約 3,063,831 件
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5334.html
1 2 3 4 5 6 2012/8/31 http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1346412022/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 一緒に入ってでも入れるって…天の助裏山 -- (名無しさん) 2015-11-23 21 40 14 歌くそワロタww -- (名無しさん) 2013-01-08 21 57 37 ボーボボとクロスすればどんな作品も飲み込まれるなwww -- (名無しさん) 2013-01-07 19 27 03
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/223.html
「散華、まさかおまえ、他人に自分の名前を言ったんじゃあないだろうな?」 娘に念を押してしかる父親、黎樹。それに対して散華はうつ伏せでぐったりと力なく地べたに倒れており、黙ったままである。 そしてその娘からは平然と鮮血が漏れていた。 「まぁ・・・今回は許してやる。それよりも散華、私はまだ右腕の治療しか出来ていないぞ? 左手の指もさっさと直してくれ。」 父親の左手の指は所々先が無い。何本かが切られていた。 そしてその娘の散華は・・・右腕が消失していた。肩の先からの腕が無くなっていたのである。 父親の名前はまさに千種黎樹。まさにその者だった。 改めてみても子持ちとは思えないような若々しい風貌である。 「散華、お前の左手の指を私にくれるな・・・? お前は元気な子なんだから。」 父親の黎樹はどこかから鋭利な日本刀を取り出す。 それに対して娘はただ黙って左手を差しだした。何も対抗意識もなく無表情で。 「よしよし、いい子だ。さて、その指を貰うぞッ!!」 父が日本刀を振り上げた瞬間、外の窓がバリバリ裂けて割られた。 破片が辺りに飛び散る中、 まるで高跳びの選手がポールを飛び越えるようなフォームで少年が人の家に堂々と入ってきた。 「あんた・・・その刀でその子になにをしようとしているんですか・・・!?」 窓を思い切りにブチ割って入ってきたロキが父親に問いかける。 「何って・・・こ、これはただの」 「ただのドメスティックヴァイオレンスが許されるとでも思ってんすか? 分かったのならその日本刀をさっさとしまってくださいよ。」 ロキがさっきより強い口調で黎樹に迫る。 だが、黎樹は日本刀を娘の手に日本刀を振り下ろした。 勢いよく鮮血が吹き出てロキと父親にかかる。 「よく人前でそんな狂ったようなことができますね。恥ずかしくないんですか?」 ロキの心の中で静かに怒りが湧きあがる。しかし表面に出さず見下した表情で言い放った。 「お前の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったな。悪鬼ロキ。」 血に染まる真っ黒なスーツとダンディな顔。親父は先程娘から切り落とした指を拾い上げる。 親父の左手にも指が切り落とされたような無残な跡がある。 そこに娘の指を、あたかも人形を組み立てるかのようにグリグリと押し込む。 娘の指と親父の左手はくっついていた。指の大きさの差もなくまるで元通りのように。 「アンタ・・・吸血鬼か?」 「いや、これは私の能力ではない。娘の加護さ。 フッフ・・・もう誤魔化せそうにないからいうが、 こいつの能力は、自然治癒能力と、ありとあらゆる人間の細胞に変化することが出来る能力さ。」 黎樹という男が言うにはその能力は娘のものらしい。 切り落とされた娘の指が男の手に侵食して馴染んでしまうらしい。 散華の能力1つめは自己修復能力。 もう1つが何にでも変身できる能力。相手の細胞に変化できる能力。 右腕がないところに、彼女の右腕を切り取ってくっつければ、相手の体に馴染み、相手のものとなる この能力によって自分の体、パーツを相手の体に レゴブロックのように人形のように修復することができるのである。 「こいつは化け物。私はこいつのことを抑える役目も持っている、 そして行くあてのない化け物のこいつに生きがいを与えてやる役目も持っている。 お前は立ち去った方がいい。その怪我で帰れるならだがな・・・!!」 突如黎樹が猛進してロキの腹に日本刀を突き刺す。 一瞬と言っていい程の速さで懐に入って、いとも簡単に貫いて見せた。 ロキは声こそ上げないもののその場に突き刺されたまま蹲った。 「やっぱり化け物を見ちまったんだからやっぱここでくたばってもらわないとな。」 黎樹が刀を引きぬく。 同時にロキの抉られたからだから栓が抜かれたかのように血が溢れ出した。 「見ての通りあの娘は何も感じておらぬ。無論痛みも。 私の役に立つことがあいつにとっての幸せなのだ。お前には分かるまい。」 黎樹がロキのことを上から見下ろす。勝ち誇ったような顔で悟らせるように。 しかしその彼の目つきはますますと強く鋭くなっていくばかりだった。 「いくらそんな能力を持っているからって娘の右腕とか指を切ることが許されると思っているのか?」 「娘のことを知ったような口を聞いてんじゃあないぞ!!」 「知ったような口を聞いてんのはてめぇだろうがっ・・・!!」 冷血な父親に対して少年が思わず怒りを上げた。 「確かにあいつはあんな壮絶な事をされても声も出さずびくともしなかった。今だって平然な顔をしている。」 けど、なんで刃物をブッ刺された俺を見て平然な顔しながら涙を出しそうになってんだ・・・? どうして痛みを堪えている俺を見て目をうるわしているんだ・・・!」 父親が娘の方向を向くと娘はやはり平然な顔。喋ることも無かった。 一見無表情をしているが、それでも雫は目の表面に確かに張り付いていた。 ロキは彼女の位置から遠くにいた、そんなことを確認する暇もなく、 重傷を負っているのにも関わらずその微かな感情の表れに気付いていた。 「あいつは、お前に縛られているのを耐えているだけなんだ・・・!」 訴える彼の心をよぎるのは、人形のように感情を一切見せない彼女の姿。 黎樹から解放しなければならない囚われの人の娘の姿だった。 何も言わない黎樹はそんなことも聞きもせずに日本刀を振り下ろす。今にもロキの頭を切り裂こうとする刃。 だが彼は避けることもなく自分の手刀を振り上げて刀に放った。 金属を叩きつけたような響く音。 鳴り響いた時、ロキの手刀が日本刀を裂く。 刃は折られ、その破片はロキとは逆の方向に飛んでいく。 弾き飛ばされた破片は黎樹の目に突き立てられる。彼の目から血が静かに流れ始めた。 「ヌゥゥゥ・・・!この小僧!!!」 怯む父親が即座に向くのは目の前の敵、ではなく自分の娘。 「散華・・・お前の目を・・・私にくれるな・・・・・?」 先を折られた刀を娘の目に向けた。 「よせ・・・!やめろ・・・!!」 必死に呼びかけるロキ。しかし親父の刃は娘の瞳へと近づいていく。 「あたし・・・何年ぶりに涙を流したんだろう・・・。 その流した涙ごと、お父さんに上げなきゃいけないの・・・・・? ひょっとしたらもうあたし、泣くことすら出来なくなっちゃうの・・・・・? そんなの・・・いや・・・!」 幼き娘が呟く。その声に父親も驚く。初めて逆らう娘の声。 そして彼女の目に光が戻る。冷たく固まった人形でなく、人間らしい子供の顔になっていた。 その決意に満ちた目は父親の黎樹に反抗の意識を向けた。 「私の娘はどんなことがあってもなんの嫌な顔をすることはなかった。 むしろ笑っていた。私に逆らうなど娘ではない・・・・! お前は死すらも受け入れるはずなんだッ!!」 黎樹の刀は娘の頭へと振り下ろされる。 頭だけは自然治癒が出来ない。 だが非情にも父親の刀は娘へと叩きつけられる。 脳を抉られただけでも散華は死にいたる。 それなのに刃は彼女へと近づいていく。 死にいたることを彼女は悟る。 「違う・・・!これが本来のあるべき散華の姿なんだ!」 無残な音はしなかった。 彼女の前に1人の勇敢な少年が両手でを抑えていた。 両手から皮が剥がれ、血が噴き出す。 「貴様ァァァ!!」 あっけに取られる父親。 そして声すら出せない娘。 自分が死ぬはずだったのにも関わらず、この大怪我を負っている少年が自分のことを守ってくれた。 今ここで、死を知らないはずの幼き子供がその命を救われた。 少年の勇気を示す白刃取りがそれを物語っていた。 「アンタは超えてはいけない一線を越えた。」 その時日本刀の刃が完全に折られる。 逆襲の込められたその刃は黎樹の胸へと突き立てられる ロキが腹を貫かれた復讐の分と、娘への冒涜に対する怒りの分が込められた刃は黎樹に突き刺さった。 散華が父から解放された今後、もうその傷は治ることは無い。 手に持っていた折れた日本刀をそのまま落とす。 だが親父はまだ倒れない。後ろへのけ反るどころか刺されたままロキに殴りかかる。 避けれずに痛烈な一撃を頬に喰らう。何かが折れる音が顔面に走るが、 それに気にかけることもなく今度はロキが親父にとどめの手刀を刺そうとする。 「ノロいッ!! そんな拳など掠るだけだッ!!」 何度突いても当たらない。 ロキの手刀は直撃することも無く、肌の表面を掠めるだけだった。 それなのにロキは満足そうに笑っていた。 「『掠る』のがいいんじゃあないか・・・ それが火事の元なんだから・・・・・!」 異変に気付いた時、親父の肉体はあちらこちらが炎に塗れていた。 ロキの摩擦の能力は手で触れるだけで火をつけるほどのもの。 体に点いた火は、掠った時にその摩擦の能力によって発火させられたものだった。 「このガキがァァァァァァァ・・・・!!!」 灼熱に包みこまれる黎樹の肉体。 なお襲いかかろうとする黎樹。ロキにはもう喰いとめる体力は無い。 頭を鷲掴みにしようとした時、散華が目の前で折れた日本刀を黎樹の頭に、娘が父親を頬から串刺しにした。 唖然とするロキ。 父親は娘にとどめを刺されたことに気付かずに憎悪の目をロキに向けたまま崩れていく。 ついに火だるまになってそのモンスターペアレントは倒れた。 ついに散華の魔の親、黎樹を倒した。 だがロキは既に満身創痍。そして点火した黎樹から炎が燃え移り、家ごと火事にしていた。 「散華、幸せにな・・・。」 残された幼き子供にその言葉を言い残してロキまでもが倒れる。 その時、倒れた少年も火に包まれた。 散華は最後まで涙で目を濡らしたままであった。 ある朝、保健室の中で少年が再び目を覚ます。 「デジャヴ?」 一体目覚めるまで何時間・何日もの時が経ったのだろう。 やがて記憶が段々と蘇ってくる。 日本刀で腹を貫かれたこと、白刃取りの時に両手の皮が裂けたこと、 渾身の一撃で殴られたこと、炎に包まれたこと。 しかしそれらの痛みはなかった。いや、傷がなく、怪我すらしていなかった。 正確に言うと怪我が既に治っていた。 「うーん。今は何月何日の何曜日なんだろう。土日だといいけどなぁ。」 ベッドの上で暢気な事を言う。するとベッドの下の空間から前に見たことがある子供が出てきた。 「おはよう!」 顔を近づけて元気に挨拶をするその子は散華だった。 火事現場から自分を救ってくれたから今自分が生きているんだろう。 幼い割にしっかりしている、と少年は感心した。勿論能力のせいもあるが。 「おはよう。オレって一体何回火傷を負うんだろうなぁ。」 「ぶっちゃけたことを言うと作者がこういう展開にすることが多すぎるんです。」 「やめろ、それを言うな。」 しかし自分が今全く怪我を負っていないということに深い疑問を持っていた。 散華の父親、黎樹と死闘を繰り広げたというのに。 長い年月が経ったわけでもあるまい。どうして・・・。 思いあたる原因があった。この子の能力・・・。親父が娘の指を切断してくっつけたように、まさか・・・この娘が・・・ 「お前、さては俺の怪我を直したのもお前なのか?」 「うん。私はお父さんにこういうことをやらされていたし、医療とかには詳しいから。 ここには麻酔もあるし。」 結論から言うとその娘が能力によって 自分の肉体の一部をロキの体細胞に変化させて、痛みを堪えてそれをそぎ落とす、 そしてロキの怪我を負っている部分にその肉体の部品をくっつけて治したということ。 自分の体から瀕死の少年の体に体の部品を数々と移植をしたのである。 ゴールドエクスペリエンスみたいに。 「お前、これじゃあ親父の時の二の舞じゃあないか!!」 自分を治した無垢な子供に咄嗟に怒った。勿論これも彼女の為を思っていたから声を荒げたのであったのだが。 どうしようもない。この子は結局そういう風に生きていくのだろうか。 かつて父親がやったように、誰かに皮膚を剥がされ肉体を奪われ痛みに追われながら生きていくのだろうか。 「あたしのお父さん・・・最初はあんな人じゃなかった。」 途方に暮れているロキを尻目に散華が言う。 「ある日あたしと、お兄ちゃんと、お父さんと、お母さんは車でドライブに行ったの。 あたしもみんなも旅行でウキウキしていた。 でも車に乗ってた時、あたし達4人は車で崖から落ちた・・・。突然崖が崩れ落ちて・・・・・。」 「お母さんとお兄ちゃんは死んじゃった。でもあたしは生きてた。 病院で生死の境を彷徨った末に奇跡的に生き残ったんだって。 お父さんの命もなんとか助かった・・・けど、お父さんは腕を複雑骨折して使いものにならなくなっちゃっていたの。 お医者さんが言うには、あたしは助かる可能性が0パーセントに近かったんだってさ。 でもあたしも最初は右目がその事故で駄目になっちゃった・・・。ふふ。」 「退院しても あたしは右目を無くして眼帯をつけて、お父さんは右腕を切断されてそれで生活をしていたの。 結局お父さんはお仕事を無くしちゃった。 体が思うように動かなくなったからなのか、家族を失ったショックなのかは分からないけど。 それでよくお父さんは残った左腕であたしのことを殴りつけた。何回も何回も。 昔は優しかったのに。」 「ある時あたしは殴られた時の拍子で右目の眼帯が取れちゃったの。 その時お父さんが驚いて飛びのいた。鏡を見てみると眼帯があった跡に右目がついていた。失った目が治っていたの。 気味悪がってあたしに近づかなかった。けど・・・。」 「ある日のこと。突然お父さんがあたしの右腕を何かに抑えつけた。お父さんはチェーンソーを持っていた。 必死に悲鳴を上げた。助けを求めた。けど・・・あたしはその時右腕を切断された・・・。痛かった。とっても痛かった。 でも、右腕を切り落とされてもやっぱり翌日には治ってた。そして・・・お父さんの右腕も治っていた。 どうゆう原理か知らないし、どうしてお父さんに分かったのか分からないけど、 あたしには自分の細胞を他の人間の細胞に変化させる能力があったの。超回復能力もね。 『もう少し早く気付いていれば母さんも兄も死ななかった。』お父さんはずっとこう嘆いた。 この言葉が今でもあたしの耳に響いてる。耳鳴りみたいに。」 「数日後お父さんは酷いケガを負って帰ってきた。このままだったらお父さんが死んじゃう、だなんて思った。 あたしは必死にお父さんの為に出来ることをやっていった。初めは自分から自主的に。 けど、気がついたら私はお父さんの言うことに従っていた。痛みを堪えて体の一部を切断したりさせられた。 それが私がやるべきことだって信じて・・・。」 「初めてあたしが自分の能力で治した時、お父さんはすごく褒めてくれた。 『人の命を助けることが出来る天使の子』なんて言われたわ。 お兄ちゃんやお母さんのようにもう大切な人を失うことが無いということ、 病気や怪我で困っている人の役に立てるということ。それを考えただけで壮絶な痛みも忘れれた。 けど、お父さんは最期まで他の人の為にあたしの能力を使わせることは無かった。 お父さんは既に暴力団と関わりを持っていて、不死身の黎樹なんて名前をつけられていた。 当然あたしが治療するからなんだけどね・・・。 あたしの能力はもう人を治す天使の能力ではなく、人を傷つける為の悪魔の能力に変わっていた。」 やむを得ず壮絶な痛みを受け続ける度に散華は感情を失っていった。 皮肉な話、幼子が持つ能力はただの商売道具でしかなかった。 そんなことを思い胸を痛めつつ、これまでで一番冷めている散華の話を聞く。 幼い女がこんなに長く平然と喋るなんて思いもしなかった。 「お兄ちゃんはその元凶のお父さんを殺した。不死身の黎樹を。ちょっと怖いなんて思ったけど・・・。 だけどお兄ちゃんはあたしを庇ってくれた。死ぬことが滅多にないあたしを助けるために命を捨てる勢いで庇ってくれた。 ロキ、これからもあたしのことを大事にして、悪い人たちを退治してね。あたしはいつでもここにいるから。」 今まで棒読みでしか喋らなかった散華が突然抱きついて言った。 人形のように冷めた表情はもうない。寂しそうに寝ている自分の元にすり寄ってきている。 かつて愛情無しで父親に育てられた娘がそれを欲していた。 「・・・・・。暇だったら俺の寮まで来いよ。 あと、お前こそ自分の体を大事にしろよ。そんな能力を持っているからって簡単に自分の体を切断したりするなよ?」 すりよってくる幼い娘。ロキは何も言わず頭を撫でるのであった。 夢幻学園の七不思議 怪我をして保健室に行った時に、ベッドの下から幼い娘が現れる。 眠って目を覚ますと自分の怪我が治っている。 こんな都市伝説が流行ったと言われている・・・。 (しかし・・・『お兄ちゃんはその元凶のお父さんを殺した。』なんて言ったが・・・ 最期にトドメを差したのは、折れた日本刀を差した散華だった・・・。 ひょっとして、自分自身で覚えていないのか?まさか・・・)
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/364.html
ス ー パ ー 嘔吐 デ ス テ ィ ニ ー 巨大なミミズのような不格好に、非常にテカテカ感。 包茎手術に大失敗したかのようなペニスに酷似した、その化物。 そう、英語で書くともれなくMONSTERなソレは、おおよそ全長10mはあった。 ソイツの先端には巨大な口があり、歯が蠢いていた。 恐怖の権化のような格好の、そう、それはまるでペニス。 もう誰も住んでいない廃墟の路地裏で、体をうねらせる。 そんな怪物の前に二人の少年少女。 ペニスの化け物に対峙した少年は明らかに瀕死、少女は優位に立つ者の笑みを浮かべていた。 そんな異様な光景。 ◆超日常◆ 我が名は嘉山是郎(かやま しろう)。なかなか、威厳のある名前だろう。 だが、今俺はベッドの中にいた。何故なら眠いからだ。朝日が憎ったらしい。 朝日よ、滅べ。そう心中唱えた瞬間だった。 「あに。あに。あさごはんができたよ。おきないとうつみ、おはようのキッスをかますよ」 ───今年5歳になる俺の妹、虚美(うつみ)は非常に賢い子だった。 「それではまるでロリコンではないかッッ!!」 「おはようございます」 「……うむ。待っていろ、5秒で着替える……」 やれやれ、虚美には敵わんな!そう思い、俺はパジャマを脱いで服を着るためタンスを開ける。開けィ!と言いながら開ける。 「あに。それはふだんぎ」 「何ィ?………あぁ、そうか」 そうだ。俺は今日から───中学生ッッ!!! 俺のマイルームには、ピカピカの学ランが掛けられていた。 なんだか感慨深いものがあった。俺ももう中学生───これからは心を入れ替えて……新生是郎として生きていかねばなるまい。 「かんがいにひたるのはいいけど…はやくしてね」 難しい言葉を使うのだな…と俺は思ったが、妹は俺よりも既に賢いため、納得した。虚美の言葉にも「Yes」と了解する。 俺は嘉山家直伝の着替え術で、宣言通り5秒で着替えを完了する。 それを見た妹は頷くと、踵を返しキッチンへ向かう。その小さな背中は、ついて来いって言っているようだった。 それにしても、毎朝のことながら小さなエプロンを装備したこの妹には、まるで小さな猫や犬に服を着せたような無理やり感があった。 我が妹ながら──なんと儚く、可愛らしいのだ。守ってやりたい……!!あああ!これではまるでロリコンではないか。 思いつつ、ご飯を冷めないうちにいただくため、俺は妹についていく。 「是郎ッッッエロスとはなんだ!!!!!!!」 俺がキッチンへ来ると、そこにはアマゾネスがいた。 「意味がわからないよママン」 もとい、母親である。某モンハンのような格好をしている。そう、母さんはハンターなのだ! その逞しい脂肪率は漏れ無く0%の丸太のような腕。素手で熊の頭をかち割った逸話もあるというのだから驚きだ。 「見よこの健気な妹を!!!!私を起こしてくれたと思ったら、この通り御飯まで用意してくれているではないか!!!!!!!」 「声がでかいよママン!!!!!!!」 「貴様もうるさいではないかッッ!!!!!!!!」 「ママンだってッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」 「ふたりともうるさいではないか」 見ると、妹が俺たちを睨んでいた。はよ、あさめしにせんかい!と言いたげだ。やれやれ、妹には敵わんな! 「ガッハッハッハゥ!!虚美に言われてしまったらしようがないなッッッッ!!!!では飯としようか!!!!!精をつけるのだぞ!!!!!」 だというのにちっとも声を小さくしようともしやがらないアマゾネス。 これが、いつもの我が家の一日の始まり。俺はやれやれとため息をついて、朝飯を前にがっつく。 「ふたりとも……いただきますは?」 「「いただきますッッ!!!!!!!!」」 「……まじでうるさいな……」 平和……幸福ッ! 母は今日もその重装備で巨大生物が多発するという裏山へ狩りに行く。巨大猪や巨大熊……とても人間には手に負えないそれを余裕で狩ってくるのだから母は人間ではないのだろう。 妹は今日も自力で夢幻幼稚園へ行く。五歳という年齢で全てに於いて完璧超人。生まれた時から失敗した事がない彼女は、保育士よりもしっかりしているらしい。兄の尊厳は今日も危うい。 そして俺は、今日も学校へ行くのだ。まさしく今日が、我が人生の分岐点かも知れない。ついに『厨房』と謂われる年齢に達した俺は、いつもより足取りが自然と緊張で重くなったが、緊張は即 忘れ、すぐに軽くなった。 「ィィヤッホォォォウ!」 声高に叫びながら俺は廃墟の路地裏を抜ける。夢幻街は広い。ついでに夢幻学園は遠い。されど、嘉山の血は強靭だった。 幼い頃既に(ママンまでとはいかないが)強靭な肉体を手に入れ、喧嘩だって負けたことはない。廃墟の群れを忍者のように駆け抜ける。 そこには、やはり夢幻街。人影がないようなところにも人影あり。今日は少女の影を見た。あんなところで何をしているのだろう。 俺は、ロマンを感じていた。 俺は、この群れなす廃墟の光景が好きだった。夢幻街とは基本、謎だらけだが、ここほど放置された謎だらけなものはない。 なんでも噂によれば最近ここらを化け物がうろつくらしいが、余裕だ。俺はあの獰猛な母と同居している。故に体は必然と鍛えられる。 例え巨大熊や、音速で走るチーターが現れても、俺は容易く逃げられるだろう………。 ──そう、常軌を逸する……それこそモンハンに出てくるような怪物中の怪物とさえ出くわさなければな。 このままニンジャ・ステップしていけば、後ほんの5分で夢幻街に続く路地に到着する。そんな時だったかなァ…… 「!?」 真下に巨大な蠢く何が見えたのは……。 「い…今のは……」 まず最初に感じたのは「恐怖」。次に感じたのは………「好奇心」。 思えば最近この廃墟群では、余り人影を見ない気がした。 そうか!つまり! 「あれは人食いミミズ!つまりあれを倒せば俺はこの廃墟で最強となる!即ち! 廃墟で暮らすモンスターに怯える未知の人々は、俺を慕う → 廃墟村の村長の一人娘と結婚する → 将来が 安 泰 」 今日は中学生デビューの日だが、ハンターデビューの日でもあったか! ちなみに、廃墟村は妄想の産物だが一人娘と考えてまず、あの少女の影が思い浮かぶ。顔はよく見えなかったが、きっと可愛らしいに決まっている。 俺が巨大ミミズをぶち殺した暁には、きっと廃墟の住民である少女は俺を……フフフフ! 俺は胸が高なった!そう考えたあとの、俺の行動は早かった。多分チーターよりも速かった。変な自信が、俺を纏っていたのだ 大丈夫、勝てなさそうでも逃げりゃいいさ、とも考えていた。 そして─── ◆さすらいの魔性少女◆ 「へっっくし!!!」 寒いのう、めちゃんこ寒い。 廃墟暮し歴三日。私の名前はゼロコ・デイドルジェロモルス。魔性少女であった。 魔性少女としての『義務』の改訂。即ち、力を自由に行使することの許可の後から、自らを力を悪用する魔性少女が非常に増えたと感じる。 『奴らが悪を行うのなら私は自らの正義を行う!!』と、豪語を打って出た私。 そんなわけで、私は今日も正義の為、怪しい噂……この廃墟で謎の化け物が暴れているという知らせを聞いて駆けつけた。 廃墟は噂通り怪しい雰囲気を纏っていた。そしてそのモンスターを全身全霊で探すこと早二日。 私は────迷った。 「どこなのだ。最早どこなのだここは。もう帰りたい。家に帰りたいが───」 私には────家がない。 ここ二日の動向はこうだった。 モンスターを探索するのに魔性力を消費し、結局見つからなかったため私は飢えを凌ぐ為魔性力を養分に変換。 やりくりしながら体勢を立て直すため、この廃墟群を出ようとしたが───迷う。まるで迷路のようなところだ。空を飛ぼうにも力がない。 そう、最早、魔性力はほぼ尽きていた。ついでにいうと飯もない。空腹だった。先ほど、空飛ぶ少年の影を幻視したほどだ。 魔性少女の、魔性力の供給法は魔性少女によって全く違ってくることをご存知だろうか。 魔性少女の性格や人格、これまでの行い、魔性少女化時点での思考などによってそれらは全く変わってくるのだ。 いずれにしても、本人にとって全く苦ではない方法になることは確かだ。 それが────実用的かどうかはさておき。 私の魔性力供給法は特殊だった。故に、供給できず。 ここで最早餓死or助けを待つのみ。打ち上げられたヒトデのような心境だった。 「今モンスターに出くわしたら、為す術もなく、喰われるなぁ」 我ながら、悔しさと諦観に満ち溢れた声だった。 そんな時だった。 『ぬわー!!!!』 声がしたのだ! 悲鳴と言ってもいい。そう…これは、まさしくチャンスだった!! 私は即座に立ち上がると、最早限りなくゼロに近い魔性力を使い、全身全霊の本気中の本気で悲鳴の方向へと向かった。 ◆◆◆ 「はぁ……はぁっ!!無理だ……はぁっ!なんてことだ、逃げなければ!!」 俺は────気が狂いそうになっていた。 「ウボボボボッ!ウボボボボッ!!!!!!!!!!!」 背後で奇怪な声を上げる巨大な異形のミミズは、這いずっているとは思えぬほどのスピードで迫っていた! そう、まさしくチーターよりも圧倒的な速度で、巨大プーさんよりもよっぽど力強く周囲の廃墟を弾き飛ばすように破壊しながら!俺を追ってくるのである! 空中で、廃墟から廃墟へ飛び移り逃げゆく俺。あともう三分もあれば夢幻学園へ出るはずだ!しかし、振り返ると見える…… 「ウボボボボァー!ウボァーボボボァーウウウウボッウボッボァ!!!!!!!!!!!!!!!!」 その姿はまさしく、この世のあらゆる悪意を一つのまとめたような悪魔的! 俺は一生懸命に廃墟中を必死に逃げ回ったが、遂に躓く!!! 焦り過ぎたのだ……と反省する間もなく超巨大ミミズは廃墟と廃墟の間に落下する俺を問答無用で廃墟ごと粉砕するッッッ!!!! 「ぬわああああああ!!!!!!!!……!?」 だが見える! 急に、空間がスローになった気がした! そうだ、俺はあのアマゾネスの息子だ! 空中廃墟と共に散らばった俺は瞬時に覚醒した! それは一瞬の出来事だった。 今も落下する、廃墟の残骸──粉々に割れた岩壁と岩壁との間を駆け巡り、俺は遂に、俺を轢き殺してやったわ!とドヤ顔の巨大ミミズの前に出た。 「死ねィ!!!」 その瞬間、俺は全身全霊の蹴りを巨大ミミズの首元(?)に叩きこむ。どうだ! 「ウボァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」 ──────あれ!? 全く効果がない、寧ろ怒っていらっしゃった。 俺は最早無理──と振り出しに戻った、寧ろ状況が悪化したのを感じつつミミズをもう一度蹴って、その反動で外へ逃げようと考えた。 「ふ、ふはは!さらばだミミz……」 グルンッと視界が回転する。あれ……空ってこんなに赤かったっけ。 俺がなんだか意識が飛びそうな具合になっていると、丁度巨大ミミズがものすごい勢いで横へ吹っ飛んだので、俺の意識は回復した。現金な意識だった。 ◆邂逅◆ 「おどりゃくたばらんかァアアアアアアアアアア!!!!!!」 魔性力全開の殴打が、間に合った。 目の前の巨大ペニスは殴られた風船のように分かり易く吹っ飛ぶ。そして直後に地面にクレーターまで作って血まみれで倒れる少年を発見。 手遅れだった……!生きているモノでなければ、『それ』は効果がない…!ゼロコ、圧倒的失意!! 「ぐ……がふっ!」 「!!?!?意識があるのか!?」 「あ…ああ……伊達にママンの元で修行を積んでいないからな……!!」 どんなママンだ!と突っ込みをいれたい気持ちを抑え、少年に近づき…………。 その傷の深さ故に、私は目を逸らしそうになった。が、別にそんなことはないと心の中で強がってみせる。 「どうなっている?………俺は………助かりそうか?」 「このままでは死ぬな、間違いなくだ。足が無いからな」 「何ィ……足がないだと」 少年は自分の足が太腿の途中で消え去っているのに気づいた。初めは悔しさやら恐怖やらパニックになりそうな顔をしていた少年だったが、別にそんなことはなかった。 「ふっ……」 何がおかしいのだろうか、笑い始めたのだ! 「構わん、少女よ…俺を置いて逃げろ。多分、というかもうコレ無理だから。ミミズはまだ……恐らく生きてる……俺は精一杯囮になるので……逃げるがよい」 「ほう」 私は感心した。しかし暇はない。あの巨大ペニスはこれしきでは倒れぬだろう。 「良かったよ。非常にな。私はお前のような男の 吐 瀉 物 なら、高級和牛の何倍も価値があると思っている!」 少年は何を言っとるんだこのキチガイは、という顔をしたが、迷っている暇はなかった。 背後でトンデモない音がする。巨大ペニスだった。 ◆始まりの嘔吐◆ はっきり言って、俺は瀕死だった。不思議と痛みは無かったが、意識が浮遊しているような、わけのわからぬ感覚だった。 中学生デビューの日にハンターもデビューして、ついには仏デビューか。 今日は高級デビュー三連続のデビュー記念日だな、とわけのわからぬことを考えながら、俺は少女に言った。「俺を置いて逃げろ」と。 この少女がお迎えだったら、恐らくこれは高得点だ。間違いなく俺は天国へ導かれることだろう。そうでもなくても、俺は今、最高にかっこよかった。 しかし天使にも見えた美少女はわけのわからぬことを言い始めた。吐瀉物がなんとか言ってた。 「良いか!私はお前の吐瀉物を食すことによって私は力を得れるのだ!どうする!?迷っている時間はない!ミミズが来るぞ!」 まだ何か言っている。聞き間違えたのかも知れない。もう一度聞いてみよう!そう思った瞬間だったかなぁ。 「すまん、死ぬなよ!」とか言いながら、美少女が、俺の口の中に手刀を突っ込んだのは。 「もがぐがっごおご……オボロロロ露露!……!!?!?!?!?」 俺は今まさに生死を境をさまよっているのだろうなぁと感じたが、最早迷いはなかった。 イイぜ、お前がその気なら俺は吐いてやる。 死ぬ前に、一度やってみたかったんだ───── ゲ ロ プ レ イ !!!!!!! 俺は、生死の境まで思春期真っ盛りだった。精子の境だったのかもしれない。 そして俺は吐いた。壮大に吐いた。 それはさしづめ、間欠泉のようだったのかも知れない!! そして少女は色気の欠片もなく大きく口を開き、上へ上へと突き進むゲロの巨塔を飲み込んだ。 何してんだ、コイツ! その上、飲み込みながら……彼女は俺の口を遂にその口で塞いできた!ゲロまみれのファーストキッスだと! しかし、そんなことよりも、何してんだ、コイツ!と心底思ったが、意識が今度こそ飛びそうだったので、最早どうでもよかった。 ◆超嘔吐運命◆ ────さぁ、ショウタイムだ! 「ウボボボボッウボボボボッウボボボボッ!ボボボボウッ!!!!!!!!」 喚くペニスを前に、私は呟いた。口から吐瀉物を垂らしながら。 「美味だ……美味だぞぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 否、呟いたのではない、叫んだのだ! 「魔性少女、へんしーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「瞬くような反吐リズム!食道震える酸っぱさ!手を突っ込んだ、その瞬間!内容物をロックオンッッ!!!!!!」 次いで、私は変身の呪文を叫んだ! 私の魔性少女の衣装は、まさしく魔性少女といった感じではなかった。 どちらかと言えばウルトラマンかも知れない。両手に宝石がついていた。我ながら見慣れた代物だが、それは差し詰め、今先程口にした吐瀉物の色だった。 「ウボボボボッ!!ウボボボボッ」 目の前で喚きながら突進してくるペニス。私は依然余裕だった。 「とても美味だ………この感じ……中々美味な朝飯を食べてきたと思われる……… しかしそれ以上に………あの少年の吐瀉物だからか!!!!!!!!!」 宝石が輝く。激しく酸っぱい異臭を流しながら! 「ああ……私は数々の吐瀉物を食してきたが…………」 宝石がさらに輝く。ペニスは危険を察知したのか、突進しながらも避けようとするが……無意味であるッッ 「これほどまでに!!!!これほどまでに美味いゲロはなかったぞおおおおおおお!!!!!!!!」 ビームの速度は超音速だった。 ギュイン!!!!と音がしたと思えば、ペニスを貫く。 両手から発射され、途中で統合したレーザービーム。 それは巨大なペニスに突き刺さり、周囲の廃墟を甘美な吐瀉物色の輝きに染めた。 「甘美な嘔吐に、酔いしれよ……」 優しい口調で言うと、巨大ペニスはモゴモゴし始めた。吐瀉物色の発光が終わる。決着がついたのだ。 「ウ……ウ……………ウッボルバ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 かくしてペニスは、廃墟と共に爆砕したのであった。 ◆一段落◆ 長い間、寝ていた気がする───そろそろ起きなければ、と目を開ける。 「……ここは……」 「廃墟だ」 俺は聞こえてきた声の方を向く。漸く少女の顔が静かに拝めた、と感じた。やはり同い年に見える。 「お前は三分もの間、気絶していたのだ」 少女が言うと、俺はだんだんと意識がはっきりしてくる。同時に、先程起きたことも思いだしてくる。 たったの三分かよ、とか色々聞きたいことはあったが、ひっくるめて、まず自己紹介をすることにした。 「ふっ……我が名は嘉山是郎」 「ふっ……私の名前は、ゼロコ・デイドルジェロモルス」 俺は座りながら、無言で少女と握手をした。なんだか気が合いそうな気がした。 「聞きたいことは色々あるが、一つ良いか」 「うむ、なんだ?…うっぷ!」 「何故お前は俺の太腿周辺に汚物を吐いている?」 異様だった。思えば彼女は、俺の吐瀉物を飲んでいたな。 「汚物とは失敬だな。私の吐瀉物には癒しの力があるんだよ!」 頭がおかしいんとちゃうか?と言いそうになったが、実際彼女が俺の吐瀉物を飲んだらミミズが爆発したため、それなりの説得力があった。 実際、足の血も止まった。 しばらく変な空間が展開された。彼女が嘔吐する音と、俺が彼女のその苦しそうな姿を見るだけの空間。酸っぱい臭いがした。 「見ていろ」 少女は俺の千切れた足を持ち上げ言った。千切れた足の断面にもゲロが塗りたくってあった。用意周到だな! 「くっつくから」 「!?」 俺は驚愕した。足がぴったりとくっついたのだ。まるで接着剤のようだな、と率直な感想を述べた。 「私の吐瀉物で、断絶された神経・筋肉とか諸々を繋いだ。立ち上がってみろ」 「マジか……」 さらに驚愕した。俺は、先程まで足が吹っ飛び、死をも覚悟していたというのに……それらが全て夢だったと言わんばかりに、普通に立ち上がれたのだ。 まるで魔法のようだ。これが奇跡と言わずなんという!? 「お前は何者なんだ!?一体どんな魔法を使った!?」 「魔法、か……」 少女は遠い目をした。 「魔法のようなものだ、これは。我々思春期の子供の強い欲望や意思などの感情を力に変える魔性のシステムさ」 「ほう」 何の話だ。 「人は我々を、魔性少女と呼ぶ!」 少女は誇らしげな顔で言った。胸まで張っていた。 「そうか……」 俺はなんだか可哀想なものを見る目で言った。実際、彼女の衣装は非常にアレだった…… 俺の目に気づいたのか、彼女は早口で続けた! 「そう!そうとも。魔性少女は全員、力を得る方法が違うのをご存知だろうか!?そう、例えば、私は嘔吐物を食すことで力を得れる」 「……………………真面目な話か!?」 「真面目な話だ!」 だからあのような奇行に及んだのかと、合点がいく。納得はしたくないが。 「しかし、それは辛くないか?他人の嘔吐物だぞ……二日酔いのおっさんの嘔吐物でも飲むのか?」 「飲むな。飲むしかないからな。間接的に未成年の飲酒になるが」 問題はそこじゃねぇだろ!と思わず突っ込みかけた時、彼女は呟いた。 「だが……もう味をしめてしまった」 「…何か言ったか?」 「別に…」 少女は何か物欲しげな顔でこちらを見ている。 突っ込みたいことは山ほどあったが、質問攻めにするのも怠い。というか何か大事な事を忘れている気がした。 「そうだ、俺は学校があるのだった!!!!よりにもよって入学式がッ!!もう間に合わんか」 「なんだと!?それは大変だ!」 少女は自分のことのように深刻な顔をすると、いざ参らん!と背中を広げた。 「おんぶしてやるから乗れ!」 「何をしているんだお前は!背負えるわけがないだろう、小柄な小娘が!この俺の筋肉を見ろ!体重だって…」 「うるさい黙れ!魔性少女を舐めるな!」 少女は俺の手を引っ張ると、そのまま空へ浮く。不思議な感覚だった。 「というか、なんか酸っぱい臭いがするぞ!!!」 「仕様だ。それより夢幻学園はどの方向だ?」 あっちだ、と俺はその方角に指をさした。 少女は了解!と叫ぶと、空中で俺を引き摺るように学園へ飛んでいく。 心のなしか、単に酸っぱいというより、この臭いは甘酸っぱさに似ている気がした。 俺は漠然と、この少女と、長い付き合いになる気がしていた。 ◆止めどなく思春期◆ 止めどなく END
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5329.html
律「まったく、お前らの所為で怒られちゃっただろ」 ボーボボ「ごめんなさい…」 首領パッチ「いいのよ、ママ怒ってないから」 ボーボボ「ママ…」 天の助「ギー太くん、反省することはいいことだ」 天の助「しかしだね、それをいつまでも後悔するのはよくないよ」 ボーボボ「エリザベスのおじさん…」 首領パッチ「さ、帰りましょう。今日はあなたの好きなシチュー作ってあげるからね」 ボーボボ「やった、ママ大好き!」 首領パッチ「あらやだ…、この子ったら」 唯「親子なかよしなんだね……」 梓「何かが決定的に違うきがします…」 そして、軽音部一行はムギちゃんの別荘へとついた 唯「おじゃましまーす」 紬「いらっしゃーい……あら?」 ボーボボ「ギー太です」 首領パッチ「むったんでーす!」 天の助「エリザベスです」 唯「朝おきたら皆こうなってて~」 紬「そうなの?じゃあ、皆の分のお料理も用意しなくちゃ」 澪「ムギ、おどろかないのか?」 紬「だって、みんな楽器を大事にしてきたんですもの」 紬「喋れるようになっても、不思議じゃないと思うの」 律「いや、もう姿形すら変わってるからな、喋れるってレベルじゃないからな?」 ボーボボ「そういえば、ドラ美は先についてるんだっけ」 天の助「ああ、一式先にこっち送ってるらしいな」 律「そういえばそうだった。ムギ、どこにおいてあるんだ?」 紬「……」 スッ… 律「何で目をそむけた」 澪「もしや、あっさりエリザベスたちを受け入れたのって……」 律「うそだろ……!」 ボーボボ「おいおい、まるで俺たちみたいになったらイヤみたいじゃないか」 首領パッチ「まったく、ひでー言い草だぜ」 天の助「傷つくよな」 澪「いや、今までの行動振り返ってくれ」 紬「あ、でも…、3にんに比べたらまだましかな…?」 律「そうなのか…、信じていいんだな?」 梓「この三人が基準なのがちょっと怖いですね……」 唯「じゃあ、会いにいってみようよ~」 ソフトン「…騒がしいな、少し静かにしてくれないか」 律「!?」 律「おい、ムギ。どこがマシなんだ…どうみてもアレだろ」 紬「違うの、彼は……」 首領パッチ「おう、キー坊じゃねーか」 天の助「なんだよ、先にバカンスとかずりーな」 ソフトン「ひさしぶりだな、ギー太」 ボーボボ「ああ。どうやら、腕をあげたようだな」 梓「どうやら、あのソフトクリームみたいな人はムギ先輩のなんですね」 律「そ、そうだよな、ソフトクリームだよな」 ビュティ「ちょっと皆!ちゃんとしないと、律っちゃんたち困ってるじゃない!」 ボーボボ「ドラ美」 律「……」 律(マシだ……) ボーボボ「さて、皆もそろったことだし」 首領パッチ「遊ぼうぜ!」 ビュティ「えぇ!?ちょっと、合宿でしょ!?ちゃんと練習しないと!」 唯「大丈夫、あとでちゃんとやるから!」 律「よーし、じゃあ水着に着替えるぞー!」 ビュティ「ちょっと、澪ちゃんと梓ちゃんと紬ちゃんからもいってあげてよ!」 ビュティ「それに……」 ビュティ「何で私たち楽器になってるのーーーー!?」 ビュティ「何をどうやって奏でるの!?」 ボーボボ「ほら、こうやって……」 シュルルルルッ ビュティ「ボーボボは鼻毛で何とかなっても、他の皆は!?」 ビュティ「天の助くんなんて、弾かれる度に身が削られるんだよ!?」 ボーボボ「ビュティ」 ボーボボ「おれはボーボボじゃない、ギー太なんだ」 天の助「いや、おめーも今ビュティって言ったぞ」 ボーボボ「あらやだ!やっちゃった!」 首領パッチ「おいおい、ちゃんと気ぃ引き締めていけよ」 ソフトン「しかし、いきなり彼女たちの楽器になっていたのは事実だぞ」 首領パッチ「俺とかギターだぜ、ギター!」 首領パッチ「俺はこんなに立派なギター持ってるっていうのによ」 スッ ビュティ「だからそれバターだよ!」 律「えっと、つまりだ」 律「みんな、朝起きたら私たちの楽器になっていたんだな?」 ソフトン「そういうことになるな」 澪「どういう理屈なんだ?」 ソフトン「分からん、バビロン真拳にはこのような奥義はない」 ボーボボ「聖鼻毛領域でもないぞ」 天の助「俺のプルプル真拳でもないぞ」 首領パッチ「あと不思議なのがよ、こいつらの楽器としての記憶もあるんだよな」 ソフトン「それが最大の謎だ」 紬「なんだか、大変な話になってきたわね……」 唯「そうだねえ……」 ボーボボ「よし……、この状況を打破するためにも」 ボーボボ「泳ごう!」 海 天の助「あちっ、あちぃ!砂浜があちいよーー!」 澪「しょうがないな、ほら。捕まれ…えっと、天の助」 天の助「わ、わりいな」 澪「よくわからないけど、お前はエリザベスみたいだし…」 首領パッチ「お前どうせヒロインの座ねらってんだろ?」 首領パッチ「さっさと先輩たち卒業しないかなっておもってんだろ?」 首領パッチ「白状しなさいよ、この小娘!」 バシッ バシッ 梓「そ、そんなこと思ってません!」 ソフトン(この事態。どのようにして打破すべきか……) ソフトン「ところで、紬」 ソフトン「昨日頼んでおいたアレは用意できたか?」 紬「はい、これ」 ソフトンは、ブレスケアを手に入れた 紬「別荘にまだいっぱいあるから、なくなったらそれを使ってね」 ソフトン「助かる」 律(アイツ、口臭気にしてたのか……) ビュティ「どうかしたの?」 律「い、いや、なんでもない!」 律「なんていうか、ビュティの仲間はみんな個性的だな~?」 ビュティ「……そうだね、色々大変だけど、おかげで退屈はしないかな?」 律「そりゃ、あれだけフザけてればツッコむの大変だろうな」 ビュティ「……でもね、フザけるのあの人たちだけじゃないんだ」 律「……!?」 律は、言い知れぬ恐怖を抱いた 唯「ギー…じゃなかったボーボボどこにいったんだろ?」 ボーボボ「終わりだよ、お前とは」 唯(居た…、誰と話してるんだろう?) ボーボボ「お前の顔なんざ、みたくもねえ」 唯(喧嘩してるのかな…?) ?「酷い、あんなに好きだっていったじゃない!」 ボーボボ「うるせえ!もうお前には…、ワカメの味噌汁にはあきたんだよ!」 ワカメ「やっぱり豆腐ね、あの子と浮気してたのね!?」 ボーボボ「喋るな!磯臭ぇのが移んだろうが!」 ワカメ「酷い、……あなたのこと、一生うらんでやるわ!」 ボーボボ「ああ、そうかよ。勝手にしな」 ワカメ「あなたの幸せ、ずっと妬んでやるんだから」 ボーボボ「はいはい……」 唯(ボーボボ……) 唯「私、お豆腐とワカメ両方はいったお味噌汁も大好きだよ!」 ボーボボ「唯ちゃん……」 ワカメ「何よこの娘は!あんた、豆腐だけじゃなくてこんな小娘とも!」 ボーボボ「……この子は、違う」 ワカメ「何が違うっていうのよ!」 ボーボボ「いい加減だまれやー!」 ガシッ ブチィッ! ワカメ「ぎゃあああああああああああ」 唯「ボ、ボーボボ…」 唯「お豆腐とワカメ、どっちも入てあげようよ」 ボーボボ「だって、ワカメいれると味かわっちゃうんだもん…」 ボーボボ「ワカメの味になっちゃうんだもん……!」 ワカメ「そこの、あなた……」 唯「わ、私……?」 ワカメ「その人は、そうやって選ぶってますが……」 ワカメ「本当は、一人になるのが怖いんです……」 ワカメ「ですから、その人を一人にしないでやってください……ガクッ」 唯「ワカメさん、ワカメさん!!」 ボーボボ「…………」 ボーボボ(バカヤロウ……、なんで死んじまうんだよ!) ボーボボ(死んだら、死んだら何もできねえだろ!!) ボーボボ「唯ちゃん」 ボーボボ「夕食は、わかめの味噌汁にするようにムギちゃんにいってくれないか」 ボーボボ「それがきっと、彼女にとってなによりの供養になるから」 唯「うん、そうだね。きっとワカメさんも喜んでくれるよ」 ボーボボ「今まで思い出をありがとう……」 ワカメ(ありがとう、あなた……) ボーボボ「……お前」 ワカメ(私はこうして、あなたの血や肉になれる、それだけでうれしいの) ボーボボ「ああ、そうだな」 ボーボボ「その前に、俺も最後にお前に言いたいことがある。天国に行く前にきいてくれ」 ワカメ(あら、なにかしら?) ボーボボ「喋るワカメなんぞ食えるかーーー!!」 唯「ボ、ボーボボ……」 ボーボボ「誰がてめぇで味噌汁作るっていった!」 ボーボボ「普通に台所にある乾燥ワカメ使うっての!」 ワカメ(そう…よね) ワカメは、成仏した ボーボボ「安心しろ、お前の死はむだにはせん」 唯「ね、ボーボボ」 唯「帰ろっか、ムギちゃんの別荘に」 ボーボボ「ああ。そうだな」 3
https://w.atwiki.jp/flyffohayo/
Flyff Universe(フリフユニバース)リシスサーバーで活動中のエンジョイ勢のおはようと申します。 ご訪問いただき、ありがとうございます。私の関心をシェアすることで、皆様の興味や関心を呼び起こすのに役立つことを目的としています。 コンテンツをお楽しみください。さあ、一緒に始めましょう。 「Flyff Universe」は,2004年に正式サービスが始まった「Flyff Online」(フリフオンライン)のリメイク版で,「Flyff Online」や「Flyff Legacy」の開発者達によって制作されたファンタジーMMORPGです。HTMLのバージョン5を使用したHTML5ゲームで,ダウンロードの必要がなく,ブラウザの動くすべてのプラットフォームに対応しており,クロスプレイも可能です。 自己紹介 2022年8月29日プレイ開始 リシス鯖2chで主に活動しています。微課金エンジョイ勢で他クラス多数所有 平日ログイン時間 21:00~24:00 休日前夜は朝5時ぐらいまでプレイ。休日は日中は疎らですが予定がなければ終日ログインしています。 交流は深めて行きたいと思いますので見かけたらお声がけ頂けると嬉しいです。 ギルド「レプリカント」所属 GC、GA参戦中 管理者のX(旧Twitter) Tweets by secci_game TwitterではFlyff Universe以外の内容も発信しています。 よろしければこちらより閲覧フォローしてください。 イベント情報 フリフ20周年記念スペシャルクエスト ラッキーダイスを振ろう! 開始日:2024年8月22日メンテナンス後 終了日:2024年9月24日メンテナンス前 このイベント期間中、イベントタブに特別なイベントボードが表示されます。プレイヤーは全員スタートラインからスタートし、サイコロボタンをクリックするとランダムなサイコロの数字が表示され、出たサイコロの数字に応じてボード上を移動できます。ボード上の各セクションには異なる報酬があり、プレイヤーはサイコロの数字に従って移動した後にセクション報酬を受け取ることができます。 【詳しくは公式のイベントをご覧ください。】 週末イベント ※イベント時間はサーバー時間により異なります。サーバーにより異なる場合があります 【詳しくは公式のイベントをご覧ください。】 期間限定FWCサーバー ⭐ FWC サーバー開始日 2024 年 5 月 16 日 ⭐ FWC サーバー終了日 2024 年 10 月 24 日 【公式】:https //universe.flyff.com/?lang=jp 【公式問い合わせ】:https //galalab.helpshift.com/hc/ja/12-flyff-universe/contact-us/ 【公式最新情報】https //universe.flyff.com/news Flyff Universe公式プロモーション動画 ※当wikiは非公式の攻略wikiです。情報の妥当性や正確性について保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。 ※当wikiを利用することによって生じるいかなる損害も当サイトでは補償致しません。 ※ご利用につきましては自己責任となりますのでご注意ください。 ※また、当wikiおよびwiki管理人はFlyff Universe運営様とは一切関係がありません。wiki管理人にエラーなどについて問い合わせないようお願いします。ゲームに関する問い合わせに関してはこちらから ※文章の著作権は当wikiにあります。内容の複写、転載を禁じます。 ※当wikiで使用している画像、情報等の権利は、Flyff PC および Flyff Legacy の開発元である Gala Lab Corpに帰属します。
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/317.html
突然だけどボクってばもう疲れた。 ボクは入学初日、教室をメッタクソに壊した後物凄い剣幕で怒られた。 泡を吹いて搬送された嶽林の方じゃなくて、確かリンドーとかいう先生に。 髪の毛が真赤で、眉毛がグワシと上がってて、目の中が燃えてて、何より声がデカかった。 「キサマァァァアアアアアア!!!!!!!!!!入学初日に破壊工作とはいいテロリストっぷりじゃないかッッッッ!!!!!!!!!!!」 「すいまッせぇえええええええん!!コイツには後からしつこく言って聞かせますんで!!!!!」 「え、ていうかあのボクはぶっちゃけ被害s「そうかッッッ!!!分かればイイッッッッ!!!!!!!!!!ファハハハハァアアアアアアアア!!!!!!!!!」 「フフ…先生はなかなかイケるクチですね……ははははははははははははははははは!!!!!!!!!」 「おお!!もうこの学園には慣れたようだな!!ファハハハハハハハハァァァアアアア!!!!!!!!」 「ハッハッハハハハハハハハぁあああああああああああああああ!!!!!」 「フハハハハハハハフハフハフハフハフハフハフハフハフハフハ」 「oh my god...」 という具合だった。幼馴染み…もとい、脳臾ちゃんは一体どうなってんだってばよ。いやリンドー先生も十分変だけど。 そしてボクは今家に帰ってきて大絶賛布団の上でMON☆MONとしているワケである。 普通の学園生活は幼馴染みに破壊されたばかりで、次に何をしていいのかどうかすら分からない。 というかそもそも、幼馴染みとは言ったがボクは彼女の事をほぼ知らない。というか覚えていない。 だって幼稚園の頃の話だ。みんな覚えてる?アーユーノウウィング?ボクは覚えてない。 しかし!ここで諦めては男が廃る!今こそこの日々ノ帝天国の思考力を発揮する時!! ………… ………………………………! ………………………………………………………………!! あとから聞いた話だが、その日、ボクは腕組みをしたまま寝ていたという。 「おはようございます!!」 「ん…なんだ、脳臾ちゃんか…………!?」 次の日の朝、目を覚ますとそこには元気にボクの部屋の窓を壊して侵入してきた不審者の姿が! 「母さん警察呼んd「ストォオオオオオオオオオオオオオオオオップ!!!!!!!!」 焦った不審者────もとい、幼馴染み(仮)────脳臾ちゃん渾身の空手チョップを脳天に喰らい、あえなくボクは二度目の眠り(永遠)についた…… ~完~ 「大丈夫かァァ!!」 「また首回転したァアアアアアアアアアアアア!!!!しぬ!!死んじゃうううう!!!!」 グリリンといい音を立てて回転したボクの首(480度)の痛みにより、ボクの意識は永遠の眠りから解き放たれt「よし!学校に行くぞう!!」 「えっ」 「いってらっしゃーい」 母さん、もう少し息子を心配してください──ボクは首を元に戻しながら、そう考えていた。 「…と、そんなわけでボクは今日も学園への道をスタコラ歩いているわけである」 「何をチンタラ歩いているんだ日々ノ帝!早くしないと校門が開いてしまうぞ!!」 「どんだけ一番乗りしたいんだよ!」 「フン!この世の理は即ち速さ!速さに勝るものなどあんまりないッ!!」 「結構あると思うよ、命とかブッフォンッ」 「大丈(ダイジョウ)か!」 「三島由紀夫かよ!…うう、いってて……」 痛い。何かにぶつかったようだ。 全く、いくらボクが余所見してたからって無闇にぶつかるとは感心しませんな。 ボクが痛みをこらえつつ目を擦るとそこには…… 「あ、あの……大丈夫、ですか?」 オーケー、我が世の春が来た。 まさしく天啓、神の思し召しとでも言おうか。 ボクがぶつかったのはどうやら女の子のようである。いきなり不良にぶつかってカツアゲを喰らうどこぞの不幸な少年とは違うのだ! 重要なのは!それよりも!何よりも重要なのはッ!! 「えっと…すみません、どこかお怪我を……?」 「いいや、大丈夫さ…」 これかなり可愛いんじゃありませんかーーーーーーッ!? やったッ!勝ったッ!小説完ッ!ハッピーエンドッ!圧倒的大団円…ッ!! だが。 ボクが心の中でガッツポーズを掲げ── 彼女の名前なぞ尋ねようと近付こうとした── その時──── 「大丈夫かぁああああああああああああああ!!!!!!!」 ──刹那、少女は宙を舞った。 幼馴染みの…脳臾の強烈極まりないアッパーカットが──少女を襲った…… そして…今まさに重力に従い落下してくる少女に向かって! あろうことか! 脳臾は諸手を掲げた!そう!まるで宙高く放り投げたピザの生地をキャッチする熟練のシェフのように! そのまま少女はその手に吸い込まれるように落下!そして脳臾は再び!少女を宙へ放り投げた! 「そっぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいッ!!!!!!!!!!!!!!」 しかも!今度は高い!アッパーカットのみでは如何に常識を投げ捨てた幼馴染み(?)の脳臾とてそこまで常識離れした高度を出す事は叶わなかった! しかし一度キャッチし、もう一度放り投げる事でその高度はまさに超夢幻級!そのまま落下すれば頭蓋が砕け!そうでなくとも内臓が破裂して死に至ることは確実! さらに!脳臾はそれでも飽き足らず追い討ちをかけるように自身も宙へと舞い上がった! 「これで……終わりだぁああああッ!!」 今拳を掲げ!脳臾は少女に渾身の一撃を放たんとする! くそ、ボクはどうする事もできないのか──思わずボクは目を覆った。 なんてことだ。これでボクの輝かしいハッピーエンドは!大団円は!脆くも崩れ去ったのだ!…そう思った。 ──次にボクが目の前の光景を、目撃するまでは。 「なッ…!?バカな!!私に……捉えられなかっただと!?」 「人の恋路を邪魔する族は…迅速に!滅(シ)ね!」 ──ボクの目に映ったものは。 初めて見る憔悴した顔の幼馴染み(?)の脳臾…そして! 明らかにカタギじゃない眼をした──少女の姿だった。 「なっ…え!?ちょ、ちょっと!どういうこと!?」 「貴様は下がっていろ日々ノ帝ぃ!!この女は私が…逆さから読んでもって世之離裏脳臾が!直々に粉砕するッ!!」 「へぇ…?随分な名前をお持ちね。丁度いいわ。ワタシも自己紹介しておきましょう。未来の旦那様にね……。 ワタシは独楽乃目巫神楽(コマノメ ミカグラ)!第893代目、御独楽の巫女よ!…そこの猿も、命が惜しければ覚えておく事ね!」 「ほう…?私を猿呼ばわりとは、いい趣味してるじゃないか小娘がッ!!」 「ちょ、待ってよ!ケンカはやm「うるさぁあああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!」「オウフ」 物理的に口止めされた…! とにかくまずいことになった。脳臾は明らかに正気じゃない(元々かもしれないけど)し、さっきまであんなにおとなしそうで優しそうで温厚そうで可愛かった女の子──巫神楽も、今やどこかのヤクザ顔負けのスゴ味を感じる程のオーラを放っている。 「往くぞぉあ!死に果てろぉぉぉおおおおおおおおお!!」 脳臾の目にも留まらぬ右ストレートが巫神楽を急襲する! 「全く…これだから猿だって言うのよ」「ッ!?」 しかし拳は空振りッ!それどころか脳臾の背後には既に巫神楽の脚が迫っていた! 「とっとと滅(シ)んじまいな!」 「ぐがッ……!」 咄嗟に反応して防御を試みるが、脚での一撃をモロに喰らう脳臾! 常人離れした強さを誇る磐石な両足が、その勢いに負け崩れ横転する! 「ちぃッ……」 「どう?さっさと降参しない?そしてあの子をワタシに渡すのよ」 あの子ってボクの事……じゃないよね!たぶん。 「フザケるなッ!!日々ノ帝は私の…私の大切なッ!幼馴染みだぁあああああああああ!!!!!」 「…あ、そう。まぁいいわ。本人に聞いてみれば分かることだもの。 ねぇ、旦那様?」 そう言って、巫神楽は目をこちらに向けた。 あ、やっぱボクなのね。畜生。帰りたい。家に。あわよくば土に。 「さあ、選んでくださいまし、旦那様!」 「え、ボ、ボクは……」 「……日々ノ帝…………」 どうすればいい。 ボクに選べというのか。 …できない。 「…どちらかを選ぶなんて、そんなのできないっ……!」 「旦那様…!」 「日々ノ帝…」 だって… だってさぁ! どっちも嫌だなんて、言えるわけないじゃん。 言ったら殺される。間違いなく惨殺処刑の後校門前で晒し首打ち首拷問北斗百裂拳だ。 ボクが決意を伝えると、それをどう受け取ったか、巫神楽は穏やかな表情に戻って語り出す。 「…分かりました。では、勝負ですね、世之離裏脳臾。」 「ああ!コマノメナントカ!」 …えっ? 「どちらがより旦那様 に相応しいか」 「どちらがより日々ノ帝に相応しいか」 「勝負よっ!!」 「勝負だッ!!」 かくして、二人はガッシリと握手を交わした。交わした手は友情の証。 たとえ手と手の間から呻き声のような音が聞こえても。たとえ互いの手から血が噴き出していようと。 「さて、それじゃ、旦那様♪」 「日々ノ帝ッ☆」 「えっ…え?」 ガッシリと、二人の少女に腕を掴まれる。 未曾有の危機っ…! 破滅の予兆っ……! ボクもとい俺は、朝っぱらだというのに心をズタボロのゾウキンのようにして、二名の女子に引き摺られて学園への道を進んでいった。 ゲームオーバーだ、天国。 だが残念なことに、ボクのコンティニューは終わらないっ…止まらないっ…らしかった……。
https://w.atwiki.jp/83452/pages/8606.html
戻る ・・・・・・良い。ラブラブすぎ。 -- (通りすがり) 2010-10-30 23 24 05 最高過ぎる -- (名無しさん) 2010-10-30 23 29 34 やっぱり唯梓が至高の組み合わせ -- (名無しactive) 2010-10-30 23 36 20 この二人は俺の頬筋をどうしたいんだよ… -- (名無しさん) 2010-10-31 00 28 37 2828オブザイヤー受賞作 -- (名無しさん) 2010-10-31 01 27 53 oh… なんという至高の百合 おもわずバタバタ寝転げ回ってしまった -- (名無しさん) 2010-10-31 01 50 49 夏目漱石人気だな〜 なんかラストは不安な感じだが。 -- (名無しさん) 2010-10-31 01 57 30 この梓は可愛いけど、なんか…… うざいな。 -- (名無しさん) 2010-10-31 03 16 43 組み合わせより作者の腕 なに書いても、この作者なら至高 -- (名無しさん) 2010-10-31 05 19 10 唯の優しさやあずにゃんの不安や嬉しさがこちらにまで伝わってきてユートピア -- (ななし) 2010-10-31 09 20 03 キャラ崩れているようで、崩れてない。唯梓も作者も至高 -- (名無しさん) 2010-11-03 01 10 49 最近唯梓書いてるのこの人しかいない? -- (名無しさん) 2010-11-03 01 12 11 普通に他の人が書いたと思われる唯梓もある ただここに掲載されないだけで -- (名無しさん) 2010-11-03 02 21 12 ↓↓この作者の唯梓はダキッとエレベーターとこれだけだから勘違いじゃね -- (名無しさん) 2010-11-03 02 23 55 モノローグないほうがよかった -- (名無しさん) 2010-11-04 02 08 49 かかかわいいい。梓が唯のこと好きすぎてどうしていいか分からなくて、唯がそれを包み込んでる感じがたまらん。もっとお話したかったのにやらられた -- (名無しさん) 2010-11-08 00 10 30 唯ちゃんが大学1年、あずにゃんと大人のお付き合い。ラブホテルでお泊りの朝。 梓との来年ためにがんばってる唯ちゃん素敵! -- (ムギビジョン) 2010-12-03 07 32 23 唯梓だからこその可愛い文章にノックアウトされますた ラブラブだな -- (名無しさん) 2010-12-11 23 53 04 気づいたらニヤけてる俺…もう駄目かもしれない。 良いssでした。 -- (名無しさん) 2010-12-12 01 25 12 かっこ唯イケメン唯 -- (名無しさん) 2011-04-02 13 59 42 だだっ子あずにゃんとカッコユイ先輩にノックアウトされたw ほんわかしていいと思うな -- (とある学生の百合信者) 2011-04-03 09 10 09 唯「だって、あと五ヶ月もしたらあずさも卒業じゃん」 梓「うん……それがどうしたの?」 唯「そしたら二人で部屋借りて住もうよ」 -- (名無しさん) 2011-04-03 09 39 05 風呂に入ってるわけじゃないのに、のぼせたわ -- (7時) 2011-04-14 11 58 06 ニヤニヤが止まらんぜww -- (名無しさん) 2011-07-27 17 30 50 唯梓も良いものだなと思える作品でした。この2人、幸せに過ごして欲しい…… -- (ムギュウ) 2011-07-27 21 27 20 鮮やかな光景が浮かんでくる俺はいったい -- (名無しさん) 2011-08-23 00 59 39 素晴らしい -- (名無しさん) 2011-10-16 15 30 35 吐血した -- (名無しさん) 2011-10-16 16 36 24 あぶろばぁ‼ 何じゃこの鼻血が出そうな甘さは‼(笑) -- (あずにゃん) 2011-10-16 23 21 41 王道の中でも良作! -- (名無しさん) 2011-10-16 23 54 29 なにこれやばい -- (名無しさん) 2011-10-17 04 14 11 これは唯梓が苦手な人におすすめ、いい唯梓である -- (名無しさん) 2012-02-29 22 16 52 何度読んでも良すぎてくらくらする -- (名無しさん) 2012-02-29 23 13 36 完成度高いよな -- (名無しさん) 2012-02-29 23 35 51 なにこれやば -- (輸血してくれ) 2012-03-01 04 51 58 やばい!!甘すぎて溶ける!あずにゃんのぼーとしてる感が凄くいい! -- (あずにゃんラブ) 2012-12-31 14 55 41 これは・・・ムギじゃなくても出血多量で倒れるレベルだわ・・・ ましてはムギなら・・・ショック死でしょうな -- (輸血頼む!) 2013-04-12 23 30 52 今更だけどここラブホか? -- (名無しさん) 2013-04-12 23 38 28 可愛い -- (名無しさん) 2014-08-25 11 51 32
https://w.atwiki.jp/imasss/pages/2465.html
【ミリマス】Lily knight「おはよう、Vivid rabbit」 執筆開始日時 2014/12/12 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418363964/ 概要 Vivid rabbit「なにいきなり話しかけてきてるわけ?」 Lily knight「えっ…」 Lily knight「えっ、ちょっちょっと!」 vivid rabbit「なんだいきなり焦り出した 風の戦士」 Lily knight「えっ、本当にどうしたの!?なにか嫌なことでもあったのvivid rabbit」 取り巻き「さんをつけろよ!」 Lily knight「ええっ…」 タグ ^七尾百合子 ^望月杏奈 まとめサイト
https://w.atwiki.jp/sinsedai/pages/144.html
今日にさよなら、明日におはよう。 ◆1GiZbsHFZI 雲は優雅に紺碧の海を泳いで、大地には葦が気持ち良さそうにそよぐ。 懐かしい土の匂いが鼻をくすぐって、琥珀色に輝く太陽は目の奥にじんじんと染みた。 風が吹いた。髪をさらって、肌を掠めて、遥か彼方へ吹き抜ける。心地良かった。 清々しい青空の下、青年は土を蹴り上げ地を駆ける。気温はほどほど、湿度は低い。 踊る肩、切れる息。額の汗は滑り落ち、シャツは生傷の多い肌に張り付く。足は浮かぶ雲の様に軽い。 何処にだって行けそうだった。何だって出来そうだった。 そこには、全てがあった。 「リッド! おっそーい!」 聞こえた声に、青年は足を止めて辺りを見渡す。さして苦労もせず声の主は見つかった。 目が痛くなる様な橙色のラシュアン染めのワンピースは、鬱蒼と茂る木々に映え過ぎるくらいだ。 少女――ファラ=エルステッド――は、背を木に預け、青年をじとりと睨んでいた。 「わ、わりぃ……ちょっと寝ててよ」 そう言って頭をぼりぼりと掻く青年へ向けられるのは疑いの眼差し。 「 ぁ ゃ ι ぃ 」 「いやいや嘘じゃねぇって!」 慌てて諸手をあげてリアクション。そう、嘘ではない。いや……厳密には嘘になるのかもしれないが。 なにせ自分は“起きてはいた”のだから。 いたのだが……不思議な事にこちらでは“寝ていた”らしい。 どうにも腑に落ちないし矛盾してはいるが、頭のリボンがそれを真実と言うのだから仕方がない。 青年は眉間に皺を寄せる。難しい理屈は分からないが、とにかくどうやら“寝ていた間に違う世界で起きていた”らしかった。 「……しっかりしてよね」 「わーってるよ。行こうぜ」 怪訝そうな顔を向ける少女へ適当な返事を投げ、青年は踵を返す。 「皆が来てんだって?」 暫く歩いて、ふと思い出したように青年は尋ねた。 「うん」少女が頷く。「暇が出来たから遊びに来たみたい」 青年は口をへの字に曲げた。“一体今はいつだ?”浮かぶ疑問に応える者はいない。 参ったな、と青年は舌を巻いた。何故って―――――彼には記憶がなかったからだ。 この世界に飛ばされた影響かは判らないが、正確な日時把握が出来ないようだった。 今がいつ、どのタイミングなのかが脳内ではっきりとしなかったのだ。 「……セレスティアからか?」 故に青年は足を進めながら恐る恐る尋ねる。自分の世界のことなのに、分かることは何もない。奇妙な感覚だった。 「? それ以外どこから来るのよ?」 少女は小首を傾げて言った。青年は何かを取り繕う様に頭をぼりぼりと掻く。 「え? いや、あはは! そ、そうだよなぁ。わざわざご苦労なこって。 ……チャットとフォッグも一緒なのか?」 「チャットは一緒だけどフォッグは領主の仕事が忙しいみたいでお留守番だよ」少女は再び首を傾げた。「三日前に手紙きてなかったっけ?」 「あ? あー、ああ! そそそそうだったな! うん、そうだった!!」 訝しげな表情を見て苦笑い。当然、手紙なんて貰った覚えはない。 間違いなかった。此所は確かにエターニアで、インフェリアで……しかし自分の知らない世界だ。 記憶はネレイドを倒した辺りで途切れている。 フォッグがセレスティアの総領主になっているという事は、おそらくそう遠くない未来なのだろう。 「……ちょっと大丈夫? なんだか変だよ」 少女が心配そうな表情でこちらを覗き込む。ごくりと喉が鳴った。 「お、おう! 大丈夫、大丈夫」 「ならいいけど……それよりリッド」 なんだよ、とぶっきらぼうに青年が言った、その瞬間だった。 「そのリボン……何?」 石化する思考。どっと毛穴から噴き出す汗。無邪気な表情から飛ばされたあまりにも素朴な質問に、思わずぎょっとする。 しまったと舌を巻くがもう後の祭りだ。迂闊だった。取るのを忘れていた。 「……。……ああ、これはなぁ」 「“これは”?」 少女は繰り返す。その後一拍、ほんの一拍だけ間を開けて青年は口を開いた。 真っ直ぐな瞳だった。そこには僅かな曇りすらなかった。 「……友達がくれたんだ」 青年は頬を赤らめ微笑む。 「ナニソレ」少女はつられて控えめに笑った。「変なリッド」 「だろ」青年は苦笑を浮かべる。「俺も変だと思う」 ーーーーー嘘を吐くことだって、出来た筈だった。 むしろ変に友達だとか言うくらいなら、イメチェンだとかなんとか言った方が自然だったのかもしれない。 下手に突っ込まれて、いい言い訳が思いつく自信もない。 だけど。だけれど、そうはしなかった。したくなかった。 嘘を吐けばこのリボンごとおもいでも絆も決意も、なにもかもが消えてなくなってしまう気がしたから。 風車が回っていた。小鳥が唄を歌っていた。金色の波が麦畑に満ちていた。 故郷ラシュアンはいつもと変わらずそこにあって、世界はのんびりと欠伸をしながら正常に廻っている。 「よう、リッド。……。 …………………。 ……おい、なんだその戯けたリボンは。王都の仮装パーティにでも行くつもりか?」 当たり前の日常。約束された平和と、呆れるくらいの自由。 いつも通りの皮肉。紺碧色の髪を弄りつつ、肩を竦める友人は相変わらずだった。 青年はほっと胸を撫で下ろす。そうだ。どうしようもないくらいに、ここが自分の居る世界なのだ。 「うっせーな。どうせ似合ってねーよ」 青年が嬉しそうに頬を膨らませると、学士はハン、と鼻で嗤い後ろの少女を一瞥する。 「聞いたかメルディ。まったくこいつときたらとことん馬鹿だ。 似合ってない自覚があるなら外せばいいだけの話だろう? 違うか?」 「なんだとお?」 額に血管を浮かべ、青年は学士へと足を踏み出す。 前言撤回。誰がほっとなんかするもんか。まったくもってこいつはいつも挑発が過ぎる。 「なんだ?」学士が言って、 足を踏み出した。「暴力で訴える気か? これだから野蛮な猟師は困る」 「お、おま。猟師を馬鹿にすると肉に祟られるぜ、キール!」 「ふん、馬鹿馬鹿しいな。祟りという迷信に近い概念が胡散臭くていかにも田舎らしい。 よし。まずお前には霊魂について話す必要があるようだな」 学士は大きく息を吸うと、人差し指を立てて捲し立てる。 「いいか、そもそもレオノア百科全書第三巻生命学第六十三項よると霊魂というやつはだな、生命体の約三分の二を構成する水晶霊が、 宿主である肉体が失われた事により空間に拡散せねばならない時、ある特異条件下によって拡散せず収束結合する現象によって生まれるものとされている」 「お、おい……ややややめろよ霊とか怖ぇって!!」 青年は怯えた声で叫ぶ。学士はそれを馬鹿にするかの様に溜息を吐いた。 「怖いものか。今からそれを説明するんだ」 「ワイール! キールがお話、面白いけどちょっと長いな。短くお願い!」 げ、と眉を顰める青年。どうやら乗り切らしい晶霊技師を尻目に視線だけで後ろの少女へ助けを求めるが、首をふって肩を竦めるだけだ。 諦めろ、ということらしい。そんな殺生な……。 「いや面白かねぇしだいぶ長ぇよ……なぁ、怖い話はもうやめようぜ?」 「黙って聞け。ここから先は僕の持論だが、これにはファキュラ説とそれに伴うカロリック流動が密接な関係にあると言えるだろう。 仮にファキュラ説が正しく、晶霊群に意思があるとするならば、肉体を構成するそれらは当然宿主に依存する。自然物とは逆にな。 さてここで問題だ。肉体的な死により宿主を無くした水晶霊群はどうなると思う?」 「んー、消えちゃうか?」 晶霊技師が小首を傾げて言った。学士は頷く。 「うん、まぁ正解に近いが少し違うな。答えは拡散だ。水晶霊群は肉体から乖離し大気を漂う。 しかしファキュラ説が正しいならば、そこにイレギュラーが発生する。 宿主の記憶を持つ晶霊群が元の形を取ろうと意識的に集合し、晶霊圧を増加させるケースがあるからだ。カロリック流動がこれには関係している。 仮に肉体の晶霊の群ないしは単体側に意思があるならば、僕達の意思が否定される事になりかねないから、この論は兼ね正しいと言っていい」 「ねぇメルディ、チャットは?」 「船でお留守番だよ。整備とか言ってたな」 「そっか。後でチャットも呼んで皆でご飯食べよ?」 「ワイール! ファラがお料理久しぶり!」 「オムレツ! ファラ、俺オムレツ食いてぇよ!」 「しかしながら、霊体は半透明で消える事や乗り移る事も可能だと言うし、だいいち目視可能というのは肉体がない前提からいくと不可解だ。 そこでカロリック流動を持ち出すのだが、その前に第一条件として水晶霊と光晶霊は相性が良い。水晶霊は光晶霊が生む屈折、反射、吸収、全反射といった反応を全てやってのけるからだ。 さて、カロリック流動はグロビュール歪曲にも関係するのは周知の事実だが、霊体によくある大昔の人物という設定や、半透明、消失などといった能力はこれで説明がつく事くらいはもう分かるな? そう、グロビュール歪曲による長期スパンでの特定場においての晶霊圧力場の発生と、カロリック流動と水晶霊群の反応による蜃気楼の発生だ。 分かるかリッド?」 「いや……“そう”とか自信満々に言われても全然わかんねぇよ」 さっぱりだね、と溜息を吐く青年。学士は眉を潜めたが、直ぐにこほんと咳払いを入れて話を続けた。 「馬鹿は置いといてーーー「おい、バカって言ったかバカって!?」ーーー卵と鶏どちらが先かという話はここでは捨て置くが、 つまるところ霊魂というものは残留思念体に似たものだと考えられ、晶霊学で説明がついてしまうんだ。 これを元に考えれば、モンスターの肉体に水晶霊が含まれていない事や、 水晶霊が飽和して霧状になり現界しているいざないの密林などにおいて、霊魂、ひいては幽霊の類の目撃例が数多くあるのも頷ける。 即ちファキュラ説の立証は晶霊学の発展のみならず生態学やオカルト現象の解明においても欠いてはならない課題であり、一刻も早く取り組む必要があるのだが、 アカデミーや王立天文学会の頭が固いプライドだらけの老害連中は、自分達が支持してきた今までの常識が覆される事に強い反感を持っているため、 ドカターク効果の検証やオリナシ方程式の虚数解においても未だにーーー……」 目尻に涙を浮かべて大きな欠伸をする青年と、腕を組んで偉そうにふんぞり返る学士。 その間へ、半ば呆れたように少女が割って入った。 「ストップスト~ップ! そこまでだよ二人共! 久し振りの再会なんだからそのへんにしておきなさい!」 「いや二人ともって……明らかにキールが悪いだろ」 「つべこべ言わないの!」 ぼそりと零れた愚痴にぴしゃりと激が飛ばされ、へいへいと青年は溜息を吐く。 そこへ追い打ちをかけるように、 「そうだ落ち着け、情けないぞリッド」 と煽る声。青年はむっとして学士を睨みつける。 「……てめぇなぁ」 「こら! キールもいちいちつっかからないの!」 「そうだよぅ。リッドが可哀相。キールが意地悪な!」 「わ、悪かったよ……」 手が出る前に咎める少女達は流石というべきか。青年はしょぼくれる学士を一瞥し、やれやれと首の骨を鳴らした。 「……ったく。どいつもこいつも似合ってねー似合ってねーって言いやがって」 学士に説教する少女から離れ、青年は頭のリボンを弄りながら一人呟いた。似合ってないことくらい、分かっているのだ。 暁美ほむら。どちらでも良かったが、今考えてみれば彼女の一言が十中八九世辞だった事くらい、馬鹿な自分でも想像がつく。 でも。 「ワイール! そんな事ないよリッド! そのリボン、メルディがとっても好き!」 ……でも、それがどうした。不満も怒りも、何もかもを吹き飛ばす様なとびっきりの笑顔でそう言ってくれる仲間が、一人だけ此処に居た。 「めるでぃ」 無意識だった。口をついて出た彼女の名は呆れるくらい間抜けな音で、自分でも吹き出してしまいそうだった。 「はいな」彼女はそんな気持ちを知ってか知らずか、儚げに笑って青年の手を取った。「メルディは此処に居るよ」 青年の掌に、柔らかな肉の感触と共に熱が染み込む。彼女の手はほんのり暖かかった。 当たり前だった。だって、彼女は“生”きているのだから。血潮が流れているのだから。この世界に立っているのだから。 「メルディ」青年は繰り返し、彼女の手を強く握り返す。声は情けなく震えていた。「ごめん、ごめんな……ごめん」 彼女を見ないようにしていた。何処か喋りかけられないように祈ってしまう自分がいた。 こちらで起きてから、青年は自分なりに考えたのだ。ノアを倒す為にワープさせられた人数は四人。うち二人がプログラムである自分と暁美ほむら。 世界が崩れる瞬間、元のマスターデータに返されたのは自分だけ。メルディやクレス=アルベインは居なかった。 そして元のマスターデータに触れる事が出来たのは暁美ほむらただ一人。 つまりーーーあの世界のメルディは、もしかしなくとも。 だから、罪悪感が拭えなかった。あっちではきっと救えなかったから。 誰かを守る為に極光術を覚えたのに、おそらくそれすら嘲笑して世界は彼女を奪っていった。そしてあの時の自分はそれすら知らなかった。 それがどうしても喉に引っかかって、後ろ髪を引っ張って、しようがなかった。 結果的に彼女は生きている。それでよかったのだけれど、良いわけがなかった。 許しを乞いたいわけじゃない。これはけじめだった。もう二度と大切な誰かを喪ってしまわないよう、自分に課す戒めの楔だった。 「なんで謝るか?」しかし、彼女は言うのだ。「メルディはリッドにいっぱいいっぱい、ありがとう言いたいよ」 「でも、俺は」 「リッド」 彼女の手が両頬に確りと添えられる。情けなく歪んだ顔が彼女の双眸に映っていた。 「そのリボンーーーーーーーーーーーとっても似合ってるな」 はっとした。熱い何かが青年の胸にこみ上げる。全身が震えるようだった。 リフレインする記憶。フラッシュバックする台詞。ふと頭に過ぎる奇跡に近い可能性。 その言葉をトリガーにして、雪崩の様に全てが押し寄せた。 「メルディ、お前、まさか」 騒がしく高鳴る心音。焦点の合わぬ瞳。青年の言葉は赤子の様に辿々しかった。 目の前の彼女は、やはり笑って頷く。 「うん。全部、リッドが“おもいで”な」 「へへ……なんだよ、ったく」 青年は気の抜けた表情で嬉しそうにそう呟くと、小さく鼻を啜った。 「アリガト、リッド。この世界を守ってくれて」 少女は青年の顔から両手を離すと、くるりと回った。髪が微風に揺れて、桃色のワンピースががふわりとバルーンを作る。 「メルディ、幸せだよ」 嗚呼、なんてことはなかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーその一言で、充分過ぎたのだ。 「おいお前ら、こそこそと何の話だ?」 無粋な奴の無粋な一言にあっと言う間に現実に戻され、青年は苦笑した。ぶちこわしだっつーの。 「知らない! 意地悪キールには内緒だよう」 「うぐ。な、なんだよそれ……」 あかんべえをする晶霊技師にあからさまに動揺する学士を見て、青年は思わず吹き出した。 嗚呼、成る程これは確かにぶちこわしだ。でもーーーーーーそれも悪くないと思うのは、なんでだろう。 「お? なんだキール傷付いたのかよ?」 「だ、黙れ!」 「ちょっと二人共!」 「キール走ったらあぶないよぅ。また今朝みたいにこけちゃうよ」 「おい聞いたかファラ。今朝みたいに、だってよ。ぷぷぷ」 「よ、余計な事は言うなお前! こいつが調子に乗rだぶべっ」 「「「……あ」」」 それから船の整備に精を出す海賊と合流して、青年達は少女の家で沢山話した。 学士の転け方があんまりだったとか、セレスティアは今異常気象が多発して大変だとか、宇宙が綺麗だとかなんだとか。 暫くして、海賊の少女が今日インフェリアに来た理由を青年達に告げた。近況報告ともう一つ、歓喜の町ジイニへ皆で行くからなのだと。 「しかしなんでまたジイニなんだ?」 青年が肉を頬張りながら尋ねる。 わざわざジイニへ行くだなんてそんな物好き、ギャンブラーくらいしかいないと思っていたからだ。 どうやらそう思っていたのは青年だけではなかったらしく、学士がうんざりした顔でパンヤ麺から箸を離した。 「まったくだよ。でもチャットが行きたいと聞かなくてな……。 一人で行けと言ったんだが、なんでもジイニでは12才以下は同伴が要るらしいんだ。 で、どうせ遊ぶならリッド達も誘うとメルディとチャットが言い出した」 「でもちゃんと公平にするよう多数決にしたじゃないですか」 「多数決!」海賊の茶々に学士が裏返った声を張り上げた。「多数決だって!?」 何が公平なもんかと眉間に皺を寄せると、学士は続けた。 「あれを多数決と言おうもんなら戦争が起きるね。いいかチャット、ああいう結果が分かりきってるのは“数の暴力”と言うんだ。 当然の様に僕が負ける。まったくもって始末が悪い茶番だ」 肩を竦ませ学士が悪態を吐く横で、けれども海賊はにかりと笑った。 「いいじゃないですか。キールさんもなんだかんだで皆さんと会いたがってましたよね?」 「……ほぉ~?」 「なぁにキール、私達にそんなに会いたかったの?」 「そうだよぅ。キールが素直じゃないな!」 「ば、ばばっ、馬鹿を言えっ。だだ誰がお前らなんかにああああ会いたいもんかっ」 嫌らしい笑みを浮かべた青年達を尻目に、学士は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、咳払いを一つ。 「ごほん。ま、まぁそれは置いといてだ。 ティンシアからジイニへ、サイグローグという人物からあるアーケードゲームが輸出されたそうなんだ。それが目当てだよ。 世界で初だから見たいそうだ。サーバーという新技術を使った珍しいシステムらしくてな、プログラムが気になるんだと」 へぇ、と少女が呟くと、隣の海賊が銀色のフォークをくるくると回しながら口を開いた。 「そのアーケードゲームの開発元はアークシステムワークスと言うのですが、ぱっと出の企業で誰も知らないっていうのも気になるんです。 信じられますか? ティンシアから輸出されたくせに、街の裏の顔でもあるフォッグさんやアイラさんも知らなかったんですよ!? 一体誰が資金援助して、誰があそこまで高度なものを完成させたのか……下手をすれば軍事用にも使えるとの噂ですし」 ぐんじよう、と少女は繰り返す。それが本当ならぞっとしない話だ。 「どうでもいいけどよ、あぁけぇど……なんだって?」 青年が皿の上のオムレツをかっさらいながら尋ねる。学士はやれやれとかぶりを振った。 「ふん。“アーケードゲーム”だ。世界を旅した癖にそんな事も知らないのか? この程度セレスティアでは常識だぞ。雷晶霊に謝れ」 「お前はいちいち嫌味な奴だなぁ……ゲームくらい知ってら。ウィスみたいなもんだろ?」 覚束ない動きで肉を切り分けながら青年が言ったが、学士は呆れた表情で黙り込む。 確かにウィスはゲームだが、カードゲームであってアーケードゲームではない。 「……。聞いたかメルディ。こいつジイニのカジノに行った事があるくせに、ゲームのなんたるかを何も理解してないぞ」 「メルディもダンスしか覚えてないよ?」 「俺はインドアな遊びは苦手なんだよ」 青年がナイフを片手に肩を竦ませた。学士はふぅと息を吐いて箸を置くと、ナプキンで丁寧に口を拭き水を飲んだ。 その動作が何を意味するのか青年は理解すると、逃げるように隣の少女へ視線を配る。 「おいおい、こりゃぁまた始まるぜファラ」 「知らない。リッドが悪いんだもん」 「勘弁してくれよ……」 しかし少女はどこ吹く風。すまし顏でソディを自分の料理へ振りかける。 「いいかリッド。アーケードゲームというのはだな、雷晶霊の力を地晶霊を利用して制作された基盤に流す事で起きる反応を利用した、業務用ゲーム機器の事だ。 そもそもここで言う“ゲーム機器”という単語が何かというのを一から説明すると、セレスティアの文化と歴史に言及しなければならなくなる」 「いや、もういいからメシ食おうぜ……」 「いいや駄目だ。そう言って逃げるのはお前の十八番だからな。空腹など後で満たせばいいだろう? ……そうだな、先ずはお前にも理解できる様にティンシアを中心にして起きた産業革命と、ジイニがその特異な文化を守る為に独自に築いた交易ルートについて話そう。 そもそも何故ティンシアが職人の街と呼ばれ栄えているかだが、これは意外にも歴史は新しく、自由軍シルエシカ発足の際に多額のーーー……」 「ワイール! ゲームゲーム! みんなでやったらきっと楽しい!」 「きっとそうでしょうね!」 「気分乗らねぇなぁ……」 「大丈夫! イケるイケる!」 胸元のペットを抱きながら晶霊技師の少女がハミングすると、それに合わせて胸元で小動物、クィッキーも踊り出す。 青い毛並みが震えると海賊の少女は泣き出して、青年はそれを好機と海賊の皿からオムレツを盗んだ。 話を聞け、と怒る学士に行儀の悪い青年を怒る少女。夜のラシュアンに響く歌い声と泣き声と、罵声と食器の音。 宴はいつまでも続いて、夢のような時間が流れてゆく。窓の外には満点の星、台所からはシチューの匂い。 遠く森から梟が鳴いた。少し冷たい風が吹いて、暖炉の炎はぱちりと揺れる。 桃色のリボンが揺れて、遠く遠く、笑い声がこだまする。 それでいい。それが青年の守りたかった景色なのだから。 何処にだって行けそうだった。何だって出来そうだった。そこには全てがあった。 18歳の俺達には世界は広すぎて、けれど世界の何もかもを知ってしまった。 ーーーそう思っていた。 そしてそれは作られたものなのだと彼女は言った。でもそれが真実だろうがそうでなかろうが、何も変わらない。 目の前の笑顔は、空は、風は、光は……嘘じゃないから。 俺達は此処で生きて、生きて、生き続ける。明日は誰にも分からない。未来は誰にも見えやしない。だから、生きてゆく。 あの地平線の向こうには、何がある? 海の底は? 宇宙の向こうは? 答えはきっと、セイファートにだって分からない。 俺達は世界を知った気になっていただけで、まだ何も知らないちっぽけな人だった。 地に足を立て、息を吸ってーーーーーーーーー俺達はこの世界を歩いてゆく。 【リッド・ハーシェル 生還】 ┌┤´д`├┐ オレハモウネル <前 次> [[]]
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/176.html
「あの若林子乃って子が超ナウいわ…」 某月某日、某等部某年某組の某子ちゃんが不意に放った発言がそれだった。 (若林…俺と同じ姓だな) どんな子なんだろう…少し気になったが、まぁ…いいか。 俺はいつものように夢幻学園には珍しく、鬱陶しいぐらい真面目な担任の超退屈な授業を寝て過ごし… 俺はいつものように放課後、寝起きで少々覚束ない足をフラフラフラックスさせながら帰路に… 「おい貴様」 つけなかった… 振り返るとそこには俺より少し背の低い…恐らく中等部の 「…えーっと、貴様って…俺のこと?君誰?」 とりあえず…いきなり初対面で年上を貴様呼ばわりしたこの不遜な厨房に優しく微笑みながら話し返す俺超絶紳士 「貴様の名前は若林弘(ヒロム)だな?」 「え?そうだけど…なんで知ってr」 「ぶち殺す」 厨房が手を翳すと、突如何も無い虚空状態の彼の手のひらの上に、何の前触れもなく出現した… その名も 大鎌【タイタンサイズ】ッ!! 「往生せいやァァ!!」 「うわぁああああ!!」 俺は当然の如く踵を返し全力で走った!! 喧嘩を売ってきた厨房を前に全力逃走ってすごい情けない!! が、逃げるというのは別に敗北するわけじゃあない!! ここは弱肉強食の世界!敗北とは即ち死のことだ!! 「逃げるが勝ちだ…!」 という全力逃避をしながらその行為を全力で正当化した俺はもっと褒められるべk 「逃げられると思っているのかァァァ!!」 しかし現実は非情だった!! ガスンッ!!という謎の擬音と共に俺の目の前の地面を抉り突き刺さる大鎌… 終わる世界… 「どうやらここまでのようだなぁ…若林ィ…」 こ、こうなったら… 「ちょ、ちょっと待てぇぇぇ!!」 「あん?」 こうなったら全力で言い訳するッ! 「俺が何をしたっていうんだッ!お前とは初対面の筈だがッ!?」 「……俺はよォ、ここに来る前『若林』に殺されてんだ…」 「!? でも今生きてるじゃん!」 「…何故、俺『達』が生きているかは知らねぇが… 俺自身が殺されただけなら…自分の弱さが悪い!…ただそれだけの感想に尽きるだろう…! だがなァァァ!!俺の仲間も…友達も!全員そいつの無慈悲な暴力によって殺されたんだッ!!」 「いや待て…それと俺が何故くっ付くのか…」 「悪しき血は根絶やしにしなけりゃいけねぇよなァァァァ!!! つーわけで死ぬんだ若林ッッ!!オラァ!!」 「ぬ、ぬわーー!」 迫る大鎌! そんな馬鹿な!ジョルノだって邪悪の化身の息子なのに黄金の精神持ってただろちきしょー つーかそもそもそんな人でなしは親じゃねぇ!言いがかりだ! あ…いかん…走馬灯が… 「 や め ろ ば か ! 」 だが俺の色々と程々だった人生の走馬灯は強制中断した… 「宮城ォォ!!何故止めるッ!?」 宮城(みやぎじゃなくてみやじょう)とか言う人が俺の目の前に立つことで鎌を止めさせたからである!! 理由は不明!だが感謝ッ! 「ありがとう宮城さん!俺…明日から生きてみるよ!」 「待て!第二の若林!」 「第二!?」 「お前には恐らく…その姓を授かったことさえも後悔するほど、これからもこのような難関が訪れるだろう… まぁなんだ…頑張れ!」 「なんでだチキショー!!」 ……… 「ふぅ……虎菊…お前の馬鹿さ加減にはうんざりさせられるぞ!」 「…何故だ!?俺は…俺達の全てを奪っていきやがった若林をぶち殺そうと!」 「………あの若林は見るからに関係ないだろ!!いい加減にしろ!!」 「ぐわーーー!!」 鎌男は吹っ飛んだ! 「……若林の血を受け継いだ者は若林子乃という少女だけ… くくっ、面白い因果関係だ……ちょっとばかし理不尽すぎるか?」 などと格好つけながら宮城は言ったが、実はただの知ったかである。騙されてはいけない。 ……… 「はぁ……はぁ……ふぅ……ふぅ……」 走りすぎた…か…? しかし…ここまでくればもう大丈夫だろう… だって下水道だぜ…?流石に臭いとかキモいとかいう理由で追ってこないだろ… 俺の命は…保証されたというわけだ…! 「いやどこが保証されてんだよ…」 「ねぇ」 ビクゥー!!いきなり背後から話しかけられるのがトラウマになりそうだ… というか脳内のボケにノリツッコミとか恥ずかしすぎる… というか…後ろの声って… 「ど、どなたですか…?あ…俺は若林じゃないよ…今日から小林だよ」 今日から小林です。 「違うよ…私は…あなたの敵じゃない。」 ん…? 妙に心地良い声質だ…なんだろうこの感じ… 「あなたと私、変だけどちょっと似てるから…話しかけてみただけ。」 振り返るとそこにいたのは白いワンピース一枚しか着てない幼女が体育座りしてました。 なんか電波なこと口走ってるし…。 先に言っておく!アグネス…俺は悪くないぞ!これは不可抗力だ! 「ねぇ、怖がらずに話そうよ。」 「ここここ怖くないわ警察なんぞ!」 「警察…?何か悪いことしたの?」 ハッ…いかん落ち着け…電波口走ってるのは俺じゃないか 「滅相もない!…時に君は何故こんなくっさい所で体育座りしてんだ?」 華麗に話題変換だ! 「……私が、悪い子…だからかな。」 「……うん?」 幼女が俯いてそう言った。 俺が一体何をしたと言うのだと言わざるを得なくなるほど空気が暗くなった気がした… そしてしばしの沈黙… なんで幼女と二人きりなのにこんな重苦しい空気になるんだ… 単に下水道が暗くて臭いという理由なのか?そうだよな… とかなんとか思っていると、 幼女がなんだか申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。 「あの…私がどうしてここにいるのか、気になるでしょ?」 「え?あぁ…うん。」 まぁなんとなく気になるからな…そこは否定しないさ そして…幼女は何か言いづらそうな顔で間をおくと、やがてこう言った… 「実は私…h「チュミミィィィン…」…え?」 しかし幼女の声は全く別の方角から飛んできた大声によって遮られる!! 「幼女をこんな所で襲う暴漢か…胸が熱くなるな…」 そこにいたのは… 「我が名はクレイッ!!この世に存在するありとあらゆる性犯罪者とその予備軍を抹殺するべく裏で暗躍する…その名もミス・ロリータ! 貴様は先程から性犯罪者臭いので後をつけていたが…姓が若林なのか!!あの子乃の兄だなさては!」 二回名乗った!?つーか子乃って誰だ!!畜生俺は一人っ子だ!! 「そして貴様その幼女にナニをする積もりだったこのロリペド野郎がァァー!」 「ちょ…誤解だよ!えーっと…ミス・ロリータさん!」 「ミ、ミスロリータだとォ!!?なんて卑猥な奴だ!!」 「アレ!?」 「今すぐ殺す!地獄でナニでもしてろ!!」 「待って!!」 「!?」 「幼女!?」 「この人は悪くない…悪いのは私よ!」 「…どういうことだキバヤシ!?」 「キバヤシ!?俺…若林でも小林でもなくキバヤシ!?」 「私は…えーと、とにかく私が悪いのよ!」 「おのれ…あのロリロリな子乃ちゃんの兄がこんないたいけな幼女をマインドコントロールで操って好き勝手な発言をさせるとは… 幻滅もんだぜ!!!」 「どうしてそうなるの!?」 ダメだ!!この女…まるで聞き分けがない! 糞ッ!若林とか言う奴どんだけとんでもないんだよ!噂広すぎだろ!! 「ごめんね…俺逃げなきゃ殺されるかもわからん!幼女ちゃん…また会おうね」 「う、うん…私もなんかごめん…」 「マインドコントロールを使用して幼女に同意の返事をさせるなこの自演乙野郎!! ステファニィィィイイイ!!このペド野郎やっちゃってぇぇぇ!!」 「それじゃ!!!」 ギャギィ!メギョギョ!! グギイギイギギギ!! ドギャギャガガガ!! メゴスメゴス!! ズバッショアアアア!! フゥ…なんとか下水道を脱出した! マンホールから出てくる一般人というのはさぞかしシュールなものだろう。 え?その時点で一般人じゃない?はは、まさか 「いやはやそれにしてもなんて厄日だ…もうこれは厄日とかいうレベルではない。…………凄い厄日だ!」 「オッス、そこいくお兄さん。ねぇお兄さん、姓が若林って言うらしいね!ちょっと憂さ晴らしも兼ねて実験体になってみない?」 「!?」 また背後から話しかけられた!! こうなったら… 「振り返らず逃げる!!」 「あ!待て!ちょっと!」 「追ってくるなァァァ!!」 どいつもこいつも若林若林若林!! 俺の平穏は一体どこへ行っちまったんだッ!? 「逃げるなっつってんだろ!!」 という大声と共に頭に襲いかかる激痛!! どうやら殴打されたらしい…さよなら俺の人生… 「やぁおはよう。気分はどうだい?」 目が覚めたらそこは手術室だった!! 「……絶不調です。」 オッサンに問われた気分云々の 「そーかそーか…じゃあ今から手術を開始する。」 「え!?何!?手術って何!?説明もなし!!?」 「まぁまぁ。」 「まぁまぁじゃねぇよ!」 「痛みは来ないようにしてあるからダイジョブだぜ!」 「ダイジョブとかきもいんだよオッサン!メスを近づけるな…ハッ!?体が全く動かん!」 「わしが時を止めた…」 「やめろォォオオオオオオオ!!!」 ────こうして俺は 「よーし手術成功!28世紀の技術で作ったから全てが完璧だ!というわけでお前は今日から 若林弘子として 生きていくんだな! ざまぁみろ!」 ────死んだ。 「誰だ?この美少女」 俺は鏡を見て思った… なんてかわいいんだ!! これは本当に俺なのか!? 「ブサイクじゃあ人生に絶望して自殺しちゃうかも知れないだろ? 俺は慈悲深いからな…あの邪悪の化身、若林の血族と言えど… 自分がそんな美少女なら危険を顧みず殺人行為に耽るような真似はしないだろ? 俺の数多くの同志たちが奴に殺されていったんだ…」 「(殺人行為に耽るような奴だったのか若林は…)」 俺はまだ見ぬ同姓で同性になってしまった若林子乃を逆恨みした。 「あれは夏に入ってすぐの日のことだった…」 「なんか始まったぞ…」 ~~ ──俺達は街中の綺麗な女性をナンパと見せかけて解剖やら何やらをしまくる犯罪組織でな 「お!そこいくお姉さん!かわいいね!ちょっと解剖させてよ!」 ──と、ダイナミックな勧誘をした仲間が逆に解剖されちまったというわけよ…… ~~ 「辛かった…あの時は…」 「それ完全にあんたらが悪くね?」 「俺達が悪いとかそんなん知るか!俺は元男のオカマ野郎に興味はねぇからさっさと還れ!土とかに!」 「酷い!つーか完全に女になったんじゃなかったの!?」 「完全に女だけど、元が男だと考えると身の毛がよだつ。」 「…………だったらなんで女にしたんだ?」 「うーん…なんとなく?」 「…………。」スッ この瞬間、若林弘改め…若林弘子は初めて人を殺した。 この手を、血で初めて汚したのだ…。 整形は、人の形だけではなく人の心をも変えるらしい。 ──その日、裏で密かに息づいていた『女をナンパと見せかけ拉致し猟奇殺人をする悪趣味な組織』の息の根が止まった。 彼は、これが起点となり、最早『自分ではなくなった』この美少女の顔で、『殺人行為』に耽るようになったという。 元々、彼は…姓が『若林』なだけで『例のアレ』とは無関係の一般人だった。 しかしそんな彼が…例の『若林』に近づくことに、どこか運命的な物を感じるのは…きっと気のせいではないだろう。 そう…これは狂った運命が織り成した…一つの…たった一つの悲劇に過ぎないのだ…。 スーパーハッピーエンド