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それぞれの想い 依頼主 :モグタン(ドラヴァニア雲海 X20-Y26) 受注条件:レベル54~ 概要 :アサー天空廊のモグタンは困っているようだ。 モグタン 「しかし、困ったことになったくぽ。 この風の調子だと、きっと聖竜様は、 雲海の下に行ってしまっているはずくぽ。 ラッパを吹いたとしても、聖竜様には聞こえないくぽ。 急いでいることは知っているけど、あせっても仕方ないくぽ。 この先の広場で、風の流れが変わるまで、ひとやすみくぽ~。」 モグタンと話す アルフィノ 「急ぐ旅ではあるが、あせりは禁物・・・・・・か。」 エスティニアン 「天候相手となると、どれほど時間がかかるかはわからん。 キャンプでも張るとするか・・・・・・。」 イゼル 「聖竜の宮殿は目前だというのに、 もどかしいものだな。」 モグタン 「この辺りで、ひとやすみくぽ~。 明日になれば、風の流れも変わりそうくぽ。 それまで、ゆっくりするくぽ~。」 アルフィノ 「確かにこの辺りなら、安心して一休みできそうだ。 時間が惜しいが、相手が風となると、あせっても仕方あるまい。 戦いも多い旅だったからね。 これを機に皆で休息を取るのも悪くはないさ・・・・・・。 焚き火でも起こして、身体を温めよう。 では、私が薪になるものを集めてくるよ。 なに心配しないでくれ。 これでも薪拾いのコツは、掴んだつもりだからね。」 エスティニアン 「やれやれ・・・・・・。 「あせっても仕方がない」なんて、よく言うぜ。 聖竜との対面を前に、気もそぞろなのがバレバレだ。 あの様子じゃ、背後の魔物にすら気付けそうにない。 Nikuq、坊ちゃんの後を付けて、 危険そうな魔物を排除してやってくれ。 その間、俺たちは荷を解いて、 キャンプの準備でもしておくさ。」 アルフィノ 「薪拾いなら任せてくれよ!」 モグタン 「怖いだけかと思ったけど、 エスティニアンも、優しいところがあるくぽね。」 アルフィノの西側で危険な魔物を探して討伐 アルフィノの東側で危険な魔物を探して討伐 エスティニアンと話す イゼル 「簡単なものだけど、料理の準備をしておいたわ。」 エスティニアン 「どうやら、坊ちゃんの様子を見に行かせたのは、 正解だったようだな? アルフィノが戻ったら、飯にしよう。 氷女が、シチューの用意をしてくれたもんでな・・・・・・。」 アルフィノ 「温かいな・・・・・・。 それに、焚き火から立ち上る焔を見つめていると、 見知らぬ土地にありながらも、どこか安らぎを覚えるよ。」 エスティニアン 「この前までは、薪拾いさえ、 やったことがなかった坊ちゃんがよく言うぜ。」 アルフィノ 「ハハハ、確かにそうだね。 エスティニアン殿に教わるまで、 焚き火に適した薪の選び方すら知らなかった・・・・・・。 シャーレアンの有力議員の息子として生まれ、 最年少で魔法大学への入学を許され、神童と持てはやされた。 知識では、並みの大人に負けはしないと傲っていたんだ。 自分がどれほど、無知で無力かも知らずにね。 結果、利用され、裏切られ、大切な仲間を・・・・・・。」 イゼル 「そう、私たちは無知だわ。 無知ゆえに、戦いの根源が何であったのかさえ知らず、 教えられるまま、命じられるまま、戦争に身を投じさえする。 私は、聖竜と出会い真実を知った。 そして、無知を利用し、戦争を煽る教皇を倒そうと決意した。 自分が罪を犯すことで、融和をもたらせるならと・・・・・・。」 アルフィノ 「無知であることを認め、常に学び、 他者に流されず、信念の道を己の足で歩む・・・・・・。 その難しさと大切さを、私はこの旅で思い知ったよ。」 エスティニアン 「それでいいのさ。 アルフィノ、お前は16歳だったか・・・・・・同じ年頃の俺なんて、 ただ、がむしゃらに槍を振り回すだけのガキだった。 それに比べりゃ、お前は十分に立派さ。 俺だって、今になって無知を痛感している始末だからな。 この壮麗な遺跡群を見てみろ・・・・・・。 かつて人と竜がともに生きた時代があったと、 それを知らなかったのだと、この俺でさえ認めざるを得ない。 だが、悲しいかな、今は人と竜とが殺し合う時代だ。 俺の両親は、ニーズヘッグに殺された。 時代のせいと諦められはしない。 俺は無知で、戦いの発端を知らない。 だが、この「千年戦争」に終止符を打たなければ、 俺のような存在が、増えるだけだということは知っている。 そして、俺には邪竜を止める力があることもな。 もし、その力を振るうしかないとわかれば、誰かの命令ではなく、 俺自身の選択としてニーズヘッグを討つぞ。」 イゼル 「エスティニアン・・・・・・貴様・・・・・・。」 エスティニアン 「すべては、対話次第だ。 「氷の巫女」よ、お前にも信念があるのだろう? ・・・・・・だったら、フレースヴェルグを説得してみせろ。」 イゼル 「言われるまでもない・・・・・・。」 アルフィノ 「すべての答えは、明日か・・・・・・。 さあ、仮眠でもとっておこう。 明日は、大切な日になるのだから・・・・・・。」 アルフィノ 「Nikuq、ゆっくり休めたかい? そろそろ旅も大詰めだ、気を引き締めて行こう。」 エスティニアン 「さて、噂の「七大天竜」の一翼に、ご対面といこうじゃないか。」 イゼル 「是が非でも、聖竜との対話を成功させなくては・・・・・・。 聖女「シヴァ」よ、支えていてください・・・・・・。」
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第29話:背負うもの 「見つけたぞ、ケフカ」 レーべからすぐ南にある森の一画で重々しいその声が響いた。 支給品の袋をあさっていたケフカは声がした方へゆっくりと振り返る。 「これはなつかしい、レオ将軍ですか。イヤなときにイヤな旧友と出会うものだな」 「お前が友であったことなど、かつて一度もない」 ケフカの言葉に対し、茂みの奥から堂々たる足取りであらわれたレオ・クリストフは断固として言った。 道化師を真似て見せているのか派手な化粧を施している顔で、レオを舐めるように見つめる。 その眼差しは、笑っているようにも、嘲っているようにも見えた。 レオは、喉の奥で低く獰猛に唸った。 「…ケフカ、お前はこのゲームに乗るつもりなのか?自分ひとりが生き残る気か?」 疑問というよりも確信に彩られたレオの質問にケフカは答えなかったが、 代わりにその顔に浮かべた狂気めいた満面の笑みの表情が質問の答えを雄弁に語っていた。 「君とは長い付き合いだ。ここはなにも言わず引いてくれれば、僕としては余計な手間が省けて嬉しいんだがね」 「私はこのふざけたゲームに乗るつもりはない。だが――」 レオは一度言葉を切り、支給品である吹雪の剣を鞘から引き抜くと、切っ先をケフカに向けた。 「貴様のような不逞の輩、これまで野放しにしておいたのが我が愚策か。ここでその腐った息の根、止めてくれよう」 「――だから君は、この僕に殺されたんだよその生真面目な性格を利用されてね」 ケフカは懐から取り出した支給品と思しき物体を手で弄びながら、言葉をも弄ぶかのようだった。 「それとも、まだ怒っているのかな?僕のことを。武人というのは、随分と根に持つものなんだね」 「黙れ。なにひとつ真理を知らん、痴者が」 からかうようなケフカの態度を、レオは一喝する。 そして吹雪の剣を引っ提げ、ケフカにゆっくりと歩みよった。 「ゲームに乗るというのなら、貴様の相手はこの私がしてやろう。下らぬ魔術、思う存分に披露するがいい」 「どうやらもう一度この僕に殺されたいらしい。困ったものだ」 ケフカは人差し指で宙に弧を描いた。 その指先に巨大な火球が生み出される。――ファイガだ。 その腕を振り下ろすと、火球が弾丸もかくやと言わんばかりにとレオへと向かっていく。 常人には視認出来ないほどの速度で飛んできたそれを、レオは踊るようにしてかわす。 不安定な姿勢になったレオの耳にケフカの声が飛び込んだ。 「これはどうかな?」 レオがケフカの姿をとらえた時にはすでにもう一つのファイガの火球が生み出されていた。 通常、これほどの短時間で連続して魔法を紡ぐことなどいかなる優れた魔道士でも不可能なのだが、 ケフカに支給されたアイテム…ソウルオブサマサがこれほどの魔法詠唱を可能にしている。 再度飛来してきた火球をかわす体勢にはレオははいっていない。このままでは直撃は必至だ。 「子供だましだな」 しかしレオは鼻で笑い、火球に向かって逆に一歩踏み込んで行った。 その勢いを利用し、横なぎの斬撃を火球に叩き込み、ファイガを一刀両断する。 ケフカは楽しげに甲高い声で笑った。 「魔法を剣で斬るなんてね。君のほうこそ相変わらず、身もフタもない男だね」 「下らん、と言ったはずだ」 そして三度目の魔法詠唱の時間を与えぬとばかりに、レオは地を蹴る。 振り上げた剣は、ケフカの血を吸うべく鈍く輝く。 「貴様が殺した罪無き人々の分の血、その身体から吐き出して逝け!」 ケフカは一見無防備のごとく棒立ちだったが、懐から取り出したものをすでに目の前に迫ったレオに向けた。 刹那―― レオに向かって幾筋もの雷が発生する。レオは反射的に剣を持つ逆の手に装備した鉄の盾で防御するが やはり防ぎきれず、電撃を受ける。 内部に蓄えた魔晄エネルギーを瞬時に擬似魔法へと変換する魔晄銃による攻撃だとレオは気づいただろうか。 大きく姿勢を崩すレオにケフカは勝利を確信し、笑みを浮かべる。 ケフカはレオに肉薄して今度は回避できぬよう至近距離で魔法を放つつもりだった。 しかしレオは今にも倒れそうな姿勢から、斬撃を繰り出した。 見事なバランス感覚は、不安定な姿勢から美しき弧を描き出す。その行き着く先は、ケフカの肩口だ。 血が飛沫き、今度は逆に後退するケフカにさらにもう一撃を加える。鼻頭から左頬にかけて一文字に裂ける。 「おのれ、――おのれレオ・クリストフ!」 切り裂かれた顔を抑えながら、ケフカは凄まじい怒号を上げる。 レオの方はようやく体勢を直し、すぐさま飛びかかれるように全身の筋肉を撓めた。 「覚えていろレオ将軍。この仕打ち、必ず後悔させてやろうぞ」 憎々しげに呪詛の言葉を吐くケフカの姿が段々と見えなくなっていく。姿を消す魔法、バニシュ。 ケフカの姿が完全に見えなくなり、気配が消える。 しばらく周りを探っていたレオはケフカが自分から逃走したことに気づいた。 「…逃がしたか、おのれっ!」 レオは舌打ちをして、手にした剣も収めぬままケフカが逃げたと思われる方角へ駆け出す。 ――奴だけは、この手で殺さねばならない。それがもう一度、生を受けた私のけじめだ! 【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改 第一行動方針:ケフカを見つけ出し殺害 第二行動方針:ゲームに乗らない】 【現在位置:レーべ南の森】 【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 第一行動方針:レオから逃走 第二行動方針ゲームに乗る】 【現在位置:レーべ南の森】
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アニメネタ一覧>答えろ!ルドガー! 調整中やマジキチの発言、アニメの展開などまるで意味がわからんぞ!!な時に使用。 略して「答ルド」とも。 その汎用性から、一時は本スレで使われまくっており、中の人もtwitterでネタにしていた(さすがに略してはいないが)。 元ネタは5D's57話。 遊星「俺はどうしたらいい!あいつらに…どうやって償えばいいんだ!」 龍可「遊星…」 遊星「答えろ!答えてみろルドガー!!」 ルドガー「…それがお前の心の闇か」 自分の父の開発したモーメントが多くの人々の人生を狂わせたことに負い目を感じながら生きてきた遊星の心の叫びである。 これに対しルドガーは言葉のドッジボールで返したが、その直後にクロウが 「それは俺が答えるぜ!!」とカッコよくキャッチボールを返してくれた。 なお、「それがお前の心の闇か」の方も放送後しばらくはそこそこネタにされており、TF6では闇属性のパック名にされたりした。 死んでからも長年答えを求められ続けるルドガーに対し「もう休ませてやれよ」というコメントも多い。 とはいえアニメがZEXALに移行し新たなネタが増えたこともあり、以前ほど頻繁には答えを迫られなくなっている。 これで彼も安らかな眠りにつけるだろう。 かと思ったら某人気RPGにて同じくルドガーという名の主人公が登場した。 こちらは作品の都合上台詞などを殆ど喋らないので、同じく「答えろ!ルドガー!」と言われることがある。 それどころか作中に「お前にできるのか?選択が…破壊が! 審判を超え…答えろルドガー・ウィル・クルスニク!!」 という台詞があり、公式が答ルド状態である。 関連項目 知らんそんな事は俺の管轄外だ(略して「知ら管」) ゴーシュとセックス(略して「ゴセ」) おせーよホセ(略して「おセ」)
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弁慶「無駄だ。貴様では私に傷一つ付けることは出来ん。 引導を渡してやろう━━黒鉄悉く我が盾となれ 黒鉄悉く我が刃となれ ━━『悲願千本太刀(ひがんせんぼんだち)』! 」 謳うような声と共に告げられた真名と共に弁慶は鋼鉄の体と化した。 敵の攻撃を一切合財弾き返す絶対防御! しかし、アーチャーは臆する様子も見せず、唇を吊り上げ、悪魔のような邪悪な顔でカナリアの如く美しい声で呟く。 カスパ「━━射殺せ━━『魔弾の射手(デア・フライシュッツ)』 ━━」 ラドカ「━━万象一切灰燼と為せ━━『焼き焦がす蒼炎(ナプホルト)』 ━━」 ライダーの宝具に夥しい魔力が充填していくのがわかる。 海面が渦巻く。大気が震える。海上に集まった三人が宝具を発動しようとしているのだ。 マヌ「本気になったようだなセイバー」 イウェ「凄まじい魔力の昂ぶりだなライダー・・・・だが貴様は知らぬ」 マヌ「何?・・」 イウェ「我が『黒翼繚乱(ケンヴェルヒン)』 がとうに貴様の『海角天魚(マツヤ)』を超えていることをな」 マヌ「戯言を。美しく最後を飾りつけろセイバー ━━水天逆巻け━━『圧し来る帰滅の海(プラーナム・アーキヤーナム)』」 ラドカ「錆びつけば二度とつきたてられれず、つかみそこなえば我が身を引き裂く。そう、ほこりとは刃に似ている。 己が自惚れを知り、その矮小なる誇りと共に錆び朽ちろセイバー ━━万象一切灰燼と為せ━━『焼き焦がす蒼炎(ナプホルト)』 ━━」 セイバー「私が本気を出した以上貴様らの死は確実だ 最早、貴様らに抗う術は無い。 血のように赤く 、骨のように白く 、 孤独のように赤く 、沈黙のように白く 、 獣の神経のように赤く 、神の心臓のように白く 、 溶け出す憎悪のように赤く 、凍てつく傷歎のように白く 、 夜を喰む影のように赤く 、月を射抜く吐息のように 、白く輝き ━━赤く散れ━━『黒翼繚乱(ケンヴェルヒン)』━━」
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八神 庵 プロフィール 格闘スタイル 八神流古武術+本能 誕生日 3月25日 出身地 日本 身長 182cm 体重 76kg 血液型 O型 スリーサイズ - 趣味 バンド活動 好きな食べ物 肉 得意スポーツ 全部 大切なもの 無し 嫌いなもの 暴力 勝利台詞 対エリザベート 貴様の苦悩とやらも、その命とともに消える……喜ぶがいい、貴様はもう自由だ! 対デュオロン 楽になりたいのか?ならば殺してやる。すぐにな…… 対シェン 口が聞ける程度には手加減してやった…………あの小僧は今どこにいる? 対京 貴様より先に始末を付けなければならん奴がいる……命拾いしたな、京! 対紅丸 無様に朽ちは果てるがいい……貴様には似合いの最期だ! 対大門 消し炭にならずにすんだことを幸運に思え……そして、二度とくだらん考えは起さんことだ! 対テリー 牙の折れた狼に生きる価値などない……そのまま死ね! 対アンディ 雑魚の相手も面倒だ……さっさとうせろ、貴様に用はない 対ジョー 騒々しい男だ……そこで永遠に静かにしていろ! 対アテナ 思い上がるな……貴様に救えるものなど何もない! 対拳崇 恐怖にこわばったその顔も見飽きた……失せろ、小僧 対鎮 どいつもこいつも御託が多すぎる…………死の間際くらい静かにしろ 対レオナ ……力は制御できるだと?その結果が敗北とは無様だな 対ラルフ 貴様には死に方を選ぶ自由すらあたえん!後悔にまみれて逝け! 対クラーク クズは何をしようとクズだ……死んでも変わらん 対舞 貴様の悲鳴も聞き飽きた……そろそろ死ね 対ユリ とどめは刺さん……もがけ、苦しめ、そして狂い散れ! 対キング 俺の前に立つなら容赦はせん…………そういっておいたはずだがな 対庵 そこでおのれの愚かしさを悔しいるがいい……永遠にな! 対マチュア 今すぐ失せろ!俺の役に立たないのなら、貴様には一片の存在価値もない! 対バイス 俺の邪魔をするなら殺す……そういっておいたはずだ! 対リョウ 親子二代で築き上げたものがこれか……話しにならんな 対ロバート 極限だと……?くだらん……これが貴様の限界か 対タクマ 茶番で命を落とすか……愚かしいいにもほどがある 対キム ……もう一度いってみろ正義がどうかしたか? 対ホア 命乞いなど聞こえんな……最期くらいはいさぎよく散れ! 対ライデン どんなに手を伸ばしても月には届かん……いつまでもそこで這いつくばっているがいい! 対K 貴様の存在そのものが鼻につく……今この場で引導を渡してやるぞ! 対クーラ くだらんままごとにつき合うつもりはない……俺の気が変わらんうちに消えろ 対マキシマ 壊れたガラクタに興味はない……消えろ、今すぐに! 対アッシュ あの世で悔しいるがいい……俺の炎に手を出したことをな! 対ビリー ……認めてやろう何度敗れても学習しない頭の悪さだけはな 対斎祀(変身前) 貴様もだ……貴様も俺の世界には必要ない 対炎を取り戻した庵 しょせんはまやかしか……話にならん 対ネスツスタイル京 立て京……楽には死なせんといったはずだ俺のこの血のたぎりが冷めるまで、もう少しつき合ってもらうぞ……! 対Mr.カラテ 生ぬるい殺気だ。俺には遠くおよばん……そのまま死ね 対斎祀(BOSS) 目障りだ!オロチも、貴様も!そのまま死ね! 対血の螺旋に狂うアッシュ その苦しみは、貴様の愚かしさの代償だ……死の刹那までじっくりと味わうがいい! ボイス マチュア プロフィール 格闘スタイル 主にスピード攻撃を中心とする 誕生日 4月8日 出身地 不明 身長 177cm 体重 58kg 血液型 O型 スリーサイズ B88 W57 H87 趣味 機械いじり、スカルピー造形 好きな食べ物 鳥(特にチキン) 得意スポーツ スノーボード 大切なもの 自分の脚 嫌いなもの 鳩、神楽家 勝利台詞 対エリザベート あなたといい神楽といい……本当に愚かなのね、人間て。 救いようがないわ 対デュオロン あなたには道案内の必要はなさそうね勝手知ったる冥府への道……ひとりでお行きなさいな 対シェン あら? 意外におとなしいのね、あなた……もっと荒々しいのを期待していたのに拍子抜けだわ 対京 今は殺さないわ。 なぜだか判る、草薙?……そうよ、すぐに彼が来るわ。炎を取り戻したあの男がね 対紅丸 あなたには惹かれるものを感じるわ……だって、美しくしなやかなけだものの匂いがするから 対大門 人間て、なんて愚かな生き物なのかしら?それが無駄な努力なのだと、どうして判らないの? 対テリー 命の駆け引きはいつもゾクゾクするわ……あなた、なかなかよかったわよ 対アンディ ……そろそろ天国の門が見えてくる頃かしら?永遠にさようならね、色男さん……ふふふ 対ジョー あら、まだおやすみの時間じゃないのよ? これからが本番……少し痛いけど、我慢してね。 じきに気持ちよくなってくるから…… 対アテナ 罪深い人間が、何の権利があって私たちを責めるの?偽善こそが人間の本質だって、認めたくないのかしら? 対拳崇 私は嫌いじゃないわよ、ぼうやのこと無様にあがいて散っていく姿は、特にね…… 対鎮 力なき人のために戦うデスって?……虫唾が走るわそんな力もないくせに正義の味方気取りなんて 対レオナ 可哀相な子……どうあがいても運命からは逃げれられないのに…… 対ラルフ あなたとのダンス、なかなか面白かったわよ無精髭のダンディさん。次があったらまた会いましょう 対クラーク 判るかしら?いい女を手に入れるためにはそれなりの代償が必要なのよ、傭兵さん 対舞 あなた、特別に綺麗なまま眠せてあげるわ……ふふふ……100万回のおやすみなさい…… 対ユリ 絶望に満ちた未来があなたを待ってるわさあ……静かに目を閉じなさい 対キング あなたの悲鳴……たまらないわ。 ゾクゾクしちょう…………ひと思いに殺すのが惜しくなってくるわ 対庵 どうしたの、八神? らしくないじゃないまさか炎といっしょうにあの猛々しさも失ったのかしら? 対マチュア もうひとりのわたしを見るのは鏡の中だけで充分だわ……いますぐ消えなさい。目障りよ! 対バイス あら、少しやりすぎたかしら?……でも安心してあなたのぶんまでわたしが切り刻めばいいだけの話だから 対リョウ 四角四面じゃ面白く無いわ。あなた、もっとはじけたらどう?……そのほうがずっと楽しいわよ……? 対ロバート そろそろ静かになってくれないかしら?おしゃべりな男は好みじゃないの。もう口を閉じてちょうだい 対タクマ ずっと戦い続けて生きてきて……もう疲れたでしょう?さあ、私の胸で眠りなさい。……そう、永遠にね 対キム そもそも正義だとか悪だとかって、あなたが決めることなの?それこそ人間の独善じゃないかしら? 対ホア 地位や名誉にこだわるのは人間の愚かしさの証ね……そんなもの、死ねば無意味になるでしょうに…… 対ライデン ねえ、気持ちいいでしょう? 痛くないでしょう?……フフッ、男にとって、最高の死に方だとは思わない? 対K あなたにとって、今日は忘れられない記念日になるわよ……すべてのしがらみから解放されて、真に自由になれた日なんだから 対クーラ 降ったばかりの一面の新雪って、わけもなく踏みにじりたくなるのよね……あなたもそう。恨むなら自分を恨むことね 対マキシマ 冷たい鋼鉄のボディの中に、熱い魂が脈打っているのね……いいわ……その魂、私が綺麗に吹き消してあげる 対アッシュ あなたもお熱いのがお好き?でも残念ねあなたはこの先、ただ静かに冷たくなっていくだけよ 対ビリー 地位、権力、金……そんなものにこだわる人間の考えが理解不能だわまして、そんなもののために傷つけ合うだなんて、本当に罪深いわね 対斎祀(変身前) 一族を率いてるトップがこの程度なら、滅ぶのも仕方がないわね……さようなら。もう二度と会うこともないでしょう 対炎を取り戻した庵 以前のあなたはもっと荒々しかったはずだけど……私を滅茶苦茶にしてくれたあの時のあなたはどこに行ったのかしら? 対ネスツスタイル京 とどめは刺さないでおいてあげるけど、勘違いしないでね?連れていってあげるわ、あなたの待ち人のところへ…… 対Mr.カラテ 戦いにすべてを捧げた人間が、夢破れて絶望の闇に沈んでいく……ふふふ……見ていて飽きないわね。破滅していく人間の末路って 対斎祀(BOSS) 我らが主の力、返してもらうわよ。……悪く思わないでね夢の続きは冷たい闇の中で見るといいわ 対血の螺旋に狂うアッシュ 永遠に醒めない冷たい夢の世界へようこそ……未来なんかありえないあなたにはお似合いでしょう? ボイス バイス プロフィール 格闘スタイル 主に力技を中心とする 誕生日 11月28日 出身地 不明 身長 178cm 体重 59kg 血液型 A型 スリーサイズ B90 W58 H88 趣味 アメコミコレクション 好きな食べ物 梅 得意スポーツ ベンチプレス 大切なもの Dan Breretonのサイン本 嫌いなもの 草薙柴舟 勝利台詞 対エリザベート 想像通り……いや、想像以上のバカだったようだね人間ごときが私に勝てると思ったのかい? 対デュオロン たまらないねえ、見ていてゾクゾクしてくるよ……!あんたみたいな色男が血まみれになっていく姿ってのはさぁ! 対シェン さあ、私の足を舐めてワンて吠えてみなよそしたらひと思いにとどめを刺してやるからさあ 対京 どうする、親父に泣きつくかい? 私はそれでもかまわないよ親子揃って血祭りにあげてやるだけだからねえ! 対紅丸 今の気分はどうだい、色男さん?アゴの骨を砕かれてもいつもの軽口が叩けるかい? 対大門 ホント、見ていて飽きないねえ……アンタみたいな大男が何度も宙を舞うのはさぁ! 対テリー あんたが狼だって? 野良犬の間違いじゃないのかい?ほら、吠えてみなよ!キャンキャンってさあ! 対アンディ さあ、次はどこの骨を折られたい?足かい、腕かい?特別にあんたのリクエストに応えてあげるよ! 対ジョー ほてった肌に心地よかったよ、あんたの起こすそよ風は……そよ風じゃなくて嵐?命懸けのジョークのわりには面白くないね 対アテナ ……さすがに現役アイドルだ、いい声で泣くねえついつい聞き惚れちまったよ、お嬢ちゃん 対拳崇 苦痛にまみれて生きるか、苦痛から逃げれるために死ぬか……あんたに選ばせてやるよ。……まあ、私はどっちでもいいんだけどねえ 対鎮 長生きしすぎて死にたくなったんだろ?願いがかなってよかったじゃないか、ジジイ! 対レオナ お寝坊さんな子だねえ……これでもまだ目が覚めないのかい? 対ラルフ 痛いのかい?……だったらアンタは運がいいよそいつはまだアンタが生きてるって証拠だからねえ! 対クラーク さあ、そろそろ死神のお迎えが来る頃だよ何かいい残したことはないかい、クールガイ? 対舞 あんたが流した血の海の湯加減はどうだい?せっかくだからゆっくりしていきな! 息絶えるまでねぇ! 対ユリ どうだい、これでおつむの弱いあんたにもよく判っただろう?……小娘と大人の女の差ってのがさ! 対キング クックッックッ……見事な断末魔だったじゃないか生まれ変わったらまた会おうか! 対庵 どうしたんだい? だらしがないねえそんなザマでホントに草薙に勝てるのかい、八神!? 対マチュア あんたも案外あてにならないんだねえ……結局、信用できるのは自分自身だけってことかい? 対バイス また神楽の作り出したくだらない幻影かい?どっちにしろ幻に負ける私じゃないんだよ!消えな! 対リョウ あんたが「無敵の龍」だって?笑わせてくれるじゃないかオロチ八傑集を前にして、まさか龍を名乗るとはねえ! 対ロバート ここまで来た以上、覚悟はできてるんだろ?いまさら泣き言をいっても遅いんだよ!あきらめな! 対タクマ しょせんここまでってことじゃないのかい?どんなに鍛えたって、人間がたどり着ける強さなんてのはさ! 対キム 正義だ悪だとわめいていればそれで満足のかい?ハッ!ずいぶんと安い男だね! 対ホア ククッ……ずいぶんといい音がしたじゃないか!さて、続けようか?まだ骨は残ってるんだろう? 対ライデン 人間てのは、自分で自分の首を絞める愚かな動物だね!アンタを見てると、そいつがよーく判るよ! 対K ククク……あんまり馬鹿らしくて笑っちまったよ……そんなまがいものの炎で私を祓おうってんだからさぁ! 対クーラ 寒いのかい? だったら私が抱き締めてあげるよ……全身の骨が粉々になるくらいに強くねぇ! 対マキシマ もう少し待ってなよ、デカブツ!今すぐ完全なスクラップにしてやるからさあ! 対アッシュ あんたの流す血はさすがにほと味違うねえ……!1滴残らずしぼり出してやるよ!クックックッ……! 対ビリー 腕の骨といっしょにアンタのオモチャもへし折ってやったよこれでもまだ続けるってのかい?根性だけは一人前じゃないか 対斎祀(変身前) 全身の骨を砕かれても息があるのかい?さすがにしぶといねえ……けど、とどめは刺さないよ!たっぷり苦しむんだね! 対炎を取り戻した庵 不甲斐ないねえ、八神!そんなんじゃ話にならないよ私が気合いを入れ直してやろうじゃないか。さあ、立ちなよ! 対ネスツスタイル京 さて……息子のほうはこれでケリがついたねあとはあのムカつく親父に落とし前をつけさせるだけだよ 対Mr.カラテ ……ま、人間にしてはがんばったほうじゃないかい?私もそこそこ楽しませてもらったよ。……おい、聞いているのかい? 対斎祀(BOSS) さあ、耳を揃えて返してもらおうか!おまえたちが盗んでいったもの……オロチの力をね! 対血の螺旋に狂うアッシュ 今すぐこの場から這いずって逃げ出すかい?それとも息の根を止められたいのかい?好きな方を選びな! ボイス
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第二十章-第一幕- 哀れなる妄想 第十九章-第三幕- 第二十章-第二幕- エナとロバートを伴ったイノは、ゆっくりと、しかし確実に エッセ=ギーゼン教皇の待つ謁見の間へと静かに戻る。 まだ抵抗を続ける信者やイグジスターを斬り散らしつつ、 三人は強い敵意を秘めて、謁見の間へ辿り着き、 味方の合流を待つ事もなく、一気に決着をつけにかかる。 ずばん!! ドアを叩き割り、イノ、ロバート、エナは 遂にエッセ=ギーゼン教皇との再会を果たした。 苛烈な姿を隠して生きてきた女性ではあるが、 エッセは今、苛烈さに加え、病的な物を感じさせた。 「来たか、イノ。私に育てられ、強くなったお前が 真っ先に裏切るとは思ってもみなかった。 てっきり、ターレット辺りが造反すると思っていたがな。 結局は皆、生き残れなかったわけか、ん?」 「あなたが用意した周到な見せしめ用の信者の攻撃と、 不測的なイグジスターとやらの襲撃で、ね…… 正直、もっとソルの言う事をちゃんと聞いておけば、と思う」 敵意は隠さぬまま、イノは静かに語る。 「そうだな。だが私はお前よりもイグジスターよりも、 そこのロバートこそが最も危険だと思っているぐらいだ。 ロバート、イノ。悪い事は言わぬ。我が軍門に降れ。 そして今一度私のもとで、イグジスターを叩き潰せ」 「イグジスターは私達の手で必ず叩き潰す。 ただし、その作戦にあなたは要らない。滅ぼす……教団ごと」 イノはアックスボンバーを抜き放ち、構えを取る。 「貴様は人間を信用しちゃいねぇ。そんな奴に従えるか。 まして俺を誰かが従えようたぁ笑わせる。俺は反逆の徒だぜ!」 ロバートもエンジェルランプを抜き放った。エナはソーサーを浮かべる。 「あなたのために多くの人が死んでいったと思われます。 私はその非道を許したくありません……!!」 「そうか、残念だよ」 エッセはあっさり諦めると、タイマーを手に取る。 何らかのカウントダウンが行われていた。 「それは……!」 イノが驚く。そのタイマーはターレットの遺作。 魔神王の復活までの期間を予測するタイマーである。 贄に捧げた人間の養分を正確に計測し、 エッセ教皇の理論に基づいた時差修正値を加える事で、 魔神王復活の正確な予測を叩き出す装置だ。 それはターレットの技術力の結晶であり、悪意の産物でもあった。 ターレットは、それを作る事を必ずしも望んでいなかったからだ。 「そう、ターレットの遺作だよ。見たまえ! 魔神王様の復活まで、あと十分そこいらというところだ。 この悲願が達成された時、我が教団はその役割をどのみち終える! そこの特等席で見ている権利を君達にやろう。黙って見ていろ!」 「やなこった!」 ロバートはなびきマントを久々に、本当に久々に広げ、 波打つマントに包まれ、轟然と吼える。 「人の悪意で我欲を満たす! 亡者の王が何とする! 異邦の命が貴様を薙いで! 異端の刃が貴様を穿つ! 共闘反逆ストレンジャー! 俺達の恨みを侮るんじゃねぇ!!」 「私の友には既に別れは告げている。 あとは、サキとの約束を果たすだけ……!」 二人はエッセ教皇を抹殺しようと駆ける。 祭壇の上に立っている彼女はやや遠いが、問題ないはずだった。 「愚か者めが!」 ずだん、と杖のような武器を手に取るエッセ教皇。 「この爪杖ベアーズクローの餌食になりに来る気か! 復活までの時を黙ってみているなら見逃してやろうと、 最後の情を愚直にもかけてやったものを! 親心も分からぬ子はもはや不要、果てるが良い!」 「よく言う……たまたま浮浪者だった私の両親を殺し、 まだ赤子だった私を生贄に捧げようとしたくせに……!」 「イノ! 何故それを知っている!?」 「あなたの日誌を盗み見させてもらった事がある。 けれど育ててもらった恩義は確かにあるから、黙っていた」 教皇はその一言に激昂する。 「知っていながら私に従っていたというのか! そして育ての親である私を今裏切ろうというのか! たいした親不孝者だな、イノ=ヘレティックは!」 ロバートの攻撃を打ち払い、イノの攻撃を止めて言う。 見た目によらず、凄まじい体力と体術の使い手だった。 「だが、お前の中に潜在的才能を見出して生かしておいた! 今こうして生きていられる私の英断を感謝せよ、イノぉ!」 「それもよく言う。私を殺すのを止めたのは、前の教皇だと ソルが教えてくれた。それをあなたは殺し、教皇の地位に昇り、 そして私の力のみを利用するために生かしておいただけ。 そんな人に誰をも非難する資格は無い。まして殺すなど……!」 「うるさい!」 エッセは大きく爪杖ベアーズクローを振り回し、 二人を大きく押し戻した。膂力も凄まじいものがある。 「くくく……誰がお前を育てたと思っている、イノ。 弟子が師匠に及ぶわけがあるまい? ましてや未熟なお前ではな!」 「一人ならね。だけど今は、味方がいる」 「ならばその味方もろともに砕くまで! 怨念招来! カース・プレデター!!」 すると、周囲の墓から凄まじい数のゴーストが姿を現す。 いずれも凄まじい怨念を秘めており、上位のゴーストばかりだ。 まともに張り合えば常人なら一分以内に命は無いだろう。 「たとえイグジスターが来たとしても、この技で一撃よ! 怨念に食い尽くされ、滅びるであろう! まして魔神王様が復活した暁には言うまでも無く、な!」 彼女は知らないのだ。その怨念などという負の感情が 一層イグジスターを活性化させるキーであるなどとは。 魔神王云々はともかく、それに気付いていないのはいっそ哀れである。 「哀れな妄想……全て断ち切るまで」 「なんとぬかすか!? お前とてつい昨日までは 我が理想のために協力してきた使途であろう!? いくら人殺しをしてこなかったとは言え、その事実は消えんよ!」 「だからこそあなたを倒して詫びとするまで……!」 イノは迫り来るゴーストを叩き伏せつつ、あくまで冷静に言う。 エナはソーサーを動かし、必死に防御に徹し、 ロバートが更にそれをサポートして、何とか凌ぐ。 「くっ……!」 悔しそうにエッセ教皇を睨むが、手も足も出ないエナ。 「ふははは! 息巻いても数の不利は否めぬか! もはや贄など捧げる必要も無い。討ち捨ててくれるわ!」 前教皇を殺害し、のし上がってきたというだけの事はある。 凄まじい魔力と、地形を味方に付ける戦術である。 だが、イノのアックスボンバーには斧として斬る以外の力もある。 砲撃モードに変更し、斧でゴーストの攻撃を防ぐ。 「……仕留める!」 ずどん! ずどん! ずどん! 三点バースト射撃というアサルトライフルのような荒業で 祭壇上のエッセ教皇を狙撃するイノ。 「ぬぬッ!?」 エッセ教皇は辛うじて二撃を回避。 爪杖ベアーズクローでもう一撃を叩き落とした。 「くうっ、その手があったか! だが私を倒すには遅い! たった三人で乗り込んできた愚を悔いてそのまま果てよ!」 「……ここに、ゲイリーがいたなら……」 一緒に弭槍で攻撃してくれただろう。 それがどれだけ頼もしかった事か。 散り逝く友に未練など無いはずだが、窮地に陥れば頼りたくなる。 その心根を、静かにイノは恥じた。 「恥じるな! 仲間を頼るのは負け犬の証明なんかじゃねぇ! 裸の王様が支配者を気取っている事が、 俺は震えるほど気に入らねぇ! 全員の力で倒すんだ! これ以上奴の好きにさせてやるかよ!!」 ロバートは銃で射撃するが、距離が距離なのでまともに当たらない。 「よく言った、ロブ!」 「おっさん!?」 そこに登場したのは、エリックとヴァジェスを先頭とした 勇者軍主力部隊である。アイゼンカグラやアンリ姫も一緒だ。 「クロカゲさん、カイトさん、マリーさんも……よく無事で!」 途中で離れた三人の無事をエナも喜ぶ。 「うちの総帥の息子を返してもらうぞ、魔神王教団教皇!」 エリックは轟く声で怒鳴る。 「連れて帰りたければ勝手にするが良い! 魔神王様復活の時は目前だ! 相手にしていられるか!」 エッセ教皇は乱入者の登場により一層苛立つ。 「無論そうさせてもらう! だが魔神王復活など知った事か! 何がどうあろうと勇者軍次期総帥に手を出す事の恐ろしさ、 貴様の身をもって思い知ってもらわねばならんのだ! 俺はネイの友人として! ロバートの先達者として! それを為す義務を持つ者! 故に俺はエリック=ルストだ! 勇者軍メインメンバーの一角を為す当主なのだ! 断固として貴様の思惑が達せられるなどと、ゆめ思うな!」 エリックの気迫にロバートは心底驚愕した。 まるで自分の知っているエリックとは別人である。 「おっさん……!? どうした!?」 「話は後だ……俺はイグジスターを許さん! お前の力も要る! 故に俺達も奴を叩きのめす!」 「お、おう!」 ロバートは慌てて再攻撃の態勢を取る。 残りの勇者軍メンバーも各々、攻撃態勢に入った。 タイマーはもう残り少なく、間も無くナインサークルロードの主、 惑星アースの守護者である魔神王が蘇ろうとしている―― <第二十章-第二幕-へ続く>
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【検索用 かみさまのにわ 登録タグ 2020年 VOCALOID か ロテ 初音ミク 曲 曲か】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ロテ 作曲:ロテ 編曲:ロテ 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『神様の庭』(かみさまのにわ) ロテ氏の7作目。 「神様についてかきました。」(作者コメントより転載) 歌詞 本当にいつからだろうね 僕らどこで間違えたんだろうね なるべくしてこうなったのかもね それなら笑うことすら辛いんだろうね 名前に 触れる こともないまま 神様なんて 今更どうでもいいよね 何ならいない方が 腑に落ちるから 双眸(そうぼう)閉ざして 眠ったふりで 泣いてもいいの 苦しさはもういいんだよ 諦めたなんて君は 言うんだろうね 今日から一歩も 出れない君を書いてる 師走の夕に(師走の日暮れに雨ながれ) あなたがわからず(感情ひとつ明るくなくて) 足を引きずり(かかとを削った僕ですが) もう動かない(息を止めたあなたですが) 生を叶えて(真昼のように生きようと) 悪意に負けて(努めて嵐に苛まれ) 私は生きました(一体誰のおかげでしょう) 誰を頼ればいいのでしょう(誰を責めれば良いのでしょう) あなたが 苦しむ この世なら 神様なんて 今更どうでもいいよね 何ならいない方が 腑に落ちるから 言葉の一つが花連れ往くんだ 泣いてもいいの 苦しさはもういいんだよ 諦めたなんて君は 言うんだろうね 今日から一歩も 出れない 君のいない庭で 師走の夕に(師走の日暮れに雨ながれ) あなたがわからず(感情ひとつ明るくなくて) 足を引きずり(かかとを削った僕ですが) もう動かない(息を止めたあなたですが) 詩を認めて(私の書いた詩のさきが) あなたが笑う(ひとつ微笑むあなたなら) 望むはそれと(それがどれほど僥倖か) あなたが死んで思うのです コメント 詩的な歌詞と落ち着いたメロディーが調和して作り出している、優しいけれど淋しい雰囲気が本当に好きです。 -- 赤味噌 (2020-09-05 08 59 11) 名前 コメント
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292 :もしも遠野志貴が引き篭もりだったら ◆4OkSzTyQhY:2008/03/26(水) 23 24 38 ※注意!注意!!注意!!! 今回は黒猫さんがでるので、ちょっとアレな描写があります。 そういうのが苦手な人は一気にスクロールして選択肢だけ選んでください。読まなくても選べます。 でも読んでから投票すると役得とかもあると思う、ゼ。 例えば、霧が発生する瞬間を確認することは難しい。 景色を覆っている白濁を見ることはできても、景色を覆い始める瞬間は認識し難いものだ。 いつの間にか発生して、いつの間にか消える。 それは、その類のものだった。 空を眺めていた遠野志貴の視界の中心に、いつともなくそれは紛れ込んでいた。 ゆらゆらと、まるで糸の切れた凧のように、あるいは海中を進む烏賊のように。 空を漂っているそれは、奇妙な物体だった。 一応生物ではあるらしい。顔や四肢はとりあえず存在する。 体は小さい。まるで子供のよう。 だけど子供と言い切るには雰囲気が幼くなかった。 糸のように細められた目が、志貴を捕らえる。 「――……っ!?」 志貴はほとんど反射的にベンチから腰を上げていた。 あの物体はそれなりの高度を飛んでいる。それなのにはっきりと目が合うのは異常だ。 だが志貴が咄嗟に動いたのはそんな理屈からではなく、単純に背筋に走った悪寒を信じたためだった。 あの物体が、口を開く。 野太い、ダンディズムに溢れる声だった。 「ネコアルク――」 ここまでは、まるで耳元で囁く様に。 だが次の瞬間、それは凶暴に目を見開き、 「―――カオスッ!!!!!!」 己の名を叫びつつ、腰のジェットを吹かして落下した。 ◇◇◇ 志貴は己の勘に感謝していた。 事前に立ち上がっていたおかげで、何とかその場から飛びのくことができたからだ。 もっとも、実際は尻餅をつくようなものだったが。 なんにせよ、彼は奇跡的に無傷だった。 アレは墜落事故真っ青のスピードで突っ込んできたというのに、ほとんど破片やらなにやらを撒き散らさなかったのだ。 その墜落地点は、砂煙でぜんぜん確認することができない。 今考えるとその時点でもうお終いだったのだが。 やがて砂煙が薄まり、事故現場があらわになる。 ――なんか、頭が地面に埋まって必死にばたばたしている怪生物がいた。 「うわ」 うわ、としか言いようがない。 まずこれが何なのか分からない。なにこの二頭身UMA。お前の学名は何だ。 足が短すぎてばたばたしても地面に届かない辺りが哀れみを誘っている。 ――引っこ抜いたほうがいいのかな。 ぼんやりとそんなことを思うが、あまり実践する気にはなれなかった。 きっとアレの救助はムツゴロウさんでも躊躇うだろう。目の前のアレはそんな生物である。 だってホラ、関わるべきでないという証拠に、いまアレの首がにゅいーんて伸びた。 そのまま伸びた首でブリッジするように足を接地させると、UMAはズボリと地面から頭を引き抜く。 「危ない危ない。ネコミミが無ければ即死だったな……」 ――ネコミミ? おい、まさか。 そんなパーツで、お前は自分が黒い猫だと言い張るつもりか。 それは遠野志貴の心情というよりは、まるで世界の外側からの紛糾。 そしてそのネコミミはそれに答えるように、何処か遠い所に向かって叫び始めた。 「ケーキランドセル縦笛体操着無口幼女つるぺた。 彼を受け止めるには少女の体はあまりにも小さすぎた――だが男はまるで獣のように以下省略。 ――さて、この位で建前は果たせたと思うかねマイブラザ?」 何処からか葉巻など取り出して銜えつつ、同意を求めるかのような視線。 その時、志貴は未だその場を離れられないでいた。 例えばアレが牙とか剥き出しで 「フハハハ貴様ら全員捕らえて生血を啜ってやる」 とか絶対悪っぽいこと言ってたら逃げる気にもなっただろう。 だが、あれは意味が分からない。方向性すらわからない。 それでも、視線を向けられて理解した。 「ママー、なにアレー?」「シッ、見ちゃいけません」という有りそうでやっぱりないやり取りの意味を理解した。 なんてことだ。 もはや慣習、様式美の類と化していたそれに込められて意味はかくも重いものだったのか。 即ち――変なものに関わっちゃいけません。 その言葉をするめを噛むように噛み締めた。ぶっちゃけ泣きそうだった。 それでも、志貴は尋ねずにはいられない。それは明らかに愚昧な動作であったが。 「お前――なんなんだ」 「質問を質問で返すなァ――! と言いたいところであるが、ふむ。我輩も自己紹介は済ましたいところ。紳士的な意味で。 こんにちは、そしてごちそうさま。我が名はネコアルク・カオス。 ロリ分を求める諸兄への逆清涼剤かつ、 先ほど動物園と化したホテルの付近に生息していた野良猫が 上から落ちてきた貴様の不良兄貴に飲まされるはずだった混沌の雫とフュージョンしたという裏設定を持つキャット。 あまり深く考えるな。どうせ今夜限りの儚い存在よ」 フハァー、とダルそうに紫煙を吐くネコアルク・カオスとやら。 「……ああ、そう」 確かに深く考えたら負けだ。 ホテルは動物園になんてならないし、所詮ロリコンはマイノリティ。 大体、自分に兄なんて―― ――ズキリと、頭の奥が痛んだ。 「っ――」 ……思い、出せない。 思い出せないということは分かるのに、肝心の記憶が手繰り寄せられない。 「やめとけやめとけ。我輩が来た時点でもはや貴様はこっちの住人。 シリアス展開になど戻れぬものと知れ。 あ、でも白いほうを選んでたら清純友情ルートとか始まってたらしいゼ! やっぱGCVの方の白猫ですが。 んー今日も順調に狂ってますな、世界」 やはり意味の分からないことを垂れ流すブラックキャット。 だけどそれが絶望的なことだというのは、何故だか理解できた。 だから、遠野志貴は逃げた。全力で逃げ出した。 ――いや、逃げようと、した。 「おやおや、何処へ行くのかな汝?」 肩にのしかかる重み。 志貴は嫌な感触に半泣きになりながらも、ここで泣いたら取り憑かれると気丈に振り返った。 「遠慮なんてしなくてもよいではないか。ほら暖かい紅茶とパンは無いけれど、君にはこの混沌をプレゼント! ちなみにクーリング・オフも可。こっちもオフし返してやっけどな!」 ――肩の上には、粘る黒い粘液が。 「うっわわわわわ!」 ペイペイッ、と払い落とす。 地面に落ちたそれはなんかキイキイ喚いていたが、やがて静かになった。 多分寄生して無いと数秒持たないとか、そんな謎生態系なものだったのだろう。 「むう。異文化コミュニケーションという名の侵略行為は失敗に終わったか。 志貴の馬鹿っ、やる前から諦めるなんて!」 「どっちが馬鹿だ、この化け猫!」 「むっ、カッチーン。貴様こそヒッキーの癖に生意気な。 一般人からすりゃ貴様も十分化け物だっつーのこの絶倫超人。 どうせアレだろ? 仮に期待通りに黒猫が来ても、貴様のナニでアレして白猫にする気だったんだろ? 猫にミルクとかそういうレベルじゃなくて」 「な、何をいってるのか分からないな!?」 「そんな台詞を言うのなら冷や汗は隠しておけよブラザー。 三度の飯よりアレが好き、な貴様が何をいうか。 個人の趣味は自由だというが、刑法とソフ論には触れぬようにするのがジャスティス。 目を見て話せよ。おい。 が、我輩はマイノリティにも理解が有る。 再犯しないと拇印捺して誓うのなら見逃してやろう。 選べよ、犯罪者」 「くそぅ……! 俺は引き篭もりだったことを今ほど後悔したことはない……! 語彙が少なくて言い負けそうじゃないか!」 「いいね! 貴様もなかなかどうしてこっち色に染まってきたじゃないか。素敵! じゃ、そろそろ終幕と行こうか」 すでにご馳走様は言い終えてるしな、とネコアルク・カオス。 「え――?」 「ふふん、考えてみろ。何で魔眼殺しを持たない貴様が我輩と話せてる? 頭痛も吐き気も無しで。 ていうか――たかが人間がジェットをかわせるわけ無いじゃん」 「え、ちょ、ま」 なんか、無茶苦茶言ってる。 一応まともなこといってるっぽいけどさ、それをいうお前は無茶苦茶の固まりじゃん。ていうかカオスじゃん。 今までの展開、全部丸投げしやがった。 だがその抗議文を提出する間も無く。 というか、本来はあらゆる時間が許されていなかったのだが。 「そゆことそゆこと、汝はもう我が腹の中。 ――ここが貴様の終着だ。なんちて」 慌てて周囲を見渡して――遠野志貴は、絶望した。 どうしていままで気づかなかったのか。 茂みの中。ジャングルジムの上、滑り台の影、水飲み場、自販機のつり銭口。 あらゆる場所に――無数の、黒猫が。 「あ、あ――」 「I am the bone of my cat――体は猫で出来ている。 猫王の巣、流法(モード)無限肉球……! お気に召したかね?」 ――分かりきったことを語る必要は無い。 遠野志貴は死ぬにしろ死なないにしろ、もはやまともな人生には復帰できないだろう。 BADEND NO.2 『それなんてカオス?』 【選択肢】受講する科目を選んでください。 皆:教えて!知得留先生(スタ) 混:教えて!知得留先生(ンダ) 沌:教えて!知得留先生(ード) 投票結果 皆:4 混:1 沌:5
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* 突き刺せ、と俺は言った。ゆるがぬ信仰心とやらが貴様のでかい図体のすべてを形作っているものなのだとしたら、それは赤子の手をひねるよりも簡単なことだろうと俺は言った。みごとその胸に突き立ててみせろ。 ヴァチカン第三課のとっておきは、祝福印をとかれて今俺にある。けがれのない綿花がみっしりと敷きつめられた箱におさまり、おおぎょうに何重にも、何重にも、何重にも聖布でくるまれて、まるでロシアの小箱人形だ。めくってもめくっても、中からいくらでも代わりの一回りちいさながわがあらわれて、芯の部分に辿りつく前に厭になってしまう。それでいいのだとずっと思っていた。辿りつく前に厭になってしまうから、だから芯の部分を見ないでも済むのだった。そうして代わりに安心を得た。めくりきれば誤魔化せない。隠しとおせない。なにがなんでも目の前の非現実的な現実を、直視せざるを得なくなる。 それはいやだった。 だから俺は見えないことに安心して、とっておきを使わなくてもおさまる事態に安心して、そうしてのうのうとここまでやってきてしまったのだった。 そうだ、俺はそうして自分の直視すべき現実から、ずっと目をそむけて生きてきたのだ、そむけて生きてきたのだと言うことに、愚かにも今、たった今気付いたばかりなのだ。 直視した現実はあまりに非現実で、正直なところ、自分は夢でも見ているのじゃあないかと思うほどだった。色がない。音がない。においも、あたたかさもない。砂嚢の代わりにざらざらとした灰色の粒を脳髄に詰めこまれたように、俺は自分が莫迦になったのではないかと思った。 なにもかんじない。 だのに俺の意思に反して俺の口は、勝手にこころにもない言葉を、次から次へと、まるで機関銃のように吐きだしては止まらないのだ。自分がいったい今何を命じているものか、俺にはさっぱり判らなかった。どうしたことだというとまどいとすこしの恐れ、それに今この瞬間とはまったく関係のない、たとえば先だって訪れた博物館で見た戦闘機の尾翼のかたち、だとかそんなどうしようもないものが、俺の脳裏をよぎってゆくのだ。 なに、使い方は拍子ぬけるほど簡単なんだ、ただこれを、貴様の心臓に突き刺せばいい。それでしまいだ。それでなにもかも片付く。 新しく買った電化製品についてくる保証書、説明書、ああいった誰も読まないくせにただ無駄にぶ厚い冊子と何も変わることがない俺の言葉の塵の山、商品取り扱い説明からはじまって保証内容を話し終え、あとは目の前で黙って俺の言葉が終わるのを待っている貴様の了承の声を聞いたらそれで仕舞い。執務机の使いこまれた木目の模様を眺め、無意識にそれを撫ぜながら最後の言葉を吐きだして、俺の口は発することをやめた。俺の意識は唐突に俺の中へ戻る。 唐突に戻されて俺はうろたえる。どうすることが今いちばん不自然に見えないのか判らなくなって混乱する。 とりつくろえない俺の前で、貴様が静かにかくあれかしと呟き、頭をさげた。 わかったというしるし。そうすることでひとつ、壁の裏や地中の中で地盤をおさえる螺子のひとつになれるというのならばそうすることがただしいのであろうと了承したしるし。そうして貴様が頭をさげた瞬間から、俺はひとでなしになったことを自覚した。血も涙もなく手札を使い捨てつづける管理の中の一員。 たとえばはじめはとるに足らない、いつのまにか胸もとにあった一本の万年筆。にぎりが悪い、紙面が毛羽だつ、インクが漏れる、とても使えたもんじゃあない粗悪品が、それでも使い勝手のよい代わりがないものだから、文句を言いながら使い続ける、五年、十年、そのうち手に馴染み、癖もあるしとても良品と言えるものではないにしても、辛抱してここまで使ったのだ、使い続けたのだ、使い続けてやったのだ、そこに愛着とまで強いものはなくとも、ささやかな未練のようなものは存在するのじゃあないだろうか。頭をさげた貴様を見ながら俺はそんなことを思う、だが俺の口は動かない、せんごろ莫迦みたいに次々と漏れたどうでもいい言葉が、今は口を衝いてでない、神妙な顔をして黙りこくる、しかしこの場合黙っていることは別に悪い対応じゃあない、だったらそれでも良いのではないかと思った。 間違いでないのなら。 しばらくして頭をあげた貴様を、やはり俺は莫迦みたいに黙って眺めている、口が開いていることに気が付いて慌てて閉じた。さまになっていない。それから、頭をあげても貴様は俺を見ないのだなとふと思った。視線は床からすこし上、ちょうど机の木目のあたりにうつろい、俺を直視しない。直視しない貴様が不意に腕を伸ばしこちらへ差し出した。 俺は一瞬、貴様の意図が読めなくてぎょっとなり、それからすぐに貴様の腕が俺へむけてではなく、俺が、無造作に差しだした木箱を包んだ布包みへ向けられているものであることに気が付いて、つい腕をひっこめそうになった。そうしたら貴様は、もしかすると視線を上げて俺を見るかもしれないと思ったからだ。けれど引こうとした腕は、金縛りにあったように俺の意志では動かない、動かせない、もし俺が悪心を起こして無理やりに体を引いたとして貴様が驚いて顔をあげる、そうして真正面から見据えられたら、俺はぜんたいどうした顔をしたらいいのだ。 みられることはいやだった。 俺よりよほど一回り大きいてのひらで受け取る貴様は、黙ったまま発しない、先に一語発してからもう貴様はなにも言わない、貴様より一足先にひとでなしになった俺を哀れんでいるのかとも思ったが、とても聞けなかった。 受けとる際に、おそらく貴様の意図ではなく偶発的に、貴様の指が俺の指に触れた。触れたというにはおこがましいほど、かすめた、そう言った感覚に近い、かすかな、ほんのかすかなぬくもり。驚いて俺は手を放す、放してからすぐにしまったと悔いた。だがしっかりと貴様の手に渡されきった木箱はゆらともせず、千万の命よりもはるかに貴重な聖遺物は無事だった。取り落とすこともなく、けたたましい音をたてて床に転がることもなく、だから本当は俺は安心したらよかったのだ。だというのに、貴様の手にしっかりと握られたそれを見て、俺はひどくめちゃくちゃになって、あられもなく奇声をあげ、喚きたくなった。どうしてなのかは知らない。 かくあれかしと、受け取った貴様がもう一度呟いた。牽制を含んだ貴様の響きが、まるで俺を丸ごと否定しているように聞こえて、俺は足もとがいきなり崩れ、地球とか言う球体の芯の部分に延々と落下してゆくこころもちになった。 なるほどそうかと、俺は唐突に理解する。貴様もたったいま、ひとでなしの仲間入りを無事に果たしたのだなと。めでたいことじゃないか。たいそう立派な、めでたいことだった。 祝杯を、いや俺が今からやらかそうとしていることを考えると、祝砲という方がただしいかもしれない、派手に打ち上げて届いた空にはいっせいに吹雪が散る。アリルイヤ。いと高きところにおわす国の使者から大音声、ひとが、ひとであることをやめてはじめて到達した境涯。聞こえたか、貴様には聞こえたろうか。俺には今はっきり聞こえた、たしかに聞こえた気がする。 俺の口は莫迦みたいに動かない。 ああ、いやだと思った。いやだ。いやだいやだいやだいやだ。俺は貴様をそんな高みに押し上げたくはなかった。俺が、俺だけが高い場所にいて、上の方から貴様に向かって進むべき方向をさししめす、貴様は黙って従う、それだけでよかったし、いままでも、これからも、そうして、五年、十年、使い続けた道具は道具のままでこの先二十年、さらに三十年。そうして過ぎてゆくことが当然であると思っていたし、そうなるものだと思っていた。俺はいやだ。貴様が勝手にひとでなしになり、俺の手の届かないずっと先へ行ってしまうのがいやだ。愛着じゃない、そんなものは俺にはない、だが馴染んだものに対するほんのちっぽけな未練まで捨て置かれて、貴様がさっさと先にゆくのはいやだ。 しくじるなよ。 ようやく動いた俺の口がそんなことを言った。つづけて聖句を唱え、貴様をここから送りだす、化け物の群れの中へ解き放つ、打ち抜かれた銃弾は戻らない。二度と戻らない。頭の中がぐるぐるとする、二度と戻らないことを知っていて今から俺は貴様を手ばなす、なによりも強い貴様はきっと化け物の群れを射抜く、射抜き、討ちはてて、だったら俺は何を心待ちにして、ここで、この場所で待っていたらよかったのだろう。 もう一度貴様の目が見たかった。けれど見てしまったら、虚勢は瓦解する。いっさいが消えてなくなる。瞼を閉じた。瞼の裏の黒がすべてだと思った。 こころおきなく死ね。俺は言った。 心の臓腑が張り裂けそうだと思った。 next -------------------------
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ごみ袋かなにかのように助手席に勢いのまま抛りこまれて、俺は尻からというよりは頭から座席に突っ込んだ。しかもまだ起き上がりもしないうちにキーを回してエンジンが掛けられ、乱暴にアクセルを踏まれている。 加速のGに俺は唸った。 「きさ、」 「口を固く閉じていなさい。舌を噛みます。」 俺が喚きかけた先を制して、そいつが俺にそう言った。俺が口を開くことを見越していたとしか思えない、どんぴしゃ絶妙のタイミングの制し方だった。 貴様な。 何か文句を言ってやりたかった。 もうちょっと丁寧な運転ができないのか。いやそんなことはいまどうでもいい。そもそもなんで貴様が俺のことを迎えに来るんだ。俺は迎えにこいだなんてひと言も頼んでいない。どころか来るなと電話越しながら怒鳴りつけたはずで、だのに自分が迎えにくるのはさも当然、と言ったふうでそいつが運転席に座り、前方の路面を睨みつけてハンドルを握っているのを見ると、無性にむかむか腹が立った。 俺は、貴様に面倒を見てもらわなきゃならないガキじゃない。 言ってやりたかったけれど、うっかり口を開くと文字通り舌を噛みそうだった。噛むだけならまだましかもしれない。路面がでこぼこしており、しかもこいつがやたらとスピィドを出しやがるものだから車体が跳ね、勢い、噛み切ってしまいそうだ。夜間救急行きだ。 噛み切った舌というのは、ところで医務局に駆け込んだところで何とかなるのかな、縫い付けてくっつくものなのだろうか。しかし医務局の奴らなら何とかしてしまいそうで、いやだな。 ついついそんなことを思いながら、俺は上下に突き上げられる車の中で何とか体を起こし、座り直してシィトベルトを締めるとアシストグリップを握る。そこでようやく一息ついた。 そうして、運転席のそいつと同じようにフロントガラスの向こう側へ目をやる。 真っ暗だった。 この時間でも、市街ならまだ防犯のために街灯がぽつぽつ点いているものを、店近辺の郊外ともなると、カーライトが当たっている箇所以外はほぼほぼ漆黒の闇だ。おまけに見たところ道路横にはガードレェルすらない。今走っている道路がどの程度の高低か判らなかったが、もしある程度の高さがあるとすると、ハンドルを握るこいつがほんのすこし手を滑らそうものなら道路外へ真っ逆さま、という洒落にならない事態に陥るわけで、そう考えるとぞっとしない。 しかも、思えばこいつの運転する車に乗った機会がない。まったくの初めてだった。 俺がヴァチカンから公用で出かけるときは専属の運転手がついたし、十三課個別の用事であったなら、俺は局員の中から気のおけない連中を選んで運転を頼んでいたから、こうして、こいつの隣に座る、ということがそもそもないのだ。 そこまで思い、俺はアンデルセンの顔を窺った。 街灯もないものだから車内はひどく暗い。まさか相手の表情をたしかめるために車内灯を点けるわけにもいかず、そいつがいま一体どんな顔をして前方へ顔を向けているのか判ったものじゃあなかった。 判ったものじゃあない、けれど俺はどういうわけだか貴様がひどく腹を立てていると言うことが手に取るように判るのだ。 ……というかこいつ、運転できたか? 胡乱な目で眺めてしまう。免許証保持うんぬんのはなしではなく、実際の運転技術の問題の方だ。 人斬り包丁役のこいつは、後部席に座ることが多かった。運転役は運転に徹するもの、そうしてこいつの役目は的を見つけた瞬間、引き金を引き即凶器として飛び出す、と言うことだったから、ハンドルを握っていてはその役目を果たせない。 だから俺が見たことがあるのは、ばかでかい体をちまーと縮こめて座席に座りながら機を伺う姿で、こんなふうにクラッチペダルを踏み、シフトレバーをせわしなく動かす姿というのは、わりと想像の斜め上をいった。 だいたい、貴様の手の大きさじゃあ、レバーの握りが小さくて不便だろうに、などと俺は思い、それからいきなりきつく踏まれたブレーキの反動にわっと息を飲み、がくんと体を前後させた。 ベルトをしていてよかったと思う。してなけりゃあフロントガラスに頭の形に皹を入れて脳挫傷だ。 「――赤信号でした。」 ……貴様な。 なじる俺の目線に、悪びれもなく貴様は低く呟いた。ひと言。 顔へ、信号の赤いライトが反射して、ようやく俺はそいつの表情を窺うことができる。 思った通り、ものすごく不機嫌な顔だった。 黙りこくったまま、じきに青信号になり、また車は発進しだす。だが一度止まって貴様は若干頭が冷えたのか、次の加速は先ほどめちゃくちゃなものではなく、俺はひとまずほっとした。徐々に市街地に近づいてきたせいもあるのかもしれない。一応こいつにも、往来を気にしてスピィドを緩める、という頭はあったわけだ。 路面の凹凸もやや平坦になったのか、先よりも上下に揺さぶられる感じも少なくなった。 そのままなんとなく、口を開けない空気が車内に広がっていたと思う。十五分は、会話もなく走っていた気がする。 俺は先ごろの店での接待相手とのやりとりを、思い出したくもないのに思い出していた。座っているだけで手持無沙汰で、それしかやることがなかったのだ。 これが日中なら、それでも外の景色について言及出来たろうに、夜間のおかげでまるきり景色は見えないし、ローマ市内につながるどこかの幹線道路を走っているはずなのに、いったい今どの路線を走っているのすら判らなかった。 「……ったろに、」 車内の揺れも軽減されたことだし、ひたすら黙って助手席に乗っているのも気まずい気がしたので、俺は何も見えない窓の外を眺めながら、ようやく口を開く。 本当だったらここは、休んでいる時間だろうに迎えに来てくれて悪かったな、だとかいう場面なのだろうと思う。俺もそういうつもりで口を開いたのだし、なにもばつの悪い子供じみた言い訳を言うつもりは微塵もなかった。 なのに、 「――はい、?」 貴様の声に一気に不穏が混じる。 「……らから。俺は、迎えにこらくて、いいって、言ったんら。」 ちがう。そんなこと言うつもりじゃあなかった。なのに口から勝手に付いて出た言葉は、まるきり可愛げのない言葉で、貴様が不快になるのも当然だと思う。 「……、そうは見えませんでしたがね。」 ふんと鼻を鳴らしてそいつが答える。 「だいたい、あの醜態はなんです。痴態とは言いたくないですがね。組み敷かれ、抗いらしい抗いもできず、あのまま私が行かなければいったい今ごろどうなっていたと思いますか。無傷で帰宅できるとお思いでしたら、能天気もたいがいにしろと言わざるを得ませんね。」 「……俺にらって考えが、」 「考え。考えねえ。」 続けてそいつは笑った。せせら笑いだ。 「……その呂律もおぼつかない、まともにひとりで立つこともできやしない状態で、『考え』? あの御老人に気に入られるために、あなたはなにを差し出すつもりだったんです?」 「……、」 いらいらとハンドルを指ではじき、アンデルセンが前方を見据えたまま吐き捨てた。 「それとも、おきれいなあなたの崇拝者は多勢いて、『こうしたこと』は日常茶飯事だとでも言いたいですか。」 「――、」 そいつの言葉に、ひゅっと、俺は俺の喉が息を吸い込む音を聞いた気がした。 誰にでも媚を売りすり寄り、股を開き、夜の親密関係によって今の座を手に入れた、だとか内外で噂されていることを俺は知っている。べつに今に限った話じゃあない。ものごころついてよりずっと、俺は自分自身の顔をなにかと比べられ、貶されて生きてきた。 ……見たかい、あの顔。母親そっくりじゃあないか。そりゃああの子に罪はないのだろうけれど、……けど、あの顔ではね。 古くは唯一の身寄りが死んだとき、引き取り拒否をした親戚どもに。 ……なンて醜悪な面なんだろう。 そうして義母に。 ……わたしはその顔が大嫌いだよ。男に媚を売り、お情けを乞うその顔がね。 片膝で俺を押さえつけ、ぐりぐりと火箸を肋骨の間に差し込みながら、あの女は憎悪を浮かべて死ね、死ねと耳に吹き込んだ。 自分の顔が歪むのが判った。恐怖でなく、純粋に痛みに耐えかねたのだ。 望んで生まれた顔じゃあない。そもそもおのれの面なんざ、鏡でもない限り見えやしないのに、まったく勝手ばかり言いやがる。 ……見たか? あいつ。ほら、■■枢機卿のお気に入りってもっぱらの噂のだよ。え? ……そう、そりゃあのおきれいな顔でだろうさ……。 ヴァチカンに入っても妬み嫉みを含んだそれは変わらなかった。 きれい? なにが? きれいだとして、何かが変わるのか。 だいたい、この顔に産んでくれと誰も頼んでいない。腹立ちまぎれに言い返したかった。けれど反論するだけ無駄なことも俺は知っていた。 悪意に反応すればするほど、そいつらはそら見たことかと手を叩きはやし立てて、それまで以上に噂に尾ひれがついてひとり歩きだ。相手にしないのが一番で、だから俺は俺自身にまるで興味を持てなかったし、どころかおのれの顔がひどく嫌いだった。反吐が出る。 部屋にも鏡を置かなかった。鏡はなくても身支度は整うし、映る姿を見るだけでうんざりした。 だから、街に出るのも、実はあまり好きじゃあない。自分の姿がショウウィンドウに映るからだ。 今回だってそうだった。 あの、老いた枢機卿とやらが、俺のことを舐めまわすような目で眺めていたことは知っていた。……ああ、またか。そう思った。 要は慣れだ。 いちいち不快を示したところで、俺にとって有利にはならない。適当にあしらって流すのが結局一番害が少ないのだ。 猊下が是非にと望んでおられます、だとかなんとか、従者が今日の業務終了後の会食に当然のように誘ってきたが、受けるつもりはなかった。俺はさっさと局務室に戻り、仕事がしたかった。 だいたい、俺に仕事を振るなと言いたい。一日のやることリストだけで両の手の指がなくなってしまうほどくそ忙しいのに、老いぼれの相手を割り振るなと言ってやりたい。 公務だかなんだか知らないが、そんなものは閑職のやつらに回しておけと言いたかった。どうして俺なのだ。 ひゅっとなった俺の喉の音は、狭い車内に響き、妙に気まずくなる。 「――申し訳ない。失言を撤回します。」 俺が息を飲んだことに気が付いたそいつが、前を向いたまま舌打ちし、かぶせて言い直す。 だが言い直してどうなる、俺は思う。撤回するなら、最初から口に出しちゃあいけないんだぜ。 口から一度放たれた言葉はもう二度と元には戻らない。だから、よくよく注意して発言せよと、毎日開くありがたい聖書にだって、何度となくそう書かれているじゃあないか。 ……ああそうか、俺は気付く。 貴様の心にも、他のやつらと同じ、俺への侮蔑が満ちているのだな。 妙に冷めた頭で思い、そうして、止めろよ、と俺は言った。 「は、」 「車を止めろ。」 深夜営業の看板に顎をしゃくって俺は言い、貴様は黙ってスピィドをゆるめ、路肩へ寄った。駐車禁止の文字がちらと見えた気もするが、かまうものか。これは停車であって駐車じゃあない。それに、俺は降りるが、こいつは運転席に座ったままだ。 ちょっと待ってろ。 言い置いて俺はドアーを開け、灯りに誘われる蛾のようにふらふらとした足取りで、まぶしいくらい灯りが漏れる店に向かって歩き出した。 少し頭を冷やしたかった。 「――マクスウェル、」 だのに、なぜだかそいつまで慌てた様子で車を降り、付いてくる。待ってろと言ったのに聞こえないらしい。いらいらした。 苛立ったけれど、付いてくるなと口を開くのも面倒くさくなって、俺は黙って歩を進める。一瞬ゆら、と視界がぶれ、まだ酒が抜けていないことを知った。支えようと伸ばされた腕を振り払う。……かまうなよ。 鬱陶しかった。 こうしたことが日常茶飯事? 貴様も俺のことをそう思っていたんだな。 そればかりが頭の中をぐるぐる回って、なんだかぐちゃぐちゃだ。反吐が出そうだった。なんでもいい、何か飲みたかった。 服の隠しをさぐり、紙巻きの箱を取り出すと一本咥え、火を点ける。煙草の煙と硫黄がまじりあったにおいが好きなので、懐にマッチを入れていることが多い。だが今日はすうと深く吸い込んだ煙がおかしな具合に苦い。内心首をかしげた。 おかしいな。酒を飲んだあとは、いつもよりうまく感じるものなんだけどな。 隣でぬっと立っているそいつに、俺はもう一度顎を使って店内を示した。何か買ってこい。言ってやる。 「……なにか、」 「なんでもいい。飲む物。」 ちいさく頷き、貴様がのそのそ店内へ消える。俺はその背に向かって、長々と煙を吐きだした。 売り言葉に買い言葉。判っていた。 俺が貴様にねぎらいではなく不貞腐れた言葉をかけたのも、貴様が俺の悪意に過敏に反応して辛辣な言葉を返したのも。 ばかばかしい。失言と言うなら互いに失言で、言葉尻をあげつらってどうのこうの言ったって泥試合だ。泥沼どころか底なし沼だ。 「あー……飲みすぎたかなァ……。」 ひとりごち、がりがり頭を掻いて、立ちのぼってゆく煙を追って空を仰ぐ。仰ぐと、優しい黄味を帯びた月が空にかかっていた。 ぼんやり眺める。普段眺めているものより、だいぶんあたたかな色に見える。色でだいぶん印象が変わるものだな。なんだかやわらかでうまそうだ。 そのまま空を仰いでいると、ややして店内から湯気の立つ紙コップを手にふたつ提げたアンデルセンが、またぬうと姿をあらわす。無言で差しだすところへ、煙草の火をもみ消し、俺はひとつを受け取った。 市街から離れた、幹線道路にぽつんと建つ深夜営業の店に、テイクアウトのエスプレッソをわざわざ買い求めに来る頭のめでたい客は他にはいなかったのだろう。それは舌を火傷するほど熱くなっていて、俺とアンデルセンはふうふうと口をとがらし息を吹きかけ、しばらく立ったままコーヒーをすすった。 すすりながら、ちらと目をやる。ここは車内よりも店の灯りが漏れて明るい。だからそいつの顔がよく見える。やつが己の失言に苦い顔をし、俺になんといったらいいものか思案しているさまが判って、不意に笑いたくなる。口が過ぎた、しまったと具合悪くなっているのは俺も同じだった。 「……悪かったな。」 先に口を開いたのは俺だった。時間が経ったおかげで呂律も直りつつある。湯気の向こうの貴様が、窺うようにこちらに緑灰色の視線を走らせた。 「……バスもタクシーもこの時間はない。ヒッチハイクは論外だし、あすこから歩いて帰るのも大変そうだ。正直、迎えは助かった。」 「――、」 じっとこちらを見る貴様に、俺は肩をすくめ、 「給仕はあの従者がやっていた。やたらと勧められたのは、きっと何か一服盛られていたんだろうな。」 続けて眉をしかめてみせる。 酒が強いとは思っていないけれど、それでもまるきり飲めないわけでもない。だのに二、三杯で視界がぐらぐらし始めた。従者もあの老いぼれもそろってこちらを観察する目で見ていたから、俺は最初値踏みされているのだと思っていたけれど、あれは、盛った薬の効き目が表れるのを待っていたのかもしれない。 そう言えば市内中のオテルを探すことになる、だとか電話越しに告げていたような気もする。とするとあの枢機卿は、俺を実際「そうした目に」合わせようとしていたわけだ。 はたしてあの猊下が俺に圧しかかる方か、もしかすると圧しかかられる方がお好みなのかもしれないが、さてどちらの御趣味だったのかな。くつくつと漏らすと、黙ってこちらを見ていたそいつの眼差しがきつくなった。 「……笑いごとで済んだからいいようなものを、」 「笑いごとさ。笑うしかないだろう。女性ならともかく、私は男だ。」 「――、」 すっと目を眇めたそいつが、紙コップを持っていない空いた方の手を俺に伸ばす。不意の動作に俺はぎょっとなったけれど、そこで下がるのは貴様に怯えたようで嫌だった。俺は貴様がちっとも怖くない。ふんと鼻を鳴らし、顔を上げて相手の顔を睨めつけてやる。 「男、ねぇ。」 「男だろう。たしかに髪は長いが、背の高さも、腰も、肩幅も、声も、どこにも女性のやわらかさやなよやかさやまろみはない。」 「……、……、……、」 黙って頬の横で俺の髪をからめて弄る指を、横目で見ながら言ってやった。 そりゃあこいつの体のデカさ、ぶ厚さにくらべれば数段劣るのかもしれないが、それは俺が華奢だとか、貧弱だとか言うわけではなくて、いわゆる比較対象が悪すぎるのだと思う。俺が普通で、こいつが規格外なだけなのだ。俺が局のトップで、こいつが武装神父隊の隊長なものだから、どうしたって横に並ぶことが多くなる。並べば比べられるのだ。しようがない。 言い募る俺に、うんとも否とも貴様は答えなかった。ただ眇めたままの目で推しはかるように俺の顔を眺めていただけだ。 「……、……なんだよ、?」 あまりにじっと眺めてくるので、居心地が悪くなる。まだ熱いエスプレッソの紙コップを片手に、俺は顔を背け、車へ戻ることにした。 向かいながら、そこではじめて、俺が乗せられていた、つまりそいつが乗ってきた車が、ヴァチカンの公用車でなかったことに気が付いた。 公用車の車種は決められている。その時々によって多少変動があったりはするが、メルセデス・ベンツか、デイムラーが最近の車種だったはずだ。 けれど、駐車禁止の看板の真ん前に堂々と停められている軽薄な青銀のそれは、だいぶ乗りくたびれたプジョー104、一般車両だ。ヴァチカンのものじゃあない。 たとえばヴァチカンに通う職員の車の可能性はあったが、それにしたってナンバープレェトが明らかにちがう。これは一般車だ。 そうして俺は、その車が停めてある光景を見たことがある気がした。 見たことがある、どこで。 「……アンデルセン。」 俺は足を止め、背後からゆっくり追ってくる男に声をかける。かけながら、先ごろのリストランテの位置を、頭の中の地図に思い浮かべていた。 「ちょっと待て。貴様、……、……貴様、どこから来た。」 たしか電話でのやりとりは、こいつがヴァチカンにいることになっていて、そこから二十キロ少々、だから待ち時間は三十分でぎりぎりだとかなんとか、そんなように従者が言っていたような気がする。 俺もあのときなんだかぼんやりしていて、会話を聞き流すまま、とくに気にも留めてはいなかったけれど、よくよく考えてみれば、このところアンデルセンが出張らなければならないような大掛かりな公務外征はない。 俺のラインに直接かけてきたから、たぶん従者はこいつがヴァチカンに詰める職員であると判断したのだろうけれど、こいつの肩書きはヴァチカンではなくフェルディナントルークス孤児院のお優しいアンデルセン先生さまだ。 つまりこいつは、 「おい、貴様、まさか、」 「――今夜はあなたが顔を出すような気が、なんとなくしていたのですがね。自慢じゃあないですが、私の勘はちょっとしたものなんですよ。あなたに言わせれば動物的だと言われてしまいそうですが……、……、寝ずに待っていたが、一向にやってくる気配がない。ですからこれは、十三課の局室で仕事しているのだろうと当たりを付けた。そうしてコォルしたら、知らない人間が電話口に出るでしょう。事件に巻き込まれたのかと焦りました。」 「……、」 助手席のドアーを開け、乗り込みながら俺はじろりと貴様を睨む。こいつが多弁になるときはきまって、何か誤魔化したいときだ。 なあ、と俺は言った。 「……フェルディナントルークスからあの店まで、どれだけあると思う?」 「……、さあ、」 孤児院からリストランテまでの距離は、ヴァチカンから店の比じゃあなかった。だとすると、指定された時間に間に合わせたこいつは、いったい時速何十キロでぶっ飛ばしてきたのかという話になる。 何十キロの世界じゃないよな。百キロ二百キロの世界だよな。 はあ、と俺はため息をつき、眉間の皺を揉みながら、轢いてないよな、ととりあえず確かめることにした。 「はい、?」 「この際、一般道をサーキット並みに何キロでクソ飛ばしたかは不問だ。信号をいくつ無視したのかも言わんでいい。言いたいことは山ほどあるが、確認したいのはひとつだけ、……貴様、店に現れるまで通行人をひっかけてはいないな?」 「おそらく。」 「……じゃあいい。」 まったくもってよくない気がしたが、俺はそう答える。 通報されたらどうするつもりだったのかとか、パトロール中の警察に見とがめられたらどうするつもりだったのかとか、貴様まさかスピィド超過カメラに引っかかってないよなとか、こいつがやらかしたことのしわ寄せは、確実に俺にやってくるわけで、できれば深夜の気ちがい暴走車をどいつもこいつも見ていなければいいが、そう思いながら俺は深々とため息をついた。 不問だ。不問。みんな不問。 厄介ごとの後始末は、とりあえず局に上がってきてから考えることにした。 「これ、誰の車だ? 公用車じゃあなし、フェルディナントルークス院に専用車はなし、ということは、院に出入りする誰かの車だな。脇に停めてあるのを一度見たことがある。」 「ルチオ神父です。彼は通いですから、」 俺のあとからそいつも運転席に乗り込んでくる。大柄なそいつがどすんとシィトに腰かけるだけで車が軽く揺れた。こいついったい何キロあるんだろう。ほどよく筋肉と脂のついたその体が、戦闘時は驚くほど俊敏に動くことを俺は知っていた。 「通話しながら表に出たときに、ちょうどエンジンをかけ、帰宅しようとしていた彼とはち合いましてね。」 「強奪してきたか、」 「まさか。快く貸してくれましたよ。」 「……快く、な。」 有無を言わさず奪ったんだろうなこれは。思いはしたものの口には出さなかった。こいつが血走った眼で貸してくれと押し迫って、否と言える人間の方がきっと少ない。 横目で眺めていると、俺の視線に気づいた貴様が、なにか、と怪訝そうにたずねた。 「……なにもない。」 そういやこいつ、夜目が利くんだったな。俺は視線を外し、慌てて漆黒の前方を見た。 ふんと息を吐いた貴様は、運転手の当然の権利だとでも言うように、こちらに向かって手にしたまだ中身のある紙コップを差し出す。たしかに片手で運転はできない。だったので、俺は仕方なく貴様の分も受け取る。 こういう時に、手に持ったままでなくてもいい、電車や飛行機にあるような、飲み物がこぼれないカップホルダーが取り付けられると便利なのにな。思いながら一旦ダッシュボードの上にふたつ置き、ベルトを締めてから再度手に持ち、俺は前を向いた。 先ごろとはまるきり違う、急な発進も不意の加速もなしに車は幹線道路をすべりだし、俺はシィトにもたれながら、ああ煙草が吸いたいなあとふと思った。 色々疲れた。頭を空っぽにしたい。 この両手の紙コップが片付けば蒸かしたってよかったのだけれど、ところでルチオは煙草を吸ったかな。吸わない人間の車にヤニのにおいをつけるのは、さすがに忍びない。 相変わらず窓の外はほとんど闇だった。ほんの時おり表示看板に当たる道路灯がぽつんと見えてはそれもすぐに車の後ろに流れていく。どこを走っているのか判らないのも先とすこしも変わらなかったが、どうも、ヴァチカンやフェルディナントルークスに向けて走っていないことだけはなんとなく理解した。 つまりこいつも特にゆく当てを決めるでもなく、でたらめに分岐を選び、運転していることになる。 貴様と深夜のドライブか。 俺はため息をつき、手にした紙コップの俺の分の方へ口をつける。冷めたそれは香りも飛んで、ただの黒いぬるま湯だった。 「――今日に限って、なぜ酒の誘いに乗った。」 「……あ?」 不意にアンデルセンが口を開き、静かに問うた。言葉の唐突さに俺は間抜けな声を上げる。 「公的な場所以外で個人と対面して酒を飲むことが、そんなにおかしいことか?」 「お前はしない。」 「……貴様がどう思っているのか知らんが、曲がりなりにも私は局の長だぞ? 酒の席でしか話せない相談事だって、」 「お前は付き合いを極力避けるだろう。行動を把握しているわけではないが、俺の知っている限り、他人との馴れ合いを是とする人間じゃあない。誘導役を務めた程度の、ほとんど見知らぬ人間と、必要性を感じない酒の席におそらくお前はいかない。……ただひとつを除いてな。」 「知った風な口を、」 「口に出せなくなるとお前は酒に逃げる。悪い癖だ。……実際のところ、あの老人とコネもツテも作るつもりもなく、ただ単純にお前が飲みたかっただけだろう? たまたま舞台設定をあちらさんが設置してくれたわけだ。何から逃げる。俺と、顔を合わせるのが怖くなったか?」 「……怖い。どうして私が貴様を怖いと思わなければならないんだ。」 挑発的なそいつの言葉にさっと反応して、俺は肩をそびやかし、笑ってみせた。 「ばかばかしい。そういうのを下種の勘繰りというんだ。だいたい、来ると思った、だとか先ごろ貴様は言っていたが、いつ私は貴様と逢引の約束をした? 院に行くつもりなんてさらさら――、」 「さらさら? なかったか?」 くく、と喉を低く鳴らしてそいつは言った。どこか含んだところがあるように思えて、引っかかり、俺は片眉を上げる。 「……何が言いたい、」 「次期再生者候補リストを正式に提出したと聞いたぞ。」 「――、」 不意打ちだった。そこまで貴様が判っていたとは知らなかった。胸を衝かれてこわばり、俺は一瞬言葉を失う。 「今日の昼に事務所に用事があってな。ヴァチカンに顔を出した。ついでに医務局に呼ばれて、立ち寄ったところに、医局員がそんな話を振ってきた。」 「――、」 「選んだのは、我らがイスカリオテ第十三課の長のお前だろう。前から選出を渋っていたそうじゃあないか。さんざんせっついて、ようよう数名の候補があがってきたと、医局員はそんなように言っていたが、」 泣きべそかいて、俺のところに顔を出すと思っていたが、酒に逃げるとは思わなかったな。前方を注視しながらアンデルセンが低く笑う。 「――、」 動揺を隠したくて、俺は一息で残りのコーヒーを呷る。ぐっと喉を鳴らして飲みこんで、空になったそれを足下にほうり投げた。 またひとつ、灯りが窓の外を流れて、一瞬だけ貴様の横顔を照らし、すぐに闇に沈んだ。 「……べつにそれが原因で誘いに乗ったわけじゃあない。」 たっぷり十分は黙ったあと、しぶしぶ弁明しはじめた俺の声はしわがれていた。狼狽があからさまに声に出ている。なんとも情けない話じゃあないか、そう思う。 「飲みたい気分だった。それだけだ。」 「飲みたい気分、……ねえ。」 「悪いか? 始末書だの報告書だの見積書だの申請書だの、積み重なるファイルの山に日々うんざりだ。たまには、気晴らしに飲みに行きたい気分になったって、おかしいことじゃあないだろ。……その飲みたい気分の日がたまたま今日で、案内を務めた相手がたまたま誘ってきたから、断る口実も見当たらなかったし、乗っただけの話だ。」 なるほど。 一応そいつは答えた。だがまるで納得していない声色だった。返答に、俺はいらいらし、苛立ちを紛らわしたくて手にしたコーヒーを一口含む。含んでから、あ、これこいつの飲み差しだった、と気が付いたが、いまさら吐き出すわけにもいかず、しかたなく飲みこんだ。 こいつの言った通り、医務局から早く出せ早く出せと選出の突き上げを食らっていたのはたしかだった。 医務局は心配している。切り札を失うことをおそれている。 たしかに今現在、再生者アレクサンド・アンデルセンに不備はない。不備はないどころか基準値を大幅に上回る良好ぶりだった。こないだ行った身体検査も今までにないいい数値で、どこにも悪いところはなし。太鼓判を捺された。だったら杞憂じゃあないのか。俺は思う。 思う、けれど、今不備がないからと言って、明日も同じとは限らない。 それは残酷な事実だった。 ――マクスウェル局長は、超新星爆発を知っていますか。 顔もおぼろな医局員の誰かが呟いた言葉が、今も脳裏にこびりついている。 前任者は五年だったそうだ。その前は七年。その前が八年。再生者歴代の記録を目にしたことがある。当たり前だ。俺は使役する側で、だったら放つ銃剣の性能をきちんと把握しておかなければその力を百パーセント効率的に使用することはできない。 どれだけ基準をクリアーしていようと、どれだけ歴代の再生者を凌駕していようと、鬼札は生き物だ。日々刻々と変化してゆくものを、変化してゆかねばならないものを、医療と秘跡で「いま」にとどめ、縛り付けておく複合技術だ。 歴代の再生者はみな精神をやられていったそうだ。……貴様はどうだろう。俺はたしかめるのが怖い。 俺の立場上、貴様の数値の増減は必ず報告にあがってくる。俺は見止め、認め、貴様が次第にしおれ、だめになってゆく姿をそのうち必ず目にすることになる。 それはいつだ。明日か? 数か月先か? それとも数年後? 駄目になるのだろうか。こいつが。俺を置いて先にくたばってしまうのだろうか。 ……こんなに腹の立つほど近くにいて、減らず口を叩いてくるのに? 飲みたかった。飲んでへばって、ぐでんぐでんに崩れて、どうしようもなく不条理な、先々の布石だとかいう、次期再生者候補の名前なんざ頭から追い出して、反吐にまみれて眠ってしまいたかった。 飲める場所なら場末のカウンターだろうが、ヴァチカンお抱えの高級リストランテだろうが、どこでもよかった。とにかく飲んで、このぐずぐずに堂々巡りになった思考を、頭から追い出してしまいたかった。 もうすこしでばかになれた、前後不覚にひっくり返ってしまえるあと半歩のところで、不意に胸元の携帯電話が震えた。 取りだしたディスプレイの数字を見たかどうかは覚えていない。耳にあてた瞬間、今いちばん聞きたくない声が、俺だ、と言った。俺だ。いまどこにいる。局室か部屋ではないんだろう。何をしている。 瞬間一気に感情が高まって、わけが判らなくなった。いやだ。貴様が消えてしまうのはいやだ。 この声も、聞けなくなってしまう。 「――だいたい貴様は私の保護者か? 何か鬱憤を晴らしたい理由で酒に逃げたとして、どうして貴様がしゃしゃり出る? 私は成人した男で、しかも貴様の上司だ。くそテロリストだの異教徒だのから、拉致だの襲撃されたときに警護されることにいささかの不満も感じないが、今回は別だろ。接待相手から酒席に招待され、それを私が受けた。それだけの話だ。受けた理由が酒に逃げるためだろうが、純粋なる接待相手との歓談だろうが、貴様に関係のある話か? ないだろう。私事に首を突っ込むな。不愉快だ。」 「――、」 言い募っているあいだに、くん、と体が前方へ引かれる感じがした。運転席のそいつがゆるゆると減速したのだ。 そのまま次第に車はスピィドを失い、中途からがくがくと車体が震えた。加速の時は流暢にいっていたのだから、減速を知らないわけじゃあない。さっき店に停めたときだって、こんなようにはならなかった。だからこいつはわざとこうしているわけで、つまりギアチェンジする気がさっぱりないらしい。 下から突き上げてくるようなエンストすれすれまで堪えてのち、ギアをニュートラルに戻して、すん、とエンジンが黙り込む。途端に車内が静かになった。 路肩に停めることすらせず、おんぼろ中古のプジョーは停まった。道路のど真ん中だ。頭がおかしい。 たとえば今、後方から車が来てみろ。街灯ひとつないあたりは畑だか藪だかの田舎道で、真の闇だ。そこにライトを消した車が一台、反射板ひとつ後方に立てるでもなく、ぶつかる気満々でど真ん中に停まっていて、はたして運転手が自車のライトと目視だけで、いったい接近何メートルで気が付くか。それが普通車だって冗談じゃあないのに、もし、大型ダンプだったとしたら? 車内にいる自分たちが、ダンプのライトを確認し、ベルトを外し、車外へ逃げ出す時間があるかどうか、考えたくもない。 深夜だからか、田舎道だからか、行き交う車はまるでないことだけが救いだけれど、いつやってくるかは判らない。危険なことに変わりはなかった。 なんだ、と俺は言った。先は一度、俺が譲った。売り言葉に買い言葉、迎えが助かったことは事実だったし、言い張ることも大人げないと思ったからだ。けれど、 「……なるほど、」 今日ここ一番重低い声でそいつが言い捨てた。なるほど。俺の言い放った何かがこいつに気に障ったらしい。……なるほど。三度呟かれたが、いまさら後に引く気は俺にもなかった。 「……私がどこで誰と飲もうが、仮におのれの手落ちで窮地に陥ろうが、それは私の問題で、貴様の問題じゃあない。はき違えるな。再生者リストを提出した、それがなんだ? 次期再生者候補者選出に多感な私が心を痛め、憂鬱に陥り、酒に逃げたとして、何か問題があるか? 貴様に泣きつく? 私が? 孤児院のガキどもじゃあないんだ。ばかばかしい。……もう一度言ってやろうか。私の問題だ。貴様は何の関――、」 何の関係もない、と言いたかった言葉は立ち消えた。 次に感じたのは、どんとおのれの後頭部が座席にぶち当たる衝撃だった。不意を衝かれ、固く目を瞑る。一瞬何がどうなったのか、理解できなかった。殴られたのだろうか。腹を立てた貴様が拳を俺に叩きつけたのだろうか。 それにしては殴られた痛みは感じないけれど。 「っ――、」 目の前が暗かった。暗いというか塞がっている。 車内は暗くて、夜目が利くでもない俺には何も見えないわけで、だから暗いと言うならもうずっと暗かったのだけれど、暗さというか、迫っていたのは質量だった。振り払おうともがいて、そこで初めて、俺は貴様に押さえ付けられていることを知る。そいつのばかでかい手が、俺の頬というか顎というか、顔ごとがっちりと掴んでいた。 塞がれていたのは俺の口だ。 俺の口が、貴様の厚ぼったいそれでもって塞がれ、有無を言わさぬ強さで押しつけられ、乱暴に食まれる。 頭が真っ白になり、一拍のちには血が上った。 やめろと言いたかった。怒鳴りたかった。 こんな公道で、しかもライトすら消した車体で、田舎道だったから通行人に見られる心配はなくても、先も言ったように後続車が突っ込んでくる可能性はいくらでもあった。ゼロに近い交通量はゼロじゃあない。 だのにこんなふうに俺に圧し掛かり、互いの視界を塞ぎ合い、唇を貪りあっていては、あっけなく追突され、二名仲良く死亡、そんな新聞記事まで目に浮かぶ。冗談じゃあない。本当に冗談じゃあなかった。 振り払いたくて暴れるのに、万力のように挟むそいつの手はびくともしない。手袋越しのくせに体温がこちらに伝わってきて、ますます頭に血が上った。 それは羞恥ではなく怒りだ。 「――ふ、ざ、け……ッ、……!……!」 ふざけるなと怒鳴った口は声を発しきることなく塞がれたまま、貴様の唇が覆いかぶさり舌が侵入する。噛みついてやってもよかったが、噛み切った舌先が俺の口中に残ることを考えると、生々しい話だった。 貴様の二の腕に、俺はぎりぎりと力を籠め指先で引きはがそうとしてしがみつく。やめろと言いたかった。 やめろ。はなせ。放してしまえ。塞がれた息でもって口中で叫ぶ。何もかも放してしまえ。 貴様、ヴァチカンへ顔を出したなら、三課の話も回っているのか? 俺は聞きたかった。聞きたくて、そうしてどうしたって絶対にその答えをこいつの口から聞きたくなかった。 今日正式に、俺のところにあれが運ばれてきたぞ。ヴァチカンの秘蔵物、奇蹟の偶像崇拝、キリストを穿ったエレナの聖釘。 仰々しく箱をまた何重にも聖骸布で包んであってな。中まで確認させられた。釘というから真っ直ぐな、太い鉄のそれを俺は想像していたんだが、中に入っていたのは釘というよりは不格好な形の杭だった。――こんなものを心臓に突き立てる? 見ただけで嫌悪感に吐き気がした。 突き立てなければならないのか。それしか手はないのか。突きたてなくてもなにか別のやりようが、探せばいくらでもあるんじゃあないのか。 貴様がひとであることをやめて、それで何か救われるのか。 いやだ。いやだ。いやだ。無茶苦茶に暴れて押さえ込む貴様の力を、俺はたしかめて安心している。これだけ力があるのだ。小汚い釘ひとつに頼らなくたって、貴様の力はまだこんなにも強いじゃあないか。 どうして貴様なんだ。貴様以外の誰でもいい、誰が別の人間がその大役を務めることはできないのか。――できないのか。 ……できない。できないんだよ。判っている話だった。貴様以外にできない。 暗闇の中で貴様にすがりつく。シートに埋め込む勢いで俺を押さえている貴様は、きっと気づかない。気づかないでよかった。気づいたらきっと駄目になる。 目端に浮かんだ涙は、息苦しさと混同する。貴様にバレていないとよいなと思う。顎を掴んだ手と、頭の後ろにあてがった手は不愉快に熱い。俺の体を押さえこむ膝は、肋骨をぎしぎし軋ませたけれども、その痛みがある間はこうして貴様と触れ合っていても許されるような気がした。 これは罰だ。こいつを死地へ送り込む、確実に人として駄目になるのが判っている場所へ送り込む俺の罪に対する罰だと思った。 俺の手は抗うようでいて、貴様の背中に回されていた。くそ。呻く。無駄に熱い体が腹立たしかった。 ぢゅ、ぢゅと互いに唇を貪る水音が耳管に響く。やめろ。勘弁してくれ。俺がこいつでいっぱいになって、溢れてしまう。 一瞬離れた隙を衝いて俺は喘ぎ、相手の胸板を押した。押した手を取られる。何をするつもりだと見上げたそいつの影が、ゆるゆると取った顔に近づけ、俺の手を噛んだ。 俺には見えない。だが、夜目が利くそいつなら、俺があ、と息を漏らしたのも判るはずだ。 握っていたはずのコーヒーは手になかった。車内に香ばしくて苦い豆のにおいが立ちのぼる。こいつが激突した瞬間に落としたのだ。じっとりと太もものあたりに濡れた感触が広がって、ああ畜生シィトが染みになると俺は唸った。 唸った口を再度塞がれる。そいつの伸びかけた無精髭が、ざらざら痛い。 食いついてやろうとすると離れ、追いかけると押しつけられる。求められて舌を出し、からめて吸いしゃぶる。互いに性急で手前勝手な口づけだった。