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大福ぱちゅりープロローグ 13KB 虐待-普通 考証 実験・改造 飼いゆ 野良ゆ 愛護人間 独自設定 補足的お話です こちらが先でも漫画の方が先でもおそらく問題ないです。 いわゆる蛇足というやつなんで生暖かく見てください。 『大福ぱちゅりープロローグ』 まりむあき 曇天の下を一人の人間と一匹のゆっくりが帰宅の道を急いでいる。 頬を撫でていく風に湿気がほんのり混じり、もうすぐ連夜の雨が来そうだからだ。 「これだから梅雨の時期は気が滅入るな」 空の様子を見て男は一人ごちる。 雨が降ればここらに多く生息するゆっくりにとっても、もちろん人間にとっても外出が不便になってしまう。 そう考えながら男は腕に掛かる負担に難儀していた。 開いた傘と買い物袋とゆっくりを同時に持つのはいささか骨が折れる。 そんな苦労も当のゆっくりは気にもしてない。 まだ鼻の頭にも感じないほどの雨なのに、ペットは濡れぬようにと主人の腕で丸く収まっている。 この状況になってしまっているのも自分の甘さだと頭では分かっている。 しかし、それほどにゆっくりちぇんは可愛いと少なくとも男は思うのだ。 ともかく両腕の痺れに目をつむれば、このときまでは穏やかな夕暮れだった。 男の家は少し山を入ったところにあるため、帰路は山道となる。 この日もいつもと変わらない少しならされただけの道を歩く。 昨晩の雨で土から泥へと変化していて、ぬかるみに足を捕られないようにしなければならない。 それゆえ男は足下ばかりに気を取られ、それそのものを最初に発見したのはちぇんだった。 「ゆぅ?おにいさん、ぱちゅりーがいるよー」 どれ、とばかりに視線を上げるが視界のどこにもゆっくりの姿は見えない。 「ちぇん、ぱちゅりーはどこだ?」 「そこでねているよー」 なんでねてるんだろうねーわからないよーと言ってちぇんは男の手から飛び降りる。 「あ、こら。足が汚れるだろ……」 泥も意ともせず跳ねていくちぇん。 男がその様子を目で追っていくと、ちぇんは大きい土塊の隣で止まった。 「ぱちゅりー!! どうしたのーわからないよー!!」 ちぇんの悲鳴に似た叫びに男が駆け寄る。 震えるちぇんの前にいたのは確かによく見ればぱちゅりーだった。 「これはひどいな」 そこにいた口からクリームを吐いているぱちゅりーは、ゆっくりの姿から既に掛け離れた形をしていた。 帽子はなく、薄紫の長髪も土で汚れ痛み、多くの小さい傷と顔には大きく開いた傷を負っていた。 おおかた山道の片側を占める斜面の上方から足を滑らして転げ落ちて死んだのだろう。 彼らの死因の多くは自身の不注意か、本人達のいざこざによる結果である。 そして男の家の周辺では、このようにゆっくりらが死んでいる姿を見るのは少なくなかった。 「ぱちゅりー……」 野生のぱちゅりーの酷い成れの果てを目にして、ちぇんは深く悲しんでいるようだ。 ちぇんのその声色に男もつられてチクリと胸が痛んだ。 自分達がもはや野生のそれと違った存在になっていることを、 餡子のどこかで理解していてもそれでもやはり同族の死は辛いらしい。 男とちぇんが買い物に出かけたときにはこの死体は見当たらなかった。 ということはこのぱちゅりーが息絶えたのはかなり最近なのだろう。 「もう家に帰ろうちぇん。このぱちゅりーはずっとゆっくりしてるよ」 男はうつむくちぇんの隣にしゃがみ、そう言って帰宅を促した。 これ以上ここにいてももうすぐ本格的に雨が降ってきてしまうからだ。 「わかるよー……」 沈痛な面持ちなちぇんも素直にそれに従う。 自分達の家の方向に足を向ける直前、ちぇんは最後にとばかりにぱちゅりーに優しく頬擦りをした。 もうこれ以上苦しまないよう、そしてゆっくりできるようにと。 一人と一匹は重い足取りで再び帰宅の道を急ぐためぱちゅりーに背を向けた。 一旦雨で緩んだ地面に降りてしまったためちぇんの底部は汚れてしまっている。 家に帰ったらまず洗ってやらねばと男が思いながら足を一歩出した。 その瞬間、背後からかすかに声が聞こえた。 男とちぇんは慌てて振り向き、まさかと思いながらぱちゅりーを凝視する。 「……ゆ゛っ……」 「おにいさん!!」 「ああ、まだ生きてるな」 男とちぇんはぱちゅりーの生存を確かめ合う。 確かにうめき声と共にぱちゅりーが微かに動いているのだ。 だがこの傷だ、もはや助かるまい。 「おにいさん!!」 「どうした、ちぇん」 今度はちぇんがこちらを見ながら叫んでいた。 男はこの後に続く言葉は十分に予想できた。 空いた手で頭を掻きながら、ちぇんのキラキラと輝く目を見続ける。 「……わかった、俺の負けだ。だけどもう手遅れかも知れないな」 ちぇんへの甘さは自覚している。 だからこれしきの願いも叶えてやらないわけにもいかないのだ。 「やるとは言ったものの、これは難しいな」 ちぇんの代わりにぱちゅりーを抱えて帰宅し、今は台所で症状の深さを診ている。 いつもより早めの晩ご飯をやり、ちぇんには部屋で大人しくして貰うことににした。 男はまずある程度ぱちゅりーの表面の汚れを取り払ってやった。 髪や体に付いた泥土を水を含ませたタオルでそっと拭き取る。 すると次第にぱちゅりー本来の色を取り戻していき、実際の状況が見えてきた。 帽子は無くなってはいたが、そのほかの飾り、そして髪の毛は無事だったようだ。 顔や底部の皮は水分を含んで若干緩くなっているようだ。 また皮に付いていた傷は数は多いが、思った以上に深くないという印象だ。 どうやらその長い髪のお陰で比較的岩肌との接触を避けながら転落したようだ。 一箇所の大きい傷は皮をかなり欠損しているものの、倒れていたときには上を向いていた。 「だから中身の流出は少なくて済んだわけか」 そして生き長らえることができた。 現在進行で痛みで苦しんでいるという裏返しでもあるが。 しかしここで疑問もある。 たかだか傷が多く中身も口から出た少しの量だけで、こうも弱るものだろうか。 そう、ぱちゅりーの命はもはや風前の灯火なのだ。 同じような傷をそこらのゆっくりに与えてもうるさく泣き叫ぶのがオチだ。 激しく地面に叩き付けられたから? いや、あの様子だと斜面を転がり、柔らかくなった地面でうまくその速度を殺して止まっていたようだった。 「まあ……、とりあえず傷の修復からかな」 少し引っかかるところはあるが、ひとまず皮の傷を治してやることに決めた。 家の外では日も沈み、いつの間にか雨が降り始めていた。 最初に取りかかるのは皮の欠損した部分の治療だ。 これを塞がないとクリームの流出が止まらず、後の行程に支障が出る。 そのほかの傷は自身の回復力でも十分対処できるだろう。 腕まくりした男はおもむろに買い物袋から普通の饅頭を取り出す。 甘い物好きだがゆっくり製の和菓子は食傷気味なので、たまたま買っていたのだ。 「運の良い奴だよほんと」 意識を失っているのか、あれからぴくりともしないぱちゅりーに向かって呟いた。 ゆっくりは饅頭がまるで生物のように動いているものと言っていい。 そうなるとゆっくりの皮も饅頭の皮も同じようなものだ。 厳密には違うのだろうけど、皮は皮、餡子は餡子とそれぞれ対応している。 詰まるところ代用が効くのだ。 今回みたいなゆっくりの大きな怪我には饅頭から部品を持ってきて張り合わされる事例があるのを知っている。 男自身は初めてだが、それほど難しくないと文献や伝聞が示していた。 男は買ってきた饅頭の皮をナイフを駆使して慎重に剥ぎ取る。 皮を最大限利用できるよう十字に切れ目をいれていき四等分する。 そして皮と餡子を分割すると大きく饅頭の皮を得る事が出来るというわけだ。 「餡子はあとでゆっくり頂くとしよう」 よもやナイフも饅頭を果物のように切る時が来ようとは思いもしなかっただろうな。 綺麗に剥ぎ取った饅頭の皮は早速クリームの露出している部分に被せられた。 できるだけ隙間が出来ぬよう細かく切った皮も利用して蓋をするように敷き詰めていく。 ゆっくりの傷を治すのにこんなに静かな空間も珍しいだろうなと男は思った。 聞こえてくるのは換気扇の回る音と雨の降る音くらいだ。 ぱちゅりーがあまりにも動かないのに若干の不安を感じながらも皮を張り終えた。 「ん?」 新しい皮を張り終えた男はぱちゅりーを見て違和感を覚える。 本来の皮の色がさきほどより黒ずんできているようにも見えたからだ。 「気のせいではないな」 部屋の光量が減ったからかと考えたが、先程貼り合わせた饅頭の皮と比べれば一目瞭然だ。 表皮を覆っていた泥は払えたが、染み込んでいた水分まではどうしようもなかった。 おそらくその水分で少し変色して見えるだけだろう。 「とにかくひとまずこれで様子を見てみるか」 饅頭の皮を自分の皮だと認識して定着する頃には、きっと乾燥して元の色に戻っているだろう。 翌朝男とちぇんはぱちゅりーの様子を見た。 「うーん……」 「ぱちゅりーはやくよくなってねー」 一晩経つと状況はより悪化していた。 ちぇんがまだぱちゅりーを気味悪がらない点をみると死んではいない。 死んではいないが、明らかに皮の黒ずみが増えている。 移植した皮は変化無しでその場所にあり続け、隙間からは白い中身が見える。 顎に手を当てて考えてみてもどうもこの状態がピンと来ない。 一晩もあれば饅頭の皮は定着すると聞いていたのだが違ったのか? いや、そもそも他の小さい傷も塞がった様子すらない。 となると自然治癒力そのものが失われているとみていい。 ならなぜその力が無くなっているのか。 「いや、まてよ。そもそも生き物の常識が通用する奴らじゃないんだ」 生きていて、なおかつ元気なら傷が治る。これは生き物の基本だろう。 だがそんなことはゆっくりでは当てはまらない。 ゆっくりするために存在する、それがゆっくり。 つまりゆっくりしたいが為に食べて、寝て、そして傷を治す。 今、ぱちゅりーに起こっている現象はその真逆。 「ということは、このぱちゅりー……」 暖かな陽気を感じた。 目を瞑っていても分かるほどのお日様さんの光だ。 体はまだゆっくりしているようで上手く動かせない。 しばらくするとなんとかまぶただけは開く事が出来た。 目を開けると普段はなかなか見られない木々の頭が並んでいた。 緑が眩しい、そう思って目を細めていると急に隣から声が聞こえた。 「ぱちゅりー、ゆっくりしていってねー」 声の主はどうやらちぇんのようだが、知らないちぇんだ。 いつから隣にいたのだろう。 ちぇんの顔を覗こうと振り向こうとしたがそれは叶わなかった。 何故か体が上手く動かない。一体どうしてしまったのだろうか。 「おにいさんをよんでくるよー。ゆっくりまっててねー」 そう言ってちぇんはこの場を去ったようだ。 動かない体に反して動く思考でぱちゅりーはこれまでを振り返ってみた。 どうしてこんな場所にいるのだろうか? 早く帰らないとご飯の分配も、すっきりの抑制も、外敵の撃退も、越冬の準備も何もできないじゃないか。 でも帰るってどこに帰るんだっけ? 私の帰る場所は……。 「ようやく目を覚ましたか」 まとまらない思考を遮るように、背後から人間さんの声がした。 反射的に隠れようと試みたがそもそもやはり足は動かない。 すると体が宙に浮き、前後反転させられて自然と人間さんと対面する形になった。 「おはようぱちゅりー。ゆっくりしていってくれ」 「……」 私を持ち上げている人間さんは友好的な挨拶をしてきた。 この人間さんは警戒すべき相手では無いのかも知れない。 「まずこいつから紹介しようか。ちぇんおいで」 私を元の場所に降ろした人間さんは次に足下に寄ってきたちぇんを抱いた。 「ちぇん、ぱちゅりーに挨拶してやってくれ」 「わかるよー。ちぇんはちぇんだよー。ゆっくりしていってねー」 「……」 私はぱちゅりーだ。そう言いたいのに口が開かない。 「ぱちゅりー、今はまだ動けないはずだから、無理はしなくていい。」 ちぇんを抱く人間さんは私の考えを見透かしたようにそう言った。 「君が全ての事を理解できるかはわからないが、君の現状を説明してあげよう」 「……」 人間さんの言葉に、私は無言を頷きの意とした。 「ぱちゅりー、君は今から二日前死にかけていた。違うな、二回太陽が沈む前ずっと ゆっくりしようとしていた。それをちぇんに頼まれて私が助けた。最初は傷の修復 だけでなんとなるかと思ったが、皮、あー、つまり君の肌は黒くなり、剥がれてし まったんだよ」 人間さんはとてもゆっくり、私にもわかりやすく話をしようとしてくれた。 「黒くなって剥がれた君の肌は二度とくっつく事はなかった。それは君の肌は失われ たということだ。肌は新たに肌を生み出すが、餡子は肌を生み出さないからだ。ま あ、簡単に言うと君の肌はもうない。これからもずっとだ」 そうなのか、と私は冷静に理解した。本来ならとても信じられる内容では無いが。 「そうなると君の体の中身が外に出てしまう。餡子が体から出てしまっては困るだろ? そこで私は君をおもちで覆った。饅頭の皮が定着しないから仕方なくね」 その後、よそからゆっくりの皮を剥いできてもよかったのだけどと物騒なことを人間さんは呟いた。 「あとここからは予想だが、これから君を包んでいるおもちは新しく君の肌となるだ ろう。それまではしばらく動く事も喋る事も出来ないし、そのあとも不便な生活に なるだろう。だからこれからは君は私の家にいて、ちぇんと一緒にゆっくりして欲 しい。そのほうが君にとってゆっくりできるだろうからね」 「これからいっしょにゆっくりしようねー」 「……」 やはりどうしても理解しきれない内容ばかりだった。 自然と眉が歪んだようで人間さんは私にある物を見せた。 「これを見て貰えれば全て理解できるはずだ。これは鏡といって君の姿を映すものだ」 人間さんが部屋の隅にあったものを持ってくる。そこには部屋の風景が映っているようだ。 それが私の目の前に置かれたとき、恐怖に包まれた気がした。 「君の肌は薄く柔らかくなった。これからは少しの衝撃にも気をつけなきゃならない」 人間さんが説明する言葉が遠くなっていく。 私の目の前にいるゆっくりはとてもじゃないがゆっくりできない姿だった。 水たまりの反射で自分の姿を見た事はあった。 だがその姿と全く一致せず、鏡に映った私は目だけが生きている状態だ。 逃げたい。 一刻も早くここから逃げないと頭がだめになりそうだ。 でも動く事が出来ず、自分を見つめる自分の視線が刺さってくる。 それにここから逃げてどこにいく? そうだ帰らなくちゃ。 今すぐ帰らないといけないんだった。 でもどこに帰るんだっけ? 「それにしてもぱちゅりー。君はどうしてあんなところで倒れていたんだ?」 焦る心に人間さんの言葉が侵入してきた。 そういえばどうして私は死にかけたのだったか。 あ、そうだ……。ゆっくりと事の顛末を思い出してきた。 「あとは肌の傷が治らなかったのも気になるな。あの程度の傷なら勝手に直ってもお かしくないんだが。あれじゃまるで“ゆっくりしたくない”ようだった」 そうだ、全て思い出した。 もう私には帰る場所はないんだった。 いつからか周りのゆっくり達の様子がおかしくなった。 ゆっくりがゆっくりを殺すことが平然と起こった。 殺したゆっくり、殺されたゆっくりは仲の良い番だったのに。 番の一方が相手以外の他のゆっくりをやたらと褒めちぎる。 その状況にゆっくりできなくなったもう一方が相方をゆっくりできなくした。 そしてあのまりさは私を褒めたれいむでなく、れいむが褒めた私を殺そうとした。 私が突き落とされた時すでに帰るべき場所である私の群れは崩壊していたんだった。 そして死を受け入れてまりさの攻撃を甘んじて受けたんだった。 「ともかくこれからはここでゆっくりするといい。ちぇん、ぱちゅりーの世話を頼む」 「わかったよー。ぱちゅりーゆっくりしようねー」 一度死を受け入れた私は、再びこうして生きることとなった。 もはや自分の居場所はここにしかない。 帰る群れはなく、自分の飾りや容姿を失い、全く新しいぱちゅりーになってしまったのだから。 だけど、餡子の奧に疼く痛みだけは消えはしないのだろう。 ゆっくりできないこの痛みを解消するために再び死を選ぶことはもう私にはできない。 部屋を去る人間さんの背中と隣にいるちぇんの笑顔を見ながら、私は声にならない声でさけんだ。 どうしてあのままずっとゆっくりさせてくれなかった。 あとがき ここまで読んで頂きありがとうございます。 一度投稿した瞬間とんでもない誤字をしていたので再投稿するはめにorz まだまだ誤字ありそうだけどどうぞスルーしてください。 あと本編できちんと補足しきれていない脳内設定はゆっくりぱるすぃですね。 ぱるすぃのすることは「あのゆっくり素敵だよね」って番の片割れに言うことだけです。 すると自然に内部崩壊を起こす→死体が増える→それをぱるすぃ食べる、というような流れになるわけですよ。 本家の妖怪の能力ってほどでもないですけど、間接的に嫉妬させるイメージです。 ぱるすぃなりの狩りの手段とでもいいましょうか。 久しぶりに文章書いて疲れたのでもみじもふもふしてくる!! どうも、まりむあきでした。 絵 byまりむあき トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 独自設定にマジレスするのもアレかと思ったが、念のため言わせて欲しい。 れいむ まりさ=餡子(粒か濾しかは作者による) ぱちゅりー=生クリーム ありす=カスタード ちぇん=チョコレート みょん=ホワイトチョコ らん=いなり寿司 れみりゃ=肉まん ふらん=ピザまん ゆうか=蜂蜜 めーりん=唐辛子関係の食材 こんな感じだったはず。 とりあえず、あの漫画の前日譚を読めて良かったよ。 -- 2018-02-03 10 30 06 いやいや ぱちゅりーは生クリーム饅頭 -- 2012-02-21 18 04 05 アリスは人形焼きって話もあったが -- 2010-11-22 11 55 23 >ぱちゅりーはゲロ袋。 いやあああああああああ -- 2010-11-06 13 12 49 設定次第だよ。まりさが漉し餡でれいむが粒餡という設定も見たことがある。まりさが大福で通してる作者さんもいるし。 -- 2010-10-24 19 36 12 >ぱちゅりーはゲロ袋。 これは訂正しないの? -- 2010-08-06 03 42 08 ↓違う違う れいむが漉し餡、まりさは粒餡なだけで両方ただの饅頭 -- 2010-08-06 01 55 42 まりさは大福って設定なかったかな? れいむは饅頭・まりさは大福・ありすはシュークリーム・ぱちゅりーはゲロ袋。 -- 2010-07-12 06 19 48
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ぱちゅりーのお話 第1話 校正済 16KB 当作品はメカあき氏の「ゆっくりスクール」、餡小話の「ユグルイ」シリーズから一部設定をお借りしています。 非常に賢いゆっくりが登場します。 連作の第1話です。プロローグが予想以上の長さになりました。虐待分薄めです。 初SSです。拙文ですがお楽しみ頂ければ幸いです。 俺設定含有。 何か問題があればコメント欄にお願いします。必要に応じて削除致します。 ある名家の当主が急逝した。診断はクモ膜下出血。享年50歳、早すぎる人生の幕であった。 地元に多大な影響力を持つ彼の死は、瞬く間に町民から町民へと伝播した。 葬儀には他県の有力者が訪れ、町民総出で厳かに行われた。 かつての村興しに最も尽力した男の突然の逝去は、町の空気を暗く彩った。 家の跡継ぎには彼の一人息子が選ばれ、周囲にも異議を唱える者もなかった。 それどころか普段から品行方正で穏やかな彼を応援する町民達声は大きかった。 それもその筈、新当主の有能さは誰の目から見ても明らかだったからだ。 周囲の支えもあり、さして大きな環境の変化も起こらずに家庭内は再び機能し始めた。 こうして田舎町の一大事は人間達を混乱に陥れる事なく静かに終息した。 ただ一つ決定的な日常の変容を被ったのは、当主の飼いゆっくりだけであった。 ~ぱちゅりーのお話~ 第1話「崩壊」 いつも通りのある日のこと。ぱちゅりーはゆっくりと目を覚ました。 「むきゅ、今日もいい朝ね・・・ご主人様はもう起きているのかしら?」 ぱちゅりー種にしては皮の引き締まった均整の取れた体。 上質な和菓子のような質感に聡明な顔立ち。 厳しく教育を施されたゆっくりである事は一目瞭然だった。 特に目を引くのは、朝日を受けて煌めく三日月を模した飾りの横にある それ だろう。 それ は全ての飼いゆっくりの目標であり憧れ。 ほんの一握りのゆっくりしか触る事さえ憚られる それ の存在感は、まるで陽光が固形化したかのよう。 金バッジである。 ぱちゅりーは生まれてすぐに親に捨てられた。 理由は分からないし、今更知る術もない。 親から生まれた時の記憶はない。 「ゆっくりしていってね!」と声高に叫んだ経験もない。 ただただ、孤独だった。 意味が、分からなかった。 ろくに食事を取る事も出来ず、ただ道の端で震えているところを人間に拾われた。 ぱちゅりーにとって幸運だったのは、身を潜めていた場所がたまたま屋敷の前の道であり、見つけたのがたまたま当主自身であった事だろう。 気まぐれで知られた当主がたかが野良ゆっくりに声をかけてみたのも、単なるいつもの気まぐれだったのかもしれない。 が、その行動がこの孤児ぱちゅりーにとってはゆん生の転換であり、間違いなく、奇跡であった。 「どうして君みたいな赤ゆっくりがこんなところに一人でいるんだい?」 「む、むきゅうぅ・・・ぱちゅもわかりゃにゃいにょ・・・にんげんしゃんはぱちゅににゃんにょようにゃにょ・・・?」 「・・・・・・・・・私は君を助けに来たんだよ。分かるかな?今日から私の飼いゆっくりになるんだ」 「む、むきゅぅ・・・・・・きゃいゆっきゅり・・・?」 突然の展開を理解しようと少ないクリームを総動員したが、そこはまだほんの赤ゆっくり、とても処理しきれる筈もなかった。 何も言わないのを人間は是と取ったのか、そのままぱちゅりーを手に収めて屋敷へと歩いて行った。 人間の発した「かいゆっくり」という言葉の意味は知らなかった。 ただ、ぱちゅりーの本能的な部分が自分より遥かに巨大な生物に逆らう事は危険だと教えてくれた。 それゆえに、生まれて初めて本能レベルで嗅ぎ取った危険にぱちゅりーは微動だにする事もできなかったのだ。 ゆっくりとは古来から捕食するよりもされる方が圧倒的に多い種だ。 自分よりも大きな種族には刃向かうべきではない・・・本来遺伝子レベルで刷り込まれている情報だが、どういう訳だかそれに気付かず短いゆん生を終えるゆっくりが多数を占める。 「ゆっ?おいくちょにんげん!れいみゅにゆっくりあみゃあみゃをよこちてね!」 「さっさとするんだじぇ!まりしゃ、ぐじゅはきりゃいだよ!」 「ときゃいはなありしゅにあみゃあみゃをよこしにゃちゃい!にんげんにゃんてぴゃぴゃがいっぱちゅでえいえんにゆっくりさせちゃうにょよ?」 「むきゅきゅ!ぱちゅのいんちぇりぶりにおしょれをにゃしてりゅにょにぇ?ばきゃにゃにんげんはあみゃあみゃもっちぇきょい!」 対してこのぱちゅりーはすぐさま本能に埋もれた先祖の記憶を呼び覚ました。 非常に珍しいケースではあるが、決して有り得ない振る舞いではない。 事実、このぱちゅりーは全くと言って良いほど飼い主や他の人間に逆らう事はなかった。 人間の手に優しく包まれたぱちゅりーは戸惑っていた。 今の今まで自分は冷たいコンクリートの上で震えていたのにどうして? 人間は危険な生き物なのではなかったのか? このまま自分は「かいゆっくり」になるのだろうか? 疑問は次から次へとクリームを駆け巡ったが、そのどれに対しても明確な答えを導く事は出来なかった。 お気付きの読者もおられるだろうが、明らかに生後間もなくの赤ゆっくりのし得る思考・状況把握能力ではない。 ぱちゅりーのそれは既に通常の成体れいむ種のものと比べても優れていた。 疑問に疑問を重ねるぱちゅりーだったが、このようなクリームの酷使も初めての経験だった。 生まれて初めて肌で感じる生き物の暖かさに精神的疲労も重なり、ぱちゅりーはゆっくり夢の世界へと旅立った。 目が覚めるとぱちゅりーは小さなプラスティック製のケージの中、小さなクッションの上に横たえられていた。 ゆっくりフード、水、ふかふかのクッション、トイレ・・・ぱちゅりーにとっては初めて見るものばかりだったが戸惑う事はなかった。 食べ物と水はすぐに理解し、クッションの用途もなんとなく今の使い方で合っているのだろう、と思った。 トイレだけは何のために存在しているのか分からなかったが、きっと必要なものなのだろう、とも思った。 相変わらず不明なのは、「どうして自分が今ここにいるのか?」という一点だった。 と、部屋の扉が開いた。 「目が覚めたかい?そこの居心地はどうかな」 「む、むきゅ!にんげんしゃん!たべものちょおみじゅをわけちぇくれちぇありがちょう・・・」 「・・・、いや、いいんだよ、ぱちゅりー。(・・・赤ゆが初対面の人間にお礼が言うのか・・・こいつは、少し・・・驚いたなあ・・・)」 「にんげんしゃん、ぱちゅはしりちゃいこちょがありゅの・・・おしえちぇくれにゃい?」 「ブツブツ・・・(どうやら当たりを引いたか。私の勘もまだまだ捨てたもんじゃないかもな・・・)」 「に、にんげんしゃん・・・?」 「あ、ああごめんな、なんだい?(敬語も不完全ながら使える・・・)」 ぱちゅりーは貪欲に知識を求めた。 ぱちゅりー種はゆっくりの中でも概して知識欲の高い種ではあるが、その事を踏まえても凄まじい勢いだった。 「かいゆっくり」とは?自分はどうしてここに?おじさんはだれ?なぜこんなにやさしい?じぶんはこれから何をすればいい?・・・etcetc 多少気圧されながらも当主は聞かれるがままに情報を与えた。 飼いゆっくりとは人間をゆっくりさせるゆっくりである事、自分がこの屋敷の主人である事、気まぐれで野良を探しに行ったら家のすぐ前でぱちゅりーが震えていた事、これからぱちゅりーには自分をゆっくりさせて貰いたい、という事・・・etcetc 何も知らない人間が見れば、赤ゆっくりと中老を控えた人間が熱く言葉を交わしているという、世にも奇妙な光景が広がっていただろう。 そんな奇妙な問答は日が暮れるまで続いた。 「ごしゅじんさま!ぱちゅはきんバッジをとりたいです!」 そんな事を言い出したのは、ぱちゅりーが当主の「飼いゆっくり」となってから2週間が過ぎ、言葉から赤ちゃん言葉も抜けた頃の出来事だった。 飼いゆっくりは所定の機関へ届けを提出すると、その証である「銅バッジ」が送付されてくる。 無論このぱちゅりーの頭にも鈍く輝く小さなブロンズのプレートが確認できた。 しかしぱちゅりーが言っているのは「金バッジ」の事だ。 ・・・飼いゆっくりなら誰もが一度は夢見る黄金色のバッジ。 意匠が凝らされた造りのそれを装備する事、それは飼いゆっくりヒエラルキーの頂点に位置する事を意味する。 つまりこの世で一番飼い主をゆっくりさせられるゆっくりであるという絶対の証明だ。 そんな金バッジだが、当然銅バッジのように金を払えば配布される、訳がない。 最難関バッジ取得試験、通称THEY(The Highest Examination for a YUKKURI)と呼ばれる試験を突破しなければならないのだ。 ゆん生で一度しか受ける事を許されていないその試験、野良ゆっくりはおろか、銀バッジの飼いゆっくりでさえも1次試験で落とされる難度とされる。 そんな試験をぱちゅりーは生後わずか3週間足らずで志すと言うのだ。 「・・・・・・ぱちゅりー。君は確かに優秀なゆっくりだ。本当だよ。だから私はもうとてもゆっくりしているんだ・・・君を拾って良かったと、そう思っているんだよ」 「むきゅ、ぱちゅもごしゅじんさまのおかげでゆっくりしています。でもぱちゅはもっともっといろんなことをしりたいんです!きんバッジをとってもっとゆっくりしたいです!」 「なんてゆっくりだ、君は。生まれてこの方君のようなゆっくりは見た事も聞いた事もないよ。・・・そうだね、君にはやりたい事をやって貰うのが一番私も嬉しいかな」 「ありがとうございます!ぱちゅ、がんばるわ!」 「そうだ、ぱちゅ。どうせなら最高のゆっくりを目指してみないか?」 「むきゅ、さいこうの、ゆっくり・・・?」 「ああそうだ、最高のゆっくり、つまりゆっくりスクールで首席になるんだ」 「むきゅう、ゆっくり、スクール・・・?」 「うん。そこには金バッジ取得を目指すコースもあるんだよ、ぱちゅりー。首席で卒業すれば学費も免除だし、飛び級というか、優秀なら早めに卒業させてくれる制度もあるそうだ」 「む、むきゅうう!ぱちゅ、ゆっくりスクールににゅうがくするわ!ごしゅじんさまにめいわくをかけないようにいっしょうけんめいべんきょうして、しゅせきさんになります!」 「私が思うに、君には他にはないような才能がある。ただし、驕ってはいけないよ。驕るっていうのは・・・そうだね・・・努力をせずに怠け、自分には力があると思い込む事だ。忘れちゃ駄目だよ。がんばるんだ。」 「む、むきゅーん!!!」 ぱちゅりーは当主に褒められ、激励されたのが相当嬉しかったのか、頬を紅潮させて飛び跳ねている。 早速ぱちゅりーは自分のゆっくりプレイスに戻ると当主から貰ったまどうしょ(ひらがなの本)を読み始めた。 ぱちゅりーは、天才であるにも関わらず努力を怠らないゆっくりであった。 それからの6ヶ月間、ぱちゅりーのゆん生において最も努力し、涙し、そして充実した期間が待ち受けていた。 厳しいながらも楽しい学友との生活、みんなで食べる食事の美味しさ、ゆっくり道という古武術を原案にした辛い特訓、金バッジ取得コース内のエリート養成コースでの勉強。 何もかもがぱちゅりーの向上心を刺激し、そして刺激された分だけぱちゅりーは成長した。 そして見事にぱちゅりーはエリート養成コースでの首席の座を、入学後わずか5ヶ月で手に入れた。 年間100万円もの高額の学費は免除、年度を少し折り返した時期にも関わらず、その年の最優秀学生賞に輝いた。 卒業後、1ヶ月間の中で5度に分割されたTHEYの試験においても満点を連発、ゆっくりブリーダー界を散々に騒がせ、難なく金バッジを引っ提げて屋敷へと帰っていった。 たった、6ヶ月間の出来事だった。 「それからぱちゅは言ってあげたんです!あなた、洗ってない犬の臭いがするわよ、って」 「はははっ、それはきつい一言だなあ。そのまりさも可哀想に。全くどこでそんな言葉覚えたんだよぱちゅ・・・」 「むきゅ、スクールにあった漫画さんに書いてあったんです。思った以上に効き目がありましたわ!」 「本当に、ぱちゅには適わないなあ」 「ぱちゅが漫画さんを読めようになったのも、金バッジを取れたのも、全てご主人様のお陰ですよ。いくら感謝してもしきれません!」 「そうかそうか、そう言ってくれるとこちらも世話してあげた甲斐があるよ。ぱちゅのお陰で私はゆっくりしっぱなしだ!」 「むきゅ!ぱちゅもゆっくりし過ぎて夢みたいですわ!ご主人様もぱちゅと一緒にもっともっとゆっくりしていってね!」 この時ぱちゅりー、生後8ヶ月。 当主、49歳と8ヶ月。 奇妙な1人と1匹の、幸せの絶頂期だった。 ぽにょん、ぷにょん、と。 朝日に飾りを光らせて、板張りの廊下をぱちゅりーが跳ねて行く。 「むきゅーん・・・またみたいね・・・もう、ご主人様はお寝坊さんですね!全く、もっと家の当主としての自覚を・・・ブツブツ」 最近、当主の起床時間が遅い事が多々ある。 その度にぱちゅりーは当主の様子を見に行き、その度に当主は笑いながらぱちゅりーに「心配してくれてありがとう」と声をかけた。 ぱちゅりーはここのところ、主人の「何か」がおかしい、そんな淡く朧げな印象を抱くまでに至っていたが、それが何なのかは全く分からなかった。 久しぶりに直面した難問に、ぱちゅりーは謎の焦燥を覚えたが、同時にわくわくもしていた。 THEYよりも難しい、答えを知りたい、ご主人様なら知っているだろうか、聞いたら教えて貰えるだろうか、・・・。 そんな、妙な期待をクリームに秘め、日課になりつつある早朝の当主訪問を愚直に行った。 当主の部屋の障子を器用に開け、中に入る。 案の定まだ布団が膨らんでいる。 まったく毎朝毎朝、ご主人様にも困ったものね。 頭の方へと擦り寄る。 そしていつものように 「ゆっくりおきてね!あさですよ!」 声量の調整は完璧だ。 スクールで何度も教え込まれた基礎の一つ、体に染み付いている。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・むきゅん?」 いつもの声が聞こえない。 いつもなら1度挨拶をすれば、やおらに身を起こし、こう言ってくれるのだ。 「心配してくれてありがとう」 どうして起きないのだろう? 今日は朝一番からご主人様に聞きたい事があるのだ。 早く起きないかな、まだかな。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ??? なんだ?どうしたのだ? 自分をからかっているのかな? ずり、ずり、と。 主人の顔を覗きに行く。 畳さんの上を動く時は自分の体を知らずに削り、汚してしまう事があるので細心の注意をもって移動する。 今年度のTHEYにも出題された頻出作法である。 もちろん完璧にこなせる。 ずり、ずり、ずり。 着いた。 ・・・ご主人様?ぱちゅはお見通しですよ?ご主人様? 依然として穏やかな表情を湛えて目を閉じているご主人様。 人間の耳さんと距離が縮まったら声量にも気を付けなければならない。 人間さんはゆっくりとは違い、全身で音を感じる体ではないのだ。 しかし、どうやら普通にやっていてはご主人様も動く気がないようだ。 何故だかは分からないが。 正直、そんなに面白い遊びだとは思えなかったが飼い主の機嫌を損なう行動だけは取る事はしない。 金バッジ保持ゆっくりの矜持だ。 次の手を考える。・・・よし。 今度はご主人様の手の元へ移動する。 すーりすーりして、起こしちゃうんだから、むきゅ! ・・・正直なところ、ぱちゅりーはすこし楽しみだった。 初めて拾って貰ったあの日、当主の手の中に収まって屋敷へやって来たあの運命の日。 あの暖かで優しい手の温もりをぱちゅりーが忘れた事は今まで一度たりともなかった。 そんな当主の手に近づいて・・・ 「すーり、すーり、おきなs・・・・・・ゆゆゆゆゆ!?」 ガタン!!! ぱちゅりーは跳ねていた。ただひたすらに遠くへ、遠くへと。 嘘だ、そんな、嘘だ、嘘だ・・・。 ぱちゅりーは跳ねていた。ただひたすらに遠くへ、遠くへと。 かちっ。 薄暗い部屋に穏やかな顔立ちをした男が立っている。 手には着火したライター。 透明なプラ板を組み合わせた立方体の前で中で震える「何か」を見つめている。 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ・・・」 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!もうやべでえええええええええええ!ばでぃざがわるがっだでぃず!!だがらもっっっっ・・・・・・!!!」 男が命乞いを遮り、備え付けられた穴から手を突っ込む。 生々しい、かつて眼があった部位の傷口へ、揺らめく炎をあてた。 1拍、2拍、3拍。 「ばあああああああああああああああああ゙づいあ゙づいあ゙づいいいいいいいいいいいいいいいいぎぎぎぎぎぎががっぱぴぱぱぱぷぷうううう!!!!!!!!」 体の穴と言う穴からぬめぬめとした液体を出しつつ踊り狂う片目のないゆっくりまりさ。 耳を劈く悲鳴を目の前で堪能しながら、男は白い歯を見せとても爽やかに微笑んだ。 まりさが奇妙なダンスを披露する横で餡子玉がびくんびくん痙攣している。 皮は全て剥がされ、もみあげと飾りが現代芸術を彷彿とさせるような形状で餡子に突き立っている。 どうやら数時間前までそこにはゆっくりれいむがいたようだ。 どういう経緯でこの惨憺たる状態になってしまったのかは透明プラ板の汚れ具合から大体想像できる。 一方びたんびたんとのたうちまわった末に餡子玉をそこら中にぶちまけて痙攣しているまりさ。 「ぽぴぴぴぴぴっぷぷううぴぴぱぱぱあああああああああああえへえへへへへええええええええええぺぺぺぺぺぴぴぺえええええひひひ」 「もう終わりですか・・・このまりさは心が弱いですね、まったく、けしからん。女房を見習って貰わないといけません・・・」 「ぴいぴぴぴぴゅうううぺええ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぴょるんっ!」 おおよそ耳にした事のないような断末魔を残し、まりさは事切れた。 後に残ったのは雲のような静寂と甘い甘い餡子の香り。 「また野良を補充してこないといけませんね・・・どこか使わない部屋の窓を開け放しておきましょうか・・・」 「・・・じゃおっ・・・じゃおんっ・・・」 物言わぬ糖分の塊と化したれいむ・まりさの番を器用に片付けていくのはめーりん種だ。 この虐待部屋の掃除係としてなんとか生き長らえさせて貰っている。 人間にしてみればただの甘ったるい餡子の香りだが、ゆっくりにとってみれば凄まじい死臭に感じるらしい。 めーりんは時々自らの中身を吐き出しそうになるのを堪えながら必死に片付けている。 集めた亡骸が次の虐待の日まで持たせなければならないめーりんの餌だ。 一通り綺麗に掃除しためーりんは掻き集めた餡子をまりさの帽子に入れ、部屋の片隅に落ち着いた。 男が部屋を舐める様に見回し、去ろうとしたその時、 「よし、綺麗に掃除出来ましたね。えらいえらい・・・・・・!?」 「じゃおおん!?」 ガタン!!! 障子が思い切り開く音と同時に猛スピードで飛び跳ねて行くゆっくりが見えた。 「(あれは・・・確か・・・金バッジを取ったとかいう・・・。・・・何があった?)」 男はぱちゅりーが飛び出してきた場所を確認しに向かう。 何か胸騒ぎがする、何か、確実に、悪い事が。 廊下を大股で歩く男の胸中は、夜中に鳴り響いた電話を取る時のそれと酷似していた。 そして・・・。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・父さん」 第1話「崩壊」 了 ゆ虐SSの筈が・・・どうしてこうなった・・・。 2話では話が大きく動く予定ですので多分大丈夫・・・? 私はメカあき氏の大ファンです。 餡小話のSSはどれも好きですが、特にD.O氏の作品と「ゆうかの花」が好きです。 あと金バッジ試験の名称候補だったもの↓ ゆっくりのための最高の試験(The highest examination for a YUKKURI)=通称、THEY? ←採用! ゆっくりのための金バッジ検定試験(Gold badge certificate examination for a YUKKURI)=通称、GCEY? ゆっくりのための金バッジ資格試験(Gold badge qualifying examination for a YUKKURI)=通称、GQEY? ゆっくりのための金バッジ取得試験(Gold badge acquisition examination for a YUKKURI)=通称、GAEY? 一番上を採用したのは単純に「略称が読めたから」・・・。 その方が、格好いいじゃないすか・・・。 以後、ぜろあきと名乗らせて頂きます。 今後ともよろしくお願いします。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 探したけど続きが無かった、投稿から大分時間は経ってると思うんだが、これもまた中途半端な作品 なのだろうか? -- 2012-12-19 11 09 33
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『孤独なれいむと森に住むぱちゅりー』 29KB 制裁 愛情 自業自得 差別・格差 飾り 同族殺し 群れ 青いリボンのれいむの話。 人里近くの山のふもとに、ゆっくりの小さな群れがあった。 危険な野生動物や捕食種もおらず、ゆっくりたちにとってそれなりに暮らしやすいところである。 そんな群れのテリトリー内にある巣穴の一つから、暢気な歌声が響いてくる。 「ゆっゆ~ん♪おちびちゃんかわいいよ~♪」 「まりさのおちびちゃ~ん♪はやくうまれてくるのぜ~♪」 巣穴の中には植物型妊娠をしてれいむと、伴侶と思われるまりさの二匹のみ。 この二匹は数日前に結ばれたばかりの若い夫婦だ。 しかしれいむの頭にある茎には六つの実ゆっくりがなっており、それら全てがすでに生れ落ちるのに申し分ないほどの大きさに育っている。 不意に、茎の先端に実った実ゆっくりがぷるぷると震え始める。 「ゆ~ゆ~…ゆ!?おちびちゃんがうまれおちそうだよ!まりさ、じゅんびしてね!」 「わかったのぜ!」 まりさは帽子を取ると、それを茎の下に敷く。 二匹が固唾を呑んで見守っていると、先端の実ゆっくりが茎から離れ落ちた。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!ゆううううううおちびちゃんかわいいよおおおおおおおお!」 「ゆっくりしていってね!まりさのはじめてのおちびちゃんなのぜええええええええ!」 拙い挨拶をする赤ゆっくり(種類はれいむ)を見て感激する二匹。 間をおかずして、次々と実ゆっくりが体を震わせる。 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 ――ポト 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 そんな調子で五匹の赤ゆっくりが茎から離れ、残りは一匹だけとなった。 「ゆ!?このこでさいごだよ!」 「さいごのおちびちゃん!ゆっくりうまれるのぜ!」 最後の実ゆっくりが震え、帽子の上に落下する。 種類はれいむのようだ。 赤れいむは姉妹たちと同じように、両親に顔を向けてお決まりの挨拶をする。 「ゆ……ゆっきゅちちちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりして…ゆ?」」 両親はその赤れいむを見た途端、呆然とした顔になる。 「ゆ?……ゆっくちしちぇいっちぇね!」 赤れいむ(以下末れいむと呼ぶ)は挨拶が聞こえなかったのかと思い、先ほどよりもはっきりとした挨拶を返す。 だが、両親の表情はゆるむどころか、ますます険しくなるばかりだ。 「…なんなのこのきもちわるいこは?」 「…ゆっくりしてないんだぜ」 「ゆ?ゆ??」 突然ゆっくり出来ないことを言い出した両親に困惑する末れいむ。 まさか自分に向けられた発言とは思わず、末れいむはゆっくり出来ない存在を探すために周りをきょろきょろ見回す。 両親はそんな末れいむを無視して、先に生まれた姉妹たちの方に向き直る。 「さ、おちびちゃんたち!あんなゆっくりできないくずはむししてごはんさんにしようね!」 「「「「「ゆわーい!ぎょはんぎょはん!」」」」」 親れいむは茎を振り落とすと、それを租借して柔らかくし、姉妹五匹の前に平等に分け与える。 「「「「「むーちゃむーちゃ!ちあわちぇー!」」」」」 姉妹たちは初めての食事を幸せそう顔で貪り、食べかすをあちこちに撒き散らす。 両親はその様子を満足げな表情で眺めていた。 「ゆ!れいみゅも!れいみゅもおにゃかしゅいた!」 末れいむも家族の団欒に加わろうと、姉妹たちの元へ這って行く。 ――ドン 「ゆびぃ!?」 しかし辿り着く前に、親まりさに体当たりされて吹き飛ばされてしまう。 地面を勢いよく転がったものの、何とか致命傷を負わずに済んだ。 しかし生まれたばかりに経験するにはあまりに強烈な痛みに、末れいむは体を動かすどころか声を発することすら出来ないでいた。 「きもちわるいがきはちかよるんじゃないのぜ!」 「まったく!こんなのがれいむのこどもなんてはずかしいよ!」 「ゆぷぷ!こんなゆっくちできにゃいやちゅしゃっしゃところしぇばいいのじぇ!」 「しょーだよ!くじゅはゆっきゅりできにゃいきゃらこりょしゅべきぢゃよ!」 「おちびちゃんそんなこといっちゃいけないよ!たしかにこいつはくずだけどゆっくりごろしはゆっくりできないよ!」 「そうなのぜ!かわいいおちびちゃんたちはころすなんてことばはつかっちゃいけないのぜ!」 「「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」」 (ゆ…どおちて…) なぜ自分がこんな目に遭うのか理解できず、涙を流す末れいむ。 しばらくすると満腹になった姉妹たちは眠り、両親もそんな姉妹たちに寄り添って眠った。 その間、家族に一瞥もされることはなかった末れいむは、姉妹たちがこぼした茎のカスを舐めとって飢えを凌ぐしかなかった。 別に末れいむは奇形児でもないし未熟児でもない。 知能や外見に問題はないし、体型も赤ゆ特有の丸い体で健常そのものである。 お飾りが青色であることを除けばだが。 末れいむのお飾りは、れいむ種特有の紅白リボンではなく青と白の二色で彩られたリボンだった。 極々稀にではあるが、ゆっくりの世界ではお飾りが変だったり、元々お飾りがないゆっくりが生まれることがある。 そういうゆっくりは、大抵は生まれてすぐ親や他のゆっくりに殺されてしまい、ゆっくりの社会に出てくることはそうそうない。 だが幸運と言うべきか不運と言うべきか、末れいむのお飾りがおかしなところは『色』だけで他は全く異常がなかった。 そのため辛うじて他のゆっくりから同族と認識されるも、ゆっくり出来ないゆっくりであると判断されてしまったのだ。 それから、末れいむはゆっくり出来ない毎日を送ることとなった。 「やめちぇね!おねえちゃんやめちぇね!」 「ゆ?くじゅのくしぇににゃにかいっちぇりゅよ!」 「おみゃえにゃんきゃまりしゃのいもうちょじゃにゃいのじぇ!」 「ばきゃにゃの?ちにゅの?げりゃげりゃ!」 「くずなゆっくりをいじめるのはたのちいのじぇ!」 姉妹全員にゆっくりできないと罵倒され、体当たりされてボコボコにされる。髪の毛を引っ張られて引きずり回されたり、枝で軽くぷすぷす刺されたりする。 それが生まれてから一日とて欠かさず行われる、末れいむの日課だった。 「ゆ…ゆ…」 「ゆ?みょうはんにょうしにゃくなっちゃのじぇ?」 「まっちゃく、もりょくちぇちゅかえにゃいどうぎゅだにぇ!」 「おちびちゃん!あんまりやりすぎちゃいけないよ、ころしたらゆっくりできないにおいがうつっちゃうからね!」 「「「「「ゆっきゅりりかいちたよ!」」」」」 あまり暴行が激しいようだと両親が止めることがあったが、暴行をやめるように言うことは一度もない。 末れいむと家族同士の触れ合いは一切なく、末れいむの食事は死なない程度の最低限の量しか与えられなかった。 赤ゆっくりたちが子ゆっくりに成長し、巣穴の外に出るようになっても末れいむに対する扱いは変わらなかった。 むしろ群れのゆっくりたちが加わった分、酷くなったと言っていい。 「だれきゃ…たしゅけちぇ…」 「ゆ!こんなところにゆっくりできないくずがいるよ!」 「あのいっかもこんなくずがみうちにいるなんて…かわいそうなのぜ」 「おまえなんかいきてるだけでめいわくなんだよ!さっさとしんでね!」 「しねくず!」 「ゆ……」 群れのゆっくりたちの末れいむに対する反応は、嘲笑するか見下すか罵倒するかのどれかだった。 青い飾りの末れいむはゆっくりの中では異端の存在であり、ゆっくりは異端を『ゆっくり出来ないゆっくり』として排除する傾向が強い。 末れいむが殺されない理由はただ一つ、『ゆっくり殺しはゆっくり出来ない』という本能に刻み込まれた戒律のためだ。 末れいむの味方はどこにもおらず、周りのゆっくりからは常に嫌がらせや暴行を受けていた。 しかしこんな目にあっても、群れの外に逃げ出すという考えは末れいむにはなかった。 誰も助けてくれない状況で一人で生きていけるとは思えなかったし… こんな扱いを受けていても、家族と一緒にいたいという気持ちがあったからだ。 末れいむが産まれて一ヶ月が経った。 まだ子ゆっくりの段階であるにも関わらず、毎日たっぷりと食べてきた姉妹たちと、生きていける最低限の食事しか与えられなかった末れいむとでは、体格にかなりの差が出ていた。 ――ポスン、ポスン 「おねーしゃんぱしゅなのじぇ!」 「ゆゆ!ゆっくりりかいしたよ!」 「ゅ……」 その日もいつものように、末れいむは姉妹たちに追い掛け回されてボール代わりにされていた。 最近は末れいむも泣き喚くようなことはせず、体当たりされようと何されようと黙って為すがままにされるようになっていた。 今までの経験から、姉妹たちが飽きるのを待ってじっと耐え忍ぶのが最もダメージが少ないと学習したからだ。 「ゆゆ!みんなまっちぇね!」 「「「「ゆ?」」」」 不意に姉妹の一匹が、何かに気づいたように姉妹たちに声を掛ける。 気がつくと子ゆっくりたちの目の前には、日の光もろくに差さないような深い森が見えていた。 「このもりはたしかゆっくりできないもりだよ!おかーさんやおとーさんがちかづいちゃいけないっていってたばしょだよ!」 「ゆゆ!おみょいだしたのじぇ!このもりには『ゆっくりできないゆっくり』がいるってきいたのじぇ!」 「ゆ!れいみゅもおもいだしたよ!」 「はやきゅここからはなれりゅのじぇ!」 この森は群れのゆっくりたちの間で、ゆっくり出来ないゆっくりが住んでいる、ゆっくり出来ない場所と伝えられている。 そのため群れの子ゆっくりは、親からこの場所に近づいてはいけないと何度も注意されていた。 「ゆ、ゆっくりここからはなれりゅよ!」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 長女れいむの号令で、姉妹たちは一斉に森から離れていく。 「ゆ…まっちぇ…れいみゅをおいてかにゃいで……」 意識が朦朧とする中、末れいむは姉妹たちに助けを求めるも、姉妹たちはすでにその場からいなくなっていた。 「ゆぐ…ゆぐ……おとーしゃん…おかーしゃん…おねえちゃん……」 決して報われることのない家族への思いを胸に、末れいむはその場で静かに泣きじゃくっていた。 しかし、そんな末れいむに近づく一匹のゆっくりがいた。 「むきゅ、そこのれいむ。どうして泣いてるのかしら?」 「…ゆ?」 末れいむが顔を上げると、そこには一匹の成体ぱちゅりーがいた。 群れのゆっくりたちとはどこか違う雰囲気を持っており、帽子に特徴的な模様が彫られた木製のバッチが付いている。 「酷い怪我ね…大丈夫?」 「……おねーちゃん……だりぇ?」 「ぱちぇはこの森で暮らしてるものよ。 とりあえず手当てが必要ね、ぱちぇのお家に連れてってあげるわ」 ぱちゅりーは末れいむを頭に抱えると、森の奥へと移動した。 しばらくすると、朽ち果てた巨木が見え、巨木の根元にはゆっくりが一匹分通れる穴が開いている。 ぱちゅりーは末れいむと一緒に、その中へと入っていった。 「むきゅ、ちょっと待ってなさい」 ぱちゅりーは末れいむを柔らかい干草の上に寝かせると、目の前に花や甘い草をすり潰したものを置いた。 「お腹がすいてるでしょう、まずはこれを食べなさい」 そういうとぱちゅりーは巣の奥に移動し、なにやらごそごそと探している。 末れいむはぱちゅりーと目の前の食事を交互に見た後、恐る恐るといった様子で口にした。 「むーちゃ…むーちゃ…ち、ちちちちあわちぇえええええええええ!」 普段食べているものとは比べ物にならないほどおいしい食べ物に、末れいむは感動の涙を流す。 苦くて硬い草しか食べてこなかった末れいむにとって、それは革命的と言っていいほどの食事だった。 末れいむが食事を終えたのを見計らって、ぱちゅりーは綺麗な葉っぱで末れいむの体を拭き、何か液体を末れいむの傷口に塗っていく。 傷口にそれを塗られるたびに、末れいむの体からは傷が消え痛みが引いていった。 「これで良し、と。しばらく安静にしてればすぐに良くなるわ」 「ゆ!ぱちゅりーおねえちゃんありがちょう! ……ぱちゅりーおねえちゃんはれいみゅをいじめにゃいの?」 「むきゅ?おかしなこというわね。こんな可愛らしい子を虐めるわけないじゃない」 「けど…れいみゅのおかざりしゃん、へんでしょ?」 「ぱちぇは別に変だと思わないわ。鮮やかな青色をした、綺麗なお飾りじゃない」 「ほんちょ!?えへへ…」 今まで虐げられる原因だったお飾りを初めて褒められた嬉しさから、末れいむは恐らく生まれて初めての満面の笑みを浮かべる。 「ところでれいむ、あなたはどうしてあんな場所で倒れていたのかしら?」 「ゆ……しょれは…」 末れいむは自分が生まれてからどんな目に遭って来たか、家族や群れのゆっくりたちからどういう目で見られてきたか、 森の近くで倒れていたのは姉妹たちに追いかけまわされたから、ということなどを全て話した。 ぱちゅりーは末れいむの話が終わるまで一言も口を挟まず、黙って耳を傾けていた。 「むきゅ…苦労したのね」 「ぱちゅりーおねえちゃんは、どうちてこんにゃところにひとりでくらしちぇるの?」 「ぱちぇも昔は群れのゆっくりの一員だったのよ。けど群れの皆とはそりが合わなくて、群れから離れてここで暮らすことになったの」 「ふーん…ぱちゅりーおねえちゃん、これにゃーに?」 末れいむは先ほど自分の体に塗られた液体を、ぱちゅりーに尋ねる。 「これはさっきれいむが食べたこの草をすり潰して水で溶いたものよ。わずかな甘みがゆっくりの治癒能力を促進させるの。 軽い怪我ならこれを塗るだけですぐに治せるわ」 「ゆ!しょんなことをしってるにゃんて、ぱちゅりーおねえちゃんはしゅごいにぇ!」 「むきゅ、それほどでもないわ」 「ゆ、おしょとがくらくなってきちゃよ!しょろしょろむれにかえらにゃいと」 「……大丈夫なの?」 「ぱちゅりー…れいみゅはおうちにかえりちゃいよ」 「そう…分かったわ。 森の中を跳ねてたら迷ってしまうでしょうから、ぱちぇが群れの近くまで案内してあげるわ」 巣穴の外へ出たぱちゅりーは末れいむを連れて、森の中を移動する。 しばらくすると、末れいむとぱちゅりーは遠くに群れの広場が見える場所まで辿り着いた。 「ゆ!ここからはひちょりでだいじょうぶだよ!」 「そう、じゃあ案内はここまででいいかしら」 末れいむは群れの方へと跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむを見送るように、じっと後姿を見ている。 「…ぱちゅりーおねえちゃん」 少し進んだところで不意に末れいむは足を止め、ぱちゅりーの方へ向き直る。 「あら、なにかしら?」 「…また、ぱちゅりーおねえちゃんのところにいっちぇもいい?」 「もちろんよ、機会があったらここに来なさい。ぱちぇはいつでもれいむのことを待っているわ」 「…ゆ!ありがちょうぱちゅりーおねえちゃん!」 末れいむは群れの方へと意気揚々と跳ねていく。 ぱちゅりーは末れいむの姿が見えなくなったのを確認すると、森の奥へと消えていった。 「ゆ!?くずがかえってきたのぜ!」 「あのゆっくりできないもりにいったんだってね!おおおろかおろか!」 「くじゅはやっぴゃりくじゅなのじぇ!げりゃげりゃ!」 「くじゅははやきゅしんだほうがいいのじぇ!」 家に帰ってきた末れいむを待っていたのは、普段と変わらない日常だった。 いつものように姉妹たちから暴行を受け、両親からは嘲笑される。 だが、末れいむの心にいつも感じていたような絶望はない。 今日初めて、自分と接してくれるゆっくりと出会えた。そのことは末れいむにとって大きな活力になった。 またぱちゅりーに会いたい、会えるかもしれない…そんな思いを胸に、末れいむは眠りについた。 それから末れいむは、群れのゆっくりたちの隙を見ては、群れの外に出るようになった。 姉妹が目を離した隙や、一家が狩りに出ている最中、家族全員が昼寝をしているときなど… 隙を見つけては森に入り、ぱちゅりーのところに足繁く通った。 「ぱちゅりーおねえちゃん!ゆっくちちていってね!」 「むきゅ、いらっしゃいれいむ。ゆっくりしていってね」 ぱちゅりーはれいむに様々なことを教えた。 本来親が教えるべき狩りの知識や食べられるものの区別、巣穴の作り方、ちょっとした生活の知恵、捕食種や野生動物への対処方法などなど。 そして、人間のことについても教えた 「むきゅ、今日は人間さんについてのお話をしましょう」 「ゆ?にんげんさんってなに?」 「人間さんというのは、ぱちぇたちゆっくりよりも体が大きくて、ゆっくりよりも遥かに力が強くて賢い生き物よ。 群れの北の方にも、大勢の人間さんが住んでる場所があるわ」 「ゆー!そんないきものいるの!?れいむにんげんさんにあってみたいよ!」 「ダメよ、人間さんには不必要に近づくべきではないわ」 「ゆ、どうして?」 「人間さんは、自分のテリトリーを荒らすものは決して許さないわ。 人間さんの一番怖いところは、力が強いところでも頭がいいことでもない、敵と認めたものに対しては一切容赦しないところよ。 例えれいむに悪意がなくても、人間さんに見つかっただけで殺されるということだってありえるのよ」 「ゆ…にんげんさんってこわいね」 「人間さんにはいろんな人がいるのよ。 私たちゆっくりに友好的な態度を示してくれる人もいれば、敵意を持って接してくる人もいるわ。 …少なくとも今は、出来るだけ関わらないほうがいいと思うわ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 末れいむはぱちゅりーから授かった狩りの知識を生かして栄養があるものを採取し、どんどん体が大きくなっていった。 その分姉妹たちの暴力も過激になっていったが、体が丈夫になるにつれて深い傷を負うことがほとんどなくなった。 いつしか末れいむの体は、姉妹たちと寸分違わぬくらいの大きさまで成長していた。 末れいむが成体ゆっくりより一回り小さいくらいまで成長した頃… 季節は秋になり、紅葉が散り始める時期になっていた。 群れでは大量の食料を巣穴に溜め込み、冬篭りの準備を始めなければならない時期でもある。 しかし… 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「どうしておはなさんもむしさんもいないのおおおおおお!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 群れの近くにある狩場では、獲物が全く採れなくなったのだ。 理由は単純なもので、単に群れのゆっくりが増えすぎたために自然の恵みの生産量が消費量に追いつかなくなっただけのことだが、群れのゆっくりたちにそんなことは分からない。 群れの中に打開策を考えるものはほとんどいなかった。 ゆっくりたちはただただ目の前の問題を嘆くのみで、現状に対する不満をぶつける相手を必死で探していた。 「ゆゆ!わかったよ!」 『ゆゆ!?』 「きっともりにいる『ゆっくりできないゆっくり』がたべものをひとりじめしてるんだよ!」 そして、群れのゆっくりたちは不満をぶつける相手として、森に住むぱちゅりーを選んだ。 「ゆー!なんてことなんだぜ!」 「まえからゆっくりできないとおもってたけど、そんなことまでするなんてさいていのげすなのぜ!」 「せいっさいがひつようだよ!」 「せいっさい!せいっさい!」 群れのゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようという気運が高まっていく。 それの様子を少し離れた場所で見ていた末れいむは、脇目も振らずにぱちゅりーのところへと向かった。 (このままじゃぱちゅりーがころされちゃうよ!はやくしらせないと…) ぱちゅりーの巣穴に辿り着いた末れいむは、すぐさま中へと入る。 「たいへんだよぱちゅりー!むれのゆっくりたちが…ゆ!?」 巣穴の奥で末れいむが見たものは、地面に倒れて蹲まっている弱弱しい様子のぱちゅりーの姿だった。 「ぱちゅりー!?どうしたの!?」 「むきゅ…れいむかしら…ゆっくりしていってね…どうしたの、そんなに慌てて…?」 「ゆ!じつは…」 末れいむは群れの近辺で食料が採れなくなったこと、群れのゆっくりたちはその原因をぱちゅりーのせいにしていること、 ゆっくりたちはぱちゅりーを制裁しようとしていることを説明した。 「このままここにいたらころされちゃうよ!だからはやくにげないと…」 「……ごめんなさいれいむ…ぱちゅりーは逃げられないわ…」 「ゆううう!?」 「ぱちぇは今まで随分長く生きてきたわ…それこそ群れの大人たちの誰よりも長く…だからもう体がまともに動かないの…」 「そ、そんな…」 ぱちゅりーはゆっくりとしてはかなりの高齢であり、そろそろ寿命が近いことを末れいむに説明した。 「だかられいむ…ぱちぇに構わずここから逃げなさい……ここにいたられいむまで殺されてしまうかもしれないわ…」 「い、いやだよ!ぱちゅりーとはなれたくないよ!」 ぱちゅりーはしばらく無言になると、帽子についていた木のバッチを外し、末れいむに渡した。 「人間さんが住んでる場所は、以前教えたわよね……これを持ってそこに行きなさい…」 「ゆ、それはぱちゅりーの…」 「このバッチは…お兄さんがぱちぇを識別するために特別に作ってくれたものなの……これを見せて事情を説明すれば…きっとれいむを保護してくれると思うわ」 「おにいさん…?」 「…ぱちぇはね…元々は人に飼われるゆっくりだったのよ」 かつてぱちゅりーは都会のゆっくり専門ペットショップで生まれたゆっくりだった。 成体で、しかも体が弱い不良品として処分される寸前だったぱちゅりーは、田舎から上京していたある男性に買われることとなった。 山に囲まれた僻地にある小さな村で暮らすことになったぱちゅりーは、飼い主や村人たちにとても大切に育てられた。 ぱちゅりーはそんな人間たちから様々な知識を学び、飼い主や村人たちに日々感謝した。 そして、多くのゆっくりと人間がいがみ合う関係にあることを知ったぱちゅりーは、いつしか『人間とゆっくりが互いを想い合う関係』を作るという夢を持つようになった。 ぱちゅりーは夢を実現するために、まずは野生のゆっくりに接触する必要があると考え、飼い主に頼んで近くの山に住むゆっくりたちの群れに、自分を捨ててくれるよう頼んだ。 飼い主と周りの村人たちは当然猛反対したが、結局ぱちゅりーの説得と強固な決意に折れた。 そこで飼い主が、いつでも帰ってきていいようにと、目印として帽子に模様を彫った木のバッチをつけさせたのだ。 「けど、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりは誰もいなかったわ……皆人間さんのことを見下すだけで、人間さんのことを一つも知ろうとしない…… そのうち群れの皆はぱちぇのことを鬱陶しく思うようになって、ぱちぇを群れの外へと追い出したの」 「……」 「それからぱちぇは…群れの近くのこの森で、ぱちぇの話を聞いてくれるゆっくりが現れるのを待っていたわ…… ふふ、待ってた甲斐があったわ……れいむ、あなたに会えたのだから」 「ぱちゅりーおねえちゃん…」 「さ、もう行きなさい……群れのゆっくりたちと鉢合わせしたら大変だわ…」 「…さいごに、ひとつだけいい?」 「なにかしら…?」 「…おかあさんって…よんでいい?」 しばらく無言になる二匹。 おもむろに、ぱちゅりーはれいむに顔を寄せ、すーりすーりをした。 「…例え餡子は繋がってなくても……あなたはぱちぇの自慢の娘よ」 「ゆぐ……ぱちゅりー…おがあざん!」 そのまましばらく頬をすり合わせ、二匹はそっと離れる。 時間にして一分にも満たない頬ずりだったが、二匹にはそれで十分だった。 「さ…もう行きなさい」 「……!」 末れいむは名残惜しさを振り切るように、巣穴から飛び出していった。 巣穴から少し離れたところで、不意に背後から大勢のゆっくりの声が聞こえてくる。 ――ゆ!みつけたよ!ここがげすのすみかだよ! ――げすはせいっさいしてやるんだぜ! 末れいむはゆっくりたちの怒号を背に受けながら、森の奥へと消えていった。 翌日―― ぱちゅりーへの『せいっさい』を終えてひとまず満足した群れのゆっくりたちだが… 当然、群れの食料事情は一向に改善しなかった。 「ゆゆ!おかしいよ!むしさんやはなさんがぜんぜんとれないよ!?」 「しょくりょうがぜんぜんたりないんだぜ!これじゃふゆをこせないんだぜ!」 「ゆっくりできないゆっくりはせいっさいしたのにどうしてごはんさんがないのおおおおおおおお!?」 結局わめき散らすことしかしない群れのゆっくりたち。 しかし一匹のれいむがまた、事態を動かす発言をする。 「ゆゆ!こんどこそわかったよ!」 「ゆゆ!?」 「げすぱちゅりーがにんげんさんとなかよくしようとか、わけのわからないことをいってたよ! きっとぱちゅりーはげすなにんげんとてをくんで、ゆっくりしてるれいむたちにいじわるしたんだよ!」 「ゆううう!?それはきづかなかったのぜええええ!」 「それならげすにんげんもせいっさいしないといけないね!」 『せいっさいせいっさい!』 そして群れのゆっくりたちは、今度は人間を『せいっさい』の対象として選んだ。 ぱちゅりーの話を全く聞いていない群れのゆっくりたちの人間に対する認識は、『ばかでおろかでゆっくりできないいきもの』ということのみであり、 人間はどのような存在か、どれだけの力量を持っているかということを知っているゆっくりは、末れいむを除いて皆無だった。 愚かなことに、ぱちゅりーの『せいっさい』に成功したゆっくりたちは、人間に対する『せいっさい』も、同じように成功すると信じて疑わなかった。 「けど、くそにんげんはどこにいるのかわからないよ…」 「そういえばげすぱちゅりーがいってたのぜ!おやさいさんはにんげんがそだててるって! いぜんまりさはおやさいさんをとってきたことがあるけど、きっとそこににんげんがいるのぜ!」 「すごいわまりさ!なんてあたまがいいの!?」 「ゆへへ、それほどでもないんだぜ!」 「じゃあまりさ!れいむたちをそこまであんないしてね!」 「まかせるんだぜ!みんなでくずにんげんをせいっさいしにいくのぜえええ!」 『ゆっゆおー!!!』 以前人里の畑に侵入し、野菜を盗むで生還したゆっくりが群れを先導する。 赤ゆや子ゆも含めた群れの全てのゆっくりが、人里に向けて出発した。 ゆっくりたちは群れを出て北の方に向かってただひたすら跳ねていくと、急に視界が開けた場所に出た。 そこには茅葺屋根で出来た家があちこちに点在し、家の近くには田んぼや畑がいくつもあった。 ゆっくりたちがまず目にしたのは、色とりどりの野菜がたわわに実った、大きな畑だった。 「ゆゆ!おやさいさんがいっぱいあるよ!」 「あれだけのおやさいさんをひとりじめするなんて…ゆるせないんだぜえ!」 「あのおやさいさんはぜんぶれいむのものにするよおおおお!」 「ぜんぶまりささまがむーしゃむーしゃするんだぜええええ!」 畑を前にした途端、当初の目的を忘れて畑に殺到するゆっくり。 『おやさいさんをゆくりたべるよ!』 畑に侵入し、野菜を食べようとした瞬間… 「今だ!」 不意にどこからか掛け声がし、それと同時にゆっくりたちの上に網がかかって身動きが取れなくなった。 「ゆゆ!なんなのこれ!」 「うごけないんだぜ!?」 網に絡まって右往左往するゆっくりたち。 ゆっくりたちの周りを、いつの間にか大勢の人間が取り囲んでいた。 「ゆ!くそにんげんがいるよ!」 「おいくそにんげん!まりさたちをここからだすのぜ!」 「なにぼけっとしてるの!?はやくしろおおおおおお!」 「げすなにんげんはしねええええええええ!」 「おやさいさんをむーしゃむーしゃさせろおおおおおお!」 人間たちの集団から、一人の男と一匹のゆっくりが前に出る。 男の方は見た目はごく普通の青年で、ゆっくりの方はあの一家に虐げられていた末れいむだった。 末れいむのリボンには、ぱちゅりーから託された木製のバッチが付いている。 「ゆゆ!くずがいるのぜ!」 「どおしてくずがそこにいるのおおお!?」 「おいくず!まりさたちをたすけるんだぜ!」 「はやくしろくず!」 たまたま男と末れいむに一番近い位置にいた末れいむの家族が、末れいむに対して助けを求める。 しかし末れいむは群れのゆっくりたちを悲しそうな目で見るだけで、一向に行動を起こそうとしない。 「…れいむ、こいつらとは知り合いなのか?」 「このゆっくりたちは、れいむのおやとしまいだよ」 「そうか…」 「ゆっがああああああああああああ!なにしてるんだぜえええええええ!?はやくまりさたたちをたすけろおおおおおおおお!」 「まぁ待てお前ら、まずは俺の質問に答えてくれないか」 れいむの横にいた男が、ゆっくりたちに声を掛ける。 「ゆゆ!なんでくそにんげんのしつもんにこたえなきゃいけないの?ばかなの?しぬの?」 「質問に答えてくれたら、あまあまをやるよ」 「ゆ!あまあま!?」 「はやくよこすのぜ!」 「よこせ!よこせえ!」 「あまあま!あまあまあああ!」 あまあまという言葉を聞いて騒ぎ出す群れのゆっくりたち。 あまあまを貰ったところで拘束を解いてもらわなければ、結局何の意味がないのだが…群れのゆっくりたちはとりあえず目先の利益に飛びつくことしか頭に無かった。 男はゆっくりたちに問いかける。 「お前たちは何でここに来たんだ?ここはお前たちが住んでるところからも大分離れているはずだ」 「そんなのきまってるよ!くそにんげんをせいさいするためだよ!」 「やまからたべものがとれなくなったのはおまえらくそにんげんのせいなのぜ!」 「れいむたちがかわいいからってしっとするのはみぐるしいよ!ゆっくりしゃざいしてね!」 「山の恵みが足りなくなったのは、単にお前たちゆっくりの数が増えて自然の恵みが減っただけだろう。ぱちゅりーから教わらなかったのか?」 「ゆ?ぱちゅりーって…もしかしてあのゆっくりできないぱちゅりー?」 「あのゆっくりできないぱちゅりーならまりさたちがせいっさいしてやったのぜ!」 その発言を聞いた途端、男や末れいむを含めた全ての村人の纏う空気が変わった。 「…なんで殺したんだ?」 「あのぱちゅりーがゆっくりできなかったからだよ!」 「いつもいつもれいむたちのじゃまばかりして!」 「こどもをつくるのはゆっくりできなくなるとか、わけがわからないことをいってたし!」 「とかいはなこーでぃねーとにかってにくちだししたこともあったわ!」 「あんなくずしんでとうぜんだね!」 「だからこのまえげすぱちゅりーをせいさいしてやったのぜ!」 「あのぱちゅりーをみつけたときは、れいむたちにおそれをなしてそのばでぶるぶるふるえてたよ!ゆぷぷ!」 「まずはおうちからひきずりだして、おかざりをひきさいてやったのぜ!」 「もみあげもひきちぎってやったよ!そのあとぼーるにしてあそんであげたよ!」 「ぼーるあそびのさいちゅうにはんのうをかえさなくなったから、そのあとはおめめやまむまむをぷーすぷーすしてやったよ!」 「さいごはぜんいんでぼこぼこにたいあたりをしてつぶしてやったのぜ!なかみがとびちるさまをみたときはすっきりーしたのぜ!」 「けどはんのうがにぶくていまいちだったのぜ!さいごまでもろくてつかえないどうぐだったのぜ!」 『げらげらげらげらげらげらげらげらげらげら!』 ぱちゅりーをどのようにしてなぶり殺しにしたか、それを嬉々として語るゆっくりたち。 男の方は表情を硬くして拳を硬く握り締め、末れいむは顔を伏せて体を震わせている。 ――グチャ 『……ゆ?』 不意にゆっくり出来ない音が聞こえて、群れのゆっくりたちは音がした方向を見てみる。 そこには怒りの表情でクワを振り下ろした村人と、クワに潰された一匹のれいむの姿があった。 『ゆ…ゆぎゃああああああああああああああああ!?」 「いきなりなにするのおおおおおおおおおおおおお!?」 「よくもれいむをころしたなああああああああああああ!」 「ゆっくりし…」 「死ぬのはお前らだ糞共がぁ!」 そう叫んだ村人の声を皮切りに、激昂した村人たちは群れのゆっくりたちを足や鍬を使って潰し始める。 次々と潰されていく同族を見て、鈍感な群れのゆっくりたちはようやく命の危険を感じた。 「ご、ごめんなざいいいいいいい!」 「ごろざないでえええええええ!」 「やめるのぜ!まりさをころしたら…えぎゅ!?」 周りのゆっくりたちが殺される様子を、末れいむの一家は怯えながら見ていた。 一家は男の傍にいる末れいむに助けを求める。 「お、おいくず!はやくれいむたちをたすけろ!」 「なにぼーっとしてんだくずううううううううう!」 「はやくまりさたちをたすけるのぜえええええええ!」 「さっさとしろおおおおおおお!こののろま!くず!」 「れいむたちをたすけたらさっさとしねええええ!」 一家は末れいむに、自分たちを助けるよう必死で命令する。 末れいむはそんな一家を感情の篭らない目で見ていた。 「…れいむ、こいつらをどうするかはお前が決めていい」 「いいの?おにいさん」 「俺たちにとってこのゆっくり共はぱちゅりーの仇だが、こいつらは…ぱちゅりーの忘れ形見であるお前の家族でもあるからな。 れいむがこいつらを殺さないでと言うのなら、見逃してやってもいい」 「「「「「「「ゆ!?」」」」」」」 男の言葉を耳にした一家は、自分たちの運命が末れいむの一言によって決まることを理解した。 途端に一家は態度を一変させ、媚びへつらうような口調で末れいむに命乞いをする。 「れ、れいむのかわいいおちびちゃん!れいむたちをたすけてね!」 「まりさたちをたすけるのぜ!おちびちゃんはまりさたちのかぞくなのぜ!」 「いままでいじめてごめんね!おねえちゃんはれいむのことだいk…すきだよ!」 「くz…れいむ!おねがいだからまりさをたすけるのぜ!」 「れいむもまりさたちといっしょにいたいのぜ!?そうなのぜ!?」 「そうにきまってるのぜ!れいむはまりさたちのことがすきなのぜ!」 「だってれいむたちはあんこがつながったかぞくなんだからね!」 一家の言葉を受けて末れいむは一度顔を伏せると、再び顔を上げる。 その顔には先ほどまであった悲しみの表情は一切なくなり、怒りと憎しみと恨みに染まっていた。 「…おまえたちなんてかぞくじゃないよ」 「「「「「「「……ゆ?」」」」」」」 「れいむのかぞくは…おまえたちがころしたぱちゅりーおかあさんだけだよ。 ぱちゅりーおかあさんをころしたおまえらは…………ゆっくりしないでしねえええええ!」 「ゆっがああああああなにいってるのぜええええええええ!?」 「このおんしらずうううううううううううう!」 「このくずがああああああ!したてにでてればちょうしにのりやがってええええええええ!」 「決まりだな」 男は鍬を抱えると、一家に向けて振り下ろす構えを占める。 「ああああああああああああああああああいやだいやだああああああ!しにたくないいいいいい!」 「いやだあああああああああ!まりささまはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないのぜええええええ!」 「だずげでえええええええええ!くずどいっでごべんなざいいいいいいいい!」 「く…れいぶざま!まりざだぢをだずげでぐだざいいいいいいいい!おねがいでずうううううううう!」 「くずれいぶうううはやぐだずげろおおおおおおおお!」 男は鍬を振り下ろす。 一家が断末魔を上げる様子を淡々とした表情で眺める末れいむ。 しかし、餡子を分けた家族と別れる悲しさによるものか、仇を取れた嬉しさによるものか、それとも両方なのか… 末れいむの目からは一筋の涙が流れ落ちた。 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございます。 いろいろと大変(リアル事情とかSS書きとしての腕前とか集中力とかその他もろもろ)でしたが、何とか書き上げることが出来ました。 よろしければご意見ご感想をお願いします。 「10作品未満の作者4スレ目」 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1299127853/ ではでは。 過去の作品 anko0857 願いの果てに anko3412 親の心子知らず anko3430 子ありすと都会派な人形 anko3445 ある群れの越冬方法 anko3464 とある一家のお話
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『ゆっくりEQ-ぱちゅりーの苦悩』 8KB 虐待 観察 いたづら 改造 群れ 希少種 自然界 二作目です。反省点を踏まえて書いてみました。オチって難しいですね。 一人の男が、森の中を何かを探すかの様に歩いている。 その男の背にはリュックサックが背負われている。 中に入っているのは、小型のマイクと送信機、受信機とイヤホン、注射器、そして、ゆっくりイコライザーだ。 男の趣味は虐待である。 男は、ゆっくりの能力を操作できるというゆっくりイコライザーの存在を知り、それを使った虐待をしようと森に来ていた。 探しているのはもちろんゆっくりである。 「……!」 男が森に入って30分程経った頃、ゆっくりに遭遇した。 ぱちゅりー種だ。 番が居ないのか、ぱちゅりー種には珍しく狩りをしているらしく、木の根元を調べている。 男は素早く近づき、ぱちゅりーを掴んで持ち上げた。 「むきゅ!?おそらをとんでるみたい!」 そのままリュックサックから注射器を取り出し、ぱちゅりーに薬を注射した。 「むきゅうっ!?」 男は注射針を抜くと、ぱちゅりーのおぼうしにマイクを取り付け、地面に放した。 「む、むきゅ!?に、にんげんさん!?むきゅう!?」 混乱しているぱちゅりーを無視して男は、イヤホンを取り出してマイクが作動している事を確認し、来た道を戻って行く。 「む、むきゅ……、いまのはなんだったのかしら……」 男が去ったあと暫く経ってぱちゅりーは混乱から抜け出し、何が起こったのかを冷静に考えようとしていた。 そしてその時、ぱちゅりーは少しずつイコライジングされ始めていた。 男が持っているゆっくりイコライザーは三種類あった。 知能操作特化型、即ち"記憶力"、"論理思考"、"言語能力"、"機転"、"理解力"のイコライザー。 性格操作特化型、即ち"自己愛"、"外罰性"、"思いやり"、"自制心"、"自信"のイコライザー。 体力操作特化型、即ち"歩行能力"、"肉体的耐久力"、"精神的耐久力"、"回復力"、"筋力"のイコライザー。 これらは一つに接続され、ぱちゅりーと繋がっていた。 森からの帰り道、男は歩きながら、ぱちゅりーと繋がったイコライザーを操作していた。 ぱちゅりーの、"論理思考"と"機転"、"理解力"は強化され、"自己愛"と"外罰性"、"自信"も増幅させられた。 更に、"肉体的耐久力"、精神的耐久力"、"回復力"も上げられた。 ぱちゅりーは"体力的にもしぶとい、頭は良いが根拠のない自信に満ち溢れるもりけん(笑)"となった。 ぱちゅりーは、その強化された頭脳で考える。 さっきのは人間さん。人間さんは危険だ。 とりあえず長に人間さんが近づいてきたことを報告すべきだろう。 そしてぱちゅりーの自己愛と外罰性、自信が思考を続けさせる。 そういえば、長は自分と同じぱちゅりーだ。 だが、今考えると能力的には自分の方が優れているのではないか? なら長に相応しいのは自分だ。 もし自分が長になれば、自分は群れをもっとゆっくりさせられるだろう。 それに、きっと長はゆっくりできるに違いない。 よし、決めた。長になろう。 歪ませられた心によって、ぱちゅりーは唐突に長になろうと決心した。 ぱちゅりーの所属している群れは、有能なぱちゅりー種の長によって統治され、快適なゆっくりぷれいすを作り出し、それなりの大きさを誇っていた。 だが、いくら優秀な長に統治されていても所詮ゆっくり。 長の合理的な統治を、ゆっくりできないと感じているゆっくりもいた。 群れが小さいうちはそういうゆっくりを長が直接教化する事ができたが、群れが大きくなるにつれて、長が直接教化することが難しくなり、長に対する不満を抱くゆっくりが増えてきていた。 知能が強化されたぱちゅりーはそれを鋭く見抜き、決心をした日から、長に対して不満を持つゆっくりに声をかけ不満を煽っていった。 「「「「おさ!!ゆっくりしないででてきてね!!」」」」 「む、むきゅ………、なんのようかしら……」 「むきゃー!!ぱちぇたちはもうがまんのげんっかいっよ!!おさのかいしょくをせいっきゅうっするわ!!」 「くびなんだねー!!わかるよー!!」 「む、むきゅぅう!?」 結局、長ぱちゅりーは辞任だけではなく追放にまでなった。 そして、新しい長は、イコライザーぱちゅりーが就任した。 だが、その時ぱちゅりーに異変が起きた。 「むきゅきゅ!やっとぱちぇにふさわし……むきゅうううう!!」 マイクでその様子を確認していた男が、ぱちゅりーの"自己愛"、"外罰性"、"自信"を下げたのだ。 更に、"思いやり"が上げられた。 それによって、ぱちゅりーは、その高い知能を歪ませていたものがなくなり、正しい判断が出来るようになったのだ。 つまり、自分たちをゆっくりさせてくれていた前の長を追放した罪に気付いてのだ。 しかも、"思いやり"が強化されているので、その精神的ストレスも普通より大きい。 「むきゅうううう!!」 普通のぱちゅりー種なら、精神的ストレスによりクリームを嘔吐して、場合によっては永遠にゆっくりしまうところだが、このぱちゅりーは耐久力も強化されていたので、精神的ストレスを全て味わうことを強いられた。 ぱちゅりーは酷く罪の意識に苛まれたが、暫くすると、ある決心をした。 前の長に変わって、群れをゆっくりさせる。 それが罪滅ぼしになると考えたのだ。 それからぱちゅりーは頑張った。 ゆっくりせずに、群れの為に働いた。 新しい掟を考え、古い掟を廃し、ひたすら働いた。 時間があれば、新しい狩場の開拓に自ら出かけたり、自分がゆっくりする時間を潰して働いた。 男はそれを後押しするように、"自制心"や"歩行能力"などを与えた。 暫くして、事件は起こった。 群れの中でれいぷ事件が多発したのだ。 しかも犯人は捕まらない。 異常に身体能力が高いのだ。 何度かぱちゅりーの指揮の元で捕まえたのだが、そうするとまた別のれいぱーが出るのだ。 犯ゆんはすべてありす種だった。 これは、男が仕組んだ事件だった。 男が森に来たときに、ぱちゅりーの他に何匹かのありす種にもイコライザーの注射をしていたのだった。 ぱちゅりーは悩んだ。 捕まえても捕まえてもまた別のれいぱーが出現する。 どうすればいいのだろうか。 むきゅむきゅ何日も悩んでいると、ぱちゅりーはふと解決法を思いついた。 「おさ、いったいどうしたのかしら……きゅうにありすたちだけむれのはずれにあつめるなんて」 「みゃみゃー、おにゃかしゅいちゃわぁー」 「おちびちゃん、このようじがおわったらとかいはならんちにしましょうね」 「いまよ!」 ごろごろごろ 「「「「ゆ?………ゆぎゃあああああああああ!!」」」」 「ゆぶべっ!」「ぶじゅっ!」 「ゆべあっ!」 「あ……あでぃすの……おべべ……どごにいっだの……」「もっじょ…すっきり…したかった……」 「みゃみゃぁ゛あ゛!たじゅげでぇええ!みゃみゃぁ゛あ゛あ゛!いじゃいわぁ゛あ゛」 「もっど……ずっぎり……」「んほぉお……んほぉお………ゆぶっ……」 ありすたちは全員、群れのはずれの崖の近くの一ヶ所に集められ、上から沢山の石を落とされ殺された。 これがぱちゅりーの考えた解決法だった。 この解決法を思いついた時、ぱちゅりーは"論理思考"と"思いやり"を男に奪われていた。 この後ぱちゅりーは再び"論理思考"と"思いやり"を取り戻し、新たな罪の意識に苛まれる様になった。 (ぱちぇはつみのないありすたちをなんゆんもえいえんにゆっくりさせてしまったわ……、それも、おちびちゃんたちまで…ぱちぇは……つみほろぼしどころか、もっとつみをふかくしてしまったわ……) この新たな罪の意識はそれまで抱いていた罪の意識と重なり、よりぱちゅりーを苦しめた。 その結果、ぱちゅりーは罪滅ぼしの方法を考えついた。 すっきりー制限の廃止である。 ありすたちが断末魔として、「もっとすっきりしたかった」と言っていたからだ。 もちろん男が正常な思考を阻害した結果である。 始めは群れの多くのゆっくりたちも喜んだが、すっきりーのしすぎで人口が増えた結果、深刻な食糧不足に陥った。 「おさぁ……、ごはんさんがぜんぜんとれないよぉ……」 「おちびちゃんたちがおなかをすかせてるよぉ……」 「ゆっくりできないよ……」 「むきゅ…………、そうだわ!いい考えがあるわ!」 ぱちゅりーは、食糧不足を解消するために、少し離れたところにあるゆうかの群れ遠征して、食糧を確保するという作戦を思いついた。 早速、ぱちゅりーは群れの精鋭をかき集めて遠征隊を結成し、ゆうかの、群れに向かわせた。 「むきゅきゅ、これで一安心ね」 「「おさぁあああああああああ!!たいっへんだよぉおおおおおお!!!」」 「むきゅ!?」 結果として、もちろん遠征は失敗した。 命からがら逃げてきたまりさが一匹帰ってきただけで、他のゆっくりたちは全員帰ってこなかった。 しかも、向こうの群れのゆうかを一匹殺して。 この事実を知らされたちょうどその時に、ぱちゅりーの知能は上げらた。 それによってすっきりー制限開放やゆうかの群れへの遠征がはじめから間違いだった事を理解した。 同時に、群れの精鋭を、犠牲を一匹しか出さずに皆殺しに近い状態にできるゆうかたちに報復される危険がある事を悟った。 「むきゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!」 三日後にゆうかたちは攻めてきた。 三日の間ぱちゅりーはまたも知能を下げられ、対策を考える能力を奪われ、なにも出来ずにただただ恐怖に震えているだけだった。 ぱちゅりーの群れは成体ゆっくりも赤ゆっくりも関係なく皆殺された。 しかし、ぱちゅりーは生かされた。 ゆうかたちの群れを襲わせた張本人として、拷問されながら。 ぱちゅりーは拷問されながら、自分の過ちを責め続けた。罪の意識に苦しみ続けた。 「む……むぎゅ………ごべ……だざ……」 「このこ、おもったよりしぶといわね」 しかも、ぱちゅりーは"肉体的耐久力"、"回復力"を上げられているので死ぬ事ができなかった。 なので、ゆうかたちのサディスティックな欲望を満たすためのサンドバックとして、ゆうかたちの群れが滅ぶまで苦しめられ続けた。 男はマイクからこの予想以上に面白い事になった結果を知り、苦しみ続けるぱちゅりーを思って射精した。
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「げほっ、げほっ…おがあしゃん…ゆっぐちでぎだいよ…」 その赤ちゃんゆっくりまりさは病の淵で死に掛けていた。 「おねえちゃんたちとゆっくりまっててね…おかあさんがおくすりもらってくるからね…」 「ゆっぐぢ…まっでゆよ…」 赤ちゃんまりさは力なくうなずいた。 母まりさは強い決意をたたえた瞳で巣の外を見つめた。 「ゆっくりいってくるよ、あかちゃんをおねがいね」 「ゆっくりまりさにおまかせ☆」 長女のゆっくりまりさはくるりターンしてウィンクして答えて魅せた。 それを見てにこりと笑い母まりさは巣を飛び出した。 赤ちゃんまりさはある流行病に蝕まれていた。 その病の名は『ぱちゅり沢症候群』 ゆっくりぱちゅりー達の住む集落、ぱちゅり沢で発生し伝染していったことから人間の学者がこの名前をつけた。 もとはぱちゅりー種が元来持っている持病が突然変異し他のゆっくりへの感染能力を身に着けたことにより誕生した病気である。 症状は様々だが共通しているのは病状が進むにつれゆっくり出来なくなりやがて死に至ることである。 基本的に自然治癒することは無い、かかったまま放置すれば必ず死に至る病としてゆっくり達にとても恐れられていた。 ただし、生き残る方法があった。 ぱちゅり沢症候群発祥の地、ぱちゅり沢にはこの病気の治療薬があった。 それさえ投与し続ければ段々と回復し、もとがケンコウなゆっくりならば完治する可能性もあるのだ。 まりさが向かっているのはそのぱちゅり沢であった。 まりさは危険も顧みずにただただ急いだ。 れみりゃが居るという草原を進みふらんがたむろするという森を突き抜けた。 やがて、美しい川の流れるゆっくりたちの住む集落にたどり着いた。 「ゆ…ゆっくりしてないでおくすりもらわなきゃ…」 まりさは適当な巣穴に入って中のゆっくりに話しかけた。 「まりさにぱちゅりさわしょーこーぐんのおくすりをちょうだいね!」 「むきゅ?おくすりならむらのおくのおうちでもらえるからゆっくりしてないでぱちゅりーたちのおうちからでていってね!!」 「ゆ!わかったよ!ありがとう!」 まりさは喜び勇んで言われた場所へとぴょこんぴょこん跳ねていった。 「ゆっくりおくすりをちょうだいね!」 そこは人間の使っていた廃屋をそのまま利用した場所だった。 それなりに大きく高さは三メートルはあった。 入り口の前には二匹のゆっくりぱちゅりーが番をしている。 「むきゅ、おくすりがほしかったらちゃんとたいかをはらってね!」 「ゆ!?どういうこと!?」 まりさは対価を要求されてとても驚いた。 この村から発生した病気なのだから責任を持って薬もただでもらえると思っていたからだ。 「ゆー!まりさのあかちゃんがびょうきになったのはぱちゅりーたちのせいだよ! おくすりもただでちょうだいね!」 「むきゅ、びょうきにかかったのはたいちょうかんりのもんだいよ ぱちゅりーたちにせきにんはないのをゆっくりりかいしてね」 「ゆー…」 抗議も空しく退けられ、仕方なくまりさは帰り用に取っておいたなけなしの食料を差し出した。 「むきゅぅ~これじゃぜんぜんたりないわよ ゆっくりまってるからでなおしてきてね」 その食料を見てぱちゅりー達は呆れたように首を振った。 「ゆううううううううう!!!!!!!!」 まりさは埒があかないと思った。 「まりさのあかちゃんはいまもゆっくりできなくてくるしんでるんだよ!! おくすりちょうだいね!!!」 「むきゅ、きそくはきそくだからだめよ」 その取り付くしまもない言い草にまりさは激怒した。 「もういいよかってにもらってくよ!!」 まりさは廃屋の中に入って薬を強奪することにした。 病弱なぱちゅりー種ならば問題なく倒して脱出することが可能だろうという算段からだ。 「むきゅ!だめよ!」 二匹のぱちゅりーがまりさの行く手をふさぐ。 まりさは問題なく吹き飛ばせると踏んで気にせず突進した。 「ゆ!?」 しかしぱちゅりー達はまりさの体当たりに耐え切るとそのまま押し返そうと体を前進させた。 まりさはそのぱちゅりー種とは思えない力強さに困惑する。 「むきゅ~~もってかないでね~~~~!!!」 「ゆう~~~!?」 そのまま力負けして押し潰されそうになった時、赤ちゃんが苦しむ姿が脳裏を過ぎった。 「ゆっくりいいいいいいいいいいい!!!」 「むきゅう!?」 「こ、このちからは!?」 遠く巣で床に伏せる赤ちゃんのことを思ってまりさは最後の力を振り絞りぱちゅりー達を振り払った。 ぱちゅりー達が吹き飛ばされて壁にぶつかってむきゅうしてるのを見てまりさは一目散に廃屋の中へと突貫した。 「おくすりをちょうだいねえええええええええええ!!!」 圧倒的なパワーでまりさは中のぱちゅりー達も吹き飛ばしていく。 まりさは辺りを見回しながら薬を探し走り回った。 探し物をしながら走れば当然前をちゃんと見てないわけで当然の理としてまりさはぼよんと何かにぶつかった。 「ゆ…ちゃんとまえみてさがすよ!」 気を取り直して再び探そうとしたその時、ぶつかった何かにまりさは押しつぶされた。 「ゆげえええええええええええ!?」 『ぱちゅりーのおうちをあらしてるのはあなた?』 「ゆ?だれ!?どこにいるの!?ゆっくりでてきてね!」 まりさは上に何かが乗ったまま余り体を動かせず狭い範囲を見回したが誰もいなかった。 『むきゅう、もうすぐちかくにいるわよ』 「どこ?どこ!?ゆっくりりかいできないよ!?」 『あなたのすぐうえよ』 そう、それはまりさの上に圧し掛かっているゆっくりぱちゅりーだった。 大きさは二メートルくらいだろうか。 まりさが潰れずに生きているのはひとえにぱちゅりーが加減して体重をかけないようにしているからだろう。 「ゆ~~~~~~~~!?」 まりさはこんな巨大なぱちゅりーは見たことがなかった。 確かにゆっくりが成長して数メートルまで成長することはある。 しかし病弱なぱちゅりーにおいてそんな事例は皆無であった。 混乱しているまりさにぱちゅりーが軽く体重をかけた。 「ゆぶっやべっでべぞ!?」 思わず餡子を吐き出しそうになりまりさは破裂しそうになりながら皮を必死に固めて耐えた。 ひとたび餡子が噴出せばこのまま全ての餡子が出るまで押し続けられるだろう。 『むきゅ、みんなあつまってね!』 巨大なぱちゅりーの掛け声に応じてぱちゅりー種達が集まってきた。 『ゆっくりおさえてね』 ドン、とまりさを突き出して開放したかと思うと瞬く間に回りにぱちゅりー種が集まり再び拘束する。 「ど、どういうことなのおおおおお!?」 混乱にあえぐまりさが叫んだ。 巨大ぱちゅりーの髪にはたくさんのリボンが結び付けてあった。 それはこの村のぱちゅりー達により信頼の証として差し出されたリボンである。 その堂々たる姿はまさにドスぱちゅりーというのに相応しかった。 このぱちゅりーも元はただのゆっくりぱちゅりーだった。 そんなぱちゅりーの運命が変わったのはある植物を見つけたときのことだ。 その植物の近くにいると持病が和らいで今までになくゆっくりできた。 ためしに口にしてみると持病が治まり、さらにゆっくりすることができた。 それどころかその植物の効果がある内は野原を走り回ってちょうちょを追いかけて食べたりすることも出来た。 それはぱちゅりーがいくら願っても絶対に手の届かなかったはずの感動であった。 ぱちゅりーはその時真のゆっくりとはこういうことだと確信した。 ぱちゅりーは元気な姿を仲間達に見せて驚かせた。 仲間たちは目を丸くして驚いた後ぱちゅりーの体がよくなったことを涙を流して喜んだ。 その植物があったのがこの近くの沢である。 ぱちゅりーは仲間を呼んででこの近くに住み始めた。 そして病気の完治を目指してこの植物のより良い使い方を研究し始めたのだ。 他の植物と混ぜたり別の食べ方を試したりして段々と効果を高めていった。 ぱちゅりーは完治するまでには至らなかったが薬の効果は充分に高まり ぱちゅりーが満足して生活できるくらいの効力を有するようになった。 ぱちゅりーは仲間達とその成果を喜び、体を動かしてゆっくりしあった。 しっかり食べ動くようになっていたぱちゅりーはすくすくと成長し 体も今の四分の一程度まで大きくなっていた。 そんな幸せなある日、異変が起こった。 ぱちゅりーの研究を手伝ってくれた仲間達が次々と病で倒れていったのである。 「ゆ!おとなりのゆっくりみょうんにきいたらもりのおくにやくにたちそうなおはながあるよ!」 薬の材料がどこにあるか調べてくれたれいむが 「きのこさがしならまりさにまかせるんだぜ!」 薬の原料を集めてきてくれたまりさが 「風邪には少女臭がきくわ」 様々な知識をかして手伝ってくれたゆかりんが 「わかるよーこうすればいいんだねー」 助手として薬の調合を手伝ってくれたちぇんが その病に倒れていった。 ぱちゅりーは原因もわからずに倒れていく仲間達の姿を見て自分の無力さに涙した。 自分を元気にしてゆっくりできるようにするのを手伝ってくれた仲間達が まるで昔の自分の様に病に苦しみ、そしてゆっくりできないと訴えて死んでいった。 全ての仲間を失って放心状態で巣の中に閉じこもっていたぱちゅりーは 薬を飲むのも忘れ、再び持病が発症したときに気付いた。 仲間達の病が自分と全く同じということに。 謎の病はぱちゅりーから仲間達へと伝染したのだ。 通常、ぱちゅりー種の病気が他のゆっくりに移ることはない。 だがこのぱちゅりーは通常より長く、そして強く生き過ぎた。 ぱちゅりーの体内で薬で抑えられながら病原菌は突然変異を起こし 他のゆっくりに感染する能力を身に着けたのだ。 「む゛ぎゅうううううん!!ばぢゅり゛ーのぜいでみ゛ん゛な゛が! み゛ん゛な゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!む゛ぎゅうううううううううううん!!」 ぱちゅりーは仲間達と薬の研究をした巣の中で涙が枯れ果てるまで泣いた。 最初、ぱちゅりーは死のうと思った。 死んで天国で仲間達と一緒にゆっくりしようと思った。 そしてその日から薬を断った。 薬に押さえつけられていた持病がぱちゅりーを再び襲った。 しかし病に冒され、どんどんゆっくり出来なくなる中でぱちゅりーはふと思った このまま病に殺されてしまっていいのだろうかと。 ぱちゅりー達が作った薬はまだ完全ではない。 この薬を完成させて、ぱちゅりー種の持病を 自分の中の病を完全に殺せる薬を作ることが仲間達の敵を取ることになるのではないか。 そう気付いた時には既にぱちゅりーは残っていた薬を飲み、研究を再開していた。 それまでと違い自らの体を実験台に使った孤独で過酷な研究だった。 試してみた薬の副作用でぱちゅりーの体は二倍に膨れ上がった。 様々な副作用に悩ませながらぱちゅりーは研究を続けたが、自分の中の病を 完全に殺しきることは、完治にいたることはなかった。 いくら研究しても完成しない薬に、ぱちゅりーは遂にぱちゅりー種は その構造上、絶対に持病は完治しないことを突き止めてしまった。 ぱちゅりー種はもともと病とセットで生まれてくるものだったのだ。 もし体内の病が完全に死ぬことがあるとすればそれはそのぱちゅりーが死ぬときだけである。 ぱちゅりーは再び絶望し、自分の中の病と刺し違えようと思った。 だがぱちゅりーは考えた。 自分が死んでも仲間達を殺した病原菌は生き残るのだ。 そのディレンマにぱちゅりーは悩み、死ぬに死ねずに居た。 やがてぱちゅりーはある考えにたどり着いた。 この病気を利用し、奴隷、武器として使役して自分の王国を作る。 それが仲間を殺した病気へのぱちゅりーの考える限り最高の復讐になると。 それは憎しみと病のハザマでぱちゅりーが出したギリギリの妥協案だった。 ぱちゅりーはその巨大な体躯を生かし、まずぱちゅりー種で作った群れを作った。 ぱちゅりー種の持病を抑える薬を少し与えればどんなぱちゅりーもすぐにぱちゅりーの奴隷となった。 ぱちゅりーは親愛の証として、実際には服従の証としてぱちゅりー達のリボンをその際貰い、髪に結びつけた。 この頃から、ぱちゅりーは他と自分を区別、いや差別するために自らドスぱちゅりーを名乗り始めた。 ぱちゅりー達はドスぱちゅりーを神のごとく崇め、したがった。 群れはすぐに大きくなり、ぱちゅり沢は近隣では一番大きなゆっくりの群れになった。 肥大化した群れはすぐに食料が足りなくなった。 当然である、ただでさえ体の弱いぱちゅりー達が薬の材料集めに奔走しているのだから食べ物が足りるはずがない。 ドスぱちゅりーにはこの先のヴィジョンがあった。 ドスぱちゅりーは群れのぱちゅりー達にある群れに代わる代わる向かい、一日ずつゆっくりしてくるよう言った。 ぱちゅりー達はドスに従いその群れに代わる代わる向かった。 やがて、群れの中で謎の病が流行り始めた。 このときにはもう群れのぱちゅりー達は後に『ぱちゅり沢症候群』と呼ばれる感染型の病原菌に感染していた。 そんなぱちゅりー達に代わる代わるにこられたその群れはすぐに症候群に感染した。 それから一週間して、今度はドスぱちゅりーが自ら群れに向かった。 そこで薬を振りまき、お礼に食料を分けてもらった。 ぱちゅりー達はその食料でゆっくりと過ごすことが出来た。 その内、また食料がなくなると全く同じことをして食料を得た。 やがてその群れが食料が無くなり、みんな病死ではなく餓死して全滅すると また別の群れを見つけて同じことをした。 その内にドスはぱちゅり沢から出なくて済むようになった。 病気の噂が広まり、それを治せる薬を持つドスぱちゅりーのところに勝手に向うからやってくるようになったからである。 ドスぱちゅりーはただ巣でじっとしていれば食べ物がもらえるようになった。 ぱちゅりー達は命令すれば全て自分の手足のように動いた。 この時、遂にドスぱちゅりーの王国は完成した。 何もせずに食べ物が食べられるようになり、ぱちゅりーは今と同じ大きさまで大きくなった。 そして今に至った。 「ゆううううう!まりさはあがぢゃんをだずげだいだげなんでず! お゛でがいだがらおぐずりをぐだざい!」 まりさはドスぱちゅりーの巨体に怯えながらも懇願した。 『むきゅ、かってにぱちゅりーのくすりをもってこうとしたわるいまりさにはおしおきがひつようね』 しかしドスぱちゅりーの王国を維持するために規則を破ったゆっくりは罰される運命にあった。 ドスぱちゅりーは大きく息を吸い込んだ。 『げほっ!ごほっ!げほっ!むぎゅうううん!』 大きな大きなセキが台風のようにまりさに襲い掛かった。 「ゆううううう!?やべでえええええええええ!!!」 数分それが続き、そこにはすっかり弱り果てたまりさの姿があった。 「ゆぅ…ま…まりさのあかちゃんに…お…くす…り…」 『むっきゅー、もうかんっせん☆したころだね、はなしていいよ』 「かん…せん…?…げほっごほっ!?ゆ…!?げほっ」 『あかちゃんといっしょにびょうきでゆっくりしんでね!』 ドスに病気を移されたことに気付き、まりさは驚愕し叫んだ。 「ゆうううううう!?げほっ! ま、まりさにはあかちゃんのほかにもこどもがいっぱいげほっ!ごほっ!…いるの! だがらびょうぎになんがなっでるひばはだいどおおおおおお!! ごほっ!お゛ね゛がいじばず!お゛ぐずり゛!お゛ぐずり゛わげでぐだばいいいいいい!!」 「「「「「「「「「「「「ゆっくりでていってね!!!」」」」」」」」」」」」」」 まりさはゆっくりぱちゅりー達に引き倒されて外に放り出された。 「おでがい!おぐずり!おぐずりいいいいいいいいいいいい!!!」 ぱちゅりー達の掟に一度でもドスぱちゅりー達に危害を加えたものには絶対に薬を与えないという掟がある。 故にまりさの声が聞き入れられることはなかった。 まりさは薬を諦め症候群に蝕まれた体を引き摺りながら巣に帰った。 「ゆ…くるちい…」 「がんばってね!」 「おかあさんがおくすりもってくればゆっくりできるよ!」 「もうすこしのしんぼうだよ!!」 巣の中では子まりさ達が赤ちゃんを励ましていた。 「ただい…いま…ごほっ」 「!?おかえりなさいおかあさん!はやくあかちゃんにおくすりあげてね!!」 まりさが巣に戻ると子ども達が出迎えて薬をせがんだ。 「げほっ、ごべんね、おぐずりは…ないの…」 「どういうこどおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「どうじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおお!?」 「おがあざんのばがああああああああああああああああ!!」 次々とまりさに罵倒が放たれた。 まりさは言った。 「げほっ!うるさいよ!しかたないでしょ!ないものはないよ! もんくいうおまえらなんかまりさのこどもじゃないよ!まりさのおうちからでていってね!!ごほっ!」 「う゛ああああああああああああああああああああん!!」 「おがあざんなんがもうぢらないいいいいいいいいい!!」 「ばがあああああ!おがあざんのばがあああああああ!!」 子まりさ達は泣きながら外に飛び出していった。 まりさは子まりさ達が入ってこれないように巣の穴をしっかりとふさいだ。 「おかあしゃん…ゆっくりちたいよ…」 「ごべんね…おがあざんだべだっだの…ごべんね…ごべんね…!」 それが終わるとまりさは赤ちゃんまりさの傍によりそって少しでも苦しみを和らげてあげようと 頬をこすり合わせながらただひたすら泣いて謝った。 「もっと…ゆっくりちたかったよ…」 「まりざのあがぢゃんんんんんんんん!!!うわああああああああ!ごべんねえええええええええ! ごべんねえええええええええええええええ!!!!」 それから数日後、子まりさ達が戻ってきて完全に閉じた巣の扉をなんとか抉じ開けると そこには病に倒れ息絶えた赤ちゃんまりさと母まりさが横たわっていた。 『………』 ドスぱちゅりーは肉体的に満ち足りた状態でありながらも心に何かがひっかかり続ける状態を続けていた。 その鬱憤の矛先に気まぐれに群れを一つ病で滅ぼしてみたりしてみるが一行に晴れることはなかった。 ドスぱちゅりーが、今行っていることは病気への復讐などではなく単に病気との共生生活だと 気付かない振りをするのに耐えられなくなるのはいつの日だろうか。 その日がこの王国が崩壊する日なのだ。 このSSに感想を付ける
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作者:白兎 ※虐待成分少なめ。 ※独自設定多数。 その頃、夜明けとともに隠れ家を出発した子ぱちゅりーは、 早くも河原に到着していた。 しかし、問題が解決したわけではなかった。 子ぱちゅりーは、まだ人間と話をしたことがない。 どんなふうに話せばいいのかも分からない。 それに、ゆっくりできない人間もいるということを、子ぱちゅりーは知っていた。 だから、最初に話をする相手は、慎重に選ばなければならなかった。 河原には、いつもよりたくさんの人がいた。 棒のようなものを持って、川岸にゆっくり座っているお爺さん。 あの人なら、ゆっくりできるかもしれない。 あるいは、向こうがわの茂みで、何かをしきりに探しているお兄さん。 あれは、もしかしたら、研究者というものではないかしら。 子ぱちゅりーは、そんなことを考える。 あれこそ逡巡していると、ふいに、川上のほうから、グレーの服を着た一行が現れた。 「よーし!ここで昼食にする!」 先頭を歩いていた中年の男の号令で、一同は解散し、 思い思いの場所で、箱を開け始めた。 どうやら、人間のお弁当のようだ。 こうなってしまうと、ますます誰に話しかけたら良いのか分からない。 川のそばでシートを敷き、楽しそうに談笑している3人の女性。 あの人たちなら、優しくしてくれるのではないだろうか。 いや、それとも、さっきの中年の男性に話しかけるべきか。 もしかすると、あの人が群れのリーダーかもしれない。 いやいや、それとも……。 迷っていると、子ぱちゅりーのいる茂みに向かって、若い女性が歩いて来るのが見えた。 ロングの黒髪をたなびかせて、女性は、近くにあった大きな石の上に腰掛けた。 ここでお弁当を食べるらしい。 だが、なぜだろうか。 他の群れのみんなは、何人かのグループになっている。 女は、少し猫背になると、ぱくぱくと一人で箸を動かし始めた。 なぜだろうか。 妙にこの女性が気になる。 「ゆっくりしていってね。」 子ぱちゅりーは、口もとを髪の毛でおさえた。 なぜそんなことを口走ったのか、自分にも理解できなかった。 小さな声だったが、女は聞き逃さなかったようで、こちらを振り返った。 「あら、ゆっくりじゃない。」 女は、箸を口に入れたまま、誰にともなくそうつぶやいた。 「ぱ、ぱちゅりーはぱちゅりーなのだわ。」 半ばパニックになり、とりあえず自己紹介をしておく子ぱちゅりー。 「そんなの見れば分かるわ。」 女性は笑いもせずに、冷ややかな声で言ってのけた。 子ぱちゅりーの中で、不安が広がる。 もしかして、ゆっくりできない人間に話しかけてしまったのではないだろうか。 「まあいいわ。そこでゆっくりしてなさい。」 女性は、ふたたび背を向けて、弁当を食べ始めた。 子ぱちゅりーは少し悩んだが、思い切ってこの女性に事情を話してみることにした。 なぜそんな気になったのかは、自分でも分からないのだが。 女性は、話を聞いているときも箸を休めなかった。 ときどき「へえ」とか「で?」くらいは、相槌を打ってくれた。 裁判にかけられそうになり、こうして河原まで逃げて来たことを話し終えると、 女性はちょうど食べ終わった弁当に蓋をし、手を合わせて何やら呪文のようなものを唱え、 しばらくの間、黙っていた。 「で?何がしたいわけ?」 巣を出たところまで説明すると、最後に女性が尋ねた。 「ぱ、ぱちゅは人間さんと一緒に暮らしたいのだわ。」 「どうやって?どんなふうに?」 好奇心から訊いているのでないことは、ぱちゅりーにも声音で分かった。 女性は、あくまでも、理詰めでぱちゅりーを追求してくる。 いくら子ぱちゅりーの頭がいいとは言え、人間のそれに比べれば差は明白である。 そもそも、子ぱちゅりーには、明確な答えを出すための絶対的な知識量が足りていない。 そのことを、子ぱちゅりーは、痛いほどよく理解していた。 人間はどんなところに住んでいるのだろうか。そこでどういう生活をしているのだろうか。 子ぱちゅりーは、口先で誤摩化すことを諦めた。 「むきゅ……ぱちゅにもよく分からないのだわ……。」 ところが、この返答に、女性はしごくご満悦の様子をみせた。 ゆっくりを論破したことが、それほど嬉しいのだろうか。 いや、女性の真意は、別のところにあった。 「素直でよろしい。」 子ぱちゅりーは気付いていなかった。 自分が、どれほど多くのトラップをかいくぐって来たのかを。 ぱちゅりーがお弁当をねだったら、女性は彼女を潰すつもりだった。 ぷくーをしたり、ばばあ呼ばわりしても、彼女を潰すつもりだった。 それだけではない。 もし子ぱちゅりーが自分の勉強不足を誤摩化して、 何か適当なことを言ったとしても、女性は彼女を潰すつもりだった。 なぜなら、この女性、ゆっくり駆除のお姉さんだからである。 周りにいるグレーの作業服を着た人々は、河原の清掃のアルバイトであり、 その仕事には、キャンプ場に巣食うゆっくりの駆除も含まれていた。 正直なところ、この女性も、子ぱちゅりーが最後の課題をクリアするとは、 微塵も考えていなかった。 無理もない。 これほど異能のゆっくりには、お姉さんもまだ出会ったことがなかったからである。 「本当に、群れを離れて生きたいのね?」 「むきゅ?」 「本当に人間と住みたいのかって訊いてるの。」 「も、もちろんなのだわ。」 そうだ。それしか生き残る道はない。 「じゃあ、私が連れてってあげるわ。」 「ほ、ほんとう!?」 ぱちゅりーの顔に、一筋の希望が射した。 「本当。ただし……。」 女性は、弁当ガラをリュックの中にしまうと、小振りな尻を持ち上げた。 「その群れの居場所を教えてちょうだい。」 「むきゅ……?」 ぱちゅりーには、女性の言葉の意味が分からなかった。 いや、意味は分かるのだが、意図が分からなかった。 居場所を聞いて、どうするというのだろう。 自分は、今しがたそこから逃げて来たばかりだと言うのに。 まさか、自分をリーダーに引き渡して、ご褒美をもらうつもりだろうか。 ぱちゅりーは、不安におののいた。 しかし、女性が継いだ言葉は、その不安の斜めうえであった。 「全員駆除するのよ。」 「くじょ……?」 聞き慣れない言葉だ。 街中の野良ゆっくりなら、それだけでおそろしーしーを垂れ流してしまうそれも、 野生で育った子ぱちゅりーには、ただの空気の振動にしか感じられなかった。 「簡単に言うと、殺しちゃうってこと。」 「むきゅう!?」 「今日は、それがお仕事で来たのよ。どうにも巣が見つからなくて、困ってたところ。 明日には撤収しないといけないし、巣を潰さないとボーナス出ないのよね。」 群れから離れて生きていた子ぱちゅりーは知らなかった。 河原に降りて人間のものを盗んでいるゆっくりがいることに。 それは、群れの中では公然の秘密とされており、むしろこっそり推奨されていた。 あの日、森の中で出会った子ちぇんも、実はそのために河原へ行く途中だったのだ。 もっとも、子ぱちゅりーが見つけた河原は、人間さんにはあまり人気のない場所で、 だからこそ他のゆっくりと鉢合わせになることもなかったのである。 ゆっくりの間で狩り場とされているのは、もう少し下流にある広いキャンプ場で、 そこのゴミ箱を荒らしては、戦利品をせしめていたのだ。 「こ、こ、ころしゅ……。」 全身の震えが止まらない。 もう駄目だ。 このお姉さんは、ゆっくりを殺す恐ろしいお姉さんなのだ。 自分も殺されてしまうに違いない。 そんな子ぱちゅりーの反応に、お姉さんは涼しげな顔をしている。 「あら、大丈夫よ。あんたは殺さないから。町へ行くんでしょ。」 「ほ、ほ、ほ、ほんちょに?」 余りの恐怖で、赤ちゃん言葉になってしまう子ぱちゅりー。 「本当だってば。ゆっくりの癖に、疑り深いのね。で、巣はどこにあるの?」 女性は、子ぱちゅりーの顔を凝視した。 その目は、嘘を吐いているようには見えなかった。 もしかすると、自分を殺さないというのは、本当なのかもしれない。 淡い期待が、子ぱちゅりーの餡子に、ふつふつとわいてきた。 だが、それと同時に、別の問題が子ぱちゅりーを襲った。 お姉さんに群れの居場所を教えるということは、要するに、 群れのみんなの命を引き渡すということだ。 いったいどんなことが起こるのかは、子ぱちゅりーにも容易に理解できた。 それは、ゆっくりにとって最大のタブー、ゆっくり殺しの共犯になるということ。 「ぱ、ぱちゅは……ぱちゅは……。」 「教えるの? 教えないの? それとも、まだなにかウラがあるのかしら?」 お姉さんは、そう言って一歩を踏み出した。 その振動と威圧感に、ぱちゅりーは気を失ってしまった。 「あら、もう目が覚めたの?」 ぱちゅりーが目を覚ましたとき、日は山の端にかかり始めていた。 妙な揺れを感じる。 これが地震というものかしら。 そんなことを考えたぱちゅりーであったが、すぐに誤解であると気づいた。 「むきゅ? これは自動車さん?」 「よく知ってるわね。ゆっくりはみんな『すぃー』なんて呼んでるのに。」 お姉さんは、感心していた。 一方、ぱちゅりーはそれ以上の事態が飲み込めなかった。 自分は自白してしまったのだろうか。 それとも……ごうっもんにかけられるのだろうか。 「ぱ、ぱ、ぱ、ぱちゅはどこへ行くの?」 「とりあえず、ふもとで一泊して、それから町にもどるわ」 「そ、そ、そ、そこでなにをするの?」 震えるぱちゅに、お姉さんはきょとんとした。 「町に行きたいんじゃなかったの?」 「ま、町には行きたいのだわ。でも、ごうっもんはイヤなのだわ。」 お姉さんはすこしばかりくびをひねって、それから大笑いした。 「そのことなら、もういいわよ。主任が『もう間に合わない』って言ってたし」 「しゅにん……?」 「とりあえず、あんたは潰さないでいてあげるわ。今のところはね。」 なんだか物騒なことを言われて、ぱちゅりーは身をこわばらせた。 「体調が悪いとか、そういうことはない?」 「たいちょう?」 「元気かって訊いてるのよ。」 「ぱ、ぱちゅは元気なのだわ。」 「ゆカビのチェックはしといたけど、念のためクリニックに行きましょう」 お姉さんの言葉を理解するのは、ぱちゅりーにも難しかった。 小学生が大人の会話を理解できないような、そんな状態だった。 「ひ、ひとつ聞いてもいいかしら?」 「なに?」 「ぱ、ぱちゅの群れは、どうなるのかしら…?」 お姉さんは肩をすくめてみせた。 「さぁね。今年度の駆除予算はもうないみたいだし、しばらくは安全なんじゃないの?」 またよく分からない返しをされた。 ぱちゅはそれ以上たずねる勇気がなかった。 お姉さんはそんなぱちゅりーをよそに、車の窓から空をみあげた。 「それにどうせ…。」 窓越しに広がる空は、真っ黒な雲で一面を覆われていた。 「あめさんがすごいのぜ…。」 じめじめとした空間に、リーダーまりさの声がこもった。 普通のゆっくりでは考えられない、豪勢なおうち。 群れの幹部たちのパーティーは、不穏な空気に包まれ始めていた。 テーブルのうえに乗ったごはんさんも、あまあまな花のミツも、 なかなか量が減らない。 食べているのは、こどもたちばかりだった。 「うっめっ!これめっちゃうめっ!」 「まりさ、もっとおぎょうぎよくたべるのぜ。」 リーダーまりさに注意されて、長男まりさは一瞬だけ食べるのをやめた。 だが、父親をじろりとにらみ、またがつがつと食べ始めた。 リーダーまりさのため息は、嵐の音にかき消された。 なぜこんなゲスに育ってしまったのだろう。 後悔はつきない。だが、自業自得という考えは、みじんも思い浮かばなかった。 「こんなにつよいあめさんは、はじめてなのぜ。」 「とかいはじゃないわね。」 「わかるよー。さっさとやめよー。」 妻のありすと側近ちぇんは、おたがいに相槌を打った。 そして、ありすのほうは夫に耳打ちをした。 「そろそろつぎのりーだーをきめないとだめよ。」 「……わかっているのぜ。」 ふたりは、パーティー会場を見回した。 まりさとありすのあいだには、5匹の子がいた。 そのうちの2匹がまりさ種で、のこりはありす種だった。 群れの慣例からして、この2匹のうちのどちらかが次期リーダーになるはずだった。 そして、その2匹の両方を父親まりさは評価していなかった。 「ねぇ…もういっかいくらいすっきりして…。」 「だめなのぜ。いまからそだてていたらまにあわないのぜ。」 「だいじょうぶよ。いちねんあれば。ふたりともいなかものだもの。」 「ふたりもあにがいたら、ぜったいにもめるのぜ。それに…。」 そのときだった。入り口のほうから、次男まりさがぴょんぴょんと飛び跳ねてきた。 「おとうさん!おみずさんがはいってきてるのぜ!」 「「「!?」」」 その場にいた全員が凍りついた。 リーダーまりさと側近のちぇんは、さっそく入り口の様子をみにいった。 すると、ぎっしり積み上げられた木の枝のスキマから、水が漏れているのがみえた。 「なんでおみずさんがはいってるのぜ!?」 「わからないよー!いつもどおりつくったよー!」 台風。人間ならだれでも知っている自然現象を、ゆっくりたちは知らなかった。 ここ数年、一度も直撃していなかったからだ。 災害を記録しておくという習性のないゆっくりたちには、 それだけで完全に忘れ去られてしまっていた。 「もっとコケをもってくるのぜ!おれがおさえておくのぜ!」 「わかったのぜ!」 「すぐもってくるよー!」 次男まりさと側近ちぇんは、倉庫から大量のコケを持ち出してきた。 「おとうさん、もってきたのぜ!」 「おみずさんがはいってきてるあなに…ぶべっ!?」 一瞬のできごとだった。 入り口の一部が決壊し、木の枝がリーダーまりさの目や口に突き刺さった。 「おとうさん!」 「は、はやくそこのあなを…ぐぼぼぼっ!?」 空いた穴から鉄砲水が流れ込んだ。 それを顔で受け止めたリーダーまりさは、一瞬にしてお化けのように様変わりした。 皮は剥がれ、目は水圧で飛び出し、砂糖の歯は水に溶けて流された。 ふりかえったリーダーまりさの形相に、ほかのふたりは悲鳴をあげた。 「お、おとうさんがたいへんなのぜ!」 次男まりさは、助けを呼ぼうとした。 側近ちぇんは、それを引き止めた。 「もうたすからないよー!」 「ひゃ、ひゃひゅへへ…。」 「たすけてっていってるのぜ!はなすのぜ!」 「だめだよー!」 次男まりさと側近ちぇんが揉めているところへ、ひとつの影が飛び出した。 長男まりさだった。 「やくにたたないやつらなのぜ。さっさとなおすのぜ。」 「にいさん!」 目を輝かせる次男まりさ。口もとをほころばせるリーダーまりさ。 ゲスに育ってしまった長男が、立派な態度を……。 そのよろこびは、長くは続かなかった。 「おやじはもうたすからないのぜ。さいごにやくにたってもらうのぜ。」 長男まりさはそう言って、父親を穴に押し込もうとした。 抵抗する父親まりさ。だが、水鉄砲を食らった身では、まったく力が出なかった。 「にいさん!なにをしてるの!?」 「ゆっくりはみずにとけたらドロドロになるのぜ。あなもふさがるのぜ。」 あろうことか、長男まりさは父親を凝固剤に使おうとしているのだった。 群れのリーダーに対する恐ろしい仕打ち。次男まりさは蒼白になった。 「ちぇんおじさん!にいさんをとめて!」 次男まりさは、側近ちぇんに助けを求めた。 ところが、ちぇんはまったくの無表情で、手を貸してくれなかった。 「ちぇんおじさん!」 「わかるよー…むのうなリーダーはしんだほうがいいんだよー…。」 「!?」 ちぇんの瞳に、侮蔑の炎が燃え上がる。 このぐずなリーダーは、ぱちゅりーに逃げられた。 自慢の息子、長男ちぇん殺しの容疑者であるぱちゅりーを逃がした。 あのとき、長男まりさのような残忍な行動に出ていればよかったのだ。 さいっばんなどせず、すぐに殺しておけばよかったのだ。 「にいさん!とうさんをはなせ!」 次男まりさは長男まりさに飛びかかった。が、すぐに弾き飛ばされた。 ガタイだけは群れ一番なのだ。そこにゲスの力が加わっていた。 父親まりさは穴に頭を突っ込み、もるんもるんと尻を振るばかりだった。 「あかゆみたいにケツをふってもムダなのぜ。」 「…!…!」 「さっさとまりささまにリーダーをつがせておけばよかったのぜ。そうすれば…。」 「!!!」 ぶりゅう!ぶしゃぁああああ! 父親まりさの肛門が爆ぜた。 口をあけて抵抗していたのだろう。 鉄砲水の第二弾が、肛門まで一気に突き抜けたのだ。 父親まりさは、水圧を最大にしたゴムホースのように跳ね回った。 「くっさ!うんうんくっさ!」 うんうんの混ざった水が、あたりに流れ込む。 長男まりさは、あろうことか父親まりさの体からとびのいた。 その拍子に、小枝のダムは決壊を始めた。 「た、たすけてよー!」 「おまえたちがとめるのぜ!」 長男まりさは、次男まりさとちぇんを突き飛ばして、巣の奥へかけだした。 「れいむ!すのいちばんおくににげるのぜ!」 長男まりさは、即席舞台のうえにたたずむれいむに声をかけた。 あの歌姫のれいむだった。 「れいむ!なにをぐずぐずしているのぜ!」 「……。」 「れいむ!」 長男まりさは、れいむのもみあげを引っ張った。 すると、彼女の体はぐずりと崩れ去り……何百という虫が這い出てきた。 「なんなのぜぇ!!!!!!!!!!?」 絶叫するまりさ。 あたりを見回すと、パーティー客はみな、一様にもぞもぞと動いていた。 それは、皮下を這いずり廻る虫たちの狂宴だった。 台風を察知して、土中の生き物がこの空間に集まってきたのだ。 まりさは逃げようとした。 れいむのもみあげに触れたとき、いや、この部屋にもどったとき、運命は決していた。 蟻の大群が長男まりさを取り囲み始めた。 父親まりさのうんうん汚水の匂いにつられたのだ。 「ぐる”な”ぁ”あ”あ”あ”!!!ま”り”ざばだべも”の”じ”ゃ”な”い”い”ぃ”い”い”!!!!」 まりさの目に、一匹の蟻が噛み付く。 激痛に悶えるまりさ。 ゴマをまぶしたようなまんじゅうができあがるまで、数秒とはかからなかった。 「ま”り”ざは”ぜがい”ざい”っ”ぎょ”う”な”ん”だ”ぼぉおおお!!!!!!!!」 死のダンスをおどるまりさ。 その声は、にわかに台風の轟音にかきけされた。 翌朝、野原にはさわやかな風が吹いていた。 なぎたおされた草に、露がともる。 ところどころに浮いたおかざりも、朝日を浴びて美しく光っていた。 数年、あるいは十数年続いたのかもしれない群れは消えた。 ただひとつの叡智を輩出する以外には、なんの意味もなかったかのように。 終わり これまでに書いた作品 ダスキユのある風景(前編) ダスキユのある風景(中編) ダスキユのある風景(後編) 英雄の条件 ふわふわと壊れゆく家族 ♂れいむを探して 乞食れいむのおうた ある群れと、1匹のぱちゅりーの記録(前編) ある群れと、1匹のぱちゅりーの記録(中編)
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ああゆっちゅりーの世話にも慣れてきてちゅっちゅして幸せに暮らしてたい そしたらある日突然ゆ魔理沙が家に入ってきて俺のゆっチェさんと仲良くなって もちろんその魔理沙はゆっチェさんが目を離したタイミングで始末するんだけど 汚い言葉とか外の世界の事とか知ったゆっチェさんが私も外に出たいとか ゆっくりできないからおじさん出てってとか言い始めて思わず手を出そうとして危うく自制するんだけど 殴られる!というストレスだけでゆっチェさん死んじゃって ゆっチェさんの儚さを噛みしめながら美味しく頂きたい
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「うぅーっ!」 満月の夜、ゆっくりれみりゃことゆっくりゃの悲鳴が森の中で木霊する。 獰猛な獣たちも寝静まった深夜、静寂が支配する世界で2匹の羽根が風を切り裂いていた。 「ゆぅぅうぅううぅっ!」 ゆっくりゃを追いかけているのはゆっくりフランことゆふらん。自分のテリトリーにのこのこと入ってきた大好物を追いかけている。早く口に入れようと、口は飛びながら大きく開かれ、ゆふらんの牙が月明かりを反射していた。 「うーっ! うーっ!」 前を行くゆっくりゃの目には涙。絶望的な状況に、必死に死を抗おうと、持てる全力で前に進んでいた。 ゆっくりゃにとって、ゆふらんと出会う事は死を意味する。飛行能力、身体能力、牙の鋭さ、どれをとってもゆっくりゃはゆふらんには適わない。唯一あるなら個体数だが、お互いにゆっくりでも群れを成さない種族。数が多くても1対1で相対しては意味がない。 ゆふらんとゆっくりゃの距離が徐々に縮まっていく。全てにおいて上をいくゆふらんがゆっくりゃに追いつけない道理はない。このまま行けば、笑顔で開かれた大きな口にゆっくりゃの体は収まるだろう。 では、なぜそれを知っているゆっくりゃは絶望しないのか。 ゆっくりゃの視界に、闇夜でも目を引く紫色が目に入った。 「うーっ!」 絶望に彩られたゆっくりゃの顔に笑顔が戻る。 そのまま前へ進んでいくと、紫色の正体がはっきりしてきた。 「むきゅーっ!」 それは、ゆっくりパチュリーの姿だった。 「うー♪」 「むきゅ~」 お互いに声を掛け合うと、ゆっくりゃはそのままゆっくりパチュリーことゆちゅりーの後ろへ隠れていく。 ゆちゅりーはその場に鎮座し、ゆっくりゃの脅威へと立ち向かう。 その様子に、いつの間にかゆふらんはその場に止まり、苦々しい表情でゆちゅりーを睨みつけていた。 「……う、ううぅううぅっ!」 ゆふらんはゆっくりゃだけでなく他のゆっくりも食べて過ごしている。ゆふらんを食べる捕食種も存在するが、その数は少なく、好物として狙われてはいないため、大きな脅威にはならない。ゆっくりの中でもゆふらんは天敵のいない、好き勝手できる強者といえた。 しかし、そんなゆふらんが動かない。 このゆふらんは同じ仲間と比べても随分長生きしていた。 だから知っていたのだ。このままゆっくりゃを追いかけても、捕まえられないことを。 「……ゆっくりしねっ!」 吐き捨てるように叫ぶと、そのままゆふらんは飛び去っていった。 ゆちゅりーの後ろから、ゆっくりゃが顔を出す。その顔に咲いているのは満面の笑みだ。 「うぅーっ♪」 上機嫌で、ゆっくりゃはゆちゅりーに声をかけた。 ゆちゅりーの目が遠くを見ていた。 「む、むきゅー……」 「うぅっ!?」 病弱なゆちゅりーに、夜風は体に悪い。 倒れそうに揺れているゆちゅりーを、ゆっくりゃは慌てて体全体で支えていた。 ゆっくりゃ達の飛んでいた森の中には、樹齢3桁を超えるような樹が数多く存在する。人が食べられる実を毎年実らせて生活を助けたり、30センチを超える大きな葉が秋になるとその身を黄色に染めて散り、人々を楽しませてくれる樹もあったりと、種類も千差万別だ。 そんな樹の中で、体を大きく蝕れ、大きな穴が空いた樹木がある。 その穴の中にゆっくりゃは飛びながら、ゆちゅりーは転がりながら入っていった。 「うーっ♪」 「うー♪」 「ぅぅーっ♪」 中に入った途端、樹木の中は賑わい始める。ゆっくりゃの声に、帰りを待ちわびていた子ゆっくりゃ達は感情を爆発させて出迎えた。 「むきゅーぅ……」 親と子、大小違いのある肉まんが飛び回って喜んでいるのを尻目に見て、ゆちゅりーは1人奥へと転がり進んでいく。 「むきゅー」 予め計っておいたかのような正確さで、自分の定位置に戻ると、息を吐いてゆっくりし始めた。脱力しているが、体に目立った変化はない。 子供達との騒ぎも終えて、ゆっくりゃが近づいてきた。 「うーっ♪」 体を擦り合わせ、お互いに幸せへ浸ろうとする。 「むきゅっ!」 「うぅっ!」 夢見るゆっくりゃを覚ますように、ゆちゅりーは体を揺れ動かした。 「……うぅーっ?」 「……」 ゆっくりゃの声にも応えようとしない。ゆちゅりーの気持ちがわからないゆっくりゃは、不安を声に滲ませながら窺い始めた。 「うぅっ」 「……」 「うぅ、ううっ!」 「むきゅっ!」 突き飛ばすように大きく声を上げる。普段から声も態度もトロいゆちゅりーにとって珍しい事だった。 「……うー……」 いくら言っても答えてくれないゆちゅりーに、ゆっくりゃは沈み始めた。飛ぶのを止め、丸い肉まんな体を地面に付け、羽根を畳んで下を見つめている。 「……ぅー……」 2人の一変した空気に、遠巻きから見ていた子ゆっくりゃ達の声も悲しみに満ちている。 「……」 沈んだ空気の中で、言葉を切り出したのはゆちゅりーだった。 「……むきゅぅ」 「うぅっ?」 「むきゅっ!」 体を転がして、ゆっくりゃに迫っていく。 「ぅぅっ!」 「ぅーっ!」 慌てた子供達が駆け寄ってくるが、ゆちゅりーの熱は収まらない。ゆっくりゃに近づき、無言の視線で責め続けていた。 ゆっくりゃがゆふらんに会うような行動を取るのは自殺行為だ。その脅威を知っているものは、外を出歩く際も最低限にとどめ、見つからないうちに帰るようにしている。特にこのゆっくりゃは、ゆちゅりーの助言と自身の経験から普通よりも多く危険な目に遭いながらもどうにか生き延びていた。 そんなゆっくりゃが、今夜はいつまで経っても帰ってこない。 心配して外に出ていたゆちゅりーにとって、すぐにこうして子供達と笑いあっているゆっくりゃの態度には腹が立った。 「……ゴホッ! ゲホッ!」 「うっ!」 「ぅぅーっ!」 激しく動いたからか、突然咳き込み始めるゆちゅりー。一端、ゆっくりゃから離れ、部屋の隅で咳を繰り返す。 「……」 向けられた背にゆっくりゃは飛びながら近づくと、背中を撫でるように体を密着させた。 「むっ……」 「うー……」 そのまま体を上下に小さく動かす。 次第に気分が落ち着いてきたのか、ゆちゅりーの咳は治まったが、ゆっくりゃは体を擦り合わせ続ける。求愛行動にみえるそれは、しかし求めるような激しさはなく、感謝と謝罪の込められた行動だった。 「……むきゅうー」 「うーっ」 「むきゅう」 「うーっ……」 ゆちゅりーはそっぽを向いたまま続く会話。端から見れば喧嘩にみえるが、2人に流れる空気は先ほどよりも険悪ではない。 「ぅぅっー?」 「ぅーっ?」 状況がよくわからない子ゆっくりゃ達は、お互い不思議そうに顔を見合わせるのだった。 「うぅぅううぅううぅっ」 唸るゆふらん、その声は風に乗り、辺りのゆっくり達に恐怖を振りまいている。 ゆっくりゃと同じく夜行性のゆふらんは、普段なら辺りを飛び回って新たな獲物を探している頃だ。しかしゆふらんは寝床に戻ると動こうとせず、ひたすら唸り声を上げ続けていた。 頭に浮かぶのは、紫色をしたゆっくりの姿。 「うぅうううぅううぅうぅっ!」 このゆふらんがゆちゅりーに狩りを邪魔されたのは1度だけではなかった。ゆふらんという天敵のいるゆっくりゃにとって、追い返してくれるゆちゅりーとの相性は良く、多くがペアで暮らしているからだ。 ゆふらんは初めてゆちゅりーと会った時を思い出す。庇っているゆっくりゃと2匹まとめて食べてやろうと息巻いて襲いかかり、ゆちゅりーのあまりの硬さに自慢の歯が通らなかった事を。 更に思い出す。別の機会ではゆちゅりーを持ち上げ、2匹をバラバラにしようとしたが、ゆちゅりーの硬さが捕らえた時のフックを甘くし、持ち上げる前に外れてしまった。 動きもトロく、空も飛べないそんなゆっくりに手も足も出せない事実がゆふらんを苛ただせた。 「うぅううぅうううぅうっ!」 更に声を上げるゆふらん。その体は大きく震え、体液が滲み出て来ている。 唸り声が憤怒から、いつしか苦痛を耐えるものへ変わっていた。 「ゆううぅううぅうっ!」 突然、体中に痛みが走り始める。初めての状況にゆふらんも動揺を隠せない。いつしか羽根を翻して飛び始める。 「ううぅううぅううぅっ!」 声はより大きくなり、ただただ辺りを意味もなく飛び回っている。 夜が明けるまで、ゆふらんの苦しむ声が森の中に響き渡った。 せせらぎの音がゆちゅりーは好きだった。 「むきゅー……」 住処の近くにある川辺で、静かに音を聞き入っている。しかし聞こえてくる音はせせらぎだけではない。 少し離れた所を、子ゆっくりゃ達が飛び回って遊んでいた。 「うぅーっ!」 「うー♪」 追いかけっこをしているのか、前にいる子ゆっくりゃをただひたすら追いかけている。 せせらぎに子ゆっくりゃ達の楽しげな声も加わって、ゆちゅりーは心ゆくまでゆっくりしていた。 近くにゆっくりゃの姿は見えない。ゆっくりゃは夜行性なので、今は住処で眠っている。しかし子ゆっくりゃは活動が不規則なので、昼間に起きている時はゆちゅりーがしっかりと面倒を見ていた。 のどかに過ごすゆちゅりーだったが、しかし次第に子ゆっくりゃの声が遠ざかっていく。 見てみると追いかけっこを止めた2匹は森の中へと入っていっていた。 「むきゅー……」 ゆちゅりーの口からため息が漏れる。昼間は天敵のゆふらんも寝ている時間なので危険度は落ちるものの、今度はゆちゅりーでも食べられるような動物たちが動き始める。なるべく動き回るのは控えるべきだが、子供達にそれを理解させるのは無理な話だ。 動きの遅いゆちゅりーに、素早い子ゆっくりゃたちを追いかけるのは骨が折れる。憂鬱になりながら、ゆちゅりーは森の中へと転がっていった。 しかしゆちゅりーの予想を裏切り、子ゆっくりゃ達はすぐに見つかった。 「ぅぅ~」 「ぅぅ~~」 樹に絡みついた蔓を口に咥え、飛び上がって引っ張っている。 「むきゅっ?」 子供達の変わった行動にゆちゅりーは困惑する。遠目からだとそれが何の茎なのかわからない、改めて近づこうと転がり始めた。 「ぅぅ~っ」 「ぅ~~……うっ!?」 土が盛り上がる。 ゆちゅりーが着くよりも早く、子ゆっくりゃはそれを掘り出していた。 「むきゅう~」 それは紫芋な子ゆちゅりーだった。 「ぅーっ!」 「ぅぅーっ!」 「むきゅー」 笑顔で声をかける子ゆっくりに、あまり表情を変えずに子ゆちゅりーは応えた。 ようやく転がり着いたゆちゅりーは、子ゆっくりゃ達と話している子ゆちゅりーを見て驚き戸惑った。 「むきゅー……」 たぶん子ゆっくりゃ達は子ゆちゅりーと一緒に住もうと思っている。だがそれは無理な話だ。 2人の子供を抱えた今でも危険は多い。ここに子ゆちゅりーが加わればなおさら危険度は上がるだろう。3人の子供を守っていける自信がゆちゅりーにはなかった。 ゆちゅりーは、子ゆちゅりーの頭とつながっていた茎を口で切り離す。 「むきゅっ?」 「むきゅー」 子ゆちゅりーに状況を伝えるゆちゅりー。土の中で育っている為、子ゆちゅりーは産まれたときから普通に動くことが出来る。運がよければ別のゆっくりゃと出会い、また特有の賢さを駆使して1匹生き抜いていけるだろう。それが唯一の慰めだった。 「むきゅー」 別れとお礼を告げて、そのまま転がっていく。 「ぅーっ!」 「ぅぅーっ!」 子ゆっくりゃが呼び止めようとするが、子ゆちゅりーは止まることなく転がっていく。 ゆちゅりーは思い出していた。 土の中で目覚め、ひたすら声を出して呼びかけていた事を。 暗く、じめじめした空気に徐々に気が重くなっていった事を。 叫ぶゆちゅりーの声を聞きつけ、頑張って自分を掘り出してくれたゆっくりゃの事を。 子ゆちゅりーの姿が見えなくなるまで、ゆちゅりーはじっとその場で見送り続けた。 「ゆぅううぅううぅうぅっ!」 ゆっくりれいむことれいむの悲鳴が響き渡る。 抵抗する間もなく頭からどんどん食べられていき、れいむはゆっくりゃのお腹の中に収まった。 「うー♪」 夜にのこのこと動いていた思わぬ大物を見つけ、ゆっくりゃは上機嫌だ。さらなるエサを探そうと、その場を飛び立っていった。 ゆちゅりーにエサを探すのは難しい。動きが遅いのもあるが、何よりその病弱さからすぐに咳き込み、頭痛に襲われるからだ。夜の外は危険でもエサ探しだけはどうしても欠かせなかった。 ゆっくりゃは飛び回る。夜行性ながら自由に動き回れないゆっくりゃにとってこれは唯一ストレス解消となる時間。エサを探しながら文字通り羽根を伸ばしていた。 何度か巣へエサを持ち帰り、自分のエサも先ほどのれいむで補えた。後は帰るだけである。 「うーっ」 ゆっくりゃは考えていた。昨日は軽率な事をしてゆちゅりーを怒らせてしまった。どうにかお詫びがしたい。ゆちゅりーの好物をたくさん取ってきて喜ばせてあげたい。 他のゆっくりや虫などを食べないゆちゅりーのエサは植物だが、その中でもゆちゅりーの好物である果実は樹に生えている為、採るのはゆっくりゃにしか出来ない。滅多に食べられない好物があれば、お詫びとしては充分だろう。 しかし、その樹の付近には必ずゆふらん達の目が光っている。他のゆっくりゃ達も同じ事を考えて採りにいくため、絶好の狩り場になっているのだ。 昨日追いかけられた記憶がゆっくりゃに蘇る。 「……」 しかしゆっくりゃが求めたのは、ゆちゅりーの笑顔だった。 「うーっ!」 迷いを振り切り、そのまま好物のある樹へと飛んでいく。 いくつもの樹の間を縫っていき、目的の場所へたどり着いた。 「う~♪」 上には満月が輝く中、真下に生える樹には赤い実がなっている。 「うっ?」 ゆっくりゃに影が差す。自然と上を見上げる。 その満月を隠すように羽根を広げ、ゆふらんが飛んでいた。 昨日、追いかけてきたゆふらんだった。 「うーっ!!」 「ゆっくりしね!」 慌てて赤い実をもぎ取り、飛び去っていくゆっくりゃ。追いかけるゆふらん。口に咥えた実が重いが、ゆっくりゃが口を開くことはなかった。 「うーっ! うーっ!」 「ゆっくりしねっ、しねぇええぇぇぇえぇっ!」 昨日と同じように縮まっていく距離。しかし昨日ほど巣からは離れていない。 ほどなくして、ゆちゅりーの姿が見えた。 「うー♪」 口を開かないように喜び、そして目を見開いて驚愕した。 「むきゅーっ!」 「ゆっくりしね!」 「しねっ!」 「しねぇえぇぇぇええぇっ!」 ゆちゅりーが3匹のゆふらんに襲われていた。ゆちゅりーは無事だが、たくさん囓られたのだろう。その体には擦り傷が無数に走っていた。 「うーっ!」 口から実を離すと、逆上したゆっくりゃが突進していく。 それを、後ろから追いかけ続けていたゆふらんが撃退した。 「うぅーーっ!?」 「ゆっゆっゆっ!」 後ろから体当たりを喰らい、地面へと転がっていくゆっくりゃ。 「むきゅーっ!」 ゆちゅりーの悲痛な声が響く。 ゆっくりゃの広げたままだった羽根は地面で擦れ、大きく痛んでいる。しばらくその場を動けそうになかった。 しかしそんな好物からゆふらんは目を離すと、そのままゆちゅりーへと近づいて来た。 「ゆー……」 「む、むきゅ……」 また囓られるのを恐れ、身構えるゆちゅりー。 しかしゆふらんは囓ろうとはせず、ゆちゅりーを捕まえた。 「むきゅっ!?」 「ゆっゆっゆっ」 同時に動くゆふらん達。4方向から捕まえられ、ゆちゅりーの体が宙を舞った。 「むきゅーーーっ!?」 「ゆっくりしねっ!」 ゆちゅりーの悲鳴にゆふらん達の大合唱が重なる。 この日初めて、ゆちゅりーは空を飛んでいた。 死刑執行へと向かう、飛行だった。 「むきゅー! むきゅー!」 周りを囲むゆふらんへ罵声を浴びせるゆちゅりー、しかし暴れることはない。既に周りの樹よりも高い所をゆふらんは飛んでいる。ゆちゅりーは、昔ゆふらんに落とされ、地面に跡形もなく飛び散ったゆっくりを思い出していた。 「むきゅー!」 声による必死の抵抗が続く。しかしゆふらんは何も言わず、ただ笑みを浮かべている。 次第に、大きな建物が見えてきた。 「むきゅ?」 同時に高度を下げ始めるゆふらん。 紅魔館の目の前までやって来ると、ゆふらん達はそのまま飛ぶのを止め、その場に停止した。 「む……」 初めて、ゆちゅりーの声に返事をする。 「ゆっくりしねっ!」 「むきゅぅうぅううぅっ!?」 初めて味わう落下に、思わずゆちゅりーの口から悲鳴が漏れた。 ゆふらん達が止まったのは紅魔館の門前。 ゆちゅりーを待っていたのは、扉から上に伸びた先の鋭い串だった。 「むきゅうぅうぅうぅうぅっ!!」 落下速度もあり、串はゆちゅりーの硬い体を1度に串刺しにしていた。 初めて味わう痛み。鉄の通り抜けるおぞましい感触とその激痛が、ゆちゅりーに余裕を失わせていく。 「い゛だい゛ぃいいいぃいいいぃいぃっ!」 泣き叫ぶゆちゅりー。ようやく聞けた断末魔の叫びに、ゆふらん達はお互いに飛び回りながら喜びを露わにしていた。 本来、我の強いゆふらん達が群れを成すことはない。 このゆふらん達は、同じゆふらんから産まれた分身だった。 長く生きたゆふらんは、次第に同じ思考を持つ分身が4つ産まれ、それからは4匹で行動し始める。違うもの同士ではない、同じもの同士だったからこそ成功した、ゆちゅりー捕縛だった。 「ケケケケケケケケケケケッ!」 1匹がゆちゅりーに体当たりする。 「むぎゅっ!」 突き刺さった串が中から体に食い込み、痛みがさらに増していく。 「や゛め゛でぇえええぇぇぇっ!! ゲホッ、ゴホッ!」 「ゲゲゲゲゲゲゲッ!!」 ゆちゅりーからの誓願な悲鳴に、ゆふらんの笑みがますます深くなる。 次へ次へと順番に体当たりしていき、ゆちゅりーの悲鳴が木霊した。、 「ゆっくりしねっ!」 「ゆっくりじねっ!」 「じねぇぇえぇえぇっ!!」 ゆちゅりーを中心にゆふらん達の宴が盛り上がっていく。 そこに大きな衝撃と共に邪魔が入った。 「うーっ!!」 「むきゅっ!?」 その光景に、一瞬ゆちゅりーは鉄の感触と痛みを忘れた。 ゆっくりゃが、ゆふらんに向かって突撃していた。 急加速で突っ込まれ、ゆふらんは遠くへ飛ばされていく。 しかし、残った3匹は躊躇無くゆっくりゃへ襲いかかった。 「しねっ!」 「ゆっくりしねっ!」 「むきゅうぅううぅううぅっ! やめ゛でぇええぇえぇぇえっ!」 悲痛な悲鳴が響く中、ゆっくりゃの体が囓られる。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」 気づけば残った2匹はゆっくりゃの後ろへ回り、羽根を囓ると、そのまま力任せに引っ張った。 布を裂くような音が響いた。 「ぎゃあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁっ!」 背中から肉汁があふれ出てくる。羽根を失ったゆっくりゃはもう飛び続けられず、そのまま地面に落下した。 「むきゅうぅうぅっ!」 「……うっ、うっ~」 地面にぶつかり体が跳ねたが、下に大きな石がなく、草の上に転がりながらゆっくりゃはどうにか息をしている。 その場に起き上がるゆっくりゃを見て、ゆふらんは静かに近づいていった。 「むきゅーーっ!」 危機を知らせようと叫ぶゆちゅりー。しかしゆっくりゃは、その場でただ跳び跳ね続けている。 やがてゆふらんがゆっくりゃにかぶりつくが、ゆっくりゃは飛び跳ねるのを止めなかった。 「ゆっくりしねっ!」 「う、うぅ~っ!」 意志の込められた声が響く。 「たすける。ぜったいたすけるっ!」 飛び跳ねていたのは、ゆちゅりーへ近づこうとする現れだった。 だんだんお腹の空いてきたゆふらん達は、食べられないゆちゅりーは放っておき、ゆっくりゃの方へと近づいていく。 「に゛げでぇええぇえぇっーーーーーーーっ!!」 突然、ゆちゅりーが今まで1番大きな声を上げた。 思わず振り返るゆふらんたち、振り向いた3匹全員の目が赤く光り、瞳孔が開いている。まだそんな元気があったのかと、虐待を楽しむ狂気の瞳だった。 3匹が引き返してきたのを見て、むちゅりーは覚悟を決めていた。 あのまま3匹がゆっくりゃの元にいけば、瞬く間にゆっくりゃは食べられてしまっただろう。 せめて自分が惹きつけている間に逃げて欲しい。ゆちゅりーはそう願っていた。 3匹が同時にゆちゅりーに突撃してくる。軋む体。体が硬いとはいえ、痛みは人と変わらない。中から割れそうな痛みに、ゆちゅりーの顔が歪む。 「ケケケケケケッ!」 「む゛ぎぁっ!」 間髪入れない攻めに、脳天まで響く痛みが走った。 痛みに体をしびれさせていると、ゆふらんからしばらく攻撃が来ない。 「……?」 不思議に思った瞬間、3匹に囲まれ、体を捕まえられていた。 「むきゅっ!?」 羽根を羽ばたかせ、またゆちゅりーを持ち上げようとする3匹。 串に中身が擦られ、ゆちゅりーの神経を刺激していく。 「むぎっ! ぎぅっ!!」 どうにか串からゆちゅりーの体が抜けた。 空いた穴から見える紫色の身。自分の体を通って空気が抜けるのが手に取るようにわかった。 瞬間、ゆちゅりーはまた浮遊感を味わった。 「むぎぃゅゅゆ゛ゅゅゆ゛ゅゅっ!!」 ゆちゅりーの体にまた串が刺さる。先に空いた穴を通るように2本目のトンネルが貫通した。 またゆふらん達がゆちゅりーの周りに集まっていく。 同じように引っ張り上げられ、また体が宙を浮く。 しかし落下していく際の光景には違いがあった。 目に見えていた串が、目の前まで迫り、そのまま見えなくなった事だ。 ゆちゅりーを持ち上げた3匹は、離す際にひねりを咥えることで、刺さる場所を変え、今回はゆちゅりーの右目に串が突き刺さった。 「む゛ぎゃあ゛あ゛ぁあ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛っ!!」 ゼリーで出来た目玉の欠片が、突き通った串全体を濡らしていった。 そうして持ち上げられ、穴が増え、体当たりをされ、ようやくゆふらんが疲れて来た頃、ゆちゅりーの意識はたゆたっていた。右目に空いた串の後が特に痛々しい。体を支配するのは痛みと、奥からこみ上げてくる嘔吐感、そして頭痛。病弱という体質が、ここに来てなおゆちゅりーをいたぶっている。 疲れから攻撃が止まり、ゆちゅりーの思考はわずかに正常に戻っていく。 ふと、何か違和感を感じた。 それがなんなのか確認する間もなく、ゆふらんからまた攻撃が開始される。もはや挨拶代わりになりつつある体当たりが、まず1度、2度、3度、4度……。そこでゆちゅりーは気づいた。 周りを飛んでいるゆふらんは、いつの間にか4匹になっている。 続けての体当たりに視界が歪む。飛びそうになった意識を何とか呼び戻し、ゆちゅりーは地面を見た。 ずっとゆっくりゃが飛び跳ねていた場所に。 ゆっくりゃの帽子が1つ、落ちていた。 「あ゛あ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あ゛っ!!」 乾いた音が鳴る。 ゆちゅりーに、ヒビが入った瞬間だった。 子ゆっくりゃたちは静かに待っていた。 「ぅ~」 「ぅーっ」 住処である樹の中で、声を潜めながらゆっくりゃ達の帰りを待ちわびている。 今まで2匹が住処を離れていた事は何度かあるものの、これほどの長時間留守にすることはなかった。子ゆっくりゃに不安がよぎる。 しかし子ゆっくりゃ達は動かなかった。 帰りの遅いゆっくりゃに、探しに出たゆちゅりーからここを動かない事とよく言い聞かされていたからだ。 子ゆっくりゃ達にとって、産まれた頃から面倒を見てくれたゆちゅりーは誰よりも信頼出来る相手だ。お母さんのゆっくりゃがたまに逆らっているけど、どうして逆らう気になるのか子ゆっくりゃ達にはわからなかった。 子ゆっくりゃ達は、お互いの顔を合わせず、そのまま宙を見て過ごしている。顔を合わせると泣き出してしまいそうだ。 ふと入り口に、誰かの気配がする。見るとゆっくりゃらしき影が見える。 思わず、子ゆっくりゃ達は飛び上がった。 今までなかった強い不安から解放され、思わず、子ゆっくりゃ達は初めて人の言葉を喋っていた。 「おかえりなちゃい!」 「うー♪ ゆっくりしてねぇ!」 影は応える。 「ゆっくりしねっ!」 産まれて初めての言葉は、そのまま最後の言葉になっていった。 End 最後まで読んでくれてありがとうございます。 ゆっくりんかわいいよゆっくりんりんⅡを読んでやっぱゆちゅりーは虐待に向いているな! とあらためて思い、すげぇ数の暴力にぼこぼこにされるゆちゅりーが書きたくて書きました。変則すぎてごめんなさい。 しかもフランの分身や虐待方法はゆっくりフランの人と被ってるし、羽根千切ってるのはgifと被ってるし、目の玉がゼリーなのはどれが始めだったか思い出せない、スミマセン。 前からゆちゅりーは虐待したいなと思っていたんですが『ゆちゅりー虐待する → 病弱だから死ぬ』というのがあってどうにも虐待しづらかった。しかしよくよく考えたら『弱っても中身があるから死なない』って設定にすればいいじゃないかと気づき、今回のようになりました。 ただ硬くしたのはイマイチだった気がする。これのせいで結局虐待が中途半端になったような……しかし、どうしてもこれ以外にゆふらんを追い返せる理由が思いつかなくて……。あと、今回は本当にせっぱ詰まると日本語を喋るようにしていますが、これも何だか無駄設定だったかも。「むきゅー」「うー♪」で会話させたかっただけなんですが。 いっそ人間に捕まって蒸されて、スイートポテトと作ろうとそのまま少しずつこされていく話にすればよかっただろうか……ああ腹減った。 ムラのある文章で申し訳ないですが、少しでも、楽しんでもらえたら幸いです。 by 762
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試行錯誤中なのでゆっくりの台詞に漢字を使います あるぱちゅりーとまりさの番に子どもが誕生した 胎児型出産で生まれたためぱちゅりー種が1匹、まりさ種が2匹の3匹 二匹から見ればとてもゆっくりとした子ども達だ 「まりさは子ども達に狩りを教えてくるよ!」 まりさは自分と同じ種である子どもを連れて狩りに出掛けていく 胎児型で生まれ、既に子ゆっくりではあるがまだ食べられる物の知識は無い 親が同伴して食べられる物とそうでない物を教えていく 他にも帽子を使った河渡りなど 素に残ったぱちゅりーはぱちゅりー種の子どもに自分の知識を受け継がせる これが基本的なこの2種の番である 「この草さんはとっても苦いのよ。けど、病気の時はこれを食べるとお薬になるわ」 今、ぱちゅりーが子どもに説明しているのは薬になる草だ この草は苦いがゆっくりにとっては薬になる いざというときのために常備しておいて損はない 他にも怪我に効く薬草を子どもに教えていく 体の弱いぱちゅりー種を生かすものは知識だ ぱちゅりー種はその知能を生かし群のまとめ役や補佐役をすることが多い つまり、知識のないぱちゅりー種に価値はないと言っても過言ではない とは言ってもそのようなぱちゅりー種は極々稀 この子ぱちゅりーも親から知識をドンドン吸収している 「むきゅ!分かったわ!」 親ぱちゅりーの授業は続いていく 野生で生きていく上で知識は伝えきれないほどある 「それから人間さんの群の近くに行ってはだめよ…むきゅ?」 親ぱちゅりーが子ぱちゅりーを見ると子ぱちゅりーは外を眺めていた まるで自分も外で走り回りたいと言わんばかりに 「聞いてるの?まだじゅぎょう中よ!」 「むきゅ、ごめんなさい…でも…」 体の弱いぱちゅりー種は運動が得意ではない 外で遊び回ると行ってもまりさ種やれいむ種ほど激しくは動けないのだ だと言うのに子ぱちゅりーは体を動かしたくてうずうずしている 「仕方ないわね…」 親ぱちゅりーはため息を付く 授業が終わったらこの子を外に出してあげよう 「授業が終わったらお外に行きましょう」 「むきゅぅ!」 授業が終わるとこの親子は広場にやってきた 広場は群の近くで一番日当たりがよい場所 開けていてゆっくり達が集まり一種のゆっくりプレイスとも言える 子ども達は思い思いの方法で遊び、大人達はそれを見守っている ぱちゅりーが加わったグループではかけっこをしていた 「わかるよーちぇんがいちばんなんだねー」 その中でちぇんは一番速かった 元々ちぇん種はすばしっこいがそれを差し引いてもちぇんは速かった ちぇんは親譲りのこのあしが自慢だった いつか自分も親のように素早さを生かした狩りをしようと思っているのだ 「やっぱりちぇんははやいね!」 「まりさはゆっくりおいつけないよ!」 「わかるよーはずかしいだねー」 仲間から賞賛を浴び思わずちぇんは照れてしまう 「もういちどよ!つぎはありすがいちばんよ!」 そこにありすが声を掛けて再びかけっこが始まる ちぇん、ありす、まりさ、れいむが位置につく そしてぱちゅりーがスタートの合図を送るのだが 「ぱちゅりー?はやくあいずをしてね!」 ぱちゅりーはモジモジしていてなかなか合図を出さなかった 「わからないよーどうしたのー?」 優しくちぇんが問いかける、と 「…むきゅ、ぱちゅりーもいっしょにかけっこがしたいわ」 この発言に他のゆっくりは驚いた ぱちゅりー種は病弱で生きるために狩りをしたりするがあまり体が丈夫ではない ぜんそくを起こして時に中身を嘔吐してしまう 「ぱちゅりーはあぶないよ!それにあいずがないとはしれないよ!」 「むきゅ…」 ぱちゅりーを心配してかそれともお前には無理だとでも言いたいのか まりさにぱちゅりーには危ないと告げる だが、ぱちゅりーとて諦めきれない しかし、まりさの言うとおり合図がないと競争が出来ないのも事実だった ぱちゅりーにはそれが分かり困ってしまった 「わかるよー!ちぇんがあいずをするからぱちゅりーははしてねー」 そこにちぇんが助け船を出す 自分は良いからぱちゅりーが走ればいい ちぇんは合図を送る係を申し出た が、まりさとしては面白くない 今度こそは最速のちぇんに勝とうと意気込んでいたのに 「ちぇんがいうなら」と渋々引き下がり、ゆっくり達はスタートラインに着く 「あいずだよーはしってねー」 ちぇんが合図として尻尾を使い木の枝を上げる ゆっくり達はスタートラインから飛び出してゴールを目指す 「まりさがいちばんだよ!」 ポヨンポヨンとまりさがゆっくりにしては速いスピードで走る まりさの基準で言えば、ありすは運動神経が悪くはないがまりさほどではない れいむはまだまだ、そして一番速いのが今スタート合図を送ったちぇん まりさはちぇんをライバル視していた 今日こそはちぇんから一番を奪うつもりでいた だが、病弱なぱちゅりーが水を差した フンとまりさは鼻を鳴らした 別に構わない、今一番になって次はちぇんに挑戦するのだ (…まりさのうしろにだれかいるよ) 走りながらまりさは後ろから誰かが追い上げてくるのを感じた 今のメンバーならありすがスパートをかけたのだろうか?と考える まりさも少しペースを上げる そして後ろから追い上げてきたゆっくりを見て驚いた 「ぱずゅりー!?」 ぱちゅりーはまりさと互角以上、ちぇん並の速さでまりさを追い抜いていった 「むきゅ!むきゅ!」 まりさは焦った 自分はちぇんに勝ってみんなから羨望の眼差しを送られるはずなのだ なのに、それがぱちゅりーに潰されてしまう! 必死にまりさもスパートを掛けるだが、ぱちゅりーはそれ以上の速さでまりさを引き離してゴールした 「むきゅ!ぱちぇがいちばん!?」 この結果に一番驚いたのは当人、ぱちゅりーである ぱちゅりーはただ、かけっこという遊びがしたかっただけなのだ 結果がビリでもかけっこが出来たらそれで満足だ だと言うのに、自分が一番になれたのだ 周りのみんなも 「すごいよぱちゅりー!」 「とかいはなはしりね!」 「すごいぱちゅりーなんだねーわかるよー」 と、ぱちゅりーを褒めたくっている それに照れながらぱちゅりーは返事をする しかし、まりさには面白くなかった まさか、ぱちゅりーに負けるとは思いもしなかった しかも、あのちぇんまで羨望の眼差しを送っている 今の気持ちを上手くまりさは表現出来なかったがとてもゆっくりできないことだけは分かった その日を境にぱちゅりーが外で遊び日が増えた 家で親ぱちゅりーから知識を授かり、親まりさから狩りを教えてもらう ぱちゅりーはグングンその頭角を現し始めた 狩りに行ってはちぇんやまりさと同じくらいの餌を集める 更に知識を生かし、ゆっくりの怪我や病気に効く草も見分けて別に貯蔵する 両親も鼻高々だった 「ぱちぇがゆうしゅうでおかあさんはうれしいわ!」 「おとうさんもだよ!」 両親は子どものぱちゅりーに親愛のすーりすーりをした ぱちゅりーはとても嬉しかった 姉妹のまりさ達もぱちゅりーを尊敬してくれている 「むきゅぅ~、ぱちぇはとってもしあわせよ!」 一方、あのまりさの生活は荒れていた あの日以来、一度もぱちゅりーに勝てなかった 更にライバル視していたちぇんはもうまりさを相手にしていない ぱちゅりーと勝負をしているのだ そして気にくわないことにぱちゅりーは狩りがとても上手だった まりさも親に連れられて狩りの練習をしていたときにぱちゅりーが狩りをするのをみた どうせすぐに疲れて帰るのだろうと思っていたがぱちゅりーは食べられる草とそうでない草を 素早く見抜き食べられるものだけを口にくわえて持っていく 鮮やかな手並みで大人も賞賛するほどだ まりさは狩りにおいてもぱちゅりーに破れまりさのプライドはズタボロにされてしまった やがて、子どもだったゆっくりも大人になり巣立ちを迎える ぱちゅりーも両親に見送られながら自分のゆっくりぷれいすを探すために巣立った 「むきゅ、たしかここにちょうどいいおうちがあったはずよ」 以前、ぱちゅりーは狩りをしていたときに偶然見つけた場所があった 丁度木の根もとで雨が降っても水が中に入らないゆっくりぷれいす 広さもあり、おそらく前に他のゆっくりが住んでいたのだとぱちゅりーは考えた 「ここね」 草をかき分けぱちゅりーは目当ての木を見つけた まだ誰も来ていなかった 「むきゅ、それじゃあ中を調べて…」 「わかるよーここにおうちがあったはずだよー」 ぱちゅりーが中を調べようとしたとき、ちぇんがやってきた ちぇんもここを知り自分のおうちにしようと考えていたのだ 「ぱちゅりー?」 「ちぇん?」 互いに顔を見合わせ、どうやら互いに同じ事を考えていたのだと思った しかし、あと一歩の差でぱちゅりーが先に到着したのだ 「わかったよーぱちゅりーのほうがはやかったんだねー」 ちぇんはガッカリしたそぶりも見せずにぱちゅりーに告げる 「わかるよーちぇんはべつのおうちをさがすねー」 「ちぇん!」 立ち去ろうとするちぇんだがぱちゅりーが呼び止めた 「その…もしよかったら…」 何かモジモジとしているぱちゅりーに頭を傾げるちぇん 「ぱちぇとずっといっしょにゆっくりしない?」 それはプロポーズだった 「うにゃ!?」とネコのような声をあげてちぇんは驚いたが 「わかるよーちぇんもぱちゅりーがすきなんだよーいっしょにゆっくりしようねー」 「むきゅぅぅぅん!」 互いにすーりすーりと頬を擦り合い情愛を示す ちぇんとぱちゅりーはこの日番になった まりさは群の中で厄介者になっていた ぱちゅりーのせいでゆっくりできない日が続き他人に八つ当たりすることが多くなった 狩りで他のゆっくりから餌を奪うことはしょっちゅうあった まりさの狩りは決して下手ではないのだがぱちゅりーのことを思い出すと まるで狩りが全然出来ないかのようにまりさは感じていた まりさはそこそこのおうちを見つけてそこで美ゆっくりのれいむと番になり暮らし始めた 「まりさは狩りに行ってくるのぜ」 「ゆっくりいってらっしゃい!」 この頃にはまりさはだぜ口調になっていた 若いまりさ種はこのだぜ口調が格好いい思う風習があったからだ まりさは集めた餌を帽子に詰め込む やがて、帽子が一杯になるまで詰め終わると自分のおうちへ帰ろうとしたのだが 「まつんだよーおちびちゃんたちー」 別のゆっくりの声が聞こえてきた しかも、これはあのちぇんの声だ まりさは茂みに隠れて様子を窺った おちびちゃんということはちぇんも番が出来たということだ。 いったいどんなゆっくりと番になったのだろうと見ていると子ゆっくりが飛び出してきた ちぇん種が2匹と…ぱちゅりー種2匹であった (ぱちゅりー!?) ちぇんは4匹の子ゆっくりを咥えておうちの方にむき直させおうちへ帰ろうと諭している だが、まりさにはそれよりもぱちゅりー種がいるということにショックを受けた お家へ帰っていくちぇんをまりさは気付かれないように後を付けた (うそなのぜ…ちぇんがぱちゅりーとなんて…) きっと別のぱちゅりーだ。まりさは心の中でそう願った しかし、ちぇんがお家へ帰ると出迎えたのはあのぱちゅりーだった 子どもの頃一度も勝てなかったぱちゅりー。 「ゆっくりおかえりなさい!」 「ただいまーなんだよー」 「「「「ゆっくりただいま!」」」」 子ども達がお家へ入ると二匹は草や枝で入口を偽装し、それが終わると二匹も中に入っていった その様子を見てまりさは盛大にショックを受けた まりさはちぇんが好きだったわけではない しかし、あのぱちゅりーがちぇんと番になっていることが許せなかった 自分にとっての最大の汚点、それが蘇ったのだ 「おそいよ!どこにいってたの!」 まりさが帰るとれいむはまりさに怒鳴った 「れいむはにんしんしてるんだよ!ばかなの?しぬの?」 「ごめんなんだぜ!ちょっととおくまでかりにいってたんだぜ!」 無理矢理笑顔を作りまりさは帽子の中の餌を広げる それを見るとれいむの表情も晴れていき 「ゆっくりできるごはんだね!」 とむしゃむしゃ食べ始めた このれいむは非常に美ゆっくりなのだが、性格にやや難がある かつては言い寄ってくるゆっくり達に貢がせるたりもしていた まりさも集めた餌を食べるのだが幸せには感じられなかった 「うめ!これまじうめ、ぱねぇ!ししししあわせ~!」 れいむは満足しているようだがまりさの頭の中はぱちゅりーで一杯だった あのぱちゅりーさえいなければ自分はこんなことにはならなかったのに… それからしてれいむが出産しまりさも子持ちになった まりさ種が2匹とれいむ種1匹 可愛い子ども達だった 「「「ゆっくりしていってね!」」」 「ゆぅ~ん、さすがれいむとまりさのこどもだね!とってもゆっくりしてるよぉ~」 うっとりするれいむに満更でもない様子のまりさ。この時はまりさも幸せを感じた その日、まりさはお祝いにと沢山餌を集めた 美味しい草にれいむの好きな花に虫を少々とゆっくりにとってはご馳走だ 「もうちょっとなにかほしいんだぜ」 まりさがあたりを見渡すと子ゆっくりが狩りをしていた しかも、滅多に取れない野いちごを持っているではないか それを見たまりさは子ゆっくりに近づくと後ろから体当たりした 「ゆべっ!」 相手の子ゆっくりが倒れている間に野いちごを奪い取っていく 「むきゅ…なにをするの!ゆっくりできないわ!」 抗議をする子ゆっくりを無視して野いちごを帽子に詰める 「それはぱちぇがみつけたいちごさんよぉぉぉ!!」 「うるさいんだぜ!これはまりささまがみつけたんだぜ!」 もう一度体当たりをして子ぱちゅりーを黙らせるとまりさは鼻歌を歌いながら帰って行った 「むきゅぅ…おかあさんたちにあげようとおもったいちごさん…」 子ぱちゅりーがおうちに帰るといったい何があったのかと問い詰められた 二度の体当たりを受けて子ぱちゅりーは怪我をしていたのだ 野いちごを見つけたこと、おかあさんとおとうさんに食べてもらおうと思ったらまりさに体当たりされたこと そしてそのまりさに野いちごを奪われたことを説明した 「「わからないよー!どうしてそんなことをするのおお!」」 子ちぇんたちはゲスゆっくりの存在に困惑していた 「ゆっくりできないゆっくりね!」 もう一匹の子ぱちゅりーも怒りをあらわにした ちぇんとぱちゅりーは危ないので1人で狩りをしないようにときつく子ども達に言い聞かせた 次の日、まりさは狩りをしながら子ぱちゅりーがいないか周りをキョロキョロしていた 昨日の一件で味を占めてまた野いちごを奪い取るつもりだ 「いないのぜ!やっぱりぱちゅりーはよわいのぜ!」 そうだ、これがぱちゅりーだ、とまりさは笑う ぱちゅりーは弱くなくては、と 「よわいぱちゅりーはずっとおうちにいればいいのぜ!」 「むきゅ、まりさがぱちぇのこどもからいちごさんをうばったのね」 まりさが振り返るとそこにはぱちゅりーがいた 奇しくもまりさが襲った子ぱちゅりーはまりさがゆっくりできないとしたぱちゅりーの子どもだったのだ 「なにをいってるのぜ?まりさがみつけたんだからまりさのものなのぜ!」 まりさはドンっとぱちゅりーに体当たりをして威嚇する ぱちゅりーは少し後ろに飛ばされたが怪我はしなかった 「まりさはゲスみたいね。ゲスまりさにはおしおきがひつようだわ」 「ゆっへっへっぱちゅりーがおしおき?わらせるのぜ!」 まりさは大笑いを始めた 確かにぱちゅりーは足が速いし狩りも上手い だからといって今まで喧嘩で生活してきたようなまりさに敵うはずはない 「ぱちゅりーはさっさとずっとゆっくりすればいいのぜ!」 先手必勝とばかりにまりさは再びぱちゅりーに体当たりする (こんどはほんきなのぜ!これをうけたらぱちゅりーもいちころなのぜ!) だが、それが届くことはなかった 「むきゅ!」 突如としてまりさは衝撃を受けてはじき飛ばされた 「ゆげぇぇ!」 ごろんと転がるまりさ 「これはぱちゅりーのこどものぶんよ!」 起き上がったまりさは不思議でしかたがなかった ぱちゅりーは一歩も動いていないのにまるで体当たりを受けたような衝撃を受けたのだ 「つぎはかなしんだしまいのぶんよ!」 ぱちゅりーが詰め寄る するとぱちゅりーは左右に束ねられた自分の髪をまるで拳のように使い攻撃し始めた 「むきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅ!!!!」 れいむ種には時折もみあげをぴこぴこと動かせる亜種が生まれる このぱちゅりーも同様に髪を動かすことが出来る亜種だったのだ 「ゆげげげげげ!!!」 ぱちゅりーのむきゅむきゅのラッシュを受けてまりさの顔は腫れ上がった 例えゆっくりの体当たりほどの威力でも連続で何回も受ければ当然晴れ上がる 本来ぱちゅりー種にこのような戦闘能力はない それ以前にちぇん種やまりさ種ほど活発に動くことは出来ない しかし、このぱちゅりーは亜種中の亜種、まちょりーだったのだ まちょりーとはぱちゅりー種の知能を持ちさらに病弱を克服したゆっくりだ 極々稀にしか生まれることがないのでまりさが知らないのも当然であった ぱちゅりーは一頻り殴り終えると 「むきゅ、ゆっくりはんせいしてね!」 とだけ言い残してまりさを見逃した 「………」 顔が腫れ上がったまりさは喋ることが出来なかった しかし、内心はほくそ笑んでいた (ばかなぱちゅりーなのぜ…まりさをころさなかったことをこうかいさせたやるのぜ…) 這いずりながらまりさは自分のおうちを目指した だが、まりさがおうちに辿り着くことはなかった 突然降り出した夕立に打たれて、まりさは永遠にゆっくりしてしまった 這いずりしか出来なくなった時点でまりさは雨から逃げることは出来なかったのだ 「おちびちゃん!わるいまりさにはおかあさんがおしおきをしてきたわ!」 「「むきゅ!おかあさんすごいわ!」」「「すごいよー!」」 ぱちゅりーはおうちで子ども達に悪いまりさをやっつけたと言い、もう大丈夫だと教えた そして、ちぇんも帰って来た 「あぶなかったよーきゅうにあめさんがふってきたんだねーわかるよー」 ちぇんの体は少し濡れていたが死ぬほどではない 体から雨水を落とすとちぇんは取ってきた餌を広げた 「きょうのごはんだよー」 「「「「ゆっくりいただきます!」」」」 丁寧にいただきますをしてから子ども達は餌を食べ始めた ぱちゅりーは無邪気にご飯を食べる子ども達を見て幸せであった まりさがいなくなりれいむが「しんぐるまざーでかわいそうなんだよ?」と言ってきたのは それから遠くない日であった by お題の人 まちょりーが書きたかったんです 文章は難しいですね このSSに感想をつける