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『わらしべまりさ』 9KB 誤解 野良ゆ 現代 はじめからこういう話を書けばよかった あるところに、一匹の薄汚れたまりさがいました。 自慢の帽子は汚れてくたびれており、肌は汚水が染みこんだ上にがさがさ。 日々の食事は生ごみで、その体からは染み付いた生ごみのひどい匂いがしています。 このまりさは、ありふれた街野良でした。 「まりさみたいなまちのらはこのせいかつからぬけでられないんだぜ。……なら、ここでまんぞくするしかないんだぜ」 いつ道路のしみになるか分からない生活。 そのなかで僅かなゆっくりをえようともがく、よくいる薄汚いゆっくりのうちの一匹でした。 そんなまりさが日々の糧を得ようと頑張ったはいいものの、結局駄目だった帰り道。 まりさは道端で花を見つけました。 「ゆゆ!おはなさんだぜ!」 緑に乏しい都会では、甘い匂いと味のする花はごちそうでした。 そんな花が道端に落ちている。 まりさは頑張った自分への、ゆっくりの神様からのご褒美だと考えました。 「さっそくむ~しゃむ~しゃするんだぜ!もぐもぐ……固いんだぜ」 茎の部分をかじると、明らかに食べ物ではない硬さが歯にあたりました。 この花は造花で、茎に使われていたワイヤーが歯にあたったのです。 まりさは何度か茎をかじってみたり、花びらを口にしてみたり。 そうしてでた結論は、これが食べ物ではないということでした。 「なんなんだぜ、このおはなさんは。……まあ、せっかくだしもらっていくのぜ」 たべられないとはいえ、せめてもの収穫。 そう考え、帽子に入れようとしましたが入りません。 仕方が無いので、口に加えて跳ねてゆきました。 暫く行くと、知り合いのありすに出会います。 「あらまりさ、とかいはなおはなをもってるのね!きょうのしゅうかくかしら?」 「そうなんだぜ。でも、たべられないおはなさんなのぜ」 「たべられないおはなさんなんてはじめてきくわ。でも、とかいはなおはなだわ……」 ありすは少し考え、まりさに言いました。 「ねえまりさ、そのおはなさんをこうかんしてくれないかしら?」 「こうかん?」 「ここでちょっとまっててちょうだい」 ありすはまりさを置いて、どこかへと跳ねてゆきました。 十分ほどして、ありすは口に枝を咥えてもどってきました。 涎をたらして寝ているまりさを起こして、ありすが頼みます。 「このえださんとこうかんしてくれないかしら?」 それは、マタタビの枝でした。 まだ花が付いています。 「きょうひろったのよ。どうかしら?」 「ほんもののおはなさんだぜ!もちろん、こうかんするんだぜ!」 食べられぬ花より食べられる花。 すぐにまりさは、造花をマタタビの枝と交換しました。 嬉しそうなありすと分かれ、マタタビを口に咥えてまりさは跳ねます。 「まさかごはんにかわるなんておもってもみなかったんだぜ。きょうはついてるんだぜ!」 調子づいたまりさは、少し遠回りして家に帰ることにしました。 このマタタビがもっとおいしいものにかわる。その期待からです。 その期待に答えたのか、ちぇんと出会いました。 「ま、まりさ!そのえださんはどうしたの!」 「どうって、ありすとこうかんしたんだぜ」 「すっごくゆっくりできるにおいがするんだよ~!わかるよ~!わかりすぎるよ~!」 ちぇんは猫のようなゆっくり。 そのせいか、マタタビの匂いにしあわせ~を感じたのでしょう。 頬がゆるみ、だらしない顔になっています。 「おねがいだよまりさ!そのえださんをゆずってほしいんだね~!わかってね~!」 これだけ欲しがっているなら、向こうも何かいいものを譲ってくれるかもしれない。 そう思って、まりさは話を持ちかけてみました。 「なら、なにかとこうかんしてほしいんだぜ。なにかあるのぜ?」 「わかったよ~!これをもっていってほしいんだね~!」 ちぇんが帽子を探ると、チョコレートが二つ出てきました。 店で売っている、安い小さなブロックチョコでした。 それでも、野良では味わうことが奇跡に近い、極上のあまあまです。 「あまあま!ほんとうにいいのぜ!?」 「いいんだよ~!そのえださんはあまあまよりゆっくりできるんだね~!はやくちょだいねえ~!」 まりさはちぇんにマタタビを渡すと、急いでチョコレートを帽子に入れます。 突然あまあまを手に入れたことと、ちぇんの余りのだらしない顔に怖くなって、足早にそこを立ち去りました。 「まさかたべられないおはなさんがあまあまになるなんて、すごいんだぜ!」 まりさは思いました。 思いつつ、そのまま口に出しました。 「こうかんすれば、いまもってるものとはべつのものがてにはいるんだぜ!おまけに、どんどんすごくなっていくんだぜ!」 あまあまだけでもすごいが、もっとすごいものはなんだろう。 そんなことを考えながら、おうちへと跳ねてゆきます。 その途中で、赤ゆっくりの鳴き声が聞こえました。 「んん?なにかあったのぜ?」 気になったまりさは、鳴き声の方へと向かって行きました。 そこには、れいむと赤れいむがいました。 このれいむ、最近捨てられて野良になった元飼いゆっくりであり、飼い主が外し忘れたのかバッジがついたままでした。 「れいむ、どうしたのぜ?」 「まりさ!……おちびちゃんがあんよをけがしちゃったんだよ」 「ゆぇぇぇん!いちゃいよぉおおおおおお!」 赤れいむはあんよを切っており、そこから中身のあんこが少し出ています。 先程の鳴き声は赤れいむのものであり、あんよが切れた痛みで泣いていたのです。 「あまあまがあればけがさんもなおるのに……」 れいむは昔、飼い主のお兄さんに怪我を治してもらったことがありました。 そのとき怪我に塗ってもらったのが、『とくべつなあまあま』でした。 それは濃い砂糖水と小麦粉を混ぜたもので、お兄さんから『とくべつなあまあま』だと教えられていたのでした。 「ゆゆ?まりさ、あまあまのにおいがするよ?」 帽子に入れていたチョコレートの匂いが、外に漏れてれいむに届いたのでしょう。 まりさはしまったと思いましたが、同時に好奇心が湧いてきました。 このれいむは、あまあまを一体何と交換してくれるのだろうと。 「たしかにあまあまはもってるのぜ」 「ほんとう!?れいむのおちびちゃんにちょうだいね!」 「なら、こうかんなんだぜ。あまあまよりすごいものをださないとだめなんだぜ」 「あまあまよりすごい……れいむ、なにももってないよぉ。おねがい、あとでおれいをするからあまあまをちょうだいよ!」 「ゆあぁ~ん?なにいってるんだぜ!いまださないとだめなんだぜ!べつに、まりささまはこうかんしなくてもいいんだぜ?」 まりさはふんぞり返り、見下した目でれいむを見ます。 れいむは悩んだ末、交渉を持ちかけました。 「なら、れいむのばっじさんをあげるよ!たいせつなものだけど、おちびちゃんのいのちにはかえられないよ!」 「ばっじぃ~?」 れいむは自分のおかざりについていたバッジを取り外して差し出しました。 それは白地に赤い変な模様がついた、変なバッジでした。 金や銀、銅がバッジの大半を占めており、このようなバッジは珍しいものでした。 まりさは考えます。 バッジを手に入れるということは、飼いゆっくりになれるということではないのか? 飼いゆっくりは皆バッジを付けている、ならバッジを手にいれた自分は飼いゆっくりになれる。 飼いゆっくりなら今の生活を抜け出せる。 あまあまなんて、人間の奴隷がいくらでも持ってくる。 なら、一口で済むようなあまあまなど、どうでもいい。 そうだ、自分は飼いゆっくりになるのだ。 そして、帽子の中からチョコレートを一つだして言います。 「これがあまあまなのぜ。れいむ、ばっじさんをよこすのぜ」 「ちょこれ~とさん!……わかったよ。さよなら、れいむのばっじさん」 まりさはれいむが差し出したバッジをひったくり、チョコレートを投げ渡しました。 そのまま、浮かれた気分でその場を立ち去ります。 「ついに、ついにこのせいかつからおさらばなんだぜ!まりさはのらからぬけだしたんだぜ!」 あまあまが手に入っただけでなく、飼いゆっくりのバッジまで手に入った。 なら、次に手に入るのは、このバッジと引き換えのしあわせ~な生活。 帽子にバッジをつけて、まりさは幸せな未来を妄想しながら跳ねます。 しかし、何かにぶつかってしまい、後ろへと転がってしまいます。 「ああ?なんだ、野良ゆっくりか」 ぶつかったのは、人間のお兄さんの足でした。 お兄さんはまりさへと向き直り、呟きます。 「気がたってる時にぶつかってきやがって。潰してやろうか」 潰す。 そう聞いて、まりさがはねおきます。 まりさはおにいさんにバッジをみせつけて言いました。 「まりさはかいゆっくりなんだぜ!!かいゆっくりにはやさしくしないとだめなんだぜ!」 「馬鹿かお前。お前みたいな汚いのが……おいお前。そのバッジをどこで手に入れた!」 お兄さんはまりさの帽子からバッジをむしり取ります。 バッジを奪われ、まりさは飛び跳ねて抗議しました。 「かえすんだぜ!それはまりさのばっじさんなのぜ!」 「黙れ!これはうちのれいむのバッジだ!この薄汚い野良が!」 お兄さんが何か言っていますが、まりさには聞こえません。 返してくれないお兄さんに対して、言葉を続けます。 「ばっじさんがほしいならこうかんなんだぜ!まりさをかいゆっくりにするのぜ!それでこうかんなのぜ!」 「何ふざけたこと言ってやがる!この……」 お兄さんは合点が言ったような顔をしました。 そして、まりさに言います。 「わかった、交換してやろう」 「ゆっ!わかればいいんだぜ!」 「れいむと同じ苦しみを受けて死ね!」 まりさが受け取ったのは、全体重をのせたお兄さんの踏みつけでした。 このお兄さん、飼っていたれいむが野良と番になり、それに怒ってれいむを追い出しました。 ですが考え直し、番共々飼ってあげようとれいむを探していたのです。 そこに現れたこのまりさ。 帽子には白地に赤い“れ”の文字。 れいむの“れ”を書いた、お兄さんの手作りバッジでした。 お兄さんは一目見てわかりました。 こんなにセンスのないバッジが二つあるわけがない、これはれいむのものだと。 そして確認すると、確かにれいむの登録コードが印字されていました。 野良がバッジをもっているということは、きっとこの野良に殺されたか、そうでなくても生存は怪しい。 れいむを殺された恨みを込めた一撃でした。 ● わらしべ長者というおはなしがあります。 偶然手に触れたわらしべが、どんどんいいものに交換できていくというおはなしです。 ただ、いいものに交換できたのは、双方の立場が対等であり、お互いが望んだ物だからこそ。 もし、まりさが欲を出さずにチョコレートをあげていればどうなったのか? 交換相手をゆっくりにとどめ、バッジを他のゆっくりに譲っていればどうなったのか? それは、誰にもわかりません。 ただ一つ言えるのは、分不相応な行いは不幸を生むということでしょう。 ○ 「anko2775 どうあがいても足りねえじゃねえか」を投稿してすぐに矛盾を指摘され、 「こんなんじゃ、満足して年越しできねえぜ……」と考えて勢いで書きました。 最後にありますが、わらしべ長者のお話です。多分ゆっくりならこうなるでしょう。 設定話なんかより百倍書きやすいわ!もうこっちで行こうかな。 しかしまあ、「anko2638 優秀さとは状況によって~」でも同じ失敗したのに、どうしてまたやるかね俺は。 投稿済み作品 anko2549 箱庭のゆっくり anko2621 人が見たら飼うとは言わないだろうな anko2638 優秀さとは状況によって、万華鏡のように姿を変える anko2705 ままごとには変わらないがな anko2775 どうあがいても足りねえじゃねえか (修正版有り)
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『まりさと草野球』 2KB 虐待 小ネタ やきう 快音が響いた。 打球の行方を見届けるまでもなかった。 僕はグローブを地面に叩きつけた。 敵チームの四番打者が放ったボールはフェンスをあっさりと超え、その向こうの川に吸い込まれていった。 相手ベンチが沸いた。 草野球とはいえ、負け投手になるのは癪だ。 チームメイトは慰めてくれたが、勝負事にこだわる僕は悔しくて悔しくてたまらなかった。 僕はどうしようもなくイライラした頭を冷やそうと、さっきのホームランボールが沈む川沿いで一人座っていた。 何が駄目だったのか、アレだろうかコレだろうかと考えていると、後ろから声がした。 「に……にんげんさん……」 苛立ちが収まらないまま振り向くと、そこには一匹のゆっくりまりさが居た。 僕が呆気にとられていると、まりさはおずおずと僕にこう言った。 「やきゅうさんでまけちゃったのかぜ…?」 どうやらこいつはこの河川敷の球場の近くに住んでいるらしい。 人間がやっているのが野球という遊びだということを知っているみたいだった。 「まけちゃってもつぎがあるのぜ!にんげんさん!」 僕を励ましているのか。僕を気遣うまりさの表情を見て、僕の心にある感情が沸き起こっていた。 『……。』 『……そうか。』 『僕は次も頑張れる自信がないんだ。僕は自分を信じられない……。』 「だいじょうぶなのぜ!にんげんさんならつぎはかてるのぜ!」 『本当に?』 「ほんとうなのぜ!」 『本当に僕を信じてるのか?』 「もっちろん!しんじてるのぜ!」 『そうか。』 僕は立ち上がり、まりさを持ち上げた。 「ゆゆ?なにしてるのぜ?」 『まりさ、僕は自信を取り戻したい。もしまりさを川の向こう岸に投げてまりさが無事向こうへ渡れたら、僕は自信を取り戻せると思う。』 「ゆっ……?」 『危険だが、俺は自分を信じてまりさを向こう岸まで投げる。まりさも、俺を信じてくれないか。』 「ゆゆぅ…。」 『まりさ。僕はまりさのためにも、自分自身を取り戻したいんだ。励ましてくれたまりさのためにも。』 「……わかったのぜ。まりさは、にんげんさんをしんじるのぜ。」 『よし……いくぞ!うおおおおおお!!』 僕は全力でまりさを投げた。まりさは綺麗な放物線を描いて飛んでいく。 「おそらをと」ぽちゃん……。 素人がこんなデカイ球体を川の向こう岸まで投げられるわけねーだろ。川幅50mだぞ、50m。 万が一届いたとしても饅頭が無事で済むわけねーよ。 あーむかつく。ゆっくりごときに慰められるほど落ちぶれてないっつの。 しかし最近よくボール無くなるのはこいつらのせいか。 先月ガキどもまとめてティーバッティング用の球にしてやったのすっかり忘れたのか。さすが餡子脳だ。 今日にでもまたメンバー総出で「球拾い」するか。 ストレス解消がてら丁度いいだろ。 『…ゆっくりしていってね!!』 「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」 試しに叫んでみると、草むらのそこかしこから返事が聞こえてきた。 練習用のボールには困らなそうだ。 おしまい
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『まりさの誕生日』 6KB 愛で 日常模様 飼いゆ 都会 愛護人間 独自設定 19作目 今度は春 誕生日ネタ きっと愛でのはず 「ゆっゆ~♪ゆっゆっゆゆ~♪」 ある春の日、まりさはご機嫌だった。お日様はぽかぽか、絶好の外出日和だ。 道路を跳ねるあんよも軽く、急いで履いた靴さんが脱げそうに成っている。 「おいおい、あんまり急ぐと危ないぞ!」 後ろではお兄さんが苦笑しながら見守ってくれている。そんな事は分かっている、ちゃんと自動車さんにも注意しているのだ。 「仕方が無いのぜお兄さん、今日はまりさの"誕生日"なのぜ!」 後ろを向いて叫ぶ、お兄さんも笑顔になった。 そのゆっくりした表情にまりさもゆっくり笑顔、そう今日はまりさの誕生日なのだ。 今日の朝お兄さんにそう告げられた、誕生日――はじめて聞く言葉だ、しかしまりさに告げるお兄さんの表情からとてもゆっくりした日だと分かった。 お兄さんに聞いてみると、まりさが生まれた日をお祝いする日らしい。良く分からないがそんな疑問はその後のお兄さんの言葉で吹っ飛んだ。 「そうだな誕生日だから……今日はまりさに公園でクレープを買ってやろう!」 クレープさん!いつも遊びに行く公園で時々売られているあまあまだ、よくお兄さんにお願いするが中々買ってもらうことが出来ない貴重な物だ。 「お、お兄さん本当なのぜ!?」 「あぁ、だからお昼頃になったら一緒に公園に行こうな」 「分かったのぜ、約束なのぜお兄さん!」 こうしてまりさはお兄さんと共に公園を目指しているのだ、もう少しでクレープさんである、まりさのあんよの動きも速くなる。 「ゆゅ、まりさ!ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ、れいむなのぜ!ゆっくりしていってね!」 ばったりと曲がり角でご近所のれいむに出会った。れいむもまりさと同じ銀バッジの飼いゆっくりである。 後ろには飼い主のお姉さんが居り、まりさのお兄さんと笑顔で挨拶をしている。 「れいむもお散歩なのぜ?まりさは公園に行くのぜ!」 「れいむもだよ!ゆふん、まりさ!れいむはきょう誕生日さんなんだよ!」 誕生日――れいむもそうだったのか、きっとれいむもお姉さんに公園でクレープさんを買って貰うつもりなのだ。 「れいむっ、まりさもそうなのぜ、お兄さんに公園でクレープさんを買ってもらうのぜ!」 「ゆぅ、まりさもそうなの!ゆっくりしているね!」 歩きながらお互いに笑顔、誕生日それはとてもゆっくりした日の様だ。 「ゆ、誕生日さんはとってもゆっくりした日なのぜ!」 「そうだね、誕生日さんゆっくりしていってね!」 「じゃあお宅もなんですね……」 「ええ、面倒ですがこの子達の事を考えると」 後ろではお兄さんとお姉さんがお話をしている。 「お兄さんお兄さん、誕生日さんはとってもゆっくりしているのぜ!」 「はは、まりさ、そう言う時は"誕生日おめでとう"って言うんだよ!」 「ゆ、そうなのぜ!?」 お兄さんがまりさに教えてくれた。そうか……誕生日はおめでとうなのか。 れいむとまりさが誕生日だから、 「れいむ、誕生日おめでとうなのぜ!」 「まりさ、誕生日おめでとう!」 れいむも理解したのか笑顔で返してくれる。 もう少しで公園だ、公園に着いたらゆっくりしたクレープさんである。 「ゆっ、まりさ!ちぇんがいるよ!」 れいむが道の先を指して言う、そちらに目をやるとご近所のちぇんが飼い主のお姉さんに抱っこされながらこちらに向ってきている。この方向どうやら公園からやってきたようだ。 「きっとちぇんも誕生日だったのぜ!」 「ゆぅ、じゃあちぇんにも誕生日おめでとうだね!」 「そうなのぜ、ちぇーん誕生日――」 まりさは固まった、お姉さんに抱かれて通り過ぎたのは間違いなくご近所のちぇんである。しかしちぇんはまりさに気が付く事無く涙を流して居た。 すれ違うちぇんのお姉さんもお兄さん達に会釈だけして行ってしまう、お兄さん達も同じ対応だ。 「ほら、まりさ!すぐに公園だぞ、クレープだぞ、急ごうな!」 「れいむも負けちゃダメよ!」 気が付くと目の目に公園の入り口がある、さぁクレープさんだ。しかし何故かゆっくり出来ない物を感じる。 いつもは遊ぶのが楽しみですぐに飛び込んでしまう公園の入り口、しかし今はそれがまりさ達を拒むようにゆっくり出来ないものに纏っているのだ。 「ゆぅ、まりさ……れいむ何だかゆっくりできないよ!」 同じように、それに不安を感じながらも中に入る。普段はまりさ達がやってくると現れる公園の野良達も今日は姿を見せない。 一体何があったのだろうか、 「ほらまりさ、クレープさんはあそこだぞ!」 お兄さんが指差したのは公園の中央に陣取っている大きな白いテントだった、まりさも初めて見るものである。 テントからは確かに甘い匂いが漂っている、しかし本来ゆっくり出来るそれに何故かまりさはゆっくり出来なかった。 「お、お兄さん!まりさ何だかゆっくり出来ないのぜ!」 「ほらほら、そんな事言うなよ、クレープが待っているぞ!じゃあすいませんここからは別行動で!」 お兄さんがまりさを抱え上げてしまう、ゆっくりと白いテントが近づいてくる。 少しずつ強くなる甘い匂い、しかしそれに比例してゆっくり出来ないものも強くなってくる。 何だろうこのゆっくり出来なさ、昔どこかで感じた気がする。 「お兄さん!まりさゆっくり出来ないのぜ。ここは嫌なのぜ、誕生日さんはどうなったのぜ!?」 「クレープは少し待ってな!あ、すいません予約している者です、えーとこれで!」 白いテントに入るとお兄さんは同じように白い人間さんに何かを渡している。 ここがクレープを買うところだろうか、いや前に見たクレープのお店のお兄さんじゃ無い。 「はい、結構です。では奥に進んでください!」 「みょみょおおおおおおん!」 その時奥からみょんの悲鳴が聞こえた。ゆっくり出来ない悲鳴だ。 「お兄さんここは嫌なのぜ、まりさはお家に帰るのぜ!」 「ちょ、ちょっと待ってな、すぐに帰れるから!」 体を振ってイヤイヤするがお兄さんが下ろしてくれる事は無い。 奥に進むと灰色の台と、別の白い人間さんが立っていた。 「はい、×××番さん。まりさちゃんですね、じゃあそこに乗せて押さえてください!」 「やめるのぜ!お兄さんやめるのぜ!」 「ほらまりさ!すぐに終わるから我慢するんだ!」 嫌がるが台座に押さえられてしまう、 「はい、じゃあ少しだけチクッっとしますよ~!」 まりさの背中に何か冷たいものが当たり、鋭い痛みと共に体の中に入ってくる。そして体の中にも冷たいものが広がる、ゾクリッ、染みる感覚。 「ゆぅゆわあああああああああ!」 まりさは気を失った。 「ゆぐ、ゆぐ、お兄さん酷いのぜ!」 まりさは泣いていた、目の前に有るのは心待ちにしていたクレープさん。夢にも見たあまあまを口に入れてむーしゃむしゃするが餡子の奥から沸いてくる悲しみはその程度では癒えない。クレープさんは涙の甘みがした。 「だから悪かったって、でもまりさの為に必要な事なんだよ!」 「予防注射って言ってな、まりさが悪い病気に成らない為にしなきゃいけないんだ。まりさだって嫌だろう、ゆカビとかゆ下痢とか!」 「それでも痛かったのぜ、ゆっくりできなかったのぜぇ!」 お兄さんに食って掛かるが、お兄さんは笑顔でそれを受け流している。 こんなものが誕生日だったのだろうか、なんてゆっくり出来ないのだろう。こんなものならまりさはもう要らない。 「ゆぐぐ、お兄さん、まりさ誕生日さん嫌いなのぜ。まりさはもう誕生日さんにはお外に出たりしないのぜ!」 「分かった分かったじゃあクレープを食べたら帰ろうな!」 まりさの宣言にお兄さんは一瞬ぽかんとした表情になったがすぐに笑顔に戻った。 クレープさんを食べ終えたまりさは、久しぶりのわがままを言ってお兄さんに抱っこして貰う。 帰りには同じようにお姉さんに抱っこされたれいむにも出会った。 れいむも涙目であった。まりさも涙を堪える、クレープさんをむーしゃむしゃしてもまだあの時の痛みと気持ち悪さが残っているのだ。 帰り道、まりさを抱っこしているお兄さんがぽそりと言った。 「でもなぁまりさ、お前去年も一昨年も同じ事言ってたぞ……」 終わり 公民あき 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございました。 誕生日ネタと見せかけて春の予防接種の話でした。 前作の様にゆっくりに病気が広がっていたら飼いゆっくり用にこんなのが有っても良いと思います。 ちなみにこのお話の設定はこの話の中だけの物です。 過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/2942.html
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『みえないまりさ』 21KB いじめ 不運 家族崩壊 自業自得 野良ゆ SS二作目です 読みにくかったらごめんなさい 誤字脱字があるかもしれません 解りにくい表現が多いかもしれません 適当にでも読んでいただけたら嬉しいです 独自の設定が含まれます ネタ被りご了承下さい お祓いあき、と名乗らせていただきます 【みえないまりさ】 街の自然公園、ここにはゆっくりの群れがある この群れの長はぱちぇりー 群れの掟として、人間に関わる事を禁にしている そんな群れで起きた一つの偶然・・・ ある日の昼間、群れの子ゆっくり達が集まって遊んでいた。 メンバーは、まりさ、れいむ、ありす、ぱちぇりー、ちぇん、の5匹 どうやら、今日はかくれんぼをするようだ。 「おにはれいむにきまりね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「さっそくかくれるんだぜ!」 「むきゅ!れいむはたくさんっかずをかぞえるのよ」 「ゆっくりかぞえるんだね、わかれよー!」 れいむを鬼にして、4匹はかくれ始める。 「ゆっくりかぞえるよ!いち!に!たくさんっ!!もーいいかい!!」 「むきゅ!れいむ、もっとたくさんっ!をたくさんっ!かぞえるのよ!!」 「ゆっくりりかいしたよ!いち!に!たくさんっ!たくさんっ!!たくさんっ!!!」 再び数え直すれいむ、その間に子ゆっくり達は各々隠れる場所を探している。 「ありすはここにかくれるわ!」 「ちぇんはここにするんだよー!」 「ぱちぇはここにするわ!」 3匹は隠れる場所を決めたが、まりさがまだ決まっていなかった。 「ゆ!まりさは・・まりさはここにするよ!!」 まりさが隠れた場所は、むしられた草や落ち葉、切り取られた小枝が集められた山の中だった。 かくれんぼを始めてそれなりの時間が過ぎたが、結局れいむに見つけられたのはぱちぇりーだけだった。 ありすもちぇんも、待ちきれずに自分から出てきてしまった。 「ゆ!ありすもちぇんもみつけたよ!れいむ、さがしものじょうずでごめんねっ!!」 「なにいってるのよれいむ!」 「れいむのさがすのがおそすぎるからみにきたんだよ、わかれよー!!」 「むきゅ?まりさはどこにいるの?」 まりさだけがまだ見つかっていない、きっとまだ隠れたままなのだろう。 4匹は協力してまりさを捜すことにした。 その頃まりさはというと、草の中で眠ってしまっていた。 「まりさぁぁ!どこにいったのぉぉぉ!?」 「いつまでもかくれているのは、とかいはじゃないわよぉぉ!!」 「はやくでてくるんだねぇぇ、わかれよぉぉぉ!!」 「むきゅ・・・もうおおごえがでないわ・・」 4匹は大声を出して、まりさを呼んで回った。 「ゆ、なんだかさわがしいのぜ!」 4匹の声が耳に届き、まりさが目を覚ました。 かくれんぼが終わったから、出てくるようにと叫んでいる。 まりさは草の山からみんなの前に出る事にした。 ごそごそ・・・ 「ゆ!かくれんぼはおわったのぜ?まりさがさいごまでみつからなかったのぜ?」 草の山から這い出て、4匹に声をかけるまりさ。 「ゆ?まりさ?」 「むきゅ?こえはするのにすがたがみえないわ!」 「まりさ!すごいわ!いつのまにそんなことができるようになったの!?」 「どこにいるのかわからないよー!!」 「ゆ?なにをいってるのぜ?」 草の山から出てきたはずなのに、まりさの姿が見えていないらしい。 まりさの帽子や髪の毛には、溜まっていた草や落ち葉、小さな木の枝がくっついたままだった。 どうやらこの草や枝が、れいむ種の結界のような働きをしているようだ。 「まりさにこんなすごいとくぎがあったなんて、れいむしらなっかよ!!」 「きっとしょうらいは、むれのおさになれるかもしれないわね!!」 「ゆ!もっとほめていいのぜ!!まりさ、すごすぎてごめんなのぜ!!」 なぜ姿が見えないのか、まりさ自身にも他の4匹にも解らない。 原理は解らないが、まりさはとても気分が良かった。 「そうなのぜ!これで、かぞくのみんなをおどろかせるのぜ!!そうときまれば、まりさはさきにかえるのぜ!みんな、またなのぜ!!」 そういうと、まりさは4匹を置いて一足先に家に帰っていった。 「「「「ゆ?まりさぁぁ!?」」」」 残された4匹は、まりさが本当に帰ったのか解らず、再び騒ぎだした。 「まりさぁぁ!へんじしてねぇぇ!!」 「むきゅ、みえないからかくにんができないわ・・・」 『てめぇら、さっきからうるせぇんだよ!!』 「ゆぶっ!!もっと・・ゆっくり・・・」 「ゆ!?れ、れいむぅぅ?こんなのとかいいはじゃないわぁぁ!!」 『だから、うるせぇっつってんだろうが!だまれよ!!』 「この、いなかものぉぉ!!ゆべっ・・・」 「わ、わからないよぉぉぉ!!ぶぎょ・・・」 「えれえれえれ・・・・」 なんと、近くのベンチに座っていた青年に3匹は踏み潰され、1匹は中身を吐いて死んでしまった。 そんな事態になっていることを知らずに、まりさは家の近くにまで戻ってきた。 するとダンボールの家の前で、両親のまりさとれいむが、妹の赤まりさと赤れいむ達と遊んでいた。 「そろーり!そろーり!そろーり!」 まりさはゆっくりと家族に近付き、脅かすつもりだ。 声が出ている事に全く気付いていない。 「ゆ!おちび・・・あんなところでなにをしてるんだぜ?」 「ゆ?どうしたの、まりさ?」 「おちびがあんなところで、そろーり!そろーり!してるんだぜ」 親まりさが子まりさに気付き、れいむもつられて子まりさの方を向いた。 「ゆ!きっと、けっかいっ!をはってみえなくなってるつもりなんだね!れいむたちをおどろかせるつもりなんだよ!!」 れいむ種だからなのだろうか、れいむには子まりさがしようとしてることが解ったようだ。 「そうなのぜ?だったら、きづかないふりをしてあげるのが、おやのやさしさなのぜ!!」 「「おちょーしゃん、おきゃーしゃん、どうしちゃの?にゃにかみえりゅにょ?」」 赤ゆっくりたちも子まりさの方をみるが、その姿は見えていないらしい。 どうやら今の子まりさは、成体ゆっくりには見えるが、子ゆっくり以下には見えない中途半端な状態のようだ。 「なんんでもないんだぜ!」 「そうだよ!さぁ、ゆっくりあそぼうね!」 親ゆっくりは子まりさに気付いてないフリをして、再び赤ゆっくりの相手を始めた。 「そろーり!そろーり!」 すこしずつ近付いた子まりさは、すぐそこまで来ていた。 「ゆ・・・そろそろくるよ、まりさ・・・」 「・・・なのぜ!」 「そろーり!そろーり!・・・・わぁぁぁぁぁ!!なのぜ!!!」 十分に近付いた所で、大声を出す子まりさ。 「ゆわわ!おどろいたのぜ!!」 「ゆゆゆ~!?おちびちゃん?れいむ、ぜんぜんきづかなかったよ!!」 子まりさの声を合図に、大げさに驚いてみせる親2匹。 「「ゆゆ?おねーちゃんにょこえがきこえりゅにょに、しゅがちゃがみえにゃいよ!!」」 子まりさの声に、本気で驚く赤ゆ2匹。 「ゆっふっふ~!おどろいたのぜ?おどろいたのぜ?」 そんな家族を見て、子まりさは心底上機嫌だった。 そして親れいむから、みんなに見えなかったのは結界の効果だと教えられるのだった。 しかし、れいむの説明には肝心な部分が抜けていた。 偶然、子まりさが見つけた結界は未完成だという事。 見えなくなるのは子ゆっくりなどの、成長きってないゆっくりだけで、成体のゆっくりには見えていること。 そんな事に気付きもせず、子まりさの中では更なる悪戯心が芽生えていくのだった。 次の日、子まりさは公園の広場に居た。 昨日と同じように、帽子や髪の毛には、草や葉や小さな枝が付いている。 昨晩、親れいむに全部取り払われてしまったので、先程再び草の山に入り、新たに付けたものだ。 そんな状態の子まりさが見つめる先には、ベンチに座ってソフトクリームを食べる少女の姿があった。 「にんげんにも、まりさがみえないのかためしてみるのぜ!!そろーり!そろーり!」 のっそ、のっそと少女に近付き始める子まりさ。 『わ・・やだ、何あのゆっくり・・・』 勿論子まりさが、人間に見えなくなるわけもなく、少女からは草や枝をくっ付けた、ただの汚いゆっくりにしか見えない。 はずだった。 「そろーり!そろーり!」 『・・・あぁ・・なるほど、れいむ種の結界のつもりなのね・・フフフ』 少女は子まりさの意図に気付き、あえてそれに乗ることにしたのだ。 そうこうしてる間に、子まりさは少女の足元までたどり着いた。 「そろーり!そろー!・・・ゆわぁぁぁぁ!!なのぜぇ!!!」 子まりさは、家族の時と同様、大声で少女を驚かせた。 『きゃーっ!誰もいないのに声だけ聞こえるわ!驚きすぎて、永遠にゆっくりしちゃうところだったよ!こわ~~い!!』 少女はわざとらしくそう叫ぶと、手に持っていた食べかけのソフトクリームを子まりさの目の前に落とし、大げさに走り去っていった。 「ゆ!こ・・これは、おもったいじょうのこうかなのぜ!!まりさはとんでもない、かみっすきるっ!をみにつけてしまったのぜぇぇ!!・・・ゆ?」 思いがけない成果に、驚いている子まりさ。 そんな子まりさが、目の前に落ちているソフトクリームに気が付いた。 「ゆ!これは、あまあまさん!?・・・ぺーろ、ぺーろ・・・・し、し、しあわせぇぇぇ!!!!」 生まれて初めて食べたソフトクリームの味に、子まりさはうれしーしーを流しながら絶叫した。 「こんなしあわせ、はじめてなのぜぇぇ!!ぺぇーろ!ぺぇーろ!」 子まりさがソフトクリームに夢中になっていると、背後から近寄る影があった。 「おちび!」 「おちびちゃん!!」 それは、子まりさの両親のまりさとれいむだった。 この2匹、実は子まりさが少女に大声を出す少し前から、様子に気付き見ていたのだ。 しかし人間に関わりたくなかった為に、見つけた当初は子まりさを見捨てるつもりだった。 だが、子まりさの予想外の大勝利を見て、手のひらを返すように駆け寄ってきたのだ。 「ゆ!おとーさん、おかーさん!!まりさ、にんげんをおいはらったのぜ!!」 「みていたのぜ、さすがはまりさのこどもなのぜ!!」 「れいむににて、せんっりゃくをねるのもじょうずだね!!」 「ゆ!らくっしょう!だったのぜ!!」 子まりさは戦果に酔いしれ、親まりさは自分の事のように喜んでいた。 「ゆゆ!!そうだよ!れいむがいいことをおもいついたよ!!」 「ゆ?なんなのぜ、れいむ?」 そんな中、れいむが何か思いついたらしい。 「おちびちゃんだけでも、にんげんがえいえんにゆっくりするところだったんだよ!れいむたちがちからをあわせれば、せったいににんげんを 、えいえんにゆっくりさせられるよ!!」 「「ゆ、ゆゆ!?」」 「そうすれば、にんげんがひとりじめしているあまあまも、たくっさんっ!とりかえせるよ!!」 「そうなのぜ!これは、せいっせん!のまくあけのときなのぜ」 「ゆ!まりさもやるのぜ!にんげんから、すべてのあままをとりかえすのぜ!」 やはりれいむが・・・いや、ゆっくりが考え付くような事などその程度なのだろうか。 親子まりさも乗せられて騒ぎ立てていた。 「じゃあ、さっそくけっかいっ!をはりにいこうね!!」 「おちび!まりさたちを、ゆっくりいそいであんないするのぜ!!」 「わかったのぜ!まりさにつづくのぜ!!」 そんな一家の様子を離れた場所から、先程の少女が笑いながら見ていたのだった。 同日、PM12 30頃 公園のベンチに座って、コンビニ弁当を食べている青年がいた。 『まったく・・せっかく休みだったのに呼び出しくらうなんて、ついてないよなぁ~』 ため息を漏らし、空を見上げながら弁当を突く。 休日出勤だったようで機嫌もあまり良くないようだ。 『あぁ、かったるい・・・ん?』 弁当に向けていた視線を芝生に移した青年の目に、3匹のゆっくりが映った。 「「「そろーり、そろーり、そろーり」」」 からだ中に草や葉を付けた、小汚いゆっくりが地面を這っている。 あの親子だ。 『なんだ、あのクソ饅頭は・・』 「「「そろーり、そろーり」」」 明らかにこちらに向かって進んで来てる。 『・・・ちっ』 一度目に入ったら気になる、落ち着いて弁当が食べられない。 「ゆ・・ゆぷぷ、ゆぷぷぷ・・」 「おちびちゃん、だめだよ・・わらったらきこえちゃうよ」 足元まで来た3匹は、青年を見たままニヤけていた。 『・・・・・』 青年はそんな三匹をガン見しながら、苛立ちを募らせていた。 「あのにんげん、ぜんぜんこっちにきづかないのぜ!」 「おかーさん、だいじょうぶなのぜ!ていぞくなにんげんなんかに、いまのまりさたちはぜったいにみえないのぜ!」 「ゆ!そうだね、みるからにゆっくりしてないかおしてるし、こんなにんげんにれいむたちがみえるわけないよね!」 青年が黙っているのを良いことに、言いたい放題の親子3匹。 『・・・おい、おま「「「ゆわぁぁぁ~~~!!」」」・・・・』 我慢しきれず、声をかけようとした青年。 それをさえぎる様に、3匹のゆっくりが叫びを上げた。 「「「・・・・・・」」」 『・・・・・・』 1人と3匹の間にしばしの沈黙が流れる。 「ゆ!やったのぜ!にんげんが、えいえんにゆっくりしたのぜ!」 「まりさたちの、だいっしょうり!なのぜ!!」 「いまのうちだよ、にんげんのもってるあまあまを、ゆっくりしないでとりかえすよ!」 『・・・・・・』 三匹は青年が死んだと確信して騒ぎ出した。 しかし目当てだったであろう弁当は、青年が今もしっかり手に持っている。 「ゆ?でもこのにんげん、しんでもあまあまをはなしていないのぜ!!」 「とことんいじきたないにんげんだね!まりさ、こうなったら、たいあたりでにんげんをひっくりかえしてね!!」 「まかせるのぜ!しんだにんげんをたおすなんて、あさめしまえなのぜ!!」 「おとーさん、まりさもてつだうのぜ!!」 「おちびちゃん、とってもたのもしいよ!こんなおちびちゃんをもって、れいむはしあわせものだね!!」 『おい・・・』 「「「ゆ?」」」 ずっと黙っていた青年が口を開くと、3匹が声のした方にゆっくりと振り向く。 『ゆ?じゃねぇよ・・・つか、なにがゆわーー!だクソ饅頭!人の昼飯の邪魔しやがって!!』 「まりさぁぁ!このにんげん、まだいきてるよぉぉ!!」 「もっとびっくりさせないといけないんだぜ!!」 「「「ゆわぁぁ~!ゆわぁぁ~~!!ゆわぁぁ~~~!!!」」」 まだ生きてるが、もう一息だ。 そう思った3匹は、トドメと言わんばかりに叫びまくった。 だが、そんなことで人間が死ぬわけがない。 姿を消しているはずの自分達が、青年に見えている事態にも気付いていなかった。 『うるせぇ~よ、だまれ、このクソ饅頭が!!』 「ゆわぁぁ・・ゆべしっ!!」 「ま、まりさぁぁ!!」 あまりにうるさかったので、青年がまりさを蹴り飛ばした。 地面に顔からぶつかり、衝撃で歯が折れたのらしく、開いた口からボロボロと歯がこぼれ出た。 「どぼじで、まりざがごんなめに・・・」 『やっと黙ったか、クソ饅頭ども・・まったく、昨日のガキ共といい、ゆっくりは人に迷惑をかけることしか考えないのかよ!』 どうやら昨日子まりさと遊んでいた、群れの子ゆっくりを潰したのも、この青年だったようだ。 「ひ、ひどい・・ひどすぎるよぉぉ!どおしてこんなことするのぉぉぉ!?ゆっくりだっていきてるんだよぉぉぉ!!」 「そうなんだぜ!おとーさんがかわいそうなのぜ!!ゆっくりしないであやまるのぜぇぇ!!」 最近のゆっくり達は、どうやらこの手のセリフをよく言うそうだ。 『はぁ!?』 「はぁ?じゃないでしょぉぉぉ!?あやまってねぇぇ!!そしたら、もってるあまあまおいてさっさとしんでねぇぇ!!」 自分達の事は棚に上げて、青年に罵声を浴びせるれいむ。 まりさを蹴った謝罪をさせるだけでなく、食べ物の要求も忘れないれいむ。 いったいれいむの中では、まりさと食べ物のどちらが重要なのだろうか・・・。 『おいお前ら、最初オレに何しようとしたか言ってみろ、正直に言えたら沢山のあまあまが食べられるかもしれないぜ?』 「「びっくりさせて、えいえんにゆっくりさせようとしたよ!!」」 あまあまという言葉に、れいむと子まりさは釣られてしまった。 『人を殺そうとしておいて、被害者ぶるんじゃねぇよ!!』 「ゆぶげっ!!」 今度はれいむが青年にけられてしまう。 「おかーさん!!」 「で、でいぶぅぅぅ!!」 先に蹴られたまりさが、れいむに這い寄ろうとする。 『おい、親まりさ』 「ゆ?」 『こんな馬鹿げた事を考えたのは、お前か?』 「ゆ?」 『人間を驚かして、食い物奪おうと考えたのは、お前かと聞いてるんだよ!』 青年はまりさから、誰が発案者なのか聞き出そうとしていた。 「れ、れいむなのぜ・・・」 『ほう・・・本当か、クソガキ?』 「おかーさん、なのぜ・・・」 『そうなのか、れいむ?』 「ゆぐぅ・・・」 余程蹴りが聞いたのか、れいむも言い訳せず黙っていた。 『解った・・・じゃあ親まりさ、お前ら親のうち片方だけ潰れればそれで許してやる』 「「「ゆ!?」」」 青年の提案を聞いても、ゆっくりの頭ではなかなか状況が理解できない。 『お前ら親のどちらかが、責任を持って潰れろって言ったんだよ!!』 「・・・・・」 青年の発言に、子まりさは口を開けたまま固まっていた。 「ゆ!?そ、そんなこと・・・」 「まりさだよ・・・」 「ゆ、れいむ?」 「れいむのかわりにまりさがしんでね!!」 「ゆぅぅぅ!!?」 れいむ達ではなく、れいむの代わりに、である・・・ このれいむは、完全に自分が生き残ることしか考えなくなっていた。 『まりさ、お前が潰れろと番はいっているぞ?』 「なんでなのぜ!?れいむがいいだしたことなんだから、れいむがせきにんをとればいいんだぜ!!」 「こんなとき、かぞくをすくうのがまりさのやくめでしょ?」 「そんなこといって、れいむはじぶんがたすかりたいだけなのぜ!!」 「うるさいよっ!こんなにんげんいっぴきもたおせないくせに、えらそうにしないでね!!」 二匹の言い合いがおさまるわけもなく、時間だけが過ぎていった。 『おい、さっさと決めろよクソ饅頭・・・そろそろ昼休みが』 「うるさいのぜっ!!」 「くそにんげんはだまっててね!!」 『はぁ?』 言い合いに夢中になりすぎて、青年の提案の事を忘れてしまっている。 「れいむもかりをしてみれば、まりさにたいへんさがわかるのぜ!」 「なにいってるのぉぉぉ!?そんなゆっくりできないこと、れいむがするわけないでしょぉぉぉ!!」 『もういい、お前が潰れておけ・・』 「はぁぁ!!?れいぶぅぅぐょぇっ」 これ以上は付き合いきれない。 そう思った青年は、一気にまりさを踏み抜いた。 ちなみにまりさを選んだのは適当だ、別にれいむでも構わなかったが、たまたままりさになった。 『じゃあ、お前らでそれ片付けておけよ』 そう言うと、青年は足早に公園から出ていった。 青年にはこれから、午後の勤務が待っているのだ。 「ゆふぅぅ!!ゆふぅぅ!!・・・やっとうるさいまりさがだまったよ!!ゆ!?あのくそにんげんもいなくなってるよ! きっとれいむのけんまくに、おそれをなしてにげだしたんだね!!」 「おとーさん、どうしてこんなことに・・・」 子まりさが親まりさの亡骸にむかって呟いていた。 「・・・・・・もとはといえば、ぜんぶおまえのせいだよ!!」 「ゆ?」 「おまえがにんげんをおどかせてみせたから、れいむがこんなめにあったんだよ!!」 親まりさの死だけではれいむの怒りはおさまらないのか、その矛先は当然の様に子まりさに向いた。 「お、おかーさん?」 子まりさは自分の身に危機が迫っているのを解っていても、母親の放つ殺意にあてられ、恐怖で体が言うことを聞かず動けないでいた。 「おまえにおかーさんだなんてよばれたくないよ!」 「ゆぐ・・・で、でも・・」 「ごちゃごちゃいわないで、さっさとしねぇぇ!!」 「ゆびゅげっ!」 れいむは子まりさの上に飛び乗ると、何ども何ども飛び跳ねた。 既に子まりさは息絶えていたが、れいむはそれでも飛び跳ねるのを止めなかった。 「しねぇぇ!しねぇぇぇ!!しねぇぇぇぇ!!!」 そんなれいむの体にも異変が訪れた。 「ゆぎゃぁぁ!!れいむの、あましょうぐんもしっとするけがれなきあんよがぁぁぁ!!!」 青年に蹴られたダメージも重なり、飛び跳ね続けたれいむの足はついに破れてしまったのだ。 「いだいぃぃぃ!!だれがなんどがじでぇぇ!!でいぶをだずげろぉぉぉ!!!」 れいむは泣き叫びながら転がり回った。 転がるせいで傷口から餡子が漏れ出しているが、我を失っているれいむは気付きもしない。 すると、群れの長のぱちぇりーが側近のまりさとちぇんを連れてやってきた。 「れいむ!!」 「でいぶをだずげろぉぉ!!はやぐじろぉぉぉ!!!」 れいむは騒ぐだけで、ぱちぇりーたちを見ようともしない。 「むきゅ、しかたないわ・・・まりさ、ちぇん、れいむをおとなしくさせてちょうだい!」 「わかったのぜ!」 「わかったよー!」 ぱちぇりーが命令すると、まりさとちぇんは、れいむを黙らせるために死なない程度に体当たりを仕掛けた。 「むきゅ・・・おとなしくなったわね」 「ゆ・・・ゆふぅぅ・・・ぱ、ぱちぇりー・・どぼじで・・・」 まりさとちぇんに挟まれる形で、大人しくなったれいむはぱちぇりーを見ていた。 「さて、れいむ・・・あなたはどうしてむれのおきてをやぶり、にんげんさんにかかわったの?」 「ゆ、ゆ!?し、しらないよぉ!でいぶはにんげんなんかにあってないよぉぉ!」 「うそをつくななのぜ!」 「むれのなんゆんかが、れいむたちかぞくが、にんげんさんのまえでさわいでいるのをみてるんだよー!」 公園に住んでるゆっくりはれいむたちだけではない、騒げば目立つし見られても当然と言えよう。 「おきてをやぶったあなたはせいさいするわ!でもそのまえにりゆうをきいて、おなじようなことをするゆっくりをださないようにしないといけないわ! !」 「でいぶはわるくないよぉ!たすけてねぇ、せいさいはゆっくりできないよぉぉぉ!!」 「おさ、こんなやりかたじゃれいむははなさないのぜ!!」 「ちからずくできくんだねー!」 「むきゅ、だめよ!これいじょうきずつけたら、くちをひらくまえにしんでしまうわ!」 「まったく、めんどうなれいむなのぜ!」 まりさとちぇんはれいむに手を出さず、ただ睨み付けるだけだった。 れいむは、2匹が自分に手を出せないと気付いたのか、徐々に態度を変えてくる。 「ゆ、ゆふふ・・そうだよ、これいじょうれいむにいたいことしたら、れいむしんじゃうよぉぉ!!そしたらりゆうがわからなくなるよぉぉ!! わかったらさっさと、れいむのあんよをなおすためのあまあまをもってきてね!すぐでいいよっ!!」 「「ゆぐぐ!!」」 れいむの態度に苛立つまりさとちぇん、このままでは勢いでれいむをころしてしまいそうだ。 「むきゅ、こまったわ・・・」 『よかったら、わたしが教えてあげましょうか?』 「「「「ゆ!?」」」」 四匹に声を掛けてきたのは、最初に子まりさが接触した少女だった。 「に、にんげんさんごめんなさい、すぐにしずかにするわ・・・」 『いいわよ気にしてないから、それより、れいむに代わってわたしが理由を説明してあげましょうか?』 「むきゅ!?にんげんさんは、なにがあったかしってるの?」 『知ってるわよ、だってわたしもそのれいむの子供にあまあま取られたんだから』 「ゆ!?」 この一言でれいむもようやく、少女事を思い出した。 『それに、さっきあなた達が来るまでの間の事も、全部見てたのよわたし』 「ゆ!?それはほんとうなのぜ?」 そう言いながら、まりさはれいむに威圧してきた。 まずい、このままこの人間に全部話されてしまったら、自分は用済みになって殺されてしまう。 「やめろ、にんげぇぇぇん!!でいぶがせいっさい!されるだろぉぉぉ!!!」 『そんなの知らないわよ、れいむが悪いんだから自業自得だよ』 「うるざい、だまれぇぇぇぇ!!!ゆぶっ・・」 「だまるのはれいむなんだねー!!」 再び騒ぎ出したれいむに体当たりをして、黙らせるまりさとちぇん。 「むきゅ・・・にんげんさん、はなしてくれないかしら?」 『えぇ、いいわよ』 少女は話した。 れいむ達一家が身体中に葉や草をくっつけて結界を貼ったつもりでいたこと。 見えなくなったと思い込んで、人間を襲った事。 失敗して番のまりさが殺された事。 怒りがおさまりきらないれいむが、子まりさを殺した事。 「むきゅ・・そうだったのね・・・」 事実を知ったぱちぇりー達は少なからずショックを受けていたようだ。 だが、その3匹以上のショックを受けていたのがれいむだった。 「そ、そんな・・・にんげんにはみえてた?でもさいしょにおちびちゃんがおどろかしたとき・・・」 『あぁ、あれね?嘘よ、驚いたふりをして逃げてあげただけ、当たり前じゃない?』 少女のその一言が引き金になった。 うつむき震えるれいむが顔を上げて叫んだ。 「おまえの、おまえのせいだぁぁ!!おまえがみえないふりなんてしたからぁぁぁ!!!まりさを!おちびちゃんをかえせぇぇぇ!!!」 『言い掛かりもいいところね、あなたが余計な事考え付かなければそれで終わってたのに』 「うるざい!いますぐしねぇぇぇ!!しんでわびろぉぉぉ!!!」 れいむは叫びながら少女に飛び掛った。 まりさ達は対処できたが、あえて止めようとしなかった。 『はいはい、ゆっくりしていって・・・ねっ!!』 「ゆぶぎょぼ・・・・」 れいむが突っ込んで来るのに合わせて、力一杯蹴り上げる少女。 足の裂け目から勢いよく餡子が噴き出す。 返り餡を浴びても気にもしない。 蹴り上げられたれいむは、弧を描き地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。 もはやここからでは生きているのか、死んでいるのかも解らない。 『後始末任せるわね』 「むきゅ・・・」 『同属殺しが嫌で、れいむを止めなかったんでしょ?だったら後始末くらいはしても良いんじゃない?』 「わ、わかったわ・・・」 少女は公園の出口に向かって歩き出し、途中で足を止めた。 『あ、そうそう』 「「「ゆ!?」」」 『暇つぶし程度には楽しめたわ、ありがとねぇ』 「「「・・・・・・」」」 そう言い残すと、少女は二度と立ち止まることなく、公園から去っていった。 残されたぱちぇりー達は、人間と関わってはいけないと再認識したのであった。 おわり 無理がある設定や場面も合ったでしょうね^^; この話も、暇つぶし程度に楽しんでもらえたら幸いです。 今まで書いた話 anko3952 へんしんでゆっくり
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(ゆっくりが死んだり潰れたりしますが、虐待作品ではありません。可愛いまりさが好きな人だけ読んでね) ぱらまりさを作ろう 前編 作:YT ぱらまりさを作ろう。 名もなきお兄さんの一人である俺は、ある日そう思った。 ぱらまりさとは、もちろんゆっくりまりさの亜種のことだ。 ただしそれはまだこの世に存在しない。 たったいま思いついたのだから当然だ。 巷にはさまざまなゆっくりがあふれている。 可愛いやつ、ゲスいやつ、帽子に乗って水を渡るやつ、帽子に食べ物を集めるやつ、子供を生むやつ生まないやつ、胴のあるやつないやつ、 歌うやつや殻のあるやつや芸をするやつや畑を耕すやつや化けて出るやつやレイプしたりされたりするやつや踊ったり転がったり食べられたりペットボトルに入ったり……。 きりがないのでこの辺でやめておくが、そんな現代、普通のゆっくりを飼っても面白くない。 だから自分だけのゆっくりを作ろう、と思いついた。 世間には好き者が多いからどこかで誰かが同じようなものを作っているかもしれんが、まあ構わん。 俺の周りに今までいなかったんだから、俺史上初、ということでいいだろう。 そんなわけで元になるゆっくりを一匹買ってきた。 ゆっくりまりさ、昨日生まれたばかりというほやほやの赤ん坊だ。 ショップで寝ているところを袋に入れてもらったまりさは、うちへ帰って床に転がすと、ぷよぷよん、と震えて目を覚ました。 「ゆっ……ゆっ……ゆっくりしていっちぇね!!!」 イクスクラメーション三つ。よし、イキのいい元気な赤まりさだ。 今後のためもあるので指先でなでなでして、たっぷり懐かせてやった。 「よーしよーし、俺がお父さんだぞ。ゆっくりしていってね」 「ゆっ!? おとーしゃんがおとーしゃんだにぇ? ゆっくり!!!」 「なーでなーで」 「ゆーんゆーん♪ ゆっくりできるにぇ!!!」 ゆっくりフードとか買うのはだるいので、パンの耳を適当に口で噛んで、ペーストにした。 オレンシジュースを買うのももだるいので省略。その代わりに砂糖水を用意する。 それらを出すと、まりさは喜んで食べた。 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー☆」 小さな星がまわりでキラキラする。おお、ゆっくりのくせに魔理沙風味。生意気。 満足したようなので、今後の食事はパンの耳と砂糖水に決定した。楽でいいよな。 床に本を積んで、バリケードを構築。 一畳ほどのスペースを作って、ボールやパイプなどおもちゃになりそうなものを放り込んだ。 「ゆっゆっ、ゆっくちあちょぶんだにぇ!」 気に入ってくれたようで、小さなまりさは這いずったり転がったりして遊び始めた。 うんうんやしーしーもしてくれたが、ティッシュを数枚適当に敷いて、そこでするよう命令。 二、三度指で弾き飛ばしてしつけたらすぐ覚えてくれた。 「ゆっくりしちぇいっちぇね! おとーしゃん、ゆっくりあしょんで!!!」 そんなことを叫ぶまりさを適度に放置、たまに風呂に入れたりして、一週間。 「ゆっくりしていってね! おとーさん、ゆっくり!」 大人言葉になって、ぴょんぴょん跳ねられるようになったところで、いよいよ調教を開始した。 「うーす、ご飯だよまりさ」 「ゆっ? ごはんだよ! まりさゆっくりたべるね!」 まりさは喜んで跳んできたが、その姿は昨日までとは違う。 左右の三つ編みの先を、帽子の縁に安全ピンでとめてあるのだ。 俺はそれを見咎めて、言う。 「まりさ、どうした。三つ編みが帽子に引っかかっちゃってんぞ」 「ゆう、朝起きたらなってたよ。どうしてかまりさわかんないよ……」 困惑の顔になって左右にぷるぷる震えた。ふふふ、気づいてない気づいてない。 もちろんそれはまりさが寝ている間に俺がやったのだ。 ゆっくりまりさという生き物は、デフォルトで左側しか三つ編みがないが、それでは不便なので、右側にも三つ編みを作ってやった。 大サービスだ。 ついでに三角のてっぺんも少しだけ円形に切り抜いてあるが、これには気づいていないらしい。 「まあいい、とにかくご飯だ。食べるよな」 「ゆっ! もちろんだよ!」 「じゃあ、ここな」 「ゆう?」 俺はいつもの床ではなく、二つ重ねたティッシュペーパーの箱の上に皿を置いた。 まだピンポン玉ぐらいの大きさのまりさは、戸惑ってぴょんぴょん跳ねる。 「ゆうー、とどかないよ、おとーさん!」 「まあ待て、裏へ回れ」 「ゆゆっ?」 いそいそとまりさが裏へ回ると、そこに文庫本を積みかさねた階段がある。 「ゆっくりのぼるよ!」 まりさは喜んでそこをぴょんぴょんと登っていき、最上段の扉をパタンとくぐった。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー☆☆」 例によって随喜の涙を流しつつパンの耳と砂糖水を完食、満腹になって階段へ戻ろうとする。 そこでハタと気づいた。 「ゆゆっ? とおれないよ! 板さんとおしてね!」 扉にぽよんぽよんと体当たりするまりさ。来た時はそれで通れたのだ。 しかし通れるわけがない。まりさは理解していないが、それは一方にしか開かない扉だ。 「ゆうー、困ったよ、下へ降りられないよ……」 困惑したまりさは、箱の縁へ向かったが、そこでしり込みした。 無理もない。箱二つの高さはまりさの背丈の三倍だ。 人間の感覚に当てはめれば四メートル以上に相当する。 困りきったまりさは、俺を見上げていった。 「おとーさん、ゆっくりおろしてね! まりさおりられないよ!」 「いや、無理だな。おとーさんにもその扉は開けられないし、まりさは下ろせないのだ」 「ゆーっ!? おろせないの? まりさどうしたらいいの?」 「まあ落ち着け、いい方法がある」 混乱してもたもたと這い回るまりさをなだめ、俺は説明を始めた。 「おまえが、ぱらまりさになればいいんだ」 「ぱらまりさ? それはゆっくりしたもの?」 「ああ、そうだ。とてもゆっくりしたゆっくりだ」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「跳ねるな、まだ続きがある。おまえの、それな。左右の三つ編み」 「ゆっ?」 「それがいい感じに帽子とくっついている。だから、帽子は持ち上がりこそすれ、おまえから離れることはないな」 「ゆ、ゆ……なんとなくわかるよ!」 「その状態で飛び降りると、どうなる」 「ゆっ!? とびおりはゆっくりできないよ! べちゃってなるよ!」 「それは普通の場合だ。しかしぱらまりさならべちゃっとならない。なぜなら、帽子が助けてくれるからだ」 「ゆゆっ! おぼうしさんが!?」 「そうだ。ふわぁーっとなって、三つ編みを引っ張って、まりさを持ち上げてくれるぞ。 それはもう、お空を飛んでいるみたいな感じだ」 「ゆーーーっ!? お、『おそらをとんでるみたい』!?」 『お空を飛んでるみたい』。ゆっくりが強い魅力を感じる十八の殺し文句の一つだ。 これを聞かされたゆっくりはほぼ無条件で提案に従ってしまうという、便利ワードである。 「まあ、この場合は、みたいっつーかほんとに飛ぶんだが……」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「跳ねるな、最後まで聞け。とにかく、帽子によって空を飛ぶことが出来る、これがぱらまりさだ。 大いなる真のぱらまりさになったものは、誰よりもゆっくり出来る伝説の楽園へ飛ぶことが出来る――と言われている」 主に俺に。 「ゆっ、ゆっ! ゆっくりできるんだね! まりさはゆっくり、『ファー』をするよ!」 「よし、わかったな。ではその縁へ行け」 「ゆっ、ゆっ!」 「よし、飛べ!」 「ゆうーっ!」 まりさはとんだ。高さ十センチの崖から、勇ましく、華麗に。 そして落ちた。 ベチャッ。 「ゆぎゃっ!」 口から軽くあんこを吐き出して、まりさはぐったりと斜めになる。 「ゆううう、まりさファーができなかったよ……?」 「いや、できてたぞ。ちょっぴりだけどふわぁっとしていた!」 「ゆっ、ほんと?」 あっさりと信じ込んで起き上がるまりさ。実に他愛ない。 俺はもっともらしくうなずいて言ってやった。 「うむ、帽子が浮き上がって、金髪がひらひらっとなっていたな」 これは本当だが、もちろん浮力を発するほどではない。 しかしここで俺は、ゆっくりのアバウトさに頼った大技に出た。 「そこでまりさよ、おまえ、帽子をもっと大きくしろ!」 「ゆうっ?」 ぴょん、と驚いて跳ねるまりさに、俺は指を突きつけた。 「ぱらまりさは帽子が命だ。帽子が大きければ大きいほど、長く飛ぶことができる。 まりさ! 星の出る優秀なまりさ! おまえならできる! 気合と根性で帽子を大きくし、最高にゆっくりしたぱらまりさになるのだ!」 「ゆゆぅっ!!!」 びりびりと電気に打たれたように震えるまりさ。 どうやら俺の言ったことを天命だと思い込んだらしい。 実際はワゴンで一匹二百五十円で売っていた安物まりさなのだが、それを教えてやる義理もない。 「ま……まりさは、さいこーにゆっくりしたぱらまりさになるよ!」 「なるか!」 「ゆっくりぱらまりさになるよ!」 「ゆっくり?」 「ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「よし、そうと決まったらたっぷりあんこ補給だ。 もういっちょうご飯をやるから箱の上まで走れ!」 「ゆーーーっ!!!」 ぴょんぴょんぴょん! と猛烈な勢いで箱の裏へ回るまりさ。 どっこいせ……と俺はローテンションでパン耳を取りにいった。 しかしホラというのは吹いてみるもので――。 「ゆっくりしていってね!」ふわぁっ……。 ぴょんぴょんぴょんぴょん。 「ゆっくりしていってね!」ふわぁっ……。 ぴょんぴょんぴょんぴょん。 「あほぇー……」 間抜けな声を漏らしているのは俺だ。バリケードの外から唖然として見つめている。 ティッシュ三箱分の台からジャンプして、帽子に頼ってふわふわ降下するまりさを。 ぽよん、と地上につくが早いか、ぴょんぴょんと裏へ回って、また階段を登る。 そんなことを、まりさは何十回も繰り返しているのだった。 あきれたことに、まりさはたった一週間で、本当に「ファー」をマスターしてしまった。 すでに体はピンポン玉時代より一回りも大きくなっていたが、帽子はそれ以上に大きくなっている。 いや、大きく「した」のだ。まりさが。意志の力で。 まりさ本人が可能だと信じ込んだために、大きくなったらしい。 まあ、もともとまりさの帽子の成長原理は謎だからな……。 ともあれその直径は、今や俺の手のひらぐらいある。まだ小さなまりさを支えるには十分すぎるほどだ。 それに頼って、まりさは三十センチほど先まで滑空できるようになっていた。 俺に気づくと、くるんと振り返って、ゆっくりれいむのような得意げな顔でほざく。 「ゆっ、おとーさん! まりさ、ファーができるようになったよ! ゆっくりみていてね! ゆっくりみていてね!」 ぴょん! ふわぁっ、と帽子が風を孕む。二本の三つ編みの下で金髪饅頭がゆらゆらと揺れる。 ゆっくりと降りていったまりさは、見事に着地を決めた。 その後頭部に、膨らんだ帽子がポスンとかぶさった。先端の穴から空気が抜け、頭にぴったりフィットする。 「ゆっへん! どう?」 「おおおー……」 俺は思わずパチパチと拍手した。 こうして、まりさはぱらまりさとしての道を歩みだした。 俺はまりさが少しずつ大きくなっていくのにあわせて、台の高さを少しずつ増していった。 ティッシュ箱三個分、四個分、五個分――椅子一個分、椅子とティッシュ一個分、それから机の高さ。 もちろん、すべてまりさが寝ている間に行い、「天変地異が起きたから仕方なく修行せねばならない」というポーズだけは維持した。 「うおっ、まりさ! また台が高くなってるぞ?」 「ゆゆっ!? ほんとうだよ! 机さんになってるよ!」 「お父さん、こんな高いところにご飯をおかにゃならん。やれるか?」 「ゆっくりのぼるよ!」 まりさはティッシュ箱の階段を跳ねのぼり、これだけはいつもこっそり俺が手作りしている板一枚の扉をくぐって、机に躍り出た。 俺の腰ぐらいの高さで、感動の声を上げる。 「ゆっゆう! とってもたかいよ! ゆっくりできるよ!」 「しかしそこから飛ばにゃならんぞ。いけるのか」 「ゆっくりファーをするよ!」 むーしゃむーしゃを済ませたまりさは、いざ机の端に立つと、緊張した顔で叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 バッ……ふわふわふわ。 まりさはバリケードを楽々と越え、なんと部屋の端までたどり着いてしまった。 俺は舌を巻いた。 「この野郎、早くも滑空比三をマークしやがったか」 しかし順調に見えた成長も、あるところで壁に突き当たった。 それは台がカラーボックスになり、まりさの大きさがソフトボール大を越えたころだった。 ある日、まりさの飛距離が伸びなくなったのだ。 それだけではなく、時がたつにつれ今度はみるみる飛距離が下がり始めてしまった。 しまいには滑空できず、ほとんど墜落に等しい効果をするようになった。 「ゆっくりしていってね!!!」 叫んで飛び降りたまりさが、急速に落下して、べちゃっと床に当たる。 「ゆぶぅ!」 あんこを吐き出して痙攣し、それでもめげずによろよろと這いずり、台の上に向かう。 修行が足りないと思っているからだ。しかし俺はおかしいと気づいていた。 何日目かに、まりさが派手な墜落でドバッとあんこを吐き、ぴくりとも動かなくなったところで調査に乗り出すことにした。 まずまりさに砂糖水を注射して救命しておいてから、帽子を取って調べる。 異常なし。穴が避けたり破れたりはしていない。 では、まりさ本体のほうか? そう思ってまりさを持ち上げなおした俺は、眉をひそめた。 「……んん~~~?」 重い。 なんかこう、ノシッ、と来る。 面倒だったが、体重を量ったり帽子の寸法を調べたりして計算した結果、問題点が明らかになった。 「まりさよ」 目を覚ましたまりさの前で、俺は厳粛に宣言した。 「おまえは重くなってはならない」 「ゆぅっ!?」 「いいか、ぱらまりさは身軽で敏捷なゆっくりだ。身軽とはどういうことかわかるか」 「ゆっ、からだがかるいことだよ!」 「そのとおりだ。しかるに今のおまえは重い。こう重くてはぱらまりさになれん!」 「ゆーっ!?」 「頑張って軽くなるんだ、まりさ!」 「ゆっゆっゆっ……」 どんどん成長するゆっくりにとって、軽くなれというのは至難の業。 まりさにもわかっているらしく、舌を吐き出し白目を剥いて苦しみ出した。 実のところこれは無理な注文だった。相手は物理法則だからだ。 まりさの帽子はまりさに合わせて相似形で成長し、帽子の揚力は帽子の面積に比例する。 だからつまり、揚力はまりさの寸法の二乗でアップする。 ところがまりさの体重はまりさの容積に比例する。 だからつまり、体重はまりさの寸法の三乗でアップするわけだ。 二乗vs三乗――どちらが勝つかは明らかだ。有名な二乗三乗則である。 すなわちまりさが漫然と成長を続ける限り、いつかは重くなりすぎて飛べなくなるのは、火を見るより明らかだったのだ! 「まりさ、どうする!?」 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」 宇宙を律する厳格な法則を前にして、さしものまりさも解決に至れないらしく、その晩はまりさの苦悶の声がずっと続いていた。 しかしゆっくりのいい加減さとはたいしたもので――。 「ゆっくりしていってね!!!」 バッ。 ふわぁっ…………………………。 「うぼぁー……」 間抜けな声を漏らしているのは俺だ。部屋の戸口から唖然として見つめている。 俺の身長に等しい本棚からジャンプして、部屋中をぐるぐる旋回して回るまりさを。 あきれたことに、まりさはたった二週間で二乗三乗則を克服してしまった。 その答えが―― 「おとーさん、ゆっくりしていってね!!! ぷくぅぅ!」 左右へべろんと伸びた、まりさの頬。 リフティング・ボディ(揚力型胴体)。 いや、ゆっくりは生首なんだから、リフティング・ヘッドというべきか。 ともかく足りない分の揚力を、自分の体で発生し、あまつさえ扁平になることで重量も減らしやがった。 「ゆっぷひとぶよ!」 バッ、と飛んだかと思うと、パラグライダー付き全翼機みたいなけったいな格好で、ふーわふーわと部屋の中を何周もする。 よく見れば、帽子も左右に広がり、前縁が滑らかに下向きにめくれ、後尾が燕の尾のように二股になって伸びている。 信じられないことに、帽子のモディファイまで進めやがったようだ。 嗚呼まりさ、汝はどこまで飛んでゆく……。 「ぷはっ! おとーさん、まりさまたファーができるようになったよ!」 ぽてん、と飛び降りたまりさの大きさは、もう高めのカレーパンぐらいになっていた。 そんなある日のことだ、まりさが珍しく恥ずかしそうにやってきたのは。 「おとーさん、あのね、あのね……」 赤くなってうつむいてもじもじしてウザかったので、一発パチンとでこぴんしてやると、決心したみたいにまりさは叫んだ。 「まりさ、およめさんがほしいよ!」 「ゆっくり!?」 いや、びっくり。 俺のほうが驚いた。 こいつに性欲があったとは……。 しかし考えてみれば、奇怪な飛行進化を遂げていること以外は、飯も食えばうんうんもする普通のゆっくりまりさだから、性欲があってもおかしくないわな。 「まりさ、かわいいおよめさんとふーふになりたいよ……」 照れ照れともじもじするまりさは相当ウザかったが、一蹴しようとして、俺は思いなおした。 待てよ。 これはぱらまりさを量産するチャンスかもしれん。 量産してどうするというあてはない。 というか今のこのまりさの行く末すら何の計画もないが、それは問題ではない。 ショップに売れるかもしれないし、誰かに見せられるかもしれない。 ダメなら潰せばいい。 俺はそう考えて、言った。 「……そうだな、おまえも年頃だし、ひとつ嫁探しをしてやるか」 「ゆゆーっ! ありがとうおとーさん、ゆっくりしていってね☆! ゆっくりしていってね☆!」 まりさはぴょんぴょん跳ねて星を散らして喜んだ。 俺は内心で、こんなにけったいな変形をしてしまったまりさが、果たして他のゆっくりに気に入ってもらえるだろうかと心配したが、それは杞憂だった。 嫁探しに出かけたショップで、まりさはモテモテだったのだ。 「ゆーっ、すごくかっこいいまりさが来たよ! ゆっくりしていってね!」 「むきゅ、ゆっくりして、ゆっくりしていってねッホエホッゲホッブ」 「ゆっくりしてー! まりさゆっくりしてー!」 「んほおおおおおおお! なんてゆっくりしたとかいてきまりさなのぉぉ!? ハァッハァッハァッハァッ!!!」 ケージというケージからゆっくりたちが声をかける。 それだけモテたら増長しそうなものだが、うちのまりさは他のゆっくりを見たことがないので恥ずかしがって照れる。 それがまた人気を呼び大合唱のまりさコールになるという具合だった。 「まりさこっちへ来てぇぇぇぇ!!!」 俺は不思議に思って、店員に聞いた。 「何、ここ。みんなメッチャ飢えてない?」 「やーそうでもないですが……あっ、お客さんこそ面白いまりさをお連れになってますね」 容器に収まらないので頭に乗っけていったまりさをよくよく眺めると、店員は感心した様子で言った。 「いやあこれは面白い。どうしてこんな調教を?」 「それは秘密。で、なんでもてるの」 「それはもちろん、帽子が立派だからでしょうね。まりさの帽子は何にも勝るステータスですから」 なるほど、そういえば以前自分でもそんなことを言ったわ。 まりさは最近では潰したメロンほどのサイズになり、帽子は人間の大人の麦藁帽子よりも大きくなって左右にゆったりと伸びている。 俺がまりさを頭に載せるのは、一つにはその帽子のおかげで俺にとっても日よけになるからだった。 ともあれまりさはモテモテで、嫁選びに不自由することはなかった。 俺はまりさをしばらく自由にゆっくりたちと会話させ、嫁を選ばせた。 「ま、まりさはあのれいむがいいよ……」 「まあ基本だな。よう、れいむ。おまえ、このまりさが気に入りそうか?」 「ゆん! ステキなまりさだね、ゆっくり暮らせそうだよ! ゆっくりしていってね!!!」 明るく元気なれいむのようだ。俺も納得して買ってやった。 うちへ帰って、結婚式。ウェディングドレス代わりのティッシュで適当に包んで、適当な式辞を述べて、適当に濃くした砂糖水をくれてやったら、二頭は真っ赤になって喜んだ。 「腐りしときもぉ、かじられしときもぉ、ともに生きると、誓いマスカー?」 「まりさはちかうよ!」 「れいむもちかうよ!」 「ではァ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 その晩、たとえゆっくりでも同じ室内で初夜をやられると大変に不愉快になる、ということを思い知った。 二頭は仲良く暮らした。れいむはまりさの飛行形態を見て最初は驚いたが、その形でエサを取って来るので、じきに納得したようだった。 忘れられているかもしれんが、俺は今でも「台の上にしか食事を置けない」というスタイルを崩していないのである。 その意味はだいぶ薄れてしまったが、面白いのでずっと続けていた。 月日は過ぎ、やがてまりさが来てから半年がたった。 ある日、俺が出先から帰ってくると、まりさが勢いよくふわぁーっと飛んできて、ボンと胸にぶつかった。 「おっと」 抱きとめてやると、まりさは嬉しさに顔を輝かせながら言った。 「おとーさん、ゆっくりよろこんでね! れいむに赤ちゃんができたよ!」 「なにっ?」 驚いて確かめると確かにれいむはにんっしんっしていた。腹のぽっこり膨れた、動物型妊娠だ。 「やったね! れいむ! まりさとってもうれしいよ! ゆっくりした赤ちゃんをうんでね!」 「ゆっくり! れいむがんばるね、まりさに似たかわいい赤ちゃんをうむよ!」 「すーりすーり☆☆」 星をたくさん散らして喜ぶ夫婦。 後から考えれば、このときがまりさの幸福の頂点だった。 (後編へ続く) 前作で、 09/06/25 01 47 17 たまにはこういうSSもアリだと思った俺は異端なのか この感想を書いてくださった方と、以降喜んでくださった方に、感謝とこの話を捧げます。 助かりました。 =========================================================================== 挿絵:釣りまりさあき 挿絵:セールスあき
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まりさは恋をしていた。 薄暗いケースの中にただ1匹だけ、ポツンと座っている。 四方の壁は黒く塗りつぶされ、とても殺風景。 ただ1つ設置されたのはめ殺しの窓から外を眺めるだけの毎日。 れいむ。れいむ、れいむ、れいむ。 まりさのれいむ…!! 溢れんばかりの笑顔をくれたれいむが、自分に微笑む事はもう、無い。 顔を上げ、ガラスに映る自分の顔を見る。 とても醜いその顔を。 くすんだ金バッジがゆらゆらと揺れる。 だが、今更こんな物に何の価値があろうか。 窓ガラスにおでこをあてると、声を殺して泣く。 一体、何故こんな事になったのだろう…。 まりさは思い出す。 あの平和でゆっくりとしていた日々。 つがいとなる筈だったれいむと過ごしていた幸せな日々を…。 「ただいまー。今帰ったよ」 「ゆ!?おにいさんだ!ゆっくりおかえりなさい!」 「ゆゆっ!おにいさんおつかれさま!ゆっくりおかえりなさい!」 それまで居間で遊んでいたれいむとまりさは、飼い主の姿を認めると大喜びでぴょんぴょんと跳ね寄り、足にすーりすーりしてじゃれつく。 そんな様子にお兄さんは嬉しそうに2匹の頭を撫で回した。 「あー、遅くなってごめん。お腹すいただろ?ご飯用意するからちょっと待ってて」 お兄さんはどこにでもいる一人暮らしのサラリーマンだ。 寂しさを紛らわす為に飼い始めたゆっくり達との生活は既に1年以上にもなる。 今ではお兄さんにとって、なくてはならない大切な存在となっている。 まりさ達も優しく大好きなお兄さんにとても懐いており、両者の関係はこの上なく良好だ。 「じゃ、みんなで一緒にご飯にしようか。いただきますをしようね」 「ゆー。おにいさんゆっくりいただきます!」 「ゆふふ、いっしょにごはんたべようね!ゆっくりいただきまーす!」 「「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」 幸せ一杯の顔で美味しいご飯を頬張るまりさ達を見て、つい笑みをこぼすお兄さん。 自然と会話に花が咲き、微笑ましい団欒の時間が流れていく。 「ゆー、おなかいっぱいだね…。とってもしあわせーだよ。ゆっくりごちそうさま!」 「あれ、もうお腹一杯なのか?残念だなあ。折角、食後のデザートにケーキを買ってきたんだけどな…」 「ゆゆ!?ケーキさんあるの!?ま、まりさ、たべれるよ!ぜんぜんだいじょうぶだよ!」 「ゆー!れいむもケーキさんだいすき!あまいものはべつばらだよ!」 「ははは、まったく食いしん坊だなあ。よしよし、今から用意するからちょっと待っててね」 そう言ってテーブルの上に置かれたのは大きなホールケーキ。 苺の載った大きなデコレーションケーキを前に、まりさとれいむは目を輝かせて騒ぎ出す。 「ゆわぁ!とってもおおきいね!いったいどうしたの!?」 「ゆー!?クリスマスでもたんじょうびでもないのに、おっきいケーキさんだよ!すごいね!」 「ふふふ…それはね。まりさへのお祝いだよ。 金バッジ合格おめでとう!」 「……ゆ?」 お兄さんはポケットに閉まっていた封筒を取り出し、金バッジ試験合格の通知書を広げて見せる。 信じられないといった表情でポカーンと惚けているまりさに、れいむが大喜びで、 「ゆーっ!ゆっくりおめでとう!まりさならごうかくできるって、れいむはおもってたよ!」 「…えっ…うそ…だって、まりさは……え…?」 「嘘じゃないさ。これで、まりさもれいむと同じ金バッジだよ。 記念に今度の休日、皆で遊びに行くか。まりさも家に閉じこもってばかりじゃいけないからな。 …そうそう、それともう一つご褒美があるんだが。お前達ちょっと聞いてくれるか?」 「「ゆっ?」」 「お前達も、もうゆっくりとしては大人だし…そろそろ赤ちゃんが欲しくないか? 可愛い子供に囲まれた家庭を持ってみたいだろ? あんまり沢山作られたら流石に困るけど…少し位なら作っていいよ」 「ゆゆっ!!?お、おにいさん…ほんとうにいいの!!?」 今度はれいむも驚いた様だ。お兄さんは笑いながら頷く。 「ゆわあ…!!れいむ、ゆめをみてるみたい…!おにいさん、ゆっくりありがとう…!!」 今まで赤ちゃんが欲しい等とおねだりした事は一度も無かったれいむ。 それでも心の奥底では子を作り、親子で過ごす家庭生活を夢見ていたのだろう。 れいむはこぼれる様な笑顔で隣に居るまりさに振り向いた。 「まりさ!これからもみんなでいっしょにゆっくりくらしていこうね…!」 「ゆっ!?で、でも…」 一番喜んでいい筈のまりさの顔に笑顔は浮かんでいなかった。 不安げな表情をして、戸惑い声で呟く。 「でも、ほんとうにまりさでいいの…?だって、だってまりさは…」 顔を上げるとそこにはこちらをキョトンと見つめるお兄さんとれいむの顔。 そして背後に置かれた鏡に映る自分の顔が目に飛び込んできた。 片目が潰れ、生々しい傷跡が残る醜い自分の顔が…。 まりさはいわゆる野良ゆっくりだった。 ある日、他の野良ゆっくり達の群れとまりさの家族の間で諍いが起きた。 結果親は倒れ、まりさは襲い掛かる敵から必死で妹達を庇い、どうにか逃がしたものの瀕死の重傷を負ってしまったのだ。 幸運にも一命を取り留めたのは、たまたま通りがかったお兄さんに拾われたからだ。 お兄さんはとても優しい人間さんで、まりさが動けるようになるまで熱心に看病をしてくれた。 そして数日経ち、ある程度傷が癒えた頃には、既に家族の消息は分からなくなっていた。 落胆するまりさに対し、お兄さんは行く当てが無いならウチの子にならないかと暖かく迎え入れてくれた。 以後、まりさは命の恩人であるお兄さんに対し計り知れないほどの感謝と尊敬の念を抱き、今日まで過ごしていたのだ。 野良にしては珍しい程に餡子の出来が良かったまりさは、お兄さんの教育が良かった事もありメキメキと躾を覚えあっさりと銀バッジを取得した。 先住の飼いゆっくりであるれいむ達も孤児であるまりさを受け入れ、穏やかで楽しい日々が流れていく。 一度は家族を失いはしたものの、新しい家族に迎え入れられ、まりさは文字通り順風満帆なゆん生を送っていた。 だが、今日いきなりお兄さんの口から出た金バッジ試験の合格とれいむとの子作り。 金バッジ試験に受かった事は未だに信じられない。 こんなに醜い顔をした自分が受かる訳ないと思っていた。 お兄さんは今度、皆でお外に散歩にいこうと言ってくれたが、自分なんかを連れて歩いていたら他のゆっくりや飼い主に笑われないだろうか。 自分が原因で大好きなお兄さんやれいむに恥をかかせてしまうかもしれないと思うと、やるせなかった。 それに、野良上がりのこんなに醜いお化けのような顔をした自分とつがいになって、果たしてれいむは本当にゆっくり出来るのだろうか。 れいむは自分なんかと違って、ペットショップで購入された由緒正しい餡統書付きの金バッジゆっくりだ。 お手入れが行き届いた綺麗な黒髪。柔らかそうなふっくらとしたもち肌。ぱっちりと大きな可愛いおめめ。 性格もとても優しく、家族を失い落胆していた自分を何度励まし、支えてくれた事だろう。 そんなれいむに、自分なんかが釣り合うのだろうか…。 「なんだ、そんな事を心配してるのか。馬鹿だな、まりさは」 お兄さんは苦笑して、まりさの頭に暖かい手を置き、クシャクシャと撫で回す。 「良いゆっくりになるのに一番大事な事は、勉強が出来る事でも外見が綺麗だったり可愛い事でもないんだ。 自分の周りにいる人達をどれだけゆっくりさせてあげれる事が出来るだろうかと考える、思いやりの心を持つ事。 それがゆっくりにとって一番大事だっていうのは…試験に合格したまりさやれいむに今更言うまででもないよね?」 頷くまりさに、にっこりと微笑む。 「まりさの顔のせいでお兄さんやれいむが馬鹿にされて笑われるかもしれない…? そんな事で笑うような奴には笑わせておけばいいのさ。 他人の容姿を嘲り笑うような奴等の心の方がよっぽど醜いからね。 誰に躾けられるでもなく、自然にお兄さん達を気遣うことが出来るまりさはとても素晴らしいゆっくりだと自慢に思うよ」 「ゆー。おにいさんのいうとおりだよ、まりさ。 そんなまりさだからこそ、きんバッジのしけんにごうかくできたんだよ。 まりさみたいなやさしいまりさといっしょになることができて、れいむはしあわせー!だよ」 「ゆ…っ!おにーさん…!れいむ…!」 「…ま、いくら優しいからってウジウジしすぎなのはちょっと問題だけどな」 「ゆふふ。そうだよ、まりさはもっともっとじぶんにじしんをもってね!」 笑いながら、更にまりさとれいむの頭を撫で回すお兄さん。 泣き笑いのまりさに、ずっと微笑み続けるれいむ。 暖かい笑い声はどこまでもどこまでも響いていた…。 あれから数日経った。 赤、仔ゆ用のゆっくり用品が沢山積まれている。 2匹の巣箱には赤ちゃん用のベッドまでも用意してある。 既にいつすっきりーして、にんっしんっしても大丈夫な様に準備万全だ。 そして、居間で向かい合う2匹。 まりさの帽子には数日前に登録した真新しい金バッジが輝いている。 お兄さんは現在お仕事で、留守を預かっている2匹であるが、今から子作りをするらしい。 夜遅くだと、声でお兄さんの睡眠を邪魔するからという考えのもとに、この時間帯を選んだのだろう。 「れいむ…ほんとうにいいの?」 「ゆ…いいもなにも、れいむはまりさいがいとはいやだよ…」 「ゆ…っ!」 お互い緊張の面持ちで固まっていたが、れいむのその一言に意を決し、まりさはぎこちない動作で唇を合わせた。 「……っ!」 「……っ!」 甘くて何故か酸っぱい気持ちが2匹の餡子を満たしていく。 ゆっくりと身体を離し、お互い真っ赤に染まった顔を見つめ微笑みあう。 「ゆふふ。これがファーストちゅっちゅのあじなんだ…。なんだかはずかしいね…っ」 「…っ!!れいむ…っ!!!」 下に敷いたタオルの山にれいむを押し倒す。 2つの影が1つに重なり合った…。 帰宅したお兄さんは胎生にんっしんっしたれいむを見て喜び、2匹を祝福した。 それから暫くして生まれた赤ちゃんも順調に育ち、可愛い子供達と幸せな時を過ごした。 ある程度育ち、何匹か里子に出した子供達もいたが皆、それぞれ幸せに過ごしているらしい。 ご近所に貰われていった子供達とは散歩中にも時々会える。 この前は近所に住んでいる長女のまりさが初しゅっさんっした。 もう少ししたら、孫ゆっくりと遊ぶ日も来るだろう。 それからいくつもの季節が巡り、まりさもれいむも老ゆっくりとして幸せなゆん生を過ごしている。 子孫は大体が幸せなゆん生を送っているらしい。 暖かい春の日差しを浴びながら、まりさはこれまでのゆん生を振り返る。 幼い頃こそ苦労はしたが、なんて充実して素晴らしいゆん生だったのだろう。 寄り添うれいむにほお擦りをすると、微笑みながら擦り返して来た。 その後もまりさは末永く幸せなゆん生を送る事となる。 子供や孫達、それに愛する妻や飼い主夫妻に看取られながら、老衰でゆっくりとこの世を去るまで、末永く。 まりさの話はこれにて、おしまい。 『まりさのれいむ』 カマキリあき まりさは恋をしていた。 薄暗いケースの中にただ1匹だけ、ポツンと座っている。 四方の壁は黒く塗りつぶされ、とても殺風景。 ただ1つ設置されたのはめ殺しの窓から外を眺めるだけの毎日。 ガラスの向こうでは居間の様子が透けて見えている。 お兄さんの留守番をしている2匹はクッションに座り、2匹並んですーりすーりしながらTVから流れてくる映像を眺めている。 『すーりすーり…ゆーん。ゆっくりしてるね…』 『そうだね、れいむ。とってもぽかぽかでゆっくりしてるね…』 『しあわせーだね…』 『しあわせー…だねえ…』 ケースに備え付けられたスピーカーから、聞きたくも無い外部の音声が流されてくる。 部屋の窓から差し込む日光を浴び、居間の2匹はとても幸せそうだ。 春らしいポカポカ陽気を全身で感じながら、溢れんばかりの幸せそうな笑顔で隣のまりさにすーりすーりするれいむ。 れいむ。れいむ、れいむ、れいむ。 まりさのれいむ…!! 溢れんばかりの笑顔をくれたれいむが、自分に微笑む事はもう、無い。 …違う、そんな奴じゃない! れいむはまりさのれいむだ!まりさだけのれいむだ! そんな醜い野良に笑わないで、まりさを見て!! 叫ぶ、大声で叫び続ける。 防音機能が付いているこのケース内でいくら泣き喚こうとも、居間の2匹に届かない事は分かっている。 無駄とは分かっていても、この衝動を抑える事は出来ない。 ひとしきり喚き続けた後、顔を上げ、ガラスに映る自分の顔を見る。 嫉妬に歪んだ、とても醜いその顔を。 くすんだ金バッジがゆらゆらと揺れる。 だが、今更こんな物に何の価値があろうか。 窓ガラスにおでこをあてると、声を殺して泣く。 一体、何故こんな事になったのだろう…。 まりさは思い出す。 あの平和でゆっくりとしていた日々。 つがいとなる筈だったれいむと過ごしていた幸せな日々を…。 まりさはれいむと一緒に、お兄さんがペットショップで購入した金バッジ付きの飼いゆっくりだ。 初めて飼われて来たあの日、まりさは幸せの絶頂にいた。 まりさの横に居るれいむをチラリと見る。 お手入れが行き届いた綺麗な黒髪。柔らかそうなふっくらとしたもち肌。ぱっちりと大きな可愛いおめめ。 一緒に躾の教育を受けていた友達の誰よりもゆっくりとした雰囲気を漂わせていた。 ペットショップで初めて会ったときから、まりさは恋に落ちていた。 いわゆる一目惚れというやつだ。 だが、飼いゆっくりであるまりさにとって、自由恋愛など許される訳もない。 もし、可能性があるとすれば、まりさを買ってくれる人間さんが一緒にれいむも購入して、つがいとして飼う場合だけだ。 幼いながらも教育され、理解していたまりさはその僅かな望みを胸に抱き…そして、叶ったのである。 「すいません、ゆっくり買いたいんですけど。いや、基本種でいいです。 もし気が向いたら子供を産ませるかもしれないんで去勢してないのがいいかな。予算は…」 「はい、そのご予算でしたら基本種の金バッジがよろしいかと思います。 ええ、ある程度躾もされていますし、餡統もかなりの物なんで人間にとても忠実です。勝手に子作りする事もないですから」 「そうですか。それじゃあ、まりさ種とれいむ種を1匹づつで」 「まりさとれいむですね。先週入荷した金バッジでお勧めなのがこの仔とこの仔と…」 お兄さんは店員さんが最初に指差した、ゆぅゆぅとゆっくり寝ているれいむを覗き込むと、 「ははは、ぐっすり寝てるなー。よし、れいむはこの仔で。まりさは…」 お兄さんの視線が泳ぎ、ぐるっと店内を見回した後、まりさに向かってピタッと止まる。 まりさは緊張のあまり中枢餡がバクバクドクドク鼓動するのがはっきりと分かり、そして…。 「お待たせ、ご飯だよ。ゆっくり食べていってね!」 「「ゆっくち!おにーしゃん、ありがとう!いただきましゅ!」」 その後、お兄さんの家に連れ帰られて初めてのお食事。 躾通り、音を立てずに丁寧に黙々とご飯を食べる2匹。 そんな2匹を見て、気付いたお兄さんが声を掛けた。 「ああ、そうかそうか。ええと、お兄さんの家では声を出して食べていいからね。 食べる仕草とかが好きだから。その代わりあんまりこぼさないでね」 「ゆゆ!?しあわせー!していいの!?」 「ゆわーい!おにーしゃん、ゆっくちありがとう!」 「「むーしゃ、むーしゃ!しあわせー!」」 飼い主は大らかでとっても優しいお兄さんだった。 美味しいご飯に面白い玩具に室内飼いの生活。 休日には近くの公園やレジャー施設に連れて行ってもらい楽しい一時を満喫。 優しい飼い主さんと、もしかしたらつがいになるかもしれない可愛いれいむ。 まりさは、飼いゆっくりにとっては理想のゆん生を謳歌していた。 …あいつが来て、暫くするまでは。 「「ゆ!おにーしゃん、ゆっくりおかえりなさ…」」 挨拶が止まり、れいむとまりさはそれを見つめる。 部屋に飛び込んできたお兄さんの片手に抱えられたそれは、1匹の汚い仔まりさだった。 大事なお帽子はボロボロ。片目が飛び出して頬がざっくりと裂け餡子がはみ出している。酷い状態だ。 意識はないようだが、苦しそうに息をしている所をみるとまだ命はあるようだ。 「ゆっ!?おにーさん、そのこは?」 「ぼろぼろで、とってもいたがってるよ。かわいそうだね…」 「ああ、帰る途中、家の前で拾ったんだ。多分、野良の子供なんだろうけど…まだ息があるし…。 いいかい。今からお兄さんはこの仔の治療をするけど、いいっていうまで近づいちゃ駄目だからな」 「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!」 野良まりさと初めて会話したのは意識を取り戻し、自力で歩けるようになった5日後の事だ。 お兄さんが連れてきた野良まりさの右目は潰れ、頬にその痕が残りとてもゆっくりできない姿になっていた。 鏡か何かで自分の姿を見たのだろう。 2匹を紹介されても恥ずかしがり、俯いたままなかなか喋ろうとしない。 ツギハギだらけのお帽子が震えている。もしかして、泣いているのかもしれない。 比較して1つの解れもない綺麗なお帽子を被っているまりさは、気の毒でなんと声を掛けていいのか分からず両者立ち尽くしたままだ。 そんな静寂を打ち破ったのはれいむの挨拶だった。 「こんにちわ、まりさ。れいむ、あたらしいおともだちができてうれしいな。ゆっくりしていってね!」 慌ててまりさも元気な声で挨拶に加わる。 「ゆっ!?ゆ、ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 それまで泣きそうな顔だった野良まりさは、一瞬驚いた後、本当にボロボロと泣きながら挨拶を返してきた。 「ゆっ…ゆっぐ…!ゆっくち…していってね!ゆっくちしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 外でどんな事があったのか理解する事は出来ないが、余程辛い思いをしたのだろう。 その後、野良まりさの気が落ち着くまで、れいむとまりさはすーりすーりし続けてあげた…。 段々と自分達の輪に溶け込んできた野良まりさの事を次第に家族と同等に扱うまで時間は掛からなかった。 まりさもれいむ同様、やや自分より小さい野良まりさの事を可愛い妹が出来たと思いとても喜んでいた。 野良ゆっくりと思えない程このまりさは出来がよく性格も穏やかだった。 お兄さんや、まりさ、れいむから教わった事もスポンジが水を吸うようにあっという間に覚えていった。 外で育った影響か、少々やんちゃな部分を残しつつ躾けられたまりさの事を、お兄さんはとても可愛がった。 でも、いつからだろう。 それが、嫉妬と嫌悪に変化していったのは。 あいつが楽々銀バッジを取得したあの時から? いや、足し算、引き算をあっさり覚えたあの時から? 帰宅したお兄さんが最初にあいつを撫でたあの時から? それとも、最初にあったあの時。 あいつに、れいむが微笑みを向けたあの時から? 自分が金バッジという事もあり、心の何処かに小さく在った優越心。 野良まりさが賢くなる度、可愛がられる度、れいむと仲良くする度、それは緩やかに刺激してきた。 面白くない。なんだかゆっくり出来ない気がする。 少しお勉強が出来たからって、生意気だ。まりさは足し算も引き算も出来るのに…! 気のせいかもしれないが、お兄さんは最近、自分よりもあいつに構いすぎなんじゃないだろうか? それに、れいむもあいつに対してベッタリしすぎだ。 家族として扱うとは言ったし、妹みたいなもんだと思っているから可愛がるのは構わない。 しかし、度を過ぎている気がする。 そんな事を心の奥底で考えているせいで、表面上はいつも通りに振舞っているが、まりさは内心全然ゆっくりしてなかった。 実際の所、お兄さんは3匹に対して平等に接していたし、れいむにしたって…いや、むしろまだまりさと多く接していたかもしれない。 だが、嫉みにより歪んだ見方を始めたまりさにとって、元野良まりさを取り巻く環境は一々腹立たしい内容として曲解されていた。 些細なきっかけにせよ、一度付いた嫉妬の炎というものはゆっくりはおろか人間でも中々消せる物ではない。 ましてやそれに恋愛が絡むと尚更だ。 そして、それも些細なきっかけだった。 「いたい!」 食後の居間。 みんなで仲良くボール投げで遊んでいる最中、それまでぴょんぴょん跳ねていた元野良まりさが痛みに顔をしかめ悲痛な叫び声を上げた。 「えっ!?どうした、まりさ!」 不審に思ったお兄さんが痛がるまりさを持ち上げると、あんよに1本の画鋲が刺さっている。 「あっ!さっきカレンダーを取り直すときに1本落ちていたのか。 ごめんな、まりさ。痛かったろ?お兄さんが見落としてなければ…」 「ゆっ!?だ、だいじょうぶだよ!まりさこのくらいへっちゃらだよ!おにいさん、きにしないでね!」 応急処置のオレンジ軟膏を塗る時、染みる痛みに耐えながら強がりを言う元野良の顔を見たその瞬間…。 まりさの中に、えも言えぬ快感が駆け巡った。 あの小憎たらしい野良の苦痛に歪む顔。 …ざまあ見ろ。 高ランクの飼いゆっくりにとってほとんど起こらない筈の。思ってはいけない。あってはならない感情に支配された瞬間である。 見たい。もっと見たい。あの野良が泣く姿を。 しかし、今回みたいな偶然起こる事故はそうそうない。 偶然に頼れないならば…簡単な事だ。 自分の手で行えばいいではないか。 最初はまだ罪悪感に躊躇していた事もあり、ちょっとした悪戯だった。 こっそりと餌に唐辛子を混ぜたり、野良のベッド毛布を崩したり、玩具を隠したり…。 野良まりさが慌てる姿を横でほくそ笑み眺めていたが、その内それだけでは満足出来なくなる。 行動は次第にエスカレートしていった。 餌に針を混ぜ、ベッドの中に画鋲を置き、玩具を強引に借りた後わざと壊して見せた。 泣き叫び、当惑する野良まりさを心の中で大笑いして馬鹿にした。 しかし、金バッジといっても所詮ゆっくりの稚拙な行動。 更に、今のまりさは嫉妬と加虐心に凝り固まり周りがまったく見えていなかった。 「なあ、まりさ。これは、どういう事なんだ…?」 それまで、黙ってTV画面を眺めていた1人と1匹の間に、重苦しい空気が立ち込めていた。 俯き震えているまりさにはお兄さんの表情が分からないし確かめる勇気もない。 最近頻繁に起こる元野良まりさの事故に対して不審に思ったお兄さんがこっそりビデオカメラを仕掛けていたのだ。 画像はまりさがこっそりと元野良まりさのお洋服に画鋲を仕込む姿を鮮明に捕らえていた。 暫くの沈黙の後、青褪めた表情をしたまりさは、震える声でお兄さんに全てを打ち明けた。 「おにいさん!ごめんなさい!もう、もうこんなことはしません!だから!まりさをゆるしてください!おねがいします!!」 「………っ!!!」 床に頭を擦りつけ何度も何度も懇願するまりさを、お兄さんは顔を歪め睨み付ける。 自分や、元野良まりさ達を裏切った事に対する怒り。 れいむに対する想いとその為に湧いた嫉妬心に対する憐れみ。 そして、この数ヶ月共に暮らしてきた日々に対する愛しさ。 その他、様々な感情の混じった表情で無言のまま睨み続けた。 2度としないとは言うが、ここまで歪んでしまった心は、もう元通りにはならないだろう。 隣の部屋で寝ている何も知らない2匹と一緒に、これまで通り飼う事など出来ない。 では、どうする? 見切りをつけて潰す? 無理だ。 1年弱とは言えこれまで過ごしてきた中で言葉に出来ない位愛着が湧いている。 例え、歪んだとは言えこの手にかけるなんて出来そうもない。 回収業者に渡して殺処分してもらうのも辛くて出来ない。 他の飼い主を捜す? 駄目だ。 今の状態ではゲス認定される可能性が高い。 もし引き取り手が見つかっても、その家で問題が起これば取り返しが付かない。 それでは、捨てる? 論外だ。 街中でちらほらと見かけるあの野良ゆっくり達をみろ。 恐らく悲惨な目に遭い苦しみぬいた後、死んでいくだろう。 それでは、どうする…? お兄さんの出した結論は、2匹から隔離して飼い続ける事だった。 防音機能付きのケースを購入し、中へ閉じ込める。 食事と水は夜中2匹が寝静まった後に気付かれないように交換して、会話してあげている。 殺風景なケースの中で四六時中1匹なのは可哀想に思った。 はめ込み窓になっているマジックミラーからは居間の様子が一望でき、自分で操作できないもののテレビを見る事も出来る。 これはまりさへ対するせめてもの情けと、お仕置きの意味も込めて。 何も無く暇をもてあそぶ事はないかもしれないが、自分からは決して何も出来ない。 ただ指を咥えて楽しそうな2匹の様子を眺めるしかないのだ。 急に姿を消したまりさに当惑する2匹には、まりさは病気になったので入院したと告げた。 「ゆぅ…まりさ、だいじょうぶかな…」 「そうだね。しんぱいだね…。そうだ!ねえ、れいむ!まりさいいことおもいついたよ!」 「ゆっ?」 「まりさがはやくよくなるように、おりがみさんをつくろうね!」 「ゆゆっ!?ナイスアイデアだよまりさ!ゆっくりおろうね!」 「ゆんゆんっ!」 「ゆっゆっ!おにいさん、れいむといっしょにつるさんおったんだよ!まりさにゆっくりわたしてあげて!」 「かわいいつるさんをみたら、きっとげんきになるよね。ゆっくりしないで、はやくかえってきてねまりさ…」 実は2匹が次第にまりさの事を忘れていってくれないだろうかと淡い期待を抱いていたのだが、甘かったらしい。 二度と帰ってこない仲間を待ち焦がれる2匹の姿を見るのに耐えるのも辛くなった。 数日後、入院先の病院でまりさが永遠にゆっくりしたと嘘をついた。 「…うそ…」 「そんな…ゆぐっ!まりさが…!」 「…ゆっ…ゆわああああああああん!!!やだ…っ、やだよう…!」 「ゆう…れいむ…ゆぐっ…なかないで。すーりすーり…」 「ゆぐっ…ゆうぅぅぅ…!ゆわぁぁぁ…!」 小さい頃から一緒にこの家で育って来たれいむの悲しみは特に大きかった。 誰も気付く事は無かったが、実際の所この時点ではれいむもまりさに対して特別な感情を抱いていたのである。 悲しみに暮れるれいむに対し、それまで優しくしてもらった恩返しも込めそっと寄り添い、慰める元野良まりさ。 時間が経ち、心の傷も癒え季節が変わる頃には、れいむの心の中に居たのは、それまで自分を支えてくれた元野良まりさになっていた…。 お兄さんの想像以上にまりさはゆっくり出来なくなっていた。 大好きなれいむが、あのまりさのれいむがあの薄汚い泥棒野良と楽しげに遊んでいるのを見せ付けられ、何も出来ない。 まりさにとっては生き地獄の毎日だったが、本当の不幸はまりさが躾の出来た賢い『善い』飼いゆっくりだった事だ。 自分の過ち、罪をある程度理解出来ているので罪悪感に苛まれつつも、愛しいれいむを奪った元野良を許す事が出来ず嫉妬心はつのる一方。 全ての憎悪を捨て去り、諦めれば寂しくはあるが静かな心で過ごせたかもしれない。 全ての良心を捨て去り、ゲスな言動に徹すればお兄さんも処分してくれたかもしれない。 どんなに苦しくても、どんなに辛くても、まりさは飼い主のお兄さんに対して不満を言う事は出来なかった。 夜中に餌を持ってきて話しかけてくれるお兄さんは相変わらず優しかったし、まりさにとって唯一残された温もりであった。 反抗して残されたこの温もりを失うなど出来るわけもない。 月明かりの中。 ぼんやりした笑みを浮かべ、お兄さんの腕に頬擦りしてくるまりさ。 「…ゆ。…おにいさんのおてて…とってもあったかいね…すーり、すーり…」 こうしていると相変わらず可愛い。 まるであんな酷い悪戯をしでかしたなど信じられない程に。 悲しい笑顔を浮かべ、そっとまりさの髪を撫でる。 結局、お兄さんがまりさの苦しみの深さに気付く事はなく、まりさは生きている間、ただ1度を除き、箱から出ることを許されなかったのだ。 ある日。 夜になり、お兄さんが帰宅した。 『ただいまー。今帰ったよ』 『ゆ!?おにいさんだ!ゆっくりおかえりなさい!』 『ゆゆっ!おにいさんおつかれさま!ゆっくりおかえりなさい!』 お兄さんは2匹を撫でると室内を見回す。 こちらのケースに目を合わせると、軽く微笑む。 お兄さんの目からも、内部の様子が透けてみてる訳はないのだが、明らかに自分に対してだろう。 「…おにいさん。ゆっくり、おかえりなさい…」 か細い声で微笑むながら、まりさは聞こえる筈の無い挨拶を返した…。 そして夕食後。 『…まりさへのお祝いだよ!金バッジ合格おめでとう!』 ピクリ、とケースの中。ケースの外。2匹まりさが驚きに震える。 …金バッジだって!? ポカーンと惚けているまりさを睨み付ける。 そんな馬鹿な! あんな醜い顔をした元野良が金バッジだって!? 認めない。何か不正をしたに決まっている。 あの、薄汚い野良が、まりさやまりさの愛するれいむと同じ金バッジなんて認める訳にはいかない! 『ゆーっ!ゆっくりおめでとう!まりさならごうかくできるって、れいむはおもってたよ!』 違う!れいむの口からそんな事言わないで!そいつは汚い野良なんだよ! こんなのは何かの嘘だ!間違いだ! 『嘘じゃないさ。これで、まりさもれいむと同じ金バッジだよ』 違う!違うよ、お兄さん! そんな醜い穢れた野良ゆっくりがれいむやまりさと同じな訳ないでしょ!! 心の中で喚きまくるまりさに、更に信じられない一言が届く。 『お前達も、もうゆっくりとしては大人だし…そろそろ赤ちゃんが欲しくないか?』 ……………………………………………………。 ……………………………………………………。 ……………………………………………………ゆ? オニイサン…イマ、ナニヲイッタノ…? 『まりさ!これからもみんなでいっしょにゆっくりくらしていこうね…!』 初めて会った時と変わらない。いや、それ以上の眩しい笑みを浮かべ、れいむは−−− 「ゆああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 嘘だ!嘘だ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ あのれいむが、あのれいむの口からそんな言葉が出るわけないよ! これは何かの間違いだよね!? お願い!お願いします!そんな事は嘘だって言って! 食い入るように見つめるその先には、野良まりさに笑いかけるお兄さんとれいむの笑顔。 ガラス向こうの景色が涙で歪む。 「あああああああああああっあああああああああああああああああああああっあああああああああああー………」 呆けたようにそれを見つめるまりさに構わず、話は進んでいく。 『でも、ほんとうにまりさでいいの…?』 …何だ? 何か不満があるのか? ふざけるな!何様のつもりだ!! この野良風情が…!! 『…だから、おにいさんやれいむがわらわれたらっておもうと、まりさ…まりさは…』 どうやら、自分の顔のせいで周りの連中に馬鹿にされるのが嫌なのだそうだ。 当たり前だ。お前みたいな醜い化け物面と一緒になって喜ぶ奴なんかいるものか! 『なんだ、そんな事を心配してるのか。馬鹿だな、まりさは』 お兄さんは苦笑して、まりさの頭に暖かい手を置き、クシャクシャと撫で回す。 なんで? なんでお兄さんもれいむもそんなに笑っているの? そいつの言う通りだよ!そんな奴がいたらゆっくりできないでしょ!? だから…っ! 『良いゆっくりになるのに一番大事な事は、勉強が出来る事でも外見が綺麗だったり可愛い事でもないんだ。 自分の周りにいる人達をどれだけゆっくりさせてあげれる事が出来るだろうかと考える、思いやりの心を持つ事。 それがゆっくりにとって一番大事だっていうのは…試験に合格したまりさやれいむに今更言うまででもないよね?』 ………………………。 『まりさの顔のせいでお兄さんやれいむが馬鹿にされて笑われるかもしれない…? そんな事で笑うような奴には笑わせておけばいいのさ。 他人の容姿を嘲り笑うような奴等の心の方がよっぽど醜いからね。 誰に躾けられるでもなく、自然にお兄さん達を気遣うことが出来るまりさはとても素晴らしいゆっくりだと自慢に思うよ』 『ゆー。おにいさんのいうとおりだよ、まりさ。 そんなまりさだからこそ、きんバッジのしけんにごうかくできたんだよ。 まりさみたいなやさしいまりさといっしょになることができて、れいむはしあわせー!だよ』 …………………………………………………。 あれから数日経った。 居間で向かい合う2匹。 そしてケースの中からそれを見つめるまりさ。 くすんだ自分の金バッジとは対照的に、元野良まりさの帽子には数日前に登録した真新しい金バッジが輝いている。 『れいむ…ほんとうにいいの?』 「よくないいいい!!!やめてえええ!!!」 『ゆ…いいもなにも、れいむはまりさいがいとはいやだよ…』 「ゆあああああ!!!どぼじてそんなこというのおおおお!!!!!???」 まりさは泣きながら懇願する。 「やめて!やめて!やめて!」 まるでそこらへんの野良ゆっくりみたく、単調な叫び声をあげるしか出来ない。 この2匹を止める術などまりさには何も無い。 『ゆ…っ!』 お互い緊張の面持ちで固まっていたが、れいむのその一言に意を決し、まりさはぎこちない動作で唇を合わせた。 「ゆっがあああああああああああ!!!!!!まりざの!!まりざがゆめにまでみたれいぶとのファーストちゅっちゅさんがああああ!!!!???」 『……っ!』 『……っ!』 ゆっくりと身体を離し、お互い真っ赤に染まった顔を見つめ微笑みあう2匹。 『ゆふふ。これがファーストちゅっちゅのあじなんだ…。なんだかはずかしいね…っ』 「ああああーーーーっ!!あああああああああーーーーーーっ!!! やめてええええぇぇぇ!!!もうやめてえええええーーーーーー…!!!」 『…っ!!れいむ…っ!!!』 元野良が下に敷いたタオルの山にれいむを押し倒す。 「くーーーがあああーーーーーーーっ!!!!!???? のらが!!うすぎたないこのくそのらがあ!!!!はなれろっ!!!ばりざのれいむからはなれろおおおお!!!!」 ガツン、ガツン。 1度、2度、3度。 何回も何回も壁や窓に体当たりするが、頑丈に作られ固定されたケースはビクリともしない。 れいむのお洋服がゆっくりと脱がされていく。 眩しいほどなめらかな肌が露になる。 身に纏っていた物が全て無くなり、窓から差し込む日の光の下に晒される白い裸体。 野良まりさはゴクリと唾を飲み、食い入るように見つめる。 『ゆやぁん…。はずかしいから、あんまりみないで…』 『ゆっ…!ご、ごめんね!』 「ふほぉぉぉおおおおおお!!!?? みるな!!みるなあああァァ!!!!!」 再び重なる2つの影。 最初は恥ずかしがりながら慣れない愛撫を繰り返していた2匹だが、時間が経つにつれ甘い息遣いに変わってくる。 『ゆっゆっ…!!ふうん…!!まりさっ!!まりさ!!』 『れいむ!れいむ…っ』 ぬっちゃぬっちゃ。 ディープちゅっちゅをしながら身体を絡め合い、悩ましげなポーズを取り、擦り付けあう。 興奮してきた元野良の表皮からどろりとした液が分泌されれいむの身体に塗りたくられていく。 「ゆあっゆあっゆあっ……!!やめろ!やめろ!!やめろ!!!やめ」 『ゆうんっゆふうんっ!やあ!まりさ!そこっ、はずかし…』 『れいむ…れいむ、れいむっ…かわいいよれいむ!ここ、とってもきれいだよ』 『ゆやぁん…!』 「ゆっはああああああアァーーーーーっ!!!! なにやっでるんだおまえ!!ふざげるな!!もむな!ざわるな!!がむな!! どこなめでるんだ!!いいがげんにじろおおおおおおお!!!!!」 ぶんぶんと頭を振って泣き喚きぴょんぴょんと飛び跳ねて地団太を踏む。 だが、このまりさには2匹の愛の営みを延々の見続けるしかないのだ。 悔しくて悔しくて切なくて涙が止まらない。 『ゆああんっ!!ゆあっ!ゆあっ!…ねえ、まりさ…』 『ゆふーっ!ゆふーっ!ゆっ!?』 れいむは腰を上げると、濡れそぼったまむまむはくぱっと開いた。 まだ何物の侵入も許した事の無いソレが、涎を垂らしながらぴくぴくと動き、まりさ達を虜にした。 『…おねがい。れいむのはじめて、もらってください』 ゆっ。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!??? だめよおおおおお!!!それだけはだめなのおおおおお!!!!!!!!!!!! それは!!!!!それは!!!!!まりざがもらうはずだっだ!!!!! まりざのだいせつな!!れいむのじゅんけつのバージンなんでずううううう!!!!!!!!!! ぞれだげは!!!ぞれだげはかんべんじでぐだざいいいいいいい!!!!!!!!!」 『ゆっ!いくよ…れいむ…』 『ゆっ…!れいむ、がんばる…!』 「がんばらないでねえええ!!!やめええええええええてえええええええ!!!!!!」 れいむは恥ずかしそうにコクリと頷き、元野良のそそり立ったぺにぺにが、愛しいれいむのまむまむに押し当てられ。 「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 やめでやめでやめでもうやめでそれだげはやめでいれないでえええええ!!!!!!!!!」 やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします どうかそれだけはやめておねがいしますつらいんですくるしいんですこれ以上まりさのれいむを奪わないで ぶちっ! 『ゆぐっ!!?』 『れ、れいむ!だいじょうぶ!?』 『ゆっ…だいじょうぶだよ…!ゆふふ、うれしいな。れいむのじゅんけつをささげることができて』 『れいむ…』 『ゆっ…いいよ、まりさ。うごいて…』 『ゆん…っ』 コクリと頷き、ずっちゃずっちゃと淫らな音を立てて腰を前後左右に動かせる元野良まりさ。 「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!! あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 奇声を上げ、大声で泣き崩れるまりさ。 涎、涙、それに大量のくやしーしーを垂れ流し、足元に軽い水溜りが出来ている。 もはや見ることも辛く、目を閉じてもスピーカーからは卑猥な音と嬌声が絶え間なく聞こえてくる。 『…れいむ!れいむ!もうっ!もう!!』 『まりさ!まりさ!きて!れいむも、もうっ!!』 『『すっきりーーーーーー!!!!!』』 2匹は同時に絶頂を向かえ、たっぷりの餡精液がれいむの胎内に流し込まれる。 「ゆああああああぁぁ………」 その声を聞いたケース内のまりさは、ぎりぎりと唇を噛みしめるとゆっくりと目を開き、事後の2匹を呆然と眺める。 『ゆふうっ…はあっ…ん…っ、ねえ、まりさ…』 『ん?』 『…まりさのことが、だいすきっ』 これ以上無い極上の笑顔を輝かせると、れいむはまりさに軽くちゅっとしてみせた。 照れたように恥らうれいむに元野良まりさ。 まりさはその笑顔を見て、これ以上無い程打ちのめされ完全に思い知った。 身も心も。れいむは既にあのまりさの物で。 まりさのれいむなんて、既に何処にも存在しなかったのだという事に。 れいむのまむまむからドロリと溢れ出した餡精子には、純潔だった証の餡子が少し混じっていた…。 それからどの位、月日が流れただろうか。 自分の目の前で繰り広げられる元野良まりさとれいむ家族の幸せな暮らしを延々と見せられた。 初めての出産。 育児。 巣立ち。 近所や仲間へ里子に出された子供達が家庭を持つ。 ケース内のまりさを取り残し、広がっていく元野良まりさの世界。 更にそれからいくつもの季節が巡った。 まず最初に元野良まりさが老衰でこの世を去り、その数日後、後を追うように老れいむも息を引き取った。 『まりさ…もし、ゆっくりにもあの世があるんなら。また、れいむといっしょにゆっくりしようね…』 それがれいむの最後の言葉だった。 深夜、お兄さんが数年ぶりにケースから出してくれた。 暗く静まり返った居間に横たわるれいむの遺体。 まりさは、その幸せそうな死に顔を、ただただ、虚ろな目で見つめていた。 その時、まりさが何を想ったのか。 どう感じたのか。 それは、誰にも分からない。 まりさがこの世を去ったのはそれから5日後の事である。 (終わり) 今まで書いたの ふたば系ゆっくりいじめ 533 カマキリさんの卵でゆっくりするよ!! ふたば系ゆっくりいじめ 540 浮浪者とゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 541 静かにゆっくりするよ!! ふたば系ゆっくりいじめ 581 静かにゆっくりできないよ!!(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 586 静かにゆっくりできないよ!!(後編) ふたば系ゆっくりいじめ 588 ピュアな心でゆっくりするよ!! ふたば系ゆっくりいじめ 609 ゆーピー3分クッキング ふたば系ゆっくりいじめ 725 突撃!隣のゆっくりご飯!
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東方戦火異変、ルナティックモードに挑戦するZE☆!! 「パートナーはもちろん、永遠の主人公のこのわt・・・・」 霊夢かと思ったかい? 僕だよ!!! 「ゆっくり見ていってね!!!」 「ま・た・筋・肉・か!!」 「っていうかこれ以前使ったものの焼き直・・・・コラージュなんじゃ・・・・」 「ま、君たちなんかには、大事なまりさは任せておけないからねぇ!」 「UZEEEEEEEEEEE!!」 S T A R T C O N F I G S T A R T 「まりさ、異変がおk・・・・・」 「まりさ、異変が起きたぞ!! 幻想郷のために解決に向かってくれないかい!?」 「あぁ、血の気が多いやつらが集まってなんだか大盛り上がりなんだろ?」 「そうよ、放っておくわけn・・・・・・」 「その通りだ。放置はできない。我ら博麗神社総出で彼女たちを静めに行って欲しいんだ。」 「おっけ~、まりさにまかせて☆」 「もき~~~~~~っ!!! 私の出番を喰うなぁ~~!!」 「・・・・・・という脳内設定で開始するわ。正直出オチ命なのでもうやりきった感があるわね。後は蛇足と言っても差し支えないと思う。」 「レポ主の次回作にご期待ください。」 「おいっ!! 私達の戦いはこれからなんだぜ!?」 「や、それも打ち切りフラグだから。」 C O N F I G ・難易度首領 ・パンゲア、標準、海面中 ・速度普通 ・東方叙事詩1,13-3-7 ・編集をロック ・先行スタート165ポイント(都市ひとつと戦士一体分) ・無双モード ・攻撃的AI ・登場文明、指導者指定 まりさ 攻撃・呪文 平和志向度 宣戦抑制度 プレイヤー文明 フランちゃん 攻撃・呪文 0 50 安定感ある戦争屋。このメンツの中では割と信用できる方・・・だと思う リリー(漆黒) 組織・攻撃 2 70 被宣戦率は文化で国境問題自演して勝手に切れてくる虹川三姉妹の方が高いイメージ。データ上は白玉楼随一の戦争屋 うどんさん 創造・金融 0 100 うどんさんの皮をかぶったナポレオン。金融ではあるが戦火を好み過ぎて、後半人間の里に圧殺されているのをよく見かける てんし 攻撃・拡張 0 100 安定感のある戦s(ry。 てんこじゃないよ、てんしだよ。敵のユニットとして出てきたときの安心感は異常! ☆くまー遊戯 攻撃・カリスマ 0 50 えっ、左の名前が何一つ合っていないって? HAHAHA、御冗談を。 戦火の女神。 レティ・黒幕・Wロック 拡張・金融 0 50 中の人はチンギスさん。彼女が隣国だと初期ラッシュ率150%。第一波をしのいでも金融パワーで第二派が来る確率が50%という意味で。 もこたん 帝国・呪文 2 50 中の人はお釈迦様。人間の里なので研究も早い。「攻めてこない前提の全裸防御」はいともたやすく見破られ、シャカられる 水密船長 交易・攻撃 0 50 カタログ上は屈指の戦争屋。挙動も実際その通り。世界一周は大抵彼女によってなされる。大抵の場合意味もないが。 「各文明の代表的な戦争屋をかき集めてみたよ。どの子も珠玉の戦争屋さ。」 「ルナテッィクだもんな、首領にしないと企画倒れだぜ!」 「なんということでしょう! 匠の人選により幻想郷は平均平和志向度0,5、平均宣戦抑制度65(!)の至高の情熱大陸に生まれ変わったではないですか!!(ちなみにまりさを担当するのは、博麗神社最高の戦争やである彼女が宣戦抑制率200と高かったから。平均を下げるためだけにまりさを選びました)」 「あんたら、なんてことしてくれるのよ。」 「まぁ、難易度自体は下がる設定なんだけどね、これ。 こんな設定なら場合によっては不死(蓬莱人)と同等くらいの研究ペースにもなるわよ。」 「無双モードってことは私達五人全員出られるから、何とかなるさね。東方ユニット無双は難易度あまり関係ないからね。」 「えへへ~、なにしろ主人公だからな。 毛玉や妖精の援護必須で主人公なんて勤まらないんだぜ!!」 「・・・・・これ、既にある偉大なプレイヤーによるレポと重複しない?」 「案じることはない! そう思われる賢明なる読者諸兄のためにとっておきのイベントも盛り込んでおいたよ!」 (とくに必要性はないけど)アポロ神学からの官吏スリングショットもやってみた! 「うわ~~、取ってつけたかのような差別化・・・・・・。しかもホントに必要性が感じられないし・・・。」 「そうとも限らないぜ。超高難易度ではこうした瞬間的技術リードからの技術交換によって活路が開けることがしばしばある。アポロ神殿と官吏ジャンプの二度の瞬間アドバンテージはきっとルネサンスまで追いすがるだけの原動力を与えてくれるはずだ!」 「方針としては、とにかくAIに囲いこまれるから、拡張はいっそのこと放棄。3~4都市くらい立てられれば恩の字と言ったところかな。拡張に使うハンマーを遺産に充てていこう。最悪首都だけの自発的OCCでも経済学までならなんとかなる!!(確認済み)」 「『判定見切り』、『経済学』、『博霊式』までの開発を全部終えてから一気に異変解決に乗り出すつもりだぜ。」 「それまでは防戦一方ってことね。来ないに越したことはないけど、この情熱的なメンバーでは十中八九弾幕ごっこに巻き込まれるでしょうね・・・・。」 「望むところさ。『僕の』まりさは誰にも負けはしない!!」 「誰の・・・・だって?」 「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪・・・・」 「ホントのところは人柱テスト版のテストプレイと、ついでに前回の平和的(笑)幻想郷の真逆をやったら面白いんじゃないって感じでやってみた、だそうだよ。製作者様に感謝。ゆるーく、前篇後篇の二本で〆るので、気楽に見ていってくれれば幸いさね。」 「・・・・・ところで霖之助は何であんな大変な変態みたいになっちゃってるワケ?」 「それが・・・・、私が『お前はよわっちいからユニットになってないんだな』って冗談で言ったら・・・・・」 「・・・言っちゃったら?」 「吹っ切れたように体を鍛え出して・・・・結果、ご覧のありさまだよ!!!」 「なんてことしてくれてんのよ・・・・・」 つづき→前篇 「(あたしゃここにいるよ・・・。)」 シャカさんCiv4に帰ってくれw俺はもこたんにもこられる方が好きなのに〜w -- 名無しさん (2010-11-06 08 02 26) 安定のひどさだw -- 名無しさん (2010-11-06 10 00 54) 熊の扱いが安定しないなw -- 名無しさん (2010-11-06 14 11 33) 名前 コメント
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『まりさの楽園 中編』 36KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作 *前回のあらすじ 長ぱちゅりーはまりさたちが新しく作った群れに向かった。 「ゆっくり!ゆっくりー!」 「すーや!すーや!」 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「ゆっくちー!」 ここは山の外れに位置するまりさたちが新しく作った群れの広場。 そこにいるまりさたちは、みな思い思いの方法でとってもゆっくりしている。 あるまりさは、他の家族や他のまりさたちとじゃれあい、またあるまりさは、ひなたぼっこをしながらうたた寝をしている。 そしてまたあるまりさは、自分が採ってきた食料を口一杯にほおばっていた。 それらの行為は、みな元の群れにそのままいたら到底できなかったことだ。 ここではれいぱーにおびえることもなく、でいぶに罵られ四六時中狩りに繰り出されることもなく、 もりけんに顎でこき使われることもない。 食料は自分と連れて来たおちびちゃんたちの取り分だけ狩ってくればそれでこと足りるし、 余った時間は誰に邪魔されることもなくゆっくりし放題だ。 もとよりこの群れのにいるまりさは、皆今までつがいであったでいぶやありす、ぱちゅりーの無茶な要求にも耐えてこれたような優秀な個体が集まっているのだ。 ただ生きて、暮らしていくだけならば何の問題ない。 唯一の不満と言うか不便は、この群れにはまりさ種しかいないため、つがいとおちびちゃんをつくることができないことだ。 だがしかし、それはもういい。 いまさらつがいを持とう、などと考えるまりさはこの群れにはもはや誰もいなかった。 おちびちゃんなら、いまいるだけで十分だ。 今あるゆっくりをただ享受して、ただ生きていければそれでいい。 一度は心を殺したまりさたちの、それはある種の悟りといってもいい心理であった。 この群れに逃れてきたまりさたちは、みな今の現状に満足しており、今あるゆっくりで充分と感じていたのだ。 しかし、そんな穏やかな時間が流れている群れの広場に、突然一匹のまりさが慌てた様子で飛び込んでくる。 「ゆあああああああああああ!みんなたいへんだよおおおおおおお! まりさいがいの、ほかのゆっくりが、こっちにむかってきてるよおおおおおおおお! まえのむれの、おさぱちゅりーに、かんぶありす、かんぶれいむもいるよおおおおおおおおお!」 ざわわ!? 広場で各々ゆっくりしていたまりさたちは、そのセリフを聞くや否や一転、騒然となる。 その飛び込んできた見張り役のまりさの話しでは、なんと元いた群れの長ぱちゅりーと幹部れいむ、幹部ありすが、こちらの方向に向かって進んできているというのだ。 そのゆっくり出来ない報告により混乱状態となるまりさたち。 群れの長が?いったい何のために?どうして!せっかく忘れていたのに!何しにきやがった!怖いよ!もう前の生活はゴメンだ! なんで放っておいてくれないの!顔もみたくない!逃げないと!ゆっくりできない! 様々なゆっくりできない憶測があたりを飛び交い、まりさたちはおろおろと動揺しただ広場を右往左往するばかり。 と、そこへ、 「みんなおちつくんだぜぇ!」 慌てふためくまりさたちに対して鋭い一喝が広場に響いた。 「みんなじたばたするんじゃないんだぜ!なにもおそれるひつようはないんだぜえ! もとのむれのおさだか、かんぶだかがやってきたところで、どうってことないし、やつらにしたがうひつようもないんだぜえ! もうまりさたちは、じゆうなんだぜええええええ!」 慌てふためくまりさたちに向かって、この群れのリーダー格のまりさが吼える。 「しんぱいしなくてもだいじょうぶなんだぜえ! ここはもう、どくりつした、まりさたちのむれなんだぜ! ぶがいしゃのすきかってにはさせないんだぜええええ!」 「「「ゆっ、ゆおおおおおおおおおおお!」」」 リーダーまりさの言葉により、我に帰る群れのまりさたち。 そうだ、そうだった。 もう自分たちはあの群れを出て行ったのだ。 だからあの群れのルールに従う必要もないし、長ぱちゅりーや幹部れいむ、幹部ありすにへこへこする必要もない。 何の用でこっちに向かってるか知らないが、奴らが来たところで何てことはないんだ! 「そうだね!そうだよ!」 「りーだーのいうとおりだよ!」 「ここはまりさたちのむれだよ!ぱちゅりーたちなんかのすきにはさせないよ!」 互いに団結し、落ち着きを取り戻していくまりさたち。 ここはまりさの楽園、まりさだけの群れ。 他のゆっくりの指図は受けない! そう群れのまりさたちは、強く意志を固めるのであった。 「むっきゅー!まだつかないのかしら、ぱちぇはもうつかれたわ!」 「ゆーん、うわさにきいたはなしだと、ここらへんのはずなんだけど……」 「まったく、これだからいなかはいやなのよ!」 誰にともなくぶつくさと文句を言いながら、のろのろと森を移動しているゆっくりたちがいる。 それは例の長ぱちゅりー、幹部れいむ、幹部ありすの三匹だ。 三匹は意気揚々と群れを飛び出したのはいいものの、目的地のまりさの群れの位置がよくわからず森をさ迷い歩いていた。 しかも、ただでさえ日々の身の回りの生活の一切をまりさにやらせて身体がなまっている三匹にとって、この道中は非常にしんどいものらしく、 三匹はもうヘトヘトな様子である。 そして疲れ切った長ぱちゅりーは、当然の如く不満だらけだった。 まったく何だって自分たちがこんな辛い目に遭わなければならないのか? 何故まりさの群れのにいる連中は、長や幹部である自分たちがこうしてやってきているのに、迎えの一つもよこさないのか? まったくふざけてる。 やはりわざわざこのぱちぇ自ら群れに乗り込むなんてことはせず、適当に使いでも寄越して、 向こうからこっちの群れに土下座させにこさせるべきだっか? とにかく疲れた、何だってこのぱちぇが、本来ならば下等なまりさ種がやるべき肉体労働をしなければならなのか……。 自分から群れに行くと言い出したことを棚に上げ、 そんなことを長ぱちゅりーが考えていると、突然幹部れいむが声を上げた。 「ゆゆ!みてみて!あそこにまりさがいるよ!」 「あら、ほんとだわ!ゆぷぷぷ!いなかものまるだしのつらねぇ!」 幹部れいむの言った方向に視線を向けると、その言葉が示す通り少し進んだ場所に一匹のまりさがいた。 そのまりさは何をするでもなく、じっと長ぱちゅりーたちの様子を窺っているようである。 「むっきゅー!ようやくでむかえがきたの!まったくおそすぎるわね! ちょっとそこのまりさ!ばかみたいにぼさっとしてないで、ぱちぇたちをさっさとおまえらのむれにあんないしなさい! これはめいれいよ!はやくしなさい!」 前方にいるまりさにむかって、高圧的に話しかける長ぱちゅりー。 しかし、 「……………」 そこにいたまりさは無言でクルリと踵を返すと、そのままどこかへと跳ねて行ってしまった。 「なっ!」 「ゆええ!」 「ちょっと!」 そんなまりさがとった予想外の行動に驚く三匹。 自分は確かに群れに案内しろと命令したはずだ。 この至近距離で、まさかそれが聞こえなかったなどということはあるまい。 だというのにその命令を無視し、あまつさえ長や幹部である自分たちに背を向けてどこかへ去るなどとは一体何事だろうか! 「なっ、なんなのよ!いまのたいどは!いくらなんでもふざけすぎよ!」 「ゆああああああ!あのまりさ、なまいきだよおおおおおおおおお!まりさのくせにいいい!」 「むぎゅぎゅぎゅ!こっ、このぱちぇをむしするなんて!なんてぶれいなゆっくりなの!」 三匹は呆然とするのもつかの間、すぐに我に返って怒りをあらわにする。 「あのまりさを、おうわよふたりとも!こんなあくは、けっしてみのがしちゃいけないわ!」 「「ゆっくりりかいしたよ!」」 言うが早いか、まりさが去った方角へと跳ね出す三匹。 怒りで疲れが吹き飛んだのか、長ぱちゅりーを先頭にして今までにないスピード(それでもかなり遅い)で突き進んでいく。 そして、その勢いのまま一直線に森を進んだ三匹はやがて木々を抜け、やや開けた場所へと出る。 そこには……。 「「「ゆゆ!?」」」 その場所で三匹は 我が目を疑う光景を目にした。 目の前に広がる広場。 そこにはまりさだ、まりさたちがいる! いや、そのことはいいのだ。 自分たちは、そもそもまりさの群れを目指してやってきたのだから。 まりさがいること事態は問題ではない。 問題はそのまりさたちの様子だ。 なんと、そこにいるまりさたちは、信じられないことに、誰も彼もがとんでもなくゆっくりしていた。 長ぱちゅりーたちは、こんなにゆっくりしているまりさは、いやそもそもこんなにゆっくりているゆっくりを見るのははじめてだった。 「……これは、どういうことなの」 ポカンとアホみたいに口を開けたまま思わず呟く長ぱちゅりー。 何故これほどまでも、まりさたちはゆっくりできているのであろうか? 『ぼせい』溢れるれいむ種が、『とかいは』なありす種が、そしてなにより『けんっじゃ』であるこの自分、ぱちゅりー種がこの群れにはいないというのに! 一体なぜ?どうしてゆっくりできるというのだ! と、そこへ、 「いったいこのむれに、なにようなのかぜ?」 困惑している長ぱちゅりーたちへ声がかけられる。 「むっ、むきゅ」 声をかけられた方向へ目を向けると、いつの間にやらそこには他のまりさより一回り大きいリーダーまりさを中心に、 数匹のまりさたちが集まっており、長ぱちゅりーを睨み付けていた。 「もういちど、いうのぜ! いったい、このむれになんのようできたのかと、きいているんだぜぇ!」 急な事態にやや放心気味の長ぱちゅりーたちに対して、咎める様に言うリーダーまりさ。 リーダーまりさの周りにいるまりさたちも、みな一様に険しい表情をしている。 その口調や態度から、歓迎されてないことは明らかだ。 「ゆーん!なんだかゆっくりできないふんいきだよ!」 「とかいはじゃないわね…」 流石に能天気な幹部れいむと幹部ありすも、その緊迫した雰囲気に気づいたのかやや不安げな様子である。 「ちょっとあなたたち!さっきからなんなのそのたいどは! おさであるこのぱちぇが、わざわざきてあげたのに!こんなぶれいがゆるされるとおもって! ふかいだわ!しゃざいしなさい! それから、ぱちぇたちをかんげいするぱーてぃはどうしたの!」 しかし、そんな中にあっても長ぱちゅりーは、毅然とした態度を崩さなかった。 ただ単に空気が読めてなかっただけとも言うが…。 「はぁああああん!いったいなにをわけのわからないことをいってるんだぜ? ようがないならさっさとかえるんだぜえ! ここは、おまえらがくるようなばしょじゃないんだぜぇ!」 長ぱちゅりーの態度に対し、小バカにしたように言い返すリーダーまりさ。 そしてさらに、 「ゆゆ!ぱちゅりーだ!もりけんのぱちゅりーがいるよ!」 「でいぶだ!となりにでいぶもいるよ!」 「れいぱーありすもいっしょみたいだね! ゆぷぷぷ!もといたむれの、くずしゅさんびきが、みはりのほうこくどおり、がんくびそろえてあつまってきてるよ!」 ざわ…ざわ…。 長ぱちゅりーとリーダーまりさの会話により注目を浴びたのか、今まで広場で思い思いにゆっくりしていたまりさたちまで わらわらと長ぱちゅりーたちの側に集まってくる。 そして、そうこうしているうちに、いつの間にか長ぱちゅりーたち三匹はこの群れにいる沢山のまりさたちに周囲をすっかり囲まれてしまっていた。 「ゆぴいいい!きょわいよおおおおおおお!」 「とっ、とかいはじゃないわああああああ!」 「……………くっ!」 周囲をまりさたちに囲まれ、その恐怖からみっともなく震えだす幹部れいむと幹部ありす。 それは今にも泣き出し、恐ろしーしを辺りにぶちまけんばかりの有様である。 そして長ぱちゅりーもまた、一見かろうじて平静を保っているように見えたがその顔面は真っ青だった。 「ゆふん、いったいなんのようで、このむれまでやってきたんだかしらないけど、 みてのとおり、おまえらはまねかれざるきゃくなんだぜえ! さっさとおかえりねがうんだぜ!いまならみのがしてやるんだぜえ!」 汚物でも見るかのような目で、吐き捨てるように言うリーダーまりさ。 また取り巻きのまりさたちも敵意をむき出しにしており、まさに一触即発の状態である。 うかつな言動をすれば、そのままふくろ叩きにされかねない状況だ。 長ぱちゅりーたちにとってはここはまさにアウェー。敵地なのである。 そもそもそんな場所に、幹部三匹で乗り込むこと事態が愚行であるといえるのだが、 能天気な長ぱちゅりーたちはこんなことになるなんて全く予見してなかったし、今さら何を騒いだところで後の祭りだ。 もうこういう状況になってしまった以上、最善の行動は変にまりさたちを刺激せずに大人しく帰るのが正解だろう。 というかそれ以外に手はない。 「ゆゆ、ぱちゅりー、ここはいったんひきあげたほうが……」 「そっ、そうよぱちゅりー!こんないなかにいつまでもいることないわ!」 「…………むきゅ」 危険なレベルでゆっくり出来ない気配を感じ取ったのか、長ぱちゅりーにそれとなく退却を進める幹部れいむと幹部ありす。 当初の予想だった、まりさたちが進んで群れに戻ってくるという希望的予測はもう完全に否定されている。 となれば、こんなところに長居は無用で、さっさと撤退するのが吉だ。 幹部れいむと幹部ありすには既に群れを出た当初の陽気さ楽観さはなく、その心を占めるのはこの場をさっさと離れたい一心だけだった。 そして、今この場はゆっくり出来ないという意見は長ぱちゅりーとてまた同様であった。 確かに幹部れいむたちが言うように、こんなふざけた場所からは一刻も早くおさらばしたい。 が、しかしである。 長ぱちゅりーは思う。 このままここでなにもせず、すごすごと引き下がる、などということがあってよいのだろうか? 長たる自分がまりさごときの言う事に従い、屈することが許されてよいのだろうか? いいや、それは断じて認められない! そんなのけんっじゃとしてのプライドが許さない! 大体悪いのはこいつらの方じゃないか、自分という正義がここで崩れる道理があろうはずがないのだ! 長ぱちゅりーの心の内から何か得体の知れないものがむずむずと這い上がってくる。 それはまりさたちによってもたらされた、おそらく生まれてこのかた初めて体験するゆっくり出来ないストレスが、 捌け口を求めて長ぱちゅりーの身体の中で暴れまわっているのだ。 人生において他人にムカつくことを言われ、何か言い返したいが、言い返してはいけない場面というのは存在する。 例えば今がその時だ。 こちらは三匹しかいないのに対して、あちらは多数のまりさ、それもこちらに明らかに敵意を持っている状況。 こんなときは、例え不本意でも口を噤んでおくべきである。 だがしかし、我慢などと言うものとは無縁の生活を送ってきた長ぱちゅりーは、それを耐える術をしらない。 そしてとうとう堪えきれなくなった長ぱちゅりーは、口火を切ったのであった。 「いっ、いいかげんにしなさい! かえれですって、よくもそんなくちがきけたものね! あなたたち、いったいだれにたいして、ものをいっているのかわかってるの! ぱちぇは、むれのおさなのよ!えらいのよ!けんっじゃなのよ! それをおまえら、まりさごときがこのぱちぇにいけんなんて、みのほどをしりなさい!」 あくまで見下した態度で、どこまでも不遜に長ぱちゅりーは喋り続ける。 「なんのようできたかですって?あなたたちばかまりさは、いちいちいわれないとそんなこともわからないの! おまえらくずどもを、むれにつれもどしにきたのよ! おまえらが、すきかってして、むれをでたおかげでめいわくしているゆっくりがたくさんいるの! こんなあくじを、むれのおさとして、ほうっておけるはずないでしょう! いい、いちどしかいわないわよ!ここにいるまりさたちは、そっこくむれにもどって、ぱちぇのどれいになりさい! これは、おさとしてのめいれいよ!わかったら、さっさとこうどうしなさい、このくずども!」 体内に溜まったものを吐き出すように、一気にまくし立てる長ぱちゅりー。 自分は何ら間違ってなどいない。 そうとも、間違ってるのはこいつらなのだ。 自分は正しいことをしている! 従え!このゲスども!ぱちぇは群れの長なんだぞ! 「……………はぁ?」 長ぱちゅりーの物言いに、リーダーまりさはただただ困惑気味に顔をしかめた。 また、周囲を囲んでいるまりさたちも同様に、呆けたような表情をしている。 言ってる事が分からない…イカれてるのか?この状況で。 ひょっとしてこいつらは、なぜ自分たちが群れを出て行ったのかまるで理解していないのではないだろうか? 今の長ぱちゅりーの言動から推測するには、そうとしか考えられないのだ。 仮にもしそうだったとしたら、コイツは一体どれ程愚かで無能なのだろうか。 そしてそんなヤツに今までこき使われてきた自分たちは……。 「むっきいいいい!なにぼさっとしてるの! さっさとこうどうしろといったでしょこのぐ……」 「だまるんだぜええぇぇえ!!!」 「ひっ!」 まだ何か言おうとした長ぱちゅりーの言葉を、リーダーまりさの咆哮が遮る。 リーダーまりさは悟ったのだ、長ぱちゅりーとまともに会話をするのが時間の無駄だということに。 「いいかげんにするのはおまえらのほうなのぜ! だいたい、いつまでおさきどりでいるんだぜえ!わらわせるんじゃないのぜ! ここはまりさたちのむれなんだぜ!ここではおまえらなんか、ただのむのうな、もりけんなんだぜぇ! ごちゃごちゃいうようなら、ちからずくでおいかえすまでだぜぇ!」 ドン! 「むっきょろばああああああああ!」 リーダーまりさが軽く長ぱちゅりーに体当たりすると、長ぱちゅりーは悲鳴を上げながらコロコロと転がっていく。 「ここからでていけ!そしてにどとこのばしょにくるんじゃないんだぜ!」 「そうだ!そうだ!」 「でていけ!このむれからでていけ、このげすども!」 「かえれ!かえれぇ!」 「しんでね!しんでね!はやくしてね!」 「くずが!にどとそのきたないつらを、まりさにみせにこないでね!」 リーダーまりさが手を出したことをきっかけとして、四方八方から感情を押さえきれなくまりさたちのヤジが飛ぶ。 いや違う、これはヤジなどという生易しい代物ではない。 長ぱちゅりーたちをはじめとした、過去に自分たちをこき使った群れのゆっくりたちに対する、 明確な敵意、殺気をこめた憎悪の言葉の数々であった。 「ゆぴいいい!もうやだああああ!おうじがえるううううう!」 「ひいいいい!どがいはあああああ!どがいばあああああ!」 ジョロジョロジョロ~。 そんなあまりにもゆっくりできない状態についに耐えられなくなったのか、 とうとう泣き出し、おそろしーしを漏らす幹部れいむと幹部ありす。 「うわ!きたなっ!もらしたよ!でいぶとれいぱーが、しーしをもらしたよおおおお!」 「あっちいってね、けがわらしい!」 「ゆゆ!これでもくらえ!」 ピュッ! 周りを囲んでいたまりさのうち一匹が、口に小さな石を咥え噴き出した。 そしてその石ころは放物線をえがき、見事れいむの頬に命中した。 「ゆびいいいいい!いだいいいいいい!どうしてこんなことするのおおおお! でいぶなにもわるいことしてないのにいいいい!」 「うるさい!このげすども!みんなやっちゃえ!」 「ゆゆ!くちでいってわからないげすを、むれからおいだすよ!」 はじめに石を拾ったまりさに倣って、次々に小石を口に咥え、撃ちだすまりさたち。 それは石つぶてとなり、幹部れいむと幹部ありす、そしてやや離れたところに転がっている長ぱちゅりーを襲った。 「ゆっぴぎゃああああああ!やべでえええええええええ!」 「ぎょへえええ!ちょかいは~!ちょかいはなのおおおおおおお!」 「むっげっへぼ!えれえれえれ!」 幹部れいむと幹部ありすは自分で漏らしたしーしにまみれながら、長ぱちゅりーは自身の中身を少し吐き出しながら、 たまらず群れの出口へ向かって逃げ出す。 もう長のプライドとかそんなこと言ってる場合じゃない。 このままここにいたら命が危ない!流石にそのぐらいのことはもりけんでも理解できたようだ。 「ゆふん!こんかいはこれぐらいにしておいてやるんだぜ! ただし、つぎまたやってきたら、そのときはいのちはないとおもうんだぜぇ!」 必死の形相で逃げ出す長ぱちゅりーたちに、そんなリーダーまりさの最後の声が届いた。 そして数日後。 ここは長ぱちゅりーが所属する群れ内。 「なんなの、あのいなかものまるだしのたいどは!ふざけるのもいいかげんにしてほしいわ!」 「ゆうううう!れいむにひどいことするなんて、とんでもないげすなまりさだよおおおおお! 「むっきゅううううう!よくも!よくもぱちぇをばかにしてえええええ! ゆるさない!ぜったいにゆるさないわあああああああああ!」 いつもの長ぱちゅりーのおうちで、まりさの群れから命からがら何とか帰還した三匹が、がん首そろって文句を垂れている。 彼女らのまりさたちへの感情は、憤りから明確な怒りへとシフトしていた。 とは言え、実際には口であーだこーだと文句を言うだけで、実際にまりさたちの群れへと報復行動へ移るようなことはしない。 というかできないのだ。 何故ならあれだけの数のまりさたちに対抗するには、こちらにもそれ相応の数のゆっくりがいる。 しかし肝心の群れにいる他のぱちゅりー、れいむ、ありすはたちは、自らまりさの群れに乗り込んで行いき、戦い、 そして、まりさをどうこうすることに積極的ではなかった。 いや、もちろんまりさたちに戻ってきてほしいと思っているのだ、そうでないと自分たちが困るのだから。 しかし、そのために労力を使うのゴメンだったのだ。 要するに彼女らがしたいのはケンカではなくイジメなのである。 殴りつけても文句を言わない生きたサンドバックが、おうちに食料をはこんでくるだけの機械が、 自らの手足となる奴隷が欲しいだけなのである。 それもなるべく自分たちの手は汚さないで。 そんな連中が、わざわざ苦しい思いをしてまでまりさの群れに赴くはずもなく、 ましてや、長たちの個人的復讐のために動くはずもない。 そもそもまりさたちを全員せいっさいしてしまったら、奴隷が手に入らないではないか。 ゆえに、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー全員でまりさの群れの攻め立てるという選択肢は使えないのだった。 「それで、どうするのぱちゅりー!まさかこのままじゃおわらないよねぇ!」 「そうよ!そうよ!このままでいいはずがないわ!というか、むしろありすたちのたちばがあやういわ!」 長ぱちゅりーに迫る幹部れいむと幹部ありす。 出て行ったまりさたちを連れ帰り、奴隷にするという計画は失敗に終わってしまった。 しかし今の長ぱちゅりーたちは、失敗しました残念でした、ではすまされない状態と立場にある。 何故ならばこの群れの運営は、まりさがいなくなってしまったことにより、想像以上の危機的状況に陥っていたからだ。 いままでまりさたちを劣っているとして、奴隷のように扱い、やりたい放題してきた群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー。 しかしいざそのまりさたちがいなくなってしまうと、なにも出来ずに餓死や衰弱死してしまうゆっくりが続出しはじめたのだ。 寄生主のいなくなった寄生虫の末路など、所詮こんなものということだろう。 そんなわけで、長ぱちゅりーたちの所には日々、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりーたちが、この事態を何とかしろと毎日のように苦情を言いにくるのであった。 その様子はかつて離婚禁止法を掟として決めたときに、群れのまりさがこぞってぱちゅりーの下を訪れた現象とそっくりである。 ただし、抗議にくるゆっくりがまりさではなく、れいむ、ありす、ぱちゅりーだという違いはあったが。 そもそも困ってるなら自分たちで何とかしろよ、と思わなくもないが、先ほども言ったように彼女らはなるべく自分たちの労力は使いたくないのだ。 一昔前なら、まりさとつがいになるだけで手頃に奴隷が手に入った。 しかし現在はどうだ、群れにまりさがほとんどいなくなってしまったではないか。 これはゆっくりできない、だからなんとかしろと皆長ぱちゅりーのところに次々と文句を言いにくるのだ。 長ぱちゅりーは、相手がまりさならば偉そうに突っぱねることが出来たが、しかしその対象が、れいむ、ありす、ぱちゅりー、 となるとそうもいかない。 自分ら長や幹部と同じ種族ならば、無下にすることはできないというわけだ。 今までは何とかする、大丈夫だから落ち着いて待っていろと、やってくるゆっくりをなだめてきたがそれもそろそろ限界だろう。 もしこのまま何の打開策もなしに、ズルズルとこの状況が続くようであれば、長ぱちゅりーたちは無能のレッテルを貼られ、 長や幹部を辞めさせられるばかりか、群れを衰退させた責任としてせいっさいの対象になる可能性すらある。 それは長ぱちゅりーたちが最も怖れることであった。 そうならないためには、なんとしてもあのクソまりさたちをこの群れに連れ戻す必要がある。 それも早急にだ。 「むきゅ!だいじょうぶよ!もうつぎのてはかんがえてあるわ!」 不安に駆られ迫ってくる幹部れいむと幹部ありすに、安心するように言う長ぱちゅりー。 「ゆゆ!ほんと!」 「さっすがぱちゅりーはとかいはね!」 「むっきょきょきょきょ!このけんっじゃのぱちぇに、まかせておけばいいのよ!むっきょきょきょきょ!」 不適に笑う長ぱちゅりー。 はたしてけんっじゃの次なる策とは!? 「と、いうわけで、あなたたちに、むらをでていったまりさたちを、どれいとしてつれもどすやくめをあたえるわ! これはほんらいならば、なまけもののあなたたちには、すぎたしごとよ!ありがたくおもいなさい!」 ニヤニヤと笑いを浮かべながら尊大な態度でそう言い放つ長ぱちゅりーの目の前には、二匹のゆっくりがいた。 ちぇんとみょんだ。 ここは群れ内のやや外れたところにに位置する巣穴。 主にちぇん種とみょん種が固まって生活しているテリトリーである。 今、長ぱちゅりーが話しているみょんとちぇんは、この辺り一体のリーダー格のゆっくりであった。 さて誤解しないように言っておくと、このちぇんとみょんはリーダー格と言ったが、別に群れの幹部とかそういうわけではない。 そもそもこの群れに所属しているみょんとちぇんたちはやや特殊で、群れに属していながらもあまり積極的に他のゆっくりとはかかわろうとはせず、 独自の領域に引きこもっており、群れの一部にあってなお独自の組織体質を持ってるゆっくりたちの集まりだった。 無論だからといって、別に群れの方針や掟に逆らったりしているわけではない。 あくまで群れ内に存在する一派閥のようなものであり、そこにはみょんやちぇんの他にもそのつがいとして、 まりさやれいむなどのゆっくりもきちんと生息している。 何を隠そう今この群れに僅かに残っているまりさ種は全てこのテリトリーにいるまりさたちであった。 そんな連中のまとめ役が、今長ぱちゅりーと話しているこのちぇんとみょんというわけだ。 「いっておくけど、これはじゅうようなやくめよ!しっぱいはゆるされないわ! もし、しくじるようなことがあれば、もちろんせいっさいよ! そこのところをよーく、きもにめいじておくことね!」 そして、そんな彼女らに長ぱちゅりーはまりさたちを連れ戻す役目を押し付けたのだ。 群れの、れいむ、ありす、ぱちゅりーが動かないというのならば、かわりにちぇんとみょんたちを動かせばいい。 自分らの手を一切汚すことなく、手に負えないことは他人に丸投げというわけである。 これで成功すればそれでよし、よしんばもし失敗したとしても、失敗の責任の制裁ということでみょんやちぇんたちを、 文句を言ってくる連中に対して奴隷として宛がえば不満が出ることはないだろう。要はまりさたちの身代わりである。 これでめでたく長ぱちゅりーたちの地位は安泰というわけだ。 「むきゅ!おさのめいれいはいじょうよ!もちろんこのやくめ、ひきうけるわよね!」 当然だろ?といった様子でリーダーちぇんとリーダーみょんに同意を求める長ぱちゅりー。 しかし二匹の答えは、 「おことわりだみょん!」 「そんなしごとは、ごめんなんだねー!」 「むぎゃ!なんですって!」 明確な拒否であった。 「どういうつもりなの!ふざけないで!あなたたち、むれのそういに、さからうきなの! そんなことが、ゆるされるとでもおもっているの!いいかげんにしなさい!」 怒りで顔を真っ赤にし、喰らいつくように二匹に詰め寄る長ぱちゅりー。 「べつにむれのそういにさからうなんて、そんなことだれもいってないみょん! ただ、むれのそういというのなら、きっちりてじゅんをふんで、きめてほしいってことだみょん!」 「わかるよー!むれのおきてにはしたがうけど、それはぱちゅりーのめいれいにしたがうってことじゃないんだねー!」 怒り心頭の長ぱちゅりーに対し、冷静に正論を返すリーダーちぇんとリーダーみょん。 そもそも長ぱちゅりーはことあるごとに命令だ命令だといっているが、 本来この群れの長には、他ゆんを勝手にどうこうできるような強力な権力など存在しない。 あくまで群れ全体を舵取りするための方針を決める際に、みなの中心となって行動する役割を持つというだけだ。 つまり群れの長のぱちゅりーの命令だからといって、群れのゆっくりは絶対服従しなければならないということではないのだ。 この群れでゆっくりに対して唯一無二の強制力を持つのは群れで定められた掟のみである。 この掟で決められたことだけは、いかなるゆっくりでも逆らうことはできず、逆らえば即制裁の対象となる。 そして、新しく掟を作るためには、群れの集会で賛成の数が反対の数を大きく上回らなければならないのだ。 例えば、以前掟で定められた離婚禁止法。 これは集会に参加していたれいむ、ぱちゅりー、ありすの全員が賛成し、直接当事者ではないみょんとちぇんは角が立つことを警戒して、 全員賛成でも反対でもない棄権をし、まりさたちはほとんどその場にいなかったため、賛成多数となり成立したという経緯があった。 「とにかくそのめいれいはおことわりだみょん! どうしてもやらせたいなら、きちんとしゅうかいをひらいて、そこできめてほしいみょん!」 「わかるよー!でもどうせしゅうかいをひらいても、ちぇんとみょんたちはみんなはんたいするからむだだけどねー!」 リーダーちぇんの言うように、この命令を実行させるための掟を作るために集会を開いたところで無駄に終わることだろう。 前回の離婚禁止法と違って、今回はちぇんとみょんたち全員が反対に回るであろうことは明らかだからだ。 また、流石に前使った手のように、全てのちぇんとみょんに悟られることなく極秘で集会を開くというのも不可能だろう。 つまりは、またもや長ぱちゅりーの策は失敗したということである。 「そもそもどうして、まりさたちをつれもどすひつようがあるみょん?」 「わかるよー!べつにでていきたいやつはかってにでていかせればいいんだねー!」 こんどは逆に長ぱちゅりーに質問するリーダーちぇんとリーダーみょん。 基本的にはゆっくりの群れのゆん口が増えて困ることがあっても、減って困ることはそうはない。 長ぱちゅりーはさも群れの一大事みたいに言っているが、普通の群れならこの程度のことで群れは崩壊のピンチになったりはしない。 まあ、この群れは普通じゃないので現に大ピンチなわけだが、 キチンと生活しているちぇんやみょんたちからすれば当然の疑問かもしれなかった。 「そ、それはその、ほら、のこされたつがいがかわいそうでしょ! そんなめちゃくちゃを、ゆるせるわけないじゃない!」 ややしどろもどろになりながら答える長ぱちゅりー。 まさかこのままじゃ自分の立場が危ういから、とは口が裂けても言えない。 みょんとちぇんなんかの前で本音を晒し、恥をかくなどそんなのは長ぱちゅりーのプライドが許さない。 「いちどでていったようなれんちゅうを、むりやりつれもどしたところで、どうせまたでていくだけだみょん! まりさのつがいたちも、そんなゆっくりとはわかれて、せいかいだったみょん!」 「わかるよー!またあたらしいつがいをみつければいいだけのはなしなんだねー!」 「むぎゅうううう!」 リーダーちぇんとリーダーみょんの正論の数々に唸る長ぱちゅりー。 くそっ!だめだ!だめだ! このバカどもはなにもわかっちゃいないんだ。 ああ言えばこう言う、ごちゃごちゃと屁理屈ばかりこねやがって。 まったくこの怠け者のちぇんとみょんは、無能のくせに昔っからこんなふうに仕事をサボる言い訳ばかり達者なのだ。 だいたいこいつらは根暗なんだ、こんな群れの端に引きこもっていつもこそこそしてやがる。 これならまだ黙って言う事をきいていたまりさたちのほうが、幾分かましだっていうものだ。 「さて、もうようはすんだみょんか?だったらおかえりねがうみょん!」 「わかるよー!ちぇんたちはこれからおしごとなんだねー!」 もう話しは済んだとばかりにひきあげはじめるリーダーちぇんとリーダーみょん。 すでに長ぱちゅりーのことなど眼中にないかのようだった。 「ぐぐぐぐ!むっきゅー!あなたたち!おぼえてなさい!こんなことして、きっとこうかいするわよ!」 そして長ぱちゅりーは小悪党が放つような最低レベルの捨て台詞を残し、すごすごとその場を退散したのであった。 「……みょん、ついにおそれていたときがきてしまったようだみょん」 長ぱちゅりーが去ったあと、リーダーみょんはやれやれといった様子で呟く。 「わかるよー!あのおさにもこまったものだねー!」 そしてそれに同意するように頷くリーダーちぇん。 「まったくだみょん!せんだいのおさは、たしょうしゅぞくひいきがあったくらいで、ほかはまともなのうりょくだとおもってたけど、 どうやらこそだてのじつりょくは、でいぶいかだったみたいだみょん! しょうじき、あそこまでこどもがむのうだとはおもわなかったみょん! こんなことなら、たしょうあれるのをかくごで、おさしゅうにんのしゅうかいのときにはんたいしておけばよかったみょん!」 フゥと溜息をつきながら昔を思い出すリーダーみょん。 かつてこの群れを治めていた長ぱちゅりーは、リーダーみょんの言うとおり長としては無難な実力を持っていた。 だがしかし、親バカだった。 一般に優れた人物が同時に優れた親であるとは限らないように、その先代長ぱちゅりーの子育てはでいぶ以下だったらしい。 その結果、実力はないのにプライドだけはやたら高い増長しきったバカが一匹生まれた。 その他の幹部にしても似たようなものだろう。 そんな長ぱちゅりーが長になれたのは、親である前長の強烈な後押の推薦があったからなのだが、リーダーみょんはその時の集会にて、 反対をしなかったことを今では酷く後悔していた。結局のところ今の問題はそれが全ての原因だからだ。 『むっきゅー!それじゃいまから、つぎのおさをきめるための、けつぎをするわよー! つぎのおさになるのは、このおさであるぱちぇの、かわいいかわいいおちびちゃんよー! このおちびちゃんにまかせておけば、むれはあんっしんだわ! みんな、さんせいよろしくねー!』 『むっきょきょきょ!このぱちぇがおさになったあかつきには、このむれをもっともっとゆっくりできるようにするとやくそくするわ! そう!えらばれたしんのゆっくりのみが、とってもゆっくりできるむれにね!むっきょきょきょ!』 あの当時、先代の長に紹介され、堂々とした態度で群れの皆の前に姿を現した長ぱちゅりーの自信に満ちた態度は、 群れの多くのゆっくりの目に、とってもゆっくりしていると映ったことだろう。 しかリーダーみょんは、そのときどうにもいやーな予感がしたのだ。 あの無駄に自信に満ちた態度は、今まで何不自由なく育ってきた、わがままゆっくり特有の笑みではないか? 自分以外は全て劣ったものとして認識し、周囲が自分のために働き、その命令を聞くのを当然のことだと思い込んでいる。 そんな典型的なダメゆの気配を、リーダーみょんはあの長ぱちゅりーから感じ取っていた。 そしてその予感は的中し、前長の死後、暴走した長ぱちゅりーは特定の種族だけが異常に優遇される政策を徐々にとっていくことになる。 その挙げ句が現在のようなまりさ種の大量離脱、そしてまりさに依存していたゆっくりの大量死だ。 いち早く危機を察したリーダーみょんは、自分たちとそれに比較的仲がよかったちぇん種と固まることにより、 被害を最小限に抑えたが、その分迫害の標的がまりさ種に集中してしまい現在の状態をはやめたとも言える。 そして、まりさたちが群れを出た影響で行き場をなくした醜い欲求が、ついに隠れていたみょん種とちぇん種に向かい始めることとなった。 このままじっとしていれば、まりさたちの二の舞になることは確実だろう。 さっき長ぱちゅりーが自分たちのところへやって来たのがそのいい証拠だ。 大方こんどは自分たちをまりさたちの変わりにこき使う算段なのだろう。 そうでもしないと、一度贅沢を覚えた今のれいむ、ありす、ぱちゅりーは満足に生きてはいけまい。 長ぱちゅりーはまりさを連れ戻す理由を、つがいが可哀相だからだとか、正義のためだとかゴチャゴチャ言っていたが、 結局のところさっさとこの事態を収めないと、自分の身が危ないから焦っているだけなのだろう。 今回は群れのルールを盾にとって無難にお帰り願ったが、そのうち首がまわらなくなってくれば、きっと無茶苦茶を言い出すに決まっている。 その前に何か対策を考えておかなければ……。 「それでどうするのー!いっそのことまりさたちのみかたをして、むれをのっとっちゃうー?」 考え込むリーダーみょんに、リーダーちぇんが過激な提案をしてくる。 それは、まりさたちと強力しての群れの乗っ取り計画……。 確かに今群れを牛耳ってる連中は弱い。 口だけはやかましいが、自分ひとりではなにも出来ないような連中ばかりだ。 自分たちと、それに群れを出て行ったまりさたちとが上手く連係することができれば、 力づくでこの群れを乗っ取ってしまうことも容易であろう。 しかし、 「いや、それはまだできないみょん!」 「ゆゆ?わからないよー!どうしてなのー! このままじっとしてたら、またぱちゅりーたちが、むちゃをいってくるかもよー! そうならないうちに、いっそのこと、こっちからしかけたほうがいいんじゃないかなー!」 「たしかにちぇんのいうとおり、あのぱちゅりーや、かんぶたちはどうってことないそんざいだみょん! でもそのこととはべつに、もっともっとおおきなちからがそんざいするみょん! そのちからがどちらにむかうのか、みきわめないうちは、うかつにこうどうをおこすのはきけんだみょん! いまはまだふほんいでも、まりさのがわと、ぱちゅりーのがわのどちらにでもつけるようにふるまっておくひつようがあるみょん!」 リーダーみょんは思う。 今はまだ行動を起こすべきときではない。 誤った選択肢を選べば、それが即自分たちの全滅に繋がる可能性がある。 今はまだ静観しておかなければ……。 「むっきゅ!むっきゃ!むっぎいいいいいいいい!」 その頃、長ぱちゅりーはおうちでギリギリと歯を食いしばりながら顔を真っ赤にして怒り心頭の様子だった。 度重なるゆっくりできないストレスにより、長ぱちゅりーの怒りは頂点へと達していたのである。 「むぎゃあああああああ!どいつもこいつも、このけんっじゃのめいれいにさからいやがってえええええええええ! なにさまのつもりだああああああああああ!だれのおかげで、このむれでいきていけるとおもってるんだあああああああ! ふざけるなああああああああああ!」 大声でのどがはち切れんばかりに絶叫する長ぱちゅりー。 彼女がこんなにゆっくりできないのは生まれてこのかた初めての経験だった。 「だいたいほかのれんちゅうだってそうだよおおおおおお! そもそも、じぶんたちがうっかりしてたから、まりさににげられたんでしょうがあああああああ! それをぱちぇたちにおしつけやがってええええええええ! しねええええ!むのうなゆっくりはみんなしねえええええええ!」 「ゆゆ…その、ぱちゅりー、すこしおちついたほうが…」 「そっ、そうよ!とかいはじゃないわよ……。それに、あんまりなかまをばかにするはつげんは、よしたほうが……」 長ぱちゅりーの尋常ではない様子に、恐る恐るといった感じでたしなめる幹部れいむと幹部ありす。 それは普段長ぱちゅりーと一緒にやりたい放題やっている二匹がフォローに回るという滅多に見れない光景。 つまりはそれ程までに彼女らは追い詰められているということだ。 今、長ぱちゅりーを取り巻くゆっくりたちの関係はかなり悪い。 明確に敵対行動をとっているまりさたちの勢力は言わずもがな、敵ではないものの、決して味方でもないみょんやちぇんたちの勢力。 そして唯一の味方であるはずの群れのぱちゅりー、れいむ、ありすたちの勢力もあまり協力的とは言えない状況だ。 間違ってうかつな発言をして、彼女らの心証を悪くするわけにはいかない。 「ぱちゅりー、ここはやっぱり、その、むれのみんなにおねがいして、 まりさをつれもどすのにきょうりょくしてもらったほうが……」 「そっ、そうよね!ほら、その、ここは、みょんたちにも、めいれいとかじゃなくて、ちゃんとあたまをさげて、 おねがいするべきよね……。うん、そう、これはしかかたないわ……」 興奮状態の長ぱちゅりーに変わり、わりかし現実的な案を提案する二匹。 確かに今ならまだ長ぱちゅりーが下手に出ることによって、この群れ内のゆっくり全てが団結することができれば、 挽回の機会は充分にある。 しかし、 「はあああああああああああああ!ふざけるなああああああああああああああああ このけんっじゃに、むれのゆっくりたちにあたまをさげろっていうのおおおおおおお! そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおお! ばかなの!しぬのおおおおおおおおお!」 そんなみっともない提案(別に他人に頭を下げてお願いして回るのはみっともなくない)を長ぱちゅりーが受け入れるはずもなかった。 「だいたい、おまえらみたいな、むのうにごちゃごちゃいわれなくっても、ちゃんとつぎのてはかんがえてあるんだよおおおおおお! むっげっげっげ!ぱちぇにはきりふだがあるんだよおおおおおお! くそにんげんをりようするというきりふだがねえええええええ!」 「「!?」」 その言葉を聞いて、驚愕の表情をする幹部れいむと幹部ありす。 人間を利用するだって?そんなことできるはずが! いや、しかしまてよ、確かもう人間が群れにやってくる時期だったはず。 そこで、長ぱちゅりーが群れの長という地位を上手く利用すればあるいは……。 「むっきょきょきょ!このむれのばかどもに、くそにんげんをりようして、 おさにさからうとどうなるか、めにものみせてやるわあああああああああ! ゆぎゃっはっはっはっはっはっはっ!むぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょおおおお!」 長ぱちゅりーのおうち内にて、狂ったような笑い声がいつまでも響いていた。 つづく
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『何も無いまりさ』 12KB 虐待 不運 親子喧嘩 同族殺し 番い 野良ゆ 赤ゆ ゲス 都会 虐待人間 小ネタが膨らんだ 「何も無いまりさ」 ドガッ!! 「・・・ゆげぇ!?」 ガスッ!! 「ゆぶっ!?」 ゴリュッ!! 「ゆばらばぁ!!?」 殴る。 蹴る。 踏みつける。 その度にまりさは悲鳴を上げる。 また踏みつける。 「ゆっべ!?」 踏みつけたまま回転を加える。 「ゆぎゅら゛っ!?」 足を上げて開放してやる。 「ゆ゛・・・も、もうやべ・・・ゆぼっ!?」 鳴き声が不快なのでまた蹴り飛ばす。 何度も何度も。 皮が破れぬように、死なないように加減して。 私はこの路地裏で出会ったまりさに暴力を加え続けている。 きっかけは特にない。 ただ、ふと、そういえば最近凝ったゆ虐ばかりしてシンプルなゆ虐をしていないな、と思い立ち、たまたま入った路地裏で、たまたま視界に入ったまりさを蹴り飛ばした。 それだけだ。 だがそれも飽きてきた。 このまりさ、痛がるばかりで抵抗らしい抵抗もしない。 殴られれば悲鳴を上げて逃げようとするだけ。 これではつまらない。 抵抗しろよ。 「どぼぢてごんなごどするの」と聞いてこい。 逃げるだけだとつまらないだろ? ちょっとは根性見せてみろ。 ふと、視界の端に、まりさのぼろぼろで汚らしい帽子がひらひらと空中を舞って地面に落ちるのが見えた。 周りには草といったまりさの「狩り」の成果が散らばっている。 そういえば今までよく頭の上に乗っていたものだ、と感心した。 よほど持ち主と離れたくなかったのか・・・。 一発蹴っただけで「もうおうちかえる!」と泣きじゃくって逃げ出した持ち主と違い、この帽子は根性を持っているらしい。 よろしい、先ほどぼろぼろで汚らしいと思ったことを訂正しよう。 こんなにぼろぼろになるまでこの屑まりさに使われてご苦労だった。 持ち主は今から惨めに殺してやる。お前にはもう手を出さない。 私の考えが伝わったわけではないだろうが、帽子はふわりと風に舞い上がり、空に消えていった。 同時にまりさの「狩り」の成果である草も飛んでいった。 ・・・草? そう、このまりさ、「狩り」の成果が草しかない。 普通の野良ゆっくりなら生ゴミや虫などが入っているはずだが・・・。 つまりこのまりさは、根性がないだけでなく、無能な固体ということか。 その事実に飽きかけていた虐待に少しやる気が出てきた。 「ゆ・・・が・・・も゛うやめ・・・」 蹴り飛ばしたまりさに近づく。 自分の帽子にも劣る根性なしで無能なまりさはその場から1歩も動かずにぶるぶると震えていた。 その姿に胸が高鳴るのを自覚しながら、もう何発目かもわからない蹴りを繰り出す。 小汚い饅頭が低い放物線を描きながら飛んでいく。コンクリートの地面に激突。 それだけで勢いは止まらず、そのまま転がって路地裏のダンボールにぶつかって止まる。 「ゆ!?、なんなの・・・!?」 と、その路地裏のダンボールから汚らしいれいむが飛び出してきた。 「ゆ?ゆっきゅり!」 続いてこれまた汚らしい赤れいむも飛び出してくる。 「ゆ゛・・・れいむ゛・・・だずげでね・・・」 「はぁ!?ゆっくりしてないまりさだね!」 「ゆぷぷぷぷ・・・ぼりょぼりょぢゃねぇ!」 どうやら蹴り飛ばすうちにこのまりさのおうちまで来てしまったらしい。 まぁ、まりさが逃げようとした方向に蹴り飛ばし続けてきたのだからいつか辿り着くだろうとは思っていたが・・・。 予想よりも早すぎる。 「までぃざばまでぃざだよ・・・」 「ゆっ!?・・・まりさ?」 「・・・ゆ?」 どうやらこのまりさ、「もうおうちかえる!」の言葉通り、最初から自分のおうちに逃げ込もうとしていたらしい。 少しでも知恵があったり善良な固体なら、家族に被害が及ばぬよう、自分のおうちがばれないように逃げる場合でも遠回りしたり全く関係ない方向に逃げることくらいはできるのだが。 「はぁーーーーーーーーー!?なにやっでるの!!?かりは!?ごはんは!?」 「ゆっくちしちぇないくじゅおやだにぇ!!」 このまりさには、根性も、技能も、知恵も、ないらしい。 しかも番はゲスなでいぶ。赤ゆもゲス化している。 「ゆ゛・・・ぞれがにんげんざんにおぞわれで・・・」 「そんなのそのにんげんをどれいにすればいいでしょ!!?ばかなの!?」 「ばーきゃ!ばーきゃ!」 私は、これほどどうしようもないゆっくりに会ったことはなかった。 「むぢゃいわないでね゛!?ごんなにぼろぼろにざれだんだよ!?」 「それはまりさがむのうだからでしょー!!?」 「むにょう!むにょう!」 まぁ、無能だろうがなんだろうが私のすることには変わりない。 私の存在などなかったかのように口汚く言い争う3匹に近づく。 「ぞんなごどいばないd・・・おそらをとんでるみたいぃ!!」 「ゆぅ!?だれなの!?」 「だりぇにゃの!?」 まりさを片手で持ち上げる。 尻をぶりんぶりんと振るがこの程度で逃げられるはずもない。 「・・・どーじでごごににんげんざんがいるの~!!?」 「ゆびぃ~!?」 私の存在にようやく気づいたでいぶと赤れいむ。 目を見開いて絶叫している。 『おいおい、にんげんに会ったら奴隷にするんじゃなかったのか?』 「ゆ!?・・・そうだよ!まりさ!このじじいをはやくどれいにするんだよ!」 「どりぇい!どりぇい!」 「な゛にいっでるの~!?」 でいぶの言葉にまりさの尻の動きが激しくなる。 しかも体中から汁が出てきてキモさ40%増(当社比)だ。 「うるさいよ!!このむのうが!さっさとれいむのやくにたってね!」 「たっちぇにぇ!」 しかしこのまりさ、番にまで無能と認識されているのか。 まぁでいぶは優秀なゆっくりでさえ無能と呼ぶことがあるが・・・。 ふむ。 ここまでうるさいのも面倒くさいな。 捕まえたまりさは後回しにして、先にこのれいむをどうにかしよう。 『まぁ待て、れいむ。この無能まりさを頼るより、有能なれいむが動いたほうが早いんじゃないか?』 「ゆ?・・・そうだよ!れいむはゆうっのうっ!なんだよ!じじいはいいこというね!」 「ゆゆ~ん!おかーしゃんはゆうっにょうっ!なんだにぇ!」 『まぁ無理だけど、なっ!』 ドガッ!! 「ゆぐぼっ!!」 「ゆ~ん?」 「れ、れいむーーーー!!?」 調子に乗ってふんぞり返った糞でいぶを蹴り飛ばす。 ぶくぶくと肥えて皮の厚くなったでいぶに容赦はしない。 といってもここは路地裏。 壁に足が当たらないよう気をつけたため、本気で蹴るのは無理だった。 それでも勢いよく吹っ飛ぶれいむ。 ダンボールのおうちに突っ込んでおうちを崩壊させる。 「・・・ゆ!?・・・ゆ!?」 「ゆびぃーーー!れいみゅのおうちぎゃーーー!?」 「れいむ!?ゆっくり!?ゆっくりしでいっでね!?」 自分に何が起こったのか理解できないのだろう。目を白黒させるれいむ。 泣き叫ぶ赤れいむ。母親を心配するよりもおうちを、しかも自分のものだというゲスな発言をしているあたり救いがない。 そしてさらに尻をぶりんぶりんと振るまりさ。 「・・・ゆ!?・・・いだっ!?ゆぎゃーーーーーー!!!?」 「れいみゅのたきゃらもにょがーーーー!!」 「れいむーーーー!!」 ようやく身体の痛みに気がついた餡子脳のれいむ。 崩壊したおうちの上でのたうち回っている。 キモい。とてつもなくキモい。 「ゆひぃ~!ゆひぃ~!」 ようやく落ち着いたらしい。 おうちは完全に崩壊し、れいむの垂れ流した訳のわからない汁でぐちゃぐちゃになっている。 『さて、次は赤れいむだ』 「ゆ!?やみぇちぇにぇ!?やりゅにゃりゃおとーしゃんかりゃにしちぇにぇ!?」 「どぼじでぞんなごどいうのーーーー!!?」 赤ゆのゲス発言にまた尻をぶりんぶりんと振るまりさ。 今も汁が出続け、キモさは80%増(当社比)だ。 ・・・いい加減腕もだるくなってきたし、まぁいいか。 「ゆべぇっ!?」 とりあえず壁に叩きつけて気絶させておく。 顔面から行ったので歯が何本か折れた気がするが気にしない。 「い、いまのうちだよ!!おちびちゃん!おかーさんのおくちにはいってね!!」 「ゆわーん!おかーしゃーん!!」 と、まりさに構っていた間に、れいむの母性(笑)が発揮されたらしい。 赤ゆを自分の口の中にかくまってしまっていた。 「ゆぷぷっ!これでおちびちゃんにてはだせないね!ぷく~~!!」 「しゃしゅぎゃおかーしゃんぢゃよ!!」 『・・・・・・・』 「ゆぷぷぷぷ!れいむのぷくー!にびびってるね!?いまあやまればどれいにしてあげるよ!」 「あげりゅよ!!」 『いや・・・れいむ、お前よくあんな汚い赤ゆを口に入れられるな』 「「ゆ!?」」 『あんなに汚れて埃まみれの赤ゆだ。苦かったり辛かったりするだろ?または酸っぱいのかな?少なくとも甘くはないはずだ』 そう、赤ゆはとても汚れていた。 泥や埃、排気ガスの煤、その他路地裏にはそんな汚いものが溜まっている。 そんな中暮らしていたのだ。 汚くないはずがない。 「・・・ゆ?」 「にゃにいっちぇるにょ!?」 『我慢してるのか?さすが母性(笑)の強いれいむ。感嘆するよ』 「ゆぐっ!・・・ゆごっ!・・・ゆべぇーーーーー!!」 「こーりょこーりょしゅりゅよ!!?」 あ、吐いた。 それはそうだろう。 このれいむのことだ。 我慢していたわけではなく、私に指摘され、初めて気がついたのだろう。 「にゃんでだしちゃうにょーーー!?」 「うるさいよ!!まずいんだよ!・・・ゆ!?ち、ちかづかないでね!!」 「どびょじでぞんにゃごぢょいうにょーーー!!?」 れいむの気持ちもわからなくはない。 今、赤ゆはれいむのよだれまみれで地面を転がり、しかも先ほどのれいむのよくわからない汁溜まりに突っ込んでいた。 早い話、ぬめったゴミ球になっているのだ。 人間でもお飾りがなければゆっくりだと理解するのに時間がかかるだろう。 2匹はそのまま路地裏で追いかけっこを始めてしまった。 普段なら赤ゆが成体ゆっくりに追いつけるはずはないが、なかなかどうして、いい勝負になっている。 おそらくれいむは先ほど蹴られたダメージで身体能力が落ちているのだろう。 しかし・・・ 『キモいな。・・・というか汚いな』 訳のわからない汁を飛び散らせながらぐねんぐねんと飛び跳ねるれいむ。 ぬめったゴミ球の赤れいむ。 そこには不快な光景しか無かった。 「ち、ちかづかないでね!ゆっくりできないよ!ちかづくなっていってるでじょーーー!?」 ボインッ! 「ゆがぁーーーー!?れいみゅをゆっきゅりしゃしぇにゃいくじゅおやはしにぇーーー!?」 ピョインッ! ぶちゅん! あ。潰した。 終わらない追いかけっこに耐えられなくなったのだろう。 れいむが赤ゆに飛びかかり、潰してしまった。 「ゆふー!ゆふー!ゆっくりできないこはせいっさいっ!だよ!・・・ゆ?」 ねちょり 見れば赤ゆだったものがべっとりと見事にれいむの腹(?)にへばりついている。 どうやら粘性の高い汁と埃が混ざってガムのようになっていたらしい。 「はなれてね!はなれてね!!はなれろっでいっでるだろーーーー!!??」 いくら叫んだところで赤ゆのデスマスクは剥がれない。 それどころか死臭は益々強くなる。 『れいむ、それ、こすらないと取れないぞ?』 「ゆ!?・・・ばなれろ゛っ!ばなれろ゛っ!」 私がそう言うとれいむはビルの壁面に身体をこすりつけ始めた。 「ばなれろ゛っ!ばなれろ゛っ!」 「れ・・・れいむ・・・」 と、まりさが気絶状態から回復したらしい。 放心状態で鬼気迫る様子のれいむを見ている。 『見てごらん、まりさ。あのゆっくりしていないれいむを』 れいむの目はギラギラと光っていた。 よほどゆっくりできないのだろう。 もう自分が何をしているのかもわかっていないようだ。 コンクリートの壁面はこすりつけられたデスマスクを削りおとし、れいむの身体を削り始めていた。 「・・・ばなれろ゛っ!・・・ばなれろ゛っ!」 自分の身体が削れているのにも気づかず、壁面にこすりつけ続けている。 れいむの身体が3分の2になる。 そろそろ中枢餡だろうか? 「・・・ば・・な・・・れ・・・ろ゛っ!・・・ば・・・っ!」 死んだ。 これも自殺というのだろうか? 『永遠にゆっくりしてしまったね、まりさ』 「ゆ・・・ゆわ・・・」 これで、根性がなく、技能も、知恵も無いまりさは、帽子も失い、おうちと家族をも失ったことになる。 それがたとえ自分をゆっくりさせてくれない屑みたいなゲスだったとしても、だ。 私はそれを静かにまりさに告げる。 『根性も、技能も、知識も、お帽子も、おうちも、家族も、何もかも無いまりさ、それが君だよ』 「・・・・・・・」 まりさは答えない。絶望しているのだろうか。 『・・・どうせだから、全部無くしてみようか?』 ペキンッ 「ゆがぁ!?」 残っていた歯をすべて折る。 グリュンッ 「ゆ゛!?」 目をえぐる。 ブチィッ! 「ゆぎぃっ!?」 お下げを引きちぎる。 舌を、髪の毛を、あんよを、ぺにぺにを。 思いつく限りのものを、まりさから無くしていく。 『ふう、こんなもんかな』 「・・・!?・・・!!?」 ははは、何言ってるかわからないよ、まりさ。 いや、もうまりさだとわからないくらいに無くしてしまったね。 ここにいるのはぶるぶると震える禿げ饅頭だ。 『あとは・・・』 と、そこで私はあることに気がついた。 『そういえば、まりさ。私が奪わなくても、最初から君に無いものがあと一つあったね』 「・・・?」 そう、まりさに最初から無かったもの。それは 『私に見つかるなんて・・・運が無かったね、まりさ』 「・・・!!・・・・・・・!!!???」 それはそうだ。 たまたま私が、ゆ虐をしようと思った時に見つかったのだ。 運があるわけがない。 『さて、まりさ。最後にもう一つだけ無くしてみようか』 結局シンプルなゆ虐では無かったような気もするけど、楽しかったよ、まりさ。 さて、君のお帽子との約束を果たそうか。 『根性も、技能も、知識も、運も、お帽子も、おうちも、家族も、何もかも無いまりさ』 足を持ち上げる。 狙いは頭頂部。 『・・・惨めに命を無くしていってね!』 ぐしゃり 了 <あとがき> 汚い赤ゆを口に入れてまずくないのかな、というレスを見て、書き始めました。 なんでこんなに話がふくらんだんだろう? 前作『まりさのいる生活』で結構な評価をいただきまして、ありがとうございます。 執筆スピードは遅いですが、これからも頑張りたいと思います。 あと、これが10作目だと思ってたんですが、 HDDをあさって今まで書いた物をきちんと数えたら、すでに10作越えてました。 せっかくなのでちゃんと名前を決めようかと。 ちなみに旧wikiだと「トライガンあき(仮)」でした。 スレでは「gifあき」「ねんどあき2世」と呼ばれてたことも・・・。 次も造形物かSSでお会いできれば幸いです。 それでは最後まで読んでくださって、ありがとうございました。 今までに書いたもの 『おねぇさんのゆっくりプレイス』 『詰める』 『れっつびぎん』 『ぱぺっとショウ』 『おねぇさんのゆっくりプレイス・2』 『う゛ぁれんたいん』 『もりのけんじゃのひさく』 再開後の作品 『「まりさ」が好きな人』 『ドスまりさになれる授業』 『饅頭(マントウ)』 『まりさのいる生活』 今までに作った物(スレに晒した物) (保管庫にはありません。.netなら見れるかも) 『ゆうかにゃん』(ねんどろいど改造) 『クリーチャーれいむ』(フルスクラッチ) 『AQNさん』(ホイホイさん改造) 『ありす』(フルスクラッチ) 『ぺにありす』(フルスクラッチ) 『さなえ』(フルスクラッチ) 『鏡餅れいむ3姉妹』(フルスクラッチ) 『もげふらん』(小麦粘土)
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『子まりさを飼う』 11KB いじめ いたづら 子ゆ 愛護人間 虐待人間 モンハンさんご注文の品です 「ゆっくちしていっちぇね!」 舌足らずな子まりさが元気に挨拶をする。 今日から我が家の一員だ。 私はゆっくりを飼うのは初めてなので、子まりさと一緒に水槽も購入した。 防音加工された、「透明な箱」という物もあったのだが、普通に飼うならこっちと店員に勧められたのだ。 テーブルの上を元気に飛び跳ねる子まりさを横目で見ながら、水槽内のレイアウトをする。 まずは丸洗いできるカーペットを敷き、水槽の隅にトイレを設置する。 トイレから離した位置に、ゆっくり用のクッションを置く。 これは寝床として使ってもらう予定だ。 その横に、水とえさ用の皿を置いてひとまず完成。 早速、動き回る子まりさを捕まえて、水槽内に入れてあげる事にする。 「ゆわーい!おしょらをとんでるみちゃーい!」 嬉しそうに体をブリブリと振り、目を輝かせる子まりさ。 ゆっくりは、少し高く持ち上げるだけでもこの台詞を言うそうだ。 「ゆわーい!じめんがふかふかしゃんなんだじぇ!きにいっちゃのじぇ!ここをまりちゃのおうちにしゅるのじぇ!」 私の方を見て、凛々しい顔でそう宣言する子まりさ。 フカフカのカーペットと、柔らかいクッションが早速お気に入りの様子だ。 頭から潜り込んで尻の方をブリブリと振っている。 私ははしゃぐ子まりさに、水槽内の家具を一通り説明する。 子まりさは先程同様に、得意そうな顔で「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」と元気に答えた。 それから私はしばらく子まりさの様子を観察した。 子まりさは、水槽内をコロコロと転げまわったり、「のーびのーびしゅるのじぇ!」と言いながら、体を柔軟に伸ばした。 ゆっくりという生物は、一部で可愛がられ、一部で気持ち悪がられているが、観察していると、その理由がよく解る。 愛らしいと思える仕草もあれば、妙に生物らしい一面も見せる。 寂しい一人暮らしも、これで気が紛れるだろう。 「むーしゃむーしゃしゅるのじぇ!」 最安値のゆっくり用の餌に、頭を突っ込んで食べている子まりさ。 よっぽどお腹がすいているのか、周囲に餌を撒き散らしつつ尻をブリブリと振る。 時々、「しあわしぇー!」と声をあげるのだが、その度に口からポロポロと餌をこぼす。 これが非常に汚らしい。 いくら注意しても、「なんでなのじぇ?それじゃゆっくちできにゃいのじぇー!」と文句を良い直そうとしない。 そればかりか、餌を食べ終わると必ずその場で糞をするのだ。 「おにゃかがいっぱいになったのじぇ!それじゃあ、うんうんしゅるのじぇ!!」 自信たっぷりに宣言すると、その場で糞を撒き散らす。 これは体内の古くなった餡で、汚くはないそうだが子まりさの臭がり方、嫌がり方を見ていると、どうしても汚物としか認識できない。 「うんうんくっしゃーい!はやくかたずけるのじぇ!ゆっくちできにゃいのじぇぇぇ!」 その場で駄々をこねる様に、泣きながら何度も飛び跳ねる子まりさ。 涙を流して喚き散らすその姿を見ていると、この子まりさも汚物に見えてくる。 その上この子まりさは、糞どころか、尿もその辺りに撒き散らすのだ。 いくらトイレの場所を教えても、「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」と言うだけで一向に理解しようとはしなかった。 「いちゃいのじぇぇぇぇ!どーしちぇ、まりちゃをいじめるのじぇぇぇぇ!!ゆっくちできにゃいぃぃぃ!!」 トイレの場所を覚えない子まりさに、躾けのつもりでデコピンをしたらこの騒ぎである。 叱られている意味を理解しようとはせずに、私をゲスだとか、ゆっくり出来ないと罵った。 安物を買ったから悪かったのだろうか? バッジ付きというのにすれば良かったのだろうか? 何か良い躾けの方法はないのだろうか? 前途多難である。 私は子まりさの物覚えの悪さは、元々が頭が悪いからではないかと考えてた。 そこでネットで調べた簡単な教育方法を実践してみる事にする。 まずは数の数え方。 ゆっくりというのは基本的に、3つまでしか数えられないらしい。 教育すれば、それ以上の数を認識出来る様になり、優秀な個体は計算も出来る様になるそうだ。 早速数を数えさせてみる事にする。 「いーち、にー、たくしゃーん!」 どうやらこの子まりさは、3も数えられないようだ。 何とか教育してみようとしたが、5分も経たないうちにゆっくり出来ないと泣きはじめた。 これでは、トイレの場所を覚えられないのも無理はない。 何か別の方法を考える事にして、当面は仕方なしにカーペットを洗う事にする。 「うんうんくっしゃいのじぇー!うんうんおねーしゃん!はやくうんうんかたづけちぇねー」 得意げにカーペットに、うんうんをしてから私を呼ぶ子まりさ。 子まりさにとって私は、うんうん処理の係りらしい。 ゆっくりを好んで虐待する人達が居るそうだが、今ならその気持ちが良くわかる。 だが今日からは別の方法で、子まりさを教育してみる事にする。 何時もの様に子まりさを含む水槽内のものを取り出し、汚れたカーペットを外す。 そして変えのカーペットを敷き直すのだが、今回敷くのは何時もと違う物だ。 「ゆゆ?おねーしゃん、きょうのじめんしゃんは、つるつるなのじぇ?ふかふさしゃんじゃないのじぇ?」 早速変化に気がついた子まりさ。 しばらく不満を漏らすが、すぐにツルツルの床で滑ったりして遊んでいる。 とても楽しそうにしているその笑顔は、憎らしいほどに輝いている。 とりあえずは気に入った様なので問題ないだろう。 それは偶然だった。 子まりさ用の餌等の買出しにホームセンターに行った時に、暇だったので店内を色々見て回っていた時の事だ。 木工のコーナーでそれを見つけたのだ。 「へー紙やすりって、こんなに種類があるんだ」 その種類の豊富さに驚いた。 紙やすりなんて、ザラザラした紙程度にしか思っていなかったが、表記されている数字が大きいほど、粒子が細かくなっているのに気がついた。 2000番なんて、殆どツルツルした紙だった。 そこでふと思いついたのだ。 これを子まりさのカーペットに使ってみようと。 幸いな事に、耐水性の物もあるようだ。 とりあえず、2000番から80番までを、ゆっくり用の餌と一緒に買って帰ったのだ。 それから私は、子まりさがうんうんをしてカーペットを汚す度に、新品に取り替えた。 私がホームセンターで買ってきた紙やすりは、ツルツルしてて気持ちが良いと子まりさにも評判は良かった。 だが、子まりさは気が付いていない。 私が紙やすりの目を徐々に荒くしている事に。 カーペットの変わりに紙やすりを敷いてから3日たった。 紙やすりの荒さは800、ようやく子まりさも異変に気が付いたようだ。 「おねーしゃん!なんだか、ゆかしゃんがざらざらして、ゆっくりできにゃいきがするのじぇ!どーなっちぇるの?」 頭が悪い癖に、ゆっくり出来ない事にはすぐに反応する。 こういう所は感心するが、未だにトイレを覚えないのはどうした事か? 「さあ?気のせいじゃないの?………あーもしかして、まりさが床にうんうんしーしーするから、床が怒ったのかもね?」 「ゆぷぷ!なにいってるのじぇ?おねーしゃんは、あたまがかわいそうなのじぇー♪」 こちらにあにゃるを向け、プスっと屁をこいて私を馬鹿にする子まりさ。 これには流石にイラっとくるものがある。 「さあ、どうかしらね?まあ、どちらが正しいのかその内解るわよ」 子まりさを掴んで握りつぶしたくなる衝動を抑え、平静を装い子まりさに優しく声をかける。 子まりさは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに私を馬鹿にして笑い始める。 これ以上子まりさを見ているのは、精神衛生的に悪いと思い、私は水槽を後にする。 「ゆびぇぇぇぇん!おねーしゃん、まりちゃのあんよが、ひりひりするのじぇぇぇぇ!!」 子まりさが泣きながら私に訴える。 私は様子を見るため子まりさを持ち上げあんよを見る。 「おそらをとんでるのじぇー♪…やめるのじぇ!まりちゃのあんよにみとれるんじゃないのじぇ!」 ゆっくりお決まりの台詞を言った後に、恥ずかしそうに顔を赤らめあんよを動かす子まりさ。 その姿に少々苛立つが、気にしない事にする。 気を取り直して子まりさのあんよを見てみる。 紙やすりの上でずっと暮らしていたせいか、あんよに細かい傷がついている。 ちなみに今敷いている紙やすりは240番、流石にやすりっぽくなってきている。 私は子まりさを水槽に戻すと、子まりさに優しく言い聞かせる。 「やっぱりね!床がまりさに怒っているのよ。これからはしっかり、うんうんしーしーをトイレにするのよ。そうすれば床も…」 そう言っている途中で、子まりさは大きく息を吸い込んで膨れ上がった。 「ぷきゅぅぅぅ!!まりちゃ、おこったのじぇ!ゆかしゃんのくしぇに、まりちゃにいじわるしゅるなんて!せいしゃいするのじぇ!!」 膨らんだ子まりさは、そのまま大きく何度も跳ね回る。 「ゆんしょ!ゆんしょ!どうなのじぇ?!いちゃいのじぇ?!いちゃかったらまりしゃに…ゆんやぁぁぁぁ!いっちゃいのじぇぇぇぇ!!」 得意そうに飛び跳ねていた子まりさが、突然泣き叫ぶ。 吸い込んでいた空気も全部吐き出して、泣きながら水槽内を転げまわっている。 口を閉じて膨らんでいるのにどうやって喋ってたのかは、この際気にしないでおこう。 なんとも愛らしくも情けない姿に、思わず噴出しそうになってしまう。 「ゆっく、ひっく…げすなゆかしゃんなのじぇ…こーしてやるのじぇ!うんうんしゅるのじぇ!」 ようやく落ち着いたのか、子まりさは体勢を立て直す。 そしてあにゃるを突き出し、うんうんをした。 「どーなのじぇ?まりちゃにしゃからうから、うんうんまみれになるのじぇ!………うんうんくっしゃいのじぇぇぇ!ゆんやぁぁ!!」 うんうんをして得意そうな顔をしていたかと思えば、数秒もしない内に自分のうんうんの臭いで騒ぎ出す。 そういえば、何かのギャグ漫画で自分の臭い(う○こ)を臭いと思っと思ってしまった男が、「私は自分すら愛せないのか!」と嘆いていたのを思い出した。 その漫画からすれば、この子まりさは自分も愛せないのだろう。 しばらく様子を見ていると、今度は子まりさが自分のうんうんから逃れようと、水槽内を転げまわり始める。 「こーろこーろにげるのじぇ!…こーろ…こーろ…ゆっぴぃ!いきどまりなのじぇ!こーろ、こーろ…ゆっべぇ?!…くっしゃぁぁい!これ、うんうんなのじぇぇぇぇ!!」 転がっている内に壁にぶつかり、何も考えずに転がってきた道を戻って行く子まりさ。 当然ながら、そこには自分のうんうんが待っていてくれた。 子まりさは、自らのうんうんに顔から突っ込んだ。 その場でうんうん塗れになりながら、ゆんゆんと泣き叫ぶ。 「ゆびぇぇぇぇぇん!どぼしちぇぇぇぇぇ!いじわるしにゃいでえぇぇぇ!ゆんやぁぁぁぁぁ!!」 泣きながら自分のうんうんの上で地団太を踏む子まりさ。 私は堪え切れずにその場で笑い転げてしまった。 「ゆびぇぇぇぇん!どーしちぇわらってるのじぇぇぇぇぇ!なんにもおもしろく……くっしゃぁぁぁい!うんうんくしゃいのじぇぇぇぇ!!」 「ゆびぇぇぇぇん!あんよがひりひりしゅるのじぇぇぇぇ!ゆかしゃん、いじわるしにゃいでぇぇぇ!!」 子まりさの悪夢のうんうん事件の翌日。 あれからも紙やすりを3回取り替えて、現在80番の紙やすりを敷いている。 これで買ってきた紙やすりは最後、売っていた物では一番目の荒いものだ。 あれからも、懲りずに動き回っては泣き叫ぶを繰り返してきた子まりさだが、今では水槽の隅でじっとして泣いている。 この紙やすりに変えてからは餌も食べに行かず、ずっとこの調子だ。 「ほら、床に意地悪を止めて欲しかったら、何か言う事があるんじゃないの?」 このまま飢えて死なれても面白くないので、私は子まりさにヒントを与える。 「ゆ?…ゆぅ……ゆゆぅ…」 子まりさはしばらく考え込む。 だが、中々答えが出ないのか、ゆんゆんと唸り悩んでいる。 私はしばらくその様子を見ていたが、途中で飽きてしまいその場を去る。 「ゆーん!わかったのじぇぇぇぇぇ!!」 30分ほど経っただろうか。 子まりさが急に大声を上げるので、私は急いで水槽に駆け寄る。 子まりさは得意そうに踏ん反り返ると、一言叫んだ。 「ぜーんぶ、このゆかしゃんがわるいのじぇ!!」 ?! あの後まりさは、膨れ上がって床を制裁、痛くて大泣きの繰り返しをしばらく続けた。 自らの行為を反省する事もなく、トイレの場所を覚える事もなかった。 結局私のした事は意味がなかったのだ。 「ゆびぇぇぇぇん!いたいのじぇぇぇぇ!ここはゆっくちできにゃいのじぇぇぇぇぇ!!ゆんやぁぁぁぁ!!」 水槽の中から子まりさの声が聞こえる。 様子を見てみると、餌置き場の前で情けない顔で泣いている。 あんよには小さい穴があき、そこから少量の餡が漏れている。 あの後私は、水槽内の紙やすりを処分して、そこに土を敷いた。 うんうんしーしーの処理が面倒になったからだ。 最初の内は人工芝でも置いてみようと思ったのだが、それも勿体無い気がしたので近所の空き地から土を失敬してきた。 無論それだけでは面白くないので、餌置き場の周辺に100均で買ってきた剣山を埋めておいた。 学習機能の乏しい子まりさは、毎回餌を食べに来る時に剣山を踏んでは泣いている。 圧程度弱ってきたら、オレンジジュースをかけて治療しているので簡単には死なないだろう。 「つちしゃんのくせに、なまいきなのじぇ!まりちゃがせいしゃいしゅるのじぇ!」 そう言っては剣山の生えている土の上で飛び跳ねるのも、もはや日課になっている。 こいつはきっと死ぬまでこのままなのだろう。 毎回決まったネタしかやらないお笑い芸人のようだが、それはそれで良いのかも知れない。 少なくとも私を笑わせて楽しませてくれている。 まあ、私が剣山に飽きたら他の手で、いじめて遊んであげよう。 「ゆびぃぃぃぃ!いたいのじぇぇぇぇ!ゆびえぇぇぇぇん!!ゆっくりできにゃいのじぇぇぇぇぇ!!」 ああ、なんと愛らしい馬鹿饅頭。 完 徒然あき