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学研のおばちゃん 5 8 3 2 1 1 3 2 1 5 6 6 6 5 5 5 6 5 4 3 5 ドンキホーテ 4 4 4 5 5 4 4 4 6 5 4 5 5 5 5 2 2 2 2 3 3 3 4 5 6 4 4 4 5 5 4 4 4 6 5 4 5 5 5 5 2 2 2 2 3 3 3 4 5 4
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「ドラゴンクエスト」より、竜王を召喚 使い魔の中の使い魔-01 使い魔の中の使い魔-02
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そもそも康一が戦いの場に戻ってきたときには、もう手遅れだったのだ。 距離は遠く、敵はすでに必殺の体勢を整えていた。 ガンダールブの俊足を持ってしても手が届かないほどに。 そう、ガンダールブなら間に合わなかった。 しかし康一はガンダールブである前に、スタンド使いだった! ズドォーン!!! 巨大な岩が打ちつけられる音がした。 死んだと思った。 でも、いつまで立っても衝撃が訪れないので、ルイズは恐る恐る目を開けた。 目の前にゴーレムの拳があった。 しかし、その半ばまでが地面にめり込み、動きを止めていた。 「射程距離5mニ到達シマシタ!S.H.I.T!!」 そのそばに浮かぶ、白い人影。 「あ、危ないところだった・・・!!ギリッギリ間に合ったよ!!」 そして拳とルイズの間に阻むように立つ康一の背中。 康一は振り向いて笑った。 「大丈夫だった?」 我慢していたものが溢れた。 怖くて、安心して、訳の分からないうちに気がつくと涙がこぼれていた。。 「こ・・・怖かったわよ・・・!早く戻ってきなさいよ!バカっ!!」 「ご、ごめん。」 康一は女の子の涙に狼狽えながらも謝った。 ゴーレムは急に重くなり、動かなくなった右腕を持ち上げようとして、逆にバランスを崩して膝をついた。 至近距離なので砂埃が舞い、二人は目を細めた。 「でも、そのへんはこいつを倒してからだよね。」 「・・・大丈夫なわけ?」 ルイズはずずっと鼻をすすった。 「うん。あいつを倒す方法を思いついたんだ。だから・・・」 ゴーレムは右腕を持ち上げるのをあきらめ、無事な左腕を振りあげる。 「ちょっとごめんよ!」 「え?きゃぁ!!」 康一はデルフリンガーを逆手に構え直し、ルイズを横抱えにした。 いわゆる「お姫様だっこ」というやつである。 降りおろされる左腕を横っ飛びに回避する。そして動かないままの右腕を駆け上がった! ルイズは慌てて康一の首にしがみつく。 康一はゴーレムの肩口から飛び上がり、ゴーレムの頭のてっぺんに着地した。ルイズを降ろす。 「な、なんでこんなところに来ちゃうのよ!」 ルイズが悲鳴をあげる。 「5m以上離レマシタ。3FREEZE、解除シマス。」 ACT3が忠告する。 自由になった土の巨人が立ち上がる。 康一はデルフリンガーをゴーレムの頭に突き立て、もう片方の手をルイズの腰に回し、振り落とされないように踏ん張る。 ゴーレムが立ち上がった。もっとも高い、頭のてっぺんは20m近い。 「こ、これ危ないんじゃないの?こんな高いところにいたら逃げられないじゃない!」 下を見るのも恐ろしいほどの高度。逃げ場はない。 「大丈夫だよ。この、『背筋が伸びた状態』がいいんじゃあないか。」 康一に動じる様子はない。 「君の使い魔を信じてよ。」 もうルイズは康一に全部任せることにした。 「もう・・・知らないからね!!」 ルイズは顔を押しつけるようにして、康一にいっそう強くしがみついた。 ゴーレムが頭の上の康一たちをとらえようと両手を伸ばす。 康一は高らかに叫んだ。 「たしかに逃げ場はない!でもチェックメイトだ!!ACT3!!」 「3FREEZE!!!」 ACT3は、康一が乗っている、ゴーレムの頭部の重量を激増させた。 ガンダールブの力を加えられたACT3による、0距離、最大出力の3FREEZE!! ズウゥゥゥン!!!! 抗すべくもない。 瞬きする間もなく、数百トンの重量を持たされた頭部は、それを支えるすべての部位を圧壊し、押しつぶした。 その衝撃で地面が陥没し、クレーターを形成する。 砂埃が、辺縁で巻き上がる。しかし康一とルイズのいる中心部では埃一つたっていない。 「すごい・・・・」 あっけにとられるルイズ。 康一が少し恥ずかしげに鼻の下をこする。 「へへ、だからいったでしょ。君の使い魔を信じてって。」 ゴーレムを倒した二人が、クレーターから出てくると、ミス・ロングビルが駆け寄ってきた。 「ミス・ヴァリエール。コーイチさん。大丈夫でしたか!?」 「ええ、ぼくたちは何とも。ミス・ロングビルこそ無事だったんですね!」 「はい。フーケらしき男に当て身を受け、気を失っていましたが・・・。」 ミス・ロングビルは首元を撫でた。 上空からシルフィードも降りてきた。 飛び降りてきたキュルケが康一に飛びついた。 「すごいじゃないのダーリン!あのゴーレムを倒しちゃうなんて!!」 顔を離していたずらっぽく笑う。 「でも、あの『能力』のことは今度しっかりと教えてもらうわよ。」 タバサも後を追って降りて来た。 「油断は禁物。術者が近くにいるはず。」 一行は周りを見回した。ゴーレムが動きを止め、森からは木々のざわめきや鳥の声以外の何も聞こえない。 「そういえば、『弓と矢』は?」 ミス・ロングビルが尋ねる。 「あ、それならここに。」 康一はゴーレムの土の中から掘り出した矢を取り出してみせた。足下にある弓も拾って、ロングビルに渡す。 「ああ、よかった・・・。」 ほっとするロングビルに、杖を拾ったルイズが言う。 「でも、その『弓と矢』は何の魔力もないと思うわ。ゴーレムに撃っても全然効果がなかったもの。」 「いや・・・」 康一は矢の不思議な文様を見ながら言う。 「それはそうやって使うものじゃないんだ。」 「え!?」 「コーイチさん。この『弓と矢』の使い方を知っているのですか!?」 康一は頷いた。 「ええ。まさかとは思っていました。この世界にあの『弓と矢』があるわけがないと・・・。」 「でも、間違いありません。それはぼくの知るあの『弓と矢』です。それと同じものがぼくにスタンド能力を与えたんです。」 ロングビルはごくりと生唾を飲み込んだ。 「そ、それでその使い方は・・・。」 「それは・・・帰ってからオールド・オスマンと一緒に説明します。みんなにももう知っておいてほしいことだから・・・。」 ミス・ロングビルは小さくため息をついた。 「・・・・そうですか。それじゃあしょうがないですね。」 気がつくと、杖を抜いている。数語の詠唱。 最初に異常に気がついたタバサが杖を構える前に、ミス・ロングビルの詠唱は完了していた。 あたりの土が盛り上がり、ミス・ロングビル以外の4人の体を拘束する。 「こ、これは!?」 康一も剣を抜く暇がなかった。 タバサが珍しく悔しさを滲ませて答える。 「『アース・バインド』土のトライアングル・スペル・・・。」 「そんな!ミス・ロングビルは土のラインのはずでしょ・・・!」 キュルケが叫ぶ。 タバサはミス・ロングビルから視線を離さない。 「うかつ・・・。彼女が土くれのフーケだった。」 ミス・ロングビルがにやりと笑った。大きく手を叩く。 「ブラボー。ブラボー。・・・・と言ったところかね。さすがはシュバリエ、頭の回転が速いねぇ。」 メガネを取り、斜に構えると、大人しそうな風貌がはぎ取られ、皮肉げなアウトローのそれへと変貌した。 口調もはすっぱなものへと変わっている。 「ミス・ロングビル!あなたがフーケだったんですか!?」 康一は裏切られたように思った。彼女は康一がこの世界に来てから最も信頼できる女性の一人だったからだ。 「そうさね。秘宝『弓と矢』を盗み出したはいいが、使い方がわからなくてねぇ。」 「捜索隊を出すなら使い方を知ってるやつが来るだろうと踏んだのに、まさかオールド・オスマンすら使い方を知らないと知ったときはどうしようかと思ったけれど・・・」 康一を見る。 「まさかあんたが知ってるとは、ついてるねぇ。」 康一はエコーズで攻撃しようと思った。 魔法と違って、体が動かなくてもスタンドは動かせる! しかし、その前にフーケが釘を刺した。 「おっと、コーイチ。それにそこの風竜も!ちょっとでも妙な動きをしたら、その場で全員殺すからね。さぁ、『弓と矢』について話してもらうよ!」 きゅいー!シルフィードが鳴くが、タバサを首を横に振った。 康一は思った。話すわけにはいかない! 話せば、彼女か、彼女が渡した人間が、虹村形兆や写真の親父と同じことをする!! ためらう康一にフーケは目を細めた。 「そんなに悩むなら、話しやすくなるようにしてやろうかねぇ。」 グググッ!! 康一以外の三人を締め付ける土の圧力が強くなる。 「いっ・・・・」 肺から空気を押し出され、そろってヒューヒューとした息を吐くばかりだ。 「わ、わかった。話す!話すから!」 「そうそう。大人しく話せば丸く収まるのさ。安心しな。私はあんたを気に入ってるんだ。話すなら誰も殺しはしない。」 康一は観念した。 知っていることを話す。 自分は日本という国・・・ハルケギニアからすると多分異世界からきたこと。 矢で胸を貫かれ、スタンド能力に目覚めたこと。 スタンドはスタンド使いによって一つ一つ同じものはないこと。 「つまり・・・」 フーケは『弓と矢』に視線を落とした。 「これで私を刺せば、私も「スタンド」が手に入るかもしれないってわけだ。」 フーケは矢尻を自分の腕に近づけた。 しかし思いとどまる。 「いや、あのエロジジイはこの矢が平民の手に渡れば、といった。メイジの私が使うのは危険かもしれないね。」 「それよりも、これを使って平民にスタンド使いを増やせば・・・。ふふふ、なるほど。それが世界の滅び、だね。高慢な貴族共が支配する世の中が終わるって訳だ。」 やはりそうだ。康一は思った。 この人は、この矢を自分の欲望のために使おうとしている!! 「しかし・・・」 フーケは康一の眉間に杖を突きつけた。 「スタンドは実際に見ているからともかく、異世界とはまた突拍子もないねぇ。適当言ってごまかそうっていうんなら・・・」 「証拠はあるよ!ぼくが日本から来たって証拠が!ルイズにはもう見せてる!」 フーケはうろんな眼差しをルイズに向けた。 ろくに息もできないルイズは、ただコクコクと頷く。 康一を拘束していた土の戒めが解けた。 「じゃあ、見せてもらおうか。ゆっくりとだ。ほかの三人はいつでも殺せるってことを忘れるんじゃあないよ。」 康一は黙って頷いた。 フーケを刺激しないように、ゆっくりと財布から100円玉を出して、目の高さに掲げてみせる。 「あなたが盗賊なら、これの意味が分かるはずだ。」 フーケは目を細めた。 白い輝き。銀貨?いや、感じが違う。鉄でもない・・・。 「こっちに放りな。」 康一は親指でコインを弾いた。 コインは弧を描いてフーケに飛んでいく。 しかし、飛ばした一瞬、緑色の何かが見えた気がした。 直前。とっさにフーケはコインを避けた。 盗賊の勘。康一は今、何かを企んでいた! 避けざまに杖を振る。再び土が康一を拘束し、しめつけた。 「妙な動きをするな。と、いったはずだよ。」 康一を睨みつける。 康一は何も言わず、黙って圧力に耐えている。 フーケはコインを杖でつついてみた。 コツコツ。 ・・・何も起こらない。このコインに何か細工をしたのかと思ったんだが・・・私の気のせいか。 フーケはしゃがんでコインを拾う。 康一は忌々しげに言う。 「あの吉良吉影のまねごとはしたくなかったんだけど。」 「え?」 フーケの指が、コインに触れた。 コインに張り付けられていた「文字」のエネルギーが爆発する! ドッゴォォォォォォーーーン!!!! 反応する間もない。 至近距離で発生した爆風に、フーケは上空高く吹き飛んだ。 フーケが吹き飛んだ爆風は、周りにそよ風一つ起こしていなかった。4人の戒めが解かれる。 自由になった康一はふーっと大きく息をつき、服に付いた土を払った。 「まぁエコーズの場合は文字の『実感』を与えるものだから、吉良吉影のキラークイーンとは少し違うんだけどね。」
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巻七十二とは 2013年11月1日発売。 コミック72冊目。 前は巻七十一 次は巻七十三 タイトルは”ドレスローザの忘れ物” 第712話”ヴァイオレット” 第713話”ウソランド” 第714話”ルーシーとウーシー” 第715話”激戦区Cブロック” 第716話”首領チンジャオ” 第717話”ドレスローザの忘れ物” 第718話”お花畑のリク王軍” 第719話”開けチンジャオ” 第720話”囚人剣闘士” 第721話”レベッカと兵隊さん” を収録。 扉絵 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.30「『お逃げガブル!!』お言葉に甘えて」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.31「格上海賊スコッチからの大逃走!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.32「港へ出たら見捨てた部下達」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.33「死んだババーが言っていた『何があっても兄弟仲良く!』」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.34「維新軍ガブル隊長の祖母でこれから見せしめる!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.35「海岸に軍艦!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.36「生きていた隊長!ガブル見参!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.37「労働者を、ババーを、解放せよ!!」 カリブーの新世界でケヒヒヒヒVol.38「のみこめ支配者スコッチ!!」 主な展開 サンジが助けたヴァイオレットはドンキホーテファミリーの一員だったが、サンジを助ける。 グリーンビットでローとドフラミンゴ、藤虎が揃う。藤虎が能力で隕石を落とす。 トンタッタ王国で、ウソップはモンブラン・ノーランドの子孫だと嘘をついていた。 トンタッタ王国はコロシアムの地下にある「闇の工場」で働かされている仲間を助けに行く。 ウソップとロビンはトンタッタ王国とドンキホーテ・ドフラミンゴとの因縁は900年前の歴史にあることを知らされる。 サニー号ではドンキホーテファミリーのジョーラがナミ、ブルック、チョッパー、モモの助、サニー号を能力で芸術的にされた。 Bブロック勝者のバルトロメオはルフィにあこがれて海賊になった。 首領チンジャオはガープに頭を殴られたことで、頭の尖った部分が凹んだため恨んでいた。頭の尖った部分が一族の財宝を手にする唯一の鍵だったため。 ルフィに殴られることで首領チンジャオの頭は元に戻り、孫が率いる八宝水軍を麦わらの一味の傘下にすることを決意? フランキーは兵隊さんにドレスローザの秘密、おもちゃは元人間であること、などを教えられる。 フランキーが花畑の地下に着くと、そこでコロシアムの観戦をしていたゾロはサニー号へ向かう。 サンジと錦えもんが合流、カン十郎がとらえられているおもちゃの家へ向かうことに。表向きはおもちゃの家だが、工場であることをヴァイオレットに教えられる。 ルフィは囚人剣闘士のレベッカが先代リク国王の孫であることを知る。 謎 藤虎と共に世界徴兵で選抜された緑牛(りょくぎゅう)とは(第713話”ウソランド”) ローはドフラミンゴの部下と言えば藤虎からは免れたかもしれないが、なぜ麦わらの海賊団と同盟を結んだと言ったのか。藤虎に対して勝機があるのか リッキーとレベッカの関係 バルトロメオの持っているトランクの中身は(第714話”ルーシーとウーシー”) ムシムシの実(モデルカブトムシとモデルスズメバチ)は5つしかないと言われる飛行能力を持つ能力に含まれるのか おもちゃにさせられた理由 おもちゃになっていない人の記憶が変わってしまった理由、小人の記憶が変わっていない理由 ドレスローザの2つの法、0時消灯とおもちゃと人間がそれぞれの家に入れない理由 インペルダウンLEVEL6から脱獄したのは(第716話”首領チンジャオ”) 黒ひげとバージェスのでんでん虫を使った会話に青キジが出てきたが、関係は?(第720話”囚人剣闘士”)黒ひげがシリュウを引き合いに出していることから、青ひげは黒ひげ海賊団に加わった?加わる? 黒ひげとドフラミンゴは通じているのか トンタッタ族とドンキホーテ・ドフラミンゴとの900年前の歴史に遡る因縁(第718話”お花畑のリク王軍”) レベッカが闘技場に向かう時になぜ盾を捨てたのか、左手に持った小さいものは?花びら?(第720話”囚人剣闘士”)ちなみに(元)剣闘士リッキー、昔見た剣闘士が盾を持たない戦い方をする(巻七十一第707話”Bブロック”) 花畑は以前の王宮?(第718話”お花畑のリク王軍”と第721話”レベッカと兵隊さん”) 花畑がひまわり畑なのは伏線か
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ルイズたちがニューカッスル城に到着した日の、太陽が落ちた後…… 生き残った、王党派の主要な面々は、全員城の謁見の間に集合していた。 戦時にもかかわらず、その大きな部屋には、テーブルの上に豪華な肉料理が並べられている。 野菜料理はどこにも見当たらなかったが、それにしてもテーブルからはみ出るほどの肉の量だ。 どう見てもこの間にいる人数で食べきれる量ではない。 「まさに、在庫一斉処分。食物の総出撃でありますな!」 壮年の男性が、豪快にルイズに話しかけていた。 このような状況でも、みな清潔に折り目をつけた軍服を着ていた。 どうやらこのような事態のために、特別に保管していた服であるらしかった。 彼らにとっても、この宴は意味のあるものなのだ。もしかしたら、これが最後の楽しみになるかもしれないのだから…… そう考えたルイズは悲しくなった。 だから、話しかけられた貴族に対しては適当にお茶を濁した返事しかできなかった。 「え? ええ。そうですね……」 その返事で、貴族はすべてを察したのか否か、ルイズを暖かく見つめると、では失礼するといって彼女の元から優美に立ち去っていった。 ルイズは華やかな宴の中、物思いにふける。 楽師など、とうの昔にいなくなっているため、今宵の音楽は人々の話し声のみである。 そのなかから、ワルドの声がだんだんと大きく、近づいてくることに、ルイズは気がつかなかった。 「ルイズ、いい事を考えた。この場で結婚しないか?」 結婚という単語でようやくわれに返ったルイズは、まともな反応ができなかった。 あっけに取られた様子で、ワルドのなすがままに手をとられて、そのままウェールズ公の下に連れて行かれた。 そんな様子のルイズを気にかけるでもなく、ワルドはウェールズに丁重に話しかけた。 「殿下、お願いがございます。私、ワルドとルイズは許婚なのでございますが、このたび、殿下の御武勇に預かりたく、殿下御自身に正式な婚約の誓約の証人となっていただきたいのです」 「面白いな。よかろう、その話、私は引き受けたぞ」 「ほう、それはめでたいですな」 ワルドの申し出に快諾するウェールズ。その隣に傅いたパリーがうれしそうに目を細める。 ルイズは一連の流れにまったくついていけていなかった。 「え、ちょ、ちょっとワルド様?」 「へえ、なかなかやるじゃないルイズ。ワルド様って言うの? 彼、なかなかのいい男じゃない」 いつの間にかいたのか、キュルケがはやし立てる。だが、彼女の表情は友人の祝福を願うおだやかな表情をしていた。 だが、その場の話の流れに逆らう男が二人。 「お前は何を言ってるんだ? 式を挙げる?この状況で?」 「まだ任務中なのに? 君は『家に帰るまでが遠足です』って言われた事がないのかい? っても遠足自体ないのか…」 ルイズの使い魔達だ。 その言葉にわれに返ったルイズは、両手と首を大げさに振りつつ、ワルドに返事をした。 「そ、そうよ! 私達は任務中だし、それに……」 「それに、なんだい?」 ルイズは一瞬だけ息を呑んだが、改めてかつての許婚者に向かい、はっきりと言い放った。 「それに、私。あなたと結婚するつもりはないわ」 その言葉に、ワルドは笑顔をまったく崩さない。と、いうよりも、表情が笑顔のまま凍りついていた。 ワルドの口が、ぎこちなく開かれる。まるでさび付いた城門を力任せに押し開くようだ。 「何だって?」 「ごめんなさい、ワルド様。私はあなたの事好きよ。でも、それは結婚したいとかじゃあないの。単なる憧れなのよ、魔法がとても優秀なあなたに対する……」 「……ちがう……」 ワルドが笑顔の表情を崩し始めた。徐々に狂相を帯びていく。 「違うんだルイズ! 君は自分の力に気づいていないだけなんだよ!」 ワルドはルイズの肩をつかみ、揺さぶりながらわめくように語り掛けた。 「何のことをいっているのかさっぱりわからないわ!」 (痛い、話して。ワルド様) ルイズはそう目で訴えたが、今のワルドにはまったく通じていない。 むしろ、ルイズの肩をつかむ力をいっそう強くしていった。 「ルイズ! 君の魔力は僕達なんかのスクウェアクラスよりも偉大だ。君なら世界を手に入れることすらできる!」 「……わたし、世界なんかいらないもの」 そういいながら、ルイズは人が違ってしまったようになったワルドを見上げた。 何が彼をこのように変えてしまったんだろう? 昔のワルドは、このような目をする人じゃなかった。ちゃんと私の話を聞いてくれた。 「さあ、『うん』といってくれ僕のルイズ! 僕には君の存在が必要なんだ!」 「ワルド、あなた……」 だれもがワルドの剣幕に押され、動けない中。 たった、たった二人だけ、動く影があった。 そのうちのひとり、岸辺露伴が静かに口を開く。 彼にしては珍しく、その目は静かな怒りがこめられていたのがルイズにだけは見て取れた。 「いや、ワルド……お前は『ルイズ』を必要としていない。 貴様が必要としているのはルイズが持っているかもしれないという、『ルイズの能力』だ。 お前はルイズではなくルイズの力と結婚したがっている。 貴様にとってルイズは一本の杖でしかない。ひとつの意思持たぬ凶器でしかない!」 ブチャラティが露伴の後を力強く続ける様に、言った。 「いいかッ! 吐き気をもよおす邪悪とはッ! なにも知らぬ無知なるものを利用する事だ… 自分の利益のためだけに利用する事だ! 婚約者が何も知らぬ許婚を!! てめーの都合だけでッ! ゆるさねえっ! あんたは今ッ! ルイズの心を『裏切った』ッ!」 空気が奇妙に歪んだ。 「『裏切った』? 僕が? ハハッ、それは違うね。まったく持って誤解だよ、それは」 ようやくルイズの肩を話したワルドが振り返り、投げつけるように叫んだ。 その瞳は、憎しみにとらわれた漆黒の炎を宿している。 「わが父が死んだとき、トリステインの王国がなにをしてくれた? 何もだ! 僕らの血の代償を何も支払わず、ただただ、無意味に死を強要するだけ…… 僕が裏切った? 違うなルイズ、ブチャラティ。裏切ったのはトリステイン王家のほうだ。 トリステインが、僕を裏切ったんだ!」 「ワルド、あなた、まさか……」 まさか、トリステインまでも、姫様までも裏切るの? ルイズがひねり出した、か細い疑問の声は、ワルドが会場全員に話しかけた大声にかき消された。 「聞け、全てのメイジ達よ。この内戦はやがて終わる。 だが貴族派が勝利し、内戦が終わったからといって平和が訪れるわけではない。 アルビオン王家の支配から解き放たれ、これまで押さえ付けられていた平民の政治意識は活発化するだろう。 そして理不尽なまでの貧富の差が、貴族と平民の互いの憎しみを煽る。 それはハルケギニア全土に波及する。金で貴族の位が買えるゲルマニアとて例外ではないだろう。 平民のなかに、超常の力が使えるものが少数ながら出現しつつある今、貴族と平民の能力の差は限りなく薄い。 国家の管理からはずれ、暴走する力。 それらがいつどこから飛んでくるか分からない時代がくる。 たとえ同盟国であろうがいつ敵になってもおかしくない。 それどころか、同じ国の人間どうしが殺しあう時代が訪れるだろう。今のお前達のように。 昨日までの隣人が、戦友が、家族が! お前に杖を向けるかもしれない。お前を殺すかもしれない! お前たちはそれでいいのか? お前は本当に祖国に必要とされているのか? お前達の国は、本当はお前を殺してやりたいと思っているのではないか?」 ワルドは余裕の笑みすら浮かべ、ウェールズに宣告した。 「ウェールズ公。いや、今は国王陛下だったか? われらが主、クロムウェル殿から伝言だ」 ウェールズ公の表情が驚愕にとらわれた。 ワルドは貴族派の一員だったのか! それにしても、いったいこの期に及んで、あの反逆の首魁が何の様だ? 「あの世で革命の成就を御覧あれ、だ」 そういった瞬間、ワルドは杖を引き出し、ウェールズに投げつけるように突き出そうとしていた。 彼はいつの間にか魔法を唱えていたようで、その杖の先は光り輝いている。 『ヘブンズドアー』! いつの間にかウェールズのそばにいた露伴がそういった瞬間、ワルドの動きが一瞬停止した。 同時にウェールズが後方にすっ飛んでいく。 しかし、ワルドは身動きひとつしていない。 しかも、驚くべきことに、吹き飛んだはずのウェールズまでもが元の立ち位置に戻っていた! 驚愕した顔のウェールズの懐に、再度ワルドの杖が差し込まれる。 だがしかし、今度はウェールズの体に『ジッパー』が取り付けられていて、ワルドの差し出した杖に沿ってウェールズのジッパーが開いていく。 その現象のおかげで、ウェールズ自身に肉体的ダメージはまったくない。 露伴が用心深く距離をとりながら、ワルドに話しかける。 「やはり、何らかの対策を取っていたというわけか……」 「君のスタンド能力は知っているよ。むしろ、僕が『レコン・キスタ』の一員であることにいつ気がついた?」 「まさにその点さ。僕のスタンドの対策をしている時点で、君は真っ黒なんだよ」 ブチャラティがウェールズを護衛する位置についた。 それを見ながら、ワルドはなおも涼しげに語っている。 「まったく、これで僕の三つのたくらみはすべて失敗という可能性が出てきたね。これから、『レコン・キスタ』内での僕の肩身が狭くなりそうだよ」 ウェールズの元にキュルケとタバサが駆け寄っていく。 だが、彼女達は、先日のラバーソールとの戦闘で、あらかた魔法力を喪失している。 それではまともな攻撃を行うのは難しい。 彼女達は、ウェールズの護衛に専念することにした。 ほかの貴族達も、次々に事の事態を把握し、懐から各々杖を取り出していく。 そのなかで、一人、場違いもはなはだしく、ルイズがほうけたように口を開いた。 「三つのたくらみ?」 「そうとも。ひとつはルイズ、君を手に入れること。もうひとつは、アンリエッタの手紙の奪取。最後はウェールズ閣下、あなたの御首だ」 「なるほど、でが、この状況で逃げられるとでも?」 「そうだな、『一人』では難しいな」 ワルドはそういいながら、新たに杖を振った。 彼の影がいびつにゆがむ。そこから、四体のワルドの複製が、這い出るように出現した。 「『偏在』か……」 「その通りだウェールズ閣下。しかもそれだけではない」 「僕のスタンドを打ち破った力か……」 「そのとおりさ露伴君。君にはまったくわかるまい?」 ワルドはそういいながら、偏在と本体が、同時に魔法を唱え始めた。 そして、一斉に『エア・ハンマー』を放つ。狙いはすべて、ウェールズその人に向けられていた。 貴族達は一斉にワルドに向けて攻撃をかけた。 すさまじいまでの魔法の本流がワルドを襲う。 しかも、ウェールズが露伴の手により再度ふっとばされたため、ウェールズに向けられた魔法は完全に空振りしていた。 薄れ行く意識の中、ワルドは飛び去っていくウェールズの方角を確かめた。 そして彼は、意外なことに、この状況下で自身が身につけた腕時計を操作した。 「い……ま…だ…『マンダム』!」 時空がゆがむ。 「僕のスタンドを打ち破った力か…………?」 露伴がそういいつつ、自身が何を言っているのか理解できないでいた。 「僕が何をやったか、君にはまったくわかるまい?」 ワルドはそういいながら、再度同じ時空で、偏在と本体が、同時に魔法を唱え始めた。 そして、今度は一体の偏在のみ『エア・ハンマー』を放った。 残りの偏在は、『エア・ストーム』を唱え、貴族達の魔法の軌道をそらす。 わけもわからないまま、露伴は自分のスタンド『ヘブンズ・ドアー』をウェールズに発動させ、「後方に吹っ飛ぶ」と書き込む。 ワルドは吹っ飛ぶその軌道を予想していたかのようにワルドの一体がフライで飛翔して近づいた。 そして吹っ飛んだ状態のウェールズにむかって、『エア・ニードル』をまとわせた杖を突き出す。 だが、その杖は誰の肉体をもかすることなく、会場の地に落ちた。 ワルドの右腕ごと。 その現象を作り出した男が、静かに語りだした。 「お前は時間を幾分か操ることができる。違うか?」 ブチャラティのその言葉に、王党派の面々が一様に、固まったように立ち止まった。 「その通りさ。よくわかったね」 「ああ、俺は、時空を操作された環境を『体感』して知っていたからな」 ワルドはしばらく沈黙を守った後、フフフ…と笑い出した。 「正確には、僕は時をきっかり『六秒』だけ巻き戻すことができる。私がクロムウェル殿からいただいたスタンド。名は『マンダム』だ。よろしく……そしてさよならだ」 ワルドの左手が、この場にふさわしくない、奇妙に動作を示した。 手首を半ば無理やりひねり、彼がはめていた腕時計の突起を押したのだ。 時が再び巻き戻る…… 今度は、ワルドがブチャラティの攻撃を完全によけた。 「これでチェックメイトだ! 死ね! 使い魔!」 一瞬無防備になったブチャラティの腹部に、ワルドの魔法『エア・ニードル』の凶刃が吸い込まれるように貫かれた。 「グッ!」 ブチャラティの口から嘔吐ともつかぬうめき声が発せられる。 攻撃の直前、彼の攻撃を予期していたかのようにブチャラティは体をひねっていた。 そのおかげで、彼の傷は幸い致命傷ではないようだが、かなりの重症だ。 「ちぃ、はずしたか!」 ワルドは再度同じ魔法を唱えようと、小さく詠唱を始めながら自分の杖に力をこめた。 ブチャラティとウェールズ。どちらを攻撃するか悩んだが、一瞬でブチャラティを先に攻撃することにした。 だが、スタンドを熟知しているのであれば、一瞬にしてもそのような隙をブチャラティに見せるべきではなかった。 「だが! 貴様はこれ以上攻撃できまい!」 ブチャラティは自身の、今にも吹き飛びそうな意識を闘争心で補いながら、ワルドの杖を体のジッパーで固定していた。 ワルドがどう引っ張っても、ブチャラティを貫いた杖はびくとも動かない。 そのような間にも、彼ら二人をメイジの人の輪が締め付けている。 ワルドはスタンド使いとしてはまだまだ未熟であった。 その隙はわずか一瞬。だが、その僅かな時間を許したことで、ワルドは背後の露伴の行動に気づくことができなかった。 「いいぜ相棒! 俺様の真の姿をみんなにお披露目だ!」 「奇襲してんのにしゃべんなコンほでなすっ!」 デルフリンガーを通し、露伴の腕に伝わる確かな手ごたえ。 彼の左腕は、肩から魂の本陣と切り離される。 手首につけた腕時計が床と衝突し、奇妙な金属音を立てた。 「くそ!」 ワルドが自分の窮地を察し、その場から後ずさる。 彼の後頭部から、銀色の円盤が出現し、地に落ちた。 「だが、残念だったな諸君! この城はどう足掻いても我々『レコン・キスタ』と貴族派によって落とされる! 聞こえるだろう! この大地をとどろかす砲声が、血みどろの阿鼻叫喚が!」 彼の言うとおり、城の正門がないやら騒がしい。銃声や罵声が浴びせられている。 どうやら敵の攻撃が始まったようだ。 「ド畜生がッ!」 一人の若いメイジが放った氷の魔法を、ワルドは笑ったまま眺めた。 薄笑いを浮かべ、その攻撃をよけようともしない。 「多少痛いからこの方法はとりたくなかったんだが……」 『ウインディ・アイシクル』の槍がワルドを貫こうとする瞬間、彼の肉体は空気の塊で上方に吹き飛ばされた。 そのまま大広間の天井付近のステンドグラスを突進で墓石、外に出て行った。 「待て!」 だが、今の王党派にはワルドを追う術は持ち合わせていない。 彼らは、ワルドが窓の枠越しに、外で貴族派の紋章の戦闘服をあつらえた風竜に乗り込むのを黙った見過ごしていくしかなかった。 「報告いたします! 敵一部勢力による奇襲により、われらの防衛線が破られました!」 並み居る貴族達が無力感を感じいているその場に、いまさらながら見張りの兵が駆け込んできた。 「馬鹿者が! どうして気づかなんだ!」 「そ、それが…攻撃してきた敵は一部の兵でして…傭兵が六百名ほどでしょうか。敵陣形の変更が一切なかったために見張り役は気がつきませんでした!」 「おろかな! で、味方の防衛はどうなっている?」 「わかりません! みんなバラバラで、それにもうすぐ敵がこちらに来ます!」 背後に交わされる会話と、あわただしい足音を背に、ルイズは今にも力尽きそうな自分の使い魔に駆け寄った。 彼は足元すらおぼつかない様子だったが、まだ目的がある風に、まっすぐにウェールズの元に向かっている。 ルイズは思わず自分の肩をブチャラティに貸しながら話しかけた。 彼を召喚する前のルイズであれば、平民にそのような真似などするはずもないのだが。今のルイズにはそのような発想だの微塵も浮かばなかった。 「ブチャラティ、大丈夫?」 その場にはキュルケたちも集まっていく。 「まだだ、ルイズ。俺よりも自分のみを優先しろ。みんな、気を抜くな。この貴族派の攻撃をどうにかしてやる必要がある」 「そんなこといって、ダーリン。あなたが一番傷ついているのよ!」 キュルケが切なそうに傷口を見ながら言っていた。 「その通りだ。君は休んでいたまえ。我々の名誉にかけてでも、命に代えても君たちの身柄は保証しよう」 「いや、そんなことをせずにも、この攻撃は撃退できる」 ブチャラティの息は絶え絶えだったが、その瞳には確固とした意識があった。 「こんなところに地下港があるなんてよう」 突入した傭兵隊の隊長、マーク・ワトキンはニューカッスル地下の埠頭を見下ろし、つぶやいていた。 城に突入した貴族派の兵共は、あたりを用心深く伺っている。 彼らは、城壁を越えて坑道を掘りつつ、城の地下倉庫にまで侵入することに成功していた。 王党派の連中に気づかれることなく城内部にまで入れたのはいいが、結果的に、一度に侵攻できる兵士の人数が限られてしまっている。 彼は今までの状況を反芻していた。 敵の見張りを黙らせ、防衛線の兵を背後から攻撃したので、王党派の指揮系統は混乱している。 が、それも一時的なもの。今のところ、侵入できた兵のうち、自分の指揮できる人数は百にも満たない。 貴族派総数で見積もっても、三百人には届かないだろう。 兵の絶対数で言えば、王党派のほうが有利な状況なのだ。このまま指揮系統が混乱した内にウェールズたちを縊り殺してしまうほかない。そう考えた彼は、自分の傭兵たちに、ウェールズの居場所を最優先に探すように命じていた。 そのとき、上のほうから男の声が遠くのほうから響き渡った。 「ウェールズがいたぞ! 聖堂だ!」 彼は全滅の危機を克服したと重い、ほっと一息をつきながら、自分の傭兵団、『ブース・ボクシング』に命じた。 「やろうども! 全員ウェールズを殺れ! 殺った奴には褒賞金を分けてやる!」 その一言により、一握りの兵共が全員階段を上っていく。 その途中、不思議なことに一度も王党派の兵士とすれ違わなかった。 運がいい。マーク・ワトキン葉そう多いながら、城の中庭に出ていた。 城壁には王党派の連中が張り付いていたが完全に混乱しているらしく、まったく統率が取れていない。 しかも、こちらを味方と思っているらしく、しきりに応援を頼む旗信号を送ってきている。 そんな事柄を無視し、彼らの一団は駆け足で聖堂に突入した。 彼らの成功の有無が、今回の奇襲を左右する。彼らがウェールズら幕僚を殺害しそこねれば、今回の攻撃はまったくの失敗に帰するのだ。 平民の傭兵である彼らは聖堂の扉を蹴り開け、中に荒々しく立ち入った。 この仕事を終わらせれば、ウェールズの首を貴族派に売り渡せば、俺たちは金持ちになれる。幸福になれる! そんな思いを受かべていた者達に、冷静な判断を下すことを期待できるはずもなかった。 「誰もいない?」 傭兵の一人が、聖堂の中心で素っ頓狂な声を張り上げた。 おかしい。なんだろう、この違和感は? マーク・ワトキンは血眼になった兵をなだめながらも、辺りをうかがっていた。 今にして思えば、そもそもあの男の声は俺の隊のものではなかった。 いや、それ以上にこの場所は何かおかしい。 なぜ、礼拝などの椅子が取り除かれている? まるで、大量の兵士を招き入れるかの様だ…… 突如彼は気づいた。 「全員! この場を出ろ!」これは罠だ! だが、彼の声が響き渡ると同時に、聖堂の天井にひび割れが幾重にも張り巡らせていた。 そこから、夜空が垣間見える。 ああ、今日はいい天気なんだな。 マーク・ワトキンの最期の意識は、戦闘とは無縁の、そんなのんきなものであった。 そのような感想は、彼の肉体とともに、かつて聖堂であった瓦礫に埋められていった。 「今のが敵の主力のようだな」 露伴がデルフリンガーを構えたまま、聖堂の跡地から這い上がっていた。 彼のいた場所は、聖堂の天井が崩落していない。 「露伴、お前の声に疑問を持つような奴はいなかったようだな」 ブチャラティは露伴の傍らにいるウェールズの『レビテーション』の力で聖堂の天井から降りてきた。 「大丈夫、ブチャラティ!」 その彼に、ルイズはとび脱すようにブチャラティのもとにかけていく。 「だから、大丈夫だ。君は自分の身を守っていろ」 彼はそういっているが、その本人が一番消耗しきっている。 彼の受けた傷は致命的ではないが、疲労も手伝って息も絶え絶えだ。 「脱出するなら、今しかない」 その奥、聖堂の崩れていない闇の区画から、風竜とその主人たちが姿をあらわした。 ブチャラティはうなずた後、ウェールズに告げた。 「ウェールズ公。俺たちはこのままトリステインに帰る。君たちに最期までつきあえないことを許せ」 「そんなことはない。ありがとうブチャラティ君。今回の攻撃は何とか食い止めたようだ。損害も軽い。すべては君の功績だ」 ウェールズ公がそういいながら、ブチャラティに近寄っていった。 彼は心底ブチャラティに敬意を抱いたようであった。 「これは僕の気持ちだ。このようなものでしか君を評価できない僕のほうこそ許してくれ」 ウェールズが自分の指にはめた指輪を抜き取り、ブチャラティの指にはめた。 「風のルビー……始祖ブリミルの財宝」 キュルケが驚いた目をしてつぶやく。彼女はルイズと一緒にブチャラティの体を支えていた。 「そうだ。今となっては、トリステインにあったほうがこの指輪も喜ぶだろう」 おおい、はやく乗れよ。 デルフリンガーと露伴の声を受けつつ、ブチャラティはウェールズと別れを告げた。 彼はタバサの風竜の元へと足を運んでいく。その足取りはルイズとキュルケが支えている。 「では、さらばだ!」 ウェールズが、今まさに飛び立たんとする風竜に向けて声を張り上げた。 ルイズはウェールズの笑い顔に向かって叫んだ。 「どうかご無事で! どうか、どうか生きて姫様の下へいらしてください!」 「努力はするが、あまり期待しないようにとアンリエッタに伝えてくれ」 ルイズの意思とは裏腹に、無常にも竜は飛び立っていく。 「タバサ、もうちょっとだけここにいられない?」 「無理」 それでも、といいかけたルイズに、ブチャラティがはなしかけた。 「そうだ。君の気持ちは痛いほどわかるが、今は姫殿下の命令を優先させるべきだ」 「わかったわ」 ルイズはそういって、今度はタバサに一刻も早くトリステインに行くように催促した。 タバサは半ばあきれたが、彼女は何も王女の命を重要視したのではなかった。 ブチャラティはそれを聞くと安心したかのように目をつぶった。 疲労したのか、眠っているようだ。頭をルイズの肩に乗せている。 ルイズは一瞬、その頭を押しのけようと思ったが、やめた。 その代わりに誰にも聞こえないように、そっとつぶやくのだった。 「ブチャラティの傷、一刻も早く直さなくちゃ……」 レコン・キスタ陸軍ニューカッスル方面軍集団の総司令官は本営のテントの前に立ち、攻略計画を話す副官の言葉に耳を傾けていた。 「ワルド氏の奇襲計画が失敗に終わった以上、当初の計画通り、明日正午の攻撃で一気に攻め落とします」 ふん。と鼻をうならせ、傍らに立つ隻腕の青年に話しかけた。 「こんな小細工を擁すなど、最初から大群で押しつぶしてしまえば良いのだ!」 彼の元には、奇襲作戦の計画が実行直前まで耳に入らなかった。 要するに、彼はその点が不満なのだ。 ワルドと名乗る隻腕の男は微笑を隠さずに返答した。 「これは中央部、『レコン・キスタ』の意向です」 彼はそういいながら風竜に乗り込んだ。 「まて、どこへ行くつもりだ?」 「私は王都……もとい帝都へ戻ります。報告することがありますのでね」 「わかった。好きにするがいい」 この青二才目が。卿は内心毒付いた。 彼の竜裁きは、素人見にもすばらしいらしいことが伺われる。 ワルドの姿は、あっという間に司令官の視界からいなくなってしまった。 彼はニューカッスルの方角をかえりみた。 その方角の空には、二つの月がその位置をわずかにずらしながら重なった位置で天頂にたたずんでいる。 また、城の近くの空に、一匹の風が飛行している姿が、月光に照らされているのが見えた。 何者だろうか? あのあたりは城に近すぎるだめに飛行を禁じているというのに。 「おい、竜騎士共に飛行禁止区域を再徹底させろ」 彼は副官にそういいながら、白い息を手の平にはき掛け、不機嫌そうに天幕の中に入っていった。 天幕の上空には、ワルドの乗った風竜が、傲岸な風を撒き散らしながらロンディニウムに向かって飛翔する姿があった。
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・お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ! ゴッ 「「~~~ッッ!!!!」」 頭部に走った余りの激痛に二人してのた打ち回る。 周囲が笑いの渦に飲まれていたが二人ともそんな事気にしては居られない。そして見事に同じ事を考えていた。 (何だこの石頭はッッ!!!!) 腕を組みいかにも威厳たっぷりに此方を見下ろすピンク頭。 「で!あんた一体誰?!」 しかしその額は心なしか少し赤く腫れ上がっている気がしないでも無い。威厳はその腫れで帳消しになっており…どちらかと言えばマヌケだ。 恐らく明日には青くなっているだろう。 「…エルメェス…エルメェス・コステロだ」 取りあえず名前を答えておく。 …ん? 「エルメェス?変な名前」 私の名前は『それ』だったか? もう!もう!!何なのよこいつは!!! いきなり頭突きしたり私を無視して俯いたり! 何よ何よ変な髪型! 「ミスタコルベール!やり直しを!やり直しを要求します!!」 こんなの冗談じゃない 「流石はゼロのルイズ!」 「また失敗かよ!」 「平民だ!平民を召還しやがった!!」 うっせ―黙らっしゃいこのピザが 取りあえずマルコメヌは 「ピギィ!」 蹴っておいた 「ミスタコルベール!やり直しを!!」 全く冗談じゃ無いわよ マルコリヌうっさいのた打ち回らないで 「ミスヴァリエール、それは無理だ。 呼び出してしまった以上ゥ君の使い魔は彼女…?だ。残念ながらやり直しは出来ないのだよ。」 「糞ったれこのコッパゲが残りの毛全部むしってやろうか」 (そんな…ミスタコルベールあんまりです) 「「…」」 間違ったァ――!言ってることと思っている事が逆でしたァ―!! コホン… 「さ、さぁさっさと儀式の続きをを」 多少口元がひくついてるけど大丈夫でしょ 大丈夫大丈夫もーまんたい のた打ち回らないでってばマルコリヌ 何?股間?股間が痛いの?見苦しい見苦しい見苦しい三回言った ちらと後ろに目を向けるとまだ地面に座り込んでいる平民が居た。 性別は恐らく…女?厳つい顔をしている。 後、変な髪型。それに石頭。更に石頭。石頭。 ちょっと!何で私より胸があるっていうのよ!舐めてるわね!?クソッ!クソッ! と、言うかさっきから微動だにしないんだが大丈夫なのかしら まさかさっきの頭突きで色々吹っ飛んだなんて事無いでしょうね 「ねぇちょっとあんた一体どこの平民?頭(の中とか)大丈夫?」 「えっあっああ…うん大丈夫だ」 何よ周りをキョロキョロ見回して そっか平民だからこんなの見慣れてないのね それにしても…ああ、さようならルイズのファーストキッス せめて男が良かったわ 見た目男っぽいけど 行くのよルイズ!がんばっ!ルイズ! 平民の額(あ、赤くなってるわザマーミロ)に杖を向け呪文を唱える 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え 我が使い魔となせ。」 そしてそのまま顔を近づけぇ――― ドカッ! 「まそっぷ!」 後ろに吹っ飛ばされた 「なっ何をするだぁ―!!痛いじゃないの!」 「それはこっちのセリフだボケが!」 平民の癖に口答えするわけ!?頭に来た! 「ファイヤーボール!」 チュドーン! よっしゃ当たった!この際ファイヤーボールが失敗したとかどうでも良いわ 気絶した隙に契約する!なんて頭がいいの私! ズキュ――z___ン!! 契約完了 to be continued…-
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autolink MB/S10-102 カード名:使い魔 レン カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:1 トリガー:0 パワー:6000 ソウル:1 特徴:《使い魔》?・《動物》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、そのターン中、このカードのソウルを+1。 ……危ないのは、志貴の方 レアリティ:TD illust. ▼修正内容 サイン箔を本来のデザインに修正致しました。 ▼修正理由 サイン箔の一部が本体の位置からずれていたため、修正致しました。 ▼カード交換に関して 交換対応を実施させていただきます。 ■このエラッタカードに関しては、ゲーム進行上重度の問題が発生するため、 交換対応を実施させていただきます。 10/10/18 今日のカード。運がよいとサイン入り。 登場したターンに限りソウルが2となるアタッカー。 トリガーなしの代価として得たパワー1000がまるまるなくなっているが、序盤から高ソウルで攻めることができる「これぞ黄」と言わんばかりのキャラ。 特徴も、ゼロの使い魔やなのはシリーズにシナジーの多い《使い魔》?、全般的にサポートの多い《動物》?と便利な2つ。 《動物》?デッキやソウルビート、フェイトデッキに入れてみても面白いかもしれない。
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早朝、ルイズ・フランソワーズは、蜂の巣をつついたような喧騒に、目を覚ました。 こんな朝っぱらから騒がしい… そう毒づいて、眠い目をこすりつつ、耳を澄ませる。 どうやら、外の廊下を学院中の教師たちがバタバタと走っているようだ。 皆口々に何かをわめいている。 ルイズはネグリジェのままベッドを下りて、扉に耳を当てた。 教師たちが『一大事!』やら、『宝物庫に賊が…!』やらといった内容を言い合いながら、 ルイズの部屋の前を通り過ぎ、本塔へ向かっているようだ。 ルイズの顔から、さぁっと血の気が引いた。 振り返って、自分の部屋を見る。 部屋の中は、DIOが宝物庫からパチってきた宝で一杯だ。 …………とうとうバレたか? ルイズは死にたくなった。 無論、今の今まで問題を先延ばしにしていたのは、ルイズ自身だ。 次から次へと増えていく宝の山に、最初はまずいと思ってはいたが、 次第に感覚が麻痺していき、最終的にどうでもいいやと思い出したのがまずかったか。 激しく後悔するが、もう遅い。 ルイズはソファーに横たわっているDIOを見た。 いつものように優雅に本を読んでいる。 いつもどおりなのだが、今日に限ってやけに腹が立つ。 どうしよう… ……今度こそ、退学か? それだけは勘弁してほしかった。 どの面下げてヴァリエール家に帰れというのか。 カトレア姉さまに何をされたかわかったものじゃない。 ボロきれのようにされる自分を想像して、ルイズの顔がますます青ざめる。 ---ええい、ままよ! 追い詰められたルイズはヤケクソになった。 こうなったら仕方がない。 とことんまで逃げきってやろうじゃないか! ルイズは密かに決意した。 使い魔の不始末は、ご主人様の責任なのだ。 こうして、明らかに方向性を誤った決断を下したルイズは、教師たちが集結しつつある、本塔五階の宝物庫へ向かうことにした。 いずれ、生徒の部屋にもガサ入れが来るに違いない。 それまでに、まずは、敵の戦略を読むのだ。 ルイズは音も立てずに扉を開けた。 すると、後ろからDIOが話しかけてきた。 「…どこに行くのかな?」 ルイズは振り向きもせずに答えた。 「あんたのケツを拭きに行くのよ…!」 ルイズはDIOの反応も待たず、通路にでて、扉を閉めた。 そして、滑るように本塔へと廊下を駆け抜けた。 -------- 宝物庫には学院中の教師が集まり、その惨状に口をあんぐりと開けた。 まず驚いたのは、トリステイン魔法学院の誇る宝物庫の扉が、 粉々に吹っ飛んで、瓦礫の山になっていたことだ。 中はもっとひどかった。 高価な美術品や秘薬や財宝が、メチャクチャにされている。 一体どれだけの被害になるのか、見当もつかない。 壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。 『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』 もうひとつ、教師たちの目を引いた物がある。 本棚の後ろにある、隠し部屋のことだった。 今まで、目録を作るために宝物庫に入ったことのある教師は大勢いるが、 こんな部屋があるとは誰も聞いたことがなかった。 しかし、その隠し部屋も、メチャクチャに破壊されている。 教師たちは口々に好き勝手なことを喚いていた。 「土くれのフーケ! 貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か! 魔法学院にまで手を出しおって! 随分とナメられたものじゃないか!」 「衛兵は何をやっていた!?」 「衛兵などあてにならん! 所詮は平民だ! それより、当直の貴族は誰だったんだね!?」 ミセス・シュヴルーズは震え上がった。 昨晩の当直は、彼女であった。 まさか、魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは夢にも思わずに、 当直をサボり、ぐうぐう自室で寝ていたのだった。 本来なら、夜通し門の詰め所に待機していなければならないのに。 「ミセス・シュヴルーズ! 当直はあなただったのではありませんか!?」 教師の1人が、さっそくミセス・シュヴルーズを追求し始めた。 あの恐ろしいオールド・オスマンが来る前に、責任の所在を明らかにしておこうというのだろう。 ミセスシュヴルーズはしどろもどろで反論した。 「た、確かにそうですが……み、ミスタ・ギトーこそ、 以前の当直をサボっていたではないですか…!」 シュヴルーズの言葉に、ギトーと呼ばれた教師が、顔を真っ赤にした。 「な、何だと…!あの時は、わ、私は、大切な用事があったからで…!」 教師達は次々と責任の擦り付けあいを始めた。 おまえが悪い! あなたの方こそ…! 罵詈雑言が飛び交う五階の階段の影から、その様子に呆れた視線を投げかける人物がいた。 ルイズ・フランソワーズだった。 ピンクの髪がふわりと揺れる。 呆れる一方で、ルイズはほくそ笑んだ。 どうやら、話題になっているのは『土くれ』のフーケという盗賊のようだった。 ルイズもウワサだけは聞いたことがあった。 そのフーケが、宝物庫を破った犯人ということになっているらしい。 つまり、フーケが忍び込んでくれたお陰で、全てはフーケの罪になるということだ。 宝物庫を破ったのはフーケ。 宝を奪ったのもフーケだ。 ルイズは、会ったこともない盗賊に、取り敢えずの感謝を捧げた。 しかし…………ルイズの表情に影が差す。 このままフーケが逃走してくれれば、それはそれでいい。 オールド・オスマンの立場が悪くなるだけだ。 そんなことはルイズは知ったこっちゃない。 だが、問題はそのオールド・オスマンの…学院側の動きだ。 ルイズは考える。 他の財宝はさておき、フーケがはっきりと犯行声明を出した『破壊の杖』だけは、 貴族としての誇りをかけて全力で取り戻そうとするに違いない。 王室には内密にメイジを派遣して、フーケを捕獲しようとするだろう。 フーケさえ捕らえれば、とりあえずは貴族としての体裁は保たれる。 この惨状は…どうとでもだまくらかせる。 教師の一人二人位は、そのためのスケープゴートにされるだろうが…。 あの老獪なオールド・オスマンなら、眉一つ動かさずにやってのけるだろう。 そして、もし、フーケが学園側に捕獲されてしまった場合、紛失した宝のありかを聞き出すために、オスマンはフーケを拷問するだろう。 ---ルイズは親指の爪をギリリと噛んだ。 いくら百戦錬磨のフーケとはいえ、『あの』オールド・オスマンの拷問に耐えられるとは、とてもじゃあないが思えない。 直ぐにゲロするだろう。 そうなるとまずい。 宝を盗んだのがフーケではないとバレてしまう。直に疑いの目は内部に向けられ、自分に捜査の手が伸びてくる可能性がでてくる。 別に、疑われたとしても、ルイズにはシラをきり通すだけの自信があった。 が、この場合それではダメだ。 少しでも疑われるのは避けねばならない。 相手はあのオールド・オスマンだ。 あくまでも100%全てフーケの仕業ということにしなければ…。 そのためには、何とか学院側の先回りをして、『破壊の杖』を奪還して、フーケを始末し、口を封じる必要がある。 『破壊の杖』さえ戻れば、学院側は最低限満足してくれる。 『破壊の杖』の奪還はすなわち、フーケ撃退の証でもあるからだ。 しかし、始末しようにも、 フーケが今どこにいるのか、ルイズにはわからない。 どうするべきか…? 思案を続けていると、誰かが慌てた足取りで近づいてくる音がした。 2人分の足音だ。 さっと身を隠すルイズ。 オールド・オスマンと、コルベールだ。 2人はバタバタと慌てた足取りで宝物庫に入る。 教師は全員、宝物庫に入ったようだ。 ルイズはそう思うと、階段の影から、破壊された宝物庫の扉の影へと身を移した。 瓦礫が上手いことルイズの体を隠した。 ルイズは身を隠しながら、中の様子を伺った。 見ると、オールド・オスマンは『破壊の杖』があった一角には目もくれず、 一直線に本棚の奥の隠し部屋へと向かっていた。 怪訝な表情を浮かべるルイズだったが、隠し部屋の中は暗く、よくわからない。 ルイズは暫く様子を見ることにした。 ---------- オールド・オスマンは、宝物庫に駆けつけると、『破壊の杖』が盗まれた現場になど目もくれず、本棚の裏の隠し部屋へ足を運んだ。 油断のない足取りで、奥へと進む。 不気味なほど静かだ。 隠し部屋への通路は、コルク栓を抜いたように、円形に抉られている。 オスマンの脳裏に、忌むべき過去が蘇る。 威力こそ劣るものの、間違いなく、奴の仕業だった。 部屋の中央に到達すると、オスマンは信じられない物を見た。 百余年前、自分が持てる技術を結集した結界が、破られていたのだ。 ルーンの輝きが失われている。 鎖が千切れ、封印していたはずの本が、 床に転がっている。 オスマンの頬に冷や汗が垂れる。 弾かれたように杖を構えるオスマン。 一歩一歩、時間をかけて本に近づく。 ---本がひとりでにガタガタと震えだした。 その瞬間、オスマンの杖が電光石火で振られ、杖からまばゆい光が放たれ、本に直撃した。 強烈な光に包まれ、本の動きがピタリと止まった。 オスマンは安堵のため息をついた。 これで当座はしのげるだろう。 本を拾い上げて、オスマンはそれを台座に戻した。 だが……と、オスマンは疑問に思う。 『土くれ』のフーケの話は、オスマンも知っていた。 ウワサによれば、フーケは『トライアングル』クラスのメイジらしい。 しかし、これはどうみても『トライアングル』クラスのメイジの手には余る所業だった。 『スクウェア』クラスのメイジ数人がかりの『固定化』を打ち破り、あまつさえこの封印をも破るとは。 実力を見誤っていたか? そこまで強力なメイジだとは聞いたこともないが…。 いっそ人ではなく、物の怪の類の仕業と考えた方が楽だ。 化け物………オスマンには、1人だけ、心当たりがあった。 確証が持てなかったが、一人の人物の顔が脳裏に浮かぶ。 これは…………もしや…。 ---------- しばらくして、オールドオスマンが隠し部屋から出てくると、教師達は口々にオスマンに自らに責任がないことをがなり立てた。 オスマンはしばらく黙っていたが、自らの保身しか考えていない教師達に苛立ち、杖で床をドンと叩いた。 「…静まれぃ!」 オスマンの低い一喝で、教師達はシンとなった。 誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。 「貴様らの中で、まともに当直をしたことのあるヤツが、何人おる?」 静かなオスマンの問いには、しかし、誰も答えられなかった。 「さて、これが現実じゃ。 責任があるとするなら、我々全員じゃ。 この中の誰もが……、もちろんワシを含めてじゃが…、 まさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っていなかった。 何せ、ここにいるのは、ほとんどがメイジじゃからな。 誰が好き好んで、虎穴に入るものかと思っておったが、間違いじゃった」 オスマンは、宝物庫の扉にあいた穴を見つめた。 「このとおり、賊は大胆にも忍び込み、『破壊の杖』以下、財宝十数点を奪っていきおった。 つまり、我々は油断していたのじゃ。 責任があるとするなら、改めていうが、我ら全員にあるといわねばなるまい」 オスマンの、杖を持つ手がブルブルと怒りで震えていた。 皆、俯いたまま一言も喋らない。 「……目撃者はおらんのか?」 オスマンの問いに、コルベールが答えた。 「ざ、残念ながら、深夜の突然の出来事だったようで……」 「ふむ……後を追おうにも、手がかりナシというわけか…」 オスマンはヒゲを撫でた。 それからオスマンは、気づいたように再びコルベールに尋ねた。 「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」 「それが、その…、昨夜から姿が見えませんで」 「この非常時に、どこに行ったんじゃ」 「さ、さぁ…」 そんな風に噂をしていると、宝物庫に1人の人間がフラフラと入ってきた。 服はボロボロで、ほとんど半裸だ。 全身傷だらけで、酷い火傷も負っている。 呼吸は荒く、右手で左腕を痛そうに押さえて、 右足をズルズルと引きずっている。 歩いた後には、血の後が点々と続いていた。 出血も激しそうだ。 誰がどうみても重傷だ。 ミス・ロングビルだった。 「……オ、オールド・オスマン…」 ミス・ロングビルは、オスマンの前までやっとの思いでたどり着くと、 そこで力尽きたのか、バタリと倒れて、意識を失った。 宝物庫内は騒然となった。 to be continued…… 35へ
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ヴェストリの広場。魔法学院の西側に位置する広場で、日中も薄暗く、それ故に人もあまり寄り付かない。 そんな場所に一人の少女と二人の少年が誰かを待ち受けるように佇んでいた。 少女は広場の中央で腕を組み、少年たちは離れてその様子を伺っている。 「……遅いわね」 「……遅いな」 「……遅いね」 中央で仁王立ちする少女の独り言に、そこから離れて佇む少年たちが答える。 彼女たちは決闘を行なうべく、そしてそれを見守る為に、決闘相手を待っているのだが その相手が一向に姿を現さない。時間だけが緩やかに過ぎていく。 「……来ないわね」 「……来ないな」 「……来ないね」 10分程経過しても未だに相手は現れない。少女は今朝の決闘相手とのやり取りを思い出し、 また無視されたんじゃないかと少し不安になる。 「ひょっとしてさ……」 小太りの少年がボソリと呟き、残りの二人の視線が集まる。 「場所…知らないんじゃないかな?」 「……アンタが連れて来るんじゃなかったの?」 「…知ってると思ったんだ」 少女の質問に被りを振る少年。気まずい空気が流れる。 「使えないデブね」 少女の放った言葉が思春期の繊細な心に突き刺さり、少年は座り込んで嗚咽を洩らす。 人気のない広場に少年の泣き声だけが木霊する。 「オレ……探してこようか?」 広場を包む空気に耐え切れなくなったもう一人の少年が少女に問いかける。 少年の眼から、この場から逃げ出したいと言う感情が溢れ出ていた。 「ダメ。一人にしないで」 普段の横暴さからは到底考えられない言葉を少女が紡ぎ出す。 その眼にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。 もう限界だった。 「ここがヴェストリの広場さ」 広場の入り口から聞こえた声。それは悪しき闇を吹き散らす一陣の風。 「ありがとう。助かったわギーシュ」 メイド服を着た少女が、薔薇の造花を持ち泣きはらした顔の少年に感謝を述べる。 少年はそれに手を振って答えると広場の隅に行き、座り込んで再び泣き始める。 その傍には小熊ほどもある大きなモグラが慰めるように寄り添っていた。 「お…遅かったじゃない!!」 「トリッシュ!来てくれたんだね!!」 トリッシュと呼ばれた少女は決闘相手の少女と彼女の主の少年に交互に目をやる。 「……泣いてた?」 「「泣いてなんかない!!」」 殆ど同時に否定し袖で眼を擦る二人。その仕草で泣いていたことは一目瞭然であった。 「ヤッホー!ルイズ来てあげたわよー!」 「キュルケ!アンタなんで来てんのよ!!」 トリッシュたちの後に続いて二人の女性が広場に現れた。 燃えるような赤い髪と、褐色の肌に包まれた豊かな胸の谷間を惜し気もなく見せつける少女と、 透き通る青空のような髪と、雪のように白い肌を持つ少女。 対照的二人。だが、親密な雰囲気が漂う不思議な少女たちであった。 「ちょっとね、向こうがアレなもんだから」 ルイズと呼ばれた少女がキュルケと呼んだ少女の言葉に首を傾げる。 「危険」 青い髪の少女の言葉で尚更訳が判らなくなった。 「と、ともかく!邪魔はしないでよ!!」 「判ってるわ。ちゃんと、負けるところ、見ててあげる」 決闘相手を無視して言い争いを始める二人を見て、トリッシュは一つ溜息を吐くと ルイズの立つ中央へと歩みを進めた。 「遅れて悪かったわね」 近くで聞こえたトリッシュの声でルイズは漸くその存在に気付くと、いつも通りの笑みを浮かべ 嘲りと侮蔑が込められた眼でトリッシュを凝視する。 「てっきり怯えて逃げ出したのかと思ったわ」 「アンタ相手に逃げ出す必要はね~わよ」 ルイズの挑発を意に介さず、トリッシュは逆にルイズを挑発する。ルイズの瞳が怒りに燃えた。 「き、貴族と平民の違いを、ア、アンタの身体に教え込んであげるわ!」 「そのセリフ、聞き飽きたわよ」 頭に血が昇ったルイズが呪文を唱え杖を振り、トリッシュが立っていた場所が爆風に包まれる。 それが開始の合図となった。 「ハズレよ。ヘタクソ!」 トリッシュは魔法が発動する前に横に飛び、爆発を回避してそのままルイズを中心に円を描くように走る。 怒り心頭となったルイズが呪文を唱え、トリッシュの後を追うように爆発が続く。 「逃げてないで戦いなさいよ!この臆病者!!」 ルイズが叫び、広場に敷かれた石畳や広場を囲う壁がルイズの起こした爆発によって穴が開く。 最初は攻撃魔法の呪文を詠唱していたが、どんな呪文でも爆発が起きるので詠唱時間の長い 四系統魔法の呪文を止め、コモン魔法の呪文にルイズは切り替えていた。 コモン魔法の呪文は四系統魔法のルーンを用いた呪文とは違い、唱えるメイジによって違う。 幾つかの、呪文の効果を発揮する為の言葉を入れさえすれば、使用者は各々自由に呪文を 創ることができるのである。 魔法発動の間隔が短くなり、爆発が逃げ回るトリッシュへと徐々に迫る。 しかし、トリッシュは焦ることなく静かな眼でルイズを観察する。 彼女は仲間たちの敵スタンド使いとの戦闘の経験談や、自身の僅かながらの戦闘経験によって、 観察することの重要性を認識していた。 (ルイズの起こす爆発は……銃弾のように『なにか』を打ち出して…それが触れたものを… …爆発させる……その『なにか』が見えないって~のが怖いわね) 例えば炎が襲ってくれば回避や迎撃、防御などの選択肢が生まれるが、なにも見えず感じることもできない ルイズの魔法は、知らなければ防ぎようのない恐ろしい能力である。 事前にルイズのことを知らず、様子見の為に逃げ回ると決めたトリッシュは幸運であった。 「ほらほらどうしたの?もっと早く逃げないと追いついちゃうわよ!!」 向かって来ずに自分の周りを逃げ回るだけのトリッシュを見て、落ち着きを取り戻したルイズが 笑いながら魔法を唱える。余裕ができたのか、命中率も上がり始めていた。 だが、トリッシュは逃げ回るだけ。まるでなにかを待つように――― 「偉そうなこと言っといて逃げ回るだけ?所詮は…う、げほっ!」 トリッシュは、ルイズの精神力(授業で習った)が尽きるか、又は早口で呪文を唱える ルイズがむせて攻撃が途切れるのを、ずっと逃げながら待っていたのである。 体力にも限界がある為、いい加減近づこうと思っていた矢先であった。 「それを……待ってたわ!!」 ルイズが喉を押さえてむせている。この好機を逃すまいとトリッシュはルイズに向かって走る。 距離が縮まり、そのまま殴りかかる寸前にルイズが顔を上げる。笑っていた。 「引っ掛かったわね!」 ルイズの叫びと同時に、トリッシュの左足が、爆発した。
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(しかし何か妙ですぞ…) コルベールは一人思考を巡らせていた。 (先程サラマンダーの炎を浴びた時、影は炎と反対側に出来るはずなのに実際出来た影は私から見て反対の方向!今もその方向にある!これは一体どういう事だ…?) 惜しいかな。コルベールはボスほど勘が働かず、後一歩のところで考えが及ばなかった。 (一先ず時間をとるべきか…!) 「ミス・タバサ、ミス・ツェルプストー!再びあやつの足止めを!」 「え!?あ、はい!フレイム!」 「お願い」 主人から命令を受けた二匹は再び足止めをしだした。 「皆さん、あやつの影を見るのです。」 コルベールが影を指差した。 「影がどうしたのですか?」 「シルフィードが吐く炎と反対に出来るはずなのに、私たちから見て反対にある事に気付かないのですか!?」 コルベールは熱弁を奮うが、四人の態度は「それがどーした?」というものだった。 「そんなしょうもない事より倒す方法を考えましょうよ。」 「ツェルプストーの言う通りです、ミスタ・コルベール。」 「…(コク)」 「だから禿げるんですよ。」 一瞬『爆炎』で全員窒息死させてやろうかと考えたが、さすがに思い止まった。 「な、何かヒントになるかと思ったのですが…」 「倒すにはあの矢をどうにかして取り上げればいいみたいです。」 今更何を言わせるんだこの禿は、という態度でルイズが言った。 「しかしですな、その事が矢を取り上げる事に繋がりませんかな?」 コルベールが食い下がる。 「そんなわけが」…ぁごぁあぁ…「ないでしょう。ん?僕の顔に何か付いているのかい?」 その場にいた全員がマリコルヌの顔を穴が空くほど見つめていた。 「ま、マリコルヌ…な、なな何よそれ……!!」 ルイズは震えながらマリコルヌの顔を指差した。タバサも表情こそ変わってなかったが、足がガタガタ震えていた。 「な、なんなんだよ!」…ぉげぁあぁ…「僕の顔に何か付いてるならそういってくれよ!」 ザッザッとマリコルヌはルイズに近寄ろうとした。 「こ、来ないでぇぇっ!!」 ルイズが無我夢中で杖を振り、マリコルヌの顔面で爆発が起きる。 「あぎゃっ!」 爆発をもろに喰らい後方へ吹っ飛ばされたマリコルヌはピクピク痙攣した後、やがて動かなくなった。 「や、やったの…?」 「分からない…気絶したみたいだけど…」 …ぁごぉおぉ… 「「「ひっ…!?」」」 マリコルヌの顔の中から現れた『それ』は地獄で苦しみ続ける亡者のような声でまだ泣き続けていた。 「ほ、本当になんなのよ!何が起こってるの!?魂と身体が入れ代わったり、ギーシュが殺されたり…!今度はマリコルヌから変なのが出てきたり…!」 キュルケがパニクって叫び出した。それを聞いたルイズは全ては自分のせいだと思った。自分がサモン・サーヴァントであんな奴を呼び出したばっかりに…! ルイズは駆け出した。 「ちょ、ちょっとルイズ!?いきなり何を!」 「全部私の責任なのよ!私があいつをなんとしてでも止めてみせる!倒してみせる!!」 「無理よ!魔法が効かないどころか、あなた魔法を使えないじゃない!」 「まだ分からないでしょ!」 キュルケはルイズを止めようとしたが、タバサの身体では走り出したルイズに追いつくことは出来なかった。 『そいつ』はフレイムとシルフィードに足止めされていた筈だったが、既に五人から遠く離れた所まで移動していた。 ルイズは追い掛ける途中、マリコルヌ同様、身体のどこかから別の『何か』が蛇が脱皮するように出て来ているというグロテスクな姿で地面を転がるフレイムとシルフィードを目撃していた。 しかし、二匹だけではなかった。空を飛んでいた鳥も、地面を徘徊していた蛇や蛙も、同じ様な姿になっていたのだ。 しかも、最悪な事にルイズの身体にも『それ』は始まった。 バリバリ… …あがぃぃぃ… ルイズの顔と腕から見たこともないものが出てきたのだ。 「あ、あ、あ あ あ あ あ あ」 ルイズはそれを見て声にならない悲鳴をあげた。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 ここまで来て全てが虚しく感じた。今更あいつを追い掛けてどうする?倒せるの?希望はあるの?なら何故追い掛ける?もういい、私も楽になろうじゃない… 追い掛けてくる皆の声が後ろから聞こえてくる…。 あまりの虚無感からその場にへたりこんでしまった。このまま奴を倒さなければどうなるのか。分からなかったが、予想は着いた。きっと私は私じゃ、皆は皆じゃ無くなる。 皆きっとそうなる…お父様やお母様も、姉さま達も、キュルケやタバサ達も…そして…私の憧れだったワルドも……『平等』に…… ん…平…等…?…『平等』……私だけじゃなく…皆『平等』に… そうだ。あいつは一切の加減無く『平等』に皆の魂を入れ替えた。何故そのような事が出来る?一人一人の魂を支配しているから?でもどうやって… ルイズは二つの事柄を思い出した。それは『矢』と『影』である。 あいつは矢を守ろうとしている。ならば矢を奪い取るのが倒す方法だと思っていた。 だが、触ったらギーシュの様になってしまうだろう。攻撃も与える事もシルフィードが示したように、出来ない。 それは何故だ?ひょっとしたら矢が本体じゃないのか?あの黒い人影は矢がそれを守る為に生み出した『物』と考えられないか? もしこれが正しいなら、矢を奪うことは間違っている。矢が全てを支配している『方法』があるはずだ。それが倒す方法だ。 そしてそれはコルベールの言っていた『影』じゃないのか? あいつの影は私のいる方と反対にある。何故夕日や炎の光を無視してそんな所にある? 答えは簡単だ。『光』がそっちに差し込んでいるからだ。ならその光を出しているのはどこにある? 答えはコルベールが言っていた事にある。 『私たちから見て反対にある事に気付かないのですか!?』 コルベールにも見えていた。影が自分と反対にあることが。つまり『皆』そうなのだ。『皆』の反対にあいつの影がある。 ならば光源は…! 「あたしの頭の後ろ!」 ルイズが頭の後ろに目掛けて杖を振った。 …だが、不幸な事に、鎮魂歌の本編は進みすぎていて、終曲に向かいつつあった。 「何でよ…何で腕が動かないのよ…」 ルイズの顔から出た何かはその長く太い腕を伸ばし、ルイズの腕を握りしめていた。そのためルイズの腕はそこから動かなくなっていた。 「は、離しなさい!」 ルイズが開いた手でその腕を引きはがそうとした。だが、何かは腕を離そうとせず、それどころか更にもう一本腕を出すとルイズの首を締め付け出した。 「が……はぁ………ッ…!」 普通他人の首を絞めると頸動脈を締め付ける為、気絶するのに一分もかからない。だが、その腕は体勢が悪い為か呼吸器のみを締め付けた。 肺に空気が入らず、ルイズは自らの意識が次第に遠退いていくのを感じた………… その時、ルイズは気持ちのいい、暖かい『風』を感じた。その『風』は黄金に輝いていた。ルイズの魂はそれに乗って空高く浮上していった。 「……ズ!」声が聞こえてくる。 「…イズ!」誰だろうか…目をゆっくりと、光に慣らすようにして開けていった。 「ルイズ!」私はベッドの上にいて、目の前にキュルケとタバサがいた。泣いていた。何でだろう? 「良かった、本当に良かった…」キュルケが抱き着いて来た。いきなりの行動に私の頭は真っ白になった。 「死んだかと思ったのよ…覚えてる?首を絞められて…」思い出した。あの時私は自分から出てきた何かの腕に首を絞められて意識を失ったんだっけ… 「ぎりぎりのところで先生があいつを倒したの。貴女の叫んだのがヒントになってね…」 私はハッとして自分の身体を見た。起伏のない胸板は相変わらずだが、白い手、そして何より長い桃色のブロンドの髪。 「元に…戻ったの…?」「ええ。ただ…」「ただ…?」 話の先は分かっていた。だが、言いたく無かった。 「ギーシュとマリコルヌは戻れなかったの。」 ギーシュはあいつに殺されて、マリコルヌの身体にマリコルヌの魂は戻れなかったから…とキュルケは悲しそうに言った。 ルイズは俯いた。二人が死んだのはあいつのせいじゃない。あいつを喚び出してしまった自分のせいなのだ。私が二人を殺した… 二人の遺族や友人にどう謝ればいいのだろう。何をしても許してもらえるとは思えない。 「貴女のせいじゃない」 タバサが静かに言った。 「…タバサ…」 「貴女はあいつを喚んだけど、誰かが犠牲にならなくては倒せなかった。」 それに倒したのは貴女だから借無し、と付け加えた。ルイズは小さく、ありがとう、と言った。 後で聞いた話だが、私はあの日から二日も目を覚まさなかったらしい。その間、キュルケとタバサが付きっきりで介抱してくれていたそうだ。 そして目が覚めてから三日が経った今、私はミスタ・コルベールと親友二人に見守られながら、ルーンを唱えた。 また爆発するだろう。だが、きっと中からは一人の少年が現れるに違いない。そして紆余曲折を経て、私と彼は恋に落ちるだろう。 そんな気が、した。 使い魔の鎮魂歌-fin