約 1,324,947 件
https://w.atwiki.jp/keikenchi2/pages/713.html
ホウエン地方にマボロシ島という島があった。 幻のように現れたり消えたりするこの島は、かつてはポケモンの楽園であった。 そう、かつては。 だが今ではその様相は一変していた。タブンネの異常繁殖により、島の生態分布図は大きく塗り替えられてしまったのだ。 島のポケモンの95%はタブンネで占められ、残り5%のポケモンの縄張りはどんどん狭くなっていった。 最初はそれぞれの能力で対抗していたポケモンも、タブンネの数の暴力の前に劣勢になっていき、 餌場をタブンネに抑えられているため、飢えで力が出せずに次々倒れていった。 生き残ったポケモン達も、タブンネの群れから身を隠し、かろうじて命をつなぐような状態だったのである。 とある草むらの中に隠れるムンナ親子も、その残り少ないポケモンであった。 「おかあさん、おなかすいたよう」 「ごめんね、もう少し我慢してね。今日こそはきっと誰かがいい夢を見てくれるから・・・」 子ムンナを宥めつつ、母ムンナは暗澹とした気持ちにならざるを得なかった。 他者の夢を食べて生きているムンナは、木の実など野生の食料が得られなくても、その影響を受けることはない。 だからこそ、他のポケモンが倒れていっても生き永らえることができたのだが、 ポケモン達が空腹で眠れなかったり、疲労で泥のように眠り込んで夢を見なくなったとあっては、たちまち死活問題となった。 「あっ、静かに!」 母ムンナは子ムンナの口を塞ぎ、草むらの中に身を隠す。大勢の足音が近づいてきたからだ。 「ミッミッ♪ミッミッ♪」「ミー、ミィ♪」 大量の木の実を抱えたタブンネの群れが、楽しそうに談笑しながらぞろぞろと歩いてゆく。 安穏として惰眠を貪るタブンネの集落に近づければ食べ放題なのだが、見つかれば何をされるかわからないため、 やむなくムンナ親子は、数少ない残りのポケモンが夢を見てくれることを祈るしかなかった。それしかできる事はない。 (いつまでこんな惨めな暮らしをしなくてはいけないの・・・) 日に日に痩せてゆく我が子を見つめて、母ムンナはぽろりと涙をこぼした。 そのムンナ親子の耳に聞き慣れない声が聞こえてきた。拡声器で呼び掛ける人間の声だ。 「マボロシ島に住むタブンネ以外のポケモンの皆さん、我々は君達を保護しに来ました。 決して危害を加えたりしません。食料も安全も保障します、怖がらずに出てきて下さい」 ムンナ親子は人間には数えるほどしか遭遇した事がない。どういう生き物かも知らなかった。 だがその不安より、「食料と安全の保障」という言葉に母ムンナの心は大きく動かされた。 ここで身を潜めていても餓死するのは確実。一か八か、その甘い言葉にすがってみるしかない。 おそるおそる母ムンナは、子ムンナと共に草むらから顔を出した。 「おっ、ここにもいたか。よしよし」 その姿に気づいた一人の人間が、ムンナ親子を抱きかかえた。迷彩服のフル装備の姿だ。 他にも同じ格好をした数人の人間がおり、ムンナ親子同様に隠れ家から這い出てきたポケモン達を取り囲んでいる。 それぞれ笑顔を見せ、ポケモン達の頭を撫でている様子からして、悪意を持っているようには見えない。 母ムンナはほっと一息ついた。 その様子を遠巻きにして、タブンネ達が伺っていた。 「あの人間達、何をたくらんでるミィ。タブンネちゃん達以外を保護するなんておかしいミィ」 「ミッミッミッ♪ あいつら騙されてるミィ、人間はそんな優しい連中じゃないミィ」 「どういう事ミィ?」 「きっとどこかへ連れて行って、虐待するか食べちゃうつもりだミィ。タブンネちゃん達は可愛いからここに残ってていいんだミィ」 「と言う事は、このマボロシ島はタブンネちゃん達だけの島になるミィ?」 「その通りだミィ!」 「ミッミッミッ♪」「ミッミッミッ♪」 1匹の物知りなタブンネの説明に納得したタブンネ達は、ミィミィと笑い合っていた。 それから数時間後、人間達はあらかた島の探索を終えた。 浅瀬に乗りつけられた大型ボートに、最後のポケモンの一団が乗り込み、沖合に浮かぶ輸送船へ運ばれてゆく。 砂浜に残った数人の男達は、拡声器で今度はタブンネの群れに呼び掛けた。 「タブンネの皆さん、この島に残ったのはタブンネだけになりました。そこでお願いがあります、ご協力ください」 タブンネ達は少々迷っていたようだが、しばらくするとぞろぞろと集まってきた。リーダー格らしい1匹が口を開く。 「お願いって何だミィ?」 「この島に残っているポケモンが、君達タブンネだけか確認したいのです。 ヒアリングポケモンであるタブンネなら、他のポケモンの心臓の鼓動や息遣いも聞き取れると思いましてね。できますか?」 「お安い御用だミィ!」 リーダータブンネが命じると、数匹が「ミッミッ!」と返事して森の中へ消えてゆく。 遠くから「ミッミッ?」「ミィー!」と幾度か声が木霊する。島中の仲間にそれが伝達されたのだろう。 砂浜にいるタブンネ達も一斉に静まり返り、耳を澄まし始めた。男達の耳に聞こえるのは波の音だけだ。 しばらくすると先程とは逆に、遠くから「ミィー!」「ミッ!」と山彦のように声が返ってきた。 それを一通り聞き終えたリーダータブンネは、ドヤ顔で返事をする。 「簡単だったミィ!島にはもうタブンネちゃん達以外のポケモンはいないミィ!タブンネ天国だミィ!」 返事を聞いた男達が、うれしそうに笑った。 「そうですか、ご協力ありがとうございました。これで心置きなく・・・・・・てめえらを皆殺しにできるってもんだぜ!」 男達は肩に担いでいた軽機関銃をタブンネの群れめがけて乱射する。たちまち数十匹が蜂の巣にされて吹っ飛ぶ。 「ミギャアアアアア!!」 「ヒャッハー!お前らタブンネは本当におめでてえなあ!わざわざ自分達の死刑宣告をしたことにも気づかないとはな! 他のポケモンに危害を加える恐れがなけりゃ、ブッ殺し放題ってわけよ!」 「お、お前ら一体・・・!?」 「俺達はタブ虐愛好会の者よ!ホウエン行政府の依頼でな、マボロシ島のタブンネを根絶やしにするのさ!」 「騙したミィ!決して危害を加えたりしないって言ってたミィ!」 「バカかwwwww 俺達はちゃんと『タブンネ以外のポケモンの皆さんを保護しに来ました』ってちゃんと言ったろうがwww そのビラビラした耳は何にも聞こえてねえじゃねえかよwwwww」 「さ、さっきだって、『お願いがあります、ご協力ください』って言ったくせに・・・」 「あー、悪い悪い。『協力してもらった後は殺しますけど』って言い忘れてたわwwwww」 「ひ、卑怯・・・ミビャァッ!!」 その抗議を言い終わる前に、リーダータブンネの頭は機関銃弾で粉々に吹き飛んだ。 男の言った事は事実である。 マボロシ島に上陸したポケモンハンターの報告により、島の生態系バランスが著しく崩れていることを知ったホウエン行政府は、 環境を人工的に一度リセットする事を決定した。その為に、タブンネ以外のポケモンは一時的に保護し、タブンネは残らず駆除する。 その役目を引き受けたのが、タブ虐愛好会だったのである。 砂浜で機関銃を乱射する男達の背後では、10数隻の上陸用小型ボートが接近しつつあった。いずれも屈強なタブ虐愛好会の会員達である。 上陸した数十人の男達は、思い思いの方法でタブンネ達の殺戮を始める。 「チィチィー!」「やめて!ベビちゃんと卵を放してミィ!」 懇願するママンネの目の前で、ベビンネの首が360度回転し、軽くねじ切られた。卵もグシャグシャと踏みつぶされてゆく。 「ミッヒィィー!・・・ギッ!?」 号泣する間もなく、ママンネの首に強烈な蹴りが叩き込まれた。首が不自然な角度に曲がったママンネは即死する。 「いやー、やっぱこの手応えはたまらんな!タブ虐は素手で殺るに限るわwww」 「全くだ。ほら、よっ!!」 別の男が答えながら、パパンネの顔面にパンチを打ち込むと、顔面に拳がめりこんだ。もちろんこちらも即死だ。 格闘技専門の一団は、殴り、蹴り、捻って、折って、素手で死体の山を築いてゆく。 一方こちらは刃物専門グループだ。コンバットナイフ、刀、ノコギリ、斧など得物は様々だが、血を見たいという点は一致している。 「ミッギャアアア!!」 日本刀で袈裟切りにされ、血しぶきを上げながらタブンネの横では、別のタブンネに馬乗りになった男がナイフで滅多刺しにしている。 「ミギッ!ミィ!ミィィ!」 「さすがタブンネ、なかなか死なないもんだなwww あと何回刺せば死ぬかなwwww」 恐怖で錯乱したか、1匹のタブンネが尻尾を振りながら媚びた表情で踊り始めた。本能で命乞いを始めたのであろう。 「鬱陶しいからやめいwww」 斧を持った男が一振りすると、切断された頭がホームランボールのように吹っ飛んで行った。噴水のように血が噴き出す胴体が後に残った。 「ど、どうしてこんなことに・・・」「とにかく隠れてやり過ごすミィ!」 震えながら、特技の「あなをほる」で掘っておいた穴倉に、数匹のタブンネが潜り込んで身を寄せ合っていた。 そこにコロコロと数個の木の実のようなものが転がり落ちてきた。シューシューと音を立てている。 「な、何だこれミィ?」「触らない方がいいミ・・・」 しかし次の瞬間爆発が起こり、穴倉の中のタブンネ達は粉々の肉片と化した。言うまでもなく、投げ込まれたのは手榴弾である。 「よし、やったか」「まったく手間取らせんなってのwww」 やはり一番数をこなしているのは銃火器グループである。 「そりゃ消毒だwwwww」 火炎放射器を持った男が、大木めがけて炎を浴びせる。 「ミギャァーッ!!」 その大木の陰に隠れていたタブンネが火だるまになって転がり出てきた。しばらくのたうち回った後、動かなくなる。 それを見て、他の木の陰に隠れていたタブンネ達がポテポテと逃げ始めた。 「逃がさねえぞ、とwww」 別の男がバズーカ砲を発射した。50メートルも逃げない内に、タブンネ達は血だるまで吹き飛ばされる。 いつの間にか、太陽が地平線に沈みつつある。島のあちこちでは火の手が上がっていた。 タブンネの死体が腐る前に焼却する為、それと万一生き残りがいても焼き殺す為に、森中に火を放ったのだ。 砂浜の近くの森にも火が回ってきた。タブンネ狩りを堪能し尽くした男達は、ボートで撤収し始める。 全員が沖合の輸送船に帰投し、船が動き始めた時は、島全体が炎に包まれていた。 夕日の中で炎上するマボロシ島。その光景はある種、壮絶で神秘的ですらあった。 船の甲板から、保護されたポケモン達が炎に包まれるマボロシ島を眺めていた。その表情は一様に悲痛なものであった。 いくらタブンネ達に蹂躙されていたとはいえ、自分達の故郷が炎上するのを見るのは忍びないであろう。 それを見たタブ虐愛好会の男達の顔つきも神妙なものになった。 タブンネに対しては鬼のような振る舞いをするが、他のポケモンに対しては普通に愛せる普通の人間なのである。 1人の男が口を開いた。 「そう気を落とさないでくれ。3日もすれば火は消える。全ては一旦灰になるが、必ず植物が芽を出す。 我々も植樹したりするし、何よりタブンネ共の死体がいい肥やしになって、森がすぐに蘇るはずだ。 1年あれば元に戻ると我々は計算している。その時は皆を島に戻す事を約束する、必ずだ」 理解してくれたのか、数匹のポケモンがこくりとうなずいた。 ふっとため息をついた男は、足元に目をやった。彼が先程草むらから拾い上げたムンナの親子がすやすやと眠っていた。 幸せそうな寝顔であった。それを見た男は、少々救われた気がした。 「久々に夢を食べられたんだろうな、お前達もいい夢を見るんだぞ」 輸送船は、炎上するマボロシ島を背に、同じように赤く燃え上がる地平線の夕日目指して進んでいくのだった。 (終わり)
https://w.atwiki.jp/aspurand1106/pages/308.html
39話後編 さよならありがとう、もっといいこになってるから 北沢樹里は、倉沢ほのかに対し、海野裕也を奪った事を詫びたいと言う気持ちが確かに有った、が、 実際に彼女と相対し、その殺意と狂気に触れた結果、謝罪する事は出来なかった。 ただただ、生き残る為にほのかから逃げる事しか出来なかった。 「ハァ、ハァ、ハァ……」 森の中、廃村から走ってきた樹里は息を切らしながらも立ち止まり、背後を振り返る。 ほのかは追ってきていない。どうやら振り切る事に成功したようだ。 「ハァ、ハァ……やったよ! しんのすけ! 逃げられたみたい」 脇に抱えたしんのすけに嬉しそうに話し掛ける樹里。 「うん、良かったゾ……」 それに返答するしんのすけ。しかしその声色は弱々しかった。 「……しんのすけ? どうかしたの……ッ!?」 明らかに様子のおかしいしんのすけを地面に立たせようとした所、しんのすけは崩れ落ちた。 上着の赤いシャツの胸元に穴が空き、周囲の色が異常に濃くなっている。 それが血液だと言う事に気付くのに、そう時間は掛からなかった。 「ゲホッ、ゴホッ!」 口から大量の血を吐くしんのすけ。 「しんのすけ!? しんのすけ!! ああ、何で!?」 狼狽する樹里。なぜしんのすけがこんな事になっているのか。 傷は背中まで貫通していた。いや、背中から胸に貫通したのだろうか。 先程、逃げる時にほのかによる発砲が有った。 樹里には当たらなかった。だが、脇に抱えていたしんのすけには当たった。 それ以外にこの傷の原因は考えられなかった。 「どうしよう……血を止めなきゃ……でも……!」 とにかく血を止めなければと思ったが、そのような手当が出来る道具等持ち合わせてはいない。 「お、おねえ、さん、オラ、う、撃たれたんだよ、ね? な、何だか……変な、感じ、だゾ」 「喋っちゃ駄目!」 しんのすけが言葉を発する事を制止する樹里。 だが、しんのすけは無視して続けた。 「オラの……ケツだけ星人、おねえさんの役に、立って……良かった、ゾ。 おねえさん……怪我は、無い?」 「大丈夫だよ! 私はどこも怪我してないよ! アンタのお陰だよ、しんのすけ!」 「……オラ……死ぬんだね?」 「……っ」 そんな事無い、と樹里は言いたかった。 だが、しんのすけの様子を見れば、医療に関して素人の樹里でももう長く無い事は明白であった。 「……オラ、ひ、ひまを殺した、あの、おにいさん達を、許せないゾ……。 だから、父ちゃんや、母ちゃんや、シロをさ、捜し、て、あの、おにいさん達、を……やっつけ、て、 一緒に、お家に帰って……ひまの分まで、生きようって、お、思ったん、だけ……ど、も、もう、駄目、みた、い」 「そんな……そんな……」 「おねえ、さん……お願いが、有るんだゾ」 「……何?」 溢れ出そうになる涙を堪えて樹里は、遺言になるであろうしんのすけの言葉に耳を傾けた。 「オラの、家族に、会ったら……一緒に帰れなくて、ゴメンって……。 でも、ずっと、悲しまない、で……頑張って、生きて帰ってって……。 今まで、一杯、一杯、イタズラしたりして、ゴメンって……次は、きっと、いいこにうまれるからって」 しんのすけの目から大粒の涙が溢れる。 死ぬ事への恐怖、無念、寂しさも勿論有ったが、それよりも、 大好きな家族を悲しませる結果となった事への罪の意識の方が強かった。 それが、大粒の涙となって現れたのだ。 「分かったよ」 樹里はもう、それだけ言うのが精一杯だった。 「……ありがとう……おねえ……さん……」 安心したのか、しんのすけは死の苦しみが襲う中、微笑みながらお礼を言った。 程無く、しんのすけは目を閉じ、やがて、息が絶えた。 「……しんのすけ」 樹里はしばらく呆然としていたが、やがて、声を殺して泣き始めた。 ませてはいたが、その明るく朗らかな、そして、妹の死を乗り越え家族と共に生き残ろうとした強い心に、 一度死を迎えて気分が沈んでいた樹里は救われていた部分が有った。 時間にしてみれば、五時間程にも満たない、短い時間ではあったが、確かに彼は「仲間」だった。 以前の殺し合いでは一度も手に入れられなかったもの。 失っていた大切な何かを、しんのすけは思い出させてくれたのだ。 静かな森の中に、くぐもった少女の嗚咽が響いていた。 …… …… 父ちゃん、母ちゃん、シロ、ごめんなさい。 オラは、ひまの居る天国へ行きます。 みんなを捜して、一緒に帰ろうと思っていたけど、もう、それも出来なくなっちゃった。 オラの最期の言葉、樹里のおねえさんにみんなに伝えて貰うように頼んだゾ。 樹里おねえさんなら、きっと約束を守ってくれる。 鉄砲を持った怖いおねえさんから逃げる時、オラを脇に抱えてくれた、優しいおねえさんなんだゾ。 みんな、オラは死んじゃうけど、いつまでも泣いてちゃ駄目だゾ。 泣いてたって、オラも、ひまも帰って来ないんだから。 だから、頑張って、お家に帰る方法を探してね。 みんな、色々イタズラして困らせたりしてごめんね。 それで、こんな事言うのも、何だけど。 オラは、楽しかったゾ。 父ちゃんと母ちゃんの子供に生まれて、シロに出会えて、ひまのお兄ちゃんになれて。 本当に、本当に楽しかったゾ。 また、生まれ変わっても、オラは、 父ちゃんと、母ちゃんと、シロと、ひまわりと、一緒に、なりたい。 また、みんなで、いっぱい、いっぱい、たのしく、すごして――――。 【野原しんのすけ@アニメ/クレヨンしんちゃん 死亡】 【残り 37人】 【早朝/D-1廃村南の森】 【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】 [状態]疲労(中)、深い悲しみ [装備]出刃包丁@現実 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。 2:しんのすけ……。 [備考]※本編死亡後からの参戦です。 ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞きました。 前:さよならありがとう、この次に逢う日には 目次順 次:回答しない問題みたい 前:さよならありがとう、この次に逢う日には 北沢樹里 次:GIRLS BE BRAVE ~少女よ勇気を持て~ 前:さよならありがとう、この次に逢う日には 野原しんのすけ GAME OVER
https://w.atwiki.jp/nishiparo/pages/71.html
「で、どうだった?」 「……どうだったとは?」 「ストライクゾーンの可愛ゆい女子高生はいたかって訊いてんだよ、いーたん♪」 「ぼくの人格が疑われるような、とつももなく誤解を招くような言い方しないでください。でも印象深い娘ってんなら」 「いたのか」 「ええ、各学年に一人ずつ」 「しっかりチェックしてんじゃん」 「まず一年生の娘なんですけどね。熱心に鉛筆削ってんですよ。中々勉強意欲の感じられる娘だなって思ったんですけど」 「ふぅん、それで?」 「よく見たらエリミネーターで削ってるんですよ、簡単にぶった切れそうなちっさい鉛筆を器用に」 「西条玉藻だな」 「次に二年の娘なんですが。この娘は授業中ずっとぼくの傍を離れなかった。まぁもててるってんなら、悪い気はしないんですけどね」 「ふぅん、それで?」 「黒板に書いてある方程式を前に、終了のチャイムが鳴り終わるまで、ずっと白い灰になってました」 「紫木一姫だな」 「トドメは三年生の娘。先に白状しちゃいますけど。この娘が一番やり難かった。前の二人に比べればあきらかに優等生なんですけど」 「萩原子荻だな」 「……ぼくインパクトのあるエピソード、なにか言いましたっけ?」 「んにゃ。でもあいつを気にするだろうつーーのは、初めからわかってたよ。いーたんとあいつ、どっか似てるからな」 「ぼくはどちらかといえば、いやいや、自分でいうのも心底何なんですが、確実に落ちこぼれでしたよ」 「優等生と落ちこぼれ。両極端で似てるじゃねぇか」 「そんなもんですかねぇ」 「そんなもんさ。でもこれでこの学校の生徒、特に可愛ゆい娘と問題児、一日目でだいたい抑えられたじゃん」 「……可愛ゆい娘と問題児、この学校は二つが等価なんですか」 まぁそりゃあ今日チェック、ではなく、印象に残った三人の女の子は、揃ってみんなハイレベルで可愛ゆかったけれども。 「んーー? この学校に限らず世の中全部、可愛ゆい娘は問題児さぁ。もっとも問題児が可愛いとは限んねぇけど」 などと哀川さんは言うが、そもそもこの澄百合学園には、可愛ゆくない娘などいない。 でもそれだと、全員が全員問題児ということになりはしないか? …………なんだか頭が痛くなってきた。 「ああ、そりゃそうと。おまえの可愛ゆい可愛ゆい、目に入れても痛くない玖渚ちゃんは、まだお出ましにはならないのか?」 「まだ当分無理でしょうね。あいつの場合は、引きこもってる状態の方がデフォですからね」 なのになぜ教師などという、まったく似合わない職業を選択してるのか。 玖渚の考える事に、いまさら理由など求めても仕様がないのだが、それでももう少し責任を持てとは言いたくなる。 物事から逃げるのがデフォの、欠陥製品のぼくが言うのも、非常になんではあるが。 「じゃあいーたんの代打教師生活も、意外に長くなりそうってわけか」 「そうですね。いきなり明日になったら行くとか言い出すのも、まぁ玖渚ですからありそうな気もしますけど」 最低でも新学期くらいまでは、続けないわけにもいかないだろう。 辞めるにしたって後任が決まってないのでは、一応は真っ当な社会人だと思い込んでいるぼくとしては心苦しい。 ……しかし真っ当ねぇ。 我ながら何とも笑わせてくれる。これこそまさしく戯言だ。 「ってか哀川さん、これも請け負ってくれませんかね? 諸般諸々の事情があるとはいえ、ぼくなんかが教壇に立つのは問題ありますし」 人類最強の請負人を雇うには、いったいどれほどの経費がかかるのかはわからないが、玖渚ならばキャッシュで払ってくれるだろう。 そもそもが哀川さん。この澄百合学園に来たのは、別に今日が初めてというわけではなさそうだ。 でなければ授業を終えたばかりのぼくを引っつかまえて、迷う事なく威風堂々食堂に辿り着き、A定食をパクつけはしないだろう。 「………………………………………」 と考えてはみたものの、ここにおわすのは何しろ哀川さんだ。 縁も紫も合ってない女子校にいきなり乗り込み、本能に従って食欲を満たすくらいは何でもないのかもしれない。 「いいかげんこのやり取りは飽きてきたが、あたしを名字で呼ぶのは敵だけだ。それから依頼は受けらんねぇよ、タッチの差だったな」 カラッとキレイに揚がっているアジフライを、サクサクと音を立てて咀嚼しながら、哀川さんはじろりとぼくを睨んでくる。 さり気なく言ったつもりだったが、請負人は見逃してくれなかった。 スリルを求めるのはいいが、もっと慎重に行った方が良さそうである。赤髭危機一髪の頭は、ぴくり、と半分出かかっていた。 それがドカンと飛び出したらば、ぼくの小っぽけな命が飛ぶのも疑いない。 「ここの学園長とは、ちょっとした腐れ縁ってやつでな。つまらない仕事なんだけど、暇だったからついさっき引き受けちまったんだ」 どんな依頼かは聞くまい。 守秘義務といったものが哀川さんにも無論あるだろうし、わざわざ藪から蛇を突くような真似をしたくはない。 「っかし、玖渚のやつもそうだが、非常勤教師のやたら多い学校だよな。ノアに呼ばれたときもてっきりそれかと思ったんだが」 どうも聖職について哀川さん。それなりにやる気は、どうやらまあそこそこはあったみたいだ。 だとすれば惜しい。もう後ちょっとでGTA、グレートティチャー哀川が見れたかもしれなかった。 しかし実際に教鞭を振るわれる生徒一同は学園長に、あるいは自らの幸運に、ひたすら今日一日くらいは感謝しても良いだろう。 「動物心理学なんて、高校で教えるにはマニアックな科目の先生なんか、どうも神出鬼没系らしいんですが、絶賛行方不明中ですからね」 「ん? なんだ初日にしちゃ内情にくわしいじゃん?」 「生徒全員にドン引きされるような物体を、授業で嬉々としながら解剖する変態が、訊きもしないのに丁寧に教えてくれましたので」 それにしても、心の底から尊敬する恩師が、この学園に赴任していると知っていたならば、ぼくはいかにそれが玖渚友の頼みとはいえ、 こんなところには絶対に足を踏み入れなかったろう。 「いーたんてさ、友達は少ねぇのに意外と顔は広いよな」 だが、それがぼくの助けになったことは、残念ながらあまりない。 なのにここには、ぼくの短いろくでもない人生の中でも特に、《暗黒時代》といってもいい向こうでの知り合いがまだ他にもいやがる。 悪夢だ。 「シマっていきますですよ~~~~」 何気なく廊下を歩いていたらば、ふっとそんな姫ちゃんの、まったくシマらない声が聞こえてきた。 窓から顔を覗かせると、グラウンドで野球をしている生徒達が見える。 しかしこれはぼくの偏見かもしれないが、普通女の子のやる球技なら、ソフトボールの方がふさわしいのではないだろうか。 マウンドに立っている姫ちゃんは、小さい身体を豪快にワインドアップで振りかぶっている。 投げた。 だいたい姫ちゃん届くのかと心配したが、打者のバットをキレイに空振りさせて、ビシッとキャッチャーのミットにボールが収まる。 ぼくの視力はかなり良い方だ。 だがそれでも、グラウンドまではかなり距離がある。なのにはっきりと見えた。それほどの、まるで漫画みたいな変化球だった。 蛇のように鎌首を持ち上げ、急激に浮き上がったボールが、それでも喰らいつこうとするバットを嘲笑うように、最後は沈み込んで ぴくりとも動かさないキャッチャーのミットへと吸い込まれた。 「童夢くんかよ」 惜しい。 日本のプロリーグに女子があれば、いやいや、男女混合であれば、姫ちゃんはドラフト一位で某金持ち球団にも入れたろう。 結局バッターは三球三振だ。驚いたのは全部ボールの軌道が違うことだろう。その全てが魔球である。 そしてさっきからずっとキャッチャーのミットが、ぴくりともしないのは、姫ちゃんのコントロールが抜群ということもあるだろうが、 そうしていないと例え球種がわかっていても、どうやら取れないみたいだ。 「そういや完全試合って、見たことないんだよな」 まぁもっとも野球自体にあまり、いや、まったく興味がない。 何回までやったらゲーム終了なんだろうと、スコアーボードを探すが、残念なことに見つからなかった。 「多分それは無理です。紫木には九回を投げるスタミナはありませんから」 おそらくぼくにかけられたんだろう涼やかな声に、顔の向きをグラウンドから横に変える。 初めて会ったときもそうだった。いまも何だか値踏みでもするみたいに、ジ――ッとぼくを見ている。ちなみに只今授業時間。 「いけないな、きみみたいな優等生がこんなとこで、ふらふらしてていい時間じゃないよ、自習か何かなのかな?」 「先生の授業なのですけど、自習なのですか?」 ああ……そうでした。ぼくだってこんなとこでのほほんと呑気に、ルールも漠然としかわからない球技を見ている場合ではない。 それにどうせ見るのならば、子荻ちゃんの足首にまで届く、異様なほど綺麗な黒髪の方がずっといいだろう。 「迎えに来てくれたの?」 別に色っぽい会話をしたかったわけじゃない。 「自習なら自習と決めていただかないと、わたしには策の立てようがありませんから」 いまいち子荻ちゃんの言ってることの意味がわからないが、自習、と一言告げたならば、そのまま回れ右で教室に帰ってしまいそうだ。 何だか拍子抜けのように感じるのは、やはりちょっとは期待してたということなんだろうか。やれやれ。 「行こうか」 ぼくがそう言うと子荻ちゃんは、くるりと背を向けて教室へと歩き出す。 ゆらゆらと揺れている黒髪が、何だか場違いではあるがひどく扇情的に見えた。 こうやって見ると、姫ちゃんや玉藻ちゃんほどではないにせよ、意外に身体の造りは小さい。――――というより細いというべきか これは使い古された言葉何だろうが、抱きしめたら折れてしまいそうだ。 「……女の子には優しくしないとな」 益体のないことを呟くと、姫ちゃんの魔球のように浮かび上がろうとした感情を誤魔化すように、ぼくは再び視線を外へ向ける。 いくらなんでもクビを言い渡されるには早すぎるだろうし、その理由がセクハラというのだけは避けたい。 もう首を後方へと捻らなければ見れない野球を、何とはなしにまたまた見る。 「おっ?」 バッターにボールは見えていなかったろう。とりあえず思いっきりバットを振っただけ、そんな風にぼくには見えた。でも。 “カキンッ” 大数の法則。 子気味いい音を響かせて、ボールはフェンスを越えていった。見事としか形容しようのない特大ホームラン。 どうも姫ちゃんのボールは恐ろしく軽いみたいである。当てるのは難しいが、当たってしまえば際限なく飛ぶようだ。 マウンドでは打球の行方も追わなかった姫ちゃんが、がくりと膝を落としている 子荻ちゃんの指摘したスタミナ不足を露呈するまでもなく、完全試合の夢は脆く儚く消え去った。 「姫ちゃん、お疲れさま」 ぼくは完全試合とは縁がないみたいだな。 そう思いながら正面を向くと、子荻ちゃんと目が合った。足を止めて、首だけ捻ってこっちを、ぼくをジ――ッと見てる。 「なに?」 「……野球、先生お好きなんですか?」 何でそんなことを真剣な瞳で訊いて来るのかは、ぼくにはまるでわからなかった。 「いや全然、ぼくが好きなのはサムライだよ」 きょとんと首を傾げる子荻ちゃん。それはそうだろうが、野球に興味がないのはわかってもらえたと思う。 「子荻ちゃんは好き?」 「……全然」 短くそれだけを言って、子荻ちゃんはまた正面を向いて歩き始めた。 さっきとその後姿は同じはずだが、何だか苛立ってるように見えるのは気のせいだろうか。……否、戸惑っているかな? 「興味がないものでも、先生はぼ~~っと見てられるんですね」 前言撤回。 やはり何か怒っているように感じられる。その正体までは窺い知れないが、でもまぁこの年頃は、常に何かに怒っているものだ。 ましてや女の子の気持ちなど、ぼくにわかるわけがない。 もっともそれは女の子に限らずで、ぼくには誰の気持ちであれわかりはしないが。子荻ちゃんの黒髪に見蕩れながらそう思った。 全国津々浦々にあるチェーン居酒屋の店内。 きっかけはぼくの何気ない教師生活一日目の、愚痴ともぼやきともつかない呟きだったと思う。あまりにも不用意だったろうか? “ダンッ” なみなみと注がれていたジョッキの中身を、彼女は豪快に一気で煽って、テーブルに叩きつけるような勢いで置く。 間に一人挟んで、ぼくの右側に座っていたむいみちゃんは、ぎろり、と効果音が聞こえるくらいの視線をぼくへと向けた。 「ぶったたきゃいいんだよっ!!」 これだけでむいみちゃんの人柄と、だいたいどんな形の青春を謳歌していたのかは、充分すぎるほどわかるだろう。 そりゃあショッキングピンクのジャージが似合うはずだ。 「しっかしよぅ、そういうのって最近世間が、やたらめったらでうるさいんだろう?」 「それに相手は女の子だしね、手を上げるのやっぱり不味いと思うよ」 この集団の中ではぼくが思うに、意外だがもっとも人格者だろう秋春くんと、意外でも何でもなく、見たまんまもっとも良い子だろう 智恵ちゃんが揃ってそう言うと、むいみちゃんは片一方だけに、ぎろり、とやはりド迫力の視線を向ける。 どちらが睨まれているかなどは、ぼくがあえて語るまでもない。 まぁとりあえず、お酒を呑んでるはずなのに秋春くんの顔が、みるみると真っ青になっていったことだけは伝えておこう。 「そんな甘っちょろいことほざいてるから、ガキどもが勘違いしてツケあがるんだ」 むいみちゃんは言いつつ、煙草を吸おうとフィルターを口元に持っていたところで、はっ、となると慌ててポキリとへし折った。 例え世間が決めたルールは破っても、自分で決めたルールは破らない。 ヤンキー出身の人ってこういうとこ、やたらと律儀というか頑固だったりする。 「でもさ、いっくんが先生なんてびっくりだよね、《160キロの剛速球ホームラン、ただし頭部へのデッドボール》みたいなっ!!」 ……巫女子ちゃん、それはもしかして、ぼくに早々に退場しろということなのかい? 隣にちょこんと、何だか礼儀正しく座っている巫女子ちゃんは、両手でジョッキを持ってクピクピと、とても上機嫌で喉を潤してる。 その仕草は可愛いといえないことも、まぁないかもしれないしあるかもしれない。 「確かにな、いっくんが一時間もガキどもの前でしゃべってる姿は、正直あたしには想像つかない」 店員の呼び出しボタンを押しながら、むいみちゃんがチラッと、巫女子ちゃんの肩越しに視線を送ってくる。 ぼくはそれをあえて無視して、近くを通りかかった店員を手を上げて呼び止めた。 「ウーロン茶とビールの中ジョッキを」 びびったわけではない。本当だ。 ぼくは赤色の視線に散々晒されている。いまさらヤンキーのメンチなど、何するものぞといった感じだ。 しかし、むいみちゃんの視線は怖いとかどうとかいう前に、ぼくは身体のあっちこっちの節々が何だか痛くなってくる。 特に指の関節がズキズキと痛い。念仏の鉄に睨まれたら、きっとぼくは同じ感想だったろう。 「どっかの誰かは心配なんじゃねえの、女子高生と一日中一緒にいるんだぜ。おれならくらくらしちまうね、はっきり言ってやべぇよ」 「あ? なんなら秋春、あたしがいますぐにでも、くらくらさせてやろうか、あん? ガツンとさぁ」 「……いや、その、ごめんなさい、すいませんでした貴宮さん、つい調子に乗ってしまいました」 視線が自分からぼくへと移った為だろう。口の動きが滑らかになった秋春くんだが、あっという間に謝罪と沈黙を強いられた。 鼻を両手で押さえて、また顔のシグナルをブルーにしている。 嫌なことでも思い出してしまったのか、心なし涙目になってるみたいだ。 巫女子ちゃんから聞いた話では、むいみちゃんは容赦のない性格だが、特に子供の躾にはうるさいらしい。 ぼくを抜かしたこの面子で、成人式に出席したとき、歳だけは子供のラインを越えたが、内容物はそのままの数人が、煙草は吹かすは 酒は呑むはの狼藉を働き、その上巫女子ちゃんに絡んだものだから、ブチン、そんな音がするくらい、むいみちゃんはブチギレた。 殴る、殴る、とにかく殴る。 それは天晴れな大立ち回りだったらしい。多分会場にいた八割以上の人は拍手喝采だったろう。実際巫女子ちゃんはすっとしたらしい。 しかしここで、常識人であるところの秋春くんは、このままでは相手が病院送りどころか、むいみちゃんが刑務所送りになると考えて、 後ろから羽交い絞めにして止めようとした。 でも後ろから、むいみちゃんの言い分ではこっそり近づいたのが不味かったらしく、 “ゴズゥッ!!” 振り向き様の肘鉄がモロに鼻っ柱にヒットして、秋春くんは鮮血を上げてもんどり打ち、気づいたときは救急車の中だったらしい。 そのときの様子を巫女子ちゃんは『いっくんいっくん、わたし《ここはどこ? わたしは誰?》このフレーズ初めて聞いちゃったよっ』 興奮気味に教えてくれたものだ。 ぼくも人のことは決して言えないが、貧乏くじとは秋春くんの為にある言葉だろう。どこか尊敬に値する存在だ。 「ね、ねぇいっくん、やっぱり女子高生はさ、ピッチピッチで可愛かったりするのかな?」 巫女子ちゃん。そういうときの擬音はピッチピッチではなく、出来ればピチピチにしてほしい。 ピッチピッチだと若さや元気ではなくて、何か別のものが制服から張ち切れそうだ。 ぼくはどちらかというなら、すらっとした女性が好みだったりする。それで年上で童顔だったりしたら言うことはない。 「どう……なの……かな? いるのかな? いないのかな? いっくん的に可愛い娘は?」 ぼくはなんとなく、本当に考えなしのなんとなくで、巫女子ちゃんではなく智恵ちゃんを見る。 「………………………………………」 ただただにこにこと笑っていた。ぼくと巫女子ちゃんを愉しそうに眺めながら、江本智恵はただただ笑っていた。 大人になってもそれは生きた時間ではなく、死んでない時間が長くなっただけだと、そんな風に答えを出してしまった少女が笑ってる。 ぼくは智恵ちゃんの目を見ながら、巫女子ちゃんへと答えを返した。 「みんな可愛いよ、まだまだ子供だけどね。でも、巫女子ちゃんほど可愛い娘はいなかったかな」 「うわぁっ!!」 勝手にシリアスモードになろうとしたぼくを、巫女子ちゃんの、びっくり、を表してるんだろう声が引き戻す。 「……どうしたの?」 「いっくんがこんなにはっきりと褒めてくれたの、初めてだったから嬉しいっ!!」 にこにこする巫女子ちゃん。 いつものこととはいえテンションが高い。まぁ上がったままで戻ってこない、どっかのどこかの青髪娘よりは大分マシだけどさ。 そう思った。 間違って、思ってしまった。 「いっくんはねぇ《やる気はバリバリ、でもリストラ》みたいなっ!! 《職業ボクサー、特技は大食い》み・た・い・なーーっ!!」 ――――葵井巫女子のテンションは閉店時間になっても、ぼくらの前に戻ってきてはくれませんでした。 帰り道では立ったまま寝るという、荒業を披露し、結局はぼくが(むいみちゃんが無理矢理乗せた)おぶる始末である。 役得といえなくもないが、店を出てから結構歩いていて、いいかげんに重い。 状況に必要以上に流されるぼくにも責任はあるが、まったくもって、いまの巫女子ちゃんに送りたい言葉は、唯一ただ一つだけだ。 女の子じゃなかったら放り投げたいところを、ぐっと抑えて小さく口の中だけで呟く。 「甘えるな」 「ゆらーーりぃ」 この学園に来てからそろそろ一週間。大分慣れてきた。 自分にこんなに順応性があったのかと、最初は驚いたものだが、多分それはここが、この学園が異常な空間だったからだろう。 ならばそれこそは、慣れ親しんだぼくの領域だ。 どことは実はまだよくわからないのだが、この学園はおかしい、一度そう認識してしまえば、もう時間はそれほどいらない。 答えが漠然としているので些か不安ではあるが。オーケー。ドンと来い澄百合学園。開き直りは完了している。 そんなぼくのリクエストに運命だか何だかが、律儀にも応えてくれたんだろうか。余計なことをしてくれやがって。 場所は学園の廊下。時刻は夜の十一時半。 どうしてこんな時間にまでいるのかといえば、この学園を愛してやまないからではなく、 『うちな、今日どうしても外せない予定があんのんよ。つーーわけでどうせ自分暇やろ? 宿直任せたえ、ばいばいきーーん』 心から尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して、尊敬し尽くして止まないぼくの恩師に、一言の半畳すら入れられずに 宿直を押し付けられて、ぼくはこうして深夜の学校にいる。 あんのチンチクリンめぇ。 ぼくにだって一応予定というものはあるのだ。『なんなのん?』と訊かれたりしたら返事に困るが。それがまた腹が立つ。 と。 まぁこんなまったくもって納得のいかない理由で、ぼくは宿直に付き、しかも真面目に校内巡回などをしてるわけだが、長い廊下の 向こうから滲むように、その人影はゆっくりと目の前に現れた。 「……ゆぅらぁりぃ」 すぐ前まですでに来ているので、正確を記するば《人影》ではないのだが、ぼくには何だか彼女がぼやけてるように見える。 膜が張ってあるかのように、その姿はひどく曖昧だ。 「こんばんわ玉藻ちゃん、こんなところでこんな時間に奇遇だね」 「――ああ。こんばんわ先生」 手を上げて可愛く挨拶してくれたその手には、キランッ、と光るグリフォン・ハードカスタム。もう片方の手には勿論エリミネイター。 不審者を発見した。 「何してんの? ぼくの記憶力が確かなら、下校時間は過ぎてると思うんだけど」 言いつつ窓の外を見る。 真っ暗だ。 ぼくの記憶力の方はかなり怪しいが、どう考えたところで、いたいけな少女が居ていい時間ではないだろう。 学校好きにも限度がある。 「えーーっと……そう。保健室でこっそりと寝ていたら、学校がすごく静かに、あれ? あれあれ? いま一体何時なの……でせうか?」 玉藻ちゃんはぼくの視線を追いかけると、いま気づいたとばかりに、真っ暗な外の様子を見て、不思議そうに首を傾げた。 ……いや玉藻ちゃん、きみの方が百倍は不思議だから。 「ゆらーーりぃ……ゆぅらぁりぃ」 呟きながら玉藻ちゃんは、しきりに頭を軽く振っていた。 偏頭痛でもあるのか、少し苦しそうで、痛みに耐えているようにも見えるが、ただ単純に寝すぎなだけかもしれない。 しかしそれでも玉藻ちゃんは眠そうな顔をしていた。 「まぁいいや、面倒だから」 若いんだからもっと物事に対して探究心を持った方がいいと思うが、玉藻ちゃんはかったるそうに、生きているのがかったるそうに、 首を動かしてぼくを見ると、えへっ、と可愛く笑窪を作る。 「……ふぅ」 少女の笑顔とは普通癒されるはずなのだが、何だかぼくはどっと疲れてしまった。やっぱりこの学園、慣れねぇ。 「とりあえず宿直室に来て、玉藻ちゃん」 とりあえずその後は考えてないが、ここで立ち話もなんだろう。 だが実際どうするか。学園の生徒達はほとんどの者が寮暮らしだが、ここからならどう見積もっても軽く三十分は掛かる。 時間が時間だからして、まさか玉藻ちゃん一人で帰すわけにはいかない。 ナイフ大好きの顔面刺青な通り魔と、いつ遭遇しないともいえないだろう。あの《人間失格》も相当な暇人だし。 「ん?」 そこまで考えて、ぼくは後ろを振り向いた。 玉藻ちゃんはふらふらした足取りで付いて来てる。その手に握られた二本のナイフが、月明かりに照らされて鈍く妖しく光っていた。 「あのさ玉藻ちゃん、出来れば隣りを歩いてくれないかな」 霞がかった虚ろな瞳がぼくを見て、こくん、と小さく可愛らしく、そしてやはりかったるそうに頷く。 「いいですよう」 トテトテと寄ってくると素直に横に並んでくれた。 さすがにいくらぼくでも、ナイフを所持した不思議ちゃんに、背中を晒して歩く度胸も勇気も覚悟もない。 しかしナイフさえ握ってなければ玉藻ちゃん、中々レベルの高い美少女なわけだし、特別ぼくにロリィな趣味があるわけではないが、 夜の校舎を二人っきりで歩くなど、かなり良いシチュエーションなんだけどなぁ。 「………………………………………」 チラッと玉藻ちゃんを盗み見る。 うん、可愛い。ぼくがそっちの属性があるならば、思わずこの場で押し倒すくらいには可愛いだろう。 もっともそうなれば、最終的に床に冷たく、メッタギリにされて転がっているのは、まず間違いなくぼくなのは疑いない。 「ああ、そうだ玉藻ちゃん、さっきまで保健室で寝てたってことはさ、鍵は開けっ放しだよねぇ?」 あそこには一応劇薬の類もあることだし、なにより朝出勤してきたときに、鍵が開きっぱなしだったりしたら大騒ぎだろう。 情緒不安定な水着のお姉さんが。 「あーー。えーーーーっと…………切っちゃいました。えへへ」 「……はい?」 「起き抜けだったんでぇ。なんとな~~く、スパスパッと。扉真っ二つにしてきちゃいました」 玉藻ちゃんはにやけたような薄笑いをして、ほっぺたを赤くする。照れているらしい。そんな仕草もやはり可愛らしかった。 けどそれは。なんとなくで済ましていいのか。そしてなにより、照れ笑いの使いどころが違うような。 ……何かぼくもだんだんと、深く考えるのがすげぇ面倒になってきた。 「良かったら玉藻ちゃん、今日はもう遅いし、宿直室に泊まっていくといいよ」 言いつつぼくは鍵をポケットから出して、玉藻ちゃんに手渡す。 受け取った玉藻ちゃんは、クマだかネコだかわからないキーホルダーが付いた鍵を、何か考えているのかいないのかはわからないが、 ただぼんやりと見つめていた。 「ぼくは保健室で寝るから、安心しておやすみ」 くるっとちょっとだけ格好付けて、玉藻ちゃんに背中を向けたぼくだが、その足取りはひたすらに重い。 逃げてぇ。 というのが偽らざるぼくの本心ではあるが、しかしそういうわけにもいかないだろう。 超被害妄想が激しく、超疑心暗鬼で、超傷つきやすく、超情緒不安定な上、超涙もろい保険医を、フレンチクルーラーをエサにして 朝一で宥めなくてはならない。 とてつもなく崇高な使命を帯びてるのだ。――――でもやっぱ逃げてぇ。 「ゆらーりぃ……先生」 誰かに止めてもらいたいと思ってたからだろう。 ぼくの足はぴたりと、玉藻ちゃんの小さな、うっかりしなくとも聞き逃しそうになる呟くみたいな声に、あっさりと動きを止めた。 それに、玉藻ちゃんの方から話しかけられたのは、初めてだったりもするし。 「これ貸したげますよ」 鍵の代わりに渡されたものは、ずっしりと重い、グリフォン・ハードカスタム。……なんだこれは? 一体どういう意味なんだ? ってかこんなものを平気な顔して振り回せるとは。 それも二本も。 女の子にこれは褒め言葉じゃないだろうが、玉藻ちゃん、こんなちっこい身体で結構な力持ちだ。こりゃ素手でも勝てそうにはない。 「護身用にどうぞ。えーーっと……まあいいや。面倒なんで、これでおやすみします。……ゆらーーりぃ」 極悪なゴツいナイフ一本を残して、まるで白昼夢(夜だけどさ)でも見ていたように、少女は現れたときのように闇に溶けて消えた。 ぼくは玉藻ちゃんから借り受けたばかりの、グリフォンの鋭すぎる危険な刃をじっと見る。 「玉藻ちゃん、これ出した瞬間さ、正当防衛主張しても、誰も訊いちゃくれないと思うんだけど、どうだろう?」 それこそ誰も訊いちゃいないのだが、夜の学園の廊下で、ぼくは呟かずにはいられなかった。 「ポン」 切った牌がぼくの手から離れるよりも早く、南家から実に面倒そうな声がかけられた。 文字にすればたった二文字しかない音であっても、それははっきりと、誰にでもわかるだろう。ぼくにはわかった。 長く細い綺麗な指先がすっと伸びて、ぼくの切った白の牌を攫っていく。 しかしこんなことを言ったら、またかなみさんに冷たい目で見られてしまうだろうが、これぞ芸術家、と思わせる繊細な指先だ。 ぼくがその芸術家の指先を、何とはなしにじっと眺めていると、かなみさんも気づいたのか、興味なさそうにぼくを見る。 「知らないの? わたしが《鳴きのかなみ》て呼ばれてるの」 かなみさんの手牌の横を見ると、三つ同じ絵の描いてある牌が四列並んでいた。かなみさんは確かに鳴きが多い方だろう。でも。 知らねぇよ。 当たり前だ。知るわきゃない。授業も終わったので、さぁ帰るか、と腰を上げたところで、待ってましたとばかりの先輩に捕まって、 こうして美術室までわけもわからず連れてこられたのだ。 かなみさんの通り名よりも、どうしてこんなところで麻雀をやらされているのか、それを出来るならば先に知りたい。 「数合わせに決まってるでしょ。きみさぁ、頭が悪いのは黙ってればわからないんだから、ちょっとは口を慎んだ方がいいんじゃない?」 かなみさんはやれやれとでも言わんばかりの、こちらのテンションが下がりそうな態度だった。 と。 “タンッ” そんなどうしょもない苛められ子の仇討ち、というわけではないだろうが、軽やかな音が、まだ何か言いたそうなかなみさんの追撃を やんわりと遮る。 「知ってるよねぇ? わたしが《ドラ爆の赤音》と呼ばれているのは」 「………………………………………」 すいません。このしがない戯言遣い、ついぞ勉強不足でして、そちらもまったく持って知りませんでした。 赤音さんの役を見ると、必殺の大三元爆弾。ちなみに三連チャンでかなみさんを直撃である。 恐る恐るかなみさんの方を窺うと、金の柳眉が微かだが、本当に微かだが、不機嫌そうに持ち上がったのをぼくは確かに見た。 「くっ……くくくっ…………かっははははははは」 ぼくは対面にいる西家を見る。 そこに座っているのは、一応最初は忍び笑いにしてやるかと、努力だけはしたんだろう深夜さんが大爆笑していた。 ちょっと羨ましい。チキンのぼくには出来ない芸当だ。 そう思って今度は深夜さんをじっと見ると、やはりその視線に気づいたのか、にかっ、と男っ前に笑って深夜さんもぼくを見た。 「どうした新米先生、恋する乙女みたいにおれを見たりして。非常に残念だけど、おれにはそっちの趣味はないよ」 ぼくだってない。 「……深夜さんは何て、何て呼ばれてるんですか?」 「ん? 逆木深夜だけど、この二人みたいな酔狂な通り名は、おれら凡人には普通ないから、きみだってないんだろ?」 勿論ない。 といいたいところだが《戯言遣い》、これがぼくの通り名といえば通り名か。 それにぼくの周りにはやたら通り名、二つ名を持ってる人が多かったりする。《人類最強の請負人》を筆頭に、数えたらきりがない。 しっかし変わり者ばかりだ。類は友を呼ぶというが。 「あるわきゃないですよ、ええ、絶対にそんな通り名なんて戯言は、神に誓ってありえません」 ぼくは自分自身のことを、まさか普通だと思っているわけではないが、何となく哀川さん達と並んで数えられたくはない。 劣等感、それはそこまで露骨に表現されるものでなくとも、ぼくの感じている感情はそれに近いだろう。 まあそれだけじゃないけどさ。 「安心したよ。おれだけそういういのがないんじゃ、おかしいのはおれの方だからね」 視線はぼくへと向けながら、遠回りもオブラートに包みもせず、深夜さんは二人はおかしいと、はっきりストレートに断じていた。 二方向から襲いくる氷の視線など、どこ吹く風のナイスガイ、逆木深夜32歳。 それに思わず頷きそうになってしまったのを、ぼくは意志の力を総動員して、何とか頭の動きをストップさせる。 「………………………………………」 しかしそれでも何だか、左右からの突き刺すような視線を感じて、ぼくは誤魔化すように窓の外を見た。 とっぷりと暗い。真っ暗だ。今日もこのろくでもない学園に泊りかもしれない。はぁ、みいこさんに会いたいなぁ。 「レート上げたいんだけど、いいよね?」 どうせぼくの意見など通りはしないのだ。 それは強ち間違ってはいないわけだが、ぼくはこのとき、かなみさんの立てた指の本数と、その単位を知っておくべきだったろう。 このブルジョワどもめっ!! そして次の日。みいこさんの満面の笑顔(見たことないけど)より、給料日を心待ちにしている自分が、また少し嫌いになった。 圧倒的な一人勝ちをした赤音さんが、肩をポンポンと慰めるように、そのくせ容赦なく貧乏人から点棒を毟り取っていった手で、優しく 叩きながらぼくに言う。 「今度学園の合宿で、日本海の孤島に行くらしいけど、そのときまでに少しでも、腕を磨いておいた方がいいよ」 「赤音さんはここまでなるのに、やっぱり苦労とかしたんですか」 ぼくはちょっと動くだけでジャラジャラと、やたらめったらうるさい赤音さんの点棒の束を、物欲しそうに眺めながら訊いてみた。 すげぇ羨ましい。 「苦労をしたことは一度もない」 きっぱりと赤音さんは言った。 「ただ、努力はしたがね」 含蓄のある台詞だった。ぼくにはとても、ステンテンにされたぼくにはとてもとても、言えないだろう台詞だった。 「ふふっ。何だか偉そうなことを言ってしまったな。若人、精々精進したまえよ」 「何とかの横好き、て言葉を体現しないようにね」 圧倒的な一人負けをしたぼくがいるから目立たないが、ブービー賞だったかなみさんが、面白くもなさそうにそう混ぜ返す。 「好きこそ物の上戸なれ、とも言うけどね」 赤音さん、多分おそらく、ぼくをフォローしてくれたんだと思いますが、それだとただのうわばみです。 まあそんな些細なツッコミは、赤音さんにとっても、かなみさんにとっても、どちらにとってもどうでもいいんだろう。 こんな風に放課後まで、わざわざ顔を合わせてるのに、この二人の仲はすこぶる悪い。無言でにらみ合っていた。 “キ~~コ~~カ~~コ~~ン” チャイムの音が鳴り響いても、二人とも視線を、微動だにすらさせず逸らさない。 赤音さんもかなみさんも一時限目は授業があった気がする。そしてぼくもあるのだが、さて、これからどうしよう? 「ああ、いいよいいよ。授業あるんだろ? 後はおれに任せて、まだひねてない女の子達のところに行くといいよ」 二人は深夜さんの皮肉もまるで聞こえてないのか、ぴくりともしない。何だか完全に、先に動いたら負けだ状態になっていた。 「……じゃあ、後はお任せします」 手のひらを晒す深夜さんと、見てはいないだろうが、二人にも一応ぺこりと頭を下げて、ぼくは逃げるみたいに、いや、みたいではなく 逃げるんだけど、そそくさと美術室を後にする。 大人の関係って複雑だよな。 さして感慨があるわけでもないのに、難しいことを考えているふりをしながら、ぼくはまだいまのところは、純粋無垢な少女達の待つ 教室へと歩き出した。 『さよなら戯言先生』02へ 戻る
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/462.html
守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(後編)◆guAWf4RW62 蒼の妖精と、この島に於けるラスト・ガンナー白鐘沙羅が再度衝突しようとしている頃。 時を同じくして、梨花とあゆも熾烈な戦いを繰り広げていた。 「ほら、どうしたのさ? でかい口叩いてた癖にこの程度か?」 「……勝手に吼えてなさい。すぐに目にモノ見せてやるわ」 罵倒の言葉を浴びせられつつも、梨花はベレッタM92Fのトリガーを引き絞る。 しかし先程撃たれた左肩の傷が影響して、思うような位置に銃弾を撃ち込めない。 見当違いの方角に放たれる銃弾は、あゆの身体を掠めすらしなかった。 「…………ッ!!」 今度はあゆのS W M10が火を噴いて、梨花の傍にあるコンクリートの破片が弾け飛んだ。 子供並の身体能力しか持たぬ梨花は、塔の残骸を遮蔽物として利用する事で、何とか命を繋いでいた。 対するあゆは遮蔽物を利用するまでもなく、楽々と梨花の銃撃を躱している。 それなりに場数を踏んでいるあゆと、まともな銃撃戦を初めて経験する梨花では、銃撃の精度が違い過ぎるのだ。 あゆは前傾姿勢を保ったまま、円を描くような軌道で走り回り、徐々に梨花との距離を縮めてゆく。 その間にも梨花が、遮蔽物の影から数度に渡って発砲したが、やはり当たる気配は無い。 そして両者の間合いが五メートル程まで近付いた時、梨花のベレッタM92Fが弾切れを迎えた。 「……次っ、――――!」 弾切れを予測していた梨花は、すかさず鞄からミニウージーを取り出そうとした。 しかし直ぐにその動作を中断して、形振り構わず大地を蹴って離脱する。 その一秒後には、あゆが遮蔽物の裏側にまで回り込んで来ていた。 「――逝けや!!」 あゆが握り締めたS W M10の銃口から、連続して銃弾が撃ち放たれる。 早めの回避行動が功を奏して、梨花は何とか銃撃を躱す事に成功した。 窮地を凌いだ梨花は、そのままあゆに飛び掛る。 あゆも直ぐに銃を構え直そうとしたが、僅かに梨花の方が早い。 「……たああぁぁぁぁあああああっっ!!」 「――――くあっ!?」 梨花はあゆの左足に組み付いて、思い切り両腕で引っ張った。 あゆは身体を支え切れずに、雑草が生い茂る地面へと背中から倒れ込む。 間髪置かずに梨花は次の動作へと移行し、馬乗りの形であゆに覆い被さった。 「こんな程度で、私を抑え込めるとでも……」 「――聞きなさいっ!!!」 あゆが強引に撥ね退けようとしてきたが、その前に梨花は大声で叫んだ。 既に戦いは始まってしまっているが――未だ、誰一人として死んではいない。 今なら取り返しは付く筈だ。 「ことみは人殺しなんかしていない。私はソレが事実だという『証拠』を、ちゃんと持っているわ」 「……どういう事さね?」 当然の如く訝しげな声が返って来る。 だが梨花の云っている事は、その場凌ぎの嘘偽りなどではない。 互いの吐息を感じ取れる程の距離で、梨花はあゆの瞳をじっと見詰めながら、静かに言葉を続けてゆく。 「私が持っているノートパソコンにはね、『殺害者ランキング』という物が付いてるのよ。 それさえ見れば、ことみが殺人者かどうかが分かるわ」 「……見せてみろや」 梨花はこくりと頷くと、あゆの上から身体を退けて、パソコンを立ち上げる作業へと移った。 雑草を掻き分けて、空いた場所にノートパソコンを配置する。 ノートパソコンの電源を入れて、あゆと肩を並べたまま暫く待つ。 (これで大丈夫。きっと誤解は解ける筈よ) 言葉による説得はまるで効果が無かったが、物証となれば話は別。 実際に証拠を見せ付ければ、流石にあゆも信じざるを得ないだろう。 梨花は説得の成功を確信しつつ、『殺害者ランキング』のアイコンをダブルクリックしたのだが―― 次の瞬間梨花の目に入ったのは、信じられないような光景だった。 ――殺害者ランキング八位、一ノ瀬ことみ。 ――殺害した相手、双葉恋太郎、時雨亜沙。 「……嘘、何で――――」 梨花は自身の表情が、奇妙な形へと歪んでいくのを感じていた。 ノートパソコンに表示された文字は、ことみが殺人者であるという情報を示していたのだ。 「――はっ、嘘吐きの仲間は嘘吐きって事かい」 怒りの表情を浮かべたあゆが、冷たい銃口をこちらに向けてくるが、それさえも梨花の視界には入らない。 梨花は混乱し切った頭を懸命に鎮めて、必死に思案を巡らせていた。 有り得ない、これは絶対に有り得ない。 ことみは殺人遊戯を肯定するような人間では無い。 第一ことみが殺人者で無い事は、以前ランキングを調べた時に確認してあるのだ。 なのに、一体どうして――そこまで考えた梨花は、一つの推論に思い至った。 「……鷹野だわ。鷹野が私達を陥れる為に、嘘の情報を流したのよ!」 恐らくは、それで間違いない筈だった。 首輪すらも解除してのけた自分達は、鷹野からすれば完全な抹殺対象。 執念深い鷹野ならば、あらゆる手段を用いて、様々な角度から攻撃を仕掛けてくるだろう。 ノートパソコンに嘘の情報を流す事くらい、十分に有り得る話だった。 しかしそのような推論、今のあゆに理解して貰える筈も無い。 「今更言い訳なんかしても、通用すると思うか? もう終わりにしようや」 「…………っ」 最早完全に説得は不可能。 銃口を向けられているこの状態では、反撃も間に合わない。 アセリアも、疲れ果てている今の状態では、沙羅を振り切って助けに来るのは困難だろう。 それは梨花とあゆ、双方に共通した見解。 「糞虫――最後に何か、言い残す事はあるか?」 あゆは時間的猶予があると判断し、最後の問いを投げ掛けた。 金色夜叉の眼光が、標的を真っ直ぐに射抜く。 死を目前に控えた梨花が語るのは、弁明の言葉か。 それとも、理不尽な襲撃に対する罵倒の言葉か。 否――そのどちらでも無かった。 「貴女は、人の手で奇跡を起こせると思う? 魔法みたいな超常現象の事を云ってるんじゃないわ。 定められた運命を打ち破るような、本物の奇跡を起こせると思う?」 「…………あん?」 予想外の言葉が返ってきて、あゆは一瞬呆けたような表情を浮かべた。 余り悠長に考えている暇は無い。 直ぐに鋭い表情へと戻って、自分なりの答えを口にする。 「……無理さね。運命なんてモノに干渉出来るのは、本物の神だけだ」 あゆが答えたのは、至極真っ当な回答だ。 この島に於いて、あゆは様々な超常現象を目にしたものの、只の人間に奇跡は起こせないと思っていた。 しかしそこで、梨花が唐突に微笑を浮かべた。 「……普通なら、そう考えるでしょうね。でも――私は信じてる」 梨花は告げる。 百年を超える人生の中で学んだ、『奇跡の起こし方』を。 「――何よりも強い意思と、仲間を信じる心さえあれば、奇跡だって起こせると信じてる!!!」 梨花の魂から漏れ出た叫びが、周囲一帯に木霊する。 その直後、あゆは後方から近付いてくる足音に気付いた。 慌てて対応しようとするが、遅い。 「ガッ――――!?」 背中に強い衝撃を受けたあゆは、S W M10を取り落とす。 驚愕と共に振り返ると、そこには――ことみの姿。 「――――い、一ノ瀬ええええええぇぇッッ!!!」 「梨花ちゃん、今なのっ!!!」 幾ら負傷しているとは云え、仲間の危機を前にしては、隠れてなどいられない。 故にことみは傷付いた足を酷使して、あゆの背中に体当たりしたのだ。 即座に梨花は反応して、ベレッタM92Fに銃弾を装填すると、あゆの脇腹目掛けて撃ち放った。 強固な意志を籠められし銃弾が、金色の夜叉へと食らい付く――!! 「……がああぁぁぁあああああああああっ!!」 この状況、この距離では狙いを外す筈が無い。 着弾による衝撃は半端で無く、あゆの身体がくの字に曲がって、後方へと吹き飛ばされてゆく。 あゆはそのまま、背中から地面に沈んでいった。 「殺したの……?」 「いいえ、ちゃんと急所は外してあるわ。後で治療すれば多分助かる筈よ」 梨花がそう答えると、ことみは安堵したように息を吐いた。 ことみにとって、あゆは謂れの無い言い掛かりを付けて来た、憎むべき敵だ。 とは云え、幾ら敵であろうとも、同じ人間である事に変わりは無い。 殺さずに済むのならば、それが最良だった。 「さて、次は――あっちを何とかしないとね」 梨花はそう云って、ベレッタM92Fを深く構えた。 銃口が向いている方角には、アセリアと戦っている最中の沙羅の姿。 アセリアが踏み込む瞬間に合わせて、引き金を絞る。 梨花の放った弾丸は、沙羅の足元に着弾して土埃を舞い上げた。 「――――ッ!?」 突如銃撃を受けた沙羅が、驚愕に一瞬硬直する。 それはアセリアにとって、勝負を決めるのに十分過ぎる程の時間。 仲間によって作り出された好機を活かすべく、蒼の妖精は勇猛果敢に斬り掛かる。 「ぃやあああああっ!!」 「しまっ……」 雌雄を決す一閃は、疾く速く。 雄叫びと共に振るわれた大剣が、沙羅のワルサー P99を弾き飛ばした。 更にアセリアは、体勢を立て直す時間など与えんと云わんばかりに、沙羅の左腕を掴み取る。 そのまま強引に押し倒して、問答無用で関節を極めた。 「くっ……放しなさいよ!」 必死に沙羅が暴れ回るが、この状態になってしまっては如何ともし難い。 相手が只の素人ならばともかく、今沙羅を抑え付けているのは、数多くの死地を潜り抜けてきた強者なのだ。 飛び抜けた怪力など持たぬ沙羅では、脱出しようが無い。 取り敢えず、沙羅を無力化するという目的は果たされた。 しかし未だ、解決すべき問題はもう一つ残っている。 「ちゃんと話を聞いて欲しいの。私は――」 「嫌よ! 恋太郎を殺した奴の話なんて、聞きたく無い!」 ことみが弁明しようとしたものの、沙羅はまるで聞く耳を持とうとしない。 誤解の解消。 事態を収束させるには、それが絶対必須条件なのだが、今の沙羅を説き伏せるのは容易な事では無い。 「……違う、コトミはそんな人間じゃない。一緒に居た私には分かる……コトミは、とても優しい」 「そんなのアテにならないわよ。表面上では幾ら善人面してたって、裏では何を考えてるか分からない。 あの女――月宮あゆは無害そうな顔をしてた癖に、土壇場で私と瑛理子を裏切ったんだから!」 アセリアの言葉も、疑心暗鬼に陥っている今の沙羅には届かない。 嘗て裏切り行為に遭った時の怒りと、二見瑛理子の死を知った時の無念。 それが、沙羅の疑念をより一層駆り立てる。 現状は、両者共にある意味手詰まりだと云える。 アセリア達からすれば、説得は困難。 沙羅からすれば、独力での脱出は不可能。 即ち、場を大きく動かすには、外部からの干渉が必要だ。 そして、それは何の前触れも無く起こった。 「ッああああ――――!?」 銃声がしたかと思った次の瞬間には、梨花の身体が揺らいでいた。 左足を撃ち抜かれた梨花は踏み留まる事が出来ず、ゆっくりと地面に崩れ落ちてゆく。 その最中に梨花は見た――陽が落ちた草原の中、大空寺あゆがS W M10片手に屹立しているのを。 「……やってくれたねえ、糞虫共。でも、まだまだ詰めが甘いさね」 あゆは地面に座り込んだ梨花を見下ろしながら、勝ち誇ったように言い放った。 その姿は、先程鉛球を撃ち込まれた人物のものだとは到底思えない。 状況を理解出来ぬことみが、意図せずして驚愕の声を漏らした。 「そんな、どうして……」 「忘れたのかい、一ノ瀬。私が佐藤に撃たれた時、どうして助かったのかを」 「……ッ、まさか――」 そこまで云われて、ことみは何故あゆが五体満足でいるのかを理解した。 この殺人遊戯に於ける、最高の防具――防弾チョッキ。 あゆは防弾チョッキで胴体部を守っていたからこそ、こんなにも早く戦線に復帰する事が出来たのだ。 これは完全に、ことみの失策。 もう少し慎重に思案を巡らせていれば、防げた筈の事態。 「じゃあな――嘘吐き女。恨むんなら精々、その糞虫に騙された自分の愚かさを恨んでくれや」 あゆは冷たく告げると、梨花の頭部に向けてS W M10を構えた。 一番目にことみを狙うような真似はしない。 一発の銃弾で即死させるなんて、絶対にしてやらない。 最大の怨敵であることみは、出来る限り苦痛を与えてから殺したい所。 故にまずは、ことみを擁護するような愚か者達から排除する。 「……リカァァァッッ!!」 アセリアが無我夢中で駆け出したが、梨花との距離は二十メートル以上もある。 とても、間に合わない。 冷え切った風が吹き荒れる草原の中、あゆは何の躊躇いも無く引き金を引いた。 「……………………え?」 驚きの声は、きっと一人を除いた全員のものだ。 梨花の頭部には、今も掠り傷一つ付いていないし、他の箇所に被弾した様子も無い。 では放たれた銃弾は、一体どうなったと云うのか。 「――やっと、守れた」 ぼそりと、少女が声を漏らした。 腹部を真っ赤に染め上げながらも、満足気な笑みを浮かべている。 定められた死の運命を覆した、心優しき少女の名は―― 「こ、ことみぃぃぃぃぃぃ!!!!」 叫びを上げるや否や、梨花が直ぐにことみの元へ駆け寄ろうとした。 しかしことみは両の足で屹立したまま、手で梨花の動きを制した。 視界もまともに定まらない状態で、それでも思い切りあゆを睨み付ける。 「私の事は……もう良いの。疑いたいのなら、勝手に……疑えば良い。殺したいのなら……殺せば良い。 その代わり――」 まだ倒れられない――今にも崩れ落ちそうな身体を、気力だけで支える。 呼吸器官から湧き上がる血液を強引に飲み込んで、精一杯の声で叫ぶ。 「これ以上、皆に……手を出さないで!! 梨花ちゃんが! アセリアさんが! どれだけ優しい人かも知らない癖に! 私の……大切な仲間を傷付けないでッ!!!」 それで、限界。 云い終えると、ことみは静かに地面へと崩れ落ちて行った。 だが彼女の言葉は確かに、あゆの耳にまで届いていた。 「一ノ瀬――お前、何やってんだ…………? 自分が撃たれちゃあ……今まで人を騙してきた意味が……無いさ……」 あゆは呆然とした表情をしたまま、弱々しく唇を震わせている。 目の前の光景が、正しく理解出来なかった。 否、理解したくなかった。 そんなあゆの態度に激昂した梨花が、張り裂けんばかりの叫びを上げる。 「貴女まだ分からないの!? ことみは……私を庇って撃たれたのよ! 仲間の為に命を投げ出せるような人間が、悪人な訳無いじゃないっ!!」 自らの命を犠牲にしてまで、凶弾から仲間を庇う。 それは、正体を偽っているだけの殺人鬼ならば絶対に出来ない事だ。 自身の命よりも、仲間の命に重きを置いているからこそ可能な、献身的行動だ。 そのような行動を取る人間が、殺し合いに乗っている筈も無い。 疑う余地など、最早欠片も無い。 「ことみ……しっかり! しっかりして!!」 梨花はことみを抱き上げると、懸命にその身体を揺さぶった。 するとことみは静かに腕を伸ばして、梨花の頬に優しく手を添えた。 「ぁ……梨花ちゃん……無事で良かったの」 ――もう助からない。 背中に回した梨花の手が、赤い血でべっとりと濡れていた。 出血量から判断するに、ことみが受けた傷は間違い無く致命傷だ。 だが仲間の安否のみを気遣うその姿、その言葉には、何の後悔も見受けられない。 在るのは、ようやく仲間を守り切れたという安堵だけだ。 そんなことみの姿を目の当たりにして、あゆも沙羅もようやく一つの事実を認めた。 「……アアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」 あゆは天を仰ぐと、凄まじいまでの咆哮を上げた。 今まで自分が取っていた行動は、完全に間違いだったのだ。 自分は何の罪も無い人間に、何度も何度もあらぬ疑いを掛け、命まで奪ってしまったのだ。 自らの罪業に気付いたあゆは、只唯叫び続ける。 一方沙羅は、全速力でことみの元へ駆け寄って、徹頭徹尾に謝っていた。 「ごめん……本当にごめんッ! アンタは何も悪くなかったのに……。 私、怒りで頭が真っ白になって……恋太郎の仇だって決め付けちゃって…………!」 どれだけ謝っても許されるような罪ではない。 一時の激情に身を任せ、善良な人間達に武器を向けた罪は、それ程に重い。 だというのに。 「……ううん。分かってくれれば……良いの。憎しみは、何も……生み出さないから……もう良いの。 それよりも……これからは、……皆と仲良くして欲しいの」 ことみは罵声の一つすら浴びせる事無く、沙羅を許してのけた。 沙羅はボロボロと涙を零しながら、何度も首を大きく縦に振っている。 続けてことみは、あゆの方へと視線を向けた。 ことみにとっては、この島で一番因縁深い宿敵であるし、致命傷を負わされた相手でもある。 だが――ことみは憎しみを捨てて、ゆっくりと言葉を紡いでゆく。 「大空寺さんも……お願い。私の事はもう良いから……二度と同じ間違いを犯さないで。 私の仲間を……傷付けないで」 決して、楽な選択では無かっただろう。 積み重ねられた遺恨は相当な物だろう。 それでもことみは聖母の様な慈悲を以って、あゆを許したのだ。 「……ああ。絶対……絶対にだッ! 私はお前の仲間を傷付けないし、誰にも傷付けさせはしない!!」 叫ぶあゆの瞳は、一目で見て取れる程に潤んでいる。 あゆがことみを見る目には、もう何の憎しみも篭められていない。 憎悪に囚われし金色夜叉は、余りにも不毛な戦いを経て、ようやく人間の少女へと戻っていた。 そこで、一行の下へと近付いて来る新たな足音。 「……ことみさんっ!? これは一体……」 「――ミズホッ!」 振り返ったアセリアの瞳には、宮小路瑞穂の姿が映っていた。 応急処置やオーラフォトンによる治療を施され、数時間に渡って休眠も取った瑞穂は、かろうじて動ける状態にまで回復したのだ。 瑞穂は直ぐに梨花から説明を受けて、大体の事情を把握した。 「聞いて、瑞穂さん……。私、四葉ちゃんも……恋太郎さんも……亜沙さんも……衛ちゃんも……守れなかった……。 大好きだった朋也くんも……死んじゃった……。でも……今度こそ、やっと守れたの」 ことみはそう云ってから、傍らに居るアセリアの手を取った。 自身の血に染まった右手を使って、優しく握り締める。 「ごめん、コトミ……。私はコトミを……守れなかった……」 「良いの……、アセリアさんがどれだけ頑張ってくれたかは、ちゃんと分かってるから……。 これからも……皆を守ってあげて欲しいの」 「うん……大丈夫。皆を守る……それが、私の生きる意味だから……っ」 少女の想いを受け取ったアセリアが、表情を歪めながらも、強く、強く、頷いた。 次にことみは空いてる方の手で、梨花の手をしっかりと握り締めた。 「ことみ……お願いだから死なないで! 後ちょっとじゃない……もう少しで、皆一緒に生きて帰れるのに!! 私は嫌なの! 瑞穂も! ことみも! アセリアも! 誰か一人でも欠けたら嫌なのっ!!!」 「梨花ちゃん……泣かないで。別れは……何時か必ず、訪れるものなの。 それでも……例え別れが悲しみを残したとしても……私達はそれ以上に大切な物を……築けたんだから……っ」 「ことみ……っ、ぅああ……うわああぁぁぁぁああああっ…………!!!」 ポタリポタリと、梨花が流した涙がことみの頬へと降り注ぐ。 その涙はとても悲しいものだったが、命の息吹を感じさせる暖かさも秘めている。 降り注ぐ涙は、ことみが確かに仲間を守り切った証だった。 「アセリアさん……梨花ちゃん……瑞穂さん……、みんな私の大切な仲間達。やっと……守れたの」 血に塗れし少女は、口許を綻ばせて誇らしげに微笑む。 身体の感覚は既に消えかけているけれど、この島で初めて仲間を守り切れた喜びが、ことみの胸を満たしていた。 「ねえ瑞穂さん……最後に一つ……お願いして良い?」 「良いわよ……。私に出来る事なら、何でも云って頂戴」 「初めて出会った時みたいに……ギュッとして欲しいの。瑞穂さんの胸の中は……とても暖かいから……」 「……ええ、分かったわ」 瑞穂は直ぐに両腕を伸ばして、ことみの身体を優しく抱き寄せた。 瑞穂の心中にあるのは、深い悲しみと、途方も無い程の後悔だ。 間に合わなかった。 ことみを守ると誓っていた筈なのに、気付いた時には全てが終わっていた。 そんな自分がどのような言葉を掛ければ良いのか、瑞穂には分からなかった。 「変だよね……私、ことみさんに、いっぱい……云わなきゃいけない事がある筈なのに……。 なんにも……なんにも言葉が……出て、こないよ……」 「ううん……云わなくたって、私には分かるの。だって、瑞穂さんは……こんなにも優しいから……」 ことみの瞳が徐々に光を失い、ことみの声が、徐々に掠れて小さくなってゆく。 それでもことみは大きく息を吸い込んで、自身の想いを言葉へと変える。 「私は……沢山貰ったの。瑞穂さんから……沢山、温もりを貰ったの……。だからっ…………!」 ――出会ったばかりの自分を慰めて、心の底から信じてくれたから。 ――全てを失ってしまった自分に、再び温もりを与えてくれたから。 溢れんばかりの感謝と想いを籠めて、告げる。 「――ありがとう、瑞穂さん……大好きだったの」 「私も、っ…………、僕もだよっ……。僕もことみさんの事が……、本当に大好きだったよ……っ!」 瑞穂は止め処も無い涙を流しながら、ことみを一層強く抱き締める。 機能が停止した少女の神経では、もう瑞穂の抱擁を感じ取れないかも知れない。 それでも少女は、とても穏やかな微笑みを浮かべていた。 「ふふ……本当に、暖かいの……」 ――やっと守れた大切な場所で、少女は眠る。 ――大好きな仲間達に囲まれて、確かな暖かさを感じながら。 【一ノ瀬ことみ@CLANNAD 死亡】 【C-5 電波塔周辺の草原/二日目 夜】 【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】 【装備:ワルサー P99 (2/16)】 【所持品1:S W M36(3/5)、ワルサーP99の予備マガジン1 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、双眼鏡、医薬品】 【所持品2:支給品一式×2、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE、往人の人形】 【所持品3:『バトル・ロワイアル』という題名の本、、映画館にあったメモ、家庭用工具セット、情報を纏めた紙×12、ロープ】 【状態:疲労極大、深い罪悪感、肋骨にひび・強い決意・若干の血の汚れ・両腕に軽い捻挫、両肩間接に軽い痛み】 【思考・行動】 基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する 0:まずは暫くの間休憩を取る 1:仲間を守る 2:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。 3:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす 【備考】 ※きぬを完全に信頼。 ※あゆを完全に信頼。 ※フロッピーディスク二枚は破壊。地獄蝶々@つよきすは刀の部分だけ谷底の川に流されました。 エスペリアの首輪、地獄蝶々の鞘はC-6に放置。 【大空寺あゆ@君が望む永遠】 【装備:S W M10 (1/6) 防弾チョッキ 生理用品、洋服】 【所持品:支給品一式x9、ホテル最上階の客室キー(全室分) ライター 懐中電灯、食料(パン等食べやすいもの)、大型レンチ】 【所持品2:、ヘルメット、ツルハシ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄 虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ベレッタ M93R(10/21)】 【所持品3:オオアリクイのヌイグルミ@Kanon、Mk.22(3/8)、予備マガジン(8)x3】 【所持品4:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、 分解された衛の首輪(NO.35)、情報を纏めた紙】 【所持品5:ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】 【状態:生理(軽度)、深い罪悪感、中度の肉体的疲労、肋骨左右各1本亀裂骨折、左脇腹に重度の打撲、強固な意志、左前腕打撲(多少は物も握れるようになってます】 【思考・行動】 行動方針:殺し合いに乗るつもりは無い。 0:まずは暫くの間休憩を取る 1:何があっても、ことみの仲間達(瑞穂、梨花、アセリア)を守り切る 2:殺し合いに乗った人間を殺す 3:甘い人間を助けたい 4:川澄舞に対する憎しみ 【備考】 ※支給品一式はランタンが欠品 。 ※生理はそれほど重くありません。ただ無理をすると体調が悪化します。例は発熱、腹痛、体のだるさなど ※きぬを完全に信頼。 ※沙羅を完全に信頼。 【アセリア@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、高嶺悠人の首輪、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、 情報を纏めた紙×2】 【状態:恐怖、肉体的疲労限界、魔力残量皆無(自身の存在維持のみ可能)、左肩と右わき腹に深めの切り傷(応急処置済み、動かすと痛み、鎧の該当部位損失)、 全身に切り傷、右耳損失(応急手当済み)、左上腕部打撲、両腕に酷い筋肉痛、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)、首輪解除済み、「求め」と契約】 【思考・行動】 基本:ゲームには乗らない、仲間を守る 0:まずは暫くの間休憩を取る 1:ミズホとリカを守る 2:無闇に人を殺さない(殺し合いに乗った襲撃者は殺す) 3:存在を探す 4:川澄舞を強く警戒 5:沙羅とあゆに対する複雑な思い 6:瑞穂に対する罪悪感 【備考】 ※アセリアがオーラフォトンを操れたのは、「求め」の力によるものです ※制限の低下によって、「求め」と契約しました。 これにより全体的に能力が上昇しています。 ※神剣との同調率は多少回復しましたが、マナが無い所為でスキルは使えませんし、身体能力も強化不可能です ※オーラフォトンブレイクについて 「世界」のサポートスキル、広範囲に破壊を巻き起こし、相手の行動を封じる力を持つ。 ※永遠神剣第二位「世界」について 「求め」が、「誓い」のマナを吸収したことによって、本来の「世界」へと変化しました。 しかし、覚醒直後に大量のマナを消費した事と、僅かに残っていた制限が加わって、現在は「求め」の姿に戻っています。 それに伴い、「世界」の一部である青い刃が六本、アヴ・カムゥの残骸の傍に刺さっています。 再び接触した際に変化が起こるかは不明です。 【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】 【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾13/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】 【所持品1:支給品一式×9、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ5本、 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、情報を纏めた紙】 【所持品2:バニラアイス@Kanon(残り6/10)、暗視ゴーグル、FN-P90の予備弾、電話帳】 【所持品3:カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、竹刀、トウカの刀@うたわれるもの、懐中電灯】 【所持品4:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)】 【所持品5:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】 【所持品6:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】 【状態:全身打撲、全身に魔法によるダメージ(応急処置済みだが、激しく動き回るのは不可能)、強い決意、即頭部から軽い出血(処置済み)、脇腹打撲、首輪解除済み】 【思考・行動】 基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める) 0:まずは暫くの間休憩を取る 1:アセリアと梨花を守る 2:川澄舞を警戒 3:沙羅とあゆに対する複雑な思い 【備考】 ※アセリアに性別のことがバレました。 ※他の参加者にどうするかはお任せします。 ※この島が人工島かもしれない事を知りました。 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】 【装備:猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、ミニウージー(16/25) ヒムカミの指輪(残り0回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 】 【所持品:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの)】 【所持品2:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、 ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、首輪の解除手順に記したメモ、 食料品、ドライバーやペンチなどの工具、治療用具一式、他百貨店で見つけたもの 、首輪探知レーダー(現在使用不能)、車の鍵 】 【状態:頭にこぶ二つ、中度の肉体的疲労、精神的疲労小、左肩と左太股に銃創(動かせるが痛みを伴う)、強い決意、首輪解除済み】 【思考・行動】 基本:潤と風子の願いを継ぐ。 0:まずは暫くの間休憩を取る 1:瑞穂とアセリアを守る 2:きぬが心配 3:仲間を集めたい 4:沙羅とあゆに対する複雑な思い 【備考】 ※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2 609参照) ※梨花の服は風子の血で染まっています ※レーダーは現在電池切れ、 電池(単二)が何本必要かなどは後続の書き手に任せます ※ノートパソコンの微粒電磁波装置や現在地検索機能、レーダーは使用不可能(電波塔の半壊が原因) ※ノートパソコンの『殺害者ランキング』は、鷹野によって情報を改竄されました ※催涙スプレー、ゲルルンジュース×3、チンゲラーメン、コルトパイソン(.357マグナム弾2/6)が塔の南側に落ちています。 【備考】 ※電波塔は破壊されました(正確には半壊状態だが、復旧はほぼ不可能)。破壊された時刻は18時前です その為、首輪の機能は完全に無効化されています。 ※瑞穂達のすぐ近くに赤色の車が停車しています(キーは刺さっている)。残燃料は70%程です。 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 投下順に読む 207 牢獄の剣士(Ⅱ)――夢想歌――(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 時系列順に読む 207 牢獄の剣士(Ⅱ)――夢想歌――(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 宮小路瑞穂 We Survive(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) アセリア We Survive(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 一ノ瀬ことみ 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 古手梨花 We Survive(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 大空寺あゆ We Survive(前編) 206 守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 白鐘沙羅 We Survive(前編)
https://w.atwiki.jp/asagaolabo/pages/4727.html
[Good bye, Summer~さよならは言わない~] 【グッバイサマー さよならはいわない】 言い忘れたさよならは色褪せないズッ友の思い出 (ノスタルジア 曲説明文より) [3 A.M. ディテクティブ・ゲーム] ハイライト発生箇所 他のBEMANIシリーズへの収録 収録作品 関連リンク ポップンミュージック eclaleで登場した楽曲。 担当キャラクターはミミとニャミ(どちらもエクラル-3P)で、プレイヤーキャラクターがミミ(エクラル-3P)の場合、ライバルキャラクターがニャミ(エクラル-3P)になる。 本来は「BEMANI ROCK FES 16」の開催に伴って、開催翌日の2016/07/11に登場する予定の楽曲であったが、ビラファクトリーでの目標達成に伴い2016/06/30から登場した追加配信曲。 Good bye, Summer~さよならは言わない~ / 私立BEMANI学園軽音部 OB BPM 165 新難易度 EASY NORMAL HYPER EXTRA 5 23 34 41 ハイライト EASY NORMAL HYPER EXTRA 4 4 4 4 2016年7月10日に行われた『BEMANI ROCK FES 16』(なおかつ私立BEMANI大学)のテーマソングとして手掛けられた曲で、事前に行われたBEMANI Bi-Ra Factoryでの目標達成に伴って予定より早く登場。jubeat、GITADORA、REFLEC BEAT、BeatStreamに同時配信されている。作詞T田、作曲96、ボーカルPONという形でアーティスト名にOBと付いているのはイベント開催から3年経って(BEMANI学園を)卒業したという意味だろう。公式PVではスピンオフムービーと称して、大学(の学園祭)でライブの計画を立ち上げるPONと96の姿が見られる、ノイズを伴った一昔の雰囲気の映像になっておりカラオケ風の演出。 やや速めのテンポでロック系譜面と言われる縦連打+同時押しの配置が多い。これを軸として2つのフレーズを弾かせる配置も出てくるので、同時押しの認識を意識しよう。ラストの微ズレ押しや、その後の隣接交互で初見は面食らいやすいか。EXはハイパーの傾向はそのままに、サビ以降からの隣接同時押しが混じる配置で密度・難易度が増すが、4個同時は下段2個+上段2個のパターンが多いことを意識しよう。サビ後半の隣接同時地帯に注意。また長い縦連打との複合配置もあり、全体的にリズムの維持が問われるだろう。 ハイライト発生箇所 番号 5Buttons / EASY NORMAL HYPER EXTRA 1 2 3 4 他のBEMANIシリーズへの収録 ジャケット pop n GFDM jubeat REFLEC ノスタルジア BeatStream PVの一部を使っているが、機種別に使われている部分が異なっている。 GITADORA(GUITARFREAKS&drummania) Tri-Boostで2016/06/30にポップンと同時登場。 jubeat Qubellで2016/06/30にポップンと同時登場。 REFLEC BEAT VOLZZA 2で2016/06/30にポップンと同時登場。 BeatStream アニムトライヴで2016/06/30にポップンと同時登場。後述のMVが使われている。 ジャケットはこの機種を意識してか、タカハシサンが映っているものが使われている。 ノスタルジア コナステ版において、2021/06/30から販売開始となった「ノスタルジア 楽曲パック vol.5 ~私立BEMANI学園~」に収録されている。 AC版では、Op.3における期間限定イベント「時を巡る音楽祭 Vol.III」で、2021/09/02から出現可能な曲として登場した。 PVはこちら MVの内容から、Endless Chain ~2人でトリガーをひこう~の続編的位置づけといえる。 上記PVの1 02辺りに、棚に入っているししゃものMサイズぬいぐるみ(2009/07/03発売)が確認できる。 「着信★うた♪会員限定無料配信!」で配信されたこの曲は、ジャケットがBEMANI機種に収録されたものとは全く異なるものであった。スキ!ランキングやBEMANI MUSIC AWARDS 2016ではポップンのものが使われていた。 BEMANI MUSIC AWARDS 2016において、スタッフ投票の3位となった。 収録作品 AC版 ポップンミュージック eclaleからの全作品 2016/06/30より配信開始。 CS版 関連リンク 96#? PON Endless Chain ~2人でトリガーをひこう~ 私立BEMANI学園 楽曲一覧/ポップンミュージック eclale
https://w.atwiki.jp/hakoboy/pages/55.html
管理人の状況 W18攻略中 +ワールドタイトル ワールド タイトル W1 ぼうけんの はじまり W2 さわって進もう キュービィスイッチ W3 「ハコビト」をエスコートせよ W4 フォールブロックで 足場づくり W5 天高く飛べ! ハコロケット W6 しゃだんせよ レーザースイッチ W7 ハコビトに迫るモヤモヤ W8 ウインドエリアに乗って W9 ドカンと爆発! ハコボム W10 ウォーターエリアで プカプカと W11 ハコビト運ぶ ベルトコンベア W12 押して持ち上げ レールブロック W13 瞬間移動! ハコワープ W14 星々を巣喰うもの W15 乗せて動かせ てんびんブロック W16 上下反転 アベコベエリア W17 大集結 ミックスワールド W18 星々を救うもの W19 W20 W21 W22 WORLD1~5 WORLD6~9 WORLD10~13 WORLD14~18 WORLD19~22 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/3871.html
作詞:もじゃ 作曲:もじゃ 編曲:れるりり 歌:GUMI(Whisper) 翻譯:MIU 再會midnight 桌上放著 啤酒罐與保險套 在身邊睡著的我的戀人 說著我要走了 再會midnight 最後的夜晚就快拂曉 說著乾杯 你有些靦腆 熟悉的容顏 聲音 令人安心的味道 稍稍的臉紅 一點點害羞 按著額頭的 昨天的笑容 要精精神神哦 你輕輕說著 而我一言不發 微笑著 說著道別吧 決定的這一天 在這個柔和的夜晚擁抱你 再等醒來時 已經分別兩地 我希望的是 時間快停下吧 只屬於我的你 就如同今天一樣 默默地支撐著我 難過的時候在身邊給我笑容 說著不要忘記哦 再會midnight 最後的夜晚就快拂曉 孤獨一人的時候 令我相信 膽怯的時候 遇見了你 說著我愛你 聽到了的我 第一次 感覺到了自我 無言以對 沉默不語 再見 謝謝 不再撒嬌 再見 明天見 已經再回不去 無法改變 想要改變 沒有一塵不變 想要忘記 卻忘不掉 不再回頭 桌上放著 啤酒罐與保險套 怎樣都想要告訴你 這樣喜歡過我 教會了我信任的意義 再不會相遇 再會midnight 似乎還睡著的我的戀人 與你遇見過真是太好了 閉上眼哭泣 閉上眼哭泣的我的 戀人 原曲為もじゃ自唱創作(Music Lyric) 由れるりり負責編曲和COVER成VOCALOID版本(Arrange Mix) 原唱本家: 感謝止水さん提醒和感謝MIUさん翻譯! by Fe
https://w.atwiki.jp/kanitrpg01/pages/26.html
概要 探索者は友人同士である。あなた達は、海沿いの街に観光に来て、 宿泊できる寺に泊まることになった。 適正人数 2~4人 開催日時 2~3日想定 開催場所 ココフォリア SANチェック 少なめ シナリオ傾向 現代日本謎解き・RP重視 推奨技能 特に無し目星があれば多少はスムーズかもしれない 難易度 低 キャラロスト ほぼなし 参加予定PC(自由に編集してね) [部分編集] あさづけ キリシロ ラバソ ▽タグ一覧 SAVOIA卓 クトゥルフ神話TRPG シナリオ セッション 未参加:あさづけ 未参加:キリシロ 未参加:ラバソ 開催中
https://w.atwiki.jp/vtsr/pages/1629.html
【鏡音リン】 さよなら、ニコニコ動画 【オリジナルソング】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1905786 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1905786 Vocaloid2のオリジナル曲 使用Vocaloidは鏡音リン 製作者はX-FILM氏(ジェバンニP) 一つ前のページにもどる
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/551.html
「お願いだキョン。もう、僕を1人にしないでくれ」 「1人じゃないだろ。お前には忌々しいがあの橘がいる。いけ好かないが藤原がいる。 よくわからないが九曜だっているじゃないか」 「でもそこにキョン、キミはいないじゃないか」 泣き崩れる佐々木を、俺はただ抱いてやることしかできなかった。 俺の胸の中で泣き続ける佐々木の頭を撫でてやる事しかできなかった。 「もう、あの頃には戻れないんだね」 「そうだな。一度こぼれた水はもう戻せないんだ」 「あの時キョンが涼宮さんではなく僕を選んでいたら… いや、過ぎてしまったことを口にしても意味がないね」 「佐々木、俺は――!」 「もういいんだよキョン。それより少ししゃがんではくれないか?」 「一体なにを――んっ!」 目の前に佐々木の顔がある。唇になにかが触れている感触がある。 なにが起きているか俺だって判るさ。 唇を離した佐々木は背中を向けて 「ありがとう。そしてさよならだ」 俺の前から消えてしまった。