤色、三つ編みを結わえたリボンは白色だった。 それはまりさの帽子から抜け出すのに四苦八苦していたが、暫くして帽子の縁の上まで転がり出る ことに成功した。 そしてまりさに良く似た瞳で見上げると、元気の良い第一声を放った。 「ゆーっ!」 「……………………ゆっくりしてないゆっくりがいるよ?」 まりさは上にゆっくりしてないゆっくりが乗っているのにも関わらず、おもむろに自分の帽子を引 っ張った。当然、それはころころと転がり落ちる。ただ、落ちたときの衝撃は大したことがなかった らしく軽く目を回す程度で済んでいた。 帽子についた皺を引っ張ったり軽く踏んだりして念入りに伸ばし、叩いてゴミを落とす。綺麗な状 態に戻ったことを確認して、まりさは大事な帽子を頭の上に戻した。その間、周りをゆっくりしてな いゆっくりが、何やらぐずつきながらうろうろしていたが一瞥もしなかった。 目を向けたのは、そいつが大声で泣き出してからだった。 「ゆぅーっ! ゆぅーっ!!」 「うるさいよ……!」 「ゆぴゅっ!?」 苛立たしげに吐き捨てると、まとわりついてくるそいつをお下げで振り払った。己の全幅と大差の ない幅の三つ編みの直撃を喰らったそいつは声もなく空を舞う。落下先がふかふかの寝床でなければ、 地面に叩きつけられた衝撃で爆ぜていたかも知れない。 むしろ、何故爆ぜなかったのかとまりさは思った。 震えながら身を起こそうとするそいつを寝床から引っぱり出し、涙を流して見上げてくるそいつを 冷たく見下しながら、まりさはあんよをゆっくりと持ち上げた。 覆い被さるように迫るまりさのあんよを、そいつはただ震えながら見上げていた。頭の上に触れた ときには、おずおずと頬をすり寄せてすーりすーりまでしてきた。 徐々に圧されて行く中で、何故こんな事をされるのか理解できなかっただろう。だからまりさは冷 淡に教えて上げた。 「ゆっくりできないゆっくりはいらないよ。ゆっくりしないでつぶれてね?」 「ゆ……ぅ?」 「まりさぁあああぁぁっ!!」 「ゆべぇっ!?」 そいつが潰れる寸前、意識を取り戻したれいむが横から体当たりをしてまりさを吹き飛ばした。 軽く餡子を吐いて転がるまりさ。そんなまりさと辛うじて命を繋いだそいつとの間に、憤怒の形相 のれいむが立ちはだかる。 「この仔はれいむとまりさのおちびちゃんでしょっ! なんでこんな酷いことするのっ!?」 「ゆ……ゆぐ……れ、れいむこそなんでまりさにいたいことするの!? だいいちそんなゆっくりし てないのなんか、まりさのおちびちゃんじゃないよっ!」 「……ゆ?」 「まりさをゆっくりさせてくれるのがまりさのおちびちゃんなんだよ? ゆっくりできないゆっくり が、まりさのおちびちゃんなわけないでしょぉっ!!」 「……」 れいむの形相に後ずさりはしながらも激しくまくし立てるまりさの台詞に、れいむは表情を消して 押し黙った。 漸く納得してくれたと思ったまりさは、笑顔を浮かべて歩み寄る。 「おおごえだしちゃってごめんね? ね、れいむ。あんなのはゆっくりしないでつぶしちゃって、つ ぎこそはゆっくりできるおちびちゃんをつくろうねぶっ!?」 言い切ったところで顔の中央に鈍い衝撃が走った。 軽く伸び上がってからの振り下ろすような頭突きを叩き込んでまりさを地面に打ち付けたれいむか ら、奥歯をギリギリと噛み締める音が聞こえてくる。 俯いた姿から、その表情を窺うことはできない。 ただ淡々とした声だけが、れいむから絞り出された。 「……まりさ。この仔がゆっくりできない姿で産まれちゃったのは、お腹の中でゆっくりしてなきゃ いけない時にまりさがゆっくりしないで産まれてきてねって、せっついたからなんだよ? にんっし んしたれいむのお腹を突っつき回すなんて何考えてるの? 産まれる前に永遠にゆっくりしちゃった おちびちゃんもいたの、わかってるの?」 「……ぎゅ……?」 「それなのに、またれいむにおちびちゃんを作れっていうの? それでまたお腹の中におちびちゃん が産まれたら同じ事になるよね……そんなのれいむは御免だよ」 「……ゆぶ……ばはぁっ!? ゆはぁ……ゆはぁ……」 言いたいことを言いきると、れいむはまりさから興味を失ったかのようにあっさりと身を離した。 放置されていた赤ちゃんゆっくりに寄り添い、今まで親の暴力に晒されていた影響で怯える赤ちゃん ゆっくりに優しく頬をすり寄せた。 「おちびちゃん、すーりすーりしようね。すーりすーり……」 「ゆっ!? ……ゆぅ……ゆうううぅぅ!!」 初めはおずおずと、やがて涙を流してしがみつくかのように頬をすり合わせる赤ちゃんゆっくりの 姿に、れいむは一滴の涙を流しながら微笑む。 そして赤ちゃんが疲れて寝入ってしまうまで頬を合わせていたれいむは、赤ちゃんを起こさないよ うにそっと身を起こし、凹んだ顔に四苦八苦しながら舌を這わせていたまりさに声をかけた。 「……まりさ、この仔はれいむが育てるよ。まりさにも責任をとって手伝ってもらうよ。ゆっくり理 解してね」 「ゆん? なんでそんなことまりさがしなきゃいけないの? ふざけないでね!」 「ふざけてるのはまりさでしょうがぁあああああ!!」 「ゆぎゃぁあああああ!?」 さも当然とばかりに即答で断るまりさに、れいむは辛うじて保っていた堪忍袋の緒を引き千切った。 それから暫く、余りの騒ぎに赤ちゃんが泣き出すまでの間、れいむは産後で体力を消耗していると は思えない怒濤の勢いでまりさを折檻した。 まりさがそいつに感謝したのは、それが最初で最後だった。 ―9― 「れいむ? それともまりさ?」 「ゆー?」 「ゆーん……。それじゃ、れいさ、れりさ、まりむ……」 「ゆぅ?」 「まいむ」 「ゆー!」 「ゆん、おちびちゃんはまいむなんだね。まいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ~♪」 れいむとまりさの仔は、胎内にできた直後にまりさに脅かされ揺さぶられて、まったくゆっくりす ることなく母のお腹から産まれてしまった影響なのか、れいむとまりさの特徴を混ぜたような姿をし ていた。 その上、言葉を話すことができなかった。「ゆっくりしていってね」すら言えず、ただ「ゆーゆー」 と鳴くか泣くだけで会話など成り立たない。 しかし、喋ることができないだけで話を聞くことと理解することはできると解ったれいむは、根気 強く語りかけては仔の反応をつぶさに観察することで何とかコミニュケーションを成立させた。この れいむかまりさかも解らない仔の気に入る名を付けることができたのはその最たる成果だろう。 見た目が変わっていることと、言葉を話すことができないこと。その二つに目を瞑ればまいむはと ても素直で聞き分けの良い仔だった。 だが、まりさにはその二つがどうしても無視できなかった。 れいむの目を盗んでまいむを殺そうとしたことも一度や二度ではない。その度にれいむから折檻を 受け、ついには寝室からも追い出されてしまった。 それでもおうちから追い出さなかったのは、食料の調達ができるのがまりさしか居なかったからだ った。 れいむは出産後で体力が落ちていたし、まりさとまいむを一緒に残していくことはまいむの命に関 わると悟っていたために、懇々とまりさに頼み込んだ。 まりさも最初から一家の大黒柱になるつもりがあったために食料調達を気安く請け負った。そこに はまりさから離れたれいむの心を引き戻そうとする下心もあったかも知れない。 「ゆっくりかえったよ! すごいでしょ、れいむ! まりさはこんなにたくさんごはんをとってきた よっ!」 「……まりさ?」 「ゆん? なに、れいむ」 意気揚々と出かけたまりさは、ほんの十数分で帽子をパンパンに膨らませて帰宅した。そして満面 の笑みで収穫を見せびらかしたところで、れいむが冷めた半眼で見据えていることに気付いた。 「……どうしたの? なんでそんなおめめでまりさのことみるの……?」 「まりさはれいむに狩りは得意だって言ってたよね……。たくさんたくさんの木の実さんや果物さん をれいむのおうちに持ってきて、『まりさはこんなにかりがじょうずなんだよっ!』っていってたよ ね……?」 「ゆ……っ!? そ、そうだよ、まりさはかりがじょうずなんだよっ! それがどうかしたの!?」 かつてれいむにプロポーズするために両親に頼んでかき集めてもらったご馳走のことを思い出し て、まりさの声が裏返った。総てまりさ独りで集めたということにしていたので、その話をされると そこはかとなく後ろめたい気分になる。 そんなまりさの挙動不審には目もくれず、れいむはまりさの収穫から一束の草を抜き取った。 「それ、食べてね」 「ゆっ! いいの!? ゆぅ~ん、つかれてかえってきたまりさにいちばんにごはんさんをくれるな んて、れいむはやっぱりよくできたおくさんだね♪ それじゃ、ゆっくりいただきまーす」 れいむが割と雑に投げ捨てた草は、まりさの目にはこの上ないご馳走として映った。 不慣れな狩りで疲れ、お腹が空いていたこともあり、まりさは飛びつくようにしてれいむが投げた 草を貪った。 「むーしゃーむーしゃー! むっちゃうぇっこれどぐばいでるっ!?」 「……はぁ。それは食べたらすっごく気分が悪くなっちゃう草さんだって、ぱちゅりーに習わなかっ たの? れいむは小さいときに群のがっこうで教えてもらったよ?」 「ばりざぞんなごどじらない……うぇ……」 「おちびちゃんくらいのゆっくりだと永遠にゆっくりしちゃうこともあるけど、おとなのゆっくりな ら気分が悪くなるくらいだって言ってたよ。しばらくすれば治るから、ゆっくり大人しくしていてね」 「ゆぅ……ぅ……」 笑顔で食らい付き笑いながら吐餡したまりさを冷ややかに一瞥し、れいむはまりさの収穫を黙々と 選り分けた。あの草を見つけたときには、まいむの毒殺を企んだのかと訝しんだれいむだったが、何 の躊躇も無く笑って毒草を食べたところを見てその認識が間違っていることを知った。 というか、まりさへの認識がそもそも間違っていたことに、れいむはそろそろ気付いていた。 まりさの採ってきた草はおうちの周辺に繁茂する、毒こそ無いが固くて味気のない草が大半を占め ていた。少し森の奥へ行かないと取れない木の実や、日当たりの良い丘まで行けば取れる甘い香りの 花などのご馳走は微塵も見あたらない。時期的に青虫なども多いはずだがそれも無い。 要するに、まりさの狩りは家を出た所に群生していた草を手当たり次第に採ってきただけだった。 未熟児として産まれたまいむは消化機能が極めて弱く、そういった堅い草はれいむがどれだけ噛み 砕いたとしても食べることができなかった。そんなまいむが食べることのできそうな柔らかくて口当 たりの良い草が、数本でも混じっていたのは不幸中の幸いと言ったところだろうか。 つがいになる前に見せた狩りの成果は嘘で、今目の前にある適当な草の山がまりさ本来の実力。思 い返せば、れいむが群のゆっくりたちと狩りの勉強に励んでいる時にまりさの姿を見た覚えがない。 一緒に居て楽しいところばかり見ていて、こんなあからさまな嘘を見抜けなかった。 その結果がまいむであり、産まれることなく永遠にゆっくりしてしまった子供だ。 「……むーしゃむーしゃ……ゆぶっ……んぐ。むーしゃ……」 選り分けた草の山を口にする。 堅い草、苦い草、棘のある草、えぐい草、時々混じる毒のある草。絶え間なく口内に迫り上がる餡 ごとゆっくりできない草の山を飲み下す。とにかく食べて、出産で失った餡と体力を――そしてこれ から先、一人でまいむを育てていくための力を蓄えなければならなかった。 まいむを見てゆっくりできないと言うのはまりさだけではない。ゆっくりなら多かれ少なかれそう いった感情を抱くだろうことは、れいむにだって理解できている。だから頼れる者は自分しかいない。 残したのは柔らかくて口当たりの良い草と、堅くて味気ないけど不味くはない草。 前者は当然まいむの為に。そして後者はまりさの為に残してあった。 「ゆーっ!? れいむ、なんでごはんさんひとりでむーしゃむーしゃしちゃったのぉっ!?」 「……まりさの分はそこに置いてあるでしょ。それを食べたらまた狩りにいってね。ゆっぷ……沢山 で、良いよ」 れいむは想う。美味しい食べ物を見分けることができないなら、せめて手当たり次第に集めてきて もらおう。 その中で、美味しい物をまいむに。不味い物はれいむに。余った物をまりさに。 まいむには育ってもらわないといけないから。れいむは力を蓄えなければならないから。まりさに は働いてもらわないといけないから。 「ゆー……これっぽっちじゃ、おなかいっぱいしあわせーってできないよ……。ゆっ!? そっちに おいしそうなくささんがあるよっ! まりさがたぺっ!?」 言うことを聞かないときには、ゆっくりできないけれど暴力に頼ろう。 気弱で臆病なまりさは少し脅すだけでも言うことを聞くだろうから。 「まりさの分は食べたでしょっ! れいむが取り分けたごはんさん以外を盗み食いしたら、お仕置き するからね! ゆっくり理解してねっ!」 「ゆひぃっ!? わかりましたぁあああああ!!」 れいむはお母さんだから、おちびちゃんをゆっくりさせるために思いつく限りのことをやろうと、 静かに覚悟を決めた。 その日から、れいむとまりさは一緒にゆっくりすることが無くなった。 それでもれいむは、まいむとの生活にささやかなゆっくりを味わっていた。 まりさに先導された群のゆっくりたちに、その命が打ち砕かれるその日までは―― ―10― ぱちゅりー、ありす、そして群のゆっくりたち。 その場にいる総てのゆっくりの視線がまりさに収束し、焦点のまりさは救いを探して右往左往して いる最中。まりむは誰の目に留まることもなく、母だったものの成れの果てに辿り着いた。 「ゆー……ゆっく……! ゆっくぃ……!」 頬を寄せ、舌で舐め、乏しい語彙で懸命に呼びかける小さな姿。「ゆっくりしていってね」と言え ば応えてくれるとでも思ったか、自由に動かない口で必死に挑んでいた。 その声は群のゆっくりたちにも届いている。 だがその姿を見ようとするゆっくりは一匹としていない。 まいむを見ようとすれば、自分たちが寄って集ってなぶり殺しにしたれいむの姿も目に入れること になる。 まりさの話を総て聞けば、れいむを殺めてしまったのはあまりにも筋違いだったと理解できてしま う。今更れいむを直視できるゆっくりなど、この群に一匹も居なかった。 だからその視線は、怒りと後ろめたさを孕んでまりさに突き刺さる。 そしてまりさは、この期に及んでも何故自分がそんな目で見られるのかが解っていなかった。 「ゆー……。ゆっくりできないおちびがいたことをだまってたのはわるかったとおもってるよ。けど、 こんなゆっくりできないのをれいむがしゅっさんっしたなんて、まりさははずかしくっていえなかっ たんだよ……?」 それなりに考えた挙げ句に思いついた怒られている理由は、ゆっくりできない仔がいることをみん なに黙っていたから、だった。 確かにゆっくりは奇形を殊更に嫌う。顕著な例では、ゆっくりが一番大切にする飾りに傷が付いて いるだけでも侮蔑し、無くしたら殺意を以て排斥するほどである。 れいむとまりさの特徴をまぜこぜにした容姿のまいむの事を秘密にしておきたい気持ちは、普通の ゆっくりなら共感できる。まいむを一息に殺してしまうことを積極的に容認するゆっくりも少なくは ないだろう。 だから、事の要点はそこではない。 「まりさ……」 ぱちゅりーが詰問した、れいむと暮らしたまりさの一週間。 まりさは覚えている限りの日々を包み隠さず、誇張も歪曲も無しに語った。 そしてこう言った。「れいむはまりさのことをゆっくりさせてくれない、ひどいゆっくりだったん だよっ!」と。 「あなたは……あなたが、『でいぶ』よ」 「ゆ……? まりさはまりさだよ? でいぶはれいむでしょ? まりさじゃないよ?」 「むきゅ、そうじゃないのよ」 困惑の表情を浮かべるまりさに、ぱちゅりーは悲しげな表情でゆるゆると首を振る。その悲しみは まりさの無知に向けたものか、それともれいむへの悔悟か。 それも一拍瞑目した後には綺麗に拭い去られていた。 群の長の顔に戻ったぱちゅりーは淡々とまりさに教える。 「でいぶっていうのはね、自分のゆっくりのためなら悪意無く他者のゆっくりを踏みにじる『ゆっく り』のことをそう呼ぶの。それがしんぐるまざーのれいむに多いから、れいむたちの悪口みたいにな っているけどね」 「ゆ……ゆ?」 「ぱちぇは間違ってれいむにも言ってしまったけど……まりさにも言うわね」 まりさの上目遣いで縋るような目を、傲然と躯を反らしたぱちゅりーの冷たい目が明確に拒絶する。 「ぱちぇの群にでいぶはいらないっ! まりさはぱちぇの群から追放するわっ!!」 「ゆ……」 ぱちゅりーの宣言を聞いて、目を点にしたまりさは暫く凍り付いたように制止していた。それも徐 々に言葉の意味が理解できるに連れてふるふると震えだし、目は潤み口が戦慄く。 「そんな……そんなのゆっくりできないよ……?」 右を向く。幼なじみのありすが、涙に濡れた目に敵意を込めて睨んでいた。 「まりさはゆっくりしたかっただけだよ? まりさはゆっくりしないといけないんだよ?」 左を向く。れいむの家族が、殺意に歪んだ表情で歯を軋ませていた。 「わるいのはれいむでしょ? まりさをぜんっぜんゆっくりさせてくれなかった、とってもひどいゆ っくりだったんだよ?」 周囲を見回す。だが一匹としてまりさに同情的なゆっくりはいない。 「わるいのはゆっくりできないあいつでしょ? れいむがあんなのをうんだからまりさはゆっくりで きなくなったんだよ? みんなもあれをみてゆっくりできないでしょ!? ねぇ!? ねぇ!!」 まりさを助けてくれそうなゆっくりを探す。 だが、こんな状況でも味方をしてくれたであろう優しい両親は、まりさとれいむがつがったその日 に永遠にゆっくりしていた。過労だったがまりさに知る由はない。 「やだ……やじゃ……やじゃやじゃいやじゃぁああああああ!!」 後はもう言葉にならない。 大声で喚き散らしておうちへ逃げ込もうとするまりさだったが、周囲のゆっくりに簡単に取り押さ えられた。彼らの頭上に担ぎ上げられたまりさは、泣き叫びながら群の外へと運ばれてゆく。 途中、何度も脱走を繰り返すがその度に手酷く痛め付けられるだけで逃げることはできなかった。 この時、最も苛烈に攻撃を加えていたのはありすだったという。 自発的に出ていかないゆっくりは岩場の崖から放り捨てるのがこの群の掟だった。まりさもその例 に倣って、遙かな高みから堅い岩の上に落とされた。 ゆっくりの命を奪うほどの落差ではないから、まりさはまだ生きている。 しかし群のゆっくりたちから受けた暴行の痕に、岩に叩きつけられた際に爆ぜた傷。重傷のまりさ はこの場から動くことも出来ず、静かに衰弱していくことだろう。 「まりさ……ただ……ゆっくり……したかっただけな……のに……」 その声を聞く者は、もう居ない。 ―11― まりさを担いでいった一団とは別に、その場に残ったゆっくりたちがいた。 先のれいむとの激戦で消耗しているゆっくりが大半だが、その中にぱちゅりーも残っていた。 まりさのことは、ありすたちに任せておけば問題はない。あそこまで怒りに燃えていれば余計な手 心を加える心配もない。 だからぱちゅりーはその間に後始末をするつもりだった。 一つはれいむの遺骸の埋葬。 野晒しにしたままでは可哀想だし、誤解で殺してしまった群のゆっくりたちの慰めにもなるだろう。 そしてもう一つはゆっくりできないものの排除。 「ゆっくぃ! ゆっくひ! ゆっく……ゆぅ?」 「ごめんなさいね」 「ゆきゅ!?」 未だに声を上げ続けていたまいむの背後に忍び寄り、気付かれたときには既にあんよで踏みつけて いる。後は体重をかければ一息で潰れることだろう。 「ぱちぇの群にゆっくり出来ないゆっくりは要らないの」 総てはぱちゅりーの群がよりゆっくりするために、 「ゆっくりできないゆっくりは大人しく潰れてちょうだい」 「――おカしィね?」 「……む……きゅ……?」 まいむを潰すために重心を前に移しかけたぱちゅりーの耳に、聞き覚えはあるけど不明瞭な声が聞 こえた。 その声は、明らかに聞こえるはずのない声。聞こえてはいけない声。 目を剥いて声の主を見やれば、片方だけの瞳と目が合った。 ミシリと口内の枝をへし折って屍が口を動かす。 ポトリと舌の端が零れ落ちるが発音は却って明瞭になっていった。 「こんナところに身勝手ナゆっくりのためにれいむのおちびちゃんヲを踏みにじろうとする、でいぶ がいるヨ?」 「むきゅ……ぅ、れ、れ、れいむぅっ!?」 「ねェ、ぱちゅりぃ……?」 ぱちゅりーはただでさえ白い肌を真っ白にして震えた。 何これ何これ何これ何なのこれは!? ぱちゅりーの口はガチガチガチガチ歯を打ち鳴らすことに忙しくて言葉が出ない。だからせめて心 の中で叫ぶ。 れいむは永遠にゆっくりしちゃったんでしょ? 何で動いてるの? 生きてたの? あんなに沢山 枝を突き刺されていたのに? 生きていられるわけないでしょ? 何で生きてるの? 何で近付いてくるの!? れいむのゆっくりできないおちびちゃんはまだ潰してないでしょ!? ほら、おちびちゃんは返してあげたでしょ? こっちこないでね、ゆっくりできないれいむはゆっ くりできないおちびちゃんと一緒にぱちぇの群の外で勝手にゆっくりしていってね、こっちこないで ね、お願いだからゆっくりしないで出てって…… 「むぎゅうぅぅ! おねがいだがらごわいでいぶばばぢぇにぢがづがないでえええええ!」 「れいむのおちびちゃんを、まいむをゆっくりさせないゆっくりは……」 ただ震えるだけのぱちゅりーにゆっくりゆっくりと近付いたれいむは、頬が触れるほどに身を寄せ て囁く。 その声は、不思議とその場にいた総てのゆっくりの耳に届いていた。 「れいむが……ぜぇえええぇぇったいにぃ許さないからねぇえええぇぇっ!!」 「ゆぎゃあああああっ!!」 まりさを捨てて戻ってきたありすが見たものは、泡や餡を吹いて卒倒したぱちゅりーたちの姿。 そして、ぱちゅりーの横で半ば崩れたれいむの姿と、 「ゆっくり! ゆっくりぃーっ!!」 母の躯に、漸く言えるようになった「ゆっくり」を贈り続けるまいむの姿だった。 ―12― 森のとある群に、子供を躾けるときの脅し文句にされる一つの言い伝えがある。 その群のゆっくりたちの餡に深く刻まれた恐怖と共に、永くこの群に伝えられる言い伝え。 「こらっ! みがってなゆっくりをしていると、でいぶがくるよ!」 「ぴぎゃあああああ!? でいぶこわいよおおおおお!!」 この言い伝えがあるお陰か、この群は森で一番のゆっくりしていたという。 その群の長は赤いリボンを巻いた黒い帽子を被っていたというが、真偽は定かではない。 ―終わり― 挿絵:我慢あき
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